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早期アルツハイマー病におけるレカネマブの安全性〜第III相試験

 アルツハイマー病(AD)は、世界における医療制度、患者、家族に多大な負担を強いる高齢化に伴う主要な健康問題である。早期ADに対しFDAが承認しているアミロイドベータ(Aβ)標的抗体であるレカネマブは、可溶性Aβ凝集体に高い親和性を示す薬剤である。一方、可溶性Aβ凝集体は、単量体や不溶性フィブリルよりも神経毒性が高いことが示唆されている。レカネマブは、複数の臨床試験において、忍容性が良好であると報告されているが、プラセボと比較し、アミロイド関連画像異常(ARIA)および注射部位反応の発生リスクが高いことが問題となる。米国・コロンビア大学のLawrence S. Honig氏らは、早期アルツハイマー病におけるレカネマブの安全性について、第III相試験であるClarity AD試験の結果を報告した。Alzheimer's Research & Therapy誌2024年5月10日号の報告。 Clarity AD試験は、早期AD患者を対象に18ヵ月のレカネマブ治療の有効性、安全性を評価した多施設共同二重盲検プラセボ対照並行群間試験(コア試験)であり、非盲検延長試験(OLE試験)が実施された。対象患者は、レカネマブ群(レカネマブ10mg/kg隔週投与)またはプラセボ群に1:1でランダムに割り付けられた。安全性の評価には、バイタルサイン、身体検査、有害事象、臨床検査パラメータ、12誘導心電図モニタリングを含めた。ARIAの発生は、研究全体を通じMRIにより局所と中央の両方でモニタリングを行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、コア試験参加者1,795例およびレカネマブを1回以上投与した1,612例(コア試験+OLE試験)。・Clarity AD試験では、おおむね忍容性が良好であり、コア試験におけるレカネマブ関連の死亡例はなかった。・OLE試験の死亡例は9例であり、そのうち4例は試験治療に関連する可能性があると判断された。・コア試験+OLE試験における死亡例は24例であり、そのうち脳出血(ICH)は3例であった。コア試験ではプラセボ群で1例、OLE試験ではレカネマブ群で2例(組織プラスミノーゲン活性因子:1例、抗凝固療法中:1例)のICHが認められた。・コア試験+OLE試験において、レカネマブ群で最も多く認められた有害事象は、注射部位反応(24.5%)であり、次いでヘモジデリン沈着を伴うARIA脳微小出血(16.0%)、COVID-19(14.7%)、浮腫を伴うARIA(ARIA-E:13.6%)、頭痛(10.3%)であった。・ARIA-EおよびARIA-Hは、主にレントゲン画像で軽度〜中程度であった。・ARIA-Eは、一般的に治療後3〜6ヵ月以内で発生し、ApoE e4キャリア(16.8%)でより多く、ApoE e4ホモ接合(34.5%)で最も多かった。 著者らは「レカネマブは、一般的に忍容性が良好であるが、有害事象では注射部位反応、ARIA-H、ARIA-Eが認められた。臨床医、参加者、介護者は、最適なケアを行うためにも、これらのイベントに対するモニタリングやマネジメントについて、より理解する必要がある」としている。

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人間のペニスから初めてマイクロプラスチックを検出

 人間のペニスから7種類のマイクロプラスチックが初めて検出されたことを、米マイアミ大学ミラー医学部のRanjith Ramasamy氏らが、「IJIR: Your Sexual Medicine Journal」に6月19日発表した。この研究では、5点のペニスの組織サンプルのうちの4点でマイクロプラスチックが検出されたという。研究グループは本年5月に人間の精巣から驚くべきレベルのマイクロプラスチックが検出されたことを報告したばかりであった。研究グループは、マイクロプラスチックは主要臓器の細胞や組織に浸潤する可能性があると話している。 Ramasamy氏はCNNの取材に対し、「今回の研究は、人間の心臓の中からマイクロプラスチックが見つかったことを明らかにした先行研究を土台にしている」と述べ、「ペニスは心臓と同様、非常に血管の多い臓器であるため、ペニスからマイクロプラスチックが見つかったことに驚きはなかった」と語っている。 Ramasamy氏らは今回、勃起不全(ED)と診断され、2023年8月から9月の間に陰茎インプラント手術を受けるためにマイアミ大学の病院に入院していた6人の患者から採取したペニスの組織サンプルを用いて、赤外イメージングシステムによる分析を行った。組織サンプルは陰茎体部から採取され、うち5点のサンプルは洗浄済みのガラス器具に保存された。残る1点は、プラスチック容器に保存して対照サンプルとした。 その結果、ガラス器具に保存した5点のサンプルのうちの4点と対照サンプルから7種類のマイクロプラスチックが見つかった。最も多く検出されたのはポリエチレンテレフタレート(PET、47.8%)、次いで多かったのはポリプロピレン(PP、34.7%)であった。また、マイクロプラスチックのサイズは20〜500µmであった。 このような結果を踏まえた上でRamasamy氏は、「今後は、マイクロプラスチックがEDに関係しているのか、病理学的症状を引き起こすレベルはどの程度のものなのか、どのような種類のマイクロプラスチックが病理学的症状を引き起こすのかを明らかにする必要がある」と述べている。 Ramasamy氏は、この研究が「人間の臓器内に異物が存在することについての認識を深め、このテーマをめぐる研究の促進につながる」ことを願っていると付け加えている。同氏はさらに、「われわれは、ペットボトルやプラスチック製の容器から水や食品を摂取することに留意し、今後の研究で病理学的症状を起こし得るレベルが特定されるまでは、そうしたものの使用を制限するよう努めるべきだ」と述べている。 米ニューメキシコ大学薬学部教授のMatthew Campen氏はCNNの取材に対し、「プラスチックが体内の至る所に入り込んでいることを裏付ける興味深い研究だ」と話す。同氏は、「プラスチックは一般的に、人間の体の細胞や化学物質と反応はしないが、勃起や精子の生成に関与する機能を含め、体が正常に機能するためのプロセスに対して物理的に破壊的である可能性はある」と指摘する。 Campen氏は、共著者として参加した人間の精巣に関する研究において、人間の精巣中で検出されたマイクロプラスチックのレベルが、犬の精巣や人間の胎盤で検出されたレベルより3倍高かったことに言及。「われわれは、体内のマイクロプラスチックがもたらし得る脅威にようやく気付き始めたところだ。マイクロプラスチックが不妊症や精巣がん、その他のがんに関与しているのかどうかを明確にするためにも、このテーマに関する研究の急増が必要だ」と述べている。 一方、米国小児科学会(AAP)の食品添加物と子どもの健康に関する政策声明の筆頭著者である、米ニューヨーク大学ランゴンヘルスのLeonardo Trasande氏は、マイクロプラスチックがもたらす脅威が明らかになるまでの間にわれわれがやるべきこととして、「まず、可能な限りステンレスやガラスの容器を使い、プラスチックの使用量を減らすこと。また、乳幼児用の粉ミルクや搾乳した母乳を含め、プラスチック製の容器に入った食品や飲料を電子レンジで温めるのはやめること。さらに、熱により化学物質が溶出する可能性があるので、プラスチックを食器洗浄機に入れないようにすること」とCNNに対して語っている。

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便検査異常所見から6カ月以内の大腸内視鏡追跡検査率は低い

 大腸がん(CRC)のスクリーニング便検査(SBT)で異常があった後、6カ月以内に大腸内視鏡の追跡検査を受ける成人は半数以下であるとする研究結果が、「JAMA Network Open」に3月25日掲載された。 米国医師会(AMA)のElizabeth L. Ciemins氏らは、CRCのSBTで異常が認められた後6カ月以内の大腸内視鏡追跡検査に関する、品質評価指標を開発し検証するため、後ろ向き品質改善研究を実施した。データベース研究で6カ月以内の大腸内視鏡追跡検査率を求めるため、米国の医療機関(HCO)38カ所でCRCの初回SBTを受け、異常所見のあった50~75歳の成人を観察した。 解析の結果、38カ所のHCOにおける対象成人2万581人のうち、47.9%がCRCのSBTで異常結果が出た後6カ月以内に、大腸内視鏡追跡検査を受けていた。HCO間で有意差が見られた。大腸内視鏡追跡検査の受診率が有意に低かったのは、黒人患者(37.1%)とメディケアまたはメディケイドの保険に加入している患者(それぞれ49.2%、39.2%)であった。SBTの異常所見から6カ月以内の追跡検査率を測る品質評価指標は、実行性、有効性、信頼性があると判断された。信頼性統計はHCO間で中央値94.5%であった。 著者らは、「SBTの使用は全体として検診率を向上させるかもしれないが、CRCを診断するためには、理想的にはできるだけ早く、どんなに遅くとも異常な検査結果が出た後6カ月以内に、大腸内視鏡検査で追跡しなければならない」と述べている。 なお1人の著者が、エグザクトサイエンス社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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米国におけるGLP-1RA治療開始後の中止の実態

 米国でGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)による治療を開始した糖尿病または肥満患者のうち、3分の1以上が12カ月でその治療を中止しているという実態が報告された。米エバーノース研究所のDuy Do氏らによる研究の結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に5月24日、レターとして掲載された。 この研究は、2021~2023年の医療情報データベース(Komodo Healthcare Map)を用いて行われた。解析対象は、2型糖尿病または肥満治療のために、医療保険(民間保険、メディケア、メディケイド)を利用してGLP-1RA(デュラグルチド、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド)の処方を受けた18歳以上の患者19万5,915人(平均年齢53.8±12.5歳、女性58.9%)。 GLP-1RAの最初の処方日から3、6、12カ月後の処方状況を把握し、各時点から135日以内に再度GLP-1RAが処方されていなかった場合を、GLP-1RAの処方が中止されたケースと定義した。その間、処方が途切れていた期間があったとしても、断続的に続いていた場合は中止に含めなかった。なお、処方間隔が135日以内という設定は、処方期間の長い(90日)処方箋が全体の5.3%とわずかであり、その90日よりもさらに長く追跡することで、使用が中止に至ったことを厳格に判断するために設定された。 解析の結果、GLP-1RAの中止率は、3カ月時点で26.2%、6カ月時点で30.8%、12カ月時点で36.5%と計算された。12カ月時点の中止率を治療目的別に見ると、肥満のみの患者に対するGLP-1RA処方での中止率が高かった。具体的には、2型糖尿病患者での中止率は35.8%、2型糖尿病と肥満の双方を有する患者での中止率は34.2%と、いずれも3分の1強であるのに対して、肥満のみの患者では50.3%と過半数を占めていた。 ロジスティック回帰分析の結果、2型糖尿病のみの患者を基準として、肥満のみの患者の中止のオッズ比(OR)は1.79(95%信頼区間1.74~1.85)、2型糖尿病と肥満を有する患者はOR0.91(同0.89~0.93)となった。性別に関しては、女性より男性で中止のオッズ比が高かった〔OR1.02(1.00~1.04)〕。年齢に関しては、35歳以上に比し18~34歳の若年層でオッズ比が高く、加入保険については民間保険よりメディケアやメディケイドの場合にオッズ比が有意に高かった。 このほかに、消化器症状の出現〔OR1.04(1.02~1.06)〕や薬剤費自己負担額の高さ〔1%高いごとにOR1.02(1.02~1.03)〕も、中止率の高さと有意に関連していた。また、ベースラインで心不全〔OR1.09(1.05~1.14)〕や心血管疾患〔OR1.08(1.05~1.11)〕を有する場合にも、中止のオッズ比が有意に高かった。一方、慢性腎臓病〔OR1.03(0.99~1.06)〕は有意な関連がなかった。 以上に基づき著者らは、「GLP-1RAの中止には、使用目的の差異や人口統計学的因子が関連している」とまとめている。なお、研究の限界点として、肥満者での中止における減量効果の違いや副作用の関与の程度を詳細に検討できていないこと、および新規GLP-1RAであるチルゼパチドの処方ケースが評価されていないことを挙げている。

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試験紙による簡便な検査でインフルエンザウイルスの種類を判別

 試験紙を用いた簡便で安価な検査によりインフルエンザウイルス感染の有無を調べることができ、さらにその原因となったインフルエンザウイルスの種類まで特定できる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。この検査により、A型とB型のインフルエンザウイルスを区別できるほか、A型インフルエンザウイルス亜型のH1N1やH3N2など、より毒性の強い株をも判別できるという。米プリンストン大学のCameron Myhrvold氏らによるこの研究の詳細は、「The Journal of Molecular Diagnostics」7月号に掲載された。 この検査法は、SHINE(Streamlined Highlighting of Infections to Navigate Epidemics)と呼ばれる、CRISPR-Cas技術を用いたウイルス検出法をベースにしたもの。SHINEは、CRISPR-Cas酵素を利用してサンプル中の特定のウイルスのRNA配列を識別する技術である。研究グループはまず、新型コロナウイルスを検出するために、その後、デルタ株とオミクロン株を区別するためにSHINEを利用した。 次いで研究グループは2022年から、時期を問わず環境中に循環している他のウイルス、特にインフルエンザウイルスの検出にこの技術を適用し始めた。その目的は、ウイルス検査を病院や高価な設備を持つ臨床検査室ではなく、臨床現場で行えるようにすることだった。こうして開発された新たな検査法は、異なるインフルエンザ株(A型とB型)、およびその亜型(H1N1とH3N2)を区別することができる。研究グループが、臨床サンプルを用いてこの検査法の性能を確かめたところ、RT-PCR検査による検査結果と100%の一致度を示したという。 論文の共著者の1人である米マサチューセッツ工科大学(MIT)ブロード研究所のJon Arizti-Sanz氏は、「患者に感染しているインフルエンザウイルスの株や亜型を区別できることは、治療だけでなく、公衆衛生政策にも影響を及ぼす」と述べている。 一方、論文の筆頭著者である米ハーバード大学医学大学院のYibin B. Zhang氏は、「高価な蛍光測定装置の代わりに試験紙読み取り装置を使うことは、臨床医療だけでなく、疫学的サーベイランスの目的においても大きな進歩だ」と述べている。 一般的な診断アプローチであるPCR検査は処理に時間を要する上に、訓練を受けた人員、特殊な機器、試薬を−80°Cで保存するための冷凍庫を必要とする。これに対し、SHINEは室温で実施可能であり、所要時間も約90分と短い。現在、この診断方法で必要となるのは、反応を促進するための安価な加熱ブロックのみだ。研究グループは、処理工程を簡素化して15分で結果を出せるようにすることを目指しているという。Myhrvold氏は、「最終的には、この検査が新型コロナウイルス感染症の検査に使われている迅速抗原検査と同じくらい簡便なものにしたいと思っている」と話している。 研究グループは目下、この検査を、ヒトに感染する恐れのある鳥インフルエンザウイルス株や豚インフルエンザウイルス株を追跡できるように改良しているところだと話している。

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母親のスマホ使用は乳児への語りかけの減少と関連

 母親がスマートフォン(以下、スマホ)を使っているときには、乳児への語りかけが16%減少し、乳児の言語発達に悪影響を及ぼす可能性のあることが、新たな研究で示唆された。1~2分程度の短時間のスマホ使用は、母親の乳児への語りかけをさらに減少させていたという。米テキサス大学オースティン校心理学分野のMiriam Mikhelson氏らによるこの研究結果は、「Child Development」に6月26日掲載された。 Mikhelson氏は、「新米の親へのアドバイスは、スマホの使用が子どものニーズに対応する親の能力に影響するということを認識することだ。子どもにとっては、自分の求めに応じて一貫性のあるケアを受けることが非常に重要だ。しかし、親がスマホに夢中になっていると、そのようなケアを受けにくくなることがある」と話す。 研究グループによると、親のスマホの使用は子どもの言語発達に影響を与える可能性が先行研究で示唆されているという。しかし、これらの研究結果のほとんどは、管理された実験室で親子を観察して導き出されたものである。これに対しMikhelson氏らは今回の研究で、実生活での母子のやりとりと親のスマホ使用との関連を検討した。具体的には、16人の乳児(平均月齢4.1カ月、白人75%、女児63%)に1週間オーディオレコーダーを装着し、その録音データを、1万6,673分に及ぶ親のスマホの使用時間と同期させて、スマホの使用が母親の乳児への語りかけにどのような影響を与えるのかを調べた。 その結果、母親のスマホの使用は乳児への語りかけの16%の減少と関連することが明らかになった。また、長時間の使用に比べて、短時間(1〜2分)の使用の場合には乳児への語りかけが26%減少することも示された。研究グループはこの点について、「長時間のスマホ使用では電話やビデオチャットなどでの会話を伴うことがあるため、乳児が耳にする音声の量が増えるのに対して、短時間のスマホ使用は電子メールのチェックやメッセージの送信のような非言語的な活動が主流となるからではないか」と推測している。 さらに、スマホの使用が母子のやりとりに与える影響は、特定の時間帯(午前9〜10時、正午から午後1時、午後3〜4時)に顕著になることも判明した。Mikhelson氏らは、「これらの時間帯は、食事の時間や、きょうだいが学校や保育園から帰ってくる時間など、母親が子どもと接する機会が多い時間帯と重なる」と指摘している。 研究グループは、「親は、スマホの使用が乳児への対応に与える影響を過小評価している可能性がある」と話している。Mikhelson氏は、「もちろん親の中には、仕事上の義務やその他の責任から、スマホを使わないでいることが難しい人もいるだろう」と一定の理解を示しつつも、「自分の育児の質に不安がある人に対して、われわれは、できる限り子どもに関心を向けるよう努力すること、そして、スマホがその能力をどの程度妨げているかについて自分に正直になることを勧めている」と語っている。そして、「スマホを極力使わないでおこうと思いながらも、ついついスマホを使っていると自覚することが、重要な第一歩だ」と付け加えている。 研究グループは、今後の研究では、メッセージングや電話などの特定のスマホの使用と、食事中や遊びの最中など異なる状況でのスマホの使用が、親の子どもへの語りかけに与える影響を調べる必要があるとしている。

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「孤食」の人は自殺リスクが2.8倍に?

 日本の高齢者4.6万人を7年間追跡し、社会的つながりと自殺との関連を調べたところ、「孤食」の状態にある人は、自殺死亡のリスクが約2.8倍、高かったという推計結果が発表された。日本福祉大学社会福祉学部の斉藤雅茂氏らによる研究であり、「Social Science & Medicine」4月号に掲載された。 日本では依然として、国際的に見て自殺率が高い。社会的孤立の問題が指摘されているが、個人の社会的つながりに関する多様な指標と自殺死亡を検証した研究は少ない。また、日本では50~59歳の年齢層の自殺者数が最も多いが、70~79歳と80歳以上の自殺者数を合計するとそれを上回る。そのような中、高齢者の自殺に関する研究は不足している。 そこで著者らは、日本老年学的評価研究の「健康とくらしの調査」に回答した、北海道・千葉・山梨・愛知・三重・長崎における要介護認定を受けていない65歳以上の人を対象に前向きコホート研究を実施した。2010年にベースライン調査を開始、2017年まで追跡し、死亡した人の死因を人口動態統計に基づいて特定した。 社会的つながりの乏しさの指標については、孤食(一人で食事をすることが多い)、情緒的・手段的サポート授受の欠如(心配事などを聞いてくれる/聞いてあげる人や、病気のときに看病などをしてくれる人/してあげる人がいない)、社会的活動への不参加(ボランティアや趣味などのグループに参加していない)、友人との交流の欠如(知人・友人と会っていない)を調査した。 その結果、解析対象者4万6,144人(女性2万4,710人)のうち、7年間の追跡期間中に55人が自殺した(10万人当たりの年間自殺率は18.96)。社会的つながりが乏しかった人や抑うつ傾向の人では、自殺率が高かった。 ベースライン時の性別、年齢、教育年数、婚姻状態、世帯構成、等価世帯所得、治療疾患の有無の影響を考慮して統計解析を行った結果、孤食状態にあった人は、自殺リスクが2.8倍ほど高いことが明らかとなった(ハザード比2.81、95%信頼区間1.47~5.37)。抑うつ傾向の影響を考慮しても、自殺リスクは約2.5倍だった(同2.49、1.32~4.72)。また、孤食により、年間1,800人程度の高齢者の自殺(年間の高齢自殺者の29%)が生じている可能性があると推計された。 今回の研究結果から著者らは、「孤食による高齢者の自殺は、抑うつ傾向による自殺と比べても無視できない規模といえる」と総括している。また、社会的つながりは可変的なものであるとして、「うつへの対策だけでなく、特に孤食をなくすことは自殺対策において有用であり、自殺リスクの『気づき』のポイントとしても、孤食への対策が有用であることが示唆された」と述べている。

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第219回 解消しない医薬品不足に厚労大臣が放った“迷言”とは?

「それはちょっとないんじゃないの?」と思わず、PCでニュース記事の画面を開きながら口を突いて出そうになった。7月4日に厚生労働大臣の武見 敬三氏がジェネリック医薬品企業(以下、GE企業)13社のトップを呼び、業界再編を促したと報じられたことについてだ。鎮咳薬不足の時も同じように製造企業を厚生労働省(以下、厚労省)に呼んで要請している武見氏に失礼かもしれないが、ややパフォーマンスじみているとしか言いようがない。民業であるGE企業トップを“呼びつけ”て「再編せい!」と号令をかけるのは、国務大臣として越権行為にすら映ってしまう。この日、武見氏は「薬の成分ごとの供給社数は、理想は5社程度」と具体的な数字を挙げている。確かに一つの目安かもしれないが、大臣という立場の人が口にすると一人歩きする懸念もあり、この辺は慎重な発言が求められる。そもそもこの件に関しては、武見氏に限らず、「雨後の筍のごとく存在するGE企業同士が合併してしまえばいいではないか?」と思う人は意外と多いのではないだろうか? だが、これは簡単ではない。以前、CareNeTV LIVEで講演した時にもお話ししたことだが、GE業界は近代経済学の世界でいう「完全競争」状態である。「完全競争」とは主に(1)市場に多数の企業がおり、どの企業も市場価格に影響を与えられない、(2)その市場への新規参入・撤退に障壁がない、(3)企業の提供する製品・サービスが同業他社と同質、の3条件を満たす市場を指している。完全競争市場の最大の特徴は、過当競争の結果、最悪は「企業の超過利潤がゼロ」状態に陥ることだ。再編となると避られない茨の道GE企業では完全競争の主要条件のうち(3)が再編を阻む大きな要因となる。その理由は、GE企業は複数社で同一成分の医薬品を提供しているからだ、たとえば降圧薬アムロジピンを製造するGE企業A社とB社が合併した場合、合併後の新会社がA社ブランドのアムロジピンとB社ブランドのアムロジピンを製造することはあり得ず、どちらかに統一する。よく企業同士の合併では「シナジー(相乗効果)」という言葉が聞かれるが、これは相互補完となるサービス(製品)がある場合のことだ。品目統合が必至のGE企業同士ではこの面でシナジーはほとんどない。しかも、公的薬価制度に則って販売されている医薬品では、重複品目の統合を企業が「一抜けた」的に行えるわけではない。通常、供給停止の場合、企業側は厚労省にまず「供給停止品目の事前報告書」を提出する。ここでは供給停止が医療上の不都合をもたらさないかが判断される。ちなみに事前報告書の提出時点で、製薬企業側は関連学会などから供給停止に関してすでに事前了承を取り付けていることが前提となっている。同報告書上、厚労省が供給停止に問題ないと判断してもことが済むわけではない。実はこの先に日本医師会の疑義解釈委員会があり、ここに厚労省が供給停止希望品目情報を上程し、同委員会に参集する医学系学会の全会一致で供給停止しても差し支えないと決定して初めて供給停止ができるという、やや不思議な慣例がわが国では続いている。同委員会が何をもって供給停止を了承するかの明文規定はなく、一方で従来から「不採算という理由だけで供給停止は認めない」との不文律があると言われる。おそらく国民の目から見ると、厚労省の先に日医の疑義解釈委員会という屋上屋があることは不可解極まりないだろうが、これが慣例なのだ。しかも、こうした手続きの間にさまざまな労力とコスト(金)が発生している。もしGE企業同士が合併するならば、数十~数百品目についてこの作業を行わなければならない。これ以外にも当然ながら企業同士の合併では、給与なども含めた社内制度、ソフト・ハード両面での物流や販売などの社内システムなどの統合も必要だ。製薬企業の場合、取引している医薬品卸が異なれば、その調整も必要である。企業同士の主要取引銀行が異なれば、この点もまとめねばならない。実はこの取引銀行の調整は、合併企業同士の主要取引銀行が都銀や地銀のライバル行同士の場合はかなり難儀な作業となる。また、合併する企業同士が規模に差がある場合、規模の大きい企業のほうが社内管理システムなどにおいて優れていることが多い。率直に言ってしまえば、規模の大きい側からすると、小さい側のシステムや管理部門の人材はほとんど不要と言ってもよい。つまるところ、GE企業同士の合併では、「スクラップ&ビルド」ではなく、「スクラップ&スクラップ」になる。持ち出しコストのほうが上回り、強いて言えば、そのシナジーは工場という製造部門くらいしかない。極端な話、中小GE企業が大手GE企業に買収される場合は、中小側が工場以外の人員整理、金融機関への債務返済、重複品目の薬価削除まで完了して、「あとはどうぞ」と差し出すくらいでなければ、大手側にメリットはほとんどない。しかも、日本の中堅GE企業は売上高で100~200億円くらいの規模はある。これをまともに買収するならば、将来価値の目減り分を折り込んでも、買収金額は最低数十億円になるだろう。しかし、国内大手GE企業の東和薬品や沢井製薬ですら、決算からわかる通り、現預金保有高は300億円に満たない。また、両社とも近年の医薬品供給不足に対応し、金融機関からの借り入れなどで400~500億円規模の工場新設をすでに行っている。これで企業再編を行えというのは無理筋である。厚労省が考える再編モデル、どれがいい?厚労省の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」が5月末にまとめた報告書では、GE企業の協業について、▽大手企業が他の後発医薬品企業を買収し、品目統合や生産・品質管理を集約する等の効率化を実現▽後発品企業が事業の一部または全部を他の企業に譲渡▽ファンドが介在して複数の後発品企業や事業の買収を行って統合▽複数の後発医薬品企業が新法人を立ち上げ、屋号統一化の下、品目・機能を集約・共有、という4つのモデルを示している。しかし、前述のような事情を考えれば、どのモデルも容易ではない。そもそも同報告書では、こうした再編について政府による金融・財政支援などの必要性を強調しているが、これついて具体策はまだ出ていない。冒頭で取り上げた武見氏とGE企業トップとの懇談の場では、武見氏が国として支援策を講じていくとも口にしたらしいが、その支援策を用意したうえで呼びかけるのが筋ではなかろうか?同時に、報じられた記事の中で武見氏が「過度な低価格競争からも脱却する必要がある」と発言した点については、厚労相として形式的には言わねばならないのだろうが、「それ、言う?」と思ってしまった。現行の薬価制度とGE企業の性格上、低価格競争が起こるのは必然である。確かに2024年度薬価改定では、一部の不採算品目の薬価引き上げは行われた。しかし、これは対症療法に過ぎない。もっとも現行の薬価制度の薬価調査に基づく引き下げは仕組みとして理解はできる。これがなければ国民は高止まりの医薬品の入手を強いられることになるからだ。ただ、制度上で必然として起こっていることをGE企業だけのせいにするかのように発言するのは、これまたいかがなものかと思ってしまう。いずれにせよ、今、国に求められているのは業界再編がしやすい支援策の早急な策定である。掛け声だけの再編要請なぞ、国家権力によるパワハラに等しい。そしてこの間にも医薬品不足というツケを払わされているのは患者という名の国民一人一人であることを忘れてほしくはない。

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となりのデキる奴を徹底的にパクれ! 成功の近道は『TTP』にあり【医師のためのお金の話】第82回

TTPをご存じでしょうか? 医師であれば、TTPと来れば血栓性血小板減少性紫斑病を思い浮かべることでしょう。ただ、今回取り上げたかったのは血液疾患のTTPではなく、実社会で使用されているTTPです。一般的にTTPとは「徹底的にパクる」という意味のビジネススラングです。具体的には、優秀な企業が成功している点を徹底的に模倣して、自分たちに取り込んでしまう手法です。TTPは結果を出しやすいため、中小企業だけではなく大企業でも普通に実践されています。そして、偉大な先人の知恵から学ぶTTPは、ビジネスの専売特許ではありません。TTPの考え方や手法は、資産形成でも非常に有効だと思います。実を言うと、私の資産形成手法の多くは、知人の方法を徹底的に模倣したものです。まさにTTPの申し子…。そんなことを言っても、実際どのようにして他人のノウハウをパクったらいいのかわからない人が多いと思います。今回は、私が経験したことをベースにして、資産形成でTTPを利用する手法を考えてみたいと思います。TTPが有用な理由TTP(徹底的にパクる)という手法は、成功している会社のビジネスモデルや戦略を徹底的に分析することから始まります。そして、成功している理由を抽出して、自社に応用することで成功率を高めます。ここでポイントになるのは、中途半端に模倣するだけではダメな点です。とりあえず全部マネして取り組んだうえで、結果が出た段階で少しずつ自分たちにアレンジするステップを踏みます。「徹底的にパクる」ことが大事なのです。他人がすでに成功している手法なので、徹底的にパクることで成功率が上がります。TTPしているにもかかわらず成果が出ないときには、徹底的にパクれていない可能性を考えましょう。何が本当の成功要因なのかは、成功してみなければわからないからです。いまでもウハウハの人はいるの!? 不動産投資のTTP最近では不動産価格が高騰したため、2010年代半ばぐらいまでのように誰もが不動産投資で成功できる状況ではありません。一方、私の身近には、いまでも不動産投資でウハウハの人が一定数存在しています。たとえば、市街化調整区域と市街化区域の価格差を利用したアービトラージ戦略を実践している人です。市街化調整区域とは、市街化を抑制する地域で、原則的に住宅や商業施設の建築を認められていません。極端に利用が制限されているので、土地価格はとても安いです。一方、市街化調整区域の中には、住宅や商業施設を自由に建築できる市街化区域に変更されるケースがあります。別にインサイダーでなくても、市役所や区役所に行けば誰でもその情報にアクセスできます。しかし、ほとんどの人はそんなメンドーなことはしません。ところが多少の苦労を厭わない人は、足繁く役所に通って市街化区域に変更される予定の市街化調整区域を割り出します。そして格安価格で土地を購入して、市街化区域になった暁には高値で売却するのです。私の知人は、この手法を初めて実践した人ではありませんでした。しかし、同じエリアで儲けている不動産投資家をじっくり観察して、徹底的にパクったそうです。身近にいるデキる奴を徹底的にパクることの有用性が分かる一例ですね。著書になったらもう遅い!?徹底的にパクる『TTP』が有用であることはわかりましたが、それなら著書に書いていることをパクる方が簡単だと思う人がいるかもしれません。しかし残念ながら、著書に書いていることを徹底的にパクっても効果は限定的と言わざるを得ません。その理由は、著書にノウハウが書かれて世の中に公開された時点で、すでに効果が賞味期限になっていることが多いからです。このため、徹底的にパクッて成果を出したいのであれば、あまり知られていない身近な成功者を模倣するのがベストなのです。そもそも著書にしてノウハウを公開する目的は慈善事業ではありません。多くの場合、ノウハウを隠しておくよりも、名前を売ってマネタイズする方が得だという判断がはたらいています。つまり、著書になった段階で、そのノウハウは賞味期限になっているのです。卑近な例で恐縮ですが、私は2024年5月に日経BP社から実名で著書を出版しました。わざわざ著書でノウハウを開示した理由は、もちろん慈善事業ではありません。同業他社が絶対に追いつけないレベルまで、自社のブランディングを強力に推し進めるためです。このようにTTPが効力を発揮するのは、著書が出版されていない段階です。私がTTPした事例には、2003年の不動産投資、2014年の太陽光発電、2015年のインバウンド(民泊や簡易宿所)があります。いずれも身近にいるデキる奴を徹底的にパクって収益化しました。そんなことを言っても、身近にデキる奴なんかいないよという声が聞こえてきそうですね。でも本当にそうでしょうか? 各大学に数名は「変な奴」がいるはずです。その中で成功している人をTTPのターゲットにしてみてはいかがでしょうか。

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7月12日 人間ドックの日【今日は何の日?】

【7月12日 人間ドックの日】〔由来〕1954(昭和29)年7月12日、国立東京第一病院(現:国立国際医療研究センター)で初めて「人間ドック」が行われたことから、「人間ドック」の受診を促すことで病気の早期発見につなげ、国民の健康増進に寄与することを目的に日本人間ドック・予防医療学会が制定。関連コンテンツ英語で「健診で来院しました」は?【1分★医療英語】体重が増えたときの症状チェック【患者説明用スライド】体重が減ったときの症状チェック【患者説明用スライド】少し高い血圧でも脳・心血管疾患のリスクは2倍/横浜市大検診で寿命が延びるがんは?

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尿検体の採り方と取り扱い【とことん極める!腎盂腎炎】第4回

尿検査でどこまで迫れる?【前編】Teaching point腎盂腎炎を疑う場合の尿検体は、排尿しながら途中の尿を採取する(排尿は途中で止めない)《今回の症例》70代女性が昨日からの悪寒戦慄を伴う発熱を主訴に救急外来を受診した。いままでも腎盂腎炎を繰り返している既往がある。また糖尿病のコントロールは不良である。腎盂腎炎を疑い尿定性検査を提出したが、白血球反応は陰性、亜硝酸塩も陰性であった。今回は腎盂腎炎ではないのだろうか…?はじめに尿検査はさまざまな要因による影響を受けるため解釈が難しく、尿検査のみで尿路感染症を診断することはできない。しかし尿検査の限界を知り、原理を深く理解すれば重要な情報を与えてくれる。そこで、あえて尿検査でどこまで診断に迫れるかにこだわってみる。今回は、「尿検体の採取方法と検体の取り扱い」「細菌尿と膿尿の定義や原因」について取り上げ、次回、迅速に細菌尿を検知するための検査の詳細を紹介する。1.尿検体の採取方法と検体の取り扱い読者の皆さんは自身がオーダーした尿検体がどのように採取されているか述べることができるだろうか。尿検査を電子カルテの画面でオーダー、その結果を確認するだけになっていないだろうか。尿検査の奥深さは尿検体の採取方法から始まる。基本的には排尿時の最初の数mLは採取せず、排尿しながら途中の尿(=中間尿)を採取する。排尿は途中で止めない。従来は排尿前に陰部を洗浄、清拭することが推奨されていた。しかし成人女性では清拭を省いた中間尿でも、同等のコンタミネーション率という報告(表1)1)などもあり、検体の質を改善しないため、現在は推奨されていない。画像を拡大する女性は陰部を広げて、男性は包皮を後方にずらし外尿道口に触れないようにして中間尿を採取する。中間尿が取れないときは、カテーテル(導尿)で採取する1)。例外として、クラミジア(Chlamydia trachomatis)や淋菌(Neisseria gonorrhoeae)などによる尿道炎を疑った場合は初尿を採取する。また、慢性細菌性前立腺炎を疑った際には、2杯分尿法(前立腺マッサージ前後の尿検体を採取)、もしくは、4杯分尿法([1]初尿10mLを捨てた後の尿、[2]中間尿、[3]前立腺液(中間尿採取後に前立腺マッサージを行い採取)、[4]マッサージ後10mL捨てた後の尿の4検体を採取)も報告されている2)。膀胱留置カテーテルが入っている場合は、蓄尿バッグにたまっている尿ではなく、検体採取用ポートから注射器で採取する。カテーテルのバイオフィルムに定着している菌と、真の感染の菌を区別するため、原則としてカテーテルをいったん抜去もしくは交換して採尿する。とくに2週間以上留置されており、まだカテーテルが必要な患者では交換後の採尿が推奨されている3)。長期(>30日)留置カテーテルのサンプリングポートから採取した尿とカテーテル再挿入後の尿を比べた研究では、前者では平均2菌種が検出され、多剤耐性菌は63%、後者では平均1菌種が検出され、多剤耐性菌は18%であった4)。また、カテーテルの先端培養は環境に生息する菌が検出されるだけなので提出しない。尿培養を行う検体は2時間以内に微生物検査室に搬送する。できない場合は4℃で24時間まで保存可能である。嫌気性菌は通常原因とならないので、嫌気培養を行う必要はない。2.細菌尿と膿尿尿路感染症は症候に細菌尿を組み合わせて臨床診断を行う。そのため尿培養は尿路感染症の診断において極めて重要な検査であるが尿路感染症と診断するための細菌尿の定義は論文によりさまざまである。尿中の細菌が105CFU/mL以上であることが細菌尿の一般的な定義だが、尿路感染症であっても105CFU/mL を下回ることも少なくない。尿路症状を呈する女性の下部尿路感染の診断において105CFU/mL以上では感度は51%のみであり、102CFU/mL以上とすると感度95%、特異度85%となる5)。米国感染症学会の尿路感染症の抗菌薬治療についてのガイドラインでは、女性の場合、膀胱炎で102CFU/mL以上、腎盂腎炎で104CFU/mL以上を採用している6)。コンタミネーションが少ない無症候性の男性の場合、1回の培養であっても103CFU/mL以上で感染を疑い、105CFU/mL以上で細菌尿と定義している7)。さらに無症候の場合に導尿で提出された検体ではコンタミネーションの機会がより少ないため、男性も女性も102CFU/mLと定義される7)。カテーテル関連尿路感染症の診断基準では、1種類以上の細菌が103CFU/mL以上の検出と定義されている3)。尿路感染症では、基本的に膿尿を伴う。膿尿とはWBC 10/μL(mm3)以上が一般的なコンセンサスとされる。尿中白血球数は、好中球減少患者や尿路の完全閉塞のある患者では低くなり、乏尿/血尿がある場合は高くなる。しかし、尿路感染症ではなくとも膿尿や細菌尿を認めることが、尿路感染症の診断を難しくする原因の1つである。細菌尿と膿尿の有無のそれぞれの組み合わせによる原因をまとめると表28, 9)のようになる。また、培養を用いた定義では細菌が発育するまで尿路感染症の診断ができない。そこで、迅速に細菌尿を検知するための検査として、尿定性検査(試験紙)や尿沈渣、グラム染色などが有用であり、次回詳細を述べる。画像を拡大する1)Carroll KC. Manual of Clinical Microbiology. ASM press. 2019:p.302-3302)Schaeffer AJ、Nicolle LE. N Engl J Med. 2016;374:562-571.3)Hooton TM, et al. Clin Infect Dis. 2010;50:625-663.4)Shah PS, et al. Am J Health Syst Pharm. 2005;62:74-77.5)Stamm WE, et al. N Engl J Med. 1982;307:463-468.6)Warren JW, et al. Clin Infect Dis. 1999;29:745-758.7)Nicolle LE, et al. Clin Infect Dis. 2005;40:643-654.8)Simerville JA, et al. Am Fam Physician. 2005;71:1153-1162.9)LaRocco MT, et al. Clin Microbiol Rev. 2016;29:105-147.

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診療科別2024年上半期注目論文5選(呼吸器内科編)

Clarithromycin for early anti-inflammatory responses in community-acquired pneumonia in Greece (ACCESS): a randomised, double-blind, placebo-controlled trialGiamarellos-Bourboulis EJ, et al. Lancet Respir Med. 2024 Apr;12:294-304.<ACCESS試験>:全身性炎症反応を認める市中肺炎においてβラクタム系抗菌薬へのマクロライドの追加は早期臨床反応を改善市中肺炎の治療においてβラクタム系抗菌薬へのマクロライド追加の上乗せ効果については、観察研究で証明されてきました。今回、全身性炎症反応症候群、SOFAスコア2点以上、プロカルシトニン0.25ng/mL以上を有する市中肺炎の入院成人患者を対象として、無作為化比較試験としては初めて、マクロライドの有益性が示されました。Perioperative Nivolumab in Resectable Lung CancerCascone T, et al. N Engl J Med. 2024 May 16;390:1756-1769.<CheckMate 77T試験>:非小細胞肺がんへの術前ニボルマブ併用化学療法+術後ニボルマブ単剤で無イベント生存期間を改善切除可能な非小細胞肺がん患者を対象とした無作為化比較試験で、術前ニボルマブ併用化学療法+術後ニボルマブ単剤投与が、無イベント生存期間を有意に改善することが明らかとなりました。新たな安全性シグナルは認められませんでした。Dupilumab for COPD with Blood Eosinophil Evidence of Type 2 InflammationBhatt SP, et al. N Engl J Med. 2024 May 20.<NOTUS研究>:タイプ2炎症を有するCOPDにおいてデュピルマブで増悪が減少タイプ2炎症を有するCOPD患者に対するヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体デュピルマブの有効性を評価した二重盲検無作為化比較試験です。末梢血好酸球数300/uL以上のCOPD患者において、デュピルマブはプラセボに比べて中等度または重度の増悪の減少と有意に関連していました。Bisoprolol in Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease at High Risk of Exacerbation: The BICS Randomized Clinical TrialDevereux G, et al. JAMA. 2024 May 19.<BICS研究>:ハイリスクCOPD患者へのビソプロロールで増悪は減少せずCOPD患者において、β1受容体選択性遮断薬ビソプロロールがCOPD増悪を減少させるかどうかを検証した無作為化比較試験です。増悪リスクの高いCOPD患者において、ビソプロロールによる治療はCOPD増悪を減少させませんでした。しかし、呼吸器系を含む有害事象の増加をビソプロロールで認めることはなく、ビソプロロールの安全性が示されました。Morphine for treatment of cough in idiopathic pulmonary fibrosis (PACIFY COUGH): a prospective, multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, two-way crossover trialWu Z, et al. Lancet Respir Med. 2024 Apr;12:273-280. <PACIFY COUPH試験>:特発性肺線維症患者においてモルヒネで咳嗽が減少特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)患者の咳嗽に対する低用量徐放性モルヒネの効果を検証した無作為化比較試験です。モルヒネはプラセボと比較して、客観的覚醒時咳嗽頻度を39%減少させました。この研究は、IPF患者の咳嗽に対するモルヒネの有用性を報告した初めての研究です。

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抗精神病薬誘発性体重増加に対する薬理学的介入〜ネットワークメタ解析

 抗精神病薬誘発性体重増加は、第1世代および第2世代抗精神病薬による治療において重要な問題となるが、しばしば軽視されて、心血管疾患を引き起こす可能性につながる。インド・全インド医科大学のNaveen Chandrashekar Hegde氏らは、抗精神病薬誘発性体重増加に対する利用可能な治療オプションの有効性を評価および比較するため、ネットワークメタ解析を実施した。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2024年6月11日号の報告。 MEDLINE/PubMed、Embase、Scopus、Cochraneデータベース、臨床試験レジストリより関連する臨床試験を抽出した。ベースラインからの体重変化に対する介入の全体的な効果をプールするため、ランダム効果ベイジアンネットワークメタ解析を実施した。ネットワークグラフ作成、一貫性モデルの実行、ノード分割分析の実施、SUCRAスコアに従った治療のランク付けを行った。治療期間、ベースライン時の体重、治療戦略を予測変数とし、メタ回帰を行った。エビデンスの確実性に基づき結果を分類した。 主な結果は以下のとおり。・関連する臨床試験は、68件抽出された。・有意な体重減少を示した薬剤および用量は、エフェクトサイズ順に次のとおりであった。●sibutramine 10mg:−8.0kg(−16.0〜−0.21)●メトホルミン 750mg+生活習慣の改善:−7.5kg(−12.0〜−2.8)●トピラマート 200mg:−7.0kg(−10.0〜−3.4)●メトホルミン 750mg:−5.7kg(−9.3〜−2.1)●トピラマート 100mg:−5.7kg(−8.8〜−2.5)●トピラマート 50mg:−5.2kg(−10.0〜−0.57)●リラグルチド 1.8mg:−5.2kg(−10.0〜−0.080)●sibutramine 15mg:−4.5kg(−8.9〜−0.59)●ニザチジン 300mg:−3.0kg(−5.9〜−0.23)●メトホルミン 1,000mg:−2.3kg(−4.6〜−0.0046)・抗精神病薬誘発性体重増加の体重減少に対し、治療期間、ベースライン時の体重、予防と治療戦略の影響は認められなかった。 著者らは、「抗精神病薬誘発性体重増加に対する治療法として、メトホルミン750mg+生活習慣の改善が最も効果的であり、トピラマート200mg、メトホルミン750mg、トピラマート100mgによる治療が中程度の確実性でこれに続くことが確認された」としている。

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新型コロナ、感染から完全回復までにかかる期間は?

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の回復期間の評価と、90日以内の回復に関連する要因を特定するため、米国・コロンビア大学Irving Medical CenterのElizabeth C. Oelsner氏らは、米国国立衛生研究所(NIH)に登録された14のコホートを用いて前向きコホート研究を実施した。その結果、感染から回復までにかかった期間の中央値は20日で、90日以内に回復しなかった人が推定22.5%いたことなどが判明した。JAMA Network Open誌2024年6月17日号に掲載。 この前向きコホート研究では、1971年よりNIHが参加者を登録し追跡してきた進行中の14のコホートにおいて、2020年4月1日~2023年2月28日にSARS-CoV-2感染を自己申告した18歳以上の4,708例(平均年齢61.3歳[SD 13.8]、女性62.7%)に対してアンケートを実施した。アンケートでは回復するまでの日数を聞き、90日以内に回復した群と、90日超あるいは未回復である場合は、90日時点で未回復の群に分類した。回復までの期間と関連する潜在的要因は各コホートから事前に選択された。90日以内に回復しない確率および平均回復時間は、Kaplan-Meier曲線を用いて推定され、90日以内の回復と多変量調整後の関連性をCox比例ハザード回帰分析にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・全4,708例中3,656例(77.6%)が完全に回復し、回復までの期間の中央値は20日(四分位範囲[IQR]:8~75)だった。・回復までの期間の中央値は、第1波(野生株)では28日だが、次第に短縮し、第6波(オミクロン株)におけるワクチン未接種者では18日、ワクチン接種者では15日であった。・参加者の22.5%(95%信頼区間[CI]:21.2~23.7)が90日以内に回復しなかった。オミクロン株以前は23.3%(22.0~24.6)、オミクロン株以降は16.8%(13.3~20.2)であった。・制限平均回復時間は35.4日(95%CI:34.4~36.4)だった。・重篤な入院での平均回復時間は57.6日(95%CI:51.9~63.3)であり、外来受診の場合は32.9日(31.9~33.9)だった。・90日以内に回復する確率は、感染前にワクチン接種済のほうが未接種よりも高かった(ハザード比[HR]:1.30、95%CI:1.11~1.51)。・90日以内に回復する確率は、第6波(オミクロン株)のほうが第1波(野生株)よりも高かった(HR:1.25、95%CI:1.06~1.49)。・90日以内に回復する確率は、女性のほうが男性よりも低かった(HR:0.85、95%CI:0.79~0.92)。・90日以内に回復する確率は、パンデミック前に臨床心血管疾患(CVD)を有する人のほうが、CVDがない人よりも低かった(HR:0.84、95%CI:0.71~0.99)。・肥満、低体重、COPDは、有意ではないものの回復率が低かった。年齢、教育水準、パンデミック前の喫煙、糖尿病、高血圧、慢性腎臓病、喘息、抑うつ症状との関連は認められなかった。 本結果により、SARS-CoV-2に感染した成人の5人に1人が、感染から3ヵ月以内に完全に回復しなかったことが判明した。とくに、女性とCVDを有する人では、90日以内に回復する確率は低かった。著者らは本結果について、ワクチン接種による急性感染の重症度を軽減するための介入が、持続症状のリスクを軽減するのに役立つ可能性があるとまとめている。

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高リスク高血圧患者の降圧目標、140mmHg未満vs.120mmHg未満/Lancet

 心血管リスクの高い高血圧患者では、糖尿病や脳卒中の既往によらず、収縮期血圧(SBP)の目標を120mmHg未満とする厳格降圧治療は、140mmHg未満とする標準降圧治療と比較して、主要心血管イベントのリスクが低下したことが示された。中国・Fuwai HospitalのJiamin Liu氏らESPRIT Collaborative Groupが無作為化非盲検評価者盲検比較試験「Effects of Intensive Systolic Blood Pressure Lowering Treatment in Reducing Risk of Vascular Events trial:ESPRIT試験」の結果を報告した。SBPを120mmHg未満に低下させることが140mmHg未満に低下させることより優れているかどうかは、とくに糖尿病患者や脳卒中の既往患者でははっきりしていなかった。Lancet誌オンライン版2024年6月27日号掲載の報告。主要アウトカムは、心筋梗塞、血行再建術、心不全入院、脳卒中、心血管疾患死の複合 研究グループは、中国の病院または地域医療機関116施設において、50歳以上の心血管高リスク患者(心血管疾患既往、または主要な心血管リスク因子を2つ以上有し、SBPが130~180mmHg)を、診察室SBPが120mmHg未満を目標とする厳格降圧治療群、または140mmHg未満を目標とする標準降圧治療群に、最小化法を用いて無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、主要心血管イベント(心筋梗塞、血行再建術、心不全による入院、脳卒中、心血管疾患死の複合)で、ITT解析を実施した。 2019年9月17日~2020年7月13日に、1万1,255例(糖尿病患者4,359例、脳卒中既往3,022例)が厳格降圧治療群(5,624例)または標準降圧治療群(5,631例)に割り付けられた。平均年齢は64.6歳(SD 7.1)であった。主要イベントの発生率は9.7% vs.11.1% 追跡期間中の平均SBP(最初の用量漸増期間3ヵ月を除く)は、厳格降圧治療群119.1mmHg(SD 11.1)、標準降圧治療群134.8mmHg(SD 10.5)であった。 追跡期間中央値3.4年において、主要心血管イベントは厳格降圧治療群で547例(9.7%)、標準降圧治療群で623例(11.1%)に認められた(ハザード比[HR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.78~0.99、p=0.028)。糖尿病の有無、糖尿病の罹病期間、あるいは脳卒中の既往歴による有効性の異質性は認められなかった。 重篤な有害事象の発現率は、失神については厳格降圧治療群0.4%(24/5,624例)、標準降圧治療群0.1%(8/5,631例)であり、厳格降圧治療群で高率であったが(HR:3.00、95%CI:1.35~6.68)、低血圧、電解質異常、転倒による傷害、急性腎障害については両群間で有意差は認められなかった。

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中絶薬の有効性・安全性、遠隔医療(検査なし)vs.対面(超音波検査実施)/JAMA

 遠隔医療でのスクリーニング(無検査)と薬の郵送による中絶は、超音波検査を伴う対面診療を経ての処方・中絶と比較し、完全な中絶率に関して非劣性であり、有害事象の発現率は低かった。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のLauren J. Ralph氏らが、非劣性解析を伴う前向き観察研究の結果を報告した。米国では、遠隔医療およびミフェプリストン製剤の郵送を介するなど、診療履歴による適格性評価(無検査)を用いた中絶薬による中絶の利用希望が急速に拡大しており、その有効性と安全性に関するさらなるエビデンスが求められていた。JAMA誌オンライン版2024年6月24日号掲載の報告。無検査+薬剤郵送の有効性と安全性を対面ケアと比較 研究グループは、2021年5月~2023年3月にコロラド州、イリノイ州、メリーランド州、ミネソタ州、バージニア州およびワシントン州の中絶ケアを提供する団体より参加者を募集し、15歳以上、妊娠70日まで、言語は英語またはスペイン語で、薬による中絶を希望する女性を対象に検討した。 参加者の女性と臨床医が選択したケアモデルとして、対象者を以下の3群に分けた。(1)無検査(遠隔医療)の適格性評価と薬の郵送(無検査+郵送群)228例、(2)無検査の適格性評価と薬の受け取り(無検査+受け取り群)119例、(3)超音波検査付き対面群238例。 有効性のアウトカムは、ミフェプリストン+ミソプロストールを投与および経過観察を繰り返す必要のない完全な中絶とした。安全性のアウトカムは1泊入院、手術、輸血など中絶に関連する重大な有害事象とし、患者調査と医療記録からデータを得た。 主要解析では、無検査+郵送群と超音波検査付き対面群を比較した。有効率は94.4% vs.93.3%で非劣性を確認 参加者585例の平均年齢は27.3歳で、ほとんどが非ヒスパニック系白人(48.6%)または非ヒスパニック系黒人(28.1%)であった。妊娠期間の中央値は45日(四分位範囲[IQR]:39~53)で、群間に差はなかった(p=0.30)。なお参加者の91.8%で、アウトカムのデータを得られた。 有効率は、調整モデルにおいて、無検査+郵送群94.4%(95%信頼区間[CI]:89.6~99.2)、超音波検査付き対面群93.3%(88.3~98.2)であった。補正後リスク差は1.2(95%CI:-4.1~6.4)で、事前に規定された非劣性マージン5%を満たした。 重篤な有害事象は、1泊入院4件、輸血2件、緊急手術1件を含む参加者の1.1%(95%CI:0.4~2.4)に認められ、無検査+郵送群3例、超音波検査付き対面群3例であった。無検査+受け取り群では報告されなかった。

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ウォーキングに腰痛の再発防止効果

 腰痛がようやく治ったという人は、再発防止のためにウォーキングをすると良いようだ。オーストラリアの新たな研究で、ウォーキングを始めた人は、ウォーキングをしない人に比べて腰痛が再発するまでの期間がはるかに長かったことが示された。マッコーリー大学(オーストラリア)理学療法学教授のMark Hancock氏らによるこの研究結果は、「The Lancet」に6月19日掲載された。 本研究の背景情報によると、腰痛に悩まされている人は全世界で8億人以上に上る。腰痛患者の10人中7人は腰の痛みが和らぐものの、後に再発を経験する。本研究では、最近、特定の疾患を原因としない、24時間以上続く腰痛を経験している18歳以上の成人701人(平均年齢54歳、女性81%)を対象にランダム化比較試験を実施し、6カ月間にわたる個別化された段階的なウォーキングプログラムと理学療法士による教育セッションから成る介入が腰痛の再発予防に有効であるかどうかが検討された。対象者は、351人が介入群、350人が介入を提供されない対照群に割り付けられ、12カ月以上(最長36カ月間)追跡された。 その結果、介入群での腰痛再発までの期間中央値は208日であり、対照群での112日を大きく上回ることが明らかになった。 Hancock氏は、「なぜウォーキングが腰痛予防に効果的なのか、正確な理由は不明だ。おそらくは、全身にもたらされる緩やかな振動、脊椎構造と筋肉への負荷とそれらの強化、リラクゼーションとストレス解消効果、幸せホルモンのエンドルフィンの放出など、さまざまな要因の組み合わせが効果的に作用しているのだろう」と述べている。同氏はまた、マッコーリー大学のニュースリリースの中で、「ウォーキングは低コストで、地理的な場所や年齢、社会経済的な状況に関係なくほぼ全ての人が広く取り組める簡単な運動だ」と述べている。 論文の筆頭著者である同大学のNatasha Pocovi氏は、「これまで検討されてきた腰痛予防のための運動ベースの介入は、概してグループベースで行われる上に、綿密な臨床監督と高価な器具を必要とするため、大多数の患者には利用しにくいものだった」と説明する。それに対し、ウォーキングはシンプルな上に必要コストも低い。またHancock氏は、「その上、ウォーキングには、心血管の健康、骨密度、健康的な体重、メンタルヘルスの改善など、多くの健康上の利点があることも分かっている」と付け加えている。

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網膜症は認知症リスクと関連

 福岡県久山町の地域住民を対象とする久山町研究の結果が新たに発表され、網膜症のある人は、網膜症のない人と比べて認知症の発症リスクが高いことが明らかとなった。九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治氏らと同大学眼科分野の園田康平氏らの共同研究グループによる研究成果であり、「Scientific Reports」に5月26日掲載された。 網膜症は糖尿病や高血圧などの特定の原因に限らず、網膜の微小血管瘤、微小血管の出血、滲出などと関連しており、眼底検査で確認することができる。また、網膜と脳は、解剖学や発生学などの観点から類似している。これまでの研究で、網膜の微小血管異常と認知症との関連が示唆されているものの、追跡調査の成績を用いて縦断的にそれらの関係を検討した研究は限られ、その結果は一貫していなかった。 そこで著者らは、網膜症と認知症の発症リスクとの関連を調べるために、2007-2008年に久山町の生活習慣病健診を受診した60歳以上の地域住民のうち、認知症がなく、眼底検査のデータが得られた1,709人を対象として認知症の発症の有無を前向きに追跡した(追跡期間:中央値10.2年、四分位範囲9.3~10.4年)。網膜症の有無は、眼底写真を用いて複数の眼科専門医が診断した。認知症の発症リスクの算出にはCox比例ハザードモデルを用い、多変量解析により年齢と性別の影響や臨床背景の違いを統計学的に調整した。 その結果、追跡開始時に網膜症のあった人は174人(平均年齢71.8±7.5歳、男性47.7%)、網膜症のなかった人は1,535人(同71.3±7.6歳、42.9%)であった。網膜症のある人はない人と比べ、BMIが高く、血圧が高く、糖尿病の人が多く、脳卒中の既往のある人の割合が高かった一方、総コレステロール値は低いなどの特徴があった。 10年間の追跡期間中に374人(男性136人、女性238人)が認知症を発症した。認知症の累積発症率は、網膜症のある人の方が網膜症のない人と比べて有意に高かった。網膜症のある人では、ない人に比べ認知症の発症リスク(年齢調整後)は1.56倍(95%信頼区間1.15~2.11)有意に高いことが明らかとなった。さらに、影響を及ぼし得る他の臨床背景(教育レベル、収縮期血圧、降圧薬の使用、糖尿病、総コレステロール値、BMI、脳卒中の既往、喫煙、飲酒、運動習慣)の違いを多変量解析にて調整しても、同様の結果が得られた(発症リスク1.64倍〔95%信頼区間1.19~2.25〕)。 また、高血圧と糖尿病は網膜症のリスク因子であることから、高血圧または糖尿病の有無で分けて検討した。網膜症に高血圧または糖尿病を合併した人では、網膜症がなく高血圧も糖尿病もない人に比べ、認知症の発症リスク(多変量調整後)は1.72倍(95%信頼区間1.18~2.51)有意に高かった。さらに、網膜症があるが高血圧も糖尿病もない人の認知症の発症リスクも2.44倍(同1.17~5.09)有意に高いことが明らかとなった。 著者らは、今回の研究の結論として、「日本人の一般高齢者集団の前向き縦断的データを解析した結果、網膜症は、認知症の発症と有意に関連していた」としている。また、「眼底検査により網膜の微小血管の徴候を非侵襲的かつ簡便に可視化することができ、高リスク者の同定に有用であることが示唆された」と述べている。

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ネグレクトと虫歯の関連―児童相談所での調査

 虐待などの理由で児童相談所に一時保護された子どもを対象に、虫歯の有病率と虐待の関連を調べる研究が行われた。その結果、虐待の種類としてネグレクトを受けた子どもで虫歯の有病率が高いことが明らかとなった。新潟大学大学院医歯学総合研究科小児歯科学分野の中村由紀氏らによる研究であり、「BMC Public Health」に5月18日掲載された。 子ども虐待の報告件数は増加が続いている。子どもの虫歯を放置するなど、必要な歯科医療を受けさせないことは「デンタルネグレクト」と呼ばれ、歯科保健と児童福祉の両面から対策を講じることが重要である。虫歯を放置することは虐待の兆候とも考えられるが、虫歯と虐待は直接には関連していないことを示唆する報告もある。また、虐待の種類と虫歯の関係については十分に研究されていない。 著者らは今回、2015年1月~2019年7月に新潟県内の児童相談所に一時保護された2~18歳の子どもで、一時保護から2週間以内の534人(平均年齢10.4±3.85歳、男児308人、女児226人)を対象とする横断研究を実施。新潟大学の小児歯科医師と歯科衛生士が、歯科検診および歯の健康行動に関する問診を行った。虐待に関するデータは児童相談所から入手した。 その結果、対象者のうち323人(60.5%)が、虐待を理由に一時保護を受けていた。虐待の種類の内訳は、身体的虐待が176人(54.5%)で最も多く、ネグレクトが72人(22.3%)、心理的虐待が68人(21.1%)、性的虐待が7人(2.2%)だった。 児童相談所の子ども1人当たりの虫歯(未処置の虫歯+処置済の虫歯)の平均本数は、2~6歳、7~12歳、13~18歳の全ての年齢層で、2016年の厚生労働省の「歯科疾患実態調査」の結果と比較して有意に多かった。 児童相談所の子どもについて虫歯の有無と虐待の有無との関連を調べたところ、未処置の虫歯、処置済の虫歯、未処置の虫歯+処置済の虫歯のいずれを検討した場合も、年齢層にかかわらず、虐待との有意な関連は認められなかった。 次に、虐待の種類別に検討したところ、7~12歳の虫歯(未処置の虫歯、未処置の虫歯+処置済の虫歯)の有無と虐待の種類に有意な関連が認められ、ネグレクトの場合に虫歯の有病率が高いことが示された。未処置の虫歯の本数は、身体的・性的虐待(平均1.5本、中央値0.0本)と心理的虐待(平均1.5本、中央値0.0本)に比べ、ネグレクト(平均3.4本、中央値2.0本)の方が有意に多かった。未処置の虫歯+処置済の虫歯で比較しても同様に、身体的・性的虐待(平均2.3本、中央値1.0本)および心理的虐待(平均2.1本、中央値0.0本)よりも、ネグレクト(平均4.1本、中央値3.0本)で有意に多いことが明らかとなった。 今回の研究結果から著者らは、一時保護に至った理由が虐待かどうかにかかわらず、児童相談所の子どもは全国平均と比較して虫歯の有病率が高く、歯磨きの頻度が低かったとして、対策の必要性を指摘している。また、適切な歯科治療を受けようとしなかったり、受けられなかったりするのは、家族の孤立、経済的余裕のなさ、歯科治療の必要性の認識不足などの要因から生じる可能性にも言及し、「デンタルネグレクトと判断する前に、複数の要因を考慮しなければならない」と述べている。

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GLP-1受容体作動薬の服用での一工夫(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話医師新しい薬(経口セマグルチド)の方はいかがですか?(開いた質問で尋ねる)患者 あの薬を飲んでいると、残り物とか余分なものを食べなくなりました。医師 それは、よかったですね。体重とHbA1c値も徐々に下がってきています。患者 けど、…(困った顔)医師 けど?患者 あの薬は起きたらすぐに飲まないといけないんですが…それを忘れて、飲んだり朝ごはんを食べたりしてしまって…。画 いわみせいじ医師 なるほど。確かに、あの薬の飲み方は難しいですね。けど、うまく飲む習慣を付けている人もいますよ!患者 えっ、どんな風にされているんですか?(興味津々)医師 薬を飲み物よりも先に目につく所に置いておいて、飲んだらすぐにシャワーを浴びているそうです。患者 なるほど。そうすれば、忘れずに、時間もすぐに経ちますね。ポイント「1日の最初の食事・飲水の前にコップ半分(約120mL以下)の水で服用。服用後30分は飲食を避ける」必要があります。Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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