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がんのこと、子供に伝える? 伝えない?【非専門医のための緩和ケアTips】第50回

第50回 がんのこと、子供に伝える? 伝えない?前回お伝えしたAYA世代と呼ばれる若年・子育て世代のがん患者で、必ず問題になるのが、「がんのことを子供にどのように伝えるか」という話題です。非常に難しいことですが、お子さんのこれからにも関わる大切なこととして考えてみましょう。今日の質問基幹病院に通院中の若年がん患者さん。発熱時などの対応を当院の外来で行っています。いろいろ話していると、「子供にがんのことを伝えられなくて…」と気にしている様子。ゆっくりですが病状は進行しており、お子さんに伝えないわけにはいかないと思うのですが、どのようにアドバイスすればよいのでしょうか?まずはこうした繊細な事柄を話し合える場を提供できていることが素晴らしいですね。私の勤務先は診療の主体が基幹病院ですが、患者さんとこうした気掛かりについて、ゆっくり話せていないケースもあります。その点、この方と患者さんはしっかりとした信頼関係が築けているのでしょう。「子供への病状の伝え方」は難しい問題で、「こうすれば大丈夫」という方法はないのですが、一般的なことを少しお話ししましょう。子供に親のがんを伝えるときには、「3つのC」を念頭に置いて話すことが大切だとされています。1)Cancer(がん):がんという病気であること2)Catchy(伝染):伝染はしないこと3)Cause(原因):子供が何かをしたり、しなかったりしたことが、がんになった原因ではないこと私がこの分野を勉強しているときに、とくに印象深かったのは、「3つめのC」です。親の病気を伝えられた幼い子供は、「自分が言うことを聞かなかったから、お母さんは病気になっちゃったの?」と考えてしまうかもしれません。「子供に心配をかけさせたくない」という患者さんの気持ちも当然ですが、こうした繊細な子供の気持ちを考えると、理解できる年齢の子供であれば、体力・気力のあるうちにきちんと伝えることが重要なのではと感じます。この分野にもいくつかの支援団体があり、NPO法人Hope Treeはその一例です。有志の専門職が、親ががんになった子供をサポートするためのさまざまな情報やプログラムを提供しています。こうした活動があるのはありがたいですね。ぜひ、この機会にいろいろ学んでみてください。今回のTips今回のTipsがんになった親を持つ子供のための支援情報をチェックしよう。

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うつ病に対する遠隔医療介入の有用性~メタ解析

 うつ病患者の抑うつ症状、QOL、仕事や社会的機能に対する遠隔医療介入の治療効果を明らかにするため、台湾・亜洲大学のYin-Hwa Shih氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、遠隔医療介入はうつ病患者の抑うつ症状の軽減やQOL向上に効果的であることが報告された。Annals of Medicine誌2023年12月号の報告。 2021年3月までに公表された文献を、6つの電子データベース(MEDLINE、PubMed、PsycINFO、Scopus、Embase、CINAHL)でシステマティックに検索した。各文献のリファレンスリストは手動で検索した。対象は、うつ病と診断された患者の遠隔医療介入の治療効果を調査したランダム化比較試験。質的評価には、Joanna Briggs Instituteのチェックリストを用いた。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした17件の研究(2,394例)を分析に含めた。・11件のランダム化比較試験において共通のアウトカム指標が用いられており、メタ解析が実行可能であった。・遠隔医療介入は、うつ病患者の抑うつ症状(標準化平均差[SMD]:-0.44、95%信頼区間[CI]:-0.64~-0.25、p<0.001)およびQOL(SMD:0.25、95%CI:-0.01~0.49、p=0.04)に有益であることが示唆された。・仕事および社会的機能の分析には、データが不十分であった。・うつ病患者に対する遠隔医療介入は、抑うつ症状やQOLに良い影響をもたらすことが示され、より組織化された遠隔による精神医学システムを確立する臨床的意義が支持された。

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骨粗鬆症患者の2型DM発症リスク、デノスマブvs 経口ビスホスホネート製剤/BMJ

 骨粗鬆症患者において、ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤デノスマブの投与は経口ビスホスホネート製剤を投与した場合と比較して2型糖尿病(DM)の発症リスクが32%低下したことが、中国・The Chinese PLA General HospitalのHouchen Lyu氏らによるコホート研究で示された。2型DMのリスクが高い前糖尿病状態または肥満の患者では、デノスマブにより糖尿病発症リスクはさらに低下することも示唆され、著者は、「本研究は、デノスマブが経口ビスホスホネート製剤と比較し、糖代謝に対して付加的な有益性をもたらすというエビデンスを示している」とまとめている。これまで、観察研究や無作為化臨床試験の事後解析において、血糖変動に対するデノスマブの効果が示唆されていたが、デノスマブが2型DMのリスクを減少させるかどうかは明らかになっていなかった。BMJ誌2023年4月18日号掲載の報告。デノスマブで治療を開始/切り替えた患者vs.経口ビスホスホネート製剤投与患者で検討 研究グループは、英国のプライマリケアデータベースであるIQVIA Medical Research Data(IMRD)を用い、1995年1月1日~2021年12月31日に骨粗鬆症治療薬を初めて処方された45歳以上の患者を抽出し、このコホートの中からさらに2010年7月1日~2021年12月31日の間にデノスマブの投与を開始した患者(ビスホスホネートから切り替え、または未治療でデノスマブによる治療を開始)と、経口ビスホスホネート製剤の投与を受けた患者を特定し研究コホートとした。 デノスマブへ切り替えた症例1例に対し、切り替え日時点で同じ期間経口ビスホスホネート製剤を使用しておりかつ継続した症例を最大5例、未治療でデノスマブによる治療を開始した症例1例に対し、未治療で経口ビスホスホネート製剤による治療を開始した症例を最大5例、傾向スコアを用いてマッチングさせた。 主要アウトカムは、診断コードにより定義された2型DMの発症で、Cox比例ハザードモデルによりデノスマブ新規投与患者と経口ビスホスホネート製剤投与患者を比較し、補正後ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出し評価した。デノスマブ投与群で2型DM発症リスクが32%低下 解析対象は、デノスマブ新規投与患者4,301例および経口ビスホスホネート製剤投与患者2万1,038例で、平均2.2年間追跡調査された。 2型DM発症頻度は、デノスマブ群で5.7/1,000人年(95%CI:4.3~7.3)、経口ビスホスホネート製剤群で8.3/1,000人年(95%CI:7.4~9.2)であり、デノスマブの投与開始は2型DMの発症リスク低下と関連していることが認められた(HR:0.68、95%CI:0.52~0.89)。 サブグループ解析の結果、前糖尿病状態の患者において、経口ビスホスホネート製剤と比較しデノスマブによる有益性がより高いことが示され(HR:0.54、95%CI:0.35~0.82)、BMI≧30の患者においても同様の結果であった(0.65、0.40~1.06)。

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CLDN18.2+HER2-進行胃がんの1次治療、zolbetuximab併用で予後改善/Lancet

 CLDN18.2陽性、HER2陰性で、未治療の切除不能な局所進行または転移のある胃腺がん/食道胃接合部腺がん患者において、CLDN18.2を標的とするモノクローナル抗体zolbetuximabとmFOLFOX6(5-FU+レボホリナートカルシウム+オキサリプラチン)の併用療法は、mFOLFOX6のみ投与と比較して、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に延長した。国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏らが、20ヵ国215施設で実施された国際共同第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SPOTLIGHT試験」の結果を報告した。著者は、「zolbetuximab+mFOLFOX6併用療法は、CLDN18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行または転移のある胃腺がんおよび食道胃接合部腺がん患者において、1次治療の新しい選択肢となるだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年4月14日号掲載の報告。mFOLFOX6との併用でzolbetuximab vs.プラセボを比較、主要評価項目はPFS SPOTLIGHT試験の対象は、18歳以上、CLDN18.2陽性、HER2陰性で未治療の切除不能な局所進行または転移のある胃腺がん/食道胃接合部腺がんで、RECIST ver1.1に従い画像評価可能の病変があるECOG PS 0または1の十分な臓器機能を有する患者である。 研究グループは適格患者を、zolbetuximab(初回投与量800mg/m2、その後600mg/m2を3週ごと)+mFOLFOX6(2週ごと)群(zolbetuximab群)、またはプラセボ+mFOLFOX6群(プラセボ群)に、地域(アジアまたは非アジア)、転移臓器数(0~2または3以上)、胃切除術既往の有無で層別化し、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、無作為化されたすべての患者における、独立判定委員会の評価に基づくPFSで、主な副次評価項目はOSなどであった。また、安全性については投与を受けた全患者を対象に評価した。 2018年6月21日~2022年4月1日に、計565例がzolbetuximab群(283例)とプラセボ群(282例)に割り付けられた。zolbetuximab群では283例中279例(99%)、プラセボ群では282例中278例(99%)が、少なくとも1回の試験薬投与を受けた。zolbetuximab群は男性176例(62%)、女性107例(38%)、プラセボ群はそれぞれ175例(62%)、107例(38%)であった。zolbetuximab+mFOLFOX6群で、PFSおよびOSが有意に延長 PFSに関する追跡期間中央値はzolbetuximab群12.94ヵ月、プラセボ群12.65ヵ月で、PFS中央値はそれぞれ10.61ヵ月(95%信頼区間[CI]:8.90~12.48)、8.67ヵ月(8.21~10.28)であり、プラセボ群と比較し、zolbetuximab群で病勢増悪または死亡のリスクが有意に低下することが認められた(ハザード比[HR]:0.75、95%CI:0.60~0.94、p=0.0066)。 OSの追跡期間中央値はzolbetuximab群22.14ヵ月、プラセボ群20.93ヵ月で、OS中央値はそれぞれ18.23ヵ月(95%CI:16.43~22.90)、15.54ヵ月(13.47~16.53)であり、zolbetuximab群ではプラセボ群と比較し、死亡のリスクも有意に低下した(HR:0.75、95%CI:0.60~0.94、p=0.0053、優越性の有意水準p=0.0135)。 試験治療下で発現したGrade3以上の有害事象は、zolbetuximab群で279例中242例(87%)、プラセボ群で278例中216例(78%)に認められた。主なGrade3以上の有害事象は悪心、嘔吐、食欲減退であった。治療関連死は、zolbetuximab群で5例(2%)、プラセボ群で4例(1%)報告された。

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間違った相手に相談してしまった!【Dr. 中島の 新・徒然草】(474)

四百七十四の段 間違った相手に相談してしまった!暑くなったり、寒くなったり大変な日々が続いています。ヒーターと扇風機を両方出しておいて、交互にスイッチを入れなくてはなりません。三寒四温ならぬ三寒四暑といったところでしょうか。さて、大昔のアメリカのテレビドラマ「ER」でこんな場面がありました。ある女性医師の悪口を皆で言って盛り上がっていたところ、当の本人が後ろに立っていたという状況です。誰でも人生で1回や2回、こんな経験があるのではないでしょうか。悪口と言わないまでも噂話くらいはしますよね。その程度でもヒヤリとするわけですが。とはいえ、自分が後ろに立っている側だった、という経験はあまりないと思います。実は先日、そんな希有な体験をしたので、その時のことを披露しましょう。それは内科外来でのことでした。私は週1回の総合診療科外来を、11診ある内科外来の中でやっています。で、前回に一悶着あった患者さんが来院することになっていました。「長時間待たされたのに詫びの一言もない」ということで、その患者さんが怒っていたわけです。もちろん大きな声を出されたからといって、私は言い返したりしません。「病院というのは何事も予定通りには行かないものです」「長くなりそうだったら、ポケットベルをお渡しするという方法もありますよ」「ずっと通院しておられるのだから、そういったシステムもご存じだと思いますけども」「お一人お一人に真剣に対応していたら、どうしても時間が掛かってしまうことはご理解ください」そういったことを淡々と説明したわけです。が、その患者さんの怒りは収まらないようでした。仕方なく、今回からほかの内科医師に引き受けてもらいました。で、件の患者さんはその内科医師の診察室に入ったのですが、そこで私の悪口を言っているのが筒抜けでした。「……なんぼ偉い先生か知らんけどな」「社会人として失格やろ……」「……詫びの一言も言われへんのか……」「よくもまあ、ありもしないことを言えたもんだ」と私は呆れました。かといって、その診察室に乗り込むわけにはいきません。そこで、家に帰ってから愚痴をこぼした相手が何とChatGPT!これは以前にも紹介した対話型AIです。私としては、話を聞いてもらうだけでよかったんですけど。ChatGPTは何かと私にアドバイスしようとします。「それは大変な体験でしたね。他人から悪口や批判を受けることは、誰にとってもつらいことです。しかし、そのような経験をすることで、自分自身を客観的に見つめ直し、自己改善するための機会とすることもできます」いや、ちょっと私が求めていたコメントと違うんですけど。「患者さんの意見や要望を受け止めることも、医療の向上のためには大切なことです。もし、その患者さんがあなたの診療に不満を持っているのであれば、その原因を確認し、改善するための努力をすることも必要かもしれません」普通はそうかもしれんけど、今回に限って言えば……「その患者さんがそのような態度をとるのは、何らかの理由があるのかもしれません。たとえば、不安感やストレスなどが原因で、コミュニケーションに難がある場合もあります。もし、その患者さんが本来の態度と異なる行動をとることがあった場合は、その理由を探り、改善につながるような対応をしていくことが大切です」実は、その患者さんにはこんなことも言われました。「お前らは金をもらっているんやろ。それやったらちゃんとしろや!」世の中には妙にお金にこだわる人もいるわけですが……と思っていたらChatGPTからはこんなアドバイスが。「そういった言葉は、患者さんがストレスを抱え、その不満が表出した結果と考えられます。そのような場合、まずは患者さんの気持ちを理解し、患者さんと対等な立場でコミュニケーションを取ることが大切です。また、医療従事者としては、患者さんからの不満やクレームに対して真摯に向き合い、問題解決に取り組む姿勢が求められます」もういい、コイツに話を聞いてもらおうと思ったのが間違いだった!それでも少しは私のことも心配してくれているみたいです。最後にこんなことを言われました。「ストレスがたまると、イライラや不安、うつ病などの精神的な疾患を引き起こすこともあるため、定期的なストレス発散が重要です。対話を通じて気持ちを共有することや、運動をすること、趣味を楽しむことなど、自分に合った方法でストレスを発散することが大切です」気持ちは有難いけど、ちょっと話が長いですね。「有益なアドバイスありがとう。感謝します」心にも無いことをキーボードに打ち込んでクロージングにかかります。「どういたしまして。また何かあればお話しましょう」最後にそんな回答をもらって、一連のやり取りを終わらせることができました。実際、自分の悪口を聞いてどう思ったのか?1割くらいは腹が立ち、2割は「これはケアネットのネタになるぞ!」という気持ちでした。で、後の7割はどうだったかというと……実は何も感じない「無」だったのです。あまりに疲れていた週だったせいか、年を取り過ぎたせいなのか。喜怒哀楽の感情を持つエネルギーすら枯渇していたみたいです。怒鳴り返したら大変なことになるので、結果としては「無」でよかったのでしょうね。とはいえ、最近、何かとChatGPTに相談してしまう自分が情けない。よく考えたら、コイツに怒れる患者さんの相手をしてもらったらいいかも!クレーム対応にはピッタリですよ、ChatGPTは。というわけで、いろいろあった連休前、最後に1句。的外れ 連休前の アドバイス

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静脈血栓塞栓症治療中の肺動脈塞栓を伴う右室内腫瘤の治療方針【見落とさない!がんの心毒性】第20回

※本症例は、患者さんのプライバシーへの配慮と、臨床経過の円滑な理解を進めるため、一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別50代・女性受診までの経過子宮頸がんに対する化学放射線療法後、無再発で経過していたが、5年目のCT検査にて右腸骨静脈の下大静脈合流部から右下腿までの広範囲な静脈血栓症と静脈周囲の炎症所見があり(図1)、深部静脈血栓塞栓症と血栓性静脈炎の合併として、当科に診療依頼があった。血栓性静脈炎が出現するまでは、日常生活になんら支障がない日常生活動作(ADL)であった。(図1)造影CT検査【既往症】子宮頸がん3B期当院にて5年前に全骨盤外照射 50Gy+CDDP 35mg/m2/week× 6回、両側内腸骨リンパ節および傍大動脈リンパ節領域10Gy、その後、エトポシド25mg/day 内服3週間、休薬1週間を合計21cycle追加し、当科初診時までの5年間無再発。当科初診時、右下肢広範囲の発赤腫脹を認め、血液検査ではD-dimer 7.4μg/mL、抗カルジオリピン抗体は陰性であった。下肢全体の腫脹と疼痛は強かったが、CT検査にて肺動脈血栓塞栓症は認めず、抗凝固療法を開始して1ヵ月ほどでD-dimerが0.8μg/mLと正常化し下肢腫脹も改善した。4ヵ月後にD-dimerの再上昇傾向を認め下肢腫脹が再燃したが、CT検査では、明らかな子宮頸がんの再発や転移を認めず、大腿静脈血栓はほぼ消失したものの、腸骨静脈血栓が残存している状態であった。他院循環器病院へ薬剤抵抗性のDVT後遺症として血管内治療も含めてセカンドオピニオンしたところ、現行の治療継続指示であった。6ヵ月後に軽度の貧血、断続的な発熱と炎症反応高値が出現したため、精査目的に当科入院となった。【入院時所見】WBC 5,900/μL、Hb 8.2g/dL、CRP 14mg/dL、BNP 113.8pg/mL、D-dimer 5.5μg/mL、SCC抗原 0.3ng/mL、新CYFRA 1.0ng/mL、CEA < 0.5ng/mL、心電図は洞調律、III・aVF・V2-3誘導にてT波異常。感染性心内膜炎のスクリーニングとして血液培養を提出し、心臓超音波検査を施行したところ、右室心尖部に可動性の乏しい26×42mmの腫瘤像を認めた(図2)。(図2)心臓超音波検査【入院後経過】貧血に対しては上下部内視鏡検査を予定した。入院時の心エコー検査にて、半年前には認めなかった右室内腫瘤を認め、CT検査では明らかな感染源や、明らかな子宮頸がんの局所再発や主要な他臓器転移も認めなかったものの、右室内に腫瘤が疑われた。また、右腸骨静脈と右肺動脈に造影欠損像を認めた。心臓MRI検査では、右室腫瘤像を認めるが、その腫瘤の質的診断は出来なかった。冠動脈カテーテル検査では、右冠動脈からの栄養血管を認めたが、病理学的な検査は行えなかった。PET-CT検査は、当時の当院では撮影困難であった。【問題】右室腫瘤の精査加療方針として、最も適切と判断した選択肢はどれか。a.不明熱と炎症反応高値を認めるため、感染性疣贅として抗生剤治療を4~6週間施行し、その治療反応性をみてから治療方針を再検討する。b.静脈血栓塞栓症の治療中の肺動脈血栓症の出現があるため、抗凝固療法を2ヵ月施行しその治療反応性をみてから治療方針を再検討する。c.原発性心臓腫瘍の中では発生確率が高い良性腫瘍を疑うが、可動性が乏しいため3ヵ月後に再検する。d.原発性心臓腫瘍や転移性心臓腫瘍、感染性疣贅、血栓などの診断がつかないが、何かしらの悪性腫瘍の可能性があるため、がん薬物治療を開始する。e.明らかな他臓器転移がない状態で診断がつかず肺動脈塞栓症を伴う粗大な心腔内腫瘤であり、開胸右室生検、ならびに右室腫瘤摘出術を施行する。悪性の(原発性、転移性)心臓腫瘍は稀な疾患だが、腫瘍が増大傾向を示す場合などは重要な鑑別疾患である。がんの既往歴の問診や心臓超音波、CT、MRIなどの画像検査、血栓塞栓症合併などのアセスメントは診断の補助となるが、組織学的検査による確定診断が最も重要である。本例のように、外科的切除も含めた心臓腫瘍の診断・治療について、循環器内科、心臓外科、腫瘍内科、放射線科による連携が必要である。1)北原 康行ほか. 呼吸と循環. 2016;64:889-903.2)Butany J, et al. Can J Cardiol. 2005;21:675-680.3)Lam KY, et al. Arch Pathol Lab Med. 1993;117:1027-1031.4)Amano J, et al. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2013;61:435-447.5)Silvestri F, et al. G Ital Cardiol. 1997;27:1252-1255.6)Klatt EC, et al. Cancer. 1990;65:1456-1459.【謝辞】本文作成にあたり、丸山 雄二氏(日本医科大学付属病院心臓血管外科准教授)、金政 佑典氏(都立駒込病院腫瘍内科医長)、向井 幹夫氏(大阪国際がんセンター成人病ドック科部長)、大倉 裕二氏(新潟県立がんセンター新潟病院循環器内科部長)、草場 仁志氏(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 腫瘍内科部長)、志賀 太郎氏(がん研有明病院腫瘍循環器・循環器内科部長)にご指導とご監修いただきました。ここに深く感謝申し上げます。講師紹介

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オンライン学会、質疑応答中に使える表現【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第14回

オンライン学会、質疑応答中に使える表現コロナ禍で急増したオンライン学会。オンラインのプレゼンでは、オフライン(現地)とはまた違った特有の言い回しを知っておく必要があります。ここでは、前回のトラブル編に続いて、「オンライン学会ならでは」のフレーズを取り上げます。質疑応答の際のフレーズCould you type it in the chat?(チャット欄に書き込んでもらえますか?)これも、プレゼンテーションに限らず、オンライン会議をしている時には頻出のフレーズです。質問が十分聞き取れなかったなどの場合には、こうやって文字に誘導できるのもオンライン会議の強みですね。May I chime in?(お話し中ですが、一言いいですか?)“chime in”の“chime”は音の通り「チャイム(鐘)」を意味する言葉です。しかし、ここでは“chime”に“in”が付いているので、「チャイムを鳴らして入り込む」という意味合いを持つことになります。ここで入り込むのは家ではなく、会話や議論。そこから転じて、「会話に入り込む」、「口を挟む」などの意味合いで用いることができるフレーズになります。Please feel free to unmute yourself and stop me anytime for questions or comments.(質問やコメントがあれば、いつでも音声をオンにしてプレゼンを遮ってください)先に出てきた“mute”とは逆に、音声を「オン」にするというときには、“mute”に“un-”という否定の接頭辞を付けて、“unmute”という動詞を使います。“Please feel free to”というのは「ご自由にどうぞ」という意味を持つフレーズで、使い勝手がいいので合わせて覚えてしまいましょう。In the interest of time, please save your questions till the end.For the sake of time, I would like to take questions at the end of my talk.(時間の都合上、質問は最後にしてください)質問を途中では取らずに、最後に取りたいことを伝えたい時には、このような表現もできます。“In the interest of time”や“For the sake of time”で「時間の都合上」という意味になります。途中退室が必要な際のフレーズ“Sorry, I need to jump off for another session at 3 pm.”(申し訳ないのですが、次のセッションのために3時に退出します)オンラインの画面で“jump”という動詞はなかなか出てこないかもしれませんが、とても自然でよく使われる表現です。知らないとなかなか使いこなせないので、こういった表現も覚えておくと便利です。講師紹介

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第42回 新型コロナの応召義務に違反したらどうなる?

応召義務多くの医師はご存じと思いますが、「応召義務」は医師法19条において、「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と定められています。ちなみに、応召義務は医師が国に対して負う義務であり、個々の患者さんに対して負う義務ではありません。これまでは、特定の感染症(1類感染症・2類感染症など)にかかった場合などの合理性があるような場合を除いて診療しないことは正当化されないという但し書きになっていました。新型コロナが5類感染症に移行する場合、これに感染しているからといって診療を拒否することは正当な事由に該当しないことになります。過去の応召義務違反の判例患者と医師の関係が構築できない、あるいは診療に迷惑がかかるということで、診療を拒んだ事例については、応召義務違反の裁判を起こしてもほぼ病院側の勝訴となっています。なので、患者さんが病院で大声を出したり、暴力を振るったり、病院の業務を妨害したりする場合は、診療拒否は正当でしょう。インフルエンザのような5類感染症にかかっているのに、診療を拒んだことで違反が認定された判例は見つけられませんでした。応召義務違反の判例として有名なものとしては、千葉地方裁判所昭和61年7月25日判決の気管支炎で死亡した小児の事例です。喘息の小児が、満床を理由に総合病院の受け入れを拒否され、遠方の小児科に搬送されて死亡したというものです。ベッド満床であったとしても、まずは救急室か外来のベッドで診察・点滴などの応急の治療を行ったうえで、転院なども含めて対応可能であったことが指摘されています。そのほか、両側肺挫傷・右気管支断裂の傷害を受けて救急要請があったものの、オンコールの脳外科医と整形外科医がいるにもかかわらず搬送を拒否したということで応召義務違反に問われた判例もあります。新型コロナを診療しなかったがゆえに死亡に至ったという場合、逸失利益も含めてそれなりの損害賠償請求になる可能性があるので、注意が必要かもしれません。また、刑事罰は規定されていませんが、医師法ということもあって、医師免許に対する行政処分はありうるとしています※。しかしながら、過去のそのような事例は存在しないようです。ちなみに、動線が分離できない、発熱患者を収容できるベッドがないなどは正当な事由になるかと思いますが、上述の喘息小児の事例もあるので、病院側が正当と思っていてもそれが認められない可能性があるので注意が必要です。※医師法制定以前(戦前)に関係法令に設けられていた医師の応召義務の規定について、当時は応召義務違反について刑事罰の規定があったが、医師法制定時に罰則は削除された。

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ミトコンドリアはアルツハイマー病の予防や治療の新たな扉を開くか

 アルツハイマー病リスクが高い人の特定は、予後や早期介入に重要である。縦断的な疫学研究では、脳の不均一性と加齢による認知機能低下が観察されている。また、脳の回復力は、予想以上の認知機能として説明されてきた。この「回復力(resilience)」の構造は遺伝的要因や年齢などの個人的特性と相関することが示唆されている。さらに、アルツハイマー病の病因とミトコンドリアの関連がこれまでのエビデンスで確認されているが、遺伝学的指標(とくにミトコンドリア関連遺伝子座)を通じて脳の回復力を評価することは難しかった。 中国・華中農業大学のXuan Xu氏らは、多遺伝子リスクスコア(PRS)により個人の脳の回復力レベルは特徴付けられるか、ミトコンドリア関連遺伝子座がPRSのパフォーマンスを改善し、アルツハイマー病の予防や診断において信頼性の高い指標となりうるかを調査した。その結果、脳の回復力を特徴付けるPRSの能力が確認され、さらに、いくつかのミトコンドリア関連遺伝子座を組み込むことで、脳の回復力の評価におけるPRSのパフォーマンスが向上する可能性が示唆された。Journal of Advanced Research誌オンライン版2023年3月14日号の報告。 探索サンプル1,550件および独立した検証サンプル2,090件を用いて、生物学的および統計学的側面からミトコンドリア関連遺伝子座を含む9種のPRSを構築し、それらをゲノムワイド関連解析(GWAS)から得られた既知のアルツハイマー病リスク遺伝子座と組み合わせた。個人の脳の回復力レベルは、8つの病理学的特徴を用いた線形回帰モデルにより包括的に評価した。 主な結果は以下のとおり。・PRSは、脳の回復力レベルを特徴付けることが確認された(ピアソン相関検定:Pmin=7.96×10-9)。・少数のミトコンドリア関連遺伝子座を組み込むと、PRSモデルのパフォーマンスを効率的に改善できることが示唆された(P値改善範囲:1.41×10-3~6.09×10-6)。・いくつかのミトコンドリア関連遺伝子座を組み込むことで、脳の回復力を評価する際のPRSパフォーマンスが有意に向上する可能性が示唆された。・脳の回復力に重要な役割を果たしている可能性があるミトコンドリアを標的にすることにより、アルツハイマー病の予防や治療の新たな可能性につながることが示唆された。

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術前デュルバルマブ・NAC併用+術後デュルバルマブによるNSCLCのEFS延長(AEGEAN)/AACR2023

 デュルバルマブを用いた術前・後レジメンが早期非小細胞肺がん(NSCLC)の無イベント生存期間(EFS)を有意に延長した。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJohn V. Heymatch氏が、米国がん研究協会年次総会(AACR 2023)で発表した、術前化学療法とデュルバルマブの術前・後補助療法の組み合わせを評価する第III相AEGEAN試験の結果である。・対象:手術予定のある未治療の切除可能なStage IIA〜IIIB(AJCC第8版)NSCLC・試験群:デュルバルマブ+プラチナベース化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→デュルバルマブ(4週ごと12サイクル)(Dur群)・対照群:プラセボ+プラチナベース化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→プラセボ(4週ごと12サイクル)(Chemo単独群)・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)評価のEFS、病理学的完全奏効(pCR)[副次評価項目]主要な病理学的奏効(mPR)、BICR評価の無病生存期間、全生存期間 主な結果は以下のとおり。・EFS中央値(追跡期間中央値11.7ヵ月)はDur群未到達、Chemo単独群は25.9ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.53〜0.88、p=0.003902)。・2年EFS率はDur群63.3%、Chemo単独群52.4%であった。・pCRはDur群の17.2%、Chemo単独群の4.3%で達成した(群間差:13.0%、95%CI:8.7〜17.6、p=0.000036)。・4サイクルの術前化学療法完遂率はDur群84.7%、Chemo単独群87.2%、手術完遂率はDur群77.6%、Chemo単独群76.7%、術後補助療法実施中はDur群23.2%、Chemo単独群23.5%で、いずれも両群で同等だった。・全Gradeの有害事象はDur群96.5%、Chemo単独群94.7%で発現し、全Gradeの免疫関連有害事象(irAE)はDur群の23.5%、Chemo単独群の9.8%で発現した。 発表者であるHeymatch氏は、術前・後のデュルバルマブ+術前化学療法は、切除可能なNSCLCにとって、可能性を有する新たな治療選択肢であると結論を述べている。

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腎臓のリスクを上げない飲酒量は?

 アルコールと疾患に関して過去のコホート研究では、アルコール摂取とタンパク尿と糸球体濾過量(GFR)低下を特徴とする慢性腎臓病との間に相反する関連性が報告されている。ただ、大量飲酒が腎臓に及ぼす影響を評価した研究は少なく、これまで一定の見解が得られていなかった。そこで山本 陵平氏(大阪大学 キャンパスライフ健康支援・相談センター)らの研究グループは、これまでに報告された疫学研究の結果を統合し、アルコール摂取量と腎臓病リスクの関係を解析した。その結果、1日60g程度(日本酒約3合)以上のアルコール摂取はタンパク尿リスクとなることを明らかにした。Nutrients誌2023年3月25日号に掲載。 本研究では、アルコール摂取量と腎臓病のリスクを評価した疫学研究報告の網羅的な文献検索を行い、抽出された11のコホート研究結果をメタ解析の手法を用いて統合した。 研究対象者は1,463万4,940人。この系統的レビューでは、アルコール摂取とタンパク尿の発生率および60mL/分/1.73m2未満の低い推定GFR(eGFR)の用量依存的な関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・非飲酒者と比較して、1日アルコール摂取量が12.0g以下の飲酒者ではタンパク尿の発生率が低かった(相対リスク[RR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.83~0.92)。・非飲酒者と比較して、1日アルコール摂取量が36.1~60.0gの飲酒者ではタンパク尿の発生率が高かった(RR:1.09、95%CI:1.03~1.15)。・アルコール摂取とタンパク尿発生のJ型カーブが示唆された。・低eGFR発生率は、1日アルコール摂取量が12.0g未満および12.1~36.0gの飲酒者では、非飲酒者よりも低かった(12.0g未満で0.93[95%CI:0.90~0.95]、12.1~36.0gで0.82[95%CI:0.78~0.86]、36.1~60.0gで0.89[95%CI:0.77~1.03])。・飲酒者は低eGFRのリスクが低いことが示唆された。

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2型DM患者、砂糖入り飲料多飲で死亡リスク2割増/BMJ

 2型糖尿病(DM)患者における飲料別の全死因死亡および心血管疾患(CVD)アウトカムとの関連が明らかにされた。砂糖入り飲料の多量摂取が全死因死亡およびCVDの発症・死亡と関連する一方で、コーヒー・紅茶・淡水・低脂肪乳の摂取は、摂取量と全死因死亡が逆相関であるという。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のLe Ma氏らが、2つの大規模前向きコホート試験、Nurses' Health StudyとHealth Professionals Follow-Up Studyの解析結果を報告した。著者は、「示された結果は、成人2型DM患者におけるCVDおよび早期死亡のリスクを管理するうえで、飲料の健康的な選択が果たす潜在的な役割を強調するものであった」とまとめている。BMJ誌2023年4月19日号掲載の報告。1万5,000例の飲料摂取内容・量を2~4年ごとに調査 研究グループは、1980~2018年のNurses' Health Studyと1986~2018年のHealth Professionals Follow-Up Studyに参加し、ベースラインおよび追跡期間中に2型DMの診断を受けていた男女1万5,486例を対象に、飲料別の摂取と死亡およびCVDアウトカムの関連を調べた。飲料の摂取量は、食品摂取頻度に関する質問票を用いて評価し、2~4年ごとに更新した。 主要アウトカムは全死因死亡。副次アウトカムはCVDの発症と死亡とした。砂糖入り飲料の多量摂取、死亡リスク1.2倍 平均追跡期間18.5年の間に、CVDの発症は3,447例(22.3%)、死亡は7,638例(49.3%)が報告された。多変量補正後、各種飲料摂取量の5分類中、最高量群の最低量群に対する死亡に関するプール解析ハザード比(HR)は、砂糖入り飲料では1.20(95%信頼区間[CI]:1.04~1.37)だった。一方で、コーヒーでは0.74(0.63~0.86)、紅茶0.79(0.71~0.89)、淡水0.77(0.70~0.85)、低脂肪乳0.88(0.80~0.96)だった。 同様の関連は、各種飲料摂取量とCVD発症・死亡との間にも認められた。とくに、砂糖入り飲料については、摂取の最高量群の最低量群に対するCVD発症に関するHRは1.25(95%CI:1.03~1.51)、同じくCVD死のHRは1.29(1.02~1.63)と、摂取量と正の関連がみられた。一方で、コーヒー、低脂肪乳については、摂取量と同リスクに逆相関が認められた。 さらに、2型DMの診断後にコーヒーの摂取量が増えた人は増えなかった人に比べ、全死因死亡は低いことが観察された。同様の関連性は、紅茶と低脂肪乳についてもみられた。 砂糖入り飲料から人工甘味料入り飲料への変更で、全死因死亡やCVD死の有意な低下が認められた。砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料、フルーツジュース、全脂肪乳から、コーヒー、紅茶、淡水への変更でも、一貫して全死因死亡の低下が認められた。

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進行転移胆道がんの1次治療、ペムブロリズマブ併用でOS改善(KEYNOTE-966)/Lancet

 未治療、切除不能な局所進行または転移のある胆道がんの1次治療として、ゲムシタビン+シスプラチンの標準化学療法と比較して、ペムブロリズマブを加えた併用療法は全生存期間(OS)を統計的に有意に改善したことが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のRobin Kate Kelley氏らによる第III相二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験「KEYNOTE-966試験」の結果で、著者は「標準化学療法+ペムブロリズマブの併用療法は、進行転移胆道がん患者の1次治療として新たな選択肢となる可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年4月16日号掲載の報告。ECOGパフォーマンスステータス0~1の18歳以上を対象に試験 KEYNOTE-966試験は、世界175ヵ所の医療センターで、未治療の切除不能な局所進行または転移のある胆道がんで、RECIST第1.1版に基づく測定が可能で、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスが0または1の18歳以上の患者を対象に行われた。 研究グループは被験者を1対1の割合で無作為に2群に分け、一方にはペムブロリズマブ200mg(3週ごとに静脈内投与、最大35サイクル)、もう一方にはプラセボを、標準化学療法のゲムシタビン(1,000mg/m2、3週ごとに1・8日目に静脈内投与)+シスプラチン(25mg/m2、3週ごと1・8日目に静脈内投与、最大8サイクル)と併用投与した。 無作為化は中央双方向音声応答システムを使い、試験地域、病期、原発部位により層別化した。 主要評価項目はOSで、ITT集団で評価した。副次評価項目は安全性で、治療を受けた集団で評価した。治療関連有害事象発生率、両群で同程度 2019年10月4日~2021年6月8日に1,564例がスクリーニングを受け、適格とされた1,069例が無作為化を受けた(ペムブロリズマブ併用群533例、プラセボ群536例)。最終解析時の追跡期間中央値は、25.6ヵ月(四分位範囲[IQR]:21.7~30.4)だった。 OS中央値は、ペムブロリズマブ併用群12.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.5~13.6)、プラセボ群10.9ヵ月(9.9~11.6)だった(ハザード比[HR]:0.83、95%CI:0.72~0.95、片側検定のp=0.0034、有意性閾値のp=0.0200)。 治療集団におけるgrade3/4の有害事象発生は、ペムブロリズマブ併用群420/529例(79%)、プラセボ群400/534例(75%)だった。治療関連有害事象発生は、それぞれ369例(70%)、367例(69%)で、うちgrade3/4事例はそれぞれ31例(6%)、49例(9%)だった。また、治療関連有害事象による死亡は、それぞれ8例(2%)、3例(1%)だった。

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サル痘とは?(2023年4月更新版)

サル痘とは?2023年4月版出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.サル痘とは? オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによる感染症 1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)でヒトでの初めての感染が確認され、中央アフリカ~西アフリカにかけて流行している。 国内では感染症法上の4類感染症に指定されている。 2022年5月以降、従前のサル痘流行国への海外渡航歴のないサル痘患者が世界各地で報告されているが、2023年3月時点では全体の症例の報告数は減少傾向にある。 国内では2022年7月に1例目の患者が確認され、その後散発的に発生が報告されていたが、2023年に入り患者の報告数が増加している。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.感染経路は? アフリカに生息するリスなどの齧歯類をはじめ、サルやウサギなどウイルスを保有する動物との接触によりヒトに感染する。 感染した人や動物の皮膚の病変・体液・血液との接触(性的接触を含む)、患者と接近した対面での飛沫への長時間の曝露、患者が使用した寝具などとの接触などにより感染する。 皮疹の痂皮をエアロゾル化することで空気感染させた動物実験の報告があるものの、実際に空気感染を起こした事例は確認されていない。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.発生状況は?<国内> 2022年7月25日に1例目の患者が報告された。 2023年以降、患者の発生が増加しており、2023年4月25日時点で120例が報告されている。<世界> 2022年5月以降の流行で8万6千人以上の感染例が報告されている(2023年3月24日時点)。 WHOによると、現在報告されている患者の大部分は男性であるが、小児や女性の感染も報告されている。※特定の集団や感染者、感染の疑いのある者等に対する差別や偏見は人権の侵害につながります。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.症状は? 発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの症状が0~5日程度持続し、発熱1~3日後に発疹が出現する。 リンパ節腫脹は顎下、頸部、鼠径部に見られる。 皮疹は顔面や四肢に多く出現し、徐々に隆起して水疱、膿疱、痂皮となる。 多くの場合2~4週間持続し自然軽快するが、小児、曝露の程度・健康状態・合併症などにより、重症化することがある。 皮膚の2次感染、気管支肺炎、敗血症、脳炎、角膜炎などの合併症を起こすことがある。 手掌や足底にも各皮疹が出現する。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.症状は?(続き)2022年5月以降の欧米を中心とした流行では、従来の報告とは異なる症状が指摘されている。 発熱やリンパ節腫脹などの前駆症状が見られない場合がある。 病変が局所(会陰部、肛門周囲や口腔など)に集中しており、全身性の発疹が見られない場合がある。 異なる段階の皮疹が同時に見られる場合がある。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q. 治療方法は? 対症療法(症状に応じた治療) 国内で承認された治療薬はない。 欧州では、特異的治療薬としてテコビリマットが承認されており、日本でも同薬を用いた特定臨床研究が実施されている。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.予防法は? 天然痘ワクチンによって約85%発症予防効果があるとされている。 流行地では感受性のある動物や感染者との接触を避けることが大切である。出典:厚生労働省ホームページ(2023年4月25日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.htmlCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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地域医療提供者による集中的な血圧介入は有用か?(解説:三浦伸一郎氏)

 わが国の高血圧有病者は4,300万人であり、治療中・コントロール良好な患者はわずか27%である一方、未治療・認知なしが33%、未治療・認知ありは11%も存在し、いまだに十分な心血管疾患の発症抑制にはつながっていないのが現状である。わが国は世界的に見ても、国民皆保険制度が確立し医師数も比較的多いが、医療制度が未熟な国々は多く存在し医師数も不足している。そのような国々では、医師以外の地域医療提供者の存在が欠かせない。  今回、He氏らは、Lancet誌にCRHCP Study Groupによる興味深い報告を発表した1)。医師以外の地域医療提供者主導による集中的な血圧介入が通常のケアと比較して、高血圧患者の心血管疾患および全死亡リスクを抑制するかを検討した、非盲検、エンドポイント盲検、クラスター無作為化臨床試験である。 介入群では、訓練を受けた非医師の地域医療提供者が降圧薬を開始し、簡単な段階的ケアプロトコルに従って漸増していた。その結果、介入群では、主要評価項目の心筋梗塞、脳卒中、入院を必要とする心不全、および心血管疾患による死亡の複合エンドポイントが、通常ケア群に比し有意に抑制されていた。この有用な抑制効果と共に、低血圧発症率が通常のケア群よりも介入群のほうで高かったが、低血圧による症状発現率に有意差はなく、安全性もある程度担保された結果となっていた。  今回の結果は、医療が十分に行き届いていない世界の国々において、いかに血圧を管理・治療し心血管疾患の発症抑制の方策を推進すべきかに、1つの戦略をもたらした。また、現在、わが国では遠隔医療を推進しており、地域への医療提供体制をさらに整えようとしている。オンライン診療において、医師‐患者(D to P)では情報不足となり、安全性の高いD to P with N(看護師)、D to P with H(ヘルパー)といったことを進めていく場合の参考にもなると思われる。今回のLancet誌への報告は、医師以外の地域医療提供者の活躍の可能性を広げた点において非常に興味深い結果であった。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その6【「実践的」臨床研究入門】第31回

検索式で研究デザインを限定するこれまで解説してきたように、検索式作成のポイントは、P(対象)とI(介入)またはE(曝露)の構成要素で構築する、ということでした。実際には、さらに「研究デザイン」を限定する検索式を加えることがよくあります(「研究デザイン」については連載第6回で簡単に説明しましたので、ご参照ください)。たとえば、システマティック・レビュー(SR:systematic review)では、「研究デザイン」としてランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)のみを対象とすることがよくあります。今回は、「研究デザイン」をRCTに限定する検索式について解説します。MEDLINE(PubMed)では、すべてのRCTが"Randomized Controlled Trial as Topic"というMeSH terms(連載第21回参照)が付与されるなどして、RCTとしてインデックス化されているわけではありません。そこで、コクラン・ハンドブックでは「研究デザイン」をRCTに限定する検索式(PubMedで検証済み)を、下記およびリンクのとおり2種類公開しています。Sensitivity-maximizing version (2008 revision); PubMed format(randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR drug therapy[sh] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab] NOT (animals [mh] NOT humans [mh]))Sensitivity- and precision-maximizing version (2008 revision); PubMed format(randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR clinical trials as topic[mesh:noexp] OR randomly[tiab] OR trial[ti] NOT (animals[mh] NOT humans [mh]))それぞれの検索式のPubMedへのダイレクトリンク(Sensitivity-maximizing version、Sensitivity- and precision-maximizing version)も公開されています。本稿執筆時点(2023年4月)では、Sensitivity-maximizing versionおよびSensitivity- and precision-maximizing versionのヒット論文数は、それぞれ498万2,019件と140万7,761件でしたので、その名のとおり、感度はSensitivity-maximizing versionのほうが高いことがわかります。それでは、この「研究デザイン」をRCTに限定する検索式を、これまで改訂を重ねてきた、われわれのResearch Question(RQ)の関連研究レビューの検索式に加えてみましょう。検索結果は下記の表1および2のようになりました(本稿執筆2023年4月時点)。表1画像を拡大する表2画像を拡大する「研究デザイン」をRCTに限定するとヒット論文数は、Sensitivity-maximizing version(表1)で834件から291件、Sensitivity- and precision-maximizing version(表2)では166件に減っていることがわかります。ちなみに、PubMedでは、「Filterサイドバー」から、Clinical trialやRandomized Controlled Trialなど”article type”で「絞り込み検索」を行うこともできます。「Filterサイドバー」は、検索窓に何らかのキーワードを入力し、”search”をクリックした後に表示されるメイン画面左側に表示されます。しかし、この「絞り込み検索」が機能するには、対象となる論文にPublication type[pt]の「タグ」情報が付与されていることが前提となり(連載第23回参照)、付与されていない場合は漏れてしまいます。したがって、今回解説した、「研究デザイン」を限定する検索式を使用したほうが、より網羅的に検索することができるのです。

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入院経過は過不足なく簡潔に【紹介状の傾向と対策】第5回

<あるある傾向>入院経過が長々と書かれ、外来で読み切れない<対策>紹介状の記載は紹介目的に合わせ過不足なく簡潔に記載多忙な臨床業務の中で紹介状(診療情報提供書)の作成は負担の大きな業務の1つです。しかし、紹介状の不備は、依頼先(紹介先)の医師やスタッフに迷惑をかけるだけではなく、患者さんの不利益やトラブルにつながりかねません。このため、できる限り依頼先が困らない紹介状の作成を心がけたいものです。【紹介状全般に共通する留意点】(1)相手の読みやすさが基本(2)冒頭に紹介する目的を明示する(3)プロブレムと既往歴は漏れなく記載(4)入院経過は過不足なく、かつ簡潔に記載(5)診断根拠・診断経緯は適宜詳述(6)処方薬は継続の要否、中止の可否を明記(7)検査データ、画像データもきちんと引き継ぐ今回は上記の留意点(4)「入院経過は過不足なく簡潔に」について解説します。経過の短い患者の紹介状を作成するのは比較的容易ですが、長期にわたって入院していた患者が転院する時、その入院経過を簡潔にまとめるのは、容易ではありません。長期入院中にさまざまなイベントがあり、そのすべてを詳述しようとすると膨大な文章量になってしまいます。また、プロブレムがたくさんある患者では、プロブレム1つ1つにコメントをしていると、かなりの長文になってしまうでしょう。そのような時、筆者自身は『時間』を軸として、メインの疾患について文章を構成するようにしています。たとえば、「いつから、どのような症状や所見が出現し、何の検査を行い、どのような所見が得られたから〇〇と診断し、〇〇の治療を行った。その結果、□□となった」というような順番が、どの医師にもしっくりくると思います。そして、併発した疾患については、簡潔に触れていきます。また、紹介の目的により、表記の仕方や情報粒度は使い分けています。その際の情報の取捨選択の基準は、紹介する医師に伝えるべき、あるいは引き継いでもらうべき情報かどうかです。たとえば、不明熱の精査の依頼では、日単位で症状推移をこと細かに箇条書きに、使用薬剤と用量およびその薬剤への反応性は詳細に記載し、紹介先での情報欠落によるミスリードが起きないように留意します。一方、急性期治療を終えて、リハビリ病院に紹介する場合やかかりつけ医に紹介する場合の紹介状では、入院の概要を簡潔にまとめ、冗長化しないように意識しています。いずれにしても気を付けているのは、紹介先の医師がより迅速に情報を把握できることです。しかし、情報をコンパクトにまとめることを意識し過ぎると、本来は伝えるべき情報まで削ぎ落してしまうこともあります。情報過多も困りますが、情報不足や欠落はもっと困ります。このため、最初は丁寧な紹介状を記載し、より洗練させていくのが良いと考えます。紹介された際、最も困る情報は… なお、患者を紹介され、引き継ぐ時に最も困るのは、処方に関する情報です。すべての処方には、その薬剤が処方された根拠が存在するはずです。しかし、その処方が開始された根拠や診断根拠がわからないことが少なくありません。それにより、その薬剤が中止可能なのか、それとも継続するべきなのか判断に困ることがあります。そのような場合、紹介元に問い合わせるのですが、それなりの工数になります。このため、処方に関する内容は、どのような経緯でその薬剤を開始し、今後も継続していくべきか、あるいは適宜調整や中止が可能かどうかは明記すると親切です。受け持ち患者が多くなると、自ずと処理しなければならない書類も増えて、仕事が回らなくなってきます。できる限り無駄な工数を省き、効率よくポイントを押さえた紹介状を作成する業務上の工夫も重要になってきます。退院時にバタバタしないために筆者は患者の入院時にプロブレムと入院時サマリーを作成し始めます。そして、入院中に適宜書き足していき、退院時には入院時サマリーができ上がるようにしています。そして、その入院時サマリーを基に紹介状を書き、情報の欠落が生じないようにしています。場合によっては、紹介状に入院の概要のみ記載し、より詳細を記載した入院時サマリーを添付し、先方に適宜参照してもらうようにする場合もあります。そうは言っても、やはり肝心なのは、常にほかの医師や医療者から良いところを学び、自身の紹介状スキルをブラッシュアップさせていこうとする姿勢そのものだと思います。

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第158回 またまた医師退職問題を起こしていた京都府立医大、移植チームの体制整え1年ぶりに腎移植再開

昨年春から腎移植の手術ができなくなっていた府立医大こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は野球観戦三昧でした。MLBだけでなく、日本のプロ野球も時折観ているのですが、セ・リーグでは読売ジャイアンツの低調ぶりが気になります。原 辰徳監督の采配や言動、オフでの首脳陣人事報道などを読むと、素人目にも少々“古臭いのでは”と感じるのは私だけでしょうか。選手を信頼し、選手に一定部分を任せ切ったWBCでの栗山 英樹監督のマネジメント手法との違いは明らかです。ジャイアンツの岡本 和真選手がWBC終了後の記者会見で「野球ってこんなに面白かったんだなあと思いました」と語ったそうですが、今のジャイアンツの野球が「面白くない」と言っているようで、なかなか興味深かったです。次のジャイアンツの監督に誰がなるのかについて、早くもマスコミは騒ぎ始めています。上から目線の古臭い権威主義や指導方法は、スポーツの世界からも一掃されていく流れなのかもしれません。権威主義と言えば、その最たるものがアカデミア、とくに大学医学部の世界です。ということで今回は、京都府立医科大学附属病院(京都市)で昨年春から腎移植の手術ができなくなっていた問題を取り上げます。4月11日、同大は再開後の1例目となる腎移植手術を3月末に実施した、と発表しました。同病院では昨年、移植外科の医師5人が相次いで退職。春以降、腎臓の移植手術ができない状態になっていました。市立大津市民病院の大量退職と並行して起こっていた移植外科での退職府立医大に関連する医師退職事件としては、昨年にこの連載でも何度か取り上げた地方独立行政法人・市立大津市民病院(大津市)の医師大量退職が記憶に新しいところです。昨年2月に発覚したこの事件では、府立医大病院勤務後に、大津市民病院の理事長となった医師(府立医大名誉教授)が、同病院の複数の診療科の医師を、京大出身者から府立医大出身者に半ば強引に入れ替えようとして、京大出身医師の大量退職を招きました。30人近くの医師が退職意向を示したことで地域医療は大混乱、結局、理事長、院長の交代と相成りました(「第121回 大量退職の市立大津市民病院その後、今まことしやかに噂されるもう一つの“真相”」ほか参照)。府立医大病院での腎移植の手術中止は、まさに大津市民病院の大量退職が起こっていた時期と並行して起きていたわけです。懲りないというか、流石というか、患者や地域医療は二の次に、大学の体面(やジッツ拡大)を優先する府立医大のスタンスは相変わらず揺るぎないようです。移植外科に所属していた6人のうち5人が退職府立医大病院で腎移植ができなくなっていることが表沙汰になったのは昨年10月でした。10月15日付の大阪読売新聞の報道によれば、府立医大学病院の移植外科に所属していた6人のうち5人が退職し、昨年4月以降、腎移植手術ができなくなっていました。移植外科は2018年に教授が定年退職した後、教授不在が続いていました。2022年2月に医師1人が転職を理由に辞めた後、3~4月にも3人が転職や留学を理由に退職。5月には同科のトップだった准教授も退職して医師が1人になり、手術停止に追い込まれました。各紙報道によれば、府立医大病院における2020年の腎臓移植手術件数は27件で、府内全体の約9割を占めていたそうです。2022年3月時点で、25組が生体腎移植を希望し、一部は検査を終えて手術が決まっていたとのことです。また、亡くなった人から提供される腎臓の移植手術(献腎移植)の待機患者も約200人いたそうです。生体腎移植を希望する25組のうち14組は京大医学部附属病院に紹介し、11組は他病院での手術を希望するか、府立医大病院で手術再開を待つことになりました。「前任教授の退職後から現在まで新たな医師の受け入れはゼロ」同病院は腎移植停止が発覚した10月時点で、医師たちの退職理由を明らかにしませんでしたが、2022年12月8日付の京都新聞は「『患者不在』学内からも批判 京都府立医大病院 腎臓移植中断問題」と題する記事で、その背景や理由について報じています。同記事は「退職の背景に教授の不在があった」と書いています。移植外科では2018年に当時の教授が定年退職してから約5年間、教授ポストの空席が続いていました。その結果、大学や病院内での移植外科の地位が低下、「前任教授の退職後から現在まで新たな医師の受け入れはゼロだった。それまで実施していた肝移植もできなくなり、在籍医師のキャリア選択の幅も狭まった」とのことです。「医師4人の退職意向が分かった今年1月下旬から2月上旬にかけ、准教授は残った2人で手術の継続は難しいと考え、泌尿器科などから支援を受けられないか掛け合ったものの、病院幹部らは消極的だった」と同記事は書いています。准教授(病院教授という肩書は持っていました)が病院幹部から受け取ったメールには「(移植外科)OBの意向を無視して(泌尿器科の協力を得るのは)現時点では困難」と記され、対応してもらえなかったそうです。また、同記事によれば、准教授は4人の医師の一斉退職の責任を押しつけられる形になり、結果、退職に追い込まれたとのことです。退職後、准教授はパワハラなどによって精神的な苦痛を受けたとして大学に対して申立書を提出、これに対し学長ら学内の管理職でつくるハラスメント対策会議は11月中旬までに「業務目的を大きく逸脱した言動とは言えない」とパワハラに該当しないと結論付けています。同記事は「准教授の代理人弁護士によると、准教授は病院幹部らから『新しい移植体制では君をリーダーにすることはあり得ない』と責められた」とも書いています。泌尿器科内に移植チームを急遽立ち上げ腎移植停止が表沙汰になったことで流石に慌てたのか、各紙報道によれば、府立医大は泌尿器科内に急遽移植チームを立ち上げ、同科の3人の医師が移植手術を、腎臓内科をはじめとする複数科のスタッフが術後管理などを行う体制を整え、11月には日本腎臓学会に腎臓移植施設資格の再認定を求める申請書を提出しました。再認定後、2023年1月から新規の外来受け付けを再開、3月29日に再認定後1例目となる生体腎移植が実施され、4月11日の公表に至ったというわけです。メディアが報じる10月まで府立医大は腎移植停止を公表せずそれにしても、府立医大の関連病院である大津市民病院の医師大量退職事件とほぼ時を同じくして、“本丸”である府立医大病院でも退職問題が起こっていたとは驚きです。しかも、移植外科の医師退職と腎移植の停止は、メディアが報じる10月まで、その事実を公表していませんでした。それまで府内の腎移植のほとんどを手掛けており、患者にとってはまさに生きるか死ぬかの問題だったにもかかわらず、です。さらに、移植外科の准教授が病院幹部に対して泌尿器科への協力依頼を行っていたにもかかわらず、医局の都合を優先してか「現時点では困難」と判断していました(その後の報道で事態が表沙汰になってから、泌尿器科による移植チームを編成)。移植を待つ患者は二の次で、大学や医局の都合を重視するかのような対応からは、大津市民病院の医師退職の時の同病院元理事長の言動と共通するものを感じます。それはある意味、府立医大の“学風”と言えるかもしれません。准教授のパワハラの申し立てに対し、学長ら学内の管理職でつくるハラスメント対策会議が「パワハラに該当しない」と結論付けている点も気になります。少なくともこうした調査や判定は第三者によって行われるべきものです。自分たちもパワハラの当事者かもしれないのに、内部者だけで調査し、結論を下すのは言語道断でしょう。確か、大津市民病院の大量退職に際しても、一部の医師からパワハラとの主張があったものの、当初は病院内部の検証で否定されていました(その後、事件が大きくなってから第三者委員会を組織)。2010年代、度々世間を騒がせた府立医大2010年代、府立医大はディオバン事件(バルサルタン臨床研究:Kyoto Heart Study論文撤回)、暴力団総長の虚偽診断書作成事件(当時の病院長の指示で虚偽の診断書や意見書をつくったとされる事件。病院長は不起訴となるも総長との関係が指摘された当時の吉川 敏一学長は再任を辞退)、名誉教授強制わいせつ事件など、さまざまな事件を起こし、世間を騒がせました。そう言えば、暴力団総長の虚偽診断書作成は移植外科が舞台で、当時の移植外科の教授が病院長でした。この教授の退官後、移植外科の教授の空席が続き、残った准教授が、病院教授の肩書を持ちつつも移植外科の教授にはならないまま腎移植を切り盛りしていた結果、医局が破綻してしまったというのが今回の流れのようです。大学を去った元准教授はメスを捨て、京都の山奥の国保診療所で地域医療に従事しているという情報もあります。2020年代も府立医大は、本来の診療や研究以外の部分で世の中を騒がせ続けるのでしょうか。『白い巨塔』の世界のような古臭い権威主義は、医療の世界からそろそろ消えてもらいたいところなのですが……。

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実臨床におけるアリピプラゾール月1回製剤の評価~REACT研究

 統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬による治療は、さまざまなベネフィットをもたらす可能性がある。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのDaniel Schottle氏らは、実臨床におけるアリピプラゾール月1回製剤(AOM)の有用性を評価するため、ドイツとカナダで実施された2つの非介入研究の結果を分析した。その結果、AOM治療は、性別、年齢、罹病期間、疾患重症度を問わず、幅広い患者に有効な治療法である可能性が示唆された。BMC Psychiatry誌2023年3月14日号の報告。 ドイツとカナダで実施された2つの非介入研究よりプールしたデータを分析した。実臨床下において、患者に対しAOM治療を行った。6ヵ月間のデータを分析した。簡易精神症状評価尺度(BPRS)のドメインおよび項目、患者サブグループ(性別、罹病期間[5年]、ベースライン時の疾患重症度)のBPRS総スコア、全対象患者およびサブグループにおける臨床全般印象度の改善度(CGI-I)の評価、全対象患者における併存疾患に関するデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は409例。・併存疾患が認められた患者は65.5%であった。・すべてのBPRSドメインおよび項目で改善が認められた。・男女、罹病期間(5年以内または5年超)、ベースライン時の疾患重症度レベルの差異があったとしても、同様の改善が認められた。・若年、女性、短い罹病期間の患者において、より良好な結果が認められた。

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アトピー性皮膚炎、抗IL-13抗体薬lebrikizumabが有効/NEJM

 インターロイキン13(IL-13)を標的とするIgG4モノクローナル抗体lebrikizumabは、中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)の成人・青少年患者を対象とした2つの第III相試験において、16週の導入療法期間での有効性が確認された。米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らがNEJM誌2023年3月23日号で報告した。 研究グループが実施した「ADvocate1試験」と「ADvocate2試験」は、個別にデザインされた52週の国際共同第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、いずれも16週の導入療法期間と36週の維持療法期間で構成された。 中等症~重症ADの成人(18歳以上)および青少年(12歳以上18歳未満、体重40kg以上)を対象とし、lebrikizumab群とプラセボ群に2対1の割合で割り付けた。lebrikizumabの用量は、ベースライン時と2週目に500mgの負荷投与、以降は250mgとし、隔週皮下投与した。 本稿では、16週までに評価された導入療法期間の結果が報告されている。主要アウトカムは、16週時におけるIGA(Investigator's Global Assessment)スコア0または1(皮膚病変の消失またはほとんど消失)かつベースライン時からの2点以上減少とした。副次アウトカムは、16週時におけるEczema Area and Severity Indexスコアの75%改善(EASI-75)、2、4、16週時におけるそう痒NRS(Numerical Rating Scale)、16週時におけるそう痒による睡眠障害などであった。安全性も評価された。 主な結果は以下のとおり。・ADvocate1試験において、主要アウトカムを達成した患者の割合は、lebrikizumab群(283例)が43.1%、プラセボ群(141例)が12.7%であり、有意差が認められた(p<0.001)。EASI-75達成率はそれぞれ58.8%、16.2%であり、有意差が認められた(p<0.001)。・ADvocate2試験において、主要アウトカムを達成した患者の割合は、lebrikizumab群(281例)が33.2%、プラセボ群(146例)が10.8%であり、有意差が認められた(p<0.001)。EASI-75達成率はそれぞれ52.1%、18.1%であり、有意差が認められた(p<0.001)。・そう痒およびそう痒による睡眠障害の評価結果は、lebrikizumab治療による改善を示唆するものであった。・結膜炎の発生率が、プラセボ群(ADvocate1試験:2.8%、ADvocate2試験:2.1%)よりlebrikizumab群(それぞれ7.4%、7.5%)で高率であった。・導入療法期間中にみられた有害事象のほとんどは軽度または中等度で、試験中止に至ったものはなかった。

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