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TEAAM試験:テストステロン低値の高齢者へのテストステロンの補充は、動脈硬化を抑制しない(解説:佐田 政隆 氏)-417

 男性ホルモンであるテストステロンの血中濃度は、10代後半から20代にかけてピークとなり、それ以降、加齢とともに低下する。しかし、個人差もあり、低テストステロン値は、糖尿病、メタボリックシンドローム、脂質異常症、心血管病罹患率、死亡率と関連することが報告されている。 一方、テストステロンは、血管内皮機能の改善、動脈硬化の抑制、虚血肢への側副血行路の発達促進などの血管保護作用を示すことが、動物実験などで報告されている。そこで、男性ホルモン低下が易疲労感、意欲の低下、体脂肪率の増加、認知機能の低下、骨量低下、筋肉量の低下の原因であると信じられている。したがって、抗加齢ドックなどではテストステロンの血中濃度を測定し、低値であるとテストステロンの補充が自由診療で行われている。米国においても、この10年間で、男性ホルモンの売り上げが著明に増加しているという。しかし、男性ホルモン補充療法が、はたして心血管イベントを抑制するのか、生活の質(Quality of Life)を改善するのかという科学的エビデンスがないのが現状である。 そこで本研究では、動脈硬化のサロゲートとして、総頸動脈の内膜-中膜複合体肥厚(IMT)を二重盲検法で3年間追った。60歳以上の中高齢の男性で、朝のテストステロンレベルが100~400ng/dLと低値である人が対象となった。平均年齢は67.6歳の306例がランダム化された。テストステロン75mg/日または偽薬が投与され、テストステロン群においては、途中でテストステロン濃度を測定して、500ng/dL未満であれば100mg/日に増量され、900ng/dLより多ければ50mg/日に減量された。 偽薬群で、IMTが0.010mm/年で増加したのに対して、テストステロン群においては0.012mm/年で有意差はなかった。また、IMTの変化率とテストステロンレベルに相関はなかった。冠動脈のカルシウムスコアにおいても両群間で有意差はなかった。 本研究においては、テストステロンの性機能やQOLへの効果も検討されているが、セックス願望、勃起機能、性機能全般のスコア、パートナーとの親密度、健康関連のQOLに違いがなかった。テストステロン群で有意にヘマトクリットとPSAが高値であった。 マスコミなどで、科学的根拠に乏しい健康法やサプリメントがまことしやかに報道されているのには、非常に違和感を覚える。効果がないだけならまだ良いが、時に健康に重大な害を及ぼすこともありうる。実際に、本研究よりリスクの高い症例を対象にして、テストステロンの効果を評価したTOM試験では、テストステロン群で偽薬より心血管イベントが多く早期に試験が中止になっている1)。 スタチンやピオグリタゾンのようにIMTの進行を抑制し、心血管イベントの抑制効果が証明されている薬物と違って、今回、テストステロンの抗動脈硬化効果が示せなかった。昨今、抗加齢医学が大きく注目されているが、今後末永く普及するためには、その作用機序がしっかりとした科学的根拠に基づき、信頼される臨床研究によりエビデンスが構築されていることが、きわめて重要と思われる。

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感度、特異度の話(その4)【Dr. 中島の 新・徒然草】(086)

八十六の段 感度、特異度の話(その4)タイトルから話がそれてきましたが、御容赦ください。これまでの回(その1、その2、その3)では、クモ膜下出血の疑いを捨てきれない患者さんに対して、「頭部CTのほかにどのような診断法があるか」という話をしました。1つの方法は3D-CTA(三次元CT血管造影)、他の方法として頭部MRIがあります。でもMRIを撮影できない医療施設もたくさんあるので、ほかの選択肢も持っておかなくてはなりません。それが針1本でできる検査法です。 中島 「大袈裟なMRIの装置なんか不要。針1本でできること」 学生 「腰椎穿刺でしょうか」 中島 「そのとおり。どんな所見があればクモ膜下出血かな?」 学生 「髄液に血が混ざっていたらクモ膜下出血です」 腰椎穿刺は古典的ながら、今でも有力な方法です。私が医学部を卒業したばかりの年に手伝いに行っていた診療所は、MRIどころかCTすらなかったので、突然の激しい頭痛の患者さんが来院された時には院長先生が腰椎穿刺で診断をつけました。ポタポタポタと真っ赤な髄液が流れ出したのを見たときには、あまりに教科書どおりだったので感動したものです。ちなみに、この患者さんは即座に近くの大学病院に送り、緊急手術で一命を取り止めました。閑話休題。 中島 「ここまでのところ、3D-CTA、頭部MRI、腰椎穿刺という3つの選択肢を挙げてもらったけど」 学生 「ええ」 中島 「君が研修医だったとして、腰椎穿刺をしたことがない、という事態も考えられるよな」 学生 「そうですね」 中島 「要するに3つの選択肢のすべてが封じられたという場合や。どうするかな?」 学生 「どうしたらいいのでしょう」 中島 「そこで第4の選択肢、第5の選択肢を知っておくことが必要や」 学生 「是非教えてください」 諸般の事情で3つの選択肢すべてが使えないということは十分にありえます。 中島 「そんな場合は『呼ぶ』か『送る』か、どちらかを使うこと」 学生 「呼ぶか送るか?」 中島 「つまり、宅直の脳外科医を呼ぶわけよ。もし勤務先の病院に脳外科医がいない場合には脳外科のある病院に送れ」 学生 「でも、クモ膜下出血かどうかわからない段階で、気安く呼んだり送ったりできないですよ」 中島 「そうすると事後確率30%の患者さんを自分で持ち続けるんか? いつ再破裂するかわからんぞ」 学生 「それも怖いですね」 専門外の医師がクモ膜下出血や急性心筋梗塞疑いの患者さんに当たってしまった場合、「早く目の前から消えてくれ」と感じてしまうのが正直なところだと思います。 学生 「どうしたらいいんでしょうか(泣)」 中島 「それが最大の問題や。どこかの脳外科に送るとして、君やったら何と言う?」 学生 「頭痛の患者さんのCTを撮影したら、その段階では出血は見当たらないんですけど、やはり事前確率が高いので、感度を90%、特異度を95%とした場合、事後確率が……」 中島 「『CTで出血がないんやったら電話してくるな! ガチャン』で終わりやぞ、そんな事言うとったら」 学生 「やはりそうですか」 中島 「事前確率とか感度とか、そんな話を喜んで聞いてくれるのは内科の先生ぐらいやろ。脳外科医が込み入った話を聞くわけないやないか」 学生 「何だか目に浮かぶようです」 中島 「そこで君に秘伝を授けよう。相手が気持ちよく受けてくれる台詞を」 学生 「お、お願いします!」 次回はいよいよ最終回です。またまた1句脳外科医 長い話は 聴きません

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レビー小体型とアルツハイマー型を見分ける、PETイメージング

 レビー小体型認知症(DLB)とアルツハイマー型認知症(AD)の鑑別診断において、PETイメージングによる脳内のアセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性を測定する方法が有用である可能性が示された。国立研究開発法人放射線医学総合研究所分子イメージング研究センターの島田 斉氏らが検討を行った結果、AD患者と比較してDLB患者では一貫して顕著な脳内コリン作動性障害がみられたという。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2015年8月17日号の掲載報告。 研究グループは、脳AChE活性測定の診断能を調べるため、DLB患者とAD患者で、[11C]MP4A PETイメージング法を用いた検討を行った。DLB患者14例とAD患者25例、および年齢で適合した健常対照(HC)18例を対象とし、全被験者にMP4A PETスキャンを行い、脳内局所のAChE活性を測定した。スキャン画像の解剖学的標準化を行い、k3値、AChE活性指数を、ボクセルごとに非線形二乗法分析によって推算した。関心領域(Volumes of interest:VOI)は、正面、側頭、頭頂、後頭皮質および前方と後方の帯状束回(ACGとPCG)で、パラメトリックk3イメージで同定した。そしてVOIごとに、k3値によるADとDLBの鑑別診断能を、ROC曲線下面積(AUC)で評価した。ボクセルベースの統計学的分析も行った。 主な結果は以下のとおり。・皮質AChE活性の平均値は、AD患者(HCとの比較で-8.2%)およびDLB患者(-27.8%)ともにHCより有意に低かった(それぞれp<0.05、p<0.001)。・また、AD患者とDLB患者との間に、皮質平均AChE活性の有意な差が認められた(p<0.001)。・ACG以外の同定VOIのすべての局所において、脳AChE活性の測定により、DLBとADを区別することが可能だった。とくにPCGにおける診断能が最も有意であった(AUC=0.989、95%CI:0.965~1.000)。関連医療ニュース 認知症、アルツハイマー型とレビー小体型の見分け方:金沢大学 うつ病と双極性障害を見分けるポイントは 統合失調症と統合失調感情障害、鑑別のポイント  担当者へのご意見箱はこちら

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プライマリケアでの肺塞栓症診断予測、Wells基準が有用/BMJ

 プライマリケアで容易に適用できる肺塞栓症の診断予測モデルは5つあり、的中率はいずれも類似しているが、偽陰性率が低いという点でWells基準のモデルパフォーマンスが最良であることが示された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJanneke M T Hendriksen氏らが、システマティックレビューとプライマリケア設定での妥当性確認調査を行い明らかにした。プライマリケアでは、Wellsスコア4以下でDダイマー検査陰性であれば約10人に4人の割合で、安全に肺塞栓症を除外できる。ほかにも肺塞栓症の診断予測モデルは開発されているが、2次医療で検証されたもので、プライマリケアでの臨床能は不明であった。BMJ誌オンライン版2015年9月8日号掲載の報告より。レビューで全モデルを洗い出し、プライマリケアデータセットで検証 研究グループはシステマティックレビューにより、すべてのモデルの診断能を特定し、それらモデルをプライマリケア患者に当てはめて検証作業を行った。プライマリケア設定には、オランダの一般医300人の協力を得て、急性肺塞栓症が疑われる598例のデータがセットされた。 検討では、レビューで特定したすべてのモデルの鑑別能をC統計値で算出し比較。Dダイマー検査値を含む事前規定モデルのカットオフ値で、肺塞栓症の確率が高い群と低い群に層別化した患者群に各モデルを当てはめ、感度、特異度、的中率(全体に占める低確率予測群の肺塞栓症患者の割合)、偽陰性率(低確率予測群に占める肺塞栓症例の割合)を比較した。的中率は同等だが、偽陰性率の低さでWells基準が最良 発表されていた肺塞栓症予測モデルは10個確認された。 このうち5個(原型Wells、修正Wells、簡易Wells、改訂Geneva、簡易改訂Geneva)について、プライマリケア設定で検証することができた。 鑑別能はすべてのモデルで類似していた(C統計値の範囲:0.75~0.80)。感度は、簡易改訂Genevaの88%から、簡易Wellsの96%の範囲にわたり、特異度は、改訂Genevaの48%から簡易改訂Genevaの53%にわたっていた。 すべてのモデルの的中率は43%~48%の範囲内にあった。 一方、差がみられたのは偽陰性率で、とくに、簡易Wells(1.2%、95%信頼区間[CI]:0.2~3.3%)と簡易改訂Geneva(3.1%、1.4~5.9%)の差が大きかった(絶対差:-1.98%、95%CI:-0.33~-0.74%)。 なおいずれの診断予測モデルにおいても、3例の患者が誤って低確率群に分類され、2次医療に紹介後において初めて肺塞栓症と診断された。

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2型糖尿病への肥満手術、5年時点も転帰良好/Lancet

 肥満症の2型糖尿病患者に対しては肥満手術を行ったほうが薬物療法のみよりも、糖尿病の長期コントロールが良好であることが報告された。イタリア・Sacred Heartカトリック大学のGeltrude Mingrone氏らによる単施設非盲検無作為化試験の5年フォローアップの結果、示された。著者は、「肥満症の2型糖尿病患者において手術を治療アルゴリズムに組み込むべきである」と述べ、同時に、手術群においても高血糖再発を予防するために、血糖コントロールのモニタリングは継続すべきだとも指摘している。Lancet誌2015年9月5日号掲載の報告より。薬物療法 vs.肥満手術群の5年アウトカムを分析 先行研究の無作為化試験で、胃バイパス手術は従来薬物療法よりも、短期的な2型糖尿病コントロールが良好であることが示されていたが、フォローアップ期間が短く、研究グループは、5年アウトカムを評価することを目的とした試験を行った。 検討は、イタリアの単施設で行われ、30~60歳でBMI 35以上、過去5年以内に2型糖尿病歴のある患者を、薬物療法群または肥満手術(Roux-en-Y胃バイパス手術または胆膵路転換手術)群にコンピュータで無作為に割り付けて追跡評価した。 割り付け治療について、被験者は手術前に、試験研究者は割り付け時点で認識していた。 主要エンドポイントは、2年時点の糖尿病寛解率で、寛解は、1年間薬物療法を行っておらずHbA1c値6.5%以下および空腹時血糖値5.6mmol/L以下と定義した。 今回研究グループは、無作為化後5年時点の血糖および代謝コントロール、心血管リスク、使用薬物、QOL、長期合併症について分析。per protocolに従い主要エンドポイントをintention to treatにて評価を行った。5年時点で糖尿病寛解維持は手術群50%、薬物療法群は0% 2009年4月27日~10月31日の間に、60例の患者を胃バイパス術群(20例)または胆膵路転換術群(20例)と、薬物療法群(20例)に無作為に割り付けた。このうち53例(88%、19例、19例、15例)が、5年の追跡調査を完了した。 5年時点で糖尿病寛解を維持していたのは、手術群患者19/38例(50%)(胃バイパス群7/19例[37%]、胆膵路転換術群12/19例[63%])に対し、薬物療法群は0/15例であった(p=0.0007)。 高血糖の再発について、2年時点で寛解が認められた胃バイパス群の患者15例のうち8例(53%)、同胆膵路転換術群の患者19例のうち7例(37%)で認められた。 一方、薬物療法の有無にかかわらずHbA1c6.5%以下であったのは、胃バイパス術群8例(42%)、胆膵路転換術群は13例(68%)で、薬物療法群4例(27%)と比べて手術群の達成は有意に高率であった(p=0.0457)。 また、手術群は薬物療法群よりも体重減量が大きかったが、体重の変化により術後の糖尿病寛解または再発は予測されなかった。一方でいずれの手術も、脂質低下、心血管リスク、薬物使用との有意な関連が認められた。 糖尿病重大合併症は5例(1例は致死的心筋梗塞)でみられ、4例(27%)が薬物療法群における発生で、1例は胃バイパス群であり、胆膵路転換術群では報告例がなかった。 手術群では末期合併症または死亡は報告されなかった。栄養面における有害事象は、主に胆膵路転換術後においての報告であった。

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ドライアイの涙点プラグ、製品間で保持率に差

 涙点プラグは中等症~重症ドライアイの症状を改善するが、製品によって保持率に差があることが、カナダ・クイーンズ大学のAshley R. Brissette氏らが行った無作為化二重盲検比較試験で明らかとなった。シリコン製のスーパーフレックスプラグ(米国イーグルビジョン社)とParasol(米国オデッセイ メディカル社)を比較したもので、6ヵ月後の保持率は後者が有意に高かった。「この結果は、中等症~重症ドライアイについて安全で効果的な涙点プラグ治療を受けるために患者の意思決定に役立つだろう」と著者はまとめている。American Journal of Ophthalmology誌2015年8月号(オンライン版2015年5月18日号)の掲載報告。 研究グループは、クイーンズ大学 Hotel Dieu Hospital単施設にて試験を行った。対象は中等症~重症ドライアイ患者50眼で、スーパーフレックスプラグ群またはParasolプラグ群に無作為化した。 主要評価項目は6ヵ月後のプラグ保持率、副次評価項目はシルマーI法(mm)、涙液メニスカス高(mm)、涙液層破壊時間(BUT)(秒)、フルオレセイン角膜下側染色スコア(米国立眼研究所[NEI]スケール)、リサミングリーン結膜染色平均スコア(NEIスケール)であった。 主な結果は以下のとおり。・6ヵ月後のプラグ保持率は、Parasol群68%、スーパーフレックス群32%で、有意差が認められた(p=0.011)。・6ヵ月後の人工涙液使用は、Parasol群で少なかった(p=0.024)。・どちらの群も、結膜染色を除きすべての副次評価項目は6ヵ月後に有意な改善を認めた。・プラグ保持率以外に、群間で有意差がみられたものはなかった。

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女性はSU薬による低血糖リスクが高い

 女性は男性よりもスルホニル尿素(SU)薬による低血糖リスクが高いことが、熊本大学の梶原 彩文氏らの研究により明らかになった。これは、SU薬による低血糖の潜在的なリスク因子として女性に焦点を当てて検討した初めての報告である。著者らは、本知見について「女性の低血糖リスクだけでなく、心血管疾患および認知症リスク、死亡率増加リスクなどを低下させるためにも、患者一人ひとりに合った治療を行うことが重要であるとの考えを支持するもの」としている。Clinical drug investigation誌オンライン版2015年9月号の掲載報告。 いくつかの報告において、女性は男性よりも低血糖リスクが高い可能性が示唆されているが、まだ結論には至っていない。また、糖尿病治療薬が誘発する低血糖について女性であることを考慮に入れた検討はない。そこで本研究では、女性はSU薬による低血糖リスクが高いのかを日常診療において検討した。 熊本県で行われた日本薬剤師会の薬剤イベントモニタリングプロジェクトに参加した日本人糖尿病患者2,119人を対象に、SU薬の副作用発生率を調査した。女性と低血糖症状の発生率の関連について、多重ロジスティック回帰分析を用いて、調整オッズ比(OR)および95%信頼区間(95%CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・女性と低血糖症状の発生率には、有意な関連が認められた(男性 vs.女性; OR 2.04、95%CI:1.22~3.41、p=0.007)。・女性に特異的な低血糖のリスク因子は、糖尿病治療薬の多剤併用(2剤以上 vs.併用なし; OR 2.80、95%CI:1.17~6.67、p=0.021)、短い糖尿病治療期間(3ヵ月未満 vs.24ヶ月以上; OR:4.14、95 %CI:1.06~16.14、p=0.041)、長いフォローアップ期間(OR 1.02、95%CI:1.00~1.04、p=0.041)と同定された。

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双極性障害の喫煙率、うつ病や統合失調症と比較すると

 米国・ケンタッキー大学のJames G Jackson氏らは、世界規模の論文複合解析を行い、双極性障害と喫煙との関連について調べた。その結果、双極性障害では一般集団と比べて現喫煙者が多いこと、喫煙経験(開始)が多い一方で、禁煙者は少ないことが明らかになった。また、双極性障害患者の喫煙行動の頻度は、うつ病と統合失調症の中間に位置し、統合失調症で最も高頻度であったなども示された。Bipolar Disorders誌オンライン版2015年8月4日号の掲載報告。 本検討で研究グループは、(1)双極性障害患者は、一般集団と比べて喫煙行動との関連が認められる、(2)双極性障害患者の喫煙行動率は、うつ病患者と統合失調症患者の中間程度である、との2つの仮説を立て検証した。PubMed検索または上席著者の論文コレクションから、成人喫煙者に関する論文56本を複合解析に組み込み、双極性障害患者 vs.対照群の現喫煙者、現喫煙の重度喫煙者、喫煙者だが禁煙中、喫煙経験者の各オッズ比(OR)と95%信頼区間[CI]値を算出し評価した。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害vs.一般集団の現喫煙者の複合OR(16ヵ国51試験に基づく)は、3.5(95%CI:3.39~3.54)であった。・データは限定的であったが、禁煙者のORは0.34(95%CI:0.31~0.37)、喫煙経験者のORは3.6(95%CI:3.30~3.80)であった。・双極性障害 vs.統合失調症の現喫煙者の複合OR(10ヵ国20試験)は、0.76(95%CI:0.74~0.79)であった。・喫煙経験者は、統合失調症よりも双極性障害で少ないと言える(OR:0.83、95%CI:0.75~0.91)。・双極性障害 vs.うつ病の現喫煙者の複合OR(7ヵ国18試験)は、2.05(95%CI:2.00~2.10)であった。・喫煙経験者は、うつ病よりも双極性障害で多いと言える(OR:1.5、95%CI:1.40~1.70)。一方で禁煙者は、双極性障害のほうがうつ病よりも少ない可能性がある(OR:0.51、95%CI:0.45~0.59)。関連医療ニュース 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか 精神疾患発症と喫煙の関連性 統合失調症と双極性障害、脳の違いはどこか  担当者へのご意見箱はこちら

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リードレスペースメーカーの有用性、9割で確認/NEJM

 リードレス心臓ペースメーカーの有用性が、市販後調査試験LEADLESS IIの中間解析の結果から報告された。3ヵ国56施設で526例を登録して行われた、前向き非無作為化試験の登録初期300例のうち9割の患者で、事前規定の6ヵ月時点のペーシング閾値および感知振幅の達成が確認されたという。装置関連の重篤有害事象の発生は、患者15例につき1件の頻度であった。ペースメーカーは装置関連の合併症、とくに感染症および電源供給のリード線に関連した問題により限界が指摘されていた。NEJM誌オンライン版2015年8月30日号掲載の報告より。埋設後6ヵ月時点の有効性と安全性を評価 LEADLESS IIは、永久的な心室単腔ペーシングを必要とする患者を対象に、Nanostim(セント・ジュード・メディカル社製)の有効性と安全性について検討した試験。同装置は、FDA承認の小型化された完全植込み型リードレスペースメーカーで、カテーテルにより非侵襲的に埋設が可能である。 試験では、主要有効性エンドポイントを、6ヵ月間の容認可能な、ペーシング閾値(0.4msec時2.0V以下)および感知振幅(R波5.0V以上、または埋設時と同等もしくはそれ以上)とした。主要安全性エンドポイントは、6ヵ月間の装置関連重篤有害事象の未発生とした。 主要エンドポイントの解析は、6ヵ月間のフォローアップが完了した登録初期300例(主要コホート)のデータについて行うこととあらかじめ規定され、分析目標の有効性エンドポイントは85%のデータについて、安全性エンドポイントは86%と規定されていた。 また、付加的アウトカムの評価が、2015年6月時点で登録されていた全被験者526例(全コホート)について行われた。装置関連重篤有害事象は6.7% 全コホート526例におけるリードレスペースメーカーの埋設成功例は、504例であった(95.8%)。 主要コホート300例における、intention-to-treat解析による主要有効性エンドポイントの達成者は270例であった(90.0%、95%信頼区間[CI]:86.0~93.2、p=0.007)。 同様に主要安全性エンドポイントの達成者は280例であった(93.3%、95%CI:89.9~95.9、p<0.001)。 6月時点で、装置関連重篤有害事象が観察されたのは、6.7%であった。内訳は、経皮的除去(1.7%)、心穿孔(1.3%)、ペーシング閾値上昇で経皮的除去および装置の再埋設を要した(1.3%)であった。

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アレルギー高リスク乳児でも、急性気管支炎にアドレナリン吸入は効果なし

 乳児の急性細気管支炎に対する気管支拡張薬の吸入療法は、ガイドラインで支持されていないにもかかわらず、アトピー性疾患のある個人には有効と信じられ、しばしば用いられている。しかし、細気管支炎後にアトピー性皮膚炎、アレルギー感作または気管支閉塞を発症した乳児について解析したところ、急性細気管支炎による入院期間はエピネフリン(アドレナリン)吸入によって減少していなかったことが、ノルウェー・オスロ大学のHavard Ove Skjerven氏らによる無作為化二重盲検試験の追跡調査で明らかになった。著者は、「仮説に反し、本研究の結果、アレルギー疾患のリスクが高い小児における急性細気管支炎に対しアドレナリン吸入の試みは支持されない」とまとめている。Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2015年8月25日号の掲載報告。 研究グループは、乳児の急性細気管支炎に対するアドレナリン吸入療法が、後に気管支閉塞を発症した患者、あるいはアトピー性皮膚炎やアレルギー感作を有する患者に有用であったかどうかを評価する目的で、中等症~重症の急性細気管支炎の乳児(生後12ヵ月未満)404例を対象とした無作為化二重盲検試験の追跡調査を行った。 急性細気管支炎による入院期間中、アドレナリン吸入(ラセミ体アドレナリン20mg/mL)または食塩水吸入(0.9%食塩水)が最高で2時間ごとに行われた。投与量は乳児の体重に応じ、5kg未満は0.10mL、5~6.9kgは0.15mL、7~9.9kgは0.2mL、10kg以上は0.25mLとし、すべて0.9%食塩水2mLに溶解して吸入した。 主要評価項目は入院期間であった。 追跡調査では、2歳時に問診、臨床検査および17種のアレルゲンに関する皮膚プリックテストを行い、気管支閉塞、アトピー性皮膚炎およびアレルギー感作の有無を確認し、サブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・2歳時の追跡調査を実施できたのは294例であった。・2歳までに気管支閉塞を発症した乳児のサブグループ(143例、48.6%)では、アドレナリン吸入群と食塩水吸入群とで入院期間に差はなかった(相互作用のp=0.40)。・2歳までのアトピー性皮膚炎またはアレルギー感作発症例(77例)では、アドレナリン吸入の効果と有意な相互作用を認めた(相互作用のp=0.02)。・すなわち、2歳までにアトピー性皮膚炎またはアレルギー感作を認めなかった患者では、食塩水群と比較しアドレナリン吸入群で、入院期間が有意に短かったが(-19.9時間、p=0.003)、2歳までにアトピー性皮膚炎またはアレルギー感作を認めた患者では、アドレナリン吸入群と食塩水吸入群で、入院期間に有意差はなかった(相互作用のp=0.24)。

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乾癬治療薬の安全性は生物学的製剤でも変わらない?

 ドイツで実施された中等度~重症乾癬患者の登録試験において、従来の全身治療薬と生物学的製剤では、感染症、心血管系イベント、悪性腫瘍の発生などの安全性に差はみられなかったことが、ドイツ・ハンブルク大学のKristian Reich氏らにより報告された。Archives of Dermatological Research誌オンライン版2015年9月10日号掲載の報告。 本登録試験「PspBest」は、中等症~重症乾癬患者を対象とし、従来の全身治療薬と生物学的製剤について長期の有効性と安全性を調査することを目的として、2008年から251ヵ所の皮膚センターで実施された。 各治療薬の安全性評価にあたっては、重大な感染症、悪性腫瘍、主要有害心血管イベントに焦点が当てられた。2012年6月までに2,444例(女性40%、平均年齢47.3歳[SD 14.1]、平均罹患18.2年[SD 14.7])が登録された。平均PASIスコアは14.7、皮膚科領域に特化したQOL指標 であるDLQIは11.1、平均BMIは28.2であった。 主な結果は以下のとおり。・すべての有害事象の100人年あたりの発現率は、従来の全身治療薬投与群で1.3(SD 0.9)、生物学的製剤群で1.5(SD 1.2)で有意差はみられなかった(p>0.5)。・重大な感染症の発現は、従来の全身治療薬群0.33(95%CI:0.13-0.54)、生物学的製剤群0.65(95%CI:0.35~0.98)であった。・主要な心血管イベントの発現は、従来の全身治療薬群0.56(95%CI:0.29~0.97)、生物学的製剤群0.77(95%CI:0.41~1.31)であった。・非黒色腫皮膚がんを除く悪性腫瘍の発現は、従来の全身治療薬群0.46(95%CI:0.22~0.84)、生物学的製剤群0.49(95%CI:0.21~0.97)であった。・単一の薬剤間で安全性パラメーターに差はみられなかった。

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事例71 通院・在宅精神療法の査定【斬らレセプト】

解説事例では、毎週金曜日に定期的に通院されている患者のI002通院・在宅精神療法が、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)で査定となった。同精神療法は、「精神科を標榜している医療機関で精神科を担当する医師が、一定の治療計画のもとに対人関係の改善、社会適応能力の向上などを図るため、1回5分以上の助言等の働きかけを継続的に行う治療法を実施したときに週1回を限度に算定する」と記載がある。週1回とは、特別な定めがない限り「日曜日から土曜日」までの間に1回と定められている。事例では、気分不良を理由に6月末に定期外の受診がされており、同精神療法が算定されていた。7月3日金曜日にも来院しており、同精神療法が算定されていた。前月以前のレセプトを比較する縦覧点検にて、「週1回の算定要件に合致していない」と判断され、査定となったものである。電子レセプトには項目ごとに日付データを持たせている。月が替わっていても同一週に2回算定の判断ができるようである。レセプトは月単位での請求のため、単独月のレセプト点検では、このような誤りは発見できない。受診時の注意の他に、レセプトチェックシステムの活用も必要であろう。

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軽度うつ病患者の大うつ病予防効果を検証するRCTは実施可能か

 大うつ病の基準に満たない持続性抑うつ症状は、大うつ病に進行するリスクの高い慢性状態を表す。それら抑うつ患者や軽度うつ病に対する、人間中心療法(Person-Centred Counselling)や低強度の認知行動療法といった心理療法のエビデンスは限られており、とくに長期アウトカムは限定的であった。ブラジルのジュイス・デ・フォーラ連邦大学のElizabeth Freire氏らは、大うつ病の基準に満たない抑うつ症状および軽度うつ病患者を対象とした心理療法に関する無作為化対照試験の、実行可能性について検証を行った。BMC Psychiatry誌2015年8月15日号の掲載報告。 パイロット/実行可能性試験であった本検討は、被験者募集登録率、ベースラインから6ヵ月時点でのアドヒアランスと継続(非脱落)率を主要評価項目とした。また重大副次評価項目として、6ヵ月時点でのうつ病回復またはうつ病発症予防とし、これらの評価は被験者の治療状況を盲検化したうえで独立した評価者が構造化臨床面接により行った。5件の一般診療所(GP)で36例の患者が登録され、週1回8週にわたる人間中心療法のセッションを受ける群(各々最大1時間)と、週1回8週にわたる認知行動療法(毎回20~30分間、電話サポートでリソースの活用を促す)のセッションを受ける群に無作為に割り付けられた。 主な結果は以下のとおり。・GPの患者数からみた被験者登録率は1.8%であった。・両群の介入に関して、患者は平均5.5セッション参加した。・追跡6ヵ月時点の評価に組み込まれた患者は、72.2%であった。・6ヵ月時点で評価が行われた被験者のうち、ベースライン時に軽度うつ病と診断された被験者の71.4%で回復が認められ、ベースライン時に持続性うつ病と診断された被験者のうち66.7%は大うつ病への進行を認めなかった。・6ヵ月時点での回復およびうつ病発症予防、その他のいずれのアウトカムにおいても、治療群間で有意な差は認められなかった。・以上から、被験者登録は実行可能であり、プライマリケア設定で大うつ病の基準に満たない患者および軽度のうつ病患者に対して、人間中心療法と認知行動療法はいずれも提供可能であることが示された。・ただし、GPでの登録には多大な労力を要することも示唆された。・本研究は、短期間の人間中心療法と低強度の認知行動療法は有効であると思われること、その効果については、医療経済面の評価を含む大規模無作為化対照試験で評価すべきであることを示唆するものであった。関連医療ニュース うつ病の精神療法、遠隔医療でも対面療法と同程度 日本人治療抵抗性うつ病患者へのCBT併用試験とは:FLATT Project 自殺リスク評価の無作為化試験は実施可能なのか  担当者へのご意見箱はこちら

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2価HPVワクチン、流産リスク増大の根拠なし/BMJ

 2価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの、接種後90日未満の妊娠またはあらゆる時点の妊娠への流産リスクの増大は認められないとの報告が、米国立衛生研究所(NIH)のOrestis A Panagiotou氏らにより発表された。コスタリカ単施設で行われた無作為化二重盲検比較試験の長期フォローアップ観察試験の結果、示された。ただし妊娠13~20週時の流産リスク増大が観察され、著者はこの点を踏まえて、「関連を完全にルールアウトすることはできず、詳細な調査とさらなる検討をすべきであろう」とまとめている。BMJ誌オンライン版2015年9月7日号掲載の報告。ワクチン接種後妊娠3,394例と非接種妊娠3,227例の流産発生を比較 無作為化試験は2価HPVワクチンの有効性と安全性を評価することを目的に、2004年6月~2005年12月にコスタリカの女性18~25歳7,466例を登録して行われた。被験者は、2価HPVワクチン接種(3,727例)群と対照(A型肝炎ワクチン接種)(3,739例)群に無作為に割り付けられ、4年間の試験を完了。その後、長期観察試験(6年間)に組み込まれた(ワクチン接種群2,792例、対照群2,771例)。 長期観察試験では、対照群にさらにワクチン未接種群2,836例が加えられる一方、対照群の2価HPVワクチン接種のクロスオーバー被験者と非クロスオーバー被験者を分類し、最終的に、2価HPVワクチン接種後妊娠3,394例、同非接種妊娠3,227例(A型肝炎ワクチン接種後妊娠2,507例、ワクチン未接種群妊娠720例)について分析評価を行った。 主要エンドポイントは、2価HPVワクチン接種妊娠 vs.A型肝炎ワクチン接種/ワクチン未接種妊娠で比較した、ワクチン接種後90日未満およびあらゆる時点の妊娠における流産(米国CDC規定の妊娠20週以内の胎児喪失)リスクであった。接種後あらゆる時点の妊娠の流産発生との関連は認められず 2価HPVワクチン接種後妊娠3,394例のうち、90日未満妊娠は381例であった。 流産発生は、接種群451例(13.3%)であり、90日未満妊娠群は50例(13.1%)であった。また、非接種群は414例(12.8%)であった(A型肝炎ワクチン群12.6%、未接種群13.6%)。 非接種群と比較した90日未満妊娠群の流産発生の相対リスクは、1.02(95%信頼区間[CI]:0.78~1.34、片側検定p=0.436)であった。同様の結果は、ワクチン接種時の年齢で補正後(相対リスク:1.15、片側検定p=0.17)、妊娠時年齢で補正後(1.03、p=0.422)、また暦年で補正後(1.06、p=0.358)、および層別化解析において認められた。 2価HPVワクチン接種後あらゆる時点での妊娠では、接種とすべての流産またはサブグループの流産リスク増大との関連は、認められなかったが、妊娠13~20週時の流産リスクについて有意な増大がみられた(相対リスク1.35、95%CI:1.02~1.77、片側検定p=0.017)。 以上を踏まえて著者は、「2価HPVワクチンが、ワクチン接種後90日未満妊娠の流産リスクに影響を及ぼすとのエビデンスはない」とまとめたうえで、「ワクチン接種後あらゆる時点の妊娠群における流産リスク増大の推算は、感度分析の設定による可能性がある。しかし、関連の可能性について完全に除外はできず、さらに詳しく調査をすべきであり、さらなる検討が必要と思われる」と述べている。

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日本アレルギー学会主催「第2回総合アレルギー講習会」のご案内

 日本アレルギー学会は2015年12月12日・13日の2日間、『第2回 総合アレルギー講習会 ~Total Allergistを目指して~』を、パシフィコ横浜にて開催する。本講習会は会員、非会員を問わず、アレルギーについて関心のある医師をはじめ医療関係者の受講を広く歓迎している。 開催概要は以下のとおり。【日時】2015年12月12日(土)、13日(日)【会場】パシフィコ横浜 会議センターアクセス情報はこちら【会長】大田 健氏(独立行政法人国立病院機構東京病院)【定員】2,000名【受講料】20,000円(テキスト代を含む)【対象】会員・非会員を問わず受講可能【講習内容】講義および実習当日のプログラムはこちら【取得単位】アレルギー専門医 認定・更新単位 10単位【受講申し込み】事前参加登録のため、オンライン登録をお願いします。詳細はこちら※当日の参加受付はできません。【その他】託児室(事前申し込み制)関連書籍販売(2店舗開設)「日本アレルギー学会 第2回 総合アレルギー講習会」詳細はこちら(昨年開催した第1回講習会の様子もご覧いただけます。)

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仮説検定としては意味があるが独創的とは言い難い(解説:野間 重孝 氏)-415

 本研究は、急性ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者に対して、プライマリ経皮的冠動脈インターベンション施行前にシクロスポリンを静脈内投与することにより、1年時点で評価した有害事象(全死因死亡、初回入院中の心不全の悪化、心不全による再入院、左室拡張末期容積15%以上増加のリモデリング)の発生を軽減することができるという仮説を検定したものである。 本研究に先立ち、著者らは2008年に58例を対象としたパイロットスタディを発表しており、シクロスポリンの前投与により、CK遊出量・トロポニン遊出量の減少、第5病日においてMRI hyperenhancementで計量した心筋梗塞量の減少を報告した1)。 今回の研究は、上記のphase3に当たるものであり、42施設、970例を対象として二重盲検プラセボ対照無作為化試験として実施された。結果は、複合アウトカム発生オッズ比が1.04であり、サブ解析でも優位を示した項目がみられず、仮説は否定された形となった。 この今回の研究における仮説の基礎には、心筋梗塞巣のサイズの決定に、再潅流に伴ういわゆる再潅流障害が重要な役割を果たしており、シクロスポリンはミトコンドリア壊死を防止することにより再潅流障害を軽減することができるのではないかとの予想があった。この点については、若干の解説が必要であろう。 真核生物の細胞内小器官であるミトコンドリアは、ADPの酸化的リン酸化によりATPを産生することを重要な役割としており、構造としては二重の生体膜(内膜と外膜)によって囲まれている。内膜と外膜の接触部位(contact sites)にはPTP(permeability transition pore)と呼ばれる穴構造が存在する。PTPはCaイオンの存在下に開口することが知られており、開口により膜電位が低下すると、まずアポトーシスが発生し、さらに開口して全エネルギーが失われると(complete deenerzation)ミトコンドリアが壊死に陥ることが知られている。心筋再潅流時にはミトコンドリアがCaイオン過負荷状態にあると考えられ、これがミトコンドリアの壊死から細胞全体の壊死へと発展するのではないかと考えられている。 シクロスポリンはPTPの構成物質中のcyclophilin Dとadenine nucleotide translocaseの結合を阻害することにより、PTPの開口を防止することがin vitroで確かめられており、このことからシクロスポリンは心筋再潅流時のCa過負荷から、ミトコンドリアを保護する働きがあるのではないかと考えられたのである。 予想が成立しなかった原因はいくつか考えられるだろう。シクロスポリンの一連の保護仮説の真偽は置いておくとして、まず第1に考えられるのは静脈内投与によっては十分量の薬剤が心筋に到達しなかった可能性である。これは、かなり初歩的な考え方のように思われるかもしれないが、薬剤前投与で現在まではっきり有効であると証明された薬剤がないことからも、静脈内投与の限界が考えられなくてはならないのではないだろうか。 第2に、そもそも大梗塞域の形成に果たす再潅流障害の意味付けを過大評価しているのではないかという疑問である。著者らが対象とした症例はいずれも重症例であったが、その病状形成に再潅流障害が大きく関与していたとどうして証明できるだろうか。単純に虚血域が大きいことだけで十分な危険因子なのである。 第3には、再潅流障害が起こったとして、in vitroの実験とは異なり、PCIにより再潅流している以上、微小血栓を末梢に飛ばすなど化学的以外の物理的な要因も考慮されなければならないことである。また、心筋壊死巣の大きさにはtotal ischemic timeこそが大きな意味を持つと考えられ、12時間以内という縛りでは、十分に速やかに再潅流が得られたとは言い難い点も指摘しておきたい。 急性心筋梗塞に対する治療は、この20年に著しい進歩を遂げたと言ってよい。しかしながら、それはPCI施行可能施設の増多、救急隊員・救命救急医の練度の向上、door to balloon timeの短縮といった社会的、人的な努力によるところが大きい。ステントの進歩や血栓吸引療法の登場など種々の進歩はあったものの、いわゆるパラダイムシフトが起こるには至っていない。本研究も、シクロスポリンというこの分野ではあまり注目されることのない薬剤を使用したこと、ミトコンドリア保護に注目した点は新しいと言えるが、根本的にはほかの薬剤の術前投与研究を踏襲したもので、目新しいとまでは言えない研究と考えられる。

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108)握力をキーワードにサルコペニア対策を指導【高血圧患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 患者先生、最近、困っていることがあって……。 医師それは何ですか? 患者手の力が弱くなったのか、ビンのふたが開けにくくって……。 医師確かに、握力が弱るとだんだんビンや缶のふたを開けるのが億劫になりますね。 患者そうなんです。 医師ちょっと握力を測ってみましょうか?(握力計をみせる) 患者はい。……。 医師右が○○㎏、左が○○㎏です。若い頃と比べて、いかがですか。 患者かなり落ちていますね。鍛えないといけませんね。 医師握力は鍛えると、上がっていきますので。チャレンジしてみてください。次回もチェックしますね。 患者はい。わかりました(うれしそうな顔)。●ポイント若い頃の握力と比較することで、体力低下への気づきが生まれます●資料 1) Chen LK, et al. J Am Med Dir Assoc. 2014;15:95-101. 2) Arai H, et al. Geriatr Gerontol Int. 2014;14:1-7.

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てんかん再発リスクと初回発作後消失期間

 近年てんかんの定義は見直され、1回の非誘発性発作が生じ、その後10年間の発作再発率が60%以上の場合とされた。この定義は、4年時点の95%信頼区間(CI)の下限値を用いて予測した、2回目の非誘発性発作後に起こる3回目の再発リスクに基づいたもので、初回発作の高い再発率(発作消失期間の延長に伴い急激に低下)は考慮されていない。オーストラリア・ロイヤル・パース病院のNicholas Lawn氏らは、てんかん初回発作後の発作消失期間が、再発に及ぼす影響について検討した。その結果、発作消失期間が12週以下と短い場合は、てんかんの新定義に該当する患者が認められず、初回発作後の発作消失期間が、再発リスクに関連している可能性を示唆した。Epilepsia誌2015年9月号の掲載報告。 研究グループは、初回発作後の長期アウトカム、発作消失期間が発作再発の可能性に及ぼす影響、てんかん新定義の妥当性を検討した。2000~2011年に病院で確認された1回の非誘発性発作を認めた成人798例について、前向きに解析した。発作再発の可能性を発作消失期間、病因、脳派(EEG)、神経画像所見により解析した。 主な結果は以下のとおり。・10年時点における発作再発の可能性は、EEGあるいは神経画像所見上でてんかん型異常を認める患者の60%以上に認められ、これはてんかんの新定義に見合ったものであった。・しかし、再発リスクは高い時間依存性を示し、発作消失期間が短い(12週以下)場合、てんかんの新定義を満たした患者群はなかった。・2回目の発作を起こした407例のうち、4年時点で3回目の発作を起こす可能性は68%(95%CI:63~73%)、10年時点における可能性は85%(同:79~91%)であった。・発作消失期間が短い場合に、てんかん新定義を満たす患者がいなかったことから、初回発作後の発作消失期間が再発リスクに大きく影響すると考えられた。・データから得た10年時点での3回目発作リスクに基づいて閾値を設定したところ、初回発作を起こした患者の中にてんかん既往例はみられなかった。これらのデータは、初回発作後のてんかんを定義するうえで有用である可能性がある。関連医療ニュース 寛解後、抗てんかん薬はすぐに中止すべきか 日本人難治性てんかん、レベチラセタムは有用か 気温31℃超で気分症状が再発!入院も増加  担当者へのご意見箱はこちら

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たこつぼ心筋症、9割が女性、6割で神経・精神障害/NEJM

 たこつぼ心筋症の患者は、その9割弱が女性で、神経・精神障害の有病率は約6割と急性冠症候群(ACS)に比べ有意に高率であることが明らかになった。スイス・チューリッヒ大学病院のC. Templin氏らが、欧州・米国の協同によるたこつぼ患者レジストリからの患者1,750例と、急性冠症候群のマッチング患者について行った試験の結果、判明した。たこつぼ心筋症の経過やアウトカムについては十分に解明されていなかった。NEJM誌2015年9月3日号掲載の報告より。欧米レジストリ1,750例とACS患者を適合比較 研究グループは、欧州・米国26ヵ所の医療機関コンソーシアム「国際たこつぼレジストリ」から、たこつぼ心筋症の患者と、年齢や性別をマッチングした急性冠症候群患者について比較し、その臨床的特徴やアウトカムを分析した。 たこつぼ心筋症患者1,750例のうち、89.8%が女性で、平均年齢は66.8歳だった。トリガーは身体的ストレス36%、感情的ストレス28% たこつぼ心筋症の要因(トリガー)としては、身体的ストレスが36.0%と、感情的ストレスの27.7%より高率だった。一方、28.5%で明らかなトリガーが認められなかった。 また、たこつぼ心筋症の患者は、神経障害や精神障害の有病率が55.8%と、ACS患者の同25.7%と比べ、有意に高率だった(p<0.001)。さらに、たこつぼ心筋症患者の平均左室駆出率は40.7%(標準偏差:11.2)と、ACS患者の51.5%(同:12.3)に比べ、有意に低率だった(p<0.001)。 ショックや死亡といった重度院内合併症の発生率は、両群で同等だった(p=0.93)。院内合併症の独立予測因子としては、入院時の身体的トリガー、急性神経・精神疾患、トロポニン値上昇、左室駆出率低下が挙げられた。 なお、たこつぼ心筋症患者の長期追跡期間内の、主要有害心・脳血管イベントの発生率は9.9%/患者年であり、全死因死亡率は5.6%/患者年だった。 結果について著者は、「急性心不全症候群の罹患率、死亡率が相当なものであることを示すものだ」と述べている。

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