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マジックマッシュルーム成分の抗うつ効果は?~メタ解析/BMJ

 数種類のキノコに含まれるセロトニン作動性の幻覚成分であるpsilocybinの抗うつ治療効果を検証するため、英国・オックスフォード大学のAthina-Marina Metaxa氏らは、これまで発表された研究論文についてシステマティック・レビューとメタ解析を行った。うつ症状の測定に自己報告尺度を用いており、以前に幻覚剤を使用したことがある二次性うつ病患者において、psilocybinの治療効果は有意に大きかったという。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、抗うつ薬としてのpsilocybinの治療可能性を最大化する因子を明らかにする必要がある」と述べている。近年、うつ病治療の研究は、古典的な抗うつ薬の欠点がなく強力な抗うつ作用を示す幻覚剤に焦点が当てられており、psilocybinもその1つに含まれる。直近の10年間に、複数の臨床試験、メタ解析、システマティック・レビューが行われ、そのほとんどにおいてpsilocybinに抗うつ効果がある可能性が示されたが、うつ病のタイプ、幻覚剤の使用歴、投与量、アウトカム尺度、出版バイアスなど、psilocybinの効果に作用する可能性がある因子については調査されていなかった。BMJ誌2024年5月1日号掲載の報告。メタ解析で、psilocybinの有効性をプラセボまたは非向精神薬と比較 研究グループは、psilocybinの抗うつ薬としての有効性をプラセボまたは非向精神薬と比較し明らかにするため、システマティック・レビューとメタ解析で検証した。 5つの出版文献データベース(Cochrane Central Register of Controlled Trials、Medline、Embase、Science Citation Index、Conference Proceedings Citation Index、PsycInfo)、4つの非出版・国際的文献データベース(ClinicalTrials.gov、WHO International Clinical Trials Registry Platform、ProQuest Dissertations and Theses Global、PsycEXTRA)、手動検索による参考文献リスト、カンファレンス議事録および要約をデータソースとした。 適格としたのは、臨床的に重大なうつ症状を有する成人に対し単独治療としてpsilocybinが投与され、症状の変化を臨床医による検証済み評価尺度または患者の自己報告尺度を用いて評価した無作為化試験。指示的心理療法を有する試験は、介入条件と対照条件の両方に心理療法の要素が認められた場合に包含した。参加者は、併存疾患(がんなど)に関係なく、うつ病を有する場合に適格とした。 治療効果に作用する可能性のある因子として、うつ病のタイプ(原発性または二次性)、幻覚剤の使用歴、psilocybin投与量、アウトカム尺度のタイプ(臨床医による評価または患者の自己報告)、個人の特性(年齢、性別など)を抽出。データはランダム効果メタ解析モデルを用いて統合し、観察された不均一性および共変量の効果をサブグループ分析とメタ回帰法で調べた。小さなサンプル効果、包含した試験間のサンプルサイズの実質的な差を示すため、Hedges' gを用いて治療効果サイズを評価した。psilocybinに有意な有益性あり、エビデンスの確実性は低い 包含した9試験のうち7試験の被験者436例(女性228例、平均年齢36~60歳)を対象としたメタ解析で、対照治療群と比較したうつ病スコアの変化において、psilocybinの有益性が有意であることが示された(Hedges' g=1.64、95%信頼区間[CI]:0.55~2.73、p<0.001)。 サブグループ解析およびメタ回帰法により、二次性うつ病であること(Hedges' g=3.25、95%CI:0.97~5.53)、Beck depression inventoryのような自己報告うつ病スケールで評価されていること(3.25、0.97~5.53)、高齢で幻覚剤使用歴があること(それぞれのメタ回帰係数:0.16[95%CI:0.08~0.24]、4.2[1.5~6.9])が、症状の大幅な改善と関連していた。 すべての試験は、バイアスリスクが低かったが、ベースライン測定値からの変化は高い不均一性と小規模試験のバイアスリスクと統計学的に有意に関連しており、エビデンスの確実性は低かった。

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CABGで女性の死亡率が男性よりも高い理由とは?

 男性よりも女性の方が冠動脈バイパス術(CABG)の生存率が低いことは以前から知られていたが、その理由は不明だった。こうした中、米ワイル・コーネル・メディスン心臓胸部外科分野教授のMario Gaudino氏らが、その説明となり得る研究結果を報告した。その研究によると、女性は男性よりも手術中に貧血に陥りやすく、それが死亡リスクの上昇につながっている可能性が示されたという。この研究結果の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology」に3月5日掲載された。研究グループは、「この結果を受け、CABGを受ける女性患者の生存率を高める安全策に拍車がかかるはずだ」と述べている。 この研究は、米国胸部外科学会がまとめたデータベース(The Society of Thoracic Surgeons Adult Cardiac Surgery Database)から抽出した、2011年から2022年の間に初めてCABGを受けた成人患者143万4,225人(女性34万4,357人)を対象に、手術(CABG)中の貧血、死亡、および性別の関係を調べたもの。主要アウトカムとした手術死亡率に対する女性の性別の影響を寄与リスク(AR)として算出し、さらに、手術中の貧血がこの関係をどの程度媒介しているかも検討した。 その結果、女性は男性よりも手術中の最低ヘマトクリット値(中央値)が低く(22.0%対27.0%)、手術死亡率が高いことが明らかになった(2.8%対1.7%、P<0.001、調整オッズ比1.36、95%信頼区間1.30〜1.41)。女性の性別のARは1.21(95%信頼区間1.17〜1.24)であったが、手術中の最低ヘマトクリット値で調整すると、1.12(同1.09〜1.16)まで43%低下した。媒介分析からは、手術中の貧血が、女性の性別と関連する手術死亡リスクの38.5%を媒介していることが示された。 こうした結果を受けて研究グループは、出血を最小限に抑えることが、「CABGを受ける女性の手術死亡率を改善し、性差を縮小するための実行可能な目標だ」と主張している。 研究グループによると、CABG中の患者の生命を維持する人工心肺装置では、血液を希釈して体外循環させるため、ある程度の貧血はつきものだと説明する。しかし、女性は概して男性よりも体格が小さく、また、CABG前の赤血球数も男性より少ない傾向があるため、手術中に貧血を起こしやすいのだという。 ただし、この研究は、手術中の貧血が女性の生存率を低下させる主因であることを決定的に証明するために実施されたものではない。それでも研究グループは、女性患者の生存率を向上させるためにもっと多くのことができるはずだと考えている。その例として、「例えば、回路の短い人工心肺装置を使用すれば、ポンプを作動させるのに必要な血液希釈液の量を制限することができる」と研究グループは話している。Gaudino氏は、このような介入の有効性を証明するための臨床試験が「喫緊に必要だ」と述べている。

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免疫不全患者のCOVID-19長期罹患がウイルス変異の温床に

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に1年半にわたって罹患していた免疫不全の男性患者が、ウイルスの新たな変異の温床となっていたとする研究結果が報告された。さらに悪いことに、確認された変異のいくつかは、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に生じていた。これは、ウイルスが現行のワクチンを回避するために進化していることを意味する。アムステルダム大学医療センター(オランダ)のMagda Vergouwe氏らによるこの研究の詳細は、欧州臨床微生物・感染症学会議(ECCMID 2024、4月27〜30日、スペイン・バルセロナ)で発表された。 Vergouwe氏は、「この症例は、免疫不全患者が新型コロナウイルスに長期にわたって感染している場合の危険性を強調するものだ。なぜなら、そうした症例から新たな変異株が出現する可能性があるからだ」と話している。研究グループによると、例えばオミクロン株は、より初期の変異株に感染した免疫不全患者の中で変異を遂げて登場したものと考えられているという。 Vergouwe氏らが報告した症例は、新型コロナウイルスへの感染が原因で2022年2月にアムステルダム大学医療センターに入院した72歳の男性患者に関するもの。この男性患者は、骨髄から白血球が過剰に産生される骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN)オーバーラップ症候群に罹患しており、その治療として行われた同種造血幹細胞移植により免疫不全状態にあった。患者はその後、移植後リンパ増殖性疾患を発症し、リツキシマブによる治療を受けた。これにより、患者の体内には、通常であれば新型コロナウイルスと闘う抗体を産生するB細胞が消失していた。 この患者は、COVID-19に罹患する前に新型コロナワクチンを複数回、接種していた。しかし、入院時の検査で新型コロナウイルスに対するIgG抗体は検出されなかった。定期的なゲノムサーベイランスから、この患者はBA.1系統のオミクロン株(BA.1.17)に感染していることが分かり、ソトロビマブ、抗IL-6抗体であるサリルマブ、およびデキサメタゾンによる治療が行われた。しかしシーケンス解析からは、ソトロビマブ投与後21日目には、患者の体内の新型コロナウイルスは同薬に耐性を持つように変異していたことが判明した。また、治療から1カ月が経過しても、新型コロナウイルスに特異的なT細胞の活性化や抗スパイク抗体の産生がほとんど認められず、患者の免疫システムにはウイルスを排除する能力がないことが示唆された。最終的に、患者は613日にわたって新型コロナウイルスと闘い、その後、血液疾患により死亡した。 この男性の入院中(2022年2月〜2023年9月)に採取された27点の鼻咽頭ぬぐい液の全ゲノムシーケンスからは、現時点で世界的に広まっているBA.1系統と比べると、ACE-2受容体と結合するスパイクタンパク質の部位にL452M/KやY453Fの変異が生じるなど、ヌクレオチドに50以上の新たな変異が生じていることが明らかになった。さらに、スパイクタンパク質のN末端ドメインにはいくつかのアミノ酸の欠失が生じており、免疫回避の兆候が示唆された。 こうした調査結果を踏まえて研究グループは、「この症例では、COVID-19の罹病期間が長引いた結果、宿主の中でウイルスが広範に進化し、新規の免疫を回避する変異体が出現したものと思われる」と述べている。そして、このような症例は、「エスケープ変異株を地域社会に持ち込むリスクをはらんでおり、公衆衛生上の脅威となり得る」と付け加えている。ただし、この男性患者から他の人への新型コロナウイルス変異株の伝播は記録されていないという。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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IBSの治療、食事法の効果が薬を上回る?

 腹痛などの過敏性腸症候群(IBS)の症状を軽減する最善の治療法は適切な食事法であることを示唆する結果が、ヨーテボリ大学サールグレンスカアカデミー(スウェーデン)のSanna Nybacka氏らが実施した臨床試験で示された。同試験では、IBSの症状に対する治療法として2種類の食事法の方が標準的な薬物治療よりも優れていることが示された。詳細は、「The Lancet Gastroenterology and Hepatology」に4月18日掲載された。 IBSは、消化器疾患の中で最も高頻度に生じる上に、治りにくい疾患の一つだ。米国人のIBSの有病率は約6%で、患者数は男性よりも女性の方が多い。IBSの症状は、腹痛、腹部膨満感、下痢、便秘などの無視しがたいもので、死に至る場合もある。IBSに対しては、食事の改善のほか、便秘薬や下痢止め薬、特定の抗うつ薬、腸管内の水分の分泌を促し腸の動きを活発にする作用があるリナクロチドやルビプロストンなどの薬物による治療が行われる。 この試験で標準的な薬物治療と比較された食事法の一つは、FODMAPと呼ばれる糖質の摂取を制限する低FODMAP食だ。FODMAPは特定の乳製品や小麦、果物、野菜に含まれている、小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすい糖類のことである。もう一つの食事法は、食物繊維を多く摂取しつつ炭水化物の摂取は抑える糖質制限食だった。Nybacka氏は、「時間をかけて食べる、1回の食事の量を減らし食事の回数を増やす、コーヒーや紅茶、炭酸飲料、アルコール、脂肪分や香辛料の多い食品を制限するなど、食生活をよりシンプルなものに変えることを支持する研究もある。また、糖質制限食によってIBSの症状が軽減した患者がいるとの報告もあることから、いくつかの治療選択肢を比較する臨床試験を計画することにした」と説明している。 この臨床試験は、サールグレンスカアカデミーの外来クリニックで、中等度から重度のIBSに罹患している18歳以上の294人(女性241人、男性53人、平均年齢38歳)を対象に実施された。試験参加者は4週間にわたって、1)主な症状に応じて8種類のIBS治療薬のうちの1種類を投与する群(薬物治療群、101人)、2)米、ジャガイモ、キヌア、小麦を含まないパン、乳糖を含まない乳製品、魚、卵、鶏肉、牛肉、さまざまな果物や野菜などの食品から成る低FODMAP食を摂取し、IBS患者向けに伝統的に推奨されている食事法のアドバイスを受ける群(低FODMAP食群、96人)、3)牛肉、豚肉、鶏肉、魚、卵、チーズ、ヨーグルト、野菜、ナッツ類、ベリー類などの食品を中心とした低糖質かつ高脂質の食事を摂取する群(低糖質食群、97人)の3群のいずれかにランダムに割り付けられた。 その結果、介入から4週間後、低FODMAP食群の76%(73/96人)と、低糖質食群の71%(69/97人)で症状の有意な改善が認められたのに対し、薬物治療群で改善が認められたのは58%(59/101人)にとどまっていた。また、症状が改善した患者のうち低FODMAP食群と低糖質食群に割り付けられた患者では、薬物治療群に割り付けられた患者と比べて症状の改善度が大きかったという。 本研究には関与していない、米ミシガン大学医学部の消化器専門医であるWilliam Chey氏は、「この研究では、低FODMAP食がほとんどの患者のIBS症状を軽減することが示された。ただ、低FODMAP食は極めて厳しい制限を伴うことに加え、自分に合わない食品を見極めるために慎重にFODMAPが含まれる食品を一つずつ試す必要があるため、この食事法を続けるのは容易ではない」とニューヨーク・タイムズ紙に語っている。 Chey氏は、この試験によって「薬物治療と比較して食事法の効果は少なくとも同等であり、より優れている可能性もある」という臨床で多くの医師が経験していることを裏付ける「リアルデータ」が得られたと話す。その上で、今回の試験は、スウェーデンの単施設で比較的小規模な集団を対象に実施されたものであることを指摘し、「今後、より大規模かつより多様な集団で結果を検証する必要がある」と付け加えている。

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患者負担増の長期収載品は1,095品目、注意点は?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第131回

厚生労働省は2024年4月19日付で「長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養の対象医薬品について」という事務連絡を発出しました。この中には、後発医薬品のある先発医薬品(いわゆる長期収載品)を使用した場合に患者負担額を引き上げる品目のリストが掲載されています。今回リストに掲載されたのは全1,095品目で、10月からスタートします。対象や負担の割合などについては昨年から議論されていた内容とほとんど変わりありませんが、改めて確認していきましょう。後発医薬品が上市から5年以上経過したもの、または後発医薬品の置換率が50%以上となった薬剤が対象で、それが4月に事務連絡で発出された1,095品目です。また、患者さんが先発医薬品を選んだ場合、最も価格が高い後発医薬品との差額の25%を保険適用から外し、その分については自己負担になります。その「差額の25%」について、気を付けなればならないポイントが2点あります。1点目は、「最も価格が高い後発医薬品との差額」というのが薬剤によってさまざまなので、一概にどのくらい負担が増えますよと先に伝えるのが難しいという点です。10月以降に来局された患者さんに対してそれぞれ対応する必要があります。2点目は、その「差額の25%」については、1割負担の患者さんも3割負担の患者さんも同額の負担増になります。もっと言うと、0割負担の患者さんでも同額の自己負担が発生します。負担割合が少なく、いつも先発医薬品を好んで使用する患者さんではしっかりと説明する必要がありそうです。また、いくつか除外されるケースもあり、「医療上の必要があると認められる」「後発医薬品の提供が困難」な場合に加えて、「後発医薬品への置き換え率が1%未満」の薬剤も除外されます。「後発医薬品の提供が困難」というのは仕方ないとしても(むしろ設定してくれてよかった…)、「医療上の必要性」がどのような場合に認定されるか、というのは今後の様子見でしょう。10月以降も先発医薬品をローラー的に変更不可とする医師がいたとしたら、この大きな流れに背くことになりちょっと要注意かなと思います。一般向けにはヒルドイドの自己負担増がピンポイントで報じられているようですが、降圧薬や抗認知症薬などのその他の医薬品も対象になってるんだけどな…とちょっと不安になります。10月までに行政から働きかけをしてしっかり周知してほしいなと思います。

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職場巡視のコツ:オフィス編【実践!産業医のしごと】

産業医として働き始めると、職場巡視の役割に戸惑うことがあるかもしれません。職場巡視とは、産業医が事業場を見回り、業務内容や作業環境が労働者に有害な影響を与える恐れがないかを確認することです。労働安全衛生規則では、産業医は月に1回、職場巡視を実施することが義務とされています。私自身も、最初は医師がオフィスを巡回する意義に疑問を持ち、その役割に違和感を覚えていました。しかし、今ではこの活動は産業医の職務の“核”となる、重要な業務の1つだと認識しています。本稿では、オフィス環境における職場巡視の要点を解説します。職場巡視は産業医にとっても意義深い職場巡視は法令により定められた産業医の職務です。適切な職場巡視は、見過ごされがちなリスクを発見し改善することで、職場の生産性向上と従業員の満足度向上に寄与します。一方で、職場を直接観察することは、産業医自身にとっても非常に有意義な経験です。嘱託産業医として、健康管理室での月1回の面談だけで、従業員の働く環境や職務内容を十分に把握することは困難です。職場巡視で従業員の表情や働く環境を目の当たりにすることで職場に関する理解を深め、貴重な情報を得ることができます。また、休職者対応をしているタイミングであれば、職場復帰後の環境をよりリアルに想像でき、精緻な就業判断を下すことができます。職場巡視ではテーマを決める職場巡視は、「テーマ」を設定して行うことをお勧めします。確認すべきことは多く、全項目を毎回チェックすることは非現実的であり、巡視の質を低下させる原因にもなります。「オフィスレイアウトの変更」「直近で発生した労働災害」など、特定のトピックに焦点を当てることで、漫然としがちなオフィスの職場巡視を、目的意識を持って行えるようになります。そうした大きなトピックがないときでも、「避難経路」「転倒防止対策」「腰痛対策」など、都度テーマを決めておくことで職場巡視の焦点が定まります。オフィスの職場巡視で確認すべきポイントオフィスの職場巡視で確認すべきポイントは、大きく分けて「作業環境」と「災害(安全)対策」です。具体的なチェック項目を以下に記載します。画像を拡大する職場巡視結果の指摘の方法にもポイントがある職場巡視の結果を指摘する際にもポイントがあります。たとえば、「たこ足配線が危ない」と伝えるだけでは、何がどう危ないのか、どう改善すればよいのかまでは伝わりません。「1つのコンセントの差込口の消費電力は1,500ワットまでです。それ以上になると火災の危険が高まります。たこ足配線を解消して1,500ワット以下にしてください」と伝えれば、指摘を受けた側も理解しやすいでしょう。リスクと望ましい状態を、具体的に示すようにしましょう。さらに、改善策については、産業医よりも現場に知恵があるため、現場も巻き込んで検討するようにしましょう。産業医はしばしば理想的な提案をしがちですが、ここでは実現可能な対策を提案することが重要です。改善後は安全衛生委員会や職場巡視で結果を確認し、必要に応じて再提言を行います。オンライン職場巡視は認められていない現在、オンラインでの職場巡視は認められていません。私自身の実感でも、オンラインでは職場の雰囲気や従業員の様子を観察し、その空気を感じ取ることは難しいと思います。職場巡視は五感をフルに活用して行うべき活動であり、実際に職場に足を運び、衛生管理者や職場関係者とコミュニケーションを取ることで、見落とされがちな問題を発見しやすくなります。産業医は「職場に足を運ぶ姿勢」を大切にしましょう。職場巡視は、産業医にとって職場の安全と健康を守るうえで不可欠な活動であり、産業医自身にとっても有意義な情報を得られる機会です。この役割を積極的に果たすことを通じて、職場改善におけるリーダーシップを発揮し、従業員がより健康で安全な環境で働けるよう貢献しましょう。

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英語で「アレルギーはありますか」は?【1分★医療英語】第130回

第130回 英語で「アレルギーはありますか」は?《例文1》Are you allergic to any medication?(薬に対するアレルギーはありますか?)《例文2》What kind of reaction did you have?(どのような反応がありましたか?)《解説》医師でも看護師でも、患者さんにアレルギーを確認することが多いでしょう。聞き方はシンプルで、“Do you have any allergies?”というフレーズがよく使われますが、ポイントは発音です。日本語的に「アレルギー」と発音してしまうと、まず伝わりません。“allergy”は、カタカナにすると「アァレジー」というような発音になります。複数形では「アァレジーズ」です。最初の「ア」にアクセントがあることに注意しましょう。また、「○○にアレルギーがある」と言うときには、“allergic”という形容詞を使って、“be allergic to ○○”という表現を使うと便利です。ただし、形容詞になった際は「ア」ではなく「レ」にアクセントが来るのでその点も気を付けます。アレルギーがあると言われた場合には、“What kind of reaction did you have?”(どのような反応がありましたか?)や“When did that happen?”(それはいつ起こりましたか?)というような追加質問をして、詳細な情報を得ましょう。なお、日本で毎年春に問題になる花粉症は、英語で“pollen allergy”もしくは“hay fever”といいます。一緒に覚えておくと便利です。講師紹介

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身体診察【とことん極める!腎盂腎炎】第2回

CVA叩打痛って役に立ちますか?Teaching point(1)CVA叩打痛があっても腎盂腎炎と決めつけない(2)CVA叩打痛がなくても腎盂腎炎を除外しない(3)他の所見や情報を合わせて総合的に判断する1.腎盂腎炎と身体診察腎盂腎炎の身体診察といえば肋骨脊柱角叩打法(costovertebral angel tenderness:CVA tenderness)が浮かぶ方も多いのではないだろうか。発熱、膿尿にCVA叩打痛があれば腎盂腎炎と診断したくなるが、CVA叩打痛は腎臓の周りの臓器にも振動が伝わり、肝胆道や脊椎の痛みを誘発することがあるため、肝胆道系感染症や化膿性脊椎炎を腎盂腎炎だと間違えてしまう場合がある。身体所見やその他の所見と組み合わせて総合的に判断する必要がある。2.CVA叩打痛と腎双手診CVA叩打痛は腎盂腎炎を示唆する身体所見として広く知られている。図1のように、胸椎と第12肋骨で作られる角に手を置き、上から拳で叩打し、左右差や痛みの誘発があるかどうかを観察する。なお腎臓は左の方がやや頭側に位置しているため、肋骨脊柱角の上部・下部とずらして叩打痛の確認をする。もし左右差や痛みがあれば腎盂腎炎を示唆する所見となるが、第1回で紹介したとおり、所見がないからといって腎盂腎炎を否定することはできず、ほかの所見と合わせて診断を考える必要がある。画像を拡大するその他の身体診察として腎双手診がある。腎臓のある側腹部を両手で挟み込み、痛みを生じるかどうかを確かめる診察であり尿管結石でも陽性となり得るが、腎盂腎炎においてCVA叩打痛陰性であっても腎双手診は陽性となる症例も散見される。CVA叩打痛は脊椎の痛みを反映している場合もある一方で腎双手診(図2)は大腸の病変を触れている可能性もある。CVA叩打痛が圧迫骨折などの脊椎の痛みを誘発していないか確かめるために、棘突起を押して圧痛を生じないか確かめることが有用である。棘突起を押して圧痛を生じるようであれば、椎体の病変の可能性が高くなる。画像を拡大するこのように、腎臓の位置は肉眼では把握しづらく、痛みを生じているのが腎臓なのか、その周囲の臓器なのかわかりにくい。裏技のような方法になるが、エコーで腎臓を描出しながらプローブで圧痛が生じるか確認する、いわばsonographic Murphy’s signの腎臓バージョンもある1)。3.自身が体験した非典型的なプレゼンテーション最後に自身が体験した非典型なプレゼンテーションを述べる。糖尿病の既往がある90歳の女性で、転倒後の腰痛で体動困難となり救急搬送された。身体診察・画像検査からは腰椎の圧迫骨折が疑われ、鎮痛目的に総合診療科に入院となった。その夜に39℃台の発熱を生じfever work upを行ったところ、右の双手診で側腹部に圧痛があり、尿検査では細菌尿・膿尿を認めた。圧迫骨折後の尿路感染症として治療を開始し、後日、尿培養と血液培養より感受性の一致したEscherichia coliが検出された。本人によく話を聞くと、転倒した日は朝から調子が悪く、来院前に悪寒戦慄も生じていたとのことだった。ERでは腰痛の診察で脊椎叩打痛があることを確認していたが、その後脊椎を一つひとつ押しても圧痛は誘発されず、腎双手診のみ再現性があった。腰椎圧迫骨折は陳旧性の物であり、急性単純性腎盂腎炎後の転倒挫傷だったのである。転倒後という病歴にとらわれ筋骨格系の疾患とアンカリングしていたが、そもそも転倒したのが体調不良であったから、という病歴を聞き取れれば初診時に尿路感染症を疑えていたかもしれない。この症例から高齢者の腎盂腎炎は転倒など一見関係なさそうな主訴の裏に隠れていること、腰痛の診察の際に腎双手診は脊椎の痛みと区別する際に有用であることを学んだ。4.腎盂腎炎診断の難しさ腎盂腎炎の診断は難しい。それは、腎盂腎炎の診断が非典型的な症状、細菌尿・膿尿の解釈、側腹部痛の身体所見、他疾患の除外など、さまざまな情報を統合して総合的に判断しなければならないからである。正しい診断にこだわることはもちろん重要だが、腎盂腎炎がさまざまな症状を呈し、また、どの身体所見も腎盂腎炎を確定診断・除外できないことを念頭に置き、柔軟に対応することが必要なのではないだろうか。たとえ典型的な症状や所見が揃っていなくても、できる限り他疾患の可能性について考慮したうえで、患者の余力も検討し腎盂腎炎として抗菌薬を開始することが筆者はリーズナブルであると考える。重要なことは治療を始めた後も、経過を観察し、合わない点があれば再度、腎盂腎炎の正当性について吟味することである。多種多様な鑑別疾患と総合的な判断が求められる腎盂腎炎は臨床医の能力が試される疾患である。1)Faust JS, Tsung JW. Crit Ultrasound J. 2017;9:1.

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第214回 過度の運動はいうほど有害ではなくむしろ寿命を延ばしうる

過度の運動はいうほど有害ではなくむしろ寿命を延ばしうる先週5月6日はヒトの運動能力の限界の1つの突破が樹立された記念日で、とりわけ医師にとっては感慨深い日かもしれません。その記録とは1マイル(約1,600m)を4分未満で初めて走ったことです(1kmを2分30秒未満で走ったことに相当)。その偉業を達成したのは他でもない医学生でした。70年前の1954年5月6日に当時25歳でアスリートでもあったRoger Bannister(ロジャー・バニスター)氏は学び舎のオックスフォード大学の競技場で1マイルを3分59.4秒で走り、1マイルを4分以内で初めて走った人となりました。運動習慣は心臓の健康を保つのに役立ちますが、1マイルを4分以内で走るなどの負荷の大き過ぎる運動は心臓にはかえって毒らしいことも示唆されています。とはいうものの、長距離自転車レース(ツール・ド・フランス)出場者やオリンピックのボート選手などの極度の運動/生理能力を有する持久運動選手の寿命はより長いことを示す報告もあります。Bannister氏を初めとすると1マイル4分以内走者はどうなのでしょうか? それを調べたカナダのアルバータ大学のStephen Foulkes氏らの新たな解析結果がBritish Journal of Sports Medicine誌に先週掲載されました1)。Bannister氏以後1,750人超が1マイル4分未満走者の名簿にいまや名を連ねており、その最初から20人目までを調べた2018年の報告がFoulkes氏らを新たな研究へと駆り立てました。6年ほど前のその先立つ報告によると、それら1マイル4分未満走者20人中18人は80年以上生きており、世間一般の寿命を平均して12年上回っていました2)。かつて不可能とされていたほどの極度の運動に取り組んだところで、命の長さや質は害されないことをその結果は支持しています。Foulkes氏らはその観察結果に触発され、1マイル4分未満走者と世間一般の生存年数をより確かな統計的手法を用いて比較してみました。Foulkes氏らは解析人数も増やし、最初から200人目までの1マイル4分未満走者を調べました。全員が男性で、生まれは1928~55年です。それら200人のうち昨年末までに死亡した60人の平均死亡年齢は73歳、存命の140人の平均年齢は77歳でした。生まれた年や場所を考慮して計算したところ、1マイル4分未満走者は世間一般に比べて平均4.7年長生きでした。1マイル4分未満の初の達成が1950年代だった人はとくに長生きで、世間一般より9.2年長く生きています。1マイル4分未満の初の達成が1960年代と1970年代だった人は世間一般に比べてそれぞれ5.5年と2.9年長生きでした。その違いはおそらく世間一般が時代と共により健康になっていることによるのかもしれません3)。結論として、今回の結果は過度の運動で寿命が損なわれうるという見解に反するものであり、エリート選手レベルさえも含む運動の有益さを支持していると著者は言っています。参考1)Foulkes S, et al. Br J Sports Med. 2024 May 10. [Epub ahead of print]2)Maron BJ, et al. Lancet. 2018;392:913.3)Extreme exercise may help you live longer without stressing your heart / NewScientist

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日本人における果物や野菜の摂取と認知症リスク~JPHC研究

 果物や野菜には、ビタミンC、α-カロテン、β-カロテンなどの抗酸化ビタミンが豊富に含まれている。果物や野菜の摂取が認知症リスクに及ぼす影響を評価したプロスペクティブ観察研究はほとんどなく、結果には一貫性が認められていない。筑波大学の岸田 里恵氏らは、日本人における果物や野菜の摂取と認知症リスクとの関連を調査した。The Journal of Nutrition誌オンライン版2024年4月8日号の報告。 2000~03年(ベースライン時)に50~79歳の4万2,643例を対象としたJPHCプロスペクティブ研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study)においてフォローアップ調査を実施した。食事による果物および野菜の摂取量、関連する抗酸化ビタミン(α-カロテン、β-カロテン、ビタミンC)の摂取量は、食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いて収集した。認知障害の診断は、2006~16年の介護保険制度における認知症に係る日常生活障害の状況に基づいて行った。認知障害に関するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、潜在的な交絡因子で調整した後、エリア層別Cox比例ハザードモデルを用いて推定した。摂取量の最低四分位と比較した最高四分位の多変量HRを算出した。 主な結果は以下のとおり。・4,990例で認知障害が認められた。・男女ともに、果物および野菜の総摂取症と認知症リスクとの間に逆相関が認められた。 【男性】多変量HR:0.87(95%CI:0.76~0.99)、p-trend=0.05 【女性】多変量HR:0.85(95%CI:0.76~0.94)、p-trend=0.006・抗酸化ビタミンの中でビタミンCの摂取量は、男女ともに、認知症リスクとの逆相関が認められた。 【男性】多変量HR:0.71(95%CI:0.61~0.84)、p-trend<0.001 【女性】多変量HR:0.76(95%CI:0.67~0.86)、p-trend<0.001 著者らは、「果物や野菜、ビタミンCの食事による摂取は、男女ともに認知障害のリスク低減につながる可能性が示唆された」としている。

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乳がんの術後補助療法、アスピリンは予後を改善するか/JAMA

 高リスクの転移のない乳がんの術後補助療法において、アスピリンの連日投与はプラセボと比較して、乳がんの再発リスクや生存率を改善しないことが、米国・ダナファーバーがん研究所のWendy Y. Chen氏らが実施した「Alliance A011502試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年4月29日号で報告された。北米534施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 Alliance A011502試験は、アスピリンが乳がん生存者における浸潤がんのリスクを低減するかの検証を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2017年1月~2020年12月に米国とカナダの534施設で参加者を登録した(米国国防総省乳がん研究プログラムなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18~69歳、標準治療を受けたERBB2陰性乳がんで、局所療法と化学療法を終了しており、内分泌療法を継続している可能性のある患者であった。被験者を、アスピリン300mgを5年間、1日1回連日投与する群、またはプラセボ群に無作為化に割り付けた。 主要評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)とし、無作為化の時点から遠隔再発、局所領域再発、同側または対側の乳がんの発生、2次がん(乳房以外の浸潤がん)、全死因死亡のいずれかが発生するまでの期間と定義した。iDFSイベントに有意差はないもののアスピリン群で多い 3,020例を登録した時点で、初回の中間解析においてプラセボ群と比較したアスピリン群のiDFSのハザード比(HR)は1.27(zスコア=-1.64)と、事前に規定された無効の境界値(HR:1.03[zスコア<-0.192])を超えていたため、データ・安全性監視委 員会により試験の無効中止が勧告された。 アスピリン群が1,510例、プラセボ群も1,510例で、全体の年齢中央値は53歳、男性が16例(0.5%)含まれた。 追跡期間中央値33.8ヵ月(範囲:0.1~72.6)の時点で、iDFSイベントはアスピリン群が141件、プラセボ群は112件で発生した(HR:1.27、95%信頼区間[CI]:0.99~1.63、p=0.06)。iDFSイベントのうち、対側乳がんを除き、死亡、浸潤性疾患(遠隔、局所領域)、新規の原発性イベントはアスピリン群で多かったが有意差は認めなかった。乳がんアウトカムの改善を目的に常用を推奨すべきではない 死亡は、プラセボ群の52例に比べアスピリン群は63例と多かったが、全生存率には有意な差はなかった(HR:1.19、95%CI:0.82~1.72、p=0.36)。81例(70.4%)は乳がんによる死亡だった(アスピリン群46例、プラセボ群35例)。 Grade3以上の有害事象は275件発生し、アスピリン群が130件(9.3%)、プラセボ群は145件(10.2%)であった。このうちGrade4以上は35件で、それぞれ15件(1.1%)および20件(1.4%)だった。アスピリン群では、Grade4の血液毒性を1件(血小板減少)、Grade5の心イベントを2件(心筋梗塞、心停止)、Grade4の血管の有害事象を1件(血栓塞栓イベント)で認めたが、Grade4以上の消化器毒性は発現しなかった。 著者は、「米国では、推定2,900万人がアスピリンを毎日服用しており、その半数は心血管疾患を有していない可能性がある。早期乳がんの病歴がある患者には、乳がんのアウトカムの改善を目的にアスピリンの常用を推奨すべきではない」としている。

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2型DMへのGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬、併用vs.単剤/BMJ

 2型糖尿病患者では、GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の併用は、これらの薬剤クラスの単剤投与と比較して、主要有害心血管イベント(MACE)および重篤な腎イベントのリスクを低減することが、英国・バーミンガム大学のNikita Simms-Williams氏らが実施したコホート研究で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年4月25日号に掲載された。英国のコホート研究 本研究では、2013年1月~2020年12月に集積した英国の2型糖尿病患者の2つのコホートのデータを使用した(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成を受けた)。 1つは、GLP-1受容体作動薬で治療を開始し、SGLT2阻害薬を追加した6,696例(平均年齢56.7歳、男性54.5%)、もう1つはSGLT2阻害薬で治療を開始し、GLP-1受容体作動薬を追加した8,942例(57.6歳、52.3%)のコホートであった。併用群は、個々の基礎治療薬(GLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬の単剤投与)とその投与期間が同じ患者と、傾向スコアでマッチングを行った。 主要アウトカムは、MACE(心筋梗塞、脳梗塞、心血管死)および重篤な腎イベントとし、GLP-1受容体作動薬+SGLT2阻害薬の併用と2つの基礎治療薬単剤をそれぞれ比較した。併用により、単剤に比べMACEリスクが約3割低下 GLP-1受容体作動薬単剤と比較して、GLP-1受容体作動薬+SGLT2阻害薬の併用では、MACEのリスクが30%低下(1,000人年当たりのイベント数:併用群7.0件vs.単剤群10.3件、ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.49~0.99)し、重篤な腎イベントのリスクは57%減少(2.0件vs.4.6件、0.43、0.23~0.80)した。 また、SGLT2阻害薬単剤に比べ、GLP-1受容体作動薬+SGLT2阻害薬の併用では、MACEのリスクが29%低下(1,000人年当たりのイベント数:併用群7.6件vs.単剤群10.7件、HR:0.71、95%CI:0.52~0.98)したのに対し、重篤な腎イベントのリスクのCIは範囲が広かった(1.4件vs.2.0件、0.67、0.32~1.41)。MACEの各項目には大きな差はない MACEの各項目については、GLP-1受容体作動薬単剤との比較では、心筋梗塞(HR:0.73、95%CI:0.45~1.17)、脳梗塞(0.90、0.48~1.67)に併用群との差はなく、心血管死(0.35、0.15~0.80)は併用群で良好であったもののCIの範囲が広かった。心不全(0.57、0.35~0.91)も併用群で良好だったが、CIの範囲は広く、全死因死亡(0.71、0.49~1.02)には差を認めなかった。 また、SGLT2阻害薬単剤との比較では、併用群で心筋梗塞(HR:0.73、95%CI:0.48~1.12)、脳梗塞(0.86、0.46~1.59)、心血管死(0.54、0.29~1.01)に差はなく、心不全(0.70、0.40~1.23)、全死因死亡(0.73、0.52~1.01)にも差を認めなかった。 著者は、「これらの知見は、2型糖尿病の治療における、心血管イベントおよび腎イベントの予防において、これら2つの有効な薬剤クラスの併用の潜在的な有益性を強調するものである」としている。

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経口ワクチンが抗菌薬に代わる尿路感染症の治療法に?

 新たに開発された経口投与型のワクチンが、尿路感染症(UTI)を繰り返す「再発性UTI」の患者にとって抗菌薬に代わる治療法となる可能性のあることが、英ロイヤル・バークシャーNHS財団トラストの泌尿器科専門医であるBob Yang氏らの研究で示唆された。同氏らによると、スプレーを使って舌の下にワクチンを投与した再発性UTI患者の半数以上(54%)は、その後9年にわたってUTIを再発することがなく、また目立った副作用も認められなかったという。この研究結果は、欧州泌尿器科学会(EAU 2024、4月5~8日、フランス・パリ)で発表された。 UTIは最も一般的な細菌感染症で、女性の半数、男性の5人に1人が生涯に一度は経験するとされる。UTI症例の20~30%では、抗菌薬による治療を必要とするUTIが再発する。 Yang氏は、「ワクチン接種前は、全参加者が再発性UTIに苦しんでいた。また、多くの女性患者で再発性UTIは治療困難となり得る」とニュースリリースの中で述べている。そして、「この新たなUTIワクチンを初めて接種してから9年後の時点まで、参加者のほぼ半数は感染することはなかった」と説明。また、「全体として、このワクチンは長期にわたって安全であり、参加者はUTIの再発が減少したこと、再発した場合でも重症度が低く、多くは水をたくさん飲むだけで治ったと話していた」と振り返っている。 このMV140と呼ばれるワクチンは、4種類の細菌種を含んだパイナップル風味の懸濁液で、スペインの製薬会社であるImmunotek社によって開発された。ワクチンには、感染と闘う抗体の産生を促す細菌が含まれている。ワクチンは3カ月間、毎日舌の下に2回吹きかけて投与する。 今回の研究は、英国のロイヤルバークシャー病院でUTIの治療を受けた18歳以上の女性72人と男性17人を対象としたもの。これらの患者は、MV140の臨床試験への当初からの参加者で、ワクチン投与後1年間の追跡調査の結果は2017年に報告されていた。今回の報告は、その後の9年に及ぶ追跡調査の結果である。Yang氏らは、89人の医療記録データを分析するとともに聞き取り調査を実施した。 その結果、48人の参加者が、9年間の追跡期間中にUTIを再発しなかったことが明らかになった。再発が認められなかった期間は、女性で平均54.7カ月(4年半)、男性で平均44.3カ月(3年半)だった。なお、参加者の約40%は、1年後または2年後にMV140の再接種を受けたことを報告していた。 今回の研究には関与していない専門家であるアルタ・ウロ泌尿器医療センター(スイス)教授のGernot Bonkat氏は、「これらは有望な結果だ。再発性UTIによってもたらされる経済的な負担は大きく、また、抗菌薬の過剰使用は抗菌薬耐性感染症の要因にもなり得る」と研究結果に期待を寄せる。 Bonkat氏は、「今後は、より複雑なUTIについての研究や、異なる患者のグループを対象とした研究の実施が必要だ。そこから得られる研究成果を通じて、このワクチンの使用方法を最適化できる」と話す。また同氏は、「現実的な視点を持つ必要はあるが、このワクチンはUTI予防において画期的な手段となる可能性や、従来の治療法に代わる安全で有効な治療法となる可能性を秘めている」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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ChatGPTは高齢患者のポリファーマシー対策に有用

 人工知能(AI)は、高齢者の多剤併用(ポリファーマシー)対策に役立つ可能性のあることが、新たな研究で示唆された。OpenAI社の大規模言語モデル(LLM)であるChatGPTに高齢者の架空の投薬リストを評価させたところ、一貫して不必要な可能性のある薬の使用の中止を推奨したという。米ハーバード大学医学大学院のArya Rao氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Medical Systems」に4月18日掲載された。 Rao氏らによると、高齢者の40%以上が5種類以上の薬を処方されており、それが薬物相互作用のリスクを高めているという。このリスクは、不要な薬の処方をやめることで軽減されるが、そのための意思決定プロセスは複雑であり、時間もかかる。そのため、特に人手不足に直面していることの多いプライマリケア従事者をサポートする、効果的なポリファーマシー管理ツールが必要とされている。 今回の研究でRao氏らは、多剤を併用している同一の高齢患者に関する複数の臨床シナリオを作成し、ChatGPTの薬物削減を通じたポリファーマシー管理の性能についての評価を行った。それぞれのシナリオでは、心血管疾患の既往歴や日常生活動作(ADL)の障害の程度が異なっていた。薬の削減については、ChatGPTにイエス/ノーで回答させた。 その結果、患者に心血管疾患の既往歴がない場合には、ChatGPTは一貫して薬の削減を推奨することが明らかになった。一方、心血管疾患の既往歴がある場合には、ChatGPTはより慎重な姿勢を示し、患者の薬物療法の変更はしないと判断する傾向が認められた。いずれのケースでも、ADLの障害の重症度はChatGPTの意思決定に影響を与えていなかった。また、ChatGPTは、痛みについては考慮しない傾向や、スタチンや降圧薬などの種類の薬を削減するよりも痛み止めを削減することを推奨する傾向があることも示された。 このほか、同じシナリオを新しいチャットセッションで提示すると、ChatGPTの応答が異なることもあったという。研究グループはこの結果について、「モデルのトレーニングに使用された研究報告の中で、臨床上の減薬傾向が一貫していないことを反映している可能性がある」との見方を示している。 こうした結果を受けてRao氏は、「本研究結果は、高齢者に対する薬剤処方の安全性を確実なものにする上でAIベースのツールが重要な役割を果たし得ることを示唆している。ただし、医療上の意思決定の複雑さに対応できるよう、これらのツールを改良し続けることが不可欠だ」と述べている。 研究グループは、医師が患者の処方箋を管理するのはますます難しくなっていると指摘する。さまざまな専門医を受診するメディケア加入の高齢患者が増えている一方で、それらの患者の服薬管理はプライマリケア医に一任されているからだ。 論文の上席著者で、米Mass General Brigham放射線学部門のMarc Succi氏は、「このようなモデルの精度を高める上では注意が必要だが、AIによる服薬管理は、一般開業医の負担増を軽減するのに役立つ可能性がある」と話す。その上で同氏は、「服薬管理のために特別に訓練されたAIツールを使ってさらに研究を進めれば、高齢患者のケアを大幅に改善できるだろう」との見方を示している。

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看護師主導の多職種連携により高齢心不全患者の死亡率が低下

 高齢化により心不全の有病率は上昇し、マルチモビディティ(多疾患併存)の状態にある患者が増えている。このような患者を対象に、看護師が主導し多職種介入を行ったところ、死亡率が有意に低下したという結果が示された。これは大阪大学大学院医学系研究科老年看護学教室の竹屋泰氏、齊前裕一郎氏らによる研究結果であり、「American Heart Journal Plus: Cardiology Research and Practice」に1月20日掲載された。 異なる専門分野を有する医療従事者が関与する多職種連携は、患者に関わる職種の数が多い(multidisciplinary intervention)だけでは不十分で、多職種が互いに連携して協働する(interprofessional work)必要がある。看護師は、患者の疾患と生活の両方に携わり、24時間体制でケアを提供し、他の職種との関わりも多いことから、看護師主導による多職種連携の有効性についてはこれまでにも研究されている。しかし、複数の併存疾患を有し、複雑な管理を要する患者に対する効果は明らかになっていなかった。 そこで著者らは、急性期病院に入院し、チャールソン併存疾患指数(CCI)が2点以上の心不全患者を対象に、看護師主導による多職種連携の導入前後で患者の死亡率や緊急入院率を比較する後方視的症例対照研究を行った。導入後の2017年4月~2020年3月に入院した患者351人を多職種連携群、2014年4月~2016年3月の患者412人を通常ケア群とし、各群から年齢・性別・NYHA心機能分類でマッチングさせた200人ずつ(平均年齢80歳、男性62%)を評価対象とした。 導入された多職種連携は3ステップからなる。ステップ1では入院3日以内に看護師がスクリーニングを実施し、日常生活動作(ADL)低下リスク、在宅医療や福祉制度の必要性など、退院後の問題を評価。ステップ2はスクリーニング基準を満たす患者への標準的支援であり、入院7日以内に看護師が情報を収集。看護師がファシリテーターとなり多職種カンファレンスを行い、退院支援の必要性などを検討。退院目標を策定し、患者と家族の同意を得て、目標達成に向けて介入した。ステップ3は、標準的支援では不十分と看護師が判断した場合に実施し、看護師が必要と判断した多職種が関与。再入院のリスクが高い場合や在宅医療が必要な場合には、在宅医や訪問看護師と協働した。 対象患者のNYHA心機能分類の内訳は、クラスIが32.5%、クラスIIが46.5%、クラスIIIが20.5%、クラスIVが0.5%であり、CCIは平均6点だった。多職種連携群では通常ケア群と比べて、ポリファーマシー(6種類以上の薬剤を使用)および医療ソーシャルワーカーの関与の割合が有意に低く、訪問看護や在宅医への移行の割合が有意に高かった。要介護度や入院期間については両群間で有意差はなかった。 また、全ての死因による死亡リスクは、多職種連携群の方が通常ケア群よりも有意に低いことが明らかとなり(ハザード比0.45、95%信頼区間0.29~0.69)、退院後1年時点での死亡率には7%の有意差が認められた(9%対16%)。退院後6週間以内の緊急入院のリスクも、多職種連携群の方が有意に低かった(ハザード比0.16、95%信頼区間0.08~0.30)。 今研究における多職種介入の特長として著者らは、疾患に加え患者の生活機能に精通した看護師がファシリテーターとなり、適時適切な専門職と連携する、入院初期から退院まで、1人の入退院支援看護師が継続的に関与する、必要に応じ、患者の同意を得て地域の専門職と情報を共有・連携するといった、看護師主導の包括的な多職種連携を挙げている。研究の結論として、「看護師主導の多職種連携により、心不全と複数の併存疾患を有する患者の死亡率が低下する可能性がある」と述べている。

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第193回 医師の働き方改革、面接指導はA水準医師も対象に/厚労省

<先週の動き>1.医師の働き方改革、面接指導はA水準医師も対象に/厚労省2.特定健診・保健指導の実施率、過去最高の改善を記録/厚労省3.コロナ専門家への攻撃実態、半数が誹謗中傷などを経験4.正常分娩の保険適用を、2026年度までに検討を/こども家庭庁5.医療機器メーカーと医師の癒着、医師が再逮捕/東京労災病院6.奨学金返還とお礼奉公を巡り、看護学生と医療法人が民事訴訟に/大阪1.医師の働き方改革、面接指導はA水準医師も対象に/厚労省厚生労働省は、長時間働く医師に対する面接指導のポイントをまとめたリーフレットを初めて作成した。2024年4月から労働時間が長い医師に対する面接指導が義務化されたことに伴い、A水準の医師も面接指導の対象になると注意を喚起している。医師への面接指導は、月100時間以上の時間外労働(休日含む)が見込まれる医師に実施することとされており、時間外労働の上限が年960時間とされているA水準の医師でも対象となる。しかし、A水準の医師は、月の時間外労働が100時間未満のため、面接指導の対象にならないと考えている医療機関が見受けられる。そのため、厚労省は、A水準か特例水準かにかかわらず、長時間労働を行う医師は面接指導の対象となることを明記したリーフレットを作成し、8日に公開したもの。リーフレットでは、面接指導を適切に実施するためのチェックリストも盛り込まれている。このチェックリストには、「対象となる医師を把握しているか」「面接指導実施医師を確保しているか」「適切な時期に実施しているか」などの6項目が含まれている。さらに、適切なタイミングで面接指導を行うため、時間外労働が月80時間前後に達した場合に実施するルールを各自で設定するよう呼び掛けている。これにより、医師の長時間労働を未然に防ぎ、医師の健康を守ることを目指すとしている。参考1)長時間労働医師への面接指導を行う先生へ面接指導の進め方クイックガイド(厚労省)2)長時間労働医師への健康確保措置に関するマニュアル(改訂版)(同)3)医師への面接指導、「A水準も対象」チェックリストを初めて作成 厚労省(CB news)2.特定健診・保健指導の実施率、過去最高の改善を記録/厚労省厚生労働省は、2022年度の特定健康診査(特定健診)と特定保健指導の実施状況を公表した。2022年度の特定健診の対象者は約5,192万人、そのうち約3,017万人が受診し、実施率は58.1%で前年より1.6ポイント向上した。特定保健指導の対象者は、約512万人おり、そのうち約135万人が指導を終了し、実施率は26.5%で前年より1.9ポイント向上した。メタボリックシンドロームの該当者および予備群の減少率は、2008年度比で16.1%減少し、前年から2.3ポイント向上した。国は、2023年度までに特定健診の実施率を70%以上、特定保健指導の実施率を45%以上、メタボリックシンドローム該当者およびその予備群を2008年度比で25%以上減少させることを目標としている。参考1)2022年度 特定健康診査・特定保健指導の実施状況(厚労省)2)特定健診58.1%、保健指導26.5% 22年度実施率、厚労省(MEDIFAX)3.コロナ専門家への攻撃実態、半数が誹謗中傷などを経験新型コロナウイルス感染症の流行中、情報を発信していた専門家の半数が誹謗中傷などの被害を受けていたことが、早稲田大学の田中 幹人氏らの研究グループのアンケート調査で明らかになった。調査は2020年2月~2021年3月に行われ、国内の専門家121人にアンケートを送付、42人から回答を得たもの。そのうち21人(50%)が「情報発信後に攻撃を受けた」と回答、殺害予告や身体的・性的暴力に関する脅迫も含まれていた。とくに深刻な被害として、3人が殺害予告を受け、2人が身体的・性的暴力の脅迫を受けたと回答した。悪影響を受けた29人のうち8割は感情的、心理的な苦痛を経験している。 海外でも同様の調査が行われており、英国や米国、台湾などの専門家のうち15%が殺害予告を受け、22%が身体的・性的暴力の脅迫を受けていたことが判明している。田中氏は、「こうした脅迫行為が健全な社会の議論を妨げる」と指摘し、「科学的な議論を支援し、保護する仕組みの必要性」を強調する。また、感染症専門医である大阪大学の忽那 賢志氏も情報発信の際に多くの誹謗中傷を受け、裁判所に発信者情報の開示命令を申し立てるなど対策を講じている。忽那氏はエビデンスに基づく情報発信を心掛ける一方で、誹謗中傷に対しては反論せず、法的手段を用いて対応した。専門家が情報発信する際には、感情的な反発や誤解を避けるため、メリットとデメリットをバランスよく伝えることが重要となる。今後、科学的なリテラシーを社会全体で向上させることが必要であり、専門家の発言を組織的にサポートする体制が求められる。参考1)コロナ情報発信の国内専門家、半数が「攻撃受けた」 殺害予告も(毎日新聞)2)Xではあえて反論せず 忽那さんが振り返るコロナ情報発信(同)4.正常分娩の保険適用を、2026年度までに検討を/こども家庭庁こども家庭庁は「こども家庭審議会」の基本政策部会を5月9日に開き、「こどもまんなか実行計画」の審議会案を大筋でまとめた。この実行計画では、誕生前から幼児期にかけての継続的な保健・医療の確保を目指し、2026年度をめどに正常分娩の保険適用を検討すると明記した。実行計画では、2023年末に政府が閣議決定した「こども大綱」に基づき、子供や若者のライフステージごとに具体的な政策を整理したもの。さらに、周産期医療の集約化・重点化も盛り込まれている。2024年度からの第8次医療計画(2029年度まで)に沿って、医療機関の役割分担を進め、周産期母子医療センターを中心に新生児集中治療室(NICU)や母体胎児集中治療室(MFICU)の機能と専門医などの人材を集約化・重点化させることが計画されている。これにより、安全で安心な妊娠・出産環境を整備することを目指している。さらに、休日や夜間を含めて子供がいつでも医療サービスを受けられるように小児医療体制の充実が図られる。また、不妊症や不育症、出生前検査に関する正しい知識の普及や相談体制の強化も進められる予定。正式な実行計画は、閣僚らによる「こども政策推進会」が2024年6月頃に決定し、骨太方針に反映される見込み。「こども大綱」は5年後をめどに見直され、実行計画は毎年それぞれ見直される予定であり、こども家庭審議会が政策の実施状況を点検する。正常分娩への保険適用などの重点政策を中心に、2024年度~2028年度までの工程表も作成される。正常分娩への保険適用は、出産に伴う経済的な負担を軽減するための施策であり、政府は2026年度の導入を目指している一方で、医療機関が提供するサービスの多様化や費用の差異により、保険適用に対しては慎重な意見も存在する。参考1)こども家庭審議会 第12回基本政策部会(こども家庭庁)2)正常分娩「保険適用検討」明記、子ども政策計画案 周産期医療の集約・重点化も(CB news)5.医療機器メーカーと医師の癒着、医師が再逮捕/東京労災病院東京労災病院の医療機器納入に関する贈収賄事件で、同病院整形外科副部長が収賄容疑で再逮捕された。また、医療機器メーカー「HOYAテクノサージカル」社員も贈賄容疑で再逮捕された。被告医師は、2022年6~9月に同社の医療機器を多く使用する見返りに、現金20万円を受け取った疑いがある。この事件では、同様の手法で2022年1~4月に計50万円の賄賂を受け取っていたことが発覚しており、被告となった医師はすでに収賄罪で起訴されている。警視庁捜査2課によると、メーカー側から自社製品の使用個数に応じて1ポイントを1万円とする「ポイント」を被告の医師に付与し、被告はそのポイントを私的な飲食の領収書と引き換えて現金を受け取っていたとされる。さらに、被告医師は他の医師に対しても同社製品を使用するよう勧め、他の医師が使った分も自分のポイントとして偽っていたとみられている。医療機器業界では、競争が激化する中で、病院幹部に対する接待や贈答が行われることがあり、今回の事件もその一環とみられている。医療機器業公正取引協議会は、医療機関との取引に際して利益供与を禁じる規約を運用しているが、競争の激しさから規約違反が後を絶たない状況である。警視庁では、2022年1~9月の計約80万円の賄賂授受を立件し、3人の被告を起訴した。東京労災病院は、独立行政法人労働者健康安全機構が運営しており、その職員は「みなし公務員」として収賄罪が適用される立場にある。参考1)当院職員の再逮捕について(東京労災病院)2)自社製品使用の医師に1ポイント1万円の「ポイント」付与か 東京労災病院の汚職事件(産経新聞)3)東京労災病院の医師、別の収賄疑いで再逮捕 医療機器調達巡り(日経新聞)4)現場医師の権限、癒着生む 「大病院」汚職次々 業界の禁止規定も限界(毎日新聞)5)「聖域」で営業競争激化、しわ寄せは患者に 医療業界で汚職続く理由(朝日新聞)6.奨学金返還とお礼奉公を巡り、看護学生と医療法人が民事訴訟に/大阪看護学校卒業後に系列病院で一定期間働けば奨学金の返済が免除される制度について、その病院で勤務できない場合に返済義務があるかどうかが大阪地裁で争われている。訴訟の発端は、卒業生3人が系列病院の採用試験に不合格となり、奨学金の返済を求められたことにある。卒業生側は、不採用の理由が法人の都合によるものであり、返済義務を課すのは信義則に反すると主張している。問題となっているのは、看護学校を運営する社会医療法人が提供する奨学金制度で、卒業生はこの奨学金を受給し、卒業後に法人の病院で2年以上勤務すれば返済が免除されるというもの。しかし、2020年に不採用となった3人に対しては、法人が奨学金の返済を求め、その結果訴訟に至った。被告の法人側は、奨学金の貸与が採用を保証するものではないと主張し、不採用の理由として面接や心理テストでの基準未達を挙げている。一方、原告の卒業生側は奨学金の募集案内に不採用時の返済義務が明記されていない点、経済的事情を考慮した条件変更の説明がなかったことを問題視している。また、不採用の理由が新型コロナウイルス感染症の影響による採用人数の抑制など経営上の事情変更によるものである可能性も指摘している。このような奨学金制度は「お礼奉公」とも呼ばれ、看護師不足対策として普及しているが、雇用の流動化が進む中でトラブルも増加している。看護師養成制度に詳しい専門家は、病院側が奨学金制度の不利益な情報も丁寧に説明し、学生側もリスクを十分に検討する必要があると指摘する。参考1)トラブル相次ぐ看護学生の「お礼奉公」、系列病院が不採用なら奨学金返還義務?…訴訟に発展(読売新聞)2)お礼奉公契約は有効ですか(河原崎法律事務所)

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事例047 アンブロキソール塩酸塩の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説痰のからみを訴える扁桃炎の患者に対して、抗菌薬と去痰薬のアンブロキソール塩酸塩錠(以後「同錠」)を投与したところ、多くは病名不足を示すA事由(医学的に適応と認められないもの)にて査定となりました。同錠の添付文書を参照したところ、効能・効果には、気管支炎もしくは肺炎由来の去痰に適用があると記載されていました。扁桃炎は、扁桃に炎症が起きる上気道疾患です。効能・効果には、上気道疾患に伴う去痰が記載されていません。現在はコンピュータによる審査が行われています。添付文書の効能・効果と病名が一致しないために、A事由が適用されたものと推測ができます。他のレセプトも調べてみました。同様の理由にてブロムヘキシン塩酸塩などが査定となっていました。医師にはこの結果を伝えて、同錠などを投与する場合には、気管支や肺の炎症に伴う去痰を目的に使用した理由が読み取れる病名を付けていただくようにお願いしました。

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愛媛大学医学部 臨床腫瘍学講座【大学医局紹介~がん診療編】

薬師神 芳洋 氏(教授)藤井 知美 氏(緩和ケアセンター 特任講師)長谷部 晋士 氏(腫瘍センター 特任講師)山中 伸太郎 氏(腫瘍センター 院生医員)講座の基本情報医局の特徴、医師の育成方針全国に広がる臨床腫瘍学教室の大きな使命は、次世代のがん診療を担うリーダーを養成することです。がん医療のリーダーには、多くの疾患や腫瘍、ゲノム医療、緩和医療に長けた診療能力を培うことのみならず、医療経済上の知識や対応、臨床治験を推進する能力、地域や行政と連携する能力なども必要です。また、基礎医学との連携を通じ、医学貢献への絶え間ない努力も必要です。当愛媛大学医学部臨床腫瘍学講座は、がん患者さんに対する高度な医療行為や緩和医療に加え、がん医療におけるこういった技術や知識の習得を目標に、学部学生やがんプロ大学院の指導を広く行っています。私たちの教室で「がん医療のリーダー」として羽ばたいてみませんか?力を入れている治療緩和ケアセンターのセンター長をしています。がん治療と緩和ケアは相補的な関係にあり、腫瘍学と緩和ケアの統合が推奨されています。当院では全入院患者に対しつらさのスクリーニングを行い、適切な患者に時期場所を問わず、すなわち必要があればがんと診断した早期から継続的に緩和ケアを提供しています。神経ブロックなど専門的緩和ケアを行い、多職種の緩和ケアチームで患者、およびそのご家族のつらさを和らげています。同医局でのやりがい、魅力/医学生・初期研修医へのメッセージ治すがん医療も大切ですが、治らない状況下でいかに患者さんとそのご家族に寄り添いつらさを和らげるかも医療の大事な側面です。緩和医療、緩和ケアは医療者自身の人間性の成長が問われる大変やりがいのある分野だと思っています。一般的な緩和ケアの提供はがん治療に携わるすべての医療者が行うべきものです。がん治療の研鑽とともに緩和ケア、緩和医療についても一緒に学んでみませんか?力を入れている治療県下一円の医療機関より、診断・治療に難渋する原発不明がんや希少がんのご紹介をいただきます。医療機関がお困りである以上に、患者さん、そしてご家族はお困りでいらっしゃいます。ご紹介いただいた方々に対し何ができるか、ご希望にどこまで添えるか。大学病院にいらっしゃるさまざまなエキスパートの先生方のお力添えをいただきながら、個々の患者さんに対し最良の医療を提供すべく精進しております。医局の魅力教授の面倒見の良さ、に尽きます。20年にわたる師弟関係です。箸にも棒にもかからなかった研修医を、病棟医長として見捨てることなく指導し、総合内科専門医・がん薬物療法専門医になることができました。院生時代は基礎実験の手技に至るまでマンツーマンで指導、学位取得まで導いてくれました。この医局でなければ私は、大学人として生きて行くことは不可能でしたし、医師として専門性を深めることも難しかったでしょう。医学生/初期研修医へのメッセージ学部学生時代に父をがんで亡くしており、現在の専門に進む動機となりました。そして師のおかげで、憧れであったがん薬物療法専門医となり、腫瘍内科医として専門性をもった仕事を行えております。将来ある皆さまが生涯の師との出会いに恵まれますことを祈念しております。これまでの経歴愛媛大学医学部医学科を卒業後、県内で初期研修を開始すると同時に、医学系研究科臨床腫瘍学教育課程に進学し、臨床経験を積みつつ、研究と論文執筆を行いました。卒後3年目からは当講座に入局し、がん診療に一部携わりながら、患者のがん細胞を用いた基礎研究を行っています。同医局を選んだ理由元々純粋な臨床医として生きていくつもりでしたが、コロナ禍を経て、われわれを取り巻く医療および社会のあり方について深く考えさせられ、医学研究に強く興味を持ったことがきっかけで、学部時代からお世話になっていた当講座への入局、および大学院進学を決めました。卒後の進路について思い悩んでいたときに相談に乗ってくださった薬師神教授にはたいへん感謝しています。現在学んでいること腫瘍に関連する幅広い知識を学んでおり、大学院での基礎研究はもちろん、臨床分野では、クラシカルな殺細胞薬から、ICIや最新の分子標的治療薬まで、数多くの抗腫瘍薬が最新のエビデンスに基づいて使用されており、腫瘍内科の特徴である臓器横断的な医療を日々経験しています。また、新たな治療の選択肢を見つける手段としてがんゲノム検査(CGP検査)を行っており、その検査データの解釈を通じて、ゲノムに関する学びも深めています。愛媛大学医学部 臨床腫瘍学講座住所〒791-0295 愛媛県東温市志津川454問い合わせ先oncology@m.ehime-u.ac.jp医局ホームページ愛媛大学医学部 臨床腫瘍学講座専門医取得実績のある学会日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医日本緩和医療学会 緩和医療専門医日本内科学会 総合内科専門医日本ペインクリニック学会 ペインクリニック専門医研修プログラムの特徴(1)がん診療を生涯のライフワークとする医師を養成(2)愛媛大学病院を含む愛媛県下の7つのがん診療連携病院、ならびに全国のがんセンターを研修先とした、がん薬物療法専門医/緩和ケア専門医研修(サブスペシャリティー研修)を受け付ける(希望に応じて専門研修施設が選べる)

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