26323.
RCTの結果とreal-worldの結果では、新規デバイス治療において患者対象も治療成績も異なる可能性がある。米国でのTAVRの30日生存と1年生存成績を最新のものに更新する目的で、STS/ACC Transcatheter Valve Therapies RegistryとCMS診療報酬請求データをリンクさせ、2011年9月~2013年6月までの米国299病院、1万2,182症例を1年間経過観察した。 死亡率、脳卒中、再入院を含む治療成績を多変量解析した。平均年齢84歳、女性52%、STS PROM score 7.1%、自宅退院59.8%、30日死亡率7.0%(n=847 deaths)であった。1年間に24.4%(n=2,074)が1回再入院、12.5%(n=1,525)が2回再入院した。1年死亡率23.7%(n=2,450 deaths)、脳卒中率4.1%(n=455 stroke events)であり、1年死亡率に有意に関係した因子は、高齢(95歳以上vs. 75歳未満 hazard ratio [HR]:1.61、85~94歳vs. 75歳未満HR:1.35、75~84歳vs. 75歳未満HR:1.23)、男性(HR:1.21)、末期腎不全(HR:1.66)、COPD(HR:1.39)、心尖部アプローチ(HR:1.37)、STS PROM score 15%超vs. 8%未満(HR:1.82)、周術期Af/AF(HR:1.37)、脳卒中(男性vs. 女性 HR:1.40)であった。 米国の市販後のTAVRの成績における1年時点の死亡と脳卒中の結合発生率は26%であり、こうしたreal-worldのデータをこれからの患者選択の資料とすべきと結論した。 2010年に発表されたPARTNER trial(Smith CR, et al. N Engl J Med. 2011;364:2187-2198.)のコホートAは、TAVRとSAVRのRCTである。PARTNER trialのTAVR群の1年後の治療成績を本報告と比較してみると、検討対象の平均年齢(83.6歳vs. 84歳)はほぼ同等であるが、PARTNERで男性比率(57.8%vs. 48%)が高く、STSスコア(11.8vs. 7.1)は本報告よりPARTNERでかなり高い母集団を対象としていた。PARTNERのTAVR群の結果は、1年死亡率(24.2%vs. 23.7%)、重大な脳卒中発症率(5.1%vs. 4.1%)共に、本報告よりやや高率であったに過ぎず、PARTNER trialのSTSスコアの高さを考慮した場合、この米国の市販後のTAVRの治療成績はPARTNERのTAVR群の治療成績より、同等あるいはやや劣る可能性がある。 ただし、RCTは多くの場合、当該治療領域で卓越した診療技術を持つ施設が選択されることから、市販後の成績がRCTと常に同等になるとは限らない。しかし、Learning curveの時期が過ぎれば手技の習熟度に応じて治療成績が改善されていくであろうし、さらに、デバイスの改良により一般的には治療成績は向上していくものと考えられている。今後のPMS Registry報告に期待したい。