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アジスロマイシン、非嚢胞性線維症性気管支拡張症の感染増悪を抑制/JAMA

 非嚢胞性線維症性(non-CF)の気管支拡張症の維持療法として、マクロライド系抗菌薬であるアジスロマイシン(商品名:ジスロマック)の12ヵ月間毎日投与法が有用なことが、オランダ・アルクマール医療センターのJosje Altenburg氏らが実施したBAT試験で示された。気管支拡張症では、小~中径の気管支にX線画像上特徴的な病的拡張と粘膜肥厚を認め、気管支壁の構造的異常により下気道クリアランスが低下して慢性的な細菌感染や炎症を来すという悪循環を呈する。マクロライド系抗菌薬は嚢胞性線維症やびまん性汎細気管支炎に対する効果が示されているが、non-CF気管支拡張症にも有効な可能性が示唆されている。JAMA誌2013年3月27日号掲載の報告。マクロライド系抗菌薬維持療法の有効性を無作為化試験で評価 BAT(Bronchiectasis and Long-term Azithromycin Treatment)試験は、成人のnon-CF気管支拡張症に対するマクロライド系抗菌薬による維持療法の有効性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験。 対象は、前年に下気道感染症に3回以上罹患し抗菌薬治療を受けた18歳以上のnon-CF気管支拡張症の外来患者とした。これらの患者が、アジスロマイシン250mg/日を投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、12ヵ月の治療が行われた。 1次エンドポイントは12ヵ月の治療期間中に感染増悪を来した患者数とし、2次エンドポイントは肺機能、喀痰培養、炎症マーカー、有害事象、QOLなどであった。治療期間中の感染増悪率:46 vs 80% 2008年4月~2010年9月までにオランダの14施設から83例が登録され、アジスロマイシン群に43例(平均年齢59.9歳、女性63%)、プラセボ群には40例(64.6歳、65%)が割り付けられた。 治療終了時に感染増悪を認めた患者数中央値はアジスロマイシン群が0例、プラセボ群は2例であった(p<0.001)。治療期間中に1回以上の感染増悪を来した患者数中央値はアジスロマイシン群が20例(46%)、プラセボ群は32例(80%)であった[ハザード比(HR):0.29、95%信頼区間(CI):0.16~0.51]。 混合モデル解析では、予測値に対する1秒量の経時的な変化に両群間で差を認め、アジスロマイシン群では3ヵ月ごとに1.03%ずつ上昇したのに対し、プラセボ群は0.10%ずつ低下した(p=0.047)。 消化管の有害事象の発生率はアジスロマイシン群が40%と、プラセボ群の5%に比べ高頻度であり、腹痛の相対リスクが7.44(95%CI:0.97~56.88)、下痢の相対リスクは8.36(95%CI:1.10~63.15)であったが、治療の中止を要する患者はいなかった。 薬剤感受性試験では、アジスロマイシン群(20例)のマクロライド系抗菌薬耐性率は88%(53/60例)と、プラセボ群(22例)の26%(29/112例)に比べ有意に高かった(p<0.001)。 治療終了時のQOLはアジスロマイシン群がプラセボ群に比べ有意に良好であった(p=0.046)。 著者は、「non-CF気管支拡張症の成人患者に対するアジスロマイシン12ヵ月投与はプラセボに比べ感染増悪率が良好であった」とまとめ、「感染増悪の抑制がQOLの改善をもたらした可能性があり、生存への良好な影響も期待されるが、薬剤耐性の影響を考慮する必要がある」と指摘している。

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「岐阜県COPDストップ作戦」一丸となってCOPDに取り組む

大林 浩幸 ( おおばやし ひろゆき )氏岐阜県COPD対策協議会 本部長(東濃中央クリニック 院長)※所属・役職は2013年2月現在のものです。岐阜県におけるCOPDの現状大規模なCOPD疫学調査NICE Study*の結果によれば、COPD患者は40歳以上の8.6%、約530万人と推定されています。COPDによる死亡者数は年々増加しており2011年の死亡者数は16,639人です。このNICEstudyの有病率に岐阜県の人口を当てはめると、岐阜県のCOPD患者数は12万3070人と推定されます。一方、岐阜県の治療中のCOPD患者数を主要なCOPD治療薬の販売量から推定すると5,000人未満となり、推測患者数の1割にも満たないことがわかりました。すべての治療患者さんが対象ではないとしても、これはあまりにも少なすぎます。残りの10万人以上の方は潜在患者として、気づかれないままでいるか、他疾患の治療のみ受けている可能性もあるわけです。また、岐阜県のCOPD死亡者数は1997年から2009年までの12年間、全国平均を常に上回っています。このように岐阜県のCOPD治療は重要な課題を抱えていました。*NICE(Nippon COPD Epidemiology)study:2004年に順天堂大学医学部の福地氏らが報告した40歳以上の男女2,343名のデータによるCOPDの大規模な疫学調査研究COPD死亡率(人口10万人対)2009年画像を拡大するCOPD死亡率(人口10万人対)岐阜VS全国画像を拡大する手をかけなければいけない疾患COPD喘息には吸入ステロイドなどの治療薬があり、適切な治療で症状改善が可能ですが、COPDには進行を遅らせる治療しかありません。具体的には、禁煙、増悪防止のための感染予防(ワクチン)、日常管理といった基本と、その上で行われる気管支拡張薬、呼吸リハビリテーションなどがそれにあたります。この中の一つでも欠けると奏功しません。このように、COPDはさまざまな医療が必要となる“手をかけなければいけない疾患”だといえます。COPDの認知度の低さCOPDの認知度はきわめて低いものです。一般の方の半数以上はCOPDをご存じありませんし、知っていたとしても名前だけで、COPDがどういう疾患かわかる方はとても少ないです。息切れは年齢のせい、喫煙者だから多少の息切れは当たり前と考えているのですから、医療機関を受診をすることはありません。このように、COPDの認知の低さにより、自分がCOPDである事を知らずに過ごしている方が数多くいることになります。また、受診してもCOPDを理解していないと治療はうまくいきません。COPDの薬剤を吸入しながら喫煙しているケースなどは、その典型例といえます。肺機能検査の普及COPDの早期発見と診断には肺機能検査が必要です。しかし、プライマリ・ケア領域では機器がない、あるいは機器があっても使っていない状況であり、肺機能検査を実施しているのはほとんどが大病院です。つまり、COPD潜在患者のほとんどが医療機関未受診かプライマリ・ケア領域に潜んでいる可能性があります。高血圧などの循環器疾患、脂質異常症や糖尿病、消化器疾患などの疾患治療患者の何割かに隠れCOPDがいると思われます。COPDストップ作戦立ち上げこのような背景の中、岐阜県としては早急にCOPDへの対策を図る必要がありました。COPDは片道切符で、一旦悪化するとなかなか元に戻りません。ブレーキの始動が遅れると終着駅は在宅酸素になります。だからこそ、重症化する前にいかに早期発見・早期診断し、いかに禁煙、薬物治療、リハビリテーションという一連の治療を導入していくのかを考えなければなりません。また、これらの治療はバラバラでは意味をなさず、全県が同じレベルでこれらの治療がカバーできるよう足並み揃えて取り組む必要がありました。そこで平成23年度に岐阜県医師会と岐阜県で協議し、委託事業として県医師会がCOPD対策事業を始めることになりました。まず岐阜県医師会COPD対策協議会を立ち上げ、その下にCOPD対策本部を設置しました。そして岐阜県を5地区に分け、各地区に対策委員会を設置しました。地域医師会との連携がスムーズに行われるように、専門医と共に、地域医師会役員も地区委員に就任していただきました。そして私、大林が岐阜県COPD対策本部長に指名され、平成23年10月に全県一斉に「COPDストップ作戦」を立ち上げ開始しました。岐阜県5ブロック画像を拡大するCOPD対策協議会画像を拡大するCOPDストップ作戦の目的は、COPD死の減少です。活動の軸は、COPDの頭文字をとって、Care COPD(COPDの早期治療)、Omit COPD(COPD発症の最大原因である喫煙習慣の排除) 、Prevent COPD(COPD発症の原因であるタバコの害を啓発し、喫煙開始させない)、Discover COPD(COPDを早期から発見し、早期治療に結びつける)の4本としました。県医師会“COPDストップ作戦”の4つのコンセプト画像を拡大するCOPDストップ作戦 第1弾COPD教育講演会ストップ作戦の第1弾はCare COPDとして、COPD教育講演会を実施しました。COPDの適切な治療法の普及を目的とし、H23年10月〜12月に第1回、翌年のH24年10月〜12月に第2回を県内5地区すべてで行っています。H25年には第3回を実施の予定です。この講演会の特徴は、外部講師を招かず、地元の専門医に座長と講師をお願いしていることです。地域の核となる先生と地域の先生が顔の見える連携を築き、今後の病診連携に役立てることを意図しています。COPDストップ作戦第2弾 スパイロキャラバン第2弾はDiscover COPDとして、スパイロキャラバンを実施しました。COPDの早期発見・早期治療の最大の障壁は肺機能検査(スパイロメトリ―)の普及不足です。肺機能検査を体験していただき、より日常診療的な検査にしていただくことを目的として行っています。まず、岐阜県下の診療所等を対象に、各地区での説明会を行い、ボランティア参加で協力診療所を募りました。肺機能検査装置のない診療所には貸し出し、患者さんに無料で肺機能検査を実施していただくというものです。検査対象者は、COPD以外の疾患で受診中の、喫煙中または禁煙歴があり、労作性呼吸困難の訴えがある40歳以上の患者さんです。この方たちに書面で同意を得て肺機能検査を実施しました。第1回はH23年10月〜12月、第二回はH24年9月〜12月の期間に実施しています。第1回のスパイロキャラバンの結果、COPD疑いありの患者さんは、検査を行った方の30.9%でした。とくに、70歳代では半数、80歳代では6割が疑いありと非常に高い頻度でした。人数でいうと、計530例の潜在患者さんを参加51施設が引き出したことになります。また、肺年齢はII期以上から実年齢に比べ有意に下がっていることもわかりました。このスパイロキャラバンの結果は、県下において積極的にCOPDストップ作戦を展開すべき根拠を明らかにしたといえます。スパイロキャラバン実施結果画像を拡大する年齢別COPD(疑)存在率(%)画像を拡大するCOPDストップ作戦第3弾 禁煙指導セミナー第3弾はOmit COPDとして、プライマリ・ケアの医師、薬剤師を対象に県5地区すべてで禁煙治療法セミナーを開講しました。目的は禁煙治療ができる施設を増やし、禁煙治療をもっと市民に身近なものにすることと、県内の禁煙治療レベルの底上げです。COPDの進行を止める最も有効かつ根本的な治療法は禁煙です。ただし、禁煙指導は標準治療に則り正しく行わないと成果が上がりません。ところが、実際は施設によって禁煙指導のやり方に差があるなど多くの課題がありました。平成24年10月~12月に第1回を行いましたが、反響が大きく、各地域とも非常に多くの先生方に参加いただきました。今年は第2回を開催する予定です。COPDストップ作戦第4弾 吸入指導セミナー第4弾はCare COPDとして、吸入指導セミナーを薬剤師会との連携により実施していきたいと考えています。このセミナーは薬局の吸入指導技術の向上と、すべての薬局で同じ指導ができるようにすることが目的です。COPD治療薬の主軸は吸入薬です。しかし、吸入指導が不十分で、患者さんが誤った吸入方法を行ったり、有効に吸入できていないケースが多くみられます。吸入デバイスもメーカーごとに異なり、すべての薬剤・デバイスを網羅したセミナーが必要とされています。東濃地区では2009年から行っていますが、薬剤師の方は非常に熱心で、成果も上がっています。これから全県下に展開していきたいと思います。COPDストップ作戦の成果と今後スパイロキャラバンで新たに多くの潜在患者から引き出し、プライマリ・ケア領域に多くのCOPD患者さんが埋もれている可能性を示したことは、大きな成果といえます。また、この作戦を通し、医療者の意識の変化も感じられます。COPD患者さんを積極的にみられる先生方も増えるなどCOPDの意識が定着し始めてきたと思います。また、肺機能検査実施の意識が高まってきたと思います。スパイロキャラバンに2回とも参加したり、数多く肺機能検査を実施される熱心な先生も増えてきました。肺機能検査の重要性や簡単さが浸透し、第1回目のスパイロキャラバン開始後、肺機能検査装置の新規購入が増えたようです。禁煙指導セミナーについては非常に反響が強く、禁煙治療の標準化が県下で底上げされたと思います。とはいえ、一般市民へのCOPDの認知率向上は今後も必要ですし、Prevent COPDとして学校での禁煙教室も非常に重要です。さらに、病診連携の実現もありますので、これら4つのコンセプトを軸にCOPD作戦を今後も進めて行きたいと考えています。COPD治療は前述のとおり、しなければならないことが多いのですが、それだけのことを行わないと、患者さんに良い医療を十分に提供できたことにはなりません。しかし、個々の施設ごとで、十分に対応できるとは限りません。そこで、これまでのような局地戦でなく、県全体が力を合わせた総力戦で行うことで、患者さんが救われるのだと思います。

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聖路加GENERAL 【Dr.仁多の呼吸器内科】

第1回「息が苦しいのはどういう時ですか?」第2回「胸が痛いのは、心臓のせいだけではありません」第3回「慢性の咳にはまずCXRから」第4回「先生、痰に血が混じっているのですが・・・」 第1回「息が苦しいのはどういう時ですか?」鑑別の難しい呼吸器疾患へのアプローチのポイントについて、役立つ情報が満載です。【CASE1:軽い咳と白色痰が続くために来院した65歳の男性】身体所見は特に問題ありません。しかし、よくよく聞いてみると、数年前から駅の階段を昇る時に息苦しさがあり、最近強くなってきたことがわかりました。また、この患者は40本/日の喫煙を45年間続けていました。労作時呼吸困難は、医師から尋ねないとわからないことが多いため、詳細な問診が重要なポイントになります。検査の結果、労作時呼吸困難の原因は重度のCOPDでした。他に考えられる労作時呼吸困難を引き起こす症例としては間質性肺炎があります。その診断方法、病期分類、治療について詳しく解説します。【CASE2:3ヶ月前から駅の階段を昇るときに息苦しさを感じ始め、増悪傾向の60歳女性】この方は、ペットとしてチンチラを飼っています。肺疾患の場合、ペット飼育歴や住環境を必ず確認します。診察の結果、聴診で両下肺野でfine cracklesを聴取しました。呼吸副雑音を聴取したときは、その音の性質とフェーズを確認することで、その原因をある程度絞り込むことができます。その方法について、詳しく解説します。そして、びまん性肺疾患の場合、症状がない場合でも専門医に送ることが勧められています。必要な検査を実施し、治療方針を立てて、協力しながら治療を進めることが重要です。この患者の場合も、検査の結果、意外なところに原因がありました !第2回「胸が痛いのは、心臓のせいだけではありません」気胸の鑑別、画像による診断、治療などについて詳しく解説します。【CASE1:突然刺されるような胸痛を訴えた42歳の男性】胸痛といえば、循環器疾患を思い浮かべますが、今回は呼吸器による胸痛の症例です。労作時に呼吸困難があったことから、胸部X線写真を撮った結果、気胸であることがわかりました。気胸は、つい見逃しがちな疾患といえますが、まずは、「胸痛の鑑別診断に必ず含める」ということを気を付けたいところです。若年に多いとされる自然気胸ですが、40代でも発症する例はあります。気胸には緊急性を要するものがあるため、この患者のように突然発症した場合は、まず救急車で搬送するのが原則です。【CASE2:3ヵ月前から慢性的に右胸痛を訴える58歳の女性】労作時呼吸困難を伴うため、胸膜炎などによる胸水が疑われます。単純エックス線写真を撮影したところ、右肺にかなりの胸水が貯留していることが確認されました。CTも撮影してよく確認してみると、胸水の貯留している右肺ではなく、比較的健康に見えた左肺にその原因につながる影が確認されました。胸痛の診断のポイントは、ずばり問診です。痛みの性状にくわえて、突然発症したか、持続するか断続的かなどの時相的な要素も重要なポイントになります。胸痛には、解離性大動脈瘤など、緊急性の高い疾患も含まれますので、しっかり問診をして鑑別することが重要です。これらのポイントについて、具体的にわかりやすく解説します。第3回「慢性の咳にはまずCXRから」慢性咳嗽についてポイントを詳しく解説します。【CASE1:15本/日の喫煙を40年間続けてきた62歳男性】咳嗽の出現をきっかけに救急室を受診し、気管支炎の疑いで抗菌薬を処方されましたが、改善しませんでした。その後、抗菌薬を変えたところ効果があったかにみえましたが、またすぐに咳嗽が再燃してしまいました。このように、長引く咳をみたときには、まず胸部単純写真(CXR)を撮ることが、診断のポイントになります。本症例では、CXRから結核を疑い、検査の結果結核と診断されました。初動が遅れることで結果的に治療が遅れ、感染の可能性が高まってしまいました。このような事例を防ぐためには、常に疑いをもち、問診の時点から結核を発症しやすい患者を見ぬくことがコツです。また、多剤併用が原則の治療についても、詳しく解説します。【CASE2:乳がん術後、化学療法中の65歳女性】数カ月前から乾性の咳が続くため、咳喘息の疑いで吸入ステロイド治療を開始しましたが、改善はあるものの軽快しません。胸部単純写真を撮影したところ、正面では問題がないように見えましたが、側面では、ちょうど心臓の裏側に隠れるように浸潤影が確認されました。咳の鑑別において重要なことは、まず腫瘍、結核などの器質的疾患を除外することです。そのためには、胸部単純写真は正面だけでなく、側面も撮ること、必要があればCTを撮って確認することが重要です。どのような場合にCTを撮ればよいのか、ポイントをお伝えします。また、遷延する咳の鑑別について詳しく解説します。第4回「先生、痰に血が混じっているのですが・・・」血痰の鑑別について、詳しく解説します。【CASE1:半年ほど前から、週に2〜3回、断続的に痰に血が混じるようになった77歳の女性】60歳ごろから検診などで胸部異常陰影を指摘されていましたが、経過観察となっていました。血痰をみると、まず結核、肺がん、気管支拡張症などを疑いますが、最初に考えなくてはいけないことは、「本当に血痰なのかどうか」です。もしかすると、口腔内の出血や、吐血の可能性もあります。この患者の場合は、以前より胸部異常陰影があることと、喫煙歴などから肺病変の疑いが強いと考え、検査をしたところ、非結核性抗酸菌症であることがわかりました。非結核性抗酸菌症においては、最終的な診断が出るまで、必ず結核の疑いを持つことが重要です。【CASE2:若い頃から気管支拡張症を指摘されていた66歳の女性】3日前から発熱、喀痰が増加し、近医で肺炎と診断されて、抗菌薬治療を開始していました。ところが、入院当日に持続する喀血があり、救急車で搬送。画像検査では、気管支拡張症と肺の病変が認められました。喀血において、最も重要なことは、その量です。出血の原因より、喀血による窒息のほうが重要な問題を引き起こすためです。本症例においても、大量の喀血とされる600ml/24hrを超えると思われる出血がありました。このような場合、まず気道確保が重要です。気管支鏡検査をしたところ、出血部位を下方にしても両側に血液が流れこむほどの出血があったため、気管支ブロッカーを使用して気道を確保しました。その後、原因とみられる気管支動脈をBAEによって塞栓しました。このように、大量喀血は緊急性の高い場合が多く、その検査の流れなどを詳しく解説します。

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プライマリ・ケアでのCOPD患者の自己管理・定期管理vs.通常ケア、長期ベネフィットは?/BMJ

 プライマリ・ケアでの慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者のマネジメントについて、総合的自己管理や定期管理と、通常ケア(患者の判断で受診)とを比較した無作為化試験の結果、総合的自己管理や定期管理は通常ケアと比べて、QOLや効果の実感に関して長期的なベネフィットが示されなかったことが、オランダ・Radboud大学のErik W M A Bischoff氏らにより報告された。プライマリ・ケアでは特に、COPDに対して周到で効果的なマネジメント戦略が必要とされる。しかし、著者らは、ガイドラインに即した定期管理の効果には疑問の声もあり、総合的自己管理プログラムのベネフィットは示されているが、プライマリ・ケアでの効果は明らかではないとして本検討を行った。BMJ誌2012年12月1日号(オンライン版2012年11月28日号)掲載より。自己管理、定期管理、通常ケアの3群に無作為化し検討 研究グループは、一般診療所におけるCOPD患者の2つの異なる疾病マネジメント方法(総合的自己管理と定期管理)について、QOL(主要目的)、増悪の頻度と自己管理、効果の実感(副次目的)に関する長期の効果を評価することを目的に、24ヵ月にわたる多施設共同での調査者盲検3群プラグマティック無作為化試験を行った。 被験者は、オランダ東部の15の一般開業医で、スパイロメトリーで確認され治療を受けているCOPD患者を対象とした。呼吸器専門医の治療を受けている重症のCOPD患者は除外された。 被験者は、総合的自己管理群と定期管理群、通常ケアの3群に割り付けられた。総合的自己管理群には、通常ケアの補助として、臨床看護師による4回の特別セッションを含む継続的な電話サポートプラグラムが提供された。定期管理群には、通常ケアの補助として、臨床看護師による年2~4回の体系的コンサルテーションによりモニタリングが行われた。通常ケア群は、患者主導の受診のみであった。 主要評価項目は、CRQ(Chronic Respiratory Questionnaire)の合計スコアで測定した24ヵ月時点のCOPD特異的QOLの変化とした。副次評価項目は、CRQの各領域スコア、Nijmegen telephonic exacerbation assessment systemで測定した増悪の頻度と患者管理、およびCOPD self-efficacy scaleで測定した効果の実感とした。自己管理は通常ケアよりも適切な増悪管理が可能 165例の患者が、自己管理群(n=55)、定期管理群(n=55)、通常ケア群(n=55)に割り付けられた。 24ヵ月時点の、平均CRQスコアについて、3群間の補正後治療格差に有意差は認められなかった。また、増悪に対する自己管理を除き、副次評価項目の結果でも差は認められなかった。 通常ケア群と比較して自己管理群では、増悪の管理を、気管支拡張薬(オッズ比:2.81、95%信頼区間:1.16~6.82)、プレドニゾロンあるいは抗菌薬またはその両方(同:3.98、1.10~15.58)で、より多く行っていることが認められた。 以上の結果を踏まえて研究グループは、「一般診療所のCOPD患者では、総合的自己管理や定期管理は、QOLや効果の実感に関して通常ケアよりも長期的ベネフィットを示さなかった。自己管理群では、通常ケア群よりも増悪を適切に管理することが可能のようである」とまとめている。

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Dr.岡田のアレルギー疾患大原則

第8回「喘息(前編)」第9回「喘息(後編)」第10回「アトピー性皮膚炎」第11回「じん麻疹・血管性浮腫・接触性皮膚炎」 第8回「喘息(前編)」喘息の基本は、慢性の気道炎症→気道過敏症→気道狭窄→喘息発作。長期コントロールは気道炎症を抑える抗炎症剤、発作が起こってしまったら炎症がおさまるまでとりあえず気管支拡張剤で呼吸を維持するのは常識ですが、炎症を抑えるためにステップアップすることばかりでなく、副作用も無視できません。そこで、もう一歩奥に踏み込んで、アレルギー、鼻炎、GERDなどを含めた慢性炎症の原因について考えていきます。 前編では、いつもの外来ですぐに役立つ、毎回聞く6つの質問、ピークフローがどうして必須なのか、GINA2006、JGL2006の具体的な利用法、ロイコトリエン抑制剤の効果が得られやすい患者群と吸入性ステロイドを使うべき患者の特徴などを解説します。第9回「喘息(後編)」喘息の長期コントロールには気道炎症を抑える抗炎症剤を用います。しかし、患者さんから「ステロイドはちょっと…」と言われたときはどうしていますか? また折角処方しても実際使ってもらえないのでは意味がありません。後編では、吸入ステロイドの副作用に関してデータを一つひとつ示しながら、医師も患者も納得して使えるように詳しく説明していきます。 さらに、抗ロイコトリエン剤が有効な症例の選び方、アスピリン喘息の解説、喘息治療の落とし穴=Vocal Cord Dysfunctionの症例呈示に加えて、ヨーロッパで常識になってきているシングルインヘーラー療法まで紹介します。第10回「アトピー性皮膚炎」ステロイドクリームの強さの分類が、アメリカと日本とフランスでは全く違うことをご存じでしょうか。日本では5段階中2番目のベリーストロングに分類されている「フルメタ」が、アメリカでは7段階中4番目と、真ん中より下になります。このような例からも分類に固執して部位ごとに外用薬を何種類も処方したり、症状によって毎回種類を変えるのではなく、塗り方と回数を調節してみる方が効果があることがわかります。 今回は簡単なステロイドの使い方はもちろん、ワセリンが加湿剤ではなく保湿剤であることを認識した上での使い方、また、注意が必要な感染症であるとびひ、ヘルペス、真菌症などについて解説します。 できてしまったアトピーは、先ずシンプルに一度治してしまいましょう!第11回「じん麻疹・血管性浮腫・接触性皮膚炎」大人の慢性じん麻疹は、食物アレルギーに因る確率はわずか1%未満で、原因としては自己免疫、ストレス、感染症など様々な因子に関連していることが多いです。しかし、いつ、どこまで検索すればよいのか迷うことはないでしょうか。今回は、すべての原因を一つの図にして、患者さんが納得できる説明方法と実践的な治療法を紹介します。また、複雑な病態を診断する上で無意識に行っているパターン認識、Aphorism(定石集)、分析の考え方も整理します。 接触性皮膚炎は、アレルギー性と刺激性の区別を発症時間、症状、病態でひとつの表にすると鑑別が容易になります。数少ない実地臨床で高頻度に出会う「非I型(IV型)アレルギー=接触性皮膚炎」をマスターすれば、大原則の総仕上げです!

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Dr.林の笑劇的救急問答5

第3回「さ、さ、酸素! ~一酸化炭素中毒~」第4回「さ、さ、酸素! ~気管支喘息~」 第3回「さ、さ、酸素! ~一酸化炭素中毒~」一酸化炭素(以下CO)中毒は、案外日常生活の中や事件・事故現場に潜んでいます。しかし、疑わないと分からないのがCO中毒の落とし穴。患者さんの主訴や血液検査の結果だけでは見逃してしまう事もあります。何を、どう疑えば診断に辿り着けるのか、そしてCO中毒と診断した場合どのように戦えばいいのか、習得してください。 40歳男性 頭痛と嘔吐を主訴に来院。本人は食あたりを主張するが下痢はない…。 家具工場の火事から救出された三人の男性。それぞれの状態に合せどう対応すればいいのか?第4回「さ、さ、酸素! ~気管支喘息~」気管支喘息は非常によくある疾患で、夜間外来などにも老若男女を問わず来院します。重症の患者さんが徒歩で来院することも決して珍しくありません。また「吸入で改善するだろう」などと甘く見ていると吸入薬が効かなかったり、来院後にみるみる具合が悪くなっていくケースもあります。そんなとき、次の一手はどうするか? 様々な戦術をDr.林が披露します ! 27歳女性 喘息発作で来院。呼吸困難でピークフローは100l/min SpO2 88% 75歳男性 夜間、喘息発作で救急へ。気管支拡張薬やステロイドが著効しない…。

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コントロール不良の喘息患者にチオトロピウム投与で、肺機能、症状増悪リスクが改善/NEJM

 吸入グルココルチコイドと長時間作用性β刺激薬(LABA)で治療を行いながらもコントロール不良の喘息患者に対し、チオトロピウム(商品名:スピリーバ)を投与することで、肺機能が改善し、症状増悪リスクが約2割減少することが、オランダ・Groningen大学医療センターのHuib A.M. Kerstjens氏らによる検討で示された。喘息患者900人超について行った無作為化試験の結果で、NEJM誌2012年9月27日号(オンライン版2012年9月2日号)で発表した。吸入チオトロピウムを48週間投与研究グループは、吸入グルココルチコイドとLABAで治療中の症状のある喘息患者、合計912例について、2つの再現性無作為化比較試験(試験1、試験2)を行い、チオトロピウムの追加投与による肺機能や症状増悪に対する効果を分析した。試験は2008年10月~2011年7月に、15ヵ国で行われた。被験者を2群に分け、一方には、ソフトミストタイプの吸入チオトロピウム(総用量5μg)を、1日1回48週間にわたって投与し、もう一方の群には同量のプラセボを投与した。被験者の平均年齢は53歳で、女性の割合は60.4%、平均FEV1は予測値の62%だった。被験者は全員症候性で、気管支拡張薬投与後の1秒量(FEV1)は予測値の80%以下、前年に1回以上の重度増悪があった。最大FEV1改善幅、チオトロピウム群の対プラセボ格差は86~154mL24週間後のチオトロピウム投与3時間後の最大FEV1の平均変化量(±SE)は、チオトロピウム群がプラセボ群より大きかった。平均群間格差は、試験1では86±34mL(p=0.01)、試験2では154±32mL(p

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チオトロピウムによる喘息患者の肺機能改善

 2012年欧州呼吸器学会(ERS)総会にて、ベーリンガーインゲルハイムは、喘息患者を対象とした包括的な第3相臨床試験PrimoTinA-asthma試験結果の一部を発表した。 PrimoTinA-asthma試験は2つの二重盲検並行群間比較試験からなる第3相臨床試験。高用量ICSとLABAの併用治療を受けており、気管支拡張剤投与後の1秒量が予測値の80%未満、喘息管理質問票(ACQ)スコアが1.5以上の喘息患者912人を、チオトロピウム(5μgレスピマットソフトミスト吸入器使用)または、プラセボ群に分け、それぞれ48週間上乗せ投与した。 主要評価項目である肺機能(投与24週間後のピークFEV1とトラフFEV1)は、プラセボ群と比べチオトロピウム投与群で有意に改善した。また、重度の喘息増悪については、プラセボ群に比べチオトロピウム投与群で初回の重度の喘息増悪までの期間を有意に遅らせ、そのリスクを抑制した(HR= 0.79、P=0.03)。さらに、チオトロピウム投与群は、すべての喘息増悪のリスクを抑制した(P

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アジスロマイシン、非嚢胞性線維症性気管支拡張症の増悪を抑制:EMBRACE試験

 アジスロマイシン(商品名:ジスロマック)は、嚢胞性線維症を原因としない気管支拡張症におけるイベントベースの増悪の予防治療として有効なことが、ニュージーランド・Middlemore病院(マヌカウ市)のConroy Wong氏らが実施したEMBRACE試験で示唆された。気管支拡張症は好中球性の気道炎症、慢性的な細菌感染、繰り返す肺の病態の増悪で特徴づけられ、大量の喀痰を伴う重篤な咳嗽や進行性の肺機能低下、QOL低下をきたし、死亡率の上昇をもたらす可能性がある。アジスロマイシンは抗炎症作用および免疫調節作用を有するマクロライド系抗菌薬で、嚢胞性線維症の病態の増悪を抑制することが示されている。Lancet誌2012年8月18日号掲載の報告。気管支拡張症に対する効果をプラセボ対照無作為化試験で評価EMBRACE(Effectiveness of Macrolides in patients with BRonchiectasis using Azithromycin to Control Exacerbations)試験は、非嚢胞性線維症に起因する気管支拡張症の治療において、アジスロマイシンは増悪率を低減して肺機能を増強し、健康関連QOLを改善するとの仮説の検証を目的とする二重盲検プラセボ対照無作為化試験。2008年2月12日~2009年10月15日までに、ニュージーランドの3施設に、抗菌薬治療を要する増悪の既往歴があり、高解像度CT検査で気管支拡張症と診断された18歳以上の患者が登録された。これらの患者が、アジスロマイシン500mgあるいはプラセボを週3日(月、水、金曜日)、6ヵ月間投与する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、6ヵ月の治療期間中のイベントベースの増悪率、気管支拡張薬投与前の1秒量(FEV1)のベースラインからの変化、St George呼吸器質問票(SGRQ:0~100点で表し値が低いほど良好、4点以上の変化で臨床的に有意と判定)総スコアの変化の複合エンドポイントとした。増悪率が有意に改善、FEV1、SGRQ総スコアは改善せず141例が登録され、アジスロマイシン群に71例、プラセボ群には70例が割り付けられた。治療期間中の増悪率はアジスロマイシン群が0.59/人と、プラセボ群の1.57/人に比べ有意に改善した(率比:0.38、95%信頼区間[CI]:0.26~0.54、p<0.0001)。拡張薬投与前FEV1は、アジスロマイシン群はベースラインから変化はなく、プラセボ群では0.04L低下したが、この差は有意ではなかった(群間差:0.04L、95%CI:-0.03~0.12、p=0.251)。さらに、SGRQ総スコアの変化についても、アジスロマイシン群は5.17点の低下、プラセボ群は1.92点の低下で、有意差は認めなかった(群間差:-3.25点、95%CI:-7.21~0.72、p=0.108)。著者は、「6ヵ月間のアジスロマイシン治療は、増悪率の低下に加え、初回増悪までの期間もプラセボ群に比し有意に延長し、これらの改善効果は治療終了後6ヵ月の時点でも継続していた。SGRQの症状関連項目の改善効果も確認された。それゆえ、アジスロマイシンは1回以上の増悪歴のある非嚢胞性線維症性気管支拡張症における増悪の予防治療の新たな選択肢である」と結論し、「長期治療の場合は、マクロライド系抗菌薬への耐性の発現を十分に考慮して患者を選択すべきである」と指摘している。

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ドライパウダー式吸入剤「シムビコートタービュヘイラー」に、COPDの効能追加

アステラス製薬株式会社とアストラゼネカ株式会社は10日、ドライパウダー式吸入剤「シムビコートタービュヘイラー」について慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)が効能追加として承認取得されたと発表した。シムビコートタービュヘイラーは、COPDの薬物療法の中心である気管支拡張薬の一つである長時間作用性β2刺激薬(LABA)と、COPDの増悪を減少させる吸入ステロイド(ICS)の配合剤。COPD患者の場合、吸入回数は4吸入(朝2吸入、夜2吸入)で吸入器具(タービュヘイラー)より吸入する。1日の薬剤吸入量は、ブデソニド640μgとホルモテロールフマル酸塩水和物18μg。 シムビコートタービュヘイラーは、日本では2010年1月に1日2回投与のドライパウダー吸入式の喘息治療配合剤として発売された。2012年4月現在で、喘息の治療薬として114ヵ国、COPDの治療薬として106ヵ国で承認されている。 詳細はプレスリリースへhttp://www.astrazeneca.co.jp/activity/press/2012/12_8_10.html

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現在・元ヘビースモーカーへの低線量CT肺がんスクリーニングで、COPD検出可能

現在および以前にヘビースモーカーであった人に対する、低線量CT肺がんスクリーニングは、感度63%、特異度は88%と、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を検出可能であることが示された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのOnno M. Mets氏らが、1,140人を対象に行った前向き横断試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年10月26日号で発表した。50~75歳、1日16本、25年間喫煙といったヘビースモーカーを対象研究グループは、2007年7月~2008年9月にかけて、50~75歳の現在または過去の喫煙者男性、1,140人について試験を行った。被験者は、1日16本以上の喫煙を25年以上、または11本以上を30年以上などのヘビースモーカーだった。研究グループは被験者に対し、同一日に行う吸・呼気CT検査で、気管支拡張薬服用前の肺機能検査を行った。肺気腫の定義は、FEV1/FVCが70%未満だった。感度63%、特異度88%、陽性適中率76%、陰性適中率79%その結果、肺気腫が認められたのは、全体の38%にあたる437人だった。CTによる肺気腫や空気とらえ込み現象の検出、BMI、喫煙量(パック・年)、喫煙状況などで補正を行った結果、CT検査によるCOPD検出モデルのROC曲線下面積は0.83(95%信頼区間:0.81~0.86)だった。同モデルによって、COPD陽性と判定されたのは274人で、うち85人が偽陽性だった。COPDの同モデルによる検出感度は63%(同:58~67)、特異度は88%(同:85~90)、陽性適中率は76%(同:72~81)、陰性適中率は79%(同:76~82%)だった。被験者で症状のある人については、ROC曲線下面積は0.87(同:0.86~0.88)、症状のない人については0.78(同:0.76~0.80)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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喘息患者への気管支拡張薬vs. プラセボvs. 無治療

喘息患者を対象とした前向き実験的試験で報告されるプラセボ効果の客観的および主観的効果結果への影響について、気管支拡張薬とプラセボ(2種類)と無治療とを比較して検討した二重盲検クロスオーバーパイロット試験の結果、客観的なFEV1を指標とした結果ではプラセボ群に改善は認められなかったが、主観的な患者評価では気管支拡張薬とプラセボに有意差は認められなかったことが報告された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院/ハーバードメディカルスクールのMichael E. Wechsler氏らが米国国立補完代替医療センターから助成を受け行った試験報告で、NEJM誌2011年7月14日号で発表された。4つの介入群の客観的指標および主観的評価の変化を比較Wechsler氏らによるパイロット試験は、積極的介入としてアルブテロール吸入(サルブタモール、商品名:サルタノールインへラー、アイロミールエアゾール)と、プラセボ吸入、シャム鍼治療、無治療の4つの介入後の急性変化について比較された。被験者は、79人がスクリーニングを受け、そのうち症状が中等度で適格基準を満たした46例で、連続する4回の受診(3~7日間隔)で4つの介入を無作為に1回ずつ受けた。この介入を1ブロックとして、合計3ブロックの介入(被験者の受診回数は合計12回)が実施された。12回の受診時には毎回、客観的反応の測定として、介入後に各20分の2時間にわたるスパイロメトリーが行われFEV1最大値を測定。また主観的反応の測定として、症状の改善認知度をスコア0~10のビジュアルスケールを用いて回答してもらうとともに、受けた介入が実際の治療と思うかプラセボと思うかも回答してもらった。客観的評価の差は有意、しかし主観的評価の有意差は気管支拡張薬 vs.プラセボに認められず試験を完了したのは39例であった。結果、FEV1が、アルブテロール吸入群では20%増加したのに対し、他の3つの介入群はそれぞれ約7%の増加であった(P<0.001)。しかし、患者評価の結果では気管支拡張薬とプラセボ間に有意差は認められなかった。改善したと回答した患者は、アルブテロール吸入群は50%、プラセボ吸入群は45%、シャム鍼治療群は46%であった。ただし、3群とも無治療群(21%)よりは改善したと回答した人が有意に多かった(P<0.001)。結果を踏まえてWechsler氏は、「プラセボ効果は、臨床的に意味があり、積極的な薬物療法の効果についてライバルとなり得る。臨床管理および調査デザインの視点から、患者評価は信頼できないものであるが、客観的評価を確認するために臨床試験の基本項目とするのであれば、治療をしなかった患者群の評価も基本項目に入れるべきであろう」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬 インダカテロール(商品名:オンブレス)

2011年7月、慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬「インダカテロールマレイン酸塩」(商品名:オンブレス®、以下「インダカテロール」)の製造販売が承認された。COPDの現状と課題COPDは「肺の生活習慣病」とも呼ばれ、たばこの煙などの有害物質を長期間にわたり吸入することで発症する、肺の炎症性疾患である。COPDは呼吸機能が加速的に低下する疾患で、主な症状は、咳、痰や体動時の呼吸困難などで、進行すると死に至ることもある。わが国のCOPD患者数は500万人を超えるといわれているが、国内の医療機関でCOPDと診断された患者は約17万にとどまることが報告されている。喫煙率が高く、喫煙開始年齢が若年化しているわが国では、今後さらに患者数が増えることが予想されている。即効性と持続性を兼ね備えたCOPD治療薬COPDを根治する薬物はいまだ登場しておらず、現在の薬物治療は気管支拡張薬が中心となる。長期間作用性β2刺激薬のカテゴリーに属するインダカテロールは、専用の吸入器「ブリーズヘラー®」を用いて吸入する吸入型の気管支拡張薬である。1日1回の吸入で、呼吸機能改善効果は24時間持続し1),2)、さらに、その気管支拡張効果は吸入5分後に発現する3),4)。このように、インダカテロールは1日1回という吸入回数や持続時間の長さなどの利便性、持続性に加え、従来の吸入型長時間作用性気管支拡張薬にはみられない即効性を兼ね備えた、新しいタイプのCOPD治療薬である。インダカテロールの効果と安全性インダカテロールは国際共同第Ⅲ相試験において、1日1回の吸入により、プラセボ群と比べて呼吸機能、呼吸困難の症状、QOLの有意な改善が認められた5)。また、有害事象の発現率も低く、その安全性も確認されている5)。さらに、1日1回投与の長時間作用性抗コリン薬であるチオトロピウムと比較した海外臨床試験(無作為化、非盲検)では、呼吸機能の改善(トラフFEV1)については同等以上の効果を、QOLについては有意な改善を示した1)。また、同じ長時間作用性吸入β2刺激薬で、1日2回投与のサルメテロールとの比較においても、呼吸機能の有意な改善、息切れやQOLの改善などの優れた有効性が認められた2)。まとめインダカテロールは新しいタイプの長時間作用性吸入β2刺激薬であり、既存のCOPD治療薬に比べても、呼吸機能改善効果は同等以上であることが認められている。また、利便性、持続性、即効性という特徴は、患者のQOL改善にも大きく寄与すると思われ、今後、COPD治療の新しい選択肢となることが期待される。

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COPDの標準治療へのβ遮断薬追加の有用性が明らかに

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、β遮断薬を標準的な段階的吸入薬治療に追加すると、全死因死亡、急性増悪、入院のリスクが改善されることが、イギリス・Dundee大学のPhilip M Short氏らの検討で示された。β遮断薬は、心血管疾患に対する明確なベネフィットが確立されているが、COPDを併発する患者では、気管支攣縮の誘導や吸入β2刺激薬の気管支拡張作用の阻害を理由に使用されていない。一方、β遮断薬がCOPD患者の死亡や増悪を抑制する可能性を示唆する報告があるが、標準的なCOPD治療薬との併用効果を検討した研究はないという。BMJ誌2011年5月14日号(オンライン版2011年5月10日号)掲載の報告。β遮断薬の上乗せ効果を評価する後ろ向きコホート試験研究グループは、COPD管理におけるβ遮断薬の意義を評価するために、標準治療+β遮断薬の効果を検討する後ろ向きコホート試験を実施した。スコットランド、テーサイド州の呼吸器疾患データベースであるTayside Respiratory Disease Information System(TARDIS)を検索して、2001年1月~2010年1月までにCOPDと診断された50歳以上の患者5,977例を抽出した。Cox比例ハザード回帰分析にて、全死因死亡、経口副腎皮質ステロイド薬の緊急投与、呼吸器関連入院のハザード比を算出した。全死因死亡率が有意に22%低下平均フォローアップ期間は4.35年、男性3,048例/女性2,929例、診断時の平均年齢は69.1歳、使用されたβ遮断薬の88%が心臓選択性であった。β遮断薬の追加によって全死因死亡率が22%低下した(ハザード比:0.78、95%信頼区間:0.67~0.92)。β遮断薬追加が全死因死亡にもたらすベネフィットは、治療の全段階で認められた。対照群(1,180例、短時間作用性吸入β2刺激薬、短時間作用性吸入抗コリン薬のいずれか一方のみで治療)との比較における全死因死亡率の調整ハザード比は、吸入ステロイド薬(ICS)+長時間作用性β2刺激薬(LABA)+長時間作用性抗コリン薬チオトロピウム(Tio)併用治療では0.43(95%信頼区間:0.38~0.48)、これにβ遮断薬を追加した場合は0.28(同:0.21~0.39)であり、いずれも有意に改善されたが、ICS+LABA+Tio+β遮断薬併用治療のほうがより良好であった。急性増悪時の経口ステロイド薬の緊急投与および呼吸器関連入院の低減効果についても、全死因死亡と同様の傾向がみられ、β遮断薬追加のベネフィットが示された。長時間作用性気管支拡張薬や吸入ステロイド薬にβ遮断薬を併用しても、肺機能に対する有害な影響は認めなかった。著者は、「β遮断薬は、COPDの確立された段階的吸入薬治療と併用することで、併存する心血管疾患や心臓病薬との相互作用を起こさずに、かつ肺機能へ有害な影響を及ぼすことなく、死亡や増悪を低下させる可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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乳幼児の急性細気管支炎、アドレナリン単剤の有効性示すエビデンス

2歳以下の乳幼児の急性細気管支炎に救急部外来で対処する場合、第1日の入院リスクを最も低減する治療法はアドレナリン(エピネフリン)単剤であることが、カナダAlberta大学小児科のLisa Hartling氏らの検討で示された。急性細気管支炎の治療法は世界中で大きなばらつきがみられ、それぞれの事情に基づいて異なる気管支拡張薬やステロイド薬が使用されている。系統的なレビューがいくつか実施されているが、個々の治療選択肢に関する信頼性の高いエビデンスはいまだに確立されていないという。BMJ誌2011年4月9日号(オンライン版2011年4月6日号)掲載の報告。乳幼児の急性細気管支炎の至適治療法に関するメタ解析研究グループは、2歳以下の乳幼児の細気管支炎の急性期管理における気管支拡張薬とステロイド薬の単剤あるいは併用療法の有効性と安全性について系統的にレビューし、メタ解析を行った。データベース(Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Scopus、PubMed、LILACS、IranMedEx)、関連学会プロシーディング、臨床試験登録を検索して、喘鳴を伴う細気管支炎を初めて発症した生後24ヵ月以下の乳幼児を対象に、気管支拡張薬とステロイド薬の単剤あるいは併用療法を、プラセボあるいは他の介入法(別の気管支拡張薬やステロイド薬、標準治療)と比較した無作為化対照比較試験を抽出した。2名のレビューワーが、患者選択基準やバイアスのリスクなどに関して各試験の評価を行った。主要評価項目は、外来患者の入院(第1日、第7日まで)および入院患者の入院期間であった。メタ解析には変量効果モデル(random effects model)を用い、全介入法を同時に比較するためにベイジアン・ネットワーク・モデル(Bayesian network model)による混合治療比較法(mixed treatment comparison)を使用した。1週間までの入院リスクの低減にはアドレナリン+デキサメタゾン併用療法が有用48試験(4,897例)が解析の対象となった。バイアスのリスクは、「低い」が17%(8試験)、「高い」が31%(15試験)、「不明」が52%(25試験)であった。プラセボとの比較において第1日の入院を有意に低減したのはアドレナリン単剤のみであった[920例のプール解析によるリスク比:0.67、95%信頼区間(CI):0.50~0.89、ベースラインの入院リスクが20%の場合に1例の入院を回避するのに要する治療例数(NNT):15、95%CI:10~45]。第7日までの入院の有意な低減効果を認めたのは、バイアスのリスクが低いと判定された1つの大規模試験(400例)で示されたアドレナリン+デキサメタゾン併用療法であった(リスク比:0.65、95%CI:0.44~0.95、ベースラインの入院リスクが26%の場合のNNT:11、95%CI:7~76)。混合治療比較法による解析では、外来患者に対する好ましい治療法としてアドレナリン単剤(第1日の入院を基準とした場合に最良の治療法である確率:45%)およびアドレナリン+ステロイド薬併用療法(同:39%)が示された。有害事象の報告に治療法による差は認めなかった。入院患者の入院期間については、明確な効果を示した介入法は確認されなかった。著者は、「急性細気管支炎の乳幼児に救急部外来で対処する場合、第1日の入院リスクを最も低減する治療法はアドレナリン単剤であり、アドレナリン+デキサメタゾン併用療法は第7日までの入院リスク低減に有用であることを示すエビデンスが得られた」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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中等症~最重症COPD患者の増悪予防に有効なのは?

中等症~最重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の増悪予防には、LABA(長時間作用性β2刺激薬)のサルメテロール(商品名:セレベント)よりも、長時間作用性抗コリン薬のチオトロピウム(商品名:スピリーバ)のほうが有効であることが、7,300例超を対象とした1年間の無作為化二重盲検ダブルダミー並行群間比較試験の結果示された。COPD治療ガイドラインでは、同患者の症状軽減と増悪リスク低下に対して長時間作用性の吸入気管支拡張薬が推奨されているが、LABAもしくは長時間作用性抗コリン薬のいずれが推奨されるかは明らかではない。ドイツ・Giessen and Marburg大学病院Claus Vogelmeier氏ら「POET-COPD」研究グループは、長時間作用性抗コリン薬がLABAよりも優れているのかどうかを検討するため、25ヵ国725施設共同で本試験を行った。NEJM誌2011年3月24日号掲載より。チオトロピウム群とサルメテロール群に無作為化、初回増悪発生までの期間を主要エンドポイントに試験は、中等症~最重症COPD(40歳以上、喫煙10箱・年以上、GOLD II~IVなど)で前年に増悪の既往がある患者を対象とし、無作為に、チオトロピウム18μg・1日1回投与群もしくはサルメテロール50μg・1日2回投与群に割り付け、中等度~重度の増悪発作に対する治療効果を比較した。主要エンドポイントは、初回増悪発生までの期間とした。被験者は2008年1月から2009年4月の間、計7,376例(チオトロピウム群3,707例、サルメテロール群3,669例)が登録された。基線での両群被験者の特徴は均衡しており、おおよそ75%が男性、平均年齢63歳、現喫煙者48%、COPD歴8年などだった。チオトロピウム群のほうが42日間遅く、17%のリスク低下結果、初回増悪発生までの期間は、チオトロピウム群187日、サルメテロール群145日で、チオトロピウム群の方が42日間遅く、17%のリスク低下が認められた(ハザード比:0.83、95%信頼区間:0.77~0.90、P<0.001)。またチオトロピウム群のほうが、初回重度増悪の初回発生までの期間も延長(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.61~0.85、P<0.001)、中等度または重度増悪の年間発生回数の減少(0.64対0.72、発生率比:0.89、95%信頼区間:0.83~0.96、P=0.002)、重度増悪の年間発生回数の減少(0.09対0.13、発生率比:0.73、95%信頼区間:0.66~0.82、P<0.001)も認められた。なお重篤な有害事象、治療中止となった有害事象の発現率は、総じて両群で同程度だった。死亡例は、チオトロピウム群64例(1.7%)、サルメテロール群78例(2.1%)だった。(武藤まき:医療ライター)

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地域ベースのCOPD予防・マネジメント介入で肺機能低下を抑制:中国

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、喫煙や空気汚染など複数の因子が重なって起きる慢性進行性の疾患であり、一つの因子への介入では十分な効果が得られない。これまで、早期ステージでの地域ベースの介入にはほとんど関心が示されていなかったが、中国・広州医科大学のYumin Zhou氏らグループが、COPDの早期予防とマネジメントを目的に、地域ベースの統合的介入がもたらす効果を評価するクラスター無作為化比較試験を行った。BMJ誌2010年12月4日号(オンライン版2010年12月1日号)掲載より。872例を統合的介入群と通常ケア群に割り付け追跡試験は、2地域8つの保健単位1,062例のうち試験適格・除外基準を満たした40~89歳の872例(COPD患者101例、非COPD患者771例)を、統合的介入プログラム群(介入群)または通常ケアプログラム群(対照群)に割り付け行われた。介入群には、体系的な保健教育、個別の集中的介入と治療、リハビリテーションが行われた。主要評価項目は、気管支拡張薬投与前の努力呼気1秒量(FEV1)の年低下率とした。FEV1の年低下率が介入群の方が有意に低い結果、FEV1の年低下率は、介入群の方が対照群よりも有意に低かった。補正後のFEV1の年低下率の差は19mL/年(95%信頼区間:3~36、P

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コントロール不良の成人喘息患者へのチオトロピウム追加投与

吸入用ステロイド(グルココルチコイド)単独療法でコントロール不良の成人喘息患者の代替治療に関して、COPD治療薬として開発された長時間作用性抗コリン薬の臭化チオトロピウム水和物(商品名:スピリーバ、日米とも喘息は未適応)の追加投与が、喘息症状および肺機能を改善することが報告された。米国ウェイクフォレスト大学のStephen P. Peters氏らNHLBI喘息臨床研究ネットワークによる。その効果は、すでに改善効果が認められている長時間作用性β2刺激薬(LABA)のサルメテロール(商品名:セレベント)を追加投与した場合と、同等のようだと結論している。NEJM誌2010年10月28日号(オンライン版2010年9月19日号)掲載より。チオトロピウム追加投与を、ステロイド倍量、サルメテロール追加投与とそれぞれ比較Peters氏らは、18歳以上喘息患者210例を対象に、チオトロピウム追加投与(毎朝18μg)、吸入用ステロイド倍量投与(160μg〈2パフ・80μg〉を1日2回)、サルメテロール(50μgを1日2回)追加投与を段階的に受ける二重盲検トリプルダミー交差試験を行った。試験目的は、吸入用ステロイド単独療法へのチオトロピウム追加投与に関する評価を、吸入ステロイド用倍量投与と比較(主要評価項目、優越性を評価)およびサルメテロール追加投与の場合と比較(副次評価項目、非劣性を評価)することだった。ステロイド倍量投与に優越、サルメテロール追加投与に非劣性優越性を検討した吸入用ステロイド倍量投与との比較では、朝の最大呼気流量(PEF)とした主要転帰が、チオトロピウム追加投与の方が優れていることが認められた。PEF平均差は25.8 L/分(P<0.001)だった。また、大半の副次転帰についても優れていた。たとえば、夕方のPEF平均差は35.3 L/分(P<0.001)、喘息コントロール日数の差は0.079(P=0.01)、気管支拡張薬投与前1秒量(FEV1)の差は0.10 L(P=0.004)、1日症状スコアの差は-0.11ポイント(P<0.001)などだった。一方、サルメテロール追加投与との比較では、すべての評価項目で非劣性であることも認められた。なかでも、気管支拡張薬投与前FEV1はチオトロピウム追加投与の方がより大きな増大が認められ、その差は0.11 L(P=0.003)だった。(武藤まき:医療ライター)

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喘息治療の新展開 ―2剤目の配合剤が登場―

2009年12月4日、日本記者クラブにて開催された喘息プレスセミナー(主催:アステラス製薬株式会社/アストラゼネカ株式会社)で、昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科部門教授の足立満氏が「日本の喘息治療の現状と新展開」について講演を行った。近年、わが国の喘息の死亡率は、吸入ステロイド薬の普及に伴い、大きく低下し続けている。その減少率は主要疾患の中でもひと際目立つといえる。しかし、人口10万人あたりの喘息死亡率は1.9人(2008年)と、フィンランドの0.3人(2003年)、米国の1.3人(2004年)に比べ、先進国中では、依然高いのが現状である。その理由としては、喘息治療が進んでいる北欧に比べ、わが国の吸入ステロイド薬の使用率が低いことがあげられている1)。吸入ステロイド薬使用率の低さの原因としては、吸入手技の指導やステロイド薬に対する不安があるものの、足立氏は別の視点で見る必要があると話した。今年3月に行ったインターネットの調査によると、喘息治療に用いる吸入薬に期待する特性としては、医師は「効き目の速さ」と、発作・増悪の抑制といった「効果の持続」を同程度に重要視している一方で、患者さんのおよそ8割は「効き目の速さ」を期待している。つまり、「症状消失に対する患者ニーズが高い」現状に対して、吸入ステロイド薬は、速やかな症状消失効果はないため、治療の実感が得られないというギャップがあると考えられる。2009年10月に承認されたシムビコートは、吸入ステロイド薬のブデソニドと即効性・長時間作用性吸入β2刺激薬のホルモテロールからなる配合剤である。本剤1剤で気管支喘息の病態である気道炎症・気道狭窄両方に対して優れた効果を示す。また、本剤に含まれるホルモテロールは、吸入3分後にも呼吸機能を大きく改善し、強い気管支拡張効果を持続的に発揮することから、患者さんは治療効果を実感しやすく、アドヒアランスの向上が期待される。喘息予防・管理ガイドライン2009では、治療ステップ2から、配合剤の使用が認めてられている。今後、配合剤の普及が期待される。最後に、足立氏は、喘息の治療における配合剤の有用性は明らかであり、長期にわたる優れた喘息コントロールと速やかな効果発現を示すシムビコートは、今後日本の喘息治療に変化をもたらす薬剤ではないかと講演を締めくくった。(ケアネット 呉 晨/吉田 直子) 出典:1) 足立満ほか:アレルギー 51: 411-420, 2002.2) 足立満ほか:アレルギー 57: 107-120, 2008.3) K.F. Rabe et al.: Eur Respir J 16: 802-807, 2000.4) 大田健ほか:アレルギー・免疫 16: 1430-1440, 2009.

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50歳以下のCOPD患者の経年的な呼吸機能低下を有意に抑制

ベーリンガーインゲルハイムとファイザーは17日、大規模臨床試験UPLIFT(Understanding Potential Long-term Impacts on Function with Tiotropium)データのpost-hoc解析の結果、スピリーバ(一般名:チオトロピウム)が50歳以下のCOPD患者で、呼吸機能の経年的な低下を有意に抑制し、また健康関連QOLを有意に改善したことが、欧州呼吸器学会(ERS)年次総会で発表されたと報告した。4年間の試験期間を通じ、スピリーバの投与を受けた50歳以下のCOPD患者の呼吸機能の経年的な低下量は、同年代のコントロール群の患者に比べ34%改善した(気管支拡張薬投与後FEV1〔ピークFEV1〕の低下量:スピリーバ群が38mL/年、コントロール群が58mL/年, P=0.01)。UPLIFTは、COPD患者に長時間作用型吸入抗コリン薬スピリーバの有用性を検討する最大規模の無作為化二重盲検プラセボ対照試験。この解析は、50歳以下のCOPD患者356名を対象とした。スピリーバ群ではコントロール群に対し、増悪の発症リスクを27%有意に軽減させた〔95%信頼区間, 相対危険度0.73(0.56, 0.95), P=0.02〕。増悪は、疾患の臨床経過を悪化させることから、COPDの増悪回数を著しく減らすスピリーバによる治療は、COPDの疾患予後を改善し、臨床経過に良好な影響をもたらす可能性が示されたという。詳細はプレスリリースへhttp://www.boehringer-ingelheim.co.jp/com/Home/Newscentre/pressrelease/news_detail.jsp?paramOid=5479

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