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第171回 医師会長、病院団体とともに診療報酬の大幅引き上げを岸田総理に強く要求/医師会

<先週の動き>1.医師会長、病院団体とともに診療報酬の大幅引き上げを岸田総理に強く要求/医師会2.肥満症治療薬セマグルチドが薬価収載、供給不足の懸念も/中医協3.不妊治療の保険適用で医療費895億円、患者の経済負担は?/中医協4.2025年発足のかかりつけ医機能報告制度、分科会で議論開始/厚労省5.日本で緊急避妊薬の試験販売開始、医師の処方箋不要に/厚労省6.解禁前に大麻類似成分含むグミ問題が浮上、販売停止へ/厚労省1.医師会長、病院団体とともに診療報酬の大幅引き上げを岸田総理に強く要求/医師会日本医師会の松本 吉郎会長は、病院団体の代表らとともに11月15日に官邸を訪れ、岸田 文雄首相と面会し、医療現場で働く職員の賃上げを「非常に重要な事項」として診療報酬の改定での増額を求めた。この面会に先立ち、松本会長は日本病院会などからなる四病院団体協議会の幹部と記者会見を開き、2024年度の診療報酬改定に向けて大幅な引き上げを強く求める合同声明を発表した。医療業界は物価高騰や賃金上昇による経営環境の厳しさに直面しており、とくに入院基本料の引き上げを要望している。入院基本料は15年間据え置かれており、病院経営の持続可能性に影響を与えている。財務省側の診療報酬マイナス改定の求めに対して、日本病院会の島副会長は、「赤字病院が8割を超えており、診療報酬の引き下げが入院医療の質の低下につながる」と懸念を表明したほか、全日本病院協会の猪口会長は、賃上げの余裕がない現状を指摘し、財政支援の必要性を訴えた。来年の診療報酬の改定の幅は年末までに決定される見込みで、今後は厚生労働省、財務省とさらに折衝が行われる。参考1)類を見ない物価高騰「大幅な診療報酬引き上げを」日本医師会と四病協が合同で声明(CB News)2)日医・四病協が合同声明 24年度診療報酬改定「大幅引上げ強く求める」 日病「入院基本料引上げは悲願」(ミクスオンライン)3)首相「医療職賃上げ重要」 日医会長らと面会(東京新聞)4)令和6年度診療報酬改定に向けた日本医師会・四病院団体協議会合同声明(日医)2.肥満症治療薬セマグルチドが薬価収載、供給不足の懸念も/中医協厚生労働省は、11月15日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、肥満症治療の新薬セマグルチド(商品名:ウゴービ)の薬価収載について了承した。肥満症の治療薬として約30年ぶりに公的医療保険の対象として承認された。セマグルチドはGLP-1受容体作動薬であり、肥満症の治療に用いる場合は、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法や運動療法で十分な効果が得られない、特定のBMI基準を満たす患者に限定されている。ウゴービと同一成分のオゼンピック注は、すでに糖尿病治療薬として使用されており、ウゴービの薬価償還により美容・ダイエット目的での不適切な使用が増え、供給不足のため必要な患者への薬剤供給が困難となる可能性が懸念されている。厚労省や医療関係者は、GLP-1受容体作動薬の適切な使用を強く呼びかけ、不適切な使用による健康被害や供給不足の問題を防ぐための対策を求めている。また、セマグルチドの供給に関しては、製薬会社が安定供給を確保できると報告しているが、実際の供給状況や使用実態については、引き続き注視が必要。参考1)オゼンピック皮下注2mg供給(限定出荷)に関するお知らせ(ノボ ノルディスクファーマ)2)中医協総会 肥満症治療薬・ウゴービ収載で厚労省に対応求める ダイエット目的の使用で供給不安を懸念(ミクスオンライン)3)肥満症薬ウゴービ22日収載、ピーク時328億円 中医協・総会が了承(CB News)4)肥満症に30年ぶり新薬、ウゴービを保険適用へ…ダイエット目的の使用に懸念も(読売新聞)5)糖尿病治療薬は「やせ薬」? ネットで広まり品薄状態に(産経新聞)3.不妊治療の保険適用で医療費895億円、患者の経済負担は?/中医協厚生労働省は、11月17日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、不妊治療を取り上げた。2022年度の診療報酬改定に合わせて、不妊治療が保険適用され、患者側や医療機関側の反応と金額について議論を行った。保険適用後の不妊治療の実施状況は、医療費895億円、レセプト件数125万件、実患者数37万人。一般不妊治療管理料は31万回、生殖補助医療管理料は合計61万回以上算定されていた。しかし、保険適用にあたって設けられた範囲や年齢・回数制限に関して、見直しを求める意見が出されたほか、凍結保存胚の維持管理期間の延長が検討された。また、不妊治療の全体像を正確に把握するために、今後も日本産婦人科学会のデータ検証が必要とされた。参考1)中央社会保険医療協議会 総会(第565回) 議事次第2)不妊治療の保険適用、昨年度の医療費895億円 対象拡大後 厚労省(朝日新聞)3)「不妊治療の保険適用」は効果をあげているが「年齢・回数制限の見直し」求める声も、凍結胚の維持管理期間を延長してはどうか-中医協総会(Gem Med)4.2025年発足のかかりつけ医機能報告制度、分科会で議論開始/厚労省2025年4月に施行される「かかりつけ医機能報告」制度に向けて、厚生労働省は「第1回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」を11月15日に開き、議論を開始した。かかりつけ医機能報告制度は、慢性疾患患者や高齢者など継続的な医療が必要な人々に対して、地域での「かかりつけ医機能」を確保・強化することを目的としている。分科会では、医療機関が都道府県に報告する「かかりつけ医機能」の内容や、報告制度の対象となる医療機関の範囲などを具体化することが議題となっている。分科会では、患者が適切な受診先を選択できるように「かかりつけ医機能」をカバーする医療機関の基準設定の必要性が指摘された。このほか、地域医療機関の連携強化や患者が「かかりつけ医機能を持つ医療機関」を容易に検索できる仕組みの構築が重要であるとの意見も出された。医療提供側からは、幅広い医療機関が参加できるような仕組みへの期待を寄せる声が上がったほか、患者側と医療側で「かかりつけ医機能」に関する意識のズレも明らかとなった。今後は議論を重ね、実効性のある「かかりつけ医機能」の具体化に進め、来年の夏までに取りまとめを行い、法律改正を経て、令和7(2025)年度の発足を目指す見込み。参考1)第1回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会 資料(厚労省)2)「かかりつけ医機能」具体化へ分科会が初会合 プレゼン・ヒアリングでまず実態把握(CB News)3)かかりつけ報告、来年夏に取りまとめへ 厚労省分科会が初会合(MEDIFAX)5.日本で緊急避妊薬の試験販売開始、医師の処方箋不要に/厚労省厚生労働省は、緊急避妊薬(アフターピル)の試験販売が11月28日から開始されることを明らかにした。全国約145~150の薬局で、医師の処方箋なしで販売される予定。価格は7,000~9,000円で、16歳以上の女性を対象としているが、18歳未満では保護者の同伴が必要となる。緊急避妊薬は、性交後72時間以内に服用することで妊娠を高確率で回避でき、現在は、医師の処方箋が必要であり、避妊失敗や性暴力による望まない妊娠を防ぐために市販化を求める声が上がっていた。試験販売は来年3月29日までの予定で、厚労省が求める要件を満たす薬局で実施される。要件としては夜間や休日の対応、近隣の産婦人科との連携、プライバシーが確保できる個室の有無などが含まれ、購入者は研究への参加に同意する必要がある。参考1)緊急避妊に係る診療の提供体制整備に関する取組について(厚労省)2)緊急避妊薬、薬局で試験販売 28日から、全国145店舗 厚労省(時事通信)3)緊急避妊薬28日試験販売 全国145薬局、16歳以上(日経新聞)4)医師の処方箋なしで緊急避妊薬、28日から全国150薬局で試験販売…薬剤師の面前で薬を服用(読売新聞)6.解禁前に大麻類似成分含むグミ問題が浮上、販売停止へ/厚労省厚生労働省麻薬取締部は、大麻の類似成分を含むとされるグミによって体調不良を訴える人が相次いでいることを受け、東京と大阪の販売店に対して販売停止命令を出した。これらのグミは「HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)」という未規制の成分を含んでいるとされ、武見 敬三厚生労働大臣は使用・流通の禁止を検討している。今回の事件は、東京都内や大阪市での祭りや公共の場での配布により、体調不良を訴え、病院に搬送される患者から発覚した。厚労省は、これらのグミが健康被害を引き起こす可能性があるとして、成分分析を行っている。また、CBD(カンナビジオール)を含む合法的な「CBDグミ」との混同を避けるための情報提供も行っている。販売する「ワンインチ」社の社長は、同社のCBDグミは安全であり、大麻グミとは異なると主張している。また、厚労省は、CBD製品は、大麻取締法に該当しないことを明らかにしている。大麻草から抽出した成分を用いて製造した医薬品の国内での使用解禁を含む、大麻取締法の改正案が11月14日に衆議院本会議で可決されたばかりで、武見厚労働大臣は、17日の閣議後の会見で、成分が特定されれば、「速やかに指定薬物として指定し、使用・流通を禁止する」方針を明らかにしている。参考1)大麻グミ騒動 「CBDグミ」販売元が訴え「味覚糖製造、安全」「HHCHとは大きく異なる…大変迷惑」(スポニチ)2)「グミ」店に販売停止命令 麻薬取締部、大麻類似成分(東京新聞)3)「大麻グミ」規制へ 搬送相次ぎ、厚労相「使用・流通禁止を検討」(朝日新聞)4)大麻法改正案、衆院通過 成分含む薬、使用可能に(産経新聞)

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増加する化学療法患者-機転の利いた専攻医の検査オーダー【見落とさない!がんの心毒性】第26回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別70代・女性(BMI:26.2)既往歴高血圧症、2型糖尿病(HbA1c:8.0%)、脂質異常症服用歴アジルサルタン、メトホルミン塩酸塩、ロスバスタチンカルシウム臨床経過進行食道がん(cT3r,N2,M0:StageIIIA)にて術前補助化学療法を1コース受けた。化学療法のレジメンはドセタキセル・シスプラチン・5-fluorouracil(DCF)である。なお、初診時のDダイマーは2.6μg/mLで、下肢静脈エコー検査と胸腹部骨盤部の造影CTでは静脈血栓症は認めていない。CTにて(誤嚥性)肺炎や食道がんの穿孔による縦隔炎の所見はなかった。2コース目のDCF療法の開始予定日の朝に37.8℃の微熱を認めた。以下が上部消化管内視鏡画像である。胸部進行食道がんを認める。画像を拡大する以下が当日朝の採血結果である(表)。(表)画像を拡大する【問題】この患者への抗がん剤投与の是非に関し、専攻医がオーダーしていたために病態を把握できた項目が存在した。それは何か?a.プロカルシトニンb.SARS-CoV-2のPCR検査c.Dダイマーd.βD-グルカンe.NT-proBNP筆者コメント本邦のガイドラインには1)、「がん薬物療法は、静脈血栓塞栓症の発症再発リスクを高めると考えられ、Wellsスコアなどの検査前臨床的確率の評価システムを起点とするVTE診断のアルゴリズムに除外診断としてDダイマーが組み込まれているものの、がん薬物療法に伴う凝固線溶系に関連するバイオマーカーに特化したものではない。がん薬物療法に伴う静脈血栓症の診療において、凝固線溶系バイオマーカーの有用性に関してはいくつかの報告があるものの、十分なエビデンスの集積はなく今後の検討課題である」と記されている。一方で、「がん患者は、初診時と入院もしくは化学療法開始・変更のたびにリスク因子、バイオマーカー(Dダイマーなど)などでVTEの評価を推奨する」というASCO Clinical Practice Giudeline Updateの推奨も存在する2)。静脈血栓症の症状として「発熱」は報告されており3)、欧米のデータでは、実際に肺塞栓症(PE)発症患者の14~68%で発熱を認め、発熱を伴う深部静脈血栓症(DVT)患者の30日死亡率は、発熱を伴わない患者の2倍になることも報告されている4)。このほか、可溶性フィブリンモノマー複合体定量検査値は、食道がん周術期においても中央値は正常値内を推移することが報告されており、その異常高値はmassiveな血栓症の指標になる可能性もある5)。がん関連血栓症の成因として、(1)患者関連因子、(2)がん関連因子、(3)治療関連因子が2022年のESC Guidelines on cardio-oncologyに記載された6)。今後一層のがん患者の生存率向上とともに、本症例のようなケースが増加すると思われる。1)日本臨床腫瘍学会・日本腫瘍循環器学会編. Onco-cardiologyガイドライン. 南江堂;2023. p.56-58.2)Key NS, et al. J Clin Oncol. 2023;41:3063-30713)Endo M, et al. Int J Surg Case Rep. 2022;92:106836. 4)Barba R, et al. J Thromb Thrombolysis. 2011;32:288–292.5)Tanaka Y, et al. Anticancer Res. 2019;39:2615-2625.6)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;43:4229-4361.講師紹介

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インフルエンザワクチン(1)鶏卵アレルギー【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q93

インフルエンザワクチン(1)鶏卵アレルギーQ93外来にインフルエンザの予防接種希望で56歳女性が受診した。体温は平熱で問診票上、既往などもないようだ。とくに問題ないなと問診票に目を通していくと、過去に重篤な鶏卵アレルギーがあったと記載されている。薬剤部に問い合わせたところ、今期、当院が入荷しているインフルエンザワクチンは鶏卵由来とのこと。この患者に予防接種はできる?できない?

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ステロイド処方医は知っておきたい、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症のガイドライン改訂

 『グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023』が8月に発刊。本書は、ステロイド薬処方医が服用患者の骨折前/骨密度低下前の管理を担う際に役立ててもらう目的で作成された。また、ステロイド性骨粗鬆症の表現にはエストロゲン由来の病態も含まれ、海外ではステロイド性骨粗鬆症と表現しなくなったこともあり、“合成グルココルチコイド(GC)服用による骨粗鬆症”を明確にするため、本改訂からグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症(GIOP)と表記が変更されたのも重要なポイントだ。9年の時を経て治療薬に関する膨大なエビデンスが蓄積された今回、ガイドライン作成委員会の委員長を務めた田中 良哉氏(産業医科大学第一内科学講座 教授)に、GIOPにおける治療薬の処方タイミングや薬剤選択の方法などについて話を聞いた。ステロイド薬処方時にグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の予防策 自己免疫疾患や移植拒絶反応をはじめ、多くの疾患治療に用いられるステロイド薬。この薬効成分は合成GCであるため、ホメオスタシスを維持する内在性ホルモンと共通の核内受容体に結合し、糖、脂質、骨などの代謝に異常を来すことは有名な話である。他方で、ステロイド薬の処方医は、GCを処方することで代謝異常を必然的に引き起こしていることも忘れてはいけない話である。 つまり、ステロイド薬を処方する際には、必ずこれらの代謝異常が出現することを念頭に置き、必要に応じた予防対策を講じることが求められる。その1つが“骨粗鬆症治療薬を処方すること”なのだが、実際には「骨粗鬆症の予防的処方に対する理解は進んでいない」と田中氏は話した。この理由について、「GIOPには明確な診断基準がなく、本ガイドラインに記載されていることも、あくまで“治療介入のための基準”である。診断基準がないということは診断されている患者数もわからない。骨粗鬆症患者1,600万人のうち、GCが3ヵ月継続処方されている患者をDPCから推算すると約100~150万人が該当すると言われているが、あくまで推定値に過ぎない。そのような背景から、GIOPに対する管理・治療が世界中で問題になっている」と同氏は警鐘を鳴らした。グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症のガイドラインで治療や予防のための基準このような問題が生じてしまうには、5つの誤解もあると同氏は以下のように示し、それらの解決の糸口になるよう、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023ではGIOPの予防的管理や治療に該当する患者を見極めるための基準を設けている(p.xiii 図2:診療アルゴリズムを参照)。1)GC骨粗鬆症の管理にはDXA法などの骨密度検査が必要?→スコアリングシステムで計算すれば、薬物療法の必要性が判断できる。2)ステロイド5mg/dayなら安全と考えがち→人体から2.0~2.5mg/dayが分泌されており、GC投与は1mgでも過剰。安全域がないことも周知されていない。3)骨を臓器の一種とみなしていない→「骨粗鬆症は骨代謝異常症であり代謝疾患の一種」という認識が乏しい。4)命に直結しない!?→「骨が脆弱になっても死なない」と思われる傾向にある。実際には、大腿骨や腰椎などの骨折が原因で姿勢が悪くなり、その結果、内臓・血管を圧迫して循環障害を起こし、死亡リスク上昇につながった報告もある1)。5)GIOP治療が難しいと思われている→スコアリングに基づき薬物介入すれば問題ない。GCを3ヵ月以上使用中あるいは使用予定患者で、危険因子(既存骨折あり/なし、年齢[50歳未満、50~65歳未満、65歳以上]、GC投与量[PLS換算 mg/日:5未満、5~7.5未満、7.5以上]、骨密度[%YAM:80以上、70~80未満、70未満])をスコアリングし、3点以上であれば薬物療法が推奨される。ステロイド性骨粗鬆症のガイドラインから第一選択薬の明記をなくす スコアリングシステムは、ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療 ガイドライン2014年改訂版からの変更はないものの、治療薬の選択肢が増えたことからシステマティックレビューなどを行った結果、5つの薬剤(ビスホスホネート[内服、注射剤]、抗RANKL抗体、テリパラチド、エルデカルシトール、またはSERM)が推奨され、抗スクレロスチン抗体はFuture Questionになった。なお、前回まではアレンドロネートとビスホスホネートを第一選択薬として明記していたが、本改訂では第一選択薬の明記がなくなった。これについて同氏は「厳密に各薬剤を直接比較している試験がなかった」と補足した 。 また、新たな薬剤の推奨の位置付けやエビデンスについても「抗RANKL抗体は大腿骨頸部や橈骨の構成要素である皮質骨、椎体の構成要素の半分を占める海綿骨、いずれの骨密度にも好影響を及ぼすが、海外では悪性腫瘍の適応と同一薬価で販売されていることも推奨度に影響した。一方、抗スクレロスチン抗体は現状ではエビデンス不足のため本書での推奨が付かなかった。推奨するにはエビデンスに加えて、医療経済やアドヒアランスの観点も踏まえて決定した」と説明した。グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症のガイドライン準拠は10%未満 最後に同氏は、「GIOPは腰椎と同時に“胸椎”にも高頻度に影響しやすいため、原疾患の治療にてレントゲン撮影をする際にはGIOPの治療効果・経過観察のためにも、ぜひ骨にも目を向けてほしい。そして、本ガイドラインを準拠している内科医は10%にも満たないと言われているので、すべての医師がこれを理解してくれることを期待する。骨代謝異常症に対するビスホスホネートの作用点は、脂質代謝異常薬の作用点であるメバロン酸経由の下流であることからも、骨と脂質異常症の相同性が示唆される。ハートアタックならぬボーンアタックを予防するためにも、3ヵ月以上にわたってステロイドを処方する場合には骨粗鬆症予防の介入を考慮し、GIOPの予防・管理につなげてもらえるように学会としても啓発していきたい」と語った。

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統合失調症患者における抗精神病薬誘発性糖尿病性ケトアシドーシスのリスク評価~医薬品副作用データベース解析

 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は、生命を脅かす重篤な状態であり、抗精神病薬により引き起こされる可能性がある。アジア人糖尿病患者は、白人と比較し、インスリン抵抗性が低いといわれている。これまでに報告されている抗精神病薬に関連したDKAの研究は、すべて欧米人を対象としているため、これらのデータが日本人でも同様なのかは、不明である。獨協医科大学の菅原 典夫氏らは、自発報告システムデータベースである日本の医薬品副作用データベースを用いて、抗精神病薬とDKAとの関連を分析した。その結果から、統合失調症患者のDKA発現にはオランザピン治療が関連していることが明らかとなった。とくに、男性患者において、DKAリスクが高いことも確認された。Journal of Psychosomatic Research誌オンライン版2023年10月19日号の報告。 2004年4月~2021年3月に独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出された有害事象報告書を用いて、レトロスペクティブにファーマコビジランスの不均衡分析を行った。対象集団は統合失調症患者7,435例であり、抗精神病薬に関連したDKAの報告は合計55件であった。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者のDKA症例55例のうち、DKA後の死亡した患者は3例(6%)であった。・DKAの兆候は、オランザピン治療後に報告されており、調整後報告オッズ比は有意であった(aROR:3.26、95%信頼区間[CI]:1.87~5.66)。・準選択法を用いた多変量ロジスティック回帰分析では、オランザピン治療症例1,399例において、DKA発現と関連していた因子は、男性であることだった(aROR:2.72、95%CI:1.07~6.90)。 結果を踏まえ、著者らは「本データは、統合失調症患者の抗精神病薬に関連するDKA発現を減少させるために、リスク管理やモニタリングに役立つであろう」としている。

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プライマリケアでの女性の尿路感染症への抗菌薬処方、介入で有意に減少/BMJ

 プライマリケアにおけるマルチモーダル(複数の方法による)介入が、女性の単純性尿路感染症(UTI)に対する第二選択の抗菌薬処方率および全抗菌薬処方率を有意に減少したことが、ドイツ・ブレーメン大学のGuido Schmiemann氏らが、同国5地域の一般診療所を対象に行った並行群間クラスター無作為化試験の結果で報告した。ドイツの総合診療医(GP)向け等のガイドラインでは、受診機会の多い女性のUTI治療について、抗菌薬投与の回避が望ましい軽症~中等症UTIでは対症療法を優先し、第一選択の抗菌薬も推奨薬が明確に示されている。この明確な推奨にもかかわらず、フルオロキノロンなどの第二選択の抗菌薬が依然としてよく用いられ(地域の一般処方率38~54%)、抗菌薬以外の治療をGPが選択することはまれだという。教育プログラムや処方のフィードバックなどの介入が不適切処方を減少することは示されているが、ガイドラインを推奨する介入プログラムについては、これまで検討されていなかった。BMJ誌2023年11月2日号掲載の報告。ドイツの128の一般診療所を、介入群vs.対照群に無作為化し評価 研究グループは、プライマリケアでのマルチモーダル介入によって、女性における単純性UTIへの第二選択の抗菌薬処方率および全抗菌薬処方率が減少するかどうかを調べた。 データは、2021年4月1日~2022年3月31日に、ドイツの5地域の、128の一般診療所で収集された。 一般診療所は介入群と対照群に、地域で層別化をして、ブロック法により1対1の割合で無作為化された(ブロックサイズは4つ、SAS ver9.4を使用)。 マルチモーダル介入は、(1)各診療所から参加したGPおよび患者に対するガイドラインの推奨、(2)抗菌薬耐性に関する地域データの提供および年4回のフィードバック(個々の第一選択と第二選択の抗菌薬処方率、地域内または地域を越えたベンチマークについての情報、および電話カウンセリングを含む)から構成された。対照群には介入に関する情報は提供されなかった。 主要アウトカムは、1年後の単純性UTIに処方された、全抗菌薬に対する第二選択の抗菌薬の割合とし、介入群と対照群の平均処方率の絶対差を算出して評価した。副次アウトカムは、1年後のUTI治療に対する全抗菌薬の処方率で、介入群と対照群の全抗菌薬処方率の平均値の絶対差を算出して評価した。 有害事象は、探索的アウトカムとして評価した。第二選択の抗菌薬処方率、全抗菌薬処方率とも有意に減少 無作為化された一般診療所128施設のうち、ベースライン(Qb:研究開始1年前の2020年の第1四半期のデータ)および各四半期(Q1~Q4)のデータが完全に入手できた110施設(介入群57施設[GP103人]、対照群53施設[100人])を最終解析の対象とした。一般診療所やGPの特性は両群で類似しており、地域差は若干みられたが、患者数(四半期当たり平均数)やGPの性別(両群とも男性48%、女性52%)、平均年齢(介入群50歳、対照群53歳)、職歴、雇用形態などに差はなかった。 全四半期(Qb~Q4の15ヵ月)において1万323症例が特定された。 12ヵ月後の第二選択の抗菌薬の平均処方率は、介入群0.19(SD 0.20)、対照群0.35(0.25)であり、介入前の処方率を調整後の平均処方率の群間差は-0.13(95%信頼区間[CI]:-0.21~-0.06、p<0.001)であった。 12ヵ月間のUTIに対する全抗菌薬処方率は、介入群0.74(SD 0.22)、対照群0.80(0.15)であり、平均処方率の群間差は-0.08(95%CI:-0.15~-0.02、p<0.029)であった。 両群間で合併症(腎盂腎炎、入院、発熱など)の症例数に差はみられなかった。

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CKD治療、ダパグリフロジンにzibotentan併用の有用性/Lancet

 現行の推奨治療を受けている慢性腎臓病(CKD)患者において、エンドセリンA受容体拮抗薬(ERA)zibotentanとSGLT2阻害薬ダパグリフロジンの併用治療は、許容可能な忍容性と安全性プロファイルを示し、アルブミン尿を減少させ、CKDの進行を抑制する選択肢となることが示された。オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J. L. Heerspink氏らが「ZENITH-CKD試験」の結果を報告した。先行研究で、SGLT2阻害薬およびERAは、CKD患者においてアルブミン尿を減少させ、糸球体濾過量(GFR)低下を抑制することが報告されていた。今回、研究グループはzibotentan+ダパグリフロジンの有効性と安全性を評価した。Lancet誌オンライン版2023年11月3日号掲載の報告。zibotentan+ダパグリフロジン併用vs.ダパグリフロジン単独を評価、第IIb相試験 ZENITH-CKD試験は、18ヵ国の診療施設170ヵ所で行われた第IIb相の国際多施設共同無作為化二重盲検実薬対照試験。被験者は、推定GFR(eGFR)が20mL/分/1.73m2以上、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が150~5,000mg/gの成人(18歳以上90歳以下)を適格とした。 研究グループは被験者を無作為に2対1対2の割合で、(1)zibotentan 1.5mg+ダパグリフロジン10mg、(2)zibotentan 0.25mg+ダパグリフロジン10mg、(3)ダパグリフロジン10mg+プラセボの3群に割り付けた。全被験者にスクリーニング前の少なくとも4週間、安定用量のACE阻害薬またはARBを投与し、忍容性が認められた場合に(1)~(3)の割り付け治療薬が1日1回12週間投与された。 主要エンドポイントは、12週時点のUACR(zibotentan 1.5mg+ダパグリフロジン10mg群vs.ダパグリフロジン10mg+プラセボ群)の、ベースラインからの変化量であった。着目したイベントは体液貯留で、ベースラインからの体重増が3%以上(体内総水分量が2.5%以上であること)、または無作為化後のBNP値上昇が>100%、かつBNP値が>200pg/mL(心房細動が非併存)または>400pg/mL(同併存)と定義した。12週時点のUACR、併用群で有意に低下 2021年4月28日~2023年1月17日に1,492例が適格とされた。主要解析では449例(30%)が無作為化され、そのうち447例(99%)が解析に含まれた。平均年齢62.8歳(SD 12.1)、138例(31%)が女性、305例(68%)が白人、平均eGFRは46.7mL/分/1.73m2(SD 22.4)、UACR中央値は565.5mg/g(四分位範囲[IQR]:243.0~1,212.6)であった。447例の割り付けは、zibotentan 1.5mg+ダパグリフロジン群179例(40%)、zibotentan 0.25mg+ダパグリフロジン10mg群91例(20%)、ダパグリフロジン+プラセボ群177例(40%)。 試験期間を通して、zibotentan 1.5mg+ダパグリフロジン群とzibotentan 0.25mg+ダパグリフロジン群は、ダパグリフロジン+プラセボ群と比較して、UACRの低下が認められた。 12週時点でダパグリフロジン+プラセボ群と比較したUACRの差は、zibotentan 1.5mg+ダパグリフロジン群は-33.7%(90%信頼区間[CI]:-42.5~-23.5、p<0.0001)、zibotentan 0.25mg+ダパグリフロジン群は-27.0%(-38.4~-13.6、p=0.0022)であった。 体液貯留は、zibotentan 1.5mg+ダパグリフロジン群で33/179例(18%)、zibotentan 0.25mg+ダパグリフロジン群で8/91例(9%)、ダパグリフロジン+プラセボ群14/177例(8%)で観察された。

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遠隔虚血コンディショニングは脳卒中急性期患者の転帰を改善するか?(解説:内山真一郎氏)

 急性期脳卒中における遠隔虚血コンディショニング (RIC)の有効性は確立されていない。RESIST試験は、脳卒中発症後4時間以内で入院前の脳梗塞または脳出血1,500例における無作為化比較試験であった。介入方法は、治療群では上肢を200mmHgまで、対照群では20mmHgで5分の加圧と5分の除圧を5回反復した。治療は、救急車の中で開始し、病院で少なくとも1回反復し、その後7日間1日2回反復した。一次評価項目は、90日後の改定ランキン尺度スコアのシフトであった。 結果は、RICによる90日後の転帰改善効果は認められなかった。多くの虚血性脳卒中患者は血栓溶解療法や血管内治療を行っても転帰は改善しないので、RICは機能回復や脳保護に有効な補助的治療として期待されている。先行して行われたRICAMIS試験は、発症後48時間以内の1,893例において両側のRICを10~14日間行い、対照群より有意に転帰良好例が多かったことを報告している。 両試験はRICの方法、治療開始時間枠、治療継続期間、症例数、評価法が異なっており、今後どのようなRICの試験デザインが妥当であるかを再考する必要があるように思われる。また、脳保護療法の効果は90日後ではなく、もっと長い6ヵ月や1年後で判定すべきであるとの意見も増えている。

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飲酒をする人は緑内障になりやすい?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第245回

飲酒をする人は緑内障になりやすい?Unsplashより使用緑内障は、人間ドックで眼底や眼圧をみてもらわないとなかなか発見できない病気なので、定期的にチェックする必要があります。さて、日本から新たなエビデンスが発出されました。飲酒と緑内障の関係についてです。Sano K, et al.Association Between Alcohol Consumption Patterns and Glaucoma in Japan.J Glaucoma. 2023 Nov 1;32(11):968-975.これは、緑内障3,207例、マッチコホート3,207例を含んだ日本人の症例対照研究です。アルコールの摂取量が多いと緑内障の有病率が増えるのではないかという関連を検証したものです。詳細な飲酒パターンのほか、喫煙歴や生活習慣に関連する併存疾患など、さまざまな交絡因子を登録し、条件付きロジスティック回帰モデルを用いて、緑内障有病率のオッズ比を算出しました。その結果、男性においては、1週間当たり数日(オッズ比:1.19、95%信頼区間[CI]:1.03~1.38)、1週間当たりほぼ毎日(オッズ比:1.40、95%CI:1.18~1.66)の飲酒頻度は緑内障のリスクであることが示されました。生涯の総飲酒量でみると、1年当たり60杯超90杯以下(オッズ比:1.23、95%CI:1.01~1.49)、1年当たり90杯超(オッズ比:1.23、95%CI:1.05~1.44)で有意な関連が示されています。反面、女性においては、これらの因子とは有意な関連がみられませんでした。最近のメタアナリシスでは、アジア人はアルコール摂取と緑内障との間に強い関連があることが示されています1)。アルコールによって誘発される緑内障の感受性に人種差があるのかもしれません。というわけで、飲酒習慣がある男性は、メタボ、肝炎、そのほかの生活習慣病だけでなく、緑内障にも気を付けながら生活する必要があるかもしれません。ちなみに、緑内障と診断された後にアルコールをやめることで、視力障害や失明のリスクを減らすことができるという報告もあります2)。1)Stuart KV, et al. Alcohol, Intraocular Pressure, and Open-Angle Glaucoma: A Systematic Review and Meta-analysis. Ophthalmology. 2022;129:637-652.2)Jeong Y, et al. Visual Impairment Risk After Alcohol Abstinence in Patients With Newly Diagnosed Open-Angle Glaucoma. JAMA Netw Open. 2023 Oct 2;6(10):e2338526.

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第186回 妊婦禁忌のコロナ薬を処方、その理由が独自取材で明らかに

11月14日、日本感染症学会 、日本化学療法学会、日本産科婦人科学会、日本医師会、日本薬剤師会の5団体が医療従事者向けに「妊婦にとって禁忌とされている新型コロナウイルス感染症治療薬の処方並びに調剤に関する合同声明文」を発表した。要は新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の経口治療薬で催奇形性があるとされているモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)、エンシトレルビル(同:ゾコーバ)について、再三の注意喚起が行われながら現在でも処方後に妊娠が判明した事例が報告されていることを受け、改めて注意喚起を促した声明文である。従来のこの手の声明文と異なり、今回の声明文はお堅い表現も用いずに極めて平易な文章で書かれている。しかも、「新型コロナウイルス感染症の治療を受けられる女性の患者さんへ お薬を飲むまえに、もう一度確認を!」という日本感染症学会、日本化学療法学会、日本産科婦人科学会による患者向け文書も作成されている。その最後には以下のように記述されている。「新型コロナウイルス感染症に罹患され、そのお薬を内服したいというお気持ちもあると思いますが、あとでつらい思いをすることがないように、妊娠可能な世代の女性の患者さんにおかれましては、問診や調剤前、チェックリスト使用の時には妊娠の可能性はない、と申告されたとしても、内服前には、もう一度、最近数ヵ月間のことをよく思い出し、妊娠の可能性につき、思い当たる節がある場合には内服を控えるようにしてください。その場合には、お薬を保管しないで、ご自身で破棄するか、薬剤師に戻してください」最悪のケースとして異例とも言える患者自身による破棄まで言及している点からして、相当に危機感が強いのだろう。厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策本部と医薬局医薬安全対策課も同日付の都道府県、保健所設置市、特別区の衛生主管部(局)宛の事務連絡で、声明文の周知依頼を行っている。では、実際どれだけこうした事例があるのだろうか?エンシトレルビルについては緊急承認に基づく使用成績調査が課されており、10月15日までに妊婦への投与は疑い6例を含む32例が報告されている(この間の推定投与患者数84万1,646例)。一方、モルヌピラビルについては、MSD広報部門は「国内で妊婦に投与された事例があることは当社でも把握しているものの、例数は非開示」としている。ただし2023年1月4日に開催された薬事・食品衛生審議会(医薬品等安全対策部会安全対策調査会)において、国内で特例承認を受けた2021年12月24日から一般流通開始前の2022年9月15日までに数例あることが明らかにされている(この間の投与実績は61万9,621例)。ざっくり言えば、数万件に1件の割合で妊婦への処方事例が起きている計算になる。頻度としては少ないことになるだろうが、実際に胎児に影響が出れば、出生児にとっては生涯にわたって影響する可能性があるため、重大な問題だろう。とはいえ、これらの薬剤投与後に妊娠が発覚したケースは、製薬企業作成のチェックリストを使用せずに投与してしまった事例がごく一部にあるものの、声明文にあるように大半はこうしたチェックを経ても防げなかった事例である。ある意味、打つ手なしとも言えそうだが、まだやるべきことは残されていると個人的には思っている。というのも、モルヌピラビルに関してはアメリカで医療提供者向けに「Healthcare Provider Action」と題して「Assess whether an individual of childbearing potential is pregnant or not, if clinically indicated」と表記してある。直訳すれば「臨床上の兆候があれば、妊孕性のある女性での妊娠の有無を評価すること」となるが、事実上、必要に応じて妊娠検査を行うよう求めていると十分に解釈できるものだ。しかし、国内ではモルヌピラビル、エンシトレルビルとも添付文書やインタビューフォームにこうした記載はなく、投与前のチェックリストに「妊娠初期の妊婦では、妊娠検査で陰性を示す場合があります」と記載するに留まっている。アメリカと同様の記載がないことについて、MSD広報部門は「通常、添付文書の作成は規制当局と検討が行われますが、本剤の承認申請時の規制当局との添付文書の検討において、(国内の添付文書では)妊娠検査等の記載が必要であるという指示等は受けていないという背景がございます」と回答した。ただ、個人的にはアメリカでのモルヌピラビルの例にならった表現やより明確に事前に妊娠検査を行うよう記述することが望ましいのではないかと思う。それでも妊婦へ誤って処方してしまうケースはゼロにはならないだろうが、前述したように、たとえ1例でも重大なことである以上、やって損はないと思う。この点について当事者である行政、企業に尋ねてみたところ、次のような回答が返ってきた。「添付文書の記載を変更する予定は今のところありません。禁忌という形で注意喚起しておりますので、その中で医療現場が必要に応じて対応していただけていると思っております。また妊娠検査も妊娠週数4~5週間以降でやっと尿検査などでわかるようなものと認識しております」(厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課)「MSDでは妊婦さんへの投与について注意喚起するために、医療関係者向けの文書や投与前のチェックリストなどを作成し、適正使用の推進に努めているところでございます。また、今後の添付文書等の改訂についてですが、現時点では予定はありませんが、引き続き今後の状況を確認しながら、適正使用の推進に向けて必要な対応を行ってまいります」(MSD広報部門)「妊娠検査の必要性に関する添付文書への記載も含め、妊婦への投与を防ぐための取り組みについては、さまざまな検討は行っております。ただ、現時点で添付文書に妊娠検査の必要性を記載するということは決まっておりません」(塩野義製薬広報部)確かにチェックリストの記載を見れば、本来、妊娠検査を含む対応は医療現場でやっていてしかるべきと思える面はある。しかし、ここまで各方面が繰り返し注意喚起を行わなければならない現状となっている以上、とくに厚生労働省にはもう一歩踏み込んでもらっても良さそうな気がするのだが。

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医師が取り組むべき節税対策とは?上手な節税を考えてみよう!

年末調整に確定申告…。年末から春は税金を意識する機会が増えます。さらに、最近では定額減税や新NISAスタートなど、税金に関する話題も増えています。ケアネットの連載「医師のためのお金の話」執筆者が、「医師のための上手な節税」を解説します。せっかく稼いだお金だから、できるだけ手元に残しておきたい! とくに高収入の医師には切実な願いではないでしょうか。しかし現実は税金が高過ぎて、給料明細を見るたびにため息が出る…。そんな方が多いことでしょう。そんな医師の強い味方となりうるのは「節税」です。しかし一言で節税と言っても、たくさんの種類があります。「候補が多過ぎてさっぱりわからない」「制度が複雑すぎてわからない」このような悩みを抱える医師は、きっとあなただけではないはず。ケアネットで、会員医師の方々を対象にした 「節税」に関するアンケートが公開されています。職場では大っぴらにしにくい話題ですが、ほかの人がどのような節税をしているのかはとても興味深いものです。アンケート結果から浮かび上がったのは、一般的に有名なものから、少数ではあるものの医師特有の節税対策まで…。私自身もとても参考になりました。貴重なアンケート結果を基にして、医師のための上手な節税について考えてみましょう。節税の制度が大きく変わる! 新NISAは絶対に押さえよう節税に関する今年最大の話題は、何といっても2024年1月から始まる新NISAではないでしょうか。NISAとは2014年から始まった少額投資非課税制度で、株式や投資信託の利益が非課税になります。NISAはうってつけな節税対策に思えますが、大きな欠点があります。これまでのNISAは非課税保有限度額が少なく、しかも非課税保有期間がわずか5年しかない、という制約がありました。保有期間が終了すると自動的に課税口座に移管されてしまい、その時点で含み損があると将来的に値上がりしても余分な税金が課せられます。しかし、同じ「NISA」でも、新NISAはこれまでのNISAとは似ても似つかない、素晴らしい制度に生まれ変わりました。大きな変更点は、非課税枠の上限金額が大幅に増えたことと、非課税保有期間の縛りがなくなったことです。極論すれば、これまでのNISAは期間終了時に株価が上昇していることに賭ける投機だったといえます。私がやりたいのは“投資”であり“投機”ではない…。このため、私は世間の盛り上がりとは裏腹に、完全無視を決め込んでいました。ところが、新NISAはこれらのデメリットのかなりの部分が解消されました。新NISA最大のメリットは、非課税保有限度額が1人当たり1,800万円に拡大されたことでしょう。このおかげで、必要十分なレベルの資産を非課税で保有できるようになりました。そして、新NISAでは非課税保有期間が無制限となったことも特筆するべき点です。期間の縛りがなくなったメリットは計り知れません。これまでのNISAと異なり、長期にわたって腰を据えて投資可能となり、また非課税のメリットを受け続けられるようになりました。これまでのNISAはお世辞にも推奨できるようなシロモノではありませんでしたが、2024年1月から始まる新NISAは違います。投資余力の大きな医師にとっても、真剣に取り組む価値のある節税制度だといえるでしょう。ハードルは高いが取り組む価値の大きなものとは?新NISAは万人向けの節税対策ですが、医師だからこそ取り組むべき価値のあるものもあります。その代表格は不動産投資です。不動産投資というと節税のイメージが大きいものの、うさんくささやハードルの高さも意識せざるを得ません。ケアネットが先日行ったアンケートでも、不動産投資に取り組んでいる人はあまりいませんでした。確かに不動産は投資額が大きく、気軽に取り組めるとは言い難いものです。しかし、ポイントさえ外さなければ、大きな節税効果が期待できるのもまた事実です。多くの医師が取り組む価値があるのは、個人所得税の節税対策としての不動産投資でしょう。具体的には不動産投資で出た赤字を、医師としての給与所得と損益通算して節税を図る手法です。この節税対策として、最も有名なのは新築区分マンション投資だと思います。職場によくかかってくる不動産投資の勧誘電話ですね。しかし、新築区分マンション投資は絶対に取り組んではいけない不動産投資の筆頭です。節税どころか、本当に「損」してしまいますから。それでは、個人所得税の節税対策として、どのような不動産投資がお勧めなのでしょうか。これには節税の仕組みを読み解く必要があります。税務上で不動産投資が赤字にならなければ、個人所得税の節税になりません。しかし、新築区分マンション投資のように本当に損をしてしまうと、本末転倒です。ここで重要なのは、税務上の赤字と実際の赤字は異なる、という点です。この違いは「減価償却」で生まれてきます。減価償却とは、建物取得金額を法定耐用年数に応じて費用計上する会計処理です。減価償却では、実際にお金が出ていかないにもかかわらず、帳簿上で費用計上可能となります。一応、新築区分マンション投資でも減価償却をうたってはいますが、物件価格が割高過ぎるので利益はほとんど出ません。お勧めは築古木造戸建投資でしょう。築22年超の古い木造物件は4年で減価償却できます。新築区分マンション投資の法定耐用年数は47年なので、圧倒的な節税効果が見込めます。ただし、築古木造戸建投資を実行するには専門的な知識が必要です。必ず専門家のアドバイスを聞きましょう!ふるさと納税は誰でもノーリスクで安心して実践できる新NISAや不動産投資の節税効果はわかりましたが、もう少し簡単で気楽にできる節税対策はないものでしょうか。そのようなニーズに応える筆頭は、ふるさと納税でしょう。ケアネットが先日行ったアンケートでも、8割以上の医師がふるさと納税に取り組んでいました。2023年10月から還元率が改悪されましたが、ふるさと納税が始まる前は還元率ゼロだったことを考えれば、ほとんど誤差範囲内だと思います。世間では10月までに駆け込みでふるさと納税するべしという論調がありましたが、一般の医師は無視しても問題ないでしょう。一方で、ふるさと納税のチョイスに時間をかけ過ぎるのは禁物です。膨大な数の返礼品があるので、ついつい「お得さ」をとことんまで追求してしまいがちです。しかし、ふるさと納税の返礼品は“オマケ”みたいなもの。そこに貴重な時間を振り分けても得るものは少ないでしょう。私がいつも心掛けているのは、ふるさと納税をできるだけ自動化することです。理想は、自動的にふるさと納税の返礼品が送られてくる状態です。もちろんまったく時間をかけないわけにはいきませんが、工夫次第で半自動化することが可能です。ふるさと納税の自動化でお勧めの返礼品は、お米の定期便です。3~12ヵ月の間、おいしいお米が毎月送られてくるパターンが多いです。一度寄付すると、あとは自動的に送られてくるのは魅力的です。お米の定期便には、もうひとつのメリットがあります。お米は精米すると劣化が早まるため、長く家に置いておけません。とくに夏場はお米が傷みやすいので要注意です。私は何袋も一気に頼んで数ヵ月置いていたところ、まずくなって閉口した経験があります。こうしたことなく、定期的に新鮮なお米が手に入るわけです。ふるさと納税はお得な制度ではあるものの、永続性に疑問があり、真剣に注力する類のものではありません。節税に取り組むのであれば、新NISAなどのしっかりした枠組みの制度を、腰を据えて研究することをお勧めします。

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マクロ地中海食、乳がんの再発予防効果なし?

 いくつかの前向き研究で、食事の質の向上が乳がん患者の生存率改善と関連することが示唆されているが、乳がん特異的死亡率への影響については定まっていない。今回、イタリア・Fondazione Istituto Nazionale TumoriのFranco Berrino氏らがマクロ地中海食(地中海食に味噌や豆腐などの日本由来のマクロビオティックを取り入れた食事)による乳がん再発抑制効果を無作為化比較試験(DIANA-5試験)で検討したところ、再発抑制効果は示されなかった。しかしながら、推奨される食事の順守度による解析では、推奨された食事への変化率が上位3分位の女性では有意に予後が良好だったという。Clinical Cancer Research誌オンライン版2023年10月17日号に掲載。 本試験の対象は、再発リスクの高い(エストロゲン受容体陰性もしくはメタボリックシンドロームもしくは血中インスリン/テストステロン高値)乳がん患者1,542例で、食事介入群と対照群に無作為に割り付けた。食事介入群には、料理教室、コミュニティでの食事、食事推奨などで積極的に介入した。推奨される食品は全粒穀物、豆類、大豆製品、野菜、果物、ナッツ類、オリーブ油、魚などで、回避すべき食品は精製品、ジャガイモ、砂糖、デザート、赤肉、加工肉、乳製品、アルコール飲料である。食事順守の指標として、推奨される食品と回避すべき食品の差をDietary Indexとした。 主な結果は以下のとおり。・5年の追跡期間中に、食事介入群95例、対照群98例で乳がんが再発し(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.69~1.40)、差はみられなかった。・両群を合わせてDietary Indexの変化率が上位3分位の女性は、下位3分位の女性に対して、再発のHRが0.59(95%CI:0.36~0.92)であった。 著者らは「本結果は、今後の食事療法の研究において、推奨される食事をより順守し、無作為化した群間に十分な差別化を図ることの重要性を指摘している」としている。

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ファイザーのコロナワクチン、インフルワクチンと同時接種の有効性は?

 ファイザーの新型コロナワクチン(BA.4/5対応2価)と季節性インフルエンザワクチンを同時に接種した場合、別々に接種した場合と比べて有効性に差があるかを、米国の18歳以上の約344万人を対象に、米国・ファイザー社のLeah J. McGrath氏らの研究グループが調査した。その結果、コロナワクチンとインフルワクチンの同時接種は、それぞれ単独で接種した場合と比較して同等の有効性があることが示された。JAMA Network Open誌2023年11月8日号に掲載。 本研究では、2022年8月31日~2023年1月30日に、ファイザーの新型コロナワクチン(BA.4/5対応2価)のみ、インフルワクチンのみ、または両方を同日接種した、米国の民間医療保険に加入している18歳以上の344万2,996人を対象に、後ろ向き比較試験を実施した。1価ワクチンまたは他社の新型コロナワクチン接種者は除外した。65歳以上は、強化型インフルワクチン接種者のみを対象とした。主な転帰および評価基準は、COVID-19関連およびインフルエンザ関連の入院、救急(ED)や緊急診療(UC)の受診、および外来受診とした。ワクチン接種群間の残存バイアスを検出するため、尿路感染と不慮の傷害の2つのネガティブコントロールアウトカム(NCO)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・全344万2,996人(女性57.0%、平均年齢65歳[SD 16.7])のうち、62万7,735人がコロナワクチンとインフルワクチンの同時接種を受け、36万9,423人がコロナワクチン単独接種を受け、244万5,838人がインフルワクチン単独接種を受けた。・65歳以上(221万493人、女性57.9%、平均年齢75歳[SD 6.7])において、同時接種群は、コロナワクチン単独接種群と比較して、COVID-19関連入院の発生率が類似していた(調整ハザード比[aHR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.87~1.24)。一方、救急や緊急診療の受診(aHR:1.12、95%CI:1.02~1.23)と、外来受診(aHR:1.06:95%CI:1.01~1.11)の発生率はわずかに高かった。・18~64歳(123万2,503人、平均年齢47歳[SD 13.1]、女性55.4%)では、同時接種群は、コロナワクチン単独接種群と比較してCOVID-19関連転帰の発生率がわずかに高く、COVID-19関連入院はaHR:1.55(95%CI:0.88~2.73)、救急や緊急診療の受診はaHR:1.57(95%CI:1.09~2.26)、外来受診はaHR:1.14(95%CI:1.07~1.21)であった。ただし、若年層群では全体的にイベントが少なかったため、CIは広くなった。・65歳以上では、インフルワクチン単独接種群と比較して、同時接種群はすべてのインフル関連転帰の発生率が低く、インフル関連入院はaHR:0.83(95%CI:0.72~0.95)、救急や緊急診療の受診はaHR:0.93(95%CI:0.86~1.01)、外来受診はaHR:0.86(95%CI:0.81~0.91)であった。・18~64歳でも高齢者と同様に、インフルワクチン単独接種群と比較して、同時接種群はインフル関連転帰の発生率が同等か、それより低かった。インフル関連入院はaHR:0.92(95%CI:0.69~1.23)、救急や緊急診療の受診はaHR:1.08(95%CI:0.91~1.29)、外来受診はaHR:0.76(95%CI:0.72~0.81)。・NCOを用いたCOVID-19関連およびインフルエンザ関連の転帰のキャリブレーション(較正)で、一貫してすべてのaHR推定値が基準値に近づき、ほぼすべてのCIが1.00を横断し、同時接種の有効性に有意な差がないことが示唆された。 本研究により、ファイザーの2価コロナワクチンとインフルワクチンの同時接種が、高齢者と若年者の両方で、各ワクチンを単独で接種した場合と同等の有効性があることが示された。本結果は、今後の秋冬期のワクチン接種キャンペーンにおいて、両ワクチンの同時接種を支持するものとなった。

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EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法は日本人でもPFS改善(FLAURA2)/日本肺学会

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬のオシメルチニブと化学療法の併用療法は、オシメルチニブ単剤と比べて無増悪生存期間(PFS)を改善することが、国際共同第III相無作為化比較試験FLAURA2試験で報告されている(治験担当医師評価に基づくPFS中央値は併用群25.5ヵ月、単独群16.7ヵ月、ハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.49~0.79)1)。本試験の日本人集団の結果について、小林 国彦氏(埼玉医科大学国際医療センター)が第64回日本肺学会学術集会で発表した。試験デザイン:対象:EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失/L858R)のStageIIIB、IIIC、IVの未治療NSCLC成人患者557例(日本人94例)試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、279例[日本人47例])対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例[日本人47例※])評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率など※:1例は治療開始前に死亡 日本人集団における主な結果は以下のとおり。・日本人集団の患者背景は、併用群でEGFR遺伝子L858R変異が多かったが(併用群51%、単独群34%)、それ以外は両群で同様であった。日本人集団はPS 0が多く(全体集団はいずれの群も37%であったのに対し、日本人集団はそれぞれ53%、43%)、腫瘍径が小さかった(平均値は全体集団がそれぞれ65mm、64mmであったのに対し、日本人集団はそれぞれ48mm、51mm)。・治験担当医師評価に基づくPFS中央値は、併用群が24.8ヵ月、単独群が16.4ヵ月であった(HR:0.49、95%CI:0.28~0.86)。・OSはデータカットオフ時点で未成熟(成熟度:29%)であった。参考値ではあるが、データカットオフ時点のOS中央値は、併用群が31.9ヵ月、単独群が未到達であった(HR:0.70、95%CI:0.32~1.54)。・奏効率は、併用群が87%(CRは0例)、単独群が72%(CRは0例)で、奏効期間中央値は、それぞれ23.3ヵ月、13.8ヵ月であった。・Grade3以上の有害事象は併用群に多く発現したが(併用群47%、単独群13%)、治療関連死はいずれの群においても認められなかった。 また、全体集団におけるベースライン時の脳転移の有無別、EGFR遺伝子変異の種類別にみた治験担当医師評価に基づくPFSの結果も報告された。PFS中央値およびHR、95%CIは以下のとおり。・脳転移あり集団:併用群24.9ヵ月、単独群13.8ヵ月(HR:0.47、95%CI:0.33~0.66)。・脳転移なし集団:併用群27.6ヵ月、単独群21.0ヵ月(同:0.75、0.55~1.03)。・exon19欠失変異集団:併用群27.9ヵ月、単独群19.4ヵ月(同:0.60、0.44~0.83)。・L858R変異集団:併用群24.7ヵ月、単独群13.9ヵ月(同:0.63、0.44~0.90)。 本試験結果について、小林氏は「オシメルチニブ+プラチナ製剤+ペメトレキセドは、日本人においてもEGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCに対する1次治療の新たな選択肢となるだろう」とまとめた。

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日本人統合失調症患者の院内死亡率と心血管治療との関連性

 統合失調症は、心血管疾患(CVD)リスクと関連しており、統合失調症患者では、CVDに対する次善治療が必要となるケースも少なくない。しかし、心不全(HF)により入院した統合失調症患者の院内予後およびケアの質に関する情報は限られている。京都府立医科大学の西 真宏氏らは、統合失調症患者の院内死亡率および心不全で入院した患者の心血管治療との関連を調査した。その結果から、統合失調症は心不全により入院した非高齢患者において院内死亡のリスク因子であり、統合失調症患者に対する心血管治療薬の処方率が低いことが明らかとなった。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌2023年10月18日号の報告。 日本全国の心血管登録データを用いて、2012~19年に心不全により入院した患者70万4,193例を対象に、年齢別に層別化を行った。18~45歳の若年群2万289例、45~65歳の中年群11万4,947例、65~85歳の高齢群56万8,957例に分類した。すべての原因による死亡率、30日間の院内死亡率、心血管治療薬の処方について評価を行った。欠損データを複数回代入した後、混合効果多変量ロジスティック回帰分析を用いて分析した。ランダム効果の変数として、病院識別コードを有する患者と病院の特性を用いた。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は、入院期間が長期化し、入院費用が高額になる可能性が高かった。・非高齢者群における統合失調症患者の院内死亡率は、非統合失調症患者と比較し、有意に不良であった。 【対若年群死亡率】7.6% vs. 3.5%、調整オッズ比(aOR):1.96、95%信頼区間(CI):1.24~3.10、p=0.0037 【対中年群死亡率】6.2% vs. 4.0%、aOR:1.49、95%CI:1.17~1.88、p<0.001・30日以内の院内死亡率は、中年群で有意に不良であった(4.7% vs. 3.0%、aOR:1.40、95%CI:1.07~1.83、p=0.012)。・高齢群の院内死亡率は、統合失調症の有無にかかわらず同程度であった。・β遮断薬およびACE阻害薬、ARB処方は、すべての年齢層の統合失調症患者で有意に低かった。 結果を踏まえ、著者らは「重度の精神疾患を有する患者では、心不全に対する十分なケアやマネジメントが必要である」としている。

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頻脈を伴う敗血症性ショック、ランジオロールは無益/JAMA

 頻脈を伴う敗血症性ショックでノルアドレナリンによる治療を24時間以上受けている患者において、ランジオロール点滴静注は標準治療と比較し、無作為化後14日間のSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコアで評価される臓器不全のアウトカムを改善しなかった。英国・University Hospitals Birmingham NHS Foundation TrustのTony Whitehouse氏らが、医師主導の多施設共同無作為化非盲検並行群間比較試験「Study into the Reversal of Septic Shock with Landiolol:STRESS-L試験」の結果を報告した。敗血症性ショックは、アドレナリン作動性ストレスにより心臓、免疫、炎症、代謝経路に影響を与える。β遮断薬は、カテコールアミン曝露の悪影響を軽減する可能性があり、最近のメタ解析で、敗血症性ショック患者においてβ遮断薬による死亡率の低下が示されていた。しかし著者は本試験の結果を受けて、「敗血症性ショックに対してノルアドレナリンで治療されている患者の頻脈管理に、ランジオロールを用いることは支持されない」とまとめている。JAMA誌2023年11月7日号掲載の報告。ランジオロールvs.標準治療、SOFAスコアおよび死亡率等を比較 研究グループは、英国国民保健サービス(NHS)急性期病院の集中治療室40施設において、コンセンサス基準(Sepsis-3)により敗血症性ショックと診断され、24時間以上(72時間未満)のノルアドレナリン(0.1μg/kg/分)投与を受け、頻脈(心拍数95/分以上)を有する18歳以上の成人患者を、ランジオロール群および標準治療群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、無作為化後14日時点の平均SOFAスコア、副次アウトカムは28日および90日死亡率、有害事象の件数などであった。 本試験は、ランジオロール群で有害性が示唆されたため、独立データモニタリング委員会の勧告により2021年12月15日に早期中止となった。2018年4月19日~2021年12月15日に無作為化された患者は、予定された340例のうち126例(37%)にとどまった(ランジオロール群63例、標準治療群63例)。126例の患者背景は、平均年齢55.6歳(95%信頼区間[CI]:52.7~58.5)、男性58.7%であった。平均SOFAスコアに有意差なし、28日および90日死亡率はランジオロール群で上昇 SOFAスコア(平均値±SD)は、ランジオロール群8.8±3.9、標準治療群8.1±3.2、平均群間差は0.75(95%CI:-0.49~2.0、p=0.24)であった。 無作為化後28日死亡率は、ランジオロール群37.1%(62例中23例)、標準治療群25.4%(63例中16例)(絶対群間差:11.7%、95%CI:-4.4~27.8、p=0.16)、90日死亡率はそれぞれ43.5%(62例中27例)、28.6%(63例中18例)(15%、-1.7~31.6、p=0.08)であった。 有害事象の発現率は、ランジオロール群17.5%(63例中10例)、標準治療群12.7%(63例中8例)で、両群間に有意な差はなかった。しかし、重篤な有害事象の発現率は、ランジオロール群25.4%(63例中16例)に対し、標準治療群では6.4%(63例中4例)で有意差がみられた(p=0.006)。1つ以上の有害事象を発現した患者数については両群で差はなかった。

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巣状分節性糸球体硬化症のeGFR変化、sparsentan vs.イルベサルタン/NEJM

 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)患者において、エンドセリン受容体・アンジオテンシン受容体デュアル拮抗薬のsparsentanは、イルベサルタンと比較し尿蛋白の減少が大きかったにもかかわらず、108週時の推算糸球体濾過量(eGFR)スロープ(eGFR変化率の年率換算)に有意差は認められなかった。米国・ミネソタ大学のMichelle N. Rheault氏らが、多施設共同無作為化二重盲検第III相試験「DUPLEX試験」の結果を報告した。FSGSの治療にはアンメットニーズが存在する。sparsentanは、8週間の第II相試験ではFSGS患者の尿蛋白を減少させたが、FSGSに対する長期投与の有効性と安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2023年11月3日号掲載の報告。最終解析はeGFRスロープ(eGFR変化率の年率換算)で有効性を検証 研究グループは、生検でFSGSと確定診断された、またはFSGSに関連するポドサイト蛋白変異が確認された8~75歳の患者を、sparsentan群またはイルベサルタン群に、1対1の割合で無作為に割り付け、最大108週間投与した。 事前に規定した36週時点の中間解析では、代替エンドポイントをFSGS部分寛解の蛋白尿(尿蛋白[g]/クレアチニン[g]比が≦1.5、かつベースラインから>40%減少と定義)とした。 108週時の最終解析では、有効性のエンドポイントを全eGFRスロープ(1日目から108週時までのeGFR変化率の年率換算[米国では主要エンドポイント、米国以外では副次エンドポイント])、および慢性期eGFRスロープ(6週時から108週時までのスロープ[米国では副次エンドポイント、米国以外では主要エンドポイント])とし、追加の副次エンドポイトをベースラインから112週時(最終投与から4週間後)までのeGFR変化量とした。108週時のeGFRスロープ、sparsentan群とイルベサルタン群で有意差なし 2018年4月17日~2021年1月5日に、計371例がsparsentan群(184例)またはイルベサルタン群(187例)に無作為化された。 36週時の中間解析において、蛋白尿部分寛解率推定値はsparsentan群42.0%、イルベサルタン群26.0%で、両群間に有意差が認められた(群間差:16.0ポイント[95%信頼区間[CI]:4.0~28.0]、相対リスク:1.55[95%CI:1.10~2.18]、p=0.009)。 108週時の最終解析では、eGFRスロープに両群で有意差は確認されなかった。全eGFRスロープの群間差は0.3mL/分/1.73m2/年(95%CI:-1.7~2.4)、慢性期eGFRスロープの群間差は0.9mL/分/1.73m2/年(-1.3~3.0)であった。 二重盲検投与期を完了した患者において、ベースラインから112週時までのeGFR平均変化量は、sparsentan群-10.4mL/分/1.73m2、イルベサルタン群-12.1mL/分/1.73m2であった(群間差:1.8mL/分/1.73m2、95%CI:-1.4~4.9)。 安全性プロファイルはsparsentan群とイルベサルタン群で類似しており、有害事象の発現率もそれぞれ93.5%および93.0%で同等であった。

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妊娠糖尿病に対する早期のメトホルミン投与の効果(解説:小川大輔氏)

 日本においてメトホルミンは「妊婦または妊娠している可能性のある女性」への投与は禁忌となっている。一方、海外ではメトホルミンは妊娠糖尿病に使用可能である。今回、妊娠糖尿病患者を対象に、妊娠早期からメトホルミン治療を開始する試験の結果がJAMA誌に発表された1)。 この試験はアイルランドの2ヵ所の医療機関で、妊娠28週以前に妊娠糖尿病と診断された被験者を登録して実施された二重盲検無作為化試験である。被験者510人(妊娠535件)を対象として、メトホルミンを投与する群(メトホルミン群)と、プラセボを投与する群(プラセボ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。主要アウトカムは妊娠32週または38週時点での空腹時血糖高値(5.1mmol/L以上)、またはインスリン療法の開始であった。 主要複合アウトカムはメトホルミン群で56.8%、プラセボ群で63.7%と有意差を認めなかった(相対リスク:0.89、95%信頼区間[CI]:0.78~1.02、p=0.13)。母体に関する副次アウトカムのうち、インスリン開始までの時間、自己報告の毛細血管血糖コントロール、妊娠中の体重増加はメトホルミン群で有意に良好であった。新生児に関する副次アウトカムでは、出生時体重がメトホルミン群で有意に低値であった。 妊娠早期からのメトホルミン投与により、主要複合アウトカムは有意差がなかったが、インスリン療法の開始についてはメトホルミン群で38.4%、プラセボ群で51.1%と有意差を認めた(相対リスク:0.75、95%CI:0.62~0.91、p=0.004)。また、副次アウトカムでも妊娠中の血糖コントロールや母体の体重管理は、メトホルミン早期導入により改善することが示された。そのため今回の試験結果だけで、妊娠糖尿病に早期からメトホルミンを導入するべきではないと結論付けることは難しい。著者らが考察しているように、より規模の大きな臨床試験を行う必要があるだろう。 また、すべての妊娠糖尿病患者に早期からメトホルミンを投与する必要はないのかもしれない。インスリン分泌が低下しているのであれば早期からインスリン導入を検討するべきであるし、肥満を伴っていれば早期からメトホルミン投与を考慮してもよいだろう。今後試験デザインを再考し、対象となる症例を増やして妊娠糖尿病に対するメトホルミン早期導入の意義を検討する臨床試験が行われることを期待したい。 メトホルミンは妊娠中の血糖管理だけでなく、妊婦の体重増加や妊娠高血圧腎症などに有効かつ安全であることが報告されている2)。実臨床で血糖コントロールのために大量のインスリンを必要とし、体重管理に苦慮する妊娠糖尿病の症例をしばしば経験するので、日本でも妊娠糖尿病でメトホルミンが投与できるようになることを願う。

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087)爪切り処置の飛び散り対策【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第87回 爪切り処置の飛び散り対策ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆爪の伸展が速くなる夏の時期を過ぎましたが、皮膚科外来の皆さまにおかれましては、いかがお過ごしでしょうか?私の勤める病院では、すこしずつ患者数が落ちつき、秋の訪れを感じるこの頃です。それと同時に、カサカサ乾燥肌の相談がちらほらとみられるようになり、冬の訪れを意識するようにもなりました。(しかし、まだ日中は暑いですね!)伸びが落ちつくと言っても通年でなくならないのが、爪切りの相談!主には肥厚し、「自分で切れなくなった」というご相談がメインですが、この爪切り処置。分厚く肥厚した爪甲との格闘に夢中になるあまり、切った破片を外来のあちらこちらに飛び散らせてしまうことが多々あります。そうするとスタッフが処置ベッドや床をお掃除するという手間が発生してしまう訳ですが、下手をすると自分の頭にも飛んできたり、最悪、顔に当たったりすることも…。怪我をするほどのことではありませんが、気分が良くないのは言うまでもありません。(他人の足の爪~!)そこで、なるべく切った爪の破片は、自分の手元に落としたいところ。私が実践しているのは、主に以下の2つです。(1)切り離されるあたりの爪の一部に、あらかじめ手で触れておく。(2)切る位置を確定したら、もう片方の手でガードする。(1)は、切るときに爪の先端を指で触れておく、というもの。こうすると破片の勢いを殺すことができるので、切除後の爪はそのまま床に大人しく落下します。また、切るときに手元を確認することができるので、安全でお勧めです。が、時に失敗して、あらぬ方向に飛んでいくこともあります…。(2)は、切る位置にニッパーをかまえたら、力をこめるだけの状態にしておいて、もう片方の手で覆いながらカットする、というもの。飛び散った破片は手の中に当たり、だいたいはまっすぐ床に落下します。切る瞬間に手元を確認できないので、下手に切らないよう注意が必要です(位置を決めたら、動かさない)。飛び散った破片が手のひらに当たるため、多少イテッと感じることがあります。が、ガード率はやや高めなものの、斜め下の方角へ反射して飛んでいくことも…。爪切り処置を行う皆さまは、どちら派でしょうか?私の個人的なお勧めは、(1)です!爪切り処置、破片の飛び散り対策について記事にしてみました!それでは、また次の連載で。

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看護学校の面接試験【Dr. 中島の 新・徒然草】(503)

五百三の段 看護学校の面接試験近所の紅葉、あまり鮮やかではないような気がします。まだ季節が早すぎるのでしょうか?それとも綺麗な紅葉を見るためには、面倒がらずに出かけるべきなのかもしれません。さて、先週末には看護学校の社会人入試があり、私も面接官としてお手伝いさせていただきました。残念なことに、今年の受験者数はずいぶん減ってしまったのだとか。世の中の景気が悪いと志願者が増え、景気が良くなると志願してもらえないそうです。確かに帝国データバンクが公表している景気動向調査のグラフを見ていると、直近で景気の最低は2020年4月頃で、そこから徐々に上向きになって、現在は2023年4月頃から高止まりしています。一番いいのは、世の中の景気もよくて看護学校受験者数も多いことですが、なかなか思うようにはいきませんね。で、教員たちによると「とにかく看護師免許を取りたいと思って入学しました」と公言する学生が少なくないのだとか。中島「『とにかく看護師免許を取りたい』っていうのもアリじゃないかな。『勤めていた会社が倒産したので妻子を抱えて路頭に迷っています。夜勤でも何でもやるので入学させてください!』という人がいたら、僕は志なんか問わずに、その根性に期待するけどね」教員「そりゃあそうかもしれませんけど、その人の看護観というのも大切ではないかと……」私にとって衝撃だったのは、1997年の山一証券の自主廃業です。「あんなでかい会社でも潰れるのか!」と、当時の製薬会社のMRさんたちと一緒に驚いたことを覚えています。そのようなニュースを知っているので「とにかく免許を取りたい」という気持ちもよくわかります。とはいえ現実の医療の世界に放り込まれたら、志も個人的事情も後回しにして、ひたすら働かなくてはなりません。中島「僕の親戚で、50歳過ぎてから看護学校を卒業した人がいるけどね」教員「すごいですね!」中島「彼女に『夜勤とか辛くない?』と聞いたら『とにかく最初の3年間は急性期病院で頑張ります』と言ってたけど」教員「最近の学生には、急性期病院にこだわらずに最初からやりたい仕事をしたほうがいいかも、とアドバイスすることが多くなりましたよ」コロナ禍で法事が行われないので、その親戚が今どうしているのか、知る機会がなくなってしまいました。そういえば履歴書にTOEICの点数を書いてきた受験生もいました。外国人観光客が増えてきた昨今、英語の勉強をしている人は戦力としてアテにできそうですね。一般に外国人観光客は助けを求めて医療機関を受診するので、こちらの下手な英語にも忍耐強く付き合ってくれます。なので、とかく苦手意識を持ちがちな外国人診療ではありますが、自分の英語を鍛えるいい機会だと思うようになりました。ということで、教員たちと話が盛り上がった秋の1日。面接試験では初々しい受験生たちに接して気分が若返りました。最後に1句夜勤明け 朝日にまばゆい 紅葉(もみじ)かな

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