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映画「かがみの孤城」(その3)【この城が答えだったんだ!(不登校への学校改革「かがみの孤城プロジェクト」)】Part 2

これからの中学校に必要な機能とは?こころたちが城に通うようになったのは、願いを叶えるという目的がある、先に鍵を見つけられるかという評価がある、ほどほどに仲良くなれるという距離感があるからであることがわかりました。そして、これらの仕組みは、学校にはないことがわかりました。これを踏まえて、とくにこれからの中学校はどう変わればいいでしょうか? 私たちの現実の世界で、「かがみの孤城」のような中学校をどうつくることができるでしょうか? ここから、「かがみの孤城プロジェクト」と称して、これからの中学校に必要な機能を主に3つご提案します。(1)学校に行く目的を意識させる―自我を育む1つ目の機能は、学校に行く目的を意識させることです。その1でも説明したとおり、小学校までは「親に言われるから」「友達に会えるから」という理由で、学校に行っていました。しかし、中学校からは、これだけではなく、学校に行く目的を自分で納得する必要があります。これは、自分は何を学んでどうなりたいかという自我を育みます。そのための具体的な取り組みを主に3つ挙げてみましょう。a.ビジョンを共有する学校では、従来から「将来の夢」を書かせることはよくあります。ただ、これだけで終わらせないことです。その夢の実現のためのプロセスを具体的に示し、話し合って共有する必要があります。1つ目は、ビジョンを共有することです。これは、大人になったらどうしたいか、どうなりたいか、つまりどうやって生きていきたいかを本人、家族、そして学校が定期的に話し合っており、それを共有していることです。また、学校に行く一番の目的は、なるべく偏差値の高い高校や有名な大学に進学するためではないことも共通認識とする必要があります。その一番の目的は、先ほども触れましたが、大人になって社会で自分が望むように生きていくためです。その結果として、偏差値の高い高校や有名な大学に進学する必要が出てくることはあります。これは、その2でご紹介した家庭でのタイムマシンクエスチョンに通じます。ちなみに、プロスポーツ選手、アイドル、ユーチューバー、ゲームクリエイターなどなかなかなれない職業を言ってきたら、どうしましょうか? その夢は夢で支持しつつも、実際になれる人の数や知名度による収入差を示し、なれなかった時のバックアップのための現実的な職業も考えてもらうことです。思いつかないと言ったら、どうしましょうか? その2でも説明したとおり、いったん本人の強み(リソース)の再確認をして、自尊心や自信を高めます。そして、「やってもいい職業」「嫌いじゃない職業」と言い換え、ハードルを下げて、とりあえず何かの職業を言いやすくすることです。そして、その職業を「仮ビジョン」とすることです。大事なことは、何でもいいからまずビジョンを描くことです。そうすれば、こころの願いごとが最後に変わったように、学校で出会う友達や先生との相互作用によって、仮ビジョンが最終ビジョンに変わっていく可能性を見出せます。逆に、仮ビジョンすらなければ、学校に行く目的を見失ってしまい、最終ビジョンを育むチャンスを逃してしまいます。b.どれだけ学ぶかの自由を与える小学校の教育は、社会で生きていくために必要なものばかりです。一方、高校の教育は、義務教育ではなく、何をどれだけ学ぶかの選択の自由があります。その間の中学校の教育は、現代の情報化社会では必ずしも生きていくために必要なものばかりではないのに、義務教育であるという建前のため、高校のような選択の自由がないです。自由があるとしたら、それは不登校という一択だけです。2つ目は、どれだけ学ぶかの自由を与えることです。これは、本人のビジョンに合わせて、何をどれだけ学ぶかの多様性(自由)を認めることです。学びのトータルの時間を変えずに、そのバランスを選ばせるということです。もちろん、従来の標準的な各科目の授業時間数は基準として示しておけば、従来通りの教育を受けることもできます。たとえば、英語、国語、数学、理科、社会科の各科目の時間数の60%は必修としつつ、残りの40%は選択とすることです。すると、英語をもっと学びたいけど数学は必要最低限で良いという生徒は、数学の40%の時間を英語に回して、英語の授業時間数を増やすことができます。逆に、言語能力がもともと低い場合は、英語が負担になってしまうため、英語の40%の時間を国語に回して、日本語に専念することができます。このプロセスで大事なことは、あえて生徒に選ばせることです。選べばそこに責任が生まれます。これは、学ぶことで責任感を持たせ、学校に行く動機づけを高めます。もともと決められたこととしてやらなければならないという心理(外発的動機づけ)から、自分で決めてやりたいという心理(内発的動機づけ)に変えていくことができます。これは、本人の意思を尊重している点で、大人扱いです。そして、学校に行かないと得るものがないという点で、学校に行くことは義務ではなく権利であるという感覚になります。そして、学校で自分がどうしたいかという自我を育みます。c.学ぶ責任を自覚させる高校では、何をどれだけ学ぶかの自由があると同時に、その学びが期限内に達成されなければ、留年や中途退学という責任が負わされます。先ほどのように、中学校でもどれだけ学ぶかの自由(選択権)をある程度与えるなら、その選んだ責任が生まれると考えることができます。3つ目は、学ぶ責任を自覚させることです。これは、学校に行かないことによる将来のリスクを説明するだけでは限界があります。義務教育であるだけに、やはり社会的な介入が必要になります。たとえば、欠席日数が1ヵ月を超えた時点で、教育委員会や専門医療機関での評価と定期的な心理カウンセリングを義務づけることです。その義務も果たさない場合は、親(養育者)に罰金を課すことです。親としても、罰金を取られたくないという大義名分から、本人に義務を守ることを促すことができます。これも大人扱いです。学校に行かないと面倒が起きて損をするという点でも、本人にその責任を自覚させることができます。ちょうど、車がスピードを自由に出してはいけないという交通ルールがあるのと同じです。子供が教育を受けないで自由にしていてはいけないという「ワークルール」を教える必要があります。教育を受けるとは、何かに取り組むこと(ワーク)であり、働く(ワーク)リハーサルをしているとも言えます。これは、日本国憲法に定められた三大義務のもう1つである「勤労の義務」につながります。交通ルールと同じように、この「ワークルール」も、罰金などのペナルティがあることで、ルールを守る責任を自覚させることができます。(2)評価によって今後を左右させる―自信を育む2つ目の機能は、評価によって今後を左右させることです。その1でも説明したとおり、小学校まではまず居場所であることが重要なため、評価は二の次でした。しかし、中学校からは、積極的に評価して、本人の強み(リソース)を自覚させる必要があります。これは、自信を育みます。具体的な取り組みを主に3つ挙げてみましょう。a.科目別・達成度別にクラスを分ける1つ目の取り組みは、科目別・達成度別にクラスを分けることです。たとえば、1学年で4クラスあるなら、それぞれの科目で4つの達成度別のクラスをつくります。ちょうど、英検や漢検などの資格が細かく級分けされているイメージです。すると、より自分のレベルに合った授業を受けられるため、わからなくて嫌になることも物足りなくて嫌になることもなくなります。そして、学べば学ぶほど、達成した結果が目に見えるため、自信がつきます。これは、その2でご紹介した家庭でのお小遣いルールに通じます。また、この取り組みによって、よく一緒の授業を受ける人が数人いることはあっても、すべての授業を同じ数十人が同じ教室でずっと一緒に受け続けることはなくなります。もはや「〇組」という概念は曖昧になります。すると、クラスの人間関係は流動的となり、先ほど説明した同調性が低くなるので、結果的にいじめのリスクが低くなるという副次的な効果が得られるでしょう。b.クラス替えを年複数回にする2つ目の取り組みは、クラス替えを年複数回にすることです。すると、もしも自分のレベルに合っていないクラスだったり、人間関係でうまく行かなかったとしても、1年我慢して待たなくてよくなります。これは、不登校のリスクを下げるでしょう。たとえば、年度替わりの4月、夏休み明けの9月、冬休み明けの1月でそれまでのクラスの評価をもとにクラス替えを3回行います。冬休み明けの1月を外して、2回にすることもできます。評価には、休み中の課題を加味すれば、その課題の達成率が飛躍的に高まります。人間はやってもやらなくても状況が変わらないのだったらたいていやる気が起きませんが、やっただけ評価され、状況が変わるのであれば、やる気は高まります。この取り組みも、クラスの人間関係をさらに流動的にさせるため、いじめのリスクをさらに低くさせることができるでしょう。c.飛び級・「留級」を可能にする3つ目の取り組みは、飛び級・「留級」を可能にすることです。たとえば、3学年で12クラスあるなら、科目別と達成度別に12のクラスをつくります。達成度によってその生徒に合う授業を受けることを優先することです。もはや、年齢と学年を厳密に一致させる合理性はまったくなくなります。これは、ある生徒がある科目のクラスに出席していなかったりただ教室に座っているだけの場合、その生徒はそのクラスに次の学期(約3ヵ月)に留まること(名づけて「留級」)になります。この状況は、見方によっては「かわいそう」と思われるかもしれません。しかし、よくよく考えると、学んでいないのに自動的に進級させるのは、本人にとってさらに難しい授業を受けさせることになります。むしろこちらの方が「かわいそう」です。また、すべての科目の1年間の留年と違い、1つずつの科目の3ヵ月の「留級」は、そのロスが最低限です。逆に、ある科目のクラスで生徒の学ぶスピードが速いのであれば、次の学期で飛び級にすることは、その生徒により合った授業を提供することになるため、もちろん合理的であり、その生徒のためになります。中学校を半年早く卒業すれば、海外の高校にも進学できます。ただし、これらは本人希望であることが大前提です。本人が望まなければ、大人扱いして本人の意思を尊重します。また、本人があえて「留級」を望む場合も同じです。この取り組みは、科目によっては学年が上がっていたり下がっていたりすることもあることから、もはや「〇学年」という概念も曖昧になるでしょう。ちなみに、欧米では、小学校、中学校での留年率が一定数ある国が多いです。たとえば、留年率が高い国としてはドイツの中学校(15%)、フランスの中学校(30%)です1)。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「かがみの孤城」(その3)【この城が答えだったんだ!(不登校への学校改革「かがみの孤城プロジェクト」)】Part 3

(3)教え合うという役割を与える―自尊心3つ目の機能は、教え合うという役割を与えることです。その1でも説明したとおり、小学校までは不特定多数の友達づくりの心理から、教室にただ一緒にいるだけで居場所になりました。しかし、中学校からは、特定少数の親友づくり(グループ形成)の心理が高まることから、ただ一緒にいるだけでは仲間外れが起こり、居場所になるとは限りません。よって、学校側が一緒にいる理由(役割)を枠組みとしてつくる必要があります。これは、自尊心を育みます。具体的な取り組みを主に3つ挙げてみましょう。a.グループワークをメインにする1つ目の取り組みは、授業はグループワークをメインにすることです。少人数グループに分けて、一人ひとりが学んだことを発表し合い、お互いに教え合います。教師は、教え合うテーマを出して、簡単なガイダンスをすることはあっても、一方的に教えるのを控え、サポートに徹します。これは、まさに映画に登場する案内人の女の子の立ち位置です。逆に言えば、ただ教室に座っているだけの生徒は評価されないことになります。教室で発言しようとする態度とその発言内容が評価されます。生徒たちもお互いにどれだけ学んでいるかがわかり、評価もオープンなものになります。すると、授業中に寝る生徒はいなくなるでしょう。寝るなら、評価されないだけだからです。これは、わざわざ寝ている生徒を起こす必要がなくなり、教師にとっても楽になります。なお、教え合うにはやはり達成度が同じレベルであることが必要になります。同じでなければ、教え合ってもわかり合えないという事態が起きるからです。この取り組みは、アクティブ・ラーニングとも呼ばれています。この詳細は、関連記事2のページの最後をご覧ください。b.オンラインによる個別学習にする2つ目の取り組みは、オンラインによる個別学習です。これは、グループワークの前に自習時間を設け、各自で予習をすることです。教えるためには、やはりまず教わる必要があります。ただし、教わる場所や教師は、同じである必要はありません。場所は、図書室、空き教室、自宅などで自由とします。その内容は、すでに収録された授業をストリーミング動画でいつでも視聴できるようにします。また、教える先生は、グループワークと同じ先生ではなく、別の学校の先生でも、学習塾の先生でも可能とします。どの先生にするか、生徒に選ぶ自由(選択権)を与えるのです。これも、大人扱いです。そもそも、現代の情報化社会でICTが高度に発展しているなか、大人数が教室という1ヵ所に集まって、決まった教師が話すことを一方的に聞いて、黒板を静かに書き写す作業を1日中続けることは、何の合理性もないです。これは、海外の教育学者から「工場型一斉授業」と指摘されています2)。まさに、商品がベルトコンベヤーに並べられて自動的に作り込まれていくのと同じように、生徒たちが教室に並べられて有無を言わさずに一方的に知識を詰め込まれるイメージです。オンライン個別学習によって、1人の教師の授業動画を数百万人の生徒に共有できるようにすれば、残りのほとんどの教師はグループワークの授業だけになり、時間と労力が相当数浮きます。その分、グループワークの授業に専念できますし、グループワークに複数の教師を配置することもできます。そして、もともとの教師不足という社会問題の打開策にもなります。また、科目別・達成度別のクラスを複数維持するためには、選択したいクラスがバッティングしないように予備の時間(自習時間)を増やす必要があります。その時間にオンライン個別学習を当てれば、この問題は解消されます。なお、オンライン学習(学習インプット)+グループワーク(学習アウトプット)は、ブレンディッド・ラーニングと呼ばれ、すでに米国で広がりつつあります2)。ちなみに、オンライン個別学習だけで、すでにホームスクーリング(家庭学習)の役割を果たしていることにもなります。ちなみに、テストも個別学習と同じように、オンライン化していつでもどこでも受けられるようにします。生成AIを導入すれば、オンラインで面接テストも可能です。成績表(評価)を自動算定できるようにします。これらの取り組みは、生徒だけでなく、教師の労力も大幅に減らすことができます。もはや、教室という空間は、生徒たちが静かに座っている場ではなく、生徒たちが活発に話し合って動き回って相互作用する場にしかしないようにするのです。この取り組みも、自習時間がクラスの人間関係から解放される時間になり、逆に「ぼっち」がありふれたものになるため、もはや「ぼっち」というレッテルを貼るいじめはなくなるでしょう。c.校則を生徒たちの投票によって決める3つ目の取り組みは、校則を生徒たちの投票によって決めることです。これは、かがみの孤城で7人が話し合いによってルールを決めていたように、自分たちの学校生活のルールを話し合い、投票によって決めるのです。そのためには、生徒会が真の役割を発揮するでしょう。これは、民主主義の基本を学ぶことにもなります。条例が法律に則っていれば有効であるのと同じように、校則も法律や条例に則っていれば有効です。すると、制服や髪型の規制をはじめとする不合理な「ブラック校則」はすぐになくなるでしょう。これは、その2でご紹介した家庭のルールづくりの交渉制に通じます。この取り組みは、生徒一人ひとりに票があるという点で、自尊心を育みます。また、選ぶという行為によって、自我が高まります。かがみの孤城プロジェクト」をスムーズに進めるには?こころたち7人の共通点は、不登校でした。当初、だから城に集められたと私たちは思い込んでいました。ネタバレになるため詳細は避けますが、彼らが城に集められたのは、ある別の目的によって不登校であることが都合良かったからなのでした。この映画の設定と同じようにすれば、「かがみの孤城プロジェクト」を実験的にスムーズに進めることができます。ここから、3つの段階に分けてご提案します。(1)第1段階第1段階は、すでに不登校になっている中学生を全国から募り、個別学習だけでなくグループワークもオンラインにすることです。まさに、パソコンやスマホの画面という「かがみ」を通して、グループワークという「孤城」に参加するのです。こころたちと同じように、新しい人間関係になるため、もともとのクラスに戻るよりも引け目がない分、ずっと参加しやすいでしょう。そもそも、彼らは、たいてい昼に家にいます。そして、不登校であるため、学習指導要領に縛られるという問題は起きません。つまり、不登校に対して規制がないことを逆手に取るのです。これは、不登校の生徒たちだからこそ実現できる学校改革です。そして、これがこのプロジェクトをスムーズに進めるための第一歩です。これだと、戸惑いや抵抗を感じる関係者の方々は少ないでしょう。すでに、「不登校特例校」でオンライン授業を2025年から開始する構想があります。この構想にこのプロジェクトが結びつくことが理想でしょう。(2)第2段階第1段階で枠組みが整えば、第2段階は、募集対象を不登校になりそうな子供、希望する子供まで広げることです。また、地域のフリースクールや学習塾と連携することです。そうすれば、オンラインから、オフライン、つまり実際のこれらの教室でもグループワークに段階的に参加する頻度を増やすことができるでしょう。グループワークで重要なのは、オンラインはあくまで橋渡しの位置づけで、最終的には生身の人間関係にも慣れていく必要があることです。なぜなら、在宅ワークが増えたとはいえ、やはり社会の仕組みが対面の人間関係に重きを置いているからです。そして、これが私たちの本来の姿(社会脳)だからです。(3)最終段階第2段階で規模が大きくなっていけば、最終段階は、すべての生徒たちに、いままでどおり学校に行くか、それともプロジェクトに参加するかを選ばせることです。また、プロジェクトに参加してグループワークの授業をする教師を学校の教師からも募集することです。プロジェクト参加を希望する生徒や教師がどんどん増えれば、必然的に学校からどんどん生徒や教師が減っていきます。すると、学習指導要領をはじめとする学校の仕組み自体を大きく見直す必要に迫られるでしょう。これが、学校改革のタイミングです。そして、学校が「かがみの孤城プロジェクト」そのものになる日が来るでしょう。その時、問題なのは、不登校の生徒ではなく、不登校を招く学校のあり方であったことに気付くでしょう。なお、このプロジェクトは、中学校の科目全般で進めるだけでなく、小学校の英語教育でも進めることができます。この詳細については、関連記事3をご覧ください。1)「教育は何を評価してきたのか」P49:本田由紀、岩波新書、20202)「ブレンディッド・ラーニングの衝撃」P14、P37:マイケル・B・ホーンほか、教育開発研究所、2017<< 前のページへ■関連記事マザーゲーム(前編)【ママ友付き合い、なんで息苦しいの?(「女心」の二面性)】Part 1クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 2NHKラジオ「小学生の基礎英語」【和製英語教育」から抜け出せる?日本人がバイリンガルになった未来とは?(言語政策)】Part 1

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花粉症、舌下免疫療法を希望する患者が来院【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第17回

花粉症、舌下免疫療法を希望する患者が来院講師日本医科大学多摩永山病院 病院教授 後藤 穣 氏【今回の症例】33歳女性。約10年前より2月下旬から4月上旬にかけて水様性鼻漏、くしゃみ、目のかゆみを自覚している。前年までは市販薬で治療していたが効果が乏しいために、2月初めにスギ花粉症に対する根治的治療として舌下免疫療法を希望し、クリニックを受診した。

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第83回 反ワクチンは左派が多い?

illustACより使用SNSでは反ワクチン・反マスク・反医療などが話題になりました。ある程度弱毒化したため、COVID-19のワクチンも以前ほど取り上げられなくなりました。医療従事者でも、もう接種していない人であっても普通に働いている印象です。さて、X(旧Twitter)を使った興味深い研究結果が報告されました1,2)。ズバリ、「反ワクチンは左派が多い」というものです。個人的には右派だろうと左派だろうと、どちらでもいいのですが、SNSでは結構バズっているので取り上げてみました。とはいえ、反ワクチンにも幅があります。何となく心配だから…という人の気持ちはよくわかります。「殺人ワクチンや!」みたいなことを叫んでいる人は、ガチの反ワクチンでよいと思います。そういう方は、攻撃的なアカウントのことが多く、私も職場にいくつか誹謗中傷のお手紙が届きました。風の噂では、「ワクチン接種をやめろ」とカッターナイフが職場に届いた医師もいるそうです。さて、この研究は、2021年1~12月にワクチンを含んだツイート(現在は「ポスト」といいます)を収集して、機械学習を用いて「ワクチン賛成」「ワクチン政策批判」「ワクチン反対」の3つのクラスターに分類しました。ワクチン反対ツイートを多く投稿したアカウントを特定し、このアカウント周辺の方々を反ワクチンと定義しています。ワクチン賛成派と反対派を比較して、反対派の特徴を明らかにしました。結果、ワクチン反対派は賛成派と比べて政治的関心が強いことがわかりました。基本的に、左側に偏った意見が多かったようです。これはわれわれも実感するところです。他方、ワクチン賛成派は政治的なツイートは多くなかったようです。また、コロナ禍以前から反ワクチンだった人は、同様に政治的関心が強く、ほとんどが左派政党や陰謀論に偏っていることもわかりました。そして、コロナ禍以降に新たに反ワクチンになった人は陰謀論・スピリチュアリティ・代替医療に傾倒しやすく、反ワクチンを掲げる参政党への支持を高めているという結果が示されています。確かに、アメリカにおいても反ワクチンは、イベルメクチンや一部政党と関連があったという研究結果も報告されています。国を挙げた政策になることから、ワクチンと政治は切っても切れない関係なのかもしれません。個人的にはワクチンに懐疑的な集団をすべて反ワクチンとひとくくりにするのではなく、エビデンスがしっかり確立されているにもかかわらず、強い熱意を持って反対活動を行い、周囲の人へ当該危険性を知らしめるような行動を取る人に注意すべきだと思っています。参考文献・参考サイト1)Toriumi F, et al. Anti-vaccine rabbit hole leads to political representation: the case of Twitter in Japan. J Comput Soc Sci. 2024 Feb 5. [Epub ahead of print]2)東京大学工学部:人はなぜワクチン反対派になるのか ―コロナ禍におけるワクチンツイートの分析―

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第21回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2024

 日本臨床腫瘍学会は2024年1月31日にプレスセミナーを開催し、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(2024年2月22日~24日)の注目演題などを紹介した。 今回は、国・立場・専門分野・職種・治療手段などのあらゆる障壁をなくし、世界を1つにして皆で語り、議論をして、その先に続く未来を切り拓いていきたいという願いを込め、「Break the Borders and Beyond ~for our patients~」というテーマが設定された。演題数は1,258となり、そのうち海外演題数は511と過去最多になる予定である。プレジデンシャルシンポジウムなどの注目演題 能澤 一樹氏(愛知県がんセンター ゲノム医療センターがんゲノム医療室・乳腺科部 医長)が、本会で企画されているプレジデンシャルシンポジウムを紹介した。プレジデンシャルシンポジウムは8セッション、シンポジウムは30セッション企画されている。プレジデンシャルシンポジウムは以下のとおり。【プレジデンシャルシンポジウム】会長企画シンポジウム1:Real World Data(RWD)活用に向けた基盤整備2月22日(木)9:00~10:20会長企画シンポジウム2:ICIで変わる、周術期治療2月22日(木)10:30~11:30会長企画シンポジウム3:腫瘍内科医に知って欲しい外科治療の進歩2月22日(木)15:30~17:00会長企画シンポジウム4:多学際領域との協働で奏でる臨床腫瘍学の未来2月23日(金)8:20~9:50会長企画シンポジウム5:超高齢社会のがん医療、日本はどうすべきか2月23日(金)9:50~11:20会長企画シンポジウム6:臨床開発や日常診療のためのReal World Data活用を考える2月24日(土)8:20~9:50会長企画シンポジウム7:がん診療は集約化か均てん化か2月24日(土)13:45~15:15会長企画シンポジウム8:新規薬剤開発における新しいドラッグロス2月24日(土)9:50~11:50 また、岩田 広治氏(愛知県がんセンター副院長 兼 乳腺科部長)は、プレジデンシャルセッションが充実していることを強調した。プレジデンシャルセッションで発表されるデータは、過去に国際学会で発表されたものではなく、世界で初めて発表されるデータとなっている。紹介された演題は以下のとおり。【プレジデンシャルセッション】・肺がんグローバル試験の日本人サブセット解析:1演題・肺がんグローバル試験のアジア人サブセット解析:1演題・肺がんグローバル試験の全生存期間アップデート:1演題・消化器がん大規模コホート研究からの新規データ(SCRUM-Japan MONSTAR SCREEN2、GALAXY Trial):3演題・血液がんの新規薬剤第I相試験:1演題・乳がん新規抗体薬物複合体のグローバル試験のアジア人サブセット解析:1演題・乳がん新規グローバル試験のバイオマーカー解析:1演題・日本での新規抗体薬物複合体の第I相試験データ:1演題・消化器がんの日本での第III相試験のバイオマーカー解析:1演題・消化器がんのグローバル試験の日本人サブセット解析:1演題・肝胆膵領域でのJCOG試験の追加解析結果:1演題新規薬剤のドラッグロスへの取り組み 室 圭氏(愛知県がんセンター 薬物療法部 部長)がドラッグロスについて解説した。ドラッグロスは、欧米にて承認されている薬剤が日本では開発されず、使用できないという問題であり、ドラッグロスに該当する抗がん剤は2016年時点で21剤であったのに対し、2020年時点では44剤に増加している。この原因として、海外新興企業が開発する薬剤の増加、臨床試験に日本が組み入れられないことなどが挙げられる。 そこで、わが国が直面する喫緊の問題の解決に向けて、以下のシンポジウムが企画されている。会長企画シンポジウム8:新規薬剤開発における新しいドラッグロス2月24日(土)9:50~11:50リアルワールドデータの活用に向けた諸問題 武藤 学氏(京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学講座 教授)がリアルワールドデータの活用法と現状の課題について紹介した。国際的には、リアルワールドデータを用いて薬剤の承認申請を行うことが検討されており、実際に活用され始めている。日本でもさまざまなデータベースが利用できるようになっているが、アウトカムのデータが存在しない、デジタル化が遅れている、電子カルテメーカーや施設によって情報のコードやデータ構造が異なる、医療者によって記載方法が異なるナラティブデータの取り扱い方が定まっていないなど、課題が山積している。 そこで、リアルワールドデータの活用に向けて、以下のシンポジウムが企画されている。会長企画シンポジウム1:Real World Data(RWD)活用に向けた基盤整備2月22日(木)9:00~10:20会長企画シンポジウム6:臨床開発や日常診療のためのReal World Data活用を考える2月24日(土)8:20~9:50

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日本における頭痛に対する処方パターンと特徴

 長野県・諏訪赤十字病院の勝木 将人氏らは、メディカルビッグデータであるREZULTを用いて、日本の成人頭痛患者(17歳以上)に対する処方パターンの調査を行った。Cephalalgia誌2024年1月号の報告。 Study1では、2020年に頭痛と診断された患者における急性期治療薬の過剰処方の割合を横断的に調査した。過剰処方は、トリプタンとNSAIDs(30錠/90日以上)、NSAIDs単剤(45錠/90日以上)と定義した。Study2では、最初の頭痛診断から2年超の処方パターンを縦断的に調査した。処方薬剤数は、90日ごとにカウントした。 主な結果は以下のとおり。・Study1では、363万8,125例中20万55例(5.5%)が頭痛と診断されており、そのうち1万3,651例(6.8%)に対し急性期治療薬が処方されていた。・NSAIDs単独処方は、1万2,297例(90.1%)でみられ、トリプタンは1,710例(12.5%)に処方されていた。・過剰処方は、2,262例(16.6%)でみられ、1,200例(8.8%)には頭痛の予防治療薬が処方されていた。・Study2では、684万618例中40万8,183例(6.0%)は、頭痛と診断され、その後2年以上継続していた。・時間の経過とともに、急性期治療薬の過剰処方の割合が増加していた。・2年間で急性期治療薬が過剰処方を経験した患者は3万7,617例(9.2%)、2万9,313例(7.2%)において、予防治療薬の処方経験が認められた。 著者らは「実臨床データより、予防治療薬の処方が依然として不十分であることが示唆されており、頭痛に対する急性期治療薬および予防治療薬の処方の割合は、いずれも時間の経過とともに増加している」とまとめている。

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フレイル、「やせが多い」「タンパク質摂取が重要」は誤解?

 人生100年時代といわれ、90歳を迎える人の割合は女性では約50%ともされている。そのなかで、老衰が死因の第3位となっており1)、老衰の予防が重要となっている。また、要介護状態への移行の原因の約80%はフレイルであり、フレイルの予防が注目されている。 そこで、2024年1月26日(腸内フローラの日)に、青森県りんご対策協議会が「いま注目の“健康・長寿”における食と腸内細菌の役割 腸内細菌叢におけるりんごの生体調節機能に関する研究報告」と題したイベントを開催した。そのなかで、内藤 裕二氏(京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授)が「京丹後長寿研究から見えてきたフレイルの現状~食と腸内細菌の役割~」をテーマに、日本有数の長寿地域とされる京丹後市で実施している京丹後長寿コホート研究から得られた最新知見を紹介した。フレイルの4つのリスク因子、やせではなく肥満がリスク 内藤氏はフレイルのリスク因子は、大きく分けて4つあることを紹介した。1つ目は「代謝」で、糖尿病や高血圧症、がんの既往歴、肥満などが含まれる。実際に、京丹後市のフレイルの人にはやせている人はほとんどいないとのことである。2つ目は「睡眠」で、睡眠時間ではなく睡眠の質が重要とのことだ。3つ目は「運動」で、日常的な身体活動度の低さがリスク因子になっているという。4つ目は「環境」で、これには食事、薬剤、居住地などが含まれる。このなかで、内藤氏は運動と食事の重要性を強調した。高タンパク質食はフレイルの予防にならない!? 厚生労働省が公開している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、65歳以上の高齢者のフレイルやサルコペニアの発症予防には、少なくとも1g/kg/日以上のタンパク質摂取が望ましいとしている2)。しかし、内藤氏はこれだけでは不十分であると指摘した。高齢者の高タンパク質食は、サルコペニアの発症予防にならないどころか発症のリスクとなっているという報告もあり3)、単純にタンパク質を多く摂取すればよいわけではないことを強調した。フレイル予防に有用な栄養素とは? 内藤氏は、京丹後長寿コホート研究でフレイルと非フレイルを比較した結果を報告した(未発表データ)。3大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)について検討した結果、フレイルの有無によって脂質や炭水化物の摂取量には差がなく、タンパク質についても植物性タンパク質がフレイル群でわずかに少ないのみであった。しかし、6大栄養素(3大栄養素+ミネラル、ビタミン、食物繊維)に範囲を広げて比較すると、フレイル群はカリウムやマグネシウム、ビタミンB群、食物繊維の摂取が少なかった。また、食物繊維を多く含む食品のなかで、その他野菜(非緑黄色野菜)や豆類の摂取がフレイル群で少なかったことも明らかになった。 京丹後長寿コホート研究では、食物繊維の摂取が腸内細菌叢にも影響することもわかってきた。食物繊維の摂取と酪酸産生菌として知られるEubacterium eligensの量に相関が認められたのである。Eubacterium eligensの誘導に重要な食物繊維はペクチンであり4)、内藤氏は「りんごにはペクチンが多く含まれており、フレイル群で不足していたカリウムやマグネシウムも多く含まれているので、フレイル予防に役立つのではないか」と述べた。 食物繊維について、現在の日本人の食事摂取基準2)では成人男性(18~64歳)は21g/日以上、15~64歳の女性は18g/日以上が摂取目標値とされている。しかし、最新の世界保健機関(WHO)の基準では、10歳以上の男女は天然由来の食物繊維を25g/日摂取することが推奨されているため5)、内藤氏は「日本が世界基準に遅れをとっていることを認識してほしい」と述べた。

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ニーマン・ピック病C型へのN-アセチル-L-ロイシン、神経学的状態を改善/NEJM

 ニーマン・ピック病C型(NPC)の患者において、リソソームと代謝の機能障害改善が期待されるN-アセチル-L-ロイシン(NALL)による12週間の治療はプラセボと比較し、神経学的状態を改善したことが、スイス・ベルン大学のTatiana Bremova-Ertl氏らが、60例を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検クロスオーバー試験の結果で示された。NPCは、進行性、衰弱性、早期致死性の常染色体劣性遺伝性リソソーム蓄積症(ライソゾーム病)で、発症頻度は10万人に1人(本邦では12万に1人)と報告される希少疾病である。現行では、ミグルスタットによる薬物治療があるが進行抑制に限定され、欧州連合(EU)と本邦を含むいくつかの国では承認されているが、米国では未承認である。NALLの有効性と安全性を評価した今回の結果について著者は、「さらなる検討で長期の有効性を確認する必要がある」とまとめている。NEJM誌2024年2月1日号掲載の報告。12週投与後の小脳性運動失調評価法(SARA)の合計スコアをプラセボと比較 研究グループは、4歳以上の遺伝学的に確認されたNPC患者を1対1の割合で無作為に2群に割り付け、一方にはNALLを12週間投与後にプラセボを12週間投与、もう一方にはプラセボを12週間投与し、その後NALLを12週間投与した。 NALLまたはプラセボは、体重35kg未満の4~12歳には体重ベースの用量(2~4g/日)を1日2~3回、体重35kg以上の4~12歳および13歳以上には4g/日を1日3回(朝2g、昼1g、夜1g)経口投与した。 主要エンドポイントは、小脳性運動失調評価法(SARA:0~40で数値が低いほど神経学的状態が良好)の合計スコアだった。副次エンドポイントは、臨床全般印象度改善度(CGI-I)スコア、脊髄小脳性運動失調症機能指数(SCAFI)スコア、modified Disability Rating Scale(mDRS)スコアなどだった。 各群のクロスオーバーデータを用いて、NALL群とプラセボ群の比較を行った。合計スコア変化量、NALL群-1.97ポイントvs.プラセボ群-0.60ポイント 5~67歳の患者60例が登録された。主要エンドポイントであるSARAのベースライン時の平均合計スコアは、NALL初回投与前(60例)が15.88、プラセボ初回投与前(59例、1例はプラセボ投与なし)が15.68だった。 SARA合計スコアのベースラインからの平均変化量(±SD)は、NALL 12週間投与後は-1.97±2.43ポイント、プラセボ12週間投与後は-0.60±2.39ポイントだった(最小二乗平均差:-1.28ポイント、95%信頼区間:-1.91~-0.65、p<0.001)。 副次エンドポイントについては、概して主要解析の結果を支持するものだったが、それらの結果について、多重比較補正は事前に規定していなかった。有害事象の発現率はNALLとプラセボで同等で、重篤な治療関連有害事象は認められなかった。

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GLP-1受容体作動薬、血糖値や体重減少効果が高いのは?~76試験メタ解析/BMJ

 中国・北京中医薬大学のHaiqiang Yao氏らが成人の2型糖尿病患者を対象としたGLP-1受容体作動薬の76試験をネットワークメタ解析した結果、プラセボと比べ、チルゼパチドによるヘモグロビンA1c(HbA1c)と空腹時血糖値の低下が最も大きく、血糖コントロールの有効性が最も高いGLP-1受容体作動薬であることが示された。また、GLP-1受容体作動薬は体重管理も大幅に改善することが示され、なかでも体重減の効果が最も大きかったのはCagriSema(セマグルチドとcagrilintideの合剤)だった。一方で、GLP-1受容体作動薬は、とくに高用量の投与で消化器系の有害事象がみられ、安全性について懸念があることも明らかになったという。BMJ誌2024年1月29日号掲載の報告。2023年8月までの試験をシステマティックレビューとネットワークメタ解析 研究グループは、2型糖尿病成人患者において、GLP-1受容体作動薬による血糖コントロール、体重、脂質プロファイルの有効性と安全性を比較評価することを目的とし、システマティックレビューとネットワークメタ解析を行った。 PubMed、Web of Science、Cochrane CENTRALおよびEmbaseを、データベース発刊から2023年8月19日まで検索し、GLP-1受容体作動薬治療を受けた2型糖尿病成人患者を登録しプラセボまたはほかのGLP-1受容体作動薬と比較した、追跡期間12週間以上の無作為化対照試験を適格とし特定した。クロスオーバーデザインの試験、GLP-1受容体作動薬と他クラスの薬剤をプラセボ群なしで比較した非劣性試験、販売が中止された薬剤を使用したもの、英語以外で記述された試験などは除外した。体重減は対プラセボでCagriSemaが-14kg、チルゼパチドが-8kg 適格基準を満たしたのは76試験で、15種のGLP-1受容体作動薬と被験者総数3万9,246例が、ネットワークメタ解析に組み入れられた。プラセボとの比較において、15種すべてのGLP-1受容体作動薬が、HbA1cと空腹時血糖値を低下させた。 なかでもチルゼパチドは、HbA1c濃度(対プラセボの平均差:-2.10%、95%信頼区間[CI]:-2.47~-1.74、SUCRA:94.2%、信頼性のエビデンス:高)、空腹時血糖値(-3.12mmol/L、95%CI:-3.59~-2.66、97.2%、高)の低下が最も大きく、血糖コントロールについて最も有効なGLP-1受容体作動薬であることが示された。 さらに、GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病成人患者の体重管理に強力なベネフィットを有することが示された。なかでもCagriSemaは体重減少が最も大きく(対プラセボの平均差:-14.03kg、95%CI:-17.05~-11.00、信頼性のエビデンス:高)、チルゼパチド(-8.47kg、-9.68~-7.26、高)がそれに続いた。 セマグルチドは、LDL値の低下(対プラセボの平均差:-0.16mmol/L、95%CI:-0.30~-0.02)と総コレステロール値の低下(-0.48mmol/L、-0.84~-0.11)に有効であった。 また今回の解析では、GLP-1受容体作動薬による消化器系の有害事象、とくに高用量投与の安全性について懸念があることが示唆された。

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ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対する次世代治療薬repotrectinib(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 ROS1融合遺伝子は非小細胞肺がんの約2%に認められるドライバー遺伝子変異である。現在、本邦でもROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対し、クリゾチニブおよびエヌトレクチニブが承認されている。「PROFILE 1001試験」においてROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対してクリゾチニブはORR 72%、PFS中央値19.2ヵ月、OS中央値51.4ヵ月という有効性を示した(Shaw AT, et al. N Engl J Med. 2014;371:1963-1971. , Shaw AT, et al. Ann Oncol. 2019;30:1121-1126.)。また同じくROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対するエヌトレクチニブ単剤療法を評価した「ALKA-372-001試験」と「STARTRK-1試験」「STARTRK-2試験」の3つの臨床試験の統合解析では、ORR 77%、PFS中央値19.0ヵ月という結果が示された。いずれも『肺診療ガイドライン2023年版』では推奨度「1C」という位置付けとなっている。 ただし、現在承認されているROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対する治療薬は、耐性の出現や脳転移での再発の頻度が高いことが知られている。今回紹介するrepotrectinibはROS1のトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)A/B/Cを選択的に阻害する低分子チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)である。repotrectinibは過去の臨床試験において、ROS1 G2032Rなどの耐性変異を含むROS1融合遺伝子陽性肺がんに対する活性が示された次世代のROS1-TKIとされている。 今回行われた「TRIDENT-1試験」の第I相試験の結果に基づき、repotrectinibの推奨用量は160mg、1日1回を14日間投与後、15日目以降は160mg、1日2回投与とされた。ROS1-TKI未治療の拡大コホート1に含まれた71例では、奏効率79%、PFS中央値35.7ヵ月と高い効果が示された。また化学療法治療歴がなくROS1-TKIで1種類の治療歴のある56例の拡大コホート4でも、奏効率38%、PFS中央値9.0ヵ月と期待される結果が示された。ベースラインに脳転移がない症例における、頭蓋内の12ヵ月時点でのPFS率は拡大コホート1で91%、拡大コホート4で82%と高い効果が示された。また、第II相試験の用量で治療された426例のうち、頻度の高い有害事象はめまい、味覚障害、異常感覚であり、Grade3以上の有害事象は29%であったと報告された。治療中止に至った有害事象は3%となっている。 第III相試験が行われたわけではないので、純粋に比べることはできないが、この「TRIDENT-1試験」の結果からは次世代ROS1-TKIであるrepotrectinibは既存の治療薬と並べても、奏効率も無増悪生存期間も期待できることがわかる。とくに拡大コホート4で行われたROS1-TKIが1種類使用された症例群においても奏効率38%、PFS 9.0ヵ月というのは有望である。既存のROS1-TKIでも制御が難しい脳転移に対しても、高い頭蓋内PFS率が示されたことも心強い結果であり、早期の承認が望まれる。 ただ、本研究に使用されたROS1融合遺伝子の検索は「Guardant360 CDx」あるいは「GeneseeqLite circulating tumor DNA-based assays」に基づいている。本邦の医療機関では一般的に扱っていない検査キットであり、今後、このrepotrectinibが実臨床で活用されるためにはコンパニオン診断の問題が出てくるのであろう。

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洗剤誤飲【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第11回

異物誤飲は救急外来で遭遇する機会の多い疾患の1つです。高齢者の義歯が取れて飲み込んでしまった、コップに洗剤を入れていたことを忘れてそれを飲んでしまった…など。わが国の誤飲頻度の正確なデータはありませんでしたが、単施設での報告によると65歳以上の高齢者の頻度が多く、1位:薬剤の包装紙、2位:義歯、3位:魚骨でした1,2)。一方、消費者庁によると2020年度の65歳以上の高齢者の誤飲・誤食の事故情報は318件寄せられており、医薬品の包装シート、義歯・詰め物、洗剤や漂白剤が多いそうです3)。洗剤や漂白剤を誤飲してしまったときの対処法を記載した医学書やレビューは少ないため、実際に私も救急外来で「誤って洗剤を飲んでしまったが、かかりつけ医に相談したところ救急外来を受診するよう指示されたので来た」という話を聞くことがあります。私は年に数回「誤って洗剤を飲んでしまった」という電話相談もしくは診察をすることがありますが、私の経験では成人が洗剤や漂白剤を誤飲したとしても何か特別な処置が必要なケースは限られていて、ほとんどが何もすることなく終わっています。だからといって全部大丈夫というわけではないため、日本石鹸洗剤工業会の「誤飲・誤用の応急処置(公益財団法人 日本中毒情報センター監修)」を参考に、私の診療過程を症例をもとに紹介します。なお、今回は認知症のない成人で台所用洗剤に重点を置きます。<症例>70歳女性主訴誤って台所用洗剤を飲んだ。昼の12時ごろ台所のコップに入っていた水を飲んだところ変な味がした。娘に確認したところコップを洗剤につけて茶渋を取っていたとのこと。口腔内に違和感があるため受診。既往歴高血圧上記は救急外来にフラッとやって来た患者さんです。順を追って対処しましょう。(1)バイタルサイン、嘔吐の有無の確認こういった洗剤などの誤飲で問題になってくるのは、嘔吐して誤嚥してしまうことです。洗剤は当然飲むものではなく、強い味や香りのため飲めたものではありません。万が一飲んでしまった場合、その味や香りで嘔吐して誤嚥することがあります。そのため、まずは誤嚥性肺炎を生じていないか確認しましょう。この患者さんは、嘔吐もなく、SpO2は室内気で98%でした。(2)洗剤の種類の確認台所用洗剤の種類は大きく分けて合成洗剤、食器洗い機専用洗剤、台所用石けん、台所用漂白剤(塩素系)、台所用漂白剤(酸素系)、クレンザーとなります。いずれの中毒量(マウス)は液状だと5mL/kgとなっています。体重が50kgの人だと250mL程度になりますが、原液を10mL飲むのも困難であり、私は意識がはっきりしている人で大量の原液を誤飲した症例の経験はありません。しかし、洗剤の誤飲は少量であれば問題にならないのかというとそうでもありません。第9回の化学眼外傷のときに紹介したとおり、強い酸性orアルカリ性の物質の場合は強い粘膜障害が生じる懸念があります。それらを誤飲した場合は、腐食性食道炎が生じ食道穿孔などが生じるリスクがあり、内視鏡検査や入院治療が必要になり注意が必要です4,5)。本症例は、茶渋をとるために強アルカリ(pH11.0~12.0)の次亜塩素酸塩配合の台所用漂白剤(キッチンハイター)を入れていたそうです。(3)誤飲状況の詳細と症状を確認では、強アルカリの物質を誤飲してしまった場合、すべて消化器内科を受診して入院が必要なのでしょうか? そんなことはありません。腐食性食道炎を生じるには、それなりの量が必要です。何mL飲めば生じる可能性が上がるという根拠は見つかりませんでしたが、先述のとおり洗剤は通常飲めないようにできています。ハイターの臭いをかいだことがあればわかると思いますが、あの匂いのものを間違えてごくごく飲むのはかなり無理があります。私は味わったことがないですが、誤飲した人に聞いたところ「苦いけど苦いとも言えない味、刺激が強い」とのことでした。意識がある人が飲めるものではありません。実際に腐食性食道炎を生じている患者が強酸性or強アルカリ性の物質を摂取した理由は自殺が最も多く、私が和文文献を探していて唯一自殺以外であったのが「酩酊状態の誤飲」でした4-6)。また症状としては、粘膜障害が生じるため咽頭痛、嗄声、嘔吐、心窩部痛が2~3時間以内に急激に生じます。今回の症例の場合、水で薄めたハイターをコップに入れていて、患者は一口飲んで吐き出したので飲んだには飲んだがほんの少しだけでした。症状としては口に苦い感じがするとのことでした。飲んだ量も少なく、濃度も薄い、さらに症状もほとんどありません。1時間ほど外来で経過をみましたが何もないため経過観察としました。治療に関しては、今回のようなケースではとくにすることはありません。少量誤飲してすぐの状態であれば、口をゆすいだ後に水を飲んでもらうくらいです。昔から食器用洗剤を誤飲した場合は牛乳がよいと言われていますが、効果のほどは定かではありません。プロトンポンプ阻害薬やアルギン酸を粘膜保護を目的に投与している施設もありますが、今回のようなほぼ無症状の人に対して投与する明確な根拠はありません。少なくとも私は中性洗剤の場合であれば処方はせず、帰宅後に何らかの症状が出現すれば再診としています。今回のような粘膜障害を生じうる洗剤を飲んだ場合は症状に合わせて3日分処方することもありますが、もし電話相談で「ハイターを飲んでしまった。症状はない」という相談が来たときに、プロトンポンプ阻害薬とアルギン酸を処方するために受診させたりはしません。今回は、台所用洗剤の誤飲に重点を置いて紹介しました。まとめますと、「意識がはっきりしている人が洗剤を誤飲したとして、大量に誤飲した可能性は低いためさほど恐れることはない」ということです。特殊なものを除き、家庭にあるほとんどの洗剤は同じストラテジーで対処できます。ただし、強い症状(嚥下時痛、嗄声、心窩部痛など)があれば内視鏡や胃洗浄などを行いますので、高次医療機関に相談してください。教科書や論文のレビューが少ないテーマなので経験がない人は不安になるかもしれませんので参考になればと思います。1)岡 陽一郎ほか. 日本臨床外科学会雑誌. 2007;68:2449-58.2)山本 龍一ほか. 埼玉医科大学雑誌. 2010;37:11-14. 3)消費者庁:高齢者の誤飲・誤食事故に注意しましょう! 4)松村 英樹ほか. 日本臨床外科学会雑誌. 2015;76:714-719.5)De Lusong MAA, et al. World J Gastrointest Pharmacol Ther. 2017;8:90-98. 6)佐藤 雄亮ほか. 日本臨床外科学会雑誌. 2008;69:1658-1662.

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第198回 救急医を巡るパワハラ疑い、鳥取県立中央病院で起こったこととは

救命救急医が救急隊員に対して頻回のパワハラ疑いこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。プロ野球のキャンプが始まりました。「第177回 「令和の米騒動」と神戸・甲南医療センター専攻医自殺・労災認定で感じた共通する“病根”(前編)」でも書いた、中日ドラゴンズの立浪 和義監督がまたやってくれました。今季から中日に加入した中田 翔選手が茶髪でキャンプに参加したところ、「かっこよくて、似合っているからいいんじゃない?」と容認したというのです。立浪監督といえば、2021年の監督就任時、「長髪、茶髪、ヒゲの禁止」を打ち出したことで有名です。その後、このルールは有名無実化したと言われていますが、その指導方針の古臭さと一貫性のなさには少々あきれてしまいます。今年は辰年ですが、ドラゴンズは今シーズンも燃えることなく、Bクラスの予感がします。さて、今回は鳥取県立中央病院(鳥取市江津)で起きた救命救急医の救急隊員に対するパワハラ事件を取り上げます。救急救命士である救急隊員からの特定行為の指示要請に応諾しなかった、という事態もさることながら、問題とされた医師の一人(救命救急センター長)が「プロフェッショナル 仕事の流儀」(NHK)や「情熱大陸」(毎日放送制作、TBS系列)に登場したこともある医師であったことが、救急医の世界に少なからぬ衝撃を与えています。「それって僕が助言しなきゃ、いけないことですか」と対応鳥取県立中央病院の救命救急センターの複数の医師からパワハラを受けたとして、県東部1市4町の救急搬送を担う県東部広域行政管理組合消防局が調査を求めていた問題で、2月1日、同病院の廣岡 保明院長、中川 善博事務局長、鳥取県病院局の竹内 和久局長が記者会見を行い、1人の医師について3件のパワハラがあり、パワハラの疑いがある言動も3件あったことを明らかにしました。毎日新聞等の報道によれば、調査は同消防局から東部地区メディカルコントロール協議会を通じて依頼があり、救命救急センターの医師4人による、計22件の言動を対象に実施されました。電話の録音やカメラ映像、聞き取りなどで事実関係を確認した結果、救急隊員が話している時にいきなり電話を切る行為2件と、「それって僕が助言しなきゃ、いけないことですか」「僕が言わなきゃ、ご判断できなかったことですかね」などと高圧的な口調で対応した行為1件がパワハラの可能性がある、と判断したとのことです。廣岡院長は「技術の向上を願う指導のつもりでこのような発言になったようだ。指導を徹底し、再発防止に努める」などと説明、今後、外部委員も入った県病院局ハラスメント防止委員会において検証される予定とのことです。きっかけは特定行為の指示要請に応諾しないとするメールの送信鳥取県立中央病院(以下、中央病院)の救命救急センターを巡るパワハラ騒動が表沙汰になったのは昨年末のことでした。12月、中央病院の救急救急センターが県東部広域行政管理組合消防局に対し、現場に出動した救急救命士が医師の指示を受けて行う必要がある特定行為の指示要請に応諾しないとするメールを送信、その後10日間にわたって実際に指示を行っていなかったことが明らかになったのです。12月26日付の毎日新聞等の報道によれば、12月5日、「医学的観点からの責任問題もあり、当院ホットラインへの指示要請、及び検証医への検証は応諾いたしかねます」などと書かれたメールが病院側から消防局に届いたとのことです。事態に困惑した同消防局の幹部は中央病院を訪ね、「通常通り指示をしてほしい」と何度も要請。14日夜になって「ホットラインの運用を通常通り再開する」というメールが中央病院から届き、翌日から指示が出るようになったとのことです。中央病院は、鳥取県東部地区における3次救急医療機関で、他に5つの医療機関が2次救急医療機関に指定されています。今回、中央病院から医療行為の指示要請に応諾しない旨の連絡があったことで消防局は5病院に代わりの対応を要請、この10日間で別の病院に指示を要請したケースは3件あったとのことです。救命救急センター長は「県プロトコルは古く、医療の質が担保できず、法的な責任問題もあると判断」と説明その後の報道で、このメールを送ったのは救命救急センター長のK医師であることがわかっています。12月28日付の日本海新聞等の報道によれば、K医師は取材に対し、2024年4月に予定される県プロトコル(救急隊員が遵守すべき事項及び手順について定めたもの)改定まで地区プロトコルの運用を止め、現行の県プロトコルに準拠するよう東部地区メディカルコントロール協議会の会長名で求められたとした上で、「現在の県プロトコルは古く、処置の具体的な手順の整備なども不十分。これでは医療の質が担保できず、法的な責任問題もあると判断した」と、指示要請に応諾しなかった理由を説明しています。「指示要請への不応需は大変不適切な行動であり、ご心配、ご迷惑をお掛けし申し訳ありませんでした」と院長謝罪救急救命士は出動要請を受けて救急車で現場に向かうと、地域のメディカルコントロール協議会が定めるプロトコルに従って、患者に処置をしながら医療機関へ搬送します。搬送中に重篤な患者への気管挿管やアドレナリン投与などの特定行為が必要になった場合は、その都度、専用電話で医師の指示を受けることが救急救命士法で定められています。鳥取県では県救急搬送高度化推進協議会が処置手順を定めた「県プロトコル」を基に、東部、中部、西部の各地区メディカルコントロール協議会が実情に合わせて定めた地区プロトコルに従って救急救命士の医療行為が行われていました。それにしても、「プロトコルが古く、責任を持てないから指示要請に応諾しなかった」というのは、どう考えても異常な対応です。各紙報道では、12月26日に開かれた東部地区メディカルコントロール協議会に中央病院の廣岡院長が出席、メールで指示要請に応諾しない旨を伝えたのはK医師の独自の判断で行われたことを報告し、関係者に謝罪したとのことです。また、中央病院は12月28日、病院のウェブサイトに「県民の皆様へ(マスコミ報道について)」と題するお詫び文を院長名で掲載、「指示要請への不応需は大変不適切な行動であり、県民の皆様、消防関係者の皆様には、ご心配、ご迷惑をお掛けし申し訳ありませんでした」と謝罪しました。事態は中央病院の救命救急医のパワハラ問題に急展開しかし、事態はこれでは収束しませんでした。問題はK医師をはじめとする中央病院の救命救急医のこれまでのパワハラ問題にまで発展していったのです。同消防局が、中央病院の救命救急センターが救命救急士からの医療行為の指示要請に応諾しなかった問題で、12月5日から同14日までの間で実際に要請を拒まれた3件のうち1件について、「中央病院への搬送時に医師からの高圧的な態度、冷淡な対応」があったとして、病院側にパワハラに関する調査を申し入れたのです。また、救急隊員へのパワハラとみられる2022年からの同センターの対応約20件についても調査を申し入れました。救急隊員が、気管内挿管が必要と判断したものの病院側は「特定行為の指示は出せない」と回答1月11日付の毎日新聞の報道によれば、3件のうち1件とは、12月12日に鳥取市内で発生したのどに異物を詰まらせた患者を搬送する際に起きた事案です。救急救命士である救急隊員が、気管内挿管が必要と判断し中央病院に電話した際、病院側は「特定行為の指示は出せない」と回答し、他の病院で指示を受けるよう回答していました(他の病院医師の指示で特定行為を行い、その後中央病院に搬送)。このほか、中央病院に連絡を取ろうと電話をしたものの一方的に切られる、到着後の病院で「医師に処置内容を報告しても反応がない」「患者をストレッチャーからベッドに移し替える『移乗』の際、手伝うそぶりがない」「移乗後の胸骨圧迫を救急隊員のみで実施した」などの報告が救急隊員からあったとのことです。パワハラの調査依頼があったことに対して中央病院の廣岡院長らは1月12日に記者会見を行い、救命救急センターの対応を謝罪し、救急隊員がセンター救急医からパワハラを受けたとする指摘についても認め、県病院局のハラスメント防止委員会へ対応を求めました。こうした消防局からの調査依頼に対し、病院、県病院局が記録映像や電話等の音声の確認を進め、正式にパワハラを認めたのが冒頭で紹介した2月1日の記者会見というわけです。2月7日公開の本記事について、いくつか事実と異なる点があったため、該当箇所を編集部で修正・削除しました(2月8日)。本記事公開後、記事中に登場する医師当人から意見が寄せられた。編集部が取材を行い、医師の主張をまとめたインタビュー記事はこちら。鳥取救急に関する「ニュース批評」で批判された当事者救急医が真相を語る

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アルコールや肉は大腸がんと因果関係なし?~メンデルランダム化解析

 食事パターンと大腸がんリスクとの関連については、数多くの疫学研究が報告されているが相反する報告もあり、また人種・民族による違いもみられている。今回、中国・Beijing University of Chinese MedicineのMengyang He氏らが、主にヨーロッパ人である英国Biobankデータを用いて9つの食習慣と大腸がんリスクとの潜在的な因果関係をメンデルランダム化解析で検討した結果、遺伝的に予測されるアルコール・果物・肉・牛乳・菓子・紅茶の摂取と大腸がんに因果関係はないことが示唆された。一方、野菜との間には因果関係が示唆された。BMC Medical Genomics誌2024年1月17日号に掲載。 本研究では、英国Biobankから、アルコール(54万9,703人)、インスタントコーヒー(25万308人)、果物(21万947人)、肉(21万947人)、牛乳(4万1,306人)、菓子(2万5,521人)、紅茶(50万1,494人)、野菜(21万947人)、ヨーグルト/アイスクリーム(21万947人)の摂取習慣に関するゲノムワイド関連研究の要約データと大腸がんに関するデータ(症例:5,567例、対照:37万2,016例)を収集し、メンデルランダム化解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・野菜の摂取と大腸がんリスクとの間に正の因果関係が観察された(オッズ比[OR]:1.014、95%信頼区間[CI]:1.000~1.029、p=0.048)。・アルコール(OR:1.012、95%CI:0.974~1.051、p=0.556)、果物(OR:1.007、95%CI:0.986~1.029、p=0.512)、肉(OR:1.000、95%CI:0.987~1.026、p=0.968)、牛乳(OR:1.019、95%CI:0.979~1.061、p=0.357)、菓子(OR:0.998、95%CI:0.991~1.004、p=0.524)、紅茶(OR:1.002、95%CI:0.994~1.009、p=0.672)の摂取習慣と大腸がんリスクとの間に因果関係は認められなかった。

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スプラトゥーンが上手いと気管支鏡も上手い!?

 結核予防会複十字病院呼吸器内科の下田 真史氏らの研究により、気管支鏡の経験が乏しい集団では、ビデオゲームの技能と気管支鏡の観察時間に相関が認められることが示された。これまでに、ビデオゲームと消化器内視鏡や腹腔鏡手術などのさまざまな医療手技の技能との関係が報告されているが、気管支鏡に関する報告は不足していた。本研究結果は、Scientific Reports誌2024年1月27日号で報告された。 本研究は、2021年1月~2023年10月の期間に結核予防会複十字病院で実施した。参加者を気管支鏡の経験をもとに未経験群23人(気管支鏡の経験のない医学生またはレジデント)、熟練群18人(気管支鏡の経験が100件以上の呼吸器内科の医師)に分類した。ビデオゲームの技能と気管支鏡の技能の関係を検討するため、ビデオゲーム(スプラトゥーン2[任天堂])のクリア時間と、モデルを使用した気管支鏡による内腔観察に要する時間を測定した。ビデオゲームの技能は、クリアまでの時間が短いほど技能が高いものとした。さらに、アクションを伴うビデオゲームの習慣から、週1時間以上かつ6年以上の経験がある参加者をゲーマー、それ以外を非ゲーマーに分類して同様の検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・未経験群において、ビデオゲームのクリア時間と気管支鏡による内腔観察に要する時間に中等度の有意な相関が認められた(r=0.453、p=0.030)。・熟練群では有意な相関は認められなかった(r=0.268、p=0.283)。・未経験群において、ゲーマーサブグループ(12人)と非ゲーマーサブグループ(11人)を比較すると、ゲーマーサブグループは気管支鏡による内腔観察に要する時間が有意に短かった(観察時間中央値:200秒vs.281秒、p=0.005)。 本研究結果について、著者らは「気管支鏡の経験が乏しい集団において、ビデオゲームの技能と気管支鏡の技能との間に相関があることが示された。ビデオゲームに慣れ親しんでいる人は、気管支鏡の技能を素早く習得できる可能性が示唆された」と結論付けている。

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乾癬の患者報告アウトカム、PSSDスコアの有意な改善とは?

 カナダ・Probity Medical ResearchのKim A. Papp氏らは、乾癬患者を対象とした第III相試験で用いられた患者報告に基づくPsoriasis Symptoms and Signs Diary(PSSD)スコアの変化を、Patient Global Impression of Change(PGI-C)スコアおよびPatient Global Impression of Severity(PGI-S)スコアに照らし合わせ、患者にとって臨床的に意義のある有意な改善を示すPSSDスコアの変化量を検討した。解析の結果、PSSDスコアのベースラインからの改善が15ポイント以上の場合、PGI-Cスコアに意義のある変化が示された。乾癬の臨床試験では、PSSDスコアのベースラインからの変化が、患者報告アウトカムとして広く用いられているが、臨床的に意義のあるスコア変化の閾値が、臨床試験の設定では確立されていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年12月20日号掲載の報告。 研究グループは、Program to Evaluate the Efficacy and Safety of Deucravacitinib, a Selective TYK2 Inhibitor(POETYK), PSO-1(POETYK PSO-1)試験のデータを用いて、PSSDの臨床的に意義のあるスコア変化の閾値を評価した。 POETYK PSO-1試験は、成人の中等症~重症の乾癬患者を対象に、選択的TYK2阻害薬デュークラバシチニブの有効性と安全性を評価した国際共同第III相多施設共同無作為化二重盲検試験。本試験は、2018年8月7日~2020年9月2日に行われた。対象患者には、デュークラバシチニブ6mg(1日1回)またはプラセボ、アプレミラスト30mg(1日2回)のいずれかを投与し、追跡調査した。 今回の解析では、PSSDを毎日報告していた成人患者を対象とし、ベースラインから16週時までのPSSDスコアの平均変化量を、PGI-CおよびPGI-Sの改善のカテゴリーに照らし合わせて、臨床的に意義のあるスコア変化の閾値を導出した。 主な結果は以下のとおり。・解析には、666例が含まれた。平均年齢は46.1(標準偏差13.4)歳、男性が453例(68.0%)であった。・ベースラインでPGI-SとPSSDを報告していたのは601例であった。16週時点でPGI-SとPSSDを報告していたのは481例であり、PGI-CとPSSDを報告していたのは486例であった。・609例を対象とした解析により、以下の3つの閾値が特定された。・PSSDスコアのベースラインから16週までの変化が15ポイント以上の場合、PGI-Cの臨床的に意義のある改善のカテゴリーに該当することが示された。・PSSDスコアの変化が25ポイント以上の場合、PGI-SおよびPGI-Cの両方が臨床的に意義のある改善のカテゴリーに該当することが示された。・PSSDスコアの変化が30ポイント以上の場合、乾癬の症状が大きく改善(PGI-Cによる評価が非常に大きく改善/大きく改善)した患者が特定された。

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ブレクスピプラゾール切り替え後の治療継続率

 国立精神・神経医療研究センターの中込 和幸氏らは、統合失調症または統合失調感情障害患者において、これまで投与されていた抗精神病薬から、新規ドパミンD2受容体パーシャルアゴニストであるブレクスピプラゾールに切り替えた場合の治療継続率について、検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年1月22日号の報告。 多施設共同単一群非盲検の24週間介入研究として実施された。介入期間は、2つの連続する12週間の期間(切り替え期、継続期)で構成した。これまで投与されていた抗精神病薬には、オランザピン、リスペリドン、パリペリドンが含まれた。主要アウトカムは、最初の12週間における治療継続率とした。副次的アウトカムは、社会機能的転帰評価尺度(SLOF)、抗精神病薬治療下での主観的ウェルビーイング評価尺度短縮版(SWNS)、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)のベースラインからの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・ブレクスピプラゾールを投与した対象患者は79例。・12週間後の治療継続率は78.5%で、事前に定義した閾値である65%よりも有意に高かった。・これまで投与されていた抗精神病薬別での12週間後の治療継続率は、オランザピンで84.6%、リスペリドンまたはパリペリドンで72.5%であった。・SLOF、SWNS、PANSSスコアは、ベースラインからの有意な改善が認められた。・懸念される有害事象はみられなかった。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、オランザピン、リスペリドン、パリペリドンからの切り替えを行ううえで、適正な抗精神病薬であると考えられる」としている。

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乳房温存術後の局所再発率、70遺伝子シグネチャーで予測可能か(MINDACT)/JCO

 乳房温存手術を受けた早期乳がん患者の局所再発リスクは、70遺伝子シグネチャー(MammaPrint)によるリスクと独立して関連しないことが、EORTC 10041/BIG 03-04 MINDACT試験の探索的サブ解析で示された。また、術後8年間の局所再発率は3.2%と推定された。オランダ・Netherlands Cancer Institute-Antoni van Leeuwenhoek HospitalのSena Alaeikhanehshir氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年1月19日号で報告。 本解析は、EORTC 10041/BIG 03-04 MINDACT試験において、乳房温存手術を受け、臨床的リスクおよび70遺伝子シグネチャーによるリスクが判明している女性を評価した。主要評価項目は累積発生率で推定した8年の局所再発率だった。 主な結果は以下のとおり。・登録患者6,693例中5,470例(81.7%)が乳房温存手術を受け、そのうち98%が放射線治療を受けていた。・8年間で189例に局所再発が発生し、8年累積発生率は3.2%(95%信頼区間[CI]:2.7~3.7)であった。・70遺伝子シグネチャーによる低リスク患者における8年累積発生率は2.7%(95%CI:2.1~3.3)であった。・単変量解析では、化学療法で調整後、12変数のうち70遺伝子シグネチャーを含む5変数が局所再発と関連した。多変量解析では、術後内分泌療法、腫瘍径、悪性度と関連していた。 著者らは「この探索的解析では、局所再発イベント数が少なかったためか、70遺伝子シグネチャーは独立して局所再発を予測するものではなく、現在のところ、局所再発に関する臨床的意思決定には使用できない」とした。

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強迫症患者に多い/少ない死因は?/BMJ

 強迫症(OCD)患者はOCD非罹患者と比較して、さまざまな自然死因による死亡のリスクが上昇しており、その多くは非伝染性で予防可能なものである一方で、自殺や事故といった外因死の寄与が大きく、新生物による死亡リスクはむしろ低いことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のLorena Fernandez de la Cruz氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年1月17日号で報告された。スウェーデンの2つのコホートで、罹患者と非罹患者を比較 研究グループは、スウェーデンのOCD患者における全死因死亡と原因別死亡のリスクの評価を目的に、2つのコホートでOCD罹患者と非罹患者の比較を行った(Swedish Research Council for Healthなどの助成を受けた)。 住民ベースのコホートには、1対10の割合で、性別、出生年、居住地でマッチさせたOCD患者6万1,378人と非罹患者61万3,780人を含めた。また、同胞コホートは、OCD患者3万4,085人とその非罹患同胞4万7,874人であった。これらのコホートを、1973年1月1日~2020年12月31日に、中央値8.1年間追跡した。全死因、自然死因、非自然死因による死亡ともに高リスク 住民ベースのコホートでは、研究期間中にOCD患者のうち4,787人(粗死亡率8.1人/1,000人年)と非罹患者のうち3万619人(粗死亡率5.1人/1,000人年)が死亡した。 出生年、性別、居住地、移住者か否か(スウェーデン生まれか外国生まれか)、社会人口統計学的変数(最新の学歴、婚姻状況、世帯収入)で補正した層別化Cox比例ハザードモデルによる解析では、非罹患者と比較してOCD患者は全死因死亡(ハザード比[HR]:1.82、95%信頼区間[CI]:1.76~1.89)、自然死因による死亡(1.31、1.27~1.37)、非自然死因による死亡(3.30、3.05~3.57)のリスクが高かった。同胞コホートでも同様の結果 自然死因のうち、内分泌・栄養・代謝疾患(HR:1.54、95%CI:1.28~1.86)、精神・行動障害(1.63、1.42~1.87)、神経系(1.20、1.01~1.43)、循環器系(1.36、1.28~1.43)、呼吸器系(1.69、1.51~1.90)、消化器系(1.20、1.01~1.43)、泌尿生殖器系(1.52、1.15~2.02)の疾患などによる死亡リスクが、OCD患者で高かった。 一方、新生物による死亡リスクは、非罹患者に比べOCD患者で低かった(HR:0.87、95%CI:0.80~0.94)。また、非自然死因死亡では、OCD患者は自殺(4.90、4.40~5.46)のリスクが最も高く、次いで事故(1.92、1.68~2.19)の順であった。これらの結果は、精神疾患の併存や家族関連の交絡因子で補正しても強固に維持されていた。 同胞コホートの解析では、全死因死亡(HR:1.85、95%CI:1.67~2.03)、自然死因死亡(1.51、1.35~1.68)、非自然死因死亡(3.10、2.52~3.80)のリスクは、いずれもOCD患者で高く、住民ベースコホートの結果と類似していた。 著者は、「OCD患者における致死的なアウトカムのリスクを低減するには、より優れたサーベイランスや予防策、早期介入戦略を実施する必要がある」としている。

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末期腎不全治療選択(ETC)モデル導入で人種格差・地域格差などの解消になるのか?(解説:浦信行氏)

 米国では1972年の社会保障法の改正により、翌年から慢性腎不全治療としての透析や腎移植がメディケアの給付対象となり、連邦政府が総費用の80%を負担することとなった。その後、負担軽減の幾度かの改正を経て、2010年のヘルスケア改革法に基づき、数年の準備を経て2014年に本格的に、この改革法が実行された。いわゆるオバマケアである。基本骨格は低所得者を対象としたメディケイドと基本的に高齢者を対象としたメディケアであり、両方の有資格者をメディケア・メディケイド二重資格者としている。 末期腎不全(ESRD)はすべての年齢でメディケアの対象であるが、日本と違い一定の保険料を払う義務がある。これを改良し、利用者負担に保険料納付の上限を設けて、より低負担でより広範囲な医療を受けられるようにしたのが、メディケアアドバンテージプランである。しかしESRD患者は、その医療費負担が自治体や保険会社に過大であると判断され、2020年までは適応対象とはならなかった。2021年1月に、ようやく適応対象とされ、ESRDの患者にとって必要な医療がより受けやすくなった。 Kevin H. Nguyenら(JAMA. 2023;329:810-818.)は、ESRD患者の加入状況をその前後の1年間で比較した。その結果、加入率は24.8%から37.4%と1.5倍になった。内訳は黒人で72.8%、ヒスパニックで44.8%、二重資格者で73.6%の増加を見た。これによる人種格差、経済状態による格差、医療サービス内容の格差の是正を期待させるものである。そこで、実際に在宅透析の利用、腎移植待機リストへの登録や移植の受療などの格差が、解消に向かっているのかを担当施設に経済的インセンティブ(賞与もしくは罰金)を与える、施設への支払い方法の末期腎不全治療選択(ETC)モデルを導入し、格差是正の現状を評価した。 その結果の詳細は、ジャーナル四天王の記事(「米国透析施設の新たな支払いモデル、人種・経済格差の影響は?/JAMA」2024年1月18日配信)をご覧頂きたいが、やはり人種や経済状態による格差は有意に残っていた。腎移植施行率にも格差はあったが、以前の他の報告に示されていた待機期間の人種差の現状も気がかりな部分ではある。

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