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【緊急寄稿】働き方改革、スタート目前!米国医師の働き方を変えた「10の仕組み」~第1回・勤務体制編~

2024年4月から、いよいよ日本では「医師の働き方改革」の新制度が施行されます。私は日本で初期研修医、そして新専門医制度下での内科専攻医を経験した後、2021年に渡米し、現在は米国で内科レジデントとして働いています。米国の内科レジデンシーは全部で3年間あり、内科に特化した研修を行います。日本で内科の専攻医を経験した後に米国での内科レジデンシーを経験したことから、日本と米国の内科研修の違いを肌で感じました。その中で最も衝撃を受けたのは「米国の働き方改革とデジタル化は、日本よりもはるかに進んでいる」という点です。この寄稿では、日米の内科研修を両方経験した立場から、どのようなツールやシステムが米国の働き方改革に貢献しているか、1)勤務体制編、2)スマホアプリ編、3)電子カルテ編の3つに分けて、10の仕組みを紹介、解説します。この寄稿が日本での働き方改革を議論するうえで、少しでも参考になればと思います。第1回の今回は、米国医師の働き方を改革した勤務体制の仕組みづくりについて、4つの具体例を挙げて説明します。仕組み1:チーム制・シフト制米国の多くの病院では、入院患者の管理は専門科医ではなく、ホスピタリスト(病院総合診療医)が担当します。専門科医はコンサルタントとして関与する形です。ホスピタリストの指導の下、3~4人の内科レジデントが患者をケアするチームをつくり、看護師同様にシフト制で勤務します。私の勤める病院では、2~3年目の先輩レジデントが1年目の新人レジデントに指導をしながら、チーム全体で約16~20人の患者を受け持ちます。シフトは早番と遅番に分かれ、早番は朝7時~夕方5時、遅番は朝7時~夜8時の勤務です。シフトの終わりには、自分が担当した患者の情報を次の担当者に引き継ぎ、ToDoリストや急変時の対応プランを確認します。シフト終了後は看護師から連絡が入ることはなく、帰宅してリラックスする時間が確保されます。チーム制・シフト制を採用することで仕事とプライベートのオンオフがはっきりします。図1仕組み2:夜勤とsick callレジデントのローテーションの中には、夜勤のみを行う期間があります。夜勤レジデントは、毎晩の当直(夜8時~翌朝7時)を6日間勤務+1日休みのサイクルで2週間勤務するスケジュールで働き、入院患者の管理や救急外来からの新規入院患者の対応を行います。この夜勤システムにより、夜勤レジデントは昼間に休息を取り、夜間に働くという生活リズムを維持できます。これにより、日勤レジデントは当直の必要がなくなり、体内時計の乱れを避けることが可能になります。また、「sick call」と呼ばれる病欠者のカバーをするシフトが存在します。ほかのレジデントが病気やその他の理由で勤務できないときに、そのシフトをカバーする担当のレジデントのことで、呼び出しがなければ自宅待機します。このように、誰かが休んでも業務が特定の人に集中することを防ぎ、全体の負担を軽減するシステムが構築されています。仕組み3:勤務上限時間の設定神戸市の病院で勤務していた若手医師が長時間労働下で自殺し、労災と認定された事件は記憶に新しいですが1)、米国ではACGME(Accreditation Council for Graduate Medical Education、米国卒後医学教育認定評議会)という団体が研修プログラムのレジデントやフェローの労働時間を規制しており、このルールにより若手医師は過剰労働や業務過多から守られています。具体的には、週に80時間までの勤務7日間に1日の割合で休日を設ける連続勤務は24時間まで24時間勤務の後は次の勤務まで14時間空けるといったルールが定められています。このルールをレジデント全員が常に守る必要があるため、綿密なスケジュール調整が必要になります。日本では働き方改革に当たり、教育や研究が「自己研鑽」の扱いになるかどうかが議論され、厚生労働省が「教育・研究に直接関連性のある研鑽は労働時間に該当する」と明示したことが話題になりました2)。米国では教育的なレクチャーは、昼食時や週に半日ある「Academic Half Day」と呼ばれる臨床業務が免除される時間に行われるケースが多く、平日の勤務時間内に組み込まれています。研究に関しては、自由に選択できるローテーションで「研究」を選択することで、臨床業務が免除され学会発表の準備や論文執筆の時間に充てることができます。十分な人員がいるからこそ実現可能なのかもしれませんが、このように自己研鑽が労働時間外にならないよう配慮されています。なお、日本の内科専門医制度では「J-OSLER」と呼ばれる症例登録制度があり、内科専門医を取得するためには160症例の症例登録と29症例の病歴要約の提出が求められています。私自身、休日や時間外を含めて多くの時間を費やすこととなり苦労しました。一方で、米国の内科レジデンシーでは症例登録や病歴要約の提出は一切必要ないものの、一緒に働いた指導医やプログラムの評価を頻繁に提出することが求められます。上記のACGMEが各プログラムや指導医の質を評価することで教育の質を担保する、というシステムです。レジデントの負担を考慮した、合理的かつ効率的な制度だと感じます。仕組み4:ACGMEによる監視システム研修プログラムが勤務時間の規則を順守しているのか、確認するシステムがあります。レジデントはオンラインで勤務時間を報告することが義務付けられており、さらにACGMEによる査察が定期的に行われます。査察はレジデントとの抜き打ちの面接や匿名のアンケートによって行われ、定められた勤務スケジュールとレジデントが報告する勤務時間に乖離がないかを確認します。ACGMEは研修プログラムの評価および認定機関でもあるので、規則に違反したことが明らかになった場合には、さまざまな罰則を科すことができ、最悪の場合には研修施設としての認定の取り消しに至ることもあります。このような監視システムがあることで、ルールの形骸化を防いでいるのです。1)“26歳医師が自殺で遺族会見 ‘極度の長時間労働’で労災認定”. NHK NEWS WEB. 2023-08-18.,(参照2024-03-04).2)“医師等の宿日直許可基準及び医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方についての運用に当たっての留意事項について”. 厚生労働省. 2024-01-15.,(参照2024-03-04).

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初発統合失調症のミエリン形成不全と認知機能低下との関係

 統合失調症患者の皮質領域におけるミエリン形成不全は、これまでの死後脳研究により明らかとなっており、異常な脳の成熟過程を反映している可能性がある。しかし、この異常なミエリン形成が統合失調症の初期段階からすでに存在しているのか、疾患の経過中に進行するのか、両方であるのかは現時点でよくわかっていない。富山大学の小林 春子氏らは、初発統合失調症患者の皮質内ミエリン形成の潜在的マーカーとして灰白質/白質コントラスト(GWC)を調査し、GWCの所見と臨床および認知機能との関連について検討を行った。Cerebral Cortex誌2024年1月31日号の報告。 初発統合失調症患者63例および健康対照者77例を対象に、GWCの調査を目的としたMRI研究を実施した。初発統合失調症患者におけるGWCの所見と臨床/認知的変数との関連も調査した。 主な結果は以下のとおり。・初発統合失調症患者の両側側頭、頭頂、後頭、島部のGWCは、対照群と比較し有意に高かった。・これらは、罹病期間、投薬期間、発症年齢、実行機能低下、言語学習機能低下と部分的に関連が認められた。 著者は、「高GWCは皮質のより深い層でのミエリン低下と関連している。統合失調症患者では初回精神病エピソードの時点で皮質のミエリンが低値であり、これが疾患初期段階の認知機能低下のベースとなっている可能性がある」とまとめている。

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日本人片頭痛患者における日常生活への影響~OVERCOME研究

 日本人の片頭痛患者を対象に、日常生活活動や基本的な健康指標(睡眠、メンタルヘルス)など、日常生活に及ぼす影響を詳細に調査した研究は、これまであまりなかった。鳥取県済生会境港総合病院の粟木 悦子氏らは、日本人片頭痛患者における日常生活への影響を明らかにするため、横断的観察研調査を実施した。Neurology and Therapy誌2024年2月号の報告。 日本における片頭痛に関する横断的疫学調査(OVERCOME研究)は、2020年7~9月に実施した。片頭痛による家事、家族/社交/レジャー活動、運転、睡眠への影響は、片頭痛評価尺度(MIDAS)、Migraine-Specific Quality of Life(MSQ)、Impact of Migraine on Partners and Adolescent Children(IMPAC)scales、OVERCOME研究のために作成したアンケートを用いて評価を行った。片頭痛のない日の負担を評価するため、Migraine Interictal Burden Scale(MIBS-4)を用いた。抑うつ症状および不安症状の評価には、8項目の患者健康質問票うつ病尺度(PHQ-8)、7項目の一般化不安障害質問票(GAD-7)をそれぞれ用いた。日常生活への影響は、MIDAS/MIBS-4カテゴリで評価した。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛を有する1万7,071例のうち、定期的に家事援助を必要とした人の割合は24.8%であった。・片頭痛により人間関係、余暇活動、社会活動に支障を来した人は、それぞれ31.8%、41.6%、18.0%であった。・頭痛が起こる日の間に、社交/レジャー活動の予定を立てることを少なくとも時々心配する人の割合は、26.8%であった。・家族と同居している人(1万3,548例)では、片頭痛により家族活動への参加や家族との楽しみにも影響がみられた。・運転経験のある人(1万921例)のうち、症状により運転が妨げられると報告した人の割合は、43.9%であった。・片頭痛により睡眠が妨げられた人は52.7%、気分が低下した人は70.7%であった。・PHQ-8の閾値を満たした臨床的うつ病の割合は28.6%、GAD-7の閾値を満たした臨床的不安症の割合は22.0%であった。・日常生活に対する片頭痛の影響は、MIDAS/MIBS-4カテゴリの重症度が増加するほど強力であった。 著者らは「日本人片頭痛患者にとって、日常生活、睡眠、メンタルヘルスへの負担は大きいため、臨床現場では、頭痛症状だけでなく、日常生活に及ぼす影響を評価することが重要である」としている。

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日本人NASH患者の臨床的特徴~5年間のRWDを用いた症例対照研究

 得津 慶氏(産業医科大学公衆衛生学 助教)らが非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)およびそれに関連する患者の臨床的特徴を調べるため、国民健康保険ならびに後期高齢者レセプトデータベースといったReal World Data(RWD)を用いて症例対照研究を行った。その結果、NASHの診断定義を満たした患者では非NASH患者に比べてBMIが有意に高いことが示唆された。また、女性、脂質異常症、高血圧症、胃食道逆流症(GERD)、2型糖尿病の罹患割合はNASH群で高く、NASHは肝硬変や肝がんのリスク上昇と関連していたことも示唆された。BMJ Open誌2023年8月22日号掲載の報告。 研究者らは、2015年4月~2020年3月までにNASH(ICD-10の分類表記K75.8[非アルコール性脂肪性肝炎]、K76.0[その他の炎症性肝疾患/その他の脂肪肝])と診断された患者をNASHの診断定義を満たす患者として非NASH患者と照合させ、性別、生年月日、居住地域に従ってランダムに選択した。1次および2次アウトカムの測定値(年齢、性別、BMI、NASH関連の併存疾患、生活習慣病など)の患者背景間の関係についてオッズ比(OR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・NASH患者545例(男性:38.3%)と非NASH(対照)患者18万5,264例(同:43.2%)を抽出した。各群の年齢中央値は68歳(四分位範囲:63.0~75.0)と65歳(同:44.0~74.0)であった。・BMIはNASH患者のほうが対照患者よりも有意に高かった(25.8kg/m2 vs.22.9kg/m2、p<0.001)。・女性、高血圧症、脂質異常症、2型糖尿病の割合はNASH患者のほうが高かった。さらに、NASHは肝硬変のリスク増加と関連しており(OR:28.81、95%信頼区間[CI]:21.79~38.08)、次に肝臓がんのリスクが高かった(OR:18.38、95%CI:12.56~26.89)。・NASHとうつ病(OR:1.11、95%CI:0.87~1.41)、不眠症(OR:1.12、95%CI:0.94~1.34)、慢性腎臓病(OR:0.81、95%CI:0.58~1.34)のリスクとの間には有意な関連はみられなかった。 これまでの国内研究報告1)にてNAFLD患者の特徴(中年男性と高齢女性の有病率が高い)は示されていた。NASHに関する今回の研究を通じて、本研究者らは「日常診療において、性別や年齢の違いを考慮し、肝臓がんのリスクやNASHに関連するそのほかの生活習慣関連の併存疾患に細心の注意を払う必要がある」としている。

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新型コロナ公費支援、3月末で終了を発表/厚労省

 厚生労働省は3月5日付の事務連絡にて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の医療提供体制および公費支援について、予定どおり2024年3月末をもって終了し、4月以降は通常の医療体制とすることを発表した1)。新型コロナの医療提供体制については、2023年5月8日に5類感染症変更に当たり特例措置が見直され、同年10月に公費支援を縮小し、2024年3月末までが「移行期間」であった。4月以降、医療機関への病床確保料や、患者のコロナ治療薬の薬剤費および入院医療費の自己負担に係る支援、高齢者施設への補助などが打ち切りとなる。無料で行われてきた新型コロナワクチンの特例臨時接種も予定どおり3月末で終了する。新型コロナの特例的な財政支援の終了について記載された資料も公開された2)。医療提供体制の移行(外来・入院・入院調整) 外来医療体制については、移行期間に各都道府県が策定した移行計画に沿って、外来対応医療機関数のほか、かかりつけ患者以外に対応する医療機関数が拡充されてきた。4月以降は広く一般の医療機関による対応に移行し、外来対応医療機関の指定・公表の仕組みは3月末をもって終了する。 4月から病床確保料は廃止となる。2023年10月~2024年3月末の病床確保料の金額は、ICUの場合、特定機能病院等では1日17万4,000円、一般病院では1日12万1,000円。HCUの場合、一律1日8万5,000円。その他病床の場合、特定機能病棟等では1日3万円、一般病院では1日2万9,000円であった。 4月以降の新型コロナ患者の入院先の決定(入院調整)は医療機関間で行う。医療機関等情報支援システム(G-MIS)での受け入れ可能病床数および入院患者数が入力できる日時調査等の項目は残される。厚労省からの入力依頼は3月末で終了するが、4月以降は都道府県で必要に応じて管轄下の医療機関に対してG-MISの入力を依頼するなどの活用が可能だ。令和6年度診療報酬改定での感染症への対応 6月1日からの施行となる令和6年度診療報酬改定では、コロナに限らない感染症を対象とした恒常的な対策へと見直されるが、新型コロナを含む感染症患者への診療も一定の措置が取られる。新興感染症に備えた第8次医療計画に合わせ、診療報酬上の加算要件(施設基準)も強化される。 外来感染対策向上加算の医療機関を対象に、発熱患者等への診療に加算(+20点/回)や、とくに感染対策が必要な感染症(新型コロナ含む)の患者入院の管理を評価し、(1)入院加算の新設(+100~200点/日)、(2)個室加算の拡充(+300点/日)、(3)リハビリに対する加算の新設(+50点/回)が行われる。新型コロナ患者等に対する公費支援の終了 新型コロナ患者の治療費および入院医療費については、一定の自己負担ともに公費支援が継続されてきたが、3月末で終了する。4月以降は、他の疾病と同様に、医療保険の自己負担割合に応じて負担することとなるが、医療保険における高額療養費制度が適用され、所得に応じた一定額以上の自己負担が生じない取り扱いとなる。 3月末までは新型コロナ治療薬の薬剤費のうち、医療費の自己負担割合に応じて3割負担の人で9,000円、2割負担の人で6,000円、1割負担の人で3,000円という上限額が設けられ、これらの上限額を超える部分を公費で負担していたが、4月以降は公費負担を終了する3)。 4月以降の新型コロナ治療薬の1治療(5日分)当たりの薬価と自己負担額の目安は以下のとおり。・モルヌピラビル(ラゲブリオ):約9万4,000円 1割負担:9,400円、2割負担:1万8,800円、3割負担:2万8,200円・ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッド):約9万9,000円 1割負担:9,900円、2割負担:1万9,800円、3割負担:2万9,700円・エンシトレルビル(ゾコーバ):約5万2,000円 1割負担:5,200円、2割負担:1万300円、3割負担:1万5,500円 入院医療費については、3月末まで高額療養費制度の自己負担額限度額から最大1万円の減額が行われていたが、4月以降は他の疾病と同様に、医療保険の負担割合に応じた通常の自己負担と、必要に応じて高額療養費制度が適用となる。 高齢者施設等については、約9割が医療機関との連携体制を確保し、感染症の予防およびまん延防止のための研修と訓練を実施していることが確認されたため、3月末までで新型コロナに関わる高齢者施設等への支援も終了する。令和6年度介護報酬改定において、今後の新興感染症の発生に備えた高齢者施設等における恒常的な取り組みとして、新興感染症発生時に施設内療養を行う高齢者施設等を評価する加算の創設などを行う。ゲノムサーベイランスは継続 そのほかの措置として、各自治体が実施しているゲノムサーベイランスについては、実施方法を見直したうえで4月以降も継続する方針で、引き続き行政検査として取り扱われる。また、自治体が設置している相談窓口機能について、今後の対応は各自治体の判断によるが、厚労省では4月以降も新型コロナ患者等に対する相談窓口機能が設けられる予定だ。新型コロナ緊急包括支援交付金(医療分)終了 新型コロナへの対応として、都道府県の取り組みを包括的に支援することを目的として行われてきた「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)」については、3月末で終了する。救急で新型コロナ対応として使用する個人防護具(PPE)について、都道府県や市町村が購入する場合の費用も本措置の補助対象であった。

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超加工食品摂取の健康への有害性、アンブレラレビューでも/BMJ

 超加工食品の摂取の多さは、有害な健康アウトカム、とくに心代謝系、一般的な精神障害および死亡のリスク増大と関連していることが、オーストラリア・ディーキン大学のMelissa M. Lane氏らの検討で示された。超加工食品と有害な健康アウトカムとの関連性についてはメタ解析が行われているが、研究グループは幅広い視点を提供し、先行研究のメタ解析によるエビデンスを評価するため、包括的なアンブレラレビューを行った。結果を踏まえて著者は、「今回得られた知見は、健康改善のために超加工食品への曝露を減らす公衆衛生対策の策定、およびその効果の評価に論理的根拠を与えるものである」と述べている。BMJ誌2024年2月28日号掲載の報告。超加工食品の摂取と健康アウトカムとの関連についての疫学的メタ解析のアンブレラレビュー 研究グループは、Nova食品分類システムで定義されている超加工食品の摂取と、健康への悪影響との関連を評価する目的で、既存のメタ解析のアンブレラレビューを行った。 MEDLINE、PsycINFO、Embase、Cochrane Database of Systematic Reviewsおよび参考文献リストをデータソースに、2009年から2023年6月までの研究を検索し、適格基準はコホート研究、症例対照研究、および/または横断研究デザインのシステマティックレビューとメタ解析とした。 アンブレラレビューによる各再メタ解析結果は、エビデンスの信頼性についてはエビデンス分類基準および既存のアンブレラレビューに従い、「クラスI(信ぴょう性が高い)」「クラスII(強く示唆的)」「クラスIII(示唆的)」「クラスIV(弱い)」「クラスV(エビデンスなし)」に分類。また、エビデンスの質についてはGRADEシステムを用いて評価し、「高」「中」「低」「非常に低」に分類した。超加工食品の摂取は、32の健康アウトカムと関連 検索の結果、430本の論文が同定され、適格基準を満たした14件のメタ解析研究、計45件の異なるプール解析が対象となった。 プール解析に含まれた参加者の総数は988万8,373例で、13件は用量反応モデリングが検討されたものであった。32件(71%)の異なるプール解析において、ランダム効果モデルに基づき、超加工食品の摂取の多さと死亡、がん、精神、呼吸器、心血管、胃腸、代謝等に関する健康アウトカムとの間に直接的な関連が示された。 事前に規定したエビデンスの分類に基づくと、クラスIで関連が示されたのは、心血管疾患関連死(リスク比:1.50、95%信頼区間[CI]:1.37~1.63、質:非常に低)および2型糖尿病(用量反応性のリスク比:1.12、95%CI:1.11~1.13、質:中)の発生、ならびに不安アウトカム(オッズ比[OR]:1.48、95%CI:1.37~1.59、質:低)および一般的な精神障害の複合アウトカム(OR:1.53、95%CI:1.43~1.63、質:低)の有病リスクであった。 クラスIIは、全死亡(リスク比:1.21、95%CI:1.15~1.27、質:低)、心疾患関連死(ハザード比[HR]:1.66、95%CI:1.51~1.84、質:低)、2型糖尿病(OR:1.40、95%CI:1.23~1.59、質:非常に低)および抑うつアウトカム(HR:1.22、95%CI:1.16~1.28、質:低)の発生、ならびに有害な睡眠関連アウトカム(OR:1.41、95%CI:1.24~1.61、質:低)、喘鳴(リスク比:1.40、95%CI:1.27~1.55、質:低)および肥満(OR:1.55、95%CI:1.36~1.77、質:低)の有病リスクであった。 残りの34のプール解析のうち、21件はクラスIII~IV、13件はエビデンスなし(クラスV)に分類された。 全体でGRADEシステムによるエビデンスの質は、22件のプール解析が「低」、19件が「非常に低」であり、「中」は4件であった。

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妊娠高血圧腎症疑い、PlGF検査の反復は有効か?/Lancet

 妊娠高血圧腎症が疑われる妊婦において、胎盤増殖因子(PlGF)に基づく検査を繰り返し行い、結果に基づく管理を行っても、周産期アウトカムは改善しなかった。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのAlice Hurrell氏らが、イングランド、スコットランド、ウェールズの22施設で実施した無作為化並行群間比較優越性試験「PARROT-2試験」の結果を報告した。PlGF検査は、妊娠高血圧腎症の予測に関する高い診断精度を有しており、診断までの時間を短縮して母親の重度有害アウトカムを大幅に減少させるが、その反復実施について、臨床上の有益性は不明であった。著者は、「有害アウトカムの発生率が低い高所得国では、妊娠高血圧腎症が疑われるすべての妊婦において一律に繰り返しPlGF検査を行うことは推奨されない」とまとめている。Lancet誌2024年2月17日号掲載の報告。PlGF反復検査の結果を開示vs.非開示に無作為化 研究グループは、妊娠高血圧腎症が疑われ、PlGF検査の時点で妊娠22週0日~35週6日の18歳以上の単胎妊娠妊婦を登録し、通常ケアを行うとともにPlGF反復検査を行うも結果を知らせない群(対照群)と、反復検査の結果を知らせる群(介入群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 試験の性質上、被験者またはパートナー、医師またはデータ収集者は、検査の実施について盲検化されなかったが、本試験の統計学者は介入の割り付けに関して盲検化された。 主要アウトカムは、死産、早期新生児死亡または新生児ユニット入室の周産期複合アウトカムとした。主要解析はITT解析とし、割り付けにしたがって管理された被験者を対象としたper-protocol解析も行った。周産期複合アウトカムの発生に有意差なし 2019年12月17日~2022年9月30日に、妊婦1,253例が無作為化された。1例は無作為化エラーのために除外され、介入群が625例、対照群が627例となった(平均年齢32.3±5.7歳、白人879例[70%])。対照群の1例は追跡不能であった。 周産期複合アウトカムのイベントは、介入群で625例中195例(31.2%)、対照群で626例中174例(27.8%)に発生し、両群間に有意差は確認されなかった(相対リスク:1.21、95%信頼区間[CI]:0.95~1.33、p=0.18)。per-protocol解析結果も同様であった。 重篤な有害事象は介入群で4例、対照群で6例に認められたが、すべての重篤な有害事象は治験責任医師により検査とは関連性なしと判定された。

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医学生に腫瘍内科の魅力を!学会が教育プログラムを作成/日本臨床腫瘍学会

 国内における医師の診療科の偏在は長らく問題となっている。平均勤務時間が長い、訴訟リスクが高いなどの理由から、外科・産婦人科などが医学生・若手医師から敬遠されて減少傾向となり、その反面、形成外科・放射線科などが増加傾向にある1)。 腫瘍内科をはじめとするがん関連の診療科も、学生時代に接点が少ない、専門性やキャリアの描き方が見えづらいなどの理由から、入局者数、専門医数、学会会員数などの伸びに課題を抱えている。こうした状況を背景として、日本臨床腫瘍学会(JSMO)の教育企画部会は、全国の大学向けに腫瘍学の教育プログラムを提供するプロジェクトをスタートした。 第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)では、このプロジェクト「JSMO大学」の活動内容を紹介し、大学の腫瘍内科教育が抱える課題についてディスカッションするシンポジウムが行われた。JSMO大学の中心メンバーである聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座主任教授の砂川 優氏が「JSMO University:本邦の腫瘍学教育の発展を目指した取り組み」と題した発表を行い、プロジェクト開始時に腫瘍内科の教員を対象に行ったアンケート結果を紹介した。 アンケートの概要は以下のとおり。・実施時期:2023年3~4月・対象:全国の医学部を有する大学82大学、日本臨床腫瘍学会の施設登録責任者・回答:76大学(93%)から得た・「臨床腫瘍学または腫瘍学関連の大学講義はありますか?」との問いに、「ある」が91%、「ない」が9%と、ほとんどの大学で腫瘍内科に関する講義の設定があった。・一方で、「腫瘍内科の講義の単位数」は0.5~36単位と大きな幅があり、「講義を担当している医局員数」は25%の大学で1人、半数の大学で3人以下だった。さらに「講義スライドを作成する際に参考にしているコンテンツはあるか?」との問いに、44%が「ない」と回答するなど、教える側の負担の大きさも見える結果となった。・「腫瘍学に関する実習はあるか?」との問いに、「ある」が65%と、実習が設定されていない大学も3分の1程度あることがわかった。・テストについて、腫瘍学関連の内容が「定期テストに含まれている」との回答が78%、「卒業試験に含まれている」との回答が68%、「医師国家試験の過去問題に基づいたテストを作成している」との回答が77%となり、試験の分野としては定着している現状がわかった。・教員の自由回答からは「基礎応用腫瘍学は内容が高度過ぎる」「系統的に腫瘍内科学を学ぶ機会がない」「情報量が多く一方通行」「わかりやすい資料がない」といった課題感が寄せられた。 同時に医学生向けのアンケートも行われ、腫瘍内科学の講義への感想として「面白かった」との回答が44%あったものの、「難しかった」との回答も56%あるなど(5年生の場合)、学生に興味を持ってもらう講義づくりに工夫の余地を感じさせる結果となった。 これらのアンケートの結果を受け、JSMO大学ワーキンググループは以下のような事業を展開していく予定だ。・教育資材を作成し、全国の大学に配布(2024年4月予定)・教育関連セミナーを開催(講義方法や国家試験対策を学ぶ)・腫瘍内科の魅力やキャリアプランを伝える動画を作成、YouTubeで公開JSMO2024 委員会企画 3「腫瘍学は人気がないのか?医学部教育の実態に迫る【JSMO University】」オンデマンド配信中(3/31まで。JSMO2024への参加登録要)https://www.micenavi.jp/jsmo2024/医学生向け腫瘍内科紹介動画「がん治療のジェネラリストでありスペシャリストである腫瘍内科医を目指しませんか?」https://www.youtube.com/watch?v=P-aMqgb2AFM

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内臓脂肪減少薬オルリスタット、OTCで発売/大正

 大正製薬は日本初の内臓脂肪減少薬オルリスタット(商品名:アライ)を、ダイレクトOTC薬として2024年4月8日に発売する。発売に先立ち世界肥満デーである3月4日に新発売記者会見を開催した。世界的な肥満パンデミック、日本人は小太りでも要注意 米国の若年成人の肥満(BMI30以上)は、1970年代後半には5.5%だったが、2017年には33%と6倍に増加している1)。米国だけでなく1975年当時、成人の平均BMIが25前後だった欧州、中東、オーストラリアなども2014年には30前後になっている2)。いまや肥満は世界的パンデミックと言っても過言ではない。 BMI30の白人の2型糖尿病発症率は10%強だが、日本人を含む東アジア人はBMI24〜25で同じ発症率に達してしまう。つまり、「日本人は小太りでも病気になりやすい」と日本肥満学会理事長である千葉大学の横手 幸太郎氏は述べる。 「肥満」は脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態であり、「肥満症」は肥満に伴って健康を脅かす合併症があるまたは合併症になるリスクが高い場合と定義され、肥満症は医療行為の対象である3)。 肥満における内臓脂肪の蓄積は健康障害の原因となる。積極的保健指導対象者に対する試験では、3%以上の減量で血圧、脂質、血糖、肝機能、尿酸など、内臓脂肪蓄積者における多くのリスク因子に改善がみられた。日本肥満学会でも、肥満症や高度肥満症患者に対する減量を目指した食事、運動、行動療法を提唱している3)。しかし、それらの治療には限界があり、治療薬の登場が期待されていた。そのような中、2023年、30年ぶりの抗肥満薬としてセマグルチドとオルリスタットが登場した。セマグルチドは肥満症治療薬であり、オルリスタットは内臓脂肪減少薬として、未病である肥満から肥満症への進行を抑制する。横手氏は、肥満の予防から健康寿命の延伸に寄与する薬剤として、オルリスタットに期待感を示した。16年間の開発期間を要した日本初の内臓脂肪減少薬オルリスタット オルリスタットは肪分解酵素リパーゼに結合し不活性化することで、脂肪の分解を阻害して腸からの吸収を抑える。摂取した脂肪の約25%を便とともに排出するとされる。 同剤は、海外において、1997年に医療用医薬品として承認され、2007年にはOTC医薬品としても承認されている。大正製薬は2008年に日本への導入契約を締結し、2011年から臨床試験を実施、2019年にダイレクトOTC医薬品として厚労省に承認申請して2023年に承認された。日本での開発期間は16年間におよび、「市販薬では異例といえる長期間の開発」と大正製薬マーケティング本部の宍戸 正臣氏は述べる。52週時で内臓脂肪が2割強減少 オルリスタットは1,700万人以上の使用経験、100以上の臨床プログラムなど、海外では豊富なエビデンスがある。日本人に対しては、探索試験、用量設定試験、検証試験(二重盲検)、長期投与試験、一般臨床試験(薬剤師による有効性安全性の検討)、生活習慣病治療薬併用試験が行われ、安全性と有効性が検証されている。 日本人試験の結果、投与24週時点の内臓脂肪面積は、プラセボ群-5.78%に対しオルリスタット群では-14.1%(検証試験)、52週時点ではオルリスタット群で21.52%、実測値で28.05cm2減少した。内臓脂肪蓄積の指標となる腹囲は、オルリスタット投与52週で4.89%、実測値で4.3cm減少した(長期試験)。 オルリスタットの長期投与試験における副作用発現は60.8%、主なものは油の漏れ34.2%、便を伴う放屁23.3%、脂肪便9.2%、便失禁6.7%などであった。消化管における脂肪吸収を抑えるという作用機序から起こる症状であるため、発現機序を十分に理解して、服用前は脂肪の多い食事を避けるなどの対策をとっておくべきである。症状発現時期は「臨床データ上では服薬開始14日以内が最も高く、その後は率が下がってくる傾向」と大正製薬セルフメディケーション臨床開発部の藤田 透氏は言う。研修を修了した薬剤師による対面販売 オルリスタットは要指導薬のため薬剤師の対面販売でしか購入できない。初回購入には、専用のチェックシートと生活習慣記録(購入1ヵ月前からの記録)を使用者が記入し、薬剤師が確認しなければならない。生活習慣記録については、入力の手間を省くために、LINEアプリ「STEP UP DIARY」を用意している。 一方、特別な販売方法のため薬剤師の継続的な教育は欠かせない。販売に従事する薬剤師は日本肥満学会監修の「アライ専用eラーニング研修」の修了が求められるが、すでに2万6,000人を超える薬剤師が研修を修了しているという。 また、オルリスタットは医薬品卸を介さず、大正製薬が要指導薬と第1類を取り扱う薬局・ドラックストアに直接販売する。販売店は全国で約1万店舗強あるとされるが、ほぼすべての店舗で取り扱いできる見込みだ。販売店は同剤のブランドサイトで検索できる。製品概要・製品名:アライ・効能・効果:腹部が太めな方の内臓脂肪および腹囲の減少(生活習慣改善の取り組みを行っている場合に限る)・用法・用量:年令 成人(18才以上) 1回量1カプセル 服用回数1日3回・成分:1 カプセル中 オルリスタット 60mg・価格:6日分2,530円、30日分8,800円(ともに税込み)使用条件・腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上・健康障害*を合併していない・初回購入前3ヵ月以上生活習慣改善の取り組みを行っていること・初回購入前1ヵ月および使用中に生活習慣改善の取り組み**、体重、腹囲を記録すること*:高度肥満または糖尿病、脂質異常症、高血圧などの「肥満診療ガイドライン2016」に記載された11疾患**:定期的に健康診断を受けていること

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ミニトマトの季節【Dr. 中島の 新・徒然草】(519)

五百十九の段 ミニトマトの季節皆さん、確定申告は終わりましたか?私はまだ悪戦苦闘しています。マイナポータルを使えば、ふるさと納税の入力が楽になると聞いて挑戦しているのですが、なかなか前に進みません。それでも、今年やっておけば来年は楽になるはず、と思って頑張っております。さて、最近の事件として福岡県の小学校1年生の男児が、給食で出たうずらの卵を喉に詰めて死んでしまったというものがありました。報道によると、事件の後の保護者説明会で「危険な食材との認識をちゃんと持っていたのか」という質問があったようです。でも、うずらの卵が危険なのであれば、冬から春にかけて今まさに旬のミニトマトだって危険ということになります。そう思っていたら、驚いたことに日本小児科学会のウェブサイトで、うずらの卵もミニトマトも窒息を起こしやすい食品のリストに入っていました。丸くてつるっとしているものが危険なのだそうで、ほかにはブドウ、さくらんぼ、ピーナツ、白玉団子、あめ、ソーセージなどが挙げられています。知らんかった!ほかにも危険な食品として、粘着性が高く唾液を吸収して飲み込みづらいものとして、餅、ご飯やパン類まで挙げられており、もう食べるものがなくなってしまいそうです。子供に危ないものは大人にも危ないかもしれないと思い、ウチではミニトマトを食べる時には半分に切るようにしました。さて、どんなに注意していても食べたものが気管に入って窒息する可能性はゼロではありません。そんな時に必要なのが医師なら誰でも知っておくべき「Heimlich maneuver」です。米国人医師のHenry J. Heimlich先生が考案し、これまで何万人もの人の命を救った腹部突き上げ法(上腹部圧迫法)。日本ではハイムリック法とかハイムリッヒ法とか複数の呼称がありますが、ここではハイムリック法としておきましょう。というのも、ある事件についてのHeimlich先生のインタビュー映像では「ドクター・ヘンリー・ハイムリック」と呼ばれていたからです。この事件は2016年5月23日、オハイオ州シンシナティのデュプリー・ハウス(Deupree House)という高齢者向け居住住宅の食堂で起こりました。96歳のハイムリック先生がステーキを食べていた時のことです。隣のテーブルに座っていた87歳のご婦人が、喉にハンバーガーを詰まらせてしまいました。そこでハイムリック先生は100人の群衆が見ている中、自らが考案したハイムリック法で見事に彼女を救命したのだそうです。命拾いしたパティ・リスさんはインタビューに答えて「神様は私をハイムリック先生の隣のテーブルに座らせてくれました。なんという幸運だったのでしょう!」と喜んでいました。また、デュプリー・ハウスの食堂の支配人ペリー・ゲインズ氏は、その年だけでもすでに2回もハイムリック法を行った経験があり、この時もキッチンから飛び出していったそうですが「さすがに私はお呼びでなかったよ」と語っていました。うずらの卵に話を戻しますが、ハイムリック法を行うためには状況認識が大切です。良からぬことが起こった時に、何が起こっているのかを瞬時に判断しなくてはなりません。それが窒息かどうかはチョーキング・サインで見極めることになります。つまり、窒息した人間は自分の喉を親指と人差し指でつかむわけですね。食べ物による窒息だと思ったら、すかさず処置をする必要があります。この時の処置は、意識が有るか無いかで分れます(参考:日本医師会 救急蘇生法 気道異物除去の手順)。意識がなければただちに胸骨圧迫、いわゆる救命処置です。一方、意識があればファイブ・アンド・ファイブ(背部叩打法5回とハイムリック法5回)。まずは背中を叩きます。これだけでも食べた物が飛び出すこともあるとのこと。背部叩打法を5回試して解決しなければ、次はハイムリック法。これも5回まで試してみるそうで、以後はこれらの繰り返しになります。ちなみに2016年の事件では、3回目のハイムリック法でハンバーガーが口から飛び出したのだとか。というわけで、うずらの卵事件から学ぶことは3つ。チョーキング・サインを知るハイムリック法を含むファイブ・アンド・ファイブを使えるようになる物を食べるときは、喉に詰めないようわれわれ自身も注意する医師たるもの、常に窒息に備えておかなくてはなりませんね。最後に1句ミニトマト ハイムリック法を 思い出せ

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留学!ドイツへの道【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第34回

今もなお、ドイツへ臨床留学したいと希望される先生からの相談を受けます(私はいつでもウェルカムですよ!)。ドイツでの就労では、とにかく医療従事者側のQOLが非常に高いです。年間6週間の有給休暇が取れて(むしろ取らないと怒られる)、本気を出せばヨーロッパ中の国へ車や鉄道などの陸路で旅行に行けちゃいます。写真は私が最も好きな場所の1つであるミュンヘン中央駅です。ターミナル駅で、ここからヨーロッパ中に鉄道が走っていきます。「ここから冒険が始まる」感が半端ないのです。それと「ちょっと体調悪いな~」と思えば電話1本で休みが取れるし、フランクな人をかかりつけ医に選べば、「鬱気味です」って言うだけですぐに診断書を書いてもらえるので、有給とは別に1週間くらいのお休みが簡単に取れたりします。留学で必要な3項目ドイツの医療レベルについては、よく知られている通りです。とくに循環器分野では新しいデバイスがどんどん取り入れられていて、短期間であっても留学すれば勉強になること請け合いです。ですから、ドイツ…いいと思いますよ。人生の一時期でもいいからヨーロッパで暮らしてみたいと思っている方もおられるのではないでしょうか。しかし「何から始めていいかわからない」となっちゃうと思います。かねてから私が言い続けているのは、留学で必要なのは「言語」「カネ」「コネ」の3つです。語学は勉強を頑張るしかなくて、お金は頑張って当直をいっぱいすれば何とかなると思われます。では、コネはどうやって作ったらいいの? とよく相談を受けます。これは確かに正解がなく、一筋縄ではいかないと思われます。口に出す効用コネ作りについて、私がよく勧めているのは「とにかく口に出せ」ということです。「留学? チャンスがあれば行きたいですね~」とか言っている間はダメです。たとえば、ドイツならドイツでいいので「ドイツに行きたいんだ!」ってことを、ことあるごとに口にすれば良いと思います。「いい男いたら紹介してくんない?」だと、なかなか簡単には紹介してもらえないと思います。しかし、「30歳くらいのマッチョな男がいたら紹介してよ!」だと、マッチョを見かけるたびに「あ、そういえば紹介して欲しいって言ってたよな~」と、チャンスに繋がったりするわけです。「ドイツ」と言うキーワードを出すだけで、知り合いの先生が「あ、そう言えば俺の同級生が2年前にドイツに留学してたよ。1回連絡してみる?」ってな感じで、急に輪が拡がったりします。「具体的な目標を口に出して言ってみる」ことは、想像以上の効果があると思います。何よりタダですし!ぜひ「口に出す」ことから始めてみてください!

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第87回 「そもそも麻疹を診たことがない」

フタバのフリーイラストより使用世界保健機関(WHO)から「西太平洋諸国は予防接種とサーベイランスのギャップによって麻疹発生のリスクにさらされている」という衝撃的な記事が公開されました1)。輸入リスクが高い国として、日本も麻疹の知識を身に付けておく必要があるでしょう。「西太平洋地域では2023年、世界の他の地域でみられるような大規模な麻疹の流行は発生しなかったが、この地域で360万人の子供たちが2020~22年にかけて定期予防接種を受けられなかった。世界中で麻疹が再流行しており、麻疹の輸入リスクが増大している」定期的に観測される麻疹例2月26日、奈良市保健所が、外国人観光客の20代男性が麻疹に感染していると報告しました。19日に発熱・発疹があり、同感染症と診断されました。保健所は、その行動を細かく報告しています。いつ、どこの観光都市から奈良県にやって来たのか、移動手段は何を使ったのか、など。さらに、3月1日には東大阪市でも20代男性の麻疹感染例が確認されました。なぜここまで詳細なコンタクトトレースをするかというと、麻疹の基本再生産数(R0)は12~18といわれており、1人の発症者から多くの感染者を生み出すことで知られているためです。麻疹のR0はインフルエンザウイルスの約10倍で、免疫がない人が接触すると、ほぼ100%感染するといわれています。しかし、現在はワクチンのおかげで麻疹というものは流行しなくなりました。「なぜこんなに慌てるんですか?」と感じている医療従事者もいるかもしれません。私が子供のときは、麻疹にかかる人はそれなりにいたので、いやほんとジェネレーションギャップを感じます。麻疹が全数届出になった2008年の年間届出数は約1万例で、そのあとは激減の一途をたどっており、2022年はわずか6例でした。ここまで減るかというくらい、本当に減ったのです。もはやレアな疾患ですから、複数例アウトブレイクしようものなら、報道になるのです。ワクチン接種歴の確認を医療従事者に限ったことではありませんが、自身に麻疹ワクチン接種歴があるかどうか、母子手帳がある人はご確認ください。麻疹ワクチンが定期接種になったのは1978年で、当時1回の定期接種でした。1回の接種では十分な免疫がないため、2008年に特例措置によって、追加接種が行われました。そのため、2000年以降に生まれた方は、2回の定期接種を受けている可能性が高いでしょう。私みたいなオッサン世代が一番自分自身のワクチン接種歴を把握していなかったりするので、一度皆さんご確認ください(表)。追加接種は自費ですが、たいがい1万円以内で接種できますし、成人でも接種可能です。画像を拡大する表. 麻疹のワクチン接種歴(筆者作成)麻疹の臨床経過麻疹の症状についておさらいしておきましょう。教科書で知っていても、目の前にやって来ると診断できない可能性があります。まず潜伏期間ですが、10~12日と長いです。接触感染だけでなく、空気感染する点に注意が必要です。そのため、R0がむちゃくちゃ高いのです。初発症状は、発熱、咳、鼻水、のどの痛みなど感冒症状があります。いったん治癒すると思われた矢先、高熱と発疹が同時にやって来ます(図)。この激烈な「2峰性」が麻疹の特徴です。発疹が出てくる1~2日前に口の中の頬の裏側に、やや隆起した小さな白い斑点(Koplik斑)が出現することが特徴的といわれてきましたが、風疹や他のウイルス感染症でも出現することがわかっており、必ずしも特異度が高いとは言えません。画像を拡大する図. 麻疹の典型的経過(筆者作成)成人の場合、中途半端な免疫がある場合(1回接種者など)、軽症で非典型的な「修飾麻疹」になることがあります。そうなるとさらに診断が困難となります。何よりも、いざというときに麻疹の存在を疑えることが重要といえます。参考文献・参考サイト1)WHO:Western Pacific countries at risk of measles outbreaks due to immunization and surveillance gaps. 2024 Mar 1.

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陰性所見に注目する【国試のトリセツ】第30回

§1 アセスメント陰性所見に注目するQuestion〈110F19〉50歳の女性。頭痛を主訴に来院した。2日前の夕食中に突然の頭痛を自覚した。翌日も頭痛は続き、37.8℃の発熱もあったため、自宅近くの診療所を受診した。鎮痛薬を処方され内服したが、頭痛が改善しないため救急外来を受診した。意識は清明。身長156cm、体重57kg。体温36.8℃。脈拍84/分、整。血圧126/70mmHg。神経学的診察で脳神経に異常を認めない。項部硬直とKernig徴候とを認めない。四肢の運動系に異常を認めず、腱反射は正常でBabinski徴候を認めない。血液所見と血液生化学所見とに異常を認めない。頭部単純CTを次に示す。対応として適切なのはどれか。(a)経過観察(b)腰椎穿刺(c)止血薬静注(d)降圧薬内服(e)頭部CT 血管造影検査画像を拡大する

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ADHDと6つの精神疾患リスクとの関連

 注意欠如・多動症(ADHD)とさまざまな精神疾患との合併率の高さは、観察研究や診断基準などから示唆されている。中国・重慶医科大学のYanwei Guo氏らは、ADHDと6つの精神疾患との潜在的な遺伝的関連性を調査するため、メンデルランダム化(MR)研究を実施した。BMC Psychiatry誌2024年2月5日号の報告。 2サンプルのMRデザインを用いて、ADHDと6つの精神疾患のゲノムワイド関連研究(GWAS)に基づき、遺伝的操作変数(IV)をシステマティックにスクリーニングした。主なアプローチとして、逆分散重み付け(IVW)法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・IVW MR分析では、ADHDと自閉スペクトラム症リスクとの間に正の相関が認められた(オッズ比[OR]:2.328、95%信頼区間[CI]:1.241~4.368)。・ADHDは、統合失調症のリスク増加に対する正の関連も認められた(OR:1.867、95%CI:1.260~2.767)。・ADHDとチック症、知的障害、気分障害、不安症との関連は認められなかった。 著者らは「ADHDは、自閉スペクトラム症および統合失調症のリスク増加と関連していることが示唆されたことから、ADHD患者では、両疾患との合併をさらに注意し、タイムリーな介入や治療が必要であることが明らかとなった」としている。

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薬不足をリアルに感じている患者は2割/アイスタット

 近年では、都市部で24時間営業の薬局が出現したり、インターネットで市販薬が購入できたりと市販薬購入のハードルはさらに下がってきた。また、不急ではない病気やけがでは、医療機関に頼らず市販薬で様子をみるという人も多いのではないだろうか。 こうした「薬をもらうなら病医院へ」の常識が変わりつつある今、薬不足、オーバードーズなど薬に関する深刻な問題も顕在する。また、一般人のジェネリック医薬品(後発品)の服用状況や飲み切らなかった処方箋薬の扱いなどの実態を知るためにアイスタットは、薬に関するアンケート調査を2016年5月の第1回に続き、今回実施した。調査概要形式:Webアンケート形式調査期間:2024年2月15日回答者:セルフ型アンケートツールFreeasyに登録している20~69歳の300人アンケート概要・最近1年間で処方箋薬を服用した人は6割近く。年代が高くなるほど服用率が多い・最近1年間で市販薬を服用した人は6割を超える。40代の服用が最多・最近1年間の薬の服用割合は、「処方箋薬」より「市販薬」の方が多い・最近1年間で「処方箋薬」「市販薬」の両方を服用している「併用型」の人は4割・日本国内で薬不足が深刻な問題になっている中、実際に薬不足を感じている人は2割・処方箋薬を処方された人(280人)のうち、飲み切らない人は約8割 飲み切らない人(218人)のうち、再発時に残った薬を服用する人は8割、捨てる人は2割 残った薬の使用期限は、「処方日から1年未満であれば再発時に服用する」が最多・ジェネリック医薬品を拒否する人は1割弱・オーバードーズについて「問題である」と思っている人は7割・37.5℃以上の発熱ではじめにすること第1位は「市販薬で様子をみる」基本ジェネリック医薬品でよいとする人は7割超 質問1で「最近1年間で、病医院で処方された薬(処方箋薬)をどのくらいの頻度で服用したか(内服薬、外服薬を問わず)」(単回答)について聞いたところ、「服用したことはない」が42.3%、「毎日」が34.0%、「体調が悪いとき、体調を改善したいときのみ」が14.0%という順で多かった。この回答を服用の有無別にみると、最近1年間で処方箋薬の服用がある人は6割近くいた。年代別では、服用の有無で「ある」と回答した人は「60代」で最も多く、年代が高くなるにつれ服用率が高い傾向がみられた。 質問2で「最近1年間で、ドラッグストアなどの店頭で購入した薬をどのくらいの頻度で服用したか(内服薬、外服薬を問わず)」(単回答)について聞いたところ、「体調が悪いとき、体調を改善したいときのみ」が48.7%、「服用したことはない」が39.0%、「定期的に」が7.3%の順で多かった。服用の有無別にみると、最近1年間で市販薬を服用した人は6割を超えていたほか、年代別で服用の有無で「ある」を回答した人は「40代」で最も多かった。 質問3で「最近1年間のうち、『薬不足』を感じたことがあるか」(単回答)について聞いたところ、「薬不足を感じなかった」が82.3%、「薬不足を感じた」が17.7%だった。薬を必要とする人(205人)のみを抽出し、解析した結果、「薬不足を感じなかった」が79.5%、「薬不足を感じた」は20.5%だった。ほぼ全体と同様の回答動向だった。なお、薬不足を感じた人の内訳は、「ドラッグストアなどの店頭のみ感じた」が7.3%、「病医院の処方箋薬のみ感じた」が6.8%、「両方で感じた」が6.3%だった。 質問4で「薬不足を感じた」と回答した53人に「最近1年間のうち、『薬不足』を感じた理由」(複数回答)について聞いたところ、「ドラッグストアや薬局でいつも購入している薬がなく、他の薬を購入した」が37.7%、「病医院でいつも服用している薬がなく、やむを得ず別の薬を処方された」が32.1%、「病医院で処方される薬の個数が減少したと感じた」「ニュースや身近の人の話を聞いて」が同率で22.6%と多かった。 質問5で「医療機関や薬局で処方された飲み薬をすべて服用しなかった場合、その薬はどうしているか」(単回答)について2群に分けて聞いた。はじめに「今まで飲み薬を処方されたことはない」と回答した20人を除いた280人を対象に処方箋薬の「飲み切り状況」を聞くと、処方箋薬を「飲み切らない人」が77.9%、「今まで残したことはない」が22.1%で、処方箋薬を飲み切らない人は約8割だった。次に、処方箋薬を飲み切らない人(218人)への同じ質問では、再発時に残った薬を服用する人は8割、捨てる人は2割だった。さらに残った薬の使用期限を調べてみると、「処方日から1年未満であれば再発時に服用する」が27.5%、「処方日から3年以上でも服用する」が17.0%と多かった。 質問6で「医療機関や薬局でジェネリック医薬品(後発品)を薦められた場合の回答」(単回答)について聞いたところ、「常に問題ないと答える」が49.7%、「自らお願いする」が23.7%、「どの疾患の治療薬かに応じて、選択有無を決める」が20.3%と多かった。 質問7で「『オーバードーズ』(過剰摂取)についてどう思うか」(単回答)について聞いたところ、「問題である」が74.7%で、「どちらともいえない」が15.0%、「問題であると思わない」が10.3%であった。年代別の解析では、「問題である」と回答した人は「50代」で最も多かった一方、「問題であると思わない」と回答した人は「20代/30代」の若者世代で最も多かった。 質問8で「37.5℃以上の発熱をした場合、はじめにすること」(単回答)について聞いたところ、「市販の風邪薬・解熱剤で様子をみる/対処する」が43.3%、「薬や病医院の受診に頼らず、安静にして様子をみる/対処する」が29.3%、「すぐに、発熱外来を予約/受診する」が12.7%で多かった。年代別では、「20代/30代」に「自己検査キット」「発熱外来へ受診」が多く、「50代」に「市販薬」「処方箋薬の残り」が、「60代」に「薬や受診に頼らず、安静にする」という回答が多かった。 質問9で発熱しても「すぐに発熱外来に行かない人(262名)」に「37.5℃以上の発熱をした場合、『すぐに発熱外来を受診しない』理由」(複数回答)について聞いたところ、「高熱でなければ、病医院に行く必要性を感じないから」が40.5%、「病医院の通院・診療が面倒だから」が27.9%、「費用がかかるから」が21.8%で多かった。処方箋薬と市販薬で服用が多いのは アンケ―ト結果から「処方箋薬」と「市販薬」の服用状況を解析したところ、「毎日」「定期的に」の服用割合は「処方箋薬」の方が多く、「体調が悪いとき、体調を改善したいときのみ」の服用割合は「市販薬」の方が多かった。一方、「服用したことはない」を除いた合計では、「処方箋薬」が57.7%、「市販薬」が61.0%で、「処方箋薬」より「市販薬」の方が多いことが判明した。 アンケ―ト結果から「薬の服用タイプ」を集計したところ、「処方箋薬」「市販薬」の両方を服用している「併用型」の人は43.0%、病医院を受診せずに「市販薬のみ」で対処する人は18.0%、「処方箋薬のみ」で対処する人は14.7%、「服用なし」の人は24.3%であり、「併用型」が最も多かった。

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医師が過小評価した心房細動、予後にどう影響?/慶應義塾大学

 医師による心房細動患者の健康状態の評価と、その後の治療および転帰との関連を調査した結果、医師は心房細動患者の健康状態を過小評価していることが少なくなく、過小評価している場合はその後の治療の積極性が低く、1年後の健康状態の改善が乏しいことを、慶應義塾大学の池村 修寛氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年2月5日号掲載の報告。 外来における心房細動の主な治療目標は、患者の症状・機能や生活の質を最適化することであるが、これは医師が心房細動患者の健康状態を正確に評価することで可能になる。そこで研究グループは、医師による心房細動患者の健康状態の評価と、その後の治療および転帰との関連性を調査するため、多施設共同前向きコホート研究を実施した。 対象は、2018年11月8日~2020年4月1日に東京都内の3次医療機関2病院(慶應義塾大学病院、東京医療センター)で新たに心房細動と診断された患者、または心房細動の初回評価のために紹介されて外来を受診した患者であった。データ分析は2022年12月22日~2023年7月7日に実施された。主要アウトカムは、医師・患者の健康状態の評価の一致と治療エスカレーション(抗不整脈薬の変更または開始、除細動やカテーテルアブレーションの実施)との関連、1年後のAFEQT(Atrial Fibrillation Effect on Quality-of-Life)スコアの変化であった。 患者報告による健康状態として、AFEQT質問票を用いて、症状、日常生活、治療不安の3領域の評価を組み合わせたAFEQTスコアを登録時と1年後に収集した。医師は、診察直後に簡略版の質問票を用いて、心房細動患者の前月の症状、日常生活、治療不安を評価した。各領域の項目に対する患者回答と医師評価のスコアの差から、医師が患者の健康状態を適正評価、過小評価、過大評価しているかを判断した。 主な結果は以下のとおり。・心房細動患者330例が登録・解析された。男性は238例(72.1%)、平均年齢(SD)は67.9(11.9)歳、発作性心房細動は163例(49.4%)であった。・医師が健康状態を適正に評価した患者は112例(33.9%)、過小評価した患者は42例(12.7%)、過大評価した患者は176例(53.3%)であった。・健康状態が過小評価された群は、適正に評価された群に比べてより若く(平均年齢[SD]:63.7[10.6]歳vs.65.6[12.3]歳)、心房細動アブレーションの治療歴があった(19.0% vs.8.0%)。・206例(62.4%)の患者が初回評価から1年以内に治療がエスカレーションされた。健康状態が過小評価された群の実施率は47.6%で、適正に評価された群(63.6%)や過大評価された群(66.3%)よりも少なかった。・多変量調整後、健康状態の過小評価は治療エスカレーションの頻度の低さと独立して関連していた(調整オッズ比:0.43、95%信頼区間:0.20~0.90、p=0.02)。・適正または過大評価された群と比べて、過小評価された群では1年後のAFEQTスコアの改善が有意に低く(p=0.01)、とくに症状領域のスコアの改善が顕著に低かった(p<0.001)。

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市中誤嚥性肺炎、嫌気性菌カバーは必要?

 誤嚥性肺炎の治療において、本邦では嫌気性菌カバーのためスルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)などが用いられることがある。しかし、海外では誤嚥性肺炎の0.5%にしか嫌気性菌が認められなかったという報告もあり1)、米国胸部学会/米国感染症学会(ATS/IDSA)の市中肺炎ガイドライン2019では、嫌気性菌カバーは必須ではないことが記載された2)。また、2023年に実施されたシステマティックレビューにおいて、嫌気性菌カバーの有無により、誤嚥性肺炎患者に転帰の差はみられなかったことも報告されている3)。しかし、本レビューに含まれた論文は3本のみであり、サンプルサイズも小さく、結論を導くためには大規模研究が必要である。そこで、カナダ・クイーンズ大学のAnthony D. Bai氏らは、約4千例の市中誤嚥性肺炎患者を対象とした多施設後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、嫌気性菌カバーは院内死亡リスクを低下させず、C. difficile大腸炎リスクを上昇させた。本研究結果は、Chest誌オンライン版2月20日号で報告された。嫌気性菌カバーで院内死亡率は改善せずにC. difficile大腸炎リスクが上昇 研究グループは、カナダの18施設において市中誤嚥性肺炎で入院した患者のうち、入院から48時間以内に抗菌薬が投与された3,999例を対象とした後ろ向き研究を実施した。セフトリアキソン、セフォタキシム、レボフロキサシンが投与された患者を非カバー群(2,683例)とした。アモキシシリン・クラブラン酸※、モキシフロキサシンが投与された患者、非カバー群の薬剤とクリンダマイシンまたはメトロニダゾールが併用された患者を嫌気性菌カバー群(1,316例)とした。主要評価項目は院内死亡、副次評価項目はC. difficile大腸炎の発現、治療開始後のICU入室であった。なお、両群間の背景因子を調整するため、傾向スコアオーバーラップ重み付け法を用いて解析した。※:本研究が実施されたカナダではSBT/ABPCが使用できないため、SBT/ABPCに相当するものとした。 市中誤嚥性肺炎治療で嫌気性菌カバーの有無による転帰の差を評価した主な結果は以下のとおり。・市中誤嚥性肺炎患者の入院期間中央値は非カバー群6.7日、嫌気性菌カバー群7.6日であった。・市中誤嚥性肺炎患者の院内死亡率は非カバー群30.3%(814例)、嫌気性菌カバー群32.1%(422例)であった。・傾向スコアによる背景因子の調整後の院内死亡リスクの群間差は1.6%(95%信頼区間[CI]:-1.7~4.9)であり、両群間に有意差は認められなかった。・C. difficile大腸炎の発現率は非カバー群0.2%以下(5例以下)、嫌気性菌カバー群0.8~1.1%(11~15例)であった。・傾向スコアによる背景因子の調整後のC. difficile大腸炎の発現リスクの群間差は1.0%(95%CI:0.3~1.7)であり、嫌気性菌カバー群で有意にリスクが高かった。・治療開始後のICU入室率は非カバー群2.5%(66例)、嫌気性菌カバー群2.7%(35例)であった。 著者らは、本研究には抗菌薬を必要としない誤嚥性肺炎患者が含まれる可能性があること、院外死亡や再入院の評価ができなかったこと、多くの患者で肺炎の原因菌が特定できていなかったことなどの限界が存在することを指摘しつつ、「誤嚥性肺炎において、嫌気性菌カバーは院内死亡率を改善せず、C. difficile大腸炎リスクを上昇させることから不要である可能性が高いと考えられる」とまとめた。

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RET融合遺伝子陽性の固形がん、セルペルカチニブの有効性(LIBRETTO-001)/日本臨床腫瘍学会

 RET融合遺伝子は主に非小細胞肺がん(NSCLC)や甲状腺がんにみられるが、それ以外のがん種でもまれではあるものの認められることがある。RET受容体型チロシンキナーゼ阻害薬セルペルカチニブは、本邦ではRET融合遺伝子陽性のNSCLCおよび甲状腺がん、RET遺伝子変異陽性甲状腺髄様がんにおける治療薬として用いられている。セルペルカチニブは脳転移を有するNSCLC患者において良好な頭蓋内奏効を示し1)、肺がん・甲状腺がん以外のRET融合遺伝子陽性の進行固形がんでも、有望な抗腫瘍活性を示すことが報告されている2)。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)において、大江 裕一郎氏(国立がん研究センター中央病院 副院長/呼吸器内科長)が、国際共同第I/II相バスケット試験(LIBRETTO-001)の肺がん・甲状腺がん以外の患者を対象とした最新の解析結果を報告した。 LIBRETTO-001試験は、RET融合遺伝子陽性の進行・転移固形がん患者を対象とした国際共同第I/II相非盲検バスケット試験で、用量漸増パートと用量拡大パートから構成されている。用量拡大パートでは、セルペルカチニブ160mgを1日2回経口投与した。本解析は、肺がん・甲状腺がん以外の固形がん患者55例(有効性解析対象集団は52例)が対象となった。主要評価項目は独立判定委員会(IRC)評価に基づく奏効割合(ORR)で、副次評価項目は治験責任医師評価に基づくORR、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性であった。 主な結果は以下のとおり。・有効性解析対象集団の年齢中央値は54.0歳(範囲:21~85)、前治療歴なしが9.6%、1~2ラインが61.5%、3ライン以上が28.8%であった。・有効性解析対象集団におけるがん種は16種類で、膵がんと大腸がんが最も多かった(いずれも13例[25.0%])。そのほかは唾液腺がん4例(7.7%)、肉腫、原発不明がん、胆管がん3例(5.8%)などであった。・IRC評価に基づくORRは44.2%(CR:3例、PR:20例)で、日本人集団(11例)では63.6%(CR:2例、PR:5例)であった。膵がんでは53.8%、大腸がんでは30.8%であった。・追跡期間中央値24.8ヵ月時点のPFS中央値は13.2ヵ月で、日本人集団では18.7ヵ月(追跡期間中央値33.1ヵ月)であった。・DoR中央値は37.2ヵ月で、日本人集団では17.3ヵ月であった。・追跡期間中央値33.2ヵ月時点のOS中央値は18.0ヵ月で、日本人集団では18.7ヵ月(追跡期間中央値34.4ヵ月)であった。・多く認められた有害事象(30%以上に発現)は、ALT上昇(45.5%)、AST上昇(36.4%)、下痢(32.7%)、口渇(32.7%)、高血圧(30.9%)であった。・安全性に関する新たなシグナルは認められなかった。 本研究結果について、大江氏は「セルペルカチニブはRET融合遺伝子陽性の固形がん患者において、持続的な抗腫瘍活性と忍容可能な安全性を示した。日本人集団の有効性・安全性は全体集団と同様であった。RET融合遺伝子などのactionableな遺伝子異常を同定するためには、全がん種でCGP検査を実施することが重要である」とまとめた。 なお、セルペルカチニブのRET融合遺伝子陽性固形がんへの適応追加について、日本イーライリリーが厚生労働省へ承認申請中である。

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小児インフルワクチンの最適な接種月/BMJ

 2~5歳の小児に対するインフルエンザワクチン接種の最適な時期について調べた住民ベースのコホート試験で、誕生月が予防健診受診の時期に影響を与えることからワクチン接種のタイミングと関連することが示され、その結果、10月生まれの小児は10月にワクチン接種を受ける可能性が最も高く、インフルエンザと診断される可能性が最も低かった。11月および12月に接種を受けた小児については、インフルエンザと診断される可能性が低かったが交絡因子の存在が示唆されたという。米国・ハーバード大学医学大学院のChristopher M. Worsham氏らが、米国でインフルエンザワクチン接種を受けた2~5歳の小児約82万人を対象に行ったコホート試験の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「10月のワクチン接種促進の推奨と一致した結果が得られた」とまとめている。BMJ誌2024年2月21日号掲載の報告。2011~18年にワクチン接種を受けた2~5歳について検証 研究グループは、2011~18年にインフルエンザワクチンの接種を受けた民間医療保険に加入する8月1日~1月31日に出生した2~5歳の小児を対象に、住民ベースコホート試験を行った。 主要アウトカムは、接種を受けた小児の誕生月別によるインフルエンザ診断率であった。10月生まれの小児、インフルエンザ診断率2.7%と最低 全体で、2~5歳の小児81万9,223例がインフルエンザワクチンの接種を受けていた。 11月および12月に接種を受けた小児は、インフルエンザと診断される可能性が最も低かった。ただしこの結果については、ワクチン接種の時期と、インフルエンザのリスクに影響を与える交絡因子が存在している可能性が示唆された。 ワクチン接種は概して、小児が予防的に受ける定期健診の際や誕生月に受けており、10月生まれの小児は10月にワクチン接種を受ける割合が高く、平均すると8月生まれの小児より遅く、12月生まれの小児より早くワクチン接種を受けていた。 また、10月生まれの小児は、インフルエンザ診断率が最も低かった。たとえば、8月生まれの小児のインフルエンザ診断率3.0%(6,462/21万2,622例)に対して、10月生まれの小児は2.7%(6,016/22万4,540例)だった(補正後オッズ比:0.88、95%信頼区間:0.85~0.92)。

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