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妊娠糖尿病の診断基準、低vs.高血糖値でLGA児リスクの差は?/NEJM

 妊娠糖尿病の診断基準として低めの血糖値を用いても、高めの血糖値を用いた場合と比較し、在胎不当過大(LGA)児を出産するリスクは低下しないことを、ニュージーランド・オークランド大学のCaroline A. Crowther氏らが無作為化試験「Gestational Diabetes Mellitus Trial of Diagnostic Detection Thresholds:GEMS試験」の結果、報告した。妊娠糖尿病の治療は母子の健康を改善するが、その診断基準ははっきりしないままであった。NEJM誌2022年8月18日号掲載の報告。妊婦を低め/高めの基準値群に無作為化し、LGA児出生を比較 研究グループは、2015年4月~2020年8月の期間に、妊娠24~32週の妊婦を、妊娠糖尿病の診断基準として低めの血糖値を用いる群(低基準値群、2,022例)と高めの血糖値を用いる群(高基準値群、2,039例)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 低基準値群は、75g経口ブドウ糖負荷検査(OGTT)において、(1)空腹時血糖値≧92mg/dL(5.1mmol/L)、(2)1時間値≧180mg/dL(10.0mmol/L)、(3)2時間値≧153mg/dL(8.5mmol/L)のいずれかを満たした場合、高基準値群は、(1)空腹時血糖値≧99mg/dL(5.5mmol/L)、(2)2時間値≧162mg/dL(9.0mmol/L)のいずれかを満たした場合とした。 主要評価項目は、LGA児(出生時体重がFenton-WHO成長曲線の>90パーセンタイルと定義)の出生、副次評価項目は母子の健康状態などであった。低基準値群で妊娠糖尿病の診断・治療は高頻度も、LGA児出生は高基準値群と同等 妊娠糖尿病と診断された妊婦は、低基準値群で2,022例中310例(15.3%)、高基準値群で2,039例中124例(6.1%)であった。出生後、退院時まで追跡調査が完了した新生児は、低基準値群で2,019例、高基準値群で2,031例であり、このうちLGA児はそれぞれ178例(8.8%)および181例(8.9%)であった(補正後相対リスク:0.98、95%信頼区間[CI]:0.80~1.19、p=0.82)。 分娩誘発、医療サービスの利用、薬剤の使用、および新生児低血糖は、高基準値群と比較して低基準値群で高頻度であったが、その他の副次評価項目の結果は両群で類似しており、有害事象について実質的な群間差は確認されなかった。 75gOGTTの検査値が、低基準値と高基準値の間に位置していた妊婦のうち、妊娠糖尿病の治療を受けた195例は、治療を受けなかった178例と比較し、LGA児が少ないなど母子の健康への有益性が認められた。

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コロナvs.インフル、入院患者の血栓塞栓症リスク/JAMA

 米国・ペンシルベニア大学のVincent Lo Re III氏らによる、米国の公衆衛生サーベイランスシステムのデータを用いた後ろ向きコホート研究の結果、COVID-19入院患者はワクチンの導入前か実施期間中にかかわらず、2018/2019シーズンのインフルエンザ入院患者と比較し、入院後90日以内の動脈血栓塞栓症リスクに有意差はないものの静脈血栓塞栓症リスクが有意に高いことが示された。これまで、COVID-19患者における動脈血栓塞栓症および静脈血栓塞栓症の発生率は不明であった。JAMA誌2022年8月16日号掲載の報告。入院後90日以内の動脈/静脈血栓塞栓症の発症を比較 研究グループは、米国食品医薬品局センチネルシステムから4つの地域統合医療システムと2つの医療保険会社のデータを利用し、ワクチン導入前(2020年4月~11月)のCOVID-19入院患者4万1,443例、ワクチン実施期間中(2020年12月~2021年5月)のCOVID-19入院患者4万4,194例、ならびにCOVID-19の重複感染がない2018年10月~2019年4月のインフルエンザ入院患者8,269例(いずれも診断時に18歳以上)を抽出し、後ろ向きに解析した。 主要評価項目は、入院日から90日以内の動脈血栓塞栓症(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中)または静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓症)の診断であった。追跡期間は、インフルエンザ患者は2019年7月まで、COVID-19患者は2021年8月までとした。 インフルエンザコホートとCOVID-19コホート間の差異に対応するため層別化した傾向スコアを作成し、重み付けCox回帰を用いて各COVID-19入院患者群のインフルエンザ入院患者群に対する血栓性イベントの補正後ハザード比(aHR)を算出し評価した。COVID-19入院患者で、静脈血栓塞栓症リスクが有意に高い 患者背景は、COVID-19患者群(計8万5,637例)が平均(±SD)年齢72±13.0歳、男性50.5%、インフルエンザ患者群がそれぞれ72±13.3歳、45.0%であった。 動脈血栓塞栓症の90日絶対リスクは、インフルエンザ患者群14.4%(95%信頼区間[CI]:13.6~15.2)に対し、ワクチン導入前COVID-19患者群15.8%(15.5~16.2)(群間リスク差:1.4%、95%CI:1.0~2.3)、ワクチン実施期間中COVID-19患者群16.3%(16.0~16.6)(群間リスク差:1.9%、95%CI:1.1~2.7)であった。インフルエンザ患者群と比較し、動脈血栓塞栓症リスクは、ワクチン導入前COVID-19患者群(aHR:1.04、95%CI:0.97~1.11)およびワクチン実施期間中COVID-19患者群(1.07、1.00~1.14)のいずれも、有意な上昇は認められなかった。 一方、静脈血栓塞栓症の90日絶対リスクは、インフルエンザ患者群5.3%(95%CI:4.9~5.8)に対し、ワクチン導入前COVID-19患者群9.5%(9.2~9.7)(群間リスク差:4.1%、95%CI:3.6~4.7)、ワクチン実施期間中COVID-19患者10.9%(10.6~11.1)(群間リスク差:5.5%、95%CI:5.0~6.1)であり、静脈血栓塞栓症リスクはインフルエンザ患者群と比較して、ワクチン導入前COVID-19患者群(aHR:1.60、95%CI:1.43~1.79)およびワクチン実施期間中COVID-19患者群(aHR:1.89、95%CI:1.68~2.12)のいずれも有意に高かった。

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古いほど良い:友と酒とCABG?(解説:今中和人氏)

 血行再建後の抗血小板療法に関して熱く議論されてきたPCIに引き換え、CABGだって術後は何かしら抗血小板薬を投与はするものの、PCIと違って新製品なんて出てこないし、それ以上に外科医の“さが”というか、どうしても手技そのものにばかり関心が向いてしまって、グラフト素材やオフポンプ手術に比べて、投薬については議論が盛り上がっていない印象は否めない。 本論文の中心テーマは、大伏在静脈を用いたCABG術後のチカグレロル追加の便益で、アスピリン単剤かチカグレロル併用DAPT、またはチカグレロル単剤を投与した患者で、中期遠隔期のグラフト開存性を確認した前向き無作為化試験4本のメタ解析である。用量はアスピリン81~100mg、チカグレロルは90mgで、1次エンドポイントは12ヵ月以内の静脈グラフト不全と出血イベント、2次エンドポイントはMACCEとした(実際は4論文中2本がアスピリン単剤とDAPTの比較、1本はアスピリン単剤とチカグレロル単剤の比較、1本がアスピリン単剤、DAPT、チカグレロル単剤の3群比較)。 静脈グラフト不全はCTかCAGでの閉塞ないし50%以上の狭窄と定義し、出血イベントはBleeding Academic Research Consortium(BARC)の基準を用いている。これは医学的に問題とならないType 1から致死的なType 5まで分かれており、本論文では臨床的に有意で対処を要するType 2、Hb 3g/dLを超える低下や輸血を要するType 3、致死的出血であるType 5の3カテゴリーを「出血イベント」と定義した。 DAPT 435例とアスピリンSAPT 436例の比較では、年齢は67歳と66歳(男性85%)、人工心肺下手術は両群69%、平均バイパス本数2.3本、内視鏡的静脈採取が4.6% vs.6.1%であった。12ヵ月以内の静脈グラフト不全はDAPT群11.2% vs.SAPT群20.0%、閉塞は9.6% vs.16.2%と、チカグレロルの併用により有意に抑制された一方、出血イベントはDAPT群22.1% vs.SAPT群8.7%と有意に増加した(致死的なType 5は両群ゼロ)。このあたりのtrade-offはPCIのスタディで毎度おなじみである。 ただし画像上のグラフト不全は減ったものの、心臓死はともに0.7%、急性心筋梗塞は1.8% vs.1.4%、追加血行再建は2.8% vs.1.6%と有意差はないがむしろDAPT群で多く、脳卒中が1.4% vs.2.5%とDAPT群で少なかった。つまりアスピリン単剤で臨床的に重要なキー・グラフトの開存は同等に得られており、出血イベントは断然少ない。なお、チカグレロル単剤群はメリットもデメリットも有意差がないので、抗血小板薬は古い「ほど」良い、では言い過ぎで、古い「けど」良い、といったところ。 印象的だったのはサブ解析で、人工心肺下CABG術後の静脈グラフト不全はDAPT群10.0%、SAPT群15.4%だが、オフポンプ手術ではDAPT群14.0%に対しSAPT群32.1%に跳ね上がる。換言すると、オフポンプCABG後にアスピリン単剤では1年以内に3分の1がグラフト不全になってしまう。ぜひともDAPTを入れたくなる結果だが、DAPTにすればもちろん、前述の出血イベントを覚悟せねばならない。すると当然、「そもそもオフポンプCABGのメリットって何だっけ?」という疑問が湧いてくる。 この議論はとても長くなるが、10年前、オフポンプCABGは不利益が多い、と喝破した前向き無作為化のROOBY試験に対して、「これはVA(退役軍人病院)のスタディだから、技術レベルが低いだけだ」という、ちょっと大声では言いにくい反論がかなりあった。今回は有名施設も含む北米、オランダ、中国からの前向き無作為化論文のメタ解析である。症例数は十分多いとは言えないが、オフポンプ派のご意見はいかがであろうか? 古いほど良いと言えば友と酒、女房と鍋釜が定番のようだが、もしかしてCABGも?

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コロナワクチン第4弾!【Dr. 中島の 新・徒然草】(440)

四百四十の段 コロナワクチン第4弾!コロナ第7波は相変わらず猛威を振るっています。当院でも医療スタッフが次々にPCR陽性となり、現場の人手不足が目立つようになりました。そんな中、4回目のコロナワクチンが始まりました。私自身は過去3回ともファイザーでしたが、今回はモデルナに割り当てられました。未体験のワクチンだと、何となく不安です。先に済ませた人たちには「発熱で翌日は休んでいた」とか「腕が腫れた」とか、恐ろしい話を聞かされました。「ちょっと大げさ過ぎるのと違うか」と思いつつも、不安が募ってきます。で、いよいよ恐怖のコロナワクチン第4弾、打った感想は?結論から言うと、ファイザーの2回目や3回目より楽でした。2回目の最高体温は38.1度、3回目のそれは38.0度だったのに対し、4回目は37.7度だったのです。とはいえ、過去3回の経験に学んで、カロナールやロキソニンは早めに服用しました。金曜日午後3時頃に接種し、その3時間後に寒気を感じたのでまず1錠、以後はほぼ6時間ごとに土曜日の18時までカロナールかロキソニンを服用。幸い土曜日と日曜日はどこにも行かずに済んだので、1日中布団に寝てゴロゴロしていました。結局、日曜日の朝に1錠、月曜日の朝にもう1錠、ロキソニンを追加で飲んだだけで済みました。カロナールとロキソニン合わせて7錠です。発熱と寒気、頭痛の軽いものはあったものの、全部で60時間ほどの持続で済みました。早めの服薬と、無理せずに寝ていたのが良かったのかもしれません。もちろんワクチンを打ったからといって、調子に乗って外に出掛けることは控えておきます。今後も自宅か病院に籠って、コロナ禍をやり過ごそうと決意を新たにしました。読者の皆様も、どうぞお気を付けてお過ごしください。最後に1句ワクチンを 打ってゴロゴロ 夏休み

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注目高まる、緩和目的の放射線治療と神経ブロック【非専門医のための緩和ケアTips】第34回

第34回 注目高まる、緩和目的の放射線治療と神経ブロックがん疼痛に対し、医師がまず試みるのはオピオイドなどの薬物療法でしょう。一方、薬物療法だけではなかなか緩和できない痛みがあることも事実です。そのような時に強い味方になるのが「放射線治療」と「神経ブロック」です。あまりなじみのない方も多いかもしれませんが、最近注目されている分野です。今日の質問オピオイドで鎮痛を試みても、がん疼痛がなかなか緩和しない患者さん。本人はつらそうですし、私たちも無力感が募ります。こういった難治性のがん疼痛はどのように対応したらよいのでしょうか?緩和ケアを実践する立場として切実な問題ですよね。こうした薬物療法で緩和できないがん疼痛は、「難治性がん疼痛」としてアプローチする必要があります。そこで重要になるのが薬物以外の介入です。その代表が、「放射線治療」と「神経ブロック」です。放射線治療はがん治療において広く使われていますが、がん疼痛を緩和する目的でも活用できます。とくに骨転移の痛みに対して非常に重要です。放射線治療の難点を挙げれば、「専門とする医師が少ない」ことと「放射線治療の装置が必要となるためにがん拠点病院のような大規模の病院でしか提供できない」ことです。さらに、放射線治療は通院で行うことが多いため、「通院の負担をある程度許容できる患者さんである」ことも条件です。ただし、症状緩和を目的とした放射線治療は照射回数を少なくするなど負担軽減の工夫も可能です。直接、放射線治療医に相談してみるとよいでしょう。続いて紹介するのが、神経ブロックです。最も有名なのが、膵臓がんにおける難治性がん疼痛に対して行うものです。CTで事前にターゲットになる神経叢を評価し、透視下で実施するケースが多いでしょう。痛みを伝える神経に直接アプローチするため、高い鎮痛効果を期待できます。神経ブロックも放射線同様に、術者が少ないことが課題です。麻酔科の先生が対応していることが多いのですが、専門に取り組んでいる方はなかなかいないのが現状です。このように放射線治療も神経ブロックも提供体制に課題を抱えており、自分の診療地域の状況を把握しておく必要があります。提供体制の課題の背景には、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。医師育成や地域の配分、キャリア選択など、いろいろな論点があるのですが、まずはこういった難治性がん疼痛に対する知識を身に付けることが重要です。その上で、自分が診療しているエリアにおいては、どの医療機関がどういった連携や提供体制を整備しているのか、情報収集しましょう。これらの難治性がん疼痛に対する治療は、今後、整備が進むことが予想されます。とくにがん拠点病院においては、地域連携も含めたしっかりした提供体制の構築が求められることになりそうです。先日開催された日本緩和医療学会の学術集会においても、難治性がん疼痛に対する放射線治療および神経ブロックの提供体制を向上させる議論が活発に行われました。今後の動きに注目していただければと思います。今回のTips今回のTips放射線治療と神経ブロックもがん疼痛には大切な治療法。自分の地域の提供体制を確認してみよう。

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添付文書だけではわからない!?サル痘ワクチンの打ち方

添付文書だけではわからない!?サル痘ワクチンの打ち方サル痘が国内でも確認されたことを契機に、8月2日、天然痘ワクチンに対し「サル痘予防」の効能追加が承認されました。しかし、その接種方法はかなり特殊なため、事前に理解していないと思わぬ落とし穴にはまる可能性もあります。もちろん添付文書にも接種方法や注意事項の記載はありますが、動画で見ておくと、実際にイメージしやすいのではないでしょうか。そこで、国立国際医療研究センター病院が医療者向けに配信している『天然痘(痘そう)ワクチンの準備から接種まで』の字幕解説付き動画を同施設の許可を得て、CareNet.comでも配信します。いつ自分が接種対象者、接種者になるかは分かりませんが、この機会にぜひご覧ください。本編では調剤から接種後の注意点までが丁寧に解説されています。<内容>調剤および接種に必要な物品調剤接種また、同施設では職員向け資料として、「乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」接種手順ガイド」も公開しており、テキストのみで手順を確認したい場合、添付文書のなかでとくに注意が必要な点を知りたい場合に有用です。※本ガイドは7月22日に作成されており、8月2日の効能追加承認による添付文書改訂(種痘回数など)が反映されていないため、現在Ver.2を作成中とのこと。参考国立国際医療研究センター病院:サル痘の予防について

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第8回 コロナ療養期間がさらに短縮か

現在の新型コロナの療養期間現在、新型コロナが陽性になった場合、無症状であれば検体採取日を0日目として8日目に療養解除、有症状であれば発症日を0日目として11日目に療養解除となります(図1)。コロナ病棟に入院いただく患者さんも退院基準を満たしたら基本的に自宅に帰ることから、おおむね10日間は入院が必要になります。図1. 2022年8月24日時点の無症状陽性者と有症状陽性者の療養期間(筆者作成)しかし、中には10日間が長過ぎるということで、自己退院される患者さんもいます。同居の家族が陽性で、自宅療養に問題がなければ退院してもよいのですが、そういった条件がなかったとしても、こちらとしても何ら強制できるものでもありません。個人的には医学的に落ち着いている人であれば、自宅に戻っていただいて構わないと思っているのですが、交通手段が問題になることが多いです。「病院の前のタクシーを使ってもらってOKですよ」なんて口が裂けても言えないわけで。かといって、介護タクシーやコロナタクシーのような特別な搬送をお願いすると、コストが高くつきます。2日間の短縮案現在、さらに2日間前倒しして、無症状を5日間、有症状を7日間に短縮してはどうかという案が出ています(図2)。濃厚接触者の待機期間が以前緩和されたときにも議論になりましたが、要は「社会がどこまで感染リスクを背負えるか」という点に尽きます。図2. 無症状陽性者と有症状陽性者の療養期間(案)(筆者作成)PCRで新型コロナ陽性と判明した後、感染性のウイルスが検出されなくなるまでの期間は、デルタ株が平均4日、オミクロン株が5日とされています(統計学的な有意差はなし)1)。PCRが陰性になるまでの期間は、それぞれ10日と11日でした。これは症状よりも長引くことが知られていますよね。ただ、このBoucau氏らの報告でも指摘されていますが、感染性のウイルスの排出期間というのは個々のばらつきが非常に大きいのです。そのため、療養期間を短くするほど、感染者が外に出てくるリスクが高いわけで、この施策が感染者数の増加に影響しないかどうかが懸念となるわけです。ただ、米疾病対策センター(CDC)では、感染者の療養期間をすでにマスク着用の条件で5日間まで短縮しており、日本のようにマスクのアドヒアランスが極めて高い国では、短縮はさほど問題にならないと考えています。参考文献・参考サイト1)Boucau J, et al. Duration of Shedding of Culturable Virus in SARS-CoV-2 Omicron (BA.1) Infection. N Engl J Med. 2022 Jul 21;387(3):275-277.

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うつ病リスクは旅行をしないと高くなる?高齢者の旅行とうつ病との関係

 韓国・ソウル大学のSeungjae Hyun氏らは、うつ病と旅行との相互関係を調査した。その結果、旅行しない人はうつ病リスクが高くなり、旅行とうつ病との間には相互関係があることが報告された。Annals of General Psychiatry誌2022年8月10日号の報告。うつ病リスクが1年間の旅行の有無で70%高く プロスペクティブコホート研究である韓国縦断研究(Korean Longitudinal Study of Ageing)より2008~16年のデータを用いて、参加者8,524人(平均年齢:63.1±10.5歳)を抽出し、分析を行った。うつ病の診断には、10項目のうつ病自己評価尺度(CES-D10)を用い、スコア4以上をうつ病と定義した。統計分析は、一般化推定方程式および交差遅延パネルモデルを用いた。 うつ病と旅行との相互関係を調査した主な結果は以下のとおり。・1年間旅行しなかった参加者は、旅行した参加者と比較し、翌年のうつ病リスクが71%高かった(相対リスク[RR]:1.71、p<0.001)。・うつ病の参加者は、非うつ病の参加者と比較し、旅行しないリスクが2倍以上高かった(RR:2.08、p<0.001)。・交差遅延パネルモデルでは、旅行での移動距離とうつ病のCES-D10スコアとの間に悪循環が観察された。より頻繁に旅行する参加者は、CES-D10スコアが低くなる傾向があり(係数:-0.04~-0.03、ps<0.01)、CES-D10スコアが高い参加者ほど、旅行する可能性が低かった(係数:-0.06~-0.03、ps<0.01)。

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オミクロン流行期、小児コロナ入院患者の症状に変化/国立成育医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波が全国的に猛威をふるっている。一般報道では第7波の特徴として小児の陽性感染が多いことが指摘され、全国の小児科はいつにも増して診療を待つ患者であふれているという。小児がCOVID-19に感染した場合、症状が軽微とあると従来言われてきたが、実際入院した患者ではどのような特徴があるだろう。 国立成育医療研究センター感染症科の庄司 健介氏らのグループは、国立国際医療研究センターの研究チームと合同で、オミクロン株流行期における小児新型コロナウイルス感染症による入院例の疫学的・臨床的な特徴を、デルタ株流行期と比較検討し、その結果を公表した。 この研究は、国立国際医療研究センター運営の国内最大のCOVID-19レジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」利用し、今回初めてわが国の小児COVID-19患者の特徴を、オミクロン株流行期とそれ以前とで比較した大規模な研究となる。 本研究は、デルタ株流行期(2021年8月~2021年12月)、オミクロン株流行期(2022年1月~3月)に、それぞれの期間に登録された18歳未満の小児COVID-19入院例847人(デルタ株流行期:458人、オミクロン株流行期:389人)を対象に実施したもの。その結果、オミクロン株流行期は、デルタ株流行期に比べて2~12歳の患者で発熱やけいれんが、13歳以上の患者では咽頭痛が有意に多かったことが判明した。一方で、6歳以上の患者の嗅覚・味覚障害はオミクロン株流行期には少なかったこともわかった。 また、新型コロナウイルスワクチンの接種歴の有無が入力されていた790名に着目してみると、酸素投与・集中治療室入院・人工呼吸管理などのいずれかを要した「より重症と考えられる患者」43名は、いずれも新型コロナウイルスワクチン2回接種を受けていなかったことからワクチン接種が子ども達を重症化から守る方向に働いている可能性があることも示唆された。オミクロン株流行期では発熱やけいれんが多い【背景・目的】わが国におけるオミクロン株流行期の小児COVID-19の臨床的特徴についての情報の解明【研究概要・結果】研究対象:2021年8月~2021年12月(デルタ株流行期)と2022年1月~3月(オミクロン株流行期)の間にCOVIREGI-JPに登録された18歳未満のCOVID-19患者研究方法:COVIREGI-JPに登録されている、患者の背景や臨床経過、ワクチン接種歴、予後などのデータを集計・分析【研究結果概要】・研究対象となった18歳未満の患者はデルタ株流行期458人、オミクロン株流行期389人。・入院患者の年齢の中央値はデルタ株流行期が8歳、オミクロン株流行期が6歳。オミクロン株流行期の方が若年化している傾向にあった。・オミクロン株流行期は、デルタ株流行期に比べて2~12歳の患者で発熱やけいれんが、13歳以上の患者では咽頭痛が有意に多くあった。一方で、6歳以上の患者の嗅覚・味覚障害はオミクロン株流行期に少なかった。・酸素投与を要した患者はオミクロン株流行期に多かったが、人工呼吸管理や集中治療室入院を要した患者の数、割合には大きな変化はなかった。・新型コロナワクチン2回接種を終えていた患者は、研究対象847人のうち50人(5.9%)だった(接種の有無不明は57人)。この50人は、いずれも軽症だった。・ワクチン接種歴の有無が判明していた790人の中で、酸素投与、集中治療室入院、人工呼吸管理のいずれかを要したより重症と考えられる患者43人のうち、新型コロナワクチン2回接種を受けていた患者はいなかった。ワクチンが重症化から子ども達を守る これらの研究結果を踏まえ庄司氏らは、「発熱やけいれんが増えていたことは、小児COVID-19の診断を考える上で重要な情報と考えられる。また、小児新型コロナワクチン接種者自体が少ない時期の研究なので限界はあるが、ワクチン接種が子ども達をCOVID-19の重症化から守る方向に働いている可能性を示唆している結果であったことは重要な結果と考える。小児COVID-19の特徴はそのときに流行している変異株により変化しうるので、引き続き情報の収集、解析を続けていくことが重要」と今後の展望を述べている。※なお、本研究は、オミクロン株(BA.5)流行前に実施されているためその影響は検討できていないこと、また、それぞれの株が国内の主流であった時期の患者を比較した研究であることなど注意を喚起している。

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イベルメクチン、メトホルミン、フルボキサミンはコロナ重症化を予防せず/NEJM

 メトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミンはいずれも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した低酸素血症や救急外来受診、入院または死亡の発生に対する予防効果はないことが、米国・ミネソタ大学のCarolyn T. Bramante氏らが行った第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、示された。3剤は、SARS-CoV-2感染早期の外来患者への投与でCOVID-19重症化を予防できるのではと期待されていた。NEJM誌2022年8月18日号掲載の報告。SARS-CoV-2感染3日以内、発症7日以内の過体重/肥満の外来成人患者に投与 研究グループは2×3要因デザイン法を用いて、SARS-CoV-2感染確認から3日以内、発症から7日以内の外来成人患者に対し、メトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミン3種の薬剤のドラッグ・リパーパシングとして、COVID-19の重症化予防効果を検証した。被験者は30~85歳で、過体重または肥満だった。 主要エンドポイントは、低酸素血症(自宅測定での酸素飽和度≦93%)、救急外来受診、入院、死亡の複合とした。 全解析は、同時に無作為化した対照群を用い、SARS-CoV-2ワクチン接種状況や、他の試験薬の使用で補正を行った。主要複合イベント補正後オッズ比、0.84~1.05でいずれも有意差なし 合計1,431例が無作為化を受け、主要解析は1,323例を対象に行われた。被験者は年齢中央値46歳、56%が女性(うち6%が妊婦)で、52%がワクチン接種歴ありだった。 主要複合イベント発生に関する補正後オッズ比は、メトホルミン群0.84(95%信頼区間[CI]:0.66~1.09、p=0.19)、イベルメクチン群1.05(0.76~1.45、p=0.78)、フルボキサミン群0.94(0.66~1.36、p=0.75)だった。 事前に規定した副次解析において、救急外来受診、入院、死亡に関する補正後オッズ比は、メトホルミン群0.58(95%CI:0.35~0.94)、イベルメクチン群1.39(0.72~2.69)、フルボキサミン群1.17(0.57~2.40)だった。また、入院または死亡に関するオッズ比は、それぞれ0.47(0.20~1.11)、0.73(0.19~2.77)、1.11(0.33~3.76)だった。 結果を踏まえて著者は、「過体重/肥満の成人患者を対象に行った今回の無作為化試験では、検討した3剤は、主要複合イベントをいずれも予防できなかった。事前規定の副次解析において、メトホルミンは救急外来受診、入院、死亡を減らす可能性があることが示唆されたが、3剤ともそれぞれマッチさせたプラセボ投与よりも、重症度が低かった薬剤はなかった」とまとめている。

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固形がんの第I相試験、20年間で奏効率2倍に/Lancet

 2000~19年に行われた固形がんに関する第I相臨床試験の奏効率は、治療関連の死亡率を増大することなく2倍近くになっていることが判明した。一方で、同期間の奏効率の改善は、がんの種類、治療薬、試験デザインなどさまざまな要因によるばらつきも認められたという。米国・国立がん研究所(NCI)のDai Chihara氏らが、がん治療評価研究プログラム(Cancer Therapy Evaluation Program:CTEP)の患者データを分析し明らかにした。Lancet誌2022年8月13日号掲載の報告。治療関連死、Grade3-4毒性、奏効率を評価 研究グループは、2000年1月1日~2019年5月31日に行われたNCIが資金を提供した研究者主導の固形がんに関する第I相臨床試験のCTEPから患者データを集めて分析した。治療関連死(「おそらく」・「十中八九」・「明確に」治療に起因するGrade5の毒性による)、治療中の全死亡(がん種にかかわらずプロトコール治療中の死亡)、Grade3-4の毒性、全奏効の程度(完全奏効および部分奏効)、対象期間中(2000~05年、2006~12年、2013~19年)の完全奏効率、および経時的傾向を評価した。 また、がんの種類別、治療薬別奏効率や、がん種別奏効の経時的傾向についても分析した。 患者のベースライン特性(年齢、性別、全身状態、BMI、アルブミン濃度、ヘモグロビン濃度)および試験登録期間、治療薬、試験デザインと全奏効率との単変量解析を、修正ポアソン回帰モデルに基づくリスク比を用いて評価した。全期間全奏効率は約12%、完全奏効率は約3% 被験者総数1万3,847例、試験薬数261、465件のプロトコールについて解析を行った。そのうち、単剤療法は144件(31%)で併用療法は321件(69%)だった。 全体の治療関連死亡率は、全期間で0.7%(95%信頼区間[CI]:0.5~0.8)だった。治療関連死亡リスクに、全期間で変化はなかった(p=0.52)。試験期間中の治療中の全死亡リスクは、8.0%(95%CI:7.6~8.5)だった。 最も多く認められたGrade3-4有害イベントは血液学的なもので、1万3,847例のうち、Grade3-4の好中球減少症2,336例(16.9%)、リンパ球減少症1,230例(8.9%)、貧血894例(6.5%)、血小板減少症979例(7.1%)が、それぞれ報告された。 全試験の全奏効率は、全期間で12.2%(95%CI:11.5~12.8、1,133/9,325例)、完全奏効率は2.7%(2.4~3.0、249/9,325例)だった。全奏効率は2000~05年の9.6%(95%CI:8.7~10.6)から2013~19年の18.0%(15.7~20.5)に、完全奏効率は同じく2.5%(2.0~3.0)から4.3%(3.2~5.7)にそれぞれ上昇した。 全奏効率は、単剤療法が3.5%(95%CI:2.8~4.2)に対し併用療法が15.8%(15.0~16.8)と高率だった。 試験薬のクラス別全奏効率は、疾患により異なった。また、抗血管新生薬は、膀胱がん、大腸がん、腎臓がん、卵巣がんで高い全奏効率と関連していた。DNA修復阻害薬は、卵巣がん、膵臓がんで高い全奏効率と関連していた。 全奏効率の経時的傾向も疾患により大きく異なり、膀胱がん、乳がん、腎臓がん、皮膚がんは著しく改善したが、膵臓がんと大腸がんでは全奏効率は低いまま変わらなかった。 これらの結果を踏まえて著者は、「第I相臨床試験への参加について、試験前に患者に情報を提供したうえで意思決定を求めることが非常に重要だ」と述べながら、「今回の試験結果は、固形がんの最新の第I相臨床試験の有望なアウトカムをアップデートするものである」とコメントしている。

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ジェネレーションギャップを愚痴ってみた!プチ褒めに疲れました【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第51回

第51回 ジェネレーションギャップを愚痴ってみた!プチ褒めに疲れましたこのコラムの執筆のネタは、自分ひとりで考え出しているわけではありません。ケアネット編集部の方々からのヒントも参考にしております。「最近の若い先生方はパソコンをあまり使わない(スマホで済ませる)などと耳にしますが、中川先生もそのあたりのギャップなど感じることあるでしょうか?」との意見を頂戴しました。うーん、面白いポイントです。ネタとして採用です。このコラムの読者の皆さまは、パソコンでキーボードを叩きながら文章を打ち込むことは可能と思います。今の大学生たちは必ずしもそうではなく、パソコンが苦手な若者が急速に増えています。パソコンが使えない年齢層といえば中高年というのが通り相場で、若い世代はパソコンが得意というイメージを持っている方も多いと思います。スマートフォンやタブレットの普及により、若者のパソコン離れが進んでいます。20年くらい前までは、パソコンを使うといえば WordやExcelといったアプリケーションを使うことと同じでした。その後、インターネットが急速に普及し、電子メールによる情報交換やブラウザを使ってWebから情報を得ることが日常化します。しかし、それはパソコンを用いての作業でした。スマートフォンやタブレットが登場し、世の中が変わったのです。パソコンとキーボードの操作方法を習得してから机に向かってインターネットを楽しむ時代から、スマートフォン片手に簡単な操作でインターネットを楽しむ時代へと移行しました。操作にスキルを必要としないため、インターネットを使い始める年齢層が低下し、常に持ち運びできるデバイスなので、利用時間も格段に長くなりました。極端にいえば、親のスマホが子守り役で、物心がつく前から画面をタッチしていた世代です。パソコンを個人として保有したことがない学生もいます。レポート作成のすべてをスマートフォンで完了させるツワモノも登場します。全文をフリップ入力で打ち込むそうです。キーボードやマウスに慣れ親しんでいない者は、医師になってから研究活動や論文作成で苦労するように感じます。このような人は、フォルダや階層構造という概念の理解が不十分なのです。この考え方はデータ管理の基本となります。スマートフォンも、実際にはフォルダや階層構造を用いています。意識しなくとも直感的に作業が可能であることは利点ですが、理論的思考が訓練されず、作業効率も悪く、不十分なデータ整理に繋がります。ここまで書き進めて、あることに気づきました。自分自身がパソコンとキーボードと共に情報化社会への対応を経験してきた世代の人間で、無意識のうちにスマートフォンやタブレットで成長してきた世代を容認できず、彼らを批判的に感じていることです。一見、パソコンからスマートフォンへの変遷を解説する文章を装いながら、若者を攻撃する嫌なジジイの愚痴を書き連ねてしまいました。反省です。世代間に生ずる知識・関心・考え方などの違いであるジェネレーションギャップは、引き継がれてきた命題です。世代が違えば育ってきた環境はまったく変わります。持っている知識や価値観が違うのは当たり前です。異世代同士はもともとすれ違う運命かもしれません。自分が意識したジェネレーションギャップの実例を紹介します。若い世代は、紙でメモを取らず写真を撮ります。なぜなら、スマートフォンで撮影しておけば瞬間で完了し、見返すのも便利だからです。講義中に映写されたスライドやホワイトボード(黒板ではない)に書かれた解説を撮影する学生も普通にいます。「ノートをちゃんと取れよ!」とイラっとする自分が教壇にいますが、彼らにはまったく悪気はありません。ここでのポイントは、彼らを叱ってはいけないことです。彼らは褒められることを好みます。それも盛大に褒めたたえるのではなく、軽く褒める「プチ褒め」が鍵だそうです。毎日毎日ちょっとずつプチ褒め続けることが新世代の若者の心をつかむコツであるそうです。さらに言わせてもらえば、ジェネレーションギャップを埋めることを諦めない物わかりの良い大人を演じることに少し疲れる自分がいます。今回紹介したジェネレーションギャップは、昭和世代と平成世代の間で起こりがちな事例です。令和世代に突入し、ジェネレーションギャップをめぐる攻防が激化することはあっても、解消することはないでしょう。世代間のギャップはあって当然です。ジェネレーションギャップを楽しむくらいの気持ちが大切なのでしょう。今回は、皆さまに愚痴をこぼしてしまいました。お付き合いいただきありがとうございました。愚痴を聞いてもらう相手は猫だけにするのが得策のようです。

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Dr.光冨の肺がんキーワード解説「ROS1」【肺がんインタビュー】 第84回

第84回 Dr.光冨の肺がんキーワード解説「ROS1」肺がんではさまざまなドライバー変異が解明されている。それに伴い、種々の標的治療薬が登場する。それら最新の情報の中から、臨床家が知っておくべき基本情報を近畿大学の光冨徹哉氏が解説する。

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入院中の不穏の原因はNOMI?致死率50%超の恐るべき疾患【知って得する!?医療略語】第18回

第18回 入院中の不穏の原因はNOMI?致死率50%超の恐るべき疾患血管に閉塞病変がなくても腸管虚血が起きることがあるのですか?腸間膜血管の攣縮が原因と推測されている、非閉塞性腸管虚血(NOMI)があります。NOMIは疑わないと診断できない疾患です。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】NOMI【日本語】非閉塞性腸管虚血【英字】non-occlusive mesenteric ischemia【分野】消化器【診療科】消化器内科・消化器外科【関連】腸管虚血実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。入院患者さんの急変原因は多々ありますが、急変疾患の1つに非閉塞性腸管虚血(NOMI:non-occlusive mesenteric ischemia)があります。今では教科書にもNOMIの記載を見かけるようになりましたが、私が初めてNOMIの患者を経験した当時は、まだNOMIは教科書にも記載されておらず、私が最初の症例を経験した時点では曖昧な知識しかありませんでした。NOMIの致死率は56~79%と非常に高く、私が経験した3例はすべて院内発症で2例は救命困難でしたが、救命成功例を振り返ると、やはり早期診断と迅速な治療方針の決定が重要な疾患だと考えます。しかし、NOMIは疑わないと診断することが難しいとされ、その発症しやすい患者の背景まで知っておく必要があります。NOMIとはNOMIは腸管虚血の1つで、腸間膜血管主幹部に器質的な閉塞を伴わずに非連続性の腸管血流障害を来たす疾患です。本邦の報告では腸管虚血の15~27%がNOMIであると報告されています。病態は腸間膜収縮、腸間膜血管攣縮、それに続発する末梢腸間膜動脈枝の攣縮により、腸管虚血を来し、そして腸管壊死に至る疾患です。NOMIのリスク因子として以下のようなものが挙げられており、血管内の低灌流が交感神経に反応し、血管攣縮を来し腸管虚血を来すとされています。心疾患(心不全)維持透析高齢糖尿病脱水周術期低拍出量症候群長時間の体外循環膵炎ショック不整脈熱傷出血薬剤(カテコラミン、利尿薬、ジギタリス)の使用NOMIの臨床像について、発症早期は特異的な臨床徴候が認められない例が多いと指摘されています。NOMI発症例の20~30%は腹痛の訴えさえないそうで、私の自験例3例も腹痛の訴えはなく、スタッフからの「不穏になっている」との連絡が発見のきっかけでした。ただ、病室にかけつけたときは呼吸が促拍し、苦悶様の表情で腹部をさすっていたのを今でも記憶しています。自験例3例に共通していたのは、脳卒中急性期治療中の高齢者での発症で、経口摂取を開始して間もない、いずれも食後1~3時間後の発症という共通点がありました。このため脳卒中に伴う高カテコラミン状態が、交感神経優位状態を招き、腸管血管の攣縮を招きやすい状態であった可能性は十分に考えられます。NOMIについて特筆したいのは、病態悪化の速さです。それゆえ、診断に戸惑う時間的猶予はなく、NOMIの臨床像や疑うべき画像所見を知っておかなければ、あっという間に腸管壊死からショックに至ります。ただし、NOMIを保存的に治療しようとすれば、塩酸パパベリンのような強力な血管拡張薬を使用することになりますが、持続静注すると全身の血圧低下を招くため、持続動注する必要あります。このため、腹部血管造影が出来る体制が必要となります。さらに腸管壊死を来す際には、外科手術の選択も視野に入りますが、NOMIが高齢者に発症しやすく、仮に手術できたとしても、広範な腸管切除が余儀なくされ、術後に人工肛門管理となる可能性が高く、術後のQOLの課題もあるため、基礎疾患のある高齢者には外科的介入のハードルは高いと考えます。また手術できても縫合不全の確率が高く、手術や麻酔自体で循環動態を悪化させるリスクもあります。一方で、非常に早期に診断できれば、救命できる例もあります。もし、NOMIを未経験の方については、腹部X線、腹部CT所見も含め、症例報告をご覧になると良いかもしれません。1)日本腹部救急医学会プロジェクト委員会NOMIワーキンググループ. 日腹部救急医会誌. 2015;35:177-185.2)日本循環器学会:2022年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン3)新関 浩人ほか. 日本大腸肛門病会誌. 2004;57:71-75.

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第123回  高血圧治療用アプリ保険適用、中医協委員は健康アプリとの線引きの曖昧さやフォローアップの必要性を指摘

日本で2番目に承認されたDTxこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末から月曜にかけては、甲子園の高校野球観戦三昧でした。夏の全国高校野球選手権大会の決勝は仙台育英高校が下関国際高校に勝ち、優勝旗が初めて「白河の関超え」(東北勢の初優勝)をすることになりました。仙台育英は夏の大会決勝進出3度目にしての悲願達成です。個人的に記憶に鮮明なのは、大越 基投手が仙台育英のエースだった1989年の決勝です。大越投手は一人で全6試合を投げ抜き、帝京(東東京)との決勝は延長10回、0-2で敗れました。その大越投手、ダイエー・ホークス(当時)引退後は大学に入学し直して教員の資格を取り、現在は下関国際高校の地元でもある山口県下関市の早鞆(はやとも)高校野球部監督を務めています(2012年に春の選抜大会出場)。大越氏は決勝当日、8月22日の朝日新聞朝刊の「エール 東北人+山口の監督として」に登場、「OB、東北人としては育英を応援したいけど、山口県の監督としては下関に深紅の大優勝旗が来てほしい」と語っていました。同じ山口県内のライバル校を倒し、東北勢の長年の呪縛も解いた母校・仙台育英高校の優勝に、大越氏もほっと胸をなでおろしているのではないでしょうか。さて、今回は8月3日、中央社会保険医療協議会総会で医療機器として保険適用が決まったCureApp社の「CureApp HT高血圧治療補助アプリ」について書いてみたいと思います。日本で2番目に承認されたこのデジタル治療薬(Digital Therapeutics:DTx)に対し、中医協委員から使用実態についてのフォローアップの必要性を指摘されるなど、厳しい意見も多数出されました。月1回830点、6ヵ月を限度に算定中医協総会は8月3日、CureApp社の「CureApp HT高血圧治療補助アプリ」について保険適用を了承しました。診療報酬上は特定保険医療材料としては設定せず、新規技術料で評価されます。同社のニコチン依存症治療アプリも同様の区分で承認されており、これに準じた扱いです。具体的には、同アプリを使用して高血圧症に関する総合的な指導および治療管理を行った場合、アプリによる治療開始時に「禁煙治療補助システム指導管理加算」を準用する形で、140点を1回に限り算定します。また、同アプリを使用して高血圧症に関する総合的な指導および治療管理を行った場合に「血糖自己測定器加算の4(月60回以上測定する場合)」を準用し、月1回に限り830点を算定します。830点の算定については、初回の使用日の月から6ヵ月を限度としており、加えて前回算定日から、平均して7日間のうち5日以上、アプリに血圧値が入力されている場合にのみ算定できるとしています。なお、アプリの使用に当たっては、関連学会の策定するガイドラインおよび適正使用指針の順守を求めています。830点6ヵ月は患者側にとってはなかなか高い点数ですが、皆さんどう思われるでしょう? 6ヵ月間のアプリ使用料は3割負担で約1万5,000円となります。一般的なゲーム課金と比べると、少々高い印象です。同アプリは9月には保険収載される見通しです。中医協の資料によれば、推定適用患者数(ピーク時)は約824万人、このうち市場規模予測(ピーク時)として同アプリの使用患者数は約7万人と見積もられています。国はDTxなどプログラム医療機器の普及・定着に前のめり「CureApp HT高血圧治療補助アプリ」は、同社が自治医科大学の研究グループと共同開発した治療用アプリで、患者がスマートフォンなどを用いて使用するものです。患者がIoT血圧計で測定した家庭血圧や、生活習慣のログを日々記録すると、アプリはこれらのデータを基に、患者ごとに個別化された治療ガイダンスとして、食事、運動、睡眠などに関する情報を表示します。これにより患者の行動変容を促すことで降圧効果が得られるとしています。同アプリについては、本連載でも、2022年4月26日に薬事承認された直後に「第109回 高血圧治療用アプリの薬事承認取得で考えた、『デジタル薬』が効く人・効かない人の微妙な線引き(前編)」、「第110回 同(後編)」と2回に渡り取り上げ、国がDTxをはじめとするプログラム医療機器(SaMD)の普及・定着に相当前のめりになっている状況や、DTxの臨床試験の不可解さについて書きました。「アプリのアドバイスになかなか従わない人に果たして効果があるか」前編では、同アプリが薬事承認の了承に当たって、「承認後1年経過するごとに、市販後の有効性に関する情報を収集し、有効性が維持されていることを医薬品医療機器総合機構(PMDA)宛てに報告すること」という条件が付けられたことを紹介、「こうしたスマホアプリに順応して素直に行動を変えられる人ならよいが、頑固でアプリのアドバイスになかなか従わない人に果たして効果があるのだろうか」という素朴な疑問を投げかけました。続く後編では、「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」の臨床試験の結果を読み解き、「主要評価項目であるABPM (24時間自由行動下血圧測定)による24時間のSBP(収縮期血圧)が、高血圧治療ガイドラインに準拠した生活習慣の修正に同アプリを併用した『介入群』と、同ガイドラインに準拠した生活習慣の修正を指導するのみの『対照群』を比較評価した結果、『介入群』の方が有意な改善を示した、とのことですが、『有意な改善』とは言っても、血圧の変化量の群間差は-2.4[-4.5〜-0.3]で、素人目には劇的というほどではありませんでした」と書きました。さらに、PMDAが公開した「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」の審議結果報告書には臨床試験の対象患者について、「20歳以上65歳未満の降圧薬による内服治療を受けていないI度又はII度の本態性高血圧患者のうち、 食事・運動療法等の生活習慣の修正を行うことで降圧効果を十分に期待できると判断された患者を対象」と記載されているものの、「『降圧効果を十分に期待できる』をどう判断したかについては書かれていない」と指摘しました。また、DTxの成功例として知られる米Welldoc社の糖尿病治療用アプリ「BlueStar」も、相当厳格な対象患者絞り込みによって、有意差のある結果を出していたらしいことにも言及。DTxの開発は国内外で、糖尿病、うつ病、不眠症、アルコール依存症とさまざまな領域で活発化しているものの、大日本住友製薬など、開発に頓挫したケースもあることを紹介しました。中医協、支払側・診療側双方の委員から厳しい指摘この連載で書いたような、DTxの治療効果への疑問や、臨床試験での対象患者選びがブラックボックス化していることなどは、中医協委員も感じていたのかもしれません。総会では中医協委員から厳しい意見が出されました。日経メディカルやミクスオンラインなどの報道によれば、同アプリの保険適用に当たっては、支払側委員から「ニコチン依存症の治療用アプリとは異なり、(高血圧症治療補助アプリ)は健康アプリに近い印象があり、同様のアプリが今後登場してきた際には判断が難しくなるのではないか」、「通常の生活習慣指導と比較したアプリの効果についてはエビデンスがあるものの、他の健康アプリとの比較は行われていない」など、一般向けの健康アプリとの線引きの曖昧さが指摘されました。一方、診療側委員からは、「次回改定時には前例にとらわれず、専門組織からの意見などを受けて、本製品の評価について見直しを行うことも検討する必要がある。一定期間の使用を踏まえたアウトカム評価を導入することも必要ではないか」と使用実態についてのフォローアップが求められました。サワイ、CureAppが開発する肝炎治療用アプリの販売権を獲得健康アプリとの線引きの曖昧さの指摘や、フォローアップをしっかり行うようにとの要請など、なかなかに厳しい船出と言えます。しかし、DTxはこれからも次々と上市される見込みです。後発医薬品大手のサワイグループホールディングスは(サワイGHD)8月2日、CureAppが開発する肝炎の治療用アプリの販売権を獲得したと発表しました。契約一時金に加え、臨床試験の進展に応じCureAppに最大105億円を支払うとのことです。この治療用アプリは肝臓に炎症を引き起こす非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を治療対象にしたものです。医師の代わりに患者に食生活の見直しや運動などを促し、生活習慣の改善をめざすとしています。「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」と同様、医師が患者に処方して使うDTxです。CureAppと東京大学医学部附属病院が共同で2016年10月より単施設における臨床研究を開始、2018年4月からは多施設共同臨床研究を実施し、認知行動療法に基づいた本アプリによる明確な体重減少ならびに肝線維化の改善効果が認められたとしています。今後、これまでの試験データを基に、第III相臨床試験に進む予定とのことです。第III相臨床試験はCureAppとサワイGHDが共同して行い、上市後の販売や営業活動はサワイGHDが担うとしています。NASHの患者は国内に200万人程度、その予備軍は推定1,000万人程度いるとされ、病気が進行すると肝硬変や肝がんを引きおこすおそれがあります。確立された薬物療法がなく、運動療法や食事療法などの生活改善が中心になっており、その一翼を同アプリが担うとしています。ただ、認知行動療法で体重減少を目指す点は理解できますが、その療法と肝線維化との関連性がどうなっているのか、プレスリリースや報道などでは今ひとつわかりません。それこそ、普通の一般向け減量アプリとの差別化はどうなるのでしょう。第III相臨床試験では、そのあたりもきちんと実証し、公表して欲しいと思います。

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アルツハイマー病およびMCIに対する治療薬aducanumabとリチウムの有効性比較~ネットワークメタ解析

 2021年、米国FDAはアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)を有する患者に対する治療薬としてaducanumabの迅速承認を行ったが、そのコストは高く、患者1人当たり年間約2万8,000ドルを要する。一方、リチウムは年間約40ドルと非常に安価であり、MCIおよびアルツハイマー病にみられる認知機能低下に効果があると報告されている。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬とは対照的に、aducanumabやリチウムにはdisease-modifying drugとしての可能性が示唆されている。東京医科大学の寺尾 樹氏らは、MCIおよびアルツハイマー病の認知機能低下に対するaducanumabとリチウムの効果を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Ageing Research Reviews誌オンライン版2022年8月9日号の報告。MCI治療薬aducanumabとリチウムの認知機能低下に対する有用性評価 2022年1月までに公表されたMCIまたはアルツハイマー病患者に対する治療薬として承認されたaducanumabとリチウムの認知機能低下に対する有用性を評価したランダム化比較試験を、PubMed、Cochrane Library、CINHAL、ClinicalTrials.govより検索した。直接的および間接的な効果を推定するため、頻度論的固定効果ネットワークメタ解析を用いた。主要アウトカムは、ミニメンタルステート検査(MMSE)で測定した認知機能スコアの変化とした。 MCI治療薬として承認されたaducanumabとリチウムの認知機能低下に対する有用性を評価した主な結果は以下のとおり。・ネットワークメタ解析では、リチウムはaducanumabよりも、主要アウトカムに対する有効性が有意に高いことが示唆された。・本研究では、さまざまな制限があったものの、MCIおよびアルツハイマー病の認知機能低下に対するリチウム治療は、MCIまたはアルツハイマー病患者に対する治療薬として承認されたaducanumabよりも費用対効果に優れる治療法である可能性が示唆された。

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オミクロン株感染者の半数以上が自覚していない

 米国・カリフォルニア州ロサンゼルス郡の人口の多い都市部で、オミクロン株流行時に抗体陽転が確認された人を対象としたコホート研究において、感染者の半数以上が感染を認識していないこと、また、医療従事者は非医療従事者より認識者の割合が高いが全体としては低いことが示唆された。米国・Cedars-Sinai Medical CenterのSandy Y. Joung氏らが、JAMA Network Open誌2022年8月17日号に報告。 本研究は、ロサンゼルス郡のCOVID-19血清学的縦断研究に登録された大学病院の医療従事者と患者の記録を分析したもので、参加者は2回以上の抗ヌクレオカプシドIgG(IgG-N)抗体の測定を1ヵ月以上の間隔で行った。1回目はデルタ株流行終了(2021年9月15日)以降、2回目はオミクロン株流行開始(2021年12月15日)以降で、2022年5月4日までにオミクロン株流行時に感染が確認された成人を対象とした。新型コロナウイルス感染の認識は、自己申告の健康情報、医療記録、COVID-19検査データのレビューで確認した。 主な結果は以下のとおり。・血清学的にオミクロン株感染が確認された210人(年齢中央値[範囲]:51[23~84]歳、女性:65%)のうち、44%(92人)が感染を認識しており、56%(118人)が認識していなかった。・認識していない人のうち10%(12人/118人)が何らかの症状があったが、その原因は風邪や新型コロナウイルス以外の感染症であると回答した。・人口統計学的および臨床的特徴を考慮した多変量解析では、医療従事者は非医療従事者よりもオミクロン株感染を認識している可能性が高かった(調整オッズ比:2.46、95%信頼区間:1.30~4.65)。 これらの結果から、著者らは「オミクロン株感染の認識率の低さが地域社会における急速な伝播の要因である可能性が示唆される」と考察している。

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CABG後の静脈グラフト不全リスク、DAPTで回避できるか/JAMA

 冠動脈バイパス術(CABG)を受けた患者の抗血小板療法において、アスピリンにチカグレロルを加えた抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)はアスピリン単剤療法と比較して、静脈グラフト不全のリスクが有意に低い一方で、臨床的に重要な出血のリスクは有意に高く、チカグレロル単剤とアスピリン単剤の比較ではこのような差はないことが、オーストリア・ウィーン医科大学のSigrid Sandner氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2022年8月9日号に掲載された。4つの無作為化臨床試験のメタ解析 研究グループは、CABG術後の抗血小板療法による静脈グラフト不全のリスクの抑制効果を、チカグレロルDAPTまたはチカグレロル単剤療法と、アスピリン単剤療法で比較する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(研究費は、米国Weill Cornell Medicine心臓胸部外科の内部資金による)。 2022年6月1日の時点で、医学関連データベース(MEDLINE、Embase、Cochrane Library)に登録された文献(記述言語は問わない)が検索された。対象は、伏在静脈グラフト不全に対する抗血小板療法の効果を、チカグレロルDAPTまたはチカグレロル単剤療法と、アスピリン単剤療法で比較した無作為化臨床試験であった。 主要アウトカムは、伏在静脈グラフト当たりのグラフト不全であった。グラフト不全は、個々の試験プロトコルで規定されたフォローアップ時に、侵襲的血管造影またはCT血管造影で評価された伏在静脈グラフトの50%以上の閉塞または狭窄と定義された。副次アウトカムは、患者当たりの伏在静脈グラフト不全およびBARC(Bleeding Academic Research Consortium)出血基準でタイプ2、3、5の出血とされた。 4つの無作為化臨床試験(TAP-CABG[2016年]、DACAB[2018年]、TARGET[2022年]、POPular CABG[2020年])に参加した1,316例(1,668個の伏在静脈グラフト)が解析の対象となった。グラフト不全:11.2% vs.20%、タイプ2、3、5出血:22.1% vs.8.7% 主解析には、チカグレロル単剤について検討したTARGET試験と、DACAB試験の1群を除く871例が含まれ、このうち435例(527個の伏在静脈グラフト、年齢中央値67歳[IQR:60~72]、女性65例[14.9%]、治療期間中央値365日[IQR:307~365])がチカグレロルDAPT(すべてチカグレロル+アスピリン)群、436例(537個、66歳[61~73]、63例[14.5%]、364日[315~365])はアスピリン単剤群であった。 伏在静脈グラフト当たりのグラフト不全の発生率は、チカグレロルDAPT群が11.2%(54/481グラフト)と、アスピリン単剤群の20.0%(99/494グラフト)に比べ有意に低かった(群間差:-8.7%[95%信頼区間[CI]:-13.5~-3.9]、オッズ比[OR]:0.51[95%CI:0.35~0.74]、p<0.001)。 また、患者当たりのグラフト不全の発生率は、チカグレロルDAPT群が13.2%(52/394例)、アスピリン単剤群は23.0%(92/400例)であり、チカグレロルDAPT群で有意に優れた(群間差:-9.7%[95%CI:-14.9~-4.4]、OR:0.51[95%CI:0.35~0.74]、p<0.001)。 これに対し、BARC出血基準タイプ2、3、5の出血イベントの発生率は、チカグレロルDAPT群が22.1%(96/452例)と、アスピリン単剤群の8.7%(38/436例)に比し有意に高かった(群間差:13.3%[95%CI:8.6~18.0]、OR:2.98[95%CI:1.99~4.47]、p<0.001)が、タイプ3、5の出血イベントの発生率には差がなかった(1.8%[8/435例]vs.1.8%[8/436例]、群間差:0%[95%CI:-1.8~1.8]、OR:1.00[95%CI:0.37~2.69]、p=0.99)。 一方、チカグレロル単剤とアスピリン単剤の比較(DACAB試験とTARGET試験)では、伏在静脈グラフト当たりのグラフト不全(19.3%[71/368グラフト]vs.21.7%[83/383グラフト]、群間差:-2.6%[95%CI:-9.1~3.9]、OR:0.86[95%CI:0.58~1.27]、p=0.44)、患者当たりのグラフト不全(25.2%[64/254例]vs.29.3%[75/256例]、-4.1%[95%CI:-11.9~3.7]、0.81[95%CI:0.55~1.20]、p=0.30)、およびBARC出血基準タイプ2、3、5の出血イベント(8.9%[26/293例]vs.7.3%[21/289例]、1.7%[-2.8~6.1]、1.25[0.69~2.29]、p=0.46)の発生率は、いずれも両群間に有意な差は認められなかった。 著者は、「チカグレロルDAPTはアスピリン単剤に比べ、BARC出血基準タイプ2~5のリスクが有意に高く(22.3% vs.8.7%、p<0.001)、有意差はないものの全死因死亡のリスクが上昇する傾向がみられた(2.1% vs.0.9%、p=0.17)。今回の解析結果からは、CABG術後に、アスピリンにチカグレロルを追加するか否かを決める際には、グラフト不全、虚血性イベント、出血に関する個別の患者のリスクを、慎重に検討する必要がある」としている。

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進展型小細胞肺がんの1次治療におけるペムブロリズマブ+化学療法(KEYNOTE-604)/WCLC2022

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)の1次治療において、ペムブロリズマブと化学療法の併用が良好な成績を示した。試験結果は、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのRudin氏により世界肺学会(WCLC2022)で発表された。 ES-SCLCの1次治療におけるエトポシド+カルボプラチン(EP)とペムブロリズマブの併用はプラセボとの併用に比べ、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善することがKEYNOTE-604試験の結果で示されている(HR:0.75)。WCLC2022では、35サイクルを完遂した患者における3.5年の追跡結果が、全生存期間(OS)を含め発表された。・対象:未治療のStage IVのSCLC・試験薬群:ペムブロリズマブ+EP 3週ごと4サイクル →ペムブロリズマブ 3週ごと31サイクル(n=228)・対照群:プラセボ+EP 3週ごと4サイクル →プラセボ 3週ごと31サイクル(n=225)・評価項目[複合主要評価項目]盲検化独立中央委員会(BICR)評価のPFSとOS[副次評価項目]全奏効率(ORR)、BICR評価の奏効期間(DoR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・無作為割付けからデータカットオフまでの期間は43.3ヵ月であった。 ・ITT集団のOS中央値はペムブロリズマブ群10.8ヵ月、プラセボ群9.7ヵ月であった (HR: 0.76、95%CI:0.63〜0.93)・ITT集団のPFSはペムブロリズマブ群4.8ヵ月、プラセボ群4.30ヵ月であった (HR:0.70、95%CI:0.57〜0.85)。 ・ORRはペムブロリズマブ群 70.6%、プラセボ群61.8%であった。・DoRはペムブロリズマブ群 4.2ヵ月、プラセボ群3.7ヵ月であった。・全有害事象(AE)はペムブロリズマブ群の100%、プラセボ群の99%で発現した。・免疫関連有害事象はベムプロ群の27.4%、プラセボ群の12.1%で発現した。 およそ3.5年の追跡の結果、ペムブロリズマブ+EPはES-SCLCに対し、OSとPFSに関して臨床的に意味のある改善を維持した。

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