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第41回 コロナ禍を吹っ飛ばせ!腕試し心電図クイズvol.2【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第41回:コロナ禍を吹っ飛ばせ!腕試し心電図クイズvol.2今回はゴールデン・ウイークに公開した心電図クイズの第2弾です。“息抜きに”と言いつつ、まぁまぁ骨のある問題を出しましたが、今までのレクチャーで扱った知識を総動員して今回も頑張ってみましょう。「面白い」と「ためになる」の両立を目指して、今回もDr.ヒロの心電図ワールドのはじまりです!症例提示83歳、男性。高血圧症、気管支喘息などで通院中。治療にはアムロジピン、テオフィリン(徐放錠)、プランルカスト、レルベア®を使用している。血圧134/90mmHg、脈拍97/分・不整。定期診察時の12誘導心電図を示す(図1)。*:クイズの性格上、自動診断結果の一部を非表示にしている(以下同)。(図1)入院時の心電図画像を拡大する【問題1】調律に関する以下の診断のうち、正しいものを2つ選べ。1)洞頻脈2)異所性心房頻拍3)心房期外収縮4)心室期外収縮(間入性)5)心室期外収縮(完全代償性)解答はこちら1)、5)解説はこちらR-R間隔が整な部分に時折おかしなQRS波が混じるようです。幅が正常(narrow)な部分はほぼ太枠3マスで、“イチニエフの法則”を満たすP波が定期的にも観察され、基本調律は「洞頻脈」で良いと思います。次に“線香とカタチと法被(はっぴ)が大事よね”を思い出してください。洞周期に「先行」するタイミングで出現し、洞収縮とは異なる「カタチ」で「幅」もワイド、P波もないですから、「心室期外収縮」(PVC)の診断は容易です。「完全代償性」か「間入性」は用語的にはやや難しく感じるかもしれませんね。でも大丈夫。後者は文字通り、洞周期の“間”にPVC“入り”込んでいるもので、PVC前後のP-P間隔は洞周期そのものです。一方の「(完全)代償性」のほうはと言えば、レクチャーでも扱った“ニバイニバーイの法則”を満たすものです。PVC前後のP-P(R-R)間隔が洞周期の2倍となることが特徴で、今回もこれに該当します。参考レクチャー:第21回、第26回【問題2】QRS電気軸に関して、最も適切なものを1つ選べ。また定性的評価も加えよ。1)-60°2)-15°3)0°4)+75°5)+120°解答はこちら2)定性的評価:軽度の左軸偏位解説はこちらQRS電気軸を数値で求める場合、まずは肢誘導を上からザーッと見直しましょう。6つのうち上下“トントン”のQRS波があればいいのですが、この心電図にはないようです。そんな時は“トントン法Neo”を使いましょう。肢誘導界の円座標を思い浮かべ、aVL → I → -aVR → II → aVF → III …の順にQRS波の向きを確認します。すると、IIとaVFの間で向きの逆転が起こりますから、この間に“トントン・ポイント”(TP)があるのです。IIの上向き具合とaVFの下向き具合は同程度と考えて、両者の中間(+75°)がTPということになります。求める電気軸は、TPに直交し、かつIが上向きですから、「-15°」が“トントン法Neo”による推定値となります。ちなみに、心電計による自動診断は「-14°」となっていました。「-30°~0°」の範囲は「左軸偏位」の中でも“軽度”の範疇で、正常範囲に準じた扱いがなされることもあります。定性的には、I:上向き、II:上向き、aVF:下向きであるケースが大半です。参考レクチャー:第8回、第9回、第11回【問題3】ほかの心電図所見として正しいものはどれか。1)反時計回転2)QT延長3)(左室)高電位4)PR(Q)延長5)ST上昇解答はこちら4)解説はこちら1)は胸部誘導の移行帯に関するものですが、本例ではV4とV5誘導の間で「R<S」から「R>S」に変わっており、反時計回転ではありません。2)のQT間隔も正常です(補正値[QTc]]437ms)。3)は、QRS波高は代表的なSokolow-Lyon index(SV1+RV5)や“(ブイ)シゴロ密集法”などにもかかりません。上級者ですとIとaVLのQRS波高が気になるかもしれませんが、惜しくも該当しません。PR(Q)間隔は、5mmちょっとで「230ms」と正常上限をオーバーしています(したがって4)が○)。ただし、この程度では「1度房室ブロック」の診断には及びません。5)の「ST上昇」はなく、むしろV4~V6で「ST低下」を認めます(I、aVLにも軽度あり)。参考レクチャー:第1回症例提示253歳、男性。近医で糖尿病の診断を受けているが、本人拒否もあり無投薬で経過観察されている。深夜1:30に救急要請。意識清明、血圧138/87mmHg、脈拍49/分・不整、酸素飽和度(SpO2)99%(室内気)。全身冷汗著明。本人曰く、「昨日ね、夕方6時くらいに焼き肉に行ったんです。たらふく食べて飲みました。10時過ぎに帰って、風呂に入って寝たんです。0時くらいに起きたら気持ち悪くて、ひどい下痢もしてて。何度も吐いて、胃が焼け付くくらい“熱い”んです。ちょっと生に近い状態の肉を食べたんで、あたったんですか?」とのこと。来院時の心電図を示す(図2)。(図2)来院時の心電図画像を拡大する【問題4】調律に関して正しいものを選べ。また、心拍数はいくらか。1)洞徐脈2)洞不整脈3)心房粗動4)心房細動5)心房静止解答はこちら4)心拍数:51/分(新・検脈法)解説はこちら心電図を見たら、まずは“レーサー・チェック”でしたね。ちなみに、後述しますが、ST変化に気をとられる余り、調律診断が疎かになるようなことはあってはならないと思います。R-R間隔は不整で、洞性P波も確認できません。そんな時に見るべきは、ボク一押しのV1誘導でした。本例はやや見つけにくいですが、“f(細動)波”が確認できます。振幅が1mmに満たず、いわゆる「fine AF」だと思いますが、2nd bestである下壁誘導ではグニャグニャ部分もあり、「心房細動」(AF)で良いでしょう。心拍数に関しては、「検脈法」です。シンプルに全体10秒間のQRS波の個数を数えて9×6=54/分としてもいいですが、肢誘導の右端、そして胸部誘導は両端のQRS波が“ちぎれて”いますから、これらを0.5個とカウントして、(4.5+3+0.5×2)×6=51/分として求める“新・検脈法”は、このように徐脈気味の時に真価を発揮します。心電計の値も見事に「51/分」となっていました。参考レクチャー:第4回、第29回【問題5】この段階でなすべきこととして、正しいものを2つ選べ。1)消化器科医をコールし、上部消化管内視鏡を依頼する。2)右側胸部誘導を記録する。3)点滴ルートを確保して硫酸アトロピンを投与する。4)体外式除細動器を準備する。5)硝酸イソソルビドを静注しつつ、循環器科医をコールして心エコーを依頼する。解答はこちら2)、4)解説はこちら下痢や嘔吐を主訴に来院しても、この心電図を見てしまったら、「急性胃腸炎」では済ませることはできません。胃カメラうんぬんは笑い話レベルとしても、症状的には消化器疾患と紛らわしい例であることは事実です。心電図では、II、III、aVF、さらにV4~V6に「ST上昇」を認め、逆にaVL、V1、V2などでは「ST低下」(対側性ST変化)が見られます。こういう場合、第一に「ST上昇型急性心筋梗塞」(STEMI)を疑うべきパターンになります。迷走神経に関連し、急性下壁梗塞で嘔吐が前面に出ることがあるというケースを過去のレクチャーでも扱っており、これも類似のケースです。「下痢」の合併は稀かとは思いますが、実際にこのような訴えもあることを知っておくと、診療の幅が広がります。下壁梗塞を疑う場合、何も考えずに右側胸部誘導をとることはガイドラインでも推奨されていますが、なかなか行われておらず現場では歯がゆく感じるところがあります(本ケースでも記録されていませんでした)。心筋梗塞の場合、徐脈ならアトロピン、ST上昇だから即ニトロという盲目的な対応は時に危険で、禁忌というケースもあることはご存じでしょうか?(参考:ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン[2013年改訂版])前者はNG、後者もいきなり静注は推奨できません。まずは救急カート、電気的除細動器を準備、とにかくすぐに循環器科医をコールして指示を仰ぐようにしましょう(一番先にすべきことは心エコーでないことは明らかかでしょう)。参考レクチャー:第27回、第31回【問題6】本症例の臨床診断として正しいものを1つ選べ。1)胆石仙痛発作2)急性胃腸炎3)急性心筋梗塞4)尿管結石5)肋間神経痛解答はこちら 3)解説はこちら前問の解説通り心電図的にはきれいなSTEMIで、傷害部位は左室の下壁と側壁です。心電図から責任血管が右冠動脈か左冠動脈回旋枝かを推測する方法もあることはある(確実ではないですが)ので、おいおい扱いましょう。緊急冠動脈造影では、右冠動脈遠位部の完全閉塞が確認され、そのままインターベンション(ステント留置)が行われました。症例提示387歳、女性。糖尿病、高血圧症、慢性腎臓病、陳旧性心筋梗塞で通院中。血圧162/69mmHg、脈拍86/分。定期診察時の12誘導心電図を示す(図3)。(図3)定期診察時の心電図画像を拡大する【問題7】異常Q波はいくつの誘導で認められるか。以下のうち、最も適切なものを選べ。1)0個(なし)2)2個3)3個4)5個5)7個解答はこちら5)解説はこちら古い(陳旧性)心筋梗塞の存在を示唆する「異常Q波」の拾い上げは2段階でしたね。まずはV1~V3誘導が陰性波から始まっていたら問答無用で“異常”です。V1はしっかりとした「QS型」で、V2、V3に認められる小さな“q波”―これらもすべて“アウト”(異常)です。V1~V3、そしてaVRを除く計8個の誘導では、幅と深さを意識した“1mmの法則(ルール)”が重要でした。II、III、aVFは幅的に“ヤバイだろ”と主張したげです(ここまでで6個)。残るV4は微妙ですが、幅も深さもほぼ1mmであること、そして何よりV3とほぼ同じQRS波形で片方(V3)がおかしければ、もう片方も自然に思えるセンスがDr.ヒロが求めるものの一つになります。ですから、今回は「7個」、これが正解です。参考レクチャー:第30回、第33回、第34回【問題8】壊死心筋(梗塞巣)として推定される部位は以下のうちどれか。すべて選べ。1)心室中隔2)左室前壁3)左室側壁4)左室後壁5)左室下壁解答はこちら1)、2)、5)解説はこちらこれは前問ができればオマケ的なものです。異常Q波を拾って、さらに解剖学(空間)的な隣接性、平たく言えば“お隣さんルール”。2つ以上の誘導セットでQ波があったら、その領域の心筋梗塞を疑うというシンプルなロジックです。CT画像を用いた心臓の水平断で宇宙人たちがカメラを構えていた図を覚えているでしょうか? V1が「心室中隔」、V2~V4は「前壁」、そしてII、III、aVFは「下壁」と対峙するのでしたね。このようなパターンでは、右冠動脈と左冠動脈前下行枝(LAD)とがそれぞれ別に詰まったというよりは、心尖部を越えて下壁中隔から下壁まで灌流するような大きなLAD(wrap-around / wrapped LAD)の梗塞であることが多いと思います。参考レクチャー:第17回症例提示481歳、女性。高血圧症、高尿酸血症、骨粗鬆症などで他院へ通院中。高齢で足腰が弱って通院困難を理由に転医希望、受診となった。心機能については無症状。血圧142/74mmHg、脈拍80/分・不整。初診時の12誘導心電図を示す(図4)。(図4)初診時の心電図画像を拡大する【問題9】心電図所見に関して正しいものをすべて選べ。1)上室外収縮2)心室期外収縮3)非伝導性心房期外収縮4)心房細動5)心室頻拍6)右軸偏位7)左軸偏位8)高度軸偏位(北西軸)9)完全右脚ブロック10)完全左脚ブロック解答はこちら1)、7)、10)解説はこちら最後はDr.ヒロ流“ドキ心”の真骨頂である所見拾いです。ゲーム感覚で漏れなく指摘して、気持ちよく終わりましょう。心電図自体は前半のものに比べればさほど難しくはないと思います。肢誘導3拍目、胸部誘導2、6拍目が「期外収縮」で、QRS幅はワイドですが、P波が先行し、洞収縮波形も含めてすべて同一のカタチですから、これは1)PACですね。“1画面”つまり全10秒間に3つ以上の期外収縮があったら、頭に「頻発性」とつけて結構なレベルです。なお、3)に関しては、予想される洞性P波のタイミングより早く、波形も異なるP波も認めるものの、直後にQRS波を伴わないパターンのPACですが、これは該当しません。4)と5)は基本調律に関するもので、いずれも該当しません。このように期外収縮がたくさん出るとAFチックに見えるので注意してくださいね。期外収縮以外のビートには、“イチニエフの法則”を満たすP波がQRS波手前の“定位置”におり、これは洞調律の証です。QRS電気軸は、定性的にI:上向き、aVF(II):下向きですから、「左軸偏位」(“トントン法”では「-60°」と求まる)ですね。その他、QRS波の「幅」に異常があることもわかりますね。ワイドでV1の「rS型」、I、aVL、V6でq波なくスラーを伴う「R型」ですので、「完全左脚ブロック」と診断してください。参考レクチャー:第1回、第19回【古都のこと~清水寺、音羽の滝】前回に引き続き清水寺の話をしたいと思います。ところで、清水寺の宗旨を知っていますか? いわゆる「~宗」というものです。正解は「北法相宗(きたほっそうしゅう)」*1。唐伝来の奈良仏教が、いかに京都にやって来たのかを知ることは、お寺の名称の起源を知ることでもあり、今回はそれをお話します。ある日、大和国(奈良県)の子島寺で修行した賢心(けんしん)は「木津川の北流に清泉を求めて行け」という霊夢に従い北を目指します。そして音羽の山中*2で輝くような清泉を発見し、そこで行叡居士(ぎょうえいこじ)から霊木を授かり、千手観音像を彫り、ここを観音霊地として草庵を結びます*3。それから2年後、音羽山に鹿狩りに来た坂上田村麻呂*4が修行中の賢心と出会い、観音霊地での殺生の罪を知り、観世音菩薩の功徳の話に深く感銘を受けます。これにより田村麻呂は仏門に帰依することとなります。その後、日本初の征夷大将軍に任命され、蝦夷平定から帰京した田村麻呂は798年(延暦17年)、自邸を寄進し、延鎮(えんちん)と改名した賢心とともに本堂を築き、音羽の滝の清らかな水にちなんで「清水寺」と名付けました。桓武天皇は清水寺を自らの御願寺と定め伽藍構築を支援し、大同5年(810年)には嵯峨天皇より「北観音寺」の宸筆(しんぴつ)が贈られ、鎮護国家の寺院の定めを受けたのです。以上が『続群書類従』による清水寺の始まりです。舞台に気を取られ、ふと見過ごしてしまいそうな「音羽の滝」に寺のルーツがあると知り、より一層キヨミズさんに興味が湧いてきますね。*1:南都六宗の一つで、唯識宗(ゆいしきしゅう)、応理円実宗(おうりえんじつしゅう)、慈恩宗(じおんしゅう)などとも呼ばれる。南都は奈良のこと。大本山は興福寺で、中世・近世において清水寺はその末寺であった。昭和40年(1965年)、北法相宗の本山として独立した。*2:山城国愛宕郡八坂郷の東山。当時は「乙輪」と呼ばれていた。*3:清水寺の開創とされる奈良時代末期の宝亀9年(778年)のこと。ボクが「舞台」と間違っていた奥の院付近が庵の場所とされ、真下に「音羽の滝(瀧)」がある。*4:奈良時代末期~平安時代の武人。身重の妻の病を癒やすため、鹿の生き血を求めたとされる。

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Dr.皿谷の肺音聴取道場

第1回 胸部の解剖第2回 呼吸音伝達の仕組み第3回 正常呼吸音を聴く第4回 肺炎と胸膜炎を理解する第5回 頸部で聴こえる音第6回 中葉・舌区で聴こえる音第7回 肺底部で聴こえる音第8回 肺炎へのアプローチ第9回 気管支喘息、肺がんへのアプローチ第10回 多彩な疾患へのアプローチ 肺音に苦手意識がある先生、ぜひこの番組を見てください!Dr.皿谷が、胸部の解剖から肺音が聞こえる原理、雑音が生じる理由まで、肺音聴取に必要な知識を丁寧に解説します。胸部だけでなく頸部や口腔での聴診のコツも伝授。さまざまな部位での聴診スキルと異常音を知ることで、肺音から疾患を特定できるようになります。実症例で録音した肺音を数多く聞いて、コモンな疾患を聴き分けられる耳を養いましょう。※学習効果を高める1冊 皿谷氏の最新著作 「まるわかり!肺音聴診」は、聴診のポイントから診断アプローチまで丁寧に解説。DVDで学んだスキルを深く理解できるおすすめの1冊です。Amazon購入リンクはこちら↓「まるわかり!肺音聴診」(南江堂)第1回 胸部の解剖効果的に肺音を聞くには、解剖の理解が不可欠。なぜなら、体表から肺の位置を把握できることが適切な音を聞くための土台だからです。第1回では、モデルの体表に骨や肺の位置をマーキングし、体表から肺の位置がわかるように解説します。第2回 呼吸音伝達の仕組み肺音は、正常呼吸音と副雑音に分かれます。それぞれの異常に気付くために押えておきたい基本は呼吸音がどこで発生しているのか、そしてその音がどうやって体の中で伝達されているか。これを理解するために最も重要なポイント「肺はlow pass filterである」をわかりやすく解説します。第3回 正常呼吸音を聴く呼吸音は、気管呼吸音、気管支呼吸音、肺胞呼吸音の3つに分類されます。これらの正常音の聴取部位や音の性質をしっかりと把握していれば、異常を見つけるのも簡単。それぞれの呼吸音の正常な状態と、異常が生じる場合を実際に録音した症例音源で解説します。第4回 肺炎と胸膜炎を理解する臨床で頻繁に遭遇する肺炎と胸膜炎。これらの疾患で肺音はどう変化するのか?病変の種類と聴取部位による音の違いを、実際の症例で見ていきます。患者に発語してもらい音の変化から病変を捉える「声音聴診」や打診を組み合わせたテクニックも実技で解説します。第5回 頸部で聴こえる音患部を聴いても見つけられない状態変化を見つける方法を知りたくないですか?それは頸部聴診。頸部で聴こえる異常音がどんな音かを知ってさえいれば、気管狭窄や喘息発作、COPDの急性増悪などをすぐに見つけられます。症例写真と聴診音で勉強していきましょう!第6回 中葉・舌区で聴こえる音中葉・舌区は、鼻症状を呈する患者では必ず聴診を行うべき部位。なぜなら鼻に症状が出る場合、気管支にも何らかの異常があることが多いから。今回は副鼻腔気管支症候群や気管支炎などの疾患で聴こえる音の性質を見ていきます。さらにこれを理解するとより一層、聴診から疾患を予測できるようになる「呼吸相」を解説します。第7回 肺底部で聴こえる音間質性肺炎を疑うとき、最も注意して聴診すべき箇所が肺底部。ここで音をキャッチできるとより早期に間質性肺炎を発見し、治療に結び付けられます。肺底部での聴診のコツ、そして実際の症例で録音した肺音から、音の性質、聴こえるフェーズなどを理解しておきましょう。第8回 肺炎へのアプローチ肺音は、さまざまな肺炎を発見し病期を見分けるのに有用なツールです。今回はインフルエンザ感染後の肺炎、マイコプラズマ肺炎、そしてレジオネラそれぞれの肺音を症例写真とともに聴いていきます。呼気、吸気どちらでよく聴こえるか?高音か低音か?さまざまな角度から音を聴き分ける練習をしていきましょう。第9回 気管支喘息、肺がんへのアプローチ高音と低音と入り混じった喘鳴を聴いたとき、どんな疾患を想像しますか?答えを出すポイントは、気道の構造を考慮すること。気道の太さと細さで音の性質が変わることを念頭に置いて画像や診察情報と照らし合わせることで答えにたどり着くことができます。肺音と解剖、そして画像や診察情報などを総合して、疾患を見つける訓練をしていきましょう。第10回 多彩な疾患へのアプローチ最終回は肺音で聴き取れる特殊な症例をみていきます。画像診断やその他の検査で診断がついてから肺音を聴取してみると、その異常が肺音でも聴き取れることがわかります。こうした症例を知っておくと、侵襲的な検査をする前に異常を発見することにもつながります。これはまさに上級者のテクニック。基本的な肺音を聴けるだけでなく、高度なテクニックも身に付けて診断の精度を上げていきましょう!

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相性の悪かった吸入器を変更して服薬習慣も改善【うまくいく!処方提案プラクティス】第18回

 今回は、喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)患者さんのアドヒアランスを上げるために、吸入器の変更を検討した処方提案です。内服薬の見直しと介護サービスの連携も同時に行うことで、QOLを改善することができました。患者情報75歳、男性(在宅、要介護1)基礎疾患:気管支喘息、肺気腫、末梢動脈疾患、両膝変形性関節症服薬管理:一包化介護状況:訪問介護(毎日午前中)喫  煙:20本/日処方内容1.エピナスチン錠20mg 1錠 分1夕食後2.モンテルカスト錠10mg 1錠 分1 夕食後3.ブロムへキシン錠5mg 3錠 分3 朝昼夕食後4.ロキソプロフェン錠60mg 2錠 分2 朝夕食後5.レバミピド錠100mg 2錠 分2 朝夕食後6.ツロブテロール錠1mg 2錠 分2 朝夕食後7.サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステルドライパウダーインヘラー250ディスカス 1日2回 朝夕吸入本症例のポイント在宅訪問を開始する際に、この患者さんは服薬アドヒアランスが悪く、喘息発作のため何度も入退院を繰り返しているという話を訪問診療医から聞き取りました。初回面談時に両膝関節痛と呼吸苦を訴えていましたが、朝も夕もほとんど内服ができておらず、残薬がたくさんある状況でした。また、吸入薬もほとんど残数が減っていませんでした。詳しく聞いていくと、患者さんは治療の必要性や治療効果を十分に感じていないようで、具合が悪くても年のせいと諦めていて、服用忘れがあっても次の分の時に飲めばいいという認識でした。吸入薬に関しても、残薬カウンターに拡大レンズを付けていたものの、残数が見えにくく、吸入したかどうかわからないため吸入しないことが多々あることが判明しました。さらに、吸入器の操作にも難があり、薬装填レバーを繰り返し押してカウンターを無駄に回していました。本人としては、飲み薬は可能な限り減らして、吸入薬も残薬がわかりやすくて使いやすいものにしてほしいという希望があったため、介入を開始しました。処方提案と経過(1)服薬管理についてまず、ケアマネジャーに、毎朝の訪問介護スタッフに朝の内服と吸入薬の声掛けをしてもらうことは可能か相談しました。もともとケアマネジャーも服薬管理が困難であることを問題視していたため、快く受け入れてもらうことができました。そこで、医師に処方薬を下記の内容で1日1回朝にまとめることを訪問報告書で相談することにしました。(処方提案内容)エピナスチン錠、モンテルカスト錠を朝内服に変更ブロムへキシン錠をアンブロキソール徐放錠45mg 朝のみに変更ロキソプロフェン錠、レバミピド錠を中止し、ロキソプロフェンテープ(1日1回朝)に変更吸入薬にLABAが含有されているため、ツロブテロール錠を中止(2)吸入薬について適切に吸入できるようにするため、1日1回かつレバーを空けるだけで薬が装填可能で、残薬カウンターも見やすいビランテロールトリフェニル酢酸塩・フルチカゾンフランカルボン酸エステルドライパウダーインヘラーへの変更を検討しました。吸気確認や操作手順の確認をするために吸入練習器を使用したところ、吸気や操作手順に問題はなく、患者さんの受け入れもよかったため、上記の報告書に練習器の吸入状況も記載して報告し、ビランテロールトリフェニル酢酸塩・フルチカゾンフランカルボン酸エステルドライパウダーインヘラーへの切り替えを提案しました。医師より電話連絡があり、提案書の内容で承認を得ることができ、翌日より朝1回の内服と吸入の管理が始まりました。訪問介護スタッフからは、変更後の吸入器は残数が見やすく、吸入できたかどうかの確認が容易なので声掛けがしやすいという報告をいただきました。その結果、服薬忘れがなくなり、頻回だった呼吸苦も改善しました。きちんと服薬すると体調が改善することを実感できたため、患者さん自ら服用忘れを防止するメモを書いてわかりやすい場所に置くなど、自分の体調を守ろうという意識に変化しました。その後、喘息発作の出現はなく、両膝関節痛も貼付薬で良好にコントロールできています。

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再発性多発軟骨炎〔RP:relapsing polychondritis〕

1 疾患概要■ 概念・定義再発性多発軟骨炎(relapsing polychondritis:RP)は、外耳の腫脹、鼻梁の破壊、発熱、関節炎などを呈し全身の軟骨組織に対して特異的に再発性の炎症を繰り返す疾患である。眼症状、皮膚症状、めまい・難聴など多彩な症状を示すが、呼吸器、心血管系、神経系の病変を持つ場合は、致死的な経過をたどることがまれではない。最近、この病気がいくつかのサブグループに分類することができ、臨床的な特徴に差異があることが知られている。■ 疫学RPの頻度として米国では100万人あたりの症例の推定発生率は3.5人。米国国防総省による有病率調査では100万人あたりの症例の推定罹患率は4.5人。英国ではRPの罹患率は9.0人/年とされている。わが国の全国主要病院に対して行なわれた疫学調査と人口動態を鑑みると、発症年齢は3歳から97歳までと広範囲に及び、平均発症年齢は53歳、男女比はほぼ1で、患者数はおおよそ400~500人と推定された。RPは、平成27年より新しく厚生労働省の指定難病として認められ4~5年程度経過したが、筆者らが疫学調査で推定した患者数とほぼ同等の患者数が実際に医療を受けているものと思われる。生存率は1986年の報告では、10年生存率55%とされていた。その後の報告(1998年)では、8年生存率94%であった。筆者らの調査では、全症例の中の9%が死亡していたことから、90%以上の生存率と推定している。■ 病因RPの病因は不明だが自己免疫の関与が報告されている。病理組織学的には、炎症軟骨に浸潤しているのは主にCD4+Tリンパ球を含むリンパ球、マクロファージ、好中球や形質細胞である。これら炎症細胞、軟骨細胞や産生される炎症メディエーターがマトリックスメタロプロテナーゼ産生や活性酸素種産生をもたらして、最終的に軟骨組織やプロテオグリカンに富む組織の破壊をもたらす。その発症に関する仮説として、初期には軟骨に向けられた自己免疫反応が起こりその後は、非軟骨組織にさらに自己免疫反応が広がるという考えがある。すなわち、病的免疫応答の開始メカニズムとしては軟骨組織の損傷があり、軟骨細胞または細胞外軟骨基質の免疫原性エピトープを露出させることにある。耳介の軟骨部分の穿孔に続いて、あるいはグルコサミンコンドロイチンサプリメントの摂取に続いてRPが発症したとする報告は、この仮説を支持している。II型コラーゲンのラットへの注射は、耳介軟骨炎を引き起こすこと、特定のHLA-DQ分子を有するマウスをII型コラーゲンで免疫すると耳介軟骨炎および多発性関節炎を引き起こすこと、マトリリン-1(気管軟骨に特異的な蛋白の一種)の免疫はラットにRPの呼吸障害を再現するなどの知見から、軟骨に対する自己免疫誘導の抗原は軟骨の成分であると考えられている。多くの自己免疫疾患と同様にRPでも疾患発症に患者の腫瘍組織適合性抗原は関与しており、RPの感受性はHLA-DR4の存在と有意に関連すると報告されている。臨床的にも、軟骨、コラーゲン(主にII型、IX、XおよびXIの他のタイプを含む)、マトリリン-1および軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)に対する自己抗体はRP患者で見出されている。いずれの自己抗体もRP患者の一部でしか認められないために、RP診断上の価値は認められていない。多くのRP患者の病態に共通する自己免疫反応は明らかにはなっていない。■ 症状1)基本的な症状RPでは時間経過とともに、あるいは治療によって炎症は次第に治まるが、再発を繰り返し徐々にそれぞれの臓器の機能不全症状が強くなる。軟骨の炎症が基本であるが、必ずしも軟骨細胞が存在しない部位にも炎症が認められる事があり、注意が必要である。特有の症状としては、軟骨に一致した疼痛、発赤、腫脹であり、特に鼻根部(鞍鼻)や耳介の病変は特徴的である。炎症は、耳介、鼻柱、強膜、心臓弁膜部の弾性軟骨、軸骨格関節における線維軟骨、末梢関節および気管の硝子軟骨などのすべての軟骨で起こりうる。軟骨炎は再発を繰り返し、耳介や鼻の変形をもたらす。炎症発作時の症状は、軟骨部の発赤、腫脹、疼痛であるが、重症例では発熱、全身倦怠感、体重減少もみられる。突然の難聴やめまいを起こすこともある。多発関節炎もよく認められる。関節炎は通常、移動性で、左右非対称性で、骨びらんや変形を起こさない。喉頭、気管、気管支の軟骨病変によって嗄声、窒息感、喘鳴、呼吸困難などさまざまな呼吸器症状をもたらす。あるいは気管や気管支の壁の肥厚や狭窄は無症状のこともあり、逆に二次性の気管支炎や肺炎を伴うこともある。わが国のRPにおいてはほぼ半数の症例が気道病変を持ち、重症化の危険性を有する。呼吸器症状は気道狭窄によって上記の症状が引き起こされるが、狭窄にはいくつかの機序が存在する。炎症による気道の肥厚、炎症に引き続く気道線維化、軟骨消失に伴う吸・呼気時の気道虚脱、両側声帯麻痺などである。気道狭窄と粘膜機能の低下はしばしば肺炎を引き起こし、死亡原因となる。炎症時には気道過敏性が亢進していて、気管支喘息との鑑別を要することがある。この場合には、吸引、気管支鏡、気切、気管支生検などの処置はすべて死亡の誘因となるため、気道を刺激する処置は最小限に留めるべきである。一方で、気道閉塞の緊急時には気切および気管チューブによる呼吸管理が必要になる。2)生命予後に関係する症状生命予後に影響する病変として心・血管系症状と中枢神経症状も重要である。心臓血管病変に関しては男性の方が女性より罹患率が高く、また重症化しやすい。これまでの報告ではRPの患者の15~46%に心臓血管病変を認めるとされている。その内訳としては、大動脈弁閉鎖不全症(AR)や僧帽弁閉鎖不全症、心筋炎、心膜炎、不整脈(房室ブロック、上室性頻脈)、虚血性心疾患、大血管の動脈瘤などが挙げられる。RP患者の10年のフォローアップ期間中において、心血管系合併症による死亡率は全体の39%を占めた。筆者らの疫学調査では心血管系合併症を持つRP患者の死亡率は35%であった。心血管病変で最も高頻度で認められるものはARであり、その有病率はRP患者の4~10%である。一般にARはRPと診断されてから平均で7年程度の経過を経てから認められるようになる。大動脈基部の拡張あるいは弁尖の退行がARの主たる成因である。MRに関してはARに比して頻度は低く1.8~3%と言われている。MRの成因に関しては弁輪拡大、弁尖の菲薄化、前尖の逸脱などで生じる。弁膜症の進行に伴い、左房/左室拡大を来し、収縮不全や左心不全を呈する。RP患者は房室伝導障害を合併することがあり、その頻度は4~6%と言われており、1度から3度房室ブロックのいずれもが認められる。高度房室ブロックの症例では一次的ペースメーカが必要となる症例もあり、ステロイド療法により房室伝導の改善に寄与したとの報告もある。RP患者では洞性頻脈をしばしば認めるが、心房細動や心房粗動の報告は洞性頻脈に比べまれである。心臓血管病変に関しては、RPの活動性の高い時期に発症する場合と無症候性時の両方に発症する可能性があり、RP患者の死因の1割以上を心臓血管が担うことを鑑みると、無症候であっても診察ごとの聴診を欠かさず、また定期的な心血管の検査が必要である。脳梗塞、脳出血、脳炎、髄膜炎などの中枢神経障害もわが国では全経過の中では、およそ1割の患者に認める。わが国では中枢神経障害合併症例は男性に有意に多く、これらの死亡率は18%と高いことが明らかになった。眼症状としては、強膜炎、上強膜炎、結膜炎、虹彩炎、角膜炎を伴うことが多い。まれには視神経炎をはじめより重症な眼症状を伴うこともある。皮膚症状には、口内アフタ、結節性紅斑、紫斑などが含まれる。まれに腎障害および骨髄異形成症候群・白血病を認め重症化する。特に60歳を超えた男性RP患者において時に骨髄異形成症候群を合併する傾向がある。全般的な予後は、一般に血液学的疾患に依存し、RPそのものには依存しない。■ RP患者の亜分類一部の患者では気道病変、心血管病変、あるいは中枢神経病変の進展により重症化、あるいは致命的な結果となる場合もまれではない。すなわちRP患者の中から、より重症になり得る患者亜集団の同定が求められている。フランスのDionらは経験した症例に基づいてRPが3つのサブグループに分けられると報告し、分類した。一方で、彼らの症例はわが国の患者群の臨床像とはやや異なる側面がある。そこで、わが国での実態を反映した本邦RP患者群の臨床像に基づいて新規分類について検討した。本邦RP症例の主要10症状(耳軟骨炎、鼻軟骨炎、前庭障害、関節炎、眼病変、気道軟骨炎、皮膚病変、心血管病変、中枢神経障害、腎障害)間の関連検討を行った。その結果、耳軟骨炎と気道軟骨炎の間に負の相関がみられた。すなわち耳軟骨炎と気道軟骨炎は合併しない傾向にある。また、弱いながらも耳軟骨炎と、心血管病変、関節炎、眼病変などに正の相関がみられた。この解析からは本邦RP患者群は2つに分類される可能性を報告した。筆者らの報告は直ちに、Dionらにより検証され、その中で筆者らが指摘した気管気管支病変と耳介病変の間に存在する強い負の相関に関しては確認されている。わが国においても、フランスにおいても、気管気管支病変を持つ患者群はそれを持たない患者群とは異なるサブグループに属していることが確認されている。そして、気管気管支病変を持たない患者群と耳介病変を持つ患者群の多くはオーバーラップしている。すなわち、わが国では気管気管支病変を持つ患者群と耳介病変を持つ患者群の2群が存在していることが示唆された。■ 予後重症度分類(案)(表1)では、致死的になりうる心血管、神経症状、呼吸器症状のあるものは、その時点で重症と考える。腎不全、失明の可能性を持つ網膜血管炎も重症と考えている。それ以外は症状検査所見の総和で重症度を評価する。わが国では、全患者中5%は症状がすべて解消された良好な状態を維持している。67%の患者は、病勢がコントロール下にあり、合計で71%の患者においては治療に対する反応がみられる。その一方、13%の患者においては、治療は限定的効果を示したのみであり、4%の患者では病態悪化または再発が見られている。表1 再発性多発軟骨炎重症度分類画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)現在ではRPの診断にはMcAdamの診断基準(1976年)やDamianiの診断基準(1976年)が用いられる(表2)。実際上は、(1)両側の耳介軟骨炎(2)非びらん性多関節炎(3)鼻軟骨炎(4)結膜炎、強膜炎、ぶどう膜炎などの眼の炎症(5)喉頭・気道軟骨炎(6)感音性難聴、耳鳴り、めまいの蝸牛・前庭機能障害、の6項目の3項目以上を満たす、あるいは1項目以上陽性で、確定的な組織所見が得られる場合に診断される。これらに基づいて厚生労働省の臨床調査個人票も作成されている(表3)。表2 再発性多発軟骨炎の診断基準●マクアダムらの診断基準(McAdam's criteria)(以下の3つ以上が陽性1.両側性の耳介軟骨炎2.非びらん性、血清陰性、炎症性多発性関節炎3.鼻軟骨炎4.眼炎症:結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、ぶどう膜炎5.気道軟骨炎:喉頭あるいは気管軟骨炎6.蝸牛あるいは前庭機能障害:神経性難聴、耳鳴、めまい生検(耳、鼻、気管)の病理学的診断は、臨床的に診断が明らかであっても基本的には必要である●ダミアニらの診断基準(Damiani's criteria)1.マクアダムらの診断基準で3つ以上が陽性の場合は、必ずしも組織学的な確認は必要ない。2.マクアダムらの診断基準で1つ以上が陽性で、確定的な組織所見が得られる場合3.軟骨炎が解剖学的に離れた2ヵ所以上で認められ、それらがステロイド/ダプソン治療に反応して改善する場合表3 日本語版再発性多発軟骨炎疾患活動性評価票画像を拡大するしかし、一部の患者では、ことに髄膜炎や脳炎、眼の炎症などで初発して、そのあとで全身の軟骨炎の症状が出現するタイプの症例もある。さらには気管支喘息と診断されていたが、その後に軟骨炎が出現してRPと診断されるなど診断の難しい場合があることも事実である。そのために診断を確定する目的で、病変部の生検を行い、組織学的に軟骨組織周囲への炎症細胞浸潤を認めることを確認することが望ましい。生検のタイミングは重要で、軟骨炎の急性期に行うことが必須である。プロテオグリカンの減少およびリンパ球の浸潤に続発する軟骨基質の好塩基性染色の喪失を示し、マクロファージ、好中球および形質細胞が軟骨膜や軟骨に侵入する。これらの浸潤は軟骨をさまざまな程度に破壊する。次に、軟骨は軟骨細胞の変性および希薄化、間質の瘢痕化、線維化によって置き換えられる。軟骨膜輪郭は、細胞性および血管性の炎症性細胞浸潤により置き換えられる。石灰化および骨形成は、肉芽組織内で観察される場合もある。■ 診断と重症度判定に必要な検査RPの診断に特異的な検査は存在しないので、診断基準を基本として臨床所見、血液検査、画像所見、および軟骨病変の生検の総合的な判断によって診断がなされる。生命予後を考慮すると軽症に見えても気道病変、心・血管系症状および中枢神経系の検査は必須である。■ 血液検査所見炎症状態を反映して血沈、CRP、WBCが増加する。一部では抗typeIIコラーゲン抗体陽性、抗核抗体陽性、リウマチ因子陽性、抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性となる。サイトカインであるTREM-1、MCP-1、MIP-1beta、IL-8の上昇が認められる。■ 気道病変の評価呼吸機能検査と胸部CT検査を施行する。1)呼吸機能検査スパイロメトリー、フローボリュームカーブでの呼気気流制限の評価(気道閉塞・虚脱による1秒率低下、ピークフロー低下など)2)胸部CT検査(気道狭窄、気道壁の肥厚、軟骨石灰化など)吸気時のみでなく呼気時にも撮影すると病変のある気管支は狭小化がより明瞭になり、病変のある気管支領域は含気が減少するので、肺野のモザイク・パターンが認められる。3)胸部MRI特にT2強調画像で気道軟骨病変部の質的評価が可能である。MRI検査はCTに比較し、軟骨局所の炎症と線維化や浮腫との区別をよりよく描出できる場合がある。4)気管支鏡検査RP患者は、気道過敏性が亢進しているため、検査中や検査後に症状が急変することも多く、十分な経験を持つ医師が周到な準備をのちに実施することが望ましい。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)全身の検索による臓器病変の程度、組み合わせにより前述の重症度(表2)と活動性評価票の活動性(表3)を判定して適切な治療方針を決定することが必要である。■ 標準治療の手順軽症例で、炎症が軽度で耳介、鼻軟骨に限局する場合は、非ステロイド系抗炎症薬を用いる。効果不十分と考えられる場合は、少量の経口ステロイド剤を追加する。生命予後に影響する臓器症状を認める場合の多くは積極的なステロイド治療を選ぶ。炎症が強く呼吸器、眼、循環器、腎などの臓器障害や血管炎を伴う場合は、経口ステロイド剤の中等~大量を用いる。具体的にはプレドニゾロン錠を30~60mg/日を初期量として2~4週継続し、以降は1~2週ごとに10%程度減量する。これらの効果が不十分の場合にはステロイドパルス療法を考慮する。ステロイド減量で炎症が再燃する場合や単独使用の効果が不十分な場合、免疫抑制剤の併用を考える。■ ステロイド抵抗性の場合Mathianらは次のようなRP治療を提唱している。RPの症状がステロイド抵抗性で免疫抑制剤が必要な場合には、鼻、眼、および気管の病変にはメトトレキサートを処方する。メトトレキサートが奏功しない場合には、アザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)またはミコフェノール酸モフェチル(同:セルセプト)を次に使用する。シクロスポリンAは他の免疫抑制剤が奏功しない場合に腎毒性に注意しながら使用する。従来の免疫抑制剤での治療が失敗した場合には、生物学的製剤の使用を考慮する。現時点では、抗TNF治療は、従来の免疫抑制剤が効かない場合に使用される第1選択の生物学的製剤である。最近では生物学的製剤と同等以上の抗炎症効果を示すJAK阻害薬が関節リウマチで使用されている。今後、高度の炎症を持つ症例で生物学的製剤を含めて既存の治療では対応できない症例については、JAK阻害薬の応用が有用な場合があるかもしれない。今後の検討課題と思われる。心臓弁膜病変や大動脈病変の治療では、ステロイドおよび免疫抑制剤はあまり有効ではない。したがって、大動脈疾患は外科的に治療すべきであるという意見がある。わが国でも心臓弁膜病変や大動脈病変の死亡率が高く、PRの最重症病態の1つと考えられる。大動脈弁病変および近位大動脈の拡張を伴う患者では、通常、大動脈弁置換と上行大動脈の人工血管(composite graft)置換および冠動脈の再移植が行われる。手術後の合併症のリスクは複数あり、それらは術後ステロイド療法(および/または)RPの疾患活動性そのものに関連する。高安動脈炎に類似した血管病変には必要に応じて、動脈のステント留置や手術を行うべきとされる。呼吸困難を伴う症例には気管切開を要する場合がある。ステント留置は致死的な気道閉塞症例では適応であるが、最近、筆者らの施設では気道感染の長期管理という視点からステント留置はその適応を減らしてきている。気管および気管支軟化病変の患者では、夜間のBIPAP(Biphasic positive airway pressure)二相性陽性気道圧または連続陽性気道圧で人工呼吸器の使用が推奨される。日常生活については、治療薬を含めて易感染性があることに留意すること、過労、ストレスを避けること、自覚的な症状の有無にかかわらず定期的な医療機関を受診することが必要である。4 今後の展望RPは慢性に経過する中で、臓器障害の程度は進展、増悪するためにその死亡率はわが国では9%と高かった。わが国では気管気管支病変を持つ患者群と耳介病変を持つ患者群の2群が存在していることが示唆されている。今後の課題は、治療のガイドラインの策定である。中でも予後不良な患者サブグループを明瞭にして、そのサブグループにはintensiveな治療を行い、RPの進展の阻止と予後の改善をはかる必要がある。5 主たる診療科先に行った全国疫学調査でRP患者の受診診療科を調査した。その結果、リウマチ・免疫科、耳鼻咽喉科、皮膚科、呼吸器内科、腎臓内科に受診されている場合が多いことが明らかになった。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 再発性多発軟骨炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)聖マリアンナ医科大学 再発性多発軟骨炎とは(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報再発性多発軟骨炎患者会ホームページ(患者とその家族および支援者の会)1)McAdam P, et al. Medicine. 1976;55:193-215.2)Damiani JM, et al. Laruygoscope. 1979;89:929-946.3)Shimizu J, et al. Rheumatology. 2016;55:583-584.4)Shimizu J, et al. Arthritis Rheumatol. 2018;70:148-149.5)Shimizu J, et al. Medicine. 2018;97:e12837.公開履歴初回2020年02月24日

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コントロール不良な気管支喘息へのトリプル合剤吸入療法について(解説:小林英夫氏)-1163

 気管支喘息治療の基本が吸入ステロイド薬であることは、標準医療として認知されている。日本では1978年に吸入ステロイド薬としてアルデシンとベコタイドが導入された。その後、吸入ステロイドだけでは良好なコントロールが得られずβ2刺激薬の追加吸入を要する症例に対し、吸入ステロイド+吸入β2刺激薬の2剤合剤であるアドエアが1998年にスウェーデン、2007年に日本で、シムビコートが2000年にスウェーデンで、日本では2010年に発売となった。またシムビコートは2012年にSMART療法(シムビコートを定期吸入と悪化時頓用とする用法、CLEAR!ジャーナル四天王-845「持続型気管支喘息におけるSMART療法について」)の適応も取得した。 そして長時間作用型抗コリン薬を加え3剤へと含有成分が増えれば効果も強まるであろうことは、高血圧や糖尿病に例を取るまでもなく感覚的に推測しえよう。また3つの吸入薬を各々別々に吸入したり、デュアル(2剤)薬の合剤にもう1種を吸入するという手順をトリプル製剤1つで完了できることも、利便性が向上し、アドヒアランスも改善する。すでに、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対するトリプル製剤の有効性について、ケアネット ジャーナル四天王2018年2月22日配信記事や2018年11月15日配信記事において紹介されてきた。 筆者のトリプル製剤使用における危惧として、診断・病態の把握が不十分な症例にも第1選択として過剰投与されてしまうことが挙げられる。イタリアでの開業医データベースでは、COPD症例の21%にトリプル製剤が処方されていたとされる(Vetrano DL, et al. Respir Med. 2019;154:12-17.)。21%が適正かどうか評価しかねるが、筆者には少々多すぎるように感ずる。また、トリプル製剤内の各薬剤含有量はワンパターンしか販売されていないので、症例に応じた投与量調整が困難である。病態の安定が得られた後に、どのように治療法をステップダウンしていくのかも明らかではない。滅多に経験しないが吸入ステロイドは肺炎のリスクになることも報告されており、本研究でも有害事象として記載されている。 注意点として、日本で販売されているトリプル製剤の適応はCOPDのみで、現状では気管支喘息は適応外であり、ただちに日常使用できない。ただしCOPDと気管支喘息の合併病態であるACO(asthma COPD overlap)には処方可能であろう。また、本邦発売の2製品について優劣は不明だが、ビレーズトリは加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)で、テリルジーはドライパウダー製剤であるため、吸入手技や吸入時刺激感などが異なることにも留意しておきたい。

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コントロール不良の喘息、トリプル吸入療法が有効/Lancet

 コントロール不良の喘息患者において、吸入ステロイド(ICS)+長時間作用性β2刺激薬(LABA)への長時間作用性抗コリン薬(LAMA)追加併用療法は、肺機能を改善し喘息増悪の発生を減少することが示された。ドイツ・ロストック大学のJohann Christian Virchow氏らが、ICS(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル:BDP)、LABA(ホルモテロールフマル酸塩水和物:FF)、LAMA(グリコピロニウム:G)の3成分の極細粒子を、1つの吸入デバイスに配合した吸入剤の有効性および安全性を検証した2件の第III相無作為化二重盲検実薬対照比較試験、「TRIMARAN試験」および「TRIGGER試験」の結果を報告した。これまで、喘息に対する単一吸入器によるトリプル吸入療法の有効性は明らかになっていなかった。Lancet誌オンライン版2019年9月30日号掲載の報告。ICS/LABA/LAMAとICS/LABAを比較 TRIMARAN試験は16ヵ国171施設、TRIGGER試験は17ヵ国221施設で実施された。対象は、前年に1回以上の喘息増悪の既往を有し、ICS(TRIMARAN試験:中用量、TRIGGER試験:高用量)+LABAによる治療歴があるコントロール不良の成人(18~75歳)喘息患者とした。当初2週間、BDP/FF(TRIMARAN試験:BDP 100μg/FF 6μg、TRIGGER試験:BDP 200μg/FF 6μg)を投与した後、国で層別化し、次のように割り付け検討した。 TRIMARAN試験では、2016年2月17日~2018年5月17日の間に1,155例を3剤併用群(BDP 100μg/FF 6μg/G 10μg、579例)または2剤併用群(BDP 100μg/FF 6μg、576例)に1対1の割合で無作為に割り付け、1回2吸入を1日2回、52週間投与した。 TRIGGER試験では、2016年4月6日~2018年5月28日に1,437例を、3剤併用群(BDP 200μg/FF 6μg/G 10μg、573例)、2剤併用群(BDP 200μg/FF 6μg、576例)(以上2群は二重盲検下、1回2吸入を1日2回)、または非盲検下の2剤(BDP 200μg/FF 6μg、1回2吸入を1日2回)+チオトロピウム(2.5μg、1回2吸入を1日1回)群(288例)に2対2対1の割合で無作為に割り付け、52週間投与した。 両試験(3剤併用群と2剤併用群の比較)の主要評価項目は2つで、26週時点の投与前1秒量(FEV1)と52週間の中等度~重度の増悪発生率とした。トリプル吸入療法で中等度~重度の増悪発生率が減少 3剤併用群は2剤併用群と比較し、26週時点の投与前FEV1がTRIMARAN試験で57mL(95%信頼区間[CI]:15~99、p=0.0080)、TRIGGER試験で73mL(95%CI:26~120、p=0.0025)改善した。 52週間の中等度~重度の増悪発生率は、TRIMARAN試験15%(率比:0.85、95%CI:0.73~0.99、p=0.033)、TRIGGER試験12%(率比:0.88、95%CI:0.75~1.03、p=0.11)の減少を認めた。 TRIMARAN試験で3剤併用群の1例、TRIGGER試験で3剤併用群の1例および2剤併用群の2例、計4例に治療に関連した重篤な有害事象が発現した。また、TRIMARAN試験の3剤併用群3例と、TRIGGER試験の2例(3剤併用群1例、2剤併用群1例)は有害事象により死亡したが、治療に関連した死亡は確認されなかった。

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日本人アレルギー性喘息に対するダニ舌下免疫療法の安全性

 ダニアレルゲン舌下免疫療法(HDM SLIT)は、コントロール不良のアレルギー性喘息に対し、有効かつ安全であることが、これまでに欧州で確認されている。 今回、田中 明彦氏(昭和大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー内科部門 講師)らは、日本人を対象に、最大19ヵ月にわたるHDM SLITの有効性と安全性を評価した。その結果、成人アレルギー性喘息患者において、HDM SLITは良好な安全性プロファイルを示した。The journal of allergy and clinical immunology:In practice誌2019年9月18日号に掲載。 本研究は、18~64歳のアレルギー性喘息患者を対象に行われた無作為化二重盲検プラセボ対照試験。患者はSQ HDM SLITタブレットの1万JAU群、2万JAU群、またはプラセボ群にランダムに割り付けられた。被験者の喘息コントロール質問票のスコアは1.0~1.5であり、無作為化時には、フルチカゾン プロピオン酸エステル200~400μg(吸入ステロイド:ICS)を毎日吸入していた。 主要評価項目は、無作為化からICSの投与量を減らしていき、最初の喘息増悪までの期間とした。 主な結果は以下のとおり。・無作為化された826例のうち、693例(84%)が試験を完了した。・主要評価項目または他の有効性評価項目において、治療群とプラセボ群の間に統計学的有意差は認められなかった。・事後解析において、ベースライン期間中に短時間作用性β2刺激薬を使用していた被験者では、2万JAU群とプラセボ群の間に有意差が示された(ハザード比:0.70、 95%信頼区間:0.48~1.00、p=0.04997)。・死亡やアナフィラキシー反応の報告はなく、ほとんどの有害事象は軽度~中等度だった。 これらの結果について、研究グループは「日本人の成人アレルギー性喘息患者に対するSQ HDM SLITタブレットによる治療は、良好な安全性プロファイルを示した。この治療は、発作治療薬を必要とする患者に有効だと思われる」と結論付けている。

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成人気管支喘息の重度悪化予防療法について(解説:小林英夫氏)-1118

 今回指定された論文は、成人気管支喘息発作時の治療法によって重症増悪予防効果に優劣があるかどうかを検討したものである。登録885例の軽症・中等症では、発作時にブデソニド/ホルモテロール配合薬の頓用吸入群が、低用量ブデソニド維持療法+テルブタリン頓用吸入群に比べて、重度喘息増悪の予防効果に優れると報告している。 本CLEAR! ジャーナル四天王では、845(2018年4月30日掲載)、1060(2019年6月11日掲載)、に続き3回目のSMART(single maintenance and reliever therapy)療法関連へのコメントとなる。SMARTに関しては上記845内で解説しているが、当初は否定的な意見があったものの約10年間の経験により、その非劣性効果はほぼ定まってきた。論文によって対象群やアウトカムなどの差異はあるが、ブデソニド/ホルモテロール(商品名:シムビコート)の有用性が支持されている。そして吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬合剤は喘息治療への安全性においても問題がないことは2018年の他論文でも確認され(Busse WW, et al. N Engl J Med. 2018;378:2497-2505.)、現行標準治療の一つとなっている。注意すべき点として喘息発作時への保険適用はシムビコートだけであること、海外と異なり小児喘息への適応はないこと、が挙げられる。本論文により格段の新知見が得られたわけではなく従来の再確認との印象が強い。筆者としては、治療に難渋する気管支喘息を念頭において表現型(フェノタイプ)を意識したさらなる臨床研究を期待したい。なお、これまで発作時に追加吸入可能な製剤は独占的であったが、発売から9年目を迎え本邦3社からジェネリック医薬品「ブデホル」が登場予定である。

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加熱式タバコによる受動喫煙の害は?【新型タバコの基礎知識】第8回

第8回 加熱式タバコによる受動喫煙の害は?Key Points加熱式タバコによる受動喫煙のリスクは、あるかないかで言えば、ある。ただし、紙巻タバコと比べると程度は低いと考えられる。すでに禁煙になっている場所を加熱式タバコはOKとすべきではない。加熱式タバコによる受動喫煙はどれぐらい発生するのでしょうか?屋内空間で加熱式タバコを使用したときにどれぐらいの濃度で、粒子状物質や有害物質が検出されるのか、調べた研究がこれまでに3つあります。その3つの文献の結果をまとめたのが表です。画像を拡大する一番左の文献を例として表の見かたを説明します。Ruprechtらによる2017年の研究は、イタリア国立がんセンターの研究者らが実施した研究です。アイコス・スティックと紙巻タバコのそれぞれを用いた場合に、屋内空間に充満する有害物質の濃度を1時間に1.5回換気するという設定で測定しています。基準となる紙巻タバコの場合の有害物質の濃度を100%とした場合に、アイコス・スティックの場合の有害物質濃度が何%に相当するのか、が表されています。たとえば、PM2.5の濃度は1.3~1.5%であり、アセトアルデヒドは5.0~5.9%、ホルムアルデヒドは6.9~7.1%でした。100%より小さな値=加熱式タバコの場合の濃度が低いことを表しています。3つの文献の結果をみると、右2つのタバコ会社からの報告では、粒子状物質(PM:particulate matter)が検出されていないのに対して、タバコ会社から資金提供のない研究機関からの報告では検出されていると分かります。しかも、タバコ会社による研究では測定されていなかったPM nmという10~1,000nmの大きさの粒子状物質が比較的多く出ていると分かりました。ただし、比較的多いといっても紙巻タバコと比べると4分の1から5分の1というレベルであり、他の大きさの粒子状物質の濃度は紙巻タバコに比べてかなり低く、PM2.5で100分の1から50分の1というレベルでした。3種のアルデヒド類の濃度を比較すると、タバコ会社による研究ではアクロレインが検出されていませんが、イタリア国立がんセンターの研究では検出されています。アセトアルデヒドおよびホルムアルデヒドについては3つの研究すべてで検出されており、紙巻タバコの場合と比較して、おおよそ10分の1から20分の1の濃度でした。それでは、加熱式タバコによる受動喫煙の被害はあるといえるのでしょうか? あるかないかで言えば、あるが答えだといえるでしょう。ただし、程度が問題でもあります。加熱式タバコでは副流煙(吸っていない時にタバコの先端から出る煙のこと)がないため、受動喫煙は紙巻タバコと比べれば、かなり少なくなります。加熱式タバコであれば、屋内に発生する粒子状物質の濃度は紙巻タバコの数%というレベルに減らすことができるのです。とはいえ、受動喫煙がまったくないわけではなく、加熱式タバコからもホルムアルデヒドなどの有害物質が放出されています。加熱式タバコによる受動喫煙の被害については、それぞれケースバイケースで考える必要があるといえるでしょう。もともと屋内で紙巻タバコを吸っていた人が加熱式タバコに完全にスイッチできれば、受動喫煙の害は減らせるかもしれません。屋内での紙巻タバコの喫煙は、皆が考えているよりもはるかに危険といえます。屋内で喫煙すると、すぐに大気汚染の緊急事態レベルとなっているのです。たとえば、屋内で3人が喫煙するレストランではPM2.5濃度が600μg/m3となり、この値は大気汚染の緊急事態レベル濃度500μg/m3よりも高いものです*。また、喫煙する自動車内では、PM2.5の1時間平均値は750μg/m3と非常に高い値となります。紙巻タバコを加熱式タバコに置き換えることができれば、PM2.5を減らすことができるでしょう。一方、もともと禁煙だった場所なのに、加熱式タバコが使われるようになるケースもあることに、注意が必要です。自宅内ではタバコを吸わないルールだったのに、加熱式タバコならいいだろうと言って、禁煙から加熱式OKへと後退してしまうケースなどです。そういったケースが続出しているのです。その場合には、いままでなかった受動喫煙の被害が発生してしまうこととなります。家庭では、子どもや家族が受動喫煙の危険にさらされてしまうのです。また、世の中には、タバコの煙やエアロゾルから被害を受けやすい人もいます。狭心症などの虚血性心疾患、気管支喘息や化学物質過敏症の患者さんが代表例です。少量の曝露でも、発作を起こしたり、体調を崩したりするなどの健康被害が起きてしまう可能性があります。受動喫煙に関しては、加熱式タバコの方がましかもしれないからといって、単純に加熱式タバコならOK、とは考えるべきではないのです。第9回は、「新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?」です。*微小粒子状物質(PM2.5):大気中に浮遊する小さな粒子のうち、粒子の大きさが2.5µm以下の非常に小さな粒子のこと。PM2.5の健康影響について、米国の研究では、大気中のPM2.5値が10μg/m3増えると、心臓や肺の疾患による死亡率が9%、肺がん死亡率が14%、全死亡率が6%増えると報告された。2013年、日本の環境省は「健康影響が出現する可能性が高くなる濃度水準」をPM2.5日平均値で70μg/m3と定め、それを超えた場合には、不要不急の外出や屋外での長時間の激しい運動をできるだけ減らすこと、呼吸器系や循環器系疾患のある者・小児・高齢者などにおいては体調に応じてより慎重に行動することが望まれるとしている。

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チャーグ・ストラウス症候群〔CSS : Churg-Strauss syndrome〕(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)

1 疾患概要■ 概念・定義チャーグ・ストラウス症候群(以下CSS)は、1951年にJacob ChurgとLotte Straussの2人の病理学者が提唱した疾患概念で、(1)気管支喘息、(2)発熱、(3)好酸球増加、および(4)特徴的な血管病理所見の4つを基本とした疾患である。特徴的な血管病理所見とは、結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa: PAN)にみられるフィブリノイド壊死と、血管壁および血管外結合組織における血管周囲の好酸球浸潤および類上皮細胞と巨細胞からなる血管外肉芽腫の2つである。とくに好酸球浸潤と肉芽腫の存在により、PANとは独立した疾患とされた。その後、Chapel Hill Consensus Conferenceで、(1)気道における好酸球を多数認める肉芽腫性炎症所見、(2)小・中型血管の壊死性血管炎、(3)喘息と好酸球増多症の3項目がCSSの定義として記載された。すなわちCSSの疾患概念は、1)気管支喘息2)好酸球増加3)病理所見(血管壁への好酸球浸潤と血管外肉芽腫)の3つを有する疾患といえる。2012年に血管炎の分類が見直され、CSSはeosinophilic granulomatosis with polyangiits(EGPA)とされ、和訳では「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」とよばれることに決まった。なお、日本ではアレルギー性肉芽腫性血管炎(allergic granulomatous angiitis)という名称も使用されてきたが、今後はEGPAに統一されていくと思われる。■ 疫学英国での疫学調査で、100万人あたり1~2人程度といわれてきた。わが国では2008年に実施された全国調査でその実態が明らかとなり、年間新規患者数は約100例、受療患者数は約1,900例と推定されている。男女比は1:1.7程度で女性にやや多く、発症年齢は30~60歳に好発し、平均55歳であった。■ 病因家族内発症はほとんどないことから、遺伝的要因はほとんどないと考えられる。環境要因として、気管支喘息患者でロイコトリエン拮抗薬(leukotriene antagonist:LTA)の服用者に多いことが指摘され、LTAそのものに対するアレルギー、LTA併用によるステロイドの減量の影響、などが発症要因としていわれてきた。しかし、わが国で2008年に実施された全国調査では、LTAの服用率は約35%に過ぎず、因果関係は不明である。抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)が約40~50%の症例に検出されることから、この抗体が本症の病態に関与していると考えられる。しかし、ANCAの有無からCSSの臨床的特徴を検討した研究によると、ANCA陽性例では腎病変と末梢神経病変および組織学的に血管炎が証明された率が高く、陰性例では心病変が多かった。したがって、臓器への“好酸球浸潤”による病変と、“血管炎”による病変の2種類の病態があり、ANCA陽性群は“血管炎”が優勢、ANCA陰性例は“好酸球浸潤”が主な病態であると推察される。ただし、後者は特発性好酸球増多症候群(hypereosinophilic syndrome:HES)症例と鑑別が必要である。■ 症状臨床症状では、気管支喘息と多発性単神経炎が90%以上の症例でみられ圧倒的に高頻度である。そのほか、発熱、体重減少、筋痛、関節痛、紫斑が30%以上の症例にみられた。頻度は低いが腹痛・消化管出血(胃・腸の潰瘍)・消化管穿孔などの消化器病変、脳出血・脳硬塞、心筋梗塞・心外膜炎などの病変もみられる。検査所見では好酸球増加、白血球増加、IgE高値が90%以上にみられ、MPO-ANCAは約半数で陽性である。■ 分類CSSの中で、とくに病型の分類などはない。■ 予後約80%の症例は、適切な治療によって寛解ないし治癒するが、約20%の症例では、脳出血・脳硬塞や心筋梗塞・心外膜炎、腸穿孔、視力障害、腎不全を生じることがある。生命予後は一般に良好であるが、末梢神経障害が長年後遺症として残ることがある。また、一度寛解・治癒しても、再燃・再発を来すことがあるが、その頻度は少ない(10%以下と推定される)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)CSSは、他の血管炎、とくに顕微鏡的多発血管炎と多発血管炎性肉芽腫症(旧 ウェゲナー肉芽腫症)との鑑別が重要であり、わが国では1998年の厚生労働省の分類基準(表1)によって診断されている。しかし、国際的にはLanhamらの分類基準(表2)と米国リウマチ学会(ACR)の分類基準(表3)が使われている。最近、Wattsらによる全身性血管炎の分類アルゴリズムが提唱され、CSSはLanhamまたはACRの分類基準のいずれかを満たすものとされている。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)一般的にはステロイドで、初期治療ではプレドニゾロン(商品名:プレドニンほか)30~60 mg/日(大半が40mg/日以上)が使用され、その後症状に合わせて漸減される。脳・心臓・腸に病変を有する場合は、免疫抑制薬であるシクロホスファミド(同:エンドキサン)(内服:50~100mg/日、点滴静注:500~1,000mg/月)などを併用する。後遺症として末梢神経障害が高頻度にみられるが、これに対して高用量ガンマグロブリン療法が保険適用で使用される。2018年5月にIL-5抗体メポリズマブ(同:ヌーカラ)が承認され、上記の既存薬で効果不十分なEGPAに適用となった。4 今後の展望治療としてはステロイド療法が依然主体であるが、ステロイドの副作用を回避するため、抗IL-5抗体(メポリズマブなど)に加えて、将来は、IL-5受容体抗体(ベンラリズマブ)や抗IgE抗体(オマリズマブ)、抗CD20抗体(リツキシマブ)などの分子標的療法も試みられている。今後、原因究明のための基礎研究や疫学的研究、後遺症として残存する末梢神経障害に対する治療なども検討課題である。5 主たる診療科膠原病内科、アレルギー科、呼吸器内科、神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)難病情報センター 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2013年03月21日更新2019年08月27日

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喘息患者の3 人に1 人は救急経験あり

 アストラゼネカ株式会社は、気管支喘息患者を取り巻く現状や喘息治療の実態を明らかにすることを目的とした患者調査を全国3,000名の患者に実施し、その結果が公表された。 調査結果は今回発表の「喘息患者さんの予定外受診・救急受診・救急搬送の現状」編のほか、「喘息患者さんの通院・服薬の現状」編、「重症喘息患者さんの現状」編という3つのテーマで公開される。監修は東田 有智氏(近畿大学病院 病院長)が担当した。●調査概要調査実施日:2019年4月15~26日実施方法:インターネット調査対象:全国の気管支喘息患者 3,000名(気管支喘息と診断されて直近1年以内に通院または入院の経験あり)性別:男性1,539名、女性1,461名発作で救急搬送されたことを主治医に伝える患者は半数 「気管支喘息の症状のコントロールについて」という問いでは、「症状がコントロールされた状態」と回答した患者が73.6%、「少し不十分」が24.1%、「まったくコントロールされていない」が2.2%と、おおむねコントロールできている患者が多数を占めた。 「現在の喘息治療で、喘息のない人と同じ日常生活を送れているか」という問いでは、「非常にそう思う」と回答した患者が20.8%、「どちらかというとそう思う」が48.8%、「どちらともいえない」が16.3%、「どちらかというとそうは思わない」が10.9%、「まったくそう思わない」が3.2%と、約7割の患者が健康な人と同じ日常生活を送っていると回答した。 「気管支喘息のために予定外受診、救急受診、入院などを経験した頻度はどれくらいか」という問いでは、「月1回以上」と回答した患者が12.3%、「月1回未満~年1回以上」が26.2%、「ここ1年はない」が61.5%だった。約6割の患者が急変した状況の診療がないと回答した。地域別でみると九州・沖縄地方(19.7%)、中部地方(12.1%)、四国地方(12.0%)で「月1回以上」と回答した患者が多かった。 「これまでに、気管支喘息の発作で救急搬送されたり、救急受診をしたことがあるか」という問いでは、「ある」と回答した患者が34.6%、「ない」が65.4%だった。地方別では、九州・沖縄地方(40.3%)、近畿地方(37.2%)、四国地方(36.1%)の順で多かった。 救急受診・救急搬送経験者(n=1,038)に「主治医に救急受診したことを伝えたか」という問いでは、「はい」と回答した患者が53.7%、「いいえ」が27.4%、「わからない」が18.9%だった。 「医師から説明を受けて、気管支喘息の悪化に関連しているものは何か」という問いでは、「好酸球の増加」(76.5%)、「ダニなどのアレルゲン」(62.5%)、「喫煙」(59.8%)、「妊娠」(58.3%)、「過去の重篤な発作」および「鼻炎・副鼻腔炎」(52.1%)の順で多かった。さらなる医師と患者のコミュニケーションの進展が治療のカギ これらの調査を踏まえ監修の東田 有智氏は「今回の調査結果から、6割に上る患者が、自分の症状はコントロールされている、あるいは、喘息の無い人と同じ日常生活を送れている、と感じていながら、ガイドラインで『コントロール不十分』『コントロール不良』と定義される状態にあると考えられることが示された。さらに、患者の3人に1人が喘息発作で救急搬送や救急受診などを経験している実態も明らかとなったほか、救急搬送を経験した患者の半数は主治医にその旨を伝えていた。そのほか、自分の症状悪化の要因が『好酸球の増加』であると、医師から説明を受けて認識している人が7割に上るなど、患者と主治医との間のコミュニケーションの現状もわかった。引き続き患者と主治医とがコミュニケーションを取り、患者がそれぞれの症状にあった治療に出会い、健康な人と変わらない日常生活を送ることを願う」とコメントを寄せている。

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第25回 対面での吸入指導がアドヒアランスに与える影響は予想以上に大きい【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 気管支喘息やCOPD患者さんへの吸入指導は日常的にあるため、わかりやすい説明は薬剤師に求められる必須スキルの1つです。薬局で説明する旨の医師指示が処方箋に記載されているケースも少なくなく、私も新人のころはすべてのデバイスごとの手順や使用上のピットフォールを必死で覚えたものです。デモ用キット、リーフレット、ビデオなどの充実した資材が製薬会社から提供されていますので、患者さんにとって最も有用な説明手段を選択したいですよね。今回は、その参考となるリアルワールドデータ(実臨床で得られたデータ)の調査を紹介します。対面での実技指導を好む患者が83%REAL(Real-life Experience and Accuracy of inhaLer use)調査という、適切な吸入器の使用、吸入手技、吸入器の特性など、患者アドヒアランスへ影響すると考えられる23項目について電話で行われた調査があります1)。2016年1月4日~2月2日に調査が実施され、対象はブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、英国、米国の9ヵ国から抽出された軽度~重度のCOPD患者764例(平均年齢56±9.8歳)でした。使用吸入器の内訳は、ブリーズヘラー186例、エリプタ191例、ジェヌエア194例、レスピマット201例でした。自己申告のアドヒアランスは、66歳以上の患者と比較して65歳以下の患者では有意に低く、性別、疾患の重症度、診断からの経過時間では有意差はみられませんでした。手技の説明では、吸入器を用いた対面による指導(吸入デモ)が「とても役に立つ」と回答している割合が最も高く、吸入デモ83%>ビデオ58%>口頭による使用説明51%>リーフレット34%という結果でした。吸入デモの回数が多い患者ほどアドヒアランスが高く、さらに呼吸器科医自身による指導を受けている患者ではより良好でした。少なくとも過去2年間に医療者による吸入手技の確認を受けたことがないと回答した患者は29%で、手技の確認を受けた患者ではよりアドヒアランスが良好かつ全量を吸入できている自信がありました。なお、全量を吸入したという実感があったのは、ブリーズヘラーを用いた患者では93%、ジェヌエアでは84%、エリプタでは80%、レスピマットでは76%でした。吸入指導は、呼吸器科医(41.3%)、薬剤師(20.2%)、看護師(18.1%)、一般医(12.0%)、その他(8.4%)によって行われており、呼吸器科医は自ら患者を指導する割合が高かったのに対し、一般医はほかの医療者に委任する割合が高いという結果でした。製剤特性や用法に依存する部分もありますが、アドヒアランスを高めるポイントは、対面での吸入デモ、小まめな手技確認、とくに呼吸器科医による吸入指導、ということになると思います。患者が好む吸入器は簡単・シンプル治療満足度には、吸入指導の方法という観点とは別に、吸入器に対する好みの問題もあります。これに関しては、COPD患者、喘息患者の吸入器の好みに関するリアルワールドデータの調査があります2)。こちらは、欧州、米国、日本および中国で実施された呼吸器疾患プログラムから、喘息(12歳以上の患者)、COPD(気道閉塞が確認された40歳以上の患者)、喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)の7,300例を超える患者データが収集され、吸入維持療法の現在の治療法と吸入器の種類、医師の好み、患者が重要と考える吸入器の特性および満足度を変数として解析した研究です。よく処方されているのが、ドライパウダー式の吸入器(62.8~88.5%の患者)と加圧噴霧式定量吸入器(18.9~35.3%の患者)でした。ディスカス、エリプタ、タービュヘイラーなどに次いでエアゾール剤が多いというのはさほど違和感はないかと思います。吸入器の特性について重視する要素として、どの疾患においても「使い方がシンプルで簡単」ということが半数以上の患者で挙げられ、長持ちして壊れにくい、持ち運びが簡便、充填の必要がない、吸入のために息を吸い込む必要がない、毎回肺に同じ量の薬が届く、薬剤の残数がわかるなどの特性が続きます。最近の吸入器は工夫があるものも多いので、各製剤の特徴を把握して図にまとめておくと説明しやすいと思います。吸入器の種類も多様化していますので、うまく吸えないときはその原因を特定したり、改善策のアドバイスや適切な吸入器への変更を提案したりすることもあるでしょう。吸入アドヒアランスはCOPDや喘息の治療効果に直結するので、背景因子を理解して患者さんに共感しつつも、しっかりと対面で説明や提案ができるようにしておきたいものです。1)Price D, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018;13:695-702.2)Ding B, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018;13:927-936.

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アレルギー総合ガイドライン2019が発行、アレルギーとアナフィラキシーを網羅

 アレルギー疾患罹患率はとくに先進国で増加し、いまや日本人の約50%が何らかのアレルギー症状を有しているといわれる。代表的なアレルギー疾患に関する12の最新ガイドラインの内容を1冊にまとめた「アレルギー総合ガイドライン」の改訂版が、3年ぶりに発行された。アレルギー総合ガイドライン2019は診療科を超えて横断的に出現し、急性増悪のリスクもはらむアレルギー疾患に対して、標準的な臨床的対応を円滑に行うことができるよう、実用性を重視した構成となっている。「喘息予防・管理ガイドライン2018」「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017」「鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版(改訂第8版)」「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)」「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018」「重症薬疹の診断基準」「接触皮膚炎診療ガイドライン」「蕁麻疹診療ガイドライン 2018」「食物アレルギー診療ガイドライン2016《2018年改訂版》」「ラテックスアレルギー安全対策ガイドライン2018」「職業性アレルギー疾患診療ガイドライン2016」「アナフィラキシーガイドライン」 ここでは、とくに2018年に改訂されたばかりの下記5冊のガイドラインについて、主な改訂内容を紹介する。 「喘息予防・管理ガイドライン2018」では、問診・聴診・身体所見の項目が新たに追加されたほか、治療においては長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の使用推奨範囲が拡大され、抗IL-5抗体、抗IL-5Rα抗体、気管支熱形成術が追加されている。さらに、2019年3月には、12歳以上の難治性喘息に抗IL-4Rα抗体製剤デュピルマブが保険適用になっている。これを受けてアレルギー総合ガイドライン2019では、成人喘息の治療ステップの中に追加され、小児喘息における位置づけについても、解説が追加されている。 「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018」は、日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインと、厚生労働省研究班および日本アレルギー学会の診療ガイドラインの初の統合版。ステロイド外用薬の使い方などに関して、新たな知見(原則として2015年12月末まで)が反映されている。 「蕁麻疹診療ガイドライン 2018」は2011年以来7年ぶりの改訂版。2018年に発表された国際ガイドラインと、病型分類や重症度評価などで整合性をとる形に改訂されている。 「食物アレルギー診療ガイドライン2016《2018年改訂版》」は、「栄養食事指導」「経口免疫療法」について新たに章立てする形で詳細な記述が追加された。また、ヒスタミン遊離試験のキットの発売中止、牛乳アレルゲン除去調製粉乳の微量元素添加の終了、アナフィラキシー治療の際のアドレナリンの併用禁忌の解除などが反映されている。 「ラテックスアレルギー安全対策ガイドライン2018」では、加硫促進剤が主要なアレルゲンで、非ラテックス製手袋でも報告されている「化学物質による遅発型アレルギーである接触皮膚炎」についての記述を追加。最新のラテックスフリーの製品や加硫促進剤フリーゴム手袋の一覧が収載された。 そのほか、「職業性アレルギー疾患診療ガイドライン2016」については、刊行後に判明した最新エビデンスを加えた内容が、アレルギー総合ガイドライン2019に掲載されている。■「食物アレルギー」関連記事メロンアレルギーの主要アレルゲンを確認非専門医向け喘息ガイドライン改訂-喘息死ゼロへ

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成人の「軽症」気管支喘息における増悪予防治療について(解説:小林英夫氏)-1060

 成人気管支喘息の治療は重症度による差異はあるものの、大まかには、吸入ステロイド薬を維持療法の基本薬とし、発作時には短時間作用型β2刺激薬(SABA)を用いている。本論文は成人軽症喘息の増悪予防療法について3群を比較検討し、ブデソニド+ホルモテロール合剤の頓用が吸入ステロイド維持療法に劣らないとしたものである。 これまで維持療法が導入されていない軽症症例を、発作時のみSABA吸入頓用群、吸入ステロイド維持療法+発作時SABA頓用、発作時にブデソニド+ホルモテロール合剤の頓用、の3群化している。初めの2群は一般的な治療であり、3つ目の群を評価することが本試験の目的となっている。なお、喘息発作時に合剤を追加吸入する治療としてSMART(single maintenance and reliever therapy)療法が報告されているが、この療法は維持療法として合剤を使用したうえにさらに上乗せする治療で、本試験の第3群とは別個の概念である。 本試験の結論として、「軽症」成人喘息においては、喘息発作時の合剤頓用が吸入ステロイド維持療法と同等以上に増悪発生と重症増悪を管理できるとしている。結論に大きな異論はないように感ずる。また、患者は毎日の定期吸入療法よりも必要時のみの合剤頓用に簡便性を感じるかもしれない。それでは、日常の治療選択肢として合剤頓用が望ましいであろうか。今後、合剤頓用が喘息治療のガイドラインに組み込まれる可能性はあろうが、筆者は当面は積極的な導入は見合わせるつもりである。本結論を支持する追加論文の必要性もある。そして患者本人の判断に重きを置く治療法への不安が残る。SABAも合剤も、本人判断による頓用が過剰吸入や喘息の過小評価につながった経験は決して少なくない。頓用療法では自覚症状のみではなくピークフロー測定の導入がより重要になると感じる。30年近く前にSABA頓用の有害性が報告された歴史も踏まえ、もうしばらくはデータの蓄積を待ってもよいのではないだろうか。

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軽症喘息の増悪予防、SABA vs.ブデソニド+ホルモテロール頓用/NEJM

 軽症喘息の成人患者では、ブデソニド+ホルモテロールの頓用はalbuterol(日本ではサルブタモールと呼ばれる)頓用に比べ喘息増悪の予防に優れることが、ニュージーランド・Medical Research Institute of New ZealandのRichard Beasley氏らが行った「Novel START試験」で示された。研究の詳細はNEJM誌2019年5月23日号に掲載された。これまでの二重盲検プラセボ対照比較試験で、ブデソニド+ホルモテロール頓用は、短時間作用性β2刺激薬(SABA)の頓用に比べ、重度の喘息増悪のリスクが低く、ブデソニド維持療法+SABA頓用とほぼ同じと報告されていた。3群で年間喘息増悪発生率を比較 本研究は、ニュージーランド、英国、イタリア、オーストラリアの16施設が参加した52週間の非盲検無作為化対照比較試験であり、2016年3月~2017年8月に患者登録が行われた(AstraZenecaなどの助成による)。 対象は、年齢18~75歳、登録前の3ヵ月間に単独の喘息治療としてSABAを使用し、患者報告で2回以上のSABA使用があるが、直近4週間の1日平均使用回数が2回以下の喘息患者であった。 被験者は、次の3つの群の1つに無作為に割り付けられた。(1)albuterol群:加圧噴霧式定量吸入器で、1回100μgを2吸入、発作時に頓用、(2)ブデソニド維持療法群:ブデソニド(タービュヘイラーで1吸入200μgを1日2回)+albuterol頓用、(3)ブデソニド+ホルモテロール群:タービュヘイラーで、ブデソニド200μgとホルモテロール6μg(1吸入)を頓用。薬剤の使用量の測定には、吸入器の電子モニタリングを用いた。 主要アウトカムは、喘息増悪の年間発生率であった。重度の喘息増悪の回数も有意に少ない 668例が登録され、albuterol群に223例(平均年齢35.8±14.0歳、女性50.7%)、ブデソニド維持療法群に225例(34.9±14.3歳、57.3%)、ブデソニド+ホルモテロール群には220例(36±14.1歳、55.5%)が割り付けられた。 ベースラインの過去1週間のACQ-5(0~6点、点数が高いほど喘息コントロールが不良)の平均値は1.1点(軽症喘息)で、患者の7.3%で過去1年間に重度の喘息増悪がみられ、54%で過去4週間のSABA使用が週2回以下であった。 ブデソニド+ホルモテロール群の年間喘息増悪発生率は、albuterol群よりも有意に低く(絶対的発生率:0.195 vs.0.400、相対的発生率:0.49、95%信頼区間[CI]:0.33~0.72、p<0.001)、ブデソニド維持療法群とは発生率に有意差はなかった(絶対的発生率:ブデソニド+ホルモテロール群0.195 vs.ブデソニド維持療法群0.175、相対的発生率:1.12、95%CI:0.70~1.79、p=0.65)。 重度の喘息増悪の回数は、ブデソニド+ホルモテロール群がalbuterol群(9回 vs.23回、相対リスク:0.40、95%CI:0.18~0.86)およびブデソニド維持療法群(9回 vs.21回、0.44、0.20~0.96)に比べ、有意に少なかった。 吸入ブデソニドの平均(±SD)使用量は、ブデソニド+ホルモテロール群が107±109μg/日、ブデソニド維持療法群は222±113μg/日であった。 有害事象の発生率と種類は、先行試験および実臨床での使用報告と一致していた。最も頻度の高い有害事象は、3群とも上気道感染症で、次いで鼻咽頭炎、喘息の順だった。 著者は、「この知見は、患者が喘息の増悪に気付いた状況で、吸入グルココルチコイドを気管支拡張薬との併用で頓用することで、患者が緊急治療を求めるほどに増悪が重症化するリスクを低減する可能性を示唆する」とし、「ブデソニド維持療法は、喘息症状のコントロールに優れるため、増悪よりもむしろ症状を最大の苦痛とする患者にとって価値があると考えられる」と指摘している。

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軽症持続型喘息、ICSもLAMAも対プラセボで有意差なし/NEJM

 軽症持続型喘息患者の大多数は、喀痰中好酸球比率が低く、モメタゾン(吸入ステロイド)またはチオトロピウム(長時間作用性抗コリン薬)のいずれも反応性についてプラセボと有意差は認められないことが、米国・カリフォルニア大学のStephen C. Lazarus氏らによる、42週間の無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験「Steroids in Eosinophil Negative Asthma trial:SIENA試験」の結果、示された。軽症持続型喘息患者は、喀痰中の好酸球が2%未満と低値である場合がほとんどであり、このような患者に対する適切な治療法は明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は、「好酸球低値の患者において、吸入ステロイドと他の治療法を比較する臨床試験が必要であることが示唆される」と提言している。NEJM誌2019年5月23日号掲載の報告。米国24施設、12歳以上295例を対象にプラセボ対照試験 SIENA試験は、2014年7月~2018年3月に、米国・国立心肺血液研究所(NHLBI)のAsthmaNet consortiumに参加している24施設で実施された。対象は12歳以上の軽症持続型喘息患者295例で、喀痰中好酸球比率が<2%の好酸球低値群と≧2%の好酸球高値群に分け、どちらの群もモメタゾン、チオトロピウムおよびプラセボを投与順は無作為化して各12週間投与した。 主要評価項目は、好酸球低値群において事前に定義した反応性(response)を認めた患者割合の治療間の差で、プラセボvs.モメタゾンまたはプラセボvs.チオトロピウムを比較した。反応性の定義は、治療失敗、喘息コントロール日数(レスキュー剤のアルブテロール未使用、喘息治療薬の非併用、症状なし、救急外来受診なし、ピーク・フローがベースライン時の80%以上の日数)および1秒量からなる階層的複合アウトカムとし、統計学的有意水準は両側p<0.025とした。副次評価項目として、好酸球低値群と高値群の反応性を比較した。モメタゾンまたはチオトロピウムともに、vs.プラセボと有意差なし 295例中221例(73%)が好酸球低値群であった。 これら221例中、反応性が認められた患者割合は、プラセボvs.モメタゾンの比較では59%、プラセボvs.チオトロピウムの比較では60%であった。 しかしながら、反応性を認めた患者割合に治療間での有意差は認められなかった。モメタゾンvs.プラセボの比較における反応性を認めた患者(59%)の内訳比率は、モメタゾン群57%(95%信頼区間[CI]:48~66)、プラセボ群43%(95%CI:34~52)であった(p=0.14)。チオトロピウムvs.プラセボの比較(60%)については、チオトロピウム群60%(95%CI:51~68)、プラセボ群40%(95%CI:32~49)であった(p=0.029)。 一方、好酸球高値群で反応性に差がみられた患者における解析では、モメタゾンvs.プラセボの比較ではモメタゾンのほうが反応性を示した患者の割合がより高かったが(74% vs.26%)、チオトロピウムvs.プラセボの比較では差はなかった(57% vs.43%)。

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5/9呼吸の日に「ぜん息外来.jp」リリース

 アストラゼネカ株式会社は、5月9日“呼吸の日”に喘息治療サポートサイト「ぜん息外来.jp」をオープンした。 本サイトは、「ぜん息について」「あなたのぜん息タイプは?」「知ろう、あなたのぜん息コンディション」「専門医からのメッセージ」「医療機関検索」という5つのコンテンツで構成され、疾患が起こるメカニズムや検査、重症化の原因によって分けられる喘息のタイプなど、喘息に関する最新情報を提供する。 とくに喘息患者の5~10%を占める重症喘息については、昨今の研究によって好酸球などの存在が喘息を悪化させる原因として明らかになってきた。本サイトでは、患者が自身の喘息と向き合い、治療しても抑えきれない症状を「いつものこと」とあきらめず、喘息治療の目標である“喘息がない人と変わらない日常生活を送ることができる”状態を目指して、医師に相談することを提案している。ぜん息外来.jpの概要《ぜん息について》 喘息のメカニズムや治療法など、喘息の基本情報を紹介している。《あなたのぜん息タイプは?》 喘息の症状は、程度や頻度、呼吸機能、治療薬の種類によって重症度が分けられる。最近では、気道の炎症を起こす原因にさまざまな免疫細胞が関わっていることがわかってきた。このページでは、原因となる細胞の体内での動きをイメージした動画を公開しており、喘息の重症度やコントロール状態を確認できるチェックリストも用意している。《知ろう、あなたのぜん息コンディション》 喘息症状や日常生活での経験について、いくつかの質問に答えることで、喘息のコントロール状況や日常生活・心理的影響について回答結果を出力できる。※医療機関を受診する際に活用する参考情報であり、喘息症状を診断するものではありません。《専門医からのメッセージ》 全国各地で喘息治療向上に取り組む喘息治療専門の先生方より、臨床経験から喘息という疾患とその治療について、治療中の患者さんに知ってもらいたい情報をインタビュー形式で紹介。《医療機関検索》(近日公開予定) 調べたい都道府県名を選択すると、地域で喘息の専門治療を提供する医療機関が住所順に表示される。受診医療機関を探す際の参考情報として活用できる。■参考アストラゼネカ株式会社 プレスリリースぜん息外来.jp

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COPD診療における最新知見/日本呼吸器学会

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療に対する吸入ステロイド薬(ICS)の上乗せについて、新しい臨床試験の結果が続々と報告されているが、それらをどう捉えればよいのだろうか。2019年4月12日から3日間、都内にて開催された第59回 日本呼吸器学会学術講演会において、シンポジウム3「COPD、ACOガイドラインを超えて」での講演から最新の知見を紹介する。COPD治療におけるICSの位置付けは? COPDの安定期における治療は、原則として長時間作用性抗コリン薬(LAMA)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)の気管支拡張薬である。これまで、通常のCOPD治療にICSを追加する有益性は高くないとされていたため、本学会が発刊している『COPD診断と治療のためのガイドライン2018(第5版)』と『喘息とCOPDのオーバーラップ診断と治療の手引き2018』では、喘息とCOPDの合併例(asthma COPD overlap:ACO)に限定して、ICSの早期使用が推奨されている。 しかしその後、LAMA+LABA+ICSのトリプルセラピーがLAMA/LABA配合剤に対して、中等度~重度のCOPD増悪を有意に抑制したことが「IMPACT試験」で報告されたため、COPD治療におけるICSの位置付けに関しては引き続き検討されていくだろう。COPD、ACOの診断に用いられるバイオマーカー シンポジウムでは、玉田 勉氏(東北大学 呼吸器内科学分野 講師)が「末梢血好酸球増加はICS治療ターゲットになるか?」という問いかけをテーマに、COPD患者のバイオマーカーをどのように扱うかについて語った。 COPD治療において、好酸球性気道炎症が存在する症例の中には、LAMA、LABAなどの気管支拡張薬にICSを上乗せすることで、さらなる気管支拡張効果を得られる病態が存在することがわかっている。このようなICS感受性の高いCOPDに関して、判断の目安となるのは増悪回数、末梢血好酸球の増加、喘息の合併などであるという。 また、上述の最新ガイドラインでは、COPDにおける好酸球性気道炎症の存在を、喘息の特徴でもある末梢血好酸球>5%あるいは>300/μL、呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)>35ppbなど複数の項目で評価することを推奨している。その結果ACOと判断できれば、早期にICSを投与することが望ましいが、ACOに該当しなければ、高用量のICS投与は肺炎リスクを上昇させる恐れがあるため、重症であっても投与しないとされている。しかし、ACOの病態は経過中に出現することもあるので、繰り返し評価することが重要である。 同氏は「われわれの研究と先行研究を合わせた結果、COPD患者の2割くらいにICS有効例が存在するのではないか」と見解を語った。海外データから読み取れる情報 海外で報告されているGOLD2019レポートでは、増悪リスクおよび症状レベルがともに高い“グループD”において、末梢血好酸球が300/μL以上あるいは100/μL以上で増悪を繰り返す患者ではICS/LABA有効例が多く、逆に末梢血好酸球100/μL未満ではICSの有効性は期待できないとされている。しかし、この根拠となった複数の臨床試験の対象となった症例には、さまざまな割合で喘息合併例が混在しているため、ICSの上乗せ効果を正確に判断することは難しい。 データを読む際、ICSの使用による1秒量(FEV1)の増加が大きいほど、喘息病態を合併したCOPDの症例が多く混ざっていると考えられ、その結果、末梢血好酸球300/μL以上の症例をピックアップすると、ICSが増悪抑制に有効であろうことが見えてくるという。 よって、各論文の筆者による結論だけでなく、喘息合併例をどうやって分けているか、ICSの使用でどれだけ呼吸機能が改善しているかなども考慮して解釈することが必要だ。単独のバイオマーカーでICS使用の判断はできない 発表テーマである「末梢血好酸球増加はICS治療ターゲットになるか?」という問いに対して考えると、気道の好酸球性気道炎症をよく反映するのは喀痰好酸球数だが、末梢血好酸球数とは強く相関しないことが明らかになっている。 「COPD、ACO患者のバイオマーカーは、これまでもさまざまな横断研究が報告されているが、日本人データを含めたバイオマーカーの使い方やカットオフ値の設定が求められる。よって、末梢血好酸球数だけでICSを使うかどうか決めるには時期尚早なのではないか」と現段階での見解を示し、「ICSの有効例に関しては、どこまで追求しても、最終的には過剰投与であったり、潜在的に有効でも投与されなかったりといった事態が起こりうる可能性がある」と指摘した。 COPDやACOの診断に当たっては、ガイドラインの知見を踏まえ、なるべく客観的な指標に基づいてICSの使用を検討するなど、診断の精度を高めることが求められる。また、ICSを開始する場合、肺炎リスクが頭打ちとなる半年より前に、呼吸機能の改善度などから効果判定を行い、ICS投与を継続するか判断することが望ましいとされている。■参考一般社団法人 日本呼吸器学会第59回日本呼吸器学会学術講演会■関連記事新COPDガイドラインの要点と日本人データCOPDの3剤併用療法、2剤併用と比較/NEJM

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36)レスピマット(スピリーバ)/使用の前準備【吸入薬使い方ガイド】

※上の画像をクリックすると別のウィンドウにて「環境再生保全機構」の動画ページが開きます。■今回の内容今回は、レスピマット(スピリーバ)使用の前準備を説明します。※初回のみ行う操作です。手順としては、使用開始時、箱を開封する→キャップを閉じた状態で、安全止めを押しながら透明ケースをはずす→カートリッジの緑色の部分を上にして、本体に挿入する(非常に固いので、机などの固い平面で、ガチッとカートリッジが本体にほとんど隠れるまで、真っすぐ奥に押し込む)→透明キャップを装着する→キャップを閉じたまま上向きにし、片手で本体上部を固定し、反対の手で本体下部をカウンターの赤い矢印の方向にカチッと音がするまで180度回転させる→キャップを開ける→下を向け、黒い噴射ボタンを押し、ミストの噴射(約1.5秒間)を確認する→もう一度キャップを閉じ、180度回転→ミストの噴射を3回繰り返す→前準備完了※一度挿入したカートリッジは、絶対に抜かないでください。※顔に向けて噴射しないように注意してください。●主な製剤(2015年3月時点のデータ)スピリーバ

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