サイト内検索|page:1350

検索結果 合計:35155件 表示位置:26981 - 27000

26981.

グラゾプレビル+エルバスビル、8週vs. 12週/Lancet

 肝硬変なし未治療のC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型単独感染患者およびHIV/HCV重複感染患者に対し、グラゾプレビル(grazoprevir、MK-5172)+エルバスビル(elbasvir、MK-8742)併用療法はリバビリン併用の有無を問わず、8週投与よりも12週投与が有効であることが判明した。米国・ジョンズホプキンス大学のMark Sulkowski氏らが第II相無作為化試験C-WORTHYの結果から報告した。グラゾプレビル+エルバスビル併用療法に関する検討はすでに、より大規模な第III相試験が行われている。著者は、「われわれの検討結果は、第III相試験の継続を支持するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年11月11日号掲載の報告より。肝硬変なし未治療のHCV単独感染またはHIV/HCV重複感染患者について評価 C-WORTHYは、HCV患者に対するグラゾプレビル(1日100mg)+エルバスビル(1日20または50mg)併用療法について、リバビリン投与あり/なしで検討した第II相の国際多施設非盲検無作為化並行群間比較試験である。 研究グループは、肝硬変なし未治療のHCV遺伝子型1型単独感染またはHIV/HCV重複感染についての検討所見を報告した。被験者の適格条件は、18歳以上、末梢血HCV RNA値1万IU/mL以上の未治療HCV遺伝子型1型感染症患者であった。 検討では、パートAにおいて、HCV単独感染患者に対する併用療法+リバビリンあり/なしの12週投与を行った。被験者は遺伝子型1a、1b群で層別化され、次の各群に無作為化された。A1群(1a+1b):グラゾプレビル+エルバスビル(20mg)+リバビリン、A2群(1a+1b):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)+リバビリン、A3群(1b):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)。 パートBでは、HCV単独感染患者に対する8週投与と12週投与の検討、およびHIV/HCV重複感染患者に対する併用療法+リバビリンあり/なし12週投与の検討を行った。被験者は遺伝子型1a、1b群で層別化され、次の各群に無作為化された。B1群(1a):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)+リバビリンを8週投与、B2群(1a+1b):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)+リバビリンを12週投与、B3群(1a):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)、重複感染患者についてはB12群(1a+1b):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)+リバビリン、B13群(1a+1b):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)でいずれも12週投与。 主要エンドポイントは、ウイルス学的著効(SVR)について、各治療終了後12週時点でのHCV RNA値25 IU/mL未満達成患者の割合で評価した(SVR12)。12週投与群のSVR12、HCV単独感染群93~98%、HIV/HCV重複感染群87~97% 試験に登録されたのは、HCV単独感染患者159例、HIV/HCV重複感染患者59例の計218例であった。 結果、12週投与リバビリンあり/なしのSVR12達成率は、HCV単独感染群が93~98%、HIV/HCV重複感染群は87~97%であった。このうちリバビリン投与なし群についてみると、HCV単独感染群は98%(95%信頼区間[CI]:88~100%、43/44例)、HIV/HCV重複感染群87%(同:69~96%、26/30例)であった。リバビリン投与群については、HCV単独感染群は93%(同:85~97%、79/85例)、HIV/HCV重複感染群97%(同:82~100%、28/29例)であった。 一方、HCV(遺伝子型1a)単独感染患者に対する8週投与のSVR12は、80%(95%CI:61~92%、24/30例)であった。 ウイルス学的失敗以外の理由で早期に治療中止となった被験者は6例いたが、そのうち5例は、試験最終測定時でHCV RNA値25 IU/mL未満を示していた。 12週治療群のウイルス学的失敗例は7例(7/188例、4%)で、薬剤関連耐性変異によるものであった。 安全性プロファイル(グラゾプレビル+エルバスビル併用療法+リバビリン投与あり/なし)は、HCV単独感染群、HIV/HCV重複感染群で類似していた。有害事象や検査値異常による治療中断例はなかった。最も頻度が高かった有害事象は、疲労(51例、23%)、頭痛(44例、20%)、悪心(32例、15%)、下痢(21例、10%)であった。

26983.

1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第14回

第14回:乗り物酔い(動揺病)の予防監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 乗り物酔い(動揺病)の予防方法を、患者さんに聞かれることがあると思います。さまざまな予防法がありますが、基本的には、体調を整えて無理をしないことのようです。予防のための薬物使用としてGrade A1)として挙げられているスコポラミンの貼り薬は、日本では市販・処方箋処方ともに製品として販売していません。酔い止めとして市販されているトラベルミンなどにはスコポラミンが成分として入っていますが、医師が処方箋として処方するトラベルミン(ジフェンヒドラミンサリチル酸塩[第一世代抗ヒスタミン]、ジプロフィリン)には、スコポラミンは入っていません。市販薬を勧めてみることも選択肢の一つといえます。第一世代抗ヒスタミンでは、Cinnarizine(日本販売なし)、プロメタジン(商品名:ヒベルナ、ピレチア/動揺病として保険適用あり)がModerately Effectiveとして挙げられています1)。 以下、American Family Physician.  2014年7月1日号1) より1. 概論乗り物酔いは、ある種の揺れに体が巻き込まれて起こる症状である。前庭部や視覚、その他の感覚受容器での調整不全から起こると考えられている。嘔気が特徴であるが、胃の不快感や倦怠感、眠気、神経過敏がしばしば先に出現する。早くその症状に気づくことは大切であり、動揺病を防ぐための行動や薬での対策をすべきである。2. 非薬物療法乗り物酔いを引き起こしやすい状況を自覚して、天候不順時の移動を避けたり、起伏の激しい地形やカーブの多い路面を避ける。また、乗り物の最も安定した場所にいることにより不快な揺れを減らすべきである。具体的には、飛行機では翼上の座席、自動車では運転席あるいは前席、2階建てバスや電車では前の方の1階席の窓側、船では波の来る面に対して水面近くだが船首は避ける。ゆっくりした断続的な揺れは、症状を軽減する。水平線を眺めたり、自分で乗り物を運転する、動く方向に顔を向ける、目を閉じて横になる、視覚的な作業をしないなどがある(Grade C)。可能な限り、身体的(脱水や疲労、空腹など)、精神的、感情的に不快を及ぼしやすい要因を減らす。体を動かし続けることも試みるべきである。3. 薬物療法スコポラミンは予防の第一選択薬で、数時間前に経皮的に貼るか、1時間前に服用すべきである(Grade A 貼り薬:Most Effective、経口:Moderately Effective)。第一世代抗ヒスタミンは、鎮静的になるが、効果はある(Grade B)。第二世代以降の抗ヒスタミン薬やオンダンセトロン、根生姜などの有効性は乏しい。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Andrew Brainard, et al. Am Fam Physician. 2014 Jul 1;90(1):41-46.

26985.

妊婦への3種混合ワクチン、早産リスクと関連せず/JAMA

 妊娠中に破傷風・弱毒化ジフテリア・無菌体百日咳3種混合ワクチン(Tdap)を接種しても、早産や在胎週数不当軽量児(SGA)、妊娠高血圧症の発生リスクは増大しないことが明らかにされた。一方で、絨毛羊膜炎リスクが、接種群で2割弱の増大が認められたという。米国・HealthPartners Institute for Education and ResearchのElyse O. Kharbanda氏らが、単胎生児を出産した12万超の女性について行った検討で明らかにした。米国では2011年、米国疾病管理予防センター(CDC)の予防接種の実施に関する諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices)が、Tdap未接種の妊婦に対し、妊娠20週以降の同接種を勧告している。JAMA誌2014年11月12日号掲載の報告より。単胎生児出産した試験対象のうちTdap接種をした21%について分析 検討は、後ろ向き観察研究にて行われ、単胎児を妊娠し、2010年1月1日~2012年11月15日の間に生児出産した女性12万3,494人を対象とした。カリフォルニア州の2つのワクチン接種に関するデータベースを基に、妊娠中のTdap接種と、妊娠中または出生後の有害アウトカムとの関連を分析した。 対象者のうち、Tdap接種を受けたのは2万6,229人(21%)、受けなかったのは9万7,265人だった。早産発生率は6~8%、SGAは8%と両群で同等 結果、妊娠中のTdap接種は有害な出生アウトカムとの関連は認められなかった。早産発生率は接種群で6.3%に対し非接種群では7.8%(補正後相対リスク:1.03、95%信頼区間:0.97~1.09)、SGA(在胎週数相当の10パーセンタイル未満)の発生率はそれぞれ8.4%と8.3%だった(同:1.00、同:0.96~1.06)。 妊娠20週までのTdap接種でも、妊娠高血圧症の発症リスクを増大しなかった(同:1.09、同:0.99~1.20)。一方で、絨毛羊膜炎については、接種群が6.1%に対し非接種群が5.5%と、接種群で2割弱の増大が認められた(同:1.19、同:1.13~1.26)。

26986.

肝移植後HCVへのIFNフリーレジメンの検討/NEJM

 肝移植後の再発C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型感染症患者に対し、インターフェロンを用いない、NS5A阻害薬オムビタスビル+リトナビル・ブースト・プロテアーゼ阻害薬ABT-450(ABT-450/r)+非ヌクレオチド系NS5Bポリメラーゼ阻害薬ダサブビル+リバビリンの24週治療は、治療後のウイルス学的著効(SVR)が12週後、24週後ともに97%を示し、有効であることが示された。米国・インディアナ大学のPaul Y. Kwo氏らが、患者34例を対象とした試験で明らかにした。今回試験対象とした移植後再発患者は、従来の標準治療レジメンでは、治療反応率は13~43%に留まっていたという。NEJM誌オンライン版2014年11月11日号掲載の報告より。主要評価項目は治療終了12週後のSVR 被験者は、12ヵ月前までに肝移植を行い、HCV遺伝子型1型感染症の再発が認められ、線維症がないか軽度な患者34例で、オムビタスビル+ABT-450/rの合剤、ダサブビル、リバビリンを24週間投与した。 具体的なレジメンは、オムビタスビル-ABT-450/r(オムビタスビル25mg、ABT-450/r 150mg、リトナビル100mgをそれぞれ1日1回)、ダサブビル250mg1日2回と、リバビリン(初期投与量とその後の貧血症状に基づく用量調整は治験担当医の判断)を投与した。 主要評価項目は、SVR 12だった。12週後、24週後ともにSVRは97% その結果、治療終了12週後、24週後ともに、被験者34例中33例でSVR達成が認められ、その割合は97%(95%信頼区間:85~100)だった。 最も多くみられた有害事象は、疲労、頭痛、咳だった。また、エリスロポエチンの投与を要した人は5例(15%)で、輸血は0例。治療中の移植片拒絶は認められなかった。 治療中には、血中カルシニューリン濃度を測定し、用量を調節し治療レベルの維持が図られていた。

26987.

ウステキヌマブ、日本人高齢患者の長期治療に有用

 ウステキヌマブ(UST、商品名:ステラーラ)の長期1年間の治療は、日本人65歳以上の重症感染症を有していない乾癬患者について十分な効果が期待できるものであるようだ。東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座の林 光葉氏、同教授の中川 秀己氏らがレトロスペクティブな検討の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「所見は、USTが高齢乾癬患者にとって選択肢として望ましい治療薬であることを示すものであった」とまとめている。Journal of Dermatology誌2014年11月号の掲載報告。 乾癬患者は高齢患者の占める割合が増大している。しかし、高齢乾癬患者について満足のいく長期的な治療は、若い患者と比べて共存疾患の頻度が高く、また全身性の治療薬は有害事象リスクが高く困難なものとなっている。 研究グループは、USTは他の全身性治療薬よりも有害事象の頻度が少なく通院頻度もわずかで済むことから、長期治療としての有効性および安全性をレトロスペクティブに評価した。評価はPASIおよびDLQIにて行い、有効性についてはPASIスコア75以上(PASI 75)達成患者の割合で評価した。 主な結果は以下のとおり。・65歳以上の24例を検討対象に含んだ(年齢範囲:65~88歳、平均73.1歳)。乾癬の重症度は中等度~重症であり、QOLに障害を来していた。・PASI 75達成患者は、16週時点で56.5%、28週時点で59.1%、52週時点で60.0%であった。・1年間にあらゆる重症感染症を発生した患者は報告されていなかった。・DLQIスコアの平均値は、0週時点7.8±6.0、16週時点2.5±3.4、28週時点1.4±1.7、52週時点1.2±1.7であった。

26988.

小児てんかんの死亡率を低下させるために

 米国疾病予防管理センター(CDC)のAnbesaw W. Selassie氏らは、2000~2011年までのサウスカロライナ州における小児てんかんの死亡率、ならびにチーム医療がアウトカムに及ぼした影響などについて調査を行った。その結果、小児てんかんの全死亡率は8.8/1,000人年で、死亡の年間リスクは0.84%であることを報告した。そのうえで、チーム医療介入がアウトカムを改善すること、とくに併存症(co-occurring conditions)を有する患者への適切かつタイムリーな介入が早期死亡リスクを減少させうるとした。Morbidity and Mortality Weekly Report 2014年11月7日号の掲載報告。 てんかんは小児期における一般的な神経系疾患で、米国の2007年における0~17歳のてんかん児は推定45万人。そのうち特別な治療を必要とするてんかん児のおよそ53%が併存症を有しているが、包括的なケアを受けているのは3分の1にとどまっているという。これまでに、てんかん児と一般集団とを比較した死亡リスクの検討において、併存症を有するてんかん児ではよりリスクが高い一方で、併存症を有していないてんかん児の死亡リスクは一般集団と同程度であることが示されていた。しかしながら、検討された試験は少なく、実施された試験もサンプル数が少なく、比較が限定的で代表的なデータとはいえないことから、研究グループは、「超過死亡をより正しく把握するためには、てんかん児の死亡率に関する広範なサーベイランスの必要性が示唆される」として本検討を行った。 検討は、2000~2011年までのサウスカロライナ州におけるてんかん児の死亡率について、人口動態的特性および死因の側面から行った。 主な結果は以下のとおり。・てんかん児の全死亡率は8.8/1,000人年で、年間死亡リスクは0.84%であった。・てんかん児の主な死因は、病状進行、心血管障害、外傷であった。・医療および医療以外のシステムとの協同によるチーム医療によりアウトカムの改善が可能であり、特別な医療サービスを必要とする小児におけるコスト軽減につながると思われた。ただし、いずれもさらなる検討が求められる。・てんかん児、とくに併存症を有する患児には、適切かつタイムリーな医療・ソーシャルサービスの投入が、早期死亡リスクを減少させる可能性があった。・「チームケア」が、てんかん児のアウトカムを改善するか否かの評価にあたっては、医療従事者、ソーシャルサービス提供者、支援団体などが協働することが望ましい。関連医療ニュース 小児てんかんの予後予測、診断初期で可能 小児てんかん患者、最大の死因とは 統合失調症患者の突然死、その主な原因は  担当者へのご意見箱はこちら

26989.

1型糖尿病治療における基礎インスリン(解説:住谷 哲 氏)-280

 インスリン分泌の枯渇している1型糖尿病患者においては基礎インスリンと追加インスリンとの両者を補充する生理的インスリン補充法(physiological insulin replacement)が必須である。とりわけ必要十分量の基礎インスリンを補充することが良好な血糖管理のカギとなる。この点で、基礎インスリン補充量を自在に調節できるインスリンポンプはインスリン頻回注射法(multiple daily injection: MDI)に一日の長がある。持効型インスリンアナログ(デテミル、グラルギン)登場前は中間型インスリン(NPH、レンテ)のほかに選択肢はなく(ウルトラレンテもあったが薬効が安定せず、ほとんど使用した経験がない)、1日数回の注射を必要とした。筆者自身は中間型インスリン投与時には不可避であった重症低血糖が、持効型インスリンアナログ、とりわけグラルギンの登場により大幅に減少したように感じているが、本研究はこの点も含めて、中間型インスリンと持効型インスリンアナログとの有用性をメタ解析およびネットワークメタ解析を用いて比較検討したものである。 「ネットワークメタ解析」は聞き慣れない用語であるが、単純にいえば、介入Aと介入Bとを比較した研究と、介入Aと介入Cとを比較した研究とを統合して、介入Bと介入Cとを比較する統計手法である。メタ解析は「他人のふんどしで相撲を取る」と揶揄されることが多いが、それの進化形であるネットワークメタ解析もその点は同様である。しかし今後は本論文のように、単なる薬剤の有効性(efficacy)ではなく、実臨床における有用性(effectiveness)を比較する研究(Comparative effectiveness research: CER)が主流となっていくと考えられる。その点で、本論文のlast authorがSharon E Straus(Sackett の弟子で、EBMのバイブルであるEvidence-Based Medicine: How to Practice and Teach It. Churchill Livingstone; 4th ed. 2010の筆頭著者)である点は注意しておいてよい。 論文の結論は、持効型インスリンアナログは中間型インスリンに比較して、よりHbA1cを低下させ、体重増加が少なく、重症低血糖が少ない、とするものであった。これらの点はわれわれの日常診療での経験と一致していると思われる。2型糖尿病患者においてはHbA1c 1%の低下により糖尿病関連エンドポイントが21%減少することが報告されているが1)、本論文で明らかにされたHbA1c 0.3%低下の成人1型糖尿病患者における臨床的意義については明らかではない。1型糖尿病患者においては、過去に重症低血糖を経験した場合、心血管イベント後の死亡率が増加することが明らかにされている2)。したがって、HbA1cの低下よりも重症低血糖の減少を評価すべきかもしれない。さらに両者の費用対効果も検討されているが、欧米と日本とでは1型糖尿病患者の有病率も、インスリン療法にかかる費用も異なるため、参考程度に留まる。 1型糖尿病患者の血糖管理は難しい。裏を返せば、それだけ医師としての職人技(art)が必要な領域であろう。しかし本論文に記されたような客観的事実(science)を基礎にしてこそ、医師としての職人技だと思われる。

26993.

第29回 外科手術に100%を求める裁判所の姿勢への疑問

■今回のテーマのポイント1.整形外科疾患で一番訴訟が多い部位は「脊椎」である2.脊椎疾患に関する訴訟では、手術適応、手技ミス、術後管理、説明義務違反が主として争われている3.脊椎疾患に関する訴訟では、他の診療科の疾患に比し、手技ミスが容易に認められており、大きな問題である■事件のサマリ原告患者X被告Y病院争点手術手技上のミスによる債務不履行責任結果原告勝訴、1,260万円の損害賠償事件の概要55歳女性(X)。平成12年頃から、腰痛ならびに右下肢の痺れおよび疼痛が出現したことから、平成13年に近医受診したところ、第4腰椎と第5腰椎間に脊柱管の狭窄が認められ、腰部脊柱管狭窄症と診断されました。その後Xは、近医にて、理学療法を受けたり、鍼灸院に通院したりしたものの、症状が改善しなかったため、平成16年8月、Y大学附属病院を紹介受診しました。Y大学附属病院にて神経根ブロックを実施したところ、心拍数および血圧が急激に低下したため、Xに対する神経根ブロックは途中で中止となりました。検討の結果、今後も神経根ブロックを実施しないこと、Xに対し除圧手術を行うこととなりました。Xは、平成16年9月24日、除圧手術目的で入院となり、同月30日に内視鏡下で手術が行われました。執刀医であるA医師は、硬膜を露出させるために、エアドリルなどを用いて第4腰椎の椎弓を切除するとともに、ケリソン・ロンジュールなどを用いて、黄色靭帯の切除を開始しました。A医師が黄色靭帯の切除を続けるうちに、硬膜外腔の脂肪層が消滅し、黄色靭帯と硬膜とが広範囲にわたって癒着していることが明らかとなりました。そこで、A医師は、硬膜を直視下に確認できない状態のまま、剥離子を用いて硬膜と黄色靭帯とを剥離しながら、ケリソン・ロンジュールを用いて黄色靭帯を切除していきました。ところが、その後しばらくして、術野に髄液と思われる透明の液体が漏れ出してきました。A医師は、硬膜損傷の可能性を疑いましたが、硬膜を観察することはできなかったため、内視鏡下法から従来法に、術式を変更することとしました。A医師が硬膜を露出させたところ、露出した硬膜の左側において、硬膜およびクモ膜が円状(直径約1cm)に欠損しており、同欠損部分から馬尾が露出していました。また、欠損が生じていない部分についても、硬膜の菲薄化が進行していました。A医師は、狭窄箇所に対する除圧を十分に行った後、Xの傍脊柱筋から縦2cm × 横3cmの筋膜を採取し、上記欠損部分を覆うようにして、椎弓および軟部組織に上記筋膜を逢着し、手術を終了しました。 しかし、Xは、病室に戻った直後から、左下肢の痺れおよび疼痛を訴えるようになり、翌日以降には、左臀部、陰部の痺れおよび疼痛、ならびに膀胱機能障害が認められるようになりました。その後、加療したものの、症状の十分な改善はみられず、Xは、身体障害者福祉法施行規則別表第5号3級の「体幹の機能障害により歩行が困難なもの」に該当する障害と認定され、身体障害者手帳の交付を受けました。なお、Xが従前訴えていた右下肢の痺れ及び疼痛については、本件手術後、その大部分が消失しました。これに対し、Xは、手術手技上のミスなどがあったとして、Y大学附属病院に対し、約2,980万円の損害賠償請求を行いました。事件の判決A医師は、黄色靭帯と硬膜との剥離を開始する前の時点で、L4/5の硬膜外腔の脂肪層が消滅し、硬膜と黄色靭帯とが広範囲にわたって癒着していることを認識していたと認められる。ところで、証人の証言及び鑑定の結果によれば、黄色靭帯と馬尾を保護する硬膜とが癒着している場合、硬膜の菲薄化が進んでいることが多く、黄色靭帯の剥離に伴い、硬膜及び硬膜下に存在する薄いクモ膜に欠損が生じる可能性があることが認められる。また、前記で認定した事実及び鑑定の結果によれば、硬膜及びクモ膜に欠損が生じた場合、これらに保護された馬尾に損傷を生じる可能性があること、また、L4/5に存する馬尾に損傷が生じた場合、下肢の筋力低下、感覚障害並びに膀胱及び直腸の機能障害といった重篤な障害が生じ得ることが認められる。そうすると、A医師は、本件手術において、黄色靭帯を硬膜から剥離して除去する際、硬膜及びクモ膜に欠損を生じさせ、馬尾を損傷することのないよう、慎重に黄色靭帯の剥離を行い、剥離が完了した部分のみをケリソン・ロンジュール等を用いて除去すべき注意義務を負っていたというべきである。また、前記で認定した事実によれば、本件手術が従来法に比べて難易度の高い内視鏡下法により行われていたこと、内視鏡下法で開始された手術であっても、従来法に術式を変更することは比較的容易であることが認められるから、A医師の負っていた上記注意義務は、従来法により手術を実施した場合に比して軽減されるものではないというべきである。A医師は、硬膜を直視下に確認できない状態のまま、剥離子を用いて硬膜と黄色靭帯を剥離しながら、ケリソン・ロンジュールを用いて黄色靭帯を切除していった。その結果、原告の硬膜及びクモ膜に、直径約1cmの欠損を生じさせている。ところで、鑑定の結果によれば、本件手術に用いられたケリソン・ロンジュールは、1回の操作で数mmの組織しか切除することができないものであることが認められる。そうすると、A医師は、硬膜から剥離しきれていない黄色靭帯ないし硬膜そのものを、ケリソン・ロンジュールによって複数回にわたって切除したか、又は、これらをケリソン・ロンジュールによって把持した状態で牽引操作を加え、硬膜を引き裂いて原告の硬膜及びクモ膜に直径約1cmもの欠損を生じさせたと認めることができる。そして、このようなA医師の手技は、前記で判示した慎重に黄色靭帯の剥離を行い、確実に剥離された部分のみをケリソン・ロンジュール等を用いて除去すべき注意義務に反するものといわざるを得ない。したがって、A医師には手技を誤った過失があり、これは、被告の診療契約上の債務不履行に当たる。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(鹿児島地判 平成24年4月11日)ポイント解説■整形外科疾患の訴訟の現状今回は整形外科疾患です。整形外科疾患で最も訴訟が多い部位が「脊椎」であり、ほぼ半数を占めています。次いで多い部位が下腿で、以下、大腿、股関節、手関節となっています(表1)。脊椎疾患は、疼痛や痺れなど症状はあるものの、従前、歩行していた患者が、突然、寝たきりとなってしまうことから、訴訟件数が多くなっています。このような背景からか、脊椎疾患に関する訴訟は、他の部位と比し、原告側の勝訴率も高く(76.9% 対 33.3%)、かつ、認容額も高く(1,888万円 対 1,154万円)なっています。 脊椎疾患に関する訴訟で最も多い疾患は、腰部脊柱管狭窄症で、次いで頸椎症性脊髄症となっています。そして、脊椎疾患に関する訴訟において主として争点となるのは、手術適応、手技ミス、術後管理(再手術決断の遅れを含む)、説明義務違反であり、裁判所が過失を認めた争点として最も多いのが術後管理(4/5件)であり、次いで説明義務違反(3/6件)となっています(表2)。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する■脊椎疾患における手技ミス脊椎疾患に関する訴訟において特徴的なのは、他の手術と比べ手技ミスが認められやすい(2/5件)点です。第18回でも解説したように、裁判所は、具体的な手術手技に著しい問題があった場合にのみ、手技上の過失を認めることが通常ですが、脊椎疾患については、手技上の過失を厳格に認める傾向があります。本事例においても、「A医師は、本件手術において、黄色靭帯を硬膜から剥離して除去する際、硬膜及びクモ膜に欠損を生じさせ、馬尾を損傷することのないよう、慎重に黄色靭帯の剥離を行い、剥離が完了した部分のみをケリソン・ロンジュール等を用いて除去すべき注意義務を負っていたというべきである。また、前記で認定した事実によれば、本件手術が従来法に比べて難易度の高い内視鏡下法により行われていたこと、内視鏡下法で開始された手術であっても、従来法に術式を変更することは比較的容易であることが認められるから、A医師の負っていた上記注意義務は、従来法により手術を実施した場合に比して軽減されるものではないというべきである」として、厳格に手技ミスを認めています。他の判例においても、「被控訴人が手術前四肢全体としては重度の障害があったというものの、術後は両下肢を全く動かすことができず手指もほとんど動かないといった質的に明らかに異なる四肢不全麻痺が出現していることに加え、前記頸椎後縦靱帯骨化巣の切除のためのエアトーム使用の際の危険性等に照らせば、乙医師が本件第1頸椎手術の際になんらかの原因で脊髄を損傷したものとみるのが自然かつ合理的であるから、控訴人の主張は採用することができない。そうすると、頸椎後縦靱帯骨化巣の前方からの切除術が難易度の高い手術であることを十分に考慮に入れても、上記損傷が不可避であった等の特段の事情について立証のない本件にあっては(なお、乙医師は、本件手術当時、500例を超える頸椎手術を経験していたこと、上記のとおり、本件手術に際しマイクロスコープを用いていたことのみでは上記特段の事情があると認めることはできない。また、損傷が不可避であるとすれば、このような手術方法を選択したこと自体の当否が問題とされるべきであろう)、乙医師が過誤によって脊髄を損傷したものであると推認すべきであって、乙医師は、上記〔1〕ないし〔3〕の際に、細心の注意を用い脊髄を損傷させないようにすべき注意義務があったにもかかわらず、これを怠った過失があるというべきである」(福岡高判平成20年2月15日)といったように損害が発生した以上は過失が推認され、病院側から特段の事情を主張立証する必要があるとするような判決まであります。いくら損害が重大であったとしても、このような裁判所の傾向は問題といえます。法律上、主張立証責任は原告が負っているのであり、原告から具体的な過失を提示されない限り、病院側は防御のしようがありません。あまつさえ、何も問題がなかったことを病院側で立証しろといった悪魔の証明を課すことは、およそ許されることではありません。2000年代に生じた医療バッシングの残骸(可哀想だから金を払え)が、脊椎疾患に関する訴訟に残っているように思われます。医療側は、批判を受け反省し、脊椎内視鏡手術については、現在、認定を受けた脊椎外科医のみが執刀できるようにしています。それでも残念ながら合併症がなくなることはありません。このような過酷な判断が繰り返され、萎縮医療が進むようなことがあれば、結局、不利益を受けるのは国民です。医療の現実を直視し、裁判所は冷静な判断をするよう切望します。(*判決文中、下線は筆者による加筆)※資料作成 森 亘平氏(浜松医科大学医学部医学科2年)裁判例のリンク鹿児島地判平成24年4月11日福岡高判平成20年2月15日本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。

26994.

115)健康的な朝食で糖尿病を予防【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者先日、通天閣がブルーになっていましたけど、あれは何ですか?医師あれは、年に1回の「世界糖尿病デー」です。日本だけでなく、全世界でブルーサークルで糖尿病を予防しようという取り組みです。患者なるほど!?医師今年のテーマは朝食でブルーを実行しよう(Go Blue For Breakfast)です。健康的な朝食をとることは糖尿病の予防につながりますからね。患者確かに。医師朝食は和食ですか? それとも洋食ですか?患者パンとコーヒーだけのことが多いです。たまに、寝坊して忘れることもあるんですが・・・。医師そうですか。健康的な朝食にするには何が加わるといいですか?患者卵焼きとサラダですかね。それに、牛乳と果物かな。医師朝食は1日の始めですので、豪華なものでも大丈夫です。患者はい。わかりました。●ポイント世界糖尿病デー関連づけ、健康的な朝食について患者さんと一緒に考えます。 1) Reutrakul S, et al. Chronobiol Int. 2014; 31: 64-71. 2) 香川靖雄. 科学が証明する朝食のすすめ. 女子栄養大学出版部: 2002.

26995.

糖尿病患者へのインフルエンザ予防接種、HbA1c値は抗体保有に影響するのか

 インフルエンザA(H1N1)pdm09ワクチンは、1回の接種で、糖尿病患者の免疫力を十分なレベルまで高めることができ、HbA1c値は抗体保有割合に悪影響を及ぼさないことが、大阪市立大学の江川 裕美氏らによる研究で明らかになった。ただし、高齢者やBMIが低い患者では、免疫応答が低下する可能性があるという。Human vaccines & immunotherapeutics誌2014年5月号の報告。 糖尿病患者は、インフルエンザの感染やインフルエンザに関連する合併症のリスクが高いと考えられている。そのため、著者らは、糖尿病患者におけるインフルエンザA(H1N1)pdm09ワクチンの免疫原性を評価するために、前向きコホート研究を行った。 糖尿病患者49例にインフルエンザA(H1N1)pdm09ワクチンを接種し、ベースライン時と接種後3週後に赤血球凝集抑制抗体価を測定した。 主な結果は以下のとおり。・ワクチン接種による重篤な有害事象は認められなかった。・感染症が疑われた1例を除き、48例について分析を行った。・赤血球凝集抑制抗体価は、ワクチン接種により、幾何平均抗体価の約9倍上昇した。・抗体応答割合は79%であった。・抗体保有割合は73%であった。・免疫応答は、より高齢の患者、BMIがより低値の患者ほど低い傾向を示した。・多変量解析の結果、HbA1c値は抗体保有割合に悪影響を及ぼさないことが示された。

26996.

疼痛を伴うMSにデュロキセチンが有効

 米国・コロラド大学ヘルスサイエンスセンターのTimothy L. Vollmer氏らは、神経障害性疼痛をしばしば有する多発性硬化症(NP-MS)患者における疼痛処置としてのデュロキセチン(商品名:サインバルタ)の有効性と忍容性を評価する無作為化二重盲検試験を行った。その結果、NP-MS患者に対してデュロキセチンは有効であることを報告した。安全性プロファイルも他の患者集団で報告されたものと一致していた。NP-MS患者へのデュロキセチン治療は適応承認されていない。Pain Practice誌2014年11月号の掲載報告。 検討は、239例のNP-MS患者を対象に行われた。まず、被験者を、デュロキセチン60mg/日投与群またはプラセボを投与する群に無作為に割り付け、1日1回投与の6週間にわたる急性期治療フェーズの検討を行った(デュロキセチン投与群は30mgを1週間、60mgを5週間投与された)。その後、12週間の非盲検延長フェーズ(デュロキセチン30~120mg/日投与)の検討を行った。 被験者は、無作為化以前に、MSを有して1年以上、1日の平均疼痛(API)評価スコアが4以上の日が7日間のうち4日以上あった。なお患者の毎日のAPI評価は、電子日記において11ポイント制(0[疼痛なし]~10[最大級の痛み])で行われた。 主要有効性評価は週ごとのAPI評価の変化で、ミックスモデル反復測定分析により分析が行われた。治療完了や治療中断理由、治療関連有害事象の発生は、Fisher's 正確確率検定で比較した。 主な結果は以下のとおり。・デュロキセチン群は118例、プラセボ群は121例であった。・6週時点で、デュロキセチン群の患者はプラセボ群の患者と比較して、API評価における統計的改善が有意に大きかった(-1.83 vs. -1.07、p=0.001)。・治療完了について、群間で有意な差は認められなかった。・有害事象による中断は、デュロキセチン群がプラセボ群よりも統計的に有意に多かった(13.6% vs. 4.1%、p=0.012)。・食欲減退の報告頻度が、デュロキセチン治療患者で有意に高かった(5.9% vs. 0%、p=0.007)。

26997.

精神科病棟への長期入院の予測因子は

 老年精神科の病床数は限られている。カナダ・カルガリー大学のZahinoor Ismail氏らは、高齢者の精神科病院の入院期間の予測因子を明らかにするため検討を行った。その結果、入院期間は概して入院時の臨床特性により予測されることが明らかになった。長期入院の予測因子は、無能力、陽性症状が認められることであり、認知症は長期入院の予測因子ではなかったという。International Psychogeriatrics誌オンライン版2014年10月21日号の掲載報告。 研究グループは、2005~2010年における大都市の精神科病院の入院および退院データをレトロスペクティブに分析した。人口統計学的および臨床情報(入院72時間以内)を集約し、resident assessment instrument - mental health(RAI-MH)を用いて評価し、認知症と非認知症の高齢患者の比較を行った。なお入院期間の予測因子は、一連の一般線形モデルを用いて確認した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、認知症高齢患者169例、非認知症高齢患者308例であった。・本検討集団において、認知症の診断は長期入院の予測因子ではなかった。・内科併存疾患が複数あることは、入院期間と逆相関の関連性を示した。すなわち、併存疾患が多いほど入院期間は短く、また非認知症高齢者よりも認知症高齢者のほうが短かった。・認知症の有無にかかわらず、無能力および陽性症状は、長期入院の予測因子であった。・一方、入院時の疼痛は、短期入院の予測因子であった。関連医療ニュース 入院期間の長い認知症患者の特徴は?:大阪大学 日本の統合失調症入院患者は低栄養状態:新潟大学 統合失調症入院高齢患者、アジアでの多剤併用率は50%以上  担当者へのご意見箱はこちら

26998.

ホスピスが入院や医療コストを抑制/JAMA

 米国の終末期がん患者のうちホスピスケアの利用者は非利用者に比べ、入院やICU入室、侵襲的手技の施行が少なく、医療コストも抑制されることが、ブリガム&ウィメンズ病院のZiad Obermeyer氏らの調査で示された。近年、米国ではがん患者のホスピス利用が増えている一方、ホスピス外でのケアの増加や入所期間が短縮しているが、ホスピスが保健医療の活用に及ぼす影響や、医療コストがホスピス利用に与える影響は明らかにされていなかった。JAMA誌2014年11月12日号掲載の報告。約3万6,000例の予後不良がん患者をホスピス利用の有無別に比較 研究グループは、終末期がん患者における保健医療の利用状況や医療コストを、ホスピスケア利用の有無別に検討した。対象は、1次診断で予後不良と判定されたがん(肺、膵、脳など)や転移性悪性腫瘍、再発・非寛解血液腫瘍などの患者であった。 解析には、2011年に死亡した出来高払制(fee-for-service)メディケア受給者の20%に相当する患者データを使用した。死亡前にホスピスに登録した患者と、ホスピスに入所せずに死亡した患者の背景因子(年齢、性別、地域、診断から死亡までの期間など)をマッチさせ、ホスピスケア開始前後の入院や処置などの医療サービスの利用、死亡場所、医療コストなどの評価を行った。 予後不良がん患者8万6,851例の診断から死亡までの期間中央値は13ヵ月(四分位範囲:3~34ヵ月)であり、このうち5万1,924例(60%)が死亡前にホスピスを利用した。 背景因子をマッチさせたホスピス利用者と非利用者、それぞれ1万8,165例を比較した。平均年齢は非ホスピス群、ホスピス群とも80歳、男性が48%ずつで、予後不良がんの診断から死亡までの期間中央値は213日、210日、固形がんが88.2%、91%であった。最後の1年間の医療コストが約8,700ドル安価に ホスピスケア開始後にがん治療を受けた患者は、ホスピス群が1%、同時期の非ホスピス群は11%であった。ホスピスケア期間中央値は11日であった。6ヵ月以上の利用患者は6%。 入院率は非ホスピス群が65.1%、ホスピス群は42.3%(リスク比[RR]:1.5、95%信頼区間[CI]:1.5~1.6)、ICU入室率はそれぞれ35.8%、14.8%(RR:2.4、95%CI:2.3~2.5)であり、いずれもホスピスケアを利用した患者で有意に低かった。 医療サービスの利用は非ホスピス群がホスピス群よりも多く、ほとんどががんとは直接に関連しない急性疾患の治療であった。侵襲的手技(動・静脈カテーテル、気管内挿管、輸血など)の施行率は非ホスピス群が51.0%、ホスピス群は26.7%(RR:1.9、95%CI:1.9~2.0)であり、長期療養型病院等での死亡率はそれぞれ74.1%、14.0%(RR:5.3、95%CI:5.1~5.5)と、いずれも大きな差が認められた。 ホスピスケア開始前1年間の1日平均医療コストは、ホスピス群が145ドル、非ホスピス群は148ドルであった。また、開始前1週間のホスピス群の1日平均医療コストは802ドルに達し、非ホスピス群よりも146ドル高額であった。これに対し、ホスピスケア開始以降、ホスピス群の医療コストは急激に減少し、死亡までの最後の1週間の1日平均医療コストはホスピス群の556ドルに比べ、非ホスピス群は1,760ドルに達し、その差は1,203ドルだった。 死亡までの最後の1年間のホスピス群の平均総医療コストは6万2,819ドルであり、非ホスピス群の7万1,517ドルよりも8,697ドル(95%CI:7,560~9,835)安価であった。 著者は、「非ホスピス群の患者の多くが、ホスピス群と同時期にがんとは直接関連しない急性疾患で入院またはICUへ入室していたが、その治療は患者の望むところではない可能性が高い」とし、「今回の知見は、終末期医療の現実について医師と患者間で率直に話し合うことの重要性を浮き彫りにするもの」と指摘している。

26999.

HCV経口レジメン、グラゾプレビル+エルバスビル第II相試験/Lancet

 C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型感染症へのグラゾプレビル(grazoprevir、MK-5172)+エルバスビル(elbasvir、MK-8742)併用療法は、リバビリンの追加併用を問わず、未治療の肝硬変併存患者、ペグインターフェロン+リバビリン(PR-null)既治療が有効であった肝硬変併存患者または非併存患者において、12週投与、18週投与ともに高い効果を示したことが、米国・テキサス大学健康科学センターのEric Lawitz氏らによる第II相非盲検無作為化試験の結果、報告された。Lawitz氏は、「結果は第III相の試験実施を裏付けるものであった」と述べている。Lancet誌オンライン版2014年11月11日号掲載の報告より。グラゾプレビル+エルバスビル、リバビリンありなしを検討 HCV治療については、インターフェロンを用いず、経口投与のみの短期間治療のニーズが高まっている。加えて、その治療対象患者は多岐にわたること(肝硬変が伴う患者、ペグインターフェロンやPR-nullが既治療の患者を含む)も求められている。 本検討では、ベースライン特性不良のHCV遺伝子型1型感染症の患者について、グラゾプレビル+エルバスビル併用療法、リバビリンあり・なしでの有効性、安全性を評価する「C-WORTHY」試験を行った。 本報告では、2つの試験集団について得られた所見を報告している。コホート1は、肝硬変を伴う未治療患者集団(123例)であり、コホート2は、PR-null既治療が有効だった患者(肝硬変のありなし問わず、130例)であった。 被験者の適格条件は、18歳以上の血中HCV RNA値は1万IU/mL以上のHCV遺伝子型1型感染症患者とした。 被験者は無作為に、グラゾプレビル(1日100mg)+エルバスビル(1日50mg)、リバビリン追加併用ありなしの12週投与または18週投与群に割り付けられ追跡を受けた。 具体的にコホート1では、60例が12週投与群に割り付けられ(リバビリンあり31例、なし29例)、63例が18週投与群に割り付けられた(同:32例、31例)。コホート2は、65例が12週投与群に(同:32例、33例)、65例が18週投与群(33例、32例)に割り付けられた。 主要エンドポイントは、12週治療後12週時点でのHCV RNA値が25 IU/mL未満を達成していた(SVR12)患者の割合とした。多様な患者集団でSVR12達成割合が90~100% SVR12の達成率は、リバビリン併用ありなし、治療期間の長さに関与しておらず、90%(コホート1の12週投与リバビリン併用、28/31例、95%信頼区間[CI]:74~98)から100%(コホート2の18週投与リバビリン併用あり、33/33例、同:89~100)と高率を示した。 12週投与のリバビリン併用なし群は、コホート1では97%(95%CI:82~100、28/29例)、コホート2では91%(同:76~98、30/33例)であった。 10%以上の報告があった有害事象は、疲労感(66例、26%)、頭痛(58例、23%)、無力症(35例、14%)であった。

27000.

事例29 ツロブテロール(商品名: ホクナリン テープ)1mgの査定【斬らレセプト】

解説事例では、熱発にて初診を行なった7歳の患者に対して処方したツロブテロール(ホクナリン®)テープ1mgが、A事由(医学的に適応と認められないもの)を理由に査定となった。医師から、コメントで「咳が激しい」と訴えたが査定となった。その理由は何かと問い合わせがあり、調べてみた。レセプトを確認すると、傷病名欄には急性上気道炎のみの記載であった。他には急性上気道炎に対する薬剤が処方されているのみであった。急性上気道炎に対してホクナリン®テープの適応があるかどうか添付文書を精査した。添付文書の効能・効果には、「気管支喘息、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫の気道閉塞性障害に基づく呼吸困難など諸症状の緩解に適応する」とある。したがって、レセプトに記載された急性上気道炎のみでは医学的に適用が認められないとしてA事由にて査定となったものであろう。経験則では、インフルエンザなどの医学的に気管支炎を伴う疾病が記載されていれば、急性気管支炎などの適用病名を記載しなくても査定となっていない。しかし、査定が増えている薬剤であるので、留意して算定をお願いしたい。

検索結果 合計:35155件 表示位置:26981 - 27000