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航空会社のシフト制労働者の不規則な食事リズムは抑うつや不安と関連

 遅い夕食や長い食事摂取の時間枠などの不規則な食事リズムが、抑うつや不安のリスクを高める可能性のあることが、航空会社のシフト制労働者を対象にした新たな研究で明らかになった。上海交通大学(中国)のMi Xiang氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に7月15日掲載された。 この研究では、中国の主要航空会社の従業員(パイロット、客室乗務員、航空保安検査員)を対象とした継続中の研究(Civil Aviation Health Cohort of China)への参加者2万2,617人(18〜60歳、年齢中央値29.1歳、男性60.6%)のデータが分析された。研究グループは、調査データをもとに、就業日と休日における朝食と夕食を摂取するタイミング、毎日の食事摂取の時間枠、およびイーティングジェットラグを割り出し、抑うつや不安との関連を検討した。 その結果、午前シフトの日における午後8時以降の夕食の摂取は、午後8時前の摂取と比べて、抑うつと不安のリスク増加と関連することが明らかになった(抑うつ:調整オッズ比2.01、95%信頼区間1.78〜2.27、不安:同1.78、1.53〜2.05)。同様の結果は、夜間シフトの日と休日でも認められた。一方、午前シフトの日に食事摂取の時間枠が12時間未満であることは、12時間以上の場合と比べて抑うつと不安のリスクが低かった(同順で、同0.81、0.75〜0.89、同0.84、0.75〜0.93)。この結果は、休日でも同様であった。 また、午前シフトの日における夕食の遅れと夜間シフトの日における夕食の遅れは、抑うつと不安のリスク増加に関連していた(午前シフト:同順で、調整オッズ比1.39、95%信頼区間1.22〜1.58、同1.32、1.13〜1.54、夜間シフト:同順で、同1.21、1.08〜1.36、同1.22、1.06〜1.39)。さらに、午前シフトの日における食事を摂取するタイミングの遅れは抑うつリスクの増加と関連していたのに対し(同1.35、1.13〜1.61)、タイミングの前倒し、つまり早めに食事を摂取することは不安リスクの低下と関連していた(同0.78、0.70〜0.87)。 こうした結果を受けて研究グループは、「航空会社の従業員の食事リズムは、フライトスケジュール(早朝か、夜遅くかなど)に左右されることが分かった。このような不規則な食事リズムは抑うつと不安のリスク上昇と関連していた」と述べている。また、このような結果が得られた理由として、研究グループは、食事時間の変動が、概日リズムとしても知られる体の睡眠・覚醒サイクルに影響を与え、最終的に気分に影響を与える代謝シフトを引き起こすのではないかと推測している。 研究グループはさらに、「航空会社の従業員は厳しい訓練の中で回復力を養っているため、平均的な労働者よりもストレスにうまく対処し、緊急事態を管理する能力が高いと考えられる。それゆえ、典型的なシフト制労働者において不規則な食事リズムが心理面に与える影響はより深刻な可能性がある」と述べている。

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極端に暑い日や寒い日には診療予約のキャンセルが増加

 極端に高温や低温の日には、予約されている診療時間に来なかったり(ノーショー)、診療をキャンセルしたりする患者が増えることが明らかになった。こうした傾向は、65歳以上の高齢者と慢性疾患を有する人で顕著だったという。米ドレクセル大学医学部のNathalie May氏らによるこの研究の詳細は、「American Journal of Preventive Medicine」に6月20日掲載された。 この研究では、米フィラデルフィア市の13カ所の大学病院の外来患者(18歳以上)9万1,580人の間に、2009年1月から2019年12月31日の間に発生した診療予約104万8,575件の追跡が行われた。May氏らは、受診の有無に関するデータを米国海洋大気庁(NOAA)の国立環境情報センター(National Centers for Environmental Information;NCEI)が提供する気象データに基づいて寒い季節と暑い季節に分類し、極端な気温とプライマリケアの利用との関連を検討した。 その結果、最高気温が華氏89度(摂氏31.7度)以上になると、華氏1度(摂氏0.56度)上昇するごとに、無駄になる(ノーショーまたはキャンセル)診療予約が0.64%増加することが示された。また、最高気温が華氏39度(摂氏3.9度)以下の場合でも、華氏1度低下するごとに、無駄になる診療予約が0.72%増加していた。さらに、極端な気温に伴い診療を取りやめる傾向は、特に、65歳以上の患者と慢性疾患を有する患者で強いことも判明した。 May氏は、「気候変動による異常気象は、慢性疾患を有する全ての患者の健康とウェルビーイングを脅かす」と指摘する。同氏はさらに、「とりわけ、極端な暑さや寒さに対抗するための資源を持っていない可能性のある最も脆弱な患者に対しては、警戒を怠らないようにするべきだ。われわれは、プライマリケアの利用における気候変動の影響を研究することで、特に、都市における気候変動の悪影響の観点から健康と公平性を支援する政策を推進したいと考えている」と話している。 一方、論文の筆頭著者であるドレクセル大学医学部のJanet Fitzpatrick氏は、「ノーショーは、患者が自身の健康を損なうだけでなく、他の患者にも悪影響を及ぼす。診療を切望している患者は他にもいる中でのノーショーは、貴重な予約枠を無駄にし、待ち時間の長さによる患者満足度を低下させる。また、急患や救急外来の利用が増え、慢性疾患の管理も不十分になることから、将来、より多くの医療が必要となり、結果的に国の医療システムにかかるコストも増加する」と話す。 医療システムは、遠隔医療の活用によってこのような影響を軽減することができるとFitzpatrick氏は話す。同氏は、「新型コロナウイルス感染症のパンデミックの際、遠隔医療は医療提供の重要な一形態として機能した。気候変動が悪化する中、この研究は、患者が必要なケアを確実に受けられるようにするための選択肢として、遠隔医療の恒久的な適用を提唱することを支持するものだ」と述べている。

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スタチンの使用はパーキンソン病リスクの低下と関連

 日本人高齢者を対象とした大規模研究により、スタチンの使用はパーキンソン病リスクの低下と有意に関連することが明らかとなった。LIFE Study(研究代表者:九州大学大学院医学研究院の福田治久氏)のデータを用いて、大阪大学大学院医学系研究科環境医学教室の北村哲久氏、戈三玉氏らが行った研究の結果であり、「Brain Communications」に6月4日掲載された。 パーキンソン病は年齢とともに罹患率が上昇し、遺伝的要因や環境要因などとの関連が指摘されている。また、脂質異常症治療薬であるスタチンとパーキンソン病との関連を示唆する研究もいくつか報告されているものの、それらの結果は一貫していない。血液脳関門を通過しやすい脂溶性スタチンと、水溶性スタチンの違いについても、十分には調査されていない。 そこで著者らは、LIFE Studyの2014年~2020年の健康関連データを用いて、コホート内症例対照研究を行った。65歳以上の高齢者で、追跡中にパーキンソン病を発症した人を症例、症例1人に対してコホート参加時の年齢、性別、市町村、参加年をマッチさせた対照5人を選択し、解析対象は症例9,397人と対照4万6,789人とした(女性53.6%)。スタチンは脂溶性(アトルバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン)と水溶性(プラバスタチン、ロスバスタチン)に分類し、コホート参加時からの累積投与量の指標として、標準化1日投与量の合計(total standardized daily dose;TSDD)を算出した。 条件付きロジスティック回帰を用い、先行研究に基づいて併存疾患の有無を調整して解析した結果、スタチン使用は非使用と比較して、パーキンソン病リスクの低下(オッズ比0.61、95%信頼区間0.56~0.66)と有意に関連していることが明らかとなった。この関連は性別にかかわらず、男性(同0.62、0.54~0.70)と女性(同0.60、0.54~0.68)ともに認められた(交互作用P=0.71)。また、年齢層ごとに検討した場合も、65~74歳(同0.57、0.49~0.66)、75~84歳(同0.60、0.53~0.68)、85歳以上(同0.73、0.59~0.92)のいずれも同様の関連が認められた(交互作用P=0.17)。 全体として、スタチンの累積投与量が多いほどパーキンソン病リスクが低いことも明らかとなった。具体的には、TSDD 0(投与なし)の人と比較して、TSDD 1~30ではリスク上昇(同1.30、1.12~1.52)と関連していた一方で、TSDD 31~90(同0.77、0.64~0.92)、TSDD 91~180(同0.62、0.52~0.75)、TSDD 181以上(同0.30、0.25~0.35)ではリスク低下と関連していた。また、脂溶性スタチン(同0.62、0.54~0.71)と水溶性スタチン(同0.62、0.55~0.70)のどちらも、パーキンソン病リスク低下と関連していることが示された。 以上から著者らは、「日本人高齢者において、スタチン使用とパーキンソン病リスク低下との間に有意な関連が認められた。スタチンの累積投与量が多いほど、パーキンソン病の発症に対して予防効果を示した」と述べている。スタチンによる予防効果のメカニズムについては、脳動脈硬化の低下やドーパミン作動性神経細胞の生存などによる可能性が考えられるとして、この予防効果をより正確に評価するため、さらなる研究の必要性を指摘している。

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COPD・喘息の早期診断の意義(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 COPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)は2021年の統計で1万6,384例の死亡者数と報告されており、「健康日本21(第三次)」でもCOPDの死亡率減少が目標として掲げられている。気管支喘息も、年々死亡者数は減少しているとはいえ、同じく2021年の統計で1,038例の死亡者数とされており、ガイドラインでも「喘息死を回避する」ことが目標とされている。いずれも疾患による死亡を減少させるために、病院に通院していない、適切に診断されていないような症例をあぶり出していくことが重要と考えられている。しかしながら、疾患啓発や適正な診断は容易ではない。現在、COPD前段階ということで、「Pre COPD」や「PRISm」といった概念が提唱されている。閉塞性換気障害は認めないが画像上での肺気腫や呼吸器症状を認めるような「Pre COPD」や、同じく1秒率が閉塞性換気障害の定義を満たさないが、%1秒量が80%未満となるような「PRISm」であるが、それらの早期発見や診断、そして治療介入などが死亡率の減少に寄与しているかどうかについては明らかになっていない。 今回NEJM誌から取り上げるカナダ・オタワ大学からの「UCAP Investigators」が行った報告では、症例発見法を用いたCOPD・気管支喘息の診断と治療により、呼吸器疾患に対する医療の利用が低減することが示された。約3万8,000例の中から、595例の未診断のCOPD・喘息が発見され、介入群と通常治療群に分けられ、呼吸器疾患による医療利用の発生率が評価されている。ガイドラインによる治療を順守するような呼吸器専門医の介入により、被検者の医療利用は有意に低下することが報告された。早期診断・治療を受けることにより、SGRQスコアとCATスコアや1秒量が改善することが示され、症例の健康維持に寄与することが期待されている。また、早期診断することにより、自らの病状の理解や自己管理の重要性を認識することも重要と考えられる。 一見、病気はすべて早期発見・早期治療が良いように思われるが、いくつかの問題点も考えられる。1つは軽症や無症状の症例が診断されることにより、生命予後に寄与しない治療が施される可能性がある。診断された患者は不安や精神的・心理的なストレスを抱えることも懸念される。2つ目に、限りある医療資源を消費してしまうことが推測される。呼吸器専門医や呼吸器疾患に携わる医療者は本邦でも潤沢にいるわけではなく、呼吸器専門医が不在の医療機関も少なくない。より重症や難治例のために専門医の意義があるわけで、軽症例や無症状の症例に対してどこまで介入できるか、忙しい日本の臨床の現場では現実的ではない部分が大きい。3つ目には薬物療法の早期開始により、副作用リスクがメリットを上回る可能性も不安視される。とくに吸入ステロイドによる局所の感染症や糖尿病や骨粗鬆症のリスクは、長期使用となると見逃すことはできないのだろう。 いずれにしても症例発見法は簡便であり多くの医療機関で導入可能と筆者は訴えているが、COPD・喘息の早期診断・早期介入が医療利用の低減のみならず、長期予後や死亡率の減少などにつながるかどうか、より長期的な検討が必要なのだろう。

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第223回 院内処方は例外?腑に落ちない「医薬品の自己負担の新たな仕組み」

酷暑が続く最中だが、秋に向けてさまざまな動きがスタートしている。医療界では10月から、患者の希望に基づくジェネリック(GE)医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の処方は選定療養となり、新たに自己負担が生じることになる。すでに厚生労働省は特設ページまで用意している。国民に新たな負担を強いるわけだから、この対応自体は一定の評価はできると個人的に考えている。さてこのページを見ていて、ちょっと気になったことがあった。それは「長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)」という事務連絡通知だ。余計なことを言えば、「その1」があるならば、「その2」はいつ出るのだろうとも考えているが…。私がこの通知の中で気になったのが以下の疑義解釈である。【院内処方その他の処方について】問7 院内採用品に後発医薬品がない場合は、「後発医薬品を提供することが困難な場合」に該当すると考えて保険給付してよいか。(答)患者が後発医薬品を選択することが出来ないため、従来通りの保険給付として差し支えない。なお、後発医薬品の使用促進は重要であり、外来後発医薬品使用体制加算等を設けているところ、後発医薬品も院内処方できるようにすることが望ましい。「は?」という感想しかない。念のために言っておくと、私は原則的に医薬分業を推進すべきだと思いつつ、過渡的に院内処方はありだと思っている。しかしだ、さすがにこれはないだろうと思ってしまった。まず、国が医薬分業推進とジェネリック品(私の表記はこれで統一、以下GE品)の使用促進を謳っている中で、院内処方にこだわるならば、せめてGE品も院内在庫として有するのが筋というもの。こういうと、「GE品は先発品とは医薬品添加剤などが異なるから実質的に異なるもの」という主張が出てくる。医薬品添加剤などが異なるは、その通りである。しかしながら、GE品は長期収載品との同等性試験のデータを提出して承認されるものである。実は私は会社員として専門紙記者をやっていた頃、この生物学的同等性試験(以下、同等性試験)を受けようとしたことがある。やや余談になるが、その時の話をまず記述したいと思う。同等性試験に参加したワケ当時の私は、所属していた媒体でインフォームド・コンセント(IC)に関する連載を担当しており、臨床試験でのICの実態を体験したいと考えていた。私の友人にはGE品の同等性試験を経験した人がおり、そこから試験申し込みの情報は得ていた。とはいえ、会社員の身で事実上の潜入取材となるため、直属の上司は編集局長の許可がいると言い出し、最終判断は局長一任となり却下された。だが、その直後、直属の上司が社内異動となり、社内の他媒体の編集長が私の媒体の兼任となった。私はこの間隙を縫って、兼任編集長に次ぐ、記者でもある主任に再度掛け合った。主任は私の申し出に腕組みして考えた後、「友人に迷惑かけんなよ。それと試験手前で離脱できるならしろ。その条件で認める。後は俺が責任を取る」と言ってくれた。私は友人から教えられた電話番号に連絡し、事前の採血や健康診断を受け、さらに臨床試験のICも受けた。率直に言って、この時受けたICは、臨床試験に際して求められる項目がかなり抜け落ちたものだった。結局、私は試験開始前に離脱を表明し、最終的にその状況を記事にしたのだった。記事が出た当初、社内で問題になることはなかったが(そもそも局長が社内媒体すべてには目を通していなかった)、しばらくして大問題となった。社内の広告営業部門の幹部が飛んできて「えらいことをしてくれた」と言うのだ。曰く、私と同期入社である営業担当社員が半年ほど、臨床試験受託会社の業界団体加盟社すべてから営業訪問を拒否されているとのこと。長らくその理由も明らかにされなかったが、この同期社員が「なぜ会ってもいただけないんですか?」とある会社に食い下がったところ、私の記事のコピーを差し出されたという。私が離脱した同等性試験を受託していたのは、この業界団体の加盟社だった。結局、同期の営業社員は年間で営業成績が数百万円の落ち込みとなってしまった。彼には直接詫びたが、彼は「まあ、うちら専門紙がやるかという問題はあるけど、(記事は)必要だったと思うよ」と精一杯の“やせ我慢”(と私は思っている)で応えてくれた。私が属していた会社は、いわゆる業界紙という区分にもなる専門紙だったが、私以外にもこうした誤報ではないが、読者でもあり広告出稿者の癇に障る記事を書いて、一時出稿停止になることは珍しくなかった。ちなみに私の退職時の送別会に出席した前述の営業部門幹部から、私の記事が原因で飛んだ7年間の広告料概算総額を聞かされた時は正直血の気が引いたものである。同等性試験の参加者は過酷さて同等性試験に話を戻そう。私は事前に友人が受けた同等性試験の様子は聞いていたが、それはある意味壮絶なものだった。友人の証言に基づくと、彼が受けた同等性試験では最初の6時間は1時間おき、その後は丸2日間にわたって3時間おきに採血が行われたという。これは服用薬の血中濃度測定のためだ。この頻回な採血により、後半になると採血用の注射針を刺した直後に失神する被験者もいたという。いずれにせよ、そうした犠牲を払って行われた同等性試験の結果が正しいという前提に立てば、「GE品は先発品と異なる」との主張はあまり適当ではないと思われる。確かに昨今のGE企業の相次ぐ不祥事もあるが、それでGE品を丸々否定するのはやや度が過ぎていると感じる。そのような中で、今回示された疑義解釈に沿えば、院内処方の医療機関でGE品を在庫していないというだけで選定療養の対象外とするのは、さすがに国の方針としてやや甘過ぎないだろうか? そしてこの解釈を利用すれば、院内処方を行う医療機関と医学的な必要性もなく長期収載品の処方を望む患者が手を組めば、事実上不正な処方も行えることにほかならない。院内処方はたかだか20%なのだから固いこと言うなとの意見もあるかもしれない。しかし、そもそもこの解釈そのものが今回の制度改正の主旨であるGE品の使用促進に伴う国の薬剤費負担を軽減することにすら反する。現行の制度や世の中を取り巻く環境を考えるならば、院内処方をする医療機関はそれ相当の矜持を有するべきであり、国もそれ相応の対応を取るべきである。しかし、この解釈に対しては、少なくとも私は場当たりな印象しかない。最後に申し添えておくと、ときどき保険薬局の薬剤師からは「院内処方をしている医療機関から時に在庫確保が困難だからとかの理由で処方箋が出されることがある」との話はよく耳にする。現在の医薬品供給不足で、在庫確保の困難さは薬局も同じこと。大きなお世話と言われようが、そこは互いに思いやりが必要ではと思ってしまう。

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何はさておき記述統計 その7【「実践的」臨床研究入門】第46回

変数の型とデータ記述方法の使い分け前回は交絡因子について解説し、われわれのResearch Question(RQ)の交絡因子として下記の要因を挙げました(連載第45回参照)。年齢、性別、糖尿病の有無、血圧、eGFR、蛋白尿定量、血清アルブミン値、ヘモグロビン値今回からは、仮想データ・セットからこれらの交絡因子のデータを「低たんぱく食厳格遵守群」と「低たんぱく食非厳格遵守群」に分けて記述し、表を作成していきます。これは論文の表1として示されることの多い、いわゆる「患者背景表」となります。実際に表を作成してみる前に、まずは変数の型とデータ記述方法の使い分け、について説明します。変数の型は連続変数とカテゴリ変数に大別されます。連続変数は量を表す変数です。前述した交絡因子では年齢や血圧などの測定値、eGFR、蛋白尿定量、ヘモグロビン値や血清アルブミン値という臨床検査値、が連続変数です。カテゴリ変数は性質を表す変数で、名義変数、順序変数が該当します。今回挙げた交絡因子のうち性別と糖尿病の有無、が順序のない2値(1 or 0)の名義変数となります。ここからは、無料の統計解析ソフトであるEZR(Eazy R)の操作手順を含めて解説します(連載第43回参照)。表1の作成に必要な仮想データ・セットを以下の手順でEZRに取り込んでみましょう。仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」取り込んだ仮想データ・セットの内訳を下記に示します。A列:id 患者IDB列:treat 比較群分け(カテゴリ変数 1;低たんぱく食厳格遵守群、0;低たんぱく食非厳格遵守群)C列:age 年齢(連続変数)D列:sex 性別(カテゴリ変数 1;男性、0;女性)E列:dm 糖尿病の有無(カテゴリ変数 1;糖尿病あり、0;糖尿病なし)F列:sbp 収縮期血圧(連続変数)G列:eGFR (連続変数)H列:UP 蛋白尿定量 (連続変数)I列:albumin 血清アルブミン値(連続変数)J列:hemoglobin ヘモグロビン値(連続変数)それでは、連続変数のデータ記述方法について説明します。連続変数データの代表値としては平均値(Mean)や中央値(Median)が使われます。また、連続変数データのばらつきを示す値としては標準偏差(Standard deviation:SD)や範囲(Range)、もしくは四分位範囲(Inter-quartile range:IQR)を用いる場合があります。それぞれの使い分けについては、実際にEZRを操作しながら説明します。連続変数を記述する際、まずはヒストグラム(度数分布図)を確認してみましょう。EZRでは下記の手順でヒストグラムを描くことができます。「グラフと表」→「ヒストグラム」を選択すると、ポップアップウィンドウが開きますので、まずは下記のとおりに変数や設定を選択してみてください。年齢のヒストグラムが比較群分けごとに示されています。想定のとおり、低たんぱく食厳格遵守群(treat=1)は、低たんぱく食非厳格遵守群(treat=0)より年齢の分布が若干若いようです(連載第45回参照)。このヒストグラムのように、その連続変数データの分布が一峰性(ひとやま)でおおむね左右対称で正規分布に近似している場合は、その代表値を平均値(Mean)で、そのばらつきを標準偏差(SD)で記述することができます。しかし、臨床研究における連続変数のデータは正規分布に近似するものばかりではありません。たとえば、下記のように「ヒストグラム」のポップアップウィンドウで蛋白尿定量であるUPを選択し、「OK」ボタンをクリックしてみてください。ネフローゼ症候群の患者は対象から除外されていることもあり(連載第40回参照)、多くのデータがUP2g/日以下に偏り、右に裾を引いたようなヒストグラムになっています。このような形状のデータ分布の場合、代表値としては中央値(Median)、データのばらつきを示す値としては四分位範囲(IQR)、もしくは最小値から最大値という範囲(Range)で示すことが望まれます。なお、カテゴリ変数データの記述方法は簡単です。カテゴリ変数はカテゴリ別の頻度か割合で報告しますが、データ数の大きさによって、下記に示したような使い分けが慣例的に推奨されています。データ数が100以上:小数点以下1桁までの割合(%)データ数が100未満20以上:整数の割合(%)データ数が20未満:割合は使用せず、頻度の実数

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東海大学医学部 外科学系腎泌尿器科学領域【大学医局紹介~がん診療編】

小路 直 氏(教授/診療科長)梅本 達哉 氏(助教)青木 芽衣子 氏(臨床助手)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴当科は、泌尿器悪性腫瘍(前立腺がん、腎臓がん、尿路上皮がんなど)に対するロボット支援手術、および腹腔鏡手術を多数実施しています。また、良性疾患である前立腺肥大症、および尿路結石症に対して、幅広い内視鏡手術を多数実施しており、個々の状況に応じた術式で対応しています。特徴ある医療技術として、本学が先進医療として開始し、2022年から保険収載された“前立腺針生検法:MRI撮影および超音波検査融合画像によるもの”、また2023年に先進医療として承認された“集束超音波治療器を用いた前立腺がん局所焼灼・凝固療法”があり、国内外の診療、および研究を牽引しています。地域のがん診療における医局の役割主に神奈川県西部の医療圏の患者さんの多くを診療させていただいています。当院は、三次救急も担っているため、外傷や重症尿路感染症の診察も行うことがあります。また、当科で行っている高度な医療を求める国内外の広い地域の患者さんも多く受診しています。今後医局をどのように発展させていきたいか標準医療を高い精度で実施しつつ、個々の患者さんに対応できる医療技術の選択肢を提供できる診療科を目指します。医工連携は重要なテーマとして考えており、すでに交流のある電気通信大学や東京農工大学との連携により、東海大学独自の診療を確立していきたいと思います。力を入れている治療/研究テーマ治療に関してはロボット支援手術全般、研究テーマとしては「転移性腎がんに対する薬物療法後の待機的腎摘除(Deferred cytoreductive nephrectomy:Deferred CN)の有効性」、「下大静脈腫瘍塞栓を有する腎がんに対する薬物療法後の待機的手術」に現在は力を入れています。腎がんに対する薬物治療の効果は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を主軸とした併用療法の出現により劇的に向上しました。ICIの時代におけるDeferred CNの適応や有効性に関してはまだ明らかになっておらず、当院ではICI併用レジメンを半年以上投与し、外科的CRが達成される症例をDeferred CNの主な適応として治療を行っています。下大静脈腫瘍塞栓を有する症例に対してもICI-分子標的薬併用レジメンを使用し、可能な限り腫瘍塞栓を縮小させた状態でロボット支援手術を併用することにより手術侵襲の軽減が得られると考えています。医局でのがん診療/研究のやりがい、医学生/初期研修医へのメッセージ臓器ごと、がんの種別でチームが分かれていないため、すべてのがんに対して診断や治療を行うことができます。その背景には医局の人数が少ないことも関係していますが(笑)、若手の先生にとっては大きな魅力だと思います。また、当科は臨床に強く、症例数も豊富なため入局後早期から多くの経験を積めると思います。医局の雰囲気が良いことも特徴で、若手の先生方の成長をしっかりとサポートできる環境は整っていますので、興味を持っていただけると嬉しいです。同医局を選んだ理由医学科5年の臨床実習で初めて泌尿器領域に触れ、多彩な疾患と幅広い手技に興味を持ちました。特にロボット支援手術や内視鏡手術における豊富な経験と、絶えず最先端・最良を追求する学究的かつ誠意ある柔軟な姿勢に魅力を感じ、入局を決めました。学生として、研修医として、専攻医として、いかなる時にも熱意をもってご指導いただき、医局の先生方ひとりひとりが私の医師人生のロールモデルとなっています。現在学んでいること入局1年目として、まずは病棟管理の基本を学んでいます。感染症の急性期治療から末期がんの緩和治療まで、患者さんにとっての最善を考え、チームで相談しながら実践しています。また処置や内視鏡手術、ロボット手術の助手など、上級医の先生の手技を学びながら、技術の修得に日々励んでいます。今後のキャリアプラン泌尿器科医として一人前になることが第一で、その後は大学院進学や留学で見聞を広めたいと考えています。悪性腫瘍、とくに尿路上皮がんを専門領域として研究や論文執筆にも挑戦したいと思っていましたが、入局すると女性医師として女性患者さんからの需要を肌で感じ、最近では女性泌尿器疾患にも取り組む意欲が湧いています。いずれにしても、大学病院で最先端の治療と研究、そして患者さんのための医療に邁進するつもりです。東海大学医学部 外科学系腎泌尿器科学領域住所〒259-1143 神奈川県伊勢原市下糟屋143問い合わせ先sunashoj@tokai.ac.jp医局ホームページ東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学領域専門医取得実績のある学会日本泌尿器科学会日本治療学会日本内視鏡外科学会日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会日本排尿機能学会日本メディカルAI学会研修プログラムの特徴(1)ロボット支援手術、腹腔鏡手術など、豊富な症例数を経験することが出来ます(2)先進医療などの新しい医療技術を経験することが出来ます(3)関連病院を活用し、地域医療を勉強する期間をつくっています

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消毒の難しい器具の消毒、消毒用ワイプvs.UV+過酸化水素

 理学療法で用いられる器具の消毒は、消毒液を含浸したワイプを用いた消毒では不十分である可能性が示された。米国・デューク大学のBobby G. Warren氏らは、理学療法で使用される消毒の難しい器具について、消毒方法の効果を評価した。その結果、消毒液を含浸したワイプによる消毒では病原体が残存する可能性が高かったが、深紫外線(UV-C)と過酸化水素を用いた消毒方法は病原体の残存が抑制された。本研究結果は、Infection Control & Hospital Epidemiology誌オンライン版2024年7月26日号で報告された。 研究グループは、成人および小児の理学療法で使用される器具を対象として、2段階の前向き比較試験を実施した。第1段階では、使用後の器具を消毒液を含浸したワイプで消毒して(消毒用ワイプ消毒)、汚染状況を評価した。第2段階では、使用後の器具を左右対称に分割し、一方は消毒を実施せず(無消毒)、もう一方はUV-Cと6%過酸化水素水を用いたキャビネットで消毒して(キャビネット消毒)、汚染状況を評価した。 主な結果は以下のとおり。・消毒用ワイプ消毒後に臨床的に重要な病原体(CIP)を保持する割合は43%(52/122サンプル)であった。とくに、歩行補助具(72%)、治療用ボール(66%)の汚染率が高かった。・キャビネット消毒後にCIPを保持する割合は2%(3/196サンプル)であった(無消毒は19%[37/196サンプル])。・キャビネット消毒後のCIPのコロニー形成単位(CFU)中央値は0(四分位範囲:0~55)であり、無消毒の977(同:409~2,547)、消毒用ワイプ消毒後の527(同:117~1,218)と比較して有意に低かった(いずれもp<0.00001)。 本研究結果について、著者らは「理学療法で用いられる器具は、消毒用ワイプによる標準的な消毒後も、病原体による汚染がみられた。これは、形状や素材、消毒液の塗布が難しいことに起因すると考えられ、これらの器具では、UV-Cと6%過酸化水素水を用いたキャビネットでの消毒が効果的であることが支持された」とまとめた。

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うつ病発症リスクが高い夜型人間、再発リスクへの影響は

 夜型クロノタイプは、うつ病発症リスクが高いといわれている。この影響は、主にうつ病の初期と関連するのか、再発エピソードでも見られるのかはわかっていない。中国・上海交通大学のShuang Hu氏らは、うつ病患者におけるクロノタイプとうつ病重症度との関連が、初回エピソードと再発エピソードで同様であるかを調査した。Chronobiology International誌2024年7月号の報告。 対象は、うつ病患者386例(女性の割合:70.7%、年齢範囲:16〜64歳)。クロノタイプ、睡眠の質、疲労レベル、うつ病重症度の評価には、朝型夜型質問紙(MEQ)、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、Multidimensional Fatigue Inventory(MFI20)、簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)をそれぞれ用いた。クロノタイプとうつ病重症度との関連を分析するため、多変量回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・クロノタイプ、睡眠の質、疲労レベルは、いずれもうつ病重症度と関連していることが示唆された。・夜型クロノタイプは、初回エピソードのみで、睡眠の質および疲労レベルとは独立してうつ病重症度の有意な増加を予測したが(−0.068、p=0.010)、再発エピソードでは認められなかった(0.013、p=0.594)。 著者らは「サーカディアンリズムに焦点を当てた治療は、初回エピソードのうつ病患者のみで検討することが妥当である」としている。

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バスケットボールでよくある傷害は足首の捻挫

 バスケットボールは、わが国でも漫画の影響やBリーグの活躍で非常に人気の高い球技であり、パリ・オリンピック2024でも注目されている競技である。そんなバスケットボールは、身体接触も多く、選手の怪我も多いスポーツである。 では、バスケットボールの選手は、どのような傷害をよくするのか。セルビアのPristina-Kosovska Mitrovica大学体育・スポーツ学部のNikola Aksovic氏らの研究グループは、さまざまな文献を基にシステマティックレビューを行った。その結果、選手は膝と足首を傷害する頻度が高いことが判明した。Life誌2024年7月19日号の報告。シューティングガードのポジションは負傷率高め 研究グループは、バスケットボール選手のスポーツ傷害に関し性別、場所、スポーツ、コート上の位置によるスポーツ傷害の違いを説明する目的で利用可能な関連データを収集した。 研究方法としては、1990~2024年までのPubMed、MEDLINE、ERIC、Google Scholar、ScienceDirectの論文について、データベースを用いデジタル検索を行い、解析した。 主な結果は以下のとおり。・男女共に最も頻度の高い重度傷害は膝と足首の傷害だった。・最も頻度の高い傷害形態は足首の捻挫と靭帯の損傷だった。・最も頻度の高い傷害はランニング中とボールとの接触後に起こっていた。・ポジション別では、シューティングガードの負傷率が最も高く、次にセンター、ポイントガードであり、ガードは内転筋の負傷率が最も高いという結果だった。 これらの結果から研究グループは、「バスケットボール選手には足首と膝のケガが多く、とくに足首の捻挫が多い。膝の損傷は、膝前十字靱帯(ACL)損傷を含め、女子バスケットボール選手に多い。ジャンプ、着地、急激な方向転換、試合中の身体への負荷など、さまざまな要因が傷害の原因となっていることが明らかになった」としている。

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ベンラリズマブ、好酸球性食道炎に有効か?/NEJM

 好酸球性食道炎に対し、ベンラリズマブはプラセボと比較して組織学的寛解率が有意に高かったものの、嚥下障害の症状に関しては有意な改善は認められなかった。米国・シンシナティ大学のMarc E. Rothenberg氏らMESSINA Trial Investigatorsが、第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「MESSINA試験」の結果を報告した。ベンラリズマブは好酸球を減少させる抗インターロイキン-5受容体αモノクローナル抗体である。これまでの研究で、ベンラリズマブ治療により、血液、骨髄、肺、胃、食道組織における好酸球のほぼ完全な減少がもたらされ、ベンラリズマブが好酸球性食道炎の治療薬として有望である可能性が示されていたが、好酸球性食道炎患者におけるベンラリズマブの有効性と安全性は不明であった。NEJM誌2024年6月27日号掲載の報告。組織学的寛解と嚥下障害症状の改善をベンラリズマブとプラセボで比較 MESSINA試験は2020年9月22日~2022年10月25日に、12ヵ国78施設で実施された。 研究グループは、症状を有し組織学的に活動性の好酸球性食道炎と診断された12~65歳の患者を、ベンラリズマブ(30mg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、盲検下で4週ごとに24週皮下投与した後、以降は全例に非盲検下でベンラリズマブ(30mg)を4週ごとに52週時まで皮下投与した。 主要有効性エンドポイントは2つで、24週時の組織学的寛解(高倍率1視野当たりの好酸球数が6個以下)、および嚥下障害症状質問票(DSQ)スコア(範囲:0~84、スコアが高いほど嚥下障害が高頻度または重度であることを示す)のベースラインからの平均変化量とした。ベンラリズマブは組織学的寛解率を有意に改善、嚥下障害症状の改善に差はなし 計211例が、ベンラリズマブ群(104例)およびプラセボ群(107例)に割り付けられた。 24週時に組織学的寛解が認められた患者の割合は、ベンラリズマブ群87.4%、プラセボ群6.5%であり、ベンラリズマブ群で有意に高かった(群間差:80.8%、95%信頼区間[CI]:72.9~88.8、p<0.001)。 一方、DSQスコアのベースラインからの変化量は、ベンラリズマブ群-12.1、プラセボ群-15.1で、両群間に有意差は認められなかった(最小二乗平均の差:3.0、95%CI:-1.4~7.4、p=0.18)。 また、重要な副次エンドポイントである24週時における好酸球性食道炎内視鏡基準スコア(EREFS、範囲:0~9、スコアが高いほど内視鏡所見の異常が多い)のベースラインからの変化量は、ベンラリズマブ群-0.5、プラセボ群-0.4であり両群間に差はなかった。 有害事象の発現割合は、ベンラリズマブ群64.1%、プラセボ群61.7%で、有害事象のために試験を中止した患者はいなかった。

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アルツハイマー病、血液検査で高い精度で診断/JAMA

 血漿中リン酸化タウ217(p-tau217)と非p-tau217の比率(%p-tau217)と血漿中アミロイドβ42およびアミロイドβ40の比率(Aβ42:Aβ40比)を組み合わせたAPS2(amyloid probability score 2)と、%p-tau217のみに基づく検査は、事前に定義されたカットオフ値を用いた場合、1次医療および2次医療で認知症状を有する人のアルツハイマー病(AD)を高い精度で診断できることが明らかになった。スウェーデン・ルンド大学のSebastian Palmqvist氏らが、事前に定義されたバイオマーカーのカットオフ値を前向きに評価する目的で実施したコホート研究の結果を報告した。血液検査によりADを診断できる可能性がある。JAMA誌オンライン版2024年7月28日号掲載の報告。%p-tau217とAβ42:Aβ40比による診断精度を検証 研究グループは2020年2月~2024年1月に、1次医療施設および2次医療施設にて、認知症状のために臨床評価を受ける患者1,213例を登録した。独立したコホートで確立されているバイオマーカーのカットオフ値を、1次医療コホート(307例)と2次医療コホート(300例)に適用し、患者1例当たり血漿1検体を単一バッチとして解析した。その後、1次医療コホート(208例)と2次医療コホート(398例)において、前向きに血液検査を行った(患者1例当たり血漿1検体が採取後2週間以内に解析された)。 主要アウトカムはAD病理(脳脊髄液Aβ42:Aβ40比およびp-tau217の異常により判定)、副次アウトカムは臨床的ADとした。陽性予測値(PPV)、陰性予測値(NPV)、診断精度および曲線下面積(AUC)を算出して評価した。APS2の診断精度は高く、集団全体で90% 1,213例の平均年齢は74.2歳(SD 8.3歳)、48%が女性で、主観的認知機能低下23%、軽度認知障害44%、認知症33%であった。1次医療と2次医療の両方の評価において、患者の50%がAD病理を有していた。 血漿検体を単一バッチで解析した場合、1次医療コホートではAPS2使用時のAUCは0.97(95%信頼区間[CI]:0.95~0.99)、PPVは91%(95%CI:87~96)、NPVは92%(95%CI:87~96)、2次医療コホートではそれぞれ0.96(0.94~0.98)、88%(83~93)、87%(82~93)であった。 血漿検体を前向きに解析した場合、1次医療コホートではAPS2使用時のAUCは0.96(95%CI:0.94~0.98)、PPVは88%(95%CI:81~94)、NPVは90%(95%CI:84~96)、2次医療コホートではそれぞれ0.97(0.95~0.98)、91%(87~95)、91%(87~95)であった。 4つのコホートにおけるAPS2の診断精度は高かった(範囲:88~92%)。 1次医療の医師が臨床検査、認知機能検査およびCT検査により臨床的ADを同定する診断精度が61%(95%CI:53~69)であったのに対し、APS2は91%(95%CI:86~96)、認知症専門医による診断精度が73%(95%CI:68~79)であったのに対し、APS2は91%(95%CI:88~95)であった。 集団全体では、APS2の診断精度(90%、95%CI:88~92)は、%p-tau217のみを用いた診断精度(90%、95%CI:88~91)と差はなかった。

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HPVワクチンのキャッチアップ接種推進に向けて/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催した。会見では、「2025(令和7)年度の予算要求要望」について、「医療DXの適切な推進、地域医療への予算確保、新興感染症などへの予算確保」ならびに事項要求として「物価高騰・賃金上昇への対応」を厚生労働省に要望したことが報告された。また、医師会が日本医学会との協力で発行している英文ジャーナル「JMA Journal」が「1.5」(クラリベイト社発表)のインパクトファクターを取得したことも報告された。そのほか、2024年9月末に期限が迫っている「HPVワクチンキャッチアップ接種推進に向けて」について医師会の取り組みが説明された。キャッチアップ接種について看護学生の9割は「知っている」と回答 HPVワクチンは、定期接種が小学校6年生~高校1年生相当の女子を対象に行われている。現在、接種勧奨が行われているが、平成9年度生まれ~平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)の女子の中に、 通常の定期接種の対象年齢のときに接種機会を逃した人もおり、HPVワクチンの接種の機会(キャッチアップ接種)が設けられている。 このキャッチアップ接種は、2025(令和7)年3月31日までとなっているが、3回の接種を完了するためには半年程度の期間が必要で、2024(令和6)年9月末までに初回接種をする必要があり、その期限が目前となっている。 こうした事態を受けて、釜萢 敏副会長(小泉小児科医院 院長)が、「HPVワクチンのキャッチアップ接種について」をテーマに、これまでの医師会の取り組みや接種対象の看護学生へのアンケート結果などを説明した。 医師会では、HPVワクチンの接種について、さまざまな啓発動画を制作・公開するとともに啓発資料を作成し、医師会員の医療機関などで活用してもらっている。そこで、最近公開された資料として福岡県立大学看護学部のワクチン対象年齢の学生25人に行ったアンケート調査結果について内容を説明した。 アンケート調査の概要は以下のとおり。・「HPVワクチンの接種の有無」を聞いたところ、「接種した」が48%、「予定している」が28%、「ない」が24%だった。・「キャッチアップ接種について知っているか」を聞いたところ、「よく知っている」が40%、「多少は知っている」が52%、「知らない」が8%だった。・「20代のがんの過半数が子宮頸がんであることを知っているか」を聞いたところ、「よく知っている」が56%、「多少は知っている」が40%、「知らない」が4%だった。  また、自由回答でワクチン接種のきっかけを聞いたところ、「無料接種だから」「母親の勧め」「がん予防のため」「医師の勧め」などの回答だった。一方、接種していない・悩んでいる対象者の未接種理由では、「親が不要と言っている」「副反応が怖い」「注射が苦手」などの回答だった。 「医師会では、ひとりでも多く子宮頸がんなどで亡くなる人をなくしたいという目的でこうした活動を行っているが、接種については本人が決めることであり、接種を考える際の判断材料にしてもらいたい。そして、期限までに多くの対象者に接種してもらいたい」と釜萢氏は思いを語った。 医師会では、今後も9月末の期限までにさまざまなメディアで啓発活動を行うとしている。

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OTC医薬品の点鼻薬が呼吸器感染症の罹病期間や重症度の軽減に有効か

 OTC医薬品の点鼻薬が、公衆衛生の大きな脅威である薬剤耐性に対する強力な武器になるかもしれない。1万4,000人弱の成人を対象にしたランダム化比較試験から、広く用いられている点鼻薬が上気道感染症の罹病期間を短縮し、抗菌薬の必要性を減らすのに役立つ可能性のあることが示された。英サウサンプトン大学心理学および行動医学分野のAdam Geraghty氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Respiratory Medicine」に7月11日掲載された。 抗菌薬の使い過ぎや誤用によって引き起こされる薬剤耐性は、細菌感染症の治療を困難にしている。研究グループは今回の研究について、点鼻薬を使って鼻や喉からウイルスを洗い流したり、運動やストレスマネジメントによって免疫機能を高めたりすることで、呼吸器感染症の頻度や重症度を減らすことができるという最近のエビデンスに興味を持ち、実施したものだと説明している。 このことを確かめるために、Geraghty氏らは英国の332の診療所から集めた18歳以上の患者1万3,799人を対象にランダム化比較試験を実施した。これらの患者は全員が、呼吸器感染症に罹患すると転帰が不良となり得る併存疾患かリスク因子を1つ以上持っていた。対象者は、通常のケア(疾患の管理に関する簡単なアドバイス)を受ける群、ジェルベースの点鼻薬を使用する群(感染症の兆候が現れた際、または感染者に曝露した可能性がある際に、それぞれの鼻腔内に2回ずつスプレーする、1日最大6回まで)、生理食塩水のスプレーを使用する群(ジェルベースの点鼻薬と同じ条件)、簡単な行動介入(運動とストレスマネジメントを促すウェブサイトへのアクセスを提供)を受ける群に、1対1対1対1の割合でランダムに割り付けられた。 データのそろった1万1,612人を対象に解析した結果、呼吸器感染症の平均罹病期間は、通常ケア群では8.2日であったのに対し、点鼻薬群では6.5日(発生率比0.82、95%信頼区間0.76〜0.90、P<0.0001)、生理食塩水群では6.4日(同0.81、0.74〜0.88、P<0.0001)であり、点鼻薬群と生理食塩水群で有意に短縮することが明らかになった。一方、行動介入群での平均罹病期間は7.4日(同0.97、0.89〜1.06、P=0.46)であり、通常ケア群の罹病期間との間に有意な差は認められなかった。また、仕事と通常の活動の損失日数についても、点鼻薬群と生理食塩水群では通常ケア群よりも20〜30%程度少なかった。 こうした結果を受けて、論文の筆頭著者であるサウサンプトン大学プライマリケア研究分野教授のPaul Little氏は、「この研究により、点鼻薬は呼吸器感染症の罹病期間と重症度、および日常的な活動への影響の軽減に効果的であることが明らかになった」と述べている。 またGeraghty氏は、「点鼻薬は、もし広く使われるようになるなら、抗菌薬の使用とそれに伴う薬剤耐性菌の出現を減らし、呼吸器系ウイルスが患者に及ぼす影響を軽減するという、重要な役割を果たす可能性がある」との見方を示している。

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世界では、HIV予防は新しい時代へ(解説:岡慎一氏)

 Pre-Exposure Prophylaxis(PrEP)と呼ばれる、HIV感染リスクがある人に対する予防法の研究が、欧米を中心に盛んに行われていたのは、2010年前後である。その結果をもとに2012年には、米国でPrEPが、HIV感染予防法として承認された。当時の方法は、TDFとFTCという2剤の合剤(ツルバダ錠)を1日1回経口服用するというものであった。その後、ほぼ世界中でツルバダ錠によるPrEPは承認された。これに対し、日本では、2024年9月頃にやっとツルバダ錠によるPrEPが承認される予定である。まさに、12年という十二支の周回遅れである。先進国でPrEPが認可されていなかったのは、もちろん日本だけである。 世界では、その後もツルバダ錠に留まらず、いろいろな薬剤、投与法のPrEPが試されてきた。特記すべきは、2021年に報告された、カボテグラビルという半減期の長い注射剤によるPrEPで、8週間に1回の注射による予防が、毎日服用する今までのツルバダ錠による予防より有意に優れていたという論文である。この研究は、中間解析で有意差が明らかになったため中止されている。われわれの研究では、ツルバダによるPrEPでも、ちゃんと毎日服用できていれば、予防効果は100%であった。しかし、服薬アドヒアランスがどうしても低下するために、失敗例が出てしまうのである。とくに女性では、HIV感染リスクに対する意識の違いか、服薬アドヒアランスが低く、男性同性愛者に対するPrEPほどの効果は得られていなかった。この問題に対し、注射剤であれば、服薬アドヒアランスという障壁はなくなることになるのである。 さて、今回の研究では、さらに半減期の長いレナカパビルという注射剤を半年に1回注射した場合のPrEPの有効性を、しかも女性に対して、かつ、ツルバダ錠の改良薬であるデシコビ錠も対照薬に入れて、その有効性を比較した欲張りな研究であった。結果は、レナカパビルの圧勝であった。2,134例のレナカパビル群で、注射の痛みで4例の中止が出たものの、継続した人からは1例も感染例が出なかったのである。 新しい科学技術の粋を尽くして改良された注射剤によるHIV予防の一番の問題点は、薬剤費であろう。ツルバダ錠であれば、日本でもジェネリック薬を個人輸入すれば1ヵ月5,000円程度で入手可能で、タバコ代などと比べても手の届く範囲の金額である。ちなみに、カボテグラビルやレナカパビルは、治療用の注射剤として日本でも保険収載されているが、カボテグラビルの2ヵ月分の薬価は約25万円であり、レナカパビルの6ヵ月分の薬価は、約320万円である。まずは、米国での普及を見守りたい。

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運動不足気味の糖尿病患者さんへの運動指導(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者最近、血糖値が上がってきて…。確かに、空腹時の血糖値はいいのですが、平均血糖値のHbA1cが高いので食後に血糖値が上がっているかもしれませんね。なるほど。どうやったら、血糖値が下がりますか?そうですね。確か〇〇さんの仕事はデスクワークが中心でしたね。そうです。デスクワークが中心で運動不足気味です…。なるほど。家での過ごし方はいかがですか?家でもスマホをみながら、ゴロゴロしていることが多いです。なるほど。座る時間が長くなると、血糖値が上がりやすくなると言われていますからね。やっぱり、座り過ぎがよくないんですね。そうですね。30分に1回、立ち上がって軽い運動ができるといいですね。わかりました。30分に1回ですね。頑張って立ち上がってみます。画 いわみせいじポイント食後に30分おきに軽い運動を行うことで、食後高血糖が改善することを説明します。Copyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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たまには地雷を踏もう【Dr. 中島の 新・徒然草】(541)

五百四十一の段 たまには地雷を踏もうついに8月に突入して暑さ全開!今日、車に乗ろうとしたら外気温が41度と表示されました。これ、お盆の頃には一段落つくのでしょうか?さて、今回は外部講師による先日の研修医向け症例検討会の様子を述べたいと思います。当初は研修医が準備した症例についてディスカッションする予定だったのだとか。しかし、病歴聴取も身体所見も不十分だ、ということで結局は講師が準備した症例を使ってのカンファレンスになりました。私にとっても良い勉強になるので、この検討会にはもう10年以上も参加し続けています。さて、肝心の検討会。準備された症例は、中年女性の発熱です。講師は可能性のある病態を順に研修医に挙げさせます。発熱ですから、当然のことながら、鑑別診断は感染症に集中します。講師「感染症としてありそうな疾患は、ほかに何を挙げることができるかな?」研修医「悪性リンパ腫でしょうか?」中島「うっ、マズイ」その瞬間、講師の表情が険しくなります。講師「今は感染症ということで鑑別疾患を挙げているのだから、ほかのカテゴリーに入ってはダメだよ」講師はイラッとしたに違いありませんが、この時は事なきを得ました。でも、この研修医、一体何を聴いていたんでしょうか。レビュー・オブ・システムズを含む病歴聴取が済んだ後、講師が研修医たちに尋ねます。講師「じゃあ一通り病歴を確認した後に、次は何が必要かな」研修医「CTでしょうか?」中島「ま、まずい!」そう思う間もなく、講師がアナフィラキシーを起こしてしまいました。講師「違ーう! CTなんか撮るな。血液検査も論外!」研修医「え……と?」何という鈍い研修医。自分が地雷を踏んだ自覚もないのか。講師「身体所見じゃないか。身体所見だろ、次に必要なのは!」研修医「そうでしたっけ」病歴聴取、身体所見の後に検査というのがお作法です。総合診療科のカンファレンスで毎週のように研修医を厳しく指導してきたあの日々は、一体なんだったのか?こっちまでアナフィラキシーを起こしそうになりました。ただ、講師のほうは一気に活性化されたようです。その後の身体所見の取り方、鑑別診断の挙げ方など、レクチャーそのものは冴えわたりました。何よりも、診断学の奥の深さを思い知らされ、私までヤル気が湧いてきます。西洋社会ではdevil's advocate(悪魔の代弁者)といって、わざと違う意見を吹っかけて議論を活性化させるという手法があるそうですが、あの研修医は期せずして悪魔の役割を果たしたのかも。レクチャーの後で講師と話したときに「ああいう奴も必要ですよね」ということで意見が一致しました。正しい答えを言おうとするあまりに出席者が沈黙してしまうカンファレンスよりも、見当外れであっても講師を活性化させる研修医がいたほうがいいような気がします。もし今後のカンファレンスがあまり活発でなかったら、私自身がdevil's advocateになることが必要かもしれません。でも「こいつアホか?」と思われたりしたら辛いですね。ま、今さら世間体を気にする年齢でもないか。最後に1句地雷踏む 若者現る 夏盛り

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第108回 オリンピックもSNSで誹謗中傷だらけ

コロナ禍で加速した誹謗中傷私は大手メディア等でこっそりと情報発信を続けていますが、コロナ禍で行政や教授のなかなかプレッシャーのある立場で、熱心に発信し続けていた医師たちがいます。しかし、彼らに対する誹謗中傷は見るに堪えないものでした。そんなダメージが蓄積されたせいで、彼らの発信頻度も最近減ったのではないか…と感じております。SNSは、X(旧Twitter)のユーザーが圧倒的に多いですが、日本ではInstagram、TikTok、Facebookなどのユーザーも多いです。いずれのSNSにも共通していることとして、「心無い言葉をかける人が増えた」と感じます。Threadsのように最近登場したSNSはまだ少し穏やかな雰囲気が漂っていますが、だんだんとオラオラ系のつぶやきが増えてくるのがSNSの性(さが)。コロナ禍は、マスクやワクチンなど意見を二分するようなテーマが多かったので、敵意帰属バイアスが起こりやすかった。要は、相手に敵意がなくとも、そこに敵意が存在しているかのように誤認してしまうバイアスで、「ワクチン接種=犯罪」という極端な方向に意見を置いてしまうことです。そのため、メッセンジャーRNAワクチンだろうと不活化ワクチンだろうと、世のあまねくワクチンは罪であるという、ネジが吹っ飛んだ考え方に傾倒してしまい、医療従事者へ厳しい罵詈雑言を投げかけるワケです。敵意帰属バイアスの怖いところは、「自分イズ正義」と思い込んでいることです。犯罪者には人権はなく、厳しい言葉をぶつけてもいいと思っている人は、放送禁止用語を連発してディスってきます。これがSNSでよく見かける誹謗中傷です。また、SNSの特徴は、その人に直接メッセージを送るわけではなくて、ただ空中につぶやいているだけのことも多い。誹謗中傷の相手がそれを読んでいるとは思っていないし、本人は悪口とも思っていないはずです。ちょっと「毒を吐いている」程度の認識だから、余計にタチが悪い。周りはみんな見ていますよ。オリンピックでも誹謗中傷今回のオリンピックでは、誤審だけでなく、選手の態度、性別に関する話題もSNSで取り上げられました。その仔細について、私はとやかく言う立場ではないですが、今回のオリンピックの選手に向けた誹謗中傷は、なかなかのものだなあと感じます。自国を愛して、その選手たちを応援するのは自然な感情だと思います。ただ、このナショナリズムが過度になってしまうと、相手選手や審判へのフルボッコは加速していきます。1回針をチクリと刺しただけでは人は死にませんが、SNSで何万人もの人に刺され続けると、人は簡単に死にます。過去に誹謗中傷を受けて自死した人がいることをわれわれは知っているのですから、SNSを使う人は感情垂れ流しではなく、オトナにならないといけません。いつまでもイジメがなくならない理由は、たぶんこういう「安易な悪口」をやっちゃう人が多いからだと思います。自分が発信している内容を、家族や友人が見ても「いいね」してくれるだろうか。安易につぶやく前に、冷静になってみましょう。もちろんこれは、自戒も込めて。

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80歳以上の心房細動患者、低用量エドキサバンは有益か

 心房細動への抗凝固薬の処方において、高齢患者では若年患者より出血が増加するため、推奨用量より低い用量を処方することが多いが、無作為化試験のデータは少ない。今回、米国・ハーバード大学医学部のAndre Zimerman氏らは、80歳以上の心房細動患者において、事前に規定された減量基準を満たさない場合でも低用量の抗凝固薬(エドキサバン)が有益かどうか、ENGAGE AF-TIMI 48試験における事後解析で検討した。その結果、エドキサバン30mgは、エドキサバン60mgとの比較(減量基準を満たさない患者)またはワルファリンとの比較(減量基準を満たす/満たさない患者)において重大な出血が少なく、虚血性イベントは増加しなかった。JAMA Cardiology誌オンライン版2024年7月10日号に掲載。 ENGAGE AF-TIMI 48試験は、心房細動患者を2種類の用量のエドキサバンまたはワルファリンに無作為に割り付けた国際共同二重盲検試験である。今回は本試験の事後解析として、80歳以上の減量基準を満たさない患者でエドキサバン30mg群と60mg群を比較し、また減量基準を満たすまたは満たさない患者でエドキサバン30mg群とワルファリン群を比較した。主な評価項目は、死亡・脳卒中もしくは全身性塞栓症・重大な出血の主要ネットクリニカルアウトカム、および個々の発生率であった。 主な結果は以下のとおり。・今回の解析では80歳以上の2,966例(平均年齢83歳、男性56%)を対象とした。・減量基準を満たさない1,138例において、エドキサバン60mg群は30mg群に比べて重大な出血が多く(ハザード比[HR]:1.57、95%信頼区間[CI]:1.04~2.38、p=0.03)、とくに消化管出血が多かった(HR:2.24、95%CI:1.29~3.90、p=0.004)が、有効性エンドポイントに有意差はなかった。・減量基準を満たす/満たさない2,406例において、エドキサバン30mg群はワルファリン群と比べ、主要ネットクリニカルアウトカム(HR:0.78、95%CI:0.68~0.91、p=0.001)、重大な出血(HR:0.59、95%CI:0.45~0.77、p<0.001)、死亡(HR:0.83、95%CI:0.70~1.00、p=0.046)の発生率が低かったが、脳卒中と全身性塞栓症の発生率は同等であった。 著者らは「これらのデータは、高齢の心房細動患者では減量基準を満たさない場合でも、エドキサバン30mgといった低用量の抗凝固薬投与を考慮してもよいという概念を支持する」としている。

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自閉スペクトラム症のADHD症状に対する薬理学的介入〜メタ解析

 自閉スペクトラム症(ASD)患者における注意欠如多動症(ADHD)症状の治療に対する薬理学的介入の有効性に関するエビデンスを明らかにするため、ブラジル・Public Health School Visconde de SaboiaのPaulo Levi Bezerra Martins氏らは、安全性および有効性を考慮した研究のシステマティックレビューを行った。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2024年7月14日号の報告。 ASDおよびADHDまたはADHD症状を伴うASDの治療に対する薬理学的介入の有効性および/または安全性プロファイルを評価したランダム化比較試験を、PubMed、Cochrane Library、Embaseのデータベースより検索した。主要アウトカムは、臨床尺度で測定したADHD症状とした。追加のアウトカムは、異常行動チェックリスト(ABC)で測定された他の症状、治療の満足度、ピア満足度とした。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューの包括基準を満たした22件のうち、8件をメタ解析に含めた。・メチルフェニデートと比較した、クロニジン、モダフィニル、bupropionによる治療に関する研究が、いくつか見つかった。・メタ解析では、メチルフェニデートは、多動、易怒性、不注意などの症状に対し、プラセボと比較し、有効であることが示唆された。しかし、定型的症状に対する影響は認められず、メチルフェニデート誘発性の副作用による脱落率が大きな影響を及ぼしていることが、データ定量分析より明らかとなった。・アトモキセチンは、プラセボと比較し、多動および不注意症状に対し有効であることが示唆されたが、定型的症状または易怒性には影響を及ぼさなかった。・さらに、研究からの脱落原因となった副作用に、アトモキセチンは影響を及ぼさないことが明らかとなった。 著者らは「メチルフェニデートは、多動、不注意、易怒性に有効であるが、安全性に懸念がある。一方、アトモキセチンは、多動および不注意に緩やかな有効性を示し、副作用プロファイルは比較的良好であった。グアンファシン、クロニジン、bupropion、モダフィニルなどの薬剤に関する情報は、限定的であった」としている。

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