サイト内検索|page:564

検索結果 合計:35638件 表示位置:11261 - 11280

11261.

コロナ入院患者にレムデシビルは有益か:WHO最終報告/Lancet

 レムデシビルは、人工換気へと症状が進んだ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対して有意な効果をもたらさないことが、またその他の入院患者について、死亡または人工換気(あるいはその両方)への進行に対する効果はわずかであることを、世界保健機関(WHO)の連帯試験コンソーシアム(Solidarity Trial Consortium)が最終結果として報告した。COVID-19患者を対象としたSolidarity試験では、これまでに4つの既存薬に関する中間解析結果が報告されている。このうちロピナビル、ヒドロキシクロロキン、インターフェロン(IFN)-β1aは無益として試験が中止となったが、レムデシビルの無作為化試験は継続されていた。本稿で同コンソーシアムは、これまでに行われたすべての関連試験の死亡率およびメタ解析の最終結果を報告している。Lancet誌オンライン版2022年5月2日号の報告。35ヵ国454病院でCOVID-19入院患者1万4,221例を対象に無作為化試験 Solidarity試験には、医師の見立てで明らかなCOVID-19で最近入院し、いずれの試験薬にも禁忌がなく、その他の患者の特性は問わず同意が得られた成人(18歳以上)患者が登録された。 被験者は、試験地で入手可能であった試験薬に等分になるよう無作為に割り付けられ、その時点で入手可能であった4つの試験薬(ロピナビル、ヒドロキシクロロキン、IFN-β1a、レムデシビル)のいずれかまたは非試験薬(対照)の投与を受けた。また、すべての患者は、試験地の標準治療も受けた。プラセボの投与は行われなかった。 プロトコールで指定されていた主要エンドポイントは、疾患重症度で分類した院内死亡であった。副次エンドポイントは、人工換気への進行(同未実施の場合の)、入院から退院までの期間などであった。 最終的なlog-rank検定およびKaplan-Meier解析はレムデシビルについて行われ、すべての4つの試験薬について追加された。メタ解析は、今回の試験およびその他3つの試験薬の無作為化試験で報告された入院患者における死亡率の加重平均値を評価した。 2020年3月22日~2021年1月29日の間に、WHOに加盟する世界6地域にある35ヵ国454病院から1万4,303例の適格条件を有すると思われる患者が登録された。COVID-19診断が反証されたり、暗号化された同意がデータベースに入力されなかったりした83例(0.6%)を除外後、Solidarity試験には1万4,221例が登録され、うち8,275例がレムデシビル(早期退院とならない限り10日間連日静注投与、4,146例)またはその対照(レムデシビルを入手可能な地域であったが、試験薬に割り当てられなかった、4,129例)を受けるよう無作為に割り付けられた。すでに人工換気を受けていた患者の死亡、レムデシビル群42.1%、対照群38.6% レムデシビル群、対照群ともにコンプライアンス率は高かった。 死亡は、レムデシビル群は4,146例中602例(14.5%)、対照群は4,129例中643例(15.6%)であった(死亡率比[RR]:0.91[95%信頼区間[CI]:0.82~1.02]、p=0.12)。すでに人工換気を受けていた患者の死亡は、レムデシビル群359例中151例(42.1%)、対照群347例中134例(38.6%)であった(RR:1.13[0.89~1.42]、p=0.32)。人工換気は受けていなかったが酸素投与を受けていた患者の死亡は、レムデシビル群14.6%、対照群16.3%であった(RR:0.87[0.76~0.99]、p=0.03)。 当初は酸素投与を受けていなかった患者1,730例の死亡は、レムデシビル群2.9%、対照群3.8%であった(RR:0.76[95%CI:0.46~1.28]、p=0.30)。また、人工換気を受けていなかった全患者の死亡は、レムデシビル群11.9%、対照群13.5%であり(RR:0.86[0.76~0.98]、p=0.02)、人工換気への進行はレムデシビル群14.1%、対照群15.7%であった(RR:0.88[0.77~1.00]、p=0.04)。 死亡/人工換気への進行の複合アウトカムの発生率(事前に規定されていなかった)は、レムデシビル群19.6%、対照群22.5%であった(RR:0.84[95%CI:0.75~0.93]、p=0.001)。 レムデシビルの連日静注投与への割り付け(非盲検対照との比較で)は、10日間の治療期間中の退院を約1日遅らせた。 なお、レムデシビル非使用と比較したレムデシビルのすべての無作為化試験における死亡率のメタ解析では、類似した所見が得られたという。

11262.

PCSK9阻害薬、エゼチミブは心血管リスクを低減/BMJ

 エゼチミブまたはPCSK9阻害薬は、忍容最大用量のスタチン投与中あるいはスタチン不忍容の、心血管リスクがきわめて高い/高い成人において、非致死的な心筋梗塞(MI)および脳卒中を抑制可能なことが示された。同リスクが中程度および低い患者では認められないという。米国・Houston Methodist DeBakey Heart & Vascular CenterのSafi U. Khan氏らがシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果を報告した。BMJ誌2022年5月4日号掲載の報告。スタチンの有無を含めて心血管リスクへの影響をネットワークメタ解析 研究グループは、エゼチミブおよびPCSK9阻害薬が心血管アウトカムに及ぼす影響を、忍容可能な最大用量のスタチン治療を受けている成人またはスタチン不忍容の成人において比較する検討を行った。 Medline、EMBASE、Cochrane Libraryを2020年12月31日時点で検索し、被験者500例以上、追跡期間6ヵ月以上のエゼチミブとPCSK9阻害薬の無作為化対照試験を特定。頻度論的な固定効果ネットワークメタ解析とGRADE(grading of recommendations, assessment, development, and evaluation)によるエビデンスの確実性の評価を行った。 結果には、5年間治療を受けた患者1,000人当たりの非致死的MI、非致死的脳卒中、あらゆる原因の死亡、および心血管死の相対リスク(RR)と絶対リスクが含まれた。ベースラインで受けていた治療および心血管リスクの閾値別に、一定のRR(ネットワークメタ解析から推定)を想定の下で絶対リスク差を推算。1次および2次予防における心血管リスクはPREDICTリスク計算法で算出した。 患者を、心血管リスクが「低い」~「きわめて高い」に分類。ガイドラインパネルとシステマティックレビューの著者により、最小重大差(MID)はMIが1,000例当たり12例、脳卒中が1,000例当たり10例と定められた。心筋梗塞、脳卒中の発生を抑制 検索により、スタチン治療を受けている成人8万3,660例が参加する、エゼチミブとPCSK9阻害薬を評価した14試験が特定された。 スタチンへのエゼチミブ追加は、MI(RR:0.87[95%信頼区間[CI]:0.80~0.94])および脳卒中(0.82[0.71~0.96])を抑制したが、あらゆる原因による死亡(0.99[0.92~1.06])、心血管死(0.97[0.87~1.09])は抑制しなかった。 同様に、スタチンへのPCSK9阻害薬追加は、MI(RR:0.81[95%CI:0.76~0.87])および脳卒中(0.74[0.64~0.85])を抑制したが、あらゆる原因による死亡(0.95[0.87〜1.03])または心血管死(0.95[0.87~1.03])は抑制しなかった。 また、被験者のリスク分類別に見ると、きわめて高い心血管リスク成人において、PCSK9阻害薬の追加投与がMI(16/1,000例)、脳卒中(21/1,000例)を抑制すると思われた(中程度~高い確実性)。これに対してエゼチミブの追加投与は、脳卒中(14/1,000例)は抑制するようであったが、MI(11/1,000例)は抑制するもののMIDに到達しなかった(中程度の確実性)。 PCSK9阻害薬とスタチンへのエゼチミブ追加は、脳卒中(11/1,000例)を抑制するようであったが、MI(9/1,000例)は抑制するもののMIDに到達しなかった(低い確実性)。スタチンとエゼチミブへのPCSK9阻害薬の追加は、MI(14/1,000例)、脳卒中(17/1,000例)ともに減じるようであった(低い確実性)。 心血管リスクが高い成人においては、PCSK9阻害薬の追加投与は、おそらくMI(12/1,000例)、脳卒中(16/1,000例)は抑制しうることが示唆された(中程度の確実性)。エゼチミブの追加投与は、おそらく脳卒中(11/1,000例)は抑制しうるようであったが、MI(8/1,000例)はMIDに到達しなかった(中程度の確実性)。 PCSK9阻害薬とスタチンにエゼチミブを追加しても、MIDを達成するアウトカムの減少は得られなかったが、エゼチミブとスタチンにPCSK9阻害薬を追加すると、脳卒中(13/1,000例)は抑制しうることが示唆された。 これらの結果は、スタチン不忍容の患者でも一致していた。中程度および低い心血管リスクの集団では、スタチンにPCSK9阻害薬またはエゼチミブを追加しても、MIおよび脳卒中へのベネフィットは、ほとんど/まったく得られなかった。

11263.

抗精神病薬の多剤併用から単剤療法に切り替え後の再発率と精神症状への影響

 抗精神病薬の多剤併用療法について、支持するエビデンスはほとんどなく、安全性や副作用に対する懸念が存在する。それにもかかわらず、多剤併用療法は、統合失調症の長期入院患者に対し一般的に行われている。オランダ・マーストリヒト大学のMushde Shakir氏らは、第1世代抗精神病薬(FGA)および第2世代抗精神病薬(SGA)の併用療法からいずれかの単剤療法への切り替えが及ぼす、再発率および精神症状への影響を検討した。その結果、統合失調症の長期入院患者においてFGAとSGAの併用療法から単剤療法へ切り替えた場合、再発率は増加することなく、逆に減少することが示唆された。Schizophrenia Research誌オンライン版2022年4月6日号の報告。 SGAとFGAの併用療法を行っている入院中の慢性期統合失調症患者136例を対象にランダム化非盲検試験を実施した。切り替え群はFGAまたはSGAのいずれかを中止し、現状維持群は併用療法をそのまま継続した。再発および精神症状は、ベースライン時、フォローアップ後3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月の時点で測定した。精神症状の評価には、簡易精神症状評価尺度(BPRS)を用いた。再発の定義は、(1)BPRSのいずれかの項目における2ポイント以上の増加、または(2)BPRS合計スコア4ポイント以上増加および抗精神病薬の調整とした。 主な結果は以下のとおり。・性別で補正したロジスティック回帰モデルでは、切り替え群の再発率が有意に低いことが示唆された(OR:0.29、95%CI:0.13~0.62)。・単剤療法への切り替えによる保護効果は、単剤療法としてクロザピンを継続している患者で認められた。・再発および脱落しなかった患者では、切り替え群においてBPRS合計スコアの有意な減少が認められた(p=0.0001)。

11264.

妊娠中の新型コロナウイルス感染症へのワクチン接種は妊娠中合併症リスクに影響せず(解説:前田裕斗氏)

 新型コロナウイルス感染症に妊娠中感染することで早産や妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症のリスクが上昇することが報告されている。一方、妊娠中のワクチン接種には根強い抵抗があり、臨床現場でもその安全性について質問される機会も多い。これまでも妊娠中ワクチン接種と妊娠合併症の関係を調査した論文は多かったが、病院ベースや高リスク群を対象としたものが多かった。そこで本研究ではノルウェー、スウェーデンのある期間中における全妊娠を対象としている。 早産(37週未満、32週未満)、死産、SGA(週数に比して低体重)、新生児仮死、NICU入院のリスクについて解析が行われ、いずれの項目についてもワクチン接種群、非接種群で発生率に差は認めなかった。むしろ、ノルウェーにおけるNICU入院はワクチン接種群でわずかに減少した。 本研究の大きな価値は2021年1月〜2022年1月の全ての妊娠を対象としたことである。これにより低リスク〜高リスク全ての妊娠が含まれ、選択バイアスが軽減された。また、国のデータベースを用いているため、幅広い交絡要因を検討することが可能である点も強みとして挙げられる。一方、分娩時合併症について報告したカナダの研究と同様、妊娠初期にワクチン接種を受けた群が少ないことが研究の限界として挙げられる。また早産やNICU入院など新型コロナウイルス感染が直接的に影響する合併症のリスクは、国ごとのコロナ対策により大きく左右される可能性があるため、日本でも同様の結果になるかどうかは不明であるが、少なくとも合併症が増す方向になる可能性は今回の結果から考えて低いことが予想される。前述したカナダからの研究とも合わせ、妊娠中の新型コロナウイルス感染症へのワクチン接種の安全性が強く支持されたといえるだろう。

11265.

第108回 医療施設はウクライナ軍の逃げ場!?だからロシアは狙うのか

現在、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の1日の新規陽性報告数は、ゴールデン・ウイークで人同士の接触が増えたことから、一時的に増加傾向にあるようだ。しかし、今年に入って始まった第6波のピーク時から考えれば、全体としてはすでに減少傾向にある。そして2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻により、一般向けニュースの様相は変わってきた。実際、私が記事を提供するインターネットの情報サイトの編集者からは「もうコロナは読まれなくなってきているので、書くなら短めで。それより、ぜひウクライナのほうで何かあれば」とまで言われるようになっている。とくに自分の場合は医療と国際紛争をメインテーマにしているというやや特殊な立ち位置だけに、そうした依頼が来る。そんなこんなことも踏まえ、今回は世界保健機関(WHO)のレポートを中核に据えて、現在のウクライナの医療事情を個人的な経験や感想も交えながら簡単にご紹介しようと思う。世界保健機関(WHO)の報告によると、開戦から5月4日までの時点で医療施設や医療関連の輸送、医療従事者や患者、医療関連物資の倉庫などに対して確認された攻撃が186件。これにより発生した死者は73人、負傷者は52人となっている。日本国内でもこうした事例はたびたび報道されており、「なぜ医療機関が攻撃対象に?」と思う人も少なくないだろう。これは誤爆など意図しない攻撃と意図した攻撃の2つが考えられる。現代では軍事作戦と無関係の施設や人間を攻撃することは、戦時国際法では違法行為とされる。こうした違法行為を防ぐために発展してきたのが戦闘機による空爆や地上からのミサイル攻撃などで使われる精密誘導弾である。これらは主にレーザーなどで目標位置を確認しながら軌道修正を行って着弾する。その命中精度だが、攻撃目標に対して半数以上が命中する半数必中界(CEP:Circular Error Probability)は20~30m程度である。逆に言えば医療機関から20~30m以内に軍事施設などがあれば、結果として誤爆は起こりえるということだ。これが非精密誘導兵器ならば、CEPはおおむね0が1個多くなる。ロシアの場合、精密誘導兵器の保有割合が先進国などと比べて低いと言われているため、必然的に誤爆の確率は高くなる。そして先進国による経済制裁により、現在、ロシアではこうした精密誘導兵器に使う電子部品などが枯渇しつつあると報じられている。やや嫌な見通しになるが、今後はさらにこうした誤爆による医療機関も含む民間施設への攻撃は増加してくると考えられる。一方、意図した攻撃とは、敢えて民間施設を狙うことで一般人の厭戦(えんせん)気分を煽り、「反撃能力を低下させる」あるいは究極のケースでは「その結果、戦争を主導する首脳部を下から突き上げ崩壊させる」ことを意図したものだ。今回のロシアの攻撃についてはむしろこの可能性が強く疑われている。というのもロシアに関しては、近年明らかに“そうしたい”としか感じられない攻撃を中東のシリアで何度も行っているからである。シリアは現在、バッシャール・アル・アサド大統領による独裁政権に抵抗する反政府勢力との間で内戦状態となっているが、ロシアはアサド大統領側に肩入れして軍事介入を行っている。ここでは何度も医療機関を含む民間施設への執拗な空爆をロシア軍が行っている。また、現在ウクライナ入りして取材している私の友人によると、先日までロシアが支配下に置いていた首都キーウ(キエフ)北方のボロディアンカの市街地は見事なまでに一般市民の高層アパートのみが攻撃を受けているという。実はこの2つ以外に医療機関が攻撃を受けるグレーな状況というものが存在する。先日、日本記者クラブで、フランスに本部を置く国際協力組織(NGO)の「国境なき医師団」のメンバーとして3月下旬から4月上旬まで現地に派遣されていた医師の門馬 秀介氏が記者会見したが、会見の中で門馬氏は次のように語った。「これは聞いた話でしかないんですけれど、マリウポリから避難してきたウクライナ人に話を聞くと、医療機関に逃げてくる兵士もいるので、 そこを狙って攻撃をしていると言っている方もいらっしゃいました」 これは「やっぱり」と思った。私もイラクで経験があるのだが、医療機関の周辺で戦闘が起こると、付近の住民はもちろんのこと一部の戦闘員が武装したまま逃げ込んでくることがあるのだ。少なくともそこを拠点に攻撃を開始でもしなければ、医療機関側も避難者として兵士を受け入れるしかない。自分もこの経験をした時は「勘弁してほしい」と内心では思っていたものの、兵士に面と向かってそうは言えなかった。ちなみに自分以外にもこうした経験を持つ取材者はいて、皆で意見が共通しているのが、逃げ込んでくるのは、多くは若年の徴集兵だということ。まあ経験値も少ない彼らは恐れが先に立つので、ある意味やむを得ないとも思う。もっともこうした事実があったとしても、医療機関への攻撃が正当化されるものではない。さて、WHOのレポートでは、ウクライナに展開しているWHOの救急医療チームが3月12日~4月30日までに提供したケア件数は3,472件で、その内訳は感染症が17%、外傷が12%、その他が62%。意外に外傷は少ないと思われるかもしれないが、あくまでWHOが把握している範囲である。そもそもWHOが活動する地域は最前線からある程度後方になることを考えれば、そこまでアクセスできないケースや前線近傍で対応しているケースも考えられるため、そもそもが過少報告になっている可能性が高いと言える。もっとも感染症の蔓延についてはWHOもかなり懸念しているようだ。日本国内でも多くの人が報道で目にしているように、一般市民の中には地下の避難所などで長らく避難生活を強いられている人も少なくない。そしてこれもまた報道で目にしているようにその環境はお世辞にも衛生的とは言えない。実際、WHOもレポートで「コレラ、はしか、ジフテリア、新型コロナなどのような病気の発生リスクは、水、下水設備、衛生状態へのアクセスの欠如、空爆シェルターと集合避難センターの混雑状態、通常および小児期の免疫獲得が最適ではないなどの事情から悪化している」と指摘している。WHOによると、4月28日~5月4日までの間に報告されたウクライナでの新型コロナ新規陽性者は2,886人、死亡者は52人。この前の1週間と比べ、それぞれ37%と29%減少しているが、 WHOは「新型コロナの症例と死亡は過少報告されているため、これらの数値は慎重に解釈する必要がある」と指摘している。むろんこの状況でウクライナ全土での公的サーベイランスが平時同様に機能している可能性は極めて低いため当然の指摘だろう。一方、WHOレポート内ではメンタルサポートへのアクセスが制限されている結果として、虐待や自傷行為も含むメンタル問題が増加することへの懸念も簡潔ながら言及されている。前述の門馬氏も移動診療所での診療経験からこの点の重要性を指摘していた。門馬氏の通訳を担当した現地の英語教師が、問診の通訳最中、患者が避難に至る訴えなどを聞いているうちにショックを受けて泣き出してしまうのだという。門馬氏は「(ウクライナの人たちは)戦争が扉1 枚隔ててすぐ横にある状態で心理状況が不安定。そのギリギリの中でやっているので、何か1つのことで急に泣き出してしまうことを実感した」と語っている。そして私個人の経験では、紛争地でのメンタルの問題は戦闘状態が長期化するほど複合的にさまざまな問題をもたらすと感じている。おおむね戦闘が長期化している地域では、メンタル面でどん底に落ち込んでしまう人とその状態に慣れてしまう人がいる。どん底に落ちた人の一部は薬物中毒などに走る。実際、私が過去に取材した紛争地では違法薬物が半ば堂々と売買されているシーンを目にすることは稀ではなかった。しかも医療アクセスが限定的となっているため、こうした人たちが医療的ケアにアクセスできる機会は限られているため、どんどん泥沼に落ち込んでしまう。一方で、打ち続く戦闘状態の中で半ば正常性バイアスらしきものが働き、その状態にメンタル的に慣れてしまう人もある種の問題を引き起こす。どういうことかというと、慣れっこゆえの不注意さで戦闘に巻き込まれて負傷したり、命を落としたりということが少なくないのだ。自分が以前、内戦中の旧ユーゴのボスニア・ヘルツェゴビナを取材した時のことだ。私の通訳をしてくれたのはサラエボ在住の男子大学生。その彼が市街地のある場所を通り過ぎる時、いつもなぜか寡黙になった。彼と仕事をするようになって3回目の時、私は彼に思い切ってそのことを尋ねてみた。すると彼はため息と苦笑い交じりで次のように話してくれた。「ここさ、高校時代の同級生が撃たれて死んだところなんだ。敵側のスナイパーの射程に直接入るところでね。うちらは毎日ここを走り抜けて高校に行っていたんだけど、ある時、自分と友人も含め5人で集まって『いつもよりやや遅めの走りで肝試ししよう』となってね。自分は4人目で何ともなかったんだけど、5人目の彼がやられてしまった。今考えると何でそんな遊びしちゃったんだろうって」戦闘に慣れるということはそういう負の側面もあるのかと何とも言えない気持ちになったことを今でもはっきり覚えている。ロシアによるウクライナ侵攻はまだ当面終わりそうにない。この状態が長く続くほど、私もまたこのエピソードを何度も思い返すことになるだろう。何とも気が重くて仕方がない。

11268.

統合失調症患者の併存疾患~リアルワールドデータ分析

 米国において統合失調症の影響は320万人超に及ぶとされる。しかし、統合失調症の併存疾患パターンは、リアルワールドでシステマティックに検証されていない。米国・ハーバード大学のChenyue Lu氏らはこの課題を解決するため、米国の健康保険データセットの8,600万例の患者コホートを用いた観察研究を実施した。その結果、統合失調症患者の既知の併存疾患だけでなく、これまであまり知られていなかった併存疾患パターンも特定された。Translational Psychiatry誌2022年4月11日号の報告。統合失調症患者の併存疾患の初期兆候に臨床医が注意を払う 統合失調症患者と非統合失調症患者を年齢、性別、居住地(郵便番号の最初の3桁)でマッチさせた。統合失調症患者とマッチした非統合失調症患者の疾患ごとの有病率を比較し、年齢、性別で層別化したサブグループ分析を行った。 統合失調症の併存疾患パターンを観察研究した主な結果は以下のとおり。・青年および若年成人では、統合失調症診断前に、不安症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、薬物乱用が認められることが多かった。・60歳以上の統合失調症患者の併存疾患として、せん妄、アルコール依存症、認知症、骨盤骨折、骨髄炎の発症リスクが高かった。・統合失調症診断前の女性では、2型糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、摂食障害が認められることが多く、男性では、急性腎不全、横紋筋融解症、発達遅延が多かった。・統合失調感情障害患者では、他の統合失調症患者と比較し、不安症状や肥満の頻度が高かった。 著者らは「これらの併存疾患プロファイルは、同時に発生する疾患の初期兆候に臨床医が注意を払うよう導いてくれるだろう」としている。

11269.

T-DXdの効果、HER2発現だけでなく腫瘍内の空間的分布も影響(DAISY)/ESMO BREAST 2022

 転移乳がんへのトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の有効性を評価したDAISY試験における探索的評価項目のトランスレーショナル解析から、T-DXdの抗腫瘍効果は腫瘍細胞のHER2発現量だけでなく、空間的分布にも影響されることが示唆された。フランス・Gustave RoussyのMaria Fernanda Mosele氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で報告した。T-DXd無効とHER2陰性細胞の高い空間的分布が関連 DAISY試験は、転移乳がんを対象にT-DXdの有効性をHER2発現量(高発現、低発現、陰性の3群)で評価した多施設非盲検第II相試験。主要評価項目である最良客観的奏効率はすでに報告されており、HER2高発現群(IHC 3+またはIHC 2+/ISH+、68例)で71%、HER2低発現群(IHC 2+/ISH-またはIHC 1+、72例)で37.5%、HER2陰性群(IHC 0、37例)で30%と、T-DXdの抗腫瘍効果はHER2発現量と関連していた(p=0.0001)。今回はT-DXdの作用機序と耐性機序を解明するため、腫瘍細胞への取り込み、免疫細胞のモジュレーション、HER2の空間的分布、耐性機序について検討した。 T-DXdの作用機序と耐性機序について検討した主な結果は以下のとおり。・HER2陰性細胞ではT-DXdの取り込みが少なく(p=0.053)、T-DXdの取り込みとHER2発現量には中程度の相関が認められた(r=0.75)。・HER2高発現の乳がんでPD-L1発現の減少がみられたが、HER2低発現や陰性ではみられなかった(p=0.02)。・T-DXdによるT細胞やマクロファージの量的モジュレーションはみられなかった。・HER2陰性細胞の高い空間的分布がT-DXd無効と関連(p=0.0008)していた。すなわち、HER2発現細胞が空間的に遠い場合は効果が小さいことが示唆された。・T-DXdで病勢進行した20例中13例(65%)にHER2発現の減少がみられた。

11270.

外陰部高度扁平上皮内病変でイミキモド外用は手術との比較で非劣性/Lancet

 外陰部の高度扁平上皮内病変(vHSIL)の治療において、外用免疫調節薬イミキモドによる局所療法は、有効性に関して外科手術に対し非劣性で、安全性も良好であり、本症の1次治療となる可能性があることが、オーストリア・グラーツ医科大学のGerda Trutnovsky氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年4月25日号で報告された。オーストリア6施設の無作為化非劣性第III相試験 本研究は、外陰部上皮内新生物(VIN)の治療における、イミキモドの手術に対する非劣性の検証を目的とする無作為化第III相試験であり、2013年6月~2020年1月の期間に、オーストリアの6つの病院で参加者の登録が行われた(オーストリア科学基金とオーストリア婦人科腫瘍グループの助成を受けた)。 対象は、年齢18~90歳の女性で、組織学的にvHSILと確定され、肉眼的に単巣性または多巣性病変を有する患者であった。主な除外基準は、(1)臨床的に浸潤性病変が疑われる、(2)外陰がんまたは外陰部の重度の炎症性皮膚症の既往がある、(3)過去3ヵ月以内にvHSILに対する積極的な治療を受けている場合であり、免疫不全状態、妊娠中、授乳中の女性も除外された。 被験者は、イミキモド(5%クリーム)の投与または手術(切除術またはアブレーション)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。イミキモドは、緩やかな増量計画に基づき、4~6ヵ月間にわたり最大で週3回、患者自身により塗布された。ベースライン、6ヵ月、12ヵ月の時点で、外陰部鏡検査、外陰部生検、ヒトパピローマウイルス(HPV)検査、患者報告アウトカムの評価が行われた。 主要エンドポイントは、局所イミキモド治療または1回の外科的介入から6ヵ月の時点での臨床的完全奏効(CCR)であった。CCRは、外陰部病変の臨床的証拠がないこと(原発病変の完全消失)と定義された。解析はper protocol集団で行われ、非劣性マージンは20%とされた。intention-to-treat解析でも非劣性の強い傾向が 110例が登録され、このうち109例がintention-to-treat集団(単巣性vHSIL例78%、多巣性vHSIL例22%)で、イミキモド群56例(平均[±SD]年齢53.0[15.7]歳、閉経後61%)、手術群53例(50.2[14.4]歳、43%)であった。per protocol解析には98例(46例、52例)が含まれた。 6ヵ月時のper protocol解析によるCCRは、イミキモド群が80%(37/46例)、手術群は79%(41/52例)で達成され、イミキモド群の手術群に対する非劣性が示された(非劣性解析のp=0.0056)。閉経状態や喫煙習慣の有無と臨床効果には関連がなかった。 CCRのintention-to-treat解析では、イミキモド群の非劣性の強い傾向が認められた(CCR割合:イミキモド群72%[39/54例]vs.手術群79%[42/53例]、非劣性解析のp=0.065)。 また、浸潤性病変は、手術群(2回目の手術を受けた患者を含む)で5例に認められたのに対し、イミキモド群ではみられなかった。 6ヵ月時の全体のHPVクリアランス率は44%で、両群間に差はなかった。手術群では最初の1ヵ月間に外陰部痛が、イミキモド群では2ヵ月間に外陰部の掻痒の頻度が高かった。また、イミキモド群は、びらんや紅斑のほか、疲労、頭痛、筋肉/関節の痛みの頻度が手術群よりも高かったが、多くが軽度~中等度だった。鎮痛薬の使用は手術群で多かった。治療満足度は両群間に差はなかった。 著者は、「この試験は免疫組織化学的解析と長期追跡調査が継続されており、今後、イミキモドによる局所治療が最も有益な患者を特定するのに役立つと考えられる」としている。

11271.

新たな患者報告アウトカム評価法がコロナ罹患後症状の評価に有用/BMJ

 最新の心理測定法を用いて開発された包括的な患者報告アウトカムの評価法である「long COVID症状負担質問票(symptom burden questionnaire for long COVID:SBQ-LC)」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を経験した生存者において、long COVIDによる重要な症状の測定に有用で、介入効果の評価が可能であり、臨床管理における最良の診療法に結び付く有益な情報をもたらす可能性があることが、英国・バーミンガム大学のSarah E. Hughes氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年4月27日号に掲載された。英国の新たなlong COVID評価法の開発と妥当性の検証 研究グループは、long COVIDによる症状負担の患者アウトカム評価法(SBQ-LC[第1版])を新たに開発し、その妥当性を検証する目的で、多段階的な混合研究法を用いた前向き研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成を受けた)。 2021年4月14日~8月1日の期間に、英国において実地試験のための遠隔データが収集され、ソーシャルメディアのチャンネルで特定されたlong COVID患者の支援グループで、実地試験への参加者の募集が行われた。 自己申告によるlong COVIDの成人(年齢18歳以上)患者13人(20~60歳、女性10人[77%])と臨床医10人により、SBQ-LCの項目内容の妥当性が評価された。次いで、274人(平均年齢45.0歳[範囲:21~70]、女性88%)のlong COVID患者により、質問票の草案が実地に検証された。 SBQ-LCの概念的枠組と初期の項目群は、既報の系統的レビューを参考に作成された。認知デブリーフィング(cognitive debriefing)のための患者へのインタビューとオンラインでの臨床医の調査の記録から主題分析が行われ、内容的妥当性(content validity)が確認された。 また、患者と住民参加型の支援グループによる合意形成のための議論(Therapies for Long COVID in non-hospitalised individuals: From symptoms, patient reported outcomes and immunology to targeted therapies[TLC研究])で、表面的妥当性(face validity)が確定された。 実地試験データのRasch分析により、項目と尺度が改良され、SBQ-LCの測定特性(measurement properties)に関する初期の証拠が提示された。国際的な臨床試験に有用な可能性 SBQ-LC(第1版)は、患者報告アウトカムを測定するモジュール式の評価法であり、有望視されている心理測定特性を有する17の独立の尺度で構成される。回答者は、過去7日間の症状負担を二者択一形式または4点評定尺度を用いて評価する。 各尺度は、異なる症状の領域を対象としており、線形スコア(0~100点)への変換が可能な素点の合計となる。点数が高いほど、症状負担が大きいことを表す。 評定尺度の改良と項目の削減を行ったところ、すべての尺度でRaschモデルの一次元性(unidimensionality)と項目適合度(item fit)の要件が満たされた。また、評定尺度のカテゴリーは、許容範囲内のカテゴリー適合度統計量で順序付けされた。 17の尺度は、person reliability(r≧0.70:許容範囲、r≧0.80:良好、r≧0.90:きわめて良好)の範囲が0.34~0.87、person separation(1.5~2.0:許容範囲、2.0~3.0:良好、≧3.0:きわめて良好)は0.71~2.56、item separationは1.34~13.86、internal consistency reliability(クロンバックα係数≧0.7:許容範囲)は0.56~0.91だった。 著者は、「2021年12月現在、英国で約130万人、世界で1億人以上のlong COVIDまたはpost-COVID-19症候群の患者が存在し、本症はかなりの症状負担を伴い、労働能力や生活の質に悪影響を及ぼす多系統疾患であることが知られている。この新たな質問票は、long COVIDの国際的な臨床試験を行う際に有用と考えられる」としている。

11272.

コロナ治療薬の早見表2種(年代別およびリスク因子有無別)

年齢別で使用できるコロナ治療薬ー新型コロナ重症化リスク因子がある人ー・重症化リスク因子とは、65歳以上の高齢者、悪性腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙、固形臓器移植後の免疫不全、妊娠後期などのこと軽症~中等症薬剤対象者内服点滴ラゲブリオパキロビッドパックロナプリーブゼビュディ(モルヌピラビル)(ニルマトレルビル・リトナビル)(カシリビマブ/イムデビマブ)(ソトロビマブ)発症から5日以内に5日間服用発症から5日以内に服用(1回に2種3錠を5日間服用)薬剤の大きさは約2cm薬の飲み合わせに注意が必要のため「お薬手帳」を持参して服用中のすべての薬を医療者に伝えましょう(とくに高血圧や不整脈治療薬、睡眠薬など)オミクロン株には無効アナフィラキシーや重篤な過敏症を起こす恐れがあるので投与~24時間は観察が必要発症から5~7日を目安に投与オミクロン株のBA.2系統には有効性減弱12歳以上かつ40㎏以上小児妊婦・授乳婦子どもを望む男女発症から7日以内に投与子供を望む男女が服用する場合、服用中と服用後4日間の避妊を推奨※※※65歳未満65歳以上※妊婦:治療上の有益性が危険性を上回る時に服用可、授乳婦:授乳の継続又は中止を検討出典:各添付文書、新型コロナウイルス感染症診療の手引き第7.2版、COVID-19 に対する薬物治療の考え方第13.1版Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.年齢別で使用できるコロナ治療薬ー新型コロナ重症化リスク因子がない人ー・薬剤が使用できる方は、重症度分類が中等症II以上(酸素投与が必要)の場合に限ります軽症※~重症薬剤対象者中等~重症点滴内服/点滴点滴内服ベクルリーステロイド薬アクテムラオルミエント(レムデシビル)(デキサメタゾン)(トシリズマブ)(バリシチニブ)投与目安は軽症者が3日間中等症以上が5日間(最大10日間)重症感染症の適応で使用発症から7日以内に使用。ステロイド薬と併用、人工呼吸器管理・ECMO導入を要する方に入院下で投与入院から3日以内に投与。総投与期間は14日間、レムデシビルと併用肝/腎機能障害、アナフィラキシーなどに注意投与目安は10日間血糖値が高い方、消化性潰瘍リスクがある方は注意が必要結核、B型肝炎の既往、糞線虫症リスクを確認。また、心疾患や消化管穿孔リスクがある方は注意が必要抗凝固薬の投与等による血栓塞栓予防を行う結核・非結核性抗酸菌症やB型肝炎リスクを確認※軽症は適応外使用小児妊婦・授乳婦子どもを望む男女3.5㎏以上※プレドニゾロン40㎎/日に変更※65歳未満65歳以上※妊婦:治療上の有益性が危険性を上回る時に服用可、授乳婦:授乳の継続又は中止を検討出典:各添付文書、新型コロナウイルス感染症診療の手引き第7.2版、COVID-19 に対する薬物治療の考え方第13.1版Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

11273.

時間限定カロリー制限食は単純カロリー制限食の体重減少効果を越える効果を持つか否かはなはだ疑問である!―(解説:島田俊夫氏)

 現代社会は食生活に関して利便性を重視し、食事の内容(質・量)に関しては無関心になっているのでは? このため外食産業が繁栄し、私たちは食事の質よりも利便性をますます重視する傾向が強くなっている。本質に立ち返り、私たちが生きていくためにはエネルギーが必要でそのソースを食物に依存していることを忘れてはいけない。 NEJM誌2022年4月21日号掲載の中国の南方医科大学のDeying Liu氏等の論文は139人中118人(84.9%)が受診ノルマを達成した肥満者をランダムに2群に分け、単純カロリー制限食群と(食事時間限定+カロリー制限)食群の2群に分類し、12ヵ月の経過から腹囲、BMI、体脂肪、除脂肪体重、血圧、代謝危険因子等についてベースラインデータと12ヵ月後の各データとの群内差および群間差を比較した結果を報告した。研究の狙いは単純食事カロリー制限食群と(食事時間限定+カロリー制限)食群との間で介入方法に基づく差があるか否かを標的とした研究である。結果は概ね同等で両群間に有意差を認めなかった。もちろん食事制限による減量効果は両群でほぼ同等に認められた。また、副作用についても両群間に差は認められなかった。 この研究の狙いがいまひとつ私にはピンとこない。時間限定カロリー制限食に関してカロリー制限による効果以外の意義を見いだせず、結果については両群で大差のないとの結果であった。これまでの短期間の小規模研究では、時間限定カロリー制限食は体重減少効果が単純カロリー制限食より大きいとの報告が多いようだが、議論の多いところでもあり1)2)、真相は藪の中である。この研究の仮説の狙いがいまひとつ私には理解しがたく、時間限定カロリー制限食の間欠的空腹期間の関与への期待は過大かもしれない。治療の主効果は両群のベースラインからの体重減少の差の群間比較であり、副次効果はウエスト周囲径、BMI、体脂肪および代謝リスク因子(血漿グルコース濃度、インスリン感受性、血清脂質、および血圧)等の測定値の変化差の群内比較としたが主効果に差がなく、群内比較は両群で同等に有意差を認めた。 著者も述べているが中国人の食習慣を配慮した研究プロトコルのために異なる習慣の国々には一般化できない可能性もある。肥満の多い欧米とは事情がわが国とは多少異なるが糖質制限食が肥満治療に用いられており、この問題も含めて食事カロリー制限の影響を3大栄養素摂取の質・量を含め検討する必要に迫られているのではないかと考える3)。この論文の結論は(食事時間限定+カロリー制限)食群の単純カロリー制限を越えてのメリットを肯定する情報を見つけ出すことはできなかった。

11274.

昭和の休日【Dr. 中島の 新・徒然草】(425)

四百二十五の段 昭和の休日ついにゴールデンウィークも終わってしまいました。読者の皆さんはゆっくり休めましたか?私はよく寝ることができました。とくに、5月2日(月)と6日(金)の2日間しか出勤せずにすんだ週。もはや週休2日ではなく、週休5日!不謹慎ながら、いつもこんな風だったらいいのになあ、と思ったわけです。ふと思い出すと、昭和から平成初期は週休1.5日でした。日曜日は休みですが、土曜日の午前中は出勤です。今の私には到底できません。さて、今年(2022年)の休みを数えてみると、123日ありました。土日、国民の祝日、年末年始を合わせてです。一方、1970年のカレンダーで数えてみると、休みは91日。土曜日を0.5日でカウントした場合です。現在の休みは3割増しになっているわけですね。1970年といえば私は小学生。欧米の先進国では週休2日が当たり前、というのがメディアの論調でした。さらに進んだ国では週休3日だ、とも言われていたくらいです。このままいくと日本も週休2日、やがて週休3日になるんだろうな。そう漠然と思っていたのですが、50年以上経った今でも週休3日は実現していません。少なくとも私の周囲では、ですが。日本でも週休3日というのが徐々に広がりつつあるそうです。ごく少数のメーカーに導入されることがニュースになっていました。我々、医療業界でも週休3日が導入されないでしょうかね。きっと楽しい日々になるんだろうな、と私は夢想しています。最後に1句週三日 休んで暮らす 立夏かな

11275.

α1-アンチトリプシン欠乏症〔AATD:α1-antitrypsin deficiency〕

1 疾患概要■ 定義α1-アンチトリプシン欠乏症(AATD)は、血液中のα1-アンチトリプシン(AAT)の欠乏により肺疾患や肝疾患を生じる常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)性疾患である1)。肺では若年性に肺気腫を生じ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を発症する。気管支拡張症を合併する例もある。肝臓では、新生児期に黄疸や肝機能障害を認める場合があり、成人期には肝硬変・肝不全に移行し、肝細胞がんを発症することがある。欧米では、COPDの1~2%はAATDによるとされる。頻度は少ないが、皮下脂肪織炎や肉芽腫性血管炎を合併することがある。AATDは難病法に基づいて疾病番号231番の指定難病となり、重症度に応じて医療費助成対象疾患となった。■ 疫学ほぼ世界中で報告されているが、ヨーロッパや北米では比較的多い疾患で、約1,600~5,000人出生あたり1人とされている1)。わが国では極めてまれであり、呼吸不全に関する調査研究班と日本呼吸器学会による全国疫学調査では14名(重症9人、軽症5人)の発端者が集積され、有病率は24家系(95%信頼区間:22-27)と推計された2)。■ 病因AATDは、第14染色体長腕(14q32.1)にあるSERPINA1遺伝子の異常により生じる単一遺伝子疾患である。AATは394個のアミノ酸からなる分子量約52kDaの糖タンパク質で、血清蛋白分画のα1-グロブリン分画の約9割を占める(図1)。セリンプロテアーゼインヒビタ-として機能し、生体内で最も重要な標的は好中球エラスターゼである。主に肝臓で産生されて流血中に放出されるが、他に好中球、単球、マクロファージ、肺や腸管の上皮細胞からも産生される。図1 α1-アンチトリプシン欠乏症(Siiyamaホモ接合例)患者の血清蛋白電気泳動画像を拡大する健常者(A)と比べ、AATD(B)ではα1-グロブリン分画が欠損している(矢印)。SERPINA1遺伝子は共優性co-dominantに発現して遺伝様式に寄与する。150種類以上の変異型(バリアント)が報告されており、(a)質的・量的に正常なAATを産生する正常型バリアント、(b)流血中にAATがまったく検出されないnull型バリアント、(c)減少するdeficient型バリアント、あるいは (d)機能が変化してしまうdysfunctional型バリアントなどに分類される。正常型バリアント以外の病的バリアントを両方の対立遺伝子として受け継いでいる個体はAATDを発症するが、片方が正常型バリアントである場合には血清AAT濃度の低下は軽度で、通常は肺疾患や肝疾患の発症リスクとはならず保因者と呼ばれる。AATは、遺伝子変異によるアミノ酸置換により蛋白全体の荷電状態が変化し、等電点電気泳動における泳動位置、すなわち、AATの“表現型”が変化する。泳動位置の違いから、陽極pH4に近い位置からアルファベットの若い“B”、陰極pH5に近いものを“Z”と命名される。中央部は90%以上の遺伝子頻度を占める“M”となる。新規に同定されたSERPINA1バリアントの表現型には、表現型アルファベットに下付の小文字で同定された地名が付される。AATDの原因となるバリアントの多くはdeficient型バリアントであり、欧米ではZ型(Glu342Lys)とS型(Glu264Val)が最も多いのに対し、わが国ではSiiyama型(Ser53Phe)が85%と高頻度に検出される。わが国では遺伝学的に明らかにされたZ型の報告はない。deficient型バリアントでは変異AAT分子の折りたたみ構造が変化し、肝細胞の小胞体内で重合体polymerを形成して蓄積し流血中へ分泌できなくなるため、血清中濃度が低下する。さらに、好中球エラスターゼ阻害活性自体も低下している。 dysfunctional型バリアントは血液中のAAT蛋白量は正常であるが好中球エラスターゼ阻害活性が低下したタイプで、F型(Arg223Cys)が知られている。■ 病態生理1)好中球エラスターゼ阻害活性の低下~喪失によりもたらされる影響血清AAT濃度は通常20~50μMであり、気道被覆液中に拡散し好中球エラスターゼに代表されるセリンプロテアーゼによる組織破壊に対し防御的に働いている。しかし、11μM以下(<50mg/dL)になるとプロテアーゼによる組織破壊を十分防げず肺気腫が進行する(プロテアーゼ・アンチプロテアーゼ不均衡)。Z型では、血清AAT濃度は約2~10μMと著明に低下している。喫煙は、AAT正常者でもCOPD発症の最大の危険因子であるが、AATDでは喫煙感受性が非常に高く、より若年で肺気腫が進行しCOPDを発症する。一方、MZなど正常型とdeficient型のヘテロ接合型は、その中間の血清AAT濃度(>11μM)を呈するため、COPDを発症するリスクはないとされてきたが、最近の研究ではCOPD発症リスクがあるとする成果も報告されている。2)小胞体内や細胞外での変異AAT重合体の蓄積変異AATは小胞体内で重合体を形成して貯留し、小胞体ストレスとなり細胞を障害する。これが肝障害の主たる要因である。変異AAT重合体は、流血中、肺の気道被覆液中、肺組織などの組織間液中などの細胞外でも検出される。細胞外の変異AAT重合体は炎症を誘起する作用があり、好中球や単球に対する走化性因子や活性化因子として作用し、肺での炎症のみならず、脂肪織炎や血管炎の発症に関与すると考えられている。■ 臨床症状労作時息切れ、咳や痰などの呼吸器症状はもっともよくみられる初発症状であるが、本症に特異的な症状はない。肺疾患の有病率は主に患者の喫煙歴に依存し、喫煙歴のあるAATD患者では70%以上がスパイロメトリーでCOPDの基準を満たすが、非喫煙者では約20~30%程度である。AATDの肺気腫は汎細葉性肺気腫であり、細葉中心性肺気腫の病理像を示すAAT正常者とは異なる。胸部単純X線所見では、AAT正常者のCOPDと異なり下肺野優位に肺気腫を示唆する透過性亢進を認める(図2)。胸部CTでは汎細葉性肺気腫を示唆する広範な低吸収領域を認め、気管支拡張を伴う例もある(図3)。図2 α1-アンチトリプシン欠乏症(Siiyamaホモ接合例)の胸部X線所見画像を拡大する肺野全体の透過性亢進、血管影の減少を認めるが、両側下肺野に著しい。図3 α1-アンチトリプシン欠乏症(Siiyamaホモ接合例)の胸部高分解能CT画像画像を拡大する(A)AAT正常のCOPD症例。細葉中心性肺気腫を示唆する低吸収領域を認める。(B)Siiyamaホモ接合例。汎細葉性肺気腫を示唆する広範な低吸収領域を認める。(C)Siiyamaホモ接合例。汎細葉性肺気腫を示唆する広範な低吸収領域とともに気管支拡張像を認める。■ 経過と予後非喫煙AATD患者ではCOPDの発症は少なく、喫煙AATD患者より生存期間も長い。例えば、非喫煙AATDでCOPDを発症した症例の死亡年齢の中央値は65歳であるのに対し、喫煙AATDでCOPDを発症した症例は40歳と報告されている。さらに、PI*ZZ(Z型バリアントのホモ接合)のAATDの非喫者で無症状の場合は、ほぼ正常の寿命が期待できる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ どのような状況でAATDを疑い、血清AAT濃度を測定するか?AATDを疑って血清AAT濃度(ネフェロメトリー法)を測定する事が何よりも重要である 3,4)。従来から、一般的COPDとはやや異なる臨床像(若年者、非喫煙者、喫煙歴があったとしても軽度、COPDの家族歴など)を示すCOPD患者などでは血清AAT濃度を測定するべき3)とされてきた(表 ATR/ERSステートメント)。しかし、有病率の高いヨーロッパや北米でさえ、今だにAATDのunderdiagnosis状況が持続しており、2016年の成人AATD患者の管理・治療ガイドライン4)やGOLD 2022レポートでは、「すべてのCOPD患者には、年齢、人種を問わず、AATDの診断テストを行うべきである」と述べている(表)。表 どのようなときにAATDを疑い、診断のための検査を考慮するべきか?画像を拡大する■ 診断基準AATDは、血清AAT濃度<90mg/dL(ネフェロメトリー法)と定義され、AAT欠乏の程度は、軽症(血清AAT濃度50~90mg/dL)あるいは重症(<50mg/dL)の2つに分類される5)。AATは急性相反応蛋白質であるため感染症などの炎症性疾患では増加すること、一方、肝硬変、ネフローゼ症候群、タンパク漏出性胃腸症などの他の原因でも減少しうるので、診断に際してはこれらの病態を除外する必要がある。指定難病では、重症度2以上が医療費助成の対象となる。重症度の評価方法については難病情報センターを参照されたい。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 予防を含めた全般的考え方肺疾患の予防には、喫煙しない、受動喫煙も含めて有害粒子の吸入曝露を避けること、が大切である。AATD患者では、定期的にスパイロメトリーあるいは胸部CTを行い、肺疾患の発症あるいは進行をモニタリングする。COPDを発症している場合には、COPDの治療と管理のガイドラインに準じて治療を行う。呼吸不全に至った症例では肺移植の適応となる。肝疾患発症の危険因子についてはよくわかっていないが、肥満は肝疾患のリスクを高め、男性は女性よりリスクが高い。AATD患者では肝炎ウイルス(HAV、HBV)のワクチン接種、アルコールを摂取しすぎない、健康的な食事を心がけることが推奨されている。AATD患者では、年1回程度の採血による肝機能のモニタリング、腹部超音波検査による肝がんのスクリーニングを適宜行う。■ AAT補充療法(augmentation therapy)病因・病態に則した治療としてAAT補充療法がある。ヒトのプール血漿から精製されたAAT製剤を週1回点滴静注(60mg/kg)する治療であり、CT画像における気腫病変の進行を遅らせる効果、死亡率を低下させる効果が報告されている。わが国では4名の重症AAT患者が参加した治験が実施され6)。欧米人で示されている安全性と薬物動態、すなわち、AAT(60mg/kg)を週1回点滴静注することにより、肺胞破壊に対し防御的な血清AAT濃度>11μM(>50mg/dL)を維持できることが示された。その結果、ヒトα1-プロテイナーゼインヒビター(商品名:リンスパッド)点滴静注用1,000mg(凍結乾燥製剤)(海外商品名:Prolastin-C)として2021年7月に上市された。ヒトα1-プロテイナーゼインヒビターは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気流閉塞を伴う肺気腫などの肺疾患を呈し、かつ、重症AATDと診断された患者[血清AAT濃度<50mg/dL(ネフェロメトリー法で測定)]に投与する。ヒトα1-プロテイナーゼインヒビター1,000mgを添付溶解液20mLで溶解し、ヒトAATとして60mg/kgを週1回、患者の様子を観察しながら約0.08mL/kg/分を超えない速度で点滴静注する。最後に、ルート内のAATすべてが患者に投与されるよう生理食塩液25mLに換えて同じ速度で点滴して終了する。体重60kgの成人では、全体で約20分以上を要する。AAT補充療法を開始するタイミングについて明確な基準はない。週1回の点滴静注を非常に長期にわたって継続する必要があるが、数十年以上にわたって投与し続けると想定した場合、長期投与における有害事象のリスクに関する情報は乏しい。成人AATDの治療と管理のガイドラインでは、FEV1<65%predの症例では、患者の意向を確認した上でAAT補充療法を検討するとされている3,4)。肝障害に対する特異的治療はなく、栄養指導、門脈圧亢進症の管理などの支持療法が主体である。門脈圧亢進症がある場合には、出血のリスクがあるためNSAIDsの投与は避ける。重症の肝不全では肝移植が適応となる。4 今後の展望患者細胞からiPS細胞を樹立し、肝細胞に分化させた後にゲノム編集で病的バリアントを正常バリアントに換えて患者に移植する研究、siRNAによる肝細胞でのSERPINA1発現のサイレンシング、異常AATのポリマー形成を阻害する薬剤などの試みがある。近年、AATDの正確な実態把握と治療効果の追跡を継続的に行い、長期的な管理戦略を構築することを目的に、欧州では多国間にわたる臨床研究協力の取り組みが始まっている。わが国においては、呼吸器財団、日本呼吸器学会、厚生労働省難治性疾患政策研究事業、難病プラットホームの4者の支援を受け、本症を含めた希少肺疾患を対象としたレジストリ(登録制度)が開設されている。希少肺疾患登録制度5 主たる診療科主たる診療科は呼吸器内科となる。肝疾患については消化器内科、脂肪織炎や肉芽腫性血管炎では皮膚科および関連する診療科と連携する必要がある。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター α1-アンチトリプシン欠乏症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Alpha-1 Foundation 米国の患者団体ホームぺージ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)希少肺疾患登録制度(医療従事者向けのレジストリ情報サイト)1)Greene CM, et al. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16051. 2)Seyama K, et al. Respir Investig. 2016;54:201-206. 3)American Thoracic Society;European Respiratory Society. Am J Respir Crit Care Med. 2003;168:818-900. 4)Sandhaus RA, et al. Chronic Obstr Pulm Dis. 2016;3:668-682.5)佐藤晋ほか、難治性呼吸器疾患・肺高血圧に関する調査研究班.α1-アンチトリプシン欠乏症診療の手引き2021 第2版. 2021.6)Seyama K, et al. Respir Investig. 2019;57:89-96. 公開履歴初回2022年5月12日

11276.

第108回 日本ではいつまで続く?各国のマスク着用解除、メリット・デメリットを検証

ゴールデンウィーク中は、マスクを外して散歩やジョギングなどをしている人が目に付いた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のもとで、海外ではマスク着用義務が解除された国々が増え、日本でも屋外などでマスクを外せる条件や時期について議論が出始めた。一方で、マスクの着用により口呼吸が癖になった人がマスクを外しても口呼吸することで体に弊害を及ぼす可能性も指摘されている。また、各国で報告されている原因不明の子供の肝炎には、マスク着用が新型コロナ以外の感染症にかかりにくくし、免疫力が低下したことが背景にあるのではとの見方もあり、マスク着用の功罪についての議論や研究の必要性が指摘されている。外出時に着用必須の中国、身を守るために着ける韓国世界のマスク事情を見てみると、上海に続き北京もロックダウンになった中国は、ゼロコロナ政策により、マスク着用義務はないが、着用しないと外出できず、スーパーなどにも入れてくれないという。韓国は屋内も屋外もマスク着用義務があり、違反者には罰金が科せられていた。3月16日には1日の新規感染者数が62万人と過去最多になったが、その後、感染者数の減少に伴い規制緩和を進め、5月2日からは屋外のマスク着用義務が原則解除された。感染者の隔離義務もなくなるが、未感染者の中には「自分の身を守るため、マスクは着用する」という声が多いという。欧米に目を転じると、英国では1月27日、交通機関や屋内でのマスク着用義務が解除され、2月24日には新型コロナ対策の法的規制がすべて撤廃された。感染者の隔離義務もなくなった。そもそも屋外ではマスク着用は義務化されたことがないため、1月上旬、オミクロン株の感染拡大が一番ひどい時は、新規感染者数が1日当たり20万人超いたが、それでも屋外でマスクを着用している人の割合は2割ぐらいだった。コミュニケーション上、デメリット感じる米英現在、介護施設や病院の中では、マスクの着用を義務付けているところもある。ただ、英国ではマスクにデメリットを感じる人も多い。顔をマスクで隠しながらコミュニケーションをとることに抵抗を感じる人は少なくない。とくに子供たちの場合、対人関係を一番学ばなければならない時期にマスクをすることが、コミュニケーション能力の成長を妨げてしまうのではないかと考える教育関係者や親が多い。そのため、これまで学校では11歳未満の子供に対して、マスクを着用する義務はなかった。顔を隠すデメリット以外にも、マスクを着けていると息苦しいとか、コストがかかるとか、廃棄されるマスクの環境への負荷など、マスク着用のデメリットに関して議論がされてきた。それらを踏まえ、英国ではマスクをするしないを個々人で決めているという。米国では感染者数の減少に伴い規制緩和が進み、一部の地域を除いてほとんどの公共交通機関でマスク着用義務が解除された。全米ではマスクを着けている人はほとんどいないが、2年ほど前のコロナパンデミック下で1日800人ほどが死亡したニューヨークでは、1~2割の人がマスクを着用しているという。ただ、米国は移民の国なので、コミュニケーションは笑顔が基本。マスクを着けていると表情が見えないため、そもそもマスク着用は根付かない土壌がある。また、自由の国であるため、義務を押し付けられることを嫌う国民性がある。マスク着用義務は自由の尊重という米国建国の理念に反すると反発する国民も多い。予防策としてのメリットと口呼吸を癖にするデメリットマスクを着けるメリットを改めて考えると、新型コロナをうつさない、もらわないという感染対策が挙げられる。公共交通機関の中で感染しないためには、マスクを着けていたほうが安全だ。一方で、デメリットもある。マスクをすることで口呼吸する人が増えた。鼻呼吸のほうが、フィルター機能があったり温度を調整してくれたりするので、吸った空気が気管に与える影響は軽減される。口呼吸が癖になると、今後マスクを外した時に、口呼吸がもとで体調を崩す人が増える可能性が考えられる。原因不明の子供の肝炎はマスク着用が原因?原因不明の子供の肝炎が十数ヵ国で報告されているが、COVID-19患者の治療に当たっているクリニック院長は「今まではさまざまな感染症にかかることで免疫が保たれたりしていたが、マスクをすることで新型コロナ以外の感染症にかかりにくくなり、その分免疫力が低下して原因不明の疾病にかかりやすくなっている事態に陥っている可能性もある」と指摘する。マクロな視点でマスク着用のメリット・デメリットを考察する時期に来ているのではないだろうか。

11277.

医療従事者、PPE着用時の皮膚病リスクと低減戦略

 シンガポール・国立皮膚疾患センターのWen Yang Benjamin Ho氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにおける最前線の医療従事者を対象に、個人用防護具(PPE)着用と職業性皮膚病(OD)との関連を明らかにする疫学調査を行い、リスク因子と低減戦略を検討した。 対象者416例のうち73.8%がPPE関連OD(PROD)を有したと回答。そのエビデンスベースに基づく推奨事項として、着用から1時間ごとに休憩を予定する、さまざまなPPEを試してみることなどの知見が得られたと報告した。JAAD International誌オンライン版2022年4月8日号掲載の報告。 研究グループは、PRODは医療従事者にとって重大な職業上の負荷であり、その疫学を理解することは低減戦略を策定するうえで不可欠として、医療従事者におけるPRODの有病率を明らかにし、その症状を特徴付け、リスク因子を特定し、医療従事者の行動変容を断面調査法にて評価した。 調査は、オンライン質問法を用いて、2020年7月~9月に行われた。累積で少なくとも2週間、COVID-19患者と直接的に接触した医療従事者に参加を促した。 主な結果は以下の通り。・有効回答者416例において、PROD有病率は73.8%(307/416例)であった。・最も一般的な原因は、フェイスマスク(93.8%、288例)であった。・フェイスマスク、保護眼鏡、ヘアネット、ガウン、手袋と関連する最も頻度の高いPRODは、ざ瘡(71.5%、206/288例)、圧迫創傷(70.7%、99/140例)、頭皮のかゆみ(53.3%、16/30例)、かゆみ/発疹(78.8%、26/33例)および乾皮症(75.0%、27/36)であった。・1時間超のPPE着用で、PRODのオッズ比は4.8倍増加した。・医療従事者の大半は、PROD軽減のために行動を変更していた。・以上のエビデンスに基づき、医療従事者に強く推奨するべきこととして、(1)PPE着用時は1時間ごとに休憩をとる、(2)さまざまなPPEモデルを試着する、(3)配置前に既存の皮膚病のスクリーニングを行う、(4)PRODに見舞われた場合の低減戦略/支援手段について教育を受けておくことが示された。

11278.

日本人高齢者における野菜・果物の摂取と認知症リスク~久山町研究

 これまで、欧米で行われていたプロスペクティブ研究では、野菜や果物の摂取が認知症リスクを低下させることが示唆されている。しかし、アジア人を対象とした疫学的なエビデンスは限られていた。九州大学の木村 安美氏らは、日本人コミュニティにおける野菜や果物およびそれらの栄養素の摂取と認知症発症リスクと認知症サブタイプとの関連について調査を行った。その結果、野菜とその構成栄養素の摂取量が多いほど、日本人高齢者の認知症リスクが低下することを報告した。BMC Geriatrics誌2022年3月28日号の報告。野菜では認知症リスク低下を認めるも果物は有意な関連なし ベースライン時に認知症でない60歳以上の日本人1,071人(男性:452人、女性:619人)を対象に、24年間プロスペクティブにフォローアップを行った。野菜、果物、栄養素の摂取量は、ベースライン時に70項目の半構造化された食物摂取頻度調査票で評価し、性別ごとに四分位で分類した。評価項目は、認知症とそのサブタイプ(アルツハイマー病、血管性認知症)の発症とした。認知症発症のリスク推定値の算出には、Cox比例ハザードモデルを用いた。 野菜や果物、およびそれらの栄養素の摂取と認知症発症リスクと認知症サブタイプとの関連について調査を行った主な結果は以下のとおり。・長期フォローアップ期間中の認知症発症は464例であり、その内訳はアルツハイマー病286例、血管性認知症144例であった。・交絡因子で調整した後、野菜の摂取量が多い人では認知症(p trend<0.05)およびアルツハイマー病(p trend<0.05)のリスク低下が認められたが、血管性認知症のリスク低下は認められなかった。・野菜の摂取量が最高四分位の人では、最低四分位の人と比較し、認知症リスクが27%、アルツハイマー病リスクが31%低かった。・認知症リスクは、ビタミンA、リボフラビン、ビタミンC、マグネシウム、カルシウム、カリウムの摂取量が増加するほど有意な減少が認められた(各々:p trend<0.05)。・食物繊維の総摂取量が多い人は、認知症リスクが低い傾向にあった(p trend=0.07)。・果物の摂取量と認知症および認知症サブタイプのリスクとの有意な関連は認められなかった。

11279.

オミクロン株BA.2などについて更新、COVID-19診療の手引き7.2版/厚労省

 5月9日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第7.2版」を公開し、全国の自治体や関係機関に通知を行った。 今版の主な改訂点は以下の通り。診療の手引き7.2版の主な改訂点【1 病原体・疫学】・オミクロン株のBA.2系統について更新・懸念される変異株の表を更新・COVID-19死亡者数の図を更新・国内発生状況でオミクロン株のBA.2系統への置き換わりについて更新・海外発生状況で世界の流行株(主にオミクロン株)と今後の公衆衛生措置などを更新【2 臨床像】・罹患後症状について定義付け、症状一覧の図を更新 (「後遺症」という用語を削除)【3 症例定義・診断・届出】・改訂点なし【4 重症度分類とマネジメント・重症度別マネジメントのまとめの図の治療薬の脚注を更新【5 薬物療法】・ソトロビマブ(ゼビュディ点滴静注液500mg)について2022年4月18日の添付文書改訂による、本剤のオミクロン株(B.1.1.529/BA.2系統)への有効性(効果減弱の可能性)について更新・ニルマトレルビル/リトナビルに関する記載について併用薬留意の文言を追加・S-217622に関する記載について開発対象と参考情報を更新【6 院内感染対策】・妊婦および新生児への対応について、帝王切開の分娩方法や感染妊婦の出生児接触の対応について更新

11280.

高リスク早期乳がんへの術後アベマシクリブ、HR0.68でiDFS改善(monarchE Cohort 1)/ESMO BREAST 2022

 日本および欧州(EMA)での承認の対象である、腋窩リンパ節転移個数や腫瘍径といった臨床現場で判定しやすい特徴により定義された再発リスクの高いホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)早期乳がん患者に対して、術後薬物療法としてのCDK4/6阻害薬アベマシクリブと内分泌療法併用のベネフィットが示された。ドイツ・Evang. Kliniken Essen-MitteのMattea Reinisch氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)でmonarchE試験Cohort 1の有効性データを報告した。[monarchE試験 Cohort 1]・対象:HR+/HER2−の初発乳がん、遠隔転移なし・腋窩リンパ節転移陽性の症例(閉経状況問わず)、術前/術後の化学療法は許容・Cohort 1(全体の91%):腋窩リンパ節転移(pALN)が4個以上またはpALN1~3個かつGrade3の病変または腫瘍径≧5cm・試験群:アベマシクリブ150mg×2/日+標準的術後内分泌療法。アベマシクリブは最長2年間投与(アベマシクリブ+ET群:2,555例)・対照群:標準的術後内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、LH-RHアゴニストなど。薬剤は主治医選択)(ET群:2,565例)・評価項目:[主要評価項目]無浸潤疾患生存期間(iDFS)[副次評価項目]遠隔無転移生存期間(DRFS)、全生存期間(OS)、安全性、患者報告アウトカムなど Cohort 1における主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の臨床病理学的特徴は両群でバランスがとれていた(pALN≧4個:アベマシクリブ+ET群65.6% vs.ET群65.1%、Grade3:41.6% vs.40.9%、腫瘍径≧5cm:23.5% vs.23.6%)。・データカットオフは2021年4月1日、追跡期間中央値は28ヵ月。・2年間に到達せず治療が中止されたのはアベマシクリブ+ET群17.8% vs. ET群17.0%だった。・iDFSはアベマシクリブ+ET群で有意に改善し(ハザード比[HR]:0.680、95%信頼区間[CI]:0.572~0.808、Nominal p<0.0001)、2年iDFS率はアベマシクリブ+ET群92.6% vs.ET群89.6%、3年iDFS率は88.6% vs. 82.9%(3年後の絶対ベネフィット:5.7%)だった。・DRFSも有意な改善が認められ(HR:0.669、95%CI:0.554~0.809、Nominal p<0.0001)、2年DRFS率は94.1% vs.91.2%、3年DRFS率は90.2% vs. 85.7%(3年後の絶対ベネフィット:4.5%)だった。・主な再発部位は骨・肝臓・肺といった遠隔転移で、その発生率はアベマシクリブ+ET群で低かった(71.9% vs.75.6%)。・安全性解析結果は、アベマシクリブの既知の安全性プロファイルと一致した。 Reinisch氏は、ルーチンの乳がん診断の一環として特定可能な定義による再発高リスクのHR+/HER2−早期乳がん患者において、術後薬物療法としてのアベマシクリブと内分泌療法の併用が、遠隔転移のリスク低減を含む、浸潤性疾患リスクの臨床的に意義ある低減を示したとまとめている。

検索結果 合計:35638件 表示位置:11261 - 11280