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血糖値や体重のコントロールに最も有効なGLP-1受容体作動薬は? (解説:小川大輔氏)

 GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病に対して血糖降下作用や体重減少効果のある優れた治療薬である。セマグルチドやチルゼパチドのほか、日本では発売されていないGLP-1受容体作動薬も含めて、数多くあるGLP-1受容体作動薬の中で血糖コントロールや体重減少効果に対して、最も有効な製剤は何か? その問いに答える論文がBMJ誌に発表された1)。 著者らは成人2型糖尿病患者を対象とし、12週間以上プラセボあるいは他のGLP-1受容体作動薬と比較した無作為化対照試験を抽出した。そのうちクロスオーバー試験、非劣性試験、現在使用されていない薬剤との比較試験などは除外し、基準を満たした76試験のネットワークメタ解析を行った。 血糖コントロールに関しては、15種類のGLP-1受容体作動薬の中でHbA1c、空腹時血糖値の低下はチルゼパチドが最も大きく、最も有効なGLP-1受容体作動薬であると述べている。ただし、日本ではチルゼパチド2.5~5mgを使用しているのに対し、この論文ではチルゼパチド5~15mgを使用した試験の解析を行っている。そのため私たちのチルゼパチドに対する印象とは、やや異なる結果となっており、その解釈には注意が必要である。 体重管理に関しては、いずれのGLP-1受容体作動薬も効果があるが、なかでもCagriSema(セマグルチドとcagrilintideの合剤)が最も体重減少が大きかったと報告している。しかし以前に本コラムでコメントしたが2)、CagriSemaは日本では発売されていないので、日本で現在使用できるGLP-1受容体作動薬の中では、チルゼパチドやセマグルチドが効果の高い製剤となる。 GLP-1受容体作動薬の脂質に対する効果については、これまでにあまり報告がない。この論文で、LDLコレステロール値と総コレステロール値にセマグルチドが唯一有効なGLP-1受容体作動薬であった、と述べている点は興味深い。また中性脂肪の低下に対しては、ITCA 650(日本未発売)とチルゼパチドが有効であった。 今回の解析で、有害事象についてはいずれのGLP-1受容体作動薬においても悪心、嘔吐や下痢などの消化器系の有害事象が認められた。予想通りの結果ではあるが、血糖値や体重の減少を期待して高用量のGLP-1受容体作動薬を投与する際には、消化器症状の発現に注意する必要があると言えよう。

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トラブルになりそうな職場復帰、どう対応するか【実践!産業医のしごと】

トラブルを引き起こす可能性のある職場復帰事例の典型を紹介します。産業医として、企業から無理筋な判断の要求を受ける典型的なケースとして、一緒に考えてみましょう。事例:ある企業の産業医として選任され、A人事課長からB従業員との復職面談の実施を依頼されました。今回、B従業員は休職満了直前まで療養し、復職可能の診断書を提出しています。B従業員はこれまで3回休職と復職を繰り返しています。これまでもパフォーマンスが低いようで、仕事でも職位に見合った成果を出せていません。A人事課長からは、今回の産業医面談で「できればB従業員が復職できないよう、意見してほしい」と言われました。考え方:職場復帰の可否は、最終的には使用者(事業者)が決定するものですが、産業医がどのような意見を述べたのかは、企業の判断において重要な点となります。産業医として勤務していると、今回の例ほど強い要求でなくとも、似たような例に遭遇することがあります。どのような事例でも必要なのは、中立的かつ独立的な立場から客観的に意見を述べるスタンスです。それを踏まえたうえで以下の2つの点から考えます。1)職場復帰判断には、事前情報が重要産業医の立場から、客観的かつ合理的な判断をするためには、職場復帰前から現在に至るまでの情報が必要です。休職期間の満了間際になって慌てて産業医面談を始めるのでは、その情報をほとんど聴取することができません。休職期間中から定期的に休職者と産業医面談を行う、リワークに通所を依頼する、通勤訓練や試し勤務を行う、等の方法によって適切な情報を事前に収集しておく必要があります。産業医が説得力のある医学的判断を行うためには、こうした事前情報が不可欠です。つまり、復職時の産業医面談のみで判断せざるを得ない場合は、事前情報が不足している可能性が高いのです。その場合、明らかな心身の不調が認められない限り、職場復帰可能と判断するのが妥当と考えます。2)休職期間の残期間も考慮する職場復帰の際には、休まずに出社できればよいだけではなく、休職前の職位に相当する業務ができることが必要です。しかし、過去の裁判例では、休職満了時の際には、「回復が当該労働者の本来業務に就く程度には回復していなくても、当初は軽易な業務に就かせれば、程なく従前の業務を行える程度に回復する」と見込まれる場合には、職場復帰させるべきと考えられています。「どの程度の軽減業務で、どの程度の期間行うべき」であるかは明確にはなっていませんが、「従前の半分程度で、半年程度の期間」と示した主治医見解を、「当初は軽易な業務に就かせれば、程なく従前の業務を行える程度に回復すると予測できる場合とは解されない」とした裁判例(独立行政法人N事件)もあります。産業医面談において、従前の業務ができるほどに回復していないと判断した場合、休職期間に残りがあれば、企業は復職を認めずに従前の業務ができるほどに回復を待つことが妥当です。休職満了が迫るタイミングでは、企業は本人の同意を得て、主治医に情報提供を依頼し、改めて主治医が復職可能と判断した根拠と、軽減勤務を必要とする場合の条件を聴取する必要があるでしょう。「その理由を第三者にも合理的に説明できるか」を考える職場復帰における産業医の意見は、企業の判断の根拠となる材料です。職場復帰の判断は、復職面談に至るまでの事前の情報が重要であり、職場復帰が困難であることを判断する十分な根拠がない場合は、企業は復職を認めることが原則と考えます。仮に産業医が主治医と異なる意見を出すときには上記に示したことを基に、「復職できないと判断した根拠を、第三者にも客観的かつ合理的に説明できるか」を意識するとよいでしょう。企業が復職を望まない場合には、従業員のパフォーマンスやスキル不足が背景にあることがあります。それが問題となっている場合は、企業が職場復帰後にOJTや指導を通じて、改善を求めるのが妥当でしょう。産業医が本来負うべきでない(果たすことができない)責任を負わないよう、使用者の責任と産業医の責任の範囲を整理することも重要です。

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英語で「検査結果が出る」は?【1分★医療英語】第122回

第122回 英語で「検査結果が出る」は?《例文1》医師The result should come back in 10 minutes.(検査結果は10分で出るはずです)患者Okay. I will wait here.(では、ここで待ちます)《例文2》患者Did the CT scan result come back?(CTの結果は出ましたか?)医師Let me check.(確認します)《解説》「検査結果が出る」という表現には、“come back”を使います。主に血液検査に対して使われることが多いのですが、他の検査についても使用することができ、汎用性の高い表現だといえます。血液検査検体を中央検査室に送り、その結果がカルテに「帰ってくる」ために“come back”という言い方になっているのでしょう。病院では日常的に使われており、かつ簡単な表現なので、ぜひ身に付けてください。講師紹介

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短時間での投与が可能なHER2陽性乳がん・大腸がん治療薬「フェスゴ配合皮下注MA/同IN」【最新!DI情報】第11回

短時間での投与が可能なHER2陽性乳がん・大腸がん治療薬「フェスゴ配合皮下注MA/同IN」今回は、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体・ヒアルロン酸分解酵素配合薬「ペルツズマブ(遺伝子組換え)・トラスツズマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)(商品名:フェスゴ配合皮下注MA/同IN、製造販売元:中外製薬)」を紹介します。本剤は、HER2陽性の乳がんおよび大腸がんの配合皮下注射薬です。従来の静脈注射は60~150分かけて投与するのに対し、本剤では5~8分以上で投与可能であり、患者・医療施設双方の負担が軽減することが期待されています。<効能・効果>HER2陽性の乳がん、がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がんの適応で、2023年9月25日に製造販売承認を取得し、同年11月22日より販売されています。<用法・用量>通常、成人に対して1日1回、ペルツズマブ(遺伝子組換え)/トラスツズマブ(遺伝子組換え)/ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として初回投与時にはそれぞれ1,200mg/600mg/30,000Uを、2回目以降はそれぞれ600mg/600mg/20,000Uを、初回投与時には8分以上、2回目以降は5分以上かけて3週間間隔で皮下投与します。HER2陽性の乳がんに対しては他の抗悪性腫瘍剤との併用において投与し、術前・術後薬物療法の場合は投与期間は12ヵ月までとなります。<安全性>重大な副作用として、Infusion reaction(4.0%)、心機能障害(3.6%)、過敏症、間質性肺疾患(各0.8%)、肝障害、敗血症(各0.4%)などが報告されています。その他の主な副作用には、下痢(30.7%)、注射部位反応(14.1%)、発疹、疲労(各5%以上)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬に含まれるペルツズマブおよびトラスツズマブは、HER2というタンパク質の動きを抑えることによりがん細胞の増殖を抑えます。2.この薬の投与により、心臓の機能が低下することが報告されていますので、定期的に心臓の検査を受けてください。3.妊婦または妊娠している可能性がある人はこの薬を使用することはできません。妊娠する可能性がある人は、この薬を使用している間および使用を中止・終了してから7ヵ月間は適切な方法で避妊してください。<ここがポイント!>本剤は、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体であるペルツズマブおよびトラスツズマブとボルヒアルロニダーゼ アルファを配合した抗悪性腫瘍薬です。ペルツズマブはHER2細胞外領域のドメインIIに、トラスツズマブは細胞膜近接部位のドメインIVに結合し、異なる経路から包括的にHER2シグナルを遮断し、腫瘍細胞増殖の抑制やアポトーシスを誘導すると考えられています。一方、ボルヒアルロニダーゼ アルファは、結合組織におけるヒアルロン酸を加水分解することにより、薬剤注入時の抵抗を減少させて薬物の体内浸透や拡散を促進させる作用があります。これまで、ペルツズマブおよびトラスツズマブを点滴静注するには60~90分以上の投与時間が必要でしたが、本剤は初回が8分以上、2回目以降は5分以上と短時間での投与が可能となりました。なお、ボルヒアルロニダーゼ アルファが配合された医薬品には、多発性骨髄腫および全身性ALアミロイドーシスに適応を持つダラツムマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)(商品名:ダラキューロ配合皮下注)が2021年5月から販売されています。HER2陽性の早期乳がん患者を対象とした国際共同第III相臨床試験(FeDeriCa試験)において、サイクル7(サイクル8投与前)でのペルツズマブ血清中トラフ濃度が主要評価項目として検討されました。ペルツズマブ+トラスツズマブ(IV)群に対する本剤群のペルツズマブ血清中トラフ濃度の幾何平均値の比(GMR)は1.22(90%信頼区間[CI]:1.14~1.31)であり、信頼区間の下限値が非劣性マージンの0.8を上回ったので、フェスゴ群の非劣性が検証されました。また、副次的評価項目である全病理的完全奏効率は、本剤群が59.7%(95%CI:53.3〜65.8)、ペルツズマブ+トラスツズマブ(IV)群が59.5%(95%CI:53.2〜65.6)であり、その差は0.2%(95%CI:-8.7〜9.0)で同等でした。

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どうすればわかりやすく話せる?【もったいない患者対応】第1回

どうすればわかりやすく話せる?登場人物患者さんにうまく病状説明ができなくて困ってるんです。先日も「先生の話がわかりにくい」と患者さんに言われてしまって…。唐廻先生は、患者さんへの説明でどんなことを意識してるのかな?できるだけ簡単な言葉を使う…とかですかね?それはもちろん大事だね。でも、いくら言葉が簡単でも、情報がきちんと整理されていないと、聞き手には伝わりにくいんだ。なるほど…。僕のおすすめは、ポイントが何個あるかを最初に示すことだよ。僕はこのことを「アウトラインの提示」や「目次をつける」と呼んでいるよ。アウトラインの提示とは?私が患者さんに病状説明をするとき、最も大切にしているのが、最初に「何をどんな順番で話すか」を伝えることです。たとえば、検査結果を患者さんに説明するときを想像してみてください。私はまず、「○○さんに受けていただいた3つの検査の結果について、いまから説明します。1つ目は血液検査、2つ目はCT検査、3つ目はMRI検査の結果です。よろしいですか?」とお話しします。この時点で患者さんの頭の中には、(1)血液検査(2)CT検査(3)MRI検査という目次が浮かび上がります。そして、「まず、血液検査ですが…」「次に、CT検査ですが…」と順に話し始めると、患者さんは「あと残るはMRIだな」と認識することができ、いま話のフローのどこにいるのかを把握することができます。このアウトラインの提示がないままに、「○○さん、血液検査の結果は△△でした。次にCTの結果は××でした。それからMRIの結果ですが…」と話し始めると、聞くべき項目がいくつあって、いつまで話が続くのかがわからず、理解が追いつかなくなります。医師に一方的に話をされて、途中で疑問点が思い浮かんでも話を切りにくい、と感じている患者さんは多くいます。もちろん、医師が威圧的で、なんとなく質問しにくい雰囲気があるケースもあるかもしれませんが、何よりどこが話の切れ目かわからないのが大きな理由でしょう。アウトラインを提示しておき、話の切れ目にあたるところで、「ここまでは大丈夫ですか?」と質問を受け付けて、そこまでの話をいったん整理するのも大切です。検査結果以外でも使えるこの「アウトラインの提示」は、検査結果を患者さんに説明するときだけでなく、あらゆるシチュエーションで使えます。たとえば、「○○さん、検査の結果ですが、がんが再発しているようです。私たちがそう考える理由は3つあります。まず1つ目が……」というふうに伝えることで、患者さんは「何がどんな順番で話されるのか」に関して、頭の準備をすることができます。ほかにも、頭部打撲の患者さんに経過観察の方針を告げる際には、「○○さん、いまから24時間は慎重に様子をみてください。『どんなことがあったらもう一度受診してほしいか』ですが…」というような形で、あえて数字を示さなくても(あるいは伝えるべきことが1つしかなくても)、「いまから何を話すのか」をまず伝えるのが得策です。あえてこう書くのは、日本語の構造上、何も意識しないと結論が最後に来てしまうからです。前述の例で言えば、「○○と、△△と、××があったときはもう一度受診してください」と言ってしまうと、聞き手としては、途中まで「何を意図して話しているのか」がわからないまま話を聞かなくてはならなくなってしまいます。「アウトラインの提示」を意識するだけで、話は随分伝わりやすくなります。ぜひ試してみてください。

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第206回 脂肪肝疾患(NASH/MASH)治療薬を米国FDAが初承認

脂肪肝疾患(NASH/MASH)治療薬を米国FDAが初承認米国FDAが3月14日に非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)治療薬を初めて承認しました1,2)。米国のMadrigal Pharmaceuticals社が開発したresmetirom(商品名:Rezdiffra)が、第III相試験(MAESTRO-NASH)の1年時点の肝生検結果を基に取り急ぎ承認(Accelerated approval)されました。resmetiromは1日1回の経口服用薬で、NASH患者の肝臓で不調となる甲状腺ホルモン受容体β(THR-β)のアゴニストです。resmetiromが担うTHR-β活性化は肝臓のトリグリセリド(中性脂肪)を減らすことが知られています。第I相試験の段階でresmetiromは健康な被験者のトリグリセリドを多ければ60%低下させました3)。米国でおよそ150万例もが患うNASHは、昨年に世界の肝疾患専門家や患者団体が集まって決めた病名であるMASH(metabolic dysfunction associated steatohepatitis)に改められました2)。とはいえFDAは引き続きNASHを採用しており、resmetiromの添付文書の効能・効果は肝線維化が中等度~高度(肝線維化ステージF2-3)であるものの肝硬変ではないNASH患者に対して、食事療法や運動療法とともに同剤を投与することとなっています(以下FDAに倣ってNASHを使用)。難儀な肝生検は幸いにもその使用に際して必要ありません。MAESTRO-NASH試験で病理学者2人(病理学者AとB)が生検組織を検討した結果によると、肝線維化F2-3の非肝硬変NASH患者の1年間のresmetirom経口服用で、少なくとも4例に1例ほどが肝線維症の改善や脂肪性肝炎の消失を達成できるようです。詳しい結果は以下のとおりです4)。画像を拡大するresmetiromは含量60mg、80mg、100mgの3つの錠剤が承認され、80mg錠は体重が100kg未満の患者、100mg錠は体重が100kg以上の患者向けとなっています。クロピドグレルなどの若干のCYP2C8阻害作用を有する薬剤と併用する場合には減量が必要で、その場合体重100kg未満の患者は60mg錠、体重100kg以上の患者は80mg錠を服用します。強力なCYP2C8阻害薬との併用はできません。resmetiromの1年間分の薬価は4万7,400ドル(700万円強)で5)、同剤の最大年間売上は50億ドルを超えうるとアナリストの1人は予想しています6)。その達成のためには、進行中のMAESTRO-NASH試験の最長54ヵ月のresmetirom治療が死亡、肝移植、重大な肝イベント(腹水、脳症、胃食道静脈瘤出血を含む肝代償不全、肝硬変への進展、MELDスコア上昇)をプラセボに比べて減らすことを示して、取り急ぎの承認を本承認にする必要があるでしょう。その本勝負の結果はClinicalTrials.gov登録情報によると約4年後の2028年1月に判明します7)。肝硬変をすでに患うNASH患者の死亡、肝臓移植、腹水、脳症、胃食道静脈瘤出血、MELDスコア上昇がresmetiromで減ることを示すための第III相試験(MAESTRO-NASH-OUTCOMES)も進行中で、その結果は来年2025年8月に判明する見込みです8)。参考1)FDA Approves First Treatment for Patients with Liver Scarring Due to Fatty Liver Disease / PRNewswire2)Madrigal Pharmaceuticals Announces FDA Approval of Rezdiffra (resmetirom) for the Treatment of Patients with Noncirrhotic Nonalcoholic Steatohepatitis (NASH) with Moderate to Advanced Liver Fibrosis / GlobeNewswire3)Taub R, et al. Atherosclerosis. 2013;230:373-380.4)Prescribing Information:Rezdiffra5)Rezdiffra (resmetirom) FDA Approval Conference Call March 2024 / Madrigal Pharmaceuticals6)US FDA approves first drug for fatty liver disease NASH / Reuters7)MAESTRO-NASH試験(ClinicaltTrials.gov)8)MAESTRO-NASH-OUTCOMES試験(ClinicaltTrials.gov)

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高齢者の身体活動量、推奨値を変更/厚労省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」

 厚生労働省は健康・医療・介護分野における身体活動を支援する関係者を対象として、身体活動・運動に関する推奨事項や参考情報をまとめた「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」を2024年1月に公表した。「健康づくりのための身体活動基準 2013」から10年ぶりの改訂となる。同ガイドの改訂に関する検討会で座長を務めた中島 康晴氏(九州大学大学院医学研究院整形外科 教授)に主な改訂点とその背景について話を聞いた。年齢や疾患の有無などに応じ、身体活動の推奨事項をそれぞれ提示 今回の改訂では、「健康日本21(第三次)」のビジョン1)の中で示されている「誰一人取り残さない健康づくり(inclusion)」ならびに「より実効性をもつ取組の推進(implementation)」の観点から、ライフステージごと(成人、こども、高齢者)に身体活動・運動に関する推奨事項をまとめるとともに、「慢性疾患(高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、変形性膝関節症)を有する人の身体活動のポイント」「働く人が職場で活動的に過ごすためのポイント」など個人差を踏まえた推奨事項を示している点が大きな特徴。それぞれ2~4ページごとにまとめられており、指導の際のツールとしての使いやすさを考慮して作成されている。中島氏は、「年齢・性別・疾患の有無などに応じて、多くの人が当てはまるように場合分けをして、わかりやすく推奨事項を示すことが今回の改訂の大きなテーマ」とした。高齢者の推奨身体活動量を週10メッツから15メッツに変更 高齢者の身体活動量の推奨値は、2013年版では「強度を問わず身体活動を週10メッツ・時」とされていたが、「強度が3メッツ以上の身体活動を週15メッツ・時以上」に変更された。これは今回の改訂にあたって実施されたアンブレラレビューの結果(強度が3メッツ以上の身体活動を週15メッツ・時以上行う高齢者は、身体活動をほとんど行わない高齢者と比べて総死亡および心血管疾患死亡のリスクが約30%程度低下)や高齢者の現状の身体活動量に基づく。 そのほか高齢者への推奨事項に関しては、今回から「多要素の運動」という言葉が用いられ、その具体例や科学的根拠なども示されている。成人は1日約8,000歩以上、高齢者は約6,000歩以上を推奨 推奨の身体活動量についてメッツだけでなく相当する歩数をそれぞれ示したことも2023年版の大きな特徴となっている。これについて中島氏は、「わかりやすさはもちろん、近年多くの研究で歩数と疾患の関係が示されており、運動器そのものの機能も歩くことによって改善することが明らかになっている」と説明。また、座位行動という言葉が初めて用いられ、成人・高齢者ともに「座位行動(座りっぱなし)の時間が長くなりすぎないように注意する(立位困難な人も、じっとしている時間が長くなりすぎないよう、少しでも身体を動かす)」と明記された。 成人・高齢者それぞれの主な推奨事項は以下のとおり:[成人]・強度が3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時以上行う。具体的には、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上行う(1日約8,000歩以上に相当)・強度が3メッツ以上の運動を週4メッツ・時以上行う。具体的には、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上行う・筋力トレーニングを週2~3日行う(週4メッツ・時の運動に含めてもよい)[高齢者]・強度が3メッツ以上の身体活動を週15メッツ・時以上行う。具体的には、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日40分以上行う(1日約6,000歩以上に相当)・筋力・バランス・柔軟性など多要素な運動を週3日以上行う・筋力トレーニングを週2~3日行う(多要素な運動に含めてもよい) 中島氏は、「たとえば成人の1日約8,000歩以上というのは決して簡単な数字ではなく、かなり意識しないと達成できない。ガイドにも明記されているように、個人差を踏まえて可能なものから取り組み、今より少しでも多く身体を動かすことを意識してほしい」と話した。また小児については、WHOの「身体活動及び座位行動に関するガイドライン(2020年)」2)では具体的な数値が示されているものの、日本の子供たちの現状としては身体活動を全然行っていない場合と行っている場合に大きく二極化していることから、本ガイドでは参考値として示している。実臨床での運動指導を“より具体的に”行うために 本ガイドでは「身体活動・運動を安全に行うためのポイント」として、運動前の注意事項、症状の把握やリスク分類、身体活動の状況の評価が3つのステップに分けて解説されており、実臨床で運動指導を行う際にも活用できるチェックシートが掲載されている。中島氏は、「患者さんに“運動してください”と言っても、それだけで実行に移してもらうことは難しい。具体的に何をどのくらいどこまでやったらいいのか、注意点は何なのかを伝えることが重要。その際の参考に、今回のガイドをぜひ活用していただきたい」と話した。

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早期アルツハイマー病における攻撃的行動と関連する脳の変化

 認知症患者の精神神経症状は、介護者の負担につながり、患者の予後を悪化させる。これまで多くの神経画像研究が行われているものの、精神神経症状の病因学は依然として複雑である。東京慈恵会医科大学の亀山 洋氏らは、脳の構造的非対称性が精神神経症状の発現に影響している可能性があると仮説を立て、本研究を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2024年2月23日号の報告。 アルツハイマー病患者における精神神経症状と脳の非対称性との関連を調査した。対象は、軽度のアルツハイマー病患者121例。日本の多施設共同データベースより、人口統計学的データおよびMRIのデータを収集した。脳の非対称性は、左脳と右脳の灰白質体積を比較することで評価した。精神神経症状の評価には、Neuropsychiatric Inventory(NPI)を用いた。その後、脳の非対称性と精神神経症状との相関関係を包括的に評価した。 主な結果は以下のとおり。・攻撃的な精神神経症状は、前頭葉の非対称性と有意な相関を示しており、右側の萎縮が認められた(r=0.235、p=0.009)。・この相関は、多重比較の調整後も統計学的に有意なままであった(p<0.01)。・事後分析において、この関連性はさらに確認された(p<0.05)。・対照的に、感情症状や無関心を含む他の精神神経症状のサブタイプについては、有意な相関が認められなかった。 著者らは「前頭葉の非対称性、とくに右側の相対的な萎縮が、早期アルツハイマー病における攻撃的行動と関連している可能性が示唆された」としている。

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深刻化が懸念される抗がん剤のドラッグ・ロスについて議論/日本臨床腫瘍学会

 日本の医療界にとって深刻な課題となりえるドラッグ・ロス。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)では、会長企画シンポジウムとして取り上げられ、各方面の専門家による議論が交わされた。新興バイオファーマ(EBP)に知られていない日本の医療環境と開発環境 国立がん研究センター中央病院先端医療科長の山本 昇氏は、ドラッグ・ロス解消を目的に欧米のEBPと交渉した体験談を交え発表した。 EBPとの交渉では、薬価制度に対する苦言はなかったものの、日本の医療環境や開発環境は知られていないことが明らかになった。開発対象の患者数がわからず、日本で薬を開発したらどれだけ売れるかイメージできていない。日本のがん統計データは日本語表記という問題がある。それだけでなく、EBPが求めるのは特定の遺伝子異常のがん患者数など、現状のがん統計データよりも細かい情報である。一方、日本は承認されると一定期間内に必ず保険償還されるという特徴は好感触であった。 ドラッグ・ロス解消には産官学での取り組みが重要である。 薬価対策や薬事申請方法など、産官のアクションは始まっているが、医療機関の取り組みが遅れている。国際共同試験に耐える施設、迅速な症例登録など、日本の治験実施体制を底上げして治験にコミットできる体制作りが必要だろう。日本の新薬開発環境、市場の魅力をEBPに伝える 医薬品医療機器総合機構(PMDA)の藤原 康弘氏はPMDAのドラッグ・ロス解消に向けた取り組みについて紹介した。 ドラッグ・ロス解消に向け、2023年7月に政府も昨年の骨太の方針の中でさまざまな政策を提示し、厚生労働省も「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」を設置して必要な対応等が検討されてきた。国際共同治験における日本人PhaseIの必要性については、文章記載を変え、英文でも明示して理解を促している。薬価については、迅速導入加算や外国平均価格調整など企業にとって福音になる方向性が中医協から示されている。 一方で日本の薬事制度や日本の医療機関の現状が海外のEBPやベンチャーキャピタルなどに伝わっていないことが懸念される。 日本の薬事制度を英語でかつリアルタイムに海外に発信していくことが最も重要だと考えられる。 PMDAとしては、アジア圏を中心とした参照国制度(治験の簡略化や迅速な承認を実現する仕組みなど海外と結んでいる協定)のさらなる活用促進、有名英文学術雑誌への掲載・投稿、欧米審査機関とのさらなる連携、アジアや米国への支局設置による各国の情報収集および規制当局やベンチャーキャピタルへの情報伝達、といった取り組みを検討中である。 医薬品開発業務受託機関(CRO)の視点からはシミックホールディングスの奥田 晃義氏が発表した。 日本におけるグローバル治験は年々増加している。2012年は30%だったグローバル治験の割合が2022年には55%となった。増えているとはいえ、アジア諸国の中で見ると、その割合はかなり低い。グローバル治験の対象国を見ると、日本が含まれていない治験は61%にのぼる。2023年FDAで承認された抗がん剤16剤のうち日本で承認されたのは2剤、審査中・開発中が9剤、まったくアクションなしが5剤ある。その5剤はすべてEBPの薬剤だ。 近年、抗がん剤の開発企業はEBPに移行している。EBPにとって日本の新薬環境、市場の利点は知られておらず誤解もある。改善のためには、日本の新薬開発環境、市場の魅力を伝え、ビジネスチャンスが生まれることをアピールする必要がある。 日本CRO協会はドラッグ・ロス検討会を設け、日本の治験の魅力を海外に発信する取り組みを行っている。また、多くのショーケースや海外学会でのミーティング活動などを通して、日本での開発の打診を続けてきている。さらに、グローバルCROとのパートナーシップを構築していく。日本の責任企業を増やす環境を作る必要性 米国アステラス製薬の廣橋 朋子氏は、新薬開発におけるドラッグ・ロスと日本の取るべき対応策について、海外グローバル企業からの意見を発表した。 日本の臨床開発手法はここ20年で大きく変わってきた。以前は国内フル開発だったが、現在では日本PhaseIストラテジーと国際共同治験への参加が標準的な開発手法となっている。これによりドラッグ・ラグは解消されたと考えていたが、欧米の開発スピードの加速化、 創薬研究の多様化によって新たなドラッグ・ラグ/ロスが生じている。 製薬研究の多様化の1つに、ビジネスディベロップメント(BD)の多様化が挙げられる。 多くの新薬は欧米ベンチャー企業が創出し、有効性を確認後BDを通して開発が進められる。 このBDは、グローバル企業がバイオテック企業を合併・買収、または共同開発によって世界展開する「グローバル型」と、各地域の開発・販売権を得た企業各々が展開する「テリトリー型」に分類される。とくにテリトリー型は今後増えていく可能性が高いと考えられる。この場合、日本の責任企業が不在となることがあり、その場合はドラッグ・ロスは避けられなくなる。 これらの問題を解決するには、より多くの企業が日本の責任企業となれる環境を作ることが急務である。そのためには、グローバル企業の日本支社をはじめとした企業の努力、日本における創薬ビジネスの活性化が必要となる。また、ピボダル試験前にグローバルFIH(First-in-Human)試験で日本人の安全性評価ができるような計画も有効であろう。欧米諸国のバイオテック企業がグローバルFIHへの日本の参加を検討・実施しやすい環境を作ることで、グローバル型、テリトリー型いずれの場合もドラッグ・ラグ/ロスを改善できる可能性がある。

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未治療尿路上皮がん、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブがOS・PFS改善(EV-302/KEYNOTE-A39)/NEJM

 局所進行または転移を有する尿路上皮がん患者の1次治療において、エンホルツマブ ベドチン(nectin-4に対する抗体薬物複合体)とペムブロリズマブ(PD-1阻害薬)の併用は化学療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が有意に延長し、臨床的に意義のある有益性を示し、安全性プロファイルは既報と一致することが、英国・Queen Mary University of LondonのThomas Powles氏らが実施した「EV-302試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年3月7日号に掲載された。25ヵ国の無作為化第III相試験 EV-302試験は、未治療の局所進行または転移性尿路上皮がんにおけるエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ併用療法の有効性と安全性の評価を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、日本を含む25ヵ国185施設で参加者を募集した(Astellas Pharma USなどの助成を受けた)。 前治療歴のない成人患者を、3週を1サイクルとして、エンホルツマブ ベドチン(1.25mg/kg体重、1および8日目に静脈内投与)+ペムブロリズマブ(200mg、1日目に静脈内投与)を投与する群、または3週を1サイクルとして、ゲムシタビン+シスプラチン(シスプラチンが不適応の場合はゲムシタビン+カルボプラチン)を投与する群に、無作為に割り付けた。 主要評価項目はPFSとOSであり、独立中央判定委員会が盲検下に評価した。 886例(年齢中央値69歳[範囲:22~91]、男性76.7%)を登録し、442例をエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群、444例を化学療法群に割り付けた。生存の追跡期間中央値は17.2ヵ月だった。シスプラチン不適応例、適応例の双方で高い有益性 PFS中央値は、化学療法群が6.3ヵ月であったのに対し、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群は12.5ヵ月と有意に優れた(病勢進行と死亡のハザード比[HR]:0.45、95%信頼区間[CI]:0.38~0.54、p<0.001)。 また、OS中央値は、化学療法群の16.1ヵ月と比較して、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群は31.5ヵ月であり有意に良好だった(死亡のHR:0.47、95%CI:0.38~0.58、p<0.001)。 シスプラチン不適応例および適応例のいずれとの比較においても、PFS中央値およびOS中央値は、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群で優れた。 全奏効率もエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群で良好で(67.7% vs.44.4%、p<0.001)、また完全奏効率も同群で高かった(29.1% vs.12.5%)。一方、疼痛進行までの期間(患者報告アウトカム)には差を認めなかった(14.2ヵ月 vs.10.0ヵ月、p=0.48)。投与サイクル数は多いが、Grade3以上の有害事象は少ない 投与サイクル数中央値は、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群が12回(範囲:1~46)、化学療法群は6回(1~6)であったが、この間に発現したGrade3以上の治療関連有害事象は前者のほうが少なかった(55.9% vs.69.5%)。エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群で頻度の高かったGrade3以上の治療関連有害事象は、斑状丘疹状皮疹(7.7%)、高血糖(5.0%)、好中球数減少(4.8%)だった。 著者は、「エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ群の有益性は、肝転移の有無、シスプラチンの適格性、PD-L1の発現状態などの事前に規定されたサブグループのすべてで認めた」とまとめるとともに、「疼痛進行までの期間の延長などの所見が、患者に及ぼす影響を明らかにするためには、より詳細な患者報告アウトカムの解析が求められる」としている。

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ソーシャルワーカーの介入、HIV患者の退院後の受診改善/JAMA

 入院中のHIV感染患者への介入として、強化された標準ケアと比較して、退院後のHIVクリニックへの受診を促す連携型の患者管理(linkage case management)による介入は、退院後の死亡率を改善しないものの、受診までの期間を短縮し、抗レトロウイルス療法(ART)のアドヒアランスやウイルス量が抑制された患者の割合を改善することが、米国・Weill Cornell MedicineのRobert N. Peck氏らが実施した「Daraja試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年3月6日号で報告された。タンザニア20施設の無作為化試験 本研究は、HIVケアへの参加の障壁に対処するようにデザインされた連携型患者管理介入(Darajaと呼ばれる)が、タンザニアのHIV感染患者の退院後のアウトカムを改善できるか否かの検証を目的とする単盲検無作為化試験であり、2019年3月~2022年2月に同国北西部の20施設で参加者を募集した(米国国立精神保健研究所[NIMH]などの助成を受けた)。 ARTを受けていない、もしくは中止し、何らかの理由で入院したHIV感染患者500例(平均年齢37歳、女性76.8%)を登録し、Daraja介入を受ける群に250例、強化標準ケアを受ける群に250例を無作為化に割り付け、12ヵ月間追跡した。 Daraja介入群は3ヵ月間にわたり、ソーシャルワーカーによる最大5回の研修を病院、自宅、HIVクリニックで受けた。強化標準ケア群は、退院前にHIVカウンセリングとHIVクリニックの予約の仕方に関する支援を受けた。ART開始までの期間、受診の継続率も改善、介入関連の有害事象は発現せず 175例(35.0%)がCD4細胞数<100/μLで、402例(80.4%)はARTによる治療歴がなく、98例(19.6%)はARTを中止した患者であった。 12ヵ月後までに85例(17.0%)が死亡した(介入群43例、強化標準ケア群42例)。12ヵ月時点の全死因死亡率(主要アウトカム)は両群間に差を認めなかった(介入群17.2% vs.強化標準ケア群16.8%、ハザード比[HR]:1.01、95%信頼区間[CI]:0.66~1.55、p=0.96)。 一方、介入群は強化標準ケア群に比べ、初回のHIVクリニック受診までの期間(HR:1.50、95%CI:1.24~1.82、p<0.001)、ART開始までの期間(1.56、1.28~1.89、p<0.001)が有意に短縮した。 また、12ヵ月時のHIVクリニック受診の継続率(87.4% vs.76.3%、p=0.005)、ARTのアドヒアランス(81.1% vs.67.6%、p=0.002)、HIVのウイルス量抑制(HIV RNA<1,000コピー/μL)(78.6% vs.67.1%、p=0.01)の割合は、いずれも介入群で良好だった。 Daraja介入の1年間の平均費用は、立ち上げ費を含め1例当たり約22ドルであった。また、Daraja介入に関連した有害事象は認めなかった。 著者は、「低コストの患者管理介入により、HIVクリニックとの早期の連携とART開始が促進され、HIV患者の退院後の死亡率を低減できるとの仮説は確証できなかったが、退院後のHIVケアの継続を促すという効果が得られた」とまとめ、「これらの知見は、HIVの入院患者における連携型の患者管理に関して、その潜在的な役割を決定するのに役立つ可能性がある」としている。

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代替塩で高血圧予防

 食塩を代替塩に置き換えると、低血圧リスクを高めることなく高血圧リスクが約4割抑制されるとする研究結果が報告された。北京大学臨床研究所(中国)のYangfeng Wu氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に2月12日掲載された。 世界保健機関(WHO)によると、高血圧は心臓病発症と心血管死の主要な危険因子であり、世界中で14億人以上の成人が高血圧に罹患していて、毎年1080万人が高血圧に関連して死亡しているという。Wu氏は、「人々は手頃な価格で容易に入手できる加工食品を利用することを通して、塩分を過剰に摂取してしまうことが少なくない。食品の選択が心臓の健康に及ぼす影響を認識して、減塩に対する人々の意識を高めることが重要だ」と述べている。 Wu氏らは、中国の介護施設居住者を対象とする無作為化比較試験により、食塩を代替塩に替えることの血圧への影響を調査した。研究参加者は55歳以上で高血圧でない(140/90mmHg未満)611人(平均年齢71.4歳、女性26%、血圧121.9/74.4mmHg)。無作為に2群に分け、298人には通常の食塩を使った料理を提供し、313人には代替塩を使った料理を提供した。代替塩は、ナトリウム濃度が62.5%に抑えられていて、カリウムが25%を占め、残りの12.5%はキノコやレモン、海藻などを利用した香料で構成されていた。 2年間の追跡期間中の100人年当たりの高血圧発症率は、通常塩群では24.3であるのに対して代替塩群では11.7であり、交絡因子調整後のハザード比は0.60(95%信頼区間0.39~0.92)と、代替塩群で有意なリスク低下が観察された(P=0.02)。なお、高齢者では高血圧とは反対に、血圧が下がり過ぎてしまう危険な低血圧も起こりがちだが、代替塩群でそのような低血圧の増加は認められなかった〔リスク比1.10(95%信頼区間0.59~2.07)〕。Wu氏は、「われわれの研究結果は、人々が食事を楽しみながら血圧を高めることなく、自分の健康を守り心血管リスクを最小限に抑えられる方法を示している」と述べている。 アムステルダム大学医療センター(オランダ)のRik Olde Engberink氏が、この研究発表に対して付随論評を寄せている。その中で同氏は、「これまでのところ、人々に対して単に塩分摂取量を減らすことを訴えるだけの対策の効果は十分でないことが示されており、本研究の結果はそのような方法に代わる公衆衛生戦略となり得る」と述べている。また、本研究において介護施設で提供する食事への加工食品の利用が週に1回までに制限されていたことに着目し、加工食品に含まれるナトリウム量の削減が重要である可能性も指摘。「食品業界全体で代替塩を採用して、加工食品中のナトリウム/カリウム比を改善していくべきではないか」と付け加えている。

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脳卒中患者の手術前の頭位が手術成績に影響

 手術を待つ脳卒中患者の病床での頭位が、脳内の血栓を除去する手術の成績に影響する可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。脳主幹動脈閉塞(large vessel occlusion;LVO)による急性期脳梗塞を発症して手術を待つ患者では、病床で頭位を30度挙上させるよりも0度(水平仰臥位)にする方が、術前の安定性が増し、神経学的機能も改善し、術後の転帰も良好になる可能性が示されたのだ。米テネシー大学健康科学センター看護学および神経科学分野教授のAnne Alexandrov氏らによるこの研究結果は、国際脳卒中会議(ISC 2024、2月7〜9日、米フェニックス)で発表された。 LVOでは、閉塞の原因となっている血栓を取り除いて脳内の血流を改善する血栓回収療法が、死亡リスクや脳に恒久的なダメージが及ぶリスクを低下させることが知られている。しかし、LVO患者に対する血栓回収療法は、さまざまな理由で遅れがちである。そのため、手術を待っている間の患者の脳への血流を最適化することは、神経学的な障害や身体的な障害を最小限に抑えるために不可欠である。 血栓回収療法を待つ患者に対しては、病床で頭位を30度以下の角度で挙上させておくことが推奨されている。しかし、Alexandrov氏らによるパイロット研究では、水平仰臥位を保つことで狭窄/閉塞した動脈の血流が20%増加することが示されていた。 今回のランダム化比較試験では、LVO患者を対象に、血栓回収療法を受ける前の患者の頭位を水平仰臥位にした場合と30度に挙上させた場合との間で臨床的安定性と転帰を比較した。患者は水平仰臥位で神経画像検査を受けた直後に、NIHSS(国立衛生研究所脳卒中尺度、0〜42点で評価し、スコアが高いほど重症)での評価を受けた。その後は、ランダム化された頭位(0度または30度)を維持したまま、手術を受けるまで10分ごとにNIHSSの再測定を受けた。 米国の12カ所の包括的脳卒中センターから92人の患者が登録され、中間解析が行われた。その結果、水平仰臥位を保つことで手術前の安定性が増し、および/または臨床的改善が得られることが明らかになった。このような有効性は、データ安全性モニタリング委員会(DSMB)が患者の新規登録を早々に打ち切る決定を下したほど高いものであった。研究グループは、水平仰臥位を保つことが手術後の患者に何らかの利益をもたらすかどうかについても調べた。研究グループは、手術そのものに大きな予後改善効果があるため、水平仰臥位と30度挙上の頭位との間で予後に差が出ることを予想していなかったという。しかし、手術から24時間後と7日後の両時点で、水平仰臥位を保っていた患者は30度挙上の頭位を保っていた患者に比べて、神経学的障害が少ないことが明らかになった。 Alexandrov氏は、「手術から3カ月後までには、両群の間で転帰に差は認められなくなったが、退院時にリハビリテーションを必要とする神経学的障害が生じた患者の数を減らせたのは喜ばしい結果だ」と話している。その上で同氏は、「頭位保持は、脳卒中の治療法ではなく、手術前に脳機能を維持するための方法と考えるべきだ」と主張している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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スマートイヤリングで健康状態を追跡

 健康状態を把握するイヤリング型のウェアラブルデバイスThermal Earringの開発に関する研究成果が、米ワシントン大学(UW)ポール・G・アレン・スクール・オブ・コンピューター・サイエンス&エンジニアリングのQiuyue Shirley Xue氏らにより報告された。このイヤリングは、耳たぶの温度を継続的にモニタリングすることが可能であり、6人を対象にした小規模試験では、安静時の皮膚温の感知においてスマートウォッチよりも優れていることが示されたという。この研究結果は、「Proceedings of the ACM on Interactive Mobile Wearable and Ubiquitous Technologies」に1月12日掲載された。 Xue氏は、「私は健康管理のためにスマートウォッチを使っているが、多くの人がスマートウォッチはファッション性に欠け、かさばる上に着用感も良くないと感じていることに気が付いていた」と、スマートイヤリングの開発に至った背景を説明している。 「イヤリングにできるほど小さく、また頻回な充電を必要としない頑丈なウェアラブルデバイスを作ることは工学的な挑戦であった」と研究グループは振り返る。論文の共著者である米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のYujia Nancy Liu氏は、「通常、電力を長持ちさせたいのであればバッテリーを大きくしなければならないが、それではサイズが犠牲になってしまう。ワイヤレスにすることで消費電力も増える」と話す。 このような問題を乗り越えて作り出されたスマートイヤリングのプロトタイプは、縦31mm、横11.3mm、重さ335mgと、小さなペーパークリップと同等の大きさと重さで、バッテリーは28日間持つという。イヤリングには、耳に接する上部とその数センチ下の下部に、それぞれ耳たぶの体温を測定するセンサーと気温を測定するセンサーが搭載されている。下部にはBluetoothのチップとアンテナも内蔵されており、Bluetoothのアドバタイズ(Bluetooth機器がペアリング可能であることを伝える信号)を使用してスマートフォンなどのデバイスにデータを転送する。データの転送後、イヤリングは節電のためにディープスリープモードに入る。このイヤリングはまた、精度に影響を与えることなくレジンや宝石などで装飾することも可能だという。 研究グループは、このイヤリングを6人の人に着用してもらい、スマートウォッチによる測定結果と比較した。その結果、安静時の耳たぶの温度の最大標準偏差は、スマートイヤリングでは0.32℃、スマートウォッチでは0.72℃であり、前者の測定結果の方が安定していることが示唆された。 また、体温が37.8℃以上の発熱患者5人(ただし、1人は37.6℃)と平熱(37℃前後)の健康な対照者20人を対象に、室温が20〜22℃の類似した環境でスマートイヤリングによる体温測定を行った。その結果、耳たぶの温度は、発熱患者で平均35.62±1.8℃であったのに対し健康な人では29.7±0.74℃であり、スマートイヤリングを発熱患者のモニタリングに活用できる可能性も示唆された。このほか、スマートイヤリングは、食事、運動、ストレス、女性での排卵に関連した体温変化の検出にも優れていたという。 Xue氏は、「Apple WatchやFitbitのようなウェアラブルデバイスにも温度センサーが内蔵されているが、1日の平均体温しか分からない上に、手首や手の温度の測定値は排卵を追跡するにはノイズが多過ぎる。われわれは、イヤリング型のウェアラブルデバイスが、特に女性やファッションに関心のある人にとっても魅力的な選択肢となり得るかを見てみたかった」と説明している。 研究グループは、それぞれの潜在的な用途に適合するようにスマートイヤリングのアルゴリズムを訓練し、より広範なテストを行う予定である。Xue氏は、「将来的には、このイヤリングにより心拍数や活動量のモニタリングもできるようになるかもしれない」と話している。また、このイヤリングは、太陽エネルギーやイヤリングの振動により生じる運動エネルギーで駆動するようにできる可能性もあるという。

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第186回 65歳以上のコロナワクチン定期接種、自己負担は7,000円に/厚労省

<先週の動き>1.65歳以上のコロナワクチン定期接種、自己負担は7,000円に/厚労省2.医師国家試験合格者、7年連続9,000人超え/厚労省3.進む医師の働き方改革、診療体制の縮小が課題に/厚労省4.地域医療構想の加速化、国がモデル推進区域を選定/厚労省5.ゲノム医療に共同提言、エビデンスなき遺伝子検査ビジネスに警鐘/医学会・日医6.労組結成後のストライキ、医療法人が職員に莫大な損賠を請求/大阪1.65歳以上のコロナワクチン定期接種、自己負担は7,000円に/厚労省厚生労働省は、2024年度から65歳以上の高齢者を中心とした新型コロナウイルスワクチンの定期接種開始について、自己負担額が最大7,000円程度に設定することを発表した。これまで無料で提供されていたワクチン接種が、4月からは季節性インフルエンザワクチン同様、一部自己負担が必要な定期接種へと移行する。接種費用は、1回当たり約1万5,300円と見積もられ、このうち8,300円を国が市町村に助成し、残額を個人が負担する形となる。ただし、市町村による独自の補助がある場合、実際の自己負担額はこれより低くなる可能性がある。定期接種の対象は、65歳以上の高齢者と60~64歳で基礎疾患がある人に限られ、それ以外の人は任意接種として全額自費負担となるが、低所得者に対しては無料接種が継続される。厚労省は、新型コロナワクチンの価格が想定より3倍以上高額になることを受け、急激な自己負担額の増加を緩和するために追加助成を行うことを上記のように決定した。今後、新型コロナウイルスワクチンの接種は、年1回秋冬の接種となり、65歳未満で健康な人は4月以降、定期接種の対象ではなく任意接種の扱いとなるため、自己負担額は7,000円を超える見込み。参考1)コロナ定期接種、自己負担7,000円程度 24年度65歳以上(日経新聞)2)新型コロナワクチン、自己負担7,000円程度に 4月から国の助成で(毎日新聞)3)新型コロナ ワクチン定期接種の自己負担額 最大約7,000円で決定(NHK)4)コロナ定期接種、最大7千円負担 4月から65歳以上対象 厚労省(産経新聞)2.医師国家試験合格者、7年連続9,000人超え/厚労省2024年3月15日、厚生労働省は、2月に実施された第118回医師国家試験の結果を発表した。合格率は92.4%に達し、前年比0.8ポイント上昇、過去10年で最高を記録した。合格者数は9,547人で、7年連続で9,000人を超える結果となった。とくに、新卒者の合格率は95.4%で、全体の合格者数の中で9,048人を占めた。女性合格者は3,307人(全体の34.6%)、男性は6,240人で、男女別の合格率はそれぞれ91.7%、93.6%だった。学校別の合格率では、自治医科大学が新卒・既卒共に100%の合格率を達成し、このほか群馬大学医学部、名古屋大学医学部、東海大学医学部も新卒者の合格率が100%だった。ほかに高い合格率を示した学校では、国際医療福祉大医学部99.2%、兵庫医科大学99.1%、産業医科大学99.0%などがあった。合格基準については、必修問題の採点に一般問題を1問1点、臨床実地問題を1問3点とし、200点満点中160点以上が合格ラインとされた。また、一般問題と臨床実地問題はそれぞれ1問1点で、300点満点中230点以上が必要となった。今回の医師国家試験は、過去10年間で最も高い合格率を記録し、医療界への新たな人材の供給が期待されている。また、性別や大学別のデータは、今後の医療教育の改善や方針策定に役立つ貴重な情報となる。参考1)第118回医師国家試験の合格発表について(厚労省)2)医師試験9,547人合格 厚労省発表(東京新聞)3)医師国家試験、合格率92.4% 新卒の合格者は9千人を突破(CB news)4)第118回医師国家試験(2024年)合格発表…合格率92.4%(リセマム)5)医師国家試験2024、自治医科大学100%合格…学校別合格率(同)3.進む医師の働き方改革、診療体制の縮小が課題に/厚労省2024年4月の医師の働き方改革施行を控え、厚生労働省は、労働時間の上限規制に関する「C水準」の上限見直しを検討している。C水準は、研修医や高度な技能を目指す医師に適用される特例で、現在は年間1,860時間の上限が設けられている。厚労省は、医師の労働時間短縮推進と、地域医療の提供体制と働き方改革の関係に焦点を当て、具体的な対応策の検討を進めている。その一方で、「医療機関勤務環境評価センター」が受け付けた医師の労働時間短縮の取り組みに対する評価の申し込みは、想定を下回る483件に留まっている。これは、タスクシフトや労働基準監督署長による宿直許可取得など、働き方改革が進んだ結果とみられている。厚労省は、診療体制の縮小や派遣医師の引き揚げによる地域医療への影響を調査することで、改革の実施に伴う課題に対応していきたいとしている。また、全国約7,000医療機関を対象にした調査では、49医療機関で派遣医師の引き揚げによる診療体制の縮小が見込まれ、地域医療への影響が懸念されている。これに対し、厚労省は、地域医療の維持に向けた支援策を強化する方針。働き方改革の影響調査や都道府県との連携による医療機関の支援は、改革の進展に伴い重要性を増している。労働時間の短縮だけでなく、地域医療の維持と医師のスキルアップを両立させるための施策が求められ、これらの取り組みは、医師の働き方改革が単なる時間規制に留まらず、より質の高い医療サービスの提供と医師自身のキャリア発展を促す方向に進むことを示している。参考1)第19回医師の働き方改革の推進に関する検討会(厚労省)2)派遣医師の引き揚げで49施設が診療体制縮小の可能性-働き方改革準備状況調査(医事新報)3)医師の働き方改革“地域医療への影響調査を”厚労省検討会(NHK)4)医師働き方改革に向け都道府県-医療機関の連携深化、2024年4月以降も勤務医の労働環境・地域医療への影響を注視-医師働き方改革推進検討会(Gem Med)5)医師の時短評価受審申し込み483件、想定下回る 厚労省「働き方改革が進んだため」(CB news)6)C水準の上限見直し検討へ、厚労省方針 働き方改革推進の課題に「縮減のあり方」(同)7)診療体制縮小の見込み「あり」457カ所 医師の残業上限規制で、厚労省調査(同)4.地域医療構想の加速化、国がモデル推進区域を選定/厚労省厚生労働省は、3月13日に第8次医療計画等に関する検討会の分科会の地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループを開き、地域医療計画の進捗などについて討論した。第8次医療計画の策定に向けて、各都道府県に対して「推進区域」と「モデル推進区域」を指定し、支援を実施する方針を固めた。この後ワーキンググループでの了承を経て、厚労省は今後の詳細な計画を策定し、通知として各都道府県へ発出する予定。人口動態の変更を加味し、2次医療圏ごとに病床の必要量と実際の見込み病床数の乖離、医療提供体制の課題解決に向けた工程表作成など、地域ごとの取り組みには差がある。国は、これらの課題に対して「地域の医療提供体制の見える化」「都道府県が行うべき事項のチェックリスト作成」などの支援を提供することで、2025年の目標実現を促進する。とくに注目されるのは、地域医療構想の実現に向けた具体的な支援策。これには、地域別の病床機能などのデータの可視化、都道府県および医療機関の好事例の共有、地域医療介護総合確保基金などの支援策の活用方法の周知、都道府県や医療機関の取り組みを評価するチェックリストの作成と公表が含まれる。また、モデル推進区域では、伴走支援として技術的、財政的支援を実施する。この新方針に対する構成員からの意見も考慮され、推進区域やモデル推進区域の選定、医師働き方改革の影響の検討、ポスト地域医療構想に向けた準備など、今後の地域医療の提供体制構築に向けた課題と解決策が議論されている。参考1)第14回地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ(厚労省)2)地域医療構想実現に向けた取り組みはバラつき大、国が「推進区域、モデル推進区域」指定し支援実施-地域医療構想・医師確保計画WG(Gem Med)5.ゲノム医療に共同提言、エビデンスなき遺伝子検査ビジネスに警鐘/医学会・日医日本医学会と日本医師会は、3月13日共同で記者会見を開き、「ゲノム医療の推進に関する共同提言」を発表した。ゲノム研究の国際競争が激化する中、わが国の国家的な体制整備の遅れに対する危機感を表明し、オープンサイエンスの推進と大規模な基盤構築の必要性を強調している。また、ゲノム情報の取り扱いに関し、不当な差別を防ぐための罰則を含む法整備も求めた。2023年6月に公布されたゲノム医療推進法は、良質かつ適切なゲノム医療の提供を目的としている。日本医学会は142の分科会の意見を取り入れ、提言ではゲノム医療が医学・医療分野全体に関わる事項であることを強調、国家レベルでの大規模データ収集とその利活用の進め方、オープンサイエンスの理念の重要性を指摘している。また、ゲノム医療の推進が厚生労働省だけでなく、総務省、文部科学省、経済産業省など関連するすべての省庁にまたがる課題でもあるとしている。具体的な提案としては、ゲノム医療に関する特別法の制定、遺伝・ゲノムリテラシーの向上、遺伝子検査ビジネスの規制などが挙げられている。また、遺伝カウンセリング体制の充実やゲノム情報に基づく不利益や差別の防止に向けた罰則のある法律の策定も求められている。そして、提言では、ゲノム医療の安心・安全な提供とその推進に向けた国家的な取り組みの加速を促すもので、わが国が新たな科学立国としての地位を世界に示し、サイエンス分野での地位の維持と向上に直結するものであるとの視点から、具体的な行動計画の策定と実施が急務であると訴えている。参考1)ゲノム医療推進のため大規模な基盤構築を-日本医学会と日医が提言(医事新報)2)「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律」に関する提言について(日本医学会・日本医師会)6.労組結成後のストライキ、医療法人が職員に莫大な損賠を請求/大阪大阪地域合同労働組合は、大阪市で開かれた記者会見で、クリニックの待遇改善を求めてストライキを行った男性組合員とその労働組合に対し、運営する医療法人から約8,400万円の損害賠償を請求されたことを公表した。この訴訟提起は、組合活動を抑圧する目的で行われたスラップ訴訟(訴訟による嫌がらせ)に当たると主張し、「組合つぶしの意図が明らかで不当である」と非難している。被告の男性組合員は、大阪にある精神科「ブレインクリニック」の職員で、2022年10月に同僚らと合理性のない基本給の減給廃止、昇給制度廃止の撤廃などの待遇悪化および診療方針の改善を求めて労働組合を結成し、大阪地域合同労組に加盟した。しかし、団体交渉での応答がゼロだったため、2023年8~11月にかけて、大阪および名古屋で合計6回のストライキを実施した。また、原告のクリニックは、発達障害の専門外来として経頭蓋磁気刺激治療(TMS)などの保険適用外の自由診療を提供していることが明らかにされている。医療法人による損害賠償請求は、労働者の組合活動を支援する大阪地域合同労組によって強く反発されており、今後の展開が注目されている。参考1)医療法人がストに損賠提訴 8,400万円、組合側反発(中日新聞)2)発達障害外来、学会の指針逸脱 クリニックが高額治療(共同通信)

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便通異常症 慢性便秘(11)薬物療法:酸化マグネシウム【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q109

便通異常症 慢性便秘(11)薬物療法:酸化マグネシウムQ109浸透圧性下剤の1つである酸化マグネシウムは本邦で広く使われている。『便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症』において、本薬剤が使用禁忌・慎重投与と記載されている腎機能はどれくらいか。

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昭和医科大学医学部 外科学講座乳腺外科学部門【大学医局紹介~がん診療編】

林 直輝 氏(教授/診療科長)垂野 香苗 氏(准教授/診療科長補佐)成井 理加 氏(専攻医)講座の基本情報医局独自の取り組み、医師の育成方針当院のブレストセンターは、診察室、マンモグラフィ撮影室、超音波室、処置室、患者の集うリボンズハウスなどを1つのエリアに備え、患者中心の理想的な環境を提供しています。また、附属病院も含めて年間1,000件以上の手術を行う国内最大規模の、多くの若い力で活気に溢れた医局です。乳がん診療の発展と社会貢献のために、“乳がん診療の発展と社会に貢献できる視野の広い医師になる”、“良い臨床医になるためにScienceを理解する”を2つの柱として、臨床、研究、教育を進めています。臨床面での強み臨床面での当院の大きな強みは、国内でも早くから取り組んでいる遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)、MRIガイド下生検などです。さらに、乳がん診療における多方面からのde-escalationに取り組んでおり、手術の縮小を目指す臨床試験だけでなく、画期的な治療法である短期加速乳房照射「SAVI」を導入しています。これは通常約5週間かかる乳房部分切除後の照射を2~5日のみで完結するもので、time toxicityの新たな解決法になります。新しい技術を活用しながら、乳がん診療の進歩に貢献し、患者に最適な治療を提供するチームを目指します。医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力昭和医科大学乳腺外科の英語表記は、”Breast Surgical Oncology”です。乳がんに関わる周術期の治療のみではなく、診断から手術、再発転移までの治療を幅広く行う診療科です。また、HBOCなどの多診療科での連携した診療や昭和医科大学内のさまざまな研究所と連携した新薬の治験や臨床研究も多数行っております。また、ほかの診療科との連携も大学病院でありながらしやすい環境にあるのも魅力です。大学というバックグラウンドもあり、臨床と研究にバランスよく関われるのが当院の魅力であると思います。一般病院では難しい研究の支援も大学として、昭和医科大学統括研究推進センター(Showa Medical University Research Administration Center:SURAC)を中心に力を入れており、さまざまな支援を受けることができます。医局の雰囲気、魅力昭和医科大学の乳腺外科は、外科学講座を構成する一部門として、2010年に創設されたまだまだ歴史の浅い医局です。しかし、附属4病院(旗の台、豊洲、藤が丘、横浜市北部)、NTT東日本関東病院の乳腺外科を統括し、合わせて1,000件以上の乳がん手術を行っています。本部は、旗の台にある昭和医科大学附属病院で、日本で有数のブレストセンターがあります。昭和大学出身者が比較的多いですが、出身大学、初期研修病院などはさまざまです。また、途中入局の医師も多く在籍しており、異なるバックグラウンドの医師が在籍しております。女性医師も多く在籍しており、産休、育休の取得や時短勤務にも対応しております。また、毎朝のカンファレンスなどでの情報共有や、コミュニケーションの時間を重視しています。医学生/初期研修医へのメッセージ乳がん領域の診療は、画像診断、手術、薬物療法とさまざまな領域の発展が日進月歩です。将来的に何をどのように専門にしていくかは、医学生・初期研修医の段階で決めるのは難しいと思いますし、実際経験してみて自分の適性というものがわかることも多々あります。乳腺外科の分野でまず、幅広くいろいろなことを学び、自分の適性やビジョンを定めていくことをおすすめします。当科では、その点幅広い経験ができ、乳腺・乳がん診療に将来的に関わっていくうえで多岐にわたる経験を通じて、その後の進路を選択することができると思います。興味のある先生はぜひ一度見学にいらしてください。いつでも大歓迎です。毎朝行われるカンファレンスこれまでの経歴・同医局を選んだ理由2017年地方大学卒業後、初期研修は都内の他大学病院で1年目を大学、2年目を市中病院で研修を行いました。研修医のときに回った乳腺外科に興味を持ち、働きやすさとやりがいの両方から、乳腺外科への入局を考えるようになりました。同医局を選んだ理由としては大きく3つあります。1つ目は手術件数の多さです。私が入局を考えていた頃は新専門医制度が開始した直後であり、その制度もまだ不明な点も多く、大学病院など大きな病院での外科専門医取得を考えました。その中でも乳がん手術件数の多い当医局を入局先の候補として考え、実際に見学して入局を決定しました。2つ目は働きやすさです。見学した際に、他大学から入局されている先輩がいるかどうか、先輩方の雰囲気などを確認しました。当医局は、他大学や他研修先から入局する人も多く、上級医の先生方もほかの病院で勤務していた方が多いです。そのため外部からの入局者を歓迎している雰囲気があります。3つ目は早くから乳腺外科としての経験を多く積むことができることです。これに関しては、メリットデメリットどちらもあるかと思いますが、自分のやりたいことが決まっている方には、早くから乳腺外科の外来や手術などを経験できる点が良いと思います。現在学んでいること・今後のキャリアプラン現在私は医師7年目で、今年乳腺専門医を取得しました。3〜5年目は、外科プログラムに則り経験を積み、5年目頃からは乳腺外科を中心に診療を行っています。入局以降、上級医の先生にご指導いただき、毎年の学会発表や乳腺専門医の取得に必要な論文などを書かせていただきました。当医局では多くの症例と乳がん診療の経験豊富な先生方の指導のもと、専門医取得を行うことができます。専門医取得後のキャリアはさまざまです。自分のやりたいことがあれば、それを相談できる環境にあると思います。乳腺外科を考えられている方、ほかの科と乳腺外科とで迷われている方はぜひ一度見学にいらしてください。日本乳学会学術総会で昭和医科大学医学部 外科学講座乳腺外科学部門住所〒142-8555 東京都品川区旗の台1-5-8問い合わせ先breast.ikyoku@gmail.com医局ホームページ昭和医科大学病院乳腺外科昭和医科大学病院ブレストセンター専門医取得実績のある学会日本外科学会日本乳学会遺伝性腫瘍学会臨床腫瘍学会 など研修プログラムの特徴(1)乳がんの診断から手術、薬物療法と乳がんに関わる一連の治療をトータルで学ぶことができます。(2)放射線科、形成外科、産婦人科、遺伝診療部など多診療科に関わるチーム医療を学ぶことができます。(3)外科専門医、乳腺専門医の要件に十分な症例経験を積むことができます。

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【緊急寄稿】働き方改革、スタート目前!米国医師の働き方を変えた「10の仕組み」~第2回・スマホアプリ編~

第1回は米国病院の勤務体系についてご紹介しました。今回は米国と日本の臨床現場での大きな違いの1つとなっている、「スマホアプリ」がテーマです。多くの専用アプリが導入されており、業務の効率化や働き方改革に大きく貢献しています。今回は、その例をいくつかご紹介します。仕組み5:Haiku日本の電子カルテは富士通などが主流ですが、米国ではEpic Systemsの「Epic」という電子カルテシステムがシェアのトップを占めています。このEpicにはさまざまな便利機能が付いているのですが、一番大きな利点は「スマホで電子カルテを閲覧できる」ことです。スマホでは「Haiku」という名前のアプリで、由来はおそらく日本語の俳句から取ったものだと思うのですが、正確なところはよくわかりません。このアプリでは患者さんのカルテをどこでも閲覧可能で、業務効率が格段に上がります。血液検査データや画像検査の結果もアプリ上で閲覧できるため、検査データを確認するために電子カルテ用のパソコンを立ち上げる必要もなくなります。また、患者さんの皮膚所見など、カルテに取り込みたい画像がある場合には、アプリを立ち上げて患者さんを選択し、スマホで写真を撮影するだけで簡単に追加することができます。以前の日本の職場では、デジタルカメラで写真を撮り、USBでパソコンにつないで…という手順を追う必要があり、「Haiku」によって大幅な時間短縮になっています。さらに、Epicには「Epic chat」というメッセンジャー機能があり、看護師とのやりとりや他科へのコンサルトをLINEのような感覚で行えます。日本で働いていた時には院内PHSに頻繁に電話がかかってくるのがストレスでしたが、Epic chatでは空いた時間にまとめて返信できるので、業務に集中することができます。さらに、「消化管出血の患者さんへの治療介入を消化器内科、消化器外科、放射線科のどの医師が担当するかディスカッションする」という際、日本では専攻医の自分が仲介役となって各科の医師に何回も電話する必要がありましたが、Epic chatでは関係する科のグループチャットを作ってそこで議論ができるため、非常に効率が良いと感じます。仕組み6:Doximity「Doximity」というアプリは、遠隔診療やオンラインFAXの機能が充実しています。たとえば、「患者さんやその家族にスマホから電話をかけたいが、自分の電話番号は知られたくない」といったときに、このアプリから通話をすると、病院の電話番号経由で患者さんに電話をかけることができます。電子カルテの遠隔利用とこのサービスを組み合わせることで、医師は自宅からでも患者さんの家族に電話をかけたり、病状説明をしたりすることができます。また、日本と同じく、米国でもいまだに他の医療機関とFAXでのやりとりをするケースがあるのですが、Doximityはアプリ内で自分のFAX番号を作成して、送られてきたFAXをそのままスマホで閲覧したり、スマホで撮影した画像をFAXで送ることができたりする機能があります。シンプルですが、FAXに関連するトラブルを最小限にできるため、重宝しています。日本でも遠隔診療を進めるうえで、こうしたアプリの需要が高まってくるのではないでしょうか。仕組み7:AMiON米国では多くの医師が看護師のようなシフト制で働いています。そのため、「どの科のどの医師がその時間を担当しているか」を把握する必要があるのですが、その際に使われているのが「AMiON」という当直表管理アプリです。いわば「オンラインで見られる当直表」で、どの科の医師がどういうスケジュールで働いているかが、一目でわかります。勤務の交代があった場合でもオンライン上で簡単に変更ができます。日本では当直の変更があるたびに事務職員の方が当直表を新しく印刷して張り替える、ということをしていたので、それと比較して格段に効率的です。

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前庭リハビリテーションガイドライン 2024年版

平衡訓練/前庭リハビリテーションのガイドラインが誕生!前庭リハビリテーションはめまい患者の日常生活動作(ADL)改善目的で行われるが、日本国内ではかつてさまざまな訓練方法が混在していた。日本めまい平衡医学会はその標準化を目的に、本ガイドラインを策定した。訓練方法をイラストで詳細に解説し、11のCQでシステマティックレビューに則ってエビデンスを解析し、推奨を作成した。エビデンスによって標準化された前庭リハビリテーションを学ぶために、必携・必読・必修の1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する 前庭リハビリテーションガイドライン 2024年版定価3,300円(税込)判型B5判頁数100頁(カラー図数:9枚)発行2024年2月編集日本めまい平衡医学会ご購入はこちらご購入はこちら

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