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第221回 「青カビは取ればいい」が招いた人災ー紅麹サプリ事件

3月以来、紅麹問題で揺れた小林製薬。同社は7月23日に一連の事案に関して外部の弁護士3人に依頼した事実検証委員会の調査報告書を公表するとともに、引責の形で代表取締役会長の小林 一雅氏と代表取締役社長の小林 章浩氏が代表取締役を辞任することを発表した。新たな代表取締役社長には専務取締役の山根 聡氏が昇格する。報道では創業家以外から初の社長という文字が目立つが、章浩氏は代表権こそないものの取締役補償担当として役員には残留し、一雅氏については役員から外れるものの特別顧問という形となる。私自身はこれまでの企業取材の経験から、必ずしも同族経営をネガティブなものとは見ていないが、それでもなお今回の人事には「いかにも同族経営らしい決着」と思ってしまう。一方で公表された調査報告書を読んだ率直な感想は「過度な悪意はない危機感の欠如」の一言に尽きる。紅麹は機能性表示食品?それとも特定保健用食品?まず、今回の件で同社が行政への報告までに約2ヵ月を要した理由について、「因果関係が明確な場合に限ると解釈していた」と報道されている。この点については、とりわけ医療従事者の多くは疑問を感じただろうと思う。生鮮食品による食中毒ならいざ知らず、何らかの物質や食品の摂取を通じて起こる有害事象の因果関係の特定には一定の時間を要することが少なくないからである。それゆえに医薬品には「有害事象」と「副作用・副反応」の2つの用語がある。さて、厚生労働大臣の武見 敬三氏までが「自分勝手な解釈で極めて遺憾」と評したこの解釈はなぜ生まれたのか? それが今回公表された調査報告書に記載されている。まず、機能性表示食品では、消費者庁の届出等ガイドライン1)において「届出者は、評価の結果、届出食品による健康被害の発生及び拡大のおそれがある場合は、消費者庁食品表示企画課へ速やかに報告する」と定めている。小林製薬側はこの規定を「健康被害の発生」と「健康被害の拡大のおそれ」の両方が満たされた場合に報告が必要になると解釈。ただし、どのような場合が「健康被害の発生」に該当するかが明確ではないと考えていたという。その結果、同社安全管理部が「特定保健用食品の審査等取扱い及び指導要領」2)で健康被害が生じ、行政報告が必要な場合として「当該食品に起因する危害のうち、死亡、重大な疾病等が発生するおそれがあることを示す知見を入手した場合」と規定されていることを援用し、さらに同規定の「起因する」の文言を「因果関係が明確である」と解釈。最終的に「因果関係が明確な場合に行政に報告する」との解釈を採用したという。何とも言い訳じみた…と思う人もいるかもしれないが、行政文書のわかりにくさを考えれば、このようなさまざまな文書の援用自体はありえなくはない。ただ、ここでは根本的な“ミス”が含まれている。そもそも援用した規定は特定保健用食品、いわゆるトクホのものであり、これにはヒトでの臨床試験が必要である。もっともその臨床試験の多くは数十例程度で行われ、臨床研究法の対象にもならず、この規模で起こり得る健康被害すべてが検出できるとは思わないが、臨床試験をやってもやらなくともよい機能性表示食品と比べればハードルは高く、審査も厳格である。報告書で気になったことこれ以外に報告書を読んでいて気になったことは、個人的に2点ある。1点目は医師から紅麹製品による健康被害が疑われる事例の報告を受けての初動である。1月15日に医師から紅麹製品を摂取していた患者が急性腎不全で入院し、透析治療中である旨の連絡を受けたのが第1例目。半月後の2月1日には別の病院の医師から同時に3例の報告を受けている。この間の半月については1例目を孤発症例と考えれば、無理もないかもしれない。しかし、同時3例の報告後、同社がこれら医師に面談連絡を取ったのは、第1例目の医師が2月8日、2番目の同時3例報告の医師には2月15日。結局面談が実現したのは、前者が2月29日、後者が2月22日だ。ちなみに両医師との面談日程候補期間は小林製薬側から月末を提示している。そして、これら医師に面談要請の連絡をするまでの間、同社では(1)シトリニン原因説、(2)モナコリンK原因説、(3)コンタミネーション原因説、の 3つの仮説が立てられ、分析を行う方針を決定していた。もちろん早急に原因を究明すべく仮説を立てたことには異論はないが、この仮説の絞り込みなども考えれば、より1日でも早く面談を実現すべきではなかったか? 繰り返しになるが、面談候補日を提示したのは小林製薬側である。青カビ発生は当たり前?そして最後に、これが報告書を読んで一番驚いたことだったが、検証委員会のヒアリングに対する大阪工場の現場担当者の証言だ。それによると、問題となった紅麹製品に用いられた原料ロットの製造時、乾燥工程で乾燥機が壊れて原料ロットの紅麹菌が一定時間乾燥されないまま放置されていたそう。加えて、紅麹培養タンクの蓋の内側に青カビが付着していたことを確認し、品質管理担当者に伝えたところ「青カビはある程度は混じることがある」旨を告げられたというのだ。ちなみに報告書ではこの証言について「本件問題の原因であるか否かは不明であるものの」と慎重な言い回しで記述している。この証言を読んで思い出したのが、個人的な話で恐縮だが、産婦人科医でもあった私の亡き父方の祖父とのエピソードだ。幼少期、正月に祖父宅を訪ねると、祖父はたいそう喜び、傍らの缶から切り餅を取り出し、祖母に私と祖父のために焼くように指示した。この時、5mmほどの青かびが3つほどついているのが目に入った。私が「おじいちゃん、それ…」と指さすと、祖父は座椅子のひじ掛けの下の物入れから小刀を取り出し、目の前でそれを削り取って、そのまま祖母に渡したのだ。明治生まれの極めてパターナリスティック(父権主義)な祖父に歯向かうことができず、結局、私はその餅を食べることになった。こうしたことは個人の範疇ならば、自己責任で済む。死者にムチ打つようで悪いが、この品質管理担当者は亡き祖父と同程度の認識で不特定多数の人が口にする紅麹製品を製造していたのか、とやや呆れてしまった。この問題はまだ原因究明中ではあるが、いずれにせよこの調査報告書は悪意のない危機意識が積み重なると、人の命までも奪いかねないという重大な教訓を伝えてくれていると言える。参考1)消費者庁:機能性表示食品の届出等に関するガイドライン2)消費者庁:特定保健用食品の審査等取扱い及び指導要領

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家族から「どうしても死に目に会いたい」と言われたら…【非専門医のための緩和ケアTips】第80回

第80回 家族から「どうしても死に目に会いたい」と言われたら…家族からよく出る要望として、「死に目に会いたい」というものがあります。とはいえ、家族が遠方に住んでいたり、予想より早いタイミングで看取りになったりなど、実現が難しい場合もあります。われわれ医療者はこうした要望にどう応えればよいのでしょうか?今回の質問訪問診療で診ている患者さん。お看取りが近くなってきたので、家族に説明していた時のことです。「県外に住む家族がいるので、その家族が着くまで命を持たせることができませんか?」と質問されました。「死に目に会いたい」というのですが、在宅でずっと心肺蘇生するのも現実的ではありません。こうした患者さんは容態が悪くなったら救急搬送するしかないのでしょうか?「お看取りの際は、できるだけ家族と一緒に過ごせるように」というのは、多くの医療者が大切にしていることでしょう。とくに緩和ケアに関わる医療者はこうした要望に応えたくなる“本能”を持つ方が多いように思います。ただ、私は「死に目に会わせる」ことを必ずしもケアの目標とする必要はない、と考えています。私は救急診療に当たっていた時期もあります。心肺停止状態で運ばれてきた患者さんの家族に救命が難しいことを説明する際、「今から病院に向かうので、到着まで心肺蘇生を継続してほしい」と頼まれるケースがあり、こうした場合にはできる限り要望に応えていました。一方、ご質問や緩和ケアでは、治癒困難な疾患により看取りとなる状況が大半でしょう。患者さんが呼吸停止に至った状況では、蘇生行為は無益であることが予想されます。そのような状況で、ご家族の「死に目に会いたい」という要望に応えるにはどうすればよいでしょうか? 私自身、緩和ケアの専門医になってからも「家族の要望で、フルコード(心肺停止時に心肺蘇生を含めさまざまな治療をする方針)でお願いします」と申し送りを受けることがありました。しかし、こうしたケースでも、ご家族とゆっくり話すと状況が変わることもあります。「なかなかそばにいてあげられなかったので、最後くらい一緒にいないとかわいそう」といった家族の気持ちを一通り聞いたうえで、「病状を考えると延命は難しいと思います」「できるだけ早く、病状を共有するようにします」と伝えます。そして「看取り時にご家族と会える可能性が高まるよう、できることを取り組んでいきます」とお話しすると、たいてい納得してもらえます。「家族が死に目に会えるか」は、医療者の対応だけで解決する問題ではありません。家族にも遠方に住んでいる、仕事を休めないといったさまざまな事情を抱えています。医療者としてできることに誠実に取り組むのは当然ですが、結果的に「死に目に会えなかった」としても、医療者が全責任を負う必要はないでしょう。それはそれでその患者さんとご家族の生活であり、人生です。少しドライかもしれませんが、患者さんと距離の近い看護師の方などから「最期にご家族に会わせてあげられなかった。十分なケアではなかった」と後悔する声を聞くことがあります。そうした方には、このような私の考えを伝えています。皆さんはどう考えますか?今回のTips今回のTips「死に目に会いたい」は、希望であって義務ではない。医療者として背負わなくてよいこともある。

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昔話「うらしまたろう」(その2)【隠された陰謀とは?そして精神医学的に解釈するなら?(シン浦島太郎)】Part 1

今回のキーワード伝承の心理原田病(急性びまん性ぶどう膜炎)ウラシマ効果モラハラ気質ストックホルム症候群中毒(嗜癖)ひきこもりブリーフセラピー前回(その1)は、浦島太郎の3つの謎を紐解きました。それは、おじいさんにならなければならなかった理由、乙姫が開けてはいけない玉手箱をわざわざ渡した理由、そして帰ってきたら数百年経っていた理由でした。さらに、このストーリーには隠された陰謀がありそうです。それは何でしょうか?前回に引き続き、今回(その2)も浦島太郎を取り上げます。そして、伝承の心理の視点で、現代の精神医学的な解釈に挑戦してみましょう。浦島太郎に隠された陰謀とは?この根拠は、丹後国風土記(713~715年)のすぐあとに書かれた正史である日本書紀(720年)と万葉集(732年前後)です。これらは、同じ8世紀の歴史書であるにもかかわらず、浦島太郎のストーリーのディテールに食い違いがあります。最後に、その違いを3つ挙げ、その陰謀に迫ってみましょう。(1)浦島太郎を体制側の使者にすり替えた前回(その1)に、丹後国風土記に書かれた「雄略天皇の御代」(5世紀)は、船出した時期ではなく帰ってきた時期、つまり丹後国が衰退した時期の隠喩であることを説明しました。にもかかわらず、日本書紀ではわざわざ船出の時期が「雄略22年(西暦478年)7月」とさらに限定して書かれています。なぜ付け加えたのでしょうか?なんと、この「雄略22年(西暦478年)7月」は、ちょうど雄略天皇(大和政権)が宋(中国)に使者を送った時期でした。そしてこの時は、日本書紀で「豊受大神を伊勢に遷座させた」(丹後の神を丹後から追い出した)時期ともされました。つまり、あえてこの時期をピンポイントで限定したのは、その1で説明した丹後国風土記のミスリードを利用して、反体制側(地方王権)の浦島太郎を体制側(中央政権)の使者にすり替えるという正史の陰謀であったことが示唆されます。ちなみに、昔話「桃太郎」も、もともとは吉備国の伝説で、登場する鬼は実は反体制側の地域王権であったという説があります1)。(2)浦島太郎を体制側の舞台にすり替えたもともと浦島太郎の舞台は「丹後国(京都)」であったのに、万葉集では「住吉(大阪)」になっています。なぜ変えたのでしょうか?大阪は、大和政権の拠点である奈良盆地から一番近い海です。つまり、反体制側の浦島太郎を体制側の舞台にすり替えるという正史の陰謀であったことが示唆されます。こうして、浦島太郎の舞台が曖昧となり、日本全国、不特定多数に広がってしまったのでした。(3)浦島太郎を体制側の老人神にすり替えたもともと浦島太郎のラストは老人にならなかったのに、万葉集では「若々しかった肌はしわだらけ、黒かった髪も真っ白になり、息も絶え絶えでついに死んでしまった」と書かれ、老人になっています。なぜ書き足したのでしょうか?老人は、大和政権の成り立ちを伝える「海幸山幸伝説」に登場する「塩筒老翁」(老人神)を連想します。つまり、反体制側の浦島太郎を体制側の老人神にすり替えるという正史の陰謀であったことが示唆されます。それが、やがて御伽草子で仙人のイメージに変わっていったのでした。次のページへ >>

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昔話「うらしまたろう」(その2)【隠された陰謀とは?そして精神医学的に解釈するなら?(シン浦島太郎)】Part 2

伝承の心理とは?浦島太郎とは、昔話でありファンタジーであり伝説であり、そしてもともと史実であったことがわかりました。これらはまとめて伝承と呼ばれます。そして、伝承される内容は、その時代のその社会(文化)によって、より適応的な意味づけや解釈がされ、変化していくことがわかります。これは、伝承の心理と呼べるでしょう。先ほどの陰謀論にしても、それは丹後国の視点です。大和政権の視点からは、浦島太郎の新たな伝承が、当時の社会をまとめていくイデオロギーとして機能していたわけです。妖怪の言い伝えにしても、たとえば「座敷わらし」は実は認知症の症状であったり、「一目小僧」は奇形児の特徴であったりと、単なる作り話ではなく、精神障害や身体障害を含む人間の生き様から由来していることがわかります。なお、座敷わらしの起源の詳細については、関連記事1をご覧ください。そして、進化心理学的に考えれば、人類がそもそも伝承を好む理由は、その社会(集団)の生存と生殖の適応度を上げるためです。原始の時代から、私たちは毎晩キャンプファイヤーを囲んで、集まった部族の誰かの話に耳を傾けてきました。その適応行動が、現代ではテレビなどのメディアを見ることに取って代わっただけです。この起源の詳細については、伝承を噂話に言い換えた関連記事2をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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昔話「うらしまたろう」(その2)【隠された陰謀とは?そして精神医学的に解釈するなら?(シン浦島太郎)】Part 3

シン浦島太郎とは?伝承の心理の視点から、現代の社会構造や価値観によって、浦島太郎のストーリーはどう解釈できるでしょうか?たとえば、日本眼科学会から医学的な解釈として、実は浦島太郎は「原田病」(急性びまん性ぶどう膜炎)という免疫疾患にかかったという指摘がされています2)。これは、発病すると視力が落ち難聴となり白髪やシワが増えていき、どんどん老け込んでいくという特徴があります。また、物理学的な解釈として、実は浦島太郎は宇宙旅行に連れ出されて、帰ってきたら自分よりも地球の時間が速く進んでいたというストーリーもあります。この現象は、相対性理論の「ウラシマ効果」と呼ばれています。最後に、精神医学的な解釈として、現代版の浦島太郎、名づけて「シン浦島太郎」を3つのポイントに分けて物語ってみましょう。(1)乙姫は実はモラハラ気質であった現代に生きる浦島太郎さんは、人権意識がとても高い若者です。亀に誘われて竜宮城を訪ねたのはいいものの、乙姫に「四季の部屋」に案内されるなどして引き留められ、なかなか帰らせてくれません。やっとのことで自宅に帰ってみたら、思っていた以上に月日が過ぎ去っていました。しかも、お土産の玉手箱を開けると、中から謎の薬品が噴射され、体に著しい異変が起こりました。浦島太郎さんは、乙姫は説明義務を怠ったと憤ります。また、逆恨みから放射性物質を仕掛けていたのではないかとおびえます。あの乙姫ならやりかねません。よくよく考えると、亀は助けてもらった恩返しと言っておきながら、一方的で強引でした。竜宮城からは自由に出ることはできず、あの手この手で理由をつけられて拉致監禁されていました。乙姫はモラハラ気質で、自分はストックホルム症候群(詳細は関連記事3を参照)に陥っていたことに浦島太郎さんは気付きます。これは、乙姫だからといって決して許されることではありません。浦島太郎さんは、すぐにSNSで竜宮城での乙姫による拉致監禁、玉手箱による甚大な健康被害を世間に注意喚起します。二度と自分のような被害者が出ないようにと願いました。そして、当局に竜宮城と乙姫を刑事告訴して、損害賠償請求しました。これから長い戦いになりそうです。(2)竜宮城は実は中毒の刺激だらけだった現代に生きる浦島太郎くんは、退屈な毎日を送る若者です。ある日、亀から竜宮城という名のテーマパークの永久パスポートをもらいました。そこは、病みつきになりそうなメニューが食べ放題。お酒飲み放題。アトラクション乗り放題。ゲームし放題。連日、歌とダンスとパレードのお祭りが続き、なんと宿泊し放題。さらに、キャストの乙姫たちから心地良い言葉かけやスキンシップなどのおもてなしも。浦島太郎くんはすっかり入り浸ってしまい、月日が過ぎるのを忘れてしまいます。ふと気付くと、不摂生から太ってしまい、動くと息切れがするようになってしまいました。頭はぼんやりして、ぶつぶつと独り言を言っていました。体も心もボロボロで、彼はお土産の玉手箱を開ける前に、すでにおじいさんのようになっていたのでした。浦島太郎くんは、中毒(嗜癖)の刺激(詳細は関連記事4を参照)にさらされすぎて、生活習慣病や認知機能低下など心身ともに後遺障害がみられているようです。(3)玉手箱は実は未来を映し出す鏡だった現代に生きる浦島太郎は、長年ひきこもりになっている若者です。竜宮城と名づけた自分の部屋で好きなゲームをし続け、乙姫と皮肉った親に身の回りの世話をさせてきました。しかし、ふとこのままでいいのかと焦ってもいました。ある日、ネット検索をしていると、「玉手箱」という亀のマークのアプリに目が留まります。気になってクリックすると、「30年後の自分」と名乗る生成AIが出てきました。その自分は、確かに老けていますが、顔も声も自分に似ています。そして、「自分で竜宮城を立てたよ」「本当の乙姫と一緒になれたよ」「こうなるための自分の強みは何だったと思う?」「まず何をしたと思う?」と語りかけてきます。浦島太郎は、ブリーフセラピー(詳細は関連記事5を参照)を受けたことで、理想の未来を垣間見て、むしろ気持ちは若返っているようです。1)「よみがえる浦島伝説」P31:坂田千鶴子、新潮社、20012)「第109 回 日本眼科学会総会 特別講演II 眼疾患発症の外因と内因」P907:大野重昭、日本眼科学会、2005<< 前のページへ■関連記事ペコロスの母に会いに行く【認知症】NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(中編)【そもそもなんで私たちは噂好きなの?じゃあこれから情報にどうする?(メディアリテラシー)】Part 1美女と野獣【実はモラハラしていた!? なぜされるの?どうすれば?(従う心理)】映画「チャーリーとチョコレート工場」【夢の国は「中毒」の国!?その「悪夢」とは?(嗜癖症)】Part 2東京タラレバ娘【ブリーフセラピーとは?】

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大ヒット書籍の著者に聞く、医師ならではのAIツールの「使いこなし」

2024年6月に発売された、近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚 篤司氏による『医師による医師のためのChatGPT入門:臨床がはかどる魔法のプロンプト』(医学書院)が評判になっている。CareNet.comが同時期に行った会員向け生成AI使用状況のアンケートでは、使用経験のある医師は約2割という結果だった。「AIで医師の仕事が大きく変わることは必至」という大塚氏に、執筆の動機や生成AIの上手な使い方について聞いた。使っている医師は約2割、一般よりも慎重か――CareNet.comのアンケートでは、生成AIを「現在使用している」と回答した医師は約20%でした。本の出版後、多くの医療者から感想を頂きましたが、そこで得た私の体感とも大きく外れてはいません。一般ビジネスパーソンを対象にした同様のアンケートでは4割超が使っている、といった結果もあるので、医師はまだ使用に慎重な面もあるのでしょう。使わない理由として「使いこなすのが難しそう」という意見が多かったようですが、生成AIはそこまで難しいものではありません。「AI」という言葉の響きから、プログラミングのような専門知識が必要だと思って敬遠する人が多いのかもしれませんが、そんなことはまったくない。「情報が正しいかどうか信頼できない」という意見もありますが、確かに生成AIが登場した当初のChatGPT 3.5ではハルシネーション(もっともらしいうそ)が問題視されていましたが、最近はそれを抑える使い方も出ており、間違った情報自体も減ってきている。初期のころの印象に引っ張られて使わないでいるのは、本当にもったいないと思います。まずは論文の翻訳・要約から――医師という職業特性を踏まえ、AIツールを使うべき場面は?最初はインプット部分、具体的には論文を読む場面でしょう。私自身、今では論文を最初から読むことはほとんどありません。まずChatGPTに論文の内容を翻訳・要約してもらい、それを読んでから気になる箇所を原文で確認したり、ChatGPTに詳しく聞いたりして、内容を深く理解しています。原文に目を通すのは、最終的に内容が間違っていないかを確認する程度。ガイドラインもPDFで読み込ませておけば、ChatGPTに質問するだけで該当箇所を示してくれるので調べる時間が節約できます。「どんな場面で使えばいいのかわからない」という方は、まずはGoogle検索をする場面で代わりにChatGPTに聞いてみるとよいでしょう。私は昨年からPythonのプログラミングを学びはじめたのですが、この学習にもChatGPTが大いに役立っています。自分で画像診断システムをつくろうとしているのですが、これも生成AI登場前では考えられなかったことです。アウトプット部分では、生成AIは文書の下書きが上手なので、定型的な文書、紹介状や症例報告などの下書きを任せています。文書の校正なども得意です。もちろん患者情報などは入力しませんが、入力することでできることも多いはず。医療においてAIをどこまでどう使うのか。できることが急速に増えているのに比してグレーゾーンが広いので、ルールづくりの議論を進める必要があるでしょう。まずはChatGPT、ツールによって得意分野はさまざま――ChatGPT以外にもさまざまなツールがありますが、どう使い分けているのでしょうか?私は、ほぼすべての生成AIツールを一度は課金して使っています。少し込み入ったことをするには無料版だと限界がありますし、フル機能で使ってみないとツールの良し悪しを判断できないからです。「とりあえず使ってみたい」という方は、マルチに使えるChatGPTの有料版から始めるとよいのではないでしょうか。一方、日本語の精度はClaudeが優れているので、より自然できれいな日本語の文章を作成したい場合はこちらがお勧めです。GeminiはGoogleが提供するツールの裏で動いているため、Google AI StudioのようなGoogleのサービスと相性が良い、という特徴があります。最近注目しているのが、テキストから動画を生成できるGen-3 Alphaです。動画はプロンプト(AIへの指示や質問)が同じでも毎回異なる結果が出力され、思いどおりのアウトプットを得るのが難しい面もありますが、そこが面白さでもあります。医療の仕事は「正確性」が求められるので、正確さを求められない生成AIの動画の用途を模索していたのですが、最近「使えるかも」と感じたのが「教育」分野です。たとえば、以前「ヘリオトロープ疹」の動画を作成してみました。ヘリオトロープ疹は、上まぶたに紫色の皮疹が出る疾患で、ヘリオトロープの花の色に似ていることから名付けられました。これを学生の記憶に残りやすいよう、ヘリオトロープ疹とヘリオトロープの花を組み合わせた動画にしました。バラの花と組み合わせた「バラ疹」にもトライしました。正確性よりも印象に残るイメージを生成するという点で、AIは有効なツールになりうる印象です。大塚氏が生成AIで作成した「バラ疹」のイメージ動画AIで激変する医師の仕事、自ら変化を生み出すために――医療者向けに生成AI使いこなしの書籍を執筆した動機は?学内やSNSでAIの使い方について聞かれることが増え、まとめる価値があるのではと考えました。日々変わるAIツールを本というメディアで伝える難しさはありましたが、基本的なことは網羅できたと思います。また、医師としての危機感も出版の動機です。AI技術を使えば、電子カルテに入力された情報から自動的に診断を行うシステムを簡単につくることができます。そうなると、どの科でも、医師免許と処方箋を書く権限がある医師が1人いれば、病院を運営できる未来が来るかもしれません。もちろん、AIがすべての医師の仕事を代替することは難しいでしょうが、AI技術の進化によって、医師の働き方が大きく変わることは間違いありません。大事なのは、その変化を“医療者自身”が生み出すこと。医療者以外が医療のAI開発に取り組めば、「AIを使って、いかに医療費や医師を削減するか」という視点ばかりになる危険性があります。だからこそ、医療者自らがAIツールを使い、その可能性と限界を知ることが重要です。AIツールを使いこなすことで、医師はより創造的な仕事に集中できるようになるはず。AIとより良く共存し、人間にしかできない医療を創造するために、医療者自らがAI技術に対する理解を深める必要がある。この本にはそうしたメッセージも込めました。大好評の書籍はこちら(ケアネット 杉崎 真名)

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日本の精神科ガイドライン著者におけるCOI分析

 臨床診療ガイドライン(CPG)は、エビデンスに基づく標準的な患者ケアを提供するために、必要不可欠である。しかし、CPGの著者に対する金銭的な利益相反(COI)により、著者への信頼性が損なわれる可能性がある。東北大学の村山 安寿氏らは、日本の精神科CPGの著者におけるCOIの範囲および規模を調査するため、本研究を実施した。BMJ Open誌2024年6月21日号の報告。 製薬会社より開示された支払い金額を横断的に分析し、日本の双極性障害/うつ病のCPGの著者に対し2016〜20年に支払われた講演謝礼、コンサルティング料、執筆謝礼などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・5年間に著者の93.3%に対し支払いが行われており、その総額は400万米ドル超であることが判明した。・著者1人当たりの支払額中央値は5万1,403米ドル(IQR:9,982〜11万1,567)であり、CPG委員長を含む少数の著者に集中していることが顕著であった。・CPGでCOIを開示した著者は、ごく一部に過ぎなかった。・多額の支払いは、CPGに掲載されている新規抗うつ薬や睡眠薬を製造販売している製薬会社でなされた。 著者らは「日本の双極性障害/うつ病CPGの著者のうち、93%以上が製薬会社からの支払いを受けていることが明らかとなった。国際的なCOIマネジメント基準から逸脱していると考えられ、日本の精神科CPGに対する厳格なCOIポリシーの必要性が示唆された」としている。

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HR+/HER2-進行乳がん1次治療、リアルワールドでのパルボシクリブ+フルベストラント/+AIの効果/日本乳学会

 HR+/HER2-進行乳がん1次治療におけるパルボシクリブ+フルベストラントとパルボシクリブ+アロマターゼ阻害薬(AI)の効果をリアルワールドデータ(RWD)で評価した結果、ほぼ同様な傾向であったことを京都大学の増田 慎三氏が第32回日本乳学会学術総会で発表した。後治療の検討から、増田氏は「後治療におけるホルモン療法の期間を伸ばす工夫が今後大切」とした。 HR+/HER2-進行乳がんにおいてパルボシクリブと内分泌療法の併用療法が内分泌療法単独と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することは第III相試験において示されているが、実臨床下でフルベストラント併用とAI併用を別々に評価した研究はほとんどない。本研究では、HR+/HER2-進行乳がんに1次または2次治療としてパルボシクリブ+内分泌療法を行った際の実臨床下での有用性を評価した国内20施設の多施設観察研究のデータから、1次治療として登録された420例のうち、術後補助療法終了から再発までの期間(TFI)が12ヵ月以上、および初診時Stage IVの症例を解析対象とした。併用した内分泌療法別に、患者背景、実臨床下でのPFS(rwPFS)、全生存期間(OS)、化学療法開始までの期間(CFS)、後治療の内訳を評価した。 主な結果は以下のとおり。・1次治療でパルボシクリブ+フルベストラントおよびパルボシクリブ+AIで治療された症例は、それぞれ74例および118例であった。患者背景に大きな違いはなかったが、閉経前/閉経周辺期の患者割合がフルベストラント併用群27.0%、AI併用群 6.8%とフルベストラント併用群で多かった。・rwPFS中央値は、フルベストラント併用群 で33.57ヵ月(95%信頼区間[CI]:23.37~50.43)、AI群で34.10ヵ月(同:25.63~44.53)とほぼ同様で、第II相試験であるPARSIFAL試験、PARSIFAL-LONG試験の再現性が認められた。・CFS中央値についても、フルベストラント併用群43.90ヵ月(同:32.57~NE)、AI群42.53ヵ月(同:33.6~NE)で同様の傾向がみられた。・OS中央値はどちらも未達で、今後、長期フォローアップによるデータの更新を予定している。・TFIが12ヵ月以上の再発症例と初診時StageIVの症例、また閉経状況によらず、rwPFS、CFS、OSはおおむね同じ傾向であった。・後治療の内訳は、フルベストラント併用群、AI併用群の順に、化学療法が34.1%および29.5%、内分泌療法単独が19.5%および26.2%、内分泌療法+CDK4/6阻害薬が17.1%および34.4%、内分泌療法+エベロリムスが26.8%および4.9%であった。1次逐次治療で内分泌療法±分子標的治療を選択された患者群の治療期間中央値は、フルベストラント併用群3.0ヵ月、AI併用群4.5ヵ月であった。 増田氏は「HR+/HER2-進行再発乳がん治療において、ホルモン感受性が期待できると考えられる集団の1次治療において、日本人におけるReal world evidence studyから、パルボシクリブ+フルベストラントとパルボシクリブ+AIは共に有用な選択肢であることが示唆された」と結論した。

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口腔がんが日本人で増加傾向、その最大要因とはー診療ガイドライン改訂

 『口腔診療ガイドライン2023年版 第4版』が昨年11月に4年ぶりに改訂された。口腔がんは歯科医も治療を担う希少がんだが、口腔がんを口内炎などと見間違われるケースは稀ではないという。そこで今回、日本口腔腫瘍学会学術委員会『口腔診療ガイドライン』改定委員会の委員長を務めた栗田 浩氏(信州大学医学部歯科口腔外科学 教授)に口腔がんの疫学や鑑別診断などについて話を聞いた。 口腔診療ガイドライン2023年版では、日常的に出くわす臨床疑問に対してClinical Question(CQ)を設定、可能な限りのエビデンスを集め、GRADEアプローチに準じ推奨を提案している。希少がんであるがゆえ、少ないエビデンスから検証を行っていることもあり、FRQ(future research question)やBQ(background question)はなく、すべてがCQだ。同氏は「アナログな手法ではあるが、システマティック・レビューで明らかになっているCQの “隙間を埋める”ように、明らかにされていない部分のCQを作成し、全部で60個を掲載した」と作成経緯を説明した。口腔がんの好発年齢は50歳以降、インドや欧州で罹患率が高い 口腔がんとは、顎口腔領域に発生する悪性腫瘍の総称である。病理組織学的に口腔がんの90%以上は扁平上皮がんであり、そのほかには小唾液腺に由来する腺系がんや肉腫、悪性リンパ腫、転移性がんなどがあるが、口腔診療ガイドライン2023年版では最も頻度が高い口腔粘膜原発の扁平上皮がんを「口腔がん」として記している。 口腔がんの好発年齢は50歳以降で加齢とともに増加し、男女比3:2と男性に多いのが特徴である。これまで国内罹患数は年間5,000~8,000人で推移していたが、近年の罹患数は年間1万人と増加傾向にあるという。これについて栗田氏は「もともと世界的にはインドや欧州での罹患率が高いが、日本人で増えてきているのは高齢化が進んでいることが要因」とコメントした。部位別発生率については、2020年の口腔がん登録*の結果によると、舌(47.1%)、下顎歯肉(18.4%)、上顎歯肉(11.9%)、頬粘膜(8.6%)、口底(6.6%)、硬口蓋(2.6%)、下顎骨中心性(1.7%)、下唇(0.8%)で、初診時の頸部リンパ節の転移頻度は25%、遠隔転移は1%ほどである。*日本口腔外科学会および日本口腔腫瘍学会研修施設における調査。扁平上皮がん以外も含む。 また、口腔がんの場合、口腔以外の部位にがんが発生(重複がん)することがあり、重複がんの好発部位と発生頻度は上部消化管がんや肺がんが多く、11.0~16.2%に認められる。これはfield cancerizationの概念1,2)で口腔と咽頭、食道は同一の発がん環境にあると考えられているためである(口腔診療ガイドライン2023年版CQ1、p.80)。 これまで、全国がん登録を含め口腔がんの統計は口腔・咽頭を合算した罹患数の集計になっていたため、口腔がん単独としては信頼性の高いデータは得られていなかった。同氏は「咽頭がんと口腔がんでは性質が異なるので別個の疾患として捉えることが重要」と、口腔がんと咽頭がんは別物であることを強調し、「口腔診療ガイドライン2023年版に記されている罹患率は口腔がん登録のものを記しているため、全国がん登録の罹患状況とは異なる。その点に注意して口腔診療ガイドライン2023年版を手に取ってもらいたい。今後、口腔がんに特化したデータの収集を行うためにも口腔がん登録が厳正に進むことを期待する」と説明した。口腔診療ガイドライン、ハイリスク患者には放射線療法を提案 口腔がんが生じやすい部位や状態は、舌がん、歯肉がん、頬粘膜がんの順に発生しやすく、鑑別に挙げられる疾患として口内炎、歯肉炎、入れ歯による傷などがある。「もし、口内炎であれば通常は3~4日、長くても2週間で治る。この期間に治らない場合や入れ歯が合わないなどの原因をなくしても改善しない場合、そして、白板症、紅板症のような前がん病変が疑われる場合は歯科や口腔外科へ紹介してほしい。またステロイド含有製剤の長期投与はカンジダなど別疾患の原因となる可能性もあり避けてほしい」と話した。 口腔がんの治療は主に外科療法で、口腔を含む頭頸部がんにも多くの薬剤が承認されているが、薬物療法のみで根治が得られることは稀である。再発リスク因子(頸部リンパ節節外進展やその他リスク因子)がある場合には、術後化学放射線療法や術後放射線療法を行うことが提案されている(口腔診療ガイドライン2023年版CQ33、p.146)。外科手術や放射線療法の適応がない切除不能な進行がんや再発がんにおいては、第1選択薬としてペムブロリズマブ/白金製剤/5-FUなどが投与されるため、がん専門医と連携し有害事象への対応が求められる。口腔がんの予防・早期発見、まずは口腔内チェックから 口腔がんの主な危険因子(口腔診療ガイドライン2023年版CQ2~4、p.81~85)として喫煙や飲酒、合わない入れ歯による慢性的な刺激、そしてウイルス感染(ヒトパピローマウイルス[HPV]やヒト免疫不全ウイルス[HIV]など)が挙げられるが、「いずれも科学的根拠が乏しい。早期発見が最も重要であり、50歳を過ぎたら定期的な口腔内チェックが重要になる」と強調した。 現在、口腔以外の疾患で入院している患者では周術期などの口腔機能管理(口腔ケア、栄養アセスメントの観点からの口腔内チェックなど)が行われており、その際に口腔がんが発見されるケースもある。健康で病院受診をしていない人の場合には、近年では各歯科医師会主導の集団検診や人間ドックのオプションとして選択することがリスク回避の場として推奨される。同氏は「歯周病検診は口腔機能をチェックするために、口腔がん検診は生活習慣病の一貫として受けてほしい。口腔がん検診は目に見えるため容易に行えるほか、前がん病変、口腔扁平苔癬、鉄欠乏性貧血、梅毒による前がん状態などの発見にもつながる」と説明した。 最後に同氏は「口腔がんは簡単に見つけられるのに、発見機会が少ないがゆえに発見された時点で進行がんになっていることが多い。進行がんでは顔貌が変化する、食事は取りづらい、しゃべることが困難になるなど、人間の尊厳が奪われ、末期は悲惨な状況の患者が多い。そのような患者を一人でも減らすためにも早期発見が非常に重要」とし、「診察時に患者の話し方に違和感を覚えたり、食事量の低下がみられたりする場合には、患者の口腔変化を疑ってほしい」と締めくくった。

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卵巣がんリスク、卵巣子宮内膜症/深部子宮内膜症では9.7倍/JAMA

 卵巣がんのリスクは、卵巣子宮内膜症や深部子宮内膜症を有する女性で顕著に高いことを、米国・ユタ大学のMollie E. Barnard氏らが、ユタ州住民データベース(Utah Population Database:UPDB)を用いたコホート研究の結果を報告した。子宮内膜症は卵巣がんのリスク増加と関連しているが、子宮内膜症のサブタイプと卵巣がんの組織型との関連は十分に明らかになっていなかった。著者は、「卵巣子宮内膜症ならびに深部子宮内膜症を有する女性は、卵巣がんのリスクと予防に関するカウンセリングによって恩恵を受ける可能性がある。スクリーニングと予防研究の対象として重要な集団となるだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年7月17日号掲載の報告。1,100万人以上の住民データベースを用い子宮内膜症と卵巣がんのリスクを解析 研究グループは、ユタ州の1,100万人以上の情報を含むUPDBを用い、1992~2019年に子宮内膜症と診断された18~55歳の女性7万8,893例を同定し、出生年と出生地(ユタ州/それ以外)に関して1対5の割合でマッチさせた子宮内膜症を有していない女性37万9,043例(対照群)から成るコホートを構築した。 主要アウトカムは卵巣がんで、子宮内膜症の各サブタイプと卵巣がんの組織型との関連について、ロバスト分散推定によるCox比例ハザードモデルを用い、対照群に対する症例群の補正後ハザード比(aHR)とその95%信頼区間(CI)を算出するとともに、一般化線形モデルを用いて1万人当たりの補正後リスク差(aRD)を推定した。 子宮内膜症は、電子健康記録を用いて腹膜病変、卵巣子宮内膜症、深部子宮内膜症、卵巣子宮内膜症と深部子宮内膜症の併存、またはその他の5つに分類した。 また、卵巣がんについては、I型卵巣がん(類内膜がん、明細胞がん、粘液性がん、低異型度漿液性がん)、およびII型卵巣がん(高異型度漿液性がん)に分類した。子宮内膜症群では卵巣がんのリスクは4.2倍 解析対象は、初期コホートからベースライン時点でがん罹患歴のある症例、死亡、両側卵巣摘出およびindex date以前に卵巣がん診断歴のある症例を除外した45万906例(子宮内膜症群7万8,476例、対照群37万2,430例)で、子宮内膜症群の初回診断時の平均年齢は36歳(SD 10)であった。 子宮内膜症群は対照群と比較して、卵巣がんのリスクが高く(aHR:4.20[95%CI:3.59~4.91]、aRD:9.90[95%CI:7.22~12.57])、中でもI型卵巣がんのリスクが高かった(7.48[5.80~9.65]、7.53[5.46~9.61])。 子宮内膜症のサブタイプ別では、深部子宮内膜症および/または卵巣子宮内膜症を有する女性で卵巣がんのリスクが高く、全卵巣がん(aHR:9.66[95%CI:7.77~12.00]、aRD:26.71[95%CI:20.01~33.41])、I型卵巣がん(18.96[13.78~26.08]、19.57[13.80~25.35])、およびII型卵巣がん(3.72[2.31~5.98]、2.42[-0.01~4.85])であった。

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ニルマトレルビル・リトナビル、曝露後予防の効果なし/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の家庭内接触者を対象に、ニルマトレルビル・リトナビルの曝露後予防の有効性および安全性を検討した第II/III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、ニルマトレルビル・リトナビルの5日間または10日間投与はいずれも、症候性COVID-19発症リスクの有意な低下が認められなかった。米国・PfizerのJennifer Hammond氏らが報告した。COVID-19治療薬の臨床試験では、これまで曝露後予防の有効性は示されていなかった。NEJM誌2024年7月18日号掲載の報告。COVID-19家庭内接触後96時間以内で無症状かつ迅速抗原検査陰性の成人が対象 研究グループは、無作為化前96時間以内にCOVID-19患者と家庭内接触があり、無症状かつSARS-CoV-2迅速抗原検査陰性の成人を、ニルマトレルビル・リトナビル(ニルマトレルビル300mg、リトナビル100mg)の5日間投与群、10日間投与群、またはプラセボ群(5日間または10日間投与)に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、ベースラインでRT-PCR検査が陰性であった参加者(解析対象集団)における、14日目までの症候性COVID-19の発症(RT-PCR検査または迅速抗原検査でSARS-CoV-2感染を確認)であった。 2021年9月9日~2022年4月12日に、計2,736例が5日間投与群921例、10日間投与群917例、およびプラセボ群898例に無作為化された。症候性COVID-19発症率にプラセボ群と有意差認められず 投与14日目までのRT-PCR検査または迅速抗原検査でSARS-CoV-2感染が確認された症候性COVID-19の発症率は、5日間投与群2.6%(22/844例)、10日間投与群2.4%(20/830例)、プラセボ群3.9%(33/840例)であった。 プラセボ群に対する相対リスクの減少は、5日間投与群で29.8%(95%信頼区間[CI]:-16.7~57.8、p=0.17)、10日間投与群で35.5%(-11.5~62.7、p=0.12)であり、統計学的な有意差は認められなかった。 有害事象の発現率は、5日間投与群23.9%(218/912例)、10日間投与群23.3%(212/911例)、プラセボ群21.7%(195/898例)で、いずれも同程度であった。最も発現率が高かった有害事象は味覚障害で、それぞれ5.9%、6.8%、0.7%であった。 なお著者は、ニルマトレルビル・リトナビルの独特の味による盲検化への影響、COVID-19患者に関する診断や治療に関する詳細なデータの不足、家庭内の他の家族の影響などを本研究の限界として挙げている。

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ベンゾジアゼピン系薬剤は認知症リスクを上げるか

 ベンゾジアゼピン系薬剤の使用が認知症リスクを増加させる可能性は低いが、脳の構造に長期にわたってかすかな影響を及ぼす可能性のあることが、新たな研究で報告された。認知機能の正常なオランダの成人5,400人以上を対象にしたこの研究では、同薬剤の使用と認知症リスクの増加との間に関連性は認められなかったという。研究グループは、ベンゾジアゼピン系薬剤の使用による認知症リスクの増加を報告した過去の2件のメタアナリシスとは逆の結果であると述べている。エラスムス大学医療センター(オランダ)のFrank Wolters氏らによるこの研究の詳細は、「BMC Medicine」に7月2日掲載された。 ベンゾジアゼピン系薬剤は、脳の活動を抑制する神経伝達物質GABAの放出を促進して神経系の活動を低下させる薬剤で、催眠作用、抗不安作用、抗けいれん作用、筋弛緩作用を有する。今回の研究では、オランダの成人5,443人(平均年齢70.6歳、女性57.4%)を対象に、ベンゾジアゼピン系薬剤の使用が認知機能にもたらす長期的な影響について検討した。Wolters氏らは、1991年からベースライン(2005〜2008年)までの調剤薬に関する記録を調べ、また、処方されたベンゾジアゼピン系薬剤が抗不安薬であるか鎮静催眠薬であるのかも確認した。さらに、脳MRI検査を繰り返し受けていた4,836人を対象に、神経変性マーカーとベンゾジアゼピン系薬剤の使用との関連も検討した。 5,443人のうち2,697人(49.5%)が、ベースライン以前の15年間のいずれかの時点でベンゾジアゼピン系薬剤を使用していた(1,263人〔46.8%〕は抗不安薬、530人〔19.7%〕は鎮静催眠薬、904人〔33.5%〕はその両方を使用)。平均11.2年に及ぶ追跡期間中に726人(13.3%)が認知症を発症していた。 解析の結果、累積用量にかかわりなく、ベンゾジアゼピン系薬剤の使用により、使用しない場合と比べて認知症の発症リスクは有意に増加しないことが示された(ハザード比1.06、95%信頼区間0.90〜1.25)。種類別に見ると、同リスクは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の使用の方がベンゾジアゼピン系鎮静催眠薬の使用よりも幾分か高かったが、いずれも統計学的に有意ではなかった(抗不安薬:同1.17、0.96〜1.41、鎮静催眠薬:同0.92、0.70〜1.21)。 一方、脳MRI画像の検討からは、ベンゾジアゼピン系薬剤の現在の使用は、横断的には海馬、扁桃体、視床の体積の減少(萎縮)、縦断的には海馬の加速度的な萎縮、および海馬ほどではないが扁桃体の萎縮と有意に関連することが示された。 こうした結果を受けてWolters氏らは、「これらの結果は、ベンゾジアゼピン系薬剤の長期処方に注意を促す現在のガイドラインを支持するものだ」と結論付けている。 研究グループは、「ベンゾジアゼピン系薬剤の使用が脳の健康に及ぼす潜在的影響について調査するためには、さらなる研究が必要だ」と話している。

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感謝の気持ちは寿命を延ばす

 感謝の気持ちを持つことは長生きの秘訣となる可能性が、新たな研究で示唆された。Nurses’ Health Study(NHS)に参加した4万9,000人以上の女性を対象にしたこの研究では、感謝の気持ちを測定する質問票での得点が高かった女性では、低かった女性に比べてあらゆる原因による死亡(全死亡)のリスクが9%低いことが明らかになったという。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のYing Chen氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Psychiatry」に7月3日掲載された。 Chen氏は、「感謝の気持ちを持つことで精神的苦痛が軽減する一方で、感情的ウェルビーイングと社会的ウェルビーイングは向上する可能性のあることは、過去の研究で示唆されている。しかし、感謝の気持ちと身体的健康との関連について分かっていることは少ない」と話している。 今回の研究では、NHS参加女性4万9,275人(ベースライン時の平均年齢79歳)を対象に、感謝の気持ちと全死亡および原因別死亡との関連が検討された。対象女性は2016年に、感謝の気持ちを評価する質問票に回答していた。この質問票は、「私の人生には、ありがたいと思うものがとても多い」や「感謝の気持ちを感じるものをリストアップすると大変長くなる」などの6項目の質問に、1(全く同意しない)から7(強く同意する)で回答する内容だった。対象者の死亡(全死亡、原因別死亡)については2019年12月まで追跡された。 平均3.07年にわたる追跡期間中に4,608人の死亡が確認された。最も多かった死因は心血管疾患(1,364人)であり、そのほかの死因は、呼吸器疾患、がん、神経変性疾患などだった。質問票の回答を総計したスコアに応じて対象者を高・中・低の3群に分け、ベースライン時の社会人口学的特性や社会・宗教的参加、メンタルヘルスなどを調整して解析した結果、高スコア群では低スコア群に比べて全死亡リスクが9%低いことが明らかになった(ハザード比0.91、95%信頼区間0.84〜0.99)。また、死因別に解析したところ、心血管疾患による死亡と感謝の気持ちは逆相関の関係にあり、高スコア群では低スコア群に比べて同死亡リスクが15%有意に低い(同0.85、0.73〜0.995)ことが示された。そのほかの死因(がん、呼吸器疾患、神経変性疾患、感染症、外傷、その他)でもリスク低下は認められたが、統計学的に有意ではなかった。 こうした結果を受けて研究グループは、「これらの結果に基づくと、人は感謝の気持ちを抱くものに心を傾けることで、健康を改善できる可能性がある」と述べている。またChen氏は、「先行研究では、週に数回、感謝していることを書き出したり話し合ったりするなど、意図的に感謝の気持ちを育む方法があることが示されている。健康的な老化の促進は公衆衛生の優先事項である。今後の研究で、長寿を増進する心理的資源としての感謝の気持ちに対する理解が深まることを期待している」と述べている。

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低血糖時に慌てないための方法(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者 先日、低血糖になって…医師 どんな感じだったんですか?(低血糖エピソードの経過について尋ねる)患者 変な汗が出てきて、スキャンしたら血糖が58でこれはヤバいと思って、近くにある菓子パンやジュースを飲んだんですけど…その後、高血糖になって、インスリンで修正したら、下がり過ぎて…。医師 なるほど。血糖値がジェットコースターみたいだったんですね。患者 そうなんです。また、低血糖になったら、どうしようかと心配で…。医師 それなら、「15-15ルール」を活用してみてください。低血糖になったら15g程度の炭水化物、ロールパン1個ぐらいですね。それをとってから、15分後に血糖を確認してみてください。もし、まだ低いようなら15gの炭水化物を追加してみてください。患者 なるほど。今まで、慌てて、とり過ぎていました。画 いわみせいじポイント低血糖後の高血糖を予防するために、「15-15ルール」について具体例をあげてわかりやすく説明します。Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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新型コロナ感染時、外出を控える推奨期間

新型コロナウイルス感染症に感染した場合の考え方①(5類感染症移行後)5類感染症に移行後、新型コロナ患者は法律に基づく外出自粛は求められません。外出を控えるかどうかは、個人の判断に委ねられます。新型コロナウイルス感染症を他の人にうつすリスクは?⚫ 一般的に、発症2日前から発症後7~10日間はウイルスを排出しているといわれている(症状軽快後もウイルスを排出しているといわれている)。⚫ 発症後3日間は感染性のウイルスの平均的な排出量が非常に多く、5日間経過後は大きく減少する。⚫ とくに発症後5日間が他人に感染させるリスクが高いことに注意。新型コロナにかかったとき、外出を控えることが推奨される期間は?⚫ 発症日を0日目(無症状の場合は検体採取日)として5日間は外出を控え、5日目に症状が続いていた場合は、熱が下がり痰や喉の痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまでは外出を控え様子を見ることが推奨される。⚫ 発症後10日間は不織布マスクを着用したり、高齢者などハイリスク者と接触は控えるなど、周りの人に配慮する。10日を過ぎても咳やくしゃみなどの症状が続く場合は、マスク着用など咳エチケットを心がける。厚生労働省ホームページ「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html)より抜粋Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.新型コロナウイルス感染症に感染した場合の考え方②(5類感染症移行後)5類感染症に移行後、新型コロナ患者は法律に基づく外出自粛は求められません。外出を控えるかどうかは、個人の判断に委ねられます。家族が新型コロナウイルス感染症にかかったときは?⚫ 家族・同居人が新型コロナにかかったら、可能であれば部屋を分け、感染者の世話はできるだけ限られた人で行う。⚫ 外出する場合、新型コロナにかかった人の発症日を0日として、とくに5日間は自身の体調に注意する。7日目までは発症する可能性がある。その間、手洗いなどの手指衛生や換気などの基本的感染対策のほか、不織布マスクの着用や高齢者などハイリスク者と接触を控える。【参考】位置付け変更前との違い位置付け変更前感染症法に基づき外出自粛を求められる期間位置付け変更後(2023年5月8日~)外出を控えることが推奨される期間(個人の判断)新型コロナ陽性者(有症状)発症日を0日目として、発症後7日間経過するまで発症日を0日目として、発症後5日間経過するまで新型コロナ陽性者(無症状)・5日目の抗原定性検査キットによる陰性確認・検査を行わない場合は7日間経過するまで検査採取日を発症日(0日)として、5日間経過するまで濃厚接触者5日間の外出自粛なしかつ、症状軽快から24時間経過するまでの間厚生労働省ホームページ「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について(https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html)より抜粋Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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枕とふらつき【Dr. 中島の 新・徒然草】(539)

五百三十九の段 枕とふらつきついに大阪でも梅雨明け宣言が出ました。2024年の梅雨明けは7月21日で例年より2日遅いそうです。梅雨入りが例年より15日遅かったので、梅雨自体の期間は13日短かったということになりましょうか。この計算で合ってますかね?さて、灼熱の炎天下。総合診療科を受診した男性は40歳前後。主訴はふらつきで、かれこれ1年くらい症状があるそうです。この方が言うには、立っているとふらつきが強く、座ると少しマシ、寝るとほぼ感じないとのことでした。また自転車に乗っている時にはあまり感じないけれども、USJのミニオン・ハチャメチャ・ライドに乗った時に一番ふらつきが強かったとのこと。奥さんと小学生の子供さんはケロッとしていたのに、ご本人にとってはこれ以上ないくらい目が回って気分が悪くなったのだそうです。ふらつきについては、これまでたくさんの医療機関を回り、複数回の頭部MRIを撮影したけど、とくに問題はなかったとのこと。持参された他院の頭部MRIを私が見ても、とくに異常はなさそうでした。一般的に私の考えるふらつきというのは、脳に入力される複数の情報の統合がうまくいっていない状況ではないかと思います。これらを箇条書きにすると以下のとおり。目から入る視覚情報三半規管から入る頭の向きの情報手足や背中から入る深部知覚の情報これらの情報が、脳の中で矛盾なく統合された状態の時に、人間はふらつきを感じないわけです。ところが閉眼によって視覚情報が遮断されたり、三半規管の不具合があったり、頚椎症などのために手足からの深部知覚がうまく脳に伝わらなかったりすると、ふらつきを感じてしまいます。また脳自体の問題で、情報の統合がうまくいかないということもあるでしょう。で、いろいろな身体所見から「ひょっとして頚椎に問題があるのかも?」と思った私は、全脊椎MRIを撮影することにしました。しかし頚椎は軽いヘルニアがある程度でした。また胸腰椎もとくに問題はありません。一方、この患者さん。私の初回と2回目の診察の間に、ご自分で探し出した整体に行っておられたのです。果たして整体の効果やいかに?患者さんに尋ねてみた結果は予想外のものでした。整体では背骨を触って「頚椎と腰椎の前弯が消失していますね」と言われたのだそうです。実際、全脊椎MRIではストレートネックになっており、腰椎もストレート気味でした。これがふらつきの原因かもしれない、と思った患者さんは頚の下に枕を入れて寝るようにしたそうです。それまでは枕をせずに寝ていたのだとか。枕を使うと、ふらつきが随分マシになったそうです。一体、そういうことがあるのか?私自身はあまり経験がないのでネットで調べてみました。確かに「ストレートネックは頭痛やめまいの原因になる」といった記載が数多くみられます。その多くは整形外科というよりも、整骨院のホームページになるのですが。原因やメカニズムが何であれ、治ったらOKです。整体でどのような施術をするのか、そしてその結果はどうなのか。虚心坦懐にフォローしてみようと思います。最後に1句梅雨明けて 枕をしたら 快調だ

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第106回 肺炎球菌ワクチン、「プレベナー20」一強時代の到来か

「プレベナー20」とは成人・小児共に最も有効かつエビデンスがある肺炎球菌ワクチンは「プレベナー20®水性懸濁注」(PCV20)です。小児における、「肺炎球菌(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33F)による侵襲性感染症の予防」を効能または効果として、2024年10月から定期接種される見込みです。え…?10月…ッ!!?( ゚д゚) …   (つд⊂)ゴシゴシ  (;゚ Д゚) …!?ええっと、今7月ですよね。医療機関の契約変更、医師会やクリニックの調整、そして予診票…、もろもろの準備、間に合うんでしょうか。その想定を受けて水面下で定期接種の話が進んでいたものと推察されるので、ちゃんと間に合わせてくるのかもしれません。プレベナー13(PCV13)はPCV20の入れ替わりのような形で供給が終了になっていくものと予想されます。どちらもファイザー社製品なので、供給のバランスを取ればいいだけです。本当は、成人にも使いたいできれば成人にもPCV20を使いたいところです。――というのも、海外ではPCV20を接種するのが当たり前になっているためです。国際的には、肺炎球菌感染症のリスクが高い成人については、基本的にPCV20が推奨されています。これまで定期接種に長らく使われてきたニューモバックス(PPSV23)は、2024年4月から助成の範囲が縮小されました。5の倍数の年齢ごとにチャンスがあったものが、65歳固定になりました。基礎疾患がある場合は、60~64歳と広めに対象が設定されていますが、「チャンスが減った」ということで今後も接種率は低くなっていくかもしれません。…まあ、もともと接種率が低いんですけど…。現在、新しい肺炎球菌ワクチンとして、バクニュバンス(PCV15)が小児および成人を対象として用いられています。ただ、国際的にはPCV15を接種する場合、1年後にPPSV23を追加接種するほうが予防効果が高いとされています。現在65歳の方は、助成をフルに活用するならPPSV23→PCV15の順番で接種することが望ましいかもしれません。ただ、1回のワクチンが1万円→数千円になるくらいの助成なので、そこまでこだわらなくてもよいのではないかと思っていますが。いずれにしても、PCV15+PPSV23の連続接種が完了すると、PCV20単独よりも3つの血清型に追加防御が生じるため、こちらのほうを好む専門家もいます1)。PCV13は成人にも使用することができますが、PCV13の代わりにPCV20を導入することで、医療費の削減効果は2,039億円あるとされており、労働産生的な損失も加味すると、費用削減としては約3,526億円の効果が期待できるとされています2)。画像を拡大する図. 3種のワクチン接種プログラム(人口当たり)の費用対効果(文献2より引用、CC BY 4.0)図は、右軸にQALYの増加、縦軸に費用の増加をプロットしており、PCV13から他ワクチンに置き換わった場合の効果および費用の増分を算出しています。医薬品のアプレイザル(総合評価)では、かなりポジティブなデータとなっています。…なので、どの方向に転んでも、現時点でのエビデンスでは「PCV20推し」となるわけです。さて、肺炎球菌ワクチンは今後どうなるのか、要注目です!ちなみに、私は肺炎球菌ワクチンに関して、開示すべきCOIはありません!参考文献・参考サイト1)Mt-Isa S, et al. Matching-adjusted indirect comparison of pneumococcal vaccines V114 and PCV20 Expert Rev Vaccines. 2022 Jan;21(1):115-123.2)Shinjoh M, et al. Cost-effectiveness analysis of 20-valent pneumococcal conjugate vaccine for routine pediatric vaccination programs in Japan. Expert Rev Vaccines. 2024 Jan-Dec;23(1):485-497.

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統合失調症の肺炎リスクと抗精神病薬や抗コリン負荷との関連

 観察研究において、抗精神病薬は肺炎リスクと関連していることが示唆されているが、抗精神病薬の使用が肺炎リスクにどの程度影響を及ぼすのか、用量反応性、各薬剤と特異的に関連するかは不明である。オランダ・アムステルダム大学のJurjen J. Luykx氏らは、特定の抗精神病薬に関連する肺炎リスクを推定し、多剤併用療法、投与量、受容体結合特性が統合失調症患者の肺炎と関連しているかを調査した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2024年6月26日号の報告。 対象は、1972〜2014年のフィンランドレジストリデータより特定された、16歳以上の統合失調症または統合失調感情障害患者。診断、入院治療、専門外来治療に関するデータは退院レジストリ、外来での治療薬に関するデーは処方箋レジストリより収集した。フォローアップ期間は1996〜2017年、データ分析は2022年11月4日〜2023年12月5日に実施した。抗精神病薬の使用量は、用量別に低用量群(WHOが定義する1日用量[DDD]:0.6未満)、中用量群(DDD:0.6〜1.1)、高用量群(DDD:1.1以上)に分類した。特定の抗精神病薬単剤療法、多剤併用療法、抗コリン負荷に応じて、低、中、高に分類した。主要アウトカムは、肺炎発症による入院とした。肺炎リスクは、抗精神病薬未使用の場合を基準とし、調整済み個別(within-individual)Cox比例ハザード回帰モデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、統合失調症患者6万1,889例、平均年齢は46.2±16.0歳、男性の割合は50.3%(3万1,104例)であった。・22年間のフォローアップ期間中に、肺炎で1回以上入院した患者は8,917例(14,4%)、入院後30日以内に死亡した患者は1,137例(12.8%)であった。・全体では、抗精神病薬使用患者は、抗精神病薬未使用患者と比較し、肺炎リスクとの関連は認められなかった(調整ハザード比[aHR]:1.12、95%信頼区間[CI]:0.99〜1.26)。・抗精神病薬単剤療法では、抗精神病薬未使用患者と比較し、用量依存的に肺炎リスクの増加との関連が認められたが(aHR:1.15、95%CI:1.02〜1.30、p=0.03)、多剤併用療法では関連が認められなかった。・抗コリン負荷別に分類した場合、抗コリン負荷の高い抗精神病薬の使用と肺炎リスクとの関連が認められた(aHR:1.26、95%CI:1.10〜1.45、p<0.001)。・肺炎リスクの増加と関連していた抗精神病薬は次のとおりであった。【高用量クエチアピン】aHR:1.78(95%CI:1.22〜2.60)、p=0.003【高用量クロザピン】aHR:1.44(95%CI:1.22〜1.71)、p<0.001【中用量クロザピン】aHR:1.43(95%CI:1.18〜1.74)、p<0.001【高用量オランザピン】aHR:1.29(95%CI:1.05〜1.58)、p=0.02 著者らは「統合失調症患者の肺炎リスクと関連する抗精神病薬は、クロザピン(180mg/日以上)だけでなくクエチアピン(440mg/日以上)やオランザピン(11mg/日以上)も含まれることが示唆された。さらに、抗精神病薬単剤療法および抗コリン負荷の高い抗精神病薬の使用は、用量依存的に肺炎リスクを増加させる可能性がある。本知見は、肺炎リスクの高い抗精神病薬による治療を必要とする患者に対する予防戦略の必要性を示唆している」としている。

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脳転移を有するHER2低発現乳がん、T-DXdの頭蓋内奏効率は?(DESTINY-Breast04)/日本乳学会

 化学療法歴を有するHER2低発現の切除不能または転移を有する乳がん患者を対象として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択による化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast04試験の、脳転移を有する患者に絞った探索的研究において、T-DXd群ではTPC群を上回る良好な頭蓋内奏効が得られたことを、昭和大学の鶴谷 純司氏が第32回日本乳学会学術総会のアンコール企画で発表した。 脳転移は、HER2低発現の転移・再発乳がん患者の約15%に生じる可能性があり、予後不良であることが報告されている。これまでのDESTINY-Breast04試験のサブグループ解析では、脳転移を有する症例であっても、T-DXd群は全体集団と同様に有意に無増悪生存期間(PFS)が延長したことが報告されているが、頭蓋内転移に対する有効性は不明であった。そこで研究グループは、DESTINY-Breast04試験のうち、ベースライン時に無症候性脳転移を認めた症例におけるT-DXdおよびTPCの頭蓋内病変に対する有効性を、脳MRIまたはCTの盲検下独立中央判定(BICR)に基づき評価した(データカットオフ:2022年1月11日)。 評価項目は、BICR判定による頭蓋内確定奏効率(cORR)(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])、頭蓋内最良総合効果、頭蓋内臨床的有用率(CBR)(CR+PR+安定[SD])、病勢コントロール率(DCR)(CR+PR+SD)、BICR判定による中枢神経系PFS(CNS-PFS)、全生存期間(OS)であった。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時に無症候性脳転移を認めたのは35例で、T-DXd群が24例(うち未治療が8例)、TPC群が11例(同7例)であった。T-DXd群では、年齢中央値が高く、CDK4/6阻害薬の治療歴がない割合が高く、脳転移に対する治療として放射線療法(±外科治療)を受けていた割合が高かった。・頭蓋内cORRは、T-DXd群25.0%、TPC群0%であった。T-DXd群では、16.7%でCRが得られた。・T-DXd群およびTPC群の頭蓋内CBRは58.3%/18.2%、頭蓋内DCRは75.0%/63.6%であった。・頭蓋内最良総合効果のSwimmer Plotでは、奏効している患者はT-DXd群のほうが長い傾向を示した。・T-DXd群におけるCNS-PFS中央値は9.7ヵ月、OS中央値は16.7ヵ月であった。・最初の増悪部位別では、頭蓋内で進行(PD)と判定されたのはT-DXd群8.3%、TPC群27.3%であった。 鶴谷氏は「本探索的研究は部分集団解析であり、前治療歴などは両群で差があったことを加味する必要がある」としたうえで、「組み入れられた患者はごく少数であったが、頭蓋内の有効性データから、TPCを上回るT-DXdの有益性が示された」とまとめた。

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デュルバルマブ+化学療法±オラパリブの日本人子宮体がんに対する成績(DUO-E)/日本婦人科腫瘍学会

 進行子宮体がんに対してデュルバルマブを含む治療と標準化学療法を比較する第III相試験DUO-Eの日本人サブセット解析が、第66回日本婦人科腫瘍学会学術大会で久留米大学の西尾 真氏により発表された。 DUO-E試験では、進行再発子宮体がん1次治療のITT集団において、化学療法・デュルバルマブ併用+デュルバルマブ維持療法群および、同併用+デュルバルマブ・オラパリブ維持療法群共に、化学療法と比べ無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が報告されている。対化学療法群におけるハザード比(HR)はそれぞれ0.71(95%信頼区間[CI]:0.57〜0.89、p=0.003)、0.55(95%CI:0.43〜0.69、p<0.0001)であった。・対象:未治療の進行StageIII/IV(FIGO2009)または再発子宮体がん・試験群1: 化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル)+デュルバルマブ→デュルバルマブ(TC+D群)・試験群2:TC+デュルバルマブ→デュルバルマブ+オラパリブ(TC+D+O群)・対照群:TC→プラセボ(TC群)・評価項目:[主要評価項目]治験責任医判定によるPFS(TC+D群vs.TC群、TC+D+O群vs.TC群)[副次評価項目]全生存期間、安全性など 主な結果は以下のとおり。・日本人サブセットは88例(TC群32例、TC+D群30例、TC+D+O群26例)であった。・日本人サブセットはITT集団に比べPS良好例、初発例、StageIV例が多く、放射線治療歴が少なかった。・日本人患者のPFS中央値はTC群9.5ヵ月、TC+D群9.9ヵ月(対TC群HR:0.61、95%CI:0.32〜1.12)、TC+D+O群15.1ヵ月(対TC群HR:0.44、95%CI:0.22〜0.85)で、ITT集団と一貫した傾向であった。・安全性プロファイルはITT集団と一貫していた。・Grade3以上の有害事象発現はTC群の19.0%、TC+D群の10.0%、TC+D+O群の45.0%であった。 DUO-E試験の結果から、日本人の子宮体がんにおいて、化学療法+デュルバルマブおよびその後のデュルバルマブ±オラパリブが新たな治療選択肢となり得る、と西尾氏は述べた。

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