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抗精神病薬誘発性体重増加にGLP-1受容体作動薬セマグルチドが有効

 抗精神病薬誘発性体重増加は、患者および臨床医にとって重要な臨床課題であり、抗精神病薬使用患者の体重増加を予防または回復するための適切な介入が求められる。最近、肥満管理の新たなアプローチとしてGLP-1受容体作動薬が大きな注目を集めている。GLP-1受容体作動薬セマグルチドは、顕著な体重減少をもたらすことが明らかとなっている薬剤である。オランダ・マーストリヒト大学のBea Campforts氏らは、抗精神病薬誘発性体重増加に対してもセマグルチドが同等の体重減少効果を示すかを調査した。BMC Psychiatry誌2024年11月30日号の報告。 日常的な外来診療における抗精神病薬誘発性体重増加の治療に対するセマグルチドの有効性および安全性を評価するため、プロスペクティブ非ランダム化コホート研究を実施した。その後、メトホルミンを使用している抗精神病薬誘発性体重増加患者を対照群として、結果を比較した。 主な結果は以下のとおり。・16週間後の体重減少は、セマグルチド群(10例)で4.5kg(95%信頼区間[CI]:−6.7〜−2.3、p<0.001)、メトホルミン群(26例)で2.9kg(95%CI:−4.5〜−1.4、p<0.001)。・この結果は、平均体重減少率がセマグルチド群で4%、メトホルミン群で2.5%に相当する。・セマグルチド群におけるBMIの減少は−1.7kg/m2(95%CI:−2.4〜−1.0、p<0.001)、ウエスト周囲径の減少は−6.8cm(95%CI:−9.7〜−3.8、p<0.001)。・メトホルミン群におけるBMIの減少は−0.8kg/m2(95%CI:−1.4〜−0.3、p=0.001)、ウエスト周囲径の減少は−3.4cm(95%CI:−5.4〜−1.3、p=0.001)。・両群間で、統計学的に有意な差は認められなかった。・両群ともに副作用は、典型的に軽度、一時的であり、主な副作用は悪心であった。・さらに、精神症状の軽減、QOL向上が認められた。 著者らは「セマグルチドは、精神疾患患者の抗精神病薬誘発性体重増加に対し実行可能で効果的かつ安全な治療オプションであることが示唆された。これらの結果を裏付けるためにも、さらなる調査が求められる」と結論付けている。

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テクリスタマブ、再発/難治多発性骨髄腫に承認/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、2024年12月27日、BCMA/CD3標的二重特異性抗体テクリスタマブ(商品名:テクベイリ)について、「再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能又は効果として製造販売承認を取得したと発表した。 テクリスタマブはT細胞表面に発現するCD3受容体と骨髄腫細胞表面に発現するBCMAの両方に結合し、免疫系を活性化させるT細胞リダイレクト二重特異性抗体で、投与前の希釈が不要な皮下注製剤である。 今回の承認は、海外第I/II相MajesTEC-1試験4および国内第I/II相MMY1002試験の結果に基づくもの。両試験は、成人の再発/難治多発性骨髄腫(R/R MM)患者を対象にテクリスタマブの全奏効率(ORR)、最良部分奏効(VGPR)、完全奏効(CR)などの有効性および安全性を評価している。 MajesTEC-1試験は、免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬および抗CD38抗体を含む少なくとも3つの標準治療歴を有する成人外国人のR/R MM患者を対象に、テクリスタマブの有用性を評価する第I/II相用量漸増単群非盲検多施設共同用量拡大試験。追跡期間中央値 30.4ヵ月において、ORR63%、CR以上46%を示した。有害事象は、好中球減少症(全Grade72%)、貧血(全Grade55%)、血小板減少症(全Grade42%)、リンパ球減少症(全Grade36%)、感染症(全Grade79%)などであった。MMY1002試験は成人日本人のR/R MM患者を対象に、テクリスタマブの有用性を評価する第I/II相用量漸増単群非盲検多施設共同試験。追跡期間中央値14.3か月において、ORR76.9%、VGPR以上76.9%、CR以上65.4%を示した。安全性に関する所見はMajesTEC-1の結果と一貫していた。

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高K血症治療薬patiromerが心不全治療を最適化-DIAMOND試験サブ解析

 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)を含むレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害薬は高カリウム血症(以下、高K血症)を引き起こす可能性があるため、処方がためらわれる場合がある。今回、オーストラリア・Heart Research InstituteのAndrew J. S. Coats氏らは、高K血症治療薬patiromerがHFrEF(左室駆出率が低下した心不全)患者におけるRAAS阻害薬の目標用量の達成を容易にすることを明らかにした。さらに、RAAS阻害薬による治療以前に高K血症を認めた患者の場合でも、patiromerが血清K値を維持し、MRAの目標用量を達成するうえでより有益である可能性も示唆した。JACC:Heart Failure誌2024年12月号掲載の報告。 本研究はpatiromerの第III相 DIAMOND試験*のサブ解析で、RAAS阻害薬の投与によって高K血症を認めた、または過去(登録前1年以内)に高K血症(血清K値>5.0mmol/L)を認めた患者において、patiromerの効果を評価した。対象者はRAAS阻害薬の用量最適化のための単盲検試験に参加し、その後にpatiromerの継続あるいはプラセボへ変更するかを二重盲検で無作為に割り付けられた。*RAAS阻害薬を投与されているHFrEF患者の高K血症管理に対するpatiromerの有効性をプラセボと比較した研究1) 主な結果は以下のとおり。・観察期を終了した1,038例のうち、RAAS阻害薬によって高K血症を認めた422例中354例(83.9%)と過去に高K血症を認めた616例中524例(85.1%)がRAAS阻害薬の用量最適化を達成し、治療に無作為に割り当てられた。・二重盲検期間中、patiromerはサブグループ(RAAS阻害薬による高K血症患者および過去に高K血症を認めた患者)の両方で、プラセボと比較して血清K値を低下させた。・ベースラインからの調整平均差は、それぞれ-0.12(95%信頼区間[CI]:-0.17~-0.07)および-0.08(95%CI:-0.12~-0.05)であった(相互作用のp=0.166)。・RAAS阻害薬による高K血症患者と過去に高K血症を認めた患者を比較しても、patiromerはMRAの目標用量を維持するうえでプラセボよりも効果的であった(HR:0.45[95%CI:0.26~0.76]vs.HR:0.85[95%CI:0.54~1.32]、相互作用のp=0.031)。・有害事象はサブグループ間で同様であった。

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ポラツズマブ ベドチン+R-CHPのDLBCL1次治療、5年追跡でも有効性確認 (POLARIX)/ASH2024

 未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する、ポラツズマブ ベドチンとR-CHPレジメンの併用は5年追跡結果でも、引き続き無増悪生存期間(PFS)ベネフィットが示された。 中等度または高リスクのDLBCLにおいてPola-R-CHPレジメンとR-CHOPレジメンを比較するPOLARIX試験の5年追跡結果 (カットオフ2024年7月5日) が第66回米国血液学会(ASH2024)で報告された。・試験デザイン:国際無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験・対象:未治療の成人(18~80歳)DLBCL(IPI指標2〜5)・試験群:ポラスズマブ ベドチン+シクロホスファミド+ドキソルビシン+プレドニゾン +リツキシマブ→リツキシマブ (Pola-R-CHP、440例)・対照群:シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン+リツキシマブ→リツキシマブ(R-CHOP、439例)・評価項目:【主要評価項目】治験担当医評価のPFS【副次評価項目】治験担当医評価の無イベント生存期間(EFS)、PET-CTによる完全奏効(CR)割合、盲検下独立中央判定(BICR)評価の全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値54.9ヵ月における5年PFS割合はPola-R-CHP群64.9%、R-CHOP群59.1%と、引き続きPola-R-CHP群で有意な改善を示した(ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.62~0.97)。・5年CR持続(DOCR)割合はPola-R-CHP群71.8%、R-CHOP群66.5%であった(HR:0.75、95%CI:0.57〜1.00)。・5年OS割合は、Pola-R-CHP群82.3%、R-CHOP群79.5%であった(HR:0.85、95%CI:0.63〜1.15)。・後治療を受けた割合はPola-R-CHP群38.3%、R-CHOP群61.7%だった。 拡大集団では中国の121例が追加され、合計1,000例(Pola-R-CHP群500例、R-CHOP群500例)が評価された。・拡大集団におけるPFSのHRは0.80(95%CI:0.65〜0.98)、無病生存率のHRは0.81(95%CI:0.63〜1.05)、OSのHRは0.83(95%CI:0.62〜1.10)であった。・拡大集団におけるGrade3~5の有害事象(AE)発現率はPola-R-CHP群98.0%、R-CHOP群98.6%、Grade3/4のAE発現はそれぞれ62.6%と60.2%、Grade5の発現はそれぞれ2.8%と2.0%で、Pola-R-CHP群とR-CHOP群で同等だった。 5年追跡データの結果でも、Pola-R-CHPは未治療の中または高リスクDLBCL患者に対する標準治療であることが確認された。

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外傷患者への早期の酸素投与、制限的vs.非制限的/JAMA

 成人外傷患者において、早期の制限的酸素療法は非制限的酸素療法と比較し、30日以内の死亡や重大な呼吸器合併症を減少しなかった。デンマーク・RigshospitaletのTobias Arleth氏らTRAUMOX2 Trial Groupが、デンマーク、オランダ、スイスの15の病院前救護拠点および重症外傷センター5施設で実施した無作為化非盲検評価者盲検比較試験「TRAUMOX2試験」の結果を報告した。すべての重症外傷患者に対して早期から酸素投与を行うことが推奨されているが、過度に酸素を投与することは死亡や呼吸器合併症のリスク増加と関連することが示唆されていた。JAMA誌オンライン版2024年12月10日号掲載の報告。30日以内の死亡と重大な呼吸器合併症の複合アウトカムを比較 研究グループは、2021年12月7日~2023年9月12日に、鈍的または穿通性外傷により参加施設に直接搬送され、外傷チームの発動を要し24時間以上の入院が予想される成人外傷患者を、施設到着前または外傷センター入院時に、制限的酸素療法群(SpO2の目標94%、8時間)または非制限的酸素療法群(12~15L/分または吸入酸素濃度0.6~1.0、8時間)に1対1の割合で無作為に割り付け、2023年10月12日まで追跡した。 主要アウトカムは、30日以内の死亡および/または重大な呼吸器合併症の複合とし、盲検下で麻酔および集中治療医学の医療専門家が評価した。また、30日以内の死亡ならびに重大な呼吸器合併症のそれぞれを、重要な副次アウトカムとして個別に評価した。主要アウトカムの発生は、16.1% vs.16.7%で有意差なし 計1,979例が無作為化され、1,508例が試験を完了した(制限的酸素療法群750例、非制限的酸素療法群758例)。患者背景は、年齢中央値50歳(四分位範囲:31~65)、男性73%、外傷重症度スコア中央値14(9~22)であった。 主要アウトカムの解析対象(制限的酸素療法群733例、非制限的酸素療法群724例)において、複合アウトカムのイベントはそれぞれ118例(16.1%)と121例(16.7%)に発生した(オッズ比:1.01[95%信頼区間[CI]:0.75~1.37]、p=0.94、絶対群間差:0.56%ポイント[95%CI:-2.70~3.82])。 複合アウトカムの個別イベントの発生についても、両群間で有意差は認められなかった。 有害事象および重篤な有害事象の発現は、無気肺を除いて両群間で同程度であった。無気肺は、制限的酸素群が非制限的酸素群と比較し発現頻度が低かった(それぞれ27.6%、34.7%)。 なお、著者は研究の限界として、非盲検デザインが治療決定に影響を与える可能性があること、無作為化後に除外された患者によりバイアスが生じた可能性があること、傷害の種類は意図的に不均一としたこと、アウトカムに影響を与えるには介入時間が短い可能性があることなどを挙げている。

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生成AIにも認知機能障害!?/BMJ

 主要な大規模言語モデル(LLM)の認知機能についてモントリオール認知評価(MoCA)テストなどを用いて評価した結果、ChatGPT-4oを除いたLLMで軽度認知機能障害の兆候が認められたことを、イスラエル・Hadassah Medical CenterのRoy Dayan氏らが報告した。人間と同様に年齢が認知機能低下の重要な決定要因であり、「高齢」すなわちバージョンが古いチャットボットはMoCAテストの成績が不良である傾向がみられたという。著者は、「これらの結果は、近くAIが人間の医師に取って代わるという想定に疑問を投げ掛けるものであり、主要なチャットボットの認知機能障害は医療診断の信頼性に影響を与え、患者の信頼を損なう可能性がある」と述べている。これまで複数の研究により、LLMはさまざまな診断において人間の医師よりも優れていることが示されているが、AI自体が認知機能低下を来すかどうかは評価されていなかった。BMJ誌2024年12月20日号掲載の報告。ChatGPT、Claude、Geminiの認知機能をMoCAテストなどで評価 研究グループは、公開されているLLMまたはチャットボットのChatGPT-4および4o(開発:OpenAI)、Claude 3.5 Sonnet(Anthropic)、およびGemini 1.0および1.5(Alphabet)を対象とし、テキストベースのプロンプトを介したLLMとのオンラインの対話について検証した。 MoCAテスト(バージョン8.1)を用い、患者に与える課題と同じ課題をLLMに与え、公式ガイドラインに従い神経科医が採点し評価した。追加の評価として、Navon図形、Cookie Theft Picture Test、Poppelreuterの錯綜図、Stroop testも実施した。 主要アウトカムは、MoCAテストの総合スコア・視空間認知/実行機能およびStroop testの結果であった。MoCAスコアが最も良好なのはChatGPT-4o、30点満点で26点 MoCAテストの総合スコア(30点満点)は、ChatGPT-4oが26点で最も高く、次いでChatGPT-4およびClaudeが25点であり、Gemini 1.0は16点と最も低かった。 MoCAテストの視空間認知/実行機能の成績は、すべてのLLMで低いことが示された。すべてのLLMがTrail Makingの課題および視空間認知機能の時計描画を失敗し、ChatGPT-4oのみアスキーアートを使用するよう指示された後で立方体の書き写しに成功した。そのほかの主な課題である命名、注意、言語、抽象的思考などはすべてのLLMで良好であったが、Geminiは1.0および1.5ともに遅延再生の課題に失敗した。 Navon図形では、すべてのLLMが小さな「S」を認識したが、大きな「H」の構造を特定したのはChatGPT-4oとGeminiのみであった。 Cookie Theft Picture Testでは、すべてのLLMがクッキーの盗難の場面を正しく解釈できたが、前頭側頭型認知症でみられる共感の欠如が示唆された。 Poppelreuterの錯綜図では、すべてのLLMがオブジェクトを認識できなかったが、ChatGPT-4oとClaudeはほかのモデルよりわずかに良好であった。 Stroop testでは、すべてのLLMが第1段階を成功したが、第2段階を成功したのはChatGPT-4oのみであった。

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乳がん患者の脱毛に対するミノキシジル投与は安全かつ効果的

 発毛剤のロゲインやリアップの有効成分であるミノキシジルを化学療法の最中や治療後に服用すると、多くの乳がん患者で発毛が促され、心臓関連の重大な副作用も認められなかったとする研究結果が報告された。脱毛症の治療薬として知られるミノキシジルは、血管拡張作用により血圧を下げる効果も有することから高血圧の治療薬としても用いられている。しかし、この血管拡張作用が化学療法に伴う心臓関連の副作用を増大させ、胸痛、息切れ、体液貯留などを引き起こすのではないかと懸念されていた。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部のDevyn Zaminski氏らが、NYUランゴン・ヘルスの資金提供を受けて実施したこの研究の詳細は、「Journal of the American Academy of Dermatology」に12月3日掲載された。 Zaminski氏らは、化学療法の副作用の一つである脱毛は、女性によっては、自信を失うほどの苦痛を引き起こすこともあり、脱毛を恐れて化学療法を思いとどまる患者もいると言う。今回の研究では、2012年から2023年までのNYUランゴン・ヘルスの電子記録システムを用いて、女性の乳がん患者に対するミノキシジル投与の安全性と有効性が検討された。対象は、脱毛症治療薬として処方された経口ミノキシジルを1カ月以上服用し、薬の忍容性に関するデータがカルテに記録されていた51人。このうちの25人は化学療法に加えて手術や放射線治療の組み合わせを、26人は手術または放射線治療のみを受けていた。 その結果、医師による評価と患者の自己報告の両方から、低用量の経口ミノキシジルを服用した全ての患者で、治療開始後3~6カ月以内に発毛の改善または脱毛の安定化が確認されたことが明らかになった。追加の治療や入院を必要とするような深刻な心臓関連の副作用が生じた患者はいなかった。NYUグロスマン医学部のKristen Lo Sicco氏は、「本研究により、ミノキシジルは患者にとって安全であり、効果的であることが明らかになった。ミノキシジルの有効性は、外見的に自分らしさを失った患者が、それを取り戻し、自分をある程度コントロールできるようになる助けとなる可能性がある」と述べている。 ただし、研究グループは、軽度の体液貯留といった心臓関連の副作用の中には、患者が気が付かない無症候性のものもあるため申告されておらず、その結果、患者の健康記録に記録されていなかった可能性があると指摘している。また、医師と患者による評価の一部が自己申告または観察によるものであることも、本研究の限界の一つであるとしている。 Lo Sicco氏は、「さらなる研究でこれらの結果を確認するとともに、ミノキシジルが他の種類のがん患者や異なる化学療法を受けている患者にも安全かどうかを確かめる必要がある」と述べている。

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若年性大腸がんが世界的に増加

 世界中で大腸がんに罹患する若者が増えているようだ。世界50カ国のうち27カ国で、若年性(50歳未満での発症)大腸がんの罹患率が上昇していることが、新たな研究で明らかになった。この研究の論文の筆頭著者である米国がん協会(ACS)がんサーベイランス研究のHyuna Sung氏は、「若年性大腸がんの増加は世界的な現象だ。これまでの研究では、主に高所得の西側諸国での増加が確認されていたが、今や世界中のさまざまな経済状況の国や地域で記録されている」と述べている。この研究結果は、「The Lancet Oncology」に12月11日掲載された。 この研究でSung氏らは、大腸がん罹患率に関する世界保健機関(WHO)国際がん研究機関のデータベースを用いて、若年層(50歳未満)と高齢層(50歳以上)における大腸がんの発症率の傾向を比較した。データには、世界の50カ国と領土(以下、国で表記)における2017年までの大腸がんの診断年、性別、5年ごとの年齢グループの発症データが含まれていた。 その結果、直近10年間(2008〜2017年、一部の国を除く)の若年性大腸がん罹患率の年平均変化率(average annual percentage change;AAPC)は50カ国中27カ国で上昇していることが示された。特にニュージーランド(AAPC 3.97%)、チリ(同3.96%)、プエルトリコ(同3.81%)、英イングランド(同3.59%)では、顕著な上昇が認められた。一方、高齢層でのAAPCに関しては、これら27カ国中14カ国で変化が認められないか(アルゼンチン、フランス、アイルランド、ノルウェー、プエルトリコ)、低下していた(オーストラリア、カナダ、ドイツ、イスラエル、ニュージーランド、スロベニア、イングランド、スコットランド、米国)。また、若年層と高齢層の双方でAAPCに上昇傾向が認められた13カ国のうち、チリ、日本、スウェーデン、オランダ、クロアチア、フィンランドでは若年層のAAPCの方が高齢層よりも高かったのに対し、タイ、マルティニーク(フランス海外県)、デンマーク、コスタリカでは若年層のAAPCの方が高齢層よりも低かった。 直近5年間(2013〜2017年、一部の国を除く)における10万人年当たりの若年性大腸がんの年齢調整罹患率(ASR)は、オーストラリア(ASR 16.5)、米国(同14.8)、プエルトリコ(同15.2)、ニュージーランド(同14.8)、韓国(同14.3)で特に高く、ウガンダ(同4.4)とインド(同3.5)で低かった。 Sung氏は、「この懸念すべき傾向が世界規模で広がっていることは、食習慣、運動不足、過体重に関連するがんを予防し、制御するための革新的なツールを開発する必要性を浮き彫りにしている」と述べている。その上で同氏は、「このような傾向の背後にある要因を特定し、世界中の若年層や地域のリソースに合わせた効果的な予防戦略を開発するには、継続的な取り組みが不可欠だ」と話す。同氏はさらに、「若年層やプライマリケア提供者の間で、直腸出血や腹痛、排便習慣の変化、原因不明の体重減少などの若年性大腸がんに特徴的な症状に対する認識を高めることは、診断の遅れを減らし、死亡率を低下させるのに役立つ可能性がある」と付け加えている。 一方、Cancer Research UKのMichelle Mitchell氏は、「年齢を問わず、がんの診断は患者とその家族に多大な影響を及ぼす。50歳以上の人に比べて若年成人でのがんの罹患率は依然として非常に低いものの、若年性大腸がん増加の原因を究明することは重要だ」と述べている。

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重症大動脈弁狭窄症に冠動脈疾患を合併した症例の治療方針を決めるのに、たった1年の予後調査でよいのか(解説:山地杏平氏)

 重症の大動脈弁狭窄症に冠動脈疾患を合併する場合、患者が80歳以上や高リスク症例であれば、経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)と経皮的冠動脈形成術(PCI)による経皮的治療が選択されることが多く、一方で、若年者やリスクが低い症例では、長期成績を踏まえ、大動脈弁置換術(SAVR)と冠動脈バイパス術(CABG)による外科手術が推奨されます。 TCW研究では、70歳以上の無症候性重症大動脈弁狭窄症かつ、50%以上の狭窄を有する2枝以上の冠動脈病変、もしくは20mm以上の病変、あるいは分岐部を含む左前下行枝病変を有する症例について、経皮的治療と外科手術を無作為比較しています。 実際に登録された症例の平均年齢は76歳で、STS-PROMスコアやEuroSCORE IIは2~3%と低く、低リスク症例が中心でした。当初の計画では328例の登録を予定していましたが、外科手術群で心臓死や重大な出血イベントが多くみられたため、172例の登録時点で試験が中止されました。カプランマイヤー曲線では両群間で明確な差が示されましたが、登録症例数が少ないため、絶対的なイベント数は多くなく、経皮的治療群では91例中4例(4%)にイベントが発生し、外科手術群では77例中17例(23%)に発生しました。 本試験では低左心機能(左室駆出率30%未満)や腎不全(eGFR 29mL/分/1.73m2未満)の症例が除外されています。それにもかかわらず、とくに、外科手術群での7例の死亡と9例の重大な出血イベントについては、発生率は高く感じられます。一方で、経皮的治療群のイベント数(死亡1例、脳梗塞1例、心筋梗塞2例、重大な出血イベント2例)は、逆に少なすぎるようにも思われます。重大な出血イベントについては、外科手術に関連するものとして理解できますが、外科手術群での死亡の多くは30日以降にみられており、偶然多かった可能性は否定できません。試験が予定登録数の約半分で中止されたため、統計的なパワー不足であることは注意が必要です。 CABGの良さは、左内胸動脈(LITA)を使って左前下行枝(LAD)に吻合することで、長期的なイベントリスクを低減することです。一方で、1年の予後はPCIとCABGであまり差はないように思います。70歳できちんとLITAをLADにつないで、将来のイベントを予防するメリットについては、今回の試験では評価されておらず、TCW研究結果をそのまま実臨床に反映させるには慎重な対応が必要です。

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1つ賢くなった2025年【Dr. 中島の 新・徒然草】(562)

五百六十二の段 1つ賢くなった2025年年末年始の九連休も終わっていよいよ仕事始め。新年最初の外来にお見えになったのは100歳の患者さん。この方、本来は昨年の12月に再診予定だったのですが、諸般の事情で今月になってしまいました。ともあれ、めでたいことには違いないので93歳の奥様と一緒に写真を撮りました。なんだかこっちまで長生きできそうです。さて、年末年始の長期休暇に、ネットで読んだ小説にびっくりさせられました。読んだのは小説というよりも評論といったものですが。その作者は、アガサ・クリスティの小説『The Mirror Crack'd from Side to Side(邦題:鏡は横にひび割れて)』の中に「mentally afflicted」という表現が出てくるけれども、これは作者の死後に書き換えられたのではないか、と疑っているのです。彼女は、原作ではretardedのような差別的表現があったのかもしれない、と推測していました。そういう経緯からか、彼女は英語版の古本を入手したいのだそうです。とはいえ、retardedというのはそんなに差別的響きがあるのでしょうか?われわれ医師は、mental retardationという言葉を普通に使ってきたと思います。なので、ChatGPTに尋ねてみました。「mental retardationというのは差別的響きがあるのか?」と。すると、こんな回答が返ってきました。*****(ChatGPTの回答 開始)*****はい、医学用語としての「mental retardation」はかつて広く使用されていましたが、現在では差別的または侮蔑的と感じられることが多くなっています。とくに日常会話や一般的な社会的文脈では、この言葉にはネガティブな響きがあり、不適切とされています。医学および診断における変化現在では、診断名として「intellectual developmental disorder(知的発達障害)」または「intellectual disability(知的障害)」が国際的に一般的になっています。例えば:アメリカ精神医学会(APA): DSM-5-TRでは「intellectual developmental disorder(intellectual disability)」という用語を採用。世界保健機関(WHO): ICD-11では「disorders of intellectual development」として分類。実践的なアドバイス医学的な場面では、最新の用語である「intellectual developmental disorder」または「intellectual disability」を使うことが推奨されます。患者やその家族に接する際には、より柔らかい表現や人間中心の言葉(例:「person with an intellectual developmental disorder」や「individual with an intellectual disability」)を用いることが望ましいです。*****(ChatGPTの回答 終了)*****調べてみると、確かに「intellectual developmental disorder(intellectual disability)」や「disorders of intellectual development」という用語が用いられています。ひょっとして自分だけがこのことを知らなかったのでしょうか?わざわざ周囲に尋ねるのも恥ずかしいので、カンファレンスで誰かがmental retardationという言葉を口にしたときに、すかさず「その言葉はもう古くて、今はintellectual disabilityと言うらしいぞ」とさりげなく突っ込むことにいたしましょう。読者の皆さんはご存じでしたか?私は1つ賢くなりました。最後に1句年明けて 機会をうかがう 新知識

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自壊創への対応【非専門医のための緩和ケアTips】第91回

自壊創への対応がん患者の緩和ケアでは、皮膚症状の対応が求められることもあります。中でもがん患者の「自壊創」は、経験がないと対応に苦慮することが多いでしょう。今回は、この自壊創の対応について考えます。今回の質問今度、訪問診療で新たに担当する乳がん患者がいます。紹介状では自壊創があり、訪問看護など定期的な創処置が必要とのことです。経験がないのですが、どのような対応や経過が想定されるのでしょうか?緩和ケアを実践していると、悪性腫瘍による自壊創を経験します。乳がんがその代表例ですが、ほかにも喉頭がんや子宮頸がんの患者さんもいました。腫瘍が増大して表層に露出した場合、そこが自壊創として難治性の潰瘍となります。ほかにも、頸部や鼠径部のリンパ節転移が増大して自壊創になったケースもありました。どのがん種でも、自壊創が引き起こす問題はある程度共通しています。出血、滲出液、そして悪臭です。そしてこれらは直接見えるため、患者本人や家族にとってつらい問題となります。私の経験では、滲出液や悪臭のために外出することすらできなくなってしまった患者さんもいました。このような創に対しては1)洗浄2)滲出液のドレッシング3)適切な薬剤の使用が基本的なアプローチとなります。自壊創は常にじわじわと滲出液が染み出しており、かつ創部には壊死組織があるため、定期的に洗浄することが有効です。そのうえで滲出液の多い部位に、吸水性のある被覆材でドレッシングします。創部が滲出液で湿ったままになると、そこが嫌気性菌などの繁殖源となり、悪臭が発生します。定期的な洗浄と適切なドレッシングで、まずはこれを阻止します。薬剤は疾患の状態によって使い分けますが、緩和ケアの面からは2つの軟膏について知っておくと良いでしょう。1)メトロニダゾール軟膏自壊創の悪臭は滲出液と壊死組織により繁殖した嫌気性菌が原因です。なので、嫌気性菌をカバーする抗菌薬であるメトロニダゾールを含む軟膏を創部に塗るというのは理にかなっていますよね。以前は薬剤部での製剤が必要でしたが、今はロゼックスゲルという製品が登場しており、そのまま使えて便利です。2)モーズ軟膏これは聞いたことがない方が多いかもしれません。塩化亜鉛による腐食作用により、自壊創のタンパク質を硬化することで効果を発揮します。化学的に熱傷をつくるような作用ですので、使用することで腫瘍塊も徐々に小さくなるケースも見られます。また圧迫で止血されない、じわじわとした出血を止める効果もあります。ただ、モーズ軟膏については、私は皮膚科の先生に対応をお願いしています。モーズ軟膏は刺激が非常に強く、正常皮膚に付くとその部位が化学的熱傷を起こしてしまいます。また、塩化亜鉛を溶かした軟膏の硬さは水分と亜鉛華デンプンの配合バランスで調節するのですが、これがなかなか難しく経験を要します。これらの理由から、使い慣れてない中で処置するのは危険もあるため、ぜひ専門の先生と相談しながら活用してください。今回のTips今回のTipsたまに遭遇する自壊創の対応、皮膚科の知識を身に付けて対応しましょう。

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1月9日 風邪の日【今日は何の日?】

【1月9日 風邪の日】〔由来〕寛政7(1795)年の旧暦の今日、第4代横綱で63連勝の記録を持つ谷風 梶之助が風邪で亡くなったことに由来して制定。インフルエンザや風邪が流行する季節でもあることから、医療機関や教育機関で風邪などへの予防啓発で周知されている。関連コンテンツこじれた風邪には…【漢方カンファレンス】風邪で冷えてきつい…【漢方カンファレンス】風邪の予防・症状改善に亜鉛は有用か?~コクランレビュー“風邪”への抗菌薬処方、医師の年齢で明確な差/東大小児の風邪への食塩水点鼻、有症状期間を2日短縮か/ERS2024

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第129回 「脳外科医竹田くん」在宅起訴

2025年になりました。今年も医療に関するホットな話題をお届けできればと思っています。内部告発漫画?『脳外科医竹田くん』さて、『脳外科医竹田くん』という漫画をご存じでしょうか。もう知らない人はいないですよね。『脳外科医 竹田くん あり得ない脳神経外科医 竹田くんの物語』未熟な外科技術により複数の医療事故を起こす脳神経外科医である竹田くんの診療風景を描いたWEB漫画であり、漫画の内容と、実際の医療事故の話(被害者ブログや報道内容)が酷似しており、あまりにリアルな内容から内部告発の漫画だろうとして話題を集めました。先日、この漫画のモデルになったと思われる方が、在宅起訴になったことが報道されました。関わった手術のうち、少なくとも8件で患者が死亡または後遺障害が残る医療事故が発生したと報道されており、業務上過失傷害罪の時効5年までで残り1ヵ月を切ったタイミングで起訴となっています。手術で助手を務め、2024年7月に竹田くんと共に書類送検された上司の科長は不起訴となっています。「在宅起訴」は、刑事事件を起こした被疑者の身柄を拘束せずに検察官が起訴することです。刑事事件といえば、基本的に逮捕されて身柄を拘束されることが一般的ですが、在宅での起訴もありえます。身体拘束を受けたまま起訴されると、保釈が認められなければ仕事などができなくなりますが、在宅起訴の場合は生活を続けながら刑事事件と向き合うことが可能です。また、この訴訟に関しては、被害者やその代理人が公判に出席して被告人に直接質問が可能な「被害者参加制度」が適用される見通しです。被害者家族のブログ私の知る限り、神経を誤って切断し後遺障害を負わせた女性の家族と、維持透析目的で搬送された病院で透析をされなかった男性の家族の2人が、被害者としてのブログを立ち上げています(リンクは貼りません)。今回の件を受けて、それぞれ、「執刀した医師を厳罰に処していただき、医療過誤を起こした医師が繰り返し手術したり不適切な診療を続けることのないよう、医道審議会には厳しい行政処分を下していただけますよう強く望みます」「明らかな医療事故を起こした父のケースに対し、裁判ではどのように判断してくださるのか、興味を持っています」と厳しいコメントを寄せています。家族たちの声には、医療者として考えさせられるものがあります。医療行為が刑事事件として問われるのは、明らかな注意義務違反や重大な過失がある場合に限られるのが一般的です。しかし、今回は地検側が手術映像を専門家に見てもらい検証した結果、刑事責任を問えると判断しました。このような形での起訴は珍しいケースですね。

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うつ病や不安症の予防に有効な飲み物を年齢別に分析

 メンタルヘルスには食習慣が関連しており、独立したリスク因子であることが示唆されている。しかし、飲料摂取とメンタルヘルスとの関連を年齢別に評価したエビデンスは限られている。中国・温州医科大学のJiali Xie氏らは、6種類の飲料とうつ病および不安症との関連を推定するため、UKバイオバンクのデータを用いて検討を行った。Journal of Affective Disorders誌2025年2月15日号の報告。 食事に関するアンケートを1回以上回答したベースライン時にうつ病および不安症でなかった参加者18万8,355人をUKバイオバンクデータより抽出した。分析には、Cox比例ハザードモデルおよび置換分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・平均フォローアップ期間11.15年の間にうつ病を発症した参加者は5,884例(3.12%)、不安症を発症した参加者は6,445例(3.42%)であった。・60歳未満では、1日1杯以上の砂糖入り飲料(ハザード比[HR]:1.14、95%信頼区間[CI]:1.02〜1.28)および人工甘味料入り飲料(HR:1.23、95%CI:1.09〜1.38)の摂取は、うつ病リスク上昇と関連していた。・一方、純粋な果物/野菜ジュース(HR:0.81、95%CI:0.72〜0.92)およびコーヒー(HR:0.88、95%CI:0.81〜0.96)の摂取は、うつ病リスク低下と関連していた。・60歳以上では、純粋な果物/野菜ジュースおよびコーヒーの摂取量が多いほど、うつ病および不安症リスクの低下が認められた。・60歳未満では、砂糖入り飲料を純粋な果物/野菜ジュースまたはコーヒーに変更すると、うつ病および不安症リスクが軽減し、60歳以上では、ミルクを純粋な果物/野菜ジュースまたはコーヒーに変更すると、うつ病および不安症リスクが軽減した。 著者らは「飲料とうつ病および不安症との関係は、年齢により異なることが示唆された、メンタルヘルスのリスク軽減において、慎重な飲料選択が重要であろう」と結論付けている。

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高血圧患者の家庭脈拍数、66bpm以上で死亡リスク2倍超/帝京大

 診察室脈拍数は、心血管疾患の発症リスクや全死亡リスクと関連することが知られている。しかし、家庭脈拍数との関連は明らかになっていない。そこで、大久保 孝義氏(帝京大学医学部公衆衛生学講座 主任教授)、木村 隆大氏(帝京大学医学部附属溝口病院)らの研究グループは、高血圧を有する患者の家庭脈拍数と死亡、心血管イベントとの関連を検討した。その結果、家庭脈拍数が高いと全死亡リスクも高いことが示された。本研究結果は、Journal of the American Heart Association誌2024年12月17日号で報告された。 本研究は、日本人の家庭血圧の適正な降圧目標値を検討した無作為化比較試験「HOMED-BP試験」1)のサブ解析として実施された。対象患者は、心房細動や脳心血管疾患の既往歴のない40~79歳の高血圧(収縮期血圧135 mmHg以上または拡張期血圧85 mmHg以上)患者3,022例とした。家庭脈拍数は、降圧治療開始前5日間の測定結果の平均値をベースライン値とし、ベースライン値で5群(41.6~61.1bpm、61.2~66.1bpm、66.2~70.5bpm、70.6~76.2bpm、76.3~108.6bpm)に分類した。主要評価項目は全死亡、副次評価項目は主要心血管イベント(MACE)であった。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は59.4歳、女性の割合は50.2%(1,518/3,022例)、ベースライン時の家庭脈拍数の平均値は69.0bpmであった。・追跡期間中央値は7.3年であった。・ベースライン時の家庭脈拍数が高いと、全死亡リスクが高かった(bpm 1SD増加当たりのハザード比[HR]:1.52、95%信頼区間[CI]:1.24~1.92)。・治療中についても同様で、治療中の家庭脈拍数が高いと全死亡リスクが高かった(bpm 1SD増加当たりのHR:1.70、95%CI:1.39~2.08)。・全死亡リスクをベースライン時の家庭脈拍数別にみると、66.2~70.5bpm以上の3群でリスクが上昇した。各群のHRは以下のとおり。 41.4~61.1bpm:1.00(対照) 61.2~66.1bpm:1.00 66.2~70.5bpm:2.49 70.6~76.2bpm:2.21 76.3~108.6bpm:2.89・家庭脈拍数と診察室脈拍数の両者を含めた多変量解析では、家庭脈拍数が全死亡の有意な関連因子であったが、診察室脈拍数には有意な関連がみられなかった。・MACEと家庭脈拍数には有意な関連は認められなかった。 著者らは「家庭脈拍数が死亡リスクを予測する有用な指標であり、臨床において家庭脈拍に注意することの重要性を示した。高脈拍数と関連する改善可能な生活習慣(喫煙、座りがちな生活など)の特定や是正、指導の一助となることが期待される」とまとめた。

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ザヌブルチニブ、再発/難治慢性リンパ性白血病などB細胞性悪性腫瘍に承認/BeiGene Japan

 BeiGene Japanは、2024年12月27日、新たなBTK阻害薬ザヌブルチニブ(商品名:ブルキンザ)が、慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫含む)、原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫を適応症として厚生労働省より承認されたことを発表した。 今回の承認は、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)患者を対象にザヌブルチニブの有用性を評価したALPINE試験とSEQUOIA試験、原発性マクログロブリン血症/リンパ形質細胞リンパ腫(WM/LPL)患者を対象としたASPEN試験の3つの第III相臨床試験に基づいている。さらに、日本人患者を対象とした第I/II相臨床試験(BGB-3111-111)の結果は、ザヌブルチニブのプロファイルを裏付けるものであった。 再発・難治CLL/SLL患者652例を対象に行われた海外第III相臨床試験ALPINE試験では、ザヌブルチニブ群のイブルチニブ群に対する非劣性および優越性が示された。 未治療のCLL/SLL 患者589例を対象に行われたザ海外第III相臨床試験SEQUOIA 試験では、ザヌブルチニブ群のベンダムスチン/リツキシマブ(BR)群に対する優越性が示された。 WM/LPL患者229例を対象に行われた海外第III相臨床試験ASPEN試験では、ザヌブルチニブ群のイブルチニブ群に対する優越性は示されなかった。 ザヌブルチニブは、バイオアベイラビリティ、半減期、選択性を最適化することにより、BTKタンパクを完全かつ持続的に阻害するよう設計された経口投与のBTK阻害薬。同剤は他のBTK阻害薬とは異なる薬物動態を示し、多くの疾患関連組織において悪性B細胞の増殖を阻害することが報告されている。

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外科医は器用?バズワイヤーゲームで評価/BMJ

 バズワイヤーゲーム(イライラ棒ゲーム)を用いた評価の結果、外科医は他の病院スタッフと比較して、手先が器用であったが不快な言葉を発する割合も高かった。一方、看護師および非臨床スタッフは、いら立ちの声を発する割合が高かった。英国・リーズ大学のTobin Joseph氏らが、前向き観察研究「Tremor研究」の結果を報告した。著者は、「病院スタッフの職種によって多様なスキルセットがあることが浮き彫りとなった。今後のトレーニングでは、器用さとストレス管理の両方を強化するためファミリーゲームを取り入れることが有用かもしれない。また、今後の募金活動では、外科医のswear jar(不快な言葉への罰金箱)の実施を検討すべきある」とまとめている。BMJ誌オンライン版2024年12月20日号掲載の報告。バズワイヤーゲームを使用、器用さと併せてイライラ具合も評価 研究グループは、2024年6月25日~7月16日の3週間、英国のリーズ教育病院NHSトラストにて参加者を募集し、バズワイヤーゲームを用いて手先の器用さを評価する前向き観察研究を行った。 参加者は、内科医、外科医、看護師、非臨床スタッフ(病棟クラーク、秘書、内部職員など)であった。 参加者は、金属ループが着いた棒を、曲がりくねった金属ワイヤーに触れないよう経路の端から端まで動かした。ループがワイヤーに触れた場合は、ブザーがなり、スタート地点に戻らなければならなかった。ゴールは、ブザーを鳴らさずにコース全体を完了することであった。 主要アウトカムは、5分以内にバズワイヤーゲームを完了した参加者の割合、副次アウトカムは、英国のテレビで午後9時以前の放送には不適切と定義されている不快な言葉やため息、うめき声、つぶやきなどいら立ちの声を発した参加者の割合であった。 計254人のスタッフが参加し、内訳は内科医60人、外科医64人、看護師69人、非臨床スタッフ61人であった。外科医は、最も成功割合が高いが不快な言葉を発する割合も高い 5分以内にバズワイヤーゲームを完了した参加者の割合は、外科医84%、内科医57%、看護師54%、非臨床スタッフ51%であり、外科医が有意に高かった(p<0.001)。イベント発生までの時間分析の結果、外科医は他の集団と比較して、年齢や性別に関係なく、バズワイヤーゲーム完了までの時間が最も短いことが示された。 ゲーム中に不快な言葉を発した参加者の割合は、外科医が50%で最も高く、次いで看護師30%、内科医25%、非臨床スタッフ23%の順であった(p=0.004)。また、いら立ちの声を発した参加者の割合は非臨床スタッフが75%と最も高く、次いで看護師68%、外科医58%、内科医52%の順であった(p=0.03)。

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コロナ罹患後症状、研究指標をアップデート/JAMA

 米国・スタンフォード大学のLinda N. Geng氏らは、米国国立衛生研究所(NIH)によるRECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)Initiativeの一環であるRECOVER-Adult studyにおいて、追加の参加者のデータを含めた最新解析を行い、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の持続的な症状であるLong COVID(LC)の研究指標を報告した。著者は、「LCの理解が進むに従って指標の継続的な改善が必要で、LC研究指標2023年版を更新した2024年版は、研究者がLCとその症状サブタイプを分類するのに役立つ」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年12月18日号掲載の報告。追加参加者を含めRECOVER成人コホートのデータを解析 研究グループは、米国およびプエルトリコの83施設において、SARS-CoV-2感染歴の有無にかかわらず18歳以上の成人を登録し、90日ごとに症状について調査した。 感染歴がある場合は、初回SARS-CoV-2感染から4.5ヵ月後以降に少なくとも1回来院しており、再感染から30日以内ではない者とした。 研究の対象とした来院期間は、2021年10月~2024年3月であった。 主要アウトカムはLCの有無と参加者が報告した52の症状で、LASSO回帰を用いた重み付けロジスティック回帰分析により、LCを特定する症状と各症状のスコアを算出した。2024年版では11症状で評価 解析対象は1万3,647例(SARS-CoV-2感染が確認されている人1万1,743例、感染歴が確認されていない人1,904例)で、年齢中央値は45歳(四分位範囲:34~69)、73%が女性であった。 LC研究指標2024年版では、2023年版で特定された12症状から3つの症状(性的欲求・性機能の変化、消化管症状、異常行動)が除外され、2つの症状(息切れ、いびきまたは睡眠時無呼吸)が追加された。その結果、LC研究指標は労作後倦怠感、疲労、ブレインフォグ、浮動性めまい、動悸、嗅覚・味覚の喪失または変化、口渇、慢性咳嗽、胸痛、息切れ、いびきまたは睡眠時無呼吸の11症状となった。 また、重度のLC症状を有する患者を特定するためのスコアの閾値は11点以上であった。 LC研究指標2024年版では、既知のSARS-CoV-2感染歴がある参加者の20%、既知の感染歴がない参加者の4%が「LCの可能性が高い」と分類され(2023年版ではそれぞれ21%、5%)、既知の感染歴がある参加者の39%が、2024年版で新たに追加されたカテゴリーである「LCの可能性あり」(スコアが1以上11未満)と分類された。 クラスター分析の結果、生活の質(QOL)を追跡するLC症状サブタイプとして、嗅覚または味覚の変化(サブタイプ1)、慢性咳嗽(サブタイプ2)、ブレインフォグ(サブタイプ3)、動悸(サブタイプ4)、労作後倦怠感・めまい・消化器症状(サブタイプ5)の5つが特定された。その中で、多系統症状で負荷の大きいサブタイプ5は、他のサブタイプよりも、QOL、身体の健康、日常機能が悪いと報告する頻度が高かった。

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肝臓手術前の瀉血療法は輸血リスクを低減する

 カナダ、オタワ在住の2児の母であるRowan Laddさん(46歳)は、2022年、予定されている肝臓に転移したがんを摘出する手術を開始する前に、血液を採取して保存する可能性があると医師から説明を受けた際、不思議には思ったが害はないだろうと考えた。Laddさんは、「肝臓には血管がたくさんあるので大出血のリスクがあることは手術前の説明で聞いている。研究者達がそのリスクを低減させるために努力しているのは素晴らしいことだと思った」と振り返る。 実際、Laddさんが参加した臨床試験の結果によると、このような採血により肝臓手術中に必要となる輸血のリスクが半減することが明らかになった。この研究結果は、「The Lancet Gastroenterology & Hepatology」に12月9日掲載された。論文の筆頭著者で、オタワ大学(カナダ)肝膵胆道研究部長のGuillaume Martel氏は、「大規模な肝臓手術の直前に血液を患者から採取することは、出血量と輸血を減らすための方法としてこれまでわれわれが見出した中で最良の方法だ」と述べている。 Martel氏らは、肝臓手術を受けた患者の4分の1から3分の1は、過度の出血のため輸血が必要になると指摘する。肝臓手術の最も一般的な理由はがんであるが、残念ながら輸血ががんの再発リスクを高める可能性があるという。 Martel氏らは、2018年から2023年の間にカナダの4つの病院で、肝切除を受ける予定がある患者486人を登録し、循環血液量減少を目的とした瀉血療法を受ける群(245人、瀉血療法群)と通常のケアを受ける群(241人、通常ケア群)にランダムに割り付けた。瀉血療法群は、肝切除前に体重1kg当たり7~10mLの全血を採取された。 最終的に、瀉血療法群223人(平均年齢61.4歳、男性61%)と通常ケア群223人(平均年齢62.1歳、男性51%)を対象に解析が行われた。ランダム化後30日以内の赤血球輸血率は、瀉血療法群で8%(17/223人)、通常ケア群で16%(36/223人)であった。群間差は−8.8(95%信頼区間−14.8〜−2.8)、調整リスク比(aRR)は0.47(同0.27〜0.82)であり、瀉血療法群では輸血リスクが有意に低下していた。また、30日以内に重篤な合併症が生じた割合(瀉血療法群17%、通常ケア群16%)と、あらゆる合併症の発生率(それぞれ、61%、52%)に両群間で有意な差は認められなかった。 Martel氏は、循環血液量減少を目的とした瀉血療法について、「肝臓の血圧を下げることで効果を発揮する。この方法は安全で、簡単で、費用もかからないことから、出血リスクの高い肝臓手術では必ず検討すべきだ」と述べている。 Laddさんの手術は、輸血を必要とすることなく終わり、2年が経過した今もがんは再発していない。Laddさんはこの臨床試験について、「私が選ばれて本当に良かったと思うし、それが他の人の助けになることにも喜びを感じている。この手術は、私の命を救ってくれたと感じている。私は仕事を辞めて、リラックスし、自分のことを大事にするようになった。がんになったのは不運だったが、それが私の目を覚まさせてくれた。以前はただ生きているだけだったが、今は自分の人生を心から楽しんでいる」と話している。 研究グループは、瀉血療法は大幅なコスト削減につながることも指摘している。カナダでは、輸血には350ドル(1ドル154円換算で5万3,900円)以上かかるが、瀉血療法に使われる血液バッグとチューブのコストは20ドル(同3,080円)程度に過ぎない。研究グループは、この手順は現在、肝臓移植の手術で試験されているが、大量の出血を伴いがちな他の手術でも試験的に検討されるべきだとの考えを示している。論文の共著者であるモントリオール大学(カナダ)輸血医学部長のFrançois Martin Carrier氏は、「一度実施してみれば、医療従事者はこの処置の容易さが分かるし、それが手術に与える影響は劇的だ。これは現在、試験に参加した4つの病院で標準治療となっている。この研究結果が公表されれば、世界中の他の病院でもこの処置を採用し始めるはずだ」と述べている。

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