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Ca拮抗薬・NSAID・テオフィリンと逆流性食道炎リスク/国立国際医療研究センター

 逆流性食道炎の有病率と薬剤などの危険因子について調査した結果、カルシウム拮抗薬、テオフィリン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用が逆流性食道炎の独立した予測因子であることが示唆された。国立国際医療研究センターの植田 錬氏らが、BMJ Open Gastroenterology誌2024年12月16日号で報告した。 この後ろ向き横断研究は、2015年10月~2021年12月に国立国際医療研究センターで食道・胃・十二指腸内視鏡検査を受けた患者を対象とし、質問票を用いて患者の特徴、病歴、喫煙・飲酒歴、内視鏡検査時に服用していた薬剤に関するデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者1万3,993例中、逆流性食道炎の有病率は11.8%であった。・多変量ロジスティック回帰分析により、以下の因子が逆流性食道炎の独立した予測因子であることが示された。それぞれのオッズ比(95%信頼区間)は以下のとおり。- 男性:1.52(1.35〜1.72)、p<0.001- 肥満(BMI≧25):1.57(1.40〜1.77)、p<0.001- 喫煙:1.19(1. 02~1.38)、p=0.026- 飲酒:1.20(1.07~1.35)、p=0.002- 糖尿病:1.19(1.02~1.39)、p=0.029- 食道裂孔ヘルニア:3.10(2.78~3.46)、p<0.001- 重症萎縮性胃炎なし:2.14(1.77~2.58)、p<0.001- カルシウム拮抗薬の使用:1.22(1.06~1.40)、p=0.007- テオフィリンの使用:2.13(1.27~3.56)、p=0.004- NSAIDの使用:1.29(1.03~1.61)、p=0.026

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各向精神薬の投与量は死亡リスクとどのように関連しているか

 抗精神病薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピンの使用は、統合失調症患者の死亡リスクに影響を及ぼす可能性がある。しかし、多くの観察研究では、向精神薬投与患者が必然的に生存している期間(フォローアップ開始から薬物治療開始までの期間)がある場合の不死時間バイアス(immortal time bias:ITB)は考慮されておらず、ITBを考慮しないと、向精神薬と死亡率との関連の解釈を誤認する可能性がある。カナダ・ラバル大学のSebastien Brodeur氏らは、抗精神病薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピンの累積投与量と統合失調症患者の死亡リスクとの関連を調査し、ITBを考慮しない場合の潜在的な影響についても評価した。JAMA Network Open誌2024年11月22日号の報告。 対象は、カナダ・ケベック州の行政データより抽出した2002〜12年に統合失調症と診断された17〜64歳の患者3万2,240例。データ分析は、2022年6月22日〜2024年9月30日に実施した。主要アウトカムは、すべての原因による死亡率とし、2013〜17年または死亡するまでの期間、フォローアップを行った。抗精神病薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピンの投与量で3群(低、中、高)に分類し、死亡リスクを評価した。ITB制御なしの時間固定曝露とITBを制御した時間依存曝露によるCox比例ハザード回帰モデルを行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は46.1±11.6歳、男性の割合は61.3%(1万9,776例)。・フォローアップ期間中に死亡した患者は1,941例(6.0%)であった。・時間固定法では、抗精神病薬と死亡率との間に用量反応関係は認められなかった。・しかし、高用量の抗精神病薬使用は、ITB補正後の死亡率上昇と関連が認められた(調整ハザード比[aHR]:1.28、95%信頼区間[CI]:1.07〜1.55、p=0.008)。・抗うつ薬に関しては、時間固定法では死亡リスクの減少が認められたが、ITB補正後では高用量のみで死亡リスクの減少がみられた(aHR:0.86、95%CI:0.74〜1.00、p=0.047)。・ベンゾジアゼピンに関しては、いずれの評価においても死亡リスク増加との関連が認められた。 著者らは「本結果は、統合失調症患者に対する抗精神病薬の有効性に異議を唱えるものではなく、長期的な死亡リスクに対する課題を提起するものである」としている。

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「小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療GL」第2版が発刊

 日本治療学会編『小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療ガイドライン2024年12月改訂 第2版』が12月20日に発刊された。本書は、「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン 2017年版」をMinds診療ガイドライン作成マニュアル2020に準拠して、7年ぶりに全面改訂された。 2024年版は、女性生殖器、乳腺、泌尿器、小児、造血器、骨軟部、消化器、脳の8つの領域に、新たに肺、耳鼻咽喉・頭頸部、膠原病が加わり11領域をカバーしている。また、従来の性腺毒性分類は、2003年のASCOの分類表以降の国際的な報告を元に最新のJSCO分類として生まれ変わっている。小児・AYA世代のがんの現状と課題解決に向けて 厚生労働省は、小児・AYA世代がん患者等の経済的な負担軽減を目指して、国と自治体による妊孕性温存療法に係る経済的支援を2021年4月に開始した。また、2023年3月に閣議決定された第4期がん対策推進基本計画の「がん医療(1)がん医療提供体制等」の中に「妊孕性温存療法について」が施策の1つとして加えられたことから、2024年版ガイドラインの役割が一層重要になりそうだ。

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高リスクくすぶり型多発性骨髄腫、ダラツムマブ単剤が有効/NEJM

 くすぶり型多発性骨髄腫は、活動性多発性骨髄腫の無症候性の前駆疾患であり、現在の標準治療は経過観察であるが、活動性多発性骨髄腫への進行リスクが高い患者では早期治療が有益な可能性があるとされる。ギリシャ・アテネ大学のMeletios A. DimopoulosらAQUILA Investigatorsは「AQUILA試験」において、高リスクくすぶり型多発性骨髄腫の治療では注意深い経過観察と比較して抗CD38モノクローナル抗体ダラツムマブ皮下注単剤療法が、活動性多発性骨髄腫への進行または死亡のリスクを有意に改善し、全生存率も良好で、予期せぬ安全性に関する懸念も認めないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年12月9日号で報告された。23ヵ国の無作為化第III相試験 AQUILA試験は、高リスクくすぶり型多発性骨髄腫の治療におけるダラツムマブの有用性の評価を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2017年12月~2019年5月に日本を含む23ヵ国124施設で患者を登録した(Janssen Research and Developmentの助成を受けた)。 年齢18歳以上、過去5年以内に国際骨髄腫作業部会(IMWG)の基準でくすぶり型多発性骨髄腫との確定診断を受け、活動性多発性骨髄腫への進行リスクが高く、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance-status(ECOG PS、0~5点、点数が高いほど機能障害が重度)のスコアが0または1点の患者を対象とした。 これらの患者を、ダラツムマブの皮下投与を36ヵ月間で39サイクル受けるか、あるいは病勢の進行が確定するまで投与を継続する群、または注意深い経過観察を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。注意深い経過観察群では、疾患特異的治療を受けず、36ヵ月間あるいは病勢が進行するまで観察を継続した。 主要評価項目は無増悪生存(活動性多発性骨髄腫への進行または全死因死亡)とし、IMWG基準に従って独立審査委員会が評価した。完全奏効以上、最良部分奏効以上の割合も良好 390例を登録し、ダラツムマブ群に194例(年齢中央値63.0歳[範囲:31~86]、男性49.0%)、注意深い経過観察群に196例(64.5歳[36~83]、47.4%)を割り付けた。くすぶり型多発性骨髄腫の初回診断から無作為化までの期間中央値は0.72年(範囲:0~5.0)であった。ダラツムマブの投与期間中央値は35.0ヵ月(0~36.1)、サイクル数中央値は38だった。 追跡期間中央値65.2ヵ月の時点で、活動性多発性骨髄腫への進行または全死因死亡に至ったのは、経過観察群が99例(50.5%)であったのに対し、ダラツムマブ群は67例(34.5%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.36~0.67、p<0.001)。5年無増悪生存率は、ダラツムマブ群63.1%、経過観察群40.8%であった。 病勢進行までの期間中央値は、それぞれ44.1ヵ月および17.8ヵ月(HR:0.51、95%CI:0.40~0.66)であり、完全奏効以上(厳格な完全奏効+完全奏効)は、17例(8.8%)および0例(0%)、最良部分奏効以上(厳格な完全奏効+完全奏効+最良部分奏効)は、58例(29.9%)および2例(1.0%)だった。 41例が死亡し、内訳はダラツムマブ群15例(7.7%)、経過観察群26例(13.3%)であった(HR:0.52、95%CI:0.27~0.98)。5年全生存率は、それぞれ93.0%および86.9%だった。重篤な有害事象は29.0%、投与中止は5.7% Grade3または4の有害事象は、ダラツムマブ群40.4%、経過観察群30.1%で発現し、最も頻度が高かったのは高血圧で、それぞれ5.7%および4.6%であった。重篤な有害事象は、29.0%および19.4%で発現し、最も高頻度だったのは肺炎で、3.6%および0.5%だった。ダラツムマブ群では、11例(5.7%)で投与中止に至った有害事象を認めた。 Grade3または4の感染症は、ダラツムマブ群16.1%、経過観察群4.6%で発現した。ダラツムマブ群では、32例(16.6%)で投与に関連した全身反応が報告され(Grade3または4は2例[1.0%])、53例(27.5%)で注射部位の局所反応(Grade3または4はなし)を認めた。ダラツムマブ群の18例(9.3%)および経過観察群の20例(10.2%)で2次原発がんが発生した。ダラツムマブによる新たな安全性に関する懸念は確認されなかった。 著者は、「これらの知見は、ダラツムマブは臓器障害の進行を遅らせるか、あるいは完全に防止し、活動性多発性骨髄腫への進行を抑制する可能性を示唆し、深い寛解を達成しない場合でも臨床的な有益性をもたらす可能性があると考えられる」「ダラツムマブをベースとした併用療法などの治療戦略がより適切かは現時点では不明だが、先行試験と本試験の結果を統合すると、本疾患の治療にダラツムマブ単剤療法を一定期間使用することが支持される」としている。

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ダトポタマブ デルクステカン、HR陽性/HER2陰性乳がんに承認/第一三共

 第一三共は、抗TROP-2抗体薬物複合体ダトポタマブ デルクステカン(商品名:ダトロウェイ)について、2024年12月27日、「化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳」を適応として日本で製造販売承認を取得したと発表。  同剤は上記(HR陽性/HER2陰性)患者を対象とした第III相臨床試験(TROPION-Breast01)の結果に基づき、承認された。同剤の承認は世界で初めてで、日本においてHR陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんを対象とするTROP-2を標的とした薬剤として初めて承認された。・販売名:ダトロウェイ点滴静注用100mg・一般名:ダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)・製造販売承認日 :2024年12月27日・効能又は効果:化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳・用法及び用量:通常、成人にはダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回6mg/kgを90分かけて3週間間隔で点滴静注する。初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。なお、患者の状態により適宜減量する。

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高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫患者、ダラツムマブ vs.積極的経過観察(AQUILA)/ASH2024

 高リスクのくすぶり型骨髄腫(smoldering multiple myeloma:SMM)に対するダラツムマブ(DARA)導入治療の有用性が示された。 SMMでは治療介入せずに積極的経過観察が推奨されてきたが、症候性の多発性骨髄腫(MM)への進行リスクも懸念されることから、高リスクSMMに対する治療介入の可能性が示唆されている。 CD38標的モノクローナル抗体であるDARAは、再発/難治MM(R/R MM)への有用性が示されている。DARAが積極的経過観察と比較してSMMからMMへの進行を遅らせることができるかを検討した。第III相AQUILA試験の中間解析結果が第66回米国血液学会(ASH2024)で発表された。・対象:診断されてから5年以内の高リスクSMM患者・試験群:ダラツムマブ(サイクル1および2は毎週、サイクル3~6は2週ごと、それ以降は4週ごと)4週1サイクルを39サイクル、36ヵ月または疾患進行まで(DARA群、194例)・対照群:積極的経過観察(196例)・評価項目【主要評価項目】独立審査委員会評価(IRC)評価の無増悪生存期間(PFS)※PFSはIMWGのSLiM-CRAB基準による【副次評価項目】全奏効率(ORR)、MMの1次治療までの期間、MM1次治療におけるPFS(PFS2)、全生存期間(OS)など 主な結果は以下のとおり。・追跡中央値65.2ヵ月のPFS中央値はDARA群未到達に対し、積積極的経過観察は41.5ヵ月で、DARAで有意に改善した(HR:0.49、95% CI:0.36〜0.67、p<0.0001)。推定60ヵ月PFS率はDARA群 63.1%、積極的経過観察40.8%であった。・ORRはDARA群63.4%、積極的経過観察2.0% であった(p<0.0001)。・OS中央値は両群とも未到達、60ヵ月OS割合はDARA群93.0%、積極的経過観察86.9%であった(HR:0.52、95%CI:0.27〜0.98)・死亡はDARA群15例(7.7%)、モニタリング群26例(13.3%)であった。・ランダム化からMM1次治療までの期間中央値は、DARA未到達に対し、積極的経過観察は50.2ヵ月であった(HR:0.46、95%CI:0.33〜0.62、名目p<0.0001)。・Grade3/4 の治療関連有害事象 (TEAE) は、DARA群の40.4%、積極的経過観察群の30.1%に発生した。頻度の高い (≧5%) Grade3/4のTEAEは高血圧 (DARA群5.7%、積極的経過観察群4.6%)であった。・DARA群において投与中止に至ったTEAEの発現は5.7%であった。

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無症候性アテローム性動脈硬化症の負担は全死亡と関連

 無症候性アテローム性動脈硬化症では、頸動脈プラークの負荷(carotid plaque burden;cPB)と冠動脈石灰化(coronary artery calcium;CAC)が全死亡と有意に関連していることを明らかにした研究結果が、カルロス3世国立心血管研究センター(スペイン)のValentin Fuster氏らにより、「Journal of the American College of Cardiology」10月8日号に発表された。 アテローム性動脈硬化症は進行性のプロセスであるが、無症候性の段階でも、頸動脈での動脈硬化の程度や進行を定量化することで全死亡リスクを予測できるのかどうかについては、エビデンスがほとんどない。 BioImage研究は、リスクのある無症候性の成人におけるアテローム性動脈硬化症の負荷の評価を目的にした大規模研究で、2008年から2009年に無症候性の米国成人7,687人を登録して開始された。参加者は、頸動脈の超音波検査とCT検査によるCACスコアリングが実施されており、今回は、必要なデータのそろった5,716人(平均年齢68.9歳、女性56.7%)を解析対象とした。このうち732人は、中央値で8.9年後に再び頸動脈の超音波検査を受け、cPBの進行を評価されていた。参加者は、2021年10月まで全死亡について追跡された。 中央値12.4年の追跡期間中に901人(16%)が死亡していた。ベースラインのcPBとCACスコアを三分位数で3群に分類し、全死亡との関連をCox比例ハザード回帰分析により評価した。その結果、cPBとCACスコアはいずれも、年齢、性別、人種、心血管リスク因子、使用している薬剤で調整後も、全死亡と有意な関連を示し、三分位群のカテゴリーが1つ上がるごとのハザード比(HR)は、それぞれcPBで1.23(95%信頼区間〔CI〕1.16〜1.32、P<0.001)、CACスコアで1.15(同1.08〜1.23、P<0.001)であった。cPBとCACスコアをモデルに追加することで、全死亡リスクの予測精度は有意に向上した。向上の程度はcPBを追加する方が高かったことから、リスクの評価においてcPBはCACスコアよりも重要な指標であることが示唆された。 次に、頸動脈の超音波検査の再検査を受けた732人の参加者を対象に、cPBの進行と全死亡との関連をCox比例ハザード回帰分析により評価した。参加者を、ベースラインと追跡調査時のcPBの変化により、「進行なし(いずれの検査でもcPB=0)」「後退(cPBが減少)」「進行(cPBが増加)」に分類したところ、571人(78.0%)が「進行」、63人(8.3%)が「後退」、98人(13.4%)が「進行なし」に該当した。cPBの進行は、上述の因子の調整後も全死亡と有意な関連を示した(cPBが10mm3増加するごとのHR 1.03、95%CI 1.01〜1.04、P=0.01)。 著者らは、「アテローム性動脈硬化症の無症状期間の長さは、現時点では十分に活用されていないが、早期介入や予防策を講じる良い機会となり得る」と述べている。

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紙巻きタバコと電子タバコの併用は禁煙成功率を下げる

 紙巻きタバコを吸っている人が禁煙のため、一時的に電子タバコを併用したとしても禁煙につながらず、むしろ喫煙継続率が高まるとする研究結果が報告された。ゲッティンゲン大学医療センター(ドイツ)のJosef Hamoud氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、詳細は「ERJ Open Research」に12月3日掲載された。 Hamoud氏らは、紙巻きタバコと電子タバコの二重喫煙者が、その後、禁煙したか、電子タバコまたは紙巻きタバコのどちらか一方のみの喫煙としたか、あるいは二重喫煙を継続していたかを検討した過去の研究報告を検索。16件の研究に基づく46報の論文を抽出した。このうち8件の研究データがメタ解析に利用され、研究参加者は二重喫煙者2,432人を含む9,337人だった。 解析の結果、二重喫煙者は禁煙に至ることが少なく、時間の経過とともに紙巻きタバコの喫煙者に戻るケースが多いことが分かった。詳しく見ると、4~8カ月の観察期間中に完全に禁煙できた人の割合は、二重喫煙者では3%、紙巻きタバコのみの喫煙者では6%、電子タバコのみでは8%であり、8~16カ月で禁煙に至った人の割合は同順に5%、7%、19%、16~24カ月では13%、17%、26%、24~48カ月では24%、25%、35%だった。 また、二重喫煙者の30%が4~8カ月の間に紙巻きタバコのみに切り替え、8~16カ月には47%、16~24カ月には58%、24~48カ月には55%が、紙巻きタバコのみを吸っていた。加えて、二重喫煙者の38%は8~16カ月の間、依然として両方のタバコを併用しており、24~48カ月でも8%は二重喫煙者だった。紙巻きタバコに移行した人も含めると、結局63~90%の人は喫煙を継続していた。 この結果からHamoud氏は、「紙巻きタバコと電子タバコの併用は、禁煙に向かう『過渡期』ではなく、むしろ、長期にわたる二重喫煙のリスクを高めるステージと言える。ヘビースモーカーが電子タバコを併用することで、紙巻タバコの喫煙量を減らせるというメリットを期待できるという主張もあるようだが、併用は従来の喫煙スタイルよりもさらに有害である可能性がある」と警告している。 欧州呼吸器学会のタバコ規制委員会委員長を務めるFilippos Filippidis氏も、Hamoud氏の見解に同意を示し、「今回報告された研究は、電子タバコと紙巻きタバコの併用に関するこれまでのエビデンスの全てを対象として行われた大規模な解析であり、結果として、大半の人にとっては電子タバコが禁煙への足がかりにはならないことが示された」と述べている。同氏はまた、「非喫煙者が電子タバコを吸い始めることのないよう、できる限りのことをする必要がある」と付け加えている。なお、Filippidis氏は本研究に関与していない。

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健康な高齢者では高用量ビタミンDで糖尿病リスクは低下しない

 たとえ高用量のビタミンDサプリメントを摂取したとしても、糖代謝異常がない高齢者の場合、2型糖尿病の発症リスク低下にはつながらないとする研究結果が発表された。東フィンランド大学のJyrki K. Virtanen氏らが行ったプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験によるもので、詳細は「Diabetologia」に12月2日掲載された。 過去の観察研究からは、血中ビタミンD濃度が低い場合に2型糖尿病の発症リスクが高いという関連が示されている。しかし、観察研究の結果のみでは、ビタミンDサプリの摂取が糖尿病リスク抑制につながるかどうかは不明。他方、既に血糖値がやや高い前糖尿病の人を対象に行われた研究では、ビタミンDサプリ摂取が糖尿病への移行リスクをわずかに抑制する可能性も示唆されているが、健康な集団での有用性のエビデンスはない。これを背景としてVirtanen氏らは、フィンランドの一般住民を対象にビタミンDサプリ摂取の影響を検討した大規模研究(FIND)のデータを用いた解析を行った。 FINDの参加者は60歳以上の男性と65歳以上の女性で、心血管疾患やがん、腎障害などの既往がなく、摂取している全てのサプリに含まれているビタミンDが合計20μg/日以下などの条件を満たす2,495人。一次評価項目として心血管疾患、二次評価項目としてがん、三次評価項目として2型糖尿病の発症が設定されていた。ビタミンDの中用量(40μg/日)群、高用量(80μg/日)群、およびプラセボ群の3群に、1対1対1でランダムに割り付け、平均4.2年間介入した。 全参加者のうちベースライン時点で血糖降下薬が処方されていた224人を除外した2,271人が、三次評価項目の解析対象とされた。この対象者の平均年齢は68.2±4.5歳、女性が43.9%、BMIは26.8±4.0であり、食事からのビタミンD摂取量は10.7±7.9μg/日で、66.0%はビタミンDサプリを摂取していなかった。解析対象者のうち504人は血中ビタミンD濃度(25〔OH〕D3)が測定されていて、その平均は29.8±7.2ng/mLだった。 追跡期間中に105人が2型糖尿病を発症。各群の発症者数は、ビタミンD中用量群が31人、高用量群36人、プラセボ群38人であり、100人年当たりの罹患率は同順に0.97、1.11、1.19だった。年齢と性別を調整後、プラセボ群を基準とする発症ハザード比は、中用量群が0.81(95%信頼区間0.50~1.30)、高用量群が0.92(同0.58~1.45)であり、ビタミンDの用量にかかわらず有意なリスク低下は観察されなかった。 追跡開始2年目までに2型糖尿病を発症した人を除外した解析や、性別、年齢層別、BMI別に層別化したサブグループ解析でも、ビタミンDサプリ摂取が2型糖尿病リスク低下につながる集団は特定されなかった。また、血糖値、血中インスリン値、インスリン抵抗性(HOMA-IR)、BMI、ウエスト周囲長の変化も検討されたが、いずれもビタミンD摂取による有意な影響は観察されなかった。 これらの結果から著者らは、「健康な高齢者を対象としたわれわれの研究では、中用量または高用量のビタミンDサプリの長期摂取による2型糖尿病の発症抑止効果は示されなかった」と結論付けている。

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GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドは、駆出率の保たれた心不全肥満患者に有効(解説:佐田政隆氏)

 左室駆出率が40%未満の心不全を「左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)」、左室駆出率が50%以上の心不全を「左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)」、左室駆出率が40%以上50%未満の心不全は「左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)」と定義されている。 HFrEFに対する薬物療法では、この30年ほどの間に著明な進歩があった。β遮断薬、ACE阻害薬/ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)もしくはARNI (アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)、MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)、そして最近はSGLT2阻害薬の上乗せが予後をさらに改善することが証明された。現在、β遮断薬、ARNI、MRA、SGLT2阻害薬はfantastic fourと呼ばれ、HFrEF患者の予後改善のために1ヵ月以内に早期に導入することが強く推奨されている。 一方、HFpEFに対しては、β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、ARNI、MRAを用いて各種大規模臨床研究が行われてきたが、いずれも予後を改善することは証明できなかった。近年、HFrEFよりHFpEFが増加しているという報告もあり、今後予想される心不全パンデミックに備えて、HFpEFに対する有効な治療法の開発が望まれていた。 この数年、SGLT2阻害薬がHFrEFのみでなくHFpEFに対しても有効性があることが証明され、ダパグリフロジンとエンパグリフロジンは糖尿病がなくても心不全治療薬として承認されている。しかし、HFpEF患者の予後改善のためには、さらなる追加の治療法が求められていた。 2023年、肥満を有するHFpEF患者において、セマグルチド2.4mgによる治療によって、プラセボと比較して、症状と身体的制限が軽減し、運動機能が改善し、体重が減少することがSTEP-HFpEF試験で報告された。 小腸から分泌されて膵臓に作用するインクレチン製剤としては長年GLP-1受容体作動薬が用いられてきたが、昨今、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドが糖尿病治療薬として開発され、その強力な血糖降下作用と体重減少効果から、本邦でも急速に普及している。 本論文では、BMI 30以上の肥満をもったHFpEF患者(2型糖尿病患者はおよそ48%)に対するチルゼパチドの効果を検討した。主要評価項目である104週間での「心血管死と心不全増悪」を、チルゼパチドでプラセボと比較して有意に減少させた。また、カンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS:スコア範囲は0~100で、数値が高いほど症状と身体的制限が少ないことを示す)と6分間歩行距離を改善した。体重減少は、チルゼパチド群で-13.9%、プラセボ群で-2.2%であった。注目すべきことには、高感度CRPがチルゼパチド群でなんと-38.8%低下し、プラセボ群では-5.9%であった。この抗炎症効果は、体重減少だけでは説明がつかないと思われ、膵臓以外の臓器へのチルゼパチドの多面的な作用の関与が大きいと思われる。 米国ではチルゼパチドは肥満症治療薬として2023年11月にすでに承認されているが、日本においてもセマグルチドに続いて2024年12月27日に承認された。肥満を有するHFpEF患者に対するチルゼパチドの効果のメカニズム、GLP-1受容体作動薬とGIP/GLP-1受容体作動薬でHFpEFに対してどちらがより効果的なのか、肥満のないHFpEFにも有効なのかと疑問は尽きないが、今後の臨床研究、基礎研究で解明されていくことが期待される。

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第224回 入院できる医療機関が減少傾向 病院・有床診療所、2年間で332施設減/厚労省

<先週の動き>1.入院できる医療機関が減少傾向 病院・有床診療所、2年間で332施設減/厚労省2.赤穂市民病院、手術ミスで医師を在宅起訴 患者に重度の障害/神戸地検3.社会保障費が過去最大の38兆円超、高齢化と賃金上昇で増加/政府4.医療DX推進、標準型電子カルテの本格提供開始は2027年度に延期へ/政府5.社会保障改革と医療DXに向けた改革実行プログラムを策定/政府1.入院できる医療機関が減少傾向 病院・有床診療所、2年間で332施設減/厚労省入院可能な医療機関が減少傾向にあることが、厚生労働省の調査で明らかになった。2024年10月末時点の一般病院の数は6,999ヵ所と、1年前と比較し68ヵ所減少した。有床診療所も減少傾向が続き、2023年10月末~2024年10月末までの1年間で284ヵ所減少し、5,391ヵ所となった。2年前と比較し、病院と有床診療所を合わせて332ヵ所減少したことになる。病院の減少は、経営状況の悪化や医師不足、高齢化などが背景にあるとみられ、また、診療所の減少は、病院への統合や、無床診療所への転換などが要因と考えられている。有床診療所は、地域医療において重要な役割を担っており、入院患者の受け皿となるだけでなく、在宅医療や介護施設との連携など、地域包括ケアシステムにおいても重要な存在。しかし、有床診療所の経営状況は厳しく、2023年度の調査では、4割以上が赤字経営であることが明らかになっている。政府は、診療報酬改定などで有床診療所の経営支援を行っているが、減少傾向に歯止めがかかっていない状況。有床診療所の減少は、地域医療の提供体制に影響を与える可能性があり、今後の動向が注目される。参考1)医療施設動態調査[令和6年10月末概数](厚労省)2)一般病院7千カ所を割り込む、10月末概数 前年比68カ所減(CB news)3)物価高騰の影響、前年より「あり」227病院の65% 24年度上半期 福祉医療機構調べ(同)4)有床診療所はさらに減少し5,391施設に、2025年5月に7万床、26年3月に5,000施設を割る可能性大-医療施設動態調査[2024年10月末](Gem Med)2.赤穂市民病院、手術ミスで医師を在宅起訴 患者に重度の障害/神戸地検神戸地検姫路支部は12月27日、赤穂市民病院(兵庫県赤穂市)で2020年に行われた手術で、患者に重度の障害を負わせたとして、当時手術を担当した医師を業務上過失傷害罪で在宅起訴した。起訴状によると、医師は患者の腰椎を削る手術中、十分な止血を怠ったまま電動ドリルを操作し、脊髄神経を損傷した。その結果、患者は下半身に重い麻痺が残り、膀胱直腸障害も負った。地検姫路支部は、複数の専門家に手術の映像を確認してもらい、刑事責任を問えるだけの過失があると判断した模様。同院では、この医師が関わった手術で8件の医療事故が発生し、2人が死亡するなどしており、病院側は医療過誤を認めて謝罪した。医師は3年前に依願退職している。患者は、手術後に同院に対して損害賠償請求訴訟を起こし、病院側は医療過誤を認め、謝罪した。今回の在宅起訴を受け、患者の家族は「法廷で自分の過ちを素直に認めてほしい」と話している。参考1)“手術で患者に重い障害”担当医を在宅起訴 神戸地検姫路支部(NHK)2)赤穂市民病院で手術中、適切な処置怠り重度障害負わせる…医師を在宅起訴(読売新聞)3)兵庫の手術ミス、執刀医在宅起訴 業務上過失傷害罪で(日経新聞)3.社会保障費が過去最大の38兆円超、高齢化と賃金上昇で増加/政府政府は12月27日に、2025年度予算案を閣議決定した。一般会計総額は115兆円を超え、過去最大となった。その中で、医療や介護などの社会保障費は38兆2,778億円と、24年度から5,585億円増加し、過去最高を更新した。高齢化の進展に加え、賃金・物価上昇に伴う年金給付額の増加が主な要因。政府は、高額療養費制度の見直しや薬価の引き下げなどの歳出改革に取り組んでいるが、社会保障費の急速な伸びを抑えきれていない現状である。25年度の社会保障費は、高齢化による自然増に加え、年金給付額の増加や保育士などの賃上げなどが歳出増の要因となっている。一方、歳出抑制策としては、薬価の引き下げや高額療養費の見直しなどが盛り込まれた。薬価については、特許切れ新薬などを中心に引き下げる一方、物価高騰への配慮として最低薬価を引き上げるなどの措置も講じられているほか、高額療養費制度については、年収が多い人ほど自己負担の上限を引き上げる見直しが行われている。しかし、これらの抑制策だけでは、社会保障費の膨張を抑えることは難しく、さらなる改革が必要となっている。26年度には診療報酬改定が予定され、本体部分への切り込みや、医療・介護の自己負担の見直しなどが焦点となる。参考1)令和7年度予算案の概要(厚労省)2)社会保障費の抑制に腐心 「高額療養費」見直しで年1,600億円削減(朝日新聞)3)予算案115兆円決定 来年度 社保費膨張38兆円 過去最大(日経新聞)4)社会保障費最大の38.2兆円 製薬・高所得者負担で抑制 医療・介護、自己負担上げに反発強く(同)5)2025年度予算案で過去最高の社会保障費38兆円を閣議決定(日経メディカル)4.医療DX推進、標準型電子カルテの本格提供開始は2027年度に延期へ/政府政府は、国民の健康増進や切れ目のない質の高い医療の提供に向け、医療分野のデジタル化を進め、保健・医療情報(介護含む)の利活用を行うため、医療分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に、2023年6月に「医療DX推進に関する工程表」を策定していた。この工程表では、2025年度中に標準型電子カルテを本格運用し、2030年にはすべての医療機関への導入を目指すとされていた。しかし、2024年12月26日に政府の経済財政諮問会議が決定した「経済・財政新生計画 改革実行プログラム2024」では、標準型電子カルテの本格提供開始を2027年度に延期する方針が示された。これは、2025年1月から開始される試行版(α版)のモデル事業で、有用性や運用上の課題を検証した上で、本格版を提供するためのもの。標準型電子カルテは、クラウド型のシステムにより低コスト化を図り、とくに医科診療所などでの導入を促進することを目的としている。医療機関間での患者情報の共有を可能にすることで、医療の質向上と効率化を図る。その一方で、医療DXの推進には、いくつかの課題も指摘されている。医療機関、とくに大規模病院における標準型電子カルテの導入には、多額の費用と時間が必要であり、さらに電子カルテ情報共有サービスの運用費用は、将来的に社会保険料で賄う方針だが、保険者からは負担増への懸念の声が上がっている。医療情報は極めて機微な個人情報であるため、共有システムのセキュリティ対策が重要となる。医療DXの効果を最大限に発揮するためには、多くの医療機関が積極的に参加することが重要であり、政府は、これらの課題を解決しながら、医療DXを推進していく方針。参考1)経済・財政新生計画 改革実行プログラム2024(経済財政諮問会議)2)標準型電子カルテ、本格版を27年度に提供開始 改革実行プログラム2024決定 諮問会議(CB news)3)電子カルテ情報共有サービスの運用費用、標準型電子カルテが5割程度普及した段階で保険者等に負担求める-社保審・医療保険部会(Gem Med)4)2025年1月から無床診療上向けの標準型電子カルテのモデル事業を実施、既存電子カルテの標準化改修も支援-社保審・医療部会(同)5)電子カルテ情報共有サービスについて(厚労省)6)医療機関等向け総合ポータルサイト(社会保険診療報酬支払基金)5.社会保障改革と医療DXに向けた改革実行プログラムを策定/政府政府は、2024年12月26日に経済財政諮問会議を開催し、重要政策に対してEBPM(証拠に基づく政策立案)を実践・実装する「EBPMアクションプラン2024」および改革工程を具体化し実行する「改革実行プログラム2024」を決定した。2025年は、団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となり、全人口の18%が高齢者となる超高齢社会の節目の年に当たる。社会保障分野においては、全世代型社会保障制度の構築に向け、現役世代と高齢世代の給付と負担のバランスを見直し、効率的で質の高い医療・介護サービスの提供体制を構築することが重要課題として掲げられている。主な改革項目は下記の通り。勤労者皆保険の拡大:短時間労働者への適用拡大や、個人事業所の適用業種の拡大など、働き方に中立的な社会保険制度の構築を目指す。医療DXの推進:全国医療情報プラットフォームの構築、診療報酬改定DX、電子カルテ情報共有サービスの導入など、デジタル技術を活用した医療の効率化と質向上を図る。地域医療構想:2027年度から新たな地域医療構想に基づいた医療提供体制の改革を推進する。医師の偏在対策も強化し、地域医療の充実を図る。医療・介護の連携:医療従事者におけるタスク・シフト/シェアを推進し、多剤重複投薬の適正化など、医療と介護の連携強化による効率的なサービス提供を目指す。能力に応じた全世代の支え合い:介護保険の負担割合の見直しや、高額療養費制度の見直しなど、能力に応じた負担と給付の公平性を確保する。医薬品政策:創薬力の強化、医薬品の安定供給確保、薬価制度の見直しなど、医薬品政策の改革を進める。これらの改革を実行するためには、医療現場の理解と協力、そして国民への丁寧な説明が不可欠となる。とくに、医療DXの推進には、医療従事者の負担軽減や情報セキュリティ対策など、解決すべき課題が多く残る。政府は、これらの課題を克服し、国民の理解と協力を得ながら、改革実行プログラムを着実に推進していく方針。参考1)ことし約5人に1人が後期高齢者に 医療や介護の体制拡大が課題(NHK)2)「EBPMアクションプラン2024」・「改革実行プログラム2024」(経済・財政一体改革推進委員会)3)改革実行プログラム2024(経済財政諮問会議)

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線形回帰(重回帰)分析 その1【「実践的」臨床研究入門】第50回

まずは相関と回帰これまで、統計解析手法はアウトカム指標(目的変数)の型によって異なることを説明してきましたが、その内容を以下のように表にまとめました。アウトカム指標(目的変数)の型による統計解析手法の分類記述統計の際、カテゴリ変数はデータ数が20未満の場合は頻度の実数で、データ数が20以上の場合は割合で示します。連続変数の場合は、まずヒストグラムを作成し、そのデータの分布が正規分布に準じるか否かを確認します。正規分布に近似できる場合、平均値と標準偏差(Standard Deviation:SD)で示すか、または中央値(四分位範囲)で示します。正規分布に近似できない場合は、中央値(四分位範囲)で示すことが推奨されています(連載第46回参照)。生存時間の記述統計については、人年法を用いて生存時間曲線を描きます(連載第40回〜第43回参照)。また、2群の生存時間曲線の比較では、一般的にLogrank検定を使用します。2群比較ではカテゴリ変数(2値)の場合はΧ2検定(もしくはFisher検定)、連続変数の場合は(正規分布に準じていれば)t検定を用います。もしデータが歪んだ分布である場合、対数変換を行い、正規分布に近似させることを検討します(連載第48回参照)。今回からは、アウトカム指標が連続変数の場合の多変量解析(回帰モデル)手法のひとつである線形回帰(重回帰)について解説していきます。まずはその前段として、相関と回帰について説明します。まず、相関とは「2つの連続変数間の直線的な関係」を指します。一方の変数が他方の変数に影響を及ぼしており、一方の値が増加すると他方の値も増加、または減少する関係性です。このような 1対1に対応する2つの連続変数データ を観察する場合、両者の関連性を視覚的に表す最も良い方法は散布図です。散布図とは、2次元のグラフ上で x軸に一方のデータの値を、y軸に他方のデータの値をとり、それぞれの該当する場所に点をプロットしたグラフです。もし、2つの連続変数間に直線的な関係が見られた場合、次に考えることは「一方の値から他方の値を予測できるか」ということではないでしょうか。別の言い方をすると、「ある結果を表す変数(従属変数、または目的変数)」を「他の変数(独立変数、または説明変数)」によってどの程度説明できるかを考えることです。この手法を回帰と呼びます。散布図に基づき、最も適切な回帰直線を当てはめるための数学的な方法が最小二乗法です。最小二乗法は、実際のデータ点と予測値との誤差の二乗和を最小化することで、最適な回帰直線を求めます。データをプロットした散布図において、できるだけ多くのデータ点に「近い」直線を引こうとするイメージです。それでは、仮想データ・セットを用い、EZR(Eazy R)で散布図と回帰直線を描いてみましょう。仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。はじめに。以下の手順で仮想データ・セットをEZRに取り込みます。「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」続いて「グラフと表」→「散布図」を選択し、下記のポップアップウィンドウのとおり、x変数は「age」をy変数は「diff_eGFR5」を指定、またOptionsでは「最小2乗直線」のチェックボックスにレ点を入れます。※「diff_eGFR5」は、われわれのResearch Question(RQ)のセカンダリO(アウトカム)に設定されている、ベースラインから5年後の糸球体濾過量(GFR)変化量「OK」をクリックすると、下記のような散布図と回帰直線が描けたでしょうか。回帰直線の傾きからは、「age」が増加すると「diff_eGFR5」が減少(eGFRの低下幅が大きくなる)する傾向、すなわち負の相関が示唆されます。今回の解説では、相関と回帰について基礎から説明し、EZRを用いて散布図と回帰直線を描画する手順を示しました。次回は、この基礎を踏まえて線形回帰(重回帰)分析について実践的に解説していきます。

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映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その4)【実は双極性障害から進化したの!?(統合失調症の起源)】Part 1

今回のキーワード双極性障害遺伝率共通の遺伝因子ランク理論(社会的地位理論)前適応双極性障害起源説敏感さ(過敏性)創造性前回(後編・その3)、統合失調症が昔から世界中で100人に1人発症する謎、青年期に発症する謎、途上国や田舎で回復しやすい謎を、この記事で提唱する「集団統合仮説」から解き明かしました。しかし、まだ謎が残っています。それは…統合失調症は一体どうやって生まれたのでしょうか? ヒントは、双極性障害との謎の関係です。今回(後編・その4)は、前回にも取り上げた映画「ミスト」とドラマ「ザ・ミスト」を踏まえて、統合失調症と双極性障害の謎の関係から、「統合失調症は双極性障害から進化した」という仰天の仮説を立てます。そして、いよいよ統合失調症の起源に迫ってみましょう。統合失調症と双極性障害の謎の関係とは?まず、統合失調症と双極性障害の相違点と共通点をそれぞれ3つの項目に分けて、その謎の関係に迫ってみましょう。なお、双極性障害の詳細については、関連記事1をご覧ください。(1)疫学まず、疫学においてです。その相違点として、一番は繁殖成功率です。統合失調症は男性20%、女性50%でかなり低下しているのに対して、双極性障害は男性75%、女性85%で比較的に保たれています1)。一方の共通点として、遺伝率は、統合失調症も双極性障害もほぼ同じく約80%です。共通の遺伝因子は、双極性障害の発症因子全体の約40%を占めています2)。実際に、家族歴では、統合失調症と双極性障害は同じ家系に混在していることが多いです。ちなみに、うつ病の遺伝率は約40%で、ストレスとの関係の方が大きいことが指摘されています。発症率は、統合失調症も双極性障害もほぼ同じく約1%で、性差がない点も同じです。ちなみに、うつ病は、約10%程度と高く、男性よりも女性が2倍多いです。発症年齢は、統合失調症も双極性障害もほぼ同じく20歳台が多いです。ちなみに、うつ病の発症年齢は、ストレスとの関係から中高年も多く、幅広いです。つまり、疫学的に、実は双極性障害は、うつ病よりも統合失調症に断然近いことがわかります。(2)治療次に、治療においてです。その相違点として、統合失調症には抗精神病薬、双極性障害には気分安定薬を主に使います。一方の共通点として、統合失調症にも気分安定薬、双極性障害にも抗精神病薬を併用することが多いです。実際に、抗精神病薬に気分安定薬を追加することで増強効果が発揮されるため、統合失調症の治療にも有効です。また、昨今の抗精神病薬は、抗幻覚妄想作用だけでなく気分安定作用もあり、気分安定薬として代用できるため、双極性障害にも適応があります。ちなみに、うつ病への気分安定薬の効果は限定的です。逆に、双極性障害への抗うつ薬の効果は無効です。それどころか、抑うつ状態から躁状態に転じるリスクもあります。つまり、治療的にも、実は双極性障害は、うつ病よりも統合失調症に断然近いことがわかります。実際に、双極性障害は、うつ病と誤診されると治療薬が違うので問題になりますが、統合失調症と誤診されても治療薬がほぼ同じなのであまり問題にならないです。治療薬の詳細については、心療内科・精神科の薬(2024)をご覧ください。(3)経過最後に、経過においてです。その相違点として、統合失調症は陽性症状(敏感さ)と陰性症状(鈍感さ)を繰り返し、双極性障害は躁状態と抑うつ状態を繰り返します。症状の中身(内容)としてはもちろん違います。そして、統合失調症には残遺症状(後遺症)があるのに対して、双極性障害にはないです。一方の共通点として、統合失調症の陽性症状と双極性障害の躁状態、統合失調症の陰性症状と双極性障害の抑うつ状態はそれぞれ重なります。つまり、名称が違うだけで、実は統合失調症の経過(形式)は、双極性障害と同じく2つの相(エピソード)を繰り返す「双極性」(循環性)です。ちなみに、うつ病の経過は、再発する場合は反復性ではありますが、「双極性」(循環性)ではなく「単極性」です。つまり、経過的にも、実は双極性障害は、うつ病よりも統合失調症に断然近いことがわかります。統合失調症と双極性障害は共通点が多すぎて、もはや同じ病態の症候群で、ただ表面的な症状だけで別々に分類されているにすぎないとも言えそうです。実際の脳画像の研究においても、統合失調症と宗教体験は同じ脳領域が過活動になっていることをその1で触れましたが、さらに双極性障害もこれらと同じ脳領域が過活動になっていることがわかっています3)。また、双極性障害とうつ病は同じ気分障害に分類されていながら、意外にもこの2つの正体はまったく別物であることもわかります。次のページへ >>

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映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その4)【実は双極性障害から進化したの!?(統合失調症の起源)】Part 2

統合失調症は双極性障害からどうやって生まれたの?統合失調症の起源は抽象的な思考が可能になった約10万年前であるとその2で説明しました。その後に人類がアフリカから大規模な拡散を始めたのは、約7万年前です。よくよく考えると、発症率をはじめ統合失調症の特徴は世界共通であることから、約7万年前にはすでに統合失調症は現在の形に「完成」されていたことになります。だとしたら、統合失調症は10万年前から7万年前の3万年間で進化したわけですが、単独で進化するには期間があまりにも短すぎます。一方で、先ほどの示した統合失調症と共通点の多い双極性障害の起源は、ランク理論(社会的地位理論)から、少なくとも人類が部族をつくるようになった約300万年前と推定できます。ランク理論の詳細については、関連記事2をご覧ください。以上を踏まえると、統合失調症の進化には双極性障害という土台(前適応)があった、つまり統合失調症は双極性障害から進化したという仮説を立てることができます。名付けて、統合失調症の「双極性障害起源説」です。それでは、統合失調症は双極性障害からどうやって生まれたのでしょうか? 次は、先ほどの経過の共通点と相違点から、大きく3つの段階で進化精神医学的に解き明かしてみましょう。なお、前適応の詳細については、関連記事3をご覧ください。(1)躁状態から敏感さが生まれたランク理論を踏まえると、約300万年前から人類は、躁状態によって「ボスザル」になり上がる種が現れていたでしょう。躁状態では、ハイテンションになり、興奮して怒りっぽくもなります。この易怒性は、躁状態の診断基準の1つです。そこから、被害的にもなりやすいことは容易に想像できます。これが、被害妄想の起源です。つまり、躁とは何かに敏感でもあるわけです。1つ目の段階は、躁状態から敏感さ(過敏性)が生まれたことです。わかりやすく言えば、過敏さは躁状態という「エンジン」によって生まれたということです。躁状態が、意欲だけでなく、思考や知覚、そして自我意識まで広がって活性化するイメージです。思考の過敏さは妄想、知覚の過敏さは幻覚です。ちょうど、ドラマ版のナタリーが動物と会話する状況が当てはまります。これは、精霊信仰(アニミズム)の起源でしょう。また、自我意識の過敏さは作為体験です。これは、自分を意識する感覚が過剰になると、自分ではない誰かが自分を意識している、つまり見られている感覚やコントロールされている感覚になることです。そして同時に、ないものをあるかのように感じて想像する能力でもあります。これが、いわゆる霊感(超越的な存在の実感)の起源です。ちょうど、ドラマ版で登場人物たちが「あの霧は私のことを知っている」と言い出し、霧の中で操られるシーンに重なります。もちろん、これはドラマの設定上の霧の仕業という演出ですが、あたかも作為体験のように描かれている点が興味深いです。なお、統合失調症の敏感さやそのメカニズムの詳細については、関連記事4、関連記事5をご覧ください。実際の臨床では、躁状態(双極性障害)による興奮と幻覚妄想状態(統合失調症)による興奮は、区別できないことが多いです。これらがそれぞれ極端になった病態は同じく緊張病と呼ばれます。また、統合失調症と双極性障害が合併した病態として、統合失調感情障害もあります。一方、幻覚妄想状態が一時的にだけ出てくる病態として、急性一過性精神病性障害があります。また、幻覚がなく妄想だけが出てくる妄想症という病態もあります。そして、明らかな幻覚や妄想がなく、もともと霊感が強いだけの統合失調型パーソナリティ障害という性格特性もあります。これらは、神のお告げを繰り返し聞くこと(幻聴)がないため、それができるリーダー(統合失調症)には負けるでしょう。そして、これらの病態は、統合失調症ほど「集団統合機能」として完成されていないからこそ、統合失調症のリーダーとの対立を引き起こさず、そのリーダーのフォロワーとしてサポート的な「集団統合機能」を発揮したでしょう。これらすべての病態を合わせて、統合失調症スペクトラム障害と呼んでいます。なお、統合失調症にまで発症していなくても、統合失調症スペクトラム障害の人がリーダーになる方法が、実はありました。それは、外的な影響(ストレス因子)によって、一時的に幻覚妄想状態になること、いわゆるトランスを繰り返すことです。たとえば、古くから多くのシャーマンがわざわざ幻覚作用のある毒キノコを食べて幻覚状態になっていたのは、このためです。また、夜通し同じお経(歌)を唱え続けたり、同じ仕草や振り付け(ダンス)を繰り返すのも、このためです。この時、疲れ果てて身体的なストレスから幻覚状態(せん妄)を引き起こしていました。これらは、原始の時代に、幻覚状態(統合失調症)になりきれない場合の「裏技」として発明された行動様式と解釈することができます。さらに、リーダーだけでなく、フォロワーも一緒に毒キノコを食べたり、一緒にお経(歌)や振り付け(ダンス)をすることで同調効果が高まり、集団がよりまとまったでしょう。(2)抑うつ状態から鈍感さが生まれた躁状態の「エンジン」は、アクセル全開で過敏性を生み出したわけですが、循環性であるため、一定期間で抑うつ状態というブレーキがかかります。つまり、敏感の真逆の鈍感にもなります。2つ目の段階は、抑うつ状態から鈍感さが生まれたことです。鈍感さとは、陰性症状として、感情鈍麻、無為自閉、認知機能障害などが挙げられます。これらは、抑うつ状態の抑うつ気分、興味・喜びの減退、思考制止に似ています。(3)敏感さが止められない状況で残遺症状が生まれた双極性障害に残遺症状がないことから、もともと統合失調症も残遺症状がなかったでしょう。しかし、躁状態の「エンジン」から生まれた敏感さは、とくに部族の危機が解決せずにリーダーシップを続ける必要がある状況では、ブレーキがかかりにくくなったでしょう。つまり、鈍感になるという休息ができない状況です。その代償が、脳の過活動による脳細胞の消耗です。簡単に言えば、「脳細胞の過労死」です。3つ目の段階は、敏感さが止められない状況(社会環境によるストレス)で残遺症状(後遺症)が生まれたことです。逆に、そのストレスがなければ、スムーズに陰性症状(鈍感さ)の時期を迎え、残遺症状は目立たないでしょう。これは、回復率への影響因子としてすでにその3で説明しました。実際に、かつてのアフリカのヌアー族という未開の部族社会についての調査研究によると、当時にやってきたヨーロッパ人やアラブ人たちの脅威によって、部族の団結を精力的に促す預言者(シャーマン)が出てきた一方、奇行が目立つ預言者(シャーマン)も出てきたとの報告がされています4,5)。まさに、この部族の危機は、その3で説明した先進国や都市部の生活環境のストレスに重なります。つまり、統合失調症の残遺症状については、うつ病と同じく社会環境によるストレスの要素が大きいと言えます。そして、この残遺症状が繁殖成功率を下げる要因にもなっているでしょう。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その4)【実は双極性障害から進化したの!?(統合失調症の起源)】Part 3

統合失調症の起源は創造性じゃなかったの?統合失調症の「双極性障害起源説」について説明してきました。従来から、統合失調症の起源仮説として、創造性が挙げられています。統合失調症は、人類が創造性という能力を進化させた時の副産物であるという仮説です。確かに、創造性と幻覚妄想は、紙一重です。創造性とは、まさにないものあるかのように感じて表現することであり、作為体験に通じます。しかし、創造性は起源ではないと考えられます。その理由は3つあります。1つ目は、創造性が生まれたのは、早くても約5万年前であり、7万年前の出アフリカよりもあとです。もしも創造性が起源だとしたら、統合失調症の発症率などに地域差が生まれることになってしまい、世界共通であることを説明できなくなるからです。2つ目は、創造性が起源だとすると、その3で説明した発症率、好発年齢、回復率の謎のどれも説明できなくなるからです。3つ目は、創造性が「集団統合機能」のように生存や生殖の適応度を直接高めることがなく、進化の選択圧(淘汰圧)としては弱いからです。つまり、創造性もまた「集団統合機能」の副産物と言えるでしょう。創造性の起源の詳細については、関連記事6をご覧ください。ボスザルからリーダーに約20万年前に人類が言葉を話すようになり、約10万年前に抽象的な思考(概念化)ができるようになってから、敏感さ(過敏性)を得た人は、その超越的な存在の実感を神と呼ぶようになったでしょう。しかも、もともと躁状態であったことから、確信して断定的に言ったでしょう。こうして、双極性障害のボスザルになる機能は、統合失調症のリーダーになる機能に拡張されていったのです。これが、その2で説明した「集団統合仮説」です。統合失調症と同じく双極性障害も発症率が1%であることから、おそらく100人の部族には最終的に双極性障害と統合失調症が1人ずついたことになります。おそらく、生活環境(社会環境)が安定している時はハイテンションの双極性障害がそのままボスとなり、逆に生活環境が不安定な時はカリスマ的な統合失調症がリーダーに台頭するという役割分担をしていたのかもしれません。現在の調査研究でも、感染症が蔓延して生活環境が不安定な亜熱帯の地域ほど、宗教の数が増えていくことがわかっています3,6)。そのような地域の人々は、まさに映画版のカーモディさんやドラマ版のナタリーのような教祖(統合失調症)にすがってしまうのでしょう。実際に、その時代の社会情勢が不安定な時にこそ、カルトを含む宗教が盛り上がるのは、日本も含め歴史から学ぶことができます。だからこそアフリカのサバンナからグレートジャーニーへよくよく考えると、約20万年前から私たち現生人類(ホモサピエンス)の脳は構造的にも遺伝的にも大きく変わっていないです。この点を踏まえると、人類の概念化の能力や一部の人(統合失調症)の霊感の能力(超越的な存在の実感)は、約20万年前の時点ですでに潜在的に備わっていたと考えられます。それらが、ようやく約10万年前になって言葉によって表現され共有され、顕在化したのでしょう。つまり、10万年前から7万年前(出アフリカ)の3万年間は、統合失調症が進化した期間ではなく、すでに進化していた統合失調症の歴代のリーダーたちが「集団統合機能」を言葉(伝承)によって文化的に発展させる、つまり原始宗教を確立する期間であったのでしょう。そして、この原始宗教が約7万年前にようやく確立したからこそ、その時点でアフリカからの大規模な拡散、つまりグレートジャーニー(大陸大移動)が始まったのでしょう。かつてのアフリカのサバンナのボスザルは、「約束の地」(神が約束した新天地)へと導くリーダーになっていった…統合失調症の起源に根気強く迫っていくなか、そんな人類史の壮大な歴史にまで思いを馳せてしまいます。参考記事なお、さらに20万年前よりも以前に遡った概念化の心理機能とは、そもそも目の前にないものを存在として認識する心理機能(象徴機能)が考えられます。この詳細については、お化けの起源として、関連記事7をご覧ください。確かに、神とお化けは同じく、姿がよくわからないし、何かされそう…実は神はもともとお化けだった…!?1)「進化精神病理学」p.195、p.214:マルコ・デル・ジュディーチェ:福村出版、20232)「標準精神医学 第8版」p.306、p.329:医学書院、20213)「宗教の起源」p.246:ロビン・ダンバー、白揚社、20234)「ヌアー族」pp.323-324:エヴァンズ・プリチャード、平凡社、20235)「ヌアー族の宗教 下」p.231:エヴァンズ・プリチャード、平凡社、19956)「友だちの数は何人? ダンバー数とつながりの進化心理学」P127:ロビン・ダンバー、インターシフト、2011<< 前のページへ■関連記事映画「心のままに」(その1)【どうハイテンションになるの?そのあとは?(双極性障害)】Part 1映画「心のままに」(その1)【どうハイテンションになるの?そのあとは?(双極性障害)】Part 3NHK「おかあさんと一緒」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 1絵画編【ムンクはなぜ叫んでいるの?】ビューティフルマインド【統合失調症】ピカソ「泣く女」【なんでこれがすごいの?だから子供は絵を描くんだ!(アートセラピー)】Part 2絵本「ねないこだれだ」【なんでお化けは怖いの?なんで親は子供にお化けが来るぞと言うの?(お化けの起源)】Part 1

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婚活の「希望条件」はキャリアプランも踏まえて設定を【アラサー女医の婚活カルテ】第5回

アラサー内科医のこん野かつ美です☆前回は、結婚相談所(以下、相談所)で婚活を始める際に重要となる、プロフィール写真や自己PR文について書きました。今回も引き続き、婚活の事前準備について私の経験をご紹介したいと思います。「居住地」問題に直面地方在住者には高いハードルが…婚活では、当然ながら「結婚相手に希望する条件」を明確にしなければなりません。年齢、居住地、年収、職業、学歴、容姿、身長……。いろいろな項目がありますが、すべてが自分の理想通りというお相手はそうそういないので、優先順位を付ける必要があります。医師、とくに大学医局に所属している医師にとって、障壁となりやすいのが「居住地」の問題です。居住地の離れたお相手と結婚した場合、別居婚を許容するのでない限り、転居を考えなくてはなりません。医師免許さえあれば、全国どこでも仕事は見つかるでしょうが、自分の所属する医局の関連病院がない地域だと、退局の決断を迫られることになります。将来のキャリア設計に大きく関わることです。大手の連盟(「連盟」については第3回を参照)である「TMS」の発表データ1)によれば、会員の約4割が関東在住(6万4,845名中2万5,698名、2023年11月時点)だそうです。もう1つの大手である「IBJ」では、首都圏在住者の割合はもっと高いと聞きます。私のような地方在住の医師にとって、医局でのキャリアを継続しながら相談所婚活で結婚するというのは、それだけハードルが高いということです(結婚のために退局するというのも、それはそれで1つの選択肢だとは思いますが……)。また、たとえ婚活時点では居住地が同じ県内でも、全国転勤があるお相手だと、ゆくゆくは同じ問題に直面することになります。「居住地」問題、私はこう向き合った「居住地」の問題、私はこんなふうに向き合いました。私の場合、せっかく積み上げてきた医局でのキャリアを捨てたくなかったので、「将来同じ県内に住むことができる」というのは、譲れない条件でした。また、子育てのことを考えると、必要なときには実家の親にサポートしてもらえるよう、私の地元に近い場所に住みたいという理由もありました。そこで、男性からお見合いを申し込まれた場合は、担当カウンセラーを通じてあらかじめ居住地の条件を伝え、お相手が了承してくれた場合のみ、お見合いをお受けするようにしました。私からお見合いを申し込む場合も、担当カウンセラーを通じて、全国転勤のある方かどうかを事前に確認するようにしました。条件には優先順位を付けて居住地以外にも、私がこだわった条件がいくつかありました。本連載の第1回でも触れましたが、私はお相手を同業者(医師)に限定せずに活動しました。しかし一方で、バックグラウンドがあまりにも自分とかけ離れたお相手だと共同生活が成り立たないと考えたため、「大卒以上」の学歴と「500万~600万円以上」の年収を最低限の条件として、フィルターをかけました。また、婚活を始めた大きな理由の1つが「子どもを持ちたかったため」だったので、将来の生活設計を考えて、年齢は「自分の年齢±5歳まで」としました。一方、これらの条件を設定した分、容姿や身長といった私にとって優先度の低い条件には、あまりこだわりませんでした。年収や職業の開示は「身バレ」リスクも要考慮女性医師が、プロフィールページで自身の年収や職業を開示するかどうかは、悩みどころです(私の利用していた連盟は、なぜか女性は年収を開示しなくてもよいシステムでした)。私の担当カウンセラーは、「女性は年収を公表しないほうが婚活しやすい」という意見でした。その理由は、「男性は、年収が自分よりも高い女性を敬遠しがちだから」だとか……。学歴についても同様だそうです。共働き世帯の多い令和の時代に、ちょっと前時代的ですよね(汗)。前述のように、私は自分より極端に収入が低い男性を避けたかったため、カウンセラーの意見を聞いて、むしろ積極的に年収を開示することにしました。一方、職業については「医療系の専門職」という表現でぼかし、プロフィールページでは姓・名ともに匿名にしました(私の利用していた連盟では、匿名設定の場合でも、お見合いが成立した段階でお互いの姓が開示されるシステムでした)。医師はインターネット上に顔写真や氏名を公開する機会が多く、「(名字) 医師」で検索するだけで、身元がわかってしまう場合があります。不特定多数への「身バレ」のリスクを小さくするための、私なりの自衛策でした。余談ですが、職業をぼかして書いていたため、非医療職の男性とお見合いで会うなり「看護師さんですか?」と(食い気味に)尋ねられたことが何度かありました(白衣の天使に憧れをお持ちだったのかもしれません)。「いえ、医師です」と答えると、「じゃあ、僕より頭が良いのですね……」と、何だかちょっと引かれてしまい、(担当カウンセラーが言っていたのは、このことかぁ~)と思いました。それ以来、お見合いが成立したお相手には、前述の居住地の条件と合わせて、私が医師であることも事前に伝えてもらうことにしました。いかがでしたか?お相手への希望条件設定に当たり、地方在住医師ならではの苦労した点をご紹介しました。次回は、お見合いに臨んだ際の経験をお伝えします。お楽しみに。参考1)会員プロフィール/TMS

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ワイン摂取量と尿中酒石酸・心血管リスクの関係/Eur Heart J

 適度なワイン摂取は、心血管疾患(CVD)の発症リスクを低下させると報告されているが、ワイン摂取量は自己申告に基づくものであり、正確な評価は難しい。そこで、スペイン・バルセロナ大学のInes Dominguez-Lopez氏らの研究グループは、ワイン摂取量の指標としての尿中酒石酸濃度の有用性を検討し、また尿中酒石酸濃度とCVDイベント発生リスクとの関係を検討した。その結果、尿中酒石酸濃度とCVDイベント発生リスクには、有意な関係が認められ、ワイン摂取量よりも尿中酒石酸濃度が有用な指標となる可能性が示された。本研究結果は、European Heart Journal誌オンライン版2024年12月18日号で報告された。 本研究は、心血管リスクの高い集団を対照として、地中海食とCVDイベントとの関連を検討した無作為化比較試験「PREDIMED試験」1)のデータを用いて実施した。対象は、PREDIMED試験の対象となった7,447例のうち、試験期間中にCVDイベント(心不全、心筋梗塞、脳卒中、心血管死)が発生した685例と、発生していない547例であった。自己申告によるワイン摂取量、ベースライン時および1年後の尿中酒石酸濃度を用いて、CVDリスクとの関係を検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象の平均年齢は68歳で、女性は657例(53.3%)であった。・ワイン摂取量と尿中酒石酸濃度には正の相関があった(r=0.46、95%信頼区間[CI]:0.41~0.50)。・ベースライン時の尿中酒石酸濃度が3~12μg/mL、12~35μg/mLの集団ではCVDイベント発生リスクが低かった。尿中酒石酸濃度別のCVDイベントのハザード比(HR)、95%CI、p値は以下のとおりであった。 <1μg/mL(ワイングラス1杯/月未満に相当):1(対照) 1~3μg/mL(同1~3杯/月):0.89、0.56~1.42、p=0.637 3~12μg/mL(同3~12杯/月):0.62、0.38~1.00、p=0.050 12~35μg/mL(同12~35杯/月):0.50、0.27~0.95、p=0.035 >35μg/mL(同1.25杯/日超):0.89、0.48~1.66、p=0.723・CVDイベント別の解析では、尿中酒石酸濃度の増加に伴って心筋梗塞のリスクが低下した(尿中酒石酸濃度1SD増加当たりのHR:0.70、95%CI:0.50~0.97)。・ワイン摂取量別の解析では、CVDイベント発生リスクの低下はみられなかった。 本研究結果について、著者らは「少量~中等量のワイン摂取量に相当する尿中酒石酸濃度は、CVDイベント発生リスクの低下に関連した。尿中酒石酸濃度がワイン摂取量の客観的なバイオマーカーとなり、CVDイベント発生リスクの評価に有用である可能性が示された」とまとめた。

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急性呼吸不全、高流量経鼻酸素vs.非侵襲的人工換気/JAMA

 急性呼吸不全患者への呼吸支持療法として、高流量経鼻酸素療法(HFNO)は非侵襲的人工換気(NIV)に対して非劣性なのか。ブラジル・Hcor Research InstituteのAlexandre Biasi CavalcantiらRENOVATE Investigators and the BRICNet Authorsは、急性呼吸不全患者を原因で5群に層別化して、無作為化非劣性検証試験「RENOVATE試験」を行い、4群(免疫不全の低酸素血症、呼吸性アシドーシスを来したCOPD増悪、急性心原性肺水腫[ACPE]、低酸素血症を伴うCOVID-19)について非劣性が示されたことを報告した。ただし、サンプルサイズや感度分析の観点から結果は限定的であるとしている。急性呼吸不全患者の呼吸支持療法として、HFNOとNIVはいずれも一般的に用いられている。JAMA誌オンライン版2024年12月10日号掲載の報告。ブラジルの33病院で実施、5群で7日以内の気管内挿管または死亡を評価 試験は2019年11月~2023年11月にブラジルの33病院で行われ、急性呼吸不全を呈し入院した18歳以上の患者を5群に層別化し、7日時点の気管内挿管または死亡の発生率について、HFNOのNIVに対する非劣性を検証した。5群の内訳は、(1)非免疫不全の低酸素血症群、(2)免疫不全の低酸素血症群、(3)呼吸性アシドーシスを来したCOPD増悪群、(4)ACPE群、(5)低酸素血症を伴うCOVID-19群(2023年6月26日に試験プロトコールに追加)であった。最終フォローアップは2024年4月26日。 主要アウトカムは、7日以内の気管内挿管または死亡で、患者群間の動的利用(dynamic borrowing)法を用いた階層ベイズモデルで評価した。非劣性は、オッズ比(OR)が1.55未満となる事後確率(NPP)が0.992以上と定義された。低酸素血症を伴うCOVID-19群でHFNOの非劣性を検証 1,800例が登録・無作為化され、1,766例(平均年齢64[SD 17]歳、女性707例[40%])が試験を完了した(HFNO群883例、NIV群883例)。 主要アウトカムの発生率は、HFNO群39%(344/883例)、NIV群38%(336/883例)であった。 非免疫不全の低酸素血症群では、主要アウトカムの発生率はHFNO群57.1%(16/28例)、NIV群36.4%(8/22例)であった。同患者の登録は無益性により途中で中止され、最終ORは1.07(95%信用区間[CrI]:0.81~1.39)、非劣性のNPPは0.989であった。 免疫不全の低酸素血症群では、主要アウトカムの発生率はHFNO群32.5%(81/249例)、NIV群33.1%(78/236例)であった(OR:1.02[95%CrI:0.81~1.26]、NPP:0.999)。 ACPE群では、主要アウトカムの発生率はHFNO群10.3%(14/136例)、NIV群21.3%(29/136例)であった(OR:0.97[95%CrI:0.73~1.23]、NPP:0.997)。 低酸素血症を伴うCOVID-19群では、主要アウトカムの発生率はHFNO群51.3%(223/435例)、NIV群47.0%(210/447例)であった(OR:1.13[95%CrI:0.94~1.38]、NPP:0.997)。 呼吸性アシドーシスを来したCOPD増悪群では、主要アウトカムの発生率はHFNO群28.6%(10/35例)、NIV群26.2%(11/42例)であった(OR:1.05[95%CrI:0.79~1.36]、NPP:0.992)。 しかしながら、5群にわたる動的利用法を用いない事後解析では、呼吸性アシドーシスを来したCOPD増悪群、免疫不全の低酸素血症群、ACPE群でいくつかの質的に異なる結果が示された。著者は、「これら患者群についてはさらなる試験が必要」としている。 重篤な有害事象の発現率は、HFNO群(9.4%)とNIV群(9.9%)で同程度であった。

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体脂肪率が片頭痛の重症度と関連、とくに女性で顕著

 片頭痛は、悪心、光恐怖症、音恐怖症を頻繁に伴う反復性頭痛を特徴する疾患であり、その有病理は非常に高く、社会経済的負担の増大と関連している。近年、一般人口における肥満の割合は増加しているが、体脂肪率と重度の頭痛や片頭痛の発症率との関連は、あまり研究されていなかった。中国・重慶医科大学のRongjiang Xu氏らは、この課題を明らかにするため、体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛の発生率との関連を調査した。Cureus誌2024年10月26日号の報告。 対象は、1999〜2004年の米国国民健康栄養調査(NHANES)より抽出した5,060例。性別、貧困所得比(PIR)、学歴、喫煙状況、中程度の身体活動、高血圧で調整した後、制限付き3次スプライン(RCS)曲線およびロジスティック回帰を用いて、体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛の発生率との関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者のうち、重度の頭痛または片頭痛が認められた患者は1,289例(25.5%)。・重度の頭痛または片頭痛を有する患者は、そうでない患者と比較し、女性の割合が高く、学歴、世帯収入、喫煙、アルコール摂取、糖尿病、高血圧が低い傾向であった。・とくに女性では、モデルにおいて体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛との間に有意な関連が認められたが、男性では認められなかった。・体脂肪率の四分位を用いた多変量ロジスティック回帰分析でも、同様の結果であった。 著者らは「関連変数で調整した後、体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛との間に正の相関が認められた。この関連は、とくに女性で強かった」としたうえで「肥満と片頭痛との関連は複雑であり、体脂肪率が片頭痛の悪化に及ぼす影響を明らかにするためにも、さらなる研究が求められることが浮き彫りとなった」とまとめている。

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