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日本人の主な死因(2023年)

日本人の主な死因その他食道 2.8%21.0%前立腺 3.5%肺および気管・気管支19.8%大腸(結腸・直腸)13.9%悪性リンパ腫3.8%アルツハイマー病1.6%その他悪性新生物(腫瘍)25.0%24.3%乳房 4.1%膵胃胆のう・胆道 4.5%10.5%10.1%肝・肝内胆管 6.0%n=38万2,504人腎不全 1.9%心疾患新型コロナウイルス感染症 2.4%不慮の事故2.8%誤嚥性肺炎3.8%(高血圧性を除く)心疾患14.7%老衰脳血管疾患 12.1%6.6%肺炎慢性リウマチ性4.8%心筋症 1.5%0.8%慢性非リウマチ性心内膜疾患5.2%くも膜下出血n=157万6,016人10.7%31.3%n=10万4,533人20.6%心不全42.9%急性心筋梗塞13.4% 不整脈および伝導障害15.6%その他 2.9%脳内出血その他n=23万1,148人脳梗塞55.1%厚生労働省「人口動態統計」2023年(確定数)保管統計表 都道府県編 死亡・死因「第4表-00(全国)死亡数,都道府県・保健所・死因(死因簡単分類)・性別」より集計注:死因順位に用いる分類項目(死因簡単分類表から主要な死因を選択したもの)による順位Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第219回 外科医確保へ処遇改善、長時間労働是正など包括的な対策を検討/厚労省

<先週の動き>1.外科医確保へ処遇改善、長時間労働是正など包括的な対策を検討/厚労省2.医療機関の経営危機に緊急支援、1,311億円の対策パッケージ/政府3.ED治療薬のスイッチOTC化を検討、意見募集を開始/厚労省4.美容医療の規制強化の対策案公表、情報公開と行政指導を強化/厚労省5.マイナ保険証対応の義務化は「適法」医師らの訴え棄却/東京地裁6.建設費高騰で新病院建設を断念、埼玉県の医師不足解消に暗雲/順天堂大1.外科医確保へ処遇改善、長時間労働是正など包括的な対策を検討/厚労省厚生労働省は11月29日、「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」を開き、外科医不足が深刻化する中、外科医の業務負担軽減と処遇改善に取り組む方針を固めた。外科医は長時間労働や休日出勤が多く、私生活との両立が難しいことから、若手の医師などに敬遠されがちな診療科となっている。厚労省は、外科医のなり手を増やすため、業務負担の軽減、報酬の引き上げ、研修制度の見直しなどを検討する。具体的な対策としては、手術支援ロボットの導入や医師事務作業補助者の配置による業務効率化、外科医の給与増額などが考えられている。また、若手医師の外科離れを防ぐため、研修制度の見直しも検討される。医師の偏在対策を議論する有識者検討会では、外科医の処遇改善に向けた「手厚い評価」について議論が行われた。この中で、病院経営の観点から外科医の給与増額を提案する意見や、大学病院の医局制度の見直しを求める意見などが出された。厚労省は、これらの意見を踏まえ、年末に取りまとめる医師偏在対策の総合的な対策パッケージに反映させる方針。参考1)第8回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会(厚労省)2)外科医確保へ処遇改善 厚労省方針、負担軽減や報酬増(日経新聞)3)医師偏在是正に向け「外科医の給与増」・「総合診療能力を持つ医師」養成・「広域連携型の医師臨床研修」制度化等が重要-医師偏在対策等検討会(Gem Med)4)広域連携型プログラムの検証制度、早期検討を 医師偏在対策で複数意見 厚労省検討会(CB news)2.医療機関の経営危機に緊急支援、1,311億円の対策パッケージ/政府高齢化やコロナ禍による受診行動の変化で経営状況が悪化している医療機関に対し、政府は2024年度補正予算案で1,311億円規模の緊急支援パッケージを盛り込んだ。この支援策は、医療機関の賃上げ支援、病床削減を実施する医療機関への支援、医師不足地域への支援、医療DX推進などが柱となっている。賃上げ支援では、病院や有床診療所には1床当たり4万円、無床診療所と訪問看護ステーションには1施設に付き18万円の給付金を支給するほか、病床削減を進める医療機関には、1床当たり410万4,000円の給付金を交付し、診療体制の変更を支援する。また、医師不足地域に対しては、診療所の承継や開業、医師の派遣、専門医に対するリカレント教育などを支援する。医療DX関連では、全国医療情報プラットフォームの構築や電子処方箋の普及促進、マイナ保険証の利用促進などに予算が計上された。一方、財務省は11月29日に財政制度等審議会を開き、2025年度予算編成に向けた建議をまとめ、医療費総額の伸びを抑制するため、不断の制度改革を求めた。福祉医療機構の調査によると、今年春の診療報酬改定による施設基準の厳格化の影響が大きく、急性期病院の約45%が2024年度診療報酬改定後に減益となっていることが明らかになっており、財務省側は補助金による財政措置に歯止めを求めている。政府の緊急支援パッケージは、医療機関の経営安定化に一定の役割を果たすと期待される一方、財政状況の悪化や高齢化に伴う医療ニーズの変化に対応した抜本的な改革も求められている。参考1)医療・介護の賃上げに1,800億円 24年度補正予算案(日経新聞)2)賃上げ支援1床当たり4万円、病院と有床診 無床診と訪看は1施設18万円 補正予算案(CB news)3)急性期163病院の45%が減益 24年度報酬改定後 増収分を費用が上回る 福祉医療機構(同)4)令和7年度予算の編成等に関する建議(財務省)3.ED治療薬のスイッチOTC化を検討、意見募集を開始/厚労省厚生労働省は11月25日、勃起不全(ED)治療薬のタダラフィル(商品名:シアリス)について、医師の処方箋なしで購入できる一般用医薬品(OTC)への転用(スイッチOTC化)を検討するため、意見募集を開始した。ED治療薬がOTC化されれば、国内では初めてのケースとなる。現在、ED治療薬は医療用医薬品として医師の処方箋が必要となっている。しかし、医師への受診をためらい、インターネットなどを利用して個人輸入で海外から薬を購入するケースが増加し、偽造薬のリスクなどが懸念されている。タダラフィルがOTC化されれば、薬局やドラッグストアで購入できるようになり、正規品の入手機会の拡大と、偽造薬による健康被害の防止が期待される。厚労省は、意見募集の結果を踏まえ、専門家による検討会で課題や対応策を議論し、最終的には薬事審議会の部会で承認を判断する。参考1)候補成分のスイッチOTC化に関する御意見の募集について(厚労省)2)スイッチOTC医薬品の候補となる成分の検討結果について(同)3)タダラフィルなど3成分、スイッチで意見募集 厚労省、「時短スキーム」第1弾(日刊薬業)4)ED治療薬、処方箋不要に 厚労省検討、正規品入手しやすく(日経新聞)5)医療用医薬品から要指導・一般用医薬品への転用(スイッチOTC化)の促進(日本OTC医薬品協会)4.美容医療の規制強化の対策案公表、情報公開と行政指導を強化/厚労省厚生労働省は、11月28日に社会保障審議会医療部会を開き、美容医療のトラブル増加を受け、規制強化に向けた対策案を公表した。この対策案は、6月から開催されてきた「美容医療の適切な実施に関する検討会」で議論されてきた内容をまとめたもの。背景には、美容医療に関するトラブル相談が急増している現状があり、国民生活センターの報告によると、美容医療に関する相談件数は2023年度に5,507件となり、5年間で3倍以上に増加した。厚労省は、美容医療を提供する医療機関に対し、安全管理体制や医師の専門医資格の有無、相談窓口の設置状況などを都道府県へ報告することを義務付けるほか、保健所による指導の明確化のほか、診療録の記載の徹底、オンライン診療のルール整備、関係学会によるガイドライン策定、医療広告規制の強化のほか、国民へ美容医療についてのリスクの情報提供の強化を行うこととした。さらに、一般社団法人が開設する医療機関に対し、安全管理体制や医師の専門医資格の有無、相談窓口の設置状況などを都道府県に事業報告書などの書類提出を義務付ける方針を固めた。一般社団法人は、医師が代表となる医療法人と異なり、管理者となる医師がいれば異業種でも医療に参入できる。近年、美容クリニックを中心に、一般社団法人が開設する医療機関が増加しており、2023年には780ヵ所に達している。しかし、一般社団法人は医療法人と比べて規制が緩く、営利目的での運営や医療の質の低下などが懸念されてきているため対応が急がれていた。厚労省は、一般社団法人に対しても医療法人と同等の報告を義務付けることで、経営実態の把握を強化し、非営利性の徹底を図る考え。参考1)美容医療の適切な実施に関する検討会報告書(厚労省)2)「一般社団法人」クリニック 経営や事業の内容確認 厳格化へ(NHK)3)一般社団法人の医療機関、報告対象に 美容医療が念頭(日経新聞)5.マイナ保険証対応の義務化は「適法」医師らの訴え棄却/東京地裁医師らがマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」への対応を義務付ける厚生労働省の省令は違法だとして、国に義務がないことの確認を求めた訴訟で、東京地裁は11月28日、医師側の請求を棄却した。判決は、マイナ保険証への対応義務化について「制度運営の効率化や、正確なデータに基づいたより良い医療のためと認められる」と指摘。医療機関への経済的負担が生じても「事業継続を困難にするとは言えず、医療活動の自由に重大な制限を課すものではない」として、国側の主張を認めた。原告の医師らは、機器導入費用や維持費、情報漏えいのリスクなどを訴えたが、判決では、システム導入には財政的な補助があり、廃業を余儀なくされるほどの負担ではないと判断した。この判決を受け、原告団は控訴する意向を示している。一方、政府は12月2日に現行の健康保険証の新規発行を停止し、マイナ保険証への移行を進める方針。平 将明デジタル相は、マイナ保険証は医療費適正化や新たな価値創出に不可欠であり、移行を予定通り進める必要があると強調した。マイナ保険証の導入を巡っては、医療現場の混乱や患者情報の取り扱いなど、さまざまな課題が指摘されている。政府は、これらの課題に対応しながら、マイナ保険証の普及促進を目指していく考え。参考1)マイナ保険証対応の義務化は適法、医師らの訴えを退ける 東京地裁(朝日新聞)2)マイナ保険証導入義務化 違法と言えず 医師ら訴え退ける判決(NHK)3)マイナ保険証システム義務化は適法 医師の違法確認を棄却 東京地裁(毎日新聞)6.建設費高騰で新病院建設を断念、埼玉県の医師不足解消に暗雲/順天堂大埼玉県さいたま市への新病院建設を計画していた順天堂大学は、11月29日、計画を中止すると埼玉県に伝えた。2015年に埼玉県が公募した病院誘致計画で、順天堂大学は800床規模の新病院建設を提案し、採択されていた。しかし、建設費や資材費の高騰により、総事業費が当初の834億円から2,186億円に膨れ上がったこと、コロナ禍以降の病院経営の悪化、医師の働き方改革への対応などを理由に、計画を断念するにいたった。埼玉県の公募に応える形で、新病院の建設が決まったのは2015年3月。当初は2020年度に開院としていたが、その後、何度もその時期が先送りされてきた。大学側は、事業費を抑えるために看護系学部の開設や宿舎の整備・大学院棟の建設を先送りにし、病院の規模も当初予定していた800床から500床程度に縮小する計画案を検討した。しかし、建築費の高騰や医療を取り巻く厳しい環境を鑑みると、計画の見直しなどによっても、埼玉県民に貢献できる最先端医療機能を備え、かつ、DXを活用した未来型基幹病院の開設は困難と判断した。埼玉県の大野 元裕知事は、「大変遺憾」と述べ、「県民の期待が大きかっただけに残念だ」と語っている。順天堂大学は、計画中止をさいたま市にも報告し、清水 勇人市長は「大変残念」とコメントした。新病院の建設予定地は、県有地とさいたま市有地で、約7万7,000平方メートル。県は土地取得に55億5,000万円を投じていた。今後の土地活用については、埼玉県は「病院誘致の可能性も含め、総合的に判断する」としている。順天堂大学の新病院は、埼玉県が抱える医師不足の課題解決に向けても期待が寄せられていた。埼玉県は、人口10万人当たりの医師数が全国で最も少なく、医師不足が課題となっていた。このため、埼玉県は新病院の公募の条件に、医師不足の地域に大学が医師を派遣することを挙げており、現在、順天堂大学からは県北部と西部の病院に2人の医師が派遣されている。新病院の開院後は段階的に人数を増やし、年間20人の医師が派遣される予定だった。今回の計画中止は、埼玉県の医師不足解消に大きな影響を与える可能性がある。参考1)埼玉県浦和美園地区病院の整備計画中止について(順天堂大学)2)順天堂大学 800床の病院整備計画を中止 埼玉県に伝える(NHK)3)順天堂大、さいたま市への新病院建設を断念 資材高騰で資金不足(毎日新聞)4)順天堂大の新病院、建設決定から9年半で計画中止に…「青天の霹靂」「裏切られた気持ちだ」(読売新聞)

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人工股関節置換術前の検査【日常診療アップグレード】第18回

人工股関節置換術前の検査問題73歳女性。変形性股関節症の治療のため入院中である。3日後に左の人工股関節置換術が予定されている。出血量は300~500mLと予想される。既往歴として高血圧と甲状腺機能低下症がある。エナラプリル(ACE阻害薬)、アムロジピン(Ca拮抗薬)、レボチロキシン(甲状腺ホルモン薬)、アセトアミノフェン(鎮痛薬)を内服している。バイタルサインは異常なし。疼痛のため、左股関節の可動域に制限がある。2ヵ月前にTSH(甲状腺刺激ホルモン)を測定していて異常はない。術前検査として、全血球計算(CBC)と腎機能に加えTSHとFT4をオーダーした。

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糖尿病を有する終末期がん患者におけるシックデイ時の薬物療法を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第63回

 今回は、胃がん終末期の患者に関して、食事摂取量低下時の重篤な副作用を予防するために薬剤師から能動的に処方調整を提案した事例を紹介します。終末期がん患者では、病勢の進行に伴う全身状態の変化に応じたきめ細やかな薬物療法の調整がとくに重要となります。患者情報85歳、男性基礎疾患胃底部がん(門脈腫瘍塞栓あり)、2型糖尿病(罹患歴35年)、第12腰椎圧迫骨折ADL移乗・移動は全介助、食事は自立、オムツ使用生活環境ホスピス入所中、24時間看護体制下で療養食事摂取量通常の2割程度(1週間前は5割)介入時の検査値HbA1c 7.1%処方内容1.メトホルミン錠500mg 1錠 分1 朝食後2.シタグリプチン錠25mg 1錠 分1 朝食後3.デキサメタゾン錠4mg 1錠 分1 朝食後4.ランソプラゾール錠15mg 1錠 分1 朝食後5.アンブロキソール錠15mg 3錠 分3 毎食後本症例のポイント終末期がんによる全身状態の悪化に伴い、食事摂取量が5割から2割へと急激に低下しました。現行処方を確認したところ、以下の懸念点が浮かび上がりました。メトホルミンによる乳酸アシドーシスのリスク高齢(85歳)食事摂取量の著明な低下がん終末期による全身状態悪化血糖コントロールに影響を与える因子デキサメタゾンによる血糖上昇作用食事摂取量低下による血糖値の変動リスク終末期における治療方針の検討QOLを重視した血糖管理目標の設定低血糖リスクの回避医師への提案と経過以下の内容について情報提供を行いました。【現状報告】食事摂取量:5割→2割に低下がんの進行状況(門脈腫瘍塞栓あり)デキサメタゾン併用による血糖変動リスク【懸念事項】乳酸アシドーシスのリスク因子→食事摂取量低下、がん終末期による代謝異常、高齢終末期における治療方針→症状緩和優先の方針、QOLを考慮した血糖管理目標の設定【提案内容】メトホルミンの中止シタグリプチンによる血糖管理の継続症状観察の強化・継続医師には提案を採用いただき、メトホルミンの中止が決定しました。施設スタッフに状況を説明し、食事摂取状況や血糖値の推移、全身状態の変化、苦痛症状がないかどうかを観察いただくよう伝えました。中止1週間後でも重篤な血糖上昇や乳酸アシドーシス症状はなく、QOLは維持していました。考察本症例では、以下の点が適切な介入につながったと考えています。1.終末期における薬物療法の考え方:QOLを重視した処方調整、リスク・ベネフィットバランスの見直し、過少・過剰医療の回避2.多職種連携の重要性:医師との適切な情報共有、施設スタッフとの密な連携、観察ポイントの明確化3.先制的な介入の意義:重篤な副作用の予防、終末期QOLの維持、安全な薬物療法の実現終末期がん患者の薬物療法管理では、病勢の進行に応じた柔軟な対応が求められます。とくに食事摂取量の変化など、全身状態に影響を与える因子については、早期に気付いて対応することが重要です。本事例は、薬剤師による予防的な処方調整提案が、終末期患者のQOL維持に貢献した例と言えます。ホスピスにおける薬剤師の役割として、患者の状態変化を予測した先制的な介入の重要性を再認識させられた症例となりました。

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酒で赤くなる人は睡眠満足度が低い?

 飲酒後に顔や首が赤くなる症状はアジアンフラッシュとして知られ、東アジア人の約36%がアジアンフラッシュの特徴を持っている。アジアンフラッシュに関連する遺伝的因子は睡眠時間と逆相関することが報告されているが、アジアンフラッシュと睡眠満足度との関連を報告した研究はない。今回、大阪健康安全基盤研究所の清水 悠路氏らがインターネット調査による横断研究で検討したところ、アルコール曝露に対する身体的反応の遺伝的特徴が睡眠の質にも影響を及ぼす可能性が示唆された。Medical Science誌2024年11月8日号に掲載。 本研究は、インターネット調査会社に登録している大阪府在住の一般モニターのうち20~64歳の日本人3,823人(男性1,907人、女性1,916人)を対象とし、2023年11月27~30日にインターネット調査を実施した。睡眠の満足度については、「満足」「少し不満」「かなり不満」「非常に不満またはまったく眠れなかった」のうち「満足」と回答した参加者を満足のいく睡眠をとっているとみなした。アジアンフラッシュについては、「飲酒し始めた年齢で、少量のアルコール摂取(ビールコップ1杯程度)ですぐに顔が赤くなりましたか?」という質問に「はい」と回答した参加者をアジアンフラッシュを経験していると分類した。飲酒したことのない参加者と過去に飲酒していた参加者を非飲酒者と定義した。 主な結果は以下のとおり。・アジアンフラッシュと睡眠満足度の間に有意な逆相関が認められた。潜在的交絡因子を補正した睡眠満足度のオッズ比(OR)は0.81(95%信頼区間[CI]:0.69~0.96)であった。・飲酒者と非飲酒者で基本的に同様の関連が認められた。補正後のORは、非飲酒者で0.81(95%CI:0.65~0.997)、飲酒者で0.80(同:0.61~1.05)であった。 著者らは、この結果が与える新たな臨床的意味合いとして「日常診療や毎年の健康診断に簡単に導入できる質問票が、睡眠不足の危険因子を特定するために役立つ可能性がある。また、飲酒しない人でもアジアンフラッシュは睡眠時間だけでなく睡眠満足度に関しても睡眠障害のリスクであることが明らかになった」としている。

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HBV母子感染予防、出生時HBIG非投与でもテノホビル早期開始が有効か/JAMA

 B型肝炎ウイルス(HBV)の母子感染は新規感染の主要な経路であり、標準治療として母親への妊娠28週目からのテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(TDF)投与開始と、新生児への出生時のHBVワクチン接種およびHBV免疫グロブリン(HBIG)投与が行われるが、医療資源が限られた地域ではHBIGの入手が困難だという。中国・広州医科大学のCalvin Q. Pan氏らは、妊娠16週からのTDF投与とHBVワクチン接種(HBIG非投与)は標準治療に対し、母子感染に関して非劣性であることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年11月14日号で報告された。中国の無作為化非劣性試験 研究グループは、妊婦へのTDF早期投与開始と新生児への出生時HBIG投与省略がHBVの母子感染に及ぼす影響の評価を目的とする非盲検無作為化非劣性試験を行い、2018年6月~2021年2月に中国の7施設で参加者を募集した(John C. Martin Foundationの助成を受けた)。 年齢20~35歳、HBe抗原陽性の慢性B型肝炎でHBV DNA値>20万IU/mLの妊婦280例(平均年齢28[SD 3.1]歳、平均妊娠週数16週、HBV DNA値中央値8.23[7.98~8.23]log10 IU/mL)を登録した。 これらの妊婦を、妊娠16週目から出産までTDF(VIREAD[Gilead Sciences製]、300mg/日)を投与する群(実験群)に140例、妊娠28週目から出産までTDFを投与する群(標準治療群)に140例を無作為に割り付けた。すべての新生児は生後12時間以内にHBVワクチンの接種を受け、1ヵ月および6ヵ月後に追加接種を受けた。加えて、標準治療群の新生児のみ、出生時にHBIG(100 IU)を投与された。 主要アウトカムは母子感染とし、生後28週時の乳児における20 IU/mL以上の検出可能なHBV DNA値またはHBs抗原陽性の場合と定義した。母子感染率が、標準治療群と比較して実験群で3%以上増加しなかった場合に非劣性と判定することとし、90%信頼区間(CI)の上限値で評価した。ITT集団、PP集団とも非劣性基準を満たす 全生産児273例(ITT集団)における母子感染率は、実験群が0.76%(1/131例)、標準治療群は0%(0/142例)であった。また、per-protocol(PP)集団の生産児(プロトコールの非順守がなく28週時点のデータが入手できた)265例の母子感染率は、それぞれ0%(0/124例)および0%(0/141例)だった。 母子感染率の群間差は、ITT集団で0.76%(両側90%CIの上限値1.74%)、PP集団で0%(1.43%)と、いずれも非劣性の基準を満たした。 また、母親における分娩時のHBV DNA値<20万IU/mLの達成率は、実験群で有意に高かった(99.2%[130/131例]vs.94.2%[130/138例]、群間差:5%、両側95%CI:0.1~10.0、p=0.02)。 先天異常/奇形は、実験群で2.3%(3/131例)、標準治療群で6.3%(9/142例)に発生した(群間差:4%、両側95%CI:-8.8~0.7)。忍容性は全般的に良好 母親へのTDF治療は全般的に忍容性が高く、投与中止は吐き気による1例(0.36%)のみであった。コホート全体で最も頻度の高かった有害事象として、母親のALT値上昇が25%(実験群23.6% vs.標準治療群26.4%)、上気道感染症が14.6%(11.4% vs.17.8%)、嘔吐が12.9%(16.4% vs.9.3%)で発生した。 実験群では、妊娠中絶1件(ファロー四徴症)、胎児死亡4件(流産1件、死産3件)を認めた。新生児におけるグレード3/4の有害事象の頻度は両群で同程度だった。 著者は、「これらの結果は、とくにHBIGを使用できない地域では、HBV母子感染の予防において、妊娠16週目から妊婦へのTDFを開始し、新生児へのHBVワクチン接種を併用する方法を支持するものである」「新生児へのHBIG使用を最小限に抑えるための母親へのTDF療法の最適な期間はいまだ不明である」としている。

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アブレーション後のAF患者における左心耳閉鎖術の安全性・有効性/NEJM

 カテーテルを用いた心房細動アブレーションを受け、脳卒中リスクが中等度~高度の患者において、経口抗凝固薬投与と比較して左心耳閉鎖術は、36ヵ月後の手技に関連しない出血(大出血および臨床的に重要な非大出血)のリスクが有意に低く、全死因死亡、脳卒中、全身性塞栓症の複合に関して非劣性であることが、米国・クリーブランド・クリニックのOussama M. Wazni氏らが実施した「OPTION試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年11月16日号に掲載された。国際的な無作為化臨床試験 OPTION試験は、カテーテルアブレーションを受けた心房細動患者における左心耳閉鎖術の安全性と有効性の評価を目的とする国際的な無作為化臨床試験であり、2019年11月~2021年6月の期間に10ヵ国106施設で参加者を募集した(Boston Scientificの助成を受けた)。 CHA2DS2-VAScスケール(0~9点、高スコアほど脳卒中のリスクが高い)のスコアが男性≧2点、女性≧3点で、カテーテルアブレーションを受けた心房細動患者1,600例を登録した。これらの患者を、左心耳閉鎖術を受ける群(803例)、経口抗凝固薬の投与を受ける群(797例)に無作為に割り付けた。 ベースラインの全体の平均[±SD]年齢は69.6±7.7歳、女性が34.1%で、平均CHA2DS2-VAScスコアは3.5±1.3点、平均HAS-BLED(0~9点、高スコアほど出血のリスクが高い)スコアは1.2±0.8点であった。左心耳閉鎖術群は、98.8%(753/762例)でデバイスの留置に成功した。副次エンドポイントも非劣性を達成、デバイス/手技関連合併症は23例 36ヵ月の時点でのITT集団におけるKaplan-Meier法による安全性の主要エンドポイント(手技に関連しない出血[ISTH基準の大出血および臨床的に重要な非大出血]、優越性を評価)の推定発生率は、経口抗凝固薬群が18.1%(137例)であったのに対し、左心耳閉鎖術群は8.5%(65例)と有意に低かった(ハザード比[HR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.33~0.59、優越性のp<0.001)。 また、36ヵ月時のITT集団におけるKaplan-Meier法による有効性の主要エンドポイント(全死因死亡、脳卒中、全身性塞栓症の複合、非劣性[非劣性マージン5%ポイント]を評価)の推定発生率は、左心耳閉鎖術群5.3%(41例)、経口抗凝固薬群5.8%(44例)であり、左心耳閉鎖術群の非劣性が示された(HR:0.91、95%CI:0.59~1.39、片側97.5%CIの上限値:1.8、非劣性のp<0.001)。 36ヵ月時の副次エンドポイント(ISTH基準による大出血[手技関連出血を含む]、非劣性[非劣性マージン5.25%ポイント]を評価)の発生率は、左心耳閉鎖術群3.9%(30例)、経口抗凝固薬群5.0%(38例)と、左心耳閉鎖術群の非劣性が示された(HR:0.77、95%CI:0.48~1.24、片側97.5%CIの上限値:1.0、非劣性のp<0.001)。 デバイスまたは手技に関連する合併症は、左心耳閉鎖術群の23例(うち1例は経口抗凝固薬群からのクロスオーバー)で発現した。12ヵ月後のデバイス関連血栓の発生率は1.9%だった。 著者は、「心房細動アブレーション施行時に左心耳閉鎖術を安全に行えるという事実は、長期間の経口抗凝固薬投与に代わる新たな選択肢をもたらす可能性がある」としている。

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大戦中の砂糖配給制の影響を胎児期に受けた人は糖尿病や高血圧が少ない

 第二次世界大戦中と終戦後しばらく、砂糖が配給制だった時期に生まれた人には、2型糖尿病や高血圧が少ないとする、米南カリフォルニア大学(USC)ドーンサイフ経済社会研究センターのTadeja Gracner氏らの研究結果が「Science」に10月31日掲載された。2型糖尿病リスクは約35%、高血圧リスクは約20%低いという。この結果は、現代の人々が砂糖のあふれた環境によって、いかに大きな健康被害を受けているかを示しているとも言えそうだ。 この研究では、第二次世界大戦中に英国で行われた砂糖配給制に焦点が当てられた。英国では1942年に砂糖が配給制となり、国民の砂糖摂取量は1日当たり平均40g(ティースプーンで約8杯分)となった。ちなみに、現在流通している一般的な加糖飲料の中には50gほどの砂糖が使われているものもある。英国の砂糖配給制は戦後もしばらく継続され、1953年9月になって終了した。それとともに砂糖の摂取量は平均80gへと倍増した。 このように、配給制度下で砂糖摂取量が限られていた時期に胎児期から乳幼児期(受胎後の最初の1,000日)を過ごした人と、配給制が終了して砂糖摂取量が急増した時期に、受胎後の最初の1,000日を過ごした人とで、成人後の糖尿病や高血圧のリスクに差があるかが検討された。検討には、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータが用いられた。 解析の結果、砂糖摂取量が少ない環境で受胎後の最初の1,000日を過ごした人は、そうでない人に比べて、2型糖尿病のリスクが約35%低く、高血圧リスクは約20%低いことが明らかになった。また、それらを発症した人の発症年齢は、前者の群で2型糖尿病については4年、高血圧については2年遅かった。この結果から、砂糖摂取量の少ない母親の子宮内環境への暴露は、糖尿病や高血圧に対する保護効果を持つと考えられた。また、出生後に固形食が始まったと思われる、生後6カ月以降に砂糖摂取量が限られていたことで、その保護効果はより強化されていた。子宮内環境のみによるリスク低減効果は、全体の約3分の1を占めていた。 Gracner氏は、「胎児期から乳幼児期の栄養摂取の影響を調査するランダム化比較試験の実施には高いハードルがあり、かつ、50年後、60年後にその差を検証することも困難だ」と解説。その上で、「われわれは、配給制の実施と終了という社会的な変化を利用してそれらの課題をクリアし、自然実験を行った」と述べている。また、論文の共著者の1人である米シカゴ大学およびマギル大学(カナダ)のClaire Boone氏は、「この研究は、幼い頃の砂糖摂取を減らすことが、子どもの生涯にわたる健康増進に向けた強力な一歩であるという因果関係を指し示す、初のエビデンスである」としている。

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日中の眠気と熱意の低下は認知症の前段階と関連

 日中に眠気があり、活動への熱意を奮い起こすことが困難な高齢者は、そうした症状のない高齢者に比べて、認知症の前段階の一形態である運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome;MCR)になるリスクが3倍以上高いことが、新たな研究で明らかになった。MCRは主観的認知機能の低下と歩行速度の低下が併存した状態を指す。米アルバート・アインシュタイン医科大学のVictoire Leroy氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に11月6日掲載された。 今回の研究でLeroy氏らは、認知症のない65歳以上の高齢者445人(平均年齢75.9歳、女性56.9%)を対象に、悪い睡眠の質とMCRとの関連を調査した。MCRは、標準化された質問票を通じて報告された認知機能の低下と、電子トレッドミルで記録された歩行速度の低下が同時に認められる場合と定義し、試験開始時と年に1回の追跡調査時に評価された。睡眠の質はピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)で評価し、5点以下の「良い睡眠の質」と5点超の「悪い睡眠の質」に分類した。 試験開始時にMCRが認められなかった対象者は403人だったが、そのうちの36人が、中央値2.9年の追跡期間中にMCRに該当すると判定された。解析の結果、睡眠の質が悪い人は、睡眠の質が良い人と比べてMCRリスクが2.7倍高いことが明らかになった(ハザード比〔HR〕2.7、95%信頼区間〔CI〕1.2〜5.2)。しかし、抑うつ症状を考慮すると、この関連は統計学的に有意ではなくなった(調整HR 1.6、95%CI 0.7〜3.4)。完全調整モデルを用いた解析では、PSQIを構成する7つの要素のうち、日中の機能障害(過度の眠気と熱意の低下)だけが、MCRリスクと有意な関連を示した(調整HR 3.3、同1.5〜7.4)。一方、試験開始時にすでにMCRが認められた人では、MCRと悪い睡眠の質との間に有意な関連は認められなかった(オッズ比1.1、95%CI 0.5〜2.3)。 研究グループは、この研究では睡眠障害とMCRとの関連が示されただけで、因果関係が証明されたわけではないと指摘している。また、Leroy氏は、「さらなる研究により、睡眠障害と認知機能低下との関係、およびその関係にMCRが果たしている役割を調べる必要がある。さらに、睡眠障害をMCRおよび認知機能低下に結び付けるメカニズムを説明するための研究も必要だ」と述べている。 その一方で研究グループは、「それでも本研究結果は、良質な睡眠により老後の脳の健康が守られる可能性が高いことを示している」との見方を示す。Leroy氏は、「われわれの研究結果は、睡眠障害のスクリーニングの必要性を強調するものだ。睡眠に問題がある人は、その治療を受けることで、老後の認知機能低下を予防できる可能性がある」と話している。

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手術ロボットが動画で手術手順を学習

 ロボットが初めて、経験豊富な外科医による手術動画を見て学習し、その手術手技を人間の医師と同じくらい巧みに実行できたとする研究結果が、米ジョンズ・ホプキンス大学のAxel Krieger氏らにより報告された。研究グループは、「このような模倣学習を利用して手術ロボットをトレーニングすることにより、手術中に必要な手技を逐一プログラムする必要がなくなり、ロボットが人間の手助けなしで複雑な手術を行えるようになることが期待される」と述べている。この研究結果は、ロボット学習学会(CoRL 2024、11月6〜9日、ドイツ・ミュンヘン)で発表された。 研究グループの説明によると、この手術ロボット(ダヴィンチ・サージカルシステム、以下、ダヴィンチシステム)は、ChatGPTの基盤と同じ人工知能(AI)を搭載しているが、言葉やテキストの処理を中心に行うChatGPTとは異なり、動きを数学的に表現する言語であるキネマティクス(運動学)に重点を置いている。ダヴィンチシステムはすでに医療現場で広く使用されているが、研究グループによると、その精度は低いという。研究グループは、その欠点を克服する上で重要なのが、モデルに絶対的な動きではなく、相対的な動きを実行させるようにトレーニングすることだと述べている。 今回、研究グループは、この手術ロボットに何百本もの手術動画を見せ、手術に必要とされる3つの重要な手技(針の操作、体組織の持ち上げ、縫合)を実行できるようにトレーニングした。その結果、手術ロボットは、それらの手技を人間の医師と同じくらいの精度で行えるようになったことが確認された。 研究グループのメンバーであるジョンズ・ホプキンス大学のJi Woong Kim氏は、「われわれが画像入力するだけで、AIモデルが適切な動作を見つけ出す。数百回のデモンストレーションだけで、モデルは手技を学習し、未経験の新しい環境にも適応できることが分かった」と述べている。Krieger氏はこの点について、「このモデルは、われわれが教えていないこともとても上手に学習する。例えば、針を落としても自分で拾って動作を続ける。これは、私が教えたことではない」と説明している。 研究グループは現在、この手術ロボットに縫合のような外科手術の部分的なタスクではなく、手術全体を行えるように教えている最中だという。Krieger氏は、「これ以前の手術ロボットでは、手術の単純な部分を行わせるのに必要な全ての作業を手動でコーディングする必要があった。そのため、ロボットに1種類の手術のための縫合を教えるのに10年かかることもあり得た」と話す。さらに同氏は、「今回の手術ロボットでは、模倣学習のために、さまざまな手術手技の記録を集めるだけで、ロボットにその手順を数日で学習させられる点が新しい。これにより、医療ミスを減らし、より正確な手術を実現しながら、自律性の目標に向かって加速することができる」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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禁煙後に体重が3kg以上増えると高血圧リスクが上昇

 禁煙後に体重が3kg以上増加すると、高血圧の発症リスクが有意に高くなることを示唆する研究結果が報告された。ただし、喫煙を継続していた場合は体重増加が3kg未満であっても、高血圧発症リスクが有意に高くなるという。日本医科大学衛生学公衆衛生学分野の大塚俊昭氏らの研究によるもので、詳細は「The American Journal of Medicine」に9月14日掲載された。 タバコは言うまでもなく体に悪く、高血圧発症リスク因子でもあり、全ての喫煙者に禁煙が推奨される。しかし、禁煙によってニコチンの持つ空腹感抑制作用がなくなることや、味覚・嗅覚および胃粘膜の血流改善によって、食欲が高まることがあり、体重増加を介して禁煙による健康へのプラス作用を弱めてしまう可能性がある。その悪影響の一つとして、血圧の上昇が挙げられる。ただ、禁煙後の体重変化と高血圧リスクとの関連については、不明点が少なくない。大塚氏らは、日本人労働者の健診データを用いた縦断的解析により、この点を検討した。 解析対象は、国内精密機器開発メーカーの従業員のうち、健診データと高血圧発症を判定可能な情報がそろっている男性1万354人(平均年齢38.4±8.8歳)。ベースライン時点(2008~2009年)における高血圧既往者、過去喫煙者(喫煙歴があるが既に禁煙していた人)、追跡期間中の新規喫煙者、およびサンプル数不足のため女性は除外されている。 全体の68.0%は喫煙歴がない「非喫煙群」であり、2.2%は2008~2009年の間に禁煙に成功した「新規禁煙群」で、残りの29.8%は喫煙を続けていた「喫煙継続群」だった。 平均2.9±0.4年の追跡期間中に、1,032人(10.0%)が高血圧を発症した。発症率を喫煙状態別に見ると、非喫煙群は8.3%、新規禁煙群は12.4%、喫煙継続群は13.6%だった。交絡因子(年齢、BMI、飲酒・運動習慣、高血糖、脂質異常症、高尿酸血症、血圧カテゴリー、高血圧家族歴)を調整後、非喫煙群を基準とする高血圧発症オッズ比は、喫煙継続群は有意に高いものの(調整オッズ比〔aOR〕1.39〔95%信頼区間1.18~1.63〕)、新規禁煙群は非有意だった(aOR1.21〔同0.76~1.91〕)。 次に、禁煙後の体重変化の影響を検討するため、追跡期間中の体重変化幅が+3kg以上/未満で分け、全体を6群に群分けした上で、非喫煙かつ体重変化が3kg未満の群(5,642人〔全体の54.5%〕)を基準とする解析を行った。前記同様の交絡因子を調整後、非喫煙群では体重が3kg以上増加した場合に高血圧発症率の上昇傾向を示したがわずかに非有意であり、新規禁煙群では体重が3kg以上増加していた場合のみ有意に上昇、喫煙継続群では体重の変化にかかわらず有意に上昇という結果が示された。 各群の高血圧発症の調整オッズ比は以下の通り。非喫煙群で3kg以上体重が増えた人(1,405人〔全体の13.6%〕)はaOR1.27(0.99~1.62)、新規禁煙群で体重変化が3kg未満の人(169人〔同1.6%〕)はaOR0.90(0.52~1.58)、新規禁煙群で3kg以上体重が増えた人(56人〔0.5%〕)はaOR2.95(1.37~6.35)、喫煙継続群で体重変化が3kg未満の人(2,431人〔23.5%〕)はaOR1.35(1.13~1.61)、喫煙継続群で3kg以上体重が増えた人(651人〔6.3%〕)はaOR1.90(1.43~2.52)。 著者らは、血圧に影響を及ぼし得る禁煙補助薬の処方状況が考慮されていないことなどを本研究の限界点として挙げた上で、「喫煙を継続した場合、および禁煙後に体重が3kg以上増加した場合に高血圧発症リスクが上昇すると考えられ、高血圧予防のため、現喫煙者に対する禁煙と禁煙後の体重管理が強く推奨される」と結論付けている。

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成人ADHD患者における自殺リスク評価、発生率や関連因子は

 注意欠如多動症(ADHD)と自殺傾向との関連性は、近年ますます研究対象としての関心が高まっている。自殺傾向の評価は、一般的にカテゴリ別に評価されており、検証済みの方法が使用されていないため、不均一あるいは矛盾する結果につながっている。自殺念慮や自殺企図の発生率は大きく異なり、関連するリスク因子も明らかになっていない。イタリア・トリノ大学のGabriele Di Salvo氏らは、次元アプローチおよび国際的に認められた検証済みの方法を用いて、ADHDにおける自殺傾向を調査した。Annals of General Psychiatry誌2024年11月1日号の報告。 成人ADHD患者74例における自殺念慮、重度の自殺念慮、自殺行動、非自殺的自傷行動の発生率を評価するため、本研究を実施した。また、自殺傾向リスクの増加と関連する社会人口統計学的および臨床的特徴の検討も行った。自殺傾向の評価には、コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)を用いた。自殺念慮、重度の自殺念慮、自殺行動、非自殺的自傷行動の予測因子を調査するため、ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・自殺念慮、重度の自殺念慮の生涯発生率は、それぞれ59.5%、16.2%であった。・生涯にわたる自殺行動は9.5%、非自殺的自傷行動は10.8%で認められた。・生涯にわたる自殺念慮は、成人期の不注意症状の重症度、自尊心低下、社会的機能障害と関連していた。・生涯にわたる重度の自殺念慮は、小児期の不注意症状の重症度、注意衝動性、入院回数と関連し、身体活動は保護的に作用していることが示唆された。・生涯にわたる自殺行動および非自殺的自傷行動の発生率は、社会人口統計学的または臨床的特徴との有意な関連が認められなかった。 著者らは「成人ADHD患者は、自殺リスクを有していると考えるべきであり、予防的介入を行うためにも、高リスク患者を特定することが重要である。ADHDと自殺念慮との関連性は、精神疾患の併存ではなく、ADHDの中核症状である不注意症状が影響を及ぼしている可能性が示唆された」と結論付けている。

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今、肺静脈隔離にシャム試験?(解説:高月誠司氏)

 Sham-PVI試験は心房細動患者に対してクライオバルーンによる肺静脈隔離とシャム手術を行い比較する、無作為化比較試験である。 結果的に肺静脈隔離群では有意に心房細動の再発は少なく、QOLは高かった。心房細動に対する肺静脈隔離法が始まって約20年、これまで心房細動に対する第一選択の治療法として薬物療法とクライオアブレーションを比較する試験は行われており、アブレーション治療のほうが洞調律維持率は高いことは確立していた。 本試験はアブレーションとシャム手術を比較する初めての試験であり、アブレーションによるプラセボ効果は明確に否定されたということになる。シャム手術では左房へのカテーテル挿入はなかったようだが、鎮静下でシースを挿入し、上大静脈のカテーテル電極で右横隔神経刺激を受けている。これはクライオアブレーション中右肺静脈隔離の際に右横隔神経の麻痺を早期診断するための方法である。被験者の方のご協力はありがたいが、ここまでの試験を行うべきだったのだろうか。

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第239回 「遺伝子治療」を正しく説明できる?~コロナワクチンを遺伝子組み換えと呼ぶなかれ

SNS上では相も変わらず新型コロナウイルス感染症のワクチンに関して、まあどこをどう突けばそんな話が出てくるのかと思うような言説が飛び交っている。その中で結構目立つのがmRNAワクチンを“遺伝子組み換えワクチン”と呼ぶことである。遺伝子組み換えとは、厳密に言えば「ある種の生物から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、植物などの細胞の遺伝子に組み込み、新しい性質をもたせること」ことを指すため、まったく的外れな呼称である。多くの人がご存じのように、遺伝子組み換え技術はすでに食品などで使用されている。これまで農作物などでは人にとって好ましい新品種を交配で作り出してきたが、遺伝子組み換え技術により、新品種を作り出す期間が短縮されたのである。しかし、今でもこうした食品は危険だと主張する人は一部にいる。そして最近公開されたある調査を見て、どうやら人は「遺伝子」という言葉にやや過敏に反応するのではないかと思いつつある。調査とはファイザー社が2024年9月に国内の20代以上の男女(スクリーニング調査1万人、本調査829人)に行った遺伝子治療に関する一般向け意識調査である。結果を要約すると、▽「遺伝子治療」という言葉を聞いたことのない人は30% (n=10,000)▽ 遺伝子治療への「誤解や理解不足がある人」は98.4% (n=829)▽遺伝子治療に対し、「怖い、危険、不安」というネガティブな印象を持つ人は46%(n=829)、というものだ。ちなみ2番目の「誤解や理解不足がある人」とは、アンケートで用意された遺伝子治療に関する質問6つを1つでも正答できなかった、あるいはわからなかった人を指し、これは一般向けにはなかなか厳しいと感じる。むしろ「怖い、危険、不安」が5割弱という結果がやや驚きだった。釈迦に説法は承知で、ここで遺伝子治療について簡単に整理しておきたい。遺伝子治療とは「治療用遺伝子をベクターに乗せて標的細胞内に導入する治療法」だが、概論的な作用機序は(1)治療遺伝子を病的細胞内で働かせて細胞を改変(2)治療用遺伝子が宿主細胞内に取り込まれタンパク質を発現し、それらが分泌・全身を循環して遺伝子の欠損や異常を補完、に大別される。また、この標的細胞の遺伝子導入法は、標的細胞を体外に取り出してベクターで遺伝子を導入し、品質チェックをしながら培養して患者の体内に戻す体外法(ex vivo法)、治療遺伝子を乗せたベクターを直接体内に投与して遺伝子導入を起こさせる体内法(in vivo法)の2つがある。私自身は遺伝子治療に拒否感はないが、記者2年目の1995年にアデノシンアミナーゼ(ADA)欠損症に対して北海道大学が行った日本初の遺伝子治療以降は、昨今のCAR-T細胞療法(商品名:キムリア、イエスカルタ、ブレヤンジ)や脊髄性筋萎縮症(SMA)に対するオナセムノゲンアベパルボベク(商品名:ゾルゲンスマ)まで知識も記憶も抜け落ちている。ということで、日本遺伝子細胞治療学会理事の山形 崇倫氏(栃木県立リハビリテーションセンター 理事長/自治医科大学小児科学講座 客員教授)に遺伝子治療の現在地について聞いてみた。医師でも「遺伝子治療が怖い」と思う理由山形氏は前任の自治医科大学小児科教授時代の2015年、小児神経難病の1種である芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症を対象にAADCを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療を国内で初めて行った経験を有する。前述のファイザーによる一般向けアンケートの結果に講評も寄せている山形氏だが、正直結果はやや意外だったようで、「十分に情報が伝わっていない現実は否定しがたいと思う。結局は『知らないから怖い』という心理ですね。実際に遺伝子治療が対象になる可能性がある患者やその家族が遺伝子治療の効果を知ると、『ぜひやってほしい』と積極的な姿勢に変わることが多い」と語る。これを裏付けるかのように、遺伝子治療について「怖い、危険、不安」と回答した人(381人)でも、「もしあなたが遺伝子が原因の疾患に罹患して、治療法の選択肢の1つとして遺伝子治療があった場合、遺伝子治療を受けてみたいと思いますか」との問いに、「ぜひ受けてみたい」「やや受けてみたい/受けてみてもよい」の回答合計は3分の1の33.6%に上る。要は背に腹は代えられぬということなのだろう。もっとも山形氏は、1990年代に遺伝子治療が行われた患者では、後に副作用として白血病の発症に至った例があることなどから、医師の中でもその時代の認識で止まっていることも少なくないと考える。「現時点で最先端の遺伝子治療の対象は小児の難病・希少疾患が多く、これらは医師でも診療経験がある人は少ない。結果的に遺伝子治療に関して教科書的な知識はあるものの、それ以上はあまり知らないことも多い。先日、医師向けに遺伝子治療の講演をしたが、反応の大半は『難しそうだね』と。私が示したAADC欠損症患者の治療後の動画を見せたら『すごいな』とは思ったようですが」と同氏はコメントした。昨今の医学部教育ではカリキュラムに組み込まれるようになっているものの、山形氏は「すべての大学がきちんとした講義を行っているかはわからない。基礎医学や病態生理学の一部で触れられる程度のところもある」との認識を示す。さて国立医薬品食品衛生研究所遺伝子治療部がまとめた日本国内での遺伝子治療薬の開発状況1)を見ると、後期開発品はin vivo法ではほぼ単一遺伝子疾患、ex vivo法では血液がんで占められている。これは標的が絞り込みやすいからだと思われる。もっとも、標的が決定しても遺伝子導入方法が今も大きな課題として残る。同氏が取り組んだAADC欠損症の場合は局所投与という形で行ったが、「ほとんどの遺伝性疾患の場合は、全身的な細胞への遺伝子導入が必要になるのが実際」と語った。現時点で明らかになっているウイルスベクターの安全性ここで問題になるのがベクターの効率性と安全性である。ベクターに関しては、使われるウイルスベクターが初期のガンマレトロウイルスからレンチウイルス、さらに現在ではAAVへと変化してきた。そもそもガンマレトロウイルスの場合、マウスで白血病を起こすウイルスということ自体が問題だったが、AAVはヒトでの病原性はないため、かなり安全性は改善されたと言える。ただ、静注での全身投与が必要な場合は要注意だという。同氏は「静注による大量投与では、細胞に取り込まれずに循環するベクターが肝細胞表面や血管内皮に結合し、そこで起きる免疫反応で肝障害・血管内皮障害などの副作用を起こすことがわかり、絶妙な投与量の調節が求められることがわかった」と指摘する。この問題を解決するため、現在では(1)遺伝子治療薬の投与時に免疫抑制薬の併用、(2)肝細胞に結合親和性の低いベクターを開発、(3)免疫発達途上の乳幼児期に発症する疾患ではできるだけ早期に治療開始、が考えられるという。とりわけ(3)は副作用だけではなく、治療効果の面からも重要なファクターだ。たとえば、前述のSMAでのオナセムノゲンアベパルボベクによる治療は、治療開始時期が早いほど健常者との運動機能発達レベルの差が少ないことがわかっている。そこでカギとなるのが、まず現時点で先天代謝異常20疾患が対象となっている新生児マススクリーニングの徹底とその拡大である。現状では新生児の親が支払う費用負担が地域によって異なることが影響してか、受診率に地域格差が存在する。また、新たに治療法が登場したSMAや造血幹細胞移植により治癒の可能性がある重症複合免疫不全症に関しては、2023年からこども家庭庁の旗振りにより国と都道府県・指定都市の折半による全額無料検査の実証事業が決定した。2024年10月時点で27都府県・10政令指定都市が事業に参加したが、「財政基盤の弱い県などは参加を控えている」(山形氏)と、ここでも地域格差が生まれている。同氏は「いっそ新生児に一律でスクリーニングの遺伝子検査をすればいいという意見もあるが、実はそれのみでは発見しにくい疾患もある。その意味ではマススクリーニングの受診率向上、対象疾患の拡大とともに、学会などの協力の下、乳幼児の健診などを担う一般内科医の知識向上に尽力して総出で臨床的な異常を早期に発見していくというアナログな対応も現状では必要」とも語る。一方で遺伝子治療に関しては、日本では必ずしも研究開発が活発ではないとの指摘もある。実際、「The Journal of Gene Medicine」の調べ2)による2023年3月時点での世界各国の遺伝子治療の臨床試験数で日本は世界第6位の55件。1位であるアメリカの2,054件、2位の中国の651件と比較して大きく水をあけられている。山形氏は自身が遺伝子治療に取り組んだ際、「高い基準を満たしたベクター製造が必要かつその費用が非常に高額で、研究費を得るために厚生労働省に何度も足を運んだ」と振り返る。この経験を踏まえ、日本での遺伝子治療の進展のためには、国が旗振り役となり、資金調達を中核としたエコシステムの構築が必要だと主張する。また、「新型コロナワクチンでは変異株対応でmRNA部分以外はプラットフォームとみなして審査を簡略化する措置が常態化しているが、これと同じように遺伝子治療では、対象疾患や導入遺伝子の違いがあってもベクターが同一の場合は、ベクター部分の審査を簡略化する仕組みは導入できるはず」と提言する。新型コロナの治療薬・ワクチンで世界に遅れをとった日本。岸田前政権の末期には日本発の創薬エコシステム確立を声高に掲げ、どうやら石破政権でもこの方針を引き継ぐと言われている。そこを基軸に遺伝子治療分野で勝ち目を見いだせるのだろうか?参考1)国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子医薬部ホームページ:国内企業あるいは日本で臨床開発中の主な遺伝子治療製品(2024年11月20日更新)2)Ginn SL, et al. J Gene Med. 2024;26:e3721.

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退院時の説明が不十分だと責任発生?【医療訴訟の争点】第6回

症例入院患者は退院した後、直ちに入院前と同様の生活を送ってよいわけではなく、食事や運動制限を段階的に緩和していくなど、生活していく中で留意すべき事項がある。また、退院後に、急変が生じた場合はもちろん、それに至る前の異常が生じた場合には速やかに受診をしてもらう必要がある。このようなことから、療養方法の指導の適否が問題となる。今回は、退院時の説明義務の違反の有無等が争われた東京地裁令和5年3月23日判決を紹介する。<登場人物>患者69歳・男性十二指腸乳頭部腫大と診断され、内視鏡的乳頭部切除術および胆管・膵管ステント留置術後。切除組織の病理検査結果が深部断端陽性であったため、追加切除のため受診。原告患者の妻子被告総合病院(大学病院)事案の概要は以下の通りである。平成27年7月28日他院の上部消化管内視鏡検査にて十二指腸乳頭部腫大を疑われ、生検にてGroup3と診断された。11月10日上記施設にて、内視鏡的乳頭部切除術および胆管・膵管ステント留置術を受けた。術後切除組織による病理検査の結果報告にて深部断端陽性(断面にがんが露出した状態)と診断され、追加切除を検討すべき旨の説明を受けた。患者は被告病院での手術を希望した。12月16日上記施設にて、留置していた膵管ステントおよび胆管ステントを抜去した。平成28年1月15日患者は妻子とともに被告病院消化器外科を受診。A医師から、治療方法には経過観察と膵頭十二指腸切除術の2つがある旨の説明がなされた。患者は、膵頭十二指腸切除術を受けることを決めた。1月25日被告病院に入院。患者はA医師から亜全胃温存膵頭十二指腸切除術の説明を受け、同意書に署名した。1月26日A医師の執刀で本件手術が実施された。1月30日胆管空腸ドレーンを抜去2月2日膵管空腸ドレーンを抜去2月5日ドレーン抜去部から膿状の排液が認められた。2月6日腹部の造影CT検査にて膵頭部摘除部に膵液瘻、仮性嚢胞形成過程の疑いと診断された。このため、ドレーン抜去部から再度ドレーンの留置を試みるが、皮下への挿入となり、膵空腸吻合部の腔(cavity)に到達せず、抗生物質の投与による保存的治療を実施した。2月8日瘻孔造影検査にて瘻孔からcavityが造影されたため、ドレーン抜去部から再度ドレーンの留置を試みたが、ドレーンが入らず、翌日に超音波ガイド下の穿刺ドレナージを予定した。2月9日再度瘻孔造影検査を行い、cavity内にドレーン(ファイコン14Fr)を留置し、以後、生理食塩水による洗浄ドレナージを実施した。2月15日再度瘻孔造影検査を行い、cavityに留置するドレーンをファイコン 14Frからピッグテールカテーテル(ソフトタイプ)に交換した。2月25日再度、瘻孔造影検査を行い、造影の結果、膵腸吻合部に小腔が確認されたため、ソフトピッグテールカテーテルを留置。2月29日ソフトピッグテールカテーテルを抜去3月1日患者に退院後の療養指導・説明3月2日退院(再診日は3月11日予定)3月9日午後4時頃自宅療養中の患者は、妻に対し、お腹が痛いから2階で休むと述べ、寝室がある2階に上がった。午後5時30分頃2階から音が聞こえたため、妻が2階に上がると、患者が倒れていたため、救急要請。午後5時49分救急隊が到着したが、本件患者は既に心停止の状態であった。午後6時21分頃病院に到着する直前に無脈性電気活動の状態。病院において、心肺蘇生措置、気管挿管、アドレナリンの投与等を受けたが、自己心拍は再開せず。午後7時43分死亡実際の裁判結果本件の争点は、ドレーン抜去のタイミングの適否をはじめとして多岐にわたるが、本稿では、退院時の説明義務違反について取り上げる。退院時の説明義務について、原告(患者家族)は、患者および退院後のキーマンとなる家族に対し、説明用の資料を作成して、退院に至る総合的な判断の具体的な内容、退院時の病状、退院後のリスク、退院後の生活における留意事項等について具体的に説明すべきであったと主張した。これに対し、裁判所は、A医師が2月29日にドレーンを抜去し、患者に対し、明日(3月1日)一日様子を見て大丈夫であれば明後日に退院となる旨を伝えたことを指摘し、「本件病院の医師は、本件患者に対し、退院に至る判断の具体的な内容および退院時の病状について、ドレーンを抜去しても問題がなく、病状が軽快したから退院となる旨、大まかに説明したものと認められる。よって、被告病院の医師に、退院に至る判断の具体的な内容および退院時の病状について、説明義務違反があったと認めることはできない」とした。また、裁判所は、被告病院の看護師が退院前日に、退院後の注意点として、食事については手術後の食事指導のパンフレットを参考にすること入浴および飲酒は次の外来(3月11日)まで控えること激しい運動は避けること重い荷物を持つことは避けること38度を超える発熱がある場合、吐気・嘔吐がある場合、食事・水分がまったく取れない場合、傷口が痛い・腫れる・血が出る場合、腹痛がある場合で心配なときは、被告病院に電話連絡し、受診したほうがいいかなどについて医師または看護師に相談することを説明したことや薬剤部の職員(原文ママ)が、患者に対し退院時の処方について用法用量の説明をしたこと栄養士が、患者および妻に対し食事指導を行ったこと等を指摘し、「被告病院の看護師は、本件患者に対し、本件説明書を用いて、退院後の生活における留意事項および受診の目安を説明し、また、被告病院の栄養士および薬剤部の職員も、本件患者に対し、食事上の留意事項や服薬に関する事項を説明したから、被告病院の医療従事者は、患者に対し退院後の生活における留意事項等を説明したと認められる」とした。なお、「本件説明書」とは「退院に向けての確認事項」と題する書面とのことであり、判決文からは記載内容の詳細は定かでないが、上記の看護師の説明内容として認定されている事項に沿う記載がなされている書面と推察される。注意ポイント解説本件訴訟では、退院時の説明について、被告病院は「被告病院の医師は、退院前日の3月1日、本件患者に対し、食事は消化の良い物を食べ、脂質の多い食事は避けること、運動は軽めの散歩等とし、激しい運動は避けること等を指示するとともに、腹痛や発熱等の症状が出た場合には直ちに来院するよう指示し、…本件患者の理解も良好であった」と主張した。しかし、判決文では、上記のとおり、「ドレーンを抜去しても問題がなく、病状が軽快したから退院となる旨、大まかに説明した」との判断にとどまっている。これは、被告病院の主張したような説明をしたことにつき、説明に用いた書面もなく、カルテに説明内容の記載もなかったためと推察される。そうであるとすれば、退院時の療養指導に関して必要な説明がされたと認定できず、説明義務違反があると判断される可能性もあり得たと思われる。このような状況であったにもかかわらず、裁判所が「説明義務違反がない」と判断したのは、被告病院の看護師が「退院に向けての確認事項」と題する書面を用いて、退院後の生活における留意事項および受診の目安を説明していたことや、被告病院の栄養士や薬剤部の職員が、食事上の留意事項や服薬に関する事項の説明をしていることの記録・記載があったことに加え、退院時に説明が求められる内容は、医師による説明でなければならないとは言えないものであったこと(コメディカルによる説明が許容されるものであったこと)によると考えられる。本来は、退院時の説明についても医師が説明を行い、その記録が残っていることが望まれるところであるが、看護師や薬剤部職員、栄養士らほかの医療職の説明により、退院時に説明すべき事項が補完された例と言える。また、医師自身が説明した内容について、カルテにきちんと記載しておくことが望まれることや、ある程度の定型的な留意事項についてはあらかじめ説明書を用意しておく(その上で、当該症例に即した個別の留意事項について追記等を行いつつ説明する)ことの有益性が改めて確認された例とも言える。医療者の視点多忙な勤務医にとって、患者への説明時間の確保は難解なテーマです。昨今では、単に病状説明をするだけではなく、誰に、どのような内容を、どれだけ詳しく説明し、さらにその説明を聞いた患者さん側がどの程度理解されたかなど、事細かにカルテに記載しなければなりません。働き方改革の影響もあり、一人ひとりの患者さんに多くの時間を割けない状況になっているため、(1)定型の説明文書を記載しておく、(2)チーム内の医師同士やコメディカルと説明業務を分担する、などの工夫が重要となります。ただし、当然のことながら、患者さんごとに病状/病態、背景、併存症などが異なるため、各患者さんに個別の注意喚起をする必要もあります。必要十分な説明を患者さんに届けるには、業務の効率化やチーム医療の推進が肝要です。Take home message退院にあたっての一般的な留意事項は定型の説明書を用いることも含め、医師の説明内容を記録化する(定型の説明書を用いる場合、当該症例に即した個別の留意事項について追記等を行いつつ説明し、コピーを残す)ことが重要である。医師に限らず、看護師らコメディカルが、それぞれの立場から留意事項を説明することもまた有益である。キーワード療養方法の指導としての説明義務退院時や診療の結果、入院させないで帰宅させて自宅で経過観察をする際に、生活上の留意事項やどのような症状が生じたときに病院を受診すべきか等につき指示・説明をする義務。患者に対する診療行為の一環として行われるものであり、患者の生命・身体の安全そのものを保護する見地から導かれる説明義務であり、治療法の選択に関する説明義務が患者の自己決定権の尊重を根拠に置くのとは根拠を異にする。

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結婚相談所vs.マッチングアプリ【アラサー女医の婚活カルテ】第2回

アラサー内科医のこん野かつ美です☆「婚活カルテ」連載第2回。前回は、私がイバラの(?)婚活道に足を踏み入れたきっかけについて書きました。今回は、私が婚活に利用した具体的なツールについて取り上げたいと思います。マッチングアプリvs.結婚相談所婚活ツールとして、最も裾野が広く、敷居が低いのが「マッチングアプリ(以下、アプリ)」でしょう。明治安田生命の「『いい夫婦の日』に関するアンケート調査」(2023年)1)では、1年以内に結婚した夫婦の「出会いのきっかけ」としては「アプリ」が25.0%を占め、「職場での出会い」と同率1位だったそうです。読者の皆さんの中にも、きっとアプリ利用経験者が相当数いることと思います。私自身は結局アプリではなく、結婚相談所(以下、相談所)を選びましたが、婚活を始めるに当たって、アプリと相談所を、自分なりに比較検討しました。アプリのメリットまずは、相談所に比べてアプリのほうが優れている点について、述べたいと思います。アプリの強みは、何といっても利用者数の多さでしょう。最大手といわれる「ペアーズ」は「累計登録数2,000万突破!※」を売りにしています。相談所が加盟する「連盟(連載第3回で解説)」の会員数が、最大規模といわれる「IBJ」で約9万人、「TMS」で約4万5,000人であることを考えると、アプリの会員数は桁違いに多いことがわかります。価格の面でも、アプリに軍配が上がります。「ペアーズ」では、マッチング相手とメッセージをやり取りする段階から発生する利用料が「3,700円/月~」(男性の場合。女性は基本機能無料)に設定されています。一方、多くの相談所では、登録などの初期費用だけで軽く10万円を超え、さらに月会費や、プランによってはお見合い料、成婚料などが加算されます。これを見ると、アプリはかなりリーズナブルといえます。※2024年11月執筆時点、公式サイトより引用。他同様アプリのデメリット一方、アプリにはデメリットもあります。私が思うに、アプリの最大のデメリットは、利用者の「結婚への熱量」に幅がある……、いえ、“あり過ぎる”ことです。たとえば「ペアーズ」公式の「こんな方におすすめ」という欄には「独身を卒業したい方」と並んで「休日の予定がなく、ヒマな方」「忙しいけど恋愛がしたい方」なども書かれています。「婚活」ではなく、ライトな「恋活」目的の利用者も多いということでしょう。利用者の身元確認についても、アプリは相談所に比べて信頼性が劣ります。相談所では、本人確認書類に加えて、独身証明書や、収入を証明する書類(源泉徴収票など)の提出が求められます。医師の場合は、これに加えて大学の卒業証書や医師免許証も必要です(←私の経験上)。一方、アプリでは多くの場合、独身証明書の提出は義務ではなく、収入も自己申告です。私がアプリよりも結婚相談所を選んだ理由以上のように、相談所とアプリのそれぞれに、メリット、デメリットがあります。これらのメリット、デメリットを念頭に置いて、「婚活開始時の私のような『早めに結婚したい女性医師』にとって、相談所とアプリのどちらが適しているのか」という観点から考えてみたいと思います。おそらく、婚活を意識する年代の医師の多くは、「お金はあるが、(仕事が忙しくて)時間がない」という状況なのではないでしょうか。……少なくとも、私はそうでした。アプリでは、相手と実際に会うまでに、何往復もメッセージのやり取りをしなくてはならない……、という話をよく耳にします。しかし、朝から夜まで働き通しの若手医師にとって、会ったこともない相手とメッセージのラリーを延々続ける時間は、なかなかないものです。相手の身元の確からしさという点でも、不安が拭えません。アプリの男性利用者には「ニセ医者」がやたらと多く、せっかくアプリに登録したのに、本物の医師だと信じてもらえなかった……と、以前大学の同期(男性)が嘆いていました(笑)。われわれ女性医師なら、さすがに「ニセ医者」に引っかかる心配はないでしょうが、他業種をかたられたら見抜けないかもしれません。ライトな恋活・遊び目的の相手とダラダラ(←失礼)恋愛して、結局婚期を逃すのではないか、という点も気掛かりです。そんなふうにあれこれ心配する、その時間と労力がもったいない!こう考えた私は、アプリではなく、相談所で活動することに決めたのです。ちなみに、サポートの手厚い相談所を選べば、お相手とのお見合い日程調整などについては、担当者に一任できます。その意味でも、時間と労力の節約につながりました。おまけ:こんな婚活ツールもあります女性医師の結婚をサポートする「女医〇ン」という組織があります(伏せ字にしていますが、婚活を考える女性医師なら、たぶんおわかりですよね)。私も、初期研修医の頃、新幹線で遠路はるばるパーティに参加したことがあります。さすが、医師の先生が企画されているだけあって、活動理念は素晴らしいですし、料金設定も、一般の結婚相談所に比べると割安です。ただ、率直な感想としては、お相手は「玉石混交」です。パーティには「女医さんのヒモになりたい」願望を隠そうとしない男性、「ボクに釣り合う頭脳の遺伝子を求めています」というT大卒男性、など、(ネタかよ…)と思いたくなるような男性が一定数いらっしゃいました。また、一度「女医〇ン」で1対1のお見合いを組んでいただいたのですが、1時間半かけてお見合い場所まで行ったのに、何とお相手が予定を忘れていたそうで、すっぽかされました(私の知る限り、このような場合でも、お相手へのペナルティはとくにない様子でした)。総じて、私にはあまり合いませんでしたが、あくまで個人的な感想です。興味がある方は、一度パーティに参加してみても良いかもしれません。また、「草の根運動」的に、信頼のおける知人に紹介を頼む、というのもアリだと思います。これなら、相談所での活動と並行してお相手を探せます。なお、本連載の主旨からは少しズレますが、最後に一言だけ。もし、医学生や初期研修医の方がお読みになっていたら……、今がまさに、あなたにとっての「出会いのボーナス期」です! 将来結婚したい気持ちがあるなら、なるべく今のうちに、身近なところで良い相手を見つけておくのが近道です!……と、声を大にして申し上げておきます。今回は、アプリと相談所の比較を中心に、婚活ツールについて書きました。いかがでしたか?次回は、相談所の仕組みや、独特なルールについて紹介したいと思います。お楽しみに☆参考1)「いい夫婦の日」に関するアンケート調査/明治安田生命

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セマグルチド2.4mg、MASHで有意な改善示す(ESSENCE)/ノボ ノルディスク

 GLP-1受容体作動薬のセマグルチドは代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に有益であることが実証されているが、主要評価項目を「肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失」「MASHの悪化を伴わない肝線維化の改善」とする第III相ESSENCE試験1)のPart Iで得られた結果がAASLD 2024 The Liver Meeting(米国肝臓学会議)において発表された。 本発表内容は11月25日付けでノボ ノルディスク ファーマがプレスリリースし、セマグルチド2.4mg(以下、セマグルチド群)のプラセボに対する優越性が報告された。 本試験の主要評価項目「肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失」「MASHの悪化を伴わない肝線維化の改善」について、セマグルチド群でプラセボと比較し統計学的に有意な差が認められ、72週時で肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失が認められたのは、セマグルチド群62.9%、プラセボ群34.1%だった。また、MASHの悪化を伴わない肝線維化の改善が認められたのは、セマグルチド群37.0%、プラセボ群22.5%であった。 副次評価項目である肝機能検査(ALT、AST、γ-GT[γ-GTP])やELFスコアも改善が示され、セマグルチド群の32.8%でMASHの消失と肝線維化の改善の両方が認められた。なお、プラセボ群では16.2%であった。 本試験の治験責任医師である米国・VCU School of MedicineのArun J. Sanyal氏は「本データからセマグルチド2.4 mgはMASHの進行を遅らせ、既存の肝機能障害を回復させることが明らかになった」とコメントしている。ESSENCE試験とは ESSENCE試験は、肝線維化が中等度~高度(ステージF2またはF3)の成人MASH患者を対象に、セマグルチド2.4 mg週1回皮下投与の効果を評価する第III相試験で、2つのパートから成る。被験者1,200例をセマグルチド2.4 mgまたはプラセボに2:1の割合で無作為に割り付け、標準治療に上乗せして240週間投与する。Part Iでは、無作為割付した最初の800例において、72週時点の肝生検の組織学的所見がセマグルチド2.4 mg投与により改善するかを検証した。Part IIは、セマグルチド2.4 mgによりプラセボと比較して240週時における肝関連事象の発現リスクが低下するかを検証することを目的としている。

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高齢者が健康長寿でいられるBMIは22.5~23.5/早大ほか

 高齢者が健康で長生きできる理想的な体型はあるのだろうか。このテーマに対して渡邉 大輝氏(早稲田大学スポーツ科学学術院)らの研究グループは、わが国の高齢者約1万人を対象に調査研究を行った。その結果、フレイルでもフレイルでもない高齢者のどちらでも、体格の指標であるBMIが22.5~23.5で最も介護認定を受けるリスクが低いことが示された。また、BMIが18.5未満の痩せている人は介護認定を受ける前に死亡する可能性が高く、その一方でBMIが27.5以上の肥満の人は障害を伴う生存期間が長いことが示された。International Journal of Obesity誌オンライン版2024年11月15日からの報告。BMIの高低、フレイルの有無で障害生存期間に差 研究グループは、フレイルのある高齢者とフレイルのない高齢者で、BMIと全生存年齢、障害および無障害生存率との関連について調査を行った。本研究では、2011~16年に実施された京都亀岡スタディで有害事象の追跡調査を受けた65歳以上の成人1万232人を登録。BMIは、自己申告による身長と体重に基づいて算出され、18.5未満、18.5~21.4、21.5~24.9、25.0~27.4、27.5以上の5つのカテゴリーに分類した。フレイルは、基本チェックリストを用いて評価し、BMIと障害および死亡率との関係は、多変量Cox比例ハザードモデルとラプラス回帰を用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値5.3年(4万5,472人年)の間に、2,348例(22.9%)が新たに介護認定を受けた。・病歴や生活習慣などの交絡因子を調整した結果、BMIが最も低いカテゴリーと最も高いカテゴリーでは、BMIが21.5~24.9の人と比較し、障害のハザード比(HR)が高かった(18.5未満のHR:1.31[95%信頼区間[CI]:1.16~1.49]、27.5以上のHR:1.27[95%CI:1.08~1.49]、非直線性p<0.001)。・全生存期間および無障害生存期間の年齢における50パーセンタイル差では、BMIが18.5未満の人は、障害発生前に死亡する可能性が高かった(障害を伴う生存期間[全生存期間-無障害生存期間]:-10.2ヵ月)。・BMIが27.5以上の人は、障害を伴う生存期間が長かった(12.5ヵ月)。・これらの関係はフレイル層別化モデルでより顕著であり、BMIが27.5以上群では、フレイルのある人はフレイルのない人よりも障害を伴う生存期間が長かった(27.2ヵ月vs.6.2ヵ月)。 以上の結果から研究グループは、「BMI高値の高齢者でフレイルの人は、障害を伴う生存期間の長期化と関連していた。また、BMIの値にかかわらずフレイルのある人は、フレイルのない人に比べて生存期間が短いため、フレイルを回復させることを優先するべき」と結論付けている。

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チルゼパチドのHFpEFを有する肥満患者への有効性/NEJM

 駆出率が保たれた心不全(HFpEF)を有する肥満の患者において、チルゼパチドはプラセボと比較し、心血管死または心不全増悪の複合リスクを低減し、健康状態を改善することが示された。米国・ベイラー大学医療センターのMilton Packer氏らが、9ヵ国129施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「SUMMIT試験」の結果を報告した。肥満は、HFpEFのリスクを高める。チルゼパチドは、体重減少をもたらすが、心血管アウトカムへの有効性に関するデータは不足していた。NEJM誌オンライン版2024年11月16日号掲載の報告。チルゼパチド群vs.プラセボ群、52週間投与 研究グループは、40歳以上でBMI値≧30、左室駆出率(LVEF)≧50%の慢性心不全患者(NYHA心機能分類クラスII~IV)を、チルゼパチド群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、通常の治療に加えて少なくとも52週間、週1回皮下投与した。投与量は、2.5mg/週から開始し、4週ごとに2.5mg/週ずつ、20週後に15.0mg/週となるまで増量した。 主要エンドポイントは2つあり、当初は(1)全死因死亡または心不全増悪イベント(試験期間全体について評価)と、52週時のカンザスシティ心筋症質問票の臨床サマリースコア(KCCQ-CSS:0~100、高スコアほど生活の質が高い)および6分間歩行距離のベースラインからの変化量を組み合わせた階層的複合エンドポイント、および(2)52週時点での6分間歩行距離の変化量であった。しかし、2023年8月に発表されたSTEP-HFpEF試験の結果を受け、米国食品医薬品局(FDA)との協議も踏まえて修正され、心血管死または心不全増悪イベント(time-to-first-event解析で評価)の複合と52週時のKCCQ-CSSの変化量とされた。主要複合アウトカム発生のHRは0.62 2021年4月20日~2023年6月30日の間に計731例が無作為に割り付けられた(チルゼパチド群364例、プラセボ群367例)。追跡期間中央値は104週間であった。 心血管死または心不全増悪イベントの発生は、チルゼパチド群で36例(9.9%)、プラセボ群で56例(15.3%)に認められた(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.41~0.95、p=0.026)。心不全増悪イベントはそれぞれ29例(8.0%)、52例(14.2%)であったが(HR:0.54、95%CI:0.34~0.85)、心血管死はそれぞれ8例(2.2%)、5例(1.4%)(1.58、0.52~4.83)であった。 52週時のKCCQ-CSSの変化量(最小二乗平均値±SE)は、チルゼパチド群で19.5±1.2であったのに対し、プラセボ群は12.7±1.3であった(群間差中央値:6.9、95%CI:3.3~10.6、p<0.001)。 治験薬投与の中止に至った有害事象は、チルゼパチド群で23例(6.3%)、プラセボ群で5例(1.4%)に認められた。胃腸症状による投与中止はチルゼパチド群でのみ15例(4.1%)が報告された。

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MI後のスピロノラクトンの日常的使用は有益か?/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた心筋梗塞(MI)患者において、スピロノラクトンはプラセボと比較し、心血管死または心不全の新規発症/増悪の複合イベント、あるいは心血管死、MI、脳卒中、心不全の新規発症/増悪の複合イベントの発生を低減しなかった。カナダ・マクマスター大学のSanjit S. Jolly氏らCLEAR investigatorsが、14ヵ国の104施設で実施した無作為化比較試験「CLEAR試験」の結果を報告した。ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、うっ血性心不全を伴うMI患者の死亡率を低下させることが示されているが、MI後のスピロノラクトンの日常的な使用が有益であるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2024年11月17日号掲載の報告。スピロノラクトンvs.プラセボ投与を比較 研究グループは、PCIを受けたST上昇型MIまたは1つ以上のリスク因子(左室駆出率[LVEF]≦45%、糖尿病、多枝病変、MIの既往または60歳以上)を有する非ST上昇型MI患者を、2×2要因デザインによりスピロノラクトン+コルヒチン、コルヒチン+プラセボ、スピロノラクトン+プラセボ、またはプラセボのみを投与する群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 コルヒチン群とプラセボ群を比較した結果は別途報告されている。本論ではスピロノラクトン群とプラセボ群の比較について報告された。 主要アウトカムは2つで、(1)心血管死および心不全の新規発症または増悪の複合と、(2)MI、脳卒中、心不全の新規発症または増悪および心血管死の複合であった。2つの主要アウトカムについて有意差なし 2018年2月1日~2022年11月8日に、7,062例が無作為化され、3,537例がスピロノラクトン、3,525例がプラセボの投与を受けた。今回の解析時点で、45例(0.6%)の生命転帰が不明であった。 追跡期間中央値3.0年において、1つ目の主要アウトカムである心血管死および心不全の新規発症または増悪の複合イベントは、スピロノラクトン群で183件(100患者年当たり1.7件)、プラセボ群で220件(100患者年当たり2.1件)が報告された。非心血管死の競合リスクを補正したハザード比は0.91(95%信頼区間[CI]:0.69~1.21、p=0.51)であった。 2つ目の主要アウトカムの複合イベントの発生率は、スピロノラクトン群で7.9%(280/3,537例)、プラセボ群で8.3%(294/3,525例)が報告され、競合リスク補正後ハザード比は0.96(95%CI:0.81~1.13、p=0.60)であった。 重篤な有害事象は、スピロノラクトン群で255例(7.2%)、プラセボ群で241例(6.8%)に報告された。

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