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腎機能を考慮したファモチジンの変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第1回

 千葉県柏市にある在宅医療特化型薬局「つなぐ薬局」の鈴木です。私は現在、施設往診同行や在宅訪問などで積極的に医師とコミュニケーションを取り、処方提案を行っています。これまの学びを処方提案という形でアウトプットすることで、薬剤師の立場と視点による薬物治療の適正化を推進し、患者さんがより良い状態になっていくことを実感しています。このコラムでは、薬学的管理の質を向上させる処方提案の重要性とともに、薬局薬剤師の視点での提案のコツをお伝えしたいと思います。処方提案する際には、ご家族からの訴えが重要な手掛かりとなることがあります。認知症様の症状が生じていると聞き取り、検査値や処方薬を見直したところ、高齢者では注意が必要な薬剤がありました。今回は腎機能を起点に処方提案した症例についてご紹介します。患者情報75歳、女性、身長:140cm、体重:45kg現病歴:脳梗塞、認知症同居の家族から、最近話が通じにくいことが多いと訴えあり。処方内容アスピリン腸溶錠100mg 1錠 分1 朝食後マニジピン錠10mg 1錠 分1 朝食後プラバスタチン錠10mg 1錠 分1 朝食後ファモチジン錠20mg 2錠 分2 朝夕食後酸化マグネシウム錠330mg 2錠 分2 朝夕食後メマンチン錠20mg 1錠 分1 夕食後前月の検査値(L/D)Scr:1.02mg/dL、eGFR:40.63mL/min/1.73m2、Mg:2.0mg/dLHDL:45mg/dL、LDL:118mg/dL本症例の着眼点この患者さんは、脳梗塞の2次予防のために低用量アスピリンを服用継続していて、その消化性潰瘍予防のためファモチジンを服用していました。処方箋の受付時に家族から聴取した「会話のつじつまが合わないことが多い」という訴えは、認知症に伴う周辺症状の可能性もありますが、ファモチジンによるせん妄や意識障害の可能性も示唆されます。腎機能が低下している場合、腎排泄型のH2受容体拮抗薬であるファモチジンの血中濃度が持続して過量投与となることがあります。『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』において、「すべてのH2受容体拮抗薬は可能な限り投与を控える。とくに入院患者や腎機能低下患者では、必要最小限の使用にとどめる」ということが記載されています。腎機能を正しく評価して薬剤投与設計を行うために、下記の評価を行いました。腎機能の評価Cockcroft-Gaultの式を用いて推算CCrを算出することができます。計算するために必要なパラメータはScr(血清クレアチニン)、年齢、体重、性別で、女性は筋肉量が少ないため、係数の0.85を乗じます。<Cockcroft-Gaultの式>男性:CCr(mL/min)=(140-年齢)×体重(kg)/(72×Scr)女性:CCr(mL/min)=(140-年齢)×体重(kg)/(72×Scr)×0.85通常は上記の簡易式が用いられるが、身長が考慮されていないので、肥満患者では腎機能を過大評価してしまう可能性がある。そのため、実体重ではなく標準体重や理想体重を用いて計算することもある。<標準体重(男女共通)>身長(m)×身長(m)×22(係数)<理想体重>男性=50+{2.3×(身長-152.4)}/2.54女性=45+{2.3×(身長-152.4)}/2.54今回の患者さんの場合、CCr(Cockcroft-Gaultの式にて推算):33.9mL/min、体重未補正eGFR:30.5mL/minであり、60mL/min>CCr>30mL/minの場合のファモチジンの推奨投与量は、20mg 1日1回あるいは10mg 1日2回となります。本症例において、ファモチジンは過量投与です。なお、腎機能が低下している場合、マグネシウムの蓄積に伴う高Mg血症を評価することも重要ですが、検査結果は基準値内であり、自覚症状の面からも高Mg血症は否定的です。処方提案と経過腎機能を評価したところ、ファモチジンが過量投与となっており、減量が望ましいと判断しました。また、せん妄のような症状も現れており、H2受容体拮抗薬が影響していることも考えられます。そこで、処方医に電話で、ファモチジンを1日1回に減量あるいは肝代謝型のPPI(プロトンポンプ阻害薬)に変更してみるのはどうか提案しました。その結果、ファモチジンは中止となり、ランソプラゾールOD錠15mgが開始となりました。後日家族に確認したところ、会話のつじつまが合わないということは減ったと聴取しました。本症例のポイント・定期的に血液検査の結果と身長・体重を聴取する。・薬物投与設計のための腎機能評価を正しく理解する。・H2受容体拮抗薬は腎排泄型薬剤が主であり、高齢者においてはせん妄や意識障害のリスク因子となる。「透析患者に対する投薬ガイドライン」, 白鷺病院,(参照:2019年6月24日)日本老年医学会ほか 編. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015. メジカルレビュー社;2015.

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VRで学ぶ消化器外科の主な術式

VRで学ぶ消化器外科の主な術式VR医学コンテンツの視聴法1.スマートフォンとVRゴーグルをお手元にご準備ください。※スマートフォンに対応したVRゴーグルは、プラスチック製や段ボール製など、さまざまなタイプが販売されており、大手ネット通販サイトなどでお求めいただくことができます。簡易的な段ボール製のものなら、100円ショップにもお取り扱いがあります。画像を拡大する2.スマートフォンでこちらのQRコードを読み取り、コンテンツ一覧から「VRで学ぶ消化器外科の主な術式」を選択し、動画サイトにアクセスします。3.見たい動画を選択すると、動画が再生されます。画像を拡大する4.再生画面右下の画面拡張ボタンをタッチして、全画面表示にします。画像を拡大する5.スマートフォンを横向きにします。二つの画像が並んで再生されているのを確認します。画像を拡大する6.スマートフォンをVRゴーグルにセットします。画像を拡大する7.VRゴーグルをのぞくと、動画が3Dでご覧いただけます。画像を拡大する

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仮想現実=VRを活用した医学コンテンツの可能性

杉本 真樹氏手術前、VRゴーグルをかけて、眼前に浮かび上がる「仮想の臓器」で病変を確認。それに対してどこからアプローチして、どのように切除するか、仮想現実の中で本番さながらにシミュレーション手術を行う。そんな未来が現実になりつつある。このシステムを開発しているのは、Holoeyes株式会社。プロジェクトをリードするのは、消化器外科医で同社取締役COOの杉本真樹氏だ。杉本氏は医用画像解析アプリケーションOsiriXの普及に取り組み、2014年にAppleから世界を変える続けるイノベーターに選出されるなど、医療分野でのICT活用を積極的に推し進めてきた人物として知られる。VR(仮想現実)を実現する同社のHoloeyes XRのおおまかな仕組みは以下の通り。まず患者のCTスキャンデータやMRIデータから3次元のVirtual Reality(VR)やAugmented Reality(AR)のアプリケーションを生成。利用者がVRゴーグルをかければ、患者の臓器の3Dモデルが目の前に浮かび上がり、その仮想現実の世界に自ら介入できる。仮想現実をチームで共有することも可能で、術前のシミュレーションや術後の症例カンファレンスなどに取り入れれば、より質の高いコミュニケーション、教育効果が期待できる。ケアネットではHoloeyesと協力し、このVR技術を活用した新しい医学コンテンツを開発していく方針だ。今回、第74回日本消化器外科学会でHoloeyesとイブニングセミナーを共催するのを機に、CareNet.com上で試作コンテンツを公開する。100円から購入できるVRゴーグルにスマートフォンを設置してのぞき込めば、消化器外科の主な術式を杉本氏が解説する動画が3Dで視聴できる。アプリではないため、角度を変えたり介入したりすることはできないが、VR医学コンテンツの世界を感じていただければと思う。

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遠隔転移のリスクを低減させる去勢抵抗性前立腺がん治療薬「アーリーダ錠60mg」【下平博士のDIノート】第29回

遠隔転移のリスクを低減させる去勢抵抗性前立腺がん治療薬「アーリーダ錠60mg」今回は、前立腺がん治療薬「アパルタミド錠(商品名:アーリーダ錠60mg)」を紹介します。本剤を服用することで、去勢抵抗性前立腺がん患者の無転移生存期間を延長し、臨床症状の悪化を遅らせることが期待されています。<効能・効果>本剤は、遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がんの適応で、2019年3月26日に承認され、2019年5月30日より発売されています。本剤は、アンドロゲン受容体(AR)に選択的に結合し、ARのシグナル伝達を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。<用法・用量>通常、成人にはアパルタミドとして1日1回240mgを経口投与し、患者の状態により適宜減量します。なお、痙攣発作やGrade3または4の副作用が発現した場合には、添付文書に記載の基準を考慮して、本剤を休薬、減量または中止する必要があります。<副作用>国際共同第III相試験において、本剤が投与された安全性評価対象例803例(日本人34例を含む)のうち、565例(70.4%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、疲労181例(22.5%)、皮疹123例(15.3%)、甲状腺機能低下症38例(4.7%)、そう痒症33例(4.1%)、体重減少27例(3.4%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、痙攣発作(0.1%)、心房細動(0.2%)、心不全(0.4%)、心筋梗塞(0.2%)などの心臓障害、多形紅斑(0.2%)などの重度の皮膚障害が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、男性ホルモンの働きを阻害することで、前立腺がんの進行を抑制します。2.痙攣発作が現れることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械を操作する際は注意してください。3.発熱や皮疹、かゆみ、動悸、足のむくみなどが現れた場合には、医師・薬剤師に相談してください。4.皮膚を清潔に保ち、刺激を避け、保湿などのスキンケアを心掛けてください。<Shimo's eyes>前立腺がんは中高齢男性に多く、2025年には男性のがん罹患率のなかで最も高くなると予測されています。治療は、アンドロゲンの働きを抑えるホルモン療法が主に行われますが、ホルモン療法に抵抗性を示した場合、あるいは外科的去勢後に症状が増悪した場合は予後不良の「去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)」となります。CRPCに対する既存の抗アンドロゲン薬は、アンドロゲン合成酵素阻害薬のアビラテロン(商品名:ザイティガ)、アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬のエンザルタミド(同:イクスタンジ)が発売されており、本剤はエンザルタミドに次ぐ2剤目の経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬です。CRPCでは、約80%の患者が最終的に骨転移すると言われており、転移を遅延または予防することが重要です。海外と共同で行われた臨床試験では、プラセボと比較して、本剤の投与により無転移生存期間を延長し、遠隔転移と死亡リスクを低下させることが認められています。重大な副作用としては、痙攣発作、重度の皮膚障害、うっ血性心不全などが挙げられています。日本人では皮疹が発生しやすいと言われているため、保湿剤によるスキンケアなどの生活指導によって、副作用による患者のQOL低下を防ぐことが大切です。なお、本剤は2019年7月現在、「転移性去勢感受性前立腺がん」に対して、適応拡大承認の申請中です。

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新型タバコも禁煙外来でやめられる?【新型タバコの基礎知識】第4回

第4回 新型タバコも禁煙外来でやめられる?Key Points加熱式タバコをやめるために禁煙外来・禁煙治療を受けることは可能。CO測定値を記録する欄に、「加熱式タバコ使用中」などと記録しておけばよい。喫煙指数(=喫煙本数×喫煙年数)については、加熱式タバコの本数を紙巻タバコと同等に扱ってもよいと考えられる。新型タバコの登場によって、禁煙外来の現場でも混乱が起きているようです。禁煙外来では、受診者における前日から当日の喫煙状況を反映する指標として、「呼気一酸化炭素濃度検査」が実施されています。紙巻タバコに含まれる代表的な有害物質の1つが、一酸化炭素(CO)です。一酸化炭素は赤血球のヘモグロビンと結合し、CO-Hb(一酸化炭素ヘモグロビン)となります。酸素もヘモグロビンと結合して全身に運ばれますが、一酸化炭素は酸素よりもヘモグロビンと結合しやすく、一酸化炭素があるとヘモグロビンと酸素の結合が妨げられ、酸欠状態が生じます。喫煙により息切れや虚血性心疾患が生じる原因の1つが、一酸化炭素なのです。ハンディタイプの測定器を使えば、簡単に呼気一酸化炭素濃度を測定でき、結果が即座に表示画面に数字で示されるので、禁煙の動機付けに役立ちます。また、呼気一酸化炭素濃度は半減期が3~5 時間と短く、禁煙後すぐに正常値に戻るので、禁煙を維持する励みとしても用いることができます。しかし、加熱式タバコを吸っているケースでは、呼気一酸化炭素濃度を測定してもその数値は上がりません。そのため、加熱式タバコを吸っている場合には、禁煙外来で禁煙治療を受けることができないとの誤解をしている医療者が多くいるようなのです。しかし、それは誤解です。加熱式タバコを吸っている場合に、加熱式タバコをやめるために禁煙治療を受けることは可能です。禁煙外来における保険診療は、ニコチン依存症に対する治療(ニコチン依存症管理料)です。加熱式タバコにも紙巻タバコとほぼ同等のニコチンが含まれており(第3回参照)、加熱式タバコを吸っている者もニコチン依存症であり、保険適用とすることが可能です。一酸化炭素測定値を記録する欄には、「加熱式タバコ使用中」などと記録しておけばOKです。保険適用の条件に、「呼気一酸化炭素濃度の数値が高いこと」は含まれませんのでご心配なく。また、喫煙指数(=喫煙本数×喫煙年数)については、加熱式タバコの本数を紙巻タバコの本数と同等に扱ってもよいものと考えられます(図)。ただしプルーム・テックの場合には、カプセルの個数を記録しておくとよいでしょう。JTはプルーム・テック用のタバコカプセル5個をタバコ20本相当としていますが、まだこれに関してのコンセンサスは得られていません。画像を拡大する保険適用上は問題がないとしても、喫煙量や喫煙状況を客観的に確認する方法として、加熱式タバコの場合には呼気一酸化炭素濃度検査が有効にはたらかないという問題が存在します。今後、呼気一酸化炭素濃度検査の代わりに、喫煙もしくは禁煙していることを確認するための簡便な方法を模索していく取り組みを進めていきたいと考えています。第5回は、「加熱式タバコから有害物質は出ない?」です。

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177)診察室で15秒!超簡単な体力測定法【糖尿病患者指導画集】

患者さん用:片脚立ちで何秒立てる?説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話医師最近、自分の体力についてどう思いますか?患者運動不足で、だんだん体力が落ちてきている気がします。医師そうですか。それでは、簡単にできる体力テストをしてみましょう。患者どうすればいいですか?医師目を開けたまま、片脚で立ってください。何秒間立っていることができるでしょうか。…さっそくやってみましょう。ハイ、スタート!患者……(開眼片脚立ちにチャレンジ)。あー、もうだめです。医師13秒間でしたね。患者それってどうなんですか?医師15秒未満だったので、転倒リスクが高い運動器不安定症が疑われます。患者えっ、そうですか…。そう言えば、最近つまずきやすいかもしれません。医師そうでしたか。転倒は入院や寝たきりにつながるので、もう少し体力をつけたほうがよさそうですね。転倒を予防できるいい運動がありますよ!患者どんな運動ですか? 教えてください!(興味津々)医師それは…。(転倒予防の話に展開)※診察室では、ケガのリスクなどに十分注意して実施してください。●ポイント体力低下は転倒リスクにつながるので、運動の必要性を意識してもらいます。参考公益社団法人 日本整形外科学会 運動器不安定症【訂正のお知らせ】「閉眼」⇒「開眼」に訂正いたしました(2019年7月16日)。

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総合診療の醍醐味本【Dr.倉原の“俺の本棚”】第20回

【第20回】総合診療の醍醐味本表紙にドカーンとホワイトライオンの写真。ガオー!なかなかインパクトがあります。なぜアルビノのライオンにしたのかなと思っていたら「ゼブラ自体は動物界でそれほど稀少でもないこと、また、より稀少感を出したかったこともあり、“ゼブラ”をリスペクトしつつも、タイトルは他の動物にしようと考えた」とのことでした。『ホワイトライオンも追え! ゼブラへのリスペクト,そして見逃せない鑑別疾患』志水 太郎,原田 拓/監修. メディカル・サイエンス・インターナショナル. 2019知らない人はいない思いますが、念のため補足をしておきますと、「蹄(ひづめ)の音を聞いたら、シマウマではなく馬を探せ(When you hear hoofbeats, think of horses not zebras.)」という医学界の格言があります。ある症候をみたときに、珍しい病気ではなくコモンな疾患を思い浮かべて診療にあたれということです。なるほど、確かにシマウマは今や動物園ですぐに見に行ける時代。蹄の音を聞いて、それがシマウマだったということはありえるわけです。いや、しかし、そもそも蹄の音なんて最近聞いてないんですけど…、そこは置いといて。「銀色の便、耳たぶのシワ、フライパン加熱後の呼吸困難など、100のまれな疾患・症候を、クリニカルパールや症候リスト、周辺/類似疾患の鑑別疾患リストとともに解説」。この文章で「ウワまじ読みてぇ!」と思った医師は、おそらく100%満足できる書籍です。NHKの「総合診療医ドクターG」が好きな人は、たぶんメチャハマります。全体的に希少疾患が多いのは本書の特性上やむを得ませんが、総合診療のロジカルシンキングって大事だなぁと思わされるコラムばかりです。参考文献も細かく明示されており、さすが獨協総診だなぁと感嘆するコラムばかりでした。大事なのは「ホワイトライオンを追え」ではなく「ホワイトライオンも追え」なのです。珍しいトンデモ疾患ばかり追いかけるのではなく、王道の鑑別疾患を挙げた上で「まさかとは思うが」と頭の片隅にレアな疾患もイメージしておく。そのトレーニングのために、本書はとくに若手医師にとってよい刺激になると思います。実臨床でホワイトライオンに遭遇したとき、「やはりな」と余裕をもって対応できる医師でありたいですね。その前に、蹄の音がしない百獣の王に、噛み殺されるかもしれませんけど(笑)。『ホワイトライオンも追え! ゼブラへのリスペクト,そして見逃せない鑑別疾患』志水 太郎,原田 拓/監修出版社名メディカル・サイエンス・インターナショナル定価本体3,000円+税サイズA5判刊行年2019年■関連コンテンツ志水太郎の診断戦略ケーススタディ

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第46回 スピーチの質に直結する“マイクチェック”【週刊・川添ラヂオ】

動画解説川添流上手なスピーチの方法第3弾。完璧なスピーチを行うために川添先生が最後にやっている事はなんとマイクチェック!会場に入ったら用意されたマイクは性能が良い物か、古くてハウリングする物かを確かめ、どのように持ち喋るのがベストかを考えましょう。講演のプロはここまでやる!一段上のスピーチのコツを伝授します!

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第2回 眼科の手技 その1【一般内科医が知っておきたい他科の基本処置】

第2回 眼科の手技今回の眼科編では、眼の異常所見“Red eye”の診断について学習します。日常診療で患者さんの眼に異常をみかけたら、簡単な診療をすると喜ばれますし、白内障などの見落としてはいけない疾患の早期発見につながればさらに信頼度は高まります。ケース1では10歳女児の「眼の充血」からどのような手技、検査、視診が必要かを学びます。また、患者さんやその家族にできる療養指導やアドバイスなども網羅。解説は石井 恵美氏(やくも診療所 院長)、監修はへき地・離島医療の助っ人ゲネプロ。【眼科編 1】症例から診る眼の異常所見

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Siriに…通じた(泣)【Dr. 中島の 新・徒然草】(280)

二百八十の段 Siriに…通じた(泣)Siriとは皆さん御存じの iPhone の音声入力ツールです。単なる音声入力というより、色々返事をしてくれるキャラといってもいい存在かもしれません。で、ある日、私は思いついたわけです。このSiriを英語設定にして、「ドゥワミダセラッパミリン?」と言ってみたら、と。このカタカナの羅列は第二百七十三の段「ニック式英会話」で紹介したオーストラリア人講師、ニック先生 YouTube で “Do you want me to set up a meeting?” は、「ドゥワミダセラッパミリン?」で十分通じますよ、と解説していた台詞です。さらにニック先生は、「meeting は日本語の『味醂(みりん)』みたいな発音ですね」と説明していました。その時は笑いながら見ていたのですが、Siriに通じるのか、ちょっとやってみました。中島「ドゥー和見だ世良っぱ味醂?」(私がミーティングをセットしましょうか?)Siri“What date and time is your appointment?”(あなたのアポの日と時刻はいつなの?)つ、通じとるがな!ちなみに私の喋った部分も画面に表示されていて、ちゃんと “Do you want me to set up a meeting?”になっています。これは衝撃でした。「和見だ」が“want me to”に、「世良っぱ」が“set up a”に、そして「味醂」が“meeting”に、完璧に変換されています。「Siriに通じて嬉しい」と思う反面、「これが通じるのなら、今まで僕が習ってきた英語は何だったんだ? 最初からこういう風に教えてくれていたらよかったのに」と、そう思わずにはいられませんでした。さらに実験です。今度は、「アイダンナウェウェガナゴー」(I don't know where we're going to go.)とSiriに言ってみました。これもニック先生が「これで十分通じるよ。whereもwe're も、どっちも『ウェ』と発音しようね」とYouTubeで説明していたのをやってみたものです。中島「愛、旦那、上上賀名号!」(僕たち何処に行こうとしているのか、わからないよ)Siri“Don't worry about it, 伸.“(そのことについては心配しなくていいわよ、伸)中島「ありがとう、Siri(泣)」てか、通じてるじゃん、これも!私の喋った部分についても“I don't know where we're going to go.”と正確に、というか、意図通りに表示されています。どうなってんの?しかも私の台詞のうち、最初の「上」が“where”、次の「上」が“we're”と、キチンと区別されています。再び「僕たち日本人が習ってきた英語は何だったんだ。ちゃんと普段喋っている通りに教えてくれよ」と思ってしまいました。日本語に例えるとわかりやすいかもしれません。日本語教室で外国人に対して、「ありがとうございます」「こんにちわ」と教えていながら、自分たち日本人は日常会話で「あざーす」「ちゃーす」とやっているみたいなもんです。無茶苦茶やがな。というわけで、日々、「世良っぱ味醂」などと練習しております。下手な英語に根気よく付き合ってくれているSiri、ありがとう!最後に1句Siri相手 英語を練習 夏の日々

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第24回 脳梗塞/TIA患者の抗血小板薬2剤併用療法はいつまで行うのがベスト?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 抗血小板薬2剤併用療法(Dual antiplatelet therapy:DAPT)は、脳梗塞の既往がある患者さんやステント留置後の患者さんでよく行われるため、薬局で処方を見掛けることも多いと思います。今回は、2018年にBMJ誌に掲載された軽症虚血性脳梗塞または高リスク一過性脳虚血発作(TIA)患者におけるクロピドグレル+アスピリンのDAPTとアスピリン単独療法を比較したシステマティックレビュー(以下、SR)を紹介します1)。この研究が行われた背景には、BMJ Rapid Recommendations(RapidRecs)プロジェクトの一環として、治療方法の推奨を作るという目的があります。インパクトのある新規研究が発表されたら、診療ガイドラインの推奨を素早く作成するのが望ましいですが、現実的には特定の臨床上の疑問(Clinical question)に対して網羅的に研究を調査し、それらをまとめて分析統合を行う手順、つまりSRが行われ、新規研究が出てから推奨を作成するまでの時間的ギャップが課題となっています。たとえば、SRが最新かつ信頼があつい期間といえる“寿命”を調べた研究では、後行研究が出た後の統計的有意差の変化、効果量の50%を超える相対的な変化や意思決定に影響を与えるために十分な新情報、先行研究への重要な警告、より優れた治療法の出現を既存SRの寿命のシグナルとみた場合に、SRの“寿命”の中央値は5.5年で、1年以内に15%、2年以内に23%のエビデンスが覆り、7%はすでに出版時点で逆の結果が出ているという報告があり2)、タイムリーに新規研究を含めたまとめを作ることの大切さを物語っています。2020年には医学情報量が倍増するのにかかる期間はわずか0.2年(73日)になるという予測すらありますから3)、RapidRecsのように即座にSRを行う重要性は今後ますます増えるでしょう。DAPTを24時間以内に開始し、10~21日間の継続でベネフィット最大DAPT vs.アスピリン単独療法のSRに話を戻しますと、本研究は2018年7月にNew England Journal of Medicine誌に掲載されたPOINT trial(Johnston SC, et al. N Engl J Med. 2018;379:215-225.PMID: 29766750)の結果を受けて行われています。内容としては、急性軽症虚血性脳卒中または高リスクTIAと診断された患者で、クロピドグレル+アスピリンのDAPTを発症後3日以内に開始した場合と、アスピリン単独療法を発症後3日以内に開始した場合を比較し(最終的に組み入れられた研究は発症後24時間以内または12時間以内)、90日までの転帰(全死亡、脳卒中による死亡、非致死的虚血性/出血性脳卒中、頭蓋外出血、TIA、心筋梗塞、機能的転帰など)を調査した研究です。データベースのMEDLINE、EMBASE、CENTRAL、Cochrane Library、ClinicalTrials.gov、WHO website、PsycINFO、grey literatureを網羅的に検索して研究を集めています。2名の評価者によって、各研究のバイアスのリスクが評価され、最終的な合意形成は第三者を交えてされています。バイアスのリスクの評価基準は、Cochraneのrisk of biasツールの調整版が用いられており、各研究におけるランダム割り付けの有無、脱落データの割合、割り付けの隠蔽化、研究参加者/介入者/アウトカム評価者のマスキング、その他バイアスが評価されていますので、厳密な方法論で行われたSRとみてよいと思います。最終的に採用されたランダム化比較試験は3件(FASTER、CHANCE、POINT)で、合計症例数は1万447例でした。アウトカムごとに統合された結果をみると、DAPT群ではアスピリン単独群に比べ、非致死的脳卒中の再発が低減しており、リスク比は0.70(95%信頼区間[CI]:0.61~0.80)、絶対リスク減少率は1.9%(NNT換算すると53)でした。総死亡については両群で有意差はありませんでしたが(リスク比:1.27、95%CI:0.73~2.23)、中等度または重度の頭蓋外出血については、DAPT群のリスク比は1.71(95%CI:0.92~3.20)、絶対リスク上昇率は0.2%とアスピリン単独群よりも増加傾向にあり、軽微または小出血もDAPT群のリスク比は2.22(95%CI:1.60~3.08)、絶対リスク上昇率は0.7%と有意に増加しています。機能的転帰には有意差はありませんでした。経時的変化を見てみると、脳卒中イベントの発症の多くはDAPT群でもアスピリン単独群でもランダム化後10日以内に生じていますが、21日以降はほぼ平行線となっています。一方で、出血イベントはDAPT群で長期的にやや増えていきます。これらのことから、ハイリスクのTIAおよび軽度の虚血性脳卒中の患者における本研究の結果は、BMJ誌のClinical Practice Guideline4)のまとめとして以下の2点が強く推奨されています。イベント発生後24時間以内にDAPTを開始するDAPTは10~21日間継続し、21日を超える継続はしないDAPT継続中の患者さんの中には、脳卒中の再発が心配で治療を継続させたいという方もいるかもしれませんが、もし2剤で21日を超えて長期間投与されている場合は出血イベントのリスクを考慮し、処方医への情報提供を検討すべきと思います。1)Hao Q, et al. BMJ. 2018;363:k5108.2)Shojania KG, et al. Ann Intern Med. 2007;147:224-233.3)Densen P. Trans Am Clin Climatol Assoc. 2011;122:48-58.4)Prasad K, et al. BMJ. 2018;363:k5130.

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仮想現実=VR技術が手術を変える!セミナーのお知らせ

2019年7月18日(木)に開催される第74回日本消化器外科学会総会イブニングセミナーにて、医療VR(仮想現実)サービスを手掛けるHoloeyes株式会社とCareNetの共催で、手術をリアルにシミュレートする最新VR技術Holoeyes XRのレクチャーと体験を行います。Holoeyes XRは、患者のCTスキャンデータやMRIデータから3次元のVirtual Reality(VR)やAugmented Reality(AR)のアプリケーションを生成。患者の臓器の3Dモデルを共有して、術前のシミュレーションや術後の症例カンファレンスなどに活用できます。立体のビジュアルを共有することにより、非言語の豊なコミュニケーションが実現します。プレゼンターのHoloeyes COOで外科医の杉本真樹氏は、これまでに医用画像解析や手術支援システム、3Dプリンターによる生体質感臓器造形など、医学・工学分野の横断的な研究開発や科学教育に尽力。2014年Apple社Webにて、世界を変え続けるイノベーター30名に選出。2017年Microsoftイノベーションアワード優秀賞、およびWIRED AUDI イノベーションアワード受賞しています。本セミナーでは、参加者先着200名様にVRゴーグルを配布し、会場でHoloeyes XRで記録した複数の術例シミュレーションをVRで体験いただくことができます。医療現場や教育現場で活用できる次世代コミュニケーションツールを、この機会にぜひ体感ください。本セミナーと連携し、CareNet.comでもVRの世界を体感できる新しい医学教育コンテンツを紹介します。詳細概要日 時 :2019年7月18日(木)16:30~18:00場 所 :グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール1階 暁光(第13会場)地図はこちらテーマ :「VR仮想現実が消化管・肝胆膵手術支援を変える」~ホログラフィ手術支援加算と遠隔VRテレカンファレンス~演 者 :杉本 真樹 氏 (帝京大学冲永総合研究所 特任教授、Holoeyes株式会社 共同COO)座 長 :佐野 圭二 氏 (帝京大学医学部 外科学講座 教授)定 員 :200名注意事項:※VR体験にはスマートフォンをご持参ください。

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医師の起業に役立つ7つのビジネスモデル【医師のためのお金の話】第22回

医師の起業に役立つ7つのビジネスモデル先日、医師向けの医学論文意見交換サイトQuotomyを運営している大谷 隼一先生と、起業についてお話する機会がありました。大谷先生が勤務されている病院では、若手医師が起業を志すケースが多いそうです。医療とビジネスの間に横たわる障壁が確実に低くなってきていることを感じます。ただ、やみくもに起業しても成功するわけではありません。起業は道なき道を自分の経験と勘に従ってソロリソロリと進んでいくものです。そして、至る所に落とし穴が隠れています。小さな落とし穴であれば這い上がってこられますが、致命傷になってしまう大きな落とし穴も無数に存在します。机上の空論では、これらの落とし穴を回避することは不可能です。「習うより慣れよ」が起業を成功させるためには重要なのです。そうは言っても、もちろん押さえておくべきポイントはあります。それはビジネスモデルです。絶対に知っておくべき7パターンビジネスモデルとは、利益を生み出す商品やサービスに関する事業戦略と収益構造のことです。簡単に言うと、「誰に何をどのようにして提供して、どの部分でどれだけ儲けるかを簡潔に言い表したもの」です。いわゆるビジネスの戦略に相当します。ビジネスモデルが優れているからと言って起業が成功するわけではありませんが、稚拙であると確実に失敗します。このように言うと難しそうに思えますが、ビジネスモデルは小学生でも理解できる程度のものです。ここでは一般的によく言われている7つのパターンを挙げてみます。1)物販モデル(自動車、農家、工場など)2)小売モデル(スーパー、コンビニエンスストアなど)3)広告モデル(新聞、雑誌など)4)ライセンスモデル(映画、協会など)5)消耗品モデル(プリンターメーカーなど)6)継続課金モデル(電力会社、携帯電話など)7)マッチングモデル(不動産仲介、人材募集サイトなど)世の中のサービスは、上記のいくつかのパターンを組み合わせたものが多いです。たとえば、「食べログ」は3)広告モデルと6)継続課金モデルを組み合わせたビジネスモデルです。継続課金モデルとの組み合わせがカギそれでは、私たちが起業する場合に最もおすすめのビジネスモデルは何でしょうか?前述のビジネスモデルの中で最も安定的にビジネスを展開できると言われているのは6)継続課金モデルです。このビジネスモデルの代表例は、電力会社や携帯電話会社です。不動産賃貸業もこのモデルに該当します。電力会社は電気料金を、携帯電話会社は通信料を、大家さんは賃料を毎月課金し続けます。消費者はこれらの商品やサービスを利用し続けざるを得ません。継続課金モデルを採用している会社は、定期的に流入する売上のおかげで安定的なビジネスを展開できるのです。実際、このビジネスモデルを採用している企業の数は多く、最近では動画配信サイトの「Netflix」に代表されるサブスクリプション(売買ではなく特定期間内の使用権を販売する)方式が注目を集めています。ちなみに私の知り合いの医師は医療系コンサルティング事業を起業しましたが、顧問料として月額料金を徴収しています。この継続課金による定期収入でスタッフ給与などの固定費を賄って安定性を確保しつつ、クライアントが抱えている問題を解決するためのソリューションを提供することで青天井の収益を目指す戦略を掲げています。このケースは、前述の1)物販モデルと6)継続課金モデルの組み合わせであり、安定性と収益性を兼ね備えた秀逸なビジネスモデルのようです。押さえるべきは拡大よりも「絞り込み」ビジネスモデルで押さえておくべきポイントの1つに、対象とする領域や顧客の絞り込みが挙げられます。ありがちなのは、できるだけ多くの顧客を獲得しようとして、事業領域を広げ過ぎてしまうことです。ビジネスで利益を出すためには、事業領域の拡大ではなくて絞り込みが必要です。事業領域が広いと知識や経験を蓄積するのに時間が掛かります。これでは競合相手に勝つことはできません。ある領域に特化して付加価値をつけることが、競合相手を抑えて利益を出すことにつながるのです。前述の医療系コンサルティング事業を起業した医師は、クライアントを某専門職に絞っており、提供するサービスはある1つの問題解決手法に特化しています。このため、きわめて狭い領域ではあるものの、高い競争力を武器にして順調に業績を拡大しているようです。

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ASCO2019レポート 乳がん

レポーター紹介2019年5月31日~6月4日まで5日間にわたり、ASCO2019が開催された。2019年のテーマは“Caring for every patient, Learning from every patient”であった。薬物療法の大きな演題が少なかった代わりに、支持療法やサバイバーケアの演題が多く取り上げられているように感じた。乳がんにおいては直接私たちの実臨床を変えるような試験の発表はなかったが(残念ながらプレナリーセッションもなし)、日常臨床の中で解決しなければならないクリニカルクエスチョンに回答する試験、今後の開発の方向性を示唆する試験の発表が多かったように感じる。その一方で、日本が参加していない試験の報告も多く、わが国の世界の治療開発の中での課題を再認識させられた学会でもあった。乳がんのLocal/Regional口演から2演題、Metastatic口演から5演題を紹介する。臨床的リスク因子がOncotypeDXによる再発スコアに及ぼす影響(TAILORx追加解析)OncotypeDXは乳がん組織中の21遺伝子のメッセンジャーRNA発現を解析することにより再発リスクの予測、化学療法の上乗せ効果を予測する検査である。TAILORx試験は、再発スコア(RS)を11以下の低リスク、12~25の中間リスク、25以上の高リスクに分け、中間リスクに対する化学療法の上乗せ効果を検証した第III相試験である。主たる解析結果は昨年のASCOで発表され、中間リスクに対する化学療法の上乗せ効果は認められなかった。サブグループ解析では50歳以下でRSが16~20では2%の、21~25では7%の化学療法上乗せ効果が示唆された(Sparano JA, et al. N Engl J Med.2018;379:111-121.)。今回の発表では、RSに臨床的リスク因子を加えた解析が行われた。臨床的低リスクは3cm以下かつ低グレード、2cm以下かつ中間グレード、1cm以下かつ高グレードと定義され、臨床的低リスクに当てはまらない症例が臨床的高リスクと分類された。臨床的高リスクは30%であった。無病生存期間(disease free survival:DFS)および遠隔無再発生存期間は、RS11~25の中間リスクにおいて臨床リスクによる差を認めなかった。化学療法の有益性が示唆されている50歳以下のRS16~25に限った解析では、RS16~20かつ臨床低リスクでは化学療法上乗せ効果を認めなかった。また、この集団における化学療法の上乗せ効果は化学療法誘発閉経によるものである可能性が示唆された。今回の結果はOncotypeDXの実臨床での使い方に大きな影響を及ぼすものではないが、50歳以下(未閉経)RS16~25の場合に化学療法を上乗せするかどうかの参考にはなりえるかもしれない。本研究の結果は発表同日、論文発表された(Sparano JA, et al. N Engl J Med. 2019;380:2395-2405.)。HER2陽性乳がんに対する術前ペルツズマブ+化学療法vs.T-DM1+ペルツズマブ (KRISTINE試験)本試験はHER2陽性早期乳がんを対象とした、ペルツズマブ+トラスツズマブ+カルボプラチン+ドセタキセル(TCH+P)とT-DM1+ペルツズマブ(T-DM1+P)を比較する第III相試験である。各施設判定での主要評価項目は病理学的完全奏効(pathological complete response:pCR)率であり、pCRは56% vs.44%でTCH+P群で良好であった (Hurvitz SA, et al. Lancet Oncol. 2018;19:115-126.)。一方で、Grade3の有害事象や重篤な有害事象の発生頻度などでT-DM1+ペルツズマブ群のほうが安全性は良好であった。今回の発表では、副次評価項目の無イベント生存率(event free survival: EFS)、無浸潤がん生存率(invasive disease free survival:IDFS)などについて発表された。3年EFSはTCH+P群 vs.T-DM1+P群で94.2% vs.85.3%(層別化ハザード比:2.61、95%CI:1.36~4.98)とTCH+P群で良好であり、主要評価項目のpCR率と同様の傾向を示した。イベントとしては手術前の増悪がT-DM1+P群で15例(6.7%)と、イベントの約半数を占めていた。TCH+P群では0例であり、手術前の増悪がEFSの差につながったと考えられる。手術前に増悪した15例のうち14例についてHER2のmRNA発現が解析されており、全例で中央値を下回っていた。また、HER2の免疫組織化学染色は15例のうち10例(66.7%)が2+であり、このようなHER2の発現状況がT-DM1+Pの効果に影響を及ぼした可能性が考えられる。3年IDFSは92.0% vs.93.0%で両群に差は認めなかった。KATHERINE試験(von Minckwitz G, et al. N Engl J Med. 2019;380:617-628.)では術前治療で腫瘍が残存した症例に対してT-DM1の術後治療が無病生存(disease free survival:DFS)、全生存期間(overall survival:OS)を改善している。今回の結果との違いはHER2の発現の違いによる可能性は示唆されるが、さらなる検討が必要であろう。抗HER2療法で進行したHER2陽性転移乳がんに対するmargetuximab+化学療法 vs.トラスツズマブ+化学療法の比較第III相試験(SOPHIA試験)本試験は新しい抗HER2抗体であるmargetuximabと化学療法の併用をトラスツズマブと化学療法の併用と比較する試験である。margetuximabはトラスツズマブと同様の特異性と結合性の抗体認識部分を持ち、下流シグナルの抑制効果も同等である。トラスツズマブと異なるのはFCγ受容体結合部位であり、IgG1の野生型のままのトラスツズマブと異なり、CD16Aを活性化し、CD32Bを抑制するよう改変されている。CD16Aの遺伝子型が抗HER2抗体の治療効果予測因子となることが示唆されているため、margetuximabはCD16Aの変異型を有する腫瘍に対しても有効性が高いことが期待された。本試験は2レジメン以上の抗HER2治療歴(転移乳がんに対して1~3レジメン)の症例を対象として、主治医選択化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビンまたはビノレルビン)と併用して抗HER2抗体を1:1に割り付けた。margetuximab群に266例、トラスツズマブ群に270例が割り付けられた。主要評価項目は無増悪生存期間(progression free survival:PFS)およびOSであった。前治療としてトラスツズマブおよびペルツズマブは両群で全例が、T-DM1はそれぞれ約91%が受けていた。PFSの中央値は5.8ヵ月 vs.4.9ヵ月(ハザード比:0.76、95%CI:0.59~0.98、p=0.033)とmargetuximab群で良好であった。事前に計画されたCD16Aの遺伝子型によるサブ解析ではCD16A-FFもしくはFVではmargetuximab群で良好であったが、VVでは有意差を認めなかった。FF、FVのみでの解析では有意差を認めなかったが、margetuximab群で良好な傾向であった。また、OSについては有意差を認めなかった。奏効率、臨床的有用率についてもmargetuximabで良好であった。有害事象においてはmargetuximab群でinfusion-related reactionが多い傾向を認めた。今後、抗HER2抗体で進行した転移乳がんの治療として、margetuximabは1つの選択肢となってくる可能性があるが、残念ながら日本からはこの試験には参加していない。転移のあるHER2陽性乳がんにおけるneratinib+カペシタビンvs.ラパチニブ+カペシタビンの比較第III相試験(NALA試験)neratinibはHERファミリーのチロシンキナーゼドメインに不可逆的に結合することにより、下流シグナルを抑制する少分子化合物である。NALA試験は転移乳がんに対し2レジメン以上の抗HER2治療の既往がある症例を対象としてneratinib+カペシタビンvs.ラパチニブ+カペシタビンを比較する第III相試験で、主要評価項目はPFSおよびOSであった。neratinib群に307例が、ラパチニブ群に314例が登録された。PFSはハザード比0.76(p=0.0059)とneratinib群で良好であった。もう1つの評価項目であるOSではneratinib群で良好な傾向は認めたものの、統計学的には有意ではなかった。副次評価項目の中枢神経転移に対する介入の割合はneratinib群の22.8%に対し、ラパチニブ群で29.2%とneratinib群で良好であった(p=0.043)。有害事象は下痢(とくにGrade3/4の下痢)、悪心、嘔吐、食欲低下がneratinib群で多く、手足症候群はラパチニブ群で多い傾向にあった。患者報告によるQOLでは両群間に差を認めなかった。トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するアテゾリズマブ+nab-PTX併用試験のOSアップデート(IMpassion130)アテゾリズマブ+nab-PTX併用療法のTNBCに対する初回治療の結果は昨年の欧州臨床腫瘍学会で発表され、乳がんへの適応拡大が期待されている(Schmid P, et al. N Engl J Med. 2018;379:2108-2121.)。本試験ではPD-L1の発現(1%以上または未満)によって層別化が行われた。PD-L1は41%の症例で陽性であった。主要評価項目はPFSであり、ITT集団では7.2ヵ月 vs.5.5ヵ月、PD-L1陽性集団では7.5ヵ月 vs.5.0ヵ月で、アテゾリズマブ群で良好であった。今回は2回目の中間解析の結果が発表された。観察期間の中央値は18.0ヵ月であり、ITT集団で59%の死亡イベントが発生していた。ITT集団における生存期間中央値(median survival time:MST)は21.0ヵ月 vs.18.7ヵ月(ハザード比:0.86、95%CI:0.72~1.02、p=0.0777)、24ヵ月生存率は42% vs.39%であり、アテゾリズマブ群で良好な傾向を認めたものの、統計学的有意差は認めなかった。PD-L1陽性集団における解析はITT集団で陽性だった場合にのみ行う統計手法が用いられていたため参考値ではあるが、MSTは25.0ヵ月 vs.18.0ヵ月、24ヵ月生存率は51% vs.37%であり、より差が開く傾向がみられた。PD-L1陰性では、MSTは19.7ヵ月 vs.19.6ヵ月であり、アテゾリズマブ追加の有無にかかわらず差を認めなかった。MST、24ヵ月生存率のいずれもプラセボ群ではPD-L1陽性の場合に短い傾向がみられ、PD-L1が予後予測因子でもある可能性が示されている。乳がんにもついに免疫チェックポイント阻害剤の波が到達しようとしている。有害事象のマネジメントも含めて、先人たちに学びながら有効な治療を安全に患者さんに届けるようにしていきたい。なお、余談ではあるが本試験の共同演者には愛知県がんセンターの岩田 広治先生が入っていた。最近では国内からの参加のある国際共同試験の多くで共同演者に日本の先生が入っていることも多く、非常にうれしく感じている。ホルモン受容体陽性乳がんを対象としたエリブリン+ペムブロリズマブ併用療法とエリブリン単剤療法のランダム化第II相試験ホルモン受容体陽性乳がんは免疫学的には“コールド”と考えられており、免疫チェックポイント阻害剤の効果が得られにくいと考えられている。免疫チェックポイント阻害剤単剤では2.8~12%の奏効率が報告されている。一方で化学療法との併用の術前治療ではpCR率を上げることが報告されており、化学療法と免疫チェックポイント阻害剤の併用はホルモン受容体陽性乳がんの治療として有望である可能性が残されていた。本研究ではエストロゲン受容体および/またはプロゲステロン受容体陽性HER2陰性で、2レジメン以上のホルモン療法歴(術後治療含む)、転移乳がんに対する0~2レジメンの化学療法歴を有する症例を対象として、エリブリン+ペムブロリズマブ併用療法とエリブリン単剤療法を比較した第II相試験である。主要評価項目はPFS、副次評価項目として奏効率・臨床的有用率とOSが設定されていた。44例が併用群、46例が単剤群に割り付けられた。PFSは4.1ヵ月 vs.4.2ヵ月(ハザード比:0.8、95%CI:0.5~1.3、p=0.33)であり両群間に差を認めなかった。PD-L1陽性集団に限った解析でも同様の傾向であった。奏効率はITT集団で27% vs.34%、PD-L1陽性集団で23% vs.45%と、併用群で低い傾向であった。OSは両群間に差を認めなかった。有害事象は多くの項目で両群間に大きな差を認めなかったが、併用群では2例の免疫関連有害事象による治療関連死を認め、単剤群では認めなかった。本試験の結果をもって、ホルモン受容体陽性乳がんに対する免疫チェックポイント阻害剤の有用性を結論付けることはできないが、併用群で奏効率が低下した理由についてはreverse translational researchが必要であろう。MONALEESA-7 副次評価項目の全生存期間の中間解析で有意に延長MONALEESA-7は閉経前転移乳がんを対象に1次ホルモン療法に対するCDK4/6阻害剤であるribociclibの上乗せをみた第III相試験である。ホルモン療法としてはタモキシフェンもしくはアロマターゼ阻害剤とLHRHアゴニストであるゴセレリンが併用された。前治療としてホルモン療法は許容されておらず、化学療法は1レジメンのみ許容されていた。主要評価項目はPFS、キー副次評価項目としてOSが設定されていた。PFSの結果は昨年のSan Antonio Breast Cancer Symposiumで発表され、ribociclib群で23.8ヵ月に対しプラセボ群で13ヵ月(ハザード比:0.55、95%CI:0.44~0.69、p<0.0001)とribociclib群で良好であり、閉経前の症例においてもこれまでに閉経後を対象として行われてきたCDK4/6阻害剤と同様の上乗せ効果が得られることが示された。今回の発表では観察期間中央値34.6ヵ月時点でのOSの中間解析結果が発表された。生存期間中央値はribociclib群では未達であり、プラセボ群では40.9ヵ月であり、中間解析に割り振られたp値を下回りribociclib群で有意に長かった(ハザード比:0.712、95%CI:0.535~0.948、p=0.00973)。点推定値では、36ヵ月で71.2% vs.64.9%、42ヵ月で70.2% vs.46.9%と観察期間が延長するにつれて差が開いていく傾向を認めた。本試験はCDK4/6の1次治療への上乗せを検証した試験の中で、OSの結果を公表し統計学的有意差を認めた初の試験である。本試験の対象は閉経前であるため、現在の国内で1次治療に使用できるCDK4/6阻害剤に直接応用することはできない。また、中間解析でありイベントが十分に発生していないことなどから、今後の結果については最終解析の結果を待つ必要がある。本試験結果は発表同日New England Journal of Medicine誌に論文公表された( Im SA, et al. N Engl J Med. 2019 Jun 4. [Epub ahead of print])。なお、ribociclibは国内での開発が中止となっているため、本試験には日本からは不参加である。閉経前に対するCDK4/6の国内における開発は非常に重要であり、閉経前後を含めてタモキシフェンにパルボシクリブの上乗せを検証する、日本を含めたアジア共同医師主導治験のPATHWAY試験(UMIN000030816)の症例集積が完了する見込みである。結果の公表が待たれる。

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間質性膀胱炎(ハンナ型)〔IC:interstitial cystitis with Hunner lesions〕

1 疾患概要■ 概念・定義間質性膀胱炎(interstitial cystitis:IC)という名称は、1887年に膀胱壁に炎症と潰瘍を有する膀胱疾患を報告したSkeneによって最初に用いられた。そして1915年、Hunnerが、その膀胱鏡所見と組織所見の詳細を報告したことから、ハンナ潰瘍(Hunner's ulcer)と呼ばれるようになった。しかし、ハンナ潰瘍と呼ばれた病変は、胃潰瘍などで想像する潰瘍とは異なるため(詳細は「2 診断-検査」の項参照)、潰瘍という先入観で膀胱鏡を行うと見逃すことも少なくなく、現在はハンナ病変(Hunner's lesion)と呼ぶことになった。以前は米国・国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases:NIDDK)による診断基準(1999年)が用いられたが、これは臨床研究のための診断基準で厳し過ぎた。『間質性膀胱炎診療ガイドライン 第2版』では、「膀胱の疼痛、不快感、圧迫感と他の下部尿路症状を伴い、混同しうる疾患がない状態」の総称を間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(interstitial cystitis/bladder pain syndrome:IC/BPS)とし、このうち膀胱内にハンナ病変のあるものを、「IC/BPS ハンナ病変あり(IC/BPS with Hunner lesion)」、それ以外を「IC/BPS ハンナ病変なし(IC/BPS without Hunner lesion)」とすることとした。これまでは、ハンナ病変はないが点状出血を認めるIC/BPSを非ハンナ型ICとしていたが、これもIC/BPSハンナ病変なしに含まれることになる。要は、ハンナ病変が確認されたIC/BPSのみが「間質性膀胱炎」であり、ハンナ病変がなければ、点状出血はあってもなくても「膀胱痛症候群」となる。本症の名称については、前述の経緯も含め変遷があるが、本稿では「間質性膀胱炎(ハンナ型)」の疾患名で説明をしていく。■ 疫学過去のICに関する疫学調査の対象はIC/BPS全体であり、0.01~2.3%の範囲である。疾患に対する認知度が低いために、疫学調査の結果が低くなっている可能性がある。2014年に行ったわが国での疫学調査では、治療中のIC患者数は約4,500人(0.004%:全人口の10万人当たり4.5人)であった。性差は、女性が男性の約5倍とされる。■ 病因尿路上皮機能不全として、グリコサミノグリカン層(glycosaminoglycan:GAG layer)異常が考えられている。GAG層の障害は、尿路上皮の防御因子の破綻となり、尿が膀胱壁へ浸潤して粘膜下の神経線維がカリウムなどの尿中物質からの影響を受けやすくなり、疼痛や頻尿を引き起こすと考えられる。しかし、GAG層が障害される原因は解明されていない。このほか、細胞間接着異常、上皮代謝障害、尿路上皮に対する自己免疫が推測されている。また、肥満細胞の活性化によりサイトカインなどの炎症性メディエータが放出され、疼痛、頻尿、浮腫、線維化、粘膜固有層内の血管新生などが引き起こされるとされる。これら以外にも免疫性炎症、神経原性炎症、侵害刺激系の機能亢進、尿中毒性物質、微生物感染など、複数の因子が関与していると考えられている。■ 症状IC/BPSの主な症状には、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿意亢進、膀胱不快感、膀胱痛などがある。尿道、膣、外陰部痛、性交痛などを訴えることもある。不快感や疼痛は膀胱が充満するに従い増強し、そのためにトイレにいかなければならず、排尿後には軽減・消失する場合が多い。■ 分類膀胱鏡にてハンナ病変が確認されたIC/BPSに限り「IC/BPS ハンナ病変あり」とし、ハンナ病変がないIC/BPSは「IC/BPS ハンナ病変なし」と分類する。「IC/BPS ハンナ病変あり」は、間質性膀胱炎(ハンナ型)として2015年1月1日に難病指定された。■ 予後良性疾患であるので生命への影響はない。1回の経尿道的ハンナ病変切除・焼灼術で症状改善が生涯持続することもあるが、繰り返しの手術を必要とし、疼痛コントロールがつかなかったり、自然経過あるいは手術の影響によって膀胱が萎縮したりして、膀胱摘出術が必要となることもまれにある。症例によって経過はさまざまである。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断のフローは、『間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドライン』(2019/6発刊)に詳しく紹介されているので参照いただきたい。本稿では、エッセンスだけにとどめる。■ 検査1)症状IC/BPSを疑う症状があることが、最も重要である(「1 疾患概要-症状」の項参照)。2)排尿記録排尿時刻と1回排尿量を24時間連続して記録する。蓄尿時膀胱・尿道部痛または不快感により頻尿となるため、1回排尿量が低下し、排尿回数が増加している症例が多い。多くの場合、夜間も日中同様に頻尿である。3)尿検査多くの場合、尿所見は異常を認めない。赤血球や白血球を認める場合は感染や尿路上皮がんとの鑑別を行う必要がある。4)膀胱鏡ハンナ病変(図)を認める。ハンナ病変とは、膀胱粘膜の欠損とその周囲が毛細血管の増生によりピンク色に見えるビロード状の隆起で、しばしば瘢痕形成を伴う。表面にフィブリンや組織片の付着が認められることがある。膀胱拡張に伴い病変が亀裂を起こし、裂け、そこから五月雨状あるいは滝状に出血するため、拡張前に観察する必要がある。図 IC/BPSハンナ病変ありの膀胱鏡所見画像を拡大する■ 鑑別診断過活動膀胱、細菌性膀胱炎、慢性前立腺炎、心因性頻尿との鑑別を要するが、子宮内膜症との鑑別はともに慢性骨盤痛症候群であるから非常に難しい。しかし、最も注意すべきは膀胱がん、とくに上皮内がんである。膀胱鏡所見も、瘢痕を伴わないハンナ病変は、膀胱上皮内がんとよく似ており鑑別を要する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)病因が確定されていないため根治的な治療はなく、対症療法のみである。また、IC/BPS ハンナ病変あり/なしを区別した論文は少ない。なお、わが国で保険収載されている治療は「膀胱水圧拡張術」だけである。■ 保存的治療患者の多くが食事療法を実行しており、米国の患者会である“Interstitial Cystitis Association”によればコーヒー、紅茶、チョコレート、アルコール、トマト、柑橘類、香辛料、ビタミンCが、多くのIC/BPS患者にとって症状を増悪させる飲食物とされている。症状を悪化させる食品は、個人によっても異なる。膀胱訓練は決まった方法はないものの有効との報告がある。■ 内服薬治療三環系抗うつ薬であるアミトリプチリン(商品名:トリプタノール)は、セロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを抑制して中枢神経の痛み刺激の伝達を抑えるほか、ヒスタミンH1受容体をブロックして肥満細胞の活動を抑制するなどの作用機序があると考えられ、有効性の証拠がある。トラマドール(同:トラマール)、抗けいれん薬であるガバペンチン(同:ガバペン)も神経因性疼痛に対するある程度の有効性があるとされる。また、肥満細胞の活性化抑制を目的として、スプラタスト(同:アイピーディ)、ロイコトリエン受容体拮抗薬のモンテルカスト(同:キプレス、シングレア)がある程度有効である。免疫抑制薬のシクロスポリンA、タクロリムス、プレドニゾロンはある程度の有効性はあるが、長期使用による副作用に十分注意が必要であり、安易な使用はしない。このほかNSAIDs、選択的COX-2阻害薬、尿のアルカリ化のためのクエン酸もある程度の有効性がある。■ 膀胱内注入療法ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide:DMSO)は炎症抑制、筋弛緩、鎮痛、コラーゲンの分解、肥満細胞の脱顆粒などの作用があるとされ、IC/BPSに有効性のエビデンスがある。ハンナ病変ありのIC/BPSには効果があるとの報告もある。わが国では、現在臨床試験中である。ヘパリン、ヒアルロン酸はGAG層の欠損を補うことにより症状を緩和すると考えられ、IC/BPSに対してある程度の有効性のエビデンスがある。リドカインは短時間で疼痛の軽減が得られるが、その効果は短期間である。ボツリヌス毒素の膀胱壁内(粘膜下)注入、ステロイドのハンナ病変および辺縁部膀胱壁内注入も、ある程度の有効性のエビデンスがある。■ 手術療法膀胱水圧拡張術が、古くからIC/BPSの診断および治療の目的で行われてきた。有効性のエビデンスは低く、奏効率は約50%、奏効期間は6ヵ月未満との報告が多い。IC/BPSハンナ病変ありには、経尿道的ハンナ病変切除・焼灼術が推奨される。反復治療を要することが多いが、症状緩和には有効である。膀胱全摘出術や膀胱部分切除術+膀胱拡大術は、他の治療がすべて失敗した場合にのみ施行されるべきである。ただし、膀胱全摘出術後も疼痛が残存することがある。4 今後の展望これまではIC/BPS ハンナ病変あり/なしを区別、同定して行われた研究は少ない。世界的に「IC/BPSハンナ病変あり」は1つの疾患として、他のIC/BPSとは分けて考えるという方向になった。以前の非ハンナ型ICを含む「IC/BPSハンナ病変なし」は、heterogeneousな疾患の集合であり、これから「IC/BPSハンナ病変あり」(ハンナ型IC)を分けることによって、薬の開発も行われやすく、薬の効果評価も明確なものになると期待される。5 主たる診療科泌尿器科膀胱水圧拡張術を保険診療として行うためには、施設基準が必要である。間質性膀胱炎(ハンナ型)(「IC/BPSハンナ病変あり」のこと)は、難病指定医により申請が可能である。日本間質性膀胱炎研究会ホームページに掲載されている「診療に応じる医師」が参考になるが、このリストは医師からの自己申告に基づくものであり、診療内容は個々の医師により異なる。日本排尿機能学会認定医のような、排尿障害に関する専門医が望ましい。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本間質性膀胱炎研究会(Society of Interstitial Cystitis of Japan:SICJ)(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 間質性膀胱炎(ハンナ型)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)日本間質性膀胱炎研究会 ガイドライン作成委員会 編集. 間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドライン. リッチヒルメディカル;2019. 2)Hanno PM,et al. J Urol. 1999;161:553-557.3)Yamada Y,et al. Transl Androl Urol. 2015;4:486-490.4)Tomoe H. Transl Androl Urol. 2015;4:600-604.5)Tomoe H, et al. Arab Journal of Urol. 2019;17:77-81.6)Whitmore KE, et al. Int J Urol. 2019;26:26-34.公開履歴初回2019年7月9日

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頭打ちの後発医薬品使用の裏で始まった新制度【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第28回

10年前の後発医薬品の使用割合はどのくらいだったか、覚えていますか? 2009年の後発医薬品の使用割合は35%で、計算方法は多少変わっていますが、現在は約70%ですので、約10年で後発医薬品の使用は2倍に増えています。報酬改定に追われるように…、というのは否めませんが、保険薬局の努力が後発医薬品の使用割合の増加に大きく貢献したことは間違いありません。しかし、このたび後発医薬品の使用割合が頭打ちになっているという調査結果が報告されました。2018年10月から19年1月にかけて、28都府県の保険薬局91施設を対象に実施した聞き取り調査の結果によると、後発医薬品調剤体制加算3の算定要件(数量ベースの後発品使用割合85%の基準)が新設されたことについて、70.7%が「要件が厳しい」と答えた。理由としては▽薬局の取り組みだけでは困難▽処方元の後発品に対する意識が変わらない限り難しい▽処方箋の「変更不可」欄がある限り難しい―といった声が上がった。(2019年6月17日付 日刊薬業)これは、日本製薬団体連合会という製薬企業の団体の中にある保険薬価研究委員会が行った研究報告です。後発医薬品の数量割合が70%を超えたあたりから頭打ち状態になっている保険薬局が多い点や、政府目標の80%を達成するためには、保険薬局の努力だけでは限界を感じている点などが明らかになっています。「現在が頭打ち」という状況は、私個人としても実感しています。2018年の報酬改定では、医科の報酬でも後発医薬品の使用を促進する改定がいくつかあったものの、調剤においては後発医薬品調剤体制加算の基準が引き上げられ、一番点数が大きい要件は85%になりました。正直、処方箋の変更不可欄のチェック率や、小児処方の変更の難しさなどを考えると、私が関わっている薬局での85%達成は難しいなと思っています。後発医薬品、上市後10年経過でさらに薬価引き下げここで改めて、後発医薬品の数量割合の目標を確認してみましょう。2017年に閣議決定された、いわゆる「骨太の方針2017」で、2020年9月までに後発医薬品の使用割合を80%とする、という目標が決まりました。これは内閣府が旗を振っているものですから、厚生労働省も上から達成を監視されているという状況なのでしょう。2020年9月までの報酬改定はあと1回だけです。かなり厳しい状況ですが、個人的には医師の処方権を考えると変更不可欄がなくなることはないだろうと思っていますので、もしかしたら目標達成の期限を延ばすのでは、とも思っています。しかし、国もただ手をこまねいているわけではなく、2019年4月より長期収載品の薬価を後発医薬品並みに引き下げる「G1、G2ルール」というかなり力業の制度が導入されました。現在は、最初の後発医薬品の収載から5年を経過し、10年を経過しない品目のうち、後発医薬品への置き換え率が80%となる先発医薬品の薬価が引き下げられています(Z2ルール)。G1ルールではそれに加え、10年が経過した品目に関して、後発医薬品への置き換え率が80%以上の品目の薬価を6年かけて2年ごとに薬価を引き下げていき、G2ルールでは置き換え率80%未満の品目の薬価を10年かけて2年ごとに引き下げていきます。これによって、長期収載品を有する製薬企業は、長期収載品を販売し続けるべきか、撤退すべきかの判断を迫られることになります。実際には、長期収載品を保持し続けたり、権利を他社に移譲したりする企業もあるようですが、市場から撤退する長期収載品が増える→後発医薬品を選択せざるを得ない医療機関が増える→後発医薬品の使用割合が増える、という流れが予想されます。金額ベースから数量ベースになったり、母数の考え方が変わったりと紆余曲折があった後発医薬品の使用促進が佳境を迎えていますので、引き続き注目したいと思います。

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