サイト内検索|page:374

検索結果 合計:35155件 表示位置:7461 - 7480

7461.

統合失調症患者の認知機能を含む症状に対するメトホルミンの影響~メタ解析

 統合失調症または統合失調感情障害患者の抗精神病薬誘発性メタボリックシンドローム(MetS)のマネジメントに対し、メトホルミンは優れた有効性を示す薬剤である。メトホルミンによる抗うつ効果や認知機能改善への影響も検討されているものの、これらの情報はシステマティックに評価されていなかった。イタリア・ミラノ大学のVera Battini氏らは、抗精神病薬治療中の統合失調症患者における認知機能およびその他の症状に対するメトホルミンの影響を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、統合失調症の認知機能やその他の症状に対し、メトホルミンのある程度の効果が確認された。メトホルミンの潜在的な薬理学的効果を明らかにするためには、適切な尺度を用いた長期にわたる研究が必要であるとしている。Frontiers in Psychiatry誌2023年7月12日号の報告。 2022年2月までに公表された、統合失調症および統合失調感情障害と診断された後、体重増加の治療のために抗精神病薬の追加療法としてメトホルミン治療を実施した患者を対象に、精神症状および認知機能の変化を評価したランダム化比較試験(RCT)をPubMed、ClinicalTrials.gov、Embase、PsycINFO、WHO ICTRPのデータベースより検索した。 主な結果は以下のとおり。・該当したRCT19件のうち、適格基準を満たした12件をメタ解析に含めた。・安定期統合失調症患者において、24週間のメトホルミン治療により、良好な傾向が認められた(標準化平均差:-0.40[95%信頼区間[CI]:-0.82~0.01]、オッズ比:0.5[-2.4~3.4])。・統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)および陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)による評価は、研究間の不均一性が低く、より良い影響が確認された。・1つの研究では、プラセボにおいてBACSの言語記憶サブドメインの好ましい変化が報告されていた(平均差:-16.3[95%CI:-23.65~8.42])。・最も報告された副作用は、胃腸障害、口腔乾燥症、錐体外路症状であった。・精神医学的有害事象、とくに統合失調症の再発に起因する症状も報告されていた。

7462.

高齢がん患者、米国における診療の工夫

 マサチューセッツ総合病院緩和老年医療科の樋口 雅也氏がナビゲーターとなり、医師、薬剤師、看護師などさまざまな職種と意見交換をしながら臨床に直結する高齢者診療の知識を学べる「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」。がんと老年医学をテーマにした回では、ゲストとしてダートマス大学腫瘍内科の白井 敬祐氏が参加し、米国における高齢者のがん診療の実際について紹介した。高齢のがん患者とのコミュニケーションにおける工夫は?白井氏:免疫療法などの進化によって、以前であれば予後が厳しかったがん種や進行がんでも、治療効果が見込めるケースが増えてきました。しかし、臨床試験の結果と目の前の患者さんにその薬が効くのかはまったく別問題。患者さんの期待値が上がっていることもあり、そのあたりの説明やコミュニケーションには気を遣っています。とくに高齢の患者さんには、5年生存率の平均値や中央値といった数字をそのまま伝えるだけでなく、自分が診療しているほかの患者さんの例を出して説明するなど、治療やその後の生活を具体的にイメージしやすいように工夫しています。実際の診療で気を付けていることは?白井氏:米国では「Shared Decision Making(SDM)」という考え方が浸透しており、医師は数多くの患者を診てきた専門家として情報提供やアドバイスをしつつ、患者や家族と一緒に意思決定することを目指しています。使う言葉も「Up to you.(あなたが決めてください)」ではなく「Up to us.(一緒に決めましょう)」といった、共同意思決定を促すものを意識して選ぶようにしています。 もう1つの工夫は、「がん以外の生活に目を向ける質問」を挟むことです。外来でフォローしている患者さんに対して「痛みや吐き気はどうですか?」といった診療に必要な質問のほかに、「前回の診察から、何か良いことはありましたか?」といったポジティブな気持ちになる質問をすることで、前向きに治療に臨めるような雰囲気づくりを心掛けています。がんになっても、できるだけ希望に沿った生活を続けられるよう、サポートすることが重要だと考えています。印象に残っている患者さんや事例は?白井氏:91歳でStageIVの肺がん患者の診療に4年近く当たっているのですが、彼は日本人の私に興味を持ってくれ、メジャーリーグの大谷選手が一面に載った新聞を持ってくるなど、診察のたびにいろいろな方法や話題でコミュニケーションをとってくれます。この方から「病気ではなく、その人個人への興味を持つ」ことの大切さを学びました。ほかにも患者さんから教わることは多いです。“Death ends life, but never ends relationship.”(死によって人生が終わっても、関係性はなくならない)という言葉が好きで、毎日それを実感しながら、診療に当たっています。 8月に配信された対談の後編では、米国のがん診療における多職種連携の実際、日本でも使えるチーム医療のコツを紹介している。■詳細は以下の番組(有料・申し込み要)CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン(シーズン2)

7463.

セファゾリンやダビガトラン、重大な副作用追加などで添付文書改訂/厚労省

 厚生労働省は8月29日、セファゾリンやダビガトランなど6つの医薬品の添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。セファゾリンでアレルギー反応に伴う急性冠症候群 セファゾリンNa水和物(商品名:セファメジンα筋注用0.25g ほか)とセファゾリンNa(同:セファゾリンNa点滴静注用1gバッグ「オーツカ」 ほか)において、アレルギー反応に伴う急性冠症候群の国内症例(7例[死亡0例])を評価した結果、本剤とアレルギー反応に伴う急性冠症候群との因果関係の否定できない国内症例が集積したことから、副作用の項に『重大な副作用』を新設した。ダビガトランの食道潰瘍や食道炎の発症、『重要な基本的注意』へ 非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制に使用されるダビガトラン(同:プラザキサ)において、重度(CTCAE v5.0でGrade3以上)の食道潰瘍および食道炎の国内症例を評価した結果、現在、『適用上の注意』の項に記載されている「速やかに胃に到達させるため、十分量(コップ1杯程度)の水とともに服用する」旨を、『重要な基本的注意』の項に記載することが適切と判断された。〇食道潰瘍 17例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例14例であるが、14例中1例は禁忌に該当する症例)【死亡0例】〇食道炎 32例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例11例であるが、11例中1例は禁忌に該当する症例)【死亡0例】リバスチグミン、ペフィシチニブ、フィナステリドの添付文書も改訂 そのほか、リバスチグミン(同:イクセロンパッチ ほか)では「QT延長」が、ペフィシチニブ(同:スマイラフ)では「静脈血栓塞栓症」が重大な副作用に追加され、フィナステリド(同:プロペシア ほか)では慎重投与の項に「うつ病、うつ状態又はその既往歴、自殺念慮又は自殺企図の既往歴を有する患者」が追加された。

7464.

divarasib、既治療のKRAS G12C変異固形がんに有望/NEJM

 KRAS G12C変異陽性固形がんに対し、divarasibの単剤療法は持続的な臨床効果をもたらし、有害事象はほとんどがGrade2以下であった。カナダ・トロント大学のAdrian Sacher氏らが、12ヵ国35施設で実施された第I相試験「GO42144試験」の結果を報告した。divarasib(GDC-6036)は共有結合型KRAS G12C阻害薬で、in vitroにおいてソトラシブやadagrasibより高い効力と選択性を示すことが報告されていた。NEJM誌2023年8月24日号掲載の報告。非小細胞肺がん、大腸がん、その他の固形がんを対象に単剤療法の第I相試験を実施 研究グループは2020年7月29日〜2022年10月7日に、KRAS G12C変異を有する既治療の局所進行または転移を有する固形がん患者137例(非小細胞肺がん60例、大腸がん55例、その他の固形がん22例)に、divarasib 50~400mgを1日1回経口投与した。まず、50mgと100mgの単回用量漸増コホートに順次登録した後、3+3デザインを用いて200mgと400mgの用量漸増コホートに追加登録し、さらに400mgの用量拡大コホートに登録した。 試験の主要目的は安全性の評価であり、薬物動態、抗腫瘍効果、奏効および耐性のバイオマーカーについても評価した。忍容性は良好、奏効率は非小細胞肺がんで53%、大腸がんで29% 検討したいずれの用量(50mg、100mg、200mg、400mgを1日1回投与)においても、用量制限毒性および治療に関連した死亡は報告されなかった。 治療関連有害事象(TRAE)は127例(93%)に発現し、主な事象は悪心(74%)、下痢(61%)、嘔吐(58%)であった。Grade3のTRAEは15例(11%)に、Grade4は1例(1%)に発現した。TRAEにより19例(14%)で投与量が減量され、4例(3%)が投与を中止した。 抗腫瘍効果は、非小細胞肺がんで奏効率53.4%(95%信頼区間[CI]:39.9~66.7)、無増悪生存期間(PFS)中央値は13.1ヵ月(95%CI:8.8~推定不能)、大腸がん患者でそれぞれ29.1%(95%CI:17.6~42.9)、5.6ヵ月(95%CI:4.1~8.2)であった。その他の固形がん患者においても、奏効が観察された。 血中循環腫瘍DNAの経時的評価において、奏効に関連するKRAS G12C変異アレル頻度の低下が示され、divarasibに対する耐性に関与する可能性のあるゲノム変化が同定された。

7465.

骨盤臓器脱修復術、周術期の膣エストロゲン併用の効果は?/JAMA

 症候性骨盤臓器脱患者において、周術期の腟エストロゲン投与は、自家組織による経腟的修復術後の骨盤臓器脱再発を改善しない。米国・テキサス大学サウスウエスタン医療センターのDavid D. Rahn氏らが、米国の3施設で実施した無作為化優越性臨床試験の結果を報告した。膣尖部/前壁脱の外科的修復では、一般的に子宮摘出後の膣断端固定として自家組織の骨盤靭帯が用いられる。骨盤臓器脱の再発抑制を目的に臨床医は膣エストロゲンを推奨することがあるが、膣エストロゲンが骨盤臓器脱の外科的管理に及ぼす影響は不明であった。JAMA誌2023年8月15日号掲載の報告。膣エストロゲンクリームを術前5週以上、術後12ヵ月投与 研究グループは2016年12月~2020年2月に米国内3つの3次医療施設(テキサス州、アラバマ州、ロードアイランド州)で、症候性膣尖部または膣前壁脱を有し、自家組織を用いる経腟的修復術を希望する48歳以上の閉経後女性206例を登録し、膣エストロゲンクリーム1g(結合型エストロゲン0.625mg/g含有)群(膣エストロゲン群)またはプラセボクリーム群(プラセボ群)に1対1に無作為に割り付けた。手術前に毎晩2週間、その後は週2回、計5週間以上、腟内の塗布が行われた。患者は腟式子宮摘出術後(子宮がある場合)に、膣断端固定術(仙骨子宮靭帯固定術または仙棘靭帯固定術のいずれか)を受け、術後12ヵ月間、週2回の塗布を継続した。 主要アウトカムは、術後12ヵ月以内における修復失敗までの期間。修復失敗は次の3つのアウトカムのうち少なくとも1つによって定義した。(1)前壁または後壁が膣口を超える解剖学的/客観的脱出または膣尖部の膣長3分の1以上の下降、(2)自覚的な膣の膨隆感、(3)再手術。副次アウトカムは、排尿機能および性機能、泌尿生殖器萎縮の症状と兆候、有害事象であった。術後12ヵ月以内の修復失敗率は膣エストロゲン19%、プラセボ9% 206例のうち、199例(平均[標準偏差]年齢65[6.7]歳)が無作為化され(膣エストロゲン群102例、プラセボ群97例)、186例が手術を受けた。 術後12ヵ月時の修復失敗率は、膣エストロゲン群19%(20例)、プラセボ群9%(10例)で(補正後ハザード比[HR]:1.97、95%信頼区間[CI]:0.92〜4.22)、主要アウトカムについて、膣エストロゲン群とプラセボ群で有意差は認められなかった。最も多く認められた修復失敗は、解剖学的/客観的脱出または膣尖部の下降であった。 手術当日における盲検下での外科医による膣組織の評価は、膣エストロゲン群で有意に良好であった。ベースラインで中等度以上の膣萎縮症状を有する患者集団(109例)では、12ヵ月後に膣エストロゲン群で膣萎縮スコアの有意な改善が認められた。

7466.

便通異常症診療ガイドライン2023―慢性下痢症

本邦初の慢性下痢症のガイドライン日本消化管学会編集による『便通異常症診療ガイドライン2023』の「慢性下痢症」編。Mindsの作成マニュアルに準拠し、臨床上の疑問をCQ(clinical question)、BQ(background question)、FRQ(future research question)に分けて解説。冒頭には診断・治療のためのフローチャートを掲載し、下痢症の定義・分類・診断基準から疫学、病態生理、診断検査、内科的治療について、最新知見を盛り込み、日常診療に必携の1冊となっている。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    便通異常症診療ガイドライン2023―慢性下痢症定価3,080円(税込)判型B5判頁数80頁発行2023年7月編集日本消化管学会電子版でご購入の場合はこちら

7467.

4年ぶりの一時帰国、変わるもの、変わらないもの【臨床留学通信 from NY】第51回

第51回:4年ぶりの一時帰国、変わるもの、変わらないもの8月上旬に、日本に一時帰国しました。実に4年ぶり、2019年7月以来です。2020年2~3月から新型コロナが猛威を振るい始め、2022年9月までは日本入国時に陰性証明書も必要であったことから、一時帰国は控えていました。また、帰らなくなるとだんだんと米国に適合し、日本の良さを忘れてきてしまい、帰らなくてもいいかな、と思ってきてしまいます。両親などとはビデオチャットで話しているとはいえ、さすがに4年も帰らないのは、ということもあり、一念発起して家族共々一時帰国しました。昨今の物価上昇と、夏休みの時期というのもあり、直行便で2,000ドル(8月18時点で1ドル145円なので29万円!)とかなり高額です。そこはやむを得ません。帰国時にはビザの更新も原則必要で、円安の影響もあり家族4人で10万円以上かかります。実際に帰ると久々の時差ボケもありますが、とにかく暑かったです。連日35度を超えて干からびそうな日々でした。車の免許も切れてしまったため、更新するまで移動は歩きも多く疲弊してしまいました。コロナの影響のため、期限が切れてしまっていても特別処置で更新程度の手続きで済んだのはよかったです。ほかには暴飲暴食ではありませんが、普段あまり食べられない新鮮な納豆、生卵はもちろん、お寿司、焼肉、うなぎ、日本酒といったものを食べ過ぎてしまいました。日本ではマスクが多いと聞いておりましたが、電車でも予想よりマスクをしている人が少なかった印象で、暑さの影響もあるのでしょうか。滞在は2週間の休暇で子供たちと両親や親戚、祖母、姉家族と過ごしておりましたが、やはり両親や祖母が4年分歳を取ってしまったな、というところは認識せざるを得ませんでした。それでも孫、ひ孫を見せることができたのはよかったと思います。また少ない時間ではありますが、大学や初期研修の同期たちとも久々に会うことができ、そこはやはり変わらないなと思いました。日本の物価の安さも変わらないという印象で(それでも昨年以降は上がっているようですが)、ビッグマックの価格が欧米の6割程度とよく言われるように、欧米諸国からは安くて良いものが手に入る国として見なされてしまっているようです。私としては米国で働き続けるのか、選択肢を迫られた時にいろいろ考えさせられます。といっても、現在ドル建てでお給料をもらっていても余るどころか減る一方なので、足りない分を円から補おうとすると、現状では円安がつらいところです。一般的な臨床研究の留学は2~3年、基礎研究で3~5年でしょうか。渡米して6年目に突入するといろいろ考えることが増えてきます。ColumnCirculation誌の姉妹誌であるCirculation Cardiovasc Imaging 誌(IF 8.5)に、Montefioreの研究チームで投稿した冠動脈石灰化スコアに関する論文が、先日発表されました。私は主に解析を担当し、共同筆頭著者として参加しました。米国では予防循環器学(preventive cardiology)が発達しており、このような冠動脈の石灰化と予後をみるような研究が盛んに行われています。発症してしまったものを治すだけでなく、ならないようにどう予防するかが重要な時代になってきています。私のいる病院はマンハッタン島から北東にあるブロンクスというエリアで、ヒスパニック系や黒人が患者の4分の3を占めており、米国大都市の現状を反映していると思います。Fattouh M, Kuno T, et al. Interplay Between Zero CAC, Quantitative Plaque Analysis, and Adverse Events in a Diverse Patient Cohort. Circ Cardiovasc Imaging. 2023;16:e015236.

7468.

英語プレゼン、数字の基本的な口語表現(6)知って得する豆知識【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第22回

英語プレゼン、数字の基本的な口語表現(6)知って得する豆知識今回は数字の表現において、知っておくと便利な「豆知識」をご紹介します。知っていなくてもコミュニケーションに支障がないものもありますが、覚えておけば、英語レベルを一段上げることができるはずです。画像を拡大する1)要注意発音:13 vs.30音の似ている“thirteen”、“thirty”。区別のためには、発音する際に「強調する位置」がきわめて重要です(13は後半、30は前半を強調します)。この2つの数字、伝達ミスの原因となりやすいことは広く認識されており、米国人同士の会話でも、比較的ゆっくり、明確に強調を置いて話されることが多いです。また、区別をより明確にするため、“thirteen, which is one-three”などのように、“thirteen”、“thirty”に続けて、一桁ずつ数字を読み上げることもよくあります。2)形容詞としての数字の使用:A 30-year-old man, a 30-minute infusion数字は、形容詞の一部として使用する場合は「単数形」です。日本語では基本的に複数形の概念がなく、「30歳の男性」と「その男性は30歳です」では「30歳」の部分には変化がないので、間違いに気付きにくいようです。複数形にしてしまっても多くの場合は文脈から通じますが、ネイティブには明確に違和感を持たれるので、英語の上級者になれば気を付けたい表現です。3)数字の表記:数字記号vs.単語学会上など英語のフォーマルな場では、「1~9(または10)までは単語で記載」し、「それ以上は数字記号で記載」する、という伝統的なルールがあります。たとえば、“There are 5 patients”ではなく、“There are five patients”と記載し、“There are 11 patients”はそのままです。日本でも米国でも、このルールに固執するベテラン医師はいます。しかし、近年ではなるべく数字記号で記載することが推奨されています。たとえば、医学論文執筆のルールブックとされる『AMA(American Medical Association) Manual of Style 11th edition』(2020年)では、以下のように記載されています。ただ実際は、医学雑誌ごとに推奨方法が異なっており、学会発表スライドは論文ほどにはフォーマルではないため、聴衆が読みやすいと思うほうを選択すればよいと思います。『AMA Manual of Style 11th edition』(2020年)より抜粋詳細は原文を参照Because numerals convey quantity more efficiently than spelled-out numbers, they are generally preferable in technical writing.(数字記号は数量をより効率的に伝達できるため、科学的な執筆においては、文字での記載よりも一般的に好ましい)In scientific writing, numerals are used to express numbers in most circumstances (eg, 5 not five).(科学的な執筆では数字を表現する多くの場合で数字記号が使用される[例:Fiveではなく5])Exceptions are the following:(以下を例外とする:)Numbers that begin a sentence, title, subtitle, or heading(文章、タイトルなどの先頭が数字の場合)Accepted usage, such as idiomatic expressions and numbers used as pronouns(一般に許容されている使用方法、たとえば、イディオムとしての数字表現や、代名詞としての使用)Ordinals first through ninth(1から9までの序数)4)慣習的な表現:1,000 vs.K英語のコミュニケーションでは、しばしば“K”という1文字で1,000を意味することがあります(“kilo”に由来)。論文などのフォーマルな場では避けるべきですが、米国のカルテなどでは多用されていますし、英会話でも、“5,000”を「ファイブ ケー」と読み上げる人も多くいるので、これも知っておいたほうがよい表現です。講師紹介

7470.

第176回 虫垂がんを宣告されたある医師の決断(後編) 田舎の親の病医院を継ぎたくない勤務医にも参考になる「中小病院が生き残るための20箇条」

大谷選手右肘靭帯損傷とレカネマブ製造販売承認了承のインパクトこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この1週間はさまざまな分野で大きなニュースが目白押しでした。個人的には、ロサンゼルス・エンジェルスの大谷 翔平選手の右肘靭帯損傷のニュースにがっくりきました。この秋にも、大谷選手の投球を観にアナハイムに行こうと思っていたのですが…。報道では、大谷選手は2度目となる肘の再建手術(トミー・ジョン手術)に踏み切る可能性もあるとのことです。ただ、当の本人は8月25日(現地時間)からのニューヨーク・メッツ戦にDHとして出場し、第1戦、第2戦では打撃も好調でした。今回の故障、本人が一番ショックを受けていると思われますが、さすがというか、なんというか…。まあ、打者として出場できるだけでもラッキーと言えるかもしれません。右投げ左打ちの効用でしょうか。しかし、これでシーズン終了後のFAも混迷の度合いが深まりました。9月に入ってからは、ホームラン王(三冠)争いと、MLBでの大谷争奪戦をウオッチしたいと思います。医療では、8月21日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会第一部会が、エーザイが主導し、米バイオジェン社と共同開発した「レケンビ点滴静注」(一般名:レカネマブ)の製造販売承認を了承したことが最大のニュースと言えるでしょう。近く承認され、薬価も確定し、10月か11月には日本の医療現場で使われるようになる見込みです。レカネマブについては、本連載でも度々書いてきました(「第169回 深刻なドラッグ・ラグ問題が起こるかも?アルツハイマー病治療薬・レカネマブ、米国正式承認のインパクト」参照)ので、今回は詳しくは書きません。ただ、薬事・食品衛生審議会第一部会終了後の記者説明会で、医薬品審査管理課の担当者が「アルツハイマー病に対する『夢の新薬』と思われるかもしれないが、レケンビはあくまで認知機能の悪化を27%遅らせる薬剤であり、アルツハイマー病を完全に治す薬ではない」と何度も強調していたのが印象的でした。8月27日付の日本経済新聞朝刊の科学面に、「アミロイド仮説は勝ったか」という、とてもわかり易い解説記事が掲載されています。この記事では、「米国の神経生物学者であるカール・へラップ氏はアミロイド仮説を批判した近著『アルツハイマー病研究、失敗の構造』の中で、レカネマブの『27%減』について『生物学的にほとんど実質のない差である』と指摘している」と書き、「薬効27%減」について「実際の治療にあたる医師や患者、その家族からすると、どこまで期待に応えるものかどうかは評価が難しい」と冷静に記しています。薬価が決まり、臨床での使用がスタートしてから、いろいろなトラブルが起こりそうな予感がします。中小病院や診療所の経営者だけでなく、親の病医院を継ぐかどうかに悩む若手医師にもさて、前回に引き続き、がん宣告を受けた熊本の病院経営者、東 謙二氏の著書、『続“虎”の病院経営日記 コバンザメ医療経営を超えて』(日経メディカル開発)の内容を紹介します。前回は、東氏ががん宣告後に下した経営者としての決断について書きましたが、今回は本書に掲載されている「中小病院が生き残るための20箇条」について書きます。東氏は2017年に出版された前著『“虎”の病院経営日記 コバンザメ医療経営のススメ』の中で、「中小病院が生き残るための15箇条」をまとめていますが、今年出た新著ではその内容をバージョンアップし、5箇条を新たに追加し、全部で20箇条としています。改めてじっくり読んでみますと、中小病院や診療所の経営者に参考になるだけでなく、病医院の経営者の子供で勤務医を続けている医師が、親の病医院を継ぐかどうかを考える際のヒントにもなりそうです。以下、東氏の了解を得て、20箇条の一部分を抜粋で紹介します。1. 病院の「周り」をよく見る「私が病院を経営する上で心がけていることの一つが、病院の『周り』をよく見るということだ。『周り』とは簡単に言えば、病院の立地や、周辺の医療機関と言い換えてもいいだろう。(中略)。『周り』をよく見るとは、このように、時間をかけて地域の他の医療機関との関係性を構築することでもある。だからこそ新規開業や、新しい診療科の開設など、大事な決断をする場合は他人任せにせずに、まず周辺の医療機関の医師たちと飲んで話し合ってみる。これが肝である」。2. 敵対より連携「東病院に戻ってからは、内視鏡手術を積極的に取り入れることはしなかった。一つの理由は、内視鏡手術は導入する機器がかなり高額だからだ。その上、内視鏡分野の機器は今後もどんどん進歩していく。進歩に合わせてその都度、新しいものに買い替えていたのでは、民間病院では到底ペイしない。(中略)そこで内視鏡手術の適応患者は近くの基幹病院に紹介することにした。(中略)。患者を紹介する縁で、済生会熊本病院や熊本中央病院との病病連携は深まっていった」。3. コバンザメ医療経営のススメ「東病院は、ある時期から基幹病院との患者争奪戦から足を洗い、基幹病院に寄り添う“コバンザメ”経営で、なんとかしのいできた。ただ、コバンザメになることで、基幹病院にもそれなりのメリット(軽症患者受け入れ、在院日数短縮に貢献など)を提供できていると自負している」。4. 中小病院の生きる道「大きな病院は、大きな戦艦と同様、施策の変更の振れ幅が大きい場合、すぐには進路変更できない。これに対し、中小病院は組織が小さい分、幹部職員で意思統一を図りやすく、病院の進路を一気に変えることも可能だ。中小病院経営の面白さはそういった点にもある」。5. 病院経営はいいかげんに「残念ながら医師は“商人”ではない。むしろ商人にはなるべきではない。医師は医師らしく下手な経営をやっていけばいいと思っている。自分の能力の範囲でできることをできるだけすればいい。ただ、守るべきことがある。前にも書いたが『「全ての責任は理事長である自分が持つ』ということである」。6. 2代目は本当にだめか「初代の多くが持ち合わせているパイオニア的な性格は、逆に2代目には向かないと言われる。既に立ち上がった事業を安定的に成長させるには、“進取の気性”が逆に邪魔になることがあるからだ。父親が時間をかけて作った事業の枠組みを、あえてぶち壊そうとしてもがく2代目は少なくないが、そうした人はパイオニア的な性格である場合が多いようだ」。7. ブランドと持分「ブランドは病院経営の観点から見ると、また違った側面が見えてくる。医療法人で言えば、地域医療に貢献し、経営が順調であれば、ブランド力は向上、患者も増えて高収益となる。この高収益が、医療法人にとっては悩みの種になることがある。医療法人は剰余金配当ができないため、高収益であればあるほど純資産価額が多額となるからだ」。8. 同族経営と事業承継について考える「私が考える事業承継を成功させるポイントを整理してみた。1.早期から承継に向けた準備を行う。2.病院事業を継続・発展させるという強い意志のある後継者を選ぶ。3.事業承継が決まったら、その方針を親族や従業員にも周知する。一度決めた方針はよほどのことがない限り変更しない。4.現経営者と後継者との間に信頼関係があること。いったん、継承したら現経営者は経営の一線からは退く覚悟で(返り咲きは紛争の元)」。9. 理事長はつらいよ「組織では、往々にして身内が反旗を翻す。そこで身内には“甘く”するようにしている。『身内には厳しく』というのが常道だが、私は逆を行く。(中略)逆に身内でない人間には『身内』のように接するようにしている」。10. 右腕について「もしも神経質で細かなことが気になる人間だったら、とても2つの職務をこなせないだろう。そしてもう一つの理由は、いい加減な私を支えてくれる(中略)2人の“右腕”のおかげである。診療に関しては副院長にほとんどを任せ、事務・経理に関しては事務局長に全面的に任せている」。11. 医師をどう集める、どう働いてもらう「医師を集めることも大変だが、集めた医師に継続して働いてもらうことの方がずっと難しい。中小病院は、大病院のように医療機器・設備は不十分だし、診療だけに専念できる環境も整っていない。たとえ給与面で厚遇しても、医師の不満は溜まりがちだ」。12. 職員の採用と教育、私の考え方「面接では、その人の人間性や優秀さではなく、適応能力だけを見ることにした。適応能力とは、置かれた環境や状況の変化に、自らの考え方や行動を切り替えて、どれだけ適応することができるかの能力だ。適応能力がある人間は、逆境に強く、様々な変化にも対応できる。言い換えれば柔軟性がある」。13. 医師仲間との付き合い「公的な団体への参加の傍ら、私が院長に就任して3年後の平成18年(2006年)から、熊本の同世代の病院長の集まりを始めた。こんな地方の病院の理事長・院長になると、将来にわたってずっとなんらかの関わりが続くだろうから、若いうちから知り合って、顔をつないでおこうという気軽な気持ちで始めた」。14. 酒の飲み方 医師以外のネットワークの作り方「こうした行きつけの店は、私にとって今では息抜きの場所だ。同時に、病院の評判や大げさに言えば世の中の動き(景気や流行)を知る上でも得難い場所となっている。それを知ることで、病院経営がうまくいくわけでもないが、世の中を知るために、気の置けない医療業界以外の仲間も開業医には必要だと思う今日この頃である」。15. 子どもを医者にするのは是か非か「まずは本人の意志だろう。子どもが医師になりたくない、というならば私は決して勧めない。医師は社会的責任が強い。いやいやながら責任を負わされることほど苦痛なことはない。次に親として医師になることを勧めるならば、その適性を見極めなければならない」。16. 持分放棄の決断の前に「私は父から理事長を受け継いだ時点で出資持分の相続税を支払わなければならなかった。書類上、東謙一から東謙二という漢字に一本加えるだけで数億円の税金を払うことになった。『持分あり』医療法人は理事長が変わるたびに多額の相続税がかかる。この制度があるために医療法人は『3代で潰れる』と言われるのは、あながち嘘ではない」。17. 子どもに病院を継がせるということ「私も親となり子どもも医者となった。そして、子どもに継承してほしいと望んではいる。しかし決めるのは子ども自身であり、強制することではない。そのため、継承したくない場合は他人に譲渡しやすいよう、『持分なし』の医療法人形態に変えた。そして私の代で理事長と院長の役割を明確に区分し、理事長となり病院の経営だけに関わる道と、医療・介護事業の運営に専念できる院長の道も用意。子どもにある程度の選択ができる環境を整えた」。18. 理事長の仕事と院長の仕事「理事長の仕事と院長の仕事を兼任した方がいいか、分担した方がいいのかは、それぞれの病院の事情次第である。ただ、冒頭でも述べたように、病院経営は複雑化しており、経営と診療をどちらも十分にこなすのは難しい時代である。組織が大きければ大きいほど、経営と診療の分離は不可欠だと思う」。19. 公的な役職について「熊本には『肥後の引き倒し』という言葉がある。『出る杭は打たれる』とほぼ同義で、誰かが成功したり頭角を現わしたりするとみんなでその人の足を引っ張るという意味だ。私自身は引き倒されてもいいと思っている。役職というものは地位ではなく使うものだ。その役職を使って何かを完成に導けるならば、その地位なんて必要ない。誰かが私の後を引き継いで、最終的によりいい形になればいい」。20. 医師は世間知らず、開業で騙されないために「例えば開業準備を進める勤務医の場合、働きながら商売相手に負けないほどの診療所経営の知識やノウハウを身に付ける時間はない。そこがプロ集団が付け入る隙となる。だからこそ急いではいけない。少なくとも契約までにはじっくりと時間をかけること。商売相手以外に信用できる相談相手を見つけること。それが重要だ。(中略)。では相談相手として有名銀行の銀行員なら大丈夫か、有名な医療経営コンサルティング会社のコンサルタントなら大丈夫か。バカ言っちゃいけない。そう信じている能天気な医師は開業は諦めた方がいいだろう」。手術から4年、転移や再発もなく元気に病院経営と病院団体の活動を継続中以上、同書から一部分を抜粋してみました。20箇条をじっくり読んでみたい方は、Amazonなどでのご購入をお勧めします。ところで、当の東氏ですが、2019年に回盲部切除術を受けてから丸4年が経ちましたが、現在、転移や再発もなく、元気に病院経営と病院団体の活動を続けているとのことです。コロナ禍もあって、しばらくは“夜の街の活動”も自粛が続いていたようですが、そちらもコロナ禍前の状況に戻りつつあるそうです。今度、機会があれば、手術後に大虎が子虎になったかどうか、確認しに行ってみたいと思います。

7471.

中等症~重症の尋常性乾癬へのリサンキズマブ、5年追跡結果

 中等症~重症の尋常性乾癬患者に対するリサンキズマブ治療の長期安全性と有効性が報告された。最長5年の継続投与の忍容性は良好であり、持続的かつ高い有効性が示された。ベルギー・Alliance Clinical Research and Probity Medical ResearchのKim A. Papp氏らが、進行中の第III相非盲検延長試験「LIMMitless試験」の中間解析の結果をJournal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2023年8月6日号で報告した。乾癬は慢性の炎症性皮膚疾患で、長期にわたる治療が必要になることが多い。リサンキズマブはヒト化抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤で、IL-23のp19サブユニットに結合し、IL-23の作用を中和することで乾癬による皮膚症状や関節炎などを改善する。 LIMMitless試験は、中等症~重症の尋常性乾癬患者を対象に、リサンキズマブ150mg(12週ごとに皮下注射)の長期安全性と有効性を評価する国際共同単群評価試験。日本を含む17の国と地域で、先行する複数の第II/III相試験のいずれかを完了した患者が登録された。今回の中間解析では、304週間にわたる安全性(治療中に発生した有害事象[TEAE])を評価した。有効性は、256週間にわたって評価した。Psoriasis Area and Severity Index(PASI)スコアが90%以上または100%減少(PASI 90/100)、static Physician's Global Assessment(sPGA)スコアで皮膚病変が消失/ほぼ消失(sPGA 0/1)、およびDermatology Life Quality Index(DLQI)で生活への影響なし(DLQI 0/1)を達成した患者の割合を評価した。 主な結果は以下のとおり。・先行研究でリサンキズマブ群に無作為化された897例のうち、データカットオフ時点で治療を継続していたのは706例であった。・TEAE、投与中止に至ったTEAE、とくに注目すべきTEAEの発現率は、いずれも低率であった。・256週時点において、PASI 90、PASI 100達成患者の割合は、それぞれ85.1%、52.3%であり、sPGA 0/1達成患者の割合は85.8%、DLQI 0/1達成患者の割合は76.4%であった。

7472.

日本人成人強迫症患者におけるADHD併発の影響

 これまでの研究において、小児および青年における強迫症と注意欠如多動症(ADHD)との関連が報告されている。しかし、成人における強迫症とADHDとの生涯併発率との関連を調査した研究は、ほとんどなかった。兵庫医科大学の宮内 雅弘氏らは、日本人成人強迫症患者におけるADHDの併発に関連する臨床的および精神病理学的特徴を調査した。Comprehensive Psychiatry誌2023年8月号の報告。強迫症患者93例のADHD生涯併発率は16.1%と推定された 日本人成人強迫症患者93例を対象に、ADHDの生涯併発率を評価した。ADHDの特徴および重症度の評価には、コナーズ成人ADHD 評価スケール(CAARS)日本語版を用いた。ADHDではないがADHD特性レベルが上昇した患者は、調査結果から除外した。ADHDを伴う強迫症患者とADHD特性が認められない強迫症患者における背景プロファイルおよび強迫症状や心理学的検査結果などの臨床的特徴を比較した。さらに、6ヵ月間の治療結果を、両群間でプロスペクティブに比較した。 日本人成人強迫症患者におけるADHD併発に関連する臨床的および精神病理学的特徴を調査した主な結果は以下のとおり。・強迫症患者93例のADHD生涯併発率は、16.1%と推定された。・ADHDを伴う強迫症患者は、ADHD特性が認められない強迫症患者と比較し、以下の特徴が確認された。 ●強迫症の発症年齢が低い ●ためこみ症(hoarding symptom)の頻度が高い ●抑うつ症状や不安症状レベルが高い ●QOL低下 ●衝動性レベルが高い ●物質依存症や行動依存症の割合が高い ●うつ病の割合が高い・ADHDを伴う強迫症患者は、ADHD特性が認められない強迫症患者よりも、強迫症に対する標準的治療6ヵ月後の Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale(Y-BOCS)平均改善率が有意に低かった(16.1% vs. 44.6%)。 著者らはこの結果から、「ADHDの併発は、成人強迫症患者の臨床的特徴や治療アウトカムに重大な影響を及ぼす可能性が示唆された。強迫症患者の全体的な臨床症状の重症化や治療抵抗性を引き起こす因子として、ADHDの根底にある病理学的特徴が関与している可能性があることを考慮することが重要である。このような患者の治療戦略を検討するには、さらなる研究が必要である」と述べている。

7473.

オラパリブ、アビラテロンとの併用で、BRCA変異陽性去勢抵抗性前立腺がんに承認/AZ・MSD

 アストラゼネカとMSDは2023年8月23日、「BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺」の適応症において、オラパリブ(商品名:リムパーザ)とアビラテロンおよびプレドニゾロンとの併用療法が承認されたことを発表した。オラパリブとアビラテロンの併用療法が画像診断による無増悪生存期間延長 この承認は、BRCA遺伝子変異陽性の転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)患者において、オラパリブとアビラテロンの併用療法が、アビラテロン単独療法と比較して、画像診断による無増悪生存期間(ハザード比[HR]:0.23、95%信頼区間[CI]:0.12~0.43)および全生存期間(HR:0.39、95%CI:0.16~0.86)のいずれにおいても臨床的に意義のある延長を示した第III相PROpel試験のサブグループ解析に基づくもの。

7474.

ソリリス、小児の全身型重症筋無力症患者に対する追加承認を取得/アレクシオン

 アレクシオンファーマは、ソリリス点滴静注300mg(一般名:エクリズマブ[遺伝子組換え]、以下「ソリリス」)が日本において、免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)または血液浄化療法(PLEX)による症状の管理が困難な抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性の全身型重症筋無力症(gMG)の小児患者の治療に対する用法および用量の追加承認を、8月23日付で取得したと発表した。ソリリスが小児の難治性gMG患者に臨床的有効性を示した gMGは、筋機能および重度の筋力の低下を特徴とする希少な自己免疫疾患である。gMG患者の80%は抗AChR抗体陽性であり、神経細胞と筋肉の接着部である神経筋接合部(NMJ)のシグナル受容体に特異的に結合する自己抗体(抗AChR抗体)を産生する。この結合は、感染に対する身体の防御に不可欠な補体系を活性化し、免疫システムによるNMJの破壊が引き起こされる。これにより炎症が起こり、脳と筋肉との情報伝達の遮断につながる。gMGはどの年齢でも起こりえるが、最も一般的には40歳以下の女性および60歳以上の男性にみられる。初期症状には、構音障害、複視、眼瞼下垂、バランスの喪失などがあり、病気が進行すると、嚥下障害、息苦しさ、極度の疲労、呼吸不全など、より重篤な症状につながる可能性がある。 ソリリスは、小児および青年患者のgMGの治療薬として、日本で初めて承認された唯一の分子標的治療薬である。今回のソリリスの追加承認は、難治性gMGの小児患者を対象とした、ソリリスの第III相臨床試験の結果に基づいている。本試験では、免疫抑制療法が無効で重大な疾患症状が消失せず持続している難治性gMGの小児患者において、ソリリスの臨床的有効性が示された。ソリリスは、主要評価項目である定量的重症筋無力症(QMG)総スコア(疾患の重症度と運動機能を医師が評価する尺度)のベースラインから26週目までの変化に有意な改善を示した(-5.8[95%CI:-8.4~-3.13]、p=0.0004)。 東京女子医科大学小児科の石垣 景子氏は、「gMGの小児患者の治療において、利用できる免疫抑制薬などの現行の治療法では、疾患の進行に伴い、十分に症状をコントロールできない場合もあるなど課題があった。このたびの日本におけるソリリスの小児の適応拡大は、gMGの治療におけるC5補体阻害剤の効果を示すものであり、小児患者が運動機能を維持し、重篤な症状を軽減する可能性のある新たな治療選択肢を提供する」と述べている。また、Alexion(米国)のマーク・デュノワイエ最高経営責任者(CEO)は、「gMGと共に生きる小児患者は、標準治療に反応しなくなり、運動機能、会話、呼吸に影響を及ぼす症状が継続することがある。当社のファースト・イン・クラスのC5補体阻害剤であるソリリスは、小児患者の症状や家族の生活の質を改善する可能性がある。日本においてgMGの小児患者のコミュニティーに、最初で唯一の分子標的治療薬を届けることを誇りに思っている」と語っている。

7475.

妊娠30~34週の硫酸Mg、児の死亡・脳性麻痺を抑制するか/JAMA

 妊娠30週未満の出産前の妊婦に、硫酸マグネシウムを静脈内投与すると、児の死亡と脳性麻痺のリスクが低下することが知られているが、30週以降の効果は不明とされていた。ニュージーランド・オークランド大学のCaroline A. Crowther氏らは、「MAGENTA試験」において、妊娠30~34週に硫酸マグネシウムを投与しても、プラセボと比較して、2年後における児の脳性麻痺のない生存の割合は改善しないことを示した。研究の詳細は、JAMA誌2023年8月15日号に掲載された。オーストラリアとニュージーランドの無作為化臨床試験 MAGENTA試験は、オーストラリアとニュージーランドの24の病院で実施された無作為化臨床試験であり、2012年1月~2018年2月に参加者の登録を行った(オーストラリア国立健康・医学研究評議会などの助成を受けた)。 対象は、妊娠30~34週の期間に早産のリスクがあり、単胎または双胎妊娠で、出産が予定されているか、24時間以内に確実に出産が予測される妊婦であった。被験者を、硫酸マグネシウム(4g)またはプラセボを30分で静脈内投与する群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、児の補正年齢2歳時までの死亡(死産、退院前の生児の死亡、退院後の補正年齢が2歳になる前の死亡)または脳性麻痺(小児科医の評価による運動機能の喪失、筋緊張と筋力の異常)とした。副次アウトカムは、妊婦と児の健康を評価する36の項目であった。 1,433例(平均年齢30.6[SD 6.6]歳、白人67.4%)の妊婦を登録し、硫酸マグネシウム群に729例、プラセボ群に704例を割り付けた。その児1,679例(マグネシウム群 858例、プラセボ群821例)のうち1,365例(691例、674例)が主要アウトカムの解析に含まれた。イベント発生率(3.3% vs.2.7%)は予測より低い 補正年齢2歳時の死亡または脳性麻痺の発生率は、硫酸マグネシウム群が3.3%(23/691例)、プラセボ群は2.7%(18/674例)であり、両群間に有意な差を認めなかった(リスク差:0.61%[95%信頼区間[CI]:-1.27~2.50]、補正後相対リスク[RR]:1.19[95%CI:0.65~2.18]、p=0.57)。 死亡は、硫酸マグネシウム群が1.4%(12/837例)、プラセボ群は0.9%(7/796例)で認められ(リスク差:0.48%[95%CI:-0.62~1.58]、補正後RR:1.50[95%CI:0.58~3.86]、p=0.40)、脳性麻痺は、それぞれ1.6%(11/679例)、1.7%(11/667例)で発現し(-0.03%[-1.39~1.33]、0.98[0.43~2.23]、p=0.96)、いずれも両群間に有意差はみられなかった。 出生時の入院期間中の新生児では、プラセボ群に比べ硫酸マグネシウム群で呼吸窮迫症候群(34%[294/858例]vs.41%[334/821例]、補正後RR:0.85[95%CI:0.76~0.95]、p=0.01)、慢性肺疾患(5.6%[48/858例]vs.8.2%[67/821例]、0.69[0.48~0.99]、p=0.04)などの発生率が低かった。 出産時の入院期間中の妊婦では、重篤な有害事象は発現しなかったが、注射による有害事象の頻度はプラセボ群に比べ硫酸マグネシウム群で高かった(77%[531/690例]vs.20%[136/667例]、補正後RR:3.76[95%CI:3.22~4.39]、p<0.001)。注射による主な有害事象は、悪心、嘔吐、ほてり、注射を受けた腕の痛み、口腔乾燥、めまい、霧視などであった。 また、帝王切開による分娩を経験した妊婦は、硫酸マグネシウム群のほうが少なかった(56%[406/729例]vs.61%[427/704例]、補正後RR:0.91[95%CI:0.84~0.99]、p=0.03)。一方、産後に大出血を発現した妊婦は、硫酸マグネシウム群で多かった(3.4%[25/729例]vs.1.7%[12/704例]、1.98[1.01~3.91]、p=0.05)。 著者は、「妊娠30~34週での硫酸マグネシウム投与に効果がなかった理由は不明である」としている。また、「本試験では、死亡と脳性麻痺のイベント発生率が予測よりも低かったため、死亡または脳性麻痺のリスクにおける、小さいものの潜在的に重大な差の検出力が不足していたと考えられる」と指摘している。

7476.

IgA腎症のメサンギウム領域に障害をもたらすIgA1は腸管由来が主体?(解説:浦信行氏)

 IgA腎症は糸球体メサンギウム領域を中心に、一部糸球体毛細血管係蹄にIgA1の有意な沈着を伴うメサンギウム増殖腎炎であり、最も頻度の高い原発性糸球体腎炎である。未治療で経過すると4割が末期腎不全に至る腎予後不良の疾患であり、病因解明に向けて多くの研究が行われているが、いまだにその病因の詳細は不明である。これまでは主に粘膜免疫異常がその病因候補として検討されてきた。 わが国では以前から上気道粘膜、とりわけ口蓋扁桃粘膜の関与が注目され、治療法として扁桃摘出+ステロイドパルス療法(扁摘パルス)が広範囲に行われ、その有効性が報告されている。早期介入では高率な寛解も一部の試験で報告されている。しかし欧米では扁摘パルスは必ずしも有効性は高くなく、ステロイドの副作用などの観点から推奨されていない。 欧米では、IgA腎症と炎症性腸疾患やセリアック病との合併例が多いことから、腸管における粘膜免疫異常が病因に関連する可能性が議論されてきた。Nefeconは、腸管作用型ステロイド薬のブデソニドが徐放されて腸管由来のIgA1の産生・放出を抑制する。今回のNefIgArd試験ではNefeconが著明な腎機能障害進行抑制作用を示した。また、eGFR低下が2.47mL/min/1.73m2にとどまっており、欧米における45歳以上の健康成人の年間のeGFRが約1mL/min/1.73m2であることから、とりわけ尿蛋白が1.5g/gCr未満の群では自然経過とほぼ変わりない。開始時eGFRでの層別解析でpoint of no remissionの解析や、地域差・人種差を考慮すると、アジア地区の解析もあればわが国にとってはより有益な情報となるであろう。有害事象に関しては、全身投与よりは頻度も程度も低値であろうが、ステロイドによると考えられるものがやはり主体である。

7477.

旬をグルメしながらCVIT誌のインパクトファクター獲得を祝福する【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第63回

論文にも「旬」がある!?野菜や魚介類などの食材には「旬」が存在します。特定の食材がほかの時季と比べて収穫量が多く、新鮮でおいしく食べることができる時季のことです。各時季、各地域での旬の食材に精通することが、グルメの第一歩です。では、旬の期間はどの程度かご存じでしょうか。旬という言葉の本来の意味は10日間です。1ヵ月を3分し、それぞれの10日間を上旬、中旬、下旬というのは馴染みがあると思います。旬は思ったよりも短いのです。旬が存在するのは食材だけではありません。論文にも旬が存在します。論文の旬を強く意識するのがインパクトファクター(Impact Factor:IF)について考えるときです。IFは、第42回「インパクトファクターのインパクトを考える」でも紹介したとおり、学術誌の影響度を評価する指標です。IFの算出法を復習しましょう。ある学術誌Aは、2022年の掲載論文の総数が140件、2023年が160件であったとします。2年間で計300件です。この300件から、2024年の1年間に計600回引用されたとします。ジャーナルAの2024年のIFは、600÷300=2.0となります。つまり被引用論文数が分子に、掲載論文数が分母になります。IFの高いジャーナルは被引用論文数が多い、すなわち引用に値する質の高い論文が掲載されていることを意味します。CVIT誌が悲願のインパクトファクター獲得日本心血管インターベンション治療学会は、心血管疾患患者に対する有効かつ安全なカテーテル治療の開発と発展、臨床研究の推進などを目的とする学会です。私も学会役員として発展を願っております。本学会が刊行している英文の学術誌が「Cardiovascular Intervention and Therapeutics誌」(以下:CVIT誌)です。このように学会が発行する学会誌をofficial journalといいます。CVIT誌は、和文の学術誌として創刊時からVol.24まで発行され、2010年1月に上梓されたVol.25から英文誌になりました。英文誌の編集長は、初代が住吉 徹哉先生、次いで伊苅 裕二先生、現在は3代目の小林 欣夫先生です。学術誌の価値を意義付ける大きなステップとしてIF獲得があります。CVIT誌は、長年にわたり価値ある論文を発信してきましたが、IFを持っていなかったのです。IF獲得は学会員すべての悲願でした。ここで不思議に感じる人もいることでしょう。前述の計算式に従えば、すべての学術誌は、新規刊行から3年を経れば、各々のIF値を算出することは可能だからです。しかし、これは正式なIFではないのです。実は世界的に通用し評価の対象となるIFは、正しくはジャーナル・インパクトファクター(Journal Impact Factor:JIF)を指しているのです。JIFは、Clarivate社という企業が作成するWeb of Science Core Collectionのデータを土台としてIF値が算出され、同社がJIFとして認定したもののみが正式にIFを持つ雑誌として公表することができます。2023年6月に吉報が届きました。CVIT誌にJIF 3.2が認められたのです。CVIT誌の歴代の編集長と編集委員に敬意を表します。何よりも質の高い論文を投稿してくださった皆の努力の結集によって成し遂げたことです。心より祝福いたします。Congratulations!日本発ジャーナルの価値を高める方法は?まだここで満足して立ち止まってはいけません。JIFをさらに上げてCVIT誌の価値を高め、世界と戦う素地を作っていくべきです。具体的には何をすれば良いのか。それは、皆さんが執筆する論文にCVIT誌に掲載された論文を引用することです。論文の投稿先はCVIT誌である必要はありません。2023年8月に投稿すれば、順調にいったとしても、論文が実際に掲載されるのは2024年になる可能性が高いです。その論文に引用された文献がCVIT誌のJIFの向上に貢献するのは、CVIT誌に2022~23年に掲載された論文を引用した場合のみです。ここで最初に紹介した「旬」というキーワードが効いてくるのです。IFの観点からは、論文の旬は2年間しかないのです。とにかく、最新の論文を引用することが重要です。最近、どの学術誌でもガイドラインの改訂やコンセンサスドキュメントが増えています。これは最新の論文として引用してもらい、IFの向上を狙う意味もあるのです。もちろん、引用したくなるような質の高い論文をより多く掲載することが王道です。CVIT誌と同時に、日本不整脈心電学会の発行する「Journal of Arrhythmia誌」もJIFを認められました。おめでとうございます。このほか日本に編集本拠地があるJIFを持つ循環器領域ジャーナルとして「Circulation Journal 誌」「Journal of Cardiology誌」「Heart and Vessels誌」そして「International Heart Journal誌」などがあります。掲載論文に、同誌の過去号の論文を引用することを、自己引用(self-citation)といいます。自己引用はJIFの向上につながるとはいえ、ジャーナルの国際認知度向上にはあまり効果を発揮しません。同誌での引用ではなく他誌からの引用のほうが高評価だからです。過度の自己引用は、JIFの取り消しにもつながりかねません。ジャーナルの価値を高めるには、JIFを持つほかのジャーナルに論文が引用されることが大切です。日本人が運営している学術誌に複数の英文誌があることが、アジアの中でも日本の大きな強みです。日本人は日本人の論文をあまり引用しないと言われます。制度を十分に理解したうえで、日本人が相互の論文を積極的に引用し合うことによって、お互いのジャーナルの価値を高めていくことが可能となります。ひいては日本の研究活動の学術的意義の向上に結び付くことを期待します。

7478.

アロマターゼ欠損症〔AD:Aromatase Deficiency〕

1 疾患概要■ 定義エストロゲン合成酵素(アロマターゼ)の活性欠損・低下により、エストロゲン欠乏とアンドロゲン過剰とによる症状を呈する遺伝性疾患である。染色体核型が女性型の場合は、性分化疾患(46,XX DSD)に分類される。生理的にエストロゲン合成が亢進する妊娠中と思春期~性成熟期に症状が顕性化する。女性患者と男性患者とで表現型が異なる。■ 疫学10万人に1人以下のまれな疾患である。これまでに30家系50人を超える患者が報告されている。当初はヨーロッパとヨーロッパからアメリカ大陸への移民者の報告が多かったが、最近ではアジア(中国やインド)からの報告も増えている。わが国からの報告はこれまでのところ1例のみである。■ 病因アロマターゼは、アンドロゲンを基質としてエストロゲンを産生する酵素である。アロマターゼ活性欠損により、エストロゲンが産生されずアンドロゲンが蓄積する。その結果、女性でエストロゲンの欠乏と男性ホルモンの過剰による症状が生じる。これに対し、男性ではエストロゲン欠乏による症状のみが生じる。■ 症状1)胎児ヒト胎児副腎は大量の副腎性アンドロゲン(dehydroepiandrosterone)を産生し、これが胎盤(胎児に由来する)のアロマターゼによりエストロゲンに転換される。胎児がアロマターゼ欠損症の場合には、アンドロゲンが蓄積して母体と胎児に男性化が生じる。胎児が女性の場合は、外性器が男性化する。母体では、妊娠中に男性化症状が増悪し、分娩後に軽快する。残存するアロマターゼ活性が1%を越えると、母体に男性化はみられないとされる。2)女性エストロゲンによって生じる二次性徴(初経や乳腺発育・女性型の皮下脂肪など)は欠如する。しかし、活性低下が軽い変異を有する症例では、初経発来や規則月経を呈することがある。エストロゲン補充が行われていない女性では、リモデリングの亢進を示す骨粗鬆症が認められる。女児では、外性器の男性化(Prader 分類II~IV/IV)が全例に認められる。ゴナドトロピンが上昇する前思春期頃から、卵巣に多房性嚢胞(一部は出血性)をみることがある。活性低下の強い症例(truncated type)では索状性腺をみることがある。3)男性男性患者では、出生時に症状はない。思春期に生理的な身長急伸を欠如するとともに、その後の伸長停止(骨端閉鎖)も欠如するのが特徴である。本来伸長が停止する16歳頃を過ぎても身長が伸び続け、高身長(時に2mを超える)・骨粗鬆症となって20歳台後半で診断される例が多い。しばしば、外反膝・類宦官症体型が認められる。肥満、内臓脂肪の増加、インスリン抵抗性、脂質異常症などの代謝異常を示すことも少なくない。また、巨精巣症・小精巣の報告もある。精子数減少を示唆する報告もあるが妊孕性の喪失はない。■ 分類初期の報告例は、アロマターゼ活性低下が高度でエストロゲンがほぼ欠損し、二次性徴を完全に欠如する症例(古典型)であった。その後、エストロゲン欠乏が軽度で、乳腺発育や月経発来といった二次性徴が部分的にみられる症例(非古典型)が報告された。遺伝子変異をtruncated variantsとnon-truncated variantとに分けて検討し、前者ではエストロゲン欠乏に関連する症状(原発性無月経や索状性腺)が強く、後者では症状が軽いとする報告もある。■ 予後本症の長期予後については不明であるが、これまでの情報を総合すると生命予後に直接影響を与えないと思われる。その一方で、エストロゲン低下に伴って生じる骨粗鬆症や脂質異常症などの代謝異常に対して、適切な管理を行い予防する必要がある。アロマターゼ活性低下の強い症例では、女性の妊孕能は低下する。活性低下の軽い症例の女性の妊孕性については不明である。男性患者では妊孕性の低下はみられない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床症状1)女性女性患者では、本症と診断されないまま無月経に対してエストロゲン投与が継続されていることがあり、その場合、臨床症状から本症を想定することは困難である。患児が本症に罹患している場合、妊娠中に母体の進行性男性化(活性低下の軽い例では欠如)と胎児外陰の男性化(全例にみられる)が診断の手掛かりになる。妊娠母体の男性化は、P450酸化還元酵素欠損症や妊娠黄体腫(母体卵巣)にもみられ鑑別が必要である。P450酸化還元酵素欠損症では、アロマターゼのほか複数のステロイド産生酵素の活性も低下し、性ステロイド以外のホルモンによる症状が出現する。2)男性妊娠母体の男性化症状とエストロゲン低値から胎児の罹患が疑われて、出生後早期に診断された男性患者も報告されているが、実際に出生時に診断される例は少ない。弟妹の女性発端者が手がかりとなって診断されることもある。思春期以降に身長の伸びが止まらず、高身長となって成人期に初めて診断されることが多い。思春期の身長急伸の欠如、成人期の骨端線閉鎖の欠如、高身長、骨粗鬆症が、本症を推定する手がかりとなる。肥満、内臓脂肪の増加、インスリン抵抗性、脂質異常症などの代謝異常の合併も診断の参考となる。■ ホルモン検査1)女性ゴナドトロピン値(FSH、LH)は成人に至るまで一貫して高値を示す。とくにFSH優位の高値を示すのが特徴である。一般に、出生後数週~6ヵ月頃にかけて、視床下部下垂体性腺系は生理的活性化(mini-puberty)を示し、ゴナドトロピンは一過性に上昇する。その後、視床下部下垂体性腺系は強く抑制される時期に入り、ゴナドトロピンは低値となる。前思春期に入ると抑制が徐々に解除され、ゴナドトロピンは上昇に転ずる。アロマターゼ欠損症のゴナドトロピンも同様の二相性変動を示すが、常に同年齢対照より高値を示す。アンドロゲン値も同年齢対照者より高く、同様の二相性の変動を示す。血中エストラジオールは一貫して同年齢対照より低値を示すが、基準域に近い値を示す症例もみられる。測定感度の問題もあり、エストラジオール単独での診断は難しい。FSH値の上昇は、エストロゲン欠乏や表現型の強さを反映し治療効果の指標になる可能性がある。2)男性FSHが高値を示す例は男性では60%で女性よりFSHの診断意義は低い。E2が測定感度以下となるのは男性患者の80%であり、除外診断には注意を要する。LHが高値を示す例は20%、Tが高値となるのは30%と少なく、除外診断には使いにくい。■ 遺伝子型本症の確定診断には、15q21.2にあるCYP19A1に活性喪失変異(loss-of-function mutation)を同定する。これまでに、1塩基置換によるミスセンス変異、ナンセンス変異、スプライシング異常の他、1〜数塩基の欠失や挿入などさまざまな変異が報告されている。ヘテロは無症状で、ホモまたは複合ヘテロで症状が認められ、常染色体潜性(劣性)遺伝を示す。変異は酵素活性に関連するエクソン9に比較的多く認められるが、エクソン2を除きすべてのエクソンにほぼ均等に認められる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)根本的な治療法はない。欠乏するエストロゲンによる諸症状・疾病の発生を予防するために長期のエストロゲン補充が行われる。■ 46,XX DSDほとんどが女性として育てられている。性自認は女性である。外陰形成術が施行される。性腺摘除が併施されることもある。二次性徴や骨量の獲得と維持を目的にエストロゲン(子宮を有する性成熟期女性ではプロゲスチンを併用)投与を行う。エストロゲン投与により、血清ゴナドトロピン値が正常化し、卵巣嚢胞は消失する。骨量も増加する。■ 46,XY最終身長の適正化と骨量増加・骨粗鬆症の予防を目的にエストロゲン投与を行う。思春期前からの治療では、少量のエストロゲン投与から開始し、漸増させて生理的時期での骨端閉鎖を促す。骨端閉鎖後は、経皮的にエストラジオール25μg/日を生涯にわたって投与する。思春期症例にエストロゲンを投与すると、身長の急伸、骨端閉鎖、骨量の増加といった生理的骨成長と同様の変化が認められる。成人では維持量の投与により、ゴナドトロピン値の正常化、脂質異常の改善、インスリン抵抗性の改善なども期待できる。4 今後の展望本症の発見は、骨におけるエストロゲンの生理的役割などの解明に大きく貢献した。エストロゲン補充により、症状の多くは軽減されるが、女性患者の妊孕性については回復が認められていない。本症の患者数は少なく、系統的な研究が困難である。5 主たる診療科内科、小児科、婦人科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター アンドロゲン過剰症(ゴナドトロピン依存性思春期早発症及びゴナドトロピン非依存性思春期早発症を除く)アロマターゼ欠損症は、小児慢性特定疾病対策事業においてアンドロゲン過剰症(ゴナドトロピン依存性思春期早発症およびゴナドトロピン非依存性思春期早発症を除く)の原因疾患の1つに包含されている。(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Shozu M, et al. J Clin Endocrinol Metab. 1991;72:560-566.2)Singhania P, et al. Bone Reports. 2022;17:101642.3)Stumper NA, et al. Clin Exp Rheumatol. 2023;41:1434-1442.4)Rochira V,et al. Nature Reviews Endocrinology 2009;5:559-568.公開履歴初回2023年8月29日

7479.

静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(後編)【見落とさない!がんの心毒性】第24回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。前回は、深部静脈血栓塞栓症に対する治療選択、がん関連血栓塞栓症のリスクとして注目すべき患者背景について解説を行いました。今回は同じ症例でのDVT治療継続における問題点を考えてみましょう。《今回の症例》年齢・性別30代・男性既往歴なし併存症健康診断で高血圧症、脂質異常症を指摘され経過観察喫煙歴なし現病歴発熱と咳嗽が出現し、かかりつけ医で吸入薬や経口ステロイド剤が処方されたが改善せず。腹痛が出現し、総合病院を紹介され受診した。胸部~骨盤部造影CTで右下葉に結節影と縦隔リンパ節腫大、肝臓に腫瘤影を認めた。肝生検の結果、原発性肺腺がんcT1cN3M1c(肝転移) stage IVB、ALK融合遺伝子陽性と診断した。右下肢の疼痛と浮腫があり下肢静脈エコーを実施したところ両側深部静脈血栓塞栓症(deep vein thrombosis:DVT)を認めた。肺がんに伴う咳嗽以外に呼吸器症状なし、胸部造影CTでも肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)は認めなかった。体重65kg、肝・腎機能問題なし、血圧132/84 mmHg、脈拍数82回/min。肺がんに対する一次治療としてアレクチニブの投与を開始した。画像所見を図1に、採血データを表1に示す。(図1)中枢性DVT診断時の画像所見画像を拡大する(表1)診断時の血液検査所見画像を拡大するアレクチニブと直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant:DOAC)の内服を継続したが、6ヵ月後に心膜播種・胸膜播種の出現と肝転移・縦隔リンパ節転移の増悪を認めた。ALK阻害薬の効果持続が短期間であったことから、がん治療について、ALK阻害薬から細胞傷害性抗がん薬への変更を提案したが本人が希望しなかった。よって、ALK阻害薬をアレクチニブからロルラチニブへ変更した。深部静脈血栓症(Venous Thromboembolism:VTE)に関しては悪化を認めなかったためDOACは変更せず内服を継続した。その後、肺がんの病勢は小康状態を保っていたが、1ヵ月後に胸部レントゲン写真で左下肺野にすりガラス陰影が出現し、造影CTを実施したところ新規に左下葉肺動脈のPEを認めた(図2)。(図2)PE発症時の画像所見画像を拡大する【問題】DOAC内服中にVTEが増悪した場合、どのような対応を行うか?1)Farge D, et al. Lancet Oncol. 2022;23:e334-e347.講師紹介

7480.

英語で「詳細を教えてください」は?【1分★医療英語】第95回

第95回 英語で「詳細を教えてください」は?I don’t feel like eating recently.(最近、食欲がないんです)Could you elaborate on that?(もう少し詳しく教えてもらえますか?)《例文1》Could you explain further?(もっと説明してもらえますか?)《例文2》Could you tell me more about it?(それについてもう少し話してもらえますか?)《解説》問診において患者さんからオープンクエスチョンで情報収集することは非常に大切ですが、なかなか具体的な説明が伴わないこともよくあります。「もっと情報が欲しい」というときは、“Could you tell me more about it?”(それについて、もう少し話してもらえますか?)または“Could you explain further?”(もっと説明してもらえますか?)といった表現があります。そして、「もっと詳細を教えてほしい」と言いたい場合には、“Could you elaborate on that?”(それについて、もう少し詳しく教えてもらえますか?)、“Could you tell me in detail?”(詳細について話してもらえますか?)、“Could you break it down for me?”(詳しく教えてもらえますか?)などと表現することができます。“break it down”は「かみ砕いて話す」という意味になりますので、さらに内容を詳しく教えてほしいと言いたいときに使いやすい表現です。また、周辺の状況や背景について説明をしてほしい場合には、“Could you please give me a bit more background?”(もう少し状況について教えてもらえますか?)という言い方もできます。講師紹介

検索結果 合計:35155件 表示位置:7461 - 7480