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認知症患者への抗精神病薬、各薬剤の最適な投与量は?

 アルツハイマー病を含む認知症の神経精神症状(NPS)に対する抗精神病薬は、広く使用されている一方で、有効性と安全性のバランスが依然として大きな臨床課題となっている。東京・iこころクリニック日本橋の寺尾 樹氏らは、認知症のNPSに対する各種抗精神病薬の用量依存的な有効性と忍容性を比較するため、用量反応モデルに基づくネットワークメタ解析を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌2026年2月号の報告。 CENTRAL、PubMed、CINAHL、ClinicalTrials.govより網羅的に検索し、認知症のNPSに対する抗精神病薬を評価したランダム化比較試験を特定した。アルツハイマー病を含む認知症患者を対象に、アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、リスペリドン、クエチアピン、オランザピンのさまざまな用量における有効性(NPS重症度の変化)および忍容性(有害事象による治療中止)を評価するため、用量反応モデルに基づくネットワークメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、20研究、5,844例を含めた。・研究に含まれた抗精神病薬のほとんどが、有効性と忍容性の両方で、おおむね正の用量反応関係を示した。しかし、オランザピンは有効性に関してベル型曲線を示した。・アリピプラゾール10mg、ブレクスピプラゾール1~2.5mg、リスペリドン1~2mg、オランザピン2.5~5mgのみが、プラセボよりも有意に有効であった。・アリピプラゾール10mgまで、ブレクスピプラゾール3mgまで、リスペリドン1mgまで、オランザピン2.5mgまでおよび15mg、クエチアピン200mgまでであれば、プラセボと比較し忍容性が有意に低下することはなかった。・さらに、いくつかの抗精神病薬では、特定の用量間で有効性と忍容性に有意差が認められた。 著者らは「アリピプラゾール10mg、ブレクスピプラゾール1~2.5mg、リスペリドン1mg、オランザピン2.5mgは、いずれも有効性と忍容性が良好であり、好ましい治療選択肢となる可能性が示唆された。本モデルにはいくつかの不確実性要因が含まれているため、本知見は慎重に解釈する必要があり、臨床的意思決定を支援するための暫定的な枠組みとして捉えるべきである」としている。

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市中敗血症への抗菌薬、4日目からde-escalationは可能?

 市中発症敗血症で入院し、多剤耐性菌感染が確認されていない患者において、入院4日目から広域抗菌薬のde-escalationを実施しても、広域抗菌薬継続と比較して90日死亡率に差は認められず、抗菌薬使用日数および入院期間の短縮と関連していたことが報告された。米国・ミシガン大学のAshwin B. Gupta氏らが、本研究結果をJAMA Internal Medicine誌オンライン版2025年12月22日号で報告した。 研究グループは、Michigan Hospital Medicine Safety Consortium(HMS)のデータを用いて、抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)薬および抗緑膿菌(PSA)薬のde-escalationの影響をtarget trial emulationの手法で検討した。対象は、2020年6月~2024年9月に入院し、広域抗菌薬によるエンピリック治療を開始した18歳以上の市中発症敗血症患者とした。入院1日目または2日目に多剤耐性菌感染が確認された患者は除外した。抗MRSA薬、抗PSA薬について、入院4日目にde-escalationを実施した群と、広域抗菌薬の投与を継続した群の2群に分類して評価した。主要評価項目は90日死亡率とし、副次評価項目は抗菌薬使用日数(14日目まで)、入院期間などとした。逆確率重み付け法を用いて、背景因子を調整し、2群の比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・抗MRSA薬の解析対象は6,926例であり、そのうち2,993例(43.2%)でde-escalationが実施された。・抗PSA薬の解析対象は1万1,149例であり、そのうち2,493例(22.4%)でde-escalationが実施された。・重み付け後の解析において、抗MRSA薬のde-escalationは、継続と比較して90日死亡率に有意な差は認められなかった(オッズ比[OR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.88~1.14)。・抗PSA薬のde-escalationについても、継続と比較して90日死亡率に有意な差は認められなかった(OR:0.98、95%CI:0.86~1.13)。・抗MRSA薬および抗PSA薬のいずれも、de-escalationは、抗菌薬使用日数の減少、入院期間の短縮と関連した。詳細は以下のとおり。 <抗菌薬使用日数(中央値)> 抗MRSA薬:8日vs.10日(リスク比[RR]:0.91、95%CI:0.89~0.93) 抗PSA薬:8日vs.9日(RR:0.91、95%CI:0.88~0.93) <入院期間(中央値)> 抗MRSA薬:7日vs.8日(RR:0.88、95%CI:0.85~0.92) 抗PSA薬:5日vs.7日(RR:0.88、95%CI:0.80~0.96)・入院3日目時点で臨床的に安定していた患者のサブグループ解析では、抗MRSA薬のde-escalationは90日死亡率の低下と関連した(OR:0.72、95%CI:0.54~0.96)。抗PSA薬のde-escalationも同様の傾向がみられた(同:0.76、0.58~1.01)。・抗PSA薬のde-escalationは、探索的アウトカムである90日再入院の減少と関連していた(RR:0.87、95%CI:0.76~0.99)。抗MRSA薬のde-escalationでは、この傾向はみられなかった(同:1.04、0.92~1.17)。・de-escalationの実施割合は病院間で2倍以上のばらつきがあった(抗MRSA薬:27.3~61.7%、抗PSA薬:6.9~37.7%)。 著者らは、本研究結果について「多剤耐性菌が検出されなかった市中発症敗血症患者において、入院4日目の広域抗菌薬のde-escalationは安全であり、抗菌薬使用日数の減少および入院期間の短縮につながる可能性がある」と結論付けている。

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転移乳がんへのT-DXd+放射線療法、重篤な毒性増加は示されず

 転移を有するHER2陽性またはHER2低発現の乳がん患者において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と放射線の併用療法は治療上の利点が期待される一方で、安全性と実現可能性に関するエビデンスは限られている。今回、T-DXd治療と放射線療法を同時に併用しても重篤な毒性や治療継続を妨げる毒性の増加は認められなかったことを、イタリア・Azienda Ospedaliero-Universitaria CareggiのLuca Visani氏らが明らかにした。The Breast誌2026年1月2日号掲載の報告。 転移乳がんの治療では全身治療が病勢コントロールの中心であるが、放射線療法も症状緩和や局所制御のために用いられる。そこで研究グループは、T-DXd治療中に放射線療法を同時に併用しても安全かどうかを後ろ向きに検証した。 対象は、イタリア、スロベニア、オーストリア、スウェーデンの6施設で2021年5月~2024年5月にT-DXd治療(±放射線療法)を受けた転移を有するHER2陽性またはHER2低発現の乳がん患者であった。併用療法の定義は、T-DXd治療中または治療開始10日以内に実施された放射線療法とした。主要評価項目は併用療法とGrade3以上の有害事象(AE)との関連で、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)などであった。 主な結果は以下のとおり。・全体(147例)の年齢中央値は49歳で、T-DXd+放射線群(67例)は45歳、T-DXd単独群(80例)は53歳であった。脳転移を有する患者はT-DXd+放射線群のほうが多かった(55.2%vs.22.5%)。放射線の照射部位は中枢神経系が最多であった(54.9%)。T-DXd開始からの追跡期間中央値は9(範囲:0.5~46)ヵ月であった。・Grade3以上のAEは24例(16.3%)に発現し、T-DXd+放射線群(11.9%)とT-DXd単独群(20.0%)の間に有意差は認められなかった(p=0.30)。・毒性によるT-DXdの中止は19例(12.9%)で、T-DXd+放射線群とT-DXd単独群で同等であった(11.9%vs.13.8%)。・頭蓋内への放射線照射後に症候性放射線壊死が1例(1.5%)報告された。・間質性肺疾患は、T-DXd+放射線群で7例(10.4%)、T-DXd単独群で7例(8.8%)に発現した。・探索的解析では、放射線併用によるPFSまたはOSへの悪影響は示されなかった。 研究グループは「これらの結果は、HER2陽性またはHER2低発現の転移乳がん患者に対するT-DXdと放射線療法の併用療法は実行可能で忍容性も高いことを示唆するものである。T-DXdと放射線療法の最適な順序、安全性および有効性をより明確にするためには前向き研究が必要である」とまとめた。

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「最近の」研究、実際には何年前?/BMJ

 生物医学雑誌に掲載された論文の執筆者は、引用したエビデンスを「最近の(recent)」と表現することが多いが、この言い回しの裏にある引用文献の実際の発表年代を定量化した例はまれだという。スペイン・La Paz University HospitalのAlejandro Diez-Vidal氏とJose R. Arribas氏は、1,000編の論文を調査し、「最近の」引用文献はその発表と引用の時期に中央値で4年のずれがあり、ほぼ5編に1編の割合で発表が引用の時期より10年以上古く、「最近の」はきわめて弾力性に富む表現として使用されていることを明らかにした。BMJ誌2025年12月11日号クリスマス特集号「WORDS AND MEANINGS」掲載の報告。20の“recent”を含む表現でPubMedを検索 研究チームは、生物医学論文と、その論文で「最近」との記述で引用される過去の研究との時間的な隔たりを定量化する目的で、後ろ向き研究を実施した(特定の助成は受けていない)。 事前に定義した20の「最近」表現(recent article、recent evidence、recent literature、recent research、recent studyなど)に基づき、構造化PubMed検索を行った。 「最近の」という表現が、直接的に引用と結び付いている英語の生物医学論文(全文掲載)1,000編を解析の対象とした。これらの論文と、その参照先である「最近の」研究との時間的な隔たりを年単位で評価した。177編(17.7%)が、10年以上前の研究を「最近」と表現 引用された「最近の」研究の発表年代は大きく異なっていた。また、研究の発表から引用までの時間差は、0年から最長で37年に及んだ(平均5.53年、中央値4年[四分位範囲:2~7])。著者は、「37年の時間差は、この論文の執筆者が『最近』を『ルネサンス』と混同したのではないかと疑わざるを得ない」と指摘している。 最も多かった時間差は1年(159編[15.9%])であった。「最近」として、10年以上前の研究を引用した論文が177編(17.7%)あり、20年以上前の研究を引用した論文が26編(2.6%)あった。時間差の幅は、専門分野によって異なる 引用パターンは専門分野によって異なっていた。集中治療学、感染症学、遺伝学、免疫学、放射線医学では、発表から引用までの時間差(中央値)の幅が小さかった(約2年)。著者は、「この分野は、新たな病原体やゲノム、抗体が絶えず出現するため、過去を振り返る余裕がないのかもしれない」と冗談めいた論評をしている。一方、腎臓学、獣医学、歯学では、この時間差の幅がかなり大きかった(8.5~14年)。 また、内科、外科、疫学などの分野については、著者は「基礎研究の成果が、数十年にわたり臨床的に有用であり続けることに留意すべきだろう。このような分野の出版物では、発表から引用までの時間差の長さは陳腐化を意味するのではなく、重要なエビデンスの持続性を反映している」と指摘し、「とはいえ、『最近の』よりも正確な用語を用いることで、この違いをより適切に表現できるかもしれない」と考察している。高IFのジャーナルほど、より新しい研究を引用 表現別では、「最近のアプローチ(recent approach)」「最近の発見(recent discovery)」「最近の研究(recent study)」は古い研究と関連し、「最近の出版物(recent publication)」「最近の記事(recent article)」はより新しい研究の引用との結び付きが強かった。 また、引用までの時間差の長さは地域間で類似しており、時間の経過とともに徐々に短くなり、最新の出版物で最も短かった。さらに、インパクトファクター(IF)が高い(≧12)ジャーナルほど、より新しい研究を引用していた。 著者は、「『最近の』という用語は、真に最新のエビデンスを示す信頼できる指標というより、柔軟な修辞的装置として機能することが多いと示唆される」「本研究の知見は、この表現の廃止を求めるものではないが、執筆者は使用前に一呼吸置くこと――真に最近なのか、単に修辞的に都合がよいだけなのかを考える一瞬の時間を持つこと――を提唱したい」「読者と査読者は、『最近の』をうのみにせず、実際の時間差を厳密に確認すべきである」としている。

1045.

乳児のRSV関連入院予防、ニルセビマブvs.RSVワクチン/JAMA

 呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染は、乳児の急性下気道感染症(LRTI)による入院の主因とされる。フランス・EPI-PHAREのMarie-Joelle Jabagi氏らは、ニルセビマブ(長期間作用型抗RSVヒトモノクローナル抗体)による受動的乳児免疫は、RSV融合前Fタンパク質(RSVpreF)ワクチン母体接種後の胎盤を介した抗体移行による乳児免疫と比較して、RSV関連入院を抑制し、重度のアウトカムのリスク低下をもたらすことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年12月22日号に掲載された。フランスのコホート研究 研究グループは、乳児のRSV関連入院の予防におけるニルセビマブによる受動免疫の有効性の評価を目的に、住民ベースのコホート研究を行った(EPI-PHAREなどの助成を受けた)。解析には、フランスのほぼ全住民の個別データを含むフランス全国保健データシステム(SNDS)のデータを使用した。 RSVpreFワクチンの母体接種は、RSV流行期である2024年9月1日~12月31日にフランス本土で出生した乳児を対象に、妊娠32~36週に実施した。ニルセビマブによる乳児への受動免疫は、退院の前に単回の筋肉内投与で行った。これら2群(RSVpreFワクチン群、ニルセビマブ群)の乳児を、産科病棟退院日、性別、在胎週数、居住地域により、1対1の比率でマッチさせ追跡評価した。 主要アウトカムは、RSV関連のLRTIによる入院とした。 合計4万2,560人の乳児(平均日齢3.7[SD 1.4]日、男児51.7%)を登録した(各群2万1,280人)。母親の出産時年齢中央値は、ニルセビマブ群でわずかに若かった(31歳vs.32歳)。追跡期間中央値は84日(四分位範囲:70~99)だった。ほとんどが細気管支炎で入院 RSV関連のLRTIによる入院(主要アウトカム)は481例で発生した。RSVpreFワクチン群が269例(55.9%)であったのに対し、ニルセビマブ群は212例(44.1%)と有意に少なかった(群間差:-11.8%、95%信頼区間[CI]:-18.1~-5.5、p<0.001、補正後ハザード比[HR]:0.74、95%CI:0.61~0.88)。 全体の入院時の平均日齢は38.9(SD 22.2)日であった。入院の原因となったRSV関連LRTIのほとんどが細気管支炎(464例、96.5%)で、気管支炎(13例)や肺臓炎(4例)はわずかだった。入院期間中央値は両群とも5日であった。 また、RSVpreFワクチン群に比べ、ニルセビマブ群は重度のアウトカムのリスクが低かった(小児集中治療室[PICU]入室:25.9%vs.37.5%、p=0.007、補正後HR:0.58[95%CI:0.42~0.80]、酸素療法:18.4%vs.28.3%、p=0.01、0.56[0.38~0.81]、人工呼吸器:24.1%vs.33.1%、p=0.03、0.57[0.40~0.81])。これは、ニルセビマブにより入院後の疾患進行が抑制されたことを示唆する。ECMO、NO吸入の使用はない 非侵襲的換気(ニルセビマブ群24.1%vs.RSVpreFワクチン群32.0%、p=0.06)や侵襲的換気(0.9%vs.1.5%、p=0.59)の頻度は、両群間に差はなかった。また、体外式膜型人工肺(ECMO)や一酸化窒素吸入療法は使用されなかった。院内死亡の報告はなかった。 サブグループ解析や感度分析は、これら主解析の結果と一貫性を示した。なお、本研究では、安全性の評価は行っていない。 著者は、「追跡期間中にニルセビマブ群で観察されたリスク低減は、RSVpreFワクチン群における母体由来抗体の減衰、あるいは初期の抗体値の不足を反映している可能性がある」「これらの結果は、RSVpreFワクチンの有効性を否定するエビデンスと解釈すべきではない。接種の条件や環境によっては、ワクチンがより現実的な場合があり得る」「本試験の知見は、フランス本土において、これらの免疫戦略を用いた最初のRSV流行期の状況を反映しており、今後の研究では、この戦略の再評価を行う必要がある」としている。

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2型糖尿病患者は難聴の有病率が高い

 2型糖尿病と難聴リスクとの関連が報告された。罹病期間が長い糖尿病患者は難聴有病率が高いことなどが示されている。バルセロナ大学(スペイン)のMiguel Caballero-Borrego氏、Ivan Andujar-Lara氏の研究によるもので、詳細は「Otolaryngology-Head and Neck Surgery」11月号に掲載された。 慢性高血糖に伴う神経や血管の障害は全身性であることから、聴覚系にも影響を及ぼす可能性がある。これまでにも、糖尿病患者では内耳毛細血管の超微細構造に変化が生じているという報告など、糖尿病と難聴の関連性を示すエビデンスが報告されている。ただし、実臨床での研究結果には一貫性が見られず、糖尿病罹病期間や性別などにより関連性が異なるのではないかとの考え方もある。Caballero-Borrego氏らはこれを背景として、システマティックレビューとメタ解析による検討を行った。 論文検索にはPubMed、Scopusを用い、2019年1月~2024年4月に収載された論文を対象とした。包括基準は、糖尿病と難聴との関連を検討したコホート研究、横断研究、症例対照研究で、英語またはスペイン語の論文とし、糖尿病以外の要因による聴覚障害の可能性を否定できない研究、1型糖尿病患者のみを対象とした研究、聴力検査の信頼性が低いと判定される研究などは除外した。 一次検索で8,354件の論文がヒットし、重複削除、タイトルと要約に基づくスクリーニング、全文精査を経て17件を抽出した。これらの研究の参加者数は糖尿病群が計3,910人、対照群が4,084人であり、糖尿病群の難聴の有病率は40.6~71.9%の範囲だった。 有病率を比較可能な4件の研究(糖尿病群2,358人、対照群3,561人)を統合した解析で、糖尿病群の難聴有病率は有意に高いことが明らかになった(オッズ比〔OR〕4.19〔95%信頼区間1.22~14.37〕)。また、糖尿病群の純音聴力閾値は対照群より有意に高く(3.19dB〔同1.08~5.19〕)、低音域(1.11dB〔0.62~1.57〕)および高音域(2.3dB〔1.97~2.63〕)も同様に、糖尿病群の方が有意に高かった。 HbA1cと難聴の重症度との関連も示された。例えば中等度難聴の糖尿病群は対照群に比し平均HbA1cが0.57%(0.1~1.05)高値であり、より重度の難聴の糖尿病群は対照群に比し0.95%(0.02~1.87)高値だった。また、糖尿病の診断後10年以上経過している患者は10年未満の患者に比べ、難聴有病率が有意に高いことも分かった(OR2.07〔1.45~2.94〕)。一方、性別は難聴の有病率に有意な影響を与えていなかった。 著者らは、「糖尿病における難聴は、潜在的に生じている可能性のある細小血管症の結果として現れるのではないか。つまり、糖尿病患者に見られる聴力の低下は早期の警告サインと考えられる。よって糖尿病患者に聴力低下を認めた場合、より綿密なモニタリングを行うとともに、難聴への進行リスクを最小限に抑えるため、治療内容を再検討する必要があるだろう」と述べている。

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高脂肪乳製品は認知症から脳を守る可能性

 チーズは休日の集まりにしばしば登場する食品だが、実は脳の健康を守っているかもしれないと誰が想像しただろうか。ルンド大学(スウェーデン)栄養学准教授のEmily Sonestedt氏らの研究によると、高脂肪のチーズやクリームの摂取量が多いことは、認知症リスクの低下に関連している可能性のあることが明らかになったという。この研究結果は、「Neurology」に12月17日掲載された。 Sonestedt氏は、「何十年もの間、高脂肪食と低脂肪食のどちらが良いのかを巡る議論に基づき健康に関するアドバイスが行われてきたが、その過程で、チーズは摂取を制限すべき不健康な食品と見なされることもあった。われわれの研究では、一部の高脂肪乳製品が、実際には認知症リスクを低下させる可能性のあることが示された。これは、脂肪と脳の健康に関する長年の前提に疑問を投げかける研究結果だ」とニュースリリースの中で述べている。 この研究では、平均年齢58.1歳のスウェーデン人2万7,670人のデータを用いて、高脂肪チーズの摂取量が多い(1日50g以上)群と、少ない(1日15g未満)群の脳の健康状態を比較した。高脂肪チーズとは脂肪分が20%超のものを指し、チェダー、ブリー、ゴーダなどが該当する。一方、高脂肪クリームは通常、脂肪分が30~40%で、ホイップクリームやクロテッドクリームなどが該当する。研究参加者は、過去1週間の食事の記録を提出したほか、過去数年間に特定の食品をどの程度の頻度で食べていたかや、食品の調理方法についても報告した。 中央値25年間の追跡期間中に3,208人が認知症を発症した。解析の結果、高脂肪チーズの摂取量が多い群では少ない群に比べて、全ての認知症のリスクが13%、血管性認知症のリスクが29%、それぞれ低いことが示された。アルツハイマー型認知症に関しては、その遺伝的リスク因子(APOE ε4)を保有していない人においてのみ、高脂肪チーズの摂取量の多いことが13%のリスク低下と関連していた。さらに、1日20g以上の高脂肪クリームを摂取していた群では、全く摂取していなかった群と比較して認知症リスクが16%低いことが示された。一方、低脂肪のチーズまたはクリーム、牛乳(高脂肪および低脂肪)、バター、ヨーグルトやバターミルクなどの発酵乳製品(高脂肪および低脂肪)の摂取と認知症リスクとの間に関連は認められなかった。 ただし、この研究デザインでは高脂肪のチーズやクリームの摂取と認知症のリスク低下に因果関係があることは証明できず、関連が示されたに過ぎないことを研究チームは付け加えている。 Sonestedt氏は、「この結果は、脳の健康への影響という観点では、全ての乳製品が同じではないことを示唆している。高脂肪のチーズやクリームの摂取量が多いことは認知症リスクの低下と関連していたが、他の乳製品や低脂肪の代替品では同様の関連は認められなかった」と述べている。また、「今回の結果を確認するとともに、特定の高脂肪乳製品に実際に脳の保護効果があるのかを詳細に調べるため、さらなる研究が必要である」としている。 台北医学大学(台湾)のTian-Shin Yeh氏は付随論評の中で、本研究の重要な限界として、食事摂取が評価されたのは追跡開始時の1回のみであり、25年間の追跡期間における長期的な食習慣が反映されていない可能性があることを指摘している。同氏は、「今後、異なる食習慣を持つ多様な集団において、この結果の再現性を確認することが不可欠である。食事摂取の長期的な変化をより正確に捉えるためには、食事評価を繰り返し行う前向きコホート研究を実施する必要がある」と述べている。

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炭酸脱水酵素阻害薬は睡眠時無呼吸症候群を改善(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

本邦における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の疫学と治療の現状 本邦における閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA:Obstructive Sleep Apnea)の人口当たりの発症頻度は男性で3~7%(40~60代に多発)、女性で2~5%(閉経後に多発)と報告されており、男女合わせて500万例以上、総人口の約4%にOSA患者が存在すると考えられている。本邦における成人OSAに対する有効な治療法としては経鼻/経口の持続陽圧呼吸(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure)が中心的位置を占める。CPAP不適あるいは不認容の非肥満(BMI<30kg/m2)患者に対する植込み型舌下神経(XII神経)電気刺激も有効な方法である。その他、比較的軽症のOSA患者に対するマウスピースや特殊な原因に対する耳鼻科的・口腔外科的手術/処置が有効な場合もある。いずれにしろ、OSA患者に施行されている治療はCPAPに代表される機械的治療が中心であり、現在のところ、有効性が確認され、かつ、保険適用を受けた薬物治療は存在しない。 本邦におけるOSA患者に対するCPAPの導入率はCPAP必要患者の15%前後と低く、米国の70%を大きく下回っている。その意味で、本邦におけるOSA患者に対する治療は不十分であり、OSAを“扇の要”として関連する種々の疾患(病的肥満、糖尿病、治療抵抗性高血圧、冠動脈疾患、心房細動、心不全、脳卒中、大動脈解離、認知症など)の管理に少なからず影響を与えている(OSAを頂点とするMetabolic Domino現象)。さらに、OSA患者では明確な機序不明であるがメラノーマ、腎臓がん、膵臓がんなどの悪性腫瘍の発生率が高いことも注意すべき事項の1つである。以上の諸点を鑑みると、今回論評の対象としたRanderath氏らの論文で明らかにされた内服の炭酸脱水酵素(CA:Carbonic Anhydrase)阻害薬のOSA抑制効果は近未来のOSAに対する治療を質的に変化させる可能性がある。抗糖尿病薬GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(商品名:マンジャロ)もOSAを改善することが報告されている(Malhotra A, et al. N Engl J Med. 2024;391:1193-1205.)。しかしながら、チルゼパチドは、あくまでも肥満の軽減を介して2次的に無呼吸頻度を低下させるものであり、OSA自体を1次的に改善させるものではない。それ故、チルゼパチドは今回の論評には含めない。 睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)には中枢性のもの(CSA:Central Sleep Apnea)も存在するが、その頻度はOSAに比べ有意に低いこと(SAS全体の10%以下)、発症機序に不明な点が多いことなどから本論評においては詳細な評価を割愛した。炭酸脱水酵素(CA)と睡眠時無呼吸の関係 CAは生体細胞に広く分布し、細胞内代謝の結果として産生されるCO2とH2Oとの反応を触媒しH2CO3を産生する。H2CO3はH+とHCO3ーに自然解離し、HCO3ーはクロライド・シフトを介して細胞外に排出、H+は細胞内の蛋白に吸着され細胞内pHは一定に維持される(生理的pH下ではγ-グロブリン以外の蛋白は陰イオンとして存在しH+と結合)。生体には臓器特異的に15~16種類に及ぶCAのアイソザイムが存在することが報告されており、各臓器において細胞内pHの恒常性維持に寄与している。このような細胞内環境下でCAの活性を阻害すると、細胞内でのCO2処理が遅延し細胞内CO2濃度が上昇、細胞内アシドーシスが招来される。その結果として、脳幹部(延髄、橋)に局在する呼吸中枢神経群(延髄表層に存在するCO2感受性の中枢化学受容体を含む)のCO2感受性が亢進し、換気応答が活性化される。さらに、細胞内アシドーシスは咽頭/喉頭に存在する上気道筋群の筋緊張を維持する。以上の機序を介して、CAの阻害は睡眠時の閉塞性無呼吸の発生を1次的に抑制するとされているが、これ以外の未知の機序が関係する可能性も指摘されている。CA阻害薬の分類と臨床 臨床的に使用可能なCA阻害薬には点眼薬と内服薬の2種類が存在する。点眼薬(商品名:ドルゾラミド、ブリンゾラミドなど)は主として眼圧低下と緑内障治療薬として使用される。内服薬のうち1954年に緑内障治療薬としてFDAに承認された歴史的薬剤であるアセタゾラミド(商品名:ダイアモックス)は静注薬としても使用可能であり、緑内障以外にてんかん、メニエール病、急性高山病、尿路結石症の発作予防など幅広い保険適用を獲得している。最近認可された内服CA阻害薬として本論評の対象としたスルチアム(商品名:オスポロット)が存在するが、スルチアムは、本邦においては精神運動発作(てんかん)のみに使用が限定されている。CA阻害薬のOSAに対する治療効果-大規模研究の結果 SAS(OSA、CSA)発症にかかわる重要な因子としてCAが関与する化学反応が長年注目されてきたが確証が得られるには至らなかった。しかしながら、2020年、Christopher氏らはアセタゾラミド内服薬のSAS抑制効果に関して28研究(OSA:13研究、CSA:15研究)を基にメタ解析を施行した(Schmickl CN, et al. Chest. 2020;158:2632-2645.)。彼らの解析結果によると、アセタゾラミド内服(36~1,000mg/日)によってSAS患者の無呼吸/低呼吸指数(AHI:Apnea-Hypopnea Index)が37.7%(絶対値として13.8/時)低下すること、さらには、AHIの低下はOSA患者とCSA患者でほぼ同等であることが示された。アセタゾラミドによる無呼吸抑制効果は投与量依存性を示し、薬剤量が高いほど顕著であった。Christopher氏らの解析結果は、アセタゾラミドの内服がOSAのみならずCSAの治療にも有効である可能性を示している。 本論評の対象としたRanderath氏らの論文は、OSAに対するCA阻害薬スルチアムの効果を解析した第II相二重盲検無作為化プラセボ対照用量設定試験(FLOW試験)の結果を報告した(欧州5ヵ国、28病院における治験)。対象は未治療、中等症以上のOSA患者298例で、プラセボ群(75例)、スルチアム100mg群(74例)、同200mg群(74例)、同300mg群(75例)の4群に振り分けられた。観察期間は、薬物投与量が一定になってから12週間(薬剤投与開始から15週間)と設定された。スルチアムの1日1回就寝前投与は、AHI、夜間低酸素血症、日中の傾眠傾向(Epworth Sleepiness Scaleによる評価)などOSAに付随する重要な症状を用量依存的に改善した。スルチアム投与によって重篤な有害事象は認められなかったが、知覚異常を中心とする中等症以下の多彩な有害事象が発生した。“治療効果と副反応”の比はスルチアム200mgの連日投与で最も高く、この用量がOSA治療に最も適していると結論された。 以上のように、OSA治療におけるCA阻害薬の有効性が実証されつつあり、本邦においてもCPAPにかわる新たな治療法としてCA阻害薬の内服治療の有効性を検証する臨床治験が早急に実施されることを期待するものである。この問題に関連して、2025年4月、本邦の塩野義製薬は米国Apnimed社と合弁会社を設立し(Shionogi-Apnimed Sleep Science)、睡眠時無呼吸症候群に対するスルチアムを含めた新たな薬物治療戦略を世界レベルで開始しており、今後の動向が注目される。

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外科医のための肺がん周術期療法講座【肺がんインタビュー】第118回

第118回 外科医のための肺がん周術期療法講座著しく進歩する非小細胞肺がんの周術期治療。術後に加え、術前および術前+術後レジメンが加わり外科医の役割はますます重要になりつつある。国立がん研究センター東病院の青景圭樹氏に外科医の視点で周術期治療を解説いただいた。

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尿路感染症状を伴わない細菌尿【日常診療アップグレード】第47回

尿路感染症状を伴わない細菌尿問題57歳女性。3日前に脊椎硬膜外膿瘍のため手術を受けた。手術室で留置された尿道カテーテルを装着している。昨日、38.3℃の発熱が認められ、尿検体を尿検査および培養検査に提出した。服用中の薬剤はアムロジピン、アトルバスタチンである。身体診察では37.3℃の発熱以外はバイタルサインに異常はない。背部の切開部位に軽度の発赤を認めるが、滲出液は認めない。恥骨上部の圧痛や肋骨脊柱角叩打痛は認めない。白血球8,500/μL、尿検査:エステラーゼ陽性、白血球22/HPF、尿培養:103CFU/mL、感受性良好なEscherichia coliが検出された。尿バルーンを抜去し、セファレキシンを開始した。

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第301回 アルブミンの抗カビ作用を発見

血中のありふれたタンパク質であるアルブミンの抗カビ作用が発見されました1,2)。ケカビ(Mucorales)の類いの真菌が引き起こすムコール症は、場合によっては死に至りもする日和見感染症で、打つ手は限られ、発症の仕組みはあまりわかっていません。死と隣り合わせでもあり、患者全体の死亡率は50%を超え、播種性患者の死亡率は100%近くになります。ムコール症は組織の甚大な壊死を特徴とし、そのため抗真菌薬は感染病巣に到達できず、ひどく外観を損ねる手術をしばしば必要とします。他の真菌感染症と異なり、ムコール症はもっぱら代謝不調患者に発生します。具体的には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う免疫代謝不調、制御不良の糖尿病、アシドーシス、鉄過剰症、栄養失調などがムコール症を生じ易くします。半世紀以上も前3)からヒトの血清のケカビ阻止効果が報告されています。ギリシャのクレタ大学のAntonis Pikoulas氏らの新たな検討でもその効果が改めて確認され、健康なヒトの血清はケカビの増殖を防いだのに対して、ムコール症患者の血清のその効果はほぼ皆無でした。アルブミンは血清に最も豊富なタンパク質で、血管内、間質、粘膜表面で生理機能を担います。興味深いことに、ムコール症を生じ易くする種々の免疫代謝失調患者に低アルブミンがよく認められます。そこでPikoulas氏らはムコール症へのアルブミンの働きを詳らかにすることを思い立ち、まず初めに血清アルブミン濃度とムコール症の生じやすさやその経過との関連にあたりました。ムコール症を生じ易いことが知られる血液がん患者を調べたところ、実際に肺ムコール症に陥った患者のほとんどのアルブミンは、細菌性肺炎やアスペルギルス・フミガーツス(A. fumigatus)による肺炎患者に比べて有意に乏しいことが示されました。糖尿病やCOVID-19を主な危険因子とする肺ムコール症患者などでも同様の結果が得られ、さらには重度の低アルブミン(2.5g/dL以下)が調べたどのムコール症集団でも転帰不良と関連しました。アルブミンこそどうやらケカビ阻止に寄与するらしく、アルブミンを省いた健康なヒトの血清はケカビ阻止活性が低下していました。一方、A. fumigatus阻止活性は保たれていました。そして、アルブミンこそケカビの増殖を防ぐ作用を担うことが精製アルブミンやマウスを用いた実験で明らかになります。精製アルブミンはケカビの増殖に限って阻止し、他の主な病原性細菌や真菌への有意な活性はありませんでした。アルブミンを欠くマウスはムコール症に限って生じ易くなり、その血清にアルブミンを与えるとケカビを阻止できるようになりました。アルブミンがケカビを阻止する仕組みにはアルブミンを結合した遊離脂肪酸(FFA)の流通が貢献しています。アルブミンは抗真菌活性を失わせるFFAの酸化を防ぎ、アルブミンが結合したFFAはケカビのタンパク質合成を阻止することで病原因子の発現を制してケカビを無毒化します。ムコール症患者ではその仕組みが機能していないらしく、血清のFFAがより酸化されていました。FFAがケカビのタンパク質合成に限って阻止する仕組みの詳細が今後の研究で明らかになるだろうと著者は言っています。参考1)Pikoulas P, et al. Nature. 2026 Jan 7. [Epub ahead of print]2)Blood protein thwarts deadly fungal disease / Nature3)Gale GR, et al. Am J Med Sci. 1961;241:604-612.

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2026年度調剤報酬改定、薬局に求められているものは?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第163回

令和8年度(2026年度)診療報酬改定の具体的な議論が交わされています。今回の改定はどのような方向性になるのでしょうか。スケジュ-ル感と併せて紹介します。まず、前回の令和6年度(2024年度)の調剤報酬改定のテ-マはどのようなものだったか覚えていますか? 中小規模の面薬局が優遇されるといった経過措置のような期間はもう終わりで、これからは調剤以外の機能と実績で算定しますよ、というメッセ-ジのような改定でした。調剤基本料および地域支援体制加算が見直しになり、調剤後薬剤管理指導加算を受け継いで調剤後薬剤管理指導料に格上げになりました。皆さんの薬局の売り上げは2年前に比べて上がりましたか?今回の改定についてはすでに年内に各論の審議や基本方針がおおむね決定され、改定率は診療報酬本体が+3.09%と引き上げになりました。これは1996年以来の高水準です。薬価・材料価格は-0.87%というマイナス改定ですが、全体では+2.22%のプラス改定となり、これは2014年度以来12年ぶりです。その中で調剤がどうなるかという議論はこれからですが、全体的にプラス改定の財源が確保できているというのは覚えておきたいところです。また、今回の診療報酬改定の全体については、4つの柱が掲げられています。物価高・人手不足対応2040年を見据えた医療体制(在宅・地域包括ケア)質の高い医療の実現(医療DX・ICT連携)制度の持続可能性向上(保険財政の安定)もちろん、調剤もこれに沿ってどこに点数をつけるのかという議論になるかと思います。具体的には、後発医薬品体制加算の廃止について議論が交わされています。後発医薬品の使用率を上げることを目的に20年間ほど設けられてきた加算ですが、現在の後発医薬品の使用率は財務省が目標としてきた90%超にすでに到達しています。気が付けば後発医薬品を使用することが当たり前になったという意味では、ひと時代が終わったのかなという気持ちになります。今回の改定で、使用率に加算をつける意味が問われています。また、調剤基本料1を算定している薬局の多さについても問題視されているようです。現在の調剤基本料1は中小薬局を対象にした基本料ですが、外来の処方箋の数量に依存するモデルというのは今回の改定で難しくなるかもしれません。1~2月には短冊と呼ばれる改定の項目が決まり、その後、その項目ごとに点数が決定していきます。また、前回の改定と同様に、今回も施行は6月になりそうです。今後の薬局に何が期待されているのか、議論に注目していきたいと思います。

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片頭痛患者のアルコール制限は必要か?

 アルコールは、世界中で広く消費されている飲料である。一方、片頭痛、緊張型頭痛(TTH)、そのほかの一次性頭痛を含む頭痛は、有病率が非常に高い。疫学研究においてアルコール摂取と頭痛の相関関係が示されているが、特定の病態生理学的メカニズムはいまだに解明されていない。ポーランド・ワルシャワ医科大学のAnna Zdunska氏らは、さまざまな頭痛の誘因となるアルコールの問題、頭痛を有する患者のアルコール摂取について報告した論文、アルコールと頭痛の病態生理学的および臨床的側面を扱った論文をレビューした。Nutrients誌2025年11月20日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・本レビューにおいて、アルコールは片頭痛および非片頭痛性の頭痛のいずれにも影響を及ぼすと結論付けられた。・二次性頭痛に分類されるアルコール誘発頭痛は、拍動性の両側性頭痛で、身体活動によって悪化し、アルコール摂取によって誘発される。・TTHはアルコール摂取によって誘発される可能性があり、TTH患者は片頭痛患者よりもアルコール関連の問題を抱えている。・群発頭痛(CH)はアルコールによって引き起こされることが多いが、驚くべきことに多くのCH患者は発作中であってもアルコールを摂取していた。・アルコールと片頭痛との関係は複雑であり、アルコール飲料に含まれる多くの成分が痛みの誘発に影響を及ぼし、片頭痛発作の原因となる可能性が示唆された。・赤ワインは片頭痛発作の誘因として最も頻繁に挙げられるアルコール飲料の1つであるが、少数のプロスペクティブ研究においては必ずしもこの知見が裏付けられているわけではない。・アルコールの安全な摂取量は存在しないため、できるだけアルコール摂取を避けることが推奨される。

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高用量リファンピシン、結核性髄膜炎の予後を改善するか/NEJM

 結核性髄膜炎患者に対する治療において、リファンピシンの高用量投与は標準用量投与と比較して6ヵ月以内の死亡率を改善せず、有害な作用をもたらす可能性も否定できないことが、ウガンダ・Makerere UniversityのDavid B. Meya氏らHARVEST Trial Teamが実施した「HARVEST試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年12月18・25日号に掲載された。3ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 HARVEST試験は、インドネシア、南アフリカ、ウガンダの9ヵ所の病院で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり(英国医学研究審議会[MRC]などの助成を受けた)、2021年3月~2024年7月に成人(18歳以上)の結核性髄膜炎患者499例(ITT集団)を登録した。 被験者を、標準用量のイソニアジド+リファンピシン(10mg/kg/日)+エタンブトール+ピラジナミド(配合錠)に加え、追加リファンピシン錠(総投与量35mg/kg/日)を連日経口投与する群(高用量群、249例)、またはプラセボを投与する群(標準用量群、250例)のいずれかに無作為に割り付け、8週間投与した。両群とも、9~12ヵ月の治療期間の残りの期間は標準治療を受けた。 主要アウトカムは、無作為化から6ヵ月以内の死亡であった。 ITT集団(499例)の年齢中央値は37歳(四分位範囲[IQR]:28~45)で、222例(44.5%)が女性であった。428例(85.8%)はdefinite/probableの結核性髄膜炎だった。また、306例(61.3%)がMRC疾患重症度分類のグレード2で、304例(60.9%)はHIV感染者であった。ベースラインで348例(69.7%)が抗結核治療(中央値で3日間)を受け、473例(94.8%)がグルココルチコイドを処方されていた。サブグループ、副次アウトカムにも有益性はない 無作為化から6ヵ月以内の死亡(主要アウトカム)は、高用量群で109例(Kaplan-Meier推定値44.6%)、標準用量群で100例(40.7%)に発生し、両群間で有意差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.17、95%信頼区間[CI]:0.89~1.54、p=0.25)。 また、6ヵ月以内に死亡した被験者の死亡までの期間中央値は、高用量群が13日(IQR:4~39)、標準用量群は24日(6~56)だった。 サブグループ解析でも、高用量群で有益な作用を示すエビデンスは認めなかった。高用量群で死亡率が高いサブグループとして、ベースラインで抗レトロウイルス療法(ART)を受けていたHIVの被験者(高用量群42%vs. 標準用量群25%、HR:2.01、95%CI:1.07~3.78)と、脳脊髄液(CSF)中の白血球数が<5/mm3の被験者(59%vs.36%、2.01、1.14~3.54)を認めた。 Kaplan-Meier法による12ヵ月時の死亡率(高用量群47.0%vs.標準用量群43.7%、HR:1.14、95%CI:0.88~1.49)や、24週時の修正Rankinスケールスコア(オッズ比:0.80、95%CI:0.58~1.11)にも両群間で有意差はみられなかった。また、他の副次アウトカム(Liverpool Outcomeスコア、グラスゴー・コーマ・スケールスコアなど)にも、両群間で有意差はなかった。新たな安全性シグナルの発現はない 新たな安全性シグナルは観察されなかった。重篤な有害事象(高用量群33.7%vs.標準用量群40.4%、p=0.12)の頻度は両群で同程度だった。グレード3~5の誤嚥性肺炎(6.4%vs.1.6%、p=0.006)が、高用量群で多く発生した。 グレード3/4の肝イベントのうち、総ビリルビン値の上昇(≧2.6×基準範囲上限[ULN]、9.6%vs.3.6%、p=0.007)が高用量群で高頻度にみられた。グレード3/4の薬剤性肝障害(8.0%vs.4.4%、p=0.09)は高用量群で頻度が高い傾向を認めたが、薬剤性肝障害による死亡は両群とも発生しなかった。 著者は、「高用量リファンピシンによる有益性が得られなかった説明として、次の2点が挙げられる。(1)高用量群では、肝代謝の誘導がより強かったため、グルココルチコイドの曝露量が低かった可能性がある、(2)高用量リファンピシンによるマイコバクテリアのより迅速な殺菌が、理論上は、より強い(有害な)免疫学的反応を引き起こした可能性がある」としている。

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リスクベースvs.年1回の乳がん検診、乳がん発生率や生検率を比較/JAMA

 集団ベースの遺伝子検査を含むリスクに基づく乳がん検診について、StageIIB以上の乳がん発生率が従来の年1回の検診に対し非劣性で、生検率は低減しないものの、個々のリスクに基づく検診の強度、検診法、開始年齢の層別化の安全にもつながることが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のLaura J. Esserman氏らが実施した「WISDOM試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年12月12日号で報告された。米国の実践的無作為化臨床試験 WISDOM試験は、全米50州で行われた実践的な並行群間無作為化臨床試験であり、2016年9月~2023年2月に、40~74歳で、乳がんや非浸潤性乳管がん(DCIS)の既往歴がなく、予防的両側乳房切除術を受けていない女性2万8,372人を登録した(Patient-Centered Outcomes Research Institute[PCORI]などの助成を受けた)。 被験者を、リスクに基づく乳がん検診を受ける群(リスクベース群、1万4,212人)、または年次乳がん検診を受ける群(年次群、1万4,160人)に無作為に割り付けた。すべての研究手順はオンラインのプラットフォーム経由で行った。無作為化を辞退して検診法を自分で選択した女性は観察コホートに登録した。 リスク評価には、9つの疾患感受性遺伝子、多遺伝子リスクスコア(polygenic risk score:PRS)、Breast Cancer Surveillance Consortium(BCSC)のバージョン2のモデルを用いた。 リスクベース群は、次の4つのリスク別の推奨事項のいずれか1つを受けた。(1)最高リスク(5年リスクが6%以上で、高浸透率の病原性変異を有する):6ヵ月ごとのマンモグラフィまたはMRIによる交互の検査、カウンセリング、(2)高リスク(年齢別リスクの上位2.5パーセンタイル):年1回のマンモグラフィとリスク低減カウンセリング、(3)平均的リスク:2年ごとのマンモグラフィ、(4)低リスク(40~49歳で、5年リスクが1.3%未満):リスクが1.3%以上になるか、50歳に達するまで検診は不要。 主要複合評価項目は、StageIIB以上の乳がんの発生の非劣性と、生検率の低減に関する優越性とした。StageIIB以上の乳がん発生については、両群間の絶対差の両側95%信頼区間(CI)の上限値が10万人年当たり50未満の場合に、リスクベース群は非劣性と見なした。生検率は低減せず 全体の平均年齢は54(SD 9.6)歳で、非ヒスパニック系白人が77%を占めた。リスクベース群の内訳は、最高リスクが2%、高リスクが8%、平均的リスクが63%、低リスクが27%であった。追跡期間中央値は5.1年で、この間に523件の乳がん(浸潤がん408件[78%]、DCIS 115件[22%])が発生した。 StageIIB以上の乳がんは52件(リスクベース群21件、年次群31件)発生し、リスクベース群の年次群に対する非劣性が示された(リスクベース群30.0[95%CI:16.3~43.8]/10万人年vs.年次群48.0[95%CI:30.1~65.5]/10万人年、率差:-18.0[95%CI:-40.2~4.1]/10万人年、非劣性のp<0.001)。 乳房生検率は、リスクベース群で有意な低減を示さなかった(リスクベース群1,029件vs.年次群943件、率差:98.7[95%CI:-17.9~215.3]/10万人年、優越性のp=0.10)。一方、マンモグラフィの施行数はリスクベース群で少なかった(3万2,332件vs.3万4,751件、-3,835.9[-4,516.8~-3,154.9]/10万人年)。観察コホートの89%がリスクベースを選択 副次評価項目であるStageIIA以上の乳がんは、リスクベース群の非劣性の基準(群間差の95%CI上限値<100/10万人年)を満たした(率差:-28.6[95%CI:-64.5~7.3]/10万人年)。浸潤性乳がん、DCISの診断率はいずれも両群間で同程度であった。 リスクベース群におけるがんの発生率、生検、マンモグラフィ、MRIの施行率は、リスクカテゴリーが上昇するに従って増加した。たとえば、浸潤性乳がんの発生率は、10万人/年当たり最高リスクで1,279、高リスクで428、平均的リスクで233、低リスクで169だった。 なお、これらの無作為化コホートとは別に、自分で検診法を決定した観察コホート(1万8,031人)のうち、1万5,980人(89%)がリスクベースの乳がん検診を選択した。 著者は、「リスクに基づく乳がん検診は、女性にとって安全かつ受容可能であり、プレシジョン・メディシン(精密医療)時代に、検診の近代化の機会を提供する」「次のプラットフォームであるWISDOM 2.0では、サブタイプ別の祖先集団に基づくリスク評価のためのPRSと、画像診断によるAIを使ったリスク測定値を活用する取り組みが進行中である」としている。

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親のうつ病の特定の症状は子どもの報酬処理に影響か

 親にうつ病があると、その子どももうつ病を発症しやすいことが知られているが、こうしたリスクは、うつ病のある特定の症状に関連している可能性のあることが、新たな研究で示唆された。物事を楽しめない、あるいは物事に興味を持てないといったタイプの親の症状は、周囲で起きていることに対する子どもの反応の仕方に影響を与え得ることが示されたという。米ニューヨーク州立大学ビンガムトン校(SUNY-BU)気分障害研究所のBrandon Gibb氏とElana Israel氏によるこの研究の詳細は、「Journal of Experimental Child Psychology」2026年2月号に掲載された。 Gibb氏らによると、子どもの脳が肯定あるいは否定的なフィードバックにどのように反応するかには、親のうつ病が影響を及ぼすことがすでに明らかにされている。その原因に、物事に対する興味や喜びが失われる状態である「アンヘドニア(無快感症)」と呼ばれるうつ病の症状が関わっている可能性があるとGibb氏らは言う。 Gibb氏らは今回の研究で、7〜11歳の子どもとその親217組を対象に実験を行った。この実験は、親のアンヘドニアの症状が、子どもの報酬系における肯定的あるいは否定的なフィードバック処理にどのような影響を与えるのかを明らかにする目的で計画された。 Israel氏は、「この研究は、物事への興味や関心が薄れ、喜びを感じにくくなるというリスク要因がある場合、それが環境からのフィードバックに対する脳の反応の仕方に反映される可能性があるという考え方に基づいている」と説明している。また同氏は、「親に強いアンヘドニアを伴ううつ病があると、その子どもでは反応が弱くなると予想され、その一方で他のうつ病の症状は、理論的にはこの特定の脳反応にはそれほど強く関連しないはずだ」とニュースリリースの中で述べている。 実験では、子どもに2枚の扉を見せ、向こう側に賞金がある扉を当てるよう指示した。正解の扉を選ぶと賞金が得られ、間違えると失う仕組みだった。その結果、親のアンヘドニアの症状のレベルが高いほど、子どもは賞金を獲得した場合でも、逃した場合でも、その反応は鈍くなる傾向が認められた。一方、アンヘドニアを伴わないうつ病の症状レベルが高い親の場合では、子どもの反応が鈍化する傾向は見られなかった。 Israel氏は、「この結果から言えるのは、親のアンヘドニアに特有の何かが子どもの神経反応に影響を与える可能性があるということだ。さらに、うつ病の中核的特徴である興味や喜びの喪失、関心の低下に陥るリスクが高い子どもの特定につながる研究結果でもある」と述べている。 研究チームは、今後の研究課題として、アンヘドニアの症状がある親が治療を受けたり、状態が改善し始めたりした場合に、家族の相互作用がどのように変化するのかを調べることを挙げている。また、同級生からの社会的フィードバックなど他の種類のフィードバックに対する子どもの反応にも親のうつ病による影響があるのかどうかについて検討することが重要であると述べている。 Israel氏は、「前向きな気分や関心、良好な親子関係の強化を目的とした介入について検討している研究者もいる。今回の知見を活かして、そのような介入による効果が得られる可能性が最も高い家族を特定できるかどうかを検証することが重要だ」と述べている。

1057.

パートナーとの親密な関係性は心疾患患者の回復を促す

 心臓は、特にバレンタインデーの時期になると「愛」と結び付けて語られることが多いが、実際、両者の関連は思っている以上に深いかもしれない。新たな研究で、愛するパートナーの支えは、心筋梗塞や心不全などの心疾患による緊急事態を経験した人の回復を大きく改善する可能性のあることが示された。オタワ心臓研究所(カナダ)のHeather Tulloch氏らによるこの研究結果は、「Canadian Journal of Cardiology」に12月15日掲載された。 この結果を踏まえ、研究グループは、心臓リハビリテーションプログラムには、患者の心臓の健康を支える役割を果たしてくれる親密なパートナーを含めるべきだと提言している。Tulloch氏は、「患者の健康行動やメンタルヘルス、さらに心血管アウトカムの改善を促すには、心臓の治療に加え、関係性を育むことが重要だ。それにより、回復中の患者の情緒的・社会的適応が強化され、最終的にはより良い健康行動につながる可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。 本研究では、心疾患患者1,444人(男性77%)とそのパートナーを対象とした過去の16件のランダム化比較試験を対象に、患者とパートナーの双方が関与するカップルベースの介入が修正可能な心血管リスク因子、心血管疾患アウトカム、メンタルヘルス、および関係性の質に及ぼす影響を評価した。介入では、心臓の健康に良い食事を用意したり、定期的な運動を促したり、処方薬を確実に服用するようにするなど、心疾患患者を支える上でパートナーが果たす重要な役割に焦点が当てられていた。 解析の結果、レビュー対象となった研究の77%において、パートナーが介入に参加し支援することで、患者の健康行動が改善していた。一方、心血管アウトカムについては、血中脂質濃度や医療の利用など一部の指標に改善が認められたものの、結果は一貫していなかった。また、メンタルヘルスに対する効果も結果は一貫していなかった。さらに、関係性の質について評価していた研究は3件のみで、有意な改善は確認されなかった。 Tulloch氏は、「心疾患がきっかけで絆が深まるカップルもいるが、多くの場合、それは2人の関係性にとっても、当事者それぞれにとっても大きな試練になる。われわれは長年、心疾患は患者にだけ起こる問題ではなく、カップルに生じる問題であることを学んできた」と話している。 研究グループは、カップル参加型の心臓リハビリテーションプログラムについて、さらなる研究が必要だと結論付けている。Tulloch氏は、「カップルが心疾患により良く対処し、心身と関係性の双方の健康を高めるために、パートナーを能動的な参加者として含め、患者とそのパートナーの関係性の中で生じている問題に実質的に対処する介入を開発・検証する必要がある」と述べている。

1058.

宅配食で血糖コントロールが改善する

 糖尿病の管理に適した宅配食が、血糖コントロールの改善につながることを示した研究結果が報告された。米アーカンソー大学のEliza Short氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Nutrition Education and Behavior」12月号に掲載された。 この研究では、宅配食を12週間利用した糖尿病患者は、HbA1cが有意に低下した。一方で、食事の質が健康的か否かを表す指標(Healthy Eating Index-2015〔HEI-2015〕)には有意な変化が見られなかった。このことから研究者らは、糖尿病患者が普段、非健康的な食品を選択して食べているとは言えず、むしろ、食品を宅配することによって、健康的な食品を手軽に入手できるようになることが、血糖コントロール状態の違いを生んだのではないかと考えている。 論文の筆頭著者であるShort氏は、「明らかになった結果は、食料不安を抱え、交通アクセスの不便さといった障壁を抱えている人々の糖尿病管理に、目に見える改善をもたらすためには、個々の患者に合わせて調整された食品を自宅に配達するという方法が有効である可能性を示している」と研究成果を総括。また、「多くの2型糖尿病患者にとって、健康的な食品を確実に入手できるということは、単に便利であるということにとどまらず、不可欠なヘルスケアとも言える」と、宅配食の意義を強調している。 この研究には、アーカンソー州内の五つのフードパントリー(食料不安を抱えている人に無償または低価格で食品を提供する支援活動)の利用者の中から、101人の2型糖尿病患者(平均年齢57.1±10.6歳、女性67.3%)が参加した。参加者には12週間にわたって毎週、食品ボックスを宅配。その食品ボックスの中身は、2019年の米国糖尿病学会(ADA)の食事療法ガイドラインに準拠し、でんぷん質の少ない野菜、全粒穀物、タンパク質食品、新鮮な果物などで構成されていた。 また、食品ボックスには、レシピおよび、そのレシピどおりに調理するために必要なその他の食材も含まれていた。さらに、糖尿病自己管理のための教育用資材も同梱されており、それらの資材は英語だけでなく、スペイン語、マーシャル語で書かれていた(同州には北太平洋マーシャル諸島出身者が多い)。研究期間中97%の参加者が、これらの食品と資材を完全に受け取ることができた。 宅配食を開始した時点のHbA1cは平均9.9±2.3%だった。これが宅配開始12週間後には9.1±2.0%となり、共変量を調整後に0.56パーセントポイントの有意な低下が確認された(P=0.01)。HEI-2015は開始時点が59.9±16.9、12週間後が59.5±13.0で有意な変化がなかった(P=0.47)。 研究者らは、「食習慣が発症リスクに関連している疾患の予防・治療にとって、栄養価の高い食品は『薬』とも言える。これからは、このような考え方に基づく領域が成長していくのではないか。本研究結果はその発展に寄与し得ると考えられる」と述べている。また、「今後の研究では、こうしたプログラムの参加者の健康に最も影響を与えるのはどの要素なのか(食品を宅配することか、教育用資材か、あるいはその両方なのか)を明らかにする必要がある」と付け加えている。

1059.

多くの患者はPHQの質問内容を正しく解釈できていない

 診察前に渡される質問票に記入しているとき、意味がよく分からず目がうつろになった経験はないだろうか。それは、あなただけではないようだ。症状に関する質問票に患者が混乱することは珍しくなく、それが身体的疾患や精神疾患の診断や治療の妨げになっている可能性のあることが、新たな研究で示された。米アリゾナ大学ツーソン校心理学分野のZachary Cohen氏らによるこの研究結果は、「JAMA Psychiatry」に12月17日掲載された。 この研究は、うつ病の重症度評価ツールとして広く用いられているPatient Health Questionnaire(PHQ)に焦点を当てたもの。PHQには、PHQ-2、PHQ-8、PHQ-9など質問項目の数に応じて複数のバージョンがある。しかし、最もよく用いられているPHQ-9でも、質問内容が患者にとって分かりにくい場合があると研究グループは指摘している。この研究では、PHQの質問が症状にどの程度、悩まされたかを尋ねる一方で、回答選択肢は症状の発生頻度に焦点を当てている点に着目し、参加者がこれらの質問と選択肢をどのように理解して反応したかが検討された。 Cohen氏らは、Amazon Mechanical Turk(MTurk)で募集した一般集団503人(平均年齢40.63歳)およびOPTIMA研究の参加者である中等度から重度の抑うつを有する349人(平均年齢33.44歳)を対象に、PHQ-8に回答してもらった。その後、PHQ-8の指示内容をどのように解釈したかを、以下の3つの質問で評価した。まず、「ほぼ毎日眠り過ぎているが、そのことに悩まされていない」という睡眠に関する仮想シナリオを参加者に考えてもらい、その上でPHQ-8の「眠り過ぎ」の質問に回答してもらった。この質問では、「0(全くない)」の回答が「眠り過ぎていることに悩まされていない」を意味する。次に、先の回答は、症状に悩まされた程度に基づいたのか、症状の発生頻度に基づいたのか、それともその両方かを尋ねた。最後に、再びPHQに答える際には2つ目の質問で挙げた3つのうちどれを基準に回答するかと尋ねた。 その結果、仮想シナリオに関してPHQ-8の質問の意図を正しく理解できていた、つまり、症状にどの程度悩まされたかを回答していた人の割合は、MTurk群で54.7%、OPTIMA群では15.5%にとどまっていた。この質問についてCohen氏は、「PHQ-8の指示文を文字通り読めば、この場合は『全くない』と答えるはずだ」と指摘している。また、2つ目の質問について、「症状にどの程度悩まされたか」に基づいて回答したと答えた人の割合は、MTurk群で21.3%、OPTIMA群で11.7%にとどまり、さらに、次回以降も同じ解釈をすると答えた人の割合はそれぞれ22.3%と9.9%であった。 Cohen氏は、「これらの結果は、PHQによる評価は患者が実際に経験していることを正確に反映していないことを示唆している。われわれは多くの場合、患者の抑うつ症状について把握するためにPHQを使う。そうした意味で、『どの程度悩まされていたか』という点は非常に重要だ」と話す。同氏は、「例えば、GLP-1受容体作動薬による減量治療が急増しているが、オゼンピック使用者の食欲低下はうつ症状として数えるべきではない。それが薬を使っている主な理由なのだから」と述べ、「PHQが普及している状況に鑑みると、こうした誤解や理解のずれは、非常に広範な問題につながりかねない」と懸念を示している。 Cohen氏はさらに、「同じ経験をしているのに、人によって正反対の回答をするという状況が望ましいとは考えにくい。それが良い結果をもたらすはずがない。この論文は、実際にそれが起きていること、そしてそれが問題になり得ることを示した」と述べている。その上で同氏は、「今後の研究では、患者にとってより分かりやすくなるよう、質問文の言い回しを変更することに焦点を当てるべきだ」との考えを示している。

1060.

肥満症の治療にアミリン受容体作動薬は登場するか?(解説:小川大輔氏)

 肥満症の治療において最も基本となるものが食事療法と運動療法であるが、これらに取り組んでも効果が不十分な場合は薬物療法が検討される。GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は糖尿病治療薬として開発されたが、体重減少効果もあるため近年は肥満症治療薬としても承認されている。GIPやGLP-1以外にも肥満症の新しい治療標的が探索されているが、その1つがアミリン(amylin、別名:IAPP)と呼ばれるホルモンである。 アミリンは、インスリンと共に膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンで、胃の動きを遅らせて糖の吸収を穏やかにする、あるいはグルカゴン分泌を抑制するなど、血糖値の調節に関わることが知られている。また脳に作用して満腹感を高める作用もあり、食欲抑制に重要な役割を果たしていると考えられている。アミリンの働きを模倣するアミリンアナログが糖尿病や肥満症の治療薬として開発され、米国ではすでにpramlintideが糖尿病の治療薬として承認されているが、作用時間が短く1日3回の注射製剤のため使用は限定的である。 eloralintideは長時間作用の選択的アミリン受容体作動薬で、今回肥満患者を対象とした第II相試験の結果が発表された1)。プラセボ群と比較しeloralintide投与群では48週後の体重の平均変化率が9~20%減少と、有意な体重減少効果を認めた。主な有害事象としては悪心、便秘、下痢などの消化器症状と疲労であった。 肥満症の治療薬としてGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬がすでに使用されており、今後「トリプルアゴニスト」と呼ばれるGIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬や、新規の経口GLP-1受容体作動薬が登場する予定である。アミリン受容体作動薬としては2021年にcagrilintideが第II相試験で肥満症に対して有効性が確認され2)、さらに2025年にcagrilintideとGLP-1受容体作動薬セマグルチドの配合薬が肥満・過体重の減量に効果があることが報告された3)。今後eloralintideを含め、アミリン受容体作動薬が肥満症の治療薬として日本で使用できるようになるか、引き続き注目したい。

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