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機能性ディスペプシアの診療ガイドライン~プライマリケアでの対応も掲載

 今年4月の日本消化器病学会総会において、「機能性消化管疾患診療ガイドライン-機能性ディスペプシア(FD)」(日本消化器病学会編)が発表された。6月6日に開催されたメディアセミナー(ゼリア新薬工業・アステラス製薬共催)では、本ガイドラインのポイントや、国内で唯一FDに適応を持つアコファイド(一般名:アコチアミド)の有用性について、兵庫医科大学内科学消化管科 主任教授 三輪 洋人氏が講演した。FDの定義は日本の実臨床に合わせて FDは、胃や十二指腸などの臓器の機能異常により、むかつき、胃痛、胃もたれ、早期満腹感など、心窩部を中心とする上腹部の症状が慢性的に続く疾患で、QOLを著しく下げる。珍しい疾患ではなく、日本人の4人に1人が経験しているとのデータもあるという。しかし、病因が明らかではなく、症状により定義される疾患であること、上部消化管内視鏡検査では明らかな異常所見が認められないことから、診断が難しい。 FDの定義は、世界的に使用されているRomeIIIの診断基準では、明らかな器質的疾患がなく、食後膨満感・早期満腹感・心窩部痛・心窩部灼熱感のうち1つ以上あり、その症状が6ヵ月以上前からあり最近3ヵ月間は症状を認めるものとされている。しかし、わが国では医療機関へのアクセスがよく、6ヵ月以上症状が続いている患者が医療機関で受診しないことはまれである。そのため、今回作成されたガイドラインでは、心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状が「慢性的に続く」という言葉に留めることにより、より現実的で日本の実臨床に合った定義を提唱している。診断・治療フローチャートはプライマリケア、消化器専門医に分けて作成 FDの診断には、症状の原因となる器質的疾患の除外が重要である。本ガイドラインの診断と治療のフローチャートは、診療の実情、すなわち内視鏡検査実施の可否を考慮して、プライマリケアでの対応と消化器専門医での対応に分けて作成されている。プライマリケアでの対応では、慢性的なディスペプシア症状がある患者に対して、警告徴候(原因が特定できない体重減少、再発性の嘔吐、出血徴候、嚥下困難、高齢者)を認めない場合、数ヵ月以内に内視鏡検査などで器質的疾患が除外されている例は内視鏡検査をスキップしFDと診断する。一方、数ヵ月以内に検査を実施していない場合は、FD疑いとして初期治療開始という選択肢を示している。なお、「FD疑い」での薬剤処方は保険適用とならない。FDに対するわが国で唯一の保険適用薬 FD治療薬剤について、本ガイドラインでは初期治療として、酸分泌抑制薬、消化管運動機能改善薬が推奨されている。そのうち運動機能改善薬については、昨年6月に発売されたアコファイドが開発されるまで、厳密なプラセボとの比較試験で明らかに効果が証明された消化管運動機能改善薬はなかった。三輪氏は、アコファイドの有用性について、日本人を対象とした臨床試験でのデータを紹介し、その結果から本ガイドラインでは「わが国で唯一、FDに対して保険適用薬となっている」と記載されていると述べ、「日本が誇れる薬剤の1つ」と高く評価した。

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脱水症の診断が遅れて死亡した8ヵ月女児のケース

小児科最終判決判例タイムズ 952号256-265頁概要右眼充血の精査目的で総合病院眼科へ入院した生後8ヵ月の女児。全身麻酔下の眼圧、眼底、隅角検査にて先天性緑内障、ぶどう膜炎と診断された。全身麻酔から覚醒後、発熱、下痢が出現し、感冒性消化不良症の診断で小児科に転科となった。補液、止痢薬投与などが行われたが、3日間にわたって頻回の下痢が継続し、嘔吐もみられるようになった。そして、発症から4日後の深夜に持続点滴が自然抜針し、大泉門陥没、顔色不良、四肢冷汗など脱水症を示唆する症状がみられた。当直医による血管確保が試みられたがうまくいかず、静脈のカットダウンを行おうとした矢先に噴水状の嘔吐、それに続き心肺停止となり、救急蘇生の効果なく死亡確認となった。詳細な経過患者情報生後8ヵ月、体重7,710gの乳児経過1988年11月頃右眼充血に気付き、近医眼科を受診して治療を受けるが改善せず。12月23日某総合病院眼科受診、全身麻酔下の眼圧、眼底、隅角検査などが必要と判断された。12月24日精査目的で眼科に入院。胸部X線写真、心電図では異常なし。12月25日外泊(このとき兄弟がインフルエンザに罹患していた)。12月26日全身麻酔下の精密検査にて、先天性緑内障、ぶどう膜炎と診断。治療については年明けに大学病院へ転医して検討することになった。麻酔から覚醒後、38.9℃の発熱、水様便が3回みられた。12月27日39.5℃、アセトアミノフェン(商品名:アンヒバ)坐薬投与。小児科に依頼するとともに退院を延期。小児科担当医の診察では、咽頭発赤、皮膚の緊満度がやや減少、血液検査でNa 135、BUN 7、Ht 35.6%、Hb 11.1であり、発熱、下痢が続いていたことから感冒性消化不良症(インフルエンザ疑い)と診断。水様便が15~17回みられたので止痢薬を投与するとともに、20mL/hrで輸液を開始。12月28日38.7℃、解熱薬メフェナム(同:ポンタール)シロップを適宜内服。1時間に2回くらいの水様便、さらに嘔吐もみられるようになる。12月29日病院は年末年始体制へ移行。小児科担当医は当直明けの午前中に診察し、咽頭発赤、下痢、やや粗い呼吸音が聴取されたが、皮膚の緊満度には問題はないと判断し帰宅した。この日も1時間に1回くらい黄色泥状便がみられた。12月29日23:0036.0℃、脈拍142、呼吸数40回、ぐずつきが続き、活気がなく衰弱が激しいと母親は看護師に訴えた。小児科担当医に電話連絡を取ったところ、眼科領域の問題ではないかと考えて眼科医へ連絡するように指示。連絡を受けた眼科医は3日前の検査で眼科的な疾病が原因で衰弱することはないと認識していたため、鎮静薬ジアゼパム(同:セルシン)シロップの投与を指示。12月30日00:00セルシン®シロップ0.7mg哺乳瓶に入れて投与。01:40ようやく入眠。この時看護師は眼窩部のへこみを確認(担当医に上申せず)。03:00母親が抱っこしようとした時に右足に入れていた点滴がぬけていることに気付く。看護師が駆けつけると点滴はシーネごと外れており、足に巻かれた包帯はかなり濡れていた。患児は元気なくぐったりしていて、顔色不良、四肢の冷感が強く、大泉門陥没が認められた。輸液の再開のため四肢を暖め、電気あんかを入れ保温に努めた(深夜ということもありすぐに小児科担当医へは上申せず)。04:10母親が心配したため看護師は内科系の当直に診察を依頼(この日小児科当直は不在)。04:20内科系当直により末梢からの血管確保が試みられたが不成功。06:00再度内科系当直医が末梢血管から点滴を試みたが失敗したため、小児科担当医に連絡。06:45小児科担当医が駆けつけ、経皮的静脈穿刺を試みたが失敗。患児は次第に元気がなくなり、ぐったりしてきた。07:30末梢からの血管確保ができないので静脈のカットダウンが必要と判断し、外科系当直医と産婦人科当直医に応援依頼。この時患児の脈拍は弱くなり、循環不全の症状が出現。07:50応援医師が到着。静脈カットダウンの準備をしている時に患児の呼吸が微弱となったため酸素投与開始。ところがまもなく噴水状の嘔吐を来たし、これを吸い込んで呼吸停止。ただちに吸引して吐物を除去。08:30心停止。気管内挿管、鎖骨下静脈穿刺、心腔内アドレナリン(同:ボスミン)投与などの救急蘇生を行ったが、効果はみられず。09:25死亡確認。病理解剖の同意は得られなかった。当事者の主張患者側(原告)の主張1.小児科担当医は脱水症状を疑うべきであったのに、頻繁に診察することを怠り、血液検査は小児科初診時のみで、かつ体重測定を怠った結果、脱水症の悪化を見落としたため死亡した2.点滴が自然抜針したのであればただちに血管確保するべきであったのに、看護師が担当医師への報告したのはかなり時間が経過してからであり、さらに何度も経皮的静脈穿刺に失敗したのであればただちにカットダウンを行うべきであった病院側(被告)の主張1.死亡するまでの水分補給は十分であり、死亡直前まで脱水症を疑う臨床症状はなかった。点滴が自然抜針してから約5時間半輸液は行われなかったが、それまでの水分補給量に照らすと脱水症によって死亡することはあり得ない2.死亡したのはインフルエンザからライ症候群となったことが原因である裁判所の判断頻回の下痢による水分喪失に対し、死亡前の輸液量、経口水分摂取量、大泉門の陥没、眼窩のくぼみ、四肢冷汗、顔色不良などの所見を総合すると、中等症の脱水症があったと考えられる。それに対し医師および看護師らは脱水症に陥り得ることを予測するべきであったのに、体重測定、血液検査などの十分な観察を怠り、点滴注射が抜針したあとも輸液路の確保を怠ったため、循環不全を起こして死亡した。病院側が主張するライ症候群については、経過中にけいれんがみられなかったこと、脳圧亢進を示す大泉門膨隆とは逆の大泉門陥没が認められたことを考えると採用できない。原告側合計3,390万円の請求に対し、3,190万円の判決考察本件では小児科担当医、内科当直医、眼科医師、小児科看護師などの複数のスタッフが関与していながら、事の重大さを認識することができずに、本来であれば死亡するとは考えにくい乳児が最悪の転帰となってしまいました。もちろん病院側の事情、たとえば容態が急変した時間帯がたまたま年末年始の当直体制とかさなっていたこと、小児科担当医が卒後2年目の研修医であったこと、点滴が抜けたのが深夜であり当直明けの小児科医を呼び出すのがためらわれたこと、直ぐに静脈のカットダウンを行うほど切迫した状況とは思えなかったことなどを考えると、同情すべき点が多々あることも事実です。とはいうものの、以下の点については重要な教訓として今後の参考にしたいと思います。1. 各担当医の認識不足まず、本件の場合には全身麻酔後に出現した発熱、下痢ということで、小児科担当医は「単なる感冒で点滴でもすればいずれ落ち着くだろう」という程度の認識であり、ご両親の主張にもある通り頻繁に患児のもとに診察に訪れなかったと思われます。そして、点滴自然抜針の約4時間前(この時患児を診察していれば脱水症状に気付いていたはず)の23:00に、「呼吸数40回、ぐずつきが続き、活気がなく衰弱が激しい」という看護師の上申を自宅で受けた時も、「きっと眼科的問題によるものだろう」と判断して眼科医の判断を仰ぎました。その根拠としては、約12時間前の診察でとくに異常はみられなかったことが頭にあったのだと思います。この時点で(たとえ当直明けであっても)面倒くさがらずに病院まで赴き患者を診察するか、あるいは内科の当直医師に診察を依頼するなどの対策を講じていれば、最悪の結果を回避できた可能性があったと思います。ところが眼科医にボールを投げてしまったために(眼科医も眼科的には問題ないと確信していたために)、脱水状態にある患児にセルシン®投与を指示し、さらに状態を悪化させたのではないかと思います。この眼科医にしても、頻回の下痢や嘔吐を十分に把握しないままセルシン®を投与したのですから、認識不足は否めないと思います。また、今回の小児科担当医師を監督する立場にある小児科部長医師も、卒後2年目の研修医に適切な指示を与えなかった点において由々しき問題があったと思います(小児科医師同士のコミュニケーション不足も潜在していたのでしょうか)。そして、看護師が点滴再挿入を内科当直医に依頼したのは点滴自然抜針に気付いてから1時間以上経過してからであり(それも母親に催促された)、依頼を受けた内科当直医にしても、当初はおそらく「自分の役割は点滴を入れることだけだ」という程度の認識であり、その当時の患児を注意深く観察せずに眼窩のくぼみ、大泉門陥没などの脱水症状に気付きませんでした。そして、何度も針を刺したもののうまくいかず、いよいよあきらめたのが1時間40分も経ってからでした。このように、本件を担当した病院スタッフはみな脱水症の危険性を念頭におかないばかりか、責任もって観察するという姿勢に欠けていたと思われます。2. 頻回の下痢、嘔吐が続いていながら体重測定や血液検査を怠ったこと。本件は体重わずか7,710gの乳児でした。しかも発症してから3日間はひどい時で1時間に2回という頻回の下痢がみられていましたので、当然脱水症に陥らないように配慮しなければならない状況でした。ところが、血液検査を行ったのは小児科初診時の1回きりであり、以後死亡するまでの3日間は電解質のチェックすら行っていませんし、たいして手間のかからない体重測定も指示しませんでした。しかも頻回の下痢に加えて嘔吐まで出現したのですから、現行の輸液(最初から輸液量20mL/hrで変更なし)でよいのか見直すのはむしろ当然ではなかったかと思います。3. 病理解剖の重要性感冒による発熱、下痢、嘔吐で入院治療中の8ヵ月乳児が4日後に急死したとあれば、病院側のミスを疑うのがむしろ当然ではないかと思います。裁判では「ライ症候群」の可能性、つまり死亡したのは不可抗力であったと主張しましたが、血液検査が行われたのは小児科入院時の1回きりであり、しかも急性脳症を疑う所見は嘔吐だけで脳圧亢進症状(大泉門膨隆)やけいれん発作もなく、臨床上はライ症候群とするには無理があったと思います。もちろん経過中にご家族へはライ症候群という説明はありませんでしたし、判決でもライ症候群の主張は一蹴されました。やはりこのような時、つまり死因が特定できず病院側の不備を指摘されかねない状況では、是が非でも病理解剖を行うべきであったと思います。今回のケースではご遺族の同意が得られず病理解剖ができなかったということですが、はっきりと死因が特定できない場合には少々ためらわれても異状死体として「行政解剖」の手続きをとり、医学的な裏付けをとっておかないと正当性を主張するチャンスを失うことになると思います。今回のようなケースは、日常の診療でも遭遇する機会が多いのではないかと思います。このコーナーをご覧頂いている先生方の多くは診療に対する問題意識が高いと思いますので、もし本件を担当していれば発熱、下痢、嘔吐などの症状から脱水症を早期に発見し、適切な対応を行うことができたのではないかと思います。そうはいっても、本件のようにさまざまな要因が重なって適切な診断へのプロセスが妨げられることもあり得ますので、まずは先入観にとらわれることなく基本的な診察(本件では脱水症の所見を確認すること)をきちんと行うとともに、主治医となって担当する患者さんには可能な限りのコミットメントを行うことが肝心だと痛感しました。小児科

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抗がん剤の副作用の発現時期

抗がん剤の投与後にはさまざまな副作用が現れます抗がん剤による主な副作用の発現時期投与日アレルギー反応、吐き気・嘔吐、血管痛、発熱、血圧低下2~7日疲れやすい、だるい、食欲不振、吐き気・嘔吐、下痢7~14日口内炎、下痢、食欲不振、胃もたれ、骨髄機能の抑制(貧血、白血球減少・血小板減少)14~28日脱毛、皮膚の角化やしみ、手足のしびれ、膀胱炎経過時期によって現れる有害事象は変わってきます独立行政法人国立がん研究センター がん情報サービスよりCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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回復期リハ退院後の30日再入院率は11.8%/JAMA

 米国でメディケア受給者の急性期後(回復期)リハビリテーション(postacute inpatient rehabilitation)後の30日再入院率を調べた結果、最も低かったのが下肢関節置換術後の患者で5.8%、最も高かったのが患者の衰弱の18.8%であったことなどが、テキサス・メディカル・ブランチ大学のKenneth J. Ottenbacher氏らによる調査の結果、明らかにされた。米国のメディケア・メディケイドサービスセンターでは最近、リハビリテーション施設に対して、医療の質の評価指標として30日再入院率を定義づけた。Ottenbacher氏らは、この動きを受けて同施設の再入院率とその因子を明らかにするため、メディケア受給者73万6,536例を対象とした後ろ向きコホート研究を行った。JAMA誌2014年2月12日号掲載の報告より。リハ施設から地域へ退院した73万6,536例の再入院率を6診断群別に評価 対象者は2006~2011年に、1,365ヵ所のリハビリテーション施設から地域へ退院したメディケア受給者73万6,536例(平均年齢78.0[SD 7.3]歳)であった。63%が女性で、85.1%は非ヒスパニック系白人だった。 これら対象者について、6つの診断群(脳卒中、下肢骨折、下肢関節置換、衰弱、神経障害、脳の障害)別にみた30日再入院率を主要評価項目として評価した。最小は下肢関節置換5.8%、最大は衰弱18.8% 全体の平均入院期間は12.4(SD 5.3)日、全30日再入院率は11.8%(95%信頼区間[CI]: 11.7~11.8%)だった。 再入院率は、最小5.8%(下肢関節置換)から最大18.8%(衰弱)にわたった。その他はそれぞれ脳卒中12.7%、下肢骨折9.4%、神経障害、17.4%、脳の障害16.4%だった。 再入院率は、男性が女性よりも高く(13.0%vs. 11.0%)、人種別では非ヒスパニック系黒人が最も高かった。また、メディケイドとの複合受給者がメディケアのみ受給者よりも高い(15.1%vs. 11.1%)、共存症が1つの患者(25.6%)が2つ(18.9%)、3つ(15.1%)、なし(9.9%)の患者よりも高いなどの特徴も明らかになった。 6診断群では、運動および認知機能が高いと再入院率は低かった。 州で補正後の再入院率は、最小9.2%(アイダホ州、オレゴン州)から最大13.6%(ミシガン州)にわたった。 30日以内に再入院した患者の約50%は11日以内で退院に至った。再入院の理由(Medicare Severity Diagnosis-Related Groupコードによる)は、心不全、尿路感染症、肺炎、敗血症、栄養・代謝障害、食道炎、胃腸炎、消化不良などが一般的であった。 著者は、「再入院の原因を明らかにするためにさらなる研究が必要だ」とまとめている。

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洗口剤や歯周病治療の併用で胃内H.pylori除菌率UP

 アモキシシリン/エソメプラゾール/レボフロキサシン3剤併用療法による胃内ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori、以下HP)除菌療法は、洗口剤や歯周病治療を併用し、口腔内HP感染率を減少させることで、胃内HP除菌率が有意に高まることが、中国医科大学附属盛京医院のHan-Yi Song氏らによる研究で明らかになった。World journal of gastroenterology誌2013年10月21日号の報告。 本研究の目的は、胃内HP除菌成功に口腔内HPが及ぼす影響について検討することである。 対象は、消化不良を訴える患者391人。HP感染の診断には、唾液HP抗原検査(HPS)、13C尿素呼気試験(UBT)を用いた。胃内HP感染を認めた233人を、口腔内HP感染の有無と治療内容により以下の4群に割り付けた。 <口腔内HP(-) 胃内HP(+)>   アモキシシリン/エソメプラゾール/レボフロキサシン           : A群(53人) <口腔内HP(+) 胃内HP(+)>   アモキシシリン/エソメプラゾール/レボフロキサシン           : B群(53人)   アモキシシリン/エソメプラゾール/レボフロキサシン+洗口剤       : C群(65人)   アモキシシリン/エソメプラゾール/レボフロキサシン+洗口剤+歯周病治療 : D群(62人)治療終了から4週後に再度HPSおよびUBTを行い、各群の胃内HP除菌率と口腔内HP感染率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・各群の胃内HP除菌率は、以下のとおりであった(p値は対B群)。   A群:93.3%(p=0.039)   B群:78.4%   C群:90.0%(p=0.092)   D群:94.7%(p=0.012)・胃内HP除菌率は、内用薬のみの群よりも、内用薬に洗口液や歯周病治療を併用した群のほうが有意に高かった。・治療後の口腔内HP感染率は、以下のとおりであった(p値は対B群)。   A群:0%  (p<0.0001)   B群:76.5%   C群:53.3%(p=0.011)   D群:50.9%(p=0.006)・口腔内HP感染率は、内用薬に洗口剤のみ併用した群、内用薬に洗口剤と歯周病治療を併用した群で有意に減少した。

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NSAIDsにより消化性潰瘍が穿孔し死亡したケース

消化器概要肺気腫、肺がんの既往歴のある67歳男性。呼吸困難、微熱、嘔気などを主訴として入退院をくり返していた。経過中に出現した腰痛および左足痛に対しNSAIDsであるロキソプロフェン ナトリウム(商品名:ロキソニン)、インドメタシン(同:インダシン)が投与され、その後も嘔気などの消化器症状が継続したが精査は行わなかった。ところがNSAIDs投与から12日後に消化性潰瘍の穿孔を生じ、緊急で開腹手術が行われたが、手術から17日後に死亡した。詳細な経過患者情報肺気腫、肺がん(1987年9月左上葉切除術)の既往歴のある67歳男性。慢性呼吸不全の状態であった経過1987年12月3日呼吸困難を主訴とし、「肺がん術後、肺気腫および椎骨脳底動脈循環不全」の診断で入院。1988年1月19日食欲不振、吐き気、上腹部痛が出現(約1ヵ月で軽快)。4月16日体重45.5kg5月14日症状が安定し退院。6月3日呼吸困難、微熱、嘔気を生じ、肺気腫と喘息との診断で再入院。6月6日胃部X線検査:慢性胃炎、「とくに問題はない」と説明。6月7日微熱が継続したため抗菌薬投与(6月17日まで)。6月17日軟便、腹痛がみられたためロペラミド(同:ロペミン)投与。6月20日体重41.5kg、血液検査で白血球数増加。6月24日抗菌薬ドキシサイクリン(同:ビブラマイシン)投与。6月26日胃もたれ、嘔気が出現。6月28日食欲低下も加わり、ビブラマイシン®の副作用と判断し投与中止。6月29日再び嘔気がみられ、びらん性胃炎と診断、胃粘膜保護剤および抗潰瘍薬などテプレノン(同:セルベックス)、ソファルコン(同:ソロン)、トリメブチンマレイン(同:セレキノン)、ガンマオリザノール(同:オルル)を投与。7月4日嘔気、嘔吐に対し抗潰瘍薬ジサイクロミン(同:コランチル)を投与。7月5日嘔気は徐々に軽減した。7月14日便潜血反応(-)7月15日嘔気は消失したが、食欲不振は継続。7月18日体重40.1kg。7月19日退院。7月20日少量の血痰、嘔気を主訴に外来受診。7月22日腰痛および膝の感覚異常を主訴に整形外科を受診、鎮痛薬サリチル酸ナトリウム(同:ネオビタカイン)局注、温湿布モムホット®、理学療法を受け、NSAIDsロキソニン®を1週間分投与。以後同病院整形外科に連日通院。7月25日血尿が出現。7月29日出血性膀胱炎と診断し、抗菌薬エノキサシン(同:フルマーク)を投与。腰痛に対してインダシン®坐薬、セルベックス®などの抗潰瘍薬を投与。7月30日吐物中にうすいコーヒー色の吐血を認めたため外来受診。メトクロプラミド(同:プリンペラン)1A筋注、ファモチジン(同:ガスター)1A静注。7月31日呼吸不全、嘔気、腰と左足の痛みなどが出現したため入院。酸素投与、インダシン®坐薬50mg 2個を使用。入院後も嘔気および食欲不振などが継続。体重40kg。8月1日嘔吐に対し胃薬、吐き気止めの投薬開始、インダシン®坐薬2個使用。8月2日10:00嘔気、嘔吐が持続。15:00自制不可能な心窩部痛、および同部の圧痛。16:40ブチルスコポラミン(同:ブスコパン)1A筋注。17:50ペンタジン®1A筋注、インダシン®坐薬2個投与。19:30痛みは軽快、自制の範囲内となった。8月3日07:00喉が渇いたので、ジュースを飲む。07:30突然の血圧低下(約60mmHg)、嘔吐あり。08:50医師の診察。左下腹部痛および嘔気、嘔吐を訴え、同部に圧痛あり。腹部X線写真でフリーエアーを認めたため、腸閉塞により穿孔が生じたと判断。15:00緊急開腹手術にて、胃体部前壁噴門側に直径約5mmの潰瘍穿孔が認められ、腹腔内に食物残渣および腹水を確認。胃穿孔部を切除して縫合閉鎖し、腹腔内にドレーンを留置。術後腹部膨満感、嘔気は消失。8月10日水分摂取可能。8月11日流動食の経口摂取再開。8月13日自分で酸素マスクをはずしたり、ふらふら歩行するという症状あり。8月15日頭部CTにて脳へのがん転移なし。白血球の異常増加あり。8月16日腹腔内留置ドレーンを抜去したが、急性呼吸不全を起こし、人工呼吸器装着。8月19日胸部X線写真上、両肺に直径0.3mm~1mmの陰影散布を確認。家族に対して肺がんの再発、全身転移のため、同日中にも死亡する可能性があることを説明。8月20日心不全、呼吸不全のため死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張慢性閉塞性肺疾患では低酸素血症や高炭酸ガス血症によって胃粘膜血流が低下するため胃潰瘍を併発しやすく、実際に本件では嘔気・嘔吐などの胃部症状が発生していたのに、胃内視鏡検査や胃部X線検査を怠ったため胃潰瘍と診断できなかった。さらに非ステロイド系消炎鎮痛薬はきわめて強い潰瘍発生作用を有するのに、胃穿孔の前日まで漫然とその投与を続けた。病院側(被告)の主張肺気腫による慢性呼吸器障害に再発性肺がんが両肺に転移播種するという悪条件の下で、ストレス性急性胃潰瘍を発症、穿孔性腹膜炎を合併したものである。胃穿孔は直前に飲んだジュースが刺激となって生じた。腹部の術後経過は順調であったが、肺気腫および肺がんのため呼吸不全が継続・悪化し、死亡したのであり、医療過誤には当たらない。ロキソニン®には長期投与で潰瘍形成することはあっても、本件のように短期間の投与で潰瘍形成する可能性は少なく、胃穿孔の副作用の例はない。インダシン®坐薬の能書きには消化性潰瘍の可能性についての記載はあるが、胃潰瘍および胃穿孔の副作用の例はない。たとえ胃潰瘍の可能性があったとしても、余命の少ない患者に対し、腰痛および下肢痛の改善目的で呼吸抑制のないインダシン®坐薬を用いることは不適切ではない。裁判所の判断吐血がみられて来院した時点で出血性胃潰瘍の存在を疑い、緊急内視鏡検査ないし胃部X線撮影検査を行うべき注意義務があった。さらに検査結果が判明するまでは、絶食、輸液、止血剤、抗潰瘍薬の投与などを行うべきであったのに怠り、鎮痛薬などの投与を漫然と続けた結果、胃潰瘍穿孔から汎発性腹膜炎を発症し、開腹手術を施行したが死亡した点に過失あり。原告側合計4,188万円の請求に対し、2,606万円の判決考察今回のケースをご覧になって、「なぜもっと早く消化器内視鏡検査をしなかったのだろうか」という疑問をもたれた先生方が多いことと思います。あとから振り返ってみれば、消化器症状が出現して入院となってから胃潰瘍穿孔に至るまでの約60日間のうち、50日間は入院、残りの10日間もほとんど毎日のように通院していたわけですから、「消化性潰瘍」を疑いさえすればすぐに検査を施行し、しかるべき処置が可能であったと思います。にもかかわらずそのような判断に至らなかった原因として、(1)入院直後に行った胃X線検査(胃穿孔の58日前、NSAIDs投与の45日前)で異常なしと判断したこと(2)複数の医師が関与したこと:とくにNSAIDs(ロキソニン®、インダシン®)は整形外科医師の指示で投与されたことの2点が考えられます(さらに少々考えすぎかも知れませんが、本件の場合には肺がん術後のため予後はあまりよくなかったということもあり、さまざまな症状がみられても対症療法をするのが限度と考えていたのかも知れません)。このうち(1)については、胃部X線写真で異常なしと判断した1ヵ月半後に腰痛に対して整形外科からNSAIDsが処方され、その8日後に嘔吐、吐血までみられたのですから、ここですぐさま上部消化管の検査を行うのが常識的な判断と思われます。しかもこの時に、ガスター®静注、プリンペラン®筋注まで行っているということは、当然消化性潰瘍を念頭に置いていたと思いますが、残念ながら当時患者さんをみたのは普段診察を担当していない消化器内科の医師でした。もしかすると、今回の主治医は「消化器系の病気は消化器内科の医師に任せてあるのでタッチしない」というスタンスであったのかも知れません。つまり(2)で問題提起したように、胃穿孔に至る過程にはもともと患者さんを診ていた内科主治医消化器系を担当した消化器内科医腰痛を診察しNSAIDsを処方した整形外科医という3名の医師が関与したことになります。患者側からみれば、同じ病院に入院しているのだから、たとえ診療科は違っても医者同士が連絡しあい、病気のすべてを診てもらっているのだろうと思うのが普通でしょう。ところが実際には、フリーエアーのある腹部X線写真をみて、主治医は最初に腸閉塞から穿孔に至ったのだろうと考えたり、前日までNSAIDsを投与していたことや消化性潰瘍があるかもしれないという考えには辿り着かなかったようです。同様に整形外科担当医も、「腰痛はみるけれども嘔気などの消化器症状は内科の先生に聞いてください」と考えていたろうし、消化器内科医は、「(吐血がみられたが)とりあえずはガスター®とプリンペラン®を使っておいたので、あとはいつもの主治医に任せよう」と思ったのかも知れません。このように本件の背景として、医師同士のコミュニケーション不足が重大な影響を及ぼしたことを指摘できると思います。ただしそれ以前の問題として、NSAIDsを処方したのであれば、たとえ整形外科であっても副作用のことに配慮するべきだし、もし消化器症状がみられたのならば内科担当医に、「NSAIDsを処方したけれども大丈夫だろうか」と照会するべきであると思います。同様に消化器内科医の立場でも、自分の専門領域のことは責任を持って診断・治療を行うという姿勢で臨まないと、本件のような思わぬ医事紛争に巻き込まれる可能性があると思います。おそらく、各担当医にしてみればきちんと患者さんを診察し、(内視鏡検査を行わなかったことは別として)けっして不真面目であったとか怠慢であったというような事例ではないと思います。しかし裁判官の判断は、賠償額を「67歳男性の平均余命である14年」をもとに算定したことからもわかるように、大変厳しい内容でした。常識的に考えれば、もともと肺気腫による慢性呼吸不全があり、死亡する11ヵ月前に肺がんの手術を行っていてしかも両側の肺に転移している進行がんであったのに、「平均余命14年」としたのはどうみても不適切な内容です(病院側弁護士の主張が不十分であったのかもしれません)。しかし一方で、そう判断せざるを得ないくらい「医師として患者さんにコミットしていないではないか」、という点が厳しく問われたケースではないかと思います。今回のケースから得られる教訓として、自分の得意とする分野について診断・治療を行う場合には、最後まで責任を持って担当するということを忘れないようにしたいと思います。また、たとえ専門外と判断される場合でも、可能な限りほかの医師とのコミュニケーションをとることを心掛けたいと思います。消化器

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世界初のFD治療剤が登場 ~今後のFD治療に与える影響は?~

 2013年6月7日(金)、千代田区丸の内にて、島根大学医学部 内科学講座第二 教授 木下芳一氏による「機能性ディスペプシア(FD)」のメディアセミナーが開催された(主催:ゼリア新薬工業株式会社/アステラス製薬株式会社)。機能性ディスペプシア(FD:functional dyspepsia)とは? FDは、機能性消化器疾患の国際的診断基準であるRome III基準で「食後のもたれ感・膨満感、早期満腹感(飽満感)、心窩部痛(みぞおちの痛み)などの消化器症状を訴えるが、原因となる器質的疾患が見当たらない疾患」と定義されている。これまでFDは「慢性胃炎」と診断されることが多かった。日本国際消化管運動研究会2006では、上腹部症状を有する症例のうち、9割以上の症例では器質的疾患が無かったと報告されている。FDの原因は? FDは以下のようなさまざまな原因が考えられている。1) 胃排出能異常、胃の適応性弛緩障害2) 胃酸分泌過剰、分泌異常3)ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)の感染などによる胃粘膜の炎症4) 消化管知覚過敏5) 心理的要因同じFD患者でも、それぞれの病態・病因が異なっているのが現状のようだ。世界初のFD治療剤アコチアミド新発売 これまでFDに対して適応を有する薬剤はなかったが、2013年6月6日(木)、世界初となる機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド錠100mg」(一般名:アコチアミド塩酸塩水和物)が発売された。アコファイドは消化管運動に重要な役割を果たす神経伝達物資アセチルコリンの分解酵素である末梢のアセチルコリンエステラーゼを阻害することにより、上記1)に該当する胃排出能異常、胃の適応性弛緩障害を改善させ、胃もたれや早期飽満感に効果が期待される。アコファイドの臨床試験結果 食後の膨満感、上腹部膨満感、早期満腹感を有するFD(Rome III)例(892例)を対象としてアコチアミド100mg×3/日、28日間の投与とプラセボ投与の大規模多施設ランダム化二重盲検試験(第3相)が行われ、治療効果についての全体的な印象(overall treatment efficacy)と3症状(食後の膨満感、上腹部膨満感、早期満腹感)の消失率の2つの主要エンドポイントにおいて、アコチアミド投与群で有意に改善したことが報告されている。また、本試験における有害事象発現率と副作用発現率については、プラセボ投与群との間に統計的な有意差は認められていない。FDに対する診断と治療 胃がんなど他疾患の可能性を除外した上で、FDと診断した場合にはH.pyloriの検査が推奨される。感染が認められる際は除菌治療を行い、感染が認められない場合、または除菌後も症状が持続する場合には、低脂肪のものを少量食べるなどの食事療法を実施する。さらに患者さんの愁訴があれば、胃痛が中心の場合には胃酸分泌抑制剤などを投与し、胃もたれが中心となる場合には、アコチアミドなどの消化管運動機能改善薬を投与するというのがひとつのフローとなる(場合によっては両薬剤の併用を考慮し、それでも症状改善が十分でない場合には抗うつ薬や抗不安薬を検討する)。 先述のようにFDの原因はさまざまであるが、以前に比べ、多様な治療が可能になりつつあると木下氏は述べている。アコファイドの発売によりFD患者の自覚症状の改善やQOL向上が期待されるとともに、FD治療の幅が広がることは多くの医療関係者にとってベネフィットになると言えよう。

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ピルフェニドン、特発性肺線維症の肺機能低下の抑制効果が明らかに

ピルフェニドン(商品名:ピレスパ)は、特発性肺線維症患者の肺機能低下を抑制し、適切な治療選択肢であることを示唆するデータが、米国・デューク大学のPaul W Noble氏らが実施したCAPACITY試験で示された。特発性肺線維症は進行性、致死性の肺疾患で、肺機能の喪失は不可避的だという。抗線維化/抗炎症薬であるピルフェニドンは経口投与が可能な合成分子で、形質転換増殖因子(TGF)βや腫瘍壊死因子(TNF)αの活性を調整することがin vitroで示され、肺線維症の動物モデルでは線維芽細胞の増殖やコラーゲンの合成を阻害し、線維化の細胞組織学的マーカーを低下させることが明らかにされている。Lancet誌2011年5月21日号(オンライン版2011年5月14日号)掲載の報告。ピルフェニドンの有効性を評価する2つの無作為化プラセボ対照第II相試験CAPACITY試験の研究グループは、ピルフェニドンの特発性肺線維症における肺機能低下の抑制効果を検討する2つの無作為化プラセボ対照第II相試験(004、006)を行った。004と006試験には、オーストラリア、ヨーロッパ、北米の13ヵ国110施設から40~80歳の特発性肺線維症患者が登録され、ピルフェニドン群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられ、72週以上の治療が行われた。004試験ではピルフェニドン2,403mg/日、1,197mg/日、プラセボを投与する群に2:1:2の割合で、006試験ではピルフェニドン2,403mg/日、プラセボを投与する群に1:1の割合で患者が割り付けられた。2,403mg群は801mgを、1,197mg群は399mgを1日3回経口投与した。主要評価項目は、72週における努力性肺活量(FVC)の変化率(%)とし、intention-to-treat解析を行った。004試験で、FVCの低下が有意に抑制004試験には435例が登録され、ピルフェニドン2,403mg群に174例が、1,197mg群に87例が、プラセボ群には174例が割り付けられた。006試験の344例のうち2,403mg群に171例が、プラセボ群には173例が割り付けられた。004試験では、ピルフェニドンによる有意なFVCの改善効果が認められた(p=0.001)。すなわち、72週におけるFVCの平均変化率は2,403mg群が-8.0%、プラセボ群は-12.4%であり、ピルフェニドンにより4.4%のFVC低下の抑制効果が得られた。1,197mg群のFVCの平均変化率は、2,403mg群とプラセボ群の中間であった。006試験では、両群で72週時のFVCの変化率に差を認めなかった(p=0.501)。すなわち、FVCの平均変化率は2,403mg群が-9.0%、プラセボ群は-9.6%であった。しかし、48週までは明らかなピルフェニドンによるFVC低下の抑制効果が認められた(p=0.005)。ピルフェニドン2,403mg群では、プラセボ群に比べ悪心(36% vs. 17%)、消化不良(19% vs. 7%)、嘔吐(14% vs. 4%)、食欲不振(11% vs. 4%)、光過敏症(12% vs. 2%)、皮疹(32% vs. 12%)、眩暈(18% vs. 10%)の頻度が高かったが、全死亡(6% vs. 8%)および特発性肺線維症関連死(3% vs. 7%)は少なかった。著者は、「ピルフェニドンはベネフィット/リスクのプロフィールが良好であり、特発性肺線維症の適切な治療選択肢と考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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経口ビスホスホネート製剤と食道がんリスクとの関係

 骨粗鬆症の予防や治療に用いられる経口ビスホスホネート製剤を服用する患者には、消化不良、吐き気、腹痛、びらん性食道炎、さらに食道潰瘍といった副作用が一般にみられることは報告されている。さらに最近の症例報告では、食道がんリスクの増加が示唆されている。英国オックスフォード大学のJane Green氏らのグループは、「経口ビスホスホネート製剤服用者において食道がん(胃・大腸ではない)リスクは増加する」との仮説検証を目的に、UK General Practice Research Databaseを用いたコホート内ケース・コントロール解析を行った。BMJ誌2010年9月11日号(オンライン版2010年9月1日号)より。英国40歳以上住民を対象にケース・コントロール解析を実施 解析に用いられたデータベースは、英国のプライマリ・ケア対象住民約600万人を擁する。その中から、ビスホスホネート製剤の処方記録のあった40歳以上男女で、1995~2005年に、食道がん(2,954例)、胃がん(2,018例)、大腸がん(1万641例)と診断された人をケース群とし、ケース群1症例につき、年齢、性、一般医療、観察期間で合致した各5例を対照群とし検証が行われた。 主要評価項目は、喫煙、飲酒、BMIで補正後の、食道・胃・大腸がん発生の相対リスクとした。「10回以上」「5年以上」服用者の食道がん発病率は、非服用者の倍と推計 経口ビスホスホネート製剤を過去に1回以上処方されたケースでは、処方されたことのないケースと比較して食道がんの発病率は高まった(相対リスク:1.30、95%信頼区間:1.02~1.66、P=0.02)。 食道がんリスクは、1~9回処方されたケース(同:0.93、0.66~1.31)と比べて10回以上処方されたケース(同:1.93、1.37~2.70、不均一性P=0.002)で、また3年以上服用していたケースで有意に高かった(平均5年、処方なしのケースに対する相対リスク:2.24、95%信頼区間:1.47~3.43)。 食道がんリスクは、ビスホスホネート製剤のタイプによる有意な違いはなかった。 10回以上処方された場合のリスクは、年齢、性、喫煙、アルコール摂取、BMIによる変動はなかった。また、骨粗鬆症、骨折、上部消化器疾患、さらに制酸薬、NSAIDsやステロイドの処方による変動もなかった。 胃がんと大腸がんは、ビスホスホネート製剤処方との関連は認められなかった。「1回以上処方」対「処方なし」の相対リスクは、0.87(95%信頼区間:0.64~1.19)、0.87(同:0.77~1.00)だった。 研究グループは、「食道がんに関する特異性は試験の方法論的な限界の反証となる」としつつ、「食道がんリスクは、経口ビスホスホネート製剤の10回以上の処方、または5年以上にわたる処方によって増加する」と結論し、「ヨーロッパと北米の60~79歳の食道がん発病率は、非服用者は5年で人口1,000対1だが、服用者では1,000対2に倍増することが見込まれる」と述べている。

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うつ病治療に伴う女性の性機能障害にもバイアグラが有効

抗うつ薬の選択的・非選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)治療に関連する一般的な副作用として性機能障害があり、しばしば抗うつ薬による治療を早期に中断せざるを得ない要因ともなっている。これまでSRIによる性機能障害に、シルデナフィル(商品名:バイアグラ)が有効なことは知られていたが、米国ニューメキシコ大学医学部のH. George Nurnberg氏らは、女性にも同様に効果があると報告した。JAMA誌2008年7月23日号より。閉経前の女性98例に対して性行為前に服用させ比較2003年9月1日から2007年1月1日の間、米国内の7つの研究施設において、大うつ病がSRI治療で沈静化したものの、性機能障害も経験した閉経前の女性98人(平均年齢37.1歳)を対象に、8週間の前向き・2群並行・無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験を実施した。患者は49例ずつ無作為に、性行為の前にシルデナフィルまたはプラセボを50~100mgまで増減して服用するよう割り付けられた。主要評価項目は、研究終了時点で、Clinical Global Impression性機能スケールによるベースラインからの変化の平均差とした。副次的評価項目は、Female Sexual Function Questionnaire、アリゾナSexual Experience scale(女性版)、ニューメキシコ大学Sexual Function Inventory(女性版)および性行為記録、ハミルトンうつ病評価スケールとした。内分泌レベルも評価が行われた。性機能スコアは改善、深刻な副作用は見られずClinical Global Impression性機能スコアは、シルデナフィル群が平均1.9(95%信頼区間:1.6~2.3)だったのに対して、プラセボ群は同1.1(0.8~1.5)で、終了時点の平均差は0.8(0.6~1.0、P=0.001)だった。ベースライン登録患者の22%は、早期に中断する結果になったが、シルデナフィル群の平均エンドポイントは性機能スコア1.5(1.1~1.9)であり、プラセボ群は同0.9(0.6~1.3)、終了時点の平均差は0.6(0.3~0.8、P=0.03)と有意な差があった。ベースラインにおける内分泌レベルは正常範囲内で、群間差はなかった。うつ病のハミルトン・スコアは平均値4.0(SD 3.6)で、両群の寛解度は同程度だった(P=0.90)。治療期間中に頭痛、潮紅、消化不良はしばしば報告されたが、深刻な副作用で脱落した患者はいなかった。このためNurnberg氏は、「SRI服用で性機能障害になった女性に対するシルデナフィル治療は、有害な性的効果を減少させる」と結論した。(朝田哲明:医療ライター)

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消化不良にPPIによる胃酸分泌抑制は適切な初期治療

プライマリ・ケアにおける消化不良の初期治療では、ピロリ菌の検査・除菌とプロトンポンプ阻害薬(PPI)による胃酸分泌抑制の費用効果および症状抑制効果は同等であり、PPIは適切な治療戦略であることがMRC-CUBE試験の結果により示された。BMJ誌2008年3月22日号(オンライン版2008年2月29日号)で、英国Birmingham大学プライマリ・ケア科のBrendan C Delaney氏が報告した。英国の消化不良の治療ガイドラインでは、上部消化管の腫瘍が疑われる徴候がない場合は、これら2つの管理法が推奨されている。80ヵ所のGP施設に699例を登録MRC-CUBE試験の研究グループは、プライマリ・ケアにおける消化不良の初期治療としてのピロリ菌の検査・除菌と胃酸分泌抑制の費用効果を評価するための多施設共同無作為化対照比較試験を実施した。英国の80ヵ所のGP施設に、年齢18~65歳で上腹部痛、胸やけ、あるいはその双方が見られ、悪性腫瘍を疑わせる徴候のない699例が登録された。13C尿素呼気試験の陽性例に1週間の除菌治療を行う群あるいはPPI投与のみを行う群に無作為に割り付け、その後の患者管理は各GPの裁量に任された。費用効果はEQ-5Dを用いて生活の質で調整した生存年数(QALY)ごとのコストを算出し、消化不良症状に対する1年後の効果は略式Leeds 消化不良質問票のスコア、医療資源の使用度、患者満足度で評価した。ピロリ菌検査・除菌とPPIの費用効果は同等ピロリ菌検査には343例が割り付けられ、100例が陽性であった。そのうち78%が除菌に成功した。PPI治療には356例が割り付けられ、28日間にわたり治療が行われた。1年後の時点で、両群間にQALY、コスト、消化不良症状に差は認めなかった。初診時のピロリ菌の検査・除菌のコストは、1年後にはコスト抑制効果によって相殺されてPPI治療群と同等となった。Delaney氏は、「消化不良の初期治療におけるピロリ菌検査・除菌とPPI投与の費用効果は同等であった。PPIによる胃酸分泌抑制はプライマリ・ケアの初期治療において適切な治療戦略である」と結論している。また、同氏は「全体として両治療群のコストに差はないので、初診時にピロリ菌の検査を行うか、持続的な症状の評価のみを行うかは、各GPが個々の患者と相談して決めるべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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