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画像を拡大するTake home messageリネゾリドを使用する際には、血小板減少症を中心として重要な5つのポイントを覚えておこう。抗MRSA薬の1つにリネゾリドがあります。頻度は少ないものの、重要な場面で使うことがある薬剤です。今回は、リネゾリドに関する5つの重要事項を学んでいきましょう。1)消化器系症状リネゾリドの副作用には、使用早期から現れる可能性があるものとして腹痛、嘔気、嘔吐などの消化器症状が挙げられます。最も頻度が高い副作用の1つですが、症例によっては対症療法のみで自然に改善する場合もあります。2)骨髄抑制次に押さえておくべき副作用は骨髄抑制です。とくに血小板減少症に対する注意が必要です。骨髄抑制の副作用は約2週間以上の使用で発現するとされ、短期間の使用は問題ないことが多いのですが、使用期間が2週間を超える疾患には使用しにくくなります。一般的には、使用中止後1~3週間で回復するとされています。3)セロトニン症候群リネゾリドを開始する際には、相互作用のチェックも重要です。リスクの程度差はあるものの、SSRI、SNRI、MAO阻害薬との併用はセロトニン症候群を引き起こす可能性があります。最近の報告によると、セロトニン症候群を引き起こす可能性のある薬剤のうち、SSRIの中でもエスシタロプラムやオピオイドのメサドンなどはとくに関与が強いと報告されています。発症は服用から数時間~数日以内に現れることが多く、中止すれば24時間以内に改善するといわれています。しかし、まれに横紋筋融解症や腎不全などを来すこともあるため、注意が必要です。開始する際には、薬剤師と連携を取りながら、慎重に併用薬を確認する必要があります。4)乳酸アシドーシスまれながら、乳酸アシドーシスの副作用も報告されています。これは2003年に初めて報告されましたが、発症までの期間は1~16週間と幅があります。致死率は25%にも上るとされており注意が必要です。リネゾリド使用中に乳酸アシドーシスを来した場合には、ほかの原因検索と共にリネゾリドの副作用を考慮することが重要です。5)末梢神経障害・視神経障害末梢神経障害・視神経障害は、ノカルジアや非結核性抗酸菌症、多剤耐性結核などに対する特殊な状況で、長期の投与が必要な際の副作用として報告されています。末梢神経障害は「手袋と靴下型」(手袋や靴下が覆うように手足の先端部分から徐々に症状が進行していく)で発症まで5~11ヵ月、視神経障害は視力低下や色覚異常を来すことが多いとされています。リネゾリドは長期で使用することは少ないため頻度は高くありませんが、頭の片隅に入れておきましょう。以上、有名な血小板減少症以外にも、リネゾリドのこれらの重要な副作用・相互作用に関して念頭に置き、使用する際には患者さんに、その有益性とリスクに関して十分に説明するようにしましょう。1)Apodaca AA, et al. N Engl J Med. 2003;348:86-87.2)Legout L, et al. Clin Infect Dis. 2004;38:767-768.3)Crass RL, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2019;63:e00605-e00619.4)Gatti M, et al. Eur J Clin Pharmacol. 2021;77:233-239.5)Mao Y, et al. Medicine (Baltimore). 2018;97;e12114.6)Narita M, et al. Pharmacotherapy. 2007;27:1189-1197.