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医療裁判にも影響か?肝機能の指標がALT>30に

 肝機能検査として血液検査で汎用されるALT値。今後、これが30を超えていたら、プライマリ・ケア医やかかりつけ医による肝疾患リスクの確認が必要となる―。6月に開催された第59回日本肝臓学会総会にて、ALT>30を指標とする『奈良宣言』が公表された。これは、かかりつけ医と消化器内科医が適切なタイミングで診療連携することで患者の肝疾患の早期発見・早期治療につなげることを目的に、さまざまなエビデンスに基づいて設定された。記者会見では吉治 仁志氏(奈良県立医科大学消化器内科学 教授/日本肝臓学会理事)らが本宣言の背景や目的を説明しており、今回ケアネットでは日本肝臓学会理事で本宣言での特別広報委員を務める江口 有一郎氏(江口病院 ロコメディカル総合研究所 所長)に独自取材を行った。「ALT>30」の根拠と利点 ALTの新たな指標設定の理由は、以下のとおりである。(1)シンプルで健診や一般診療で汎用されている項目(2)英文も含めて基準値に関する文献が多数存在する(3)わが国の特定保健診査(特定健診)および人間ドック学会の基準値はALT30以下(4)特定健診や人間ドック学会の基準値は日本消化器病学会肝機能研究班の意見書に基づいて決定 今回、なぜこのような基準値を設けたのか、プライマリ・ケア医としても第一線で活躍する江口氏によると「これまでは“肝炎ウイルス検査を受けましょう”とか“肝臓は沈黙の臓器”というように文脈で注意喚起を行っていた。しかし、それでは捉え方に個人差が生じてしまうため、行動経済学の観点を盛り込み、参照点※を明確にするために、一般の方でも聞き覚えのある検査指標であるALTに注目して基準を設けた」と説明した。一般市民の方は「ALT>30でかかりつけ医を受診しましょう」と言われても、基準値範囲内であり自覚症状もなければ、健康指導を受けるだけと思ってしまいがちである。しかし、「明確な基準がなかったことから亡くなった方が多くいるのは事実であり、B型・C型肝炎の患者会や原告団の方々もこの宣言に賛成の意を示され、これ以上肝臓で苦しむ人を増やしたくないとおっしゃっている」と話した。※参照点(Reference Point):プロスペクト理論における利得と損失の判断を分ける基準点学会が宣言した指標、裁判にも影響か また同氏によると、宣言後に本指標を無視してしまうと、注意義務違反が生じる場合もあるという。「肝硬変や肝臓がんは年数を経て病態が進行していく疾患なので、ある患者がこの宣言以降に人間ドックでALTが35だったとしましょう。しかし、医師は基準値内だからと次の行動を起こさず、翌年にその患者が肝硬変になって“医師に検査を進めてもらえなかった”と医療裁判を起こしたらどうだろうか」と例示し、「ある弁護士からは医師側が敗訴する可能性が十分ありうるといった見解を受けたため、医療安全の観点からも医療者に周知していく必要がある」と医師側のリスクを指摘した。同氏によるとこの宣言の指標が浸透するには1~2年はかかるそうだが、その間に医師一人ひとりが新たな指標を意識し、注意しておく必要がありそうだ。 なお、今回の宣言は『日本における主要な臨床検査項目の共用検査範囲』(日本臨床検査標準協議会)では基準値内の症例も対象となるが、健康成人の約15%でALT>30を満たすとの報告があることから、この宣言がプライマリ・ケア医やかかりつけ医の診療に影響を与えうるとも学会は見解を示している。さらに、厚生労働省が作成した令和6年度版の『標準的な健診・保健指導 プログラム』での健診検査項目の保健指導判定値及び受診勧奨判定値(別紙5)において、保健指導判定値(ALT≧31、AST≧31)として記されている点は、本指標の明確な根拠である。 現在、YouTubeにて「奈良宣言2023 over30 せんとくん」が公開されており、視聴回数は38万回を突破している(7/14時点)。このようなSNSを活用した市民啓発にも力を入れている同氏は「国内では日本糖尿病学会や日本動脈硬化学会などが疾患予防啓発の一環として、熊本宣言や大阪宣言を行っている。肝臓学会も50年もの歴史のなかでこのようなステートメントを提言したのは初の試みであり、大きなことと言える。ぜひ、慢性肝臓病(Chronic Liver Disease:CLD)予防のために患者さんの検査値をチェックし、ほかの検査値と複合的に診断・鑑別、そして専門医への紹介を行ってもらいたい」とし、「日本肝臓学会では奈良宣言特設サイトを設け、一般市民や患者向けの説明リーフレットなどの患者啓発ツールを自由にダウンロードして使えるよう用意しているので、ぜひ活用してほしい」と締めくくった。

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統合失調症治療の専門家、早期の長時間作用型注射剤使用を支持

 統合失調症は、精神症状、陰性症状、認知機能低下などを来す慢性疾患である。統合失調症患者は、一般的にアドヒアランスが不良であり、これに伴う再発によりアウトカム不良に至る可能性がある。抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)は、治療アドヒアランスを改善し、再発・再入院リスクを低下させることが期待される。初発や発症初期の統合失調症患者にLAIを使用することで、その後のベネフィットが得られる可能性があるものの、歴史的にLAIの使用は慢性期患者を中心に行われてきた。スペイン・マドリード・コンプルテンセ大学のCelso Arango氏らは、初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAI使用に関する専門家のコンセンサスを報告した。その結果、疾患の重症度、再発回数、社会的支援の有無にかかわらず、初発および発症早期の統合失調症患者に対するLAI治療が支持された。しかし、この結果は臨床医の認識とギャップがあるため、初発および発症早期の統合失調症患者に対するLAI治療に関するエビデンスを作成していくことが求められる。BMC Psychiatry誌2023年6月21日号の報告。 初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAI使用に関する専門家のコンセンサスは、3段階のデルファイ法プロセス(第1段階:紙面調査、1:1面談、第2~3段階:電子メール調査)を用いて収集した。文献レビューおよび専門家5人からなる運営委員会の意見に基づき、患者集団、有害事象マネジメント、機能回復に関するステートメントを作成した。専門家の意見が次の段階に進むかどうか、および合意レベルのコンセンサスが得られるかを分析ルールに従い判断した。中心傾向(最頻値、平均値)および変動性(四分位範囲)の測定値が報告され、パネリストがグループ全体の反応を参照し、以前の反応を評価することに役立てた。 主な結果は以下のとおり。・デルファイ法のパネリストは、フランス、イタリア、米国、ドイツ、スペイン、デンマーク、英国の7ヵ国でLAIによる統合失調症の治療経験を有する精神科医17人であった。・パネリストに対し3つのカテゴリ(患者集団、薬剤の投与量・マネジメント・有害事象、機能回復の領域および評価)に関する73のステートメントが提示された。・55のステートメントにおいて、コンセンサスとみなされる80%以上の合意が得られた。・合意度が低い(40~79%)または非常に低い(39%以下)項目は、初発および発症初期の統合失調症患者における投与開始時期、有効性の喪失時のマネジメント、ブレークスルーエピソードのマネジメントであり、現在のエビデンスギャップを反映していた。・初発および発症初期の統合失調症患者に対するLAIのベネフィットが強調されており、再発、再入院、機能不全のリスク軽減に関するコンセンサスが得られた。・LAI使用に対しては、これらのベネフィットだけでなく、症状寛解を超えた長期的な機能回復との関連性が支持された。

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第168回 コロナワクチン接種に悩む友人の“例え”が衝撃的だった話

先週、沖縄での新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)について触れたが、この秋からのワクチン接種に関して厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会は6月16日、オミクロン株XBB.1系統に対応した新しい1価ワクチンを使用する方針を了承。これに応じて7月7日、ファイザー、モデルナの両社はオミクロン株XBB.1.5系統対応の1価ワクチンの承認事項一部変更(通称・一変)を申請した。さすがに抗原タンパク質の設計変更が容易なメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンだと、こうも迅速に対応が可能なのだと個人的には改めて驚いている。もちろん一変なので改めて臨床試験を行う必要はないが、前述の6月16日の分科会ではモデルナが実施した予備的臨床試験の結果も報告されている。この予備的臨床試験は18歳以上ですでにワクチンを4回接種済み、かつBA.4/5用の追加接種から3ヵ月以上を経た101人を2群に分け、5回目の追加接種としてXBB.1.5系統対応1価ワクチンとBA.4/5+XBB.1.5系統対応の2価ワクチンを接種して比較したもの。それによると、接種後の中和抗体価の変化は、XBB.1.5系統に対しては1価ワクチンで16.6倍、2価ワクチンで11.6倍、XBB.1.16系統に対しては1価ワクチンで10.2倍、2価ワクチンで9.3倍、いずれも上昇したとの結果だ。過去のオミクロン株BA.1対応あるいはBA.4/5対応の時の中和抗体価上昇に関する臨床試験の際も、やはりこれらに対応した1価と武漢株を含む2価のワクチンでは1価ワクチンのほうが中和抗体価の上昇がより高いことが確認されている。しかし、念のためと称して2価ワクチンが採用されたことを考えれば、今回はこの経験が生かされていると言えるかもしれない。さて問題はここからだ。もはや新型コロナワクチンに関しては、感染予防、発症予防、重症化予防でも一定の有効性が認められることに医学的にほぼ異論はないと考えるのが一般的である。一部にそうではない意見があることはもちろん承知しているが、誤解を恐れずに言えばそれはノイズである。しかし、すでに多くの国民が「コロナ禍」、そして相次ぐ「ワクチンの追加接種」に疲弊しているのは確かだろう。実際、今春の接種が開始された直後から知人・友人から「まだワクチンを接種したほうが良いの?」と相談を受けることが増えた。これに対して、私はまずはかかりつけ医がいるかどうかを確認し、「いる」と答えた人には「先生は何と言っている?」と聞き返している。偶然にもそうしたケースはいずれも「先生は『接種したほうが良いよ』と言っているよ」との答えが返ってきたので、「俺もそう思うよ」と言うと、だいたい話は終わる。これに対して「いない」と答えてくる人はやや対応が面倒になる。この際には私はまず「データ上は有効性が明らかなので、できるだけ接種したほうが良いと思うよ」と答える。ただ、これで終わることはまずない。一番多い反応は「なんか打つたびに熱が出るし、しんどいよ」というもの。まあ、気持ちはわからないわけではない。だが、私はそうは答えない。というのも、過去4回の接種で私は自覚できる副反応らしきものを経験していないからだ。そこでとりあえずは「俺は次回も打つよ」とだけ答えている。これに対する反応は実にまちまちだ。列挙するとこんな感じだ。「ふーん」「うーん、もう一度考えてみるか」「まあ、タダのうちは打っとくか」「本当に物好きだよね」「出ました。ワクチン男」「お前、今にワクチンで死ぬんじゃない?」最後の3つは大きなお世話と言いたいところだ。そのような中で1人だけ興味深いことを口にした友人がいた。彼はワクチン接種後の死亡事例の中で、ワクチン接種との因果関係が否定できないとして国の健康被害救済制度の認定を受けた事例があることを挙げて、とことん食い下がってきた。私はどの医薬品、ワクチンでも副作用・副反応はゼロにならないこと、その中でごく少数とは言え、極めて不幸な結果になってしまう事例は完全には避けられないことなどを話した。まあ、定型のやり取りと言えばそれまでかもしれない。約1時間の電話でのやり取り後に妙な沈黙となった。正直、私自身かなり疲れてしまって、それ以上何かを言う気にもなれなかった。その沈黙を破ったのは友人のほうだった。「まあ、俺の父親の件みたいなものか」一瞬、混乱した。彼の父親は今から10年以上前に交通事故で亡くなっている。新型コロナワクチンとは何も関係ない。「え、何が?」と私が問うと彼は次のように答えた。「いやさ、父親が交通事故で死んだのは知ってるよね。もちろん父親をはねた運転手に対する恨みは今でもあるよ。でもさ、父親が交通事故で死んだからって自動車を世の中から廃止しろとは言わないよ。ワクチンもそんなものかなと。さっきからワクチンの有効性についてはコンセンサスがあるって言ってたじゃん。確かに報道で医師がこのワクチンのことについて言及する時も多くは打ったほうが良いと言うよね。それはそうなんだろう。ただ、どうしてもごく少数の不幸な事例は出てしまう。かといってこのワクチン接種を止めろと言うならば、それは俺が自動車を全廃しろと言うくらいナンセンスかもね、ということよ」何気ない会話かもしれないが、私は彼のこの発言にかなり圧倒されてしまった。言葉を仕事にしながら、自分はこうした表現は思いつかなかったからだ。結局、彼はひとしきりそう言うと「まあ、もう一度じっくり考えてみるわ」と言って電話を切った。さて国は、そして報道は、このもはやコロナ禍は終わったかのような空気が漂う中で、この秋から始まる予定のXBB系統の新ワクチンの接種を推進するためにどのような言葉を選択していくのだろう。報道の片隅に身を置く立場として、この友人の言葉を私自身はこの1週間反芻している。参考(1)厚生労働省:第47回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料

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NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(中編)【そもそもなんで私たちは噂好きなの?じゃあこれから情報にどうする?(メディアリテラシー)】Part 1

今回のキーワード社会脳フリーライダー(反社会性パーソナリティ)社会的影響(同調)スリーパー効果信憑性(証拠)出どころ(情報源)ファクトチェックポスト真実前回は、噂好きの心理を掘り下げました。それにしても、そもそもなぜ私たちは噂好きなのでしょうか? 今回は、さらに噂好きの心理の起源に迫ります。これを踏まえて、私たちはフェイクニュースをはじめ、情報にこれからどう向き合っていけば良いかというメディアリテラシーについて、一緒に考えてみましょう。なんで噂好きの心理は生まれたの?前編で、噂好きの心理とは、びっくりしたい(新奇性)、信じたいものだけを信じる(確証バイアス)、同じ考えでつながりたい(同類性)という3つの要素があることを説明しました。それでは、そもそもなぜ噂好きの心理は生まれたのでしょうか? その起源を人類の心の進化の歴史からひもといてみましょう。約700万年前に人類が誕生し、約300万年前に父親が母子と同居して家族が誕生し、やがてその血縁が集まって部族が誕生しました(社会脳)。この詳細については、関連記事5をご覧ください。この当時から、人類は助け合い(協力)をして生存と生殖の適応度を高めるようになったわけですが、同時に協力して得た貴重な食料をこっそりかすめ取ったり、部族内の誰かのセックスパートナーを勝手に寝取ったり誘惑したりすることで、生存と生殖の適応度を高める種(フリーライダー)も現れたでしょう。なぜなら、進化の本来の姿は競争だからです。なお、フリーライダー(ただ乗り遺伝子)とはもともと、みんながお金を支払って乗り物に乗っているのに、自分だけただで乗ろうとする人(遺伝素因)のことを指します。この詳細については、反社会性パーソナリティの起源として、関連記事6の後半をご覧ください。そんななか、そのようなフリーライダーの裏切りを部族内で伝え合うことができれば、その人を部族から排除して、集団の協力関係が保たれます。排除されるとわかっていれば、裏切りの抑止にもなります。これが、噂の起源です。もっと言えば、噂はニュースの起源とも言えます。つまり、もともとニュースとは、現代のように一人ひとりが世の中の見識をただ広げて教養人になるためのさっぱりした個人的な興味関心ではなく、まずフリーライダーをあぶり出して集団の秩序を維持するためのじめじめした社会的な装置(機能)であることがわかります。だからこそ、現代の私たちは良い噂よりも悪い噂に敏感です。他人についてはもちろんですが、自分についての噂ならなおさらです。私たちのおしゃべりの大半は、共通に知っている人の噂話です。当たり前すぎて、逆に気にも止めなかったでしょう。そのマインドで、国内の事件報道や有名人を取り上げたワイドショーをつい見てみてしまうのです。また、噂は、単にその時の部族内だけでなく、語り継ぎや言い伝えによって、世代を超えた伝説や神話に形を変えていったのでしょう。それらは、共有すべき規範意識が込められることで、共同体への帰属意識(集団同一性)を高めます。これが、モラルの起源です。さらに、世代を超えて続く噂は、共通の生きる知識や知恵としても、集団の適応度を高めたでしょう。これが、文化の起源です。そして、その子孫が現在の私たちです。だからこそ、私たちは、映画、ドラマ、小説などのストーリーを好むのです。なんで噂の信憑性や出どころには疎いの?残念ながら、人類は、噂自体には敏感なのですが、噂の信憑性(証拠)や出どころ(情報源)まで敏感になるようには進化しませんでした。なぜでしょうか?その訳は、原始の時代の部族社会は、閉ざされていて、約100~150人までのお互いによく知っていて信頼関係がある人たちしかいなかったからです。そのため、いちいち毎回噂の信憑性や出どころについて疑う必要がなかったからです。もしも、嘘の噂を流す人がいれば、「狼少年」(これも寓話という形の噂)のようにすぐにばれてしまいます。そして、要注意人物(フリーライダー)として部族のメンバー全員からレッテルを貼られたり排除されたりして、嘘の噂をまた流すことができなくなるだけだったからです。実際の心理実験(アッシュの同調行動実験)では、まず被験者に「同じ長さの線はどれか」という質問をします。この場合の正答率はほぼ100%でした。次に、8人グループで同じ質問をして1人ずつ答えさせるわけですが、実は被験者は1人だけで、残りの7人は被験者ではなく、前もって間違った答えを同じように言うように指示されたサクラにすり替えます。すると、被験者の75%はその7人の間違った答えに同調したのでした3)。このことから、人は周りの意見に影響を受けやすいことがわかります。これは、前編でも触れましたが、社会的影響(同調)と呼ばれています。私たちは、周りの多くの人が同じ噂話をしていると、その信憑性はさておき、その噂を信じ込んでしまいやすいということです。別の心理実験では、「開発された新薬をすぐに使用できるようにすべきだ」という論説を、1つのグループに専門の学術誌(信頼性が高い情報源)の記事として読ませ、もう1つのグループには大衆雑誌(信頼性の低い情報源)の記事として読ませました。そして、その記事に納得するかの度合いを調べたところ、直後は当然ながら前者が高かったのに、1ヵ月後には差がみられなくなったという結果が出ました4)。つまり、読んだ内容は覚えていても、その出どころは忘れてしまっているのです。これは、スリーパー効果と呼ばれています。私たちは、信頼性の低い情報源でも、目に触れれば、潜伏工作員(スリーパー)が暗躍するように、知らず知らずのうちにすり込まれていくということです。皆さんも、人から聞いた話をいつの間にか自分の話として話している状況を、誰かから指摘されたり、逆に誰かに指摘した経験があるでしょう。次のページへ >>

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NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(中編)【そもそもなんで私たちは噂好きなの?じゃあこれから情報にどうする?(メディアリテラシー)】Part 2

これから情報にどう向き合っていけばいいの?噂好きの心理の起源は、人類が原始の時代に集団の適応度を高めるために、フリーライダーをあぶり出すことであったことがわかりました。そして、噂(情報)の信憑性と出どころに鈍感なのは、原始の時代の社会は閉ざされていて嘘の噂を流すのが難しいことから、そもそもその信憑性や出どころを疑う必要がなかったからでした。これを踏まえて、私たちはフェイクニュースをはじめ、情報にどう向き合っていけば良いでしょうか? ここから、その注意点(メディアリテラシー)を主に2つ挙げてみましょう。(1)信憑性(証拠)樹は上司に「『青虫うどんの真相?』って、真相が記事の中身に書かれていないのに、完全な釣りタイトルです。語尾に?をつければ許されるってものじゃありません」と怒りをぶつけていました。自分の記事のタイトルが、上司の指示で書き換えられていたのでした。これは、タイトルの情報に根拠がない状態です。1つ目の注意点は、その情報は確かなのか、つまり信憑性(証拠)です。断定するわりに根拠が書かれていなかったり、専門家の経験則、歴史上の偉人の名言の引用、ことわざだけを根拠としている情報は、信頼性が低いと言わざるを得ないでしょう。(2)出どころ(情報源)樹は上司や同僚たちに「うち(イーストポスト)の記事が広がらない理由の1つに、こんな声があります。『イーカゲンポストの記事なんで信じない』」と言い、公式アカウントへの返信を見せます。そして、「これまでのツケです」と続けます。釣りタイトルばかり書いていたため、信頼されなくなっていたのでした。2つ目の注意点は、その情報は誰が伝えているのか、つまり出どころ(情報源)です。匿名であったり、まさに「イーカゲン」な(ファクトの乏しい)情報を伝えるような組織は、信頼性が低い情報源であると評価する必要があります。先ほどにも触れたように、「狼少年」を検知する心を発動させる必要があります。たとえば、そのような記事サイトには「この記事を表示しない」というブロック機能を利用することができます。もちろん、ファクトチェックがAIで自動化されることも望まれます。サブタイトル「あるいはどこか遠くの戦争の話」とは?インスタントうどん青虫混入事件は、難民問題の是非にまで発展してしまい、本質から「遠ざかって」いきます。そして、選挙戦で有権者同士の暴動を引き起こします。これが、「どこか遠くの戦争」の意味でしょう。SNSの進歩によって、私たちはよりつながって団結するのではなく、逆に分断されていくという皮肉が込められているようです。情報とは、原始の時代ではフリーライダーをあぶり出して部族をより団結させる装置であったはずなのに、現代では逆にフリーライダーに利用され社会を分断させる武器になってしまいました。情報伝達は単なる機能にすぎませんが、それが使われる社会構造が代わってしまったことを私たちは今よく理解する必要があります。原始の時代の私たちの心のデフォルトは、真偽不明なものであっても、それを集団で信じることでした。その最たるものが、「神がいる」という教えです。よくよく考えると、誰も神を見た人がおらず、まったく根拠がなく、その存在を証明できません。合理的に考えれば、これほどおかしな情報はありません。それでも、世界中で多くの人に広く受け入れられているのは、実は、宗教もまた社会(集団)をまとめるための文化的な装置(機能)だからでしょう。なお、この宗教の起源の詳細については、関連記事7をご覧ください。キャッチフレーズ「全てが真実になり、全てが真実でない時代だ」の意味とは?進化心理学的に考えれば、情報伝達の一番の機能とは、本来社会をうまくまとめることであり、真実を追究することそのものではないことがわかります。この点で、「破壊的な噂」(フェイクニュース)が世界を動かすようになった現代において、もはや「これからの真実」(ポスト真実)とは、事実がどうだったかという客観性ではなく、その事実をどう感じたかという主観性に重きが置かれるようになっていくという指摘には納得がいきます。これが、「全てが真実になり、全てが真実でない時代だ」というキャッチフレーズの意味でしょう。樹は編集長の上司を説得しようと、「おまえらネットメディアだって金儲けのためにやってるんだろって言われても、伝えることを伝えるのが私たちの義務です。どんな媒体だろうとそれが記者の務めです」「嘘がまかり通る社会を(編集長の)娘さんに残したいですか?」と訴えます。このセリフは、今この瞬間に自分が得するかという個人的な視点ではなく、これから先の未来に自分たちの子供が幸せになれるかという社会的な視点が込められています。このドラマを通して、世界が分断されるのではなく、再び団結できるような「建設的な噂」(メディアリテラシー)を私たち一人ひとりが分かち合う必要性に気付かされます。3)社会心理学P34:山岸俊男(監)、新星出版社、20114)人はなぜだまされるのかP114:石川幹人、講談社、2011<< 前のページへ■関連記事映画「アバター」【私たちの心はどうやって生まれたの?(進化心理学)】Part 1万引き家族(前編)【親が万引きするなら子供もするの?(犯罪心理)】Part 3ミスト(前編)【信じ込む心(宗教)】

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7月14日 内臓脂肪の日【今日は何の日?】

【7月14日 内臓脂肪の日】〔由来〕「内臓脂肪」の頭文字「な(7)い(1)し(4)」と読む語呂合わせから、内臓脂肪の蓄積が将来の健康リスクに繋がることへの啓発と健やかに過ごし、自分の健康を見つめ直す機会とすることを目的に株式会社ファンケルが制定。関連コンテンツ抗肥満薬「アライ」がダイレクトOTCとして薬局で購入可能に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】「つい食べてしまう」という患者さん【糖尿病外来NGワード】内臓脂肪指数は大腸がん発症の予測因子~日本人コホート全粒粉穀物がもたらす身体への効果/日本糖尿病学会2型DM発症リスク、肥満でなくても腹囲が影響/BMJ

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7月17日 理学療法の日【今日は何の日?】

【7月17日 理学療法の日】〔由来〕昭和40年に理学療法士について定めた法律「理学療法士及び作業療法士法」が公布され、翌41年に第1回理学療法士国家試験が実施された。この試験に合格した110名の理学療法士によって結成されたのが「日本理学療法士協会」。この日を記念して同協会が制定し、この日の前後に全国で理学療法に関係する医療、介護のイベントが開催されている。関連コンテンツ終末期でも「リハビリ」が大切な理由【非専門医のための緩和ケアTips】日常生活でできる運動はあるの?【患者説明用スライド】今さら聞けない心リハ首・腰痛、姿勢療法は医療費増大/JAMA末梢動脈疾患の在宅での歩行運動導入、歩行距離を改善/JAMA

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ASCO2023 レポート 血液腫瘍

レポーター紹介はじめにASCO2023の年次総会(6月2日~6日)は、ようやくCOVID-19が感染症法上の5類扱いとなったことで海外への渡航もしやすくなり、米国シカゴで現地参加された日本人の先生方もおられたと思います。今年も現地参加に加えWEBでの参加(視聴)も可能であり、私は昨年と同様に、現地まで行かずに通常の病院業務をしながら、業務の合間や終了後に時差も気にせず、オンデマンドで注目演題を聴講したり発表スライドを閲覧したりしました。それらの演題の中から、今年も10の演題を選んで、発表内容をレポートしたいと思います。以下に、悪性リンパ腫(慢性リンパ性白血病含む)関連4演題、多発性骨髄腫関連3演題、白血病/MDS関連3演題を紹介します。悪性リンパ腫(慢性リンパ性白血病含む)関連SWOG S1826, a randomized study of nivolumab(N)-AVD versus brentuximab vedotin(BV)-AVD in advanced stage (AS) classic Hodgkin lymphoma (HL). (Abstract #LBA4)本臨床試験は、プレナリーセッションで発表された注目演題である。昨年のASCO2022にて、進展期の未治療ホジキンリンパ腫に対し、それまでの標準治療であったABVD療法と、ブレンツキシマブ ベドチンとブレオマイシンを置き換えたA-AVD療法を比較したECHELON-1試験の6年のフォローアップの結果が示され、全生存率でもA-AVDがABVDよりも優れていたという結果が発表された。今回の試験では、進展期の未治療ホジキンリンパ腫に対し、抗PD-1抗体薬ニボルマブとAVDを併用したN-AVDと、新たな標準治療となったA-AVDを比較した試験の中間解析結果が報告された。N-AVD(496例)、A-AVD(498例)に割り付けられた。本試験では、ECHELON-1試験には組み入れられなかった12~17歳の未成年患者が約4分の1含まれていた。主要評価項目のPFS(1年時点)は、94%と86%でHRは0.48と有意にN-AVDが優れていた。また、副作用として、G-CSFの1次予防の実施がA-AVDではほぼ全例、N-AVDでは約半数だったことで、好中球減少はN-AVDで多く認められたが、感染症の発症率はほぼ同等であった。末梢性神経障害はA-AVDで多く認められた一方、ニボルマブによる免疫関連の副作用(IrAE)は、ほとんど問題なかった。今後、フォローアップを継続し、晩期の副作用の発現や再発後の治療選択なども見ていく必要がある。Results of a phase 3 study of IVO vs IO for previously untreated older patients (pts) with chronic lymphocytic leukemia (CLL) and impact of COVID-19 (Alliance). (Abstract #7500)未治療高齢CLL患者に対し、イブルチニブ(I)とオビヌツズマブ(O)併用後のI治療継続(IO)と、IOにベネトクラクス(V)を12ヵ月間併用し、MRD陰性の場合は治療を終了し、MRDが残存する場合はI治療を継続する(IVO)治療を比較する第III相試験の中間解析結果が報告された。465例(IO群:232例、IVO群233例)がエントリーされ、18ヵ月時点でのPFSは、IO群87%、IVO群85%で差を認めなかった。14サイクル終了時点でのCR率とMRD陰性率は、IO群で31.3%と33.3%、IVO群で68.5%と86.8%であり、IVO群で高かった。18ヵ月時点でのIVO群のMRD陰性例と陽性例のPFSには差がみられなかった。有害事象としては、両群ともCOVID-19による死亡例が最も多く(IVO群>IO群)、COVID-19の流行により、臨床試験の結果は大きな影響を受けることとなった。今後、長期のフォローアップにより、MRD陰性例(治療中止例)のPFSのデータが出た時点で、Vの併用の意義が明らかになると考える。A phase 2 trial of CHOP with anti-CCR4 antibody mogamulizumab for elderly patients with CCR4-positive adult T-cell leukemia/lymphoma. (Abstract #7504)日本からの発表。同種移植の適応とならない高齢アグレッシブCCR4陽性ATL患者に対するモガムリズマブ(Moga)とCHOP-14の併用療法(Moga-CHOP-14)の第II相試験の結果である。アグレッシブATLは難治性の疾患であり、同種移植の適応とならない患者の生命予後はきわめて不良である。寛解導入療法のCHOP療法は、奏効率も低く、生命予後の改善も乏しい。50例のATL患者(年齢中央値74歳)にMoga-CHOP-14×6サイクル+Moga×2サイクルが実施された。1年PFSが36.2%、ORRが91.7%(CRが64.6%)、1年OSが66.0%であった。主な有害事象は、血球減少とFN(G3以上64.6%)、皮疹(G3以上20.8%)であった。Moga-CHOP-14療法は、高齢ATL患者に対する治療オプションとして有用と考えられる。Epcoritamab + R2 regimen and responses in high-risk follicular lymphoma, regardless of POD24 status. (Abstract #7506) 再発・難治の濾胞性リンパ腫(FL)に対し、CD20×CD3の二重特異性抗体薬epcoritamab(Epco)とリツキシマブ・レナリドミド(R2)を併用した治療の第II相試験(Epcoの投与スケジュールが異なる2群)の統合解析結果が報告された。2つの試験の対象となった111例が解析された。患者の年齢中央値は65歳で、CS III/IVが22%/60%であり、FLIPIの3〜5が58%であった。57%は前治療のライン数が1であり、POD24は38%が該当した。全奏効率は98%、完全代謝奏効(CMR)は87%であった。POD24に該当するハイリスク患者においてもそれぞれの奏効率は98%/75%と、治療効果は良好であった。有害事象は、CRSと好中球減少をそれぞれ48%で認めたが、CRSは46%がGrade1〜2であり、Grade3は2%であった。また、有害事象によって治療中止となった例はなかった。現在、第III相試験(EPCORE FL-1試験、EPCORE NHL-2試験)が行われている。多発性骨髄腫関連Carfilzomib, lenalidomide, and dexamethasone (KRd) versus elotuzumab and KRd in transplant-eligible patients with newly diagnosed multiple myeloma: Post-induction response and MRD results from an open-label randomized phase 3 study. (Abstract #8000)未治療の多発性骨髄腫(MM)患者に対するKRd療法とエロツズマブ(E)を併用したE-KRd療法の第III相比較試験(DSMM XVII試験)が行われた。試験デザインは6サイクルの寛解導入後、1回の自家移植(CRが得られない場合あるいはハイリスク染色体異常の場合は2回)を実施し、4サイクルの地固め実施後、レナリドミド(R)あるいはエロツズマブ+レナリドミド(ER)の維持療法を行うこととなっている。579例がランダム化された。寛解導入後の効果について、主要評価項目の1つでもあるVGPR以上でMRD陰性例の割合は、KRd/E-KRdで、35.4/49.8%であり、Eの併用効果を認めた。Grade3以上の有害事象もE併用により、66.3%から75.3%に増えているが、感染症による死亡例はそれぞれ0.3/1.2%で差はなく、COVID-19例も4.4/3.2%で差を認めなかった。未治療MMに対し、Eの併用の有用性が初めて示された試験である。First results from the RedirecTT-1 study with teclistamab (tec) + talquetamab (tal) simultaneously targeting BCMA and GPRC5D in patients (pts) with relapsed/refractory multiple myeloma (RRMM). (Abstract #8002)トリプルクラス抵抗性のMM患者の生命予後は、きわめて不良であり、それらの患者に二重特異性抗体薬が高い有効性を示すことが報告され、欧米では承認されている。標的分子が異なるそれらの治療薬を併用することで、さらなる治療効果の増強が期待される。本発表では、BCMA×CD3の二重特異性抗体薬のteclistamab(Tec)とGPRC5D×CD3の二重特異性抗体薬のtalquetamab(Tal)の併用治療の第Ib相試験(RedirecTT-1試験)の結果が報告された。93例の再発・難治MM患者(前治療のライン数:4、33.3%がハイリスクの染色体異常を有し、79.6%がトリプルクラスレフラクトリー、37.6%が髄外腫瘤を有していた)が参加している。本試験は用量設定試験であり、用量は4段階あるが、有効性は全奏効率が86.6%、CR以上が40.2%であり、第II相の推奨用量(Tec:3.0mg/kg+Tal:0.8mg/kg Q2W)では、全奏効率が96.3%、CR以上が40.7%と、優れた治療成績が示された。また、CRSや骨髄抑制などの有害事象は単剤治療とほぼ変わりなかった。今後のさらなる開発が期待される。Talquetamab (tal) + daratumumab (dara) in patients (pts) with relapsed/refractory multiple myeloma (RRMM): Updated TRIMM-2 results. (Abstract #8003)再発・難治MM患者に対するGPRC5D×CD3の二重特異性抗体薬のtalquetamab(Tal)とダラツムマブ(Dara)を併用した試験(TRIMM-2試験)のアップデート成績が報告された。65例(前治療のライン数:5、トリプルクラス抵抗性:60%、抗CD38抗体薬抵抗性:78%、二重特異性抗体薬抵抗性:23%、BCMA標的治療歴:54%)が参加した。追跡期間中央値16ヵ月時点の成績は、全奏効率81%(VGPR以上:70%、CR以上:50%)であり、奏効が得られた症例の80.9%で、12ヵ月時点で奏効が持続しており、PFSの中央値は19.4ヵ月、1年PFS率は70%、1年OS率は92%であった。有害事象は既知のものであり、CRSも78%で認められたが、すべてGrade1〜2であった。TalとDaraの併用は、トリプルクラス抵抗性(とくに抗CD38抗体薬抵抗性)のMMに対し、新たな治療オプションとして注目される。白血病/MDS関連Efficacy and safety results from the COMMANDS trial: A phase 3 study evaluating lus patercept vs epoetin alfa in erythropoiesis-stimulating agent (ESA)-naive transfusion dependent (TD) patients (pts) with lower-risk myelodysplastic syndromes (LR-MDS). (Abstract #7003)赤血球輸血依存のLow-リスクMDS患者に対するluspatercept(Lus)とエリスロポエチン製剤(ESA)との第III相比較試験の中間解析結果が報告された。対象となった患者は、IPSS-RでのLow-リスクであり、環状鉄芽球の有無は問わず、血清Epo値が500U/L未満であり、ESAの投与歴がない輸血依存(4~12単位の輸血を8週間以上継続している)状態の患者であった。Lusは3週に1回の皮下注、ESAは週1回の皮下注にて投与され、24週以上継続した。Lusは178例、ESAは176例の患者が割り付けられた。主要評価項目である開始24週以内における12週以上の輸血非依存の達成率(Hb 1.5g/dL以上上昇を伴う)は、Lusで58.5%、ESAで31.2%であった。治療薬関連の副作用は、Lusで30.3%、ESAで17.6%に認められ、副作用による中止はLusで4.5%、ESAで2.3%であった。また、AMLへの進行は、それぞれ2.2%と2.8%であった。Lusは、輸血依存のLow-リスクMDSに対し、貧血の改善効果がESAよりも優れていることが示された。A first-in-human study of CD123 NK cell engager SAR443579 in relapsed or refractory acute myeloid leukemia, B-cell acute lymphoblastic leukemia, or high-risk myelodysplasia. (Abstract #7005)CD123(IL-3レセプターのα鎖)を発現している細胞とNK細胞を結び付けるSAR443579(SAR)の再発・難治AML、およびCD123陽性HighリスクMDS、B-ALL患者に対する第I/II相試験の結果が発表された。SARは、週2回と週1回の静脈内投与で2週間投与され(10~3,000μg/kg/dose)、その後、週1回(100~3,000μg/kg)の投与スケジュールとなり、寛解導入期は3ヵ月、その後、維持療法期には約28日ごとの投与となる。23例の患者(全員AMLの診断)が登録され、最高用量の3,000μg/kgまで用量制限毒性は認められなかった。有害事象で最も多かったのはIRR(13例)であり、CRSは1例(Grade1)のみに認められた。有効性は、3例でCR/CRiが得られており、その3例は1,000μg/kgの投与量であった(1,000μg/kgでは8例中3例がCR/CRi:37.5%)。新たなNK細胞エンゲージャー治療薬の今後の開発の進展が期待される。Chemotherapy-free treatment with inotuzumab ozogamicin and blinatumomab for older adults with newly diagnosed, Ph-negative, CD22-positive, B-cell acute lymphoblastic leukemia: Alliance A041703. (Abstract #7006)未治療Ph陽性のALLに対し、TKIとブリナツモマブ(Blina)を併用したケモフリーレジメンの有用性が示されているが、本研究では、未治療Ph陰性、CD22陽性のB-ALLの同種移植の適応とならない高齢患者に対し、イノツズマブ オゾガマイシン(Ino)とBlinaの併用によるケモフリーレジメンが試験されている。Inoを1~2サイクル投与し、その後、Blinaで地固めを行う。33例(年齢中央値:71歳)が試験に参加し、最良治療効果のCRcは96%、1年EFS率が75%、1年OS率が84%であった。主な有害事象は骨髄抑制(Grade3以上の好中球減少:87.9%、血小板減少:72.7%)で、FNは21.2%にみられ、有害事象での死亡例は2例(脳症と呼吸不全)のみにみられた。通常の化学療法と比較し、とくに寛解期での死亡例が少なく、移植非適応のPh陰性ALL患者には、安全性の高い治療法である。おわりに以上、ASCO2023で発表された血液腫瘍領域の演題の中から10演題を紹介しました。ASCO2021、ASCO2022でも10演題を紹介しましたが、今年も昨年、一昨年と同様、どの演題も今後の治療を変えていくような結果であるように思いました。来年以降も現地開催に加えてWEB開催を継続してもらえるならば、ASCO2024にオンライン参加をしたいと考えています(1年前にも書きましたが、もう少しWEBでの参加費を安くしてほしい、円安が続く今日この頃[笑])。

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ワインは心血管に良い影響?22試験のメタ解析

 アルコール摂取と心血管イベントにはJ字型、U字型の関連があるという報告もあり、多量のアルコール摂取は心血管に悪影響を及ぼす一方、少量であれば心血管に良い影響を及ぼす可能性が指摘されているが、結果は一貫していない1-3)。また、ワインの摂取が心血管の健康に及ぼす効果についても、意見が分かれている。そこで、スペイン・Universidad de Castilla-La ManchaのMaribel Luceron-Lucas-Torres氏らは、ワインの摂取量と心血管イベントとの関連について、システマティックレビューおよび22試験のメタ解析を実施した。その結果、ワインの摂取は、心血管イベントのリスク低下と関連していた。また、年齢や性別、追跡期間、喫煙の有無はこの関連に影響を及ぼさなかった。Nutrients誌2023年6月17日号の報告。 Pubmed、Scopus、Web of Scienceを用いて、2023年3月26日までに登録されたワインの摂取量と冠動脈疾患(CVD)、冠動脈性心疾患(CHD)、心血管死との関連を検討した研究を検索した。その結果25試験が抽出され、22試験についてDerSimonian and Laird Random Effects Modelを用いてメタ解析を実施した。また、ワインの摂取量と心血管イベント(CVD、CHD、心血管死)との関連に影響を及ぼす因子を検討した。異質性はτ2値を用いて評価した(0.04未満:小さい、0.04~0.14:中等度、0.14~0.40:大きい)。 主な結果は以下のとおり。・ワイン摂取はCHD、CVD、心血管死のリスクをいずれも有意に低下させた。リスク比(95%信頼区間)およびτ2値は以下のとおり。 -CHD:0.76(0.69~0.84)、0.0185 -CVD:0.83(0.70~0.98)、0.0226 -心血管死:0.73(0.59~0.90)、0.0510・試験参加者の平均年齢、性別(女性の割合)、追跡期間、喫煙の有無はワイン摂取とCHD、CVD、心血管死との関連に影響を及ぼさなかった。・メタ解析を実施した研究のバイアスリスクはいずれの研究も良好であった。出版バイアスについては、CVDに関する研究において認められたが(p=0.003)、CHD、心血管死に関する研究では認められなかった(それぞれp=0.162、0.762)。 著者らは、「年齢、薬物、病態の影響によりアルコールに対する感受性が高い患者では、ワインの摂取量を増やすことが有害となる可能性があるため注意が必要である」と指摘しつつも、「システマティックレビューおよびメタ解析によって、ワイン摂取はCVD、CHD、心血管死のリスクを低下させることが示された。今後、ワインの種類によってこれらの効果を区別する研究が必要である」とまとめた。

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高齢者の片頭痛患者に対する抗CGRP抗体の安全性・有効性

 抗CGRPモノクローナル抗体は、片頭痛治療において顕著な有効性および忍容性が認められているが、高齢者に対する使用データについては、臨床試験では暗黙の年齢制限があり、リアルワールドのエビデンスも限られていることから、十分であるとは言えない。スペイン・バルセロナ大学のAlbert Munoz-Vendrell氏らは、65歳以上の片頭痛患者を対象に抗CGRPモノクローナル抗体であるエレヌマブ、ガルカネズマブ、フレマネズマブの安全性および有効を評価するため、検討を行った。その結果、リアルワールドにおける65歳以上の片頭痛患者に対する抗CGRPモノクローナル抗体による治療は、安全かつ効果的な治療法であることを報告した。The Journal of Headache and Pain誌2023年6月2日号の報告。 本研究は、スペインの頭痛治療施設18施設からプロスペクティブにデータを収集し、レトロスペクティブに分析を実施した観察研究である。対象は、抗CGRPモノクローナル抗体による治療を開始した65歳以上の片頭痛患者。主要エンドポイントは、治療6ヵ月後の1ヵ月当たりの片頭痛に数の減少および副作用の発生とした。副次的エンドポイントは、頭痛の軽減、治療3ヵ月および6ヵ月後の薬剤投与頻度、治療反応率、患者報告による転帰の変化、治療中止理由とした。サブ分析として、1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少と副作用発現率を薬剤間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は162例(年齢中央値:68歳、範囲:65~87歳、女性の割合:74.1%)であり、脂質異常症(42%)、高血圧症(40.3%)、糖尿病(8%)、心血管虚血性疾患(6.2%)などの既往歴が認められた。・治療6ヵ月後の1ヵ月当たりの片頭痛の数の減少は、10.1±7.3日であった。・副作用が認められた患者の割合は25.3%、いずれも軽症で、血圧上昇は2例のみであった。・患者報告では、頭痛および薬剤の投与頻度の有意な減少が報告され、転帰の改善が認められた。・1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少率別の患者割合は、以下のとおりであった。 ●1ヵ月当たりの片頭痛日数30%以上減少:68% ●1ヵ月当たりの片頭痛日数50%以上減少:57% ●1ヵ月当たりの片頭痛日数75%以上減少:33% ●1ヵ月当たりの片頭痛日数100%減少:9%・治療6ヵ月後の治療継続率は、72.8%であった。・片頭痛日数の減少は、各薬剤同様であったが、フレマネズマブの副作用発現率は低かった(7.7%)。

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肥満2型DMでのチルゼパチド、体重減少にも有効/Lancet

 過体重または肥満の2型糖尿病患者において、チルゼパチド10mgおよび15mgの週1回72週間皮下投与は、体重管理を目的とした他のインクレチン関連薬と同様の安全性プロファイルを示し、臨床的に意義のある大幅な体重減少をもたらしたことが示された。米国・アラバマ大学バーミンガム校のW Timothy Garvey氏らが、7ヵ国の77施設で実施された第III相国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SURMOUNT-2試験」の結果を報告した。肥満2型糖尿病患者の健康状態を改善するためには、体重減少が不可欠である。チルゼパチドは持続性のGIP/GLP-1受容体作動薬で、非2型糖尿病の肥満患者を対象としたSURMOUNT-1試験では、72週間のチルゼパチドによる治療で体重が最大20.9%減少することが認められていた。Lancet誌オンライン版2023年6月24日号掲載の報告。BMI 27以上の2型DM患者で、チルゼパチド10mgまたは15mgをプラセボと比較 研究グループは、BMI値27以上、HbA1c 7~10%の2型糖尿病成人患者(18歳以上)を、チルゼパチド10mg群、15mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、週1回72週間皮下投与した(週1回2.5mgから投与を開始し、4週ごとに2.5mgずつ増量)。スクリーニング前3ヵ月以内に体重が5kg以上変化した患者、肥満に対する外科的治療を受けたことがあるまたは予定されている患者、抗肥満薬、DPP-4阻害薬、経口GLP-1受容体作動薬または2型糖尿病の注射薬を投与されていた患者は除外した。すべての試験参加患者、研究者およびスポンサーは治療割り付けをマスクされた。 主要エンドポイントは2つで、ベースラインから72週までの体重変化率および72週時点のベースラインからの体重減少が5%以上を達成した患者の割合とした。治療レジメンの推定は、治療の中止または抗高血糖レスキュー治療開始を問わず有効性を評価した。 有効性と安全性のエンドポイントの解析評価は、無作為化されたすべての患者のデータを用いて行われた。72週間で体重減少最大14.7%、5%以上体重減少の達成率は79~83% 2021年3月29日~2023年4月10日に1,514例が適格性の評価を受け、938例が無作為化された(チルゼパチド10mg群312例、15mg群311例、プラセボ群315例)。患者背景は、平均年齢54.2±10.6歳、女性476例(51%)、白人710例(76%)、ヒスパニック系/ラテン系561例(60%)であった。また、ベースラインの平均体重は100.7±21.1kg、BMIは36.1±6.6、HbA1cは8.02±0.89%であった。 72週時の体重のベースラインからの最小二乗平均変化率はチルゼパチド10mg群-12.8%(標準誤差[SE]0.6)、15mg群-14.7%(0.5)、プラセボ群-3.2%(0.5)であり、プラセボとの群間差はチルゼパチド10mg群-9.6ポイント(95%信頼区間[CI]:-11.1~-8.1)、15mg群-11.6ポイント(95%CI:-13.0~-10.1)であった(いずれもp<0.0001)。また、72週時の5%以上体重減少達成率は、プラセボ群32%に対し、チルゼパチド10mg群79%、15mg群83%であり、チルゼパチド群で高かった(いずれもp<0.0001)。 チルゼパチドの主な有害事象は、悪心、嘔吐、下痢などの胃腸障害で、多くが軽度~中等度であり、治療中止に至った有害事象はほとんどなかった(<5%)。重篤な有害事象は、全体で68例(7%)が報告された。チルゼパチド10mg群で死亡が2例確認されたが、治験責任医師によりチルゼパチドとの関連はないと判断された。

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2型DMでのorforglipron、HbA1c低下に最適な用量-第II相/Lancet

 新規の経口非ペプチドGLP-1受容体作動薬orforglipronは、12mg以上の用量でプラセボまたはデュラグルチドと比較しHbA1cおよび体重の有意な減少を示し、有害事象のプロファイルは同様の開発段階にある他のGLP-1受容体作動薬と類似していた。米国・Velocity Clinical ResearchのJuan P. Frias氏らが、米国、ハンガリー、ポーランド、スロバキアの45施設で実施された26週間の第II相多施設共同無作為化二重盲検用量反応試験の結果を報告した。orforglipronは2型糖尿病および肥満症の治療薬として開発中で、今回の結果を踏まえて著者は、「orforglipronは、2型糖尿病患者にとって少ない負担で治療目標を達成することが期待でき、GLP-1受容体作動薬の注射剤や経口セマグルチドに代わる治療薬となる可能性がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年6月24日号掲載の報告。BMI値23以上の2型DM、orforglipron各用量vs.プラセボvs.デュラグルチド 研究グループは、18歳以上の2型糖尿病患者で、HbA1c 7.0~10.5%、BMI値23以上、無作為化前3ヵ月間体重が安定している(増減が5%以下)患者を、プラセボ群、デュラグルチド(1.5mg週1回皮下投与)群、orforglipron 3mg、12mg、24mg、36mg(グループ1)、36mg(グループ2)、45mg(グループ1)、45mg(グループ2)(1日1回投与)各群に、5対5対5対5対5対3対3対3対3の割合で無作為に割り付けた。36mgと45mgのコホートは、それぞれグループ1と2で異なる用量漸増レジメンが検討された。試験参加者は、試験薬、デュラグルチド、プラセボについてマスクされた。 主要有効性アウトカムは、orforglipron各用量群vs.プラセボ群の26週時におけるベースラインからのHbA1cの平均変化とした。副次アウトカムは、orforglipron各用量群vs.デュラグルチド群の26週時におけるベースラインからのHbA1cの平均変化とした。また、ベースラインからの体重の変化なども評価した。 有効性の解析対象集団は、無作為化され少なくとも1回治験薬の投与を受けた全患者で、投与中止またはレスキュー治療開始後のデータは除外した。安全性は、少なくとも1回の治験薬投与を受けた全患者を対象に評価した。orforglipron群のHbA1c、全用量でプラセボより、12mg以上でデュラグルチドより低下 2021年9月15日~2022年9月30日に569例がスクリーニングを受け、383例が無作為化された。352例(92%)が試験を完遂し、303例(79%)が26週間の治療を完遂した。ベースラインの患者背景は、平均値がそれぞれ年齢58.9歳、HbA1c 8.1%、BMI値35.2で、男性226例(59%)、女性157例(41%)であった。 26週時のHbA1cの平均変化は、orforglipron群-1.2%(3mg群)~-2.1%(45mg群)、プラセボ群-0.4%、デュラグルチド群-1.1%であった。orforglipronの全用量群で、HbA1c低下に関してプラセボ群に対する優越性が認められた(群間差:-0.8~-1.7%、全用量群のp<0.0001)。また、orforglipronの12mg以上の用量群ではHbA1c低下に関して、デュラグルチド群に対する優越性が認められた。 26週時の体重の平均変化は、orforglipronで-3.7kg(3mg群)~-10.1kg(45mg群)、プラセボ群-2.2kg、デュラグルチド群-3.9kgであった。 治療下の有害事象の発現率は、orforglipron群61.8%~88.9%、プラセボ群61.8%、デュラグルチド群56.0%で、多くは軽度から中等度の胃腸障害であった(orforglipron群44.1%~70.4%、プラセボ群18.2%、デュラグルチド群34.0%)。orforglipron群で3例、デュラグルチド群で1例に臨床的に明らかな低血糖(<54mg/dL)が発現したが、重症低血糖は報告されなかった。死亡は、プラセボ群で1例報告されたが、試験とは関連がなかった。

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lecanemab、アルツハイマー病治療薬として米国FDAよりフル承認を取得/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとBiogen(米国)は2023年7月7日、米国商品名「LEQEMBI」注射100mg/mL溶液(一般名:lecanemab)について、アルツハイマー病治療薬としてフル承認に向けた生物製剤承認一部変更申請を米国食品医薬品局(FDA)が承認したことを発表した。今回の「LEQEMBI」のフル承認は、エーザイの大規模グローバル臨床第III相検証試験であるClarity AD試験のデータに基づいている。 「LEQEMBI」は、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、継続的に蓄積される最も神経毒性の高いAβ(Aβプロトフィブリル)をターゲットとして除去し、既存のプラークを除去するとされる。2023年1月6日にFDAより迅速承認を取得しており、さらに6月には臨床第III相Clarity AD検証試験の結果が本剤の臨床上のベネフィットを示すエビデンスであることを、FDAの末梢・中枢神経系薬物諮問委員会(PCNS)が全会一致で支持していた。今回の承認により、「LEQEMBI」は、アルツハイマー病の進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることを示し、フル承認を取得した世界初かつ唯一の治療薬となる。 また、「LEQEMBI」のFDAフル承認を受け、メディケア&メディケイド・サービスセンターは、本剤に対する幅広いメディケアでの保険適用が可能となったことに加え、簡便なデータ提出プロセスを含む、レジストリの詳細について発表した。

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英語勉強法2【Dr. 中島の 新・徒然草】(485)

四百八十五の段 英語勉強法2前回に引き続き、英語勉強法その2を述べたいと思います。今回はスピーキング、つまり「話す」技能です。まずは自分自身のニーズをはっきりさせておきましょう。どのような場面で英語を話すことを想定しているのか?それが大切です。私ならこんな感じでしょうか。外国人の診療国際学会での口演発表学会後の懇親会での初対面の外国人との会話とくに最後のものが一番難しいのではないかと思います。1つの対策としては、鉄板ネタを持っておくというのがあります。ここで皆さんは「そこまでやる?」思うかもしれません。でも、プロほど準備周到です。かつて吉本の芸人さんが述べていたのを聞いたことがあります。いきなり「面白い話して!」と一般人に無茶振りされることがあるのだとか。で、いつも原稿用紙30枚分の話を準備しているそうです。プロですらそこまでやるのですから、われわれ素人が準備するのは当然。体験談やエピソードを語る時のパターンも決まっています。前回も紹介したYouTubeの「ニック式英会話」では、こんな例が挙げられていました。出だしこないだ怖いことがあってね状況説明〜していたら出来事こういうことがありました。という形です。最初の「怖いこと」の部分は“Something scary happened.”となりますが、この部分は「恥ずかしいこと」とか「ラッキーなこと」という形でも応用できます。次の状況説明は、英語でも日本語でも過去進行形を使うのだとか。たとえば、“I was walking down the street,”(通りを歩いていたら)みたいな形になります。そして出来事は英語でも日本語でも過去形。先の例に続けてみると、“and a guy came up to me.”(男の人が話し掛けてきた)となります。こういったいろいろな場面でのスピーキングの練習は、オンライン英会話がピッタリ。私が利用しているレアジョブなら、1回25分のレッスンで講師はフィリピン人。まずはレッスンの冒頭で自分のニーズを明確に伝えます。時々ある英語での外国人診療が上手くなりたい、など。だから患者役となって練習に付き合ってほしい、と言えばいいですね。すると彼女らはここぞとばかり、自分の頭痛、母親の手術、親戚の病気など、ありとあらゆる医学的疑問をぶつけてきます。まるで無料医学コンサルタントみたいなもんで、心の中ではきっと「ラッキー!」と思っていることでしょう。で、医学的には簡単な話でも、英語となると出てきません。「片頭痛って何だったかな?」と苦しんだ挙句、日本語に引きずられてone-side headacheなどと言ったら意味が通じません。片頭痛はmigraineですね、正しく伝えましょう。痛みの性状を表現する「拍動性」というのも難しいです。パッと出てくるのはpulsatileですが、一般人に通じるのでしょうか?むしろpoundingのほうが良いかもしれません。レッスンで四苦八苦した後は、別の講師相手に同じ話題で臨むのがいいと思います。何しろ講師は3,000人以上いるので、毎日新しい人にレッスンを受けることも可能です。そうすれば「また同じ話か」と思われることは決してありません。きっと少しずつスムーズに話せるようになることでしょう。オンライン英会話も狙いを持ってやることが大切ですね。最後に1句汗かけど なかなか出ない 英単語

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円安に負けず、お得に海外旅行に出かけよう!【医師のためのお金の話】第70回

ようやく日本でも、新型コロナウイルス感染症の規制が緩和されました。世界に遅れること約1年。最後尾での規制緩和ですが、ようやくコロナ禍前のように気軽に海外旅行に行けるようになりました。新型コロナウイルス感染症のために海外旅行に行けない状況はなくなりましたが、別の理由で海外旅行の敷居は高いです。その理由とは、もちろん急激に進行した円安。もともと日本円の購買力低下は、静かに進行していました。しかし、2022年になってから、目に見える形で円安が進行しました。残念ながら、主要通貨の中で日本円よりも弱い通貨は存在しません。日本円の実力を示す実質実効為替レートは、50年前の1970年代前半レベルにまで落ち込んでいます。ようやく新型コロナウイルス感染症の制限がなくなったと思ったら、海外旅行が辛くなるほど日本円の購買力が落ちていた…。笑えない状況ですが、やはり海外旅行に出かけて新しい体験をしたいですね。円安に負けず海外に行く方法を考えてみましょう。3年ぶりの海外は驚きの連続だった!今年のゴールデンウイークに、私は2週間ほど東ヨーロッパに旅行しました。コロナ禍が始まった2020年3月のタイ旅行以来、初めての海外旅行だったのでとても新鮮でした。そして3年振りの海外は、日本国内とまったく異なる風景で驚きの連続でした。まず、マスクをしている人が皆無です。コロナ禍の痕跡は「keep distance」という張り紙をところどころで見かける程度。コロナ? 何それ? といった感覚で、日本とのギャップに驚きました。唯一マスクをしていたのは、航空会社の客室乗務員だけでした。マスク姿を見かけないだけではありません。航空機の搭乗券がほぼなくなっていることにも驚きました。スマホのQRコードをかざすだけで搭乗です。入出国審査も自動化ゲートがメジャーでした。現地通貨も使用機会がありません。クレジットカードのみでほぼOK。いまだにクレジットカードお断りの店が少なくない日本との格差に、ただただ驚くばかりでした。そして非接触型(コンタクトレス)決済ではないクレジットカードは使い物にならず、骨董品扱いでした。最大の衝撃は、アジア系のほとんどの人たちは、韓国もしくは中華系だったことです。ポーランド、チェコ、ハンガリーで2週間の間に会った日本人は皆無でした。私たちにとって、海外旅行はかなりハードルが上がってしまったのかもしれません。格安に海外旅行をする方法私たち日本人にとって、今の円安状況が海外旅行のハードルを上げていることは事実でしょう。しかし、海外旅行は高いからといって、ただただ指をくわえているのは避けたいところです。お得に海外旅行に行く方法を考えてみましょう。旅行の時期を考える航空機のチケットや宿泊施設の価格は、時期や曜日によって大きく異なります。最も旅行費用を抑えることができるのは、日本発着の時期を閑散期にすることでしょう。しかし、医師は時間的融通の利きにくい職種。長期休暇を取得できる時期は限られています。次善の策として、日本を発着する曜日を数日ずらして混雑しない平日を検討しましょう。私はゴールデンウイーク期間中に海外旅行をしましたが、2日ほど日本発着をずらしただけで、大幅に航空機費用を削減できました。少しマイナーな目的地を選ぶ人気のある観光地や都市は高価になる傾向にあります。一方、あまり知られていない観光地を選ぶと、旅行費用を節約できます。東ヨーロッパのプラハやブダペストは、パリやロンドンほど人気の観光地ではないので、リーズナブルな価格で旅行できました。フライトの価格を比較するスカイスキャナーやGoogle flightなどの価格比較サイトやアプリを利用すると、複数の航空会社のフライト価格を一括して比較できます。最安値のフライトを簡単に見つけることができるのでお勧めの方法です。できるだけ早い時期に予約する航空業界やホテル業界では、レベニューマネジメントという手法でフライト価格や宿泊価格を決めています。端的に言うと、顧客の需要に応じて商品やサービスの料金を変動させる価格決定手法です。一般的には、早い時期に予約すればするほど、フライト価格や宿泊価格は安価です。半年前から予約可能なケースが多いので、この時期に予約すると安価で済むケースが多いです。ちなみに、今年のゴールデンウイーク旅行は、2022年12月に予約しました。地元レストランはGoogle mapを利用しよう!海外旅行では、地元レストランの食事も楽しみの1つです。しかし、日本語メニューは期待できません。しかし、英語メニューで十分かというと、そういうわけでもありません。英訳の精度が低いため、予想外の食事が出てくるケースが多いのです。そのような時に役立つのがGoogle mapです。Google mapの店舗紹介では、大量の食事の画像がアップされています。たくさんオーダーされているメニューほどたくさんの画像がアップされているので、人気メニューも一目瞭然です。オーダーするときには、Google mapの画像を店員に指し示すだけでOK。面倒なメニュー解読も必要ありません。もちろんGoogle mapでお店にも間違いなくたどり着けます。海外旅行ではGoogle mapは必需品といえるでしょう。ここまで述べてきたように、海外旅行も日々進化しています。ちょっとした工夫と便利なアプリ利用を組み合わせることで、お得な海外旅行が可能です。チャンスがあれば、夏休みは海外に行きたいものですね!

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第53回 マイナ保険証に「潰される」クリニック

マイナンバーカードとヒューマンエラーillust ACより使用マイナ保険証が他人と紐付けされてしまい、「個人情報漏洩が怖い」ということで、現在マイナンバーカードやマイナ保険証事業がうまく進まない雰囲気になっています。マイナンバーの問題が岸田政権に与える影響はかなり大きいと思います。ところで、あまり声を大きくすると怒られますが、個人的には「そんなに心配しなくても…」と思っています。現在問題になっているのは、マイナンバーカードが本人以外の保険資格とコネクトしていることでしょう。マイナンバーカード黎明期の紐付け作業は、スマホを使ってマイナポータル上で行うか、あるいは市役所の窓口で行ったと思います。市役所の窓口で行われた作業は人が手動で行っていますが、この中にはヒューマンエラーで紐付けが失敗された事例があるということです。これはマイナ保険証を使おうと使わまいと起こったことです。マイナンバーカードの申請数は8,000万枚で、そのうち数千件のエラーなので、このあたりは「そんなもんかなあ」と思う部分もあります。リアルの保険証の世界でもこういう事例はあったと思いますが、ただ表面化していなかっただけでしょう。マイナンバーの用途は、税金、社会保障、災害対策といった特定の場面に限定されています。よく、メルカリやPayPayでマイナンバーカードをかざしている、あれは何だと聞かれますが、あれは公的個人認証サービスを利用しており、実は12桁のマイナンバーはまったく使っていません。いずれにしても、マイナンバーカードというのは、悪用できる類のものではなく、「オンラインで本人確認が可能なICチップが入ったただの顔写真付き身分証明書」に過ぎないという点は理解しておきたいところです。マイナ保険証はマイナンバーを使っていないまた、マイナ保険証ではマイナンバーと紐付けされているとよく誤解されています。実は、マイナ保険証ではマイナンバーを使っていません。病院でマイナ保険証を使う場合も、そもそも患者のマイナンバーを使うことがない仕組みで運用されています。じゃあなぜマイナという名前が付いているかというと、そもそも2023年4月から病院で「オンライン資格確認」の導入が原則義務化されたためです。もちろん紙やカードベースの健康保険証も現在は使えますが、医療機関のスタッフは番号や記号を手打ちで入力しています。マイナンバーカードがあると、ICチップ内の電子証明書と、パスワード(あるいは顔認証)を使って、オンラインの情報にアクセスできるという仕組みです。マイナ保険証の手続きをしたときにマイナンバーと保険証が初めて紐付けされたわけではなくて、すでに全員この紐付けは終わっていて(上述したようにまれにヒューマンエラーあり)、マイナンバーカードをマイナ保険証として使用するかどうか選択できる、というのが現在の位置付けです。とはいえ、現行の健康保険証は2024年秋に廃止され、マイナ保険証一本化の予定です。「怖いから、とりあえずマイナンバーカードを返納しよう」という動きもありますが、これはまったく無意味です。マイナンバー自体はなくなりませんので、自分でさまざまなサービスにアクセスできるカードを放棄しているに過ぎません。マイナ保険証に潰されるクリニック懸念されるのが「マイナ保険証閉院」です。上述したように、「オンライン資格確認」が原則義務化された流れを受け、もう継続は無理だと悟った医療機関がすでに閉院を始めています。現在の保険証がなくなると、マイナ保険証を読み取ることができないので、機器を導入しなければ自動的にそのクリニックでは診療ができなくなります。紙レセプトで請求していた医療機関などは、自動的に閉院することになります。マイナ保険証やマイナンバーカードに対する批判はよくわかるのですが、DX化に順応しなければ生きていけない時代になってきたので、「政府の陰謀だ!」と腹を立てずに、そこは感情を排して淡々と対応するほうがスマートなのでしょうね。

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COVID-19罹患前の睡眠状態が長期的な罹患後症状に影響

 多くのCOVID-19生存者が長期にわたる罹患後症状を経験しており、公衆衛生上の深刻な問題となっている。これまでのところ、COVID-19罹患後症状の状態に影響を及ぼすリスク因子の特定はあまり進んでいない。イタリア・ラクイラ大学のFederico Salfi氏らは、COVID-19の長期的な罹患後症状の発生に対する感染前の睡眠の質や時間、不眠症の重症度の影響について評価を行った。その結果、感染前の睡眠の質/量および不眠症重症度には、罹患後症状の発生数と用量依存的な関連性があることが示唆された。著者らは、「睡眠の健康状態の予防的な改善がCOVID-19の罹患後症状を軽減できるかを判断するためには、さらなる研究が必要である」としている。Brain, Behavior, and Immunity誌8月号の報告。  本研究は、2020年4月と2022年4月の2つの評価を含めたプロスペクティブ研究である。ベースライン時(2020年4月)に、SARS-CoV-2感染が現在または過去にない参加者において、睡眠の質/時間、不眠症状を評価した。睡眠状態の評価には、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、不眠症重症度質問票(ISI)を用いた。フォローアップ時(2022年4月)には、COVID-19生存者に対し、罹患後1ヵ月(713例、2020年4月~2022年2月に感染)および3ヵ月(333例、2020年4月~2021年12月に感染)の21症状の有無をレトロスペクティブに調査した。また、COVID-19から完全に回復するまでの期間も調査した。長期的な罹患後症状の数に対する感染前の睡眠状態の影響を推定するため、zero-inflated負の二項回帰モデルを用いた。睡眠変数、罹患後症状それぞれの発生率と、感染4週後/12週後の回復割合との関連性の評価には、二項ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・感染前の睡眠状態が、COVID-19後1ヵ月/3ヵ月の罹患後症状の数に大きく影響していることが明らかとなった。・過去にPSQIスコア、ISIスコアが高く、睡眠時間が短い人では、COVID-19後1ヵ月/3ヵ月の時点におけるほぼすべての長期的な罹患後症状のリスクが有意に高かった。・ベースライン時の睡眠障害は、COVID-19後、感染前の日常的な機能レベルに戻るまでの期間が長期化することとも関連していた。

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HER2低発現乳がんの予後をHER2ゼロと比較~42研究のメタ解析/ESMO Open

 HER2低発現が乳がん患者の予後に影響を及ぼすかどうか、ベルギー・Institut Jules BordetのChiara Molinelli氏らがメタ解析で検討したところ、ホルモン受容体の発現にかかわらず、転移乳がんおよび早期乳がんのいずれにおいても、HER2低発現はHER2ゼロと比較して若干の全生存期間(OS)改善との関連がみられた。早期乳がんでは、とくにホルモン受容体陽性で、HER2低発現が低いpCR率と関連していた。ESMO Open誌2023年7月4日号に掲載。 本メタ解析では、HER2低発現乳がんとHER2ゼロ乳がんの生存アウトカムを比較した研究を系統的レビューにより同定し、転移乳がんにおける無増悪生存期間(PFS)・OS、早期乳がんにおける無病生存期間(DFS)・OS・病理学的完全奏効(pCR)について、統合ハザード比(HR)およびオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)をランダム効果モデルで算出した。 主な結果は以下のとおり。・同定された1,916研究中、179万7,175例を含む42研究が適格であった。・早期乳がんでは、HER2低発現はHER2ゼロと比較して、DFS(HR:0.86、95%CI:0.79~0.92、p<0.001)、OS(HR:0.90、95%CI:0.85~0.95、p<0.001)の改善と有意に関連していた。・OSの改善はHER2低発現患者におけるホルモン受容体陽性と陰性の両集団で観察されたが、DFSの改善はホルモン受容体陽性でのみ観察された。・HER2低発現は、HER2ゼロと比較して、全集団(OR:0.74、95%CI:0.62~0.88、p=0.001)およびホルモン受容体陽性集団(OR:0.77、95%CI:0.65~0.90、p=0.001)のいずれにおいても、pCR率の低下と有意に関連していた。・転移乳がんでは、ホルモン受容体の有無にかかわらず、HER2低発現乳がんはHER2ゼロ乳がんと比較してOSが良好であった(HR:0.94、95%CI:0.89~0.98、p=0.008)。・PFSに有意差は認められなかった。

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