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コントロール不良の喘息にあの抗菌薬が有用?/Lancet

 中~高用量の吸入ステロイド+長時間作用型気管支拡張薬服用ではコントロール不良の喘息成人患者に対し、マクロライド系抗菌薬の経口アジスロマイシンの追加投与は、喘息増悪リスクを約4割減少し、喘息関連QOLも改善することが示された。オーストラリア・Hunter Medical Research InstituteのPeter G. Gibson氏らが、420例を対象に行った48週間にわたる無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果で、著者は「アジスロマイシンは喘息コントロールの追加療法として有用と思われる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年7月4日号掲載の報告。アジスロマイシン500mg、週3回48週間投与 研究グループは2009年6月12日~2015年1月31日にかけて、吸入ステロイドや長時間作用型気管支拡張薬の服用にもかかわらず喘息症状が認められる、18歳以上の患者420例を対象に、経口アジスロマイシンの追加で喘息増悪の頻度が減少可能かを調べる試験を行った。被験者は、聴覚障害や補正QT間隔延長が認められない場合を適格とした。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはアジスロマイシン500mgを(213例)、もう一方にはプラセボを(207例)、それぞれ週3回48週間投与した。試験を行った医療センターと喫煙歴について、層別化も行った。 主要評価項目は、48週間の中等度~重度の喘息増悪の頻度、および喘息症状関連の生活の質(QOL)で、intention-to-treatにてデータを分析・評価した。喘息増悪1回以上の発症率も減少 喘息増悪の発現頻度は、プラセボ群が1.86/人年だったのに対し、アジスロマイシン群は1.07/人年と、約4割低かった(罹患率比:0.59、95%信頼区間[CI]:0.47~0.74、p<0.0001)。 また、試験期間中に1回以上の増悪が発現した患者の割合も、アジスロマイシン群で有意に低率で、プラセボ群61%(207例中127例)だったのに対し、アジスロマイシン群は44%(213例中94例)だった(p<0.0001)。さらに、アジスロマイシン群はプラセボ群に比べ、喘息関連QOLも有意に改善し、喘息QOL質問票(AQLQ)スコアの補正後平均値格差は0.36(95%CI:0.21~0.52、p=0.001)だった。 なお、下痢の発症がプラセボ群19%に対し、アジスロマイシン群で34%と有意に高率に認められた(p=0.001)。

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成人喘息患者の3人に1人は現在喘息ではない!?/JAMA

 過去に医師から喘息と診断されたことがある成人患者のうち、33.1%は現在喘息ではないと診断された。カナダ・オタワ大学のShawn D Aaron氏らが、喘息と診断された成人患者を対象に、現在も喘息であるという診断を除外できるか、また、喘息治療薬を安全に中止できるかを検証する目的で行った多施設前向きコホート研究の結果、報告した。著者は、「医師から喘息と診断されたことがある患者は、その診断を再評価したほうがいいかもしれない」と提言している。喘息は慢性疾患であるが、成人喘息の自然寛解や診断の確実性については不明であった。JAMA誌2017年1月17日号掲載の報告。喘息の診断歴がある成人患者約700例で、現在も喘息かどうかを再評価 研究グループは2012年1月~2016年2月に、カナダ10都市でRDD(random digit dialing)法を用い、過去5年以内に医師から喘息と診断された18歳以上の成人患者を無作為に抽出し(長期ステロイド内服患者と、スパイロメトリー検査ができない患者は除外)、診断した医師から喘息の初期診断に至った過程について情報を得た。 電話によるスクリーニングにおいて1,026例が基準を満たし、そのうち701例(68.3%)が本試験に登録された。全例、在宅ピークフロー値、症状モニタリング、スパイロメトリー、および気管支誘発試験にて評価し、日常的に喘息治療薬を使用している患者では、4回の受診で薬を徐々に減らした。最終的に現在喘息であることが否定された患者については、1年間は気管支誘発試験を繰り返し、臨床的に追跡した。 主要評価項目は、現在喘息ではないと判定された患者(すべての喘息治療薬を中止後、または本試験の呼吸器専門医が他の診断を確定後に、喘息症状の急性増悪・可逆性気道閉塞・気管支過敏性の所見を認めなかった患者と定義)の割合、副次評価項目は、12ヵ月後に喘息が否定された患者の割合、および初期に適切な診断的精密検査を受けていた患者の割合であった。33%が現在喘息なし、1年の追跡調査後も約30%が喘息ではなかった 701例(平均年齢51±16歳、女性67%)中、613例が試験を完遂し最終評価を受けた。その結果、613例中203例が現在喘息ではないと判断された(33.1%、95%信頼区間[CI]:29.4~36.8%)。また、12例(2.0%)は重篤な心呼吸器疾患(虚血性心疾患、声門下狭窄、気管支拡張症、間質性肺疾患、肺高血圧症、サルコイドーシス、気管支軟化症)であり、地域で喘息と誤診されていたことが判明した。 12ヵ月の追跡調査で喘息が否定された患者は181例(29.5%、95%CI:25.9~33.1%)であった。現在喘息ではないと判断された患者は、喘息であると確認された患者と比較し、地域での初期診断で気流制限検査の実施が少ない傾向にあった(それぞれ43.8% vs.55.6%、絶対差:11.8%、95%CI:2.1~21.5%)。 著者は本研究の限界として、追跡調査期間の短さや、気管支誘発試験の特異度が80%未満であること、長期ステロイド内服患者は除外されていることなどを挙げている。

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START研究が喘息診療の過去の幻想を拭い去った(解説:倉原 優 氏)-625

 過去のガイドラインにおいて、吸入ステロイド薬(ICS)治療は1週間に2日を超えて症状がある喘息患者、すなわちpersistent asthmaに推奨されてきた歴史がある。それ以下の症状の喘息をintermittent asthmaと呼び、吸入短時間型β2刺激薬などでその都度発作を解除してきた。 この2日というカットオフ値がエビデンス不足のまま現行GINAガイドライン1)へ至ることとなったため、軽症の喘息患者に対するICSの適否をはっきりさせるべきだという意見が多かった。そのため、START研究の事後解析が行われた。なお、現在のGINAガイドライン1)では、頻繁ではないが喘息症状を有し発作のリスクが高い患者に対しては低用量ICSでの治療開始(step 2)を推奨している1)。日本のガイドライン2)では治療ステップ1および2のカットオフ値は、週1回と月1~2回という問診が用いられている。 START研究について解説しておくが、これは今から13年前、発症2年以内の軽症持続型喘息患者を対象に長期追跡した有名な大規模試験である。この研究は、軽症持続型喘息患者においては発症早期から低用量ICSを使うべしという道筋を立てた、喘息診療のマイルストーンともいうべき存在である。 事後解析では、喘息症状の頻度を0~1日/週(0~1日群)、1~2日/週(1~2日群)、2日超/週(2日超群)で層別化し、複合プライマリアウトカムに初回の喘息関連イベント(SARE:入院、救急受診治療、死亡)およびベースラインからの肺機能の変化(気管支拡張後)が設定された。ICSは低用量ブデソニドが用いられ、これがプラセボと比較されている。 層別化はおおむねバランスのとれた頻度で、0~1日群が31%、1~2日群が27%、2日超群が43%だった。解析の結果、どの症状頻度サブグループにおいても初回のSAREまでの期間を有意に延長させることがわかった(0~1日群:ハザード比0.54 [95%信頼区間0.34~0.86]、1~2日群:ハザード比0.60 [95%信頼区間0.39~0.93] 、2日超群:ハザード比:0.57 [95%信頼区間0.41~0.79], p=0.94)。さらに、プラセボ群と比較すると、ブデソニド群は経口あるいは全身性ステロイドを要する重症発作のリスクを減らした(0~1日群:率比0.48 [95%信頼区間0.38~0.61]、1~2日群:率比0.56 [95%信頼区間0.44~0.71]、2日超群:率比0.66 [95%信頼区間0.55~0.80]、p=0.11)。 つまり、1週間あたりの症状が少なかろうと多かろうと、この軽症喘息というくくりでみた患者のすべてが低用量ICSの恩恵を受けることは間違いないということである。「1週間に2日」という幻想に縛られていた過去を、見事に拭い去る結果となった。 喘息であれば早期からICSを導入する、という考え方は正しい。しかし、咳喘息やアトピー咳嗽などの喘息以外の好酸球性気道疾患が増えてきたうえ、喘息とCOPDがオーバーラップしているという疾患概念まで登場している。疾患診断が昔より複雑になったことは否めない。その中で、経験的にICSをホイホイと処方するようになってしまうと、医学的効果がほとんど得られないにもかかわらず、将来の肺炎リスクのみを上昇させてしまうような事態にもなりかねない。 何よりも、喘息という疾患を正しく診断することが重要なのはいうまでもない。参考1)Global Strategy for Asthma Management and Prevention. Updated 20162)喘息予防・管理ガイドライン2015. 日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会編. 協和企画.

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軽症喘息への低用量吸入ステロイドは?/Lancet

 症状発現頻度が週に0~2日の軽症喘息患者に対する低用量吸入コルチコステロイド(ICS)の投与は、症状増悪リスクを減らし、肺機能低下の予防効果もあることが示された。オーストラリア・シドニー大学のHelen K. Reddel氏らが、7,000例超の患者を対象に行ったプラセボ対照無作為化比較試験「START」の、事後解析の結果で、Lancet誌オンライン版2016年11月29日号で発表した。ICSは、喘息増悪と死亡率の低下に非常に有効であるが、症状発現頻度の低い喘息患者は、投与の対象に含まれていない。一方で、週に2日超の患者への投与は推奨されているが、そこを基準とするエビデンスは乏しかった。初回重度喘息関連イベント発生までの期間を比較 START(Steroid Treatment As Regular Therapy)試験は、32ヵ国の医療機関を通じて、2年以内に軽症の喘息診断を受け、コルチコステロイドの定期服用歴のない、4~66歳の患者7,138例を対象に行われた。被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方には吸入ブデソニド400μg(11歳未満は200μg)/日を、もう一方の群にはプラセボが投与された。被験者は3ヵ月ごとにクリニックを受診、試験は3年間にわたって行われた。 主要評価項目は、初回重度喘息関連イベント(SARE:入院・救急外来診察・死亡)発生までの期間と、気管支拡張薬投与後の肺機能のベースラインからの変化だった。 ベースラインでの症状発現頻度により被験者をグループ化し、同評価項目との関連について分析した。重度増悪リスクもおよそ半減 ベースラインの被験者は、平均年齢24(SD15)歳、症状発現頻度は、週に0~1日が31%、1超~2日が27%、2日超が43%だった。 SARE発生までの期間は、ベースラインの症状発現頻度別の全グループで、ICS群がプラセボ群より長かった。ICS群 vs.プラセボ群のハザード比は、0~1日/週グループが0.54(95%信頼区間[CI]:0.34~0.86)、1超~2日/週グループが0.60(0.39~0.93)、2日超/週グループが0.57(0.41~0.79)だった(相互作用に関するp=0.94)。 ベースラインから3年時点の、気管支拡張剤投与後の肺機能低下もいずれもプラセボ群よりも少なかった(相互作用に関するp=0.32)。 さらに、経口・全身性コルチコステロイド投与を必要とする重度増悪の発生頻度も、すべての頻度グループで減少した(各グループの率比、0.48、0.56、0.66、相互作用に関するp=0.11)。 ICS群はプラセボ群に比べ、ベースラインの症状発現頻度にかかわらず肺機能が高く(相互作用のp=0.43)、無症状日数も有意に多かった(全3グループのp<0.0001、相互作用のp=0.53)。 これらの結果は、被験者をあらゆるガイドラインに則っていわゆる軽症持続型 vs.間欠型で層別化しても、類似していた。 著者は、「結果は、ICS投与について、週に2日超の患者という設定は支持しないものだった。軽症喘息患者に対する治療推奨は、リスク低下と症状の両方を考慮すべきであることを示唆する結果だった」とまとめている。

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気管支喘息への新規抗IL-5受容体抗体の治療効果は?(解説:小林 英夫 氏)-598

 気管支喘息の有病率は減少していないが、本邦での年間死亡数は20年前に7千人を超えていたものが近年は2千人以下と減じた。その最大の理由として、吸入ステロイド薬の普及が挙げられる。しかし、高用量の吸入ステロイド薬ないし吸入ステロイド+長時間作用型β2刺激薬でもコントロールに難渋する重症・難治性気管支喘息が約1割でみられる。そこで、さらなる治療効果を求め、抗IgE抗体や抗interleukin-5(IL-5)抗体が臨床に登場した。新規抗IL-5抗体benralizumabは、Il-5のアルファサブユニット(IL-5Rα)を標的とするヒト化モノクローナル抗体で、受容体結合により抗体依存性細胞障害作用を発揮し、ナチュラル・キラー細胞を介し好酸球のアポトーシスを誘導する。すでに、第II相試験で好酸球性喘息の増悪を改善する効果が得られている。本論文では、benralizumabがプラセボ群に比して年間喘息増悪を有意に抑制すると報告している。 本第III相試験(CALIMA試験)の対象は、年齢が12~75歳、中から高用量の吸入ステロイド+長時間作用性β2刺激薬治療が必要、12ヵ月以上継続、試験前12ヵ月間に2回以上の増悪、などを条件とした。Benralizumab 30mgを4週間に1回投与(Q4W群)、または8週間に1回投与(Q8W群)、プラセボ群に1対1対1の割合でランダムに割り付け、治療は56週間継続し、吸入薬はそれまで通り併用した。エントリー症例は、Q4W群425例、Q8W群441例、プラセボ群440例、脱落症例は149例(11%)であった。主要評価項目はベースライン血中好酸球数300/μL以上での、プラセボ群と比較したbenralizumab群の年間増悪率比とし、2次評価項目は気管支拡張薬投与前FEV1とtotal asthma symptom scoreとした。 結果は、プラセボ群年間増悪は0.93回(95%信頼区間0.77~1.12回)に対し、Q4W群年間増悪0.60回(0.48~0.74回)で、プラセボと比較した率比は0.64(0.49~0.85)、Q8W群年間増悪0.66回(0.54~0.82回)で率比は0.72(0.54~0.95)、といずれも有意だった。気管支拡張薬投与前FEV1のベースラインから56週までの変化量は、benralizumab群で有意に大きかった。56週時点のtotal asthma symptom scoreは、プラセボ群ではベースラインから1.16ポイント低下、Q4W群で1.28ポイント、Q8W群は1.40ポイント低下し、Q8W群で改善が有意だった。ベースラインの好酸球数はQ4W群が中央値470/μL、Q8W群は480/μLだったが、4週時にはいずれも中央値0個/μLに、56週時も0個/μLだった。著者らは、benralizumabはコントロール困難な好酸球性喘息の年間増悪率を有意に減少させたので、この治療が最も効果的な患者群を特定していきたいと結論している。 筆者の読後感として、本薬剤が8週間ごとの投与でも有効性を発揮していた点を評価したい。しかし本論文だけでは、すでに導入されている抗IL-5抗体との優劣が不明、治療レスポンダーの抽出項目が不明、薬価はどうなるのかなど、今後解明すべき問題は残されている。また、ほぼ同時かつ同一条件でbenralizumabを評価するSIROCCO試験がLancet上に掲載されているが、両試験を一括報告できていれば、より説得力のある論文になったであろうことが惜しまれる。

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重症/最重症COPD、3剤配合吸入薬の臨床効果/Lancet

 重症/最重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、吸入コルチコステロイド(ICS)+長時間作用型β2受容体刺激薬(LABA)+長時間作用型ムスカリン受容体拮抗薬(LAMA)の配合薬の吸入療法は、ICS+LABAよりも良好な臨床ベネフィットをもたらすことが、英国・マンチェスター大学のDave Singh氏らが実施したTRILOGY試験で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2016年9月3日号(オンライン版2016年9月1日号)に掲載された。GOLDガイドラインは、COPDの増悪歴のある患者には、LAMAまたはICS+LABAを推奨しているが、これらを行っても多くの患者が増悪を来すため、実臨床ではICS+LABA+LAMAの3剤併用療法へと治療が強化されることが多い。このレジメンを簡便化した、プロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)+フマル酸フォルモテロール(FF)+グリコピロニウム臭化物(GB)の配合薬の開発が進められている。3剤配合薬の有用性を無作為化試験で評価 TRILOGYは、重症/最重症COPD患者において、BDP/FF/GBとBDP/FFの安全性と有効性を比較する二重盲検実薬対照無作為化試験(Chiesi Farmaceutici SpA社の助成による)。 対象は、年齢40歳以上、気管支拡張薬投与後の1秒量(FEV1)<50%、%FEV1<0.7で、過去1年以内に中等症~重症のCOPD増悪を1回以上発症し、COPDアセスメントテスト(CAT)スコア≧10点、ベースライン呼吸困難指数(BDI)スコア≦10点であり、スクリーニングの前に、ICS+LABA、ICS+LAMA、LABA+LAMA、LAMAによる2ヵ月以上の治療歴がある症候性COPD患者であった。 被験者は、全例が2週間の導入期間にBDP/FFの投与を受けたのち、BDP/FF/GBにステップアップする群またはBDP/FFを維持する群(加圧定量噴霧式吸入器[pMDI]を用いて1日2回吸入)に無作為に割り付けられ、52週の治療が行われた。 主要評価項目は、26週時の投与前(朝)FEV1および投与後2時間のFEV1のベースラインからの変化、呼吸困難変化指数(TDI)スコアの3つとした。副次評価項目は、52週時の中等症~重症のCOPD増悪の割合などであった。 2014年3月21日~2016年1月14日までに、14ヵ国159施設(1次医療機関:18、2次医療機関:99、3次医療機関:28、専門研究機関:14)に、1,368例が登録された。BDP/FF/GB群に687例、BDP/FF群には681例が割り付けられた。呼吸困難の改善効果には差がない 平均年齢は、BDP/FF/GB群が63.3歳、BDP/FF群は63.8歳で、男性がそれぞれ74%、77%を占めた。現在喫煙者は両群とも47%、COPD初回診断後の経過期間は両群とも7.7年であった。 26週時の投与前FEV1は、BDP/FF/GB群がBDP/FF群よりも0.081L改善し(95%信頼区間[CI]:0.052~0.109、p<0.001)、投与後2時間FEV1はBDP/FF/GB群が0.0117L改善した(95%CI:0.086~0.147、p<0.001)。これらのBDP/FF/GB群の優位性は、52週時も維持されていた(いずれも、p<0.001)。 26週時の平均TDIスコアは、BDP/FF/GB群が1.71、BDP/FF群は1.50であり、両群に有意な差は認めなかった(群間差:0.21、95%CI:-0.08~0.51、p=0.160)。 QOL評価では、26週時のSt George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)スコアの臨床的に重要な改善(ベースラインからの4単位以上の低下)の達成率は、BDP/FF/GB群が47%と、BDP/FF群の36%に比べ有意に良好であった(オッズ比[OR]:1.52、95%CI:1.21~1.91、p<0.001)。このBDP/FF/GB群の優位性は、52週時も維持されていた(43 vs.36%、OR:1.33、95%CI:1.06~1.66、p=0.014)。 中等症~重症増悪の補正年間発生頻度は、BDP/FF/GB群が0.41と、BDP/FF群の0.53に比べ有意に23%少なかった(率比:0.77、95%CI:0.65~0.92、p=0.005)。 治療関連有害事象の発現率は、BDP/FF/GB群が54%、BDP/FF群は56%であった。BDP/FF/GB群で、1例に重篤な治療関連有害事象(心房細動)が認められた。 著者は、「BDP/FF/GBは、良好な気管支拡張作用を発揮し、呼吸困難の改善効果は有意ではなかったものの、健康関連QOLおよび中等症~重症の増悪の予防効果は有意に優れた」とまとめ、「本試験は、単一の吸入器を用いた、ICS+LABAからICS+LABA+LAMAの3剤併用療法へのステップアップ治療の、臨床ベネフィットのエビデンスをもたらした初めての研究である」としている。

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コントロール不良の重症喘息にbenralizumabは有用/Lancet

 好酸球増多を伴うコントロール不良な重症喘息の治療において、benralizumabは患者アウトカムを改善する可能性があることが、米国・ウェイクフォレスト大学のEugene R Bleecker氏らが実施したSIROCCO試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年9月2日号に掲載された。重症喘息の増悪は生命を脅かし、QOLを低下させる。好酸球増多は、喘息の重症度の悪化や肺機能の低下をもたらし、喘息増悪の頻度を上昇させる。benralizumabは、インターロイキン(IL)-5受容体αに対するモノクローナル抗体であり、抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用(ADCC)によって好酸球を抑制するという。増悪を繰り返す重症例が対象のプラセボ対照無作為化試験 SIROCCO試験は、好酸球増多を伴うコントロール不良な重症喘息の治療におけるbenralizumabの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験(AstraZeneca社、Kyowa Hakko Kirin社の助成による)。 対象は、年齢12~75歳、体重40kg以上で、登録の1年以上前に、医師によって中/高用量の吸入コルチコステロイド(ICS)+長時間作用型β2刺激薬(LABA)を要する喘息と診断され、登録前の1年以内に、コルチコステロイドの全身療法または維持量の経口コルチコステロイドの一時的な増量を要する増悪を2回以上発症した患者であった。 被験者は、標準治療に加え、benralizumab 30mgを4週ごとに投与する群、同8週ごとに投与する群(最初の3回は4週ごとに投与)、プラセボを4週ごとに投与する群に無作為に割り付けられ、48週の治療が行われた。 主要評価項目は、血中好酸球数が300個/μL以上の患者における、プラセボ群と比較した増悪の年間発症率の率比とし、主な副次評価項目は、48週時の気管支拡張薬投与前の1秒量(FEV1)および喘息症状スコアとした。 2013年9月19日~2015年3月16日までに、17ヵ国374施設に1,204例が登録され、benralizumab 4週ごと投与群に399例、同8週ごと投与群に398例、プラセボ群には407例が割り付けられた。2つの投与法とも年間喘息増悪率が改善 ベースラインの平均年齢は、benralizumab 4週ごと投与群が50.1歳、同8週ごと投与群が47.6歳、プラセボ群は48.7歳で、女性がそれぞれ69%、63%、66%を占めた。血中好酸球数が300個/μL以上の患者は、275例、267例、267例であり、これらの患者が主要評価項目の解析の対象となった。 48週時の年間喘息増悪率は、プラセボ群に比べ4週ごと投与群(率比[RR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.42~0.71、p<0.0001)および8週ごと投与群(RR:0.49、0.37~0.64、p<0.0001)とも有意に低下した。 benralizumabの2つの投与レジメンは、いずれもプラセボ群に比し、48週時の気管支拡張薬投与前FEV1が有意に改善された(ベースラインからの最小二乗平均の差=4週ごと投与群:0.106L、95%CI:0.016~0.196、8週ごと投与群:0.159L、0.068~0.249)。 喘息症状は、プラセボ群に比べ8週ごと投与群(ベースラインからの最小二乗平均の差:-0.25、95%CI:-0.45~-0.06)は有意に改善したが、4週ごと投与群(同:-0.08、-0.27~0.12)では有意な差を認めなかった。 最も頻度の高い有害事象は、喘息増悪(benralizumab治療群:13%[105/797例] vs. プラセボ群:19%[78/407例])および鼻咽頭炎(12%[93/797例] vs. 12%[47/407例])であった。 著者は、「これらの知見は、benralizumabが、好酸球増多を伴うコントロール不良な重症喘息の新たな治療選択肢となることを支持するもの」と指摘している。

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新規抗好酸球抗体薬、重症喘息を約6割まで減少/Lancet

 血中好酸球数が300/μL以上で、吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬を併用(ICS+LABA)投与してもコントロール不良な重度喘息の患者に対し、開発中の抗好酸球モノクローナル抗体benralizumab(抗IL-5受容体抗体)は、喘息増悪の年間発生リスクを約6割に減少することが報告された。米国・Wake Forest School of MedicineのJ. Mark FitzGerald氏らが行った第III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験「CALIMA」の結果で、Lancet誌オンライン版2016年9月5日号で発表された。benralizumabを4・8週間ごとに30mg投与 CALIMA試験は2013年8月~2015年3月にかけて、11ヵ国、303ヵ所の医療機関を通じて行われた。被験者は、中~高用量のICS+LABA投与でコントロール不良な重度喘息で、前年に2回以上の増悪が認められた12~75歳の患者1,306例だった。 研究グループは被験者を無作為に3群に割り付け、benralizumabを4週間ごとに30mg、8週間ごとに30mg(初回4回は4週間ごと投与)、プラセボをそれぞれ皮下注投与した。 主要評価項目は、高用量ICS+LABA投与でベースライン時血中好酸球数が300/μL以上の被験者の、喘息増悪の年間発生に関する率比だった。また、主な副次評価項目は、気管支拡張薬投与前のFEV1と、総喘息スコアだった。気管支拡張薬投与前のFEV1値も改善 被験者のうち、benralizumab投与4週ごと群は425例、8週ごと群は441例、プラセボ群は440例だった。 そのうち主要解析には728例(241例、239例、248例)が含まれた。解析の結果、同集団において、benralizumab投与4週ごと群の喘息増悪年間発生率は0.60、8週ごと群の発生率は0.66、プラセボ群の発生率は0.93だった。プラセボと比較した発生率比は、4週ごと群0.64(95%信頼区間:0.49~0.85、p=0.0018)、8週ごと群は0.72(同:0.54~0.95、p=0.0188)で、いずれも有意に低率だった。 また、気管支拡張薬投与前FEV1はbenralizumab投与4・8週ごと群ともに、総喘息スコアについては8週ごと群のみであったが、いずれも有意な改善が認められた。 忍容性も概して良好であった。最も頻度の高い有害事象は、鼻咽頭炎(4週ごと群90例[21%]、8週ごと群79例[18%]、プラセボ群92例[21%])、喘息増悪(各群61例[14%]、47例[11%]、68例[15%])だった。 著者は、「今回の試験データは、benralizumab治療の恩恵を最大限受けられる患者集団を精錬するものとなった」とまとめている。

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スピリーバ、より多くの喘息患者に

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:青野吉晃、以下「日本ベーリンガーインゲルハイム」)は2016年8月26日、チオトロピウム(商品名:スピリーバ レスピマット)について、気管支喘息に対する適応症拡大ならびに、新剤型の製造販売承認取得を発表した。 チオトロピウムは抗コリン作用性の長時間作用性吸入気管支拡張剤で、COPD(慢性閉塞性肺疾患)を適応としてスピリーバ吸入用カプセル18µg、スピリーバ2.5µg レスピマット60吸入が販売されている。また、気管支喘息(重症持続型の患者に限る)を適応として、スピリーバ2.5µg レスピマット60吸入が2014年11月に承認を取得している。 今回、スピリーバ2.5µg レスピマット60吸入の「重症持続型の患者に限る」の制限が削除され、気管支喘息を適応とした承認を取得した。またスピリーバ1.25µg レスピマット60吸入が新剤型として製造販売承認を取得した。 今回の適応症拡大と新剤型の製造販売承認により、スピリーバ レスピマットは症状・重症度に応じ、より多くの気管支喘息患者の治療に貢献することが可能になる。日本ベーリンガーインゲルハイムのプレスリリースはこちら

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喘息の発症時期、早いほうがより重症?

 小児発症喘息と成人発症喘息を比較した場合、小児発症喘息のほうが成人期の肺機能への影響が大きいことが、オーストラリア・メルボルン大学のTan DJ氏らにより報告された。Thorax誌オンライン版2016年6月14日号掲載の報告。 これまでに、小児発症喘息と成人発症喘息の違いは、前向き研究のデータを用いて包括的に評価されたことはなかった。本研究では、タスマニア縦断研究(TAHS)のデータを用いて小児発症喘息と成人発症喘息の特徴の違いが検討された。1968年、対象者が7歳のときに一度目の呼吸器系の病歴調査およびスパイロメトリーが行われた(n=8583)。その後、2002年から2005年までに行われた対象者の追跡・再調査において、喘息と気管支炎を進展した成人患者1,389例を研究対象者とした。 主な結果は以下のとおり。・全TAHSコホートのうち、7.7%(95%信頼区間[CI]:6.6~9.0%)が小児発症喘息、7.8%(95%CI:6.4~9.4%)が成人発症喘息であった。・アトピーや家族歴のある患者は小児発症喘息でより多くみられ、成人発症喘息では女性・喫煙者・社会経済状況の低い患者が多くみられた。・一秒率の低下は小児発症患者のほうがより大きかった(気管支拡張薬使用前の小児発症・成人発症患者の低下率の差:-2.8%[95% CI:-5.3~-0.3]、気管支拡張薬使用後の差:-2.6%、[95%CI:-5.0~-0.1])。・喘息の重症度および喘息スコアには、発症年齢による有意差がみられなかった。・喘息と喫煙の間には交互作用がみられ、成人発症喘息患者の不可逆性気流閉塞の程度が喫煙と関連していることが示された。しかし、小児発症喘息患者ではこの交互作用はみられなかった。

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気管支内コイル治療は重症肺気腫患者の運動耐容能を改善させるのか?(解説:山本 寛 氏)-549

 本研究は、肺気腫に対する気管支内コイル治療の効果と安全性を検討するため、2012年12月から2015年11月まで、北米21施設、欧州5施設が参加して315例を対象に行われた。患者は、ガイドラインに準拠した通常ケア(呼吸器リハビリテーション、気管支拡張薬の投与)のみを行う群(n=157)と、これに加えて両側気管支内にコイル治療を行う群(n=158)とに無作為に割り付けている。コイル治療群では、2回の治療を4ヵ月間隔で行い、1肺葉当たり10から14個のコイルを気管支鏡を用いて埋め込んだ。治療前と治療12ヵ月後の6分間歩行距離の変化を主要評価項目とし、6分間歩行距離の改善割合、SGRQ (St. George’s Respiratory Questionnaire)を用いたQOL(Quality of Life)の変化、そして1秒量の変化率がそれぞれ副次評価項目として設定されている。 その結果、6分間歩行距離の12ヵ月間での変化量はコイル治療群で+10.3m、通常ケア群で-7.6mであった。その群間差は14.6m(97.5%CI:0.4m~∞、片側p値:0.02)であり、有意にコイル治療群で優れていた。1秒量の変化率は中央値で7.0%(97.5%CI:3.4%~∞、片側p値0.01)であり、やはりコイル治療群で大きな改善が示された。SGRQスコアの群間差は-8.9ポイント(97.5%CI:-∞~-6.3ポイント、片側p値<0.001)で、コイル治療群において有意な改善が示された。 一方、コイル治療群において主要な合併症が34.8%も発生している。通常ケア群においては19.1%であり、コイル治療群では有意に合併症の頻度が高かった(p=0.002)。コイル治療群では、肺炎が20%(通常ケア群では4.5%)、気胸が9.7%(通常ケア群では0.6%)とそれぞれ有意に高頻度に認められた。 以上の結果から、肺気腫患者に対する気管支内コイル治療が、6分間歩行距離やQOL、肺機能の改善に有効であると結論することは早計である。主たる評価項目である6分間歩行距離の改善はわずかであり、設定されたMCID(minimal clinical important difference)=29mを超えるものではない。しかも、重大な合併症の頻度も高く、長期的な効果についても不明である。 しかし、本研究には残気量が予測値の225%以上という高度のair trappingを示す肺気腫症例が多く(235例)登録されている。探索的評価項目のうち、残気量と残気率に関しては、コイル治療を行うことによってそれぞれ0.31Lの減少、3.5%の減少が得られている。サブグループ解析の結果、air trappingが225%以上と高度で、heterogeneousな気腫症例においては、6分間歩行距離で+29.1m、1秒量で+12.3%、SGRQで-10.1ポイントと、臨床的にも意味のある効果が示されている。今後は、本治療法の長期効果についての追加報告がなされること、またheterogeneousな気腫分布を示す、air trappingが高度な肺気腫を調査対象としたランダム化比較試験が行われることが期待される。

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喘息様症状、COPD増悪に影響せず

 喘息様症状を有するCOPD患者は、適切な治療の下では良好な臨床経過をたどることが、北海道大学医学部の鈴木 雅氏により報告された。American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine誌オンライン版2016年5月25日号掲載の報告。 COPD患者の中には、喘息の臨床的診断こそつかないものの、喘息様症状を有する患者が存在する。しかし、こうした喘息様症状とCOPDが重複する病態の臨床的意義は明確ではない。本研究では、北海道COPDコホート研究による10年間の追跡結果を用いて、適切な治療を行った場合に喘息様症状がCOPD患者の臨床経過にどのような影響をもたらすのかを評価した。 対象者は、呼吸器専門医によって喘息ではないと診断されたCOPD患者268例であった。喘息様症状には、気管支拡張薬による可逆性(ΔFEV1≧12% かつ ≧200mL)、血中好酸球の増多(≧300/μL)、アトピー(抗原吸入に対するIgE陽性反応)を含めた。初めの5年間は毎年、気管支拡張薬吸入後のFEV1変化率およびCOPDの増悪を観察し、死亡率は10年間を通して追跡した。 主な結果は以下のとおり。・全対象者のうち、57例(21%)が気管支拡張薬による可逆性、52例(19%)が血中好酸球の増多、67例(25%)がアトピーを持っていた。・気管支拡張薬吸入後のFEV1年間低下速度は、血中好酸球の増多がみられた患者で有意に遅かった。気管支拡張薬による可逆性とアトピーは影響しなかった。・いずれの喘息様症状も、COPD増悪との関連はみられなかった。喘息様症状が複数ある場合でも、気管支拡張薬吸入後のFEV1低下とCOPD増悪率は喘息様症状が1つ以下の患者と同様であったが、10年死亡率は喘息様症状が1つ以下の患者と比べて有意に低かった。■「COPD増悪」関連記事COPD増悪抑制、3剤併用と2剤併用を比較/Lancet(ケアネット 細川 千鶴)【訂正のお知らせ】本文内の表記に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2016年6月15日)。

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重症肺気腫、両側気管支内コイル治療で運動耐性が向上/JAMA

 重症エアトラッピングが認められる肺気腫患者に対し、気管支拡張薬などによる標準的治療に加え両側気管支内コイル治療を行うと、標準的治療のみに比べ、6分間歩行などのアウトカムの改善に有効であることが判明した。一方で、重篤合併症の発生率は、コイル治療群で高かった。米国・ピッツバーグ大学のFrank C. Sciurba氏らが、315例を対象に行った無作為化比較試験の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、さらなる検討を行い、健康アウトカムへの長期的影響を調べる必要があるとまとめている。JAMA誌2016年5月24・31日号(オンライン版2016年5月15日号)掲載の報告。12ヵ月後の6分間歩行距離の変化を比較 研究グループは2012年12月~2015年11月にかけて、北米21ヵ所、欧州5ヵ所の医療機関を通じて、重症エアトラッピングが認められる肺気腫患者315例を対象に、無作為化比較試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方の157例には肺リハビリテーションや気管支拡張薬を含むガイドラインに則した標準的治療を、もう一方の158例には標準的治療に加え両側気管支内コイル治療をそれぞれ行い、アウトカムを比較した。気管支内コイル治療では、4ヵ月間隔で2回の連続的処置を行い、一肺葉に気管支鏡で10~14コイルを装着した。 主要評価項目は、ベースラインから12ヵ月後の6分間歩行距離の絶対差だった。副次評価項目は、6分間歩行改善率、呼吸器疾患に関するQOL指標「St George’s Respiratory Questionnaire」(SGRQ)の変化幅、1秒量(FEV1)のベースラインからの改善幅それぞれに関する群間差などだった。 被験者の平均年齢は64歳、女性は52%だった。6分間歩行距離の改善、コイル治療群が標準治療群より14.6m延長 12ヵ月の追跡を終えたのは、被験者のうち90%だった。 その結果、6分間歩行距離のベースラインからの改善は、標準治療群が-7.6mだったのに対し、コイル治療群は10.3mと、群間差は14.6mだった(Hodges-Lehmann推定97.5%信頼区間:0.4~∞、片側検定p=0.02)。 6分間歩行距離の改善が25m以上だったのは、通常治療群が26.9%に対し、コイル治療群では40.0%と、有意に高率だった(オッズ比:1.8、同:1.1~∞)。補正前群間差は11.8%だった(片側検定p=0.01)。 FEV1中央値変化の群間差は7.0%、SGRQ変化の群間差は-8.9ポイントと、いずれもコイル治療群で有意な改善が認められた(いずれもp<0.001)。 一方で、入院を要する肺炎などの重篤な合併症の発生率は、通常治療群19.1%に対しコイル治療群は34.8%と有意に高率だった(p=0.002)。 その他の重篤有害作用としては、肺炎が4.5%、20%、気胸が0.6%、9.7%と、いずれもコイル治療群で高率だった。

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COPDの基準を満たさない喫煙者は健康なのか?(解説:倉原 優 氏)-536

 COPDを診断する際、誰もが知っているように1秒率70%未満という呼吸機能検査上の診断基準がある1)。ただし、この診断は絶対ではない。COPDの診断基準を満たさない一般人でも、COPDと同じような臨床経過をたどる一群が存在する。たとえば、胸部CTで明らかに気腫肺があっても、10人に1人はGOLD基準あるいはATS/ERS基準(LLN)のいずれのCOPDの診断基準も満たさないという報告すらある2)。 つまり、未診断のCOPDだけでなく、診断基準という枠組みから漏れたCOPDのような患者(本当はCOPDと同じ病理学的変化が起こっているのに病的でないと判断されたCOPD予備軍)がいるのは間違いない※。 今回のWoodruff氏らの報告は、喫煙歴のある人と喫煙歴のない人に対してCATスコアおよびスパイロメトリーを実施した観察研究で、「COPDの診断基準を満たさないものの呼吸器症状がある人(CATスコア10点以上)は健康なのかどうか」を調べたものである。COPDの診断基準を満たさない、というのは具体的には1秒率が70%以上で努力性肺活量が正常下限値を上回るということである。GOLD I期の軽症例であっても呼吸器症状を呈さない患者がいる中で、非COPD例でも呼吸器症状を呈する人がいるという不可解な現状に一石を投じてくれる臨床試験だ。 その結果、喫煙歴を有する有症状の非COPDの人は、呼吸機能悪化率が無症状者や非喫煙者と比べて有意に高いことがわかった。また、有症状の喫煙者では活動制限が大きいことも明らかになった。つまり、間違いなく一般人の中にCOPD予備軍が存在するということである。 実臨床でもこうした患者をよく診る。COPDにマッチした強い呼吸器症状があるにもかかわらず、何度測定しても1秒率が70%を下回らないのだ。この研究でも多くの患者が気管支拡張薬を処方されていたが、日本のプライマリケアでも同様の結果になるかもしれない。こうした安易な吸入薬の処方が、「現場は至極柔軟に対応している」と評価されるべきなのか、「不適切な治療をしている」と非難されるものなのか、答えはまだない。 ※この研究に照らし合わせると、「smokers with preserved pulmonary function」という呼び方が妥当なのだろう。「COPD with preserved pulmonary function」のほうがわかりやすいかと思ったが、これだと用語自体が定義上矛盾してしまう。

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喫煙歴+呼吸器症状は呼吸機能悪化のリスク/NEJM

 呼吸機能保持が認められる現在・元喫煙者で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)診断基準を満たさなくとも呼吸器症状がある人は、ない人に比べ、呼吸機能が悪化する割合が高く、活動制限や気道疾患の所見がみられるという。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のPrescott G. Woodruff氏らが行った、2,736例を対象とした観察試験の結果、示された。COPDの診断は、気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーによる検査で1秒量(FEV1)/努力肺活量(FVC)が0.70未満の場合とされている。しかし、この定義を満たさなくとも多くの喫煙者で呼吸器症状が認められており、研究グループはその臨床的意味について検討を行った。NEJM誌2016年5月12日号掲載の報告より。CATスコア10以上を呼吸器症状ありと定義 研究グループは、現在喫煙者および喫煙歴のある人(元喫煙者)と、喫煙歴のない人(非喫煙者;対照群)、合わせて2,736例を対象に観察試験を行った。COPD評価テスト(CAT、スコア0~40で評価)を実施して、スパイロメトリーによる検査で呼吸機能が保持されている人について、呼吸器症状がある人(CATスコアが10以上:有症状群)はない人(CATスコアが10未満;無症状群)と比べ、呼吸増悪のリスクが高いかどうかを検証した。 呼吸機能保持の定義は、気管支拡張薬投与後のFEV1/FVCが0.70以上で、FVCが正常下限値を上回る場合とした。また、有症状群と無症状群の、6分間歩行距離、肺機能、胸部の高分解能CT画像所見の違いの有無を調べた。呼吸機能保持の現在・元喫煙者の半数が呼吸器症状あり 追跡期間の中央値は、829日だった。その結果、呼吸機能が保持されている現在・元喫煙者の50%で、呼吸器症状が認められた。 平均年間呼吸機能悪化率は、有症状の現在・元喫煙者0.27(SD:0.67)、無症状の現在・過去喫煙者は0.08(同:0.31)であり、対照群の非喫煙者の0.03(同:0.21)と比べ、いずれも有意に高率だった(両比較においてp<0.001)。 また、有症状の現在・元喫煙者は、喘息既往の有無を問わず、無症状の現在・過去喫煙者に比べ、活動制限が大きく、FEV1、FVCや最大吸気量の値がわずかだが低く、高分解能CTで肺気腫は認めなかったが、気道壁肥厚がより大きかった。 有症状の現在・元喫煙者の42%が気管支拡張薬を、また23%が吸入ステロイド薬を使用していた。著者は「有症状の現在・元喫煙者はCOPD基準を満たしていなくとも、呼吸機能の悪化、活動制限、気道疾患の所見が認められた。また、エビデンスがないままに多様な呼吸器疾患薬物治療をすでに受けていた」とまとめている。

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1日1回のICS/LABA、心血管リスクのあるCOPDでの安全性は/Lancet

 心血管リスクを有する中等度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬配合剤のフルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)/ビランテロール(VI)(商品名:レルベア)1日1回吸入は、プラセボと比較し統計学的な有意差はなかったものの死亡や心血管系イベントの発現リスクを低下させ、忍容性は良好であった。英国・南マンチェスター大学病院のJorgen Vestbo氏らが、43ヵ国1,368施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験(Study to Understand Mortality and Morbidity:SUMMIT)の結果、報告した。COPD患者は心血管疾患(CVD)を併発することが多いが、こうした患者に対する治療方針の決定に関して、これまで十分なエビデンスがなかった。Lancet誌2016年4月30日号掲載の報告。心血管リスクを有する中等度COPD患者約1万6,500例で検証 SUMMIT試験の対象は、40~80歳、気管支拡張薬投与後の予測FEV150~70%、1秒率70%未満(FEV1/FVC<0.7)、喫煙歴(10pack/year以上)、修正MRC(mMRC)息切れスケールスコア2以上の、CVDの既往歴またはリスクを有するCOPD患者であった。FF 100㎍+VI 25㎍(FF/VI)群、FF 100㎍(FF)群、VI 25㎍(VI)群、プラセボ群の4群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、すべての治療群でエリプタ吸入器を用い1日1回吸入した。 主要評価項目は、全死因死亡、副次的評価項目は治療期間中のFEV1低下率および心血管複合エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症、一過性脳虚血発作)であった。 2011年1月24日~2014年3月12日に1万6,590例が無作為化され、このうち試験薬を1回以上使用した1万6,568例が安全性解析対象集団に、またGCP違反の施設を除いた1万6,485例(FF/VI群4,121例、FF群4,135例、VI群4,118例、プラセボ群4,111例)が有効性解析対象集団となった。追跡期間は最長4年、投与期間は中央値1.8年であった。全死因死亡リスクはFF/VI群で12%低下するも、統計学的有意差はなし 試験期間中の全死亡リスクは、プラセボ群と比較しいずれの治療群も差はなかった。FF/VI群のHRは0.88(95%信頼区間[CI]:0.74~1.04)で相対リスク減少率は12%(p=0.137)、FF群のHRは0.91(同:0.77~1.08、p=0.284)、VI群のHRは0.96(同:0.81~1.14、p=0.655)であった。 FEV1低下率は、プラセボ群と比較しFF/VI群およびFF群で減少した(プラセボ群との差;FI/VI群:8mL/年[95%CI:1~15]、FF群:8mL/年[95%CI:1~14]、VI群:-2mL/年[95%CI:-8~5])。 心血管複合エンドポイントの発現リスクは、プラセボ群とほぼ同等であった(FF/VI群:HR 0.93[95%CI:0.75~1.14]、FF群:HR 0.90[95%CI:0.72~1.11]、VI群:0.99[95%CI:0.80~1.22])。 中等度~重度増悪の発現率は、すべての治療群でプラセボ群より減少した。 有害事象については、肺炎や心血管系有害事象の増加は認められなかった(肺炎の発現率:FF/VI群6%、FF群5%、VI群4%、プラセボ群5%/心血管系有害事象の発現率:FF/VI群18%、FF群17%、VI群17%、プラセボ群17%)。

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妊娠後期のビタミンD補給で子供の喘鳴を予防できるか/JAMA

 母親が妊娠後半(妊娠7ヵ月以降)にビタミンD3を補給しても、生まれた子の持続性喘鳴のリスクは低下しないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学のBo L. Chawes氏らが行った単一施設での二重盲検無作為化比較試験で明らかとなった。この試験は、コペンハーゲン小児喘息前向きコホート研究2010(Copenhagen Prospective Studies on Asthma in Childhood 2010 :COPSAC2010)の一環として行われたもの。これまで、観察研究において妊娠中のビタミンD摂取量増加により子の喘鳴を予防できる可能性が示唆されていたが、妊婦へのビタミンD投与による予防効果について検証はされていなかった。JAMA誌オンライン版2016年1月26日号掲載の報告。妊娠24週以降のビタミンD3補給、2,800IU/日と400IU/日を比較 研究グループは2009年3月4日~10年11月17日の間に、妊娠24週の妊婦623例を、ビタミンD3投与群(以下、ビタミンD群)(315例)と対照群(308例)に無作為に割り付けた。妊娠24週から出産後1週まで、全員にデンマークの保健機関が推奨している通常の妊婦管理としてビタミンD3 400IU/日を投与するとともに、ビタミンD群にはさらに2,400IU/日を投与、一方対照群にはプラセボを投与した(すなわち、本研究はビタミンD3の2,800IU/日投与と400IU/日投与を比較している)。 その後、出生児581例(ビタミンD群295例、対照群286例)を、少なくとも3歳まで追跡し、持続性喘鳴や呼吸器症状などについて調査した。持続性喘鳴は、既存の次のアルゴリズムに従って診断した。(1)生後6ヵ月以内に発作性の呼吸器症状(咳嗽、喘鳴、呼吸困難)が5回/日以上3日以上継続、(2)喘息特有の症状、(3)気管支拡張薬の間欠的使用、(4)ステロイド吸入の3ヵ月間の試験的導入による奏効と吸入中断による再発。持続性喘鳴の発症リスクに両用量で差はなし 3歳までに持続性喘鳴と診断されたのは、ビタミンD群47例(16%)、対照群57例(20%)の計104例(18%)であった。 ビタミンD3投与は持続性喘鳴の発症リスクと関連していなかったが(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.52~1.12、p=0.16)、繰り返す発作性の呼吸器症状の発現リスクについては有意な低下が認められた(平均発現件数ビタミンD群5.9 vs.対照群7.2、発現リスク比[IRR]:0.83、95%CI:0.71~0.97、p=0.02)。3歳時の喘息者数、上気道感染症または下気道感染症の発症などにビタミンD3投与の影響はみられなかった。 また、子宮内胎児死亡はビタミンD群1例(<1%) vs.対照群3例(1%)、先天性奇形はそれぞれ17例(5%) vs.23例(8%)であった。 なお、本研究は主要評価項目に関する統計的検出力が低く、著者は「ビタミンD3補給の有用性を立証するには、さらに大規模な、高用量および早期介入による臨床試験が必要」とまとめている。

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大人の咳嗽に対してハチミツ+コーヒーが有用【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第60回

大人の咳嗽に対してハチミツ+コーヒーが有用 FREEIMAGESより使用 第31回で「ハチミツが小児の咳嗽に有効」という論文を紹介しました。親も快適に眠れるでしょうから、難治性の小児の咳嗽に対して、ハチミツは一考の余地がありそうです。 しかし、大人に対してはコーヒーと合わせて飲むほうが良いそうです。なにっ!? Raeessi MA, et al. Honey plus coffee versus systemic steroid in the treatment of persistent post-infectious cough: a randomised controlled trial. Prim Care Respir J. 2013;22:325-330. これはイランの大学病院で実施されたランダム化比較試験です。3週間以上続く感染後咳嗽の成人患者97人(平均年齢40歳)が被験者です。お湯200mLにハチミツ20.8gとインスタントコーヒー2.9gを溶かして8時間ごとに1週間飲み続けるハチミツコーヒー群(29人)と、ハチミツ+コーヒーの代わりにプレドニゾロン13.3mgを入れるステロイド群(30人)と、同じく鎮咳薬グアイフェネシン25gを入れるコントロール群(26人)を設定し、ランダムに割り付けました。ハチミツはイランの山奥で採れたものを用いました。スーパーで買ったんじゃないんでしょうか、高級ハチミツなんですかね? アウトカムは介入前と介入1週間後の咳の頻度をスコアで比較しました。97人中12人が脱落しているのが気になりますが、残りの85人で解析が行われました(ITT解析ではない)。その結果、ハチミツコーヒー群とステロイド群では有意に咳嗽の頻度が減りました。スコアの変化は圧倒的にハチミツコーヒー群で高かったようです。ハチミツコーヒー群は、ほぼ咳嗽スコアがゼロになっています。ハチミツだけでなく、コーヒーにもある程度気管支拡張作用がありますから、これも咳嗽の軽減に寄与したのかもしれません。なるほど、ハチミツコーヒーか。今度、難治性咳嗽の患者さんにも勧めてみようか。インデックスページへ戻る

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嚢胞性線維症〔CF : cystic fibrosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義嚢胞性線維症(cystic fibrosis:CF)は、欧米白人の出生2,000~3,000人に1人と、比較的高い頻度で認められる常染色体劣性遺伝性疾患であるが、日本人にはきわめてまれとされている。1938年にAndersonにより、膵外分泌腺機能異常を伴う疾患として初めて報告されて以来、現在では全身の外分泌腺上皮のCl-移送機能障害による多臓器疾患として理解されている。近年のCFに関する遺伝子研究の進歩により、第7染色体長腕にあるDNAフラグメントの異常(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator:CFTR遺伝子変異)がCFの病因であることがわかってきた。このCFTR遺伝子変異は、世界中で400種類以上報告されており、△F508変異(エクソン10上の3塩基欠失によるCFTR第508番アミノ酸であるフェニルアラニンの欠失)が、欧米白人におけるCF症例の約70%に認められている。■ 疫学かつては東洋人と黒人にはCFはみられないと考えられていたが、現在では約10万人に1人と推測されている。わが国では厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班によってCFの実態調査が行われ、1952年にわが国での第1例の報告以来、1980年の集計で46例が報告された。その後、当教室における1993年までの集計によって、104例(男57例、女47例)のCF患者の報告を認めている。単純に計算すると、わが国におけるCF患者の頻度は出生68万人に1人の割合となるが、CFに対する関心が高まったことなどから、1980年以降の頻度は出生35万人に1人の割合となり、確定診断に至らなかった例や未報告例などを考慮すると、真の頻度はさらに高いものと思われる。また、2009年の全国調査では、過去10年間の患者数は44例程度と報告されている。日本人CF症例の遺伝子解析の検討は少なく、王らは3例のCF患児に、花城らはCF患児1例にそれぞれ△F508変異の有無を検索したが、この変異は認められなかった。また、古味らは、△F508変異に加えてCFTR遺伝子のエクソン11に存在するG542X、G551D、およびR553X変異の有無も検索したが、いずれの変異も認められなかった。筆者らは、NIH(米国国立衛生研究所)のgenctic research groupとの共同研究により5例のCF患者およびその家族の遺伝子解析を行い、興味ある知見を得ている。すなわち全例において、△F508変異をはじめとする16種類の既知のCFTR遺伝子変異は認められなかったが、single stand conformational polymorphism analysisにより4例においてDNAシークエンスの変異を認めた(表1)。この変異が未知のCFTR遺伝子変異であるのか、あるいはCFTR遺伝子とは関係しないpolymorphismであるのかの検討が必要である。画像を拡大する■ 病因1985年にWainwrightらによって、第7染色体上に存在することが確認されたCF遺伝子が、1989年にMichigan-Toronto groupの共同研究により初めて単離され、CFTRと命名された。RiordanらによりクローニングされたCFTR遺伝子は、長さ250kbの巨大な遺伝子で、1,480個のアミノ酸からなる膜貫通蛋白をコードしている(図1)。翻訳されたCFTR蛋白の構造は、2つの膜貫通部(membrane spanning domain)、2つのATP結合構造(nucleotide binding fold:NBF 1、NBF 2)、および調節ドメイン(regulatory domain)の5つの機能ドメインからなっている。1991年にはRichらの研究により、CFTR蛋白自身がCl-チャンネルであることが証明され、最近では、NBF1とNBF2がCl-チャンネルの活性化制御に異なる機能を持つことが報告されている。このCFTR遺伝子の変異がイオンチャンネルの機能異常を生じ、細胞における水・電解質輸送異常という基本病態を形成していると考えられている。CFTR遺伝子のmRNA転写は、肝臓、汗腺、肺、消化器などの分泌および非分泌上皮から検出されている。CFTR遺伝子変異のなかで過半数を占める主要な変異が、CF患者汗腺のCFTR遺伝子のクローニングにより同定された△F508変異である。この△F508変異は欧米白人におけるCF症例の約80%に認められているが、そのほかにも、400種類以上の変異が報告されており、これらの変異の発生頻度および分布は人種や地域によって異なっている(表2)。△F508変異の頻度は、北欧米諸国では70~80%と高く、南欧諸国では30~50%と低いが、東洋人ではまだ報告されていない。画像を拡大する画像を拡大する■ 症状最も早期に認められ、かつ非常に重要な症状として、胎便性イレウスによる腸閉塞症状が挙げられる。粘稠度の高い胎便が小腸を閉塞してイレウスを惹起する。生後48時間以内に腹部膨満、胆汁性嘔吐を呈し、下腹部に胎便による腫瘤を触れることがある。腸管の狭窄や閉塞がみられることもある。わが国におけるCF症例の集計では、27.9%が胎便性イレウスで発症している(表3)。膵外分泌不全症状は約80%の症例で認められ、年齢とともに症状の変化をみることもある。食欲は旺盛であるが、膵リパーゼの分泌不全による脂肪吸収不全のため多量の腐敗臭を有する脂肪便を排泄し、栄養不良による発育障害を来してくる。低蛋白血症による浮腫、ビタミンK欠乏による出血傾向、低カルシウム血症によるテタニーなどの合併症を認める場合もある。粘稠な分泌物の気管および気管支内貯留と、それに伴うブドウ球菌や緑膿菌などの感染により、多くは乳児期から気管支炎、肺炎症状を反復して認めるようになる。咳嗽、喘鳴、発熱、呼吸困難などの症状が進行性にみられ、気管支拡張症、無気肺、肺気腫などの閉塞機転に伴う病変が進展し慢性呼吸不全に陥り、これが主な死亡原因となる。胸郭の変形、バチ状指、チアノーゼなども認められる。CF患者では汗の電解質、とくにCl濃度が異常に高く、多量の発汗によって電解質の喪失を来し、発熱や虚脱などの“heat prostration”と呼ばれる症状を呈することが知られている。その他の症状として、閉塞性黄疸、胆汁性肝硬変、耐糖能異常、副鼻腔炎症状などをはじめとする種々の合併症状が報告されている。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ CFの一般的な診断法表4にわが国のCF患者104例における確定診断時の年齢分布を示した。全症例の半数以上である64例(61.5%)が1歳までにCFと診断されており、新生児期にCFと診断された30例(28.8%)のうち29例が胎便性イレウスにて発症した症例であった。したがって、胎便性イレウス症候群では、常にCFの存在を念頭におき、メコニウム病(meconium ileus without CF)との鑑別を行っていく必要がある。CFの診断には、汗の電解質濃度の測定が必須であり、Cl濃度が60mEq/L以上であればCFが疑われる。Pilocarpine iontophoresis刺激による汗の採取法が推奨されているが、測定誤差が生じやすく、複数回測定する必要がある。当教室では米国Wescor社製の発汗刺激装置および汗採取コイルを使用し、ほとんど誤差なく簡便に汗の電解質濃度を測定している。CFを診断するうえで、膵外分泌機能不全の存在も重要であり、その診断は、脂肪便の有無、便中キモトリプシン活性の測定、PFD試験やセクレチン試験などによって行っていく。X線検査により、気管支拡張症、無気肺、肺気腫などの肺病変の診断を行う。画像を拡大する■ CFのマス・スクリーニング欧米において、1973年ごろよりCFの新生児マス・スクリーニングが試みられるようになり、1981年にCrossleyらが乾燥濾紙血のトリプシン濃度をradioimmunoassayにて測定して以来、CFの新生児マス・スクリーニング法として、乾燥濾紙血のトリプシン濃度を測定する方法が広く用いられるようになった。さらに1987年にはBowlingらが、より簡便で安価なトリプシノーゲン濃度を測定し、感度および特異性の点からもCFの新生児マス・スクリーニング法として非常に有用であると報告している。筆者らも、わが国におけるCFの発生率を調査する目的で東京都予防医学協会の協力を得て、CFの新生児マス・スクリーニングを行った。方法は、先天性代謝異常症の新生児マス・スクリーニング用の血液乾燥濾紙を使用し、Trypsinogen Neoscreen Enzyme Immunoassay Kitにて血中トリプシノーゲン値を測定した。結果は、3万2,000例のトリプシノーゲン値は、31.8±8.9ng/mLであり、Bowlingらが示した本測定法におけるカットオフポイントである140ng/mLを超えた症例はなかった(図2)。画像を拡大する■ CFの遺伝子診断CFの原因遺伝子が特定されたことにより、遺伝子診断への期待が高まったが、CF遺伝子の変異は人種や地域によってまちまちであり、本症の遺伝子診断は足踏み状態であると言わざるを得ない。欧米白人では、△F508変異をはじめとするいくつかの頻度の高い変異が知られており、これらの検索はCFの診断に大いに役立っている。しかしながら、わが国のCF症例における共通のCF遺伝子の変異は、まだ特定されておらず、PCR-SSCP解析と直接塩基配列解析を用いて遺伝子変異を明らかにすることが必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 対症療法新生児期にみられる胎便性イレウスに対しては、ガストログラフィンによる浣腸療法などが試みられるが、多くは外科手術が必要となる。膵外分泌不全による消化吸収障害に対しては、膵酵素剤の大量投与を行う。しかし近年、膵酵素剤の大量投与による結腸の炎症性狭窄の報告も散見され、注意が必要である。胃酸により失活しない腸溶剤がより効果的である。栄養障害に対しては高蛋白、高カロリー食を与え、症例の脂肪に対する耐性に応じた脂肪摂取量を決めていく。中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)は、膵酵素を必要とせずに吸収されるため、カロリー補給には有用である。必須脂肪酸欠乏症に対しては、定期的な脂肪乳剤の経静脈投与が必要である。脂溶性ビタミン類の吸収障害もみられるため、十分量のビタミンを投与する。呼吸器感染に対しては、気道内分泌物の排除を目的としてpostural drainageと理学訓練(physiotherapy)を行い、吸入療法および粘液溶解薬や気管支拡張薬などの投与も併せて行っていく。感染の原因菌としてはブドウ球菌と緑膿菌が一般的であるが、検出菌の感受性テストの結果に基づいて投与する抗菌薬の種類を決定していく。1~2ヵ月ごとに定期的に入院させ、2~3剤の抗菌薬の積極的な予防投与も行われている。抗菌作用、抗炎症作用、線毛運動改善作用などを期待してマクロライド系抗菌薬の長期投与も行われている。肺機能を改善する組み換えヒトDNaseの吸入療法や気道上皮細胞のNa+の再吸収を抑制するためのアミロイド、さらに気道上皮細胞からのCl-分泌促進のためのヌクレオチド吸入療法などが、近年試みられている。4 今後の展望まずは早期に診断して、適切な治療や管理を行うことが大切であり、その意味から早期診断のための汗のCl-濃度を測定する方法の普及が望まれる。さらに遺伝子検索を行うにあたっての労力と費用の負担が軽減されることが必要と思われる。適切な治療を行うためには、今後も肺や膵臓および肝臓の機能を改善させたり、呼吸器感染症を予防する新薬の開発が望まれる。さらに遺伝子治療や肺・肝臓移植が可能となり、生存年数が欧米並みに30歳を超えるようになることを期待したい。5 主たる診療科小児科、小児外科、呼吸器内科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報第4回膵嚢胞線維症全国疫学調査 一次調査の集計(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業)難病情報センター:膵嚢胞線維症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報難病患者支援の会(内閣府認定NPO法人、腎移植や肝移植などの情報提供)Japan Cystic Fibrosis Network:JCFN(嚢胞性線維症患者と家族の会)1)成瀬達ほか.第4回膵嚢胞線維症全国疫学調査.厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「難治性膵疾患に関する調査研究」平成21年度 総括・分担研究報告書. 2010; 297-304.2)Flume PA, et al. Am J Respir Care Med. 2007; 176: 957-969.3)清水俊明ほか.小児科診療.1997; 60: 1176-1182.4)清水俊明ほか.小児科. 1987; 28: 1625-1626.5)Wainwright BJ, et al. Nature. 1985; 318: 384-385.公開履歴初回2013年08月15日更新2015年12月15日

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タバコを吸いやすくさせる添加物

タバコを吸いやすくする添加物 メンソール粘膜への局所麻酔作用で熱感を軽減し、煙を吸いやすくする。 砂糖燃焼で生じる「アセトアルデヒド」がニコチン急性毒性による自覚症状を緩和し、ニコチン吸入をしやすくする。砂糖メンソール成分のミントココア末アンモニア ココア末燃焼で生じる「テオブロミン」による気管支拡張作用で煙を吸いやすくする。カフェインにも同様の作用があることが知られている。 アンモニアニコチンはアルカリ性環境で吸収されやすく、酸性環境では吸収されにくい。アンモニアは粘膜をアルカリ性にし、ニコチンの吸収を早くする。「タバコは、単に葉っぱを紙で巻いたものではない。死ぬまでやめられないように巧妙に開発された製品なのだ」(2000年 WHO世界禁煙デー)社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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