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イサツキシマブ+VRd、移植非適応多発性骨髄腫の1次治療に有効/NEJM

 移植が非適応の多発性骨髄腫患者の1次治療において、標準治療であるボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメサゾン(VRd)と比較して抗CD38モノクローナル抗体イサツキシマブ+VRdは、60ヵ月の時点での無増悪生存(PFS)を有意に改善し、イサツキシマブを加えても新たな安全性シグナルの発現は観察されないことが、フランス・リール大学のThierry Facon氏らIMROZ Study Groupが実施した「IMROZ試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年6月3日号で報告された。標準治療への上乗せ効果を評価する無作為化第III相試験 IMROZ試験は、日本を含む21ヵ国93施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2017年12月~2019年3月に参加者を募集した(Sanofiなどの助成を受けた)。 年齢18~80歳、新規に診断された未治療の多発性骨髄腫で、移植の適応がない患者446例を登録し、イサツキシマブ+VRd群に265例(年齢中央値72歳[範囲:60~80]、女性46.0%)、VRd単独群に181例(72歳[55~80]、48.1%)を登録した。イサツキシマブは、1サイクル目に10mg/kg体重を週1回、その後は同量を2週ごとに静脈内投与した。 有効性の主要評価項目は、独立審査委員会の評価によるPFS(無作為化から病勢進行または死亡までのtime-to-event解析)とした。CR以上の割合、CR達成例のMRD陰性も良好 全患者の16.6%に高リスクの細胞遺伝学的特性を、37.0%に染色体異常として1q21+を認め、28.7%が推算糸球体濾過量(eGFR)<60mL/分/1.73m2であった。 追跡期間中央値59.7ヵ月の時点における60ヵ月推定PFS率は、VRd単独群が45.2%であったのに対し、イサツキシマブ+VRd群は63.2%と有意に優れた(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.60、98.5%信頼区間[CI]:0.41~0.88、p<0.001)。 全奏効(部分奏効以上)の割合は両群とも高かったが(イサツキシマブ+VRd群91.3% vs.VRd単独群92.3%)、完全奏効(CR)以上(CRまたは厳密なCR[stringent CR])の割合はイサツキシマブ+VRd群で有意に良好であった(74.7% vs.64.1%、p=0.01)。 また、CR達成例における微小残存病変(MRD)陰性の割合は、イサツキシマブ+VRd群で有意に優れた(55.5% vs.40.9%、p=0.003)。全体のMRD陰性割合(58.1% vs.43.6%)および12ヵ月以上持続するMRD陰性割合(46.8% vs.24.3%)ともイサツキシマブ+VRd群で高かった。OSは追跡を継続中 60ヵ月時の推定全生存率(OS)は、イサツキシマブ+VRd群が72.3%、VRd単独群は66.3%であり(死亡のHR:0.78、99.97%CI:0.41~1.48)、CIの上限値が事前に規定された無益性の閾値(1.1)を超えており、現在も追跡を継続している。 一方、イサツキシマブ+VRd群では、新たな安全性シグナルの発現を認めなかった。投与期間中に発現した重篤な有害事象(70.7% vs.67.4%)、および試験薬の投与中止の原因となった有害事象(22.8% vs.26.0%)の頻度は両群で同程度だった。 著者は、「この第III相試験では、移植非適応の多発性骨髄腫の1次治療において、標準的なVRd療法に比べ、イサツキシマブ+VRdはPFSについて優れた有益性を示すとともに深い奏効をもたらした」とまとめ、「本試験では、高リスクの細胞遺伝学的特性を有する患者におけるイサツキシマブ+VRdによるPFSの改善は確認できなかったが、他の複数の試験でこれらの患者に対する1次治療および再発病変の治療におけるイサツキシマブをベースとする併用療法の有益性が観察されたことを踏まえ、さらなる解析と長期の追跡が正当化される」としている。

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悪性黒色腫への術前ニボルマブ+イピリムマブ、EFSを大きく改善(NADINA)/NEJM

 切除可能なIII期の肉眼的な悪性黒色腫の治療では、ニボルマブによる術後補助療法と比較して、イピリムマブ+ニボルマブによる2サイクルの術前補助療法は無イベント生存率(EFS)が有意に優れ、病理学的奏効も良好であることが、オランダがん研究所のChristian U. Blank氏らが実施した「NADINA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年6月2日号に掲載された。術前と術後の免疫療法を比較する無作為化第III相試験 NADINA試験は、オランダとオーストラリアの施設を中心とする国際的な無作為化第III相試験であり、2021年7月~2023年12月に参加者の無作為化を行った(Bristol Myers Squibbなどの助成を受けた)。 年齢16歳以上の切除可能なIII期の肉眼的な悪性黒色腫で、1つ以上の病理学的に証明されたリンパ節転移および最大3つのin-transit転移を有する患者423例を登録し、術前補助療法としてイピリムマブ+ニボルマブの投与(3週ごと)を2サイクル行う群に212例(年齢中央値60歳[範囲:22~84]、女性33.5%)、術後補助療法としてニボルマブの投与(4週ごと)を12サイクル行う群に211例(59歳[19~87]、36.0%)を割り付けた。 主要評価項目はEFSとし、無作為化から手術前の悪性黒色腫の進行、再発、悪性黒色腫または治療による死亡までの期間と定義した。EFSのハザード比0.32 ITT集団における主要評価項目のイベント数は100件で、内訳は術前補助療法群で28件、術後補助療法群で72件であった。 追跡期間中央値9.9ヵ月の時点における推定12ヵ月EFSは、術前補助療法群が83.7%(99.9%信頼区間[CI]:73.8~94.8)、術後補助療法群は57.2%(45.1~72.7)で、境界内平均生存期間(restricted mean survival time)の群間差は8.00ヵ月(99.9%CI:4.94~11.05、p<0.001、進行、再発、死亡のハザード比[HR]:0.32、99.9%CI:0.15~0.66)であり、術前補助療法群で有意に良好であった。 術前補助療法群の病理学的奏効については、患者の59.0%で病理学的著効(major pathological response、残存腫瘍≦10%)が達成され、8.0%で病理学的部分奏効(残存腫瘍11~50%)が得られ、26.4%は非奏効(残存腫瘍>50%)で、2.4%は手術前に病勢が進行し、4.2%では手術が未施行か施行されなかった。 また、術前補助療法群における病理学的奏効の状態別の推定12ヵ月無再発生存率は、病理学的著効例で95.1%、部分奏効例で76.1%、非奏効例では57.0%であった。Grade3以上の有害事象、内分泌障害は術前補助療法群で多い 全身療法に関連したGrade3以上の有害事象は、術前補助療法群で29.7%、術後補助療法群で14.7%、手術関連のGrade3以上の有害事象はそれぞれ14.1%および14.4%に認めた。全身療法関連の内分泌障害は、それぞれ30.7%および9.9%で発現した。 また、重篤な有害事象は、それぞれ36.3%および24.0%でみられ、術後補助療法群では1例がニボルマブに起因する肺臓炎で死亡し、術前補助療法群では治療関連死を認めなかった。 著者は、「術前の免疫チェックポイント阻害薬療法が、術後の同療法よりも有効性が高いことの説明として、術前の免疫療法はより強力で多様なT細胞応答を誘導するためとの仮説が提唱されている。この性質は、免疫療法の開始時には腫瘍の全体が存在し、それゆえ完全なネオアンチゲンのレパートリーが存在するためと考えられている。また、術前のPD-1阻害薬にCTLA-4阻害薬を追加すると有効性が向上することも示唆されている」としている。

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体調不良のまま働くタクシー運転手の交通事故リスク

 体調不良を抱えたまま勤務する「プレゼンティーズム」は、欠勤するよりも大きな損失につながるとして注目されている。新たに日本のタクシー運転手を対象とした研究が行われ、プレゼンティーズムの程度が大きいほど交通事故リスクが高まることが明らかとなった。産業医科大学産業生態科学研究所環境疫学研究室の藤野善久氏、大河原眞氏らによる前向きコホート研究の結果であり、「Safety and Health at Work」に4月16日掲載された。 これまでに著者らは救急救命士を対象とした研究を行い、プレゼンティーズムの程度が大きいこととヒヤリハット事例発生との関連を報告している。今回の研究では、救急医療と同様に社会的影響の大きい交通事故が取り上げられた。その背景として、タクシー運転手は不規則な運転経路、時間厳守へのプレッシャーなどから事故を起こしやすいことや、車内で長時間を過ごすため運動不足や腰痛につながりやすく、睡眠や健康の状態も悪くなりやすい労働環境にあることが挙げられている。 著者らは今回の対象を福岡県のタクシー会社に勤務するタクシー運転手とし、2022年6月のベースライン調査時、産業医科大学が開発した「WFun」(Work Functioning Impairment Scale)という指標を用いてプレゼンティーズムを評価した。WFunは7つの質問(「ていねいに仕事をすることができなかった」など)により労働機能障害を判定するもので、その得点からプレゼンティーズムの程度を「問題なし」「軽度」「中等度以上」に分類した。2023年2月に追跡調査を行い、回答時点から過去3カ月間の擦り傷や軽い接触など(会社に報告していないものも含む)の件数を「軽微な交通事故」として評価した。 運転時間が週に10時間未満だった人などを除き、428人を解析対象とした。年齢中央値は67(四分位範囲60~72)歳、男性の割合は93.2%。プレゼンティーズムの程度は、問題なしが343人(80%)、軽度が72人(17%)、中等度以上が13人(3%)だった。 1件以上の軽微な交通事故の発生割合は、プレゼンティーズムの程度が問題なしの人では16%、軽度の人では17%、中等度以上の人では23%だった。性別、年齢、運転経験の影響を統計的に調整した上で、交通事故とプレゼンティーズムとの関連を調べた結果、プレゼンティーズムの程度が大きいほど、軽微な交通事故のリスクが高くなることが明らかとなった(傾向性P=0.045)。 今回の研究に関連して著者らは、これまで、突然の意識不明や死亡につながる脳血管疾患や心疾患などの重大な疾患が注目されてきたが、これらを原因とする交通事故の割合は、職業運転手による交通事故のうちの一部でしかないと説明。体調不良などによる交通事故は過少報告されている可能性が高く、見過ごされがちであることを指摘している。また、タクシー運転手の給与体系の多くが歩合制であることも体調不良のまま勤務してしまう要因となっていることを挙げ、「交通事故防止のため、職業運転手に対する社会経済的支援を強化し、健康管理を優先することが重要だ」と述べている。

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第215回 沖縄でコロナ急拡大、首都圏での流行予測は…

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染症法上の5類移行後、この件は世間的にどこ吹く風になっている感がある。国内の感染状況を見ると、2024年第22週(5月27日~6月2日)の全国平均の定点当たり発生数は3.52人。前週の第21週(5月20〜26日)の3.35人と比べ、微増である。2024年に入ってからは徐々に感染者数は増加し、第5週(1月29日~2月4日)の16.15人をピークに、その後は第18週(4月29日~5月5日)の2.27人にまで徐々に低下していたが、そこから再び増加している状況である。ちなみに5類移行後の最高値は2023年第36週(9月4~10日)の20.19人、最低値は2023年第46週(11月13~19日)の1.95人である。さて、そうした中で最新の2024年第22週の定点当たり発生数が19.74人と“突出”しているのが沖縄県である。この“突出”の表現を使ったのは、地元紙が見出しにこの言葉を使い危機感をあらわにした記事を掲載しているからだ。確かに第22週の全国の感染状況を見れば、沖縄県が特異的なことは明らかだ。沖縄県を除く都道府県別で最も発生数が多いのは鹿児島県の7.11人。これに次ぐのが北海道の5.44人。沖縄県はこれらの約3~4倍となっている。もっとも定点発生数は定点医療機関の配置、各医療機関の検査方針なども影響するので、これだけですべてを語れるものではないのは確かだ。おそらく沖縄県以外の都道府県も潜在的な感染者は定点発生数より多いと思われる。とはいえ、この点を考慮しても、2番目に多い鹿児島県と約3倍の開きがある現実は、やはり沖縄県の固有事情があると思わざるを得ない。そう思いながら厚生労働省のホームページで発表されている第22週の新型コロナ発生状況のプレスリリースを見て、やはり固有事情はあるのだろうと感じている。このリリースでは新型コロナの5類移行以後の定点発生数の推移を全国と各都道府県別で公表している。これを見るとすぐにわかることだが、全国的な推移は前述のように2023年第36週前後と2024年第5週前後をピークにした二峰性のグラフを描いている。そして都道府県別でもおおむね二峰性の推移だが、沖縄県だけは明確に異なる。とくに2024年第5週前後は沖縄県も発生数は多少増加しているものの、ピークを描くには至っていない。一方、5類移行後最初のピークは第25週前後と全国平均より10週ほど早い。この辺は気候的な影響が少なくないだろう。まず、全国的な推移で見られた2つのピークは、それぞれ気温がかなり高い時期か気温がかなり低い時期。つまり暑さや寒さゆえに温度管理が行き届いた室内にこもりがちな時期である。新型コロナの5類移行後でもウイルスそのものの性質に変化がないことを考えれば、室内にこもりがちでいわゆる三密(やや懐かしい響きだが)の状態が起こりやすいことが感染拡大に影響しているのだろうと読み解ける。これに対して沖縄県那覇市の平均気温を見ると、5月時点で24.2℃。すでにこの時点の平均気温で夏日(25℃以上)に近い状況なので、暑さゆえに室内にこもりがちな時期となる。ちなみに東京で同じく平均気温が夏日前後になるのは7月である。5月末から7月末までは9週間あるので、前述した全国平均と沖縄の夏の発生数ピーク時期の差である約10週前後と整合性は取れる。一方、冬の1~2月に関して言えば、前述の那覇市の平均気温を見ればわかる通り、17℃台。これは東京で言えば4~5月や10月くらいに相当するので、気候が原因で屋内にこもりがちにはならない。それゆえ沖縄県でこの時期にそれほど発生数が上昇しないことも説明できる。もちろんこれ以外に人口構成比や地域の風俗・習慣、外部からの流入人口なども影響していると思われるが、気候の影響はそこそこ以上に大きい要因だと考えられる。となると、首都圏などでの感染拡大はこれからが本格的になるという嫌な予想が成り立ってしまう。しかも、繰り返しになるが新型コロナに関しては、もはや彼方のことになっている人も多い。はてさて、どのような情報発信をしていけばよいのかと、最近とみに悩みが深くなっている。

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開業するならなるべく早く!と言い切れる恐ろしい理由とは【医師のためのお金の話】第81回

「来る来る」と言われて全然来ないのが、国民皆保険制度の破綻ではないでしょうか。まだ私が若かった(?)2000年代前半から、しきりに国民皆保険制度の命運が尽きようとしていると警告する人が後を絶ちませんでした。あれから20年近く経った現在でも、国民皆保険制度は機能しています。もちろん、保険料だけで膨れ上がった医療費を賄うことは不可能です。保険料は医療費全体の約5割に過ぎず、3割以上は税金から拠出されています。「相互扶助」の観点からは、すでに国民皆保険制度は破綻しています。しかし、現実には税金で支えられているため、国民皆保険制度はつつがなく維持されているようにみえます。このご利益を最大限に受けているのは医師ではないでしょうか。医療費の支払いは出来高払いです。医師の立場では医療費を節約するインセンティブがはたらきにくいですね。一方、患者さんは国民皆保険制度のおかげで安価に医療を受けられます。医師や患者さんを含めた全員が、保険料や税金に群がっているのが現実なのです。インフレの定常化で医療業界に大逆風発生!相互扶助の観点では、すでに実質的に破綻している国民皆保険制度ですが、実際の運用は税金で補填されているため盤石振りが際立っています。それでは、このまま私たちは安心して医療に取り組んでいればよいのでしょうか。少し前まで、この考え方もあながち間違いではありませんでした。ところが、コロナ禍以降で、医療業界を揺るがす可能性のある大きな地殻変動が起こっています。その変化とは、強烈な円安とそれに伴うインフレです。勤務医の中でも投資をしていない医師にとっては、「少し物価が上がったかな?」程度の変化かもしれません。しかし実際には、円安に伴うインフレのために、医療機関の経費が増大しています。最初の兆候は、原油価格高騰による電気代上昇でした。これだけであれば、ウクライナ戦争による特殊要因として片付けられたでしょう。しかし、それに続いてあらゆるモノやサービス価格が上昇しました。2024年度の診療報酬改定で診療報酬の本体部分は0.88%引き上げられましたが、数%を超える経費の上昇率に追い付いていません。国民皆保険制度の実質的破綻前にやってくる恐ろしい状況残念ながら、これまでの推移を見る限りでは、診療報酬増加率がインフレによる経費上昇率を上回る可能性は高くなさそうです。さらに保険料収入が頭打ちのなか、診療報酬の原資に占める税金の割合が年々高まっています。増税は政治リスクが高いので、簡単には引き上げられないでしょう。このため、診療報酬増加率はインフレ率に負け続ける可能性が高いです。私たちにできることは、インフレが鎮静化して、あわよくばデフレ経済に逆戻りすることを、ただひたすら祈るしかありません。この未来予想図が意味するところは、医療業界の収益性が年々悪化する状況です。1990年代のバブル崩壊後に延々と続いたデフレ経済は、医療業界には追い風でした。何といっても、経費が増加しないのに診療報酬微増を確保できましたから。しかし、夢のような状況は、どうやらコロナ禍明けで終わりを告げたようです。これから私たちが体験するのは、診療報酬という収益のアタマを押さえられた状態で、経費だけが増加していく苦しい状況です。開業するならなるべく早く!驚かすことを言いましたが、少なくとも現時点では、医療業界の収益性はまだまだ高い状態が続いています。TKC医業経営指標令和5年版では、院内処方の一般診療所の経常利益率は26.4%でした。よほど下手な経営をしないかぎり、診療所は黒字を確保できる状況です。しかし、この状況が今後10年先まで続く保証はありません。仮に、経費上昇率-診療報酬増加率=2%の状況が10年続くと20%減益となり、現在の経常利益の大部分が消えて無くなります。診療報酬増加率がインフレ率2~3%と同じ状態を続けられれば、なんとか現状維持可能です。しかし、これまでの推移を見る限り、診療報酬が毎年2~3%ずつ増加する状況は少し想像し難いですね。これらの状況から、もし開業するのであれば、医療業界の収益性が保たれているうちにチャレンジすることが望ましいでしょう。端的に言うと、いますぐ開業が望ましいということです。世の中がインフレに転換したのであれば、できるだけ早く開業するしかありません。私はいまでも母校の医局に所属している勤務医です。いますぐ開業しよう! などと主張するとお叱りを受けること必定でしょう。そのような事情があるものの、ケアネットの読者の方には、こっそりお伝えします。開業するつもりであれば早いに越したことはないでしょう。

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6月14日 認知症予防の日【今日は何の日?】

【6月14日 認知症予防の日】〔由来〕アルツハイマー病を発見したアロイス・アルツハイマー博士の誕生日から日本認知症予防学会が制定。認知症予防の大切さを啓発している。関連コンテンツ睡眠で認知症予防、良質な睡眠を誘う音楽とは?【外来で役立つ!認知症Topics】脳トレゲームで認知症を防げるか?【外来で役立つ!認知症Topics】高まる「脳ドック」ニーズ、認知症を予測できるか?【外来で役立つ!認知症Topics】日本人における果物や野菜の摂取と認知症リスク~JPHC研究中年のコーヒーや紅茶の摂取と将来の認知症リスク~HUNT研究

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ASCO2024 レポート 消化器がん

レポーター紹介本レポートでは、2024年5月31日~6月4日に行われた2024 ASCO Annual Meetingにおける消化管領域におけるトピックスを解説する。1.【食道がん】ESOPEC trial(#LBA1)最初に解説するのは、今年消化管領域でPlenary Sessionに選ばれたESOPEC trialである。欧米ではわが国をはじめとする東アジアと異なり、食道がんにおいては下部食道から接合部にできる腺がんが中心である。cT2-4a、cN+/-の切除可能進行食道腺がんにおける現在の標準治療は、CROSS trialで用いられたパクリタキセル+カルボプラチン+41.4Gyの術前化学放射線療法(CRT)とFLOT4 trialで用いられた術前・術後のFLOT(5-FU、LV、オキサリプラチン、ドセタキセル)療法の両者が併存しており、それぞれ開発が行われたオランダではCROSSレジメンが、ドイツではFLOTレジメンが主流である。ESOPEC trialでは両者の直接比較が第III相試験として行われた。2016年2月~2020年4月に438例のcT1N+ or cT2-4a、cN0/+、cM0の食道および接合部腺がんが登録された。年齢中央値は63歳、男性が89.3%、cT3/4の症例が80.5%、リンパ節転移陽性症例が79.7%であった。主要評価項目である全生存期間(OS)でハザード比(HR)が0.70、p=0.012、OS中央値がFLOT群66ヵ月、CROSS群39ヵ月、3年OS率がFLOT群54.7%、CROSS群50.7%と有意にFLOT群が優れていた。また、計画された術前治療を完遂できたのはFLOT群で87.3%、CROSS群で67.7%と差を認めた。無増悪生存期間(PFS)では、HR:0.66、p=0.001、3年PFS率がFLOT群51.6%、CROSS群35.0%と有意にFLOT群が優れていた。病理学的完全奏効(pCR)もFLOT群で16.8%、CROSS群で10.0%とFLOT群のほうが良好であった。術後合併症は両群で差を認めない結果であった。本試験結果をもって、切除可能局所進行食道・接合部腺がんにおいてFLOTレジメンの有意性が示された。本邦でも切除可能局所進行食道・接合部腺がんに対してFLOTやDCS(ドセタキセル、シスプラチン、S-1)をはじめとする術前化学療法が主流であり、本結果は受け入れられると考える。一方、術前CRT後pCRとならなかった症例にはCheckMate 577のエビデンスから術後ニボルマブ1年が無病生存期間(DFS)を有意に改善することが検証されているが、KEYNOTE-585やATTRACTION-5の結果より、術前・術後の化学療法に対して免疫チェックポイント阻害薬の有効性は検証されていない。今後FLOTとCROSSの直接比較のみならず、CRT後のニボルマブの有効性も含めた結果の解釈が必要になる。2.【大腸がん】切除不能大腸がん肝転移に対する肝移植の有効性(#3500)切除可能性のない大腸がん肝転移症例に対する標準治療は化学療法であるが、根治は困難である。今回、フランスの研究者から化学療法(C)に対する肝移植+化学療法(LT+C)の優越性を検証するTransMet試験が報告された。適格基準は65歳以下、PS 0-1、化学療法で3ヵ月以上部分奏効もしくは安定が得られている、CEAが80mg/mLもしくはベースラインより50%以上の減少、血小板8万超、白血球2,500超と厳格な基準で行われた。157例がスクリーニングされ、そのうち94例がランダム化された。LT+C群の47例のうち11例がPer protocolから外され(9例が病勢進行のためLTせず)、C群の47例のうち9例がPer protocolから外された(7例が肝切除実施のため)。主要評価項目の5年OS(ITT)はLT+C群が57%、C群が13%(HR:0.37、p=0.0003)であり、LT+Cが実施された36例のうち、26例に再発を認めた(一番多い部位は肺転移の14例)が、その後手術および焼灼療法が12例(46%)に実施され15例で最終的にがんがない状態を維持できていた。副次評価項目である3年・5年PFSは、LT+C群とC群で3年PFSがそれぞれ33%と4%、5年PFSがそれぞれ20%と0%(HR:0.34、p<0.0001)とLT+C群が有意に優れている結果であった。適切な症例選択をすることで、切除不能大腸がん肝転移症例に対してLT+Cは有意にOSとPFSのそれぞれを改善することが示された。長期予後が期待できない切除不能肝転移症例に対して根治の可能性を届けられることが示された。3.【大腸がん】CheckMate 8HW(#3503)CheckMate 8HW試験は1次治療におけるニボルマブ+イピリムマブ(NIVO+IPI)と標準治療(mFOLFOX6/FOLFIRI+/-ベバシズマブ/セツキシマブ)のPFSのデータがすでに2024 ASCO Gastrointestinal Cancers Symposiumで報告されているが、前回と同様のdMMR/MSI-H切除不能大腸がんにおいて1次治療でNIVO+IPIを行った202例と標準治療を行った101例の追加情報が報告された。観察期間中央値は31.6ヵ月と延長したが、PFS中央値でNIVO+IPI群は到達せず、標準治療群は5.9ヵ月(HR:0.21、p<0.0001)とNIVO+IPI群が圧倒的に優れている結果であった。サブ解析でもNIVO+IPI群が肝転移症例、BRAF V600E変異症例、RAS変異症例など、免疫チェックポイント阻害薬の効果が乏しいとされる症例でも良好なHRを認めていた。また、本試験では標準治療群は増悪後NIVO+IPIを試験治療で行うことが可能になっており、今回2次治療までのPFS(PFS2)が報告された。標準治療群では試験治療とそれ以外を合わせて67%の症例がcross overされたが、PFS2中央値でNIVO+IPI群が未到達である一方、標準治療群は29.9ヵ月(HR:0.27)と後治療の実施も含め1次治療でNIVO+IPIを実施する有効性が示された。免疫関連有害事象については一定数認められたが、Grade3以上はいずれも5%以下であり、臨床的には許容できると解釈された。dMMR/MSI-H切除不能大腸がんの1次治療としてNIVO+IPIが重要な選択肢であることが検証されたが、NIVO単剤との比較データは今回報告されておらず、どちらを第1選択にするかの最終判断は、今後の報告を見てからになると考える。4.【大腸がん】PARADIGM試験のバイオマーカー解析(#3507)本邦からもRAS野生型切除不能大腸がんに対してパニツムマブ(Pmab)+mFOLFOX6とベバシズマブ(Bmab)+mFOLFOX6を1対1で比較したランダム化比較試験であるPARADIGM試験のバイオマーカー解析が報告された。治療前と治療後に血漿検体を採取してNGS解析を行った556例のうち、病勢進行(PD)で中止となった276例で治療開始時とPD時のゲノムの変化を解析した。PD症例のOSや増悪後の生存期間(PPS)は両群で差を認めず、PD時のacquired alterationsに注目すると、Pmab群で2つ以上のalterationsが52.4%の症例に認められた一方、Bmab群では43.3%に認められた。Pmab群で2つ以上のalterationsを認めた症例はalterationsを認めなかった症例よりも有意にPPSが短く、Pmab症例において獲得alterationsがPD後の生存に影響している可能性が示された。さらに獲得alterationsをpathwayごとに分けて解析すると、RTK/RAS経路のalterationsを認める症例はPmab群でPPSが不良である一方、CIMPやPI3K経路のalterationsを認める症例はBmab群でPPSが不良な結果であった。RTK/RAS経路とCIMP経路はOSでも同様の結果が認められ、獲得耐性のパターンがレジメンにより異なり、またそれが増悪後の生存に影響する可能性が示唆された。現在の臨床では、治療前後の血漿を用いたNGS解析は実施できないが、科学的には重要な示唆を持つ結果であった。5.【大腸がん】CodeBreaK 300のOSの報告(#LBA3510)CodeBreaK 300試験は前治療のあるKRAS G12C変異結腸直腸がんに対して、ソトラシブ960mg/日+Pmab群、ソトラシブ240mg/日+Pmab群、主治医選択(トリフルリジン・チピラシルまたはレゴラフェニブ)群を1対1対1で比較した第III相試験である。主要評価項目である盲検独立中央判定によるPFSは2つのソトラシブ+Pmab群が主治医選択群よりも有意に優れていることが検証されているが、副次評価項目であるOSの報告が、OSのイベントが50%を超えた今回のタイミングで行われた。症例数からOSの検証はできないが、観察期間中央値13.6ヵ月の段階で2つのソトラシブ+Pmab群が主治医選択群よりも良好な傾向が認められ、有意差はないもののソトラシブ960mg/日+Pmab群はHR:0.70と良好な結果であった。後治療として主治医選択群はその後31%がKRAS G12C阻害薬の治療を受けていた。その他の結果もupdateが報告され、ソトラシブ960mg/日+Pmab群は奏効割合が30%、Duration of Response中央値が10.1ヵ月、PFS中央値の再解析では5.8ヵ月(HR:0.46)の結果であった。これらの結果は、ソトラシブ960mg/日+PmabがKRAS G12C変異大腸がんの新たな選択肢であることを示すものであり、本邦でも今後早期の承認が期待される。6.【直腸がん】切除可能dMMR/MSI-H直腸がんに対するPD-1抗体の医師主導治験の長期治療効果(#LBA3512)スローン・ケタリング記念がんセンターから報告された切除可能dMMR/MSI-H直腸がんに対するdostarlimab(PD-1抗体)の医師主導治験は、14例という少数例の結果であったものの全例に臨床的完全奏効(cCR)が認められるという優れた結果であった。今回さらなる症例集積と治療効果の継続について報告がなされた。今回の報告では48例までの登録がなされており、Lynch症候群の確定検査がなされた41例のうち21例(51%)がLynch症候群の診断であった。またTumor Mutation Burdenの中央値が53.6、BRAF V600E変異が1例に認められた。PD-1抗体薬であるdostarlimabの投与が終わった42例で主要評価項目であるcCRが100%に認められ、観察期間中央値17.9ヵ月の時点で1例も再増悪を認めていなかった。もう1つの主要評価項目である12ヵ月cCRについても26.3ヵ月の観察期間中央値で100%の結果であった。Grade3以上の有害事象は認めず、安全性についても大きな懸念事項は認めなかった。すでにNCCNガイドラインでは、切除可能dMMR/MSI-H直腸がんに対する第1選択は免疫チェックポイント阻害薬6ヵ月となっており、企業主導の検証治験として行われているAZUR-1が進行中である。また本邦でも医師主導治験としてStageI~III直腸がんまでを対象にNIVOの有効性・安全性をみるVOLTAGE-2試験が進行中である。7.【大腸がん】c-Metをターゲットとした新規Antibody-Drug Conjugate(ADC)製剤であるABBV-400の安全性・有効性(#3515)ABBV-400はc-Metをターゲットとした抗体薬であるtelisotuzumabとtopoisomerase-1阻害薬のADC製剤である。BRAF野生型かつMSSの切除不能大腸がんの3次治療以降の症例を対象にdose escalation/expansionが行われた。1.6mg/kg、2.4mg/kg、3.0mg/kgと増量が行われ、Grade3以上の主な有害事象は貧血(35%)、好中球減少(25%)、血小板減少(13%)であった。すべてのGradeで嘔気(57%)、疲労(44%)、嘔吐(39%)が認められた。治療継続期間中央値は4.1ヵ月であり、1.6mg/kgではRelative Dose Intensity(RDI)が100%であったが、3.0mg/kgでは86.5%であった。奏効割合は16%であり、Duration of Response中央値は5.5ヵ月であった。用量が増えるに従って奏効率は上昇し、3.0mg/kgでは24%であった。C-Metタンパクの発現を≧10% 3+をcut offとして検討すると、2.4mg/kg以上で投与された症例のうちcut off以上の症例は奏効割合37.5%、PFS中央値5.4ヵ月と有望な結果であった。2.4mg/kgと3.0mg/kgを比較すると、2.4mg/kgのほうが、RDIが保たれ毒性は許容される結果であった。ABBV-400は大腸がん領域のADC製剤としては有望と考えられており、現在本試験の中でABBV-400とベバシズマブの併用が検討されている。

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病院経営層、事務長さま向け「2040年に地方で生き残る病院の条件」 

国内、特に地方の病院においては超高齢化社会が急速に進む上で、時代の潮流を読み、地域のニーズを捉えた経営の必要性が加速する。病床再編により、急性期病院はさらに機能を充実させて高度急性期を目指すか、方向転換して回復期や慢性期等の高齢者を対象にした医療に力を入れるか様々な要件が交差する。今回のセミナーは「2040年に地方で生き残る病院の条件」と「病院経営に寄与する医師の採用の見極め方」をテーマにそれぞれの専門家を招いてセミナーを開催します。

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高リスク早期TN乳がんに術後アベルマブ1年投与でOS改善、DFSは改善せず(A-BRAVE)/ASCO2024

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)における抗PD-L1抗体アベルマブ1年投与の術後補助療法は、観察群と比べ無病生存期間(DFS)を有意に改善しなかったが、全生存期間(OS)を有意に改善した。医師主導で実施された多施設共同無作為化第III相A-BRAVE試験の結果について、イタリア・Padova大学のPierfranco Conte氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:治癒目的で手術および術前/術後化学療法を完了した高リスクのTNBC A層-手術後、pN1/pT2、pN0-3/pT3-4、pN2-3/any pT B層-術前化学療法後、乳房/腋窩リンパ節に浸潤性残存病変あり・試験群:アベルマブ(10mg/kg静注)を2週ごと52週間投与・対照群:観察・評価項目:[主要評価項目]DFS、B層におけるDFS[副次評価項目]OS、PD-L1陽性例におけるDFS、安全性 主な結果は以下のとおり。・2016年6月~2020年10月にイタリアの64施設および英国の6施設から477例が登録され、無作為に割り付けられた。直後に11例が同意を取り下げたため、アベルマブ群235例、対照群231例で試験開始した。A層はアベルマブ群40例/対照群43例、B層はアベルマブ群195例/対照群が188例だった。・追跡期間中央値52.1ヵ月において、3年DFS率はアベルマブ群が68.3%と対照群63.2%より5.1%増加したが、DFSの有意な改善はみられなかった(ハザード比[HR]:0.81、95%信頼区間[CI]:0.61~1.09、p=0.172)。B層における3年DFS率についても、6.2%増加したが有意な改善はみられなかった(HR:0.80、95%CI:0.58~1.10、p=0.170)。・3年OS率はアベルマブ群が84.8%と対照群76.3%より8.5%増加し、OSの有意な改善が認められた(HR:0.66、95%CI:0.45~0.97、p=0.035)。・事後探索的解析の遠隔無病生存期間(DDFS)において、3年DDFS率がアベルマブ群で7.5%改善し、有意な改善が認められた(HR:0.70、95%CI:0.50~0.96、p=0.0277)。・アベルマブ群における有害事象による投与中止は20例(30.8%)で、そのうち免疫関連有害事象による投与中止は17例だった。 Conte氏は、「遠隔転移リスクが30%減少し、死亡リスクが34%減少したことから、術前療法後に浸潤性残存病変あり、もしくは術後に高リスクの早期TNBC患者において、アベルマブが役割を有する可能性が示唆される」とまとめた。

3070.

精神病性うつ病の維持療法に対する抗うつ薬や抗精神病薬治療の実際の有効性

 精神病性うつ病は、機能障害や自殺リスクの高さを特徴とする重度の精神疾患であるが、その維持療法に使用される薬物療法の有効性を比較した研究は、あまり多くない。フィンランド・東フィンランド大学のHeidi Taipale氏らは、日常診療下における精神病性うつ病患者の精神科入院リスクに対する特定の抗精神病薬と抗うつ薬、およびそれらの併用療法の有効性を比較するため、本研究を実施した。World Psychiatry誌2024年6月号の報告。 新たに精神病性うつ病と診断された16〜65歳の患者を、フィンランド(2000〜18年)およびスウェーデン(2006〜21年)の入院、専門外来、病気休暇、障害年金のレジストリより特定した。主要アウトカムは、重度の再発を表す精神科入院とした。特定の抗精神病薬および抗うつ薬による薬物療法の影響を比較した。薬剤の使用期間および非使用期間に関連する入院リスク(調整ハザード比[aHR])は、各個人を自身の対照とする個人内デザインにより評価し、層別Coxモデルで分析した。フィンランドとスウェーデンの2つのコホート研究をそれぞれ事前に分析し、次に固定効果メタ解析を用いて統合した。 主な結果は以下のとおり。・フィンランドのコホートには1万9,330人(平均年齢:39.8±14.7歳、女性の割合:57.9%)、スウェーデンのコホートには1万3,684人(平均年齢:41.3±14.0歳、女性の割合:53.5%)が含まれていた。・抗うつ薬未使用と比較し、再発リスク低下と関連する抗うつ薬は、bupropion(aHR:0.73、95%信頼区間[CI]:0.63〜0.85)、ボルチオキセチン(aHR:0.78、95%CI:0.63〜0.96)、ベンラファキシン(aHR:0.92、95%CI:0.86〜0.98)であった。・長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬(aHR:0.60、95%CI:0.45〜0.80)およびクロザピン(aHR:0.72、95%CI:0.57〜0.91)は、抗精神病薬未使用の場合と比較し、再発リスク低下と関連していた。・単剤療法のうち、ボルチオキセチン(aHR:0.67、95%CI:0.47〜0.95)とbupropion(aHR:0.71、95%CI:0.56〜0.89)のみが、抗うつ薬および抗精神病薬未使用の場合と比較し、再発リスクの有意な低下と関連していた。・探索的解析では、抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法において、抗うつ薬および抗精神病薬未使用の場合と比較し、再発リスクの有意な低下が認められた組み合わせは、アミトリプチリン+オランザピン(aHR:0.45、95%CI:0.28〜0.71)、セルトラリン+クエチアピン(aHR:0.79、95%CI:0.67〜0.93)、ベンラファキシン+クエチアピン(aHR:0.82、95%CI:0.73〜0.91)であった。・ベンゾジアゼピンおよび関連薬(aHR:1.29、95%CI:1.24〜1.34)、ミルタザピン(aHR:1.17、95%CI:1.07〜1.29)は、再発リスク増加と関連が認められた。 著者らは、「精神病性うつ病の維持療法において再発リスク低下と関連している薬剤は、bupropion、ボルチオキセチン、ベンラファキシン、LAI抗精神病薬、クロザピンおよびごく少数の特定の抗うつ薬と抗精神病薬との併用療法であった。このことから、精神病性うつ病の標準治療として、抗精神病薬と抗うつ薬との併用療法を推奨している現在の治療ガイドライン(詳細は明記されていない)に対し異議を唱えるものである」としている。

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イメグリミンのRWD、体重減少や肝機能改善も/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会の年次学術集会(会長:植木 浩二郎氏[国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター長])が、5月17日~19日の日程で、東京国際フォーラムをメイン会場に開催された。 今回の学術集会は「『糖尿病』のない世界を目指して〜糖尿病学の挑戦〜」をテーマに、46のシンポジウム、169の口演、ポスターセッションなどが開催され、特筆すべきは糖尿病患者の参加プログラムやこれからの医療を担う高校生向けの参加プログラムなども開催された。 本稿では「口演118 薬物療法」から「当院におけるイメグリミンの有効性・安全性の検討」(演者:吉田 薫氏[名鉄病院内分泌・代謝内科])をお届けする。イメグリミンはHbA1cを低下させ、脂質、肝機能を改善する可能性 イメグリミン(商品名:ツイミーグ)は、ミトコンドリアへの作用を介し、グルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用(糖新生抑制および糖取込み能改善)により血糖降下作用を示すことで、糖尿病によって引き起こされる細小血管・大血管障害の予防につながる血管内皮機能および拡張機能の改善作用を有する可能性が示唆されている治療薬で、β細胞の生存と機能を保護する効果も期待されている。わが国では、2021年6月23日に製造販売承認、同年8月12日に薬価収載、同年9月16日に発売されている。 吉田氏らの研究グループは、リアルワールドでのイメグリミンの有効性と安全性の検討を行うとともに、患者の体組成分析の検討も行った。 対象・方法として、2022年9月より2型糖尿病患者のイメグリミンへの切り替え、追加投与を行い、6ヵ月以上観察可能の75例(男性55例/女性20例)について投与前後の各種臨床指標および体組成推移を比較検討した。患者背景としては、平均年齢62.6歳、平均HbA1c8.8%、平均病歴12年、平均BMIは26で、併用薬ではメトホルミン、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬の順で多く、インスリンは28%の患者で使用していた。 主な結果は以下のとおり。・HbA1cは8.9±1.5%から8.0±1.1%へ低下、グリコアルブミン(GA)は21.1±6.2%から19.5±4.5%に有意に改善した。・GA/HbA1cには変化がなかった。・脂質、肝機能(AST、ALTともに)は改善傾向がみられたが、血圧、腎機能には変化がなかった。・FIB-4 indexに変化はなかった。・体重は71.5±15.2kgから67.3±14.4kgへと減少した。・体組成分析において、体水分量は減少したが体蛋白量は変化がなかった。・脂肪量、筋肉量に有意な変化はなかった。・安全性では6例に消化器症状があり中止となったが、特筆すべき事象はなかった。 以上から吉田氏らのグループは「イメグリミンは体重を増加させることなく、血糖コントロールを改善し、脂肪肝を改善する可能性がある。また、体重を減らすことなくHbA1cを改善する可能性が示唆される」と考察している。

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年収額に満足している診療科は?/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2月20日(火)に会員医師1,004人を対象に、「年収に関するアンケート」を実施した。その中で、自身の年収額を妥当だと思うかどうか尋ねたところ、「そう思う」「ややそう思う」の合計が過半数を超えておおむね満足していることが伺えたが、「まったくそう思わない」と回答した医師も10%存在した。診療科別では、満足している診療科とそうでない診療科の差が明らかとなった。年収600万円未満の満足度が高い 年収額の妥当性について、全体では「そう思う」が25%、「ややそう思う」が36%、「あまりそう思わない」が29%、「まったくそう思わない」が10%であった。年収別の「そう思う」「ややそう思う」の割合は、600~800万円が44%、800~1,000万円が46%と半数を切ったが、その後は年収が上がるとともにほぼ上昇した。なお、600万円未満の「そう思う」「ややそう思う」の割合は55%で、うち「そう思う」が31%と満足度の高さが目立った。年代が上がるほど満足度も上昇 年代別の「そう思う」「ややそう思う」の割合は、35歳以下が52%、36~45歳が58%、46~55歳が62%、56~65歳が61%、66歳以上が70%であった。なお、最も多い年収帯は、35歳以下が1,000~1,200万円、36~45歳が1,400~1,600万円、それ以降の世代では2,000~2,500万円であった。女性の満足度が下がる 男女別では、男性は「そう思う」が25%、「ややそう思う」が35%、「あまりそう思わない」が29%、「まったくそう思わない」が10%で、女性はそれぞれ21%、40%、29%、9%であった。2022年に実施した同様の調査では、男性の分布は本年とほぼ同じであった一方、女性の「そう思う」は32%で、本年は約10%低くなっていた。とくに満足度が下がっていたのは、56~65歳と66歳以上の女性であった。大学病院の満足度が低い 勤務先別の「そう思う」「ややそう思う」の割合は、一般診療所が61%、一般病院が64%であったが、大学病院は45%と低かった。病床数別では、20床未満は71%、20床以上は60%であった。診療科別の傾向は? 「そう思う」「ややそう思う」と回答した医師の割合が50%以上であった診療科は下記のとおり(30人以上の回答が得られた診療科を抜粋)。精神科:78%泌尿器科:70%消化器内科:69%呼吸器内科:69%内科:64%小児科:62%神経内科:60%糖尿病・代謝・内分泌科:56%外科:50% その他、年代ごとの男女別、病床数別、勤務先別などの詳細な年収分布については、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2024【第3回】年収額の妥当性

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aggressive ATLに対する同種造血幹細胞移植の有効性(JCOG0907)/ASCO2024

 成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)のうち、急性型、リンパ腫型、予後不良因子を有する慢性型のATL(aggressive ATL)は予後不良で、化学療法による生存期間中央値は約1年と報告されている。一方、aggressive ATLへの同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)による3年全生存割合(OS)は約40%とされるが、その多くが後ろ向き解析に基づくものである。日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)では、aggressive ATLに対するallo-HSCTの有効性と安全性を検証するため、第III相単群検証的試験(JCOG0907)を実施。琉球大学の福島 卓也氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で結果を発表した。・対象:allo-HSCTの実施に前向きな、未治療のaggressive ATL患者(血清抗HTLV-I抗体陽性、≦65歳[試験開始時は≦55歳に対する骨髄破壊的移植(MAST)のみであったが、2014 年9月にプロトコルを改訂し56~65歳に対する骨髄非破壊的移植(RIST)を組み込んだ]、ECOG PS≦3、十分な臓器機能を維持、中枢神経系浸潤なし)・治療プロトコル:1)導入化学療法(VCAP/AMP/VECP 療法※2014年9月に一時的にモガムリズマブ併用も可としたがその後不可とした)2)allo-HSCT[血縁ドナー]MAST:ブスルファン12.8mg/kg+シクロホスファミド120mg/kg、GVHD予防(シクロスポリン+short termメトトレキサート[sMTX])RIST:ブスルファン12.8mg/kg+フルダラビン180mg/m2、GVHD予防(シクロスポリン)[非血縁ドナー]MAST:全身放射線照射(12Gy)+シクロホスファミド120mg/kg、GVHD予防(タクロリムス+sMTX)RIST:ブスルファン+フルダラビン+全身放射線照射(2Gy)、GVHD予防(タクロリムス+sMTX)・評価項目:[主要評価項目]全登録患者における3年OS 主な結果は以下のとおり。・2010年9月~2020年6月に、110 例(急性型72例、リンパ腫型27例、予後不良因子を有する慢性型9例、予後不良因子のない慢性型1例、ホジキンリンパ腫1例)が登録された。年齢中央値は55(33~65)歳、男性/女性=54/56例、PS 0/1/2/3=56/49/3/2例であった。・何らかのallo-HSCTを受けた全92例の患者のうち、試験治療としてのallo-HSCT実施は41例(MAST 19例/RIST 22例、血縁12例/非血縁29例[試験移植群])、後治療としてのallo-HSCT実施は51例(MAST11例/RIST40例、血縁11例/非血縁15例/臍帯血25例[非試験移植群])で、後者のうち 35例が初回寛解中、16例が進行/再発後のallo-HSCT 実施であった。・登録された110例の3年OSは44.0%(90%信頼区間[CI]:36.0~51.6)で、目標とする閾値(両側90%CIの下限値25%)を上回り主要評価項目は達成された。・移植実施までの期間中央値は、試験移植群4.7ヵ月、非試験移植群4.3ヵ月で、両群に差を認めなかった。・年齢とPSで調整し、移植実施の有無を時間依存共変量とした多変量解析によるOSハザード比は、試験移植群vs.非試験移植群が0.92(95%CI:0.55~1.51)で試験移植群に延命効果を認めなかったが、upfront移植(試験移植群と非試験移植群のうち初回寛解中の移植実施例)vs.移植非実施群が0.65(0.33~1.31)で、upfront allo-HSCTは延命効果を示した。・ドナーソース別にみたOSハザード比は、非血縁vs.血縁が0.94(95%CI:0.49~1.79)、臍帯血vs.血縁が1.20(0.59~2.46)で、ドナーソース間で生存に有意差を認めなかった。・試験移植群41例のうち、治療関連死は血縁者間移植16.7%、非血縁者間移植20.7%で、一時的に試験中止とする基準を下回った。死亡全70例の死因は、原病34例、試験移植関連9例、非試験移植関連21例、その他の疾患6例であった。 福島氏は、未治療のaggressive ATLに対するallo-HSCT について、本試験で採用した移植法は延命効果が明確でなかったが、初回寛解時にできる限り早期に移植を実施する治療戦略であるupfront allo-HSCTは推奨されると結論付けた。

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リウマチ性心疾患、低中所得国で死亡率が高い/JAMA

 リウマチ性心疾患(RHD)成人患者の死亡率は高く、弁膜症の重症度と関連しており、一方で弁手術と弁形成術は死亡率の大きな低下と関連していることを、インド・All India Institute of Medical SciencesのGanesan Karthikeyan氏らが、国際多施設共同前向き観察研究「INVICTUS試験」の結果で報告した。RHDは、低中所得国において依然として公衆衛生上の問題となっているが、複数の流行国で患者を登録した大規模研究はほとんどなかった。今回の結果を受けて著者は、「抗菌薬による予防と抗凝固療法を中心とした現在のアプローチに加え、外科的治療とインターベンション治療へのアクセスを改善する必要性が高まっている」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年6月5日号掲載の報告。24ヵ国のRHD患者約1万4千例の予後を前向きに調査 研究グループは、RHDが流行中の低中所得国24ヵ国の138施設において、心エコー検査により臨床的にRHDが確認され同意が得られた18歳以上の成人患者を連続登録し、6ヵ月ごとに対面または電話で追跡調査を行い、1年ごとに対面で評価した。 主要アウトカムは全死因死亡、副次アウトカムは死因別死亡、心不全(HF)による入院、脳卒中、感染性心内膜炎、リウマチ熱の再発などであった。アウトカムは、世界銀行グループ加盟国の最新の所得水準別分類(低所得国[LICs]、低中所得国[LMICs]、高中所得国[UMICs]、高所得国[中東、北アフリカ]、北米、南アジア、サハラ以南)に基づきイベント発生率を分析し、多変量Cox回帰モデルを使用して死亡の予測因子を同定した。 2016年8月~2022年5月に、計1万3,696例のRHD患者が登録された。2,769例(20%)がLICs(エチオピア、マラウイ、モザンビーク、ネパール、ルワンダ、タンザニア、ウガンダ)、8,453例(62%)がLMICs(カメルーン、エジプト、インド、ケニア、ニジェール、パキスタン、フィリピン、スーダン、ザンビア、ジンバブエ)、2,474例(18%)がUMICs(ボツワナ、ブラジル、中国、カザフスタン、メキシコ、パラグアイ、南アフリカ共和国)であった。全体の平均年齢は43.2歳、女性が72%であった。死亡率は14.2%、その約7割は血管死 観察期間中央値3.2年(4万1,478人年)において、1万2,967例(94.7%)の生命予後に関するデータが入手可能であった。 全体で1,943例(14.2%、4.7%/人年)が死亡した。死亡例の67.5%(1,312例)は血管死で、主にHF(667例)または心臓突然死(352例)であった。 観察期間中、弁手術を受けた患者は少なく(604例、4.4%)、HFによる入院(805例、5.9%、年間発生頻度2.0%)も低値であった。また、非致死的脳卒中(年間発生頻度0.6%)、感染性心内膜炎(0.07%)、リウマチ熱の再発(0.02%)もまれであった。 死亡リスクの増加と関連していた因子は、うっ血性心不全(ハザード比[HR]:1.68、95%信頼区間[CI]:1.50~1.87、p<0.001)、肺高血圧症(1.52、1.37~1.69、p<0.001)、心房細動(1.30、1.15~1.46、p<0.001)など重症弁膜症のマーカーであった。一方、観察期間中の弁手術(0.23、0.12~0.44、p<0.001)や弁形成術(0.24、0.06~0.95、p=0.042)は死亡リスクの低下と関連していた。 患者レベルの因子を調整した後、国の所得水準が高いことが死亡率の低下と関連していることが認められた。

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切除可能なdMMR大腸がん、ニボルマブ+イピリムマブ術前補助療法が有用/NEJM

 ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)の局所進行大腸がん患者において、ニボルマブ+イピリムマブによる術前補助療法の忍容性および安全性は良好であり、高い病理学的奏効を得られたことが、オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMyriam Chalabi氏らによる第II相多施設共同単群試験「NICHE-2試験」の結果で示された。dMMR腫瘍は、転移のない大腸がん患者の10~15%に認められ、化学療法の有効性は限られている。小規模なNICHE試験でニボルマブ+イピリムマブによる術前補助療法の有用性が示唆されていたが、さらに多くの症例において有効性と安全性を検討する目的でNICHE-2試験が行われた。NEJM誌2024年6月6日号掲載の報告。計115例を対象に安全性と3年無病生存率を評価 研究グループは、未治療で遠隔転移のない切除可能な局所進行dMMR直腸腺がんで、最初のNICHE試験ではStageI~III、2020年10月のプロトコール改訂後のNICHE-2試験ではcT3以上かつ/またはN+の18歳以上の患者を登録し、1日目にイピリムマブ1mg/kgとニボルマブ3mg/kgを、15日目にニボルマブ3mg/kgを投与した後、試験登録後6週間以内に手術を行うこととした。 主要評価項目は、適時手術(治療関連有害事象による手術の遅延が2週間以内)で定義された安全性および3年無病生存率(DFS)、副次評価項目は病理学的奏効とゲノム解析であった。 本報告では、NICHE試験に登録された32例、およびNICHE-2試験に登録された83例を合わせた115例(登録期間2017年7月4日~2022年7月18日)の解析結果が示されている。手術遅延なしが98%、病理学的著効が95%、病理学的完全奏効が68% 115例の患者背景は、年齢中央値60歳(範囲:20~82)、58%が女性、67%がStageIII、64%がcT4であった。 適時手術が行われた患者は、115例中113例(98%、97.5%信頼区間[CI]:93~100)で、2週間以上の手術遅延に至った治療関連有害事象は2例(2%)のみであった。免疫関連有害事象は全Gradeで73例(63%)、Grade3または4が5例(4%)に発現したが、治療中止に至った有害事象は認められなかった。 有効性解析対象111例のうち、109例(98%、95%CI:94~100)に病理学的奏効が認められた。105例(95%)が病理学的著効(MPR:残存腫瘍が10%以下と定義)、75例(68%)が病理学的完全奏効(pCR:原発巣およびリンパ節のいずれも残存腫瘍なし)であった。 追跡期間中央値26.2ヵ月(範囲:9.1~65.3)時点で、再発は認められなかった。追跡期間が3年を超えた37例は、全例、無病のままである。 なお著者は研究の限界として、大腸がんの放射線学的Stage判定は不正確であることが多く、過剰治療につながる可能性があることなどを挙げている。

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遠隔医療のビデオ通話では医師の「背景」が重要

 遠隔医療により医師はどこからでも診療することができるようになったが、ビデオ通話の際の背景を医師らしく見えるようにすることで、患者の診療内容やアドバイスへの信頼度が強まることが、米ミシガン大学医学部内科学分野のNathan Houchens氏らによる研究で明らかになった。これは、遠隔診療を行う際には、たとえ診療所や診察室から遠く離れていても、そこにいるかのように見せるべきことを示唆する結果だ。研究の詳細は、「JAMA Network Open」に5月15日掲載された。 この研究では、ミシガン・メディスンまたは米国退役軍人(VA)アナーバーヘルスケアシステムのいずれかで1年以内に診療を受けた18歳以上の患者1,213人(626人が女性を自認)を対象に、2022年2月22日から10月21日の間に実施された調査結果の分析が行われた。調査では、7種類の異なる環境(医師のオフィス、診察室、壁に卒業証書や資格証明書などが飾られたオフィス、書棚のある自宅オフィス、寝室、キッチン、無地の背景)にいる医師の写真が提示された。調査参加者は、自分の好みの環境を選び、また6つのドメイン(知識の豊富さ、信頼性、思いやり、親しみやすさ、専門性、患者が感じる居心地の良さ)について1〜10点で評価し、複合スコアが算出された。 その結果、複合スコアが最も高かった背景は、卒業証書などを掲示してある医師のオフィスだった(スコアは平均7.8点)。また、医師のオフィス、診察室、書棚を背景にした自宅のオフィス、無地の背景も高評価を得た。これに対して、背景に寝室(平均7.2点)やキッチン(平均7.0点)が映り込んでいるケースの評価は低かった。卒業証書などで飾られたオフィスを好む人の割合は34.7%、医師のオフィスを好む人の割合は18.4%、無地の背景を好む人の割合は14.4%であったのに対し、寝室やキッチンを好む人の割合はそれぞれわずか3.5%と2.0%に過ぎなかった。 Houchens氏は、「患者は、医師の服装やワークスペースがどのようなものであるべきかについての考えをあらかじめ持っている」と述べ、「今回の研究により、患者は、従来、伝統的あるいは専門的と見なされている服装や環境を好むことが明らかになった」と話している。同氏はさらに、「背景の中の卒業証書や資格証明書は、患者が医師に期待する専門知識を想起させる一方で、リラックスしたインフォーマルな家庭環境の背景だと何かが失われてしまうのだろう」と付け加えている。 こうした結果を受けて研究グループは、医師に対して、遠隔診療を行う場合は、オフィスや診察室から行うか、そのような専門的な環境をシミュレートしたバーチャル背景を作成することを推奨している。また、一部のクリニックに設けられている、遠隔医療を行うための専用スペースは、できる限りプロフェッショナルに見えるようにすべきだとも助言している。 Houchens氏は、「この研究結果は、医療従事者や医療システムが気にかけていないような細部を、患者はしばしば気にすることを教えてくれる。患者は、われわれが使う言葉や非言語的な振る舞いを真剣に受け止めるものだと常に念頭に置いておくことが重要だ。また、われわれ自身もそのことを重く受け止める必要がある」と述べている。

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禁煙を拒む患者に試すアプローチ法(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者中性脂肪が高い原因は、タバコかもしれませんね。(Relevance:関連性)タバコは中性脂肪にも悪さをするんですね。そうですね。新型コロナの重症化とも関連していますしね。(Risks:危険性)えっ、そうなんですか!?(驚いた顔)ですが、すぐに禁煙できれば、体にさまざまな良い変化が現れますよ!(Rewards:効果)へぇー、そしたら血圧も下がりますかね。画 いわみせいじそうですね。ところで、禁煙するに当たって何か懸念されるようなことはありますか?(Roadblocks:懸念)意志が弱くて、続ける自信がなくて…。なるほど。意志が弱い方でも禁煙に成功する方法がありますよ!色々な方法があるので、また次回説明しますね。(Repetition:繰り返す)はい。わかりました。(うれしそうな顔)ポイント5Rアプローチは、か行(関連性、危険性、繰り返す、懸念、効果)で覚えておくと便利です。Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)表.禁煙に無関心な喫煙者に対する5Rアプローチ5R内容Relevance(か:関連性)なぜ禁煙が必要かを患者に関連付けるRisks(き:危険性)喫煙の危険性を説明するRepetition(く:繰り返す)動機付けを繰り返すRoadblocks(け:懸念)禁煙への懸念を取り除くRewards(こ:効果)禁煙で得られる効果を確認する参考:川根博司, 工藤翔二, ほか編. 南江堂. 禁煙指導の実際. 呼吸器疾患 最新の治療 2007-2009. 2007:464-466.Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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093)駆け込み受診はキャラが濃い?【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第93回 駆け込み受診はキャラが濃い?ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆落ち着いていることが多い、ここ最近の皮膚科外来。真夏日の影響もあるのか、ぼちぼち汗疹の患者さんが増えてきてはいるものの、繁忙期に比べたら心身ともに余裕のある日が続いております。ある日のこと、「今日の外来も落ち着いていたなぁ~」と背伸びをしていると、更新されたパソコンの一覧画面に数名の新規患者さんが!「おやまあ、こんな時間に同時の駆け込みとはめずらしい」と内心思いながら診察室へ呼びこんでみたところ、これがなかなかに癖のあるツワモノぞろい(数名おりました)。「今このタイミングで来る?」と言いたくなるような重症患者さんだったり、発言が独特なキャラの濃い患者さんだったり…。「診療時間の終了間際に駆け込んでくる患者さんって、濃いよね!?」と思わずスタッフと顔を見合わせてしまいました。仕事や学校帰りにギリギリで受診するパターンもあり、一概にそうとは言えないはずですが、たまたま印象に残る患者さんが駆け込み受診だったりすると、余計にこちらの記憶に残ってしまうのか?「これってバイアスがかかっているのかな」と思いつつも、やっぱりギリギリで駆け込んでくる人には「何か一癖あるのかもしれない」と思わずにはいられないのでした。読者の皆さまにもご経験ありますでしょうか?それでは、また次の連載で。

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ログインの意味を考える、航海日誌と実験ノートの共通点は丸太【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第73回

ログインとは何か?「もう覚えきれない!」こう叫びたくなったことはありませんか。PCで仕事をしようとして、インターネット上のサービスを利用しようとする際に、ログインIDとパスワードを使って認証を求められることに辟易したことはありませんか。パスワードの変更も頻回に要求されます。定期的にパスワードを変更することで、セキュリティが維持される理屈はわかります。しかし、あまりに多くのパスワードは覚えられません。パスワードを書き留めた付箋をモニターの枠に貼り付けたくなります。自分の記憶力の減退を嘆くばかりです。そもそも、この「ログイン」とは何なのでしょうか。ログインのログのスペルは「log」で、記録という意味があります。インは入るですね。ログインは記録することを意味します。逆にシステムから出ることはログアウトで、記録を終えることを意味します。このログという言葉を辞書で調べると、1番目の意味は丸太です。伐採して枝を切り落とした幹だけの「丸太ん棒」がログです。なぜ丸太が記録になったのか、ウンチクを語らせていただきます。大航海時代、どうやって船の位置を測定した?大航海時代に遡ります。大海を安全に航海するには自船の位置を知ることが必須です。緯度と経度を知りたいのです。緯度は赤道を基準として南北の位置なので、正中時の太陽高度を測ることによって正確に知ることができました。大航海時代になっても東西にどれだけ移動したかを正しく測ることは難しかったのです。その理由は正確な時計が存在しなかったからです。クロノメーターと呼ばれる正確な時計が出現してからは、同時刻の天体観測のデータと照らし合わせて正確な経度を算出することが可能となりました。クロノメーターが登場する以前は、船の速度から経度の近似値を得ていたのです。船の速度をなるべく正しく測ることが求められました。原始的には船首から丸太(ログ)を投げ入れ、船尾まで流される時間を計測して船の速度を求めていました。さらに計測法は進化します。太い丸太に長いロープをくくりつけ海に投げ入れます。同時に砂時計をひっくり返し、一定時間を測定します。そのロープには一定間隔で結び目(ノット)があり、その時間中に流出したノットの数から速度を求めたのです。ちなみに一定時間は28秒間、結び目の間隔は14.4メートルであったそうです。船の速度の単位を今でもノットと呼称する由来です。航海中は、このデータを記録に残すことが求められました。丸太を用いて測定したデータを正確に記録することから、この記録帳は「ログブック」と呼ばれました。データを記録することをログと呼ぶようになったのは、航海術に由来する歴史的な背景があったのです。ログブックは最重要書類これは過去の話ではありません。現在も世界中の船舶や軍艦は、所属国の法的定めにより航行中の記録を残すことが義務付けられています。日本においても、船員法は船長に対し日誌の備え付けを義務付けており、最後の記載をした日から3年を経過する日まで、船内に備え置かねばならないとしています。記載の仕方も細かく規定しています。具体例として、記述に変更や修正を加える場合には、権限のある記入者が誰による加筆かわかるようにしたうえで、修正後にも修正された前の記述が読めるような形で加筆を行うことが定められています。ログブックは、船の行動についての証明書の役割を持ち、公用航海日誌とも称される最重要書類です。海難事故などを巡る法的争いにおいても、航海日誌の記載内容は国際的にも証拠として認められる意味を持ちます。航海日誌と実験ノートの意味合いが非常に似ていることに気付きました。実験ノートは、科学的な実験や研究の過程を詳細に記録するためのノートです。実験の結果や観察内容を保存して、後で見返すことができます。実験ノートは研究室の共有財産であり、退職や卒業などでラボを離れても研究室に残すものです。自分のためのメモや自習用のノートとは区別することが必要です。研究者が、科学における不正行為をしたのではないかとの嫌疑をかけられ調査の対象となった場合には、身の潔白を証明できる唯一の証拠ともいえるのが実験ノートです。発明や発見の証拠を残し、特許申請などの際にも証拠書類となります。航海日誌と実験ノートは、それぞれの分野で異なる目的で使用しますが、正確な記録を残すという点では同じです。時系列に従っての記載、法的な面での重要性、継続的な更新と保管など多くの類似点があります。信頼性の高い記録を残すことが専門的な活動で重要な役割を果たすのです。落語では、江戸っ子が「この丸太ん棒めぇ~」とケンカ相手に威勢よく啖呵を切る場面がしばしばあります。日本語では役立たずの代表のような扱いの丸太ですが、もっと丸太に敬意を示すべきかもしれません。

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休むのも仕事のうち【Dr. 中島の 新・徒然草】(533)

五百三十三の段 休むのも仕事のうち6月になりましたが、まだ肌寒い日もあったりします。ちゃんと夏が来るんかいな、と思わなくもありませんが。そのうち耐え難い暑さになるんでしょうね。さて、先日は看護師さんたちの患者対応実習にアドバイザー的な立場で参加しました。いろいろなシナリオが準備されていて、しかもビデオ付き!とくにリアルだったのは、救急搬送された患者さんの奥さんの演技。救急外来の外で「主人の意識はどうなんですか! 大丈夫ですよね?」と矢継ぎ早に質問を浴びせてくるので、担当看護師はタジタジ。あまりの迫真の演技に、医療職がナンチャッテ演技をしているとは到底思えず「本物の女優さんなんじゃないか」と思わされたくらいです。このビデオを見た後、皆で順に家族役や看護師役になってロールプレイをやりながら相互に観察をしたわけですが、時には「中島先生はどう思われますか」などと振られました。最初に言ったこと。中島「うろたえた奥さんのペースに巻き込まれず、担当看護師は情報収集という役割を果たさなくてはなりません」奥さんの精神的な支えになることも大切ですが、それだけでは不十分です。中島「必要な情報を得るためには『奥さんにご協力いただくことが重要なんです』というメッセージを最初に伝えましょう」そうすれば奥さんの協力も期待できるというもの。中島「奥さんを味方に付けて、病気という敵に対して一緒に戦うというポジションを取るといいですね」目先の作業に集中することによって、多少は奥さんも落ち着くことが期待できます。さらなる追加発言。中島「担当の看護師さんは『検査結果が出ないと病状の説明はできません』と言っておられましたが……」「結果が出ないと」とか「説明は出来ません」とか否定文が並ぶと、内容は正しくても印象が悪くなったりしないかが心配です。中島「むしろ『検査結果が揃ったらキチンと説明させていただきます』と言って、医師に下駄を預けてしまったらどうでしょうか」そう言うと参加者の皆さん肩の荷が下りたようです。まだまだコメントを続けました。中島「細かいことですが『これまでに大きな病気をしましたか?』と聞いていましたが、『大きな病気』というのが漠然としているので、パニックになった相手には通じにくいですよね」看護師「何と言ったらいいのですか?」中島「『大きな病気』と言う代わりに『入院や手術の経験はありますか?』と言ったほうが、具体的でわかりやすいと思います」必要最小限のことを聞いた後に、あらためて持病や定期内服薬の有無を尋ねたほうが効率的ですね。最後に最も大切なこととして、自分自身の心の余裕を挙げました。過去の自分の失敗を振り返ってみると、コミュニケーションの齟齬というのは、得てして疲れている時に起こっていたように思います。疲労困憊すると心も体も余裕を持つことができません。だから常に体調を整えておくことが大切だと思います。「皆さん、休むのも仕事のうちですから、ちゃんと休んでくださいね」と締めくくって終了。助言をするための参加ではありましたが、私にとっても学ぶことの多い研修でした。それにしてもビデオに出演していた奥さん役の鬼気迫る演技が気になります。もしビデオ作成者に会うようなことがあったら、あの人が医療職なのか女優なのか尋ねてみたいところ。案外、どちらでもないかもしれませんね。最後に1句水無月の 狂気の演技 本職か?

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