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StageIのTN乳がんにおける術前化療後のpCR率とOSの関係/ESMO2024

 StageIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)において、術前化学療法後のpCR率は良好な長期転帰と関連することが示され、同患者における術前化学療法の実施が裏付けられた。オランダ・Netherlands Cancer InstituteのManon De Graaf氏が、1,000例以上のTNBC患者を対象としたレジストリ研究の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。 本研究では、2012~22年に術前化学療法後に手術が施行されたcT1N0のTNBC患者をオランダがん登録のデータから特定し、pCR率と全生存期間(OS)との関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・アントラサイクリンおよびタキサンベースの術前化学療法を受けた患者1,144例が特定された。・年齢中央値は50.0(22.0~77.0)歳、94.1%がcT1c腫瘍で、90.4%が乳管がんであった。41.3%がプラチナベースの術前化学療法を受け、24.7%が術後カペシタビン療法を受けていた。・全体のpCR達成率は57.3%(656例)であった。・多変量ロジスティック回帰分析の結果、若年(50歳未満vs.50歳以上、オッズ比[OR]:1.75、95%信頼区間[CI]:1.36~2.26)および腫瘍グレードの高さ(グレード3 vs.1または2、OR:2.07、95%CI:1.55~2.76)はpCR率の高さと関連し、小葉がんはpCR率の低さと関連していた(小葉がんvs.乳管がん、OR:0.18、95%CI:0.03~0.69)(いずれもp<0.05)。・プラチナベースの術前化学療法は、pCR率の改善と有意な関連はみられなかった(プラチナベースの術前化学療法ありvs.なし、57.6% vs.57.1%、OR:1.02、95%CI:0.80~1.29、p=0.9)。・4年時OSは、pCR達成群で98% vs.残存病変群で93%となり、pCR達成群で有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.29、95%CI:0.15~0.36、log-rank検定のp<0.001)。・残存病変群における術後カペシタビン療法の有無によるOSへの影響をみると、4年時OSはカペシタビン群93% vs.術後化学療法なし群91%であった(HR:0.65、95%CI:0.31~1.39、log-rank検定のp=0.3)。 Graaf氏は、StageIのTNBC患者のうち術前化学療法が必要な患者を決めるため、またTILsや免疫関連遺伝子シグネチャ―などの予測バイオマーカーを評価するために、さらなる研究が必要と結んでいる。

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内臓脂肪や皮下脂肪で慢性疼痛リスク上昇か

 内臓脂肪や皮下脂肪の過剰な蓄積が筋骨格系の痛みと関連しているようだ―。オーストラリア・タスマニア大学のZemene Demelash Kifle氏らは、腹部の過剰かつ異所性の脂肪沈着が多部位で広範囲にわたる慢性筋骨格系の痛みの発症に関与している可能性を示唆した。また、男性よりも女性でより強い影響が確認され、これは脂肪分布とホルモンの性差が影響している可能性があるという。Regional Anesthesia&Pain Medicine誌オンライン版2024年9月10日号掲載の報告。 研究者らは、大規模前向きコホート研究であるUK Biobankのデータを使用し、内臓脂肪組織(visceral adipose tissue:VAT)と皮下脂肪組織(subcutaneous adipose tissue:SAT)の定量化のために、2回の画像診断時に腹部MRIを実施。首/肩、背中、腰、膝、または全身の痛みの評価を診断時に行い、混合効果多項式ロジスティック回帰モデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象者は3万2,409例(女性:50.8%、平均年齢±SD:55.0±7.4歳)であった。・多変量解析の結果、1標準偏差増加当たりの女性のVATのオッズ比(OR)は2.04(95%信頼区間[CI]:1.85~2.26)、SATのORは1.60(95%CI:1.50~1.70)、VAT/SAT比のORは1.60(95%CI:1.37~1.87)であった。また、男性ではVATのORは1.34(95%CI:1.26~1.42)、SATのORは1.39(95%CI:1.29~1.49)、VAT/SAT比のORは1.13(95%CI:1.07~1.20)であり、両者においてVAT、SAT、VAT/SAT比と慢性疼痛部位の数との間に用量反応関係が認められた。・脂肪組織レベルが高いと、男女ともに慢性的な痛みを報告する確率が高くなることも関連しており、これらの脂肪測定の影響推定値は、男性よりも女性のほうが比較的大きかった。

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HER2陽性胃がん1次治療、ペムブロリズマブ+トラスツズマブ+化学療法の最終OS(KEYNOTE-811)/ESMO2024

 昨年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)において局所進行または切除不能のHER2陽性胃がん1次治療として、トラスツズマブ+化学療法にペムブロリズマブを上乗せすることによって奏効率(ORR)と無増悪生存期間(PFS)が改善したことを報告したKEYNOTE-811試験。本試験における全生存期間(OS)の最終解析結果を、イタリア・Veneto Institute of Oncology のSara Lonardi氏がESMO2024で発表した。・試験デザイン:第III相無作為化プラセボ対照比較試験・対象:未治療の切除不能HER2陽性胃がんまたは胃食道接合部がん、PS 0~1・試験群(ペムブロリズマブ群):ペムブロリズマブ200mgを3週間ごと+トラスツズマブ+化学療法(5-FUおよびシスプラチン[FP]またはカペシタビンおよびオキサリプラチン[CAPOX])、最大35サイクル・対照群(プラセボ群):プラセボを3週間ごと+トラスツズマブ+化学療法・評価項目:[主要評価項目]PFS、OS[副次評価項目]ORR、奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・計698例がランダム化され、ペムブロリズマブ群350例、プラセボ群348例に割り付けられた。最終データカットオフは2024年3月20日、追跡期間中央値は50.2ヵ月であった。・最終のOS中央値はペムブロリズマブ群20.0ヵ月に対し、プラセボ群 は16.8ヵ月と有意にペムブロリズマブ群で良好な結果だった(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.67~0.94、p=0.0040)。PD-L1 CPS≧1の患者におけるOS中央値は、ペムブロリズマブ群で20.1ヵ月、プラセボ群で15.7ヵ月であった(HR:0.79、95%CI:0.66~0.95)。・最終のPFS中央値は、ペムブロリズマブ群が10.0ヵ月に対しプラセボ群は 8.1ヵ月で、引き続きペムブロリズマブ群が良好な結果だった(HR:0.73、95%CI:0.61~0.87)。PD-L1≧1の患者におけるPFS中央値は10.9ヵ月対7.3ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.60~0.87)であった。・ORRはペムブロリズマブ群で72.6%、プラセボ群で60.1%であった。 ・Grade3以上の治療関連有害事象はペムブロリズマブ群59%、プラセボ群51%で発生した。 Lonardi氏は「切除不能なHER2陽性、PD-L1≧1の胃がん患者において、1次治療としてのペムブロリズマブ+トラスツズマブ+化学療法は、OSを統計的に有意に改善し、臨床的に意義のある改善をもたらした。これらのデータは、このレジメンの有用性を確認するものである」とした。 この最終結果をもって、国内においても同レジメンの承認が進むとみられる。

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早期アルツハイマー病治療薬「ケサンラ点滴静注液」承認/リリー

 日本イーライリリーは9月24日付のプレスリリースにて、同日に厚生労働省より、早期アルツハイマー病(AD)治療薬「ケサンラ(R)点滴静注液350mg」(一般名:ドナネマブ)について、「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」を効能又は効果として、日本における製造販売承認を取得したことを発表した。 ケサンラは、アミロイドβプラークを標的とする早期AD治療薬だ。既承認のエーザイのAD治療薬「レケンビ点滴静注」(一般名:レカネマブ)に続く抗アミロイドβ抗体薬で、国内2製品目となる1)。4週間隔で、少なくとも30分以上かけて点滴静注することにより、脳内に過剰に蓄積したアミロイドβプラークを除去する。本剤は、アミロイドPET検査によりアミロイドβプラークの除去が確認された時点で投与を完了する(アミロイドβプラークの除去が確認されない場合であっても、本剤の投与は原則として最長18ヵ月で完了する)。本剤の投与完了により、当事者および介護者の身体的、精神的な負担を軽減することが期待される。 本剤は、8ヵ国の1,736例が参加した第III相二重盲検プラセボ対照試験「TRAILBLAZER-ALZ 2試験」2)の結果に基づいて承認された。本試験では、アミロイドβ病理を示唆する所見が確認された60~85歳の早期AD患者を対象に、参加者を無作為に2群に分け、一方にはケサンラを(860例)、もう一方にはプラセボを(876例)、4週間隔で72週間静脈内投与し、安全性および有効性を評価した。参加者は、アミロイドβプラークがアミロイドPET検査の視覚読影で陰性と判定される最も低いレベルまで除去されたことが確認された場合、ケサンラの投与を完了し、残りの試験期間をプラセボ投与に切り替えた。 本試験の主な結果は以下のとおり。・早期ADの中でもより早い段階にある参加者1,182例(脳内タウ蓄積レベルが軽度~中等度、MMSEスコア平均値約23)と、より進行した段階にあることを示す脳内タウ蓄積レベルが高度の参加者を含む参加者全体(MMSEスコア平均値約22)を、ケサンラ群とプラセボ群に分けて解析した結果、両集団ともにケサンラ群において、臨床症状の悪化が有意に抑えられた。・脳内タウ蓄積レベルが軽度~中等度の参加者のうち、ケサンラ群では、認知機能と日常生活機能を総合的に評価する統合AD評価尺度(iADRS)において、プラセボ群と比較して35%の有意な進行抑制が認められた。・高度のタウ蓄積を有する患者を含めた参加者全体においても、ケサンラ群のiADRSでは、プラセボ群と比較して22%の有意な臨床的進行抑制が認められた。・タウ蓄積レベルが軽度~中等度の参加者では、ケサンラ群においてプラセボ群と比較して、次の臨床病期に進行するリスクが39%低下した。・本試験に参加した日本人集団でも、参加者全体と同様の結果が確認された。・ケサンラ群において、アミロイドβプラークが試験開始時と比較して6ヵ月で平均61%、12ヵ月で平均80%、18ヵ月で平均84%減少した。・試験開始から12ヵ月後、ケサンラ群の66%において、アミロイドPET検査の視覚読影で陰性に相当するアミロイドβプラークの除去が確認された。・アミロイドβを標的とする治療に共通する副作用であるアミロイド関連画像異常(ARIA)のうち、ARIA-Eがケサンラ群の24.0%に発現し、症候性のARIA-Eがケサンラ群の6.1%に発現した。Infusion reactionは、ケサンラ群の8.3%に発現した。【製品概要】商品名:ケサンラ(R)点滴静注液350mg一般名:ドナネマブ効能又は効果:アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制用法及び用量:通常、成人にはドナネマブ(遺伝子組換え)として1回700mgを4週間隔で3回、その後は1回1,400mgを4週間隔で、少なくとも30分かけて点滴静注する。用法及び用量に関連する注意(添付文書から一部抜粋):本剤投与中にアミロイドβプラークの除去が確認された場合は、その時点で本剤の投与を完了すること。アミロイドβプラークの除去が確認されない場合であっても、本剤の投与は原則として最長18ヵ月で完了すること。【副作用について】ARIAは、多くは無症状のため、定期的な核磁気共鳴画像(MRI)検査によって検出する。発生した場合は、脳の一部または複数の領域の一時的な浮腫として発現することがあるが、通常は時間の経過とともに消失する。脳の表面や脳内の小さな出血として認められることもあり、より広範囲な脳の領域で出血が起こることもある。ARIAは、まれに重篤となり、生命を脅かす事象となる可能性もある。本剤の投与により、アナフィラキシーを含むinfusion reactionsを起こす可能性があり、中には重篤で生命を脅かすこともある。これらが起こる場合は通常、投与中または投与後30分以内に発現する。副作用の1つとして、頭痛も多く報告されている。

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初発統合失調症患者の約40%が治療抵抗性の可能性あり

 初回エピソード統合失調症(FES)患者における治療抵抗性統合失調症(TRS)の有病率は、国際的およびオーストラリア国内で十分に調査されていない。オーストラリア・Graylands HospitalのMirza Detanac氏らは、FES患者コホートにおけるTRSの有病率を評価し、TRS患者の社会人口学的および臨床的特徴について、治療反応が認められたFES患者との比較を行った。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2024年8月28日号の報告。 2020年10月、西オーストラリアの早期精神疾患介入サービス(EPIS)4施設において、統合失調症と診断されたすべての患者(ICD-10)の人口統計学的、臨床的、治療関連のデータを2年にわたり収集した。TRSの診断には、慶應義塾大学の鈴木 健文氏らが2012年に報告したTRSの修正版診断基準を用いた。データ分析は、記述統計、マン・ホイットニーのU検定、Studentのt検定、False-Discovery Rateモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・FESと診断された167例におけるTRSの有病率は41.3%であり、EPIS間で差は認められなかった(p=0.955)。・TRS患者は、治療反応が認められたFES患者と比較し、自立度が低く(p=0.011)、失業期間が長く(p=0.014)、障害年金受給者になる可能性が高かった(p=0.011)。・さらに、症状がより重症であり(p=0.002)、精神症状の持続期間が長く(p=0.019)、入院回数が多く(p=0.002)、累積入院期間が長かった(p=0.002)。 著者らは「EPISでマネジメントされているFES患者では、抗精神病薬に対する治療抵抗性を示す患者の割合が、非常に多いことが明らかとなった。とくに、TRSと臨床的重症度の上昇、心理社会的および治療上の負担との関連性が確認された。これらの結果は、TRSの早期発見と、精神保健サービスにおけるTRSに対するよりタイムリーな専門的介入の必要性を浮き彫りにしている」と結論付けている。

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膀胱がんへの周術期デュルバルマブ併用、EFS・OSを改善(NIAGARA)/NEJM

 膀胱全摘除術が可能な筋層浸潤性膀胱がんにおいて、術前化学療法への周術期デュルバルマブ併用は、術前化学療法単独の場合と比較して、無イベント生存期間(EFS)と全生存期間(OS)の有意な改善をもたらしたことが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のThomas Powles氏らNIAGARA Investigatorsによる第III相非盲検無作為化試験で示された。術前化学療法に続く膀胱全摘除術は、シスプラチン適応の筋層浸潤性膀胱がん患者における標準治療だが、周術期免疫療法の追加によりアウトカムを改善する可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2024年9月15日号掲載の報告。術前化学療法+周術期デュルバルマブvs.術前化学療法単独 研究グループは、シスプラチン適応の筋層浸潤性膀胱がん患者を、術前補助療法としてデュルバルマブ+ゲムシタビン+シスプラチンを3週ごと4サイクル投与し、その後に膀胱全摘除術と補助療法としてデュルバルマブを4週ごと8サイクル投与する群(デュルバルマブ群)、または術前補助療法としてゲムシタビン+シスプラチンを投与し、その後に膀胱全摘除術のみを施行する群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は2つで、そのうちの1つがEFS(もう1つは病理学的完全奏効)だった。重要な副次評価項目はOSとした。EFS、OSが有意に改善 2018年11月~2021年7月に22ヵ国で1,063例が無作為化された(デュルバルマブ群533例、対照群530例)。両群の被験者のベースライン特性は全体的にバランスが取れており、試験対象は欧州、アジア、北米、オーストラリアおよび南米から登録された筋層浸潤性膀胱がんの代表的な患者集団であったが、黒人患者の割合は小さかった。 24ヵ月時点の推定EFS率は、デュルバルマブ群67.8%(95%信頼区間[CI]:63.6~71.7)、対照群59.8%(55.4~64.0)であった(病勢進行、再発、膀胱全摘除術の非施行、死亡のハザード比[HR]:0.68、95%CI:0.56~0.82、層別log-rank検定のp<0.001)。 24ヵ月時点の推定OS率は、デュルバルマブ群82.2%(95%CI:78.7~85.2)、対照群75.2%(71.3~78.8)であった(死亡のHR:0.75、95%CI:0.59~0.93、層別log-rank検定のp=0.01)。 Grade3または4の治療関連有害事象の発現頻度は、デュルバルマブ群40.6%、対照群40.9%。死亡に至った治療関連有害事象は、各群で0.6%報告された。 膀胱全摘除術を受けた被験者は、デュルバルマブ群88.0%、対照群83.2%であった。

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急性心筋梗塞による心原性ショック、MCSデバイス使用は有益か/Lancet

 急性心筋梗塞による心原性ショック(AMICS)の患者に対する積極的な経皮的機械的循環補助(MCS)デバイスの使用は、6ヵ月死亡を抑制せず、大出血および血管合併症を増加したことが、ドイツ・ライプチヒ大学ハートセンターのHolger Thiele氏らMCS Collaborator Scientific Groupが行った個別患者データのメタ解析の結果で示された。ただし、低酸素脳症のリスクがないST上昇型心筋梗塞(STEMI)による心原性ショックの患者では、MCS使用後に死亡率の低下が認められた。積極的な経皮的MCSは、死亡への影響に関して相反するエビデンスが示されているにもかかわらず、AMICS治療での使用が増加しているという。本検討で研究グループは、AMICS患者における早期ルーチンの積極的な経皮的MCSと対照治療の6ヵ月死亡率への影響を確認した。結果を踏まえて著者は、「MCSの使用は、特定の患者のみに限定すべきである」としている。Lancet誌2024年9月14日号掲載の報告。MCS(VA-ECMOなど)vs.対照治療の6ヵ月死亡率をメタ解析で評価 個別患者データのメタ解析は、言語を制限せず、PubMed経由のMEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Embase、ClinicalTrials.govの電子データベースを2024年1月26日時点で検索し、適切な無作為化比較試験(3つの検索単語群を用い、各群の少なくとも1単語がマッチした試験)を特定した。 解析には、AMICS患者の治療について早期ルーチンの積極的な経皮的MCS治療(無作為化後カテーテル検査室でただちに施行)と対照治療の6ヵ月死亡のデータを比較しているすべての無作為化比較試験を組み入れた。 主要アウトカムは、対照治療を受けた場合と比較した、早期ルーチン積極的経皮的MCS治療を受けたAMICS患者の6ヵ月死亡率で、デバイスタイプ(loadingタイプ[venoarterial extracorporeal membrane oxygenation:VA-ECMOなど]、unloadingタイプ)および患者の選択(すべての心筋梗塞、低酸素脳症リスクがないSTEMI)に焦点を当て、Cox比例モデルを用いてハザード比(HR)を算出し評価した。MCS使用の6ヵ月死亡率への影響に有意差は認められず 無作為化比較試験の報告9件(患者1,114例)が詳細に評価された。 全体として、VA-ECMO治療と対照治療の試験が4件(611例)、左室unloadingデバイス使用治療と対照治療の試験が5件(503例)であった。2試験に含まれていたAMICSではない患者55例(44例がVA-ECMO、11例が左室unloadingデバイスで治療を受けていた)のデータは除外された。 患者の年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:57~73)、データが得られた1,058例のうち845例(79.9%)が男性で、213例(20.1%)が女性であった。 ITT集団において、早期MCS使用の6ヵ月死亡率への影響について有意差は認められなかった(HR:0.87[95%信頼区間[CI]:0.74~1.03]、p=0.10)。VA-ECMO治療と対照治療(0.93[0.75~1.17]、p=0.55)、左室unloadingデバイス使用治療と対照治療(0.80[0.62~1.02]、p=0.075)でも有意差は観察されなかった。 低酸素脳症リスクがないST上昇型心原性ショックの患者では、MCS使用による6ヵ月死亡率の低下がみられた(HR:0.77[95%CI:0.61~0.97]、p=0.024)。 大出血(オッズ比:2.64[95%CI:1.91~3.65])および血管合併症(4.43[2.37~8.26])は、対照治療群と比べてMCS治療群で多くみられた。

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これでイノカ(INOCA)?これでいいのだ!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第76回

狭窄や閉塞のない原因不明の胸痛「本当に胸が痛いんです」外来の診察室で患者さんが話します。他病院を受診していたのですが、経過が思わしくなく当方を受診されたようです。「○○病院の循環器内科のお医者さんは、相手にしてくれないんです。本当に痛みがあるのに、心療内科に紹介するというのです。神経質だからとか、不安症だからという訳ではないんです。本当に胸が痛いんです。悔しいやら、情けないやら、先生、助けてください」患者は50歳の女性で、3ヵ月前から始まった胸痛を主訴に来院しました。胸痛は主に運動時に出現し、階段の上り下りや家事中に誘発されるそうです。前胸部に鈍痛として感じられ、締め付けられるような感覚を伴います。痛みは夜間にも現れることがあり、数分から10分程度持続します。全体的に疲れやすく、活動時に息苦しさもあるとの訴えです。○○病院を受診し、初診時の心電図や心エコーでは明らかな異常は認められませんでしたが、狭心症の疑いがあるからとの説明で心臓CT検査を受けました。その結果、冠動脈に狭窄や閉塞はなく大丈夫と言われたそうです。心臓CTを受ける前に、もし冠動脈に詰まりかけている部位があれば、入院してカテーテル治療が必要かもしれないと説明を受けたとのことでした。この時点までの医師の対応は、優しく患者に寄り添い、訴えにも親身に耳を傾けてくれたそうです。ところが、冠動脈に狭窄病変がないと結果が判明したときから、医師の対応が冷たくなり、症状を訴えても相手にしてくれなくなりました。近年注目されるINOCAこの患者さんのように、原因不明とされる胸痛に悩まされている方は、実は多く存在します。注目を集めている病態があります。目視できるサイズの冠動脈に閉塞や狭窄がない狭心症という意味で、虚血性非閉塞性冠疾患(Ischemic Non-obstructive Coronary Artery disease)といい、スペルの頭文字からINOCAと略され、「イノカ」と発音します。高血圧・糖尿病・脂質異常症などの動脈硬化リスクの高い患者では、冠動脈に明らかな閉塞・狭窄がみられます。一方で、動脈硬化リスクが低い患者では冠動脈が正常にみえることから、検査をしても異常なしとされることが多くありました。近年、INOCAを診断するための新しい検査機器が開発され、今まで診断することができなかった原因不明の胸痛に対する確定診断の道筋ができたのです。従来法の冠動脈造影検査が正常であっても、本当は心臓が血流障害のために悲鳴を上げている病態です。詳細は述べませんが、冠攣縮性狭心症や微小血管狭心症の可能性があります。微小血管狭心症とは、肉眼では見えない髪の毛ほどの太さ(100μm以下)の微小な冠動脈の動脈硬化や拡張不全、収縮亢進のために胸痛が生じるのです。この患者さんの場合、専用のカテーテル検査機器と解析ソフトを用いて微小血管の血流や抵抗値を測定し、微小血管狭心症の診断が確定しました。その病態に応じて内服薬を調整し、胸痛から開放されました。難しい症例は共感が薄れる?この例を通じて多くの考えることがありました。診断が難しい、あるいは治療が困難な症例に直面すると、医師は精神的な負担を感じやすくなります。これにより患者に対する対応が冷たくなったり、共感が薄れたりするのです。治療が順調に進み見通しが良い場合に、より共感的に対応することは簡単です。反対に、診断がつかない、治療の見込みがない場合には、距離を置いてしまう傾向があります。紹介した症例で最初に対応した○○病院の循環器内科医を責めている訳ではありません。医師であれば、誰でも思い当たる感情の揺らぎなのです。また「後医は名医」というように、情報が集約された時間的に後から診療する医師のほうが優位な立場にあることは明白です。とはいえ、どのような状況でも心の平静を保ち、フラットに対応できる精神力を維持することの大切さを学んだのでした。自分は、INOCAの症例に出会うたびに自問自答する呪文があります。「これでイノカ?」カンファレンスの場で声に出すと恥ずかしいので、心の中で唱えます。「これでいいのだ!」ご存じのように、バカボンのパパのあまりにも有名な決めセリフです。ザ・昭和のギャグアニメの主人公にして、私も最も敬愛する人物であるバカボンのパパは、バカ田大学を主席で卒業し、定職に就かず「これでいいのだ!」を合い言葉に、日々楽しく自由に生きる男です。美人の妻と、バカボンとはじめちゃんという2人の息子がいます。バカボンのパパの名言を紹介します。「わしはバカボンのパパなのだ。わしはリタイヤしたのだ。すべての心配からリタイヤしたのだ。だからわしは疲れないのだ。どうだ、これでいいのだ。やっぱり、これでいいのだ」バカボンという名前の由来は、サンスクリット語の仏教用語「薄伽梵(ばぎゃぼん)」という言葉という説もあるそうです。「これでいいのだ」は、お釈迦さまの「すべてをありのままに受け容れる」という悟りの境地に到達していることを示す言葉なのです。話が脱線したようですが、患者さんの訴える症状を否定することなく受け容れることが、INOCAの診断の鍵であることは間違いありません。「これでイノカ? やっぱり、これでいいのだ!」

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余命を問われたら?【もったいない患者対応】第14回

余命を問われたら?登場人物<今回の症例>60歳男性腹痛を主訴に精査された結果、胃がん、肝転移、腹膜播種が判明化学療法を行う予定になった<説明の後、患者さんから質問をされました>先生、私の余命はどのくらいなのでしょうか?そうですね。およそ10ヵ月くらいでしょうか。えぇっ! 1年も生きられないのですか…。残念ですが、StageIVの胃がんですと、手術で取ることもできませんので、なかなか予後は厳しいですね。そうですか…。~数日後~先生から余命10ヵ月だと言われて本人がふさぎ込んでいます。長く生きられないなら化学療法を受けても無駄だから、治療はやめたいと言っています。そんな…。10ヵ月といっても人によって違いますから…。先生の説明が悪かったんじゃないですか? 本人はもう意欲をなくしています。【POINT】切除不能の胃がん患者さんに、唐廻先生は唐突に余命を聞かれ、思わず具体的な数字だけを返答してしまいました。患者さんはその短さに驚き、治療意欲を喪失。化学療法を始めるのが難しくなっています。本来であれば、化学療法を行うことで少しでも生存期間を延長できたはず。唐廻先生の責任は重大ですね。“余命”に関する質問にはかなり慎重に答える必要があるとくに悪性腫瘍の患者さんからは、余命を聞かれることが多いと思います。テレビドラマや小説などで「余命○ヵ月」という言葉をよく聞くため、医師は“余命”をある程度正確に言い当てられると考える患者さんは多いのです。しかし、余命を尋ねられたときは、かなり慎重に返答する必要があります。説明不足だと、今回のような事態になりかねません。「生存期間中央値」「5年生存率」は、個々の症例に当てはめることはできないまず、余命としてなんらかの数字を伝えるなら、該当するのは「生存期間中央値」か「5年生存率(疾患によっては「3年」や「10年」も)」になるのが一般的でしょう。生存期間中央値は、同じ進行度の患者さんの生存期間を並べたとき、ちょうど中央にくる値のことです。一方、5年生存率は、同じ進行度の患者さんを追跡したとき、5年後に何%の人が生存しているかを示す値ですね。いずれも、過去の臨床試験などのデータを参照すれば得られる数字ですが、個々の患者さんが生きられる期間や生きている確率を推測したものではありません。StageIVの胃がんの生存期間中央値が10ヵ月だったとしても、「目の前の胃がん患者さんの生きられる期間が10ヵ月だ」という意味ではありません。あくまで中央値ですから、それより長く生きた人もいれば、短くしか生きられなかった人もいるでしょう。同じStageIVであっても、1ヵ所の肝転移を有する胃がんもあれば、多数の肝転移に加え腹膜播種で腹水が貯留している状態の胃がんもあります。それぞれで予後が同じはずがありません。治療がどの程度効果を示すかによっても予後は変わってくるでしょうし、個々の患者さんがどんな併存疾患をもっているかによっても、治療成績は変わってきます。患者さんに余命を聞かれたときは、以上のことをすべて説明し、「余命を推測することがいかに難しいか」をきちんと理解していただく必要があります。質問の意図までよく考えるまた、余命を尋ねられたときは、患者さんが「なぜ余命を知りたいと思ったのか」まで踏み込んで考える必要があります。たとえば、「余命がとても短いなら、効果の高さより副作用が少ない治療を選びたい」といった気持ちがあるのであれば、患者さんはできる限りQOLを落としたくないと考えているのかもしれません。ではQOLを落としたくない理由はなんでしょうか?「子供の結婚式に元気な姿で参列したい」「妻と海外旅行に行きたい」「会社経営をしていて、まだ現場を離れられない」そんな背景があるなら、それを治療方針に反映させなくてはなりません。「どんな治療を受けたいと思っているのか」「どんな人生を送りたいと考えているのか」といった思いが、“余命への疑問”の背後に隠れている可能性があるのです。そのためには、ご本人だけでなく、ご家族の考えも知っておかねばなりません。このように、安易に予後を数字だけで伝えても、まったくもって説明不足だということがおわかりいただけるかと思います。これでワンランクアップ!先生、私の余命はどのくらいなのでしょうか?テレビなどで余命という言葉をよく聞きますが、実は医師が余命を言い当てることはできないんです※1。私自身、これまで患者さんに「余命何ヵ月です」というような告知をしたことはありませんよ。いまからその理由を説明したいと思いますが、その前に、〇〇さんがなぜ余命について知りたいのか、教えていただけませんか?※2※1:「余命」に関する誤解は丁寧に解こう。※2:余命を知りたい理由までしっかり聞く。

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アニメ「インサイド・ヘッド2」(その2)【なんで不安やうつは「ある」の?どうすれば?(病的感情)】Part 1

今回のキーワード不安うつ偏桃体パニック発作ストレス関連成長(SRG)思春期危機自己イメージの安定「蛙化現象」前回(その1)に、映画「インサイド・ヘッド2」を通して、社会的感情の機能とその起源を解き明かしました。とくに、不快感情である恥ずかしさと悔しさ、相対的な不快感情であるうらやましさとねたましさは、ストレス反応として積み重なると、不安やうつなどの病的感情に発展します。それでは、そもそもなぜ病的感情は「ある」のでしょうか? そして、とくに不安が「暴走」したら、どうなるのでしょうか?今回(その2)は、再びこのアニメ「インサイド・ヘッド2」に登場する「大人の感情」のキャラクターから、この病的感情の機能とリスクを解き明かします。そして、より良い感情との付き合い方を一緒に考えてみましょう。病的感情の機能とは?それではまず、残りの2つの「大人の感情」のキャラクターの特徴を通して、病的感情の機能をまとめてみましょう。(1)シンパイ―不安シンパイは、細見でオレンジ色。大きな口をワナワナさせ、頭のてっぺんに伸びた傷んだ髪の毛は、すり減った神経のようです。シンパイは、「目に見える危険なものから守る」のが基本感情のビビリであると説明し、「(それに対して)私の役割は、まだ見えてない危険なものから守ること。未来を考えて計画を立てる」と自己紹介します。確かに、細見の体格はビビリと似ています。シンパイは「良くないことが起きた時のために、心の準備をしとかなきゃいけないの」と言います。1つ目の病的感情は、「心配性」「神経質」とも言い換えられる、不安です。たとえば、シンパイは、ライリーをヴァルたちと仲良くさせるために、逆にもともと仲良しだった2人を遠ざけます(回避)。試合で認められるために、朝練で同じシュートの練習を繰り返させます(強迫)。また、ヴァルたちに気に入られるために、好かれそうな曲やバンドの名前を思い出させようとします(同調)。このように、不安は、身を守り、地位(縄張り)を守り、周りに合わせる働きがあります。これが、不安の心理の機能です。不安は、感情でありながら、認知(思考)面にも大きな影響を与えていることがわかります。だからこそ、シンパイは「大人の感情」のキャラクターたちを率いているのです。なお、不安の起源の詳細については、関連記事1をご覧ください。(2)ダリィ―うつダリィは、くすんだブルーグレイ。けだるい様子で、いつもソファに寝転がり、だらだらスマホをいじっています。最初はこのキャラクターの役割がはっきりしません。もう1つの病的感情は、「無気力」「倦怠感」とも言い換えられる、うつです。たとえば、その後、ヴァルたちに気に入られるために、幼稚だと思われたバンドをライリーにわざと「大大だーい好き」と皮肉っぽく言わせます(マイナス思考)。そして、その1で説明した社会的感情である、さげすみを掛け持ちしているとも言えます。また、親の前では、ライリーを不機嫌でだるそうにさせます(反抗)。さらに、今回の映画では描かれていませんでしたが、一番の役割は、がんばりすぎたあとに脳を一定期間休ませることです。そもそも本来は弱っているからこそ、消極的になり、マイナス思考に陥るのです。これらが、うつの心理の機能です。なお、うつの心理の起源の詳細については、関連記事2をご覧ください。実はシンパイとダリィは表裏一体映画では、シンパイとダリィの2つの「大人の感情」のキャラクターが病的感情として登場していました。確かに、精神医学的にも、不安とうつとして分類します。ただ、脳科学的には、これらは同じく、脳の中にある感情中枢(扁桃体)が、不快感情(ストレス)によって過活動になり、動悸などの自律神経を亢進させている状態です。例えるなら、不安は、朝に遅刻しそうになって、最寄り駅まで全速力で走っている時のような、「脳の爆走」です。一方、うつは、その途中で息が上がっていったん動けなくなっている時のような、「脳の息切れ」です。この時、同じく、脳内のある神経伝達物質(セロトニン)が働きにくくなっています。つまり、一見真逆に見えて、その根っこは同じである点で、シンパイ(不安)とダリィ(うつ)は表裏一体と言えるでしょう。次のページへ >>

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アニメ「インサイド・ヘッド2」(その2)【なんで不安やうつは「ある」の?どうすれば?(病的感情)】Part 2

シンパイが暴走すると?―病的感情のリスクシンパイは、「もう、ライリーにヨロコビたちは必要ない」と言い出し、なんと司令部からヨロコビたちを追放します。そして、ライリーが生まれてからヨロコビたちが大事に育ててきた「私はいい人」というジブンラシサの花を引っこ抜きます。そして、シンパイたち「大人の感情」のキャラクターたちだけで、ライリーの感情をコントロールしようとするのです。やがてシンパイは、「未来をしっかり見据える。起こりうるミスを全部予想しておくよ」と言い出し、次々と最悪のシナリオの映像を映し出して、ライリーに想像させます。すると、ライリーは「私は全然だめ」という心の声が聞こえるようになり、夜寝つけなくなります。そして、夜にこっそりコーチの部屋に忍び込み、コーチの評価ノートをのぞき見します。ライリーは、不安のあまり善悪の判断がつかなくあり、打算的になっていくのでした。さらに、次の日の試合中に、不安に飲み込まれてしまい、過呼吸の発作(パニック発作)を起こしてしまうのです。これは、「脳の暴走」です。ちょうど、シンパイがあまりにも動き回るため、感情操縦デスクの周りにできたオレンジ色の大きな渦巻きとして描かれていました。その中では、シンパイが固まって動けなくなり、点滅していました。このままでは、このあとに「脳の息切れ」である、うつがやってきて、ぐったりとして動けなくなりしばらく何もできなくなることを暗示しています。つまり、ダリィの出番になりそうです。これらが、不安とうつという病的感情のリスクです。なんでシンパイは暴走したの?シンパイは、暴走する前に、「大事なのは、これまでのライリーがどうであるかよりも、これからのライリーがどうなるべきかなんだよ」「ライリーの将来のために、彼女は変わらなければならない」と言っていました。つまり、思春期とは、単に自分がどうしたいかだけでなく、周り(社会)がどうしてほしいかも意識する時期です。自分が自分のことをどう感じているかだけでなく、相手(社会)が自分のことをどう感じているかも重要になってきます。そんななか、仲良しだった2人の親友が違う高校に行くと聞かされて裏切られたと感じたこと、その2人に当てつけで無視したり皮肉を言ってしまったこと、そして念願のアイスホッケーのチームに入れるかどうかの試練に直面していることなどが重なって、大きなストレスになっています。これが、シンパイが暴走した原因です。ここで誤解がないようにしたいのは、私たちはこれらのストレスはないに越したことはないと思いがちですが、実はむしろ必要です。これらのストレスがあるおかげで、思春期の子供は、これらのストレスを乗り越えて自己成長するからです。これは、ストレス関連成長(SRG)と呼ばれています。ただし、これらの思春期のストレスを乗り越えられずに、過呼吸を繰り返したりだるさが続く場合があります。これは、思春期危機と呼ばれています。その原因は、大きく2つあります。1つは、いじめなどのようにストレスが大きすぎる場合です。もう1つは、不安を感じやすいなど、もともとストレスに弱い場合です。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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アニメ「インサイド・ヘッド2」(その2)【なんで不安やうつは「ある」の?どうすれば?(病的感情)】Part 3

本当のジブンラシサの花とは?ヨロコビたちが感情操縦デスクにようやく戻ってきたあと、ヨロコビはオレンジ色の感情の渦巻きの嵐の中で固まっていました。ヨロコビは、何とかシンパイをデスクから引きはがします。そして、もとのジブンラシサの花を戻します。しかし、シンパイから「ヨロコビの言う通りだよ。ライリーらしさは私たち感情が決めるものじゃない」と言われて、ヨロコビはハッとします。そして、さっき戻したばかりの花をまた引っこ抜くのです。すると、もともとジブンラシサの花が栄養源としている地下の「信念の泉」に流れ着いていた無数のさまざまな記憶のボールから、まるで芽のように光がどんどんと出ていき、新しいジブンラシサの花が現れるのです。そして、ライリーの心の声が頭の中に次々と響いていきます。「私はわがまま」「私はやさしい」「私は全然だめ」「私はいい人」…「私は強い」「私は弱い」「私は助けてもらいたい時もある」と。最後、ヨロコビは、新しいジブンラシサの花を抱きしめ、他の感情のキャラクターたちも次々と集まって抱きしめます。このシーンは感動的です。ジブンラシサの花とは、まさに自分らしさのメタファーであり、心理学では自我と呼ばれます。自分らしさとは、「私はこうだ」という自分に納得していることなのですが、実はそれは1つの「私」の良い面ではなく、だめなところも含めたいろいろな「私」の面をすべて受け入れるということなのです。すると、自分を大切に思えて、自分は大丈夫と思えてきます。自分は愛されるために完璧である必要はないと気付いていきます。それを、感情のキャラクターたち全員がジブンラシサの花をそのまま丸ごと全員で抱きしめるシーンとして、わかりやすく描いています。このように自分は完璧である必要はない、良いところもだめなところも含めてこれが自分だと思えることは、自己イメージの安定と呼ばれています。すると、やがて相手に対しても完璧であることを求めなくなります。良いところもだめなところも含めてこれが相手だと思えることは、他者イメージの安定と呼ばれています。こうして、相手も愛するために完璧である必要はないと気付き、相手も大切に思えるようになるのです。逆に言えば、自己イメージが安定していないと、相手に完璧さを求めてしまいがちになります。相手を理想化して、その後にちょっとでも違っていると幻滅することを繰り返してしまいます。これは、思春期の恋愛における「蛙化現象」を説明できます。「インサイド・ヘッド2」とは?「インサイド・ヘッド2」のキャッチフレーズは「どんな自分もまるごと好きになる」であり、テーマは「自分自身を受け入れる」でした。ラストシーンで、感情のキャラクターたちが、ジブンラシサの花をみんなで抱きしめたことで、過呼吸になっていたライリーは、その後に落ち着きます。そしてすぐに、もともと仲良しだった2人に謝り、仲直りします。そして、その後は、ホッケーの試合を心から楽しむのでした。彼女は、本来の自分らしさを取り戻し、さらに成長したのでした。自我とは、思春期になると、ヨロコビたち(基礎感情)が最初に主導したように「ただ自分はこうしたい」と好きに思うことではなく、シンパイたち(社会的感情)が主導したように「こうなるべき」と無理に思い込んだり損得勘定に走ることでもなく、「社会の中でこうしていきたい」と自然に自覚するようになることです。この先が、自我の確立です。そして、何より、その自我によって日々の人生を楽しむことでしょう。今回は、思春期になったライリーの成長を、感情のキャラクターたちと一緒に私たちも見守る構図になっています。世界中の親子にとっての普遍的な物語であり、思春期の子供に接する親だけでなく、まさに思春期の子供たちが自分の気持ちを俯瞰することにも役立つでしょう。<< 前のページへ■関連記事アニメ「インサイド・ヘッド2」(その1)【なんで恥ずかしくなるの?なんで恥ずかしさは「ある」の?(社会的感情)】Part 1ウォーキングデッド【この世界観だからこそわかる!「コロナ不安」への処方せん】ツレがうつになりまして。【うつ病】

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第231回 入院料通則に入ったACP、「人生会議」のネーミングもそろそろ変えどきか?地域包括ケアシステム・セミナーを覗いて考えた(前編)

病院再編の時代から、在宅医療・かかりつけ医・介護との連携の時代へこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。秋になって、政治の世界も野球の世界も、決戦の時を迎えようとしています。野球では、日本のプロ野球もMLBもシーズン終盤に差し掛かり、順位争いが熾烈になってきました。9月24日(日本時間)現在本塁打53、盗塁55を達成した大谷 翔平選手が属するロサンゼルス・ドジャースは、25日からナショナルリーグ西地区の首位を争う、サンディエゴ・パドレスとの3連戦です。先発、中継ぎ、抑えの投手陣全体がズタボロのドジャースが、今年のポストシーズンでどこまで駒を進めることができるのか、それを占う上でもパドレス戦の勝敗(とくに投手の出来)はとても重要です。できることなら2勝1敗でいきたいところですが……。さて、今回は9月2日に東京で開かれた「第10回 地域包括ケアシステム特別オープンセミナー」(医療経済研究機構主催)を覗いてきましたので、その内容を簡単に報告したいと思います。「地域包括ケアシステム」と言えば、かつては介護の世界で使われる言葉でしたが、最近では医療の世界でも普通に使われる言葉となりました。オープニングで、地域包括ケアシステムの育ての親とも言える田中 滋氏(埼玉県立大学理事長)が、医療の世界は「病院再編に重点が置かれた時代から、在宅医療・かかりつけ医・介護との連携重視」へと時代が移りつつあると指摘されたのは、まさに至言だと感じました。「地域包括ケアを支える上でACPは非常に大事」と仲井 培雄氏第10回となった同セミナーのテーマは「尊厳ある”在宅での看取り”とは」でした。基調講演の田中氏に続いて、武田 俊彦氏(日本在宅ケアアライアンス 副理事長)、花戸 貴司氏(東近江市 永源寺診療所 所長)、仲井 培雄氏(医療法人社団和楽仁 芳珠記念病院理事長/地域包括ケア推進病棟協会 会長)、高砂 裕子氏(全国訪問看護事業協会 副会長)、柴田 久美子氏(日本看取り士会 会長)がそれぞれレクチャーし、その後パネルディスカションとなったのですが、私が印象的だったのは仲井氏のACPに関する発言です。地域包括ケア推進病棟協会(2024年6月までは地域包括ケア病棟協会)の会長を務め、2014年の診療報酬改定で新設された地域包括ケア病棟の発展に努めてきた仲井氏は、レクチャー、そしてその後のディスカッションにおいて、「地域包括ケアを支える上でACPは非常に大事」と話し、テーマである「尊厳ある”在宅での看取り”」だけでなく、地域包括ケア定着のためにも今後ACPが地域で広がっていくことが重要である、と幾度も強調していました。「人生会議」という珍妙なネーミング、国民には浸透せずACP(Advance Care Planning)は、将来意思決定能力を失った場合に備えた、患者さん本人によるあらゆる計画のことです。話し合う内容は、将来受けたい、あるいは受けたくない医療・ケア、希望する生活や看取りの場所など、さまざまです。医療機関のスタッフだけでなく、地域の訪問看護や介護サービスのスタッフと連携を取りながらACPを進めることが求められています。日本では、2018年3月に厚生労働省が「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の改訂版を公表、この中にACPの概念が盛り込まれました。ACPのゴールは一般的に「その人が重篤な慢性疾患に罹患したときに、その人の価値観、目標や治療選好に一致した医療が受けられることが確実になるようにサポートすること」とされています。2018年11月には、厚生労働省の公募によって、 ACPの愛称が「人生会議」と決まり、一般に向けた普及・啓発活動もスタートしました。この「人生会議」という珍妙なネーミングは、巨額の広報予算を使ったにもかかわらずほとんど国民には浸透していませんが、ACPの取り組み自体は医療現場で徐々に広がっています。「入院料の通則」見直しでACPに関する指針の作成が必要な医療機関の対象拡大前回、2020年の診療報酬改定では、ACPの取り組み(適切な意思決定支援に係る指針を定めていること)がすべての地域包括ケア病棟の施設基準盛り込まれました(それまでは一部の同病棟)。そして、今年の診療報酬改定では、「入院料の通則」が見直され、「人生の最終段階における適切な意思決定支援の推進」のため、ACPに関する指針の作成が必要な医療機関の対象が拡大、小児や思春期精神科病棟など特定の病棟以外のすべて入院に求められることになりました。「入院料の通則」は入院基本料を算定するための基本的なルールです。実施しなければ、入院料の算定そのものが認められません。なお、この指針作成については、在宅療養支援診療所・病院をはじめとする「看取り」に関わる「かかりつけ医機能」を有する医療機関にも求められることになりました。厚生労働省が作った「人生会議」という言葉はダサすぎてわかりづらい地域包括ケア病棟での地道な実践などが認められるかたちで、ACPは小児以外のほぼ全病棟においてもその取り組みが必須となったわけです。しかし、実際には「指針」を作成するだけで、本当に患者に寄り添ったかたちでACPが医療・介護の現場で行われているかどうかは甚だ疑問です。とはいうものの、地域包括ケアの合言葉とも言える「ときどき入院、ほぼ在宅」を実践し、患者が望まない過剰な医療を提供せず、尊厳ある死を迎えてもらうためにも、ACPの普及・定着は必要でしょう。そのためには、医療機関側からの働きかけのみならず、患者や家族側からのアクション、ACPの要望を伝えることも必要だと思います。そう考えると、厚生労働省が作った「人生会議」という言葉はダサすぎてわかりづらく、普及・定着を逆に妨げているのではないでしょうか。なんならそのまま「ACP」でもいいので、今一度そのネーミングを考え直すべきだと思いますが、皆さんいかがでしょう。ところで、この地域包括ケアシステム特別オープンセミナーでは、もう一人、とても興味深い発言をした人がいました。武田 俊彦氏です。この日は、日本在宅ケアアライアンス副理事長という肩書での出席でしたが、これからの病院と診療所の役割について言及した発言は、元厚生労働省医政局長ということを踏まえると、なかなかに重いものでした。(この稿続く)

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完全切除NSCLCへのデュルバルマブ、第III相試験結果(BR.31)/ESMO2024

 抗PD-L1抗体デュルバルマブは、切除不能なStageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線療法後の地固め療法、切除可能なStageII~IIIB期NSCLCの周術期治療において有効性が示されている1,2)。そこで、完全切除NSCLC患者の術後補助療法におけるデュルバルマブの有効性を検討することを目的として、国際共同第III相無作為化比較試験「BR.31試験」が実施された。本試験の結果、完全切除NSCLCの術後補助療法におけるデュルバルマブの有効性は示されなかった。本結果は、カナダ・オタワ大学のGlenwood Goss氏によって欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:完全切除(R0切除)を達成したStageIB(≧4cm)〜IIIA(AJCC第7版)のNSCLC患者1,415例・試験群(デュルバルマブ群):デュルバルマブ(20mg/kgを4週ごと、最長1年) 944例・対照群(プラセボ群):プラセボ(4週ごと、最長1年) 471例・評価項目:[主要評価項目]PD-L1 TC≧25%およびEGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の患者における無病生存期間(DFS)[主要な副次評価項目]PD-L1 TC≧1%およびEGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の患者におけるDFS、OS、有害事象など 今回の発表では、EGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の集団の結果が報告された。本発表における主な結果は以下のとおり。・EGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の患者の割合は86%であり、この集団における年齢中央値は64歳、男性の割合は65%、腺がんの割合は64%であった。・追跡期間中央値60.0ヵ月時点において、主要評価項目のPD-L1 TC≧25%およびEGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の患者におけるDFSは、デュルバルマブ群69.9ヵ月、プラセボ群60.2ヵ月であり(ハザード比[HR]:0.935、95%信頼区間[CI]:0.706~1.247)、主要評価項目は達成されなかった。・PD-L1 TC≧1%およびEGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の患者におけるDFSは、デュルバルマブ群59.9ヵ月、プラセボ群60.3ヵ月であった(HR:0.989、95%CI:0.788~1.248)。・EGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性(PD-L1の発現状況は問わない)の患者におけるDFSは、デュルバルマブ群60.0ヵ月、プラセボ群53.9ヵ月であった(HR:0.893、95%CI:0.752~1.065)。・Grade3/4の治療関連有害事象は、デュルバルマブ群の13.0%(122例)、プラセボ群の4.5%(21例)に発現した。 Goss氏は、本研究結果について「EGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の完全切除NSCLC患者において、術後補助療法としてデュルバルマブを用いる治療法は、PD-L1の発現状況にかかわらずDFSを改善しなかった。NSCLC患者において最適な効果を得るためには、周術期でのアプローチと同様に、原発巣の存在と関連する腫瘍抗原の存在が必要であることが示唆された」とまとめた。

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HR+/HER2+の閉経前乳がん、卵巣機能抑制で予後改善/ESMO2024

 術前または術後補助化学療法を受けた閉経前のHR+/HER2+の早期乳がん患者において、内分泌療法に卵巣機能抑制を追加することで予後が有意に改善したことを、韓国・延世大学校医科大のSung Gwe Ahn氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表した。 これまでの研究により、卵巣機能抑制と内分泌療法の併用により、閉経前のHR+の早期乳がん患者の無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)が改善することが示されている。しかし、これらの対象の多くはHER2-の乳がん患者であり、HER2+の乳がん患者におけるデータは限られている。 そこで研究グループは、国際共同第III相HERA試験のデータを後ろ向きに解析し、HR+/HER2+の閉経前の早期乳がん患者に卵巣機能抑制を追加することで予後が改善するかどうかを評価した。また、卵巣機能抑制に併用した内分泌療法(タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬)による予後を比較した。 患者を、下記の4群に分け、(1)のタモキシフェン単独群vs.(2~4)の内分泌療法+卵巣機能抑制群、および(2)のタモキシフェン併用群vs.(3、4)のアロマターゼ阻害薬併用群のDFSとOSを評価した。追跡期間中央値は11.0年であった。(1)タモキシフェン単独 501例(2)タモキシフェン+卵巣機能抑制 269例(3)タモキシフェン+アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制 140例(4)アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制 55例 主な結果は以下のとおり。タモキシフェン単独vs.内分泌療法+卵巣機能抑制・解析には965例が含まれ、そのうち501例(51.9%)はタモキシフェン単独で、464例(48.1%)は卵巣機能抑制と内分泌療法(タモキシフェン269例[27.9%]、エキセメスタン195例[20.2%])を併用していた。・内分泌療法+卵巣機能抑制群の10年DFS率は70.9%、タモキシフェン単独群は59.6%で、内分泌療法の追加は予後の改善と独立して関連していた(ハザード比[HR]:0.68[95%信頼区間[CI]:0.53~0.88]、p<0.001)。・10年OS率は、内分泌療法+卵巣機能抑制群84.7%、タモキシフェン単独群74.0%で、併用群で有意に良好であった(HR:0.64[95%CI:0.46~0.89]、p<0.001)。・これらの結果は、トラスツズマブ併用の有無によらず同様の傾向にあった。タモキシフェンvs.アロマターゼ阻害薬・解析には、タモキシフェン+卵巣機能抑制群269例、タモキシフェン+アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制群とアロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制群(以下、アロマターゼ阻害薬+免疫機能抑制群)195例が含まれた。・10年DFS率は、アロマターゼ阻害薬+免疫機能抑制群が78.7%、タモキシフェン+卵巣機能抑制群が65.2%であり、アロマターゼ阻害薬併用のほうが良好であった(HR:0.54[95%CI:0.38~0.75])。・10年OS率は、アロマターゼ阻害薬+免疫機能抑制群91.3%、タモキシフェン+卵巣機能抑制群79.7%であった(HR:0.48[95%CI:0.30~0.77])。・これらの結果は、トラスツズマブ併用の有無によらず同様の傾向にあった。

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死亡率が下がる脂肪の取り方は?

 穀物や植物油由来の植物性脂肪の摂取量が多いと、全死亡率および心血管疾患(CVD)死亡率が低下することが明らかになった。一方で、乳製品や卵由来の動物性脂肪の摂取量が多いと、全死亡率およびCVD死亡率が上昇することも示唆された。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年8月12日号掲載の報告。 中国・The Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのBin Zhao氏らは、食事による植物性脂肪および動物性脂肪の摂取と全死亡率およびCVDによる死亡率との関連性を調査するため、1995~2019年にかけて米国で大規模な前向きコホート研究を行った。検証済みの食物摂取頻度調査(FFQ)を用い、食事由来の脂肪について、ベースラインでの食品源を特定し、その他の食事情報を収集。Cox回帰分析にてハザード比(HR)と24年間の調整絶対リスク差(ARD)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象者は40万7,531人で、男性が23万1,881人(56.9%)、平均年齢±SDは61.2±5.4歳であった。・810万7,711人年の追跡期間中、CVDによる死亡5万8,526例を含む18万5,111例の死亡が確認された。・関連する食品源の調整を含む多変量調整後、最高五分位と最低五分位を比較すると、植物性脂肪ではHR:0.91(調整済みARD:-1.10%)とHR:0.86(同:-0.73%、傾向のp<0.001)で、とくに穀物(HR:0.92[同:-0.98%]とHR:0.86[同:-0.71%]、傾向のp<0.001)と植物油(HR:0.88[同:-1.40%]とHR:0.85[同:-0.71%]、傾向のp<0.001)からの脂肪摂取量が多い場合に、全死亡率とCVD死亡率が低下することが示された。・対照的に、動物性脂肪の摂取量が多いと全死亡率とCVD死亡率が上昇し、全動物性脂肪ではHR:1.16(同:0.78%)とHR:1.14(同:0.32%、傾向のp<0.001)で、乳製品はHR:1.09(同:0.86%)とHR:1.07(同:0.24%、傾向のp<0.001)、卵はHR:1.13(同:1.40%)とHR:1.16(同:0.82%、傾向のp<0.001)であった。・動物性脂肪由来のエネルギーの5%を植物性脂肪、とくに穀物や植物油由来のエネルギーに置き換えると、全死亡が4~24%減少、CVDによる死亡が5~30%減少した。

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切除不能肝細胞がん、TACE+レンバチニブ+ペムブロリズマブが有用(LEAP-012)/ESMO2024

 切除不能肝細胞がん(HCC)では、肝動脈化学塞栓療法(TACE)が標準療法の1つだが、これにレンバチニブ+ペムブロリズマブの併用療法の上乗せが、TACE単独療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したという。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)Presidential Symposiumにおいてスペイン・バルセロナ病院のJosep Llovet氏がLEAP-012試験の初回解析結果を発表した。・試験デザイン:第III相多施設共同ランダム化二重盲検試験・対象:根治的治療不適のHCC患者、PS 0~1・試験群(併用群):レンバチニブ(体重により8または12mgを1日1回経口投与)+ペムブロリズマブ(400mgを6週間隔で静脈内投与、最長2年)+TACE・対照群(プラセボ群):プラセボを経口+静脈内投与+TACETACEは全身療法開始後2~4週間に行い、1つの腫瘍につき最大2回、計4回、1ヵ月に1回までとした。・評価項目:[主要評価項目]PFS、全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・480例が併用群(n=237)またはプラセボ群(n=243)にランダムに割り付けられ、両群ともTACEを受けた。・初回解析までの追跡期間中央値は25.6ヵ月(SD 12.6~43.5)であり、計286件のイベントが発生した。・PFS中央値は併用群14.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.6~16.7)対プラセボ群10.0ヵ月(95%CI:8.1~12.2)であり、併用群はプラセボ群と比較してPFSが有意に改善した(ハザード比[HR]:0.66、95%CI:0.51~0.84、p=0.0002)。・OSは未達だったものの、併用群が優位な傾向を示した(HR:0.80、95%CI:0.57~1.11、p=0.0867)。・ORRは併用群46.8%に対し、プラセボ群33.3%だった。・Grade3~5の治療関連有害事象(TRAE)は、併用群の71.3%に発生したのに対し、プラセボ群では31.1%であった。TRAEにより併用群8.4%(20例)とプラセボ群1.2%(3例)の患者で薬剤投与が中止された。 Llovet氏は「LEAP-012は主要評価項目を達成した。レンバチニブ+ペムブロリズマブ+TACEは、PFSの統計的に有意で臨床的に意義のある改善を示し、OSについても早期に改善傾向を示した。有害事象も既知の安全性プロファイルと一致しており、この治療戦略は新たなオプションになる可能性がある。OSは今後の解析で再評価される予定だ」とまとめた。 CareNet.comにESMO2024消化器がん領域の速報を寄せた静岡県立静岡がんセンターの大場 彬博氏は「今年1月に行われたASCO-GIでは、HCCのデュルバルマブ+ベバシズマブ+TACEの、TACE単独に対する有用性を示したEMERALD-1試験の報告があった。TACEへの免疫療法の上乗せ効果は再現性がありそうだ。今後はどのレジメンがより有用かを探求することが主要な話題となってくるだろう」とした。

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炭水化物カロリー比が高いとうつ病リスク上昇

 うつ病は、世界的に重大なメンタルヘルスの課題の1つである。中国・四川大学のYifei Tan氏らは、うつ病と炭水化物摂取カロリー比(CRC)との関連を明らかにするため、大規模な横断的研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌2024年12月号の報告。 2005〜20年のNHANESデータベースのデータを用いて、Rプログラミング言語によりデータ分析を行った。うつ病の評価には、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。CRCは、総炭水化物摂取量の4倍を総カロリー摂取量で割ることにより算出した。CRCとうつ病との関連を調査するため、多変量ロジスティック回帰モデルおよび回帰スプラインモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・参加者データ9,254例中、1,530例がうつ病と診断された。・CRCが高く、54.1%(人口レベルの第4四分位[Q4])超の場合、抑うつ症状レベルが上昇した。・調整済み多変量ロジスティック回帰モデルでは、人口レベルの第1四分位(Q1)と比較し、Q4ではうつ病レベルが高く、うつ病リスクが高く、うつ病が人生に及ぼす影響が大きかった。【うつ病レベルが高い】β=0.5102、95%信頼区間(CI):0.2419〜0.7784、p=0.0002【うつ病リスクが高い】ハザード比(HR)=1.3380、95%CI:1.1331〜1.5812、p=0.0006【うつ病が人生に及ぼす影響が大きい】HR=1.5133、95%CI:1.1656〜1.9746、p=0.0020 著者らは「米国成人において、CRCが高いほど、抑うつ症状の可能性が有意に高まることが示唆された」と結論付けている。

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高齢NSTEMI患者に、侵襲的治療は有益か/NEJM

 非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)の高齢患者では、保存的治療と比較して侵襲的治療は、心血管死または非致死的心筋梗塞の複合のリスクを改善しないことが、英国・ニューカッスル大学のVijay Kunadian氏らBritish Heart Foundation SENIOR-RITA Trial Team and Investigatorsが実施した「SENIOR-RITA試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2024年9月1日号で報告された。約3分の1がフレイルのNSTEMI患者集団で侵襲的治療の有用性を評価 SENIOR-RITA試験は、高齢NSTEMI患者における侵襲的治療の有用性の評価を目的とする非盲検無作為化対照比較試験であり、2016年11月~2023年3月にイングランドとスコットランドの48施設で参加者のスクリーニングを行った(英国心臓財団[BHF]の助成を受けた)。 年齢75歳以上のNSTEMI患者1,518例(平均年齢82歳、女性44.7%、フレイル32.4%、認知機能障害62.5%)を登録し、侵襲的治療戦略を受ける群に753例、保存的治療戦略を受ける群に765例を割り付けた。侵襲的治療群は、冠動脈造影と血行再建術を施行し、有効性が最も高いと考えられる薬物療法を行った。保存的治療群は薬物療法のみを行った。 主要アウトカムは、心血管系の原因による死亡と非致死的心筋梗塞の複合とし、time-to-event解析で評価した。心筋梗塞は少ないが主要アウトカムに差はない 追跡期間中央値4.1年の時点で、主要アウトカムのイベントは、侵襲的治療群で193例(25.6%)に、保存的治療群では201例(26.3%)に発生し、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.77~1.14、p=0.53)。 心血管系の原因による死亡は、侵襲的治療群で119例(15.8%)、保存的治療群では109例(14.2%)に発生し(HR:1.11、95%CI:0.86~1.44)、非致死的心筋梗塞はそれぞれ88例(11.7%)および115例(15.0%)に発生した(0.75、0.57~0.99)。手技に関連した合併症は1%未満 副次アウトカムである全死因死亡と非致死的心筋梗塞の複合は、侵襲的治療群で319例(42.4%)、保存的治療群で321例(42.0%)に発生し(HR:0.97、95%CI:0.83~1.13)、致死的または非致死的心筋梗塞はそれぞれ100例(13.3%)および124例(16.2%)に発生した(0.79、0.61~1.02)。 また、一過性脳虚血発作は、侵襲的治療群で18例(2.4%)、保存的治療群で9例(1.2%)に発生し(HR:2.05、95%CI:0.92~4.56)、出血イベント(BARCタイプ2以上)はそれぞれ62例(8.2%)および49例(6.4%)に発生した(1.28、0.88~1.86)。侵襲的治療群では、手技に関連した合併症の発生率は1%未満だった。 著者は、「臨床医は、出血や手技関連合併症への懸念からフレイルの高齢者に侵襲的な処置を行うことに消極的だが、本研究では最新の血管造影とインターベンション戦略を用いたためこれらの合併症の発生は最小限であった」とし、研究の限界として「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は、とくに併存疾患の負担が大きいフレイルの高齢患者の募集に影響を及ぼし、予定されていた症例数に達しなかった」と述べている。

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