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肥満は「累積」が重要、BMI単独では心血管リスクと関連せず

 肥満が心臓病などのリスクを高めることは古くから知られているが、肥満の程度と肥満該当期間の積である「肥満の累積負荷」の方が、より重要なことを示唆する研究結果が報告された。この累積負荷を考慮に入れた場合、ある一時点のBMIの高さは、心筋梗塞や脳卒中のリスクとの関連が有意でなくなるという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院および米ハーバード大学のAlexander Turchin氏らによる研究の結果であり、詳細は「PLOS ONE」に4月8日掲載された。 この研究は、米国で行われている看護師健康調査(NHS)と医療従事者対象調査(HPFS)のデータを用いて行われた。1990~1999年の間に1回以上、BMI25超(米国の基準では過体重、日本国内の基準では肥満に該当)が記録されていた13万6,498人(平均BMI27.2)を解析対象とした。肥満の累積負荷は、過剰なBMI(25超に相当する値)と、その持続期間(年数)を掛け合わせ、面積として評価した。その四分位数に基づき全体を4群に分類し、性別・年齢層別に心血管イベント(心筋梗塞と脳卒中)の発生リスクを比較した。 2000年から中央値16.7年(四分位範囲12.5~17.8)追跡したところ、1万2,048人(8.8%)に心血管イベントが発生した。四分位群ごとの累積イベント発生率は、女性では第1四分位群から順に、2.62%、2.89%、3.35%、3.53%、男性では13.45%、15.09%、16.80%、17.99%だった。 交絡因子(年齢、性別、人種/民族、喫煙習慣、ベースラインのBMI、糖尿病、高血圧、心不全、動脈硬化性疾患の既往歴および糖尿病または動脈硬化性疾患の家族歴など)の影響を調整後、肥満の累積負荷の第1四分位群と第4四分位群との間に有意なリスク差が認められた。例えば、女性については、35歳未満(ハザード比〔HR〕1.60〔95%信頼区間1.05~2.44〕)と35~50歳(HR1.27〔同1.01~1.58〕)で有意差が観察され、男性では35~50歳(HR1.57〔1.22~2.03〕)と50~65歳(HR1.23〔1.02~1.48〕)において有意差が認められた。 全体的に若年成人において肥満の累積負荷の影響が強く見られ、50歳以上の女性と65歳以上の男性は関連が非有意だった。なお、肥満の累積負荷を考慮に入れた解析では、ベースラインのBMIは性別・年齢層にかかわらず、イベントリスクと有意な関連が見られなかった。 これらの結果を基にTurchin氏らは、一時点においてBMIが高いという情報も警告のサインに違いないが、心臓や血管へのダメージは、過剰な体重による負荷が長く続くほど大きくなると述べている。また、本研究では若年成人で肥満の累積負荷の影響がより強く認められたことに関して研究者らは、肥満は永続的なことではなく修正可能なリスクであることを強調。Turchin氏も、「われわれの研究結果は、ある一時点において肥満であっても体重を減らせば、健康状態が改善する可能性があることも示唆している」としている。 なお、本研究はイーライリリー社の資金提供を受けて実施された。

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インフルエンザmRNAワクチンの予防効果を臨床症状で判定(解説:栗原宏氏)

Strong point・インフルエンザmRNAワクチンの有効性を、実臨床に即した「PCR+臨床症状」を基準として大規模な第III相試験で示した・mRNAワクチンが従来型ワクチンに比して、非劣性にとどまらず優越性まで証明したWeak point・ハイリスク患者に対して従来型ワクチンより有効性が示されている高用量ワクチン、アジュバント添加ワクチンとの比較がなされていない・インフルエンザB型に対しては十分な解析ができていない 本調査は、50歳以上を対象とした4万人規模のインフルエンザmRNAワクチン(モデルナの開発製品mRNA-1010)の第III相試験である。効果判定を抗体価ではなく、RT-PCRでインフルエンザ陽性に加え、全身症状(37.2℃超の発熱、悪寒、発熱感、倦怠感、頭痛、筋肉痛)および呼吸器症状(咽頭痛、咳、喀痰、喘鳴、呼吸困難)を有するという実臨床に即した症候を基準としてその発症予防に設定しており、臨床的な意義が大きいものとなっている。 本論文によれば、従来型ワクチンの症候性インフルエンザ発症率2.8%に比してmRNAワクチンでは2.0%であり、本論文で事前規定された非劣性基準および優越性基準はいずれも達成された。重症化の評価に関しては本調査の主題ではなく、症例数自体も少ないが、医療機関受診を伴うイベント80例(従来型120例)、高次医療22例(同42例)、入院4例(同8例)と全体的にmRNAワクチンのほうが少ない傾向があることが示されている。 一方で副反応も高率に出現し、注射部位の痛み65.8%(従来型29.8%)、倦怠感45.1%(同20.3%)、筋肉痛35.4%(同11.6%)となっている。これらの症状は軽症~中等度であり、多くは1~2日で消失し、重大な有害事象の発生率には差がなかった。 筆者個人としては、統計学的には有意な差が示されたとしてもNNT(治療必要数)は約137と効果自体は大きいとは言い難く、副反応の発生割合が高い点は気になるところである。加えて、インフルエンザワクチンは毎年実施する、対象者数が多い、大多数は軽症で自然軽快する、おそらくワクチンの価格が高いことを踏まえると費用対効果に乏しいと思われる。 今後、すでにメタ解析によって高齢患者を対象として有効性が示されている高用量ワクチン、アジュバント添加ワクチンとmRNAワクチンと罹患予防、重症化予防の直接比較や、年次比較による効果の安定性が明らかになることが期待される。【用語】高用量ワクチン 高齢者・基礎疾患のある患者など、免疫応答が弱い患者に従来型ワクチンより数倍の高用量の抗原を投与する。入院リスクを減少させることが示されている。アジュバント添加ワクチン ワクチンに対する免疫応答を高めるために免疫賦活剤を添加したもの。外来受診、入院リスクを減少させることが示されている。

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第295回 MMRワクチン、約30年ぶり国内使用へ 麻しん拡大下で定期接種化を検討/厚労省

<先週の動き> 1.MMRワクチン、約30年ぶり国内使用へ 麻しん拡大下で定期接種化を検討/厚労省 2.備蓄手袋を医療機関向けに供給 18日から申請開始/厚労省 3.がん拠点病院の整備指針見直しへ 2030年度から実績要件を強化/厚労省 4.東京都で麻しん急増、緊急ワクチン接種開始 接触後72時間以内が鍵/JIHS 5.電子カルテ停止で診療一時停止 市立奈良病院、再発防止へ検証/奈良県 6.病院再編に現場反発、4割が退職希望 静岡市立清水病院/静岡県 1.MMRワクチン、約30年ぶり国内使用へ 麻しん拡大下で定期接種化を検討/厚労省厚生労働省は5月11日、第一三共の麻しん・おたふくかぜ・風しん混合ワクチン「ミムリット皮下注用」を承認した。3疾患を1度に予防するMMRワクチンで、効能・効果は「麻しん、おたふくかぜ及び風しんの予防」。国内でMMRワクチンが使用されるのは約30年ぶりとなる。ミムリットは、現在定期接種の対象となっている第一三共の麻しん・風しん2種混合ワクチンに、世界で広く用いられているおたふくかぜワクチン株を組み合わせた3種混合の弱毒生ワクチンである。添付の溶剤0.7mLで溶解し、その0.5mLを1回皮下に注射する。接種対象は生後12ヵ月以上で、性別や年齢にかかわらず接種可能とされるが、具体的な接種年齢は学会などの最新情報を踏まえ総合的に判断する。明らかな発熱がある人、免疫機能に異常がある人や免疫抑制治療中の人、妊娠していることが明らかな人などは接種不適当者とされる。わが国では1989年に別のMMRワクチンが定期接種に導入されたが、含有されていたおたふくかぜワクチンによる無菌性髄膜炎の発生が社会問題となり、1993年に事実上中止された。今回のミムリットについて厚労省は、国内第III相臨床試験で小児約400例に無菌性髄膜炎の発現は認められなかったこと、含まれるムンプスウイルス株がWHOで事前認定された株の1つであること、海外で豊富な使用実績があり、無菌性髄膜炎の発現率が相対的に低いとの報告がある株を選択したことなどを踏まえ、リスクは許容可能と判断した。現在、麻しん・風しんはMRワクチンとして定期接種の対象だが、おたふくかぜワクチンは任意接種で自己負担となっている。おたふくかぜは無菌性髄膜炎、脳炎、難聴などの合併症を起こし得る。2015~16年の流行では成人を含め少なくとも359例がムンプス難聴と診断され、医学系学会が定期接種化を要望してきた。海外では120ヵ国以上で定期接種化されており、ミムリットの承認により、接種回数の削減と保護者負担の軽減、さらにおたふくかぜ対策の前進が期待される。 参考 1) 麻疹・おたふく・風疹のMMRワクチン承認 約30年ぶり使用へ(毎日新聞) 2) MMRワクチン、国内でも使用可能に-第一三共の「ミムリット」承認取得(日本医事新報) 3) 第一三共の3種混合ワクチン承認 はしかと風疹におたふく追加(日経新聞) 4) 厚労省 第一三共のMMRワクチン・ミムリット皮下注用を承認 2つの再生医療等製品も(ミクスオンライン) 2.備蓄手袋を医療機関向けに供給 18日から申請開始/厚労省厚生労働省は、中東情勢悪化による医療用物資の供給不安を踏まえ、国が備蓄する医療用手袋のうち、まず5,000万枚を医療機関向けに放出する。医療用手袋は現時点で全体としてただちに不足する状況ではないが、通常量を超える発注や一般のネット通販で取引が停止されており、歯科診療所など一部の医療機関で確保困難が生じている。国は新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、非滅菌手袋などの個人防護具を備蓄しており、今回の放出は需給の偏在を緩和する措置となる。要請は医療機関等情報支援システム「G-MIS」を通じて行う。医療機関は週次調査で在庫量、1週間の想定消費量、1週間の購入見込み量を入力し、あわせて販売業者であるアスクルの専用サイトに施設名、住所、医療機関コード、メールアドレスなどを登録する。都道府県が要請内容と配布要否、枚数を確認し、厚労省が承認した後、対象医療機関のリストが販売業者に送られ、医療機関は案内メールを受けて購入手続きを行う。G-MISでの申請が困難な場合は、都道府県への相談による個別シート対応も用意されている。対象となるのは、在庫量が「今後1週間の想定消費量から購入見込み量を差し引いた量の4週間分」を下回る医療機関である。購入可能数は想定消費量2週間分を基準に1,000枚単位で切り上げ、1セット1,000枚から購入できるほか、セット単位でサイズ指定も可能とされる。第1弾は5月18日午前9時から20日午後5時まで申請を受け付け、以後も毎週水曜午後5時締めで受け付ける予定。感染対策資材の不足は、病院、歯科、在宅、訪問看護など幅広い診療継続に直結する。医療機関には、在庫と使用量を踏まえた適正申請が求められ、国と都道府県には配送状況や追加放出の情報を迅速に示す対応が求められる。 参考 1) 中東情勢を踏まえた医療用手袋の放出について(厚労省) 2) 上野厚労相「国備蓄の手袋5千万枚を放出」 中東情勢影響による医療機関での不足受け(産経新聞) 3) 医療用手袋 5月18日から購入申請受け付け開始 政府備蓄放出分(NHK) 4) 国備蓄の医療用手袋放出発表うけ 看護現場からは安堵の声(日本テレビ) 3.がん拠点病院の整備指針見直しへ 2030年度から実績要件を強化/厚労省厚生労働省は5月14日に「がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」を開き、がん診療連携拠点病院などの整備指針見直し案を示した。柱となるのは、がん医療の高度化と人口減少を踏まえた「集約化」と「均てん化」の切り分けである。2026年夏ごろに新たな整備指針を取りまとめ、2027年度から新体制を始める見通し。とくに注目されるのは、がんゲノム医療体制の強化である。厚労省は2026年度の指針改定で、がん診療連携拠点病院などが「がんゲノム医療中核拠点病院」「同拠点病院」「同連携病院」のいずれかに指定されていることを「望ましい要件」とし、2029年度の改定時には必須要件化する方針を示した。がんゲノム医療の進展により、患者ごとに最適な薬物療法を選択する重要性が高まっているためである。ただ、2026年4月1日時点で地域がん診療連携拠点病院357施設のうち、がんゲノム医療中核拠点病院などの指定を受けているのは7割弱にとどまる。別資料でも、2026年3月時点で拠点病院等463施設のうち指定済みは295施設(63.7%)とされ、遺伝カウンセリング体制、C-CATへのデータ登録、エキスパートパネル実施などが課題となっている。手術療法と放射線療法についても、実績要件の厳格化が進む。現行指針では、地域拠点病院の要件として、悪性腫瘍の手術年400件以上、放射線治療の延べ患者年200人以上などの絶対数要件がある一方で、同一がん医療圏に1施設のみの場合は、地域患者の約2割を診療していれば要件を満たす「カバー率要件」も認められている。厚労省は2029年度の見直しでこの緩和要件を廃止し、2030年度から手術年400件以上、放射線治療年200人以上を必須要件とする方向。現在、手術件数を満たさず、カバー率で指定されている施設は13施設、放射線治療の基準を下回る地域拠点病院は38施設ある。また、手術、放射線治療、薬物療法の実績や専門職配置、機器情報などを都道府県に報告し、都道府県がん診療連携協議会の求めに応じて情報提供すること、診療実績をウェブサイトなどで公表することも必須要件とする。協議会には、地域でどの医療を集約し、どの医療を身近に提供するかを議論する役割が期待される。その一方で、ワーキンググループでは、拠点病院が減少した場合の地域医療の質や患者アクセスへの影響を懸念する意見も出た。集約化は質の維持や人材確保には不可欠だが、患者や住民に必要性をわかりやすく説明し、地域がん診療病院や周辺医療機関との連携を強めることが求められる。今回の見直しは、がん医療を「どこでも同じ」から「高度医療は集約し、継続診療は地域で支える」体制へ再編する転換点となる。 参考 1) 第10回がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ(厚労省) 2) がん拠点病院、ゲノム中核指定を「望ましい要件」に 整備指針改定で 29年度からは必須要件化(CB news) 3) がん診療連携拠点病院、2030年度から「ゲノム中核拠点病院等であること」を必須要件へ-がん拠点病院指定要件WG(Gem Med) 4.東京都で麻しん急増、緊急ワクチン接種開始 接触後72時間以内が鍵/JIHS国立健康危機管理研究機構(JIHS)によると、2026年第18週(4月27日~5月3日)の麻しん(はしか)報告数は23例で、年初からの累計は462例となった。過去10年で患者数が最多だった2019年の同時期467例に迫る水準で、感染は首都圏を中心に広がっている。累計では東京都226例が最多であり、神奈川県41例、鹿児島県34例、埼玉県33例、千葉県28例、愛知県25例と続く。東京都では5月14日までに239例の患者が確認され、現在の集計方法となった2008年以降で過去2番目、過去10年では最多となった。麻しんは空気感染する極めて感染力の強い感染症で、免疫を持たない人が同じ空間にいれば、ほぼ感染するとされる。発熱、咳、発疹などを来し、肺炎、中耳炎、脳炎などを合併し、重症化すれば死亡することもある。国内は麻しんウイルスが定着していない「排除状態」とされるが、今年の患者の約7割は国内感染とみられ、海外から持ち込まれたウイルスが国内で連鎖している可能性がある。5月5日には埼玉県所沢市のベルーナドームで野球観戦した来場者の麻しん陽性が判明し、ゴールデンウイーク後の拡大が警戒されている。東京都は感染拡大を受け、保健所が接触者と特定した都民のうち、接触から72時間以内で、麻しんの既往がなく、接種歴が不明または1回以下の人を対象に、5月18日から都内8ヵ所の感染症指定医療機関で無料の緊急ワクチン接種を始める。接触後72時間以内の接種により、発症を予防できる可能性があるためだ。厚生労働省も、子どもの定期接種の徹底に加え、乳幼児や渡航者と接する機会の多い職種で未接種者に接種検討を呼びかけている。医療機関での対応も重要になっている。国立国際医療センターでは、病棟勤務の医療従事者2人と外来受診患者1人の麻しん陽性が判明した。職員2人は麻しん含有ワクチンを複数回接種済みで、修飾麻しんでは典型例より症状や感染性が低い傾向があるとされるが、同院は通常の麻しん発生時に準じ、接触者調査、免疫確認、健康観察を実施している。疑い患者には事前連絡を求め、一般患者と動線や診察時間を分け、医療従事者はN95マスクを着用するなど、院内感染対策の徹底が求められる。背景には、世界的なワクチン接種率の低下がある。新型コロナ禍で接種機会が失われ、医療資源もコロナ対応に偏った。麻しん流行国は2024年に59ヵ国と2022年の1.6倍に増え、集団免疫に必要とされる95%以上の接種率を1回目接種で達成した国・地域は、2019年の84から2024年には69に減少した。わが国でも麻しんワクチン1回目の接種率は2024年度に92%と、2008年度以降で最低となった。ワクチン供給の混乱に加え、否定的な印象の拡大も指摘されており、麻しん対策は国内流行への対応にとどまらず、予防接種への信頼回復を含む公衆衛生上の課題となっている。 参考 1) 世界でワクチン離れ、接種率「コロナ前」遠く はしか流行1.6倍の59カ国(日経新聞) 2) 麻疹報告数462例に、過去10年で最多だった2019年同時期に迫る(日経メディカル) 3) はしか感染者 過去10年で最多の2019年に迫るペースで増加(NHK) 4) 東京都 はしか感染拡大で接触者に無料ワクチン接種の緊急対策(同) 5) はしか患者10年で最多の東京都、ワクチン緊急接種の開始を発表…患者との接触者が対象(読売新聞) 6) 当院職員の麻しん発症に関するご報告(国立国際医療センター) 7) 当院受診患者の麻しん発症に関するご報告(同) 5.電子カルテ停止で診療一時停止 市立奈良病院、再発防止へ検証/奈良県奈良市の市立奈良病院で4月に電子カルテなどのシステムに異常が検知され、外来診療や救急受け入れが一時停止した問題で、市は原因究明と再発防止に向け、情報セキュリティーの専門家らによる第三者委員会を設置する方針を明らかにした。病院では4月21日夜、ネットワーク監視装置が異常な通信を検知。電子カルテなどに関係するサーバーをネットワークから切り離したため、電子カルテの入力や閲覧ができなくなった。これを受け、同病院は翌22日から2日間にわたり、救急患者と一般外来患者の新規受け入れを停止した。外来診療や救急搬送の受け入れは4月24日朝から通常通り再開したが、その後も受付、会計、一部診療、診療報酬関連システムなどで復旧作業が続き、業務に遅れが生じていた。奈良市は5月13日午後、残っていたシステムを含め、すべての復旧作業が完了したと発表した。現時点で、異常の原因は明らかになっていない。サイバー攻撃の疑いも含めて検証が必要とされており、市は6月初めごろにも第三者委員会を開き、病院側の分析の妥当性を外部の専門家が確認する。仲川 げん市長は記者会見で、「日常の病院業務がいとも簡単に止まってしまうリスクを今回感じた」と述べ、原因を分析した上で国に報告し、全国の自治体にも事例を共有できるよう取り組む考えを示した。今回の障害は、電子カルテや会計、診療報酬請求など、病院運営の基盤となる情報システムが停止した場合、地域の救急・外来機能にただちに影響が及ぶことを改めて示した。医療機関では、サイバー攻撃対策だけでなく、異常検知後の初動対応、ネットワーク遮断時の診療継続体制、紙運用への切り替え、復旧手順、自治体や国への報告体制などを含めた事業継続計画の実効性が問われている。第三者委員会の検証結果は、自治体病院を含む全国の医療機関にとっても重要な教訓となりそうだ。 参考 1) サイバー攻撃疑いで診療停止の市立奈良病院 原因究明に向け、奈良市が第三者委員会設置へ(産経新聞) 2) 市立奈良病院のシステム障害 完全復旧し原因解明へ(NHK) 3) 電子カルテシステムの大規模障害、市立奈良病院は全てのシステムが復旧したと明らかに…第三者委員会で検証(読売新聞) 6.病院再編に現場反発、4割が退職希望 静岡市立清水病院/静岡県静岡市は、20年連続で赤字が続く市立清水病院について、清水厚生病院との一体的運用と指定管理者制度の導入により、市立病院としての存続を図る方針を示した。開始目標は2027年4月。市立清水病院は463床、29診療科を持つ総合病院だが、稼働病床は291床にとどまる。2025年度の赤字額は29.5億円、赤字率は29.9%に達する見込みで、市は従来型の改善策では再建困難と判断した。背景には、清水区全体の医療需要の縮小がある。市立清水病院のほか、154床の清水厚生病院、159床の清水さくら病院が存在するが、人口減少下で各病院が同じ機能を維持すれば、患者と症例が分散し、医師確保や若手医師育成にも悪影響を及ぼす。市は「共倒れ」を避けるため、清水厚生病院の入院機能を市立清水病院に集約し、約400床規模で一体運用する計画。清水厚生病院は外来診療所として地域医療を継続し、指定管理者の最有力候補には同院を運営するJA静岡厚生連が挙がっている。その一方で、現場の反発は大きい。労働組合のアンケートでは、指定管理導入後も継続勤務を希望する職員は12.0%にとどまり、「退職したい」が41.4%、「悩んでいる」が44.1%を占めた。退職希望の理由は「給与が下がる可能性」が95.5%、「手当がなくなる可能性」が87.2%と、処遇悪化への不安が中心となっている。職員からは、「説明が突然で、行政から見放されたようだ」との声もある。難波 喬司市長は説明不足を認め、職員説明会や個別相談窓口の設置を表明した。市は、指定管理者への転籍に際して数年間の給与水準保障や、市職員としての配置転換も検討する。病院再編は地域医療を守るための選択肢となり得るが、医療提供体制の根幹である職員の納得と定着を欠けば、かえって診療機能の低下を招きかねない。今回の事例は、再編の成否が病床数の最適化だけでなく、雇用不安への対応と現場との合意形成に左右されることを示している。 参考 1) 静岡市、指定管理で赤字病院の存続図る 清水区の市立・公的病院を一体的運用(CB news) 2) 市立病院で職員の4割が「退職したい」 突然の方針表明に「あまりに突然。行政から見放されたような思い」 指定管理者制度の導入で待遇面の悪化を危惧 不十分な説明に怒りと困惑(FNNプライムオンライン) 3) 民営化待遇低下不安視 「退職したい」4割 職員向け説明会へ 静岡市立清水病院(読売新聞) 4) 市立清水病院・清水厚生病院の一体的運営方針発表の静岡市…病院職員反発に市長“説明不足”を謝罪し詳細説明会開催へ(静岡第一テレビ)

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第97回 クローンバックα係数とは?【統計のそこが知りたい!】

第97回 クローンバックα係数とは?クローンバックα係数(Cronbach's alpha)は、心理学や教育学、医療分野などで広く用いられる信頼性係数の1つで、とくにアンケートや試験のような「複数の項目から構成される尺度の内的一貫性を評価するため」に使用されます。内的一貫性とは、「同じ概念や特性を測定する複数の項目がどの程度一貫しているか」、すなわち「互いに関連しているかを示す指標」です。今回は、クローンバックα係数について解説します。■クローンバックα係数の意味クローンバックα係数は、0~1の範囲をとり、値が高いほど尺度の内的一貫性が高いことを示します。具体的には、以下のように解釈されます:0.9以上:非常に高い信頼性0.8以上0.9未満:高い信頼性0.7以上0.8未満:適切な信頼性0.6以上0.7未満:疑わしい信頼性0.6未満:低い信頼性ただし、α係数が高すぎる場合、項目間の冗長性(余分なもの、余剰がある)や重複がある可能性も考慮する必要があります。その一方で、α係数が低い場合、尺度が測定しようとしている概念を適切に捉えていない、または、項目数が少なすぎる可能性があるので注意が必要です。■クローンバックのα係数の計算方法クローンバックα係数は、以下の式で計算されます。ここで、m尺度を構成する項目数(質問の項目数など)σi2各項目の分散(各質問項目などの分散)σx2尺度全体の分散(各質問項目などを合計した尺度得点の分散)この式からわかるように、項目数が多いほど、また各項目の分散が小さいほど、α係数は高くなります。したがって、項目数の増加や項目の質の向上は、内的一貫性の向上に寄与するわけです。■クローンバックα係数の限界クローンバックα係数は内的一貫性の指標として有用ですが、以下のような限界もあります。(1)一元的構造の仮定α係数は、尺度が単一の概念を測定していることを前提としています。複数の異なる概念を含む尺度に対しては、適切な指標ではない可能性があります。(2)項目の数と質項目数が多いとα係数は高くなりやすく、項目の質が低い場合、信頼性が高いとは言えません。項目の内容妥当性も考慮する必要があります。(3)等質性の仮定α係数は、各項目が等質であることを仮定しています。項目間の相関が均一でない場合、α係数の解釈には注意が必要です。■医療分野におけるクローンバックのα係数の活用医療分野では、患者の症状評価や生活の質(QOL)の測定など、多くの場面でアンケートや尺度が使用されます。これらの尺度の信頼性を評価する際、クローンバックα係数は重要な指標となります。たとえば、新たに開発された症状評価尺度の内的一貫性を確認することで、その尺度が一貫して特定の症状を評価できるかを判断することができます。クローンバックα係数は、尺度の内的一貫性を評価するための重要な指標であり、医療分野におけるアンケートや評価尺度の信頼性を判断する際に広く用いられています。しかし、その解釈や適用には限界も存在するため、他の信頼性指標や妥当性の評価と併せて総合的に判断することが求められます。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第46回 単相関係数とは?第47回 単相関係数の算出方法は?第54回 スピアマン順位相関係数とは?第55回 スピアマン順位相関係数の計算方法は?

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誰も寝てはならぬ――その意味は少し変わった、STEMI-DTU研究からの考察【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第96回

夜半の着信と、強制的覚醒「STEMI患者搬送中です、至急来院を」深夜、カテ待機中の循環器内科医は携帯着信音が静寂を破った瞬間、意識はほとんど反射的に臨床モードへと切り替わります。それまでどのような夢の中にいたのかは思い出せませんが、少なくとも現実の私は、ほんの数秒前まで睡眠という生理的権利を享受していたはずでした。「すぐ行きます」この一文には、臨床医としての責務のほぼすべてが凝縮されています。そして同時に、それは睡眠との決別の宣言でもあるのです。ふと脳裏に流れるのは、プッチーニのオペラ『トゥーランドット』に登場する名アリアの旋律です。「誰も寝てはならぬ(Nessun dorma)」ただし、正確を期せば、「誰も」ではなく、少なくとも「自分だけは」なのですが。時間という絶対軸カテーテル室へ向かう廊下を歩きながら反芻されるのは、単純でありながら揺るぎのない命題です。Time is Muscle.ST上昇型心筋梗塞(STEMI)の治療において、時間は単なる変数ではありません。1分でも早く。1秒でも早く。血管を開け、再灌流し、心筋を救う。STEMI診療とは、言ってしまえば「時間」に対する信仰にも近い概念です。ドア・トゥ・バルーンタイムは短ければ短いほど良いとされています。血流が遮断された心筋は不可逆的変化へと進行し、その過程に対して医療側が介入しうる唯一の手段が「いかに速やかに再灌流を達成するか」である以上、この命題の重みは極めて明確です。そのため、PCI(経皮的冠動脈形成術)の現場では速度と正確性の両立が求められます。熟練とはすなわち「速く、かつ迷いなく正確に動くこと」を意味します。ワイヤー操作の一挙手一投足に至るまで、そこには時間という見えない圧力が作用しているのです。舞台としてのカテーテル室カテーテル室に足を踏み入れた瞬間、空気は緊張感をもって変質します。スタッフはすでにそれぞれの役割へと滑り込み、器具は整然と配置され、モニターは静かにその準備を整えています。この一連の流れはオペラの舞台装置に近く、患者の到着とともに一気に展開します。術者は躊躇なく穿刺し、ワイヤーは閉塞血管へと進み、バルーンとステントがその後に続く。すべては連続した運動として遂行され、その完成度は経験に比例して洗練されていきます。そこに存在するリズムは速く、鋭く、そしてどこか切迫しています。それは確かに、「誰も寝てはならぬ」の終盤、「勝つのだ(Vincero!)」の高らかな歌い上げに向かう緊張の高まりと、どこか構造を共有しているかのようです。滋賀医科大学カテーテル室での緊急PCIの様子(筆者提供)30分という、わずかな逸脱しかしながら、この時間に対する絶対的な信頼に対し、無視できない揺らぎをもたらす試みが報告されました。ACC2026において発表され、JACC誌に同時掲載された「STEMI-DTU試験」です1)。本試験の着想は、単純でありながら挑発的なものでした。すなわち、「すぐに再灌流すること」が本当に最適なのか、という問いです。具体的には、再灌流に先立ってImpella補助循環用ポンプカテーテルによる左室アンローディング(負荷軽減)を実施し、心筋の酸素需要および壁応力を低減させた状態を意図的に作り出したうえで、あえて30分間の待機時間を設け、その後にPCIを行うという戦略が検証されました。結果として、主要評価項目である梗塞サイズに関しては、両群間で明確な差は認められませんでした。加えて、出血などの合併症は増加しており、少なくとも現時点において、この戦略が標準治療を置き換えるものではないことは明白です。対象とされたのは、心原性ショックを伴わない前壁STEMI症例であり、循環動態が比較的安定した選択的な患者集団であった点にも留意が必要です。このような集団において得られた知見を、より広範なSTEMI患者群に直接当てはめることにはおのずと限界が存在し、その解釈には慎重さが求められます。「悪くならなかった」という事実仮説の完全な証明には成功しなかったものの、本試験の示唆は軽視されるべきではありません。30分という「意図的な遅延」が付加されたにもかかわらず、梗塞サイズが有意に増悪しなかったという観察事実は、虚血時間のみを単一の決定因子としてきた従来の枠組みに対して、確かな一石を投じています。心筋障害の程度は、単に血流途絶の長さだけで規定されるのではなく、その間に置かれた心筋の負荷状態、すなわち壁応力や酸素需要といった要素によっても修飾されることを示唆しています。Impellaによる左室アンローディングは、その一端に介入する手段として理論的整合性を有しており、本試験はそれを臨床の文脈で検証した重要な一歩として位置付けられるでしょう。時間の相対化、その始まりもちろん、この結果をもって「急ぐ必要がない」と結論づけることは明確な誤りです。迅速な再灌流がSTEMI診療の根幹であるという事実は、いささかも揺らぎません。しかしながら、時間という概念が唯一絶対の軸ではない可能性が示唆されたことの意味は小さくありません。それは、これまで単線的に理解されてきたSTEMIの病態に対し、より多次元的な視点を導入する契機となるものです。心筋は、単に血流を待っている受動的な組織ではなく、その置かれた力学的および代謝的環境によって運命を変える「動的な存在」なのです。この認識が今後どこまで臨床に実装されるかはいまだ不明ですが、少なくとも私たちの思考の枠組みは、わずかに拡張されたと言ってよいでしょう。終幕に代えて夜のカテーテル室で感じていたあの緊迫感は、おそらくこれからも変わりません。時間は依然として重要です。ただ、その旋律の中に、これまでにはなかったもう一つの和音が加わったようにも感じられます。速さに加えて、「いかに守るか」という視点です。「誰も寝てはならぬ」その言葉の意味は、今や単なる速度への賛歌ではなく、最適解を模索し続ける姿勢そのものを指し示すものへと、変容しつつあるのかもしれません。 などと哲学的なことを考えていると、再び携帯が鳴ります。「次のSTEMI、来ます」やっぱり、寝られない。30分待てるかどうか以前に、そもそも自分は1分も眠れないのです。参考1)Kapur NK, et al. Left Ventricular Unloading in Anterior ST-Segment Elevation Myocardial Infarction Without Shock: The ST-Segment Elevation Myocardial Infarction Door to Unload Randomized Controlled Trial. J Am Coll Cardiol. 2026 Mar 28. [Epub ahead of print]

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「エンレスト」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第87回

第87回 「エンレスト」の名称の由来は?販売名エンレスト®錠50mg、100mg、200mgエンレスト®粒状錠小児用12.5mg、31.25mg一般名(和名[命名法])サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(JAN)効能又は効果<錠50mg・100mg・200mg>成人慢性心不全ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。小児慢性心不全<錠100mg・200mg>高血圧症<粒状錠小児用12.5mg・31.25mg>慢性心不全用法及び用量<慢性心不全>通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回50mgを開始用量として1日2回経口投与する。忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量する。1回投与量は50mg、100mg又は200mgとし、いずれの投与量においても1日2回経口投与する。なお、忍容性に応じて適宜減量する。通常、1歳以上の小児には、サクビトリルバルサルタンとして下表のとおり体重に応じた開始用量を1日2回経口投与する。忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に目標用量まで増量する。なお、忍容性に応じて適宜減量する。小児における用量表(1回投与量)画像を拡大する<高血圧症>通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回200mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最大投与量は1回400mgを1日1回とする。(参考)画像を拡大する警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.アンジオテンシン変換酵素阻害薬(アラセプリル、イミダプリル塩酸塩、エナラプリルマレイン酸塩、カプトプリル、キナプリル塩酸塩、シラザプリル水和物、テモカプリル塩酸塩、デラプリル塩酸塩、トランドラプリル、ベナゼプリル塩酸塩、ペリンドプリルエルブミン、リシノプリル水和物)を投与中の患者、あるいは投与中止から36時間以内の患者3.血管性浮腫の既往歴のある患者(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬又はアンジオテンシン変換酵素阻害薬による血管性浮腫、遺伝性血管性浮腫、後天性血管性浮腫、特発性血管性浮腫等)4. アリスキレンフマル酸塩を投与中の糖尿病患者(ただし、他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除く)5.重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者6.妊婦又は妊娠している可能性のある女性※本内容は2026年5月21日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2025年9月改訂(第10版)医薬品インタビューフォーム「エンレスト®錠50mg、100mg、200mg/エンレスト®粒状錠小児用12.5mg、31.25mg」

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英語で「膀胱炎」、患者に説明するには?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第60回

医学用語紹介:膀胱炎 cystitis「膀胱炎」について説明する際、患者さんにcystitisと言って通じるでしょうか?cystitisは医療者同士のコミュニケーションではごく一般的に用いられますが、患者さんにはなかなか通じにくい用語です。では、何と言い換えればよいでしょうか?講師紹介

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認知症の人の葛藤に学ぶ

認知症を解決すべき問題としてではなく、「生きる営み」としてとらえ直す(「はじめに」より)長年、認知症の研究に従事してきた著者が、難しいといわれる「認知症の精神療法」について、その意義、留意点、実践方法を語る。精神療法を用いた、著者と認知症の人・家族の対話は22例を収載。それぞれの認知症の人・家族が抱く想い・葛藤と、その人たちを支え、本人らしくあってほしいと願う著者の想いが満ちており、心を揺さぶられる。認知症の人にかかわる全ての人にお勧めの1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する認知症の人の葛藤に学ぶ定価3,520円(税込)判型四六判(上製)頁数304頁発行2026年4月著繁田 雅弘ご購入はこちらご購入はこちら

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再発・難治性DLBCLの第I~II相試験での奏効率、25年で倍増~メタ解析/Lancet Haematol

 再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の早期の相の試験における薬剤クラスごとの抗腫瘍効果と安全性の推移を系統的レビューおよびメタ解析で評価した結果を、オランダ・Amsterdam University Medical CenterのAnne M. Spanjaart氏らが報告した。2000~25年の25年間のデータを解析した結果、新規薬剤の登場により奏効率は2倍以上に向上し、治療関連死亡率は低く維持されていることが示された。Lancet Haematology誌2026年5月号に掲載。 本研究の対象は、2000年1月1日~2025年5月9日に公開された、成人の再発・難治性DLBCL患者を対象とした第I~II相試験で、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Libraryを用いて検索し、試験薬剤単独またはCD20抗体併用療法のデータを抽出した。主要評価項目は奏効率(ORR)および完全奏効率(CRR)で、ランダム効果一般化線形混合モデルを用いて統合解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・最終的に132試験、7,786例(女性43%、男性57%)が解析対象となった。・全体のORRは30.5%(95%信頼区間[CI]:26.0~35.5)、CRRは14.3%(同:11.5~17.7)であった。・薬剤クラス別の奏効率は以下の順で高かった。 - CAR-T細胞療法:ORR 70.0%/CRR 51.0% - 二重特異性抗体:ORR 46.0%/CRR 30.0% - 抗体薬物複合体:ORR 40.0%/CRR 18.0%・ORRは2000~08年の16.6%から、2018~2025年には36.8%へ2倍以上に向上した。・治療関連死亡率は0.6%(95%CI:0.4~1.0)と、期間を通じて1%未満を維持していた。・用量制限毒性/投与中止は6.0%、Grade3~4の有害事象は61.5%、非再発死亡は3.6%に認められた。 著者らは、「2000年以降、再発・難治性DLBCLの早期の相の試験における奏効率は、細胞療法や二重特異性抗体の導入により2倍以上に向上した。一方で治療関連死亡はきわめて低く抑えられており、これらのデータは臨床医や規制当局にとって、現在のリスク・ベネフィット傾向を把握するための重要な指標となる」としている。

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全身型重症筋無力症、siRNA薬cemdisiranが有効/Lancet

 重症筋無力症(MG)の治療において、補体第5成分(C5)を標的とする低分子干渉RNA(siRNA)薬cemdisiranの、単独療法(12週ごと皮下投与)および抗C5抗体pozelimab(4週ごと投与)との併用療法は、いずれも有効であり概して忍容性は良好であることが、米国・サウスフロリダ大学のTuan Vu氏らNIMBLE Trial Investigatorsが行った第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験「NIMBLE試験」の結果で示された。自己免疫疾患であるMGは、抗体を介した補体活性化により病態形成が促進されることから、抗体の抑制もしくは補体活性を阻害する標的療法の開発が進んでいる。NIMBLE試験では、MGで多くみられるアセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性の全身型MG患者を対象に、cemdisiranの単独療法およびpozelimabとの併用療法の有効性、安全性を評価した。結果を踏まえて著者は、「12週ごと皮下投与のcemdisiranは、全身型MG治療における新たな選択肢となる可能性がある」と述べている。Lancet誌2026年5月2日号掲載の報告。日本を含む13ヵ国86施設で第III相試験、単独および抗C5抗体との併用を評価 NIMBLE試験は、日本を含む13ヵ国86施設で行われた。18歳以上で全身型MGと診断された、抗AChR抗体または抗LRP4抗体が陽性で、重症筋無力症日常生活動作(MG-ADL)スコアが6以上の患者を登録した。 研究グループは被験者を、cemdisiran単独療法群(12週ごと600mg投与)、pozelimab単独療法群(4週ごと200mg投与)、cemdisiran(4週ごと200mg投与)+pozelimab(4週ごと200mg投与)併用療法群、またはプラセボ群に無作為に割り付けた。全例で24週の二重盲検試験期間中、皮下投与にて治療が行われた。 主要エンドポイントは、ベースラインから24週時点までのMG-ADLスコアの変化量で、主要解析は修正ITT集団(いずれかの投与を受け、少なくとも1回ベースライン後評価を受けた245例)を対象とした。評価には、事前に規定された階層的統計検定戦略が用いられ、cemdisiran単独群vs.プラセボ群、併用群vs.プラセボ群の比較について多重性が調整された(pozelimab単独群は、プラセボ群と比較した統計的検定は行われず、併用群における寄与の評価のみに用いられた)。24週時点のMG-ADL総スコア、cemdisiran単独群のほうが変化が大きい 2022年1月20日~2025年7月18日に、390例がスクリーニングされ、本報告のデータカットオフ時点(2025年7月8日)で、284例が無作為化された(cemdisiran単独群79例[28%]、pozelimab単独群50例[18%]、併用群80例[28%]、プラセボ群75例[26%])。277例がいずれかの試験薬の投与を受け、263例(95%)が二重盲検試験期間を完了した。 修正ITT集団において、24週時点で、MG-ADL総スコアの最小二乗平均変化量は、cemdisiran単独群(64例)が-4.5(SE 0.4)、併用群(67例)が-4.0(SE 0.4)、プラセボ群(59例)は-2.2(SE 0.5)であった。24週時点のMG-ADL総スコアのプラセボとの補正後最小二乗平均群間差は、cemdisiran単独群が-2.3(SE 0.7、95%信頼区間[CI]:-3.6~-1.0、p=0.0005)、併用群が-1.7(SE 0.7、95%CI:-3.0~-0.4、p=0.0086)であった。 二重盲検試験期間中に少なくとも1件の有害事象を報告した被験者の割合は、cemdisiran単独群54/78例(69%)、併用群65/80例(81%)、pozelimab単独群40/49例(82%)、プラセボ群54/70例(77%)であった。 cemdisiran単独群で最も多くみられた有害事象は、上気道感染症(9/78例[12%])で、プラセボ群と同程度であった(8/70例[11%])。cemdisiran単独群では、重篤な感染症または髄膜炎菌感染症の発現は報告されなかった。治療中止に至った有害事象は、プラセボ群で2例(3%)、pozelimab単独群で1例(2%)が報告された。 二重盲検試験期間中に死亡は報告されなかったが、二重盲検試験期間終了後に2例の死亡が報告された。そのうち1例について、治験責任医師は治療に関連したものと評価したが、治験依頼者は治療に関連したものではないと評価している。

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新規インフルワクチンの第III相試験、mRNA-1010 vs.従来型ワクチン/NEJM

 開発中の季節性インフルエンザワクチンmRNA-1010(Moderna製)は、標準用量投与の承認済みワクチンよりも、50歳以上の成人におけるRT-PCR検査で確認されたインフルエンザ様疾患の予防において優れることが示された。報告された有害事象の頻度は、mRNA-1010群で高かった。ベルギー・ゲント大学のIsabel Leroux-Roels氏らFluent Trial Investigatorsが、第III相二重盲検実薬対照試験「Fluent試験」の結果を報告した。mRNA-1010は、世界保健機関(WHO)が2024-25年株として推奨する3つのインフルエンザ株(A/H1N1、A/H3N2、B/Victoria)由来のヘマグルチニン糖タンパク質をコードしている。NEJM誌2026年5月7日号掲載の報告。2024-25インフルエンザシーズンに、承認済み標準用量ワクチンと無作為化比較試験 試験は北半球の11ヵ国301施設で行われ、2024年9月16日に無作為化が開始された。研究グループは50歳以上の成人を、3価mRNA-1010投与群(37.5μg、各株12.5μgを含む)または承認済み標準用量ワクチン投与の対照群に無作為に割り付けた。 有効性の主要エンドポイントは、ワクチン接種後14日目から2024-25インフルエンザシーズン終了(2025年4月30日)までの期間における、RT-PCR検査で確認されたインフルエンザ様疾患(インフルエンザA型またはB型によるものとプロトコールで定義)に対するワクチンの相対的有効性であった。 階層的仮説検定で、非劣性(95%信頼区間[CI]下限が-10%超)、優越性(95%CI下限が0%超)および高レベルの優越性(95%CI下限が9.1%超)が評価された。相対的有効性26.6%で非劣性、優越性を確認、副反応報告例は増加 計4万703例がワクチンを接種された(mRNA-1010群2万350例、対照群2万353例)。追跡期間中央値は181日(範囲:1~227)であった。 RT-PCR検査で確認されたプロトコール定義のインフルエンザ様疾患は、mRNA-1010群で411/2万179例(2.0%)、対照群で557/2万124例(2.8%)に認められた。ワクチンの相対的有効性は26.6%(95%CI:16.7~35.4)であり、非劣性、優越性および高レベルの優越性の基準を満たした。 報告された副反応は、mRNA-1010群で対照群よりも多かった(注射部位疼痛65.8%vs.29.8%、疲労45.1%vs.20.3%、頭痛37.8%vs.18.0%、筋肉痛35.4%vs.11.6%)が、ほとんどの副反応は軽度~中等度であり、一過性であった。 報告された重篤な有害事象は、mRNA-1010群で2.2%(治験責任医師によりワクチンに関連するものと評価された事象3件)、対照群で1.9%(同事象2件)であった。

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若年性認知症、そのリスク因子は?

 65歳未満で発症する若年性認知症は、重要な健康上の問題である。しかし、認知症のリスク因子に関する知見の多くは、65歳以降で発症した晩年期認知症の研究から推測されたものである。米国・ミネソタ大学のKatherine Giorgio氏らは、若年性認知症とさまざまな人口統計学的因子、臨床的因子および生活習慣因子との関連性を調査し、それらの推定値を晩年期認知症の場合と比較した。The Lancet Healthy Longevity誌2026年3月号の報告。 英国および米国における5つの地域ベースの縦断的コホート研究(UKバイオバンク、ARIC[Atherosclerosis Risk in Communities Study]研究、フラミンガム心臓研究、多民族アテローム性動脈硬化症研究[Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis]、ホワイトホールII研究)のデータを統合し、標準化した。認知症は、各コホートのプロトコールに従い、入院記録および死亡記録に基づき、臨床評価の有無にかかわらず確認した。リスク因子には、性別、自己申告による人種または民族(ヒスパニック、白人、黒人、アジア人、その他)、学歴、高血圧、糖尿病、肥満、高コレステロール血症、うつ病、過度の飲酒、喫煙、運動不足を含めた。年齢を時間軸とし、時間変動係数を用いたCox回帰モデルを用いて、若年性認知症と晩年期認知症のハザード比(HR)を推定し、発症年齢によってHRが異なるかを検証した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中(中央値13.7年[四分位範囲:12.9~14.4])に、参加者54万4,442例において、若年性認知症を発症したのは807例、晩年期認知症は1万4,253例の発症が確認された。・女性は、男性と比較し、若年性認知症リスクが低かった(HR:0.70、95%信頼区間[CI]:0.61~0.80)。・若年性認知症リスクの上昇と独立して関連していた因子は、黒人と白人の人種(HR:1.61、95%CI:1.23~2.11)、小学校卒業以下の学歴(HR:1.99、95%CI:1.67~2.38)、糖尿病(HR:2.45、95%CI:1.99~3.03)、うつ病(HR:2.73、95%CI:2.34~3.20)、喫煙(HR:1.86、95%CI:1.56~2.22)、肥満(HR:1.24、95%CI:1.04~1.48)、運動不足(HR:1.33、95%CI:1.11~1.59)、過度の飲酒(HR:1.22、95%CI:1.01~1.47)であった。・高血圧ステージ1(HR:1.19、95%CI:0.97~1.47)、高血圧ステージ2(HR:1.16、95%CI:0.94~1.43)、高コレステロール血症(HR:1.11、95%CI:0.92~1.34)は、正の効果推定値を示したが、統計的に有意ではなかった。・人種、運動不足、過度の飲酒を除くすべてのリスク因子は、晩年期認知症よりも若年性認知症との関連性が強かった。 著者らは「若年性認知症の発症における修正可能なリスク因子の重要性が示された。若年性認知症の1次予防における優先度の高いターゲットを特定するためにも、本結果は今後の研究の指針となりうる」としている。

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人は退屈に思われる雑談でも実は楽しんでいる

 エレベーターでの何気ない雑談、長い行列に並んでいるときの会話、あるいは自分には全く興味のない話題を中心としたやり取りなどをした経験は、誰にでもあるだろう。一見すると、このような退屈な話題について話すことに意味はないように思えるかもしれない。しかし、新たな研究で、人々はそのような会話を意外に楽しんでいることが明らかにされた。米ミシガン大学のElizabeth Trinh氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Personality and Social Psychology」に4月13日掲載された。 この研究では、1,800人の参加者を対象に、9つの実験を通じて、退屈な会話に対する予想と実体験を比較した。参加者には、本人が「退屈」と感じる話題についての会話をどの程度楽しめるかを予測してもらった。話題は、第一次世界大戦や第二次世界大戦、ノンフィクション書籍、株式市場、猫、ビーガン食などであった。その後、参加者は、これらの退屈な話題について、実際に対面やオンラインで会話を行った。会話の相手は、友人の場合もあれば見知らぬ人の場合もあった。その後、会話がどの程度楽しかったかを評価した。 その結果、人々は一貫して、「退屈な話題」についての会話の楽しさや面白さを過小評価する傾向があることが明らかになった。たとえ双方が「それほど面白くない話題」と認識していたとしても、実際の会話は事前の予想よりもはるかに楽しいと感じられることが示された。 Trinh氏は、「その効果の強さには、われわれ自身も驚くと同時に気持ちが高ぶった。人々は一貫して、退屈に思われる話題の会話はつまらないと予想していたが、実際にはそうではなかったのだ」と述べている。 研究グループは、このずれは、人々が会話を始める前の段階での予測の立て方に起因していると述べている。というのも、事前に話題に意識を向けることは容易だが、実際に会話がどのように展開するかを事前に正確に予測することは難しいためである。 Trinh氏は、「楽しさを生み出す本質的な要素は、関与である。相手が話を聞いていると感じ、互いに応答し合い、相手の背景や経験について思いがけない発見をすることが、平凡な話題を意味のあるものに変える」と説明する。端的に言えば、会話の楽しさを左右するのは、話題そのものよりも人と人とのつながりだということだ。 これらの結果は、一部の人が気軽な会話を避ける傾向と、それによって機会を逃している可能性を説明し得る。Trinh氏は、「もしコーヒーマシンの前で同僚と話さなかったり、エレベーターで隣人と会話しなかったり、イベントで見知らぬ人と話さなかったりすれば、われわれは小さなつながりの機会を失っているかもしれない。日常的な会話は、われわれが考えている以上に価値があるものなのかもしれない」と話している。

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未治療の梅毒は心血管イベントリスクを高める

 梅毒は、長期間治療されないまま放置すると、心血管系の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があるとする研究結果が報告された。梅毒は大動脈瘤または大動脈解離などの血管イベントのリスクを約2倍に高め、さらに脳卒中や心筋梗塞の発症リスクも大幅に上昇させることが明らかになった。この研究の詳細は、「JAMA Network Open」に4月13日掲載された。 論文の筆頭著者である米テュレーン大学医学部のEli Tsakiris氏は、「心血管疾患は米国における主要な死因である。最近の梅毒罹患者の増加傾向を考えると、この関連性は梅毒リスクの高い患者を診療する全ての医療従事者が認識すべき重要な問題だ」とニュースリリースで述べている。 梅毒は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)の感染により、主に性的接触を介して伝播する性感染症(STD)である。初期症状としては、感染部位(通常は陰茎、外陰部、膣など)に潰瘍が現れることが多く、進行すると、皮膚の発疹、湿潤部位の灰白色または白色の隆起、インフルエンザ様症状、脱毛、体重減少、頭痛、リンパ節の腫れなどが見られる。 研究グループによると、米国では梅毒患者が急増しており、2018年から2023年の間に80%以上増加したと報告されている。梅毒は多くの場合、既存の抗菌薬で治療可能であり、ペニシリンの単回投与で治癒が見込める。一方で、未治療で放置すると、神経系、眼、耳、脳、肝臓などに深刻な障害を引き起こす可能性がある。梅毒が心血管系の合併症と関連することは以前より知られていたが、心血管イベントリスクに与える影響を独立して評価した大規模研究はほとんどなかった。 今回の研究では、ニューオーリンズの3つの三次医療システムのデータを用い、8,814人の患者(平均年齢50.0歳、女性53.9%、梅毒患者1,469人、非梅毒患者〔対照群〕7,345人)を対象に、2011年から15年間にわたり、健康状態を追跡し、梅毒と心血管イベントとの関連を検討した。心血管イベントには、心筋梗塞、心不全、大動脈弁逆流症(大動脈弁閉鎖不全症)、心房細動、大動脈瘤または大動脈解離、脳梗塞、出血性脳卒中、末梢動脈疾患、静脈血栓塞栓症、および死亡を含めた。 解析の結果、梅毒群は対照群と比較して、大動脈瘤または大動脈解離(ハザード比2.08、P=0.001)、脳梗塞(同1.53、P<0.001)、出血性脳卒中(同1.92、P=0.004)、末梢動脈疾患(同1.28、P=0.04)、心筋梗塞(同1.33、P=0.01)、および死亡(同5.80、P<0.001)のリスクが有意に高いことが示された。一方、心不全、心房細動、大動脈弁逆流症、静脈血栓塞栓症については有意な関連は認められなかった。 ただし、この研究は観察研究であり、梅毒と心血管疾患の間の因果関係が証明されたわけではない。このことを踏まえたうえで、研究グループは、「それでも本結果は、長期的な梅毒感染に伴う心血管の問題が、これまで考えられていた以上に多い可能性を示している」と述べている。 論文の上席著者であるテュレーン大学心血管トランスレーショナルリサーチ部門ディレクターのAmitabh C. Pandey氏は、「梅毒は全身の炎症を引き起こすことが知られており、この炎症が心血管疾患の進行を加速させる可能性がある。今回の研究で示されたのは、梅毒の場合、こうした心血管疾患の兆候は見過ごされがちだが、決して無視すべきではないということだ。特に、梅毒の治療後でもこれらの影響が残ることは、心血管疾患の一因となり得る」と指摘している。

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乾癬は皮膚だけの病気ではない? 重症度と心血管リスクが関連

 乾癬は皮膚に症状が現れる慢性炎症性疾患だが、近年では全身性炎症を背景に心血管疾患リスクの上昇との関連も指摘されている。今回、日本人乾癬患者を対象に、心血管リスク評価に用いられる久山町スコアで解析した結果、乾癬の重症度が高いほど心血管リスクが高いことが示された。研究は、東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野の小林愛里氏、照井仁氏(現:米カリフォルニア大学サンフランシスコ校)らによるもので、詳細は「Immunological Medicine」に3月17日付で掲載された。 乾癬は慢性炎症性皮膚疾患であり、近年では心血管疾患との関連が注目されている。乾癬患者では高血圧や脂質異常症などのリスク因子が多く、重症例ほど心血管リスクが高いとされ、日本人においても関連が報告されている。一方で、従来の欧米人での臨床データから作成された評価法では日本人における乾癬患者の心血管リスクを過小評価する可能性がある。そこで本研究では、日本人に適した久山町スコアを用いて乾癬重症度と心血管リスクとの関連を検討した。 久山町スコアは福岡県久山町の住民データ(久山町研究)に基づき、日本人の10年間の心血管疾患発症リスクを予測する指標である。本研究では、乾癬患者における心血管リスクと重症度との関連を検討するため、久山町スコアを用いた単施設の後ろ向き研究を実施した。2010年から2022年にかけて東北大学病院を受診した40~79歳の乾癬患者119人を対象とし、糖尿病、慢性腎臓病、心血管疾患など既存疾患のある48人を除外した71人を解析対象とした。乾癬の重症度はPASI(Psoriasis Area and Severity Index)スコアで評価し、血圧、脂質プロファイル、喫煙歴などに基づき、対象者を低・中・高リスク群に分類した。群間比較にはWilcoxon検定を用い、年齢や性別、血圧、脂質プロファイルなどで調整したロジスティック回帰分析により高リスクの予測因子を検討した。 解析の結果、乾癬の重症度が高いほど心血管リスクが高いことが示され(p=0.003)、特にPASIスコアが10を超える男性では中~高リスク群に分類される割合が高かった(p=0.049)。女性では重症度と心血管リスクとの間に有意な関連は認められなかった。 血圧や脂質プロファイルなどのリスク因子と心血管リスクとの関連を検討したところ、中~高リスク群では収縮期血圧の上昇(p=0.011)やHDLコレステロールの低下(p=0.017)がみられた。さらにロジスティック回帰分析の結果、収縮期血圧は心血管リスクの独立した予測因子として同定された(p=0.026)。乾癬の罹病期間と心血管リスクとの間に有意な関連は認められなかった。 さらに、性別や年齢で見ると傾向に違いがみられ、特に40代男性では脂質異常がリスク上昇に関与する可能性が示唆された。 著者らは、本研究により久山町スコアを用いることで乾癬患者の心血管リスクを把握できることが示されたと述べている。特に若年層では、血圧やコレステロールの管理がリスク低下に重要であると指摘している。また、乾癬は皮膚疾患にとどまらない全身性の病気であることから、皮膚科医はかかりつけ医や循環器医と連携し、積極的にリスク管理を進めることが望ましいと強調している。 なお、本研究の限界として、単施設の後ろ向き研究で対象が少なく、治療内容や疾患期間の影響も排除できない点が挙げられる。著者らは、より大規模な研究での検証が望まれると指摘している。

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子どもの溺水による心停止、人工呼吸の有無で生存・神経予後に差――全国データ解析

 プール監視や学校現場などで遭遇しうる子どもの溺水では、その場での初期対応が転帰を左右するとされている。今回、日本の全国データを用いた研究で、小児の溺水による心停止において、人工呼吸を伴う心肺蘇生(CPR)は胸骨圧迫のみのCPRと比べて、生存および神経予後の点で良好である可能性が示された。研究は岡山大学学術研究院医歯薬学域地域救急・災害医療学講座の小原隆史氏らによるもので、詳細は3月10日付の「Resuscitation」に掲載された。 溺水は世界的に不慮の事故死の主要な原因の一つであり、日本でも小児の事故死の上位を占める。溺水による心停止では、体に酸素が行き渡らなくなるため、人工呼吸を含むCPRが重要と考えられてきた。実際、小児や心臓以外が原因の心停止では、人工呼吸を伴うCPRが胸骨圧迫のみのCPRより良好な転帰と関連することが報告されている。一方、近年は簡便さなどから胸骨圧迫のみのCPRが広く行われるようになっているが、こうした変化が溺水による心停止の転帰に与える影響は十分に検討されていない。そこで本研究では、小児の溺水による院外心停止において、一般市民によるCPRの方法の変化と、生存および神経予後との関連を検討した。 本研究では、2012~2023年の全国データを用い、小児(17歳以下)の溺水による院外心停止のうち、一般市民によるCPRが実施された症例を解析した。データは全国の院外心停止症例を登録したデータベース(All-Japan Utstein Registry)から取得し、CPRが行われていない症例やCPRの方法が不明な症例は除外した。対象は、人工呼吸を伴うCPRと胸骨圧迫のみのCPRの2群に分類した。主要評価項目は発生から30日以内の死亡とし、副次評価項目として病院到着前に心拍が再開しなかったこと、および30日後の神経予後不良(重度障害、昏睡、または死亡と定義)を設定した。解析には多変量解析を用い、年齢や目撃の有無による層別解析も行った。 対象となった740例のうち、人工呼吸を伴うCPRは41.6%、胸骨圧迫のみのCPRは58.4%に行われていた。人工呼吸を伴うCPRの割合は、2012年の約45%から2020年以降は約30%に減少していた。人工呼吸を伴うCPRは、特に乳幼児や家族が目撃していたケースで行われることが多かった。 胸骨圧迫のみのCPRは、人工呼吸を伴うCPRと比べて、30日以内の死亡リスクが約38%高く、病院到着前に心拍再開が得られなかった割合も約22%高かった。また、神経予後も不良となる傾向がみられた。こうした差は、目撃者がいない心停止(溺水の場面を直接見ていないケース)や、1~7歳の子どもで特に顕著であった。この結果は、目撃がない症例であっても発見次第速やかに人工呼吸を開始する重要性を示唆する。一方、目撃されていたケースや8歳以上の子どもでは、死亡の差はそれほど大きくなかったが、神経予後には差が認められた。 本研究では、小児の溺水による心停止において、人工呼吸を伴うCPRが減少し、胸骨圧迫のみのCPRが増加している実態が示された。一方で、胸骨圧迫のみのCPRは、人工呼吸を伴うCPRと比べて死亡や神経予後の点で不良であった。溺水のように呼吸が保てなくなる心停止では、人工呼吸が重要な役割を果たす可能性が示唆される。こうした結果は、溺水では人工呼吸を含むCPRを推奨する海外のガイドラインとも一致しており、その重要性を裏付けるものといえる。 著者らは、小児や溺水といった医学的に人工呼吸の効果が期待されるケースにおいても、その重要性が十分に理解されていない可能性を指摘する。その上で、保護者や教職員などを対象に人工呼吸を含むCPR教育を強化することや、救急通報時のオペレーターによる口頭指導において年齢や原因に応じた対応を行うことの重要性を強調している。

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マバカムテンは青年期の閉塞性肥大型心筋症にも有効である(解説:原田和昌氏)

 成人では閉塞性肥大型心筋症(HOCM)に対して心筋の収縮力を抑制する薬が承認されたが、小児の薬はなかった。わが国のガイドラインでは、HOCMの左室流出路閉塞軽減のためマバカムテンがClass 1で推奨されている。米国・フィラデルフィア小児病院のRossano氏らは、第III相二重盲検無作為化比較試験であるSCOUT-HCM試験にて、青年期(12歳以上18歳未満)のHOCM患者において、マバカムテンがプラセボと比較して、28週間にわたり左室流出路閉塞を有意に改善することを報告した。 NYHA心機能分類II度またはIII度の症候性HOCM患者44例を、マバカムテン群23例(14.7±1.7歳)、プラセボ群21例(14.6±1.7歳)に無作為に割り付け、有効性と安全性を評価した。マバカムテン群では、ベースラインにおける体重45kg以上は1日1回5mg、35kg以上45kg未満は1日1回2.5mgで投与を開始した。バルサルバ法による左室流出路圧較差および左室駆出率(LVEF)に基づき、増量または減量が可能であった。主要エンドポイントは、誘発時の左室流出路圧較差のベースラインから28週時の変化量であった。 誘発時の左室流出路圧較差は、それぞれ78.4±34.1mmHg、80.8±47.4mmHgであった。28週時点の誘発時左室流出路圧較差の最小二乗平均変化量は、マバカムテン群 -48.5 mmHg、プラセボ群 -0.5mmHgであった(p<0.001)。有害事象の発現率は両群で同程度で、重篤な有害事象は各群2例で認められた。マバカムテン群では1例で失神、もう1例で植込み型除細動器による不適切ショックが報告された。プラセボ群では1例で胸痛、もう1例で自殺念慮を伴ううつ病が報告された。LVEFが50%未満に低下した患者はなく、試験期間中に死亡の報告はなかった。また、心臓のリモデリングが改善し、病気の自然経過が改善される可能性を示唆する兆候がみられた。 本研究の限界として、被験者数が比較的少ない、研究期間が短い、被験者の大部分が白人であることが挙げられる。そのため、50週間の追跡調査、12歳未満の小児、さまざまなタイプのHOCM患者における有効性を今後研究すると書かれている。これまで、効果の高い新薬の、青年や小児への適応拡大に時間と治験費用がかかることが問題視されていた。その意味で、マバカムテンの青年患者への速やかな適応拡大を期待させる非常に意義のある試験である。

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血培で「マジックマッシュルーム」が陽性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第306回

血培で「マジックマッシュルーム」が陽性「マジックマッシュルーム」と聞くと、なんとなく危ない薬物、というイメージはあるかもしれません。幻覚作用をもつ成分を含むキノコの俗称で、知覚の変化や幻覚、多幸感、不安、混乱などを引き起こします。つまり、いわゆる“毒キノコ”のように食べたらすぐ重い臓器障害を起こすタイプとは少し違い、主に中枢神経系に作用するキノコです。Giancola NB, et al. A "Trip" to the Intensive Care Unit: An Intravenous Injection of Psilocybin. J Acad Consult Liaison Psychiatry. 2021 May-Jun;62(3):370-371.主人公は30歳男性。背景には双極性障害と静注薬物使用歴があり、処方されていた薬もきちんと飲めていませんでした。本人はオピオイド依存や抑うつを自分で何とかしようとしており、ネット上で見つけた情報をもとに、自己流の“治療”としてマジックマッシュルームを使って「ある方法」を試したようです。ある方法というのは、マジックマッシュルームを「飲んだ」ことではなく、「煮出したキノコ液をそのまま静脈に入れた」ことです。ひぃぃぃぃぃ!!!患者さんはその後、傾眠、黄疸、下痢、悪心、吐血を来し、救急外来を受診した時点で血圧は75/47mmHgまで低下していました。検査では血小板減少、電解質異常、急性腎障害、急性肝障害がみられ、多臓器不全として集中治療室に入室しました。敗血症性ショック、急性呼吸不全、播種性血管内凝固まで合併し、挿管や血漿交換を要しました。血液培養では、細菌だけでなく真菌も検出され、その真菌はPsilocybe cubensis、つまり本人が注射したマジックマッシュルームそのものと同定されました。怖すぎる…。皆さんも、マジックマッシュルームを静注しないように気を付けてください!

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サラッとStat中級編:PFSとOSの基本的な見方【Oncologyインタビュー】第57回

出演岐阜大学泌尿器科学講座 古家 琢也氏京都大学医学統計生物情報学 森田 智視氏医療者にとって臨床統計の解釈は大きな課題である。岐阜大学泌尿器科学講座の古家 琢也氏と京都大学医学統計生物情報学の森田 智視氏が臨床目線で送る“ワカる”臨床統計解説。

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脳と体を動かす新習慣!長寿研式 やさしいパズル&かんたんコグニサイズ

脳と体の協働を高める、高齢者向け認知機能トレーニング!認知機能を幅広く刺激する19種類・難易度3段階の「パズル」を収録、解答日・正解数・時間を記録でき、継続意欲を後押し。さらに、国立長寿医療研究センター開発の認知症予防プログラム「コグニサイズ」を豊富なイラストでわかりやすく紹介。実際の動きを動画で確認できる二次元コード付き。脳を動かす“頭”と“体”の体操で、楽しみながら認知機能を維持・向上できる!自分に合ったペースで無理なく1人で、デイサービスなどで楽しく間違えながら複数人でなど、様々な活用が可能。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する脳と体を動かす新習慣!長寿研式 やさしいパズル&かんたんコグニサイズ定価1,320円(税込)判型B5判(並製)頁数144頁発行2026年4月監修島田 裕之(国立長寿医療研究センター研究所 老年学・社会科学研究センター長)ご購入はこちらご購入はこちら

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