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スポーツによる脂肪腫【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第38回

スポーツによる脂肪腫 (>足成より使用) ご存じの通り、脂肪腫は最もよくみられる軟部組織の良性腫瘍です。脂肪腫は体のありとあらゆる部位にできることが知られています。スポーツが脂肪腫に関連しているのではないかとする報告があります。 Copcu E. Sport-induced lipoma. Int J Sports Med. 2004;25:182-185. この文献の冒頭に書かれているように、脂肪腫の原因はいまだによくわかっていません。しかし、外傷がその原因になっているのではないかと考える研究者もいます。この症例報告では、2人のアスリートに発生した急速に増大する脂肪腫が報告されました。1人はプロのバレーボール選手で、もう1人は卓球選手でした。いずれも肩甲部の脂肪腫を指摘されました。実はスポーツに限らず、慢性的な機械的ストレスを受けることで脂肪腫が発生するのではないかとする知見は有名で、いくつか報告があります(Copcu E and Sivrioglu NS. Dermatol Surg. 2003; 29: 215-220.)。主な機序として、外傷によって放出されたサイトカインが前脂肪細胞の分化や増殖を促進させることで、脂肪腫になるのではないかと考えられています。しかしこれには異論もあり、脂肪腫のようにみえる偽脂肪腫(良性腫瘍のようにカプセル化されていない脂肪組織)をみているだけではないかという議論もなされています(Aust MC et al. Skinmed. 2007; 6: 266-270.、Sah K et al. J Oral Maxillofac Pathol. 2011; 15: 113–115.)。そもそも外傷後の脂肪腫とされるものは、基本的に偽脂肪腫だろうと考えるグループもありますので、いまだに境界線がはっきりしない領域のようです。ただ、外傷後に脂肪腫様の変化を来すことは少なくなく、とくにスポーツをしている女性の方はコスメティックな観点からも注意が必要とされています。ボールが当たったからハイ脂肪腫、という簡単なものではないので、予防しようがないのですが……。ちなみに私も首の後ろに小さな脂肪腫のようなものがありますが、子供の寝相が悪くてケリを入れられたことくらいしか首の外傷の記憶はありません。インデックスページへ戻る

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FDA、ニボルマブの扁平上皮NSCLCへの追加適応承認

 2015年3月4日、米国FDAは、完全ヒト型抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、プラチナ製剤による化学療法での治療中または治療後に進行が認められた転移性の扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する治療への適応拡大を承認した。 扁平上皮NSCLCに対するニボルマブの有効性は無作為比較試験で確認されている。試験対象患者272例をニボルマブ群135例、およびドセタキセル群137例に無作為に割り付け、比較分析した。その結果、ニボルマブ群の全生存期間平均値はドセタキセル群に比べ3.2ヵ月長かった。 また、ニボルマブの安全性および有効性は、プラチナベースの化学療法を含む複数の全身療法後にもかかわらず進行した117例に対する単群試験で確認された。結果、ニボルマブ奏効率(ORR)は15%であり、そのうち59%で6ヵ月以上の奏効期間が認められた。詳しくはFDA Press Announcementsへ

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抗うつ薬の違いによる自殺リスクを検討/BMJ

 うつ病患者の抗うつ薬使用と自殺、自殺企図・自傷行為リスクは、SSRIと三環系薬では有意な差はないことが、英国・ノッティンガム大学のCarol Coupland氏らによるコホート研究の結果、明らかにされた。また、服用開始後28日間および中止後の28日間にリスクが最も高いことも判明し、研究グループは、「同期間は注意深いモニタリングが必要である」と指摘している。うつ病患者における自殺・自殺企図について、これまで抗うつ薬の違いにより発生率にばらつきがあるのかどうかは不明であった。BMJ誌オンライン版2015年2月18日号掲載の報告より。抗うつ薬の違いによる自殺、自殺企図・自傷行為の発生について調査 検討は、英国一般医(GP)が関与するQResearchデータベースに登録され、2000年1月1日~2011年7月31日に初発のうつ病と診断された20~64歳の23万8,963例を対象に行われた。被験者は2012年8月1日まで追跡を受けた。 被験者が処方された抗うつ薬の種類(三環系薬、SSRI、その他)、用量、服用期間および指示投薬量、処方錠剤数を調べ、Cox比例ハザードモデルを用いて潜在的交絡因子で補正後、自殺、自殺企図・自傷行為の発生ハザード比を算出して評価した。 追跡期間中、コホートの87.7%(20万9,476例)が1つ以上の抗うつ薬の処方を受けており、治療期間の中央値は221日(四分位範囲:79~590日)であった。SSRIと三環系薬の有意差みられない 追跡開始5年間で、自殺198件、自殺企図または自傷行為5,243件が発生した。 SSRI使用者との比較において、三環系薬使用者の自殺発生率に有意な差はみられなかった(補正後ハザード比:0.84、95%信頼区間[CI]:0.47~1.50、p=0.6)。しかし、その他の抗うつ薬使用者では有意な増大が認められた(同:2.64、1.74~3.99、p<0.001)。また自殺発生率は、SSRIのシタロプラムとの比較において、その他抗うつ薬のミルタザピン(レメロン、リフレックス)で有意な増大がみられた(同:3.70、2.00~6.84、p<0.001)。薬剤別にみた1年間の自殺絶対リスクのばらつき範囲は、アミトリプチリン(トリプタノールほか)の0.02%からミルタザピンの0.19%であった。 同様に自殺企図・自傷行為発生率も、SSRI使用者との比較において三環系薬使用者に有意差はみられなかったが(同:0.96、0.87~1.08、p=0.5)、その他の抗うつ薬使用者では有意な増大が認められた(同:1.80、1.61~2.00、p<0.001)。また、SSRIのシタロプラムとの比較において、ベンラファキシン(国内未承認、同:1.85、1.61~2.13、p<0.001)、トラゾドン(レスリンほか、1.73、1.26~2.37、p=0.001)、ミルタザピン(1.70、1.44~2.02、p<0.001)で同発生率の有意な増大が認められた。一方、アミトリプチリンでは有意な減少が認められた(0.71、0.59~0.85、p<0.001)。薬剤別にみた1年間の自殺企図・自傷行為絶対リスクのばらつき範囲は、アミトリプチリンの1.02%からベンラファキシンの2.96%であった。 自殺、自殺企図・自傷行為の発生率は、治療開始後の28日間および治療中止後の28日間で最も高かった。 著者は、「自殺、自殺企図、自傷行為の発生率は、SSRIと三環系薬で同等であった。ミルタザピン、ベンラファキシン、トラゾドンで、同発生との高い関連が示されたが、自殺数はわずかで明言はできるものではなかった。また、本検討は観察研究であり、所見は処方バイアスやうつ病重症度からの残余交絡、処方を受けた患者特性などが反映されている可能性があった」と述べたうえで、「抗うつ薬の開始および中止後の28日間における発生率増大は、この期間は患者のモニタリングを注意深く行う必要性があることを強調するものである」と指摘している。

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糖尿病黄斑浮腫、VEGF阻害薬3剤を比較/NEJM

 糖尿病黄斑浮腫に対する、眼科用VEGF阻害薬のアフリベルセプト(商品名:アイリーア)、ベバシズマブ(アバスチン、日本では眼科用は未承認)、ラニビズマブ(ルセンティス)の有効性、安全性を比較する多施設共同無作為化試験が米国で行われた。Jaeb Center for Health ResearchのAdam R. Glassman氏ら研究グループ(Diabetic Retinopathy Clinical Research Network)が米国内89ヵ所の協力を得て行った同試験の結果、3剤ともに視力の改善効果は認められるが、相対的効果は治療開始時の視力に依存し、開始時の視力障害が軽度であれば改善効果は3剤間で明らかな差はないが、障害が重度の場合はアフリベルセプトの改善効果が有意に高かったことを報告した。NEJM誌オンライン版2015年2月18日号掲載の報告より。アフリベルセプト、ベバシズマブ、ラニビズマブの有効性、安全性を比較検討 試験は米国立衛生研究所(NIH)資金提供の下で行われた。89の医療機関で、糖尿病黄斑浮腫を有する患者660例(平均年齢61±10歳)を、アフリベルセプト2.0mg(224例、メディケア加入者の単回投与コスト1,950ドル)またはベバシズマブ1.25mg(218例、同50ドル)もしくはラニビズマブ0.3mg(218例、同1,200ドル)のいずれかの眼内注射治療を受ける群に無作為に割り付けて追跡した。試験薬は、プロトコル指定アルゴリズムに従い、4週ごとに投与された。 主要アウトカムは、1年時点の視力の変化で、視力letterスコア(範囲:0~100、高スコアほど良好な視力を示す、スコア85以上は約20/20[=日本で一般的な小数視力表記で1.0])で評価した。治療開始時の視力障害の程度により改善効果に差、安全性は同等 結果、ベースラインから1年時点までのスコア変化の平均値でみた視力の改善は、アフリベルセプト群で13.3、ベバシズマブ群で9.7、ラニビズマブ群は11.2であった。スコアの改善はアフリベルセプト群がその他2群よりも有意に大きかったが(対ベバシズマブ群のp<0.001、対ラニビズマブ群のp=0.03)、同改善はベースラインの視力障害の程度によって異なることがみられ(相互作用のp<0.001)、結果については臨床的に意味がなかった。 試験開始時の視力障害スコアが78(20/32;小数視力0.63)~69(20/40;0.5)の場合(被験者の51%が該当していた)は、平均改善スコアはアフリベルセプト群8.0、ベバシズマブ群7.5、ラニビズマブ群8.3で、3群間で有意な差はなかった(p>0.50)。一方、開始時の視力障害スコアが69未満(20/50;0.4未満)の場合、平均改善スコアはアフリベルセプト群18.9に対し、ベバシズマブ群は11.8、ラニビズマブ群は14.2で、アフリベルセプト群の視力改善効果が有意に高かった(対ベバシズマブ群のp<0.001、対ラニビズマブ群のp=0.003、ラニビズマブ群vs. ベバシズマブ群のp=0.21)。 なお、重度有害事象(p=0.40)、入院(p=0.51)、死亡(p=0.72)または重大心血管イベント(p=0.56)はいずれも3群間で有意差はみられなかった。

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【日本発】ピロリ菌保菌者は骨粗鬆症に注意

 ピロリ菌感染や萎縮性胃炎が骨に与える影響について、海外ではいくつかの報告があるものの日本ではほとんど報告がない。 そこで、神戸薬科大学の水野 成人氏らは、50~60代の男性230人を対象とし、ピロリ菌感染や萎縮性胃炎が骨の状態を測るバイオマーカーとして有用かどうかを調べた。 その結果、ピロリ菌感染や萎縮性胃炎の血清学的診断は、骨粗鬆症のリスクアセスメントに有用であることがわかった。Digestive diseases and sciences誌オンライン版2015年2月8日の報告。 主な結果は以下の通り・ピロリ菌は有意に海綿骨密度低下のリスクを増加させた。(オッズ比:1.83、95%CI:1.04~3.21、p=0.03)・萎縮性胃炎は有意に海綿骨密度低下のリスクを増加させた。(同:2.22、1.17~4.22、0.01)・ピロリ菌抗体陽性かつ萎縮性胃炎ありの被験者では、そうでない被験者と比較して、有意に海綿骨密度低下のリスクが高かった。(同:2.65、1.27~5.55、0.01)

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心房細動による脳卒中での寝たきり予防に 提言書 第二版を発表

 公益社団法人日本脳卒中協会とバイエル薬品株式会が共同事業として展開する「心房細動による脳卒中を予防するプロジェクト」は3月4日、「脳卒中予防への提言 ―心原性脳塞栓症の制圧を目指して―(第二版)」を発表した。本提言書は、昨年5月に発表した「脳卒中予防への提言─心原性脳塞栓症の制圧を目指すために─初版」で示した提言について、どのように実行が可能なのかを、各地で進む事例を取り上げながら、具体的な実行策を示したもの。 提言書 第二版は同プロジェクトの過去1年間の活動成果、および各地域での先進的な取り組みなどを取り上げ、自治体、保険者、医療関係者などが、提言を実行に移すための具体的な施策について提示している。提言は、1)心房細動の早期発見 2)脳卒中予防のための適切な治療の推進 3)切れ目ない地域連携で乗り越える制度間の課題──の3部構成となっており、各項目について具体的な解決策や事例を紹介している(提言の要旨は別紙参照)。 心原性脳塞栓症の予防には、心房細動を早期に発見し、脳卒中予防のための治療(主に抗凝固療法)を適切に行うことが大切だが、現在は「発見」と「治療」の両方に多くの課題があるという。同プロジェクトでは、これら課題の解決には、自治体、保険者、医療関係者などの連携が鍵を握ると考え、昨年5月に、地域一体での取り組みの必要性を「初版」として提言していた。 なお、今回発表された提言書 第二版の全文は「心房細動による脳卒中を予防するプロジェクト」のウェブサイトに掲載されている(PDF)。詳細はプレスリリース(PDF)へ

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Vol. 3 No. 2 AF患者の脳卒中にどう対応するか? NOAC服用患者への対応を中心に

矢坂 正弘 氏国立病院機構九州医療センター脳血管センター脳血管・神経内科はじめに非弁膜症性心房細動において新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulant : NOAC)の「脳卒中と全身塞栓症予防」効果はワルファリンと同等かそれ以上である1-3)。大出血や頭蓋内出血が少なく、管理が容易であることを合わせて考慮し、ガイドラインではNOACでもワルファリンでも選択できる状況下では、まずNOACを考慮するように勧めている4)。しかし、NOACはワルファリンより脳梗塞や頭蓋内出血の発症頻度が低いとはいえ、その発症をゼロに封じ込める薬剤ではないため、治療中の脳梗塞や頭蓋内出血への対応を考慮しておく必要がある。本稿では、NOACの療法中の脳梗塞や頭蓋内出血時の現実的な対応を検討する。NOAC療法中の急性脳梗塞NOAC療法中の症例が脳梗塞を発症した場合、一般的な脳梗塞の治療に加えてNOAC療法中であるがゆえにさらに2つの点、rt-PA血栓溶解療法施行の可否と急性期抗凝固療法の実際を考慮しなくてはならない。(1) rt-PA血栓溶解療法の可否ワルファリン療法中は適正使用指針にしたがってPTINRが1.7以下であればrt-PA血栓溶解療法を考慮できる5)。しかし、ダビガトラン、リバーロキサバンおよびアピキサバン療法中の効果と安全性は確立しておらず、明確な指針はない。表1にこれまで発表されたダビガトラン療法中のrt-PA血栓溶解療法例を示す6-8)。ダビガトラン療法中の9例のうち中大脳動脈広範囲虚血で190分後にrt-PAが投与された1例を除き、8例で良い結果が得られている。それらに共通するのは、ダビガトラン内服から7時間以後でrt-PAが投与され、投与前APTTが40秒未満であった。ダビガトランの食後内服時のTmaxが4時間であることを考慮すると、rt-PA投与が内服後4時間以降であり、APTTが40秒以下(もしくは前値の1.5倍以下)であることがひとつの目安かもしれない。内服時間が不明な症例では来院時のAPTTと時間を空けてのAPTTを比較し、上昇傾向にあるか、低下傾向にあるかを見極めてTmaxを過ぎているかどうかを判断することも一法であろう。NOAC療法症例でrt-PA血栓溶解療法を考慮する場合は、少なくとも各薬剤のTmax 30分から4時間程度、ダビガトランではAPTTが40秒以下、抗Xa薬ではプロトロンビン時間が1.7以下であることを確認し、論文を含む最新情報に十分に精通した上で施設ごとに判断をせざるを得ないであろう5)。アピキサバンはAPTTやPT-INRと十分に相関しないことに注意する。抗Xa薬では、血中濃度と相関する抗Xa活性を図る方法も今後検討されるかもしれない。表1 ダビガトラン療法中のtPA血栓溶解療法に関する症例報告画像を拡大する(2) 急性期抗凝固療法心原性脳塞栓症急性期は脳塞栓症の再発率が高いため、この時期に抗凝固療法を行えば、再発率を低下させることが期待されるが、一方で栓子溶解による閉塞血管の再開通現象と関連した出血性梗塞もこの時期に高頻度にみられる。したがって、抗凝固療法がかえって病態を悪化させるのではないかという懸念もある。この問題はまだ解決されていないため、現時点では、脳塞栓症急性期の再発助長因子(発症後早期、脱水、利尿薬視床、人工弁、心内血栓、アンチトロンビン活性低下、D-dimer値上昇など)や、抗凝固療法による出血性合併症に関連する因子(高齢者、高血圧、大梗塞、過度の抗凝固療法など)を考慮して、個々の症例ごとに脳塞栓症急性期における抗凝固療法の適応を判断せざるを得ない。われわれの施設では症例ごとに再発の起こりやすさと出血性合併症の可能性を検討して、抗凝固療法の適応を決定している。具体的には感染性心内膜炎、著しい高血圧および出血性素因がないことを確認し、画像上の梗塞巣の大きさや部位で抗凝固療法開始時期を調整している(表2)9)。表2 脳塞栓症急性期の抗凝固療法マニュアル(九州医療センター2013年4月1日版)画像を拡大する(別タブが開きます)出血性梗塞の発現は神経所見とCTでモニタリングする。軽度の出血性梗塞では抗凝固療法を継続し、血腫型や広範囲な出血性梗塞では抗凝固薬投与量を減じたり、数日中止し、増悪がなければ再開する10)。新規経口抗凝固薬、ヘパリン、およびワルファリン(ワーファリン®)の投与量および切り替え方法の詳細も表2に示す。ワルファリンで開始する場合は即効性のヘパリンを必ず併用し、PT-INRが治療域に入ったらヘパリンを中止する。再発と出血のリスクがともに高い場合、心内血栓成長因子である脱水を避けること,低容量ヘパリンや出血性副作用がなく抗凝血作用のあるantithrombin III製剤の使用が考えられる11)。NOAC療法中に脳梗塞を発症した症例で、NOAC投与を考慮する場合、リバーロキサバンとアピキサバンは第III相試験が低用量選択基準を採用した一用量で実施されているので、脳梗塞を発症したからといって用量を増量したり、調節することは適切ではない2,3)。他剤に変更するか、脳梗塞が軽症であれば、あるいは不十分なアドヒアランスで発症したのであれば、継続を考慮することが現実的な対応であろう。一方ダビガトランは第III相試験が2用量で行われ、各々の用量がエビデンスを有しているので、低用量で脳梗塞を発症した場合、通常用量の可否を考慮することは可能である1)。NOAC療法中の頭蓋内出血ここではNOAC療法中の頭蓋内出血の発症頻度や特徴をグローバルやアジアでの解析結果を参照にワルファリン療法中のそれらと対比しながら概説する。(1) グローバルでの比較結果非弁膜症性心房細動を対象に脳梗塞の予防効果をワルファリンと対比したNOAC(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)の4つの研究(RE-LY、ROCKET AF、ARISTOTLE、ENGAGE-AF)においてワルファリン群と比較してNOAC群の頭蓋内出血は大幅に減少した(本誌p.24図1を参照)1-3,12)。(2) アジアでの比較結果各第III相試験サブ解析から読み取れるアジアや東アジアの人々の特徴は、小柄であり、それに伴いクレアチニンクリアランス値が低く、脳卒中の既往や脳卒中発症率が高いことである13-16)。またワルファリンコントロールにおけるtime in therapeutic range(TTR)が低く、PT-INRが低めで管理されている症例が多いにもかかわらず、ワルファリン療法中の頭蓋内出血発症率は極めて高い特徴がある(本誌p.24図2を参照)13-16)。しかし、NOACの頭蓋内出血発症率はワルファリン群より大幅に低く抑えられており、NOACはアジアや東アジアの人々には一層使いやすい抗凝固薬といえよう。(3) NOAC療法中に少ない理由NOACで頭蓋内出血が少ない一番の理由は、脳に組織因子が多いことと関連する16-18)。組織が損傷されると組織因子が血中に含まれる第VII因子と結びつき凝固カスケードが発動する。NOAC療法中の場合は第VII因子が血液中に十分にあるので、この反応は起こりやすい。しかし、ワルファリン療法中は第VII因子濃度が大幅に下がるのでこの反応は起こりにくくなり止血し難い。次にワルファリンと比較して凝固カスケードにおける凝固阻止ポイントが少ないことが挙げられる。ワルファリンは凝固第II、VII、IX、X因子の4つの凝固因子へ作用するが、抗トロンビン薬や抗Xa薬はひとつの凝固因子活性にのみ阻害作用を発揮するため、ワルファリンよりも出血が少ない可能性がある。さらに安全域の差異を考慮できる。ある薬剤が抗凝固作用を示す薬物血中濃度(A)と出血を示す薬剤の血中濃度(B)の比B/Aが大きければ安全域は広く、小さければ安全域は狭い。ワルファリンはこの比が小さく、NOACは大きいことが示されている19)。最後に薬物血中濃度の推移も影響するだろう。ワルファリンはその効果に大きな日内変動はみられないが、ダビガトランは半減期が12時間で血中濃度にピークとトラフがある。ピークではNOAC自身の薬理作用が、トラフでは生理的凝固阻止因子が主となり、2系統で抗凝固作用を発揮し、見事に病的血栓形成を抑制しているものと理解される(Hybrid Anticoagulation)(図)16,17)。トラフ時には生理的止血への抑制作用は強くないため、それが出血を減らすことと関連するものと推測される。図 ハイブリッド抗凝固療法画像を拡大する(4) 特徴NOAC療法中は頭蓋内出血の頻度が低いのみならず、一度出血した際に血腫が大きくなり難い傾向も有するようだ。われわれはダビガトラン療法中の頭蓋内出血8例9回を経験しケースシリーズ解析を行い報告した20)。対象者は高齢で9回中7回は外傷と関連する慢性硬膜下出血や外傷性くも膜下出血などで、脳内出血は2例のみであった。緊急開頭が必要な大出血はなく、入院後血腫が増大した例もなく、多くの転帰は良好であった。もちろん、大血腫の否定はできず、血圧、血糖、多量の飲酒、喫煙といった脳内出血関連因子の徹底的な管理は重要であるが、ダビガトラン療法中の頭蓋内出血が大きくなりにくい機序としては、前述の頻度が低い機序が同様に関連しているものと推定される。(5) 出血への対応1.必ず行うべき4項目基本的な対応として、まず(1)休薬を行うこと、そして外科的な手技を含めて(2)止血操作を行うことである。(3)点滴によるバイタルの安定は基本であるが、NOACでは点滴しバイタルを安定させることで、半日程度で相当量の薬物を代謝できるので極めて重要である。(4)脳内出血やくも膜下出血などの頭蓋内出血時には十分な降圧を行う。2.場合によって考慮すること急速是正が必要な場合、ワルファリンではビタミンK投与や新鮮凍結血漿投与が行われてきたが、第IX因子複合体500~1,000IU投与(保険適応外)が最も早くPT-INRを是正できる。NOACの場合は、食後のTmaxが最長で4時間程度なので、4時間以内の場合は胃洗浄や活性炭を投与し吸収を抑制する。ダビガトランは透析で除去されるが、リバーロキサバンやアピキサバンは蛋白結合率が高いため困難と予測される。NOAC療法中に第IX因子複合体を投与することで抗凝固作用が是正させる可能性が示されている21)。今後の症例の蓄積とデータ解析に基づく緊急是正方法の開発が急務である。抗体製剤や低分子化合物も緊急リバース方法の1つとして開発が進められている。おわりにNOACは非常に有用な抗凝固薬であるが、実臨床における諸問題も少なくない。登録研究や観察研究を積極的に行い、安全なNOAC療法を確立する必要があろう。文献1)Connolly SJ et al. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 361: 1139-1151 and Erratum in. N Engl J Med 2010; 363: 1877.2)Patel MR et al. Rivaroxaban versus Warfarin in Nonvalvular Atrial Fibrillation. N Engl J Med 2011;365: 883-891.3)Granger CB et al. Apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 981-992.4)http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf5)日本脳卒中学会 脳卒中医療向上・社会保険委員会 rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法指針改訂部会: rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 適正治療指針 第二版 http://www.jsts.gr.jp/img/rt-PA02.pdf6)矢坂正弘ほか. 新規経口抗凝固薬に関する諸問題.脳卒中2013; 35: 121-127.7)Tabata E et al. Recombinant tissue-type plasminogen activator (rt-PA) therapy in an acute stroke patient taking dabigatran etexilate: A case report and literature review, in press.8)稲石 淳ほか. ダビガトラン内服中に出血合併症なく血栓溶解療法を施行しえた心原性脳塞栓症の1例―症例報告と文献的考察. 臨床神経, 2014; 54:238-240.9)中西泰之ほか. 心房細動と脳梗塞. 臨牀と研究 2013;90: 1215-1220.10)Pessin MS et al. Safety of anticoagulation after hemorrhagic infarction. Neurology 1993; 43:1298-1303.11)Yasaka M et al. Antithrombin III and Low Dose Heparin in Acute Cardioembolic Stroke. Cerebrovasc Dis 1995; 5: 35-42.12)Giugliano RP et al. Edoxaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2013;369: 2093-2104.13)Hori M et al. Dabigatran versus warfarin: effects on ischemic and hemorrhagic strokes and bleeding in Asians and non-Asians with atrial fibrillation. Stroke 2013; 44: 1891-1896.14)Goto S et al. Efficacy and safety of apixaban compared with warfarin for stroke prevention in atrial fibrillation in East Asia with atrial fibrillation. Eur Heart J 2013; 34 (abstract supplement):1039.15)Wong KS et al. Rivaroxaban for stroke prevention in East Asian patients from the ROCKET AF trial. Stroke 2014, in press.16)Yasaka M et al. Stroke Prevention in Asian Patients with Atrial Fibrillation. Stroke 2014, in press.17)Yasaka M et al. J-ROCKET AF trial increased expectation of lower-dose rivaroxaban made for Japan. Circ J 2012; 76: 2086-2087.18)Drake TA et al. Selective cellular expression of tissue factor in human tissues. Implications for disorders of hemostasis and thrombosis. Am J Pathol 1989; 134: 1087-1097.19)大村剛史ほか. 抗凝固薬ダビガトランエテキシラートのA-Vシャントモデルにおける抗血栓および出血に対する作用ならびに抗血栓作用に対するビタミンKの影響. Pharma Medica 2011; 29: 137-142.20)Komori M et al. Intracranial hemorrhage during dabigatran treatment: Case series of eight patients. Circ J, in press.21)Kaatz S et al. Guidance on the emergent reversal of oral thrombin and factor Xa inhibitors. Am J Hematol 2012; 87 Suppl 1: S141-S145.

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長話 さっさと切り上げ 茶を1杯【Dr. 中島の 新・徒然草】(057)

五十七の段 長話 さっさと切り上げ 茶を1杯私は毎週日曜日の夕方に近所の小さなクリーニング屋に行くことにしています。出来上がった洗濯物を回収するためです。というのは、予め約束していた日時に出来上がりを回収すると10%割引券をくれるからです。洗濯物の引き取りはついつい後回しになりがちですが、このシステムだと律儀に店に向かうことになります。全くよくできたシステムですが、こうでもしなくては、小さなクリーニング店は引き取りの遅れた洗濯物ですぐにスペースが一杯になってしまうことでしょう。このシステムの良いところは、約束を守ったら10%割引で「得をする」ということです。約束を破ったらペナルティーというシステムに比べると、人々が喜んで約束を守ってくれそうです。ワイシャツ1枚のクリーニング代がせいぜい200円程度ですから、10%割引といってもたったの20円。それでも時間に遅れて割引券を貰えなかったりすると、すごく損をした気分になります。でも単に「得しなかった」というだけのことなので、クリーニング店に文句を言う人は見たことがありません。逆にワイシャツ1枚180円、時間に遅れたら20円罰金などというルールだと、お客さんの方は不平不満だらけになることでしょう。おそらく人は「約束を守らなかったら損をする」というルールの下では、なかなか約束を守らないのではないかと思います。ところが「約束を守ったら得をする」というルールだったら、一生懸命約束を守ろうとしてくれます。さて、このようなシステムを我々の医療業界にも応用できないでしょうか?すぐに思いつくのは外来患者さんの長話ですね。およそ医師にとって患者さんの長話ほどつらいものはありません。よく「3時間待ちの3分診療」と揶揄されますが、話を聞かされるこちらの立場にもなってほしいものです。中には30分以上しゃべり続ける患者さんもおられますが、高齢の患者さんにとって外来担当医など良い話し相手に過ぎないのでしょう。いっそのこと再診料を10倍くらいに設定したいところですが、国の決めている診療報酬を我々が勝手に変えるわけにはいきません。そこで、10分以内に診療が終わった患者さんには「茶菓子券」を差し上げる、というのはどうでしょうか?たかがお茶・お菓子といえば、そのとおりですが、人間というのは自分だけ貰い損ねることには極めて敏感です。さっさと診察をすませてお茶を飲んで人がいる一方、ついつい長話をしたばかりに「茶菓子券」を貰えない、となると悲しいですね。診察が9分経過するとキッチンタイマーかピピピピピと鳴り始めるようにしたら、皆さんどんどん話を切り上げてくれるのではないかと思います。患者さんの長話に困っている先生方。ぜひ、どなたか試してみてください。最後に1句長話 さっさと切り上げ 茶を1杯

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腰椎穿刺によるクモ膜下出血の除外基準/BMJ

 急性非外傷性頭痛の患者について腰椎穿刺を実施し、その結果、赤血球数が2,000×106/L未満で脳脊髄液の黄変化が認められない場合には、動脈瘤性クモ膜下出血を除外できることが明らかにされた。カナダ・オタワ大学のJeffrey J Perry氏らが、同国内12ヵ所の救急部門を訪れた急性非外傷性頭痛の患者1,739例について行った、前向きコホート試験の結果、明らかにした。BMJ誌オンライン版2015年2月18日号掲載の報告より。主要評価項目は、要介入または致死の動脈瘤性クモ膜下出血 研究グループは、2000年11月~2009年12月にかけて、急性非外傷性頭痛でカナダの大学病院の救急部門を訪れ、クモ膜下出血の疑いで腰椎穿刺を受けた15歳以上の患者1,739例について、前向きコホート試験を行った。 主要評価項目は、介入を要する、または死に至った動脈瘤性クモ膜下出血だった。動脈瘤性クモ膜下出血は被験者の0.9% 結果、最終管の赤血球数が1×106/L超、または脳脊髄液の黄変化が1管以上で、脳脊髄液異常が認められたのは、641例(36.9%)だった。同異常が認められた被験者の平均年齢は45.1歳、正常だった被験者の平均年齢は41.6歳だった。 腰椎穿刺で異常が認められ動脈瘤性クモ膜下出血と診断されたのは被験者全体のうち15人(0.9%)であった。 赤血球数が2000×106/L未満で、脳脊髄液の黄変化が認められない場合では、動脈瘤性クモ膜下出血の除外診断の感度は100%(95%信頼区間:74.7~100%)、特異度は91.2%(同:88.6~93.3%)だった。

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今すぐやめられない喫煙者にもバレニクリン有効/JAMA

 1ヵ月以内にすぐにとはいかないが、3ヵ月以内に減煙・禁煙をしたいという意思のある喫煙者に対し、バレニクリン(商品名:チャンピックス)を24週間投与することで、長期の禁煙効果があることが示された。禁煙率は治療終了時、および1年後も介入群で有意に高率であった。米国・メイヨークリニックのJon O. Ebbert氏らが、1,510例の喫煙者を対象に行った多施設共同無作為化プラセボ対照試験の結果、報告した。JAMA誌2015年2月17日号で発表した。8週までに75%以上の減煙、12週までに禁煙を目標 研究グループは2011年7月~2013年7月にかけて、10ヵ国、61ヵ所の医療センターを通じ、1ヵ月以内の禁煙の意思はないが、3ヵ月以内の減煙・禁煙の意思のある1,510例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはバレニクリン(1mg、1日2回投与)を24週間、もう一方の群にはプラセボを投与した。目標は、4週までに50%以上、8週までに75%以上の減煙、12週までに禁煙とした。21~52週の禁煙率、バレニクリン群で17.1%高率 結果、15~24週の禁煙率はプラセボ群が6.9%に対しバレニクリン群が32.1%(リスク差[RD]:25.2%[95%信頼区間:21.4~29.0]、相対リスク[RR]:4.6 [3.5~6.1])と、有意に高率だった。 また、21~24週にかけても、プラセボ群とバレニクリン群の禁煙率は、それぞれ12.5%と37.8%(RD:25.2%[21.1~29.4]、RR:3.0 [2.4~3.7])、21~52週ではそれぞれ9.9%と27.0%(同17.1%[13.3~20.9]、2.7 [2.1~3.5])だった。 なお、重篤な有害事象の発生率は、プラセボ群が2.2%、バレニクリン群3.7%であり、有意差はみられなかった(p=0.07)。 今回の結果を踏まえて著者は、「バレニクリンは、臨床ガイドライン非対象のすぐにやめる意思がない禁煙希望者にとって治療オプションとなる」とまとめている。

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吸収性局所止血材、膝関節全置換術後リスクを低下

 人工膝関節全置換術(TKA)において、術後出血は重大な合併症の原因となり輸血を要することもある。米国・St. Francis Memorial HospitalのJohn H. Velyvis氏は、ヒトトロンビン含有ゼラチン使用吸収性局所止血材の使用がTKA術後ドレーン排液量および輸血予測確率を低下させることを報告した。結果について著者は「今後、多施設無作為化試験などさらなる研究が必要である」とまとめている。Orthopedics誌2015年2月号の掲載報告。 検討は、初回TKAを受ける連続症例を前向きに登録し、74例にヒトトロンビン含有ゼラチン使用吸収性局所止血材(商品名:フロシール)5mLを用いた。さらに83例に10mLを用いて評価した。 フロシール群の登録に先立ち、対照群としてフロシールを使用しなかったTKA施行連続100例のデータを診療記録より抽出した。 なお、全例、手術の翌日から血栓予防としてワルファリンが投与された。 主な結果は以下のとおり。・術後ドレーン排液量は、フロシール5mL群236.9mL、10mL群120.5mLで、どちらも対照群(430.8mL)より有意に少なかった(ともにp<0.0001)。・また、フロシール5mL群と比較するとフロシール10mL群が有意に低値であった(p<0.0001)。・輸血予測確率は、フロシール5mL群と対照群とで差はなかったが(6.0% vs 7.6%、p=0.650)、フロシール10mL群は対照群より有意に低率であった(0.5% vs 5.5%、p=0.004)。・フロシール10mL群のうちフロシールの使用が止血帯解除前であった群と解除後であった群のどちらも、対照群との間で排液量ならびに輸血予測確率が有意に低かった。・使用された麻酔の種類は、転帰に影響を及ぼさなかった。・フロシール使用に関連した有害事象は認められなかった。

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統合失調症のカフェイン依存、喫煙との関連に注意

 スペイン・Gallegan Health SystemのManuel Arrojo-Romero氏らは、長期間にわたる精神科病院でのカフェイン消費について調べた。結果、統合失調症とカフェイン使用との明らかな関連性は、その大半を喫煙で説明しうることが明らかになったと報告した。Schizophrenia Research誌オンライン版2015年2月20日号の掲載報告。 検討は、統合失調症とカフェイン使用についてより深く探索するため、すでに発表されているスペインの試験(統合失調症外来患者250例と一般集団290例)と、同じくスペインの長期入院患者試験(同一病院から統合失調症145例、その他の重度精神疾患64例)の対象を統合して行われた。とくに、喫煙などの交絡因子で調整後、統合失調症とカフェインの関連が、統合失調症患者全体で一貫して見られるのか、および異なるカフェイン使用の定義においてはどうかを明確にすることを目的とした。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症入院患者におけるカフェイン使用者の割合は、非統合失調症入院患者と比較して有意に高いとはいえなかった(77%[111/145例] vs. 75%[48/64例])。また、対照と比べても高くなかったが、統合失調症外来患者より有意に高かった。・統合失調症入院患者のカフェイン使用者のうち使用頻度が高い人の割合は、非統合失調症入院患者と比較して有意に高いとはいえなかった(45%[50/111例] vs. 52%[25/48例])。また、対照と比べても高くはなかったが、統合失調症外来患者より有意に低かった。・喫煙は、全対象および定義にわたってカフェイン使用と有意に関連していた。・カフェイン中毒(喫煙者で700mg/日超)は、統合失調症入院患者、同外来患者、非統合失調症入院患者で2~3%であった。・また、これらカフェイン中毒の喫煙患者の何人かは、他の誘導物質(とくにオメプラゾール)も摂取していた。・統合失調症とカフェイン使用との間に一貫した関連がみられなかったことは、全解析群(使用者および高使用者)および全対象において喫煙とカフェイン使用との関連が非常に一貫していたことと比較すると驚くべきことであった。・統合失調症とカフェイン使用の明白な関連は、喫煙の交絡的な影響により説明することができる。関連医療ニュース 統合失調症患者の過度なカフェイン摂取、どう対処すべき 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか 認知症治療薬ガランタミン、ラット試験で喫煙欲求の軽減効果を確認  担当者へのご意見箱はこちら

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成人の季節性インフルエンザに対するオセルタミビルの効果:ランダム化比較試験のメタ解析(解説:吉田 敦 氏)-319

 ノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルは、現在世界で最も使用されている抗インフルエンザ薬であり、パンデミックに対する備えとしてもその位置付けは大きい。その効果についてはこれまで多くの臨床試験と経験が蓄積されてきたが、今回あらためてランダム化比較試験のメタ解析が行われ、成人例におけるオセルタミビルの効果と副作用が検証された。Lancet誌オンライン版2015年1月30日号の発表。用いられたランダム化比較試験 対象として解析されたのは、成人に75mg 1日2回投与を行ったランダム化プラセボ対照二重盲検試験であり、これまで論文として発表された、あるいはロシュ社がスポンサーになって施行された未発表のものを含む。インフルエンザ様症状を訴えて来院した例についてランダム化して投与を行い、一部ではその後ウイルス分離あるいは抗体検査を行い、その結果によってインフルエンザウイルス感染症の証拠を得た(Intention-to-treat infected population)。すべての症状が消失するまでの時間をアウトカムとし、投与により短縮された時間を解析した。同時に、合併症・副作用の内容と出現頻度、入院数を比較した。9試験の集計結果 合計して4,328例が解析可能であった。上記の検査で、インフルエンザウイルスの感染が判明した集団(Intention-to-treat infected population)に絞った解析では、プラセボ群に比べ、オセルタミビル群は解熱までの期間が21%短かった(時間比0.79、95%CI:0.74~0.85、p<0.0001)。中央値で比較しても、プラセボ群122.7時間に対し、オセルタミビル群97.5時間であった。一方、検査の有無にかかわらず、インフルエンザ様症状を訴えた患者全体(Intention-to-treat population)を対象として解析すると、その効果はやや弱くなったが、それでも17.8時間の違いがみられた。合併症と副作用に及ぼす影響 Intention-to-treat infected populationでの解析では、抗菌薬の使用が必要となる下気道感染合併症を来した例は、やはりオセルタミビル群で少なく(リスク比0.56、95%CI:0.42~0.75、p=0.0001、オセルタミビル群4.9%、プラセボ群8.7%)、入院が必要となる例も少なかった(リスク比0.37、95%CI:0.17~0.81、p=0.013、オセルタミビル群0.6%、プラセボ群1.7%)。安全性については、オセルタミビル群で嘔気(リスク比1.60、95%CI:1.29~1.99、p<0.0001、オセルタミビル群9.9%、プラセボ群6.2%)と、嘔吐(リスク比2.43、95%CI:1.83~3.23、p<0.0001、オセルタミビル群8.0%、プラセボ群3.3%)が増加したが、精神神経疾患としての影響は見られず、重篤な副作用も認められなかった。オセルタミビルの位置付けと今後 今回のメタ解析では、オセルタミビルによる症状消失までの時間が約1日短くなること、下気道感染合併例・入院例が少なくなること、嘔気と嘔吐が増えたことが確認された。この結果はこれまでの観察研究や経験とおおよそ合致しており、わが国では比較的納得しやすい結果であろう。なお、メタ解析の基になった解析の中で、標本数の少ない解析についてはとくに、オセルタミビル群で差が出た解析に偏って報告されているバイアスは否定できない。しかし、これらの解析の重み付けは少なくなっている。 一方で著者らは、本研究の限界として、元々の解析では呼吸器感染症の合併をアウトカムに設定しておらず、特異的な診断法がなく診断されていること、入院例・肺炎例共に数が少ないことを挙げている。また、予防投与で用いられるような、長期投与での安全性・利便性についても、データを示していない。 オセルタミビルを含む抗インフルエンザ薬について、今後もさまざまな角度から検討がなされ、より厳密な情報が得られることに期待したい。登場してから10年余りでここまで広く使用されているが、それ以前と比べて何がよくなったのか、常に考えるべきではないだろうか。

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