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認知症発症リスクと心臓疾患との関係

 複数の心血管リスク因子が、認知症やアルツハイマー型認知症(AD)のリスクを増大することが知られるが、心臓疾患が及ぼす影響については不明なままであった。東フィンランド大学のMinna Rusanen氏らによる住民ベースのコホート研究の結果、高齢期の心臓疾患は、その後の認知症やADリスクを増大することが明らかにされた。結果を受けて著者は、「心臓疾患の予防と効果的な治療は、脳の健康や認知機能維持の観点からも重要であると考えられる」とまとめている。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2014年5月13日号の掲載報告。 研究グループは、認知症やADの長期リスクについて、中高年期の心房細動(AF)、心不全(HF)、冠動脈疾患(CAD)との関連を調べるため、住民ベースのコホート研究CAIDE(Cardiovascular Risk Factors, Aging and Dementia)のデータを分析した。CAIDEには、4期(1972、1977、1982、1987年)にわたって無作為に選択された住民合計2,000例が参加。被験者は、25年超後の1998年と2005~2008年の2期に追跡調査を受けていた。 主な結果は以下のとおり。・研究参加者2,000例のうち1回以上の追跡調査を受けていたのは、1,510例(75.5%)であった。そのうち認知症との診断を受けていたのは、127例(8.4%)であった。・全因子補正後の分析の結果、高齢期のAFは、認知症(ハザード比[HR]:2.61、95%信頼区間[CI]:1.05~6.47、p=0.039)、AD(同:2.54、1.04~6.16、p=0.040)の独立リスク因子であった。・アポリポ蛋白E(APOE)ε4を有していない人では、同関連はより強かった。・高齢期HFについても同様にリスクを増大する傾向がみられた。CADではみられなかった。・中年期診断の心臓疾患は、その後の認知症やADリスク増大と関連していなかった。関連医療ニュース 高齢者への向精神薬投与、認知症発症リスクと強く関連 認知症予防効果を降圧薬に期待してよいのか スタチン使用で認知症入院リスク減少

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帯状疱疹のリスク増大要因が判明、若年ほど要注意/BMJ

 帯状疱疹リスクは、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)、COPD、喘息などの疾患を有している人では増大し、概して年齢が若い人でリスクが大きいことが明らかにされた。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のHarriet J Forbes氏らが、2000~2011年の同国で帯状疱疹と診断された14万4,959例を対象とした症例対照研究を行い明らかにした。英国では2013年より新たに、高齢者のみを対象とした帯状疱疹ワクチンの接種キャンペーンが始められたが、これまで帯状疱疹リスクを定量化した大規模な検討は行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2014年5月13日号掲載の報告より。英国14万4,959症例を、年齢別に疾患リスクとの関連を分析 最近の文献報告において、帯状疱疹のリスクが一部の疾患で増大すること、および若い人のリスクが高い可能性が示唆され、研究グループは、年齢別に影響があると思われる帯状疱疹のリスク因子の定量化を試みた。具体的には、英国プライマリ・ケアのデータベースであるClinical Practice Research Datalinkを活用して症例対照研究を行った。 2000~2011年に帯状疱疹と診断された14万4,959例と、年齢・性別・診療状況で適合した対照54万9,336例を特定し、年齢ごとの各リスク因子と帯状疱疹との関連の強さを、条件付きロジスティック回帰分析にて補正後オッズ比(OR)を求めて評価した。関節リウマチ患者は1.46倍、相対的に疾患のある若い人でリスクが高い 症例群と対照群の年齢中央値は、62歳であった。 分析の結果、帯状疱疹リスクの増大因子として、関節リウマチ(2.1%vs. 1.5%、補正後OR:1.46、99%信頼区間:1.38~1.55)、IBD(1.3%vs. 0.9%、同:1.36、1.26~1.46)、COPD(4.7%vs. 3.7%、同:1.32、1.27~1.37)、喘息(7.1%vs. 5.8%、同:1.21:1.17~1.25)、慢性腎臓病(6.0%vs. 5.4%、同:1.14、1.09~1.18)、うつ病(4.7%vs. 4.0%、1.15、1.10~1.20)が認められた。 糖尿病との関連は部分的で、1型では関連がみられたが(0.3%vs. 0.2%、同:1.27、1.07~1.50)、2型では関連はみられなかった(7.1%vs. 6.9%、同:1.01、0.98~1.04)。 また年齢別(50歳未満、50~59歳、60~69歳、70歳以上)でみると、若年の患者でリスクが高いことがみてとれた。たとえば、関節リウマチ患者の補正後ORは、50歳未満では1.69であったが、70歳以上では1.41となっていた。 帯状疱疹のリスクが最も高かったのは、帯状疱疹ワクチンの接種が非適格である重度の免疫抑制状態患者の患者で、リンパ腫患者の補正後ORは3.90(99%CI:3.21~4.74)、骨髄腫2.16(同:1.84~2.53)などとなっていた。 以上のように、疾患を有している人では帯状疱疹のリスクが増大することが判明した。また概して、リスクの増大は若年者でより高いことが明らかになった。 これらの結果を踏まえて著者は、「現在推奨されているワクチン接種は、帯状疱疹リスクが高い人には禁忌であることが明らかになった。まった、これらの人々にはリスクを抑制するための別の戦略が必要であることが明確になった」とまとめている。

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中~高強度スタチンへのPCSK9阻害薬上乗せ効果を確認/JAMA

 米国・アイオワ大学のJennifer G. Robinson氏らによる第III相無作為化試験LAPLACE-2の結果、中~高強度のスタチン治療を受けている高コレステロール血症患者に対し、PCSK9阻害薬エボロクマブ上乗せ効果は、プラセボおよびエゼチミブ(商品名:ゼチーア)追加よりも、LDL-C値を有意に低下したことが報告された。JAMA誌2014年5月14日号掲載の報告より。エゼチミブおよびプラセボとの比較で12週間治療 中~高強度のスタチン治療を受けている高コレステロール血症患者では、多くが治療目標を達成できず、さらなるLDL-C値低下の非スタチン治療を考慮することが推奨されている。LAPLACE-2は、中~高強度のスタチン治療との組み合わせとして、エボロクマブの12週治療の有効性と安全性を、エゼチミブおよびプラセボとの比較で検討することを目的に行われた。 試験は2013年1月~12月に、17ヵ国198施設から患者を集め、2段階で24治療群のいずれか1つに無作為に割り付けて検討した。 患者(計2,067例)はまず初めに、1日量のスタチン治療が中強度(アトルバスタチン[10mg]、シンバスタチン[40mg]またはロスバスタチン[5mg])、高強度(アトルバスタチン[80mg]、ロスバスタチン[40mg])に無作為化された。 4週間後、患者(1,899例)はスタチン治療に加えて、エボロクマブ(140mgを2週に1回または420mgを月に1回)+プラセボ(2週に1回または月に1回)、エゼチミブ(1日1回10mgまたはプラセボ[アトルバスタチン単独群となるよう])の投与が比較できるように無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは2つとし、ベースライン時からのLDL-C値の低下率について、10~12週の平均LDL-C値による評価(1ヵ月投与群の低下を良好に反映する)と、12週時点のLDL-C値による評価とした。2週に1回投与群66~75%低下、1ヵ月1回投与群63~75%低下 結果、中~高強度のスタチン治療群全体において、エボロクマブ上乗せによるLDL-C値の低下率は、プラセボとの比較において、2週に1回投与群は-66%(ロスバスタチン40mg群)~-75%(アトルバスタチン80mg群)の範囲に及び、月1回投与群では-63%(ロスバスタチン40mg群、アトルバスタチン10mg群)~-75%(アトルバスタチン80mg群)だった。12週時点の評価でみたLDL-C値の低下率も同程度だった。 中強度スタチン治療群(アトルバスタチン10mg群、シンバスタチン40mg群、ロスバスタチン5mg群)についてみると、エボロクマブ2週1回の追加投与によりLDL-C値はベースライン時平均115~124mg/dLから39~49mg/dLへの低下がみられた。月1回投与群では、同123~126mg/dLから43~48mg/dLへの低下がみられた。 高強度スタチン治療群(アトルバスタチン80mg群、ロスバスタチン40mg群)では、同じくエボロクマブ2週1回の追加投与により89~94mg/dLから35~38mg/dLへの低下が、月1回投与群では89~94mg/dLから33~35mg/dLへの低下がみられた。 有害事象の発生は、エボロクマブ、エゼチミブ、プラセボ群でそれぞれ36%、40%、39%で報告された。エボロクマブ投与群で最も頻度が高かった有害事象は、背中の痛み、関節痛、頭痛、筋けいれん、四肢の痛みであった(すべて2%未満)。 結果を踏まえて著者は、「さらなる検討を行い、この治療アプローチの長期アウトカムおよび安全性を確認する必要がある」とまとめている。

28104.

増悪を起こしやすいCOPD患者に高用量N-アセチルシステインは有用か

 高用量のN-アセチルシステイン(NAC)はハイリスクなCOPD患者に対して、増悪頻度を減少させ、初発の増悪までの期間を短縮させるが、ローリスクなCOPD患者に対しては効果がみられない可能性があることを香港・KwongWah 病院のHoi Nam Tse氏らが報告した。CHEST誌オンライン版2014年5月15日の掲載報告。 高用量のN-アセチルシステインはCOPDの増悪を減少させることが知られてきたが、どのようなカテゴリーのCOPD患者に最も有効なのかについては明らかではなかった。 本研究の目的は、ハイリスクなCOPD患者とローリスクなCOPD患者に対する高用量のN-アセチルシステイン(600mg×2回/日)の効果を比較することである。安定期のCOPD患者(スパイロメトリーで確認)をランダムに2群に分け、現在の治療に加え、一方には高用量のN-アセチルシステイン(600mg×2回/日)、もう一方にはプラセボを追加した。各患者群のフォローアップ期間は1年間で、16週ごとに評価した。現在のGOLDのガイドラインにより定義される増悪リスク分類ごとに、さらなる分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・120例のCOPD患者の背景は93.2%が男性、平均年齢70.8 ± 0.74歳、気管支拡張薬投与前の対標準1秒量(%FEV1)は53.9 ± 2.0%であり、ベースライン特性は2群間で同等であった。・1年間フォローアップできた患者は108例であった(NAC投与群52例、プラセボ投与群56例)。・ハイリスク患者89例において、プラセボ投与群と比べて高用量NAC投与群では増悪頻度が有意に減少し[0.85 vs. 1.59回/年、p=0.019(8ヵ月時点)、1.08 vs. 2.22回/年、p=0.04(12ヵ月時点)]、初発の増悪までの時間も有意に短く(p=0.02)、1年間1度も増悪を起こさない確率が有意に高かった(51.3% vs. 24.4%、p=0.013)。・ローリスクの患者では、高用量NAC投与群とプラセボ投与群で有意な差は認められなかった。

28105.

偽膜性大腸炎を診断できずに死亡に至ったケース

消化器最終判決判例時報 1654号102-111頁概要高血圧性小脳出血を発症した65歳男性、糖尿病、腎障害、および軽度の肝障害がみられていた。発症4日目に局所麻酔下にCT定位脳内血腫吸引術を施行し、抗菌薬としてセフォタキシムナトリウム(商品名:クラフォラン)、ピペラシリンナトリウム(同:ペントシリン)を開始した。術後2日目から下痢が始まり、術後4日目から次第に頻度が増加し、38℃台の発熱と白血球増多、CRP上昇など、炎症所見が顕著となった。術後6日目にはDICが疑われる状態で、腎不全、呼吸・循環不全となり、術後12日目に死亡した。解剖の結果、空腸から直腸にかけて著しい偽膜性大腸炎の所見が得られた。詳細な経過患者情報65歳男性経過1991年3月2日11:00頃法事の最中に眩暈と嘔吐を来して歩行不能となり、近医を経てA総合病院脳神経外科に搬送され、頭部CTスキャンで右小脳出血(血腫の大きさは3.8×2.5×2.0cm)と診断された。意識清明であったが言語障害があり、脳圧降下薬の投与、高血圧の管理を中心とした保存的治療が行われた。3月6日若干の意識障害、右上肢の運動失調がみられたため、局所麻酔下にCT定位脳内血腫吸引術が行われた。術後感染防止のため、第3世代セフェム(クラフォラン®)、広域ペニシリン(ペントシリン®)の静注投与が行われた。3月8日焦げ茶色の下痢と発熱。腰椎穿刺では髄膜炎が否定された。3月9日白血球15,000、CRP 0.5。3月10日下痢が5回あり、ロペラミド(同:ロペミン)投与(以後も継続された)。3月11日下痢が3回、白血球42,300、CRP 3.9。敗血症を疑い、γグロブリン追加。胸部X線写真異常なし、血液培養陰性。3月12日下痢が3回、チェーンストークス様呼吸出現。3月13日下痢が2回、血圧低下、腎機能低下、人工呼吸器装着、播種性血管内凝固症候群を疑い、メシル酸ガベキサート(同:エフオーワイ)開始。抗菌薬をアンピシリン(同:ビクシリン)、第3世代セフェム・セフタジジム(同:モダシン)、ミノサイクリン(同:ミノマイシン)に変更。以後徐々に尿量が減少して腎不全が進行し、感染や血圧低下などの全身状態悪化から人工透析もできないままであった。3月18日死亡。死体解剖の結果、空腸から直腸にかけて、著しい偽膜性大腸炎の所見が得られ、また、エンドトキシン血症の関与を示唆する肝臓小葉中心性新鮮壊死、著しい急性肝炎、下部尿管ネフローシス(ショック腎)が認められたため、偽膜性大腸炎により腸管の防御機能が障害され、細菌が血中に侵入し、その産生するエンドトキシンによる敗血症が惹起されエンドトキシンショックとなって急性循環不全が引き起こされた結果の死亡と判断された。当事者の主張患者側(原告)の主張小脳出血は保存的に様子をみても血腫の自然吸収が期待できる症状であり、手術の適応がなかったのに手術を実施した。1.死因クラフォラン®およびペントシリン®を中心として、このほかにビクシリン®、モダシン®、ミノマイシン®などの抗菌薬を投与されたことによって偽膜性大腸炎を発症し、その症状が増悪して死亡したものである2.偽膜性大腸炎について3月10~13日頃までには抗菌薬に起因する偽膜性大腸炎を疑い、確定診断ができなくても原因と疑われる抗菌薬を中止し、偽膜性大腸炎に効果があるバンコマイシン®を投与すべきであったのに怠った。さらに偽膜性大腸炎には禁忌とされているロペミン®(腸管蠕動抑制剤)を投与し続けた病院側(被告)の主張高血圧性小脳出血の手術適応は、一般的には血腫の最大経が3cm以上とされており、最大経が3.8cmの小脳出血で、保存的加療を行ううちに軽い意識障害および脳幹症状が発現し、脳ヘルニアへの急速な移行が懸念されたため、手術適応はあったというべきである。1.死因初診時から高血圧性腎症、糖尿病性腎症、感染によるショックなどの基礎疾患を有し、これにより腎不全が進行して死亡した。偽膜性大腸炎の起炎菌Clostridium difficileの産生する毒素はエンテロトキシンおよびサイトトキシンであるから、本件でみられたエンドトキシン血症は、偽膜性大腸炎に起因するとは考えがたい。むしろエンドトキシンを産生するグラム陰性桿菌が腸管壁を通過し、糖尿病、肝障害などの基礎疾患により免疫機能が低下していたため、敗血症を発症し、多臓器不全に至ったものと考えられる2.偽膜性大腸炎について偽膜性大腸炎による症状は、腹痛、頻回の下痢(1日30回にも及ぶ下痢がみられることがある)、発熱、腸管麻痺による腹部膨満などであり、検査所見では白血球増加、電解質異常(とくに低カリウム血症)、低蛋白血症などを来す。本件の下痢は腐敗性下痢である可能性や、解熱薬の坐薬の影響が考えられた。本件の下痢は回数的にみて頻回とまではいえない。また、腹痛や腹部膨満はなく、血清カリウム値はむしろ上昇しており、白血球やCRPから炎症所見が著明であったので肺炎や敗血症は疑われたものの、偽膜性大腸炎を疑うことは困難であった裁判所の判断1. 死因本件ではClostridium difficileの存否を確認するための検査は行われていないが、抗菌薬以外に偽膜性大腸炎を発生させ得る具体的原因は窺われず、また、偽膜性大腸炎はClostridium difficileを起炎菌とする場合がきわめて多いため、本件で発症した偽膜性大腸炎は抗菌薬が原因と推認するのが合理的である。そして、Clostridium difficileにより発生した偽膜性大腸炎により腸管の防御機能が障害され、腸管から血中にグラム陰性菌が侵入し、その産生するエンドトキシンにより敗血症が惹起され、ショック状態となって急性循環不全により死亡したものと推認することができる。2. 偽膜性大腸炎について一般的に医師にはさまざまな疾病の発生の可能性を考慮して治療に従事すべき医療専門家としての高度の注意義務があるのであって、本件の下痢の状況や白血球数などの炎症反応所見の推移は、かなり強く偽膜性大腸炎の発生を疑わせるものであると評価するのが相当である。病院側の主張する事実は、いずれも偽膜性大腸炎が発生していたことを疑いにくくする事情ではあるが、ロペミン®により下痢の回数がおさえられていた可能性を考慮して下痢の症状を観察するべきであった。そのため、3月11日から翌12日午前中までには偽膜性大腸炎が発生していることを疑うことが可能であり、その時点でバンコマイシン®の投与を開始し、かつロペミン®の投与を中止すれば、偽膜性大腸炎を軽快させることが可能であり、エンドトキシンショック状態に陥ることを未然に回避できた蓋然性が高い。2. 手術適応について高血圧性小脳出血を手術するべきであったかどうかの判断は示されなかった。原告側合計3,700万円の請求に対し、2,354万円の判決考察このケースは、脳外科手術後にみられた「下痢」に対し、かなり難しい判断を要求していると思います。判決文を読んでみると、頻回の下痢症状がみられたならばただちに(少なくとも下痢とひどい炎症所見がみられた翌日には)偽膜性大腸炎を疑い、確定診断のために大腸内視鏡検査などができないのならば、それまでの抗菌薬や止痢薬は中止してバンコマイシン®を投与せよ、という極端な結論となっています。もちろん、一般論として偽膜性大腸炎をまったく鑑別診断に挙げることができなかった点は問題なしとはいえませんが、日常臨床で抗菌薬を使用した場合、「下痢」というのはしばしばみられる合併症の一つであり、その場合程度がひどいと(たとえ偽膜性大腸炎を起こしていなくても)頻回の水様便になることはしばしば経験されます。そして、術後2日目にはじめて下痢が出現し、術後4日目から下痢が頻回になったという状況からみて、最初のうちは単純な抗菌薬の副作用による下痢と考え、止痢薬を投与するのはごく一般的かつ常識的な措置であったと思います。その上、術後に発熱をみた場合には腸以外の感染症、とくに脳外科の手術後であったので髄膜炎や肺炎、尿路感染症などをまず疑うのが普通でしょう。そのため、担当医師は術後2日目には腰椎穿刺による髄液検査を行っていますし(結果は髄膜炎なし)、胸部X線写真や血液検査も頻回に調べていますので、一般的な注意義務は果たしているのではないかと思います。ところが判決では、「頻回の下痢が始まった翌日の3月11日から3月12日午前中までには偽膜性大腸炎が発生していることを疑うことが可能であった」と断定しています。はたして、脳外科の手術後4日目に、頻回に下痢がみられたから即座に偽膜性大腸炎を疑い、発熱が続いていてもそれまでの抗菌薬をすべて中止して、バンコマイシン®だけを投与することができるのでしょうか。この時期はやはり脳外科術後の髄膜炎がもっとも心配されるので、そう簡単には抗菌薬を止めるわけにはいかないと考えるのがむしろ脳外科的常識ではないかと思います。実際のところ、脳外科手術後に偽膜性大腸炎がみられるのは比較的まれであり、それよりも髄膜炎とか肺炎の発症率の方が、はるかに高いのではないかと思います。にもかかわらず、まれな病態である偽膜性大腸炎を最初から重視するのは、少々危険な考え方ではないかという気までします。あくまでも推測ですが、脳外科の専門医であれば偽膜性大腸炎よりも髄膜炎、肺炎の方をまず心配するでしょうし、一方で消化器内科の専門医であればどちらかというと偽膜性大腸炎の可能性をすぐに考えるのではないかと思います。以上のように、本件は偽膜性大腸炎のことをまったく念頭に置かなかったために医療過誤とされてしまいましたが、今後はこの判例の考え方が裁判上のスタンダードとなる可能性が高いため、頻回の下痢と発熱、著しい炎症所見をみたならば、必ず偽膜性大腸炎のことを念頭に置いて検査を進め、便培養(嫌気性培養も含む)を行うことそして、事情が許すならば大腸内視鏡検査を行って確定診断をつけておくこと通常の抗菌薬を中止するのがためらわれたり、バンコマイシン®を投与したくないのであれば、その理由をきちんとカルテに記載することというような予防策を講じないと、医師側のミスと判断されてしまうことになると思います。なお本件でもう一つ気になることは、本件では手術直後から予防的な抗菌薬として、2種類もの抗菌薬が使用されている点です。クラフォラン®、ペントシリン®はともに髄液移行の良い抗菌薬ですので、その選択には問題ありません。しかし、手術時には明らかな感染症は確認されていないようなので、なぜ予防的な抗菌薬を1剤ではなくあえて2剤にしたのでしょうか。これについてはいろいろとご意見があろうかと思いますが、ことに本件のようなケースを知ると、抗菌薬の使用は必要最小限にするべきではないかと思います。消化器

28106.

チャイルドシート熱傷に注意【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第19回

チャイルドシート熱傷に注意真夏の車内でシートベルトを着用しようとしたら、金属部分に手が触れて「あつっ!!」とあやうくヤケドするところだったという経験があるでしょう。これだけ熱ければ、ボンネットで目玉焼きでも焼けるんじゃないかと思いました。Moharir M, et al.Burn injury from car seat in an 11-month-old infant.Paediatr Child Health. 2012; 17: 495-497.ある日、母親と祖母に連れられて救急部を受診した11ヵ月の赤ちゃんがいました。どうやら左の大腿に棒状の熱傷がみられていたようです。熱傷が急性期のものではなかったため、病院側は幼児虐待を考慮して児童相談所へ連絡したそうです。―――この熱傷エピソードがある前、子供は母親のもとを離れて父方の家族のもとにいたようです。父親は少し離れたところで勤務していたため、両親は離れて暮らしていたみたいです。今回、母方の結婚式に出席するために父親と子供は5時間かけて車で移動しました。目的地に到着して、母親が児を抱き上げたとき、左大腿に広がる熱傷に気付きました。車の中には父親しかいませんでしたが、彼も「原因はまったくわからない」といった態度で、一体どのようにして熱傷を起こしたのか見当がつきませんでした。母親はしばらく熱傷の経過をみていましたが、皮膚が数日かけて悪化してきたため、救急部に子供を連れてきたというワケです。児の外傷については今回の熱傷のエピソードしかなく、家族全員が今回の件を不思議がっている態度をみると、どうやら虐待ではなさそうです。よくよく調べてみると、どうやら熱傷を起こした日は35℃の炎天下であり、車のガラスからは直接チャイルドシートに日光が当たり続けていたようです。子供の左大腿があった部分、それはチャイルドシートのプラスチックの部分でした。もちろん状況証拠でしかありませんが、高温になったチャイルドシートが熱傷の原因であろうと考えられました。巧妙に父親が虐待を隠した可能性もゼロではありませんが、そこは医学論文が論じる範疇ではないようです。今回のケースのように、車内にあるプラスチックや金属部分が高温になって熱傷を来した場合、医療従事者は幼児虐待であると誤認してしまうことがあります(Pediatrics. 1978; 62: 607-609.)。 乳幼児の熱傷をみた場合、救急部では虐待の可能性を考えることは重要ですが、クロだと決めつけてしまわないことも大事ですね。ちなみに小児だけでなく麻痺のある成人の患者さんでも、高温の車内では熱傷に注意が必要です(J Burn Care Rehabil. 2003; 24: 315-316.)。

28107.

睡眠の質は腰痛患者の痛みの程度に強く関連

 急性腰痛患者における発症後の疼痛強度は、睡眠の質と関連していることが、サウジアラビア・ダンマーム大学のSaad M. Alsaadi氏らにより明らかにされた。最近の報告で、睡眠の質と疼痛強度が密接に関係していることが示唆されていた。腰痛患者では睡眠をめぐる問題が一般的であるが、睡眠の質に、疼痛の強度が影響しているのかどうかは不明であった。結果を踏まえて著者は、「睡眠の質を改善することが疼痛の軽減に寄与するのかについて、さらなる研究が必要である」とまとめている。Arthritis & Rheumatology誌2014年5月号の掲載報告。 研究グループは、睡眠の質が腰痛に及ぼす影響について調査を行い、睡眠不足が腰痛を増強させるのかを調べた。 急性腰痛患者1,246例を対象に、ピッツバーグ睡眠質問票を用いて睡眠の質(0〜3ポイント)を、数値的評価スケールを用いて疼痛強度(0〜10)を評価し、一般化推定方程式を用いて両者の関係を分析するとともに、うつや腰痛の予後因子との関連についても評価した。 主な結果は以下のとおり。・睡眠の質が1ポイント低下すると、疼痛強度は2.08ポイント(95%信頼区間:1.99~2.16)増加し、睡眠不足が疼痛強度に影響することが認められた。・この影響は、うつや一般的な腰痛の予後因子とは独立していた。・睡眠の質は、急性腰痛患者では、その後の疼痛強度と強く関連していることが明らかになった。

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期待の新規不眠症治療薬、1年間の有効性・安全性は

 新規不眠症治療薬スボレキサント(MK-4305)の1年間にわたる治療について、おおむね安全であり忍容性も良好で、自覚的な睡眠導入で評価した有効性もプラセボと比較して有意であったことが示された。米国メルク社のDavid Michelson氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。スボレキサントはオレキシン受容体阻害薬で、先行研究において治療3ヵ月間の有効性は示されていた。Lancet Neurology誌2014年5月号の掲載報告。 本検討で研究グループは、スボレキサントの1年間の治療期間中およびその後の臨床プロファイルを評価することを目的とした。試験は2009年12月~2011年8月の間、アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ、南アフリカの106の治験施設で行われた。 被験者は、DSM-IV-TR適格基準で原発性不眠症と診断された18歳以上の患者であった。コンピュータによる無作為化(2対1)を受けた被験者は、スボレキサントを毎晩投与(65歳未満患者40mg、65歳以上患者30mg)もしくはプラセボ投与の治療を1年間受けた。その後2ヵ月間の中断期間を経て、スボレキサント投与群は引き続きスボレキサントの投与を受けるかプラセボに突然切り替えられた。プラセボ投与群はそのままプラセボ投与を受けた。治療割り付けについては患者、治験担当医ともに知らされなかった。 主要目的は、最長1年間のスボレキサントの安全性と忍容性を評価することであった。副次目的は、スボレキサントの有効性で、患者の報告に基づく治療開始1ヵ月間の、主観的な総睡眠時間(sTST)および主観的な睡眠導入までの時間(sTSO)の改善で評価した。治療開始1ヵ月間の有効性のエンドポイントは、ベースライン時の治療反応変数の条件(年齢、性別、試験地、治療、期間、時間相互作用別治療)に基づく混合モデルで評価した。 主な結果は以下のとおり。・1年間の試験相を完了したのは、スボレキサント治療に割り付けられた522例のうち322例(62%)、プラセボは259例のうち162例(63%)であった。・1年間において、スボレキサント群では521例のうち362例(69%)がさまざまな有害事象を報告した。プラセボ群では258例のうち164例(63%)が報告した。・重大有害事象は、スボレキサント群では27例(5%)、プラセボ群では17例(7%)が報告された。・両群に共通した最も頻度が高かった有害事象は傾眠で、報告数は、スボレキサント群は69例(13%)、プラセボ群は7例(3%)であった。・1ヵ月時点の有効性は、スボレキサント群がプラセボ群よりも有意に高いことが示された。・有効性評価の被験者数は、スボレキサント群517例、プラセボ群254例であった。・1ヵ月時点のsTST改善は、それぞれ38.7分vs. 16.0分(差:22.7分、95%信頼区間[CI]:16.4~29.0、p<0.0001)だった。・同sTSO改善は、-18.0分vs. -8.4分(差:-9.5分、95%CI:-14.6~-4.5、p=0.0002)だった。関連医療ニュース 睡眠薬、長期使用でも効果は持続 自殺と不眠は関連があるのか 不眠症の人おすすめのリラクゼーション法とは

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新規経口薬、移植後サイトメガロウイルス感染の予防効果を確認/NEJM

 同種造血細胞移植後レシピエントの疾患・死亡リスクの原因となっているサイトメガロウイルス(CMV)感染に対して、新規開発中のレテルモビル(AIC246)が有意に同感染発生を抑制したことが第II相試験の結果、示された。米国・MDアンダーソンがんセンターのRoy F. Chemaly氏らによる報告で、最高用量240mg/日で最大抗CMV活性が認められ、安全性プロファイルは忍容可能なものであったという。CMV感染に対する有効な治療法は確立しているが、臨床的に重大な毒性作用や薬剤耐性があることから、新たな治療オプションの開発が求められていた。NEJM誌2014年5月8日号掲載の報告。レテルモビル60、120、240mg/日の12週投与の有効性と安全性を検討 レテルモビルは、新たな作用機序を有する経口抗CMV薬である。第II相試験では、レテルモビル60、120、240mg/日の12週投与の有効性と安全性について、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験にて評価が行われた。 被験者は2010年3月~2011年10月に19施設(ドイツ9、米国10)から集められ、試験適格であった131例が各用量投与群およびプラセボ群に無作為に割り付けられ評価を受けた。 主要エンドポイントは、予防の失敗(原因を問わない)であった。その定義は試験薬投与の中止(CMV抗原またはDNAの検出、終末器官の疾患発生、その他の理由による)とし、被験者は毎週、CMV感染についてのサーベイランスを受けた。240mg/日群で最も抑制、安全性プロファイルはプラセボ群と類似 試験薬各用量群における全要因による予防失敗率は、投与量が増すにつれて低下が認められた。プラセボ群における予防失敗率は64%であったが、レテルモビル60mg/日群では48%(p=0.32)、120mg/日群では32%(対プラセボp=0.01)、240mg/日群では29%(同p=0.007)だった。 Kaplan-Meier分析の結果、予防失敗までの期間については240mg/日群でプラセボ群との比較による有意な差が認められた(p=0.002)。 安全性プロファイルは、いずれもプラセボ群と類似しており、血液毒性や腎毒性の徴候は認められなかった。

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抗精神病薬、気分安定薬の暴力犯罪抑制効果は?/Lancet

 英国・オックスフォード大学のSeena Fazel氏らは、世界中で広く精神疾患患者に処方されている抗精神病薬および気分安定薬と、暴力犯罪リスクとの関連について、スウェーデンの状況について調べた。その結果、暴力犯罪の抑制に寄与している可能性が判明したという。精神疾患患者へのこれらの薬の処方に関し、疾患の再発予防や症状の軽減については明確な有効性のエビデンスが示されているが、暴力犯罪など有害アウトカムへの効果については明らかにされていなかった。結果を受けて著者は、「精神疾患患者の治療選択において、これらの薬の暴力や犯罪への効果について考慮がなされるべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年5月8日号掲載の報告より。スウェーデン全国レジストリ精神疾患患者8万2,647例を解析 研究グループは、抗精神病薬および気分安定薬の暴力犯罪発生への影響を調べるため、スウェーデン全国レジストリを用いて、2006~2009年に抗精神病薬または気分安定薬の処方を受けていた8万2,647例について、精神疾患の診断歴と、それ以降の犯罪歴を調べた。 個別分析法にて、追跡期間中に処方薬を受けていた人vs. 処方を受けていなかった人の暴力犯罪率を比較した。比較は各被験者のあらゆる交絡因子について補正を行った。 主要アウトカムは暴力犯罪の発生で、スウェーデン国家犯罪レジスターで確認した。処方を受けていた患者の暴力犯罪は、非処方患者よりも45%抑制 追跡期間中に、スウェーデン人の男性4万937例が両薬の処方を受けていた。このうち2,657例(6.5%)が、暴力犯罪で有罪判決を受けていた。 同様に女性は4万1,710例が処方を受けており、そのうち暴力犯罪で有罪判決を受けていたのは604例(1.4%)であった。 同期間中の非処方群と比較して、抗精神病薬処方を受けていた患者の暴力犯罪発生率は45%低かった(ハザード比[HR]:055、95%信頼区間[CI]:0.47~0.64)。また、気分安定薬の処方を受けていた患者については24%低かった(同:0.76、0.62~0.93)。 ただし、診断-気分安定薬と暴力犯罪抑制との関連について、潜在的に有意な違いがあることが確認されたのは、双極性障害患者についてのみであった。 感度分析による抗精神病薬の暴力抑制率は、異なるアウトカム指標(あらゆる暴力、薬物関連暴力、重大ではない暴力、暴力事件での逮捕)でも22~29%の間に留まった。抑制効果は、低用量処方患者よりも高用量患者のほうが強いことは認められた。 また、デポ薬でも暴力犯罪の顕著な減少が認められた(併用経口薬補正後HR:0.60、95%CI:0.39~0.92)。

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IPFの病勢進行を遅らせるNintedanib

 ドイツのベーリンガーインゲルハイムは2014年5月18日NEJMに発表された特発性肺線維症(IPF)を対象とした第3相臨床試験結果の内容を発表。Nintedanib(BIBF1120)が特発性肺線維症(IPF: Idiopathic Pulmonary Fibrosis)の病勢進行を遅らせることが明らかになったという。  New England Journal of Medicine誌のオンライン版に 5月18日に発表された第3相INPULSISTM試験の結果において、NintedanibがIPF患者病勢進行を有意に遅らせることが示された。1,066例が参加した2つの52週間にわたるINPULSISTM試験において、Nintedanibはプラセボと比較して、努力性肺活量(FVC)の年間減少率を約50%有意に抑制した。2つの試験におけるFVCの年間減少率は以下のとおり。・ INPULSISTM-1: -114.7mL(Nintedanib)vs. -239.9mL(プラセボ) ・ INPULSISTM-2: -113.6mL(Nintedanib)vs. -207.3mL(プラセボ)  INPULSISTM-1試験では、主要な副次評価項目においてNintedanibとプラセボ群に統計的有意な差はみられなかった。しかし、INPULSISTM-2試験ではプラセボと比較して、Nintedanibを服用した患者は、健康関連QOL(St.George's Respiratory Questionnaire)スコアが有意に低下し、初回の急性増悪のリスクも低下した。  Nintedanib群で最も頻度の高かった有害事象は下痢で、Nintedanib群、プラセボ群で62% vs. 19%(INPULSISTM-1試験)、63% vs. 18%(INPULSISTM-2試験)であった。Nintedanib群で下痢を理由に治療を中止した患者は5%未満であった.ベーリンガーインゲルハイムプレスリリースはこちら

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第8回

第8回:爪甲真菌症:疑えば繰り返し検査を、治療は適切な抗真菌薬と期間で 日本医真菌学会の調査によると、爪甲真菌症を含むすべての皮膚真菌症は皮膚科の新患患者の12.3%を占め、皮膚科医としても頻度の高い皮膚感染症であるとされます1)。 またプライマリ・ケア医が関わる診療現場でも、直面する頻度の高い皮膚疾患であります。他の疾患をフォロー中に見つける場面は少なからずあり、診断・治療については現場で悩みながら、もしくは経験的に治療する場面もあるかもしれません。 以下、本文 American Family Physician 2013年12月1日号2)より爪甲真菌症1.概要爪甲真菌症は手指爪や足指爪の真菌感染症で、変色・肥厚・爪床からの分離を来す。爪甲真菌症は人口の10%程度に生じるが高齢者に多くみられ、60歳以上では20%、70歳以上ともなると50%もの有病率に至る。高齢者の有病率が増える背景としては末梢血管疾患、免疫異常、糖尿病との関連がいわれている。糖尿病があると1.9〜2.8倍にリスクが増加するともいわれる。HIVを基礎疾患に持つ人では15〜40%の有病率といわれる。2.微生物学的原因さまざまな原因菌があるが、最も多いのはTrichophyton(白癬菌属)の中の皮膚糸状菌である。他の菌種は、Candidaで手指爪に多く、慢性の粘膜皮膚カンジダ症でみられる。3.分類形態学的な観点からいくつかの種類に分類される。 遠位側縁爪甲下爪真菌症(DLSO):下爪皮から爪甲・爪床へ向かい広がっていく。爪は肥厚し崩れ、萎縮する。色調は黄〜白色もしくは褐色〜黒色へ変化する。頻度は最多。 全層性爪真菌症:爪が乳白色変化し、でこぼこで、層状に分裂した状態。稀である。DLSOの亜系とも考えられる。 近位爪甲下爪真菌症(PSO):爪の近位部の下で沈殿が積み重なった状態。近位から遠位へ進行し白色変化する。免疫抑制状態を示唆する。 表在性皮膚真菌症(SO):爪表面に線状横断するような粉状の変化がみられる。 全異栄養性爪真菌症(TDO):長期の感染により爪構造が完全に破壊される。4.診断爪の変色・変形・肥大・角化、爪下沈殿あり:爪甲真菌症疑い  ↓70%イソプロピルアルコールで消毒し、切り落とした爪や爪下沈殿からの検体を採取  ↓KOHを使用し検鏡  ↓陽性:治療開始:起因微生物を同定するための検査も考慮  ↓培養確認、またPAS染色でも評価(陰性の際もこの過程を)(※PAS染色の感度:82%培養[ 53%、KOH法 46%])(※培養とPAS染色を合わせることで感度を96%まで上げられる)  ↓陽性:治療開始陰性:他の部位からの検体採取を検討5.治療と効果 臨床的治癒:爪の80〜100%が正常形態になっていること 真菌的治癒:培養、検鏡で病原体が検出されないこと フルコナゾール 100〜300mg/週 3〜6ヵ月(手指)、6〜12ヵ月(足指)カンジダ種に対して効果。副作用は嘔気・嘔吐・下痢・腹痛・頭痛・発疹。臨床的治癒率 41%、真菌的治癒率 48%。 イトラコナゾールパルス法 200mg 2回/日を1週間内服/月 2ヵ月(手指)3ヵ月(足指)持続法 200mg 1回/日 6週間(手指)12週間(足指)カンジダ種、皮膚糸状菌、アスペルギルス種などに効果。副作用は嘔気・嘔吐・低カリウム・トランスアミナーゼ上昇・中性脂肪上昇・発疹。臨床的治癒率 70%、真菌的治癒率 パルス法 63% / 持続法 69%。 テルビナフィン 250mg 1回/日を6週間(手指)12週間(足指)糸状菌、酵母菌(カンジダなど)の一部に効果。副作用は胃腸障害・発疹・頭痛。臨床的治癒率 66%、真菌的治癒率 76%。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 日本皮膚科学会雑誌.皮膚真菌症診断・治療ガイドライン 2) Westerberg DP, et al. Am Fam Physician. 2013 Dec 1;88:762-770.

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引きこもりへのアドバイス【Dr. 中島の 新・徒然草】(018)

十八の段 引きこもりへのアドバイス私自身が引きこもり体質のせいか、脳外科外来でもニートの息子さんの相談をされることがよくあります。患者「ウチの息子なんですけど、何年も家に引きこもっているんです」中島「でもお母さんが倒れたときは、毎日病院に来ておられたんで、僕もずっと病状説明をしていましたよ」患者「じゃあ、私が倒れたときは息子も頑張っていたんですね」中島「彼、単なる普通の大人しい青年じゃないんですか」患者「先生に対しては普通にしゃべれるんですけど、ほかの人には全然ダメなんです」ま、引きこもり同士、息子さんと私の間には通じるものがあるのかもしれません。中島「それで、お母さんが会社に行っている間、ずっと家の中に籠っているわけですか?」患者「そうなんですよ。なんとかして仕事につかせる方法とか、ありませんかね」中島「確か、お父さんは早くに亡くなったのでしたか」患者「そうなんですよ。そのうえ、中学校でひどいイジメにあってすっかり人見知りするようになったんです」中島「なるほどね」患者「なんとか仕事に就かせないといけないんです」ここで気の利いたアドバイスの1つくらい言うべきですね。中島「ま、就職しろと親が圧力をかけすぎるのもどうか思いますよ。就職が人生の最終目標ってわけでもないし」患者「は?」中島「仕事は無理にする必要なくてですね、経済的に自立すればいいわけです」患者「仕事をしなくてお金が入ってくるんですか」中島「起業するとか、ネット商売をするとか、オンライン投資で頑張るとか。それでお金を儲けるということも考えてみたらどうでしょうか」後で考えてみれば、かえってハードルを上げてしまっています。中島「僕の知っている人は、ネットオークションで不動産を買って、それを人に貸して儲けてますよ。本業はサラリーマンですけど」自分ができもしないことをよく他人様にアドバイスできるもんですな。ま、世の中そんなものかもしれません。でも、最近はもう少し現実的なアドバイスをしようかと思うようになりました。頭の中でシミュレートしてみると、こんな感じでしょうか。中島「小さなマイゴールを達成していきましょう」患者「と、おっしゃいますと」中島「まず部屋の片付けです。部屋がスッキリすれば心もスッキリ。ついでに家の中も掃除してもらえばお母さんも助かるでしょう」患者「やらないでしょうねぇ、あの子が掃除なんか」中島「次に体を鍛えましょう」患者「鍛える・・・んですか」中島「健全な精神は健全な肉体に宿るわけです」患者「はあ」中島「そして勉強ですよ。外国語をしゃべれたら就職の時にもアピールできるんじゃないかな。外国語の勉強だったら家の中でも十分にできますし」患者「外国語?」中島「英語は当然として、もう1つくらいあった方がいいな。アジアの時代ですから、タイ語とかインドネシア語とか、いいんじゃないですか? でも、後々のことを考えれば政情不安定な国は避けておいた方が無難でしょうね」患者「インド・・・ネシア・・・ですか」中島「経済的自立はその次でしょうね。就職するもよし、自分で何かをするもよし」患者「・・・」あまりの大風呂敷に呆れられたのかも。中島「外国語を学んだりお金を儲けたりは大変かもしれませんがね、まず第一歩は部屋の片付けです。何事も足元から。お母さんも一緒に頑張りましょう!」患者「ええ、まずアニメとかDVDを整理させるところからやってみます」ということで、引きこもりに対する現実的なアドバイスを考えてみましたが、実行したら、また結果を報告いたします。

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統合失調症患者への抗精神病薬、神経メカニズムへの影響は

 統合失調症患者の記憶を含む認知機能は、機能的転帰と強く相関している。長期増強(LTP)は、記憶のための生理学的基礎であると考えられる神経メカニズムのひとつである。抗精神病薬は、ドパミン作動性伝達を変化させることにより、このLTPや認知機能を損なう可能性がある。カナダ・トロント大学のRae Price氏らは、LTPに対する抗精神病薬とD2アンタゴニストとの関係を評価するために、系統的レビューを実施した。Progress in neuro-psychopharmacology & biological psychiatry誌オンライン版2014年5月10日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・LTPと抗精神病薬に関する大部分の研究によると、抗精神病薬の急性投与は、野生型動物のLTP障害と関連していた。・対照的に、統合失調症動物モデルでは抗精神病薬の連用および急性投与のどちらもLTP障害との関連は認められなかった。・クロザピンとオランザピンを除く定型および非定型抗精神病薬、およびその他のD2アンタゴニストでは、同様の結果であった。・クロザピンでは、強直誘発の独立した増強要因であった。また、オランザピンでは、破傷風誘発の増強を促進していた。・これらの研究は、モデル動物で実施されており、統合失調症患者に対する抗精神病薬の影響は限定的である。・慢性的に抗精神病薬による治療を受けた統合失調症患者でのさらなる研究は、これら薬剤の効果を理解するうえで重要であると考えられる。関連医療ニュース 統合失調症患者の認知機能に対するアリピプラゾール vs リスペリドン 精神疾患におけるグルタミン酸受容体の役割が明らかに:理化学研究所 双極性障害における神経回路異常が明らかに

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HCV遺伝型2、3型感染患者へもソホスブビル+リバビリン/NEJM

 C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝型2型または3型感染患者への治療として、ソホスブビル+リバビリン治療が、高い持続性ウイルス学的著効(SVR)を達成したことが示された。治療期間は、2型感染患者が12週間、3型感染患者は24週間だったという。ドイツのヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学医療センターのStefan Zeuzem氏らがヨーロッパ77施設から419例を登録して行った多施設共同の第III相無作為化試験の結果、報告した。NEJM誌オンライン版2014年5月4日号掲載の報告より。2型感染患者には12週間、3型感染患者には24週間で検討 HCV遺伝型6タイプのうち、2型または3型の感染患者は世界中で約30%を占めているという。現状では両者への標準治療は、ペグインターフェロン+リバビリンの24週間治療とされているが、研究グループはこれら患者に対するインターフェロンを用いないソホスブビル+リバビリン治療の有効性について検討を行った。 同治療に関するこれまでの臨床試験では、12週間治療で2型感染患者については高率のSVRが観察されたが、3型感染患者では低率だったことが報告されていた。そこで研究グループは、インターフェロンベース治療の有無を問わずに集めた両患者を対象とした試験を計画した。具体的には2型感染患者91例と3型感染患者328例を4対1の割合で、ソホスブビル+リバビリンまたはプラセボの12週間治療に割り付けて有効性を評価するプラセボ対照無作為化試験であった。 しかし試験開始後、他の第III相試験で、3型感染患者への16週間治療の有効性が報告された(対12週、非盲検試験)。そこで急遽プロトコルを変更し、3型感染患者への治療期間を24週間に延長し、プラセボ治療は中止とした。試験目的は再定義し記述的なものとすることとし仮説(2型感染患者への12週間治療の有効性を確認し、3型感染患者への24週間治療を評価すること)の検定は含まないこととした。 主要エンドポイントは、治療後の12週時点のSVRだった。SVR達成率はそれぞれ93%と85% 試験に登録され治療を受けた419例のうち、21%が肝硬変を有しており、58%にインターフェロンベースの治療歴があった。 結果、SVRの達成率は、12週間治療の2型感染患者では68/73例、93%(95%信頼区間[CI]:85~98%)で、24週間治療の3型感染患者では213/250例、85%(同:80~89%)だった。 3型感染患者について、肝硬変なしの患者では91%、ありの患者では68%だった。 最も頻度が高かった有害事象は、頭痛、疲労感、かゆみだった。

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胆道閉鎖症への術後ステロイド治療は有益か/JAMA

 新生児の胆道閉鎖症に対する肝門部腸吻合術(葛西法)後に、ステロイド治療を行っても胆汁ドレナージについて有意な改善は得られないことが明らかにされた。米国・シンシナティ小児病院のJorge A. Bezerra氏らが行った多施設共同二重盲検プラセボ対照試験「STRAT」の結果、6ヵ月時点でのドレナージ改善について、若干の臨床的ベネフィットはみられたが統計的な有意差は示されず、ステロイド治療と重大有害事象の早期発生との関連が明らかになったことが報告された。胆汁ドレナージ改善のための術後のステロイド治療が、臨床アウトカムを改善するかについては議論の的となっていた。JAMA誌2014年5月7日号の掲載報告。術後72時間以内にステロイド治療開始vs.プラセボで検討 STRAT(Steroids in Biliary Atresia Randomized Trial)は、米国14施設で2005年9月~2011年2月に、胆道閉鎖症で葛西手術を受けた140例(平均2.3ヵ月齢)の患児が参加して行われた。最終フォローアップは2013年1月だった。 患児は、静注用メチルプレドニゾロン(4mg/kg/日を2週間)と経口プレドニゾロン(2mg/kg/日を2週間)による治療後9週間で漸減するプロトコル群(70例)、もしくはプラセボを投与する群(70例)に無作為に割り付けられた。ステロイド治療は術後72時間以内に開始された。 主要エンドポイントは、術後6ヵ月時点で肝臓に関して未治療であり血清総ビリルビン値が1.5mg/dL未満(治療絶対差25%を検出するための推奨)の患者の割合とした。副次エンドポイントは、24ヵ月時点の未治療生存、重大有害事象などとした。6ヵ月時点の胆汁ドレナージ改善に有意差なし 6ヵ月時点の胆汁ドレナージ改善について、両群間に統計的な有意差はみられなかった。主要エンドポイントを達成した患者の割合は、ステロイド治療群58.6%、プラセボ群48.6%で、補正後相対リスクは1.14(95%信頼区間[CI]:0.83~1.57、p=0.43)だった。補正後絶対リスク差は8.7%(95%CI:-10.4~27.7%)だった。 24ヵ月時点で移植手術を要することなく生存していた患児は、ステロイド治療群58.7%、プラセボ群59.4%だった(補正後ハザード比:1.0、95%CI:0.6~1.8、p=0.99)。 重大有害事象の発生率は、それぞれ81.4%、80.0%だったが(p>0.99)、ステロイド治療群のほうが、初発重大有害事象発生までの期間が有意に短く、術後30日までの同発生率は、37.2% vs. 19.0%だった(p=0.008)。

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足爪白癬に抗菌外用薬+レーザー治療が有効?

 足爪白癬の治療として、抗真菌外用薬とフラクショナルCO2レーザーの組み合わせが有効であることが、韓国・忠南大学校のEun-Hwa Lim氏らによる検討の結果、報告された。足爪白癬の従来療法は経口抗真菌薬の内服治療だが、有効性が低~中等度であり、有害反応や副作用の可能性もあり、使用が制限される患者も少なくない。今回の結果について著者は、「内服治療が禁忌となる患者のオプション治療として検討されるべきであろう」と述べている。Journal of the American Academy of Dermatology誌2014年5月号(オンライン版2014年3月18日号)の掲載報告。 研究グループは、爪白癬治療としての抗真菌外用薬とフラクショナルCO2レーザーの組み合わせの臨床的な有効性と安全性を調べるため24例の患者を対象に検討を行った。 レーザー治療は、4週間間隔で3セッション行った。有効性の評価は、一般写真画像、爪甲下型の直接鏡検、主観的評価とした。 主な結果は以下のとおり。・被験者24例のうち、92%が臨床的有効性を示した。50%は直接鏡検で陰性を確認し治癒したことが示された。・アウトカム成功例に影響を及ぼした因子として、爪白癬のタイプと治療前の爪甲の厚みが明らかになった。・治療レジメンへの忍容性も良好で、最終治療後3ヵ月後も再発はみられなかった。・なお本検討は、24例の患者を追跡したものであり、対照群を設定していなかった点で限定的である。

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