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単剤療法を開始する統合失調症患者のケアパターンと経口抗精神病薬切り替えコスト

 統合失調症において抗精神病薬は主要な治療法であるが、治療目標の達成や副作用を最小限にするため、疾患経過に伴って薬剤を変更する必要がある。実臨床における治療パターンや、切り替えを含む抗精神病薬の変更に関連する経済的な影響について、評価した研究は限られている。米国・OptumのRebecca Fee氏らは、経口抗精神病薬(OAM)の単剤療法を開始した統合失調症患者の治療パターンを調査し、抗精神病薬の切り替えに関連する医療資源利用およびコストを評価した。Journal of Managed Care & Specialty Pharmacy誌オンライン版2024年4月9日号の報告。 米国のメディケア・アドバンテージおよび民間医療保険に加入していて、2015~21年6月にOAMの単剤療法を開始(または6ヵ月以上経過した後に再開)した統合失調症患者(2件以上の請求データを有する成人患者)を対象とした。治療の時機および間隔を用いた請求データに基づくアルゴリズムにより、最長7年間にわたるOAM単剤療法開始患者の投与変更、とくに単剤療法の切り替えを特定した。最初のOAM単剤療法から次のOAM単剤療法へ切り替えた患者(切り替え群)を、臨床的および人口統計学的特徴に基づき、切り替えを行っていないOAM単剤療法開始患者(非切り替え群)とマッチさせた。切り替えに関連する医療資源利用および最初の切り替えの前後3ヵ月に発生したコストを、両群で比較した。 主な結果は以下のとおり。・OAM単剤療法を開始した患者6,425例中1,505例(23.4%)は、フォローアップ期間中に少なくとも1回、他のOAM単剤療法切り替えを経験していた。・最初の切り替えまでの平均時間は209±333日(中央値:67日)であり、フォローアップの人年当たりの切り替え率は0.65、最初の切り替えの56%はOAM開始から3ヵ月以内に行われていた。・OAM単剤療法を開始した患者のうち947例(14.7%)は、最初のOAM単剤療法切り替え患者あった。傾向スコアマッチング後、最初の切り替え群865例と非切り替え群865例がマッチされた。・非切り替え群と比較し、最初の切り替え群は、すべての原因による受診の平均回数、統合失調症関連の緊急受診および入院の平均回数が多く、1ヵ月当たりの入院日数は長かった。・統合失調症関連の平均コストは、患者1人当たり、切り替え群で1,252±2,602ドル、非切り替え群で402±2,027ドルであった(p<0.001)。 著者らは「OAM単剤療法を開始した統合失調症患者の約4分の1は最初のOAMの変更を行っており、その多くは最初のOAM切り替えから3ヵ月以内であった。また、切り替えを行った患者は、行わなかった患者と比較し、医療資源利用およびコストの増加が認められた」とまとめ、「本結果は、症状コントロールを効果的に維持し、忍容性のリスクを最小限にするOAM単剤療法を開始する重要性を強調するものであり、これによりOAM切り替えの必要性を最小限とし、過剰な医療資源の利用およびコストを削減することが可能である」としている。

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HPVワクチン接種プログラムの効果、社会経済的格差で異なるか?/BMJ

 以前の検討によってイングランドで観察されたヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種プログラムの高い予防効果は、その後12ヵ月間の追跡調査においても継続しており、とくにワクチンの定期接種を受けた女性では、社会経済的剥奪の程度5つの段階のすべてで子宮頸がんとグレード3の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN3)の発生率が大きく低下したが、剥奪の程度が最も高い地域の女性では低下の割合が最も低い状態にあることがわかった。一方で、子宮頸がんの罹患率は、ワクチン接種女性において、未接種の女性でみられる社会経済的剥奪の程度による勾配はみられなかったことが、英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のMilena Falcaro氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年5月15日号に掲載された。イングランド居住女性の観察研究 本研究は、2006年1月1日~2020年6月30日にイングランドに居住した20~64歳の女性を解析の対象とした住民ベースの観察研究である(Cancer Research UKの助成を受けた)。 イングランドでは、2008年にHPVワクチン接種が導入され、12~13歳の女児に定期接種が行われた。また、2008~10年には、より年長で19歳未満の集団を対象に接種の遅れを取り戻すためのキャッチアップ・キャンペーンが展開された。 2006年1月1日~2020年6月30日に、2万9,968例が子宮頸がんの診断を、33万5,228例がCIN3の診断を受けた。追加追跡期間の相対リスク減少率:子宮頸がん83.9%、CIN3は94.3% 12~13歳時にHPVワクチンの定期接種を受けた集団では、追加された12ヵ月間の追跡調査(2019年7月1日~2020年6月30日)における子宮頸がんおよびCIN3の補正後年齢調整罹患率に関して、ワクチン接種を受けなかった集団と比較した相対リスク減少率が、子宮頸がんで83.9%(95%信頼区間[CI]:63.8~92.8)、CIN3で94.3%(92.6~95.7)と大幅に低下していた。 また、2020年の半ばまでに、HPVワクチン接種により、687例(95%CI:556~819)の子宮頸がんと2万3,192例(2万2,163~2万4,220)のCIN3を予防したと推定された。 社会経済的剥奪の程度が最も強い地域に居住する女性では、ワクチン接種後の子宮頸がんおよびCIN3の割合は最も高いままであったが、剥奪の5段階すべてでこれらの割合は大幅に低下していた。健康格差の縮小をもたらす可能性も キャッチアップ・キャンペーンでワクチン接種を受けた女性のCIN3予防率は、社会経済的剥奪の程度が最も弱い地域に比べ最も強い地域で低く、16~18歳時に接種した女性では40.6%に対し29.6%、14~16歳時に接種した女性では72.8%に対し67.7%であった。 また、ワクチン接種を受けていない女性における子宮頸がんの罹患率には、社会経済的剥奪の程度が強い地域から弱い地域へと下方に向かう急峻な勾配を認めたのに対し、ワクチン接種を受けた女性では、もはやこのような勾配はみられなかった。 著者は、「本研究の知見は、十分に計画を立てて実行された公衆衛生介入は、健康状態を改善するだけでなく、健康格差の縮小ももたらす可能性があることを示している」としている。

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日本人結節性痒疹、ステロイド外用薬使用下のネモリズマブの有用性は?

 日本人の結節性痒疹患者におけるネモリズマブの長期投与の最適用量、有効性、安全性を評価した国内第II/III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果が報告された。本試験では、試験開始前のステロイド外用薬の継続下においてネモリズマブ30mg、60mgの有用性をプラセボと比較した。その結果、ネモリズマブ群で結節性痒疹のそう痒や皮膚症状の改善が認められた。東京医科歯科大学皮膚科の横関 博雄氏らNemolizumab-JP11 Study GroupがBritish Journal of Dermatology誌オンライン版2024年4月17日号で報告した。 本試験は、高用量ステロイド外用薬による治療を実施したにもかかわらず、中等度以上のそう痒(かゆみスコア3以上かつPeak Pruritus Numerical Rating Scale[PP-NRS]7以上)を有する13歳以上の日本人結節性痒疹患者を対象とした。対象患者を、ネモリズマブ30mg群(初回投与のみ60mg)、同60mg群(本邦承認外用量)またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、4週間ごとに16週間投与した。対象患者はいずれもステロイド外用薬を併用した。 有効性の主要評価項目は、投与開始16週後のPP-NRS週平均の変化率。有効性の副次評価項目は、そう痒、結節性痒疹の重症度、睡眠、QOLなどであった。なお、本試験は2020年12月に開始され、データ解析は2022年5月に行われた。16週の治療完了後、適格患者は52週の長期試験に組み込まれ追跡された。 主な結果は以下のとおり。・230例が対象となり、ネモリズマブ30mg群に77例、同60mg群に76例、プラセボ群に77例が割り付けられた。・投与開始16週後のベースラインからのPP-NRS週平均の変化率(最小二乗平均値)は、ネモリズマブ30mg群-61.1%、同60mg群-56.0%、プラセボ群-18.6%であった。・ネモリズマブ群とプラセボ群のPP-NRS週平均の変化率の群間差は、30mg併用群が-42.5%(95%信頼区間[CI]:-51.9~-33.1、p<0.0001)、60mg併用群が-37.4%(-46.7~-28.1、p<0.0001)であり、いずれも統計学的に有意な差が認められた。・ネモリズマブ群は、プラセボ群と比較して、結節性痒疹の重症度、睡眠、QOLの改善が大きかった。・ネモリズマブの忍容性は、両用量群とも良好であった。

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PPIとH2ブロッカーで頭痛リスク上昇か

 胸焼けを抑えるための薬を服用している人は、服用していない人に比べて片頭痛やその他の重度の頭痛のリスクが高い可能性のあることが、新たな研究で示唆された。このようなリスク上昇は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)、制酸薬など、検討した全ての種類の胃酸分泌抑制薬で認められたという。米メリーランド大学栄養学・食品科学部門のMargaret Slavin氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に4月24日掲載された。 Slavin氏は、「胃酸分泌抑制薬は幅広い用途で使用されている。この薬剤と片頭痛や重度の頭痛との潜在的な関連を考慮すると、今回の研究結果はさらなる調査実施の必要性を示したものだと言えるだろう」と述べる。同氏はさらに、「胃酸分泌抑制薬に関しては、しばしば過剰処方が指摘されている。また、PPIの長期使用により認知症リスクなど他のリスクが上昇する可能性を示唆する新たな研究結果も報告されている」と付け加えている。 胃酸が食道まで逆流する胃酸逆流は、食後や横になっているときに起こり、胸焼けや胃潰瘍を引き起こす。頻回な胃酸逆流は胃食道逆流症(GERD)の原因となり、それが食道がんにつながることもある。今回、Slavin氏らは、胃酸分泌抑制薬(PPI、H2ブロッカー、制酸薬)を使用している成人患者1万1,818人を対象に、胃酸分泌抑制薬の使用と片頭痛や重度の頭痛との関連を検討した。 胃酸分泌抑制薬使用者と非使用者での片頭痛や重度の頭痛の有病率は、PPIでそれぞれ25%と19%、H2ブロッカーで25%と20%、制酸薬で22%と20%であった。年齢や性別など頭痛に影響を及ぼす因子を調整して解析した結果、胃酸分泌抑制薬の使用者は非使用者に比べて、偏頭痛や重度の頭痛の発症リスクが有意に高いことが明らかになった。リスクは、PPI使用者で70%、H2ブロッカー使用者で40%、制酸薬使用者で30%の増加であった。 このような結果が示されたものの、Slavin氏は、この研究で対象としたのは処方薬のみであり、処方薬よりも薬効が低い傾向にある市販薬は対象としていない点を強調。その上で、「医師に相談することなく使用中の胃酸分泌抑制薬の服用を中止すべきではない」と主張している。同氏は、「胃酸の逆流とそれに付随する症状を抑えるために胃酸分泌抑制薬を必要とする人は数多く存在する。胃酸分泌抑制薬やサプリメントを使用していて、片頭痛や重度の頭痛に悩まされている人は、薬の服用を続けるべきかどうかを医師と相談する必要がある」と「Neurology」誌のニュースリリースの中で述べている。

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喫煙歴があっても食習慣次第で肺気腫リスクが低下

 現喫煙者や元喫煙者など、肺気腫のリスクが高い人であっても、植物性食品中心の食習慣によって、その罹患リスクが抑制される可能性を示唆するデータが報告された。米ネブラスカ大学医療センターのMariah Jackson氏らの研究によるもので、詳細は「Chronic Obstructive Pulmonary Diseases : Journal of the COPD Foundation」3月発行号に掲載された。 肺気腫は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の一種で、血液中の二酸化炭素と酸素の交換が行われる肺胞の構造が破壊されて、呼吸機能が不可逆的に低下する病気。原因は主に喫煙であり、肺気腫の進行抑制には禁煙が必須だが、禁煙治療の成功率は高いとは言えない。一方で、植物性食品中心の食習慣が、呼吸器疾患の病状に対して潜在的な保護効果をもたらす可能性が報告されている。Jackson氏らはこのような背景の下、食習慣と肺気腫リスクの関連の有無を検討した。 この研究は、若年成人の冠動脈疾患リスクを探索する目的で実施された、米国での多施設共同前向きコホート研究(CARDIA研究)のデータを用いた二次分析として行われた。CARDIA研究の参加者は18~30歳で、30年間追跡されている。研究参加者5,515人から、追跡開始後20年目までに、自己申告に基づく喫煙習慣(現喫煙または元喫煙)が確認されなかった人や、食習慣に関する調査に回答していなかった人などを除外し、1,351人(平均年齢25.5±3.5歳、女性58.4%)を解析対象とした。 追跡開始25年目に行ったCT検査で、175人(13.0%)に肺気腫が確認された。食習慣の質を評価するスコア(APDQS)の五分位に基づき、植物性食品中心の食習慣らしさで全体を5群に分類して肺気腫の罹患者率を比較すると、スコアの第5五分位群(最も植物性食品中心の食習慣である上位20%)は4.5%であるのに対して、第1五分位群(最も植物性食品中心の食習慣でない下位20%)は25.4%だった。 肺気腫の罹患リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種、BMI、累積喫煙量、摂取エネルギー量、教育歴など)を調整後、第5五分位群は第1五分位群に比べて肺気腫罹患のオッズ比(OR)が56%低かった〔OR0.44(95%信頼区間0.19~0.99)、傾向性P=0.008〕。また、APDQSスコアが1標準偏差高いごとにオッズ比は34%低下していた。つまり、食事に占める野菜や果物の割合が高いほど、肺気腫のリスクは低かった。 Jackson氏は、「われわれの研究結果は、食習慣と喘息の罹患リスクとの関連を示した先行研究の結果と一致している。喫煙歴のある人の慢性肺疾患リスクを抑制しようとする場合、食事などの修正可能な因子が極めて重要なポイントとなる」と話している。また同氏は、「食習慣を健康的なものに改善することが、慢性肺疾患に罹患しながらも禁煙が困難な状況にある人の一助となるのではないか。さらなる研究が必要ではあるが、将来的には公衆衛生関連のガイドラインなどで、特に子どもや若年者に対する食事の推奨事項として、これらの情報を提供できる可能性がある」と付け加えている。

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小児期の運動不足が若年成人期の心肥大と関連

 子どもの頃の運動量と若年成人期の心臓の大きさとの間に有意な関連があり、運動不足だった子どもは成人後に心肥大が見られるとする研究結果が報告された。東フィンランド大学のAndrew Agbaje氏の研究によるもので、詳細は「European Journal of Preventive Cardiology」に5月7日掲載された。 心肥大とは心臓のサイズや重量が過度に増大した状態であり、成人の心肥大は心血管疾患や早期死亡といったイベントのリスクを高める。小児期にはそのようなイベントの発生は少ないものの、心肥大自体は後年のリスク上昇につながる可能性がある。一方、成人では適度な運動が心血管の健康増進に役立つことが広く認識されている。しかし、小児期の運動習慣が心臓の形態に与える影響についてはよく分かっていない。これらを背景としてAgbaje氏は、子どもの運動習慣が、その後の心臓の形態や機能に及ぼす影響について、縦断的に検討した。 この研究は、英国の子どもとその親を対象に行われている出生コホート研究(ALSPAC)のデータを用いた二次分析として行われた。平均年齢11.75±0.24歳の子ども1,682人(女児62.7%)を約13年間にわたって追跡。日常の運動量は、11歳、15歳、24歳の時点で加速度計を4~7日間、身に着けて生活してもらい把握した。心臓の形態と機能については、17歳、24歳の時点で行った心エコー検査により、左室心筋重量係数(LVMI)や左室拡張能などを評価した。 研究参加者全体の座位行動時間を平均すると、ベースライン(11歳時点)が6時間だったものが、24歳時点では9時間となり、13年間で3時間増加していた。またLVMIは、17歳から24歳の7年間で平均3g/m2.7上昇していた。 運動量とLVMIの変化との関連性を解析した結果、小児期からの座位行動の累積時間の長さは、性別や肥満の有無、血圧レベルにかかわらず、LVMIの上昇幅が最大40%増えることと関連していた。その反対に、小児期からの軽強度運動の累積時間の長さは、LVMIの上昇幅が最大49%減ることと関連していた。また、軽強度運動の累積時間が長いと、左室拡張能などの指標も良好だった。なお、小児期からの中~高強度運動の累積時間が長いことは、LVMIの上昇幅が最大5%増えることと関連していたが、これは運動負荷に伴う生理的な変化と考えられるという。 Agbaje氏は、「子どもの頃の座位行動が成人後の健康上の脅威となるという報告が増えてきており、それらの知見を真剣に受け止める必要がある」と述べている。一方で同氏は、「軽強度運動は座位行動の弊害を打ち消す効果的な手段だ。毎日3~4時間の軽強度運動を続けるということは、それほど困難なことではない」と解説。子ども向きの軽強度運動の具体的な例として、外遊び、犬の世話、おつかい、徒歩または自転車での通学、公園の散歩、ガーデニングなどのほかに、バスケットボール、サッカー、ゴルフ、フリスビーといった競技性の高くないカジュアルなスポーツなどが該当するとのことだ。

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代替エンドポイントの適否は臨床試験でなくても確認できる(解説:折笠秀樹氏)

 評価項目(エンドポイント)には臨床と代替があります。たとえば、高血圧症であれば、臨床は脳心疾患であり、代替は血圧値です。代替である血圧値の低下が立証されれば、新薬の承認を得ることができます。その前提は、血圧値と脳心疾患の間に相関があることです。がんを除く32領域の慢性疾患で使われた37個の代替エンドポイントに対して、臨床エンドポイントとの相関性を調査しました。臨床試験から成るメタアナリシスで確かめられたのは、15個(41%)だけでした。残りの22個(59%)では、そうしたメタアナリシスはなかったようです。よく眺めると、メタアナリシスがないのは希少疾患が多そうでした。 続いて、メタアナリシスがあった15個の代替エンドポイントを調べました。54報のメタアナリシスがあり、109件の臨床試験が含まれていました。両者の相関性を報告していたのは59件(54%)ありましたが、強い相関性を示していたのは10件(17%)にすぎませんでした。このことから、相関性のエビデンスがないのに代替エンドポイントで承認されているのが現実だという報告でした。 この研究の最大の限界は、臨床試験しか調べていないことだと思います。両者の相関性は、疫学研究で確認している例がほとんどだと思います。私自身も新たな代替エンドポイントを使用する際は、必ず疫学データで裏付けできるようにと言ってきました。縦断的な疫学研究によって、代替エンドポイントの悪化と臨床イベント発現の有意な相関性が見られれば、それは十分強固な証拠になるはずです。臨床試験である必要性はないと思います。 臨床エンドポイントで承認するとなると、大規模かつ長期試験が必須となり、新薬が承認されるまで時間がかかります。そうするとドラッグロスが生じ、患者さんにとって不利益が生じます。希少疾患では、いつになっても承認されることがないかもしれません。そこで、代替エンドポイントによる承認は避けられません。疾患の詳しいメカニズムに関する研究が進み、疾患バイオマーカーの開発も伸びています。代替エンドポイントによる早期の新薬承認は、これから必要性を増してくると思われます。そのために、疾患レジストリーや電子カルテ等のRWDの活用も盛んになることでしょう。

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「高齢者施設の服薬は昼1回に集約」提言のインパクト【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第132回

薬局で働いていると、高齢化を感じる機会は多いのではないでしょうか。2022年10月時点の日本の高齢化率(65歳以上の人口が占める割合)は29%です。約10年前の2011年の高齢化率は18%でしたので、1年で約1%増えているイメージですね。いまの65歳は元気な人が多く、高齢化社会大綱において「65歳以上を一律に“高齢者”と見る一般的な傾向は、現状に照らせばもはや現実的なものではなくなりつつある」とされているとはいえ、今後は高齢者施設のニーズがさらに高まり、それに伴って施設職員の負担は増えると考えられます。そのような中、超高齢社会における対策として、日本老年薬学会が「高齢者施設の服薬簡素化提言」を5月17日に出しました。【提言1】服薬回数を減らすことには多くのメリットがある服薬回数を減らすと、誤薬リスクの低下と医療安全の向上に加えて、入所者/入居者にとっては服薬負担の軽減と服薬アドヒアランスの向上、施設職員にとっては与薬負担の軽減と勤務の平準化が期待できる。【提言2】服薬は昼1回に:昼にまとめられる場合は積極的に検討する施設職員の多い昼の時間帯に服薬を集約することで、さらなるメリットが期待できる。ただし、昼服用に適さない薬剤もあり、また療養場所が変わったときには再度の見直しが必要になるなど制限もある。個人的には、「昼1回にまとめる」という具体的な提案がとてもよいと思います。どんな患者さんでも/どんな薬でもというわけにはいきませんが、単に「服薬回数を減らす」のではなく、マンパワー不足などの現実的な問題から「昼1回にまとめる」と具体的に提案することで、メリットの大きさや取り組みやすさを感じます。この提言の背景として、「施設では職員の勤務シフトを組んで朝昼夕、眠前の配薬・与薬・服薬確認に対応しているが、現状の処方では、他のケアもある中で服薬支援を確実に遂行するには限界がある」という課題が挙げられています。また、近年、薬剤師からもポリファーマシーに対して処方提案を行うことが増えていますが、「ポリファーマシー対策では、処方見直しを行って薬剤の種類が減っても、服薬回数は変わらないことがある」とあり、それには静かにうなずくしかありません。服薬簡素化により、誤薬のリスクを減らし、患者さんご本人や職員の負担軽減が期待されます。しかし、服薬簡素化には患者さんや家族から十分な理解を得て、療養場所が変わった際には再度の見直しが必要とも記載されています。注意することは多々ありますが、服薬簡素化が大きな流れになる可能性もあると期待が高まります。日本老年薬学会は、服薬簡素化を導入するための手順やフローチャートなどをホームページで公開していますので、ぜひ見てみてください。実際に目の前で起きているこれらの問題に着目し、専門家が集まり、仮説を立て、検証し、それを学会の取り組みとして発表していてとても素敵だぁと思うとともに、目の前の患者さんの服薬負担やアドヒアランスを改善するヒントとしてとても参考になります。関連サイト高齢者施設の服薬簡素化提言 第1版

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英語で「膿の切開と排膿」は?【1分★医療英語】第132回

第132回 英語で「膿の切開と排膿」は?《例文》医師To treat the abscess, the best course of action will be the I&D procedure, which stands for Incision and Drainage.(膿瘍を治療するために、最適な処置としてはI&Dです。これは切開排膿という意味です)患者Does the procedure hurt?(その処置は痛いですか?)《解説》今回は“I&D”という略語についての解説です。これは“abscess”(膿瘍)の切開排膿の処置を示す表現です。“Incision(切開)and Drainage(排膿)”という表現を略して、“I&D”と表現します。発音としては「アインディー」という感じです。“and”が文の間に入る際、英語だと「ン」のみしか発音しないので注意です。医療者間であれば、当たり前のように“I&D”という表現が使われます。口語のみでなく、カルテにも“I&D”と記載されることが多くあります。“I&D”のみでも“I&D procedure”でも構いません。ただし、医療に詳しい人でない限り患者さんはこの用語を知りませんので、使う際には《例文》のように、“Incision and drainage procedure”といった補足説明が必要でしょう。私が現場で働いている際にも「Please prepare the stuff forアインディー」といった感じで言われて「???」となった経験があるため、今回紹介させていただきました。この文は「切開排膿に必要なものを準備しておいて」という意味ですね。講師紹介

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高齢者診療の困ったを解決するヒントは「老年医学」にあり!【こんなときどうする?高齢者診療】第1回

今回のテーマは、「なぜ今、老年医学が必要なのか?」です。このような症例に出会ったことはありませんか?85歳女性。自宅独居。糖尿病、高血圧、冠動脈疾患の既往有。呼吸苦を主訴に救急外来を受診。肺炎と診断し入院にて抗菌薬加療。肺炎の治療は適切に行われ呼吸苦症状も改善したが、自力歩行・経口摂取が困難になり自宅への帰宅不可能に。適切な診断と治療をして疾患は治ったにもかかわらず状況が悪化してしまう-高齢者診療でよく遭遇する場面かもしれません。老年医学はこうしたジレンマに向かい合うきっかけを提供し、すべての高齢者に対してQOLの維持・向上を図ること、また同時に心や体のさまざまな症状をコントロールするために体系化された学問です。老年医学の原則とアプローチ(「型」)を実践することで、困難事例に解決の糸口をみつけることができるようになります。老年医学の原則:コモンなことはコモンに起きる-老年症候群と多疾患併存日本における平均寿命と健康寿命はいずれも延伸していますが、平均寿命と健康寿命のギャップは医療の進歩にも関わらず顕著には短縮しておらず、女性で約12年、男性で約7~8年あります。1)この期間に多くの高齢者が抱える問題が2つあります。ひとつは老年症候群。たとえば記憶力の低下や抑うつ、転倒や失禁などの認知・身体機能の低下など、高齢者にコモンに起きる症状・兆候を「老年症候群」と総称します。もうひとつは、多疾患併存(multimorbidity)です。年齢に比例して併存疾患の数が多くなり、60歳以降では約20%が3つ以上の疾患を有しているという調査があります。2)高齢者の治療やケアをする場合、老年症候群と多疾患併存があるという前提で診察やケアにあたることが大切です。老年医学の型:5つのM老年症候群があり、多疾患併存状態にある高齢者の診療は、疾患の診断-治療という線形思考で解決しないことがほとんどです。そこで、複雑な状況を俯瞰するために「5つのM」というフレームを使います。要素は、大切なこと(Matters most)、薬(Medicine)、認知機能・こころ(Mind)、身体機能(Mobility)、複雑性・落としどころ(Multi-complexity)の5つです。今回のケースを5つのMを使って考えてみましょう。ポイントはMatters mostから考え始めること。「生きがい」・「大切なこと」といったことでもよいのですが、「今、患者/家族にとって一番の困りごとは何か、肺炎を治療した先の日々の生活に期待することは何か?」を入院加療の時点で考えられると、行うべき介入がさまざまな角度から検討できるようになります。今回のケースでは、肺炎治療後に自宅に帰り、自立した生活をできる限り続けることがゴールだったと考えてみましょう。そうすると、肺炎治療に加えて1人で歩行するための筋力維持が必要だと気付くでしょう。また筋力を維持するためには栄養状態にも気を配らなければなりません。それに気付けば理学療法士や管理栄養士など、その分野の専門職に相談するという選択肢もあります。また、肺炎治療中の絶対安静や絶食は、筋力や栄養状態の維持を同時に叶えるために適切な選択だろうか?本当に必要なのだろうか?と立ち止まって考えることもできます。しかし命に係わるかもしれない肺炎の治療は優先事項のひとつですから、落としどころとして、安静期間をできる限り短くできないか検討する、あるいはリハビリテーションの開始を早める、誤嚥のリスクを見極めて経口摂取を早期から進めていく、といった選択肢が出てくるかもしれません。100%正しい選択肢はありません。ですが5つのMで全体像を俯瞰すると、目の前の患者に対して、提供できる医療やケアの条件の中で、患者のゴールに近づく落としどころや優先順位を考えることができます。高齢者にかかわるすべての医療者で情報収集し共有する今回のケースでは、例として理学療法士や管理栄養士を出しましたが、その他にもさまざまな専門職が高齢者の医療に携わっています。医師は診断・治療といった医学的介入を職業の専門性として持つ一方で、患者とコミュニケーションできる時間が少ないために十分な「患者―医師関係」が構築しにくく、患者・家族が本当に大切にしていることが届きにくい場合があります。そのため、協働できる多職種の方とともに患者の情報を得る、そして彼らの専門性を活かして介入の方法やその分量のバランスをとること、落としどころを見つけることが医師に求められるスキルのひとつです。参考1)内閣府.令和5年度版高齢社会白書(全体版).第1章第2節高齢期の暮らしの動向.2)Miguel J. Divo,et al. Eur Respir J. 2014; 44(4): 1055–1068.

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第216回 オセルタミビルの新たな才能、難聴予防効果を発掘

オセルタミビルの新たな才能、難聴予防効果を発掘タミフルの製品名でよく知られるインフルエンザ治療薬オセルタミビルの新たな才能が米国のクレイトン大学(Creighton University)のチームの新たな研究で判明しました。その才能とは難聴予防効果です。抗がん剤や騒音による難聴を防ぐオセルタミビルの効果が、細胞やマウスの実験で裏付けられました1,2)。騒音による難聴(騒音性難聴)は老化関連難聴に次いで多く、世界のおよそ5%を苛んでいます。予防法といえば騒音を避けることぐらいで、治療法は補聴器の装用や人工内耳の移植に限られます。抗がん剤シスプラチンによる難聴と騒音性難聴に共通する分子経路が先立つ研究で示されています。ということはその共通経路を狙うことでシスプラチンによる難聴と騒音性難聴のどちらも防げるかもしれません。クレイトン大学のTal Teitz氏が率いるチームはまずシスプラチンによる細胞死を防ぐ効果がある薬を見つけることを目指しました。同大学は米国のネブラスカ州オマハ市にあるイエズス会系の私立大学です。Teitz氏らは内耳細胞培養で1,300を数える米国FDA承認薬を検討し、シスプラチンによる細胞死を防ぐ効果が図抜けて高いものを発見しました。それこそオセルタミビルです。マウスから摘出した内耳蝸牛でもオセルタミビルの細胞死予防効果が認められました。内耳蝸牛にシスプラチンを与えると外有毛細胞が減りましたが、オセルタミビルも与えたところ外有毛細胞は減らずに済みました。また、オセルタミビルのみの投与で外有毛細胞が減ることはなく、試した用量のどれも毒性は幸いにもありませんでした。同様の効果はマウスでも認められ、シスプラチン投与マウスの難聴や外有毛細胞の減少をオセルタミビルは防ぎました。またオセルタミビルはマウスの騒音による難聴を防ぐ効果も示しました。オセルタミビルはインフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ活性を阻害するようにできており、哺乳動物の体内での同剤の標的は知られていません。薬の標的を予想してくれるウェブサイトSuperPREDにオセルタミビルの構造を入力したところ、リン酸化によって活性化するERK2やNF-κBが最も有力と判定されました。ERK1/2とNF-κBはどちらもシスプラチンや騒音による難聴と関連します。先立ついくつかの研究によると、ERKのリン酸化の亢進、それに免疫細胞動員をもたらすNF-κB活性化がシスプラチンや騒音に伴って生じます。そこでオセルタミビルがリン酸化ERK(pERK)を減らす働きがあるかどうかがマウスの内耳蝸牛を使って調べられました。マウス内耳蝸牛のpERKはシスプラチンのみの投与では有意に増え、オセルタミビルも投与するとシスプラチン投与のみに比べてより少なくて済みました。オセルタミビルはSuperPREDが予想したようにERK活性化を抑制する働きがあるようです。ERK1/2は炎症と関連することが知られ、騒音やシスプラチンは免疫細胞の集合を伴う炎症促進を招きます。それに、難聴とは異なる分野での先立つ細胞実験でオセルタミビルの抗炎症作用が示されています。どうやらオセルタミビルは騒音に伴う炎症も鎮めるようです。マウスの蝸牛の炎症促進(CD45)免疫細胞は騒音を聞かすと増え、オセルタミビルを投与すると有意に減少しました。その結果はオセルタミビルの抗炎症作用を示唆しています。オセルタミビルは1999年に米国で承認されてからインフルエンザ治療に長く使われており、世界中で広く利用されています。今回の結果を受けて著者は、シスプラチンや騒音による難聴を防ぐ聴覚保護薬としてのオセルタミビルの使い道は有望だと結論しています。参考1)Sailor-Longsworth E, et al. bioRxiv. 2024 May 8. [Epub ahead of print]2)New Study Highlights Tamiflu as a Promising Otoprotective Drug / Hearing Health & Technology Matters.

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日本のプライマリケアにおける危険な飲酒やアルコール依存症患者のまん延状況

 岡山県精神科医療センターの宋 龍平氏らは、日本のプライマリケア患者における危険な飲酒と潜在的なアルコール依存症との関係を調査し、患者の変化への準備状況や他者の懸念に対する患者の意識を評価した。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2024年4月4日号の報告。 2023年7〜8月、クラスターランダム化比較試験の参加者を対象としたスクリーニング調査として、多施設横断的研究を実施した。対象は、20〜74歳のプライマリケア診療所の外来患者。危険な飲酒とアルコール依存症疑いの有病率、患者の変化への準備状況、他者の懸念に対する患者の意識を評価するため、アルコール依存症チェックシート(AUDIT)および自己記入式アンケートを用いた。 主な結果は以下のとおり。・診療所18施設から参加した1,388例のうち危険な飲酒またはアルコール依存症の疑いと特定された人は、22%(95%信頼区間[CI]:20〜24)であった。・AUDITスコアが増加すればするほど、変化への対応が増加した。・AUDITスコアが8〜14の人のうち、医師を含む他者が過去1年間の飲酒について懸念を指摘したと報告した人の割合は、わずか22%(95%CI:16〜28)であった。AUDITスコアが15以上の人では、74%であった。 著者らは、「本調査より、日本のプライマリケア現場における普遍的または高リスクのアルコールスクリーニングおよび短期的介入の必要性が示唆された」としている。

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Grade1のILD回復後のT-DXdによる再治療、7割弱でILD再発なし/ESMO BREAST 2024

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)によるがん治療におけるGrade1の間質性肺疾患(ILD)発症後、回復および適切な管理の実施後であれば、T-DXd再投与が有用な可能性が示唆された。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S.Rugo氏が乳がん、肺がん、胃がんなど9つの臨床試験の後ろ向きプール解析結果を欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2024、5月15~17日)で報告した。T-DXdによる再治療を受けた患者の約69%は減量しておらず、約67%はILDの再発がなかった。また約18%は1年超再治療を継続していた。 本プール解析では、T-DXd(5.4~8.0mg/kg)単剤療法を1回以上受けたHER2陽性の乳がん、非小細胞肺がん、胃がん、大腸がんの患者を対象とした9つの臨床試験のデータを用いて、Grade1の初回ILD後の患者を対象に、T-DXdによる再治療期間とILD再発について評価した。 主な結果は以下のとおり。・9試験から2,145例が解析対象とされた。べースラインの患者特性は、年齢中央値が58.0歳、日本の患者が27.3%、乳がん患者が68.2%を占め(肺がん16.3%、胃がん13.7%、大腸がん0.9%など)、肺の併存疾患なしが94.3%、SpO2≧95%が94.5%、T-DXdの用量5.4mg/kgの患者が67.6%であった。・193例が治験責任医師評価によりGrade1の薬剤関連ILDと判定され、うち97例(50.3%)がステロイドによる治療を受け、45例(23.3%)がT-DXdによる再治療を受けていた。・初回のILD発症からT-DXdによる再治療開始までの期間中央値は28(8~48)日であった。・45例中31例(68.9%)が減量なくT-DXdによる再治療を行い、15例(33.3%)は>6ヵ月、8例(17.8%)は>12ヵ月T-DXdによる再治療を継続していた。・45例中15例(33.3%)がILD再発を経験しており、Grade1が40.0%、Grade2が60.0%であった。8例がステロイドによる治療を受けており、うち6例が回復/後遺症を伴う回復をしていた。≧Grade3のILDおよび再発ILDのアウトカムとしての死亡は確認されていない。 Rugo氏は、より大きなデータセットでのリアルワールド研究が必要としたうえで、適切なモニタリングと管理によりGrade1のILDから完全に回復後のT-DXd再治療は、治療によるベネフィットを最大化する可能性があるとまとめている。

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世界初、「塗る」アレルギー性結膜炎治療薬が登場/参天

 参天製薬などは、5月22日、持続性・経眼瞼アレルギー性結膜炎治療剤「アレジオン眼瞼クリーム0.5%」(一般名:エピナスチン塩酸塩、以下アレジオンクリーム)の発売を開始したと発表した。塗布するクリームタイプのアレルギー性結膜炎治療薬は世界初となる。 国内で無症状期のアレルギー性結膜炎患者を対象として行われた第III相試験(プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験)では、アレルギー性結膜炎の主症状である眼そう痒感スコアおよび結膜充血スコアにおいて、アレジオンクリームのプラセボ眼瞼クリームに対する優越性が検証された。また、長期投与試験において認められた副作用は眼瞼そう痒症1.6%(2/124例)および眼瞼紅斑0.8%(1/124例)で、重篤な副作用は認められなかった。 現在、アレルギー性結膜炎に対しては同社の「アレジオン点眼液」をはじめとするヒスタミンH1受容体拮抗薬の点眼薬が広く処方されているが、1日2回または4回の点眼が必要となる。アレジオンクリームは1日1回の塗布で終日にわたって有効性を維持でき、点眼が困難な患者でも容易かつ適切に投与しやすいことが特長で、アレジオン点眼薬と同様にコンタクトレンズ装着時にも使用できる。 従来の点眼薬との使い分けについて参天製薬は「アレジオンクリームは患者さんの投薬負担の軽減が期待でき、服薬コンプライアンス、QOL向上にも貢献できると考えている。新規治療だけでなく、点眼薬で治療中の患者さんの置き換えも視野に入れている」とする。また、点眼薬とアレジオンクリームの併用については、「臨床試験では他剤の併用例はなく、他剤と併用した場合の効果や安全性は現時点では不明だが、日本眼科学会の『アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン』では、抗アレルギー点眼薬だけでは効果不十分な場合には、ステロイド点眼薬、NSAIDs点眼薬の併用、また花粉など抗原に対するセルフケアとして洗眼薬の使用が勧められていることから、そうした治療薬との併用が必要な場合もあると考える。一方で、同ガイドラインに抗アレルギー点眼薬同士の併用を推奨する記載はなく、アレジオンクリームは前例がない剤形であることからも、追加薬剤としての抗アレルギー点眼薬との併用治療の考え方などは現状では不明である」としている。製品概要製品名:アレジオン眼瞼クリーム 0.5%一般名:エピナスチン塩酸塩性状:白色~淡黄白色のクリーム剤効能・効果:アレルギー性結膜炎用法・用量:通常、適量を1日1回上下眼瞼に塗布する貯法:室温保存包装:2gチューブ入×10本薬価:1,686.7円/g保険給付上の注意:なし発売日:2024年5月22日

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トリプル療法で効果不十分のCOPD、テゼペルマブの有用性は?/ATS2024

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、吸入ステロイド薬(ICS)・長時間作用性β2刺激薬(LABA)・長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の3剤を1つの吸入器で吸入可能なトリプル製剤が使用可能となっているが、トリプル療法を用いてもCOPD増悪や入院に至る患者が存在する。COPD増悪はQOLを低下させるだけでなく、呼吸機能の低下や死亡リスクの上昇とも関連することが知られており、新たな治療法が求められている。 そこで、さまざまな分子に対する分子標的薬の開発が進められている。その候補分子の1つにTSLPがある。TSLPは、感染や汚染物質・アレルギー物質への曝露などにより気道上皮細胞から分泌され、炎症を惹起する。TSLPはタイプ2炎症と非タイプ2炎症の双方に関与しているとされており、TSLPの阻害はCOPDの幅広い病態に対してベネフィットをもたらす可能性がある。そのような背景から、すでに重症喘息に用いられているヒト抗TSLPモノクローナル抗体テゼペルマブのCOPDに対する有用性が検討されている。米国胸部学会国際会議(ATS2024 International Conference)において、英国・マンチェスター大学のDave Singh氏が海外第IIa相試験「COURSE試験」の結果を発表した。試験デザイン:海外第IIa相無作為化比較試験対象:トリプル療法を用いているにもかかわらず、過去12ヵ月以内に中等度または重度のCOPD増悪が2回以上発現した40~80歳のCOPD患者333例(喘息患者および喘息の既往歴のある患者は除外)試験群(テゼペルマブ群):テゼペルマブ(420mg、4週ごと皮下注射)+トリプル療法を52週間(165例)対照群(プラセボ群):プラセボ+トリプル療法を52週間(168例)評価項目:[主要評価項目]中等度または重度のCOPD増悪の年間発現回数[副次評価項目]気管支拡張薬吸入前の1秒量(FEV1)、QOL、安全性など 主な結果は以下のとおり。・対象患者のうち、過去12ヵ月以内に中等度または重度のCOPD増悪が3回以上発現した患者が41.1%(137例)を占め、血中好酸球数300cells/μL以上の患者は16.8%(56例)にとどまっていた。・主要評価項目の中等度または重度のCOPD増悪の年間発現回数は、テゼペルマブ群がプラセボ群と比較して数値的に17%低下したが、統計学的有意差は認められなかった(90%信頼区間[CI]:-6~36、片側p=0.1042)。・サブグループ解析において、血中好酸球数が多い集団でテゼペルマブ群の中等度または重度のCOPD増悪の年間発現回数が少ない傾向にあった。血中好酸球数(cells/μL)別のレート比および95%CIは以下のとおり。 150未満:1.19、0.75~1.90 150以上:0.63、0.43~0.93(post hoc解析) 150以上300未満:0.66、0.42~1.04 300以上:0.54、0.25~1.15・52週時における気管支拡張薬吸入前のFEV1のベースラインからの変化量(最小二乗平均値)は、テゼペルマブ群26mL、プラセボ群-29mLであり、テゼペルマブ群が改善する傾向にあった(群間差:55mL、95%CI:14~96)。・52週時におけるSt. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)スコアのベースラインからの変化量(最小二乗平均値)は、テゼペルマブ群-4.80、プラセボ群-1.86であり、テゼペルマブ群が改善する傾向にあった(群間差:-2.93、95%CI:-6.23~0.36)。・52週時におけるCOPDアセスメントテスト(CAT)スコアのベースラインからの変化量(最小二乗平均値)は、テゼペルマブ群-3.04、プラセボ群-1.18であり、テゼペルマブ群が改善する傾向にあった(群間差:-1.86、95%CI:-3.31~-0.40)。・有害事象はテゼペルマブ群80.6%、プラセボ群75.0%に発現したが、新たな安全性シグナルはみられなかった。 Singh氏は、全体集団では主要評価項目を達成できなかったものの、血中好酸球数が多い集団でテゼペルマブの有効性が高かったことを指摘し、血中好酸球数150cells/μL以上の集団がテゼペルマブによるベネフィットを得られる集団となる可能性があると考察した。

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任意接種を中心に記載、COVID-19ワクチンに関する提言(第9版)/日本感染症学会

 日本感染症学会 ワクチン委員会、COVID-19ワクチン・タスクフォースは、5月21日付で、「COVID-19ワクチンに関する提言(第9版)-XBB.1.5対応mRNAワクチンの任意接種について-」1)を発表した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンは4月1日から定期接種B類に位置付けられ、65歳以上を対象に、2024年秋冬に1回接種することとなったが、現時点でも任意接種として6ヵ月齢以上のすべての人は自費で接種を受けることができる。今回の提言では、COVID-19ワクチンの有効性と安全性に関する科学的な情報を解説し、接種を判断する際の参考にするために作成されており、XBB.1.5対応mRNAワクチンの任意接種を中心に記載している。 本提言の主な内容は以下のとおり。任意接種に使用できるCOVID-19ワクチン・2024年4月から定期接種が秋に開始されるまでの期間で、国内の任意接種に使用できるCOVID-19ワクチンは、ファイザーとモデルナの1価XBB.1.5対応mRNAワクチンのみとなっている。・2023年秋開始接種に用いられた第一三共のmRNAワクチン ダイチロナ筋注(XBB.1.5)、ファイザーの生後6ヵ月~12歳未満用のXBB.1.5対応mRNAワクチン、武田薬品工業の組換えタンパク質ワクチン ヌバキソビッド筋注(起源株)は供給が停止され使用できない。XBB.1.5ワクチン追加接種の意義 本提言では、国内の65歳以上の高齢者と基礎疾患のある人は、2023年秋開始接種でXBB.1.5ワクチンを接種した人/していない人共に、現時点でXBB.1.5ワクチンを任意接種として1回接種する意義があるとしている。また、65歳未満の健康な人でもXBB.1.5ワクチンは任意接種として接種できることから、医療従事者や高齢者施設の職員など感染リスクが高い人や発症するとハイリスク者に伝播させる機会が多い人は、接種が望まれるとしている。その根拠として以下の要因が挙げられている。・COVID-19は、2023年7~9月の第9波、2024年1~2月の第10波と大きな流行がみられた。・2024年1月に行われたSARSCoV-2抗体保有状況調査では、感染既往を示す抗N抗体保有割合は平均55.1%。60代で45.4%、70代で30.5%、80歳以上で31.6%と高齢者で低くなっているため、今後も高齢者の感染リスクは高いことが予想される。・オミクロン株になって致命率は減少したものの、高齢者やハイリスク者では基礎疾患による悪化による死亡やウイルス性肺炎による重症化がみられている。・2023年5月8日以前の国内のCOVID-19による死亡者は、3年5ヵ月間で7万4,669人であったが、人口動態調査に基づく2023年5~11月のCOVID-19による死亡数は、7ヵ月間で1万6,043人と多い状況が続いている。・新規入院患者数も2024年4月下旬の第17週だけで1,308人みられており、疾病負担が大きいことが示唆される。・米国の研究では、2022~23年秋冬シーズンにおける発症30日以内の死亡リスクは、65歳を超える高齢者ではハザード比1.78で、COVID-19のほうがインフルエンザより高いことが報告されている。・日本では2024年5月現在もJN.1の流行が続いており、2022年と23年共に、夏に大きな流行がみられたため、今後夏にかけての再増加が予想される。米国や諸外国での接種推奨状況・米国のワクチン接種に関する諮問委員会(ACIP)は2024年2月28日に、XBB.1.5ワクチンを接種して4ヵ月経過した65歳以上の成人に、もう1回のXBB.1.5ワクチン接種を推奨した。・COVID-19mRNAワクチンの効果は数ヵ月で減衰すること、追加接種によって免疫がすみやかに回復すること、XBB.1.5ワクチンは流行中のJN.1にも一定の効果がみられることなどがその根拠となっている。また、中等度~重度の免疫不全者には最終接種2ヵ月からのXBB.1.5ワクチン接種を推奨し、その後の追加接種も可能としている。・英国、フランス、スウェーデン、アイルランド、カナダ、オーストラリア、韓国、台湾、シンガポールといった諸外国でも、高齢者、高齢者施設入所者、免疫不全者などを対象に、2024年春のXBB.1.5ワクチン2回目の接種が推奨されている。COVID-19ワクチンの開発状況と今後 日本での2024年秋から定期接種で使用されるCOVID-19ワクチンは、XBB.1.5ではなく新たなワクチン株を選定して作製される。WHO(世界保健機関)のTechnical Advisory Group on COVID-19 Vaccine Composition(TAG-CO-VAC)は、4月26日に新たなワクチン株としてJN.1系統を推奨することを発表した。日本では、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会「季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会」でワクチン株の選定が検討される予定で、WHOの推奨株を用いることを基本とするとされていることから、JN.1対応のワクチンが使用される見込みとなっている。選定されたワクチン株をもとに秋に使用されるワクチンの製造が各社で検討される。そのほか、国内製薬会社で組換えタンパク質ワクチン、従来の方法による不活化ワクチン、mRNAワクチン(レプリコン)の臨床試験も進んでおり、実用化が期待されている。新たな変異株 米国では4月末~5月初旬にはJN.1に替わってKP.2が28.2%、東京都でも4月中旬にはXDQが31.6%と増加しており、新たな変異株の出現が頻繁に起きている。KP.2とXDQのスパイクタンパク質のアミノ酸配列は、いずれもBA.2.86に近く、受容体結合部位のアミノ酸はJN.1といずれも2個異なっており、今後増加する場合は抗原性の検討が必要と予想されている。2023年秋開始接種のXBB.1.5ワクチンの接種率 2023年秋開始接種のXBB.1.5ワクチンの接種率は、高齢者で53.7%、全体で22.7%と十分ではなかった。接種しても罹患することがあるが、接種後にかかっても未接種者に比べて家庭内感染率が46%低下する。個人の感染予防だけでなく、周りの人に感染を広げないためにも、多くの人への接種が望まれる。ワクチン接種後にCOVID-19にかかったとしても、罹患後症状(後遺症)の発現率が43%低下するというメタアナリシスの結果も報告されている。 本提言は、「ワクチン接種を受けることで安全が保証されるわけではない。今後ともマスク、換気、身体的距離を適切に保つ、手洗い等の基本的な感染対策は可能な範囲で維持しなければならない。今後も流行が続くと予想されるCOVID-19の予防のために、COVID-19ワクチンが正しく理解され、接種が適切に継続されることを願っている」と結んでいる。なお、本提言ではXBB.1.5対応mRNAワクチンのJN.1に対する有効性のデータなども掲載している。 なお、厚生労働省が5月24日付で発表した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況」によると、COVID-19定点当たり報告数(全国)推移、および入院患者数の推移において、ゴールデンウィーク以降の5月6日~12日の週より、COVID-19報告数とCOVID-19入院患者数が増加に転じている2)。

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CVDの1次予防にバイオマーカー追加は有用か/JAMA

 心血管イベントの1次予防において、5つの心血管バイオマーカーはいずれもアテローム性動脈硬化性心血管疾患の発生と有意に関連するものの、その関連性は小さく、心不全と死亡率についてはより強力な関連を認めるが、確立された従来のリスク因子と心血管バイオマーカーを組み合わせてもアテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスク予測能の改善はわずかであることが、ドイツ・University Heart and Vascular Center HamburgのJohannes Tobias Neumann氏らの検討で示された。研究の成果はJAMA誌オンライン版2024年5月13日号で報告された。28件の住民ベースのコホート研究の患者データを解析 研究グループは、日本を含む12ヵ国で行われた28件の住民ベースのコホート研究から得た個々の患者データを用いて、心血管バイオマーカーおよび従来のリスク因子に心血管バイオマーカーを加えた場合の予後予測能の評価を行った(European Union project euCanSHareの助成を受けた)。 これらのコホート研究では、心血管バイオマーカーとして、高感度心筋トロポニンI、高感度心筋トロポニンT、N末端プロ脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)、脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、高感度C反応性蛋白(hs CRP)を測定した。追跡期間中央値は11.8年だった。 主要アウトカムは、すべての致死的および非致死的なイベントを含む初発のアテローム性動脈硬化性心血管疾患(冠動脈性心疾患イベント[possibleまたはdefinite]、脳梗塞イベント[同]、冠動脈血行再建、冠動脈性心疾患死、脳梗塞死、分類不能の死亡)の発生とした。全バイオマーカーで有意な関連、全死因死亡、心不全との関連が強い 16万4,054例(年齢中央値53.1歳[四分位範囲[IQR]:42.7~62.9]、女性52.4%)を解析の対象とした。アテローム性動脈硬化性心血管疾患イベントは1万7,211件発生した。 すべてのバイオマーカーで、アテローム性動脈硬化性心血管疾患の発生と有意な関連を認めた。1SDの変化当たりのサブディストリビューション・ハザード比は、高感度心筋トロポニンIが1.13(95%信頼区間[CI]:1.11~1.16)、高感度心筋トロポニンTが1.18(1.12~1.23)、NT-proBNPが1.21(1.18~1.24)、BNPが1.14(1.08~1.22)、hs CRPが1.14(1.12~1.16)であった。 副次アウトカムである全死因死亡、心不全、脳梗塞、心筋梗塞の発生についても、同様の有意な関連がみられた。バイオマーカーと全死因死亡および心不全との関連は、アテローム性動脈硬化性心血管疾患との関連よりも強力であった。バイオマーカーの併用も有望 確立されたリスク因子を含むモデルに、それぞれ単一のバイオマーカーを加えると、C統計量が改善した。 また、高感度心筋トロポニンI、NT-proBNP、hs CRPを併用すると、10年間のアテローム性動脈硬化性心血管疾患発生のC統計量が、65歳未満では0.812(95%CI:0.8021~0.8208)から0.8194(0.8089~0.8277)へ、65歳以上では0.6323(0.5945~0.6570)から0.6602(0.6224~0.6834)へと改善した。 さらに、これらのバイオマーカーを組み合わせると、従来のモデルと比較して、リスクの再分類も改善された。 著者は、「すべてのバイオマーカーはアテローム性動脈硬化性心血管疾患の発生だけでなく、全死因死亡、心不全、脳梗塞、心筋梗塞の予測因子であった。いずれのバイオマーカーも、致死的または非致死的なアテローム性動脈硬化性心血管疾患イベントと比較して、全死因死亡および心不全と強い関連を示すという興味深い知見が得られた」とまとめている。

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外用抗菌薬の鼻腔内塗布でウイルス感染を防御?

 抗菌薬のネオマイシンを鼻の中に塗布することで、呼吸器系に侵入したウイルスを撃退できる可能性があるようだ。新たな研究で、鼻腔内にネオマイシンを塗布された実験動物が、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの強毒株の両方に対して強力な免疫反応を示すことが確認された。さらに、このアプローチはヒトでも有効である可能性も示されたという。米イェール大学医学部免疫生物学部門教授の岩崎明子氏らによるこの研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に4月22日掲載された。 岩崎氏らによると、新型コロナウイルスは2024年2月時点で、世界で約7億7450万人に感染し、690万人を死亡させたという。一方、インフルエンザウイルスは、年間500万人の重症患者と50万人の死者を出している。 これらのウイルスに感染した際には、一般的には経口または静脈注射による治療を行って、ウイルスの脅威と闘う。これらは、感染の進行を止めることに重点を置いたアプローチだ。しかし研究グループは、鼻に焦点を当てた治療アプローチの方が、ウイルスが肺に広がって肺炎のような命を脅かす病気を引き起こす前にウイルスを食い止められる可能性がはるかに高いのではないかと考えている。 今回の研究では、まず、マウスを使った実験でこの考えを検証した。マウスの鼻腔内にネオマイシンを投与したところ、鼻粘膜上皮細胞でIFN誘導遺伝子(ISG)の発現が促されることが確認された。ISGの発現は、ネオマイシン投与後1日目から確認されるほど迅速だった。そこで、マウスを新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスに曝露させたところ、感染に対して有意な保護効果を示すことが確認された。さらに、ゴールデンハムスターを用いた実験では、ネオマイシンの鼻腔内投与が接触による新型コロナウイルスの伝播を強力に抑制することも示された。 次に、健康なヒトを対象に、鼻腔内にネオマイシンを主成分とするNeosporin(ネオスポリン)軟膏を塗布する治療を行ったところ、この治療法に対する忍容性は高く、参加者の一部で鼻粘膜上皮細胞でのISG発現が効果的に誘導されていることが確認された。 岩崎氏は、「これはわくわくするような発見だ。市販の安価な外用抗菌薬が、人体を刺激して抗ウイルス反応を活性化させることができるのだ」と話している。なお、米国立衛生研究所(NIH)によれば、Neosporinは、抗菌薬のネオマイシン、バシトラシン、およびポリミキシンBを含有する。 岩崎氏は、「今回の研究結果は、この安価で広く知られている抗菌薬を最適化することで、ヒトにおけるウイルス性疾患の発生やその蔓延を予防できる可能性があることを示唆している。このアプローチは、宿主に直接作用するため、どんなウイルスであろうと効果が期待できるはずだ」と話している。

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