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事例002 尿中アルブミン定量の査定【斬らレセプト シーズン4】

解説II型糖尿病患者に対して早期腎症の治療経過判定のために「D001 8 尿中アルブミン定量」を測定したところ、縦覧点検においてB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)が適用されて査定となりました。さらに「審査結果の理由等」の欄には、「3月に2回の実施」とコメントがありました。レセプトデータを確認すると、2ヵ月前のレセプトに尿中アルブミン定量が算定されていました。尿中アルブミン定量検査の留意事項には、「糖尿病又は糖尿病性早期腎症患者であって微量アルブミン尿を疑うもの(糖尿病性腎症第1期又は第2期のものに限る)に対して行った場合に、3ヵ月に1回に限り算定できる」とあることを理由に査定となったものでした。縦覧点検ができないレセプトチェックシステムであったために、見落としにつながったものです。査定対策として、尿中アルブミン定量検査には、次回実施可能日を電子カルテに表示させることにして、医事システム上で回数チェックができるように設定を行いました。医師からは、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』(東京医学社発行)には、「30mg/gCr以上のアルブミン尿の3か月以上の持続で慢性腎臓病と診断する」とあるため、治療経過に応じて連月実施を必要とする患者が存在するとのことでした。その場合は、慢性腎臓病に移行しないようガイドラインに沿った治療管理をしていることを、検査データを含めて補記いただき、審査に委ねることにしています。

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片頭痛患者に対するフレマネズマブ治療の日本における費用対効果

 日本においてフレマネズマブは、反復性片頭痛(EM)および慢性片頭痛(CM)患者に対して有効な治療薬だが、その費用対効果は明らかになっていなかった。大阪・富永病院の竹島 多賀夫氏らは、日本の医療観点から、治療歴を有するEMおよびCM患者に対するフレマネズマブの費用対効果について標準治療(SOC)との比較を行った。PharmacoEconomics誌2024年7月号の報告。 フレマネズマブとSOCの有効性および健康関連QOLに関連するデータを分析するため、マルコフモデルで推定回帰モデルを行った。モデルには、さらに文献データを追加した。調整された日本の医療観点には、生産性の損失も含めた。主なモデルアウトカムは、質調整生存年(QALY)、コスト(2022年時点の日本円)、増分費用効果比(ICER)を含む費用増加アウトカムとした。分析は、EM患者とCM患者の個別に実施し、その後組み合わせた。費用と効果は、年率2.0%の割引を行った。 主な結果は以下のとおり。・EMとCMを合算した25年間の平均QALYは、SOCで13.03、フレマネズマブで13.15であった。・関連コストは、SOCで2,755万292円、フレマネズマブで2,837万1,048円であった。・フレマネズマブ、SOCのいずれにおいても、EM患者はCM患者と比較しQALYが高く、コストが低かった。・SOCと比較したフレマネズマブの決定論的ICERは、EMで633万4,861円、CMで739万3,824円、EMとCMを合わせて653万398円であった。・間接コストと平均頭痛日数モデル分析の選択は、ICERに大きな影響を及ぼした。 著者らは、「日本におけるEMおよびCM患者に対するフレマネズマブ治療は、SOCと比較し、1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少、QALYの増加を示した。片頭痛患者に対するフレマネズマブとSOCの費用対効果は、日本公的医療において、ICERが653万398円であった」と報告した。

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CABG後1年間のDAPT、術後5年のMACEを有意に抑制/BMJ

 冠動脈バイパス術(CABG)後1年間のチカグレロル+アスピリンによる抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は、アスピリン単剤療法やチカグレロル単剤療法に比べ、術後5年間の主要有害心血管イベント(MACE)発生リスクを有意に低下させたことが、中国・上海交通大学医学院のYunpeng Zhu氏らによる無作為化試験「Different Antiplatelet Therapy Strategy After Coronary Artery Bypass Grafting(DACAB)試験」の5年フォローアップの結果で示された。チカグレロル+アスピリンのDAPTは、CABG後の伏在静脈グラフト不全の予防において、アスピリン単剤よりも効果的であることが示されている。しかしCABG後のDAPTの、臨床アウトカムへの有効性については確定的ではなかった。DACAB試験ではこれまでに、DAPTがアスピリン単剤と比較して1年後の静脈グラフト開存率を有意に改善したことが示されていた。BMJ誌2024年6月11日号掲載の報告。DAPT vs.チカグレロル単剤vs.アスピリン単剤を評価 CABG後の異なる抗血小板療法の臨床アウトカムへの有効性を調べたDACAB試験は、2014年7月~2015年11月に中国の6つの3次機能病院で被験者を登録し、2019年8月~2021年6月に5年間のフォローアップを完了した。 被験者は、待機的CABG手術を受け、DACAB試験を完了した18~80歳の患者500例(うち女性は91例[18.2%])であった。被験者は1対1対1の割合で、チカグレロル90mgを1日2回+アスピリン100mgを1日1回(DAPT群168例)、チカグレロル90mgを1日2回(チカグレロル単剤群166例)、アスピリン100mgを1日1回(アスピリン単剤群166例)に無作為に割り付けられ、術後1年間投与された。1年以降の抗血小板療法は、治療担当医が標準治療に従い処方した。 主要アウトカムはMACE(全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建の複合)で、ITT解析を原則として評価。治療群間の比較にはtime-to-event解析を用いて、複数の事後感度解析により試験で得られた所見の堅牢性を検証した。DAPT群のハザード比、対アスピリン単剤0.65、対チカグレロル単剤0.66 MACEに関する5年時フォローアップは、477/500例(95.4%)で完了した。MACEの発生は148例で認められ、うち39例がDAPT群、54例がチカグレロル単剤群、55例がアスピリン単剤群であった。 5年時点のMACEの発生リスクは、DAPT群がアスピリン単剤群と比べて(22.6% vs.29.9%、ハザード比:0.65[95%信頼区間:0.43~0.99]、p=0.04)、またチカグレロル単剤群と比べても(22.6% vs.32.9%、0.66[0.44~1.00]、p=0.05)有意に低下した。 結果は、すべての感度解析でも一貫していた。

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GCG/GLP-1作動薬survodutide、MASHの改善に有望/NEJM

 線維化の進行を伴わないmetabolic dysfunction-associated steatohepatitis(MASH)の改善に、グルカゴン(GCG)受容体+GLP-1受容体の二重作動薬であるsurvodutideはプラセボとの比較において優れることが、米国・バージニア・コモンウェルス大学のArun J. Sanyal氏らが行った第II相無作為化試験の結果で示された。著者は、「第III相試験でさらなる評価を行う必要がある」と述べている。GCG受容体+GLP-1受容体の二重作動薬はGLP-1受容体作動薬単独よりも、MASHの治療において有効であることが示されているが、肝線維化を伴うMASH患者におけるsurvodutideの有効性と安全性は明らかにされていなかった。NEJM誌オンライン版2024年6月7日号掲載の報告。線維化ステージF1~F3のMASH成人を対象に第II相試験 第II相試験は48週間にわたり、生検でMASHが確認された線維化ステージF1~F3の成人を1対1対1対1の4群(survodutide 2.4mg群、同4.8mg群、同6.0mg群、プラセボ群)に無作為に割り付け、週1回皮下投与した。 試験は、24週間の急速用量漸増期、続く24週間の維持期の構成で実施された。 主要エンドポイントは、線維化の進行を伴わない(線維化ステージのあらゆる進展が認められない)MASHの組織学的改善(NAFLD活動性スコアが2ポイント以上減少し、小葉内炎症または肝細胞の風船様変性が1ポイント以上減少)とした。副次エンドポイントは、肝脂肪量が30%以上低下かつ生検評価による1ステージ以上の線維化の改善(軽減)などとした。MASH改善、survodutide 2.4mg群47%、4.8mg群62%、6.0mg群43%、プラセボ群14% 2021年4月27日~2023年12月21日に1,153例が適格性についてスクリーニングを受け、計293例が無作為化されsurvodutideまたはプラセボを少なくとも1回投与された。ベースラインの被験者特性は試験群間(survodutide 2.4mg群73例、4.8mg群72例、6.0mg群74例、プラセボ群74例)で類似しており、全被験者における平均値は、年齢50.8±12.8歳、体重100.84±22.37kg、BMI 35.81±6.41、女性は53%、2型糖尿病罹患者39%、線維化ステージはF2が41%、F3が35%などであった。 線維化の進行を伴わないMASHの組織学的改善は、survodutide 2.4mg群47%、4.8mg群62%、6.0mg群43%で認められたのに対し、プラセボ群では14%であった(最適適合モデルとしての二次線量反応曲線のp<0.001)。 肝脂肪量の30%以上低下が認められたのは、survodutide 2.4mg群63%、4.8mg群67%、6.0mg群57%、プラセボ群14%であった。また1ステージ以上の線維化の改善は、それぞれ34%、36%、34%、22%で認められた。 survodutide群で発現頻度がプラセボ群より高かった有害事象は、悪心(66% vs.23%)、下痢(49% vs.23%)、嘔吐(41% vs.4%)などであった。重篤な有害事象の発現率は、survodutide群8%、プラセボ群7%であった。

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急性膵炎の管理にエビデンスに基づく推奨事項を提起、米ACG

 急性膵炎(AP)患者の管理について、エビデンスに基づく推奨が示された臨床ガイドラインが、米国消化器病学会(ACG)発行の「The American Journal of Gastroenterology」3月号に掲載された。 米ニューヨーク州立大学ブルックリン校のScott Tenner氏らは、膵臓の急性炎症と定義されるAPの管理について論じている。 著者らは、APは不均一な疾患であり、患者によって進行が異なることを指摘している。ほとんどの患者は数日間症状が続くが、約20%の患者は、膵壊死と臓器不全の一方または両方を含む合併症を経験する。AP患者には、胆道原性膵炎を評価するための経腹超音波検査が推奨され、特発性AP患者には、追加の診断的評価が推奨される。患者には、輸液蘇生を中等度の強度で実施することが推奨される。静脈路からの輸液蘇生には、生理食塩水よりも、乳酸リンゲル液が推奨される。胆管炎を伴わない急性胆道原性膵炎では、早期の内視鏡的逆行性胆管膵管造影よりも、薬剤治療が推奨される。重度のAP患者には、予防抗菌薬を使用しないことが推奨される。感染性膵壊死が疑われる患者には、穿刺吸引は推奨されない。軽度のAP患者には、従来の絶食の手法よりも、患者が許容できれば経口摂取の早期開始(24~48時間以内)が推奨される。軽度のAP患者には、流動食から固形食へと段階的に進める手法よりも、初回からの低脂肪固形食の経口摂取が推奨される。 著者らは、「さらなる研究が必要であるが、感染壊死が認められた患者には緊急手術が必要である、という考え方はもはや妥当ではない」と述べている。

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SGLT2iはステージ5のDKDの予後も改善し得る

 腎機能が高度に低下した糖尿病患者であっても、SGLT2阻害薬(SGLT2i)によって予後が改善することを示すデータが報告された。Dr. Yen'sクリニック(台湾)のFu-Shun Yen氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に4月30日掲載された。SGLT2iの処方が、透析導入や心不全、急性心筋梗塞(AMI)、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)、急性腎障害(AKI)による入院リスクの有意な低下と関連しているという。 SGLT2iは血糖降下作用とともに腎保護作用や心保護作用を有することが明らかになっており、ガイドラインでも使用が推奨されている。しかし、そのエビデンスは腎機能が一定程度以上に保たれている患者を対象に行われた研究から得られたものであり、高度腎機能低下例でのエビデンスは数少ない。これを背景としてYen氏らは、台湾の国民健康保険研究データベース(NHIRD)を用いて、ステージ5(eGFR20mL/分/1.73m2未満で定義)の慢性腎臓病(CKD)を有する糖尿病患者でのSGLT2iの有用性を検討した。なお、同国は1995年に皆保険制度が施行され、国民の99%が国民健康保険に加入しており、NHIRDにはその医療行為が記録されている。 解析には、SGLT2iが同国で使用され始めた2016年5月以降、2021年10月までのデータを用いた。この間に2型糖尿病かつステージ5のCKDを有する糖尿病関連腎臓病(DKD)患者のうち、2万3,854人にSGLT2iが処方されていた。SGLT2iが処方されていないDKD患者2万3,892人を無作為に抽出し、透析導入、心血管イベント、全死亡などのアウトカムを、SGLT2i処方の有無で比較した。解析対象者全体の平均年齢は61.0歳で女性が49.8%、HbA1c8.2%、eGFR10.3mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)82mg/gCrだった。追跡期間は平均3.1±1.5年、最長5.4年。 結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、HbA1c、糖尿病罹病期間、LDL-C、併存疾患、処方薬など)を調整後、SGLT2iが処方されていた患者群ではITT解析による1,000人年当たりの透析導入のハザード比(HR)が0.34(95%信頼区間0.27~0.43)で、66%低リスクだった。年齢層、性別、UACRによるサブグループ解析においても、それらによる有意な差異は認められず、結果は一貫していた。 また、以下のイベントによる入院についても、SGLT2iが処方されていた群で有意なリスク低下が観察された。心不全はHR0.80(同0.73~0.86)、AMIはHR0.61(0.52~0.73)、DKAはHR0.78(0.71~0.85)、AKIはHR0.80(0.70~0.90)。一方、全死亡に関してはHR1.11(0.99~1.24)で、SGLT2i使用の有無による有意差がなかった。 以上の結果を基に著者らは、「ステージ5のDKD患者において、SGLT2iの使用は透析導入や心腎イベントおよびDKAリスクの低さと関連していた。SGLT2iはCKDステージにかかわらず、疾患管理において基礎的な薬剤となり得るのではないか」と述べている。ただし今回の研究は2型糖尿病患者のみを対象としたため、「この知見は2型糖尿病のないCKD患者には当てはまらない可能性がある」としている。

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米国てんかんセンター協会がガイドライン改訂

 米国てんかんセンター協会(National Association of Epilepsy Centers;NAEC)はこのほど、てんかんセンターが提供する医療に関するガイドラインを改訂。米ホフストラ大学ザッカー医学部のFred A. Lado氏らが作成したガイドラインの要約版が、「Neurology」に2月2日掲載された。 NAECは米国内の260以上のてんかんセンターが加盟している非営利団体で、1990年に初のガイドラインを発行。初版発行以降、約10年サイクルで改訂を重ねてきており、前回の改訂は2010年だった。今回の改訂に際してはPubMedとEmbaseを用いたシステマティックレビューが行われ、重複削除後の5,937報から197報を抽出。医師、患者、介護者、看護師、検査技師などさまざまなバックグランドを持つ41人から成る委員会が、それらの報告に基づき推奨の草案を作成。その後、修正デルファイ法によって最終的な合意を得るという手法により、信頼できるコンセンサスベースの推奨(trustworthy consensus-based statements;TCBS)として52項目がまとめられた。 52項目の推奨事項は、診断、外来、入院および脳波モニタリングユニット(epilepsy monitoring unit;EMU)、手術に大別され、外来については、診療、薬物管理、患者教育、食事療法、リハビリテーション、心理社会的支援などに細分化されている。推奨事項のいくつかを具体的に挙げると、例えば診断の項目では、全てのてんかんセンターは遺伝子検査が有用と思われる患者を選別するための確立されたプロトコールを持つべきであり、認定カウンセラーによる遺伝カウンセリングを提供する必要があるとしている。また外来での心理社会的支援としては、てんかん患者に生じ得る教育的、社会的、感情的、職業的な障害を把握し対処するために、全てのてんかんセンターには臨床ソーシャルワーカーを配置すべきとの項目が掲げられている。 今回のガイドライン改訂の背景について、筆頭著者であるLado氏は、「医学が進歩していることに加え、近年では発作の管理にとどまらず、患者の総合的な健康や幸福について介入が求められるように環境が変化してきた。不安症やうつ病などの併存疾患のケア、患者-ケアチーム間のコミュニケーションの強化なども、今では欠くことができない。てんかんセンターやその他の医療機関が、質の高い包括的ケアを提供する上で必要なリソースを確保するためにも、ガイドラインの拡充が切に必要とされていた」と語っている。 なお、2人の著者が製薬企業および医療テクノロジー関連企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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長距離フライト中の飲酒は心臓に悪影響を与える可能性も

 飛行機に乗っている間、とりわけ長距離フライト中に飲酒すると、眠っている間に心臓の健康が脅かされる可能性のあることが、ドイツ航空宇宙センター・航空宇宙医学研究所のEva-Maria Elmenhorst氏らによる研究で示された。同研究では、飲酒と飛行機の巡航高度での機内気圧が組み合わさることで、血液中の酸素量が低下し、若くて健康な人でも心拍数が長時間にわたって上昇し続けることが示されたという。この研究結果は、「Thorax」に6月3日掲載された。 今回の研究の背景情報として、巡航高度で飛行中には、健康な乗客でも酸素濃度〔酸素飽和度(SpO2)〕が血中の約90%まで低下する可能性があり、それ以下になると、低圧低酸素、すなわち高高度で血中酸素濃度が低下した状態と見なされるとElmenhorst氏らは説明している。アルコールは血管壁を弛緩させ、睡眠中の心拍数を増加させる。そのため、Elmenhorst氏らは、飲酒と飛行機の機内気圧の組み合わせが睡眠中の乗客に有害な影響をもたらすのではないかと考えた。 Elmenhorst氏らは今回、18歳から40歳の研究参加者48人の半数を、通常の気圧の睡眠検査室で眠る群に、残る半数を飛行機の巡航高度での機内気圧が再現された低圧試験室で眠る群に割り付けた。睡眠を取ることができる時間帯は、午前0時から4時の間とした。研究参加者には、それぞれに割り当てられた部屋で2晩過ごしてもらったが、そのうちの1晩は、ビール2缶またはワイングラス2杯に相当するアルコール量のウォッカを摂取してから睡眠を取り、もう1晩は飲酒せずに睡眠を取った。各群とも、半数が1晩目に、残りの半数は2晩目に飲酒してから睡眠を取り、1晩目と2晩目の間には2晩のウォッシュアウト期間を設けた。 その結果、飲酒と飛行機の機内気圧の組み合わせによってSpO2が85.32%まで低下し、その代償として睡眠中の心拍数が87.73回/分まで上昇することが示された。これに対し、低圧試験室で飲酒せずに睡眠を取った人では、SpO2は88.07%、心拍数は72.90回/分であった。一方、通常の睡眠検査室で飲酒後に睡眠を取った人では、SpO2は94.97%、心拍数は76.97回/分であり、通常の睡眠検査室で飲酒せずに睡眠を取った人では、SpO2は95.88%、心拍数は63.74回/分だった(全て中央値)。 このほか、基準値を下回る血中酸素濃度(SpO2が90%未満)が続いた時間は、低圧試験室で飲酒後に睡眠を取った場合には201.18分間、低圧試験室で飲酒せずに睡眠を取った場合には173.28分間だった。 Elmenhorst氏らは、「これらの結果を総合的に捉えると、たとえ若く健康な人であっても気圧が低い環境での飲酒と睡眠の組み合わせは心血管系にかなりの負担をもたらし、心疾患や肺疾患の患者の症状を悪化させる可能性があると考えられる」と結論付けている。またElmenhorst氏は、「こうした潜在的なリスクについて、医師や乗客、乗務員に知らせるべきだ。また、飛行機内でのアルコール飲料へのアクセスを制限する規制の変更を検討することも有益かもしれない」と付け加えている。

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長期間、精液を静注していた男性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第259回

長期間、精液を静注していた男性ある男性が激しい背中の疼痛で受診しました。3日前に重たいものを持ち上げてから、痛いとのこと。しかし、彼の腕はなぜか化膿性に腫脹していました。蜂窩織炎です。…あれ、痛いのは背中じゃないんですか?「いやいや、話せば長いのですが、実は私、精液を注射していまして…」という、まったくエキセントリックな論文を紹介しましょう。Dunne L, et al.“Semenly” Harmless Back Pain: An Unusual Presentation of a Subcutaneous Abscess. Ir Med J. 2019 Jan 15;112(1):857.病歴をよくよく聴いてみると、腰痛はずっと前からあったようです。3日前から悪化したわけではなく、慢性腰痛があったということです。そして、この症状に対して彼は約18ヵ月にもわたって、毎月1回、腕に精液を静注していたようです。繰り返します。腕に精液を静注していたのです…ッ!…ちょっと何言ってるかわからないですが、話を進めましょう。今回腕の蜂窩織炎が悪化したのは、静注だけでなく筋肉のほうにも精液を追加投与したからではないかとのこと。腰痛も気になっていたでしょうが、おそらくこちらの腕のほうが気掛かりだったに違いありません。いやしかし、そもそも、なぜ精液を自己注射しようとしたのか。地域にこういった民間療法があるわけではなく、何らかのポリシーで精液を注射することで腰痛が治ると信じていたようです。今回の症例報告の著者は、過去の文献で精液を静注して皮下膿瘍・蜂窩織炎を発症した症例がないか調べたようですが、残念ながら1例もありませんでした。そりゃそうや!その後、彼は精液ではなく抗菌薬を静注され、事なきを得ました。やれやれです。というわけで、エビデンスのない民間療法はダメだよ、という啓蒙になっています。

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第216回 異例の承認「外傷性脳損傷による運動麻痺」の改善薬

6月21日夜、私が接したのは異例中の異例の結論だった。国内バイオベンチャー・サンバイオが中等度から重度の外傷性脳損傷後の運動機能障害の改善を適応として申請中の再生医療等製品「アクーゴ脳内移植用注」(一般名:バンデフィテムセル、開発番号:SB623、以下は開発番号で表記)について、厚生労働省(以下、厚労省)の薬事審議会の再生医療等製品・生物由来技術部会*(以下、部会)は、再生医療等製品特有の条件および期限付承認を了承したが、端的に言うと「承認するが、当面出荷は認めず」という“玉虫色”の結論を出したのである。*旧薬事・食品衛生審議会、本年4月より改称SB623とは外傷性脳損傷は、交通事故、労働災害や高齢者のふらつきなどによる転落・転倒、スポーツ外傷などによって起こり、脳の神経細胞の損傷が著しい1割程度の中等~重度の患者では慢性的な記憶障害や運動機能障害などに至ってしまう。運動機能障害の症状は手足の動きの鈍化、嚥下機能の低下、円滑な発話が困難などで日常生活におけるQOLは大幅に低下する。外傷性脳損傷による慢性的な運動機能障害は、現状ではリハビリテーション以外にほぼ治療手段はない。そうした中で2001年に米国・カリフォルニア州で設立されたサンバイオ(2014年、日本に本社移転)が創業以来、開発に注力してきたのがその治療薬SB623である。SB623は健康成人骨髄液由来の間葉系間質細胞を加工・培養して作製されたヒト(同種)骨髄由来加工間葉系幹細胞。これを定位脳手術で脳内の損傷した神経組織へ直接移植手術を行うことで、脳神経再生能力を促し、喪失した運動機能を回復させる効果が見込まれている。損傷した脳の神経細胞の復元がきわめて難しいことは一定の医学知識があれば容易に想像がつくが、そこに挑んだのがSB623である。サンバイオが日本に拠点を移動した2014年11月には国内再生医療等製品に関する早期承認(条件および期限付承認)制度がスタート。同制度は、アンメットメディカルニーズゆえに被験者数の確保が難しく、二重盲検比較試験実施も困難な再生医療等製品について、有効性が推定され、安全性が認められた再生医療等製品を、条件や期限を設けたうえで早期承認する仕組み。承認後は製造販売後使用成績調査や製造販売後臨床試験を計画・実施し、7年を超えない範囲で有効性、安全性を検証したうえで、期限内に再度承認申請して本承認(正式承認)を取得する。株価に期待や不安が織り交ざる先進国内で最も再生医療等製品の上市ハードルを低くしたともいえる同制度は、サンバイオのSB623開発にとって追い風だったことは想像に難くない。同社は2015年に東京証券取引所マザーズ市場(現・グロース市場)に上場を果たし、2018年11月には外傷性脳損傷を対象にしたSB623の日米共同第II相「STEMTRA試験」で主要評価項目の達成を発表。2019年1月に同社株価は1万2,730円と上場以来の最高値を記録した。ただ、当時の株価急上昇は外傷性脳損傷でのポジティブな試験結果とは別の要因も働いていたと考えられる。というのも同社創業直後から、SB623は外傷性脳損傷よりはるかに市場規模が大きい慢性期脳梗塞での運動機能障害を適応とする臨床試験が先行していたからだ。つまり2018年11月の速報結果発表以降の株価の急上昇は、脳梗塞での試験成功への期待値も織り込んでいたというのが、関係者の間では共通認識だった。しかし、上場後の株価最高値を記録した2019年1月末、同社は業績予想の下方修正と脳梗塞で進んでいた第II相試験の主要評価項目未達を相次いで発表。翌2月に株価は反転急落し、同月最安値は2,401円にまで落ち込んだ。ところがこの3ヵ月後の2019年4月、外傷性脳損傷後の運動機能障害の改善の適応に関してSB623が厚生労働省の先駆け審査品目に指定を受け、再び期待が高まることになった。「先駆け審査指定制度」の法制化3年後に申請先駆け審査指定制度は、2014年6月に閣議決定された産業競争力の強化を通じ日本の成長戦略「日本再興戦略改訂2014」で謳われた「世界に先駆けた革新的医薬品・医療機器等の実用化の推進(先駆けパッケージ戦略)」を受け、2015年度から厚生労働省と医薬品医療機器総合機構(PMDA)が試行的に開始。2019年の薬機法改正で法制化された。同制度は(1)治療薬の画期性(2)対象疾患の重篤性(3)対象疾患に係る極めて高い有効性(4)世界に先駆けて日本で早期開発・申請する意思・体制、の4条件を満たす開発中の医薬品を、企業の申請に基づき薬事審議会での意見聴取などを考慮して指定する。指定を受けた医薬品は、申請前に事前にPMDAによる優先相談や事前評価を受けられ、申請から原則6ヵ月以内に承認可否が下されるなどの“特典”がある。そしてついに同社は2022年3月、「外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善」の適応で承認を申請。同制度の原則に基づけば2022年9月には承認可否が決定しているはずだったが、同年8月までに開催された2回の部会の議題には上らず、7月22日付で同社は9月までに先駆け審査制度に基づく承認の見込みはないとのプレスリリースを公表し、10月には「今期中の承認取得はないものと判断しています」とのプレスリリースも発表した。この中身が明らかになったのは2023年3月に行われた同社決算会見。同社が「細胞の製造の際に申請時点と比較して収量が減少する課題が発生した」と公表し、以後、同社のプレスリリースではこの点に関する情報発信が以下のように変化していった。「現時点ではまだ、申請時点と同等の収量に戻り切っていませんが、直近の製造を通して得られた追加データに基づく原因分析の結果、課題解決に直結すると考えられる施策を策定することができました。現在、この施策を講じた上で製造を行っており、8月にこの製造の収量結果をもって課題解決の判断ができる見込みです」(2023年6月)「収量に関する課題について、施策を講じた直近の製造において、収量の改善を確認することができました。今後、追加製造と並行して、生産関連の審査に適時適切に対応していくことで、引き続き、今期中の承認取得を目指します」(2023年8月)「収量に関する課題については解決し、審査は進捗しております。但し、審査の状況から承認取得にはもう少し時間を要するため、承認取得目標時期は2024年3月に修正いたします」(2023年12月)承認審議、そこから明らかになった課題そして今年3月18日、厚労省が3月25日の部会開催を発表し、その議題には「非公開案件 議題2 再生医療等製品『アクーゴ脳内移植用注』について」と記載されていた。「うわっ!承認審議か」と私も含め多くの記者が色めき立ったが、翌日の一部専門紙で「承認可否は審議せず、“今後の方向性”を審議する」と報じられた。そもそも部会審議の議題にあがりながら、承認可否を審議しないこと自体異例である。この時に厚労省が発表した資料によると、「治験製品と本品との同等性/同質性が確認される前提ではあるものの、一定の有効性は期待でき、ベネフィットを踏まえると安全性は許容可能。本品の有効性および安全性に関する情報は現時点で限定的であるものの、本品を臨床現場に提供する意義はあるものと評価」との見解を示しながらも、「現時点で得られたデータでは、治験製品と本品との同等性/同質性は判断できない」と記述されていた。要は製品としての品質が担保されていないということだ。この品質問題の詳細について厚労省側は企業秘密に該当するとして公表していない。サンバイオ側にも確認したところ、「お答えできない」との回答だった。ただ、この件に関する同社のプレスリリースでは品質に関する追加データを提出していく意向を示しており、「(提出するデータは)今後当局との協議の中で明確化して対応していく予定です。当局との協議次第となります」(同社広報)との回答だった。承認へ、本品が唯一の治療方法になる可能性そして再び6月12日に厚労省は6月18日の部会開催を発表。議題の1つが「再生医療等製品『アクーゴ脳内移植用注』の製造販売承認の可否、条件及び期限の要否並びに再審査期間の指定の要否について」。3月の開催案内に比べ、議題表記がかなり具体的であるため、私や周囲の何人かの記者は承認の見通しだろうと予想した。そして6月18日、夜9時からオンラインで開催された部会後の記者レク*。事前に厚労省からメールで届いた資料を読んでいて、「ああやっぱり承認か」と思いながらPDFをスクロールしていると、2ページ目の備考欄で目が留まった。そこには以下のような記載があった。*記者レクチャーの略。記者団などを相手に発表を行うと共に発表者から説明が行われる場「本品の製造実績が限られていることを踏まえ、あらかじめ定めた計画に基づき、本品の品質に関する情報を速やかに収集するとともに、治験製品と本品との品質の同等性/同質性を評価し、結果を報告すること。また、当該結果を踏まえ、必要な承認事項一部変更承認申請を行うとともに、当該申請が承認されるまでの間、本品の出荷を行わないこと。」(下線は筆者追加)実はこの時、記者レク参加予定の記者、AさんとBさんと同時並行でLINEのやり取りをしていた。すぐに2人からメッセージが着信した。Aさん「いや、承認条件の一番下、これなんですか?」Bさん「これってすぐには販売開始できないんですかね?」そして夜9時に厚労省医薬局医療機器審査管理課による記者レクが始まった。まず冒頭、担当者から以下のような説明があった。「(3月25日の部会では)今回の承認条件に関係する同等性/同質性の確認が困難だった。それを経てサンバイオ社から追加データが提出され、その内容をPMDAが評価した結果を踏まえて承認の可否を諮り、承認して差し支えないことになったが、3月に論点になっていた同等性/同質性については、追加データでもなお確認できないという結論。しかしながら、それでもなお承認して差し支えないと判断をしたのは、適用対象疾患に対しては、現時点では代替の治療方法がない、リハビリテーションをするしかないため、本品が唯一の治療方法になる可能性があるというところを鑑みて、条件を付したうえでデータの再提出後に改めて部会で議論することを織り込み済みであれば、承認して差し支えないだろうとの判断をいただいた」以下は医療機器審査管理課の担当者と記者との主なやり取りだ。―前回の部会以降追加で求めたデータはどのようなもので何がネックになっていたのか、可能な範囲で教えてください。担当者今後また審査に付される部分が含まれる内容になりますので、回答はなかなか難しい。先ほど申し上げたとおり、前回の部会以降に追加されたデータでは、同等性/同質性としては確認できなかったので、それを補完するために承認を一度与えたうえで承認後にデータを取り直すことを承認条件としました。―「必要な承認事項一部変更承認申請(通称・一変)を行うとともに」との記述があるが、審議の結果では今後一変の必要性が高いと見込まれたのでしょうか?(筆者)担当者現時点ではデータが不足している事実があり、それを充足したうえで内容を審査するプロセスを経るので、既存の承認事項の中で変更が必要な部分は審査内で明らかになってくる。ただ、少なくとも本品は製造実績が限られ、使用期限の設定ができていません。この点は改めて製造実績を積んで、使用期限設定の根拠となるデータを提出のうえで変更申請をしなければならないので、少なくとも1ヵ所は一変が必要でしょう。―そもそも承認条件付き期限付き承認は迅速に患者に治療薬を提供すること、既に非常に時間かかってます。制度のメリットが生かされていないという指摘もあります。担当者申請から承認に至るまで約2年かかっている点は、迅速なアクセスに至っていないという批判があること、承認されたらすぐアクセスできるものでもないことはご指摘の通りです。しかし、品質をないがしろにしてよいかは別問題で、本品はその点はまだ改善しなければならない点があり、すぐに出荷は認められない背景事情があります。―3月の審議時点とデータ的には変化はないが、厚労省とPMDAの考え方が変わったということですか?担当者追加のデータはあり、それを評価したうえで今回ご審議いただいたので、3月時点から今回の審議品目のデータには差はあります。―3月の審議時点と具体的に何が変わって条件付き承認を認めたのでしょうか?担当者繰り返し申し上げたとおり、3月時点ではなかったデータが今回追加で提出されておりますので、それを含めて評価をした結果、条件付き承認かつさらにこちらが求めたデータの提出とそれに伴う一変申請による承認までは出荷してはならないという条件付き承認を与える対応が妥当、という判断をさせていただきました。―承認しないのと、今回のように一旦は承認して承認条件をつけて実際に出荷できないのは、どのような違いがあるのでしょうか?担当者いずれの場合でもデータ収集のタスクが課せられることは変わりありません。本品の場合、患者のもとに迅速に届ける目的を達成するためにどのような方策が取れるかについて、厚労省とPMDAともさまざまな方策を考えました。その結果、承認前に収集することと承認後に収集することを比べた際、承認後のほうがサンバイオ社の実行可能性が高いと判断し、今回の措置を取りました。―追加データで同等性/同質性を確認できないものの、3月時点よりは科学的に同等性/同質性の確認により近づいたという判断だったのでしょうか?(筆者)担当者結論だけを見れば、同等性/同質性の確認ができない点は変わりませんが、追加データを評価した結果、一定の評価をできるという点が違いとしてあり、同等性の確認のレベルにより近づいたかと言えば微妙ながら近づいた、とご理解をいただければと思います。―承認後にデータ提出を求めたほうがよいという判断根拠はなんでしょうか?(筆者)担当者先ほどから繰り返し申し上げているとおりなんですが、この件はサンバイオ社が主語となりますので、具体的な内容については主体のサンバイオ社にご確認をお願いします。―承認後のほうがデータ収集しやすいというのはサンバイオ社が申し出たのでしょうか?(筆者)担当者さまざまなオプションを検討する中で、承認後のほうがデータを集めやすいということを議論の中で行政側とも合意をしました。記者レクの中で担当者も「異例」の言葉を使っていたが、今まで何か特殊な条件で承認された薬としたら、私の中で浮かぶのは本連載でも取り上げた抗インフルエンザ薬のファビピラビル(商品名:アビガン)くらいだ。とはいえ、アビガンのケースは催奇形性を警戒して通常出荷としなかっただけで、今回のように「承認されたけど、今の時点ではいかなる手段でも使えない」状況とは違う。この記事出稿後、同社はプレスリリースで、今後2回程度の市販品製造を行い、同等性/同質性を確認すること、出荷可能時期は2026年1月期第1四半期を想定している旨を公表した。今後、SB623ことアクーゴはどうなるのだろうか?

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フェンタニル貼付薬はハサミで切らないで!【非専門医のための緩和ケアTips】第78回

第78回 フェンタニル貼付薬はハサミで切らないで!「フェンタニル」は、貼付薬として処方できる唯一のオピオイドですが、そのユニークな投与経路ゆえの注意点もあります。われわれ医療者にとっては当たり前でも、患者さんや家族は知らずに危険な行動をとっているかもしれません。今回の質問先日、高齢のがん患者さんにフェンタニル貼付薬を処方しました。嚥下機能が低下して内服が負担になっていたため、切り替え自体は喜んでもらえました。ところが、次の外来で診察したところ、薬剤を半分に切って貼付していました。聞くと「痛みがなくなってきたし、もったいないから湿布のように半分に切って使いました」とのことでした…。嚥下機能が低下した患者さんで疼痛コントロールが安定している場合、フェンタニル貼付薬は良い適応です。ただ、今回の質問のように「切って使ってはいけない」といった注意点があります。フェンタニルは、脂溶性のオピオイドであることが特徴です。経皮吸収されるため、貼付薬があるのですね。貼付薬としては、腰痛や膝痛などに用いられる湿布薬が最も一般的でしょう。そして、湿布薬に慣れ親しんだ高齢者にとって、貼付薬は錠剤よりも親しみやすいかもしれませんが、その分、湿布薬とは異なる点が見落とされがちです。フェンタニル貼付薬は、貼付薬といえどもれっきとしたオピオイドであり、過量投与にならないよう、薬剤の放出・吸収量が厳密に設計されています。正しく使わないと理論上の投与量が狂ってしまい、過量投与と重篤な有害事象につながります。そして、添付文書の「適用上の注意」には、「本剤をハサミ等で切って使用しないこと」と明記されています。ハサミで切ると、切断面から薬剤が漏出し、予想外に多くの薬剤が経皮吸収される可能性があります。今回の患者さんの「もったいないから半分に切った」というのは、湿布薬でよく見かける状況ですが、おそらく湿布薬であっても望ましくはないでしょう。ましてや今回のフェンタニル貼付薬の場合、過量投与のリスクにつながるのは言うまでもありません。フェンタニル貼付薬の使用上の注意点としては、「貼付後に身体を温めない」というものもあります。添付文書には「警告」扱いで「本剤貼付部位の温度が上昇するとフェンタニルの吸収量が増加し、過量投与になり、死に至る恐れがある。本剤貼付中は、外部熱源への接触、熱い温度での入浴等を避けること。発熱時には患者の状態を十分に観察し、副作用の発現に注意すること」としています。貼ったまま長時間の熱いお湯に入浴したり、こたつに入ったりすることは厳禁です。「貼付薬」というと気軽に使えるように思われがちですが、フェンタニル貼付薬はその特性上、患者さんが安全に使用できるよう、薬剤師と協力してしっかり指導する必要があります。皆さんの施設でも適切な指導ができているか、振り返ってみましょう。今回のTips今回のTipsフェンタニル貼付薬の注意点を理解し、処方の際はきちんと指導しよう。

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最初の数分で患者の情報を系統立てて収集する【こんなときどうする?高齢者診療】第2回

外来で1人の患者に割ける診察時間は何分ありますか?今回は限られた時間の中で高齢者の健康問題の情報を効率的に得る方法「DEEP-IN」を紹介します。こんな場面を想定してみてください。90歳男性。独居。既往歴は安定した高血圧と糖尿病。前医の退職に伴い、新しいかかりつけ医を求めて新規患者枠で外来にやってきました。診察に使える時間は5分です。高齢者診療の原則は「老年症候群があるという前提で診療する」ことです。患者の老年症候群を把握すると、疾患の治療だけでなく、同時にQOL/ADLの維持・向上への次の一手を考えることができるようになります。包括的高齢者アセスメント(Comprehensive Geriatric Assessment ; CGA)は優れたツールですが、まとまった時間を十分にとることのできない外来で使うのはあまり現実的ではありません。そこで短時間で高齢者アセスメントができる型、簡易高齢者アセスメントを活用してみてはいかがでしょうか。簡易高齢者アセスメントの型は、高齢者にコモンに生じる項目の頭文字をとり「DEEP-IN」と覚えます。順番にDementia, Depression, Delirium, Drugs(認知機能、抑うつ、せん妄、服薬状況)、Eye(視力)、Ear(聴力)、Physical function・Fall(身体機能、転倒)、Incontinence(失禁)、Nutrition(栄養状態)です。この型は、短時間で高齢者の診療とケアに必要な情報が得られるよう、とくに「身体・認知機能」と日々の自立生活に必要な項目に注目して設計されています。DEEP-INで患者の情報を効率的に収集する各項目でどのようなことを聞くか、例をみてみましょう。D(認知機能)診察当日の曜日や家族・お孫さんの名前や年齢。これらで大まかな認知能力をアセスメントできます。E&E(視力・聴力)眼鏡や補聴器の使用有無だけでなく、テレビや電話が使いにくくなっていないか、と日々の生活からも情報を収集することができます。P(身体機能)毎日の生活で○○するのが難しい、不安、ということはないか。例えば着替えや洗濯、買い物などです。独居であれば入浴について聞くのがおすすめです!衣服の着脱、浴槽をまたぐ、水・お湯の温度を設定するなど、複雑な動作が数多く含まれている入浴という行為。これに問題や不安がなければ、ほかの日常生活動作も大丈夫というアセスメントも可能でしょう。I(失禁)多くの高齢者の方が悩まれている失禁ですが、これまで一度も聞かれたことがない、ということも珍しくありません。血圧が心配で来たのに、「尿失禁」について急に聞かれると驚く方もいます。デリケートな話題なので聞き方には配慮しましょう。「○○さんのお年になると悩む方も多いのですが」といった一言を添えると答えやすくなります。N(栄養状態)衣服やベルトのサイズ変化、1年間の体重変化や食事内容などが聞けるとGoodです!さて、DEEP-INの型を使って問診したところ、次のような情報が得られました。90歳男性。独居。安定した高血圧と糖尿病D:今日の曜日が言える。孫の名前と年齢を覚えている。しかし服薬記憶はあいまい。お薬手帳は所持。服用している薬の中に、副作用リスクが高い薬がある(NSAIDs、ベンゾジアゼピン、抗ヒスタミン薬が配合された総合感冒薬、抗アレルギー薬を常用)、複数の保険薬局を使用している。E&E:眼鏡と補聴器が欠かせない。眼鏡は2焦点レンズ1)。補聴器は耳掛け式。P:ADLはほぼ自立しているものの、入浴時に転倒の不安がある。直近12ヵ月で転倒歴はない。しかし外出時は杖を使用。I:尿便失禁なし。夜間頻尿もなし。N:1年で5kgの体重減少(これまで誰にも相談したことはない)。ベルトサイズ、時計のバンドサイズの変化、食欲低下あり。いかがでしょうか。「高血圧症、糖尿病」と疾患名だけでは焦点が定まっていなかった患者像の解像度がグッと高くなったと思いませんか?これだけの情報が得られれば、高血圧と糖尿病への処方だけでなく、自立した生活・QOLを向上させるような健康増進介入も可能です。今回は転倒リスクに注目してみましょう。赤字の項目すべてが転倒リスクにつながるため、介入策はないか考えてみましょう。介入の方法としては、(1)転倒につながる副作用がある薬剤の減薬・中止を検討する(2)視力検査と単焦点レンズの眼鏡への変更の2点は比較的簡単にできるのでは、と考えます。2焦点レンズの眼鏡の下部は近距離用に焦点があわせてあるため、足元を見たときに視界がぼやけて遠近感がつかみにくいため転倒のリスクが高まります。単焦点眼鏡への変更を提案してもいいでしょう。1回の問診で網羅できなくても、すべての健康問題を解決できないとしても、焦る必要はありません。これらの項目はさまざまな医療職の方でも情報収集が可能で、医師よりも聞きやすい、聞きなれていることも多いのではないでしょうか。例えば看護師の方に失禁に関して聞いていただくなど、ぜひチームで役割分担、情報共有してみてください。患者の日々の生活が鮮明に想像できるようになります。本人から情報を得られないときは?高齢者の診療においては、患者本人から情報が得られない状況によく遭遇します。その際は、身体診察から情報を得る、年齢・性別といった疫学的視点から頻度の高い症状・徴候を推測してみましょう。これは老年症候群を知っておくことにほかなりません! 医師で在宅医療に携わるサロンメンバーは、患者本人から情報が得られないときには「●歳をすぎたら、突然具合が悪くなって救急車に乗ることがあるかもしれません。そうなったときにすぐに対処できるように、子どもさんにお薬や治療のことを知ってもらっているんですよ」と声掛けをして、家族の同席を促すそうです。身内がいない方であれば地域包括支援センターとの連携を促すなど、どんな形であっても第3者の目を入れることがポイントです。この声掛けには老年医学で大切にしている、高齢者へのかかわり方のコツが詰まっています。1つめはノーマライゼーション。「●歳を過ぎたら皆さんそうしていますよ」と患者と同年代の人の多くがそうしていると伝えると心理的ハードルが下がります。2つめは「救急車に乗るかもしれない」という言い方で、予後予測を共有していること。患者と予後予測を共有するのは非常に重要ですが、受け入れがたい方が多い話題でもあります。このケースは今すぐに起こることではないが起こってもおかしくない話なので、患者が恐れを持ちづらいのがポイントです。そして最後に、「子どもさんに知ってもらっているんですよ」という締め方。どうしますか?と患者に選択させるのではなく、医療者としてのお勧めをデフォルトで提示すること。これで患者の意思決定ストレスを減らしています。いずれも患者に恥ずかしさや恐怖を与えない配慮が素晴らしいです。これらは高齢者にかかわるときあらゆる場面で役に立ちます。DEEP-INとともにぜひ診療で使ってみてください!参考1)多焦点レンズの使用は遠近感や周囲視野の視力を低下させ、転倒のリスク上昇と関連するといわれている。Lord SR,et al. J Am Geriatr Soc. 2002 Nov;50(11):1760-1766.

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片頭痛予防の再定義、抗CGRPモノクローナル抗体による早期治療が治療反応を強化

 片頭痛予防に承認されている抗CGRPモノクローナル抗体による治療は、患者によって治療反応が異なり、多くの国では費用償還(reimbursement)ポリシーがあるため、治療が妨げられることもある。スペイン・Vall d'Hebron HospitalのEdoardo Caronna氏らEUREkA study groupは、6ヵ月間の抗CGRP抗体に対する良好/優良な治療反応およびそれに関連する臨床的因子を調査するため、本研究を実施した。Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry誌オンライン版2024年5月22日号の報告。 本研究は、2018年3月以降に抗CGRP抗体による治療を行った高頻度の反復性片頭痛または慢性片頭痛患者を対象とした欧州の多施設共同プロスペクティブリアルワールド研究である。良好/優良な治療反応の定義は、6ヵ月後の1ヵ月あたりの頭痛日数(MHD)の減少がそれぞれ50%以上、75%以上とした。治療反応と独立して関連する変数を特定するため、一般化混合効果回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、5,818例(女性の割合:82.3%、年齢中央値:48.0歳[40.0〜55.0])であった。・ベースライン時のMHD中央値は20.0日/月(14.0〜28.0)、慢性片頭痛と診断された患者は72.2%であった。・6ヵ月後、良好な治療反応が認められた患者は56.5%(4,963例中2,804例)、優良な治療反応が認められた患者は26.7%(4,963例中1,324例)であった。・一般化混合効果回帰モデルでは、良好な治療反応を予測する因子として次の因子が検出された(AUC:0.648、95%信頼区間[CI]:0.616〜0.680)。●高齢(1.08、95%CI:1.02〜1.15、p=0.016)●片側痛(1.39、95%CI:1.21〜1.60、p<0.001)●うつ病あり(0.840、95%CI:0.731〜0.966、p=0.014)●1ヵ月あたりの片頭痛日数の減少(0.923、95%CI:0.862〜0.989、p=0.023)●ベースライン時のMigraine Disability Assessmentの低さ(0. 874 、95%CI:0.819 〜0.932、p<0.001)・上記の因子は、良好な治療反応の予測因子でもあった(AUC:0.691、95%CI:0.651〜0.731)。・一般化混合効果回帰モデルでは、性別は重要な因子ではなかった。 著者らは、「片頭痛の頻度が高く、ベースライン時の障害が大きい場合、抗CGRP抗体に対する治療反応が低下する可能性が、大規模リアルワールド研究において明らかとなった。治療を成功させる可能性を最大限にするためには、早期治療が必要であることが示唆された」としている。

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NSCLC患者への周術期ペムブロリズマブ、QOLの評価(KEYNOTE-671)/ASCO2024

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象としたKEYNOTE-671試験では、術前補助療法としてペムブロリズマブ+化学療法、術後補助療法としてペムブロリズマブを用いた場合、術前補助療法として化学療法を用いた場合と比較して、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)などが有意に改善したことが報告されている1)。今回、本試験における健康関連QOL(HRQOL)の解析結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で、イタリア・Fondazione IRCCS Istituto Nazionale dei TumoriのMarina Garassino氏より発表された。 KEYNOTE-671試験では、対象患者797例を以下のとおり試験群と対照群に1対1で無作為に割り付けた。・試験群(397例):ペムブロリズマブ200mg+化学療法(シスプラチン[75mg/m2]+ゲムシタビン[1,000mg/m2を各サイクル1、8日目]またはペメトレキセド[500mg/m2])を3週ごと最大4サイクル→手術→ペムブロリズマブ200mgを3週ごと最大13サイクル・対照群(400例):プラセボ+化学療法(同上)を3週ごと最大4サイクル→手術→プラセボを3週ごと最大13サイクル HRQOLの変化は副次的評価項目であり、患者はベースライン、術前補助療法フェーズ(手術前最後の受診時)、術後補助療法フェーズ(術後補助療法の1~4、7、10、13サイクル目)、術後補助療法後のフォローアップ期間中に、EORTC QLQ-C30およびQLQ-LC13の調査票に回答した。 主な結果は以下のとおり。・調査票への回答率は、両群ともに術前補助療法フェーズの11週目で87%以上(コンプライアンス87%以上)、術後補助療法フェーズの10週目で62%以上(コンプライアンス92%以上)であった。・ベースラインから術前補助療法フェーズの11週目までの変化および術後補助療法フェーズの10週目までの変化は、QLQ-C30の全般的な健康状態/QOL、機能尺度(身体、役割)、症状尺度/項目(呼吸困難)、QLQ-LC13の症状尺度/項目(咳、胸痛)において、両群間に差はなかった。・QLQ-C30の全般的な健康状態/QOL、機能尺度(身体、役割)は両群ともに術前補助療法フェーズで低下が認められたが、術後補助療法フェーズでおおむねベースラインレベルまで上昇した。 Garassino氏はKEYNOTE-671試験におけるHRQOLの結果について「OSとEFSの改善、新たな安全性シグナルが認められなかったことと併せて、術前および術後補助療法におけるペムブロリズマブの使用が新しい標準治療であることを裏付けている」とまとめた。

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スタチンにEPA併用、日本人の心血管イベント再発予防効果は?/Circulation

 スタチン治療を受けている慢性冠動脈疾患の日本人患者で、エイコサペンタエン酸/アラキドン酸(EPA/AA)比の低い患者において、高純度EPAのイコサペント酸エチルによる心血管イベント再発予防の可能性を検討したRESPECT-EPA試験で、心血管イベントリスクは数値的には減少したが統計学的有意差は認められなかった。一方、冠動脈イベントの複合は有意に減少した。順天堂大学の宮内 克己氏らがCirculation誌オンライン版2024年6月14日号で報告。 本試験はわが国の前向き多施設共同無作為化非盲検試験である。スタチン投与中の慢性冠動脈疾患でEPA/AA比が低い(0.4未満)患者を、通常治療による対照群とイコサペント酸エチル(1,800mg/日)を併用するEPA群に割り付けた。主要エンドポイントは、心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳梗塞・不安定狭心症・冠血行再建術の複合とした。冠動脈イベントの副次複合エンドポイントは、心臓突然死・致死性および非致死性心筋梗塞・緊急入院を要し冠血行再建術を必要とした不安定狭心症・臨床所見に基づく冠血行再建術の複合とした。 主な結果は以下のとおり。・国内95施設で3,884例が登録され、うち2,506例がEPA/AA比が低く、1,249例がEPA群、1,257例が対照群に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値5年で、主要エンドポイントはEPA群では1,225例中112例(9.1%)、対照群では1,235例中155例(12.6%)に発生した(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.62~1.00、p=0.055)。・冠動脈イベントの複合は、EPA群で有意に少なかった(6.6% vs.9.7%、HR:0.73、95%CI:0.55~0.97)。・有害事象に差はなかったが、心房細動の新規発症がEPA群で有意に高かった(3.1% vs.1.6%、p=0.017)。 著者らは「これらの結果を総合すると、スタチン治療を受けている慢性冠動脈疾患でEPA/AA比の低い患者において、イコサペント酸エチルが将来のイベントを軽減するという臨床的意義を有する可能性が示唆される」としている。

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学校健康診断に関する報道についての見解/日医

 2024年6月に群馬県みなかみ町の小学校で行われた健康診断において、医師が本人や保護者の同意を得ずに児童の下半身を視診していたことが明らかになり、学校健康診断に関する報道が過熱している。そこで、日本医師会常任理事の渡辺 弘司氏が、6月19日の定例記者会見で、日本医師会としての学校健康診断に関する見解を明らかにした。 まず、渡辺氏は、「学校健康診断のマニュアルである『児童生徒等の健康診断マニュアル』には、健康診断時に注意すべき疾病および異常として思春期早発症への言及がある。当該医師は小児内分泌の専門医であり、医学的に診察を行ったことの妥当性はある」としつつ、「一般的な学校健康診断では、児童・生徒全例に第2次性徴の診察を実施することは想定されていないことから、事前に保護者に説明する必要があった。学校設置者・学校・学校医の連携や共通認識が必要だったのではないか」と述べた。 学校健康診断の目的は、学校生活を送るに当たり支障があるかどうかについて疾病をスクリーニングし、健康状態を把握することであり、通常の診療とは状況も場所も異なる。そのため、「懸念される疾病などをその場で確認しなければならないという気持ちがあったとしても、子供のプライバシーにしっかりと配慮しながら学校検診を行わなければならないとあらかじめ理解する必要があった」と指摘するとともに、「法令に定める項目以外の検診項目を実施する場合やプライバシーや心情に関わるような場合では、事前に学校を介して保護者に説明し、同意を得る必要がある」と強調した。 最後に、「5月に発刊した『学校医のすすめ そうだったのか学校医』の活用を含め、学校医業務で配慮すべき内容を理解してもらえる仕組みが必要。文部科学省とも協議してできるだけ早く対応を進める」と述べ、児童・生徒、保護者が安心して学校健康診断を受けることができるよう、関係者と連携して取り組むことを明らかにした。

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再発難治性多発性骨髄腫、belantamab mafodotin上乗せの有用性/NEJM

 レナリドミド治療歴のある再発または難治性の多発性骨髄腫患者において、belantamab mafodotin+ポマリドミド+デキサメタゾン(BPd)併用療法はポマリドミド+ボルテゾミブ+デキサメタゾン(PVd)併用療法と比較し、無増悪生存期間(PFS)の有意な改善と、より深く持続的な奏効が得られることが示された。眼関連有害事象の発現率は高かったが、belantamab mafodotinの用量変更によって管理可能であった。ギリシャ・アテネ大学のMeletios Athanasios Dimopoulos氏らDREAMM-8 Investigatorsが、18ヵ国95施設で実施された無作為化非盲検第III相試験「DREAMM-8試験」の結果を報告した。プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、抗CD38抗体を組み合わせた3剤または4剤併用療法により、未治療多発性骨髄腫患者の生存期間は延長したが、初回治療におけるレナリドミドの使用により初回再発時にレナリドミド耐性患者が増加していた。NEJM誌オンライン版2024年6月2日号掲載の報告。主要評価項目はPFS 研究グループは、レナリドミドを含む少なくとも1種類以上の治療歴があり、直近の治療中または治療後に病勢進行が確認された再発または難治性の多発性骨髄腫患者を、BPd併用療法群およびPVd併用療法群に1対1の割合に無作為に割り付けた。 BPd併用療法群では28日間を1サイクルとしてポマリドミドおよびデキサメタゾンとの併用で、belantamab mafodotinをサイクル1のDay1に2.5mg/kgを、サイクル2以降は各サイクルのDay1に1.9 mg/kgを静脈内投与した。PVd併用療法群では21日間を1サイクルとしてポマリドミドおよびデキサメタゾンとの併用で、ボルテゾミブ1.3mg/m2をサイクル1~8はDay1、Day4、Day8、Day11に、サイクル9以降はDay1およびDay8に皮下投与した。 主要評価項目はPFSで、無作為化した日からInternational Myeloma Working Group 2016に基づく独立評価委員会による評価で、最初に病勢の進行が確認された日または全死因死亡までの期間と定義した。重要な副次評価項目は全生存期間(OS)、微小残存病変(MRD)陰性率、奏効期間、その他の副次評価項目は患者報告の健康関連QOL、安全性などであった。12ヵ月PFS推定率BPd併用療法群71% vs.PVd併用療法群51% 2020年10月~2022年12月に302例が無作為に割り付けられた(BPd併用療法群155例、PVd併用療法群147例)。 追跡期間中央値21.8ヵ月(範囲:<0.1~39.2)において、BPd併用療法群はPVd併用療法群と比較しPFSの有意な延長が認められた(ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.37~0.73、両側p<0.001)。PFS中央値はBPd併用療法群では未到達、PVd併用療法群では12.7ヵ月(95%CI:9.1~18.5)であり、12ヵ月PFS率推定値はBPd併用療法群71%(95%CI:63~78)、PVd併用療法群51%(42~60)であった。 OSのデータは未成熟であった。全奏効率(部分奏効[PR]以上)はBPd併用療法群77%(95%CI:70~84)、PVd併用療法群72%(64~79)であり、完全奏効(CR)以上はそれぞれ40%(95%CI:32~48)、16%(11~23)で認められた。CR以上の患者におけるMRD陰性化率はBPd併用療法群24%(95%CI:17~31)に対し、PVd併用療法群は5%(95%CI:2~10)であった。 Grade3以上の有害事象はBPd併用療法群94%、PVd併用療法群76%に発現した。眼関連有害事象の発現率はそれぞれ89%(Grade3/4は43%)、30%(同2%)であった。BPd併用療法群の眼関連有害事象はbelantamab mafodotinの用量変更により管理可能であったが、9%の患者が眼関連有害事象により治療を中止した。

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重症敗血症へのβ-ラクタム系薬、持続投与vs.間欠投与~メタ解析/JAMA

 敗血症または敗血症性ショックでICUに入院中の重症成人患者において、β-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与は間欠点滴投与と比較し、90日死亡リスクの低下と関連していることが、オーストラリア・クイーンズランド大学のMohd H. Abdul-Aziz氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果で示された。β-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与が、敗血症または敗血症性ショックの重症成人患者において臨床的に重要な転帰を改善するかどうかはわかっていなかった。著者は、「今回の結果は、臨床医が敗血症および敗血症性ショックの管理における標準治療として持続点滴投与を考慮すべきことを示している」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年6月12日号掲載の報告。システマティックレビューとメタ解析で、90日全死亡率を比較 研究グループは、敗血症または敗血症性ショックの重症成人患者を対象にβ-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与と間欠点滴投与を比較した無作為化臨床試験について、データベース開始から2024年5月2日までに公表された論文を、言語を問わずMEDLINE(PubMed経由)、CINAHL、Embase、Cochrane Central Register of Controlled TrialsおよびClinicalTrials.govを用いて検索した。 2人の研究者が独立してデータ抽出を行い、バイアスリスクを評価。エビデンスの確実性は、GRADEアプローチを用いて評価した。主要統計的手法としてベイジアンフレームワークを、二次的手法として頻度論的フレームワークを用いた。解析にはランダム効果モデルを用い、リスク比または平均差としてプール推定値を求めた。 主要アウトカムは90日全死因死亡率、副次アウトカムはICU死亡率、臨床的治癒率などであった。持続点滴投与で90日全死因死亡リスクが低下、エビデンスの確実性は高い 敗血症または敗血症性ショックの重症成人9,108例を含む計18件の無作為化試験が解析に組み入れられた。全体の患者背景は、年齢中央値54歳(四分位範囲[IQR]:48~57)、男性5,961例(65%)であった。18試験のうち17試験(9,014例)より主要アウトカムのデータが提供された。 β-ラクタム系抗菌薬の間欠点滴投与と比較して持続点滴投与の90日全死因死亡率のリスク比は0.86(95%信用区間[CrI]:0.72~0.98、I2=21.5%、エビデンスの確実性:高)であり、持続点滴投与が90日全死因死亡率の低下と関連している事後確率は99.1%であった。 β-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与は、ICU死亡リスクの低下(リスク比:0.84、95%CrI:0.70~0.97、エビデンスの確実性:高)および臨床的治癒率の増加(リスク比:1.16、95%CrI:1.07~1.31、エビデンスの確実性:中)とも関連していた。

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オンライン特定保健指導、減量効果は対面に劣らない

 2020年度に特定保健指導を受けた人のデータを用いて、オンライン面接と対面面接の効果を比較する研究が行われた。その結果、翌年までのBMI変化量に関して、オンライン面接は対面面接に劣らないことが明らかとなり、特定保健指導にオンライン面接を活用することの有用性が示唆された。帝京大学大学院公衆衛生学研究科の金森悟氏、獨協医科大学研究連携・支援センターの春山康夫氏らによる研究であり、「Journal of Occupational Health」に5月10日掲載された。 特定健康診査(特定健診)・特定保健指導は、40~74歳の人を対象に、メタボリックシンドロームの予防や解消を目的として実施される。新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、オンラインで特定保健指導を行う機会が増えたが、特定保健指導後の体重減量効果について、オンライン面接と対面面接で差があるのかどうかは分かっていなかった。 そこで著者らは、デパート健康保険組合に加入する被保険者の特定健診・特定保健指導データを用いた縦断研究を行った。対象者は、2020年度(2020年4月~2021年3月)にオンライン面接または対面面接による特定保健指導を受け、次年度に特定健診を受けた人1,431人(前年度の初回面接から90日以内の人は除外)とした。特定保健指導は保健師または管理栄養士が行い、動機付け支援の対象者には30分の初回面接、積極的支援の対象者には30分の初回面接後、継続して1、2、3カ月後に20分間の電話面接を行った。 オンライン面接を受けた人は455人(平均年齢49.9歳、男性47.0%)、対面面接を受けた人は976人(同51.1歳、同50.3%)だった。BMIは、オンライン面接群ではベースライン時の27.68から次年度の特定健診時は27.48に低下し、対面面接群では27.61から27.42に低下していた。 BMIの変化を目的変数、面接方法を説明変数とし、傾向スコアを用いた逆確率重み付け推定法で統計学的に解析した結果、オンライン面接は対面面接と比較して劣っていないことが明らかとなった。具体的には、BMIの変化量の差は-0.014(95%信頼区間:-0.136~0.129)で有意差はなく(P=0.847)、この信頼区間の上限は、事前に検討した非劣性マージン(対面面接と比べてBMIの低下量が劣っていないと許容できる上限)の0.175を下回っていた。 以上から著者らは、「特定保健指導において、オンライン面接でも減量効果は変わらないことが示唆されたことから、オンライン面接の活用可能性を広げることができると考えられる」と述べている。また、時間やアクセスの制約を減らすことができるため、オンライン面接を積極的に利用することで、特定保健指導の実施率が高まる可能性があることを付け加えている。

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DPP-4阻害薬と良い関係の食材があります(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師なかなか血糖が下がらないんですよね。(DPP-4阻害薬服用者からの相談)それなら、いい方法がありますよ! この薬(DPP-4阻害薬)は、青魚をよく食べている人に効果が高いみたいです。患者 えっ、そうなんですか! 最近、お肉ばかり食べていました。どのくらい食べたらいいですか?医師 そうですね、たとえばサバ缶(約200g)なら、半分の量を週に3回くらいからスタートしてみてはいかがでしょう?患者 なるほど。焼いたり、揚げたりしてもいいですか?画 いわみせいじ医師 焼くと2割、揚げると5割くらい良質な油(EPA[エイコサペンタエン酸]やDHA[ドコサヘキサエン酸]など)が失われるので、お刺身や蒸し料理がお勧めです。患者 なるほど、わかりました。さっそく買って帰ります!(うれしそうな顔)ポイント青魚を勧める際は、1回に食べる量(約90g)、頻度(週3回以上)、調理法(生>蒸す>焼く>揚げる)などについて補足しましょう。Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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