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境界性パーソナリティ障害と統合失調症の幻聴の違い~システマティックレビュー

 幻聴を伴う境界性パーソナリティ障害(BPD)は、統合失調症などの原発性精神疾患と誤診されることがある。正確な診断ができないことは、効果的な心理療法を実行するうえで課題となる可能性がある。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのShih-Ting Tseng氏らは、統合失調症と比較したBPDにおける幻聴の現象学的特徴を特定し、BPD患者の幻聴をターゲットとした心理社会的介入を明らかにするため、システマティックレビューを実施した。Clinical Psychology & Psychotherapy誌2024年1・2月号の報告。 BPDと統合失調症における幻聴の現象学的類似点および相違点に関するエビデンスをシステマティックにレビューした。また、BPDにおける幻聴に対する心理学的介入の特定も行った。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューには、18件の研究を含めた。・BPD患者は、統合失調症と比較し、より持続的かつ反復的な幻聴が認められ、音声関連の障害や全能性評価が有意に増加し、幻聴の発症年齢がより若年であることが示唆された。・BPD患者は、抑うつや不安症状がより重度であり、小児期トラウマの発現が多く、否定的な自己スキーマが多かった。・認知行動療法の対処方略増強法(CBT-CSE)は、BPDにおける幻聴の軽減に有用である可能性があるが、その有効性を判断するにはさらなる研究が求められる。 著者らは、「幻聴を伴うBPD患者を正確に診断するためには、DSM-V基準を拡大する必要性があると考えられる。これにより、診断の実践強化やタイムリーな治療アクセスが容易となる可能性がある。また、BPDにおける幻聴をターゲットとした心理的介入の開発が求められる」としている。

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小児~成人期のnon-HDL-C高値、中年期の心血管イベントと関連/JAMA

 小児期から成人期まで、持続的な非HDLコレステロール(non-HDL-C)高値の脂質異常症を有する人は心血管イベントのリスクが高かったが、成人期までにnon-HDL-C値が改善した人は脂質異常症ではなかった人と心血管リスクは同程度であることが、オーストラリア・メルボルン大学のFeitong Wu氏らによる、International Childhood Cardiovascular Cohort(i3C)コンソーシアムの前向きコホート研究で示された。non-HDL-C上昇は小児によくみられ、成人期の心血管リスクを増大することが知られる。しかし、小児期のnon-HDL-C上昇が成人期までに改善することが臨床的な心血管リスクの低下と関連するかどうかは不明であった。著者は今回の結果から、「小児期のnon-HDL-C上昇を予防・軽減するための介入が、早発性心血管疾患の予防に役立つ可能性が示唆された」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年4月12日号掲載の報告。登録時3~19歳の約5千例、小児期と成人期のnon-HDL-C高値と40歳以降の心血管イベントの関連を解析 研究グループは、1970~96年にi3Cコンソーシアムの7件の前向きコホート(米国5件、フィンランド1件、オーストラリア1件)に登録された3~19歳の参加者4万2,324例のうち、小児期(3~19歳)および成人期(20~40歳)のnon-HDL-C値のデータがあり、所在または死因が確認でき、追跡終了時40歳以上であった5,121例を主解析の対象とした。除外基準にのっとり、オーストラリアのコホートは主解析から除外された。最終追跡調査は2019年に実施された。 主要アウトカムは、40歳以降の致死的および非致死的心血管イベント(2015~19年に調査)で、小児期および成人期のnon-HDL-C値の年齢・性特異的zスコア、および臨床ガイドライン推奨の脂質異常症カットオフ値によるカテゴリー別に関連を評価した。 解析対象5,121例は、non-HDL-C値測定のための初回受診時(ベースライン)の年齢中央値が10.7歳、女性60%、黒人15%であった。小児期のnon-HDL-C値zスコア1単位増加当たり心血管リスク1.4倍 40歳以降の平均追跡期間8.9年において、5,121例中147例に心血管イベントが発生した。小児期および成人期のnon-HDL-C値はいずれも心血管イベントのリスク上昇と関連しており、ハザード比(HR)はnon-HDL-C値zスコア1単位増加当たりそれぞれ1.42(95%信頼区間[CI]:1.18~1.70)、1.50(1.26~1.78)であった。 小児期non-HDL-C値の影響は、成人期non-HDL-C値で調整すると減弱したが(HR:1.12、95%CI:0.89~1.41)、成人期non-HDL-C値の影響は小児期non-HDL-C値で調整しても大きなままであった(HR:1.41、95%CI:1.14~1.74)。しかし、小児期から成人期のzスコアの変化で調整した場合、小児期non-HDL-C値の影響は大きなままであり(HR:1.58、95%CI:1.30~1.92)、zスコアの変化(増加)は独立した予測因子であった(HR:1.41、95%CI:1.14~1.74)。 小児期non-HDL-C値と小児期から成人期にかけての変化の両方がアウトカムと独立して関連していたことから、予防の観点からは小児期non-HDL-C値と成人期にかけての変化の両方が有益であることが示唆された。 小児期および成人期に持続的に正常なnon-HDL-C値(ガイドラインで推奨される範囲内)であった人と比較し、小児期から成人期にかけてnon-HDL-C高値の脂質異常症を発症した人は心血管リスクが有意に高く(HR:2.17、95%CI:1.00~4.69)、小児期から成人期まで持続的にnon-HDL-C高値の脂質異常症であった人はそのリスクがさらに倍増した(HR:5.17、95%CI:2.80~9.56)。小児期にnon-HDL-C高値の脂質異常症であったが成人期にはガイドラインで推奨される範囲内であった人では、有意なリスク上昇は認められなかった(HR:1.13、95%CI:0.50~2.56)。

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認知症患者の抗精神病薬使用、複数の有害アウトカムと関連/BMJ

 50歳以上の認知症患者において、抗精神病薬の使用は非使用と比較し脳卒中、静脈血栓塞栓症、心筋梗塞、心不全、骨折、肺炎および急性腎障害のリスク増加と関連していることが、英国・マンチェスター大学のPearl L. H. Mok氏らによるマッチドコホート研究で示された。有害アウトカムの範囲は、これまで規制当局が注意喚起を行っていたものより広く、リスクが最も高かったのは治療開始直後であったという。BMJ誌2024年4月17日号掲載の報告。50歳以上の認知症患者約17万4千例のデータを解析 検討には、英国のプライマリケア研究データベースのClinical Practice Research Datalink(CPRD)AurumおよびGOLDのデータが用いられた。これらのデータベースは、入院、死亡、社会的格差など他のデータと連携している。 1998年1月1日~2018年5月31日に、初回認知症診断日から1年以上CPRDに登録されている50歳以上の成人を対象とし(最初の認知症の診断コードが記録される以前に抗コリンエステラーゼ薬が処方されている患者、診断以前の1年間に抗精神病薬を処方されている患者は除外)、初回認知症診断日以降に抗精神病薬を使用した患者と、初回認知症診断日が同じ(または診断日から56日後まで)で抗精神病薬を使用していない患者(最大15例)を、incidence density samplingを用いてマッチさせた。 主要アウトカムは、脳卒中、静脈血栓塞栓症、心筋梗塞、心不全、心室性不整脈、骨折、肺炎、急性腎障害とした。抗精神病薬使用期間で層別化し、抗精神病薬使用群と非使用群の累積発生率を用いて絶対リスクを算出。また、観察不能な交絡の可能性を検出するため、関連性のないアウトカム(陰性対照)として虫垂炎と胆嚢炎についても検討した。 計17万3,910例(女性63.0%)の認知症成人が適格条件を満たし、試験に組み入れられた。認知症診断時の年齢は平均82.1歳(SD 7.9)、中央値83歳であった。このうち、研究期間中に抗精神病薬を処方された患者は3万5,339例(女性62.5%)であった。肺炎、急性腎障害、静脈血栓塞栓症、脳卒中、骨折、心筋梗塞、心不全の順にリスクが高い 抗精神病薬使用群は非使用群と比較して、心室性不整脈を除くすべてのアウトカムのリスク増加と関連していた。現在の抗精神病薬使用(過去90日間の処方)に関する有害アウトカムのハザード比(逆確率治療重み付け[IPTW]で調整)は、肺炎2.19(95%信頼区間[CI]:2.10~2.28)、急性腎障害1.72(1.61~1.84)、静脈血栓塞栓症1.62(1.46~1.80)、脳卒中1.61(1.52~1.71)、骨折1.43(1.35~1.52)、心筋梗塞1.28(1.15~1.42)、心不全1.27(1.18~1.37)であった。陰性対照(虫垂炎と胆嚢炎)については、リスク増加は観察されなかった。 心室性不整脈と陰性対照を除くすべてのアウトカムの累積発生率は、抗精神病薬使用群において非使用群より高く、とくに肺炎の絶対リスクおよび群間リスク差が大きかった。抗精神病薬投与開始後90日間における肺炎の累積発生率は、抗精神病薬使用群で4.48%(95%CI:4.26~4.71)に対し、非使用群では1.49%(1.45~1.53)であり、群間リスク差は2.99%(2.77~3.22)であった。

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腸内での酪酸産生菌の増加は感染症リスクの低下と関連

 腸内で酪酸産生菌が10%増えるごとに、感染症による入院リスクが14〜25%低下することが、オランダとフィンランドの大規模コホートを対象にした研究で明らかになった。アムステルダム大学医療センター(オランダ)のRobert Kullberg氏らによるこの研究結果は、欧州臨床微生物学・感染症学会(ECCMID 2024、4月27〜30日、スペイン・バルセロナ)で発表予定。 酪酸は、ビフィズス菌や乳酸菌などの「善玉」の腸内細菌が食物繊維を分解・発酵させる際に産生される短鎖脂肪酸の一種である。米クリーブランド・クリニックの説明によると、酪酸は大腸の細胞が必要とするエネルギーの大部分(約70%)を供給しており、消化器系の健康に重要な役割を果たしているという。 重症の感染症による入院患者において腸内細菌叢に変化が生じることは珍しくなく、また、前臨床モデルでは、好気性の酪酸産生菌が全身感染症に対して保護効果を持つことが示されている。酪酸産生菌は入院患者では減少していることが多く、またこれらの菌は感染症以外の腸疾患に対しても保護効果を持つ可能性が考えられることから、これまで酪酸産生菌に焦点を当てた研究が実施されてきている。しかし、腸内細菌叢が大きく変化することで重症感染症に罹患しやすくなるのかについては、明確になっていない。 今回の研究では、総計1万699人から成るオランダとフィンランドの2つの大規模コホート(オランダコホート4,248人、フィンランドコホート6,451人)を対象に、ベースライン時の腸内細菌叢とその後の感染症関連の入院リスクとの関連が検討された。試験参加者の便サンプルを用いて腸内細菌のDNAシーケンス解析を行い、腸内細菌叢の組成や多様性、酪酸産生菌の相対存在量を評価した。さらに、国の登録データを用いて、便サンプルの採取から5〜7年間の追跡期間中に生じた感染症による入院または死亡について調査した。 追跡期間中に総計602人の参加者(オランダコホート152人、フィンランドコホート450人)が感染症(多くは市中肺炎)により入院または死亡していた。腸内細菌叢と感染症リスクとの関連を検討したところ、腸内細菌叢の中に占める酪酸産生菌の量が10%増えるごとに感染症による入院リスクは、オランダコホートでは25%、フィンランドコホートでは14%低下することが明らかになった。このような結果は、人口統計学的属性やライフスタイル、抗菌薬曝露や併存疾患で調整して解析しても変わらなかった。 こうした結果を受けてKullberg氏は、「ヨーロッパの2つの独立したコホートを用いたこの研究で、腸内細菌叢の組成、特に酪酸産生菌の定着は、一般集団の感染症による入院予防と関連していることが示された」と結論付けている。 研究グループは、「今後の研究では、腸内細菌叢を調整することで重症感染症のリスクを低減できるかどうかを検討する必要がある」と述べている。ただ残念なことに、酪酸産生菌は酸素を嫌う嫌気性細菌であるため、これらの貴重な細菌を腸内に取り込むことは困難であるという。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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遊びや社会的な活動は犬の脳機能の維持に役立つ

 犬も高齢になると脳が縮小するため、人間と同じように記憶や思考の問題に悩まされるが、遊びや他の犬と関わるなどの社会的な活動が脳機能の維持に役立つようだ。少数のビーグルを対象にした研究で、運動をしたり、おもちゃで遊んだり、他の犬と遊んだりすることが犬の脳機能の維持に役立つことが明らかになった。米カリフォルニア大学アーバイン校のCraig Stark氏らによるこの研究結果は、「The Journal of Neuroscience」に4月1日掲載された。 この研究では、アルツハイマー病の治療薬となる可能性のある2種類の薬剤(カルシニューリン阻害薬のタクロリムス、転写因子のファミリーの一つであるNFATを阻害する化合物のQ134R)を用いた研究の一環として、中年(研究開始時に6歳)のビーグル43頭(雌36頭、雄7頭)の脳の健康状態を、毎年のMRI検査により3年間追跡した。これらの犬は全て、毎日運動し、おもちゃで遊び、社会的な活動を行った。また、雄だけのグループと雌だけのグループに分かれて毎日30分遊ぶことが許された。 その結果、加齢に伴い犬の前頭葉(思考、判断、情動のコントロール、コミュニケーション、運動などを司る部位)は急速に萎縮する一方で、尾状核(学習と記憶に重要な役割を果たす部位)の大きさは相対的に安定していることが明らかになった。また、薬剤を投与されていたか否かにかかわりなく、全ての犬で海馬の体積が毎年約1.74%ずつ増加していることも確認された。海馬は記憶と情動に関連する脳の部位で、加齢による衰えの影響を特に受けやすい。過去の研究では、加齢に伴い海馬の体積は減少することが示されている。 研究開始時の犬の脳は標準的な大きさであったことから、研究グループは、通常の加齢に伴い海馬の体積が増加したとは考えにくく、「この増加は、社会的な相互作用、探索行動、運動、感覚刺激など、本研究で行われた高レベルの行動エンリッチメント(豊かで意義のあるものにすること)に起因すると考えられる」との見方を示している。研究グループは、このような活動は脳への血流量を増やし、場合によっては脳細胞を成長させる可能性も考えられると説明している。 研究グループは、犬は9歳(人間でいえば60歳前後)になると、脳の老化の兆候が現れ始めることが多いことを踏まえて、加齢に伴う犬の健康状態の変化を追跡し続ける予定であるとしている。次の追跡MRI調査は、今回の研究対象となった犬が10〜11歳になったときに実施予定であり、この調査により脳内治療薬の効果についても最終的な結論が導き出される見込みであるほか、社会的活動や遊びの利点に関するさらなるエビデンスも得られるものと期待されている。 研究グループは、「中年の犬でも家族として迎え入れて愛情を注ぐことは、犬の寿命を延ばし、老犬になった際の健康に役立つ可能性がある」と話している。そして、「犬と遊ぶことは犬の脳の健康に有益なだけでなく、人間の脳の健康にも役立つ可能性がある。これは、科学的な裏付けが高まりつつあるペットを世話する際の助言として受け取っても間違いないと思われる」と付言している。

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習慣的な運動が不眠症症状を抑制

 習慣的な運動と睡眠の関係を10年間にわたって追跡した結果が報告された。運動習慣のある人は入眠困難などの不眠症の症状が少なく、睡眠時間も適切であることが多いという。レイキャビク大学(アイスランド)のErla Bjornsdottir氏、Elin Helga Thorarinsdottir氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Open」に3月26日掲載された。研究者らは、「われわれの研究結果は、最適な睡眠時間を確保し、不眠症の症状を軽減するには、習慣的な運動が重要であることを強く示している」と語っている。 この研究は、欧州9カ国、21医療機関で行われた欧州共同体呼吸器健康調査(ECRHS)参加者のうち、2011~2013年の第3回追跡調査のデータのある39~67歳の成人4,339人(男性48.1%)が解析対象とされた。ベースライン時および10年間の追跡の調査で明らかになった運動習慣に基づき、全体を後述の4群に分類して、不眠症の症状や睡眠時間、日中の眠気との関連を検討した。運動習慣は、週に2日以上、計1時間以上の運動をしていると回答した場合に「活動的」と定義。その上で、10年間常に活動的だった群(24.9%)、途中から非活動的になった群(20.3%)、途中から活動的になった群(17.9%)、常に非活動的だった群(36.9%)の4群に分類した。 年齢、性別、BMI、喫煙習慣などを調整後に、10年間常に非活動的だった群を基準として比較すると、常に活動的だった群は不眠症の症状が少なく、睡眠時間が適切な人が多いことが明らかになった。 例えば不眠症の症状については、入眠困難がオッズ比(OR)0.58(95%信頼区間0.42~0.77)、中途覚醒がOR0.80(同0.66~0.97)だった。早朝覚醒〔OR0.80(0.63~1.03)〕、および日中の眠気〔OR0.87(0.69~1.10)〕については有意差がなかった。一方、10年間の途中から非活動的になった群、または途中から活動的になった群は、常に非活動的だった群と、不眠症の症状および日中の眠気ともに有意差がなかった。 睡眠時間については、短時間睡眠(6時間以下)、通常の睡眠時間(6~9時間)、長時間睡眠(9時間以上)の3群に分けて検討すると、10年間常に活動的だった群は通常の睡眠時間であることが有意に多く〔OR1.55(1.29~1.87)〕、短時間睡眠〔OR0.71(0.58~0.85)〕や長時間睡眠〔OR0.48(0.28~0.80)〕は有意に少なかった。 運動習慣のほかには、BMI高値は入眠困難や中途覚醒と正の関連が認められ、喫煙習慣は日中の眠気と正の関連、入眠困難とは負の関連が認められた。 研究者らは、「われわれの研究結果は、習慣的な運動と良質な睡眠との関連を報告したこれまでの研究の結果と一致している。生活に運動を取り入れている人は、適度な疲労のため夜間に質の良い睡眠を得られるだけでなく、健康的なライフスタイルを実践していることが多いようだ」と述べている。

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妊娠中のナッツ摂取が子どもの「仲間関係の問題」を予防?

 約1,200組の母子を対象としたコホート研究の結果から、妊娠中にナッツを摂取すると、生まれた子どもの「仲間関係の問題」を予防できる可能性が示唆された。これは愛媛大学大学院医学系研究科疫学・公衆衛生学講座の三宅吉博氏らによる研究結果であり、「Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition」に3月7日掲載された。 著者らの研究グループはこれまでに、妊娠中のさまざまな栄養素の摂取が、生まれた子どもの感情・行動の問題と関連することを報告している。食品に着目すると、栄養密度が高いことで知られるナッツは、不飽和脂肪酸、タンパク質、食物繊維、ビタミンやミネラルといった栄養素を豊富に含んでいる。そこで今回の研究では、妊娠中のナッツの摂取と5歳児の行動的問題との関連を調べた。 研究対象は「九州・沖縄母子保健研究」の参加者で、2007年4月~2008年3月に妊娠し(年齢中央値32.0歳)、生まれた子どもが5歳の時の追跡調査に参加した母子1,199組。妊婦の栄養データは、妊娠中に食事歴法質問調査票を用いて入手した。子どもの行動的問題は、5歳時の調査で、母親に「子どもの強さと困難さアンケート(Strengths and Difficulties Questionnaire;SDQ)」に回答してもらい、評価した。 その結果、1,199人の子ども(生後59~71カ月)のうち、SDQの下位尺度である「情緒の問題」は12.9%、「行為の問題」は19.4%、「多動の問題」は13.1%、「仲間関係の問題」は8.6%、「向社会的な行動の低さ」は29.2%に認められた。また、ナッツを摂取していた妊婦は618人、摂取量の中央値は0.8g/日(四分位範囲0.4~1.3g/日)であり、ナッツの種類としてはピーナッツの割合が36.2%、他のナッツが27.3%、ピーナッツと他のナッツの両方が36.4%だった。 次に、対象者の背景の差(妊娠年齢、妊娠週数、居住地、子どもの数、両親の教育歴、世帯収入、妊娠中の食事内容・抑うつ症状・飲酒量・喫煙、子どもの出生体重・性別、生後1年間の受動喫煙、母乳摂取期間)を調整し、妊娠中のナッツの摂取と子どもの行動的問題の関連を解析した。その結果、妊娠中のナッツの摂取は子どもの「仲間関係の問題」のリスク低下と有意に関連していることが明らかとなった(ナッツ非摂取と比較したオッズ比0.64、95%信頼区間0.42~0.97)。 この「仲間関係の問題」は、SDQのアンケート項目「一人でいるのが好きで、一人で遊ぶことが多い」「いじめの対象にされたりからかわれたりする」「他の子どもたちより、大人といる方がうまくいくようだ」など、5つの項目から評価されたもの。一方で、子どもの行動的問題のうち「情緒の問題」「行為の問題」「多動の問題」「向社会的な行動の低さ」に関しては、妊娠中のナッツ摂取との有意な関連は認められなかった。 以上から著者らは、「妊娠中の母親のナッツ摂取は、子どもの5歳時点における仲間関係の問題のリスク低下と関連している可能性がある」と結論付けている。また、この予防的関連の背景にあるメカニズムについては、さらなる研究が必要としている。

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子宮頸がん、どの年齢層で多い?

子宮頸がん、どの年齢層で多い?⚫ 日本では20〜40代の女性を中心に毎年約1万人が新たに子宮頸がんと診断され、年間約3,000人が亡くなっています⚫ 主に性交渉によるHPV(ヒトパピローマウイルス)感染が原因となります⚫ 多くの女性が人生で一度はHPVウイルスに感染する可能性があると言われており、感染したからといって必ずがんになるわけではありませんが、誰でもなる可能性のあるがんです3025罹患率(人口10万対)20151050出典:国立がん研究センター「知ってくださいヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸がんのこと」国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)2019年データCopyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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ダニ咬傷【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第14回

ダニは主に野外に生息し、哺乳類(ヒトを含む)や鳥類、爬虫類から血を吸う節足動物です。農業や林業作業中だけでなく、山登りやハイキングといったレジャーでもダニにかまれることがあります。ダニは日本紅斑熱(JSF)やライム病(LD)などのリケッチア症やボレリア症などの感染症を伝播しますが、ダニ媒介感染症は特定の地域に比較的限定されていて、効果的な抗菌薬もあるため、日本ではダニによる咬害をそれほど恐れない傾向がありました。しかし、2013年に重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome:SFTS)が報告され、にわかに注目を集めています。結果として、ダニによる咬害治療のための来院が急速に増加しているため1)、皆さんの診療所や救急外来にダニにかまれた患者さんが突然受診するかもしれません。今回は、ダニ咬傷の対処法を説明します。日本では咬傷を生じるダニは6種類いて、地域によって異なります。SFTSなどを生じるマダニは主に西日本にいます。これらの詳細を書くととても長くなるので、今回はマダニにかまれて来院した患者さんの対処法を記載します。<症例>75歳男性主訴西日本在住。山菜を採りに山へ入った。当日の入浴時に右前腕に黒い脚が生えている動くダニを発見した。引っ張ってみたりしたが外れないため、救急外来を受診した。(1)ダニを確認するまずは、かんだダニを確認して吸血の有無を判断しましょう。血液を吸っていればお腹が大きく膨らんでいます。本症例は、さほど膨らんでいませんでした。(2)かまれてからの時間を確認かまれてからの時間を確認しましょう。ダニ咬傷はほとんど症状がなく、気付くまで2~3日、長いと1週間ほどかかることがあります。ダニがかみついてから24時間経過すると食いつきが強くなり、攝子では除去が困難になります2)。かまれてから3日以上経過した場合はマダニ媒介感染症のリスクが高くなるため、外科的除去がより強く推奨されます3,4)。本症例は、山に山菜取りに行ったのが久しぶりで、当日にかまれたことが想定されます。よって、24時間以内と判断しました。(3)ダニの除去方法はいくつかありますが、今回は非侵襲的方法2つと侵襲的方法1つを紹介します。a.非侵襲的除去基本的にダニの体には触らないことが理想です、なぜなら、体を押すと病原体や毒が体内に入ったり、体をつまんで除去をしようとするとダニの口が残ってしまったりします。よって1つ目の方法は「無鈎攝子でダニの口器をつかんで除去する」です(図1)。図1 攝子を用いたダニの除去方法2つ目の方法として、もし手元にあれば、Tick twisterという動物用のダニ除去器具を用いるのも手です(図2)。ダニの口は縦方向の力に強いため、攝子で引っ張るにはある程度力がいります。Tick twisterを皮膚とダニの間に挟んで軽く持ち上げながら回転させることで非常に簡便に除去できます。口器を意識せずに使用できるのも利点です。ダニ咬傷を診る機会があれば、1個1,000円程度ですので持っておいてもよいかもしれません。YouTubeで「Tick Twister」と検索すると複数の動画がヒットしますので使用の際は参考にしてください。本症例は攝子で口器をつまんで除去しました。図2 Tick Twisterb.侵襲的処置口が深く入って把持できなかったり、ダニ咬傷となってから3日以上経っていたりする場合は外科的切除が必要になります4)。まずキシロカインで鎮痛し、図3のようにダニの周囲を円錐状に切除して皮膚ごと除去します3)。図3 侵襲的処置(4)除去後の処置まずは創部を洗浄しましょう。抗菌薬はダニにかまれた場合には推奨されていません。というのも、そもそものマダニ媒介感染症のリスクが低いため、抗菌薬の使用によるリスクがベネフィットを上回るためです。しかし例外として、シュルツェマダニにかまれた場合は予防投与の適応となります。シュルツェマダニは北海道、本州中部が生息域と推定されています(参考文献5の図4を参考にしてください)。ダニがシュルツェマダニであり、血液を吸い肥大化している場合、ライム病のリスクが高いため200mgのドキシサイクリン単回投与が推奨されます4)。この場合はダニの種類の同定が必要であり、ダニを保存して専門家へ相談することも必要になります4)。本症例は西日本の患者さんであったため抗菌薬の予防投与は行いませんでした。帰宅時に、マダニ咬傷から4週間以内に発熱、嘔吐、下痢、感覚障害などの神経症状が出現した場合はマダニ媒介感染症を生じた可能性があるので、医療機関を受診するように指導しました。以上がダニ咬傷の対処法です。ダニはなるべく早く除くことが重要ですので、上記手技を使って素早く除去しましょう。1)Inoue Y, et al. 衛生動物. 2020;71:31-38.2)鵬図商事:マダニに刺されてしまったら3)Roupakias S, et al. Wilderness Environ Med. 2012;23:97-99.4)Natsuaki M. J Dermatol. 2021;48:423-430.5) 国立国際研究所:ライム病とは

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第210回  大病院で繰り返されるがん“見逃し”事故、名大病院が画像診断レポートの所見に担当医が対応せず肺がんが進行し、死亡した事例を公表

CTで肺がんの疑いが指摘されたにもかかわらず担当医が対応せず放置、患者は検査から約6年後に死亡こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。民間の有識者でつくる人口戦略会議(議長=三村 明夫・日本製鉄名誉会長)は4月24日、全国の市町村のうち4割超にあたる744自治体が「消滅する可能性がある」というショッキングな報告書を公表しました。これらの自治体では20〜39歳の女性人口が2050年にかけて50%以上減少し、いずれ消滅する可能性があるとのことです。人口減少については、本連載の「第161回 止められない人口減少に相変わらずのんきな病院経営者、医療関係団体。取り返しがつかなくなる前に決断すべきこととは…(前編)」などでも書いてきたことですが、医療関係者や、公立・公的病院の再編を担う自治体関係者は、地域の医療・介護リソースの集約などについて、早急に議論を進めていくべきだと思いました。さて今回は4月11日に名古屋大学医学部附属病院(名古屋市。以下、名大病院)が公表して全国ニュースにもなった、がん“見逃し”事故について書いてみたいと思います。名大病院は、CTで肺がんの疑いが指摘されたにもかかわらず、担当医が画像診断レポートに記載された所見に対応せず放置し、患者は検査から約6年後に死亡した事例を公表しました。同様の事故は全国各地で頻発しており、その都度の注意喚起が行われてきましたが、一向になくなっていないようです。また、今回の報告書概要で知ったのですが、名大病院では2015年以降、同様の“見逃し”による患者死亡事例が今回の例を含め、なんと6例もあったというのです。こんな事故が大学病院で頻発していたことに、本当に呆れるしかありません。報道では「肺がん疑い見逃し」などと書かれていますが、実際のところ”見逃し”ではなく、単なる職務怠慢だと言えるでしょう。「事案の重大性、他病院に対する警鐘、再発防止の必要性に鑑み」て報告書概要を公表名大病院は4月11日、泌尿器科外来で2016年3月に行った胸部CT検査の画像診断レポートを、主治医が確認はしたものの精査するなど適切な対応をしなかったために診断が遅れ、80代男性患者が約6年後の2022年3月に死亡した事例があったと公表しました。同病院は今年3月25日、遺族に対し説明と謝罪、賠償の約束を行い、遺族の承諾を得て、同病院のwebサイトで外部専門家を主体とする事例調査委員会の報告書概要を公表しました。あえて公表したのは、「事案の重大性、他病院に対する警鐘、再発防止の必要性に鑑み」てのことだそうです。泌尿器科の主治医が画像診断レポートの指摘を熟読できていなかったため肺野の所見への対応行われず公表された報告書概要1)によれば患者は80代男性(2022年3月時点)で、臨床経過は以下のようなものでした。患者は名大病院泌尿器科において2007年から前立腺がんの治療を受け、その後は同科に定期通院していました。2016年3月28日の受診の際、左下腹部痛の原因精査のために胸腹部単純CT検査を受けたところ、放射線科医から画像診断レポートにおいて肺右上葉にすりガラス影を伴った索状影を指摘され、肺がんの除外のための精査が推奨されました。しかし、泌尿器科の主治医が画像診断レポートの指摘を熟読できていなかったため、肺野の所見への対応等が行われなかったとのことです。2018年12月に患者の血液疾患に対する精査が開始されたところ、その最中に上述の肺の病変が認識され、2019年7月に肺がんと確定診断されました。その後、肺がんに対する治療が行われましたが根治には至らず、確定診断から33ヵ月後の2022年3月に死亡しました。3カ月後に再度CT検査を実施していれば、臨床病期IA期の末梢小型肺がんと診断・治療できた可能性が高い報告書概要の「事例検証」の項では、患者の死因は「肺及び肺転移による腫瘍死」とされ、2016年3月の3ヵ月後に再度CT検査を実施していれば、臨床病期IA期の末梢小型肺がんと診断・治療できた可能性が高い、としています。そして、「本患者は2016年3月のCT検査後及び2017年9月の血液検査実施時に適切な対応がなされなかったことにより、肺の診断がなされる機会を失い肺が進行したと言える。特に2016年3月については、患者は肺の進行により根治的治療を受ける機会を失い病態に差が生じ生命予後を損なったと考えられる」と結論付けています。「画像像診断レポートを熟読できておらず、悪性疾患を疑う所見としてその後のフォローがなされなかったことは、標準的な対応と言えない」「事故発生原因に対する検討」の項では、放射線科医が2016年3月28日(撮影当日)に患者を撮影したCT画像を読影し、「両肺下葉主体に1cm大までの多数の結節を認めます」、「肺転移が除外できません」、「肺の除外が必要」、「これらの肺の所見は3ヶ月程度のCT再検または、可能なら過去の画像との対比を推奨します」などと画像診断レポートに記載したにもかかわらず、外来担当医がまったく対応しなかったことが事故発生の原因としています。報告書は、「外来担当医は、4月4日に本患者の次回外来の予習を行った際に、CT画像診断レポートから放射線科医による指摘部分についてコピー&ペースト機能を利用し本患者の電子カルテに転記した。しかし、担当医は肺野の所見は第一に炎症性変化によるものと考えた。3カ月後に再度CT検査を行い評価することも考えていたが、最終的には良性疾患との意識が勝り、『肺を強く疑い、必ず3カ月後にCTを撮る』との明確な方針決定に至らず、専門診療科である呼吸器内科への相談、その後肺野の所見への対応等はしなかった。(中略)。担当医は外来診察の準備の段階で放射線科医の記載を熟読できておらず、自らの読影見解のみから判断を行った。担当医が放射線科医による画像診断レポートの記載を熟読できておらず、悪性疾患を疑う所見としてその後のフォローがなされなかったことは、標準的な対応とは言えない」と断じています。「熟読できておらず」という表現になっていますが、その後の対応を考えると、コピー&ペーストをしただけで「読んでいなかった」というのが実情と考えられます。「重要レポートにフラグをつけていなかったことは、当時の水準に照らし標準から逸脱したものではないが、現在の水準に照らせば改善の余地あり」「事故発生原因に対する検討」の項ではまた、名大病院における重要画像診断レポートのフォロー体制の不備についても言及しています。それによれば、「2016年当時、当院では、画像診断レポートの未読問題には着手をしていたが、重要所見を熟読できていないという問題については着手していなかった。また、放射線科医が重要画像診断レポートに目印(フラグ)をつけるといった取り組みは行っていなかった。この背景には、当時,当院では画像診断レポートの既読管理の導入に重点が置かれ、重要画像診断レポートのフォロー体制については検討が開始されたばかりであるという事情があった。また、当院放射線科においては放射線科医の読影所見にあえて軽重を付けることは画像診断業務の原則から好ましいことではなく、目印の付け忘れや主治医が目印の無い画像診断レポートに注意を払わなくなるといった別のリスクも生まれうることから、積極的に行っていなかったという事情もあった。2016年当時、当院が重要画像診断レポートに何らかの目印をつけていなかったことは、当時の水準に照らし標準から逸脱したものではない(ただし、現在の水準に照らせば改善の余地がある)」としています。2015年以降、今回の例を含めて6例も同様の見逃しによる患者死亡事例報告書は以上を踏まえ、1)画像診断レポートの対応漏れ対策、2)血液検査結果の対応漏れ対策、3)重要検査結果に対するフラグ付け機能と第三者モニターシステムの構築、4)患者情報の誤記載や誤伝達につながる可能性のあるコピー&ペースト機能に対する注意喚起――の4点の再発防止策の提言を行っています。冒頭でも書いたように、今回、名大病院が事故の概要を公表したのは、「事案の重大性、他病院に対する警鐘、再発防止の必要性に鑑み」て、ということで、それはそれで評価できます。しかし、驚いたのは、報告書概要の最後に添付されている「画像診断レポート見逃し事故経過表」です。この事故経過表には、今回の例を含めて実に6例も同様の見逃しによる患者死亡事例が記載されているのです。報告書概要によれば、最初の患者死亡は2015年4月で、耳鼻咽喉科にかかっていた患者でした。やはり肺がんの診断遅れで、読影リポートが2010年2月に提出されたものの、確認されたのはなんと37ヵ月後でした。その他の事例では、レポート確認が69ヵ月後というケースもありました。ちなみに6例中5例が肺がん、1例が大腸がんです。なお、今回の見逃しについて報告書概要には、「外来担当医のヒューマンエラーに加え、当時当院では未読画像診断レポート管理システムの導入に重点的に取り組んでいた時期であり、重要画像診断レポートのフォロー体制については検討が開始されたばかりであったことが挙げられる」と書かれています。どうやら今回の事故は、度重なる見逃し事故を背景に対策を徹底しようとした矢先に起こってしまったようです。なお、現在、名大病院では、一連の事故の反省から未読画像診断レポート管理システムを導入、45日以上の未読画像診断レポートのゼロ化を達成しているとのことです。デジタル化で便利になり過ぎたことが、逆にヒューマンエラーを招いているのでは今回のような、画像診断レポート見逃し事故については、2020年7月22日掲載の本連載「第16回 デジタル化が進んでも、繰り返される『CT見落とし』」でも取り上げました。このときは旭川医科大学病院での見逃しについて書いたのですが、同様の事故は千葉大学医学部附属病院、兵庫県立がんセンター、横浜市立大学附属病院でも起こっており、医療現場(とくに大病院)では頻繁に起こっていたインシデントだと言えるでしょう。事実、日本医療機能評価機構が定期的に報告している「医療安全情報」では、2012年2月と2018年5月の2回、「画像診断報告書の確認不足」をテーマに掲げ、「画像を確認した後、画像診断報告書を確認しなかったため、検査目的以外の所見に気付かず、治療が遅れた事例が報告されています」と注意喚起をしています。CTの読影を主治医ではなく放射線科医が担当する分業体制になっている、電子カルテ導入などによってデジタル化が進み過ぎた、などさまざまな要因、背景が考えられます。デジタル化で便利になった(報告書を熟読しなくても、コピー&ペーストでカルテ記載ができる、など)ことが、逆にヒューマンエラーを招いている可能性もあります。医療DX流行りで、画像診断などではAIも積極的に活用されているようですが、最終的に判断するのは生身の人間です。名大の“見逃し”事故の報告書を読んで、デジタルと人間(アナログ)のインターフェースの大切さを改めて感じた次第です。参考1)画像診断レポートに記載された所見に対応せず,肺が進行し死亡した事例

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roflumilast外用薬、慢性尋常性乾癬の長期治療の有用性を確認

 慢性尋常性乾癬患者へのroflumilastクリーム0.3%(1日1回塗布)の長期投与を評価した試験において、忍容性は良好であり、64週までの有効性が確認された。米国・Henry Ford Medical CenterのLinda Stein Gold氏らが、海外第II相多施設共同非盲検シングルアーム長期投与試験の結果を報告した。PDE4阻害薬は慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乾癬、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎など炎症性疾患に対する治療効果が示されており、roflumilastはPDE4の強力かつ選択的な阻害薬である。roflumilastクリーム0.3%は、すでに米国食品医薬品局(FDA)より尋常性乾癬に対する承認を受けており、長期投与の評価が行われていた。結果を踏まえて著者は、「顔や間擦部などでも忍容性は良好であり、長期治療に適した外用薬であることが示唆された」と述べている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2024年3月29日号掲載の報告。 試験は米国とカナダの30施設で行われ、2つの登録コホート(12週間の早期試験を完了した患者または新規に登録された未治療患者)で構成された。主な適格基準は、18歳以上、乾癬の臨床的診断を受けてから6ヵ月以上、顔・四肢・体幹・間擦部に皮疹がある、皮疹がBody Surface Area(BSA)の2~20%(新規登録患者は2~25%)などであった。 roflumilastクリーム0.3%は、すべての皮疹に塗布することとし、試験中に発現した新たな皮疹にも頭皮を除くすべてに塗布した。 安全性のエンドポイントは、治験薬投与下で発現した有害事象、重篤な有害事象などであった。有効性のエンドポイントは、Investigator Global Assessment(IGA)0(消失)または1(ほぼ消失)を達成した患者の割合、IGA 0/1かつベースラインから2ポイント以上改善した患者の割合、間擦部のIGA(I-IGA)0/1かつベースラインから2ポイント以上改善した患者の割合、およびPsoriasis Area Severity Index(PASI)75(ベースラインから75%改善)を達成した患者の割合などであった。 主な結果は以下のとおり。・332例の患者が登録され、244例(73.5%)が試験を完了した。・13例(3.9%)が有害事象により中止し、3例(0.9%)は無効中止となった。・治療関連有害事象は12例(3.6%)に発現したが、重篤な有害事象は報告されなかった。・被験者の97%以上は塗布部位反応として刺激感が認められなかった。・タキフィラキシーは観察されず、52週時においてIGA 0/1を達成した患者の割合は44.8%であった。IGA 0/1かつベースラインから2ポイント以上改善した患者の割合は36.4%であった。・新規に登録された未治療患者のうち、ベースライン時に間擦部の皮疹が認められた集団において、I-IGA 0/1かつベースラインから2ポイント以上改善した患者の割合は66.7%であった。・52週時においてPASI 75を達成した患者の割合は37.6%であった。

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新年度、あなたの医局は増えたor減った?/医師1,000人アンケート

 新年度がはじまり、新人を迎えた職場も多い。医師の就職を語るうえで欠かせないものに「医局」の存在がある。ケアネット会員医師を対象に、医局への所属状況や選択理由、最近の医局員数の増減などについて、30~50代・200床以上の医療機関の勤務者を対象とし、オンラインのアンケート形式で聞いた。 「Q1. 現在、医局に所属していますか?」の問いに、「はい」と答えたのは73%。200床以上という中規模以上の病院に勤務している医師であっても、3割近くが医局に所属していない現状が明らかになった。年代別にみると30代は8割近くが医局に所属しているが、年代が高くなるにつれ所属者の割合が減り、50代は7割だった。 「Q2. 所属医局を選んだ『一番の決め手』は何ですか?」(単一回答)との問いには、「専門医を取得しやすい」が31%と最多で、「研究時間・症例数など研鑽機会や実績が多い」(17%)、「医局の雰囲気が良い、尊敬する医師がいる」(15%)、「職場やキャリアに多様性がある」(10%)が続いた。「年収が高い」を選んだ人は4人(0.4%)のみだった。「その他」で挙げられた理由としては、「出身大学・地元だから」との回答が多かったほか、「当時は医局に入ることが当然だったから」「流れで/なんとなく」といった消極的な回答も目立った。 「Q3. 5年前と比較した、医局員総数の増減」を聞いたところ、「増えた」との答えが25%、「変わらない」が30%、「減った」が27%と、3分する結果となった。診療科ごとに見ると、内科・循環器内科・呼吸器内科などの「内科系」は「減った」が27%だったのに対し、外科・呼吸器外科・呼吸器外科などの「外科系」は「減った」が32%、多忙とされることの多い「救急科・産婦人科・小児科」は「減った」が30%と、いずれも内科系よりも減った割合が高かった。一方で、リハビリ科・眼科・皮膚科など「その他」の診療科では「減った」が23%と最も少なく、反対に「増えた」が26%と最も多かった(「内科系」も同率)。 「Q4. 近年の新規入局者が医局を選ぶにあたり、『最も重視すること』は何だと思いますか?」(単一回答)との問いに対し、1位は「専門医を取得しやすい」(24%)で、Q2で聞いた「自分が医局を選んだ理由」と同じだったが、その割合はQ2よりも低かった。2位は「医局の雰囲気が良い、尊敬する医師がいる」(18%)、3位が「研究時間・症例数など研鑽機会や実績が多い」(13%)と、Q2の回答と順位が入れ替わった。Q2の「自分が医局を選んだ理由」ではほとんど選ばれることのなかった「時間外労働や雑務が少ない」(7%)や「年収が高い」(3%)も一定数が選択しており、「若手医師は自分とは異なる価値観を持っている」と考える中堅医師が多いようだ。 年代別に見ると、新規入局者に年齢の近い30代では「専門医取得」や「医局の雰囲気」を選択した人が多かったのに対し、50代では「研究時間・症例数など研鑽機会や実績がある」を選択した人が多く、さらに年代が上がるにつれ「わからない」との回答者も増えており、ジェネレーションギャップを感じるベテラン医師の姿も浮かび上がった。 最後に自由回答で「Q5. 医局の思い出、入局者を増やす施策や若手育成の工夫など」を聞いたところ、医局に所属するメリットとして「論文執筆や後輩指導を学ぶことができた」「いろいろな施設で経験を積むことができた」といった回答が目立った。一方でデメリットしては「雑務が多い」「しがらみがあって自由に勤務先を選べない」という回答が多かった。現状の改善策としては、「育成制度の整備など、若手医師が魅力的に思うような環境をつくる」「医局運営に関する金銭面の透明性を確保」「ワークライフバランスや収入面の条件を、詳しく正確に情報開示する」といったさまざまな提言が寄せられた。―――――――――――――――アンケートの詳細は以下にて公開中『新年度、医局の動向は?』―――――――――――――――<アンケート概要>内容:新年度を迎えたタイミングで、医局への所属状況や選択理由、医局への思いなどについて聞いた。実施日 :2024年4月9日実施方法:インターネット対象  :ケアネット会員医師 1,013人(30~50代、200床以上の医療機関の勤務者)

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日本人不眠症患者におけるレンボレキサント切り替えの有効性と安全性

 慢性不眠症患者は、従来の治療法では必ずしも満足のいく有効性および安全性を得られているとはいえない。したがって、代替治療法への切り替えを考慮する必要があるものの、これらの有効性を評価したプロスペクティブ研究は不十分である。久留米大学の小曽根 基裕氏らは、慢性不眠症患者に対するレンボレキサントへの切り替えにより患者の満足度が向上するかを評価した。Advances in Therapy誌2024年4月号の報告。 対象は、現在の治療に満足していない日本人慢性不眠症患者90例。4つのコホート研究から、プロスペクティブ非ランダム化オープンラベル介入的多施設共同研究を実施した。コホート研究には、非ベンゾジアゼピン系鎮痛催眠薬(ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン)単剤療法、デュアルオレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント)単剤療法、スボレキサントとベンゾジアゼピン受容体作動薬の併用療法、スボレキサントとメラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)からレンボレキサントへの切り替えの4つを含めた。主要エンドポイントは、2週間(漸増期終了)時点でのレンボレキサント切り替え成功率とした。切り替え成功の定義は、漸増期にレンボレキサントを服薬し、その後の維持期(2~14週目)においてレンボレキサントの継続使用意向を示した患者の割合とした。患者の満足度と安全性(治療中に発現した有害事象[TEAE]の発生率)の評価は、14週目(漸増期および維持期終了時)に実施した。 主な結果は以下のとおり。・2週間のレンボレキサント切り替えに成功した患者の割合は、95.6%(95%信頼区間:89.0~98.8%)であった。・レンボレキサントの継続に成功した患者の割合は、漸増期(2週目)97.8%、維持期(14週目)で82.2%であった。・全体的なTEAEの発生率は47.8%であり、重篤なTEAEは認められなかった。・Patient Global Impression-Insomnia versionの3つの尺度による患者の満足度評価では、すべてのコホートにおいて、肯定的な反応を示す患者が否定的な反応よりも多かった。・維持期では、レンボレキサントに切り替え後、2週目、6週目、14週目において不眠重症度指数の改善が認められた。 著者らは「現在の治療に満足していない不眠症患者に対するレンボレキサント切り替えは、有効な選択肢となる可能性が示唆された」としている。

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olezarsen月1回投与、トリグリセライドを50%減/NEJM

 olezarsenは、開発中のアポリポ蛋白C-III(APOC3)mRNAを標的とするN-アセチルガラクトサミン結合型アンチセンス・オリゴヌクレオチド。米国・ハーバード大学医学大学院のBrian A. Bergmark氏らBridge-TIMI 73a Investigatorsは、「Bridge-TIMI 73a試験」において、主に中等度の高トリグリセライド(TG)血症を有し心血管リスクが高い患者集団では、本薬の月1回投与によりプラセボと比較して、TG値を有意に低下させ、安全性に関する重大な懸念は生じないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年4月7日号に掲載された。北米24施設の第IIb相無作為化プラセボ対照比較試験 Bridge-TIMI 73a試験は米国とカナダの24施設で実施した第IIb相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2022年6~9月に患者を募集した(Ionis Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 年齢18歳以上、中等度の高TG血症(TG値150~499mg/dL)で心血管リスクが高い患者、および重度の高TG血症(同500mg/dL以上)の患者を、olezarsen50mgまたは同80mgを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、次いでそれぞれの用量のコホート内でolezarsenまたはプラセボを1ヵ月に1回皮下投与する群に、3対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、ベースラインから6ヵ月後までのTG値の変化率とし、2つの用量のolezarsen群とプラセボ群の差を算出した。副次アウトカムは、APOC3、アポリポ蛋白B(APOB)、non-HDLコレステロール、LDLコレステロールの値の変化などであった。APOB、non-HDL-Cも改善、LDL-Cには有意な変化なし 154例を登録し、olezarsen 50mg群に58例、同80mg群に57例、プラセボ群に39例を割り付けた。全体のベースラインの年齢中央値は62歳(四分位範囲[IQR]:55~70)、女性が42%で、中等度の高TG血症患者が90%を占めた。TG中央値は241.5 mg/dL(IQR:192~324)だった。 TG値は、ベースラインから6ヵ月後までにプラセボ群で7.8%低下したのに対し、olezarsen 50mg群では57.1%、同80mg群では60.9%低下した。TG値の低下率のプラセボ群との絶対差は、olezarsen 50mg群が-49.3ポイント、同80mg群は-53.1ポイントと、いずれも有意差を認めた(双方ともp<0.001)。 また、ベースラインから6ヵ月後までに、プラセボ群と比較して、2つのolezarsen群ともAPOC3(50mg群:-64.2ポイント[p<0.001]、80mg群:-73.2ポイント[p<0.001])、APOB(-18.2[p<0.001]、-18.5[p<0.001])、non-HDLコレステロール(-25.4[p<0.001]、-23.1[p<0.001])の値が有意に低下したが、LDLコレステロール値(-9.9[p=0.24]、-7.7[p=0.36])には有意な変化はみられなかった。TG値正常化の割合も良好 ベースライン時に中等度の高TG血症で、6ヵ月後のTG値を測定できた128例の解析では、TGが正常値(150mg/dL未満)であった患者は、プラセボ群の34例中4例(12%)に対し、olezarsen 50mg群は49例中42例(86%)、同80mg群は45例中42例(93%)と、いずれの用量も有意に良好であった(双方ともp<0.001)。 有害事象(プラセボ群74%、olezarsen 50mg群72%、同80mg群67%)および重篤な有害事象(5%、7%、12%)のリスクは3つの群で同程度であった。また、肝臓(5%、12%、9%)、腎臓(13%、3%、2%)、血小板減少(3%、0%、4%)に関する臨床的に重要な異常はまれで、3群でリスクに差はなかった。 著者は、「olezarsenは、現在利用可能な治療薬よりも高い水準までTG値を有意に低下させ、他剤とは異なり、アテローム性動脈硬化発生のリスクのマーカーであるAPOBおよびnon-HDLコレステロール値の有意な低下をももたらした」とまとめ、「6ヵ月の時点では、2つの用量でTG値に対する効果は同等であったが、12ヵ月時には80mg群でより大きな減少を示した。さらなる試験により、とくに重度の高TG血症患者において、高用量がTG値の低下およびその他の脂質値にどの程度の付加的な効果をもたらすかが明らかになるだろう」としている。

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左室駆出率が保たれた急性心筋梗塞、β遮断薬の長期投与は有効か/NEJM

 左室駆出率(LVEF)が保たれている(≧50%)急性心筋梗塞患者では、長期のβ遮断薬投与は投与しなかった場合と比較して、全死因死亡と新たな心筋梗塞の発生の複合主要エンドポイントを改善せず、安全性のエンドポイントには差がないことが、スウェーデン・ルンド大学のTroels Yndigegn氏らが実施した「REDUCE-AMI試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2024年4月7日号で報告された。3ヵ国の無作為化試験 REDUCE-AMI試験は、3ヵ国(スウェーデン、エストニア、ニュージーランド)の45施設で実施したレジストリーベースの前向き非盲検無作為化並行群間比較試験であり、2017年9月~2023年5月に患者を登録した(Swedish Research Councilなどの助成を受けた)。 冠動脈造影と心エコー図検査を受けたLVEF 50%以上の急性心筋梗塞の成人患者5,020例(スウェーデン人95.4%)を登録し、β遮断薬(メトプロロールまたはビソプロロール)の長期経口投与を受ける群に2,508例、β遮断薬の投与を受けない群に2,512例を割り付けた。 主要エンドポイントは、全死因死亡と新規の心筋梗塞の複合とした。全死因死亡、心筋梗塞の個別の発生にも差がない 全体のベースラインの年齢中央値は65歳、女性が22.5%で、ST上昇型心筋梗塞が35.2%であった。リスク因子としては、46.2%で高血圧、14.0%で糖尿病、7.1%で心筋梗塞の既往歴、0.7%で心不全の既往歴を認めた。入院時に11.6%がβ遮断薬の投与を受けていた。 追跡期間中央値3.5年(四分位範囲[IQR]:2.2~4.7)の時点で、主要エンドポイントは投与群の2,508例中199例(7.9%、年間イベント発生率2.4%)、非投与群の2,512例中208例(8.3%、2.5%)で発生し、両群間に有意な差はなかった(ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.79~1.16、p=0.64)。 また、投与群では副次エンドポイントの改善も得られなかった(全死因死亡[投与群3.9%、非投与群4.1%]、心血管死[1.5%、1.3%]、心筋梗塞[4.5%、4.7%]、心房細動による入院[1.1%、1.4%]、心不全による入院[0.8%、0.9%])。喘息/COPDによる入院、脳卒中による入院も同程度 安全性のエンドポイント(徐脈性不整脈による入院、第2度または第3度房室ブロック、低血圧、失神、ペースメーカー植込み)は、投与群で3.4%、非投与群で3.2%に発生した。また、喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)による入院はそれぞれ0.6%、0.6%、脳卒中による入院は1.4%、1.8%にみられた。 著者は、「これらの知見は、いくつかの大規模な観察研究やそれらの研究のメタ解析の結果とも一致する」と述べ、「本試験で使用したβ遮断薬は先行研究に比べ低用量であったが、現在のβ遮断薬治療の実情を反映するものである」とまとめている。

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使用済みの油を使った揚げ物は脳に悪影響を及ぼす

 揚げ物はウエストを太くするだけでなく、脳にも悪影響を及ぼす可能性のあることが、ラットを用いた実験で示唆された。使用済みのゴマ油やヒマワリ油とともに餌を与え続けたラットでは肝臓や大腸に問題が生じ、その結果、脳の健康にも影響が及ぶことが明らかになった。タミル・ナードゥ中央大学(インド)のKathiresan Shanmugam氏は、「使用済みの油が脳の健康に及ぼす影響は、油を摂取したラットだけでなく、その子どもにも認められた」と述べている。この研究結果は、米国生化学・分子生物学会議(ASBMB 2024、3月23〜26日、米サンアントニオ)で発表された。 Shanmugam氏は、「高温で食べ物を揚げる調理法はいくつかの代謝疾患と関連付けられているが、揚げ油の摂取と健康への有害な影響に関する長期的な研究は実施されていない。われわれの知る限り、長期にわたる使用済み油の摂取が第一世代の子孫の神経変性を増加させるという報告は初めてだ」と話している。 研究グループは、食品は油で揚げることによりカロリーが大幅に増加する上に、再利用された揚げ油は、天然の抗酸化物質や健康上の利点の多くを失う一方、有害な化合物を増加させることが多いと説明する。今回、Shanmugam氏らは、揚げ油の長期にわたる摂取の影響を調べるため、雌の実験用ラットを30日にわたって、標準的な餌を与える群、未使用のゴマ油またはヒマワリ油0.1mLと標準的な餌を与える群、加熱使用済みのゴマ油またはヒマワリ油0.1mLと標準的な餌を食べる群の5群に分けた。餌の影響は、最初の子孫(第一世代)まで追跡された。 その結果、加熱使用済みのゴマ油またはヒマワリ油を摂取した群ではその他の群に比べて、総コレステロール、LDLコレステロール、およびTAG(トリアシルグリセロール)の値が有意に増加し、肝機能検査では、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)値とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)値の有意な上昇が認められた。また、これらの群では、炎症マーカーのHs-CRP(高感度C反応性タンパク質)値とLDH(乳酸脱水素酵素)値が有意に上昇し、RT-PCR検査では、抗酸化物質遺伝子SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)とGPX(グルタチオンペルオキシダーゼ)の発現が有意に増加していることも示された。さらに、肝臓および大腸の組織学的解析では、加熱使用済みのゴマ油またはヒマワリ油を摂取した群では細胞構造に有意な損傷が見られた。ダメージを受けた大腸では、特定の細菌から放出される毒素であるエンドトキシンやリポ多糖に変化が生じ、「その結果、肝臓の脂質代謝が著しく変化し、重要な脳のオメガ-3脂肪酸であるDHAの輸送が減少し、これにより、これらのラットとその子孫では、神経変性が引き起こされた」とShanmugam氏は説明している。 Shanmugam氏は、「これらの結果は、使用済みの油の再利用が、肝臓・腸・脳の間の結合に影響を及ぼす可能性を示唆している」と述べている。ただし研究グループは、「これは初期の研究結果であり、動物実験の結果がヒトにも当てはまるとは限らない」と強調している。 研究グループは次の段階として、揚げ物の摂取がアルツハイマー病やパーキンソン病のような脳の病気、不安やうつ病のような気分障害に及ぼす潜在的な影響について研究したいと考えている。また、「これらの結果は、腸内細菌叢と脳の関係に関する新たな研究実施の可能性につながるものでもある」との見方を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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約90%の心血管疾患患者はナトリウムを摂取し過ぎ

 心血管疾患の治療にはナトリウムの摂取を控えることが重要であるが、ほとんどの心血管疾患患者は摂取量を制限できていないようだ。新たな研究で、心血管疾患患者は概して、推奨されている1日当たりのナトリウム摂取量の2倍以上を摂取していることが明らかになった。ナトリウムは、人間の健康に不可欠ではあるが、過剰摂取は血圧を上昇させ、血管にダメージを与え、心臓の働きを悪くする上に、体液の貯留を引き起こして心不全などの症状を悪化させ得ると研究グループは指摘している。米Piedmont Athens Regional病院のElsie Kodjoe氏らによるこの研究結果は、米国心臓病学会(ACC 24、4月6〜8日、米アトランタ)で発表された。 米国の食事ガイドラインでは、心血管疾患患者ではナトリウムの摂取量を1日1,500mg(食塩相当量3.81g)に、健康な人でもナトリウム摂取量を1日2,300mg(食塩相当量5.84g)未満に制限することを推奨している。 この研究では、2009年から2018年の間に国民健康栄養調査(NHANES)に参加した、心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞、心不全、冠動脈疾患、狭心症)患者3,170人の食事データの分析が行われた。対象者は24時間の間に摂取した全てのものを報告していた。 その結果、対象者の89%が1日当たりの推奨量を上回る、1日当たり平均3,096mgのナトリウムを摂取しており、この値は、米疾病対策センター(CDC)が以前に報告した全国の平均摂取量(3,400mg/日)をわずかに下回るに過ぎなかった。収入-貧困比(IPR)の増加は1日当たり46mgのナトリウム摂取量の増加と有意に関連していたが、この関連は年齢、性別、人種、教育レベルで調整すると有意ではなくなった。 これらの結果についてKodjoe氏は、「心血管疾患患者の摂取量と全国平均との間でナトリウム摂取量の差が比較的小さかった。このことは、心血管疾患患者は一般の人と比べて摂取量を積極的に制限しているわけではないこと、また、心血管疾患患者に対して推奨されている摂取量の2倍以上を摂取していることを示唆している」と話している。 Kodjoe氏は、「スーパーマーケットで売られている食品やテイクアウトの食事に含まれるナトリウム量を推定するのは困難だ」と指摘する。さらに同氏は、「ナトリウム量を示す食品ラベルは、その量を推測する助けにはなる。しかし、低ナトリウム食の遵守は、遵守に対する強い動機があるはずの心血管疾患患者にとってさえも極めて困難だ」と話す。そして、「心血管疾患患者が食事療法のガイドラインを守りやすくするためには、一般の人々が食事中のナトリウムの量を推定できるような、より実用的な方法を見つける必要がある」と主張している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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レム睡眠行動障害の男女差が明らかに

 レム睡眠行動障害の臨床的特徴を性別に着目して検討した結果、男性と比べて女性では、睡眠の質が悪く、抑うつ傾向が強いことが明らかとなった。愛知医科大学病院睡眠科の眞野まみこ氏らによる研究結果であり、「Journal of Clinical Medicine」に2月5日掲載された。 レム睡眠中には筋肉の活動が低下しているため、夢を見て、夢の中で行動しても手足や体は動かない。しかし、レム睡眠行動障害では筋肉の活動が抑制されず、夢の中でとっている行動がそのまま現実の行動として現れる。寝ながら殴りかかったり、暴れたりするなどの異常行動を伴い、本人や周囲の人が怪我をする危険もある。 また、レム睡眠行動障害はパーキンソン病やレビー小体型認知症などのリスク因子とされている。発症年齢の中央値は49歳と報告され、加齢とともに増加する。しかし、その特徴の男女差についてはまだ十分に研究されていない。 そこで著者らは、2013年5月~2022年3月に愛知医科大学病院睡眠科を受診し、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を用いてレム睡眠行動障害と診断された患者の臨床的特徴を後方視的に評価した。40歳未満の患者やパーキンソン病の患者などを除外し、研究対象は204人(男性133人、女性71人)となった。睡眠や抑うつなどに関する質問紙調査も行った。 その結果、男性は女性と比べて、年齢が有意に低く(平均67.9±8.0対70.5±8.2歳)、BMIが有意に高い(平均23.5±2.7対22.5±3.3)などの特徴が見られた。主観的評価では、男性と比べて女性の方が、睡眠の質が有意に悪く(ピッツバーグ睡眠質問票の平均得点:5.9±3.8対7.2±3.6)、抑うつ症状が有意に高かった(うつ病自己評価尺度の平均得点:38.0±8.7対41.7±8.5)。一方、男性の方が女性よりも、レム睡眠行動障害の症状は有意に高かった(スクリーニング問診票の平均得点:8.6±2.9対7.7±3.1)。 PSGによる客観的評価では、中途覚醒時間に男性と女性で有意な差は見られなかった(97.3±57.3対89.0±57.0分)。総睡眠時間に占めるノンレム睡眠のステージ1(N1)の割合(48.8±17.7対36.5±18.2%)およびステージ2(N2)の割合(32.1±16.4対45.4±17.4%)には有意差が認められた。最も深い睡眠段階であるステージ3(N3)の割合は、有意差はなかったものの、女性の方が高かった(0.4±1.4対1.0±2.9%)。レム睡眠時間の割合に有意差はなかった(18.7±7.7対17.1±6.6%)。無呼吸低呼吸指数(AHI:15.1±7.6対7.2±7.9回/時)および覚醒反応指数(ArI:29.5±16.3対22.3±11.8回/時)は、男性の方が有意に高かった。 さらに、ロジスティック回帰分析により、性別と睡眠の質および抑うつとの関連が検討された。年齢、BMI、AHI、ArIの差を調整した解析の結果、女性は睡眠の質の悪化(男性と比較したオッズ比2.03、95%信頼区間1.082~3.796)および抑うつ(同2.34、1.251~4.371)と有意に関連していることが明らかとなった。 研究の結論として著者らは、レム睡眠行動障害の女性は男性と比べて、PSGでN2とN3の割合が高かった一方で、主観的な睡眠の質は悪く、さらに抑うつ傾向が強いことも確認されたとしている。また、「これまで、レム睡眠行動障害が睡眠の質や抑うつに及ぼす影響についてはあまり注目されてこなかった。特に、女性患者の睡眠の質と抑うつに留意することは重要である」と述べている。

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抗血小板療法を「軽くする」時代(解説:後藤信哉氏)

 筆者の循環器内科医としてのキャリアは1980年代に始まった。心筋梗塞は入院後も突然死リスクのある恐ろしい疾病であった。抗血小板薬としてアスピリンが標準治療と確立されつつある時代であった。PCIの適応は限局的で、基本的に急性冠症候群にはPCIの選択はなかった。t-PAが急性期予後を改善する薬剤として注目されていた。心筋梗塞発症後も血栓の再発による予後悪化が常に危惧されていた。 心筋梗塞急性期のPCIの普及により、発症後の生命予後は改善した。しかし、ステント血栓症などにより、急変が数週後に起こることがあった。薬剤溶出ステントでは、数ヵ月後のlate stent thrombosisも問題とされた。滅多に起きないけれど起こると重篤な合併症であるステント血栓症の予防のために、アスピリン・クロピドグレルの併用療法が普及した。標準量のクロピドグレルよりも強力なP2Y12阻害効果を有する用量のチカグレロル、プラスグレルも開発され普及した。抗血小板併用療法により重篤な出血合併症である頭蓋内出血も増えた。しかし、臨床医は血栓の予防に注目してきた。 冠動脈ステントの形状、材質、手技も改善した。ステント血栓症のリスクなどは低下してきた。重篤な血栓イベント以上に重篤な出血イベントの低減を目指す方向となった。アスピリンでも、アスピリン・クロピドグレルでも、アスピリン・チカグレロルでも、重篤な出血合併症が増加することは臨床試験の結果から明白であった。アスピリン、クロピドグレルは特許切れしているので、長期の使用を死守したいメーカーもいない。臨床医の方向は急性冠症候群の抗血小板療法を「軽くする」方向に向いた。本研究は、抗血小板療法を「軽くする」時代背景を反映したランダム化比較試験である。 急性冠動脈疾患でもIVUSを入れてしっかりと薬剤溶出ステントを入れた症例を対象として、ステント血栓症の懸念を減らした。90mg bidのチカグレロルは東アジアでは元々多すぎるとされた用量であった。過去の強い抗血小板薬が必要であった時代背景を踏まえて、本研究ではアスピリンを抜いても全体として大きな問題が起きないことを示した。抗血小板療法を「軽くする」時代に相応しい試験であった。

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