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STEMIの“非”責任病変の治療はいつやる? 今でなくても? そもそもやるべき?(解説:山地杏平氏)

 ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)または高リスク非ST上昇型急性心筋梗塞(NSTEMI)症例において、非責任病変の治療を検討したFULL REVASC試験が発表されました。この試験では、責任病変に対するPCI施行後、入院中にFFRガイド下で非責任病変へのPCIを行う群と、入院期間中は追加のPCIを行わない群に無作為に割り付けられました。その結果、ハザード比は0.93(95%信頼区間:0.74~1.17)で、p=0.53と有意差は認められませんでした。 この結果は、過去の多くの研究とは異なるもので、最近行われた大規模研究であるCOMPLETE試験やFIRE試験では、いずれも責任病変へのPCI後に非責任病変の治療を行ったほうが、イベントリスクを低減するという結果が示されました(表)。 FULL REVASC試験の特徴は、FFRガイドに基づいて非責任病変の治療適応を決定した点にあります。FFRガイド下でのPCIにおけるカットオフ値である0.80は、FAME試験・FAME2試験などにおいて、安定狭心症の患者に対する検討結果から設定されており、0.80以上では治療によるリスク増加、0.75以下では治療によるベネフィットが示されています。急性心筋梗塞における非責任病変のFFR値が慢性期と同等であるとの報告も少数例ながら存在し、急性期のFFR測定に関して大きな問題はないと考えられます。一方で、STEMIやNSTEMIの過半数は、不安定プラークの破裂による発症とされており、そのような症例では非責任病変にも不安定プラークが存在する可能性が高いと考えられます。PREVENT試験で示されたように、不安定プラークが存在する可能性が高い症例では、心筋虚血の有無ではなく、不安定プラークの有無に基づいて治療適応を検討することが望ましいのかもしれません。 一方で、STEMIやNSTEMIといった高リスク症例において、不安定プラークを伴う非責任病変が認められた場合、その治療をいつ行うべきかという問題があります。この点に関しても、さまざまな臨床試験が実施されています。多くの研究では、時間を分けて治療するよりも、急性期のPCIと同時に非責任病変を治療したほうが良好な結果が得られることが示されています。 しかし、ここで注意が必要なのは、主に差が見られたのは緊急での血行再建に関するものであり、試験の性質上ブラインド化が困難であった点です。非責任病変が存在するにもかかわらず、研究のプロトコルに従って治療を待機することは、患者や医師にとって行いにくかった可能性があります。 急性心筋梗塞の急性期に行うPCIは、安定狭心症に対するPCIと比較して、死亡、血栓症、出血といった合併症のリスクが高くなるため、非責任病変の治療を同時に行う場合は十分な注意が必要です。とくに、CULPRIT-SHOCK試験が示したように、血行動態が不安定な症例では、責任病変の治療のみとし、ショックや心不全の管理を優先したほうがよいかもしれません。

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第225回 令和のカネミ油症事件、小林製薬に創業家を斬る覚悟はあるのか?

紅麹サプリでの健康被害が報告された小林製薬が4ヵ月ぶりに開催した記者会見。会見で明らかにされた8月4日時点での健康被害状況は、死亡に関連して詳細調査対象となった事例が107件。その内訳は調査完了21件、調査継続中が32件、詳細調査の同意取得ができないなどで調査困難なケースが54件。そのほかに入院が467件、検査入院を含む通院が1,819件。今回も前回に続き、小林製薬の記者会見での質疑応答から感じたことをお伝えしたい。あの事件を彷彿とさせる健康被害会見の質疑では、調査完了21件について「(サプリ摂取との)関係性があり/なしのどちらとも言えないというレベルのものも含まれる」(同社執行役員/信頼性保証本部本部長・渡邊 純氏)とのことだった。これらがすべて小林製薬の紅麹サプリが原因と仮定した場合、製造過程での過失を原因とした食品健康被害事件としては、1968年に発覚したPCB(ポリ塩化ビフェニル)が混入した米ぬか油による健康被害「カネミ油症事件」(2024年3月末の累計認定患者2,377人)に匹敵する事案となる。会見で同社は健康被害を訴えた消費者に対しては、医師の診断書内容などを総合的に勘案し、相応の因果関係が認められれば、医療費・交通費、慰謝料、休業補償、後遺障害による逸失利益も含めて補償する方針を説明した。摂取により死亡が疑われる事例に関しては別途対応するという。すでに原因究明は厚生労働省と国立医薬品食品衛生研究所に委ねられているため、補償認定をどのように行うかも会見で質問が出たが、「最後の判断は当社でやっていく。社内の薬剤師も含めて会議体を設定し、医師、弁護士など知見に富んだ外部有識者の監修による(判定)基準を策定している。ただ、それでも判断が難しい部分もあり、CROを通じた主治医の詳細調査、その結果に対する(監修)医師の解釈も踏まえ、間違いないかの判断を突き詰めてやっていきたい」(同社執行役員/補償対応本部本部長・佐藤 圭氏)とのことだ。会見は同社側の説明が39分超、そこから会場、オンラインそれぞれからの参加記者との質疑に入った。前回書いたように、開始前に広報・IR部の担当者から「1人2問まで」との情報を得ていたので、私の中で優先順位が高いと考えた2問に絞り込み、質問の挙手を続けた。私が指名されたのは質疑開始から41分過ぎ、最初の質問者から8番目だった。私が用意した質問は、以前、本連載でも触れた同社の事実検証委員会報告書で感じた疑問だった。質疑応答その1:調査の遅さ、所轄官庁への相談の有無【村上】健康被害の公表と製品回収の基準について、社内でいろいろ検討されて特定保健用食品の基準を援用されたようですが、規制の多いヘルスケア業界では、判断が悩ましい場合は所轄官庁に問い合わせるのが一般的だと思います。今回の件で事前の所轄官庁への問い合わせの有無、あった場合はどのような回答を得ていたのか、ない場合はなぜ問い合わせなかったのかを教えていただきたいと思います。【渡辺】監督官庁の方へのご相談はこの時に行っておりません。今思えばですが、われわれの中で自ら考え、こういった方向性で考えられるというか、物事を捉えることができるんじゃないかと少し内向き、自分たちで解決しようとする意識が強すぎたと反省しております。今であれば監督官庁にご相談に行き、前向きにやることが必要であると理解しております。【村上】事実検証委員会の調査報告書を見ると、2月5日に信頼性保証本部で健康被害の原因についてシトリニン説、モナコリンK説、コンタミネーション説の3つを検証する方針を決定していますが、原因特定、3つの仮説の絞り込みのためには症例を報告した医師からのヒアリングが非常に重要だと思われます。しかし、御社では医師に連絡を取ったのは2月5日のかなり後で、わざわざ御社から月末の面談候補日を医師に提示しています。これがなぜだったのかをお伺いしたいんですが。【渡辺】確かにおっしゃる通りで、それぞれの患者様に起こっていることは、その主治医が一番わかっておりますので、速やかにその情報を取ることが必要であったと今は感じております。この時は、その点が十分に速やかにできていなかったことは現在、反省するところでございます。面談候補日をわざわざ月末に設定した件は、準備に一定の時間がかかったためと私は理解していますが、細かな理由は、今、確認が取れておりません。この回答を得ても私が前述の事実検証委員会に関する記事を執筆した時に書いた「過度な悪意はない危機感の欠如」との印象は変わらないどころか、むしろ確信に近いものにすら感じた。質疑応答その2:青カビに対する問題意識について小林製薬が公表した事実検証委員会の調査報告書の中で、多くの人が驚いたであろうと思われるのが、紅麹原料の培養タンクの蓋内側に青カビが付着していたことを確認した同社旧大阪工場の現場担当者が、その事実を品質管理担当者に伝えたところ「青カビはある程度は混じることがある」旨を告げられたという点だ。この点についての直接的な質疑応答は2回あった。【記者】現場が青カビを認識していながら問題視しなかったという証言は、いつ頃のことだったのでしょうか?【山下】大変申し訳ございませんが、本日時点ではいつのことであったかという詳細はまだ判明しておりませんので、お答えできない状況でございます。【記者】青カビの件ですが、健康被害の訴えがあってから事実を公表した3月22日まで製造現場を積極的に調べていれば、もっと早くわかった可能性もあると思いますが。【山下】初期段階の原因究明でシトリニン、モナコリンK、コンタミネーションを疑いましたが、その時点で製造記録や品質管理担当者への確認の結果、過去と大きな変化はなかったという事実だけを受け止め、そこを信じてしまったことが問題だったと考えております。青カビの件の質問がこれだけに留まった背景には会見の時間制限に加え、記者側も呆れを通り越しているのではと思われた。創業家を排除する覚悟があるような、ないようなそして今回、最も質問が多かったのが、今後の経営体制と創業家である小林家との関係だった。今回の記者向け配布資料の中で私が一番驚いたのは「経営体制の抜本的改革」との項目で「同質性の排除」と明記していた点だ。小林製薬が同族企業である以上、同質性の排除とは率直に読めば、創業家中心の雰囲気を打破するということになる。しかし、「排除」という言葉はあまりにも意味、語感ともに強すぎる。このため「同質性の排除」は同族企業特有の社風を排除することと別の意味で使っているのかと思っていたが、そうではなかった。前回、山根氏が会見冒頭で述べた「他者を慮る想像力を見失っていた、弱くしてしまっていた」について「なぜ弱くしてしまっていたのか?」と質疑で問われた際の理由の1つにこの同質性を挙げ次のように語った。「やはり同質性の問題があったと思います。われわれは創業家中心の同族会社で同質性は良い時は一枚岩で強く回りますが、悪い時は負の方向に回ります。これが想像力の弱体化と連動し、今回の事態を招いたのではないかと思います」山根氏自身は1983年入社の生え抜きだが、私の印象では冒頭の謝罪の弁も質疑応答も用意された原稿を読むわけでもなく、本人なりの言葉で話していた印象がある。その中で「同質性の排除」もかなりの覚悟で盛り込んだのだろうと感じたが、同時に創業家に関する質問では、ある意味揺れ動いていると感じられる部分もあった。とりわけ今回代表取締役会長を辞任し、特別顧問に就任した一雅氏について記者から問われた際がそうだ。ちなみに一雅氏の特別顧問報酬が月額200万円であることが明らかになり、世間の批判の的にもなっている。以下、関連質疑応答を紹介する(複数の記者とのやり取りを抜粋)。質疑応答その3:特別顧問の一雅氏、報酬が月額200万円について【記者】先日、経済同友会の新浪 剛史代表幹事が、“これだけ社会に迷惑をかけた会社で前会長が月収200万円の特別顧問に就任し、小林前社長が取締役で残留する甘い体制を是とした理由を説明すべきだ”と公に発言しています。【山根】ご批判は承知しています。新浪さんのコメントを読み、正直自分も恥ずかしかったし、ショックでした。一雅氏が辞任意向を示した際に特別顧問として事業に貢献したいと申し出がありました。新製品開発、マーケティングで当社に貢献されたのは事実で、われわれの気付かない着眼点などもあり、それを与えていただく前提で取締役会は合意しました。【記者】創業家は今もまだ大株主である以上、無視することは困難です。先ほど創業家に忖度しないとの発言がありましたが、そう言い切れる根拠をご説明ください。【山根】大株主の考え方にわれわれが耳を傾けるのは当然ですが、われわれの考え、あるべき姿や方向に基づき主張すべきは主張し、皆さんが納得する良いアイデアが(創業家から)あったら受け入れる。是々非々の姿勢を貫きたいと私は思っています。【記者】一雅氏が特別顧問として関わりたいと申し出たから特別顧問としたとの説明自体が既に忖度しているとの解釈もあると思います。【山根】当然そう思われる方もいるでしょう。一方でわれわれはこれからもメーカーとしてさまざまなアイデア・事業を作っていくわけで、この点で知見があるならば生かすことが会社にとっても意味があることじゃないかと思い、取締役会では決断しました。【記者】再発防止に注力しなければならない中、新製品やマーケティングに対する知見があるから力を貸して欲しいというのは拙速と受け止められかねませんが。【山根】そこはやはり先ほど触れましたが、品質・安全に対する今までの考え方はわれわれがさらに強くしなければならないと思いますので、そのフィルターの上に新しいアイデア・知見をどう構築するかが今後求められます。これはもう新体制で判断するのがわれわれの権利ですから、何でも採用するという判断は一切いたしません。【記者】3月、今回の会見共に小林前会長がいらっしゃらない理由を教えてください。【山根】3月の会見は執行サイドのトップである社長が出るという判断だったと思います。今回、本人はもう辞任済みで同席できなかったのだと思います。【記者】辞任しても特別顧問として残られますし、山根社長がおっしゃった同質性の問題にも深く関わってる方です。何らかの説明責任はあると思いますが。【山根】これも本人にそれをどう決断していただくかも当然あると思います。私は1つの考えとしては説明責任を果たすべきだと思います。【記者】一雅氏の特別顧問の月額報酬が200万円は適切とお考えですか?【山根】捉え方はさまざまあると思います。この額は本人より提示のあったもので、取締役会で議論して、合意しました。先ほど少しも触れましたが、われわれにない視点やアイデアを提供していただく前提でこの金額で合意したものです。何度も申し上げますが、われわれの顧問でありますから助言があったとしても、われわれは是々非々で判断し、すべて言いなりになるわけではありません。同社関係者をして“天皇”とも呼ばれ、山根氏の入社時点で社長の任にあった一雅氏のことについては、どうしても奥歯にものが挟まった言い方になるのだろう。そして会見中、ある関西ローカル局の記者が「この問題について質問のため電話をしても、電話での質問は一切答えられませんと言われ、広報部長さんにも何度も電話しても、1回も折り返しがありません。正しい報道をしたいという私達の考えと相いれない。改善してほしい」との発言まであった。ちなみに私個人は2度電話で問い合わせ、いずれも回答をもらえているので「?」と思ってしまった。答えようのない質問だったのかもしれないが、「1回も折り返しがない」は対応としていかがなものだろう? この時は会見前の控室での出来事が頭に浮かんでしまった。これも強力な創業家によって運営されてきた社風の一端だろうか? 同社の改革とは絶壁を切り崩すかのごとき難易度に思えてしまう。

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フェンタニルは呼吸困難に使えるか?【非専門医のための緩和ケアTips】第82回

第82回 フェンタニルは呼吸困難に使えるか?呼吸困難に対するオピオイドといえば、最もメジャーなものはモルヒネでしょう。最近は、呼吸困難時にヒドロモルフォンやオキシコドンも使われることが増えてきました。では、貼付剤もあって利便性の高いフェンタニルはどうでしょうか?今回の質問訪問診療で診ている肺がん患者さん。嚥下機能が低下し、内服が難しい状況です。がん疼痛と労作時呼吸困難に対してオピオイドが必要と判断し、モルヒネの坐剤とフェンタニル貼付剤を処方しました。痛みが強い時はモルヒネを使うのですが、フェンタニル貼付剤を開始したところ呼吸困難がラクになったと言います。フェンタニルは呼吸困難にはあまり有効でないと考えていましたが、実際には効くのでしょうか?「呼吸困難に対するオピオイドの使い方」は、緩和ケアでしばしば話題になるテーマです。とくにフェンタニルは腎機能が悪い場合も使いやすく、貼付剤もあることから在宅緩和ケアで重宝する薬剤ですが、呼吸困難に対する効果はどうなのでしょうか?エビデンスについて詳細に述べることはしませんが、私の理解としては、ざっくり以下の通りです。がん患者の呼吸困難に対しフェンタニルが症状緩和に有効であったという報告はあるものの、モルヒネやプラセボを上回る有効性を示した研究はない。慢性心不全や呼吸器疾患のような非がん疾患による呼吸困難に対するフェンタニルの有効性を示した質の高い研究はない。これらを踏まえ、『進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン』(2023年版)でも、がん患者の呼吸困難に対するフェンタニルの全身投与は推奨されていません。以上がエビデンスベースの話ですが、臨床的な実感はどうでしょうか?私が急性期病院や集中治療に携わっていたとき、鎮痛のためフェンタニルを静注している患者さんを受け持つことが多くありました。その中には「呼吸困難にもフェンタニルが有効なのかな」と感じる例もありました。ただ、強い呼吸困難はフェンタニルだけでは対応が難しく、モルヒネによる鎮静が必要になることが大半でした。こうした経験を振り返ると、「フェンタニル自体の薬理作用よりも、薬剤を投与した安心感によって呼吸困難が和らいだ可能性もある」と感じます。呼吸困難は不安感などの心理的要素も症状を悪化させることが知られており、薬理効果以外の症状緩和に対する効果も考慮する必要があるでしょう。私自身は、呼吸困難に対して積極的にフェンタニルを使用することはありませんが、さまざまな経緯からフェンタニルを投与され、患者さんが効果を実感している際には「まあ、よしとするか」と判断しています。このあたりは専門家でもスタンスが異なることが多いでしょう。ぜひ皆さんの意見も教えてください。今回のTips今回のTips現状のエビデンスでは「呼吸困難にフェンタニルは積極的に使わない」。しかし、状況に応じた使い分けを検討する場合も。

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映画「心のままに」(その2)【だからハイテンションになってたの?(双極性障害の起源)】Part 1

今回のキーワード反応閾値モデル双極スペクトラム(ソフト・バイポーラリティ)個体差季節変化順位付け双極I型障害双極II型障害ランク理論(社会的地位理論)前回(その1)は、双極性障害の症状と原因を説明しました。それでは、そもそもなぜ双極性障害は「ある」のでしょうか?今回(その2)は、前回に取り上げた映画「心のままに」を踏まえて、進化精神医学の視点から、双極性障害の機能、つまり双極性障害の存在理由(起源)に迫ります。そもそもなんで双極性障害は「ある」の?前回(その1)で、双極性障害は遺伝の要素が大きいことがわかりました。だとしたら、なぜ遺伝の要素が大きいのでしょうか? 言い換えれば、そもそもなぜ双極性障害は「ある」のでしょうか? ここから、双極性障害の起源を3つの段階に分けて、進化精神医学の視点から迫ってみましょう。(1)個体差約4億年前に昆虫が誕生しました。そのなかの真社会性の昆虫であるアリは、生殖だけをする1匹の女王アリと生殖不能になって働くだけの無数の働きアリになって分業するように進化しました。働きアリは、自分自身の子孫(遺伝子)を残せなくても、血縁のある女王アリが部分的に子孫(遺伝子)を残してくれるため、集団としては子孫を残していることになります。そしてさらに、働きアリの中にも、「とても働く」働きアリと「あまり働かない」働きアリがいるようにも進化しました。1つ目は、個体差です。つまり、個体差がない種よりも、個体差がある種の方が、集団としてはより子孫を残す、つまり結果的には包括適応度が高くなります。どういうことでしょうか?現代の人間の合理化された社会構造のなかでは、一律に決まった労働に対して、一律の労働力を発揮する方が労働効率は高まります。つまり、個人差(個体差)がない方が合理的であるとされています。しかし、原始の時代は違います。獲物がたまたま見つかり労働力が急に必要になったり、飢餓や災害が起きて労働力が急に失われたりするなど、生存環境はとても不安定です。そんななか、それぞれの個体の働くスイッチ(反応閾値)に個体差があると、労働力がいよいよ必要になった状況で、もともとスイッチが入りにくくて(反応が鈍くて)「あまり働かない」個体のスイッチがようやく入り、予備要員として働き始めるのです。臓器の予備能にも似ています。これは、反応閾値モデルと呼ばれています1)。簡単に言うと、周りが働いていれば自分は働かず、周りが働いていなければ自分は働くという反応へのスイッチの入り具合(閾値)に個体差があることです。実際の実験研究によると、働きアリ150匹を個体識別して、「とても働く」働きアリと「あまり働かない」働きアリを別々に分けたところ、もともと「とても働く」働きアリグループのなかで「あまり働かない」働きアリが現れる一方、もともと「あまり働かない」働きアリグループのなかで「とても働く」働きアリが現れていき、最終的には、働き具合はもともとの割合と同じになる結果が得られました1)。なお、当然ながら、とても働いている働きアリは、その分早く寿命が尽きる、つまり過労死しやすくなることもわかっています1)。実際のコンピューターシミュレーションの研究においても、必要な労働が一定の場合は、予想通り、個体差があるよりも個体差がない人口生命の集団の方がより高い労働効率で生き残っていました。一方で、必要な労働が不定の場合は、個体差がない人口生命の集団は過労死してしまい、逆に、個体差のある人口生命の集団の方が最終的に生き残り続けました1)。このように、活動レベルにおける個体差は、双極性障害を中核とした一連の症候群である双極スペクトラム(ソフト・バイポーラリティ)の起源でしょう。躁状態と抑うつ状態は、この個体差の正規分布のそれぞれ一番端っこ、つまり「とても働く」個体と「あまり働かない」個体の極端な例に過ぎないと言えるでしょう。ただし、実は「あまり働かない」のではなく、「あえて働かない」戦略を取る種も一定数います。これは、フリーライダーと呼ばれています。人間社会だけでなく、アリ社会にもその存在が確認されました1)。フリーライダーの詳細については、関連記事1をご覧ください。次のページへ >>

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映画「心のままに」(その2)【だからハイテンションになってたの?(双極性障害の起源)】Part 2

(2)季節変化約2億年前に哺乳類が誕生しました。そして、活動レベルは、体に栄養を蓄えるために食料が多い春と夏に促進される一方、食料が少ない冬には抑制され、体温を下げて冬眠するように進化しました。なお、魚類、両生類、爬虫類、そして昆虫の活動レベルが冬に抑制されることは、「冬越し」と呼ばれています。2つ目は、季節変化です。現代の人間の文明化された社会構造のなかでは、冬に食料が少なくなって困ることはなく、生活環境である屋内の室温はエアコンでほぼ一定にコントロールされています。活動レベルは、夏だから上げて、冬だから下げる必要はありません。しかし、原始の時代は違います。とくに、約30万年前から約3万年前まで北ヨーロッパに住んでいたネアンデルタール人は、長く厳しい冬と短い夏の気候パターンである当時の氷河期に適応していきました。実際に、古代ゲノム学の研究から、このネアンデルタール人由来の遺伝子が多いヨーロッパ人やアジア人の方が、少ないアフリカ人よりも、双極性障害の発症リスクが高いという予測が示されています2)。現時点では、実証までには至っていないのですが、興味深い理論的解釈です。この気候パターンへの適応が、季節型の双極スペクトラム(季節性気分障害)の起源でしょう。そして、この冬眠する適応が、双極性障害の抑うつ状態の起源でしょう。実際の臨床経過においても、躁状態が軽いタイプ(双極II型障害)は、軽躁期1%強、抑うつ期50%強、寛解期46%、混合期2%強です3)。この割合は、軽躁期が短い夏、抑うつ期が長い冬、寛解期が春と秋にそれぞれ当てはめることができます。さらに、この活動レベルの促進と抑制のメカニズムは、単に気候パターンへの反応だけでなく、先ほどの不安定な生存環境にも働くようになったでしょう。つまり、「とても働く」ことで過労死するアリとは違い、人類は、「とても働く」分、そのあとに「よく休む」という能力(抑うつ状態)も進化させたというわけです。つまり、スイッチが入りやすい分、スイッチが切れやすくもなりました。人類の個体差は、単にスイッチの入りやすさだけでなく、スイッチの切れやすさ(時間差)も加わったと言えます。ちなみに、活動レベルに時間差が起きる個体差は、気候変動だけでなく、日内変動(概日リズム)も考えられます。それはとくに、若年者は夜更かししがち(睡眠時後退症候群)で、高齢者は早起きしがち(睡眠時前進症候群)であるという生理現象です。これらは、現代では睡眠障害(概日リズム障害)と見なされています。しかし、原始の時代は違います。約300万年前に、人類は血縁集団(部族)をつくって助け合うようになりました。しかし、人類は、まだか弱く雑食であり、獲物を狩る側ではなく、獲物として狩られる側でした。ライオンなど多くの肉食動物は、獲物に気付かれにくい夜に狩りをする夜行性です。そんななか、いかにその危険から部族を守るか、つまり夜間の保安が最重要課題になります。この時、若年者は夜更かしして、高齢者は早起きして、自発的に夜間の保安を分業するよう進化していったことが考えられます。なお、現代のように交代制について示し合わせることは、当時にはできません。なぜなら、言葉を話すようになったのは約20万年前であり、当時は時間の概念すらなく、他の動物と同じようにその日その夜その瞬間を周りの人と相互作用しながら反応的に生きているだけだったからです。また、高齢者が夜更かしではなく、あえて早起きになるように進化していった根拠としては、その危険性から考えることができます。そのわけは、早起きをする時間帯である未明は、最も油断して危険性が高いからです。実際に、合戦の奇襲のタイミングの基本は、夜明け前です。この時、若年者よりも余命が短い高齢者が盾として犠牲になる方が、集団の適応度が高くなります。もちろん、現代の人権尊重の価値観からは、明らかな年齢差別であり、まったく受け入れられません。ただ、原始の時代はそうではなかったというだけのことです。実際の観察研究において、アリやハチなどの真社会性の昆虫は、若いうちは安全な巣の中で幼虫や子供の世話をします。大きくなると次に、巣の修復にかかわる仕事をします。そして年を取った最後は、危険な巣の外で餌を取りに行く仕事をします。このように、年齢によって労働の内容が変わっていく習性は、齢間分業と呼ばれ、真社会性の昆虫に共通して見られます1)。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「心のままに」(その2)【だからハイテンションになってたの?(双極性障害の起源)】Part 3

(3)順位付け約2000万年前に類人猿が誕生しました。彼らは実際にケンカをするよりも、うなり声や攻撃のポーズなどの威嚇をして、そのすごさ(ハイテンション)をもとにした序列によって群れをつくるように進化しました。3つ目は、順位付け(ランキング)です。なお、群れで飼われるニワトリも、お互いつつき合うことで、それぞれの強さ(序列)を確かめて、群れの秩序を保っています(つつき順位)。現代の人間の文明化された社会構造のなかでは、気分が安定して穏やかであることが望ましいとされています。ハイテンションになって偉そうにしたり威嚇することは、不必要であるどころか、むしろ、異常であると見なされます。しかし、原始の時代は違います。当時は、細かいルールや先々の予定はなく、その瞬間を瞬発力で生きているだけで十分なので、ハイテンションであることは、その分、獲物を多く取ることができるでしょう。そして、性的にアクティブにもなり、異性にモテていたでしょう。そして、映画でハイテンションのジョーンズがコンサートで勝手に指揮を執ったように、約300万年前の原始の部族社会ではボスになっていたでしょう。つまり、ハイテンション(躁状態)であることは、生存と生殖の適応度を高めることができるというわけです。以上より、順位付けが、躁状態を進化させた、つまり起源であると言えるでしょう。そして、躁状態は、順位付けされた群れ社会で上位に行くための機能である、簡単に言えば「ボスザル」になる能力であると言えるでしょう2,4)。これは、ランク理論(社会的地位理論)と呼ばれています。ただし、躁状態にはタイムリミットがあり、その後にはジョーンズのようにエネルギー切れ(抑うつ状態)になります。ボス行動(支配行動)とは対照的な服従行動です。これは、同僚のハワードや主治医のボーエン先生がジョーンズを助けてくれたように、周りの援助行動を引き出す生存戦略と言えます。このようにして、双極性障害であることは、子孫を残すだけのベネフィットの方が大きかったでしょう。実際の疫学研究において、双極性障害の繁殖成功率は、男性75%、女性85%と、症状が派手な割にそれほど低下していません2)。となると、原始の時代は断然高かったことが推定できます。また、臨床経過においても、躁状態が顕著なタイプ(双極I型障害)は、躁病期9%強、抑うつ期32%強、寛解期52%、混合期6%強です3)。先ほどの躁状態が軽いタイプ(双極II型障害)と比較すると、躁病期が1%→9%と長くなっているのにもかかわらず、体を休めるための抑うつ期は50%→32%と長くならずにむしろ短くなり、寛解期は46%→52%とやや長くなっています。これは、「ボスザル」の座になるべく長く座るための進化でしょう。なお、順位付けにとらわれる心理の詳細については、関連記事2をご覧ください。「心のままに」とは?ジョーンズの主治医であるボーエン先生は、精神科医として患者たちの感情を真摯に受け止め、常に自分の感情は抑えてきました。そして、実は離婚したばかりで心を閉ざしていました。そんな彼女は典型的な現代人です。一方、まさに「心のままに」生きるジョーンズは、対照的に「原始人」です。そんな2人は、やがてお互いに激しく惹かれ合うのでした。約200年前の産業革命で科学が発展し、合理主義が広がっていったことで、気分や気力はみんな等しく一定である(べき)という価値観が広がってしまいました。それ以降、ジョーンズのような双極性障害の人は「心の病」と見なされるようになってしまったのでした。「心のままに」とは、まさにジョーンズの生き方であり、そんなジョーンズに自然と惹かれてしまうボーエン先生であり、そんな彼らを私たちに温かい目で受け止めてほしいというこの映画のメッセージでしょう。1)「働かないアリに意義がある」p.39、p.59、pp.64-65、pp.74-78、p.122:長谷川英祐、ヤマケイ文庫、20212)「進化精神病理学」pp.214-217、p.281:マルコ・デル・ジュディーチェ:福村出版、20233)「標準精神医学 第8版」p.306、p.335:医学書院、20214)「進化精神医学」pp.109-112 :アンソニー・スティーヴンズ、世論時報社、2011<< 前のページへ■関連記事万引き家族(前編)【親が万引きするなら子供もするの?(犯罪心理)】Part 3本「ギネスブック」【2位じゃダメなんでしょうか?(「天才ビジネス」のからくり)】Part 3

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転倒患者の精査義務【医療訴訟の争点】第3回

症例自宅や施設、病院入院中に患者が転倒することを経験している医師は多いと思われる。転倒患者の診療の適否が争われた松江地裁令和4年9月5日判決を紹介する。転倒事故の責任も争点となったが、本コラムでは転倒患者の診療の適否に争点を絞ることとする。<登場人物>患者91歳(転倒時)・女性施設入所前より腰部脊柱管狭窄症、慢性腎不全、心房細動(ワルファリン服用中)、糖尿病、両膝関節症および高血圧症などの既往あり。被告病院に併設する介護老人保健施設に入居していたところ、居室のベッドの近くで転倒しているところを発見された。原告患者の子被告総合病院(地域医療支援病院)事案の概要は以下の通りである。平成30年10月9日   被告病院に併設する介護老人保健施設に入居。11月25日午前1時頃  居室内のベッド付近で転倒しており、床およびシーツに血液が付着していた。被告病院の当直医(呼吸器外科医)が連絡を受け、診察。この時、患者の右側頭部に挫傷と血腫を認めたが、縫合を要するほどの裂傷ではなく、意識レベルの低下および四肢の動きに左右差も見られなかった。当直医は、ガーゼによる保護と患部のクーリング処置を行った上で、施設内での経過観察とした。午前1時30分頃本件患者がベッドに戻る。午前3時30分~午前4時30分頃居室内の本件患者から、30分程度の間隔でナースコールまたはセンサーコールがあった。午前6時20分頃患者が開眼しているものの意識消失し、呼名反応がないことを当直医が確認。被告病院の救急外来に搬送され、外傷性くも膜下出血、硬膜外血腫の疑いと診断。午前7時20分頃二次救急病院に救急搬送。11月26日   急性硬膜下血腫で死亡実際の裁判結果裁判所は、以下の各点を指摘した上で、当直医には「CT検査を行い、仮に直ちに治療すべき所見が見当たらなかったとしても経過観察は病院に入院させて行うべき注意義務があった」として、これを行わなかったことについて注意義務違反があるとした。<判決が指摘したポイント>急性硬膜下血腫は、意識レベルの厳重な観察とCT検査が重要であり、軽症頭部外傷であってもリスクファクターが存在する場合にはCT検査と入院の適応を考慮するとされていること高齢、中高年の転倒外傷、ワルファリンなどの抗血栓薬の内服はいずれもリスクファクターであること抗凝固療法を受けている患者が比較的軽微な外傷を負った際の頭蓋内出血のリスクは、抗凝固療法を受けていない中等度リスク群とみなされる患者(局所神経症状または高リスクの受傷機転など)と同等であり、初期評価で神経脱落所見がなく、外表上に外傷痕を認めなくても頭蓋内血腫を形成することがあることから、最低限、頭部CT検査を行うべきであるとされていること抗凝固療法中の高齢者における硬膜下血腫は、軽微な頭部外傷や症状の少ない頭部外傷でも進行し得ること抗凝固療法に関係した外傷性頭蓋内出血などの死亡率は高率であるとされていることなお、医師側は、本件患者の入居している施設が医師や看護師が配置されている介護老人保健施設であるため、入院した上での経過観察が行われていたことと異ならない旨を主張した。しかし、裁判所は、利用者に診療や入院が必要な場合には、協力医療機関である被告病院に引き継ぐこととされていたこと、夜間は交代で仮眠を取るため医療体制が手薄となることなどを指摘し、「本件施設での経過観察が病院に入院した上で医師や看護職員によって行われる経過観察と異ならないとは到底いえない」と判断した。注意ポイント解説本件では、患者の転倒状況を確認した施設の看護師が患者に状況を確認したところ、電気を消そうと思ってこけた、頭を打ったがどこに頭を打ったかはわからない旨を回答し、意識状態に変化はなかったという事情がある。そして、診察に当たった当直医は「患者の様子にいつもと違う点がない」「意識レベルの低下がない」「四肢の動きに左右差はない」「創部も縫合を要するものではない」ことを確認している。加えて、当直医は呼吸器外科医であったことや、(裁判所は排斥しているものの)本件患者が看護師の配置された介護老人保健施設に入居していたことからすると、当直医に酷な判断である印象は否めない。しかしながら、転倒発見時に床やシーツに血液が付着していることが確認されていたこと(それなりに強く頭を打っている可能性があること)、患者が高齢でワルファリンを服用しており、急性硬膜下血腫のリスクが高かったこと、初期評価で神経脱落所見がなく、外表上に外傷痕を認めなくても頭蓋内血腫を形成する可能性があることから、精査の必要性が否定できるものではなかった。加えて、抗凝固療法中の頭部外傷の致死率は高く、精査の必要性がより一層高いと言えること、頭部CT検査を行うことが困難な事情がないことが考慮され、上記の判決結果となった。転倒で頭部を打撲した患者においては、遅発的に症状・所見が生じてくる可能性があることから、頭部CT検査などの精査の必要性を判断する必要がある。医療者の視点超高齢化が急速に進むに伴い、転倒患者の対応をする機会が増えていると予想されます。医療者がどれだけ患者の転倒予防策を図っても、転倒を100%予防することは不可能ですので、転倒時の対応が重要となります。転倒時の診療体制は施設、病院によって大きく異なります。医師が必ず診察する、頭部受傷時は頭部CT検査まで全例撮影する、という医療機関もあれば、看護師の診察のみで済ませてしまう医療機関もあります。夜間のマンパワーが不足していたり、多忙な勤務体制となっていたりすると、つい転倒時の対応が疎かになってしまいます。転倒時の対応については、医療機関内のどの医療者が対応してもトラブルが起こらないような検査/治療体制の構築が重要です。Take home message転倒で頭部打撲をした患者は、初期診察時に特段の所見が認められなくとも、頭蓋内出血のリスクファクターが複数あれば、速やかに頭部CT検査で精査する必要がある。転倒患者に対する対応の流れを医療機関全体で確認することが重要である。キーワード転倒・転落看護職員の人員配置基準からも明らかなように、一人の看護師が複数名の患者の看護にあたるので、看護師が常に特定の患者に付きっ切りでその状態をチェックし続けることは不可能である。このため、転倒・転落事故に関する裁判では、看護師の人員配置基準や患者の転倒リスクを踏まえ、事故の発生を予見することが困難であったかや、発生を防ぐことが不可能であったかが争点となることが多い。しかしながら、裁判所は、事故が生じたという結果を重視するがあまり、あたかも医療機関側に不可能を強いるがごとく、予見可能性や防止義務を認めて事故の発生についても責任を認める判断をすることが珍しくない。むしろ、よく見舞いに来られる患者の家族のほうが、医療側の対応に限界があることを理解されている印象すらある。転倒・転落事故はどんなに注意をしていても不可避的に生じてしまうが、事故が発生した場合に、患者・家族との紛争化することを防ぐためにも、万一、紛争化したとしても重大な責任問題とならないようにするためにも、患者・家族の納得が得られる処置、重大な結果が生じることを回避するための処置がされることが望まれる。

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ADHDや境界性パーソナリティ障害に対するシンバイオティクスの有効性〜basket試験

 注意欠如多動症(ADHD)およびまたは境界性パーソナリティ障害(BPD)の患者では、易怒性により予後が悪化し、死亡率上昇を来す可能性がある。しかし、その治療選択肢は、不十分である。近年、プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたシンバイオティクスは、医療のさまざまな領域で注目されている。スペイン・Hospital Universitari Vall dHebronのGara Arteaga-Henriquez氏らは、ADHDまたはBPD患者の易怒性レベルに対するシンバイオティスクの有効性を評価するため、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。Brain, Behavior, and Immunity誌2024年8月号の報告。 本試験は、2019年2月〜2020年10月、ハンガリー、スペイン、ドイツの臨床センター3施設で実施した。対象は、ADHDおよびまたはBPDと診断され、易怒性レベルの高い18〜65歳の患者。易怒性レベルが高い患者の定義は、Affectivity Reactivity Index(ARI-S)5以上かつ臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコア4以上とした。対象患者は、シンバイオティクス群とプラセボ群にランダムに割り付けられ、10週間連続で毎日投与を行った。主要アウトカムは、治療終了時の治療反応とした。治療反応の定義は、ベースライン時と比較し10週目のARI-Sスコア30%以上減少かつ臨床全般印象度-改善度(CGI-I)総スコアが3未満(very muchまたはmuch)とした。両群間の副次的アウトカムの治療差および安全性も評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者231例中180例がランダム化され(シンバイオティクス群:90例、プラセボ群:90例)、ITT分析に含めた。・分析対象患者のうち、女性は117例(65%)、平均年齢は38歳、ADHD診断患者は113例(63%)、BPD診断患者は44例(24%)、ADHDとBPDの両方の診断患者は23例(13%)であった。・シンバイオティクスの忍容性は良好であった。・シンバイオティクス群における10週目の治療反応率は、プラセボ群と比較し、有意に高かった(OR:0.2、95%信頼区間[CI]:0.1〜0.7、p=0.01)。・シンバイオティクス(併用)療法は、ADHDおよびまたはBPDの成人患者において、臨床的に意味のある易怒性の改善と関連している可能性が示唆された。・シンバイオティクスは、プラセボと比較し、さまざまな副次的アウトカムのマネジメントにおいて優れていた。【感情調節障害】−3.6、95%CI:−6.8〜−0.3、p=0.03【感情症状】−0.6、95%CI:−1.2〜−0.05、p=0.03【不注意】−1.8、95%CI:−3.2〜−0.4、p=0.01【機能】−2.7、95%CI:−5.2〜−0.2、p=0.03【知覚ストレスレベル】−0.6、95%CI:−1.2〜−0.05、p=0.03・シンバイオティクス群では、ベースライン時のRANKLタンパク質レベルが高い場合、治療反応率の低下が認められた(OR:0.1、95%CI:−4.3〜−0.3、p=0.02)。・プラセボ群では、ベースライン時のIL-17Aレベルが高い場合、とくに感情調節障害の改善度が有意に上昇しており(p=0.04)、新規標的の薬物療法介入の可能性が示唆された。 著者らは「シンバイオティクスによる治療は、成人のADHDやBPD患者の易怒性改善に有効である可能性が示唆された。これらの結果を確認するためにも、より大規模なプロスペクティブ研究が求められる」としている。

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高K血症によるRA系阻害薬の中止率が低い糖尿病治療薬は?

 高血圧治療中の2型糖尿病患者が高カリウム血症になった場合、レニン-アンジオテンシン系阻害薬(RA系阻害薬)を降圧薬として服用していたら、その使用を控えざるを得ない。最近の報告によれば、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は尿中カリウム(K)排泄を増加させ、高K血症のリスクを軽減させる可能性があることが示唆されている。今回、中国・北京大学のTao Huang氏らは2型糖尿病患者の治療において、GLP-1RAは高K血症の発生率が低く、DPP-4阻害薬と比較してRA系阻害薬が継続できることを示唆した。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年8月12日号掲載の報告。 本研究はGLP-1RAとDPP-4阻害薬の新規処方患者における高K血症の発生率ならびにRA系阻害薬の継続率を比較するため、2008年1月1日~2021年12月31日の期間にGLP-1RAまたはDPP-4阻害薬による治療を開始したスウェーデン・ストックホルム地域の2型糖尿病の成人を対象に行ったコホート研究。解析期間は2023年10月1日~2024年4月29日。主要評価項目は、高K血症全体(K濃度>5.0mEq/L)および中等度~重度の高K血症(K濃度>5.5mEq/L)を発症する時間と、ベースラインでRA系阻害薬を使用している患者でのRA系阻害薬の中止までの時間であった。特定された交絡因子が70を超えたため、治療の逆確率重み付け法を用いた限界構造モデルによりプロトコルごとのハザード比(HR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・ 対象者は3万3,280例で、その内訳はGLP-1RAが1万3,633例、DPP-4阻害薬が 1万9,647例、平均年齢±SDは63.7±12.6歳、男性は1万9,853例(59.7%)だった。・治療期間の中央値と四分位範囲(IQR)は3.9ヵ月(IQR:1.0~10.9)だった。・GLP-1RAはDPP-4阻害薬と比較して高K血症全体(HR:0.61、95%信頼区間[CI]:0.50~0.76)、中等度~重度の高K血症(HR:0.52、95%CI:0.28~0.84)の発生率の低さと関連していた。・RA系阻害薬を使用していた2万1,751例のうち、1,381例がRA系阻害薬を中止した。・GLP-1RAはDPP-4阻害薬と比較して、RA系阻害薬の中止率の低さと関連していた(HR:0.89、95%CI:0.82~0.97)。・本結果は、ITT解析および年齢、性別、心血管合併症、ベースライン時点の腎機能の層に渡って一貫していた。 研究者らは「糖尿病治療としてGLP-1RAを使用すれば、高血圧のガイドラインで推奨されている降圧薬をより広く使用できるかもしれない」としている。

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重篤な薬疹を起こしやすい経口抗菌薬は?/JAMA

 一般的に処方される経口抗菌薬の中には、マクロライド系薬と比較して救急外来受診または入院に至る重篤な皮膚有害反応(cADR)のリスクが高い薬剤があり、とくにスルホンアミド系とセファロスポリン系で最も高いことが、カナダ・トロント大学のErika Y. Lee氏らによるコホート内症例対照研究の結果で示された。重篤なcADRは、皮膚や内臓に生じる生命を脅かす可能性のある薬物過敏症反応である。抗菌薬はこれらの原因として知られているが、抗菌薬のクラス間でリスクを比較した研究はこれまでなかった。結果を踏まえて著者は、「処方者は、臨床的に適切な場合はリスクの低い抗菌薬を優先して使用すべきである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年8月8日号掲載の報告。経口抗菌薬のクラスと重篤なcADRの関連性について解析 研究グループは、2002年4月1日~2022年3月31日に、カナダ・オンタリオ州の行政保健データベースを用いて、コホート内症例対照研究を実施した。データソースは、65歳以上のオンタリオ州住民に処方された外来処方薬のデータを含むOntario Drug Benefit database、救急外来受診の詳細情報を含むCanadian Institute for Health Information(CIHI)National Ambulatory Care Reporting System、入院患者の診断と治療のデータを含むCIHI Discharge Abstract Database、オンタリオ州健康保険(Ontario Health Insurance Plan)データベースである。ICES(旧名称:Institute for Clinical Evaluative Sciences)でこれらのデータを個人レベルで連携し、分析した。 対象は、少なくとも1回経口抗菌薬を処方された66歳以上の患者で、このうち、処方後60日以内に重篤なcADRのため救急外来を受診または入院した患者を症例群、これらのイベントがなく各症例と年齢と性別をマッチさせた患者(症例1例当たり最大4例)を対照群とした。 主要解析では、条件付きロジスティック回帰分析を用い、マクロライド系抗菌薬を参照群として、抗菌薬のクラスと重篤なcADRとの関連を評価した。スルホンアミド系とセファロスポリン系で重篤なcADRのリスク大 20年の研究期間において、症例群2万1,758例、対照群8万7,025例を特定した(両群とも年齢中央値75歳、女性64.1%)。 多変量調整後、スルホンアミド系抗菌薬が重篤なcADRと最も強く関連しており、マクロライド系抗菌薬に対する補正後オッズ比(aOR)は2.9(95%信頼区間[CI]:2.7~3.1)であった。次いで、セファロスポリン系(2.6、2.5~2.8)、その他の抗菌薬(2.3、2.2~2.5)、ニトロフラントイン系(2.2、2.1~2.4)、ペニシリン系(1.4、1.3~1.5)、フルオロキノロン系(1.3、1.2~1.4)の順であった。 重篤なcADRの粗発現頻度が最も高かったのはセファロスポリン系(処方1,000件当たり4.92、95%CI:4.86~4.99)で、次いでスルホンアミド系(3.22、3.15~3.28)であった。 症例群2万1,758例のうち重篤なcADRで入院した患者は2,852例で、入院期間中央値は6日(四分位範囲[IQR]:3~13)、集中治療室への入室を要した患者は273例(9.6%)で、150例(5.3%)が病院で死亡した。 なお、著者は研究の限界として、ICD-10コードを使用してcADRを特定したが重篤なcADR専用のコードはなく本研究固有の定義を作成したこと、cADRを引き起こす可能性のある非ステロイド性抗炎症薬などの市販薬の使用については調査できなかったことなどを挙げている。

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スピーチ・ニューロプロテーゼ、ALS患者の発話を実現/NEJM

 米国・カリフォルニア大学デービス校のNicholas S. Card氏らは、重度の構音障害を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者1例において、皮質内に埋め込んだ電極を介して発話の神経活動を文字に変換し出力するスピーチ・ニューロプロテーゼ(speech neuroprosthesis)が、短時間のトレーニングで会話に適したレベルの性能に達したことを報告した。ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)は、発話に関連する皮質活動を文字に変換しコンピュータの画面上に表示することにより、麻痺を有する人々のコミュニケーションを可能にする。BCIによるコミュニケーションは、これまで広範なトレーニングが必要で精度も限られていた。NEJM誌2024年8月15日号掲載の報告。発症後5年の45歳ALS患者に、微小電極4個を左中心前回に埋め込み 研究グループは、ALS発症から5年、四肢不全麻痺と重度の運動障害性構音障害を有する45歳の男性(ALS機能評価スケール改訂版スコア[範囲:0~48、高スコアほど機能は良好]は23)の左中心前回(発話に関連する運動活動を調整する重要な大脳皮質領域)に、4個の微小電極アレイを外科的に埋め込み、256個の皮質電極を介して神経活動を記録した。 微小電極アレイは、1個の大きさが3.2mm×3.2mmで、64個の電極が8×8のグリッド状に配置されており、専用器を用いて大脳皮質に1.5mm埋設された。 2023年7月に手術(埋め込み)が行われ、25日後から32週間にわたり84回のセッション(1日1セッション)でデータを収集した。 各セッションでは、指示された課題(患者が視覚的または音声的な合図の後に単語を言おうとする)および会話モード(患者が好きなことを言おうとする)において、患者が何かを言おうとしたときの神経活動を解読し、解読した単語をコンピュータの画面上に表示した後、テキスト読み上げソフトウェアを用いてALS発症前の患者の声に似せた音声で発声された。最終的に97.5%の精度を達成 使用初日(手術後25日)において、患者が50単語から構成された文の発話を試みた結果、スピーチ・ニューロプロテーゼは99.6%の精度を達成した。 2回目のセッションでは、スピーチ・ニューロプロテーゼの語彙を50単語からほぼすべての英語を網羅する12万5,000単語以上に増やし、1.4時間のシステムトレーニングを行ったところ、患者の発話を90.2%の精度で解読した。 さらにトレーニングデータを追加した結果、スピーチ・ニューロプロテーゼは埋め込み後8.4ヵ月にわたって97.5%の精度を維持した。この間に患者は合計248時間以上、1分当たり約32単語の速度で会話をした。

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ビーガン食で若返り?

 完全菜食主義(ビーガン)の食事スタイルが、老化現象を遅延させる可能性のあることが報告された。一卵性双生児を対象とした研究の結果であり、詳細は「BMC Medicine」に7月29日掲載された。双子のきょうだいのうち8週間にわたりビーガン食を摂取した群は、肉や卵、乳製品を含む雑食(普通食)を摂取した群よりも、生物学的な老化現象が抑制される傾向が認められたという。 この研究は、米国の加齢関連検査サービス企業であるTruDiagnostic社のVarun Dwaraka氏らが行った。老化の程度を表す生物学的年齢の推定には、DNAのメチル化やテロメア長などの指標が用いられた。Dwaraka氏は、「ビーガン食を摂取した研究参加者では、“エピジェネティック老化時計”とも呼ばれることのある、生物学的年齢の推測値の低下が観察された。しかし普通食を摂取した研究参加者では、このような現象が観察されなかった」と話している。 研究に参加したのは一卵性双生児の成人21組(平均年齢39.9±13歳、男性23.8%、BMIはビーガン食群が26.3±5、普通食群が26.2±5)。介入期間は8週間で、前半の4週間は調理済みの食事を支給するとともに栄養教育を実施。後半の4週間は、研究参加者が栄養教育に基づき自身の判断で食品を摂取し、その間、予告なしに24時間思い出し法による食事調査を実施して、各条件の食事スタイルが遵守されていることを確認した。 介入終了時点で、ビーガン食群では普通食群よりも細胞レベルの老化が少なく、また、心臓や肝臓、内分泌代謝、炎症などの検査値を基に算出した生物学的年齢の若返りが観察された。ビーガン食群の介入中の摂取エネルギー量は普通食群に比べて1日当たり平均約200kcal少なく、介入期間中の体重減少幅が平均2kg大きかった。この差は主として、介入前半の調理済みの食事を支給している期間に生じていた。 著者らは、「われわれの研究結果は、短期間のビーガン食がエピジェネティックな加齢による変化の抑制と摂取エネルギーの抑制につながることを示唆している」と総括している。ただし、「ビーガン食による加齢変化の抑制が、減量によってもたらされたものであるかどうかは不明」とのことだ。また、ビーガン食には微量栄養素が不足するリスクもあることから、「サプリメントを併用しないビーガン食の長期的な影響の検証が必要」としている。そのほかにも、「普通食をビーガン食に変更して、適切な栄養素摂取を維持した場合のエピジェネティックな変化、および全身的な健康状態に及ぼす長期的影響の検討も重要」と、今後の研究の方向性を述べている。

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自宅でできる大腸がん検査で大腸がんの死亡リスクが低減

 自宅で採取した便検体を用いる免疫学的便潜血検査(fecal immunochemical test;FIT)により、大腸がんによる死亡リスクを33%低減できることが、新たな研究で示された。FITは、大腸がんまたは前がん病変の可能性がある大腸ポリープの兆候である便中の血液を抗体で検出する検査法だ。論文の筆頭著者である、米オハイオ州立大学医学部教授のChyke Doubeni氏は、平均的なリスクの人をスクリーニングするためには、年に1回のFITによる大腸がん検診が、「10年ごとの大腸内視鏡検査と同程度に機能する」と述べている。この研究の詳細は、「JAMA Network Open」に7月19日掲載された。 Doubeni氏は、「本研究結果を受け、患者とその臨床医は、自信を持ってこの非侵襲的な検査を大腸がん検診に使用できるようになるだろう。また、大腸がん検診率が非常に低い、医療サービスが十分に行き届いていない地域社会において、FITを効果的に用いる方法を見つけることにもつながるはずだ」と同大学のニュースリリースの中で述べている。 Doubeni氏は、「大腸がん検診のゴールドスタンダードは大腸内視鏡検査だが、この検査に抵抗を覚える人もいる」と話す。大腸内視鏡検査では、患者は鎮静剤を投与され、カメラ付きの細いチューブを直腸に挿入して腸の内壁を観察する。同氏は、「大腸がんは、検診を受けることで、最も初期の前がん病変を発見できることが何十年も前から知られている。しかし、45~75歳の米国人のうち大腸がん検診を受診しているのはわずか60%程度に過ぎない」と話す。一方、FITは、自宅というプライバシーの保たれた場所で便を採取できる。採取した便検体は、検査機関に送って分析してもらう。 今回の研究では、2002年から2017年の間に自宅でのFITによる大腸がん検診を受けた米カイザー・パーマネンテの患者1万711人(60〜69歳32.9%、女性47.8%)のデータを用いて、FITによる大腸がん検診と大腸がんによる死亡リスクとの関連を評価した。1万711人のうちの1,103人は大腸がん症例、9,608人は症例と年齢、性別、健康保険加入期間、居住地域を一致させた対照だった。 その結果、FITによる大腸がん検診を1回以上受けることは、大腸がんによる死亡リスクの33%の低下(調整オッズ比0.67、95%信頼区間0.59〜0.76)、左側の大腸がんによる死亡リスクの42%の低下(同0.58、0.48〜0.71)と関連することが明らかになった。FITと右側の大腸がんによる死亡リスクとの間に関連は認められなかった。なお、大腸がん啓発団体であるFight Colorectal Cancerによれば、左側の大腸がんの発生頻度は右側の大腸がんよりもはるかに高いという。 さらに、FITによる大腸がん検診は、ほとんどの人種/民族において大腸がんによる死亡リスクの有意な低下と関連し、リスクは、アジア系では63%、黒人では42%、白人では30%低下する可能性が示された。ヒスパニック系でも死亡リスクは22%低下していたが、統計学的に有意ではなかった。 論文の共著者である、米カイザー・パーマネンテ北カリフォルニアのDouglas Corley氏は、「過去数年間にFITによる大腸がん検診を1回以上受けた人を対象にした本研究により、FITが効果的なツールであることが確認された。長い目で見ると、FITを推奨通りに毎年受けることで、大腸がんによる死亡リスクは本研究で示された数字以上に低下することが期待される」と話す。 一方、Doubeni氏は、FITで異常な結果が判明した人は遅滞なくフォローアップの大腸内視鏡検査を受けることが重要であると強調している。

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AIが医師による重要な脳波検査の判読をサポート

 人工知能(AI)が100年の歴史を持つ脳波(EEG)検査の潜在的な有用性を高め、この昔ながらの検査に新たな輝きを与えつつあると、米メイヨー・クリニック神経学AIプログラムのディレクターであるDavid Jones氏らが報告した。EEG検査は頭部に取り付けた十数個の電極を通して脳の活動を測定する検査で、てんかんの検査によく使われている。しかし、EEG検査で記録された波形は判読が難しいため、医師は、認知症やアルツハイマー病の初期兆候を見つけ出すために、より高額な費用がかかるMRIやCTなどの選択肢に頼ってきたという。こうした中、AIにより、人間には検出が難しいかすかなEEGの異常を検出できる可能性のあることが新たな研究で示されたのだ。詳細は、「Brain Communications」に7月31日掲載された。 今回の研究では、メイヨー・クリニックで10年にわたってEEG検査を受けた1万1,001人の患者の1万2,176件のEEGデータが使用された。Jones氏らは、機械学習とAIを使用して、複雑なEEGパターンから無視すべき要素を自動的に排除してデータを簡素化し、アルツハイマー病などの認知症に特徴的な6つのパターンを抽出。これらのパターンに焦点を合わせた解析を行えるモデルを設計した。 Jones氏らは、「AIを活用したEEG検査は、医師によるアルツハイマー病やレビー小体型認知症のような認知症の判別に役立つ日が来るかもしれない」と述べている。同氏は、「EEGには脳の健康状態に関する多くの医学的な情報が含まれている。認知機能に問題がある人ではEEGが遅くなり、わずかな違いが見られることは広く知られている」とニュースリリースの中で説明している。 論文の筆頭著者で、メイヨー・クリニック臨床行動神経学フェローのWentao Li氏は、「ベッドサイドでの認知機能検査や体液バイオマーカーの検査、脳画像検査といった従来の認知症の評価方法と比べると、EEGパターンを迅速に抽出するこの技術の有用性は驚くべきものだった」とニュースリリースの中で述べている。 この種のコンピューター支援による分析が、医師によるEEGの判読を後押しする可能性があると、Jones氏は言う。同氏は、「現在、医療データのパターンを定量化する一般的な方法の一つは、専門家の意見によるものだ。では、そのパターンが実際に存在しているということは、どうして分かるのか。専門家が『存在する』と判断したから、というのがその答えだ。しかし、AIと機械学習によって専門家には見えないものが見えるようになっただけでなく、専門家に見えるものを正確に数値化できるようになった」と説明する。 とはいえ、EEG検査は必ずしもMRIやPET、CTといった他のタイプの検査の代わりとなるものではないとJones氏らは言う。ただ、EEG検査はより多くの場所で受けられる検査であり、他の検査よりも費用がかからず、侵襲性も低い。例えば、EEG検査であれば脳活動をスキャンするためのX線や磁場は必要ない。Jones氏は、「専門科のクリニックやハイテクな装置には簡単にアクセスできない地域において、AIを活用したEEG検査は、脳の問題を早期の段階で発見するためのより経済的でアクセスしやすいツールとなり得る」と話す。 Jones氏は、「記憶力の問題を、それが明確になる前の段階で見つけることは極めて重要だ」と指摘。その上で、「早期段階での正確な診断は、患者に適切な見通しを与え、最善の治療を施す助けとなる。われわれが検討している方法は、髄液検査や脳グルコース代謝を調べる画像検査、記憶力検査といった現行の検査と比べて早期の記憶障害や認知症がある人を特定できる、より低コストの方法となり得る」と述べ、期待を示している。 ただし、AIを微調整してEEG分析を向上させるには、さらに数年の研究が必要になると、Jones氏は話している。

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こんな歩き方も運動療法の一方法(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者最近、体力の低下を感じてきて…年ですかね。いえいえ、年のせいなんかではありませんよ。最近、運動はどうされていますか?頑張って…歩いているつもりなんですが…だんだん歩くのが遅くなって…。なるほど。確かに、頑張って歩いていても、ダラダラ歩いているだけでは年とともに体力は低下しますからね。やっぱり。どんな運動をしたらいいですかね?お勧めは「インターバル速歩」です。インターバル速歩?そうです。ダラダラ歩くのではなくて、「はや歩き」と「ゆっくり歩き」を交互に繰り返すことです。確かに、さっさと歩くのは長く続かないので…ダラダラと長く歩いていました。どのくらいの速さで歩いたらいいですか?画 いわみせいじそうですね。全速力の6~7割程度、「ややきつい」ぐらいですかね。3分くらい少し早めに歩くと脈が上がってくると思いますよ。なるほど。どのくらいの頻度でやればいいですか。まずは、「はや歩き」を3分間、「ゆっくり歩き」を3分間、合計6分間を1セットとして、1日5セット以上、これを週4日以上行うと効果的ですよ。わかりました。頑張ってやってみます(嬉しそうな顔)ポイントインターバル速歩のやり方や到達目標(週に4日、20セット以上)を具体的に説明します。Copyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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ChatGPTに通訳をさせてみた【Dr. 中島の 新・徒然草】(543)

五百四十三の段 ChatGPTに通訳をさせてみたお盆を過ぎてようやく暑さがゆるんできました。夜は秋の虫の音がしています。もう外を歩いても熱中症の心配も不要かも。さて、私は毎日のようにChatGPTを使っています。が、ある日のこと。ふと、スマホを使ったChatGPTは、外国語の通訳も可能なんじゃないかと思いつきました。思いついたら早速試してみたくなるのが人情というもの。そこで、脳外科外来に通院しているタイ人のナタポンさん(仮名)相手に、通訳を試みました。ナタポンさんは日本に30年くらい住んでいるので、日本語での意思疎通は可能です。が、仕事中に高所から落ちて頭を打ち、以来、気の短い人になってしまいました。常に何かに腹を立てており、高次脳機能障害ということで私の外来に通院しています。ところが先日のナタポンさん。診察室に入るなり、いきなり「先生、人を殺したら何年?」とか言うのです。これを聞いた外来ナースが仰天!そもそも何を言いたいのか、さっぱり理解できないようでした。おそらく「もし人を殺したら、刑務所に何年間入ることになるのか?」という意味なのだと思います。ナタポンさんの頭の中には「気に食わない人間リスト」があって、そのうちの何人かは目の前から消えてほしいのだとか。だから「人を殺したら何年?」という短絡的思考になってしまうわけですね。私もそっち方面についてはあまり詳しくありません。なので「大体15年くらいじゃないですかねえ」とか適当に答えておきました。でも、ナタポンさんは「15年かあ……」と真剣に考えていたので、ちょっと怖かったです。さて、ナタポンさんは日本語での会話はまあまあなのですが、読み書きはまったくできません。なので、彼の持っている薬袋には、何やらタイ語らしいメモがしてあります。で、ChatGPTでの通訳に話を戻します。これをナタポンさんに試してみることにしました。私の心積もりとしては「日本語をタイ語に、タイ語を日本語にしてください」とChatGPTにあらかじめ頼んでおいて、ナタポンさんのタイ語を待つつもりでした。ところがナタポンさんには話が通じません。ChatGPTが「日本語をタイ語に、タイ語を……」と喋っている間にいきなりタイ語で「◆○△×■○!」とまくしたて始めました。相手が喋っている時は、黙って耳を傾けるという会話の基本を完全に無視。ナタポンさんらしいといえばそのとおりですけど。そういう訳で、ChatGPTに通訳をしてもらうという私の目論見は、さっぱりうまくいきませんでした。困ったもんです。ところが後で確認してみると、ChatGPTが対応している音声入力可能な言語の中にタイ語は入っていないということが判明しました。対応しているのは日本語、英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、中国語などのメジャーどころです。タイ語は入っていません。ということで、今度は「日本語を中国語に通訳してください」と言うと、これはうまくいきました。ChatGPTは私の日本語をどんどん訳して喋ってくれます。本当に正しい中国語かは不明ですが、たぶん正しいのでしょう。次に英語で試してみました。私が日本語で喋ると、これまたうまく訳してくれます。私が聴いているかぎり、正しい英語でした。こうなったらもう通訳は要らないんじゃないかと思うくらいスムーズです。今まで当院での外国人対応は、専用通訳機か人間の通訳が間に入るオンライン通訳を利用してきました。でも、ChatGPTがあればもう無敵じゃないか、と思うくらいです。あとは外国人患者さんとChatGPTをどうやってうまく繋ぐか、ですね。幸い私の外来には中国語しか話さない患者さんが通院しておられます。こういう患者さんにはChatGTPによる通訳がピッタリのはず。次に来院された時に試してみたいと思います。結果が判明したら、また報告させていただきます。最後に1句盆過ぎて 無敵の通訳 活躍す

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carcinoma(がん)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第10回

言葉の由来がん()は英語で“carcinoma”といいます。日本語ではしばしば「カルチノーマ」と呼ばれますが、英語では「カルスィノーマ」のような発音になります。“carcinoma”は上皮組織系由来のがん()を指します。肉腫や造血器腫瘍など、上皮組織系由来ではないものを含んだ広い意味での「がん」を指す英語は“cancer”です。“carcinoma”の語源はギリシャ語で「カニ」を意味する“karkinos”と、腫瘍を意味する接尾辞である“-oma”から成り立っています。古代ギリシャの医師ヒポクラテスが、がんから指のように広がる腫瘍がカニの姿に見えることから、“karkinos”という言葉を使用したとされています。なお、肉腫を表す“sarcoma”の語源も同じくギリシャ語で、肉を意味する“sarks”と接尾辞の“-oma”を組み合わせてできた単語です。がんの歴史は古く、紀元前1,500年ごろのエジプトのパピルスに、乳がんの記述が見つかっており、これが現状では最古のがんの記録です。近代になるまで「がんの正体」は明らかになっていませんでしたが、解剖学や顕微鏡の発達によって、がんは細胞の異常増殖によって発生することが明らかになり、外科手術療法の確立などにつながりました。併せて覚えよう! 周辺単語腺がんadenocarcinoma扁平上皮がんsquamous cell carcinoma転移metastasis腫瘍学oncology生検biopsyこの病気、英語で説明できますか?Carcinoma is a type of cancer that begins in the epithelial cells, which are the layers of cells that cover the surfaces of the body, line internal organs and cavities, and form glands. Carcinomas can occur in many parts of the body, including the skin, lungs, breasts, pancreas, and other organs.講師紹介

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第110回 MSDが「HPVワクチン訴訟」にコメント

HPVワクチンのキャッチアップは9月末まで子宮頸がんの原因となっているヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンについては、一時、積極的な接種勧奨が控えられていましたが、2022年より勧奨が再開されました。勧奨が一時控えられ、「空白期間」ができてしまった理由として、ワクチンの副反応に対する声がマスコミに取り上げられたことが挙げられます。産婦人科の漫画として有名な『コウノドリ』においても、マスコミの科学的根拠のないHPVワクチンに反対するキャンペーンに屈したのは日本だけである、と書かかれています。日本では毎年約1万人の女性が子宮頸がんと診断され、約3,000人が亡くなっています。HPVワクチンの接種率は激減し、後進国になってしまい、欧米の接種率と大きく差が付きました。子宮頸がんに罹患する割合も、先進国の中では高いほうで、今後ワクチン未接種の子宮頸がんの女性がさらに増えていくと予想されています。現在、HPVワクチンの定期接種の機会を逃した高校2年生から27歳の女性を対象にした無料キャッチアップ接種を実施しています。しかしながら、この施策は2025年3月末で終了します。HPVワクチンは3回接種が必要なので、無料で完遂するためには、2024年9月末までに初回接種を開始しなければいけません。MSDがコメントを発表2016年に複数の女性がHPVワクチンの接種後に体調不良を訴え、製薬会社と国を相手取って訴訟を起こしています。これに関して、HPVワクチンを販売しているMSDが、2024年8月14日にHPVワクチン訴訟に関してステートメントを出しました1)。名古屋市における調査で、HPVワクチンと接種後の体調不良については、非接種集団と有意差が付いていないことが示されています。MSDも、この部分について触れています。「HPVワクチンが世界で初めて発売された2006年よりも遥か前から、特に思春期の若い方に見られる症状として知られており、(中略)[国内の]大規模な疫学調査では、HPVワクチンの接種歴のない方においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の『多様な症状』を有する方が一定数存在した」。これは、おおむね機能性神経症状症(変換症)や機能性身体症状のことを指していると思われます。たとえば機能性身体症状は、決して思い込みやウソなどではなく、実際に起こる症状なのですが、「症状の訴えや苦痛が、確認できる組織障害の程度より大きい」というものです。身体的要因だけでなく、心理的要因も大きく影響しています。ナラティブな医療従事者が、傾聴的になりすぎることでワクチン反対の声を増幅してしまう可能性があります。もちろん、ワクチンによる症状のすべてが機能性症状とは限りません。こういったデリケートな事情も踏まえたうえで、厚労省やMSDは「接種することのメリットが接種することのデメリットを上回る」という主張を展開し続けています。コロナ禍でも問題になった「医療のリスクコミュニケーション」。うまく行政が、舵取りしてほしいところです。参考文献・参考サイト1)HPVワクチン訴訟に関するMSD株式会社のステートメント(2024年8月14日)

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加糖飲料とうつ病リスク〜前向きコホート研究

 加糖飲料とうつ病リスクの遺伝的素因との関連性は、いまだ明らかとなっていない。中国・天津医科大学のYanchun Chen氏らは、加糖飲料、人工甘味飲料、天然ジュースとうつ病との関連を調査し、これらの関連が遺伝的素因により変化するかを評価した。General Psychiatry誌2024年7月17日号の報告。 ベースライン時のうつ病でない39〜72歳の一般集団18万599人を英国バイオバンクのデータより抽出した。加糖飲料、人工甘味飲料、天然ジュースの摂取量は、2009〜12年の24時間思い出し法(24-hour dietary recall)より収集した。うつ病の多遺伝子リスクスコアを推定し、低リスク(最低三分位)、中リスク(中間三分位)、高リスク(最高三分位)に分類した。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の算出には、Cox比例ハザードモデルおよびsubstitutionモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・12年間のフォローアップ期間中にうつ病を発症した人は、4,915人であった。・加糖飲料と人工甘味飲料の摂取量が多い(1日当たり2単位超)人では、うつ病リスクの上昇が認められた。【加糖飲料】HR:1.26、95%CI:1.12〜1.43【人工甘味飲料】HR:1.40、95%CI:1.23〜1.60・天然ジュースの適度な摂取(1日当たり0〜1単位超)は、うつ病リスク低下と関連が認められた。【天然ジュース】HR:0.89、95%CI:0.83〜0.95・遺伝的素因により、これらの関連性に影響を及ぼさなかった(p interaction>0.05)。・substitution-モデルでは、1日当たり1単位の加糖飲料または人工甘味飲料を天然ジュースに変更することにより、うつ病リスクのHRはそれぞれ0.94(95%CI:0.89〜0.99)、0.89(95%CI:0.85〜0.94)へと低下することが示唆された。 著者らは「加糖飲料や人工甘味飲料の摂取量が多いとうつ病リスクは上昇し、天然ジュースの適度な摂取は、うつ病リスク低下と関連していた。理論的には、加糖飲料や人工甘味飲料を天然ジュースに変更することで、うつ病リスクが軽減されると考えられる」としている。

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日本発の論文数は横ばい、博士課程への進学者は微増/文科省

 文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の科学技術予測・政策基盤調査研究センターが毎年発行している『科学技術指標2024』が公開された。 この指標は、わが国の科学技術活動を客観的・定量的データに基づき、体系的に把握するための基礎資料であり、科学技術活動を「研究開発費」、「研究開発人材」、「高等教育と科学技術人材」、「研究開発のアウトプット」、「科学技術とイノベーション」の5つのカテゴリーに分類、約160の指標で状況を表している。 2024年版の主要な指標では、産学官を合わせた研究開発費、研究者数は主要国(日米独仏英中韓の7ヵ国)中第3位、論文数(分数カウント法)は世界第5位だった。注目度の高い論文を見るとTOP10%・TOP1%補正論文数で第13位・第12位であり、いずれについても昨年と同順位だった。また、博士課程入学者数は長期的に減少していたが、2023年度に対前年度比4.4%増加した。特許数は6.7万件で世界1位 主要指標におけるわが国の動向は次のとおり。・研究開発費:3位(前年3位)19.1兆円(参考:1位 米国、2位 中国)・研究者数:3位(前年3位)70.6万人(参考:1位 中国、2位 米国)・論文数(分数カウント):5位(前年5位)7.2万件(参考:1位 中国、2位 米国、3位 インド、4位 ドイツ)・Top10%補正論文数(分数カウント):13位(前年13位)3.7千件(参考:1位 中国、2位 米国、3位 英国、4位 インド、5位 ドイツ、6位 イタリア、7位 オーストラリア、8位 カナダ、9位 韓国、10位 フランス、11位 スペイン、12位 イラン)・Top1%補正論文数(分数カウント):12位(前年12位)3.1百件(参考:1位 中国、2位 米国、3位 英国、4位 ドイツ、5位 イタリア、6位 インド、7位 オーストラリア、8位 カナダ、9位 フランス、10位 韓国、11位 スペイン)・特許(パテントファミリー)数:1位(前年1位)6.7万件(参考:2位 米国、3位 中国)・居住国以外への商標出願数(クラス数):6位(前年6位)12.0万件(参考:1位 米国、2位 中国、3位 ドイツ、4位 英国、5位 フランス)特許の出願数は世界1位だがシェアは低下傾向 「2024年版の全体傾向」によると、企業・大学部門の研究開発費は、米国が主要国中1番の規模であり、両部門ともに2010年代に入って伸びが大きくなった。わが国の政府負担分は同時期に44%増加し、企業部門全体における重みは小さいが、研究開発費の増加には政府部門の寄与もある。大学部門では、2000年代に入ってから、ほぼ横ばいに推移しており、この間に中国、ドイツ、英国がわが国を上回っていた。 「高等教育と科学技術人材の状況」では、わが国の大学院への入学者数が伸び悩んでいたが、修士課程入学者数は2020年度を境に増加。大学院修士課程の入学者数は、2023年度は対前年度比1.4%増の7.7万人だった。そのうち社会人の割合は9.3%。大学院博士課程の入学者数は2003年度をピークに長期的には減少傾向にあったが、2023年度は増加し1.5万人、対前年度比4.4%増(うち社会人は0.6万人で、対前年度比は3.9%)。大学院博士課程の男女別入学者数は、ピーク時と比較すると女性は4%減であるのに対して、男性は24%減で、男女ともに「自然科学」系の方が「人文社会科学・その他」系より多かった。博士号取得者数は、2006年度をピークに減少傾向、2010年代半ばからほぼ横ばいに推移していたが、近年微増している。2021年度の日本の博士号取得者数は1万5,767人、主要専攻別では「保健」が最も多く6,796人と全体の43.1%を占めた。 「研究開発のアウトプットの状況」では、論文数(分数カウント法)は世界第5位、注目度の高い論文をみるとTop10%・Top1%補正論文数で第13位・第12位であり、中国はすべての論文種別で世界第1位だった。国際共著論文割合は上昇基調であるが、2020年頃から、すべての分野で低下し、主要国の中でも中国の低下が大きい。論文の各分野の2022年時点の割合は、環境・地球科学は33.1%、物理学では32.9%であり、他分野に比べ国際共著論文割合が高かった。臨床医学は22.9%であり、国際共著論文割合が1番低かった。 「パテントファミリー(2ヵ国以上への特許出願)数」では、世界第1位を保っているが、世界シェアは2000年代半ばから低下傾向。中国は2017~19年で世界第3位であり、着実にその数を増やしている。

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