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カボザンチニブ+アテゾリズマブ、去勢抵抗性前立腺がんのPFSを有意に改善/武田

 武田薬品工業は、既治療の転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対し、カボザンチニブ(商品名:カボメティクス)とアテゾリズマブ(商品名:テセントリク)の併用療法を評価する第III相CONTACT-02試験において、同併用療法が主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示したと発表した。 CONTACT-02試験は、1種類の新規ホルモン療法による1回の前治療歴があるmCRPCを対象に、カボザンチニブとアテゾリズマブの併用投与を、2剤目の新規ホルモン療法(アビラテロン+プレドニゾンまたはエンザルタミド)と比較検討する国際共同臨床第III相ランダム化非盲検比較対照試験。主要評価項目はPFSおよびOSである。同試験の併用レジメンによる新たな安全性への懸念は特定されていない。

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緊急避妊薬レボノルゲストレル、ピロキシカム併用が有効/Lancet

 経口緊急避妊薬レボノルゲストレルはピロキシカムとの併用により妊娠阻止率が高まることが、中国・香港大学のRaymond Hang Wun Li氏らが実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果、明らかとなった。緊急避妊の標準薬であるレボノルゲストレルは排卵後に服用しても効果がない。シクロオキシナーゼ(COX)阻害薬は、排卵、受精、卵管機能、胚着床などの生殖過程を促進するプロスタグランジンの産生に関与する主要な酵素であるCOXを阻害することから、経口緊急避妊薬との併用により相乗的に作用し、排卵および排卵後の過程の両方を調節する効果を向上させる可能性が示唆されていた。著者は、「レボノルゲストレルによる緊急避妊が選択される場合には、ピロキシカムの併用を臨床的に考慮してもよいだろう」とまとめている。Lancet誌2023年9月9日号掲載の報告。レボノルゲストレル+ピロキシカムまたはプラセボ併用を比較 研究グループは香港家族計画協会を訪れ、無防備な性交の72時間以内に緊急避妊を要した18歳以上の健康な女性を、レボノルゲストレル1.5mg+ピロキシカム40mg群(ピロキシカム併用群)またはレボノルゲストレル1.5mg+プラセボ群(プラセボ群)のいずれかに1対1の割合で無作為に割り付けた。割り付けは10人単位のブロックランダム化法で行われ、すべての試験薬は不透明な封筒に入れ封をされており、参加した女性や医師などは全員盲検化された。 参加者には試験薬を試験担当看護師の目の前で1回服用してもらい、次の月経予定日の1~2週後に追跡調査を行った。それまでに正常な月経がなかった場合は、妊娠検査が行われた。 有効性の主要アウトカムは妊娠阻止率で、確立されたモデルに基づく推定予測妊娠数から観察された妊娠数を引いたものを推定予測妊娠数で除して算出した。ピロキシカム併用で妊娠阻止率が約1.5倍に 2018年8月20日~2020年8月30日に、860例(各群430例)が登録され、このうち試験薬が投与され追跡調査を完遂した836例(各群418例)が解析対象となった。 ピロキシカム併用群では418例中1例(0.2%)、プラセボ群では418例中7例(1.7%)で妊娠を認めた(オッズ比:0.20、95%信頼区間:0.02~0.91、p=0.036)。推定予測妊娠数はピロキシカム併用群19.0、プラセボ群19.1で、妊娠阻止率はそれぞれ94.7%、63.4%とピロキシカム併用群が有意に高かった(p<0.0001)。 次の月経開始日が予定日の±7日以上であった女性の割合は、ピロキシカム併用群25%、プラセボ群23%で差はなく、有害事象のプロファイルも両群で類似しており、発現率に有意差は認められなかった。

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フルチカゾン、コロナ軽~中等度の症状回復に効果なし/NEJM

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者をフルチカゾンフランカルボン酸エステル吸入薬で14日間治療しても、プラセボと比較して回復までの期間は短縮しないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照プラットフォーム試験「ACTIV-6試験」の結果で示された。米国・ミネソタ大学のDavid R. Boulware氏らが報告した。軽症~中等症のCOVID-19外来患者において、症状消失までの期間短縮あるいは入院または死亡回避への吸入グルココルチコイドの有効性は不明であった。NEJM誌2023年9月21日号掲載の報告。持続的回復までの期間をフルチカゾンフランカルボン酸エステルvs.プラセボで評価 ACTIV(Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines)-6試験は、軽症~中等症のCOVID-19外来患者における既存治療転用を評価するようデザインされた分散型臨床試験で、2021年6月11日に参加者の募集を開始し現在も継続中である。 研究グループは、2021年8月6日~2022年2月9日に米国の91施設において、登録前10日以内に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染が確認され、7日以内にCOVID-19の症状を2つ以上認めた30歳以上の外来患者を登録し、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群(1日1回200μg 14日間吸入)またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、持続的回復までの期間とし、3日連続で症状がない場合の3日目と定義された。副次アウトカムは、28日目までの入院または死亡、28日目までの入院・救急外来(urgent care)受診・救急診療部(emergency department)受診・死亡の複合などであった。持続的回復までの期間に有意差なし 登録患者1,407例がフルチカゾンフランカルボン酸エステル群(715例)とプラセボ群(692例)に無作為化され、それぞれ656例および621例が解析対象集団となった。平均(±SD)年齢は47±12歳、39%が50歳以上で、女性63%、ワクチン2回以上接種65%、症状発現から試験薬投与までの期間の中央値は5日(四分位範囲[IQR]:4~7)であった。 持続的回復までの期間に、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群とプラセボ群の有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.01、95%信用区間[CrI]:0.91~1.12、有効性[HRが>1と定義]の事後確率0.56)。 入院・救急外来受診・救急診療部受診・死亡の複合イベントは、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群で24例(3.7%)、プラセボ群で13例(2.1%)に認められた(HR:1.9、95%CrI:0.8~3.5)。各群で3例入院したが、死亡例はなかった。 有害事象の発現率は、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群2.0%(13/640例)、プラセボ群2.5%(16/605例)であり、両群とも低率であった。

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動かないと認知症になる?―人類史の視点から(解説:岡村毅氏)

 いわゆる「座位行動」の研究である。座位行動とは、座ることに代表されるエネルギー消費量が1.5メッツ以下の行動を指すもので、実際には座っているとは限らない。デスクに座ってコンピュータで作業をする、ソファでだらだらテレビを見る、床に寝転がって本を読む、などはすべて該当する。 厚生労働省によると、健康によいとされる3メッツ以上の中高強度身体活動は、1日の起きている時間のうち、わずか3~8%程度だという。一方で座位行動は起きている時間のうちの6割近くを占めるという(引用)。 これまでも自記式調査票を使った調査で、座位行動と総死亡、肥満、心血管系疾患、認知症、QOLなどとの関連が報告されていた。近年は活動量計が普及し、動かない時間を実際に測定できるようになってきた。本研究はその集大成的なものである。 本論文によると座位行動が多くなると認知症発症リスクが高くなる。ただし後述のように、かなり弱いエビデンスだと個人的には思う。なお、認知症になる前には座位行動が多いはずだという批判に対して、4年間の間隔を置いたランドマーク解析も行っている。また座位行動が多くとも激しい運動をしている人は健康なのではないかという批判に対して、強い運動も投入した多変量解析もしている。 気になるのは座位行動が少ないと、やはり認知症発症が多くなっていることだ。非常に重要な部分だと思うが、これについては特段の言及はされていないのは残念である。 この論文を人類史の立場から見てみよう。ヒトは直立二足歩行したことで進化したといわれている。手が使える、遠くまで見える、移動効率がよい、大きな脳を支えられる、といった明らかなメリットがある。一方で腰痛、難産、誤嚥などは二足歩行のデメリットだ。さらに複雑なことに、難産だからより早産になり、そうなると母子関係が緊密になり、家族や社会といったシステムが出来上がった、などといわれる。 そして科学が発展し、四足歩行→直立二足歩行→座位、となり今に至る、とも考えられる。そうなると座位行動研究は必然ではあるが、座位はダメとかそういった単純なものではない。 私がこれを読んで思ったのは、医者が外来をしている時間はどうなのだろうということだ。私は精神科医なので、精神科の外来を例に話をしよう。 精神科の外来は、あまり動かない。患者さんが変わるたびに体の方向のみが60度ずつ変わり続けるだけで1ミリも動かない医師もいることだろう。 一方で、頭の中はというと、激しく活動をしている。患者さんが入ってきた瞬間に、服装や整容を観察し、歩き方、表情などもチェックする。最初の数秒で診療のモードを決定する。診察に没入しつつ、診察をする自分と診察をされる患者さんを俯瞰する視点も維持する。診断や投薬といった知的作業をしつつ、情動面のケア、たとえば共感もしばしば行う。一方で無防備に共感してはならない場合もある(たとえば境界性パーソナリティー障害の一部など)。わざと興味のない様子で話を聞くことが多いが、ずっとそうだと診察にならないので、適切なタイミングと態度で「興味がないわけではない」というシグナルも発する。日本ではとてもたくさんの患者さんを診ないと赤字になってしまうので、患者さんが延々と話したら診察にならないし、他の患者さんも待たされて怒り出すだろう。なので、短い時間(3分診療)であっても患者さんが「自分の意思で言いたいことを全部話せた」と思えるような診察を、医師の側がうまくプロデュースする必要があり、緩急が重要だ。 治療の失敗は、自殺につながることもあるから、真剣勝負である。他の医師はどうなのか知らないが、精神科の外来はものすごくエネルギーを消費する。私などは、外来中は超覚醒状態である。もちろん外には一切出さず(むしろ能天気な表出を演出する)、終わったらどっと疲れる。しかし、これは上記研究の枠では「座位行動」であろう。 囲碁や将棋をしている時間もおそらく「座位行動」であろう。しかし頭の中は激しく活動していることだろう。 あるいは脳外科の先生がマイクロサージャリーをしている時間も「座位行動」であろう。3時間座っているが、たぶんエネルギーを大量に消費している。脳内の血管の立体構造を考えまくるだろうから、とても脳によさそうである。 というわけで、なかなか面白い論文だが、座位行動自体の内容まで踏み込んでいないことには注意しなければならない。簡易型脳波計などで覚醒状態を共変量に入れることができたら面白そうだがデバイスの開発が大変そうだ。 というわけで座位行動研究は、一見つまらないと思われがちなのだが、人類史の視点から見るととても面白い。そしてまだまだ発展途上である。最後に、もちろん一日中寝転がってポテチを食べながらテレビを見ていたら認知症を含むほとんどの疾患のリスクは上がりそうなので、基本的に座ってばかりだとよくないことは確実だ、と書いておこう。

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ガラの悪い人たち【Dr. 中島の 新・徒然草】(496)

四百九十六の段 ガラの悪い人たちついに秋がやって来ました!秋分の朝、目が覚めて窓の外から入ってきたのは冷たい空気。あれだけ「暑い、暑い」と言っていたのに、むしろ肌寒いくらいです。勉強も仕事も全力で頑張ろうと思う気持ちのいい季節になりましたね。とはいえ、外来では相変わらず患者さんのピント外れの質問に振り回される毎日です。患者「先生、この前、赤切符をもらってしまったんですけど、ホンマに出頭せなアカンのでしょうか?」知りませんよ、そんなこと。それ、脳外科外来で聞くことですか?仕方がないので適当に答えておきます。中島「赤切符というのは犯罪行為ですよ」患者「へっ?」中島「私も赤切符をもらったことがありますけどね」患者「先生もあるんでっか!」ありますよ。夜間に8時間以上の駐車、いわゆる青空駐車で取り締まられてしまいました。中島「大阪だと三国にある検察庁交通分室という所に呼ばれるわけです」ずいぶん昔の話ですが、秋晴れの日に仕事を休んで交通分室とやらに出頭しました。何十人ものガラの悪い人たちが大きな部屋に詰め込まれている様は壮観そのもの。お互いに知り合いなのか、世間話をしている人たちもチラホラ。後で知ったのですが、赤切符というのは酒気帯び運転や無免許運転など、かなり悪質な違反です。交通分室で机を挟んで私に向かい合った担当者は、事実関係の確認の後に「道路は駐車場と違いますよ」と一言だけ。違反者が事実関係を争わない場合、略式起訴だか略式裁判だかで決められた罰金を支払って終わりです。でもね、私はもう懲り懲りだと思いました。というのも、そこに集められていた人たち。この世の悪人を一通り揃えましたという感じでした。「こんな連中と同じ場所に放り込まれたのか、俺は!」と思ったら情けなくて、「もう二度と違反はするまい」と誓ったものです。ちょっとGoogleで調べてみると、いわゆる「クチコミ」のところには星の数の平均が1.5個で酷い書かれようでした。でも、悪人どもにボロクソに言われるということは、むしろ交通分室は頑張っていると考えていいのかもしれません。自分の人生の中で検察庁交通分室に匹敵するほどガラの悪い場所をもう一つ思い出しました。大阪法務局池田出張所です。ここも行ったのは大昔ですが、『ナニワ金融道』の登場人物みたいな人たちが一堂に会してワイワイガヤガヤとやっていました。中には立ったまま札束の受け渡しをしている人たちもいて、「何じゃこりゃ!」と驚いたものです。私のイメージする法務局というのは、市民に法を説く役割を持ったお役所です。でも、そこに来ていたのは「法は守るものではなく、利用するものだ」という考えの人たちのようでした。ちなみに池田出張所のGoogle「クチコミ」では星の数の平均は3.8個で、なぜか高評価です。果たして、この星の数はどう解釈したらいいんですかね。ともあれ、私の知らない世界がまだまだ沢山あるということは間違いないようです。いろいろと驚かされたところで1句秋晴れの 池田で学ぶ 世の広さ

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神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症〔HDLS:hereditary diffuse leukoencephalopathy with spheroid〕

1 疾患概要■ 概念・定義神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS:hereditary diffuse leukoencephalopathy with spheroid)は、大脳白質を病変の主座とする神経変性疾患である。ALSP(adult-onset leukoencephalopathy with spheroid and pigmented glia)やCSF1R関連脳症(CSF1R-related leukoencephalopathy)と呼ばれることもある。本稿では、HDLS/ALSPと表記する。常染色体顕性(優性)遺伝形式をとるが、約半数は家族歴を欠く孤発である。脳生検もしくは剖検による神経病理学的検査により、HDLSは従来診断されていたが、2012年にHDLS/ALSPの原因遺伝子が同定されて以降は、遺伝学的検査により確定診断が可能になっている。■ 疫学HDLS/ALSPは世界各地から報告されているが、日本人を含めたアジア人からの報告が多い。HDLS/ALSPの正確な有病率は不明である。特定疾患受給者証の保持者は、2015年13人、2016年25人、2017年35人、2018年43人、2019年54人、2020年65人と年々増加傾向にある。HDLS/ALSPの有病率が増加している可能性は否定できないが、診断基準の策定など疾患についての認知度が高まり、確定診断に至る症例が増えたことが、患者数増加の要因だと思われる。しかしながら、確定診断にまで至らないHDLS/ALSP患者が依然として少なからず存在すると推察される。■ 病因HDLS/ALSPは colony stimulating factor-1 receptor(CSF1R)の遺伝子変異を原因とする。既報のCSF1R遺伝子変異の多くは、チロシンキナーゼ領域に位置している。ミスセンス変異、スプライスサイト変異、微小欠失、ナンセンス変異、フレームシフト変異、部分欠失など、さまざまなCSF1R遺伝子変異が報告されている。ナンセンス変異、フレームシフト変異例では、片側アレルのCSF1Rが発現しないハプロ不全が病態となる。中枢神経においてCSF1Rはミクログリアに強く発現しており、HDLS/ALSPの病態にミクログリアの機能不全が関与していることが想定されている。そのためHDLS/ALSPは一次性ミクログリア病と呼ばれる。■ 症状発症年齢は平均45歳(18~78歳に分布)であり、40~50歳台の発症が多い。発症前の社会生活は支障がないことが多い。初発症状は認知機能障害が最も多いが、うつ、性格変化や歩行障害、失語と思われる言語障害で発症するなど多彩である(図1)。主症状である認知機能障害は、前頭葉機能を反映した意思発動性の低下、注意障害、無関心、遂行機能障害などの性格変化や行動異常を特徴とする。動作緩慢や姿勢反射障害を主体とするパーキンソン症状、錐体路徴候などの運動徴候も頻度が高い。けいれん発作は約半数の症例で認める。図1 HDLS/ALSPで認められる初発症状画像を拡大する■ 予後進行性の経過をとり、発症後の進行は比較的速い。発症後5年以内に臥床状態となることが多い。発症から死亡までの年数は平均6年(2~29年に分布)、死亡時年齢は平均52 歳(36~84歳に分布)である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)脳MRI検査により大脳白質病変を認めることが、診断の契機となることが多い。頭部MRI所見は、初期には散在性の大脳白質病変を呈することがあるが、病勢の進行に伴い対称性、融合性、びまん性となる。白質病変は前頭葉・頭頂葉優位で、脳室周囲の深部白質に目立つ(図2A、B)。病初期から脳梁の菲薄化と信号異常を認めることが多く、矢状断面・FLAIRの撮像が有用である(図2C)。ただし、脳梁の変化はHDLS/ALSP以外の大脳白質変性症でも認めることがある。内包などの投射線維に信号異常を呈することもある。拡散強調画像で白質病変の一部に、持続する高信号病変を呈する例がある(図2D)。ガドリニウム造影効果は認めない。CT撮像により、側脳室前角近傍や頭頂葉皮質下白質に石灰化病変を認めることがある(図2E)。この所見は“stepping stone appearance”と呼ばれ(図2F)、HDLS/ALSPに特異性が高い。石灰化は微小なものが多いため、1mm厚など薄いスライスCT撮像が推奨される。HDLS/ALSPの診断基準としてKonno基準が国内外で広く用いられている。Konno基準に基づき、厚生労働省「成人発症白質脳症の実際と有効な医療施策に関する研究班」において策定された診断基準が難病情報ホームページに掲載されている(表)。図2 HDLS/ALSPの特徴的な画像所見画像を拡大する両側性の大脳白質病変を認める(A、B:FLAIR画像)。脳梁は菲薄化している(C:FLAIR画像)。拡散強調画像で高信号領域を認める(D)。CTでは微小石灰化を認める(E、F)。表 HDLS/ALSPの診断基準主要項目1.60歳以下の発症(大脳白質病変もしくは2の臨床症状)2.下記のうち2つ以上の臨床症候a.進行性認知機能障害または性格変化・行動異常b.錐体路徴候c.パーキンソン症状d.けいれん発作3.常染色体顕性(優性)遺伝形式4.頭部MRIあるいはCTで以下の所見を認めるa.両側性の大脳白質病変b.脳梁の菲薄化5.血管性認知症、多発性硬化症、白質ジストロフィー(ADL、MNDなど)など他疾患を除外できる支持項目1.臨床徴候やfrontal assessment battery(FAB)検査などで前頭葉機能障害を示唆する所見を認める2.進行が速く、発症後5年以内に臥床状態になることが多い3.頭部CTで大脳白質に点状の石灰化病変を認める除外項目1.10歳未満の発症2.高度な末梢神経障害3.2回以上のstroke-like episode(脳血管障害様エピソード)。ただし、けいれん発作は除く。診断カテゴリーDefinite主要項目2、3、4aを満たし、CSF1R変異またはASLPに特徴的な神経病理学的所見を認めるProbable主要項目5項目をすべてを満たすが、CSF1R変異の検索および神経病理学的検索が行われていないPossible主要項目2a、3および4aを満たすが、CSF1R変異の検索および神経病理学的検索が行われていない鑑別診断としては、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、多発性硬化症、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体顕性(優性)脳動脈症(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarct and leukoencephalopathy:CADASIL)など多彩な疾患が挙げられる。HDLS/ALSPと診断された症例で、病初期に多発性硬化症が疑われ、ステロイド治療を受けた例が複数報告されている。HDLS/ALSPはステロイド治療に効果を示さないため、大脳白質病変と運動症状を呈する若年女性を診察した場合には、HDLS/ALSPを鑑別する必要がある。HDLS/ALSPのための診断フローチャートを図3に示した。臨床的な鑑別診断は必ずしも容易ではなく、遺伝学的検査により確定診断を行う。2022年4月にCSF1R遺伝学的検査が保険収載され、かずさ遺伝子検査室に検査委託が可能である。図3 HDLS/ALSP診断のフローチャート画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)系統的な治療法は確立していない。HDLS/ALSPの経過中に出現する症状に応じた対症療法が行われる。痙性に対しては抗痙縮薬、パーキンソニズムに対して抗パーキンソン薬の使用を考慮する。症候性てんかんには抗てんかん薬を単剤で開始し、発作が抑制されなければ、作用機序が異なる抗てんかん薬を併用する。4 今後の展望HDLS/ALSPに対する造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation:HSCT)が海外で行われている。現在までに15例のHDLS/ALSP患者がHSCTを受けている。HSCTを受けた約4割の症例で臨床的効果を認めている。ドナー由来の細胞がHDLS/ALSP患者脳に到達し、衰弱したミクログリアの機能を補完している可能性が考えられる。ミクログリア機能を回復される治験としてアゴニスト効果を有する抗TREM2抗体薬を用いた治験が海外で行われている。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)かずさ遺伝子検査室(本症の遺伝学的検査を受託している)患者会情報Sister’s Hope Foundation(米国のHDLS/ALSPの患者会の英語ホームページ)(米国の患者とその家族および支援者の会/ホームページは英語)1)Konno T, et al. Neurology. 2018;91:1092-1104. 2)下畑享良 編著. 脳神経内科診断ハンドブック. 中外医学社;2021.3)池内 健ほか. 日本薬理学雑誌. 2021;156:225-229.4)池内 健ほか. 実験医学. 2019;37:118-122.5)池内 健. CLINICAL NEUROSCIENCE. 2017;35:1354-1355.公開履歴初回2023年9月28日

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NHK「やさしい日本語」【英語が話せないのは日本語が難しいから???実は「語学障害」だったの!?(文化結合症候群)】Part 1

今回のキーワードモノリンガル言語能力の予備能生活言語能力(BICS)学習言語能力(CALP)語学障害言語の距離モノリテラルモノカルチュラル言語の淘汰圧NHKワールドジャパンのコンテンツの1つに「やさしい日本語」という日本語の学習のための講座があります。日本語のやりとりの動画から、ひらがな・カタカナ・漢字の表記や例文がわかりやすく書かれています。「やさしい」というタイトルとは裏腹に、日本語自体は世界で最も難しい言語の1つとして、日本語を学ぼうとする外国の人たちを悩ませています。一方で、英語は比較的に簡単な言語です。しかし、日本人で英語を流暢に話せる人は決して多くはありません。日本人は、難しい日本語を話せるわけなので、英語を話すのだって難しくはないはずなのにです。それどころか、実は、世界的にはバイリンガルが多数派で、日本人のように1つの言語しか話さないモノリンガルは少数派なのです1)。なぜ日本人はなかなかバイリンガルになれないのでしょうか? 逆に、どうやってバイリンガルになっているのでしょうか? そもそも歴史上、バイリンガルはいつ生まれたのでしょうか?今回は、進化心理学の視点で、バイリンガルの起源とそのメカニズムに迫ります。そこから、日本語そのものにフォーカスして、実は日本人は難しい日本語を話すからこそ英語を話せなくなっている原因を解き明かします。そして、日本人がもともと外国語の習得に困難がある状態を「語学障害」と名付け、日本人ならではの国民病(文化結合症候群)として捉え直します。そもそもバイリンガルはいつ生まれたの?前回、言葉の学習の敏感期(グラフ1)の観点から、英語教育は中学校からでは遅すぎて、幼児期では早すぎることがわかりました。この詳細については、関連記事1をご覧ください。グラフ1が示すように、言葉の学習の敏感期に外国語を学習すれば、私たちは当たり前のようにバイリンガルになれるとして話を進めてきました。しかし、実は日本人は必ずしもそうではないようです。この訳を探るために、ここからまず、進化心理学の視点で、バイリンガルの起源に迫ってみましょう。人類が言葉を話すようになったのは、ホモ・サピエンス(現生人類)が東アフリカで生まれた約20万年前と考えられています。この詳細については、関連記事2をご覧ください。当時に生まれたホモ・サピエンスが1種類であるのと同じように、最初に発せられた言語も1種類だったでしょう。その後に、彼らはアフリカ内で拡散していき、約7.5万年前にはアフリカを出て、世界中に拡散していきました。そして、その地域や時代によって発音、語彙、文法が徐々に変化していき、人種と同じように、言語もどんどん枝分かれしていきました。このように、言語が多様化したことから、当時の部族社会では、他の部族と交流することは基本的になく、話す言葉はその部族の言葉に限られていたことが推測できます。つまり、そもそも私たちは、1つの言語しか話さないモノリンガルであることがわかります。約1万数千年前に、農耕牧畜による定住革命によって、食料の貯蔵が可能になりました。そして、約1万年前頃には、その富から、さまざまな人たちが交流する文明社会が生まれていきました。すると、必然的に、言語が違う人とも話をする必要に迫られます。これが、バイリンガルを含むマルチリンガルの起源です。約20万年間の言葉の進化の歴史のうち、そのほとんどがモノリンガルであるに対して、バイリンガル(マルチリンガル)が生まれたのはたかだか1万年前です。私たちが当たり前のようにバイリンガルになるためには、進化の歳月があまりにも短すぎます。つまり、私たちの脳は、もともとモノリンガル仕様であることがわかります。これは、前回でも説明した、言葉の学習には許容量があることを説明することができます。次のページへ >>

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NHK「やさしい日本語」【英語が話せないのは日本語が難しいから???実は「語学障害」だったの!?(文化結合症候群)】Part 2

じゃあどうやってバイリンガルになっているの?私たちの脳は、もともとモノリンガル仕様であることがわかりました。それなのに、そもそもどうやってバイリンガルになっているのでしょうか? 実は、ある脳の機能を流用していることが考えられます。ここから、その機能を2つ説明しましょう。(1)言語能力の予備能1つ目は、言語能力の予備能です。予備能とは、とくに臓器における予備の能力を指します。たとえば、肺や腎臓は2つあり、片肺や片腎になっても生きてはいけるようにできています。よって、日常的には50%程度しか使っていないことになります。原始の時代には、猛獣に追いかけられたり獲物を仕留めたりして激しい運動をすることが日常的であったため、もっと使っていたでしょう。そのための予備が現代人にも50%あると言えます。肝臓については、実際には30~40%しか使っていないと言われており、60、70%の予備があることがわかります。おそらく、原始の時代は、当然ながら冷蔵庫はなく、常に食中毒のリスクがあるため、それでも解毒して生存するために肝臓は進化したのでしょう。臓器と同じように、言語能力(脳)もある程度の予備能があることが想定されます。その理由として、音声言語が使われるようになったのは約20万年前で、機能としては新しくて予備能がなさそうですが、サイン言語はチンパンジーも使っており、機能としては実はかなり古いからです。さらに人類は歌によるサイン言語も使っていたことを想定すると、日常的に歌わなくなった私たちはその分の予備能があると考えることができます。なお、歌によるサイン言語の起源の詳細については、関連記事3をご覧ください。この予備能を流用して、外国語の学習を可能にしているのです。ただし、この言語の予備能は、体の臓器ほどはなさそうです。実際に、スペイン語を母語としてスウェーデン語を第2言語とするスウェーデン在住10年以上のバイリンガルの調査1)で、8歳までに学習を開始した24人(性別や学歴などの要因の統制後)について、バイリンガルテスト10項目のうち満点だったのは平均6.3項目でした。単純に考えると、スペイン語の理解度を10(母語なのですべて満点と想定)としてスウェーデン語を6.3とすれば、言語の予備能は6.3÷(10+6.3)=約40%であると推定できます。また、この24人のうち、10項目とも満点という完全なバイリンガルはわずか3人であり、逆に2項目しか満点がとれなかった人が2人いることから、言語の予備能は、臓器と同じようにかなりの個人差があることが推定できます。前回、言語能力を消化酵素にたとえたように、母語だけでなく外国語も含んで2言語、3言語とどんどん消化吸収できる人もいれば、母語でだけお腹いっぱいという人もいるというわけです。(2)学習言語能力2つ目は、学習言語能力(CALP)です。前回にも登場しましたが、これは、読み書きを通した抽象的で応用的な語彙力です。一方、具体的で基礎的な語彙力は生活言語能力(BICS)と呼ばれています。先ほどの予備能においての言語能力は、厳密には、この生活言語能力を指しています。生活言語能力が言葉を丸ごと捉えて感覚的(暗示的)に理解する機能であるのに対して、学習言語能力は、言葉を細かく分けて認知的(明示的)に理解するための機能と言い換えられます。つまり、言語の量と質の違いです。8歳以降に発達していくこの学習言語能力によって、国語の読解力(読字)や作文(書字)、より複雑な計算(算数)が可能になるのです。そして、この学習言語能力は英語の学習にも流用することができます。たとえば、アルファベットの文字を使って視覚的に覚えること、類似性や語源から語彙を類推して増やすこと、基本構文のパターンを覚えることなどです。ただし、この学習言語能力は読み書きとの相性(互換性)は良いですが、聞く話すとの相性は良くないです。たとえば、丸ごと英語を理解するのではなく、日本語にいちいち翻訳して理解しようとするので、会話にはなかなかついていけなくなります。また、この学習言語能力による学習は、生活言語能力と違って忘れやすいです。使い続けないと、使えなくなってしまいます。ちょうど、試験勉強で覚えたことが、日常生活や仕事で使うことがなければ、すっかり忘れてしまうのと同じです。私たち親世代(1990年生まれ以前)のほとんどが中学校(12歳)から英語教育を受け始めました。すでに生活言語能力の敏感期を過ぎているために、仕方なくこの学習言語能力だけを使って何とか英語を学習したわけですが、大人になって使うことがなければ、悲しいことに英語の読み書きさえ、ほとんどできなくなってしまうというわけです。なお、生活言語能力は12歳までに敏感期が終わり、忘れにくいので脆弱性がないのに対して、学習言語能力は8歳以降に敏感期が始まり、忘れやすいので脆弱性があるという違いがあります。この点で、生活言語能力は意味記憶、学習言語能力はエピソード記憶とそれぞれ重なります。生活言語とは、まさに日常生活で生きていくための意味記憶そのものです。一方、学習言語能力は、その意味記憶をもとに、一連のストーリーをつなぎ合わせるエピソード記憶を使って、その経験(学習)からものごとの仕組みやルールをつなぎ合わせて体系化することであると言えます。意味記憶とエピソード記憶の詳細については、関連記事4をご覧ください。ちなみに、生活言語能力は、人類が部族社会をつくり始めた約300万年からサイン言語によって急速に進化し、約20万年前から音声言語によって現在の形になったと考えられます。一方、学習言語能力は人類が貝の首飾りを信頼の証とするようになった約10万年前から、認知能力として発達していったと考えられます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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NHK「やさしい日本語」【英語が話せないのは日本語が難しいから???実は「語学障害」だったの!?(文化結合症候群)】Part 3

なんで日本人はなかなかバイリンガルになれないの?バイリンガルになるためには、言語能力(生活言語能力)の予備能と学習言語能力を流用していることがわかりました。それにしても、なぜ外国の人と比べて、日本人はなかなかバイリンガルになれないのでしょうか? 冒頭では、もともと外国語の習得に困難がある状態を「語学障害」と名付けました。これは、日本の国民病(文化結合症候群)とも言えます。文化結合症候群とは、ある文化と強く結び付いて出てくる精神障害です。たとえば、日本人ならではの「対人恐怖」(社交不安症)が挙げられます。昨今の精神障害は発達障害も含むことから、語学力の発達の困難さとしての「語学障害」は、文化結合症候群に含まれると考えることができます。それでは、ここから、この「語学障害」の原因を主に3つに分けて説明しましょう。(1)モノリンガルにとらわれている前回、生活言語能力の予備能が約40%あることを推定しました。しかし、これは、スペイン語が母語である場合においての話です。スペイン語は、英語と並んで生活言語の語彙が少なく、格変化も少ないなど文法も単純で、比較的に習得が簡単な言語です。一方、日本語は、「私」「おれ」「ぼく」など1人称のバリエーションの数の多さからもわかるように、生活言語の語彙が世界的に見てもずば抜けて多いです。また、他の言語にあまり見られない尊敬語・謙譲語・丁寧語、擬音語・擬態語、助数詞なども含めると、膨大になります。「語学障害」に陥る1つ目の原因は、日本語(母語)に予備能をすでにかなり使ってしまっている、つまりモノリンガル(単一の話し言葉)にとらわれていることです。実際に、生活言語の習得は、世界的にはおおむね8歳ですが、日本語については遅れて10歳までかかると指摘されています。その分、必然的に、英語(第2言語)に使える予備能が減ってしまいます。この状況をたとえるなら、スペイン語は胃にやさしい料理であるのに対して、日本語という料理はかなり癖があり消化酵素を余分に使う(予備能を使う)必要があり、その分、次の英語という料理で消化不良を起こしやすいというわけです。ちなみに、この予備能は、母語と第2言語の組み合わせ(言語の距離)によっても変わってきます。先ほどのスペイン語とスウェーデン語に加えて英語は同じ言語圏(インド・ヨーロッパ語族)として、発音、語彙、文法が似ており、言語の距離が近いです。一方、日本語とこれらの言語は発音、語彙、文法がまったく違い、言語の距離がかなり遠いです。その分、日本人が英語を習得する場合、必然的に予備能をより多く使わざるを得なくなります。逆に、日本語と言語の距離が近い韓国語は、予備能を多く使わなくて済みます。この状況をたとえるなら、スペイン語とスウェーデン語(または英語)、日本語と韓国語は食べ合わせが良く(言語距離が近く)、一緒に消化しやすいのに対して、日本語と英語は食べ合わせが悪く(言語距離が遠く)、やはり一緒では消化不良を起こしやすいというわけです。(2)モノリテラルにもとらわれている英語のアルファベットが26文字であるように、多くの言語で文字の種類は限られています。一方で、漢字はかなりの数がありますが、本家の中国では簡略化された漢字表記が広まっています。韓国では漢字自体をすでに廃止しています。一方、日本語では、ひらがなとカタカナのそれぞれ46文字に加え、常用漢字は約2,000文字で、簡略化はほとんどされていません。さらに、たとえば「生」の漢字の読み方のバリエーションの数の多さからもわかるように、漢字の読み方の違いも含めると、やはり膨大です。「語学障害」に陥る2つ目の原因は、日本語(母語)の書き言葉に学習言語能力をかなり使ってしまっている、つまりモノリテラル(単一の書き言葉)にもとらわれていることです。その分、必然的に英語(第2言語)に使う学習言語能力の時間や労力が減ってしまいます。(3)モノカルチュラルにもとらわれている世界のほとんどの国で、語学を学習する目的は、その言語を使って生活したり仕事をすることです。一方、日本人は英語を学習してもそれを生活や仕事に生かす人は限られています。欧米への憧れはありますが、実際に海外に出ていく人は少なく、異文化に入っていくことに消極的です。また、移民の受け入れは極めて少なく、異文化を受け入れることにもかなり消極的です。基本的に私たちは日本人だけで固まることに居心地の良さを感じています。「語学障害」に陥る3つ目の原因は、日本文化(母国文化)から抜けきれない、つまりモノカルチュラル(単一の文化)にもとらわれていることです。その分、必然的に英語を異文化として理解しようとする気持ちが弱まってしまいます。実際に、私たちは英語を長年勉強していることになっているのですが、その実体は日本文化によって色濃くアレンジされた受験英語です。これは、英文を読んで日本語で書く設問と日本語の文章を読んで英文を書く設問がほとんどです。逆に、英語を聞いて英語で話す、または英文を読んで英文で書く設問がまず見当たりません。点数化して優劣を付けやすいからこのような設問ばかり出題せざるを得なかったという事情もあるでしょうが、これでは英語の全般的な語学力を測っているのではなく、単に翻訳に限定した日本語の能力を測っていることになります。教育論者の中には、日本語の表現力を高めるために、むしろこれが望ましいと主張する人もいます2)。確かに一理あります。しかし、だとしたら最も効率的なのは、英語ではなく国語の勉強に専念することです。つまり、英語によって日本語の能力を高めると主張すること自体、モノカルチュラルにとらわれていることがわかります。この点で、日本の英語教師の多くが英語を流暢に話せないのも納得がいきます。彼らの実体は翻訳の教師であり、英会話の教師ではないのです。この状況は、海外の人からはとても驚かれます。日本語の読み書きはできるけど会話はできない自称「日本語教師」に日本語を教えてもらいたいと外国の人は思わないのは容易に想像できるでしょう。逆に言えば、英語を流暢に話せない英語教師が大多数だからこそ、生徒に英語の全般的な語学力を高めるという教育方針を打ち立てられないとも言えるでしょう。なお、モノカルチュラルにとらわれていることは、異文化による文化の淘汰圧がかからず、外国語による言語の淘汰圧もかかりにくくなります。そのため、結果的には日本語の話し言葉も書き言葉も、よく言えば多様で豊かなまま、悪く言えば中国語や韓国語のように洗練されずに難解なままになってしまっているというわけです。このようにして、モノリンガルやモノリテラルにとらわれるという悪循環が起きているのです。なお、そもそも日本人がモノカルチュラルにとらわれている原因は、不安を感じやすく受け身になりやすいという独特のメンタリティが考えられます。この起源の詳細は、関連記事5でご覧ください。1)英語学習は早いほど良いのかP101、P116:バトラー後藤裕子、岩波新書、20152)その「英語」が子どもをダメにするP69:榎本博明、青春出版社、2017<< 前のページへ■関連記事海外番組「セサミストリート」【子供をバイリンガルにさせようとして落ちる「落とし穴」とは?(言語障害)】Part 1NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 1映画「RRR」【なんで歌やダンスがうまいとモテるの?(ラブソング・ラブダンス仮説)】Part 1映画「スプリット」(続編)【なんで記憶喪失になっても一般常識は忘れないの?なんで多重人格になっても人格が入り交じることはないの?(記憶機能)】Part 1苦情殺到!桃太郎(後編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1

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第64回 これから「糖尿病」をどう表記するのか?

英語病名は定着しにくいジンクスUnsplashより使用もう皆さんご存じの話だと思いますが、「糖尿病」の新しい呼称として「ダイアベティス」が提案されたというニュースが話題です。日本糖尿病協会と日本糖尿病学会で進められてきたプロジェクトで、いくつかヒアリング等を経て呼称としてはこれに着地するということのようです。何人かの医師インフルエンサーから「糖代謝異常症」「高血糖症」のほうがよかったのでは…と声が上がっています。確かに、「ダイアベティス」が定着しやすいかと問われると、難しいかもしれません。痴呆→認知症、精神分裂病→統合失調症のように成功した事例も多いため、漢字混じりの日本語表記のほうが定着しやすいかもしれません。実際、フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームなど、とにかくカタカナの名称啓発は難航しております。とはいえ、メタボリックシンドロームのように成功した事例もあるので、ダイアベティスが馴染む可能性もゼロではありません。スティグマは病名のせい?この名称変更、糖尿病に対する偏見と差別をなくすことが目的なのですが、本当に病名が悪いのでしょうか。この疾患そのものの啓発がうまくいっていないことが背景にあって、決して病名のみが悪いわけではありません。病名を変更することも確かに1つの策ですが、疾患に関する正確な情報を社会に発信する施策のほうが重要なのではないかと考えます。病名に含まれる狭義をできるだけ排して、一般的な病名にすることで、逆に啓発が阻害されるという現象はよくみられます。たとえば、肺気腫というのは、「肺」「気」「腫」という言葉がそれぞれ何となく意味を発していて、身体に害のあるものを吸ってはいけないんだなという啓発がしやすいのですが、「慢性閉塞性肺疾患」だと、ふわっとしすぎて何の病気かわかりません。アンケートについてアンケートで5件法を適用する場合、たとえそれが定量化できない項目であっても、項目間の定量値をできるだけ「等間隔にする」というのが原則だと理解しています。リッカート尺度では、両極に位置する「1点」「5点」の選択肢の間に「2~4点」の選択肢を配置します。このとき、2~4点が極端に5点に偏った選択肢にならないよう注意しなければ、恣意的なアンケートとなってしまいます。今回の「ダイアベティス問題」で使われたアンケートは、以下のようなものです1)。Q1 「糖尿病」という病名をどう思いますか?(1)何とも思わない(2)少し気になる(3)抵抗がある(4)とても抵抗がある(5)不愉快であるたとえばこのアンケート調査のすべてが(1)~(5)に均等に分散した場合、(2)~(5)が「深い・抵抗感がある」と定義された場合、8割の人がこれに該当することになります。中立の立場でアンケート調査を行うなら、(3)に「何とも思わない」を配置したほうがよかったかもしれません。まとめ―――いずれにしても、もし病名が変更になってもしばらくは「ダイアベティス(糖尿病)」のように併記しなければ伝わらないでしょう。TwitterがXに変わって久しいですが、いまだに「X(旧Twitter)」という並列表記が当たり前になっています。コピーライターの糸井 重里氏は「俺はもう、ひとまず決めたね。『旧』とか付けずに『ツイッター』って呼ぶわ。『X』になったのはわかってるけど、『ツイッター』で通じるうちは『ツイッター』でいく」とおっしゃっており、私も共感しました。両者、非常に似ている問題だと思います。参考文献・参考サイト1)日本糖尿病学会・日本糖尿病協会合同 アドボカシー活動:「糖尿病」病名に関するアンケート

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日本人NSCLCのオシメルチニブ早期減量は脳転移の発生/進行リスク

 肺がんは初診時に脳転移が発生していることも多く、非小細胞肺がん(NSCLC)患者のうち20~40%は治療経過中に脳転移が発生するとされている1,2)。NSCLC患者はEGFR変異があると脳転移のリスクが上昇するとされており、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の脳転移制御に対する役割が注目されている。そこで、日本医科大学付属病院の戸塚 猛大氏らの研究グループは、オシメルチニブの早期減量が脳転移に及ぼす影響を検討した。その結果、オシメルチニブの早期減量は脳転移の発生または進行のリスクであり、治療開始前に脳転移がある患者、75歳以下の患者でリスクが高かった。本研究結果は、Cancer Medicine誌オンライン版2023年9月11日号に掲載された。 2018年8月~2021年10月の期間に1次治療としてオシメルチニブを投与されたEGFR変異(ex19del/L858R)を有するNSCLC患者79例を後ろ向きに追跡した。オシメルチニブ早期減量の影響を評価するため、治療開始4ヵ月時点においてオシメルチニブによる治療を継続し、病勢コントロールが達成されている患者62例を解析対象とした。対象患者を治療開始後4ヵ月以内のオシメルチニブ減量の有無によって2群に分類し(通常用量群、減量群)、脳転移の発生または進行までの期間、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者62例中13例が治療開始4ヵ月以内のオシメルチニブ減量を経験した。減量群13例の内訳は、オシメルチニブ40mgを1日1回投与が7例、オシメルチニブ80mgを隔日投与が6例であった。・早期減量の主な理由は、消化器毒性(4例)、皮疹(3例)であった。・脳転移の発生または進行までの期間は、減量群が通常群と比べて短かった(ハザード比[HR]:4.47、95%信頼区間[CI]:1.52~13.11)。・治療開始1年間における脳転移の発生または進行の累積発生率は、減量群23.1%、通常用量群5.0%であった。・治療開始前に脳転移ありのサブグループ(HR:6.23、95%CI:1.12~34.64)、75歳未満のサブグループ(同:4.84、1.40~16.76)において、減量群が通常用量群と比べて脳転移の発生または進行のリスクが高かった・PFS中央値は減量群が22.3ヵ月であったのに対して、通常用量群は24.6ヵ月であり、有意差は認められなかった(HR:1.49、95%CI:0.67~3.32)。・OSについても有意差は認められなかった(HR:1.06、0.22~4.99)。

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新クラスの血友病A治療薬「オルツビーオ」製造販売承認を取得/サノフィ

 サノフィは2023年9月25日付のプレスリリースで、高い血液凝固第VIII因子活性を長く維持するファースト・イン・クラスの高活性維持型血液凝固第VIII因子製剤オルツビーオ(一般名:エフアネソクトコグ アルファ[遺伝子組換え])の製造販売承認を取得したことを発表した。オルツビーオは世界初で唯一の血友病A治療薬 血友病Aは生涯続く希少疾患で、血液凝固因子の欠乏により血液が凝固する機能が損なわれ、関節における過度の出血や自然出血により関節障害や慢性疼痛が現れ、生活の質(QOL)が損なわれる恐れがある。血友病Aの重症度は血液中の凝固因子活性レベルで評価され、出血リスクと血液凝固因子活性レベルは逆相関の関係にある。 オルツビーオの効能・効果は「血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制」であり、本剤は、週1回の投与でその活性を週の大半にわたり正常~ほぼ正常範囲(40%超)に高く維持することができる、世界初で唯一の血友病A治療薬である。12歳以上の重症血友病A患者に対して、従来の血液凝固第VIII因子製剤による定期補充療法と比べ、有意に出血を減少させた。また、成人および小児の血友病Aにおける定期補充療法、出血時補充療法、ならびに周術期管理に使用できる。基本の用量は50IU/kgである(年齢や臨床状態、活動レベルによらず、あらゆる患者に対して適用)。 今回の承認は、NEJM誌に掲載された12歳以上の重症血友病A患者を対象としたピボタル第III相XTEND-1試験(結果)と、12歳未満の小児患者を対象としたXTEND-Kids試験(結果)を含む、重症血友病A患者から得られた良好な試験結果に基づく。 XTEND-1試験において、オルツビーオの週1回投与による定期補充療法は主要評価項目を達成し、重症血友病Aにおいて優れた出血抑制効果を示し、年間出血率(ABR)の平均値は0.71(95%CI:0.52~0.97)、ABRの中央値は0.00(Q1,Q3:0.00,1.04)であった。また、オルツビーオは重要な副次評価項目を達成し、前治療の既存の血液凝固第VIII因子製剤による定期補充療法との患者内比較でABRが77%減と有意な減少を示した(95%CI:58~87、p<0.001)。オルツビーオは血友病患者の生活のイメージを大きく変える新薬 小児を対象としたXTEND-Kids試験の最終結果では、オルツビーオの週1回投与を52週間受けた12歳未満の小児(73例)におけるABRの平均値は0.6(95%CI:0.4~0.9)、ABRの中央値は0(Q1,Q3:0.0,1.0)であった。XTEND-Kids試験の詳細な結果は、7月に開催された国際血栓止血学会(ISTH)年次総会で発表された。試験全体を通してオルツビーオの安全性プロファイルは確立されており、本剤の投与後に血液凝固第VIII因子に対するインヒビターの発現は認められず、発現頻度が10%以上の副作用は頭痛と関節痛であった。 サノフィの代表取締役社長である岩屋 孝彦氏は、「オルツビーオの承認取得は、血友病A患者にとって大きな前進となる。オルツビーオは、週1回の投与で1週間の大半にわたり血液凝固因子の高い活性レベルを維持できる医薬品であり、患者や医師が抱く血友病患者の生活のイメージが大きく変わる。サノフィは、オルツビーオをはじめとする革新的な数々の治療薬をさらに前進させ、世界中の希少血液疾患の患者の治療にパラダイムシフトを起こし、標準治療の変革をもたらせるよう尽力する」としている。 オルツビーオは、米国で2023年2月に承認されており、2017年8月にオーファンドラッグ、2021年2月にファストトラック、2022年5月には血液凝固第VIII因子製剤として初のブレークスルーセラピー(画期的治療薬)に指定されている。欧州では2019年6月にオーファンドラッグに指定され、2023年5月に承認申請している。

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非びらん性胃食道逆流症、食道腺がんのリスク因子ではない/BMJ

 非びらん性胃食道逆流症(NERD)患者の食道腺がん発症率は、一般集団と同程度であることを、スウェーデン・カロリンスカ研究所およびカロリンスカ大学病院のDag Holmberg氏らが地域住民を対象としたコホート研究の結果として報告した。胃食道逆流症(GERD) は食道腺がんの主要リスク因子であるが、NERD、すなわち典型的な症状を有するが上部内視鏡検査は正常の場合、食道腺がんのリスクが高いかどうかは不明であった。著者は、「今回の結果は、内視鏡的に確認されたNERD患者は食道腺がんを発症しにくく、内視鏡検査によるモニタリングは必要ないことを示唆している」とまとめている。BMJ誌2023年9月13日号掲載の報告。北欧3ヵ国のGERD患者約49万人を解析、最長31年間追跡 研究グループは、デンマーク(1995~2019年)、フィンランド(1987~2018年)およびスウェーデン(2006~2019年)において、病院および専門外来を受診しGERDと診断された患者で、少なくとも1回内視鏡検査を受けたすべての成人(18歳以上)48万6,556人について解析した。 GERD症状に基づいてGERDと診断され、初回内視鏡検査で正常所見であった患者をNERDコホート(28万5,811人)、内視鏡検査で食道炎が認められた患者をびらん性GERD検証コホート(20万745人)とした。 主要アウトカムは食道腺がんの罹患率で、最長31年間の追跡で評価した。標準化罹患比およびその95%信頼区間(CI)は、各GERDコホートにおいて観察された食道腺がんの症例数を、デンマーク、フィンランドおよびスウェーデンの対応する年齢、性別および暦年の一般集団から得られた期待数で除することにより算出した。食道腺がんの標準化罹患比は、NERDで1.04、びらん性GERDで2.36 NERDコホートでは、208万1,051人年の追跡期間において、28万5,811人中228人が食道腺がんを発症し、食道腺がんの全罹患率は11.0/10万人年であった。 食道腺がんの標準化罹患比は1.04(95%CI:0.91~1.18)で罹患率は一般集団と同程度であり、最長31年の追跡期間中も増加傾向を示さなかった(追跡期間15~31年における標準化罹患比:1.07[95%CI:0.65~1.65])。 検証のため、びらん性GERDコホートについて解析した結果、175万249人年の追跡期間において、20万745人中542人が食道腺がんを発症し、食道腺がんの全罹患率は31.0/10万人年で、食道腺がんの標準化罹患比は2.36(95%CI:2.17~2.57)と高く、追跡期間が長くなるほど上昇した(追跡期間15~31年における標準化罹患比:2.73[95%CI:2.15~3.42])。

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難治性慢性咳嗽に対するゲーファピキサント、9試験をメタ解析/JAMA

 選択的P2X3受容体拮抗薬ゲーファピキサント45mgの1日2回経口投与は、プラセボと比較し咳嗽頻度、咳嗽重症度および咳嗽特異的QOLを改善するもののその効果は小さい可能性が高く、一方で有害事象、とくに味覚に関連する有害事象のリスクが高いことが、カナダ・マクマスター大学のElena Kum氏らによるシステマティック・レビューおよびメタ解析の結果、明らかとなった。ゲーファピキサントは、難治性または原因不明の慢性咳嗽に対する初の治療薬として開発され、日本およびスイスでは承認されているが、米国、欧州、カナダなどでは規制当局の審査中である。JAMA誌2023年9月11日号掲載の報告。ゲーファピキサントの無作為化比較試験9件をメタ解析 研究グループは、2014年11月~2023年7月のMEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled TrialsおよびWeb of Scienceを検索し、8週間以上持続する難治性または原因不明の慢性咳嗽患者において、ゲーファピキサントとプラセボ、またはゲーファピキサント2用量以上(用量間比較、プラセボありまたはなし)を比較した並行群間またはクロスオーバーの無作為化比較試験(RCT)を対象として解析した。 2人の研究者が独立してデータを抽出し、各結果について頻度論的ランダム効果用量反応メタ解析またはペアワイズメタ解析を行った。GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluation)を用いて、患者が効果を重要と感じるか(臨床的最小重要差[MID]より大きい)または小さいと感じるか(MIDより小さい)のエビデンスの確実性を評価した。 主要アウトカムは、VitaloJAK咳モニターを用いて測定された24時間、覚醒時および睡眠時の咳嗽頻度(MID:-20%)、咳嗽の重症度(視覚的アナログスケール[VAS]、範囲:0~100mm、高値ほど重症、MID:-30mm)、咳嗽特異的QOL(レスター咳質問票[LCQ]、スコア範囲:3~21、スコアが高いほどQOLは良好、MID:+1.3点)、治療関連有害事象、投与中止に至った有害事象、および味覚関連有害事象であった。 9件(合計2,980例)のRCTが主要解析に組み込まれた。プラセボとの比較で咳嗽頻度は17.6%減少、味覚関連有害事象が32%増加 ゲーファピキサント45mgの1日2回投与はプラセボと比較し、覚醒時の咳嗽頻度(17.6%減少、95%信頼区間[CI]:10.6~24.0%減少、エビデンスの確実性:中)、咳嗽の重症度(平均群間差:-6.2mm、95%CI:-4.1~-8.4、エビデンスの確実性:高)、および咳嗽特異的QOL(平均群間差:1.0点、95%CI:0.7~1.4、エビデンスの確実性:中)に対してわずかな効果を示した。 一方、ゲーファピキサント45mgの1日2回投与はプラセボと比較し、治療関連有害事象(32[95%CI:13~64]/100人当たり増加、エビデンスの確実性:中)および味覚関連有害事象(32[95%CI:22~46人]/100人当たり増加、エビデンスの確実性:高)に関して、重大な増加を引き起こすと思われた。 ゲーファピキサント15mgの1日2回投与は、味覚関連有害事象に及ぼす影響が小さいことが示唆された(6[95%CI:5~8人]/100人当たり増加、エビデンスの確実性:高)。

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統合失調症患者における10年間の心血管疾患リスク

 心血管疾患(CVD)は、統合失調症患者の最も頻度の高い死亡原因の1つである。トルコ・Kahta State HospitalのYasar Kapici氏らは、統合失調症患者における10年間のCVDリスクと臨床症状との関連を調査した。その結果、統合失調症患者の罹病期間、BMI、陰性症状の重症度はCVDのリスク因子である可能性が示唆された。Noro Psikiyatri Arsivi誌2023年1月13日号の報告。 対象は、統合失調症と診断された患者208例。統合失調症の症状および重症度の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。10年後のCVDリスクの算出には、QRISK3モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者の10年間のCVDリスクは、7.4%であった。・患者の平均健康心臓年齢(QAGE)は、53.1歳であった。・統合失調症患者の10年間のCVDリスクと正の相関が認められた因子は、罹病期間(r=0.57)、BMI(r=0.37)、陰性症状の重症度(r=0.49)であった。・罹病期間、BMI、陰性症状の重症度は、統合失調症患者の10年間のCVDリスクの予測因子であった。 ●罹病期間:t=4.349、p<0.001 ●BMI:t=2.108、p=0.037 ●陰性症状の重症度:t=2.836、p=0.006

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久しぶりに『貧乏物語』を思い出しました!(解説:後藤信哉氏)

 アスピリンの心血管イベント抑制効果は、ランダム化比較試験、メタ解析により確立している。重篤な出血合併症リスクも定量化されており、心血管病の2次予防におけるアスピリンの有効性、安全性は確立されている。アスピリンの歴史は長い。薬も安価である。米国ではOTC薬として普通に薬局で売っており、最近は高くなったかもしれないが、安い薬局を探せば400錠を10ドルで購入できた記憶がある。日本でも価格によりアスピリンの使用を躊躇した記憶はない。 本論文では、2013年から2020年まで、世界51ヵ国の心血管病の既往がある症例のアスピリン使用率を調査した。論文では心血管病の既往があっても、所得が低い国のアスピリン使用率は低いと報告している。冠動脈疾患を対象とした新薬開発のランダム化比較試験でも、アスピリンは90%以上の症例に使用されている。本論文が示した、心血管病の既往歴のある症例でのアスピリン使用率が全体で40.3%(95%CI:37.6%~43.0%)とは、にわかには信じ難い結果であった。 昭和生まれの筆者が子供のころの日本は貧しかった。しかし、1945年の敗戦と荒廃からはだいぶ回復して高度経済成長期であった。筆者も敗戦後の貧困と荒廃の時期などはわからない。本研究では、低所得国のアスピリン使用率は16.6%(95%CI:12.4%~21.9%)、低中所得国では24.5%(95%CI:20.8%~28.6%)、upper middleとなると51.1%(95%CI:48.2%~54.0%)、高所得国では65.0%(95%CI:59.1%~70.4%)と、安価なアスピリン使用率も各国の国富と相関性があることを示した。 昔、河上 肇の『貧乏物語』を読んだことがある。人類が共通して必要な最小限の衣食住・医療環境をみんなに整えることを第一の目的とすれば、貧しい国でも有効・安全なアスピリンを使用できて、心筋梗塞の再発などを世界で減少させることができるかもしれない。しかし、経済的に余裕があると、生存に必要がなくても格好いい服・車、ほとんどのヒトが現実には使用できない著しく高価な薬などをつい作って売ってしまう。付加価値の高いものを作り出すほうが、資本主義社会では効率的に金持ちになれる。この論文を読んで、久しぶりに『貧乏物語』を思い出した。 科学的視点では、所得の低い国より高い国のほうが単に臨床データが充実していることを本論文は反映しているだけとの可能性があることを指摘しておきたい。 日本の戦後の貧困と混乱の中で、先人が医療の方向をどのように決めたかに興味があれば、武見 太郎の『実録 日本医師会』を読むとよい。社会主義的に規制された医療業界の中で、製薬・医療デバイス産業などが資本主義競争にさらされている現状はこのままでよいのだろうか?

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085)外来のシステムトラブルで【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第85回 外来のシステムトラブルでゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆私の勤務先は、数年前までは紙カルテ記載と電子オーダー(一部は紙運用)というハイブリッド形式でしたが、移行後はすべて電子で行うシステムとなりました。この電子カルテ、とくに使用感に不満はないものの、ちょっとしたことでフリーズしてしまうことが時々あり…。(私の所感では、登録済みの処方セット(通称:マイセット)の画面を開くと、フリーズすることが多いようです)突然、診察中にパソコン画面が動かなくなってしまい、医事課の担当者を呼んだり、パソコンを再起動したりということで、これまでやり過ごしてきました。先日、いつものように外来で、診療を終え、あとは処方箋を発行するだけ、という段階でパソコンの画面が動かなくなってしまいました。「ああ、またいつものフリーズか、再起動かな? 隣のパソコンでも使わせてもらうかな」などと、のんきに考えていると、ブースの奥からスタッフが現れ、どうやら病院全体的な障害であるとの情報が!こんなことは初めて…!!お隣の科も、お向かいの科も診察が止まってしまい、静まり返る外来ブース。システムトラブルとあっては、私たちのほうでできることもなく、完全に手持ち無沙汰な状態に。「いつ復旧するのだろう」という不安はよぎるものの、とくにできることもないので、のんびり待つこと10分ほど? 幸いなことにシステムは復旧し、診察再開となりました。日頃、何の感謝もせず当たり前のように使わせてもらっている電子カルテシステム。「システムのおおもとが止まってしまうと、もはや何もできることがないのだな」と思い知らされた出来事でした。その点、紙カルテは強い…!今となっては戻ることもかないませんが、古き良き時代のことをつい想い返してしまうのでした。それにしても、このときに「外来にカラオケ台でもあれば歌うのに~♪」と言い出したお茶目なナースには笑いました。それでは、また次の連載で。

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髄膜炎菌ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第16回

ワクチンで予防できる疾患髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は、飛沫感染で伝播し、侵襲性感染症として、菌血症、髄膜炎を伴わない敗血症、髄膜炎、髄膜脳炎の4つの病型に分けられる。とくに重篤な侵襲性髄膜炎菌感染症は、髄液または血液などの無菌部位から検出され、2~10日間の潜伏期間の後、突発的に発症する。点状出血が眼球結膜や口腔粘膜、皮膚に認められ、出血斑が体幹や下肢に認められるという重篤な感染症を引き起こす。髄膜炎では、頭痛、発熱、痙攣、意識障害を来す。敗血症では発熱、悪寒、重症化すると汎発性血管内凝固症候群(DIC[ウォーターハウス・フリードリヒセン症候群])に進展することがある。「髄膜炎菌性髄膜炎」は感染症法において5類感染症である。この菌は1887年にWeichselbaumによって、急性髄膜炎を発症した患者の髄液から初めて分離されている。菌は莢膜を有するグラム陰性の双球菌で、ヒト以外からは分離されず、自然界の条件では生存できない。患者のみならず、健常者の鼻咽頭からも分離されている(保菌者)。髄膜炎菌には、13以上の異なる種類(血清群)がある。このうち主にA群、B群、C群、Y群、W-135群の5種類が感染の原因となる。国内の2013年4月〜2017年10月までに届け出があった侵襲性髄膜炎菌感染症の160例の血清群では、Y群が1番多く、次にB群が多かった1)。わが国の侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)の好発年齢は、0~4歳の乳幼児と10代後半の思春期、40~70代前半に多く、男女比はほぼ3:2である。はっきりとした季節性は認めないが、11月~3月の報告数がやや多い。2013年以降の侵襲性髄膜炎菌感染症の致命率は15.0%(24/160)である1)。髄膜炎菌感染症は、人と人が近い距離で、長時間集まる場所で感染が広まりやすい。そのため、学生や職場の寮、クラブ活動での合宿など、狭い空間での共同生活で感染リスクが高まる。国内においては、高校の寮内での集団感染が報告されている。また、髄膜炎菌は、唾液を介して感染するため、食器類の共有、ペットボトルの回し飲み、キスなどで感染するリスクがある。海外では、アフリカ中部の「髄膜炎ベルト」と呼ばれる地域では髄膜炎菌感染症が流行し、米国、オーストラリア、英国、カナダなどの先進国でも散発的に患者が発生している。そのため、同地域へ渡航や留学する際は予防接種を求められることがある。ワクチンの概要髄膜炎菌による感染症は、診断に時間を要したり、急速に進展すると治療が遅れたりする可能性が高いため、ワクチンの接種によってあらかじめ予防しておくことが重要である。国内で承認されているワクチンは、不活化ワクチンである4価髄膜炎菌ワクチンのメンクアッドフィ(商品名)である(図)。髄膜炎菌の血清群A、C、W-135およびYに起因する侵襲性髄膜炎菌感染症を予防に用いる。画像を拡大する日常診療で役立つ接種ポイント髄膜炎菌に感染するリスクは、先述のように学生寮など共同生活を行っている場所や参加者の多い国際的な大会、会議など多くの人が集うイベント、イスラム教の聖地巡礼など、人が集うことである。国内の患者には海外渡航歴がないことも多く、国内でも感染する疾患であるとの認識が必要である。入学、入寮、合宿などの集団生活が始まる前の春休みや夏休みや髄膜炎菌が流行している地域への海外渡航・留学前は、とくに感染のリスクが高くなるため、そのような機会がある人には、疾患の説明とワクチンで予防できることを説明すると良い。●髄膜炎菌ワクチンをお勧めする人2)(1)髄膜炎流行地域へ渡航する人(2)学校の寮などで集団生活を送る人または送る予定の人(3)大勢の人の集まるところに行く予定の人(ユースのキャンプ、コンサート、スポーツ観戦など)(4)HIV、無脾症、補体機能不全などハイリスクな状態の人今後の課題・展望侵襲性髄膜炎菌感染症のアウトブレイクなどにより、米国、カナダ、オーストラリア、英国では、4価髄膜炎菌ワクチンが定期接種として導入されている。今後、人の移動と交流が活発になり、集団での活動が盛んになると、国内での感染者が増加することが予測される。上記の「髄膜炎菌ワクチンをお勧めする人」に当てはまる人は、感染の可能性があるため、ワクチンで予防していただきたい。参考となるサイト(公的助成情報、主要研究グループ、参考となるサイト)1)国立感染症研究所 病原微生物検出情報 月報Vol.39,No.1(No.455)【2018年1月発行】侵襲性髄膜炎菌感染症 2013年4月~2017年10月2)こどもとおとなのワクチンサイト 髄膜炎菌ワクチン3)医薬品インタビューフォーム「メンクアッドフィ筋注」4)「メンクアッドフィ筋注」添付文書講師紹介

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第180回 宮城の病院でレジオネラ症集団感染、病院利用がない地域住民への感染はなぜ起こった?

入院患者、外来患者だけでなく病院利用が全くなかった地域住民にも感染広がるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。日本のプロ野球は、オリックス・バファローズがパ・リーグ三連覇を決めました。阪神、オリックスがこのままの勢いで行けば、今年の日本シリーズは大阪と兵庫の球場だけで行われる関西シリーズになります。関東在住者としては少々寂しいです。一方、米国のMLBでは、藤浪 晋太郎投手が所属するボルチモア・オリオールズと、前田 健太投手が所属するミネソタ・ツインズが、それぞれアメリカン・リーグの東地区、中地区の優勝を決めました。シーズン後半になって持ち直してきた両投手のポストシーズンでの活躍に期待したいと思います。さて、今回は東北の地方都市にある民間病院で起こった、レジオネラ症の集団感染について書きます。7月に発覚したこの事件、その後の調査で、入院や外来など病院を利用した人の感染だけではなく、病院利用がまったくなかった地域住民にも感染が広がっていました。温泉入浴施設での集団感染事例が多いレジオネラ症ですが、どうして病院で起こったのでしょうか。また、どうして病院利用者以外にも広がってしまったのでしょうか…。一般病床80床、透析病床60床を有する地域の急性期病院宮城県は9月11日、県内の病院で、今年6~7月にかけて病院の利用者6人がレジオネラ症に感染し、80代と40代の男女2人が死亡した問題で、病院の利用歴のない近隣住民ら11人も感染していた、と発表しました。県は「病院の集団感染と関連があるとみられる」として、詳しい因果関係を調べているとのことです。宮城県の発表によると、ことの経緯は以下のようなものでした。6月下旬~7 月中旬、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に基づくレジオネラ症患者の届け出があった6人について、届け出を受理した大崎保健所が調査を行いました。その結果、同一医療機関を利用していたことが判明、健康被害拡大防止と重症化防止のため、7月19日に施設名の公表を行いました。集団感染を起こしたのは、宮城県大崎市の医療法人永仁会・永仁会病院です。一般病床80床、透析病床60床を有する地域の急性期病院で、Webサイトによれば、消化器、腎臓、糖尿病、乳腺疾患などを専門としています。その後、同病院の施設調査が行われ、空調設備(空調冷却塔2基の拭取検体)からレジオネラ属菌が検出。1基は安全とされる目安の97万倍、もう1基は68万倍の菌が検出されたとのことです。菌を含んだ水がエアロゾル状となり冷却塔外に舞い散る空調の冷却は冷却塔内のファンを回して行うため、菌を含んだ水がエアロゾル状となって冷却塔外に舞い散り、新型コロナ対策の換気で開放されていた病室の窓などから入り感染につながったとみられています。コロナ予防のための換気対策が逆にレジオネラ症の感染拡大につながったわけです。皮肉なものです。また、遺伝子検査により、6人の患者のうち4人の患者由来菌株と病院の空調冷却塔由来菌株との遺伝子パターンが一致したため、8月4日にはその事実も公表されました。県はこの事実に基づいて、近隣医療機関に対する注意喚起を行い、併せて同病院に対して、厚労省の「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」1)に基づき指導を行いました。半径3km以内に住む住民も感染3回目となる9月11日の宮城県の発表では、さらなる感染拡大が明らかになりました。7月に公表された患者6人に加え、7月下旬にレジオネラ症患者の届け出があった1人についても同病院を利用していたことが判明、遺伝子検査でこの患者由来菌株と病院の空調冷却塔由来菌株の遺伝子パターンの一致が確認されました。ちなみに、計8人の患者の年齢は40〜90代、入院5人、通院3人でした。死亡したのは40代と80代の2人で、残り6人は入院加療により軽快したとのことです。この時の発表では意外な事実も明らかにされました。病院の利用歴がない近隣住民らの感染です。大崎保健所の管内では、同病院を利用していた患者8人とは別に、利用歴がない13人のレジオネラ症患者の届け出が出ていました。これは、大崎管内の例年のレジオネラ症発生状況と比較しても多い数字であったことに加え、13人のうち11人については、自宅や勤務先が同病院に近接(半径3km以内)している事実が判明、うち4人については患者由来菌株と同病院の空調冷却塔由来菌株の遺伝子パターンが一致していました。宮城県は、「当該医療機関の冷却塔が感染源であることは科学的に完全には証明できておりませんが、同種事案の再発防止や県民の健康を守る観点から、県内において冷却塔を有する施設管理者に対し注意喚起を行う」と発表しました。なお、永仁会病院は県の指導の下、7月23日に清掃業者が空調冷却塔2基の清掃と薬品による化学的洗浄を実施、8月以降はこの冷却塔との関連性が疑われるレジオネラ症患者の発生はないとのことです。温泉入浴施設での集団感染が多いレジオネラ症レジオネラ症は感染症法上の4類感染症に分類されており、全数報告対象です。よくニュースになるのは、温泉入浴施設などでの感染です。最近の大きな集団感染事例は、2017年3月に発生した広島県内の温泉入浴施設で起きたもので、入浴客の中から58人の患者が発生し、1人が死亡しています。なお、2002年7月に宮崎県内の温泉入浴施設で起きた集団感染では295人が感染し、7人が死亡しています。厚生労働省のWebサイトによれば、レジオネラ症は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)を代表とするレジオネラ属菌による細菌感染症で、その病型は劇症型の肺炎と、肺炎は起こさない一過性のポンティアック熱があるとのことです。もともと土壌や水環境に普通に存在する菌ですが、エアロゾルを発生させる人工環境(ビル屋上に立つ空調冷却塔、ジャグジー、加湿器等)や循環水を利用した風呂などが菌の増殖を促し、感染機会を増やしているとされています。レジオネラ属菌で汚染されたエアロゾルを吸入すること等で感染し、潜伏期間は2~10日間、ヒトからヒトへ感染することはない、とされています。もっとも、菌に曝露しても誰もが発症するわけではなく、細胞性免疫能の低下した高齢者やがん患者、透析患者などで肺炎を発症しやすいとされています。今回の永仁会病院のケースも、病院屋上の空調冷却塔でレジオネラ属菌が増殖し、それを含んだエアロゾルが拡散、免疫の落ちた患者らが吸引し、感染したと考えられます。同病院は透析病床も多く抱えているので、そのあたりも感染拡大の一因かもしれません。病院の空調設備だけでなく給水設備も汚染源に調べてみると、院内感染によるレジオネラ症は決して珍しいことではなく、世界的にも問題になっているようです。原因は今回問題となった病院の空調設備だけでなく、給水設備も汚染源になり得るようです。たとえば、神奈川県衛生研究所の研究者らが、2015年に神奈川県内の3病院(200床以上)を対象に給水設備(病衣内の蛇口水及びシャワー水と、蛇口及びシャワーヘッドのスワブ)のレジオネラ属菌による汚染を遺伝子の検出と培養により調査した文献によれば、3病院でのレジオネラDNAの検出は水試料では6.7~93.8%、スワブ試料では0~7.1%、培養によるレジオネラ属菌の検出は水試料では26.7〜66.7%、スワブ試料では0~14.3%だったそうです。著者らはこの結果を踏まえ、「医療機関においては高リスクグループに配慮し、感染防止対策と給水設備の管理の徹底が必要である」と結んでいます2)。「藻が生えているのが目視で分かっても放置することがあった」と病院それにしても、病院利用者以外への感染はどう考えたらいいのでしょうか。宮城県はその後、調査結果を公表しておらず想像するしかありませんが、空調冷却塔からレジオネラ属菌で汚染されたエアロゾルが風などに乗って相当広範囲に飛んだのが原因だと考えられます。空調冷却塔は通常、気温が上がり始めた5~9月頃まで使用されます。同病院の場合、冷却塔の洗浄を十分にしないで今シーズンを迎えたのかもしれません。7月20日付の朝日新聞の報道等によれば、病院は「これまで、毎年1回換水し、冷房を使い終わる10月と、使い始める5月ごろに病院職員がデッキブラシなどで清掃していた」と説明し、「今年も5月に清掃した」とのことです。しかし、「冷却塔の動作確認を毎月する際、塔内に藻が生えているのが目視で分かっても放置することがあった」そうです。安全とされる目安の100万倍近い菌が棲み着いたエアロゾルが、風に乗って病院から半径3キロ内に飛び散っていたわけです。まさにモダンホラーです。これでは病院の近くにはおちおち住めませんね。駅弁で大騒動のセレウス菌も過去には医療機関で集団感染先週、青森県の駅弁メーカーの弁当で起きたセレウス菌による食中毒もそうですが、集団感染や院内感染は忘れた頃に突然起きます。医療機関以外での集団感染が一般的な感染症も、時として病院などで起こるので注意が必要です。ちなみに、セレウス菌については、病院のリネン類(外部に洗濯を依頼していた清拭タオルなど)を介した集団感染が時折起きています。大きく報道されたところでは、2006年の自治医科大学附属病院、2013年の国立がん研究センター中央病院の事例が有名です。いずれも死亡例が出ています。病院管理者の皆さん、病院が思わぬ菌の感染源とならないためにも、MRSA対策だけでなく、レジオネラ属菌やセレウス菌にも気を付けて下さい。参考1)レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針/厚労省2)大屋日登美ほか.医療機関の給水設備におけるレジオネラ属菌の汚染実態.感染症誌.2018;92:678~685.

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