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同世代・同診療科の医師の年収は?/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2月20日(金)に会員医師1,004人(男性:875人、女性:129人)を対象に、「年収に関するアンケート」を実施した。その結果、80%の医師が昨年度の年収額は1,000万円以上と回答した。しかし、男女別にみると、男性では1,000万円以上が83%であったのに対し、女性は60%と男女差がみられた。全体の最多年収帯は1,400~1,600万円 全体で最も多い年収帯は1,400~1,600万円であった(全体の14%)。年代別では、35歳以下は1,000~1,200万円(20%)、36~45歳は1,400~1,600万円(23%)が最も多かった。それ以降の世代では2,000~2,500万円が最も多く、46~55歳では16%、56~65歳および66歳以上はそれぞれ15%であった。 年収1,000万円以上と回答した割合は、全体では80%であった。年代別では、35歳以下が65%、36~45歳が86%、46~55歳が88%と年齢が上がるごとに増加したが、56~65歳は84%、66歳以上は77%と減少した。 なお、2022年3月に実施した同様の調査では、全体で最も多い年収帯は2,000~2,500万円(全体の15%)であった。1,000万円以上は男性83%、女性60% 男女別にみると、男性では1,000万円以上と回答した割合は83%であったのに対し、女性は60%であった。最も多い年収帯は、男性が1,400~1,600万円および2,000~2,500万円(それぞれ14%)で、女性は1,200~1,400万円(15%)であった。診療科別の傾向は? 診療科別に昨年度の年収が1,600万円以上と回答した医師の割合は下記のとおり(30人以上の回答が得られた診療科を抜粋)。泌尿器科(60%)呼吸器内科(50%)消化器内科(47%)外科(47%)循環器内科(46%)精神科(45%)整形外科(45%)小児科(45%)内科(44%)神経内科(40%)糖尿病・代謝・内分泌内科(31%) その他、年代ごとの男女別、病床数別、勤務先別などの詳細な年収分布については、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2024【第1回】昨年度の年収

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2024年度コロナワクチン、製造株はJN.1系統に決定/厚労省

 厚生労働省は5月29日に、「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会 季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会」を開催し、2024年度秋冬の新型コロナワクチンの定期接種で使用するワクチンの抗原構成について、JN.1系統を使用することを決定した。 秋冬の新型コロナワクチンの抗原構成をJN.1系統とする決定は、世界保健機関(WHO)の推奨の現状や、製薬企業によるワクチン開発の状況を踏まえて行われた。 WHOのTAG-CO-VAC(Technical Advisory Group on COVID-19 Vaccine Composition)が2024年4月に発表した声明において、JN.1系統およびその下位系統へのより高い中和抗体の誘導を目指すことが推奨されている。 新型コロナワクチンの製薬企業に対し、各社のmRNAワクチンまたは組換えタンパクワクチンについて、新たな抗原構成のワクチンの開発状況などのヒアリングが行われた。小委員会の資料によると、非臨床試験の結果、JN.1の成分を含む1価ワクチン接種は、XBB対応1価ワクチン接種と比較して、JN.1に対して誘導される中和抗体価が、初回接種または追加接種が完了したマウスにさらに追加して接種した場合は、約2~10倍高かったことや、初回接種として接種した場合は、約3~47倍高かったことが、製薬企業より報告された。また、JN.1の成分を含む1価ワクチン接種は、JN.1系統の他の下位系統(KP.2など)に対して、JN.1と同等程度の中和抗体価の上昇を誘導したという。 国立感染症研究所の報告によると、現在の国内の各系統の検出状況は、KP.3系統を含むJN.1系統とその亜系統、およびXDQ.1系統が国内で主流となっている。直近4週間の系統別検出数は、JN.1系統とその亜系統が約50%超、次いでXDQ.1系統が約30%検出され、直近2週間では、JN.1亜系統であるKP.3系統の割合が増加しているという。

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降圧薬による湿疹性皮膚炎リスクの上昇

 湿疹性皮膚炎(アトピー性皮膚炎)と診断される高齢者が増加しているが、多くの湿疹研究は小児および若年成人を対象としており、高齢者の湿疹の病態および治療法はよく知られていない。高齢者の湿疹の背景に薬物、とくに降圧薬が関与している可能性を示唆する研究結果が発表された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のMorgan Ye氏らによる本研究は、JAMA Dermatology誌オンライン版2024年5月22日号に掲載された。 本研究は縦断コホート研究であり、英国The Health Improvement Networkに参加するプライマリケア診療所における60歳以上の患者を対象とした。1994年1月1日~2015年1月1日のデータを対象とし、解析は2020年1月6日~2024年2月6日に行われた。主要アウトカムは湿疹性皮膚炎の新規診断で、最も一般的な5つの湿疹コードのうち1つの初診日によって判断した。 主な結果は以下のとおり。・156万1,358例の高齢者(平均年齢67[SD 9]歳、女性54%)が対象となった。45%が高血圧の診断を受けたことがあり、追跡期間中央値6年(IQR:3~11年)における湿疹性皮膚炎の全有病率は6.7%だった。・湿疹性皮膚炎の罹患率は、降圧薬投与群のほうが非投与群よりも高かった(12例vs.9例/1,000人年)。・Cox比例ハザードモデル調整後、いずれかの降圧薬を投与された参加者は、いずれかの湿疹性皮膚炎のリスクが29%増加した(ハザード比[HR]:1.29、95%信頼区間[CI]:1.26~1.31)。・降圧薬を個別に評価したところ、皮膚炎リスクへの影響が大きいのは利尿薬(HR:1.21、95%CI:1.19~1.24)とカルシウム拮抗薬(HR:1.16、95%CI:1.14~1.18)で、小さいのはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(HR:1.02、95%CI:1.00~1.04)とβ遮断薬(HR:1.04、95%CI:1.02~1.06)であった。 研究者らは「このコホート研究により、降圧薬は湿疹性皮膚炎の増加と関連しており、その関連は利尿薬とカルシウム拮抗薬で大きく、ACE阻害薬とβ遮断薬で小さいことが明らかになった。この関連性の根底にある機序を理解するためにはさらなる研究が必要だが、これらのデータは、高齢患者の湿疹性皮膚炎の管理指針として臨床に役立つ可能性がある」としている。

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UKPDS 91:診断直後の強化血糖コントロール、死亡リスクを生涯低減/Lancet

 2型糖尿病におけるスルホニル尿素またはインスリン、あるいはメトホルミン療法による早期の強化血糖コントロールは、従来の食事療法を主体とする血糖コントロールと比較して、死亡および心筋梗塞のリスクをほぼ生涯にわたって減少させ、診断後すぐに正常血糖値に近い状態を実現することは、生涯にわたる糖尿病関連合併症のリスクを可能な限り最小限に抑えるために不可欠である可能性があることが、英国・オックスフォード大学のAmanda I. Adler氏らによる英国糖尿病前向き研究(UKPDS)の10年後の結果から、14年間の追跡調査で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年5月18日号で報告された。10年後以降、24年後までの14年間の解析結果 本研究では、1977~91年に英国の23施設を受診した25~65歳の2型糖尿病患者4,209例を、強化血糖コントロール(スルホニル尿素またはインスリン、体重増加がみられる場合はメトホルミン)を受ける群、または従来の血糖コントロール(主に食事療法)を受ける群に無作為に割り付けた。 この20年間の介入試験の終了時に、3,277例の生存者が10年間の試験後モニタリング期間に参加し、2007年9月30日まで追跡が行われた。本研究の対象は、この10年間の試験後モニタリング期間の終了時に生存していた患者1,489例であった。 ベースラインの平均年齢は50.2(SD 8.0)歳で、41.3%が女性であった。10年間の追跡開始時の平均年齢は70.9(8.5)歳で、その14年後の2021年9月30日の時点(合計24年)の生存者は79.9(8.0)歳だった。ベースラインからの追跡期間の範囲は0~42年で、期間中央値は17.5年(四分位範囲[IQR]:12.3~26.8)だった。メトホルミンで、死亡と心筋梗塞の相対リスクが20%、31%低下 試験終了から最長24年間に、血糖値およびメトホルミンのレガシー効果には、減弱の徴候を認めなかった。 従来の血糖コントロールと比較して、スルホニル尿素またはインスリン療法による早期の強化血糖コントロールでは、全体的な相対リスクが全死因死亡で10%(95%信頼区間[CI]:2~17、p=0.015)、心筋梗塞で17%(6~26、p=0.002)、細小血管症で26%(14~36、p<0.0001)の減少を示した。絶対リスクは、それぞれ2.7%、3.3%、3.5%低下した。 また、従来の血糖コントロールに比べ、メトホルミン療法による早期の強化血糖コントロールは、全体的な相対リスクが全死因死亡で20%(5~32、p=0.010)、心筋梗塞で31%(同12~46、p=0.003)減少した。絶対リスクは、それぞれ4.9%および6.2%低下した。脳卒中、末梢血管疾患のリスク低減は認めず 試験中または試験後に、2つの強化血糖コントロールのいずれにおいても、脳卒中および末梢血管疾患の有意なリスクの低下は認めず、メトホルミン療法では細小血管症の有意なリスク低減はみられなかった。 著者は、「この研究結果は、2型糖尿病患者に対する早期の強化血糖コントロールの導入を支持し、長期的な糖尿病関連合併症のリスクを最小化するための治療指針として活用される可能性がある」としている。本研究は、オックスフォード大学Nuffield Department of Population Health Pump Primingの助成で行われた。

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HER2+進行乳がん1次療法、エリブリン+HP vs.タキサン+HP(JBCRG-M06/EMERALD)/ASCO2024

 日本で実施された第III相JBCRG-M06/EMERALD試験の結果、HER2陽性(+)の局所進行または転移を有する乳がんの1次療法として、トラスツズマブ+ペルツズマブ+エリブリン併用療法は、トラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサン併用療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)が非劣性であったことを、神奈川県立がんセンターの山下 年成氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。 現在、トラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサンは、HER2+の再発・転移乳がんに対する標準的な1次療法である。しかし、タキサン系抗がん剤による浮腫や脱毛、末梢神経障害などは患者QOLを低下させうるため、同等の有効性を有し、かつ副作用リスクが低い治療法の開発が求められていた。そこで山下氏らは、非タキサン系の微小管阻害薬エリブリンをトラスツズマブ+ペルツズマブと併用した場合の、トラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサンに対する非劣性を評価するために本研究を実施した。・試験デザイン:多施設共同ランダム化非盲検非劣性第III相試験・対象:進行・転移に対する化学療法(T-DM1を除く)未治療のHER2+乳がん患者446例・試験群(エリブリン群):21日サイクルで、エリブリン1.4mg/m2(1・8日目)とペルツズマブ+トラスツズマブ(1日目)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで継続・対照群(タキサン群):21日サイクルで、ドセタキセル75mg/m2(1日目)またはパクリタキセル80mg/m2(1・8・15日目)とペルツズマブ+トラスツズマブ(1日目)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで継続・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間、全生存期間(OS)、患者報告の健康関連QOL、安全性など 主な結果は以下のとおり。・2017年8月~2020年4月に、エリブリン群224例、タキサン群222例に無作為に割り付けられ、2022年4月まで追跡された。追跡期間中央値は35.7ヵ月(範囲:0.3~66.5)であった(データカットオフ:2023年6月30日)。・ベースライン時の年齢中央値はエリブリン群56.0歳(範囲:27~70)/タキサン群57.0歳(32~70)、閉経後が67.9%/76.6%、ER+が57.1%/58.1%、de novo StageIVが58.0%/59.9%、周術期のタキサン治療歴ありが31.7%/30.2%、内臓転移ありが65.2%/65.8%であった。・主要評価項目であるPFS中央値は、エリブリン群14.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.7~16.2)、タキサン群12.9ヵ月(95%CI:10.8~15.6)であった。ハザード比(HR)は0.96(95%CI:0.76〜1.19、p=0.6817)であり、95%CIの上限値が非劣性マージン(1.33)を下回ったため、エリブリン群の非劣性が示された。・ORRは、エリブリン群76.8%(CRが11.6%)、タキサン群75.2%(13.5%)であった。・OS中央値は、エリブリン群は未達、タキサン群は65.3ヵ月であった(HR:1.09、95%CI:0.76~1.58、p=0.7258)。・試験治療下における有害事象は、エリブリン群93.3%(うちGrade3以上が58.9%)、タキサン群96.3%(59.2%)に発現した。好中球減少症(エリブリン群61.6%、タキサン群30.7%)と末梢神経障害(61.2%、52.8%)はエリブリン群で多く、下痢(36.6%、54.1%)と浮腫(8.5%、42.2%)はタキサン群で多かった。・末梢神経障害がエリブリン群で多かったのは、エリブリン群のほうが投与期間が長かったことに起因していると推測された(投与期間中央値:エリブリン28.1ヵ月、ドセタキセル18.1ヵ月、パクリタキセル20ヵ月)。 これらの結果より、山下氏は「本研究は、HER2+の局所進行・転移乳がんの1次療法として、トラスツズマブ+ペルツズマブと併用した場合の、エリブリンのタキサンに対する非劣性を示した初めての研究である。トラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサンと同等の効果を有する代替治療として、トラスツズマブ+ペルツズマブ+エリブリンは第1選択となる可能性がある」とまとめた。

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限局型小細胞肺がん、デュルバルマブ地固めでOS・PFS改善(ADRIATIC)/ASCO2024

 本邦では、StageI/IIA(UICC第8版)以外でPS0~2の限局型小細胞肺がん(LD-SCLC)の治療は、プラチナ製剤を用いた同時化学放射線療法(cCRT)および初回治療で完全寛解が得られた患者への予防的頭蓋照射(PCI)が、標準治療となっている。新たな治療法として、cCRT後のデュルバルマブ地固め療法が有用である可能性が示された。国際共同第III相無作為化比較試験「ADRIATIC試験」の第1回中間解析において、cCRT後のデュルバルマブ地固め療法が全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で、米国・Sarah Cannon Research InstituteのDavid R. Spigel氏が本研究結果を報告した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:I~III期(I/II期は外科手術不能の患者)でPS0/1のLD-SCLC患者のうち、cCRT後に病勢進行が認められなかった患者730例(PCIの有無は問わない)・試験群1(デュルバルマブ群):デュルバルマブ(1,500mg、cCRT後1~42日目に開始して4週ごと)を最長24ヵ月 264例・試験群2(デュルバルマブ+トレメリムマブ群):デュルバルマブ(同上)+トレメリムマブ(75mg、cCRT後1~42日目に開始して4週ごと)を最長24ヵ月 200例・対照群(プラセボ群):プラセボ 266例・評価項目:[主要評価項目]OS、RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS(いずれもデュルバルマブ群vs.プラセボ群)[副次評価項目]OS、RECIST v1.1に基づくBICRによるPFS(いずれもデュルバルマブ+トレメリムマブ群vs.プラセボ群)、安全性など 今回は、デュルバルマブ群とプラセボ群の比較結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2024年1月15日)において、OSおよびPFSの追跡期間中央値は、それぞれ37.2ヵ月、27.6ヵ月であった。・放射線照射は、1日1回がデュルバルマブ群73.9%、プラセボ群70.3%、1日2回がそれぞれ26.1%、29.7%であった。・OS中央値はデュルバルマブ群が55.9ヵ月、プラセボ群が33.4ヵ月であり、デュルバルマブ群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.57~0.93、p=0.0104)。24ヵ月OS率はそれぞれ68.0%、58.5%、36ヵ月OS率はそれぞれ56.5%、47.6%であった。・BICRによるPFS中央値は、デュルバルマブ群が16.6ヵ月、プラセボ群が9.2ヵ月であり、デュルバルマブ群が有意に改善した(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95、p=0.0161)。18ヵ月PFS率はそれぞれ48.8%、36.1%、24ヵ月PFS率はそれぞれ46.2%、34.2%であった。・OSとPFSは、いずれも事前に規定されたサブグループ間で一貫してデュルバルマブ群で改善する傾向にあった。・Grade3/4の有害事象(AE)はデュルバルマブ群24.4%、プラセボ群24.2%に発現した。投与中止に至ったAEはそれぞれ16.4%、10.6%、死亡に至ったAEはそれぞれ2.7%、1.9%に発現した。・肺臓炎/放射線肺臓炎はデュルバルマブ群38.2%、プラセボ群30.2%(Grade3/4はそれぞれ3.1%、2.6%)に発現した。 Spigel氏は、本結果について「デュルバルマブ地固め療法は、cCRT後に病勢進行が認められないLD-SCLC患者に対する新たな標準治療となるだろう」とまとめた。

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史上初の人工心臓植え込み手術+ブタ腎臓移植

 米国ニュージャージー州出身のLisa Pisanoさんは、人生の終わりを諦観していた。54歳の彼女は心不全と末期腎不全を患い、かつ、複数の慢性疾患があるため臓器移植の待機リストから外されていた。「リストに載らないことが分かった時には、自分に残された時間があまりないことを実感した」とPisanoさんは語っている。しかし彼女は、左室補助人工心臓(LVAD)の植え込みと遺伝子編集されたブタ腎臓の移植のおかげで、新たな命を手に入れた。 治療を担当した米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスの外科医によると、このような大きく異なる二つの医療技術が1人の患者に対して用いられたのは、これが初めてのことであり、LVAD植え込み手術を受けた患者が、その後なんらかの臓器移植を受けた例は記録がないという。さらに、遺伝子編集されたブタ腎臓の移植成功例は、今年3月に米国で行われた症例に続き、今回が2例目とのことだ。NYU移植研究所のRobert Montgomery氏は、「Pisanoさんの命を救うことを可能にした科学的な進歩は驚異的であり、それを支えた人々の信念は計り知れないほどの大きさだ」と述べている。 今回の移植では、外科医らはまずLVADを植え込み、その数日後、拒絶反応を防ぐために遺伝子編集されたブタの腎臓と胸腺を移植した。LVAD植え込み手術を行わなければ、Pisanoさんの余命はあと数日か数週間と予測されていた。しかし、腎不全患者は通常、LVADの適応とならない。NYUグロスマン医学部のNader Moazami氏は、「透析患者は死亡リスクが高いため、Pisanoさんも、もし腎臓移植の見込みが立っていなければLVADは使われなかっただろう。今回の治療は、腎臓移植を予定している透析患者に対してLVAD植え込み手術が行われた世界初のケースだ」と語る。 PisanoさんへのLVAD植え込み手術は4月4日、ブタ腎臓移植は4月12日に行われた。彼女には移植された臓器を攻撃する高レベルな抗体があったため、もしそのまま待機していたなら、適切なドナーが現れるまで恐らく何年もかかる可能性があったという。しかし、遺伝子編集によってこの問題は解消され、移植されたブタ腎臓はPisanoさんによく適合した。さらに、免疫系の“教育の場”である胸腺も移植することで、拒絶反応のリスクをより低下させた。Montgomery氏によると、「ヒトへの臓器移植に利用可能なブタは繁殖させることもでき、クローン作成のような複雑な技術的操作を必要としないため、臓器不足に対する持続可能、かつ拡張可能な解決策となり得る」とのことだ。 なお、米国の末期腎不全患者は約80万8,000人で、そのうちの8万9,000人以上が移植を受ける機会を待っているが、昨年、移植を受けられた患者はわずか約2万7,000人に過ぎなかったという。

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第196回 6月からの生活習慣病管理料の導入、新たな事務負担と実質的な減収に/厚労省

<先週の動き>1.6月からの生活習慣病管理料の導入、新たな事務負担と実質的な減収に/厚労省2.iPhoneにマイナンバーカード機能を搭載、2025年春に実現へ/デジタル庁3.総合診療科の認知向上とオンライン診療の普及に向け提言を提出/規制改革推進会議4.グーグルマップの口コミ訴訟、眼科医院が名誉毀損で勝訴5.健康被害が急増の自由診療クリニック、名義貸しが横行6.出産費用の透明化進む、『出産なび』で安心の選択を/厚労省1.6月からの生活習慣病管理料の導入、新たな事務負担と実質的な減収に/厚労省2024年度の診療報酬改定が6月1日より適用される。高血圧、糖尿病、脂質異常症の治療において「特定疾患療養管理料」から「生活習慣病管理料(I)」「生活習慣病管理料(II)」への移行が行われる。この改定は、質の高い疾病管理を進めることを目的とし、具体的には患者と医療者が共通の理解を持ち、療養計画書を作成して共有することが求められる。新たに導入される「生活習慣病管理料(II)」は333点となり、従来の「特定疾患療養管理料」225点より高く設定されている反面、算定回数が月2回から1回に減少する。また、「外来管理加算」や「処方箋料」が併算定できなくなり、全体の診療報酬は減少することになる。都内の開業医によれば、1日50人の患者のうち6割が特定疾患療養管理料を算定していた場合、年間で約115万円の減収が予測されている。改定のもう1つの大きな変更点は、療養計画書の作成と患者の同意・署名の取得が必須となる点で、これにより医師やスタッフの業務負担が増加する。療養計画書には、患者と相談した達成目標や行動目標、食事や運動の指導内容、血液検査の結果などが記載され、これを患者に説明し、同意を得て署名をもらう必要がある。一方、改定により「生活習慣病管理料(I)」も引き続き存在し、点数が引き上げられた。脂質異常症は610点、高血圧症は660点、糖尿病は760点となり、一定条件下で療養計画書の交付義務が免除される場合がある。また、生活習慣病管理料(II)の算定には多職種連携が推奨され、管理栄養士などの専門職との協力が求められる。外来栄養食事指導が必要な場合は、他の医療機関と連携し、指導記録を共有する体制を整備することが重要となる。厚生労働省は、生活習慣病管理料の導入により計画的な治療管理を促進し、疾病管理を求めている。その一方で、医療機関側には新たな文章作成など負担が増大するため、業務改善が必要となる。参考1)診療報酬の改定で開業医が年間115万円の減収? 生活習慣病の治療、6月から何が変わるのか(東京新聞)2)生活習慣病管理料(II)を新設し、2区分に(CB news)3)糖尿病・高血圧症等治療は特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料I・IIへシフト、計画的治療管理を(Gem Med)4)生活習慣病管理料への移行、当院の「療養計画書」の作成法(日経メディカル)2.iPhoneにマイナンバーカード機能を搭載、2025年春に実現へ/デジタル庁5月31日にデジタル庁は、2025年春をめどにiPhoneにマイナンバーカードの機能を搭載する計画を発表した。岸田 文雄首相と米アップル社のティム・クックCEOとの会談で、この計画が確認された。これにより、iPhoneを使って行政手続きや本人確認ができるようになる。すでにAndroid端末向けには2023年5月からスマホ用電子証明書の運用が開始されており、iPhoneへの対応が焦点となっていた。アップル社は、デジタル庁と協力してiPhoneのウォレット機能にマイナカードを追加する準備を進めており、物理的なカードがなくても、スマホだけで身分証明書として使用できるようになる。これによりコンビニエンスストアでの公的証明書の発行や、病院での本人確認などが可能となる。アップルウォレットの身分証明書機能が米国以外で展開されるのはわが国が初めてとなる。一方で、政府はマイナカード機能のスマホ搭載を進めるために法改正を行い、今回の法改正でマイナカードの全機能がスマホに搭載されることが可能となり、銀行口座や証券口座の開設がスマホだけで完結できるようになるほか、コンビニエンスストアなどでの年齢確認にも使用可能となる。さらに、マイナ保険証も2025年春以降にスマホで使用できるようになる見通し(なお現行の保険証は2024年12月に廃止され、マイナカードに1本化される)。しかし、マイナンバー制度には、個人情報の管理やセキュリティの面で課題が残っているため、政府は、デジタル庁が主体となり、個人情報の正確性を確保するための支援を行うことを新たに規定する。また、医療機関でのマイナ保険証の利用率が低いため、普及促進のための取り組みが必要とされている。iPhoneへのマイナンバーカード機能の搭載は、デジタル社会への移行を大きく進める重要な1歩となると予想され、今後も利用者が安心して使える環境を政府が整えることが求められる。参考1)マイナンバーカード機能のiPhoneへの搭載について(デジタル庁)2)iPhoneにマイナカードの機能搭載へ 来春を予定 デジタル庁(CB news)3)iPhoneにマイナ機能 かざして身分証明、病院などで アップル、来夏までに(日経新聞)3.総合診療科の認知向上とオンライン診療の普及に向け提言を提出/規制改革推進会議政府の規制改革推進会議は、規制改革推進に向けた答申をまとめ、5月31日に岸田 文雄首相に提出した。主な内容として、医療機関が「総合診療科」を標榜できるように広告規制の見直しを厚生労働省に求め、2025年までに結論を出す方針。これは、患者がプライマリケアにアクセスしやすくするための措置となる。現在の医療法の広告規制では、内科、外科、精神科など特定の診療科名しか単独で広告できないが、総合診療科はこの中に含まれていない。高齢化に伴い、複数の疾患を抱える高齢者が増える中、総合診療を提供する医療機関の認知度向上が求められ、これに対応するため規広告規制の見直しを求めたもの。また、在宅医療における薬物治療を円滑に提供するため、厚労省には、訪問看護ステーションにストックできる薬の種類を拡大することが検討されている。このほか、オンライン診療で精神療法が初診から利用できることにつき2025年までに結論を出し、診療報酬の見直しを行う方針。これは、オンライン診療の利用拡大を通じて、地域差を解消し、患者の利便性を高めることを目的としている。もう1つの重要な施策として、薬剤師が不在の店舗でもオンラインで市販薬を販売できるようにする規制改革が進められている。とくに、過疎地や深夜・早朝に薬剤師が常駐しない店舗に、遠隔で管理することで市販薬の販売を可能にする方針。これにより、薬剤師の人手不足を解消し、地域住民の利便性を向上させることを目指している。今回の答申を受け、政府は新たな規制改革実施計画を取りまとめ、近く閣議決定する予定。これにより、医療分野でのデジタル技術の活用などが具体的に進められることになる。参考1)規制改革推進に関する答申~利用者起点の社会変革~(規制改革推進会議)2)「総合診療科」の標榜容認検討へ、25年結論 規制改革推進の答申(CB news)3)人手不足、デジタルで解消 遠隔で薬販売/AIで要介護認定 規制改革会議が最終答申(日経新聞)4.グーグルマップの口コミ訴訟、眼科医院が名誉毀損で勝訴兵庫県尼崎市の眼科医院がグーグルマップの口コミ欄に一方的に悪評を投稿されたとして、損害賠償を求めた訴訟の判決が大阪地裁であった。5月31日に山中 耕一裁判官は、投稿者の大阪府豊能町の女性に対し、200万円の賠償と投稿の削除を命じた。訴えによると、眼科医院は3年前に「レーシック手術を受けたが左目だけで、右目はレンズを入れられた」や「何も症状がないのに勝手に一重まぶたにされた」といった内容の書き込みを受けた。医院の院長は、これらの内容に身に覚えがないとして、グーグルに情報開示を求めて投稿者を特定し、今年1月に女性を訴えた。山中裁判官は「書き込みは、眼科の医師が患者から承諾を得ずに勝手な医療行為をするという印象を与え、医院の社会的評価を低下させた」と述べ、投稿が名誉毀損にあたると判断した。眼科医院の代理人弁護士である壇 俊光氏は、「投稿者の特定には3年かかり、ネット社会における不当な投稿への対応の遅れを感じている。迅速な削除を求める司法判断が必要だ」と述べる。この判決により、インターネット上での名誉毀損行為に対する法的対応の重要性が再確認された。参考1)グーグルマップの口コミ欄で一方的に眼科医院の悪評、投稿者に200万円の賠償命じる判決(読売新聞)2)「クチコミ」投稿者に賠償命令 眼科医院長“評判落とされた”(NHK)5.健康被害が急増の自由診療クリニック、名義貸しが横行美容や健康への関心の高まりを背景に、公的な医療保険が適用されない自由診療を提供するクリニックが急増している。しかし、自由診療クリニックの増加に伴い、健康トラブルも多発しており、健康被害や契約上の問題が顕在化している。とくに、美容医療分野では、脱毛や薄毛治療、医療ダイエットなどの自由診療が行われ、患者は全額自己負担で利用している。NHKの報道によれば、都市部を中心に「一般社団法人」として設立された美容クリニックが急増し、その多くが自由診療を提供している。一般社団法人は、医師でなくても設立可能であり、登記のみで開業できるため、異業種からの参入が容易なために医師の「名義貸し」が横行、実際には医療行為に関与しない医師が管理者として名前を貸しているケースが多数報告されている。国民生活センターによると、美容医療に関するトラブルの相談件数は、2023年度に5,833件と、この5年間で約3倍に増加している。とくに健康被害の相談は839件に上り、過去5年間で約1.7倍に増加している。たとえば、高濃度のビタミン点滴によるアナフィラキシーショックなど、深刻な健康被害も報告されている。一般社団法人によるクリニックの運営に関しては、監督官庁がなく、医療法人のような規制も適用されないため、管理が不十分とされる。渋谷区保健所の熊澤 雄一郎生活衛生課長は、「一般社団法人のクリニックも医療法人と同様に業務内容の報告体制を整備する必要がある」と指摘する。厚生労働省は、専門家による検討会を立ち上げ、自由診療における美容医療の適切なあり方や対策を協議し、行政が事業内容を定期的にチェックできる制度について検討する予定。適切な監視体制の構築が急務となる。参考1)追跡“自由診療ビジネス”の闇 相次ぐ美容・健康トラブルの深層(NHK)2)一般社団法人のクリニック 都市部で増 医師「名義貸し」証言も(同)3)美容医療でトラブル増加 厚労省 検討会立ち上げ対策など協議へ(同)6.出産費用の透明化進む、『出産なび』で安心の選択を/厚労省5月30日に厚生労働省は、医療機関ごとの出産費用やサービス内容を比較できるウェブサイト「出産なび」を開設した。このサイトは、全国の病院や助産所など約2,000の出産施設を対象に、妊婦やその家族が適切な施設を選択できるよう情報を提供する。「出産なび」では、各施設の出産費用や分娩実績、サービス内容を一覧で確認でき、たとえば、無痛分娩の対応有無や24時間対応の可否、立ち会い出産の可否などが細かく紹介されている。施設の種類や希望するサービスにチェックを入れて検索すると、条件に合致する施設が一覧表示され、地図上で施設の位置を確認することもできる。出産費用の内訳も明示されており、基本的な分娩費用や個室の追加料金などがわかるようになっている。これにより、妊婦や家族が費用面での予測を立てやすくなり、出産に伴う経済的な負担を見通しやすくなる。「出産なび」の開設は、少子化対策の一環として、出産費用の透明化を図り、不透明な値上げを防ぐことを目的としている。また、正常分娩への保険適用に向けた議論の材料としても活用される予定。現在、正常分娩は保険適用外であり、費用は全額自己負担となっているが、2026年度をめどに保険適用を検討している。厚労省では、今後も「出産なび」の情報を定期的に更新し、利用者が最新の情報にアクセスできるよう努める。また、出産費用の保険適用についても議論を進め、妊婦や家族の負担軽減を図っていく方針。参考1)「出産なび」へようこそ(厚労省)2)お産の費用見える化サイト「出産なび」開設 全国の約2千施設が対象 厚労省(CB news)3)医療機関ごとの出産費用を検索「出産なび」開設…無痛分娩の対応有無や24時間対応可も紹介(読売新聞)4)出産費用丸わかり、厚労省が施設検索サイト「出産なび」(日経新聞)

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神経発達症群(講座 精神疾患の臨床 第9巻)

神経発達症の専門医はもちろん、専門としない精神科医にもお勧め近年の多くの調査では、人口の1割以上において、主要な神経発達症のいずれかに該当することが示唆されている。成人後に初めて診断されるケースも多く、児童や精神発達症を専門としていない精神科医も無視できない状況となっている。本書は、神経発達症群全般における概念や分類の歴史的変遷をはじめ、知的発達症、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、発達学習症を軸に、診断概念、病態、原因、治療・支援に関する現時点での最新知識を概観できるようまとめている。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する神経発達症群(講座 精神疾患の臨床 第9巻)定価19,800円(税込)判型B5判(上製)頁数512頁発行2024年5月担当編集本田秀夫(信州大学教授)監修松下正明(東京大学名誉教授)編集主幹神庭重信(九州大学名誉教授)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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うつ病リスクと関連する飲料は?~5年間コホート研究

 飲料摂取がうつ病に及ぼす影響について、アジア人ではエビデンスが限られている。具体的には、野菜や果物をそのまま摂取することはうつ病の予防につながると報告されているが、野菜や果物をジュースにした場合の情報はほとんどない。さらに、加糖コーヒーとブラックコーヒーの影響の差異を比較した研究も十分ではない。国立精神・神経医療研究センターの成田 瑞氏らは、一般集団における加糖飲料、炭酸飲料、野菜・フルーツジュース、加糖コーヒー・ブラックコーヒー、緑茶の摂取とその後のうつ病との関連を調査した。Clinical Nutrition誌オンライン版2024年4月17日号の報告。 2011~16年に、ベースラインでがん、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、うつ病の既往歴がない9万4,873例を対象に、5年間のフォローアップ調査を実施した。うつ病のリスク差(RD)の算出には、ポアソン回帰モデルおよびg-formulaを用いた。多重感度分析も実施した。欠損データの処理には、ランダムフォレストを用いた。相互作用による相対過剰リスクとリスク比を分析することで、性別、年齢、BMIに基づく効果の不均一性を調査した。 主な結果は以下のとおり。・5年間のフォローアップを完了した8万497例のうち、1万8,172例がうつ病を発症した。・高摂取群と非摂取群を比較した場合の完全調整後RDは、次のとおりであった。【加糖飲料】3.6%(95%信頼区間[CI]:2.8~4.3)【炭酸飲料】3.5%(95%CI:2.1~4.7)【野菜ジュース】2.3%(95%CI:1.3~3.4)【果汁100%フルーツジュース】2.4%(95%CI:1.1~3.6)【加糖コーヒー】2.6%(95%CI:1.9~3.5)【ブラックコーヒー】-1.7%(95%CI:-2.6~-0.7)・緑茶は、統計学的に有意な差が認められなかった。・多重感度分析では、結果は頑健であった。・性別、年齢、BMIに基づく実質的な効果の不均一性は認められなかった。 著者らは「加糖飲料、炭酸飲料、野菜・フルーツジュース、加糖コーヒーはうつ病リスクを上昇させる可能性がある一方、ブラックコーヒーは低下させる可能性が示唆された」としている。

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高GI/GL食が2型糖尿病発症と関連~20ヵ国12万人超の前向き試験

 低・中・高所得国を含む5大陸20ヵ国で実施された前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiology(PURE)研究」の結果、グリセミック指数(GI)およびグリセミック負荷(GL)が高い食事の摂取が、2型糖尿病の発症リスクの増大と関連していたことを、カナダ・McMaster UniversityのVictoria Miller氏らが明らかにした。Lancet Diabetes & Endocrinology誌2024年5月号掲載の報告。 これまでの研究で、低GI/GL食が2型糖尿病患者のHbA1c低下をもたらしたことが報告されている1)。しかし、2型糖尿病の発症率との関連についてはいまだ議論の余地がある。そこで研究グループは、GIおよびGLと2型糖尿病発症との関連を評価するため、低・中・高所得国20ヵ国の成人を対象とするPURE研究のデータを分析した。解析には、35~70歳の12万7,594人が含まれ、追跡期間中央値は11.8年(IQR 9.0~13.0)であった。 食事摂取量は、その国ごとで検証済みの食品摂取頻度調査票を用いて算出した。7種類の炭水化物の摂取量に基づいてGIおよびGLを推定し、五分位で分類した。主要アウトカムは2型糖尿病の発症で、GIおよびGLとの関連について多変量Cox frailtyモデルを用いてハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に、7,326例(5.7%)が2型糖尿病を発症した。・多変量調整後、GIが最も高い群は、最も低い群と比較して、2型糖尿病の発症リスクが有意に高かった(HR:1.15、95%信頼区間[CI]:1.03~1.29)。・GLが最も高い群でも、最も低い群と比較して、2型糖尿病の発症リスクが有意に高かった(HR:1.21、95%CI:1.06~1.37)。・GIと糖尿病との関連は、BMIが高い群のほうが低い群よりも強かった。 研究グループは「これらの研究結果は、低GIと低GLの食事を摂取することで2型糖尿病の発症を防ぐ可能性があることを示唆している」とまとめた。

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学校健診でのLDL-C測定、親の疾患発見にも寄与/日本動脈硬化学会

 家族性高コレステロール血症(FH)は、約300人に1人の頻度で存在する常染色体顕性(優性)遺伝性疾患である1)。出生時よりLDL-C高値を示し、心筋梗塞などの冠動脈疾患発症率は一般人より10倍以上高い。診断基準が明確化1,2)されているものの、診断率が低い疾患の一つある。香川県では、FHの小児を早期診断することで親のFHの診断につなげる取り組みに力を入れており、今回、南野 哲男氏(香川大学医学部 循環器・腎臓・脳卒中内科学 教授)が「小児生活習慣病予防健診により家族性高コレステロール血症(FH)のこどもと大人を守る」と題し、香川県で行われている小児生活習慣病予防健診事業3)や小児FHスクリーニングの全国展開への期待について話をした(主催:日本動脈硬化学会)。学校健診が大人の疾患発掘にも有用 小児生活習慣病予防健診とは、小学4年生(9~10歳)を対象に、将来の生活習慣病の発症を予防する目的で2012年より始まった香川県独自の健診事業である。県内17市町すべてで同じプロトコル(1:身長・体重、2:血液検査[LDL-C、HDL、TG、AST/ALT、血糖]、3:生活習慣に関するアンケート)に基づいて実施されている。健診自体は任意であるものの、毎年8,000人(対象者の92%以上)が受診し、実質的には、脂質ユニバーサルスクリーニングとみなすことができる。健診の結果がLDL-C>140mg/dLであれば、かかりつけ医へ受診・相談が推奨され、FHが疑われた場合、大学・基幹病院に紹介され、必要時、次世代シーケンサーを用いたFH遺伝子の検査を行う体制が構築されている。 FHは常染色体顕性(優性)遺伝性疾患であるため1)、同氏は「子供がFHだとわかれば、両親のいずれかもFHである。子供を動脈硬化から守るユニバーサルスクリーニングはもちろんのこと、リバースカスケードスクリーニングを実施することにより、親は冠動脈疾患発症前に治療を開始することができるようになった。現在までに400人以上の子供と親・兄弟のFHを診断した」と話した。香川のエビデンスが診断基準に採用 このほかにも、本事業で得られたデータ解析を担うことで、エビデンスの観点からもこの取り組みの重要性が認められている。「小児生活習慣病予防健診で得られたデータから、2017年のガイドラインではFH発見の感度が低いことが示され、見落とし症例が存在することが明らかになった。また、LDL-Cが250mg/dL以上の子供はすべて病原性遺伝子変異陽性であることも判明した。これらの結果を受け、22年に改訂された小児FHガイドライン1)では、香川発の科学的エビデンスが診断基準に採用され、見落としを減らすため”FH疑い“の概念が導入された。さらに、改訂版では“LDL-C≧250g/dLは“FH疑いと診断”することになった」と述べた。実際に2022年のガイドラインの診断基準をもって検証を行ったところ、FHの確定診断の感度は「特異度を維持したまま上昇」という結果が得られ、診断基準を作成して検証することの重要性も証明されたという。ただし、「親と子を別々に診察すると治療継続の低下やドロップアウトを招きかねない。それらを防ぐためにもFHの親子を一緒に診察することが鍵となる」と説明した。自治体事業から医学的結果を生み出す 世界最大規模の小児FHスクリーニング体制を誇る香川県。今後の課題として、親・子の疾患啓発、健診結果の活用・有用性の証明が求められるが、「現在、学校側より“子供から親にFHを教える課題を出す”案が検討されている。また、医療側の取り組みとして、心筋梗塞の既往者を対象としたFHスクリーニングを実施する取り組みを始めている。学校採血による小児生活習慣病予防健診を起点とした小児FHスクリーニングは、静岡県の一部(中東遠地域)ではすでに開始され、そのほかにも行政(市町)や医師会、アカデミアメンバーと協議を進めている」と、事業が広がりつつあることを示した。 最後に同氏は「オール香川(地方公共団体、県医師会、大学・病院、学会、FH家族/一般市民)で小児FHを見つけていこうと奮闘している。小児FHスクリーニング体制を構築することで、小児・成人ともにFHの診断率は飛躍的に向上することが期待される。この公衆衛生学的な取り組みにより、科学的エビデンスを集積し、政策提言を実現させ、全国展開を図りたい」と締めくくった。

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デュピルマブ追加で、COPDの増悪が減少、肺機能改善/NEJM

 血中好酸球数の増加に基づく2型炎症を呈する慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の治療において、標準治療へのヒト型抗ヒトインターロイキン(IL)-4/13受容体モノクローナル抗体デュピルマブの上乗せはプラセボと比較して、COPD増悪の年間発生率を有意に減少させ、肺機能の改善をもたらすことが、米国・アラバマ大学バーミンガム校のSurya P. Bhatt氏らNOTUS Study Investigatorsが実施した「NOTUS試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月20日号に掲載された。29ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 NOTUS試験は、29ヵ国329施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年7月~2023年5月に参加者の無作為化を行った(サノフィとリジェネロン・ファーマシューティカルズの助成を受けた)。 年齢40~85歳、10pack-years以上の喫煙歴のある現または元喫煙者で、2型炎症(血中好酸球数300/μL以上)を呈する中等症または重症のCOPD患者935例を登録し、デュピルマブ300mgを2週ごとに皮下投与する群に470例、プラセボ群に465例を無作為に割り付けた。全例が基礎治療として標準的な吸入薬の投与を受けた。 全体の平均(±SD)年齢は65.0(±8.3)歳、67.6%が男性で、29.5%が現喫煙者、98.8%が3種の吸入薬(糖質コルチコイド+長時間作用型抗コリン薬[LAMA]+長時間作用型β2刺激薬[LABA])による基礎治療を受けていた。ベースラインの血中好酸球数の平均値は407±336/μLだった。12週、52週までの1秒量も良好、SGRQスコアには差がない 52週の試験期間におけるCOPDの中等度または重度増悪の年間発生率(主要エンドポイント)は、プラセボ群が1.30(95%信頼区間[CI]:1.05~1.60)であったのに対し、デュピルマブ群は0.86(0.70~1.06)であり、プラセボ群に対する率比は0.66(95%CI:0.54~0.82)とデュピルマブ群で有意に優れた(p<0.001)。 気管支拡張薬吸入前の1秒量(FEV1)のベースラインから12週までの最小二乗平均変化量は、プラセボ群が0.057L(95%CI:0.023~0.091)増加したのに対し、デュピルマブ群は0.139L(0.105~0.173)の増加であり、両群の最小二乗平均差は0.082L(95%CI:0.040~0.124)とデュピルマブ群で有意に良好であった(p<0.001)。52週までの変化量も、デュピルマブ群で有意に優れた(最小二乗平均差:0.062L、95%CI:0.011~0.113、p=0.02)。 一方、ベースラインから52週までのSt. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)スコア(0~100点、点数が低いほどQOLが良好)の変化には、両群間に有意な差を認めなかった。安全性プロファイルは確立されたものと一致 有害事象の発現率は両群で同程度であり(デュピルマブ群66.7%、プラセボ群65.9%)、デュピルマブの安全性プロファイルは確立されたものと一致していた。最も頻度の高かった有害事象は、新型コロナウイルス感染症(9.4% vs.8.2%)、鼻咽頭炎(6.2% vs.5.2%)、頭痛(7.5% vs.6.5%)、COPD(4.9% vs.7.8%)であった。重篤な有害事象は、それぞれ13.0%および15.9%、死亡の原因となった有害事象は2.6%および1.5%で認めた。 著者は、「これらの結果は、COPD患者のサブグループの病理生物学的な疾患メカニズムにおける2型炎症の役割と、この別個のCOPDエンドタイプの治療におけるデュピルマブの役割をさらに強固なものにする」と述べ、「本試験と先行研究であるBOREAS試験の知見を統合すると、COPDの治療における、2型炎症の促進因子としてのIL-4とIL-13を標的とすることの重要性が浮き彫りとなった」としている。

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ビソプロロール併用、COPDの治療を要する増悪を低減せず/JAMA

 増悪リスクの高い慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の治療において、β1選択性β遮断薬ビソプロロールの追加はプラセボと比較して、経口コルチコステロイド、抗菌薬、あるいはこれら両方による治療を要するCOPD増悪の回数を抑制しないことが、英国・リバプール熱帯医学校のGraham Devereux氏らが実施した「BICS試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年5月19日号で報告された。英国76施設の無作為化プラセボ対照比較試験 BICS試験は、英国の76施設(プライマリケア施設45、二次医療施設31)で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2018年10月~2022年5月に参加者を登録した(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術評価[HTA]プログラムの助成を受けた)。 スパイロメトリーで中等度以上の気流閉塞(1秒量[FEV1]/努力性肺活量<0.7、FEV1の予測値に対する実測値の割合<80%)を認め、過去12ヵ月間に経口コルチコステロイド、抗菌薬、あるいはこれら両方による治療を要するCOPD増悪が2回以上発現したCOPD患者519例を登録し、ビソプロロール群に261例、プラセボ群に258例を割り付けた。患者はそれまで受けていたCOPD治療を継続した。 ビソプロロールは、1日1.25mgから経口投与を開始し、標準化されたプロトコールを用いて、4期の投与期間中に忍容性に応じて最大用量5mg/日まで漸増した。 主要アウトカムは、1年間の投与期間中における経口コルチコステロイド、抗菌薬、あるいはこれら両方による治療を要するCOPD増悪の発生(患者報告による)とした。増悪までの期間、増悪による入院、全死因死亡にも差はない 本試験は当初1,574例を登録する予定であったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により2020年3月16日~2021年7月31日の間は患者の募集を中断した。解析の対象となった515例(平均[SD]年齢68[7.9]歳、男性274例[53%]、平均FEV1 50.1%)のうち、514例(99.8%)で主要アウトカムのデータが得られ、371例(72.0%)が試験薬の服用を1年間継続した。 1年の試験期間中に治療を要するCOPD増悪は、ビソプロロール群では526件発生し、平均年間発生回数は2.03件/年であり、プラセボ群ではそれぞれ513件、2.01件/年であった。補正後発生率比(IRR)は0.97(95%信頼区間[CI]:0.84~1.13)と、両群間に有意差を認めなかった(p=0.72)。 初回COPD増悪までの期間中央値(ビソプロロール群96.0日vs.プラセボ群70.0日、補正後ハザード比[HR]:0.94、95%CI:0.78~1.16、p=0.60)、COPD増悪による入院(補正後IRR:1.00、95%CI:0.67~1.50)、COPD以外の原因による入院(1.47、0.88~2.55)、全死因死亡(0.77、0.34~1.73)にも、両群間に有意な差はなかった。重篤な有害事象の発現は同程度 重篤な有害事象を発現した患者は両群で同程度であった(ビソプロロール群14.5%[37/255例]vs.14.3%[36/251例])。また、ビソプロロール群では、呼吸器系の有害反応の増加を認めなかった(9.8%[25/255例]vs.12.3%[31/251例])。最も多かった試験薬の投与中止の理由は、臓器分類コード「呼吸器、胸郭、縦隔の障害」であり、頻度は両群で同程度だった(4.6%[12/259例]vs.6.3%[16/256例])。 著者は、「COVID-19の世界的な流行による参加者の募集の中断と資金不足により、予定よりはるかに少ない患者しか登録できなかったこと、28%の患者が試験薬の使用を中止した点などが本試験の限界である」と述べたうえで、「今回の結果は、COPD患者におけるビソプロロールの臨床的有用性を否定するものであったが、他の治療法との併用や特定の患者群に対する効果について検討を進める必要がある」としている。

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高リスクEGFR陽性NSCLC、amivantamab+lazertinibの効果は?(MARIPOSA)/ASCO2024

 未治療のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、EGFRおよびMETを標的とする二重特異性抗体amivantamabと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬lazertinibの併用療法は、オシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善したことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告されている1)。EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者において、TP53遺伝子変異、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の検出、ベースライン時の肝転移または脳転移を有する場合は予後が不良であることが知られている。そこで、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」において、これらの予後不良因子を有する患者の治療成績が検討された。その結果、amivantamabとlazertinibの併用療法は、これらの予後不良因子を有する患者集団においても、オシメルチニブ単剤と比較してPFSを改善することが明らかになった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)において、スペイン・Vall d’Hebron University HospitalのEnriqueta Felip氏が本研究結果を報告した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者・試験群1(ami+laz群):amivantamab(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+lazertinib(240mg、1日1回) 429例・試験群2(laz群)lazertinib(240mg、1日1回) 216例・対照群(osi群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 429例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づくPFS(ami+laz群vs.osi群)[副次評価項目]奏効率、全生存期間など  今回は、サブグループ別のami+laz群とosi群におけるPFSの比較結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・ベースライン時にctDNAが検出された患者は、ami+laz群320例、osi群316例であった。・ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)によってベースライン時にctDNAが検出された患者の割合は、ami+laz群69%、osi群71%であったが、9週時にctDNAが検出された患者の割合は、いずれの群も15%であった。・サブグループ別のami+laz群およびosi群のPFS中央値、ami+laz群のosi群に対するハザード比(95%信頼区間)、p値は以下のとおり。- TP53遺伝子変異あり:18.2ヵ月vs.12.9ヵ月、0.65(0.48~0.87)、p=0.003- TP53遺伝子変異なし:22.1ヵ月vs.19.9ヵ月、0.75(0.52~1.07)、p=0.114- ベースライン時にddPCRでctDNAあり:20.3ヵ月vs.14.8ヵ月、0.68(0.53~0.86)、p=0.002- ベースライン時にddPCRでctDNAなし:27.7ヵ月vs.21.9ヵ月、0.68(0.53~0.86)、p=0.002- 9週時にctDNA消失:20.3ヵ月vs.14.8ヵ月、0.64(0.48~0.87)、p=0.004- 9週時にctDNA残存:16.5ヵ月vs.9.1ヵ月、0.49(0.27~0.87)、p=0.015- ベースライン時に肝転移あり:18.2ヵ月vs.11.0ヵ月、0.58(0.37~0.91)、p=0.017- ベースライン時に肝転移なし:24.0ヵ月vs.18.3ヵ月、0.74(0.60~0.91)、p=0.004- 脳転移歴あり:18.3ヵ月vs.13.0ヵ月、0.69(0.53~0.92)、p=0.010- 脳転移歴なし:27.5ヵ月vs.19.9ヵ月、0.69(0.53~0.89)、p=0.005 Felip氏は、本結果について「amivantamabとlazertinibの併用療法は、予後不良因子を有する患者においてもPFSを改善した。したがって、EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者の1次治療における新たな標準治療として有望である」とまとめた。

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気候変動は脳の疾患の悪化と関連

 気候変動は、脳卒中、片頭痛、アルツハイマー病、てんかん、多発性硬化症などの脳の疾患を悪化させる可能性のあることが、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)クイーンスクエア神経学研究所教授のSanjay Sisodiya氏らによる研究で明らかになった。研究グループは、「気候変動は、さまざまな神経疾患にかなりの影響を与える可能性が高い」と危惧を示している。この研究の詳細は、「The Lancet Neurology」6月号に掲載された。 この研究では、1968年から2023年の間に発表された332件の研究データを分析し、気候変動が、2016年の世界疾病負荷研究(Global Burden of Disease Study 2016)で検討された、脳卒中、片頭痛、アルツハイマー病、髄膜炎、てんかん、多発性硬化症などの19種類の神経疾患、および不安や抑うつ、統合失調症などの精神疾患に与える影響を検討した。 その結果、気候がいくつかの脳の疾患に影響を与えることに対しては明確なエビデンスがあり、特に脳卒中と神経系の感染症に対する影響は大きいことが示された。また、気候変動の中でも、極端な気温(高い場合も低い場合も)と気温の日内変動の大きさは脳の疾患に影響を及ぼし、特に、それらが季節的に異常な場合には影響が大きくなることも判明した。Sisodiya氏は、「夜の気温はとりわけ重要と考えられる。夜間を通して高い気温は睡眠を妨げ、睡眠の質の低さは多くの脳の疾患を悪化させることが知られているからだ」と話す。 実際に、本研究では、高温の日や熱波が発生しているときには、脳卒中による入院や身体障害の発生、死亡数が増加することが示された。一方、認知症の人は、認知機能障害が妨げとなって環境の変化に合わせた行動を取るのが難しいため、極端な気温のときや洪水や山火事のような自然災害が発生したときに悪影響を受けやすい傾向が認められた。研究グループは、「認知症の人はリスクに対する意識が低下しているため、暑いときに助けを求める能力や、水分の摂取量を増やし、衣類を調節するなどして危害を軽減させる能力が低下している」と説明している。さらに、多くの精神疾患で、高温、気温の日内変動、極端に高い気温と低い気温は、精神疾患の発症、入院、死亡リスクと関連していることも示された。 こうした結果を踏まえて研究グループは、「悪天候に起因する出来事が深刻さを増し、地球の気温が上昇するにつれて、過去の研究では脳の疾患に影響を与えるほど深刻ではないと考えられた環境要因が悪化し、人々はその悪化した要因にさらされている」と指摘する。その上で、気候変動の現在の状態だけでなく、将来の状態も考慮した最新の研究を行うことの重要性を強調している。 Sisodiya氏は、「この研究は気候条件が悪化していく中で実施されたが、有用な情報を個人や組織に提供し続けるためには、敏捷かつ動的であり続ける必要がある」と話す。同氏はまた、「将来の気候シナリオが脳の疾患へ及ぼす影響を見積もる研究はほとんどないことが、将来の計画を立てることを難しくしている」と述べている。

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自転車こぎに変形性膝関節症の予防効果?

 生涯を通じて定期的に自転車に乗っている人は、膝に頻回に痛みが生じたり、放射線検査で確認された変形性膝関節症(radiographic osteoarthritis;ROA)や症状のあるROA(symptomatic radiographic osteoarthritis;SOA)に罹患したりする可能性の低いことが、新たな研究で明らかになった。米ベイラー医科大学アレルギー・免疫・リウマチ病学分野のGrace Lo氏らによるこの研究の詳細は、「Medicine & Science in Sports & Exercise」に4月11日掲載された。 医師はしばしば、変形性膝関節症を予防するために定期的に運動することを推奨するが、運動の種類によって膝にもたらされる効果は異なる。今回の研究では、米国立衛生研究所(NIH)が後援する、変形性膝関節症に関する全国規模の調査研究であるOsteoarthritis Initiative(OAI)への参加者2,607人(平均年齢64.3歳、男性44.2%、平均BMI 28.5)のデータを用いて、自転車での活動歴と変形性膝関節症の症状や構造上のアウトカムとの関連が検討された。対象者は質問票を通じて、12〜18歳、19〜34歳、35〜49歳、50歳以上の年齢層で分けた4つの時期に最もよく行った上位3つの自転車での活動(屋外、自宅でのサイクリングマシン、スピニングバイクなど)について、その活動を行った年数、年間の活動月数、および月当たりの回数を報告した。 その結果、いずれの時期かを問わず、自転車での活動経験がある人ではない人に比べて、膝の痛みを報告するリスクが17%、ROAリスクが9%、SOAリスクが21%低いことが明らかになった。これらのリスクは、自転車で活動した時期が増えるほど低下することも示された。 研究グループは、本研究で用いた自転車での活動歴に関するデータは後ろ向きに集められたものである点を、本研究の限界として述べている。ただし、参加者は、活動歴を報告する際に自転車と変形性膝関節症との関連に関する仮説を知らなかったため、想起バイアスが生じるリスクは低かったとしている。 Lo氏はベイラー医科大学のニュースリリースの中で、「この観察研究から得た重要ポイントは、人生の後半に膝の痛みや変形性膝関節症を発症することが心配な人は、自転車に乗ることがその防止策として役立つ可能性があること、また、生涯を通じて自転車に乗る頻度が高いほど、膝の健康が良い状態で保たれる可能性も高まるということだ」と述べている。

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