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TAVRデバイスの完成度は高く短期成績はTAVR>SAVR、しかし長期成績と2次介入リスクの評価が必要(解説:伊藤敏明氏)

 論文サマリーはすでに過去の解説があるため簡潔にまとめる。 今回のRCT1)はドイツの38施設共同で行われた。生体弁適応となる65歳以上の有症状大動脈弁狭窄症(AS)、STSスコア4%未満のlowまたはintermediateリスク患者1,414例、平均年齢74±4歳がTAVRまたはSAVRに1:1で無作為割り付けされた。二尖弁、有意な冠動脈病変、先行心臓手術歴のある患者は除外され、TAVRの97.3%がtrans femoralで行われた。SAVR群の50.8%が胸骨正中切開で行われ、15.8%にrapid deploy弁が使用され、CABG同時手術率は1.8%であった。 プライマリーエンドポイントとして1年での全死亡およびstrokeの合計が設定され、カプランマイヤー法にてTAVR群5.4%、SAVR群10.0%(HR:0.53、95%信頼区間:0.35~0.79)とTAVRの非劣性が示された。 TAVR vs.SAVRの比較に必要な追跡期間と、再介入治療時のリスクの2点につきコメントしたい。 一般的に外科手術はカテーテル治療、放射線、あるいは薬物療法と比較して侵襲性が高いため、そもそも短期成績が劣る治療法である。意外とこの前提が共有されていない。外科手術が仮に優れるとしても、一定以上の期間後に、他療法との予後が交差して利点が現れてくる治療なのである。その期間は、疾患あるいは比較対象となる治療法により異なる。循環器領域での一例として、多枝病変患者に対するPCI vs.CABG比較2)では生命予後の交差に約1年を要し、2年以降差は開いていった。2021 ACC/AHAガイドラインでは、糖尿病合併多枝病変に対してはCABGがClass I推奨され、手術ハイリスクの場合に限りPCIがIIa推奨となっている。 今回のスタディは二尖弁の除外、再手術の除外、CABG同時手術率が低く、TAVRの97.3%がTFで行われ、SAVRの半分が胸骨部分切開または肋間開胸で行われた。対象患者の均質性が高く手技がアップデートされている点で、より現実的な比較と思われる。1年の短期成績は従来の報告と同じ結果であり、これ自体は手術とカテーテル治療の特性の差を反映しているにすぎず、驚くに値しない。TAVRデバイスの完成度が十分高い今日、おそらく今後どのような患者群を対象にスタディが行われても短期ではTAVR>SAVRとなるに違いない。ではTAVRとSAVRの予後の交差は果たして起きるのか、起きるとすれば何年後であるのか? これには、先行する7つのRCT(PARTNER 1A、PARTNER 2A、PARTNER 3、NOTION、US CoreValve High Risk、SURTAVI、EVOLUT Low-risk trial)のメタ解析3)が参考になり、2年で予後は交差し、以後SAVRが有利となるとされている。主にPARTNERシリーズでの予後の交差が影響していると思われる。本RCT1)は5年までの追跡がデザインされており続報が待たれる。 次に、再介入の必要が生じうる年齢層における生体弁(TAVR、SAVR含め)選択においては、初回弁の中へのカテーテル弁植え込み(Valve in valve)、または再SAVRへの適合性も考慮されるべきである。大阪大学におけるTAVR後造影CTを用いた研究4)では、SAPIEN3後の48%、Evolut PRO留置後の71%がsimulation上Valve in valve不適合と報告されている。 現在、すでにACC/AHAガイドラインでは65~80歳の生体弁適応ASにおいてTAVRもSAVRと同等のClass I推奨されており、米国の都市部では多くがTAVRを選択し、さらにこのガイドラインすら超えて通常機械弁が選択されるべき若年者までTAVRを選択しているという。これらの患者には早晩2次、3次介入が必要となり、通常倫理的に行うことができない「試験」の結果がリアルワールドから報告されるはずである。TAVR後の2次介入はSAVR、TAVRとも容易とはいえない現在、初回治療選択には個別の解剖学的条件など踏まえ、慎重な判断が求められる。

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塩分摂取のタイミングが悪いと熱中症のリスクが上昇

 塩分の摂取は熱中症の予防に重要である。しかし、日本の消防士を対象とした新たな研究の結果、不適切なタイミングで塩分を摂取することにより、熱中症のリスクが高まる可能性のあることが明らかとなった。これは福島県立医科大学衛生学・予防医学講座の各務竹康氏らによる研究の結果であり、「PLOS ONE」に1月2日掲載された。 地球温暖化や気候変動により、熱中症のリスクは高まりつつある。特に労働災害の対策は重要であり、厚生労働省は職場における熱中症予防対策を徹底するために毎年キャンペーンを実施しているが、熱中症による死亡者数は過去10年間、減少していない。塩分摂取は熱中症のリスクを下げることが報告されているが、塩分摂取のタイミングが及ぼす影響についてはこれまで明らかになっていない。 そこで著者らの研究グループは、福島県の消防署で24時間勤務を行う20歳以上の男性消防士28人(平均年齢31.0±7.7歳、平均BMI 25.0±3.1kg/m2)を対象として、塩分摂取のタイミングと熱中症の関連を検討する研究を行った。熱中症のリスクを高める高血圧や糖尿病の既往歴のある人は対象者から除外した。 対象者は2021年7月~9月の間に屋外訓練を行った。訓練中、水および市販の塩分タブレット(塩分量0.108g)を自由に摂取し、摂取量とタイミングを記録した。訓練前後に体重測定を行った。その他、質問紙にて、熱中症の自覚症状(手足の筋肉痛、筋けいれん、強い口渇、尿量減少、頭痛など)、睡眠、飲酒量などを評価した。 延べ訓練日数250日間に、熱中症症状は28件発生した。多く見られた症状の発生数は、1.5%以上の体重減少が10件、強い口喝が9件、めまいが8件、不快感が7件、頭痛が5件、手足の筋肉痛が2件だった。塩分摂取量の中央値(四分位範囲)は12.6(10.2~14.7)g/日だったが、塩分摂取量は熱中症症状の発生とは関連していなかった。 次に、塩分摂取のタイミングとの関連を分析した結果、塩分摂取なしと比較して、訓練前の塩分摂取(オッズ比5.893、95%信頼区間1.407~24.675)および訓練前+訓練中の塩分摂取(同22.889、4.276~122.516)は、熱中症症状の発生と有意に関連していることが明らかとなった。一方、訓練中のみの塩分摂取や、睡眠、飲酒、水分摂取については、熱中症症状との有意な関連は認められなかった。 以上の研究結果について著者らは、特殊な勤務シフトで日常的に重労働を行う消防士を対象としていることから、一般化には注意を要するとした上で、「塩分摂取の不適切なタイミングが熱中症のリスクを上昇させる可能性がある」と結論。塩分摂取の適切なタイミングや摂取量について、さらなる研究が必要だとしている。

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女性では短時間睡眠がNAFLD発症と関連

 女性では、短時間睡眠が非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease;NAFLD)の危険因子であるとの研究結果が発表された。日本人を対象とする縦断研究として、福島県立医科大学医学部消化器内科学講座の高橋敦史氏らが行った研究であり、「Internal Medicine」に4月23日掲載された。 NAFLDの発症や進行には不健康な生活習慣が関連しており、食習慣や運動などの身体活動に関するエビデンスは確立されている。一方で、睡眠時間とNAFLDのリスクとの関連については研究結果が一致せず、明らかになっていない。 そこで著者らは、2013年5月~2018年12月に福島県で2回以上の健診を受けた日本人を対象に縦断研究を実施。対象者は、1回目の健診時に33~86歳で、NAFLDを発症しておらず、B型肝炎抗原検査とC型肝炎抗体検査が陰性だった1,862人。そのうち男性は533人(年齢中央値65歳)、女性は1,329人(同64歳)だった。ピッツバーグ睡眠質問票を用いて睡眠時間を評価し、6時間未満、6~7時間未満、7~8時間未満、8時間以上に分類した。NAFLDは腹部超音波検査で評価した。 追跡期間の中央値は男性が39カ月、女性が47カ月であり、全体で483人(25.9%)がNAFLDを発症した。そのうち男性は159人(29.8%)、女性は324人(24.4%)だった。 NAFLD未発症のベースライン時点の生活習慣要因について、NAFLD発症者と非発症者で比較すると、男女ともに、NAFLD発症者は現在喫煙者の割合が有意に高かった。男性では、NAFLD発症者の方が、睡眠薬を使用している人、間食習慣のある人、朝食抜きの人の割合が有意に高く、運動習慣のある人の割合が有意に低かった。女性では、早食い人の割合がNAFLD発症者で有意に高かった。 同様に睡眠時間を比較したところ、女性では、NAFLD発症者の方が非発症者と比べて、6時間未満の人の割合が有意に高かった(23.8%対17.8%)。一方、男性では有意な差は見られなかった。女性について睡眠時間ごとに検討すると、6時間未満の人は7~8時間未満の人と比べて、NAFLD発症者の割合が有意に高かった(30.1%対21.2%)。 次に、睡眠時間とNAFLD発症との関連について、影響を及ぼし得る要因(年齢、性別、BMI、血圧、睡眠薬の使用、喫煙・運動・食事などの生活習慣、AST、ALT、γ-GTP、トリグリセライド、LDL-C、HDL-C、尿酸、HbA1c)を統計学的に調整した上で、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。その結果、睡眠時間が7~8時間未満の女性と比較して、6時間未満の女性におけるNAFLD発症のハザード比は1.55(95%信頼区間1.09~2.20)だった。すなわち女性では、短時間睡眠がNAFLDの独立した危険因子であることが明らかとなった。 著者らは今回の結果に関連して、女性の方が男性と比べて不眠症の有病率が高いことを挙げ、「将来のNAFLDの発症を予防するためには、十分な睡眠時間が必要だ」と述べている。また、糖尿病や肥満などの代謝異常を持つ脂肪肝として、MASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)の概念が提唱されていることに言及し、さらなる研究の必要性を指摘している。

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病院受診すべき尿の色

あなたの尿はどんな色?今すぐ病院へ!状態特徴疑う病気要注意正常茶~オレンジ色トマトジュース様の赤色やや赤みカフェオレ色やや白色濁った黄色ほぼ無色透明薄黄色~黄色〇―◎◎〇〇ーー色にごり早めに受診を胆汁が出ている状態。泡も黄色ければ「ビリルビン尿」「血尿」*「膿尿」**または「血尿」*感染症により炎症が出ている状態「膿尿」**尿酸が尿中に出ている状態「希釈尿」健康な状態胆汁は便への排泄:〇尿への排泄:×出血部位や出血量で濃淡が変化糖尿病性腎症などで腎臓の細胞が傷付いている可能性抗菌薬治療が必要リン酸塩炭酸塩シュウ酸塩などの結晶が出ることもある血中の尿酸が増えると生じる原因は水分、アルコールの多量摂取摂取水分量食事内容服用薬などで濃淡差脱水状態は「濃縮尿」匂いは弱い尿路感染症結石糖尿病ー痛風尿崩症肝機能障害結石胆道閉塞膀胱がん尿路感染症による出血尿路感染症尿路結石*血尿とは、尿に血液(赤血球)が混ざっている状態の尿のこと。**膿尿とは、尿に白血球が出ている状態の尿のこと。白血球の量で、にごり度合いが変化する。尿の色を見る場合、毎朝一番の早朝尿をチェックしましょう。最も色が濃くなるので変化を見つけやすいです。出典:高橋 悟氏,高野 秀樹(監修). 主婦の友社. 2019. 尿の健康手帖監修:高橋 悟氏(日本大学医学部泌尿器科学系 主任教授)、菅野 希氏(日本大学医学部附属板橋病院 臨床検査部尿検査室)写真:ケアネット撮影Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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デリケートな質問の切り出し方がわからない【もったいない患者対応】第8回

デリケートな質問の切り出し方がわからない登場人物<今回の症例>18歳女性来院1時間前に突然発症した腹痛を主訴に救急外来を受診<腹痛の原因を探るため、問診を開始します>お腹が痛くなったのはいつからですか?1時間くらい前に突然痛くなりました。妊娠している可能性はありませんよね?えっと…ないと思います。痛くなったのは突然ですか。それは性行為の後に起こったのではないですか?えっ…いえ、そんなことはないと思います…。【POINT】女性の腹痛に対して、唐廻先生は妊娠の可能性の有無や性行為との関係を尋ねています。今回のようなケースでは必須となる問診事項ですから、これらを聞くこと自体はまったく問題ありません。しかし、相手が答えにくいと感じる質問をしている割には、単刀直入すぎるようにも思います。場合によっては「配慮のない人だ」と思われてしまうかもしれません。こういう場合、どのような言葉を使うのが適切でしょうか?妊娠、虐待、薬物摂取などは聞き方に配慮が必要外来では患者さんが答えにくい質問をしなければならないことが度々あります。その代表的な例として、妊娠や性交渉に関わるsexualな問題についての質問虐待など、暴力による外傷の受傷機転に関する質問薬物の過剰摂取や法律に反する薬物摂取を疑った質問などが挙げられます。当然ながら、医師は医学的な必要性に迫られて問診しているのであって、相手のプライベートに興味や好奇心があるわけではありません。しかし、患者さんによっては「答えにくいプライベートなことをずけずけと質問されて嫌な思いをした」と感じる方もいるでしょう。そこで、相手が答えにくいであろうことを配慮しつつ、慎重に言葉を選ぶほうが無難です。では、どういった言葉であればあまり嫌な思いをさせずに済むのでしょうか?「○○な方全員にお聞きしているのですが」まず、用いやすいのが「これは〇〇な方全員にお聞きしているのですが」という枕詞を入れる手法です。「同様の患者さんには全員必ず同じ質問をしなくてはならないのだ」ということが伝わりやすく、相手も不信感を抱きにくいでしょう。たとえば、妊娠に関する質問をする際であれば「これは大切なことなので女性の方全員にお聞きしているのですが」と話を切り出すのは、有効な方法です。余談ですが、本人から「妊娠している可能性はない」という答えがあっても、性交渉があれば妊娠検査は必要です。100%の否定ができない限り、問診のみの情報に頼るのは危険です。妊娠に伴う腹痛を見逃せば、母子ともに命の危険にさらすからです。この点は患者さんに丁寧に説明し、理解を得る必要があるでしょう。「違っていたら大変失礼なのですが」「違っていたら大変失礼なのですが」といったセリフを枕詞として使う方法もあります。実際、虐待など暴力による外傷を疑った場合は、相手によっては「そんなわけないだろう!」と怒りをあらわにすることもあります。もしまったくの見当違いであれば“失礼な質問”になってしまうことを考慮したうえで質問するのが望ましいでしょう。何より「相手が答えにくい質問をやむをえずしているのだ」という感覚が欠如すると、医師は容易に患者さんを傷つけてしまいます。そのため、常に相手の立場を考えた言葉遣いが大切です。ただし、過剰にへりくだったり、大げさに聞きにくそうなそぶりを見せたりするのは逆効果です。あくまで医学的な情報収集の一貫なので、冷静かつ淡々と質問するほうが望ましいでしょう。ちなみに、今回の問診で唐廻先生が想定したのは卵巣出血です。性行為の後に発症することが多いとされますが、とくに誘因なく生じることもあります。これでワンランクアップ!お腹が痛くなったのはいつからですか?1時間くらい前に突然痛くなりました。そうですか。これは女性全員にお聞きしているんですが※1、妊娠している可能性はないでしょうか?※1:聞きにくいときに使える汎用性の高い一言。ええ、ないと思います。痛くなったのは突然なんですね。違っていたら大変失礼なのですが※2、性行為の後に起こった痛みということはないでしょうか?※2:角が立たずソフトな印象に。いえ、そんなことはありません。

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手足の先が冷えて困ります【漢方カンファレンス】第3回

手足の先が冷えて困ります以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう)【今回の症例】40代女性主訴冷え、頭痛既往38歳:左卵巣嚢胞摘出術、アレルギー性鼻炎病歴幼少時にはしもやけができていた。10 年くらい前から手足先の冷えを自覚するようになった。冬には手足先が冷えて夜になかなか寝つけない。また、しばしば頭痛があり、その度に鎮痛剤を飲んでいる。X年11月に当科を受診。現症身長155cm、体重60.5kg。体温36.9℃、血圧128/77mmHg、脈拍66回/分 整。心音・呼吸音ともに異常なく、両下肢浮腫なし・筋力低下なし、後脛骨動脈・足背動脈の触知良好。経過初診時「???」エキス3包 分3で治療を開始。(解答は本ページ下部をチェック!)3週間後足冷えは少しよくなった。6週間後寒くなったが夜間の足の冷えが少ない。頭痛の頻度も減った。問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】<冷えの確認>寒がりですか? 暑がりですか? 体のどの部分が冷えますか?寒がりです。手足の先が冷えます。それ以外に腰や背中などに冷えを感じることはないですか?そのあたりでは感じません。<温冷刺激に対する反応を確認>入浴で長くお湯に浸かるのが好きですか? 冷房は好きですか?熱いお風呂に入るのが好きですが長くは入りません。冷房は好きでも嫌いでもありません。飲み物は温かい物と冷たい物のどちらを好みますか?いまは寒い時期なので温かい物を飲むことが多いです。<ほかの随伴症状を確認>ほかに困っている症状はありますか?しばしば頭痛があります。またときどき、腰痛で困ることもあります。倦怠感があったり、疲れやすかったりしませんか?毎日、忙しいですが基本的には元気なほうです。頭痛はどんなときに悪くなりますか?月経や天気と関係はありますか?下肢が冷えてくると頭が痛くなることが多い気がします。天気との関連はありませんが、月経前に頭痛が多いです。寒くなるとしもやけができたり、手指の色が変わったりしませんか? 下肢がむくみますか? 月経困難はありますか?子供のころはしもやけができていました。冬に冷たい水を触ると手指が白くなります。むくみはありません。月経時の痛みで鎮痛剤が必要です。【診察】顔色は正常で、四肢末端を触ると冷感があった。また、脈診では表在性に触れず、指を深く押し込んだところで触れる沈で、反発力の弱い脈(脈:沈、弱)、腹力は中等度より軟弱であった。カンファレンス寒がりですが、自覚症状と触診では手足末端に冷えがありますね。ただし、入浴時間は長くない、強い倦怠感もありません。本症例は真の冷えである陰証ではなさそうですね。素晴らしい!全身の冷えタイプは、入浴が長い、冷房が嫌いなどに加え、横になりたいなどの強い倦怠感を伴うことが多い傾向にあります。本症例の陰陽の判断は難しいですが、いわゆる本格的な陰証ではないことは判断できます。冷えの部位からは四肢末端型の冷えと考えられそうです。漢方診療のポイント(2)の虚実の判定ですが、今回は脈の反発力が弱く、腹力も軟弱ですから虚証になります。四肢末端が中心の冷えは生体内の赤い物質「血」が隅々まで巡らない病態「瘀血」と考えて治療をするよ。下肢が冷えてくると頭痛がするというのも何かのヒントになるのでしょうか?下肢が冷えると悪化するということは寒を示唆する所見になります。本症例では、四肢末端の血の流れを改善させる冷えの治療が必要と考えます。いいところに気づいたね。漢方では症状の増悪・寛解因子を確認することが大切だよ。気温の低下で悪化する場合や入浴で温めると楽になる場合は冷えの存在を考えるし、雨天や低気圧で悪化する症状は気血水で水の異常、月経と関連する症状は血の異常と考えることができるんだ。本症例の頭痛は、下肢が冷えると悪くなる、天候ではなく、月経に関連するということで漢方診療のポイント(3)の気血水の異常は血の異常(瘀血)と考えるのですね。さらに本症例は、頭痛や腰痛、しもやけの既往があり、冷水で手指が白くなることも漢方診療のポイント(4)になります。本症例をまとめると以下のようになります。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?寒がり、手足先が冷える、強い倦怠感はない、下肢が冷えると頭痛が増悪→陰証の傾向はあるが本格的な陰証ではない:四肢末端型の冷えタイプ(2)虚実はどうか脈:弱、腹力:中等度より軟弱→虚証(3)気血水の異常を考える四肢末端が冷える、月経前に頭痛がある、月経困難→瘀血(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む頭痛、腰痛、しもやけ、冷水で手指が白く変色する解答・解説【解答】本症例は、温めて四肢末端の血流を改善させる当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)で治療を行いました。【解説】当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、手足末端の冷えを使用目標に用いる代表的な漢方薬です。手足末端の冷え以外にも腰痛や頭痛を訴えることが多いです。凍傷やレイノー症状に対する第1選択の漢方薬ともいわれています。構成生薬の当帰(とうき)・桂皮(けいひ)・細辛(さいしん)は末梢血管を拡張して四肢末梢の血行を改善させて、呉茱萸(ごしゅゆ)と生姜(しょうきょう)は内臓を温める働きがあります。また、四肢末端型の冷えで、普段からむくむ傾向があり、月経困難などを伴う場合には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)が適しています。今回のポイント「冷えの鑑別」の解説漢方で「冷え」といえば寒が主体の陰証が代表的ですが、それ以外の要因でも冷えを生じます。陰証の冷えは、体幹部を中心として全身に冷えが生じることが典型です。そのほかにも下半身は冷えるが上半身はのぼせる冷えのぼせタイプ、手足の先が中心に冷える四肢末端タイプがあります。陰証の冷えの症例に対して適切に温める治療を行うためにまずそれらの冷えタイプを除外する必要があります。【全身の冷えタイプ】全身的に寒が存在する陰証の冷えです。治療は生体を温める熱薬(附子[ぶし]や乾姜[かんきょう]など)を含む漢方薬を用います。【冷えのぼせタイプ】生体を廻る「気」が上方に偏在する(気逆)の病態。足は冷えるが赤ら顔、という冷えのぼせ状態。風呂やコタツなどの温熱刺激では、かえってのぼせが悪化して、足は温まらない。治療には、逆上した気を下方に巡らせる、桂皮を含む漢方薬が適応になります。【四肢末端の冷えタイプ】生体を廻る赤い液体「血」が隅々まで廻らない「瘀血」の病態。治療は当帰という生薬が含まれる当帰芍薬散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯などが代表的です。ただし、実際の患者では、以上の3型は単独で出現するとは限らず、多くは複数が合併しています。

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第217回 迫る日医会長選、「もう日医の力は昔ほどではない」と元自民党医系議員、松本会長は再選後も“茨の道”か?

日医松本会長が2期目を目指し、再び会長選に出馬こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思いますこの週末は久しぶりに昔の山仲間と奥秩父に行って来ました。コースは山梨県の広瀬湖から入り雁峠、雁坂峠(日本三大峠の1つです)、テント泊してそのまま下山というマイナーなコース。有名な山が1つもないので、とても静かな山行を楽しめました(夜は鹿の鳴き声と大雨で眠れませんでしたが…)。個人的には雁峠、雁坂峠間を歩いたことで、雲取山から甲武信岳を経て十文字峠に至る奥多摩、奥秩父の長大な縦走路の赤線(既歩行区間)がやっとつながりました。だからなんだ、と言われそうですが、いつの日か一気に奥多摩駅から十文字峠まで大縦走をしてみたいものです。さて、今回は今週末に迫った日本医師会の会長選挙について書いてみたいと思います。1期を務め上げた松本 吉郎会長が2期目を目指し、再び会長選に出馬しました。2024年の診療報酬改定については、どうにか本体プラス改定を勝ち取ったことで、松本会長は「医療界が一体・一丸となって対応した結果と考えている。(中略)まずは素直に評価をさせて頂く」と自画自賛しました。しかし、日医の会員(とくに開業医)たちに大きな恩恵をもたらすものではなかった、との声がもっぱらです。医療制度のさまざまな改革について財務省の声が一層高まる中、再選された後も相当な困難が待ち受けていそうです。「松本氏vs.松原氏」という会長選は前回選挙と同じ構図6月1日、日本医師会は次期役員選挙の立候補届け出を締め切りました。会長選挙は現職の松本氏(69)と元副会長の松原 謙二氏(67)が届け出ました。松本氏は埼玉県医師会所属、山口県出身で浜松医大卒の皮膚科医。一方の松原氏は、大阪府医師会所属、広島県出身で広島大医学部卒の内科医です。思い起こせば、2年前、2022年の日医会長選では、5月に松原副会長(当時)が、長年日医が反対してきたリフィル処方箋導入を診療報酬改定で“飲ん”でしまった中川 俊男会長(当時)を批判する文書を送るなど、内紛が起こり、その後「ポスト中川」の会長候補を擁立する動きが活発化しました。コロナ禍の真っ只中に会長を務めた中川氏は、国民に外出自粛を呼びかける一方で、自身は政治資金パーティーを開催したり、銀座で女性と会食したことがメディアで報じられたりなど、世間の評判は芳しくありませんでした。さらに、日医内でのワンマンぶりも災いして次第に孤立し、最終的に出馬断念を余儀なくされました。「ポスト中川」として多くの都道府県医師会の支持を集めた松本氏が、松原氏と会長選を争い、結果、圧倒的な票数を獲得(代議員375票のうち310票)し、新会長に選ばれました。というわけで、今年の「松本氏vs.松原氏」という会長選は、前回選挙と同じ構図です。今週末、6月22日に開かれる定例代議員会で投開票が行われ、新会長と新キャビネットが決まります。「なかなか日医からの提案が出せない、あるいは出しにくいものもある」と松本会長現職の松本氏ですが、6月2日に都内で選挙対策本部事務所開きを行いました。メディファクスやエムスリーなどの報道によれば、松本氏は「なかなか日医からの提案が出せない、あるいは出しにくいものもある」と本音を述べつつ、「次の2年間は本当に大事な2年間だと思っている」と決意表明。また、松本氏を推薦した東京都医師会の尾崎 治夫会長は、「これからの2年間は勝負の年になる。松本氏の真価が問われる。日医を『攻めの姿勢』に変えていってもらいたい」と激励したとのことです。一方の松原氏ですが、6月3日付のメディファクスによれば、同紙の取材に対し「国家統制による英国式の包括制家庭医制度の入り口になる特定疾患療養管理料の改悪に反対する」と説明、2024年度診療報酬改定で対象外となった3疾患を「元に戻すかどうか」を会長選の争点に挙げています。松原氏の言う「特定疾患療養管理料の改悪」とは、「第201回 2024年診療報酬改定の内容決まる(前編) 武見厚労大臣の言う『メリハリ』ある改定とは?」でも書いた「生活習慣病の管理」に関する診療報酬の見直しです。対象疾患から糖尿病と脂質異常症、高血圧が除外され、脂質異常症や高血圧症、糖尿病を主病とする患者への総合的な治療管理を評価する「生活習慣病管理料」と「外来管理加算」の併算定を認めないなどの厳格化が図られました。松原氏は前回会長選では「リフィル処方箋導入」を批判し、今回は「特定疾患療養管理料見直し」を批判しています。日医執行部にとってはなかなか痛いところを突いていると言えるでしょう。2024年改定、内科系の診療所に大きなダメージ6月3日付の東京新聞は「自民の有力スポンサー日本医師会『地元政治家との関係強化を』会員医師らに『政治』のススメ」の記事の中で、3月末に開かれた日医の代議員会での「みな内科系の診療所は怒り心頭に発しているという感じです」というある代議員の質疑応答での発言や、東京都内の開業医の「プラス改定の大部分は若手医師や医療従事者らの賃上げに充てることになっている。逆に生活習慣病の管理料や処方箋料などの適正化(引き下げ)として盛り込まれたマイナス0.25%(1,222億円)は大部分が診療所向けだ」という不満のコメントを紹介、今改定の開業医へのダメージがいかに大きかったかについて報じています。日医の“力”そのものが確実に低下してきている前回リフィル処方導入を余儀なくされ、今回は特定疾患療養管理料の見直しを受け入れたことや、今回の改定の議論における「診療所経営は儲かっている」という財務省調査データの“暴露”(第190回 財務省調査に続き医療経済実態調査も診療所黒字の結果に、病院・診療所の『分断』をここまで広げてしまった張本人とは?)、そして地域別診療報酬実現に向けた財務省一連のアピールなどを見ていると、日医の“力”(政治的影響力)そのものが確実に低下してきていると感じます。最近、ある元自民党医系議員を取材したばかり知人の記者と飲んだのですが、こんな話をしていました。「その元議員はあるドラスティックな政策に関わっており、『その政策、日医が猛反対しそうですね』と聞いたんだ。すると、元議員は『そうなんだけど、正直言ってもう日医の力は昔ほどではない。反対を表明することはできても、どこまで心底反対し切れるか』と言っていたよ」。2024年改定を見る限り「医政活動の強化」の効果は見えずそうした“力”の低下を自覚している日医は、昨年6月、常任理事を4人増員、医政活動の強化に乗り出しました(「第165回 NP制度化、かかりつけ医機能認定制……、開業医常任理事を4人増員し、とにかく反対し続ける日医に未来はあるのか?」参照)。医師会員を増やし、自民党員を増やし、自民党議員とのつながりを強め、選挙における日医の力(集票力)を復活させるための常任理事増員でした。先の東京新聞の記事でも、今年の代議員会で長島 公之常任理事が代議員らに、「都道府県医師会の先生方には今後の日本の医療のために、医師会の組織力強化、日ごろからの地元選出国会議員との関係強化、何より来年の参議院選挙への協力を、ぜひともよろしくお願い申し上げます」と医政活動を強めるよう呼び掛けたと報じています。2024年改定の内容等を見る限り、「医政活動の強化」の効果は目に見える形では表れていません。長島常任理事の言葉からもその苦戦振りが伝わってきます。尾崎・東京都医師会会長が「これからの2年間は勝負の年」と語ったように、かかりつけ医機能の制度整備、次期地域医療構想、医師偏在是正など、今後10年、20年の日本の医療の方向性を決める政策の検討が今後2年間に目白押しです。そうした重要な政策決定の過程で、日医は果たして今までのような強烈なプレゼンスを発揮し続けられるでしょうか。松本会長の再選は濃厚ですが、その先に待っているのは、政治的影響力が低下する中、財務省が提案してくるさまざまな政策に翻弄され続ける、という“茨の道”かもしれません。

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適正年収、実年収プラス200万円が妥当!?/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2月20日(火)に会員医師1,004人を対象に、インターネットによる「年収に関するアンケート」を行った。その中で、自身の業務内容や仕事量に見合った適正年収について尋ねたところ、最も回答数が多かったのは2,000~2,500万円(15.2%)、次いで3,000万円以上(12.7%)、1,800~2,000万円(12.6%)、1,400~1,600万円(10.9%)と続いた。また、実際の年収が600~1,800万円の範囲において、各年収層の半数以上が実際の年収より高い金額を希望しており、1,600~1,800円層を除く600~1,600万円の層では実年収に200万円程度上乗せした金額を希望していることが明らかになった。年代別の適正年収 各年代が適正と考える年収は、35歳以下は1,200~1,400万円、それ以降の年代はいずれも2,000~2,500万円との回答数が多かった。これをさらに男女別で見ると男性の場合は上記の全体の回答に合致していた。一方で女性の場合、35歳以下では800~1,000万円と男性より低い金額を回答したのに対し、36~55歳では1,200~1,400万円を境に適正年収が二極化、56歳以上では1,600万円未満の回答者が半数以上を占めていた。20床未満3,000万、20床以上2,000~2,500万円が最多 続いて、適正と考える年収を勤務する病床数が20床未満と20床以上で区分した結果では、20床未満の回答者が3,000万円以上(22%)、2,000~2,500万円(10%)、1,400~1,600万円(10%)と続いた。これに対し20床以上では、2,000~2,500万円(17%)、1,800~2,000万円(15%)、3,000万円以上(10%)、1,600~1,800万円(10%)となった。なお、3,000万円以上を最も希望したのは20床以上に勤務する46~55歳(43%)であった。この年代は医局員の指導的立場でありながら所属施設の管理を任されるなど、責任が重くなる時期でもある。その責任に見合う報酬などを求めているのではないだろうか。診療科別の適正年収 以下には、中央値より高い適正年収(1,800万円以上)を希望した上位3診療科を挙げる。・1,800~2,000万円:血液内科(33%)、産婦人科(21%)、泌尿器科(20%)・2,000~2,500万円:血液内科(33%)、循環器内科(25%)、消化器外科(24%)・2,500~3,000万円:消化器外科(20%)、心臓血管外科(18%)、脳神経外科(16%)、循環器内科(16%)・3,000万円以上:腎臓内科(33%)、耳鼻咽喉科(24%)、消化器外科(20%) そのほか、年代ごとの男女別、病床数別、勤務先別などの詳細な年収分布については、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2024【第4回】適正年収

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統合失調症に対する抗精神病薬の有効性および安全性の性差

 抗精神病薬は、精神疾患患者にとって中心的な治療薬であるが、有効性と安全性のバランスをとることが求められる。治療アウトカムを改善するためにも、抗精神病薬の有効性および安全性に影響を及ぼす個別の因子を理解することは重要である。オーストラリア・モナシュ大学のMegan Galbally氏らは、抗精神病薬に関連する有効性および忍容性における性差について、調査を行った。CNS Drugs誌オンライン版2024年5月7日号の報告。 大規模抗精神病薬比較試験であるClinical Antipsychotic Trials of Intervention Effectiveness(CATIE)の第IおよびIa相試験のデータを2次分析した。CATIE試験では、統合失調症患者を経口オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ziprasidone、ペルフェナジンによる治療にランダムに割り付け、二重盲検治療を行った。評価基準には、陽性陰性症状評価尺度(PANSS)、臨床全般印象度(CGI)、Calgary Depression Rating Scale、自己報告による副作用、服薬コンプライアンス、投与量、体重、さまざまな血液パラメータを含めた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は1,460例(女性:380例、男性:1,080例)であった。・治療反応、副作用、コンプライアンス、抗精神病薬の投与量は、男女間でほとんど差が認められなかった。・便秘(28% vs.16%)、口渇(50% vs.38%)、女性化乳房/乳汁漏出(11% vs.3%)、失禁/夜間頻尿(16% vs.8%)、自己報告による体重増加(37% vs.24%)は、女性において男性よりも有意に多く報告された(各々、p<0.001)。・リスペリドン治療群では、女性(61例)において男性(159例)よりもプロラクチンレベルの有意な上昇が認められた(p<0.001)。・臨床医の評価による測定値、体重増加、その他の臨床検査値は、全体として差が認められなかった。 著者らは「抗精神病薬の有効性および忍容性は、全体としての性差は限られていたが、リスペリドンについては、いくつかの特定の知見がみられた。抗精神病薬の試験において性差を評価することは、統合失調症患者に対する個別化治療だけでなく、有効性の向上や副作用の軽減にとっても重要である」としている。

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ALK陽性NSCLCにおける術後アレクチニブ、健康関連QOLへの影響(ALINA)/ASCO2024

 ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するアレクチニブの術後補助療法における有用性を検討したALINA試験では、アレクチニブがプラチナベースの化学療法と比較して、無病生存期間(DFS)を有意に改善したことが報告されている1)。今回、本試験における健康関連QOL(HRQOL)を解析した結果、精神的、身体的項目のベースラインからの改善が認められ、投与期間中維持されたことが米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で、がん研有明病院の西尾 誠人氏より発表された。 ALINA試験では、対象患者257例をアレクチニブ群(600mgを1日2回、2年間または再発まで)と化学療法群(3週ごと4サイクルまたは再発まで)に1対1で無作為に割り付けた。探索的評価項目であるHRQOLはベースライン、3週間ごと(ベースラインから12週目まで)、12週間ごと(12週目以降)に測定された。測定にはSF-36v2を用い、機能的健康状態を8つのドメインとそれらをまとめた身体的側面のサマリースコア(Physical component summary:PCS)および精神的側面のサマリースコア(Mental component summary:MCS)で評価した。スコアは米国の国民標準値に基づいて採点され、数値が高いほどQOLが良好であることを示す。臨床的に意味のある最小重要差(MID)を各項目のベンチマークとした。 主な結果は以下のとおり。・両群ともにHRQOLの測定完了率は高く、試験期間を通じておおよそ90%を超えていた。・ベースラインのスコアは両群で類似しており、「活力」以外のドメイン、PCSおよびMCSは米国の国民標準値を下回っていた。・ベースラインから12週までのスコアの平均変化は、アレクチニブ群において「身体の痛み」「日常役割機能(身体)」「心の健康」「社会生活機能」「活力」の5つのドメインとMCSにおいてMIDを上回る改善が認められた。化学療法群においては、すべてのドメイン、PCSおよびMCSのいずれも改善が認められず、「全体的健康感」「活力」の2つのドメインではMIDを上回る悪化が認められた。・MCSとPCSは、アレクチニブ群において96 週目までに改善、治療期間中維持され、米国の国民標準値と同等のレベルに到達した。化学療法群においては、化学療法終了後(12週目以降)から改善が認められ、米国の国民標準値と同等のレベルに到達した。 西尾氏は、術後患者のQOLは臨床的に考慮すべき重要な事項であるとしたうえで、今回の結果を「DFS改善のベネフィットと併せて、アレクチニブの術後補助療法としての使用が重要な新規治療戦略であることを支持するデータである」とまとめた。

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asciminib、新規診断の慢性期CMLに有効/NEJM

 新規に慢性期の慢性骨髄性白血病(CML)と診断された患者の治療において、ABLミリストイルポケットを標的とするBCR::ABL1阻害薬asciminibは、担当医が選択した第2世代チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)やイマチニブと比較して、分子遺伝学的大奏効(MMR)の達成割合が有意に高く、安全性プロファイルも良好であることが、ドイツ・イエナ大学病院のAndreas Hochhaus氏らASC4FIRST Investigatorsが実施した「ASC4FIRST試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月31日号に掲載された。第1/2世代TKIと比較する国際的な無作為化第III相試験 ASC4FIRST試験は日本を含む国際的な多施設共同非盲検無作為化第III相試験であり、2021年11月~2022年12月に参加者の無作為化を行った(Novartisの助成を受けた)。 年齢18歳以上、登録前3ヵ月以内に新規の慢性期CMLと診断された患者405例を登録した。これらの患者を、asciminibの投与を受ける群に201例、担当医が選択したTKI(第1世代TKIイマチニブまたは第2世代TKI[ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ])の投与を受ける群に204例(イマチニブ群102例、第2世代TKI群102例)を無作為に割り付けた。 主要評価項目は、48週時点でのMMR(BCR::ABL1IS≦0.1%)とし、asciminibと担当医選択TKI、asciminibとイマチニブの比較を行った。第2世代TKIとの比較では差がない 追跡期間中央値は、asciminib群が16.3ヵ月、担当医選択TKI群は15.7ヵ月であった。 48週時のMMRの達成割合は、asciminib群が67.7%、担当医選択TKI群は49.0%であり、イマチニブ群との比較ではasciminib群が69.3%、イマチニブ群は40.2%であった。 これらMMR達成割合のasciminib群と担当医選択TKI群の群間差は18.9ポイント(95%信頼区間[CI]:9.6~28.2、補正後両側p値<0.001)、asciminib群とイマチニブ群の群間差は29.6ポイント(16.9~42.2、p<0.001)であり、いずれもasciminib群で有意に優れた。 一方、asciminib群と第2世代TKI群の比較では、48週時のMMR達成割合はそれぞれ66.0%および57.8%と、両群間に有意な差を認めなかった(群間差:8.2ポイント、95%CI:-5.1~21.5)が、この比較は主要評価項目ではなかった。Grade3以上、投与中止に至った有害事象の頻度は低い 安全性プロファイルは、イマチニブや第2世代TKIに比べasciminib群で良好であった。Grade3以上の有害事象および試験薬の投与中止の原因となった有害事象の頻度は、イマチニブ(それぞれ44.4%、11.1%)、第2世代TKI(54.9%、9.8%)と比較してasciminib群(38.0%、4.5%)で低かった。また、試験薬に関連した死亡例は認めなかった。 著者は、「慢性期CMLの1次治療の選択は微妙であり、患者の目標やその他の患者固有の要因によって異なる。本試験では、無作為化前のTKIの選択は患者の希望を考慮して担当医が行ったため、共有意思決定が可能であった」とまとめ、「asciminibの有益性をさらに明らかにするには、長期の追跡調査を要する」としている。

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セマグルチドの減量効果を遺伝子検査で予測

 GLP-1受容体作動薬のセマグルチドを使い始めて数週間で減量に成功した人を見て、同薬による治療を開始したあなた。ところが体重計の針は期待したほど下がらない。なぜ? 米国消化器病週間(DDW2024、5月18~21日、ワシントン)で発表された新たな研究によると、その違いには遺伝子が関与しているようだ。 過去にも、セマグルチドによって体重が20%以上減る人がいる一方で、約7人に1人は1年以上使用しても5%以上は減らないという研究結果が報告されており、セマグルチドの減量効果には個人差があることが知られている。その個人差を、遺伝子検査によって事前に知ることができるようになるかもしれない。 この検査は、米メイヨー・クリニックの研究者らによって開発され、昨年その研究者らが設立したPhenomix Sciences社が、「MyPhenome」という名称でライセンスを取得した。CNNの報道によると、価格は350ドルで医家向けに提供される。 主任研究者のMaria Daniela Hurtado Andrade氏は、同社発のリリースの中で、「われわれのデータは、肥満者は個々に異なる遺伝的・生物学的背景を持っていて、肥満の改善には個別化された治療が重要である可能性を示している」と述べている。また、研究グループの一員である同クリニックのAndres Acosta氏は、「この遺伝子検査によって、体重を5%以上減らせられるか否かを95%の精度で予測可能だ」と、CNNの取材に対して語っている。同氏は、「セマグルチドの使用前に治療効果を知ることができれば、時間とコストを節約できる可能性がある。同薬は安価とは言えず、必ずしも保険でカバーされるとは限らないため、自己負担額が高額になる場合もある」とも述べている。 開発された新たな検査は、GLP-1のシグナル伝達経路に関連する遺伝子の変異を調べて、セマグルチドによる空腹感への影響を予測する。この検査の結果が陽性の人は、セマグルチドにシグナルが反応するのに対して、陰性の人は反応が弱く、空腹感が抑制されにくいという。 同クリニックで減量治療を受けた84人の血液または唾液検体を用いた小規模な研究から、この検査が陽性だった人はセマグルチド使用開始1年後に、平均19.5%の減量を達成していたことが分かった。これは、陰性だった人の減量幅である10%のほぼ2倍に相当する。 なお、重要なこととして、この新しい研究の結果は査読システムのある医学誌に未発表であるため、予備的なものと見なす必要がある。Acosta氏は、「薬剤と同じように、有用性を検討するためのゴールドスタンダードである、プラセボ対照無作為化二重盲検試験で検証する必要がある。ただ、われわれが既に行った研究も、減量治療が行われた時点では陽性か陰性か分かっていなかったため、実質的に盲検化はなされていた」としている。

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超音波で脳の「窓」から脳活動をモニタリング

 米南カリフォルニア大学(USC)ケック医学校と米カリフォルニア工科大学の研究グループが、患者の頭蓋骨の欠損部分にアクリル樹脂製のインプラントを設置し、この「窓」を通して、機能的超音波イメージング(functional ultrasound imaging;fUSI)により高精細の脳画像データを得ることに成功したことを報告した。研究グループは、患者の病状経過のモニタリングや臨床研究において、この感度の高い非侵襲的なアプローチが新たな道を切り開く可能性があるのみならず、脳機能に関する広範な研究にも役立つ可能性があると話している。USCケック医学校臨床神経外科分野のCharles Liu氏らによるこの研究の詳細は、「Science Translational Medicine」に5月29日掲載された。 この透明な頭蓋インプラントを用いた治療を受けたのは、米カリフォルニア州在住のJared Hagerさん39歳だ。スケートボーダーのHagerさんは、2019年4月にスケートボードで事故を起こして外傷性脳損傷を負い、脳への圧迫を和らげるために頭蓋骨の半分を取り除く緊急手術を受けた。Hagerさんの回復後に予定されていた頭蓋形成術は、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響を受けて大幅に遅れ、Hagerさんは2年以上、皮膚と結合組織だけで脳を守っていたという。 この間にHagerさんは、Liu氏らが実施した別の新たな脳イメージング技術であるfPACT(機能的光音響断層撮影)に関する早期研究にボランティアとして参加した。その後、頭蓋骨を再建するに当たり、Hagerさんは再びLiu氏らに協力した。Liu氏らは、fUSIの有用性を研究するために、PMMA(ポリメチルメタクリレート)製の透明な頭蓋インプラントをデザインし、これを用いてHagerさんの頭蓋骨に取り付けた。 研究グループは、頭蓋形成術の前後に、Hagerさんにコンピューターのモニター上で点と点をつなぐパズルを行う、ギターを弾くなどのいくつかのタスクをこなしてもらい、その間にfUSIを実施して脳活動のデータを集めた。その結果、この「窓」が、脳活動を測定するために効果的な方法であることが明らかになった。Liu氏は、「当然ながら、fUSIで得られる画像は他のイメージング技術で得られる画像よりも質は劣るが、重要なのは、それでも十分に有用であることが分かった点だ。また、他の脳-コンピューターインターフェース技術とは異なり、fUSIでは脳内に電極を埋め込む必要がないため、導入の障壁も格段に低い」と話す。 Liu氏はまた、「これは、覚醒した状態で何らかの行動をしている人の頭蓋インプラントを通してfUSIを適用した初めての例だ」と語る。同氏はさらに、「特に、頭蓋骨の再建を必要とする患者の多くは、神経学的障害を持っているか、あるいはこれからそうした障害を発症する可能性があるため、このような『窓』を通して非侵襲的に脳の活動に関する情報を得られることは大きな意味のあることだ」と大学のニュースリリースで語った。 研究グループは、このような「窓」を利用した超音波やCTが、不透明な骨や頭蓋インプラントを介したMRIやEEG(脳波)スキャンよりも有用な情報を得ることができると考えている。Liu氏はさらに、「もし、脳の機能的な情報が診断や治療に役立つのであれば、頭蓋骨にダメージを受けていない患者にも、このような『窓』を手術で埋め込むことも可能だ。もし、患者の頭蓋インプラントを通して機能的な情報を引き出すことができるのなら、より安全で積極的な治療が可能になる」と述べている。

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前立腺がんに対する監視療法の有効性を確認

 前立腺がんの多くは進行が遅いため、医師は患者に積極的な治療ではなく「経過観察」を勧めることが多い。このほど、米フレッドハッチンソンがん研究センターのLisa Newcomb氏らが約2,200人の患者を最長で10年にわたって追跡調査した研究において、医師のこの決断は多くの場合、賢明であることが明らかになった。この研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に5月30日掲載された。Newcomb氏は、「われわれの研究は、定期的なPSA(前立腺特異抗原)検査と前立腺生検を含む監視療法(アクティブサーベイランス)が低リスク(favorable risk)の前立腺がんに対する安全で効果的な管理方法であることを明らかにした」と話している。 数十年前は、前立腺がんと診断された男性の多くが、すぐに手術やホルモン療法などの治療を受けていた。これらの治療には、勃起障害や排尿障害などの副作用を伴うことがあり、生活の質(QOL)に深刻な影響を及ぼす可能性がある。 しかし、過去20年間で前立腺がんの多様な性質に関する理解が深まり、現在では検査により、差し迫った脅威をもたらす可能性のある攻撃的で進行の速い腫瘍と、非常にゆっくりと進行する腫瘍を区別できるようになった。特に患者が高齢の場合には、緩徐進行型のがんが健康にもたらす脅威は、心臓病など他の疾患がもたらす脅威ほど深刻ではない可能性がある。このため、多くの前立腺がん患者では、治療を行わずに定期的な検査により緩徐進行型のがんがより危険な状態に進行していないかどうかをチェックする監視療法が実施されている。 しかし、このような監視療法が患者の生存とQOLにどの程度有効なのかは明らかにされていない。このことを明らかにするためにNewcomb氏らは、監視療法を受けている、低リスクで治療歴のない前立腺がん患者2,155人(診断時の年齢中央値63歳、白人83%)の長期的な転帰を調べた。対象患者は、中央値7.2年、最長10年にわたって追跡されていた。 その結果、追跡期間中に40%(870人)の対象者が治療を受け、このうちの425人では確認生検後に(中央値1.5年後)、396人では監視療法中の生検後に(中央値4.6年後)治療が行われていた。治療後5年間の再発率は、確認生検後に治療を受けた患者で11%、管理療法中の生検後に治療を受けた患者で8%であった。しかし、49%の患者では、監視療法下でがんが進行したり治療の必要性が生じたりすることはなかった。診断から10年後の時点で、対照者の43%で生検により腫瘍グレードが変更され、49%が治療を受け、また、この間のがんの転移率、前立腺がん特異的死亡率、および全死亡率は、それぞれ1.4%、0.1%、5.1%と推定された。 Newcomb氏は、「この研究で得た重要な知見は、数年間の監視療法後に治療を受けた人では、1年間の監視療法後に治療を受けた人と比べて再発や転移などの有害な転帰が悪化しているようには思われないことだ。この結果は、監視療法では治癒の機会を失うのではないかという懸念を緩和するだろう」と述べている。その上でNewcomb氏は、「この研究により、前立腺がんに対しては即時治療ではなく監視療法を実施するということを、より多くの人が受け入れるようになることを期待している」と付け加えている。

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古代人にも動脈硬化、ミイラの調査で判明

 心臓病といえば現代生活の副産物だと思われがちだ。しかし、4,000年以上に及ぶ7つの異なる文化圏の成人のミイラのCT画像を調査した結果、3分の1以上のミイラに動脈硬化の痕跡が見つかり、心臓病が何世紀にもわたって人類を苦しめてきた疾患であることが明らかになった。米セントルークス・ミッドアメリカ心臓研究所のRandall Thompson氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal」に5月28日掲載された。 この研究では、世界中の成人のミイラのCT画像データを用いて、動脈硬化の有無を調べた。動脈硬化は、動脈と予測される場所にカルシウムの沈着が見られる場合を「ほぼ確実な動脈硬化」、識別可能な動脈の壁にカルシウムの沈着が見られる場合を「確実な動脈硬化」と見なした。調査対象のミイラは、古代エジプト人(161体)、低地の古代ペルー人(54体)、ボリビア高地の古代アンデス人(3体)、19世紀のアリューシャン列島のアレウト族(4体)、16世紀のグリーンランドのイヌイット(4体)、古代プエブロ族(5体)、中世のゴビ砂漠の牧畜民(4体)の7つの文化圏に由来するものに、19世紀のアフリカ系米国人(1体)とオーストラリアの先住民(1体)も加えた計237体であった。これらのミイラの死亡時の平均年齢は40±11.6歳で、58.6%(139体)が男性だった。 調査の結果、全ての文化圏に属する89体(37.6%)のミイラで「確実な動脈硬化」、または「ほぼ確実な動脈硬化」が確認されることが明らかになった。動脈硬化が認められる場所を多い順に並べると、大動脈(51体、21.5%)、腸骨-大腿動脈(49体、20.7%)、膝窩-脛骨動脈(38体、16%)、頸動脈(33体、14%)、冠動脈(9体、0.4%)であった。一方、男性と女性の間(38.1%対38.5%、P=0.36)や、エジプト人と非エジプト人(上流階級に属さない者が多い)との間(39.1%対38.5%、P=0.48)には、動脈硬化が見つかったミイラの割合に有意な差は認められなかった。 Thompson氏は、「古いものでは紀元前2,500年以前に遡る全ての時代、全ての文化圏のミイラにおいて、男女ともに、上流階級の人物であるか否かにかかわりなく、動脈硬化が認められた」とし、「これは、動脈硬化が現代の生活習慣により引き起こされる症状ではないという、われわれが以前の研究で得た知見をさらに裏付ける結果だ」と述べている。 研究グループは、「この結果は、人間には生まれつき動脈硬化のリスクがあることを示している」との見方を示している。またThompson氏は、「この研究は、喫煙、座位で過ごすことの多い生活、栄養バランスの悪い食事などの現代人の抱える心血管系のリスク因子が、加齢による自然なリスク増加に上乗せする形で動脈硬化の程度と影響を増大させる可能性があることを示している。だからこそ、コントロール可能なリスク因子をきちんとコントロールすることが重要なのだ」と話している。

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「高血圧の基準が変わった」と誤解している患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第46回

■外来NGワード「ずっと変わっていません」(頭から行動を否定)「そんなことより、ちゃんと薬を飲んでおきなさい」(話題が違う方向に)「もっと食事に気を付けなさい」(あいまいな食事指導)■解説現代は情報社会で、健康に関する情報が氾濫しています。YouTubeやFacebookやX(旧Twitter)などのSNS(Social networking service)などから健康に関する情報を得ている人も増えてきました。ところが、正しい情報源にたどりつき(検索力)、情報を分析し(分析力)、正しいかどうかを見極めて(批判的吟味力)、自分の目的に活用できる(活用力)という「情報リテラシー」が高い人は必ずしも多くはありません。情報リテラシーが低い人は、間違った情報をあまり吟味せずに、そのまま信じてしまいます。2024年4月から「高血圧の基準が変わった」とする情報を発信している人の元の情報源は高血圧学会のガイドラインではなく、2024年4月から第4期を迎える特定健診の受診勧奨値の記載のようです。受診勧奨判定値への対応が2つに分かれ、血圧が160/100 mmHg以上なら「この健診結果を持って、至急かかりつけの医療機関を受診してください」、140~159/90~99 mmHgなら「生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を」となっています。どうも前者だけを取り上げて「高血圧の基準が変わった」と誤った発信をしているようです。それに対して、日本高血圧学会は「特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を」とした声明を出しています。情報を収集する際は、できるだけ信頼できる媒体(学会や公共放送など)、複数の情報を利用するように患者さんに伝えておくとよいでしょう。そして、検索する際には「学会」「公式」などの検索用語を付け加えておくと良いことを説明しておきます。■患者さんとの会話でロールプレイ患者高血圧の基準が4月より変わったそうですね。医師えっ、そんな話は初めてですが…どこで聞かれましたか?(情報源を探る)患者YouTubeでそう言っていました。上が160を超えたら、病院で治療が必要とか…それなら、私は上の血圧が160を超えていないのでもう薬を飲まなくても良いのでは?医師なるほど。…それは、高血圧学会のガイドラインではなくて、健診を受けた人への説明文の変更ですね。誤解されている人が多いんですよ。(誤解している人が多いことを指摘し話す)患者えっ、そうなんですか。誤解って、どういうことですか?(興味津々)医師確かに4月から健診で上の血圧が160を超えていたら、「すぐに医療機関の受診を」という説明文になりました。患者「すぐに医療機関の受診を」ですか…。医師そうなんです。それに対して、上の血圧が140~159mmHgなら「生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を」ということになっています。患者なるほど。生活習慣を改善して、血圧の値が良くならなかったら、医療機関を受診する必要があるということですね。医師その通りです。今、血圧の薬を飲んでいる人が止める基準が決まったわけではありません。ただし、生活習慣を改善すれば、血圧の薬を減らすことはできますよ。患者どんなことに気を付けたらいいですか?医師基本は減塩ですが、身体を動かすこと(運動)、体重を減らすこと(減量)、お酒を減らすこと(節酒)、そして野菜をたっぷり食べて、果物はこぶし1個分くらいを食べるなどがポイントになります。患者なるほど。もう1度、初心に戻って減塩と運動に取り組んでみます。医師それはいいですね。応援しています。患者頑張って、やってみます。(嬉しそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「その情報源はどこですか?」「検索する際には「学会」とか「公式」とかの用語を入れておくといいですよ!」 1)標準的な健診・保健指導プログラム[令和6年度版](厚生労働省)2)特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を(日本高血圧学会)3)Mancia G, et al. J Hypertens. 2023;41:1874-2071.

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英語で「代診をしています」は?【1分★医療英語】第135回

第135回 英語で「代診をしています」は?《例文1》Good morning, I'm Dr. Smith, filling in for Dr. Yamada while he's away at a conference.(おはようございます、スミスと申します。山田医師が会議で不在の間、代診をしています)《例文2》Your usual doctor is on vacation, so Dr. Jones will be filling in today.(いつもの先生は休暇中ですので、今日はジョーンズ医師が代診を務めます)《解説》“I'm filling in for XXX.”は、別の医師が予定されていた担当医師に代わって診察を行うときに使うフレーズです。この“fill in”という表現は、“Please fill in the blank.”といったように、(空欄を)埋めるという意味合いで用いられます。それに“for”という前置詞と人の名前を続ければ、「空欄」ではなく「担当医師が休みで空いてしまった枠」を埋める、すなわち「代診する」という意味になり、臨床現場のコミュニケーションで頻繁に用いられています。このほかにも、“I’m covering for Dr. Yamada.”や“I’m seeing you on behalf of Dr. Yamada.”という表現も(少しニュアンスの違いはあるものの)同様の場面で「代診する」という意味合いで用いることが可能です。担当医師の突然の休養などで、代診を伝えなければいけない場面もあることでしょう。そんなとき、このフレーズを覚えておくとスムーズに伝えられます。講師紹介

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新剤形追加・添付文書改訂:クリームタイプのアレルギー性結膜炎治療薬/エンレストに粒状錠小児用規格追加【最新!DI情報】第17回

アレジオン眼瞼クリーム0.5%<対象薬剤>エピナスチン塩酸塩(商品名:アレジオン眼瞼クリーム0.5%、製造販売元:参天製薬)<発売年月>2024年5月<改訂項目>[承認]新剤形医薬品1日1回塗布のクリーム剤<ここがポイント!>既存のエピナスチン点眼液は1日4回、エピナスチンLX点眼液は1日2回の点眼が必要でしたが、エピナスチン眼瞼クリームは1日1回眼周囲(上下眼瞼)の塗布で、有効性が終日にわたり維持します。点眼が苦手な小児や高齢者に加え、日中の点眼でメイクが落ちるのが気になる人に対しても、就寝前や夜のスキンケア時の塗布で効果が期待できるため、利便性が高いと考えられます。クリームタイプのアレルギー性結膜炎治療薬は世界初であり、眼瞼皮膚を通過して眼球・眼瞼結膜に成分が分布します。第III相CAC試験(スギ花粉抗原を用いた結膜抗原誘発試験)において、アレルギー性結膜炎の眼そう痒感および結膜充血スコアをプラセボに比べて有意に抑制しました。また、第III相長期投与試験(環境試験)において、本剤の安全性および有効性が確認されています。エンレスト粒状錠小児用12.5mg/31.25mg<対象薬剤>サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(商品名:エンレスト粒状錠小児用12.5mg/31.25mg、製造販売元:ノバルティス ファーマ)<発売年月>2024年5月<改訂項目>[追加]規格粒状錠小児用12.5mg/31.25mg<ここがポイント!>小児慢性心不全は、病状が進むと心肥大や心拡大などが進行し、不整脈や突然死を引き起こすことがあります。サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物錠50mg/100mg/200mgは2024年2月9日に1歳以上の小児慢性心不全の効能・効果で承認を取得しました。しかし、体重が50kg未満の場合、薬剤師が粉砕懸濁して用量の調整を行う必要がありました。粒状錠小児用12.5mg/31.25mgは、用量を組み合わせることでさまざまな体重に対応することができ、調剤の簡便化が可能になります。粒状錠は、小児でも飲みやすい小さな粒状の錠剤ですので、カプセル型容器から取り出した錠剤を食べ物に混ぜて服用できます。粒状錠小児用は、カプセル型容器に充填したあと、PTP包装しています。パルモディアXR錠0.2mg/0.4mg<対象薬剤>ペマフィブラート(商品名:パルモディアXR錠0.2mg/0.4mg、製造販売元:興和)<発売年月>2023年11月<改訂項目>[承認]新剤形医薬品1日1回投与の徐放性製剤<ここがポイント!>高脂血症治療薬のペマフィブラート錠0.1mgは1日2回投与の即放性製剤でしたが、新剤形として1日1回投与のマルチプルユニット型徐放性製剤が2023年11月に販売されました。服用回数の増加は服薬アドヒアランスの低下に関連することが報告されているため、徐放性製剤の発売でアドヒアランスの向上が期待できます。第III相検証試験(K-877-ER-02)において、徐放性製剤0.2mgおよび0.4mgは、既存の即放性製剤と比較し、空腹時血清TGのベースライン値からの変化率が非劣性であることが確認されています。販売名のXRは徐放性(Extended Release)製剤であることを示しています。レキサルティ錠1mg/2mg、OD錠0.5mg/1mg/2mg<対象薬剤>ブレクスピプラゾール(商品名:レキサルティ錠1mg/2mg、OD錠0.5mg/1mg/2mg、製造販売元:大塚製薬)<改訂年月>2023年12月<改訂項目>[追加]効能又は効果うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)[追加]用法及び用量通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回1mgを経口投与する。なお、忍容性に問題がなく、十分な効果が認められない場合に限り、1日量2mgに増量することができる。[追加]効能又は効果に関連する注意(一部抜粋)本剤の併用は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤等による適切な治療を複数回行っても、十分な効果が認められない場合に限り、本剤による副作用(アカシジア、遅発性ジスキネジア等の錐体外路症状)や他の治療も考慮した上で、その適否を慎重に判断すること。[追加]効能又は効果に関連する注意(一部抜粋)本剤は選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤又はミルタザピンと併用すること。(本剤単独投与での有効性は確認されていない)<ここがポイント!>本剤の適応症は統合失調症のみでしたが、2023年12月に「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」が追加されました。成人では1日1回1mg投与しますが、忍容性に問題なく、十分な効果が認められない場合に限り、1日量2mgに増量できます。中等症および重症の大うつ病性障害には、SSRI、SNRI、ミルタザピンが第1選択として用いられますが、これらの薬剤による治療でも十分な効果を示さない症例も多く存在します。本剤は、アリピプラゾールに次ぐ抗うつ効果増強療法に用いる非定型抗精神病薬で、SSRI、SNRIまたはミルタザピンと併用して使用します。

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