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平均血糖値とHbA1c値の乖離の理由が明らかに/京都医療センターほか

 平均血糖値が同じ180mg/dLであってもHbA1c値が7.0%台の人もいれば、9.0%近くの人もいると、A1c-Derived Average Glucose(ADAG)研究で報告されている。これらの平均血糖値とHbA1c値の乖離現象はヘモグロビン糖化に個人差があるのではないかと推察されている。2型糖尿病ではヘモグロビン糖化インデックス(Hemoglobin glycation index:HGI)が高い人は、糖尿病合併症、心血管疾患、死亡リスクが増大すると報告されている。しかし、日本人1型糖尿病での報告はなかった。 そこで、坂根 直樹氏(京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室長)らのFGM-Japan研究グループ(9施設)は日本人1型糖尿病を対象に、HGIに及ぼす要因を検討したところ、性別(女性)、HbA1c値、腎機能(eGFR)、血糖変動(%CV)が関連していることが明らかとなった。Journal of Diabetes Investigation誌2023年2月14日号の報告。 1型糖尿病211例の過去90日間の連続血糖測定(CGM)データを用いて、平均血糖や血糖変動指標などを算出した。HGIは「実測されたHbA1cから平均血糖から予測されたHbA1cを引き算」して求められ、高HGI・中HGI・低HGIの3群に分類された。平均血糖値とHbA1c値の乖離の要因を多変量解析した結果 平均血糖値とHbA1c値の乖離の要因を検討した主な結果は以下のとおり。低HGI、中HGI、高HGIの順に、・女性の割合が多くなった(45.1%、58.6%、74.3%、p=0.002)・HbA1c値が高くなった(7.0±0.8%、7.4±0.7%、8.2±0.8%、p=0.029)・Hb値は低くなった(13.9±1.7g/dL、13.7±1.3g/dL、13.2±1.4g/dL、p=0.024)・推定腎機能は低くなった(83.4±21.3、75.6±20.1、75.1±19.4、p=0.029)・血糖変動指標の中でADRR(38.7±9.8、41.4±11.1、43.5±10.9、p=0.031)と%CV(32.6±5.1、34.8±6.7、35.0±5.9、p=0.029)が高くなった しかし、その一方で・年齢、糖尿病歴、BMI、糖尿病合併症、糖尿病治療、食事・運動習慣、生活習慣では3群間に差を認めなかった・平均血糖、GMI、TAR、TIR、TBRでは3群間に差を認めなかった その他・多変量解析の結果、性別(女性)とHbA1c値と独立して、%CVとeGFRがHGIと有意に関連していた(R2=0.44) 共同研究者の三浦 順之助氏(東京女子医科大学 内科学講座 糖尿病・代謝内科分野)は、本研究について「ヘモグロビン糖化の個人差の一部が解明されたことは、糖尿病診療の上で大きな意義がある。遺伝的要因や炎症などがヘモグロビンの糖化に関係している可能性も考えられ今後も検討が必要である」と述べている。

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パーキンソン病、片側淡蒼球内節の集束超音波で運動機能改善/NEJM

 パーキンソン病患者に対する片側淡蒼球内節の集束超音波アブレーション(FUSA)は、3ヵ月後に運動機能やジスキネジアが改善した患者の割合が高かったものの、有害事象を伴った。米国・University of North CarolinaのVibhor Krishna氏らが北米、アジアおよび欧州の16施設で実施した無作為化二重盲検シャム対照比較試験の結果を報告した。片側淡蒼球内節のFUSAは、ジスキネジアや運動変動のあるパーキンソン病患者を対象とした小規模の非盲検試験において有効性が示唆されていた。著者は、「パーキンソン病患者におけるFUSAの有効性と安全性を明らかにするためには、より長期の大規模臨床試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2023年2月23日号掲載の報告。FUSA群とシャム群に無作為化、3ヵ月後の改善を評価 研究グループは、UK Brain Bank基準で特発性パーキンソン病と診断され、投薬オフ状態でジスキネジアまたは運動変動と運動障害を有する30歳以上の患者を、淡蒼球内節のMRガイド下FUSA群またはシャム(対照)群に3対1の割合で無作為に割り付け、患者の利き手側または運動障害が大きい側と反対側に投薬オフ状態で治療を行った。 適格基準は、MDS-UPDRSパートIII(運動)スコアが投薬オン状態に対してオフ状態では30%以上減少で定義されるレボドパ反応性を有し、MDS-UPDRSパートIIIスコアが20以上で、ジスキネジアまたは運動変動の運動障害があり(投薬オン状態でMDS-UPDRS項目4.2スコアが2以上、またはMDS-UPDRS項目4.4スコアが2以上)、パーキンソン治療薬を30日以上安定投与されている患者とした。 主要アウトカムは、治療後3ヵ月時点の改善(投薬オフ状態での治療側のMDS-UPDRSパートIII[運動]スコアまたは投薬オン状態でのジスキネジア評価スケール[UDysRS]のスコアのいずれかがベースラインから3点以上減少で定義)。副次アウトカムはMDS-UPDRSの各項目スコアのベースラインから3ヵ月時点までの変化であった。 3ヵ月間の二重盲検期の後、12ヵ月時まで非盲検期を継続した。治療3ヵ月後に運動症状が改善した患者の割合はFUSA群69%、シャム群32% 94例が登録され、FUSA群に69例、シャム群に25例が割り付けられた。このうち治療を受けたそれぞれ68例および24例を安全性解析対象集団、3ヵ月後の主要評価を完遂した65例(94%)および22例(88%)を修正intention-to-treat集団とした。 治療後3ヵ月時点で改善した患者は、FUSA群で65例中45例(69%)、シャム群で22例中7例(32%)であった(群間差:37ポイント、95%信頼区間[CI]:15~60、p=0.003)。 FUSA群の改善例45例のうち、MDS-UPDRSパートIIIスコアのみが3点以上減少した患者は19例(29%)、UDysRSスコアのみが3点以上減少した患者は8例(12%)、両スコアとも3点以上減少した患者が18例(28%)であった。一方、シャム群の改善例7例のうち、6例はMDS-UPDRSパートIIIスコアのみが3点以上減少し、1例は両スコアとも3点以上減少した。 副次アウトカムは、概して主要アウトカムと同様の結果であった。 FUSA群において、3ヵ月時点で改善した45例のうち12ヵ月時点で評価し得たのは39例で、このうち30例は改善が続いていた。 FUSA群における淡蒼球破壊術関連有害事象は、構音障害、歩行障害、味覚障害、視覚障害および顔面筋力低下であった。

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コロナ感染による免疫、変異株ごとの効果は~メタ解析/Lancet

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)既感染のその後の再感染に対する予防効果は、デルタ株までの変異株に対しては非常に高く40週後も高いままであったが、オミクロンBA.1株については時間と共に急速に低下した。一方、再感染での重症化予防効果は、オミクロンBA.1株までの変異株すべてにおいて、既感染1年後まで比較的高いレベルで維持されていた。米国・保健指標評価研究所(IHME)のCaroline Stein氏らCOVID-19 Forecasting Teamが実施したメタ解析の結果で示された。著者は、「今回の解析から、過去の感染による変異株別ならびに経時的な予防効果は、mRNAワクチン2回接種と同等以上であることが示唆された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年2月16日号掲載の報告。2022年9月までの65件の研究をメタ解析 研究グループは、PubMed、Web of Science、medRxiv、SSRNなどを用い、2022年9月31日までに発表された査読つき論文、報告書、査読前原稿、ニュース記事などを検索し、SARS-CoV-2既感染者のCOVID-19のリスク減少を未感染者と比較して推定した後ろ向きおよび前向きコホート研究ならびに検査陰性症例対照研究を特定し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。 アウトカムは、再感染(前回のPCR検査/迅速抗原検査陽性から90日以上または120日以上後に検査陽性など)、症候性再感染(発熱、咳、息切れ、悪寒、筋肉痛、味覚・嗅覚障害、咽頭痛、下痢、嘔吐などを伴う再感染)、重症化(入院または死亡に至った再感染)である。既感染の有効性について、アウトカム、変異株、および感染からの経過時間ごとにメタ解析し、ベイズメタ回帰を用いて統合効果量を推定した。 19ヵ国の計65件の研究が解析対象となった。再感染での重症化予防効果、オミクロンBA.1株を含む変異株で78%以上 再感染に対する予防効果は武漢株、アルファ株、ベータ株、デルタ株に対しては高く統合推定値は82%以上であったが、オミクロンBA.1株への再感染予防効果は低く、統合推定値は45.3%(95%不確実性区間[UI]:17.3~76.1)であった。症候性再感染に対する予防効果も同様で、統合推定値は武漢株、アルファ株、ベータ株、デルタ株では82%以上であったが、オミクロンBA.1株は44.0%(95%UI:26.5~65.0)であった。一方、重症化予防効果は概して高く、アルファ株、ベータ株、デルタ株およびオミクロンBA.1株で78%以上であった。 感染からの時間関数として予防効果を評価すると、再感染予防効果は武漢株、アルファ株およびデルタ株を合わせ4週時点では85.2%と高いが、40週時点では78.6%(95%UI:49.8~93.6)に低下した。オミクロンBA.1株への再感染予防効果の低下はより急速で、40週時は36.1%(95%UI:24.4~51.3)と推定された。 症候性再感染に対する予防効果も同様であった。しかし、重症化予防効果は、40週時点で武漢株、アルファ株、デルタ株は90.2%(95%UI:69.7~97.5)、オミクロンBA.1株は88.9%(84.7~90.9)であった。

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5~11歳へのファイザーBA.4/5対応2価ワクチン承認/厚生労働省

 厚生労働省は2月28日、5~11歳を対象としたファイザーの新型コロナウイルスmRNAワクチン「販売名:コミナティ筋注5~11歳用(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)」について、追加接種(追加免疫)として承認したことを発表した。本剤は、5~11歳の初回免疫に使用することはできない。 本剤の追加免疫の用法および用量は、同社製の5~11歳用1価ワクチンと変わらず、添付文書に以下のように記されている。6. 用法及び用量本剤を日局生理食塩液1.3mLにて希釈する。追加免疫として、1回0.2mLを筋肉内に接種する。7. 用法及び用量に関連する注意7.1 本剤の使用本剤は追加免疫に使用する。初回免疫には使用しないこと。7.2 接種対象者過去に初回免疫又は追加免疫としてSARS-CoV-2ワクチンの接種歴のある5歳以上11歳以下の者。SARS-CoV-2の流行状況や個々の背景因子等を踏まえ、ベネフィットとリスクを考慮し、追加免疫の要否を判断すること。7.3 接種時期通常、前回のSARS-CoV-2ワクチンの接種から少なくとも3ヵ月経過した後に接種することができる。7.4 コミナティ筋注5~11歳用(起源株)以外のSARS-CoV-2ワクチンを接種した者に追加免疫として本剤を接種した際の有効性及び安全性は確立していない。  今回の5~11歳用ファイザーBA.4/5対応2価ワクチン承認は、同年齢層に対する本剤の有効性および安全性についての臨床試験の成績は得られていないが、12歳以上のコミナティRTU筋注(起源株/オミクロン株BA.4-5)の試験成績や、5~11歳のコミナティ筋注5~11歳用(起源株)の試験成績に基づいている。製造販売後、副作用情報などの本剤の安全性に関するデータを、あらかじめ定めた計画に基づき早期に収集し、臨床試験の結果が得られた際には、速やかに情報を提出し、最新の情報を医療従事者および被接種者が入手可能となるように措置を講じるとしている。なお本剤は、米国では2022年10月に承認されている。 また、厚生労働省は同日、武田薬品工業(ノババックス)の組換えコロナウイルスワクチン「販売名:ヌバキソビッド筋注」について、追加免疫の対象者が18歳以上だったものを、12歳以上に拡大したことも発表した。

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線溶薬を変えても結果は変わらないかな?(解説:後藤信哉氏)

 ストレプトキナーゼによる心筋梗塞症例の生命予後改善効果が示された後、フィブリン選択性のないストレプトキナーゼよりもフィブリン選択性のあるt-PAにすれば出血リスクが減ると想定された。分子生物学に基づく遺伝子改変が容易な時代になったので各種の線溶薬が開発された。しかし、循環器領域ではフィブリン選択性の改善により出血イベントリスク低減効果を臨床的に示すことはできなかった。本研究ではt-PAよりもさらに修飾されたtenecteplaseとの有効性、安全性の差異が検証された。tenecteplaseは野生型のt-PAよりも血液中の寿命が長いとされた。しかし、臨床試験にて差異を見出すことができなかった。 分子を開発しても効果を予測することは難しい。

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妊婦の感染、オミクロン株でも重篤化や妊娠合併症増加と関連(解説:前田裕斗氏)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は妊娠中に母体および胎児への有害事象を引き起こすことが示されており、妊娠前および妊娠中にはワクチン接種が強く推奨されている。一方、現在主流となっているオミクロン株について、妊娠経過や胎児への影響およびワクチンの有効性についての大規模かつ多施設からの報告はなかった。 今回の研究(INTERCOVID-2022試験)は18ヵ国41病院を通じて行われ、世界保健機関(WHO)がオミクロン株に対する懸念を表明した2021年11月27日から、2022年6月30日までに4,618人の妊婦が被験者として登録された。 結果として、COVID-19罹患者では母体死亡や重篤な合併症、新生児死亡や重篤な合併症率が高かった。またワクチンの効果について、COVID-19罹患そのものについては非接種者と比べブースター接種まで完了した者でのみ有意な効果を認め、効果自体も30%と低かったが、母体の重症COVID-19、高次施設への搬送や集中治療室(ICU)入院、死亡に対する予防効果は2回接種完了後の女性では48%、ブースター接種妊婦が76%と高く、COVID-19罹患者に絞った解析ではさらにその効果は高かった。より詳しい結果はオリジナルのニュースを参照されたい。 本研究は複数国・多施設の共同研究であり、必要な変数調整や感度分析も行われるなど、解析についても信頼できる内容となっている。重症妊娠合併症や重症COVID-19は頻度が低いため一部の合併症について信頼区間が広くなる、複合アウトカムを用いざるを得ない、などの限界はあるものの、十分参考になる結果といえるだろう。 今回の結果から、たとえオミクロン株であってもワクチン接種を完了していない場合、妊娠中感染により重篤な妊娠合併症のリスクが増加することが示唆された。接種後10ヵ月は重症合併症の予防効果が続くことが今回の研究からわかったが、いつまでこの効果が続くのか、オミクロン株対応ワクチンではどうなのかについてはまだわかっていない。そのため、妊娠中の重篤化および重症妊娠合併症予防の観点からは、今後しばらく妊娠を希望する女性での定期接種、あるいは妊娠が判明次第の新型コロナウイルスワクチン接種が望ましいと考えてよいだろう。COVID-19が日本で5類感染症に切り替わる5月前後までに、妊娠中のワクチン接種についての方針決定・周知や啓蒙活動が求められる。

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HFpEF診療はどうすれば…?(前編)【心不全診療Up to Date】第6回

第6回 HFpEF診療はどうすれば…?(前編)Key Points原因不明の息切れ、実はHFpEFかもしれないですよ!BNP値が上昇していないのにHFpEF?HFpEFの病態生理、今どこまでわかっている? 最新の情報をUpDateはじめに今回は、発症率、有病率ともに上昇の一途をたどっている左室駆出率の保たれた心不全HFpEF (Heart Failure with preserved Ejection Fraction)を取り上げる1,2)。 近年のHFpEFの病態生理の理解、診断アプローチ、効果的な新しい治療法の進歩にもかかわらず、日常診療においてHFpEFはまだ十分に認識されていないのが現状である。『原因不明の息切れ、それはHFpEFかも』をキャッチフレーズに、まずはぜひ疑っていただきたい。そのために、本稿では、HFpEFの病態生理、診断、治療に関する最新情報を皆さまと共有したい。HFpEFの“いまどき”の定義HFpEFとは、呼吸苦や倦怠感、浮腫などの心不全徴候を認め、左室駆出率(EF, Ejection Fraction)が50%以上で、安静時もしくは労作時のうっ血(左房圧上昇)を示唆する客観的証拠※を認めるものと定義される(※:Na利尿ペプチド[NP, Natriuretic Peptide]値上昇、左房機能障害・左房拡大、安静時/労作時の肺動脈楔入圧[PAWP, Pulmonary Artery Wedge Pressure]上昇など)3-5)。つまり、BNP/NT-proBNP値正常範囲内であっても、労作時息切れがあり、何らかのうっ血を示唆する所見があれば、それはHFpEFの早期段階をみている可能性があるということである6)。とくにHFpEFでは、労作時にのみ左房圧が上昇し、肺うっ血を来すという症例が約30%と決してまれではなく、“NP値が正常範囲内のHFpEF”があるということをぜひご理解いただきたい7)。しかも、この“NP値正常のHFpEF”群(息切れあり)は、非HFpEF群(息切れの原因がHFpEFではない集団)と比較して、死亡または心不全入院のリスクが約2.7倍高かったという報告もあり、この表現型(フェノタイプ)の重要性が最近とくに注目されている8)。つまり、『息切れを主訴に来院された患者、実はその原因がHFpEFかも』と考えていただき、必要あれば循環器専門施設へご紹介いただくことが、HFpEFを早期の段階(心不全Stage C早期)で診断することにつながり、その患者の予後やQOLを改善するうえでも大切といえるわけである。では、なぜそのようなことが起きるのか。キーワードは“予備能低下”である。HFpEFの病態生理、今どこまでわかっている?HFpEFを一言で説明すると、心臓だけではない多臓器の予備能が低下したヘテロな全身性の症候群といえよう9)。そして、HFpEFすべてに共通しているのは、“まずは労作時に左房圧が上昇し、その後病期が進行すると安静時まで左房圧が上昇してしまう”ということである(これ重要!)。では、それを引き起こす機序はどこまでわかっているのか、少し歴史を紐解きつつ解説していきたい。遡ること約35年前、HFpEFの初期の記述の1つとして、Topolらが高齢者の高血圧性肥大型心筋症についてNEJMへ報告したが10)、これはMモード、ドップラー心エコー図検査が急速に普及し、広く使われるようになっていた当時、拡張機能障害の概念にうまく合致するものであった。つまり、左室腔が小さく、左室壁が肥厚し、左室拡張末期圧容積関係が上方および左方にシフトし、拡張機能障害と左室充満圧の上昇を来すというものであった11)。2000年代初頭、拡張期心不全の古典的な説明が多くの患者に当てはまらないことが明らかになった12,13)。多くの患者で左室腔の大きさは正常で、明らかな左室肥大を有しておらず、拡張機能障害以外の異常が次第に確認され始めた(図1)14-16)。このような経緯で、HFpEFという用語が生まれ、その定義と特徴をより明確にすることに焦点が当てられるようになったわけである。画像を拡大する時は2023年、HFpEFは拡張機能障害だけではなく、糖尿病、肥満、高血圧、心房細動、腎機能障害、冠動脈疾患、COPD、貧血、睡眠時無呼吸症候群といった併存疾患、そして加齢が複雑に絡み合って生じる全身性炎症、内皮機能障害、心筋エネルギー代謝や骨格筋の異常などによる左室収縮・拡張予備能低下、肺血管障害、末梢での酸素利用能低下、動脈スティフネス、心室-血管カップリング異常、自律神経機能障害によって引き起こされる症候群であるという認識に至った(図2)17-19)。なお、このHFpEFの病期進行がどのような時間経過で進展していくのか、まだ結論は出ていないが、図3のような仮説が提唱されている20)。もちろん順序などには個人差があり、まだ議論の余地はあるが、病態生理を理解するうえではわかりやすく、参考にされたい。画像を拡大する画像を拡大するこのように、多臓器にわたる予備能低下を特徴とするHFpEFであるが、まずは一番重要な心臓、そして肺における異常について考えていきたい。心臓における構造的・機能的異常は、病期が進行すれば、両心房両心室に及ぶとされている4)。HFpEFでは、左室弛緩障害、スティフネス増大などにより、持続的または断続的に左室充満圧が上昇しており、それが左房のリモデリング、機能障害(左房コンプライアンスの低下)を引き起こす9-12)。HFpEFでは心房細動の合併がしばしば認められるが、これは左房機能障害がより進んだHFpEFの指標と考えられる21-23)。また、心エコー図検査(スペックルトラッキング法)で評価する左房リザーバーストレインの低下によって診断される左房機能障害が、左室機能障害よりも予後の強い予測因子とされているし22)、左房ストレインの低下が、息切れの原因精査(HFpEFが原因かどうかの区別)に最も有用であったという報告もあり24-26)、HFpEFの病態生理を理解するうえで、左房の機能評価がかなり重要な役割を担っているといえる。なお、HFpEFの多くは、左室機能障害が左房機能障害に先行するが、左室機能障害よりも左房機能障害が全面に出る(左房圧上昇があるも左室機能は保持されている)サブタイプ(primary LA myopathy)も存在するので、この点からも左室だけをみていてはいけないといえる27)。そして、左房圧の持続的な上昇は、全肺血管(肺静脈、肺毛細血管、肺小動脈)に負担をかけ、肺高血圧(PH, Pulmonary Hypertension)、右室機能障害を来し、さらには右房にまで負荷が及ぶことになる28)。実際HFpEF患者の約80%にPHが合併しており、PHのないHFpEFと比べて予後は悪く、また右室機能障害も約30%に合併し、死亡率上昇に寄与することが報告されている29-31)。つまり、HFpEFをみれば、必ず“左房さん、肺血管さん、そして右心系さん、大丈夫?”と早めから気にかけてあげることがきわめて重要なのである32-35)。早めに誰も気が付けず、この肺血管への負担が持続すると、全肺血管のリモデリング、血管収縮が生じ始め、最終的には肺血管抵抗(PVR, Pulmonary Vascular Resistance)が上昇し、肺血管疾患(PVD, Pulmonary Vascular Disease)を引き起こすことになる36,37)。PVDを伴うことで、右室-肺動脈カップリングが損なわれ、肺動脈コンプライアンスは低下し、右心機能がさらに増悪し、軽労作でも容易に右室充満圧が上昇するようになる38)。それにより、心室中隔が左室側へ押され、左室充満圧も血流のわずかな増加で容易に上昇するようになり、さらに肺うっ血が増悪するという負のサイクルがより回るようになり、”Stage D” HFpEFへと移行してしまう39)。このように、決して甘く見てはいけないのが、PVDの合併である。そうならないための糸口として、最近の研究で、HFpEFにおけるPVD進行の初期段階でこの病態を捉える重要性が認識されるようになってきた。それは、労作時にのみPVRが上昇する“Latent PVD”という概念で、左房障害の時間経過と同じように、PVDも初期段階では労作時にのみPVRが上昇、病期が進行すると、安静時でもPVRが上昇するようになる。Latent PVDの段階であっても、PVDのない群と比較して予後は不良で40)、心房間シャントデバイスのような新たな治療法への反応もlatent PVDの有無で異なることもわかってきている(HFpEF最新治療の詳細は次回説明予定)41)。ここまでHFpEFにおける心臓、肺の病態生理について述べてきたが、HFpEFでの多臓器にわたる異常を理解するうえでもう一つ重要になってくるのが、肥満や代謝ストレスなどによって誘導される全身性の炎症、内皮機能障害である42-45)。これは、心臓、肺、肝臓、腎臓、骨格筋などに対して悪影響を及ぼすが、たとえば、心臓においてはこの影響で冠微小循環障害を来すとされており、HFpEFの約75%に冠微小循環障害が合併しているという報告もある46)。この炎症反応において重要な役割を担っているE-selectinやICAM-1などの細胞接着分子(炎症細胞の炎症組織への接着に関与)の心筋発現レベルが、HFpEF患者において上昇しているという報告もあり47)、ICAM-1などをターゲットとした薬剤が今後出てくるかもしれない。また、欧米諸国では、肥満が関連したHFpEFが大きな問題となっており、字数足りず詳細は省くが、肥満とHFpEFに関してもかなり多くの研究が行われており、ご興味ある方はぜひ参考文献をご確認いただきたい17,48-52)。 画像を拡大するそのほか、自律神経機能に関する異常(脈拍応答不全、圧受容器反射感受性低下、血液分布異常)もHFpEFでは一般的であり53)、これらに対する治療として、最近いくつかのデバイス治療に関する臨床試験が進行している。たとえば、脈拍応答不全(chronotropic incompetence)に対するペーシング治療や血液分布異常(impaired systemic venous capacitance)に着目した右大内臓神経アブレーション治療(unilateral greater splanchnic nerve ablation)がそれにあたり、私自身も現在この分野の研究に携わっており、今後出てくる結果に注目いただきたい。このように多臓器にわたるさまざまな病態が複雑に絡み合うHFpEFであるが、最近報告されたゲノムワイド関連解析(GWAS, Genome Wide Association Study)の結果で、HFrEFとHFpEFの遺伝的構造には大きな違いがあり、HFpEFのgenetic discoveryは非常に限られていることが報告された54)。このことからも、HFpEF患者それぞれにおいて、異なる病態がいくつか融合する形で存在している可能性が高い。しかしながら、「HFpEF患者それぞれにおいて、どの病態の異常が、どれくらいの割合で融合しているのか、そしてそれぞれの病態の異常がどの程度進行した状態となっているのか」という点についてはまだわかっておらず、これは今後の大きな課題の1つである。最近の研究で、臨床データ、画像・バイオマーカー・オミックスデータを人工知能/機械学習技術を用いて解析することで、より適切なサブフェノタイピングが確立できるかどうかが検討されているが、これが確立すれば、上記の問題に加え、HFpEF患者それぞれの根底にある遺伝的シグナルとその要因の解明も可能となるかもしれない。この“治療に結びつくより一歩進んだフェノタイピング戦略”の開発は私自身も米国で関わっているNHLBI HeartShare Studyの主な目的の1つでもあり55)、必ず明るいHFpEF診療の未来がやってくると信じてやまないし、自分もそれに貢献できるよう、努力を続けたい。そして、次回は、いよいよHFpEFの診断、そして治療について深堀りしてきたい。1)Dunlay SM, et al. Nat Rev Cardiol. 2017;14:591-602.2)Steinberg BA, et al. Circulation. 2012;126:65-75.3)Bozkurt B, et al. Eur J Heart Fail. 2021;23:352-380.4)Pfeffer MA, et al. Circ Res. 2019;124:1598-1617.5)Borlaug BA. Nat Rev Cardiol. 2020;17:559-573.6)Sorimachi H, et al. Circulation. 2022;146:500-502.7)Borlaug BA, et al. Circ Heart Fail. 2010;3:588-595.8)Verbrugge FH, et al. Eur Heart J. 2022;43:1941-1951.9)Shah SJ, et al. Circulation. 2016;134:73-90.10)Topol EJ, et al. N Engl J Med. 1985;312:277-283.11)Aurigemma GP, et al. N Engl J Med. 2004;351:1097-1105.12)Burkhoff D, et al. Circulation. 2003;107:656-658.13)Kawaguchi M, et al. Circulation. 2003;107:714-720.14)Maurer MS, et al. J Card Fail. 2005;11:177-187.15)Maurer MS, et al. J Am Coll Cardiol. 2007;49:972-981.16)Petrie MC, et al. Heart. 2002;87:29-31.17)Shah SJ, et al. Circulation. 2020;141:1001-1026.18)Shah AM, et al. Nat Rev Cardiol. 2012;9:555-556.19)Burrage MK, et al. Circulation. 2021;144:1664-1678.20)Lourenco AP, et al. Eur J Heart Fail. 2018;20:216-227.21)Melenovsky V, et al. Circ Heart Fail. 2015:295-303.22)Freed BH, et al. Circ Cardiovasc Imaging. 2016;9.23)Reddy YNV, et al. J Am Coll Cardiol. 2020;76:1051-1064.24)Telles F, et al. Eur J Heart Fail. 2019;21:495-505.25)Reddy YNV, et al. Eur J Heart Fail. 2019;21:891-900.26)Backhaus SJ, et al. Circulation. 2021;143:1484-1498.27)Patel RB, et al. Sci Rep. 2021;11:4885.28)Verbrugge FH, et al. Circulation. 2020;142:998-1012.29)Melenovsky V, et al. Eur Heart J. 2014;35:3452-3462.30)Mohammed SF, et al. Circulation. 2014;130:2310-2320.31)Obokata M, et al. Eur Heart J. 2019;40:689-697.32)Lam CS, et al. J Am Coll Cardiol. 2009;53:1119-1126.33)Iorio A, et al. Eur J Heart Fail. 2018;20:1257-1266.34)Miller WL, et al. JACC Heart Fail. 2013;1:290-299.35)Vanderpool RR, et al. JAMA Cardiol. 2018;3:298-306.36)Fayyaz AU, et al. Circulation. 2018;13:1796-1810.37)Huston JH, et al. Circ Res. 2022;130:1382-1403.38)Melenovsky V, et al. 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第150回 かかりつけ医機能の確認めぐりひと悶着、制度化の芽も摘んだ日本医師会の執念

かかりつけ医確認は「事実行為」or「行政行為」?法案提出直前までドタバタこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、久しぶりに八ヶ岳山麓に住む大学時代の先輩宅を訪れ、硫黄岳に登って来ました。夏沢鉱泉から夏沢峠までは穏やかで快適な雪道でしたが、峠からピークまでは氷雪が覆う急登ルートで、冷たい強風が吹いていました。頂上には寒過ぎて長居できず、記念撮影だけして早々に下山しました。それでも、赤岳、甲斐駒ケ岳、富士山、北アルプスの山々が見える素晴らしい眺望で、厳冬期の八ヶ岳を堪能することができました。ただ、雪は例年よりもかなり少なかったです。さて、今回は、再度、かかりつけ医機能の制度整備について書いてみたいと思います。法案提出直前までドタバタしたかかりつけ医問題。かかりつけ医機能の確認が「事実行為」か「行政行為」か、などは患者にとっては些末などうでもいいことですが、日本医師会にとっては徹底的にこだわるべきポイントだったようです。全世代型社会保障制度関連法案、閣議決定し通常国会に提出政府は2月10日、かかりつけ医機能の制度整備などを盛り込んだ「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(通称、全世代型社会保障制度関連法案)」を閣議決定し、同日、通常国会に提出しました。この連載の「第147回 かかりつけ医機能制度化、全世代型社会保障構築会議構成員の発言から見えてくる『骨抜き』の背景」では、しょぼい制度になってしまった理由について考察しました。この回を書いていた段階では、法案は自民党の厚生労働部会で審査中でした。「かかりつけ医の制度化などを巡って慎重論が出たため、了承は見送られたようです。報道等によれば、都道府県の確認体制への不安(確認を厚労省は行政行為と説明し、それへの反発があった模様)などがあるようです。いずれにせよ、政府は与党の了承を経て閣議決定し、今国会で成立させたい考えなので、小幅の修正で法律案提出となりそうです」と書きました。しかし、「小幅」どころか見方によっては180度転換とも言える修正となりました。「確認は行政行為」という説明を取り下げ、処分性を伴わない「事実行為」と再説明自民党の厚生労働部会は2月6日に再度審査を行いました。この時、厚生労働省は、「かかりつけ医機能」を報告した医療機関が機能の要件を満たしているかなどを都道府県が「確認」する仕組みについて、前回行った「確認は行政行為」という説明を取り下げ、処分性を伴わない「事実行為」だと改めて説明し直しました。2月7日付のメディファクスの報道によれば、「厚労省は、考え方の整理が十分でなかったと謝罪し、確認は行政行為ではなく、『取り消し』などの処分性を伴わない事実行為と整理した、と報告した」とのことです。「都道府県による法的な確認の仕組みがない、従来の病床機能報告などと同様の仕組みになる」との考え方も示したそうです。さらに「『制度でかかりつけ医を縛るものではないのか』との議員の声に対しては、制度的に定めるものではないと強調した」とのことです。この説明変更によって自民党の厚生労働部会は同法案を了承、10日の閣議決定となりました。なお、法案そのものの条文は変更せず、解釈変更で対応するそうです。登録制や認定制の“芽”を摘んでおきたかった日本医師会「行政行為」とは、行政庁が法律の定めに従って、一方的な判断に基づいて、国民の権利義務その他法的地位を具体的に決定する行為のことを言います。厚労省が最初、「かかりつけ医機能」報告の確認を行政行為としたのは、単純なミスなのか、何らかの意図を持っていたのかは不明です。ただ、仮に「行政行為」ということになれば、確認によって不備や虚偽が見つかった時、何らかの行政処分(認定や登録の制度が仮にできれば、その取り消しも)が下される可能性があります。今回のかかりつけ医機能の制度整備が、将来的にかかりつけ医の登録制や認定制につながらないよう、“族議員”によって「行政行為」ではなく単なる「事実行為」だという言質を取り、早めに“芽”を摘んでおきたかった、という日医の強い執念が透けて見えます。「『かかりつけ医』と『かかりつけ医以外の医師』を区別するものでもない」と松本会長日医の松本 吉郎会長は2月15日の定例記者会見で、全世代型社会保障制度関連法案が2月10日に閣議決定され、通常国会において今後審議されること関連して、日医の「かかりつけ医機能の制度整備」などに対する考え方を説明しました。そこで松本会長は法案について、「加藤 勝信厚生労働大臣のリーダーシップの下、ステークホルダーそれぞれのベクトルの均衡点で一定の決着をみた」と話すとともに、かかりつけ医について改めて、「あくまで国民が選ぶものであり、国民にかかりつけ医をもつことを義務付けたり、割り当てたりするものではない」と強調しました。そして、「かかりつけ医・かかりつけ医機能の認定制」には明確に反対する考えを示すとともに、法案に書かれた「かかりつけ医機能の報告」は、「かかりつけ医機能を認定するものではなく、機能を持っていないからその人はかかりつけ医ではない、といったものではない。ましてや『かかりつけ医』と『かかりつけ医以外の医師』を区別するものでもない」と主張しました。そして、自民党の厚生労働部会に出席した国会議員から、「法案に明記された都道府県の『確認』は、行政処分につながる『行政行為』ではなく、現時点での診療実績の有無や受け入れる体制等を含めた、事実行為の『確認』であると厚労省から説明があった」と伝え聞いたことも付け加えましたただ「制度を作った」という事実を作るための制度行政行為か事実確認かのひと悶着は、日医の意を受けた自民党議員からの質問によって起こっていたと予想できます。それにしても、何の強制力も、発展性も、拡張性もない、ただ「制度を作った」という事実を作るためだけの制度というものは果たして必要なのでしょうか?担当する厚生労働省の役人に徒労感はないのでしょうか。この連載の「第147回 かかりつけ医機能制度化、全世代型社会保障構築会議構成員の発言から見えてくる『骨抜き』の背景」では、全世代型社会保障構築会議の権丈 善一構成員(慶應義塾大学商学部教授)の「手さえ挙げれば誰でもみんながかかりつけ医になることができるという方向で制度設計することは、これまで岸田総理や加藤大臣が言ってきた患者の視点に立った改革とは距離が相当にあると思います」という言葉を紹介しましたが、法案ができてからも「行政行為」か「事実行為」かにこだわる日医の姿勢からは、確かに患者のことを思いやる視点はまったく見えてきません。「かかりつけ医機能」の報告制度に果たして実効性はあるのか、法案成立後も注視していきたいと思います。

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紅皮症性アトピー性皮膚炎にもデュピルマブが有効

 紅皮症性アトピー性皮膚炎は、広範な皮膚病変によって定義され、合併症を引き起こし、場合によっては入院に至る重症アトピー性皮膚炎である。米国・ノースウェスタン大学のAmy S. Paller氏らは、デュピルマブの有効性と安全性を検討した6つの無作為化比較試験の事後解析において、紅皮症性AD患者に対するデュピルマブ治療は、全体集団と同様にアトピー性皮膚炎の徴候・症状の迅速かつ持続的な改善をもたらし、安全性は許容できるものであったと報告した。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年2月1日号掲載の報告。紅皮症性アトピー性皮膚炎がデュピルマブで有意に改善 中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者を対象にデュピルマブの有効性と安全性を検討した6つの国際共同、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照比較試験について、事後解析が行われた。対象は、アトピー性皮膚炎の病変が体表面積(BSA)の90%以上かつ全般症状スコア(Global Individual Sign Score)の紅斑のスコアが1以上を満たした患者とした(紅皮症性アトピー性皮膚炎)。 対象患者は、デュピルマブ(週1回または隔週)またはプラセボを、単剤または局所コルチコステロイド(TCS)との併用で投与された。 16週目における有効性(病変のBSAに対する割合、Eczema Area and Severity Index[EASI]スコア、Peak Pruritus Numerical Rating Scale[そう痒NRS]スコア)、血清中バイオマーカー(TARC[thymus and activation-regulated chemokine]、総IgE、LDH[乳酸脱水素酵素])の変化、安全性(有害事象の発現頻度)などを評価した。 データはレジメンごとにプールされ、デュピルマブ単剤投与とTCS併用投与で層別化された。 主な結果は以下のとおり。・無作為化された3,075例中、209例がベースライン時に紅皮症性アトピー性皮膚炎の基準を満たした。・紅皮症性アトピー性皮膚炎患者集団の年齢中央値はデュピルマブ単剤群31歳、TCS併用群39歳で、全体集団(それぞれ34歳、36歳)と類似していた。また、紅皮症性アトピー性皮膚炎患者集団の男性の割合は、デュピルマブ単剤群71.3%(97例)、TCS併用群74.0%(54例)であった(全体集団はそれぞれ58.7%、60.6%)。・紅皮症性アトピー性皮膚炎患者集団において、デュピルマブ投与群(週1回投与、隔週投与)はプラセボ群と比べて、有効性の指標がいずれも有意に改善した。・病変のBSAに対する割合(最小二乗平均変化率[標準誤差[SE]]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-42.0% [7.7]、隔週投与-39.9%[6.5]であったのに対し、プラセボ群は-17.2%[11.0]であった(いずれもp=0.03)。TCS併用群は週1回投与-63.2% [6.7]、隔週投与-56.1%[9.1]であったのに対し、プラセボ群は-14.5%[7.3]であった(いずれもp<0.001)。・EASIスコア(最小二乗平均変化率[SE]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-58.5% [9.0]、隔週投与-58.3%[7.9]であったのに対し、プラセボ群は-22.3%[12.4]であった(それぞれp=0.004、p=0.003)。TCS併用群は週1回投与-78.9%[7.8]、隔週投与-70.6%[10.1]であったのに対し、プラセボ群は-19.3%[8.2]であった(いずれもp<0.001)。・そう痒NRSスコア(最小二乗平均変化率[SE]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-45.9% [7.8]、隔週投与-33.9%[6.6]であったのに対し、プラセボ群は-0.6% [9.4]であった(いずれもp<0.001)。TCS併用群は週1回投与-53.0% [8.1]、隔週投与-55.7%[10.8]であったのに対し、プラセボ群は-26.0%[8.8]であった(それぞれp=0.006、p=0.01)。・名目上の統計学的に有意な改善は、早ければ1週目からみられた(デュピルマブ単剤群のEASIスコアとそう痒NRSスコア[それぞれp<0.05、p<0.001])。・バイオマーカー値はプラセボと比べて有意に低下した(いずれもp<0.001)。・デュピルマブ治療を受けた患者で最もよくみられた有害事象は、注射部位反応、結膜炎、上咽頭炎であった。

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日本人統合失調症患者に対する長時間作用型抗精神病薬注射剤の有効性比較

 明治薬科大学のYusuke Okada氏らは、日本人統合失調症患者に対する各種長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬(アリピプラゾール、パリペリドン、リスペリドン、フルフェナジン/ハロペリドール)の有効性の比較を行った。その結果、アリピプラゾールとパリペリドンのLAIは、フルフェナジン/ハロペリドールと比較し、精神科入院およびLAI中止のリスクが低かった。また、アリピプラゾールLAIは、リスペリドンよりもLAI中止リスクが低いことも報告した。Schizophrenia Research誌2023年2月号の報告。 2つのレセプトデータベースを用い、レトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2015年5月~2019年11月の間にLAI抗精神病薬による治療を開始した統合失調症外来患者。精神科入院リスクとLAI中止リスクをLAI間で比較するため、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・薬剤ごとの適格基準を満たした使用開始患者数は、アリピプラゾール303例、パリペリドン124例、リスペリドン73例、フルフェナジン/ハロペリドール123例であった。・精神科入院リスクについて、アリピプラゾール(HR:0.47、95%信頼区間[CI]:0.28~0.78)とパリペリドン(HR:0.50、95%CI:0.28~0.89)は、フルフェナジン/ハロペリドールと比較し、リスクが有意に低かった。また、リスペリドンは、アリピプラゾールおよびパリペリドンと同様の傾向が認められた。・LAI中止リスクについて、アリピプラゾール(HR:0.53、95%CI:0.35~0.80)とパリペリドン(HR:0.57、95%CI:0.35~0.92)は、フルフェナジン/ハロペリドールと比較し、リスクが有意に低かった。・アリピプラゾールは、リスペリドンと比較し、LAI中止リスクが有意に低かった(HR:0.56、95%CI:0.32~0.98)。

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CAR-T ide-cel、再発・難治性多発性骨髄腫への第III相試験結果(KarMMa-3)/NEJM

 2~4レジメンの前治療を受けた再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療において、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬であるイデカブタゲン ビクルユーセル(idecabtagene vicleucel:ide-cel)は標準治療と比較して、無増悪生存期間を約7ヵ月有意に延長するとともに深い奏効をもたらし、安全性プロファイルは先行研究と一致し新たな安全性シグナルは認められないことが、スペイン・Clinica Universidad de NavarraのPaula Rodriguez-Otero氏らが実施した「KarMMa-3試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年2月10日号で報告された。3分の2が3クラス抵抗性の無作為化第III相試験 KarMMa-3は、日本を含む12ヵ国49施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2019年5月~2022年4月の期間に患者の登録が行われた(2seventy bioとCelgene[Bristol-Myers Squibbの関連会社]の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、多発性骨髄腫と診断され、3クラスの薬剤(ダラツムマブ、免疫調整薬、プロテアーゼ阻害薬)を含む前治療(それぞれ2サイクル以上)を2~4レジメン施行され、最後の治療の最終投与日から60日以内に増悪が認められた患者であった。 被験者は、ide-celを投与する群(用量範囲:CAR陽性細胞150×106~450×106)または標準治療を受ける群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。標準治療は、担当医の裁量で、次の5つのレジメンから1つが選択された。ダラツムマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン、ダラツムマブ+ボルテゾミブ+デキサメタゾン、イキサゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン、エロツズマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン。 386例が登録され、ide-cel群に254例(年齢中央値63歳、男性61%)、標準治療群に132例(63歳、60%)が割り付けられた。66%が3クラス抵抗性で、95%はダラツムマブ抵抗性であった。全生存データは不十分 追跡期間中央値18.6ヵ月の時点における無増悪生存期間中央値(主要評価項目)は、標準治療群が4.4ヵ月であったのに対しide-cel群は13.3ヵ月と、有意に延長した(増悪または死亡のハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.38~0.65、p<0.001)。6ヵ月無増悪生存率は、ide-cel群が73%、標準治療群は40%、1年無増悪生存率はそれぞれ55%、30%だった。 奏効割合(部分奏効以上)は、標準治療群の42%に比しide-cel群は71%であり、有意差が認められた(オッズ比[OR]:3.47、95%CI:2.24~5.39、p<0.001)。完全奏効または厳格な完全奏効の割合は、ide-cel群で高かった(39% vs.5%)。また、奏効までの期間中央値は、ide-cel群が2.9ヵ月、標準治療群は2.1ヵ月で、奏効期間中央値はそれぞれ14.8ヵ月、9.7ヵ月だった。全生存のデータは不十分であった。 Grade3/4の有害事象は、ide-cel群が93%、標準治療群は75%で、Grade5はそれぞれ14%、6%で発現した。最も頻度の高い血液毒性は、好中球減少(ide-cel群78%、標準治療群44%)、貧血(66%、36%)、血小板減少(54%、29%)であり、消化器毒性では、悪心(45%、27%)、下痢(34%、24%)の頻度が高かった。 ide-cel群では、サイトカイン放出症候群が88%(197/225例)で発現し、このうちGrade3以上は5%(11例)であった。また、神経毒性は15%(34例)で認められ、3%(7例)がGrade3だった。 著者は、「複数の患者サブグループで無増悪生存期間が延長し、奏効率が改善したことを考慮すると、ide-celは、選択肢が少なく治療困難な再発・難治性多発性骨髄腫の患者に有益である可能性がある。また、本研究の知見は、生存アウトカムが不良な3クラス抵抗性の患者における本薬の使用を支持するものと考えられる」としている。

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広範囲脳梗塞、血栓回収療法の併用で身体機能が改善/NEJM

 広範囲脳梗塞患者の治療において、血管内血栓回収療法と標準的な内科的治療の併用は内科的治療単独と比較して、身体機能が有意に改善する一方で、手技に関連した血管合併症の増加を伴うことが、米国・ケース・ウエスタン・リザーブ大学のAmrou Sarraj氏らが実施した「SELECT2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年2月10日号に掲載された。中間解析で有効中止 SELECT2試験は、米国、カナダ、欧州、オーストラリア、ニュージーランドの31施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2019年9月~2022年9月の期間に患者のスクリーニングが行われた(Stryker Neurovascularの助成を受けた)。 対象は、年齢18~85歳、内頸動脈または中大脳動脈M1セグメント、あるいはこれら双方の閉塞による急性期脳梗塞で、発症から24時間以内であり、虚血コア体積が大きい(Alberta Stroke Program Early CTスコア[ASPECTS、0~10点、点数が低いほど梗塞が広範囲]が3~5点)、あるいはCT灌流画像またはMRI拡散強調画像でコア体積が50mL以上、脳梗塞発症前の修正Rankin尺度スコア(0~6点、点数が高いほど機能障害が重度、6点は死亡)が0または1点(機能障害なし)の患者であった。 被験者は、血管内血栓回収療法+内科的治療を行う群、または内科的治療のみを受ける群に無作為に割り付けられた。主要アウトカムは、90日の時点での修正Rankin尺度スコアであった。 本試験は、中間解析の結果に基づくデータ・安全性監視委員会の勧告により、有効中止となった。機能的独立や独立歩行も良好、症候性頭蓋内出血は1例のみ 352例(年齢中央値66.5歳[四分位範囲[IQR]:58~75]、女性41.2%)が登録され、178例が血栓回収療法群、174例は内科的治療群に割り付けられた。全体のNIHSSスコア中央値は19点(IQR:15~23)、最終健常確認時刻から無作為化までの間隔の中央値は9.31時間(IQR:5.66~15.33)、ASPECTS中央値は4点(IQR:3~5)、平均推定虚血コア体積は80mLであった。 90日時の修正Rankin尺度スコア中央値は、血栓回収療法群が4点(IQR:3~6)、内科的治療群は5点(4~6)であった。修正Rankin尺度スコアの分布が、血栓回収療法群でより良好な方向へと転換する一般化オッズ比(OR)は1.51(95%信頼区間[CI]:1.20~1.89)であり、統計学的に有意だった(p<0.001)。 90日時に機能的独立(修正Rankin尺度スコア:0~2点)が達成された患者の割合は、血栓回収療法群が20.0%、内科的治療群は7.0%であった(相対リスク[RR]:2.97、95%CI:1.60~5.51)。また、独立歩行(修正Rankin尺度スコア:0~3点)は、それぞれ37.9%、18.7%で達成された(RR:2.06、95%CI:1.43~2.96)。血栓回収療法群の再灌流成功割合は79.8%だった。 90日時の全死因死亡率は、血栓回収療法群が38.4%、内科的治療群は41.5%であった(RR:0.91、95%CI:0.71~1.18)。24時間以内の症候性頭蓋内出血は、それぞれ1例(0.6%)、2例(1.1%)と、両群とも少なかった(RR:0.49、95%CI:0.04~5.36)。 血栓回収療法群では、約2割の患者で手技に関連した合併症が発生した。動脈アクセス部位の合併症が5例(閉塞3例[1.7%]、血腫1例[0.6%]、感染症1例[0.6%])で、血管の解離が10例(5.6%)、脳血管の穿孔が7例(3.9%)、一過性の血管攣縮が11例(6.2%)で認められた。 著者は、「これらの結果は、ベースラインの画像所見で虚血コアが大きい広範囲脳梗塞患者への血栓回収療法の適応拡大を支持するものと考えられる」としている。

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078)乾癬で大きい病院に行くのはどんなとき?【Dr.デルぽんの診察室観察日記】(ブログより転載)

第78回 乾癬で大きい病院に行くのはどんなとき?(『デルマな日常』より転載)アロ~ハ☆今日も元気なデルぽんで~す☆本日はリクエスト漫画☆彡乾癬について漫画にしてください!というコメントをいただいたので漫画にしたよー!!どうぞー!!!乾癬(尋常性乾癬)かんせん、と読みます。名の通り乾いたカサカサのついた赤い厚みのある湿疹ができる皮膚疾患です!一般の病院ではそんなに数は多くないけれどもちろん通院している人はいる。塗り薬で定期通院しているひとがおおいよ☆彡大きい病院に紹介するのは、塗り薬や飲み薬ではうまくコントロールできないとき、患者さんの希望があったとき、爪や関節痛の治療に困ったときなど。大学など専門施設では外用・内服・光線治療のほかに注射(生物学的製剤)の治療などをやってます。乾癬の人わりと大らかな人が多い印象。出てるけど気にしてないよ☆薬ちょうだい☆、みたいな人が多くて実は乾癬だけど通院してないって人が意外ともっといるのではと個人的に思う…そんなかんじです!!でわね!バーイ☆彡※この記事は、Dr.デルぽんのご厚意により『デルマな日常』から転載させていただきました。(転載元:『デルマな日常』2022年05月17日 乾癬で大きい病院に行くのはどんなとき?)

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ペムブロリズマブの肺がんアジュバントの(FDA)承認で考えること【侍オンコロジスト奮闘記】第144回

第144回:ペムブロリズマブの肺がんアジュバントの(FDA)承認で考えること参考FDA approves pembrolizumab as adjuvant treatment for non-small cell lung cancerImfinzi and Imjudo with chemotherapy approved in the US for patients with metastatic non-small cell lung cancerReijers ILM, et al.Nat Med.202;28:1178-1188. Personalized response-directed surgery and adjuvant therapy after neoadjuvant ipilimumab and nivolumab in high-risk stage III melanoma: the PRADO trial

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英語で「ちなみに」は?【1分★医療英語】第69回

第69回 英語で「ちなみに」は?Just FYI, this patient’s son is a cardiologist.(ちなみに、この患者さんの息子は循環器内科医です)Thanks for your input.(情報ありがとう)《例文1》医師AJust FYI, your patient called me twice yesterday.(ちなみに、昨日あなたの患者さんが2回電話してきました)医師BI will call her back today.(私が後から掛け直します)《例文2》医師Just FYI, I am from Boston too.(ちなみに、私もボストン出身です)患者Oh, that is great!!(おお、本当ですか!)《解説》“Just FYI,”この短い表現は頻繁に使われます。少しくだけた表現なので私の周りでは医療従事者同士で使われることが多い印象です。“For Your Information”の略で“FYI”、発音はそのまま「エフワイアイ」です。意味としては、「ちなみに」という日本語が近いです。相手にとって有益な情報や、共有したい情報を伝える際に文頭に付けることで相手の注意を引くことができます。どちらかというと、「非常に重要な情報」というよりは、「本題に付加する豆知識的な情報」に対して使われます。日常会話でも、病院内でも、使い方をマスターすればとても便利な表現ですので、ぜひ使ってみてください。講師紹介

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2月28日 世界希少・難治性疾患の日【今日は何の日?】

【2月28日 世界希少・難治性疾患の日】〔由来〕世界希少・難治性疾患の日(Rare Disease Day)は、より良い診断や治療による希少・難治性疾患の患者生活の質の向上を目指し、スウェーデンで2008年から始まった活動。わが国でもこの趣旨に賛同し、2010年から2月最終日にイベントを開催している。4年に1度の閏日の2月29日が最も「まれな日」として象徴的に定められ、閏年以外は2月の最終日とされている。関連コンテンツ希少疾病ライブラリ希少疾病・難治性疾患特集 2021第139回 情報過多でも希少疾病の患者が孤立する理由【バズった金曜日】Withコロナにおける希少疾病診療希少がんのオンライン・セカンドオピニオンを開設/国立がん研究センター

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第152回 欧州医薬品評価委員会がモルヌピラビル承認を支持せず

Merck社がRidgeback Biotherapeutics社と組んで開発した新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」)治療薬モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)を、欧州連合(EU)の医薬品審査の実質的な最終意思決定の場である欧州医薬品評価委員会(CHMP)が承認すべきでないと判断しました1)。クリニカルベネフィットが示されていないとCHMPは判断していますが、Merck社は不服を申し立てて再検討を求める予定です2)。高リスクのコロナ患者の入院/死亡リスクがモルヌピラビルでおよそ半減することを示した2021年10月発表の試験結果3)は世間を沸かせました。その翌月にはPfizer社もコロナ薬ニルマトレルビル・リトナビル(日本での商品名:パキロビッドパック)の有望な試験成績を発表します。ニルマトレルビル・リトナビルはコロナ患者の入院/死亡率を89%低下させました4)。モルヌピラビルは今では25を超える国々で認可/承認されており、400万人を超える患者に投与され2)、昨年の売り上げは約57億ドルでした。しかし今年のモルヌピラビルの売り上げは約10億ドルになるとMerck社は予想しています5)。一方、Pfizer社は今年のニルマトレルビル・リトナビルの売り上げは約80億ドルになると見込んでいます6)。米国は取り急ぎの認可の6ヵ月ほど前の2021年6月にモルヌピラビル170万回治療分を12億ドルで購入する約束を交わし7)、今月19日時点までに取得した290万回治療分のうち約120万回分を使っています8)。Pfizer社のニルマトレルビル・リトナビルはというと約1,228万回治療分のうち約821万回分が使われています。昨夏2022年7月に米国FDAは薬剤師がPfizer社のニルマトレルビル・リトナビルを処方できるようにしましたが9)、モルヌピラビルはそうではありません。昨秋2022年10月に発表されたコロナワクチン接種患者を主とする英国での試験結果では、モルヌピラビルの入院や死亡の予防効果が認められませんでした10)。その翌月に英国は公的医療でのモルヌピラビル使用を却下する暫定方針を示しています11)。昨春2022年4月にPfizer社はコロナ患者の同居人にニルマトレルビル・リトナビルを投与しても感染を防げなかったという試験結果を発表しました12)。Merck社のモルヌピラビルも残念ながら同じ結果で、先週発表された国際試験結果でコロナ患者の同居人の感染を減らすことができませんでした13)。参考1)Meeting highlights from the Committee for Medicinal Products for Human Use (CHMP) 20 - 23 February 2023 / EMA2)Merck and Ridgeback Provide Update on EU Marketing Authorization Application for LAGEVRIO? (Molnupiravir) / BUSINESS WIRE3)Merck and Ridgeback’s Investigational Oral Antiviral Molnupiravir Reduced the Risk of Hospitalization or Death by Approximately 50 Percent Compared to Placebo for Patients with Mild or Moderate COVID-19 in Positive Interim Analysis of Phase 3 Study / BUSINESS WIRE4)Pfizer’s Novel COVID-19 Oral Antiviral Treatment Candidate Reduced Risk of Hospitalization or Death by 89% in Interim Analysis of Phase 2/3 EPIC-HR Study / BUSINESS WIRE5)Merck Announces Fourth-Quarter and Full-Year 2022 Financial Results BUSINESS WIRE6)PFIZER REPORTS RECORD FULL-YEAR 2022 RESULTS AND PROVIDES FULL-YEAR 2023 FINANCIAL GUIDANCE BUSINESS WIRE7)Merck Announces Supply Agreement with U.S. Government for Molnupiravir, an Investigational Oral Antiviral Candidate for Treatment of Mild to Moderate COVID-19 / BUSINESS WIRE8)COVID-19 Therapeutics Thresholds, Orders, and Replenishment by Jurisdiction9)Coronavirus (COVID-19) Update: FDA Authorizes Pharmacists to Prescribe Paxlovid with Certain Limitations FDA10)Molnupiravir Plus Usual Care Versus Usual Care Alone as Early Treatment for Adults with COVID-19 at Increased Risk of Adverse Outcomes (PANORAMIC): Preliminary Analysis from the United Kingdom Randomised, Controlled Open-Label, Platform Adaptive Trial. Posted: 17 Oct 202211)NATIONAL INSTITUTE FOR HEALTH AND CARE EXCELLENCE Draft guidance consultation Therapeutics for people with COVID-1912)Pfizer Shares Top-Line Results from Phase 2/3 EPIC-PEP Study of PAXLOVID? for Post-Exposure Prophylactic Use / Pfizer13)Merck Provides Update on Phase 3 MOVe-AHEAD Trial Evaluating LAGEVRIO? (molnupiravir) for Post-exposure Prophylaxis for Prevention of COVID-19 / BUSINESS WIRE

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世界初のRSVワクチン誕生へ向けて、下気道疾患の予防効果80%超/NEJM

 多くの人は2歳までにRSウイルス(RSV)に感染する。生涯を通じて再感染することがあり、通常は症状が軽いもしくは無症状とされている。しかし、高齢者や合併症を有する患者では、下気道疾患が引き起こされ、基礎疾患の増悪、入院、死亡につながる可能性がある。先進国の60歳以上の成人においては、2019年にRSV感染が約520万例の急性呼吸器感染症、約47万例の入院、約3万3千例の院内死亡をもたらしたと推定されている1)。しかし、現在までに承認されているRSVワクチンは存在しない。そこで、宿主細胞との膜融合に関与するfusion(F)タンパク質について、立体構造を安定させた融合前(prefusion)Fタンパク質を含有するワクチンが開発され、60歳以上の成人を対象とした第III相試験において、RSVに関連する下気道疾患および急性呼吸器感染症の予防効果が示された。本研究はAReSVi-006 Study Groupによって実施され、結果はイタリア・フェラーラ大学のAlberto Papi氏らによって、NEJM誌2023年2月16日号で報告された。 60歳以上の成人2万4,966例を対象に国際共同プラセボ対照第III相試験を実施した。RSVワクチン(RSVPreF3 OA)群またはプラセボ群に1:1の割合で無作為に割り付け、単回接種した。主要評価項目は、RSV流行期間中における逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)で確認されたRSVに関連する下気道疾患※1の予防効果であった。主要評価項目の達成基準は、有効率推定値の96.95%信頼区間[CI]下限値が20%を上回った場合とした。また、RSVに関連する重症下気道疾患※2および急性呼吸器感染症※3に対する有効性も評価した。RSVの分類(A型、B型)別の解析も行った。安全性について、特定有害事象(一般的にワクチン接種に関連するとされる有害事象)はRSVワクチン群879例、プラセボ群878例を対象として評価し、非特定有害事象は接種を受けたすべての被験者を対象として評価した。※1:2つ以上の下気道症状/徴候(少なくとも1つの下気道徴候を含む)、または3つ以上の下気道症状が24時間以上持続※2:下気道疾患のうち、臨床症状または治験責任医師による評価で重症とされた、または支持療法を受けたもの※3:2つ以上の呼吸器症状/徴候、または1つ以上の呼吸器症状および1つ以上の全身症状/徴候が24時間以上持続 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中(中央値6.7ヵ月)、RT-PCRで確認されたRSVに関連する下気道疾患に対するRSVワクチンの有効率は82.6%(96.95%CI:57.9~94.1)であり、96.95%CI下限値が20%を上回ったため、主要評価項目が達成された。RSVに関連する下気道疾患は、RSVワクチン群7例(1.0例/1,000人・年)プラセボ群40例(5.8例/1,000人・年)に認められた。・RSVに関連する重症下気道疾患に対するRSVワクチンの有効率は94.1%(95%CI:62.4~99.9)であった。RSVに関連する重症下気道疾患は、RSVワクチン群1例(0.1例/1,000人・年)プラセボ群17例(2.5例/1,000人・年)に認められた。・RSVに関連する急性呼吸器感染症に対するRSVワクチンの有効率は71.7%(95%CI:56.2~82.3)であった。RSVに関連する急性呼吸器感染症は、RSVワクチン群27例(3.9例/1,000人・年)プラセボ群95例(13.9例/1,000人・年)に認められた。・RSV A型、B型に対するRSVワクチンの有効率は、RSVに関連する下気道疾患がそれぞれ84.6%、80.9%であり、RSVに関連する急性呼吸器感染症がそれぞれ71.9%、70.6%であった。・特定有害事象はRSVワクチン群71.9%(632/879例)、プラセボ群27.9%(245/878例)に認められ、注射部位反応として疼痛が多く(それぞれ60.9%、9.3%)、全身反応として疲労が多かった(それぞれ33.6%、16.1%)。特定有害事象の解析対象集団における接種30日以内の非特定有害事象は、それぞれ14.9%、14.6%に認められ、Grade3はいずれも1.4%であった。 本試験の結果について、著者らは「60歳以上の成人に対するRSVPreF3 OAワクチンの単回接種は、RSVの分類(A型、B型)や基礎疾患の有無にかかわらず、RSVに関連する下気道疾患(重症含む)、急性呼吸器感染症に対する予防効果を示し、安全性に関する懸念は認められなかった」とまとめている。なお、本試験はGlaxoSmithKline Biologicalsの支援により実施され、中間解析の結果を基にグラクソ・スミスクラインは、60歳以上の成人を対象としたRSVに関連する下気道疾患の予防を目的として、2022年10月に厚生労働省へ製造販売承認申請している。

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性的マイノリティーの乳がん患者は再発リスクが3倍

 性的マイノリティー(レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー)の乳がん患者では、シスジェンダー(性自認と生まれ持った性別が一致している人)で異性愛者の乳がん患者と比較して、症状発現から診断までの期間が長く、再発リスクが3倍であることが、米国・スタンフォード大学のErik Eckhert氏らの研究により明らかになった。JAMA Oncology誌オンライン版2023年2月2日号掲載の報告。 多くの医療機関では患者の性的指向や性自認に関するデータは収集していないため、性的マイノリティーにおける乳がんの診断、治療、予後などの医療格差はあまり知られていない。そこで研究グループは、シスジェンダーの異性愛者と比較して、性的マイノリティーの乳がん治療の質と再発率を調査した。 対象は、2008年1月1日~2022年1月1日に治療を受けた性的マイノリティーの乳がん患者92例と、診断年、年齢、病期、ホルモン受容体およびHER2発現でマッチさせたシスジェンダーで異性愛者の乳がん患者92例(対照群)であった。 主な結果は以下のとおり。・参加者の診断時の年齢中央値は49歳(範囲:43~56歳)で、性的マイノリティー群はレズビアンが80%(74例)、バイセクシャルが13%(12例)、トランスジェンダーが6%(6例)であった。・対照群と比較して、性的マイノリティー群では症状発現から診断までの期間が長かった(診断までの期間の中央値:性的マイノリティー群64日vs.対照群34日、補正後ハザード比[aHR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.42~0.99、p=0.04)。・性的マイノリティー群では、がん専門医が推奨する治療を拒否する割合が高かった(補正後オッズ比[aOR]:2.27、95%CI:1.09~4.74、p=0.03)。・性的マイノリティー群では、乳がんの再発率が高かった(aHR:3.07、95%CI:1.56~6.03、p=0.001)。 これらの結果より、研究グループは「シスジェンダーで異性愛者の乳がん患者と比較して、性的マイノリティーの乳がん患者では診断が遅れており、再発リスクが3倍であることが明らかになった。性的マイノリティーでは医療格差があり、さらなる調査が必要である」とまとめた。

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うつ病や高レベルの不安症状を有する患者に対するボルチオキセチンの最新分析

 うつ病患者の多くは、不安症状を合併している。デンマーク・H. Lundbeck A/SのMichael Adair氏らは、うつ病患者の不安症状の治療に有効であるといわれているボルチオキセチンが、承認されている用量の範囲で有効性および忍容性が認められるかを検討した。その結果、ボルチオキセチンは、前治療で効果不十分であった患者を含むうつ病および高レベルの不安症状を有する患者に対し、有効かつ良好な忍容性を示し、最大の効果が20mg/日で認められたことを報告した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年1月25日号の報告。 うつ病および高レベルの不安症状(ハミルトン不安評価尺度[HAM-A]総スコア20以上)を有する患者を対象に、ボルチオキセチン5~20mg/日の有効性および忍容性を検討するため、4つのランダム化固定用量プラセボ対照試験(842例)からプールされたデータを用いた。前治療で効果不十分であった患者299例において、ボルチオキセチン10~20mg/日とagomelatine 25~50mg/日を比較したランダム化二重盲検試験のデータを個別に分析した。Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、HAM-A、シーハン障害尺度(SDS)の総スコアのベースラインからの平均変化量を、ボルチオキセチンの投与量別に分析した。 主な結果は以下のとおり。・固定用量試験からプールされた分析では、MADRS、HAM-A、SDSの総スコアの改善に関して、ボルチオキセチン5~20mg/日における用量反応関係が認められた。・ボルチオキセチン20mg/日は、プラセボと比較し、4週目以降の有意な効果が確認された。・前治療で反応が不十分であった患者を対象とした事後分析では、ボルチオキセチン10~20mg/日はagomelatineと比較し、4週目以降のすべてのアウトカムにおいて優れた効果が確認された。・ボルチオキセチンを20mg/日まで増量した場合でも、有害事象の増加は認められなかった。・いずれの研究も短期試験であり、長期的な影響は確認できなかった。

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