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GOMER、暴れる患者、対応困難な患者【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第1回

GOMER、暴れる患者、対応困難な患者Point陰性感情をもたないようにして、コミュニケーション能力(傾聴と共感)を磨け。警察を呼ぶタイミングを知っておこう:暴力、器物損壊はただちに。それ以外は2段階方式で。身体拘束と薬物拘束は段階的に、人権意識をもって対処する。器質的疾患を見逃さないようにすべし。症例56歳男性。研修医の診察中に急に激高して暴れ始めた。目はどこかあちらの世界に飛んでいるようだ。家で奇声を上げたり、台所で排尿したりして、家人が心配で連れてきた。バイタルサインは血圧160/100mmHg、脈拍110回/分、呼吸数30回/分、体温38.2℃、SpO2 98%であった。落ち着くようにいっても聞く耳をもたない。本人は帰宅するというが、そのまま帰していいのだろうか。おさえておきたい基本のアプローチ対応困難な患者は、患者だけの問題ではないGOMER(Get Out of My ER)とは、「俺の救急室からとっとと出ていけ」という特定の患者を嫌う医療者の勝手な造語であり、使ってはいけない隠語だ。患者と馬が合わないのを患者のせいにするなんて医者の風上にも置けない。多くの人が苦手とする患者であってもうまく対応できてこそプロなのだ。difficult patient(良好な医師-患者関係を築けない患者)には、患者要因、医療者要因、環境要因などが挙げられる(図1)。図1 difficult patientが誕生するわけ画像を拡大する勝手に患者が悪いなんて決めつけてはいけない。以前医療過誤にあった家族をもつ患者であれば、医療者が誰も話を聞いてくれなかったつらい過去をもっており、医療不信になるのも当然だ。そんな患者に寄り添うには、事情がわからなくても「1に親切、2に親切、3に親切」に接するに限る。つらい思いでやっと救急室にたどり着いたのに、待ち時間は長く、暇そうな医療者が大声で笑い、コーヒーのいい匂いが漏れ出てきて、愛想のない受付や看護師が対応し、最後にコミュニケーションスキルが皆無の医者が出てきて、あなたの期待に全然応えなかったら…ハイ、あなたでも怒っている患者になりませんか?医者は偏見を捨てて、患者の訴えに傾聴し(医学的に間違っていてもすぐに否定してはいけない)、決めつけずに、愛情をもった態度で、患者中心のコミュニケーションを進め、共感を示すべし1)。どんな状況においても医者には大逆転できるhalo effectがあるんだから、「私はあなたの味方ですよ」オーラを全開に放って対応しよう。自分の感情をコントロールせよ医者が陰性感情をもつ場合は、自分の力が及ばない無力感こそが最大の敵である(表1)。表1 こんな患者に陰性感情をもってはダメ:誤診の宝庫画像を拡大する研修医にわけのわからない質問を受けると、イラッと来てしまうが、それは答えがわからないいらつきなんだよね。対処法がわからない、きちんと情報が取れない、それは何も患者が悪いわけではないと自覚しよう。自分の感情をコントロールし、偏見を捨てて、患者に変なレッテルを張らないようにしよう。陰性感情をもつと、診療が雑になり、誤診しやすくなってしまう。危ない患者、暴れる患者を予想する医療者の第六感を鍛えるのは大事。どんな患者が暴れ始めるのか早めに察知しよう(表2)。表2 危険を察知する画像を拡大する初期研修医2年目も終わりごろになれば、どの科のどの医者が危ないか第六感でわかってくる、その勘と相通じるとか通じないとか…。危険を察知したら、なるべく団体行動をとること。人を集めて、数がいることで抑止力になり得る。警備員を救急待合室に配置しておこう。多勢に無勢なのに暴れるなら、その患者は本物のせん妄なのかもしれない。治療を要する患者を見逃すな病気のせいでせん妄になり暴れている場合は、何が何でも患者の安全を優先して治療しないといけない。自傷他害の恐れがなく、判断能力(decision-making capacity)がしっかりしている場合は、患者の同意なく医療行為はできない。反対にどれか1つでもかけていたら、患者の安全のために抑制し治療が必要になる(図2)。decision-making capacityに関しては4つの要素を確認する(表3)2)。その際にはきちんとMMSEなど記録をしっかり残すこと。図2 治療を優先すべきとき画像を拡大する表3 decision-making capacityの4つの要素画像を拡大するせん妄患者の特徴は、急性発症で意識レベルが変動し、注意力散漫または意識障害を呈するものである。まるでキツネにつままれたように、まともになったり、変になったりする。バイタルサイン異常、とくに発熱に気をつける。新しい記憶の障害を伴う見当識障害を認めることが多い。古い記憶は保たれるため、名前や住所が言えても意識は大丈夫と思ってはいけない。暴れる患者の鑑別診断機能的なものは精神疾患や人格障害によるものが多い。治療可能な器質的疾患は見逃さないようにしたい。鑑別診断「FIND ME」と覚えよう(表4)。慢性硬膜下血腫の半数は精神症状で来院する。感染症や薬剤によるせん妄も多い。低血糖も3割は好戦的になるのだ3)。子供だって、お腹がすくと怒りっぽくなるよねぇ。表4 暴れる患者の鑑別診断 FIND ME画像を拡大する落ちてはいけない・落ちたくないPitfalls「そんな大声出すなら警察を呼びますよ」…大声をあげるだけでは警察は動かない警察を呼ぶのに許可はいらない。必要なときは、遠慮せずさっさと警察に助けを求めよう。ぎりぎりまで我慢すると、暴力はエスカレートしてくるので、早い段階で警察を呼ぶほうがいい。警察は誰か怪我をしたとき(暴行罪:刑法第208条、傷害罪:刑法第204条)や物が壊れた時(器物損壊罪:罪刑法第261 条)は素早く動いてくれる。敵もさるもの、大声くらいでは警察が来ないのを知っている。この程度で、「警察呼びますよ」なんていうと、「おりゃぁ、じゃ、呼んでみぃ、コルアァ」と火に油を注ぐ結果になっちゃうかもしれない。大声を出したくらいでは警察は動かない。公然わいせつ罪:刑法第174条、脅迫罪:刑法第222条、強要罪:刑法第223条「土下座しろ~」、名誉棄損罪:刑法第230条、侮辱罪:刑法第231条、威力業務妨害罪:刑法第234条「大声を出す」、恐喝罪:刑法第249条「お金は払わないぞ」、つきまとい行為:ストーカー規制法など罪状は数あれど、この程度では警察はすぐ来てくれない。これくらい病院自身で対応しなさいということ。そんな場合は、2段階警察呼び出し法を知っておこう(図3)。2回通告しても診療の邪魔をしてきて、ほかの患者の診療に支障が出る場合は、証拠を残しておけば、警察に助けを求められる。図3 2段階警察呼び出し法画像を拡大するPoint暴言・暴力、迷惑行為には早々に屈して、警察を呼ぼう身体拘束と薬物拘束を同時に行いましょう…はダメ!身体拘束や薬物拘束は、重大な人権侵害になる可能性があると、常に気を配ろう。自傷他害の恐れがある場合や見当識障害がありdecision-making capacityがない場合は、患者の安全のために拘束が許される。身体抑制に至った経緯と所見をしっかりカルテ記載すること。身体抑制で事足りる場合は、薬物抑制はしてはならない。したがって、身体抑制では患者の安全が保てないと判断した場合は、その理由と時間をカルテ記載し、段階的に薬物抑制が必要だった旨をカルテ記載すべし。Point身体抑制と薬物抑制は段階的に行い、人権意識をもって対処し、記録をしっかりすべしワンポイントレッスン言葉による鎮静言葉による鎮静は基本の基本。言葉による鎮静の10ヵ条を示す(表5)。表5 言葉による鎮静の10ヵ条画像を拡大する多くの場合、患者が自分の思いが医療者に通じないと思って騒いでいることが多い。言葉の鎮静は、相手の意見を十分聞くことが秘訣だ。平昌五輪のカーリング女子のように「そだねー」を連発し、相手の意見を承認するのがいい。医療者をなるべく集めておき、患者と医療者は2人きりにならないようにする。部屋のドアは開放し、出口側に自分を位置し、いざというときはさっと逃げられるようにする。身体抑制・薬物抑制身体抑制Tips、薬剤抑制Tipsを表6に示す。表6 身体抑制・薬物抑制Tips画像を拡大する必ず同時に行わないで、段階的に行い時間を記載する。身体抑制のみでは患者の安全が保てない場合に、薬物抑制を行ったというカルテ記載を必ず残すべし。薬物抑制はなるべく筋注がいい。静注だと点滴ライン確保時に、患者が暴れて針刺し事故になる危険がある。またジアゼパムの筋注は、残り少ない理性が吹っ飛んで余計暴れるので、しないほうがいい。勉強するための推奨文献New A, et al. Psy Clin North Am. 2017;40:397-410.Moukaddam N, et al. Psy Clin North Am. 2017;40:379-395.Moukaddam N, et al. Emerg Med Clin North Am. 2015;33:797-810.American Academy of Family Physician. Fam Pract Manag. 2019;26:32.参考1)Cannarella Lorenzetti R, et al. Am Fam Physician. 2013;87:419-425.2)Appelbaum PS. N Engl J Med. 2007;357:1834-1840.3)Malouf R, Brust JC. Ann Neurol. 1985;17:421-430.講師紹介

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第244回  医学部ダブル合格者の進学先から見えてくる、親の経済的事情と私立医大序列の微妙な変化

「週刊東洋経済」、恒例の医師特集で医学部の序列の変化を報じるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。いよいよ年末です。大学受験を控える子どもの親御さんは、正月どころではないでしょうね。そんな中、秋篠宮家の長男、悠仁さまが筑波大学生命環境学群の生物学類に早々と合格されたとの報道がありました。推薦入試での合格です。国立大に推薦合格、ということでいろんな憶測、批判もあるようですが、今の時代、皇位継承順2位の男性皇族が「生物学を学ぶ」というのは喜ばしく、とても好ましいことではないでしょうか。私の友人(大学の生物学科同窓)が某動物園に勤めていた頃、まだ幼い悠仁さまがお母さま(紀子さまですね)とよく開園時間外の動物園を訪れ、さまざまな動物や昆虫について個人講義を受けておられたそうです。今の”専門”はトンボということですが、根っからの生き物好きのようです。淡水域に生息するトンボほど環境変化に弱い昆虫はいません。動物生態学をかじった私としては、日本の環境保全にもつながるような研究に取り組まれることを願ってやみません。ということで、今回は大学受験について書いてみたいと思います。「週刊東洋経済」11月30日号の第1特集のタイトルは「医者・医学部崖っぷち」で、毎年恒例の医師特集でした。働き方改革が診療現場に与えている影響、医師偏在の現状、美容医療の実情などを多角的に取材していてなかなか読ませます。大学医学部関連では、「医学部の序列に変化 歴史から見るヒエラルキーと『ダブル合格者』の進学先」というタイトルの記事が興味深く参考になりました。順天堂大と日本医大との組み合わせでは順天堂大57.1%この記事では、大学医学部にダブル合格したらどちらに進むかについて、東進ハイスクールの最新データ(過去5年)を紹介しています。それによれば、慶應大と国公立医学部のダブル合格者では、国公立大が東大・京大だった場合は全員国立大を選択。阪大、東京医科歯科大(現・東京科学大)でも国立大が優勢(阪大進学83.3%、東京医科歯科大進学78.6%)。これが千葉大になると同大が55.6%と、慶應とほぼイーブンとなっていました。一昔前なら、千葉大と慶應大なら迷わず慶應大を選択する人が大半だったのではと思いますが、親の経済的事情なども影響していると考えられます。私大同士のダブル合格はどうでしょうか。本連載の前々回、「第242回 病院経営者には人ごとでない順天堂大の埼玉新病院建設断念、『コロナ禍前に建て替えをしていない病院はもう建て替え不可能、落ちこぼれていくだけ』と某コンサルタント」でも取り上げた順天堂大と、ほかの私大(関東圏で慶應大を除く、以下同)とのダブル合格については、対慈恵医大では慈恵医大が72.2%、対日本医大では順天堂大が57.1%という結果でした。そして、その他の私大とのダブル合格については順天堂大が100%という結果でした。順大医学部は学費下げの戦略などが奏功し、近年偏差値も上昇、私立医大の新御三家(慶應大、慈恵医大、順大)と呼ばれていますが、それが数字にも表れたというわけです(元々の御三家は慶應大、慈恵医大、日本医大)。なお、慈恵医大とほかの私大とのダブル合格では、対東京医大では慈恵医大が91.7%、対日本医大では慈恵医大94.7%、その他の私大では慈恵医大100%と圧倒的な強さでした。早稲田大、慶應大のダブル合格者の進学率では早稲田大の追い上げ顕著医学部以外の大学のトレンドも簡単に見ておきましょう。こちらは、「週刊ダイヤモンド」11月16日号の特集「大学格差」の記事が参考になります。ここにも「W合格者に選ばれる大学」という記事があります。同記事は、「難関私学である『早慶上理』における『ダブル合格者の進学率』の勝負で、これまでは慶應義塾大学が他の3大学に全勝してきた。しかし2025年度入試は、早稲田大学全勝にひっくり返る可能性が高い」として、ここ7年あまりのあいだに早稲田大が急速に追い上げている実態をレポートしています。同記事も東進ハイスクールのデータを基にしていますが、それによれば、早稲田大と慶應大のダブル合格者の進学率は、2018年度は早稲田大28.5%、慶應大71.5%だったものが、2024年度は早稲田大48.4%、慶応大51.6%とほぼイーブンになってきているとのことです。興味深いのは、主要な同系統学部8学部の比較です。2018年度は慶應大が全勝していたのに、2024年度は早稲田大が7勝1敗となっているのです。同系統学部の比較とは「早大・政治経済vs.慶大・法」、「早大・政治経済vs.慶大・経済」、「早大・文vs.慶大・文」、「早大・基幹理工vs.慶大・理工」といった組み合わせでの比較です。2024年に早稲田が1敗しているのは「法学部」で、「慶大・法」が64.5%でした。ちなみに、早稲田大の看板学部である「政治経済」は、2018年度は「慶大・法」に対して28.6%、「慶大・経済」に対して44.4%と負けていましたが、2024年度は各55.6%、85.7%と勝っています。この大きな変化の理由について同記事は、「早稲田大は21年度に看板学部である政治経済学部の入試科目で数学を必須にした。また、同学部を含む3学部で大学共通テストを必須化。私立文系に特化した受験生から敬遠され、志願者数は減少した。その分、受験生に占める早稲田本命層や国公立大学本命層の割合が増え、早慶W合格者に選ばれやすくなったのだろう」と分析しています。数十年先には地方の国立大医学部の統廃合や、私立医大の廃校も現実味この分析が正しいとすれば、教育体制や研究力、就職実績といった大学の実力の違いによって受験生が進学先を選択しているというより、そもそも早稲田に入って欲しい学生を受験科目等によって大学側がセレクションしているということになります。それも、文系なのに数学を必須にしたり、大学共通テストを必須化したりと、敢えて入試を難しくすることで……。それはそれで相当な見識であり、高度な経営判断と言えるでしょう。今後、少子化による人口減、受験生減が避けられない中、より優秀な学生を受け入れて大学のレベルを上げていくことでしか、大学は生き残っていけないからです。それに対し、大学の医学部の多くは早稲田大のように10年先、20年先のことを考えて学生を獲得しようとしているのか、甚だ疑問です。地域の医師確保等を名目に、医学部の定員は依然増加を続けています。さらに相変わらずの医学部人気。放っておいても受験生は集まるので、入試をことさら工夫する動機は今のところ希薄でしょう。しかし、このような状況がいつまでも続くわけがありません。数十年先には地方の国立大医学部の統廃合や、私立医大の廃校も現実味を帯びてくるでしょう。早稲田大と慶應大というお互いしのぎを削るトップ私学の経営に、国公立、私立含め、大学医学部が学ぶ点は多いと思います。

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ASH2024レポート

レポーター紹介はじめに2024年12月6日(金)~10日(火)の5日間にわたり、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴにて、第66回米国血液学会(ASH)年次総会が開催されました。ASHは、全世界から約3万人の血液学の専門家が集う世界最大の血液学会のイベントであり、毎年、12月の初旬に開催されます。私は、2019年にフロリダ州オーランドで開催された第61回ASHに参加して以来、5年ぶりの現地参加となりました(2020年からはCOVID-19の世界的流行のため、On lineでの開催となり、以降、現地開催とともにOn lineでの参加が可能となっている)。3年前の2022年から、米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された血液領域の注目演題のレポートをケアネットのDoctors'Picksのコーナーに寄稿していますが、ASCOにて口演に採択される血液がん関連の演題数は限られており、その中から10演題程度を選ぶ作業は比較的容易ですが、ASHの演題はすべて血液関連であり、口演の演題数だけでも1,000演題程度(ポスターは4,000演題程度)あり、その中から10演題選ぶのは至難の業でした。今回は、私の専門領域のリンパ系腫瘍(悪性リンパ腫と多発性骨髄腫)の演題から独断と偏見で10演題選びました。それでは、どのような演題が発表されたか各演題の概要にお目を通してください。なお、YouTubeチャンネルのEXPERT MINDでも、これらの演題を含む24演題の解説動画を2025年1月中旬から順次アップしておりますので、興味のある方は、そちらもご覧ください。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)Five-Year Analysis of the POLARIX Study: Prolonged Follow-up Confirms Positive Impact of Polatuzumab Vedotin Plus Rituximab, Cyclophosphamide, Doxorubicin, and Prednisone (Pola-R-CHP) on Outcomes. (Abstract #469)POLARIX試験(初発のびまん性大細胞型リンパ腫[DLBCL] に対し、Pola-R-CHP療法とR-CHOP療法を比較したグローバル試験であり、主要評価項目のPFSにおいて、Pola-R-CHPが有意に優った試験)の結果をもとに、2年前から日本でも保険診療でPola-R-CHPが初発DLBCL患者に対し使用可能となっている。今回、そのPOLARIX試験の5年のフォローアップデータが示された。主要評価項目のPFSは、2年時点のHR0.73(95%CI:0.57-0.95)が、5年時点でHR0.77(0.62~0.97)となり、Pola-R-CHPのR-CHOPに対する有意性が維持されていた。副次評価項目のOSについては、2年時点でHR:0.94(0.65-1.37)であったが、5年時点ではHR:0.85(0.63-1.15)とK-M曲線において少し差が開きかけているデータであった。安全性については、両治療にほぼ差を認めず、Pola-R-CHP療法は初発DLBCLの新たな標準療法とみなせるデータが示されたと思われる。本試験はあと2年フォローが継続されるようで、OSにも有意差がみられることが期待される。A Randomized Phase 2, Investigator-Led Trial of Glofitamab-R-CHOP or Glofitamab-Polatuzumab Vedotin-R-CHP (COALITION) in Younger Patients with High Burden, High-Risk Large B-Cell Lymphoma Demonstrates Safety, Uncompromised Chemotherapy Intensity, a High Rate of Durable Remissions, and Unique FDG-PET Response Characteristics. (Abstract #582)IPIや組織型でハイリスクの初発DLBCL患者(IPI≧3あるいはNCCN-IPI≧4あるいはDH/TH)に対し、CD20/CD3二重抗体薬のglofitamab(Glofit)をPola-R-CHPとR-CHOPに併用した第2相ランダム化比較試験(COALITION試験)の結果が報告された。投与法は、Glofitを2サイクル目のDay8、Day15と3~6サイクル目のDay8に投与し、さらに地固めとしてGlofitのみを2サイクル追加した。各群40例ずつの患者がエントリーされた。安全性に関しては、ほぼ同等であり、CRSはどちらも約20%の患者でみられたがG1~2であり、ICANSはゼロであった。最良効果でのCMR率はどちらも98%であり、EOIでのcfDNAを用いたMRD陰性率は88%であった。2年時点のPFSは、どちらの群とも86%と、ハイリスクDLBCL患者に対する良好な治療成績が示された。以上の結果を基に、さらに症例数を増やした試験が実施される予定である。濾胞性リンパ腫(FL) Single-Agent Mosunetuzumab Produces High Complete Response Rates in Patients with Newly Diagnosed Follicular Lymphoma: Primary Analysis of the Mithic-FL1 Trial. (Abstract #340)CD20XCD3二重抗体薬のmosunetuzumab(Mosun)を単剤で初発の濾胞性リンパ腫(FL)患者に投与した第2相Mithic-FL1試験の初めての解析結果が報告された。Mosunは、再発・難治FLに対し、海外ではすでに承認され、日本でも近々承認される薬剤である。特徴は投与スケジュールであり、1サイクル目Day1に5mg、Day8、15に45mg、2サイクル目からはDay1に45mg投与し、8サイクル終了後(6ヵ月間)にCRであればそこで治療を終了し、PRであれば9サイクル追加(約1年間)する固定期間の治療ということである。80例がエントリーされた。効果判定可能な76例のうち、ORRは96%、CRは80%であり、1年のPFSは91%という優れた治療成績が示され、免疫化学療法の成績に劣らなかった。安全性ではCRSが54%にみられ、G2は3%のみであった。初発FLに対して二重抗体薬のみで免疫化学療法と同等の治療効果が得られる可能性が示されたことでFLの今後の治療はケモフリーの方向に進んで行くと思われた。Loncastuximab Tesirine with Rituximab Induces Robust and Durable Complete Metabolic Responses in High-Risk Relapsed/Refractory Follicular Lymphoma.(Abstract #337)抗CD19抗体に抗がん剤のPBD dimer cytotoxinを結合した新規のADC薬のLoncastuximab Tesirine(Lonca)とリツキシマブによる再発・難治FLに対する臨床試験の成績である。Loncaはすでに海外で2ライン以上の治療歴のあるR/R DLBCLに対し単剤での使用が認められており、開発試験の成績では14例に対し、ORR 78.6%、CR 64.3%であった。投与スケジュールは1~2サイクル目にLonca+R、3・4サイクル目にLoncaのみを投与し、PR以上であれば、Lonca+Rを3サイクル追加し(維持療法1)、CRであればRのみ、PRであればLonca+Rを6サイクル追加する(維持療法2)。39例の患者がエントリーされ、POD24の症例は20例であり、3ライン以上の前治療歴のある症例は11例であった。最良治療効果のORR 97.4%、CR 76.9%であり、12ヵ月時点でのPFSは94.6%であった。有害事象もほとんどがG1~2であり、安全性も問題なかった。Lonca+RもR/R FLに対する新たな選択肢となりうる可能性が示された。マントル細胞リンパ腫(MCL)Ibrutinib-rituximab is superior to rituximab-chemotherapy in previously untreated older mantle cell lymphoma patients. Results from the international randomised controlled trial, Enrich.(Abstract #235)マントル細胞リンパ腫(MCL)は、難治性のリンパ腫であり、寛解・再燃を繰り返す。これまでは、初発MCLに対しリツキシマブと抗がん剤を併用する免疫化学療法(CIT)が標準療法として実施されてきたが、BTK阻害薬が登場し治療戦略が変わりつつある。本発表では、高齢の初発MCL患者に対し、BTK阻害薬のイブルチニブとリツキシマブを併用したIR療法と従来のCITを比較した第III相試験(Enrich試験)の結果が報告された。IR群:199例、免疫化学療法群(RBかR-CHOP)198例がエントリーされた。主要評価項目のPFS中央値は、IR群65.3ヵ月、免疫化学療法群42.4ヵ月であり、HRは0.69(0.52~0.90)と有意にIR療法が優れていた。ただし、免疫化学療法の治療法別では、R-CHOPとのHRは0.37(0.22-0.62)であったが、RBとのHRは0.91(0.66~1.25)と差がみられなかった。また、Blastoid-typeのMCLに対してはRBとのHRは2.33(0.83~6.52)とIRの治療成績が劣ることも示されている。IRはケモフリー治療として初発MCL患者に対する1つの選択肢となり得る。Lack of Benefit of Autologous Hematopoietic Cell Transplantation (auto-HCT) in Mantle Cell Lymphoma (MCL) Patients (pts) in First Complete Remission (CR) with Undetectable Minimal Residual Disease (uMRD): Initial Report from the ECOG-ACRIN EA4151 Phase 3 Randomized Trial.(Abstract #LBA6)若年の初発MCL患者に対しては、第一寛解期に自家移植併用大量化学療法(ASCT)が行われることが標準療法とされてきたが、リツキシマブやイブルチニブによる維持療法を追加することで、ASCTが不要となる可能性が示されてきている。本試験でも、寛解導入療法によって微小残存病変(MRD)が陰性となった患者において、リツキシマブによる3年間の維持療法を行うことで、ASCTをスキップ可能かどうかが前向きに検証された。寛解導入治療によって、MRD陰性となった患者をASCT+R-m(A)群とR-m単独(B)群にランダム化し、主要評価項目としてOSが評価された。A群257例、B群259例がエントリーされた。2.7年の追跡期間で、HR 0.984と両群にまったく差がみられず、MIPI-cでHighリスクの症例でも同様であった。このことから、寛解導入療法でMRD陰性となったMCL患者においてはASCTを行う必要はなくなったという結果が示された。これから長期のフォローが必要だが、MCLの治療においてもMRD陰性が治療目標になることが示された。慢性リンパ性白血病(CLL)Fixed-Duration Acalabrutinib Plus Venetoclax with or without Obinutuzumab Versus Chemoimmunotherapy for First-Line Treatment of Chronic Lymphocytic Leukemia: Interim Analysis of the Multicenter, Open-Label, Randomized, Phase 3 AMPLIFY Trial.(Abstract #1009)初発の慢性リンパ性白血病(CLL)に対し、BTK阻害薬アカラブルチニブ+BCL2阻害薬ベネトクラクス±抗CD20抗体薬オビヌツズマブ併用治療(AV±O)を固定期間(14ヵ月)で行う治療と従来の免疫化学療法(FCRかBRのどちらかを選択)を比較した第III相試験(AMPLIFY試験)の中間解析結果が報告された。エントリーされた患者は、AV群291例、AVO群286例、FCR群143例、BR群147例であった。主要評価項目はAV群と免疫化学療法群のPFSの比較であった。結果は、PFS中央値が、AV群未達、免疫化学療法群47.6ヵ月でHR 0.65(0.49~0.87)と有意にAV群が優った。AVO群の免疫化学療法群に対するHRは0.42(0.30~0.59)とさらに良好であり、MRD陰性化率もAVO>免疫化学療法であったが、本試験の実施中にCOVID-19のパンデミックがあり、AVO群でCOVID-19による死亡、治療中止が最も多かったということも示された。固定期間のAVあるいはAVO療法が免疫化学療法よりも有用であることが初めて示された。感染症の観点からはAV>AVOと思われるが、現在日本で使用可能なAOの固定期間治療の有用性は、これから検証する必要がある。多発性骨髄腫(MM)Sustained MRD Negativity for Three Years Can Guide Discontinuation of Lenalidomide Maintenance after ASCT in Multiple Myeloma: Results from a Prospective Cohort Study.(Abstract #361)初発多発性骨髄腫(MM)の治療では、自家移植併用大量化学療法(ASCT)を行い、レナリドミドにて維持療法を行うのが標準療法となっている。また、MRD陰性が持続することが長期のPFSを得るためには必要な条件となっているが、いつまでレナリドミドを投与すべきか、あるいはレナリドミドを中止できる条件などは明らかではない。本試験では、レナリドミドによる維持療法を3年間行い、その期間、MRD陰性を確認できた患者に対し、レナリドミドを一旦中止し、その後のMRDを6ヵ月ごとにフォローする前向き試験の結果が報告された。52例のMM患者がエントリーされた。中央値3年間のフォロー期間で、12例(23%)がMRD陰性⇒MRD陽性となり(中央値27.5ヵ月にて)レナリドミドが再開された。4例(7.6%)がPDとなった。1例がMM以外で死亡された。Treatment-free survivalは、93.9%(@1年)、91.6%(@2年)、75.8%(@3年)であった。また、7年のPFSは90.2%であった。以上より、ASCT後、レナリドミド維持療法による3年間のMRD陰性持続が治療中止の条件として妥当と考えられた。Phase 3 Randomized Study of Daratumumab Monotherapy Versus Active Monitoring in Patients with High-Risk Smoldering Multiple Myeloma: Primary Results of the Aquila Study.(Abstract #773)くすぶり型骨髄腫(MM)に対し、これまでは治療介入せずに注意深く経過観察を行うことが推奨されてきた。本試験(AQUILA試験)では、ハイリスクのくすぶり型MMに対し、ダラツムマブ皮下注単剤治療を導入する群と注意深く経過観察する群に分けて、SLiM-CRABの所見を認めるまでの期間(PFS)を比較している。Dara群:194例、観察群:196例がエントリーされた。有害事象のためDaraが中止となったのは13例(6.7%)であり、Daraが安全な治療薬であることが示された。追跡期間の中央値65.2ヵ月において、主要評価項目のPFSは、Dara群未達、観察群41.5ヵ月であり、HR 0.49(0.36~0.67)と有意にDara群でSLiM-CRABの所見に移行する患者が少なかった。また、骨髄腫の治療が開始されるまでの期間もDara群で有意に長く、さらに、骨髄腫の最初の治療の効果(PFS、OS)は観察群で有意に不良であることも示された。以上の結果から、ハイリスクのくすぶり型MMに対するDaraによる早期の治療介入が、今後の標準治療となることが示された。Previous HDM/ASCT adversely impacts PFS with BCMA-directed CAR-T cell therapy in multiple myeloma.(Abstract #79)多発性骨髄腫(MM)の初期治療は、ASCTを行うかどうかで治療方針が大きく分かれる。通常、65歳以下でPS良好の患者はASCTの適応となる。しかし、多くの患者ではやがて再発がみられ、次の治療が必要となる。再発MMに対しては、CAR-T細胞治療の有効性が示されている。本研究では、ASCT治療歴のあるMM患者に対するCAR-T治療の効果が検証されている。BCMA-CAR-T治療が行われたMM患者で、ASCT治療歴のある81例とASCT治療歴のない77例が比較された。寛解導入療法の治療効果は、両群で差を認めなかったが、CAR-T療法によるPFS中央値は9.9ヵ月(ASCT歴あり)と16.1ヵ月(ASCT歴なし)で、ASCT歴があるとCAR-T療法の効果が有意に悪いことが示された。ただし、OSへの影響は差がなかった。CAR-T療法の種類では、特に、Ide-celの効果が落ちることも示された。この結果のメカニズムの詳細は不明だが、CAR-T療法を行う可能性があるMM患者へのASCTの適応は慎重に考える必要があることが示唆された。おわりに今回、5年ぶりのASHへの現地参加であったが、これまでと変わらない参加者たちの熱気を感じ、on lineでの参加とは違う刺激を受けました。レポートしました10の演題は現地でも注目度が高く、会場が満席で、急遽、別室で中継される事態も発生していました。これらの発表を聞いていると、今後、リンパ系腫瘍の治療は、従来の化学療法剤(ケモ薬)を使用せず、分子標的薬と免疫療法(CAR-TやT細胞エンゲージャー)だけで治療する時代に変わっていくように感じました。ASHの参加費は年々高くなり、さらに円安の影響で学会参加費は、かなり高騰しています。また、アメリカは物価が高く、わずか5泊の滞在でしたが、ホテル代や食費もかなりの出費でした。今後、毎年、ASHに参加するのは難しいと思いましたが、できれば、数年後に、また、現地参加してみたいと思っています。

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鉄剤処方や検査・問診のポイント~「鉄欠乏性貧血の診療指針」発刊

 貧血の7割を占めるといわれる鉄欠乏性貧血。これに関し『鉄欠乏性貧血の診療指針』が2024年7月に発刊された。これまでに「鉄剤の適正使用による貧血治療指針」が2004年から2015年にわたり3回発刊されてきたが、近年では高用量の静注鉄剤をはじめとした新たな鉄剤が普及しつつあることから、鉄欠乏性貧血の診療の改訂が必要と判断され、このたび、タイトルを刷新して発刊に至った。そこで今回、診療指針作成のためのワーキンググループのメンバーである生田 克哉氏(北海道赤十字血液センター)に鉄欠乏性貧血を診断、治療するうえで知っておくべきポイントなどを聞いた。なお、本書は発刊1年後を目処に学会ウェブサイトへPDFとして掲載される予定だ。 本書は以下のように、3つの章と補遺で構成されている。第I章  鉄代謝に関する総論第II章  鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の診断指針第III章 鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の治療指針補遺  1. 貯血式自己血輸血における自己血貯血    2. 鉄代謝異常症の遺伝的素因について鉄欠乏が進む患者層、現代ならではの問題 まず、第I章では、鉄の生理作用、人体内での鉄イオンの存在様式、鉄代謝制御の概要などが最新の研究結果を基に見直されており、生田氏によると「鉄代謝全般に関して基礎知識を学びたい先生にも有用となる仕上がりとなっている」という。 続いて第II章では、貧血に関する疫学が示されており(p.18表II-1-1、p.19図II-1-1)、女性の場合は高齢者に続き30~40代の貧血の割合が高いことが示されている。これについては、「晩婚化によって生涯の月経回数が増えていることが一因と考えられる。患者には時代に応じた薬物治療や栄養学的実践の指導を行う必要があるため、30~40代の貧血を診断した際には、上記の説明を加えて、鉄の重要性について意識を持っていただけるようにしてほしい」と述べた。 鉄欠乏性貧血の原因の項目(p.24)では、トピックスとして「悪性貧血と鉄欠乏性貧血」が記されているが、一言で貧血と言っても鉄欠乏・鉄欠乏性なのか否かの判断がその後の治療にも大きく左右するため、非常に重要である。たとえば、慢性炎症に伴う貧血と鉄欠乏性貧血を判別するうえでは、検査値としてヘモグロビン(Hb)値:低、平均赤血球容積(MCV)値:低、血清鉄を確認されるだろう。ところが、血液中の鉄量はどちらも減少している状態のため、いずれの検査値も両者とも同じ動向を示してしまう。鉄欠乏性貧血を鑑別する際には、鉄の体内蓄積の指標である血清フェリチンが低いかどうかをしっかり確認してもらいたい」と同氏は強調し、「不飽和鉄結合能(UIBC)を測定することで総鉄結合能(TIBC)にも違いが見られ、さらなる鑑別になる」とも説明した。ただし問題点として、血清フェリチンが炎症の影響で上昇してしまい、本当に鉄が不足しているのかわからないことがある。病態生理的に慢性炎症に伴う貧血はヘプシジンの測定が鑑別に有用であるが、現時点では保険適用はないため、現状はさまざまな病態や検査マーカーを組み合わせて判断してほしい。なお、微量元素の銅や亜鉛も臨床症状によって過不足の判断が難しい項目であるが、貧血の原因となっている場合があるため、貧血の原因が特定できない時には微量元素の測定も推奨していきたい(p.33)」と話した。鉄剤の処方時にうっかりしやすいこと 鉄剤を処方する前に確認しておくべき第III章は、治療方針、鉄剤による治療開始前に患者へ説明しておくべき事項、治療薬の種類、治療効果や鉄剤が効かなかった場合の対応方法について網羅されており、新薬である経口剤のクエン酸第二鉄水和物錠(商品名:リオナ)、注射剤のカルボキシマルトース第二鉄(同:フェインジェクト)やデルイソマルトース第二鉄(同:モノヴァー)の製品特徴に触れている。「新薬については、発売の経緯や特徴がわかりやすくなるよう意識して構成し、本邦における各薬剤の臨床試験については、コラムで紹介する形にして読みやすさを考慮した」と説明した。 さらに、鉄剤の処方時の注意点については、「たとえば循環器領域において、『静注鉄剤の入院率や入院期間への有用性に関する論文』が海外で報告されているが、この研究対象は鉄欠乏ではあるが貧血患者ではない。日本での鉄剤の保険適用はあくまで“貧血がある場合”に限るため、鉄剤を処方する際には鉄欠乏性貧血の診断基準を満たすかどうかを確認する必要がある」と指摘した。なお、実際の投与量や切り替えタイミング、どのような場面での処方が適切なのかは、今後、実臨床からの声をくみ上げて検証・反映させていく予定だという。 このほか、領域別(腎臓内科、消化器内科、産婦人科、小児科)の鉄剤使用法を示している点が本章の特徴である。鉄欠乏性貧血を問診で疑う際、注意したい症状 問診時の注意点として、同氏は「軽い貧血でもおざなりな対応をせず、鉄剤服用後のモニタリング(たとえば、3ヵ月に1回の通院時で血算以外に血清フェリチンを確認)を行い、鉄剤を漫然投与せず、必要に応じて中断し経過観察することも重要」とし、「鉄欠乏性貧血患者が問診時に訴える症状として、氷をガリガリ食べる異食症が散見される。また、脚のつりやむずむず脚症候群に関しても患者本人からの訴えはないものの、問診してみると症状を有している場合があるため、治療モニタリングのためにもこれらの症状がカギとなることを理解しておいてほしい」と症状を探るポイントを説明した。 さらに、鉄欠乏性貧血患者の特徴として「自覚症状や特異的症状がないことも多いため、だるさ(倦怠感)があったり、自律神経失調症と診断されたりした方はHb値に問題なくても実は…という場合がある。気象病や月経前不快気分障害などを自覚する方には鉄欠乏性貧血を疑い、実際に鉄欠乏性貧血を認めた場合には、軽度の貧血であっても鉄剤を処方すると患者さんが見違えるくらい元気になることがある」とコメントした。改訂に至った経緯 最後に、生田氏は改訂の背景について「鉄代謝に関しての新たな知見は集積しているが、鉄欠乏性貧血に関する目立った研究的視点が加わっていなかったため、なかなか改訂に至らなかった。しかし、近年に新たな経口鉄剤や静注鉄剤が登場したことで、今後の鉄欠乏性貧血の診療もそれらを見据えたうえで方針を決定する必要があることから、第3版では対応しきれなくなった」とし、「今回の改訂ではMinds方式を取ることができなかったが、項目立てからしっかり見直し、各領域の専門家が独立して執筆を担当していた第3版に対して、本書はワーキンググループ全体で見解を統一させた。ありふれた疾患であるゆえ、新たな知見が出そろわない、海外でも高いエビデンスを持って適切な治療の推奨ができない、各国で使用する鉄剤が異なるなどの要因がありMinds方式が取りづらく従来の方式を踏襲した」とガイドラインではなく指針に留まった旨についても説明し、「ぜひ、日常診療で本書を役立ててもらいたい」と締めくくった。

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乾癬治療のデュークラバシチニブ、長期投与の有用性

 中等症~重症の局面型皮疹を有する乾癬において、3年間のデュークラバシチニブによる継続治療は安全かつ有効であることを、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のApril W. Armstrong氏らが、3試験(POETYK PSO-1、PSO-2、長期継続試験)の結果のプール解析を行い報告した。デュークラバシチニブ治療は3年間にわたり一貫した安全性プロファイルを示し、有害事象(AE)および重篤な有害事象(SAE)の発現率は、時間の経過とともに低下または同程度であった。結果を踏まえて著者は、「今回の結果は、中等症~重症の局面型皮疹を有する乾癬患者に対するデュークラバシチニブの長期安全性と有効性を、さらに支持するものであった」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年11月27日号掲載の報告。 研究グループは、PSO-1、PSO-2試験(52週間の第III相無作為化二重盲検試験)、長期継続試験(PSO-1試験またはPSO-2試験を完了した被験者が対象)における、3年間(148週)のデュークラバシチニブの安全性と有効性を評価した。 対象は、中等症~重症の局面型皮疹を有する乾癬患者で、PSO-1、PSO-2試験における52週の治療を完了後、事前に指定された長期継続試験に登録が可能であった患者とした。長期継続試験の登録は、2019年8月12日に開始。世界的なCOVID-19パンデミックのピーク時に行われた。安全性および有効性の評価は2022年6月15日まで行われ、これらのデータは2024年6月28日まで解析された。 PSO-1、PSO-2試験では、患者をプラセボ群、デュークラバシチニブ群(6mgを1日1回)、アプレミラスト群(30mgを1日2回)に1対2対1の割合で無作為に割り付け投与した。長期継続試験に登録された患者は、非盲検下でデュークラバシチニブ6mgを1日1回投与された。 安全性のアウトカムは、デュークラバシチニブを1回以上投与された患者を対象に評価した。 有効性のアウトカムは、PSO-1、PSO-2試験の1日目からデュークラバシチニブ治療を受け、長期継続試験に組み入れられた患者を対象に、Psoriasis Area and Severity Index(PASI)75/90達成率、static Physician’s Global Assessment(sPGA)スコア0(消失)または1(ほぼ消失)達成率(sPGA 0/1達成率)などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・1,519例がデュークラバシチニブを1回以上投与され、513例が長期継続試験に組み入れられた。・100人年当たりの曝露期間で調整した有害事象の発現率(EAIR)は、最初の1年間と3年間で減少または同程度であった。AEのEAIRはそれぞれ229.2、144.8で、SAEのEAIRはそれぞれ5.7、5.5、中止に至ったAEのEAIRはそれぞれ4.4、2.4、死亡のEAIRはそれぞれ0.2、0.3であった。・多くみられたAE(100人年当たりのEAIR≧5)の最初の1年間、3年間の発現率は、上咽頭炎がそれぞれ26.1、11.4で、COVID-19がそれぞれ0.5、8.0、上気道感染がそれぞれ13.4、6.2であった。・注目すべきAE(帯状疱疹、主要心血管イベント、悪性腫瘍など)のEAIRは、いずれも低く、最初の1年間と3年間で減少または同程度であった。・臨床的寛解は、3年にわたって維持された。PASI 75、PASI 90、sPGA 0/1の1年時と3年時の達成率は以下のとおりであった。 PASI 75:72.6%、73.2% PASI 90:45.6%、48.1% sPGA 0/1:58.1%、54.1%

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日本におけるレカネマブ治療施設の現状〜北海道のいま

 認知症の中で最も多いアルツハイマー病は、認知症患者の70%を占める。日本では、2018年に65歳以上の高齢者500万人以上が認知症に罹患しており、この年齢層における患者数は2045年までに25〜30%増加すると予想されている。2023年、新たに認知症治療薬として承認されたレカネマブは、今後ますます使用されると予想されている。しかし、レカネマブの使用では、アミロイドPETスキャンやMRIモニタリングなどの厳格なマネジメントが必要とされ、専門施設の拡大が求められるため、治療施設の不足や治療アクセスの悪さに関する懸念が課題となる。北海道大学の大橋 和貴氏らは、地理情報システムデータを用いて、北海道におけるレカネマブの空間的アクセスの評価を行った。Health Services Insights誌2024年11月18日号の報告。 医療施設は、治療基準(日本認知症学会専門医1人以上、1.5T以上のMRI、アミロイドPETの自施設または他施設との契約、脳神経外科を有する)を満たす能力に基づき3つに分類した。すべての基準を満たす施設をA群(9施設)、認知症専門医はいないが他の基準を満たす施設をB群(15施設)、設備はあるが人員が不足している施設をC群(19施設)とした。サービスエリア分析では、車での移動時間が30分、60分、120分以内における人口カバー率で評価した。ニ段階需給圏浮動分析法を用いて、各施設の潜在的高需要エリア指数(PHDI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・医療施設分類と移動時間に応じた人口カバー率は、56〜97%の範囲であった。・A群のカバー率は、移動時間30分以内で56%、60分以内で73.9%、120分以内で88.3%。・カバー率は、北海道北部および南部で最も低かった。・PHDI分析では、高需要エリアが特定され、札幌において潜在的に過剰な問題に直面していることが示唆された。 著者らは「レカネマブは、アクセス性と基準施設の増加を強化するために、戦略的なリソースを割り当てる必要性が浮き彫りとなった。認知症治療のメリットを最大限に高めるためには、とくにアクセスや基準施設数に課題がある地域に新たな治療センターを設置することが重要であろう」と結論付けている。

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敗血症疑い患者の抗菌薬の期間短縮、PCTガイド下vs.CRPガイド下/JAMA

 敗血症が疑われる重篤な入院成人患者において、バイオマーカー(プロカルシトニン[PCT]とC反応性タンパク質[CRP])のモニタリングプロトコールによる抗菌薬投与期間の決定について、標準治療と比較してPCTガイド下では、安全に投与期間を短縮でき全死因死亡も有意に改善したが、CRPガイド下では投与期間について有意な差は示されず、全死因死亡は明らかな改善を確認することはできなかった。英国・マンチェスター大学のPaul Dark氏らADAPT-Sepsis Collaboratorsが、多施設共同介入隠蔽(intervention-concealed)無作為化試験「ADAPT-Sepsis試験」の結果を報告した。敗血症に対する抗菌薬投与の最適期間は不明確であり、投与中止の判断はバイオマーカー値に基づいて行われているが、その有効性および安全性の根拠は不明確なままであった。JAMA誌オンライン版2024年12月9日号掲載の報告。総抗菌薬投与期間(有効性)と全死因死亡(安全性)を評価 ADAPT-Sepsis試験は2018年1月1日~2024年6月5日に、英国国民保健サービス(NHS)の集中治療室(ICU)41ヵ所で行われた。敗血症が疑われ24時間以内に抗菌薬の静脈内投与を開始した、少なくとも72時間の投与継続の可能性がある18歳以上の成人患者2,760例を対象に、PCTまたはCRPの評価に基づく決定が抗菌薬期間を安全に短縮可能かどうかについて検証した。 被験者は、daily PCTガイド下プロトコール群(918例)、daily CRPガイド下プロトコール群(924例)、標準治療群(918例)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、無作為化から28日までの総抗菌薬投与期間(有効性)と全死因死亡(安全性)であった。副次アウトカムは、CCU(critical care unit)入室期間、入院期間データなどであった。90日全死因死亡も評価した。PCTガイド下の有効性、安全性を確認 無作為化された2,760例のベースライン特性は3群間で類似しており、平均年齢は60.2(SD 15.4)歳、男性60.3%であった。ほぼすべての患者が敗血症診断Sepsis-3基準を満たしていたと考えられ(SOFAスコア:7[四分位範囲:5~9])、敗血症患者は1,397例(50.8%)、敗血症性ショック患者は1,352例(49.2%)であった。 無作為化から28日までの総抗菌薬投与期間は、daily PCTガイド下プロトコール群が標準治療群と比較して有意に短縮した(平均期間:9.8日[SD 7.2]vs.10.7日[7.6]、平均群間差:0.88[95%信頼区間[CI]:0.19~1.58]、p=0.01)。一方、daily CRPガイド下プロトコール群は標準治療群と比較して、総抗菌薬投与期間について差はみられなかった(10.6日[SD 7.7]vs.10.7日[7.6]、平均群間差:0.09[95%CI:-0.60~0.79]、p=0.79)。 無作為化から28日までの全死因死亡について、daily PCTガイド下プロトコール群(全死因死亡率20.9%[184/879例])の標準治療群(19.4%[170/878例])に対する非劣性(非劣性マージンは5.4%)が示された(絶対群間差:1.57[95%CI:-2.18~5.32]、p=0.02)。daily CRPガイド下プロトコール群(全死因死亡率21.1%[184/874例])の標準治療群に対する非劣性は確証が得られなかった(絶対群間差:1.69[95%CI:-2.07~5.45]、p=0.03)。

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オンコタイプDX再発スコア≧31のHR+/HER2ー乳がん、アントラサイクリンによるベネフィット得られる可能性(TAILORx)/SABCS2024

 21遺伝子アッセイ(Oncotype DX)による再発スコア(RS)≧31の、リンパ節転移のないホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性乳がん患者における術後療法として、タキサン+シクロホスファミド(TC)療法と比較したタキサン+アントラサイクリン/シクロホスファミド(T-AC)療法の5年無遠隔再発期間(DRFI)および無遠隔再発生存期間(DRFS)における有意なベネフィットが確認された。とくに明確にこのベネフィットが認められたのは、腫瘍径>2cmの患者であった。TAILORx試験の事後解析結果を、米国・シカゴ大学のNan Chen氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で報告した。 TAILORx試験では、Oncotype DXによるRSに基づき低リスク(RS:0〜10)、中間リスク(同:11〜25)、高リスク(同:26〜100)に分類している。今回の解析では中~高リスク患者のうち、T-ACまたはTCによる化学療法を受けた患者のデータが分析された。中間リスクの患者は内分泌療法のみまたは内分泌療法+医師選択による化学療法のいずれかに無作為に割り付けられ、高リスクの患者は内分泌療法+医師選択による化学療法を受けていた。 年齢、RS、腫瘍グレード、腫瘍サイズ、エストロゲン/プロゲステロン受容体の状態による調整ハザード比(aHR)を使用して、T-AC群とTC群におけるDRFI率、DRFS率、および全生存期間(OS)を比較。結果はRS<31または≧31で層別化された。 主な結果は以下のとおり。・本解析の適格条件を満たした2,549例のうち、438例がT-AC療法、2,111例がTC療法を受けていた。・患者特性は年齢中央値がT-AC群53.0歳vs.TC群55.1歳、閉経後が58.4% vs.64.4%、RS 11〜25が44.7% vs.73.6%/26〜30が15.8% vs.11.9%/31〜100が39.5% vs.14.5%であった。・T-AC療法群でのレジメンは、dose-dense AC-T療法が42.5%、標準的AC-T療法が25.1%、TAC療法が13.0%、その他のアントラサイクリン/タキサンレジメンが19.4%であった。・5年DRFI率は、RS<31の患者ではT-AC群97.0% vs.TC群97.6%(aHR:1.24、p=0.484)、RS≧31の患者では96.1% vs.91.0%(aHR:0.32、p=0.009)となり、RS≧31の患者においてT-AC群で有意に改善した。・RS≧31の患者における5年DRFS率はT-AC群95.4% vs.TC群89.8%とT-AC群で有意に改善し(aHR:0.47、p=0.031)、5年OS率は97.3% vs.93.5%とT-AC群で良好な傾向がみられた(aHR:0.546、p=0.167)。・RS≧31の患者における5年DRFI率およびDRFS率のサブグループ解析の結果、DRFI率はすべてのサブグループにおいてT-AC群で良好な傾向がみられたが、DRFS率については腫瘍径>2cmではT-AC群で良好(HR:0.23、95%信頼区間[CI]:0.08~0.69)であった一方、≦2cmではTC群で良好な傾向がみられた(HR:1.32、95%CI:0.51~3.43)。・RS≧31の患者において、閉経状態ごとに5年DRFI率をみると、閉経前の患者でT-AC群96.9% vs.TC群84.4%(aHR:0.20、p=0.032)、閉経後の患者で95.6% vs.93.4%(aHR:0.25、p=0.028)であり、閉経状態によらずT-AC群で良好な傾向がみられた。・スプライン回帰モデルによりTC療法と比較したT-AC療法のDRFIへの影響は、RS 20ではaHR:0.96(95%CI:0.53~1.75)、RS 30ではaHR:0.79(95%CI:0.45~1.39)、RS 40ではaHR:0.60(95%CI:0.34~1.05)、RS 50ではaHR:0.45(95%CI:0.21~0.96)と推定され、RSの増加に伴いアントラサイクリンによるベネフィットが増すことが示唆された。 Chen氏は、事後解析であるため今回のエンドポイントを評価するために設計されていないことなどを限界として挙げたうえで、多遺伝子アッセイで高リスク、リンパ節転移陰性のHR陽性HER2陰性乳がん患者では、アントラサイクリンの使用が検討されるべきではないかとしている。

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再利用ペースメーカーは安全で再利用可能

 再利用ペースメーカーは新しいペースメーカーと同程度に安全かつ効果的であり、低・中所得国の多くの人に利用可能な治療選択肢を提供する可能性があるとする研究結果が報告された。この研究を実施した米ミシガン大学医学部循環器科内科部門のThomas Crawford氏は、「米国と異なり、低・中所得国の人は、ペースメーカー治療が利用できなかったり、利用できたとしても費用が高額過ぎたりすることが多い」と指摘。「われわれのMy Heart Your Heart(MHYH)プログラムは、それを変えることを目指している」と話している。この研究結果は、米国心臓協会年次学術集会(AHA 2024、11月16〜18日、米シカゴ)で発表された。 Crawford氏らは、7カ国の298人の成人を対象にしたランダム化比較試験で、再利用ペースメーカーの機能と安全性を、新しいペースメーカーと比較した。対象者は149人ずつ、新しいペースメーカーを植え込む群(新規ペースメーカー群)と再利用ペースメーカーを植え込む群(再利用ペースメーカー群)にランダムに割り付けられ、植え込みから2週間後と最長90日後に転帰の評価が行われた。 その結果、植え込み部位での感染症が生じ、ペースメーカーの抜去が必要になった患者は5人であり、そのうちの3人は新規ペースメーカー群、2人は再利用ペースメーカー群の患者であったことが明らかになった。また、新規ペースメーカー群の1人に、抗菌薬で対応可能な表在性皮膚感染症が発生した。ペースメーカーの植え込み後にリードの移動または交換手術を必要とした患者は、新規ペースメーカー群で5人、再利用ペースメーカー群で6人だった。ペースメーカーの故障は、いずれの群でも報告されなかった。再利用ペースメーカー群では死亡が3件発生したが、ペースメーカーの植え込みとは無関係だった。新規ペースメーカー群に死亡は発生しなかった。 こうした結果を受けてCrawford氏は、「これらの肯定的な初期の結果により、ペースメーカーの大規模な寄付とその再利用により世界中の人々の命を救うという現実に一歩近付いた」とAHAのニュースリリースの中で述べている。 研究者らは、「今回の3カ月間の結果は希望が持てるものだった。6カ月後と12カ月後の転帰を調査することで、電池の寿命を除けば、再利用ペースメーカーが新品同様に機能するかどうかが明らかになるだろう」と述べている。 米国では、リサイクルされたペースメーカーを植え込むことは違法だが、米食品医薬品局(FDA)は、それを海外に送ることは許可している。2010年、MHYHプログラムは、命を救うための代替治療法がない心臓病患者に対する人道的な使用のために、再利用ペースメーカーの海外への送付を開始した。リサイクルされるペースメーカーは、死亡した患者や、より高度なデバイスへのアップグレードを必要とする患者が使っていたものである。同プログラムでは、電池の寿命が4年以上のペースメーカーが、ミシガン州の研究所で再処理され、コネチカット州で再滅菌される。多くは墓地や火葬場業界にサービスを提供するリサイクル会社が回収したもので、全国の葬儀場からも寄付が寄せられているという。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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患部への血流遮断で変形性膝関節症の痛みが軽減

 変形性膝関節症(OA)の患部への血流を遮断することで膝の痛みが軽減し、膝関節置換術の必要性を遅らせたり回避したりできる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。ベルリン大学(ドイツ)シャリテ病院のFlorian Nima Fleckenstein氏らによるこの研究結果は、北米放射線学会年次総会(RSNA 2024、12月1〜5日、米シカゴ)で発表された。 膝関節の周りでは、いくつかの枝を持つ動脈がネットワークを形成しているが、OA患者では、これらの動脈に異常が見られる。膝動脈塞栓術(GAE)は、介入放射線科医が膝の痛みのある部位に対応する血管の枝に小さな粒子を注入し、その部位への血流を遮断する治療法である。異常な血管の塞栓は、OAに特徴的な炎症、軟骨破壊、および感覚神経の成長サイクルの抑制につながる。 この研究では、保存療法では改善が認められず、GAEを受けた中等度から重度のOA患者403人(40〜90歳)のデータを後ろ向きに解析し、GAEの安全性と有効性を評価した。治療効果として、試験開始時と追跡調査時(施術後6週間、3カ月、6カ月、1年)に視覚アナログスケール(VAS)と膝関節評価スコア(KOOS)で痛みと生活の質(QOL)を測定して評価した。 その結果、技術的成功率は100%であり、安全に施術が行われたことが確認された。手術後すぐに18%の患者で軽度の皮膚の変色や膝の痛みが認められたが、重篤な合併症の発生は報告されなかった。QOLと痛みのスコアは、1年後の追跡調査時にそれぞれ87%と71%、改善したことも確認された。 Fleckenstein氏は、「本研究では、GAEは膝の痛みを効果的に軽減し、治療後早期にQOLを改善することが確認された。これらのベネフィットは長期にわたって維持され、特に、理学療法や鎮痛薬など他の治療法で効果を得られなかった人にとって効果的であることが分かった」と話す。その上で、「GAEは、OAを原因とする衰弱性疼痛や運動障害に苦しむ多くの患者に、新たな人生のきっかけを与える可能性がある」と付言している。 また、研究グループによると、この研究では、GAEが初期段階のOAに特に効果的であることも示されたという。研究グループは、「この結果は、早期介入によってOAの進行抑制や予防が可能であり、それにより膝関節置換術などのより侵襲的な治療の必要性を減らせることを示唆している」との見方を示している。またFleckenstein氏は、「GAEは、より侵襲的な手術の必要性を減らし、医療費を削減し、OAに苦しむ無数の人のQOLを大幅に改善する可能性を秘めた治療法だ」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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SGLT2iはDPP-4iより網膜症リスクを抑制する可能性―国内リアルワールド研究

 合併症未発症段階の日本人2型糖尿病患者に対する早期治療として、DPP-4阻害薬(DPP-4i)ではなくSGLT2阻害薬(SGLT2i)を用いることで、糖尿病網膜症発症リスクがより低下することを示唆するデータが報告された。千葉大学予防医学センターの越坂理也氏、同眼科の辰巳智章氏らの研究グループが、大規模リアルワールドデータを用いて行ったコホート研究の結果であり、詳細は「Diabetes Therapy」に9月30日掲載された。 SGLT2iは血糖降下作用に加えて、血圧や脂質などの糖尿病網膜症(以下、網膜症)のリスク因子を改善する作用を持ち、また網膜症に関する観察研究の結果が海外から報告されている。ただし日本人でのエビデンスは少なく、特に早期介入のエビデンスは国際的にも少ない。これを背景として越坂氏らは、健康保険組合の約1,700万人分の医療費請求情報および健診データが登録されている大規模データベース(JMDC Claims Database)を用いた解析を行った。 2015年1月から2022年9月末の期間にSGLT2iまたはDPP-4iの処方が開始されていた患者から、18歳未満、両剤併用、合併症(網膜症を含む細小血管症や大血管症)診断の記録、および1型糖尿病や妊娠糖尿病の患者などを除外した上で、傾向スコアマッチングにより背景因子の一致する各群1万166人を解析対象とした。SGLT2iまたはDPP-4iの処方開始日から網膜症(黄斑浮腫を含む)の発症、治療中断、患者データ最終日、または死亡のいずれか最も早い日まで追跡した。追跡開始時点において、平均年齢(約50歳)、男性の割合(同80%)、BMI(29kg/m2)、HbA1c(7.7%)は両群間に大きな差はなく、また喫煙者率、血圧、血清脂質、eGFR、チャールソン併存疾患指数、併用薬剤、医療機関の規模、追跡開始年などもよく一致しており、標準化平均差が0.05未満だった。 SGLT2i群は1万5,012人年の追跡で694人が網膜症を発症し、1,000人年当たりの罹患率は46.23だった。DPP-4i群は1万3,954人年の追跡で797人が網膜症を発症し、1,000人年当たりの罹患率は57.12だった。Cox比例ハザードモデルによる解析で、DPP-4i群に比較しSGLT2i群は網膜症発症リスクが有意に低いことが示された(ハザード比0.83〔95%信頼区間0.75~0.92〕、P=0.0003)。 患者背景別のサブグループ解析でも、おおむね全体解析と同様にSGLT2i群において網膜症発症リスクが有意に低いことが示された。ただし、65歳以上、HbA1cが7~8%の範囲、脂質低下薬またはレニン-アンジオテンシン系降圧薬の併用、およびベースライン時点で何らかの血糖降下薬が既に処方されていたケースでは、DPP-4i群とのリスク差が非有意だった。 著者らは、本研究を「合併症のない日本人2型糖尿病患者を対象に、網膜症リスクに対するSGLT2iとDPP-4iの影響の違いを検討した初の大規模研究」と位置づけている。研究の限界点として、健康保険組合のデータを用いたため高齢者の割合が低いこと、および残余交絡が存在する可能性などを挙げた上で、「SGLT2iが処方された患者はDPP-4iが処方された患者よりも網膜症リスクが低い可能性が示された」と結論。また、研究参加者が比較的若年で合併症がない集団であり、かつサブグループ解析では血糖や脂質・血圧に対して既に介入がなされていた群でリスク差が非有意であったことから、「より早期からのSGLT2iによる治療が網膜症抑止において有益と考えられる」と付け加えている。

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「クリスマス熱傷」にご注意を!【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第272回

「クリスマス熱傷」にご注意を!スイスのチューリッヒ大学病院で1971~2012年の41年間に、クリスマスツリーやアドベントリースの火災による重度の熱傷患者28人を治療した研究がありました。いや、そんな研究、あるんかい!Rohrer-Mirtschink S, et al.Major burn injuries associated with Christmas celebrations: a 41-year experience from Switzerland.Ann Burns Fire Disasters. 2015 Mar 31;28(1):71-5.この研究では、スイスではクリスマスツリーやアドベントリースにろうそくを灯す習慣があり、それが家庭内火災のリスクを高めているのではないかと書かれています。なるほど、確かにそれだと熱傷リスクは高そうですし、論文としてまとめたい気持ちもわかります。クリスマス熱傷28人の患者さんのうち、なんと4人(14%)が死亡しています。ガクブル、怖い。全体の61%が男性、39%が女性で、年齢は51~75歳が最も多く全体の53.6%を占めていました。熱傷の重症度を示すABSIスコアは、生存者群で平均6.5点、死亡者群で10.8点でした。全体の熱傷面積(TBSA)は生存者群で平均18.9%、死亡者群で45.2%でした。死亡している人は広範囲の皮膚をやられていますね…。火災の原因は89%がクリスマスツリー、11%がアドベントリースによるものでした。特徴的だったのは、火災の発生時期です。60.7%が1月4日以降の1月中に発生し、重症な事故も1月4日以降に集中していました。これは、クリスマスツリーが時間とともに乾燥し、燃えやすくなることが原因とされています。乾燥したツリーは通常の燃焼ではなく、爆発的な引火を起こし、数秒で部屋全体に火が広がる可能性があります。これを象徴する典型的なパターンは、燃えているツリーを運び出そうとした際の手と顔面の重度の熱傷を起こした事例です。研究者らは、クリスマス熱傷は比較的まれではあるものの、通常の家庭内火災よりも重症になる傾向があると指摘しています。スイスに行かれる際は、クリスマス熱傷にご注意ください!

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敷地内薬局の賃料はいくら?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第142回

医療機関の敷地内にある保険薬局、いわゆる敷地内薬局が2024年度の調剤報酬でさらに厳しい立場になったことは皆さんご存じかと思います。敷地内薬局は集患に有利であるものの、医療機関に払う土地・建物代は高額と想像できますが、賃料はいくらくらいなのでしょうか? 厚生労働省による調査の結果が公表されました。厚生労働省は16日の「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」で、病院の敷地内薬局に関する調査結果を報告した。誘致元の医療機関に支払っている月額賃料に関しては37薬局と限定的な回答数だったものの、最も多かった回答は「100万~200万円」の8件だった。「300万円以上」と回答した薬局も2件あった一方、「2万円以下」との回答も2件あった。公募要件に関しても回答は少なかったが、医療機関から「駐車場」や「会議室」「コンビニ、カフェ、レストラン」などの整備を求められている実態が明らかとなった。(2024年12月17日付 RISFAX)なかなかの高額賃料ですね…。賃料だけでなく、薬局が敷地内にあるというだけで病院から施設の整備を求められるなど、利益供与ともいえるいびつな状況が明らかになっています。一方で、一度開設した敷地内薬局を閉めて撤退するという話があったり、公募しても手が上がらなかったりするなど、点数も低く、病院の言いなりになる敷地内薬局には関わりたくないという判断をする薬局も多くなっているのかもしれません。敷地内薬局には、「日本が目指してきた医薬分業ではない」という誰が聞いてもそうだよなという意見があり、そういう意味では薬局側の意識が本来の医薬分業にきちんと向いている気がします。2025年は一般用医薬品のリスク分類を見直し2024年もあとわずかとなりました。12月に紙の保険証が廃止されて新規発行されなくなり、2025年からは原則としてマイナ保険証に1本化となります。団塊の世代が全員75歳以上になるという「2025年問題」の年がいよいよ到来し、薬局を取り巻く環境にも変化が生じるかもしれません。一般用医薬品のリスク分類の見直しもある予定です。私としては、そろそろ医薬品の供給が安定化してほしいなと思います。今年も1年、ありがとうございました。来年も楽しい話題を届けられたらと思います!

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第200回日本肺学会関東支部学術集会前夜祭【肺がんインタビュー】第104回

第104回 第200回日本肺学会関東支部学術集会前夜祭1960年から始まり今回で200回を迎える日本肺学会関東支部学術集会。支部会のご厚意により、同学術集会の前夜祭の模様をアーカイブでお届けする。内科、外科のみならず放射線、病理と、あらゆる方向の肺がん最新情報を各領域のスペシャリストが紹介する。出演(講演順)<Opening remarks>国立がん研究センター東病院 坪井 正博氏<座長>国際医療福祉大学 成田病院 吉野 一郎氏<プレゼンター>国立がん研究センター東病院 青景 圭樹氏国際医療福祉大学成田病院 大西 かよ子氏<座長>日本医科大学 清家 正博氏<プレゼンター>がん研有明病院 柳谷 典子氏順天堂大学医学部附属順天堂医院 林 大久生氏国立がん研究センター東病院 善家 義貴氏<Closing remarks>東京医科大学 池田 徳彦氏

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胃ろうは必要? 希望する家族・ためらう医療者【こんなときどうする?高齢者診療】第8回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」で2024年11月に扱ったテーマ「ACPとよりよい意思決定のためのコミュニケーションスキル」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。高齢者診療には、延命治療や心肺蘇生、生活場所の変更といった大きな決断がつきものです。今回はサロンメンバーが経験した胃ろう造設に関するケースを例に、よりよい意思決定支援につながる医療コミュニケーションのコツを探ります。85歳男性。進行した認知症により経口摂取が難しくなり、誤嚥性肺炎を繰り返し、栄養状態の悪化、体重減少が進んでいる。現在、本人の意向は確認できないが、家族は栄養状態の回復と誤嚥性肺炎の予防のために胃ろう造設を強く希望している。医療チームは、胃ろう造設による栄養状態回復や誤嚥予防が望めないことや造設によるデメリット・リスクが大きいと考え、家族の希望には添えないのではないかと悩んでいる。医療コミュニケーションのための3ステージ意思決定支援(Goals of Care)の場面では、患者や家族と話し合うための準備が不可欠です。米国コロンビア大学の中川俊一氏が提唱した3ステージプロトコル1)は、意思決定支援において多くの医療者が実践できるアプローチです。意思決定のプロセスを3つのステージに分けて順を追って進めることで、患者の価値観と家族のリソースに適した落としどころにたどり着きやすくなります。老年医学の5つのMも活用すると、以下のようになります。(1)病状説明5のM(Matters most、Mind、Mobility、Medication、Multi-complexity)を活用し、包括的に現状理解を深め、病状や予後を患者・家族に共有する(2)治療ゴールの設定患者・家族と治療・介入のゴールを設定する(3)治療オプションの相談2で設定したゴールに最も適したオプション(落としどころ)を提示・相談するひとつずつ見ていきましょう。病状説明のステージのゴールは、関係者全員(医療者・患者・家族など)が現状認識を共有することです。皆が持っている情報を統一することで、予後予測や治療への期待のズレを解消します。ここでのポイントは、現在の病状評価のプロセスに5つのMを活用すること。診断は、①情報収集②情報の統合と解釈③仮説としての暫定診断を繰り返す作業です。5つのMを用いて高齢者に頻度の高い事象の情報収集をすることで、患者の実態をより的確に把握し、診断の精度を高めることができます。それにより予後予測や今後の提案の質も高まります。治療ゴール設定のステージは、前の段階で共有した病状・現状認識をもとに、患者の価値観や優先順位を踏まえて、今後の治療やケアのゴールを設定するステップです。ここでのポイントは、「どのようなゴールを望むか」に加えて、「そのゴールが達成できない場合、何が許容できて、何が許容できないのか」を確認することです。信頼関係が築けている場合は、「どのような状態になったら、自分にとって耐え難い状況だと思いますか?」「もしこうなったら死んだほうがましという状況は何ですか?」といった質問も、患者が心の中で抱えている本音を引き出すきっかけになることがあります。患者本人の意向を直接聞くことができない場合には、「もし本人が現在の状況を理解していたら、何を望み、どのように感じているだろうか」といった問いを家族や親しい人にしてみることが必要です。最後のステージでは、これまでに明らかになった患者の価値観や治療ゴール、家族の意向を踏まえ、医療チームとしての推奨方針を明確に提示します。この段階では、選択肢ごとのメリット・デメリットや実現可能性を具体的に説明しながらも、患者にとって最も価値観に沿った治療オプションがどれであるのかを医療のプロとして明示しましょう。そして、その推奨に対する家族の意見や懸念を丁寧に聞き取り、必要に応じて選択肢を調整しながら、最終的に合意された治療方針を共有します。ステージを1つずつクリアしよう!今回のケースでは、家族は患者の存命を願うあまり、胃ろう造設による栄養状態の改善や誤嚥性肺炎の予防という、実は存在しないかもしれないメリットに注目している可能性があります。一方で、医療者は、胃ろう造設による経管栄養で期待できることの限界やリスクを理解しており、造設がもたらすデメリットやネガティブな転帰を懸念しています。この状況では、家族と医療者の間に認識の違いがあることが、意思決定を難しくしているのかもしれません。この場合はステージ1に戻りましょう。もう一度、現在の病状の共有(進行した認知症で、認知機能の回復が見込めない状態。その結果としての嚥下機能低下、合併症としての誤嚥性肺炎)と、治療的介入に期待できることの限界(進行した認知症患者に対しての胃ろう・経管栄養による誤嚥予防のエビデンスはないこと、栄養状態の改善に関するエビデンスも乏しいこと)などを共有し、家族と医療者の認識の違いを解消する必要があります。ステージ1をクリアしなければ次に進めないのです。現状共有をし直した後、ステージ2で、患者の希望や意向を踏まえて、再度治療ゴールを設定します。患者は認知機能の低下により、胃ろう造設に関する意思決定能力がないと判断されるため、「もし患者が現在の状況を理解できたとしたら、どのような希望や意向を持つだろうか」という視点で、患者の価値観を深く掘り下げていきます。ステージ1まで戻ることで、ステージ2で家族の意向が変わる可能性が生まれ、それに応じてステージ3で医療チームの推奨も変化し、最終的に患者の価値観に最も合った治療方針を見つけることができるでしょう。いかがでしょうか?3ステージプロトコルを使って対話を構成することで、意思決定に関わるコミュニケーションは格段にスムーズになるはずです。私を含めて、医師は対話のスキルを磨くことに苦手意識を持つ方が多いかもしれませんが、コミュニケーションは練習すれば必ず上達するスキルです。ぜひ、一緒に練習していきましょう! コミュニケーション向上の7ステップはオンラインサロンでオンラインサロンメンバー限定の講義では、コミュニケーションの練習を効率的かつ効果的に行うための7ステップを解説。外科的介入のときに押さえておきたい4つのゴールなどのすぐに活用できるトピックがご覧いただけます。参考1)中川俊一. 米国緩和ケア専門医が教える あなたのACPはなぜうまくいかないのか? . 2024.メジカルビュー社定価2,970円(税込)判型A5判頁数240頁発行2024年9月著者中川 俊一ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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整形外科の病態と診察・診断

診断の精度を上げ、患者満足度を高める「ニュースタンダード整形外科の臨床」第1巻整形外科の実臨床に真に役立つテキストシリーズ。本シリーズは整形外科日常臨床で使える具体的な知識と技術を提供治療は保存療法を中心に解説リアルな診断・治療の動画を多数掲載最新知識、専門知識、Topics、診療のコツなどを適宜コラムやサイドメモで掲載を特長としている。シリーズ最初の第1巻では、整形外科の病態と診察法・診断法について各分野のエキスパートが執筆。第1章では骨・関節・靱帯・関節包・筋肉・末梢神経の病態生理と治癒機転を、第2章では体表解剖で痛みやしびれのある部位から想定される病態を、第3章では診察法を動画などを交えて解説。第4章では整形外科で代表的な障害・疾患と重要な周辺領域を含めて構成。臨床に役立つ動画多数(80ファイル)。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する整形外科の病態と診察・診断定価12,100円(税込)判型B5判頁数418頁(動画80ファイル)発行2024年11月専門編集・編集委員井尻 慎一郎(井尻整形外科)編集委員田中 栄(東京大学)松本守雄(慶應義塾大学)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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第246回 カロリー制限と抗老化作用の関連を担う胆汁酸を発見

カロリー制限と抗老化作用の関連を担う胆汁酸を発見現代は定期的な食事に重きが置かれていますが、古く古代より断食(カロリー制限)の効用が説かれています1)。また、古代(紀元前16世紀)のエジプトのパピルス古文書には浣腸やその他の治療として胆汁(bile)が使用されたとの記載があり、胆汁の重要な役割は古代の医師にとって自明の理だったようです2)。中国からの最新の研究成果により、古代より知られていたその2つの効能を関連付ける仕組みが判明しました。先週水曜日にNatureに掲載されたその研究の結果、カロリー制限が抗老化作用をもたらすことに胆汁酸の一種であるリトコール酸(LCA)が寄与すると判明しました3)。餌を減らした研究用の動物の寿命が伸びることが知られています。ヒトも同様の絶食で健康が改善するようです。しかし、カロリーを抑えた食事を長く続けられる人はおよそ皆無でしょう4)。そこで、ほぼ継続不可能なカロリー制限をせずとも、その効果を引き出すカロリー制限模倣化合物(CRM)を探す取り組みが始まっています。AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)はCRMの有望な標的の1つです。AMPKはヒトを含め真核生物ならおよそ持ち合わせており、カロリー制限で活性化し、カロリー制限の効能になくてはならない分子です。たとえばカロリー制限のマウスの筋肉はAMPKが活発で、萎縮し難くなることが知られています5)。糖尿病薬メトホルミンやワインに含まれる植物成分レスベラトロールはAMPKを活性化するCRMであり、種々の生物の寿命や健康生存を伸ばしうることがわかっています。そういうCRM探しが進展する一方で、カロリー制限への代謝順応がどのような仕組みでAMPKを活性化して健康を維持し、寿命を伸ばすのかは不明瞭であり、多くの疑問が残っています。そこで中国のチームはカロリー制限で変化する特定の代謝産物がAMPKの調節に携わるかもしれないと当たりをつけて研究を始めました。まず初めにカロリー制限したマウスの血清のAMPK活性化作用を調べ、加熱しても損なわれずにAMPKを活性化しうる低分子量の代謝産物が確かに存在することが示されました。続いて、カロリーを制限したマウスとそうでないマウスの血中の1,200を超える代謝分子が解析され、カロリー制限で増える212の代謝産物が見つかりました。それらを培養細胞に与えて調べた結果、LCAがAMPKを活性化することが突き止められました。LCAは肝臓で作られる胆汁酸の2次代謝産物です。その前駆体であるコール酸(CA)やケノデオキシコール酸(CDCA)が肝臓から腸に移行し、そこで乳酸菌、クロストリジウム、真正細菌などの腸内細菌の手によってLCAが作られます。特筆すべきことに、LCAは絶食で増える血清の代謝産物の1つであることが健康なヒトの試験で示されています6)。カロリー制限していないマウスにLCA入りの水を与えたところ、どうやら代謝がより健康的になり、インスリン感受性が向上してミトコンドリアの性能や数が上向きました。また、体力も向上するようで、いつもの水を飲んだマウスに比べてより長く速く走れ、より強く握れるようになりました。LCAが老化と関連する衰えを解消しうることをそれらの結果は示唆しています6)。研究はさらに進み、LCAがAMPKを活性化する仕組みも判明しました。LCAはTULP3というタンパク質を受容体とし、LCAと結合したTULP3で活性化したサーチュイン遺伝子がAMPK活性化を導くことが解明されました7)。LCAに延命作用があるかどうかは微妙です。ショウジョウバエや線虫の寿命を延ばしたものの、マウスの検討では有意な延命効果は認められませんでした3,6)。ヒトと同じ哺乳類のマウスがLCAで延命しなかったことは興ざめ4)ですが、その効果がないと結論付けるのはまだ早いようです。ヒトで言えば中年のマウスで試しただけであり、より若いうちからLCAを与えてみるなどの種々の切り口での研究が必要です。中国の研究チームは先を急いでおり、サルでのLCAの効果を調べる研究をすでに開始しています4)。参考1)A bile acid could explain how calorie restriction slows ageing / Nature2)Erlinger S. Clin Liver Dis (Hoboken). 2022;20:33-44.3)Qu Q, et al. Nature. 2024 Dec 18. [Epub ahead of print]4)Restricting calories may extend life. Can this molecule do it without the hunger pangs? / Science 5)A bile acid may mimic caloric restriction / C&EN6)Fiamoncini F, et al. Front Nutr. 2022;9:932937.7)Qu Q, et al. Nature. 2024 Dec 18. [Epub ahead of print]

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DOACとスタチンの併用による出血リスク

 直接経口抗凝固薬(DOAC)はスタチンと併用されることが多い。しかし、DOACとアトルバスタチンまたはシンバスタチンの併用は、出血リスクを高める可能性が考えられている。それは、DOACがP-糖タンパク質の基質であり、CYP3A4により代謝されるが、アトルバスタチンとシンバスタチンもP-糖タンパク質の基質であり、CYP3A4により代謝されることから、両者が競合する可能性があるためである。しかし、これらの臨床的な影響は明らかになっていない。そこで、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAngel Ys Wong氏らの研究グループは、英国のデータベースを用いて、DOACとアトルバスタチンまたはシンバスタチンの併用と出血、心血管イベント、死亡との関連を検討した。その結果、DOACとアトルバスタチンまたはシンバスタチンには、臨床的な相互作用は認められなかった。ただし、アトルバスタチンまたはシンバスタチンを使用中にDOACの使用を開始した場合、出血や死亡のリスクが高かった。本研究結果は、British Journal of General Practice誌オンライン版2024年11月28日号で報告された。 本研究は、英国のClinical Practice Research Datalink(CPRD)Aurumデータベースを用いて、コホート研究とケースクロスオーバー研究に分けて実施した。コホート研究では、2011~19年に初めてDOACが処方された患者を対象とした。DOACとアトルバスタチンまたはシンバスタチンを併用した集団(アトルバスタチン群、シンバスタチン群)と、DOACとその他のスタチン(フルバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン)を併用した集団(その他のスタチン群)に分類し、出血(消化管出血、頭蓋内出血、その他の出血)、心血管イベント(虚血性脳卒中、心筋梗塞、心血管死)、死亡のリスクを比較した。ケースクロスオーバー研究は、DOACまたはスタチン開始のタイミングが及ぼす影響について、患者自身をコントロールとして比較することを目的として実施した。対象は、DOACやスタチンの使用期間中に初めて出血、心血管イベント、死亡が認められた患者とした。 主な結果は以下のとおり。【コホート研究】・DOACが処方された患者は39万7,459例で、そのうちアトルバスタチンを併用した患者は7万318例、シンバスタチンを併用した患者は3万8,724例が抽出された。・アトルバスタチン群は、その他のスタチン群と比較して、出血、心血管イベント、死亡のいずれについてもリスクの有意な上昇はみられなかった。・シンバスタチン群は、その他のスタチン群と比較して、出血、心血管イベントのリスクの有意な上昇はみられなかった。死亡についてはシンバスタチン群でリスク上昇がみられたが(ハザード比[HR]:1.49、99%信頼区間[CI]:1.02~2.18)、年齢を詳細に調整することで、影響は減弱した(HR:1.44、99%CI:0.98~2.10)。【ケースクロスオーバー研究】・アトルバスタチン使用中にDOACの使用を開始した患者、シンバスタチン使用中にDOACの使用を開始した患者において、出血や死亡のリスクが上昇した。・DOAC使用中にアトルバスタチンの使用を開始した患者、DOACを使用中にシンバスタチンを使用した患者では、同様の傾向は認められなかった。 なお、ケースクロスオーバー研究において、スタチン使用中にDOACの使用を開始した患者で出血や死亡のリスクが高かったことについて、著者らは「薬物相互作用ではなく、DOAC開始時の患者の状態(臨床的脆弱性)が影響していると考えられる」と考察したが、「アトルバスタチンまたはシンバスタチン使用中にDOACの使用を開始する際は、出血や死亡のリスクが高いため注意が必要である」とも述べている。

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乳がん再発予測、ctDNA検査はいつ実施すべき?示唆を与える結果(ZEST)/SABCS2024

 血中循環腫瘍DNA(ctDNA)陽性で再発リスクが高いStageI~IIIの乳がん患者に対するPARP阻害薬ニラパリブの有効性を評価する目的で実施された第III相ZEST試験において、試験登録者のctDNA陽性率が低く、また陽性時点での再発率が高かったために登録が早期終了したことを、英国・Royal Marsden Hospital and Institute of Cancer ResearchのNicholas Turner氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で報告した。 ZEST試験では、治療可能病変に対する標準治療完了後の、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)または腫瘍組織のBRCA(tBRCA)病的バリアントを有するHR+/HER2-乳がん患者(StageI~III)を対象に、血液を用いた微小残存腫瘍検出専用の遺伝子パネル検査(Signatera)を実施。ctDNA陽性で放射線学的に再発のない患者を、ニラパリブ群(200または300mg/日)およびプラセボ群に無作為に割り付けた。ctDNA検査は2~3ヵ月ごとに実施された。主要評価項目はニラパリブ群の安全性と忍容性で、無再発生存期間(RFS)も評価された(当初は無病生存期間が主要評価項目とされていたが、登録の早期中止に伴い変更)。 主な結果は以下のとおり。・2024年5月8日時点で2,746例が事前スクリーニングに参加、1,901例がctDNA検査を受け、147例(8%)がctDNA陽性であった。・1,901例の患者特性は、年齢中央値が52.0歳、TNBCが88.5%、tBRCA病的バリアントを有するHR+乳がんが11.5%、術前補助療法歴ありが32.7%、術後補助療法歴ありが33.8%、術前・術後補助療法歴ありが31.2%であった。・ctDNA陽性率が低く、また陽性時点での再発率が高かったために登録は早期終了した。・ctDNA陽性となった患者の割合は1回目の検査で5.2%、2回目以降の検査で4.4%、再発率はそれぞれ52.5%、43.8%であり、再発率はctDNAレベルの高さと関連していた。・根治的治療完了からctDNA陽性までの期間は3ヵ月未満が最も多く、TNBCにおいてはctDNA陽性者の60%が根治的治療完了から6ヵ月以下で検出されていた。・ctDNA陽性者では、リンパ節転移陽性、Non-pCR、StageIII、術前・術後補助療法歴を有する傾向がみられた。・ctDNA陽性者のうち、50%(73/147例)はctDNA検出時に再発が確認された。・ctDNA陽性者のうち40例がニラパリブ群(18例)またはプラセボ群(22例)に無作為に割り付けられた。90%がTN乳がん、10%がtBRCA病的バリアントを有するHR+乳がんであった。・RFS中央値は、ニラパリブ群11.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.7~18.2) vs.プラセボ群5.4ヵ月(95%CI:2.8~9.3)であった(ハザード比:0.66、95%CI:0.32~1.36)。・ニラパリブ群において、新たな安全性シグナルは確認されなかった。 Turner氏は、十分な登録患者数が得られず早期終了したため、ニラパリブの有効性について結論を出すことはできないが、本試験が直面した課題は今後の臨床試験の設計に影響を与えるものだと指摘。ctDNA陽性者の半数がすでに再発していたことを踏まえると、今後の研究では、術前療法終了前にctDNA検査を開始すべきではないかとコメントした。これはとくにTNBCが該当するとして、術前療法で効果が得られない場合、早期に再発する可能性があると指摘している。

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