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膀胱がんの拡大リンパ郭清、周術期の合併症・死亡増(SWOG S1011)/NEJM

 膀胱全摘除術を受ける限局性筋層浸潤性膀胱がん患者において、拡大リンパ節郭清は標準的リンパ節郭清と比較して、無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)を延長しないばかりか、高率の周術期合併症および死亡の発生が認められた。米国・ベイラー医科大学医療センターのSeth P. Lerner氏らSWOG S1011 Trial Investigatorsが第III相多施設共同無作為化試験「SWOG S1011試験」の結果を報告した。NEJM誌2024年10月2日号掲載の報告。主要評価項目はDFS 研究グループは、臨床病期T2(筋層に限局)~T4a(隣接臓器に浸潤)、リンパ節転移は2個以下(N0、N1、N2)の限局性筋層浸潤性膀胱がん患者を、両側標準リンパ節郭清術(両側骨盤内のリンパ節郭清)または拡大リンパ節郭清術(総腸骨リンパ節、坐骨前リンパ節、仙骨前リンパ節の切除を含む)を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 無作為化は手術中に行われ、術前補助化学療法の内容、臨床病期(T2 vs.T3またはT4a)、Zubrod’s パフォーマンスステータススコア(0または1 vs.2[5ポイントスケールで評価、高スコアほど障害が重度であることを示す])で層別化した。 主要評価項目はDFSとし、OSおよび安全性も評価した。推定5年DFS率は56% vs.60% 2011年8月~2017年2月に658例が登録され、適格患者592例が拡大リンパ節郭清群(292例)または標準的リンパ節郭清群(300例)に無作為化された。被験者の大多数の病期がT2であり(各群71%)、組織学的サブタイプの混在が認められたのは13%。各群の被験者57%が術前補助化学療法既往であり、大多数(拡大リンパ節郭清群89%、標準的リンパ節郭清群86%)がシスプラチンベースの治療を受けていた。 手術は、米国とカナダの計27施設36人の外科医により行われた。 追跡期間中央値6.1年の時点で、再発または死亡は、拡大リンパ節郭清群で130例(45%)、標準的リンパ節郭清群で127例(42%)報告された。推定5年DFS率はそれぞれ56%、60%であった(再発または死亡のハザード比[HR]:1.10[95%信頼区間[CI]:0.86~1.40]、p=0.45)。 5年OS率は、拡大リンパ節郭清群59%、標準的リンパ節郭清群63%であった(死亡のHR:1.13[95%CI:0.88~1.45])。 Grade3~5の有害事象は、拡大リンパ節郭清群で157例(54%)、標準的リンパ節郭清群で132例(44%)発現した。術後90日以内の死亡は、それぞれ19例(7%)、7例(2%)であった。

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貧血を伴う急性脳損傷患者への輸血、非制限戦略vs.制限戦略/JAMA

 急性脳損傷患者に対する非制限輸血戦略または制限輸血戦略は、神経学的アウトカムにどのような影響をもたらすのか。ベルギー・ブリュッセル自由大学のFabio Silvio Taccone氏らTRAIN Study Groupが多施設共同無作為化試験にて検討し、貧血を伴う急性脳損傷患者では、非制限輸血戦略のほうが制限輸血戦略よりも神経学的アウトカムが不良となる可能性が低かったことを示した。JAMA誌オンライン版2024年10月9日号掲載の報告。ヘモグロビン値<9g/dL vs.<7g/dL輸血開始の神経学的アウトカム発生を評価 研究グループは、急性脳損傷患者における赤血球輸血の指針として、2つの異なるヘモグロビン閾値が神経学的アウトカムに与える影響を評価するため、22ヵ国72ヵ所のICUにて、研究者主導のプラグマティックな第III相多施設共同並行群間非盲検無作為化比較試験を行った。 外傷性脳損傷、動脈瘤性くも膜下出血または脳内出血を呈し、脳損傷後10日間のヘモグロビン値9g/dL未満、ICU入室期間が72時間以上と予想される患者を適格とした。2017年9月1日~2022年12月31日に被験者を登録し、最終フォローアップ日は2023年6月30日であった。 850例が、28日間にわたり非制限輸血戦略(ヘモグロビン値<9g/dLで輸血を開始、408例)または制限輸血戦略(ヘモグロビン値<7g/dLで輸血を開始、442例)を受けるよう無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは神経学的アウトカム不良とし、無作為化後180日時点で評価した拡張グラスゴー転帰尺度(Glasgow Outcome Scale-Extended[GOS-E]スコア)1~5で定義した。 無作為化後の脳虚血発生など、14の事前規定の重篤な有害事象を評価した。180日後の神経学的アウトカム不良、非制限戦略群62.6%、制限戦略群72.6% 820例(平均年齢51歳、女性376例[45.9%])が試験を完了し、主要アウトカムについて806例(非制限戦略群393例、制限戦略群413例)のデータが得られた。 輸血単位中央値は、非制限戦略群が2単位(四分位範囲[IQR]:1~3)、制限戦略群は0単位(IQR:0~1)であり、絶対平均群間差は1.0単位(95%信頼区間[CI]:0.87~1.12)であった。 無作為化後180日時点で、神経学的アウトカム不良であった患者は、非制限戦略群246例(62.6%)、制限戦略群300例(72.6%)であった(絶対群間差:-10.0%[95%CI:-16.5~-3.6]、補正後相対リスク:0.86[95%CI:0.79~0.94]、p=0.002)。 180日時点における輸血閾値の神経学的アウトカムへの影響は、事前に規定したサブグループ全体で一貫していた。 少なくとも1回の脳虚血を呈したのは、制限戦略群が57/423例(13.5%)であったのに対して非制限戦略群は35/397例(8.8%)だった(相対リスク:0.65、95%CI:0.44~0.97)。

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統合失調症の多剤併用から単剤療法への切り替えによる副作用への影響〜SwAP試験II

 オランダ・マーストリヒト大学のMushde Shakir氏らは、統合失調症入院患者における抗精神病薬多剤併用療法から単剤療法への切り替えが、各種副作用にどのような影響を及ぼすかを調査した。Schizophrenia Research誌2024年12月号の報告。 対象となる副作用には、精神症状、自律神経症状、性機能障害、代謝系副作用、運動機能障害を含めた。オランダの精神科病院2施設の慢性期入院患者136例を対象に、9ヵ月間の並行ランダム化オープンラベル臨床試験を実施した。対象患者は、併用継続群または切り替え群のいずれかにランダムに割り付けた。切り替え群は、第1世代または第2世代抗精神病薬のいずれかを中止する3ヵ月間の漸減期間を設けた後、単剤療法を実施した。評価は、ベースライン時およびフォローアップ3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月後に実施した。精神学的、神経学的、自律神経学的、性機能関連副作用の評価には、UKU副作用評価尺度を用い、運動機能障害の測定には、St. Hans評価尺度を用いた。各代謝パラメーターも収集した。 主な結果は以下のとおり。・併用継続群では、性欲にわずかな低下が認められた以外、副作用は時間経過とともにおおむね安定していた。・対照的に、切り替え群では、精神学的および自律神経学的症状が有意に軽減し、アカシジア、パーキンソン症状、ジスキネジアの改善が認められた。・切り替え群では、ジストニア、知覚異常、てんかん、性的症状に変化は認められなかった。・さらに、切り替え群では、BMIおよび体重も有意な減少が認められた。 著者らは「長期入院患者では、多剤併用療法から単剤療法へ切り替えることにより、運動機能障害や代謝系副作用など、さまざまな副作用の重症度軽減が期待できる」と結論付けている。

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メトホルミンがlong COVIDのリスクを軽減する可能性

 2型糖尿病の治療に広く使用されている経口血糖降下薬のメトホルミンが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の症状の遷延、いわゆるlong COVIDのリスクを軽減することを裏付ける、新たなデータが報告された。米ミネソタ大学のCarolyn Bramante氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に9月17日掲載された。 Long COVIDは、慢性疲労、息切れ、ブレインフォグ(頭がぼんやりして記憶力などが低下した状態)などの症状を呈し、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染後、数週から数カ月続くこともある。現在、米国内で数百万人がこの状態に苦しめられていると考えられている。 一方、昨年発表された研究から、SARS-CoV-2感染後すぐにメトホルミンが処方された過体重または肥満のCOVID-19患者は、long COVIDのリスクが41%低いことが示されていた。今回報告された論文の上席著者であるBramante氏は、「メトホルミンは世界中で入手可能であり、低コストで安全性が確立しているため、long COVIDの予防に有効だとしたら、COVID-19の外来治療に臨床的メリットをもたらす」と述べている。 今回の研究は、2型糖尿病治療のためにメトホルミンが処方されている人でも、昨年報告された研究結果と同様の効果が得られるのかを調べることを目的として、米国立衛生研究所(NIH)の資金提供により実施された。同大学のSteven G. Johnson氏らにより、血糖管理目的でメトホルミンが処方されている約7万6,000人の米国人糖尿病患者のデータが収集され、同薬が処方されていない1万3,000人以上の糖尿病患者のデータと、long COVIDのリスクが比較された。 Johnson氏らは解析の結果、メトホルミンが処方されていた糖尿病患者は、COVID-19罹患後6カ月以内のlong COVID発症または死亡のリスクが最大21%低いことを見いだした(ハザード比0.79〔95%信頼区間0.71〜0.88〕)。研究グループは、「これらのデータは、メトホルミンの処方がSARS-CoV-2感染後の良好な転帰と関連していることを示す、他の観察研究の結果と一致している」と述べている。 では、メトホルミンは、どのようにしてCOVID-19症状の遷延を防ぐのだろうか? NIHによると、「研究者らは現時点で、メトホルミンがCOVID-19の長期化をどのように防ぐのかを明らかにしていない。しかし、炎症を軽減したり、ウイルスレベルを下げたり、疾患関連タンパク質の形成を抑制するといった、いくつかのメカニズムが存在する可能性を推測している」という。

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歯周病原菌は頭頸部がんのリスクを高める?

 歯周病原菌は、頭頸部がんリスクを高める可能性があるようだ。新たな研究で、13種類の口腔内細菌が頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)のリスク上昇と関連していることが示された。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部人口健康学教授のRichard Hayes氏らによるこの研究結果は、「JAMA Oncology」に9月26日掲載された。Hayes氏は、「われわれの研究結果は、口腔衛生習慣を維持すべきことに対する新たな理由を示すものだ。フロスを使っての歯磨きは、歯周病だけでなく頭頸部がんの予防にも役立つ可能性がある」と述べている。 この研究では、全米21州の50〜74歳の米国人18万4,000人以上を対象にがんの潜在的なリスク因子を調査している進行中の3つの研究プロジェクトのデータが用いられた。これらの研究では、試験参加者が口腔洗浄液サンプルを提出していた。参加者のうち236人(平均年齢60.9歳、女性24.6%)が、平均5.1年間の追跡期間中にHNSCCを発症していた。これら236人と年齢、性別、人種・民族、口腔サンプル採取からの経過時間を一致させたHNSCC未発症者485人を対照として選出した。全ゲノムショットガンシーケンス解析により口腔内の細菌マイクロバイオームを分析するとともに、内部転写スペーサー(ITS)領域のシーケンス解析により口腔内真菌マイクロバイオームについても調査した。 その結果、ベースラインでの全体的な口腔内微生物叢の多様性は、HNSCC発症と関連していなかったが、13種類の口腔内細菌がHNSCC発症に関連していることが明らかになった。これらの細菌種の中には、新たに特定された種(Prevotella salivae、Streptococcus sanguinis、Leptotrichia属の種)も含まれていた。 Hayes氏らは、これら13種類の細菌と、歯周病と最も関連が強い細菌群に含まれる9種類の細菌を用いて総合的な微生物リスクスコアを作成し、HNSCCとの関連を検討した。その結果、このリスクスコアが1標準偏差増加するごとに、HNSCCリスクが50%増加することが明らかになった(多変量解析に基づくオッズ比1.50、95%信頼区間1.21〜1.85)。一方、口腔内の真菌とHNSCCとの間に関連は認められなかった。 論文の筆頭著者であるNYU人口健康学分野のSoyoung Kwak氏は、「われわれの研究結果は、口腔内微生物叢とHNSCCの関係について新たな知見を提供するものだ。これらの微生物は、専門家がHNSCCリスクの高い人にフラグを立てるためのバイオマーカーとして役立つ可能性がある」と述べている。

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2型糖尿病患者のフレイルリスクに地域差

 高齢2型糖尿病患者のフレイルリスクが、居住地域によって異なるという実態が報告された。農村部では都市部よりリスクが高く、また農村部居住患者は手段的日常生活活動(IADL)と社会的日常生活活動(SADL)の低下も認められるという。香川大学医学部看護学科慢性期成人看護学の西村亜希子氏、京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻の原島伸一氏らによる論文が、「BMC Geriatrics」に8月17日掲載された。 糖尿病は、ストレス耐性が低下した状態であるフレイルのリスク因子であり、両者が併存する場合、身体障害や死亡のリスクがより上昇する可能性があるため、早期介入が特に重要と考えられる。また、フレイルリスクを高める因子として居住地域も該当し、都市部よりも農村部でリスクが高いことが示唆されている。ただし、糖尿病とフレイルの併発に居住地域の影響があるのかという点は未だ検討されていない。西村氏らは、糖尿病患者のフレイル予防に関する多機関共同研究(f-PPOD研究)のデータを用いた横断的解析により、この点を検討した。 f-PPOD研究は国内の糖尿病専門外来のある医療機関8施設が参加。分布の偏りを避けるために各施設の外来患者数の10%を上限として、2017年3月~2020年2月に患者登録が行われた。適格基準は、基本的な日常生活活動(ADL)に支障がなく、重度の糖尿病合併症や併存疾患、身体障害、精神疾患のない、60~80歳の2型糖尿病患者。フレイルの判定には介護予防・日常生活支援総合事業で使用されている「基本チェックリスト」を用い、スコア8点以上をフレイル、4~7点をプレフレイルとした。 解析対象は417人で、このうち64.5%が都市部(人口100万人以上の都市とそれに隣接する通勤圏内)、35.5%が農村部(前記以外の地域)に居住していた。両群を比較すると、都市部の患者の方が、高齢(70.6±5.5対69.0±5.2歳、P=0.003)でHbA1c高値(7.33±1.00対7.04±0.91%、P=0.003)であり、罹病期間が長かった(16.6±10.9対12.0±10.3年、P<0.001)。握力は農村部の患者の方が高かった(26.8±8.0対29.6±8.2kg、P=0.001)。性別の分布には有意差がなかった(女性の割合が48.0対43.2%、P=0.356)。 フレイルの該当者率は、都市部では18.6%、農村部では23.0%、プレフレイルは同順に37.5%、47.3%であり、農村部で高かった(P=0.018)。居住地域、年齢、性別、HbA1c、糖尿病罹病期間を説明変数とするロジスティック回帰分析の結果、農村部への居住(オッズ比〔OR〕2.554〔95%信頼区間1.384~4.711〕)とHbA1c値(OR1.453〔同1.095~1.926〕)の二つが、フレイルに独立して関連のある因子として抽出された。また、プレフレイルに独立した関連のある因子は、農村部への居住(OR2.102〔同1.296~3.408〕)のみが抽出された。 次に、基本チェックリストのサブスケールのスコアと、前記の解析で独立変数とした各因子との関連を多重線形回帰分析で検討。すると、農村部に居住している糖尿病患者は、IADL(B=0.279、P<0.001)およびSADL(B=0.265、P=0.006)のスコアが有意に低いという関連が示された。なお、その他のサブスケール(運動器機能、栄養状態、口腔機能、認知機能、抑うつ)については、居住地域との有意な関連は見られなかった。 基本チェックリストの各質問の回答を比較すると、「バスや電車で1人で外出しているか」、「友人の家を訪ねているか」、「家族や友人の相談にのっているか」、「15分くらい続けて歩いているか」という4項目に有意差があり、いずれも都市部居住者の方が「はい」の割合が高かった。 以上を基に著者らは、「農村部の高齢2型糖尿病患者は、都市部の患者に比べてフレイルリスクが高く、IADLやSADLの低下が認められる」と結論。その理由として、「公共交通機関を利用しての外出が少なく歩行時間が短いこと、他者との交流が少なく孤立しやすいことなどの影響が想定される」とし、また既報研究を基に「ヘルスリテラシーの差異も関与しているのではないか」と考察を述べた上で、「フレイル予防のためには個人のリスク評価とともに、社会参加とコミュニケーションを促すような介入戦略が必要と考えられる」と総括している。

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潰瘍性大腸炎に対する抗TL1Aモノクローナル抗体tulisokibartの第II相試験(解説:上村直実氏)

 潰瘍性大腸炎(UC)の治療は、軽症例には従来の治療法すなわち5-ASA製剤、ステロイド、アザチオプリン、6-MP等免疫抑制薬が使用されるが、寛解が困難である症例やステロイド依存症例の中等度から重度UCの治療には、生物学的製剤や低分子化合物を用いた治療が主流になっている。厚生労働省の難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班の治療指針によると、インフリキシマブやアダリムマブなどの抗TNF阻害薬、インターロイキン(IL)阻害薬のウステキヌマブやミリキズマブ、インテグリン拮抗薬であるベドリズマブ、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のトファシチニブやフィルゴチニブなどの使用が推奨されている。しかし、UC症例の中には新たな薬剤でも十分な効果が得られない患者や副作用により治療が中断される患者が少なくなく、さらなるアプローチが必要となっている。 今回、ステロイド依存性または免疫抑制薬やTNF阻害薬などの生物学的製剤や低分子化合物による治療によっても寛解しない活動期UC患者を対象として、炎症性腸疾患の発症に対する関与が示唆されているヒト腫瘍壊死因子様サイトカイン1A(TL1A)に対するモノクローナル抗体であるtulisokibartの寛解導入に対する有効性と安全性を評価することを目的とした国際共同試験の結果が2024年9月のNEJM誌に掲載された。試験の結果、tulisokibartはプラセボと比べて安全性には差がなく、治療開始12週目の臨床的寛解および内視鏡的改善効果が有意に高率であったことが示されている。なかでも、プラセボの臨床的寛解率が1%であるのに対して実薬で26%と高率であった点は、対象症例が治療抵抗性の高い集団であったことを意味している。 一般の診療現場では、市販されている薬剤に抵抗性を示す患者を対象として本試験のようにプラセボ対応のRCTによる新規薬剤の臨床的寛解効果、内視鏡的粘膜改善効果、組織学的粘膜改善および粘膜治癒の有効性を検証する研究結果が重要であり、さらに、簡便に使用可能な高感度CRPや糞便中カルプロテクチンなど、炎症のバイオマーカーによる評価の結果は一般臨床現場のUC診療にとって大きな助けになると思われる。 なお、本試験は第II相試験であるが、症状の改善効果が非常に早い時期に確認されており、今後、より多くの症例を対象として、より長期の寛解導入および寛解維持効果を検証する第III相試験の結果からTL1A阻害薬が臨床の現場で使用可能となることが期待される研究結果と思われた。 最後に、クローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患に対する新規薬剤が次々と上市されていることから、ガイドラインの改訂方法も考慮すべきであると同時に感染症などの有害事象にも注意が必要であることを忘れてはならない。

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「少量のアルコールは体に良い」は誤り?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第267回

「少量のアルコールは体に良い」は誤り?「赤ワインをちょっとたしなむくらいが、体にもいいんだ」という話を聞いたことがあり、週に何度かアルコールを摂取している医師は多いかもしれません。確かに、一部の研究によると「適度な飲酒は心血管系に有益な効果がある」と報告されています1)。要はアルコール摂取量と動脈硬化のリスクはJカーブであって、線形のリスク増加にならないという見解です。しかし、これには方法論的な問題があると指摘されています。Schutte R, et al. Alcohol and arterial stiffness in middle-aged and older adults: Cross-sectional evidence from the UK Biobank study. Alcohol Clin Exp Res (Hoboken) . 2024 Aug 20. [Epub ahead of print]この研究は、アルコール摂取と動脈硬化の関係について調査した横断研究です。英国のバイオバンクデータを使って、40~69歳の中高年を対象に分析しています。これらのバイアスを避けるため、飲酒者のみを対象とし、連続的な分析を行うことで、アルコール摂取と動脈硬化の関係を明らかにしました。英国では、男性はビールを、女性はワインを好む傾向があるため、ビールを常用飲酒している男性9,029人と、赤ワインを常用飲酒する女性6,989人を解析対象としました。男性は週平均17.8単位(1単位=10mLエタノール相当)のアルコールを摂取し、女性は週平均8.1単位のアルコールを摂取していました。どちらのグループでも、アルコール摂取量が増えるにつれて動脈硬化指数(ASI)が直線的に増加する傾向が観察されました。すなわち、低〜中程度のアルコール摂取で動脈硬化に利益をもたらすという根拠はなかったのです。50歳未満と50歳以上で層別化しても、アルコール摂取量とASIには正の相関が観察されました。研究者によってまだ異論のあるところですが、少なくともこの研究では、「少量の飲酒は動脈硬化に有益」という従来の見解は支持されないことになります。よく、赤ワインに含まれるポリフェノールに血管保護作用があるとされていますが、線形のリスク増加があることから、リアルワールドではほぼ無視されるという見解です。少なくとも、「ちょっと飲むくらいがちょうどいい」といった誤った啓発は行うべきでない、というのが筆者らの見解です。1)Del Giorno R, et al. Association between Alcohol Intake and Arterial Stiffness in Healthy Adults: A Systematic Review. Nutrients. 2022 Mar 12;14(6):1207.

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第233回 各党の迷走ぶりをみる、衆院解散総選挙に向けた公約とは

さてさて、自民党総裁選が終わり、石破 茂氏が総裁に就任。そのまま首相になった途端、衆院解散総選挙となった。となれば、人気のないテーマとわかりつつも、毎度お馴染み各党の政策とそれに対する独断と偏見に基づく所感を書かないわけにはいかない。いやはや短期間でこれほど政治のことに触れなければならなくなるなど、まったく思っていなかった。毎度のごとく現在衆院に議席を有する国政政党に限定して取り上げていきたい。もっとも議席順や五十音順だとなかなかにバランスを欠く配置となるため、勝手ながら今回は各政党の議席順の奇数順位と偶数順位に分けたい。まずは奇数順である。自民党(1位:258議席)首相就任以来、言動がブレブレと言われる石破 茂氏。今回の選挙で自民党は「2024年政権公約」を公表した。これがどのようなものか、以前取り上げた石破氏の総裁選での公約との比較も交えて取り上げてみたい。総裁選時の石破氏の政策は「5つの『守る』」だったが、同じ「守る」を使いながら今回の自民党としての公約は6つに増えている。社会保障、医療・介護関連は、まず2番目の「暮らしを守る」に登場する。ここで社会保障の項目に記述してある内容(文意は変えずに一部改変)は年金を除くと以下の2点である。全ての世代が安心でき、能力に応じて支える、持続可能な全世代型社会保障の構築予防・健康づくりを強化し健康活躍社会を創る。女性の健康支援の総合対策、がん、循環器病、難病、移植医療、依存症等への対策を推進。食品の安全を確保し、公衆衛生の向上を図る観点からも生活衛生業を振興。感染症危機管理体制を整備。一番目は総裁選時の「従来の家族モデルを前提とした社会保障の在り方を脱却し、多様な人生の在り方、多様な人生の選択肢を実現できる柔軟な制度設計を行います」がやや言葉が丸くなった感じである。この辺は選択的夫婦別姓に関して従来は「選択なのだから反対する理由がない」から、首相就任後に「国民の間にさまざまな意見があり、政府としては、国民各層の意見や国会における議論の動向などを踏まえ、更なる検討をする必要がある」と発言が後退したことと関連があるかもしれない。いわゆる夫婦同姓に代表されるような「従来の家族モデル」に固執する党内保守派に配慮してフワッとおさめる戦略と見受けられる。2番目については総裁選時に掲げていた政策をより深化させた印象である。というのも総裁選時に「がん、循環器病、難病、移植医療、依存症等への対策を推進」に関連する文言はまったくなかったからである。また、同じ「暮らしを守る」内では、成長戦略の項目で「2025年大阪・関西万博を、AI、ロボット、ヘルスケア等の新技術の社会実装を先行体験する『未来社会のショーケース』として活用し、イノベーションの力で変革し続ける日本を発信する絶好の機会とします」と言及したほか、経済安全保障の項目で「半導体、医薬品、電池、重要鉱物等の重要技術・物資のサプライチェーンの強靱化」など、ややナショナリスティックなヘルスケア関連経済政策も掲げている。この辺は総裁選で争った高市 早苗氏や小林 鷹之氏らの政策にやや似通っている。経済に弱いと言われる石破氏の“汚名”返上とやはり党内保守派への配慮の産物だろうか?もっとも社会保障、医療・介護関連以外も眺めまわしてみたが、石破氏の総裁選時の公約と比べ、今回の党としての公約はかなり微に入り細を穿つ内容で、良く書き込まれている印象が強い。これほど短期間でどうしたのだろう? 順当に考えれば、側近がかなり練り込んだのだろうが、それが誰なのか気になってしまう。日本維新の会(3位:44議席)大阪・関西の地域政党から全国政党へと進化しようとしている日本維新の会。前回の2021年衆院選では公示前より4倍弱の議席を積み増したが、昨今では大阪・関西万博に対する支出増大などを背景に、以前より支持を落としているとも伝わる。同党のマニフェストでは、「将来世代への徹底投資で、新しい時代の政治を創る」をキャッチフレーズにしている。ここからは若年保守層への支持浸透を狙っていることが改めてうかがえる。今回、4大改革の1つとして掲げているのが「世代間不公平を打破する社会保障の抜本」だ。これ自体は以前から同党の姿勢として変わらず、「現役世代に不利な制度を徹底的に見直し。高齢者医療制度の適正化による現役世代の社会保険料負担軽減」として、低所得者等へのセーフティネットは確保しながら、高齢者医療費の原則3割負担を主張している。もっともこれまた現役世代への配慮のためか、「こども医療費の無償化」も掲げてしまうところが微妙な感じではある。これは従来から学術関係者からは指摘されている通り、無償化はモラルハザードと表裏一体の関係である。これは同党に限らず思うことだが、小児の医療費無償化を行うぐらいなら、それはせずに児童手当の支給額を積み増したほうが消費にも繋がり遥かにマシだと思うのだが。日本共産党(5位:10議席)日本の政党としてはすでに100年以上、同一政党名で活動し、旧西側諸国の共産党の中では党員数最大である。今回の衆院選では以下のような政策を掲げている。介護保険の国庫負担割合を現行の25%から35%に引き上げ、国費投入を1.3兆円増やし、ホームヘルパー、ケアマネジャーなど介護職の賃金を、「全産業平均」並みに施設職員の長時間・過密労働や「ワンオペ夜勤」の解消に向け、配置基準の見直しや報酬加算・公的補助などを実施介護事業所の人件費を圧迫している人材紹介業者への手数料に「上限」を設定今春の介護報酬改定で引き下げられた訪問介護の基本報酬を早急に元の水準に戻す介護事業が消失の危機にある自治体に対し、国費で財政支援を行う仕組みを緊急につくり、事業所・施設の経営を公費で支援70歳以上の医療費窓口負担を一律1割に引き下げ、負担の軽減・無料化を推進介護保険での軽度者の在宅サービスの保険給付外しや利用料の2割負担・3割負担の対象拡大などを止め、保険給付の拡充、保険料・利用料の減免を図る公費1兆円を投入し、国民健康保険料の抜本的に引き下げ後期高齢者医療制度を廃止病床削減や病院統廃合の中止と医師・看護師を増員で地域医療の体制を拡充マイナ保険証の強制をやめ、健康保険証を存続ざっと見まわせば、「いつもの共産党ポピュリズム」というイメージを抱く有権者が多いと思う。もっともこれまで毎回の国政選挙で各党の政策を見てきた身からすると、若干変化がある。たとえば1番目に挙げた予算について、投入金額など定量的な数字が散りばめられるようになった点である。もっとも公費負担割合の引き上げ率を定めれば、投入予算規模は計算できるので、むしろこれまで数字を積極的に記載してこなかったことが不思議と言ってしまえば、それまでではあるが…。そして毎度お馴染みが医療費や介護サービス利用料の引き上げ反対。しかし、現行や将来の財政負担を考えれば、この場合、その分の財源は若年勤労層への負担転嫁か蜃気楼のようにつかみどころがない将来の経済成長に財源を期待するしかなくなり、不透明感が増す。そもそも同党の場合、歴史の古い政党ゆえのイデオロギー縛りのためか、経済政策が相も変わらず、労働運動と所得再分配の目線が強過ぎる傾向にあり、経済振興策になっていない。余計なお世話を覚悟で言えば、そろそろこの現状から脱して経済政策と連動する財源論を唱えてほしいと思う。病床削減や病院統廃合の中止は、よくよく今後の医療需要の変動を考えれば、少なくとも単なる現状維持は、国民に均てん化した質の低い医療・介護を受けろというようなものだ。一方、比較的、現実味のある政策としては、介護事業所が支払う人材紹介業者への手数料の上限設定である。すでにこの件は社会保障審議会の介護給付費分科会でも議論されていることであり、介護事業所の経営改善の一助にはなる政策である。マイナ保険証の件については、同じ政策を掲げている後段のれいわ新撰組の政策で触れる。れいわ新撰組(7位:3議席)ご存じ山本 太郎氏が党首のリベラル系政党である。古い世代の私はどうしてもバラエティ番組「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の「高校生制服対抗ダンス甲子園」にスイミング・パンツ一丁で、全身にサラダ油を塗ってテカテカしたままおどけていたイメージが抜けない。今回の選挙マニフェストでは「世界に絶望している?だったら変えよう。れいわと一緒に。」のキャッチフレーズを掲げ、政策として01~06までの6つの大項目を掲げている。「01増税?ダメ 絶対!」では「社会保険料を下げる!年金は底上げ!」を掲げ、「国民健康保険料や介護保険料などの社会保険料を国庫負担で引き下げる」「後期高齢者医療制度は持続不可能なので、現役世代の負担と保険料をすべて国の負担とする」を謳っている。「03親ガチャ?国がやる!『子育ては自己責任』終了のお知らせ」では、子供医療費の完全無償化、「04 失われた30年を取り戻す!賃金爆上げ大作戦」では介護・保育の月給10万円アップ、民間事業者が少ない地域では、介護士を公務員化し「公務員ヘルパー」の復活を掲げている。さて、問題はこれらについては財源をどうするのか? に尽きる。従来から山本氏は3~5%までのインフレ水準までは国債を発行してもよいという考えを主張している。同時に同党が累進課税の強化や法人税引き上げを担保に消費税全廃を掲げていることも有名である。とはいえ、国によるインフレ率コントロールは、これまでの歴史から容易ではないことは明らかで、かつ日本の所得税収が中所得以下からの薄く広い徴収に依存している現実を見れば、れいわの財源論はかなり空想と言わざるを得ない。前述の中で「公務員ヘルパー」が何のことかわからない人もいるかもしれないが、介護保険制度創設以前の居宅訪問サービスがそうだったことに由来しているのだろう。これについては一考の余地はある。というのも居宅介護を拒否する人の中には公務員ならば受け入れるというケースもあるからだ。もっともこの場合は公務員と民間企業とで起こるであろう賃金格差をどのようにならすかの問題が生じる。一方、「05 あらゆる不条理に立ち向かう」では、「マイナンバーカードはいらない! 保険証・免許証はこれまでどおり」と主張している。これは個人監視や社会保障の削減につながる懸念があるためとしているが、社会保障の適切な提供のためにはデータ分析が必要であり、そのための基盤になる可能性のあるものは現時点でマイナンバーカードを軸に収集されるデータ以外にない。概観すると、日本共産党と共通する政策が多く、共産党よりもポピュリズム過ぎないか? という印象しかない。参政党(9位:1議席)2020年に結党され、「日本の国益を守り、世界に大調和を生む」との理念を掲げる保守政党である。2022年の参院選では約177万票を集め、元大阪府吹田市議の神谷 宗幣氏が議席を獲得した。これまで衆院に議席はなかったが、2021年の衆院選で国民民主党から出馬し、比例復活(神奈川10区[現18区])で当選した鈴木 敦氏は、旧民主党政権で国交相、外相などを務めた前原 誠司氏らが2023年に結党した「教育無償化を実現する会」に参加(のちに本人は国民民主党に離党届を提出するも党側から除籍される)。今回の衆院解散で同会が日本維新の会に合流を決めた中、選挙区の関係などで鈴木氏はこれに加わらず参政党に入党したため、同党は公示前1議席となった。さて同党は今回、「日本をなめるな」のスローガンの下、「3つの決意と7つの行動」を謳っている。「決意1 奪われる日本の国土と富を護り抜く」では、「消費税減税と社会保障の最適化により国民負担率に35%上限のキャップをはめる」と主張しているが、どのような社会保障最適化を行うかは、同党の衆院選特設ページを見る限りは不明である。また、「決意2 失われる日本の食と健康を護り抜く」では、「行動4 ワクチン薬害問題を党をあげて追究し、被害救済申請の負担軽減と審査の迅速化」を掲げる。同党HPでは令和6年9月時点で新型コロナウイルス感染症ワクチンによる予防接種健康被害救済制度認定件数が8,180件(うち死亡843人)で、これがコロナワクチン以外の過去すべての同制度認定総数3,687件を大幅に超えるペースとして、危険性を強調している。もっともこの数字を解釈なしで見ることが危険である。まず過去のワクチン接種による健康被害認定は、今ほど医療従事者の安全性認識が鋭敏ではなかった時代も含むことや、かつては事後の有害事象の追跡が十分にできない1回接種だったものもあったことから過少報告の可能性が十分にある。さらに制度の救済認定では、厳密な医学的な因果関係までは必要とせず、接種後の症状が予防接種で起きたことを否定できない場合も対象としており、新型コロナワクチンの被害救済認定=因果関係の認定ではない。仮に前述の8,000件超すべてに因果関係が認められたとしても、このワクチンの国内接種者は1億人超であり、認定対象となった副反応出現率は0.008%に留まる。一方で統計的な検討からこのワクチンにより数多くの死亡を防げたとする学術論文は多数ある。このようなことから新型コロナワクチンは社会全体で見れば明らかにメリットのほうが大きいと言える。これらのことから同党の主張は過剰にワクチンの危険性を強調していると言わざるを得ない。また、同党HPではレプリコンワクチンに対しても懸念を示しているが、これについては以前、本連載で触れたとおりだ。さらにこの行動4に関連し、以下のような政策を箇条書きしている。薬やワクチンに依存しない治療・予防体制強化で国民の自己免疫力を高める新型コロナワクチンの接種推進策の見直しを求める対症医療から予防医療に転換し、無駄な医療費の削減と健康寿命の延伸を実現「自己免疫力」という言葉もさることながら、それを国家として推進するのは半ば意味不明である。さらに予防を政策的に行う場合、実はそれなりにコストがかかるので、それで単純に将来的な医療費削減につながるとは言い難いのが現実。いずれにせよ同党関係者や支持者には申し訳ないが、かなり現実離れした政策が多い。さて、次回は残る立憲民主党、公明党、国民民主党、社民党についてご紹介したいと思う。

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激しい興奮を伴うせん妄への対応【非専門医のための緩和ケアTips】第86回

激しい興奮を伴うせん妄への対応緩和ケアの実践で常に遭遇するせん妄ですが、とくに激しい興奮を伴うときは非常に大変です。今回は訪問看護師さんからご質問いただきました。今日の質問在宅で終末期患者をケアしていると、時々、非常に強い興奮を伴ったせん妄を経験します。患者さんは怒りとともに、殴りかかろうとするくらいの興奮です。こんな時、どうすれば良いのでしょうか。見ている家族もつらそうで、少しでもできることがないかと思います。強い興奮を伴うせん妄は、本当に大変ですよね。私も経験がありますし、なかなか難しい対応を強いられたことも多くあります。点滴を引きちぎり、手当たり次第にモノを投げようとするなど、本当に手が付けられないような状況もありました…。このような状況でわれわれに何ができるのでしょうか。まず大前提として、せん妄の対応は原因となっている「身体疾患の改善」と環境などの「非薬物療法」の検討が必要となります。とはいえ、緩和ケアの実践では終末期状態の方が多く、身体状況は不可逆なことが多いですよね。なので、なかなか根本解決が難しいのが苦しいところではあります。さて、そういった基本的なことを理解し、実践している前提で、今回の質問のような非常に激しい興奮を伴うせん妄にはどのように対応するのでしょうか?共通見解やエビデンスに乏しい分野ですが、私の対応例をご紹介します。まず、このような状況では、本人と周囲の人の安全確保を優先しましょう。その観点から、身体拘束をせざるを得ない、という判断も必要になります。身体拘束はもちろん好ましいことではないものの、本人が暴れてベッドから落ちて骨折する、周囲の人がけがをする、などのことも許容されません。ここはジレンマを抱えながらの実践になると思います。もちろん、身体拘束が必要なくなったらすぐに解除することは大前提です。このような興奮状態の場合、そのままでの投薬は現実的に困難です。よって、人手を集め、身体拘束などで安全を確保したうえで、薬剤の投与を検討します。基本的にはハロペリドールなどの抗精神病薬を用いて、効果を評価しながらベンゾジアゼピン系薬を用います。具体的にはハロペリドールを0.5mg投与し、そのうえでミダゾラムなどをゆっくり投与します。ミダゾラムは半減期が2時間程度と短く、好んで使用する専門家が多いと思います。また、ベンゾジアゼピン系薬には拮抗作用を持ったフルマゼニルがあることも重要な点ですので、覚えておきましょう。ベンゾジアゼピンによる鎮静が過剰になった場合にも、半減期の短さと拮抗薬の存在が強みになります。一方、せん妄への処方としては、抗精神病薬以外は適応外使用になりますので、ここはよく理解して使用する必要があります。適応外使用であっても使用禁忌というわけではないですし、患者負担が増えることもありません。ただ、有害事象の発現時などには、その使用判断の妥当性は問われることを理解しておく必要があるでしょう。ベンゾジアゼピン以外の選択肢として、クロルプロマジンを使う時もあります。クロルプロマジンは内服だけでなく、筋肉注射可能な注射薬もあり、せん妄の時には重宝します。これらの鎮静作用の強い薬剤の注意点は、先に述べた適応外使用となることに加え、これらの鎮静作用自体がせん妄の悪化要因になり得ることです。それもあって鎮静効果が遷延せず、かつ作用時間が短いベンゾジアゼピンであるミダゾラムを優先して使用している方が多いのでしょう。最後に、改めてせん妄を診る時は、治癒可能な原因を見逃さないことが大切です。とくに、経過中に生じた新たな興奮を伴うせん妄は、脱水や新規薬剤など新たな要因が関与していることも多いので、対応しながら再評価する必要があります。今回のTips今回のTips興奮を伴うせん妄には、場合に応じて身体抑制と鎮静作用の強い薬剤を使用し、原因を改めて検討、評価する。日本総合病院精神医学会せん妄指針改訂班編. せん妄の臨床指針 せん妄の治療指針 第2版.星和書店;2015.

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産業医で独立するなら会社は必要?法人化のメリット&デメリット【実践!産業医のしごと】

産業医として独立を検討する際、個人事業主として活動を続けるか、法人を設立して事業を行うか、悩むことがあるでしょう。将来的に事業として大きくすることを目指すのであれば法人化が必要ですが、そこまではまだ考えていない、という方も多いと思います。今回は、個人事業主と法人化を比較し、気になる法人化のメリットとデメリットを解説します。産業医活動の税務上の扱い企業との産業医契約では、個人または法人のどちらで結ぶかによって税務上の取り扱いが変わります。個人事業主として契約を結ぶ場合、産業医報酬は原則として給与として扱われます1)。産業医が企業に対して定期的な業務を提供し、労働時間や業務内容が一定程度決められているためで、給与収入として取り扱われると、事業所得として申告することは難しくなります。法人を設立するメリット個人事業主が法人化するメリットには、信頼性の向上、節税の可能性、責任の有限性が挙げられます。1)信頼性の向上一般的には、法人化により法的に認知され、責任が明確になります。法人格を持つ企業は法律に基づいて活動し、責任も明確に区分されます。医師という職業は一般的に信頼性が高い仕事なので実感は少ないかもしれませんが、法人化により企業から見ても法的に保証された存在になり、信頼性が高まると考えます。2)節税の可能性個人が法人化することで、次のようなメリットがあります。税率が低くなる可能性法人税は所得税よりも一定の税率で課税されるため、収入が高い場合は税負担が軽減される可能性があります。いわゆる「マイクロ法人」の場合、利益が数百万円以下であれば法人税率が低く、税金の負担を抑えられる場合があります。たとえば、資本金1億円以下の法人の場合、年間利益が800万円以下であれば、法人税率は15%であり、800万円を超える所得への法人税率は23.2%です。これに対し、個人は累進課税のため所得税率は最高で45%にも達します。法人を設立することで、事業所得として収入を扱うことが可能になるため、税制上のメリットが得られるでしょう。経費を広く計上できる法人を設立することで、経費として計上できる範囲が広がります。事務所の家賃や設備投資、通信費、出張費など、ビジネスに関連するさまざまな支出が法人の経費として認められるため、結果的に課税所得を減らすことができます。個人で給与所得を得ている場合は、給与所得控除額を給与等の収入金額から差し引かれますが、給与所得控除額の上限額は195万円です。それ以上に経費がかかる場合は、法人のほうが税金上は有利となる可能性があります。節税の選択肢が増える法人にすることで、所得を分散させるなどの節税手段が取れる場合があります。たとえば、自分の報酬を一定の範囲内に抑え、法人に利益を留保することで税負担を分散することが可能です。3)責任の有限性一般的には、個人事業主として事業を行って経営が悪化した際には、従業員への未払い給与や、金融機関からの借入金、未納の税金などはすべて個人の負債となります。法人の場合は個人保証による借り入れを除くと、出資金の範囲内の有限責任となります。産業医の業務に限定した場合では、契約先の企業や従業員から訴えられる可能性があります。この場合、個人であっても法人であっても、自らが代表である限りはその責任は同等であると考えます。法人化のデメリットは?一方、法人を設立することには、次のようなデメリットもあります。1)設立・維持費用法人を設立するためには、登録免許税や公証人の手数料など、設立費用がかかります。さらに、法人を維持するためには会計帳簿の作成や税務申告のために税理士を雇う必要があり、これに関連する費用を考慮することが必要です。2)社会保険料の負担増加法人にした場合、代表者として給与を受け取る際には社会保険の加入が義務付けられます。個人事業主では国民健康保険と国民年金で済むものが、法人化すると健康保険や厚生年金の事業主の負担すべき社会保険料が増加することになります。法人代表として受け取る給与が高額であればさらに負担が大きくなるため、この点も慎重に検討する必要があります。収入の規模や今後の展開によって選択産業医としての独立に際して、法人化するべきかどうかは、収入の規模や今後の仕事の展開によって異なります。もし、産業医としての報酬が増加する見込みがあり、税負担を抑えたい場合には、法人化を検討する価値があります。一方で、収入がまだ限定的であり、法人設立や維持にかかるコストを賄う余裕がない場合には、個人事業主として活動を続けるほうが合理的かもしれません。いずれの選択肢を取るにせよ、産業医としての独立は大きな一歩です。個人や法人化のメリットとデメリットを十分に理解し、自らにとって最適な道を選びましょう。参考1)産業医の報酬/国税庁

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食事の質や睡眠時間が抑うつ症状に及ぼす影響

 不健康な食生活や不健康な睡眠時間を含むライフスタイルは、うつ病の修正可能なリスク因子として広く知られている。中国・四川大学のYue Du氏らは、食事の質、睡眠時間、抑うつ症状との関連およびこれらの複合的な影響を調査するため、本研究を実施した。BMC Public Health誌2024年9月27日号の報告。 対象は、2007〜14年のNHANESデータから抽出された20歳以上の成人1万9,134人。不健康な食生活は、Healthy Eating Index-2015の平均スコア60パーセンタイル未満、不健康な睡眠時間は、夜間の睡眠時間が7時間未満または9時間以上とした。対象者をライフスタイル別に4群に分類した。分析には、関連変数をコントロールする重み付け多変量ロジスティック回帰を用いた。さらに、ロバスト性を評価し、潜在的な高リスク群を特定するため、層別化分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・全体のうつ病有病率は8.44%。・健康的な睡眠時間の基準を満たした人は56.58%、健康的な食生活の基準を満たした人は24.83%であった。・不健康な食生活および不健康な睡眠時間は、抑うつ症状と正の相関が認められた。【不健康な食生活】オッズ比(OR):1.40、95%信頼区間(CI):1.18〜1.67、p<0.001【不健康な睡眠時間】OR:1.94、95%CI:1.63〜2.31、p<0.001・健康的な食生活と睡眠時間の基準を満たした人と比較し、いずれかまたは両方が不健康な人は、抑うつ症状と有意な関連が認められた。【不健康な食生活+健康的な睡眠時間】OR:1.60、95%CI:1.20〜2.13、p=0.002【健康的な食生活+不健康な睡眠時間】OR:2.50、95%CI:1.64〜3.80、p<0.001【不健康な食生活+不健康な睡眠時間】OR:2.91、95%CI:2.16〜3.92、p<0.001・層別分析では、女性、中年、大学卒業以上の学歴、推奨される身体活動レベルを満たしていない人は、不健康な食生活+不健康な睡眠時間により、抑うつ症状に対する感受性が上昇することが示唆された。 著者らは「不健康な食生活と不健康な睡眠時間の人、とくに女性、中年、大学卒業以上の学歴、推奨される身体活動レベルを満たしていない人は、抑うつ症状を呈しやすいことが示唆された」と結論付けている。

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高齢者の心不全救急搬送、気温低下の1~2日後に注意/日本心不全学会

 今冬はラニーニャ現象発生の影響で昨年よりも厳しい寒さとなり、心不全による入院の増加に一層の注意が必要かもしれない。では、どのような対策が必要なのだろうか―。これまで、寒冷曝露や気温の日内変動(寒暖差)が心筋梗塞や心不全入院を増加させる要因であることが示唆されてきたが、外気温低下の時間的影響までは明らかにされていない1,2)。10月4~6日に開催された第28回日本心不全学会学術集会のLate breaking sessionでは、これまでに雨季後の暑熱環境下における気温上昇と高齢者の心血管救急搬送リスクとの関連3)や脳卒中救急搬送リスク増加を示唆する疫学研究4)などを報告している藤本 竜平氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 疫学・衛生学分野/津山中央病院 心臓血管センター・循環器内科)が『時間層別による外気温低下と心不全救急搬送の関連』と題し、新たな知見を報告した。 同氏らは、気温低下が短期間に心不全へ及ぼす影響を検討するため、外気温が1℃ごと低下すると心不全の救急搬送にどのような影響を与えるかについて、時間層別の解析を行った。2009~19年に岡山市内に救急搬送された18歳以上の心不全患者を対象に自己対照研究デザインであるケースクロスオーバー研究を実施し、時間ごとの気温、気圧、相対湿度、PM2.5濃度を取得。条件付きロジスティック回帰分析により、気温1℃低下時の搬送前時間ごと(先行間隔:lag)に気圧や湿度などの交絡因子を調整したオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出し、年齢ごとに層別化した。主要評価項目は心不全救急搬送で、副次評価項目は性別、併存疾患、季節、曜日の影響を考慮した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は5,406例(男性49.4%、平均年齢81.9±11.2歳)で、65歳以上は4,985例(平均年齢84.1±8.1歳)であり、圧倒的に高齢者が多かった。・対象者の併存疾患には高血圧症、虚血性心疾患が多かった。・季節は冬季、曜日は月曜日に心不全による救急搬送が多かった。・年齢別で外気温低下の影響をみたところ、18~65歳未満ではリスク上昇を認めなかったものの、65歳以上の高齢者では低温にさらされてから24~47時間(1〜2日)のlagでOR:1.02(95%CI:1.00~1.03)とリスクが高くなり、その影響はさらに数日間持続していたことから、時間単位ではなく日単位で強く現れる遅延効果の存在が示唆された(24時間までのlagではリスク上昇を認めなかった)。・このリスク増強は、女性、併存心疾患(多くは心不全と推察)、現在のように段々と寒くなる秋期にみられた。・研究限界として、119番通報を発症時間としているので正確な発症時間が不明であること、自家用車や独歩での受診者が含まれていないこと、屋外の測定局データを利用したことなどが挙げられた。 寒冷による病態生理学的考察として、「交感神経緊張の亢進によりレニン-アンジオテンシン系の活性化をはじめ、心拍数や左室拡張末期圧および容積の増大、末梢血管抵抗や心筋酸素需要の増加、虚血閾値の低下、フィブリノゲン増加による血液凝固障害などを生じた結果、動脈圧が上昇し、左室後負荷不適合や心筋虚血による心不全増悪が考えられる」と説明した。また、気温が肺動脈圧に及ぼす影響などの報告5)も踏まえ、「気温低下に伴う交感神経系の緊張により急速な血圧上昇が時間単位で先行し、肺動脈圧上昇と合わさり、日単位で急性心不全を発症する遅延効果を説明するかもしれない」と推察した。このほか、併存疾患と寒冷関連新規発症心不全について、「ある観察研究6)によると60~69歳では併存疾患を2~3つ、70歳以上では1~2つ有する人でリスクが高まる」とも述べた。 同氏は本研究を踏まえ、「高齢者には、気温低下を観測した翌日から数日以降も、暖かい室内などで適温を維持し、とくに段々と寒くなる今の季節(秋)、心不全の既往がある女性(病型別ではHFpEF7))に対し多職種で予防策を講ずる必要性がある」と締めくくった。■参考1)Qiu H, et al. Circ Heart Fail. 2013;6:930-935.2)Ni W, et al. J Am Coll Cardiol. 2024;84:1149-1159. 3)Fujimoto R, et al. J Am Heart Assoc. 2023;12:e027046.4)岡山大学:梅雨明け後の暑さに注意!~梅雨明け後1か月間の暑さは高齢者の脳卒中救急搬送リスクを増やす~5)Carrete A, et al. Eur J Heart Fail. 2024;20:1830-1831.6)Chen DY, et al. Eur J Prev Cardiol. 2024 Aug 23. [Epub ahead of print]7)Jimba T, et al. ESC Heart Fail. 2022;9:2899-2908.

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転移を有する去勢抵抗性前立腺がん、ルテチウム-177の最終解析結果(PSMAfore)/Lancet

 ルテチウム-177 (Lu-PSMA-617)は、タキサン未治療でアンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)既治療の前立腺特異的膜抗原(PSMA)陽性で転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者において、ARPI変更群と比較して画像上の無増悪生存期間(rPFS)を有意に延長し、安全性プロファイルも良好であることが認められた。米国・メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのMichael J. Morris氏らPSMAfore Investigatorsが、北米および欧州の74施設で実施された第III相無作為化非盲検比較試験「PSMAfore試験」の主要解析(第1回中間解析)と最新解析(第3回中間解析)の結果を報告した。Lu-PSMA-617は、ARPIおよびタキサン既治療のmCRPC患者のrPFSおよび全生存期間(OS)を延長することが示されていた。Lancet誌2024年9月28日号掲載の報告。1種類のARPIで進行したタキサン未治療のPSMA陽性mCRPC患者が対象 研究グループは、18歳以上でタキサン系薬剤による治療歴がなく、1種類のARPI(アビラテロン、エンザルタミド、ダロルタミドまたはアパルタミド)による治療後に進行したPSMA陽性mCRPC患者(ECOG PSは0~1)を、Lu-PSMA-617群(7.4GBq[200mCi]±10%を6週ごとに6サイクル静脈内投与)、またはARPI変更群(アビラテロンまたはエンザルタミドに変更)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 ARPI変更群では、盲検下独立中央判定(BICR)により画像診断に基づく進行が確認された時点でLu-PSMA-617へのクロスオーバーを可とした。 主要評価項目は、BICRによるPCWG3-modified38 RECIST v1.1に基づくrPFSで、ITT解析集団において評価された。主な副次評価項目は、OS、安全性などであった。ARPI変更と比較してLu-PSMA-617でrPFSが有意に延長 2021年6月15日~2022年10月7日に、585例がスクリーニングを受け、このうち適格基準を満たした468例が、Lu-PSMA-617群(234例)またはARPI変更群(234例)に無作為に割り付けられた。ベースラインの患者背景は両群でほぼ同様であった。ARPI変更群のうち、134例(57%)がクロスオーバーされLu-PSMA-617の投与を受けた。 主要解析(第1回データカットオフ、追跡期間中央値7.26ヵ月[四分位範囲[IQR]:3.38~10.55])において、rPFS中央値はLu-PSMA-617群9.30ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.77~推定不能)、ARPI変更群5.55ヵ月(4.04~5.95)、ハザード比(HR)は0.41(95%CI:0.29~0.56、p<0.0001)であった。 第3回中間解析(第3回データカットオフ、追跡期間中央値24.11ヵ月[IQR:20.24~27.40])では、rPFS中央値はLu-PSMA-617群11.60ヵ月(95%CI:9.30~14.19)、ARPI変更群5.59ヵ月(4.21~5.95)、HRは0.49(95%CI:0.39~0.61)であった。 安全性については、Grade3以上の有害事象の発現率はLu-PSMA-617群36%(81/227例)、ARPI変更群48%(112/232例)であり、Lu-PSMA-617群で低かった。Grade5(死亡に至った有害事象)はLu-PSMA-617群4例(2%、いずれも治療に関連なしと判定)、ARPI変更群5例(2%、うち1例が治療に関連ありと判定)に認められた。

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糞便中ヘリコバクター・ピロリ抗原検査、胃がん予防に有効か/JAMA

 国立台湾大学のYi-Chia Lee氏らは、糞便中ヘリコバクター・ピロリ抗原検査(HPSA)の勧奨が胃がんの罹患率および死亡率に与える影響を評価する目的でプラグマティックな無作為化臨床試験を行い、免疫学的便潜血検査(FIT)単独との比較において、HPSA+FITの勧奨は胃がんの罹患率や死亡率を低減しなかったことを報告した。ただし、検査への参加率と追跡期間の違いを考慮すると、HSPA+FIT群ではFIT単独群と比較し、胃がん死亡率に差はなかったが、罹患率低下との関連が示されたという。これまでHPSAが胃がんの罹患率と死亡率に及ぼす影響は不明であった。JAMA誌オンライン版2024年9月30日号掲載の報告。HPSA+FIT vs.FIT単独、胃がんの罹患率と死亡率を比較 研究グループは、2014年1月1日~2018年9月27日に、台湾の彰化県に在住し、大腸がん検診プログラム(2年ごとのFIT)の対象となる50~69歳の住民26万9,870例から24万例を無作為に抽出し、HPSA+FIT群またはFIT単独群に1対1の割合で無作為に割り付け、各検査への参加を募った(最終追跡調査は2020年12月31日)。 HPSA+FIT群でHPSAの結果が陽性の場合は、標準的な10日間の除菌療法(1~5日目:エソメプラゾール[40mg]1日1回+アモキシシリン[1g]1日2回、6~10日目:エソメプラゾール[40mg]1日1回+クラリスロマイシン[500mg]1日2回+メトロニダゾール[500mg]1日2回)を行い、終了後6~8週時のHPSAでも陽性だった場合は、さらに10日間の3剤併用療法(エソメプラゾール[40mg]1日1回+アモキシシリン[1g]1日2回+レボフロキサシン[500mg]1日1回)を行った。 主要アウトカムは、胃がんの罹患率および死亡率、副次アウトカムは大腸がんの罹患率および死亡率とし、ポアソン回帰モデルを用いて群間差を解析した。胃がんの罹患率と死亡率に有意差なし 無作為に抽出した24万例(平均年齢58.1歳[SD 5.6]、女性46.8%)のうち、3万8,792例は電話による連絡が取れず、4万8,705例には必要例数に達したため電話招待を行わなかった。参加率(電話による連絡が取れ招待された人のうち検査を受けた人の割合)は、HPSA+FIT群で49.6%(3万1,497/6万3,508例)、FIT単独群で35.7%(3万1,777/8万8,995例)であった。 HPSAを受けた3万1,497例中1万2,142例(38.5%)が陽性で、このうち8,664例(71.4%)が治療を完了し、91.9%で除菌が達成された。 胃がん罹患率(/100人年)は、HPSA+FIT群0.032%、FIT単独群0.037%、平均群間差は-0.005%(95%信頼区間[CI]:-0.013~0.003、p=0.23)、胃がん死亡率はそれぞれ0.015%と0.013%で、平均群間差は0.002%(95%CI:-0.004~0.007、p=0.57)であった。 事後解析において、検査への参加率、追跡期間、患者背景を補正後、HPSA+FIT群ではFIT単独群と比較し、胃がん罹患率の低下と関連していたが(補正後相対リスク[RR]:0.79、95%CI:0.63~0.98)、胃がん死亡率に差はなかった(1.02、0.73~1.40)。 抗菌薬を投与された参加者における主な副作用は、腹痛または下痢(2.1%)、消化不良または食欲不振(0.8%)であった。 なお、著者は研究の限界として、参加率が41.5%であったこと、HPSAの結果が陽性の参加者のうち治療を受けたのは71.4%であったこと、追跡期間が相対的に短かったことなどを挙げている。

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ウイルスを寄せ付けない鼻スプレーを開発

 薬剤を含まない鼻スプレーが、理論的には、マスク着用よりもインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどの呼吸器系病原体の拡散を防ぐのに効果的である可能性を示唆する研究が報告された。このスプレーに含まれている医学的に不活性な成分が、人に感染する前に鼻の中の病原体を捕らえるのだという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院麻酔科のNitin Joshi氏らによるこの研究結果は、「Advanced Materials」に9月24日掲載された。 論文の責任著者の一人である、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJeffrey Karp氏は、「新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、呼吸器系病原体が非常に短期間で、人類に極めて大きな影響を与えることをわれわれに示した。その脅威は、今も続いている」と話す。 ほとんどの病原体は、鼻から人体に入り込む。インフルエンザウイルスや新型コロナウイルス感染者が吐き出す病原体を含んだ小さな飛沫を健康な人が吸い込むと、病原体が鼻腔内に付着して細胞に感染するのだ。こうした病原体に対する対抗手段の一つはワクチン接種だが、完璧ではなく、接種した人でも感染して病原体を伝播させ得る。また、マスク着用も有効な手段ではあるが、やはり完璧ではない。 今回、研究グループが開発した鼻スプレーは、Pathogen Capture and Neutralizing Spray(PCANS、病原体補足・中和スプレー)と名付けられたもの。スプレーに使用されている成分は、米食品医薬品局(FDA)の不活性成分データベース(IID)に登録されている、承認済みの点鼻薬用の化合物か、FDAによりGRAS(食品添加物に対してFDAが与える安全基準合格証)確認物質に分類されている化合物(ゲランガム、ペクチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC〕、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩〔CMC〕、カーボポール、キサンタンガム)であるという。Joshi氏は、「われわれは、これらの化合物を使って、3つの方法で病原体をブロックする、有効成分に薬剤を含まない製剤を開発した。PCANSは、呼吸器からの飛沫を捕らえて病原体を固定し、効果的に中和して感染を防ぐゲル状のマトリックスを形成する」と語る。 研究グループは、3Dプリントされた人間の鼻のレプリカを用いた実験を行い、このスプレーの効果をテストした。その結果、このスプレーにより、鼻腔内粘液と比べて2倍の量の飛沫を捕らえることができることが示された。論文の筆頭著者で同大学麻酔科のJohn Joseph氏は、「PCANSは鼻腔内で粘液と混ざることでゲル化し、機械的強度を100倍まで高めて強固なバリアを形成する。インフルエンザウイルス、新型コロナウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、肺炎桿菌など、われわれがテストした全ての病原体の100%近くをブロックし、中和した」と成果について語っている。 また、マウスを使った実験では、このスプレーを1回投与するだけで、致死量の25倍のインフルエンザウイルスの感染を効果的に阻止できることも示された。ウイルスがマウスの肺に侵入することはなく、炎症などの免疫反応も認められなかったという。 論文の共著者である、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のYohannes Tesfaigzi氏は、「マウスモデルを用いた厳密に計画された研究で、PCANSによる予防的治療は非常に優れた有効性を示し、治療を受けたマウスは完全に保護されたが、未治療のマウスではそのような効果は認められなかった」と述べている。 研究グループは、「今後は、人間を対象にした臨床試験でこのスプレーの効果をテストする必要がある」との考えを示している。また、このスプレーによりアレルゲンを効果的にブロックできるのかどうかについても調査中であるという。

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手術なしで白内障の治療が可能に?

 ラットと冬眠するタイプのリスを用いた研究で、白内障を改善する可能性のあるタンパク質を見つけたと、米国立眼研究所(NEI)網膜神経生理学部門のWei Li氏らが報告した。動物実験の結果が人間でも再現されるとは限らないが、「RNF114」と呼ばれるこのタンパク質が同定されたことで、手術なしで白内障を治療できる可能性が出てきたとLi氏らは話している。研究結果は、「The Journal of Clinical Investigation」9月17日号に掲載された。Li氏は、「この白内障の可逆的な現象の分子ドライバーについての理解は、われわれに治療戦略の方向性を指し示すことになるかもしれない」と言う。 白内障は目の水晶体(光を屈折させて焦点を網膜に合わせる役割を持つ)に濁りが生じる状態を指す。NEIのニュースリリースでは、白内障は加齢とともに、「水晶体中で、変性により折り畳みに異常が生じたタンパク質が凝集してクラスターを形成し、それが水晶体を通過する光を遮って散乱させ、歪ませるようになる」ことで形成されると説明している。つまり、健康な視機能を保つためには、このようなタンパク質の折り畳みや分解を正確に制御するタンパク質の恒常性(プロテオスタシス)を維持する必要があるということだ。白内障は高齢になるほど発生頻度が高まる。その理由は明確にはなっていないが、加齢によって眼球内のプロテオスタシスが低下するためと考えられている。 一方、米国の中央部に住んでいる人なら、おそらくジュウサンセンジリスを見たことがあるはずだ。研究グループによると、ジュウサンセンジリスは、網膜に存在する光を受容する視細胞のほとんどが、色覚との関わりが強い錐体で構成されていることから、色覚に関する研究に適したモデルとされているという。また、このリスは、長く厳しい冬眠にも耐えることができる頑丈な体を持つことから、眼疾患の研究モデルとしてもよく使われているという。 Li氏らは、ジュウサンセンジリスの目の水晶体が華氏39度(摂氏3.9度)前後になると、白内障のサインである白濁状態になり、暖かくなると、この状態が逆転して再び透明になることを見出した。一方、別の生物である実験用ラットも、同じ低温環境で白内障を発症したが、気温が上がっても白内障が治ることはなかった。 そこでLi氏らは、ジュウサンセンジリスの細胞から作成した幹細胞を用いて人工水晶体モデルを作成し、水晶体のタンパク質凝集を防ぐ仕組みを探った。その結果、タンパク質の分解を制御するE3ユビキチンリガーゼであるRNF114が同定され、再加温中に眼内のRNF114が、冬眠をしないラットと比べて有意に増加することが確認された。さらに、冬眠をしないラットを用いた白内障の水晶体モデルを4℃で培養し、再加温しても白内障が消失しないことを確認した上で、RNF114で前処理した水晶体を再加温すると、白内障が消失することも確認された。 以上の結果は、RNF114がタンパク質凝集回避に深く関与していることを示すとともに、ジュウサンセンジリス以外の哺乳類でも、白内障の発症後にRNF114を増量投与することが有益である可能性を強く示している。そのような哺乳類には人間も含まれていると、Li氏らは考えている。 現時点で白内障の唯一の治療選択肢は手術であり、米国では年間に約400万件もの白内障手術が行われている。そのため、眼科研究の領域では長い間、手術以外のアプローチが究極の目標となってきた。 論文の上席著者である、浙江大学(中国)のXingchao Shentu氏は、「白内障手術は有効だが、リスクがないわけではない。科学者たちは白内障手術に代わる治療法を長年にわたって探してきた。世界の一部の地域では白内障手術へのアクセスが不十分であることが治療の障壁となっており、世界的に未治療の白内障が失明の主な要因となっている」と指摘している。

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高血圧、脂質異常症、糖尿病で服薬遵守率が高い疾患は?

 高血圧、脂質異常症および糖尿病患者の服薬遵守率を、同一対象内で比較した結果が報告された。慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室の松元美奈子氏、武林亨氏らの研究によるもので、詳細は「Pharmacoepidemiology and Drug Safety」に8月15日掲載された。服薬非遵守の関連因子が、疾患ごとに異なることも明らかにされている。 過去にも服薬遵守率に関する研究報告は少なくない。しかし、異なる診療環境で治療を受けている多数の患者集団を対象として、複数の疾患治療薬の服薬遵守率を比較検討した研究は限られている。これを背景として松元氏らは、山形県鶴岡市で進行中の鶴岡メタボロームコホート研究(TMCS)のデータを医療請求データにリンクさせて、心血管疾患の主要リスク因子である、高血圧、脂質異常症、糖尿病の患者の服薬遵守状況に関する検討を行った。 TMCSは2012~2014年度に、35~74歳の鶴岡市内の住民コホートおよび被雇用者コホート、計1万1,002人が参加登録し、非感染性疾患のリスクに関する追跡調査が続けられている。なお、同市に居住している当該年齢人口の89%がTMCSの住民コホートに参加している。 今回の研究では、TMCS住民コホートのうち、2016~2019年度の追跡調査に参加し、データ欠落のない7,538人から、前記3疾患いずれかの治療薬が処方され継続的に受診していた3,693人を解析対象とした。そのうち男性が47.5%で、65歳以上の高齢者が80.9%であり、BMI25以上の肥満が36.5%、高血圧が73.2%、脂質異常症が57.2%、糖尿病が17.9%だった。また、自記式質問票に含まれていた既往症を問う質問に対して、処方薬に一致した病名が正しく回答されていた場合を「服薬理解度良好」と判定したところ、87.4%がこれに該当した。 服薬遵守率は、追跡開始から1年以内の処方日数カバー比率(PDC)で評価した。PDCは、ある期間において患者が処方薬を受け取った日数の比率であり、1(100%)であれば患者は飲み忘れることなく服用を続けていると推測される。心血管疾患リスク因子の管理において、PDC0.8以上をアドヒアランス良好の目安とすることが多いため、本研究でも0.8以上/未満で遵守/非遵守と二分した。なお、服薬の中断が連続180日以上の場合は「休薬」と判断した。ただしその該当者は51人とわずかだった。 解析の結果、併存疾患がない患者では、高血圧のみの場合の服薬遵守率が90.2%で最も高く、次いで糖尿病のみが81.2%、脂質異常症のみが80.8%であり、高血圧のみの患者と脂質異常症のみの患者の服薬遵守率に有意差が認められた。併存疾患のある患者における服薬遵守率は86.7~89.0%の範囲で有意差は見られず、一部の組み合わせの遵守率は脂質異常症のみの患者よりも有意に高かった。 次に、多変量解析により、性別、高齢(65歳以上)、自記式質問票で把握した生活習慣や服薬理解度などを説明変数とした上で、3疾患それぞれの服薬非遵守に独立して関連する因子を検討したところ、以下の結果が得られた。 まず、高血圧については、朝食欠食が非遵守の正の関連因子であり(調整オッズ比〔aOR〕1.90〔95%信頼区間1.13~3.21〕)、服薬理解度良好は負の関連因子であった(aOR0.48〔同0.26~0.89〕)。脂質異常症については、男性(aOR0.71〔0.52~0.97〕)、併存疾患あり(aOR0.64〔0.49~0.82〕)、心疾患の既往(aOR0.51〔0.33~0.79〕)という三つが、全て負の関連因子として抽出された。糖尿病については、睡眠の質が良くないこと(aOR2.06〔1.02~4.16〕)と朝食欠食(aOR2.89〔1.19~7.00〕)の二つが、いずれも正の関連因子だった。喫煙・飲酒・運動習慣、教育歴、行動変容ステージ、摂食速度、夕食の時間帯などは、いずれの治療薬の非遵守とも独立した関連はなかった。 著者らは、本研究では被雇用者コホートの医療費請求データを利用できなかったため、解析対象が高齢者の多い住民コホートのみであったことなどを研究の限界点として挙げた上で、「高血圧、脂質異常症、糖尿病に対する治療薬は、全体として高い服薬遵守率が示されたが、治療状況による違いも認められた。また、非遵守に関連する因子は、疾患によって異なった。これらの知見は、服薬アドヒアランスを高めるサポートに生かせるのではないか」と結論付けている。 なお、朝食欠食が高血圧と糖尿病における服薬非遵守の関連因子であったことについて、「欠食習慣のある患者では『朝食後に服用』と指示すると遵守率が低下する懸念がある。低血糖を来し得る薬剤を除き、『食事を食べない朝も服用してよい』と伝えることが推奨される」といった考察が述べられている。

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切除可能な胃がんに対する術前化学放射線療法の有用性は?(解説:上村直実氏)

 日本における胃がん治療は、遠隔臓器やリンパ節への転移がなく、がんの深達度が粘膜層までの場合は内視鏡治療が適応であり、がんが粘膜下層以深に達しているときは通常、外科治療が選択され、手術後の病理組織学的検査の結果で必要に応じて薬物療法が追加されるのが一般的である。なお、術前検査で遠隔臓器への転移がある場合などの切除不能がんには化学療法などの治療法が検討される(日本胃学会編『胃治療ガイドライン 2021年7月改訂 第6版』)。 一方、欧米諸国における胃がん診療は、わが国と大きく異なっている。医療保険制度の違いから内視鏡検査の適応がまったく異なることから内視鏡的切除が可能な早期胃がんの発見は稀であり、胃がんといえば進行がんが大半を占めている。周術期化学療法や放射線療法に対する考え方も大きく異なっており、わが国のガイドラインでは推奨されていない切除可能な胃がんに対する術前化学療法が、欧米諸国では標準治療となっている。さらに術前・術後の放射線療法に関しては日本では話題にも上がらない治療方針であるが、北米では食道がんと同様に術後化学放射線療法が胃がんの標準治療となっている。さらに今回は、手術可能な食道胃接合部腺がんを含む胃がんに対する術前化学放射線療法の有用性を検討した欧米10ヵ国の国際共同試験の結果が2024年9月のNEJM誌で報告された。 試験の結果、周術期化学療法に術前化学放射線療法を追加した場合、術後の病理組織学的検査による病理学的完全奏効率は有意に高率であったにもかかわらず、全生存期間および無増悪生存期間は改善せず、切除可能な食道胃接合部がんを含む胃がんの術前・術後の管理における放射線療法の役割は否定的であると考察されている。 日本の消化器内科医や外科医にとっては、放射線治療による直接的な局所効果による術後の病理組織学的改善率が高い結果は当然と思われる。筆者らが「現時点では、切除可能な胃・食道胃接合部がんの術前・術後の管理における放射線療法の役割はほとんどないが、今後、事後解析で術前化学放射線療法が有効な患者サブグループを特定できれば、将来の臨床試験のデザインに役立つと考えられる」とコメントしている点を考慮すると、この日本と欧米の胃がん診療に対する考え方の違いを理解し熟知しておくことは、国際会議の場において海外の研究者と討論する際に重要と思われる。

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ニッポン大活躍!【Dr. 中島の 新・徒然草】(551)

五百五十一の段 ニッポン大活躍!風の中にもほのかに金木犀の香りが漂う今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。最近の画期的なニュースとして、カザフスタンで行われた第27回アジア卓球選手権での日本選手の大活躍があります。実に、全7種目のうちの3種目で金メダルを獲りました。中学から大学までずっと卓球をやっていた私としては嬉しい限り。ちなみに他国の金メダルは、中国が2種目、韓国が1種目、北朝鮮が1種目です。前回の第26回大会では全7種目で優勝した絶対王者の中国の金メダルが、今回は2種目だけだったのも驚きました。優勝こそなかったものの、インドや開催国のカザフスタンも活躍しており、新しい時代が来つつあるのかもしれません。その昔、残念なことに卓球は暗いスポーツの代表だとされていました。が、今や国際大会の華やかな演出は驚くばかり。そういった場面をYouTubeで見ることができるのは、隔世の感があります。思い起こせば、各種メディアが未発達だった1980年代。世界卓球選手権のテレビ放映すら滅多に行われておらず。外国選手のプレーを見る機会はほぼありませんでした。そんな中、来日したハンガリーチームを生で見たときの衝撃は今も忘れられません。日本チームとの対戦は、まるでフェンシングと剣道が戦っているみたいでした。今はどの選手も似たような戦い方になっているのは、情報が行き渡っているせいでしょう。さて、読者の皆さまは、患者さんに適度な運動の効能を説くことも多いかと思います。手軽にできるウォーキングや、足腰に負担のかからない水泳などが、オーソドックスなところではないでしょうか。さらに健康に良いスポーツとなると、私は自分がやっていた卓球をお勧めしています。お勧めするというよりは、励ますといった感じですね。患者「先生、最近お友達に誘われて卓球を始めたのよ」中島「それはいいですね。卓球は頭も身体も使うから、老化予防にピッタリですよ」患者「じゃあ続けてみようかしら」高齢者にとっての卓球のメリットはいろいろあります。コンタクトスポーツではないので、けがをしにくい屋内スポーツゆえ危険性が少なく、天候にも左右されない初心者でもできる、年を取ってもできるラケットやピンポン球などの用具が安いゲーム性が強いので、没頭できて飽きない意外に運動量が多く、すぐに汗がびっしょり瞬間的な判断を必要とするため頭を使う逆にデメリットというと、コロナ禍の時の三密くらいですね。患者さんに卓球の効能を説いている私ですが、考えてみれば長いことラケットを握っていません。任天堂ゲームの「Wii Sports Resort ピンポン」すら、前回やったのは何年前かというレベル。自分でも何かやってみる必要がありそうです。ということで最後に1句球追えば 香りに気づく 金木犀

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