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抗精神病薬の推奨用量のコンセンサス、最も高い製剤は~ICSAD-2

 専門家のコンセンサスに基づいた臨床的に同等の推定用量や推奨用量は、臨床診療および研究において、精神疾患に対する薬物治療をサポートする貴重な情報となりうる。カナダ・ダルハウジー大学のMatthew Kt McAdam氏らは、精神疾患に対する新規薬剤と過去に報告されているコンセンサスの低い薬剤について、用量の同等性と推奨用量の確立および更新を目的に、第2回となる抗精神病薬投与に関する国際的なコンセンサス確立のための研究「Second International Consensus Study of Antipsychotic Dosing:ICSAD-2」を行った。Journal of Psychopharmacology誌2023年10月号の報告。 2段階のデルファイ調査プロセスを用いて、26製剤に関する臨床専門家および研究専門家の幅広い国際サンプルにおけるコンセンサスの確立および更新を行い、統合失調症治療の推奨用量および臨床的に同等の推定用量を検討した。等価用量推定の参照薬剤は、経口剤15種類および長時間作用型注射剤(LAI)7種類に対してはオランザピン経口剤20mg/日、短時間作用型注射剤(SAI)4種類に対してはハロペリドール筋注5mgとした。精神疾患に対する経口剤44種類、LAI 16種類、SAI 14種類についても、同等の推定用量および推奨用量の最新リストへの更新を行った。 主な結果は以下のとおり。・24ヵ国の調査参加者72人が、経口剤、LAI、SAIの同等の推定用量および推奨用量を提供した。調査の1段階から2段階にかけて、コンセンサスは向上した。・最終的なコンセンサスは、LAIで最も高く、経口剤は中程度、SAIは最も低かった。 著者らは「精神疾患に対する抗精神病薬の投与量を最適化するためのランダム化対照試験(フィックスドーズ、マルチプルドーズ)は依然としてまれであり、専門家によるコンセンサスは、臨床的投与量の同等性を推定するための有効な代替手段である」とし、「本結果は、精神疾患治療薬に関する臨床実践、ガイドラインの開発、研究デザインおよび解釈をサポートする可能性がある」とまとめている。

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11月26日開催、『第3回アンチエイジングセミナーin広島』【ご案内】

 2023年11月26日(日)、『第3回アンチエイジングセミナーin広島』が開催される。参加登録は医師、歯科医師、研究者、メディカルスタッフほか、医療関係者であれば可能で、参加費は無料。なお、申込締切は11月20日(月)で、定員120名に達し次第、締め切りとなる。 “実践のため抗加齢医学の現在地を知るセミナー”と題し、各領域のエキスパートが講演を行う。「男性更年期の診療は実際にどのように行われているか」「女性の健康を左右する因子にどう挑むか」「寿命にかかわる歯の健康と乳酸菌の関係性」「血管の若返り法」など、アンチエイジングにとって重要なテーマを取りそろえており、最新の知識を学び、予防医療への未来へ一歩リードできるようなセミナーを目指している。 主催の日本抗加齢医学会 連携委員会は「広島からアンチエイジング医学の仲間の輪をより広げていくため、知り合いや関係者などアンチエイジングに興味のある方をお誘い合わせの上、参加登録をお願いしたい」と呼び掛ける。 開催概要は以下のとおり。開催日時:11月26日(日)13:00~16:00開催場所:TKPガーデンシティPREMIUM広島駅前 ホール4A     (広島県広島市南区大須賀町13-9 ベルヴュオフィス広島4階)開催形式:会場開催(WEB配信はなし)参加方法:無料(事前参加登録制)申込締切:11月20日(月)または定員120名になり次第終了■参加登録はこちら【プログラム】 座長:井手下 久登氏(いでした内科・神経内科クリニック) 講演1.「男性更年期外来のリアル」     池岡 清光氏(医療法人池岡診療所池岡クリニック 院長) 講演2.「女性は生命長寿!しかし晩年には健康格差は大となる~その実態と対策~」     太田 博明氏(川崎医科大学産婦人科 特任教授/総合医療センター産婦人科 特任部長) 講演3.「L8020乳酸菌とオーラルケア」     二川 浩樹氏(広島大学大学院医系科学研究科 口腔生物工学分野 教授) 講演4.「ヒトは本当に血管から老いる:酸化ストレスの役割」     東 幸仁氏(広島大学 原爆放射線医科学研究所 教授)【主催】 日本抗加齢医学会 連携委員会【お問い合わせ先】 日本抗加齢医学会事務局 〒103-0024 東京都中央区日本橋小舟町6-3 日本橋山大ビル4F TEL:03-5651-7500 FAX:03-5651-7501 E-mail:seminar@anti-aging.gr.jp 学会ホームページはこちら

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オンコマインDx、カプマチニブのMETエクソン14スキッピング非小細胞肺がんに対するコンパニオン診断として追加申請/サーモフィッシャー

 サーモフィッシャーは、オンコマインTM Dx Target Test マルチ CDxシステム(以下、オンコマインDx)について、カプマチニブ塩酸塩水和物(以下、カプマチニブ)のMETエクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対するコンパニオン診断として、2023年11月1日付で厚生労働省に医療機器製造販売承認事項一部変更申請を行ったと発表。 カプマチニブに対するコンパニオン診断システムとしての適応追加の承認が得られれば、オンコマインDxは、非小細胞肺がんの7ドライバー遺伝子(BRAF、EGFR、HER2、ALK、ROS1、RET、MET)、甲状腺がんの1ドライバー遺伝子(RET)、甲状腺髄様がんの1ドライバー遺伝子(RET)を網羅するコンパニオン診断システムとなる。

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RET変異甲状腺髄様がん、セルペルカチニブvs.マルチキナーゼ阻害薬/NEJM

 RET変異甲状腺髄様がん治療において、セルペルカチニブはカボザンチニブまたはバンデタニブに比べて、無増悪生存期間(PFS)および治療成功生存期間(FFS)の延長をもたらすことが、米国・マサチューセッツ総合病院のJulien Hadoux氏らが行った第III相無作為化試験の結果で示された。セルペルカチニブは、選択性が高く強力なRET阻害薬で、第I・II相試験で進行RET変異甲状腺髄様がんに対する有効性が示されていたが、マルチキナーゼ阻害薬と比較した場合の有効性については明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2023年10月21日号掲載の報告。切除不能の局所進行、転移のあるキナーゼ阻害薬未治療の患者を対象に試験 本試験の対象は、病理学的に確認された切除不能の局所進行または転移のあるRET変異甲状腺髄様がんで、キナーゼ阻害薬未治療であり、試験登録前14ヵ月間に病勢進行が認められた12歳以上の患者とした。1次治療として、セルペルカチニブ(160mg、1日2回)と医師の選択によるカボザンチニブ(140mg、1日1回)またはバンデタニブ(300mg、1日1回)を非盲検で比較した。 被験者はセルペルカチニブ群または医師の選択によるカボザンチニブ/バンデタニブ群(対照群)に2対1の割合で無作為に割り付けられた。対照群の患者は、病勢進行後にセルペルカチニブ群へのクロスオーバーが認められた。 プロトコル規定の中間有効性解析での主要評価項目は、盲検下独立中央判定で評価したPFSだった。なお、PFSの有意性が認められた場合にのみ、FFSを副次評価項目として検証した。その他の副次評価項目は、全奏効率および安全性だった。セルペルカチニブ群はPFS、FFSとも未到達 2020年2月~2023年3月に19ヵ国176施設で、合計291例が無作為化された(セルペルカチニブ群193例、対照群98例[うちカボザンチニブ73例])。 追跡期間中央値12ヵ月時点で、PFS中央値は、セルペルカチニブ群は未到達、対照群は16.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.2~25.1)だった(病勢進行または死亡に関するハザード比[HR]:0.28、95%CI:0.16~0.48、p<0.001)。12ヵ月時点のPFS率は、セルペルカチニブ群86.8%(95%CI:79.8~91.6)、対照群65.7%(51.9~76.4)だった。 FFS中央値は、セルペルカチニブ群は未到達、対照群は13.9ヵ月だった(病勢進行や治療関連有害事象または死亡による治療中止に関するHR:0.25、95%CI:0.15~0.42、p<0.001)。12ヵ月時点のFFS率は、セルペルカチニブ群86.2%(95%CI:79.1~91.0)、対照群62.1%(48.9~72.8)だった。 全奏効率は、セルペルカチニブ群69.4%(95%CI:62.4~75.8)、対照群38.8%(29.1~49.2)だった。 減量に至った有害事象の発現割合は、対照群77.3%に対してセルペルカチニブ群は38.9%だった。治療中止に至ったのは対照群26.8%に対してセルペルカチニブ群は4.7%だった。

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セルペルカチニブによるRET陽性NSCLC1次治療、PFSを有意に延長/NEJM

 進行RET融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の患者に対し、セルペルカチニブはプラチナベースの化学療法(ペムブロリズマブの併用を問わず)と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが、中国・同済大学のCaicun Zhou氏らが行った第III相無作為化試験で示された。セルペルカチニブは中枢移行性を有する強力な選択的RET阻害薬で、進行RET融合遺伝子陽性NSCLC患者に対する有効性が、第I・II相の非無作為化試験で示されていた。NEJM誌オンライン版2023年10月21日号掲載の報告。切除不能なRET陽性・非扁平上皮NSCLCで全身性治療未実施の患者を対象に試験 1次治療としてのセルペルカチニブの有効性と安全性を検証した本試験は、病理学的に確認された切除不能なStageIIIB、IIIC、IVのRET融合遺伝子陽性・非扁平上皮NSCLCで、転移後に薬物治療を受けていない18歳以上の患者を対象に行われた。研究グループは被験者を、セルペルカチニブ(160mg、1日2回、21日サイクル)の投与を受ける群、プラチナベースの化学療法を受ける群(対照群)に、無作為に割り付けた。対照群には、治験担当医師の裁量でペムブロリズマブ(200mg)を投与した。試験薬の投与期間中、対照群に盲検下独立中央判定(BICR)で評価された病勢進行が認められた場合は、セルペルカチニブ群へのクロスオーバーが認められた。 主要評価項目は、ITTペムブロリズマブ集団(対照群に割り当てられた場合に医師がペムブロリズマブを投与する予定だった患者を含む)と被験者全体のITT集団の両集団における、BICRで評価したPFSだった。PFS中央値、セルペルカチニブ群24.8ヵ月、対照群11.2ヵ月 2020年3月~2022年8月に、23ヵ国103施設から計261例(全ITT集団)が登録された。 ITTペムブロリズマブ集団は計212例だった(セルペルカチニブ群129例、対照群83例)。被験者は65歳未満、女性、非喫煙者が多かった。 事前計画の中間有効性解析時点(死亡または病勢進行が98イベント後と規定)のPFS中央値は、セルペルカチニブ群24.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.9~推定不能)、対照群11.2ヵ月(8.8~16.8)だった(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.46、95%CI:0.31~0.70、p<0.001)。 奏効を示した患者の割合は、セルペルカチニブ群84%(95%CI:76~90)、対照群65%(54~75)だった。中枢神経系に影響をもたらした病勢進行までの時間に関する原因特異的HRは0.28(95%CI:0.12~0.68)だった。 有効性に関する全ITT集団(261例)の結果は、ITTペムブロリズマブ集団の結果と類似していた。有害事象は、両群ともに既報のものと変わらなかった。

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ナーシングホーム入所者に対するユニバーサル除菌は感染症による入院を予防できるか?(解説:小金丸博氏)

 ナーシングホームに入居する高齢者では、感染症による入院リスクや薬剤耐性菌(MRSA、ESBL産生菌など)の保菌率が高いことが懸念されている。今回、ナーシングホーム入所者に対して除菌を行うことで感染症による入院を減らすことができるかを検討したランダム化比較試験の結果が、NEJM誌オンライン版2023年10月10日号に報告された。除菌を行った群では感染症による入院が減少し(ベースライン期間と介入期間のリスク比:0.83、95%信頼区間:0.79~0.88)、日常ケア群とのリスク比の差は16.6%だった。ランダムに抽出した入所者に対して行った多剤耐性菌の保菌率は除菌を行った群で減少を認め、日常ケア群と比較した相対リスクは0.70(95%信頼区間:0.58~0.84)だった。感染症による入院を1件防ぐのに必要な治療数(NNT)は9.7件であり、ナーシングホーム入所者に対するユニバーサル除菌は有効性の高い予防法である可能性が示唆された。 過去の研究において、ICUセッティングや種々の医療機器装着患者に対する除菌により感染リスクが低減することが示されていたが、同様の結果が高齢者介護施設入所者においても示された。今後、日本においても介護施設を利用する高齢者の増加が予想されており、除菌という介入を行うことで施設からの病院受診や入院を減らすことができるのであれば、医療経済の観点からも有用な知見と考える。 本研究で実施された除菌では、10%ポビドンヨードの鼻腔内塗布(隔週ごとに1日2回5日間)およびシャワー入浴時に4%クロルヘキシジン含有洗浄剤(ベッドでの清拭にはリンス不要の2%クロスヘキシジン含有クロス)を使用した。除菌による有害事象として発疹が34件、咽頭炎が1件報告されているものの重篤なものは認めておらず、安全性に関しても大きな問題はなさそうである。今後、本試験で行われたような高齢者施設入所者に対する除菌を実効性のある介入方法とするには、使用する消毒薬剤のコストの問題を解決することや、ケアを行う介護者の負担軽減が不可欠になると考える。

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サンフランシスコのTCT2023で6つの発表【臨床留学通信 from NY】第53回

第53回:サンフランシスコのTCT2023で6つの発表TCT(Transcatheter Cardiovascular Therapeutics)2023での発表のため、サンフランシスコに来ております。サンフランシスコには4年前も来ているので観光はとくにせず、学会会場のみ3日弱の滞在です。コロナの影響を受けて街中の多くの店舗が閉まっていて、治安も悪そうな印象です。残念ながらホームレスの方がかなりいました。Abstractとしてグループ内で8つの口頭発表があり、私自身もプレゼンターとして筆頭著者かどうかにかかわらず6つの発表がありました。そのうち幸運にもグループ内で2つ、米国心臓病学会誌(JACC)(impact factor:24)と同時発表をすることができました。1つはintravascular imaging guided vs. functionally guided vs. angio guided PCIを比較したネットワークメタアナリシスです1)。今年3月のACC(米国心臓病学会)で、ニューヨーク大学のSripal Bangalore先生から研究にお誘いいただき、数年前から構想もあったこともあり、すぐに草稿を作成しJACCに提出。TCTとの同時発表も踏まえて、査読プロセスは比較的速く進みました。もう1つは、米国の主に65歳以上の政府保険であるMedicareのデータを使った解析です2)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の津川 友介先生との共同研究でした。こちらは改訂を4日間でできれば同時発表できることになり、筆頭著者の先生が頑張られて提出できたため、1週間以内にアクセプトされ、TCTと同時発表となりました。発表すること自体はある程度慣れ、論文としてほぼ同時に発表しているため内容は把握できているので、スライドを作ってしまえば、英語での質疑応答も問題ありませんでした。ただし、今回は6つの自分の発表があったため、ほかの発表を聴いて知識のアップデートをする余裕はありませんでした。NEJMに載るようなLate breaking clinical trialsセッションは、TCTMDというTCTのニュースサイトによくまとまっているので、それを見て確認することができました。学会では、ほかのセッションを聴く代わりに、私の論文をレビューしてくださるマウントサイナイ医科大学やニューヨーク大学の先生などへの挨拶を欠かさず行います。来年7月からボストンのマサチューセッツ総合病院に在籍することになるため、ボストン界隈の先生方とも以前のインタビューの中で面識がある方々に挨拶いたしました。そのような先生方に会いますと、“Email me when you come to Boston”と言っていただけました。東海岸と西海岸とでは3時間の時差があり、体調もなんとなく良くない気もしますが、西海岸だと日本から参加される先生方も多い印象です。こちらで臨床をしている先生方ともお会いすることができました。常に就職活動が付きまとう米国において、学会はネットワーク作りに有用だと改めて思いました。Column米国最大のカテーテル学会であるTCTですが、ランチョンの弁当のクオリティはかなり低め。しかしながら、今年はAbstract presenterがfacultyと見なされるためfaculty loungeが使えて、おいしい昼食にありつけました。和食弁当も学会でよく出るので、そちらのほうがヘルシーで良いとは思います。参考1)Kuno T, et al. J Am Coll Cardiol. 2023 Oct 23. [Epub ahead of print]2)Ueyama HA, et al. J Am Coll Cardiol. 2023 Oct 16. [Epub ahead of print]

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英文の表現を豊かに!自動書き換えツールが超絶便利【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第26回

英文の表現を豊かに!自動書き換えツールが超絶便利1)英文書き換えで文章をブラッシュアップする2)「QuillBot」を有効活用する3)書き換えた後の文章を自分で確認する学会発表のプレゼンテーションを準備する際には、多くの英文を書く必要があります。しかし、自分で書いていると、つい単調な表現の繰り返しになってしまうことはないでしょうか。非ネイティブの日本人にとっては、多彩な英語表現を操るのは至難の技です。そんなときに役立つのが「QuillBot(クイルボット)」というウェブツールです。「QuillBot」は英文法のチェックや文章の要約などを行ってくれるツールで、とくに役に立つのが「英文の書き換え(パラフレーズ)」の機能です。このパラフレーズをうまく使いこなすことで、同じ表現の繰り返しを避けたり、他の論文から引用する際の「剽窃」を防いだりすることができます。使い方は非常にシンプルです。まずQuillBotのページにアクセスし、左のページに書き換えたい英文を入力します〈図1〉。「Paraphrase」のボタンをクリックすると、右側に書き換えられた英文が表示され、書き換えられた箇所はオレンジ色や青色になっていることがわかります。〈図1〉画像を拡大する〈図2〉に示すように、上部の左からFluency、Formalなど、場面別のモードを選ぶことができるため、抄録やスライド・ポスターに使用する場合は「Formal」を、伝わりやすい英語で発表用原稿を作成したいという場合は「Fluency」を選ぶ、といった工夫をすることができます。また、書き換えた後の文章が自分の意図にそぐわない場合、単語をクリックすると他の候補単語が表示されるため、好みの表現を選ぶことができます。〈図2〉画像を拡大する注意点としては、医学的な専門用語を入力すると、一般向けにわかりやすいフレーズに書き換えてしまい、本来の意図と異なる文章になってしまう場合があることです。そのため、結果を過信せず、書き換えた後の表現は必ず自分自身で確認することをお勧めします。基本的な機能は無料で利用可能で、課金してアップグレード(年間約100ドル、2023年9月時点)すると、FormalやSimpleといった場面別のモードも選べるようになります。また、「Google Chrome」や「Word」にも機能拡張が可能となっており、用途に応じて追加するとよいでしょう。講師紹介

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第186回 エピペンを打てない、打たない医師たち……愛西市コロナワクチン投与事故で感じた、地域の“かかりつけ医”たちの医学知識、診療レベルに対する不安

新型コロナワクチン接種後に女性が死亡した問題で事故調査委員会が報告書公表こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。MLBのワールドシリーズ、NPBの日本シリーズが終わり、今年の野球シーズンも終幕を迎えました。ワールドシリーズは、テキサス・レンジャーズがアリゾナ・ダイヤモンドバックスを4勝1敗で破り、初優勝を飾りました。総じて地味で大味な戦いでしたが、かつてヤクルト・スワローズに在籍したことがあるという、ダイヤモンドバックスのトーリ・ロブロ監督の、バントや盗塁を駆使した日本の高校野球のような戦い方(「スモール・ベースボール」と呼んでいました)はなかなか興味深かったです(レンジャーズに1勝しかできませんでしたが…)。一方、第7戦までもつれた日本シリーズは、第6戦の山本 由伸投手の目が覚めるような完投劇があったものの、勢い勝った阪神タイガースの38年振りの日本一で幕を閉じました。オリックス第7戦登板の宮城 大弥投手は、立ち上がりはとてもいい出来に見えました。しかし、阪神のシェルドン・ノイジー外野手に投げたチェンジアップが少しだけ甘く入り、先制3ラン。あの失投さえなければ投手戦がそのまま続き、勝敗はどうなっていたかわかりません。いずれにせよ、山本投手はいいお土産を持って米国に渡ることになります。これから1、2ヵ月は大谷 翔平選手、山本投手のFA移籍先報道が熱くなるでしょう。さて今回は、昨年、愛知県愛西市で新型コロナワクチン接種後に女性が死亡した問題で、1ヵ月ほど前に愛西市医療事故調査委員会が公表した調査報告書について書いてみたいと思います。「早期にアドレナリンが投与された場合、救命できた可能性を否定できない」と結論付けた報告書ですが、なぜ、アドレナリンが適切に投与されなかったのか、アナフィラキシーを起こしている患者を前にしてその判断ができなかった医師は、どんなキャリアでどれくらいの診療レベルだったのかについて、報告書には詳細に書かれていません。「かかりつけ医機能」が発揮されるための制度整備が議論されている中、地域の医師会の医師たちの医学知識、診療レベルを疑うような事例だけに、せっかく報告書を公表するならば、そのあたりまで突っ込んでもらいたいと思いました。「早期にアドレナリンが投与された場合、救命できた可能性を否定できない」と結論この事故は、昨年11月、愛西市の集団接種会場で、新型コロナワクチンを接種した女性(当時42)が直後に容体が急変し死亡した、というものです。専門家らで構成された愛西市医療事故調査委員会は9月26日、調査報告書1)を公表、「本事例は、ワクチン接種後極めて短時間に患者が急変し、死亡に至ったものである。非心原性肺水腫による急性呼吸不全及び急性循環不全が直接死因であると考えられ、この両病態の発症にはアナフィラキシーが関与していた可能性が高い。本事例は短時間で進行した重症例であることから、アドレナリンが投与されたとしても救命できなかった可能性はあるが、特に早期にアドレナリンが投与された場合、症状の増悪を緩徐にさせ、高次医療機関での治療につなげ、救命できた可能性を否定できない」と結論付けました。医療者たちの対応はことごとく「標準的ではなかった」さらに、「ワクチン接種後待機中の患者の容体悪化(咳嗽、呼吸苦の訴え)に対し、看護師らがアナフィラキシーを想起できなかったこと、問診者に接種前の患者の状態を確認することなく、患者は接種前から調子が悪かったと解釈したことは標準的ではなかった。また、その情報に影響を受け、ワクチン接種後患者の容体変化に対し、アドレナリンの筋肉内注射が医師によって迅速になされなかったことは標準的ではなかった」と、医療者たちの対応はことごとく「標準的ではなかった」と結論付けました。病態はアナフィラキシーの可能性が低いと医師が判断、アドレナリン筋肉内注射をせず報告書によれば、接種4分後から女性に咳嗽と呼吸苦が発現したにもかかわらず、看護師らは「ワクチン接種前からマスク着用の圧迫感による過呼吸発作状態にあったもの」と勝手に解釈していたとのことです。また、体調不良者が出たことで対応を依頼された医師も「接種前から体調不良、呼吸苦があったようだという看護師からの情報と、粘膜所見、皮膚所見、掻痒感、消化器症状など『アナフィラキシーで典型的な症状』がなかったことから、女性の病態はアナフィラキシーの可能性が低いと判断し、アドレナリンの筋肉内注射を第一治療選択から外し」てしまいました。そんな中、看護師の1人は「アナフィラキシーの可能性を考え、アドレナリン投与を想定し、注射器に22ゲージの針をつけ、医師の指示があればいつでも筋注できるよう準備をし」ていましたが、「医師の判断を尊重するため、アドレナリンの準備ができていることを積極的に伝えようとはしなかった」とのことです。接種14分後に心停止、3次救急病院に搬送されるも到着時にはすでに心肺停止状態さらに対応を依頼された医師は、「アナフィラキシーガイドライン2022」(日本アレルギー学会)の存在は認識していましたが、アナフィラキシーに比較的よくみられる所見や情報が乏しかったことに影響され、ガイドライン等に沿った対応、すなわち「0.1%アドレナリン(ボスミン1/2A)の筋肉内注射、またはアドレナリン自己注射用製剤(エピペン0.3mg製剤)の投与」を行いませんでした。なお、新型コロナウイルスワクチンの接種事業に協力する医師に対して海部医師会(医師たちが所属する医師会)は、医師たちに事前に準備された「アナフィラキシー対応マニュアル」を読んでおくよう指示していたとのことです。結局、この女性にアドレナリンが投与されることはなく、接種14分後に心停止、その後救急隊が呼ばれ、3次救急病院に搬送されるも到着時にはすでに心肺停止状態で、心肺蘇生を試みた後、死亡が確認されています。ハチ毒はアレルギーを獲得した後2回目に刺された時のアナフィラキシーが怖いエピペン(アドレナリン自己注射用製剤)については、私も少々苦い思い出があります。20年ほど前の秋、奥秩父の登山中にハチに刺されたことがあります。ハチ毒は、アレルギーを獲得した後の2回目に刺された時のアナフィラキシーが怖いと言われています。そこで私は近所の内科診療所を訪れ、エピペンの処方を頼みました。実は私の友人がその数年前、ハチに刺された数ヵ月後に蜂の子を食べ、アナフィラキシーで生死をさまよいました。その話を聞いていたので、「今後、山に登る時はエピペン所持が必要だ」と考えたのです。開業医にエピペン処方を断られるエピペンの日本での歴史はそう古くはありません。1995年、国有林で働く林業従事者のハチ毒対策のために米国で製造販売されていた製品を「治験扱い」で使用されたのが始まりです。その後、民有林での使用要望も出され、2003年に厚生労働省の製造販売承認が下りています。つまり、林業従事者のハチ毒対策が日本でのエピペン普及のきっかけだったのです。この時の適応は「蜂毒に起因するアナフィラキシー反応に対する補助治療(アナフィラキシーの既往のある人またはアナフィラキシーを発現する危険性の高い人に限る)」で、該当者は処方を受けて所持・使用することができるようになりました。その後、2005年には食物や薬物等によるアナフィラキシー反応および小児への適応も取得しています(ただし2011年までは保険が効かず自費)。私がハチに刺されたのは2003年の製造販売承認後だったので、内科診療所の医師は処方できたはずだったのですが、医師(60歳代)は「処方したことがない」「自分で打つのは危険だ」「全額自費だよ」などとさまざまな理由を挙げて、結局処方してもらえませんでした。「次、山で刺されたらアナフィラキシーで死ぬかもしれない」という私の切実な訴えも、まったく無視されました(その後、別の医療機関で入手し、数年間は登山時に所持)。ちなみに現在、エピペンの処方には講習受講と登録が必要となっています。アナフィラキシーを除外した医師は「内科医、医師歴5年以上10年未満」そんな経験があったため、愛西市の新型コロナワクチン接種後に女性がアナフィラキシーで死亡した事故を知った時、対応した医師は、私にエピペンを処方しなかった医師同様、比較的年配で、アドレナリン自己注射用製剤を患者に使用させた経験がなかったのではないか、さらにはアナフィラキシーというものを教科書では読んだことがあるが、自身では経験したことがなかったのではないかと思いました。しかし、私の予想は外れました。報告書によれば、最初にこの女性の対応を任され、アナフィラキシーを除外した医師は、海部医師会愛西市班に所属する医師で「内科医、医師歴5年以上10年未満」となっています。むしろ、こちらのほうが驚きです。医師になって10年未満、エピペンの使い方も一般化し、アナフィラキシー時の対応についても十分に学んでいるはずの世代が大きな判断ミスを犯したということになるからです。医学や診療技術は、日々進歩していますが、学ぼうとしない医師も一定数います。この「医師歴5年以上10年未満」の医師は、どういう経歴で、日々の診療はどういうもので、どのように最新の医学情報をアップデートしていたのでしょうか。「かかりつけ医」機能が議論される中、報告書には判断ミスを犯した医師の資質についても言及されるべきだったのではないでしょうか。「医療事故調査制度の制度趣旨に反している」との批判もところで、今回、この事故に関して、愛西市医療事故調査委員会の委員長らが記者会見し、報告書を公表、医学的評価の判断をマスコミ等に説明したことについて、「医療事故調査制度の制度趣旨に反している」との批判が一部にあるようです。公表が医師や看護師個々人への責任追及を促す危険性をはらんでいるからです。それはそれで一理あります。しかし、仮にことの原因が、個々の医療機関の安全管理体制等ではなく、医師の教育体制(卒後教育含む)にもあるとしたらどうでしょう。個々の医療機関に報告するだけで問題は解決するのでしょうか。愛西市のワクチン事故は、今の医療事故調査制度にも一石を投じたようです。参考1)新型コロナウイルスワクチン集団接種会場で発生した死亡事案について/愛西市

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動脈硬化予防のための階段利用、何段が効果的?

 健康のために階段昇降が推奨されるが、いったい何段くらいを目安に上ると何に効果的なのだろうか―。今回、中国・北京大学のZimin Song氏らが検証した結果、階段昇降を毎日5回より多く行う(段数にして約50段)とアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクが20%以上低下する一方で、ベースラインと再調査の間に階段昇降を止めた人では、階段昇降をまったくしなかった人と比較して、ASCVDリスクが高くなることが明らかになった。Atherosclerosis誌オンライン版2023年9月16日号掲載の報告。 研究者らは、階段昇降の強度とASCVDのリスク、およびそれらがASCVDの危険因子の存在によって変化するか否かを評価するため、英国バイオバンクからの45万8,860例の成人データを使用し、前向きコホート研究を行った。ベースラインとベースラインから5年後の再調査で収集した情報は、階段昇降、社会人口学的要因、ライフスタイルに関するものだった。ASCVDとして、冠動脈疾患(CAD)、虚血性脳卒中(IS)、急性合併症が含まれた。また、階段昇降とASCVDとの関連性をCox比例ハザードモデルで解析し、CAD/ISの遺伝的リスクスコア(GRS)に基づく疾患感受性、ASCVDの10年リスク、ASCVDの家族歴で階層化して評価した。 主な結果は以下のとおり。・中央値12.5年の追跡調査中に、ASCVDを発症したのは3万9,043例、CADは3万718例、ISは1万521例だった。・1日あたりの階段昇降を1~5回、6~10回、11~15回、16~20回、21回以上に区分し、対照群(ベースライン時に階段昇降1日0回と報告)と比較したASCVDのHRは、順に0.97(95%信頼区間[CI]:0.93~1.01)、0.84(同:0.82~0.87)、0.78(同:0.75~0.81)、0.77(同:0.73~0.80)、0.81(同:0.77~0.85)だった。この結果はCADとISでも同等であった。・CAD/ISのGRSに基づく疾患感受性、ASCVDの10年リスク、ASCVDの家族歴で層別化した場合、階段昇降によるASCVDのリスク保護の関連性は疾患感受性レベルの上昇によって弱くなった。また、この関連性はASCVDのさまざまな感受性を持つ集団において広く一致していた。・ベースライン時に階段昇降を行い、その後の再調査で階段昇降を行わなくなった人は、階段昇降を行わなかったまたは少なかった(1日あたり5回未満)人と比較して、ASCVDリスクが32%高かった(HR:1.32、95%CI:1.06~1.65)。

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日本の医療従事者による薬物使用者へのスティグマ~依存症専門医療機関での調査

 医療現場のスティグマは、薬物使用者の生活に大きな影響を及ぼす。日本の医療現場での薬物使用者に対するスティグマに関して、定量的なデータは不足しており、その要因もよくわかっていない。横浜市こころの健康相談センターの片山 宗紀氏らは、薬物使用者に対するスティグマの現状とその要因について調査を行った。その結果、依存症専門医療機関の専門家が、薬物使用者に対して強いスティグマを示していることが明らかになったという。著者らは、スティグマへの対処および軽減には、包括的な教育プログラムや大規模な啓発キャンペーンが必要であると述べている。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年10月9日号の報告。 神奈川県、東京都、愛知県の5つの依存症専門医療機関で調査を行った。調査内容には、薬物使用者に対するスティグマ的態度、違法薬物使用に関する知識、薬物使用者との個人的および職業的な交流に関する質問を含めた。 主な結果は以下のとおり。・回答者の大部分は、薬物依存症は意志の強さで克服できる、または、単に道徳感の欠如によるものとは考えていなかった。・しかし、回答者の大多数は、薬物使用者を信頼できず、容認できない、理解できないと見なしていた。・臨床現場において薬物使用者による敵対的な行動の発生は限られているにもかかわらず、多くの回答者は薬物使用者を危険であると認識していた。・多くの回答者は、自身や親族の薬物関連問題への支援を模索しておらず、リカバリーした薬物使用者と協同した人は半数未満であった。これはスティグマの軽減を示す潜在的な指標であると考えられる。・依存症専門家は、法執行機関の関与は薬物使用者のリカバリーに寄与しないと認識していたが、依然として多くの専門家が、当局への報告は必要であると考えていた。

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チルゼパチド追加の「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」改訂版/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏)は、11月2日に同学会のホームページで「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム 改訂版」を公開した。このアルゴリズムは、2022年9月に2型糖尿病治療の適正化を目的に初版が公開された。今回の改訂版では、チルゼパチドが追加された。主な改訂点は次のとおり。・Fig.2のStep1:病態に応じた薬剤選択における肥満[インスリン抵抗性を想定]の最後にチルゼパチドを追記。・「インスリン分泌不全、抵抗性は、糖尿病治療ガイドにある各指標を参考に評価し得る」の文言は改訂前より記載していたが、より病態を正確にとらえるための情報として「インスリン抵抗性はBMI、腹囲での肥満・内臓脂肪蓄積から類推するが、HOMA-IRなどの指標の評価が望ましい」を追記。・Step2:安全性への配慮、における「例2)腎機能障害合併者には、グリニド薬を避ける」と記載されていた箇所に「腎排泄型の」と追記。・Step2:安全性への配慮、における「例3)心不全合併者にはビグアナイド薬、チアゾリジン薬を避ける(禁忌)」と記載されていた順番を、「チアゾリジン薬、ビグアナイド薬」に入れ替え。・Fig.2の最下段に「目標HbA1cを達成できなかった場合は、Step1に立ち返り」と記載されていたのを「冒頭に立ち返り、インスリン適応の再評価も含めて」に改訂。・別表においては、チルゼパチドを追記したのに加え、考慮すべき項目に「特徴的な副作用」と「効果の持続性」の2つを追記。・本文でもチルゼパチドや特徴的な副作用など、図、別表の改訂に関する追記に加えて、アルゴリズムの図には記載されていないが、考慮すべき併存疾患として本改訂から非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を取り上げた。・インスリンの絶対的適応と相対的適応、血糖コントロール目標における熊本宣言2013や高齢者糖尿病の血糖コントロール目標などについても詳細を追記。

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75歳以上/PS2以上の局所進行NSCLCにもCRT後のデュルバルマブ地固めは有用か?/ESMO2023

 化学放射線療法(CRT)後のデュルバルマブ地固め療法は、切除不能な局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する標準治療である。しかし、75歳以上またはperformance status(PS)2以上の切除不能な局所進行NSCLC患者における臨床的意義については明らかになっていない。そこで、この集団におけるCRT後のデュルバルマブ地固め療法の有用性を検討したNEJ039A試験が実施され、その結果を静岡県立静岡がんセンターの高 遼氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。試験デザイン:国内第II相単群試験対象:StageIIIの切除不能NSCLC患者のうち、PS 0/1かつ75歳以上の患者73例、PS 2以上かつ75歳未満の患者13例(計86例)試験群:CRT(30分割で合計60Gyを照射。最初の20回は、放射線照射の1時間前に低用量カルボプラチン[30mg/m2]を毎回投与)→デュルバルマブ(10mg/kgを2週ごと、1年間)評価項目:[主要評価項目]デュルバルマブ投与開始から12ヵ月後の無増悪生存(PFS)率※[副次評価項目]PFS、全生存期間(OS)、安全性など※:既報を基に、35%以上であれば臨床的有用性を示すとみなすこととした。 主な結果は以下のとおり。・2019年9月~2021年10月の期間にCRTを受けた患者86例のうち、61例(70.9%)がデュルバルマブ地固め療法を受けた。この61例(男性50例[82%]、年齢中央値78歳[範囲:55~89])が解析対象となった。・解析対象のうち、PS 0は28例(45.9%)、1は27例(44.3%)、2は6例(9.8%)であった。PD-L1発現状況は、50%以上が14例(23.0%)、1~49%が17例(27.9%)、1%未満が17例(27.9%)、不明が13例(21.3%)であった。・デュルバルマブ投与開始から12ヵ月後のPFS率は51.0%(90%信頼区間[CI]:39.9~61.1)であった(参考:同様のレジメンで対象患者がPS 0/1、年齢中央値64歳であったPACIFIC試験1)のPFS率は55.9%)。・PFS中央値は12.3ヵ月、OS中央値は28.1ヵ月であった。・全Gradeの有害事象として、肺臓炎または放射線肺臓炎が80.3%に発現した。Grade3/4の有害事象で最も多かったものは、肺臓炎または放射線肺臓炎(8.2%)であった。Grade5の間質性肺炎により1例が死亡した。 高氏は、本結果について「デュルバルマブ投与開始から12ヵ月後のPFS率は51.0%と高く、主要評価項目を達成した。全Gradeの有害事象として、肺臓炎または放射線肺臓炎の発現率が既報1)よりも高かったが、Grade3以上については10%未満の発現率であり、許容可能と考えられた。本試験の結果から、75歳以上またはPS 2以上などの脆弱な局所進行NSCLC患者に対しても、CRT後のデュルバルマブ地固め療法は効果的かつ適応可能であることが示唆された」とまとめた。

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日本人乳がん患者におけるHER2低発現の割合・特徴(RetroBC-HER2L)/日本治療学会

 HER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)の乳がん患者に対する治療薬の臨床的ベネフィットが示され、その割合や治療パターン、転帰などについて理解を深めることが求められる。HER2陰性転移乳がんにおけるHER2低発現患者の割合を10ヵ国13施設で評価したRetroBC-HER2L試験の日本人解析結果を、昭和大学病院の林 直輝氏が第61回日本治療学会学術集会(10月19~21日)で発表した。日本からは3施設が参加している。・対象:2014年1月~2017年12月に切除不能および/または転移を有するHER2陰性(IHC 0、1+、2+/ISH-)乳がんと診断され治療を受けた患者・評価項目:[主要評価項目]過去のHER2固定組織スライドを実施医療機関の検査室で(ベンタナ4B5または他の検査法を用いて)再評価した結果に基づくHER2低発現の割合、ベースライン特性、治療パターン、アウトカム(治療成功期間[TTF]、最初の後治療開始または死亡までの期間[TFST]、全生存期間[OS])[副次評価項目]HER2低発現の病理組織学的・臨床病理学的特徴、過去のHER2検査と再検査結果の一致状況など 主な結果は以下のとおり。・日本人サブセットには155例が組み入れられ、ホルモン受容体陽性(HR+)が120例/陰性(HR-)が35例、HER2再検査にベンタナ4B5が用いられたのが130例/その他の検査法が25例だった。・再評価の結果、過去にHER2陰性と評価された患者におけるHER2低発現の患者の割合は61.3%(155例中95例)だった(全体集団では67.2%)。ホルモン受容体の状態ごとにみると、HR+患者の68.3%(120例中82例)、HR-患者の37.1%(35例中13例)が該当した。なお検査法別にみると、ベンタナ4B5で63.8%(130例中83例)、その他の検査法で48.0%(25例中12例)だった。・HER2低発現とHER2 IHC 0の患者の間で、年齢中央値(HR+:56.5歳vs.55.0歳、HR-:50.0歳vs.47.0歳)、閉経状態(閉経後がHR+:63.4% vs.65.8%、HR-:53.8% vs.40.9%)のほか、ベースラインでの転移箇所や転移個数について有意な差はみられなかった。・治療パターンについては、一次治療としてHR+では内分泌療法単独が53.4% vs.66.7%、HR-では単剤化学療法が45.5% vs.38.9%用いられていた。・アウトカムについて、TTF中央値(HR+:5.6ヵ月vs.6.0ヵ月、HR-:3.7ヵ月vs.3.8ヵ月)およびTFST中央値(HR+:8.3ヵ月vs.6.0ヵ月、HR-:4.1ヵ月vs.5.0ヵ月)はホルモン受容体の状況によらずHER2発現による顕著な差はみられなかったが、OS中央値はHER2 IHC 0かつHR-(トリプルネガティブ乳がん)で短い傾向がみられた(HR+:38.7ヵ月vs.32.4ヵ月、HR-:29.8ヵ月vs.14.4ヵ月)。・過去のHER2検査と再検査結果の一致率は82.6%(κ=0.636)。過去にHER2 IHC 0と診断された症例の陽性一致率は76.2%(63例中48例)、過去にHER2低発現と診断された症例の陽性一致率は87.0%(92例中80例)となり、IHC 0がHER2低発現と再評価される頻度よりもHER2低発現がIHC 0と再評価される頻度のほうが低いという点で、全体集団と同様の傾向がみられた。・ベンタナ4B5が用いられた症例についてみると、過去にHER2 IHC 0と診断された症例の陽性一致率は72.4%(54例中39例)、過去にHER2低発現と診断された症例の陽性一致率は89.5%(76例中68例)となり、過去にHER2 IHC0と診断された約3人に1人がトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の治療適応になりうるHER2低発現と再評価される可能性があり、適切な治療選択のためにHER2発現の再評価を考慮すべきことが示された。

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デュピルマブによる皮膚T細胞性リンパ腫が疑われた患者の臨床・病理学的特徴

 日常診療でのアトピー性皮膚炎に対するデュピルマブの使用が増加して以降、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)やリンパ球浸潤が生じた症例が報告されているという。そこで、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのCeleste M. Boesjes氏らは、デュピルマブ治療中に臨床的にCTCLが疑われたアトピー性皮膚炎患者の臨床的および病理学的特徴の検討を目的として、後ろ向きケースシリーズ研究を実施した。その結果、デュピルマブによる治療を受けた患者は、特有の病理学的特徴を持ちながら、CTCLに類似した可逆的な良性のリンパ球集簇(lymphoid reaction:LR)が生じる可能性があることが示された。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年10月18日号掲載の報告。 本研究は、2017年10月~2022年7月にユトレヒト大学医療センターにおいて、デュピルマブによる治療中にCTCLが疑われた18歳以上のアトピー性皮膚炎成人患者14例を解析対象とした。臨床的特徴を評価し、治療前・中・後の皮膚生検のデータを収集して病理学的な再評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者14例の年齢中央値は56歳(四分位範囲[IQR]:36~66)、男性の割合は54.5%であった。・14例のうち3例は、CTCLの1つである菌状息肉症(MF)をデュピルマブによる治療前に有していたことが再評価により認められた。・残りの11例は、最終的にLRと診断された。・これらの患者はMF様症状を示したが、病理学的所見は異なり、表皮上層での小型の濃染性のリンパ球が点在し、CD4/CD8比の異常、CD30の過剰発現が認められたが、汎T細胞抗原(CD2、CD3、CD5)の消失はみられなかった。・臨床的な悪化までの期間の中央値は、4.0ヵ月(IQR:1.4~10.0)であった。・治療後の生検では、すべての患者でLRの完全な消失が示された。

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STEMI、中医薬tongxinluoの上乗せで臨床転帰改善/JAMA

 中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのYuejin Yang氏らは、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)におけるガイドライン準拠治療への上乗せ補助療法として、中国伝統医薬(中医薬)のTongxinluo(複数の植物・昆虫の粉末・抽出物からなる)は30日時点および1年時点の両方の臨床アウトカムを有意に改善したことを、大規模無作為化二重盲検プラセボ対照試験「China Tongxinluo Study for Myocardial Protection in Patients With Acute Myocardial Infarction(CTS-AMI)試験」の結果で報告した。Tongxinluoは有効成分と正確な作用機序は不明なままだが、潜在的に心臓を保護する作用があることが示唆されている。中国では1996年に最初に狭心症と虚血性脳卒中について承認されており、心筋梗塞についてはin vitro試験、動物実験および小規模のヒト試験で有望であることが示されていた。しかし、これまで大規模無作為化試験では厳密には評価されていなかった。JAMA誌2023年10月24・31日合併号掲載の報告。対プラセボの大規模無作為化試験でMACCE発生を評価 CTS-AMI試験は2019年5月~2020年12月に、中国の124病院から発症後24時間以内のSTEMI患者を登録して行われた。最終フォローアップは、2021年12月15日。 患者は1対1の割合で無作為化され、STEMIのガイドライン準拠治療に加えて、Tongxinluoまたはプラセボの経口投与を12ヵ月間受けた(無作為化後の負荷用量2.08g、その後の維持用量1.04g、1日3回)。 主要エンドポイントは、30日主要有害心脳血管イベント(MACCE)で、心臓死、心筋梗塞の再発、緊急冠動脈血行再建術、脳卒中の複合であった。MACCEのフォローアップは3ヵ月ごとに1年時点まで行われた。 3,797例が無作為化を受け、3,777例(Tongxinluo群1,889例、プラセボ群1,888例、平均年齢61歳、男性76.9%)が主要解析に含まれた。30日時点、1年時点ともMACCEに関するTongxinluo群の相対リスク0.64 30日MACCEは、Tongxinluo群64例(3.4%)vs.プラセボ群99例(5.2%)で発生した(相対リスク[RR]:0.64[95%信頼区間[CI]:0.47~0.88]、群間リスク差[RD]:-1.8%[95%CI:-3.2~-0.6])。 30日MACCEの個々のエンドポイントの発生も、心臓死(56例[3.0%]vs.80例[4.2%]、RR:0.70[95%CI:0.50~0.99]、RD:-1.2%[95%CI:-2.5~-0.1])を含めて、プラセボ群よりもTongxinluo群で有意に低かった。 1年時点でも、MACCE(100例[5.3%]vs.157例[8.3%]、ハザード比[HR]:0.64[95%CI:0.49~0.82]、RD:-3.0%[95%CI:-4.6~-1.4])および心臓死(85例[4.5%]vs.116例[6.1%]、HR:0.73[0.55~0.97]、RD:-1.6%[-3.1~-0.2])の発生は、Tongxinluo群がプラセボ群よりも依然として低かった。 30日脳卒中、30日および1年時点の大出血、1年全死因死亡、ステント内塞栓症(<24時間、1~30日間、1~12ヵ月間)など、その他の副次エンドポイントでは有意差はみられなかった。 薬物有害反応(ADR)は、Tongxinluo群がプラセボ群よりも有意に多く(40例[2.1%]vs.21例[1.1%]、p=0.02)、主に消化管症状であった。 今回の結果を踏まえて著者は、「STEMIにおけるTongxinluoの作用機序を確認するため、さらなる研究が必要である」とまとめている。

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再発高リスク肝細胞がん術後補助療法、アテゾリズマブ+ベバシズマブでRFS改善(IMbrave050)/Lancet

 根治目的の外科的切除または焼灼療法後に再発リスクが依然として高い肝細胞がん患者への術後補助療法として、アテゾリズマブ+ベバシズマブの併用療法はアクティブサーベイランス(経過観察)と比較して無再発生存期間(RFS)を改善したことが、中国・南京中医薬大学のShukui Qin氏ら「IMbrave050試験」研究グループにより報告された。これまで再発リスクの高い肝細胞がん患者への術後補助療法は確立されていなかった。Lancet誌オンライン版2023年10月20日号掲載の報告。経過観察群と比較、被験者の82%がアジア人、B型肝炎が68% IMbrave050試験は第III相国際非盲検無作為化試験で、世界保健機関(WHO)が定める4地域(欧州、アメリカ大陸、東南アジア、西太平洋地域)の26ヵ国における134の病院および医療センターから、外科的切除や焼灼療法を受けた高リスクの肝細胞がん成人患者を集めて行われた。 患者は双方向音声ウェブ応答システム(置換ブロック法、ブロックサイズ4)により、無作為に1対1の割合で、アテゾリズマブ1,200mg+ベバシズマブ15mg/kgを3週ごと17サイクル(12ヵ月間)静脈内投与する群(アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用群)または経過観察を受ける群に割り付けられた。 主要評価項目は、独立レビュー施設の評価によるITT集団のRFSであった。 2019年12月31日~2021年11月25日に無作為化を受けた患者668例がITT集団に包含された(アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用群334例、経過観察群334例)。ベースライン特性の両群間のバランスは概して良好で、ITT集団は主に男性(555/668例[83%])で占められ、年齢中央値は59歳(四分位範囲[IQR]:51~68)、ほとんどがアジア人(545/668例[82%])であり、77%(515/668例)が中国本土、香港、日本、韓国、台湾からの参加であった。 両群とも肝細胞がんの主な原因はB型肝炎(416/668例[68%])で、バルセロナ臨床肝がんStageAが84%(564/668例)を占めた。外科的切除を受けた患者が88%(585/668例)であり、これらの患者における腫瘍サイズ中央値(診断時の最大腫瘍の最長腫瘍径に基づく)は5.5cm(IQR:3.5~8.5)で、90%(526/585例)に孤立性腫瘍が認められ、61%(354/585例)で微小血管浸潤が報告された。焼灼療法を受けた患者の腫瘍サイズ中央値は2.5cm(IQR:2.3~3.0)であった。併用群でRFSが有意に延長 事前規定の中間解析(2022年10月)時点で、追跡期間中央値は17.4ヵ月(IQR:13.9~22.1)であった。 術後補助療法としてのアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用群のRFS(中央値評価不能[NE]、95%信頼区間[CI]:22.1~NE)は、経過観察群のRFS(中央値NE、95%CI:21.4~NE)と比べて有意に延長した(ハザード比[HR]:0.72、補正後95%CI:0.53~0.98、p=0.012)。 Grade3/4の有害事象の発現は、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用群で136/332例(41%)、経過観察群で44/330例(13%)が報告された。Grade5の有害事象の発現は、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用群で6例(2%、治療関連事象は2例)、経過観察群で1例(<1%)であった。 アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用群で、アテゾリズマブとベバシズマブ両方の投与中止に至ったあらゆるGradeの有害事象の発現は29例(9%)であった。 研究グループは、「われわれの知る限りIMbrave050試験は、肝細胞がんへの補助療法として肯定的な結果を報告した初の第III相試験である」と述べたうえで、「しかしながら、ベネフィット・リスクプロファイルを完全に評価するためには、RFSおよび全生存期間(OS)の両方について長期のフォローアップを行う必要がある」としている。

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世界での血管内イメージングデバイス使用率は、日本に追いつくのか?(解説:山地杏平氏)

 OCTOBER試験は、ILUMIEN IV試験と同時に発表された試験で、それぞれOCT (optical coherence tomography、光干渉断層法)を用いたPCI (percutaneous coronary intervention、経皮的冠動脈形成術)と、通常の血管造影のみで行ったPCIとで比較をしています。近年では、長い病変や、慢性完全閉塞といった複雑病変において、IVUS(intravascular ultrasound、血管内超音波)を用いたPCIのほうが、有意に結果が優れていたという報告が複数なされており、これらのランダム化比較試験の結果を受けて、米国では、血管内イメージングデバイスの使用は5%程度の施行率から、15%程度まで増加していると伺っています。OCTは、IVUSに比較して10倍空間分解能に優れていますが、一方で、造影剤もしくは低分子デキストランなどの使用にて赤血球除去が必要であり、それぞれ一長一短があります。この新たな血管内イメージングデバイスであるOCTを用いたPCIと、通常の血管造影のみで行ったPCIとで比較した試験が、米国と欧州が中心となって行われ、それぞれILUMIEN IV試験、OCTOBER試験としてESC(欧州心臓病学会)2023で報告されています。 OCTOBER試験では、分岐部病変を有する1,200症例が登録されており、OCTを用いたほうが、その後2年の臨床イベントが有意に少なかったという結果でした。その一方で、ILUMIEN IV試験では、OCTを用いたPCIのほうが、ステントの拡張された大きさは大きいものの、臨床イベントでは差はみられませんでした。この臨床イベントでの結果の違いがなぜみられたかと疑問になりますが、OCTOBER試験では左主幹部病変が約19%で、左前下行枝と対角枝の分岐部病変が71%でみられており、登録された病変が大きな冠動脈支配領域であったと予想されます。一方で、ILUMIEN IV試験では、複雑病変を有する症例が登録されていますが、この内訳として、長い病変長を有する病変が多く含まれており、分岐部病変はそれほど多くなかったようです。また、左前下行枝病変は52%であり、そのほかは左回旋枝、右冠動脈病変でした。このような病変背景の違いが、それぞれの試験結果の臨床イベントの差になったのではないでしょうか。ステントのパフォーマンスは、OCTを用いたPCIのほうが良く、さらには、大きな還流域をもつ分岐部病変だと、臨床予後にも影響を与えると理解してよさそうです。 本邦で行われているPCIは、すでに90%近くの症例でOCTやIVUSといった血管内イメージングデバイスを用いて行われています。血管内イメージングデバイスを使えない場合には、より確実に十分なステント留置ができるように、1つサイズの大きいステントや、バルーンを選択することが多いでしょうし、すでに血管内イメージングが広く普及している本邦では、これらのデバイスの有無を比較する試験の遂行は困難と考えられます。OCTOBER試験結果を踏まえて、われわれの日常臨床を変えることはないとは思いますが、少なくとも間違ったことはしていないことが追認されたと理解してよさそうです。

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アジアオリンピックの思い出【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第30回

2023年9月23日〜10月8日にかけて、中国・杭州でアジア競技大会が開催されました。いわゆる「アジアオリンピック」と言われる大会で、オリンピックの間の年に4年に1度行われます。私が医学部に入学したのは1998年で、この年はタイ・バンコクでの開催でした。この頃、私は大学の空手同好会に所属はしていましたが、何というか…受験が終わって何となく燃え尽き気味で、何かしら燃えるものを探していた頃でした。当時はまだ空手も白帯で、空手に対してガチではありませんでした。そんな最中に眺めていたテレビで、たまたまアジアオリンピックの閉会式が行われていました。フォーマルな開会式に比べ、リラックスした空気で行われていた閉会式の映像を観て「楽しそうだな。俺もこの大会に出てみたいな」と、ふっと感じました。そのときにアナウンサーが「次回の大会は4年後に韓国・釜山で行われます」と言っていたのを聞き、4年後の釜山大会に出るにはどうしたらいいかを考えるようになりました。道場の内弟子になる滋賀県大津にあった空手道場に、関東チャンピオンだった方が大学を卒業して帰ってくると聞き、そちらの道場に通うことにしました。「生徒さん」としてではなく、内弟子としてです。内弟子というのは、何というか、道場側の人間です。道場の掃除を手伝ったり、道場破りが来たら対応したりします(実際に1度だけありました。大事にはなりませんでしたが、ストリートファイトの100倍怖かったです。本気でいろいろ覚悟しました)。さて、関東チャンピオンだった先輩は、容赦のない人でした。初めて出会ったとき、ご挨拶をする前に「お前が安か? 構えろ」と言われ、いきなり殴られて鼻血が出ました。まだ「初めまして」も言ってなかったのに…。その後も毎日殴られ続け、道着はいつも血まみれでした。道着に付着した血は洗濯ではなかなか落ちないのですが、大量の汗で消えていきます。「血は汗で流せ」の精神で頑張りました。人生に影響を与えた出来事ちょうど大学5回生のときに釜山大会が開催される予定だったので、大学4回生のときに代表選考会へ自分を売り込みにいきました(向こうから誘って貰えなかったので)。多少のハッタリを織り交ぜることで、なんとか代表選考会へ潜り込むことができ、そして優勝することができました。しかし、最終選考ではもろもろの政治的思惑が働き、私はアジアオリンピックの代表には選ばれませんでした。優勝したのに代表になれなかったことに当時は本当に絶望し、「自分にとって空手とは何なのだ」と悩みました。そんな折、師匠に勧められて空手のルーツを辿るために沖縄へいき、そのまま就職先を決めてしまったのですが…それはまた別の話です。4年に1度のアジアオリンピックが来るたびに、このときの記憶が蘇ります。あのとき、選ばれなかったことで今の人生に繋がっていったと思うと、「選ばれなかったことも、まあ悪いことだけではなかったな~」と思えています。

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