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統合医療システムにおけるプロトンポンプ阻害薬の過剰使用を減らすための大規模な多要素介入の影響:差分の差分法研究 (解説:上村直実氏)

 わが国では、ピロリ菌感染率の低下や食べ物の欧米化などにより胃がんが減少している。一方、胃酸分泌が亢進する傾向とともに食道・胃逆流症(GERD)の増加とともにGERDに対する薬物治療として頻用されているプロトンポンプ阻害薬(PPI)が長期使用されるケースが増加しているのが現状である。 最近、PPI長期投与による副作用に関する欧米からの研究報告が散見されている。すなわち、市中肺炎や骨折のリスク増加、胃酸分泌抑制に伴って生ずる腸内細菌叢の変化に起因するClostridium difficile(CD)腸炎など腸内感染症の増加、腎機能の低下などが報告されている。日本人を対象とした精度の高い臨床研究によるエビデンスはないが、PPIの過剰投与に関する副作用や不必要なPPIの処方による医療費の増大にも注意するべき時代となっている。 今回、PPIの過剰使用を減らすための薬剤師による介入が医師の処方パターンや臨床転帰にどのように影響するかを検証する差分の差分法による研究のRCTがBMJ誌に掲載された。大規模な薬局ベースの介入試験であり、GERDなど適切な適応がないと思われる患者に対するPPIの制限やH2ブロッカーの推奨、および臨床医と患者に対する教育を行った介入群と介入を行わなかった対照群の両群における介入前後の副作用の発現率と医療費を差分の差分法により検証した結果、PPIの処方を受ける患者が7.3%減少し、さらに処方期間の短縮も認められた。一方、介入前後で市中肺炎や骨折の増加など副作用の発現率の割合には影響しなかった。 われわれは日本人のGERD患者を対象として、PPIとさらに酸分泌抑制力が強力なP-CABの長期5年間投与による安全性を検証する試験(VISION研究)を行い、現在投稿中であるが重大な副作用の発現は認めていない。しかし、診療現場では不要と思われるPPIの処方もみられることから、今回示された薬剤師による介入試験は重要と思われる。 わが国の医師法ではPPIを処方する医師に対して、薬剤師が薬剤の減量や処方の変更を推奨することは難しいと思われる。PPIなど広範に処方されている薬剤によって生ずる副作用や医療費の増大に対する有用な臨床研究が必要であり、実際に検証する方法を模索する必要性を感じさせる研究論文である。

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第213回 60歳以上へのRSワクチン、打つならどれ?

ここ数年、感染症のワクチンというと新型コロナウイルス感染症のワクチン開発ばかり注目されてきたが、近年、それと同時に目覚ましい進展を遂げているのがRSウイルス(RSV)ワクチンである。ご存じのようにRSVは2歳までにほぼ100%の人が感染し、発熱、鼻汁などの風邪様症状から重い肺炎までさまざまな症状を呈する。生後6ヵ月以内の初感染では細気管支炎、肺炎などに重症化しやすいほか、再感染を繰り返す中で呼吸器疾患などの基礎疾患を有する高齢者などでも重症化しやすいことが知られている。世界保健機関(WHO)の報告によると、小児の急性呼吸器感染症のうちRSV感染症は63%と筆頭となっているほか、英国・エディンバラ大学の報告では、生後60ヵ月までの死亡の50件に1件がRSVに関連すると指摘されている。一方の高齢者では、日本国内での推計値として、RSV感染症を原因とする入院は年間約6万3,000例、死亡は約4,500例と算出されている(ただし、この推計値は製薬企業グラクソ・スミスクライン[GSK]によるもの)。RSウイルスは古典的なウイルス感染症だが、ワクチン開発の試みは初期に手痛い失敗に終わっている。1960年代に行われた不活化ワクチンの臨床試験では、抗体依存性感染増強により、小児のRSV初感染時の入院率が接種群で80%、非接種群で2%と惨憺たる結果に終わり、接種群では2人の死亡者まで発生するという悲劇まで招いた。もっともこの事案からウイルスタンパク質のより詳細な構造解明の研究が行われ、昨今の新規RSVワクチンの登場に結び付いた。3つのRSワクチンを比較さて国内で見ると、2023年9月、60歳以上の高齢者を適応とするGSKの遺伝子組換えタンパクワクチンである「アレックスビー」、2024年1月には母子免疫、3月には60歳以上の高齢者も対象となったファイザーの遺伝子組換えタンパクワクチンの「アブリスボ」が承認を取得。ちょうど昨日5月30日には、モデルナがやはり60歳以上を対象としたメッセンジャーRNAワクチン「mRNA-1345」の製造販売承認の申請を行い、ほぼ役者が出そろった形だ。当然、各社とも今後は定期接種化を狙ってくるだろうと思われる。個人的にも若干興味が湧いたので、各ワクチンの第III相試験結果を改めて調べてみた。なお、有効率は接種後のRSV関連急性呼吸器疾患の予防に対する有効率で統一してみた。この有効率で統一したのは、おそらく一般の接種希望者がまずは期待するのがこのレベルだと考えたからだ。◆アレックスビーすでに市販されている。60歳以上の2万4,966例を対象に行われた第III相試験「AReSVi-006」1)の結果によると、追跡期間中央値6.7ヵ月でのプラセボ対照単回接種での有効率は71.7%。◆アブリスボ60歳以上の3万4,284 例を対象とした第III相試験「RENOIR」の中間解析結果2)によると、追跡期間中央値7ヵ月でのプラセボ対照単回接種での有効率は66.7%。◆mRNA-134560歳以上の3万5,541例を対象とした第II/III相試験「ConquerRSV」の中間解析結果3)によると、追跡期間中央値112日でプラセボ対照単回接種での有効率は68.4%。一方でワクチン接種群での有害事象の発現率を概観してみる。アレックスビーでは局所性が62.2%、全身性が49.4%。アブリスボでは局所性が12%、全身性が27%。mRNA-1345は局所性が58.7%、全身性が47.7%。いずれも主なものは局所性で注射部位疼痛、全身性で疲労感ということで共通している。このように概観してみると、有効性はほぼ同等、安全性ではややアブリスボが優位となる。なぜアブリスボで有害事象発現率が低いのかは現時点では不明である。ちなみにワクチンの有効性に関しては、ここではRSV関連急性感染症で紹介したが、論文などで紹介されている有効率は、2つ以上の徴候や症状を呈するRSV関連下気道疾患をメインで示しており、そのデータに関連してアレックスビーに比べてm-RNAワクチンのmRNA-1345は有効性の低下が早いという話も報じられている。これら3つのワクチンの登場は、これまでかなりメジャーであったものの手の施しようがなかったRSV感染症に対するブレイクスルーであることは間違いない。そしてワクチンに関して言えば、私自身は少なくとも当初は複数のモダリティによる製品があるほうが安定供給などの点から望ましいとも考えている。今後、有効性・安全性の観点から臨床現場の自然な選択が進めばよいことである。とりあえず興味と頭の整理も考えて、今回概観してみた。ちなみにワクチンマニアを自称する私はまだ50代半ばなので、接種できるのはまだ先になるが(笑)。参考1)Papi A, et al. N Engl J Med. 2023;388:595-608.2)Walsh EE, et al. N Engl J Med. 2023;388:1465-1477.3)Wilson E, et al. N Engl J Med. 2023;389:2233-2244.

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何はさておき記述統計 その5【「実践的」臨床研究入門】第44回

2群の生存時間曲線を比較する今回は、無料の統計解析ソフトであるEZR(Eazy R)を用いて前回作成したKaplan-Meier曲線と統計解析(Log-rank検定)結果の出力を確認して解説します。まず、Kaplan-Meier曲線(図1)ですが、低たんぱく食厳格遵守群(Treat=1)は赤線で、低たんぱく食非厳格遵守群(Treat=0)は黒線で表示されています。図1デフォルトのオプション設定で指定されているとおり(連載第43回参照)、「打ち切り」は「ヒゲ」で表され(連載第42回参照)、また各時点での観察対象となるat risk集団(連載第35回参照)のサンプル数が"Number at risk”として示されています。生存時間解析の結果の要約とLog-rank検定の結果は、EZRのRコマンダー出力ウィンドウの最後に表示されています(図2)。図2低たんぱく食厳格遵守群(Treat=1)、低たんぱく食非厳格遵守群(Treat=0)のサンプル数はそれぞれ212例、426例で、右端に表されているのが両群間の生存時間曲線の比較検定(Log-rank検定)のp値です。生存期間中央値と95%信頼区間はそれぞれNA(not available)と表示されています。生存期間中央値は、Kaplan-Meier曲線で生存率(イベント非発生率)が50%となる値(期間)です。Kaplan-Meier曲線(図1)をみてわかるように、両群とも観察期間終了時(5年)に50%以上の対象が生存(イベント非発生)しているので、生存時間中央値およびその95%信頼区間は求めることができません。それでは、ここで簡単に統計学的仮説検定とp値の考え方について解説します。統計学的仮説検定は論理学の背理法に基づいて進めて行きます。ここでのわれわれの仮説、「低たんぱく食厳格遵守と低たんぱく食非厳格遵守で、末期腎不全の発症率に差がある」を検証する場合、次のように考えます。まず、検証したい仮説の否定を考え、「低たんぱく食厳格遵守と低たんぱく食非厳格遵守で、末期腎不全の発症率に差がない」、とします。これを帰無仮説(差なし仮説)と言います。p値のpはprobabilityのpでまさに確率であり、0から1の値をとります。p値とは、帰無仮説が正しいと仮定したときに、実際に標本から得られたデータ以上に帰無仮説から離れたデータが得られる確率を表した値、のことです。p値が非常に小さな場合、帰無仮説が誤っている(帰無仮説を棄却)とし、統計学的有意差がある、と判断します。統計学的に有意であると判断する基準を有意水準と言いますが、一般的には0.05(5%)に設定されます。これは5%未満の誤りであれば許容できる、という一般的な感覚から慣習で決められた数値です。統計学的仮説検定の手法は扱うデータ(変数)の型によって異なります。ここで扱う生存時間、生存時間曲線の比較では一般的にLog-rank検定が用いられることが多いです。さて、低たんぱく食厳格遵守群(Treat=1)と低たんぱく食非厳格遵守群(Treat=0)の生存時間曲線の比較検定(Log-rank検定)のp値は0.0657と有意水準0.05を上回っていました。したがって、「低たんぱく食厳格遵守と低たんぱく食非厳格遵守で、末期腎不全の発症率に差がない」という帰無仮説は棄却できません。さらに言うと、統計学的に有意差はないものの、生存時間曲線の見た目からは低たんぱく食厳格遵守群(Treat=1)より低たんぱく食非厳格遵守群(Treat=0)の方が予後が良さそうにも見えます。生存時間曲線の比較検定(Log-rank検定)の結果からは、われわれの仮説に沿った解析結果が得られませんでした。ここで研究は終了(継続断念)でしょうか。次回からは、観察研究においてExposure(曝露要因)とOutcome(アウトカム)の関連や因果関係を歪める「交絡(因子)」について解説します。

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5月31日 世界禁煙デー【今日は何の日?】

【5月31日 世界禁煙デー】〔由来〕世界保健機構(WHO)が、たばこを吸わないことが一般的な社会習慣となるように、さまざまな対策を講ずべきという決議により1988年に設けられた。翌89年からは5月31日に定められた。また、厚生労働省は、1992年から毎年5月31日~6月6日までを「禁煙週間」と定め、啓発活動が全国で行われている。関連コンテンツ生活習慣の改善(1)禁煙【一目でわかる診療ビフォーアフター】患者向け広告が解禁される「治療用アプリ」って何?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】電子タバコでは禁煙できない【患者説明用スライド】植物由来cytisinicline、禁煙効果を第III相試験で検証/JAMA電子タバコは禁煙継続に有効?/NEJM

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身体活動の指標、時間ではなく歩数でもOK?

 米国における身体活動のガイドラインでは、健康のために中~高強度の身体活動を週150分以上行うことを推奨しているが、歩数に基づく推奨はエビデンスが十分ではないため発表されていない。今回、米国・Brigham and Women's Hospital/Harvard Medical Schoolの浜谷 陸太氏らによる米国の62歳以上の女性を対象としたコホート研究において、中~高強度身体活動時間および歩数と全死亡率および心血管疾患(CVD)の関連が質的に同様であることが示唆された。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年5月20日号に掲載。 このコホート研究は、1992~2004年に米国で実施した無作為化試験であるWomen's Health Studyの参加者の追跡データを解析したもの。参加者はCVDやがんを罹患していない62歳以上の女性で、年1回アンケートに回答し、中~高強度身体活動に費やした時間と歩数を加速度計で連続7日間測定した。交絡因子調整後の中~高強度身体活動の時間および歩数と全死亡およびCVD(心筋梗塞・脳卒中・CVD死亡の複合)との関連を、Cox比例ハザード回帰モデル、制限付き平均生存時間の差、受信者動作特性曲線下面積(AUC)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・計1万4,399人の女性(平均年齢:71.8歳)が対象となった。・中~高強度身体活動時間の中央値は週62分(四分位範囲:20~149分)、歩数の中央値は1日5,183歩(同:3,691~7,001歩)であった。・追跡期間中央値9.0年で、全死亡の1標準偏差当たりのハザード比は、中~高強度身体活動時間が0.82(95%信頼区間[CI]:0.75~0.90)、歩数が0.74(同:0.69~0.80)であった。・中~高強度身体活動時間および歩数が多い(上位3四分位群vs.最低四分位群)ほど生存期間(period free from death)が長かった。・中~高強度身体活動時間および歩数での全死亡率のAUCは同様で、どちらの指標も0.55(95%CI:0.52~0.57)であった。CVDとの関連についても同様だった。 著者らは「今後のガイドラインにおいては、個々人の好みに対応できるよう、時間に基づく目標と共に歩数に基づく目標が検討されるべき」としている。

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うつ病に対するアリピプラゾール補助療法の有用性~bupropionとの比較

 治療抵抗性うつ病またはうつ病患者におけるアリピプラゾールまたはbupropionの補助療法および切り替えの有効性および安全性を評価するため、中国・山東中医薬大学のMengjia Ji氏らは、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を初めて実施した。PLOS ONE誌2024年4月26日号の報告。 2023年4月までに公表された治療抵抗性うつ病、またはうつ病患者に対するアリピプラゾールまたはbupropionの補助療法、および切り替えの有効性および安全性を評価したRCTをPubMed、Embase、Web of Science、Cochraneよりシステマティックに検索した。アウトカムは、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、治療反応率、寛解率、重篤な有害事象の変化とした。 主な結果は以下のとおり。・5件のRCTより4,480例をメタ解析に含めた。・2件のRCTの品質は、非盲検であるため、3つの側面(割り当て不明、参加者および研究員の盲検化、アウトカム評価の盲検化)より「高リスク」と評価され、残りの3件のRCTは「低リスク」であった。・アリピプラゾール補助療法は、bupropion補助療法と比較し、治療反応率が有意に高かった(RR:1.15、95%信頼区間[CI]:1.05〜1.25、p=0.0007、I2=23%)。・アリピプラゾール補助療法は、bupropion切り替え療法と比較し、寛解率が有意に高かった(RR:1.22、95%CI:1.00〜1.49、p=0.05、I2=59%)。・bupropion補助療法は、bupropion切り替え療法と比較し、寛解率が有意に高かった(RR:1.20、95%CI:1.06〜1.36、p=0.0004、I2=0%)。・アリピプラゾール補助療法とbupropion補助療法で、寛解率(RR:1.05、95%CI:0.94〜1.17、P=0.42、I2=33%)、MADRS改善率(WMD:-2.07、95%CI:-5.84〜1.70、P=0.28、I2=70%)は、有意差が認められなかった。・有害事象および重篤な有害事象は、3つの治療戦略で有意な差が認められなかった。 著者らは、「治療抵抗性うつ病またはうつ病患者に対するアリピプラゾール補助療法は、bupropionの補助療法および切り替え療法よりも有用な抗うつ治療戦略である可能性がある。アリピプラゾールまたはbupropionの補助療法および切り替えの有効性および安全性をさらに評価するためにも、より大規模な多施設共同二重盲検RCTが求められる」としている。

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ASCO2024スタート!注目演題を集めた特設サイトオープン

 5月31日~6月4日(現地時間)、世界最大の腫瘍学会であるASCO 2024(米国臨床腫瘍学会年次総会)が、米国シカゴとオンラインのハイブリッド形式で開催される。 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」(医師会員限定)では、ASCO 2024のスタートに合わせ、数千に及ぶ演題の中から、複数のエキスパートが専門分野の注目演題をピックアップ。 学会スタートを受けてオープンした「ASCO2024特設サイト」では、「肺がん」「消化器がん」「乳がん」「泌尿器がん」「がん全般」のカテゴリーに分け、ASCO視聴サイトの該当演題へのリンクを、エキスパートのコメントと共に紹介している。 エキスパートが選定した、各がん種別の注目演題の一部は下記のとおり。このほかにも多くのユーザーが注目すべき演題を紹介している。【肺がん】山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター 呼吸器内科)によるまとめ【消化器がん(1)】加藤 健氏(国立がん研究センター 中央病院 消化器内科)によるまとめ【消化器がん(2)】山本 駿氏(国立がん研究センター 中央病院 消化器内科)によるまとめ【乳がん】寺田 満雄氏(名古屋市立大学 乳腺外科/UPMC Hillman Cancer Center)によるまとめ【泌尿器がん】三好 康秀氏(藤沢市民病院 泌尿器科)によるまとめ――――――――――Doctors’Picks ASCO2024特設サイト―――――――――― 学会終了後は、視聴レポートやまとめ記事なども続々アップしていく予定だ。

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前立腺全摘除術後放射線療法へのADT追加、6ヵ月vs.24ヵ月/Lancet

 前立腺全摘除術後の放射線療法への24ヵ月のアンドロゲン除去療法(ADT)の追加は、6ヵ月のADTを追加した場合と比較して無転移生存期間(MFS)を改善したことが示された。英国・The Institute of Cancer ResearchのChris C. Parker氏らRADICALS investigatorsが、カナダ、デンマーク、アイルランド、英国の138施設で実施した無作為化非盲検試験「RADICALS-HD試験」の結果を報告した。これまで、中間および高リスクの限局性前立腺がんに対しては、初期治療として放射線療法とADTの併用を支持するエビデンスがあるが、前立腺全摘除術後の放射線療法とADTの至適併用期間は不明であった。Lancet誌オンライン版2024年5月16日号掲載の報告。主要評価項目はMFS 研究グループは、前立腺全摘除術後の放射線療法の適応があり、前立腺特異抗原(PSA)が5ng/mL未満で転移病変がなく書面による同意が得られた患者を、放射線療法(RT)+6ヵ月間のADT併用(短期ADT併用)群、またはRT+24ヵ月間のADT併用(長期ADT併用)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。層別因子は、グリソンスコア、断端陽性、放射線療法の時期、予定された放射線療法のスケジュール、予定されたADTの種類であった。 ADTは、無作為化後2ヵ月以内に開始し、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アナログに加え、GnRHアナログ初回投与の1週間前から経口抗アンドロゲン薬を3週間投与した。GnRHアナログは、短期ADT併用群では月1回、長期ADT併用群では3ヵ月に1回の投与が推奨された。カナダ以外では、ビカルタミド単剤150mg連日経口投与、またはデガレリクス月1回皮下投与も許容された。 主要評価項目はMFSで、前立腺がんの遠隔転移またはあらゆる原因による死亡と定義し、標準的なtime-to-event解析を行った(ITT解析)。 本試験は当初、RT単独群vs.短期ADT併用群vs.24ヵ月のADTを併用する長期ADT併用群の3群割り付け(1対1対1)、または、RT単独群vs.短期ADT併用群(1対1)と短期ADT併用群vs.長期ADT併用群(1対1)の2通りの2群割り付けのいずれかを選択するようになっていたが、ほとんどの患者が後者に割り付けられたことから、途中で2群比較の2試験として実施された(RT単独群vs.短期ADT併用群の結果は別途報告)。最終的に、10年MFS率が75%から81%に増加(ハザード比[HR]:0.72)することに関して、両側α値5%で80%の検出力を有していた。短期ADTに対する長期ADTのハザード比は0.773(p=0.029) 2008年1月30日~2015年7月7日に、計1,523例(年齢中央値65歳、四分位範囲[IQR]:60~69)が短期ADT併用群(761例)または長期ADT併用群(762例)に割り付けられた。1,523例のうち、326例は当初の3群割り付けで無作為化された症例(3群割り付けでのRT単独群の症例は除外)であった。追跡調査は2021年12月31日に終了した。 追跡期間中央値8.9年(IQR:7.0~10.0)において、MFSイベントは計313例報告された(短期ADT併用群174例、長期ADT併用群139例)。HRは0.773(95%信頼区間[CI]:0.612~0.975、p=0.029)であり、短期ADT併用群と比較して長期ADT併用群でMFSが改善した。 10年MFS率は、短期ADT併用群71.9%(95%CI:67.6~75.7)、長期ADT併用群78.1%(74.2~81.5)であった。 Grade3以上の有害事象の発現率は、短期ADT併用群14%(105/753例)、長期ADT併用群19%(142/757例)であり、治療関連死は報告されなかった。

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モジュール式リードレスペーシング除細動システム、主要エンドポイント達成/NEJM

 皮下植込み型除細動器(S-ICD)と無線通信するリードレスペースメーカーは、植込み後6ヵ月時におけるリードレスペースメーカー関連主要合併症非発生率、リードレスペースメーカーとS-ICD間の通信成功率、およびパルス幅0.4msでペーシング閾値2.0V以下の患者の割合に関して、パフォーマンス目標を超えた。オランダ・アムステルダム大学医療センターのReinoud E. Knops氏らが、国際共同単群試験「Effectiveness of the EMPOWER Modular Pacing System and EMBLEM Subcutaneous ICD to Communicate Antitachycardia Pacing study:MODULAR ATP試験」の結果を報告した。S-ICDは、経静脈ICDよりリード関連合併症が少ないが、抗頻拍および徐脈ペーシングができない。リードレスペースメーカーとS-ICDの無線通信による抗頻拍および徐脈ペーシングを行うモジュール式ペーシング除細動システムの安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2024年5月18日号掲載の報告。心室性不整脈による突然死のリスクがある患者を登録 研究グループは、ICD植込みの適応があり単形性心室頻拍のリスクが高い18歳以上の患者でベースライン時にペーシングを必要とせず、変時性応答不全を有する、または心室同期不全のためにペーシングを必要とする患者を登録し、リードレスペースメーカー(商品名:EMPOWER)とS-ICDシステム(同:EMBLEM)を植え込み、退院前、1ヵ月、6ヵ月、12ヵ月時およびその後は6ヵ月ごとに追跡調査した。 安全性のエンドポイントは、植込み後6ヵ月時におけるリードレスペースメーカーに関連する主要合併症非発生率で、86%を目標として評価した。リードレスペースメーカー関連主要合併症は、ペースメーカーや手技または治療に関連した合併症で、システム交換、永久的ペースメーカー機能喪失、入院または死亡と定義した。 パフォーマンスの主要エンドポイントは、植込み後6ヵ月時におけるリードレスペースメーカーとS-ICD間の通信成功率(目標88%)、およびパルス幅0.4msでペーシング閾値2.0V以下の患者の割合(目標80%)であった。 2021年7月~2024年1月に、38施設において計293例が登録され、そのうち植込み後6ヵ月時の評価対象コホートには162例が含まれた。患者の平均年齢は60歳、女性が16.7%、平均左室駆出率は33.1(SD 12.6)%であった。162例のうち、151例が6ヵ月の追跡調査を完遂した。主要合併症の非発生率97.5% リードレスペースメーカー関連主要合併症非発生率は97.5%、片側98.8%信頼区間(CI)の下限値は94.2%で、事前に規定された目標を上回った。 リードレスペースメーカーとS-ICD間の通信成功率は98.8%、片側97.5%CIの下限値は97.0%で、事前に規定された目標を上回った。 パルス幅0.4msでペーシング閾値2.0V以下の患者の割合は97.4%(147/151例)、片側97.5%CIの下限値は93.4%で、事前に規定された目標を上回った。 抗頻拍ペーシング成功率は61.3%で、デバイスの通信障害により抗頻拍ペーシングが実施されなかったエピソードはなかった。 死亡は8例報告された。うち4例が植込み後6ヵ月以内であったが、死因がデバイスや手技に関連すると判定された死亡例はなかった。

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帝王切開で生まれた児は2回の麻疹ワクチン接種が必要

 帝王切開で生まれた児は、初回の麻疹ワクチン接種だけでは予防効果を得にくいようだ。新たな研究で、経膣分娩で生まれた児に比べて帝王切開で生まれた児では、初回の麻疹ワクチン接種後に免疫を獲得できないワクチン効果不全に陥る可能性が2.6倍も高いことが示された。英ケンブリッジ大学遺伝学分野のHenrik Salje氏らによるこの研究結果は、「Nature Microbiology」に5月13日掲載された。 研究グループは、「麻疹ウイルスは感染力が非常に強く、たとえワクチン効果不全率が低くてもアウトブレイク発生のリスクはかなり高くなる」と説明する。麻疹は、鼻水や発熱などの風邪に似た初期症状が生じた後に特徴的な発疹が現れる。重症化すると失明、発作などの重篤な合併症を引き起こしたり、死に至ることもある。1963年にワクチン接種が導入される以前は、麻疹により毎年推定260万人が死亡していた。 この研究では、中国の母親と新生児から成るコホートと小児コホートの2つのコホートから抽出された0歳から12歳の小児1,505人の血清学的データと実証モデルを用いて、出生後の抗体の推移を調べた。これらの試験対象者は、ベースライン時とその後6回の追跡調査時(新生児コホートでは生後2・4・6・12・24・36カ月時、小児コホートでは2013〜2016年の間にほぼ6カ月おき)に静脈血を採取されていた。 その結果、対象児ごとの差異はあるものの、出生時からワクチン接種後までの麻疹ウイルスに対する抗体レベルの変化を、かなり正確に予測できることが明らかになった。また、経膣分娩で生まれた児と比べて帝王切開で生まれた児では、初回の麻疹ワクチン接種がワクチン効果不全になるオッズが2.56倍であることも示された。初回接種後にワクチン効果不全が確認された児の割合は、帝王切開で生まれた児で12%(16/133人)であったのに対し、経膣分娩で生まれた児では5%(10/217人)であった。しかし、初回接種後にワクチン効果不全が確認された児でも、2回目の接種後には強固な免疫反応が認められた。 Salje氏は、「この研究により、帝王切開か経膣分娩かという分娩法の違いが、成長過程で遭遇する疾患に対する免疫力に長期的な影響を及ぼすことが明らかになった」と述べている。同氏は、「多くの児が麻疹ワクチンを2回接種していないことが分かっている。2022年に麻疹ワクチン接種を1回しか受けていなかった児の数は世界で83%に上り、これは2008年以降で最低の数字だ。そのような状態は、本人のみならず周囲の人にも危険をもたらしかねない」と危惧を示し、「帝王切開で生まれた児は、われわれが確実にフォローアップして、麻疹ワクチンの2回目接種を受けさせるようにするべきだ」と述べている。 帝王切開で生まれた児でワクチン効果不全に陥る可能性が高い理由について、研究グループは、腸内マイクロバイオームの違いによるものではないかと推測している。経膣分娩では、母親からより多様なマイクロバイオームが児に移行する傾向があり、それが免疫系に保護的に働く。Salje氏は、「帝王切開で生まれた児では、経膣分娩で生まれた児のように母親のマイクロバイオームにさらされることはないため、腸内細菌叢の発達に時間がかかる。このことが、ワクチン接種後のプライミング効果を低下させていると考えられる」との考えを示している。

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コロナ禍の行動制限により市民のAED使用が減少

 コロナ禍の行動制限は、市民による自動体外式除細動器(automated external defibrillator;AED)の使用にも影響を及ぼした。2020~2021年の新型コロナウイルス感染症によるパンデミック中、AEDを用いた一般市民による除細動(public access defibrillation;PAD)の実施率が低下し、院外心停止(医療機関外での心肺停止)患者の転帰が悪化していたことが示された。これは新潟医療福祉大学救急救命学科の大松健太郎氏らによる研究であり、「BMJ Open」に4月8日掲載された。 バイスタンダー(救急現場に居合わせた人)が一次救命処置(basic life support;BLS)でAEDを使用することにより、電気ショックの対象となる院外心停止患者の神経学的転帰(心停止蘇生後の脳障害)が改善する。そのため多くの市民が集まる公共の場などではAEDの設置が推奨されている。一方、パンデミック中にPAD実施率が低下したことを示す研究も報告されている。 著者らは今回、パンデミックによる影響を詳細に検討するため、2016年1月~2021年12月の総務省消防庁による院外心停止患者のデータと救急搬送に関するデータを用いて、後ろ向きコホート研究を行った。新生児や住宅での心停止などを除いた計22万6,182人の院外心停止患者を対象として、PAD実施率および神経学的に良好な1カ月生存率を調査した。また、AED設置が推奨されている場所とそれ以外の場所での分析も行った。 院外心停止全体に占める住宅外での院外心停止の割合は、パンデミック前(2016~2019年)は33.7%だったのが、パンデミック中(2020~2021年)はわずかに低下して31.9%だった。パンデミック前、住宅外の院外心停止は冬季に少なく、夏季に多いという季節的傾向が見られた。パンデミックが月ごとの傾向に及ぼした影響を分析した結果、パンデミック中にPAD実施率は低くなり、主として1年目の最初の緊急事態宣言時および2年目を通して低かったことが明らかとなった(交互作用P<0.001)。PAD実施率の低下と相関して、神経学的に良好な1カ月生存率も低下していた(R=0.612、P=0.002)。 また、パンデミックによるPAD実施率の低下への影響は、AEDの設置が推奨されている場所では有意(交互作用P=0.033)である一方、それ以外の場所では有意ではない(交互作用P=0.175)という結果も得られた。さらに、パンデミック中、バイスタンダーによるBLS(心肺蘇生またはPAD実施)の5分以上の遅れが増加していることも示され、この遅れはAEDの設置が推奨されていない場所の方が顕著だった。 以上から著者らは、「長期の度重なる行動制限が行われたパンデミック中、住宅外でPADなどのBLS行動に混乱が生じ、院外心停止患者の転帰が悪化していた」と結論。結果に関連して、感染対策の観点から消防署などが実施するBLS講習の回数や規模が縮小され、地域でBLSを行う人の数が減少していたことなどを説明している。その上で、「BLS訓練の維持、AEDの最適な配置、十分な訓練を受けた市民に心停止の発生場所を伝えるシステムの確立が不可欠だ」と述べている。

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専属英会話講師の登場【Dr. 中島の 新・徒然草】(531)

五百三十一の段 専属英会話講師の登場もうすぐ衣替えの季節。最近は深緑と涼風の良い気候ですね。1年中こうだったらいいのですけど。さて、前回に引き続いて、今回もChatGPTと英語ですよ。「またかよ」という読者がおられたらすみません。でも皆さん、どちらか一方には興味をお持ちではないでしょうか。今回は「音声会話機能を使ったらChatGPTが専属英会話講師になってしまった」というお話です。スマホ版のChatGPTには音声会話機能があります。無料版のGPT-3.5でも、回数制限付きでGPT-4o(オムニ)の音声会話が可能なようです。試しに知り合いのスマホにChatGPTをダウンロードし、そのまま試してみたら、無料版でも音声でやりとりすることができました。ただ、途中で「また後でお試しください」という意味のメッセージが出てきて中断されました。無料版ゆえの使用時間の制限か、通信回線の混雑で接続が不安定になったのかもしれません。というわけで、実際にChatGPTを英会話講師として使う方法を紹介しましょう。まずプロンプトと呼ばれる入力は日本語でOK。ChatGPTの入力画面を開け、右下のヘッドホンマークを押します。そしたら画面中心の模様がグルグル回ってグレーの丸になり、「話し始める」という表示が出ます。そしたら「英会話の練習をしたいのでロールプレイのお相手をしてくれませんか?」と声を掛けましょう。5秒ほどすると「承知しました。どのような状況を考えていますか」みたいな返事があるので、日本語で適当な設定をしてください。たとえば、「私が医者でそちらが患者さん。めまいを主訴に受診したという設定で、一問一答でお願いします」と言っておいてから“What matters to you?”と英語で話し掛けると英会話開始です。ChatGPTのほうは「1週間ほど前からめまいがあります」とか「部屋がグルグル回ります」とかいろいろ訴えてくるので「何かめまいを誘発させたり悪化させたりするようなことはありますか?」などと聞くわけです。すると“When I move my head, it gets worse, but if I keep my head still, the vertigo slowly goes away.”(頭を動かすとめまいがひどくなり、頭を動かさないと徐々にめまいが去っていきます)といった答えが返ってきました。これは完全にBPPV(Benign Paroxysmal Positional Vertigo;良性発作性頭位めまい症)を意識している返答なので、こちらも「大人しくしていたら数日で改善しますよ」などとアドバイスをします。同じように頭痛のことでロールプレイをした時には、“Bright lights and loud noises definitely make my head worse. Sometimes strong smells can trigger them too.”(明るい光や大きな騒音で確かに頭痛が悪化します。時には強い匂いで頭痛が誘発されます)などという答えが返ってきました。典型的な偏頭痛ですね。診察室ではいつもの会話なので、英語でも何とか最後までやり通すことができました。問題があるとすれば、ChatGPTが時々暴走して医師のセリフを横取りしたり、日本語になったりすることです。こういった場合には「それは私のセリフなので、貴女は患者さんの役をしてください。それと英語でお願いします」と日本語で言うと、素直に元の設定に戻ってくれます。いろいろ試した結果、ChatGPTを使った英会話ロールプレイは、もう最強の英会話練習ではないかと思うようになりました。さて、ChatGPTで英会話ロールプレイをする時のいくつかの注意点を挙げておきましょう。若干のタイムラグがあるので、相手が話し始めるまで辛抱強く待つこと。プロンプトは日本語でOK。途中から条件を追加するのも問題なし。相手はAIなので、忖度する必要はまったくなし。先方が逆ギレしたり拗ねたりする場面には出くわしたことがありません。いつ始めてもOK、唐突に終わってもOK、相手が気を悪くする心配なし。10分ほどの隙間時間があれば、いつでもどこでも始めることができますが、周囲に人がいないところのほうがよさそうです。会話の記録はテキストで残っているので、後で復習するのも簡単。というわけで、ついに到達した最強の英会話勉強法。読者の皆さんもぜひお試しください。最後に1句衣替え 熱血勉強 AIと

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ウイルスと関連するがん【1分間で学べる感染症】第4回

画像を拡大するTake home messageウイルスと関連するがんを理解しよう。HBVとHPVはワクチンにより予防可能である。がんの原因にはさまざまな因子があることが知られていますが、その中でも近年とくに注目を浴びているのが、感染症によるがんです。人間に感染症を引き起こす病原微生物は、一般的には大きく細菌・ウイルス・真菌・寄生虫と分類されますが、その中でもとくにウイルスはがんと関連するものが多く報告されています。具体的には以下の8つです。EBウイルス(EBV)・バーキットリンパ腫 ・ホジキンリンパ腫 ・鼻咽頭がん などB型肝炎ウイルス(HBV)・肝細胞がんC型肝炎ウイルス(HCV)・肝細胞がん ・非ホジキンリンパ腫HIV・カポジ肉腫 ・非ホジキンリンパ腫 ・子宮頸がん ・非AIDS関連がんヒトヘルペス8型ウイルス(HHV-8)・カポジ肉腫 ・原発性胸水性リンパ腫 ・多中心性キャッスルマン病ヒトパピローマウイルス(HPV)・肛門・子宮頸・陰茎・咽頭・膣がんHTLV-1・成人T細胞性白血病/リンパ腫メッケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)・メッケル細胞がんこれらのうち、HBVとHPVに関してはワクチンが普及しており、予防可能であるといわれています。がん全体の約12~20%がウイルスと関連すると推定されており、実に大きな割合を占めています。このことを念頭に置き、必要な患者へのスクリーニングや早期発見に役立てましょう。1)Jennifer Brubaker. “The 7 Viruses That Cause Human Cancers”. American Society for Microbiology. 2019-01-25., (参照2024-05-01)

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第99回 精巣にもすでにナノプラスチックが侵入

頸動脈だけではなかった以前、記事でも紹介したように、プラスチックの細片のうち、大きさが1μm~5mmのものをマイクロプラスチック、より小さくnm(ナノメートル)レベルのものをナノプラスチックと呼び、MNPs(Microplastics and Nanoplastics)と総称します。ペットボトル内にも存在することから、上記の頸動脈プラークへの侵入は衝撃的なニュースでした。私たち人類がどのようにしてプラスチックと向き合っていくのか、議論が必要になります。さて、MNPsはどこにでも存在することから、ヒトの生殖系に影響を与えるのではないかという話も当然出てくるわけです。イヌとヒトの精巣におけるマイクロプラスチックの頻度や組成を調べた研究が報告されました1)。この研究は、熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析計を使って、イヌの精巣47個とヒトの精巣23個に含まれる12種類のマイクロプラスチックを定量化したものです。残念ながら、いずれの精巣にもマイクロプラスチックの存在が明らかになりました。マイクロプラスチックの平均含有量はイヌ122.63μg/g、ヒト328.44μg/gという結果だったのです。ヒトとイヌの両者とも、主要なポリマータイプの割合は類似していて、最も多いのはポリエチレン(PE)でした。さらに、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレンテレフタラート(PET)のような特定のポリマーと精巣重量との間には負の相関が観察されました。共存か削減・撤廃かもしかすると、男性の生殖能力にもMNPsはすでに影響を及ぼし始めているのかもしれません。ただ、プラスチックというのは人類にとってすでに長い付き合いになっている物質ですから、実はもううまく共存できていて、そこまで悪影響がないという結論になるかもしれませんし、中長期的には削減・撤廃していかないとまずいという結論になるかもしれません。都市部では、管理がうまくできていないプラスチック廃棄物が多いほどMNPsが多いというデータもあり2)、取り組むことになるなら、人口が多い地域ほど優先的に、ということになります。ただ、利便性を捨てて多大なコストをかけるほどのメリットが人類にあるのかどうかも、まだはっきりしていません。参考文献・参考サイト1)Hu CJ, et al. Microplastic presence in dog and human testis and its potential association with sperm count and weights of testis and epididymis. Toxicol Sci. 2024 May 15:kfae060.2)Talang R, et al. Influencing factors of microplastic generation and microplastic contamination in urban freshwater. Heliyon. 2024 Apr 25;10(9):e30021.

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実臨床と資格試験との乖離を知る【国試のトリセツ】第42回

§4 実臨床リアリティ実臨床と資格試験との乖離を知るQuestion〈110D13〉異常がなければ高い確率で肺血栓塞栓症を否定できる検査はどれか。2つ選べ。(a)心電図(b)血清LD値(c)血中Dダイマー(d)胸部X線撮影(e)肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)

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タンパク質摂取量とアルツハイマー病との関連

 医療技術の進歩に伴い、疾患の構造は、急性疾患からアルツハイマー病(AD)などの慢性疾患に移行しつつある。その結果、疾患の発症だけでなく、健康寿命への潜在的な影響についての評価の必要性が高まっている。味の素株式会社のKazuki Fujiwara氏らは、ADの障害調整生存年(AD-DALY)率とタンパク質摂取量との関連を、性別および年齢グループごとに評価した。Nutrients誌2024年4月19日号の報告。 1990〜2019年の世界の疾病負担研究および日本の国民健康・栄養調査の公開データより抽出した、60代および70代以上の男女の代表値を分析に使用した。AD-DALY率とタンパク質摂取量との関連性を評価するため、相関分析を行い、重回帰モデルを層別化した。さらに、層別重回帰モデルを用いて、タンパク質摂取量の変化に伴うAD-DALY率の変化をシミュレートした。 主な結果は以下のとおり。・AD-DALY率とタンパク質摂取量は、すべての性別および年齢グループにおいて、有意な負の相関を示した。・層別重回帰モデルでは、女性において、タンパク質摂取量の増加とAD-DALY率の低下との間に有意な関連が認められた。・シミュレートでは、タンパク質摂取量が1.5g/kg/日まで増加すると、AD-DALY率は2019年と比較し、5〜9%減少した。・しかし、動物および植物性タンパク質の摂取量とAD-DALY率との関連性は、性別および年齢グループにより異なることが示唆された。 著者らは、「平均タンパク質摂取量を推奨範囲内で増加させることにより、AD-DALY率を改善可能であることが示唆された」としている。

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島根県の呼吸器診療の未来を支えるクラウドファンディングを開始/島根大学

 島根大学医学部 呼吸器内科が中心となり「島根県の呼吸器診療の未来を支えるクラウドファンディング」を開始した。進む高齢化、不足する呼吸器専門医 島根は全国的にも高齢化が進んでいる県であり、令和4年の高齢化率は34.7%で全国第7位である1)。高齢者は免疫機能が低下していることもあり、感染症やがんなど呼吸器疾患の発症率も高い。それに対して、島根では全県的に呼吸器専門医が不足しており、地域によっては専門医がいないという深刻な状況だ。このまま地域の呼吸器専門医が不在の状態が続くと呼吸器診療体制が形成できず、早期診断、疾患予防の輪が広がらないとされる。 そのような中、島根大学医学部の呼吸器内科教授である礒部 威氏をプロジェクトリーダーとして、「呼吸器専門医の育成」「非専門医師の呼吸器疾患の知識向上」「一般の方むけの啓発」をサポートするクラウドファンディングがスタートした。難易度高い呼吸器専門メディカルスタッフの育成 高齢者は複数の慢性疾患を抱えていることが多い。高齢者が多い島根では「内科全般の知識を有する」呼吸器専門医の育成が重要な課題だ。また、呼吸器専門医の診療範囲は、感染症、がん、気管支喘息、睡眠時無呼吸症候群など多岐に及ぶ。専門性の維持・向上には、多くの専門資格の取得を目指してキャリアを積んでいく必要がある。 そのため、呼吸器専門医を目指すには、研修や学会への参加、自己研鑽が必要となる。医師の金銭的、時間的な負担は大きい。クラウドファンディングの資金で、県内の呼吸器研修医がアクセス可能なITを活用した講習会セミナーを開く予定だ。非専門医への呼吸器疾患を啓発して診療連携 呼吸器疾患は早期発見が重要となる。そのためには呼吸器専門医と非専門医の連携が重要である。非専門医の最新の呼吸器疾患の知識の補充は欠かせない。とはいえ、多忙な診療の中、専門外の知識を学習するのは容易ではない。クラウドファンディングで、非専門医が呼吸器疾患の情報をキャッチアップできるHPを作成する。呼吸器疾患の予防にカギとなる一般大衆の知識向上 呼吸器疾患は禁煙、ワクチン、検診など予防が効果的であり、一般大衆の疾患知識は予防に重要である。しかし、実際は呼吸器疾患やその予防について学ぶ機会はほとんどない。 また、高齢化が進む島根県においては、適正な医療を提供しQOLを向上するため「高齢者機能評価」の普及が重要である。 一般大衆の呼吸器疾患の予防医学や高齢者機能評価の必要性について知識を得る機会を増やすため、市民公開講座などの啓発活動もクラウドファンディングで集まった資金を使って積極的に行っていきたいという。・目標金額:400万円・資金使途:生涯教育支援費用、広報用HP作成、Zoom使用料 、啓発活動、事務局人件費・運営費、クラウドファンディング手数料 など

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前立腺全摘除術後放射線療法、ADTなしvs.短期ADT/Lancet

 前立腺全摘除術後の前立腺床に対する放射線療法後に転移がみられることはまれであるが、放射線療法に6ヵ月のアンドロゲン除去療法(ADT)を追加しても、ADTを行わない場合と比較して無転移生存期間(MFS)は改善しないことが示された。英国・The Institute of Cancer ResearchのChris C. Parker氏らRADICALS investigatorsが、カナダ、デンマーク、アイルランド、英国の121施設で実施された無作為化非盲検試験「RADICALS-HD試験」の結果を報告した。これまで、中間および高リスクの限局性前立腺がんに対しては、放射線療法とともに術後補助療法として短期間のADTを行うとMFSが改善することが示されていたが、前立腺全摘除術後の放射線療法とADT併用の有用性は不明であった。Lancet誌オンライン版2024年5月16日号掲載の報告。RT単独とRT+ADT6ヵ月間でMFSを比較 RADICALS-HD試験は、前立腺がんに対する術後放射線療法と併用するADTの有効性を検証する国際第III相ランダム化比較試験である。 研究グループは、前立腺全摘除術後の放射線療法の適応があり、前立腺特異抗原(PSA)が5ng/mL未満で転移病変がなく書面による同意が得られた患者を、放射線療法(RT)単独群、RT+6ヵ月間のADT(短期ADT)併用群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。層別因子は、グリソンスコア、断端陽性、放射線療法の時期、予定された放射線療法のスケジュール、予定されたADTの種類であった。 ADTは、無作為化後2ヵ月以内に開始し、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アナログを、通常は月1回皮下投与が推奨された。加えて、GnRHアナログ初回投与の1週間前から抗アンドロゲン薬を3週間投与した。カナダ以外では、ビカルタミド単剤150mg連日経口投与、またはデガレリクス月1回皮下投与も許容された。 主要評価項目はMFSで、前立腺がんの遠隔転移またはあらゆる原因による死亡と定義し、無作為化の層別因子による層別log-rank検定により群間比較を行った(ITT解析)。 本試験は当初、RT単独群vs.短期ADT併用群vs.24ヵ月のADTを併用する長期ADT併用群の3群割り付け(1対1対1)、または、RT単独群vs.短期ADT併用群(1対1)と短期ADT併用群vs.長期ADT併用群(1対1)の2通りの2群割り付けのいずれかを選択するようになっていた。しかし、3群割り付けを選択した患者は少数であったことから、途中で2群比較の2試験として実施された(短期ADT併用群vs.長期ADT併用群の結果は別途報告)。最終的に、10年MFS率が80%から86%に増加(ハザード比[HR]:0.67)することに関する試験の検出力は80%(両側α値5%)であった。追跡期間中央値9.0年においてMFSに有意差なし 2007年11月22日~2015年6月29日に、計1,480例(年齢中央値66歳、四分位範囲[IQR]:61~69歳)がRT単独群(737例)または短期ADT併用群(743例)に割り付けられた。1,480例のうち、330例は当初の3群割り付けで無作為化された症例であった(3群割り付けでの長期ADT併用群の症例は解析から除外)。追跡調査は2021年12月31日に終了した。 追跡期間中央値9.0年(IQR:7.1~10.1)において、MFSイベントは計268例報告された(RT単独群142例、短期ADT併用群126例)。HRは0.886(95%信頼区間[CI]:0.688~1.140、p=0.35)であり、短期ADT併用によるMFSの改善は認められなかった。 10年MFS率は、RT単独群79.2%(95%CI:75.4~82.5)、短期ADT併用群80.4%(76.6~83.6)であった。 Grade3以上の有害事象の発現率は、RT単独群17%(121/737例)、短期ADT併用群14%(100/743例)であり、治療関連死は報告されなかった。

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超急性期脳卒中、救急車内での降圧治療は有効か?/NEJM

 急性期脳卒中が疑われる血圧高値の患者において、病院到着前に救急車内で降圧治療を行っても機能的アウトカムは改善しない。中国・同済大学のGang Li氏らが、同国51施設で実施した無作為化非盲検試験「INTERACT4試験」の結果を報告した。本試験では、病院到着後に対象患者の46.5%が脳出血と診断された。虚血性か出血性か病型判別前の急性期脳卒中の治療は困難で、救急車内の超早期血圧コントロールが、未診断の急性期脳卒中患者のアウトカムを改善するかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2024年5月16日号掲載の報告。発症後2時間以内、収縮期血圧150mmHg以上の脳卒中疑い患者を対象に試験 研究グループは、FASTスコア(顔[顔面下垂]、腕[上がらない]、言語[言葉が不明瞭]、時間[救急車を呼ぶまでの時間])が2以上(範囲:0~4、スコアが高いほど症状が強いことを示す)、収縮期血圧150mmHg以上、症状発現後2時間以内の急性期脳卒中が疑われる成人患者を、救急車内でただちに降圧治療を行う群(介入群)と、病院到着後に血圧管理を開始する群(通常ケア群)に、地域(中国の東部vs.西部)、年齢(65歳以上vs.65歳未満)、FASTスコア(3点以上vs.2点)を層別因子として無作為に割り付けた。 介入群では、救急車内でウラピジル25mgを1分間でボーラス投与し、収縮期血圧が130~140mmHgに低下しない場合は、5分後に1回のみ同用量を再投与した。 有効性の主要アウトカムは、無作為化後90日時点の修正Rankinスケールスコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡])の分布で評価した機能的アウトカムで、ITT集団を解析対象とした。安全性アウトカムは、重篤な有害事象であった。降圧治療の開始、救急車内と病院到着後で全体では機能的アウトカムに差はなし 2020年3月20日~2023年8月31日に計2,425例が無作為化され、同意撤回等を除く2,404例(介入群1,205例、通常ケア群1,199例)がITT集団となった。 患者背景は、平均年齢70歳、発症から無作為化までの時間の中央値は61分(四分位範囲[IQR]:41~93)、無作為化時の平均血圧は178/98mmHgであった。病院到着後に画像検査で脳卒中と確定診断されたのは2,240例で、そのうち1,041例(46.5%)が脳出血(脳内出血1,029例、くも膜下出血12例)、計1,199例(53.5%)が脳梗塞(頭蓋外または頭蓋内のアテローム性または心塞栓症による脳梗塞907例、一過性脳虚血発作53例)であった。また、病院到着時の平均収縮期血圧は、介入群158mmHg、通常ケア群170mmHgであった。 無作為化後90日時点の修正Rankinスケールスコアの分布について、両群間に有意差は認められなかった(機能的アウトカム不良の調整共通オッズ比[OR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.87~1.15)。 サブグループ解析の結果では、機能的アウトカム不良の調整共通ORは脳出血患者では低く(0.75、95%CI:0.60~0.92)、脳梗塞患者では高かった(1.30、1.06~1.60)。ただし同解析は階層的統計解析計画には含まれていなかったため、著者は「これらの関連について結論付けることはできない」としている。 重篤な有害事象の発現率は、介入群27.5%、通常ケア群28.7%であり、両群で同程度であった。

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働き盛りに発症が多いIBDには社会の理解が必要/ヤンセン

 ヤンセンファーマは、5月19日の「世界IBD(炎症性腸疾患)デー」に合わせIBD患者の就労上の課題、その解決に向けた取り組みの啓発にメディアセミナーを開催した。 IBDは小腸や大腸の粘膜に慢性炎症や潰瘍を引き起こす国の指定難病で、現在国内には患者が約29万人いると推定される。発症年齢のピークは男女ともに10代後半~30代前半で、治療と仕事の両立が患者にとっては課題となる。 メディアセミナーでは、専門医による治療と仕事の両立での課題、患者視点による就労上の問題や患者アンケ―トの結果、ヤンセンファーマが推進する「IBDはたらくプロジェクト」で行なったIBD患者の就労に関する調査結果などが講演された。IBD治療と仕事の両立に必要なのは社会のサポート 「IBD患者さんがはたらき続けるために」をテーマに小林 拓氏(北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター センター長)が、IBD疾患の概要や診療、働き世代の患者フォローについてレクチャーを行った。 IBDは消化管に起こる炎症疾患の総称を指すが、感染性や薬剤性などの特異性と、主にクローン病や潰瘍性大腸炎などの非特異性の2つに大別される。この非特異性の両疾患は社会的によく知られており、現在では継続的な治療と日常のケアで良い状態を維持することができるようになっている。 環境要因、遺伝的要因、腸内細菌、免疫応答の4つがIBDの要因として考えられ、その患者数は急激に増加しており、両疾患ともトータルで約29万人(400人に1人)近くの患者が推定されているほか、患者分布では、いわゆる働き盛り世代の30~40歳代に多いとされる。そのため、いかに仕事を続けつつ、治療継続ができる環境作りを社会が構築できるかが重要となる。 クローン病、潰瘍性大腸炎の共通症状として「下痢」「血便」「腹痛」があり、クローン病では「体重減少」「発熱」「肛門の異常」などの症状が、潰瘍性大腸炎では「便意切迫」「貧血」などの症状がみられ、患者としては隠しておきたい症状が並ぶ。そして、これらは寛解と再燃を繰り返しながら慢性の経過をたどるために、継続的な治療と定期的な通院が必要となる。再燃の原因は、個々の患者で異なり、その原因は現在も不明である。 治療では、炎症を抑えるステロイド、5-ASA製剤、生物学的製剤、JAK阻害薬、インテグリン阻害薬などの経口薬、注射薬などの薬物療法、消化管の狭窄を広げる内視鏡的バルーン拡張術、外科手術が行われ、クローン病では栄養療法も行われている。また、患者が日常生活で気を付けることとして、食事、適量のアルコール、妊娠・出産、仕事、運動などがあるが、とくに「たばこ」についてはクローン病で悪化、再燃する可能性があり、注意が必要されている。 患者の労働環境につき小林氏は、「職場に潰瘍性大腸炎と言えず悪化した例」「クローン病ゆえに進学・就職などができなかった例」「潰瘍性大腸炎の治療を中断して悪化、入院した例」「クローン病の発症で就業制限された例」「潰瘍性大腸炎で大腸を摘出し、その後のQOLに影響が出た例」と5つの症例を示した。症例で共通していることは、いずれも人生で重要なステージである10~20代でIBDを発症したことで、進学や就職に多大な影響が出ていることであり、社会的な疾患への理解の必要性を訴えた。 最後に小林氏は、「難病のある人の雇用管理マニュアル」から治療と仕事の両立について資料を示し、難病でも仕事を無理なく続けられている人は3割に過ぎず、7割の人は仕事が続けられないか、病気に配慮のない環境で働いていることを示すとともに、「IBDは適切な治療で寛解を維持できれば、仕事や生活で制限はないので、『通院ができる』などの環境作りをサポートしてもらいたい」と語り、レクチャー終えた。患者の約6割が就職・転職で困っている IBDネットワークの就労特任理事の仲島 雄大氏が「難病と就労の両立~当事者が話す、病気と付き合いながら働くということ」をテーマに、患者視点からIBD患者の悩みやアンケート結果などを説明した。 仲島氏は、病歴32年の潰瘍性大腸炎患者であり、自身の体験から患者は外面から難病と理解してもらえず困っていること、病状も寛解と再燃を繰り返すことが悩みであり、常に将来への不安がつきまとうなどと語った。同ネットワークが行った会員へのアンケ―ト(n=64)によると発症は20~29歳が1番多く、働き方は会社員が最多で、重労働に従事している人も1割いた。長く働き続けられる理由としては、「職場の配慮」が1番多く、スムーズに受診をさせてもらえる仕組みが重要だった。仲島氏は、「今後はこうした内容を含め小冊子を作成する予定」と展望を語った。 ヤンセンファーマの村崎 仁美氏(メディカルアフェアーズ本部)が、同社が行った「IBD患者さんの抱える就労における課題-調査結果より」について、概要を説明した。 アンケートは2023年11月に実施され、クローン病または潰瘍性大腸炎と診断され、薬物治療を受けつつ、フルタイムで働いている男女の患者200人に行われた。 「就職・転職活動中の苦労や困ったこと」では、55.9%の人が「苦労や困ったことがあった」と回答し、「困ったこと、悩んだこと」の中でも「病気のことを伝えるかどうか悩んだ」という事項が1番多かった。 「病状悪化(再燃)による仕事への影響」では、全体で「急な欠勤をした」が1番多く、「仕事のスケジュールを変更した」、「休職した」の順で多かった。とくに症状が中等症以上の人はこれらの比率が高かった。 「治療と仕事の両立」では、全体で70%の人ができていたが、症状が中等症以上の人では53.3%と比率は下がった。 「自分らしく働くために必要なこと」では、「周囲(社会)の理解」が49.0%、「行政による支援」が39.0%、「医師の支援」が18.5%の順で多かった。 「IBDであることを伝えるか」では、「職場の人に伝えている」が80.0%、「直属の上司」が43.5%、「とくに気にせず伝えている」が28.5%の順で多かった。

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