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検索結果 合計:36499件 表示位置:2421 - 2440

2421.

日本人高齢者の笑いの頻度とうつ病発症との関係

 笑いは、精神的および身体的な健康の有益性と関連するといわれている。しかし、日常生活における笑いがうつ病の予防に有効かどうかに関する縦断的なエビデンスは、依然として限られている。東北大学の玉田 雄大氏らは、日常生活における笑いの頻度が高齢者のうつ病発症リスクと関連しているかどうかを検証するため、6年間の縦断研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年9月4日号の報告。 6年間にわたる3-waveコホートである日本老年学的評価研究(JAGES)に参加した65歳以上の日本人3万2,666例のデータを分析した。笑いの頻度は、2019年に自記式質問票を用いて評価した。回答カテゴリーは、「ほぼ毎日」「1~5日/週」「1~3日/月」「まったくない、またはほとんどない」とした。2016~22年のうつ病発症の定義には老年うつ病尺度を用いた。2016年に測定された潜在的交絡因子でコントロールしたうえで、修正ポアソン回帰モデルを用いて調整リスク比(aRR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中に4,805例(14.7%)がうつ病を発症した。・うつ病のaRRは、笑いの頻度が「ほぼ毎日」の人と比較し、「1~5日/週」の人で1.25(95%CI:1.09~1.44)、「1~3日/月」の人で1.26(95%CI:1.05~1.52)、「まったく笑わない」の人で1.49(95%CI:1.18~1.89)であった。・これらの関係に、有意な用量反応傾向が認められた(p for trend<0.001)。 著者らは「日常生活における笑いの頻度が低いことは、高齢者のうつ病発症リスクの上昇と関連が認められた。本知見は、頻繁に笑うことが老後のうつ病予防に役立つ可能性があることを示唆している」と結論付けている。

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嚥下障害を起こしやすい薬剤と誤嚥性肺炎リスク

 飲食物を飲み込む機能障害である嚥下障害は、さまざまな疾患や薬物の副作用により引き起こされる可能性があり、誤嚥性肺炎のリスク因子となっている。しかし、嚥下障害を引き起こす特定の薬剤やその発現率については、これまで十分に解明されていなかった。慶應義塾大学の林 直子氏らは、添付文書の情報に基づき、嚥下障害に関連する薬剤およびその発現率、これらの薬剤を服用している患者における誤嚥性肺炎のリスク因子を特定するため、日本のレセプトデータベースの横断的分析を行った。Drugs-Real World Outcomes誌オンライン版2025年9月19日号の報告。 本研究では、嚥下障害誘発薬剤の候補(candidate dysphagia-inducing drug:CDID)を、副作用として嚥下障害が記載されている日本の添付文書より特定した。CDIDを服用している患者の年齢、性別、服用薬、併存疾患について、ジャムネットのJammNet保険データベースを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・54成分がCDIDとして特定された。・CDIDを服用している2万4,276例のうち、嚥下障害は146例(0.6%)、誤嚥性肺炎は76例(0.3%)で認められた。・誤嚥性肺炎と診断された患者のうち、23例(30%)は嚥下障害を併発していた。・対象となった54成分のうち28成分(52%)を服用している患者で、嚥下障害または誤嚥性肺炎が発現した。・さらに13成分は、嚥下障害または誤嚥性肺炎のいずれかの副作用発現率が1%以上であった。・各診断における発現率が最も高かった上位5つのCDIDは、クロバザム、バクロフェン、ゾニサミド、チアプリド塩酸塩、トピラマートであった。・複数のCDID服用は単剤のCDID服用と比較し、嚥下障害および誤嚥性肺炎の発現率が有意に高かった(p<0.05)。・ロジスティック回帰分析では、誤嚥性肺炎の発現は、男性、後期高齢者、嚥下障害の診断、便秘と有意に関連していることが示された。 著者らは「本研究結果は、CDIDを処方する際には、とくに高齢の男性患者の場合、誤嚥性肺炎のリスクに細心の注意を払う必要があることを示唆している」と結論付けている。

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国内WATCHMANの左心耳閉鎖術の現状(J-LAAO)/日本心臓病学会

 2019年9月より経皮的左心耳閉鎖デバイスWATCHMANが保険適用となり、それと同時に本邦の患者を対象としたJ-LAAOレジストリがスタートした。それから6年が経ち、これまでに7,690例が登録されてきた。その間にデバイスも進化を遂げ、今では3代目となるWATCHMAN FLX Proが主流となり、初期と比べより安全に左心耳閉鎖が実施できるようになってきている。第73回日本心臓病学会学術集会(9月19~21日開催)のシンポジウム「循環器内科が考える塞栓症予防-左心耳閉鎖、PFO閉鎖、抗凝固療法-」では、草野 研吾氏(国立循環器病研究センター 心臓血管内科部長)が「我が国の左心耳閉鎖術の現状-J-LAAOレジストリからの報告-」と題し、2025年3月までに登録された日本人におけるWATCHMAN最新モデルを含めた安全性・有効性を報告した。 J-LAAOレジストリは、全7学会(日本循環器学会、日本心エコー図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心臓血管外科学会、日本心臓病学会、日本脳卒中学会、日本不整脈心電学会)共同の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者を対象とした経皮的左心耳閉鎖システムによる塞栓予防の有効性・安全性を調査した多施設レジストリ研究である。今回、脳梗塞スコア(CHADS2またはCHA2DS2-VASc)に基づく脳卒中および全身性塞栓症のリスクが高い患者、抗凝固療法が推奨される患者で、とくに出血リスクスコア(HAS-BLED)が3点以上の出血リスクが高い患者を選択基準とし、本レジストリ登録者のうち7,036例の急性期の手技情報、有害事象、術後の抗凝固療法などが解析された。留置後の薬物療法としては、海外試験のレジメンにならい、留置~45日はワルファリン+アスピリン、45日~6ヵ月は抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)、その後はアスピリン単剤療法を推奨している。 主な結果は以下のとおり。 ※いずれの結果も各デバイスでフォローアップ期間が異なる点には注意・平均年齢は78.0歳(FLX Pro群:79.0歳)であった。・各スコアの中央値は、CHADS2が3点、CHA2DS2-VAScが5点、HAS-BLEDが3点であった。・アブレーション治療歴は約1/3にみられ、心房細動の種類としては発作性が2,780例(39.5%)、持続性が4,252例(60.4%)であった。・モヤモヤエコー(smoke like echo)は1,971例(28.0%)にみられた。・最終留置デバイスモデルは約11.3%で40mm、全体の2/3で31mmを超えるデバイスが選択されていた。・手術情報について、手術成功例は97.9%、手術時間は平均52.0分(G2.5:60.0分、FLX:51.0分、FLX Pro:47.0分)で、透視時間も短縮傾向、造影剤投与量も減少傾向であった。・心嚢液リスクはデバイスの形状変化に伴い減少し、G2.5は23例(3.1%)、FLXは40例(0.9%)、FLX Proは9例(0.6%)で認められた。・術45日後の左心耳有効閉鎖率(complete sealもしくは残留血流の最大幅が5mm以下の症例)はG2.5で99.7%、FLXで98.3%、FLX Proで98.3%に認められた。・術45日後の残留血液はG2.5で27%、FLXで13%、FLX Proで9.4%に認められた。・有害事象について、術直後のデバイスごとの心タンポナーデと心嚢液貯留の発生率(G2.5、FLX、FLX Proの順)は、心タンポナーデで0.7%vs.0.2vs.0.1%、心嚢液貯留で1.7%vs.1.0%vs.1.1%であった。・このほかの有害事象は、以下のような結果であった。◯デバイス血栓3.2%(G2.5:36例[4.8%]、FLX:170例[3.7%]、FLX Pro:19例[1.3%])◯うっ血性心不全4.5%(73例[9.7%]、226例[4.9%]、21例[1.4%])◯脳卒中2.5%(36例[4.8%]、131例[2.8%]、11例[0.7%])・死亡者数は全体で415例(5.8%)、G2.5では92例(12.2%)、FLXでは298例(6.5%)、FLX Proでは25例(1.7%)であった。・デバイス移動は全11例(0.16%)、機器の外科的摘出は全9例(0.13%)、経皮的デバイス抜去は全3例(0.04%)であった。 本結果について草野氏は「患者背景をみると、日本人は米国人と比べて発作性心房細動症例の割合が少なく、左心耳入口部が比較的大きい。その点が選択デバイスの大きさに反映されていた。残留血液量も減少傾向にあり、心タンポナーデの発生率の少なさからも安全に手技が行われていたことがうかがえる」とコメントした。外科的摘出の原因として、デバイス血栓・脱落、左房血栓などがみられた点については、「1年以上経過後に発生していることに留意が必要」とし、加えて「FLXでは手術当日にデバイス血栓を生じている症例が複数例あった。一方で、留置後2年後にも生じているケースも散見される。デバイス血栓を発症した患者はシリアスな病態には至っていないものの、これらの結果を踏まえて継続的なフォローアップを行ってほしい」と強調した。なお、いずれの結果を見るうえで、FLX Proは発売からフォローアップまでの期間が短いことには注意が必要である。国内ガイドラインでの推奨は… 日本での左心耳閉鎖術に関する推奨は、『2021年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版不整脈非薬物治療』1)において、「NVAFに対する血栓塞栓症の予防が必要とされ、かつ長期的な抗凝固療法の代替が検討される症例に左心耳閉鎖術を考慮してもよい(推奨クラスIIB、エビデンスレベルB)」となっていた。しかし、2024年にフォーカスアップデート版として公開された『2024年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版不整脈治療』では、症例数の乏しさから左心耳閉鎖術に関する項目に変更は示されず“長期的な抗凝固療法が必要ではあるが、出血リスクが高く抗凝固療法が適切ではない患者においては、左心耳閉鎖デバイスを用いた経皮的左心耳閉鎖術や胸腔鏡下左心耳閉鎖術を症例に応じて考慮してもよい”(p.59)にとどまっている。これについて草野氏は「J-LAAOを経年的に見ても、植込み対象での出血2次予防の割合が減少し、塞栓予防目的の植込みが増加している。今後は海外ガイドラインに準じて、脳梗塞高リスク例への広がりが期待される」と述べた。 最後に国内の状況について、同氏は「米国と日本では左心耳閉鎖術の実施件数に10倍もの差があり、欧米に比べると国内での実施件数は少ない。またレジストリでは、少数ながら脱落が外科手術に至った例があり、安全を心がけた植込み術も重要である」と締めくくった。

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シンバスタチン、二次性進行型多発性硬化症への効果は?/Lancet

 先行の疫学研究により、多発性硬化症(MS)の重症度と血管合併症の関連が指摘され、第IIb相のMS-STAT試験では、HMG-CoA還元酵素阻害薬シンバスタチンはプラセボに比べ、二次性進行型多発性硬化症(SPMS)患者の脳萎縮率を年間43%低減するととともに、総合障害度評価尺度(EDSS)の有意な改善が報告されている。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJeremy Chataway氏らMS-STAT2 Investigatorsは、第III相の「MS-STAT2試験」において、SPMS患者の障害進行の抑制に関して、シンバスタチンは有意な効果をもたらさないことを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年10月1日号で発表された。英国の無作為化プラセボ対照比較試験 MS-STAT2試験は、英国の31施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2018年5月~2021年9月に参加者の適格性を評価した(英国国立医療・社会福祉研究所[NIHR]医療技術評価プログラムなどの助成を受けた)。 McDonald診断基準でMSと確定され、EDSSのスコアが4.0~6.5であり、過去2年間に身体障害の継続的な進行がみられるためSPMSと診断された患者964例(平均年齢[±SD]54±7歳、女性704例[73%])を登録した。 被験者を、シンバスタチン80mgを経口投与する群(482例)、またはプラセボ群(482例)に無作為に割り付け、3~4.5年間投与した。 主要アウトカムは、6ヵ月後にEDSSで確定された身体障害の進行(ベースラインのEDSSスコアが6.0未満の場合は1点以上の増加、6.0以上の場合は0.5点の増加)とし、ITT解析を行った。副次アウトカムにも差はない 主要アウトカムのイベントは、シンバスタチン群で173例(36%)、プラセボ群で192例(40%)に発生し、両群間に有意な差を認めなかった(補正後ハザード比:1.13、95%信頼区間[CI]:0.91~1.39、p=0.26)。主要アウトカムの感度分析およびper-protocol解析でも、両群間に有意差はみられなかった。 5つの臨床的副次アウトカム(multicomponent disability progression、multiple sclerosis functional composite[MSFC]、Sloan low contrast visual acuity[SLCVA]、修正Rankinスケール[mRS]、brief international cognitive assessment for multiple sclerosis[BICAMS])については、シンバスタチン群の有益性を示すエビデンスは得られなかった。一方、multicomponent disability progressionの3つの構成要素のうち、上肢機能の指標である9-hole peg test(9HPT)はシンバスタチン群で優れた(補正後オッズ比:1.68、95%CI:1.05~2.69、p=0.031)。 4つの患者報告による副次アウトカム(multiple sclerosis impact scale-29 version 2[MSIS-29v2]、multiple sclerosis walking scale 12[MSWS-12v2]、modified fatigue impact scale 21[MFIS-21]、Chalder Fatigue Questionnaire[CFQ])は、いずれも両群間に差はなかった。 また、再発率はシンバスタチン群で有意に高かった(0.05 vs.0.07/人年、補正後発生率比:1.43、95%CI:1.01~2.01、p=0.044)が、数値そのものは低かった。SPMSの進行抑制に実質的な効果はない 追跡期間中に79例が疾患修飾薬による治療を開始した(シンバスタチン群43例[9%]、プラセボ群36例[7%])。このうち73例がシポニモドを使用した。 安全性に関する緊急の問題や、予期せぬ重篤な有害反応を疑わせる事例の報告はなかった。シンバスタチン群の1例で、重篤な有害反応が発現した(治療開始から56日後に横紋筋融解症で入院、続発症の発現なく回復)。心血管系の重篤な有害事象は、シンバスタチン群で5例(1%)、プラセボ群で12例(2%)に発生した。 著者は、「シンバスタチンは、SPMSの進行抑制において実質的な治療効果はないことが明らかとなった」「MSの疾患修飾薬としてのシンバスタチンの位置付けは確立していないが、スタチンは引き続きMS患者の血管合併症の1次および2次予防において重要な役割を担うと考えられる」としている。

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初回マンモグラフィ非受診女性、乳がん死リスク増加/BMJ

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のZiyan Ma氏らの研究チームは観察研究において、初回マンモグラフィの受診勧奨に応じず受診しなかった女性は、受診勧奨に応じ受診した女性と比較して、乳がん発見時の腫瘍の悪性度が高く長期的な乳がん死のリスクが顕著に増加しているが、乳がん発生率は同程度であることを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年9月24日号で報告された。初回の受診勧奨を受けた約43万例の女性を解析 研究チームは、初回マンモグラフィの受診勧奨に応じなかった女性における、その後の受診状況および乳がんのアウトカムを評価する目的で、住民ベースのコホート研究を実施した(スウェーデン研究会議などの助成を受けた)。 1991~2020年に、同国ストックホルム県でSwedish Mammography Screening Programmeの受診勧奨を受け取り、初回の受診勧奨時の年齢が50歳(2005年7月以前)または40歳(2005年7月以降)の女性43万2,775例を解析の対象とした。初回の受診勧奨前にがんの診断を受けた女性は除外した。 2023年までの追跡期間(最長25年)における、受診、乳がん発生、腫瘍特性、乳がん死について調査した。非受診者は受診率が継続的に低く、StageIII、IVの割合が高い 494万375人年の追跡期間中に、1万6,059例で新たに乳がんが発生した。初回マンモグラフィの受診勧奨を受けた女性のうち、29万4,015例(68.9%)が実際に検診を受け、13万8,760例(32.1%)は受診しなかった。 初回検診の非受診者は、その後の検診でも受診率が継続的に低く、症状の発現によって発見されて進行乳がんと診断される確率が高かった。具体的には、初回検診の非受診者は受診者に比べ、StageIII(4.1%vs.2.9%、オッズ比[OR]:1.53[95%信頼区間[CI]:1.24~1.88])およびStageIV(3.9%vs.1.2%、3.61[2.79~4.68])の乳がんの割合が高かった。非受診者の乳がん死の増加は、発見の遅れを反映する可能性 681万8,686人年の総追跡期間中に、1,603例が乳がんにより死亡した。初回検診の非受診者は乳がん死のリスクも高く、25年間の累積乳がん死亡率は、初回検診の受診者が7.0/1,000例であったのに対し、非受診者は9.9/1,000例だった(補正後ハザード比:1.40、95%CI:1.26~1.55)。 これに対し、25年間の累積乳がん発生率は両群で同程度(受診者7.8%vs.非受診者7.6%)であった。このことから、初回検診の非受診者における乳がん死亡率の増加は、発生率の上昇ではなく、発見の遅れを反映している可能性が高いという。 著者は、「これらのデータは、初回検診の非受診者が、乳がんによる死亡の長期リスクを有する大規模な集団であることを示している。この高リスク集団は、検診受診率の向上と、それによる死亡リスクの低減を目的とする、対象を絞った介入の機会を提供するものである」「初回検診非受診は、回避可能な乳がん死の早期かつ対応可能な予測因子として優先的に取り組むべき課題である」「本研究の知見は、他のがんの検診プログラムへの示唆をも含むものである」としている。

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口腔内の細菌が膵臓がんの一因に?

 膵臓がんのリスクは口の中に生息する微生物と関係している可能性があるようだ。歯周病に直接関係する微生物も含め、27種類の細菌や真菌が膵臓がんリスクと有意に関連し、これらの微生物に基づいて構築された微生物リスクスコア(MRS)が1標準偏差(SD)上昇するごとに、膵臓がんリスクが3倍以上高まることが、新たな研究で示された。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部のRichard Hayes氏らによるこの研究結果は、「JAMA Oncology」に9月18日掲載された。Hayes氏は、「歯磨きとフロスの使用は、歯周病を予防するだけでなく、がんの予防にも役立つ可能性のあることが、これまで以上に明らかになってきた」と述べている。 膵臓がんは、早期発見のための効果的なスクリーニング方法がほとんどなく、がんが見つかったときには進行していることが多いため、「サイレントキラー」と呼ばれている。研究グループによると、膵臓がんは致死率が高く、5年生存率はわずか13%であるという。 過去の研究では、細菌が唾液を介して膵臓に移動し、口腔衛生状態が悪い人のがんリスクを高める可能性のあることが示されている。しかし、具体的にどの微生物が膵臓がんリスクに特に影響を与えているのかは明らかになっていない。 この研究でHayes氏らは、American Cancer Society Cancer Prevention Study-II Nutrition Cohort(米国がん協会がん予防研究II栄養コホート)とProstate, Lung, Colorectal, and Ovarian Cancer Screening Trial(前立腺がん・肺がん・大腸がん・卵巣がんスクリーニング試験)の2つの疫学コホートのデータを用いて、口腔内の細菌および真菌のマイクロバイオーム(微生物叢)と、その後の膵臓がん発症との関連を検討した。口腔サンプルを提供した参加者の中から追跡期間中に膵臓がんを発症した445人を特定。これらと、コホート、年齢(5歳刻み)、性別、人種・民族、口腔サンプル採取時期を一致させたがん未発症の人455人を対照群とした。追跡期間の中央値は8.8年で、対象者(890人)の平均年齢は67.2歳、男性が53.3%を占めていた。 解析の結果、口腔内歯周病菌のうち、Porphyromonas gingivalis、Eubacterium nodatum、Parvimonas micraが膵臓がんリスクの増加と関連していることが明らかになった。また、細菌叢全体を対象とした網羅的解析では、8種類の細菌種が膵臓がんのリスク低下、13種類(このうち1種は前述の歯周病菌に該当)がリスク増加と関連していることが示された。真菌では、Candida属とMalassezia属の計4種が膵臓がんリスクと関連していた。さらに、膵臓がんリスクと有意な関連を示した27種類の細菌・真菌を組み合わせてMRSを構築し、膵臓がんの発症リスクとの関連を検討したところ、MRSの1SD上昇ごとの膵臓がん発症のオッズ比は3.44(95%信頼区間2.63〜4.51)と推定された。 こうした結果を受けて論文の上席著者で、NYUグロスマン医学部のJiyoung Ahn氏は、「口腔内の細菌や真菌の集団をプロファイリングすることで、腫瘍専門医は膵臓がんの検査を最も必要とする患者を特定できる可能性がある」とNYUのニュースリリースの中で述べている。 ただしAhn氏らは、この研究は観察研究であるため、口腔の健康と膵臓がんとの直接的な因果関係を導き出すことはできないと指摘している。研究グループは次に、口腔内のウイルスががんの一因となるのかどうか、また口腔内のマイクロバイオームが患者の生存率にどのような影響を与えるのかを調査する予定だとしている。

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デジタルピアサポートアプリがニコチンガムの禁煙効果を後押し

 ニコチンガムは禁煙に一定の効果を示すものの、その禁煙成功率は十分とは言えない。今回、企業の健康保険組合加入者を対象とした非ランダム化比較試験で、ニコチンガムにデジタルピアサポートアプリを組み合わせることで、禁煙成功率が有意に向上することが示された。研究は、北里大学大学院医療系研究科の吉原翔太氏らによるもので、詳細は「JMIR mHealth and uHealth」に8月19日掲載された。 日本では禁煙治療が保険適用だが、禁煙成功率は高いとは言い難い。平成29年度の厚生労働省の調査によると、ニコチン依存症管理料を算定した患者における5回の禁煙治療完了率は全体で34.6%にとどまっていると報告されている。一方で、グループでの交流を促進し、ユーザー同士で禁煙へのモチベーションを高めるデジタルピアサポートアプリは禁煙に有益である可能性がある。しかしながら、デジタルピアサポートアプリとニコチン代替療法(ニコチンガム)を統合した禁煙プログラム効果は、これまで検討されてこなかった。このような背景から、著者らはニコチン代替療法(ニコチンガム)にデジタルピアサポートアプリを追加することで、企業の健康保険組合加入者で現喫煙者の禁煙率を高めることができるかどうかを評価するために、12週間の非ランダム化比較試験を実施した。 参加者は、健康保険組合に加入する3社(電子・保険・通信)の現喫煙者を、プログラム開始約1か月前から20日間募集した。介入期間中はデジタルピアサポートアプリ(みんチャレ、A10 Lab Inc.)に常時アクセス可能であった。このアプリでは、最大5人までの匿名グループチャットが可能で、写真やコメントを含む活動報告を共有することで交流や禁煙の取り組みを促した。参加者は自己選択で、(1)ニコチンガム単独(単独群)、または(2)デジタルピアサポートアプリとニコチンガムの併用(併用群)の2つの介入群のいずれかを選択した。単独群を基準とした禁煙のオッズ比(OR)は、人口統計学的および喫煙関連変数を調整したロジスティック回帰分析により推定した。 最終的な解析対象は451人(単独群191人、併用群260人)であった。単独群と比較して、併用群は平均年齢が高く、喫煙歴が長い傾向がみられ、また禁煙の主な動機として「家族の健康」を挙げる割合が高かった。 12週間時点での禁煙成功率は、単独群38.7%に対し併用群59.2%で有意に高かった。また、年齢、性別、喫煙歴、喫煙本数、禁煙の目的や意欲といった変数を調整し、ロジスティック回帰分析を行った結果、禁煙成功のORは2.41(95%信頼区間2.07~2.81)であった。 さらに、禁煙成功率とデジタルピアサポートアプリの使用期間およびグループチャットへの投稿頻度との関連を検討した。解析の結果、アプリの使用期間が長いほど、また投稿頻度が高いほど禁煙成功率は有意に高く、いずれも正の関連が認められた(傾向性P<0.001)。 著者らは、本研究が自己申告データに依存している点などの限界を認めつつも、「標準的なニコチン代替療法に加えてデジタルピアサポートアプリを併用した現喫煙者では、禁煙率が有意に上昇することが確認された。この知見は、禁煙介入におけるデジタルツールの実装可能性を示す予備的エビデンスである」と述べている。 なお、禁煙成功率とデジタルピアサポートアプリの使用期間・投稿頻度に正の関連が見られた理由について、著者らは、アプリをより積極的に利用し、頻繁に投稿した人は、チャット機能を通じて自身の成功体験を共有したり、周囲から承認やポジティブなフィードバックを得たりする機会が増えたことが影響しているのではないかと考察している。

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097)生成AI、私生活での利用シーン【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第97回 生成AI、私生活での利用シーンゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆生成AIという言葉を耳にするようになってからだいぶ経ちますが、アナログ大好き&デジタル疎遠なこの私も、ごく最近になりようやく触りはじめました。というのも、去年あたりから表示されるようになった「スマホのキラキラしたアイコン」が、「AIアシスタント」であることにこの夏、ようやく気付いたからです(どうやら知らぬ間にインストールされていたようです)。今にして思えば、あれだけテレビCMなどでも流れていたのだから、もっと早く気付いても良さそうなものですが…。ずっと興味なくスルーし続けていた、このAIアシスタントというもの、使ってみると非常に便利だということがわかりました。医師としての使用方法については、すでに他の先生方の素晴らしい記事が連載(『誰でも使えるChatGPT』)されていますので、今回は、私生活での活用例について私の場合をご紹介したいと思います。使いはじめて1ヵ月ちょっと経ちますが、今、メインで使用しているのは“Gemini”、調べ物の際には“ChatGPT”か“perplexity”、たまに比較するために“copilot”を使う、といった感じです。それぞれに性格や癖があり、出してくる情報も異なるため、比べて楽しんだりしています。私はAndroidスマホとGoogleアカウントを主に使っているということもあり、Google連携機能のあるGeminiが便利でよく使います。主な使用シーンとしては、食事と排泄の記録…栄養管理、腸活目的睡眠分析…fitbitの睡眠ログを付与したGeminiに、毎日の睡眠データの分析を依頼リハビリ記録…故障部位の症状、トレーニング内容、歩数の記録と管理といった感じです。Geminiの場合、“Google keep”やGoogleドライブとの連携、Geminiの利用により、「ChatGPTとはまた違った活用法が楽しめるところが良いな」と感じています。お気に入りのAIアシスタントの使用法文章の推敲やちょっとした疑問の解決にも便利なAIアシスタントですが、私がとくに気に入っている使用方法は、「『アニメ感想の壁打ち』として使う」というものです。アニメの熱いシーンへの昂る想いをAIのチャット画面に打ち込むと、いつでもAIアシスタントから即座に返答があるという、この素晴らしさ! 人間相手ではないので、ウザがられる心配もありません。なおかつ、AIに「ネタバレに注意して会話すること」という制約を与えておくことで、ネタバレの心配なく、疑問点や知りたいことについて情報を得たり、考えを深めることができます。インターネットで検索してしまうと、先の展開を不用意に知ってしまう危険性があるため、「知りたいけど、調べられない」というジレンマに陥りがちのアニメ。長いシーズンのアニメを視聴中ならば、大変ありがたい仕組みです。また、会話形式で感想を吐き出していくことで、自分の中の感想や感情をさらに深掘りしていくことにつながり、より深く作品を楽しめます。アニメに限らず、小説や漫画、海外ドラマなど、シリーズものの感想の壁打ち相手として、AIアシスタントの利用を是非お勧めいたします。上記の活用法以外にも、AIへの性格の付与やロールプレイング、クイズの作成、人格の育成など、生成AIを利用した楽しい世界が広がっております。もっと早く気付けばよかった…。皆様も是非ご活用ください。それでは、また次回の連載で!

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ビザ問題で、勤務3ヵ月で早くも次の就活開始!?【臨床留学通信 from Boston】第16回

ビザ問題で、勤務3ヵ月で早くも次の就活開始!? Harvard Medical SchoolのBeth Israel Deaconess Medical Center(BIDMC)で、カテーテル治療フェローとして3ヵ月が経ち、病院の仕組みや手技にもようやく慣れてきました。フェローは、私とアイルランド人の同僚の2人体制で、手技の週と、外来・コンサルテーションの週を交代で担当しています。手技の週は非常に多忙で、時に1日6件のTAVR(経カテーテル大動脈弁置換術)をこなします。2つのオペ室を駆使して、患者さんが代わる代わる入ってくるため、休憩する暇はほとんどなく、5分以内で食事を口に放り込むような早食いの日々です。ローカルルールとして、最後のTAVRは麻酔科の都合で3時半までにテーブルに乗せる必要があり、おおむね朝7時半から夕方5時までぶっ続けになります。逆に外来やコンサルテーションの週になると、手技に参加する機会が減ってしまいます。そのため、若干モチベーションが下がるのも正直なところです。しかし、私はセカンドフェローとして積極的に手技に入り、さまざまなTipsを盗もうと努めています。外科系の先生方とはまたいろいろと違うと思いますが、結局のところ、手技は数をこなすことも大事ですが、「触らなくても危険に陥らないように前もって知っておくこと」や、「カテーテルの動かし方を触らなくても見て学ぶこと」も同様に重要だと感じています。前回は私がビザの問題に翻弄されたことをお伝えしましたが、同僚のアイルランド人フェローもまた、トランプ政権下のビザ政策に翻弄されています。同僚は9月中旬に休暇で一時帰国したのですが、今度はHビザ新規申請に対する10万ドルの加算という新たな政策が発表されました。情報が出た当初は、既存ビザの更新者にも影響が出るのではないかという危惧があったため、2週間ほどの休暇の予定を切り上げて、飛行機に飛び乗り、慌ててアメリカへ帰ってきたようでした。私自身も、現在勤務しているBIDMCに残れるかどうかもまだ不透明です。ビザの状況を打破するためには、少し郊外や田舎の病院も視野に入れなければならず、来年7月からの勤務先の就職活動を進めているところです。日本からすると「そんなに早いのか」と思うかもしれませんが、すでに知り合いの中には9月頃には来年7月からのポジションを獲得し、サインしている人もいます。現在の状況では、焦らずじっくりと、というわけにはいかないようです。Columnこちらは高校の同級生である月岡 祐介先生との写真です。彼は偶然にも同じ病院で心臓外科として活躍中で、この日も同じTAVRの手技に入りました。彼はXでも有名なようですが、実際に会うのは25年ぶりでした。しかし、あまり久しぶりな感じはしません。画像を拡大する

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第264回 「2040年を見据えた地域医療構想」医師はどう乗り越えるか?

地域医療構想が実現した日本の医療の姿厚生労働省が地域医療構想に着手して10年が経過しました。当時、厚労省は2025年の医療需要を踏まえた全国の二次医療圏ごとに必要病床数を定め、各都道府県に対して、病床機能報告をもとに4つの病床機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)で必要病床数119.1万床が、2023年度で119.2万床となったため、行政サイドはほぼ目標を達成したとしています(日本医師会雑誌2025年7月号)が、コロナ禍が収束した現在、多くの急性期病院の課題は、稼働率が以前のレベルまで回復せず、大学病院や公立病院を含めて大幅に赤字となっており経営危機が叫ばれています。すでに地域によっては医師や看護師不足のフェーズから、外来患者数の減少や入院患者の減少が予想より早く訪れており、大都市を除くと医師や看護師不足のフェーズから人口減少のため「患者不足時代」に突入したことが明らかになっています。これから迎える高齢患者増加の未来に、地域の医療機関は対応していく必要性があることは間違いありません。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する2040年に向けた新たな地域医療構想とは厚労省の令和7年版厚生労働白書によれば、2040年の日本の人口は、生産年齢人口(15~64歳)を中心に1,000万人減少する一方、85歳以上を中心に高齢者数は2040年まで増加し続け、高齢化率が35%を超えると見込まれています。少子化の加速で、労働人口が減少するため、医療・介護ニーズは増えてもそれを支える人材が不足する社会に変化することが明らかになっています。とくに85歳以上の高齢者は医療・介護の複合ニーズを有するため、85歳以上人口の増加によって85歳以上の高齢者の救急搬送は、2020年と比較して、75%増加し、85歳以上の在宅医療の需要は62%も増加することが見込まれています。(注:新たな地域医療構想に関するとりまとめ)このため高齢化によって手術などの急性期医療のニーズが減少すると、慢性期や在宅医療へ医療需要が変化するため、現状の医療提供体制のままでは持続不可能となってしまいます。画像を拡大する平成4(1992)年の段階(第8次医療計画及び地域医療構想に関する状況)で、すでに全国の外来患者数は2025年にピークを迎えることが予想され、今後は外来患者のうち65歳以上が占める割合はさらに上昇し、2040年には約6割となることが見込まれています。そして、すでに2020年までに214の医療圏では外来患者数のピークを迎えていると見込まれている一方、在宅医療の需要のピークは2040年以降と推測されています。このため厚労省では、今年の7月24日から「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」を立ち上げています。その第1回の資料(地域医療構想及び医療計画等に関する検討会)によれば、救急医療、小児科、周産期など提供体制について討議。次の第9次医療計画に反映されるよう、地域医療構想の策定状況や医療計画などの課題を国と県で共有することを目的として、検討を開始しています。厚労省は2029年度までの「第8次医療計画」や、「新たな地域医療構想ガイドライン」で、「治す医療」から「治し支える医療」への構造転換を明確に打ち出しています。また、厚労省は各都道府県に命じて、二次医療圏ごとに医療計画の立案を行うと同時に、地域医療構想で、急性期・回復期・慢性期・在宅の病床機能を明確化し、将来、必要とされる病床数を推計して、地域で完結できる体制を整えることを求めています。つまり地域社会の人口構成が変化することに応じて、病院もクリニックも、変わるべきタイミングが訪れてきていることがわかります。今後の人口減少によって、人口30万人を下回る二次医療圏では急性期拠点の集約化を進め、少なくとも1ヵ所の「急性期拠点病院」を確保することが指針とされています。これによって、2040年までに中小病院の統廃合・機能転換が加速し、勤務医の配置・専門医研修にも直接的な影響が及んできます。具体的にどういった動きが医師のキャリアや働き方に影響が出るかみていきましょう。地域医療構想の進捗における課題1)急性期医療の集約化と地域偏在中央社会保険医療協議会(中医協)の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」によれば、急性期病棟で最上位の急性期一般入院料1を届け出る病院は近年減少傾向にあり、とくに人口20万人未満の二次医療圏では、急性期充実体制加算を持つ病院が存在しない地域が約8割に上っています。このため、救急医療・手術・産科・小児などの医療人材が不足している地域では、1~2の中核病院への集約が不可避となってきます。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大するすなわち地域の拠点病院に重症患者や医師を集めて、高度医療の中核的な病院を作って、周辺の病院には、(従来は回復期リハビリテーション病棟や地域包括医療・ケア病棟が新たに呼称変換されます)「包括期病棟」を備え、回復期の患者や軽症の救急患者の対応や、医療・介護連携の強化に動くことが求められます(新地域医療構想、「急性期拠点病院の集約化」「回復期病棟からsub acuteにも対応する包括期病棟への改組」など行う-新地域医療構想検討会[Gem Med])。このような病院の再編は、医療資源の効率化を狙う一方で、勤務医にとっては地域医療を守るために、マルチモビディティ(多疾患併存)の高齢患者のために総合的・全人的にアプローチしていく「総合的な診療能力」を持つ医師の働き方が求められるようになります。2)小児・周産期医療の地域完結は困難集約化で問題になるのは「小児・周産期医療」です。少子化により出生数は2024年時点で68万人台にまで落ち込み、分娩を扱う医療機関数も20年間で半減しています。すでに地域によっては分娩取扱施設が10ヵ所未満となり、二次医療圏外への妊産婦の救急搬送が発生している自治体も出てきているはずです。このため、産婦人科・小児科医の偏在と負担集中が顕著化し、都市部の周産期センターでは24時間体制維持が困難となっています。地域の医療提供体制の再編の過程で、産科・小児科の閉鎖や統合が進む地域では、勤務医の確保策と合わせて、医師の労働環境だけでなく、キャリア支援・女性医師復帰支援が課題となってくると思われ、その対応が急がれると思います。本年10月から厚労省は「小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ」を立ち上げており、今後の議論の推移を見守る必要があると感じています。3)都道府県での医師の偏在対策厚労省は2020年度以降、全国の二次医療圏・三次医療圏ごとに、医師の偏在の状況を全国ベースで客観的に示すために、「医師偏在指標」を算出し、上位3分の1を医師多数区域、下位3分の1を医師少数区域として区分しています。このデータをもとに、都道府県に対して医師の確保の方針を踏まえ、目標医師数を達成するための具体的な施策「医師確保計画」を策定し、3年ごとにPDCAを回す仕組みが導入されています。この「医師確保計画」では、短期的には大学医局からの医師派遣調整、中長期的には地域枠・地元出身枠の増加により地域定着を図る方針が明記されています。しかし、「医師少数区域への医師派遣」は大学医局に依存しており、大学側の派遣余力の限界もあり、地域の高度急性期病院にも医師派遣機能を求めるなど対策が強化される見込みです。画像を拡大する4)養成段階での地域偏在是正大学側も医師の偏在対策のため、医学部の「地域枠」や「地元枠」の拡大や奨学金貸与により医師育成数の増加も相まって、若手医師の地方病院での研修医が増えるなど、改善の傾向がみられるものの、若手医師にとっては勤務地域・診療科の拘束が強まり、キャリア選択の自由度が減少しています。また、専門研修として、日本専門医機構によって、専攻医シーリング(診療科・都道府県別上限)が設けられたことで、女性に人気のマイナー診療科では入局待機など都市部での定員が厳格化されたことで、選択肢が少なくなってしまう可能性があります。しかし、これらの方策によって、地域での若手医師の定着率は一定の改善がみられますが、診療科での医師偏在(産科・小児・救急・外科医不足)は依然として深刻なため、若手医師のキャリア志向やQOL重視のライフスタイルとの乖離が広がっているという見方もあり、これについてはさらに見直されると思います。地域医療再編と医師への影響1)医療再編の「担い手リスク」地域医療構想に基づく病床再編は、病院間連携や統廃合を前提としていますが、その過程で医師の異動や配置転換が行われる見込みです。とくに人口20万未満の医療圏では、救急・外科系医師の不足が慢性化し、医師によっては複数施設を兼務する勤務形態が制度的に定着する可能性もあり、医師の働き方改革(時間外960時間上限)との両立が困難となり、結果的に地域医療を支える医師の離職リスクを伴っていますが、地方で医師が充実するには時間がかかるため、大学など派遣側からの協力で耐えるしかないと考えます。画像を拡大する2)医療機関の機能転換とキャリア再構築回復期リハビリテーションや在宅医療への転換が進む中で、急性期医療中心で育成された医師が、慢性期病棟や「包括期病棟」を備えた病院に配置転換されるケースが増加していくとみられます。こうした医師に対し、自治体や医学部が「キャリア形成プログラム」を策定し、医師不足地域勤務と能力開発の両立を支援する仕組みを整えていますが、まだ実際の運用は都道府県による地域差が大きく、実質的には「大学医局による医師派遣の延長線」に留まることも多いなど、さらに再考の余地はあると思われます。今後の重点課題と展望大学と自治体の連携による医師供給調整の実効性では、大学の医局依存から脱却し、地域医療支援センターを中心とした医師配置調整を強化する必要があります。とくに女性医師や家庭のある医師の地域勤務継続支援が鍵となるとみられます。1)医師のキャリアパスの一体化「医師養成-専門研修-配置」の全段階を通じ、地域医療経験を評価するキャリアモデルを確立しなければ、地域勤務は恒常的な人材流出に陥ります。2)医療機関再編と診療科維持の両立急性期集約化の中で、産科・小児・外科を維持できる体制を構築するには、複数の圏域連携型の周産期・小児医療ネットワーク化が必要になると思いますが、まだ地域によっては再編が進まず自治体ごとに周産期医療を開設しようとする動きもあり、地方への働きかけも必要と考えます。3)医師労働環境改革との整合医療再編と同時に、長時間労働の是正と夜間救急体制維持という難題をどう解決するかが最大の焦点となります。結論-将来の地域医療構想は広く医療環境を再編すべき2040年に向けた地域医療構想は、単なる病床数調整ではなく、医師の再配置・育成・労働環境改革を包括する「医療人材の再編」の一環と考えるべきです。人口が減少した地域では医療機関の統廃合は避けられず、医師の勤務場所・診療領域・働き方に直接的な影響を与えると思います。したがって、今後の医療提供体制改革の成否は、医師偏在対策の実効性と、再編後も医師が持続的に働ける場所やキャリア設計にも重要な転換点に差しかかっていると考えます。地域医療構想の最終的な目的は「均質な医療提供」ではなく、限られた医師資源を最適に循環させ、地域の生活インフラである地域医療を絶やさない仕組みの再構築にあると考え、われわれ医師もその流れに乗っていく必要があると感じています。参考 1) 地域医療構想と地域包括ケア-2025と2040(日医雑誌) 2) 地域医療構想及び医療計画等に関する検討会【第1回】(厚生労働省) 3) 新たな地域医療構想に関するとりまとめ(同) 4) 新たな地域医療構想策定ガイドラインについて(同) 5) 医師確保計画を通じた医師偏在対策について(同) 6) 医師偏在対策について(同) 7) 第1回小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ(同) 8) 新地域医療構想、「急性期拠点病院の集約化」「回復期病棟からsub acuteにも対応する包括期病棟への改組」など行う-新地域医療構想検討会(Gem Med)

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事例33 糖尿病にグルベス配合錠の査定・復活【斬らレセプト シーズン4】

解説事例は、調剤薬局レセプトと突き合わせて点検を行う「突合点検」の結果、C事由(医学的理由による不適当)が適用されて査定となりました。よく見ると、約1年前のレセプトに対する査定です。保険者による再審査の結果に基づいて「突合点検」が実施されたものと推測できます。最近、保険者による審査に基づく査定が増えているように思われます。必ず当院に責があるのかを見定めないと減収につながりますので注意が必要です。事例の過去カルテを参照しました。他院からの紹介初診であり、診療情報提供書にて「グルベス配合錠継続使用」の依頼があり投与していました。しばらくしてグルベス配合錠をいったん停止してMDI(multiple daily injections)に切り替えていました。査定のあった2024年5月には患者の希望によりBOT(Basal Supported Oral Therapy)への切り替えを行っていました。その月には、「ヒューマログ(自己注射薬)」と改めて投与された「グルベス配合錠」を併用する院外処方箋が発行されていました。カルテには、「BOTへの変更希望あり。グルベス再開。リスク軽減のためにヒューマログ併用」と記録されていました。さらに、該当月以降を確認すると、糖尿病に関わる薬剤は「グルベス配合錠」単独でした。「グルベス配合錠」の添付文書には、「2型糖尿病治療の第1選択薬として用いないこと」とあります。しばらく投与のない「グルベス配合錠」が「ヒューマログ」との併用として突然に処方されたと捉えられ、第1選択薬として用いられたと判断されたようです。当時のカルテの写しと、「グルベス配合薬」は第1選択薬ではなく再開であること、ヒューマログはBOTへの移行途上の一時的併用であったことを説明して再審査請求したところ復活しています。

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10月13日 麻酔の日【今日は何の日?】

【10月13日 麻酔の日】〔由来〕1804年の今日、江戸時代の医師・華岡青洲が、世界初の「全身麻酔」による乳がん摘出手術に成功。人類が手術の痛みから解放された歴史的な日として日本麻酔科学会が2000年に制定。関連コンテンツ「苦しいのは仕方がない」という患者さん【非専門医のための緩和ケアTips】海外旅行と医療用麻薬【非専門医のための緩和ケアTips】意外と知らないオピオイド(1)モルヒネによる眠気【臨床力に差がつく 医薬トリビア】高齢の心臓手術患者、脳波ガイド下麻酔は術後せん妄を抑制せず/JAMAICU入室患者の鎮静、α2作動薬vs.プロポフォール/JAMA

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急性期~維持期統合失調症に対するブレクスピプラゾールのベストプラクティスに関するコンセンサス

 ブレクスピプラゾールは、統合失調症などに適応を有する第2世代抗精神病薬であり、ドパミンパーシャルアゴニストとして他の抗精神病薬と異なる作用機序を有している。米国・Zucker Hillside HospitalのChristoph U. Correll氏らは、大塚ファーマシューティカルヨーロッパおよびH. Lundbeck A/Sからの資金提供を受けて組織された精神科専門家による国際委員会において実施された、統合失調症のさまざまな段階におけるブレクスピプラゾールの安全かつ効果的な使用法についての議論を報告した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2025年8月29日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・ブレクスピプラゾールの薬理学的プロファイルは、ノルエピネフリン、ドパミン、セロトニン受容体に対してバランスの取れた結合親和性を特徴としており、興奮症状や陰性症状を含む複数の症状領域において有効性を示す。・最小限の活性化および鎮静作用、長期的な心血管代謝への懸念が比較的低いといった忍容性の高い安全性プロファイルは、ブレクスピプラゾールの臨床的有用性をさらに裏付けている。・ブレクスピプラゾールは、適切な用量調節とモニタリングを行えば、入院患者および外来患者のいずれにおいても、第1選択薬として使用可能である。・ブレクスピプラゾールは、統合失調症のさまざまな症状領域の治療選択肢として、また、症状コントロールが不十分または許容できない有害事象のために抗精神病薬の変更を必要とする患者においても有用である。・統合失調症の再発予防には長期維持療法が不可欠である。ブレクスピプラゾールは、適切な用量で精神症状コントロールに使用された場合、長期的な安全性への懸念を最小限に抑えながら持続的な有効性を期待できる薬剤である。

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国が進める医療DX、診療や臨床研究の何を変える?~日本語医療特化型AI開発へ

 内閣府主導の国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」では、分散したリアルワールドデータの統合とデータに基づく医療システムの制御を目指し、日本語医療LLM(大規模言語モデル)や臨床情報プラットフォームの構築、患者・医療機関支援ソリューションの開発などを行っており、一部はすでに社会実装が始まっている。2025年9月3日、メディア勉強会が開催され、同プログラム全体のディレクターを務める永井 良三氏(自治医科大学)のほか、疾患リスク予測サービスの開発および受診支援・電子カルテ機能補助システムの開発を目指すグループの代表を務める鈴木 亨氏(東京大学医科学研究所)・佐藤 寿彦氏(株式会社プレシジョン)が講演した。厚労省主導の医療DXとの関係、プログラムの全体像 厚生労働省主導の医療DXが、診療行為に必要最低限の3文書(健康診断結果報告書、診療情報提供書、退院時サマリー)6情報(傷病名、感染症、薬剤アレルギーなど、その他アレルギーなど、検査、処方)に絞って広く全国規模で収集・利活用(全国医療情報プラットフォームの創設、電子カルテ情報の標準化、診療報酬改定DX)を目指すものであるのに対し、本プログラムではデータ取得対象は限定されるものの電子カルテデータに加えPHR、介護データ、医療レセプトや予後データなど含めたデータを収集し、臨床情報プラットフォーム構築や医療機関支援ソリューションの開発などを行うことを目的としている。2つのプロジェクトは、将来的には相互に連携していくことが期待される。 具体的には、SIPでは大きく以下の5つの課題が設定されており、医療機関・大学・関連企業からそれぞれ研究開発責任者が選任されている1)。課題A:研究開発支援・知識発見ソリューションの開発(臨床情報プラットフォーム構築と拠点形成、PHRによる突然死防止・見守りサービス開発など)課題B:患者・医療機関支援ソリューションの開発(受診支援・電子カルテ機能補助システムの開発、症例報告・病歴要約支援システム開発を通じた臨床現場支援など)課題C:地方自治体・医療介護政策支援ソリューションの開発課題D:先進的医療情報システム基盤の開発(ベンダーやシステムの垣根を超えた医療情報収集、僻地診療支援のためのクラウド型標準電子カルテサービスの開発など)課題E:大容量リアルタイム医療データ解析基盤技術の開発(大規模医療文書・画像の高精度解析基盤技術の開発) 同プログラムは2023年からの5年計画で進められており、可能なものから随時社会実装を進めつつ、今後は医療データプラットフォームの中核的病院への導入などを目指している。医療テキスト800億トークンを学習させた日本語医療LLMを構築 さらに令和5年度補正予算により生成AIの活用プロジェクトが開始され、日本語医療LLMの開発が進み、上記の各プロジェクトにおける応用が始まっている。現在世界中で使われている主なLLMでは、たとえばOpenAIのGPT-3の学習に使われた言語として日本語は0.11%に過ぎず、これらのLLMをベースに医療LLMを構築・利用した場合、・診断を行うLLMにおいて、日本人の症例や日本の疫学ではなく、英語圏の症例や疫学がベースに出力される・治療法を推奨するLLMにおいて、日本の医療/保険制度や法律に合わない出力がされるといった問題が生じうる。また、データ主権の観点からも、現在各国で政府主導の自国語LLM開発が進んでいる背景がある。 国立情報学研究所の相澤 彰子氏らは、さまざまな実臨床での利用に展開するためのベースモデルとして、医療テキスト800億トークンを学習させた日本語医療LLMのプレビュー版をすでに構築、医師国家試験で77~78%のスコア(注釈:尤度ベースと呼ばれる正解の算出方法に基づく)を達成した。開発したモデルは、推論時に利用するパラメータ数が220億と比較的軽量であるにも関わらず、700億クラスの海外モデルに匹敵する性能を示した。 この医療LLMはSIPの各プロジェクトへの組み入れが始まっており、診療現場の会話からカルテを下書きし鑑別疾患を提示するシステムや、感染症発生届の下書き支援システムなどの開発が行われている。また、計算機科学者と医師がタッグを組む形で、循環器用医療LLM、がん病変CT画像用医療LLM、健診支援医療LLMの開発がそれぞれ進められているという。電子カルテを活用した臨床情報プラットフォームや診断困難例サーチシステムがすでに始動 電子カルテには、診療録、検査データ、手術レポートなどの多くの情報が集積しているが、それらを匿名化・統合した状態で臨床研究に活用するには人的・時間的に大きな負担がかかっていた。SIPの課題A1として取り組まれている「臨床情報プラットフォーム構築による知識発見拠点形成」では、CLIDAS研究2)と称して多施設から複数のモダリティの診療データを標準化・収集するシステムを構築。国内11大学・2ナショナルセンターの電子カルテはすでに統一・連携されている。循環器領域では、PCI後のスタチン強度と予後の関係について3)など、CLIDASデータを用いた研究成果がすでに発表、論文化されているものもあり、今後も本データの臨床研究への活発な活用が期待される。 鈴木氏が責任者を務める課題A-3「臨床情報プラットフォームと連携したPHRによるライフレコードデジタルツイン開発」グループでは、NTTグループ約10万人の健診データ・約15年の追跡データを活用し、東京大学医科学研究所のスーパーコンピュータで疾患リスク予測モデルのアルゴリズム構築に着手。健診データを元に将来の疾患リスク(糖尿病・高血圧症・脂質異常症・心房細動)、検査や予防法の推奨などを提示する疾患リスク予測サービスの開発を行っている。将来的には、AIを用いた保健指導への展開も視野に開発中という。 佐藤氏が責任者を務める課題B-2「電子問診票とPHRを用いた受診支援・電子カルテ機能補助システムの開発」グループでは、日本内科学会地方会のデータ化された症例報告(約2万5千例)を基に、鑑別診断の際に参考となる疾患や病態を検索できるシステム(診断困難例ケースサーチ J-CaseMap)をすでに社会実装済で、日本内科学会会員は無料で利用できる。そのほか、電子カルテと連携した知識支援チャットボット(富士通と連携)や、再診時電子問診票、医療特化AI音声認識システムが開発中となっている。

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平均寿命が100歳になることはない?

 100歳まで生きたいと願う人にとっては悪いニュースだが、近い将来、人々の平均寿命が100歳を超えることはないようだ。新たな研究で、20世紀前半に高所得国において達成された平均寿命の延長ペースが大幅に鈍化し、その結果、1939年以降に生まれた世代の平均寿命が100歳に達することはないと予想されたのだ。米ウィスコンシン大学マディソン校ラ・フォレット公共政策学部のHector Pifarre i Arolas氏らによるこの研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に8月25日掲載された。 Pifarre i Arolas氏は、「20世紀前半に達成した前例のない平均寿命の延長は、当面の間は再び達成される可能性が低い現象のようだ。人間の寿命を大幅に延長させる飛躍的な進歩が成し遂げられない限り、成人の生存率がわれわれの予測の2倍の速さで改善したとしても、平均寿命が20世紀初頭に見られたように急速に延びることはないだろう」と述べている。 研究グループによると、1900年から1938年にかけて、平均寿命は世代ごとに約5カ月半ずつ延びた。1900年に裕福な国で生まれた人の平均寿命は62歳であったが、1938年までに80歳にまで急上昇したという。しかし、この平均寿命の直線的な延長傾向が今後も続くのか、あるいは近い将来、鈍化するのかについては不明である。 この疑問に答えるために、今回Pifarre i Arolas氏らは、最近開発されたものも含めた既存の死亡率予測手法を適用して、1939年から2000年の間に23の高所得国で生まれた出生コホートの平均寿命を推定した。 その結果、どの予測手法を用いた場合でも一貫して、1939年から2000年の間に生まれたコホートの平均寿命の延びは鈍化することが明らかになった。具体的には、これまで観察されていたコホート当たり0.46歳という平均寿命延長ペースは、使用する手法によって37%から52%の幅で減少していた。 論文の筆頭著者であるマックス・プランク人口研究所(ドイツ)のJose Andrade氏は、「1980年生まれの人の平均寿命が100歳になることはないと予測された。本研究で対象とされた世代の全てがこの節目を迎えることはないだろう。このような平均寿命延長ペースの鈍化は、過去の寿命の急激な改善が非常に若い年齢での顕著な生存率改善によって引き起こされたという事実によるものだ」とウィスコンシン大学のニュースリリースで指摘している。 研究グループによると、20世紀初頭には医学の進歩と生活の質(QOL)の向上により乳児死亡率が急速に低下し、それが平均寿命の延長に大きく貢献したという。しかし、現在の乳児死亡率は非常に低いため、平均寿命の延長ペースは鈍化し、高齢者の医療の向上だけでは、これまでの寿命延長ペースを維持するのに十分ではないとの見方を研究グループは示している。 研究グループは、予期せぬパンデミックや医学の進歩、社会や経済の激変などが予想外の形で平均寿命に影響を及ぼす可能性があることを踏まえ、このような予測を鵜呑みにしないよう慎重な解釈を求めている。その一方で、こうした予測は、貯蓄や退職、長期計画に関する個人的な決定を下すのに役立つ可能性があるとも述べている。

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トイレでのスマホ使用は痔のリスクを高める

 トイレにいる間にスマートフォン(以下、スマホ)でニュースや電子メール、ソーシャルメディアをチェックしている人は、注意した方が良いようだ。トイレでのそのような行動は、痔の発症リスクを高める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。トイレでスマホを使う人は使わない人に比べて、痔の発症リスクが46%高いことが示されたという。米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのTrisha Pasricha氏らによるこの研究結果は、「PLOS One」に9月3日掲載された。 研究グループは、トイレでスマホを使用していると、無意識のうちに滞在時間が長くなって肛門への圧力が高まり、それが痔の原因になる可能性があると説明している。Pasricha氏は、「スマホと現代の生活様式が健康に及ぼすさまざまな影響については、まだ全てが判明しているわけではない。トイレの中での使用など、スマホの使い方や使う場所によっては予期せぬ結果をもたらす可能性がある」と話している。 痔は肛門または直腸周辺の静脈が腫れた状態であり、しばしば痛みや出血を伴う。痔は妊娠中、過体重、または排便時のいきみによる圧力の上昇が原因で発生すると考えられている。 今回の研究でPasricha氏らは、同医療センターで大腸内視鏡検査を受けた成人125人を対象に、トイレでのスマホ使用と痔の有病率との関連を検討した。対象者のスマホの使用習慣を調査するとともに、Rome IV診断質問票による便通・排便症状の評価、排便時のいきみ、食物繊維の摂取量、運動習慣などを確認した。また、痔の有無を内視鏡で確認した。 その結果、対象者の66%にトイレでスマホを使用する習慣があり、痔の有病率は43%であることが明らかになった。トイレでのスマホ使用の内容は、ニュース閲覧(54.3%)とSNS(44.4%)が特に多かった。トイレでのスマホ使用習慣がある人は、ない人に比べて年齢が有意に若く(平均年齢55.4歳対62.1歳、P=0.001)、トイレでの滞在時間も有意に長く、1回当たり5分以上滞在する人の割合は、前者で37.3%に上ったのに対し、後者では7.1%にとどまっていた(P=0.006)。さらに、年齢、性別、BMI、運動習慣、排便時のいきみ、食物繊維の摂取量を調整して解析しても、トイレでのスマホ使用は痔の発症リスクを46%増加させることが示された(調整オッズ比1.46、P=0.044)。 Pasricha氏は、「スマホをスクロールしていると、信じられないほど簡単に時間を忘れてしまう。人気アプリは、まさにそのためだけに設計されているのだ。しかし、スマホに気を取られて便座に座っている時間が長くなると、痔の発症リスクが高まる可能性がある」と話す。 さらにPasricha氏は、「スマホをトイレの中に持ち込まず、排便は数分以内に済ませるように心がけるべきだ。トイレでの滞在時間がもっと長い人は、本当に排便自体に時間がかかったのか、それとも他のことに気を取られていたからなのかを自問してみてほしい」と助言している。

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メトホルミンの使用が過体重・肥満成人の認知症・死亡リスク低下と関連

 メトホルミンが処方されているBMI25以上の過体重または肥満の成人では、BMIカテゴリーにかかわらず、認知症および全死亡のリスクが低いことを示すデータが報告された。台北医学大学(台湾)のYu-Liang Lin氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes, Obesity and Metabolism」に8月6日掲載された。 メトホルミンは多くの国で2型糖尿病の第一選択薬として古くから使用されており、血糖降下以外の副次的作用に関するエビデンスも豊富。同薬の副次的作用の一つとして、認知症のリスクを抑制する可能性が示唆されている。Lin氏らは、メトホルミンが処方されることの多い過体重または肥満を有する患者における、認知症罹患率および全死亡率に関する長期的なデータを解析し、同薬の使用がそれらのリスク低下と関連しているか否かを検討した。 この研究には、世界各地の医療機関の電子医療記録を統合したリアルワールドのデータベース(TriNetX global federated health research network)が用いられた。過体重・肥満に該当する患者をBMIに基づき後述の4群に分類。BMIカテゴリーごとに、傾向スコアマッチングにより患者特性の一致するメトホルミン使用群とメトホルミン非使用群を設定し、カプランマイヤー法を用いて10年間の追跡期間中の認知症罹患率と全死亡率を比較した。 解析対象者数は、BMI25~29.9のカテゴリーが13万2,920人、同30~34.9が14万2,723人、35~39.9が9万4,402人、40以上が8万2,732人だった。解析の結果、追跡期間中の認知症罹患率と全死亡率は、全てのBMIカテゴリーでメトホルミン使用群の方が有意に低いことが示された。具体的には、認知症罹患のハザード比(95%信頼区間)は前記のBMIカテゴリーの順に、0.875(0.848~0.904)、0.917(0.885~0.951)、0.878(0.834~0.924)、0.891(0.834~0.953)であり、全死亡については0.719(0.701〜0.737)、0.727(0.708〜0.746)、0.717(0.694〜0.741)、0.743(0.717〜0.771)であった。 著者らは、「多施設の大規模なデータを統合したコホート研究において、メトホルミンの使用は過体重・肥満者における認知症および全死亡リスクの低下と関連していた。この保護効果は全てのBMIカテゴリーで有意だったが、カテゴリー間に差が認められた」と結論付けている。また、「これらの結果は、メトホルミンが過体重・肥満者の認知症リスクを抑制する可能性を示唆している。その根底にあるメカニズムを探るために、さらなる研究が必要とされる」と付け加えている。

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複数種類のがんを調べる血液検査、有用性を判断するには時期尚早

 血液サンプルを用いて複数種類のがんの有無を検査する多がん検出(multicancer early detection;MCD)検査(以下、MCD検査)は、目に見えない腫瘍を発見できる可能性があるため、大きな注目を集めている。しかし、MCD検査によるスクリーニングのベネフィットを評価した、完了した対照試験は存在せず、この検査法の有効性を判断するには時期尚早であるとする研究結果が発表された。米RTI-ノースカロライナ大学Evidence-based Practice Centerの最高医療責任者代理であるLeila Kahwati氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に9月16日掲載された。 MCD検査は、未検出の腫瘍から血液中に放出されたDNAやタンパク質、その他の生化学物質を検出することで、がんの有無を判定する。MCD検査のいくつかは、医師の診断書があれば製造元からオンラインで注文できる。ただし、いずれも米食品医薬品局(FDA)の承認を受けていない。 研究グループは、がんによる死亡の最大70%は、スクリーニング検査が存在しない悪性腫瘍によって引き起こされていることを考慮すると、このような検査が注目を集めるのは不思議ではないと話す。本研究の付随論評を執筆した、米フォックス・チェイスがんセンターの医学部長であるDavid Weinberg氏によると、検査費用は通常、保険ではカバーされず、約950ドル(1ドル148円換算で約14万円)かかるという。 Kahwati氏らは今回、無症状の人を対象にMCD検査の有効性を調べた20件の対照研究(対象者の総計10万9,177人)を基に、MCD検査の有益性、正確性、有害性について評価した。これらの研究では、19種類のMCD検査の正確性について報告されていた。20件のうち7件の研究(バイアスリスク:高5件、不明2件)は、無症状者を1年間追跡して将来のがん発症に対する予測精度を評価していた。残りの研究は、臨床的に確定したがん患者と健康な対照者を比較する症例対照研究でMCD検査の診断精度を評価したもので、いずれもバイアスリスクは高かった。 解析の結果、検査の正確性はがんの種類や参加者、研究デザインにより大きく異なり、感度は0.095〜0.998、特異度は0.657〜1.0、総合的な診断精度の指標であるROC曲線下面積(AUC)は0.52〜1.0の幅があった。有害性について報告していた研究は1件のみであり、その情報も限定的であった。 Kahwati氏らは、「このシステマティックレビューでは、MCD検査によるスクリーニングががんの検出、死亡率、生活の質(QOL)に与える影響を検討した、完了した対照研究は確認されなかった。研究の限界と不明確または矛盾した結果が主な原因で、MCD検査の正確性と有害性に関するエビデンスは不十分であることが分かった」と述べている。 さらにKahwati氏らは、「最も重大な限界点は、MCD検査の直接的なベネフィットを評価する、完了した対照研究がないことだ」と指摘している。これは、検査によるベネフィットが、偽陽性の結果によりもたらされる潜在的な有害性を上回るかどうかが明らかではないことを意味する。例えば、健康な人に偽陽性の結果が出た場合、がんではないとの確認が取れるまで、誤った検査結果によって引き起こされた恐怖や不安に耐えながら、より侵襲的な検査を受ける必要が生じる。同氏らは、「MCD検査によりがんの種類を正確に特定できる可能性はあるが、正確性のエビデンスだけでは、この検査が現在推奨されているスクリーニング検査よりも大きなメリットがあることを示したことにはならない」と記している。 研究グループとWeinberg氏は、MCD検査が広く推奨される前にその有用性を確認するさらなる研究が必要だとの見解を示している。またWeinberg氏は、「疾患による死亡率は着実に減少しているにもかかわらず、がんは依然として、米国成人の死因として2番目に多い。MCD検査のがん予防効果には期待を持てるが、真の臨床的有用性を示すデータは不十分であり、その有用性と潜在的な有害性のバランスをどのように評価すべきかが課題となっている。迅速な対応を求める市場からの圧力はあるが、最善の判断を下すにはそのようなデータが必要であり、それが得られるまでは研究環境以外での試験を正当化することは困難だ」と述べている。

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がん手術後の遠隔モニタリングは患者の回復を助ける

 手術後のがん患者に対する遠隔モニタリングは、機能回復や症状改善に有効であることが新たな研究で示された。医療チームが遠隔で症状を追跡した患者は、手術からより早く回復したという。米マイアミ大学シルベスター総合がんセンターのTracy Crane氏らによるこの研究結果は、「npj Digital Medicine」に8月28日掲載された。Crane氏は、「退院後の最初の2週間は極めて重要だ。遠隔ケアは、病院と自宅の間の溝を埋め、問題を早期に発見し、回復をサポートするのに役立つ」と話している。 この研究では、消化器がん、泌尿・生殖器がん、婦人科がんに対する大規模な腹部または骨盤手術を受ける患者293人を対象にランダム化比較試験を実施し、周術期の遠隔モニタリングの有効性を検討した。対象患者は、スマートフォン(以下、スマホ)のアプリによる遠隔モニタリングを受ける群と、手術のみを受ける群(対照群)にランダムに割り付けられた。両群とも手首に活動量計を装着して歩数などの機能的活動量を測定するとともに、手術前と退院後7・14・30・60・90日目にモバイルアプリを通じて症状を報告したが、遠隔モニタリング群では、トリアージ看護師が患者の症状と歩数データを追跡し、問題があると判断した際には患者に連絡を取った。一方、対照群では、基準値を外れた場合には病院に電話するよう促す自動メッセージが患者に送られた。 Crane氏は、「この研究は、現実世界の状況を反映するように設計されている。われわれの目標は、介入が患者と医療提供者にとって実行可能で有意義なものであることを保証することだった」と述べている。 その結果、遠隔モニタリング群では対照群と比べて、手術後2週間までの機能回復率が6%程度高いことが示された。また、遠隔モニタリング群では、症状の重症度スコアの変化が手術後90日で統計的に有意に改善したほか、日常生活への症状の影響も14日と90日で有意に改善し、主要な術後合併症も有意に少なかった。 Crane氏は、自宅で回復する患者のバイタルサインを追跡できる機器が現在では数多く利用可能になっていることを指摘した上で、本研究結果を「革新を呼びかける呼びかけ」と表現している。同氏は、「未来の医療提供者は、接続されたデバイスからのデータストリームを自在に活用し、分野を超えた専門家と連携し、あらゆる意思決定において患者を最優先に考えるべきだ。テクノロジーは、こうしたことを実現するのに役立つ」と述べている。 研究グループは、今後の研究では、特定の種類の外科手術やがんに対する最適なモニタリングに焦点を当てるべきだとの考えを示している。

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アスピリンでも安易な追加は良くない:抗凝固薬服用中の慢性冠動脈疾患の場合(解説:後藤信哉氏)

 慢性冠動脈疾患一般は、アスピリンによる心血管イベントリスクの低減が期待できる患者集団である。しかし、慢性冠動脈疾患でもさまざまな理由により抗凝固療法を受ける症例がいる。抗凝固薬の使用により出血イベントリスクが増加したところにアスピリンを追加すると、出血イベントリスクがさらに増加すると想定される。本研究では、抗凝固薬を服用している慢性冠動脈疾患を対象としてアスピリンとプラセボのランダム化比較試験を施行した。 慢性冠動脈疾患一般ではアスピリンによる心血管死亡リスクの低減が期待される。しかし、抗凝固薬を服用している慢性冠動脈疾患にアスピリンを追加すると、心血管死亡、心筋梗塞、脳梗塞、全身塞栓症、冠動脈再灌流療法、下肢虚血などは増加した。重篤な出血イベントリスクと出血死亡率も増加している。慢性冠動脈疾患でも抗凝固薬を服用している症例には安易にアスピリンを追加すべきでないことを示唆する結果であった。 心筋梗塞などの心血管イベントは血栓イベントなので抗血栓薬を使うべきとの方向性から、抗凝固薬などを使用している出血リスクの高い症例では安易な抗血栓薬の追加は避ける方向に世の中が動いている。

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