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TN乳がんに対する初のADCサシツズマブ ゴビテカン、有効性と注意すべき有害事象/ギリアド

 2024年9月24日、全身療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性/HER2陰性(トリプルネガティブ)乳がん(TNBC)の治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)サシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)が本邦で承認された。10月29日にギリアド・サイエンシズ主催のメディアセミナーが開催され、岩田 広治氏(名古屋市立大学大学院医学研究科臨床研究戦略部)が「トリプルネガティブ乳がんに新薬の登場」と題した講演を行った。ESMOガイドラインでは転移TNBCの2次治療として位置付け 欧米では同患者に対するサシツズマブ ゴビテカンは約3年前に承認・使用されており、2021年のESMO Clinical Practice Guideline1)ではPD-L1陽性患者に対する免疫療法、gBRCA陽性患者に対するPARP阻害薬、PD-L1およびgBRCA陰性患者に対する化学療法などの次治療として位置付けられている。 乳がん領域で承認されたADCとしてはトラスツズマブ エムタンシン(商品名:カドサイラ)、トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)に続き3剤目となるが標的となる抗体が異なり、TNBCに対しては初めて承認されたADCとなる。岩田氏は、「新しい作用機序の薬剤が使えるようになることは朗報。われわれはこの新しい武器を有効に使っていかなければならない」と話した。ASCENT試験とASCENT-J02試験のポイント 国際第III相ASCENT試験(日本不参加)では、2レジメン以上の化学療法歴のある(術前化学療法後12ヵ月以内に再発した場合は1レジメンで参加可能)転移TNBC患者(529例)を対象として、サシツズマブ ゴビテカンと主治医選択による化学療法の有効性が比較された。PD-L1陽性で免疫チェックポイント阻害薬治療歴のある患者が26~29%、gBRCA陽性でPARP阻害薬治療歴のある患者が7~8%含まれており、再発診断から登録までの中央値は約15ヵ月であった。 最終解析の結果、無増悪生存期間(PFS)中央値はサシツズマブ ゴビテカン群4.8ヵ月vs.化学療法群1.7ヵ月(ハザード比[HR]:0.413、95%信頼区間[CI]:0.33~0.517)、全生存期間(OS)中央値は11.8ヵ月vs.6.9ヵ月(HR:0.514、95%CI:0.422~0.625)となり、サシツズマブ ゴビテカン群における改善が示されている2)。奏効率(ORR)は35% vs.5%であり、岩田氏はこの結果について「2レジメン以上の治療歴のある患者さんに対し、大きな治療効果といえる」と話した。 日本で実施された第II相ASCENT-J02試験においても、サシツズマブ ゴビテカン投与患者(36例)におけるPFS中央値は5.6ヵ月、OS中央値はNR、ORRは25%で、ASCENT試験で報告された有効性との一貫性が示されている。注意を払うべき有害事象と今後の展望 岩田氏は、有害事象の中でとくに注意すべきものとして好中球減少症、下痢や悪心などの消化器症状、脱毛を挙げた。Grade3以上の好中球減少症はASCENT試験で34%、ASCENT-J02試験で58%、下痢はそれぞれ10%、8.3%に認められた。欧米では好中球減少症への対策として60~70%で予防的G-CSF投与が行われているといい、岩田氏は好中球減少症のマネジメントが課題となると指摘した。 現在、転移・再発TNBCの1次治療におけるサシツズマブ ゴビテカンの有効性を評価する臨床試験がすでに進行中であるほか、同様の機序の薬剤の開発も進んでいる。岩田氏は今後はそれらの薬剤との組み合わせや使い分けが重要になってくるとして、講演を締めくくった。

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NSCLCへのニボルマブ+イピリムマブ±化学療法、実臨床の有効性・安全性(LIGHT-NING第4回中間解析)/日本肺学会

 国際共同第III相試験CheckMate 9LA試験、CheckMate 227試験の結果に基づき、進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、ニボルマブ+イピリムマブ±化学療法が保険適用となり、実臨床でも使用されている。2試験の有効性の成績は、少数例ではあるものの日本人集団が全体集団よりも良好な傾向にあった一方、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は、日本人集団が全体集団よりも高い傾向にあったことが報告されている。そこで、ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法(CheckMate 9LAレジメン)、ニボルマブ+イピリムマブ(CheckMate 227レジメン)を使用した患者のリアルワールドデータを収集するLIGHT-NING試験が実施された。本試験の第4回中間解析の結果について、山口 哲平氏(愛知県がんセンター呼吸器内科部)が第65回日本肺学会学術集会で発表した。試験デザイン:後ろ向き観察研究対象:未治療の進行・再発NSCLC患者544例(有効性解析対象515例)試験群1:ニボルマブ(360mgを3週ごと)+イピリムマブ(1mg/kgを6週ごと)+化学療法(3週ごと、2サイクル)(CM 9LA群:318例)試験群2:ニボルマブ(240mgを隔週または360mgを3週ごと)+イピリムマブ(1mg/kgを6週ごと)(CM 227群:226例)評価項目:[主要評価項目]治療状況、全生存期間(OS)、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)、治療中止に至ったTRAEなど[副次評価項目]irAEの発現時期とirAEに対する治療内容および症状改善までの期間、irAEの有効性への影響など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は15.2ヵ月であった。・対象患者の年齢中央値は70歳、女性が18.8%、PS 0~1/2/3以上が89.1%/5.9%/1.3%、扁平上皮がんが27.6%、PD-L1発現状況が1%未満/1~49%/50%以上/不明は46.3%/34.9%/9.4%/9.4%であった。・治療別にみた年齢中央値はCM 9LA群が67歳、CM 227群が73歳、75歳以上の割合はそれぞれ12.3%、42.0%であり、高齢の患者では化学療法を含まないニボルマブ+イピリムマブが多く選択される傾向にあった。また、StageIV(一部切除不能StageIIIを含む)/再発の割合は、CM 9LA群が78.9%/21.1%、CM 227群が69.0%/31.0%であり、CM227群で再発の割合が高く、遠隔転移の割合が低かった。・解析時点において、イピリムマブのみを中止した患者の割合は2.6%、ニボルマブとイピリムマブの両剤を中止した患者の割合は91.9%で、イピリムマブ中止の内訳は病勢進行が43.2%、有害事象が42.8%であった。・OS中央値は、CM 9LA群が21.7ヵ月、CM 227群が18.8ヵ月であり、1年OS率はそれぞれ67.4%、61.8%、2年OS率はそれぞれ47.3%、44.0%であった。いずれの群でもPD-L1の発現状況による明らかな差はみられなかった。・PFS中央値は、CM 9LA群が6.8ヵ月、CM 227群が6.3ヵ月であり、1年PFS率はそれぞれ32.9%、36.1%、2年PFS率はそれぞれ21.0%、23.2%であった。いずれの群でもPD-L1の発現状況による明らかな差はみられなかった。・進行・再発別にみたOSの解析では、CM 9LA群におけるOS中央値はStageIV集団が17.6ヵ月、再発集団が29.2ヵ月であり、再発集団のほうが良好な傾向にあった(ハザード比[HR]:0.50、95%信頼区間[CI]:0.39~0.89)。同様に、CM 227群ではそれぞれ13.9ヵ月、27.8ヵ月であり、再発集団のほうが良好な傾向にあった(同:0.65、0.39~0.96)。・進行・再発別にみたPFSの解析でも、CM 9LA群におけるPFS中央値はStageIV集団が5.6ヵ月、再発集団が11.1ヵ月であり、再発集団のほうが良好な傾向にあった(HR:0.70、95%CI:0.49~0.98)。同様に、CM 227群ではそれぞれ5.3ヵ月、10.0ヵ月であり、再発集団のほうが良好な傾向にあった(同:0.71、0.50~0.99)。・医師判定に基づく奏効率は、40.1%(CM 9LA群:41.9%、CM 227群:37.4%)であった。・Grade3/4のTRAEは43.9%(CM 9LA群:53.5%、CM 227群:30.5%)に発現した。・治療関連死は3.7%(CM 9LA群:4.1%[13例]、CM 227群:3.1%[7例])に認められた。 本結果について、山口氏は「有効性に関して、CM 9LA群とCM 227群は同様の結果であり、いずれの群もPD-L1発現状況によっても治療効果に大きな差はみられなかったが、再発の集団で良好な傾向にあった。安全性に関する新たなシグナルは観察されず、安全性プロファイルはCheckMate 9LA、CheckMate 227試験と同様であった」とまとめた。

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高リスク網膜芽細胞腫の術後CEV療法、3サイクルvs.6サイクル/JAMA

 片眼性の病理学的高リスク網膜芽細胞腫の術後補助療法において、6サイクルの化学療法(CEV:カルボプラチン+エトポシド+ビンクリスチン)に対して3サイクルのCEV療法は5年無病生存率が非劣性であり、6サイクルのほうが有害事象の頻度が高く、QOLスコアの低下が大きいことが、中国・中山大学のHuijing Ye氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年10月21日号に掲載された。中国の非盲検無作為化非劣性試験 本研究は、病理学的高リスク網膜芽細胞腫患者に対する術後CEV療法の有効性に関して、6サイクルに対する3サイクルの非劣性の検証を目的とする非盲検無作為化試験であり、2013年8月~2024年3月に中国の2つの主要な眼治療施設で患者を登録した(Sun Yat-Sen University Clinical Research 5010 Programなどの助成を受けた)。 高リスクの病理学的特徴(高度な脈絡膜浸潤、視神経後方への進展、強膜浸潤)を有する片眼性の網膜芽細胞腫に対する摘出術を受けた患者187例(年齢中央値25ヵ月[四分位範囲[IQR]:20.0~37.0]、女児83例[44.4%])を対象とした。これらの患児を、術後CEV療法を3サイクル行う群(94例)またはこれを6サイクル行う群(93例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は5年無病生存率とし、非劣性マージンを12%に設定した。無病生存は、無作為化から、局所再発、領域再燃、遠隔転移、対側眼の網膜芽細胞腫、2次原発がん、全死因死亡のいずれかが最初に発生するまでの期間と定義した。5年全生存率には差がない 全例が試験を完了し、追跡期間中央値は79.0ヵ月(IQR:65.5~102.5)であった。無病生存イベントは19例(3サイクル群9例[9.6%]、6サイクル群10例[10.8%])発生した。局所領域の治療失敗を7例(4例[4.3%]、3例[3.2%])、遠隔転移を15例(7例[7.4%]、8例[8.6%])に認めた。 主要評価項目の推定5年無病生存率は、3サイクル群が90.4%、6サイクル群は89.2%(群間差1.2%、95%信頼区間[CI]:-7.5~9.8)であり、非劣性基準を満たした(非劣性のp=0.003)。ハザード比(HR)は0.89(95%CI:0.36~2.20)だった(p=0.81)。 5年全生存率(3サイクル群91.5% vs.6サイクル群89.3%、HR:0.78[95%CI:0.31~1.98]、p=0.61)は両群間に差はなかった。2歳以上の111例における健康関連QOLの評価では、術後6ヵ月時の身体機能、精神的機能、社会生活機能の低下が、3サイクル群で少ない傾向がみられた。 また、総費用、直接費用、間接費用は、いずれも6サイクル群に比べ3サイクル群で有意に少なかった(それぞれ42.4%、41.2%、43.0%低い、すべてp<0.001)。Grade1/2の有害事象が有意に少ない 有害事象は、3サイクル群で93例中75例(80.6%)に282件、6サイクル群で93例中89例(95.7%)に681件発現した。Grade1/2の有害事象は3サイクル群で有意に少なかった(78.5% vs.95.7%、p<0.001)。治療関連死は両群とも認めなかった。 著者は、「3サイクルのCEV療法は、片眼性の病理学的高リスク網膜芽細胞腫の術後補助化学療法として6サイクルCEVに代わる有効な治療法となる可能性がある」「3サイクルCEVは、治療期間の短縮に伴うQOLの向上や経済的負担の軽減に寄与すると考えられる」「本試験は非盲検デザインであり、非劣性マージンは12%と大きめに設定されているため、慎重な解釈が求められる」としている。

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若年透析患者の腎移植アクセス、施設スタッフ数と関連/JAMA

 米国では、透析施設によって患者対スタッフ比(看護師またはソーシャルワーカー1人当たりの患者数)が大きく異なり、この施設間の差が高齢患者のアウトカムに影響を及ぼすことが知られている。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAlexandra C. Bicki氏らは今回、青少年および若年成人の透析患者について調査し、患者対スタッフ比が低い施設と比較して高い施設は腎移植待機リスト登録率および腎移植率が低く、とくに22歳未満の患者で顕著であることを明らかにした。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年10月23日号で報告された。米国の12~30歳の患者の後ろ向きコホート研究 研究グループは、患者対スタッフ比が青少年および若年成人の透析患者における腎移植へのアクセスと関連するかの検証を目的に、後ろ向きコホート研究を行った(American Kidney Fund Clinical Scientist in Nephrology fellowshipなどの助成を受けた)。 解析には、米国の全国的な末期腎臓病のレジストリであるUS Renal Data Systemのデータを用いた。対象は、2005年1月1日~2019年12月31日に全米8,490施設で透析を開始した12~30歳の患者であった。 透析施設を、患者対看護師比および患者対ソーシャルワーカー比の四分位数で4群に分類した。Fine-Grayモデルを用い、死亡の競合リスクを考慮したうえで、四分位別の腎移植待機者登録および腎移植の発生率を評価した。スタッフの担当患者数が多いと腎移植率が低下 5万4,141例(透析開始時の年齢中央値25歳[四分位範囲[IQR]:21~28]、男性54.4%)を解析の対象とした。74.5%が透析開始時に22歳以上で、84.7%が血液透析を受けていた。患者対スタッフ比中央値は、看護師が14.4(IQR:10.3~18.9)、ソーシャルワーカーは91.0(65.2~115.0)だった。追跡期間中央値2.6年の時点で、39.9%が腎移植を受け、17.9%が移植前に死亡した。 患者対看護師比が第1四分位(<10.3)群の施設に比べ、第4四分位(>18.9)群の施設では、腎移植待機者登録率には差がなかった(サブハザード比[SHR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.93~1.01)が、腎移植率は低かった(0.86、0.82~0.91)。 また、患者対ソーシャルワーカー比が第1四分位(<65.2)群に比べ、第4四分位(>114.7)群では、腎移植待機者登録率が低く(SHR:0.95、95%CI:0.91~0.99)、腎移植率(0.85、0.81~0.89)も低かった。透析施設のスタッフ配置の改善が重要 腎移植率については、2つのスタッフ比はともに、透析開始時の年齢と交互作用がみられ、22歳以上で透析を開始した患者(患者対看護師比の第1四分位群対第4四分位群のSHR:1.00[95%CI:0.94~1.06]、患者対ソーシャルワーカー比の同:0.96[0.91~1.02])と比較して、22歳未満で開始した患者(0.71[0.65~0.78]、0.74[0.68~0.80])でより顕著に低かった。 著者は、「透析施設のスタッフの比率が若年患者の腎移植アクセスに重要な影響を及ぼし、看護師やソーシャルワーカーによる支援の不足が、若年患者が移植の評価を受ける際の支障となる可能性が示唆された」「若年透析患者が、より早期に腎移植を受けられるようにするためには、透析施設におけるスタッフ配置の改善が重要と考えられる」としている。

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血圧測定、腕の位置により過大評価も

 自宅で血圧を測定する際には、腕の位置に注意する必要があるようだ。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部小児科臨床研究副委員長のTammy Brady氏らによる新たな研究で、血圧測定の際には、腕の位置によって測定値が過大評価され、高血圧の誤診につながる可能性のあることが明らかになった。この研究結果は、「JAMA Internal Medicine」に10月7日掲載された。 米国心臓協会(AHA)によると、米国では成人の半数近くが高血圧であるという。高血圧を治療せずに放置すると、脳卒中、心筋梗塞やその他の重篤な心疾患のリスクが高まる。AHAのガイドラインでは、血圧は、適切なサイズのカフを用いて、背もたれのある椅子などで背中を支え、足は組まずに床につけた状態で、適切な腕の位置で測定することを求めている。「適切な腕の位置」とは、血圧計のカフが心臓の高さになるようにして、腕はテーブルなどの上に置くことだと説明している。しかしBrady氏らは、診察の際に、患者が腕をほとんど支えられていない状態で血圧を測定されることが多いことを指摘する。 このことを踏まえてBrady氏らは今回の研究で、血圧測定中の腕の位置(机の上に乗せた状態、膝の上に置いた状態、脇にぶら下げた状態)が測定値に与える影響を調査した。対象者の18〜80歳の成人133人(平均年齢57歳、女性53%)は、測定時の腕の位置の順序が異なる6つの群にランダムに割り付けられた。まず、全員が膀胱を空にし、2分間の歩行を行い、5分間休憩した。その後、上述の3種類の腕の位置で、上腕に合ったサイズのカフを装着して、30秒間隔で3回の測定を1セットとする血圧測定を3セット受けた。セットとセットの間には2分間の歩行と5分間の休憩をはさんだ。また、腕を机に乗せた状態で4セット目の測定も受けた。 その結果、腕を膝の上に置いた状態で血圧を測定すると、机に乗せた状態での測定に比べて収縮期血圧の平均値が3.9mmHg、拡張期血圧の平均値が4.0mmHg高くなることが明らかになった。また、腕を支えずに脇にぶら下げた状態で測定した場合には、机に乗せた状態での測定に比べて収縮期血圧の平均値は6.5mmHg、拡張期血圧の平均値は4.4mmHg高くなっていた。 論文の筆頭著者であるジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のHairong Liu氏は、「常に腕を支えずに血圧を測っていると、収縮期血圧の値が実際よりも6.5mmHg高くなる可能性がある。これはつまり、123mmHgであるはずの収縮期血圧が130mmHgに、あるいは133mmHgが140mmHgになる可能性があるということだ。収縮期血圧140mmHgはステージ2の高血圧に分類される値だ」と話す。 ただし研究グループは、これらの結果は自動血圧計による測定に限定されるもので、他の機器による測定に当てはまらない可能性があるとしている。それでもBrady氏は、「この研究結果は、臨床医がベストプラクティス・ガイドラインにもっと注意を払う必要があることを示唆している」と、ジョンズ・ホプキンス大学のニュースリリースの中で述べている。

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ビタミンD値が低いとサルコペニアのリスクが高い可能性

 血清ビタミンD値が低い高齢者は骨格質量指数(SMI)が低くて握力が弱く、サルコペニアのリスクが高い可能性のあることが報告された。大阪大学大学院医学系研究科老年・総合内科学の赤坂憲氏らの研究結果であり、詳細は「Geriatrics & Gerontology International」に8月1日掲載された。 サルコペニアは筋肉の量や筋力が低下した状態であり、移動困難や転倒・骨折、さらに寝たきりなどのリスクが高くなる。また日本の高齢者対象研究から、サルコペニア該当者は死亡リスクが男性で2.0倍、女性で2.3倍高いことも報告されている。 サルコペニアの予防・改善方法として現状では、筋肉に適度な負荷のかかる運動、および、タンパク質を中心とする十分な栄養素摂取が推奨されており、治療薬はまだない。一方、骨粗鬆症治療薬として用いられているビタミンD(VD)に、サルコペニアに対する保護的作用もある可能性が近年報告されてきている。ただし、一般人口におけるVDレベルとサルコペニアリスクとの関連は不明点が少なくない。これを背景として赤坂氏らは、東京都と兵庫県の地域住民対象に行われている高齢者長期縦断研究(SONIC研究)のデータを用いて、年齢層別に横断的解析を行った。 SONIC研究参加者のうち、年齢層で分けた際のサンプル数が十分な70歳代(平均年齢75.9±0.9歳、男性54.2%)と、90歳代(92.5±1.6歳、男性37.5%)を解析対象とした。全員が自立して生活していた。 血清25(OH)D(以下、血清VDと省略)の平均は、70歳代では21.6±5.0ng/mLであり、35.8%が欠乏症(20ng/mL未満)だった。90歳代では平均23.4±9.1ng/mLであり、43.8%が欠乏症だった。なお、VDは日光曝露によって皮膚で生成されるため、日照時間の違いを考慮して季節性を検討したところ、70歳代の男性では、冬季測定群に比べて夏季測定群の方が有意に高値だった。 サルコペニアのリスク評価に用いられている、SMI、握力、歩行速度、および、BMIや血清アルブミン、血清クレアチニンと、血清VDとの関連を単回帰分析で検討すると、年齢層にかかわらず、SMIと握力が血清VDと有意に正相関し、その他の因子は関連が見られなかった。それぞれの相関係数(r)は、以下の通り。70歳代の血清VDとSMIは0.21、血清VDと握力は0.30(ともにP<0.0001)、90歳代の血清VDとSMIは0.29(P=0.049)、血清VDと握力は0.34(P=0.018)。 続いて、SMIおよび握力を従属変数、性別を含むその他の因子を独立変数とする重回帰分析を施行した。その結果、70歳代のSMIについては、血清VDが有意な正の関連因子として特定された(β=0.066、P=0.013)。一方、70歳代の握力に関しては、血清VDは独立した関連が示されなかった。また90歳代では、SMI、握力ともに血清VDは独立した関連因子でなかった。 著者らは本研究の限界点として、横断的解析であり因果関係は不明なこと、日光曝露時間や栄養素摂取量が測定されていないことなどを挙げた上で、「地域在住の自立した高齢者では、血清VDレベルはSMIや握力と関連しているが、歩行速度とは関連のないことが明らかになった。この結果は90歳代よりも70歳代で明確だった」と総括。また、「さらなる研究が必要だが、血清VDレベルを維持することが骨格筋量の維持に寄与する可能性があるのではないか」と付け加えている。

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成人ADHDに対するメチルフェニデート+SSRI併用療法

 うつ病は、成人の注意欠如多動症(ADHD)の一般的な併存疾患であるため、このような患者には、メチルフェニデート(MPH)と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の併用療法が行われる。しかし、成人ADHDにおけるMPHとSSRI併用療法の安全性に関する臨床的エビデンスは、限られている。韓国・亜洲大学のDong Yun Lee氏らは、うつ病を併発した成人ADHD患者に対するMPHとSSRI併用療法の安全性を評価した。JAMA Network Open誌2024年10月1日号の報告。 2016年1月〜2021年2月の韓国請求データベースよりデータを収集した。対象は、ADHDおよびうつ病と診断され、MPHを処方された18歳以上の成人患者。処方内容により4群に分類し、比較を行った。より好ましい治療オプションを検討するため、SSRI+MPH(SSRI群)、MPH単剤(MPH群)、MPH+fluoxetine(fluoxetine群)、MPH+エスシタロプラム(エスシタロプラム群)の比較を行った。データ分析は、2023年7〜12月に実施した。神経精神医学的およびその他のイベントを含む17の主要および副次的アウトカムを評価した。対照アウトカムとして、呼吸器感染症を用いた。交絡因子を調整するため傾向スコアを用い、各群1:1でマッチングした。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、Cox比例ハザード回帰モデルを用いた。性別によるサブグループ解析およびさまざまな疫学的設定での感度分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、成人ADHD患者1万7,234例(研究参加時の平均年齢:29.4±10.8歳、女性:9,079例[52.7%])。・MPH群とSSRI群におけるアウトカムのリスクに差は認められなかったが、SSRI群では、頭痛リスクが低かった(HR:0.50、95%CI:0.24〜0.99)。・fluoxetine群とエスシタロプラム群における感度分析では、fluoxetine群はエスシタロプラム群よりも、高血圧(HR[1:nマッチング]:0.26、95%CI:0.08〜0.67)、脂質異常症(HR[1:nマッチング]:0.23、95%CI:0.04〜0.81)のリスクが低かった。 著者らは「うつ病を併発した成人ADHD患者に対するSSRI+MPH併用療法は、MPH単独と比較し、有害事象の有意な増加は確認されなかった。SSRI併用は、頭痛リスクの低下と関連している可能性が示唆された」と結論付けている。

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英語で「熱はありません」は?【1分★医療英語】第155回

第155回 英語で「熱はありません」は?《例文1》He is afebrile, and vital signs are stable.(彼は熱がなく、バイタルサインは安定しています)《例文2》She spiked a fever overnight.(彼女は夜間に高熱がありました)《解説》「熱がない」状態は“afebrile”(エイフェブライル)という形容詞を使って表現することができます。発音は少し複雑で、カタカナで表現すると「エイフェブライル」のようになり、医療者同士の会話で頻繁に登場します。この単語は「熱がある」を表す“febrile”に、否定を表す接頭辞の“a”が付いた単語で、「熱がない状態」を指します。一方、急に熱発したときには、“spike a fever”という表現をよく使います。これは体温をグラフにするとスパイク(鋭い突起)の形になる状態、つまり体温が急激に上がるような熱発のことを指します。講師紹介

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エステトロールを含有した月経困難症治療薬「アリッサ配合錠」【最新!DI情報】第26回

エステトロールを含有した月経困難症治療薬「アリッサ配合錠」今回は、月経困難症治療薬「エステトロール・ドロスピレノン(商品名:アリッサ配合錠、製造販売元:富士製薬工業)」を紹介します。エステトロール(E4)はわが国における新規有効成分であり、エストロゲン受容体に選択的に作用することで、既存薬で課題となっていた静脈血栓塞栓症の発現リスクを低減する可能性があります。<効能・効果>月経困難症の適応で、2024年9月24日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>1日1錠を毎日一定の時刻に定められた順に従って(ピンク色錠から開始する)28日間連続経口投与します。以上28日間を投与1周期とし、出血が終わっているか続いているかにかかわらず、29日目から次の周期の錠剤を投与し、以後同様に繰り返します。<安全性>重大な副作用には、血栓症(四肢、肺、心、脳、網膜など)(頻度不明)があります。主な副作用は、月経中間期出血(74.8%)、重度月経出血(16.8%)、希発月経、骨盤痛、乳房痛、悪心、頭痛(いずれも5%以上)、異常子宮出血、過少月経、頻発月経、子宮頸管ポリープ、乳房不快感、下痢、便秘、腹部膨満、腹痛、傾眠、浮動性めまい、回転性めまい、筋痙縮、ざ瘡、湿疹、倦怠感、浮腫、ほてりなど(いずれも1~5%未満)があります。本剤の使用中は血栓症を発現する可能性があるため、患者に対し患者携帯カードを配布するなど、血栓症に対する注意喚起が必要です。<患者さんへの指導例>1.この薬は、黄体ホルモンと卵胞ホルモンからなる混合ホルモン薬です。指示どおりに飲み続けることが重要です。2.排卵抑制作用および子宮内膜増殖抑制作用により、月経時の下腹部痛、腰痛などの症状を改善します。避妊目的では使用しないでください。3.足の腫れ・痛み・しびれ・発赤・ほてり、嘔吐・吐き気、頭痛などが現れたときは、ただちに医療機関を受診してください。<ここがポイント!>月経困難症は、月経期間中に月経に随伴して生じる病的症状であり、下腹部痛、頭痛、嘔吐、めまい、倦怠感などがみられます。これらの症状には、子宮内膜で産生されるプロスタグランジンの関与が大きく、治療には非ステロイド性抗炎症薬および低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)が広く用いられています。従来のLEP製剤には、エストラジオールを改良したエチニルエストラジオール(EE)が配合されていますが、EEは凝固線溶系に影響するため、静脈血栓塞栓症(VTE)が問題となっています。本剤は、月経困難症治療薬として、本邦で初めてエステトロール(E4)を含有したLEP製剤です。E4はエストロゲン受容体に選択的に作用することから、既存のLEP製剤に比べ、重篤な副作用であるVTEの発現リスクを低減する可能性があります。ただし、VTEの発現を完全に抑えるものではないため、使用時には適切な注意喚起が必要です。本剤は、24日間服薬して4日間休薬するため、1シートには実薬24錠とプラセボ4錠が含まれています。なお、本邦では「避妊」の適応はありません。月経困難症患者を対象とした国内第III相試験において、月経困難症スコア合計値の投与前から4周期投与後までの変化量(平均値±標準偏差)は、本剤群では-2.3±1.59、プラセボ群では-0.9±1.26でした。両群間の差(本剤群-プラセボ群)の最小二乗平均値は-1.4(両側95%信頼区間:-1.8~-1.0)であり、本剤のプラセボに対する優越性が検証されました(p<0.001)。

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リネゾリド処方の際の5つの副作用【1分間で学べる感染症】第14回

画像を拡大するTake home messageリネゾリドを使用する際には、血小板減少症を中心として重要な5つのポイントを覚えておこう。抗MRSA薬の1つにリネゾリドがあります。頻度は少ないものの、重要な場面で使うことがある薬剤です。今回は、リネゾリドに関する5つの重要事項を学んでいきましょう。1)消化器系症状リネゾリドの副作用には、使用早期から現れる可能性があるものとして腹痛、嘔気、嘔吐などの消化器症状が挙げられます。最も頻度が高い副作用の1つですが、症例によっては対症療法のみで自然に改善する場合もあります。2)骨髄抑制次に押さえておくべき副作用は骨髄抑制です。とくに血小板減少症に対する注意が必要です。骨髄抑制の副作用は約2週間以上の使用で発現するとされ、短期間の使用は問題ないことが多いのですが、使用期間が2週間を超える疾患には使用しにくくなります。一般的には、使用中止後1~3週間で回復するとされています。3)セロトニン症候群リネゾリドを開始する際には、相互作用のチェックも重要です。リスクの程度差はあるものの、SSRI、SNRI、MAO阻害薬との併用はセロトニン症候群を引き起こす可能性があります。最近の報告によると、セロトニン症候群を引き起こす可能性のある薬剤のうち、SSRIの中でもエスシタロプラムやオピオイドのメサドンなどはとくに関与が強いと報告されています。発症は服用から数時間~数日以内に現れることが多く、中止すれば24時間以内に改善するといわれています。しかし、まれに横紋筋融解症や腎不全などを来すこともあるため、注意が必要です。開始する際には、薬剤師と連携を取りながら、慎重に併用薬を確認する必要があります。4)乳酸アシドーシスまれながら、乳酸アシドーシスの副作用も報告されています。これは2003年に初めて報告されましたが、発症までの期間は1~16週間と幅があります。致死率は25%にも上るとされており注意が必要です。リネゾリド使用中に乳酸アシドーシスを来した場合には、ほかの原因検索と共にリネゾリドの副作用を考慮することが重要です。5)末梢神経障害・視神経障害末梢神経障害・視神経障害は、ノカルジアや非結核性抗酸菌症、多剤耐性結核などに対する特殊な状況で、長期の投与が必要な際の副作用として報告されています。末梢神経障害は「手袋と靴下型」(手袋や靴下が覆うように手足の先端部分から徐々に症状が進行していく)で発症まで5~11ヵ月、視神経障害は視力低下や色覚異常を来すことが多いとされています。リネゾリドは長期で使用することは少ないため頻度は高くありませんが、頭の片隅に入れておきましょう。以上、有名な血小板減少症以外にも、リネゾリドのこれらの重要な副作用・相互作用に関して念頭に置き、使用する際には患者さんに、その有益性とリスクに関して十分に説明するようにしましょう。1)Apodaca AA, et al. N Engl J Med. 2003;348:86-87.2)Legout L, et al. Clin Infect Dis. 2004;38:767-768.3)Crass RL, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2019;63:e00605-e00619.4)Gatti M, et al. Eur J Clin Pharmacol. 2021;77:233-239.5)Mao Y, et al. Medicine (Baltimore). 2018;97;e12114.6)Narita M, et al. Pharmacotherapy. 2007;27:1189-1197.

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便失禁診療ガイドライン2024年版 改訂第2版

5つのCQを設定し、7年ぶりの改訂!初版以降の新たなエビデンスと日本の医療状況に立脚した実践的なガイドライン改訂版。便失禁の定義や病態、診断・評価法、初期治療から専門的治療にいたるまで基本的知識をアップデートし、新たに失禁関連皮膚炎や出産後患者に関する記載を拡充。また治療法選択や専門施設との連携のタイミングなど、判断に迷うテーマについてはCQとして推奨を示した。患者像により多様な病態を示す便失禁の診療とケアに携わる、すべての医療職にとって指針となる1冊である。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する便失禁診療ガイドライン2024年版 改訂第2版定価3,520円(税込)判型B5判頁数152頁発行2024年11月編集日本大腸肛門病学会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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第239回 肺を再生する吸入薬の人への投与開始

肺を再生する吸入薬の人への投与開始肺疾患治療を一新しうる低分子吸入薬がヒトへの初の投与に至りました1)。米国のスクリップス研究所(Scripps Research)とその医薬品開発部門Calibr-Skaggs Institute for Innovative Medicines(Calibr-Skaggs)の研究者の協力によって作られたCMR316と呼ばれるその薬は、肺の幹細胞を刺激して傷んだ肺組織の再生を促します。CMR316が今回最初に投与されたのは第I相試験(Ph1試験)の被験者です。試験は健康な人と特発性肺線維症(IPF)患者へのCMR316投与の安全性と体への負担のほど(tolerability)の検討を目的としており、欧州・ドイツのフラウンホーファー毒物学・実験医学研究所(Fraunhofer ITEM)で実施されています。IPFはとても苦しい慢性の進行性疾患で、原因はわからず、今のところ不治の病とされています。最近の報告によると日本でのIPFの有病率は10万人当たり27例、患者数は3万4千例ほど(3万4,040例)と推定されています2)。まれに実施される肺移植を除いてIPFの根本的な治癒手段はなく、診断後の生存期間は悲惨なことにわずか2~5年です。抗線維化薬などの現存のIPF治療は進行を遅らせたり症状を治めたりするに過ぎず、根本的な治癒をもたらす手段が待望されていました。肺は控えめながら修復して再生する能力を生まれつき有しています。しかしIPFではその能力が損なわれることが知られており、下気道修復に携わる肺の幹細胞・肺胞上皮細胞2型(AEC2)の傷みや機能不全がIPFの始まりの一端を担うようです3)。CMR316はそのAEC2を増やし、肺の機能維持やガス交換に不可欠な肺胞上皮細胞1型(AEC1)へと分化できるようにします。ゆえにCMR316によるAEC2の応援で、IPFのみならず他の多くの肺病態の組織損傷も修復できる可能性があります。また、CMR316の組織再生のメカニズムは発売されている抗線維化薬と異なっていて相補的であり、併用すれば一層の治療効果が期待できます。CMR316の作製へと通じる研究成果が今春4月にPNAS誌に報告されています4)。その報告を紹介するニュース5)で、スクリップス研究所はCMR316のPh1試験が今夏に始まるとの見通しを示していました。Clinicaltrials.govの登録情報によるとPh1試験の開始日はまさに今夏の8月19日です6)。そして今回最初の投与に至っており、事は計画どおりに運んでいるようです。肺以外の再生治療の取り組みも進むスクリップス研究所の組織再生の取り組みは肺にとどまらず広く、心臓、軟骨、眼、腸も網羅します7)。傷んだ心臓に直接注入する低分子薬CMV852は心臓組織を生み出して心機能を改善しうることが、心臓発作を起こしたブタやマウスでの検討で確認されています。CMV852は臨床試験開始前の大詰めの実験が来年始まります。変形性関節症(OA)を模す動物の軟骨再生を促しうることが示されている低分子薬KA34はすでにPh1試験で良好な安全性が確認されています。注射回数が少なくて済み、長期(3~6ヵ月)にわたって軟骨の増加を促す長持ちなKA34の開発が現在試みられています。腸細胞を増やすホルモン・GLP-2の模倣薬は炎症性腸疾患(IBD)患者の腸の遮蔽機能回復を目指して開発されています。Ph1試験が完了し、有望なことに腸修復の生理指標の向上が認められています。Calibr-Skaggsか提携先がPh2試験を実施する予定です。Calibr-SkaggsのホームページによるとGLP-2の模倣薬はCLF065という名称で、アッヴィと提携して開発されています。加齢黄斑変性症(AMD)治療の取り組みでは、網膜色素上皮細胞(RPE)を増やしてRPE層を再生させる低分子化合物いくつかが同定されています。スクリップス研究所が目指す再生治療の成分は細胞ではなく低分子です。昔なじみの型どおりの細胞治療は面倒さ、効果不足、高価ゆえに停滞気味です。より手頃で容易に投与しる低分子薬による組織損傷修復の取り組みをさらに多くの臓器に広げ、老化した組織を若返らせることもやがて可能にすることをスクリップス研究所は目指しています7)。参考1)Calibr-Skaggs announces initial dosing of a first-in-class regenerative lung medicine in a phase 1 trial for idiopathic pulmonary fibrosis / Scripps Research2)Kondoh Y, et al. Respir Res. 2022;23:24.3)Parimon T, et al. Int J Mol Sci. 2020;21:2269. 4)Shao S, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2024;121:e2400077121.5)How a new drug prototype regenerates lung tissue / Eurekalert6)NCT06589219(Clinicaltrials.gov)7)Scripps Research advances breakthrough regenerative medicines to reverse aging-related diseases / Scripps Research

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実臨床のスタチン、ロスバスタチンvs.アトルバスタチン

 ストロングスタチンに分類されるロスバスタチンとアトルバスタチンは、実臨床で広く用いられているが、実臨床におけるエビデンスは限られている。そこで、中国・南方医科大学のShiyu Zhou氏らの研究グループは、中国および英国のデータベースを用いて、両薬剤の有効性・安全性を比較した。その結果、ロスバスタチンはアトルバスタチンと比較して全死亡、主要心血管イベント(MACE)、肝重症有害事象(MALO)のリスクをわずかに低下させることが示唆された。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2024年10月29日号に掲載された。 本研究では、China Renal Data System(CRDS)およびUKバイオバンクのデータベースを用いて、心血管疾患予防を目的としてロスバスタチンまたはアトルバスタチンが処方された成人患者28万5,680例を抽出した。両薬剤の比較にはtarget trial emulationの手法を用い、1対1の割合で傾向スコアマッチングを行った。主要評価項目は全死亡とした。 主な結果は以下のとおり。・6年間の全死亡率(100人年当たり)は、ロスバスタチン群がアトルバスタチン群よりも低かった(CRDS:2.57 vs.2.83、UKバイオバンク:0.66 vs.0.90)。・累積全死亡率の群間差(ロスバスタチン群-アトルバスタチン群)はCRDSでは-1.03%(95%信頼区間[CI]:-1.44~0.46)、UKバイオバンクでは-1.38%(同:-2.50~-0.21)であり、ロスバスタチン群が低かった。・両データベースの対象患者において、ロスバスタチン群はアトルバスタチン群と比較して、MACEとMALOのリスクが低かった。・UKバイオバンクの対象患者において、ロスバスタチン群はアトルバスタチン群と比較して、2型糖尿病発症リスクが高かった。慢性腎臓病発症リスクや、その他のスタチンに関連する有害作用のリスクは同程度であった。 本研究結果について、著者らは「複数の評価項目において、ロスバスタチンとアトルバスタチンでリスクの差がみられたが、その差は比較的小さく、これらの知見を臨床現場で確信をもって活用するには、さらなる研究が必要である」とまとめた。

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胃がん1次治療のニボルマブ+化学療法、承認後のリアルワールドデータ/日本治療学会

 進行再発胃がん1次治療に対するニボルマブ+化学療法は、CheckMate 649試験およびATTRACTION-4試験の結果に基づき、本邦では2021年11月に承認された。本レジメンの実臨床での有用性を検討する観察試験であるG-KNIGHTが行われ、第62回日本治療学会学術集会(10月24~26日)では、倉敷中央病院の仁科 慎一氏が本試験の2回目の解析結果を発表した。今回の解析は2023年11月までのデータに基づいて実施された。 主な結果は以下のとおり。・2021年11月~2023年6月に1次治療としてニボルマブ+化学療法を受けた切除不能・HER2陰性胃がん患者を対象に、日本全国23施設から539例が登録され、527例が解析対象となった。・追跡期間中央値は10.3ヵ月(SD 6.7~15.0)、年齢中央値は70.3歳(24~87)、65.5%が男性、90.9%がECOG PS 0または1であった。・ニボルマブと併用された化学療法は、SOX(74.6%)、CapeOX(6.8%)、FOLFOX(20.7%)であった。・PD-L1 CPS検査実施率は85.6%(453/529)であり、陽性のうち<1が19.7%、1~5が31.7%、≧5が47.9%であった。・奏効率(ORR)は65.6%(95%信頼区間[CI]:59.9~70.9)、病勢コントロール率(DCR)は93.0%(95%CI:89.5~95.6)であった。・ORRのサブグループ解析では、MSIステータス(MSI-H:88.9%、MSS:65.4%)、腹膜播種(なし:72.9%、あり:53.2%)などで差が見られた。・PD-L1 CPSはORRと関連していた(≧5:72.5%、1~5:61.7%、<1:55.6%)ものの、無増悪生存期間(PFS)とは関連していなかった。・PFS中央値は6.9ヵ月(95%CI:6.2~7.6)、全生存期間(OS)中央値は16.4ヵ月(95% CI:14.1~18.4)であった。・治療関連有害事象(TRAE)は481例(91.3%)で発生し、Grade3以上は213例(40.4%)、そのうち免疫関連有害事象は136例(25.8%)、Grade3以上は41例(7.8%)で認められた。 仁科氏は「追跡期間中央値10.3ヵ月の527例のデータに基づく2回目の中間解析により、実臨床におけるニボルマブ+化学療法の有効性と安全性に関する最新の見識が得られた。有効性、安全性とも既報と大きな相違点はなかった」とまとめた。

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精神科病床数はどのくらい必要なのか〜メタ解析

 チリ・ディエゴポルタレス大学のAdrian P. Mundt氏らは、精神科病床の必要数を推定し、これが時間経過とともにどのように変化したかを調査したうえで、実際の病床数との比較を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2024年9月26日号の報告。 2022年9月13日までに公表された研究を、PubMed、Embase classic、Embase、PsycINFO、PsycIndex、Open Grey、Google Scholar、Global Health EBSCO、Proquest Dissertationsより検索した。対象研究には、精神科入院病床の必要数の推定を検討した研究を含めた。必要推定値、入院期間、推定年を抽出した。必要推定値は、中央値および四分位範囲(IQR)を用いて統合した。また、同じ時間と場所における必要推定値と実際の病床普及率を算出した。 主な結果は以下のとおり。・98件の推定値を含む65件の研究が特定された。・病床の需要推定値は、2000年まで低下傾向であったが、その後安定していた。・2000年以降の最新研究26件(入院期間未指定病床:15件、短期入院病床:7件、長期入院病床:4件)の推定値データを統合した。・人口10万人当たりの必要推定中央値は、入院期間未指定病床47(IQR:39〜50)、短期入院病床28(IQR:23〜31)、長期入院病床10(IQR:8〜11)であった。・2000年以降の必要推定値と実際の病床普及率の中央値は1.8(IQR:1.3〜2.3)であった。 著者らは「歴史的に、精神科病床の必要推定値は、2000年ごろまで減少していたが、それ以降は安定しており、実際の病床数よりも低値から高値に変化していた。病床数のさらなる削減を推奨している場合、この政策を見直す必要性が示唆された」とまとめている。

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オピオイド使用障害、治療中止リスクが低い薬剤は?/JAMA

 オピオイド使用障害(OUD)に対するオピオイド作動薬治療(OAT)のレジメンに関する国際的なガイドラインでは、競合する治療選択肢の有効性の比較に関するエビデンスが限られているため、依然として意見が分かれているという。カナダ・サイモンフレーザー大学のBohdan Nosyk氏らは、メサドンと比較してブプレノルフィン/ナロキソンは、治療中止のリスクが高く、死亡率は両群で同程度であることを示した。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年10月17日号で報告された。ブリティッシュコロンビア州の後ろ向きコホート研究 研究グループは、OUDの治療におけるブプレノルフィン/ナロキソンとメサドンの有用性を比較評価する目的で、住民ベースの後ろ向きコホート研究を行った(米国国立薬物乱用研究所[NIDA]などの助成を受けた)。 カナダ・ブリティッシュコロンビア州の9つの健康管理データベースを用いて患者のデータを収集した。年齢18歳以上、オピオイド依存と診断され、2010年1月1日~2020年3月17日にブプレノルフィン/ナロキソンまたはメサドンの新規処方を受けた全患者を対象とした。治療開始時に収監中、妊娠中、がん緩和療法中の患者は除外した。 主要アウトカムは、24ヵ月以内の治療中止(投薬中断日数が、ブプレノルフィン/ナロキソンは6日以上、メサドンは5日以上継続した場合と定義)および全死因死亡とした。initiator解析で24ヵ月治療中止率が高かった 研究期間中にOATの初回投与を受けた新規処方者3万891例(ブプレノルフィン/ナロキソン群39%、男性66%、年齢中央値33歳)をinitiator解析(ベースラインの交絡因子を調整するために傾向スコアと操作変数を用いた)の対象とし、このうち1週目の投与量が最適でなかった患者を除いた2万5,614例をper-protocol解析(ガイドライン推奨用量でのアウトカムを比較するために打ち切り法を用いた)の対象とした。 新規処方者のinitiator解析では、メサドン群に比べ、ブプレノルフィン/ナロキソン群で24ヵ月時の治療中止率が高かった(88.8% vs.81.5%、補正後ハザード比[HR]:1.58[95%信頼区間[CI]:1.53~1.63]、補正後リスク差:10%[95%CI:9~10])。また、per-protocol解析において至適用量で評価した治療中止率の推定値の変化は限定的なものであった(42.1% vs.30.7%、1.67[1.58~1.76]、22%[16~28])。死亡リスクは両群とも低い 投与期間中の24ヵ月時の死亡率に関するper-protocol解析では、新規処方者(ブプレノルフィン/ナロキソン群0.08%[10件]vs.メサドン群0.13%[20件]、補正後HR:0.57[95%CI:0.24~1.35])、および新規・既存処方者(prevalent new user)(0.08%[20件]vs.0.09%[45件]、0.97[0.54~1.73])のいずれにおいても両群とも値が低く、曖昧な結果が示された。 これらの結果は、フェンタニル導入後やさまざまな患者サブグループを通じて、また感度分析でも一貫していた。 著者は、「北米などの地域では、より強力な合成オピオイドの使用が増加し続けていることから、治療中止のリスクを軽減するために、OUD患者の治療のあらゆる側面に関する診療ガイドラインはその再考が求められる」としている。

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GLP-1受容体作動薬、内視鏡検査の誤嚥リスクに影響するか/BMJ

 2型糖尿病患者に上部消化管内視鏡検査を行う際、検査前のSGLT-2阻害薬と比較してGLP-1受容体作動薬の使用では、肺吸引のリスクは上昇しないものの、内視鏡検査中止のリスクが高いことが、米国・ハーバード大学医学大学院のWajd Alkabbani氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年10月22日号に掲載された。米国のコホート研究 研究グループは、2型糖尿病患者の上部消化管内視鏡検査において、検査前のGLP-1受容体作動薬投与は、SGLT-2阻害薬投与に比べ肺吸引や検査中止のリスクを上昇させるかを評価する目的で、コホート研究を行った(ハーバード大学医学大学院薬剤疫学・薬剤経済学科などの助成を受けた)。 米国の2つの商用医療データベースを用いて、2016年1月1日~2023年8月31日に、上部消化管内視鏡検査前の30日以内にGLP-1受容体作動薬またはSGLT-2阻害薬を使用した18歳以上の2型糖尿病患者を特定した。 4万3,354例を解析の対象とした。内視鏡検査前に2万4,817例(平均年齢59.9歳、女性63.6%)がGLP-1受容体作動薬を、1万8,537例(59.8歳、63.7%)がSGLT-2阻害薬を使用していた。サブグループ解析でも全般に肺吸引リスクに差はない 主要アウトカムである内視鏡検査当日または翌日の肺吸引の1,000人当たりの重み付けリスクは、GLP-1受容体作動薬群が4.15、SGLT-2阻害薬群は4.26であり、両群で同程度であった(統合リスク比:0.98、95%信頼区間[CI]:0.73~1.31)。 内視鏡検査に使用した麻酔の種類や肥満度に基づくサブグループ解析でも、両群間に肺吸引リスクの差を認めなかった。また、個々のGLP-1受容体作動薬とSGLT-2阻害薬の比較でも、全般に肺吸引リスクに差はなく、エキセナチド-リキシセナチドのみリスクが高かった(統合リスク比:2.49、95%CI:1.36~4.59)が、症例数が少なく精度は低かった。BMI値≧30で検査中止リスクが高かった 副次アウトカムである内視鏡検査中止の1,000人当たりの重み付けリスクは、SGLT-2阻害薬群が4.91であったのに対し、GLP-1受容体作動薬群は9.79と増加していた(統合リスク比:1.99、95%CI:1.56~2.53)。 サブグループ解析では、BMI値≧30の患者でGLP-1受容体作動薬群の検査中止リスクが高かった(統合リスク比:2.60、95%CI:1.65~4.06)が、BMI値<30の患者では差を認めなかった(0.99、0.51~1.94)。また、SGLT-2阻害薬群と比較して、セマグルチド皮下注、デュラグルチド、エキセナチド-リキシセナチド、チルゼパチドは検査中止リスクが高かった。 著者は、「これらの知見は、無作為化試験によるエビデンスがない現在、内視鏡検査を必要とする患者に対する検査前のプロトコールの作成に役立つ可能性がある」としている。

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大量飲酒後には不整脈リスクが増加か

 パーティーやクラブで音楽を聞きながらの飲酒は気分を高揚させるものだが、心臓には悪い影響があるかもしれない。ドイツのミュンヘンで大量飲酒をした健康な若者の5%以上に、飲酒後24時間以内に臨床的に重要な不整脈が認められたとする研究結果が報告された。ルートヴィヒ・マクシミリアン大学(LMU)ミュンヘン(ドイツ)のStefan Brunner氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal」に10月4日掲載された。 論文の筆頭著者であるBrunner氏と上席著者であるLMU大学病院のMoritz Sinner氏は、2015年に、ミュンヘンの有名なオクトーバーフェスト中に調査を行い、飲酒が心拍リズムに与える影響を研究したことがある。ただ、この研究では、心電図(ECG)の単回測定の結果を頼りに結論が導き出されていた。 今回の研究では、携帯型のECGデバイスにより、外出先での飲酒により呼気アルコール濃度(BAC)が1.2g/kg以上になる可能性が高い18歳以上の若者202人の48時間分の心拍リズムが追跡された。ECGデータは、飲酒前(ベースライン;0時間)、飲酒期間(ベースラインから1〜5時間後)、回復期間(同6〜19時間後)、および飲酒期間と回復期間のそれぞれから24時間後に相当する2つのコントロール期間(同25〜29時間後と30〜43時間後)に分けて解析された。なお、研究グループによると、研究参加者は、ECG測定時にはお祭り気分であったものの、得られたデータの質は全体的に高かったという。 ECGデータが不十分だった9人を除外した193人(平均年齢29.9±10.6歳、女性36%)を対象に解析を行った。その結果、心拍数は、ベースライン時で平均89.5±12.6回/分だったのが、飲酒中には最高で平均97.0±16.2回/分にまで上昇していたことが判明した。また、参加者の5.2%(10/193人)で、臨床的に重要な不整脈が検出されたことも明らかになった。これらの不整脈は、主に回復期間に生じていた。 こうした結果を受けてSinner氏は、「アルコールは、心臓の自律的な調整プロセスに深刻な影響を与えるようだ」と話す。一方、Brunner氏は、「われわれの研究は、心臓病学の観点から、アルコールの急激な過剰摂取が健康に与える悪影響を明らかにするものだ」と述べている。ただし、研究グループは、飲酒に関連する不整脈が心臓の健康に及ぼす長期的な悪影響については、さらなる研究で検討する必要があると述べている。

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不十分な情報でも「自分は正しい」と思い込むのはなぜか

 人は、実際には全体像の一部しか把握していないにもかかわらず、決断を下すのに十分な情報を持っていると思い込みがちであることが、新たな研究で明らかになった。米オハイオ州立大学英語学教授のAngus Fletcher氏らによるこの研究結果は、「PLOS ONE」に10月9日掲載された。Fletcher氏は、「本研究により、人は概して、情報に基づいた意思決定をするために、他にも役立つ情報があるかどうかを検討してみようとはしないことが分かった」と述べている。 把握している情報量が実際には不十分であるにもかかわらず十分だと信じてしまう現象を、「情報の十分性の錯覚(illusion of information adequacy)」という。Fletcher氏らは、この概念は、限定的で偏った情報源から情報を得ているに過ぎない場合でも、人がいかに確固とした強い意見を持ち得るのかを説明するのに役立つと述べている。Fletcher氏は、「人に、一見矛盾しないと思われる情報をいくつか与えれば、ほとんどの人は『それは正しいようだ』と言って、それに従うだろう」と述べている。 この研究でFletcher氏らは、1,261人の米国人(男性59%、平均年齢39.8歳)を対象にオンラインで実験を行った。試験参加者は3群に分けられ、それぞれの群が、水不足の問題が生じている架空の学校についての記事を読んだ。ただし、1つ目の群が読んだ記事には、十分な水がある別の学校と合併すべき理由のみが、2つ目の群が読んだ記事には、十分な水がある別の学校とは合併せずに他の解決策を期待すべき理由のみが述べられていた。3つ目の群(対照群)が読んだ記事は、学校の合併に関する議論と、別々にとどまるための議論の両方が述べられた完全な内容の記事だった。 その結果、半分の内容の記事しか読んでいない1つ目と2つ目の群の参加者は、それでも「自分は確固たる決断を下すのに十分な情報を持っている」と信じ、読んだ記事の推奨に従うと答えたことが示された。Fletcher氏は、「本来の情報量の半分しか持っていなかった参加者の方が、全ての情報を持っていた参加者よりも、合併するべきか、別々にとどまるべきかの決断に対する自信が大きかった。彼らは、全ての情報を持っていなかったにもかかわらず、自分たちの決断は正しいと確信していた」と述べている。さらに、半分の情報しか持っていなかった人は、「他のほとんどの人も、自分と同じ決断を下すだろう」と考えていたことも判明した。 しかし、この実験では、一筋の希望の光も見えた。研究グループによると、記事の半分だけを読んでいた人の中には、その後、残りの半分の情報を読んだ人もいた。そうした人の多くが、自分の意見を変えることに抵抗を示さなかったという。ただしFletcher氏は、特に、固定化したイデオロギー的立場に関連する問題に関しては、全ての情報が提供されたとしても、それによってその人が考えを変えるとは限らないと指摘する。なぜなら、このような場合、人は新たな情報を信頼できないものとして切り捨てたり、既存の見解に合致するよう再解釈したりするからだ。 Fletcher氏は、「とはいえ、人間関係での衝突のほとんどはイデオロギーによるものではない。日常生活の中で生じる、ちょっとした誤解が原因だ」と話す。そして、「自分の立場を表明したり決断を下したりする前に、自分がその状況について十分に理解しているかどうかを確認する必要がある」と述べている。同氏はさらに、「この研究で明らかになったように、人には、関連する事実を全て知っていると思い込む思考パターンが備わっている。よって、誰かと意見が合わないときには、まず、相手の視点や立場をもっとよく理解するのに役立つ何かを見落としていないかを考えてみるべきだ。それが『情報の十分性の錯覚』と戦う方法だ」と助言している。

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脳卒中後の治療で最善の血栓溶解薬とは?

 脳梗塞患者に対する血栓溶解薬のテネクテプラーゼ(TNK)の適応外使用は、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)のアルテプラーゼ(以下、TPA)による治療よりもわずかに効果的である可能性があるとするシステマティックレビューとメタアナリシスの結果が発表された。TNKによる治療の方が、TPAによる治療よりも、脳梗塞の発症から3カ月後に患者が修正版ランキンスケール(modified Rankin Scale;mRS)で症状がない(0点)か、症状があっても明らかな障害はない(1点)に分類される可能性の高いことが示されたという。アテネ国立カポディストリィアコ大学(ギリシャ)神経学分野教授のGeorgios Tsivgoulis氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に10月16日掲載された。 TNKは、脳梗塞の治療薬としてヨーロッパでは承認されているが、米国では未承認。現時点での欧州脳卒中機構(ESO)の緊急推奨では、非劣性を示したメタアナリシスの結果に基づき、発症から4.5時間未満の脳梗塞に対する治療では、TPAの代わりにTNK0.25mg/kgを使用しても良いとしている。これらのガイドラインの発表以降、さらに4件のランダム化比較試験(RCT)が実施され、追加の知見が得られている。 今回の研究では、現時点で入手可能な11件のRCTの結果を用いてシステマティックレビューとメタアナリシスを実施し、発症後4.5時間以内の脳梗塞の治療におけるTNK0.25mg/kgの有効性と安全性をTPAとの比較で検討した。これらのRCTには、TNKにより治療を受けた患者3,788人と、TPAによる治療を受けた患者3,757人が含まれていた。主要評価項目は、脳梗塞から3カ月後の「優れた機能的アウトカム」(mRSスコアが0〜1点)、副次評価項目は、脳梗塞から3カ月後の「良好な機能的アウトカム」(mRSスコアが0〜2点;2点=軽度の障害)、障害の軽減(mRSスコアが1点以上減少)、症候性頭蓋内出血、および死亡であった。 その結果、TNKによる治療を受けた群では、TPAによる治療を受けた群と比べて「優れた機能的アウトカム」を達成する可能性が5%高く(リスク比〔RR〕1.05、95%信頼区間〔CI〕1.01〜1.10、P=0.012)、障害が軽減している可能性も高い(共通オッズ比1.10、95%CI 1.01〜1.19、P=0.034)ことが示された。しかし、「良好な機能的アウトカム」を達成する可能性については、両群間で同等であった(RR 1.03、95%CI 0.99〜1.07、P=0.142)。また、症候性頭蓋内出血(同1.12、0.83〜1.53、P=0.456)、および死亡(同0.97、0.82〜1.15、P=0.727)のリスクについても有意差は認められなかった。 Tsivgoulis氏は、「われわれのメタアナリシスからは、TNKとTPAの両薬剤の安全性は同等で、脳卒中後の良好な回復の可能性を高めるが、TNKは、優れた回復をもたらす効果と障害軽減効果においては、TPAよりも優れている可能性の高いことが明らかになった」と述べている。その上で、「この結果は、脳梗塞患者の治療には、TPAよりもTNKを使用するべきだという主張を裏付ける結果だ」と話している。

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