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PCOS妊婦へのミオイノシトールの投与は妊娠合併症率を改善せず(解説:前田裕斗氏)

 本研究は、オランダの13施設で464例の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)妊婦を対象とし、ミオイノシトールの妊娠糖尿病・早産・妊娠高血圧腎症の予防効果を確かめた二重盲検プラセボ対照RCTである。ミオイノシトールにはインスリン抵抗性改善を通した血管内皮機能不全や炎症の予防効果があることから、PCOS妊婦においてリスクが上昇する3つの妊娠合併症をアウトカムとしている。先行するRCTでは妊娠糖尿病の予防効果が示されていたが、サンプルサイズが200例程度と小さく、また妊娠糖尿病の有病率が約50%と高いこと、患者への薬の盲検化がされていなかったことなどを背景として、この試験が行われた。 結果の詳細は別記事に譲るが、3つの合併症の合計発生率はミオイノシトール群で25.0%、プラセボ群で26.8%と有意な低下を認めなかった。本研究にも薬剤内服の遵守率が80%以上の割合がミオイノシトール群で38.9%、プラセボ群で30.7%と低いなどの限界はあるが、先行研究と比較し、サンプルサイズや二重盲検であることなど信頼性の高い研究であるといえるだろう。 本研究結果からは、全PCOS妊婦を対象としたミオイノシトールの内服は勧められないといえる。一方、この研究では妊娠8~16週から内服を開始しており、妊娠前からの内服効果は検証されていない。日本の臨床現場では不妊治療の場でサプリメントとしてよく勧められており、妊娠前からの内服効果を確かめる研究は行いやすいだろう。ぜひ本邦発のエビデンスを出したい領域であるといえる。

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鼻に歯が生えていた2例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第297回

鼻に歯が生えていた2例さまざまな場所に歯が生えるものですが、過去に脳内に歯が生えた事例を紹介しました。今度は鼻の中です。脳に比べるとインパクトは少ないかもしれませんが、おどろき医学論文マニアとして、紹介しなければなりません。Bergamaschi IP, et al. Intranasal Ectopic Tooth in Adult and Pediatric Patients: A Report of Two Cases. Case Rep Surg. 2019 Sep 17;2019:8351825.「先生、鼻の中に“歯”があると言われたんですけど……」。外来でこんな訴えが飛び出したら、皆さんどうされるでしょうか。「抜けた歯が鼻腔に入ったのかな? いや、でもなんで歯が鼻に?」と一瞬フリーズしたくなりますが、世の中には“鼻から歯が生える”患者さんが存在します。今回は、ブラジルの口腔外科チームが報告した「鼻腔内異所性歯」の成人例と小児例、2症例を扱った論文をご紹介します。1例目は、32歳の女性です。主訴はズバリ「鼻の中に歯がある」というものでした。この患者さんによると、この状態は痛みを引き起こし、とくに寒い日には鼻血が出るとのことでした。詳しく病歴を聴取すると、6歳のときに顔面外傷を負い、上顎前歯部に損傷を受けたことが判明しました。つまり、26年もの間、歯が鼻の中に存在していたことになります。臨床診察で鼻尖部を持ち上げてみると、なんと右鼻孔内に上顎中切歯の歯冠が観察されました。6歳といえば、ちょうど前歯の永久歯が萌出する時期であり、Nollaの発育段階では7(歯冠完成、歯根の3分の1発育)に相当します。この時期に外傷を受けたことで、本来口腔内に萌出するはずだった歯が、上方に変位して鼻腔内に迷い込んでしまったと考えられます。ここで疑問が生じます。なぜ26年間も放置されていたのでしょうか。論文によると、これは「専門家からの誤った情報提供」が原因だったとのことです。つまり、症状(痛みや鼻出血)に対する対症療法のみが行われ、その原因である鼻腔内の歯が長年見過ごされていたということです。2例目は、左側の片側性口唇口蓋裂を有する8歳の女児です。この子供は、左側鼻閉を主訴に紹介されてきました。原因は、肉芽組織に囲まれた鼻腔内の硬い組織塊でした。口腔内診察とCT検査の結果、この白色塊は左側側切歯の異所性萌出であることが判明しました。口腔内では左側側切歯が欠損しており、塊の透過性は他の歯と一致していました。興味深いことに、CT検査では、この形成異常歯の上部は軟組織内に埋入しており、骨性支持がない状態でした。母親によると、この白色塊は腸骨骨移植による口鼻瘻孔閉鎖術の3ヵ月後に出現したとのことです。口唇口蓋裂自体が多因子性の病因を持つため、異所性萌出に対する遺伝的素因も否定できませんが、手術操作による歯胚の変位も原因として考えられます。両症例とも、治療は全身麻酔下での歯の外科的摘出でした。「鼻から歯を抜く」という、一見すると大手術のように思える処置ですが、実際の手技は比較的シンプルで、無事に済んだそうです。

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第295回 3次救急で停電が当たり前、ベネズエラの悲惨な医療実態

INDEX米国の攻撃で死者100人、ベネズエラの医療体制とは無償以前に医療が成り立っていない3次救急でも停電やCT稼働停止が日常茶飯事!米国の攻撃で死者100人、ベネズエラの医療体制とは「健康は基本的な社会的権利であり、生命権の一部として国家がこれを保障する責任を負う。すべての者は健康保護の権利を有する」「健康への権利を保障するため、国家は全国的な公衆衛生システムを創設・指導・管理し、社会保障制度と統合し、無償性、普遍性、完全性、公平性、社会的統合および連帯の原則に従って運営する」これはある国の憲法の条文である。もちろん日本ではないことくらいは多くの人が気付くだろうと思う。どこのものかといえば、新年早々、大統領が拘束された南米・ベネズエラの憲法第83条、第84条である。憲法という理念・概念を示す最高法規にここまで医療について明記している国は珍しいのではないだろうか?ベネズエラは1500年代からスペインの植民地となり、1800年代に独立。1900年代から昨今まで、政治上は典型的な左右両派闘争と複数回のクーデターを経験してきた。1999年からはクーデターを経て大統領に就任したウゴ・チャベス氏の下、反米・社会主義路線の独裁体制へと移行。2013年にチャベス氏が死去すると、その腹心で今回アメリカが麻薬密輸容疑などで拘束したニコラス・マドゥロ氏が後を継いだ。このチャベス政権以降のベネズエラは野党などの反対勢力や市民デモなどを徹底的に弾圧し、議会を機能不全にした。マドゥロ氏は過去3度の大統領選挙で当選しているが、いずれも不正の疑いが強く指摘されている。また、同国は原油の推定埋蔵量世界1位という極めて恵まれた環境にありながら、チャベス氏の大統領就任以降は極端な社会主義政策に基づき企業を国有化し、その乱脈経営により、国内では物不足とインフレが常態化している。この結果、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、ベネズエラからの国外難民・避難民は2025年5月時点で790万人以上との推計値を公表している。これはベネズエラの総人口の約4分の1にあたる。無償以前に医療が成り立っていないさてそのベネズエラは、冒頭で紹介した憲法条文からもわかる通り、社会主義国家に典型的な教育と医療は「無償」である。公式には国民・在住者IDと呼ばれるカードを医療機関で提示すれば、無償で医療を受けられる建前だ。ちなみに国内の医療機関数は、2001年の同国保健省の公表(かなり古いデータだが)によると、病院が214カ所、診療所が4,605カ所である。これらの国公立と私立の区分に関する正確なデータはないが、国内医療機関の5~10%が私立であるとの報告もある。また、ベネズエラ医師連盟(同国の医師会に相当)によると、2024年時点での国内の医師数は約8万人。もっともこれはチャベス政権以降の政治的混乱で4万2,000人ほどの医師が国外に脱出した結果だという。ここから試算すると、ベネズエラの人口1,000人当たりの医師数は2.81人であり、経済協力開発機構(OECD)がHealth Statistics 20231)で公表している加盟国平均の3.7人よりは少ないものの、同統計で示された日本(2.6人)やアメリカ(2.7人)をわずかに上回る。ただ、このデータは各種報道と公式人口から単純計算したものであり、世界保健機関(WHO)が公表した2017年時点のデータでは1.66人となっている。公式に公表されるデータが乏しく信用性が低いのは独裁国家の常だが、後者を信用するならば、医療アクセスはかなり悲惨な状況にあると言える。そして前述のように物不足とインフレが常態化している以上、こうした医療機関が十分に機能しているはずもない。実際、現地で活動する医師や学生によるNGO「Medicos por la Salud」(Doctors for health)が公表している「Encuesta Nacional de Hospitales(全国病院調査)」2)を見ると、その惨憺たる状況が浮かび上がってくる。ベネズエラ国内の主要な公的40病院からデータを収集した同調査の2024年中間(1~7月)報告を参照してみる。3次救急でも停電やCT稼働停止が日常茶飯事!調査対象はベネズエラ保健省がタイプIII、あるいはタイプIVと分類する病院。前者は州レベルの人口をカバーし、病床数は一般的に150〜300床程度。後者は人口100万人以上の広域エリアをカバーする300床以上の病院だ。日本で例えるならば、大学附属病院や都道府県で病床数が多い基幹病院に相当する。調査によると対象病院の各サービスが常時稼働できている割合は、ICUが73%、小児ICUが75%、臨床検査室が43%、X線撮影装置が31%、CT・MRIが12%、超音波装置が21%である。ICUですら約3割が常時稼働できていない状態であり、検査関連は惨憺たる結果だ。というか、これら検査が稼働していない状況でICUが機能できるわけもないだろう。つまるところICUの常時稼働は取りあえずマンパワーの配置だけはできている、という程度ではないだろうか?報告書によると、検査関連機器が稼働していない主な要因は、故障した機器の修理・更新費用が国から支払われていないためとしている。もし病院のCTが稼働していない場合、患者はCTが稼働している民間医療機関で撮影を行わねばならず、その費用が約90ドルであると記述している。もはやこの段階で憲法が保障する無償医療が崩壊している。ベネズエラの公務員月給は、基本給に加えてインフレによる通貨暴落に対応するためのボーナスや食糧配給クーポンなどを合わせ、米ドル連動の「包括的最低収入」という仕組みで月額160ドルが支払われる。ちなみに公務員の基本給自体は月額4ドル程度にすぎない。ここから民間医療機関でのCT撮影費用を捻出することが患者にとってどれほど大きな負担かは容易に想像がつくだろう。さらに、入院患者に1日3回の食事を提供できている病院はわずか35%であり、さらに患者の医学的ニーズに合った食事を提供できているケースは19%にとどまる。小児科の入院機能を有する病院の48%では「粉ミルクがない」と回答している。病院を支える水と電力の供給も驚くほど不安定である。毎日問題なく給水が続いている割合は、ICUで28%、手術室で30%。断続的な供給と回答している病院のうち4~5割は水道ではなく病院の貯水タンクでしのいでいるという状態だ。調査対象病院の43%が停電を経験しており、週当たりの停電発生日数は「3日未満」が68%、「3~5日」が17%、「6~7日」が16%、平均停電時間は126分である。もしかしたら「約7割は問題ないじゃないか?」と思う人もいるかもしれないが、調査対象病院は、日本で言えば停電など年1回でもあってはならない3次救急病院クラスである。実際、調査対象病院からの回答では、停電の影響で患者が死亡した事例は129例もある。加えて、手術に必要な縫合糸、鎮痛薬、生理食塩水、医師の手術ガウンなどの物品提供を患者へ求めた経験のある病院は91%に達し、手術で別途料金支払いを求めた経験のある病院は54%に上る。求めた別途料金は「100~300ドル」が最多の43%、次いで「300ドル以上」が28%である。ここでも無償医療は有名無実化している。すべての社会主義国家がこうだと言うつもりは毛頭ないが、少なくとも原油に恵まれ、反米・社会主義を掲げる独裁国家・ベネズエラの医療の実態は、違憲だけではとどまらない、もはやホラーな状態である。(表)ベネズエラの憲法と起こっている現実問題画像を拡大するもっとも、紛争や安全保障も取材領域とする私個人の意見を言わせてもらえば、チャベス政権以降のベネズエラの独裁体制には従来からかなり批判的だが、一方で今回のアメリカによる軍事作戦は明確に国際法に反する主権侵害行為とも考えている。そのため今回の事態に対しては一言では言い表せないモヤモヤしたものを感じている。ただ、もはや時計の針を巻き戻すことはできないことを考えれば、こうしたベネズエラの医療が今後少しでも改善することを願ってやまない。 参考 1) OECD:Health at a Glance 2023 2) Mid Year Report 2024

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1月9日 風邪の日【今日は何の日?】

【1月9日 風邪の日】〔由来〕寛政7(1795)年の旧暦の今日、第4代横綱で63連勝の記録を持つ谷風 梶之助が風邪で亡くなったことに由来して制定。インフルエンザや風邪が流行する季節でもあることから、医療機関や教育機関で風邪などへの予防啓発で周知されている。関連コンテンツ今冬のインフルエンザ診療のポイント【診療よろず相談TV】急性呼吸器感染症の5類位置付けに関するQ&A【患者説明用スライド】風邪や咳症状に対する日本での市販薬使用状況は?「風邪のときのスープ」に効果はある?風邪予防にビタミンDは効果なし?~メタ解析

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腰痛時の日常動作、症状を悪化させるのか?

 腰痛患者を対象に、身体活動の短期的および長期的な影響を調査した結果、持ち上げる、曲げる、押す/引く、ねじる、しゃがむなどの一部の日常動作は短期的な腰痛増悪と関連していたものの、長期的な機能障害とは関連しなかったことを、米国・Veterans Affairs(VA) Puget Sound Health Care SystemのPradeep Suri氏らが明らかにした。 身体活動は、腰痛に対して有害な影響と有益な影響の両方を有すると考えられている。研究グループは、10種類の一般的な動作について、短期的(24時間以内)な腰痛増悪リスクと長期的(累積的)な機能障害との関連をそれぞれ評価するため、前向きコホート研究の中にケースクロスオーバー解析を組み込んだ研究を実施した。 対象は、2021年3月25日~2023年9月21日に退役軍人省の外来診療所を腰痛のために受診した成人であった。参加者は1年間追跡調査された。 主な結果は以下のとおり。・合計416例(平均年齢47.5[SD 10.9]歳、男性75%)が本研究に参加した。参加者は1年間の追跡期間中に9,757回の調査に回答した。・腰痛増悪の平均発生回数は8.6回/年であった。・押す/引く、曲げる、ねじる、重いもの(約4.5kg以上)を持ち上げる、しゃがむ動作をする時間が長いほど短期的な腰痛増悪リスクが高かった。1時間増加当たりのオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -押す/引く OR:1.06、95%CI:1.03~1.09 -曲げる OR:1.06、95%CI:1.03~1.08 -ねじる OR:1.06、95%CI:1.03~1.08 -持ち上げる OR:1.05、95%CI:1.03~1.07 -しゃがむ OR:1.05、95%CI:1.03~1.08・座位時間が1時間長くなるほど、短期的な腰痛増悪リスクの低下と関連していた(OR:0.96、95%CI:0.94~0.98)。・立つ、歩く、登る、這う動作の時間の増加と、短期的な腰痛増悪との関連は認められなかった。・研究開始から8週間の各動作に費やした平均時間は、1年間の追跡調査における長期的な機能障害とは関連していなかった。 これらの結果より、研究グループは「10種類の一般的な動作の一部は腰痛の短期的な増悪と関連したが、1年間の追跡調査における機能障害との有意な関連は認められなかった。これらの知見は、腰痛患者がこれらの活動を行うことができること、そしてこれらの活動が長期的な転帰の悪化と関連していないことを裏付けている」とまとめた。

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呼吸器系ウイルス検査陽性の市中肺炎、抗菌薬投与は必要?

 米国胸部学会(ATS)が2025年に発表した最新の市中肺炎(CAP)ガイドラインでは、呼吸器系ウイルス検査陽性となった入院CAP患者全例に対して、抗菌薬を投与することを条件付きで推奨している1)。しかし米国感染症学会(IDSA)は非重症患者に対するこの推奨に同意せず、非重症患者では重複感染の可能性を検討するために多少の時間をかけることによるリスクはほとんどなく、抗菌薬を開始するかおよびいつ開始するかについては臨床医の裁量の余地があるとしている2)。米国・ペンシルベニア大学のBrett Biebelberg氏らはこれらの患者集団における抗菌薬投与の頻度・期間と転帰を評価する目的で、大規模な多施設共同の傾向スコア重み付け解析を実施。結果をClinical Infectious Diseases誌オンライン版2025年12月11日号で報告した。 本研究では、2015年6月~2024年12月に5つの病院において、来院後48時間以内に肺炎が疑われる臨床所見を認め、かつ呼吸器系ウイルス検査陽性の入院患者を後ろ向きに特定。臨床データを用いて、0~2日間の抗菌薬投与を受けた患者と5~7日間の抗菌薬投与を受けた患者について、傾向スコア法により全体およびウイルスごとの転帰を比較した。 主な結果は以下のとおり。・呼吸器系ウイルス検査陽性でCAP疑いの入院患者6,779例のうち、3,269例が0~2日間、1,560例が5~7日間の抗菌薬投与を受けた。・平均年齢は67.5歳(SD 17.6)、46.9%が女性で、検出ウイルスはSARS-CoV-2ウイルスが60.3%、インフルエンザ(AもしくはB)ウイルスが17.4%、RSウイルスが9.2%、ライノウイルスが7.3%などであった。・プロカルシトニン値>0.25μg/Lなど除外基準に該当した患者を除く2,614例(抗菌薬投与0~2日間:1,720例、同5~7日間:894例)を解析対象とした。・抗菌薬投与0~2日間の患者と5~7日間の患者の間で、入院期間(11.7日vs.11.1日、オッズ比[OR]:1.05、95%信頼区間[CI]:0.97~1.15)、48時間後のICU入院率(28.3%vs.28.2%、OR:1.01、95%CI:0.86~1.18)、院内死亡率(9.5%vs.9.8%、OR:0.97、95%CI:0.74~1.27)、30日間の病院不在日数(16.9日vs.17.0日、OR:0.99、95%CI:0.95~1.03)における有意差は認められなかった。・結果は、SARS-CoV-2以外のウイルスおよびインフルエンザウイルスのみに限定した場合、抗菌薬の投与期間を0日間と5~7日間で比較した場合、入院時に肺炎のICD-10コードを有する患者に限定した場合も一貫していた。 著者らは今回の結果について、呼吸器系ウイルス検査陽性のCAP疑い患者の多くにおいて抗菌薬は有益でない可能性を示唆するものとしている。

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日本人末期がん患者のせん妄、その発生率と薬理学的介入の現状

 末期がん患者では、疼痛やせん妄の発生が少なくない。しかし、疼痛管理のために投与されるオピオイドは、患者のせん妄を悪化させる可能性がある。名古屋市立大学病院の長谷川 貴昭氏らは、がん性疼痛とせん妄を有する末期がん患者において、実際の症状経過とオピオイドおよび抗精神病薬を含む薬理学的介入との関連を調査するため、多施設共同プロスペクティブ観察研究の2次解析を実施した。Palliative Medicine Reports誌2025年10月24日号の報告。 対象は、日本のホスピスまたは緩和ケア病棟に入院している成人患者のうち、Palliative Performance Scale(PPS)が20点以下に低下した時点(1日目、死亡直前)で、がん性疼痛(Integrated Palliative care Outcome Scale[IPOS]の疼痛スコア2以上)およびせん妄を有していた患者。薬理学的治療戦略、疼痛レベル(IPOSに基づく)、せん妄症状(Memorial Delirium Assessment Scale[MDAS]の9項目に基づく)を測定した。 主な結果は以下のとおり。・1,896例のうち、PPSが20点以下に低下した1日目に適格性の評価を受けた患者は1,396例で、そのうちの137例が解析対象の包含基準を満たした。・興奮性せん妄(多動性または混合性)が認められた患者は86例(63%)で、生存期間中央値は3日であった。・薬理学的治療戦略については、オピオイドの開始/用量漸増が32例(23%)に、抗精神病薬の定期投与が94例(69%)に行われていた。・オピオイドの開始/用量漸増と抗精神病薬投与の両方が行われていた患者は25例(18%)であった。・患者全体の約55%は、2日目に持続性がん性疼痛(IPOSの疼痛スコア2以上)が認められた。・興奮性せん妄が認められた患者のうち、2日目にも興奮症状が継続した患者の割合は79%であった。 著者らは「専門的な緩和ケアにもかかわらず、人生最後の数日間に生じるがん性疼痛とせん妄の複合的な苦痛は、依然として複雑かつ難治性であることが明らかとなった」とまとめている。

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再発・難治性多発性骨髄腫へのiberdomide+低用量シクロホスファミド+デキサメタゾンの第II相試験(ICON)/Lancet Haematol

 2~4ラインの治療歴のある再発・難治性多発性骨髄腫に対するiberdomide+低用量シクロホスファミド+デキサメタゾン(IberCd)の現在進行中の前向き単群第II相非盲検試験(ICON試験)において、追跡期間25.4ヵ月で無増悪生存期間(PFS)中央値が17.6ヵ月と良好であったことを、オランダ・アムステルダム自由大学のCharlotte L. B. M. Korst氏らが報告した。Lancet Haematology誌2026年1月号に掲載。 iberdomideは、経口セレブロンE3リガーゼモジュレーターであり、レナリドミドやポマリドミドとは薬理学的に異なりセレブロンとの親和性が高いため、直接的な抗腫瘍効果と免疫刺激効果をもたらすことが示されている。本試験は、オランダの8施設で実施され、対象は2~4ラインの治療歴がある再発・難治性多発性骨髄腫(レナリドミド耐性)患者(18歳以上、WHO PS 0~2)で、経口iberdomide(28日サイクルの1~21日目に1.6mg/日)、経口低用量シクロホスファミド(1~28日目に50mg/日)、経口デキサメタゾン(週1回40mg、75歳超は20mg)を進行するまで投与された。また、全例に血栓予防としてアスピリンもしくはcarbasalate calciumを連日経口投与した。静脈血栓塞栓症の既往がある患者には、低分子量ヘパリンのみ皮下注射した。主要評価項目はPFSで、治療開始した全例で有効性と安全性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・2021年2月17日~2023年7月7日に、61例が登録されIberCd治療を受けた(女性29例、男性32例)。前治療ライン数の中央値は3(範囲:2~5)で、52例(85%)がtriple-class exposed、27例(44%)がtriple-class refractoryであった。50例が中止(うち39例は進行)したが、全例を主要解析対象集団に含めた。・中央値25.4ヵ月(四分位範囲:19.7~31.6)の追跡期間後、PFS中央値は17.6ヵ月(片側95%信頼区間:16.6~19.9)であった。・全例において、Grade3~4の有害事象で最も頻度が高かったのは好中球減少症(56%)および感染症(34%)であった。重篤な治療関連有害事象は25例(41%)で報告され、感染症が最も頻度が高かった。治療関連死はCOVID-19による1例だった。 著者らは「IberCdは再発・難治性多発性骨髄腫に対する有効な経口剤のみの併用レジメンで、臨床的に意義のある有効性を示した。本レジメンは2~4ラインの治療歴を有する患者にとって有用な治療選択肢となり、既存治療と比較して良好な結果を示した」としている。

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ASCVD合併2型DMのCVアウトカム、チルゼパチドvs.デュラグルチド/NEJM

 2型糖尿病とアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有する患者の治療において、心血管死、心筋梗塞または脳卒中の複合エンドポイントに関し、チルゼパチドのデュラグルチドに対する非劣性が認められた。オーストラリア・Monash UniversityのStephen J. Nicholls氏らSURPASS-CVOT Investigatorsが、30ヵ国640施設で実施した無作為化二重盲検実薬対照非劣性試験の結果を報告した。チルゼパチドはGLP-1受容体およびGIP受容体のデュアルアゴニストで、血糖コントロールと体重において好ましい効果をもたらすが、心血管アウトカムへの影響は不明であった。NEJM誌2025年12月18・25日号掲載の報告。主要エンドポイントは、心血管死、心筋梗塞または脳卒中の複合 研究グループは、40歳以上、HbA1c値7.0~10.5%、BMI値25以上で、ASCVDを有する2型糖尿病患者を、チルゼパチド群(2.5mgから開始、4週ごとに増量し最大用量15mg)、またはデュラグルチド群(1.5mg)に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ週1回皮下投与した。 主要エンドポイントは、心血管死、心筋梗塞または脳卒中の複合であった。チルゼパチドのデュラグルチドに対する非劣性マージンは95.3%信頼区間(CI)の上限が1.05未満とし、上限が1.00未満の場合はチルゼパチドのデュラグルチドに対する優越性を検証するとした。ハザード比は0.92、チルゼパチドのデュラグルチドに対する非劣性を確認 2020年5月29日~2022年6月27日に1万3,299例が無作為化された。その後に適格基準を満たさないことが判明した134例を除外し、1万3,165例(チルゼパチド群6,586例、デュラグルチド群6,579例)を修正ITT集団として有効性の解析を行った。 患者背景は、年齢64.1±8.8歳、女性29.0%、HbA1c値8.4±0.9%、BMI値32.6±5.5、糖尿病罹病期間14.7±8.8年であった。 追跡期間中央値4.0年において、主要エンドポイントのイベントはチルゼパチド群で801例(12.2%)、デュラグルチド群で862例(13.1%)に発生した。心血管死、心筋梗塞または脳卒中のハザード比は0.92(95.3%CI:0.83~1.01)であり、チルゼパチドのデュラグルチドに対する非劣性が示された(非劣性のp=0.003、優越性のp=0.09)。 有害事象の発現割合は両群で同程度であったが、消化器系の有害事象はチルゼパチド群(42.5%)がデュラグルチド群(35.9%)より多かった。

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高リスク頭頸部がん、術後化学放射線療法へのニボルマブ追加でDFS改善/Lancet

 切除後の再発高リスク局所進行頭頸部扁平上皮がん(LA-SCCHN)に対し、術後シスプラチン+放射線療法にニボルマブを追加することにより、中等度の毒性が増加するものの無病生存期間(DFS)が有意に改善された。スイス・ローザンヌ大学のJean Bourhis氏らが、欧州6ヵ国82施設で実施された、フランスの頭頸部がん放射線治療グループ(GORTEC)主導の無作為化非盲検第III相試験「GORTEC 2018-01 NIVOPOST-OP試験」の結果を報告した。シスプラチン+放射線療法は、高リスクLA-SCCHNに対する術後補助療法の標準治療であるが、ニボルマブ追加の有効性と安全性は不明であった。著者は、「ニボルマブ+シスプラチン+放射線療法は、新たな標準治療として提案可能である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年12月22日号掲載報告。病理学的再発高リスク因子を有するLA-SCCHN患者が対象 NIVOPOST-OP試験の対象は、年齢が19~74歳、ECOG PSが0~1、肉眼的完全切除が施行された口腔、中咽頭、喉頭または下咽頭の扁平上皮がんで、病理学的再発高リスク因子(リンパ節被膜外浸潤、顕微鏡的切除断端陽性[R1または切除マージン1mm以下]、節外浸潤のない4個以上の頸部リンパ節転移、複数の神経周囲浸潤)を1つ以上有している患者であった。 研究グループは、欧州6ヵ国(フランス、スペイン、ポーランド、ベルギー、ギリシャ、スイス)の82施設で登録された適格患者を、シスプラチン+放射線療法群(66Gyを33分割、シスプラチン100mg/m2を3週ごとに3サイクル、標準治療群)、またはニボルマブ+シスプラチン+放射線療法群(ニボルマブ240mg単回静脈内投与→シスプラチン+放射線療法+ニボルマブ360mgを3週ごと3サイクル→ニボルマブ480mgを4週ごと6サイクル、ニボルマブ追加群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、ITT集団における治験担当医師評価によるDFSであった。ハザード比(HR、期待値)を0.65、第1種の過誤を両側0.05、検出力を90%として例数設計を行った(680例で230イベント)。ニボルマブ追加群でDFSイベントが有意に減少 2018年10月15日~2024年7月3日に680例が無作為化されたが、必要イベント数に達した時点(データカットオフ日2024年4月30日で252例のイベントが発生)でDFSの最終解析を行った。すなわち、解析対象(ITT集団)はデータカットオフ日までに無作為化された666例(標準治療群334例、ニボルマブ追加群332例)で、追跡期間中央値は30.3ヵ月であった。 DFSのイベントは、標準治療群で140例、ニボルマブ追加群で112例に認められた。再発または死亡のHRは0.76(95%信頼区間:0.60~0.98、層別log-rank検定のp=0.034)であり、ニボルマブ追加群はPD-L1の発現状況にかかわらず、標準治療群と比較しDFSが有意に改善した。 安全性は、1回以上治療を受けた標準治療群の306例、ニボルマブ追加群の312例を解析対象とした。Grade4の治療関連有害事象の発現率は、それぞれ5%(16/306例)および10%(30/312例)であり、ニボルマブ追加群で増加した。治療に関連した死亡は各群2例に発現した。

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15分で判定可能なC型肝炎ウイルス迅速PCR検査を開発

 米ノースウェスタン大学が開発した迅速検査のおかげで、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているかどうかを15分以内に判定できるようになった。この検査により、医師は診察中に感染症を診断し、その場で治療を開始できるようになる。ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部グローバルヘルス研究所・グローバル感染症および新興感染症センターのClaudia Hawkins氏らが開発したこの検査に関する詳細は、「The Journal of Infectious Diseases」に12月10日掲載された。 Hawkins氏は、「この検査は、診断を劇的に改善し、治療の普及を加速させ、より多くの人に対するより早期の治癒を可能にすることで、米国および世界のHCV治療に革命をもたらす可能性がある」とニュースリリースで述べている。同氏はさらに、「遅延を減らし、検査に至るまでの流れを簡素化することで、未治療のHCVによる壊滅的な肝臓関連の合併症から何百万人もの命を救う可能性がある」と付け加えている。 C型肝炎は、世界中で推定5000万人に影響を与え、主に肝臓の瘢痕化と肝臓がんにより、毎年24万2,000人が死亡している。研究グループは背景情報の中で、C型肝炎は8~12週間の投薬で治癒できるが、治療率は依然として低いと述べている。 通常、活動性のHCV感染の有無を調べる検査では、血液サンプルを検査機関に送る必要がある。検査機関から医師のもとに結果が届くまでには、数日から数週間かかることもあるという。 今回、開発された検査は、DASH(Diagnostic Analyzer for Specific Hybridization〔特異的ハイブリダイゼーション診断解析装置〕)迅速PCRシステムと呼ばれるもので、装置に血液サンプルを入れるだけでPCR検査の結果が得られる。この装置は当初、鼻腔スワブで採取したサンプルから新型コロナウイルスを検出するために開発された。 現状で利用可能なHCVの迅速検査は、米食品医薬品局(FDA)が2024年6月に承認したXpert HCV検査である。この検査は、結果が出るまでに40~60分かかる。一方、Hawkins氏らが開発した検査の所要時間は15分であり、Xpert HCV検査よりも最大で75%速く結果が判明するという。 この検査の臨床での有用性を確認するために、米ジョンズ・ホプキンス大学の共同研究者らは、97個の血漿サンプルを用いて独自の評価を行った。その結果、本検査は既存の検査法との比較において、陽性一致率および陰性一致率がともに100%であった。 論文の上席著者であるノースウェスタン大学マコーミック工学部のSally McFall氏は、「患者の診察中にポイントオブケアで実施できる診断検査を開発することができた。これにより、HCV撲滅に向けた取り組みを支援するための即日診断と治療が可能になる」と述べている。 研究グループは、この検査は世界保健機関(WHO)が掲げる「2030年までにHCVを根絶する」という目標の達成において、重要な役割を果たす可能性があるとの期待を示している。

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sFlt-1/PlGF検査を含むリスク評価により、満期の妊娠高血圧腎症リスクを低下(解説:前田裕斗氏)

 本研究は妊娠35~36週で妊娠高血圧腎症を伴わず、胎児に致命的な異常のない単胎妊娠8,136例を対象とした介入試験である。Fetal Medicine Foundationの提供する妊娠高血圧腎症発症のリスク評価により分娩時期を定め、陣痛発来のない場合に計画分娩とすることで妊娠高血圧腎症の発症率低下を目的とした。結果、介入群の発症率は3.9%、対照群は5.6%であり、30%の有意な減少を認めた。新生児合併症や帝王切開率の増加は認めなかった。 本研究に用いるリスク評価はsFlt-1/PlGF比の測定を含む。日本においては高リスク群以外に保険適用のない検査ということもあり、全妊娠を対象とするのは現実的ではない。そのため、日本において本研究を適用するためには妊娠初期・中期で妊娠高血圧症候群の高リスク群を抽出する2段階スクリーニングとする必要がある。もしくは検査の外注・検体搬送などのハードルはあるが、産婦人科医の少ない地域や離島に居住する妊婦を対象とするのも理にかなっているといえるだろう。ただし、費用面からも上記のような要件での保険適用が認められることが前提となる。今後、sFlt-1/PlGF検査自体の価格が下がることにも期待したい。

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症状を教えて!【Dr. 中島の 新・徒然草】(613)

六百十三の段 症状を教えて!皆さま、年末年始はどのようにお過ごしだったでしょうか?今回は驚異の9連休。例年より長く休めました。私自身はとくに遠出をすることもなく、食べたのは餅ばかり。そのせいか、ずいぶん太ってしまいました。さて、先日お見えになった外来患者さん。高齢の女性です。最近、手術のためにしばらく循環器内科に入院していたのだとか。中島「おっ、何の手術をしたのですか?」患者「心臓の手術やけど」中島「ということは……」患者「わからへん」いやいやいや。手術の名前くらい覚えておきましょうよ。念のためカルテで確認してみました。中島「心房細動に対するアブレーション手術ですね」患者「そうやったかな」中島「それで調子良くなりましたか?」患者「血圧計で測ったら不整脈のランプがつくから、もう調べるのをやめてん」それ、本末転倒じゃないですか。そう思って脈を触ってみたらレギュラーでした。中島「ちゃんと不整脈は治っていますよ」患者「そうなん?」中島「体調はどうですか。いつも『しんどい、しんどい』と言ってたけど」患者「血圧計で調べたら、血圧が……」こちらが知りたいのはご本人の症状です。中島「血圧は見たらわかりますがな」患者「……」中島「私が知りたいのは、しんどいのが治ったのか、治ってないのか、です。それは自分自身しかわからないでしょ!」ここで横からご主人のコメントが……ご主人「手術の後は『しんどい、しんどい』と言わなくなったなあ」患者「今年のお節料理は買って済まそうと思ってたけど、手術の後には自分で作る元気が出てきて……」中島「それですよ、それ! 不整脈が治ったら元気が出てきたわけでしょ」いわゆる atrial kick が復活して倦怠感がなくなったのかも……知らんけど。患者「脳トレを頑張っているから」何でピント外れの答えばかりが返ってくるのか。いやいや、これは倦怠感が改善して、脳トレをする元気が出てきたと解釈すべきかも。中島「循環器内科の主治医の顔を見たら『手術をしたら元気になりました』って言うんですよ。血圧計がどうとか脳トレがどうとか余計なことを言わずにね。お願いします!」患者「わかりました、そない言います」中島「ちょっと練習してみましょか、今ここで」患者「はい、脳トレを頑張っています」アカン、これ。何もわかってもらえていない。なので、ご主人に念を押しておきました。ご主人「アブレーションしたら調子が良くなったって言ったらいいんですね」中島「そうです。そう言ったらね、主治医の先生も喜んでくれるから」それにしても何で新年早々、脳外科外来でアブレーションの話をしているのか、自分でもわからなくなってきました。まあ、高齢患者さんというのは、皆さんこんな感じかもしれませんね。ということで本年最初の1句手術して お節を作った 大成功!

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望ましい死亡診断とは【非専門医のための緩和ケアTips】第115回

望ましい死亡診断とは死亡診断、医師にとって、とくに終末期医療に関わる医師にとって避けて通れない仕事ですが、皆さんは死亡診断時に気を付けていることはありますか? 今回は緩和ケア医として定期的に考えたくなる、死亡診断に関する話題です。今日の質問死亡診断の際、病室に時計がなかったので、自分のスマホの時刻で死亡時刻を確認しました。ご家族からとくに何かを言われたわけではないのですが、自分でも少し違和感を抱いてしまいました。死亡診断の際の行動について、何らかの指針はあるのでしょうか?緩和ケアにおける死亡診断は、それまで積み重ねてきたケアの集大成のような瞬間ですので、大切にしている方も多いと思います。一方、研修医や若手医師であればまだしも、ある程度経験を積んでくるとほかの医師の診療を見ることもなくなるため、私自身、「皆はどうしているのだろう?」と思うときがあります。若手の医師を指導しているときに受けた死亡診断に関連した質問を思い起こしてみました。死亡診断の際、モニターの電源は切るのか診察はどの程度行うのか。服の上から聴診をしてもよいかご家族にどのような声掛けをするとよいか自分が主治医でない患者を看取る際には、どのような点に注意すればいいのかこうしてみると、一つひとつは小さなことですが、患者さんとご家族にとって大切な瞬間における適切な立ち居振る舞いとは、こうした小さなことの積み重ねです。医学部における卒前教育でも、初期研修でも、こうしたことを細かく教えてもらう機会も多くないでしょう。結果として、それぞれの医師の工夫やスタイルが出やすい分野です。今回のご質問にある「死亡診断の指針」ですが、専門家の意見に基づいて作成された死亡診断のガイドブックが存在します1)。とくに在宅におけるお看取りの際の注意点がわかりやすくコンパクトにまとまっています。死亡診断時に「本人と家族へ会釈をし、生きている人と同じように接する」「事務的に見えないように配慮する」といった態度面にも言及されています。私自身としては、死亡診断はそれまでの患者・家族と医療者の関係性や文脈の中で行われるものであり、多くの人が抵抗感を抱くような立ち居振る舞いでなければ、それぞれの医師のスタイルで行えばよいと思っています。「必ずこうしなければならない」ことはそうないですし、質問にあるように「スマホで時刻を確認するのは非常識」とも言い切れないと思います。ただ、後から自身の態度を振り返ることは大切ですし、違和感があったのであれば、「次は腕時計をしていこう」と改善していくことが大切です。忘れてほしくないのは、看取りの瞬間の中心にあるのは患者自身とその家族なので、医師が変に目立ったり、印象付けようと頑張ったりする必要はない、ということです。まあ、これも私の死亡診断の考え方なので、皆さんもそれぞれ考えていただけたらと思います。今回のTips今回のTips日々振り返りをしながら、より良い死亡診断を模索しましょう。1)えんじぇる班. 地域の多職種でつくった『死亡診断時の医師の立ち居振る舞いについてのガイドブック』;2014.

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第43回 最新ゲノム解析が解き明かす、人類と牛乳の意外な歴史

「牛乳を飲むと、なんだかおなかの調子が悪くなる。」 そんな経験を持つ人は、日本人だけでなく世界中に少なくありません。実は、大人になっても牛乳に含まれる糖(乳糖)を分解できる「ラクターゼ持続性」という体質を持っているのは、人類全体で見れば少数派なのです。 なぜ一部の人だけが牛乳を飲めるように進化したのか? これまでは「牧畜を始め、ミルクを飲むことが生存に有利だったから」というシンプルな説が信じられてきました。しかし、昨年末に発表された最新の研究は、そんな定説を覆す驚きの事実を明らかにしました。南アジアの大規模なゲノム解析から見えてきたのは、遺伝子と文化、そして「ヨーグルト」が織りなす、人類の巧みな生存戦略だったのです1)。「飲める遺伝子」は、生存競争の結果ではなかった? 長年、生物学の教科書では、大人になっても牛乳を分解できる能力(ラクターゼ持続性)は、「自然選択」の代表例として語られてきました。つまり、牧畜が盛んな地域では、ミルクを栄養源として摂取できる人が生き残りやすく、その結果、「牛乳を飲める遺伝子」が爆発的に広まったというストーリーです。 実際、ヨーロッパの人々においては、この説明は正しいと考えられています。しかし、世界最大級の乳製品の生産・消費地である「南アジア(インド、パキスタン、バングラデシュ)」に目を向けると、この定説に綻びが見え始めました。 米国・カリフォルニア大学バークレー校などの研究チームは、インド、パキスタン、バングラデシュの現代人および古代人、計8,000人以上というかつてない規模のゲノム解析を行いました2)。南アジアの人々は日常的にミルクや乳製品を摂取しています。ならば、ヨーロッパと同じように、ミルクを消化する遺伝子が「生存に有利だから」という理由で強く選択され、広まっているはずです。 しかし、結果は予想外のものでした。 解析の結果、南アジアの人々が持っている「ミルクを飲める遺伝子変異」は、ヨーロッパの人々が持っているものと同じタイプであることがわかりました。ところが、南アジアのほとんどの集団において、この遺伝子の頻度は「生存競争(自然選択)」によって増えた痕跡を示していなかったのです。 では、なぜ彼らはこの遺伝子を持っていたのでしょうか? 答えは「移民」でした。 研究チームは、この遺伝子の分布が、約3,500年以上前に北方からやってきた遊牧民の遺伝子の濃さと、ほぼ完全に比例していることを突き止めました。つまり、多くの南アジアの人にとって、ミルクを飲める遺伝子は、厳しい生存競争を勝ち抜くために獲得した「武器」ではなく、単に先祖が移動してきた際に一緒に持ち込まれたにすぎなかったのです。「例外」が証明する、過酷な環境とミルクの力 「ミルクを飲めること」が生存に必須ではなかった。そう結論付けられそうになった研究ですが、データの中には「例外」も存在しました。 それは、南インドの「トダ族」と、パキスタンの「グジャール族」という2つの集団です。 この2つのグループでのみ、ミルクを消化する遺伝子の頻度が異常に高かったのです。その割合は、偶然や単なる先祖の影響では説明がつかないレベルでした。統計的な分析の結果、彼らの遺伝子には、過去数千年の間に「この遺伝子を持っていなければ生き残れなかった」と言えるほど、強力な自然選択が働いた痕跡が見つかりました。 それでは、なぜ彼らだけが? その鍵は、彼らのライフスタイルにあります。トダ族もグジャール族も、伝統的にバッファローや牛を飼育し、その生活のすべてを乳製品に依存する牧畜民だそうです。 ヨーロッパの古代牧畜民と同様、厳しい環境下で、ミルク以外の食料が手に入りにくい状況にあった彼らにとって、ミルクを「生のまま」栄養にできるかどうかは、まさに生死を分ける問題だったのでしょう。この発見は、「環境が極端に厳しく、ミルクに依存せざるを得ない状況」にあって初めて、遺伝子が強力に進化することを示唆しています。「おなかがゴロゴロしない」ための人類の知恵 しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。トダ族やグジャール族以外の南アジアの人々も、日常的に乳製品をたくさん食べています。遺伝的な進化(自然選択)が起きていないのなら、彼らはおなかを壊しながら無理して食べていたのでしょうか? 研究者たちが注目しているのは、「文化的な適応」です。 南アジアの食文化の中心は、ダヒ(ヨーグルト)、パニール(チーズ)、ギー(澄ましバター)。これらはすべて、発酵や加工の過程を経た食品です。実は、ミルクを発酵させてヨーグルトやチーズにすると、おなかの不調の原因となる「乳糖(ラクトース)」が大幅に減少します。 つまり、多くの人が、自分の遺伝子(体質)を進化させるのを待つのではなく、食べ方(文化)を工夫することで、ミルクの栄養を享受してきたのです。これを「遺伝子と文化の共進化」と呼びます。つまり、乳糖を分解できない問題を遺伝子で解決した人と文化で解決した人がそれぞれいたわけです。 遺伝子で解決した人 トダ族、グジャール族、北欧の人など(生のミルクに依存せざるを得なかった) 文化(加工)で解決した人 その他の多くの南アジアの人、そしておそらく日本人の祖先も?(発酵技術で乳糖を減らした) 「牛乳が体に合う・合わない」は、単なる好き嫌いではなく、数千年にわたる先祖の移動と、厳しい環境を生き抜いた歴史の結果です。そして同時に、もし自分の体質に合わなくても、人類は「料理」や「加工」という知恵を使って、その壁を乗り越えてきました。 「スーパーでヨーグルトを買う」という何気ない行為も、実は、遺伝子の進化を「知恵」で補ってきた人類の壮大な歴史の一部なのかもしれません。そんなことを考えると、次に口にする乳製品はまたちょっと違った味わいになるかもしれません。 1) Price M. Roots of milk drinking revealed by South Asian genomes. Science. 2026 Jan;391:12-13. 2) Kerdoncuff E, et al. Revisiting the evolution of lactase persistence: insights from South Asian genomes. bioRxiv. 2025 Nov 6. [Preprint]

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腹囲の大きさでフレイルを予測できるか/大阪公立大

 腹囲の大きさは、フレイルの進行に何らかの影響を与えるのであろうか。この課題について大阪公立大学研究推進機構都市健康・スポーツ研究センター教授の横山 久代氏は、スマートフォン(スマホ)の健康アプリを用いたウェブ調査を行った。その結果、腹部肥満は将来のフレイルに関係する可能性があることが示唆された。この結果はGeriatrics誌2025年11月8日号に掲載された。自覚、運動習慣、前フレイルがフレイルの予測因子になる可能性 フレイルリスクの高い人を特定し、適切な介入を実施することは、健康寿命の延伸に極めて重要である。本研究は、後ろ向きコホート研究として、大阪府在住の30~79歳の成人2,962人を対象に、腹部肥満が1年間のフレイル進行を予測するかどうかを検討した。横山氏は、2023~24年にわたりスマホの健康アプリを通じ年次調査を行い、ウエスト周囲径データが利用可能な2,962人(平均年齢62.7±8.8歳)からデータを収集した。フレイルは基本チェックリストを用いて評価した。フレイル進行の予測因子を特定するためロジスティック回帰分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時(2023年)において、参加者の23%が腹部肥満を有し、18%がフレイルと分類された。・ベースライン時に非フレイルだった2,431人において、1年後のフレイル発生率は、腹部肥満群で非肥満群より有意に高かった(10.5%vs.7.2%、p=0.011)。・多変量ロジスティック回帰分析では、フレイルの自覚(「よく知っている」対「知らない」、調整オッズ比[aOR]=0.341、95%信頼区間[CI]:0.212~0.548)、定期的な運動習慣(aOR=0.596、95%CI:0.382~0.930)、および前フレイル状態(aOR=1.767、95%CI:1.602~1.950)がフレイル発症の有意な予測因子であった。・腹部肥満は調整後、フレイル進行と独立した関連性を示さなかった。 これらの結果から横山氏は「粗解析では腹部肥満がフレイル発症と関連していたが、調整後は有意でなくなった。フレイルへの認識向上と定期的な運動はフレイル発症リスクを低減させる可能性があり、生活習慣指導や啓発活動が腹部肥満によるフレイル進行への影響を緩和する可能性を示唆している」と述べている。

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退職後でも認知機能が維持される人の特徴は?

 多くの先進国において、公的年金の受給年齢の引き上げが行われている。これは、退職を遅らせることで認知機能の老化に影響を与える可能性がある。しかし、退職が認知機能に及ぼす影響は個人や状況によって異なる可能性が高いと考えられる。慶應義塾大学の佐藤 豪竜氏らは、退職と認知機能の異質性について、その関連性を調査した。International Journal of Epidemiology誌2025年10月14日号の報告。 米国、英国、欧州で行われた3つの縦断研究(Health and Retirement Study、English Longitudinal Study on Ageing、Survey of Health, Ageing and Retirement in Europe)より得られたデータを統合し、分析した。本データセットは、2014〜19年に19ヵ国で実施された3つのwave調査を網羅している。本研究では、wave1では、就労していた1万2,811人を対象とし、各調査で共変量情報を収集した。wave2では、50〜80歳の参加者の退職状況を評価した。wave3では、単語想起テストを用いて認知機能を測定した。本分析では、退職の判断基準として公的年金受給年齢を用いた操作変数因果フォレスト推定法を採用した。 主な結果は以下のとおり。・退職傾向スコアが0.1〜0.9であった7,432人のうち、2,165人(29.1%)がwave2で退職していた。・分析の結果、退職者は労働者よりも平均1.348語多く記憶していたことが明らかになった。・退職と認知機能の関連は異質性を示した。・より大きな認知的利益が観察された人の特徴は、女性、社会経済的地位の高い人、退職前の健康状態が良好な人、退職前に身体活動を行っていた人であった。 著者らは「観察された異質性の関連は、政策立案者が年金制度に早期退職の選択肢を組み込み、個人がそれぞれの状況に基づいて退職を決定できるようにすることを検討すべきであることを示唆している」とまとめている。

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妊娠前・中のコロナワクチン接種、母体の重症化および早産リスク低下/JAMA

 妊娠前および妊娠中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの接種(新型コロナウイルス感染症[COVID-19]の診断前)は、変異株の流行時期にかかわらず母体の重症化リスクおよび早産リスクの低下と関連することが、カナダで行われたサーベイランスプログラムで示された。同国ブリティッシュ・コロンビア大学のElisabeth McClymont氏らCANCOVID-Preg Teamが報告した。COVID-19およびワクチン接種が妊娠アウトカムに及ぼす影響については、知見が不足していた。JAMA誌オンライン版2025年12月15日号掲載の報告。COVID-19関連入院、CCU入室および早産のリスクを解析 研究グループは、カナダのサーベイランスプログラム「CANCOVID-Preg」を用い、9つの州・準州にて2021年4月5日(デルタ株流行期開始およびカナダにおける妊娠中ワクチン接種推奨開始日)~2022年12月31日に診断されたSARS-CoV-2感染妊婦およびその乳児を特定し、2023年まで母体・周産期アウトカムの追跡調査を実施した。 主要アウトカムは、COVID-19関連入院、クリティカルケアユニット(CCU)入室および早産で、ワクチン接種の有無で分類して解析した。ワクチン接種で、入院、CCU入室および早産のリスクが低下 特定されたSARS-CoV-2感染妊婦2万6,584例のうち、ワクチン接種状況が判明していた1万9,899例が解析対象となった。大半は30~35歳(46.3%)および白人(55.9%)で、1万4,367例(72%)はCOVID-19診断前に少なくとも1回ワクチンを接種しており、未接種は5,532例(28%)であった。 ワクチン接種例のうち、80%(1万1,425例)は妊娠前に、20%(2,942例)は妊娠中に接種を受けており、接種からCOVID-19診断までの期間の中央値は18週(四分位範囲:11~25)であった。また、全対象のうち6,120例はデルタ株流行期、1万3,799例はオミクロン株流行期の症例であった。 ワクチン接種はCOVID-19関連入院リスクの低下と関連していた。デルタ株流行期における入院率は、ワクチン接種者4.8%、未接種者13.5%で、相対リスク(RR)は0.38(95%信頼区間[CI]:0.30~0.48)、絶対リスク差(ARD)は8.7%(95%CI:7.3~10.2)であった。オミクロン流行期ではそれぞれ1.5%と5.3%、0.38(0.27~0.53)、3.8%(2.4~5.2)であった。 CCU入室も同様の傾向を示し、デルタ株流行期ではRRは0.10(95%CI:0.04~0.26)、ARDは2.4%(95%CI:1.8~2.9)であり、オミクロン株流行期ではそれぞれ0.10(0.03~0.29)、0.85%(0.27~1.44)であった。 早産率は、ワクチン接種者(7.2%)と比較し未接種者(9.6%)で有意に高かった。デルタ株流行期ではRRは0.80(95%CI:0.66~0.98)、ARDは1.8%(95%CI:0.3~3.4)であり、オミクロン株流行期でそれぞれ0.64(0.52~0.77)、4.1%(2.0~6.2)であった。 多変量解析の結果、併存疾患を補正後もワクチン接種は両変異株流行期においてCOVID-19関連入院リスクの低下と関連していた。ワクチン接種者と比較し未接種者の補正後入院RRは、オミクロン株流行期で2.43(95%CI:1.72~3.43)、デルタ株流行期で3.82(2.38~6.14)であった。

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高リスク早期TN乳がん、術後EC+PTXにCBDCA追加で3年DFS・OS改善/BMJ

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対する術後補助療法として、エピルビシン+シクロホスファミド(EC療法)後の週1回パクリタキセル(PTX)投与にカルボプラチン(CBDCA)を追加することで、新たな安全性の懸念なく早期再発リスクが低下し、生存アウトカムが有意に改善したことが示された。中国・復旦大学上海がんセンターのYin Liu氏らが、第III相の無作為化非盲検試験「CITRINE試験」の結果を報告した。高リスクの早期TNBCの予後は不良であり、術後補助療法の強化戦略の最適化が依然として必要とされていたが、TNBCに対する術後補助療法としてのアントラサイクリン/タキサン系化学療法へのカルボプラチン追加の有益性については、意見が分かれていた。BMJ誌2025年12月23日号掲載の報告。中国の復旦大学上海がんセンターで実施 研究グループは、新たに診断された切除可能な片側浸潤性TNBCで、手術後の切除断端陰性、病理学的に局所リンパ節転移陽性またはリンパ節転移陰性でありKi-67が50%以上の18~70歳の女性患者を、カルボプラチン群または対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 カルボプラチン群は、エピルビシン+シクロホスファミドを2週間隔で4サイクル投与後、パクリタキセルとカルボプラチンを1サイクル28日(1日目、8日目、15日目に投与)で4サイクル投与した。対照群は、エピルビシン+シクロホスファミドを3週または2週間隔で4サイクル投与後、パクリタキセルを1サイクル21日(1日目、8日目、15日目に投与)で4サイクル投与した。 主要評価項目はITT集団における無病生存期間(DFS)、副次評価項目は無再発生存期間(RFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)および安全性であった。3年DFS、RFS、DDFSおよびOSが改善 2020年3月~2022年3月に808例が登録され無作為化された(カルボプラチン群404例、対照群404例)。このうち、カルボプラチン群の1例が治療開始前に同意を撤回した。 データカットオフ日(2025年3月10日)時点で、追跡期間中央値44.7ヵ月において推定3年DFS率は、カルボプラチン群92.3%、対照群85.8%であった(補正前ハザード比[HR]:0.64、95%信頼区間[CI]:0.43~0.95、p=0.03)。しかし、比例ハザード仮説の検証では仮説が成立しないことが判明し(p=0.02)、区分ハザードモデルによる解析の結果、HRが時間経過とともに変化することが示された(0~12ヵ月のHR:0.31[95%CI:0.13~0.73]、12~36ヵ月のHR:0.65[95%CI:0.39~1.09]、36ヵ月以降のHR:1.98[95%CI:0.69~5.69])。 副次エンドポイントについては、カルボプラチン群は対照群と比較し、3年RFS率(93.8%vs.88.3%、HR:0.59[95%CI:0.37~0.93]、p=0.02)、3年DDFS率(94.8%vs.89.8%、0.61[0.37~0.98]、p=0.04)、および3年OS率(98.0%vs.94.0%、0.41[0.20~0.83]、p=0.01)の改善が認められた。 Grade3/4の治療関連有害事象の発現割合は、カルボプラチン群で66.7%(269/403例)、対照群で55.0%(222/404例)であった。治療に関連した死亡は認められなかった。

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大気汚染は運動の健康効果を損なう

 大気汚染は、定期的な運動によって得られると期待している健康効果の一部を損なう可能性のあることが、新たな研究で示唆された。運動がもたらすはずの死亡リスクの低減効果は、大気汚染のひどい地域に住む人では半減することが示されたという。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)心理学・疫学教授のAndrew Steptoe氏らによるこの研究結果は、「BMC Medicine」に11月28日掲載された。 Steptoe氏は、「われわれの研究は、大気汚染が運動の効果をある程度弱めることを示しているが、完全に打ち消すわけではない」とニュースリリースの中で述べている。同氏は、「今回の結果は、微小粒子状物質(PM2.5)による健康被害を改めて示すものだ。健康的な老化にはきれいな空気と身体活動の両方が重要と考えられ、健康を害する汚染レベルを下げる努力を強化する必要がある」と話している。 この研究でSteptoe氏らは、まず、米国、英国、台湾、中国、デンマークなどに住む151万5,094人を対象とした7つの研究データを統合し、解析した。これらの研究の追跡期間中央値は12.3年で、この間に11万5,196人が死亡していた。 その結果、1週間当たりの運動量が7.5〜15MET/時間(150〜300分/週の中強度の運動に相当)と推奨レベルを満たしていた人では、死亡リスクが約30%低いことが示された。しかし、同じ運動量でも、空気が汚れている地域(PM2.5濃度≧25μg/m3)で運動を行っている場合には、死亡リスクの低下は12〜15%とほぼ半減することが明らかになった。 次に、3つの大型コホート(86万9,038人、死亡者数4万5,080人)を対象に、個人レベルでPM2.5の濃度別に運動の効果を比較し、この結果が再現されるのかを検討した。その結果、ほとんど運動をしない群(1週間当たり1MET/時間未満)+高汚染(PM2.5濃度が35〜50μg/m3)を基準とした場合、運動量の推奨レベルを満たしていた人の死亡リスクは、PM2.5 濃度が35〜50μg/m3で25%(ハザード比0.75)、25〜35μg/m3で33%(同0.67)、15〜25μg/m3と10〜15μg/m3でそれぞれ66%(同0.34)、10μg/m3未満で70%(同0.30)低下し、大気汚染レベルが高いほど、死亡リスクの減少幅は小さくなることが示された。 研究グループは、世界人口のほぼ半数(46%)が、PM2.5濃度に関する安全基準を超える地域に住んでいると指摘している。論文の筆頭著者である国立中興大学(台湾)のPo-Wen Ku氏は、「この研究は、汚染された環境においても運動が有益であることを強調している。しかし、大気の質を改善すれば、健康上の利益を大幅に高めることができる」と述べている。 研究グループは、このような結果ではあったものの、運動習慣のある人は落胆しないでほしいと話している。共著者の1人であるUCLの医療・社会統計学教授のPaola Zaninotto氏は、「われわれは、人々に屋外での運動をやめてほしいとは考えていない。大気の質を確認したり、より空気のきれいなルートを選んだり、汚染がひどい日は運動の強度を少し落とすことで、運動の健康効果を最大限に引き出すことができる」と述べている。

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