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腹腔鏡下手術vs.ロボット支援下手術、直腸がんの術後転帰に差

 直腸がんの手術では、狭い骨盤内での作業が必要となる。そのため、多関節アームやモーションスケーリング機能を備えたロボット支援下手術(RALS)を採用するメリットは大きい。今回、直腸がんにおけるRALSは、従来の腹腔鏡下手術(CLS)と比較して術後転帰が改善されるとする研究結果が報告された。出血量、術後C反応性蛋白(CRP)値、入院期間の点でCLSよりも有意な転帰の改善を示したという。研究は神戸大学大学院医学研究科外科学講座食道胃腸外科学分野の安藤正恭氏、松田武氏らによるもので、詳細は「Langenbeck's archives of surgery」に5月21日掲載された。 直腸がんに対する低侵襲手術としてはCLSが導入されてきたが、骨盤の狭い患者や肥満の患者に対しては、直腸間膜の全切除や適切な環状切除マージンの確保が難しいケースがある。この課題を解決するためにRALSが確立された。しかし、過去に行われたCLSとRALSの比較を目的とした複数のランダム化比較試験では、短期的な転帰について一貫した結果が得られていない。そのため、RALSの安全性と実行可能性には、なお議論の余地があることが示唆されている。このような背景を踏まえ、著者らは直腸がんに対するRALSの安全性と実行可能性をCLSと比較するため、過去にCLSまたはRALSを受けた患者を対象に後ろ向き研究を実施した。 本研究には、2009年1月から2023年12月の間に神戸大学医学部附属病院にて、前方切除術またはハルトマン手術を受けた直腸がん患者702名が含まれた。組み入れ基準は、腺、扁平上皮、神経内分泌腫瘍などの原発性直腸がん患者で、CLSまたはRALSを受けた患者とした。2群間の患者および腫瘍特性の差によるバイアスを最小限にするため、傾向スコアマッチング(PSM)を実施した。カテゴリ変数の比較にはカイ二乗検定またはFisherの正確確率検定を、ノンパラメトリック連続変数の比較にはMann-Whitney検定を用いた。疾患特異的生存率(CSS)、無再発生存率(RFS)、局所再発の累積発生率(LRR)はKaplan-Meier法で推定し、群間比較にはlog-rank検定が用いられた。 本研究では、リンパ節郭清、多発がん、データ欠損などの理由で症例を除外した結果、CLS群は313名、RALS群は75名が解析対象となった。PSM後、最終的にCLS群とRALS群でそれぞれ140名と70名がマッチングされた。両群間の患者および腫瘍特性は均衡しており、受けた手術の割合(前方切除またはハルトマン手術)も同程度であった。CLS群と比較すると、RALS群では手術時間の中央値が延長されたものの、出血量の中央値は有意に少なかった(P<0.001)。 術後の短期転帰の解析において、RALS群のCRP値の中央値はCLS群と比較して、術後1日目(4.00 vs. 5.24mg/dL、P<0.001)および術後3日目(5.49 vs. 7.08mg/dL、P=0.006)で有意に低下していた。術後入院期間の中央値は、RALS群で12.5日、CLS群で15.0日であり、RALS群では有意に短縮されていた(P=0.006)。また、グレード1以上の合併症(Clavien-Dindo分類)の発生頻度は両群間で有意な差は認められなかった。 中期転帰の解析において、CSS、RFS、LRRのいずれのKaplan-Meier曲線でも、統計的に有意な群間差は認められなかった。 本研究について著者らは、「RALS群の手術時間の延長は、初期導入の学習期間が含まれていた点を考慮する必要があるが、CLS群と比較して手術時の出血量と術後のCRP値の減少、術後入院期間の短縮というベネフィットが認められた。また、中期的な腫瘍学的転帰もCLS群と同様に良好であった。今後は、大規模かつ長期にわたる研究が必要だが、今回の知見は、直腸がんに対するRALSの実行可能性と安全性を支持するものと考える」と述べている。

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産婦人科医が授業に、中学生の性知識が向上か

 インターネットは、性に関する知識を求める若者にとって主要な情報源となっているが、オンライン上には誤情報や有害なコンテンツが存在することも否定できない。このような背景から、学校で行われる性教育の重要性が高まっている。今回、婦人科医による性教育が、日本の中学生の性に関する知識と意識の大幅な向上につながる、とする研究結果が報告された。ほとんどの学生が産婦人科医による講義を肯定的に評価していたという。研究は、日本医科大学付属病院女性診療科・産科の豊島将文氏らによるもので、詳細は「BMC Public Health」に5月28日掲載された。 インターネットへのアクセスが容易になり、子どもたちの性的な内容への露出に対する懸念が高まったことにより、多くの国々が国際的なガイドラインを導入し、包括的な性教育(CSE)プログラムを推進するようになった。2000年には、汎米保健機構(PAHO)と性の健康世界学会(WAS)は、世界保健機構(WHO)と共同で「セクシュアル・ヘルスの推進 行動のための提言」を作成し、全ての人にCSEを提供することを提案した。 日本でも、この提言に呼応し、適切な性に関する知識を得るためのCSEプログラムが求められている。また、世界的に多くのCSEプログラムでは、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種が重要な要素として含まれている。これは、HPVと子宮頸がんとの関連が確立されており、子宮頸がんは「予防可能」であることに由来する。このような背景を踏まえ著者らは、専門医による性教育の講義が、日本の中学生の経口避妊薬(OC)、避妊、子宮頸がん、HPVワクチン接種に関する知識と意識に与える影響を評価することとした。授業の前後にアンケート調査を実施し、知識と意識の変化を調査した。 本研究では、日本国内の公立および私立の中学校37校に通う中学3年生の男女を対象とした。講義で取り上げたトピックは、文部科学省のCSEガイドラインに従い、1:男女の体の違い、2:月経の問題とその管理、3:避妊方法、4:LGBTQやデートDVに関する問題、5:性感染症、6:子宮頸がんとHPVワクチン、の6つとした。生徒は講義の前後にアンケートに回答し、講義内容に関する知識と意識を評価された。 事前アンケートには5,833名、事後アンケートには5,383名が回答し、男女比はほぼ均等だった。講義に先立ち実施した事前アンケートでは、性に関する情報源と現状の知識について回答を得た。情報源として「インターネットやYouTube」と回答した生徒の割合が最も多かったが、男女別に見ると男子学生の割合が有意に高かった。女子学生は「学校の先生や授業」や「両親・家族」を情報源として挙げる割合が高かったのに対し、男子学生では、「友人」や「この種の情報を得たことがない」と回答する割合が高かった。また、講義前はOC、子宮頸がん、HPVに関する知識が乏しく、多くの学生がHPVワクチンに対して不安を抱いていた。 講義後、OCに関する知識(使用可能年齢や副作用など)が向上し、生理痛の緩和など避妊以外のメリットを認識する学生が増えた。また、避妊方法の理解も著しく深まり、「避妊は男性が責任を持つべき」と考える学生の数は減少した。さらに、子宮頸がんやHPVに関する知識も大幅に向上し、HPVワクチンの接種を希望する学生の割合も増加した。 講義後に実施したアンケートでは、ほとんどの学生が今回の講義を肯定的に評価し、5段階評価で4または5を選択した。男子学生よりも女子学生の方が、わずかに高い評価をしていた。 本研究について著者らは「本研究は、国際機関や先行研究の提言を踏まえ、日本の若者にとって包括的でアクセスしやすい性教育の必要性を明確にした。婦人科医などの専門医が関与することで、性に関する幅広い健康トピックについて正確かつ最新の情報を提供でき、こうした介入の効果をさらに高めることができるだろう」と述べている。

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経鼻投与のてんかん発作レスキュー薬「スピジア点鼻液5mg/7.5mg/10mg」【最新!DI情報】第43回

経鼻投与のてんかん発作レスキュー薬「スピジア点鼻液5mg/7.5mg/10mg」今回は、抗けいれん薬「ジアゼパム(商品名:スピジア点鼻液5mg/7.5mg/10mg、製造販売元:アキュリスファーマ)」を紹介します。本剤は、介護者による投与も可能な国内初のジアゼパム鼻腔内投与製剤であり、院外での速やかな治療が可能になると期待されています。<効能・効果>てんかん重積状態の適応で、2025年6月24日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人および2歳以上の小児にはジアゼパムとして、患者の年齢および体重を考慮し、5~20mgを1回鼻腔内に投与します。効果不十分な場合には4時間以上空けて2回目の投与ができます。ただし、6歳未満の小児の1回量は15mgを超えないようにします。●2歳以上6歳未満6kg以上12kg未満:5mg(5mg製剤を片方の鼻腔1回)12kg以上23kg未満:10mg(10mg製剤を片方の鼻腔1回)23kg以上:15mg(7.5mg製剤を両方の鼻腔1回ずつ)●6歳以上12歳未満10kg以上19kg未満:5mg(5mg製剤を片方の鼻腔1回)19kg以上38kg未満:10mg(10mg製剤を片方の鼻腔1回)38kg以上56kg未満:15mg(7.5mg製剤を両方の鼻腔1回ずつ)56kg以上:20mg(10mg製剤を両方の鼻腔1回ずつ)●12歳以上14kg以上28kg未満:5mg(5mg製剤を片方の鼻腔1回)28kg以上51kg未満:10mg(10mg製剤を片方の鼻腔1回)51kg以上76kg未満:15mg(7.5mg製剤を両方の鼻腔1回ずつ)76kg以上:20mg(10mg製剤を両方の鼻腔1回ずつ)<安全性>重大な副作用として、依存性、離脱症状、刺激興奮、錯乱など、呼吸抑制(いずれも頻度不明)があります。その他の副作用として、傾眠(10%以上)、意識レベルの低下、貧血、口腔咽頭不快感(いずれも5~10%未満)、眠気、ふらつき、眩暈、頭痛、言語障害、振戦、複視、霧視、眼振、失神、失禁、歩行失調、多幸症、黄疸、顆粒球減少、白血球減少、血圧低下、頻脈、徐脈、悪心、嘔吐、便秘、口渇、食欲不振、発疹、倦怠感、脱力感、浮腫(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、抗けいれん作用がある点鼻薬です。鼻腔内に使用します。2.脳内の神経の過剰な興奮を鎮めて、てんかん発作を抑える働きがあります。3.この薬は適切な指導を受けた保護者(家族)またはそれに代わる適切な人が使用できますが、2歳以上6歳未満のお子さんの場合は、医師のもとで使用する必要があります。4.噴霧器には1回(1噴霧)分の薬が入っています。噴霧テスト(空打ち)や再使用はしないでください。5.症状が現れたときに、1回1噴霧(どちらか片方の鼻のみ)もしくは2噴霧(両方の鼻に1回ずつ)してください。6.原則として、この薬の使用後は救急搬送を手配してください。<ここがポイント!>てんかん重積状態は、「臨床的あるいは電気的てんかん活動が少なくとも5分以上続く場合、またはてんかん活動が回復なく反復し5分以上続く場合」と定義されています。この定義は、脳へのダメージや長期的な後遺症が懸念される時間の閾値に基づいています。とくにけいれん発作が30分以上持続すると、脳損傷のリスクが高まり、生命予後にも重大な影響を及ぼす可能性があるため、速やかな治療介入が極めて重要になります。治療の第一選択薬の1つとしてジアゼパム静注が挙げられますが、院外では静脈注射や筋肉注射が困難な場合が多く、急性対応の選択肢は限られています。てんかん重積状態の治療には病院到着前の治療(プレホスピタルケア)が重要であるため、簡便に使用できる製剤が必要と考えられていました。本剤は、医療者または介護者による投与が可能な国内初のジアゼパム鼻腔内投与製剤です。ジアゼパムは1960年代から広く用いられている抗けいれん薬であり、本剤は院外での「てんかん重積状態に対するレスキュー薬」の新たな選択肢となります。本剤は、簡単かつ迅速に投与できる点鼻スプレーであり、2歳から成人まで使用可能です。また、室温保存が可能で携帯性に優れた製剤で、自宅での使用にも適しています。てんかん重積状態またはてんかん重積状態に移行する恐れのある発作を有する6歳以上18歳未満の日本人小児患者を対象とした国内第III相試験(NRL-1J02試験)において、主要評価項目である臨床的にけいれん発作と判断される状態が本剤を単回鼻腔内に投与後10分以内に消失し、かつ投与後30分間認められなかった患者の割合は62.5%(95%信頼区間:35.4~84.8)でした。

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無症状例への頸動脈狭窄のスクリーニング【日常診療アップグレード】第34回

無症状例への頸動脈狭窄のスクリーニング問題72歳女性。最近、仲のよい友人が頸動脈狭窄により脳梗塞を起こしたと聞き、心配になり来院した。治療中の疾患として高血圧はあるが、リシノプリルで血圧のコントロールは良好である。症状はとくにない。一過性脳虚血発作(TIA:Transient Ischemic Attack)や脳梗塞を含め、他疾患の既往はない。タバコは吸わない。頸動脈の超音波検査をオーダーした。

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診療科別2025年上半期注目論文5選(呼吸器内科編)

Addition of Macrolide Antibiotics for Hospital Treatment of Community-Acquired PneumoniaWei J, et al. J Infect Dis. 2025;231:e713-e722.<リアルワールドでの市中肺炎におけるマクロライド追加の有効性>:βラクタム薬にマクロライドを追加しても死亡率を改善せず英国のリアルワールドデータを用いた研究で、市中肺炎におけるβラクタム薬へのマクロライド系抗菌薬の追加は30日死亡率や入院期間に改善をもたらさないことが示されました。ACCESS試験後、マクロライド系抗菌薬追加を支持する声が高まる中、このデータはルーチンでの使用を支持しません。重症例への追加は国際ガイドラインで支持されていますが、すべての入院症例に併用が必要かについては議論が続くでしょう。Dupilumab for chronic obstructive pulmonary disease with type 2 inflammation: a pooled analysis of two phase 3, randomised, double-blind, placebo-controlled trialsBhatt SP, et al. Lancet Respir Med. 2025;13:234-243.<BOREAS・NOTUS試験統合解析>:デュピルマブは2型炎症を伴うCOPDの増悪を抑制COPD治療におけるIL-4/13受容体阻害薬デュピルマブの効果についての統合解析です。BOREAS試験とNOTUS試験の結果から、血中好酸球数が300/μL以上のCOPD患者に対し、デュピルマブがプラセボよりも有意に増悪を抑制することが示されました。「2型炎症」が関与するCOPDに対する新たな治療選択肢として期待されています。GOLDガイドライン2025でもデュピルマブが推奨に含まれました。Tarlatamab in Small-Cell Lung Cancer after Platinum-Based ChemotherapyMountzios G, et al. N Engl J Med. 2025 Jun 2. [Epub ahead of print]<DeLLphi-304試験>:タルラタマブ、進展型小細胞肺がんの2次治療に新標準を確立小細胞肺がん(SCLC)の治療における朗報です。プラチナ製剤抵抗性のSCLC患者に対する2次治療として、DLL3を標的とするBiTE免疫療法薬タルラタマブが標準化学療法より全生存期間(OS)を有意に延長しました(中央値13.6ヵ月vs.8.3ヵ月)。有効性が高く、Grade3以上の有害事象の頻度も低い(54%vs.80%)ため、今後はSCLC2次治療における標準治療となる可能性があります。Phase 3 Trial of the DPP-1 Inhibitor Brensocatib in BronchiectasisChalmers JD, et al. N Engl J Med. 2025;392:1569-1581.<ASPEN試験>:第III相試験でbrensocatibは気管支拡張の増悪を抑制本研究では、気管支拡張症患者において、brensocatib(ブレンソカチブ、10mgまたは25mg)の1日1回投与は、プラセボよりも肺増悪の年間発生率を低下させ、25mg用量のbrensocatibではプラセボよりもFEV1の低下が少なくなりました。これまで治療薬が存在しなかった気管支拡張症における待望の薬剤となります。世界初の気管支拡張症治療薬として、米国、日本で今後承認が期待されています。Nerandomilast in Patients with Idiopathic Pulmonary FibrosisRicheldi L, et al. N Engl J Med. 2025;392:2193-2202.<FIBRONEER-IPF試験>:nerandomilastが第III相試験でFVCの低下を抑制特発性肺線維症(IPF)に対する新規治療薬nerandomilast(ネランドミラスト)の第III相試験の結果です。本薬は、既存の抗線維化薬(ニンテダニブやピルフェニドン)を服用している患者も対象としており、その併用下でも努力肺活量(FVC)の低下を有意に抑制することが示されました。ただし、nerandomilast 9mg群においては、ピルフェニドン群で効果が落ちており、nerandomilastとの薬物相互作用が原因と考えられました。IPFの治療選択肢が増えることは、患者にとって大きな福音と考えられます。

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診療科別2025年上半期注目論文5選(消化器内科編~消化管領域)

Multicentre randomised controlled trial of a self-assembling haemostatic gel to prevent delayed bleeding following endoscopic mucosal resection (PURPLE Trial)Drews J, et al. Gut. 2025;74:1103-1111.<PURPLE試験>:十二指腸・大腸内視鏡的粘膜切除術後の後出血予防における止血ゲル、後出血率の低下効果は認められず欧州で行われた本ランダム化比較試験では、10mm以上の十二指腸腫瘍または20mm以上の大腸腫瘍に対する十二指腸・大腸内視鏡的粘膜切除術(EMR:Endoscopic mucosal resection)後において、止血ゲル投与群の後出血率は11.7%(14/120例)、非投与群の後出血率は6.3%(7/112例)であり、止血ゲルの後出血予防効果は示されませんでした。止血ゲルは、内視鏡治療後の人工潰瘍出血に対する新規の止血予防でしたが、その有効性が証明されなかった点は、今後の内視鏡治療において重要な知見です。Perioperative Chemotherapy or Preoperative Chemoradiotherapy in Esophageal CancerHoeppner J, et al. N Engl J Med. 2025;392:323-335.<ESOPEC試験>:切除可能食道進行腺がんへの周術期化学療法(FLOT療法)、術前化学放射線療法(CROSS療法)と比較して3年および5年生存率を有意に改善欧州で行われた本ランダム化比較試験では、切除可能食道進行腺がんに対して、FLOT(フルオロウラシル+ロイコボリン+オキサリプラチン+ドセタキセル)周術期化学療法(術前+術後)の3年生存率は57.4%、5年生存率は50.6%であり、CROSS(カルボプラチン+パクリタキセル)術前化学放射線療法の3年生存率50.7%、5年生存率38.7%と比較して優越性が認められました。進行食道腺がんにおける周術期化学療法の生存率向上効果を示した重要な知見です。Stool-Based Testing for Post-Polypectomy Colorectal Cancer Surveillance Safely Reduces Colonoscopies: The MOCCAS StudyCarvalho B, et al. Gastroenterology. 2025;168:121-135.<MOCCAS試験>:大腸ポリープ切除後のサーベイランス、便検査の活用で大腸内視鏡検査の実施回数を削減できる可能性欧州で行われた本試験では、大腸ポリープ切除および結腸直腸がん治療後、家族性大腸がんリスクを有する集団に対して、大腸内視鏡検査施行前に実施したmt-sDNA testと2種類の便潜血検査1回法(FIT:Fecal Immunochemical Test)によるadvanced neoplasiaに対する曲線下面積(AUC)は0.72、0.59~0.61でした。オランダ人口モデルを用いたシミュレーションにより、大腸内視鏡検査後のサーベイランスに便検査を行うことで、大腸内視鏡検査回数を低下させ、コスト効率の向上が期待できることが示唆されました。Effect of an Endoscopy Screening on Upper Gastrointestinal Cancer Mortality: A Community-Based Multicenter Cluster Randomized Clinical TrialXia C, et al. Gastroenterology. 2025;168:725-740.<食道がん・胃がん死亡率への上部消化管内視鏡検診の効果>:高リスク地域で1回の上部消化管内視鏡検診が食道がん・胃がん死亡率を有意に低下本試験は、中国の40~69歳の住民を対象とするクラスターランダム化比較試験です。食道がんおよび胃がんの年齢調整死亡率が全国平均の3倍以上の中国の高リスク地域において、1回の上部消化管内視鏡スクリーニングが食道がんおよび胃がんの死亡リスクを7.5年間で22%低下させることが示されました。本試験は、上部消化管内視鏡検診の有効性を明確に示した初めてのランダム化比較試験です。Vonoprazan as a Long-term Maintenance Treatment for Erosive Esophagitis: VISION, a 5-Year, Randomized, Open-label StudyUemura N, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2025;23:748-757.<VISION研究>:H. pylori未感染の逆流性食道炎患者に対するボノプラザン長期維持療法、5年間の安全性を証明強力な胃酸分泌抑制は、高ガストリン血症を引き起こし、胃がんや胃神経内分泌腫瘍のリスクと懸念されています。本ランダム化比較試験では、Helicobacter pylori(H. pylori)未感染で維持療法が必要な日本の逆流性食道炎患者に対して、ボノプラザン10mg群とランソプラゾール15mg群を比較しました。その結果、5年間の追跡で両群ともに胃がんおよび胃神経内分泌腫瘍の発生は0人でした。本試験は、H. pylori未感染患者におけるボノプラザンの長期安全性を支持する重要なエビデンスを示しました。

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第275回 食べても太らない体が脂肪細胞の一工夫で可能になるかも

食べても太らない体が脂肪細胞の一工夫で可能になるかも飽食の時代にあって食べ過ぎないようにすることは至難の業で、いまや世界の8人に1人ほどが肥満と推定されています1)。いっそのこと、いくら食べても太らない体になりたいと思ったことがある人は少なくないでしょう。そんな夢のような体になることが、FGF21というタンパク質を作るように脂肪細胞をあつらえる治療でやがては可能になるかもしれません。内分泌ホルモンとしてのFGF21は、細胞へのさまざまな負荷に応じて主に肝細胞から分泌されて全身を巡ります。FGF21は2型糖尿病や脂肪肝などの代謝疾患への有望な効果が示されていることから、治療薬としてかなり期待されています。FGF21の信号はFGF受容体1c(FGFR1c)とβ-Klothoが組み合わさったヘテロ二量体受容体を介して伝わります。FGFR1cは体中の組織で広く発現します。一方、FGFR1cと対を成すβ-Klothoの発現は主に脳、肝臓、脂肪組織に限られ、それらの組織がFGF21の主な職場のようです。実際、体内を巡るFGF21の中枢神経系(CNS)や脂肪組織での作用は、エネルギー消費の向上やインスリン感受性の改善に不可欠なことがマウスでの検討で示されています。また、FGF21が老化関連経路を繕う効果の裏付けは膨大で、それゆえFGF21は長寿促進ホルモン(pro-longevity hormone)とも呼ばれます。たとえば肝臓でFGF21を発現し続けるようにしたマウスがより長生きになることが示されています。どうやらFGF21は飢えへの順応に携わるさまざまな反応に貢献して長生きできるようにします。飢えへの順応はより長生きになることと関連することが知られており、FGF21を省くとタンパク質制限食の寿命延長効果が失われます。世界のほとんどの人々の代謝の老化が飢えとは対極の食べ過ぎ絡みであることを踏まえると、FGF21の肥満環境での役割を調べる価値は大きいようです。そこで米国のテキサス州の大学UT Southwestern Medical Centerの研究者らは、必要に応じて脂肪組織でFGF21を多く発現させることができるマウスを使い、現代人の食生活を模す高脂肪食の負荷の下での代謝や寿命へのFGF21の作用を調べました2,3)。そのマウスが成体期になってから脂肪細胞でのFGF21を増やしたところ、寿命がより長くなって2.2年ほどになりました。手を加えていない対照群マウスの寿命は1.8年ほどでした。加えて、FGF21発現マウスはどうやらエネルギー消費上昇のおかげで食べても太らない体になっており、体重をより増やした対照群マウスに比べて少食になってはいないのに痩身を維持しました。FGF21発現マウスは血糖制御、インスリン感受性、コレステロール値の改善も示しました。FGF21の増加は内蔵脂肪の炎症を防ぐ効果もあるらしく、炎症性の免疫細胞や炎症性の脂質のセラミドが内蔵脂肪に蓄積するのを防ぎました。成体期のFGF21を増やすことが健全な脂肪組織を醸成してセラミドを減らしてマウスが健康に歳を取ってより長生きできるようになることを示したそれらの結果は、寿命を延ばすのみならずより生きやすくもする治療を目指す取り組みの基礎となると著者は言っています。内臓脂肪組織狙いのFGF21遺伝子治療の代謝改善などの効果がマウスでの検討ですでに示されており4)、案外近い将来に臨床試験での検討が始まるかもしれません2)。 参考 1) One in eight people are now living with obesity / WHO 2) Gliniak CM, et al. Cell Metab. 2025;37:1547-1567. 3) Hormone may hold key to longer life, improved metabolic health / UT Southwestern Medical Center 4) Queen NJ, et al. Mol Ther Methods Clin Dev. 2020;20:409-422.

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尿路感染症への抗菌薬、フロモキセフvs.セフメタゾール/徳島大ほか

 薬剤耐性菌による尿路感染症は世界的に増加しており、とくに基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌は多くの抗菌薬に耐性を示す。ESBL産生菌による感染症には、カルバペネム系抗菌薬が推奨されるが、耐性菌の増加などの懸念から、カルバペネム系抗菌薬以外の治療選択肢が求められている。フロモキセフとセフメタゾールは、ESBL産生菌への有効性が期待される抗菌薬であるが、両剤の比較データは乏しい。そこで、新村 貴博氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部)らの研究グループは、厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)のデータと日本全国の診療データベースを用いて、両剤の比較を行った。その結果、フロモキセフはセフメタゾールと同等の有効性を示し、入院期間の短縮や一部の有害事象のリスク低下をもたらす可能性が示された。本研究結果は、BMC Medicine誌2025年7月1日号に掲載された。 本研究は、2つの大規模なデータベースを用いた後ろ向き解析と、in vitroでの評価を統合して行われた。まず、JANISのデータ(2014~21年)を用いて、大腸菌および肺炎桿菌の臨床分離株に対するフロモキセフとセフメタゾールの薬剤感受性を比較した。つづいて、JMDCの診療データベース(2014~21年)を用いて、尿路感染症で入院した患者のうち、入院当日にフロモキセフまたはセフメタゾールによる治療を開始された患者5,469例(フロモキセフ群673例、セフメタゾール群4,796例)を抽出した。主要評価項目は、入院期間とし、副次評価項目は28日死亡率、7日以内のカルバペネム系抗菌薬の使用とした。 主な結果は以下のとおり。【in vitro解析】・JANISデータを用いた解析では、第3世代セファロスポリン系抗菌薬に耐性を示す大腸菌および肺炎桿菌は、フロモキセフとセフメタゾールに対して同程度の感受性を示した。尿検体から分離された第3世代セファロスポリン系抗菌薬に耐性を示す大腸菌における耐性(最小発育阻止濃度[MIC]≧64mg/L)率は、セフメタゾールが1.4%、フロモキセフが1.0%であった。同様に、第3世代セファロスポリン系抗菌薬に耐性を示す肺炎桿菌における耐性率は、それぞれ5.5%、3.0%であった。【臨床データ解析】・JMDCデータを用いた解析において、主要評価項目の入院期間中央値は、フロモキセフ群が4日であったのに対し、セフメタゾール群は11日であり、フロモキセフ群が有意に短かった(p<0.001)。 傾向スコアマッチング後も、フロモキセフ群の入院期間はセフメタゾール群より有意に短かった(5日vs.9日、p<0.001)。・28日死亡率は、フロモキセフ群1.34%、セフメタゾール群2.71%であり、両群間に有意差はみられなかった。・7日以内のカルバペネム系抗菌薬使用率は、フロモキセフ群4.61%、セフメタゾール群6.01%であり、両群間に有意差はみられなかった。・有害事象について、腎不全はフロモキセフ群3.6%、セフメタゾール群7.5%に発現し、フロモキセフ群が有意に少なかった(p<0.01)。 著者らは「フロモキセフは、尿路感染症の治療においてセフメタゾールと同等の有効性を示す可能性があり、ESBL産生菌感染症の有病率が高い地域で有力な治療選択肢となりうる」とまとめている。

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日本人の妊娠関連VTEの臨床的特徴と転帰が明らかに

 妊娠中の女性は静脈血栓塞栓症(VTE)リスクが高く、これは妊産婦死亡の重要な原因の 1 つである。妊婦ではVTEの発症リスク因子として有名なVirchowの3徴(血流うっ滞、血管内皮障害、血液凝固能の亢進)を来たしやすく、妊婦でのVTE発生率は同年齢の非妊娠女性の6〜7倍に相当するとも報告されている1)。そこで今回、京都大学の馬場 大輔氏らが日本人の妊婦のVTEの実態を調査し、妊娠関連VTEの重要な臨床的特徴と結果を明らかにした。 馬場氏らは、メディカル・データ・ビジョンのデータベースを用いて、2008年4月~2023年9月までにVTEで入院した可能性のある妊婦1万5,470例を特定。さらに、抗凝固療法が実施されていない患者や画像診断検査が施行されていない患者などを除外し、最終的に妊婦でVTEと確定診断され抗凝固療法を含めた介入が行われた410例の臨床転帰(6ヵ月時のVTE再発、6ヵ月時の出血イベント、院内全死因死亡)などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は33歳、平均BMIは23.8kg/m2であった。・対象患者の既往歴は、糖尿病19例(4.6%)、出血の既往17例(4.1%)、先天性凝固異常17例(4.1%)、消化性潰瘍13例(3.2%)、高血圧症10例(2.4%)、脂質異常症7例(1.7%)などであった。・410例中110例(26.8%)は、肺塞栓症(PE)であり、300例(73.2%)は深部静脈血栓症(DVT)のみであった。・VTE発症時の妊娠週数の中央値は31週であった。・VTEの発生率は二峰性分布を示し、126例(30.7%)が妊娠初期(0~妊娠13週)にVTEを発症し、236例(57.6%)が妊娠後期(妊娠28週以降)にVTEを発症し、PEは妊娠後期に多くみられた。・抗凝固療法に関しては、374例(91.2%)には未分画ヘパリンが、18例(4.4%)には低分子量ヘパリン(LMWH、ダルテパリン:2例、エノキサパリン:16例)が投与された。・急性期治療について、血栓溶解療法は2例(0.5%)、下大静脈フィルター留置は17例(4.1%)が受けた。人工呼吸器管理は8例(2.0%)、ECMOは5例(1.2%)に使用された。・ 6ヵ月の追跡期間中、17例(4.1%)でVTEの再発が認められ、3例(0.7%)で頭蓋内出血および消化管出血を含む出血が発生した。・入院中に4例(1.0%)が死亡し、そのうち3例には帝王切開などの外科手術の既往があった。 本研究の限界として、データベースが急性期病院のデータに限定されているため、他の医療機関で治療された患者データが含まれていないこと、詳細な臨床データ(バイタルサイン、PE重症度、検査結果など)が不足していること、PEの過小診断の可能性、入院中のVTE再発を除外したことにより急性期の再発が過小評価されている可能性が挙げられている。 最後に、研究者らは「今回の検討にて、循環器系および産科の医師にとって参考となる妊娠関連のVTEの実態が明らかになった。また、その治療において、LMWHが欧米のガイドラインで推奨されているにもかかわらず、国内ではVTEに対するLMWHの使用が保険適用外であるため、未分画ヘパリンが大半に選択されている実情も明らかになった。この問題は今後対処されるべき」と結んでいる。

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双極症とうつ病における白質変化の共通点と相違点

 双極症とうつ病の鑑別診断は、症状の重複のため依然として困難である。 米国・ピッツバーグ大学のAnna Manelis氏らは、双極症とうつ病における線維特異的な白質の差異を、fixel-based analysis(FBA)を用いて解析し、FBA指標が将来のスペクトラム気分症状を予測するかを調査した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年6月4日号の報告。 18〜45歳の双極症、うつ病、健康対照者163例を対象に、拡散強調MRIを実施した。主要な白質線維束における線維密度(FD)、線維断面積(FC)、線維密度断面積(FDC)を、FBAを用いて評価した。縦断的フォローアップ調査により、FBA指標が6ヵ月間のスペクトラムうつ病および軽躁病の症状軌跡を予測できるかを評価した。 主な結果は以下のとおり。・双極症とうつ病の直接比較において、双極症患者はうつ病患者よりも、右上縦束、鉤状束、左視床後頭葉経路におけるFDが低かった。・うつ病患者は双極症患者よりも左弓状筋膜のFDが低かった。・双極症およびうつ病患者は、健康対照者と比較し、脳梁体後頭葉、左線条体後頭葉、視放線経路におけるFDが低かった。・これらの経路におけるFDは、将来のスペクトラム症状の重症度を予測した。・探索的解析では、FD、薬物使用、マリファナ曝露との関連が明らかとなった。 著者らは「双極症とうつ病患者における明確かつ重複する白質変化が明らかとなった。さらに、重要な神経伝達物質であるFDは、将来の症状経過を予測する因子となりうる可能性があり、気分障害の予後予測のバイオマーカーとしてFDの臨床的有用性を裏付けるものである。治療や疾患進行が白質の微細構造に及ぼす影響を明らかにするためにも、さらなる縦断的研究が求められる」と結論付けている。

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1型糖尿病薬zimislecelが膵島機能を回復/NEJM

 1型糖尿病の患者において、同種多能性幹細胞由来の完全分化型膵島細胞療法薬zimislecel(VX-880)は、生理的膵島機能の回復をもたらし、血糖コントロールを改善し、治療関連有害事象やインスリン投与量管理の負担などのインスリン補充療法の短所を解消する可能性があることが、カナダ・トロント大学のTrevor W. Reichman氏らVX-880-101 FORWARD Study Groupが実施した「VX-880-101 FORWARD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年6月20日号に掲載された。第I/II相試験の予定外の中間解析結果 VX-880-101 FORWARD試験は、1型糖尿病患者におけるzimislecelの安全性と有効性の評価を目的とする、北米と欧州の施設が参加した進行中の第I/II/III相試験であり、今回は事前に予定されていなかった第I/II相部分の中間解析の結果が報告された(Vertex Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 年齢18~65歳の1型糖尿病で、低血糖を自覚しにくく(低血糖の発症を感知する能力が低下している)、過去1年間に少なくとも2回の重症低血糖イベントを経験し、5年以上インスリン依存状態にある患者を対象とした。 パートAでは、zimislecelの半量(0.4×109細胞)を門脈へ単回投与し、必要な場合は初回投与から2年以内に残りの半量を単回投与することとした。パートBとパートCでは、zimislecelの全量(0.8×109細胞)を単回投与した。全例に、グルココルチコイドを含まない免疫抑制療法を行った。 パートAの主要エンドポイントは安全性であった。パートCの主要エンドポイントは、zimislecel投与後90~365日に重症低血糖イベントの発生がなく、180~365日における複数回の受診時にHbA1c値が7%未満であること、またはHbA1c値がベースラインから1%ポイント以上低下していることとした。被験薬関連の重篤な有害事象はない 少なくとも12ヵ月の追跡期間を終了した14例(平均糖尿病罹患期間22.8年[範囲:7.8~47.4]、平均総インスリン投与量/日39.3単位[範囲:19.8~52.0])を解析の対象とした。2例がzimislecelの半量投与を受け(パートA)、12例(平均年齢42.7歳、女性4例)は全量投与を受けた(パートB:4例、パートC:8例)。パートAの1例は、初回投与後9ヵ月の時点で2回目の半量投与を受け、その約3ヵ月後に同意を撤回した(有害事象が原因ではない)。 C-ペプチドは、ベースラインでは14例全例が検出不能であったが、zimislecel投与後は全例で検出されたことから、移植細胞の生着と膵島機能の回復が証明された。 有害事象の重症度はほとんどが軽度または中等度であった。頻度の高い有害事象は、下痢(11例[79%])、頭痛(10例[71%])、悪心(9例[64%])、新型コロナウイルス感染症(7例[50%])、口腔内潰瘍形成(7例[50%])、好中球数減少(6例[43%])、皮疹(6例[43%])であった。 試験の中止に至った有害事象は認めなかった。経過観察のために入院期間の延長に至った重篤な有害事象として好中球数減少が3例に発現し、重篤な急性腎障害が2例にみられた。担当医によってzimislecel関連またはその可能性が高いと判定された重篤な有害事象はなかった。 2例が死亡した。1例(パートB)は、手術に伴う頭蓋底損傷に起因する重篤なクリプトコッカス髄膜炎が原因で、担当医により免疫抑制薬関連死と判定された。もう1例(パートA)は、既存の神経認知障害の進行に起因するアジテーションを伴う重度認知症が原因であった。この症例には、試験登録前の交通事故による重度の外傷性脳損傷の既往歴があり、この事故は重症低血糖イベントが原因だった。全量単回投与の全例でHbA1c値<7%、10例でインスリン非依存 パートB/Cの12例では、重症低血糖イベントは発現せず、365日目の受診時にすべての患者でHbA1c値が7%未満であった。ベースラインから365日目までに、HbA1c値は平均1.81%ポイント低下した。 持続血糖測定器(CGM)を用いて、血糖値が目標範囲(70~180mg/dL)内にある時間の割合を評価したところ、ベースラインで70%を超える患者はなく、平均値は49.5%(範囲:19.0~66.2)であった。これに対し、150日目には全例が70%以上を達成し、その後の追跡期間を通じて全例でこの良好な血糖コントロールの状態が持続した。365日時の血糖値が目標範囲内にある時間の割合の平均値は93.3%(範囲:79.5~96.9)だった。 外因性インスリンの使用は、追跡期間中に12例全例で減量または中止されていた。ベースラインから365日目までに、インスリン使用量の平均値は92%低下した。150日目までに10例(83%)がインスリン非依存を達成し、この10例は365日の時点で外因性インスリンを使用していなかった。 著者は、「この結果は、多様な患者集団を対象とする、より大規模で長期にわたる試験においてzimislecelのさらなる検討を進めることを支持する」「これらの知見は、多能性幹細胞から膵島を作製し、1型糖尿病の治療に使用することは実質的に可能であるとのエビデンスを提供するものである」としている。

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COVID-19の世界的流行がとくに影響を及ぼした疾患・集団は/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行によって、COVID-19以外のいくつかの疾患、とくに精神疾患(抑うつ、不安障害)、アフリカ地域の幼児におけるマラリア、高齢者における脳卒中と虚血性心疾患の負担が著しく増加し、これには年齢や性別で顕著な不均衡がみられることが、中国・浙江大学のCan Chen氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2025年7月2日号に掲載された。GBD 2021のデータを用いた時系列モデル分析 研究グループは、COVID-19の世界的流行が他の疾病負担の原因に及ぼした影響を体系的に調査し、評価することを目的に時系列モデル分析を行った(中国国家自然科学基金委員会の助成を受けた)。 世界疾病負担研究(GBD)2021に基づき、1990~2021年の174の原因による疾病負担のデータを収集した。時系列モデルを開発し、COVID-19が発生しなかったとするシナリオの下で、2020年と2021年における174の原因による疾病負担を、地域別、年齢層別、男女別にシミュレートすることで、他の原因の疾病負担に及ぼしたCOVID-19の影響を定量化した。 2020~21年の発生率、有病率、障害調整生存年(DALY)、死亡の増加の原因について、その比率の実測値と予測値の絶対的率差(10万人当たり)と相対的率差(%)を、95%信頼区間(CI)とともに算出した。率差の95%CIが0を超える場合に、統計学的に有意な増加と判定した。とくにマラリア、抑うつ、不安障害で、DALY負担が増加 世界的に、マラリアの年齢標準化DALY率は、10万人当たりの絶対差で97.9(95%CI:46.9~148.9)、相対的率差で12.2%(5.8~18.5)増加し、抑うつ状態はそれぞれ83.0(79.2~86.8)および12.2%(11.7~12.8)の増加、不安障害は73.8(72.2~75.4)および14.3%(14.0~14.7)の増加であり、いずれも顕著な統計学的有意性を示した。次いで、脳卒中、結核、虚血性心疾患で高い有意性を認めた。 さらに、10万人当たりの年齢標準化発生率および有病率は、抑うつ状態(発生率618.0[95%CI:589.3~646.8]、有病率414.2[394.6~433.9])と不安障害(102.4[101.3~103.6]、628.1[614.5~641.7])で有意に増加し、虚血性心疾患(11.3[5.8~16.7])と脳卒中(3.0[1.1~4.8])は年齢標準化有病率が著明に増加していた。抑うつ、不安障害のDALY負担増加は女性で顕著 加えて、マラリアによる年齢標準化死亡率が有意に増加していた(10万人当たり1.3[95%CI:0.5~2.1])。また、抑うつと不安障害は、世界的なDALY負担の増加の主要な原因であり、男性と比較して女性で顕著であった。 一方、マラリアは、アフリカ地域における最も深刻なDALY負担増加の原因であり、典型的には5歳未満の小児の罹患による負担が増加していた。また、脳卒中と虚血性心疾患は、欧州地域と70歳以上で負担が増加した。 著者は、「これらの知見は、将来の公衆衛生上の緊急事態に対する偏りのない備えに資するために、保健システムの回復力の強化、平等なサーベイランスの増強、複数の疾患と社会状況の重なりに関する情報に基づく戦略(syndemic-informed strategy)の導入が、緊急に求められることを強く主張するものである」としている。

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大腸がんスクリーニング、CT検査が便中DNA検査よりも有用か

 大腸がんのスクリーニングにおいては、マルチターゲット便中DNA検査(mt-sDNA検査)よりも大腸CT検査(CT Colonography;CTC)の方が、臨床的有効性と費用対効果の点で優れていることが、新たな研究で示された。米ウィスコンシン大学医学部・公衆衛生学部放射線医学・医学物理学分野のPerry Pickhardt氏らによるこの研究結果は、「Radiology」に6月10日掲載された。 大腸がんのスクリーニングでは、現在も大腸内視鏡検査が主流であるとPickhardt氏は説明する。大腸内視鏡検査は侵襲性が高いものの、検査中に前がん状態のポリープを切除できるため、依然として検診のゴールドスタンダードであるという。しかし、鎮静薬を使い、細くて柔軟なチューブを肛門から結腸に挿入するこの検査に不安を感じ、mt-sDNA検査かCTCを選択する患者は少なくない。mt-sDNA検査は、患者から採取した便サンプルに含まれるDNAを解析して腫瘍細胞に由来する変異遺伝子や異常なメチル化パターンなどを検出する。一方、CTCでは、肛門から炭酸ガスなどを注入して大腸を膨らませた状態でCT撮影を行い、ポリープなどの病変の有無を調べる。 メディケアは現在、mt-sDNA検査とCTCの両方をカバーしている。このことからPickhardt氏らは、これらの侵襲性の低い2種類の検査方法の臨床的有効性と費用対効果を直接比較することにした。そのために同氏らは、米疾病対策センター(CDC)の2017年のデータを基にマルコフモデル(ある状態の別の状態への変化を確率的に予測するモデル)を構築し、45歳の米国人口を代表する1万人の仮想的なコホートを対象に、3つの大腸がんスクリーニング戦略を評価した。3つの戦略とは、1)3年ごとのmt-sDNA検査、2)従来型CTC戦略(6mm以上のポリープは全て内視鏡的切除を行い、検査を5年間隔で実施)、3)CTCサーベイランス戦略(6〜9mmのポリープに対しては3年ごとにCTCで経過観察を行い、10mm位以上のポリープは内視鏡的切除を行う)であった。 その結果、大腸がんの累積発症率は、スクリーニングを受けない場合での7.5%(752人)から、mt-sDNA検査を受けることで59%(310人)、従来型CTC戦略を受けることで75%(190人)、CTCサーベイランス戦略を受けることで70%(223人)減少することが示された。 また、全ての戦略において増分費用効果比(ICER)が支払い許容額の基準である10万ドル/1QALY(質調整生存年)を大きく下回り、これらの戦略はスクリーニングを受けない場合と比べて費用対効果が高いと考えられた。1QALY獲得するのにかかる費用は、mt-sDNA検査で8,878ドル(1ドル145円換算で約128万7,000円)であった。一方、CTCの両戦略は、スクリーニングを行わない場合よりも1人当たりの総医療費が少なく(スクリーニングなし:4,955ドル〔約71万8,500円〕、CTCサーベイランス戦略:3,913ドル〔約56万7,000円〕、従来型CTC戦略:4.422ドル〔約64万1,000円〕)、費用対効果が優れているとともに医療費の節約にもつながることが示された。 研究グループは、「これらの結果は、CTCが従来の大腸内視鏡検査やmt-sDNA検査の中に「正当な最前線のスクリーニングオプション」として加わることができることを示している」と結論付けている。 ただし、CTCを受けるには、検査の前に強力な下剤を使用して結腸を空にする必要がある。それでもPickhardt氏は、「CTCは骨粗鬆症や動脈硬化などの他の問題を調べるのにも有用だ」とメリットを強調している。 研究グループはまた、今回のシミュレーションはこれまでの研究結果と一致しているものの、シミュレーションでは検査方法と大腸がん発症率の低下との間の直接的な因果関係を証明することはできないことにも言及している。

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トーキングセラピーが脳卒中後の抑うつや不安を改善

 脳卒中後の抑うつや不安に苦しむ患者に対し、会話を中心にした心理療法であるトーキングセラピーが有効であることが、新たな研究で示された。英国で国民保健サービス(NHS)が無料で提供している不安と抑うつのためのトーキングセラピー(Talking Therapies for anxiety and depression;TTad)を受けた脳卒中経験者の71.3%が抑うつや不安の症状の大幅な改善を経験し、約半数は脳卒中後の気分障害から完全に回復したことが示された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)精神保健リサーチフェローのJae Won Suh氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Mental Health」に6月5日掲載された。 Suh氏は、「脳卒中経験者がトーキングセラピーを始めるタイミングが早ければ早いほど、より良いアウトカムにつながることも分かった。脳卒中後の患者の診療に当たっている総合診療医(GP)などの臨床医は、患者の抑うつや不安の症状のスクリーニングを行い、できるだけ早く心理療法を紹介することが重要だ」とUCLのニュースリリースで述べている。 Suh氏らによると、脳卒中経験者の3人中1人が抑うつ症状を抱え、4人中1人以上が不安を抱えていると推定されている。また、脳卒中経験者は、一般人口と比べて脳卒中後1年以内にうつ病を発症するリスクが約2倍、不安症を発症するリスクが約4倍高いと報告されている。 Suh氏らは今回の研究で、2012~2019年にNHSのTTadを利用した193万9,007人のデータを調査した。その中には7,597人(0.4%)の脳卒中経験者が含まれていた。TTadは、気分障害に悩む住民に向けて、1対1、またはグループで行われる認知行動療法(CBT)やカウンセリングを、対面またはオンラインで無料提供するNHSのサービスである。参加者の抑うつや不安は、PHQ-9(Patient Health Questionnaire 9)やGAD-7(Generalized Anxiety Disorder-7)などの妥当性が確認されている質問票で評価された。 その結果、トーキングセラピーを受けた脳卒中経験者の71.3%(5,403人)で、抑うつや不安の症状の大幅な改善が認められた。また、49.2%(3,723人)は、症状が明確に改善し、抑うつおよび不安のスコアが診断閾値を下回って治療を完了する「信頼できる回復」を達成したことが確認された。さらに、機能障害(仕事や家庭の管理、社会的つながりの維持、余暇活動が困難になる状態)についても中等度の改善が確認された。このほか、脳卒中の発症後1年以上が経過してからトーキングセラピーを始めた場合、発症から6カ月以内に始めた場合と比べて回復の可能性が20%低下することも明らかになった。 論文の共著者の一人であるUCL老年学および臨床心理学教授のJoshua Stott氏は、「脳卒中未経験者と比較して、脳卒中経験者ではアウトカムが不良な傾向にある。このことは、精神保健の臨床医が認知障害や感覚障害、複雑な身体上の健康問題を抱えている人など、慢性疾患を有する患者に対応するためのさらなる訓練を受けることの重要性を示している」とニュースリリースの中で指摘。その上で、「このような訓練への投資は、何千人もの患者の精神的および身体的な健康アウトカムの向上をもたらすだろう」と付け加えている。

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薬に頼らず膝の痛みを軽減するには装具がベスト

 ズキズキとした膝の痛みに悩まされている高齢者は少なくないが、薬を使わずに変形性膝関節症(KOA)を治療する確実な方法は数多くあることが、新たなエビデンスレビューで示された。膝装具、水治療法、運動のいずれもがKOAの痛みを効果的に緩和することが示されたという。内江第一人民病院(中国)のYuan Luo氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS One」に6月18日掲載された。 Luo氏らは、「これらの治療選択肢は、一般的な鎮痛薬で生じ得る胃腸や心血管などのリスクを伴うことなく痛みを軽減し、関節の可動性を向上させる。患者と臨床医は、これらのエビデンスに基づいた選択肢を優先すべきだ」と述べている。 研究の背景情報によると、60歳以上の10%以上がKOAに罹患している。そのため、特に副作用のない、シンプルで安価な治療法が求められている。 この研究では、9,644人を対象とした139件のランダム化比較試験(RCT)のデータを統合し、薬物を使用しない12種類のKOAの治療法を比較した。12種類の治療法とは、低出力レーザー療法、高強度レーザー療法、経皮的電気神経刺激療法、干渉波電流刺激、短波ジアテルミー、超音波療法、外側ウェッジインソール、膝装具、運動、水治療法、キネシオテーピング、および体外衝撃波療法であった。 解析の結果、WOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index)で評価した疼痛スコアの軽減効果が最も高かったのは膝装具であり、運動、高強度レーザー療法がそれに続いた。最も効果が低かったのは超音波療法であった。一方、膝関節の機能の評価で最も効果的だったのも膝装具で、最も効果が低かったのは超音波であった。剛性スコアに関しては、膝装具の有効性が最も高く、運動と水治療法が続いた。WOMAC総スコアに関しては、水治療法が最良の治療法である可能性が最も高く、運動療法と高強度レーザー療法が続いた。最も効果が低かったのは短波ジアテルミーであった。これらの結果に基づき、膝装具が最も効果的だと判断された。 研究グループは、KOAに対する運動療法の選択肢は、「多様であり、有酸素運動と心身運動が痛みと機能に最も大きな効果を示し、筋力強化と柔軟性・技能訓練がそれに次ぐ最良の選択肢であった」と記している。 また研究グループは、「約1万人の患者を対象とした分析により、膝装具や水中運動などのシンプルで手軽な治療法が、超音波などのハイテクな治療法よりも効果的であることが明らかになった。この結果は、より安全かつ低コストな介入に重点を置いた臨床ガイドラインの改訂につながる可能性がある」と述べている。

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第251回 沖縄でコロナ急増、入院患者の半数が80歳以上 全国でも増加傾向続く/厚労省

<先週の動き> 1.沖縄でコロナ急増、入院患者の半数が80歳以上 全国でも増加傾向続く/厚労省 2.認知症薬レカネマブ、薬価15%引き下げへ 費用対効果に課題/中医協 3.医療機関の倒産、上半期35件で過去最多ペース/帝国データバンク 4.国立大病院の赤字が過去最大285億円、移植や高額薬が経営圧迫/国立大学病院長会議 5.「終末期医療は全額自己負担」に波紋、専門家は「事実誤認」指摘/参院選 6.ALS嘱託殺人事件、元医師の有罪確定 見張り役も共謀と判断/最高裁 1.沖縄でコロナ急増、入院患者の半数が80歳以上 全国でも増加傾向続く/厚労省厚生労働省は2025年7月11日、全国約3,000の定点医療機関から報告された新型コロナウイルス感染者数が、6月30日~7月6日の1週間で1医療機関当たり1.97人となり、前週(1.40人)比で1.41倍に増加と発表した。全国平均で3週連続の増加となり、全体で7,615人の新規感染者が報告された。都道府県別では、沖縄県が1定点当たり16.36人と突出しており、2位の山梨県(3.26人)、3位の千葉県(3.11人)を大きく引き離した。一方で、感染者数が少なかったのは鳥取(0.55人)、北海道(0.60人)、青森(0.67人)など。とくに沖縄県では感染拡大が顕著で、1週間の報告数は736人と前週の1.46倍。入院患者は85人で14人増加し、その約半数が80歳以上だった。年齢別でも60歳以上が最多で、高齢者層での感染と入院増が目立った。県では7月4日に独自の「新型コロナ感染拡大準備情報」を発令し、地域医療機関に注意を呼びかけている。併せてインフルエンザも継続的に流行しており、定点当たり4.96人と依然高い水準が続いている。今後も高齢者を中心とした重症化リスクを踏まえ、早期対応や感染対策の強化、病床確保が求められる状況にある。 参考 1) 2025年 7月11日 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況について(厚労省) 2) 新型コロナ患者、3週連続で増加…人口当たりでは沖縄県が突出(読売新聞) 3) コロナ感染、増加傾向続く 前週比1・41倍(産経新聞) 4) コロナ感染者数、沖縄は前週の1.46倍に 1定点あたり16.36人 「感染拡大準備情報」を発表中(沖縄タイムス) 2.認知症薬レカネマブ、薬価15%引き下げへ 費用対効果に課題/中医協厚生労働省は7月9日に中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、アルツハイマー病治療薬レカネマブ(商品名:レケンビ)について、その費用対効果が低いとする評価結果を受け、薬価を最大15%引き下げる方針を示した。レカネマブは、エーザイと米バイオジェンが共同開発し、2023年に国内で初めて承認されたアミロイドβを標的とする薬剤で、軽度認知障害(MCI)または軽度の認知症が対象。年間投与コストは約300万円で、公的医療保険の対象となっている。今回の評価では、認知機能の低下を27%抑制し、進行を7.5ヵ月遅らせるといった治験成績はあるものの、対象が軽症であることから介護費抑制効果が限定的と判断され、「費用対効果が不十分」と結論付けられた。国立保健医療科学院の分析では、現在の薬価の3分の1が妥当とされた。一方、エーザイは公的分析が「投与期間を18ヵ月までに限定」、「患者QOLの改善を軽視」など、評価モデルに乖離があるとして反論。「費用対効果は価格評価であり、薬の有効性自体を否定するものではない」と強調している。薬価は今後、中医協で議論され、激変緩和措置により最大15%の引き下げに止まる見通し。なお、薬価の費用対効果評価は2019年度から導入されており、エンシトレルビル フマル酸(同:ゾコーバ)などでも引き下げ例がある。 参考 1) 医薬品の費用対効果評価案について(厚労省) 2) アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」 薬価15%引き下げへ(NHK) 3) エーザイ認知症薬「レカネマブ」値下げへ 中医協「費用対効果悪い」(日経新聞) 4) エーザイ、認知症薬の費用対効果で反論 中医協は「過小に評価」(同) 3.医療機関の倒産、上半期35件で過去最多ペース/帝国データバンク帝国データバンクの調査によれば、2025年上半期(1~6月)に倒産した医療機関は全国で35件に達し、過去最多だった前年(64件)を上回るペースで推移している。内訳は病院9件、診療所12件、歯科医院14件で、とくに病院の倒産が増加している。負債10億円以上の大型倒産も病院で4件確認された。これまで小規模事業者の破綻が中心だったが、中規模病院への波及が顕著となっている。主因は、物価・人件費・光熱費・医療機器価格などのコスト上昇に診療報酬が追いつかず、収益構造が逼迫している点にある。また、経営者の高齢化と後継者難により、診療所・歯科医院では廃業や解散も増加しているほか、病院では建物の老朽化が課題であり、耐用年数(39~40年)を超えても建て替え困難な事例が多発している。さらに注目されているのが「休廃業・解散」の急増で、1~5月だけで300件(病院12件、診療所288件)に上り、年換算で700件を超える見通し。医師の高齢化も深刻で、診療所経営者の過半が70歳以上、後継者不在は全体の50%超とされる。建設費高騰と資金難により、将来的な閉院リスクも増している。医師会などの調査では、医業利益ベースで赤字病院は全体の約7割に達しており、制度的支援がなければ地域医療の空白化が加速する恐れがある。今後の診療報酬・医療提供体制の在り方が問われる状況となっている。 参考 1) 倒産した医療機関 上半期で全国35件 過去最多ペース(NHK) 2) 医療機関の倒産、上半期は35件で過去最多を上回るペース 物価高、人件費の高騰で収益悪化(帝国データバンク) 3) 医療機関の倒産は過去最多ペース…「ある日突然、病院がなくなる」地域が急増する衝撃(日刊ゲンダイ) 4.国立大病院の赤字が過去最大285億円、移植や高額薬が経営圧迫/国立大学病院長会議国立大学病院長会議は、2024年度の決算速報で、全国42国立大学・44附属病院の経常損益が過去最大の285億円の赤字となったと公表した。前年度の赤字60億円からさらに大幅に悪化し、全体の7割近い29病院が赤字に陥っている。収益は547億円増加した一方で、人件費や医薬品・材料費の高騰などにより費用は772億円増加。物価高と働き方改革の影響が大きく、収入との乖離が赤字拡大の主因とされている。とくに移植手術では深刻な採算割れが発生しており、肺移植では1件当たり418万円の赤字、臓器移植全体でも平均290万円の損失となっている。加えて、高額医薬品(10万円以上)の使用が全体の28.5%を占め、その管理・維持に通常より数倍の人件費が必要とされるほか、キャンセル時には全額病院負担となることも経営を圧迫している。医療機器更新の停滞、診療報酬の低水準、研究・教育機能の劣化なども懸念され、病院長らは補正予算による支援と次期診療報酬改定での点数引き上げを強く要望している。大学病院が担う高度医療と医師養成の機能の維持には、早急な国の対応が不可欠と訴えている。 参考 1) 国立大病院285億円赤字 過去最大、24年度「新たな医療機器が買えない」(産経新聞) 2) 国立大学病院の赤字 過去最大の285億円 全体の7割近くが赤字に(NHK) 3) 国立大学病院長会議 42国立大学病院の24年度経常損益マイナス285億円 経営悪化で事業継続の危機訴え(ミクスオンライン) 5.「終末期医療は全額自己負担」に波紋、専門家は「事実誤認」指摘/参院選参政党が参議院選挙で掲げている「終末期の延命措置医療費の全額自己負担化」の公約が、大きな波紋を呼んでいる。同党は「過度な延命治療が医療費を押し上げる」として、胃ろうや点滴、経管栄養の制限と、診療報酬の定額制導入も主張している。神谷 宗幣代表は「蓄えの必要性を啓発する意図」と釈明するが、福岡 資麿厚生労働省大臣は「生命倫理に関わる問題で国民的議論が必要」と否定的な見解を示している。神谷氏の公約に対し、医療・政策専門家からは批判が相次いでいる。日本福祉大学名誉教授の二木 立氏は、死亡前1ヵ月の医療費は全体の約3%にすぎない点を挙げ、「終末期医療が医療費高騰の主因」とする主張は誤りと指摘。また、延命措置の線引きは曖昧で、終末期は必ずしも高齢者に限らず、子供にも適用されることもある。さらに、日本老年医学会の「立場表明2025」は、緩和ケアの推進と意思決定支援の重要性を強調し、「time-limited trial」などの柔軟な対応を推奨。個別の事情に応じた医療の必要性を訴えている。SNS上では「政治家が終末期医療を一律に制限することは、尊厳や人権を損なう」との声も広がる。医療現場では、患者や家族との対話を重視し、画一的な制限ではなく、多様なニーズに応じたケアが求められている。今回の公約は、医療者や国民との合意形成の積み重ねに逆行するものであり、終末期医療の制度設計をめぐる今後の議論に注目が集まっている。 参考 1) 参政党の政策(参政党) 2) 終末医療は全額自己負担 参政党が異常な公約(しんぶん赤旗) 3) 参政公約「終末期延命措置は全額自己負担」 神谷氏「啓発する思い」(朝日新聞) 4) 参政党の医療公約「終末期の延命医療費の全額自己負担化」医療政策学者と検証する(医療記者、岩永直子のニュースレター) 5) 終末期医療めぐる議論に医師作家「終末期=高齢者では決してありません」(日刊スポーツ) 6.ALS嘱託殺人事件、元医師の有罪確定 見張り役も共謀と判断/最高裁2019年にALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性患者(当時51歳)の依頼を受けて薬物を投与し死亡させた嘱託殺人事件で、最高裁第2小法廷は7月7日、元医師・山本 直樹被告(48)の上告を棄却し、懲役2年6ヵ月の実刑が確定した。実行犯である元医師・大久保 愉一受刑者(47)はすでに懲役18年が確定している。山本被告は「殺害計画は知らなかった」と無罪を主張したが、一審・京都地裁は「見張り役として犯行を支援し、被害者と大久保受刑者を繋ぐ調整役を果たした」と指摘。被害者から約130万円を受け取り、訪問日程の調整も行っていた点から「殺害の意図を認識し、共謀していた」と判断された。大阪高裁もこの判断を支持し、最高裁は「判例違反などの上告理由にあたらない」として棄却した。本件とは別に、山本被告は2011年に父親を殺害した罪でも懲役13年が確定しており、大久保受刑者も一連の事件で懲役18年が確定している。ALS患者による「自死の選択」をめぐる社会的議論が続く中、本件は「患者の依頼による殺害」でも、法的責任が厳格に問われた判例として注目されている。安楽死・尊厳死の制度化がないわが国では、医療者による関与があっても刑事責任を免れないことが改めて確認された。今後も生命倫理と医療行為の境界における慎重な議論が求められる。 参考 1) ALS患者の嘱託殺人、「見張り役」元医師の実刑確定へ 最高裁(朝日新聞) 2) 元医師も実刑確定へ 最高裁、ALS嘱託殺人(日経新聞) 3) 元医師、懲役2年6月確定へ ALS嘱託殺人、上告棄却 最高裁(時事通信)

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医師だからできる賢い不動産投資とは? 銀行融資を有利にする純資産最大化戦略【医師のためのお金の話】第94回

医師の皆さまの中には、「不動産投資はハードルが高い」と感じている方が少なくないかもしれません。とくに、初めて挑戦する際、銀行融資は大きな壁となります。医師という属性は、融資において有利に働くことが多いですが、それだけで十分とは言えません。銀行は、物件のスペックだけでなく、融資を受ける方の資産背景、つまり「純資産」を重視します。医師免許を持っていても、自己資金が乏しければ、一部の金融機関を除き、融資は難しいでしょう。ここで言う「一部の金融機関」とは、かつて「かぼちゃの馬車」事件で話題になったスルガ銀行のような高金利の金融機関です。これらの金融機関は、属性融資と呼ばれる個人の属性を重視した融資を行います。住宅ローンのようなものと考えるとわかりやすいでしょう。しかし、これらの金融機関で一度でも融資を受けると、その後の不動産投資が困難になる可能性が高いです。なぜなら、通常ではない融資審査を行う金融機関からの借入は、他の銀行からの評価を下げる要因となるからです。また、昨今の不動産価格の高騰や物件取得競争の激化は、多忙な医師にとって不利な状況を生み出しています。競争に打ち勝つためには、医師という属性だけでなく、何らかの強みが必要です。不動産投資に不可欠な銀行融資について考えてみましょう。銀行が評価するのは医師免許ではなく「純資産」融資の際、銀行が最も重視するのは、融資を受ける人の資産背景、すなわち「純資産」です。純資産が多いほど、融資を受けやすくなるだけでなく、融資条件も有利になります。銀行融資において、純資産の多寡は極めて大きな影響を及ぼすのです。参考までに、私が2024年10月に購入した物件は、法定耐用年数を超過した鉄骨造の物件でした。一般の方では融資を受けることさえ難しい物件です。しかし私は、融資期間25年・10年固定・金利1.05%という破格の条件で融資を受けました。融資当時の日本国債の利回りが1.0%程度であったことを考えると、1.05%という金利は驚異的です。そして、このような好条件で融資を受けられたのは、私が医師だからではありません。資産背景が良好で、銀行からの評価が非常に高かったからです。銀行が評価する純資産とは、所有物件の評価額と残債の差額です。例えば、評価額1億円の物件を所有していても、融資残高が1億円であれば、純資産はゼロと評価されます。実際、多くの不動産投資家がこのような状況に置かれています。一方、私は圧倒的な純資産を所有しています。その理由は、地価が持続的に上昇する好立地物件を所有し続けているからです。時間が経つにつれて、物件の評価額は上昇して、残債は減少するため、純資産がどんどん増加します。これは、以前「ワニの口作戦」として紹介した戦略です。私は18物件所有していますが、2億円近い純資産のある物件が少なくありません。さらに、有価証券担保として差し入れている株式の評価額も、昨今の株価上昇で大きく増加しており、純資産増加に貢献しています。このように、銀行が担保にしている資産の評価額が上昇することで、銀行からは数十億円の純資産を所有している資産家のように評価されます。一般的な投資家では購入が難しい都市中心部の物件でも簡単に購入できるのは、圧倒的な純資産のおかげなのです。銀行が評価する純資産を最大化する方法私の場合は、地価が安かった時期に不動産投資を始めたのが幸運でした。しかし、不動産投資の成功は、タイミングだけではありません。銀行との良好な関係を築き、銀行評価を上げる努力を続けたことも要因です。銀行から有利な融資を受けるためには、資産背景が重要です。純資産を増やすためには、時間を味方に付ける必要があります。具体的には、都市中心部の好立地物件を住宅ローンで購入して、長期保有することで少しずつ純資産を増やしていく方法を推奨します。この戦略を実践するためには、かなりの時間が必要です。そのため、早期リタイアを目指す方には不向きかもしれません。しかし、医師で早期リタイアを望む方は少ないのではないでしょうか。医療はやりがいのある仕事なので、長く現役を続けたいと思う方が多いと思います。したがって、着実に純資産を増やして、少しずつ銀行評価を高めていくこの方法は、医師の皆さまと非常に親和性が高いと言えます。私の周囲の不動産投資家で、この戦略を実践している方はほとんどいません。しかし、理論的に考えれば、時間がかかるというデメリット以外は、メリットの多い戦略です。医師の不動産投資のモデルケースの1つとして、参考にしていただければ幸いです。

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事例27 H2受容体拮抗剤(H2ブロッカー、ファモチジン筋注)の返戻【斬らレセプト シーズン4】

解説事例では、在宅患者訪問診療時のH2受容体拮抗剤(H2ブロッカー、ファモチジン注射用20mg「後発品」1A)の筋注が返戻になりました。返戻の理由には、「注射は、適応疾患に対し内服できない場合に使用できます。したがって、外来での使用は原則認められません。在宅患者等で注射を必要とした場合は、その理由を詳記してください」とありました。ファモチジン注には同一薬効の内服薬が存在します。添付文書には「注射後経口投与が可能になれば速やかに経口投与に切り替えること」とありますが、外来における注射の実施にかかる制限は記載されていません。しかしながら、支払基金の今までの査定傾向を分析すると、「同一薬効の内服薬が存在する注射薬は、経口投与が可能であれば内服薬を第1選択とする」とされているようです。この根拠は療養担当規則第20条4注射イ(1)にみつけることができます。「(前略)経口投与をすることができないとき、又は経口投与によっては治療の効果が期待できないとき」とあるからです。外来における注射には、注射を必要とした医学的理由がレセプト上で明確に表現されていることが必要なことがわかります。事例では、定期的な訪問を表す在宅患者訪問診療料が算定されています。定期的に医学的管理を行っている患者に同一薬効の経口薬がある注射薬をなぜ必要としたのかと症状詳記を求めた返戻であったことが推測できます。カルテには、「血液が混じった吐しゃ物、経口摂取不可、速効を期待してIV(静脈注射)」と記載がありました。医師にはこの内容の詳記をお願いして再請求を行い、査定はありませんでした。

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7月14日 内視鏡の日【今日は何の日?】

【7月14日 内視鏡の日】〔由来〕「7(な)」と「14(いし)」と読む語呂合わせから内視鏡医学のさらなる発展と普及を願い、内視鏡医学研究振興財団が2006年に制定。1950年に世界で初めてわが国で胃カメラによる胃内撮影に成功した。それ以来、内視鏡は消化管のがんなどの早期発見・治療のために大切な役割を果たしている。また、内視鏡は、泌尿器科、呼吸器科、耳鼻咽喉科など幅広く用いられ、進化発展している。関連コンテンツマスクが胃カメラの飛沫拡散を予防【患者説明用スライド】上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)の略語はどれが正しい?【知って得する!?医療略語】H. pylori検査と除菌後胃がん、知っておくべき7つのQ&A肥満者の鎮静下内視鏡検査、高流量鼻カニューレ酸素投与で低酸素症が減少/BMJ検査時間帯で異なる大腸内視鏡の精度、解決策は?

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