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潰瘍性大腸炎〔UC : ulcerative colitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義潰瘍性大腸炎は、クローン病とともに炎症性腸疾患の1つで、主に粘膜および粘膜下層を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症である。■ 疫学欧米に多く、白人とくにユダヤ系での発症が多いとされる。日本を含めた東アジアでも増加の一途をたどっている。難病であることから、わが国では指定難病に指定されており、患者数は20万人以上とされ、さらに毎年1万人程度増加している。性差はみられず、発症年齢は10代後半~30代に多く、25~29歳にピークがみられる。■ 病因発症原因はいまだ不明であるが、研究は飛躍的に進み、これまでの免疫学的な研究をはじめ、近年「genome-wide association study(GWAS)」により160以上の疾患関連遺伝子が特定され、また発症に関連する腸内細菌についても多くのことがわかり始めている。遺伝的素因、環境因子を背景に腸内細菌の影響の存在のうえで免疫異常を来し、腸管での免疫寛容が破綻することで慢性腸炎を誘導する。潰瘍性大腸炎ではクローン病とは対照的に、喫煙者の発症リスクは低い。発症自体とストレスの関連性は立証されていない。■ 症状主症状は粘血便(40%)、下痢(40%)、腹痛(30%)で、発熱や出血に伴う貧血もみられる。合併症は長期経過例での発がん、腸管外合併症として原発性硬化性胆管炎、仙腸関節炎や強直性脊椎炎などの関節炎、結節性紅斑や壊疽性膿皮症などの皮膚病変などがある。また、重症例では血栓傾向を認め、静脈血栓症のリスクがある。■ 分類治療法を選択するうえで、病期・病型(病変の広がり)・重症度を分類することが重要である。活動期か寛解期か、活動期であれば重症度(軽症〔63%〕・中等症〔28%〕・重症〔3%〕)(表1)および内視鏡所見(軽度・中等度・強度)(図1)はどうか、そして病型(直腸炎型〔22%〕、左側大腸炎型〔27%〕、全大腸炎型〔38%〕、右側あるいは区域性大腸炎)によっては局所製剤の適応を考慮することとなる。そのほか、臨床経過により再燃寛解型、慢性持続型、急性劇症型、初回発作型に分類される。難治性潰瘍性大腸炎の定義は、厳格なステロイド療法にありながらステロイド抵抗例あるいはステロイド依存例、またステロイド以外の厳密な内科治療下にありながら、再燃を繰り返すか慢性持続型を呈するものとされる。画像を拡大する画像を拡大する■ 予後治療介入の影響があるため、潰瘍性大腸炎の自然史は不明な点が多いが、炎症性腸疾患の自然治癒率は10%とされる。また、長期経過において50%は病状が安定していく。全大腸切除率は、欧米のコホート研究では発症1年で10%、2年目で4%、以降1年ごとに1%増加し、わが国では10年後の累積手術率は15%、とくに全大腸炎型では40%と高率である。死亡率についてはメタ解析によると、標準化死亡率は1.1で一般と差がない。炎症型発がんに起因する大腸がんの発生は、発症8年で1.6%、20年で8%、30年で18%と増加し、全大腸炎型に多いが、治療の進歩により近年では発がん率が減少しているとする報告もある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断において最も重要なのが、病歴の聴取である。慢性の下痢・粘血便で潰瘍性大腸炎を疑い、病歴や細菌検査などで腸結核やアメーバ性大腸炎を含めた感染性腸炎・放射線照射性大腸炎・薬剤性大腸炎・虚血性大腸炎などを除外する。次に大腸内視鏡検査を行い、特徴的な病変を確認し生検を併用する。内視鏡所見では、直腸から連続する全周性・びまん性の活動性炎症を認め、粘膜浮腫による血管透見消失から細顆粒状粘膜、膿性粘液が付着し、易出血性、びらん・潰瘍形成、広範な粘膜の脱落と炎症の強度が上がる。病理組織検査では、慢性炎症の所見があるかないかで炎症性腸疾患か否か判別し、そうであれば潰瘍性大腸炎かクローン病かを検討する。これらの所見で総合的に判断するが、クローン病や腸型ベーチェットの鑑別も重要である。診断の確定は診断基準(表2)に照らし合わせて行う(図2)。画像を拡大する画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療は、寛解導入療法とその後の寛解維持療法の双方を考えながら選択していく。厚生労働省難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(鈴木班)の潰瘍性大腸炎治療指針を示す(表3)。寛解導入療法は、臨床的重症度と病型によって選択される(図3)。重症例や全身状態が不良な中等症では、入院のうえ、全身管理を行いながら治療をする。近年、重症例や難治例に対しタクロリムス(商品名:プログラフ)やインフリキシマブ(同:レミケード)、アダリムマブ(同:ヒュミラ)、ゴリムマブ(同:シンポニー)(図4)、さらには2018年にトファシチニブ(同:ゼルヤンツ)、ベドリズマブ(同:エンタイビオ)と新たな治療の選択肢が増えたが、効果不十分な場合に次々と別の治療法を試すのには慎重であるべきで、外科治療のタイミングを誤らないようにすることが重要である。画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.重症例やステロイド抵抗例・依存例つまり難治例において、タクロリムスやインフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、シクロスポリン、トファシチニブ、ベドリズマブを使用する際は、専門施設での施行が望ましい。ステロイド、抗TNFα抗体や免疫調節薬を使用する際は、肝臓学会のガイドラインに沿ってHBV再活性化に対するサーベイランスが必要である。また、入院中の絶食は治療効果に影響しないばかりでなく栄養状態の悪化を招き、回復の遅延や術後合併症のリスクとなるため、大量出血や高度な腹痛などの超急性期以外は安易に選択するべきではない。維持治療においては、十分量を長期に使用することが重要で、いずれの維持治療においても薬剤中止後1年で50%が再燃するため、特段の事情がない限りは中止するべきではない。また、再燃の最大のリスクは、服薬アドヒアランスの低下であり、十分な服薬指導と定期的な確認が重要である。1)5アミノサリチル酸(5-ASA)製剤サラゾスルファピリジン(商品名:サラゾピリンほか)、メサラジン(同:ペンタサ、アサコール、リアルダ)が、わが国で使用できる5-ASA製剤である。炎症性腸疾患治療の基準薬であり、50~80%の寛解導入効果がある。また、寛解維持にも優れ、十分量を長期に使用することが重要である。4g/日以上の高用量導入が可能になり、ステロイドの投与を避けられる症例が増えた。まれに導入後・増量後に発熱・下痢を来すことがあるので5-ASAアレルギーを疑い、5-ASAでの維持が困難な場合は、後述の免疫調節薬にて維持治療を行うことになる。分割投与よりも1回または2回での投与のほうが、服薬アドヒアランスのみならず効果としても優れる可能性があり、2g/日では分1投与が認められている。また、リアルダは4.8g/日の1回投与製剤であり、より高用量の投与ができかつアドヒアランスの面でも有用である。直腸病変や遠位大腸病変には局所製剤の単独ないし併用が有用である。2)ステロイド寛解導入療法として中心的な薬剤であり、十分量の5-ASA製剤で効果不十分 な場合はステロイドの全身投与を行う。短期的には84%で有効である。しかし、離脱率は50%のみで、30%は手術、20%はステロイド依存となっていた。中等症では30~40mg経口投与を行い、1~2週間で効果判定を行う。重症潰瘍性大腸炎においては、ステロイド1~1.5mg/kgの静注療法を行うことで、約半数で寛解導入が可能である。さらに増量したとしても効果の増強は認めず副作用の危険のみが増すことが知られている。ステロイドが無効または効果不十分な場合は、ステロイド抵抗例として難治例の治療を行うことになる。維持療法としてのエビデンスはなく、寛解導入後は3~4ヵ月を目安に漸減・中止し、5-ASA製剤等での寛解維持療法へ移行する。漸減中の再燃または中止後早期の再燃を認める場合は、ステロイド依存例として免疫調節薬での寛解維持療法を行うことが望ましい。坐剤や注腸といった局所製剤は5ASA製剤が第1選択とされるが、ブデソニド注腸フォーム剤(同:レクタブル注腸フォーム)は他の注腸製剤より忍容性が高く、またブデソニドであるためステロイドによる副作用も軽減できるとされる。3)免疫調節薬アザチオプリン〔AZA〕(同:イムラン、アザニン)、メルカプトプリン〔6-MP〕(同:ロイケリン/保険適用外)。効果発現に1~3ヵ月を要するため、急速な寛解導入には向かず、主に寛解維持治療に使用する。約60%の良好な寛解維持率を認め、ステロイド減量効果も明らかとなっておりステロイド依存例の寛解維持治療に重要である。不耐症例があるため、導入初期は短期間でのモニタリングが必要である。適正投与量は個体によって異なるため、少量から開始し、WBC 3,000~4,000/μL程度への減少を目安にAZA 2~2.5mg/kg、6-MP 1~1.5mg/kgを目処に増量を試みる。感染症のリスクは、ステロイドに比較すると低い。4)タクロリムス(同:プログラフ)化合物としてはまったく異なるが、シクロスポリンと同様にカルシニューリン阻害剤として作用し、IL-2やIFN-γなどのサイトカイン産生を抑制する。わが国で開発された薬剤で、中等症~重症の潰瘍性大腸炎においてRCT(無作為化比較試験)で68%と高い改善率が認められた。添付文書の導入法では、目標血中トラフに到達するのに比較的長期間を要するため、専門施設を中心に速やかに上昇させる工夫がなされている。食前や絶食下での経口投与、高用量導入、また一部施設では持続静注によって急速に血中濃度を上昇させ、速やかな効果発現を得ている。寛解維持効果も示唆されているが、原則として3ヵ月を目安に中止するため、寛解導入後は免疫調節薬での寛解維持が望ましい。5)シクロスポリン(同:サンディシュン、ネオーラル / 保険適用外)タクロリムス同様カルシニューリン阻害剤として作用する。シクロスポリン持続静注は、ステロイド抵抗性の重症潰瘍性大腸炎に対し有効率は70~80%と高いが、長期成績は3年後の手術率50%、7年後88%と不良で、シクロスポリンで寛解導入した場合は、寛解維持に免疫調節薬が必要である。タクロリムスと異なり腸管からの吸収が安定しないため、経口投与での血中濃度の維持が困難であり、シクロスポリンでの寛解維持はできない。6)抗TNFα抗体製剤(インフリキシマブ〔レミケード®〕、アダリムマブ〔ヒュミラ®〕、ゴリムマブ〔シンポニー®〕)寛解導入および寛解維持に用いる。大規模なRCTの結果、抗TNFα抗体であるインフリキシマブがクローン病、関節リウマチなどに続き、認可された。既存治療抵抗性の中等症~重症潰瘍性大腸炎に対し、導入8週で69%の有効率、38.8%の寛解導入率を認め、30週で34%の寛解維持効果を示した。クローン病と同様に5mg/kgを0週、2週、6週で投与し、以降は8週毎の投与となる。潰瘍性大腸炎においては、効果減弱の際の倍量投与は認められていない。また、2013年6月ヒト抗体のアダリムマブが、潰瘍性大腸炎にも認可され、初回は160mg、2週後に80mg、以降は2週毎に40mgの皮下注射を行うが、これは自己注射が可能である。さらに2017年3月に4週間毎の皮下注射製剤であるヒト抗体のゴリムマブが適用追加となった。いずれの薬剤も導入前に胸部単純X線検査(必要に応じて胸部CT検査)、ツ反、IFN-γ遊離試験(IFN-γ release assay 〔IGRA〕: クオンティフェロン、TSPOTなど)で結核の感染を否定する必要がある。7)JAK阻害薬(トファシチニブ〔同:ゼルヤンツ〕)寛解導入および寛解維持に用いる。シグナル伝達分子をターゲットとした経口JAK阻害薬である。低分子化合物で、抗体製剤ではないため抗薬物抗体の産生による効果減弱は回避でき、また製造コストの抑制も可能である。既存治療抵抗性の潰瘍性大腸炎に対する第3相試験において、8週で約60%の改善率と18%の寛解導入率という有効性が示され、2018年5月に潰瘍性大腸炎に対して適用拡大となった。寛解維持率は、寛解導入試験で有効性を示した症例で52週の時点で34~40%の症例で寛解維持が得られた。なお、抗TNFα抗体製剤未使用例では寛解導入率25%で無効・効果減弱・不耐例では12%で、寛解維持率はそれぞれ5mg1日2回で27%、41%、10mg1日2回で37%、45%であった。投与法は1回10mgを1日2回、8週間投与し、効果不十分な場合はさらに8週間投与が可能である。寛解維持療法としては1回5mgを1日2回投与だが10mgを1日2回に増量することができる。なお、治験ではアジア人の比較的高齢者においてヘルペス感染症の発症が多く、注意が必要である。8) 抗α4β7インテグリン抗体(ベドリズマブ〔同:エンタイビオ〕)炎症細胞の腸管へのホーミングを阻害することで、炎症を抑制する。潰瘍性大腸炎に対する第3相試験であるGEMINI 1で47%の改善率と17%の寛解導入効果、52週において40~45%の寛解維持効果が示され、2014年に欧米で承認・発売となった。わが国においても臨床試験が行われ、2018年7月に承認された。300mgを0週、2週、6週で投与し、以降は8週毎の投与となる。腸管選択性が高いため、全身の免疫への影響が低いと考えられており、安全性に期待されている。薬理機序上効果発現はやや遅い印象があるが、寛解維持率が高く寛解維持療法における新たな選択肢として期待される。9)血球成分除去療法わが国で開発された白血球除去療法は、ステロイド抵抗例・依存例で保険適用とされ、使用されている。高用量のステロイドを要するような症例では、白血球除去療法を併用することで、より高い効果が期待でき副作用も少ないことが報告されている。しかし、海外での質の高いエビデンスは少ない。10)外科治療大腸穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症、重症・劇症で内科治療抵抗例、大腸がんおよびhigh grade dysplasia合併例では摘出手術の絶対的手術適応である。相対的手術適応例は、内科治療では寛解維持困難でQOLが保てない、または薬剤不耐などの難治例、内科治療抵抗性の壊疽性膿皮症など腸管外合併症例、狭窄や瘻孔、low grade dysplasiaなどの大腸合併症例である。術式は、大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術(IAA)や大腸全摘・回腸嚢肛門管吻合術(IACA)が標準術式である。術後に回腸嚢炎を合併することがある。多くの報告で術後のQOLを評価しているが、いずれも術後数年でのQOLは良好である。4 今後の展望現在、創薬業界では生物製剤をはじめ分子標的薬が花盛りであり、炎症性腸疾患の分野も同様である。インフリキシマブが口火を切った炎症性サイトカインをターゲットとした抗体製剤や、接着分子をターゲットとし病原性リンパ球の腸管へのホーミングを阻害し動態制御を行うことで腸炎を抑制する薬剤、また造血幹細胞移植などが注目されている。新薬の許認可において、これまでいわゆるドラッグ・ラグがあり、有効な薬剤が欧米で使用可能でも、わが国で認可されるのが数年先となるようなことも少なくなかった。しかし近年、炎症性腸疾患の分野においては、多くが国際共同治験となり、ドラッグ・ラグは解消される方向へ向かっている。クローン病でも多くの治験が行われているが、潰瘍性大腸炎に対する今後の展開について述べる。現在臨床試験中あるいは終了している薬剤は、以下のようなものがある。炎症性サイトカインを標的とした薬剤としてJAK阻害薬が開発されている。承認されたトファシチニブに引き続いてJAK1選択性を高めた第二世代のJAK阻害薬であるフィルゴチニブやウパダシチニブなどが開発中である。クローン病において承認された抗IL12/23 p40抗体のウステキヌマブ(同:ステラーラ)は、潰瘍性大腸炎においても臨床試験が進んでおり、また抗IL23 p19抗体であるリサンキツマブやミリキツマブなども臨床試験が進んでいる。腸炎惹起性リンパ球の動態制御を目的とした薬剤も多数開発されている。抗α4β7インテグリン抗体であるベドリズマブに続き、AJM300は、わが国で開発された経口低分子化合物でα4インテグリンを阻害する。102例の潰瘍性大腸炎を対象とした第2相試験で、8週後の有効率62.7%、寛解率23.5%と有意に有効性を示した。低分子化合物であるため低コストで生産でき、抗体製剤のように免疫原性や効果減弱といったリスクを回避できる可能性がある。現在第3相試験中である。皮下注射製剤の抗MAdCAM抗体であるPF-00547659は、消化管組織中に発現するMAdCAMに結合し、インテグリンとの結合を阻害する。潰瘍性大腸炎に対する第2相試験TURANDOTで、12週の寛解率24%と有意な結果が報告された。S1Pおよびその受容体の1つであるS1P1受容体は、リンパ球の二次リンパ組織からの移出に必須の分子であるが、S1P受容体アゴニストはS1P1受容体を強力かつ長期に内在化させることで、リンパ球の動態制御を行い、炎症を抑制する。S1P1およびS1P5受容体に作用するRPC1063が、潰瘍性大腸炎に対する第2相試験TOUCHSTONEにおいて、8週で16.4%の寛解率、58.2%の有効率を示し、現在第3相試験へと移行している。その他、ブデソニドは、ステロイドの全身性の副作用の軽減を目的に、肝臓で速やかに代謝されるようデザインされた局所作用型のステロイドであり、欧米では一般に使用されているが、前述のようにわが国でもクローン病に対する経口薬に続き、本症で経肛門投与のフォーム薬が承認・発売された。また近年、腸内細菌研究の急速な進歩によってプロバイオティクスも再度注目されている。さらに、c.difficile関連腸炎において高い有効性を示し、欧米で認可された糞便微生物移植も炎症性腸疾患への応用が試みられているが、まだ有効性や投与法などに関する十分な大規模データは不足しているのが現状である。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 潰瘍性大腸炎(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本炎症性腸疾患学会(医療従事者向けの研究情報)CCFA - Crohn's and Colitis Foundation of America(米国のIBD団体のサイト:一般利用者向けと医療従事者向けの情報)ECCO - European Crohn's and Colitis Organisation(欧州のIBD団体のサイト:医療従事者向けの研究・診療情報)東京医科歯科大学 潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター(一般利用者向けの情報)厚生労働省 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報、最新の診断指針・治療指針が公開されている。会員登録をすると「一目でわかるIBD」の閲覧やe-learningも可能)患者会情報IBDネットワーク(IBD患者と家族向けの情報)1)「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.2)日本消化器病学会.炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016. 南江堂; 2016.3)渡辺守 編. IBD(炎症性腸疾患)を究める. メジカルビュー社; 2011.4)炎症性腸疾患(第2版)-病因解明と診断・治療の最新知見. 日本臨牀社;2018.公開履歴初回2013年07月04日更新2018年08月28日

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添付文書改訂:ゼルヤンツ錠/トレリーフ錠/リムパーザ錠【下平博士のDIノート】第7回

ゼルヤンツ錠5mg画像を拡大する<使用上の注意>過去の治療において、ほかの薬物療法(ステロイド、免疫抑制薬または生物製剤)による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与します。<用法・用量>導入療法では、通常、成人に、トファシチニブとして1回10mgを1日2回、8週間(効果不十分な場合はさらに8週間)投与し、維持療法では1回5mgを1日2回経口投与します。なお、維持療法中に効果が減弱した患者、過去の薬物治療において難治性の患者(TNF阻害薬無効例など)では、1回10mgを1日2回投与することができます。感染症リスクの増加が予想されるので、本剤とTNF阻害薬などの生物製剤や、タクロリムス、アザチオプリンなどの強力な免疫抑制薬(局所製剤以外)との併用はできません。<Shimo's eyes>関節リウマチ治療薬として用いられてきたJAK阻害薬のトファシチニブに、国の指定難病である潰瘍性大腸炎の適応が追加されました。潰瘍性大腸炎の国内患者数は、2016年までの10年間で約1.9倍に増えました。2016年11月にメサラジン錠(商品名:リアルダ錠1200mg)、2017年12月にブデソニド(同:レクタブル2mg注腸フォーム)が相次いで発売され、海外で広く使用されているベドリズマブ(同:エンタイビオ点滴静注)も2018年7月に承認取得しています。治療選択肢が増えることにより、治療の目標となる寛解導入や寛解維持が以前より容易になることが期待されます。また、個々の患者さんの症状・生活習慣・経済状況などに合わせた治療で、より患者さんのQOL向上が見込めるでしょう。トレリーフ錠/OD錠25mg画像を拡大する<用法・用量>通常、成人にゾニサミドとして、1日1回25mgを経口投与します。<Shimo's eyes>ゾニサミドはもともと抗てんかん薬として開発され、のちにパーキンソン病治療薬として開発された薬剤です。抗てんかん薬としてはエクセグランの商品名で、パーキンソン病治療薬としてはトレリーフの商品名で、効能・効果と用法・用量を区別して発売されています。レビー小体型認知症のパーキンソニズムは、パーキンソン病のパーキンソニズムと原因や症状が同じであることから開発が進められ、追加承認となりました。ゾニサミドは、ドパミンレベルを上昇させることで、レボドパの抗パーキンソン作用を増強・延長し、レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズムを改善します。通常、レボドパ含有製剤との併用療法で使用されると予想できます。レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズムを適応症とする初めての薬なので、患者さんの新たな選択肢として治療への貢献が期待されます。リムパーザ錠100mg/150mg画像を拡大する<使用上の注意>(1)本剤の術前・術後薬物療法としての有効性および安全性は確立していません。(2)アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬およびタキサン系抗悪性腫瘍薬を含む化学療法歴のある患者を対象とします。(3)承認された体外診断薬などを用いた検査により、生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異(病的変異または病的変異疑い)を有することが確認された患者に投与します。<用法・用量>通常、成人にはオラパリブとして300mgを1日2回、経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します。100mg錠と150mg錠の生物学的同等性は示されていないため、300mgを投与する際に100mg錠を使用することはできず、100mg錠は減量時のみ使用します。<Shimo's eyes>オラパリブは、DNA損傷応答(DDR)機能を標的とした新規の作用機序を持つ、世界初のPARP阻害薬です。DNAの相同組換え修復機構が機能していないがん細胞に対して特異的に細胞死を誘導します。もともとは白金系抗悪性腫瘍薬感受性の再発卵巣がん治療薬として発売されましたが、今回の適応追加により、国内で初めて、BRCA遺伝子陽性の遺伝性乳がん治療薬として使用されることになりました。BRCA遺伝子は、アンジェリーナ・ジョリーさんが陽性であったことでも知られています。本剤は、悪心・嘔吐が高頻度で認められているため、服薬指導の際に、脱水が起こらないように水分補給や食事の工夫などのアドバイスができるとよいでしょう。

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過敏性腸症候群は炎症性腸疾患よりもうつ病が重症化しやすい

 過敏性腸症候群(IBS)患者は炎症性腸疾患(IBD)患者と比べて併存しているうつ病や不安の重症度が高いことが、中国・中日友好医院のQin Geng氏らの研究によって明らかになった。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2018年5月4日号に掲載。過敏性腸症候群のうつ病は炎症性腸疾患と比べて重症度が高い IBSやIBDといった慢性胃腸疾患の患者では、うつ病が併存している割合が高いが、IBSとIBDで一貫性のある結果は認められていない。そのため、本研究では、IBSおよびIBD患者におけるうつ病の有病率や重症度について検討した。 PubMed、PsycINFO、Embase、Cochrane Library、Wan Fang、SinoMed、Chinese National Knowledge Infrastructureを使用して、2017年9月12日までのデータについて体系的な文献探索を行い、比較解析のためのIBS患者とIBD患者を抽出した。さらに、ランダム効果モデルによって併存したうつ病の標準化平均差(standardized mean difference:SMD)とオッズ比を算出したほか、今回の解析に用いた研究から併存した不安に関するデータを抽出し、メタ解析を行った。メタ解析の質の評価はNewcastle-Ottawa Scale(NOS)を用いて行った。 過敏性腸症候群患者と炎症性腸疾患患者のうつ病の有病率や重症度を検討した主な結果は以下のとおり。・IBS患者1,244名とIBD患者1,048名が22件の研究から抽出された。・うつ病の有病率は、IBS群とIBD群で有意差はなかった(研究数10件、OR=1.18、95%CI:0.87~1.60、p=0.29)。・IBS群は、IBD群と比べて、以下の症状の重症度が高かった。 うつ病(pooled SMD=0.18、95%CI:0.04~0.33、p=0.01) 不安(pooled SMD=0.31、95%CI:0.14~0.49、p=0.0006)・22件中16件の研究が、NOSにより「質が高い」と評価された。

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潰瘍性大腸炎にはチーム医療で対抗する

 2018年7月2日、ファイザー株式会社は、同社が販売するJAK阻害剤トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)が、新たに指定難病の潰瘍性大腸炎(以下「UC」と略す)への適応症追加の承認を5月25日に得たのを期し、「潰瘍性大腸炎の治療法の現在と今後の展望について」と題するプレスカンファレンスを行った。カンファレンスでは、UC診療の概要、同社が全世界で実施したUC患者の実態調査「UC ナラティブ(Narrative)」の結果などが報告された。※トファシチニブは、2013年に関節リウマチの治療薬として発売されている治療薬は特定標的を対象にした免疫抑制のステージへ はじめに「もはや“難病”ではない炎症性腸疾患の治療法の進歩とチーム医療の役割」をテーマに日比 紀文氏(北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療[IBD]センター長)が、UC診療の概要とチーム医療の重要性を説明した。 患者実数では20万人を超えるとも言われているUCは、若年発症が多く、炎症が慢性に持続するため患者のQOLを著しく低下させる。また、UCは現在も根治する治療法がなく、患者の多くは再燃と寛解を繰り返しつつ、再燃の不安を持ち日常生活を送っている。 UCの病因は現在も不明で遺伝、腸内細菌、環境因子などの要因が指摘されている。発症すると粘血便、下痢、腹痛が主症状として見られる。 治療では、従来5-ASA製剤、副腎皮質ステロイドなどを使用して寛解導入が行われ、同じく5-ASA製剤、6MP/AZA製剤などを使用して寛解維持が行われてきた。現在も5-ASA製剤が第1選択薬であることには変わりないが、近年では疾患の免疫抑制を主体とした抗TNFα抗体、抗IL12/23抗体、抗α4β7抗体、JAK阻害剤などの新しい治療薬も登場している。とくに炎症を起こすサイトカインを標的する抗TNFα抗体やJAK阻害剤などの新しい治療薬は、「初めて特定標的に対する治療となり、治療にパラダイムシフトをもたらす」と同氏は期待を寄せる。 また、治療に際しては、「速やかな寛解導入と長期間の安全な寛解維持のためにチーム医療が重要だ」と同氏は提案する。患者を中心に医師、看護師、薬剤師による治療の提供はもちろん、家族、友人、患者の社会関係者(会社や学校など)などもチームに取り込み、疾患への理解とサポートを行う必要があるという。実際にチーム医療の成果として、当院では「医療職種の特性を生かした分担と連携によるきめ細かな治療のため、難治性UCやクローン病は激減した」と同氏は自身の体験を語る。 今後、治療薬として「サイトカインを標的にしたもの」「免疫細胞の接着・浸潤を抑制するもの」「腸内微生物を調節するもの」「再生・組織修復をするもの」などの研究開発が求められるとした上で、「こうした治療薬が、患者の寛解導入・維持をより容易にし、患者が普通の日常生活を送ることができるようになる。そのためにも患者個々に合わせた手厚いチーム医療が必要で、結果としてUCが難病ではなくなる日が来る」と同氏は展望を語り、レクチャーを終えた。UC患者は医療者に遠慮している 続いて、渡辺 憲治氏(兵庫医科大学 腸管病態解析学 特任准教授)が、「潰瘍性大腸炎実態調査『UCナラティブ』の結果について」をテーマに、結果の概要を解説した。 「UCナラティブ」とは、UC患者とUCの診療をしている医師を対象に、UCに罹患している人々がどのような影響を疾患から受けているかを調査する活動。今回、全世界10ヵ国より患者2,100例、医師1,454例にオンライン調査を実施し、その結果を報告した(調査期間:患者は2017年11月21日~2018年1月9日、医師は2017年11月29日~12月20日)。 患者は、UCと確定診断され、過去12ヵ月以内に医師の診察を受け、UCの治療薬として2種類以上を服用している患者が選ばれたほか、医師では消化器専門の内科医・外科医で、毎月5人以上のUC患者を診察(同時に10%の患者に生物学的製剤を投与)している医師が対象とされた。 アンケート結果について、患者に「UCを患っていなければもっと成功したか」と聞いたところ、68%が「そう思う」と回答。医師に「UCを発症していなければ担当患者は人間関係のアプローチが違ったか」と聞いたところ63%が「そう思う」と回答し、同様に「別の仕事や進学を選んでいたか」を聞いたところ51%が「別の仕事や進学の選択をした」と回答し、UCは患者の人生などに影を落とす疾患であると認識していることがわかった。 患者から医師に理解して欲しいUCの経験については「生活の質への影響」(35%)「日常の疲労感」(33%)「精神衛生面への影響」(30%)の順で多く、医師が患者と話し合うトピックスについては「治療オプションの利益とリスク」(75%)「副作用への懸念」(75%)「患者のアドヒアランス」(69%)の順で多く、両者の間にギャップがあることが明らかになった(いずれも複数回答)。また、患者から医師に「気兼ねなく心配や不安を話すことができるか」との質問では、81%が「できる」と回答しているものの、その内の44%の患者は「医師に多くの質問をすると、扱いにくい患者と見られて、治療の質に悪影響を及ぼすのではないかと心配」とも回答している。 最後に同氏は、「今回のアンケート結果を踏まえ、患者と医師の視点、意識の違いを知ることで、今後の日常臨床に活かしていきたい。UCは、患者に身体的・精神的影響を及ぼし、社会に機会損失をもたらす。患者には、周囲のサポートと理解が必要である。また、医師との間では、十分なコミュニケーションが大切であり、患者を中心にしたチーム医療を推進することで、患者の人生を満足させるべく、患者と医師が同じ目標に向かう協力者となってもらいたい」と思いを語った。トファシチニブの概要 トファシチニブは、炎症性サイトカインのシグナル伝達を阻害し、炎症を抑える薬剤。効果として第III相国際共同試験(1094試験)では、プラセボ群とトファシチニブ群(10mg1日2回)の比較で、寛解率がプラセボ群8.2%に対し、トファシチニブ群は18.5%と優越性が示された。安全性では、重篤な副作用、感染症などの発現はないものの、アジア人には帯状疱疹の発現がやや高い傾向があった。なお、本剤に起因する死亡例はなかった。注意すべき副作用としてリンパ球数減少、好中球数減少、貧血などが示されている。【効能・効果】 中等症から重症のUCの寛解導入および維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)【用法・容量】・導入維持療法では、通常、成人に1回10mgを1日2回8週間にわたり経口投与。 効果不十分な場合はさらに8週間投与。・寛解維持療法では、通常、成人に1回5mgを1日2回経口投与。効果減弱など患者の状態により1回10mgを1日2回投与にすることもできる。【その他】 適応症追加後3年間、全例調査を実施■参考ニュースリリース ファイザー株式会社ゼルヤンツ、潰瘍性大腸炎の適応症を追加潰瘍性大腸炎患者さんの生活実態調査■関連記事希少疾病ライブラリ 潰瘍性大腸炎

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生物学的製剤の早期導入で寛解を目指す

 冒頭では、イミュノロジー グローバルマーケティング&コマーシャルオペレーションズ ヴァイス・プレジデントのティアゴ・ロドリゲス氏が、「アッヴィの免疫領域におけるこれまでの貢献、これからの取り組み」について語り、ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)発売10周年を記念し、自己注射時の負担軽減を目的に開発された、新しいペン型デバイスを、世界で初めて日本で導入したことを発表した。現在も、安全性を確保したうえで効果を高めることができないかと考え、多くの国・適応を対象に生物学的製剤の臨床試験を続けているという。 講演では、「各疾患領域における生物学的製剤の役割と今後の展望」について、領域別(関節リウマチ・消化器・皮膚)で3人の演者がレクチャーを行った。共通していた内容は、この10年で難治性疾患の治療が劇的に変わったということ、そして、生物学的製剤は早期に導入されるほど、寛解率が上がるということであった。安全性などへの懸念により、早期導入が進まない現状 初めに、竹内 勤氏(慶應義塾大学 医学部 リウマチ・膠原病内科 教授)が、関節リウマチ領域について説明した。生物学的製剤による治療は、関節破壊の進行抑制、労働生産性の改善などといった効果を発揮する。しかし、すでに破壊された関節は元に戻らないため、発症後どの段階で生物学的製剤を導入するかが重要であり、2~3年以内の導入が望ましいという。同氏は、「早期導入が進まない原因として、医師が安全性を憂慮し過ぎていることが考えられる。データはたくさんあるので、医師は有効性・安全性などについて積極的に正しい知識を習得し、必要な患者さんには生物学的製剤を導入してほしい」と語った。 続いて、日比 紀文氏(北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター センター長)が、消化器領域について講演を行った。同氏は、「生物学的製剤は、難治性の炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)にパラダイムシフトを起こした」とその衝撃を表現した。かつては、薬物治療が無効な場合、大腸全摘の選択肢しか残されていなかった。しかし、生物学的製剤の登場で、難治性の炎症性腸疾患は激減し、寛解導入・寛解維持は容易になったという。同氏は、「今後、患者は多くの選択肢から適切な治療を選ぶことができ、体調の悪化による活動制限から解放され、通常の日常生活を送ることが可能になるだろう」と展望を述べた。発症後、時間が経つほど苦痛は蓄積する 最後に、小林 里実氏(社会福祉法人聖母会 聖母病院皮膚科 部長)が、乾癬を中心に、皮膚科領域への期待を語った。乾癬は、重症化すると関節破壊を起こすことがあり、QOLの低下はがんにも匹敵する1)という。乾癬治療は、2010年に抗TNF製剤が登場して以降、劇的に変化し、生物学的製剤による治療で、PASIスコア(乾癬の面積と重症度の指標)が90%以上改善する例も見られるようになった。しかし、小林氏は、PASIスコアが0になったからといって、生活の質が完全に回復するわけではないことを指摘した。同氏は、「乾癬は、発症後の身体的・精神的な苦痛が大きく、それらは蓄積され、経験として残る。早期の適切な治療がもっとも重要だ」と強調した。 講演の後には、生物学的製剤によって疾患の苦しみから解放された患者や患者の家族らがパネルディスカッションを行った。「これからの10年は、難治性疾患の苦しみで社会に出られなかった患者たちが、生物学的製剤の力を借りて社会に戻っていける時代だ」と締めくくった。

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病気があっても働き続けられる職場作り

『事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン』を更新 厚生労働省は、2018年4月24日に『事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン』(2016年2月作成)に、難病に関する留意事項、企業・医療機関連携のためのマニュアルなどを追加・更新したガイドラインを発表した。 このガイドラインは、事業場が、がん、脳卒中などの疾病を抱える患者に対し、適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行い、治療と職業生活が両立できるようにするため、事業場における取組などをまとめたもの。「勤務状況を主治医に提供する際の様式例」などの様式例集のほか、支援制度、支援機関の情報、「企業・医療機関連携マニュアル」などが掲載されている。がん、脳卒中、肝疾患に難病を追加 今回、従来の留意事項の疾患である、がん、脳卒中、肝疾患に難病が追加された。「難病」については、「発病の機構が明らかでなく、治療法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなる疾病を指す」と定義し、就労世代に多い主な難病として「潰瘍性大腸炎、クローン病」「全身性エリテマトーデス」「パーキンソン病」を挙げ、疾患概要を説明している。 また、難病に共通してみられやすい症状として「全身的な体調の崩れやすさ-気力・体力の低下、疲れやすさなど」「発熱」「労作時の動悸・息切れ、筋力低下など」を示すとともに、これらに対して本ガイドラインでは、「難病治療の特徴を踏まえた対応」「メンタルヘルスへの配慮」「難病に対する不正確な理解・知識に伴う問題への対応」を企業などに求め、啓発している。■参考厚生労働省 治療と仕事の両立について■関連記事希少疾病ライブラリ 

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民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.3

第9回  消化器(肝胆膵) 第10回 消化器(消化管) 第11回 感染症 第12回 呼吸器 内科系試験に対応した全3巻の基本講座の第3巻です。試験内容が異なる認定内科医と総合内科専門医試験ですが、学生の頃に学んだことを復習するというスタートラインは同じ。全13領域で出題頻度の高いテーマを、わかりやすいシェーマと明快な講義で総復習しましょう。題名の「CUE」は放送業界用語の「キュー」、『臨床的有用性』(Clinical Utility)、そしてパーキンソン病医療における「CUE」から来ています。つまり、「動こうとしてもはじめの一歩が踏み出せない状態」に対して、このレクチャーが試験勉強を始める一歩を踏み出すきっかけになってほしいという思いです。講師の民谷先生の実臨床経験を組み込んだクリアな解説は、とても役に立ちます。専門外や苦手科目からチェックして、次のステップへ進んでください。第9回 消化器(肝胆膵)出題数の多い消化器領域は、まずは民谷式の解剖図を用いて肝臓の病態や疾患を解説します。ミクロの視点で疾患を整理していくと、長い臨床問題を論理的な筋道を追いながらスムーズに解いていけるようになります。また、この領域でとくに出題が多いのはIgG関連疾患。試験に役立つポイントが丸わかりです。第10回 消化器(消化管) 出題数の多い消化器領域の消化管領域について取り上げます。まずは消化管の壁断面をおさらいしてから、それぞれの疾患について掘り下げていきます。クローン病と潰瘍性大腸炎、マロリー・ワイス症候群と特発性食道破裂。症状が似たの疾患の区別も、民谷式オリジナルシェーマを用いた解説ですんなりと頭に入ります。第11回 感染症 感染症の領域では、原因微生物・薬理学・臨床症状を総合して理解することが大切になります。民谷式でわかりやすくまとめた表で一つひとつ整理していくと、長い臨床問題を短い時間で解くためのポイントがわかっていきます。さらにどの抗菌薬がどこまでカバーしているかをまとめた表は、試験に必ず役に立ちます。第12回 呼吸器 呼吸器領域では、肺の疾患を中心におさらいしていきます。民谷式オリジナルの簡略化したシェーマでまずは全体の流れを掴みます。臨床問題では、低酸素血症と二酸化炭素が不足している状態をしっかり分けて考えることが、問題文を読み解くヒントになります。

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直腸に泡で留まる潰瘍性大腸炎治療薬

 2018年2月8日、EAファーマ株式会社とキッセイ薬品工業株式会社は、2017年12月に潰瘍性大腸炎治療薬 ブデソニド(商品名:レクタブル 2mg注腸フォーム)が発売されたことを機に潰瘍性大腸炎(以下「UC」と略す)に関するメディアフォーラムを開催した。 フォーラムでは、「進歩し続ける潰瘍性大腸炎(UC)治療~病態に応じた適切な治療法の確立に向けて~」をテーマに日比 紀文氏(北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター センター長)を講師に迎え、同症の治療の最前線が講演された。増加し続ける炎症性腸疾患の患者 原因不明かつ根本的な治療法がない炎症性腸疾患(IBD)は、わが国では年々患者数が増加傾向にあり、2014年度で22万人超の患者がいるとされる(医療受給者証・登録者証交付件数より算出)。そのうち約18万人がUCの患者であり、アメリカに次いで多い患者数だという。また、UCは、患者に幅広い年齢分布を持つ疾患であり、近年では高齢の患者が増加している。 UCは、粘血便、下痢、腹痛を主症状とし、大腸をスポットにした疾患であり、寛解と再燃を繰り返すのが特徴である。そのため治療では、速やかに炎症を抑える寛解導入と長期間安全に再燃・炎症抑制を行う寛解維持が行われる。潰瘍性大腸炎の治療のポイント UCの治療薬は、1995年まで炎症抑制のために副腎皮質ステロイドと5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA)のサラゾスルファピリジン、メサラジンが使われ、寛解の維持には5-ASA製剤と免疫調節薬のメルカプトプリン(6MP)/アザチオプリン(AZA)が使われてきた。その後、治療薬の進歩もあり、現在では抗TNFα抗体、CsA/FK506、白血球除去療法、ブデソニド、抗α4β7抗体、JAK阻害薬が寛解導入に、抗TNFα抗体、抗α4β7抗体、JAK阻害薬が寛解維持に使用されるようになっている。これらは、患者の重症度に応じて選択されるが、「UCの基本的治療薬は現在も5-ASA製剤であり、錠剤や坐剤などに進化した同剤をいかに的確に使用するかが重要だ」と同氏は指摘する。 また、「UCでは、ステロイドの有効性を高め、副作用をいかに軽減するかがポイントになる」と語る。とくに直腸の炎症の有無が、便回数や血便などの症状に大きく関与することから、「ブデソニドのような局所へのステロイド投与は、治療効果を高めることができる」と同氏は説明する。同剤は、有効成分が泡状となり腸内に長時間滞留することで効果を発揮し、肝臓ですぐに代謝されることで全身の副作用の低減が期待されている。また、立位でも投与可能で、持ち運びも便利なことから、症状悪化時の患者のADL改善に寄与すると期待が持たれている。 次に、長期間の寛解維持のためチオプリン剤の有効性、安全性の向上について説明。アジア人では、骨髄抑制や脱毛などが欧米人と比較し、多いことが報告されているが、NUDT15遺伝子の異常チェックにより、ある程度の副作用予測はできると語った。ステロイド抵抗例、依存例への治療では 治療患者全体の30%に起こるステロイド抵抗例、依存例への治療については、インフリキシマブやアダリムマブなどの抗TNFα抗体、タクロリムス、白血球除去療法の3つの対策が示され、治療時のポイントが説明された。とくに抗TNFα抗体では、中止後の再燃と再燃時の再投与の問題について、中止後の再燃は1年で40%以下であること、再開後も70~90%で有効であることが示された。タクロリムスとの薬剤選択では、有効性も安全性もほぼ同等だが、抗TNFα抗体では保険適用や高い薬価が、タクロリムスでは副作用の問題もあることなども付言された。また、白血球除去療法では、有効性と安全性の報告が出てきつつあるが、治療法の煩雑さや効果で薬剤よりも弱い点があるなど課題も指摘された。 最後に日比氏は、「2017年に登場した抗TNFα抗体であるゴリムマブ、1日1回服用の5-ASA製剤メサラジン、そして、今回のブデソニド注腸フォームと日々治療薬は進歩し、来年には免疫細胞の接着・浸潤を抑制する新しい形の治療薬の市販も予定されている」と新薬を紹介した後で、「こうした治療薬の進歩で、寛解導入も維持も以前と比べて容易となり、患者は通常の生活を送れるようになりつつある。今後は、根本治療も視野に入れていきたい」と希望を語り、レクチャーを終えた。

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再発性ディフィシル感染症に対する糞便移植-経口カプセル投与は有効か-(解説:小金丸博氏)-788

 クロストリジウム・ディフィシルは抗菌薬関連下痢症の原因となる主要な細菌である。クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)は、治療によりいったん改善しても約20%で再発し、再入院や医療費増加の原因となることが知られている。また1度再発した患者のうち、40~65%がさらなる再発を経験する。再発を繰り返すCDIの治療アルゴリズムはまだ確立していないが、近年、糞便移植の有効性が数多く報告され注目を集めている。 本研究は、再発性CDI患者を対象に、便細菌叢の投与経路による有効性の違いを検討した非盲検ランダム化非劣性試験である。少なくとも3回以上CDIを繰り返した18~90歳の患者を対象とし、経口カプセルで投与する群と大腸内視鏡で投与する群に分けて、治療効果、有害事象発生率、患者不快感などを評価した。慢性下痢症、炎症性腸疾患、がんで治療中の患者などは対象から除外された。1回の糞便移植で12週後にCDI再発を予防できたのは、経口カプセル投与群、大腸内視鏡投与群ともに96.2%であり、経口カプセル投与群の大腸内視鏡投与群に対する非劣性が示された(群間差:0%、片側95%信頼区間:-6.1%~無限大、p<0.001)。また、経口カプセル投与群では「まったく不快でない」と回答した人の割合が、大腸内視鏡投与群と比較し有意に高率だった。 糞便移植とは、健常者の便に含まれる腸内細菌叢を患者に投与することで正常な腸内環境を復元し、腸炎の治癒を図る治療法である。本研究では、再発性CDIに対する治療法として、経口カプセルによる糞便移植が大腸内視鏡投与と同等の高い有効率を示した。カプセル製剤にすることで経口投与が可能となり、患者の心理的、肉体的負担を軽減できるのは大きなメリットである。再発性CDIに対する糞便移植の有効性については評価が定まりつつあるが、投与経路、長期安全性、ドナーの選定方法など未解決な部分も存在するため、今後のさらなる研究が待たれる。 CDIに対する糞便移植は、日本ではまだ一般的でなく、保険適用にもなっていない。しかしながら、再発性CDIに対する高い有効性は魅力的であり、利便性や安全性が高まれば、治療方法の1つとして日本でも広がる可能性が十分あると考える。■「糞便移植」関連記事糞便移植は潰瘍性大腸炎の新たな治療となるか/Lancet

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クロストリジウム感染症の再発予防の糞便移植、経口カプセルでも/JAMA

 再発性クロストリジウム・ディフィシル感染症(RCDI)に対する糞便微生物移植(FMT)の経口カプセルによる実施は、大腸内視鏡で行うFMTに対して再発予防効果は非劣性であることが示された。また、経口カプセルFMTは大腸内視鏡FMTに比べて、患者の不快感も少なかった。カナダ・アルバータ大学のDina Kao氏らが、116例の患者を対象に行った非盲検無作為化非劣性試験で明らかにしたもので、JAMA誌2017年11月28日号で発表した。これまでFMTについて、送達ルートの違いにより臨床的効果が異なるのかは不明であった。各FMT実施12週間後のRCDI予防効果を比較 研究グループは、2014年10月~2016年9月にかけて、カナダ・アルバータ州の3つの大学病院で、RCDI患者116例を対象に試験を開始し、経口カプセルFMTの大腸内視鏡FMTに対する非劣性を検証した。非劣性マージンは15%とした。 主要アウトカムは、FMT実施12週間後のRCDI非発生患者の割合だった。副次アウトカムは、(1)重度および軽度有害事象の発生率、(2)健康関連QOL(生活の質)36項目調査票(SF-36)スコア(0[QOLが最悪]~100[QOLが最良])、(3)患者評価に基づく不快感(10段階評価で1[まったく不快ではない]~10[きわめて不快])と満足感(1[最良]~10[最悪])だった。RCDI予防率は両群ともに約96% 被験者116例(カプセル群57例、大腸内視鏡群59例)は、平均年齢58[SD 19]歳、女性が68%を占めた。試験を完了したのは105例(91%)だった。 per-protocol解析の結果、1回のFMT実施で12週後にRCDIを予防できたのは、カプセル群51/53例、大腸内視鏡群50/52例で、両群ともに達成率は96.2%で、カプセル群の大腸内視鏡群に対する非劣性が示された(群間差:0%、片側95%信頼区間[CI]:-6.1~無限大、p<0.001)。 軽度有害事象の発生率は、大腸内視鏡群12.5%に対しカプセル群は5.4%だった。また、不快感に関する患者評価で「まったく不快ではない」と回答した人の割合は、大腸内視鏡群44%に対しカプセル群は66%と有意に高率だった(群間差:22%、95%CI:3~40、p=0.01)。 著者は、「経口カプセルFMTは、RCDI治療の効果的なアプローチ法と思われる」とまとめている。■「糞便移植」関連記事糞便移植は潰瘍性大腸炎の新たな治療となるか/Lancet

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クローン病に対するタイトな管理の有用性-多施設共同RCT(解説:上村直実氏)-772

 クローン病(CD)は原因不明で根治的治療が確立していない慢性炎症性腸疾患であり、わが国の患者数は現在約4万人で、医療費補助の対象である特定疾患に指定されている。本疾患に対する薬物療法の目的は、活動期CDに対する寛解導入および寛解状態の維持であり、一般的には、罹患部位や症状および炎症の程度によって、5-ASA製剤、ステロイド、代謝拮抗薬、抗TNF拮抗薬と段階的にステップアップする薬物療法が行われている1,2)。 CDの活動性について、便中カルプロテクチン(FC)やC反応性蛋白(CRP)など腸炎症のバイオマーカーを用いて治療方針を決定することが、患者の予後を改善するかどうかは不明であった。本論文は、一般的なクローン病活動指数(CDAI)に基づく評価法と比較して、CDAIと上記の炎症マーカーおよびステロイドの使用量による厳密な活動性評価により抗TNF療法を含む治療方針を変更するほうが、1年後の内視鏡的粘膜治癒率の向上に結び付く研究結果を初めて示したものである。 わが国におけるCDの重症度を評価する方法は、CDAIスコア、CRP値による炎症、腸閉塞や膿瘍などの合併症の有無等を考慮した総合的判断により、軽症、中等症、重症と分類するのが一般的である1,2)。本研究で炎症のバイオマーカーを加えた厳密な活動性の評価が有用とされているが、わが国におけるFCの測定は潰瘍性大腸炎の活動性評価に保険適用を取得したものの、現状ではCDの病態把握に対しては承認されていない。一般の保険診療現場でCD患者に対しても使用できるように、本論文や過去の研究結果を参考にして、日本人の臨床エビデンスを構築するとともに、公知申請などを用いた企業や学会からの要望などが期待されるところである。■参考1)日本消化器病学会編. クローン病診療ガイドライン. 南江堂;2010.2)日本消化器病学会編. 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016. 南江堂;2016.

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クローン病と潰瘍性大腸炎の罹患率と有病率、世界的な傾向は?/Lancet

 炎症性腸疾患(IBD)は、21世紀において世界的な疾病となっている。中国・香港中文大学のSiew C. Ng氏らが各国のIBDの罹患率と有病率の変化を調べた結果、IBDは今世紀に入り、社会の西洋化が進む新興工業国で罹患者が急増し世界的な疾病になったこと、西洋諸国では罹患率は安定しているが有病率は0.3%を上回っており、疾病負荷は高いままであることを明らかにした。著者は、「示されたデータは、この複雑でコストのかかる疾病をマネジメントするために、IBDの予防およびヘルスケアシステムの革新に関する研究が必要であることを強調するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年10月13日号掲載の報告。クローン病と潰瘍性大腸炎の有病率などを報告した試験をレビュー 検討は、2016年12月31日時点でMEDLINEとEmbaseを検索し、クローン病または潰瘍性大腸炎の罹患率もしくは有病率を報告していた1990年以降の試験論文を特定し、観察的な住民ベース試験を対象としてシステマティックレビューにより行われた。住民ベース試験は、特定地域の居住者全員を対象としており、患者がその地域を代表している場合とみなした。また、レビューには、潰瘍性大腸炎とクローン病の報告が分かれていた試験を包含した。オリジナルデータを報告していない試験、小児のIBD(診断時の年齢が16歳未満)の罹患率または有病率のみを報告している試験は除外した。 最終的にシステマティックレビューの包含基準を満たしたのは147試験。そのうち、クローン病または潰瘍性大腸炎の罹患率を報告していたのは119試験、有病率を報告していたのは69試験であった。 研究グループは、クローン病と潰瘍性大腸炎の罹患率および有病率についてコロプレスマップを作成(区分地域は北米、東ヨーロッパ、北ヨーロッパ、南ヨーロッパ、西ヨーロッパ、東アジア、東南アジア、南アジア、西アジア、南米、オセアニア、アフリカ)。時間的傾向分析を用いて年率変化(annual percentage change:APC)を95%信頼区間(CI)値とともに算出し、変化について評価した。クローン病と潰瘍性大腸炎の有病率、ヨーロッパで最も高値 クローン病と潰瘍性大腸炎の有病率が最も高値であったのはヨーロッパで、潰瘍性大腸炎はノルウェー(北ヨーロッパ)で505例/10万人年、クローン病はドイツ(西ヨーロッパ)で322例/10万人年であった。また、北米も高値で、潰瘍性大腸炎は米国で286例/10万人年、クローン病はカナダで319例/10万人年であった。 北米(米国、カナダ)、オセアニア(オーストラリア、ニュージーランド)、ヨーロッパの多数の国(デンマーク、ドイツ、ハンガリー、スウェーデン、英国)で、IBDの有病率が0.3%を超えていた。 全体的には、クローン病の16/22試験(72.7%)および潰瘍性大腸炎の15/18試験(83.3%)が、北米およびヨーロッパのIBDの罹患率が安定または低下していることを報告していた。一方、1990年以降、罹患率が上昇していたのは、アフリカ、アジア、南米の新興工業国で、たとえばブラジル(1988~2012年のAPC、クローン病+11.1%[95%CI:4.8~17.8]、潰瘍性大腸炎+14.9%[10.4~19.6])、台湾(1998~2008年、+4.0%[1.0~7.1]、+4.8%[1.8~8.0])などで上昇が認められた。韓国では、1991~2005年の間は上昇が認められたが(クローン病+13.8%[8.7~19.0]、潰瘍性大腸炎+9.5%[2.7~16.7])、2006~12年は安定していた(-2.4%[-4.7~0.0]、-2.2%[-4.6~0.2])。

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遠隔医療で炎症性腸疾患の外来受診と入院が減少/Lancet

 炎症性腸疾患(IBD)患者に対する遠隔医療(myIBDcoach)は安全で、標準治療と比較し外来受診と入院の頻度を減少させることが、オランダ・マーストリヒト大学医療センターのMarin J de Jong氏らによる実用的多施設無作為化比較試験の結果、明らかとなった。IBDは、疾患の複雑さ、外来診療所へのプレッシャーの高まり、罹患率増加などにより、従来の状況では厳格で個別的な管理が困難となっているという。これまでに開発されたIBD患者の遠隔医療システムは、疾患活動性が軽度~中等度の特定の患者用でその効果は一貫していなかった。今回開発されたシステムはサブタイプを問わず適用可能であり、著者は「この自己管理ツールは、治療の個別化と価値に基づく医療(value-based health care)に向けたIBD治療の改革に役立つだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年7月14日号掲載の報告。遠隔医療システムを用いた介入と標準治療で、外来受診者数と医療の質を比較 研究グループは2014年9月9日~2015年5月18日に、オランダの大学病院2施設および一般病院2施設にて試験を実施した。対象は、回腸嚢肛門吻合術または回腸嚢直腸吻合術の既往がなく、インターネットにアクセス可能でオランダ語が堪能な18~75歳のIBD外来患者909例。疾患の活動性などをモニターし記録する遠隔医療システム(myIBDcoach)による介入群と、標準治療群に1対1の割合で無作為に割り付け(コンピュータが作成した割振りと最小化法を使用)、12ヵ月間追跡調査を行った。なお、患者、医療従事者およびアウトカムの評価者は盲検化されていない。 主要評価項目は、消化器内科医または看護師の外来診療所を受診した数と患者報告による医療の質(0~10点の視覚アナログスケールで評価)、安全性評価項目は、フレア数、ステロイド治療数、入院数、救急外来受診数、外科手術数で、intention to treat解析が実施された。遠隔医療群で外来受診数と入院数が有意に減少、患者が報告した医療の質は同等 遠隔医療群465例、標準治療群444例において、12ヵ月時における平均外来受診数(±SD)は、それぞれ1.55±1.50および2.34±1.64と遠隔医療群が有意に少なく(差:-0.79、95%信頼区間[CI]:-0.98~-0.59、p<0.0001)、平均入院数も同様の結果であった(0.05±0.28 vs.0.10±0.43、差:-0.05、95%CI:-0.10~0.00)、p=0.046)。 12ヵ月時における患者が報告した医療の質の平均スコアは、両群ともに高値であった(8.16±1.37 vs.8.27±1.28、差:0.10、95%CI:-0.13~0.32、p=0.411)。フレア数、ステロイド治療数、救急外来受診数、外科手術数は両群間で差はなかった。 なお、著者は「患者と医師のいずれも盲検化されておらず、追跡調査期間が短いことなど研究の限界がある」と述べている。

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2017年度認定内科医試験、直前対策ダイジェスト(後編)

【第1回】~【第6回】は こちら【第7回 消化器(消化管)】 全9問消化器は、最近ガイドライン改訂が続いているため、新たなガイドラインはチェックしておきたい。また潰瘍性大腸炎とクローン病については毎年出題されているので、両疾患の相違点を確認しておくことも重要である。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)胃食道逆流症(GERD)について正しいものはどれか?1つ選べ(a)コレシストキニンは下部食道括約筋(LES)収縮作用を持つ(b)シェーグレン症候群の合併症に胃食道逆流症(GERD)がある(c)食道粘膜障害の内視鏡的重症度は、自覚症状の程度と相関する(d)非びらん性胃食道逆流症はびらん性胃食道逆流症と違い、肥満者に多いという特徴を持つ(e)除菌治療によるピロリ菌感染率低下により、今後、患者数は減少すると予想されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第8回 消化器(肝胆膵)】 全8問肝臓については、各々の肝炎ウイルスの特徴と肝細胞がんの新たな治療アルゴリズムを確認しておきたい。膵臓については、膵炎の新たなガイドラインについて出題される可能性があるので、一読の必要がある。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)肝炎について正しいものはどれか?1つ選べ(a)急性肝炎でAST(GOT)>ALT(GPT)は、極期を過ぎて回復期に入ったことを示している(b)de novo B型肝炎は、HBV既往感染者(HBs抗原陰性・HBc抗体陽性・HBs抗体陽性)にステロイドや免疫抑制薬を使用した際にHBV再活性化により肝炎を発症した状態であり、通常のB型肝炎に比べて劇症化や死亡率は低い(c)HBVゲノタイプC感染に伴うB型急性肝炎では、肝炎が遷延もしくは慢性化する可能性がほかのゲノタイプよりも高い(d)B型急性肝炎とキャリアからの急性発症との鑑別にIgM-HBc抗体価が使用される(e)HBs抗原陽性血液に曝露した場合の対応として、 被曝露者がHBs抗原陰性かつHBs抗体陰性であれば十分な水洗いと曝露時のワクチン接種ならびに72時間以内のB型肝炎免疫グロブリン(HBIG)が推奨されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第9回 血液】 全7問血液領域については、何といっても白血病が設問の中心である。認定内科医試験では、治療よりも染色の特徴、検査データ、予防因子についてよく出題される傾向がある。このほか、貧血に関する出題も多いので、しっかりと押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)急性白血病について正しいものはどれか?1つ選べ(a)急性骨髄性白血病(AML)MO・M5b・M7では、MPO染色陰性であるため、注意する必要がある(b)急性前骨髄球性白血病(APL)では、白血病細胞中のアズール顆粒内の組織因子やアネキシンIIにより、播種性血管内凝固症候群(DIC)を高率に合併する(c)AMLのFAB分類M5では、特異的エステラーゼ染色・非特異的エステラーゼ染色とも陽性を示す(d)AMLの予後不良因子は、染色体核型がt(15:17)・t(8:21)・inv(16)である(e)ATRAを用いた治療中にレチノイン酸症候群または分化症候群を発症した場合、治療中断による白血病増悪を考え、ステロイド併用などを行いつつ治療を継続すべきである例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第10回 循環器】 全9問循環器領域については、弁膜症や心筋梗塞など主要疾患の診断確定に必要な身体所見と検査所見をしっかり押さえることが重要である。高血圧や感染性心内膜炎の問題は毎年出題されているので、フォローしておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)弁膜症について正しいものはどれか?1つ選べ(a)僧帽弁狭窄症(MS)は、本邦では高齢化に伴い近年増加傾向である(b)僧帽弁狭窄症(MS)では、拡張期ランブルを聴診器ベル型で聴取する(c)僧帽弁狭窄症(MS)では、心音図でQ-I時間が短いほど、II-OS時間が長いほど重症と判定する(d)僧帽弁狭窄症(MS)の心臓超音波検査では、僧帽弁前尖の拡張期後退速度(DDR)の上昇を認める(e)僧帽弁逸脱症(MVP)は肥満体型の男性に多く認める例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第11回 神経】 全8問神経領域については、今年度も「脳卒中治療ガイドライン2015」と血栓溶解療法の適応に関する出題が予想される。各神経疾患における画像所見、とりわけスペクトとMIBGシンチグラフィは毎年出題されている。アトラス等でしっかりと確認しておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)脳梗塞について正しいものはどれか?1つ選べ(a)心原性脳塞栓症は、階段状増悪の経過をとることが多い(b)一過性脳虚血発作(TIA)で一過性黒内障の症状を認めた場合、椎骨脳底動脈系の閉塞を疑う(c)TIAを疑う場合のABCD2スコアは、A:Age(年齢)、B:BP(血圧)、C:Consciousness level(意識障害の程度)、D:duration(持続時間)とdiabetes(糖尿病の病歴)の5項目をスコアリングし、合計したものである(d)CHADS2スコア1点の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の脳卒中発症予防には、ワルファリンによる抗凝固療法が勧められている(e)血栓溶解療法(アルテプラーゼ静注療法)は、血小板8万/mm3では適応外である例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第12回 総合内科/救急】 全5問総合内科/救急では、「心肺蘇生ガイドライン2015」や、JCS・GCSスコアリング、確率計算の出題が予想される。2016年12月に「日本版敗血症診療ガイドライン2016」が発表されたので、内容を押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)事前確率25%で感度60%・特異度80%の検査が陽性であった場合の正しい事後確率はどれか?1つ選べ(a)15%(b)20%(c)50%(d)60%(e)80%例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【例題の解答】第7回:(b)、第8回:(d)、第9回:(b)、第10回:(b)、第11回:(e)、第12回:(c)【第1回】~【第6回】は こちら

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潰瘍性大腸炎に対する抗MAdCAM-1抗体の有用性-第II相試験(上村 直実 氏)-687

 潰瘍性大腸炎(UC)に関しては寛解導入および寛解維持を目的として、5-アミノサリチル酸(5-ASA)、ステロイド、免疫調節薬、抗TNFα薬、血球成分除去療法などによる治療が頻用されている。今回、従来治療に不耐容の中等症~重症活動性UCに対して、粘膜アドレシン細胞接着分子1(MAdCAM-1)を標的とする完全ヒトモノクローナル抗体(抗MAdCAM-1抗体)の有用性を検証した、国際間多施設共同第II相用量設定試験の結果が報告された。 主要エンドポイントを12週後の寛解達成率として、21ヵ国が参加した多施設共同試験の結果、抗MAdCAM-1抗体22.5mg群の寛解率が最も高く、プラセボ群2.7%と比べて有意に高い寛解効果を示した。また、安全性にも大きな問題がない結果であった。 MAdCAM-1は、小腸および大腸粘膜の血管内皮に表出し、リンパ球が血管系とリンパ組織の間を循環する際のホーミングに関連する重要な因子であり、腸管の炎症時にMAdCAM-1の表出が異常に亢進している現象が報告されていた。さらに、三浦らにより施行された動物実験ではMAdCAM-1の中和抗体が薬剤性腸炎を有意に抑制することも確認されており、炎症性腸疾患に対する薬剤として期待されていた1)。 以上の推移から抗MAdCAM-1抗体は、かなり難治で重症なUCに対する有用性が高い治療薬として期待されており、今回の用量設定試験の結果を受けて、今後、抗MAdCAM-1抗体の臨床的有用性を確認するための長期間のリスク・ベネフィットを明らかにする、第III相試験をはじめとする臨床試験結果が期待されるものと思われた。とくにMAdCAM-1分子は腸管で生理的な役割も果たしていることを鑑み、いつ投薬を中止したら良いのか、その後の再燃の可能性などの検討も待ち遠しい。■参考1) 三浦総一郎ほか. J Jpn Coll Angiol. 2008;48:143-149.

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潰瘍性大腸炎への抗MAdCAM-1抗体、有効量を確認/Lancet

 従来療法に不耐容の中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎患者に対し、開発中の、粘膜アドレシン細胞接着分子1(MAdCAM-1)を標的とする完全ヒトモノクローナル抗体PF-00547659(抗MAdCAM-1抗体)を投与することで、プラセボと比べ寛解導入が有意に良好であったことが報告された。また、安全性、忍容性も確認された。ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学のSeverine Vermeire氏らが、357例の患者を対象に行った第II相の無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果として、Lancet誌オンライン版2017年5月17日号で発表した。この結果を受けて同研究グループは現在、より大規模な第III相臨床試験を進行中である。抗TNFα治療歴で層別化し、抗MAdCAM-1抗体4種の用量を投与 研究グループは2012年11月2日~2016年2月4日にかけて、21ヵ国105ヵ所の医療施設を通じ、肛門縁から15cm超までに病変部が拡張している活動期潰瘍性大腸炎患者で、少なくとも1つの従来療法の効果が不十分または忍容性が不良の357例を対象に試験を行った。被験者の年齢は18~65歳で、総メイヨースコアは6以上、メイヨー内視鏡所見サブスコアは2以上だった。 被験者を抗TNFα治療歴の有無によって層別化し、無作為に5群に分け、抗MAdCAM-1抗体7.5mg(71例)、22.5mg(72例)、75mg(71例)、225mg(70例)、またはプラセボ(73例)を、ベースライン時と4週後にそれぞれ皮下注投与した。 主要エンドポイントは、12週後の寛解(総メイヨースコア2以下、1超の個別サブスコアなし、直腸出血サブスコア1以下)を達成した患者の割合とした。 有効性解析は、無作為化治療を1回以上受けた全患者を包含して行った。また安全性解析は、割り付け治療ごとに行った。すべてのp値は片側に多変量調整して算出した。抗MAdCAM-1抗体の22.5mg群、75mg群で最も有効 12週後の寛解率は、抗MAdCAM-1抗体群のうち投与量の少ないほうから3用量群でプラセボ群より有意に高率だった。プラセボ群の寛解率は2.7%に対し、7.5mg群は11.3%(プラセボ群とのリスク差:8.0%、p=0.0425)、22.5mg群は16.7%(同:12.8%ポイント、p=0.0099)、75mg群は15.5%(同:11.8%、p=0.0119)と有意差が認められたが、225mg群は5.7%(同:2.6%、p=0.1803)であり、有意差は認められなかった。 これらの寛解率は、抗TNFα治療歴の有無で補正後も同様の傾向が認められた。 なお、抗MAdCAM-1抗体の安全性に関する疑わしい事象は認められなかった。

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潰瘍性大腸炎の寛解導入と寛解維持におけるトファシチニブの有用性と安全性(解説:上村 直実 氏)-683

 潰瘍性大腸炎(UC)に関しては寛解導入および寛解維持を目的として、5-アミノサリチル酸(5-ASA)、ステロイド、免疫調節薬、抗TNFα薬、血球成分除去療法などによる治療が行われているが、今回、非受容体型チロシンキナーゼでサイトカイン受容体と関連するJanus kinase(JAK)の選択的阻害薬であるトファシチニブに関する検討結果が報告された。 抗TNFなどの抗体製剤の開発が進むなか、経口低分子JAK阻害薬が潰瘍性大腸炎の寛解導入にも寛解維持にもプラセボに比べて有意に有効であったが、安全性には今後の検討が必要との成績であった。1年前のNEJM誌に報告された、スフィンゴシン-1-リン酸受容体のサブタイプ1と5の経口作動薬であるozanimodの8週時点での臨床的寛解率と単純に比較すると、活動性UCの寛解導入における有用性が期待されるが、長期使用を要する寛解維持に用いることはまだ躊躇される研究結果である。 わが国におけるトファシチニブは2013年に慢性関節リウマチ(RA)に対して保険承認されている薬剤で、低分子医薬品であるため生物学的製剤とは異なり経口投与が可能である点が特徴的である。一方、副作用として結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染などの重篤な感染症が報告されており、日本リウマチ学会のガイドラインにも「MTXを投与できない患者は原則として対象としないことが望ましい」と明記されている。今回の研究でもプラセボに比べて感染症や帯状疱疹が明らかに多く出現していることから、UCの寛解維持療法に使用するには長期の安全性確認が必須と思われる。 トファシチニブはUCに対する有用性の高い治療薬として期待されるものの、本研究期間の短さおよび有効率の低さなどから、トファシチニブの臨床的有用性を確認するためには長期間のリスク・ベネフィットを明らかにする臨床試験が必要であると考えられた。

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長門流 認定内科医試験BINGO! 総合内科専門医試験エッセンシャル Vol.2

第5回 内分泌 第6回 代謝 第7回 消化器(消化管)第8回 消化器(肝胆膵) 認定内科医試験に向けた全3巻の実践講座の第2巻です。重要ワードは「頻出」。長年試験問題を分析し続けている長門先生が、実際の試験問題に近い予想問題を作成し、頻出ポイントをテンポよく解説します。もちろん最新のガイドラインのアップデートにも対応。各科目で試験に問われやすいポイントを押さえていますので、認定内科医試験はもちろん、総合内科専門医試験を受ける先生方も確実に得点アップにつながります。年々難しくなっているといわれる内科系試験。このDVDでぜひ合格を勝ち取ってください。第5回 内分泌 内分泌の領域では、検査をどの順に進めて診断確定を行うかまで、細かく問われる傾向があります。とくに、甲状腺と副腎について出題が多いので、知識を整理しておきましょう。妊婦や授乳婦への禁忌項目も要チェックです。第6回 代謝代謝領域では、メタボリックシンドロームとアデポカインは近年、毎年出題されています。また、インスリンを含む糖尿病治療薬については細かく問われる傾向があります。薬剤の作用・適応・副作用・特徴をしっかり整理しておきましょう。第7回 消化器(消化管)消化管の領域では、潰瘍性大腸炎とクローン病ついて、毎年出題されています。両疾患の違いもポイントになるので、試験の「出るところ」をしっかり確認して確実に得点をとれるようにしましょう。長門流の予想問題では、新しいガイドラインの改訂にも対応しています。ぜひチェックしてください!第8回 消化器(肝胆膵)肝胆膵の領域では、肝炎ウイルスの特徴、肝細胞がんの新しい治療アルゴリズムについての出題が多い傾向があります。また、2015年に改訂があった「急性膵炎診療ガイドライン」からの出題も予想されます。この番組で頻出ポイントをしっかり押さえて、試験勉強を効率的に行ってください。

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潰瘍性大腸炎へのトファシチニブ、第III相試験の結果/NEJM

 米国・カリフォルニア大学のWilliam J. Sandborn氏らは、経口低分子ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のトファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ)が、中等症~重症の活動性潰瘍性大腸炎に対する寛解導入・維持療法として有効であることを、3件の無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験の結果、報告した。トファシチニブは、第II相試験で潰瘍性大腸炎に対する寛解導入療法としての効果が有望視されていた。NEJM誌2017年5月4日号掲載の報告。寛解導入療法と寛解維持療法におけるトファシチニブの有効性を寛解率で評価 研究グループは、潰瘍性大腸炎に対するトファシチニブの有効性および安全性を評価する3件の無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験(OCTAVE Induction 1、OCTAVE Induction 2、OCTAVE Sustain)を実施した。 OCTAVE Induction 1試験およびOCTAVE Induction 2試験では、腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬を含む前治療にもかかわらず中等症~重症の活動性潰瘍性大腸炎を呈する患者それぞれ598例および541例を、トファシチニブ(1回10mg)群またはプラセボ群に無作為に割り付け、1日2回8週間投与する寛解導入療法を行った。主要評価項目は、8週時点の寛解(Mayoスコア2以下かつ直腸出血サブスコアが0または1)であった。 OCTAVE Sustain試験は、寛解導入療法で臨床反応(Mayoスコアがベースラインから3ポイント以上かつ30%以上改善し、直腸出血サブスコアが1ポイント以上低下または1以下)が認められた患者593例を、トファシチニブ5mg、10mgまたはプラセボ群に無作為に割り付け、1日2回52週間投与する維持療法を行った。主要評価項目は、52週時の寛解であった。プラセボに比べトファシチニブの寛解率が有意に高い OCTAVE Induction 1試験において、8週時の寛解率はトファシチニブ群18.5% vs.プラセボ群8.2%(p=0.007)、OCTAVE Induction 2試験ではそれぞれ16.6% vs.3.6%(p<0.001)であった。OCTAVE Sustain試験における52週時の寛解率は、トファシチニブ5mg群34.3%、10mg群40.6%に対し、プラセボ群は11.1%であった(各用量群のプラセボ群に対するp<0.001)。 安全性に関しては、OCTAVE Induction 1/2試験では、すべての感染症および重症感染症の頻度がプラセボ群よりトファシチニブ群で高値であった。OCTAVE Sustain試験では、重症感染症の頻度は3群で類似していたが、すべての感染症ならびに帯状疱疹発症の頻度はプラセボ群よりトファシチニブ群で高値であった。また、3試験全体において、非黒色腫皮膚がんがトファシチニブ群で5例、プラセボ群で1例確認された。心血管イベントは、トファシチニブ群でのみ5例にみられた。そのほか、プラセボ群と比較してトファシチニブ群で脂質増加の頻度が高かった。 著者は、寛解導入試験の期間が短く安全性の評価や8週以上の有効性評価が不十分であることや、潰瘍性大腸炎患者にトファシチニブを1年以上投与した場合のリスクは不明であることなどを研究の限界として挙げている。なお、長期的安全性に関しては、非盲検延長試験(OCTAVE Open)が進行中である。

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自己免疫性溶血性貧血〔AIHA: autoimmune hemolytic anemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia:AIHA)は、赤血球膜上の抗原と反応する自己抗体が産生され、抗原抗体反応の結果、赤血球が傷害を受け、赤血球の寿命が著しく短縮(溶血)し、貧血を来す。AIHAは、自己抗体の性状によって温式抗体によるものと、冷式抗体によるものに2大別される。温式抗体(warm-type autoantibody)による病型を単に自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と呼ぶことが多い。冷式抗体(cold-type autoantibody)による病型には、寒冷凝集素症(cold agglutinin disease:CAD)と発作性寒冷ヘモグロビン尿症(paroxysmal cold hemoglobinuria:PCH)とがある。温式抗体は体温付近で最大活性を示し、原則としてIgG抗体である。一方、冷式抗体は体温以下の低温で反応し、通常4℃で最大活性を示す。IgM寒冷凝集素とIgG二相性溶血素(Donath-Landsteiner抗体)が代表的である。時に温式抗体と冷式抗体の両者が検出されることがあり、混合型(mixed type)と呼ばれる。■ 疫学AIHAの推定患者数は100万人対3~10人、年間発症率は100万人対1~5人で、病型別比率は、温式AIHA90.4%、CAD7.7% 、PCH1.9%とされている。温式AIHAの特発性/続発性は、ほぼ同数に近いと考えられる。特発性温式AIHAは、小児期のピークを除いて二峰性に分布し、若年層(10~30歳で女性が優位)と老年層(50歳以後に増加し70代がピークで性差はない)に多くみられる。全体での男女比は1~2:3で女性にやや多い。CADのうち慢性特発性は40歳以後にほぼ限られ男性に目立つが、続発性は小児ないし若年成人に多い。PCHは、現在そのほとんどは小児期に限ってみられる。■ 病因自己抗体の出現機序として次のように整理されている。1)免疫応答機構は正常だが患者赤血球の抗原が変化して、異物ないし非自己と認識される。2)赤血球抗原に変化はないが、侵入微生物に対して産生された抗体が正常赤血球抗原と交差反応する。3)赤血球抗原に変化はないが、免疫系に内在する異常のために免疫的寛容が破綻する。4)すでに自己抗体産生を決定付けられている細胞が、単または多クローン性に増殖または活性化され、自己抗体が産生される。■ 症状1)温式AIHA臨床像は多様性に富み、発症の仕方も急激から潜行性まで幅広い。とくに急激発症では発熱、全身衰弱、心不全、呼吸困難、意識障害を伴うことがあり、ヘモグロビン尿や乏尿も受診理由となる。急激発症は小児や若年者に多く、高齢者では潜行性が多くなるが例外も多い。受診時の貧血は高度が多く、症状の強さには貧血の進行速度、心肺機能、基礎疾患などが関連する。黄疸もほぼ必発だが、肉眼的には比較的目立たない。特発性でのリンパ節腫大はまれである。脾腫の触知率は32~48%で、サイズも1~2横指程度が多い。温式AIHAの5~10%程度に直接クームス試験が陰性のものがあり、クームス陰性AIHAと呼ばれる。クームス試験が陽性にならない程度のIgG自己抗体が赤血球に結合しており、診断には赤血球結合IgG定量が有用である。クームス陽性AIHAと同様にステロイド反応性は良好である。特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を合併する場合をエヴァンス症候群と呼び、特発性AIHAの10~20%程度を占める。2)寒冷凝集素症(CAD)臨床症状は溶血と末梢循環障害によるものからなる。感染に続発するCAD は、比較的急激に発症し、ヘモグロビン尿を伴い貧血も高度となることが多い。マイコプラズマ感染では、発症から2~3週後の肺炎の回復期に溶血症状を来す。血中には抗マイコプラズマ抗体が出現し、寒冷凝集素価が上昇する時期に一致する。溶血は2~3週で自己限定的に消退する。EBウイルス感染に伴う場合は症状の出現から1~3週後にみられ、溶血の持続は1ヵ月以内である。特発性慢性CADの発症は潜行性が多く慢性溶血が持続するが、寒冷曝露による溶血発作を認めることもある。循環障害の症状として、四肢末端・鼻尖・耳介のチアノーゼ、感覚異常、レイノー現象などがみられる。これは皮膚微小血管内でのスラッジングによる。クリオグロブリンによることもある。皮膚の網状皮斑を認めるが、下腿潰瘍はまれである。脾腫はあっても軽度である。3)発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)現在ではわずかに小児の感染後性と成人の特発性病型が残っている。以前よくみられた梅毒性の定型例では、寒冷曝露が溶血発作の誘因となり、発作性反復性の血管内溶血とヘモグロビン尿を来す。寒冷曝露から数分~数時間後に、背部痛、四肢痛、腹痛、頭痛、嘔吐、下痢、倦怠感に次いで、悪寒と発熱をみる。はじめの尿は赤色ないしポートワイン色調を示し、数時間続く。遅れて黄疸が出現する。肝脾腫はあっても軽度である。このような定型的臨床像は非梅毒性では少ない。急性ウイルス感染後の小児PCHは5歳以下に多く、男児に優位で、季節性、集簇性を認めることがある。発症が急激で溶血は激しく、腹痛、四肢痛、悪寒戦慄、ショック状態や心不全を来したり、ヘモグロビン尿に伴って急性腎不全を来すこともある。発作性・反復性がなく、寒冷曝露との関連も希薄で、ヘモグロビン尿も必発とはいえない。成人の慢性特発性病型はきわめてまれである。気温の変動とともに消長する血管内溶血が長期間にわたってみられる。■ 分類AIHAは臨床的な観点から、有意な基礎疾患ないし随伴疾患があるか否かによって、続発性(2次性)と特発性(1次性、原発性)に、また臨床経過によって急性と慢性とに区分される。基礎疾患としては全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)などの自己免疫疾患とリンパ免疫系疾患が代表的である。マイコプラズマや特定のウイルス感染の場合、卵巣腫瘍や一部の潰瘍性大腸炎に続発する場合などでは、基礎疾患の治癒や病変の切除とともにAIHAも消退し、臨床的な因果関係が認められる。 ■ 予後温式AIHAで基礎疾患のない特発例では、治療により1.5年までに40%の症例でクームス試験の陰性化がみられる。特発性AIHAの生命予後は5年で約80%、10年で約70%の生存率であるが、高齢者では予後不良である。続発性の予後は基礎疾患によって異なり、リンパ系疾患に比べてSLEなどの自己免疫性疾患に続発する場合のほうが良好である。CADは感染後2~3週の経過で消退し、再燃しない。リンパ増殖性疾患に続発するものは基礎疾患によって予後は異なるが、この場合でも溶血が管理の中心となることは少ない。小児の感染後性のPCH は発症から数日ないし数週で消退する。強い溶血による障害や腎不全を克服すれば一般に予後は良好であり、慢性化や再燃をみることはない。梅毒に伴う場合の多くは、駆梅療法によって溶血の軽減や消退をみる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)(図1 AIHAの診断フローチャート)最初に溶血性貧血としての一般的基準を満たすことを確認し、次いで疾患特異的な検査によって病型を確定する。溶血性貧血の診断基準と自己免疫性溶血性貧血の診断基準を表1と表2に示す。画像を拡大する血液検査や臨床症状から溶血性貧血を疑った場合は、直接クームス試験を行い、陽性の場合は特異的クームス試験で赤血球上のIgG と補体成分を確認する。補体のみ陽性の場合は、寒冷凝集素症(CAD)や発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)の鑑別のため、寒冷凝集素価測定とDonath-Landsteiner(DL)試験を行う。寒冷凝集素は、凝集価が1,000 倍以上、または1,000 倍未満でも30℃以上で凝集活性がある場合には病的意義があるとされる。スクリーニング検査として、患者血清(37~40℃下で分離)と生食に懸濁したO型赤血球を混和し、室温(20℃)に30~60分程度放置後、凝集を観察する。凝集が認められない場合は病的意義のない寒冷凝集素と考えられる。凝集がみられた場合には、さらに温度作動域の検討を行う。凝集素価が低値でもアルブミン法などで30℃以上での凝集が認められる場合は低力価寒冷凝集素症とする。DL 抗体の検出は、現在外注で依頼できる検査機関がないことから、自前の検査室で行う必要がある。直接クームス試験が陰性であったり、特異的クームス試験で補体のみ陽性の場合でも、症状などから温式AIHA が疑われる場合やほかの溶血性貧血が否定された場合は、赤血球結合IgG 定量を行うとクームス陰性AIHA と診断できることがある。温式AIHAと寒冷凝集素症が合併している場合は、混合型AIHA の診断となる。表1 溶血性貧血の診断基準(厚生労働省 特発性造血障害に関する調査研究班[平成16年度改訂])1)1)臨床所見として、通常、貧血と黄疸を認め、しばしば脾腫を触知する。ヘモグロビン尿や胆石を伴うことがある。2)以下の検査所見がみられる。(1)へモグロビン濃度低下(2)網赤血球増加(3)血清間接ビリルビン値上昇(4)尿中・便中ウロビリン体増加(5)血清ハプトグロビン値低下(6)骨髄赤芽球増加3)貧血と黄疸を伴うが、溶血を主因としない他の疾患(巨赤芽球性貧血、骨髄異形成症候群、赤白血病、congenital dyserythropoietic anemia、肝胆道疾患、体質性黄疸など)を除外する。4)1)、2)によって溶血性貧血を疑い、3)によって他疾患を除外し、診断の確実性を増す。しかし、溶血性貧血の診断だけでは不十分であり、特異性の高い検査によって病型を確定する。表2 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断基準(厚生労働省 特発性造血障害に関する調査研究班[平成16年度改訂])1)1)溶血性貧血の診断基準を満たす。2)広スペクトル抗血清による直接クームス試験が陽性である。3)同種免疫性溶血性貧血(不適合輸血、新生児溶血性疾患)および薬剤起因性免疫性溶血性貧血を除外する。4)1)~3)によって診断するが、さらに抗赤血球自己抗体の反応至適温度によって、温式(37℃)の(1)と、冷式(4℃)の(2)および(3)に区分する。(1)温式自己免疫性溶血性貧血臨床像は症例差が大きい。特異抗血清による直接クームス試験でIgGのみ、またはIgGと補体成分が検出されるのが原則であるが、抗補体または広スペクトル抗血清でのみ陽性のこともある。診断は(2)、(3)の除外によってもよい。(2)寒冷凝集素症(CAD)血清中に寒冷凝集素価の上昇があり、寒冷曝露による溶血の悪化や慢性溶血がみられる。直接クームス試験では補体成分が検出される。(3)発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)ヘモグロビン尿を特徴とし、血清中に二相性溶血素(Donath-Landsteiner抗体)が検出される。5)以下によって経過分類と病因分類を行う。急性推定発病または診断から6ヵ月までに治癒する。慢性推定発病または診断から6ヵ月以上遷延する。特発性基礎疾患を認めない。続発性先行または随伴する基礎疾患を認める。6)参考(1)診断には赤血球の形態所見(球状赤血球、赤血球凝集など)も参考になる。(2)温式AIHAでは、常用法による直接クームス試験が陰性のことがある(クームス陰性AIHA)。この場合、患者赤血球結合IgGの定量が有用である。(3)特発性温式AIHAに特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が合併することがある(エヴァンス症候群)。また、寒冷凝集素価の上昇を伴う混合型もみられる。(4)寒冷凝集素症での溶血は寒冷凝集素価と平行するとは限らず、低力価でも溶血症状を示すことがある(低力価寒冷凝集素症)。(5)自己抗体の性状の判定には抗体遊出法などを行う。(6)基礎疾患には自己免疫疾患、リウマチ性疾患、リンパ増殖性疾患、免疫不全症、腫瘍、感染症(マイコプラズマ、ウイルス)などが含まれる。特発性で経過中にこれらの疾患が顕性化することがある。(7)薬剤起因性免疫性溶血性貧血でも広スペクトル抗血清による直接クームス試験が陽性となるので留意する。診断には臨床経過、薬剤中止の影響、薬剤特異性抗体の検出などが参考になる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 温式AIHAの治療(図2 特発性温式AIHAの治療フローチャート)画像を拡大する特発性の温式AIHAの治療では、副腎皮質ステロイド薬、摘脾術、免疫抑制薬が三本柱であり、そのうち副腎皮質ステロイド薬が第1選択である。特発性の80~90%はステロイド薬単独で管理が可能と考えられる。1)急性期:初期治療(寛解導入療法)ステロイド薬使用に対する重大な禁忌条件がなければ、プレドニゾロン換算で1.0mg/kgの大量(標準量)を連日経口投与する。高齢者や随伴疾患があるときは、減量投与が勧められる。約40%は4週までに血液学的寛解状態に達する。AIHAでは輸血はけっして安易に行わず、できる限り避けるべきとするのが一般的であるが、薬物治療が効果を発揮するまでの救命的な輸血は、機を失することなく行う必要がある。その場合、生命維持に必要なヘモグロビン濃度の維持を目標に行う。安全な輸血のため、輸血用血液の選択についてあらかじめ輸血部門と緊密な連携を取ることが勧められる。2)慢性期:ステロイド減量期ステロイド薬の減量は、状況が許すならば急がず、慎重なほうがよく、はじめの1ヵ月で初期量の約半量(中等量0.5mg/kg/日)とし、その後は溶血の安定度を確認しながら2週に5mgくらいのペースで減量し、10~15mg/日の初期維持量に入る。減量期に約5%で悪化をみるが、その際はいったん中等量(0.5mg/kg/日)まで増量する。3)寛解期:維持療法・治療中止時期ステロイド薬を初期維持量まで減量したら、網赤血球とクームス試験の推移をみて、ゆっくりとさらに減量を試み、平均5mg/日など最少維持量とする。直接クームス試験が陰性化し、数ヵ月以上経過しても再陽性化や溶血の再燃がみられず安定しているなら、維持療法をいったん中止して追跡することも可能となる。4)増悪期:再燃時、ステロイド不応例維持療法中に増悪傾向が明らかならば、早めに中等量まで増量し、寛解を得た後、再度減量する。ステロイド薬の維持量が15mg/日以上の場合、また副作用・合併症の出現があったり、悪化を繰り返すときは、2次・3次選択である摘脾や免疫抑制薬、抗体製剤の採用を積極的に考える。ステロイドによる初期治療に不応な場合は、まず悪性腫瘍などからの続発性AIHAの可能性を検索する。基礎疾患が認められない場合は、特発性温式AIHAとして複数の治療法が考慮されるが、優先順位や適応条件についての明確な基準はなく、患者の個別の状況により選択され、いずれの治療法もAIHAへの保険適用はない。唯一、摘脾とリツキシマブについては短期の有効性が実証されており、摘脾が標準的な2次治療として推奨されている。(1)摘脾脾臓は感作赤血球を処理する主要な臓器であり、自己抗体産生臓器でもある。わが国では特発性AIHAの約15%(欧米では25~57%)で摘脾が行われており、短期の有効性は約60%と高い。ステロイド投与が不要となる症例や20%程度に治癒症例もみられることから、ステロイド不応性AIHAの2次治療として推奨されている。(2)リツキシマブステロイド不応性温式AIHAに対する新たな治療法として注目されている。短期の有効性について多くの報告はあるが、まだ保険適用ではない。標準的治療としては375mg/m2を1週間おきに4回投与する。80%の有効率が報告されている。安全性に関しても大きな問題はない。短期間のステロイド投与を併用した低用量のリツキシマブ(100mg、4週ごと投与)も試みられている。(3)免疫抑制薬ステロイドに次ぐ薬物療法の2次選択として、シクロホスファミドやアザチオプリンなどが用いられる。主な作用は抗体産生抑制で、有効率は35~40%で、ステロイド薬の減量効果が主である。免疫抑制、催奇形性、発がん性、不妊症など副作用に注意が必要であり、有効であったとしても数ヵ月以上の長期投与は避ける。■ 冷式AIHAの治療保温が最も基本的である。室温、着衣、寝具などに十分な注意を払い、身体部分の露出や冷却を避ける。輸血や輸液の際の温度管理も問題となる。CADに対する副腎皮質ステロイド薬の有効性は温式AIHAに比しはるかに劣るが、激しい溶血の時期には短期間用いて有効とされることが多い。貧血が高度であれば、赤血球輸血も止むを得ないが、補体(C3d)を結合した患者赤血球が溶血に抵抗性となっているのに対し、輸注する赤血球はむしろ溶血しやすい点に留意する。摘脾は通常適応とはならない。リンパ腫に伴うときは、原疾患の化学療法が有効である。マイコプラズマ肺炎に伴うCADでは適切な抗菌薬を投与するが、溶血そのものに対する効果とは別であり、経過が自己限定的なので、保存療法によって自然経過を待つのが原則である。特発性慢性CADの治療として、リツキシマブ単独療法やリツキシマブ+フルダラビン併用療法が報告されている。■ PCHの治療小児で急性発症するPCHは、寒冷曝露との関連が明らかではないが、保温の必要性は同様である。急性溶血期を十分な支持療法で切り抜ける。溶血の抑制に副腎皮質ステロイド薬が用いられ、有効性は高い。小児PCHでは、摘脾を積極的に考慮する状況は少ない。貧血の進行が急速なら赤血球輸血も必要となるが、DL抗体はP特異性を示すことが多く、供血者赤血球は大多数がP陽性なので、溶血の悪化を招く恐れもある。急性腎不全では血液透析も必要となる。4 今後の展望AIHAの治療では、リツキシマブが登場したことで、ステロイド不応例などでの治療選択の幅が広がった。今後、自己抗原反応性T細胞などを対象にした疾患特異的な治療法の開発が期待される。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報特発性造血障害に関する調査研究班(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 自己免疫性溶血性貧血(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)改訂版作成のためのワーキンググループ(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業特発性造血障害に関する調査研究). 自己免疫性溶血性貧血 診療の参照ガイド(平成26年度改訂版). 特発性造血障害に関する調査研究班.(参照2015.4.17)2)改訂版作成のためのワーキンググループ(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業特発性造血障害に関する調査研究). 自己免疫性溶血性貧血 診療の参照ガイド(平成28年度改訂版). 特発性造血障害に関する調査研究班. (参照2017)公開履歴初回2015年05月26日更新2017年04月04日

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