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マイナ保険証が患者を救う!?使ってもらうための実例紹介/日本健康会議

 昨年の7月にCareNet.comではマイナンバーカードの健康保険証利用の普及に先駆け、医師のマイナ保険証の取得率や自施設のカードリーダー設置率を調査した。その結果、「マイナンバーカードと保険証の連携手続きが済んでいる」と回答した医師は約6割にのぼり、カードリーダー設置率も6割を超えていた。ところが、国民のマイナ保険証利用率を直近の令和6年3月時点のデータで見ると、病院12.59%、歯科診療所10.27%、医科診療所5.22%、薬局4.17%と、今年12月に紙の保険証が廃止される状況下としてはなんとも心もとない。 そこで、医療機関、保険者、経済界の代表が集う日本健康会議がマイナ保険証の利用促進のため、4月26日に医療DX推進フォーラム『使ってイイナ!マイナ保険証』を開催。武見 敬三氏(厚生労働大臣)、齋藤 健氏(経済産業大臣) 、河野 太郎氏(デジタル大臣)らが「マイナ保険証利用促進宣言」を行い、これを皮切りに5~7月をマイナ保険証利用の集中取り組み月間として総力を挙げるという。 以下では病院、歯科診療所、薬局での具体的な取り組み事例を紹介する。病院の事例(島貫 隆夫氏:日本海総合病院 統括医療監) 床に案内レーンを設けることで、患者の身体状況やマイナンバーカードの所有状況に応じた受付ルートを案内。また、マイナンバーカードと診察券を一体化する取り組みを行っている。このほか、デジタルサイネージによるマイナンバーカードの利便性の紹介、マイナ保険証を持参していない人へのスタッフの声かけ、次回受診時に持参を促すチラシを配布し、利用率の向上に努めている。患者側のメリットとして、マイナンバーカードと診察券を一体化することで携行しているマイナンバーカード1枚で受付を済ませられる、などの声が寄せられた。一方、医療スタッフ側のメリットとして、▽マイナ保険証を利用してもらうことで常に正確な保険資格情報を得ることができる▽医事会計システムに取得情報を取り込むことで入力業務、確認業務が効率的になった▽高額療養費制度の限度額認定証の情報が常にアップデートされるため、口頭同意が不要となり入院時の手続きがスムーズになった、などが挙げられた。歯科診療所の事例(山上 博史氏:やまがみ歯科) 患者の医療情報を患者自身の治療に役立ててもらいたいという思いを持ち、カードリーダーを目立たせる位置に設置し、マイナ保険証持参のポスター掲示、スタッフによる声掛けなどを実施している。マイナ保険証利用によって▽アドレナリン禁忌患者への歯科麻酔薬の選択問題が解決できる▽抜歯時の出血を考慮した抗凝固療薬の服用状況の確認ができる▽鎮痛薬の重複処方を回避できる、といった処置に関わる問題が解消され、さらに受付業務上のメリットとして、▽保険証情報の入力時間の削減▽レセプト返戻数の減少▽保険証返却忘れの解消などを挙げた。薬局の事例(渡邊 大記氏:日本薬剤師会副会長) 主な取り組みとして、マイナンバーカードによる受付を明示、カードリーダー設置場所や投薬台に啓発用ポスターを掲示、待合でデジタルサイネージを活用など、患者の動線に応じた啓発を実践し、持参していない患者には薬剤交付時に啓発用チラシを交付している。薬局での大きなメリットは、患者の負担になりやすい聞き取り時間の短縮である。さらに、マイナンバーカード経由でこれまで見えなかった情報(入院中や院内投薬を含む使用薬剤の情報、特定健診の情報、医師からの診療情報)を把握することで、▽医療機関での院内処方の薬剤情報を確認することで、相互作用を回避できる▽特定健診情報を活用することで、薬剤服用によって期待される治療効果について、より適切な説明・指導を実施できる▽歯科の受診状況(麻酔使用の有無)が確認できる点を挙げた。 最後に、渡辺 俊介氏(日本健康会議 事務局長)は「質の高い医療を確保し、医療の適正化を図るためには医療DXに取り込むことが重要。今回の事例以外にも、東京慈恵会医科大学附属病院ではマイナンバーカード専用の会計レーンを設置し、待ち時間短縮の取り組みを行っている。利用推進と共に高齢者の不安を取り除きながらマイナ保険証が使いやすい環境を整えていきたい」と主催者代表として締めくくった。

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双極性障害や統合失調症における向精神薬治療関連の重篤な薬剤性有害事象

 気分安定薬や向精神薬は、重篤な薬剤性有害事象(ADE)を引き起こす可能性がある。しかし、その発生率は明らかではない。スウェーデン・ウメオ大学のPetra Truedson氏らは、双極性障害または統合失調感情障害の患者における重篤なADEの発生率、リチウムの影響、原因を明らかにする目的で本研究を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2024年4月3日号の報告。 本研究はLiSIE(Lithium-Study into Effects and Side Effects)レトロスペクティブコホート研究の一部として行われた。2001~17年、スウェーデン・ノールボッテン地方で双極性障害または統合失調感情障害と診断された患者を対象に、重大な結果をもたらした、麻酔後ケアユニットまたは集中治療を要した、向精神薬による重篤なADEをスクリーニングした。重篤なADEの発生率は、1,000人年当たりで算出した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者1,521例において41件の重篤なADEが発生し、発生率は1.9件/1,000人年であった。・リチウム投与と因果関係が示唆されるADEとリチウム未投与のADEとの発生率比(IRR)は2.59であり、有意な差が認められた(95%信頼区間[CI]:1.20~5.51、p=0.0094)。・65歳未満と65歳以上の患者におけるADEのIRRは3.36であり、有意な差が認められた(95%CI:1.63~6.63、p=0.0007)。・最も一般的なADEは、慢性リチウム中毒、過鎮静、心臓/血圧関連イベントであった。 本結果を踏まえて著者は、「双極性障害や統合失調感情障害の治療に関連した重篤なADEは、頻繁にあることではないが、まれではない。高齢者やリチウム投与患者では、とくにリスクが高かった。これらの患者において、新規または疑われる身体症状が認められた場合には、血清リチウム濃度を常に確認する必要がある。重篤なADEは、リチウムのみならず、他の気分安定薬や向精神薬でも発生する可能性がある」としている。

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CPOE導入で、尿路感染症入院への広域抗菌薬の使用が減少/JAMA

 尿路感染症(UTI)で入院した非重症の成人患者では、通常の抗菌薬適正使用支援と比較して、多剤耐性菌(MDRO)のリスクが低い患者に対して標準スペクトルの抗菌薬をリアルタイムで推奨するオーダーエントリーシステム(computerized provider order entry:CPOEバンドル)は、在院日数やICU入室までの日数に影響を及ぼさずに、広域スペクトル抗菌薬の経験的治療を有意に減少させることが、米国・カリフォルニア大学アーバイン校のShruti K. Gohil氏らが実施した「INSPIRE UTI試験」で示された。JAMA誌オンライン版2024年4月19日号掲載の報告。米国59施設のクラスター無作為化試験 INSPIRE UTI試験は、MDROのリスクが低い(<10%)と推定されるUTI入院患者に対して標準スペクトル抗菌薬による経験的治療を推奨するCPOEバンドル(フィードバック、教育、リアルタイムのリスクベースCPOEプロンプトから成る)の有効性を、通常の抗菌薬適正使用支援と比較するクラスター無作為化試験(米国疾病管理予防センター[CDC]の助成を受けた)。 米国の59の病院を、CPOEバンドルを使用するCPOE介入群(29施設)または通常の抗菌薬適正使用支援を行う群(30施設)に無作為に割り付けた。対象は、年齢18歳以上の非重症のUTIによる入院患者であった。試験は、18ヵ月間のベースライン期間(2017年4月~2018年9月)、6ヵ月間の段階的導入期間(2018年10月~2019年3月)、15ヵ月間の介入期間(2019年4月~2020年6月)で構成された。 主要アウトカムは、入院から3日間における広域スペクトル抗菌薬の投与日数であり、ICU以外の場所で患者1例当たりに投与された広域スペクトル抗菌薬の総数とした。バンコマイシン、抗緑膿菌薬の投与日数も良好 59の病院に入院したUTI患者12万7,403例(ベースライン期間7万1,991例、介入期間5万5,412例)を解析の対象とした。全体の平均年齢は69.5(SD 17.9)歳、男性が30.5%で、Elixhauser併存疾患指数中央値は4点(四分位範囲[IQR]:2~5)であった。 1,000日当たりの広域スペクトル抗菌薬による経験的治療の日数は、通常の抗菌薬適正使用支援群ではベースライン期間で431.1日、介入期間で446.0日であったのに対し、CPOE介入群ではそれぞれ392.2日および326.0日といずれも少なかった。全体の率比は0.83(95%信頼区間[CI]:0.77~0.89)であり、CPOE介入群で広域スペクトル抗菌薬による経験的治療の日数が有意に短縮した(p<0.001)。 副次アウトカムであるバンコマイシンによる治療日数(全体の率比:0.89、95%CI:0.82~0.96、p=0.002)および抗緑膿菌薬による治療日数(0.79、0.72~0.87、p<0.001)は、いずれもCPOE介入群で有意に短縮した。MDROの増殖は6%未満 安全性アウトカムの評価では、在院日数(全体の率比:0.96、95%CI:0.91~1.01、p=0.21)およびICU入室までの日数(0.98、0.85~1.12、p=0.77)には両群間に有意な差を認めなかった。 著者は、「MDRO関連感染の患者別リスクのデータを使用して、電子健康記録(electronic health record)から標準スペクトル抗菌薬の推奨をリアルタイムに生成することで、UTI入院患者に対する広域スペクトル抗菌薬による経験的治療を安全に削減する可能性が示された」とまとめ、注目すべき点として、試験の終盤に新型コロナウイルス感染症の流行による混乱があったにもかかわらず、ICU入室や在院期間といった安全性のアウトカムには変化がなかったこと、研究に用いたアルゴリズムによりMDROのリスクが低いと推定された患者のうち、MDROの増殖を認めたのは6%未満であったことを挙げている。

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先天性TTP、ADAMTS13の予防的投与で症状発現を抑制/NEJM

 先天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)患者では、遺伝子組み換えADAMTS13の予防的投与後のADAMTS13活性が正常値である101%を達成し、有害事象の大部分は軽度~中等度で、TTPイベントや症状の発現はまれであることが、英国・ロンドン大学病院のMarie Scully氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年5月2日号に掲載された。第III相無作為化2期クロスオーバー試験の中間解析 本研究は、欧州連合(EU)、米国、英国、日本の34施設で実施した第III相非盲検無作為化2期クロスオーバー試験であり、今回の中間解析では、2017年10月~2022年8月に登録した患者の結果が報告された(Takeda Development Center AmericasとBaxalta Innovationsの助成を受けた)。 年齢0~70歳で、分子遺伝学的検査で先天性TTPと確定し、ADAMTS13活性が10%未満の患者を対象とした。スクリーニング時に急性TTPイベントを認めなかった患者を予防コホート、急性TTPイベントを認めた患者をオンデマンドコホートとした。 被験者を、1期目として6ヵ月間、遺伝子組み換えADAMTS13(40 IU/kg体重、静脈内投与)の予防的投与を行う群、または標準治療(血漿由来製剤)の予防的投与を行う群に、1対1の割合で無作為に割り付け、引き続き2期目の6ヵ月間はこれらの治療を入れ替えた。その後、6ヵ月間、全例にADAMTS13を投与した。 主要アウトカムは急性TTPイベントであった。急性TTPイベントが発生した患者はオンデマンド治療を受けられることとした。最も頻度の高いTTP症状は血小板減少症 48例(年齢中央値33歳[範囲:3~68]、女性28例[58%])を無作為化の対象とした。ADAMTS13投与期間後に標準治療を受けた患者が21例、標準治療期間後にADAMTS13投与を受けた患者が27例だった。中間解析時に、32例が試験を完了しており、14例が継続中で、2例は中止した。 急性TTPイベントは、ADAMTS13の予防的投与期間中には発生しなかったのに対し、標準治療の予防的投与期間中には1例で発生した(年間イベント発生率の平均値0.05、95%信頼区間[CI]:0.00~0.14)。 最も頻度の高いTTPの症状は血小板減少症で、1期と2期を通じた年間イベント発生率はADAMTS13群が0.74、標準治療群は1.73であった(推定比:0.4、95%CI:0.3~0.7)。また、乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇(平均年間イベント発生率:ADAMTS13群0.26 vs.標準治療群0.74、推定比:0.4[95%CI:0.1~1.1])、神経症状(0.18 vs.0.29、0.6[0.3~1.2])、腹痛(0.11 vs.0.17、0.6[0.2~2.3])も、標準治療群に比べADAMTS13群で低い傾向を認めた。有害事象は重度7%、試験薬関連9%、中和抗体の発現はない 有害事象は、ADAMTS13投与中に71%、標準治療中に84%で発現した。大部分の有害事象の重症度は軽度~中等度で、重度の有害事象はADAMTS13投与中に7%、標準治療中に14%で発現した。ADAMTS13投与中に頻度が高かった有害事象は、頭痛、片頭痛、上咽頭炎、下痢であった。 担当医が試験薬関連と判定した有害事象は、ADAMTS13投与中に9%、標準治療中に48%で認めた。有害事象による試験薬の中断または中止は、ADAMTS13投与中にはみられなかったが、標準治療中には8例で発生した。ADAMTS13投与中に中和抗体の発現はなかった。 治療後のADAMTS13の最大活性の平均値は、標準療法後が19%であったのに対し、ADAMTS13投与後は101%だった。 著者は、「これらの知見により、遺伝子組み換えADAMTS13は先天性TTP患者に対する有効な予防的治療法であることが示された」としている。

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気候変動により脳卒中による死者数が増加か

 気候変動による気象の激しい変化は、脳卒中による死者数の増加につながっているようだ。新たな研究で、2019年には、厳寒をもたらす寒冷前線や灼熱の熱波が年間50万人以上の脳卒中による死亡に関係していた可能性のあることが示された。中南大学湘雅医院(中国)のQuan Cheng氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に4月10日掲載された。 Cheng氏は、「近年の劇的な気温の変動は、人間の健康に影響を及ぼし、広範な懸念を引き起こしている」と述べ、「われわれの研究では、このような気温の変動は世界中で脳卒中の負担を増加させ、特に高齢者や医療格差の大きい地域においてその影響が強い可能性が示唆された」と同誌のニュースリリースの中で述べている。 研究グループは、「気温は、高過ぎても低過ぎても、脳卒中のリスクを高め得る」と説明する。気温が低いと血管が収縮して血圧が上昇する。高血圧は脳卒中の主なリスク因子である。一方、気温が高いと脱水症状が引き起こされ、血液が濃くなったり血流が悪くなったりする。米国心臓協会(AHA)のデータによると、米国における脳卒中による死者数は、2011年から2021年の間に26%増加している。研究グループは、「この増加の一部は、気候変動と関連している可能性がある」との見方を示している。 今回の研究では、204の国や地域の30年間(1990〜2019年)の健康記録と気象情報のデータを用いて、非至適気温に起因する脳卒中による負荷(死亡、障害)について検討した。気象情報は、0.5度ごとの経線と緯線に囲まれた範囲の気温データを入手し、国や地域ごとの夏と冬の月単位の平均気温、平均最高気温、平均最低気温を計算した。 その結果、2019年には、非至適気温に起因する脳卒中による死者数は52万1,031人、非至適気温に起因する脳卒中による障害調整生存年(DALY)は942万3,649と推計された。この死者数は、AHAが提示している2019年の世界全体での脳卒中に起因する総死者数(660万人)のかなりの部分を占めている。特に、低い気温に起因する脳卒中による死者数は47万4,002人と推定され、高い気温よりもはるかに影響の大きいことがうかがわれた。また、死者数には男女による違いも見られ、年齢標準化死亡率(10万人当たり)は、男性で7.7であったのに対し女性では5.9であった。地理的に見て非至適気温に起因する脳卒中による死亡率が最も高かったのは中央アジアであった。 Cheng氏は、「気温の変動が脳卒中に及ぼす影響を明らかにし、健康格差に対処するための解決策を見つけ出すためには、さらなる研究が必要だ。今後の研究で、化石燃料の燃焼、森林伐採、工業プロセスなど、気候変動の潜在的な原因に対処する効果的な健康政策を特定し、それによりこの脅威の軽減を目指すべきだ」と述べている。

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コロナワクチンに不安のあるがん患者の相談相手は?

 外来で化学療法を受けるがん患者を対象に、新型コロナワクチンに関して不安を感じることの内容やその相談相手などが調査された。その結果、相談相手としてプライマリケア医が最も多いことが明らかとなった。研究グループは、薬剤師が介入できる可能性も示唆されたとしている。これは順天堂大学医学部附属順天堂医院薬剤部の畦地拓哉氏らによる研究であり、「Journal of Pharmaceutical Health Care and Sciences」に3月4日掲載された。 新型コロナワクチンは日本で2021年2月に承認され、がん患者において接種が推奨されている。しかし、がん患者のワクチン接種状況や副反応に焦点を当てた研究はほとんどない。患者はがん治療への影響も含めて多くの不安を抱えるため、医療職の関与が重要となる。 著者らは今回、順天堂大学医学部附属順天堂医院で外来化学療法を行い、2022年10月~2023年1月に薬剤師の服薬指導を受けたがん患者を対象としてオンライン横断調査を行った。無記名の質問紙を用いて、新型コロナワクチンの接種歴や副反応、ワクチン接種に関する不安の内容、相談相手や情報の入手源などを調べた。 調査の回答者は60人(男性16人、女性44人)であり、年齢層は40歳未満が3人、40~49歳が15人、50~59歳が21人、60~69歳が13人、70~79歳が8人。主ながんの種類は、乳がん(21人)、卵巣がん(9人)、肺がん(6人)、膵がん(5人)、子宮がん(5人)などだった。 不安の内容として、「がん治療がスケジュール通りにできないのではないか?」(29人)、「がんなので特別な副作用がでないか?」(24人)などの回答が多かった。一方、調査時点でワクチンを2回以上接種していた人の割合は96.7%(58人)であり、これは同時期の日本全体の接種率よりも高かった。副反応は注射部位の痛みが最も多く、全身症状は発熱と倦怠感が多かったが、がんの治療スケジュールに影響があった人はほとんどいなかった。 ワクチンについての相談相手・情報入手源としては、プライマリケア医(25人)、家族・親族(22人)、インターネット(15人)、テレビ・ラジオ(13人)、友人・知人(12人)の回答が多かった。その他、医療職に関する回答は、プライマリケア医以外の医師と看護師はどちらも4人、病院薬剤師は1人のみで、薬局薬剤師やケアマネジャーの回答はなかった。 さらに、各相談相手について、今後ワクチン接種に不安を感じたときにどの程度相談しやすいかが検討された。6段階の回答を点数化・平均し、医療職間で比較すると、最も相談しやすいのはプライマリケア医(3.55点)、次に看護師(3.20点)だったが、どちらも病院薬剤師(2.85点)との統計的な有意差はなかった。また、病院薬剤師とプライマリケア医以外の医師(2.50点)や薬局薬剤師(2.27点)との間にも有意差は認められなかった。 以上、病院薬剤師は相談相手としての回答自体は少なかったが、プライマリケア医、看護師の次に相談しやすいとされたことについて著者らは、「外来化学療法時の服薬指導や有害事象のモニタリングを通じて築かれた信頼関係による可能性がある」と説明。また、がん患者の多くはプライマリケア医に相談した場合にも、ワクチンに対して不安を抱いていることが示されたという。患者はワクチン接種後の発熱や治療薬との相互作用などを不安に感じるが、「一般集団との間で副反応に有意差がないことを経験として伝えることも不安を和らげる上で有益」とし、薬剤師が介入できる可能性を示す結果だったと総括している。

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コーヒーが早食いによるメタボリックシンドロームを予防?

 早食いは肥満につながるとされ、健康のためにゆっくり食べることが推奨される。そんな中、新たに日本人を対象として行われた研究によると、1日1杯のコーヒーを飲むことで、早食いによるメタボリックシンドロームを予防できる可能性があるという。これは京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学の小山晃英氏らによる研究結果であり、「Healthcare」に3月7日掲載された。 メタボリックシンドロームは死亡やさまざまな疾患のリスクを上昇させる。食事のスピードとメタボリックシンドロームの関連が報告されているが、一度身に付いた習慣を変えるのは簡単なことではない。著者らは今回、カフェインやポリフェノール(クロロゲン酸)を含み、さまざまな健康効果が報告されているコーヒーに着目して、コーヒー摂取量、食事のスピード、メタボリックシンドロームの関連について調べた。 この研究は、「日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)」の京都における追跡調査(2013~2017年)に参加した3,881人(平均年齢57.5±9.9歳、女性2,498人、男性1,383人)を対象に行われた。「ろ過またはインスタントのコーヒー」と「缶、ペットボトル、パック入りのコーヒー」に分けて、コーヒー摂取量、食事のスピード(遅食い、普通、早食い)のほか、生活習慣や既往歴などが質問票により調査された。 対象者のうち、15.3%(595人)がメタボリックシンドロームに該当した。また、早食いに該当した人は女性の33.8%(845人)、男性の39.8%(550人)だった。 年齢や性別、運動・喫煙・飲酒、既往歴による影響を調整して、まずはコーヒー摂取量とメタボリックシンドロームとの関連が検討された。その結果、ろ過またはインスタントのコーヒーでは、摂取量が1日1杯以上の人は1日1杯未満の人と比較して、メタボリックシンドロームのオッズが有意に低く(オッズ比0.695、95%信頼区間0.570~0.847)、男女別に見ても同様だった。一方、缶・ペットボトル・パック入りのコーヒーでは、女性に関して反対の結果が得られ、1日1杯以上の女性はメタボリックシンドロームのオッズが有意に高かった(同2.056、1.110~3.811)。食事のスピードとの関連については、早食いの人は遅食いの人と比べてメタボリックシンドロームのオッズが有意に高く(同1.689、1.227~2.324)、男女とも同様の結果だった。 次に、ろ過またはインスタントのコーヒー摂取量と食事のスピードを組み合わせて、メタボリックシンドロームとの関連が分析された。コーヒー摂取量が1日1杯未満で早食いの人と比べた結果、1日1杯未満で遅食いの人ではメタボリックシンドロームのオッズが有意に低かった(同0.502、0.296~0.851)。一方、コーヒーを1日1杯以上飲む人では、遅食い(同0.448、0.289~0.693)、普通(同0.482、0.353~0.658)、早食い(同0.684、0.499~0.936)のいずれの場合でも、メタボリックシンドロームのオッズが有意に低いことが明らかとなった。 今回の研究について著者らは、コーヒーの詳細(カフェインレスかどうか、砂糖やミルクの有無など)や、飲むタイミングなどは評価していないことを説明。その上で、結論として「ろ過またはインスタントのコーヒーを1日1杯以上飲むことで、早食いによるメタボリックシンドロームの予防に役立つ可能性が示唆された」と述べている。

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手足口病の予防は手洗いで

夏、小児に流行する手足口病〔原因ウイルス〕・エンテロウイルスやコクサッキーウイルス(※アルコール消毒や熱に抵抗性が高いウイルス)〔流行期、おもな患者層、潜伏期間〕・夏季を中心に流行し、4歳くらいの幼児が主体(2歳以下が半数。成人もまれに感染)・約3~5日の潜伏期間の後に発症〔主症状〕・口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2~3mmの水疱性発疹出現(下図参照)。肘、膝、臀部などにも出現する場合もある。・発熱は約1/3にあるが、軽度でほぼ38℃以下。・通常は3~7日で消退し、水疱が痂皮を形成することはない。・まれに幼児に髄膜炎、小脳失調症などの中枢神経系合併症が生ずるので注意が必要。〔治療〕・特異的な治療法はない。 抗菌薬の投与は意味がない。・口腔内病変には柔らかめで薄味の食べ物を推奨。・発熱には通常解熱剤なしで経過観察が可能。・頭痛、嘔吐、高熱、2日以上続く発熱などの場合 には髄膜炎、脳炎などへの進展に注意。・ステロイドの多用が症状を悪化させる示唆あり。〔予防〕・有症状中の接触予防策および飛沫予防策が重要。 とくに手洗いの励行(排便後の手洗いを徹底)!図 手足口病における水疱性発疹国立感染症研究所ホームページより引用・作成(2024年4月25日閲覧)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/441-hfmd.htmlCopyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第210回 GLP-1製剤の品薄状態、危惧する人と安堵する人

以前、こちらで取り上げたGLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1製剤)のダイエット目的の濫用とそれが原因の1つであると思われる供給不安問題。品薄はダイエット目的で使いやすいであろう週1回製剤のセマグルチド(商品名:オゼンピックなど)、デュラグルチド(商品名:トリルシティ)、チルゼパチド(商品名:マンジャロ)に集中していたが、今年1月15日にセマグルチド、4月22日にデュラグルチドが限定出荷から通常出荷に切り替わり、残すはチルゼパチドのみが品薄状態となっている。そして2023年のメガファーマ各社の決算内容が明らかになっているが、この3製剤の中で最も売上高が高いセマグルチドの2型糖尿病に適応をもつ注射薬「オゼンピック」の2023年売上高は138億ドル(日本円換算で2兆1,126億円、ノボ ノルディスク社の決算はデンマーク・クローネでの発表のため、ドル・円の売上高は現行レートで換算)となった。ちなみに同じセマグルチドを成分とし、同じく2型糖尿病の適応をもつ経口薬「リベルサス」は27億ドル(同4,204億円)、肥満症の適応をもつ注射薬「ウゴービ」は45億ドル(同7,025億円)。セマグルチド成分括りにした2023年総売上高は210億ドル(同3兆2,355億円)である。2023年の医療用医薬品の製品別売上高は、世界第1位が免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の250億ドル(同3兆8,911億円)、世界第2位が新型コロナウイルス感染症のmRNAワクチン「コミナティ」の153億ドル(同2兆3,814億円)で、オゼンピックが世界第4位。だが、セマグルチド括りでの売上高は世界第2位となる。日本の製薬企業で考えると、国内第2位のアステラス製薬と第3位の第一三共の2024年3月期決算で発表された売上高の合算を1成分の売上高で超えてしまっているのだ。なんとも驚くべきことである。オゼンピックは2017年末のアメリカでの発売から1年強で、全世界売上高10億ドル以上のブロックバスター入りを果たし、過去4年ほどで全世界売上高は9倍以上に急伸長している。糖尿病治療薬は患者数の多さゆえにブロックバスター入りしやすいが、オゼンピックは糖尿病治療薬としては、ほぼ史上最高売上高を記録している。糖尿病治療薬の売上高を更新、“注射製剤”のなぜこの背景には、これまでブロックバスター入りした糖尿病治療薬がほぼ経口薬であり、それと比べて注射薬のオゼンピックは薬価が高いという事情はあるだろう。しかし、それだけではないはずだ。余計な一言を言えば、オゼンピックの売上高が2型糖尿病患者への処方のみで形成されていると思うウブな関係者はいないだろう。たぶんここには世界的に見ても、ダイエット・美容目的の適応外処方による売り上げが含まれていると考えられる。さて、供給不安はかなり解消されたとは言え、現場ではまださまざまな不都合が生じている模様だ。たとえば薬局薬剤師に話を聞くと、実際の週1回GLP-1製剤の処方箋は1ヵ月分、すなわち製剤としては注射キット4本の処方が多いという。しかし、市中の保険薬局では今でも入庫がスムーズではなく、処方箋受け取り時には2本のみを患者に渡し、残り2本は後日に再来局をお願いするか、配送するケースも目立つという。この背景には通常出荷になっても供給が綱渡りということもあれば、自由診療クリニックへの横流しを警戒して必要量を医薬品卸が適宜配送しているという事情もあるらしい。このようなケースで薬局側が患者宅に配送をする際は、人が直接届けるかクール便を使うという。ある薬剤師は「(薬局への)納入価に配送の人件費やクール便費用を上乗せしたら赤字になる」とため息をついていた。この現状は患者にとっても薬局にとっても迷惑千万な話だろう。この状況の解消まで考えると、完全な通常流通まではまだ時間がかかりそうだ。しかし、あまのじゃくな私は、危惧すべきは完全な通常流通が実現した後ではないか? と考えてしまう。少なくとも現状はGLP-1製剤を必要とする2型糖尿病や肥満症の患者に薬が届かないという最悪の状況は避けられている。ただ、前述のように受け取りに多少の手間暇がかかっている。その一方で、いわば「メディカルダイエット」と称したダイエット・美容目的の自由診療でのGLP-1製剤の適応外処方が極端に廃れたなどという話は、少なくとも私個人はまったく耳にしていない。ネット広告では今でもこの手の広告がじゃんじゃん表示される。余談になるが、どうやら年齢・性別の属性では中高年男性もGLP-1製剤のターゲットにされているらしく、最近は私に対してもこの種の広告と薄毛治療の広告が頻繁に表示される。そして、ご存じのように自由診療での適応外処方を法令で取り締まることはできない。つまるところGLP-1製剤で完全な通常流通が実現するということは、本当に必要な患者が困らないだけではなく、適応外処方の自由診療も栄えるということだ。通常流通を危惧する理由こんなことを考えてしまったのは、先日ある開業医と話をしていて、ため息が出るような事例を聞いてしまったからだ。この医師は都内の繁華街近くで内科クリニックを開業している。そのクリニックに昨春、強い吐き気で路上にうずくまっていたという若い女性が通行人に付き添われて来院したという。「場所柄もあり『昨夜、かなり飲みましたか?』と尋ねても本人は元々飲めないと答えるし、昼時だったので食中毒を疑って直近の食事状況を聞いたら、朝からお茶を飲んだのみで、とくに何かを食べたわけでもないと言うんですよ。そこでピンと来ました」結局、問診の結果、オンラインの自由診療でGLP-1製剤の処方を受けていたことがわかった。医師は女性にGLP-1製剤では悪心・嘔吐の副作用頻度が高いことなどを伝え、中止を促すとともに、最低限の対症療法の処方箋を発行。女性は「こんなに副作用がひどいとは思わなかった。すぐに止めます」と応じたという。ちなみに問診時に身長、体重を尋ねたところBMIは18にも満たなかったとのこと。その後、女性は来院していないため、本当に彼女がGLP-1製剤を止めたかどうかは定かではない。この医師は私に「自由診療の副作用で苦しんでいる患者でも助けなければならないとは考える。でもね、それを保険診療で対応しなければならないのはねえ…」とぼやいた。至極真っ当な指摘である。この話を聞いて私が反応してしまったのは、「朝から何も食べていない」という話だった。痩身願望のある人が我流の食事制限などを行っていることは少なくない。GLP-1製剤は、その性格上、低血糖になりにくいことがウリの一つである。しかし、それはごく普通の食生活を送っていることが前提で、その場合でもほかの血糖降下薬を併用している場合には低血糖は発生している。ということは、今後、自由診療が野放しのまま完全流通が実現すれば、この医師が経験した副作用の悪心・嘔吐レベルだけではなく、重大な低血糖発作の報告事例が増加してしまうのではないだろうか?そしてオンライン診療でかなりの適応外処方が行われている実態を考えれば、車社会である地方都市在住者でも適応外で使われることが増えるだろう。運転の最中に低血糖発作が起きたらどうなるのだろうと考えてしまった。これは私の妄想だろうか? それとも考え過ぎだろうか?

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第73回 使い分けできていますか?「割合」と「率」と「比」【統計のそこが知りたい!】

第73回 使い分けできていますか?「割合」と「率」と「比」物事の現状を観測したり、過去の出来事を調査したりする場合、ある状態の出現や発生の頻度が問題になることがあります。そして、頻度が高いものは、より注意深く、観測や調査が行われます。頻度を定量的に表すために、通常は、「割合」、「率」、「比」のいずれかが用いられますが、これらの言葉は、日常生活の中で自然に使われているものなので、よく似通っており、それぞれの意味やニュアンスの違いを、あまり意識せずに使っていることがほとんどです。しかし、病気の発生原因を解き明かすことを目的とする疫学では、これらの言葉の概念を正確に理解することが必要とされます。「割合」、「率」、「比」を混同すると、疾病の頻度を測定する基準が揺らいでしまいます。今回はこれら「割合」、「率」、「比」について解説します。■疫学とは薬剤に関わらず何かの医療技術や生活習慣が、「病気に効くか効かないのか」「病気の発症に関係があるかないか」を、集団に対して評価する学問のことを「疫学」と言います。1)割合(proportion)「割合」は、分子が分母に含まれる(分子が分母の一部である)ときに使用ができます。たとえば、ある地域住民の成人のうち「ある疾患Aに罹患しているヒトの割合」について調査する場合、住民1万人でそのうちの「ある疾患Aに罹患しているヒトが150人だった」としたら、「ある疾患Aに罹患しているヒトの人数」÷「ある地域住民の成人の人数」「150」÷「1万」=0.015となり、「ある疾患Aに罹患しているヒトの人数150人」は、必ず「ある地域住民の成人の人数1万人」に含まれます。これが「分子が分母に含まれる」ということです。割合は、分子が分母に「すべて含まれる」ことが必須です。当然、分子と分母の単位も同じでなければなりません。割り算によって単位が相殺されるため、割合は必ず単位なし、このことを「無次元」になると言います。割合=分子が分母に含まれる→必ず無次元ポイントは「時間的概念を含まない」という点です。時間を含まない概念ですから、一時点のみで測定を行う横断的研究(調査)でも算出ができます。定点観察でも求められる指標ということになります。そのほか、日常生活で売値1万円の買い物をすると消費税が10%かかって、1万1,000円のお支払いになりますね。このようなとき、普通に消費税率10%と言っていませんか?「消費税率」は、「税金の額÷売値の額」です。同じような事例で100人中60人が「内閣を支持する」というのは、分子の60人は必ず分母の100人に含まれるので、支持率ではなくて、「支持割合」が正解ですが、先述のように日常出てくる「○○率」は実際には割合の意味で使われているものが多いのが実情です。ですから、言葉としては「率」が定着しているので仕方ないですね。本連載の解説においても「割合の検定」「割合の信頼区間」と表現していたのは、こっそりとこの意味に忠実に使っていたのです。ここで大事なことは、「分子が分母に含まれる」ということは、割合には上限と下限があるということになります。「割合」は必ず0から1の間の数値をとる!しかし0から1の間の数値が必ずしも「割合」を表すわけではないので要注意!2)率(rate)「率」は、「一方を1単位だけ変化させたときに、他方がどの程度変化するか」を表します。また、「注目している量÷時間」という式で表されます。単位時間当たりに、注目している量がどの程度あるのか、という意味で使われます。そのため、次元は「注目している量の単位/時間」となります。たとえば、1年当たりの出生率を表現したい場合には、「注目している年に生まれた赤ちゃんの人数÷年」となるので、単位は「人/年」です。「出生率」とは、「年齢や性別の区別なく、その年に生まれた人口1,000人当たりの出生数」のことです。厚生労働省の令和3年の人口動態統計によると、わが国の出生数は81万1,604人で、前年の84万835人より2万9,231人減少し、出生率(人口千対)は6.6となっています。率の分母は時間に関係することが多く「出生率」や「罹患率」などが当てはまります。「時間」以外では、たとえば単位としてタクシー料金なら「距離」、登山やダイビングなら気圧で〇m(メートル)などもあります。このように単位が違うので「1年当たり500人増える」とか「10m当たり1気圧上がる」とか、「割合」と違って「率」は単位の記述が残ることになります。そして、率は違うものの比較になるので、割合と違って0から1になる必要はなく、どんな値でもとり得ます。3)比(ratio)「比」は、「比べる」の文字の通りにありとあらゆるものを比べるために使われます。「男女比」ならば、「男性人数÷女性人数」あるいは「女性人数÷男性人数」となり、どちらも「人」が単位なので、単位を消すことができ、0.5や1.85などと表現されます(「0.5:1.0」や「1.0:1.85」と表現されることもあります)。この場合、明らかに「女性人数」=分子は、「男性人数」には含まれません。つまり、「分子が分母に含まれない」(分子と分母は別のもの)ということです。ただ、分母と分子のどちらが男性で、どちらが女性かがわからなくなってしまうので、あえて単位を残しておくという方法もあります。割合は「全体に占める割合」という意味で使われますが、比は「比べた結果を単純化したもの」という違いがあります。割合:0から1で比と率:どんな値でもとり得る■有病率(prevalence rate)と罹患率(incidence rate)ある時点で、病気にかかっている人が何人いるかを示す指標を「有病率」と言います。通常は、「10万人当たり○○人」などの単位で表現されます。「病気にかかっている人÷全体」なので、この数値も「有病割合」が適切なのですが、慣用的に「有病率」と表現されます。そして、「有病率」と対をなす概念に「罹患率」があります。一定の時間中、「新しく」病気にかかった人が何人いるかを示す指標を言い表します。通常は、「1年間で10万人当たり○○人」などの単位で表現されます。「有病率」とは異なり、こちらは「時間を1単位ずらしたときに、何人新しく病気にかかるか?」を評価しているので、正しい意味での「率」に分類されます。次回は「パラメトリック検定・ノンパラメトリック検定」について学習します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問5 リスク比(相対危険度)とオッズ比の違いは?(その1)質問5(続き) リスク比(相対危険度)とオッズ比の違いは?(その2)統計のそこが知りたい!第52回 相関比とは?

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成人肺炎診療ガイドライン2024

7年ぶりの改訂!肺炎診療に関する最新のエビデンスを掲載科学的根拠に基づいて肺炎診療の流れについて解説した本書が7年ぶりに改訂しました。今回の改訂では、前版2017年のガイドラインの形式を踏襲しつつ、最新のエビデンスを反映し、肺炎診療の流れを網羅的に掲載しています。改訂のポイントとしては、各肺炎の種類ごとの治療選択を更新しているほか、項目として「誤嚥性肺炎」「ウイルス性肺炎」を新規に追加しました。今回も各領域におけるクリニカルクエスチョンに対してシステマティックレビューを実施し、作成委員会にて投票した結果に基づき推奨を提示しています。ぜひ本ガイドラインを活かしていただき、質の高い医療の提供にお役立てください。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見る成人肺炎診療ガイドライン2024定価4,950円(税込)判型A4変型判頁数236頁発行2024年4月編集日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2024作成委員会ご購入はこちらご購入はこちら

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降圧薬を開始・追加した高齢者は〇〇に注意?

 高齢者は転倒リスクの1つである起立性低血圧が生じやすい。そこで、米国・Rutgers UniversityのChintan V. Dave氏らの研究チームは、降圧薬が高齢者の骨折リスクへ及ぼす影響を検討した。その結果、降圧薬の開始・追加は骨折や転倒、失神のリスクを上昇させた。本研究結果は、JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年4月22日号で報告された。 研究チームは、2006~19年に長期介護施設へ入所した米国の退役軍人2万9,648人を対象に、target trial emulationの手法を用いた後ろ向きコホート研究を実施した。50個以上の共変量について1:4の割合で傾向スコアマッチングを行い、降圧薬の開始・追加後30日以内の骨折の発生リスクを評価した。認知症の有無、収縮期血圧(140mmHg以上/未満)、拡張期血圧(80mmHg以上/未満)、降圧薬の使用歴、年齢(80歳以上/未満)別のサブグループ解析も実施した。さらに、入院または救急受診を要する重度の転倒、失神のリスクも評価した。なお、降圧薬の開始・追加は、過去4週間以内に降圧薬を使用していない患者の降圧薬の使用、または過去4週間に使用している降圧薬とは別のクラスの降圧薬の追加と定義した。 主な結果は以下のとおり。・100人年当たりの30日以内の骨折の発生率は、対照群が2.2であったのに対し、降圧薬開始・追加群は5.4であり、有意に骨折リスクが高かった(ハザード比[HR]:2.42、95%信頼区間[CI]:1.43~4.08)。・降圧薬開始・追加群は、対照群と比較して入院または救急受診を要する重度の転倒(HR:1.80、95%CI:1.53~2.13)、失神(同:1.69、1.30~2.19)のリスクが高かった。・サブグループ解析の結果、認知症あり、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧80mmHg以上、過去4週間以内の降圧薬の使用歴なしの集団において、降圧薬開始・追加による骨折リスクの数値的な上昇がみられた。一方、年齢による差はみられなかった。サブグループ別の対照群に対するHRおよび95%CIは以下のとおり。 -認知症あり:3.28、1.76~6.10 -認知症なし:1.61、0.63~4.11 -収縮期血圧140mmHg以上:3.12、1.71~5.69 -収縮期血圧140mmHg未満:1.89、1.01~3.53 -拡張期血圧80mmHg以上:4.41、1.67~11.68 -拡張期血圧80mmHg未満:1.89、1.01~3.53 -過去4週間以内の降圧薬の使用歴なし:4.77、1.49~15.32 -過去4週間以内の降圧薬の使用歴あり:1.27、0.76~2.12 -80歳以上:2.07、1.08~3.95 -80歳未満:2.29、1.10~4.79 本研究結果について、著者らは「降圧薬の開始・追加は、とくに介護施設に入所する高齢者において、骨折リスクを増加させる可能性がある。このことから、降圧薬開始後という骨折リスクの高い期間は、注意深く観察することが勧められる」とまとめた。

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統合失調症患者における入院中の抗精神病薬切り替えと再入院リスク

 米国・コロンビア大学のYihe Nina Gao氏らは、統合失調症入院患者における抗精神病薬の切り替えパターンを調査し、抗精神病薬の切り替えと再入院リスクとの関連を評価した。Schizophrenia Research誌2024年5月号の報告。 対象は、2017~18年にニューヨーク州メディケイド請求より抽出した入院前後の44日間(1ヵ月+猶予期間14日間)で抗精神病薬を処方された統合失調症または統合失調感情障害の入院患者3,295例。初回入院前後に抗精神病薬の継続または変更を行った患者を特定した。患者の特徴に合わせ調整した後、抗精神病薬継続群と切り替え群との比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・入院前後44日間に抗精神病薬が処方された患者のうち、1種類以上の抗精神病薬切り替えが行われた患者は1,599例(48.6%)、主要な抗精神病薬の切り替えが行われた患者は1,215例(36.8%)であった。・抗精神病薬切り替えは、再入院リスクの増加と関連しており(ハザード比:1.21、95%信頼区間:1.09~1.35)、退院後最初の90日間にわずかな集中が認められた。 著者らは「入院中の抗精神病薬の切り替えは、一般的に行われており、退院後の再入院リスクに影響を及ぼす可能性が示唆された」としている。

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術後の静脈血栓塞栓リスク、最も高いがんは?

 がん手術後の静脈血栓塞栓のリスク増加を、がん種別に評価した研究結果が発表された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のJohan Bjorklund氏らによる本研究結果は、JAMA Network Open誌2024年2月2日号に掲載された。 本試験は1998~2016年のスウェーデンの全人口データを用いた後ろ向きコホート研究であった。膀胱がん、乳がん、大腸がん、婦人科がん、腎臓・上部尿路上皮がん、肺がん、前立腺がん、胃・食道がんの8種のがんで手術を受けた全患者を、非がんの一般集団と1対10の割合でマッチさせた。データは2023年2月13日~12月5日に解析された。 主要アウトカムは、術後1年以内の静脈血栓塞栓イベントの発生率であった。1年以内のイベントの絶対リスクおよびリスク差、退院後イベントの時間依存性変数を調整したハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・がん手術群は計43万2,218例で、年齢中央値67歳(四分位範囲[IQR]:58~75歳)、女性68.7%だった。非がん対照群は400万9,343例で、年齢中央値66歳(IQR:57~74歳)、女性69.3%であった。・静脈血栓塞栓症の1年累積リスクは、すべてのがん手術群で対照群よりも高かった。がん種別にみたリスク差は、膀胱がん2.69パーセントポイント(95%信頼区間[CI]:2.33~3.05)、乳がん0.59(0.55~0.63)、大腸がん1.57(1.50~1.65)、婦人科がん1.32(1.22~1.41)、腎臓・上部尿路がん1.38(1.21~1.55)、肺がん2.61(2.34~2.89)、前立腺がん0.57(0.49~0.66)、胃・食道がん2.13(1.89~2.38%)であった。・1年HRは、肺がんで最も高かった(HR:8.89、95%CI:5.97~13.22)。・がん手術群の静脈血栓塞栓リスクは、退院直後にピークに達し、60~90日後にはおおむねプラトーになった。術後30日時点では乳がんを除くすべてのがん手術群におけるHRは対照群の10~30倍だったが、30日を過ぎるとHRはプラトーに達した。しかしながら、前立腺がんを除いて対照群のレベルにまで達することはなかった。深部静脈血栓症についても同様の結果だった。 研究者らは「がん手術群は静脈血栓塞栓症の1年累積リスクが統計学的に有意に増加しており、手術に伴う最初の増加がプラトーになるまでの期間はがん種によって異なることが示唆された。静脈血栓塞栓イベント予防における過剰治療と過小治療の両方を避けるために、手術外傷、疾患の重症度、および全身化学療法への曝露を考慮して、個別のリスク評価と予防策が必要である」としている。

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STEMI合併心原性ショック、循環補助用心内留置型ポンプカテーテルは有用か?/NEJM

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)で心原性ショックを合併した患者の治療において、標準治療に加え循環補助用心内留置型ポンプカテーテルImpella CP(Abiomed製)を使用することにより、標準治療単独と比較して180日全死因死亡リスクは低下したが、有害事象の複合の発現率は増加した。デンマーク・コペンハーゲン大学病院RigshospitaletのJacob E. Moller氏らDanGer Shock Investigatorsが、デンマーク、ドイツおよび英国の計14施設で実施された無作為化比較試験「Danish-German Cardiogenic Shock trial:DanGer Shock試験」の結果を報告した。心原性ショックを呈したSTEMI患者に対する、微小軸流ポンプによる一時的な機械的循環補助の有用性は依然として不明であった。NEJM誌2024年4月18日号掲載の報告。標準治療+Impella CP群vs.標準治療単独群、180日全死因死亡率を評価 研究グループは、STEMIで心原性ショックを呈した18歳以上の患者を、標準治療+Impella CP群(Impella CP群)または標準治療単独群(標準治療群)に無作為に割り付けた。院外心停止から蘇生し、心臓カテーテル検査室到着時に昏睡状態の患者、および明らかな右心不全の患者は除外した。 Impella CP群では、無作為化後ただちにImpella CPを挿入し、合併症が発生しなければ48時間以上可能な限り最高水準の性能でポンプを作動させた。両群とも、血行動態が不安定になった場合は機械的循環補助(Impella 5.0または体外生命維持装置)の追加が可能であった。 主要エンドポイントは、180日時点の全死因死亡(180日全死因死亡率)、安全性エンドポイントは重度の出血、下肢虚血、溶血、デバイス故障および大動脈弁逆流悪化の複合とした。Impella CP群で180日全死因死亡率が26%低下 2013年1月~2023年7月に、計1,211例がスクリーニングされ、360例が無作為化された。無作為化後、同意撤回により5例が除外され、解析対象は355例(Impella CP群179例、標準治療単独群176例)であった(年齢中央値67歳、男性79.2%)。 180日全死因死亡率は、Impella CP群45.8%(82/179例)、標準治療群58.5%(103/176例)であり、ハザード比は0.74(95%信頼区間[CI]:0.55~0.99、p=0.04)であった。 安全性複合エンドポイントのイベントは、Impella CP群で43例(24.0%)、標準治療群で11例(6.2%)に発生し、相対リスクは4.74(95%CI:2.36~9.55)であった。腎代替療法はImpella CP群で75例(41.9%)、標準治療群で47例(26.7%)に導入された(相対リスク:1.98、95%CI:1.27~3.09)。

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肺炎への広域抗菌薬使用、オーダーエントリーシステムで減少/JAMA

 肺炎でICU以外に入院した成人患者において、患者特異的な多剤耐性菌(MDRO)の感染リスク推定に基づき、リスクが低い患者に対し標準スペクトラム抗菌薬を推奨するオーダーエントリーシステム(computerized provider order entry:CPOEバンドル)の使用は、通常の抗菌薬適正使用支援の実践と比較し、広域スペクトラム抗菌薬の経験的使用が有意に減少した。ICU転室までの日数および在院期間に差はなかった。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のShruti K. Gohil氏らが、米国の地域病院59施設で実施したクラスター無作為化比較試験「INSPIRE(Intelligent Stewardship Prompts to Improve Real-time Empiric Antibiotic Selection)肺炎試験」の結果を報告した。肺炎は入院を要する一般的な感染症であり、広域スペクトラム抗菌薬過剰使用の主な要因である。MDROの感染リスクは低いにもかかわらず、臨床上の不確実性が最初の抗菌薬選択につながることがよくあり、肺炎患者に対する抗菌薬の経験的過剰使用を抑制する戦略が求められている。JAMA誌オンライン版2024年4月19日号掲載の報告。CPOEバンドル使用施設vs.通常施設、広域スペクトラム抗菌薬の使用を評価 研究グループは参加施設を、CPOEバンドルを使用するCPOE介入群(29病院)と通常の抗菌薬適正使用支援のみを行う対照群(30病院)に無作為に割り付けた。対象は、肺炎で入院した非重症成人(18歳以上)患者である。 CPOE介入群では、通常の抗菌薬適正使用支援に加え、MDRO肺炎の絶対リスクが低い(10%未満)患者には、入院の最初の3日間(経験的治療期間)は広域スペクトラム抗菌薬の代わりに標準スペクトラム抗菌薬を推奨するCPOEプロンプトの提供、ならびに臨床医の教育とフィードバック報告が行われた。 ベースライン期間を18ヵ月(2017年4月1日~2018年9月30日)、段階的導入期間を6ヵ月(2018年10月1日~2019年3月31日)、介入期間を15ヵ月(2019年4月1日~2020年6月30日)とし、ベースライン期間と介入期間のアウトカムを比較した。 主要アウトカムは、入院の最初の3日間における広域スペクトラム抗菌薬による累積治療日数(患者1人当たりに投与された広域スペクトラム抗菌薬の数×日数として算出。たとえば、最初の3日間に2種類の広域スペクトラム抗菌薬を少なくとも1回ずつ投与した場合は6日間とする)。副次アウトカムはバンコマイシンおよび抗緑膿菌薬による経験的治療など、安全性アウトカムはICU転室までの日数、在院期間などであった。CPOE介入により広域スペクトラム抗菌薬による経験的治療が28.4%減少 試験期間に肺炎で入院した非重症成人患者は9万6,451例(ベースライン期間5万1,671例、介入期間4万4,780例)であった。患者背景は、平均(SD)年齢68.1(17.0)歳、男性48.1%、Elixhauser併存疾患指数中央値は4(四分位範囲[IQR]:2~6)であった。 経験的治療日数1,000日当たり患者1人当たりの広域スペクトラム抗菌薬累積治療日数は、CPOE介入群ではベースライン期間613.9日から介入期間428.5日に減少したのに対して、対照群ではそれぞれ633.0日、615.2日であった。 施設および期間別にクラスタリングした率比(RR)は0.72(95%信頼区間[CI]:0.66~0.78、p<0.001)であり、対照群と比較してCPOE介入群では広域スペクトラム抗菌薬による経験的治療が28.4%(95%CI:22.2~34.1、p<0.001)有意に減少した。副次アウトカムも同様の結果であった。 安全性アウトカムについては、介入期間におけるICU転室までの平均日数(対照群6.5日、CPOE介入群7.1日)および在院期間(それぞれ6.8日、7.1日)に両群で差は認められなかった。

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公園や森林は幼児のメンタルヘルスを育む

 緑地が近くにある環境で育った子どもは、たとえそれが公園や広い裏庭であっても、2〜5歳時に不安や抑うつといった感情的な問題を抱える可能性の低いことが、新たな研究で明らかになった。米国立衛生研究所(NIH)の資金提供を受けて米ノースカロライナ大学フランク・ポーター・グラハム児童発達研究所のNissa Towe-Goodman氏らが実施したこの研究結果は、「JAMA Network Open」に4月10日掲載された。 Towe-Goodman氏は、「われわれの研究結果は、自然の中に身を置くことが子どもにとって良いことを示す既存のエビデンスを裏付けるものだ」と述べる。また、「就学前の子どもが自然とふれあうことの重要性を示唆する研究結果でもある」と付言している。 この研究では、米国41州、199郡に住む2,103人の子ども(男児50.5%)を対象に、居住地周辺の緑地への曝露と小児期初期(2〜5歳)および小児期中期(6〜11歳)の内在化障害(不安、抑うつなど)と外在化障害(攻撃、ルール違反など)の関連を検討した。居住地周辺の緑地は、衛星画像を基にした植生密度を示す指標であるNDVI(Normalized Difference Vegetation Index、正規化植生指標)を用いて評価した。小児期初期の評価を1,469人が平均年齢4.2歳時に、小児期中期の評価を1,173人が平均年齢7.8歳時に受けた。 その結果、親の教育レベルや出産時の年齢、子どもの性別などの諸要因で調整しても、居住地周辺の緑地の多さは小児期初期の不安や抑うつなどの内在化障害の症状の少なさと有意に関連することが明らかになった。一方、小児期中期の子どもでは、居住地周辺の緑地と内在化障害や外在化障害との間に有意な関連は認められなかった。 Towe-Goodman氏は、「将来的には、自然の中でどのような経験をすることが、小児期初期の子どものメンタルヘルスと関係しているのかが検討される可能性がある」とNIHのニュースリリースの中で述べている。同氏はさらに、「家や学校の周囲に緑地を作ったり自然を保護したりすることが、子どものメンタルヘルスにどのような違いをもたらすかも研究すべきだ」と付け加えている。

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いくつかの腸内細菌はコレステロールを低下させる

 腸内細菌叢の組成が、肥満や2型糖尿病、炎症性腸疾患を含む、さまざまな疾患のリスクと関連していることが明らかになってきているが、新たにコレステロール値の低下に関連している可能性のある腸内細菌が見つかった。この細菌は、心血管疾患のリスク低減というメリットをもたらす可能性もあるという。米ブロード研究所のRamnik Xavier氏らの研究によるもので、詳細は「Cell」に4月2日掲載された。論文の上席著者である同氏は、「われわれの発見は、腸内細菌叢の組成をわずかに変えることによって、心血管の健康を改善させるというアプローチのスタートラインと言えるのではないか」と述べている。 これまでの研究で、腸内細菌叢の組成が、トリグリセライド(中性脂肪)値や血糖値などの心血管疾患のリスク因子と関連のあることは分かってきている。ただし、どのような細菌がリスクを左右しているのかは明確になっていない。そこでXavier氏らはまず、米国で長年続けられている大規模疫学研究「フラミンガム研究」の参加者1,429人の糞便サンプルを用いて、腸内細菌と心血管リスク因子との関連を検討した。 その結果、Oscillibacter(オシリバクター)という腸内細菌を多く有している人は、そうでない人に比べてコレステロール値が低い傾向があることが明らかになった。また、ヒトの腸内はこのオシリバクターという細菌が驚くほど豊富であり、平均すると細菌100個に1個の割合で存在することも分かった。 続いて、オシリバクターがコレステロール値にどのような影響を与えるかを調べるために、実験室でオシリバクターを増殖させた上で研究を進めた。すると、この細菌はコレステロールを分解すること、その分解によって生じた副産物は、ほかの細菌によってさらに処理された後、体外に排泄されることが明らかになった。 オシリバクターのほかに、Eubacterium coprostanoligenes(ユーバクテリウム コプロスタノリゲネス)という腸内細菌もコレステロール値の低下に関連していることが見いだされた。この細菌は、コレステロールの代謝に関与していることが既に示されている遺伝子を有しており、オシリバクターとは異なる経路でコレステロール値を低下させると考えられた。さらに、これら2種類の細菌が、コレステロール値の低下作用を互いに高めるように働く可能性も示唆されたという。 腸内細菌は、コレステロール以外にもヒトの健康のさまざまな側面に影響を及ぼしていることが知られている。研究者らは、今回の研究でコレステロール低下の機序の一部が解明できたことで、腸内細菌がヒトの健康に及ぼす多彩な影響のメカニズムの全貌解明に結びつくのではないかと考えている。 ブロード研究所の研究者で論文の筆頭著者であるChenhao Li氏も、「腸内の細菌の相互作用がまだあまり理解されていない状況で、糞便の移植などを試みようとする研究が少なくない。できることなら、特定の細菌や遺伝子にターゲットを絞った研究を深め、その上で腸内環境の体系的な理解を試み、結果としてより良い治療戦略の確立につながることを期待している」と話している。

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Supra-annularの自己拡張弁はバルーン拡張弁に対して狭小弁輪患者のTAVIで優位に立てるか?(解説:上妻謙氏)

 重症大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は、低侵襲かつ有効な治療のため、ほとんどすべてのAS単独手術患者に関して標準的な医療となってきた。今まで自己拡張型バルブでもバルーン拡張型バルブでも外科手術に対する優位性を示してきたが、本論文は北米、欧州、中東の83施設で行われた重症大動脈弁狭窄症を登録して行われたメドトロニックが主導した臨床試験である1)。自己拡張型デバイスであるEvolut Pro/Pro+/FXとバルーン拡張型デバイスであるSAPIEN3/SAPIEN3 Ultraを1:1で無作為化して比較した現役の人工弁によるデータである。 プライマリーエンドポイントは2つ設定されており、臨床複合エンドポイントとして死亡、脳卒中、心不全による再入院において非劣性の検証を行い、血行動態的な人工弁機能不全として平均圧較差20mmHg以上と重度の非構造的人工弁機能不全(重度の人工弁ミスマッチ、中等度以上の大動脈弁逆流、人工弁血栓症、人工弁感染性心内膜炎、人工弁再治療)の複合イベントで優越性の検定が行われた。この人工弁ミスマッチ(PPM:Prosthesis-Patient Mismatch)は、体格に対して十分なサイズの人工弁が植え込まれなかったことを指しており、重度の圧較差残存を残すPPMは予後に関係するといわれてきた2)。 1年の臨床イベントが過去の文献に基づき16%という見積もりで、非劣性マージンが8%、検出力は85%で症例数が700例と計算された。血行動態的人工弁機能不全のイベント率は自己拡張弁が12ヵ月で14%、バルーン拡張弁で36%と見積もられたため、120例で80%のパワーを持つとされた。2021年4月から2022年9月に737例が登録され、ランダマイズされた。さらに無作為化されてから21例が除外され、3例が他の人工弁へクロスオーバーし、1例が治療を受けず、4例が自己拡張型の弁で留置に成功せず、バルーン拡張弁で治療された。最終的に自己拡張型群は350例、バルーン拡張群は365例となった。12ヵ月のフォローアップは98%で行われた。患者の年齢の平均値は80歳で、STSスコアの平均値は3.3%であった。平均の弁輪部面積は381.9±34.1mm2であった。両群間のベースラインは冠動脈疾患、PCI歴を除くとバランスしていた。1年の複合臨床イベントは自己拡張型群9.4%、バルーン拡張型群10.6%と非劣性をp<0.001で達成した(HR: 0.90)。死亡、脳卒中、心不全による再入院のどれも両群で差はなかった。 植え込まれた人工弁のサイズは自己拡張型群では26-mm(68.9%) 、29-mm (28.9%)valveとなり、バルーン拡張型群の20-mm(7.9%)or 23-mm(90.1%)と明らかに異なった。これによってもう1つのプライマリーエンドポイントである1年の血行動態的な複合イベントの率は自己拡張型群9.4%、バルーン拡張型群41.6%と有意に自己拡張型群が少なくなった(p<0.001)。この大きな差は主に、術後の平均圧較差20mmHg以上の割合と重度の人工弁ミスマッチの割合によってもたらされており、実際に12ヵ月後の平均圧較差は7.7mmHgと15.7mmHgと有意に自己拡張型群が低く、有効弁口面積も1.99cm2と1.50cm2と同様に差がついた。カンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)スコアでQOLの評価を行っているが、自己拡張型群が74.9%とバルーン拡張型群の67.8%に対してスコアの改善の割合が高かった。ペースメーカー植え込みの率は30日後に自己拡張型で12.1%とバルーン拡張型群の7.8%に比べて多かった。12ヵ月で有意差は消えているものの14.0%と9.3%と明らかに自己拡張型で多いことが示された。 このスタディ結果は、Supra-annularポジションという本来の自己弁の弁輪部よりも高い位置に人工弁が作成されているメドトロニック製のEvolutシリーズの人工弁が、狭小弁輪の患者においては通常の位置に人工弁があるSapien 3弁よりも有効な弁口面積を確保しやすく、狭小弁輪の患者においては血行動態的に有利であることをHead-to-Headの無作為化試験で示した。ただし、今回の論文では1年の臨床的イベントでは2つの弁は同等であり、今後5年までフォローが続けられる試験であるため、この弁の違いによってもたらされる大動脈弁圧較差の違いによって、心不全など臨床的イベントにどの程度の差が出てくるのかが注目される。一方で、ペースメーカー植え込みを必要とする患者の割合は明らかにEvolutシリーズのほうが高く、右室ペーシングになってしまった場合の予後の違いに与える影響も注目する必要がある。 メーカースポンサーの臨床試験で、オープンラベルデザインであることから、公平なデータ解析が行われていることの信頼性が担保されていることが重要である。研究者たちもそれを意識して、きちんとGCPに準拠した臨床治験レベルで行われた試験体制をsupplementに詳しく記載していることから信用してよいものと思われるが、TAVI弁植え込み後のPCIが大変になるEvolut群で、なぜか冠動脈疾患の既往、PCIの既往率が低いことには留意しておく必要がある。

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日常会話に役立つ第1文型【Dr. 中島の 新・徒然草】(528)

五百二十八の段 日常会話に役立つ第1文型大阪では雨が続いています。もう梅雨が始まったのでしょうか。できればもう少しの間は爽やかな季節を楽しみたいところです。さて、本日は英語の第1文型の話をしたいと思います。そもそも第1文型というのはS+V。つまり主語+動詞からなる文章です。例文を考えてみましょう。He runs.She sings.それぞれ「彼は走る」「彼女は歌う」ですね。まさしく主語+動詞の第1文型。しか~し。関西人の私は突っ込んでしまうわけですよ、ここに。彼が走る?彼女が歌う?何やねん、それ。もうちょっと気の利いた例文はないんかい!なら、これはどうだ。It works.「(何だかんだいっても)それで上手くいくんだ」という意味です。「(その機械は古いけど)きちんと作動するんだ」とか。「(非効率に見えるかもしれないけど)ちゃんと機能するよ」とか。なんだか日本語の日常会話でも使えそうですね。“He runs.” とか “She sings.” よりずっと役に立つはず。で、今回はこういった役立つ第1文型のコレクションを披露しましょう。日常会話にも使えるものです。まずはこれ。It hurts.「痛てえ」という意味ですね。医療従事者なら1日に何度も耳にするはずの会話フレーズ。応用として “Tell me where it hurts.”(どこが痛いか言ってごらん)とか。英語圏の患児だったらちゃんと答えてくれるかな?次、行ってみよう。It matters.「それが大切なんだ」という意味ですね。医療現場で応用するなら、“What matters to you?”(どうされましたか)。初診の患者さんに対する最初の声掛けです。さらに使える第1文型。Who cares?これもいい。「誰が気にするんだ」「誰も気にしないぞ」という意味。周囲の目を気にして1歩踏み出せない人を見たら、力強く “Who cares.” と背中を押してあげましょう。たった2語だけど力強い。そして使える第1文型の5つ目はこれ。Sh*t happens.直訳すると「クソが出る」です。実際は「悪い事は起こるもんだ」という意味で使われるのだとか。まさしく人生の真実をついた力強いメッセージ。自己完結する自動詞を用いた第1文型の面目躍如!インパクトなら誰にも負けない。というわけで “It works.” から “Sh*t happens.” まで、力強く美しい第1文型。読者の皆さま、ぜひお使いください。最後に1句梅雨が来る 第1文型 活用だ

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