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第25回 対面での吸入指導がアドヒアランスに与える影響は予想以上に大きい【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 気管支喘息やCOPD患者さんへの吸入指導は日常的にあるため、わかりやすい説明は薬剤師に求められる必須スキルの1つです。薬局で説明する旨の医師指示が処方箋に記載されているケースも少なくなく、私も新人のころはすべてのデバイスごとの手順や使用上のピットフォールを必死で覚えたものです。デモ用キット、リーフレット、ビデオなどの充実した資材が製薬会社から提供されていますので、患者さんにとって最も有用な説明手段を選択したいですよね。今回は、その参考となるリアルワールドデータ(実臨床で得られたデータ)の調査を紹介します。対面での実技指導を好む患者が83%REAL(Real-life Experience and Accuracy of inhaLer use)調査という、適切な吸入器の使用、吸入手技、吸入器の特性など、患者アドヒアランスへ影響すると考えられる23項目について電話で行われた調査があります1)。2016年1月4日~2月2日に調査が実施され、対象はブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、英国、米国の9ヵ国から抽出された軽度~重度のCOPD患者764例(平均年齢56±9.8歳)でした。使用吸入器の内訳は、ブリーズヘラー186例、エリプタ191例、ジェヌエア194例、レスピマット201例でした。自己申告のアドヒアランスは、66歳以上の患者と比較して65歳以下の患者では有意に低く、性別、疾患の重症度、診断からの経過時間では有意差はみられませんでした。手技の説明では、吸入器を用いた対面による指導(吸入デモ)が「とても役に立つ」と回答している割合が最も高く、吸入デモ83%>ビデオ58%>口頭による使用説明51%>リーフレット34%という結果でした。吸入デモの回数が多い患者ほどアドヒアランスが高く、さらに呼吸器科医自身による指導を受けている患者ではより良好でした。少なくとも過去2年間に医療者による吸入手技の確認を受けたことがないと回答した患者は29%で、手技の確認を受けた患者ではよりアドヒアランスが良好かつ全量を吸入できている自信がありました。なお、全量を吸入したという実感があったのは、ブリーズヘラーを用いた患者では93%、ジェヌエアでは84%、エリプタでは80%、レスピマットでは76%でした。吸入指導は、呼吸器科医(41.3%)、薬剤師(20.2%)、看護師(18.1%)、一般医(12.0%)、その他(8.4%)によって行われており、呼吸器科医は自ら患者を指導する割合が高かったのに対し、一般医はほかの医療者に委任する割合が高いという結果でした。製剤特性や用法に依存する部分もありますが、アドヒアランスを高めるポイントは、対面での吸入デモ、小まめな手技確認、とくに呼吸器科医による吸入指導、ということになると思います。患者が好む吸入器は簡単・シンプル治療満足度には、吸入指導の方法という観点とは別に、吸入器に対する好みの問題もあります。これに関しては、COPD患者、喘息患者の吸入器の好みに関するリアルワールドデータの調査があります2)。こちらは、欧州、米国、日本および中国で実施された呼吸器疾患プログラムから、喘息(12歳以上の患者)、COPD(気道閉塞が確認された40歳以上の患者)、喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)の7,300例を超える患者データが収集され、吸入維持療法の現在の治療法と吸入器の種類、医師の好み、患者が重要と考える吸入器の特性および満足度を変数として解析した研究です。よく処方されているのが、ドライパウダー式の吸入器(62.8~88.5%の患者)と加圧噴霧式定量吸入器(18.9~35.3%の患者)でした。ディスカス、エリプタ、タービュヘイラーなどに次いでエアゾール剤が多いというのはさほど違和感はないかと思います。吸入器の特性について重視する要素として、どの疾患においても「使い方がシンプルで簡単」ということが半数以上の患者で挙げられ、長持ちして壊れにくい、持ち運びが簡便、充填の必要がない、吸入のために息を吸い込む必要がない、毎回肺に同じ量の薬が届く、薬剤の残数がわかるなどの特性が続きます。最近の吸入器は工夫があるものも多いので、各製剤の特徴を把握して図にまとめておくと説明しやすいと思います。吸入器の種類も多様化していますので、うまく吸えないときはその原因を特定したり、改善策のアドバイスや適切な吸入器への変更を提案したりすることもあるでしょう。吸入アドヒアランスはCOPDや喘息の治療効果に直結するので、背景因子を理解して患者さんに共感しつつも、しっかりと対面で説明や提案ができるようにしておきたいものです。1)Price D, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018;13:695-702.2)Ding B, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018;13:927-936.

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アレルギー総合ガイドライン2019が発行、アレルギーとアナフィラキシーを網羅

 アレルギー疾患罹患率はとくに先進国で増加し、いまや日本人の約50%が何らかのアレルギー症状を有しているといわれる。代表的なアレルギー疾患に関する12の最新ガイドラインの内容を1冊にまとめた「アレルギー総合ガイドライン」の改訂版が、3年ぶりに発行された。アレルギー総合ガイドライン2019は診療科を超えて横断的に出現し、急性増悪のリスクもはらむアレルギー疾患に対して、標準的な臨床的対応を円滑に行うことができるよう、実用性を重視した構成となっている。「喘息予防・管理ガイドライン2018」「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017」「鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版(改訂第8版)」「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)」「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018」「重症薬疹の診断基準」「接触皮膚炎診療ガイドライン」「蕁麻疹診療ガイドライン 2018」「食物アレルギー診療ガイドライン2016《2018年改訂版》」「ラテックスアレルギー安全対策ガイドライン2018」「職業性アレルギー疾患診療ガイドライン2016」「アナフィラキシーガイドライン」 ここでは、とくに2018年に改訂されたばかりの下記5冊のガイドラインについて、主な改訂内容を紹介する。 「喘息予防・管理ガイドライン2018」では、問診・聴診・身体所見の項目が新たに追加されたほか、治療においては長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の使用推奨範囲が拡大され、抗IL-5抗体、抗IL-5Rα抗体、気管支熱形成術が追加されている。さらに、2019年3月には、12歳以上の難治性喘息に抗IL-4Rα抗体製剤デュピルマブが保険適用になっている。これを受けてアレルギー総合ガイドライン2019では、成人喘息の治療ステップの中に追加され、小児喘息における位置づけについても、解説が追加されている。 「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018」は、日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインと、厚生労働省研究班および日本アレルギー学会の診療ガイドラインの初の統合版。ステロイド外用薬の使い方などに関して、新たな知見(原則として2015年12月末まで)が反映されている。 「蕁麻疹診療ガイドライン 2018」は2011年以来7年ぶりの改訂版。2018年に発表された国際ガイドラインと、病型分類や重症度評価などで整合性をとる形に改訂されている。 「食物アレルギー診療ガイドライン2016《2018年改訂版》」は、「栄養食事指導」「経口免疫療法」について新たに章立てする形で詳細な記述が追加された。また、ヒスタミン遊離試験のキットの発売中止、牛乳アレルゲン除去調製粉乳の微量元素添加の終了、アナフィラキシー治療の際のアドレナリンの併用禁忌の解除などが反映されている。 「ラテックスアレルギー安全対策ガイドライン2018」では、加硫促進剤が主要なアレルゲンで、非ラテックス製手袋でも報告されている「化学物質による遅発型アレルギーである接触皮膚炎」についての記述を追加。最新のラテックスフリーの製品や加硫促進剤フリーゴム手袋の一覧が収載された。 そのほか、「職業性アレルギー疾患診療ガイドライン2016」については、刊行後に判明した最新エビデンスを加えた内容が、アレルギー総合ガイドライン2019に掲載されている。■「食物アレルギー」関連記事メロンアレルギーの主要アレルゲンを確認非専門医向け喘息ガイドライン改訂-喘息死ゼロへ

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成人の「軽症」気管支喘息における増悪予防治療について(解説:小林英夫氏)-1060

 成人気管支喘息の治療は重症度による差異はあるものの、大まかには、吸入ステロイド薬を維持療法の基本薬とし、発作時には短時間作用型β2刺激薬(SABA)を用いている。本論文は成人軽症喘息の増悪予防療法について3群を比較検討し、ブデソニド+ホルモテロール合剤の頓用が吸入ステロイド維持療法に劣らないとしたものである。 これまで維持療法が導入されていない軽症症例を、発作時のみSABA吸入頓用群、吸入ステロイド維持療法+発作時SABA頓用、発作時にブデソニド+ホルモテロール合剤の頓用、の3群化している。初めの2群は一般的な治療であり、3つ目の群を評価することが本試験の目的となっている。なお、喘息発作時に合剤を追加吸入する治療としてSMART(single maintenance and reliever therapy)療法が報告されているが、この療法は維持療法として合剤を使用したうえにさらに上乗せする治療で、本試験の第3群とは別個の概念である。 本試験の結論として、「軽症」成人喘息においては、喘息発作時の合剤頓用が吸入ステロイド維持療法と同等以上に増悪発生と重症増悪を管理できるとしている。結論に大きな異論はないように感ずる。また、患者は毎日の定期吸入療法よりも必要時のみの合剤頓用に簡便性を感じるかもしれない。それでは、日常の治療選択肢として合剤頓用が望ましいであろうか。今後、合剤頓用が喘息治療のガイドラインに組み込まれる可能性はあろうが、筆者は当面は積極的な導入は見合わせるつもりである。本結論を支持する追加論文の必要性もある。そして患者本人の判断に重きを置く治療法への不安が残る。SABAも合剤も、本人判断による頓用が過剰吸入や喘息の過小評価につながった経験は決して少なくない。頓用療法では自覚症状のみではなくピークフロー測定の導入がより重要になると感じる。30年近く前にSABA頓用の有害性が報告された歴史も踏まえ、もうしばらくはデータの蓄積を待ってもよいのではないだろうか。

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軽症喘息の増悪予防、SABA vs.ブデソニド+ホルモテロール頓用/NEJM

 軽症喘息の成人患者では、ブデソニド+ホルモテロールの頓用はalbuterol(日本ではサルブタモールと呼ばれる)頓用に比べ喘息増悪の予防に優れることが、ニュージーランド・Medical Research Institute of New ZealandのRichard Beasley氏らが行った「Novel START試験」で示された。研究の詳細はNEJM誌2019年5月23日号に掲載された。これまでの二重盲検プラセボ対照比較試験で、ブデソニド+ホルモテロール頓用は、短時間作用性β2刺激薬(SABA)の頓用に比べ、重度の喘息増悪のリスクが低く、ブデソニド維持療法+SABA頓用とほぼ同じと報告されていた。3群で年間喘息増悪発生率を比較 本研究は、ニュージーランド、英国、イタリア、オーストラリアの16施設が参加した52週間の非盲検無作為化対照比較試験であり、2016年3月~2017年8月に患者登録が行われた(AstraZenecaなどの助成による)。 対象は、年齢18~75歳、登録前の3ヵ月間に単独の喘息治療としてSABAを使用し、患者報告で2回以上のSABA使用があるが、直近4週間の1日平均使用回数が2回以下の喘息患者であった。 被験者は、次の3つの群の1つに無作為に割り付けられた。(1)albuterol群:加圧噴霧式定量吸入器で、1回100μgを2吸入、発作時に頓用、(2)ブデソニド維持療法群:ブデソニド(タービュヘイラーで1吸入200μgを1日2回)+albuterol頓用、(3)ブデソニド+ホルモテロール群:タービュヘイラーで、ブデソニド200μgとホルモテロール6μg(1吸入)を頓用。薬剤の使用量の測定には、吸入器の電子モニタリングを用いた。 主要アウトカムは、喘息増悪の年間発生率であった。重度の喘息増悪の回数も有意に少ない 668例が登録され、albuterol群に223例(平均年齢35.8±14.0歳、女性50.7%)、ブデソニド維持療法群に225例(34.9±14.3歳、57.3%)、ブデソニド+ホルモテロール群には220例(36±14.1歳、55.5%)が割り付けられた。 ベースラインの過去1週間のACQ-5(0~6点、点数が高いほど喘息コントロールが不良)の平均値は1.1点(軽症喘息)で、患者の7.3%で過去1年間に重度の喘息増悪がみられ、54%で過去4週間のSABA使用が週2回以下であった。 ブデソニド+ホルモテロール群の年間喘息増悪発生率は、albuterol群よりも有意に低く(絶対的発生率:0.195 vs.0.400、相対的発生率:0.49、95%信頼区間[CI]:0.33~0.72、p<0.001)、ブデソニド維持療法群とは発生率に有意差はなかった(絶対的発生率:ブデソニド+ホルモテロール群0.195 vs.ブデソニド維持療法群0.175、相対的発生率:1.12、95%CI:0.70~1.79、p=0.65)。 重度の喘息増悪の回数は、ブデソニド+ホルモテロール群がalbuterol群(9回 vs.23回、相対リスク:0.40、95%CI:0.18~0.86)およびブデソニド維持療法群(9回 vs.21回、0.44、0.20~0.96)に比べ、有意に少なかった。 吸入ブデソニドの平均(±SD)使用量は、ブデソニド+ホルモテロール群が107±109μg/日、ブデソニド維持療法群は222±113μg/日であった。 有害事象の発生率と種類は、先行試験および実臨床での使用報告と一致していた。最も頻度の高い有害事象は、3群とも上気道感染症で、次いで鼻咽頭炎、喘息の順だった。 著者は、「この知見は、患者が喘息の増悪に気付いた状況で、吸入グルココルチコイドを気管支拡張薬との併用で頓用することで、患者が緊急治療を求めるほどに増悪が重症化するリスクを低減する可能性を示唆する」とし、「ブデソニド維持療法は、喘息症状のコントロールに優れるため、増悪よりもむしろ症状を最大の苦痛とする患者にとって価値があると考えられる」と指摘している。

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軽症持続型喘息、ICSもLAMAも対プラセボで有意差なし/NEJM

 軽症持続型喘息患者の大多数は、喀痰中好酸球比率が低く、モメタゾン(吸入ステロイド)またはチオトロピウム(長時間作用性抗コリン薬)のいずれも反応性についてプラセボと有意差は認められないことが、米国・カリフォルニア大学のStephen C. Lazarus氏らによる、42週間の無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験「Steroids in Eosinophil Negative Asthma trial:SIENA試験」の結果、示された。軽症持続型喘息患者は、喀痰中の好酸球が2%未満と低値である場合がほとんどであり、このような患者に対する適切な治療法は明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は、「好酸球低値の患者において、吸入ステロイドと他の治療法を比較する臨床試験が必要であることが示唆される」と提言している。NEJM誌2019年5月23日号掲載の報告。米国24施設、12歳以上295例を対象にプラセボ対照試験 SIENA試験は、2014年7月~2018年3月に、米国・国立心肺血液研究所(NHLBI)のAsthmaNet consortiumに参加している24施設で実施された。対象は12歳以上の軽症持続型喘息患者295例で、喀痰中好酸球比率が<2%の好酸球低値群と≧2%の好酸球高値群に分け、どちらの群もモメタゾン、チオトロピウムおよびプラセボを投与順は無作為化して各12週間投与した。 主要評価項目は、好酸球低値群において事前に定義した反応性(response)を認めた患者割合の治療間の差で、プラセボvs.モメタゾンまたはプラセボvs.チオトロピウムを比較した。反応性の定義は、治療失敗、喘息コントロール日数(レスキュー剤のアルブテロール未使用、喘息治療薬の非併用、症状なし、救急外来受診なし、ピーク・フローがベースライン時の80%以上の日数)および1秒量からなる階層的複合アウトカムとし、統計学的有意水準は両側p<0.025とした。副次評価項目として、好酸球低値群と高値群の反応性を比較した。モメタゾンまたはチオトロピウムともに、vs.プラセボと有意差なし 295例中221例(73%)が好酸球低値群であった。 これら221例中、反応性が認められた患者割合は、プラセボvs.モメタゾンの比較では59%、プラセボvs.チオトロピウムの比較では60%であった。 しかしながら、反応性を認めた患者割合に治療間での有意差は認められなかった。モメタゾンvs.プラセボの比較における反応性を認めた患者(59%)の内訳比率は、モメタゾン群57%(95%信頼区間[CI]:48~66)、プラセボ群43%(95%CI:34~52)であった(p=0.14)。チオトロピウムvs.プラセボの比較(60%)については、チオトロピウム群60%(95%CI:51~68)、プラセボ群40%(95%CI:32~49)であった(p=0.029)。 一方、好酸球高値群で反応性に差がみられた患者における解析では、モメタゾンvs.プラセボの比較ではモメタゾンのほうが反応性を示した患者の割合がより高かったが(74% vs.26%)、チオトロピウムvs.プラセボの比較では差はなかった(57% vs.43%)。

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5/9呼吸の日に「ぜん息外来.jp」リリース

 アストラゼネカ株式会社は、5月9日“呼吸の日”に喘息治療サポートサイト「ぜん息外来.jp」をオープンした。 本サイトは、「ぜん息について」「あなたのぜん息タイプは?」「知ろう、あなたのぜん息コンディション」「専門医からのメッセージ」「医療機関検索」という5つのコンテンツで構成され、疾患が起こるメカニズムや検査、重症化の原因によって分けられる喘息のタイプなど、喘息に関する最新情報を提供する。 とくに喘息患者の5~10%を占める重症喘息については、昨今の研究によって好酸球などの存在が喘息を悪化させる原因として明らかになってきた。本サイトでは、患者が自身の喘息と向き合い、治療しても抑えきれない症状を「いつものこと」とあきらめず、喘息治療の目標である“喘息がない人と変わらない日常生活を送ることができる”状態を目指して、医師に相談することを提案している。ぜん息外来.jpの概要《ぜん息について》 喘息のメカニズムや治療法など、喘息の基本情報を紹介している。《あなたのぜん息タイプは?》 喘息の症状は、程度や頻度、呼吸機能、治療薬の種類によって重症度が分けられる。最近では、気道の炎症を起こす原因にさまざまな免疫細胞が関わっていることがわかってきた。このページでは、原因となる細胞の体内での動きをイメージした動画を公開しており、喘息の重症度やコントロール状態を確認できるチェックリストも用意している。《知ろう、あなたのぜん息コンディション》 喘息症状や日常生活での経験について、いくつかの質問に答えることで、喘息のコントロール状況や日常生活・心理的影響について回答結果を出力できる。※医療機関を受診する際に活用する参考情報であり、喘息症状を診断するものではありません。《専門医からのメッセージ》 全国各地で喘息治療向上に取り組む喘息治療専門の先生方より、臨床経験から喘息という疾患とその治療について、治療中の患者さんに知ってもらいたい情報をインタビュー形式で紹介。《医療機関検索》(近日公開予定) 調べたい都道府県名を選択すると、地域で喘息の専門治療を提供する医療機関が住所順に表示される。受診医療機関を探す際の参考情報として活用できる。■参考アストラゼネカ株式会社 プレスリリースぜん息外来.jp

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COPD診療における最新知見/日本呼吸器学会

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療に対する吸入ステロイド薬(ICS)の上乗せについて、新しい臨床試験の結果が続々と報告されているが、それらをどう捉えればよいのだろうか。2019年4月12日から3日間、都内にて開催された第59回 日本呼吸器学会学術講演会において、シンポジウム3「COPD、ACOガイドラインを超えて」での講演から最新の知見を紹介する。COPD治療におけるICSの位置付けは? COPDの安定期における治療は、原則として長時間作用性抗コリン薬(LAMA)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)の気管支拡張薬である。これまで、通常のCOPD治療にICSを追加する有益性は高くないとされていたため、本学会が発刊している『COPD診断と治療のためのガイドライン2018(第5版)』と『喘息とCOPDのオーバーラップ診断と治療の手引き2018』では、喘息とCOPDの合併例(asthma COPD overlap:ACO)に限定して、ICSの早期使用が推奨されている。 しかしその後、LAMA+LABA+ICSのトリプルセラピーがLAMA/LABA配合剤に対して、中等度~重度のCOPD増悪を有意に抑制したことが「IMPACT試験」で報告されたため、COPD治療におけるICSの位置付けに関しては引き続き検討されていくだろう。COPD、ACOの診断に用いられるバイオマーカー シンポジウムでは、玉田 勉氏(東北大学 呼吸器内科学分野 講師)が「末梢血好酸球増加はICS治療ターゲットになるか?」という問いかけをテーマに、COPD患者のバイオマーカーをどのように扱うかについて語った。 COPD治療において、好酸球性気道炎症が存在する症例の中には、LAMA、LABAなどの気管支拡張薬にICSを上乗せすることで、さらなる気管支拡張効果を得られる病態が存在することがわかっている。このようなICS感受性の高いCOPDに関して、判断の目安となるのは増悪回数、末梢血好酸球の増加、喘息の合併などであるという。 また、上述の最新ガイドラインでは、COPDにおける好酸球性気道炎症の存在を、喘息の特徴でもある末梢血好酸球>5%あるいは>300/μL、呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)>35ppbなど複数の項目で評価することを推奨している。その結果ACOと判断できれば、早期にICSを投与することが望ましいが、ACOに該当しなければ、高用量のICS投与は肺炎リスクを上昇させる恐れがあるため、重症であっても投与しないとされている。しかし、ACOの病態は経過中に出現することもあるので、繰り返し評価することが重要である。 同氏は「われわれの研究と先行研究を合わせた結果、COPD患者の2割くらいにICS有効例が存在するのではないか」と見解を語った。海外データから読み取れる情報 海外で報告されているGOLD2019レポートでは、増悪リスクおよび症状レベルがともに高い“グループD”において、末梢血好酸球が300/μL以上あるいは100/μL以上で増悪を繰り返す患者ではICS/LABA有効例が多く、逆に末梢血好酸球100/μL未満ではICSの有効性は期待できないとされている。しかし、この根拠となった複数の臨床試験の対象となった症例には、さまざまな割合で喘息合併例が混在しているため、ICSの上乗せ効果を正確に判断することは難しい。 データを読む際、ICSの使用による1秒量(FEV1)の増加が大きいほど、喘息病態を合併したCOPDの症例が多く混ざっていると考えられ、その結果、末梢血好酸球300/μL以上の症例をピックアップすると、ICSが増悪抑制に有効であろうことが見えてくるという。 よって、各論文の筆者による結論だけでなく、喘息合併例をどうやって分けているか、ICSの使用でどれだけ呼吸機能が改善しているかなども考慮して解釈することが必要だ。単独のバイオマーカーでICS使用の判断はできない 発表テーマである「末梢血好酸球増加はICS治療ターゲットになるか?」という問いに対して考えると、気道の好酸球性気道炎症をよく反映するのは喀痰好酸球数だが、末梢血好酸球数とは強く相関しないことが明らかになっている。 「COPD、ACO患者のバイオマーカーは、これまでもさまざまな横断研究が報告されているが、日本人データを含めたバイオマーカーの使い方やカットオフ値の設定が求められる。よって、末梢血好酸球数だけでICSを使うかどうか決めるには時期尚早なのではないか」と現段階での見解を示し、「ICSの有効例に関しては、どこまで追求しても、最終的には過剰投与であったり、潜在的に有効でも投与されなかったりといった事態が起こりうる可能性がある」と指摘した。 COPDやACOの診断に当たっては、ガイドラインの知見を踏まえ、なるべく客観的な指標に基づいてICSの使用を検討するなど、診断の精度を高めることが求められる。また、ICSを開始する場合、肺炎リスクが頭打ちとなる半年より前に、呼吸機能の改善度などから効果判定を行い、ICS投与を継続するか判断することが望ましいとされている。■参考一般社団法人 日本呼吸器学会第59回日本呼吸器学会学術講演会■関連記事新COPDガイドラインの要点と日本人データCOPDの3剤併用療法、2剤併用と比較/NEJM

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36)レスピマット(スピリーバ)/使用の前準備【吸入薬使い方ガイド】

※上の画像をクリックすると別のウィンドウにて「環境再生保全機構」の動画ページが開きます。■今回の内容今回は、レスピマット(スピリーバ)使用の前準備を説明します。※初回のみ行う操作です。手順としては、使用開始時、箱を開封する→キャップを閉じた状態で、安全止めを押しながら透明ケースをはずす→カートリッジの緑色の部分を上にして、本体に挿入する(非常に固いので、机などの固い平面で、ガチッとカートリッジが本体にほとんど隠れるまで、真っすぐ奥に押し込む)→透明キャップを装着する→キャップを閉じたまま上向きにし、片手で本体上部を固定し、反対の手で本体下部をカウンターの赤い矢印の方向にカチッと音がするまで180度回転させる→キャップを開ける→下を向け、黒い噴射ボタンを押し、ミストの噴射(約1.5秒間)を確認する→もう一度キャップを閉じ、180度回転→ミストの噴射を3回繰り返す→前準備完了※一度挿入したカートリッジは、絶対に抜かないでください。※顔に向けて噴射しないように注意してください。●主な製剤(2015年3月時点のデータ)スピリーバ

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35)タービュヘイラー(パルミコート)/使用の前準備【吸入薬使い方ガイド】

※上の画像をクリックすると別のウィンドウにて「環境再生保全機構」の動画ページが開きます。■今回の内容今回は、タービュヘイラー(パルミコート)使用の前準備を説明します。※初回のみ行う操作です。手順としては、使用開始時、フィルムをはがして開封する→左手で下の回転グリップを持ち、右手でキャップを反時計回りにひねって開ける→左手で本体を固定し、右手で回転グリップを反時計回りに止まるまで回す→今度は時計回りに回して、1回目のカチッという音を確認する→また反時計回りに止まるまで回す(音は鳴らない)→もう一度時計回りに回して、2回目のカチッという音を確認する→前準備完了※斜めにすると、吸入器の中の薬がこぼれてしまいます。吸うとき以外は、まっすぐに立てて操作してください。●主な製剤(2015年3月時点のデータ)パルミコート

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34)タービュヘイラー(シムビコート、オーキシス)/使用の前準備【吸入薬使い方ガイド】

※上の画像をクリックすると別のウィンドウにて「環境再生保全機構」の動画ページが開きます。■今回の内容今回は、タービュヘイラー(シムビコート、オーキシス)使用の前準備を説明します。※初回のみ行う操作です。手順としては、使用開始時、フィルムをはがして開封する→左手で下の回転グリップを持ち、右手でキャップを反時計回りにひねって開ける→左手で本体を固定し、右手で回転グリップを時計回りにカチッと音がするまで回す→今度は右手を反時計回りに止まるまで戻す(音は鳴らない)→もう一度時計回りに回して、2回目のカチッという音を確認する→また反時計回りに止まるまで回す(音は鳴らない)→もう一度時計回りに回して、3回目のカチッという音を確認する→前準備完了※斜めにすると、吸入器の中の薬がこぼれてしまいます。吸うとき以外は、まっすぐに立てて操作してください。●主な製剤(2015年3月時点のデータ)シムビコート、オーキシス

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33)スイングヘラー(メプチン)【解説編】【吸入薬使い方ガイド】

※上の画像をクリックすると別のウィンドウにて「環境再生保全機構」の動画ページが開きます。■今回の内容今回は、スイングヘラー(メプチン)の吸入手順を説明します。手順としては、カウンターを上に、本体を水平に持ち、キャップをカチッと止まるまで開ける→青いボタンをカチッと止まるまで押し、指を離す→カウンターの数字が減ったのを確認する→空気口をふさがないよう、水平に持つ→呼吸を整え、ゆっくり十分に息を吐く→吸入口をしっかりくわえる→下を向かず、背筋を伸ばし、勢いよく深く吸う(そのとき舌を下げて喉の奥を広げる)→吸入器をはずし、口を閉じ3~5秒間息を止め、薬剤を定着させる→鼻からゆっくり息を吐く→(指示回数に応じて、青いボタンを押すところから繰り返す)→吸入口を清掃し、キャップを閉める→うがいをする(口中3回、喉の奥3回)。《吸入回数》 ※主治医の指示を守ってください成人:1回1~2吸入、1日最大4回(8吸入)まで小児:1回1吸入、1日最大4回(4吸入)まで※注意するポイント発作時のみ使用してください青色のボタンは、上に向けて押さないでくださいカウンターの面を下や横にして持つと、正確な量が吸入できません吸っても感じないくらい細かい粒子が気管に入っていきます正確に操作ができていれば、お薬は出ていますので、心配しないでください吸い込みの練習はトレーナーを使用し、主治医に確認してもらいましょう湿気に弱いので、水洗いしたり、濡れたもので拭いたりしないでください●主な製剤(2015年3月時点のデータ)メプチン

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32)スイングヘラー(メプチン)【手順編】【吸入薬使い方ガイド】

※上の画像をクリックすると別のウィンドウにて「環境再生保全機構」の動画ページが開きます。■今回の内容今回は、スイングヘラー(メプチン)の吸入手順を説明します。手順としては、カウンターを上に、本体を水平に持ち、キャップをカチッと止まるまで開ける→青いボタンをカチッと止まるまで押し、指を離す→カウンターの数字が減ったのを確認する→呼吸を整え、ゆっくり十分に息を吐く→吸入口をしっかりくわえる→下を向かず、背筋を伸ばし、勢いよく深く吸う(そのとき舌を下げて喉の奥を広げる)→吸入器をはずし、口を閉じ3~5秒間息を止め、薬剤を定着させる→鼻からゆっくり息を吐く→(指示回数に応じて、青いボタンを押すところから繰り返す)→キャップを閉める→うがいをする(口中3回、喉の奥3回)。●主な製剤(2015年3月時点のデータ)メプチン

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呼吸器疾患死亡率、英国vs.EU15+諸国/BMJ

 1985~2015年の期間に、英国、およびEU15+諸国(英国を除く欧州連合[EU]加盟15ヵ国に、オーストラリア、カナダ、米国を加えた国々)では、いずれも呼吸器疾患による死亡率が全体として低下したが、閉塞性・感染性・間質性呼吸器疾患死亡率については英国がEU15+諸国に比べて高いことが、米国・ハーバード大学のJustin D. Salciccioli氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2018年11月28日に掲載された。世界疾病負担(Global Burden of Disease)などの報告によれば、英国は、医療制度が同程度の他国に比べて呼吸器疾患死の割合が高い可能性が示唆されていた。全呼吸器疾患死とサブカテゴリー別の死亡を検討 研究グループは、英国における呼吸器疾患による年齢標準化死亡率を、医療制度が同程度のEU15+諸国と比較する観察研究を行った(研究助成元は申告されていない)。 1985~2015年の世界保健機関(WHO)の死亡データベースを用いて、英国、EU15+諸国の全19ヵ国のデータを収集した。EU15ヵ国はオーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、ノルウェー。 全呼吸器疾患死、および感染性(インフルエンザ、肺炎、結核を含む)、腫瘍性(気管支、肺、胸膜の悪性腫瘍を含む)、間質性(特発性肺線維症を含む)、閉塞性(慢性閉塞性肺疾患、喘息、気管支拡張症を含む)、その他(肺水腫、気胸を含む)の呼吸器疾患による死亡について解析を行った。 混合効果回帰モデルを用いて国別の差を経時的に解析し、局所的に重み付けされた散布図平滑化(locally weighted scatter plot smoother)で評価した呼吸器疾患のサブカテゴリーの傾向を検討した。英国の女性は全サブカテゴリーで死亡率が高い 1985~2015年の期間に、英国、およびEU15+諸国の全呼吸器疾患死は、男性では低下したが女性では変化せずに維持されていた。呼吸器疾患による年齢標準化死亡率(10万人当たりの死亡件数)は、英国では男性は151件から89件に低下したのに対し、女性は67件から68件と、ほとんど変化しなかった。EU15+諸国についても、男性は108件から69件へ低下したが、女性は35件から37件と、大きな変化はなかった。 英国はEU15+諸国に比べ、女性ではすべてのサブカテゴリー(感染性、腫瘍性、間質性、閉塞性、その他)の呼吸器疾患による死亡率が高く、男性では感染性、間質性、閉塞性、その他の呼吸器疾患による死亡率が高かった。 著者は、「これらの国々の呼吸器疾患患者の医療費、医療制度、健康行動の違いを明らかにするために、さらなる検討を要する」と指摘している。

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27)エアゾール製剤/発作時(メプチンエアー、ペロテック、サルタノール、アイロミール)【解説編】【吸入薬使い方ガイド】

※上の画像をクリックすると別のウィンドウにて「環境再生保全機構」の動画ページが開きます。■今回の内容今回は、エアゾール製剤/発作時(メプチンエアー、ペロテック、サルタノール、アイロミール)の吸入手順を解説します。手順としては、キャップを外し、容器を数回振る→押しボタンが上になるよう、垂直に立てて持つ→呼吸を整え、ゆっくり十分に息を吐く→吸入口を軽く噛んで、歯の隙間から空気が同時に入るようにくわえる→下を向かず、背筋を伸ばし、ボンベを1回押すと同時になるべく深く吸う(そのとき舌を下げて喉の奥を広げる)→吸入器をはずし、口を閉じ3~5秒間息を止め、薬剤を定着させる→鼻からゆっくり息を吐く→2回目の指示がある場合、もう1度はじめから繰り返す→うがいをする(苦しい時はしなくて良い)→吸入口を清掃し、キャップをはめる→携帯袋に保管する《吸入回数》 ※主治医の指示を守ってください成人:1回1~2吸入、1日最大4回(8吸入)まで小児:1回1吸入、1日最大4回(4吸入)まで※注意するポイントボタンを押しにくい場合、補助器具があるので医師・薬剤師に相談してください吸入器を逆さまに持たないでくださいアルコールに過敏な方は医師・薬剤師に相談してください吸入口が汚れた場合、吸入口を外して水洗いしてください(本体は絶対に濡らさないでください)カウンターがついているタイプのものは、吸入した回数だけ減っていきます残り9回になったら新しい吸入器を用意してくださいカウンターが0になったら、新しいものと取り換えるようにしましょうカウンターがないタイプのものは、薬がなくなるとボンベが押せなくなります●主な製剤(2015年3月時点のデータ)エアゾール製剤/発作時(メプチンエアー、ペロテック、サルタノール、アイロミール)

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26)エアゾール製剤/発作時(メプチンエアー、ペロテック、サルタノール、アイロミール)【手順編】【吸入薬使い方ガイド】

※上の画像をクリックすると別のウィンドウにて「環境再生保全機構」の動画ページが開きます。■今回の内容今回は、エアゾール製剤/発作時(メプチンエアー、ペロテック、サルタノール、アイロミール)の吸入手順を説明します。手順としては、キャップを外し、容器を数回振る→押しボタンが上になるよう、垂直に立てて持つ→呼吸を整え、ゆっくり十分に息を吐く→吸入口を軽く噛んで、歯の隙間から空気が同時に入るようにくわえる→下を向かず、背筋を伸ばし、ボンベを1回押すと同時になるべく深く吸う(そのとき舌を下げて喉の奥を広げる)→吸入器をはずし、口を閉じ3~5秒間息を止め、薬剤を定着させる→鼻からゆっくり息を吐く→2回目の指示がある場合、もう1度はじめから繰り返す→うがいをする。●主な製剤(2015年3月時点のデータ)エアゾール製剤/発作時(メプチンエアー、ペロテック、サルタノール、アイロミール)

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【GET!ザ・トレンド】吸入指導をクラウドで管理 地域連携で喘息死ゼロへ

1990年代後半から、喘息死は減少を続けていたが、昨年増加に転じた。原因の詳細は不明だが、吸入薬を正確に使用できていない可能性が指摘されている。喘息死ゼロへ向けた取り組みと最新の医薬連携システムについて、目的と意義を大林 浩幸氏に聞いた。無駄をなくした医療で患者の健康を守る大林氏が院長を務める東濃中央クリニック(岐阜県瑞浪市)では、呼吸器内科、アレルギー科、消化器内科、老年内科、リハビリテーション科を標榜診療科とし、地域の住人から頼られる病院として献身的に診療を行っている。同氏は、「精度の高い診断と厳選された少数の薬による『的を射抜く』治療を心掛けており、患者さんを薬漬けにしないことで、患者さんの満足度の向上と医療経済の貢献を目指している」と診療への心意気を語った。アカデミー設立により、吸入指導から地域医療連携を進める体制づくり同氏は、薬剤師の知識の均てん化と指導力の底上げを目的に、薬剤師を主体として、2013年に一般社団法人 吸入療法アカデミーを設立した。吸入薬は喘息治療のfirst lineに位置付けられているが、吸入薬にはそれぞれ専用のデバイスがあり、正しい吸入ができていない実態に現場では多く直面するという。いかに優れた薬剤であっても、患者自身が適切に吸入できなければ、期待する治療効果は得られない。そのため、このアカデミーでは、各地域の薬剤師会と協力し、すべての吸入薬・デバイスに対し、的確な吸入指導ができる薬剤師の養成を行い、地域内のどの薬局に処方箋が持ち込まれても、均一で良質な患者吸入指導ができる体制整備を目指した活動を展開している。同氏は、吸入デバイスの誤操作をピットホールと呼び、「ピットホールの原因の多くは、加齢現象、癖、個性(利き手)、性格、生活スタイルなど患者さん側に起因するもの」と述べる。適切な吸入薬の効果を得るため、これらを医療者側でクローズアップさせる必要がある。また、同氏は「患者さんが正しく操作できるところではなく、できないことを見るのが大切。医療者側が、陥りやすいピットホールを学習・共有しておくことで、患者さんの吸入状況が医師にも伝わりやすくなり、地域医療連携にもつながる」と強調する。基盤ができたところで、吸入カルテシステムの開発同氏は、吸入療法アカデミーにおいて、吸入指導における医療連携クラウド(吸入カルテシステム)の開発を、權 寧博氏(日本大学医学部内科学系 呼吸器内科学分野 教授)らのシステムを基盤に進めてきた。このクラウドサービスは、日本大学工学部電気工学科の「戸田研究室」が協力し、医療者の利便性も盛り込み開発された。iOS・Android端末、PCなどがあればどこでも対応でき、従来の紙・FAXによるやり取りでの不便さが解消され、即時対応が可能という大きなメリットがある。セキュリティについても考慮されており、患者情報は診察券・カルテ番号で照合、識別するため、第三者に個人が特定される危険を防いでいる。システムの流れは、吸収指導が必要な患者に吸入薬が処方されたとき、クラウドに登録された医師が、本システムで吸入指導の依頼書を作成する。処方箋などで指導依頼を受けた薬剤師は、指定されたIDでアクセスすることで、指導前に患者情報を医師と共有することができる。指導を終えた薬剤師は、フィードバックとして報告書を作成する。医師・薬剤師が、吸入指導時の問題点、指導後の経過や患者の生活面、性格面についてなどを即時的に共有できるため、患者個人に寄り添った継続的な指導が期待される。また、病棟などの看護師が吸入指導を行う場面も考慮し、本システムには看護師の枠も設けられている。システムの概要スライドを拡大するスライドを拡大するシステムの流れ(システムは現在改訂中)1.医師が吸入薬の処方時に、吸入指導依頼書を作成する。依頼書はすべてクリック選択で作成することができる。下部には同意書が付いており、その場で患者の同意を確認する。2.吸入指導依頼書を受け取った薬剤師・看護師は、システムにログインして依頼内容を確認し、吸入指導を行う。3.吸入指導を行った薬剤師・看護師は、吸入指導の結果と医師への伝言(画面上部)(画面下部)などをシステム上で報告(クリックのみで報告書の作成も可能)する。特記事項があれば、記入することもできる。4.医師は、リアルタイムで報告書を確認し、次回の診察・処方に役立てることができる。※リンクで画面イメージをご確認いただけます大林氏の喘息死ゼロへ向けた取り組み

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第9回 内科クリニックからのセファレキシンの処方【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?Escherichia coli(大腸菌)・・・10名Klebsiella pneumoniae(肺炎桿菌)・・・6名Staphylococcus saprophyticus(腐性ブドウ球菌)※1・・・4名Proteus mirabilis(プロテウス・ミラビリス)※2・・・3名腸球菌・・・2名淋菌、クラミジアなど(性感染症)・・・2名※1 腐性ブドウ球菌は、主に泌尿器周辺の皮膚に常在しており、尿道口から膀胱へ到達することで膀胱炎の原因になる。※2 グラム陰性桿菌で、ヒトの腸内や土壌中、水中に生息している。尿路感染症、敗血症などの原因となる。ガイドラインも参考に 荒川隆之さん(病院)やはり一番頻度が高いのはE. coli です。性交渉を持つ年代の女性の単純性尿路感染としては、S.saprophyticus なども考えます。JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015では、閉経前の急性単純性膀胱炎について推定される原因微生物について、下記のように記載されています。グラム陰性桿菌が約80%を占め、そのうち約90%はE. coli である。その他のグラム陰性桿菌としてP.mirabilis やKlebsiella 属が認められる。グラム陽性球菌は約20%に認められ、なかでもS. saprophyticus が最も多く、次いでその他のStaphylococcus 属、Streptococcus 属、Enterococcus 属などが分離される。JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015急性単純性腎盂腎炎と膀胱炎の併発の場合 清水直明さん(病院)閉経前の若い女性、排尿痛、背部叩打痛があることから、急性単純性腎盂腎炎)※3に膀胱炎を併発している可能性が考えられます。その場合の原因菌は前述のJAID/JSC感染症治療ガイドライン2015の通りで、これらがほとんどを占めるといってもよいと思います。E. coliなどのグラム陰性桿菌(健常人にも常在している腸内細菌)には近年ESBL(extended spectrum β-lactamase)産生菌が増加しており、加えてこれらはキロノン系抗菌薬にも耐性を示すことが多く、セフェム系、キノロン系抗菌薬が効かない場合が多くなっているので注意が必要です。※3 尿道口から細菌が侵入し、腎盂まで達して炎症を起こす。20~40歳代の女性に多いとされる。グラム陰性桿菌が原因菌であることが多い。Q2 患者さんに確認することは?アレルギーや腎臓疾患など 柏木紀久さん(薬局)セフェム系抗菌薬やペニシリン系抗菌薬のアレルギー、気管支喘息や蕁麻疹などのアレルギー関連疾患、腎臓疾患の有無。妊娠の有無  わらび餅さん(病院)アレルギー歴や併用薬(相互作用の観点で必要時指導がいるので)に加え、妊娠の有無を確認します。Q3 疑義照会する?軟便や胃腸障害への対策 中堅薬剤師さん(薬局)処方内容自体に疑義はありませんが、抗菌薬で軟便になりやすい患者さんならば耐性乳酸菌製剤、胃腸障害が出やすい患者さんであれば胃薬の追加を提案します。1日2回への変更 柏木紀久さん(薬局)職業等生活状況によっては1日2回で成人適応もあるセファレキシン顆粒を提案します。フラボキサートの必要性 キャンプ人さん(病院)今回は急性症状でもあり、フラボキサートは過剰かなと思いました。今回の症例の経過や再受診時の状況にもよりますが、一度は「フラボキサートは不要では」と疑義照会します。症状の確認をしてから JITHURYOUさん(病院)フラボキサートについては、排尿時痛だけでは処方はされないと考えます。それ以外の排尿困難症、すなわち頻尿・ひょっとしたら尿漏れの可能性? それらがないとすれば、疑義照会して処方中止提案をします。下腹部の冷えを避け、排尿我慢や便秘などしないように、性交渉後、排尿をするなどの習慣についても指導できればいいと思います。疑義照会しない 奥村雪男さん(薬局)セファレキシンは6時間ごと1日4回ですが、今回の1 日3 回で1,500mgにした処方では疑義照会しません。なお、JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015 では閉経前の急性単純性膀胱炎のセカンドラインの推奨として、セファクロル250mgを1 日3 回、7 日間を挙げています。患者さんのアドヒアランスを考慮? わらび餅さん(病院)疑義照会はしません。投与量がJAID/JSCガイドラインと異なり多いと思いましたが、患者さんが若くアドヒアランスの低下の可能性を疑って、膀胱炎を繰り返さないためにも、あえて高用量で処方したのかとも考えました。ESBL産生菌を念頭に置く 清水直明さん(病院)セファレキシンは未変化体のまま尿中に排泄される腎排泄型の薬剤であり、尿路に高濃度移行すると考えられ、本症例のような尿路感染症には使用できると思います。しかし、地域のアンチバイオグラムにもよりますが、腸内細菌にESBL産生菌が増えており(平均して1~3割程度でしょうか)、単純なセフェム系抗菌薬の治療では3割失敗する可能性があるともいえます。ケフレックス®(セファレキシン)のインタビューフォームによると、E. coli、K. pneumoniae、P. mirabilisに対するMICはそれぞれ6.25、6.25、12.5μg/mLです。一方、JAID/JSCガイドラインで推奨されている1つであるフロモックス®(セフカペンピボキシル塩酸塩)のMICは、インタビューフォームによると、それぞれ3.13、0.013、0.20 μg/mLと、同じセフェム系抗菌薬でも2つの薬剤間で感受性がかなり異なることが分かります。やはり、セファレキシンは高用量で用いないと効果が出ない可能性があるので高用量処方となっているのだと思います。これらのことから、1つの選択肢としては疑義照会をして感受性のより高いセフカペンなどのセフェム系抗菌薬に変更してもらい、3日ほどたっても症状が変わらないか増悪するようであれば、薬が残っていても再度受診するように伝えることが挙げられます。もう1つの選択肢としては、初めからESBL産生菌を念頭に置いて、下痢発現の心配はあるものの、βラクタマーゼ配合ペニシリン系抗菌薬、ファロペネムなどを提案するかもしれません。私見ですが、キノロン系抗菌薬は温存の意味と、キノロン耐性菌を増やす可能性があり、あまり勧めたくありません。キノロン耐性菌の中にはESBL産生菌が含まれるので、ESBL産生菌を増やすことに繋がってしまいます。Q4 抗菌薬について、患者さんに説明することは?他科受診時や高熱に注意 柏木紀久さん(薬局)「セファレキシンは症状が治まっても服用を続けてください。服用途中でも高熱が出てきたら受診してください。水分をよく取って、排尿も我慢せず頻繁にしてください。セファレキシン服用中は尿検査で尿糖の偽陽性が出ることがあるので、他科を受診する際には申告してください」。腎盂腎炎に進行する可能性を懸念し、熱が上がってきたら再受診を勧めます。牛乳で飲まないように わらび餅さん(病院)飲み忘れなく、しっかりセファレキシンを飲むように指導します。牛乳と同時に摂取するのは避ける※4ように説明します。※4 セファレキシンやテトラサイクリン系抗菌薬は、牛乳の中のカルシウムにより吸収が低下する。キノロン系抗菌薬の服用歴 JITHURYOUさん(病院)性交渉頻度など(セックスワーカー・不特定多数との性交渉の可能性? )は気になるところですが、なかなか聞きにくい質問でもあります。レボフロキサシンなどのキノロン系抗菌薬は、開業医での処方が多いです。このため、これらの薬剤の服用歴や受診歴が重要であると思います。ESBL産生菌の可能性はないかもしれませんが、さまざまな抗菌薬にさらされている現状を考慮して、数日で症状改善しなければ、耐性菌や腎盂腎炎などの可能性もあるので再受診を促します。中止か継続かの判断 中西剛明さん(薬局)蕁麻疹や皮膚粘膜の剝落などのアレルギー症状が出た場合は中止を、下痢の場合はやがて改善するので水分をしっかり取った上で中止しないよう付け加えます。あまりに下痢がひどい場合は、耐性乳酸菌製剤が必要かもしれません。Q5 その他、気付いたことは?薬薬連携で情報を共有 荒川隆之さん(病院)閉経前の急性単純性膀胱炎から分離されるE. coliの薬剤感受性は比較的良好とされてはいるものの、地域のE. coliの薬剤感受性は把握しておくべきだと考えます。ESBL産生菌の頻度が高い地域においては、キノロン系抗菌薬の使用は控えた方がよいかもしれませんし、ファロペネムなどの選択も必要となるかもしれません。病院側もアンチバイオグラムなどの感受性情報は地域の医療機関で共有すべきだと考えますし、薬局側も必要だとアクションしていただきたいと思います。薬薬連携の中でこのような情報が共有できるとよいですね。余談ですが、ESBLを考える場合、ガイドライン上にはホスホマイシンも推奨されていますが、通常量経口投与しても血中濃度が低すぎるため、個人的にあまりお勧めしません。注射の場合は十分上がります。欧米のように高用量1回投与などができればよいのにと考えています。地域のアンチバイオグラムを参考に 児玉暁人さん(病院)ESBL産生菌の可能性は低いかもしれませんが、地域のアンチバイオグラムがあれば抗菌薬選択の参考になるかもしれません。背部叩打痛があるようですが、腎盂腎炎は否定されているのでしょうか。膀胱炎の原因 中堅薬剤師さん(薬局)膀胱炎であることは確かだと思いますが、その原因が気になります。泌尿器科の処方箋が多い薬局で数年働き、若い女性の膀胱炎をよく見てきましたが、間質性膀胱炎のことが多く、そのような場合には、保険適用外でしたがスプラタスト(アイピーディ®)やシメチジンなどが投与されていました。背部叩打痛があることから、尿路結石の可能性もあります。また、若い女性であることから、ストレス性も考えられます。営業職で、トイレを我慢し過ぎて膀胱炎になるケースも少なくありません。最悪、敗血症になる可能性も ふな3さん(薬局)発熱・背部叩打痛があることから、腎盂腎炎への進行リスクが心配されます。最悪の場合、敗血症への進行の可能性も懸念されるため、高熱や腰痛などの症状発現や、2~3日で排尿痛等の改善がない場合には、早めに再受診または、泌尿器科専門医を受診するよう説明します。後日談この患者は1週間後、再受診、来局した。薬を飲み始めて数日したら排尿時の痛みがなくなったため、服薬をやめてしまい、再発したという。レボフロキサシン錠500mg/1錠、朝食後3日分の処方で治療することになった。医師の診断は急性単純性膀胱炎で、腎盂腎炎は否定的だったそうだ。担当した薬剤師から再治療がニューキノロン系抗菌薬になったのは、より短期間の治療で済むからでしょう。セファレキシンなどの第一世代セフェムを含むβラクタム系抗菌薬を使う場合、1週間は服用を続ける必要があるといわれています。この症例は、服薬中断に加え、フラボキサートで排尿痛を減らす方法では残尿をつくってしまう可能性があり、よくなかったのかもしれません。症状がよくなっても服薬を中断しないこと、加えて、水分摂取量を増やして尿量を増やすことも治療の一環であると説明しました。[PharmaTribune 2017年1月号掲載]

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第8回 内科クリニックからのクラリスロマイシンの処方【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?マイコプラズマ・・・7名百日咳菌・・・6名コロナウイルス、アデノウイルスなどのウイルス・・・3名結核菌・・・2名肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)・・・6名モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)・・・2名インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)・・・1名遷延性の咳嗽 清水直明さん(病院)3週間続く咳嗽であることから、遷延性の咳嗽だと思います。そうなると感染症から始まったとしても最初の原因菌は分からず、ウイルスもしくは非定型菌※による軽い感冒から始まったことも予想されるでしょう。他に、成人であっても百日咳の可能性も高いと思われます。その場合、抗菌薬はクラリスロマイシン(以下、CAM)でよいでしょう。初発がウイルスや非定型菌であったとしても、二次性に細菌感染を起こして急性気管支炎となっているかもしれません。その場合は、Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、Moraxella catarrhalisなどが原因菌として想定されます。このようなときにグラム染色を行うことができると、抗菌薬選択の参考になります。※非定型菌は一般の細菌とは異なり、βラクタム系抗菌薬が無効で、培養や染色は困難なことが多い。マイコプラズマ、肺炎クラミジア、レジオネラなどがある。結核の可能性も 児玉暁人さん(病院)長引く咳とのことで、マイコプラズマや百日咳菌を疑います。患者背景が年齢しか分かりませんが、見逃すと怖いので念のため結核も考慮します。細菌感染症ではないのでは? 中西剛明さん(薬局)同居家族で最近かかった感染症があるかどうかを確認します。それで思い当たるところがなければ、まず、ウイルスかマイコプラズマを考えます。肺炎の所見もないので、肺炎球菌、インフルエンザやアデノウイルスなどは除外します。百日咳は成人の発症頻度が低いので、流行が確認されていなければ除外します。RSウイルスやコロナウイルス、エコーウイルスあたりはありうると考えます。ただ、咳の続く疾患が感染症とは限らず、ブデソニド/ホルモテロールフマル酸塩水和物(シムビコート®)が処方されているので、この段階では「細菌感染症ではないのでは?」が有力と考えます。Q2 患者さんに何を確認する?薬物相互作用 ふな3さん(薬局)CAMは、重大な相互作用が多い薬剤なので、併用薬を確認します。禁忌ではありませんが、タダラフィル(シアリス®)などは患者さんにとっても話しにくい薬なので、それとなく確認します。喫煙の有無と、アレルギー歴(特にハウスダストなどの通年性アレルギー)についても確認したいです。自覚していないことも考慮  児玉暁人さん(病院)やはり併用薬の確認ですね。スボレキサント錠(ベルソムラ®)やC型肝炎治療薬のアナスプレビルカプセル(スンベプラ®)は、この年齢でも服用している可能性があります。ピロリ菌の除菌など、パック製剤だと本人がCAM服用を自覚していないことも考えられるので、重複投与があるかどうかを確認します。シムビコート®は咳喘息も疑っての処方だと思います。感染性、非感染性のどちらもカバーし、β2刺激薬を配合したシムビコート®は吸入後に症状緩和を実感しやすく、患者さんのQOLに配慮されているのではないでしょうか。過去に喘息の既往はないか、シムビコート®は使い切りで終了なのか気になります。最近の抗菌薬服用歴 キャンプ人さん(病院)アレルギー歴、最近の抗菌薬服用歴、生活歴(ペットなども含める)を確認します。受診するまでの症状確認とACE阻害薬 柏木紀久さん(薬局)この3週間の間に先行して発熱などの感冒症状があったか、ACE阻害薬(副作用に咳嗽がある)の服用、喫煙、胸焼けなどの確認。Q3 抗菌薬の使用で思い浮かんだことは?咳喘息ならば・・・ 清水直明さん(病院)痰のからまない乾性咳嗽であれば、咳喘息の可能性が出てきます。そのために、シムビコート®が併用されていると思われ、それで改善されれば咳喘息の可能性が高くなります。咳喘息に対しては必ずしも抗菌薬が必要とは思いませんが、今の状態では感染症を完全には否定できないので、まずは今回の治療で反応を見たいと医師は考えていると思います。抗菌薬の低感受性に注意 JITHURYOUさん(病院)CAMは、抗菌作用以外の作用もあります。画像上、肺炎はないということですが、呼吸器細菌感染症としては肺炎球菌、インフルエンザ菌を想定しないといけないので、それらの菌に対する抗菌薬の低感受性に注意しなければなりません。さらに溶連菌、Moraxella catarrhalisなども考慮します。抗菌薬の漫然とした投与に注意 わらび餅さん(病院)痰培養は提出されていないようなので、原因菌を特定できるか分かりません。CAM耐性菌も以前より高頻度になっているので、漫然と投与されないように投与は必要最低限を維持することが大切だと思います。再診時の処方が非常に気になります。CAMの用量 柏木紀久さん(薬局)副鼻腔気管支症候群ならCAMは半量での処方もあると思いますが、1週間後の再診で、かつ感染性咳嗽の可能性を考えると400mg/日で構わないと思います。しっかりとした診断を 荒川隆之さん(病院)長引く咳の原因としては、咳喘息や後鼻漏、胃食道逆流、百日咳、結核、心不全、COPD、ACE阻害薬などの薬剤性の咳など多くありますが、抗菌薬が必要なケースは少ないです。もし百日咳であったとしても、感染性は3週間程度でなくなることが多く、1~2カ月程度続く慢性咳嗽に対してむやみに抗菌薬を使うべきではないと考えます。慢性咳嗽の原因の1つに結核があります。ニューキノロン系抗菌薬は結核にも効果があり、症状が少し改善することがありますが、結核は複数の抗菌薬を組み合わせて、長い期間治療が必要な疾患です。そのため、むやみにニューキノロン系抗菌薬を投与すると、少しだけ症状がよくなる、服用が終わると悪くなる、を繰り返し、結核の発見が遅れる可能性が出てくるのです。結核は空気感染しますので、発見が遅れるということは、それだけ他の人にうつしてしまう機会が増えてしまいます。また、結核診断前にニューキノロン系抗菌薬を投与した場合、患者自身の死亡リスクが高まるといった報告もあります(van der Heijden YF, et al. Int J Tuberc Lung Dis 2012;16(9): 1162-1167.)。慢性咳嗽においてニューキノロン系抗菌薬を使用する場合は、結核を除外してから使用すべきだと考えます。まずはしっかりした診断が大事です。Q4 その他、気付いたことは?QOLのための鎮咳薬 JITHURYOUさん(病院)小児ではないので可能性は低いですが、百日咳だとするとカタル期※1でマクロライドを使用します。ただ、経過として3週間過ぎていることと、シムビコート®が処方されているので、カタル期ではない可能性が高いです。咳自体は自衛反射で、あまり抑えることに意味がないと言われていますが、本症例では咳が持続して夜間も眠れないことや季肋部※2の痛みなどの可能性もあるので、患者QOLを上げるために、対症療法的にデキストロメトルファンが処方されたと考えます。※1 咳や鼻水、咽頭痛などの諸症状が起きている期間※2 上腹部で左右の肋骨弓下の部分鎮咳薬の連用について 中堅薬剤師さん(薬局)原疾患を放置したまま、安易に鎮咳薬で症状を改善させることは推奨されていません1)。また、麦門冬湯は「乾性咳嗽の非特異的治療」のエビデンスが認められている2)ので、医師に提案したいです。なお、遷延性咳嗽の原因は、アレルギー、感染症、逆流性食道炎が主であり、まれに薬剤性(副作用)や心疾患などの要因があると考えています。話は変わりますが、開業医の適当な抗菌薬処方はずっと気になっています。特にキノロン系抗菌薬を安易に使いすぎです。高齢のワルファリン服用患者にモキシフロキサシンをフルドーズしようとした例もありました。医師の意図 中西剛明さん(薬局)自身の体験から、マイコプラズマの残存する咳についてはステロイドの吸入が効果的なことがあると実感しています。アレルギーがなかったとしても、マイコプラズマ学会のガイドラインにあるように、最終手段としてのステロイド投与(ガイドラインでは体重当たり1mg/kgのプレドニゾロンの点滴ですが)は一考の余地があります。また、マイコプラズマ学会のガイドラインにも記載がありますが、このケースがマイコプラズマであれば、マクロライド系抗菌薬の効果判定をするため、3日後に再受診の必要があるので3日分の処方で十分なはずです。ステロイド吸入が適切かどうか議論のあるところですが、シムビコート®を処方するくらいですから医師は気管支喘息ということで治療をしたのだと考えます。Q5 患者さんに何を説明する?抗菌薬の患者さんに対する説明例 清水直明さん(病院)「咳で悪さをしているばい菌を殺す薬です。ただし、必ずしもばい菌が悪さをしているとは限りません。この薬(CAM)には、抗菌作用の他にも気道の状態を調節する作用もあるので、7日分しっかり飲み切ってください。」CAMの副作用 キャンプ人さん(病院)処方された期間はきちんと内服すること、副作用の下痢などの消化器症状、味覚異常が出るかもしれないこと。抗菌薬を飲み切る 中堅薬剤師さん(薬局)治療の中心になるので、CAMだけは飲み切るよう指示します。また、副作用が出た際、継続の可否を主治医に確認するよう話します。別の医療機関にかかるときの注意 ふな3さん(薬局)CAMを飲み忘れた場合は、食後でなくてよいので継続するよう説明します。また、別の医師にかかる場合は、必ずCAMを服用していることを話すよう伝えます。後日談本症例の患者は、1週間後の再診時、血液検査の結果に異常は見られなかったが、ハウスダストのアレルギーがあることが分かり、アレルギー性咳嗽(咳喘息)と診断された。初診後3日ほどで、咳は改善したそうだ。医師からはシムビコート®の吸入を続けるよう指示があり、新たな処方はなされなかった。もし咳が再発したら受診するよう言われているという。1)井端英憲、他.処方Q&A100 呼吸器疾患.東京、南山堂、2013.2)日本呼吸器学会.咳嗽に関するガイドライン第2版.[PharmaTribune 2016年11月号掲載]

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25)ディスクヘラー(フルタイド、セレベント)【解説編】【吸入薬使い方ガイド】

※上の画像をクリックすると別のウィンドウにて「環境再生保全機構」の動画ページが開きます。■今回の内容今回は、ディスクヘラー(フルタイド、セレベント)の吸入手順を解説します。手順としては、カバーを外し、白いトレーを引き出す→トレーを取り外し、穴に合わせてディスクを乗せる→カチッと音がするまで、トレーを本体に押し込む→★本体を平らに持ち、フタを垂直に立て、ブリスターに穴を開ける→フタを閉じる→呼吸を整え、ゆっくり十分に息を吐く→吸入口をしっかりくわえる→空気口をふさがないようにする→下を向かず、背筋を伸ばし、勢いよく深く吸う(そのとき舌を下げて喉の奥を広げる)→吸入器をはずし、口を閉じ3~5秒間息を止め、薬剤を定着させる→鼻からゆっくり息を吐く→(吸入指示が2回の場合、もう一度白いトレーを引き出し、再びカチッと音がするまで押し込む→ブリスターが回転する→★に戻る→)うがいをする(口中3回、喉の奥3回)→使い終わった薬をトレーから外し、捨てる→トレーを戻し、カバーを閉める。※注意するポイント中の薬がこぼれないように、平らに保ったまま操作してください吸った時に少し甘みを感じても、問題はありません粉が詰まるので、定期的にトレーを外してブラシや布で掃除しましょう汚れがひどいときは、トレーと本体を水洗いして、十分乾かしましょう●主な製剤(2015年3月時点のデータ)ディスクヘラー(フルタイド、セレベント)

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