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高齢者への高用量インフルワクチン、入院予防効果は?/Lancet

 高用量不活化インフルエンザワクチン(HD-IIV)は、標準用量不活化インフルエンザワクチン(SD-IIV)と比較して、高齢者におけるインフルエンザまたは肺炎による入院に対して優れた予防効果を示すとともに、心肺疾患による入院、検査で確定したインフルエンザによる入院、全原因による入院の発生率も減少させることが明らかにされた。デンマーク・Copenhagen University Hospital-Herlev and GentofteのNiklas Dyrby Johansen氏らDANFLU-2 Study Group and GALFLU Trial Teamが、2試験の統合解析である「FLUNITY-HD」の結果で報告した。Lancet誌オンライン版2025年10月17日号掲載の報告。方法論的に統一された2つの試験の統合解析 FLUNITY-HDは、HD-IIVとSD-IIVを比較する方法論的に統一された2つの実践的なレジストリベースの実薬対照無作為化試験(DANFLU-2、GALFLU)の、事前に規定された個人レベルのデータの統合解析であり、一般化可能性の向上とともに、高齢者における重度の臨床アウトカムに対する2つのワクチンの相対的ワクチン有効率(relative vaccine effectiveness:rVE)の評価を目的とした。 DANFLU-2試験は65歳以上を対象とし、2022~23年、2023~24年、2024~25年のインフルエンザ流行期にデンマークで、GALFLU試験は65~79歳を対象とし、2023~24年と2024~25年の流行期にスペインのガリシアで行われた。 両試験では、参加者をHD-IIV(1株当たり60μgのヘマグルチニン[HA]抗原を含む)またはSD-IIV(同15μg)の接種を受ける群に無作為に割り付け、各流行期のワクチン接種後14日目~翌年5月31日に発生したエンドポイントについて追跡調査した。主要エンドポイントは、インフルエンザまたは肺炎による入院であった。主要エンドポイントが有意に優れ、全死因死亡、重篤な有害事象は同程度 46万6,320例(HD-IIV群23万3,311例、SD-IIV群23万3,009例)を解析の対象とした。全体の平均年齢は73.3(SD 5.4)歳、22万3,681例(48.0%)が女性、24万2,639例(52.0%)が男性で、22万8,125例(48.9%)が少なくとも1つの慢性疾患を有していた。 主要エンドポイントは、SD-IIV群で1,437例(0.62%)に発生したのに対し、HD-IIV群では1,312例(0.56%)と有意に低い値を示した(rVE:8.8%、95%信頼区間[CI]:1.7~15.5、片側p=0.0082)。 HD-IIV群では、心肺疾患による入院(HD-IIV群4,720例[2.02%]vs.SD-IIV群5,033例[2.16%]、rVE:6.3%、95%CI:2.5~10.0、p=0.0006)、検査で確定したインフルエンザによる入院(249例[0.11%]vs.365例[0.16%]、31.9%、19.7~42.2、p<0.0001)、全原因による入院(1万9,921例[8.54%]vs.2万348例[8.73%]、2.2%、0.3~4.1、p=0.012)の発生率が、いずれも有意に優れた。 全死因死亡の発生率は両群で同程度であった(HD-IIV群1,421例[0.61%]vs.SD-IIV群1,437例[0.62%]、rVE:1.2%、95%CI:-6.3~8.3、p=0.38)。また、国際疾病分類第10版(ICD-10)の分類コードによるインフルエンザ関連入院は、それぞれ164例(0.07%)および271例(0.12%)(rVE:39.6%、95%CI:26.4~50.5)、肺炎による入院は、1,161例(0.50%)および1,187例(0.51%)(2.3%、-6.0~10.0)で発生した。 重篤な有害事象の発生は両群で同程度だった(HD-IIV群1万6,032件vs.SD-IIV群1万5,857件)。公衆衛生上、大きな利益をもたらす可能性 全原因による入院1件の予防に要するHD-IIV接種の必要数は515例(95%CI:278~3,929)と推定され、SD-IIVからHD-IIVへの単純な切り替えにより、医療システムにおけるインフルエンザの負担を大幅に軽減できると考えられた。 著者は、「本研究は、従来のワクチン試験では通常評価が困難なきわめて重度のアウトカムについて、十分な検出力を持つ無作為化された評価を可能にした」「インフルエンザのワクチン接種は適応範囲が広いことを考慮すると、高齢者に特化して開発されたHD-IIVの導入は公衆衛生上、大きな利益をもたらす可能性がある」としている。

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既治療の非MSI-H/dMMR大腸がん、zanzalintinib+アテゾリズマブがOS改善(STELLAR-303)/Lancet

 再発・難治性の転移を有する大腸がん(高頻度マイクロサテライト不安定性[MSI-H]またはミスマッチ修復機構欠損[dMMR]を持たない)では、免疫療法ベースのレジメンであるzanzalintinib(TAMキナーゼ[TYRO3、AXL、MER]、MET、VEGF受容体などの複数のキナーゼの低分子阻害薬)+アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)によるchemotherapy-freeの併用治療は、標準治療のレゴラフェニブと比較して、肝転移の有無にかかわらず全生存期間(OS)に関して有益性をもたらし、安全性プロファイルは既報の当レジメンや類似の併用療法とほぼ同様だが、治療関連死が多いことが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJ. Randolph Hecht氏らSTELLAR-303 study investigatorsによる第III相試験「STELLAR-303」において示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年10月20日号で発表された。16ヵ国の非盲検無作為化試験 STELLAR-303試験は、16ヵ国121施設で実施した国際的な非盲検無作為化試験(Exelixisの助成を受けた)。2022年9月~2024年7月に参加者のスクリーニングを行った。 年齢18歳以上、転移を有する大腸腺がんと診断され、病勢が進行または標準治療が不応・不耐で、MSI-HまたはdMMRの腫瘍を持たない患者901例(年齢中央値60歳、男性528例[59%]、白人485例[54%]、アジア系338例[38%]、前治療レジメン数中央値2[四分位範囲[IQR]:2~3])を登録した。 被験者を、zanzalintinib(100mg、連日経口投与)+アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと、静脈内投与)を受ける群(451例)、またはレゴラフェニブ(160mg、28日を1サイクルとして1~21日に連日経口投与)を受ける群(450例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、ITT集団におけるOSと、肝転移のない患者におけるOSの2つとした。客観的奏効率は4% 追跡期間中央値18.0ヵ月(IQR:14.6~21.5)の時点でのITT集団におけるOS中央値は、レゴラフェニブ群が9.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:8.5~10.2)であったのに対し、zanzalintinib+アテゾリズマブ群は10.9ヵ月(9.9~12.1)と有意に優れた(層別ハザード比[HR]:0.80、95%CI:0.69~0.93、p=0.0045)。1年OS率は、zanzalintinib+アテゾリズマブ群46%、レゴラフェニブ群38%、2年OS率は、それぞれ20%および10%だった。 また、肝転移のない患者の中間解析では、OS中央値はzanzalintinib+アテゾリズマブ群が15.9ヵ月(95%CI:13.5~17.6)、レゴラフェニブ群は12.7ヵ月(10.9~15.5)であり、両群間に有意差を認めなかった(層別HR:0.79、95%CI:0.61~1.03、p=0.087)。 ITT集団における無増悪生存期間(PFS)中央値は、zanzalintinib+アテゾリズマブ群が3.7ヵ月、レゴラフェニブ群は2.0ヵ月(層別HR:0.68、95%CI:0.59~0.79)、肝転移のない患者ではそれぞれ5.3ヵ月および3.7ヵ月(0.66、0.52~0.83)であった。また、ITT集団における客観的奏効率は、zanzalintinib+アテゾリズマブ群が4%(16/451例)、レゴラフェニブ群は1%(5/450例)だった。Grade3/4の高血圧が15%に Grade3以上の治療関連有害事象は、zanzalintinib+アテゾリズマブ群で60%(268/446例)、レゴラフェニブ群で37%(161/434例)に発現した。最も頻度の高いGrade3/4の治療関連有害事象は、高血圧(zanzalintinib+アテゾリズマブ群15%、レゴラフェニブ群9%)、蛋白尿(6%、2%)、疲労感(6%、2%)、下痢(6%、2%)であった。 重篤な治療関連有害事象は、zanzalintinib+アテゾリズマブ群で26%、レゴラフェニブ群で10%にみられ、治療中止に至った有害事象はそれぞれ18%および15%に、治療関連死はそれぞれ1%(5例:zanzalintinibによる腸管穿孔2例、アテゾリズマブによる肺臓炎1例、腎不全1例、zanzalintinib+アテゾリズマブによる意識障害1例)および<1%(空腸穿孔1例)に発生した。 著者は、「この併用療法は、多くの前治療歴があり治療効果の向上が求められる患者において、新たな作用機序を有するchemotherapy-freeの治療選択肢となるだろう」「有害事象は既知のclass effectと一致し、新たな安全性シグナルは認めなかった」としている。

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ホルモン療法とニラパリブの併用が進行前立腺がんに有効

 がんの標的治療薬であるニラパリブ(商品名ゼジューラ)をホルモン療法に追加することで、前立腺がんの増殖リスクが低下し、症状の進行を遅らせることができる可能性が、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)がん研究所腫瘍内科部門長のGerhardt Attard氏らが実施した臨床試験で示された。詳細は、「Nature Medicine」に10月7日掲載された。 Attard氏は、「現行の標準治療は、進行前立腺がん患者の大多数にとって極めて有効性が高い。しかし、少数ではあるが臨床的には重要な割合の患者では限定的な効果しか得られていない」と指摘し、「ニラパリブを併用することでがんの再発を遅らせ、余命の延長も期待できる」とUCLのニュースリリースの中で述べている。 Drugs.comによると、ニラパリブはがん細胞の自己修復機能を阻害する作用を持つPARP(ポリADP-リボースポリメラーゼ)阻害薬で、卵巣がんなど特定のがんの再発を防ぐための維持療法に使用する薬剤として承認されている。 今回の臨床試験では、標準治療薬であるアビラテロン酢酸エステル(商品名ザイティガ)とプレドニゾンにニラパリブを追加する併用療法が検討された。アビラテロンは前立腺がんの増殖を促すテストステロンの産生を抑える一方、プレドニゾンは治療に伴う副作用の一部を軽減する。対象は、32カ国から参加した相同組換え修復(HRR)関連遺伝子変異陽性の進行前立腺がん患者696人(年齢中央値68歳)だった。HRR関連遺伝子はDNA損傷の修復に関与しており、変異があるとがんがより速く増殖して転移しやすくなるとされている。進行前立腺がん患者の約4人に1人にBRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2などのHRR関連遺伝子に変異が見られ、今回の対象者も半数以上(56%)がBRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子の変異を保有していた。患者の半数がアビラテロンとプレドニゾンによる標準治療にニラパリブを追加する併用療法を受け、残る半数には標準治療薬に加えてニラパリブの代わりにプラセボが投与された。 約2年半の追跡期間でのITT解析から、ニラパリブ併用群では標準治療群と比べて画像診断による増悪または死亡のリスクが37%低下したことが示された。特に、BRCA1またはBRCA2遺伝子の変異を保有する患者では、画像診断による増悪リスクが48%低下するなどより顕著な効果が見られた。ニラパリブ併用群では標準治療群と比べて症状が悪化するリスクも半減し(ハザード比0.50)、顕著な症状の悪化が認められた患者の割合は、標準治療群で30%、ニラパリブ併用群で16%であった。全生存期間についても改善傾向が認められたが、生存率の向上を確認するにはさらに長期の追跡が必要であるとAttard氏らは述べている。一方で、ニラパリブ併用群では、貧血(29.1%対4.6%)や高血圧(26.5%対18.4%)などの副作用の発生率が有意に高いことが示された。また、患者の25.1%が輸血を必要としたと報告されている(標準治療群では3.7%)。治療関連の死亡者数はニラパリブ併用群14人、標準治療群7人であった。試験期間中、多くの患者が治療を中断しており(ニラパリブ併用群158人、標準治療群196人)、追加治療に移行した患者も少なくなかった。 Attard氏は、「この臨床試験の結果は極めて重要だ。診断時に広範な遺伝子検査を行い、最大のベネフィットが得られる患者に標的治療を適用するべきことを支持するものだからだ」と述べた上で、「医師は、ニラパリブが承認されているHRR関連遺伝子変異を保有するがん患者に対しては、副作用のリスクとがんの進行および症状悪化を遅らせるというベネフィットのバランスを考慮し、治療方針を話し合う必要がある」と付け加えている。

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オピオイド鎮痛薬のトラマドール、有効性と安全性に疑問

 がんによる疼痛や慢性疼痛に対して広く処方されている弱オピオイド鎮痛薬(以下、オピオイド)のトラマドールは、期待されたほどの効果はないことが、新たな研究で明らかにされた。19件の研究を対象にしたメタアナリシスの結果、トラマドールは中等度から重度の疼痛をほとんど軽減しないことが示されたという。コペンハーゲン大学(デンマーク)附属のリグスホスピタレットのJehad Ahmad Barakji氏らによるこの研究結果は、「BMJ Evidence Based Medicine」に10月7日掲載された。研究グループは、「トラマドールの使用は最小限に抑える必要があり、それを推奨するガイドラインを再検討する必要もある」と結論付けている。 研究グループによると、トラマドールはモルヒネと同様に脳内のオピオイド受容体に結合することで鎮痛作用を発揮するが、セロトニンやアドレナリンといった脳内化学物質の再取り込みを阻害することで、抗うつ薬に似た作用も併せ持つ。トラマドールは、モルヒネ、オキシコンチン、フェンタニルといったより強力なオピオイドよりも安全で依存性が低い選択肢と見なされていることから使用が急増し、現在では米国で最もよく処方されるオピオイド鎮痛薬の一つになっているという。 Barakji氏らは今回、総計6,506人の慢性疼痛患者を対象とした19件のランダム化比較試験のデータを統合して解析した。5件の研究は神経痛、9件は変形性関節症、4件は腰痛、1件は線維筋痛症に対するトラマドールの使用を検討していた。 その結果、トラマドールは慢性疼痛の軽減に対してわずかに効果があるものの、その効果量は、NRS(Numerical Rating Scale;痛みを0〜10の数字で評価する指標)で1.0ポイントという、事前に設定した臨床における最小重要差には届かないことが明らかになった。重篤な有害事象については、トラマドール群ではプラセボ群と比較してリスクが2倍に増加しており、このリスクは、主に心臓関連イベントと新生物の発生率の高さに起因していた。その他の副作用には、吐き気、めまい、便秘、眠気などがあった。 これらの結果からBarakji氏らは、「疼痛管理のためにトラマドールを使用することで生じる潜在的な有害性は、その限られた有効性を上回る可能性が高い」と述べている。また同氏らは、対象とした研究の実施方法に鑑みると、これらの結果はトラマドールの有効性を過大評価する一方で、有害性を過小評価している可能性が高いと指摘している。 さらにBarakji氏らは、トラマドールの使用を控えるべき理由として依存と過剰摂取を挙げ、「世界中で約6000万人が依存を引き起こすオピオイドの作用を経験している。2019年には薬物使用により約60万人が死亡した。そのうちの約80%はオピオイド関連、約25%はオピオイドの過剰摂取によるものだった」と述べている。 研究グループは、「米国では、オピオイド関連の過剰摂取による死亡者数は、2019年の4万9,860人から2022年には8万1,806人に増加した。これらの傾向と今回の研究結果を考慮すると、トラマドールをはじめとするオピオイドの使用は可能な限り最小限に抑えるべきだ」と主張している。

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脳に異なる影響を及ぼす5つの睡眠パターンを特定

 睡眠は、一晩にどれだけ長く眠るか以上の意味を持ち、睡眠パターンは、気分、脳の機能、さらには長期的な健康状態に影響を与える可能性が指摘されている。こうした中、睡眠の多面的な性質と人の健康・認知機能・生活習慣との関係を検討した新たな研究において5つの睡眠プロファイルが特定された。研究グループは、「これらのプロファイルは、ストレスや感情から寝室の快適さまで、睡眠の質に影響を与える生物学的、精神的、環境的要因の組み合わせを反映している」と述べている。コンコルディア大学(カナダ)のValeria Kebets氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS Biology」に10月7日掲載された。Kebets氏は、「人々は睡眠について真剣に考えるべきだ。睡眠は日常生活のあらゆる機能に影響する」とNBCニュースに語った。 この研究では、770人の健康な若年成人(平均年齢28.86歳、女性53.76%)を対象に、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)の7つの下位項目(主観的睡眠の質、入眠時間、睡眠時間、睡眠効率、睡眠障害、睡眠薬の使用、日中の機能障害)と118個の生物・心理・社会的指標(認知能力、身体・精神の健康、性格特性、感情、薬物使用、人口統計学的属性との関連を検討した。 その結果、以下に挙げる5つの睡眠プロファイルが特定された。1)睡眠不良とメンタルヘルス睡眠満足度の低下や眠りに入るまでの時間の長さなどの睡眠問題を抱え、精神面でも抑うつ、不安、身体症状、内向的行動が見られ、恐怖、怒り、ストレスなど負の感情も強い。2)睡眠レジリエンス(回復力)精神的問題を抱え、特に注意力の問題(不注意、注意欠如・多動症)や誠実性の低下、負の感情が顕著に見られるが、睡眠には不満を感じておらず(睡眠レジリエンス)、日中の機能障害以外はほとんど問題が見られない。3)睡眠薬の使用と社会関係睡眠薬の使用を特徴とし、睡眠薬の使用は社会関係の満足度と関連している。日中の機能障害は少なく、注意力にも問題はない。視覚的エピソード記憶や感情認識のパフォーマンスの低下は見られるが、社会関係には満足している。4)睡眠不足と認知能力夜間の睡眠時間が6〜7時間未満であることが特徴。認知能力では感情処理、報酬判断、言語、流動性知能、社会認知タスクの正確性の低下および反応時間の延長が見られる。攻撃性が強まり、協調性は低下している。5)睡眠障害とメンタルヘルス複数回の中途覚醒、睡眠時の呼吸の問題、夜間の排尿、睡眠中に痛み・寒さ・暑さを感じることを特徴とし、これらの睡眠障害が攻撃的な行動と関連している。認知能力では、言語処理能力と作業記憶に低下が見られる。メンタルヘルス面では不安、思考の問題、内向的行動を抱えており、タバコやアルコールなどの物質使用が見られる。 この研究には関与していない米ノースウェスタン大学概日リズム・睡眠医学センター所長のPhyllis Zee氏は、「研究や臨床では、複数の睡眠パターンを考慮する必要がある。そのためには、データを多次元的に解析するアプローチが重要だ」とNBCニュースに対して語っている。 また、同様に本研究には関与していない米スタンフォード大学の睡眠医学専門医であるRafael Pelayo氏は、「この研究は、心身の健康にとって十分な休息がいかに重要であるかを再確認させるものだ。睡眠は、単にベッドで過ごす時間だけの問題ではない。睡眠を改善できれば、精神的な健康だけでなく、身体的な健康も含めた全体的な健康にも良い影響がもたらされる」と述べている。

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ソーシャルメディアは子どもの認知能力を低下させる?

 ソーシャルメディアは10代の子どもの脳の力を低下させている可能性のあることが、新たな研究で示唆された。9〜13歳にかけてのソーシャルメディアの利用時間の増加は、読解力、記憶力、言語能力などの認知テストの成績が低いことと関連していたという。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)小児科分野のJason Nagata氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に10月13日掲載された。 Nagata氏は、「この研究では、ソーシャルメディアの使用時間が少なくても、認知能力の低下と関連していることが示された。この結果は、思春期初期の脳がソーシャルメディアへの露出に特に敏感である可能性を示唆しており、こうしたプラットフォームは年齢に合った形で導入することと、注意深く監視することの重要性を強調している」と述べている。 この研究でNagata氏らは、米国最大の長期脳発達研究である思春期脳認知発達(Adolescent Brain Cognitive Development;ABCD)研究の参加者6,554人(女児48.9%)のベースライン(2016〜2018年、9〜10歳)、1年後(2017〜2019年)、2年後(2018〜2020年)の3時点のデータを解析した。グループベースの軌跡モデリングにより対象者の1日当たりのソーシャルメディア使用時間の推移を分析し、使用しない/使用時間が極めて少ない群(13歳時点で0.3時間/日、57.6%)、低レベルから増加した群(+1.3時間/日、36.6%)、高レベルから増加した群(+3時間/日、5.8%)の3群に分類した。 その結果、使用しない/使用時間が極めて少ない群と比較して、低レベルから増加した群および高レベルから増加した群では、音読認識テストのスコアがそれぞれ−1.39点と−1.68点、エピソード記憶を評価するPicture Sequence Memory Testのスコアが−2.03点と−4.51点、絵画語彙発達検査のスコアが−2.09点と−3.85点、総合スコアが−0.85点と−1.76点、低いことが明らかになった。 Nagata氏は、「これらの差は軽微だったが一貫して認められた。読解力や記憶力といった認知能力は学習の基盤となるため、たとえ大規模集団におけるわずかな低下であっても、教育に重要な影響を与える可能性がある」と述べている。 Nagata氏らは、一部の子どもは宿題をせずにソーシャルメディアを見ていて、それが教育と発達に影響を与えているのではないかと疑っている。Nagata氏は、「ソーシャルメディアは非常に双方向的であり、読書や学業に費やす時間を奪ってしまう。幼い頃から健全なスクリーン習慣を身につけることは、学習と認知能力の発達を守るのに役立つ可能性がある」と話している。  さらにNagata氏らは、この研究結果は、日中の携帯電話の使用を制限するという学校による最近の取り組みや、ソーシャルメディアに対する年齢制限の強化といったより厳格な対策を裏付けるものだとの見方を示している。ただし、研究グループは、この研究は観察研究であるため、ソーシャルメディアの使用と子どもの認知能力との間の直接的な因果関係が明らかにされたわけではないことも指摘している。

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肝指向性DGAT2アンチセンスオリゴヌクレオチド阻害薬ION224のMASHに対する治療効果:第II相試験の結果(解説:相澤良夫氏)

 この第II相試験では、肝臓の脂肪新生を亢進し、脂肪毒性の発現と代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の進展に関わる重要な代謝酵素で中性脂肪合成の律速酵素であるdiacylglycerol O-acyltransferase 2(DGAT2)を選択的に阻害する肝指向性アンチセンスオリゴヌクレオチド製剤ION224が、脂質異常症を惹起することなくMASHに対し有効かつ安全性、忍容性の高い核酸医薬製剤であることが示された。また、このMASH改善効果は体重減少とは関連せず、体重減少効果によりMASH治療効果が期待されるGLP-1などの薬物との併用効果も期待された。 近年、次世代の医薬品として注目されている核酸医薬の開発が進み、すでにアンチセンス製剤以外にもsiRNA、アダプタマー、CpGオリゴなどが実用化されている。これらの核酸医薬は抗体医薬品に比べて比較的安価で製造できること、短期間で効率よく製薬化できること、疾患に関連する特定の遺伝子のみを選択的に制御できることなどの利点がある反面、体内で分解されにくい化学修飾や標的臓器へのドラッグデリバリーの工夫が必要なこと、長期にわたる治療での安全性に懸念があるなどの問題点も知られている。 わが国で認可されている核酸医薬品は、現状ではデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対して本邦で開発されたアンチセンス製剤であるビルトラルセンなど希少かつ重篤な進行性疾患に限られているが、がんの根治を目指した核酸医薬品の開発も行われている。 ION224はドラッグデリバリーの観点ではアシアログリコプロテインレセプターを介して肝細胞に選択的に取り込まれるように設計され、月に1回の皮下注射でよいなど煩雑性の面からも利点がある。また、1年間の試験では安全性に問題なく今後の第III相試験の結果が期待され、将来はわが国への導入も考慮されるべき製剤と思われる。 ただし、わが国での核酸医薬の収載薬価は一般経口薬に比べてかなり高価であり、罹病者が多く進行が比較的緩徐なMASHにION224を保険適用薬として一律に使用することは費用対効果面から考えても非現実的と思われる。ION224が本邦に導入される場合には、他の薬剤の効果が不十分な症例への併用薬として、あるいは肥満との関連が乏しいMASH症例など、本製剤の特徴を生かした病態に限定する必要があるものと推察される。

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左室駆出率の保たれた心不全に対するセマグルチドとチルゼパチドの比較―大規模エミュレーション研究から(解説:加藤貴雄氏)

 本研究は、保険請求データベースを利用して、ランダム化比較試験(セマグルチドのSTEP-HFpEF DM試験とチルゼパチドのSUMMIT試験)の大規模エミュレーションを行った研究で、セマグルチドとチルゼパチドの直接の比較をした点が重要である。エミュレーションとは、「模倣」との意味で、観察データを用いてtarget trialを模倣する手法である。今回のランダム化比較試験2本の組み入れ・除外基準から条件を模倣したものであり、2型糖尿病がありBMI 27以上が模倣的な組み入れ基準である。心血管アウトカムに影響を及ぼさないとされているシタグリプチンを対照として、総死亡と心不全の悪化による入院の複合イベントにおけるセマグルチドとチルゼパチドの優位性を調べた後に、セマグルチドとチルゼパチドの比較も行っている。 セマグルチド対シタグリプチンのコホートには5万8,333例、チルゼパチド対シタグリプチンのコホートには1万1,257例、チルゼパチド対セマグルチドのコホートには2万8,100例が組み入れられた。このように、RCTを模倣(拡張)した形でコホート研究を利用するメリットに、多数例の組み入れがある。 プロペンシティスコアでマッチングが行われた結果、シタグリプチンと比較したセマグルチドの複合イベントの調整ハザード比(HR)は0.58(95%信頼区間[CI]:0.51~0.65)、チルゼパチドは0.42(95%CI:0.31~0.57)であった。患者背景は、年齢や薬剤などは実際のランダム化比較試験と似ているが、心不全入院既往は少ない、BMIは高め(BMI 40以上が40%前後)であるなど差がある。チルゼパチド群のイベント率は、SUMMIT試験と同程度と思われたが、SUMMIT試験と異なり早期の3ヵ月の段階で、すでにカプランマイヤー曲線が大きく開いていた。 セマグルチドとチルゼパチドの比較では、HRは0.86(95%CI:0.70~1.06)で有意差はなかった結果であった。予後を比較していないhead-to-headの比較は、NEJM誌(Aronne LJ, et al. N Engl J Med. 2025;393:26-36.)で報告されてチルゼパチド群がより非糖尿病患者において体重を減少させたことが示されたが、用量の固定の問題などが指摘されているところである。現実的にhead-to-headの比較が困難なことは多く、本研究のような手法がリアルワールドデータの活用に有用と思われる。私たちも、リアルワールドデータベースを用いて、HFpEF+2型糖尿病患者でセマグルチドとチルゼパチドの新規使用者の予後に差がなかったことを示しており(Kishimori T, et al. J Card Fail. 2025 Sep 12. [Epub ahead of print])、本研究の結果と合致する。 今後、どのような患者がより好適か、患者背景などによる薬剤選択、BMI 40以上が約40%の試験を日本人にどう適用するかなど、個別化・最適化が図られていくことが望まれる。

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わが国初の点鼻噴霧のアナフィラキシー薬「ネフィー点鼻液1mg/2mg」【最新!DI情報】第50回

わが国初の点鼻噴霧のアナフィラキシー薬「ネフィー点鼻液1mg/2mg」今回は、アナフィラキシー補助治療薬「アドレナリン(商品名:ネフィー点鼻液1mg/2mg、製造販売元:アルフレッサ ファーマ)」を紹介します。本剤は、蜂毒、食物および薬物などに起因するアナフィラキシー反応に対する補助治療薬であり、点鼻液であるため簡便かつ迅速な投与が可能になると期待されています。<効能・効果>本剤は、蜂毒、食物および薬物などに起因するアナフィラキシー反応に対する補助治療(アナフィラキシーの既往のある人またはアナフィラキシーを発現する危険性の高い人に限る)の適応で、2025年9月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、体重30kg未満の患者にはアドレナリンとして1回1mgを、体重30kg以上の患者にはアドレナリンとして1回2mgを鼻腔内に投与します。<安全性>重大な副作用として、肺水腫、呼吸困難、心停止(いずれも頻度不明)があります。その他の副作用として、鼻部不快感、鼻粘膜障害、鼻腔内感覚鈍麻、鼻痂皮、鼻痛、鼻漏、鼻閉、咽喉刺激感、咳嗽、口腔咽頭不快感、口腔咽頭痛、咽頭感覚鈍麻、動悸、頻脈、血圧上昇、心拍数増加、胸内苦悶、不整脈、顔面潮紅・蒼白、頭痛、振戦、浮動性めまい、不安、口の感覚鈍麻、悪心、嘔吐、そう痒症、過敏症状など、悪寒、熱感、発汗、疼痛、びくびく(いずれも頻度不明)があります。過量投与により過度の昇圧反応を起こす可能性があり、急性肺水腫、不整脈、心停止などの重篤な有害事象を生じる恐れがあるので、過量投与に対して注意が必要です。<患者さんへの指導例>1.この薬は、アナフィラキシーが発現したときの緊急の補助治療のための点鼻薬です。交感神経を刺激する作用により、ショック症状を改善します。鼻以外には絶対に投与しないでください。2.医療機関での治療に代わるものではありませんので、この薬を使用した後には必ず医療機関を受診し、医師の治療を受けてください。3.患者向けの説明文書などをよく読み、練習用見本を用いて、この薬の使用方法に慣れておいてください。4.噴霧器には1回(1噴霧)分の薬が入っています。試し噴霧や再使用はしないでください。<ここがポイント!>アナフィラキシーは急速に症状が発現し、致死的な気道・呼吸・循環器症状を引き起こし得る重篤な全身性アレルギー反応です。アナフィラキシー発現時には、迅速な対応が不可欠であり、現在では補助治療の第一選択薬として、アドレナリン注射液自己注射キット(エピペン注射液)が広く使用されています。しかし、自己注射キットの用法は大腿部中央の前外側への筋肉注射であり、自己注射という特性上、患者本人や家族などの介護者が事前に投与訓練を受ける必要があります。そのため、自己注射以外のより簡便で迅速に投与できる製剤の開発が望まれていました。本剤は、アドレナリンを有効成分とする鼻腔内投与製剤で、わが国で初めて「蜂毒、食物および薬物などに起因するアナフィラキシー反応に対する補助治療」の適応を取得した点鼻薬です。本剤には、鼻腔内投与時のバイオアベイラビリティー向上を目的として、界面活性剤であるドデシルマルトシド(DDM)が配合されています。また、非加圧式ディスペンサー(ポンプ式噴霧器)を採用しており、ポンプ作動時には微細な霧状で薬液が噴霧されます。1回の作動で全量を使い切る単回使用製剤であり、試し噴霧や再使用はできません。なお、本剤の処方には医師の会員サイトでの登録が必要であり、適正使用のための流通管理が行われています。鼻アレルゲン負荷試験(OFC)によって誘発した症状を有する患者を対象とした国内第III相試験(EPI JP03試験)において、主要評価項目である投与15分後または投与15分後までの代替治療前の最終評価時点における主症状※の投与前からの改善率は、本剤1.0mg投与群の83.3%で1グレード以上の改善が認められ、本剤2.0mg投与群では66.7%でした。全体での1グレード以上の改善率は73.3%でした。総合グレードの推移は、いずれの用量群でも、本剤投与から5分以内(最初の評価時点)に各器官症状の総合グレードの平均値が低下し始めました。※主症状:OFCにより誘発されたアナフィラキシーガイドラインに基づくグレード2以上の症状(消化器症状、呼吸器症状または循環器症状)。複数の器官に同じグレードの症状が認められた場合は、その器官症状の重篤性より循環器症状>呼吸器症状>消化器症状の順に主症状を定めた。

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脾腫大を伴う咽頭痛・発熱【日常診療アップグレード】第42回

脾腫大を伴う咽頭痛・発熱問題17歳男性。5日前からの発熱、倦怠感、咽頭痛を主訴に来院した。既往歴はとくになく、服薬もない。最近の渡航歴はなく、推奨される予防接種はすべて行っている。バイタルサインは、体温39.2℃、血圧128/72mmHg、脈拍数94/分、呼吸数22/分。意識清明。診察では両側の後頸部リンパ節腫脹と圧痛がある。扁桃腺に白苔は認めない。肺の聴診ではcracklesは聴取されない。腹部触診で左肋骨弓下に2横指の脾腫大を認める。検査結果は白血球13,000/μL(リンパ球75%、異型リンパ球あり)、ヘモグロビン13.2g/dL、血小板280,000/μL、AST 78U/L、ALT 82U/Lであった。溶連菌感染を疑い、アモキシシリンを処方した。

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第291回 心臓の“非”心筋細胞が心不全を招く仕組みが判明

心臓の“非”心筋細胞が心不全を招く仕組みが判明心筋細胞ではなく線維芽細胞を発端とする心不全発生の仕組みを日本の研究チームが発見しました1-3)。世界の心不全患者数は5,500万例を超えるようであり4)、過去30年間に2倍以上も増えました5)。血流の負荷に耐えるために、まず心臓は肥大します。負荷が長く続くと左室拡張や線維化などの構造変化を伴う心機能不全が発生して、ついには心不全へと至ります。カルシウム制御の異常、アドレナリン受容体の過剰活性化、心筋細胞の死やDNA損傷などが心不全の仕組みとして多く研究されています。しかし心不全の病変は複雑らしく、十分に解明されているとはいえません。心筋細胞は心臓を作る細胞の20~30%程度に過ぎず、内皮細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、血球などの非心筋細胞が心臓の7割方を占めます。そのため、非心筋細胞が心不全の発生の主因であっても不思議ではなさそうです。非心筋細胞の心臓線維芽細胞(CF)は心筋細胞を含む複数の細胞種と相互作用します。心筋梗塞後にCFは活性化し、傷を安定化する細胞外基質タンパク質の類いの多くを発現します。衰えゆく心臓が相当の線維化を呈し、左室を硬くして拡張し難くすることに寄与していることがすでに知られています。一方、CFが心筋細胞や収縮機能に影響するかどうかは不明でした。慶應義塾大学や岡山大学などのチームの新たな研究によると、線維芽細胞こそ心不全発生のどうやら主犯格の1つのようです。研究によると心不全を模すマウスのCFの振る舞いは多様で、衰えゆく心臓のCFは6つに分けることができ、その1つは心不全段階に特有でした。心不全段階に特有のCFは転写因子MYCを盛んに作っており、CFのMYC遺伝子を省くと線維化の低下なしで心機能が改善しました。MYCはケモカインCXCL1の発現をどうやら促し、そのCXCL1が心筋細胞に出向いて心不全を発生させるようです。CXCL1の受容体のCXCR2は心筋細胞で発現しており、MYC発端のCXCL1-CXCR2の連携を絶つCXCR2阻止抗体を心不全マウスに投与したところ心機能不全が軽減しました。ヒトでも同様の仕組みが存在するらしいことが心不全患者とそうでない人の心臓組織の比較で示唆されました。心不全でない人にMYCやCXCL1が陽性のCFは見当たりませんでしたが、心不全患者のCFではMYCとCXCL1が発現していました。CXCL1の受容体のCXCR2がヒトの心筋細胞で発現することは著者らの先立つ研究で示されています。加えて、ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)起源の心筋細胞(iPSCM)でのCXCR2発現が今回新たに示され、iPSCMにCXCL1を与えたところHF遺伝子の発現が増えました。また、CXCL1はiPSCM立体培養(オルガノイド)の収縮機能を低下させました。それらの結果によると、心不全で衰えゆくヒト心臓のCFでもMYCとCXCL1の発現が増え、CXCL1が心筋細胞のCXCR2に手出しして心機能不全を招くのかもしれません。ヒトの線維芽細胞の目当ての伝達を安全に阻止する治療を開発し、より初期段階の心不全への効果を調べることが今後のさらなる研究の中心となるでしょう3)。CXCL1-CXCR2経路狙いの心不全治療がそれらの検討の後にやがて実現するかもしれません。 参考 1) Komuro J, et al. Nat Cardiovasc Res. 2025;4:1135-1151. 2) 線維芽細胞が心不全を引き起こす? -非心筋細胞の意外な役割と新たな治療標的の発見- / 岡山大学 3) Fibroblasts: Hidden drivers of heart failure progression / Eurekalert 4) Roth GA, et al. European Heart Journal. 2023;44:876 5) Lancet. 2025;406:1063

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原因不明の慢性咳嗽の“原因”が明らかに?

 英国・マンチェスター大学のAlisa Gnaensky氏らが、原因不明の慢性咳嗽(unexplained chronic cough:UCC)と原因が明らかな慢性咳嗽(explained chronic cough:ECC)を区別するための臨床リスク因子として、後鼻漏の有無を特定した。Allergy and Asthma Proceedings誌2025年9月1日号掲載の報告。本研究者らは過去の研究において、喘息や慢性閉塞性肺疾患よりもUCCである可能性が高い患者像*を報告していた。*鎮咳薬の服用量が多い、医療機関の受診回数/頻度が多い、肺機能が正常またはほぼ正常な高齢女性 本研究は、米国の7つの咳嗽センターで慢性咳嗽患者に配布された電子質問票を基に調査を行い、平均±標準誤差、連続変数の頻度(一元配置分析)、カテゴリ変数のクロス集計頻度(二元配置分析)を計算した。UCCとECCの単変量比較はt検定とノンパラメトリック一元配置分析を使用して行われた。 主な結果は以下のとおり。・登録全150例のうち、UCCは29例、ECCは121例であった。・UCCとECCの鑑別について、家族歴、年齢、性別、人種、季節性による有意差は認められなかった。・多重ロジスティック回帰分析の結果、後鼻漏の有無がUCCとECCの有意な鑑別因子であることが示された(オッズ比:4.8、95%信頼区間:1.6~15.3)。・咳嗽の重症度は、UCC患者、慢性気管支炎および/または肺気腫の患者、高血圧症、喫煙歴、高BMI、女性、教育水準、および環境刺激物質(香水[p=0.006]、家庭用洗剤[p=0.01]、芳香剤[p=0.03]、冷気[p=0.007]、タバコの煙[p=0.05])の反応性が高い患者ではより重症であった。 UCC患者はECC患者と比較して、特定の人口統計学的特徴、併存疾患を有し、環境刺激物質による重度の咳嗽を呈する頻度が高かった。これらの臨床的特徴は、UCCの診断を加速させるリスク因子を特定するのに役立つ可能性がある。

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筋層浸潤性膀胱がんにおけるデュルバルマブの役割:NIAGARA試験からの展望

 膀胱がんは筋層に浸潤すると予後不良となる。筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)の治療にはアンメットニーズが多く、新たな治療戦略が求められる。そのような中、デュルバルマブのMIBCにおける術前・術後補助療法が承認された。都内で開催されたアストラゼネカのプレスセミナーで、富山大学の北村 寛氏がMIBC治療の現状と当該療法の可能性について紹介した。StageII/III MIBCにおける術前化学療法の限界とICIの登場 膀胱がんの5年生存割合は、筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)では70~80%であるのに対して、MIBCでは20~30%と低い。また、病期が進行するにつれ予後不良となり、II期のMIBCでは46.6%、III期では35.7%、IV期では16.6%である。 StageIIとIIIのMIBC治療におけるゴールドスタンダードは膀胱全摘術±CDDPベースの術前補助療法である。膀胱全摘への術前化学療法の導入により治療成績は向上し、5年生存割合は5%上がる。この成績はさまざまな試験で立証され確立したものである。半面、恩恵を受けられる患者は5%にとどまる。StageIIとIIIのMIBCに対する新たな治療法の開発が必要であった。 このような状況で、 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場し、MIBC治療への導入が検討され始める。周術期においては、高リスクの根治切除後MIBCに対するニボルマブ術後補助療法の有効性を評価したCheckMate-274試験が行われている。同試験において、ニボルマブの術後補助療法は、プラセボと比較して無病生存期間などを有意に改善している。デュルバルマブによる術前・術後補助療法を評価する「NIAGARA試験」 CheckMate 274の結果から、ICIのさらなる有効活用が検討されはじめる。 NIAGARA試験はMIBCに対するデュルバルマブを上乗せした周術期療法を評価するために行われた。対象は膀胱全摘術の対象となるMIBCで、標準治療である術前ゲムシタビン+CDDP(GC)療法とデュルバルマブ周術期療法(術前GC・デュルバルマブ併用+術後デュルバルマブ)を比較する第III相非盲検無作為化試験である。主要評価項目は病理学的完全奏効率(pCR)、無イベント生存期間(EFS)である。 その結果、主要評価項目であるpCR(データ更新後再解析)は、デュルバルマブ・GC群37.3%、GC群27.5%で、デュルバルマブ・GC群で有意に高かった(オッズ比:1.60、95%信頼区間[CI]:1.227~2.084、p=0.0005)。また、EFSのHRは0.68(95%CI:0.56~0.82、p<0.001)、2年EFS割合はデュルバルマブ・GC群で67.8%、GC群59.8%で、デュルバルマブ・GC群で有意に改善した。 デュルバルマブ・GC群の有害事象プロファイルはGC療法単独群と大きく変わらず、免疫関連有害事象 の頻度も限定的であった。 NIAGARA試験の結果から、StageII/III MIBCに対するデュルバルマブ併用周術期治療はNCCNガイドラインで推奨されている。※記事の一部に誤記載がございました。訂正してお詫び申し上げます。

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EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法のOS最終解析(FLAURA2)/NEJM

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)オシメルチニブの単剤療法と比較して白金製剤とペメトレキセドによる化学療法+オシメルチニブの併用療法は、全生存期間(OS)を有意に延長させ、Grade3以上の可逆的な有害事象のリスク増加と関連していた。米国・ダナファーバーがん研究所のPasi A. Janne氏らFLAURA2 Investigatorsが、「FLAURA2試験」の主な副次エンドポイントの解析において、OSの事前に計画された最終解析の結果を報告した。同試験の主解析では、化学療法併用群において主要エンドポイントである無増悪生存期間(PFS)が有意に優れることが示されていた(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.49~0.79、p<0.001)。NEJM誌オンライン版2025年10月17日号掲載の報告。国際的な無作為化第III相試験 FLAURA2試験は、日本の施設も参加した国際的な非盲検無作為化第III相試験(AstraZenecaの助成を受けた)。2020年1月~2021年12月に患者のスクリーニングが行われ、年齢18歳以上(日本は20歳以上)で、EGFR変異(exon19delまたはL858R)陽性の局所進行・転移のある非扁平上皮NSCLCと診断され、進行病変に対する全身療法を受けていない患者を対象とした。 被験者を、導入療法としてオシメルチニブ(80mg)の1日1回経口投与と、ペメトレキセド(500mg/m2体表面積)+白金製剤(シスプラチン[75 mg/m2体表面積]またはカルボプラチン[AUC 5 mg/mL/分])の3週ごとの静脈内投与を4サイクル受ける群(化学療法併用群)、またはオシメルチニブ(80mg)単剤の1日1回経口投与を受ける群(オシメルチニブ単剤群)のいずれかに無作為に割り付けた。化学療法併用群は、導入療法終了後に維持療法として、オシメルチニブ(80mg)の1日1回経口投与とペメトレキセド(500mg/m2体表面積)の3週ごとの静脈内投与を受けた。 557例(最大の解析対象集団)を登録し、化学療法併用群に279例(年齢中央値61歳[範囲26~83]、女性173例[62%])、オシメルチニブ単剤群に278例(62歳[30~85]、169例[61%])を割り付けた。全生存期間中央値が約10ヵ月延長 データカットオフ時点での投与期間中央値は化学療法併用群が30.5ヵ月、オシメルチニブ単剤群は21.2ヵ月で、全生存の追跡期間中央値はそれぞれ42.6ヵ月および35.7ヵ月であった。この時点で化学療法併用群の144例(52%)、オシメルチニブ単剤群の171例(62%)が死亡した。 OS中央値は、オシメルチニブ単剤群が37.6ヵ月(95%CI:33.2~43.2)であったのに対し、化学療法併用群は47.5ヵ月(41.0~算出不能)と有意に優れた(HR:0.77、95%CI:0.61~0.96、p=0.02)。また、36ヵ月時のOS率は、化学療法併用群が63%、オシメルチニブ単剤群は51%であり、48ヵ月OS率はそれぞれ49%および41%であった。 ベースラインで中枢神経系転移を認めた患者の36ヵ月OS率は、化学療法併用群が57%、オシメルチニブ単剤群は40%であり、同転移のない患者ではそれぞれ67%および58%だった。新たな毒性作用は認めず、Grade3以上が多い 551例(安全性解析集団:化学療法併用群276例、オシメルチニブ単剤群275例)が少なくとも1回の試験薬の投与を受けた。主解析から2年超の時点での安全性の知見は、主解析時の解析結果と一致しており、新たな毒性作用は認めなかった。 Grade3以上の有害事象は、化学療法併用群で193例(70%)、オシメルチニブ単剤群で94例(34%)に、重篤な有害事象はそれぞれ126例(46%)および75例(27%)に発現した。死亡に至った有害事象はそれぞれ22例(8%)および10例(4%)で認め、このうち試験薬との関連の可能性があると判定されたのは5例(2%)および2例(1%)であり、オシメルチニブ単剤群の1例を除き、いずれも主解析のデータカットオフ日の前に死亡していた。オシメルチニブの投与中止に至った有害事象は、それぞれ34例(12%)および20例(7%)で報告された。 著者は、「Grade3以上の有害事象は化学療法併用群で高頻度であったが、このオシメルチニブ単剤群との差は、主に化学療法を含むレジメンで予想される骨髄抑制作用に起因する有害事象によるものであった」「病勢進行のため投与を中止したオシメルチニブ単剤群の患者の多くが最初の後治療として白金製剤ベースの2剤併用化学療法を受けたが、これらの患者のOSは化学療法併用群よりも劣ったことから、発症後の最初の治療は併用療法で開始するのが好ましい可能性が示唆され、本試験の化学療法併用群におけるOSの有益性は、1次治療を有効性の高い併用療法で開始することの重要性を強調するものである」としている。

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抗うつ薬30種類の生理学的影響を比較~ネットワークメタ解析/Lancet

 英国・キングス・カレッジ・ロンドンのToby Pillinger氏らは系統的レビューとネットワークメタ解析を行い、抗うつ薬はとくに心代謝パラメータにおいて薬剤間で生理学的作用が著しく異なるという強力なエビデンスがあることを明らかにした。抗うつ薬は生理学的変化を誘発するが、各種抗うつ薬治療におけるその詳細は知られていなかった。結果を踏まえて著者は、「治療ガイドラインは、生理学的リスクの違いを反映するよう更新すべき」と提唱している。Lancet誌オンライン版2025年10月21日号掲載の報告。15のパラメータの変化をネットワークメタ解析で評価 研究チームは、2025年4月21日の時点で医学関連データベースに登録された関連文献を検索し、系統的レビューとネットワークメタ解析を行った(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成を受けた)。対象は、成人の精神疾患患者の急性期(8週目まで)単剤療法において、抗うつ薬とプラセボを比較した単盲検または二重盲検無作為化臨床試験の論文とした。 頻度論的な変量効果ネットワークメタ解析により、抗うつ薬治療による抑うつ症状の重症度の変化と、次の15の代謝パラメータの変化の相関性を評価した。体重、総コレステロール、血糖、心拍数、収縮期血圧、拡張期血圧、補正QT間隔(QTc)、ナトリウム、カリウム、アスパラギン酸トランスフェラーゼ(AST)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ(ALP)、ビリルビン、尿素、クレアチニン。 151件の研究と17件の米国食品医薬品局(FDA)の報告書が選択基準を満たした。対象は5万8,534例(抗うつ薬[30種の薬剤]群4万1,937例、プラセボ群1万6,597例)で、平均年齢は44.7(SD 15.8)歳、女性が62.0%、白人が74.8%であり、治療期間の範囲は3~12週(中央値:8週、四分位範囲:6.0~8.5)であった。4つの試験が、バイアスのリスクが高いと判定された。体重に4kg、心拍数に21bpm、収縮期血圧に11mmHg以上の差 代謝および血行動態に及ぼす影響について、抗うつ薬間で臨床的に有意な差を認めた。たとえば、(1)体重:プラセボと比較してagomelatineで2.44kg減少、同様にマプロチリンで1.82kg増加し(いずれも有意差あり)、両群間で4.26kgの差、(2)心拍数:フルボキサミンで8.18bpm低下、ノルトリプチリンで13.77bpm上昇し(いずれも有意差あり)、21.95bpmの差、(3)収縮期血圧:ノルトリプチリンで6.68mmHg低下、doxepinで4.94mmHg上昇し(いずれも有意差あり)、11.62mmHgの差が観察された。 また、パロキセチン、デュロキセチン、desvenlafaxine、ベンラファキシンは総コレステロール値の上昇(プラセボと比較してそれぞれ0.16、0.17、0.27、0.22mmol/Lの上昇、いずれも有意差あり)と関連し、デュロキセチンはさらに血糖値の上昇(0.30mmol/Lの上昇、有意差あり)とも関連しており、これら4つの薬剤は体重減少(それぞれ0.35、0.63、0.63、0.74kgの減少、いずれも有意差あり)をももたらした。 一方、デュロキセチン、desvenlafaxine、levomilnacipranについては、AST(プラセボと比較してそれぞれ2.08、1.27、1.78IU/Lの上昇、いずれも数値上の有意差あり)、ALT(同様に2.20、1.43、1.97IU/Lの上昇、有意差あり)、ALP(同様に2.29、7.25、4.55IU/Lの上昇、有意差あり)の濃度上昇の強力なエビデンスを得たが、これらの変化の程度は臨床的に有意とは見なされなかった。高齢ほど血糖値上昇幅が大きい QTcとナトリウム、カリウム、尿素、クレアチニンの濃度には、臨床的に有意な影響を及ぼすほどの抗うつ薬の強いエビデンスを認めなかった。また、ベースラインの体重が重いほど、抗うつ薬による収縮期血圧、ALT、ASTの上昇幅が大きく、ベースラインの年齢が高いほど、抗うつ薬による血糖値の上昇幅が大きかった。抑うつ症状の変化と代謝異常との間に関連はみられなかった。 著者は、「これらの知見は、個別の抗うつ薬には高頻度で多様な生理学的副作用があることを示しており、とくに体重、心拍数、血圧の生理学的変化の程度は大きい。マプロチリンやアミトリプチリンは、患者のほぼ半数に臨床的に重要な体重増加を引き起こす可能性がある」「抗うつ薬の選択は、臨床所見および患者、介護者、臨床医の意向を考慮し、個別に行うべき」としている。

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アルコール依存症の再発率はどの程度?

 アルコール依存症は、早期死亡や障害の主要な要因である。インドでは、男性の約9%にアルコール依存症がみられるといわれている。アルコール依存症の短期アウトカムには、いくつかの臨床的要因が関与している可能性がある。インド・Jawaharlal Institute of Postgraduate Medical Education and ResearchのSushmitha T. Nachiyar氏らは、アルコール依存症患者の短期アウトカムについて調査を行った。Indian Journal of Psychological Medicine誌オンライン版2025年9月26日号の報告。 対象は、ICD-10 DCR基準に基づくアルコール依存症男性患者122例。アルコール依存症の重症度(SADQ)、断酒動機(SOCRATES)、全般認知能力(MoCA)、前頭葉認知能力(FAB)などの社会人口学的および臨床的パラメーターに基づき評価した。その後、過去30日間の飲酒について、タイムライン・フォローバック法を用いて1ヵ月および3ヵ月時点でフォローアップ調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・患者の平均年齢は40.6±7.6歳。・アルコール摂取期間は18.56±7.22年、平均摂取量は1日当たり14.14±8.62単位であった。・SADQスコアは25.13±12.01であり、中等度の依存症と評価された。・MoCAスコアが低かった患者は67.2%(82例)、FABスコアが低かった患者は22.1%(27例)。・1ヵ月後の再発率は約30%、3ヵ月後の再発率は50%であった。・1ヵ月後の再発率と関連していた因子は、依存症発症時の年齢が若いことであった(p=0.012)。・3ヵ月時点で禁酒の継続と関連する因子は、既婚(p=0.040)、過去の禁酒歴(p=0.003)、MoCAスコア(26超)の高さ(p=0.042)であった。 著者らは「アルコール依存症患者の約30%は1ヵ月以内に再発し、50%は3ヵ月後までに再発することが確認された。依存症発症時の年齢が若いことは、1ヵ月後の再発を予測し、既婚であること、過去の禁酒歴、全般認知能力が良好であることは3ヵ月後の禁酒を予測することが示唆された」としている。

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アルツハイマー病治療薬が自閉症にも有効か

 アルツハイマー病治療薬として2003年に米食品医薬品局(FDA)に承認されたメマンチンが、自閉症スペクトラム障害(ASD)の小児や若者の社会的機能を高めるのに役立つ可能性のあることが、新たな小規模臨床試験で明らかになった。社会性の障害に改善が見られた割合は、メマンチンを投与した群では56%であったのに対し、プラセボを投与した群では21%だったという。米マサチューセッツ総合病院のGagan Joshi氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月1日掲載された。Joshi氏は、「メマンチンに反応を示した試験参加者は、ASDの軽度の特徴は引き続き見られたものの、社会的コンピテンスが向上しASD症状の重症度も軽減した」とMass General Brighamのニュースリリースで述べている。 アルツハイマー病などの神経変性疾患では、脳の学習や記憶に大きな役割を果たす興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸が過剰に作用し、NMDA受容体が過剰に活性化した状態になっている。メマンチンは、このように過活性化されたNMDA受容体の働きを抑制することで神経細胞の損傷を防ぐ作用を持つ。Joshi氏らは、一部のASD患者は脳内のグルタミン酸濃度が異常に高いことから、メマンチンがこうしたASD患者にも有効かもしれないと考えた。 そこでJoshi氏らは今回、知的障害のないASDの若年者(8〜17歳)を対象に、社会性の障害に対するメマンチンの安全性と有効性を評価した。42人の参加者(平均年齢13.2歳、男性76.2%)が、12週間にわたりメマンチンまたはプラセボを投与する群に21人ずつランダムに割り付けられた。主要評価項目は治療に対する反応とし、これは保護者や教師などによるSRS-2(Social Responsiveness Scale-Second Edition)総合スコアの25%以上の改善、または臨床医によるCGI-I(Clinical Global Impression-Improvement)スケールによる評価で2点以下の場合と定義した。 試験を完了した参加者は、メマンチン群16人、プラセボ群17人の計33人だった。まず、試験期間中に少なくとも1回は再評価を受けた35人(メマンチン群16人、プラセボ群19人)を対象に解析した結果、治療に対する反応が認められたのは、メマンチン群で56.2%(9/16人)であったのに対し、プラセボ群では21.0%(4/19人)であった(オッズ比4.8、95%信頼区間1.1〜21.2)。メマンチンの認容性は良好で、有害事象の発生件数もプラセボ群と同程度だった。 次に、グルタミン酸を豊富に含む領域である前帯状皮質前部(pgACC)のグルタミン酸濃度に関するデータが得られたがASD患者37人と健康な対照16人を対象に、pgACCのグルタミン酸濃度が治療反応のバイオマーカーになり得るかを検討した。その結果、ASD群では健康な対照に比べてpgACCでのグルタミン酸濃度が有意に高く(95.5IU vs 76.6IU、P<0.001)、正常より1標準偏差以上高い参加者の割合は54%に上った。グルタミン酸の濃度が高かった参加者での治療反応率は、メマンチン群の80%(8/10人)であったのに対し、プラセボ群では20%(2/10人)であった。 Joshi氏は、「メマンチンが効いた患者は、社会参加が活発になったことが分かった」と話しつつも、「この薬がASDの治療にどれほど役立つ可能性があるのかをより正確に評価するには、さらなる研究が必要だ」との見解を示している。その上で同氏は、「より大規模な臨床試験の実施が、より幅広いASD患者集団におけるメマンチンの反応を評価するのに役立つ可能性がある」と述べている。

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学校給食の無償化で子どもの高血圧リスク低下

 米国で進められてきた学校給食の無償化が、子どもたちの高血圧リスクの抑制につながっているとする研究結果が、「JAMA Network Open」に9月25日掲載された。米カリフォルニア大学アーバイン校のJessica Jones-Smith氏らの研究によるものであり、無償化を始めた学校では高血圧の子どもの割合が、5年間で約11%減少したと見込まれるという。研究者らは、給食無償化による栄養状態の改善に加えて、体重に及ぼした影響が、この改善を促進した可能性が高いとしている。 論文の上席著者であるJones-Smith氏は、「給食無償化は、高血圧リスクと密接な関連のある小児肥満の減少と関連している。より健康的な食事が直接的に血圧へ好ましい影響を与えることに加えて、BMIが高い子どもが減ることに伴う間接的影響という二つの経路で、高血圧リスクが抑制されたと言える」と解説している。なお、研究者らが背景説明の中で述べているところによると、小児期の高血圧は成人期まで継続することが多く、将来的に心臓病や腎臓病のリスクを高める可能性が高いとのことだ。 米国では2010年に学校給食に対する栄養要件が強化され、低所得地域の学校に給食を無償で提供するプログラムがスタートし、これを採用する学校が増加してきている。本研究は、12州(主としてカリフォルニア州とオレゴン州)の児童・生徒の医療記録を用いた縦断的観察研究として実施された。解析対象は1,052校の4~18歳の児童・生徒15万5,778人であり、給食の無償化の開始前後で高血圧の子どもの割合の変化を求め、無償化プログラム未導入の学校での変化と比較して、差分の差(difference in differences;DD)を検討するという手法で行われた。主要評価項目は、収縮期血圧または拡張期血圧が、年齢・性別・身長に基づく90パーセンタイル以上の子どもの割合とした。 その結果、主要評価項目である高血圧の子どもの割合は、給食無償化により-2.71パーセントポイント(PP)という有意な差(DD)が生じたと計算された(95%信頼区間-5.10~-0.31〔P=0.03〕)。このDDは、高血圧の子どもの割合が5年間で約11%減少するという変化に相当する(-10.8%〔同-20.4~-1.2〕)。また、副次評価項目の一つとして設定されていた、血圧が集団全体の95パーセンタイル以上の子どもの割合についても、DDが-2.48PPと有意であった(同-4.69~-0.27〔P=0.03〕)。 論文の筆頭著者である米ワシントン大学のAnna Localio氏は、「多くの州で給食無償化の拡大を目指す法案が検討されており、われわれの研究結果は各州の政策決定に役立つ可能性がある」と述べている。一方で研究者らは、「残念ながら食糧支援プログラムが縮小される動きもあり、無料で学校給食にアクセス可能な環境が脅かされている」と指摘。Localio氏も、「学校給食無償化への資金削減は、子どもたちの健康増進にはつながらない」と語っている。

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60歳以上における全原因心肺系・心血管系疾患入院予防に対する2価RSVワクチンの効果(解説:寺田教彦氏)

 本論文は、デンマークにおける全国規模の無作為化比較試験(DAN-RSV試験)の事前規定サブ解析で、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ワクチン接種による「全原因心肺系入院のみならず、呼吸器疾患の下流に位置する全原因心血管系入院の予防効果」を評価したものである。同試験の主要エンドポイントはRSV関連呼吸器疾患による入院で、結果は別の論文で報告されている「60歳以上への2価RSVワクチン、RSV関連呼吸器疾患による入院を抑制/NEJM」。 本論文の評価項目として、副次エンドポイントは全原因心肺系入院、探索的エンドポイントとして心血管疾患の各項目である、心不全、心筋梗塞、脳卒中、心房細動による入院が設定された。 RSVは乳幼児期に細気管支炎や肺炎を引き起こし、小児死亡の主要な原因の1つとされてきた。RSVワクチンは、1960年代にワクチン関連疾患増悪(Vaccine-associated enhanced disease,VAED)が問題となり、開発が停滞したこともあったが、構造生物学的解析によってpre-fusion型F蛋白が同定され、現在は高い中和抗体誘導能を有するワクチンが実用化されている。 近年、RSVは小児以外に高齢者や慢性心疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息などの慢性呼吸器疾患などがある人々でも重症化し、肺炎や死亡に関与することが注目され、CDCでは75歳以上やRSV重症化のリスクがある50~74歳にもRSVワクチン接種を推奨している(RSV Vaccine Guidance for Adults)。 日本の高齢者に対するRSVの公的な疫学情報はなく、高齢者に対するRSVワクチンは、一部自治体で補助制度はあるが、現行は任意接種の立ち位置である。2025年10月現在、日本ではRSVワクチンとして、アブリスボ(ファイザー、bivalent preFワクチン)とアレックスビー(グラクソ・スミスクライン、単価preFワクチン)が承認されており、本研究はアブリスボの効果が評価されている(感染症情報提供サイト. 病原微生物検出情報[IASR] Vol. 46 p123-124: 2025年6月号.)。 本研究結果で、アブリスボを60歳以上に接種した場合、全原因心肺系入院は有意に減少(ワクチン有効性:9.9%、95%信頼区間:0.3~18.7%)したが、全原因心血管疾患入院での有意な減少は示せなかった。今回の結果からも、RSVワクチンの有効性は示されており、適応のある高齢者に対して引き続き接種を推奨すべきだろう。 また、心血管系疾患による入院抑制効果は統計学的有意に達しなかったが、全原因心肺系入院における絶対率減少(2.90/1,000人年)は呼吸器疾患入院単独の絶対率減少(1.87/1,000人年)より大きく、これは減少した入院患者の一部に心血管系疾患による入院患者が含まれている可能性も考えられた。それにもかかわらず、本研究で有意差が示せなかった理由としては、本試験が心血管アウトカムを主要評価項目として設計されておらず、心血管イベントの発生数も限られるため、統計学的検出力が十分でなかった可能性もある。 本研究の特徴は、気道感染症ワクチンによる全原因心血管疾患による入院予防効果を探索的に検討した点にある。RSV感染は、呼吸器炎症や酸素化障害を介して心不全増悪や急性冠症候群を誘発しうることが知られており(Woodruff RC, et al. JAMA Intern Med. 2024;184:602-611.)、感染予防を通じた2次的な心血管イベント抑制の可能性が期待されている。医療経済的にも、心血管イベント抑制が実証されれば費用対効果はさらに高まり、公的補助の拡大に向けた重要な根拠となるだろう。 RSV以外のCOVID-19やインフルエンザウイルスといった気道感染症も、高齢者において有害な心血管イベントを誘発することが指摘されている。今後は、感染症ワクチンの評価項目として、単なる感染予防・重症化予防にとどまらず、「感染を契機とする心血管イベント」を包括的に評価する研究設計が増えるかもしれない。 日本における高齢者に対するRSVワクチンという視点では、2025年4月から急性呼吸器感染症(ARI)が5類感染症として報告対象になった。日本における高齢者のRSV感染症の疾病負荷が明らかになれば、RSVワクチンの公的補助や接種勧奨が拡大されることも期待される。

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経口選択的心筋ミオシン阻害薬aficamtenは症候性の閉塞性肥大型心筋症患者においてβ遮断薬よりも臨床的に有効である(解説:原田和昌氏)

 Cohen、Braunwaldらの約60年前のエキスパートオピニオンと限定的なエビデンスにより、β遮断薬は症候性閉塞性肥大型心筋症(HCM)の第1選択の治療として使い続けられてきた。一方、経口選択的心筋ミオシン阻害薬であるaficamtenの上乗せは標準治療と比較して左室流出路圧較差を軽減し、運動耐容能を改善してHCMの症状を軽減することが第III相二重盲検比較試験であるSEQUOIA-HCM試験により示された。今回、スペイン・CIBERCVのGarcia-Pavia氏らMAPLE-HCM研究者たちは、HCMの治療においてβ遮断薬単剤投与とaficamtenの単剤投与との臨床的有益性を比較する目的で、国際共同第III相二重盲検ダブルダミー無作為化試験であるMAPLE-HCM試験を実施した。 年齢18~85歳、左室壁厚が15mm以上(疾患の原因となる遺伝子変異またはHCMの家族歴がある場合は13mm以上)のHCMと診断され、LVEFが60%以上、かつ安静時の左室流出路圧較差が30mmHg以上、またはバルサルバ法で誘発時の左室流出路圧較差が50mmHg以上の患者175例を世界71施設で登録した。ダブルダミー法により、被験者をaficamten(漸増)+プラセボ群、またはメトプロロール(漸増)+プラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、24週間投与した。aficamten群は88例、メトプロロール群は87例で、平均年齢58歳、58.3%が男性であった。ベースラインの安静時の平均左室流出路圧較差は47mmHg、誘発時の平均左室流出路圧較差は74mmHgで、平均LVEFは68%、NYHA心機能分類II群が70.3%を占めた。NT-proBNP値中央値は468pg/mLであった。 メトプロロール単剤に比べaficamten単剤は、主要エンドポイントである最高酸素摂取量の改善に関して優越性を示し、副次エンドポイントである症状の軽減や安静時および誘発時の左室流出路圧較差、NT-proBNP値、左房容積係数の改善と関連した。有害事象の発現状況は同程度であった。 現在のガイドラインではHCMに対してマバカムテンが推奨されているが、本試験の結果により、aficamtenはβ遮断薬中心の標準治療に代わって、HCMの第1選択ないしは単剤治療として推奨される可能性がある。逆に、β遮断薬はHCMの安静時および誘発時の左室流出路圧較差、NT-proBNP値、左房容積係数をいずれも改善しないことが明らかになった。もっとも、Braunwald先生らの名誉のために付け加えると、β遮断薬でKCCQ-CSSやNYHA心機能分類がわずかに改善する傾向はみられた。

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