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65歳未満の成人に対する遺伝子組み換えインフルエンザワクチンの有効性を鶏卵由来の従来ワクチンと比較したクラスターランダム化比較試験の結果が、NEJM誌2023年12月14日号に報告された。研究対象集団には18歳から64歳までのワクチン接種者163万328例が含まれた(組み換えワクチン群63万2,962例、従来ワクチン群99万7,366例)。研究期間中に組み換えワクチン群で1,386例、従来ワクチン群で2,435例のインフルエンザがPCR検査で診断された。50~64歳の参加者では、従来ワクチン群では925例(1,000例当たり2.34例)がインフルエンザと診断されたのに対し、組み換えワクチン群では559例(1,000例当たり2.00例)がインフルエンザと診断された(相対的なワクチン有効性15.3%、95%信頼区間:5.9~23.8、p=0.002)。組み換えワクチンは従来ワクチンと比べて、インフルエンザ関連の入院に対する予防効果は有意に高くはなかった。 50~64歳の成人において、遺伝子組み換えインフルエンザワクチンは鶏卵由来の従来ワクチンと比較して感染予防効果が有意に高いことが示された。従来ワクチンと比べて相対リスクで15.3%低下させたという結果は、従来ワクチンの感染予防効果がおおむね40~60%程度ということを考えると、上乗せ効果として決して低い数字ではないと考える。インフルエンザ関連の入院や市中肺炎による入院を有意に減少させる効果は示されなかったが、どちらも16%程度の相対的な有効性を認めた。試験対象者の入院率が決して高くない年齢層であることを考えると、一定の効果を示したと思われる。 遺伝子組み換えインフルエンザワクチンの特徴として、従来の鶏卵由来のインフルエンザワクチンの3倍量のヘマグルチニン蛋白を含んでいることが挙げられる。過去の研究では、高齢者において高用量のインフルエンザワクチンのほうが標準用量のワクチンと比べて感染予防効果が高いことが示されており、今回、65歳未満の成人を対象とした本研究でも有効性が示された。ワクチンに含まれる抗原量が増えることで、免疫原性が高まると考えられている。 また、遺伝子組み換えワクチンでは鶏卵由来のワクチンの製造中に生じる抗原変異(antigenic drift)の影響を受けないことも特徴の1つである。本研究で遺伝子組み換えワクチンの有効性が鶏卵由来のワクチンより改善した理由についてはよくわからないが、この点も寄与した可能性は考えられる。 本研究のLimitationとして、2シーズンに限定された試験であること、インフルエンザの診断にPCR検査のみを用いたこと、入院や死亡など65歳未満の成人では頻度の低い転帰を検討するには検出パワーが限られていたことなどが挙げられる。これらの点が本研究結果の一般化を制限する可能性がある。 遺伝子組み換えインフルエンザワクチンは本邦ではまだ認可されていないタイプのワクチンであり、今後の国内導入に向けて話が進むかどうか注目したい。