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隠れ肥満は心筋梗塞や脳卒中リスクを高める

 たとえ健康的な体重であっても、腹部や肝臓の奥深くに脂肪が蓄積すると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが静かに高まる可能性があるようだ。内臓脂肪(visceral adipose tissue;VAT)と、VATほどではないが肝脂肪(hepatic fat;HF)は、頸動脈のアテローム性硬化リスクを高める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。マクマスター大学(カナダ)保健科学部のSonia Anand氏らによるこの研究結果は、「Communications Medicine」に10月17日掲載された。 BMIが正常範囲内の人でも、このような隠れ肥満である可能性はある。Anand氏は、「見た目だけで必ずしもVATまたはHFの有無を判断できるわけではない」とマクマスター大学のニュースリリースの中で述べている。同氏は、「VATやHFは代謝的に活発で危険だ。太り気味でないことが明らかな人でも、この種の脂肪は炎症や動脈損傷と関連している。だからこそ、肥満と心血管リスクの評価方法を見直すことが非常に重要なのだ」と付け加えている。 今回の研究でAnand氏らは、Canadian Alliance for Healthy Hearts and Minds(CAHHM)研究への参加者6,760人(平均年齢57.1歳、女性54.9%)を対象に、VATとHFが、従来の心血管リスク因子の影響を考慮した上でも頸動脈のアテローム性硬化と関連しているかを検討した。参加者は、MRIでVAT量、HF含有量(HFF)、および頸動脈壁の体積(CWV)を測定された。その結果、VAT量が1標準偏差(SD)増加するごとに、CWVは6.16mm3増加することが示されたが、HFFとの関連は認められなかった。 次に、UKバイオバンク参加者2万6,547人(平均年齢54.7歳、女性51.9%)のデータを用いて、この結果の再現性を検討した。UKバイオバンク参加者では、VAT量および肝脂肪量(プロトン密度脂肪分画〔PDFF〕)と超音波で測定した頸動脈内膜中膜厚(CIMT)の関連が評価された。 その結果、VAT量が1SD増加するごとにCIMTは0.016±0.0009mm増加、PDFFが1SD増加するごとにCIMTが0.012±0.0010mm増加することが示された。しかし、心血管リスク因子で調整すると、これらの関連はやや弱まった。 CAHHMとUKバイオバンクを統合した解析では、VATとHFFは、性別を問わず頸動脈の前臨床段階のアテローム性硬化と正の関連があることが示された。ただし、HFFの影響は、VATと比べるとやや弱かった。 論文の筆頭著者であるマクマスター大学健康研究方法論・エビデンス・影響評価学分野のRussell de Souza氏はニュースリリースの中で、「この研究は、コレステロールや血圧といった従来の心血管リスク因子を考慮しても、VATとHFが依然として動脈損傷の一因となっていることを示している」と述べている。 研究グループは、「本研究結果は、医師がBMIにのみ頼るのではなく、患者の脂肪分布を画像診断に基づいて評価することを検討する必要があることを示している」との見方を示している。また中年成人は、見た目が極端に太っていなくても、隠れた脂肪が健康を害している可能性があることも考慮すべきだと付言している。 なお、米クリーブランド・クリニックは、VATは、活動的な生活、健康的な食事、十分な睡眠、ストレスの軽減、飲酒の制限によって取り除くことができるとしている。

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緑内障リスクがある患者の特定でAIが人間を上回る

 人工知能(AI)は、医師が緑内障のスクリーニングをより広く実施できるようにする手助けとなるかもしれない。新たな研究で、機械学習のアルゴリズムは、訓練された人間の評価者よりも緑内障のリスクがある患者を正確に特定できることが示された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン眼科学研究所教授のAnthony Khawaja氏らによるこの研究結果は、米国眼科学会議(AAO 2025、10月18〜20日、米オーランド)で発表された。 緑内障は、視神経の乳頭が障害を受けて視野に欠損(盲点の拡大)が生じ、最終的には失明に至る疾患で、多くの場合、眼圧の上昇が原因となる。緑内障は通常、眼圧を下げる点眼薬で治療されるが、手術が必要になることもある。 Khawaja氏は、「緑内障は依然として、世界的に見て回復させることのできない視力喪失の主要な原因の一つである。現状では、緑内障の検査は高額過ぎる。AIソリューションに遺伝的リスクに基づくターゲット設定などの他のアプローチを組み合わせることが、その解決策になると期待している」とニュースリリースの中で述べている。 Khawaja氏らは、人口ベースの大規模コホート研究「EPIC-Norfolk Eye Study」で収集された6,304枚の眼底写真を用いて、機械学習アルゴリズムと人間の評価者との間で、緑内障の重要な指標である垂直Cup/Disc比の評価に対する正確さを比較した。垂直Cup/Disc比とは、視神経乳頭(Disc)に対する視神経乳頭陥凹(Cup)の大きさの割合のことで、値が0.7以上だと緑内障が疑われる。 その結果、機械学習アルゴリズムは緑内障患者を88~90%の確率で正しく識別したのに対し、人間の判定者の場合は79~81%にとどまっていた。ただし、このアルゴリズムは、緑内障確定患者と緑内障の可能性がある患者を区別することはできなかった。 Khawaja氏らは、「研究対象者の中で緑内障が疑われたのはわずか11%であり、これは通常の検査で発見される割合と一致することから、この結果は心強い」と述べている。さらに同氏らは、「眼圧など緑内障リスクの他の指標も考慮に入れることで、精度がさらに向上する可能性がある」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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都市と地方で違う?高齢者の健康に影響する「歩きやすさ」

 「歩きやすい街」は高齢者に優しいのか?今回、日本全国の高齢者を対象にした調査で、都市と地方でその効果に違いがあることが分かった。地域の歩きやすさ(ウォーカビリティ)は都市部では歩行の増加に寄与する一方、地方部ではウォーカビリティが必ずしも健康にプラスの影響を与えないことがあるという。研究は千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門の河口謙二郎氏らによるもので、詳細は9月21日付けで「Health & Place」に掲載された。 高齢化社会では、日常生活空間の環境が高齢者の健康や生活の質に大きな影響を与えることが注目されている。特にウォーカビリティは、歩道や交差点、施設へのアクセスなど複数の要素を含み、身体的活動や心理・社会的健康に関係するとされる。しかし、ウォーカビリティが都市・地方に与える影響の違いや、身体・心理・社会面から総合的に評価した研究は限られる。そうした背景を踏まえ、著者らは、日本の65歳以上の高齢者を対象に、ウォーカビリティと健康・生活関連アウトカムの長期的関連を都市・地方別に分析し、その包括的影響を明らかにすることを目的とした。 解析には、地域在住の65歳以上を対象とした日本老年学的評価研究(JAGES)データベースより、2013年(プレベースライン)、2016年(ベースライン)、2019年(フォローアップ)の3時点で全国18の自治体において実施されたデータを用いた。2013・2016年調査データから不備や異常値を除外し、残った参加者を2019年追跡調査データと連結した「質問票ベースサンプル(2万7,354名)」と、2016~2019年の介護保険データベース(LTCI)と連結した「介護保険ベースサンプル(4万111名)」の2種類の解析サンプルを作成した。ウォーカビリティは、人口密度、最寄りの小売店および公園までの距離、道路密度(1km2あたりの道路の総距離〔m〕)から算出した複合指標を用いて評価した。7つの領域にわたる42のアウトカムについて、都市・地方別に層別した多層回帰モデルで解析し、それぞれの有意性判定に対してボンフェローニ補正(有意水準α=0.0012)を適用した。 都市部では、ボンフェローニ補正後、ウォーカビリティの高い地域ほど歩行時間が増加していることと有意に関連していた(回帰係数β=0.04、95%信頼区間〔CI〕 0.02~0.07、P<0.001)。ボンフェローニ補正後は有意ではないが、ウォーカビリティの高い地域は死亡リスクの低下(リスク比RR=0.87)、抑うつ症状の減少(β=-0.02)、趣味グループ(β=0.03)・スポーツグループ(β=0.03)・外出頻度(β=0.04)の増加とも関連していた。 一方地方では、ボンフェローニ補正後、ウォーカビリティの高い地域は要介護認定(要介護度2以上)の増加(RR=1.20、95%CI 1.06~1.31、P<0.001)、趣味グループ(β=0.04、95%CI 0.02~0.06、P<0.05)、スポーツグループ(β=0.04、95%CI 0.03~0.07、P<0.05)、外出頻度(β=0.07、95%CI 0.04~0.10、P<0.01)の増加、座りがちな生活リスクの増加(RR=1.29、95%CI 1.13~1.47、P<0.001)、互恵性の低下(β=-0.04、95%CI -0.07~-0.02、P<0.001)と有意に関連していた。ボンフェローニ補正後は有意でないが、ウォーカビリティの高い地域は残存天然歯が少ない割合の低下(RR=0.80)、自己評価健康の改善(RR=1.01)、自己申告高血圧の低リスク(RR=0.98)、自己申告の糖尿病(RR=1.05)・脂質異常症(RR=1.08)の減少とも関連していた。また、ウォーカビリティの高い地域と歩行時間増加との関連は認められなかった(β=0.01)。 本研究について著者らは、「ウォーカビリティの高い都市部では、死亡リスクの低下など一貫した利益が認められた。一方、地方では利益と課題が併存しており、趣味などの社会参加は多いものの、要介護認定や孤独感、座りがちな生活のリスクも高かった。これらの結果は、都市部では歩行を中心とした都市設計、地方では交通手段の整備や社会的つながりの促進、活動機会の拡充など、場所に応じた複合的な戦略の重要性を示している」と述べている。

2164.

抗肥満薬としての経口セマグルチド25mgの可能性(解説:住谷哲氏)

 わが国で承認されている抗肥満薬には経口薬としてマジンドール(商品名:サノレックス)、注射薬としてセマグルチド(商品名:ウゴービ)およびチルゼパチド(商品名:ゼップバウンド)がある。しかしマジンドールはほとんど使用されていないので実際は2種類の注射薬しかないのが現状である。当然注射薬よりも経口薬のほうがより多くの患者に投与できるので、製薬会社としては抗肥満薬としての経口セマグルチドの承認を目指している。しかし経口セマグルチドの問題点はその吸収に個人差がかなりあることで、その結果として注射薬と比べて有効血中濃度にかなりのばらつきがあることが報告されている1)。 そこで血糖降下薬としての最大投与量である14mgを50mgまで増量して、抗肥満薬としての有効性を検討したOASIS 1試験が2年前にすでに報告されている2)。今回その投与量を25mgまで減量して実施されたのが本試験OASIS 4である。なぜ50mgで製造承認を目指さずに半分の25mgの試験を再度実施したのかの詳細は論文に記載がないので不明であるが、筆者の勝手な想像では50mgではコストがかかり過ぎてビジネスとして成立しなかったからだろうと思われる。 結果は25mgでも抗肥満薬として十分に有効であることが示された。主要評価項目である試験終了時のプラセボと比較した体重減少率は、本試験での経口セマグルチド25mg、OASIS 1での経口セマグルチド50mg、STEP 1試験3)でのセマグルチド注2.4mgはそれぞれ11.4%、12.7%および12.4%でありほとんど差がなかった。安全面でも経口セマグルチド50mgとほぼ同様であったが、OASIS 1で13%の患者に認められた異常感覚(dysesthesia)の発現率は本試験では4.9%と少なかった。 筆者の病院の肥満外来にも地域のクリニックから患者さんが紹介されてくる。しかし、コストの点で抗肥満薬の投与を諦める患者さんも散見される。おそらく近いうちにわが国でも経口セマグルチド25mgが抗肥満薬として承認申請されるだろう。どれほどの薬価になるのかに注目したい。

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第37回 ありふれた転倒が引き起こす「見逃せない頭部外傷」【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)転倒は「ありふれた外傷」ではない!2)初診時のCT所見が正常でも油断は禁物!3)慢性硬膜下血腫は予後良好とは限らない!【症例】80歳男性。施設職員が部屋を訪れると、ベッド上で普段と様子が異なる状態を発見した。しばらく様子をみていたが、症状が改善しないため、職員の付き添いのもと車椅子で外来を受診した。●受診時のバイタルサイン意識E4V4M5/GCS血圧142/90mmHg脈拍78回/分(整)呼吸18回/分SpO296%(RA)体温36.6℃瞳孔3.5/3mm +/+頭部外傷の現状救急外来では外傷患者を診療する機会が多いですが、その多くは激しい交通事故ではなく、高齢者の自己転倒です。自宅や路上でつまずいて転倒し、体動困難のため受診し、精査の結果、大腿骨近位部骨折と診断される症例は非常に多いと思います。そして、それ以上に多いのが頭部外傷です。外傷症例の約3分の1が頭部外傷であり、とくに75歳以上の高齢者ではその頻度が非常に高いのが現状です1)。高齢者が平地で転倒し、頭部を打撲して救急外来を受診するケースは日常的に見られます。その多くは軽症頭部外傷(Glasgow Coma Scale [GCS]14~15)です。頭部外傷の診療では、Canadian CT Head Rule(CCHR)などを参考に頭部CT検査の必要性を判断することが一般的です。しかし、CCHRはもともと「意識障害、意識消失、健忘を認める症例」を対象としており、それに満たない症例では個別の判断が求められます。わが国ではCT機器が広く普及し、また初療を担当する医師が研修医や非専門医であることも多いため、頭部CT検査が比較的多くオーダーされているのが現状です。もちろん、検査の必要性を常に考慮することは重要ですが、患者自身が画像検査を希望する場合も少なくありません。そのため、「不要だから撮らない」と突き放すよりも、検査の意義や限界を丁寧に説明し、納得のうえで方針を決定することが望ましいといえます。中等症以上の頭部外傷(GCS≦13)*ではCT検査後に入院管理となることが多いですが、軽症頭部外傷の場合には帰宅となるケースが多いでしょう。その際、今後起こり得る合併症として慢性硬膜下血腫(CSDH)の可能性を説明することが多いと思いますが、どのような点を意識して説明しているでしょうか。具体的な数値とともに整理しておきましょう。*わが国では頭部外傷のうちGCS14~15点を軽症頭部外傷と定義しますが、海外では13~15点を軽症と分類しています。軽症頭部外傷後の頭蓋内出血リスクとその経過軽症頭部外傷患者で頭部CT検査を行い、とくに異常所見が認められなかった場合、その後に頭蓋内出血を新たに認めることは、どの程度あるのでしょうか。慢性硬膜下血腫は、頭部外傷後数週間を経て発症するものと定義されていますが、それより早期に頭蓋内出血を生じる場合があります。外傷直後のCT検査で異常を認めないにもかかわらず、数時間から数日後に新たに出血を呈する病態を「遅発性頭蓋内出血」と呼びます。この遅発性出血の発生率はおおむね0.3%程度であり、発症までの期間は3~5日が一般的な数字です。抗血栓薬服用の有無で発生率に有意差はなく、これらの結果からルーティンの入院や再CT検査は不要とされています2)。一方、初診時に急性硬膜下血腫(ASDH)を認めた患者(平均71.4歳、男性56.7%)では、慢性硬膜下血腫への移行率は約5.5%と報告されています。抗凝固薬の使用や、初回入院時に穿頭ドレナージを受けたか否かは有意な関連を示しませんでした3)。さらに、慢性硬膜下血腫に対して穿頭ドレナージを施行した症例を対象とした解析では、急性硬膜下血腫の約12~13%が慢性硬膜下血腫へ移行していたと報告されています4)。また、慢性硬膜下血腫症例のうち、画像上で急性硬膜下血腫を先行していたものは37%に過ぎず、残り63%は急性期出血を伴わず発生しているとの報告もあります5)。すなわち、初診時の頭部CTで異常を認めない場合、早期に出血を生じることは極めてまれです。しかし、その後に慢性硬膜下血腫へと移行するか否かは、初期血腫量や抗血栓薬使用、基礎疾患などの要因により異なり、経過を丁寧に追わなければ判断が難しいといえるでしょう。慢性硬膜下血腫の実像慢性硬膜下血腫と聞くと、高齢者が頭部外傷後に意識変容や歩行障害を認め来院し、穿頭ドレナージ術を行い帰宅。比較的予後が良い疾患に感じるかもしれませんが、本当にそうでしょうか?わが国の慢性硬膜下血腫の現状をお伝えしておきましょう。平均年齢は76歳、男性が68%と多くを占めます。70歳以上が78%を占め、とくに80歳代が37%と最多です。90%以上が穿頭ドレナージを受け、開頭術を要したのは1.5%でした6)。意識障害は54%に認められ、加齢とともに頻度が増加します。高齢者の意識障害の原因として脳卒中などを含めた神経救急の割合は20%程度ですが、急性経過の意識障害では慢性硬膜下血腫も重要な鑑別疾患の1つです。高齢化が進むわが国においては、「なんとなく普段と違う」といった訴えであっても、慢性硬膜下血腫を念頭に置く必要があります。もちろん、症状を説明しうる他の原因がある場合には過度に懸念する必要はありませんが、外傷歴がない、あるいは確認できないからといって安易に否定してはいけません。退院時に予後良好(mRS**0~2)であったのは全体の72%にとどまり、すなわち約3割は介助を要する状態です。けっして「予後良好」とは言えず、年齢とともに悪化傾向を示します。自宅退院率は70歳未満では90%以上ですが、80歳代では約30%に低下します6)。**modified Rankin Scale(mRS):脳卒中などの後遺症による日常生活動作の自立度を0~6の7段階で評価するスケールです。0は「症状なし」、6は「死亡」を意味します。1~2は軽度の後遺症で自立生活が可能、3~5は介助を要する段階を示します。最後に「頭部外傷の経過観察は丁寧に」慢性硬膜下血腫は、けっして「軽い病気」ではありません。高齢化の進行とともに、その発症頻度は今後さらに増加していくと考えられます。高齢者は筋力や視力の低下に加え、基礎疾患や多剤内服を抱えていることが多く、転倒リスクが常に存在します。転倒後の対応はもちろん重要ですが、そもそも転倒を防ぐための予防的な取り組みこそが最も効果的です。医療現場では、頭部CT検査の撮影閾値がやや低くなることは止むを得ませんが、受傷機転を丁寧に確認し、CT検査で異常を認めなくても「時間を味方につけた対応」を意識することが大切です。小さな転倒が大きな転帰を左右することがあります。だからこそ、「ありふれた外傷」を軽視せず、経過を丁寧に見守る姿勢が求められます。 1) Shibahashi K, et al. World Neurosurg. 2021;150:e570-e576. 2) Chenoweth JA, et al. JAMA Surg. 2018;153:570-575. 3) Wasfie T, et al. Am Surg. 2022;88:372-375. 4) Liebert A, et al. Neurosurg Rev. 2024;47:247. 5) Edlmann E, et al. J Neurotrauma. 2021;38:2580-2589. 6) Toi H, et al. J Neurosurg. 2018;128:222-228.

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異物除去(9):外耳道異物(2)虫の除去【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q153

異物除去(9):外耳道異物(2)虫の除去Q153山奥の診療所で夜勤のバイト中、生来健康な10歳男児が急患で受診した。主訴は右耳痛と耳鳴で、耳鏡で確認すると小さい蟻が動いている。手元にはオイルやリドカインなどの殺虫できる液体がない。どのように除去しようか。

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第292回 歯の防御の最前線のエナメルを再生させるゲルの臨床試験がまもなく始まる

歯の防御の最前線のエナメルを再生させるゲルの臨床試験がまもなく始まる歯のエナメル質は自ずと回復せず、多くの人が虫歯で痛い思いをします。定期検査で虫歯が見つかることに怯え、歯を再生する治療の実現を願う人は少なくないでしょう。そんな願いを叶えてくれるかもしれないエナメル質修復ゲルが唾液の働きに学んで開発されました1-3)。来年2026年の早くに始まる臨床試験に成功して実用化されれば、エナメル欠損はたいてい元どおりに治るちょっとした切り傷のように手軽に治療できるようになるかもしれません。エナメルは歯の表面を薄く覆っており、脆い内側の層がすり減ったり裂けたりすることや、酸や細菌で損なわれるのを防いでいます。エナメルは防御の最前線を担い、それが破られ始めると虫歯は一気に進行します。エナメルの自然回復は見込めず、フッ素コートや再石灰化液などの今ある治療はせいぜい悪化を食い止めて症状を緩和させるのが関の山です。エナメル欠損などがもたらす歯の病気は世界のおよそ2人に1人を悩ませ、2015年の記録の解析では5,440億ドルもの負担を強いたと推定されています4)。エナメル欠損がたたって歯を失えば糖尿病や心血管疾患などの慢性疾患を生じやすくもなります。たとえば就労年齢の米国成人を調べた最近の試験では、歯を失うことと複数の持病を有することの関連が示されています5)。ゆえにエナメル欠損を修復する治療が実現すればそれらの慢性疾患をも減らすことに貢献しそうです。脊椎動物の組織の中で最も硬いエナメルは、幼少期にアメロゲニン(amelogenin)タンパク質が形成する秩序立った構造を基礎とします。英国のノッティンガム大学のAlvaro Mata氏らは、アメロゲニンの構造や機能をまねてエナメルの石灰化を促す高分子入りのゲルを開発しました。ゲルはブラッシングしても数週間保たれる薄膜で歯を覆い、穴や割れ目を埋めます。その薄膜が足場の役目を担って溶液中のカルシウムとリン酸を集め、エピタキシャル結晶化と呼ばれる生来と同様の運びで新たなエナメル質が形成されるのを促します。内側の象牙質が顕わになるほど深い穴や割れ目でもエナメル質は作られました3)。10μmにも達する新たなエナメル質はその土台の生来の組織と統合して生来のような構造や特徴を再構築します。研究者によると、エナメルは一週間足らずで形成し始めます。人工的な溶液ではなく、カルシウムとリン酸をもともと含むヒトの唾液を使った検討でもゲルは同様の働きをしました3)。来年早々にヒトを対象とした臨床試験が始まる見込みです2)。Mata氏は同僚のAbshar Hasan氏とともにMintech-Bioという会社を立ち上げており、来年2026年末までに最初の製品を出すつもりです。 参考 1) Hasan A, et al. Nat Commun. 2025;16:9434. 2) New gel restores dental enamel and could revolutionise tooth repair / Eurekalert 3) Cavities could be prevented by a gel that restores tooth enamel / NewScientist 4) Righolt AJ, et al. J Dent Res. 2018;97:501-507. 5) Mohamed SH, et al. Acta Odontol Scand. 2023;81:443-448.

2168.

小細胞肺がん2次治療、タルラタマブの安全性(DeLLphi-304)/ESMO2025

 DLL3を標的とするBiTE製剤タルラタマブの小細胞肺がん(SCLC)2次治療DeLLphi-304試験における、有害事象(AE)の追加分析結果が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:プラチナ製剤を含む化学療法±抗PD-1/PD-L1抗体薬による1次治療を受けたSCLC患者(無症候性の脳転移は治療歴を問わず許容)・試験群(タルラタマブ群):タルラタマブ(1日目に1mg、8・15日目に10mgを点滴静注し、以降は2週間間隔で10mgを点滴静注) 254例・対照群(化学療法群):化学療法(トポテカン、アムルビシン、lurbinectedinのいずれか)※ 255例・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[主要な副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、患者報告アウトカム[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など※:日本はアムルビシン 主な結果は以下のとおり。・DeLLphi-304試験において新たな安全性のシグナルは特定されなかった。・タルラタマブ群は化学療法群に比べ、血液毒性および感染症の発生率が低かった。・タルラタマブの治療関連有害事象(TRAE)は多くがGrade1/2で、時間経過とともに発現割合は減少した。・同剤のTRAEで最も多いのものはサイトカイン放出症候群(CRS)であった。CRSの発現は1ヵ月未満56%、1〜3ヵ月3%、3ヵ月超0%でほとんどが1ヵ月未満であった。・CRS発現はサブグループ(PS、年齢、肝転移、脳転移、PD-[L]1投与歴、腫瘍量)間で差はみられなかった。・免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は6%で認められたが、ほとんどはGrade1/2で、93%が回復した。・神経学的TRAEとして書字障害が23%でみられた。書字障害のほとんどはGrade1/2で、全例回復、投与中止になった症例はなかった。

2169.

統合失調症のステージ別抗精神病薬治療戦略、どう使い分けるべきか

 スイス・ジュネーブ大学のMarco De Pieri氏は、統合失調症における抗精神病薬の戦略的および戦術的な使用について、現在の使用慣行に関する考察を報告した。Discover Mental Health誌2025年9月30日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・抗精神病薬は、統合失調症治療においてきわめて重要なツールであり、幻覚、妄想、思考障害などの精神症状を軽減する。・抗精神病薬は、錐体外路症状や過鎮静を引き起こす可能性があり、長期使用を困難にする。その一方で、急性期の管理には必要不可欠である。・抗精神病薬によるメタボリックシンドロームは、平均寿命短縮の主な因子であるが、短期治療においては、その懸念は最小限である。・抗精神病薬の有効性に関する研究結果はさまざまであり、試行錯誤により使用されている。・メタ解析では、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、amisulprideは、急性期において有効であり、オランザピンやハロペリドールは、統合失調症に伴う興奮状態に有効であることが示唆されている。・経験的な観察では、オランザピンやハロペリドールのような高力価の抗精神病薬は、急性期においてより効果的であり、zuclopenthixolも鎮静作用の点で有用であることが示唆されている。・ブレクスピプラゾール、アリピプラゾール、ルラシドン、低用量amisulpride、cariprazineは、良好な副作用プロファイルを有し、陰性症状に対して有効である可能性が示唆されている。 統合失調症を再発寛解型の疾患と捉え、急性期と維持期で異なる薬物療法アプローチが必要であると著者は考えている。「初期段階では、症状を迅速にコントロールするため、高用量、高力価、増量しやすい抗精神病薬(例:ハロペリドール、オランザピン、リスペリドン、高用量amisulpride、zuclopenthixol)を使用すべきであり、これを『戦術的』抗精神病薬治療と定義し、急性期症状が落ち着いたら、副作用(メタボリックシンドローム、錐体外路症状、高プロラクチン血症など)リスクが少なく、陰性症状や社会機能に対する効果が期待できる薬剤(例:ブレクスピプラゾール、アリピプラゾール、ルラシドン、低用量amisulpride、cariprazine)に徐々に切り替え、長期的に継続すべきであり、これを『戦略的』抗精神病薬治療と定義できる」としている。このアプローチは、これまでの経験的な観察結果と一致しており、病期に応じた抗精神病薬の使用を通して、統合失調症治療をさらに改善することを目的としている。本アプローチの有効性を検証するためには、さらなる研究が求められる。

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高リスク筋層非浸潤性膀胱がん、デュルバルマブ併用でDFS改善(POTOMAC)/Lancet

 BCG未治療の高リスク筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)患者において、BCG導入・維持療法+1年間のデュルバルマブ(抗PD-L1抗体)の併用は標準治療であるBCG導入・維持療法単独と比較して、無病生存期間(DFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらし、安全性プロファイルは管理可能であることが、ドイツ・Charite Universitatsmedizin BerlinのMaria De Santis氏らPOTOMAC Investigatorsが行った第III相試験「POTOMAC試験」の結果で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年11月8日号に掲載された。3群を比較する国際的な無作為化試験 POTOMAC試験は、日本を含む12ヵ国116施設で実施した非盲検無作為化試験であり、2018年6月~2020年10月に参加者の適格性を評価した(AstraZenecaの助成を受けた)。 年齢18歳以上、高リスクのNMIBCと診断され、無作為化前の4ヵ月以内に経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受け、3年以内にBCG膀胱内注入療法を受けていない患者1,018例を登録した。高リスク腫瘍の判定は、欧州泌尿器科学会(EAU)の基準に準拠した。 被験者を、デュルバルマブ(1,500mg、4週ごとに静脈内投与、13サイクル)+BCG導入(週1回、6週間)・維持(3、6、12、18、24ヵ月目に、週1回、3回)療法群(339例)、デュルバルマブ+BCG導入療法群(339例)、BCG導入・維持療法群(340例、比較群)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、試験担当医師評価によるDFSとし、ITT集団においてデュルバルマブ+BCG導入・維持療法群と比較群を比較した。DFSは、無作為化から高リスク病変の初回再発または全死因死亡までの期間と定義した(再発前の試験薬の投与中止の有無、他のがん治療薬の投与の有無は問わない)。全生存率には差がない 追跡期間中央値60.7ヵ月(四分位範囲:51.5~66.5)の時点で、DFSのイベントは、比較群で98件(29%)発生したのに対し、デュルバルマブ+BCG導入・維持療法群では67件(20%)と有意に減少した(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.50~0.93、log-rank検定のp=0.015)。 また、デュルバルマブ+BCG導入療法群で発生したDFSのイベントは105件(31%)で、比較群との間に有意差を認めなかった(HR:1.14、95%CI:0.86~1.50、p=0.35)。 この間に、デュルバルマブ+BCG導入・維持療法群で41例(12%)、比較群で52例(15%)が死亡し、群間で全生存率に有意差はなかった(0.80、95%CI:0.53~1.20)。両群とも全生存期間中央値には未到達だった。 EORTC QLQ-C30の総健康度/QOLスコアのベースラインからの補正後平均変化量は、デュルバルマブ+BCG導入・維持療法群が-7.6(SE 0.79、95%CI:-9.19~-6.07)、比較群は-4.9(0.78、-6.46~-3.41)であり、推定群間差は-2.7(95%CI:-4.85~-0.54)であった。排尿障害が最も高頻度 試験薬の投与を少なくとも1回受けた患者において、Grade3または4の治療関連有害事象は、デュルバルマブ+BCG導入・維持療法群で336例中71例(21%)、デュルバルマブ+BCG導入療法群で337例中52例(15%)、比較群で339例中13例(4%)に発現した。全群を通じて最も頻度の高い全Gradeの治療関連有害事象は排尿障害(それぞれ33%、18%、32%)であった。 重篤な治療関連有害事象は13%、11%、4%に発現し、治療関連有害事象による死亡例は認めなかった。 治療関連有害事象により試験薬の投与中止に至った患者は、デュルバルマブ+BCG導入・維持療法群で27%、デュルバルマブ+BCG導入療法群で16%、比較群で17%であった。BCGの投与中止に至ったあらゆる原因による有害事象は、それぞれ21%、7%、20%で報告された。 また、免疫介在性有害事象は27%、34%、1%に発生し、ほとんどが軽度で、Grade3または4は8%、8%、<1%だった。 著者は、「これらの結果は、PD-1/PD-L1経路の阻害とBCG膀胱内注入療法の併用が早期膀胱がんのアウトカムを改善するとの仮説を支持する」「デュルバルマブ+BCG導入療法とBCG導入・維持療法の間でDFSに有意差を認めなかったことは、BCG未治療の高リスクNMIBCの治療におけるBCG維持療法の重要性を強調するものである」「本試験の知見は、この患者集団における、デュルバルマブ1年投与とBCG導入・維持療法の併用の、新たな治療選択肢としての可能性を支持する」としている。

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帯状疱疹ワクチンは心臓病、認知症、死亡リスクの低減にも有効

 帯状疱疹ワクチンは中年や高齢者を厄介な発疹から守るだけではないようだ。新たな研究で、このワクチンは心臓病、認知症、死亡のリスクも低下させる可能性が示された。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部の内科医であるAli Dehghani氏らによるこの研究結果は、米国感染症学会年次総会(IDWeek 2025、10月19〜22日、米アトランタ)で発表された。 米疾病対策センター(CDC)によると、米国では3人に1人が帯状疱疹に罹患することから、現在、50歳以上の成人には帯状疱疹ワクチンの2回接種が推奨されている。帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)の既往歴がある人に発症するが、CDCは、ワクチン接種に当たり水痘罹患歴を確認する必要はないとしている。1980年以前に生まれた米国人の99%以上は水痘・帯状疱疹ウイルスに感染しているからだ。 水痘・帯状疱疹ウイルスは、数十年間にわたって人の免疫システム内に潜伏し、その後、再び活性化して帯状疱疹と呼ばれる痛みやチクチク感、痒みを伴う発疹を引き起こす。水痘への罹患経験がある人なら年齢を問わず帯状疱疹を発症する可能性があるが、通常は、ストレスにさらされ、免疫力が低下している50歳以上の人に多く発症する。 Dehghani氏らは、米国の107の医療システムから収集した17万4,000人以上の成人の健康記録を分析し、帯状疱疹ワクチン接種者の健康アウトカムをワクチン非接種者のアウトカムと比較した。ワクチン接種者は接種後3カ月〜7年間追跡された。 その結果、帯状疱疹ワクチンの接種により、以下の効果が得られる可能性が示された。・血流障害による認知症のリスクが50%低下・血栓のリスクが27%低下・心筋梗塞や脳卒中のリスクが25%低下・死亡リスクが21%低下 Dehghani氏は、「帯状疱疹は単なる発疹ではない。心臓や脳に深刻な問題を引き起こすリスクを高める可能性がある。われわれの研究結果は、帯状疱疹ワクチンが、特に心筋梗塞や脳卒中のリスクがすでに高い人において、それらのリスクを低下させる可能性があることを示している」とニュースリリースの中で述べている。 研究グループによると、これまでの研究でも、帯状疱疹への罹患が心臓や脳の合併症を引き起こす可能性のあることが指摘されているという。専門家は、この新たな知見は、帯状疱疹ワクチンが帯状疱疹そのものだけでなく、それらの合併症の予防にも役立つ可能性があることを示唆しているとの見方を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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友人に対する支援は高齢者のポジティブな気分を高める

 高齢者にとって、友情は最高の薬となるかもしれない。親しい友人を車で送ったり手伝ったりするなどの実際的な支援の提供は、高齢者のポジティブな気分を高める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。一方で、感情的支援の提供の場合には性差が見られ、女性ではポジティブな気分に影響しなかったのに対し、男性ではポジティブな気分が低下する傾向が認められたという。米ミシガン大学調査研究センターのYee To Ng氏らによるこの研究結果は、「Research on Aging」に9月26日掲載された。 Ng氏は、「高齢男性の場合、友人に感情的な支援を提供することがポジティブな気分の低下につながる可能性がある。このような気分の低下は、共感を示したり、感情について話し合ったりすることが男性に期待される役割と衝突し、それが不快感や精神的ストレスを引き起こすためと考えられる」と考察している。 この研究では、米テキサス州オースティン大都市圏に住む高齢者180人(平均年齢74.02歳、女性57%)を対象に調査を行った。参加者は5〜6日にわたってエコロジカル・モーメンタリー・アセスメント(EMA)を受け、3時間ごとにポジティブ・ネガティブな気分を報告した。また、友人との支援のやり取りについても毎日報告した。友人に対する支援のタイプとして最も多かったのは、相手の話を聞いたり慰めたりといった感情的な支援であり、次いで、助言、実際的な支援の順だった。 分析からは、実際的な支援を行った日にはポジティブな気分が高まることが示された。また、男性は女性に比べて、友人に感情的支援を提供することが少ない傾向が認められた。さらに男性では、感情的な支援を提供した日にはポジティブな気分が低下する傾向も認められた。一方、女性ではこのような傾向は認められなかった。 Ng氏は、「男性も女性も友情から恩恵を受けるが、男性の友情は共通の活動に重点が置かれている。これに対し、女性の友情は感情的な親密さとコミュニケーションに重点が置かれる傾向がある」と述べている。同氏はまた、「友人というのは自分で選ぶ存在であり、通常は喜びをもたらしてくれる。そのため友人は、特に、未婚、パートナーと死別、離婚、独身、または子どものいない高齢者にとっては、感情的ウェルビーイングを保つ上で非常に重要となる可能性がある」と語っている。 さらに研究グループは、実際的な支援は友人を助けるだけでなく、支援を提供した人自身が、自分は役に立っていると感じたり、社会や活動に関わっていると感じたりすることにも役立つ可能性があると述べている。他人の用事や仕事の手伝いはたいていの場合、労力を伴うことから、高齢者の目的意識の向上にもつながり得る。特に高齢男性にとっては、こうした積極的かつ実践的な支援方法を推進することが、長期的に見て大きな価値をもたらす可能性がある。 これらのことを踏まえてNg氏は、「こうした高齢者支援プログラムでは、感情的支援に加え、社会との関わり方の別の手段を模索すべきだ。あるいは、感情的支援のやりとりの中で意味付けを促すことで、高齢男性の感情的ウェルビーイングをより効果的に支援するべきだ。なぜなら感情的な支援は、少なくとも親しい友人に対して行う場合、日々の感情的負担を伴う可能性があるからだ」と述べている。 研究グループは今後の研究で、高齢者が友人の介護をする動機を探る研究を行う予定であると述べている。なお、この研究は、米国立老化研究所の支援を受けて実施された。

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心房細動患者における脳梗塞リスクを示すバイオマーカーを同定

 抗凝固療法を受けている心房細動(AF)患者においても、既知の脳梗塞リスクのバイオマーカーは脳梗塞リスクと正の関連を示し、そのうち2種類のバイオマーカーがAF患者の脳卒中発症の予測精度を改善する可能性があるとする2報の研究結果が、「Journal of Thrombosis and Haemostasis」に8月6日掲載された。 米バーモント大学のSamuel A.P. Short氏らは、抗凝固療法を受けているAF患者におけるバイオマーカーと脳梗塞リスクの関連を検討するために、登録時に45歳以上であった黒人および白人の成人3万239人を対象とし、前向きコホート研究を実施した。ベースライン時に、対象者の9種類のバイオマーカーが測定された。解析の結果、ワルファリンを内服していたAF患者713人のうち67人(9%)が、12年間の追跡期間中に初発の脳梗塞を発症していた。交絡因子を調整した後も、標準偏差1単位の上昇ごとに、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)、血液凝固第VIII因子、D-ダイマー、成長分化因子-15(GDF-15)は、いずれも新規脳卒中発症と正の関連を示した。ハザード比は、NT-proBNPで1.49(95%信頼区間1.11〜2.02)、GDF-15で1.28(同0.92〜1.77)であった。ただし、D-ダイマーとGDF-15の関連は、統計学的に有意とはならなかった。 2件目の研究で、Short氏らは、以前一般集団で脳卒中リスクと関連が報告されていたバイオマーカーが、AF患者でも同様に脳卒中リスクと関連するか、さらにCHA2DS2-VAScスコアによる予測を改善できるかを検討した。13年間の追跡期間中に、AF患者2,411人のうち163人(7%)が初発の脳梗塞を発症していた。解析の結果、NT-proBNP、GDF-15、シスタチンC、インターロイキン6(IL-6)、リポ蛋白(a)の高値は、それぞれ独立して脳卒中リスクの上昇と関連していた。CHA2DS2-VAScモデルの適合度と予測能は、これらのバイオマーカーを加えることで大きく改善した。NT-proBNPとGDF-15の2種類のみを追加したモデルが、最も適合性・予測能に優れていた。 Short氏は、「今回示されたモデルにより、医師は抗凝固療法の対象となる患者をより適切に選択できるようになり、救命や医療費削減につながる可能性がある」と述べている。

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新しい肥満の定義で米国人の7割近くが肥満に該当

 肥満の新しい定義により、肥満と見なされる米国人の数が劇的に増加する可能性があるようだ。長期健康調査に参加した30万人以上を対象にした研究で、BMIだけでなく、余分な体脂肪に関する追加の指標も考慮した新たな肥満の定義を適用すると、肥満の有病率が約40%から70%近くに上昇することが示された。米マサチューセッツ総合病院(MGH)の内分泌学者であるLindsay Fourman氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月15日掲載された。 Fourman氏は、「肥満が蔓延しているだろうと考えてはいたが、これほどとは予想していなかった。現在、成人人口の70%が過剰な脂肪を持っている可能性があると考えられるため、どの治療アプローチを優先すべきかについての理解を深める必要がある」とニュースリリースで述べている。 これまで、肥満はBMIにより定義されてきた。しかしBMIでは、例えば、筋肉量の多いボディビルダーが肥満と判定されるなど、体重と脂肪や筋肉の量が区別されないため、理想的な数値とは言えないことが指摘されている。一方、ウエスト周囲径、ウエスト身長比、ウエストヒップ比などの新たに開発された指標により、人の体脂肪をより正確に評価し、肥満度を計算する動きも出てきている。 最近、Lancet Commission(ランセット委員会)が新たに提案した肥満の定義では、1)従来のBMIの肥満閾値を超え、かつウエスト周囲径やウエスト身長比などの身体測定値が1つ以上高値であるか、BMIが40超、2)BMIは肥満閾値を下回るが2つ以上の身体測定値が高値のいずれかに該当する場合、臓器機能障害や身体的制限の有無によって、肥満を臨床的肥満(過剰な脂肪が臓器や組織に悪影響を及ぼしている)と、前臨床的肥満(体脂肪は過剰だが臓器は正常に働いている)に分類する。研究グループによると、米国心臓協会(AHA)や米国肥満学会など少なくとも76団体がこの定義を支持しているという。 今回の研究でFourman氏らは、米国立衛生研究所(NIH)が主導するAll of Us Research Programの参加者データを用いた前向きコホート研究を実施し、この新しい肥満の定義が臨床上どのような意味を持つのかを検討した。対象は、2017年5月31日から2023年9月30日の間に身体測定データがそろっていた30万1,026人(平均年齢54歳、女性61.0%)であった。 その結果、肥満に分類された人の割合は、従来の定義では42.9%(12万8,992人)であったのが、新しい定義では68.6%(20万6,361人)に増えることが明らかになった。臨床的肥満に分類されたのは10万8,650人(36.1%)であった。また、肥満ではない人と比較すると、肥満者では臓器機能障害のオッズが高く、オッズ比はBMIと身体測定値に基づく肥満者で3.31、身体測定値のみに基づく肥満者で1.76であった。さらに、臨床的肥満者では肥満のない人または臓器機能障害のない人に比べて、糖尿病(調整ハザード比6.11)、心血管イベント(同5.88)、全死因死亡(同2.71)のリスクが高いことも示された。 Fourman氏は、「BMIが正常でも腹部に脂肪が蓄積している人は健康リスクが高まることが分かってきているため、過剰な体脂肪を特定することは極めて重要だ。大切なのは体組成であり、体重計の数値だけが問題ではない」と述べている。 本研究には関与していない、米サウスショア大学病院のArmando Castro-Tie氏は、「この新しい肥満の定義によって、必要な人に医療が届き、肥満関連の慢性疾患を発症する前に余分な体重を減らすことができるようになる」と述べている。同氏は、「肥満の真の定義や肥満者がどのような人なのかについての理解を深めるための研究はかなり遅れている。これらが明らかになれば、さまざまな人口集団における異なるレベルの肥満に対して本当に効果的なアプローチは何なのかを探る、より的を絞った研究ができるようになるだろう」とコメントしている。

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抗うつ薬は体重を増やすか?(解説:岡村毅氏)

 精神科の外来では、対話から患者さんの症状を探る。うつ病の診察で最も有効なのは「眠れてますか」「食べられてますか」であろう。頑張ったらよく眠れるとか、頑張ったら食欲が湧いてくるものではないので、かなり客観的に患者さんの状態を把握できる。 意外かもしれないが、「どういったストレスがありますか」は、最重要ではない。意味がないとは言わないが、患者さんの理解や世界観に沿った長い物語が展開することが多く、まず知りたいことではない。 さて、治療が進むと、患者さんたちは、よく眠り、よく食べるようになる。それは良いのだが、女性の患者さんからは「体重が増えて困ってます」と言われることがしばしばある。女性は体重をモニターしている人が多いからと思われる。そうなると、「抗うつ薬で体重は増えるのだろうか?」「どの抗うつ薬で増えるのだろうか?」と考えるのは自然だ。 星の数ほどある抗うつ薬のどれを使うのがよいのか、という課題に対して、今や古典ともなった2009年のLancet誌の「MANGAスタディ」では、ネットワークメタ解析を用いて「効果」と「許容性」のバランスがよいのはセルトラリンとエスシタロプラムだと喝破した。同じようなネットワークメタ解析の手法で、抗うつ薬の身体への影響を調べたものが本研究である。 結果を見ると、確かに抗うつ薬の間で身体への影響には差があることがわかる。とはいえ、個人的には体重と心拍数以外は臨床的に意味のあるものはないと感じた。 心拍数は、面白いくらいに薬理学の教科書どおりの結果だ。つまり三環系抗うつ薬では軒並み上がる。ノルアドレナリン再取り込み阻害、抗コリン、α1遮断といった効果によるものだろう。とはいえ、三環系抗うつ薬はもはや臨床では絶滅危惧種になっており、あまり影響はなさそうだ。 問題は体重である。最も体重増加が多そうなのはマプロチリン(四環系抗うつ薬、こちらも希少種になっている)であり、2kg以上の体重増加が48%に、2kg以上の体重減少は16%にみられる。現役でよく使われる抗うつ薬では、セルトラリンは増加が31%、減少41%、エスシタロプラムは増加が38%、減少40%である。マスで見たら、体重増加はなさそうだ。 ただ気を付けねばならないのは、疫学研究と個別の患者さん個人の体験は、まったく次元が異なるということだ。「エビデンス上はあまり増えませんよ」と言うだけでは大失敗するだろう。患者さんが自分の身体健康あるいは見られ方を真剣に考えて、体重が増えていることを心配している場合は、しっかり対応しないと内服を自己中断したり、通院を自己中断してしまうリスクがある。その場合、もちろん再発してしまうリスクがある。 私の場合は、適宜血液検査などをするのが前提ではあるが、・体重増加は精神科薬物治療ではとても重要な課題。あなたの心配はまったく正しい! ただね、非定型抗精神病薬とかが最も気を付けないといけない薬で、このお薬はそれほどではないのでもう少し様子を見てみよう(エビデンス重視の説明)・今はうつ病の症状としての食思不振が改善していると考えたい。クスリが合っているのだ、ともいえる。だから安心して! しっかり回復したら抗うつ薬は中止するので今はまずはうつ病のほうに取り掛かろう(治療目標を明確にする説明)・食欲が増した。ここまで良くなったということ。運動を始めても(あるいは運動強度を上げても)よい時期ですよ(運動推奨)・今のお薬は大丈夫だけど、あなたがとても心配していることは放置できないから、変更しようか(不安が大きい場合)といった対応を、患者さんによって使い分けている(あるいは組み合わせる)。 うつ病が良くなると、食べ物がおいしくなって食べ始める人もいれば、ひきこもり生活から外に出るようになって痩せる人もいる。運動をすれば、カロリー消費は増えるが、当然ご飯はおいしくなるので体重が増える人もいる。難しいものだ。一般的には人の体重なんて知ったことではないが、こちらは抗うつ薬を投与しているので、関わる必要はあろう。個人の生活や認知パターンまで配慮するのが精神科医療であり、楽しいと言うと大変語弊があるが、人の多様性をいつも感じられるので飽きないものである。

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アブレーション後は抗凝固薬をやめてよい?(解説:後藤信哉氏)

 筆者は自ら長年非弁膜症性心房細動を患っているので、この論文は他人事ではない。心房細動だからといって、みんなが抗凝固薬を使う必要はない。現在の抗凝固薬では年間に3%程度の症例に重篤な出血イベントが起こることが、DOAC開発のランダム化比較試験にて示されている。長期間に抗凝固薬を使用すれば重篤な出血イベントリスクは身近な問題となる。筆者は20年程度、抗不整脈薬にて自らの心房細動をコントロールしてきた。しかし、いよいよ薬剤の調節が難しくなったのでアブレーションを受けた。アブレーション後に内膜が焼灼されるので、内膜の回復までは抗凝固薬が必要と考えた。心房細動のリスクがなくなった場合に抗凝固薬をやめられることが明確に示されればアブレーション治療の価値は大きく増加する。本研究の症例数は840例と多くないが、必須であった薬剤が不要になることを示せば患者さんにとっても医療経済的にも価値が大きい。 術後に不整脈が起こらない症例に限れば、抗凝固薬の中止により血栓イベントなどが増加しないことを示した本研究の価値は大きい。抗凝固薬をやめれば出血リスクが減少する。出血が減れば、出血により抗凝固薬を比較的にやめることによるリバウンドも減る。この研究成果は心房細動の症例にとっては価値が大きいと思う。

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第268回 高市首相、補正予算で病院支援明言 賃上げ・経営改善を前倒し実施/政府

<先週の動き> 1.高市首相、補正予算で病院支援明言 賃上げ・経営改善を前倒し実施/政府 2.インフルエンザ、全国で急拡大 定点14.9人、注意報レベルに/厚労省 3.出生数減少、上半期31.9万人で過去最少 小児・産科医療は集約化へ/厚労省 4.「かかりつけ医」機能のないクリニックに初再診料減算を提案/財政制度等審議会 5.国立大病院の赤字が過去最大規模に、学長らが国に緊急要望/国立大学病院長会議 6.有料老人ホーム「登録制」へ、頻回訪問の濫用是正、囲い込みも禁止/厚労省 1.高市首相、補正予算で病院支援明言 賃上げ・経営改善を前倒し実施/政府高市 早苗首相は11月7日の衆院予算委員会で、物価高の影響により経営が悪化している医療機関や介護施設を支援するため、2026年度の診療報酬改定を待たず、今国会に提出予定の2025年度補正予算で対応する方針を示した。政府が策定する経済対策では、食材費や光熱水費の高騰に苦しむ医療・介護事業者に対し、経営改善を目的とした補助金を支給し、職員の賃上げにも充てる。あわせて産科・小児科の体制維持、電子カルテや電子処方箋の普及促進、病床削減の支援なども盛り込まれる見通し。厚生労働省によると、2024年度決算速報では民間病院の約49%が赤字に転落し、前年度比で8ポイント近く悪化した。人件費や物価上昇に報酬改定が追いつかず、医療・介護現場では他産業に比べ賃上げが遅れている。一方、四病院団体協議会は10月29日、厚労省に対し「補正予算での早急な病院支援」「26年度に10%超のプラス改定」「消費税補填のばらつき是正」を求める要望書を提出。とくに大規模急性期病院で補填不足が顕著とする調査結果を示した。また、11月5日に開かれた国民医療推進協議会総会では、日本医師会など43団体が「補正」「26年度予算」「真水による抜本対応」を政府に求める決議を採択。政府は今国会での補正予算成立を目指し、年末までに診療報酬改定率を決定する方針で、医療従事者の処遇改善が焦点となる。 参考 1) 医療介護の経営改善に補助金 食費などの高騰対応、支援策判明(共同通信) 2) 医療従事者らの賃上げ後押しへ 補正予算案に補助金調整 厚労省(NHK) 3) 病院への早急な経営支援など求める 四病協 消費税負担、補填ばらつき解消の抜本策も(CB news) 4) 令和7年度補正予算及び令和8年度予算編成で“真水”による対応を求める決議を採択(日医) 2.インフルエンザ、全国で急拡大 定点14.9人、注意報レベルに/厚労省厚生労働省によると、第44週(10月27日~11月2日)のインフルエンザ定点当たり報告数は14.90人で、前週の6.29人から約2.4倍に急増し、注意報基準(10人)を今季初めて超えた。患者報告は5万7,424人に上り、すべての都道府県で増加した。流行入りは10月3日で、昨季より約1ヵ月早い。都道府県別では宮城県で28.58、神奈川県で28.47、埼玉県で27.91、千葉県で25.04、北海道で24.99、沖縄県で23.80、東京都で23.69と続き、神奈川県・宮城県では警報基準(30人)に迫る水準に達した。すでに学校などの休校、学年・学級閉鎖は約2,300施設と、前週の2倍超に拡大している。専門家は、今季はA香港型(H3N2)の割合が高く、集団免疫の低下により高水準がしばらく続く可能性を指摘している。厚労省は、手洗い、適切なマスク着用、咳エチケットなどの基本的な感染対策を呼びかけている。とくに空気が乾燥する季節に入り、室内の換気と湿度50~60%の維持が推奨される。高齢者や基礎疾患のある人は重症化リスクが高く、早期のワクチン接種や、体調不良時の登校・出勤回避、早めの受診が求められる。なお、今年度から定点医療機関は約3,000ヵ所に減少しており、過去との単純比較には注意が必要。 参考 1) 全国インフル定点報告 前週比約2.4倍増 14.90人(CB news) 2) インフル流行「注意報レベル」前週比2倍超、全国で増加 厚労省発表(産経新聞) 3) インフルエンザの流行拡大、注意報レベルに 昨季よりも6週も早く(朝日新聞) 3.出生数減少、上半期31.9万人で過去最少 小児・産科医療は集約化へ/厚労省厚生労働省が11月4日に公表した人口動態統計(概数)によると、2025年上半期(1~6月)の出生数は31万9,079人で、前年同期比3.3%減と過去最少を更新した。外国人を除く数値であり、下半期も同様の傾向が続けば、年間出生数は2年連続で70万人を下回る見通し。2024年は68万6,173人で、1899年の統計開始以来の最少を記録していた。一方、上半期の死亡数は82万3,343人で2.9%増。出生数との差である「自然減」は50万4,264人と、前年より3万人以上増加した。婚姻件数も4.3%減の23万166件にとどまり、晩婚・非婚化の進行が出生数の減少を加速させている。政府は「次元の異なる少子化対策」として児童手当の拡充などを進めているが、現時点で効果は限定的とみられている。こうした急速な少子化を踏まえ、厚労省の「小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ」では、小児科・産科医療機関の集約化と連携強化を軸とした体制再編の議論が開始された。第9次医療計画(2030~35年度)を見据え、症例減少に対応しつつ、医療の質と安全を維持する方針。議論では、地域中核病院の機能強化、オンライン診療や「#8000」相談事業の活用、遠方受診時の交通費支援などの組み合わせ、アクセス低下を防ぐ方策も検討する。厚労省では、出産費用の無償化や産後ケア支援などと併せ、医療提供体制の持続性を確保する構想を進めている。 参考 1) 人口動態統計(厚労省) 2) 小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ(同) 3) 上半期の出生数、31万9千人 2年連続で70万人割れの可能性(共同通信) 4) 上半期の出生数、過去最少ペース…厚労省・人口動態統計(リセマム) 5) 想定超えた少子化が進む中で、小児医療機関、産科・産婦人科医療機関の「集約化、大規模化」をさらに進めよ-小児・周産期WG(Gem Med) 4.「かかりつけ医」機能のないクリニックに初再診料減算を提案/財政制度等審議会財務省は11月5日に財政制度等審議会を開き、2026年度診療報酬改定に向けた外来改革案を提示した。柱は「かかりつけ医機能」の抜本的な見直しで、日常診療を総合・継続的に担う“1号機能”を整備していない診療所に対し、初診料・再診料の減算を求める一方、機能を十分に果たす医療機関をシンプルに高評価する設計への転換を促す。評価項目の簡素化とともに、機能強化加算(80点)は「有効性・効率性に疑義」として廃止を軸に検討、外来管理加算(52点)は即時廃止または地域包括診療料などへの包括化を提起した。制度面では、2025年度に開始となるかかりつけ医機能報告制度を踏まえた公的認定と患者の登録制、包括払い(包括評価)との連動を提案。さらに外来の受診行動の最適化として「受診時定額自己負担」の再検討を要請し、かかりつけ医療機関以外の受診では定額を上積みする二段構えの案も示した。資源配分では、経営状態の悪化している病院に重点配分するため診療所・調剤の「適正化」を主張。無床診療所の24年度経常利益率(平均)6.4%に対し、病院は0.1%と乖離があるとして、機能・病床規模に応じたきめ細かな配点を求めた。ただ、これらは財務省案であり、厚生労働省・与党協議を経て年末の大臣折衝、来年度の個別点数議論に反映される。これまでに受診時の定額負担は過去に「受診抑制」を懸念され、頓挫した経緯もあり、合意されるかは流動的な見通し。 参考 1) 財政制度分科会(財務省) 2) かかりつけ医機能報告制度(厚労省) 3) 「かかりつけ医機能」ない診療所は初再診料減算を 財務省 患者の登録制も提言(CB news) 4) 外来受診時定額負担導入の検討求める、財務省「かかりつけ」以外の受診と金額に差(同) 5) 診療所の診療報酬「適正化不可欠」 財務省主張 病院への重点的な支援を行うため(同) 6) かかりつけ医機能報告制度を、もう「過渡期扱い」した財務省の本音(日経メディカル) 5.国立大病院の赤字が過去最大規模に、学長らが国に緊急要望/国立大学病院長会議国立大学の附属病院の経営悪化が深刻化している。全国44の国立大学学長は11月7日、文部科学省と厚生労働省に対し、運営費交付金や診療報酬の大幅引き上げなどを求める緊急要望を提出した。声明では「大学病院の機能を維持できず、医学研究の停滞や地域医療の崩壊を招きかねない危機的状況」と訴えている。国立大学病院長会議(会長:大鳥 精司千葉大病院長)によると、2025年度の経常損益は全国で400億円を超える赤字となる見込みで、法人化以降で最大規模。2024年度も42病院のうち7割が赤字に陥り、赤字総額は286億円に達した。医薬品や医療機器の高騰、人件費上昇、診療報酬との乖離が要因で、「診療すればするほど赤字が増える構造」となっている。赤字補填は大学本体の財源に依存しており、学長らは「大学全体の経営にも波及する」と危機感を示している。日本記者クラブで会見した大鳥会長らは「経営改善の自己努力だけでは限界」「大学病院は最後のとりで」と強調。最先端医療の提供に加え、教育・研究、地域への医師派遣といった公益的機能を維持するために国の支援を求めた。一方、北海道大の宝金 清博総長は「物価上昇率を考えれば診療報酬を10%上げなければ赤字解消は難しい。1~2%では焼け石に水」と指摘。医療界では、地域偏在や医師の働き方改革への対応など大学病院が抱える多重課題への抜本策が急務との見方が広がっている。 参考 1) 「付属病院の赤字が急増し経営危機」 国立大学長らが国に緊急要望(朝日新聞) 2) 国立大病院の経営「危機的」、44学長らが緊急要望 文科相と厚労相に(日経新聞) 3) 日本記者クラブにて国立大学病院長会議が記者会見を行いました(国立大学病院長会議) 6.有料老人ホーム「登録制」へ、頻回訪問の濫用是正、囲い込みも禁止/厚労省厚生労働省は一部の有料老人ホームで過剰な介護サービスが提供されている問題について検討会を設けて、有料老人ホームのあり方について議論を重ねてきた結果、「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会とりまとめ」を公表した。これによると、有料老人ホーム(とくに要介護3以上や医療的ケア・認知症対応など中重度者を受け入れる類型)に登録制を導入し、基準不適合時は更新拒否・事業停止も可能としている。全施設で契約書に入居可能な要介護度、医療必要度、認知症・看取り可否などの明記と公表を義務化し、職員配置・設備の法定基準、看取り指針の整備も進めるほか、資本関係のある介護事業所の利用を入居条件化する“囲い込み”を契約に盛り込む行為は禁止とする。さらに入居紹介については優良事業者の認定制度を創設し、手数料は賃貸住宅の仲介に準じた算定を促すこととした。一方、ホスピス型住宅で主治医に「頻繁な訪問看護」を一律記載させる要請が判明し、出来高払いを悪用した過剰請求疑念が浮上しており、厚労省では“頻回”は医師が必要性を明示した場合に限定する方向で審議している。現場の医師には、頻回指示の医学的根拠・目標・期間の明記、状態変化に応じた見直し、記録の整合性点検が求められることとなる。また、10月29日に開催された「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」では「在宅医療に積極的役割を担う医療機関」は病院・診療所を基本とし、地域の協力医療機関体制の実装を加速することとなった。急増する有料老人ホーム(全国1万7千超、定員約67万人)に対し、質の担保と監督強化、支払方式の見直し(包括化含む)が医療側の持続可能性を左右するとして引き続き規制が強化される見通し。 参考 1) 有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会とりまとめ(厚労省) 2) 有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会(同) 3) 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ(同) 4) 有料老人ホーム、規制強化へ 登録制や更新拒否など導入(福祉新聞) 5) 有料老人ホーム、登録制導入へ 規制強化でサービスの質確保 厚労省(朝日新聞) 6) 有料老人ホーム検討会、取りまとめ案を大筋了承 登録制導入や紹介事業者の認定制度も提言(CB news) 7) 【在宅医療において積極的役割を担う医療機関】病院・診療所「以外」を位置づけることは好ましくない-在宅医療、医療・介護連携WG(Gem Med)

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事例35 フロリネフ錠の査定と復活【斬らレセプト シーズン4】

解説事例では、起立性低血圧の患者に投与したフルドロコルチゾン(商品名:フロリネフ錠)が、A事由(医学的に適応と認められないもの)を適用されて査定となりました。査定事由を調べるため、フロリネフ錠の添付文書を参照しました。傷病名に対する適応はありませんでした。病名が不足していたのではないかと医師に話をしたところ、「『失神の診断・治療ガイドライン』(日本循環器学会)に則った処方である」とのことでした。カルテを参照したところ、紹介された時点で使用されていたミドドリン塩酸塩を増量しても効果がなかったため、ガイドラインに沿ってフロリネフ錠を使用したところ、家庭血圧に改善傾向がみられるため処方継続しているとのことでした。適応外使用ではありますが、経過と検査データの写しを添えて再審査請求してみたところ復活しました。適応がないからと請求をあきらめるのではなく、一般的なガイドラインに沿って患者のために医学的に必要な医療を提供した場合には、医師と相談して必要としたコメントを添えて請求することも必要であると痛感した査定でした。

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英語で「花粉症」は?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第38回

アレルギー性鼻炎 allergic rhinitis春先や秋になると、くしゃみや鼻水、目のかゆみが止まらなくなる…、多くの人が悩まされるこの症状は、日本では「花粉症」として広く知られています。この症状の医学的な英語名はallergic rhinitis(アレルギー性鼻炎)ですが、日常会話でこの言葉が使われることはあまりないでしょう。より自然に、そして誰にでも伝わる一般的な表現は何でしょうか?講師紹介

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FLT3遺伝子変異陽性AMLに対する治療戦略/日本血液学会

 2025年10月10~12日に第87回日本血液学会学術集会が兵庫県にて開催された。10月10日、清井 仁氏(名古屋大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学)を座長に行われた会長シンポジウムでは、「FLT3遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病(AML)に対する治療戦略」と題して、FLT3変異陽性AMLの管理についてMark James Levis氏(米国・Johns Hopkins University)、AMLにおけるFLT3阻害薬耐性に関する理解の進展についてはCatherine Smith氏(米国・University of California, San Francisco)から講演が行われた。FLT3変異陽性AMLの高齢患者に対する最適なアプローチ FLT3変異陽性AMLの管理について、Levis氏が発表した。FLT3はAMLで最も一般的な遺伝子変異であり、FLT3変異はAMLのほぼすべてのサブタイプで発生する可能性があるため、臨床医にとっての課題となっていた。近年、FLT3変異陽性AMLのマネジメントに有用な薬剤がいくつか登場した。現在、3つの異なるFLT3阻害薬が、疾患の異なるステージに対して承認されており、FLT3変異とさまざまな共変異との相互作用に関する理解および測定可能残存病変(MRD)の検出能力の向上は、FLT3変異陽性AML患者のアウトカム改善に大きく貢献している。しかし、依然として多くの疑問が残っている。では、FLT3変異陽性AML患者をどのように治療すべきか、MRDをどのように活用して治療を最適に導くべきなのであろうか。 本講演では、推奨パラダイムが提示された。FLT3変異陽性AMLのマネジメントにおいて、強力な導入化学療法および地固め療法にFLT3阻害薬を併用することで全生存期間を改善し、より深い寛解によりMRD陰性化が可能であるが、現時点でどのFLT3阻害薬が最良の選択肢であるかは明らかになっていない。また、MRDは将来の造血幹細胞移植の必要性を判断するうえで、重要な指標と位置付けられると述べている。FLT3変異陽性AMLの高齢患者に対する最適なアプローチは、まだ十分に定義されていないとしながらも、Johns Hopkins Universityでは、ベネトクラクス(VEN)+アザシチジン(AZA)による導入療法を実施し、奏効の早期評価、遺伝子検査、MRD測定、回復後の脆弱性評価の結果に基づき、VEN+AZA療法、ギルテリチニブ(GIL)単剤療法、同種造血幹細胞移植、中等量シタラビン+GILのいずれかによる治療アプローチを行っていると述べた。AMLにおけるFLT3阻害薬耐性メカニズム 続いてSmith氏が、AMLにおけるFLT3阻害薬耐性に関する理解の進展について発表した。FLT3阻害薬は、新規患者および再発・難治性のFLT3変異陽性AML患者のいずれにおいても標準治療となっているが、すべてのFLT3阻害薬において耐性は依然として問題となっている。 キザルチニブ(QUIZ)やソラフェニブなどのタイプIIのFLT3阻害薬では、これらの阻害薬が不活性なキナーゼ構造にのみ結合するため、FLT3のオンターゲット二次キナーゼドメイン変異が獲得耐性の最も一般的なメカニズムであると考えられる。最も一般的な耐性誘発変異は、FLT3ゲートキーパーF691および活性化ループD835残基に発生するが、FLT3キナーゼドメインの他の残基とも関与している。これらのキナーゼドメイン変異は、薬物結合を直接阻害するか、FLT3阻害薬との相互作用に対し活性キナーゼ構造をもたらす。 活性キナーゼ構造に結合可能なGILやcrenolanibなどのタイプIのFLT3阻害薬を用いたその後の研究では、タイプIのFLT3阻害薬はオンターゲットキナーゼドメイン変異の影響を受けにくいものの、ゲートキーパーF691残基またはその近傍の変異には依然として一定程度の相対的耐性をもたらすことが示されている。 最近では、RAS/MAPK経路の活性化変異がGILに対する耐性の共通因子であり、他のFLT3阻害薬に対する耐性にも影響を及ぼすことが明らかになっている。患者内での腫瘍固有の異質性は、FLT3阻害薬による治療選択により、FLT3変異クローンに対するクローン選択と代替ドライバー変異の出現を促進する可能性がある。この現象は、FLT3阻害薬を他の薬剤と併用した場合においても観察されることがわかっている。 たとえば、GILとBCL2阻害薬であるVENとの併用はFLT3変異クローンを迅速に抑制するが、変異やその他の手段によるRASシグナル伝達の活性化には依然として耐性を示す可能性がある。また、トランスレーショナル研究では、FGF2やFLT3リガンドなどの微小環境因子が耐性クローンの生存や増殖を促進することが示唆されている。 耐性を最小限にするための今後の戦略としてSmith氏は「耐性クローンの発生を予防し、耐性の最も一般的な新規メカニズムであるRAS/MAPKシグナル伝達の活性化を抑制するための適切な併用戦略の確立に重点を置くべきである」とし、講演を締めくくった。

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