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喘息様気管支炎と診断した乳児が自宅で急死したケース

小児科最終判決判例タイムズ 844号224-232頁概要1歳1ヵ月の乳児。37.5℃の発熱と喘鳴を主訴に休日当番医を受診し、喘息性気管支炎と診断され注射と投薬を受けて帰宅した。ところが、まもなく顔面蒼白となり、救急車で再び同医を受診したが、すでに心肺停止、瞳孔散大の状態であったため、救命蘇生措置は行われず死亡確認となった。司法解剖では、肺水腫による肺機能障害から心不全を起こして死亡したものと推定された。詳細な経過経過1983年12月31日この頃から風邪気味であった。1984年1月1日37.2℃の発熱あり。1月2日午後37.5℃に上がり、声がしわがれてぜいぜいし、下痢をしたので、16:20頃A医院を受診。待合室で非常にぜいぜいと肩で息をするようになったため、17:20頃順番を繰り上げて診察を受ける。強い呼吸困難、喘鳴、声がれ、顔面蒼白、腹壁緊張減弱、皮膚光沢なし、胸部ラ音、下痢などの症状を認め、喘息性気管支炎と診断。担当医師は経過観察、ないしは入院の必要があると判断したが、地域の救急患者の転送受け入れをする輪番制の病院がないものと考え、転院の措置をとらなかった。呼吸困難改善のため、スメルモンコーワの注射(適応は急性気管支炎や感冒・上気道炎に伴う咳嗽)と、アセチルロイコマイシンシロップなどの投薬をし、隣室ベッドで待つように指示した。18:00若干呼吸困難が楽になったように感じたため、容態急変した場合には夜間診療所を受診するように指示されて帰宅した。18:20帰宅時、顔面が蒼白になり唇が青くなっていたため、救急車を要請。その直後急に立ち上がり、目を上に向け、唇をかみしめ、まったく動かなくなった。18:54救急車でA医院に到着したが、すでに心肺停止、瞳孔散大の状態であり、心肺蘇生術を施さずに死亡が確認された。司法解剖の結果、「結果的には肺水種による肺機能障害により死亡したものと推定」し、その肺水腫の原因として、(1)間質性肺炎(2)乳幼児急死症候群(SIDS)(3)感染によるエンドトキシンショック(4)薬物注射による不整脈(5)薬物ショックとそれに続く循環障害などが考えられるが、結論的には不詳とされた。当事者の主張患者側(原告)の主張1.医師の過失1回目の診察時にすでに呼吸不全に陥っているのを認めたのであるから、ただちに入院させて、X線写真、血液検査などの精査を行うとともに、気道確保、酸素吸入、人工換気などの呼吸管理、呼吸不全、心不全などの多臓器障害の防止措置などを行うべき義務があったのに、これらを怠った2.経過観察義務違反・転医措置義務違反呼吸不全を認めかつ入院の必要を認めたのであるから、少なくとも症状の進行、急変に備え逐一観察すべき義務があったのに怠った。さらに、転医を勧告するなど、緊急治療措置ないし検査を受けさせ、あるいは入院する機会を与えるべき義務があったのに、転医措置を一切講じなかった3.救命蘇生措置義務違反心肺停止で救急搬送されたのは、心臓停止後わずか10分程度しか経過していない時点であり救命措置をとるべき義務があったのに、これを怠った4.死因喘息性気管支炎から肺炎を引き起こして肺水腫となり、肺機能障害から心不全となって死亡した。病院側が主張する乳幼児突然死症候群(SIDS)ではない病院側(被告)の主張1.医師の過失死因が不明である以上、医師がどのような治療方法を講じたならば救命し得たかということも不明であり、不作為の過失があったとしても死亡との因果関係はない。しかも最初の診察を受けたのが17:20頃であり、死亡が18:10ないし18:25とすると、診療を開始してから死亡するまでわずか50~60分の時間的余裕しかなかったため、死亡の結果を回避することは不可能であった。また、当日は休日当番医で患者が多く(130名の患者で混みあっており、診察時も20~30名の患者が待っていた)、原告らの主張する治療措置を講ずべきであったというのは甚だ酷にすぎる2.経過観察義務違反・転医措置義務違反同様に、診療開始から50~60分の時間的余裕しかなかったのであれば、大規模医療施設に転送したからといって、死亡の結果を免れさせる決め手にはならなかった3.死因肺水腫による肺機能障害から心不全を起こして死亡したと推定されていて、肺水腫の原因として間質性肺炎、乳幼児突然死症候群などが挙げられているものの特定できず、結局死因は不明というほかない裁判所の判断1. 死因強い呼吸困難、喘鳴、顔面蒼白、腹壁緊張減弱、胸部ラ音、下痢などの臨床症状があったこと、肺浮腫、肺うっ血が、乳幼児突然死症候群に伴うような微小なものではなく、著しいあるいは著明なものであったことなどからすると、肺炎から肺水腫を引き起こして肺機能障害を来し、直接には心不全により死亡したものと考えられる(筆者注:司法解剖の所見で「死因は不詳」と判断されているにもかかわらず、裁判所が独自に死因を特定している)。2. 医師の過失原告の主張をそのまま採用。加えて、もし大規模病院へ転送するとしたら、酸素そのほかの救急措置が何らとられないまま搬送されるとも考えられないので、診察から死亡までの50~60分の間に適切な措置をとるのは困難であり死亡は免れなかったとする主張は是認できない。当時休日診療で多忙をきわめていたとしても、人命にかかわる業務に従事する医師としては、通常の開業医としての医療水準による適切な治療措置を施すべき義務を負うものであり、もし自らの能力を超えていて、自院での治療措置が不可能であると考えれば、ほかの病院に転送するべきであった。3. 経過観察義務違反・転医措置義務違反失原告の主張をそのまま採用。4. 救命蘇生措置義務違反救急車で来院した18:54頃には、呼吸停止、心停止、瞳孔の散大の死の3徴候を認めていたので、心肺蘇生術を実施しても救命の可能性があったかどうか疑問であり、その効果がないと判断して心肺蘇生術を実施しなかったのは不当ではない。原告側合計2,339万円の請求どおり、2,339万円の判決考察この事例は医師にとってかなり厳しい判決となっていますが、厳粛に受け止めなければならない重要な点が多々含まれていると思います。まず、本件は非常に急激な経過で死亡に至っていますので、はたしてどうすれば救命できたかという点について検討してみます。担当医師が主張しているとおり、最初の診察から死亡までわずか60分程度ですので、確かにすぐに大規模病院に転送しても、死亡を免れるのは至難の業であったと思います。裁判所は、「酸素などを投与していれば救命できたかも知れない」という理由で、医師の過失を問題視していますが、酸素投与くらいで救命できるような状況ではなかったと推定されます。おそらく、すぐに気管内挿管を施し、人工呼吸器管理としなければならないほど重症であり、担当医師が診察後すぐに救急車で総合病院に運んだとしても、同じ結果に終わったという可能性も考えられます。ここで問題なのは、当初から重症であると認識しておきながら、その次のアクションを起こさなかった点にあると思います。もし最初から、「これは重症だからすぐに総合病院へ行った方がよい」と一言家族に話していれば、たとえ死亡したとしても責任は及ばなかった可能性があります。次にこのようなケースでは、たとえ当時の状況が患者さんがあふれていて多忙をきわめていたとしても、まったく弁解にはならないという点です。とくに「人命にかかわる業務に従事する医師としては、病者を保護すべきものとして通常の開業医としての医療水準による適切な治療措置を施すべき義務がある」とまで指摘されると、抗弁の余地はまったくありません。当然といえば当然なのですが、手に負えそうにない患者さんとわかれば、早めに後方病院へ転送する手配をするのが肝心だと思います。最後に、ここまでは触れませんでしたが、本件では裁判官の心証を著しく悪くした要因として、「カルテの改竄」がありました。1回目の診察でスメルモンコーワの注射に際し(通常成人には1回0.5ないし1.0mL使用)、病院側は「0.3mL皮下注射した」と主張しています。ところがカルテには「スメルモン1.0」と記載し、保険請求上1アンプル使用したという旨であると説明され、さらに1行隔てた行外に「0.3」と記載されており、どうやら1歳1ヵ月の乳児にとっては過量を注射した疑いがもたれました。この点につき裁判所は、「0.3」の記載の位置と体裁は、不自然で後に書き加えられたものであることが窺われ、当時真実の使用量を正確に記載したものであるかどうかは疑わしいと判断し、さらに「診療録にはそのほかにも数カ所、後に削除加入されたとみられる記載がある」とあえて指摘しています。実際のカルテをみていないので真実はどうであったのかはわかりませんが、このような行為は厳に慎むべきであり、このためもあってか裁判では患者側の要求がすべて通りました。日常診療でこまめにカルテを書くことは大変重要ですが、後から削除・加筆するというのは絶対してはならないことであり、もし事情があって書き換える場合には、その理由をきちんと記載しておく必要があると思います。小児科

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抗TSLP抗体薬、アレルゲン誘発性喘息に有望/NEJM

 新規開発中の喘息治療薬AMG157について、軽症アレルギー性喘息患者に対する、抗アレルゲン誘発性喘息反応が確認された。カナダ・マックマスター大学のGail M. Gauvreau氏らが実証検証試験として行った二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。AMG157は、アレルギー性炎症にかかわる重大なサイトカインである胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)に結合し、受容体との相互作用を妨げる抗ヒトTSLPモノクローナル免疫グロブリンG2λとして開発中である。今回の結果について著者は「アレルギー性喘息患者における、アレルゲン誘発性の気道反応および持続性気道炎症に、TSLPが重要な役割を果たしていることが確認された。抗TSLP抗体薬が臨床的価値を有するかは確認できなかったが、所見は、さらなる検討を行い、喘息コントロール不良の患者へのAMG157の作用機序と有益性調査の実施を支持するものである」とまとめている。NEJM誌2014年5月29日号(オンライン版2014年5月20日号)掲載の報告より。軽症アレルギー性喘息患者31例を対象に二重盲検プラセボ対照試験 本試験は、AMG157が軽症アレルギー性喘息患者の、アレルゲン誘発性喘息反応を減弱するとの仮説を確認することを目的に、患者31例を対象に行われた。被験者を無作為に、AMG157(700mg)を月1回、計3回静注投与を受ける群(16例)と、プラセボ投与群(15例)に割り付け、また、AMG157の1秒量(FEV1)の最大低下率の抑制効果を評価するために、42日目と84日目にアレルゲンを投与しアレルゲン誘発性喘息反応を評価した。また、呼気一酸化窒素(FeNO)濃度、血中および喀痰中好酸球数、気道過敏性についても測定した。 主要エンドポイントは、アレルゲン投与後3~7時間に測定した遅発型喘息反応だった。即時型および遅発型の喘息反応に関するほとんどの測定値が減少 結果、AMG157投与群では、アレルゲン誘発性の即時型および遅発型の喘息反応に関するほとんどの測定値が減少した。 アレルゲン投与試験の結果は、AMG157群のほうが42日目(p=0.09)、84日目(p=0.02)ともプラセボ群よりも有意にFEV1の最大低下率の抑制効果が大きかった。各時点のFEV1の最大低下率は、42日目はAMG157群のほうがプラセボ群よりも34.0%小さく、84日目は同45.9%小さかった。さらにAMG投与群では、アレルゲン投与前後における血中および喀痰中好酸球数、FeNO濃度が有意に低下した。 有害事象は、AMG157群は15件、プラセボ群では12件だったが、重大有害事象はなかった。

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喘息患者へのビタミンD3、治療失敗や増悪を改善しない/JAMA

 成人喘息患者に対するビタミンD3の投与は、ステップ1の吸入ステロイド薬治療の失敗や増悪を改善しなかったことが、米国・ワシントン大学のMario Castro氏らが行った無作為化試験VIDAの結果、示された。著者は「症候性の喘息患者に対するビタミンD3投与の治療戦略について、裏づけは得られなかった」とまとめている。喘息などの疾患において、ビタミンD不足と有害転帰との関連が示唆されている。しかし、経口ビタミンD3の摂取により、吸入ステロイド薬治療を受けているビタミンD不足の喘息患者のアウトカムが改善するかについては、明らかではなかった。JAMA誌2014年5月28日号掲載の報告より。全米9施設で、プラセボ対照試験 VIDA(Vitamin D Add-on Therapy Enhances Corticosteroid Responsiveness in Asthma)試験は、症候性喘息で、血清25ヒドロキシビタミンD値が30ng/mL未満であった成人患者を対象に、全米9施設[米国国立心肺血液研究所(NHLBI)喘息ネット関連の大学病院]で行われた無作為化二重盲検並行群間プラセボ対照試験。2011年4月から被験者の登録を開始し、吸入ステロイド薬など現行治療に関するrun-in期間後、408例が無作為化を受け、フォローアップは2014年1月に完了した。 無作為化された被験者は、吸入ステロイド薬のシクレソニド(商品名:オルベスコ)(320mg/日)+経口ビタミンD3(10万IUを1回、その後4,000 IU/日を28週間投与、201例)またはプラセボ(207例)の投与を受けた。 試験開始から12週時点で喘息コントロールを達成した患者は、シクレソニドを160mg/日とし8週間、その後もコントロールが維持された場合は80mg/日8週間に漸減した。 主要アウトカムは、喘息治療失敗初発までの期間で、肺機能低下、β2刺激薬や全身性ステロイド薬の投与、救急受診や入院で判定した。また、副次アウトカムには、増悪ほか14のアウトカムが事前に規定されていた。初回治療失敗率のハザード比は0.9、増悪は0.7 結果、28週間のビタミンD3治療は、初回治療失敗率を改善しなかった。ビタミンD3群28%(95%信頼区間[CI]:21~34%)、プラセボ群29%(同:23~35%)で、補正後ハザード比(HR)は0.9(同:0.6~1.3、p=0.54)であった。 副次アウトカムは9つの指標について分析した。そのうち増悪について、有意差はみられなかった(13%vs. 19%、HR:0.7、95%CI:0.4~1.2、p=0.21)。 唯一統計的有意差がみられたのは、コントロール維持のためのシクレソニドの全体投与量についてであり、ビタミンD3群111.3mg/日(95%CI:102.2~120.4mg/日)、プラセボ群126.2mg/日(同:117.2~135.3mg/日)で、両群差は14.9mg/日(同:2.1~27.7mg/日)とわずかであった。

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小児喘息のモニタリングには呼気一酸化窒素より喀痰中の好酸球

 喘息を有する小児における炎症のモニタリングには呼気一酸化窒素より喀痰中の好酸球のほうがより適切であることが、スペイン・Nostra Senyora de Meritxell病院のG Vizmanos-Lamotte氏らにより報告された。Anales espanoles de pediatria誌オンライン版2014年5月22日の掲載報告。 喀痰中の好酸球と呼気一酸化窒素は喘息における気道炎症のマーカーである。この炎症の原因にはサイトカイン、システィニル・ロイコトリエン、ロイコトリエンB4などがある。本研究の目的は、小児における喘息治療のモニタリングにおいて、これらのマーカーが役立つかどうかを調べることである。 10例の子供(9~15歳)を対象に誘発喀痰中の呼気一酸化窒素、好酸球、ロイコトリエンB4を調べ、4ヵ月後に再度測定した。 主な結果は以下のとおり。・呼気一酸化窒素の濃度は減少の傾向であった(p=0.15)。・肺機能は改善傾向にあった(p=0.10)。・喀痰中の好酸球は減少していたが(p=0.003)、ロイコトリエンB4濃度はあまり変わらなかった(p=0.88)。

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コントロール不十分な日本人喘息患者を対象にしたチオトロピウムの有効性(ATS 2014)

※チオトロピウム レスピマットは、現在喘息の治療薬として承認されていません。ご注意ください。 ベーリンガーインゲルハイムは5月18日、2014年度米国胸部学会(ATS 2014)において、中等症~重症の日本人喘息患者において、チオトロピウム レスピマットの忍容性と有効性を示す第III相試験結果を発表した。 同試験(CadenTinA-asthma)は、チオトロピウム レスピマット5μgおよび2.5μgの2用量投与群とプラセボ投与群を対照として、本邦で実施された無作為化二重盲検並行群間比較試験(NCT01340209)。投与期間は52週間で、285例の中等症から重症の喘息患者が登録され、264例が治療を終了した。主要評価項目は長期安全性、副次評価項目はトラフFEV1、PEFR。 有害事象(AE)の発現率はいずれの治療群でも同様であった。重篤なAEは、チオトロピウム レスピマット5μg投与群3.5%、2.5μg投与群3.5%、プラセボ投与群15.8%で、発現率はプラセボ群よりもチオトロピウム レスピマット投与群で低値であった。 12週目、36週目、52週目のトラフFEV1平均変化量は、プラセボ投与群に比較し、チオトロピウム レスピマット5μg投与群で有意に高く、2.5μg投与群では有意差はみられなかった。また、24週目、52週目の PEFRの平均変化量は、プラセボ投与群に比較してチオトロピウム レスピマット5μg投与群で有意に高く、チオトロピウム レスピマット2.5μg投与群では有意な差はみられなかった。

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肺炎・気管支喘息で入院した乳児が低酸素血症となって死亡したケース

小児科最終判決判例時報 1761号107-114頁概要2日前からの高熱、呼吸困難を主訴として近医から紹介された2歳7ヵ月の男児。肺炎および気管支喘息の診断で午前中に小児科入院となった。入院時の医師はネブライザー、輸液、抗菌薬、気管支拡張薬、ステロイドなどの指示を出し、入院後は診察することなく定時に帰宅した。ところが、夜間も呼吸状態は改善せず、翌日早朝に呼吸停止状態で発見された。当直医らによってただちに救急蘇生が行われ、気管支内視鏡で気管分岐部に貯留した鼻くそ様の粘調痰をとりのぞいたが低酸素脳症に陥り、9ヵ月後に死亡した。詳細な経過患者情報気管支喘息やアトピーなどアレルギー性疾患の既往のない2歳7ヵ月男児。4歳年上の姉には気管支喘息の既往歴があった経過1995年1月24日38℃の発熱。1月25日発熱は40℃となり、喘鳴も出現したため近医小児科受診して投薬を受ける。1月26日早朝から息苦しさを訴えたため救急車で近医へ搬送。四肢末梢と顔面にチアノーゼを認め、β刺激薬プロカテロール(商品名:メプチン)の吸入を受けたのち総合病院小児科に転送。10:10総合病院(小児科常勤医師4名)に入院時にはチアノーゼ消失、咽頭発赤、陥没気味の呼吸、わずかな喘鳴を認めた。胸部X線写真:右肺門部から右下肺野にかけて浸潤影血液検査:脱水症状、CRP 14.7、喉にブドウ球菌の付着以上の所見から、咽頭炎、肺炎、気管支喘息と診断し、輸液(150mL/hr)、解熱薬アセトアミノフェン(同:アンヒバ坐薬)、メフェナム(同:ポンタールシロップ)、抗菌薬フルモキセフ(同:フルマリン)、アミノフィリン静注、ネブライザーメプチン®、気道分泌促進薬ブロムヘキシン(同:ビソルボン)、内服テレブタリン(同:ブリカニール)、アンブロキソール(同:ムコソルバン)、クロルフェニラミンマレイン(同:ポララミン)を指示した(容態急変まで血液ガス、経皮酸素飽和度は1回も測定せず)。10:30体温39.5℃、陥没気味の呼吸(40回/分)、喘鳴あり。11:15喘鳴強く呼吸苦あり、ステロイドのヒドロコルチゾン(同:サクシゾン)100mg静注。14:00体温36.7℃、肩呼吸(50回/分)、喘鳴あり。16:30担当医師は看護師から「喉頭部から喘鳴が聞こえる」という上申を受けたが、患児を診察することなく17:00に帰宅。19:30喉頭部の喘鳴と肩呼吸(50回/分)、夕食を飲み込めず吐き出し、内服薬も服用できず、吸入も嫌がってできない。22:00体温38.3℃、アンヒバ®坐薬使用。1月17日02:20体温38.1℃、陥没気味の呼吸(52回/分)、喘鳴あり。サクシゾン®100mg静注。06:30体温37.1℃、陥没気味の呼吸、咳あり。07:20ネブライザー吸入を行おうとしたが嫌がり、機器を手ではねつけた直後に全身チアノーゼが出現。07:30患児を処置室に移動し、ただちに酸素吸入を行う。07:40呼吸停止。07:55小児科医師が到着し気管内挿管を試みたが、喉頭部がみえにくくなかなか挿管できず。マスクによる換気を行いつつ麻酔科医師を応援を要請。08:10ようやく気管内挿管完了(呼吸停止後30分)、この時喉頭部には異常を認めなかった。ただちにICUに移動して集中治療が行われたが、低酸素脳症による四肢麻痺、重度意識障害となる。10:00気管支鏡で観察したところ、気管および気管支には粘稠な痰があり、とくに気管分岐部には鼻くそ様の固まりがみられた。10月26日約9ヵ月後に低酸素脳症により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張肺炎、気管支喘息と診断して入院し各種治療が始まった後も、頻呼吸、肩呼吸、陥没呼吸、体動、喘鳴がみられ呼吸障害は増強していたのだから、気管支喘息治療のガイドラインに沿ってイソプレテレノールの持続吸入を追加したり気管内挿管の準備をするべきであったのに、入院時の担当医師は入院後一度も病室を訪れることなく、午後5:00過ぎに帰宅して適切な指示を出さなかった。夜間帯の当直医師、看護師も、適切な病状観察、病態把握、適切な治療を怠ったため、呼吸不全に陥った。病院側(被告)の主張小児科病棟は主治医制ではなく3名の小児科医による輪番制がとられ、入院時の担当医師は肺炎、気管支喘息の患者に対し適切な治療を行って、起坐呼吸やチアノーゼ、呼吸音の減弱や意識障害もないことを確認し、同日の病棟担当医であった医師へきちんと申し送りをして帰宅した。その後も呼吸不全を予測させるような徴候はなかったので、入院翌日の午前7:00過ぎに突発的に呼吸不全に陥ったのはやむを得ない病態であった。裁判所の判断入院時の担当医師は、肺炎、気管支喘息の診断を下してそれに沿った注射・投薬の指示を出しているので、ほかの小児科医師に比べて格段の差をもって病態の把握をしていたことになる。そのため、小児科病棟では主治医制をとらず輪番制であったことを考慮しても、患者の治療について第一に責任を負うものであり、少なくとも夜間の当直医とのあいだで綿密な打ち合わせを行い、午後5:00に帰宅後も治療に遺漏がないようにしておくべきであった。ところが、入院後一度も病室を訪れず、経皮酸素飽和度を測定することもなく、ガイドラインに沿った治療のグレードアップや呼吸停止に至る前の気管内挿管の機会を逸し、容態急変から死亡に至った。患者側1億545万円の請求に対し6,950万円の判決考察1. 呼吸停止の原因について裁判では呼吸停止の原因として、「肺炎や気管支喘息に起因する気道閉塞によって、肺におけるガス交換が不十分となり呼吸不全に陥った」と判断しています。そのため、小児気管支喘息のガイドラインを引用して、「イソプロテレノールの持続吸入をしなかったのはけしからん、気道確保を準備しなかったのは過失だ」という判断へとつながりました。ところが経過をよくみると、容態急変後の気管支鏡検査で「気管および気管支には粘稠な痰があり、とくに気管分岐部には鼻くそ様の固まりがみられた」ため、気管支喘息の重積発作というよりも、粘調痰による気道閉塞がもっとも疑われます。しかも、当直医が気管内挿管に手間取り、麻酔科医をコールして何とか気管内挿管できたのは呼吸停止から30分も経過してからでした。要するに、痰がつまった状態を放置して気道確保が遅れたことが致命的になったのではないかと思われます。裁判ではなぜかこの点を重視しておらず、定時の勤務が終了し午後5:00過ぎに帰宅していた入院時の担当医師が(帰宅後も)適切な指示を出さなかった点をことさら問題としました。2. 主治医制をとるべきか当時この病院では部長医師を含む小児科医4名が常駐し、夜間・休日の当直は部長以外の医師3名で輪番制をとっていたということです。昨今の情勢を考えると、小児医療を取り巻く状況は大変厳しいために、おそらく4名の小児科医でもてんてこ舞いの状況ではなかったかと推測されます。入院時の担当医師は、肺炎、気管支喘息と診断した乳児に対し、血管確保のうえで輸液、抗菌薬、アミノフィリン持続点滴を行い、ネブライザー、各種内服を指示するなど、中~大発作を想定した気管支喘息に対する処置は行っています。それでも呼吸状態が安定しなかったので、ステロイドのワンショット静注を2回くり返しました。通常であれば、その後は回復に向かうはずなのですが、今回の患児は内服薬を嫌がってこぼしたり、ネブライザーの吸入をさせようとしてもうまくできなかったりなど、医師が想定した治療計画の一部は実施されませんでした。そして、当直帯は輪番制をとっていることもあって、入院時にきちんとした指示さえ出しておけば、後は当番の病棟担当医がみてくれるはずだ、という認識であったと思われます。そのため、11:00過ぎの入院から17:00過ぎに帰宅するまで6時間もありながら(当然その間は外来業務を行っていたと思いますが)一度も病室に赴くことなく、看護師から簡単な報告を受けただけで帰宅し、自分の目で治療効果を確かめなかったことになります。もし、帰宅前に患者を診察し、呼吸音を聴診したり経皮酸素飽和度を測るなどの配慮をしていれば、「予想以上に粘調痰がたまっているので危ないぞ」という考えに至ったのかも知れません。ところが、本件では血液ガス検査は行われず、急性呼吸不全の徴候を早期に捉えることができませんでした。そして、裁判でも、「入院時の担当医師はほかの小児科医師に比べて格段の差をもって病態の把握をしていたため、小児科病棟では主治医制をとらず輪番制であったことを考慮しても、患者の治療について第一に責任を負うものであり、少なくとも夜間の当直医とのあいだで綿密な打ち合わせを行い、午後5:00に帰宅後も治療に遺漏がないようにしておくべきであった」という、耳が痛くなるような判決が下りました。ここで問題となるのが、主治医制をとるべきかどうかという点です。今回の総合病院のように、医師個人への負担が大きくならないようにグループで患者をみる施設もありますが、その弊害としてもっとも厄介なのが無責任体制に陥りやすいということです。本件でも、裁判では問題視されなかった輪番の小児科当直医師が容態急変前に患者をみるべきであったのに、申し送りが不十分なこともあってほとんど関心を示さず、いよいよ呼吸停止となってからあわてて駆けつけました。つまり、入院時の担当医師は「5:00以降はやっと業務から解放されるので早く帰宅しよう」と考えていたでしょうし、当直医師は「容態急変するかも知れないなんて一切聞いてない。入院時の医師は何を考えているんだ」と、まるで責任のなすりつけのような状況ではなかったかと思われます。そのことで損をするのは患者に他なりませんから、輪番制をとるにしても主治医を明確にしておくことが望まれます。ましてや、「輪番制であったことを考慮しても、(入院指示を出した医師が)患者の治療について第一に責任を負う」という厳しい判決がおりていますので、間接的ではありますが裁判所から「主治医制をとるべきである」という見解が示されたと同じではないかと思います。小児科

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新規ドライパウダー吸入器の特性および簡便性の質的評価

 喘息やCOPDなどの慢性呼吸器疾患では吸入療法による治療が行われる。そのため、吸入器の選択と患者の吸入手技は長期管理のアドヒアランスに影響し、さらに治療効果に影響を及ぼす。 喘息およびCOPD患者へのインタビュー調査の結果、新たなドライパウダー吸入器(DPI)「エリプタ」は、他の吸入器と比べて満足度が高く好ましいものと認知されていることが、Henrik Svedsater氏らにより報告された。著者は「使用が容易で直感的である吸入器の開発は、喘息やCOPD患者の治療アドヒアランスを向上させるだろう」とまとめている。エリプタDPIは、2種類のドライパウダー吸入薬を1回で同時に吸入できるようデザインされた吸入器で、操作が容易で目盛が読みやすいのが特徴である。新規のICS/LABA配合剤、フルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)/ビランテロール(VI)(商品名:レルベア)のデバイスとして開発された。BMC Pulmonary Medicine誌2013年12月7日号掲載の報告。治験参加者に既存吸入器(ディスカス)と比較した使用感についてインタビュー調査 調査は、半構造化詳細質的面接法にて、エリプタが使用された6件のFF/VIについての第IIIa相臨床試験のいずれかに参加し完遂した患者を対象に、試験参加後2~4週間に行われた。 被験者に、吸入器のさまざまな特性の満足度について、また、現在使用している吸入器と比較した場合の好みについて質問した。回答は、帰納的内容分析アプローチにて検討され、また、主観的スケール(1~10)を用いた複数の基準で、被験者による吸入器の性能の評価も行われた。 対象者は、全米各地の試験サイト(喘息患者は3州、COPD患者は8州)から集められた。「デザイン」「フィット感」「みやすさ」「わかりやすさ」でエリプタを評価 結果、喘息患者33例、COPD患者42例から、エリプタの満足度が高いとの回答が得られた。回答者からは、操作が直感的で使いやすいとの声が聞かれる頻度が高かった。 現在使用している吸入器と比較してエリプタのほうが好ましい点としてしばしば引き合いに出されたのは、「人間工学的なデザイン」「マウスピースのフィット感」「ドーズカウンターのみやすさ」「わかりやすさ」であった。 喘息患者33例のうち、71%がディスカスと比較しエリプタがより好ましいと回答し、定量噴霧式吸入器(MDI)との比較では60%がエリプタがより好ましいと回答した。 またCOPD患者42例のうちでは、86%がディスカスよりも、95%がハンディヘラーよりも、また85%がMDIよりもエリプタが好ましいと回答した。 喘息およびCOPD患者における全体的な平均実行スコアは、9点以上(10点満点)であった。

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成人喘息患者の特徴の変化を分析 今後の課題が浮き彫りに

 名古屋第二赤十字病院呼吸器内科の石原 明典氏らは、急性増悪で入院となった成人喘息患者の特徴をレトロスペクティブに分析し、その変化について調べた。その結果、65歳未満の患者については、吸入ステロイド薬(ICS)の使用が一般的になってきているが喫煙率も上がっているという特徴が、また65歳以上の高齢患者については若い人よりもICSの使用率が高く喫煙率も高くないといった特徴が明らかになった。これらの所見を踏まえて、著者は「高齢者における喘息は、難治例が多い可能性があり、より効果的な治療戦略が必要と思われる」と報告している。 本検討は、自院に入院となった成人喘息患者の特徴を分析することで、喘息の予防と治療に関する残された課題を明らかにすることが目的であった。 研究グループは、2つの期間(A:2004年1月~2005年12月、B:2009年1月~2010年12月)に同院に入院した成人喘息患者を特定し、年齢、喫煙歴、ICS使用(配合剤を含む)などについてレトロスペクティブに分析した。 主な結果は以下のとおり。・各期間の総計患者数は、A群161例、B群88例であった。B期間患者数はA期間患者数と比べて約半減していた。・各群における65歳以上患者の割合は、同程度であった。・年齢で層別化した場合、65歳未満患者のICS使用率は、A群22.9%、B群35.8%であった。また現在喫煙率はA群42.7%、B群49.1%であった。・一方、65歳以上患者のICS使用率は、A群46.2%、B群48.6%であった。また現在喫煙率はA群19.7%、B群22.9%であった。・以上のように、65歳未満の喘息入院患者では、ICSが普及してきている一方で喫煙率が上昇しているとの特徴がみられた。ICSの効果が喫煙により抑制されていることが推察され、急性増悪を減らすために禁煙戦略が必要と思われた。・65歳以上患者では、ICSの使用が相対的に若い人より多いこと、また喫煙率も高くないという特徴がみられた。難治例が多いと推測され、高齢者の喘息におけるより効果的な戦略が必要と思われた。

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新規の吸入器、操作説明書を読むだけで99.3%が正しく操作

 喘息治療薬の新たな吸入器エリプタは、従来吸入器と比べて、誤操作の発生頻度が有意に低く、被験者の99.3%が操作説明書を読むだけで重大な誤操作を生じることなく操作可能であったことが、日本人を対象とした検討の結果、示された。聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院呼吸器内科の駒瀬 裕子氏らが、ドライパウダー吸入器の使用経験がない149例を対象とした薬剤非介入、無作為化非盲検試験の結果を報告した。エリプタは、同じく新規開発の1日1回吸入タイプのICS/LABA配合剤、フルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)/ビランテロール(VI)(商品名:レルベア)のデバイスとして開発された。アレルギー・免疫誌2014年1月号掲載の報告。年齢中央値65歳149例を対象に、3つのデバイスの操作性を評価 試験は、単施設(都内クリニック)で、他吸入器対照、3群クロスオーバーのデザインにて行われた。 研究グループは149例(年齢中央値65歳、うち男性75例)を、3つのデバイス[エリプタ(EP)、ディスカス(DK)、タービュへイラー(TH)]について異なる順番でデバイス操作の評価を受けるよう、6つの評価群に無作為に割り付けた。被験者に操作説明書を渡し、納得するまで読んでもらった後、操作手技を実演してもらい1回目の評価。次に評価者が実演した後、被験者に実演してもらい2回目の評価。2回目の操作が正しくできた場合は、次の吸入器の評価に移行するという方法で試験を進めた。2回目も誤操作した場合は、正しく操作できるまで指導を繰り返し、その時間を測定・記録した。 主要評価項目は、1回目の操作における誤操作の発生頻度とした。1回目に重大誤操作発生はEP群0.7%に対し、DK群19.5%、TH群68.5% 結果、1回目の操作で誤操作を生じた被験者の割合は、EP群2.7%(95%信頼区間[CI]:0.7~6.7)であった一方、DK群38.3%(同:30.4~46.6)、TH群83.2%(同:76.2~88.8)で、エリプタを基準としたオッズ比はDK群22.46(同:7.88~63.97)、TH群179.77(同:60.91~530.58)であった。 また、1回目の操作で「重大」な誤操作を生じた被験者の割合はそれぞれ、0.7%(同:0.0~3.7)、19.5%(同:13.4~26.7)、68.5%(同:60.3~75.8)であり、オッズ比はDK群35.74(同:4.80~266.07)、TH群320.99(43.61~2,362.56)であった。EP群で1回目の操作で重大な誤操作および誤操作を生じた被験者の割合は、他の両デバイス群と比較して有意に低かった(p<0.0001)。 このほか、被験者への質問票に基づく吸入器の操作性に関する評価では、最も操作しやすい吸入器としてエリプタを選択した被験者は121例(81.2%)であった[DK 24例(16.1%)、TH 4例(2.7%)]。エリプタを選択した理由としては、「操作方法のシンプルさ」が112例(75.2%)で最も多かったことが示されている。 以上を踏まえて著者は、「エリプタは、ドライパウダー吸入器の使用経験がない被験者でも、操作説明書を読むだけで99.3%が重大な誤操作を生じることなく操作することができた。このことから、正しい操作が容易に達成できる吸入器であることが確認できた」とまとめている。

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ゴキブリはピロリ菌を媒介するかもしれない【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第15回

ゴキブリはピロリ菌を媒介するかもしれないピロリ菌はおそらく経口感染であることは示唆されていますが、現時点で感染経路についてのコンセンサスはありません。消化器内科医や感染症科医にとっては有名な話かもしれませんが、ピロリ菌(Helicobacter pylori)を媒介する生物としてゴキブリ説があります。―――私はゴキブリが嫌いです。なぜかと問われても論理立てて説明できないのですが、とにかくキライなものはキライなんです。というわけで、ここではその写真を決して掲載しませんのでどうぞご安心ください。なんだかゴキブリと書くだけで寒気がしそうなので、申し訳ありませんが、この記事ではゴキブリのことを便宜的に「コックさん」と書かせてください。コックローチのコックさんです。Imamura S, et al.Vector potential of cockroaches for Helicobacter pylori infection.Am J Gastroenterol. 2003;98:1500-1503.この論文は、ピロリ菌の媒介生物としてコックさんを検証したものです。コックさんは3日間の絶食の後、ピロリ菌が含まれる環境と含まれない環境で餌と水を与えられました。その後、汚染されていない容器に移し、コックさんの足や体といった外殻部分と排泄物に対して、迅速ウレアーゼ試験やPCRを用いてピロリ菌の存在を調べました。コックさんを容器に移してから24時間後の排泄物からは、ピロリ菌が培養されました。迅速ウレアーゼ試験は3日後まで、PCRは7日後まで陽性が続きました。それに対して、コックさんの外殻からはピロリ菌はほとんど検出されませんでした(PCRは1日後まで陽性)。この結果、コックさんの排泄物が媒介となる可能性が示唆されました。ただ、ヒトにピロリ菌を媒介したということを証明した試験ではないため、あくまで一つの説として位置付けておくべきかもしれません。コックさんは小児のアレルギーや気管支喘息を起こす生物として知られており(Curr Opin Allergy Clin Immunol. 2013;4:417-425.、J Allergy Clin Immunol. 2003;112:87-92.)、家からコックさんを追い出すことに個人的には異論はありません。

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チオトロピウム、軽症から重症までの喘息に対する有効性示す~2014年度米国アレルギー・喘息・免疫学会議(AAAAI2014)~

※チオトロピウム レスピマットは、現在喘息の治療薬として承認されていないのでご留意ください。 2014年3月1日、米国サンディエゴで開催された2014年度米国アレルギー・喘息・免疫学会議(AAAAI)で、チオトロピウムの新たな第3相試験結果第3相試験GraziaTinA-asthmaの結果が発表され、低用量の吸入ステロイド薬による維持療法を受けてもなお、コントロールが不十分な喘息患者において、チオトロピウムレスピマットが肺機能を改善し、忍容性も良好であったことが示された。 GraziaTinA-asthma試験の筆頭著者であるピサ大学呼吸器内科准教授Prof. Pierluigi Paggiaro氏は、現在の治療選択肢をもってしてもなお、喘息患者の少なくとも40%がコントロール不十分で、喘息増悪リスクが高まることがあるため、あらゆる重症度の喘息患者において、新しい治療選択肢の安全性と有効性を検討することが重要であると述べた。 同学会では、GraziaTinA-asthma以外のチオトロピウムの気管支喘息についての大規模試験結果も報告されている。中等症を対象とした第3相試験MezzoTinA-asthmaの新たなサブ解析結果からは、中用量の吸入ステロイド薬による維持療法を受けてもコントロールが不十分な喘息患者において、チオトロピウムの1日1回の追加投与は、アレルギーの有無に関わらず、気道の閉塞を抑制することが示された。 重症例を対象とした第3相試験PrimoTinA-asthmaのサブ解析結果からは、吸入ステロイド薬/長時間作用性β刺激薬の併用治療を受けてもなお、コントロールが不十分な喘息患者において、チオトロピウムの1日1回の追加投与が、ロイコトリエン受容体拮抗薬の併用の有無に関わらず、肺機能を改善することが示された。 これらの試験結果から、ベーリンガーインゲルハイムは、チオトロピウムレスピマットがあらゆる重症度の喘息において、有効かつ忍容性が良好であることが示されたと発表した。ベーリンガーインゲルハイムのプレスリリースはこちら

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新しい喘息治療薬、FF/VIへの期待

 フルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)/ビランテロール(VI)配合剤(商品名:レルベア)は、新しい吸入器(エリプタ)を用いた気管支喘息に対する新規吸入用散剤であり、ICS/LABA配合剤としては、世界初の1日1吸入タイプの薬剤である。国立病院機構東京病院の大田 健氏らは、FF/VIの現時点におけるエビデンスをまとめ、「使用が簡便であることから、アドヒアランスや喘息コントロールを改善させうる可能性があり、実医療下で高い効果が期待できる薬剤であると考えられる」と報告した。アレルギー・免疫誌2014年1月号の掲載報告。日本人を含む国内外の臨床試験で喘息患者への有用性を検証 FF/VIは日本人を含む国内外の臨床試験により、喘息患者に対する有用性が検証され開発された新規吸入用散剤である。本報告では、FF、VIの用量設定試験の結果、FF/VI配合剤としての臨床試験結果などの概要が紹介されている。 用量設定試験により、有効性および忍容性の観点からICSであるFFは100μgおよび200μgの2用量が、LABAであるVIは25μgが喘息患者における適切な用量として選択された。またVIは、1日1回夜投与で24時間効果が持続する新規LABAであることが、海外試験(喘息患者対象7日間の二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験、12.5μgを1日1回夜vs. 6.25μgを1日2回投与)により確認・報告された。呼吸機能改善効果を24時間維持、忍容性も良好 FF/VI配合剤は、朝 vs. 夜投与の海外比較試験の結果、投与時間帯の違いによる日内変動への影響は観察されず、いずれの投与でも1日1吸入で呼吸機能改善効果を24時間維持した。また、日本人を含む国際共同二重盲検並行群間比較試験で、FF単剤よりも重度の喘息増悪の発現リスクが20%低下した(p=0.036)。ACQ7スコア0.75超の被験者についての評価でも、同スコア0.75以下へと良好に管理される可能性がFF単剤よりも約50%有意に高い(p<0.001)ことが示されている。 既存のICS/LABA配合剤との比較試験は、フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP)/サルメテロール(SLM)配合剤(FP/SLM、商品名:アドエア)との検討が行われた。12歳以上806例を対象とした海外二重盲検比較試験の結果、FF/VI 100/25μg 1日1回投与の臨床効果(治療24週間で評価)は、FP/SLM 250/50μg 1日2回投与と同程度であることが確認された。主要評価項目の24週時点のFEV1加重平均値(投与後0~24時間)の群間差(調整済p=0.162)、また副次評価項目のFEV1トラフ値、ACTスコア、AQLQスコアなども群間差が認められなかった(それぞれp=0.485、p=0.310、p=0.130)。 長期投与の安全性試験は国内外で行われ忍容性が確認された。本邦では18歳以上241例を対象とした52週間の多施設共同非対照並行非盲検試験が行われている。FF/VI 100/25μg(60例)、FF/VI 200/25μg(93例)、FF 100μg(90例)の3群にて検討した結果、副作用の発現率はそれぞれ23%、28%、18%で、FF/VI群での発現率に大きな違いはないことが確認されている。主な副作用は、ICSや吸入剤で知られている口腔カンジダ症、発声障害など、あるいはβ2刺激薬で知られている事象ですべて軽度であった。24時間尿中コルチゾール排泄量の評価(72例)では、FF単剤群ではベースライン時から52週時点までに約20%の減少が認められたが、FF/VI群では大きな減少は認められなかった。 以上を踏まえて著者は、「FF/VIはその簡便性から、実医療下で高い効果が期待できる薬剤であり、必ずしも十分とはいえない本邦の喘息コントロール状況が改善することを期待したい」とのコメントを記している。

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今後の喘息治療では何が求められるのか

 2014年1月27日(月)、東京都千代田区でグラクソ・スミスクライン株式会社により、気管支喘息治療剤「レルベア エリプタ」(一般名:ビランテロールトリフェニル酢酸塩/フルチカゾンフランカルボン酸エステル)のメディアセミナーが開催された。本剤は昨年12月9日に発売された新規のICS/LABA製剤である。当日は3つの講演が行われた。 【なぜレルベアが患者にとって重要か】 はじめに、同社呼吸器事業本部長であるエリック・デュベイ氏より、レルベアの患者さんへのベネフィットを中心とした講演が行われた。  デュベイ氏は、レルベアは1日1回1吸入で喘息症状に対する有効性(FEV1改善、QOLの向上など)が期待できるICS/LABAであること、また吸入デバイス(エリプタ)についても、より使いやすいよう開発されているため服薬アドヒアランス向上が期待できることを述べた。さらに、安全性のプロファイルについても、同社よりすでに発売されている1日2回吸入のICS/LABA製剤であるアドエアと同等であるという。【喘息患者の現状とガイドライン治療目標との間に大きな開き】 続いて、国際医療福祉大学 臨床医学研究センター教授/山王病院アレルギー内科教授である足立 満氏により「喘息治療 最新の実態と課題」と題する講演が行われた。 足立氏は、喘息の治療薬は、1990年代初頭を境に気道の狭窄に対する気管支拡張薬主体の治療薬から気道の慢性炎症に対する抗炎症薬主体の治療薬にシフトした、と述べた。これらを背景に喘息死は年々減少しているが、喘息治療の目標である「健常人と変わらない日常生活が送れるようにする」という点については十分といえないのが現状だという。事実、AIRJ(全国喘息患者電話実態調査)2011の結果から、喘息患者の実際のコントロール状態と治療目標との間には大きな開きがあることがわかっている1)。 さらに足立氏は、喘息治療における課題として治療継続率の低さを挙げた。この主な原因として「自己判断による中止」、「服薬を忘れる」、「服薬の手間」などがある。服薬については、喘息患者の多くが1日1回の吸入が治療を望んでいる現状がある。また、高齢化の進む今、より簡便なデバイスが求められるようになっているため、「レルベア」は1日1回1吸入、より使いやすい吸入デバイスであるという点で、治療継続率の向上が期待できるという。【レルベアの登場で今後の喘息治療はどう変わるのか】 最後に、広島アレルギー呼吸器クリニックの保澤 総一郎氏により「治験・患者アンケートからみる今後の喘息治療への期待」として講演が行われた。 保澤氏によると、喘息悪化の原因はさまざまだが、喘息症状により気道収縮を繰り返すと気道のリモデリングが起こり、難治化するという。その点、ICS/LABAは気道リモデリング抑制効果が期待できると述べた。レルベアのICSであるフルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)は吸入ステロイド薬のなかで、最もグルココルチコイド受容体親和性を示し、強い抗炎症効果がある。加えて、グルココルチコイド受容体の核内移行作用も長時間持続することから、持続的な抗炎症効果が期待できるという。 保澤氏は足立氏同様、服薬アドヒアランスを喘息治療における課題としている。実際、保澤氏のクリニックで行われた調査では、1日1回1吸入を支持する患者は8割以上に上っている。    保澤氏は、レルベアが1日1回1吸入であることに加え、朝・夜いずれの服用においても呼吸機能改善効果が24時間維持され、安全性にも影響が認められなかったことから、喘息の服薬アドヒアランス向上への期待感を示した。そのうえで、より良い喘息治療の実現を目指すにあたってレルベアは有用な選択肢となりうると締めくくっている。1)足立満ほか. アレルギー・免疫. 2012; 19: 1562-1570.

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1日1回投与の新規喘息治療薬、国内長期投与における安全性・有効性を確認

 成人気管支喘息患者を対象とした52週間長期投与試験の結果、1日1回投与タイプの新規吸入薬フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ビランテロール配合剤(FF/VI、商品名:レルベア)およびFF(フルチカゾンフランカルボン酸エステル)単剤は、いずれも忍容性が良好であり、朝・夜のピークフロー値(PEF)および喘息症状の改善・維持が認められた。近畿大学医学部奈良病院 呼吸器・アレルギー内科教授の村木 正人氏らが、日本人の患者243例について行った多施設共同・非対照・非盲検試験の結果を報告した。アレルギー・免疫誌2013年10月号掲載の報告より。日本人243例にFF/VI 100/25μg、同200/25μg、FF 100μgを52週投与し検討 試験は、喘息治療薬を定期使用している18歳以上患者を対象とし、30施設で被験者を登録して行われた。既存の治療薬に応じて被験者を、(1)FF/VI 100/25μg(2)同200/25μg、(3)FF 100μgを、1回1吸入、1日1回夜投与のいずれかに切り替え52週間投与し、安全性と有効性を評価した。 安全性は、有害事象(試験薬との因果関係問わず)と副作用(試験薬との因果関係あり)を評価。有効性は、観察期間開始日(試験薬投与開始の2週間前)に配布した患者日誌に基づき、PEF(朝と夜の試験薬投与前に測定)、喘息症状関連項目(喘息症状スコア、24時間無症状日数の割合、24時間救済薬未使用日数の割合)を評価した。解析はintent-to-treat(試験薬を1回以上投与した全患者と定義)にて行われ、中止例も含む243例を組み込み評価した。全投与群で朝・夜PEFが有意に改善、喘息症状も改善 被験者243例の内訳は、FF/VI 100/25μg群60例(女性63%、51.3歳、スクリーニング時%FEV1 93.00%)、同200/25μg群93例(同53%、52.6歳、88.42%)、FF 100μg群90例(同60%、46.8歳、90.78%)であった。試験完了例は220例(それぞれ55例、79例、86例)であった。 結果、いずれの治療群も52週間投与時の忍容性は良好であった(36週超投与はそれぞれ95%、85%、96%)。服薬コンプライアンスは全投与群とも98%以上と良好であった。 有害事象の発現頻度は12週あるいは24週ごとにみても同程度で、長期投与による増加の傾向は認められなかった。副作用(それぞれ23%、28%、18%)は、多くが口腔カンジダ症や発声障害などICSやβ2刺激薬で知られている事象であった。重篤な副作用はFF/VI 100/25μg群の肺炎1例(2%)のみで、同症例は抗菌薬治療にて回復している。 有効性については、全投与群において、朝および夜のPEF共に有意な改善が認められた。ベースライン時からの変化量の平均値(SD)は、FF/VI 100/25μg群朝18.29(36.30%)・夜20.23(35.27%)、同200/25μg群朝23.98(38.67%)・夜26.29(40.51%)、FF 100μg朝12.38(32.30%)・夜15.64(30.77%)であった。また、すべての評価時点(12、24、36、52週)で全投与群共有意な改善が認められた。 喘息症状関連項目も有意ではないが数値的に改善が認められている。有意な改善が認められたのは、FF 100μg群の24週後の喘息症状スコア(ベースライン時からの変化量の平均値[SD]:-0.20[0.85%])および24時間無症状日数の割合(同:8.60[27.70%])と、FF/VI 200/25μg群の52週後の24時間救済薬未使用日数の割合(同:4.57[15.42%])であった。 以上を踏まえて著者は、「日本人成人気管支喘息患者に対するFF/VI100/25μg、同200/25μgまたはFF100μgの1回1吸入、1日1回夜投与の長期投与時の忍容性は良好であった。また、PEFおよび喘息症状にも改善がみられ、52週間を通して維持された」と結論している。

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カミナリ喘息【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第11回

カミナリ喘息呼吸器内科医として、研修医の方々に「雷やストレスは気管支喘息を悪化させるリスク因子なんだよ」と薀蓄(うんちく)を酒の肴に語ることがあります。「本当なんですか?」と言われて、「あれ、どうだったっけ?」と思い、調べなおしてみました。結論としては、雷によってある程度の気管支喘息の悪化が観察されるようです。今回紹介する論文以外にも、過去にいくつか報告があります(J Epidemiol Commun Health. 1997;51:233-238)。Dales RE, et al.Dales RE, et al.The role of fungal spores in thunderstorm asthma.Chest. 2003;123:745-750.この研究は雷による気管支喘息、すなわち「カミナリ喘息」について入院した小児に基づいて報告されたものです。東オンタリオ小児病院のデータを用いて解析されました。雷雲が観察された日(151日)は、そうでなかった日(919日)と比較して、1日あたりの気管支喘息による受診が8.6人/日から10人/日と15%増加しました(p<0.05)。また、真菌の飛散胞子は雷雲が観察された日では約2倍に増えていたと報告されました(不完全菌類が1,512/m3から2,749/m3に増加)。真菌のほとんどがクラドスポリウムでした。また、担子菌類も雷雲が観察された日に有意に多かったそうです。過去の試験では、悪天候によって数倍から10倍という喘息発作の頻度の増加がみられたという報告もあるのですが、現時点ではこの東オンタリオ小児病院の15%程度の増加というのが現実的に妥当なデータだろうと考えられています。ただ、雷、雨、風のすべての因子を独立して検証することは気象学的に不可能ですので、雷単独が気管支喘息を悪化させるかどうかはわかりません。雨や雷といった悪天候の場合、花粉や真菌は雨とくっついて大気中から減るというイメージがあります。飛散量が確実に増えるのか減るのか、まだまだ議論の余地があります。しかし強い風によって飛散量が増えるため、悪化するのではないかという見解(Lancet. 1985; 2:199-204)があるだけでなく、悪天候の前の日が“晴れ”だった場合、舞い上がったアレルゲンが雨とともに落下してくるといわれています。そのため、雨であろうとアレルゲンが一時的に増えることがあります。とくに、小雨のときは上空から落下してくる雨粒が途中で蒸発してしまい、花粉や真菌だけが地表に落下してくると考えられています。

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より良好な喘息管理を目指し…スマホアプリを追加

グラクソ・スミスクライン(GSK)社は吸入ステロイド薬のパイオニアとして30年余にわたり世界の喘息治療に貢献している。同時に患者の啓発についても、永年にわたり力を注いでいる。近年は、インターネットでも積極的に情報配信しており、本邦でも喘息総合情報サイトZensoku.jp(http://zensoku.jp)で、一般大衆や患者に対する喘息の啓発に取り組んでいる。そのようななか、およそ1年前より、喘息患者を対象にした本邦オリジナルのスマートフォン(iPhone)アプリを公開している。今回提供しているそのアプリについて、グラクソ・スミスクライン株式会社 呼吸器事業本部 中島康一郎氏に聞いた。アプリ開発の背景には、喘息における服薬継続率の低さがある。これには、症状がないため服薬が滞る、症状の増悪に対する病識がなく受診しないなど多くの理由があるものの、喘息治療における治療アドヒアランスは喫緊の問題だといえる。このような状況のなか、日々の喘息管理に役立ツールが欲しいという、患者の声、医師の声は常にあったという。同社が開発した喘息アプリは2種。ひとつは成人患者向けアプリ「ぜんそくアプリ」、もう一つは小児患者の母親向けアプリ「ぜんそくよくな〜れ!」である。いずれも対象患者の特性を考慮し、使いやすく設計されている。豊富な情報を提供し、アドヒアランスをサポートする「ぜんそくアプリ」主なアプリ機能カレンダー(アラーム機能付き)喘息コントロールテスト日替りコンテンツ など毎日の喘息症状をチェックし、記録に残す事は長期管理にとって有用である。しかし、日々こまめにアナログで記録する事は容易ではない。当アプリの機能の一つ“カレンダー”は、毎日の症状を4段階のアイコンから選びタップするという、簡単な方法で喘息症状を記録できる。また、症状チェックとともに、毎日の服薬チェック機能もあり服薬継続をサポートしている。さらに、症状を記録するメモ機能、動画撮影機能がある。これは増悪や症状出現時、メモで記録したり、その状態をスマホのビデオで撮影できる。この機能を活用し、診察時に主治医に見せる事で客観的な情報を提供できる機能である。喘息のコントロール状況を客観的指標で評価することも重要なことである。当アプリの“喘息コントロールテスト”には、世界的な喘息評価指標であるACT(Asthma Control Test)の質問票が入っており、その指標を用いてコントロール状態を評価することができる。この評価は1ヵ月ごとに記録され12ヵ月分がグラフ化される。これにより中長期のコントロール状況が客観的に把握できる。さらに、日々の生活の中で治療アドヒアランスを向上させるために、服薬や受診日、コントロールテスト実施日のアラーム機能も付いている。服薬アラームについては、3薬剤まで登録でき、服薬時間を設定すると薬剤ごとにアラームで知らせてくれる。薬剤は製品名で登録でき、グラクソ・スミスクライン製品であれば自動的にその製品の指導書や指導ビデオが見られる機能もつく。高齢者など適正な吸入手技を完璧に覚えていることが容易ではない患者にとっても有用な機能である。ACTについてはこちら http://zensoku.jp/tools/tools_002.html「ぜんそくアプリ」のトップ画面、“カレンダー”には記録された喘息症状が表示される毎日の症状を4段階のアイコンから選びタップする。そのほか、日記メモ、動画撮影機能がある喘息コントロールテストACTを用いている服用時間のアラーム機能。そのほか、受診日、コントロールテスト実施日もアラーム設定できる飽きさせない小児喘息患者の母親向けツール「ぜんそくよくな~れ!」主なアプリ機能ぜんそく予報ぜんそくチェックぜんそく救急箱ポケットカルテ など「ぜんそくよくな〜れ!」は小児喘息患者の日常管理のサポートを考慮し、より良好な管理のために患者の母親が入力する設定となっている。同アプリのトップ画面は“ぜんそく予報”。気圧や気温の変化といった気象条件等をもとに、地域ごとの喘息発作危険度を出して毎日知らせている。“ぜんそくチェック”では、月ごとに注意すべき喘息のリスクを紹介するとともに、それぞれのリスクでの症状経験を記録できる。また、小児喘息のコントロール指標C-ACTを用いた小児喘息コントロールテストも可能である。さらに、喘息の急性発作や緊急時の対応を提供する“ぜんそく救急箱”コーナーもある。“ポケットカルテ”には、前述のぜんそくチェックやコントロールテストの結果が蓄積される。啓発のみならず、どのような時に症状がでたのかを記録できるため、毎日の管理に役立てることができる。「ぜんそくよくな~れ!」のトップ画面には毎日の“ぜんそく予報”が小児喘息コントロールテストC-ACTを用いている「ポケットぜんそくカルテ写真としてカメラロールに保存できるC-ACTについてはこちら http://zensoku.jp/child/child_002.html豊富な情報を有するウェブサイトとの連動で啓発これら2つのアプリからは、同社が運営する喘息総合情報サイトZenoku.jpへアクセスできる。これにより、アプリだけではカバーできない情報をウェブサイトでカバーしている。Zensoku.jpでは、喘息の疾患啓発、日常生活のヒント、評価ツールなど数多くの情報がある。なかでも、スポーツジャーナリスト二宮清純氏が、喘息を克服したアスリートにインタビューする「二宮清純のゼンソク人間学」(http://zensoku.jp/athlete/index.html)は、喘息を持ちながらも一流のアスリートとなった著名人の体験を通し、喘息をより深く理解するとともに、コントロールすれば通常の人と変わらない活動ができる疾患であることを伝えている。これは一般大衆にとっては、喘息という疾患を理解する情報ツールとなり、喘息患者にとっては大きなエールとなる。このようなスマホとの連携も鑑み、同サイトではスマホ対応ページも用意する予定だという。主なアプリ機能喘息総合情報サイトZensoku.jp将来の患者―医療者間の情報共有のために将来、こうしたアプリを通して患者と医療者が情報を共有することができれば、喘息の長期管理も大きく変化していくのであろう。患者と医療者がアプリを通してつながっていれば、調子が悪い患者や、服薬チェックを怠っている患者の情報を、かかりつけ医やかかりつけ薬局などの医療者に知らせることができる。そして、医療者側から患者にアクセスをとり、状態や服薬状況が確認できるようになるわけである。近年の疫学データでも未だコントロール不十分だったり、喘息症状を経験している患者は少なくない。喘息はきちんと管理すれば普通の人と変わらない生活が送れる疾患である。「患者さんへの疾患啓発、治療のサポートとして、ツール、ウェブサイトを役立てていただきたい」と最後に中島氏は述べた。グラクソ・スミスクライン株式会社 喘息アプリはこちらから http://zensoku.jp/app/index.html「ぜんそくアプリ」「ぜんそくよくな~れ!」無料カテゴリ:メディカル条件: iPhone、iPod touch およびiPad 互換iOS 4.3 以降が必要

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エキスパートに聞く!「喘息治療の最新事情(成人編)」Q&A Part2

日常診療で抱く疑問に、専門医がわかりやすく、コンパクトに回答するコーナーです。成人気管支喘息について、会員医師からの疑問にご回答いただきました。嗄声への対処法について教えてください。嗄声は吸入ステロイド薬による喉頭への影響で起こる副作用です。嗄声に対して、うがいは重要ですので吸入のタイミングは、うがいがしやすい洗顔時がよいかと思います。しかしながら、うがいによって喉頭に到達した吸入ステロイド薬が必ずしも除去できるわけではありませんので、その点は念頭に置いていただければと思います。また、食事の直前に吸入することで、喉頭に付着している薬剤が食物とともに胃に送られ、嗄声が軽減されることもありますので、試してみる価値はあるかと思います。製剤的な観点からいうと、一般にエアロゾル製剤は嗄声を来しにくいといえます。なかでもプロドラックのシクレソニド(商品名:オルベスコ)は嗄声の影響が少ないとされていますので、お試しになるのもよいと思います。今後、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)が喘息の適応を取得すると聞いていますが、難治性喘息における効果や使用方法について教えてください。LAMAの知見はそれほど多くありませんが、吸入ステロイド薬でコントロール不十分な症例における上乗せ効果がLABAと同等であることが、最近報告されています。従来、喘息の適応がなかったため、吸入ステロイド薬にまずLAMAを上乗せするということはありませんでしたが、今後、知見が集積し、保険適用も通れば、そのような治療も行われるでしょう。これまでLAMAは、喘息ではβ2刺激薬に比べて効果が弱いと理解されており、LAMAがLABAと比較して同等であるかについてはさらに検討する必要があります。また、COPDを合併する喘息や、LABAで頻脈や振戦などの副作用が出るような患者さんにはLAMAの選択がよいと思います。さらに、喀痰細胞を使った研究で好酸球が少なく、好中球が多い患者さんにはLAMAの有効性が高いという報告もあるので、この点も今後使い分けのポイントになる可能性があります。

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ひとり親家庭の子供は喘息になりやすい

 母子家庭・父子家庭(以下、ひとり親家庭)の子供は両親のいる子供と比べて、喘息による救急外来や病院の再受診が多いことが、シンシナティ小児病院医療センターのTerri Moncrief氏らによって報告された。さらに、この主な要因として世帯所得の違いが根本にあることにも言及している。The Journal of asthma誌オンライン版2013年12月10日の掲載報告。 本研究の目的は、ひとり親家庭の子供と小児喘息による健康管理施設の再受診状況との関係を明らかにし、この関係を説明する家族レベルでの心理社会的変数を検討することである。 喘息または気管支拡張薬に反応を示す喘鳴により、健康管理施設を利用した1~16歳の526例の子供と、その子供の介護者の結婚状況を前向きコホートにより分析した。本分析によると、ひとり親であることは1つのリスクカテゴリーとなることがわかった。 本研究のアウトカムは小児喘息による施設の再受診とした(救急外来または病院の再入院)。評価は4つの心理社会的変数(世帯所得、介護者が有する心理的苦痛のリスク、親に対する子供の比率、保育園の登園率やセカンドハウスの利用状況)で行った。 主な結果は以下のとおり。・コホートに登録された子どもの40%が12ヵ月以内に喘息で救急外来や病院を再受診した。・全介護者のうち59%はひとり親であった。・ひとり親であることと、それぞれの心理社会的変数との間には有意な関連が認められた。・低所得世帯や子供比率が高い世帯の子供は、高所得世帯や子供比率が低い世帯の子供と比べて、喘息による救急外来や病院の再受診が多かった(それぞれ、p<0.005)。・ひとり親の子供は両親のいる子供と比べて、喘息による救急外来や病院の再受診が多かったが(オッズ比:1.44、95%信頼区間[CI]:1.00~2.07、p<0.05)、所得により調整を行うと有意差は認められなかった。

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日誌からスマートフォンへ「チェンジ!喘息」患者さんアプリ 一人一人の患者さんの自分に合った治療をサポート

2012年10月、アストラゼネカ株式会社とアステラス製薬株式会社は、喘息患者を対象にした無料アプリ「チェンジ喘息!アプリ」の提供を開始した。そこで、当アプリ開発に携わったアストラゼネカ株式会社プライマリケア事業部 太田篤氏に、開発の背景とその狙いについて聞いた。喘息治療の問題点を解決するために喘息治療の問題点は二つ。治療アドヒアランスと医師・患者間のコミュニケーションである。この二つの問題点のサポートを目的にアステラスと共同でアプリを開発したという。本邦の喘息の治療アドヒアランスは、1年間継続受診率30%程度と低い。多くの患者さんは症状が良くなると治療が終了したと判断し、服用を中断してしまう。その間、気道炎症は悪化し、症状の増悪を招き、最悪の場合は喘息死にいたる。また、医師・患者間のコミュニケーションについても、患者さん自身の状況が医師に上手く伝えられないなど医師と患者さんの間にギャップが存在することが明らかになっている。アラート機能が改善する治療アドヒアランス向上主なアプリ機能お薬服用入力機能(アラート機能付き)喘息状態入力機能グラフ機能ソーシャルネットワーク機能喘息の長期管理には継続的な服薬が重要であることはいうまでもない、しかし、忙しい日常生活の中、服薬を忘れてしまうことも少なくない。そこで、確実な服薬をサポートするため、毎日決まった時間に服用タイミングを知らせるアラート機能を付けた。また、服薬時間が異なる複数の薬剤を服用するというケースも少なくないが、このアラートは薬剤ごとに設定できる。喘息手帳は家に置いたままだが、常に持ち歩くというスマートフォンの特性を生かした実用的な機能である。薬剤の服用時間を設定できるアラート機能薬剤ごとに時間設定することも医師・患者間コミュニケーションを改善するグラフ機能適切な喘息治療のためには、服薬状況と喘息症状が医師と患者さんの間で共有されなければならない。しかし、患者さんは医師を前にすると自分の状態を上手く伝えられない傾向がある。そのため、服薬状況と喘息症状が経時的にグラフ化される機能を付けた。服薬状況は“はい”か“いいえ”で入力(薬剤ごとの入力も可能)。喘息状態とその時の気分を入力は、選択ボタンをクリックするだけで、データが自動的にグラフ化される。簡便で誰でも使える設計である。診察時に患者さんがこの情報を医師に見せることで、服薬状況とその際の状態が客観的な情報として共有される。また、グラフを見せることが患者さんにとって話しやすい環境を作る効果もあるようだ。その日の体調や喘息状態のコメントを入力コメントはグラフ化されて見ることができ、アバターを通した発言として共有化される入力情報のグラフ表示喘息の変動性をカバーする機能喘息は変動性疾患であり、毎日服薬していても、気候の変化など何らかの増悪要因に晒されると、急激に悪くなることがある。そのため、アプリには毎日の天気予報が出る。また、花粉飛散状況や湿度などから割り出される喘息指数も表示される。症状の変化を予測することは困難だが、このように予め情報を知ることができると対処方法はまったく異なってくるという。天気予報と喘息指数が表示される患者さん同士で情報共有し治療モチベーション向上もう一つの機能として、このアプリを使っている患者さん達の状態や服薬状況が参照できるソーシャルネットワーク機能がある。同じ環境にいる人たちと情報を共有することで使用を継続できるようになる。また、患者さんは絶えず自分の境遇を理解して欲しいと願っている。ほかの患者さんが頑張っている様子を見たり、体験を共有することで、連帯感が得られ、治療へのモチベーション向上も期待できる。喘息の状態と治療薬服用状況を共有できる喘息の継続教育もサポート近年、喘息治療における患者さん教育の重要性が訴えられている。このアプリをダウンロードすると、アストラゼネカ社とアステラス社が運営する喘息患者向け情報サイト「チェンジ!喘息」へも容易にアクセスできる。アプリを使うことで継続的な喘息教育もサポートされる訳である。ITが喘息の長期管理を進化させる最後に今後の展開について聞いた。今回のアプリでは、従来にはなかった“患者さんからのメッセージ発信”の第一歩を作ったが、急速な進化を遂げているソーシャルネットワーク機能の活用は今後も様々な方向で考えたいという。同アプリは10月の公開後から多くのダウンロードがあり、医師からも「困っていた継続服薬に役立つ」といった声が寄せられるなど好評だという。口頭での情報交換から喘息日誌に、そして今デジタルへと情報媒体の変化が起こっている。ITの進化が喘息長期管理に及ぼす影響は今後も加速してくであろう。

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