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<先週の動き>1.入院できる医療機関が減少傾向 病院・有床診療所、2年間で332施設減/厚労省2.赤穂市民病院、手術ミスで医師を在宅起訴 患者に重度の障害/神戸地検3.社会保障費が過去最大の38兆円超、高齢化と賃金上昇で増加/政府4.医療DX推進、標準型電子カルテの本格提供開始は2027年度に延期へ/政府5.社会保障改革と医療DXに向けた改革実行プログラムを策定/政府1.入院できる医療機関が減少傾向 病院・有床診療所、2年間で332施設減/厚労省入院可能な医療機関が減少傾向にあることが、厚生労働省の調査で明らかになった。2024年10月末時点の一般病院の数は6,999ヵ所と、1年前と比較し68ヵ所減少した。有床診療所も減少傾向が続き、2023年10月末~2024年10月末までの1年間で284ヵ所減少し、5,391ヵ所となった。2年前と比較し、病院と有床診療所を合わせて332ヵ所減少したことになる。病院の減少は、経営状況の悪化や医師不足、高齢化などが背景にあるとみられ、また、診療所の減少は、病院への統合や、無床診療所への転換などが要因と考えられている。有床診療所は、地域医療において重要な役割を担っており、入院患者の受け皿となるだけでなく、在宅医療や介護施設との連携など、地域包括ケアシステムにおいても重要な存在。しかし、有床診療所の経営状況は厳しく、2023年度の調査では、4割以上が赤字経営であることが明らかになっている。政府は、診療報酬改定などで有床診療所の経営支援を行っているが、減少傾向に歯止めがかかっていない状況。有床診療所の減少は、地域医療の提供体制に影響を与える可能性があり、今後の動向が注目される。参考1)医療施設動態調査[令和6年10月末概数](厚労省)2)一般病院7千カ所を割り込む、10月末概数 前年比68カ所減(CB news)3)物価高騰の影響、前年より「あり」227病院の65% 24年度上半期 福祉医療機構調べ(同)4)有床診療所はさらに減少し5,391施設に、2025年5月に7万床、26年3月に5,000施設を割る可能性大-医療施設動態調査[2024年10月末](Gem Med)2.赤穂市民病院、手術ミスで医師を在宅起訴 患者に重度の障害/神戸地検神戸地検姫路支部は12月27日、赤穂市民病院(兵庫県赤穂市)で2020年に行われた手術で、患者に重度の障害を負わせたとして、当時手術を担当した医師を業務上過失傷害罪で在宅起訴した。起訴状によると、医師は患者の腰椎を削る手術中、十分な止血を怠ったまま電動ドリルを操作し、脊髄神経を損傷した。その結果、患者は下半身に重い麻痺が残り、膀胱直腸障害も負った。地検姫路支部は、複数の専門家に手術の映像を確認してもらい、刑事責任を問えるだけの過失があると判断した模様。同院では、この医師が関わった手術で8件の医療事故が発生し、2人が死亡するなどしており、病院側は医療過誤を認めて謝罪した。医師は3年前に依願退職している。患者は、手術後に同院に対して損害賠償請求訴訟を起こし、病院側は医療過誤を認め、謝罪した。今回の在宅起訴を受け、患者の家族は「法廷で自分の過ちを素直に認めてほしい」と話している。参考1)“手術で患者に重い障害”担当医を在宅起訴 神戸地検姫路支部(NHK)2)赤穂市民病院で手術中、適切な処置怠り重度障害負わせる…医師を在宅起訴(読売新聞)3)兵庫の手術ミス、執刀医在宅起訴 業務上過失傷害罪で(日経新聞)3.社会保障費が過去最大の38兆円超、高齢化と賃金上昇で増加/政府政府は12月27日に、2025年度予算案を閣議決定した。一般会計総額は115兆円を超え、過去最大となった。その中で、医療や介護などの社会保障費は38兆2,778億円と、24年度から5,585億円増加し、過去最高を更新した。高齢化の進展に加え、賃金・物価上昇に伴う年金給付額の増加が主な要因。政府は、高額療養費制度の見直しや薬価の引き下げなどの歳出改革に取り組んでいるが、社会保障費の急速な伸びを抑えきれていない現状である。25年度の社会保障費は、高齢化による自然増に加え、年金給付額の増加や保育士などの賃上げなどが歳出増の要因となっている。一方、歳出抑制策としては、薬価の引き下げや高額療養費の見直しなどが盛り込まれた。薬価については、特許切れ新薬などを中心に引き下げる一方、物価高騰への配慮として最低薬価を引き上げるなどの措置も講じられているほか、高額療養費制度については、年収が多い人ほど自己負担の上限を引き上げる見直しが行われている。しかし、これらの抑制策だけでは、社会保障費の膨張を抑えることは難しく、さらなる改革が必要となっている。26年度には診療報酬改定が予定され、本体部分への切り込みや、医療・介護の自己負担の見直しなどが焦点となる。参考1)令和7年度予算案の概要(厚労省)2)社会保障費の抑制に腐心 「高額療養費」見直しで年1,600億円削減(朝日新聞)3)予算案115兆円決定 来年度 社保費膨張38兆円 過去最大(日経新聞)4)社会保障費最大の38.2兆円 製薬・高所得者負担で抑制 医療・介護、自己負担上げに反発強く(同)5)2025年度予算案で過去最高の社会保障費38兆円を閣議決定(日経メディカル)4.医療DX推進、標準型電子カルテの本格提供開始は2027年度に延期へ/政府政府は、国民の健康増進や切れ目のない質の高い医療の提供に向け、医療分野のデジタル化を進め、保健・医療情報(介護含む)の利活用を行うため、医療分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に、2023年6月に「医療DX推進に関する工程表」を策定していた。この工程表では、2025年度中に標準型電子カルテを本格運用し、2030年にはすべての医療機関への導入を目指すとされていた。しかし、2024年12月26日に政府の経済財政諮問会議が決定した「経済・財政新生計画 改革実行プログラム2024」では、標準型電子カルテの本格提供開始を2027年度に延期する方針が示された。これは、2025年1月から開始される試行版(α版)のモデル事業で、有用性や運用上の課題を検証した上で、本格版を提供するためのもの。標準型電子カルテは、クラウド型のシステムにより低コスト化を図り、とくに医科診療所などでの導入を促進することを目的としている。医療機関間での患者情報の共有を可能にすることで、医療の質向上と効率化を図る。その一方で、医療DXの推進には、いくつかの課題も指摘されている。医療機関、とくに大規模病院における標準型電子カルテの導入には、多額の費用と時間が必要であり、さらに電子カルテ情報共有サービスの運用費用は、将来的に社会保険料で賄う方針だが、保険者からは負担増への懸念の声が上がっている。医療情報は極めて機微な個人情報であるため、共有システムのセキュリティ対策が重要となる。医療DXの効果を最大限に発揮するためには、多くの医療機関が積極的に参加することが重要であり、政府は、これらの課題を解決しながら、医療DXを推進していく方針。参考1)経済・財政新生計画 改革実行プログラム2024(経済財政諮問会議)2)標準型電子カルテ、本格版を27年度に提供開始 改革実行プログラム2024決定 諮問会議(CB news)3)電子カルテ情報共有サービスの運用費用、標準型電子カルテが5割程度普及した段階で保険者等に負担求める-社保審・医療保険部会(Gem Med)4)2025年1月から無床診療上向けの標準型電子カルテのモデル事業を実施、既存電子カルテの標準化改修も支援-社保審・医療部会(同)5)電子カルテ情報共有サービスについて(厚労省)6)医療機関等向け総合ポータルサイト(社会保険診療報酬支払基金)5.社会保障改革と医療DXに向けた改革実行プログラムを策定/政府政府は、2024年12月26日に経済財政諮問会議を開催し、重要政策に対してEBPM(証拠に基づく政策立案)を実践・実装する「EBPMアクションプラン2024」および改革工程を具体化し実行する「改革実行プログラム2024」を決定した。2025年は、団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となり、全人口の18%が高齢者となる超高齢社会の節目の年に当たる。社会保障分野においては、全世代型社会保障制度の構築に向け、現役世代と高齢世代の給付と負担のバランスを見直し、効率的で質の高い医療・介護サービスの提供体制を構築することが重要課題として掲げられている。主な改革項目は下記の通り。勤労者皆保険の拡大:短時間労働者への適用拡大や、個人事業所の適用業種の拡大など、働き方に中立的な社会保険制度の構築を目指す。医療DXの推進:全国医療情報プラットフォームの構築、診療報酬改定DX、電子カルテ情報共有サービスの導入など、デジタル技術を活用した医療の効率化と質向上を図る。地域医療構想:2027年度から新たな地域医療構想に基づいた医療提供体制の改革を推進する。医師の偏在対策も強化し、地域医療の充実を図る。医療・介護の連携:医療従事者におけるタスク・シフト/シェアを推進し、多剤重複投薬の適正化など、医療と介護の連携強化による効率的なサービス提供を目指す。能力に応じた全世代の支え合い:介護保険の負担割合の見直しや、高額療養費制度の見直しなど、能力に応じた負担と給付の公平性を確保する。医薬品政策:創薬力の強化、医薬品の安定供給確保、薬価制度の見直しなど、医薬品政策の改革を進める。これらの改革を実行するためには、医療現場の理解と協力、そして国民への丁寧な説明が不可欠となる。とくに、医療DXの推進には、医療従事者の負担軽減や情報セキュリティ対策など、解決すべき課題が多く残る。政府は、これらの課題を克服し、国民の理解と協力を得ながら、改革実行プログラムを着実に推進していく方針。参考1)ことし約5人に1人が後期高齢者に 医療や介護の体制拡大が課題(NHK)2)「EBPMアクションプラン2024」・「改革実行プログラム2024」(経済・財政一体改革推進委員会)3)改革実行プログラム2024(経済財政諮問会議)