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事例29 ツロブテロール(商品名: ホクナリン テープ)1mgの査定【斬らレセプト】

解説事例では、熱発にて初診を行なった7歳の患者に対して処方したツロブテロール(ホクナリン®)テープ1mgが、A事由(医学的に適応と認められないもの)を理由に査定となった。医師から、コメントで「咳が激しい」と訴えたが査定となった。その理由は何かと問い合わせがあり、調べてみた。レセプトを確認すると、傷病名欄には急性上気道炎のみの記載であった。他には急性上気道炎に対する薬剤が処方されているのみであった。急性上気道炎に対してホクナリン®テープの適応があるかどうか添付文書を精査した。添付文書の効能・効果には、「気管支喘息、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫の気道閉塞性障害に基づく呼吸困難など諸症状の緩解に適応する」とある。したがって、レセプトに記載された急性上気道炎のみでは医学的に適用が認められないとしてA事由にて査定となったものであろう。経験則では、インフルエンザなどの医学的に気管支炎を伴う疾病が記載されていれば、急性気管支炎などの適用病名を記載しなくても査定となっていない。しかし、査定が増えている薬剤であるので、留意して算定をお願いしたい。

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スピリーバ レスピマットが気管支喘息の適応を取得

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:青野吉晃氏)は、2014年11月18日、スピリーバ レスピマットが新たに気管支喘息の適応を取得したと発表した。 スピリーバは抗コリン作用性の長時間作用性吸入気管支拡張剤で、その効果は24時間以上持続する。慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、すでに世界各国で承認されており、日本ではスピリーバ吸入用カプセル18μgとして2004年12月から、スピリーバ レスピマットとして2010年5月から販売されている。 スピリーバ レスピマットが今回新たに取得した適応は、「下記疾患の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解 気管支喘息(重症持続型の患者に限る)」。治療ステップと現在の症状から判定された重症持続型の患者が対象となる。 今回の追加適応取得に際し、日本ベーリンガーインゲルハイム代表取締役社長 青野吉晃氏は、「現在の標準的な治療を受けているにも関わらず、気管支喘息の患者さんの半数以上は週1回以上の喘息症状に悩まされています。スピリーバレスピマットは優れた呼吸機能改善効果で“今の症状”を改善し、喘息増悪の発現リスクの低下から“未来のリスク”を軽減させることが期待できる治療薬です。喘息治療のアンメット・メディカル・ニーズを満たす薬剤として、スピリーバレスピマットが新たな治療の選択肢となることを期待しています」と述べている。日本ベーリンガーインゲルハイムのプレスリリースはこちら

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アコンカグア山に登ると気管支喘息が悪化するかもしれない【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第30回

アコンカグア山に登ると気管支喘息が悪化するかもしれない アコンカグア山(Wikipediaより使用) 私は慢性の呼吸器疾患がある患者さんには、あまり高地には行かないように注意しています。多くの患者さんが悪化して帰ってきますので、とくに何千メートルという山に登山する場合は、重症度に応じてドクターストップを考慮しなければなりません。 さて、実際の論文はどういったものがあるかといいますと、南米大陸最高峰のアコンカグア山に登ったら気管支喘息が悪化するという報告があります。『世界の果てまでイッテQ!』でイモト アヤコが挑んだ山として有名です。その標高は6,960mです。Seys SF, et al.Effects of high altitude and cold air exposure on airway inflammation in patients with asthma.Thorax. 2013; 68: 906-913. Epub 2013 Jul 2.この論文は、18人のアコンカグア山に登頂しようと試みた気管支喘息の患者を対象にした研究です。患者のうち13人は男性でした。それにしても、よく気管支喘息のある身でアコンカグアに登ろうとしましたね。アコンカグア登頂前に、低酸素試験や寒冷曝露試験に臨み、登頂前後には呼吸機能検査だけでなく血液検査も実施しました。おおよその研究シェーマは図の通りです。 画像を拡大する 図. 本研究のシェーマ(Seys SF, et al.Thorax. 2013 Oct; 68(10): 906-913. より改変引用)事前に1秒量が軽度低下することは低酸素試験や寒冷曝露試験によってわかっていたのですが、アコンカグア登山中の1秒量と努力性肺活量の低下はやはり10%以上でした。また、登山中には気管支喘息の症状も悪化しました。アコンカグア山から帰ってきた後の喘息コントロールテスト(ACT)と、1秒量も低下していました。恐るべきことに、登山前の低酸素試験で酸素飽和度が低かった患者さんは、登山によって高山病にかかる危険性が高かったそうです。筆者らによれば、事前に行われた寒冷曝露試験の呼吸機能に対する影響が大きかったことから、アコンカグア登山による気管支喘息の悪化の原因は、高地でも低酸素でもなく寒冷ではないかと考えました。寒冷曝露によって気道の好中球性炎症が惹起され、それが一時的な気管支喘息の悪化をもたらすようです。個人的にはすべての因子が相加相乗的に作用して合わせ技一本だった感じもしますが、少なくともしっかりと気管支喘息のコントロールができていない患者さんは、アコンカグア山のような高地には行かないほうが無難かもしれません。

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慢性閉塞性肺疾患(COPD)の内科的治療の選択について(解説:小林 英夫 氏)-261

まず、掲載された本論文の概略にお目通しいただきたい。本論文から読み取るべき点は、どのような薬剤が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬として優れているかについてランダム化試験を実施すべきである、という記述に尽きるというのが筆者の印象である。 Gershon氏らが指摘するように、COPDの内科的治療法には複数の選択肢が存在し、いずれも有効性を支持する報告に裏付けられているものの、最適な治療法がどれなのかについては不明なままである。 本報告では長時間作用性β2刺激薬と吸入ステロイド薬(LABA+ICS)併用群とLABA単独群間で、死亡と入院の発生をアウトカムとして検討を行った。約2年半の追跡によりLABA+ICS併用群において軽度良好な結果が示されたが、この記述をそのまま受け入れるには少なからぬ問題点がある。 本論文は約1万2,000例という多数例を基にした解析であり、それなりの意義があることは間違いない。また、本邦で2薬剤の有効性比較試験を多数例で実行することの困難性を想定すれば、本研究から得られる示唆は重要であろう。しかし、本報告を根拠として今後のCOPD治療を変更することは早計に思う。本報告は薬剤効果を比較する試験デザインではないことを意識していただきたい。 以下、本論文の特徴を列記すると、まず、本研究は後ろ向き観察研究であり、2群の優劣を判定するためのランダム化比較試験ではない。次に、症例はadministrative databasesからの抽出であり、COPDの診断の妥当性や精度について検討できていない。その点について、同著者の既報(1 を引用し、診断精度はsensitivity、specificityともに80%以上としている。しかし、1秒量、1秒率、画像所見など検討されていないのである。さらに25%の症例は呼吸機能検査が実施されていない。 同著者は気管支喘息でも同登録データに基づく診断精度を報告し(2、そちらもsensitivity、specificityがそれぞれ約80%としている。この論文でもピークフロー値などの臨床検査は記述されていない。臨床で重要視する項目と疫学的観察における視点には少なからぬ差異が存在するようである。 上記2点に加え、対象COPD群には糖尿病が25%以上、気管支喘息が約30%、高血圧が70%以上に合併していた点は、本邦症例と比すると近似した集団なのであろうか。 4点目として、集計母集団がLABA単独群3,258例、併用群3万4,289例であり、propensity score matchingを導入した後でもLABA+ICS併用群8,712例、LABA単独群3,160例となっており、対等な2群とは評価しがたい大きな開きが存在している。当初から治療選択にバイアスが存在していることが想定される。 5点目として、サブグループとしての気管支喘息+COPD群はLABA+ICS併用により良好なアウトカムが得られたと報告している。そもそも、気管支喘息合併群をLABA単独で治療するという症例が含まれていることが、行政登録データに基づく症例選択の限界であろう。治療法の優劣を判定する目的では、本研究のような後ろ向き解析には限界があることを前提に、本論文を評価していただきたい。 しかし、疾患歴、入院歴、救急受診歴などの医療情報登録システムが構築され、疫学研究に活用できるカナダの体制を知らされると、本邦でも早急にこのような観察研究が可能となる日を願ってやまない。

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ステップ4の気管支喘息患者にできればステロイドを内服させたくない(解説:倉原 優 氏)-258

外来で診ている最重症の気管支喘息患者では、ステロイドの経口投与やIgEをターゲットにしたオマリズマブ(商品名:ゾレア)を使うことがある。それでもコントロールができない患者は多く、さらなる武器に期待している呼吸器内科医は少なくないだろう。その1つが、モノクローナル抗体を用いた抗体医薬品である。メポリズマブは、インターロイキン-5をターゲットとしている。 本試験の登録患者は、少なくとも半年間、ステロイドの全身投与をプレドニゾロン換算で1日当たり5~35mg内服している。すなわち、ステップ4の中でも“やむなく”経口ステロイドを使わざるを得なかった患者が対象となっている。 ご存じの通り、経口ステロイドを長期に続けていると、数々の副作用を起こすだけでなく、日和見感染症によって呼吸器疾患が急性増悪することがしばしばある。そのため、喘息治療においては、できる限り経口ステロイドを減らしたいというのが呼吸器内科医の総意であろう。 今回の結果、メポリズマブによる経口ステロイドの減量効果が認められた。半数以上の患者が50%以上の減量に成功しているが、ただしプラセボにおいても3割の患者が50%以上の減量に成功している。統計学的に有意な差とはいえ、ベースラインとして、本当に経口ステロイドが必要なステップ4の患者だったのかどうか疑問は残る。 ちなみに、ゾレアにもステロイド減量効果があると言われているが、現時点ではまだ結論は出ていない1)。

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『鼻炎合併喘息』 その実態と対策とは

 2014年9月18日(木)、MSD株式会社により、「喘息シーズンに向けた鼻炎合併喘息の実態と対策」をテーマに、都内で予防医療プレスセミナーが開催され、3つの講演が行われた。●患者と医師、アレルギー性鼻炎合併の認識に乖離 はじめに、瀬野 恵修氏(MSD株式会社 マーケティング本部プライマリーケアグループ 呼吸器・アレルギー疾患ブランドリーダー)が「喘息と鼻炎に関する意識調査結果」について報告した。 昨今、アレルギー性鼻炎と喘息の関係について取りざたされ、アレルギー性鼻炎によって、喘息が悪化することが報告されている1)。そこで同社は、喘息の発作原因が増える秋口に先駆けて、喘息患者と医師に対して意識調査を行った。その結果、喘息患者のうち62.5%が、花粉症もしくはアレルギー性鼻炎を合併していることがわかった。 本調査ではさらに、喘息患者の63.7%、医師の72.6%は、アレルギー性鼻炎が喘息の悪化原因であると認識していることから、双方の高い意識が確認できた。しかし、喘息患者の62.5%がアレルギー性鼻炎を合併しているにもかかわらず、主治医がそれを認識している割合は26.2%と乖離がみられた。このことについて、瀬野氏は、今後診療の中で改善していく余地があるのではないか、との見解を示した。●鼻炎の合併により、喘息コントロール不良に 次に、大田 健氏(独立行政法人国立病院機構東京病院 院長)により「わが国における鼻炎合併喘息の実態について」の講演が行われた。 喘息とアレルギー性鼻炎は、下気道と上気道とのつながったパイプの中で起きる。両者は危険因子(アレルゲン)や炎症過程などが共通しており、気道粘膜構造も類似しているなど関連性が強い。大田氏によると、アレルギー性鼻炎の合併により、喘息発症リスクが約3倍高くなるだけでなく2)、喘息発作の発現率も高くなるという3)。さらに、喘息とアレルギー性鼻炎の重症度には相関がみられることも特徴である4)。 このたび、大田氏により、ガイドラインに基づいた質問票を活用した、「喘息における鼻炎の実態」について、初の全国規模調査が行われた。その結果、日本の喘息患者におけるアレルギー性鼻炎合併率は67.3%にも上り、さらに喘息患者がアレルギー性鼻炎を合併すると、喘息コントロール不良となることでQOLが低下することも明らかとなった5)。以上の結果からも、喘息とアレルギー性鼻炎は密接に関係していることがあらためて証明された。したがって、喘息患者では、アレルギー性鼻炎を視野に入れた診察・診断を行い、必要に応じて積極的に治療を行うことが大切であるといえるだろう。●長引く咳はアレルギー性鼻炎の可能性 続いて、田中 裕士氏(NPO法人 札幌せき・ぜんそく・アレルギーセンター 理事長)により「鼻炎合併喘息患者さんのQOL向上を目指した治療」と題した講演が行われた。 これから秋口にかけては、花粉症がみられるとともに、喘息やアレルギー性鼻炎が悪化しやすい時期だと言われている。花粉症のシーズン中、アレルギー性鼻炎の患者では気道過敏性の亢進がみられ6)、6.4%の患者に高度の、21.6%に軽度の気道過敏性が亢進しているとの報告もある7)。 また、罹病期間が長いほど気道過敏性も亢進することが報告されている7)。田中氏によると、アレルギー性鼻炎を治療せず放置すると、好酸球性副鼻腔炎と呼ばれる複雑な病態となり、味覚障害や鼻閉といった症状を発現し、気管支喘息、好酸球性中耳炎と経過をたどり、難聴や耳閉感を患うケースもあるという。つまり、アレルギー性鼻炎を放置することは喘息発症の危険因子といえる。 さらに、「咳喘息による咳なのか、アレルギー性鼻炎による咳なのかの鑑別が重要である」と田中氏は言う。咳喘息であれば、ICS/LABAを使用すると、よほどの重症でない限り1週間程度で咳は治まるが、アレルギー性鼻炎による慢性咳嗽の場合は2~3週間かかることがあるためである。 喘息の診断では、発作性の呼吸困難や、喘鳴、スパイロメトリー、他の心肺疾患の除外を行う。一方、アレルギー性鼻炎の診断では、発作性反復性のくしゃみ、鼻閉、皮内テスト、鼻汁中好酸球の存在を確認する。さらに、大田氏監修のSACRA質問票などの補助診断を用いることは、喘息症状とアレルギー性鼻炎症状の状態を把握するうえで有用である。 鑑別後の治療の基本的な考え方は、(1)気管支喘息のみの悪化でアレルギー性鼻炎が安定している場合は、気管支喘息の治療をする、(2)アレルギー性鼻炎のみの悪化で気管支喘息は安定している場合は、アレルギー性鼻炎の治療をする、(3)気管支喘息とアレルギー性鼻炎ともに悪化している場合は、双方を同時に治療する、ということであると田中氏は訴えた。そのうえで、このような治療方針をとることで、過剰な薬剤服用を防止し、早期の症状改善を図ることにつながる、と述べた。 これまでは、アレルギーは各疾患別に複数の科で診察されてきた。しかし、近年、アレルギー全般を診る総合アレルギー科医(Total Allergist)という概念が広がりつつある。これにより、今後さまざまなアレルギーを一人の医師が診断する時代がくるのかもしれない。(ケアネット 佐藤 駿介)【参考文献はこちら】1)Ohta K, et al. Allergy. 2011; 66: 1287-1295.2)Settipane RJ, et al. Allergy Proc. 1994; 15: 21-25.3)Bousquet J, et al. Clin Exp Allergy. 2005; 35: 723-727.4)Togias A. J Allergy Clin Immunol. 2003; 111: 1171-1183.5)Ohta K, et al. Allergy. 2011; 66: 1287-1295.6)Madonini E, et al. J Allergy Clin Immunol. 1987; 79: 358-363.7)Cirillo I, et al. Allergy. 2009; 64: 439-444.

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新規抗IL-5抗体薬が重症喘息のステロイド低減/NEJM

 喘息コントロールについて経口ステロイド薬を必要とする重症患者に対して、新たな抗IL-5抗体薬メポリズマブは、有意に経口ステロイド薬の服用を節減し、急性増悪の低下および喘息症状を改善したことが、オランダ・アムステルダム大学のElisabeth H. Bel氏らによる無作為化二重盲検試験の結果、報告された。メポリズマブについてはこれまでに、重症の好酸球性喘息患者において、急性増悪を低下したことは示されていた。NEJM誌オンライン版2014年9月8日号掲載の報告より。重症の好酸球性喘息患者135例を対象に経口ステロイド薬併用の低減効果を検討 研究グループが行ったのは、多施設共同無作為化プラセボ対照の二重盲検並行比較にデザインした第IV相試験であった。 重症の好酸球性喘息患者135例を無作為に、メポリズマブ(100mg用量)またはプラセボを投与群に割り付け、4週ごとに20週間皮下注にて投与し、ステロイドの節減効果について比較検討した。 主要アウトカムは、ステロイド用量低下の程度で、90~100%減少、75~90%未満減少、50~75%未満減少、0~50%未満減少、または減少せず、喘息コントロール不良で評価した。評価は、20~24週間または治療中止時に行った。 そのほかに、急性増悪、喘息コントロール、安全性の割合についても評価した。ステロイド用量低下の可能性はプラセボの2.39倍 結果、ステロイド用量低下の可能性は、メポリズマブ群がプラセボ群よりも、有意に2.39倍(95%信頼区間[CI]:1.25~4.56、p=0.008)高かった。 ベースライン時からの割合の減少中央値は、プラセボ群は減少なしであったのに対し、メポリズマブ群は50%(95%CI:20.0~75.0%)であった(p=0.007)。 ステロイド用量が減少したメポリズマブ群の患者について、プラセボ群と比較して、急性増悪の年間発生率は32%減少(1.44対2.12、p=0.04)、喘息症状(喘息コントロール質問票5[ACQ 5]で評価、臨床的に意味のある差は最小で0.5ポイント)に関しては0.52ポイントの減少(p=0.004)であった。 安全性プロファイルは、メポリズマブとプラセボで同等だった。

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次世代の気管支喘息治療、重症喘息患者に希望の光となりうるか(解説:倉原 優 氏)-248

気管支喘息の治療においてヒト化モノクローナル抗体といえば、IgEをターゲットにしたオマリズマブ(商品名:ゾレア)が知られており、とくにステップ4の気管支喘息患者においては私も使用することがある。決して切れ味がよいとは思っていないが、いくばくかの効果が出る患者もいる。 インターロイキンをターゲットとした喘息治療は数多く報告されているが、その中でもインターロイキン-4に対するヒト化モノクローナル抗体であるデュピルマブ1)、インターロイキン-5に対するヒト化モノクローナル抗体であるメポリズマブ2)の治療効果がとくに期待されている。 今回は、そのうちのメポリズマブのプラセボ対照比較試験である。適格基準は、持続的な好酸球炎症による繰り返す喘息発作を有する患者で、高用量の吸入ステロイド薬でもコントロールが困難なケースである。すなわち、実臨床において「コントロールしにくい」と感じる、われわれが最も治療に難渋するケースを想定している。 この試験の結果で特筆すべきは、増悪の頻度がほとんど半減している点である。また、同号に掲載されたもう1つのメポリズマブの研究においても経口ステロイドの減量効果が認められており3)、今後の重症気管支喘息患者の治療選択肢が広がるだけでなく、経口ステロイドを使いにくい患者群での喘息コントロールに有効な選択肢になりえよう。 治療選択肢の限られた重症患者において、細胞内シグナル伝達系や転写因子に対する分子標的治療薬のさらなる報告を個人的に期待している。ただ、実現したとしても、抗体医薬品の高い薬価が患者にとって大きなハードルになることは否めない。

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びまん性汎細気管支炎〔DPB : diffuse panbronchiolitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis:DPB)は病理組織学的には両側びまん性に分布する呼吸細気管支領域の慢性炎症像を特徴とし、臨床的には慢性副鼻腔炎を伴う慢性気道感染症の形を取る疾患である。そもそもDPBの疾患概念は1960年代に、わが国で確立されたものであるが、欧米においてDPBがほとんど存在しないため、長く認知されてこなかった。しかしながら、1983年、本間氏らによりChest誌上に紹介されて以来1)、徐々に理解が深まり、現在では広く認知され欧米の主要な教科書でも必ず触れられる疾患となっている。■ 疫学以前はそれほどまれな疾患ではなく、1970年代には人口10万人対11という有病率の報告もあったが、近年では典型例は激減し、めったに見ることがなくなった2)。男女差はなく、発症年齢は10~70代まで広く分布するが、発症のピークは中年である。多くの例で、幼小児期にまず慢性副鼻腔炎にて発症し、長い年月を経て下気道症状の咳、膿性痰が加わって症状が完成する。近年DPBが激減した背景には、戦後の日本人の生活水準が急速に向上し、栄養状態が大きく改善したことと、後述するマクロライド療法が耳鼻科領域の医師にも普及し、慢性副鼻腔炎の段階で治癒してしまうことの2つが大きな原因と考えられる。■ 病因明確な発症のメカニズムはまったく不明であるが、本症が病態として副鼻腔気管支症候群(sino-bronchial syndrome: SBS)の形を取ることから、背景には何らかの呼吸器系での防御機構の低下・欠損が推定される。さらにDPBでは親子・兄弟例が多く報告され、また家族内に部分症ともいえる慢性副鼻腔炎のみを有する例が多発することから、何らかの強い遺伝的素因に基づいて発症する疾患と考えられる。この観点からHLAの検討が行われ、日本人DPB患者では、一般人にはあまり保有されていないHLA-B54が高頻度に保有されていることが見出された3)。B54は特殊なHLAで、欧米人やアフリカ人にはまったく保有されず、東アジアの日本を含む一部の民族でのみ保有される抗原であり、このことがDPBという疾患が、欧米やアフリカにほとんど存在しないことと関連があると考えられる。■ 症状最も重要な症状は、慢性的な膿性の喀痰である。この症状のない例ではDPBの診断はまったく考えられない。痰に伴って咳があるのと、併存する慢性副鼻腔炎由来の症状である鼻閉、膿性鼻汁、嗅覚の低下が主症状である。疾患が進行していくと、気管支拡張や肺の破壊が進行し、息切れが増強し、呼吸不全状態となっていく。■ 予後1980年代以前のDPBはきわめて予後不良の疾患であり、1981年の調査では初診時からの5年生存率は42%、喀痰中の細菌が緑膿菌に交代してからの5年生存率はわずかに8%であった。しかしながら、1980年代半ばに工藤 翔二氏によるエリスロマイシン少量長期投与法が治療に導入されると予後は著明に改善し、早期に診断されてマクロライドが導入されれば、むしろ予後のよい疾患となった4)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)病歴と特徴ある画像所見から、典型例では診断は難しくない。画像所見としては、胸部X線所見で中下肺野に強い、両側びまん性の辺縁不鮮な小粒状影の多発を認め、これにさまざまな程度の中葉・舌区から始まる気管支拡張像と過膨張所見が加わる。CT(HR-CT)は診断上、きわめて有用であり、(1) びまん性小葉中心性の粒状影、(2) 分岐線状陰影、(3) 気道壁の肥厚と拡張像がみられる。DPBの診断基準(表1)を示す。表1 びまん性汎細気管支炎の診断の手引き1. 概念びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis: DPE)とは、両肺びまん性に存在する呼吸細気管支領域の慢性炎症を特徴とし、呼吸機能障害を来す疾患である。病理組織学的には、呼吸細気管支炎を中心とした細気管支炎および細気管支周囲炎であり、リンパ球、形質細胞など円形細胞浸潤と泡沫細胞集簇がみられる。しばしばリンパ濾胞形成を伴い、肉芽組織や瘢痕巣により呼吸細気管支炎の閉塞を来し、進行すると気管支拡張を生じる。男女差はほとんどなく、発病年齢は40~50代をピークとし、若年者から高年齢まで各年代層にわたる。慢性の咳・痰、労作時息切れを主症状とし、高率に慢性副鼻腔炎を合併または既往に持ち、HLA抗原との相関などから遺伝性素因の関与が示唆されている#1。従来、慢性気道感染の進行による呼吸不全のため不良の転帰を取ることが多かったが、近年エリスロマイシン療法などによって予後改善がみられている。2. 主要臨床所見(1) 必須項目1)臨床症状:持続性の咳・痰、および労作時息切れ2)慢性副鼻腔炎の合併ないし既往#23)胸部X線またはCT所見: 胸部X線:両肺野びまん性散布性粒状影#3 胸部CT:両肺野びまん性小葉中心性粒状病変#4(2) 参考項目1)胸部聴診所見:断続性ラ音#52)呼吸機能および血液ガス所見:1秒率低下(70%低下)および低酸素血症(80Torr以下)#63)血液所見:寒冷凝集素価高値#73. 臨床診断(1) 診断の判定確実上記主要所見のうち必須項目1)~3)に加え、参考項目の2項目以上を満たすものほぼ確実必須項目1)~3)を満たすもの可能性あり必須項目のうち1)2)を満たすもの(2) 鑑別診断鑑別診断上注意を要する疾患は、慢性気管支炎、気管支拡張症、線毛不動症候群、閉塞性細気管支炎、嚢胞性線維症などである。病理組織学的検査は本症の確定診断上有用である。[付記]#1日本人症例ではHLA-B54、韓国人症例ではHLA-A11の保有率が高く、現時点では東アジア地域に集積する人種依存症の高い疾患である。#2X線写真で確認のこと。#3しばしば過膨張所見を伴う。進行すると両下肺に気管支拡張所見がみられ、時に巣状肺炎を伴う。#4しばしば細気管支の拡張や壁肥厚がみられる。#5多くは水泡音(coarse crackles)、時に連続性ラ音(wheezes、rhonchi)ないしスクウォーク(squawk)を伴う。#6進行すると肺活量減少、残気量(率)増加を伴う、肺拡散能力の低下はみられない。#7ヒト赤血球凝集法で64倍以上。(厚生省特定疾患びまん性肺疾患調査研究班班会議、平成10年12月12日)SBSの形を取り、画像上、前述のような所見がみられれば、臨床的に診断がなされる。寒冷凝集素価の持続高値、閉塞性換気障害、HLA-B54(+)といった所見が診断をさらに補強する。通常、病理組織検査を必要としないが、非典型例、関節リウマチ合併例、HTLV-1陽性例、他のSBSとの鑑別が難しい例などでは、胸腔鏡下肺生検による検体が必要となる場合もある。近年、DPBが激減していることから経験が不足し、COPD、気管支喘息などと診断されてしまっている例もみられ、注意を要する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)表2 びまん性汎細気管支炎(DPB)に対するマクロライド療法の治療指針(2000年1月29日)マクロライド少量療法はDPBに対する基本療法であり、早期の症例ほどより高い臨床効果が得られることから、診断後は速やかにマクロライド少量治療法を開始すべきである。 なおマクロライド薬のうち、第1選択薬はエリスロマイシン(EM)である。(投与量及び用法)EM 1日投与量は400または600mgを分2または分3で経口投与する。(効果判定と治療期問)1.臨床効果は2~3ヵ月以内に認められることが多いが、最低6ヵ月は投与して、その臨床効果を判定する。2.長期投与により自覚症状、臨床検査所見(画像、肺機能など)が改善、安定し、重症度分類で4または5級(付記1)程度になれば、通算2年間の投与で終了する。3.終了後症状の再燃がみられれぱ、再投与が必要である。4.広汎な気管支拡張や呼吸不全を伴う進行症例で有効な場合は、通算2年間に限ることなく継続投与する。(付記)1.4級:咳・痰軽度。痰量10mL以下、息切れの程度はH-J II~III。安静時PaO2は70~79 Torrで、呼吸器症状のため社会での日常生活活動に支障がある。5級:呼吸器症状なし。安静時にPaO2は80 Torr以上。日常生活に支障なし。2.マクロライド薬のうち、現在までに本症に対する有効性が確認されているのは14員環マクロライド薬であり、16員環マクロライド薬は無効である。EMによる副作用や薬剤相互作用がある場合、あるいはEM無効症例では、14員環ニューマクロライド薬の投与を試みる。投与例 1)クラリスロマイシン(CAM)200または400mg 分1または分2経口投与2)ロキシスロマイシン(RXM)150または300mg 分1または分2経口投与炎症が強い例では、殺菌的な抗菌薬の静注やニューキノロン経口薬を短期間投与し、感染・炎症を抑えてから基本的治療に入る。基本的治療はエリスロマイシン、クラリスロマイシンを中心とした14員環マクロライドの少量長期投与である。これらの薬剤の抗炎症効果による改善が、通常投与後2週間くらいから顕著にみられる。エリスロマイシンでは400~600mg/日を6ヵ月~数年間以上用いる。著効が得られた場合はさらに減量して続行してもよい。ただし、気管支拡張が広範囲に進展し、呼吸不全状態にあるような例では、マクロライドの効果も限定的である。有効例では、投与後2週間くらいからまず喀痰量が減少し、この時点ですでに患者も自覚的な改善を認める。さらに数ヵ月~6ヵ月で呼吸機能、胸部X線像の改善がみられていく。同時に慢性副鼻腔炎症状も改善するが、嗅覚に関しては、やや改善に乏しい印象がある。マクロライドは一般的には、長期間投与しても何ら副作用を認めないことが多いが、まれに肝障害や時に胃腸障害を認める。元来マクロライドは、緑膿菌にはまったく抗菌力がないと考えられるが、近年の研究から14員環マクロライドが緑膿菌のquorum sensingという機能を抑制し、毒素産生やバイオフィルム形成を阻害することが解明されてきている。4 今後の展望典型例はほとんどみられなくなったが、日本人にはDPBの素因が今なお確実に受け継がれているはずであり、軽症例や関節リウマチなどの疾患に合併した例などが必ず出現する。 SBSをみた場合には、必ずDPBを第1に疑っていく必要がある。5 主たる診療科呼吸器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本呼吸器学会 呼吸器の病気のコーナー(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Homma H, et al. Chest. 1983; 83: 63-69.2)Kono C, et al. Sarcoidosis Vasc Diffuse Lung Dis. 2012; 29: 19-25.3)Sugiyama Y, et al. Am Rev Respir Dis. 1990; 141: 1459-1462.4)Kudoh S, et al. Am J Respir Crit Care Med. 1998; 157: 1829-1832.

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重症好酸球性喘息に新規抗IL-5抗体が有効/NEJM

 重篤な好酸球性喘息の治療において、メポリズマブ(国内未承認)は病態の増悪を有意に低減することが、グラクソ・スミスクライン社・米国Research Triangle ParkのHector G Ortega氏らが行ったMENSA試験で示された。重症喘息患者は、高用量吸入グルココルチコイドの継続治療を行っても、経口グルココルチコイドの併用の有無にかかわらず、持続性の好酸球性炎症によって頻繁に増悪を来す場合がある。メポリズマブはインターロイキン(IL)-5に対するヒト化モノクローナル抗体で、好酸球性炎症を選択的に阻害し、喀痰や血中の好酸球数を減少させることで、増悪の頻度を低下させるとともにグルココルチコイド全身投与の必要性を低減するという。NEJM誌オンライン版2014年9月8日号掲載の報告。増悪の抑制効果を無作為化試験で評価 MENSA試験は、重症好酸球性喘息に対するメポリズマブの有用性を評価する二重盲検ダブルダミー・プラセボ対照無作為化試験。対象は、年齢12~82歳、高用量吸入グルココルチコイド治療でも喘息の増悪を繰り返し、好酸球性炎症が確認された患者であった。 被験者は、メポリズマブ75mg(静脈内投与)、同100mg(皮下投与)またはプラセボを4週に1回投与する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は増悪の頻度で、増悪の定義は担当医がグルココルチコイド全身投与を3日以上行った場合や、患者が救急診療部を受診または入院した場合とした。 試験は、1~6週間の導入期間後に割り付けを行い、32週の治療期間後に主要評価項目を評価し、さらに8週のフォローアップを実施した。両投与法とも増悪の頻度がほぼ半減 2012年10月~2014年1月までに576例が登録され、静脈内投与群に191例(平均年齢50歳、女性55%)、皮下投与群に194例(51歳、60%)、プラセボ群には191例(49歳、56%)が割り付けられた。539例(94%、それぞれ175例、185例、179例)が治療を完遂した。 患者1例当たりの臨床的に重篤な増悪の年間発生率は、静脈内投与群が0.93、皮下投与群が0.81、プラセボ群は1.75であり、プラセボ群に比べ静脈内投与群は47%(95%信頼区間[CI]:29~61%)、皮下投与群は53%(37~65%)減少した(いずれも、p<0.001)。 入院または救急診療部の受診を要する増悪は、プラセボ群に比し静脈内投与群が32%(95%CI:-41~67%、p=0.30)、皮下投与群は61%(17~82%、p=0.02)低下し、入院を要する増悪はそれぞれ39%(-66~77%、p=0.33)、69%(9~89%、p=0.03)低下しており、いずれも皮下投与群で有意な改善効果が認められた。 1秒量(FEV1)のベースラインからの増加は、プラセボ群よりも静脈内投与群が100mL(p=0.02)、皮下投与群は98mL(p=0.03)高く、いずれも有意に改善した。 健康関連QOLの指標であるSt. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)スコア(0~100点、高いほど不良)のベースラインからの低下は、プラセボ群よりも静脈内投与群が6.4点(p<0.001)、皮下投与群は7.0点(p<0.001)大きく、いずれも有意に改善した。 また、喘息コントロールの指標である5-item Asthma Control Questionnaire(ACQ-5)スコア(0~6点、高いほど不良)のベースラインからの低下は、プラセボ群よりも静脈内投与群が0.42点(p<0.001)、皮下投与群は0.44点(p<0.001)大きく、いずれも有意な改善を示した。 治療期間中の有害事象は、静脈内投与群が84%、皮下投与群が78%、プラセボ群は83%に発現し、鼻咽頭炎(17~24%)と頭痛(17~24%)の頻度が最も高かった。このうち、担当医判定による治療関連有害事象は、それぞれ17%、20%、16%だった。 注射部位反応の発現率は、皮下投与群が9%であり、静脈内投与群の3%、プラセボ群の3%に比べ高かった。喘息関連イベントを含む重篤な有害事象は、静脈内投与群が7%、皮下投与群が8%、プラセボ群は14%に認められた。 著者は、「重症好酸球性という喘息のサブグループにおいて、メポリズマブは静脈内投与と皮下投与の双方で増悪の頻度を抑制するとともに、QOLや喘息コントロールを改善した」とまとめている。

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【寄稿】GERDとの鑑別が必要な好酸球性食道炎

概説好酸球性食道炎は、食道上皮に好酸球を中心とした炎症が持続することによって、嚥下困難や食事のつかえ感などの症状を生じ、食道の運動・知覚異常、狭窄などを合併する慢性アレルギー疾患である。原因として食物や気道抗原に対する過剰な免疫応答が想定されているが、まだ原因や病態については十分に解明されていない。欧米では1990年代以降、急激な増加傾向を示しており、最近の報告では、年間の発症率が人口10万人あたり10人に達し、有病率も人口10万人あたり50人程度となっている。一方、本邦では欧米に比して非常にまれな疾患と考えられていたが、ここ数年、成人例での報告例が増加している。本疾患は胸焼けを主訴とすることもあり、胃食道逆流症(GERD)との鑑別が重要となる。内視鏡的には縦走溝・リング・白色滲出物といった特徴的な所見を呈し、逆流性食道炎に見られる粘膜傷害(mucosal break)とは異なる。確定診断には食道上皮からの生検を行い、高倍率視野で15~20個以上の好酸球浸潤を証明することが必要である。プロトンポンプ阻害薬(PPI)治療によってもGERD症状が改善しない症例の1割弱には、好酸球性食道炎が含まれていると報告されており、治療抵抗性GERDの鑑別疾患として念頭に置く必要がある。疫学本疾患は1970年代に初めて報告され、1990年代前半までは、まれな疾患と考えられていたが、その後、欧米において急激な有病率・罹患率の増加が認められるようになった。また、当初は小児に多い疾患と考えられていたが、最近では成人例の報告が目立つようになっている。最近の米国の報告では有病率は人口10万人あたり50人を超している1)。一方、本邦では、2006年に初めて成人例において本疾患が報告された2)。当時は非常にまれな疾患と考えられていたが、ここ数年、とくに成人例での報告例が増えてきている。2011年に内視鏡約5,000例あたり1例の頻度で好酸球性食道炎が認められることが報告された3)が、最近では、さらにその頻度は増加していると考えられる。われわれの最近の検討では、食事のつかえ感や胸焼けなどの症状を主訴として内視鏡検査を施行した319例について、食道からの生検を行い、8例(2.5%)に15個以上/高倍率視野の食道好酸球浸潤が認められた4)。疫学的な特徴として、30~50代に多く、70~80%が男性であることが示されている5)。また、患者の半数以上に喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患の合併が見られる。PPI治療に抵抗を示すGERD症例に含まれる好酸球性食道炎の頻度に関する調査では、0.9~8.8%が好酸球性食道炎であったと報告されている6)。大規模な検討はなく、頻度にばらつきはあるが、PPI抵抗性GERDの1割弱に好酸球性食道炎が含まれていることが示されている。病態食物や空気中の抗原をアレルゲンとして食道上皮局所において過剰な免疫応答(アレルギー)が生じ、好酸球を中心とした慢性的な炎症が惹起されると想定されている。本疾患では、IgEを介する即時型アレルギー反応よりも、Tリンパ球を中心とした細胞性免疫の作用による非即時型のアレルギー反応が重要であることが示されている。最近の研究から、アレルギー機序に関与するいくつかの遺伝子の多型が発症に関連することが明らかにされつつある7)。症状本疾患は小児および成人で特徴的な症状が異なる。乳幼児期では、哺乳障害や発育の遅れが見られる。学童期から青年期においては、腹痛、嘔気、嘔吐などの非特異的な症状を伴うことが多い。成人例では嚥下障害や食事のつかえ感を生じることが多く、food impactionと呼ばれる食物塊の食道への嵌頓を生じる例も見られる。しかし、胸焼けや呑酸などGERDに典型的な症状を主訴とすることもあり、症状のみから、GERDと鑑別することは困難である。最近、人間ドックなどの無症状者の検診例において、典型的な好酸球性食道炎の内視鏡像を呈し、生検で食道好酸球浸潤を認めるケースも見られるようになっている。診断本疾患の診断は、食道に起因するさまざまな症状を有する例に上部消化管内視鏡検査を行い、食道に特徴的な内視鏡所見を確認し、生検で食道上皮への好酸球浸潤(高倍率視野で15~20個以上)を認めることによってなされる。本邦で作成された診断基準(案)を表1に示す6)。胸部CTで食道壁の肥厚を指摘されることが診断の契機となることもある。末梢血の好酸球増多を示すことは少ない。末梢血IgEは約70%の症例で増加を認めるが、併存するアレルギー疾患の関与によるものが大きいと考えられ、本疾患に特異的なものではない8)。内視鏡で特徴的に認められる所見は縦走溝、リング、白色滲出物である。このうち、縦走溝は本疾患において最も典型的な画像所見であり、逆流性食道炎の際に認められる粘膜傷害(mucosal break)と鑑別可能である(図1)。以前の報告では約30%の症例では内視鏡的な異常を示さないと報告されていたが、最近の報告では90%以上の症例で上記のいずれかの内視鏡所見を示すことが報告されている9)。生検時の注意点として、食道粘膜における好酸球の分布は不均一であり、生検1個での診断感度は50%程度とされ、ガイドラインでは2~4個の生検が必要と示されている。表1を拡大する図1を拡大する米国のガイドラインによる好酸球性食道炎の診断プロセスを図2に示す10)。生検で食道好酸球浸潤を認めた場合、まず、薬剤性や感染性など二次性の原因を除外する。好酸球性食道炎は、消化管のうちで食道のみに好酸球浸潤を来すことが特徴であり、好酸球浸潤が食道のみでなく、胃や小腸へも認められた場合は、好酸球性胃腸炎と診断される。したがって、診断には胃・十二指腸からの生検も必要となる。次のステップとして、PPIの有効性の評価が行われる。高用量PPIの2ヵ月間投与後に再度、内視鏡検査・病理検査を行い、改善の認められた症例はPPI反応性食道好酸球浸潤と診断され、好酸球性食道炎とは区別されて扱われる。したがって、好酸球性食道炎の診断には、PPIが無効であることが含まれている。一方、本邦では、好酸球性食道炎がまれな疾患であり、多くの場合、PPIが有効であることから、PPIの有効性によって診断の区別をしていない。今後、疾患のより詳細な解析を踏まえて、新たな診断基準の作成が必要である。図2を拡大する治療食事療法と薬物療法が中心となる。食事療法としては、原因となる食物アレルゲンを除去することが有効であるとされており、欧米では成分栄養食やアレルゲンとなる頻度の高い6種類(牛乳、小麦、卵、大豆、ナッツ類、魚介類)の食品を除いた6種抗原除去食(six food elimination diet: SFED)が治療に用いられている。最近の食事療法に関するシステマティックレビューによると、成分栄養食で90.8%、SFEDで72.1%の症例で有効であったことが報告されている11)。一方、血清中の抗原特異的IgEや皮膚のプリックテストやパッチテストによって同定されたアレルゲンに対する食事療法は有効でないことが示されており、SFEDが有効であった場合は、1種類ずつ再開し、時間をかけて原因となる食物を同定する必要がある。また、入院中は食事療法が奏効しても、退院後の継続性に問題があることが指摘されている。日本人を対象とした有効性に関する報告はまだなされていない。上述のように、欧米のガイドラインでは好酸球性食道炎はPPIが無効であることが診断基準に含まれている。しかしながら、最近の検討ではPPIが酸分泌抑制効果以外に、免疫調節作用を有しており、食道への好酸球浸潤の誘導を抑制する効果を持つことが報告されている。また、酸性条件下では、病態に関与するサイトカイン(IL-13)の作用が増強することが示されており、PPIが好酸球性食道炎の病態改善に寄与することが推測されている。したがって、食道好酸球浸潤症例の治療にはPPIを第一選択として使用すべきと考えられる(保険適用外)。PPIが無効の場合は、ステロイド投与を行う。投与方法として、気管支喘息の治療に用いられる局所作用ステロイドであるフルチカゾンやブデソニドを吸入ではなく、口腔内に投薬し、唾液と共に嚥下させる方法による治療が行われている(保険適用外)。この方法は、内服による全身投与に比して、副作用の面からも有効であると考えられるが、その効果は必ずしも十分でないとする報告もある。局所作用ステロイドで十分な効果が得られない場合は、プレドニゾロンなどの全身作用ステロイドの投与が行われる(保険適用外)が、投与開始量や減量方法などについて、十分なコンセンサスは得られていない。投与の際は、副作用についての十分な注意が必要である。その他、抗アレルギー薬やロイコトリエン受容体拮抗薬などの治療成績が報告されているが、効果は限定的と考えられている。予後一般に、軽快と増悪を繰り返し、完全に治癒することは少ないとされる。これまでに悪性化の報告はなく、比較的予後は良好であると考えられているが、長期経過に関する報告はまだ少ないため、自然史については不明な点も多い。GERDとの鑑別のポイントGERDと好酸球性食道炎の臨床像の特徴を表2に示す。好酸球性食道炎は中年男性に好発し、アレルギー疾患の合併を半数以上に認め、食事のつかえ感が主訴となることが最も多いが、胸焼けや呑酸を訴えることもある。好酸球性食道炎では90%以上に内視鏡的に特徴的な所見を認めることが最近の報告で示されており、本疾患を念頭に置いて食道を詳細に観察することが重要である。また、GERD症状に対してPPIが有効でない症例においては、食道からの生検を行い、好酸球浸潤の有無を評価すべきである。GERDと好酸球性食道炎はオーバーラップすることもある(図3)。PPIはどちらの病態に対しても有効に作用することが示されており、PPI治療は第一選択となる。現在の欧米のガイドラインではPPI無効例のみを好酸球性食道炎と定義しているが、好酸球性食道炎とPPI反応性食道好酸球浸潤を症状、内視鏡像、病理像から鑑別することは困難であることが報告されており、疾患概念の見直しの必要性が指摘されている。表2を拡大する図3を拡大する引用文献1)Dellon ES, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2014;12:589-596.2)Furuta K, et al. J Gastroenterol. 2006;41:706-710.3)Fujishiro H, et al. J Gastroenterol. 2011;46:1142-1144.4)Shimura S, et al. Digestion. 2014(in press).5)Kinoshita Y, et al. J Gastroenterol. 2013;48:333-339.6)木下芳一ほか. 日本消化器病学会雑誌. 2013;110:953-964.7)石村典久ほか. 分子消化器病. 2013;10:157-165.8)Ishimura N, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2013;28:1306-1313.9)Ishimura N, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2014(in press).10)Dellon ES, et al. Am J Gastroenterol. 2013;108:679-692.11)Arias A, et al. Gastroenterology. 2014;146:1639-1648.

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喘息様気管支炎と診断した乳児が自宅で急死したケース

小児科最終判決判例タイムズ 844号224-232頁概要1歳1ヵ月の乳児。37.5℃の発熱と喘鳴を主訴に休日当番医を受診し、喘息性気管支炎と診断され注射と投薬を受けて帰宅した。ところが、まもなく顔面蒼白となり、救急車で再び同医を受診したが、すでに心肺停止、瞳孔散大の状態であったため、救命蘇生措置は行われず死亡確認となった。司法解剖では、肺水腫による肺機能障害から心不全を起こして死亡したものと推定された。詳細な経過経過1983年12月31日この頃から風邪気味であった。1984年1月1日37.2℃の発熱あり。1月2日午後37.5℃に上がり、声がしわがれてぜいぜいし、下痢をしたので、16:20頃A医院を受診。待合室で非常にぜいぜいと肩で息をするようになったため、17:20頃順番を繰り上げて診察を受ける。強い呼吸困難、喘鳴、声がれ、顔面蒼白、腹壁緊張減弱、皮膚光沢なし、胸部ラ音、下痢などの症状を認め、喘息性気管支炎と診断。担当医師は経過観察、ないしは入院の必要があると判断したが、地域の救急患者の転送受け入れをする輪番制の病院がないものと考え、転院の措置をとらなかった。呼吸困難改善のため、スメルモンコーワの注射(適応は急性気管支炎や感冒・上気道炎に伴う咳嗽)と、アセチルロイコマイシンシロップなどの投薬をし、隣室ベッドで待つように指示した。18:00若干呼吸困難が楽になったように感じたため、容態急変した場合には夜間診療所を受診するように指示されて帰宅した。18:20帰宅時、顔面が蒼白になり唇が青くなっていたため、救急車を要請。その直後急に立ち上がり、目を上に向け、唇をかみしめ、まったく動かなくなった。18:54救急車でA医院に到着したが、すでに心肺停止、瞳孔散大の状態であり、心肺蘇生術を施さずに死亡が確認された。司法解剖の結果、「結果的には肺水種による肺機能障害により死亡したものと推定」し、その肺水腫の原因として、(1)間質性肺炎(2)乳幼児急死症候群(SIDS)(3)感染によるエンドトキシンショック(4)薬物注射による不整脈(5)薬物ショックとそれに続く循環障害などが考えられるが、結論的には不詳とされた。当事者の主張患者側(原告)の主張1.医師の過失1回目の診察時にすでに呼吸不全に陥っているのを認めたのであるから、ただちに入院させて、X線写真、血液検査などの精査を行うとともに、気道確保、酸素吸入、人工換気などの呼吸管理、呼吸不全、心不全などの多臓器障害の防止措置などを行うべき義務があったのに、これらを怠った2.経過観察義務違反・転医措置義務違反呼吸不全を認めかつ入院の必要を認めたのであるから、少なくとも症状の進行、急変に備え逐一観察すべき義務があったのに怠った。さらに、転医を勧告するなど、緊急治療措置ないし検査を受けさせ、あるいは入院する機会を与えるべき義務があったのに、転医措置を一切講じなかった3.救命蘇生措置義務違反心肺停止で救急搬送されたのは、心臓停止後わずか10分程度しか経過していない時点であり救命措置をとるべき義務があったのに、これを怠った4.死因喘息性気管支炎から肺炎を引き起こして肺水腫となり、肺機能障害から心不全となって死亡した。病院側が主張する乳幼児突然死症候群(SIDS)ではない病院側(被告)の主張1.医師の過失死因が不明である以上、医師がどのような治療方法を講じたならば救命し得たかということも不明であり、不作為の過失があったとしても死亡との因果関係はない。しかも最初の診察を受けたのが17:20頃であり、死亡が18:10ないし18:25とすると、診療を開始してから死亡するまでわずか50~60分の時間的余裕しかなかったため、死亡の結果を回避することは不可能であった。また、当日は休日当番医で患者が多く(130名の患者で混みあっており、診察時も20~30名の患者が待っていた)、原告らの主張する治療措置を講ずべきであったというのは甚だ酷にすぎる2.経過観察義務違反・転医措置義務違反同様に、診療開始から50~60分の時間的余裕しかなかったのであれば、大規模医療施設に転送したからといって、死亡の結果を免れさせる決め手にはならなかった3.死因肺水腫による肺機能障害から心不全を起こして死亡したと推定されていて、肺水腫の原因として間質性肺炎、乳幼児突然死症候群などが挙げられているものの特定できず、結局死因は不明というほかない裁判所の判断1. 死因強い呼吸困難、喘鳴、顔面蒼白、腹壁緊張減弱、胸部ラ音、下痢などの臨床症状があったこと、肺浮腫、肺うっ血が、乳幼児突然死症候群に伴うような微小なものではなく、著しいあるいは著明なものであったことなどからすると、肺炎から肺水腫を引き起こして肺機能障害を来し、直接には心不全により死亡したものと考えられる(筆者注:司法解剖の所見で「死因は不詳」と判断されているにもかかわらず、裁判所が独自に死因を特定している)。2. 医師の過失原告の主張をそのまま採用。加えて、もし大規模病院へ転送するとしたら、酸素そのほかの救急措置が何らとられないまま搬送されるとも考えられないので、診察から死亡までの50~60分の間に適切な措置をとるのは困難であり死亡は免れなかったとする主張は是認できない。当時休日診療で多忙をきわめていたとしても、人命にかかわる業務に従事する医師としては、通常の開業医としての医療水準による適切な治療措置を施すべき義務を負うものであり、もし自らの能力を超えていて、自院での治療措置が不可能であると考えれば、ほかの病院に転送するべきであった。3. 経過観察義務違反・転医措置義務違反失原告の主張をそのまま採用。4. 救命蘇生措置義務違反救急車で来院した18:54頃には、呼吸停止、心停止、瞳孔の散大の死の3徴候を認めていたので、心肺蘇生術を実施しても救命の可能性があったかどうか疑問であり、その効果がないと判断して心肺蘇生術を実施しなかったのは不当ではない。原告側合計2,339万円の請求どおり、2,339万円の判決考察この事例は医師にとってかなり厳しい判決となっていますが、厳粛に受け止めなければならない重要な点が多々含まれていると思います。まず、本件は非常に急激な経過で死亡に至っていますので、はたしてどうすれば救命できたかという点について検討してみます。担当医師が主張しているとおり、最初の診察から死亡までわずか60分程度ですので、確かにすぐに大規模病院に転送しても、死亡を免れるのは至難の業であったと思います。裁判所は、「酸素などを投与していれば救命できたかも知れない」という理由で、医師の過失を問題視していますが、酸素投与くらいで救命できるような状況ではなかったと推定されます。おそらく、すぐに気管内挿管を施し、人工呼吸器管理としなければならないほど重症であり、担当医師が診察後すぐに救急車で総合病院に運んだとしても、同じ結果に終わったという可能性も考えられます。ここで問題なのは、当初から重症であると認識しておきながら、その次のアクションを起こさなかった点にあると思います。もし最初から、「これは重症だからすぐに総合病院へ行った方がよい」と一言家族に話していれば、たとえ死亡したとしても責任は及ばなかった可能性があります。次にこのようなケースでは、たとえ当時の状況が患者さんがあふれていて多忙をきわめていたとしても、まったく弁解にはならないという点です。とくに「人命にかかわる業務に従事する医師としては、病者を保護すべきものとして通常の開業医としての医療水準による適切な治療措置を施すべき義務がある」とまで指摘されると、抗弁の余地はまったくありません。当然といえば当然なのですが、手に負えそうにない患者さんとわかれば、早めに後方病院へ転送する手配をするのが肝心だと思います。最後に、ここまでは触れませんでしたが、本件では裁判官の心証を著しく悪くした要因として、「カルテの改竄」がありました。1回目の診察でスメルモンコーワの注射に際し(通常成人には1回0.5ないし1.0mL使用)、病院側は「0.3mL皮下注射した」と主張しています。ところがカルテには「スメルモン1.0」と記載し、保険請求上1アンプル使用したという旨であると説明され、さらに1行隔てた行外に「0.3」と記載されており、どうやら1歳1ヵ月の乳児にとっては過量を注射した疑いがもたれました。この点につき裁判所は、「0.3」の記載の位置と体裁は、不自然で後に書き加えられたものであることが窺われ、当時真実の使用量を正確に記載したものであるかどうかは疑わしいと判断し、さらに「診療録にはそのほかにも数カ所、後に削除加入されたとみられる記載がある」とあえて指摘しています。実際のカルテをみていないので真実はどうであったのかはわかりませんが、このような行為は厳に慎むべきであり、このためもあってか裁判では患者側の要求がすべて通りました。日常診療でこまめにカルテを書くことは大変重要ですが、後から削除・加筆するというのは絶対してはならないことであり、もし事情があって書き換える場合には、その理由をきちんと記載しておく必要があると思います。小児科

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抗TSLP抗体薬、アレルゲン誘発性喘息に有望/NEJM

 新規開発中の喘息治療薬AMG157について、軽症アレルギー性喘息患者に対する、抗アレルゲン誘発性喘息反応が確認された。カナダ・マックマスター大学のGail M. Gauvreau氏らが実証検証試験として行った二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。AMG157は、アレルギー性炎症にかかわる重大なサイトカインである胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)に結合し、受容体との相互作用を妨げる抗ヒトTSLPモノクローナル免疫グロブリンG2λとして開発中である。今回の結果について著者は「アレルギー性喘息患者における、アレルゲン誘発性の気道反応および持続性気道炎症に、TSLPが重要な役割を果たしていることが確認された。抗TSLP抗体薬が臨床的価値を有するかは確認できなかったが、所見は、さらなる検討を行い、喘息コントロール不良の患者へのAMG157の作用機序と有益性調査の実施を支持するものである」とまとめている。NEJM誌2014年5月29日号(オンライン版2014年5月20日号)掲載の報告より。軽症アレルギー性喘息患者31例を対象に二重盲検プラセボ対照試験 本試験は、AMG157が軽症アレルギー性喘息患者の、アレルゲン誘発性喘息反応を減弱するとの仮説を確認することを目的に、患者31例を対象に行われた。被験者を無作為に、AMG157(700mg)を月1回、計3回静注投与を受ける群(16例)と、プラセボ投与群(15例)に割り付け、また、AMG157の1秒量(FEV1)の最大低下率の抑制効果を評価するために、42日目と84日目にアレルゲンを投与しアレルゲン誘発性喘息反応を評価した。また、呼気一酸化窒素(FeNO)濃度、血中および喀痰中好酸球数、気道過敏性についても測定した。 主要エンドポイントは、アレルゲン投与後3~7時間に測定した遅発型喘息反応だった。即時型および遅発型の喘息反応に関するほとんどの測定値が減少 結果、AMG157投与群では、アレルゲン誘発性の即時型および遅発型の喘息反応に関するほとんどの測定値が減少した。 アレルゲン投与試験の結果は、AMG157群のほうが42日目(p=0.09)、84日目(p=0.02)ともプラセボ群よりも有意にFEV1の最大低下率の抑制効果が大きかった。各時点のFEV1の最大低下率は、42日目はAMG157群のほうがプラセボ群よりも34.0%小さく、84日目は同45.9%小さかった。さらにAMG投与群では、アレルゲン投与前後における血中および喀痰中好酸球数、FeNO濃度が有意に低下した。 有害事象は、AMG157群は15件、プラセボ群では12件だったが、重大有害事象はなかった。

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喘息患者へのビタミンD3、治療失敗や増悪を改善しない/JAMA

 成人喘息患者に対するビタミンD3の投与は、ステップ1の吸入ステロイド薬治療の失敗や増悪を改善しなかったことが、米国・ワシントン大学のMario Castro氏らが行った無作為化試験VIDAの結果、示された。著者は「症候性の喘息患者に対するビタミンD3投与の治療戦略について、裏づけは得られなかった」とまとめている。喘息などの疾患において、ビタミンD不足と有害転帰との関連が示唆されている。しかし、経口ビタミンD3の摂取により、吸入ステロイド薬治療を受けているビタミンD不足の喘息患者のアウトカムが改善するかについては、明らかではなかった。JAMA誌2014年5月28日号掲載の報告より。全米9施設で、プラセボ対照試験 VIDA(Vitamin D Add-on Therapy Enhances Corticosteroid Responsiveness in Asthma)試験は、症候性喘息で、血清25ヒドロキシビタミンD値が30ng/mL未満であった成人患者を対象に、全米9施設[米国国立心肺血液研究所(NHLBI)喘息ネット関連の大学病院]で行われた無作為化二重盲検並行群間プラセボ対照試験。2011年4月から被験者の登録を開始し、吸入ステロイド薬など現行治療に関するrun-in期間後、408例が無作為化を受け、フォローアップは2014年1月に完了した。 無作為化された被験者は、吸入ステロイド薬のシクレソニド(商品名:オルベスコ)(320mg/日)+経口ビタミンD3(10万IUを1回、その後4,000 IU/日を28週間投与、201例)またはプラセボ(207例)の投与を受けた。 試験開始から12週時点で喘息コントロールを達成した患者は、シクレソニドを160mg/日とし8週間、その後もコントロールが維持された場合は80mg/日8週間に漸減した。 主要アウトカムは、喘息治療失敗初発までの期間で、肺機能低下、β2刺激薬や全身性ステロイド薬の投与、救急受診や入院で判定した。また、副次アウトカムには、増悪ほか14のアウトカムが事前に規定されていた。初回治療失敗率のハザード比は0.9、増悪は0.7 結果、28週間のビタミンD3治療は、初回治療失敗率を改善しなかった。ビタミンD3群28%(95%信頼区間[CI]:21~34%)、プラセボ群29%(同:23~35%)で、補正後ハザード比(HR)は0.9(同:0.6~1.3、p=0.54)であった。 副次アウトカムは9つの指標について分析した。そのうち増悪について、有意差はみられなかった(13%vs. 19%、HR:0.7、95%CI:0.4~1.2、p=0.21)。 唯一統計的有意差がみられたのは、コントロール維持のためのシクレソニドの全体投与量についてであり、ビタミンD3群111.3mg/日(95%CI:102.2~120.4mg/日)、プラセボ群126.2mg/日(同:117.2~135.3mg/日)で、両群差は14.9mg/日(同:2.1~27.7mg/日)とわずかであった。

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小児喘息のモニタリングには呼気一酸化窒素より喀痰中の好酸球

 喘息を有する小児における炎症のモニタリングには呼気一酸化窒素より喀痰中の好酸球のほうがより適切であることが、スペイン・Nostra Senyora de Meritxell病院のG Vizmanos-Lamotte氏らにより報告された。Anales espanoles de pediatria誌オンライン版2014年5月22日の掲載報告。 喀痰中の好酸球と呼気一酸化窒素は喘息における気道炎症のマーカーである。この炎症の原因にはサイトカイン、システィニル・ロイコトリエン、ロイコトリエンB4などがある。本研究の目的は、小児における喘息治療のモニタリングにおいて、これらのマーカーが役立つかどうかを調べることである。 10例の子供(9~15歳)を対象に誘発喀痰中の呼気一酸化窒素、好酸球、ロイコトリエンB4を調べ、4ヵ月後に再度測定した。 主な結果は以下のとおり。・呼気一酸化窒素の濃度は減少の傾向であった(p=0.15)。・肺機能は改善傾向にあった(p=0.10)。・喀痰中の好酸球は減少していたが(p=0.003)、ロイコトリエンB4濃度はあまり変わらなかった(p=0.88)。

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コントロール不十分な日本人喘息患者を対象にしたチオトロピウムの有効性(ATS 2014)

※チオトロピウム レスピマットは、現在喘息の治療薬として承認されていません。ご注意ください。 ベーリンガーインゲルハイムは5月18日、2014年度米国胸部学会(ATS 2014)において、中等症~重症の日本人喘息患者において、チオトロピウム レスピマットの忍容性と有効性を示す第III相試験結果を発表した。 同試験(CadenTinA-asthma)は、チオトロピウム レスピマット5μgおよび2.5μgの2用量投与群とプラセボ投与群を対照として、本邦で実施された無作為化二重盲検並行群間比較試験(NCT01340209)。投与期間は52週間で、285例の中等症から重症の喘息患者が登録され、264例が治療を終了した。主要評価項目は長期安全性、副次評価項目はトラフFEV1、PEFR。 有害事象(AE)の発現率はいずれの治療群でも同様であった。重篤なAEは、チオトロピウム レスピマット5μg投与群3.5%、2.5μg投与群3.5%、プラセボ投与群15.8%で、発現率はプラセボ群よりもチオトロピウム レスピマット投与群で低値であった。 12週目、36週目、52週目のトラフFEV1平均変化量は、プラセボ投与群に比較し、チオトロピウム レスピマット5μg投与群で有意に高く、2.5μg投与群では有意差はみられなかった。また、24週目、52週目の PEFRの平均変化量は、プラセボ投与群に比較してチオトロピウム レスピマット5μg投与群で有意に高く、チオトロピウム レスピマット2.5μg投与群では有意な差はみられなかった。

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肺炎・気管支喘息で入院した乳児が低酸素血症となって死亡したケース

小児科最終判決判例時報 1761号107-114頁概要2日前からの高熱、呼吸困難を主訴として近医から紹介された2歳7ヵ月の男児。肺炎および気管支喘息の診断で午前中に小児科入院となった。入院時の医師はネブライザー、輸液、抗菌薬、気管支拡張薬、ステロイドなどの指示を出し、入院後は診察することなく定時に帰宅した。ところが、夜間も呼吸状態は改善せず、翌日早朝に呼吸停止状態で発見された。当直医らによってただちに救急蘇生が行われ、気管支内視鏡で気管分岐部に貯留した鼻くそ様の粘調痰をとりのぞいたが低酸素脳症に陥り、9ヵ月後に死亡した。詳細な経過患者情報気管支喘息やアトピーなどアレルギー性疾患の既往のない2歳7ヵ月男児。4歳年上の姉には気管支喘息の既往歴があった経過1995年1月24日38℃の発熱。1月25日発熱は40℃となり、喘鳴も出現したため近医小児科受診して投薬を受ける。1月26日早朝から息苦しさを訴えたため救急車で近医へ搬送。四肢末梢と顔面にチアノーゼを認め、β刺激薬プロカテロール(商品名:メプチン)の吸入を受けたのち総合病院小児科に転送。10:10総合病院(小児科常勤医師4名)に入院時にはチアノーゼ消失、咽頭発赤、陥没気味の呼吸、わずかな喘鳴を認めた。胸部X線写真:右肺門部から右下肺野にかけて浸潤影血液検査:脱水症状、CRP 14.7、喉にブドウ球菌の付着以上の所見から、咽頭炎、肺炎、気管支喘息と診断し、輸液(150mL/hr)、解熱薬アセトアミノフェン(同:アンヒバ坐薬)、メフェナム(同:ポンタールシロップ)、抗菌薬フルモキセフ(同:フルマリン)、アミノフィリン静注、ネブライザーメプチン®、気道分泌促進薬ブロムヘキシン(同:ビソルボン)、内服テレブタリン(同:ブリカニール)、アンブロキソール(同:ムコソルバン)、クロルフェニラミンマレイン(同:ポララミン)を指示した(容態急変まで血液ガス、経皮酸素飽和度は1回も測定せず)。10:30体温39.5℃、陥没気味の呼吸(40回/分)、喘鳴あり。11:15喘鳴強く呼吸苦あり、ステロイドのヒドロコルチゾン(同:サクシゾン)100mg静注。14:00体温36.7℃、肩呼吸(50回/分)、喘鳴あり。16:30担当医師は看護師から「喉頭部から喘鳴が聞こえる」という上申を受けたが、患児を診察することなく17:00に帰宅。19:30喉頭部の喘鳴と肩呼吸(50回/分)、夕食を飲み込めず吐き出し、内服薬も服用できず、吸入も嫌がってできない。22:00体温38.3℃、アンヒバ®坐薬使用。1月17日02:20体温38.1℃、陥没気味の呼吸(52回/分)、喘鳴あり。サクシゾン®100mg静注。06:30体温37.1℃、陥没気味の呼吸、咳あり。07:20ネブライザー吸入を行おうとしたが嫌がり、機器を手ではねつけた直後に全身チアノーゼが出現。07:30患児を処置室に移動し、ただちに酸素吸入を行う。07:40呼吸停止。07:55小児科医師が到着し気管内挿管を試みたが、喉頭部がみえにくくなかなか挿管できず。マスクによる換気を行いつつ麻酔科医師を応援を要請。08:10ようやく気管内挿管完了(呼吸停止後30分)、この時喉頭部には異常を認めなかった。ただちにICUに移動して集中治療が行われたが、低酸素脳症による四肢麻痺、重度意識障害となる。10:00気管支鏡で観察したところ、気管および気管支には粘稠な痰があり、とくに気管分岐部には鼻くそ様の固まりがみられた。10月26日約9ヵ月後に低酸素脳症により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張肺炎、気管支喘息と診断して入院し各種治療が始まった後も、頻呼吸、肩呼吸、陥没呼吸、体動、喘鳴がみられ呼吸障害は増強していたのだから、気管支喘息治療のガイドラインに沿ってイソプレテレノールの持続吸入を追加したり気管内挿管の準備をするべきであったのに、入院時の担当医師は入院後一度も病室を訪れることなく、午後5:00過ぎに帰宅して適切な指示を出さなかった。夜間帯の当直医師、看護師も、適切な病状観察、病態把握、適切な治療を怠ったため、呼吸不全に陥った。病院側(被告)の主張小児科病棟は主治医制ではなく3名の小児科医による輪番制がとられ、入院時の担当医師は肺炎、気管支喘息の患者に対し適切な治療を行って、起坐呼吸やチアノーゼ、呼吸音の減弱や意識障害もないことを確認し、同日の病棟担当医であった医師へきちんと申し送りをして帰宅した。その後も呼吸不全を予測させるような徴候はなかったので、入院翌日の午前7:00過ぎに突発的に呼吸不全に陥ったのはやむを得ない病態であった。裁判所の判断入院時の担当医師は、肺炎、気管支喘息の診断を下してそれに沿った注射・投薬の指示を出しているので、ほかの小児科医師に比べて格段の差をもって病態の把握をしていたことになる。そのため、小児科病棟では主治医制をとらず輪番制であったことを考慮しても、患者の治療について第一に責任を負うものであり、少なくとも夜間の当直医とのあいだで綿密な打ち合わせを行い、午後5:00に帰宅後も治療に遺漏がないようにしておくべきであった。ところが、入院後一度も病室を訪れず、経皮酸素飽和度を測定することもなく、ガイドラインに沿った治療のグレードアップや呼吸停止に至る前の気管内挿管の機会を逸し、容態急変から死亡に至った。患者側1億545万円の請求に対し6,950万円の判決考察1. 呼吸停止の原因について裁判では呼吸停止の原因として、「肺炎や気管支喘息に起因する気道閉塞によって、肺におけるガス交換が不十分となり呼吸不全に陥った」と判断しています。そのため、小児気管支喘息のガイドラインを引用して、「イソプロテレノールの持続吸入をしなかったのはけしからん、気道確保を準備しなかったのは過失だ」という判断へとつながりました。ところが経過をよくみると、容態急変後の気管支鏡検査で「気管および気管支には粘稠な痰があり、とくに気管分岐部には鼻くそ様の固まりがみられた」ため、気管支喘息の重積発作というよりも、粘調痰による気道閉塞がもっとも疑われます。しかも、当直医が気管内挿管に手間取り、麻酔科医をコールして何とか気管内挿管できたのは呼吸停止から30分も経過してからでした。要するに、痰がつまった状態を放置して気道確保が遅れたことが致命的になったのではないかと思われます。裁判ではなぜかこの点を重視しておらず、定時の勤務が終了し午後5:00過ぎに帰宅していた入院時の担当医師が(帰宅後も)適切な指示を出さなかった点をことさら問題としました。2. 主治医制をとるべきか当時この病院では部長医師を含む小児科医4名が常駐し、夜間・休日の当直は部長以外の医師3名で輪番制をとっていたということです。昨今の情勢を考えると、小児医療を取り巻く状況は大変厳しいために、おそらく4名の小児科医でもてんてこ舞いの状況ではなかったかと推測されます。入院時の担当医師は、肺炎、気管支喘息と診断した乳児に対し、血管確保のうえで輸液、抗菌薬、アミノフィリン持続点滴を行い、ネブライザー、各種内服を指示するなど、中~大発作を想定した気管支喘息に対する処置は行っています。それでも呼吸状態が安定しなかったので、ステロイドのワンショット静注を2回くり返しました。通常であれば、その後は回復に向かうはずなのですが、今回の患児は内服薬を嫌がってこぼしたり、ネブライザーの吸入をさせようとしてもうまくできなかったりなど、医師が想定した治療計画の一部は実施されませんでした。そして、当直帯は輪番制をとっていることもあって、入院時にきちんとした指示さえ出しておけば、後は当番の病棟担当医がみてくれるはずだ、という認識であったと思われます。そのため、11:00過ぎの入院から17:00過ぎに帰宅するまで6時間もありながら(当然その間は外来業務を行っていたと思いますが)一度も病室に赴くことなく、看護師から簡単な報告を受けただけで帰宅し、自分の目で治療効果を確かめなかったことになります。もし、帰宅前に患者を診察し、呼吸音を聴診したり経皮酸素飽和度を測るなどの配慮をしていれば、「予想以上に粘調痰がたまっているので危ないぞ」という考えに至ったのかも知れません。ところが、本件では血液ガス検査は行われず、急性呼吸不全の徴候を早期に捉えることができませんでした。そして、裁判でも、「入院時の担当医師はほかの小児科医師に比べて格段の差をもって病態の把握をしていたため、小児科病棟では主治医制をとらず輪番制であったことを考慮しても、患者の治療について第一に責任を負うものであり、少なくとも夜間の当直医とのあいだで綿密な打ち合わせを行い、午後5:00に帰宅後も治療に遺漏がないようにしておくべきであった」という、耳が痛くなるような判決が下りました。ここで問題となるのが、主治医制をとるべきかどうかという点です。今回の総合病院のように、医師個人への負担が大きくならないようにグループで患者をみる施設もありますが、その弊害としてもっとも厄介なのが無責任体制に陥りやすいということです。本件でも、裁判では問題視されなかった輪番の小児科当直医師が容態急変前に患者をみるべきであったのに、申し送りが不十分なこともあってほとんど関心を示さず、いよいよ呼吸停止となってからあわてて駆けつけました。つまり、入院時の担当医師は「5:00以降はやっと業務から解放されるので早く帰宅しよう」と考えていたでしょうし、当直医師は「容態急変するかも知れないなんて一切聞いてない。入院時の医師は何を考えているんだ」と、まるで責任のなすりつけのような状況ではなかったかと思われます。そのことで損をするのは患者に他なりませんから、輪番制をとるにしても主治医を明確にしておくことが望まれます。ましてや、「輪番制であったことを考慮しても、(入院指示を出した医師が)患者の治療について第一に責任を負う」という厳しい判決がおりていますので、間接的ではありますが裁判所から「主治医制をとるべきである」という見解が示されたと同じではないかと思います。小児科

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新規ドライパウダー吸入器の特性および簡便性の質的評価

 喘息やCOPDなどの慢性呼吸器疾患では吸入療法による治療が行われる。そのため、吸入器の選択と患者の吸入手技は長期管理のアドヒアランスに影響し、さらに治療効果に影響を及ぼす。 喘息およびCOPD患者へのインタビュー調査の結果、新たなドライパウダー吸入器(DPI)「エリプタ」は、他の吸入器と比べて満足度が高く好ましいものと認知されていることが、Henrik Svedsater氏らにより報告された。著者は「使用が容易で直感的である吸入器の開発は、喘息やCOPD患者の治療アドヒアランスを向上させるだろう」とまとめている。エリプタDPIは、2種類のドライパウダー吸入薬を1回で同時に吸入できるようデザインされた吸入器で、操作が容易で目盛が読みやすいのが特徴である。新規のICS/LABA配合剤、フルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)/ビランテロール(VI)(商品名:レルベア)のデバイスとして開発された。BMC Pulmonary Medicine誌2013年12月7日号掲載の報告。治験参加者に既存吸入器(ディスカス)と比較した使用感についてインタビュー調査 調査は、半構造化詳細質的面接法にて、エリプタが使用された6件のFF/VIについての第IIIa相臨床試験のいずれかに参加し完遂した患者を対象に、試験参加後2~4週間に行われた。 被験者に、吸入器のさまざまな特性の満足度について、また、現在使用している吸入器と比較した場合の好みについて質問した。回答は、帰納的内容分析アプローチにて検討され、また、主観的スケール(1~10)を用いた複数の基準で、被験者による吸入器の性能の評価も行われた。 対象者は、全米各地の試験サイト(喘息患者は3州、COPD患者は8州)から集められた。「デザイン」「フィット感」「みやすさ」「わかりやすさ」でエリプタを評価 結果、喘息患者33例、COPD患者42例から、エリプタの満足度が高いとの回答が得られた。回答者からは、操作が直感的で使いやすいとの声が聞かれる頻度が高かった。 現在使用している吸入器と比較してエリプタのほうが好ましい点としてしばしば引き合いに出されたのは、「人間工学的なデザイン」「マウスピースのフィット感」「ドーズカウンターのみやすさ」「わかりやすさ」であった。 喘息患者33例のうち、71%がディスカスと比較しエリプタがより好ましいと回答し、定量噴霧式吸入器(MDI)との比較では60%がエリプタがより好ましいと回答した。 またCOPD患者42例のうちでは、86%がディスカスよりも、95%がハンディヘラーよりも、また85%がMDIよりもエリプタが好ましいと回答した。 喘息およびCOPD患者における全体的な平均実行スコアは、9点以上(10点満点)であった。

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