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FDA、ダビガトランの中和剤idarucizumabを承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、抗凝固薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)の特異的中和剤idarucizumab(商品名:Praxbind)を迅速承認した。対象はダビガトラン服用中で緊急に抗凝固作用の中和を要する患者。 idarucizumabは初めて承認されたダビガトランの特異的中和薬。ダビガトランに結合し、その作用を無効化する。 idarucizumabの効果と安全性は、ダビガトランを服用した283例の健康成人(抗凝固治療を必要としない成人)による3つの試験で検討された。その結果、idarucizumabが投与された健康成人において、ダビガトランの血中量(非結合型ダビガトランの血漿中濃度を測定)は迅速に減少し、その作用は24時間持続した。また、ダビガトラン服用中で、止血困難な出血が発生した、あるいは緊急手術が必要となった123例の患者による試験が行われた。この進行中の試験では、89%の患者でダビガトランの抗凝固作用が完全に中和され、その作用はidarucizumab投与後 4時間以上持続した。同試験において、idarucizumabの頻度の高い副作用は高カリウム血症、意識錯乱、便秘、発熱、肺炎であった。 ダビガトランの作用中和により、患者は血栓や心房細動による脳卒中のリスクにさらされることになる。そのため、idarucizumabの添付文書では、医療者が医学的に適切だと判断し次第、すみやかに抗凝固療法を再開することを推奨している。FDAのプレスリリースはこちら。

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非精神科医のための、高齢者のうつの特徴と治療法(解説:岡村 毅 氏)-436

 本論文は、高齢者のうつ病治療において治療抵抗性の場合に、抗うつ薬に加えてアリピプラゾールを加える増強療法が、効果に優れ、忍容性も良好であることを示したものである。 明日からの臨床に役立つ、きわめて臨床的な論文だ。では、どう役に立つのかを精神科以外の方々にわかりやすく説明してみたい。 現在、わが国の高齢者は人口の25%を超え、今後40%にまで上昇する。高齢期は、喪失体験、体の病気、社会的役割の変化(多くは減少する)が一般に多くみられ、心理的苦悩は大きい。さらに、単身独居高齢者が増えている。苦悩を緩衝するのは家族や仲間やコミュニティであるが、そういった機会がない高齢者も多い。加えて、高齢期の経済格差は苛烈であり、経済苦を抱える方は多い。うつ病になりやすいのである(細かいことであるが本研究では60歳以上を高齢者としているが、ご承知のとおり、わが国では65歳以上を高齢者とする)。 調査によれば、わが国でうつ病の方がまず受診するのは、精神科・心療内科ではなく、多くの場合内科である。プライマリケアを担う皆さまの外来には、多くの高齢のうつ病の方が受診していることであろうし、今後も増え続けるであろう。 ここから先は、精神科特有のおしゃべりに聞こえるかもしれないが、「こころ」という見えないものを対象とし、また「ことば」で多くが表出される内的世界を、やはり「ことば」で捉えなければならないという精神科特有の事情をご理解いただきたい。さて、高齢期のうつ病はいくつか特徴があるとされてきた。 なかでも、高齢期の焦燥うつ病(agitated depression)はしばしば言及される概念である。うつ病とは元気がなくなり思考が制止した状態と思っている方もいるかもしれないが、焦燥感に苛まれながら多くのことばを語る患者さんもいる。彼らの思考は制止していない、ただ1ヵ所をぐるぐると巡っているだけである。これをうつ状態と躁状態の混合状態と考えた、いにしえの人々もいた。この考え方は、実はうつ病と思っている病態の多くに躁が隠れている(Bipolar spectrum)という、近年の考え方に合致するものであり、精神疾患の分類とは何かという根源的問題を提起する。 おしゃべりが過ぎたので臨床に戻ると、焦燥が非常に強い高齢者のうつは、治療に抵抗性であることが多く、まずは落ち着かねば基本中の基本である休養すら取れないため、抗うつ薬の次に(抗うつ薬内部のクラス変更や抗うつ薬併用ではなく)抗精神病薬による増強療法を選択することが多い。個人的には、SSRIなどで焦燥が賦活されて大変つらい思いをされていた高齢者の方を紹介され、抗精神病薬を少量導入したところ、劇的に改善したという経験は多い。ただし、抗精神病薬の有害事象(パーキンソン症状など)は高齢者には出現しやすいので、専門医でなければ使用を躊躇してしまうかもしれない。パーキンソン症状の少ないクエチアピンという手もあるが、代謝系の副作用が問題になる。 よって今回の報告は、このような方にアリピプラゾールを使うときのリスクベネフィットの評価において、非常に大きな臨床的意思決定の基盤をもたらしてくれた。明日からの臨床に役立つであろう。 さて、おしゃべりに戻ろう。本報告では焦燥うつ病という概念は出てこない。最近のうつ病一般の分類においては「軽症」、「中等・重症だが(妄想などの)精神病症状はない」、「中等・重症で精神病症状を伴う」とすることが支配的で、焦燥うつ病や躁うつ混合状態などは一般的でなく、エビデンスとする(社会に還元する)にはこの思考に乗らねばならない。しかし、実地臨床においては焦燥うつ病は使える概念であり、専門医以上の精神科医は皆知っている概念である。 説明は以上であるが、伝わったであろうか。精神科医はついおしゃべりが過ぎる傾向があるが、私のつたないコラムで、精神科の臨床が一方で最新のエビデンスに目を配りつつ、一方では現在支配的ではない思想も知識として知っていなければならず、また最終的には目の前の個人の固有のQOLを目指すものである、という感じでやっていますということが伝われば本望である。

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統合失調症患者にはもっと有酸素運動をさせるべき

 初回エピソードの統合失調症患者のメタボリックシンドロームおよび代謝異常の有病率は、健常対照と比較して有意に高く、また1年間の治療フォローアップ中にいずれも有意な増大が認められたことが、デンマーク・オーフス大学病院のL. Nyboe氏らによる検討の結果、示された。さらに、メタボの有意なリスク因子として、有酸素運動の不足を示唆する所見もみられたという。結果を踏まえて著者らは、「健康的なライフスタイルを、精神科治療およびリハビリテーションの一部として推進していかなくてはならない」と提言している。Schizophrenia Research誌2015年10月号の掲載報告。 研究グループは、メタボリックシンドローム(MetS)と代謝異常の有病率について、初回エピソード統合失調症患者と年齢・性別で適合した健康対照と比較すること、また、治療1年間のMetSの変化、さらにMetSの予測因子について調べた。MetSは、国際糖尿病連合(IDF)の基準に基づく腹囲、血圧(BP)、トリグリセライド(TG)、高密度リポタンパク質(HDL)、空腹時血糖値で特定した。また、被験者の、身体的活動度、有酸素運動、喫煙、食習慣、睡眠障害、抗精神病薬および向精神薬の情報についても入手。ベースライン、フォローアップ1年時点で評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、初回エピソード統合失調症(FES)患者99例、健常対照50例であった。・FES患者は健常対照と比較して、MetSのベースライン有病率が高かった(p=0.07)。・また、各代謝異常のベースライン有病率も高く、腹囲(p<0.01)、TG(p<0.01)、HDL(p=0.017)、空腹時血糖値(p=0.04)は有意に高値であった。・FES患者は試験期間中、MetS(p=0.03)の有病率、および腹囲(p=0.04)、TG(p=0.01)が有意に増大した。・抗精神病薬および身体活動度の低さが、MetS増大と有意に相関していた。・多変量解析では、有酸素運動の少なさが、代謝異常やMetSの最も強固で有意な予測因子であった。関連医療ニュース 統合失調症患者の運動増進、どうしたら上手くいくか うつ病へのボルダリング介入、8週間プログラムの成果は 子供はよく遊ばせておいたほうがよい  担当者へのご意見箱はこちら

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生体弁で弁尖運動が低下、脳卒中・TIAリスク増大の可能性も/NEJM

 大動脈生体弁の植込みをした患者について調べた結果、弁尖運動の低下が認められ、その発生率はワルファリンによる抗凝固療法を行った患者のほうが、抗血小板薬2剤併用療法を受けた患者に比べ低率であることが判明した。弁尖運動の低下は、抗凝固療法により改善することも確認されたという。米国・Cedars–Sinai Heart InstituteのRaj R Makkar氏らが、約190例の患者について調べ報告した。弁尖運動の低下は、脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の発生リスクを増加する可能性も示唆され、著者は「今回発見した所見の臨床的アウトカムへの影響について、さらなる調査を行う必要がある」と指摘している。NEJM誌オンライン版2015年10月5日号掲載の報告。四次元立体レンダリングCT画像で弁尖運動の低下を判定 今回の検討の背景には、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)後に脳梗塞を発症した患者について、CTにおいて大動脈弁の弁尖運動の低下が確認され、不顕性の弁尖血栓症の懸念が持ち上がったことがある。 研究グループは、TAVR臨床試験の被験者55例と、TAVRまたは外科的大動脈生体弁植込み術を実施した患者に関する2ヵ所の医療機関の単独レジストリ登録者132例を対象に、四次元立体レンダリングCT画像データと、抗凝固療法、脳卒中やTIAを含む臨床的アウトカムに関する情報を得て分析を行った。弁尖運動低下は抗凝固療法で改善 結果、CT画像で弁尖運動の低下が認められたのは、臨床試験被験者55例中22例(40%)、患者レジストリ132例中17例(13%)だった。弁尖運動の低下は、TAVR・外科的植込み術ともに複数種の生体弁で認められた。 弁尖運動低下の発生率は、抗血小板薬2剤併用療法を行った群では臨床試験群55%、レジストリ群29%に対し、ワルファリンによる抗凝固療法を行った群ではともに0%と発生率は有意に低かった(それぞれ、p=0.01、p=0.04)。 被験者のうち追跡CT画像を撮影した患者において、抗凝固療法を受けた11例全例で弁尖運動の低下は改善したが、抗凝固療法を受けていなかった10例では同改善が認められたのは1例のみだった。 弁尖運動の低下による脳卒中またはTIAの発生率については、臨床試験群では有意差はなかったものの、レジストリ群では、弁尖運動が正常な人では115例中1例に対し、弁尖運動低下が認められた人では17例中3例と有意に高率だった(p=0.007)。

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日本糖尿病学会:ワークショップ「輝け!女性糖尿病医」を開催

 日本糖尿病学会「女性糖尿病医をpromoteする委員会」は10月30日、日本糖尿病学会 中国四国地方会 第53回総会内で、ワークショップ「輝け!女性糖尿病医」を開催する。ワークショップ 「輝け!女性糖尿病医」開催概要【日時】10月30日(金) 18:20 ~ 19:10【会場】米子コンベンションセンター 6F 第7会議室(日本糖尿病学会 中国四国地方会 第53回総会:D会場)交通アクセス情報はこちら【座長】藤川 るみ氏(グランドタワー メディカルコート)【講師】片岡 仁美氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)【主催】日本糖尿病学会「女性糖尿病医をpromoteする委員会」【共催】日本医師会 なお、学会ホームページ内「女性糖尿病医サポートの取り組み」では、同ワークショップ開催にあたって「企画者からのメッセージ」を掲載している。以下の「関連リンク」より閲覧可能。関連リンク「おすすめのイベント情報 :第53回中国四国地方会」(日本糖尿病学会「女性糖尿病医サポートの取り組み」内)

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ニボルマブ、非扁平上皮NSCLCにも適応拡大:FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は2015年10月9日、プラチナベース化学療法にもかかわらず進行した進行(転移性)NSCLCの治療薬として、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)の適応拡大を承認した。ニボルマブはすでに、進行扁平上皮NSCLCに対して承認されていたが、今回、非扁平上皮NSCLSにも適応されたもの。 今回の承認は、582例の治療歴を有する進行・再発性非扁平上皮NSCLCに対してニボルマブとドセタキセルを比較したオープンラベルの無作為化試験(CheckMate-057)の成績によるもの。主要評価項目である全生存期間はニボルマブ群で12.2ヵ月と、ドセタキセル群の9.4ヵ月に比べ有意に延長した。また、CRおよびPRとなった患者をみると、ニボルマブ群では効果が平均17ヵ月持続したのに対し、ドセタキセル群では平均は6ヵ月であった。FDAのプレスリリースはこちら。

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免疫不全患者の呼吸不全に対してわざわざ非侵襲性換気を用いなくてもよいのか?(解説:倉原 優 氏)-435

 本研究は、免疫抑制状態にある患者、とくに悪性疾患の患者の呼吸不全に対する臨床試験である。ICUに入室を余儀なくされた患者に対して、非侵襲性換気(NIV)か酸素療法のどちらがベターかというシンプルな内容である。 これまでの通説というか、暗黙の了解として、こういった場面ではNIVに軍配が上がっていた。しかしながら、レファレンスにも挙げられているように、その根拠となった免疫抑制状態にある患者の臨床試験は、10年以上前の小規模なランダム化比較試験である1)。今回の臨床試験はその“エビデンス”を少し修正させる結果なのだろうか? 本研究のプライマリエンドポイントである28日死亡率は、NIV群24.1%、酸素療法群27.3%と有意差はみられなかった。また、挿管率についても有意差はなかった。なお、本試験の呼吸不全の原因は3分の2が感染症とされており、がんそのものの悪化による例は全体としてはマイノリティである点を付け加えておきたい。 しかし、この試験の結果を受けて「なんだ、免疫不全患者の呼吸不全に対してわざわざNIVを使わなくてもよいのか」と考えるのは早計かもしれない。その私見を以下に述べたい。 この試験では、ハイフロー療法をいずれかの時点で実施された患者が、全体の3割以上を占める。この酸素療法は、私たちがイメージしている「酸素療法」とは性質を異にしており、集中治療の現場における酸素化の改善能はきわめて高いものである2)。NIVに引けを取らないハイフロー療法が含まれた状態で解析されている。論文の最後にも「ハイフロー療法、通常の酸素療法、NIVの3群を比較した臨床試験が望ましい」と書かれてあり、著者もこのlimitationは自覚しているのだろう。 また、悪性疾患の患者が明らかに感染症で悪化している場合はともかく、初期の時点ではがんそのものの悪化なのかどうか判断ができないことが多い。そのため、実臨床ではどういった酸素療法を行うかはケースバイケースである。そして、「酸素のみで管理ができないからNIVを導入する」というのがおそらく一般的な思考回路であって、通常の酸素療法とNIVを比べるのはどことなく違和感を感じる。 臨床試験は、現場のナラティブな側面にはなかなか踏み込めない。しかし、今回の研究を拝見する限り、少なくとも呼吸不全に対する「NIV神話」というのは少し言い過ぎであることは間違いなさそうだ。

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事例75 ピタバスタチンカルシウム(商品名:リバロ)錠1mgの査定【斬らレセプト】

解説事例では、高脂血症の患者に対してピタバスタチンカルシウム(リバロ®)錠1mgを処方したところ、A事由(医学的に適応と認められないもの)にて査定となった。同錠の添付文書をみてみると、効能・効果には「高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症」とある。使用上の注意には、「適用の前に十分な検査を実施し、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症であることを確認した上で、本剤の適用を考慮すること」と記載されていた。傷病名欄の高脂血症と効能・効果に記載された傷病名との不一致と判断されたことが査定事由であった。コンピューター審査では、効能・効果に記載された傷病名そのものが記載されていないと、原則として査定対象となる。明らかに医学的に対象であると判断しての投与であっても、レセプト上で妥当性の判断ができないと機械的に査定となる。効能・効果と不一致の場合の対策としては、あらかじめ医学的必要性を記載して、人の目の点検に委ねることが必要である。

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ダニ媒介性脳炎に気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第12回目となる今回は「ダニ媒介性脳炎」についてです。対岸の火事ではない! ダニ媒介性脳炎「ダニ媒介性脳炎」っていわれても、そんな病名聞いたことがないという方々も多いのではないでしょうか。ダニ媒介性脳炎はその名のとおり、マダニ属(Ixodes)のマダニに刺されることで脳炎症状を呈する感染症であり、原因となる微生物はデングウイルス、日本脳炎ウイルスなどと同じフラビウイルスに属する、ダニ媒介性脳炎ウイルスです。図はダニ媒介性脳炎の流行地図ですが、ロシアからヨーロッパにかけて広く流行しています。ダニ媒介性脳炎は、中部ヨーロッパ型とロシア春夏型に分かれ、それぞれ分布が異なります。この流行地図を見て「あっ、日本は流行してないのね…じゃあ読むのやめよう」と思ったあなたッ! そう思われるのはちょっと早いのではないでしょうか。何を隠そう、日本でもダニ媒介性脳炎の感染者が、1例だけ報告されているのですッ!2) この症例が診断されたのは1993年、そう今から20年以上も前のことです。北海道上磯町で酪農を営む女性が、突然の発熱、複視、けいれんを発症し、当初日本脳炎が疑われたのですが、精査の結果、ダニ媒介性脳炎であったことがわかりました。この患者さんの家の近くにいた犬10匹のうち5匹でダニ媒介性脳炎ウイルス抗体が上昇しており、この地域にウイルスが存在していることもわかっています。北海道ではヤマトマダニ(Ixodes ovatus)が媒介すると考えられています。もう一度言いましょう。日本でもダニ媒介性脳炎に感染する可能性があるのですッ!! しかし、その後20年間患者は1人も報告されていないことから、少なくとも感染するリスクは高くはないのだと思われます。また、日本脳炎のように不顕性感染も一定数いると考えられており、感染していても発症せずに診断に至らない事例もあるのではないかと推測されます。ダニ媒介性脳炎の特徴は2相性ダニ媒介性脳炎は、2相性の経過をたどるとされています。ダニ刺咬後7~14日の潜伏期を経て、発熱、頭痛、倦怠感、関節痛といった非特異的な症状で発症します(第1相)。これがだいたい1~8日くらい続いて、いったん症状が消失します。その後、第2相として発熱と神経学的症状が出現します。この神経学的症状は髄膜炎から脳炎までさまざまです。ヨーロッパでみられる中部ヨーロッパ型よりも、ロシア東部でみられるロシア春夏脳炎のほうが、より重篤で致死率も高い(20~30%)とされています。救命できても麻痺などの後遺症を残すこともあります。「春夏」などと牧歌的な名前のクセに実に凶悪なヤツです。こういう恐ろしいウイルスが、北海道にいるのかと思うと怖いですね…。日本での初症例で当初疑われていたように、日本脳炎との鑑別が問題になると思われますが、わが国での日本脳炎の流行が西高東低であることを考えると、北海道で起こった脳炎では、ダニ媒介性脳炎も鑑別として考慮すべきと考えられます。なお、ダニ脳炎には有効な治療薬はなく、支持療法が主体となります。ダニの予防にはDEET配合防虫剤最後に予防についてですが、ダニ脳炎にはワクチンがあります。流行地域を訪れる旅行者すべてがワクチン接種をする必要はありませんが、流行地域でキャンプをする、あるいは森林地域を行脚するといった予定がある場合には、ワクチン接種が推奨されます。残念ながらダニ脳炎ワクチンは国内で未承認ですので、未承認ワクチンを取り扱っているトラベルクリニックなどで接種をする必要があります。また、「第7回 チクングニア熱に気を付けろッ」で防蚊対策について述べましたが、DEETはマダニにも有効です。DEETを含む防虫剤を適切に使用することで、ダニ刺咬を防ぐことができます。今回は、ダニ媒介性脳炎というほぼ誰も診たことがない感染症を取り上げましたが、次回は今、日本で非常に問題になっている再興感染症の「梅毒」について取り上げたいと思いますッ!1)Richard L. Guerrant, et al. Tropical Infectious Diseases: Principles, Pathogens and Practice. 3rd ed. Amsterdam: Elsevier B.V.;2011.2)Takashima I, et al. J Clin Microbiol.1997;35:1943-1947.

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注意が必要なトランスジェンダーのメンタルヘルス

 中国医科大学のXiaoshi Yang氏らは、同国におけるトランスジェンダー女性のうつ病罹患状況とその背景要因を検討するため横断研究を行った。その結果、中国のトランスジェンダー女性は、うつ病を高頻度に経験していることを報告した。また、彼女たちのうつ病は、トランスジェンダーに関連する差別や性転換の状況よりも、特定あるいは不特定のパートナーの有無により予測できること、セックスパートナーの存在がうつ病に関連していること、また、自己効力感がうつ病の軽減に好影響を与えうることなどを報告した。そのうえで、「彼女たちがうつ病に対処できるよう、またパートナー(とくに特定あるいは不特定の)とのリスキーなパートナーシップの特徴を見極められるように、自己効力感の改善に重点を置いた介入をすべきであることが示唆された」と報告している。PLoS One誌オンライン版2015年9月14日号の掲載報告。 トランスジェンダー女性は、性転換に関連する差別や社会的サポートの欠如にしばしば悩まされている。そのことは多大な精神的打撃となり、結果として、この集団における高いうつ病罹患率につながっている可能性がある。自己効力感の増大は、性転換のうつ病が及ぼす悪影響を抑える可能性がある。しかし、トランスジェンダー女性のうつ病予防効果を検討した利用可能な研究はほとんどなく、中国人トランスジェンダー女性のメンタルヘルスを扱った研究も不十分であった。 そこで研究グループは、中国のトランスジェンダー女性におけるうつ病罹患率を調査し、その関連要因を探った。2014年1月~7月に、遼寧省瀋陽市で便宜的抽出法を用いたサンプリング(convenience sampling)により横断研究を実施した。トランスジェンダーの女性209例を対象に、Zungうつ病自己評価尺度(SDS)、人口動態学的特性、性転換の状況、セックス・パートナーシップ、トランスジェンダーであるために経験した差別、ソーシャルサポート尺度であるMultidimensional Scale of Perceived Social Support(MSPSS)、General Self-efficacy Scale(GSES)が網羅された質問票を用いて対面インタビューを行った。SDSスコアに関連する要因を階層多重回帰モデルにより分析した。 主な結果は以下のとおり。・トランスジェンダー女性のうつ病罹患率は45.35%であった。・特定のパートナーあるいは不特定のパートナーのいる性転換女性は、それらがいない場合に比べ高いSDSスコアを示した。・回帰分析により、セックスパートナーの状況はうつ病スコアにおける全分散の多く(16.6%)を説明することが示された。・自己効力感は、うつ病と負の関係にあった。関連医療ニュース うつになったら、休むべきか働き続けるべきか スタイルを気にしすぎる女性はうつに注意を 職場のメンタルヘルス、効果的な方法は:旭川医大  担当者へのご意見箱はこちら

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インフルエンザ関連肺炎患者に多いワクチン未接種/JAMA

 市中肺炎で入院した小児および成人を対象に、インフルエンザ関連肺炎患者群と非関連肺炎患者群のインフルエンザワクチン接種率を調べた結果、前者のほうが低く未接種者の割合が多かったことが示された。米国・ヴァンダービルト大学医学部のCarlos G. Grijalva氏らが、市中肺炎入院を評価する多施設共同前向き観察研究Etiology of Pneumonia in the Community(EPIC)のデータを分析し、報告した。これまで、インフルエンザワクチン接種と、インフルエンザの重篤合併症の肺炎との関連を評価した研究はほとんど行われていなかった。JAMA誌2015年10月13日号掲載の報告。全米4地域の市中肺炎入院患者を分析 EPICは、2010年1月~12年6月に全米4地域8病院で被験者を登録して行われた。研究グループは同患者のうち、検査でインフルエンザに感染していることが確認され、当該インフルエンザシーズン中のワクチン接種の有無が判明していた生後6ヵ月以上の患者のデータを用い、インフルエンザワクチン接種と市中で発生し入院となったインフルエンザ関連肺炎発生との関連を評価した。なお、直近の入院患者、慢性期ケア施設からの入院患者、重症免疫不全患者は除外した。 ロジスティック回帰分析法により、インフルエンザウイルス陽性(ケース)肺炎患者 vs. 陰性(対照)肺炎患者のワクチン接種オッズ比を比較した。人口統計学的変数、合併症、季節、研究登録地域、疾患発症の時期で補正を行った。 ワクチンの有効性について、(1-補正後オッズ比)×100%で推算。主要評価項目は、インフルエンザ関連肺炎で、鼻/口咽頭スワブによる検体をリアルタイムRT-PCR法で確認した。ワクチン接種率、インフルエンザ関連肺炎患者17%、非関連肺炎患者29% 試験期間中に肺炎で入院した適格患者は、全体で2,767例であった。 このうちRT-PCR法でインフルエンザウイルス陽性と認められた患者(症例群)は162例(5.9%)であった。62例(38%)がA(H1N1)pdm09型、51例(31%)がA(H3N2)型、43例(27%)がB型、4例(3%)がA型のサブタイプ不明、2例(1%)はA型とB型重複感染であった。なお、患者162例のうち小児患者は68例(42%)であった。年齢中央値は162例全体では31歳、成人患者52.5歳、小児患者3歳、女性は73例(45%)であった。 162例のうち、インフルエンザワクチン接種を受けていた人は28例(17%)であった。 一方、非インフルエンザワクチンウイルス陰性であった患者2,605例(対照群)において、インフルエンザワクチン接種を受けていた人は766例(29%)であった。 症例群と対照群の接種オッズ比を比較した補正後オッズ比は0.43(95%信頼区間[CI]:0.28~0.68)で、インフルエンザワクチンの有効性は56.7%(95%CI:31.9~72.5%)と推算された。

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緑膿菌による角膜炎、多剤耐性のリスクは?

 多剤耐性緑膿菌角膜炎のリスク因子は、潤滑軟膏使用、眼表面損傷および保護コンタクトレンズ使用であることを、インド・L V Prasad Eye InstituteのJayesh Vazirani氏らが後ろ向き症例対照研究の結果、示した。著者は、「防腐剤が入っていない潤滑軟膏は、感染源またはリザーバーとして作用する可能性がある」と指摘したうえで、「多剤耐性緑膿菌角膜炎は薬剤感受性緑膿菌角膜炎と比較して予後不良である」とまとめた。Ophthalmology誌2015年10月号(オンライン版2015年7月15日号)の掲載報告。 研究グループは、多剤耐性緑膿菌角膜炎のリスク因子を明らかにするとともにその臨床的特徴と予後を検討することを目的に、2007~2014年の間に3次医療機関の眼科にて診断された、多剤耐性緑膿菌角膜炎患者23例(患者群)および薬剤感受性緑膿菌角膜炎患者67例(対照群)を対象として、患者背景と多剤耐性との関連などについて分析した。 多剤耐性とは、3系統以上の抗菌薬に対して耐性を示すと定義された。 主な結果は以下のとおり。・多変量解析の結果、潤滑軟膏使用、眼表面損傷および保護コンタクトレンズ使用が、多剤耐性緑膿菌角膜炎と関連していることが認められた。・多剤耐性緑膿菌角膜炎分離株の抗菌薬耐性率は、コリスチンおよびイミペネムで最も低くそれぞれ56.52%であった。・角膜穿孔は、対照群に比べ患者群で高頻度であった(11.94%[8/67例] vs.52.17%[12/23例]、p=0.0001)。・医療用シアノアクリレート系接着剤の使用を要した患者の割合は、患者群47.82%(11/23例)、対照群22.38%(15/67例)であった(p=0.031)・角膜移植を要した患者の割合は、対照群20.89%(14/67例)に対し患者群47.82%(11/23例)で、後者が有意に多かった(p=0.017)。

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CheckMate-057試験:肺がん化学療法の歴史を変えるニボルマブ(解説:倉原 優 氏)-434

 悪性黒色腫を診療している方であればご存じであろう、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)。日本では2014年7月に発売されており、アメリカでは2015年3月に肺扁平上皮がんに対して保険適用が追加承認された。日本でも現在切除不能な進行・再発非小細胞肺がんに対する効能の追加承認を申請中である。 ニボルマブは、T細胞に発現している免疫チェックポイント分子PD-1を阻害し、そのリガンドであるPD-L1との結合を防ぐことで抗腫瘍効果を発揮する。免疫チェックポイントに関わる治療薬として、PD-1阻害薬であるニボルマブ、ペムブロリズマブ(商品名:キートルーダ)、PD-L1阻害薬であるアテゾリズマブの3つが有望視されている。このあたりが非常にややこしい。 PD-L1はがん細胞上にある蛋白で、PD-1はヒトのT細胞上にある蛋白だ。PD-L1とPD-1が結合することで、T細胞ががん細胞を攻撃しないように命令することができる。そのため、それぞれの蛋白の機能をダメにしてしまえばT細胞がしっかりがん細胞を攻撃してくれるだろう、というのがPD-1阻害薬、PD-L1阻害薬の作用機序の根幹である。 さて、肺がんを診療するすべての医師は、ニボルマブが関連する重要な臨床試験をいくつか知っておかねばならない。その1つが本試験、CheckMate-057試験である。 その前に、CheckMate-017試験について押さえておきたい1)。この試験では、治療歴のある肺扁平上皮がんの患者に対して、ニボルマブ3 mg/kgを2週間ごとに投与する群と、ドセタキセル75mg/m2を3週間ごとに投与する群にランダムに割り付けたものである。この試験では、ドセタキセルと比較してニボルマブ群で全生存期間の延長がみられた。この試験によって、治療法が限られていた肺扁平上皮がんに対して光明が見い出された。 今回のCheckMate-057試験は、プラチナ製剤を用いた2剤併用レジメンによる1次治療中ないしは治療終了後に再発・病勢進行した病期IIIB/IVの非扁平上皮非小細胞肺がんの患者を対象としたランダム化比較試験である。上述と同じ用量でニボルマブとドセタキセルが比較された。その結果、非扁平上皮がんの集団でもCheckMate-017試験と同様、全生存期間の延長を認めた。驚くべきは、事前に規定された腫瘍細胞膜上のPD-L1発現レベル(≧1%、≧5%、≧10%)のレベルの高低にかかわらず、全エンドポイントがドセタキセル群よりもニボルマブ群のほうが優れていたという点である(ただし、まったくPD-L1が発現していない症例では全生存期間に有意な差は観察されなかった)。 まとめると、ニボルマブは肺がんに対する化学療法のセカンドラインとして、一気に脚光を浴びることになったということだ。この薬剤のメリットはほかにもある。ドセタキセルよりもGrade 3/4の副作用が少ない点である。とくに殺細胞性抗がん剤にみられる血球減少や脱毛の懸念が軽減される。ただし、ニボルマブによって発疹、疲労、筋骨格痛といった副作用がみられることがあるので注意したい。 アメリカではすでに上述したペムブロリズマブの適応申請が行われている。この薬剤も、PD-L1陽性の非小細胞肺がんに有効とされているためだ2)。すでに肺がんの世界では、免疫チェックポイントに関わる抗がん剤をどう使い分けるかという議論のステージに入っている。分子標的薬がどんどん登場して私も混乱しているが、乗り遅れないように知識をアップデートしていきたい。

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112)2つ同時の行動が認知症予防に効果的!【高血圧患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 患者先生、最近物忘れが多くて、認知症にならないかと心配で……。 医師そうですか。認知症予防のために、具体的にどんなことをされていますか? 患者認知症予防になるっていうサプリメントがあって、友人に勧められて飲もうかなと思ったりしてるんですけど……。 医師それよりも、もっといい方法がありますよ。 患者それは何ですか?(興味津々) 医師頭と体を同時に使うことです。歩くことでよいアイデアがひらめきます。頭を使いながら歩いたり、運動したりするといいですよ。ただし……。 患者ただし? 医師歩きスマホは、事故の原因となりますので、だめですよ。 患者はい。わかりました。●ポイント認知症予防には、「デュアルタスク(2つのことを同時に処理する能力)を鍛えることが大切」と伝えると同時に、「歩きスマホの危険性」も喚起します 1) Doi T, et al.J Gerontol A Biol Sci Med Sci.2012;67:790-795. 2) Oppezzo M, et al. J Exp Psychol Learn Mem Cogn.2014;40:1142-1152. 3) Yamada M, et al. Age Ageing.2011;40:516-519.

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乳がん診断時の腫瘍ステージ、生存に有意に影響/BMJ

 オランダ・エラスムス大学医療センターのSepideh Saadatmand氏らは、現時点での、乳がん検出時の腫瘍病期の生存への影響を調べた。17万強を対象とする前向き住民ベース研究の結果、現状で効果があるとされる全身療法で有意に生存に影響することを報告し、「早期での診断が不可欠である」と指摘した。BMJ誌オンライン版2015年10月6日号掲載の報告。オランダ乳がん女性17万3,797例について評価 検討は、乳がん診断時の病期、腫瘍の生物学、治療の生存への影響を、現状で良好とされる術前/術後補助全身療法下で評価することを目的とした。被験者は、オランダ全国がんレジストリから、1999~2012年に原発性乳がんと診断された女性17万3,797例であった。乳がん診断のバイアスを考慮し、2コホート(1999~2005年8万228例、2006~12年9万3,569例)に区分し、両群の相対生存率を比較した。全死亡への従来予後因子の影響をCox回帰分析法にて各コホートについて分析した。相対生存率は改善も、腫瘍径やリンパ節転移進行度に伴い死亡率上昇は変わらず 2006~12年コホートは1999~2005年コホートと比較して、腫瘍径が有意に小さく(T1以下65%[6万570例] vs.60%[4万8,031例]、p<0.001)、リンパ節転移のない患者が有意に多かった(N0 68%[6万3,544例] vs.65%[5万2,238例]、p<0.001)。一方で化学療法、ホルモン療法、分子標的療法を受けた人が有意に多かった(術前/術後補助全身療法60%[5万6,402例] vs.53%[4万2,185例]、p<0.001)。追跡期間中央値は、1999~2005年コホート9.8年、2006~12年コホート3.9年であった。 5年相対生存率は、2006~12年コホートが96%(1999~2005年コホート91%)で、すべての原発巣および、リンパ節の病期において、2006~12年コホートは1999~2005年コホートと比べて改善していた。腫瘍径1cm以下は100%であった。 年齢、腫瘍型で調整した多変量解析の結果、全死亡率は、手術(とくに乳房温存手術)、放射線療法、全身療法により低下することが示された。 一方で死亡率は、両群ともに腫瘍径の増加とともに上昇がみられた(2006~12年コホートT1c vs.T1aのハザード比[HR]:1.54、95%信頼区間[CI]:1.33~1.78/1999~2005年コホート同:1.40、1.27~1.53、両コホートともp<0.001)。しかし、1cm以下の浸潤性乳がんについては、有意差はみられなかった(2006~12年コホートT1b vs.T1aのHR:1.04、95%CI:0.88~1.22、p=0.677;1999~2005年コホート同:1.09、0.99~1.20、p=0.098)。リンパ節転移の進行度とは独立した関連がみられた(2006~12年コホートN1 vs.N0のHR:1.25、95%CI:1.17~1.32;1999~2005年コホート同:1.35、1.30~1.39、両コホートともp<0.001)。

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ICU免疫不全患者の急性呼吸不全、非侵襲的換気療法の有効性/JAMA

 急性呼吸不全で低酸素血症を呈するICU入室の免疫不全患者において、早期の非侵襲的換気療法は酸素療法単独と比較して28日死亡率を低下しなかったことを、フランス・Saint-Louis University HospitalのVirginie Lemiale氏らが無作為化試験の結果、報告した。ただし、試験の検出力は限定的なものであったとしている。同患者に対しては、死亡率を低下するとして非侵襲的換気療法が推奨されている。一方で、その有効性については不明なままでもあった。JAMA誌オンライン版2015年10月7日号掲載の報告。フランス、ベルギー28施設374例を対象に無作為化試験 試験は2013年8月12日~15年1月2日にフランスとベルギーの28施設にて374例の免疫不全患者を登録して行われた。このうち317例(84.7%)は造血器腫瘍または固形腫瘍で治療中の患者であった。被験者を、早期の非侵襲的換気療法を受ける群(191例)または酸素療法単独を受ける群(183例)に無作為に割り付け、追跡評価した。 主要アウトカムは、28日死亡率。副次アウトカムは、挿管3日時点のSOFA(sequential organ failure assessment)スコア、ICU関連の感染症、機械的換気療法期間、ICU入室期間などであった。28日死亡率、換気療法群24.1%、酸素療法群27.3% 無作為化時点の酸素流量中央値は、換気療法群9L/分(四分位範囲:5~15)、酸素療法群9L/分(同6~15)であった。換気療法群の全患者が無作為化の直後に初回換気セッション(24時間以内に中央値8時間施行)を受けていた。 無作為化後28日時点で、死亡は換気療法群46例(24.1%)、酸素療法群50例(27.3%)であった(絶対差:-3.2、95%信頼区間[CI]:-12.1~5.6、p=0.47)。 また、酸素化に失敗したのは、全体では155例(41.4%)であり、群別にみると換気療法群73例(38.2%)、酸素療法群82例(44.8%)であった(絶対差:-6.6、95%CI:-16.6~3.4、p=0.20)。 ICU関連感染症、機械的換気療法期間、ICU入室または病院入院期間について、両群間で有意差はみられなかった。

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SPECT+統計解析でアルツハイマー病の診断精度改善:東北大

 東北大学の金田 朋洋氏らは、SPECT(単光子放出断層撮像法)を用いたアルツハイマー病(AD)の診断精度について検討を行い、画像評価と統計解析を併用することで診断精度が改善することを報告した。SPECTは認知症の重要な診断ツールとなっているが、最近ではこれに統計解析を加味して認知症研究に用いるのが一般的になってきている。Clinical Nuclear Medicine誌オンライン版2015年9月10日号の掲載報告。 検討は、地域ベースの研究「大崎―田尻プロジェクト」において、ADおよびその他の認知症の診断(Dx)に対するSPECT評価と統計解析の精度を評価した。認知症の連続外来患者89例を登録し、Tc-ECDを用いた脳血流SPECTが実施された。SPECTの診断精度について、(1)SPECT画像評価による診断(SPECT Dx)、(2)簡易Zスコアイメージングシステムによる統計解析を用いた自動診断ツール(eZIS Dx)、(3)画像評価とeZISの併用(統合Dx)の3つで評価した。 主な結果は以下のとおり。・統合Dxは、最も高い感度、特異度、および精度を示した。・2番目に高い精度を示したのは、eZIS法であった。・SPECT画像では、予想より高い確率でADの偽陰性を認めた。そのうち50%が前頭葉機能低下を示し、前頭側頭葉変性症と診断された。・これらの症例では、一次感覚運動皮質において「ホットスポット」が典型的にみられ(感覚運動野ホットスポットサインなど)、それらは前頭側頭葉変性症よりもADと関連すると判断された。・画像評価と統計解析を併用することにより、診断精度が改善する。・感覚運動野ホットスポットサインは、前頭葉機能低下がみられるAD検出に有用であり、AD診断能を適正に改善する。関連医療ニュース レビー小体型とアルツハイマー型を見分ける、PETイメージング アルツハイマーの早期発見が可能となるか 軽度認知障害のPET検出、実用化への課題は  担当者へのご意見箱はこちら

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脳梗塞と脳出血の発症しやすい季節

 国立病院機構南京都病院の重松 一生氏らは、京都府医師会脳卒中登録に登録された約1万4千例のデータから、虚血性脳卒中と出血性脳卒中の発症比率の季節変動を検討した。その結果、脳卒中の種類により季節変動性が異なり、脳出血/脳梗塞、くも膜下出血/脳梗塞におけるオッズ比は、年齢・性別・危険因子に関係なく、夏で低くそれ以外の季節で高いことが認められた。Acta Neurologica Scandinavica誌2015年12月号に掲載。 著者らは、1999年1月~2009年12月に登録された1万3,788例の脳卒中患者を、発症した季節で4群に分類。脳卒中全体・脳梗塞・脳出血・くも膜下出血について、夏の発症率を基準とし春・秋・冬の発症のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。また、年齢・性別・危険因子の調整後、脳出血/脳梗塞とくも膜下出血/脳梗塞におけるORの季節変動について、ロジスティック回帰を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・脳梗塞の発症率は、秋のほうが夏より低かった(OR:0.93、0.87~0.98、p=0.013)。・脳出血の発症率は、春(OR:1.36、1.23~1.49、p<0.001)、秋(OR:1.16、1.05~1.28、p=0.004)、冬(OR:1.37、1.25~1.51、p<0.001)において、夏より高かった。・くも膜下出血の発症率は、春(OR:1.51、1.28~1.79、p<0.001)と冬(OR:1.44、1.22~1.70、p<0.001)において、夏より高かった。・脳出血/脳梗塞のORは、春が1.28(1.13~1.45、p<0.001)、秋が1.26(1.11~1.43、p<0.001)、冬が1.35(1.19~1.53、p<0.001)であった。・くも膜下出血/脳梗塞のORは、春が1.46(1.19~1.79、p<0.001)、秋が1.34(1.09~1.66、p=0.007)、冬が1.50(1.22~1.84、p<0.001)であった。

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経橈骨動脈カテーテル検査・治療では経大腿動脈アプローチに比して術者の被曝線量がわずかに増える(解説:藤本 肇 氏)-432

 本研究は、冠動脈造影(CAG)や経皮的冠動脈形成術(PCI)において、経橈骨動脈アプローチが経大腿動脈アプローチに比してどの程度、術者の被曝量増加を伴うのか否かをメタ解析で調べたものである。 計1万9,328例の症例を含む24の無作為試験を基に解析した結果、経橈骨動脈アプローチにおける透視時間は経大腿動脈アプローチに比して、わずかではあるものの統計学的に有意に高かった(CAG:1.04分、p<0.0001、PCI:1.15分、p<0.0001)。また、実効稼働負荷も同様な結果であった(CAG:1.72 Gy cm2、p=0.06、PCI:0.55 Gy cm2、p=0.02)。このわずかな被曝量の増加が臨床的に意味を持つものなのか、また、これをもって経橈骨動脈アプローチのメリットが失われるかは不明である、としている。 術者にとっては経大腿動脈アプローチのほうが手技が容易で被曝線量も少ない、という利点がある。一方で、出血リスクや血管合併症が少ない、長時間安静にしなくてよい、といった経橈骨動脈アプローチの長所は、患者にとって非常に大きな利点である。 本研究は、患者へのメリットを勘案して経橈骨動脈アプローチを採用することは、術者にとっても身体的に明らかなデメリットはないことを示唆する試験といえるだろう。

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